(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-31
(54)【発明の名称】ケーブル駆動型ツールにおける係合解除の検出
(51)【国際特許分類】
A61B 34/30 20160101AFI20230824BHJP
B25J 3/00 20060101ALI20230824BHJP
B25J 9/08 20060101ALI20230824BHJP
【FI】
A61B34/30
B25J3/00
B25J9/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023509744
(86)(22)【出願日】2021-08-11
(85)【翻訳文提出日】2023-03-24
(86)【国際出願番号】 IB2021057405
(87)【国際公開番号】W WO2022034518
(87)【国際公開日】2022-02-17
(32)【優先日】2020-08-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516133124
【氏名又は名称】バーブ サージカル インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Verb Surgical Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】モーン・スペンサー
(72)【発明者】
【氏名】ハリリ・アリレザ
【テーマコード(参考)】
3C707
4C130
【Fターム(参考)】
3C707AS35
3C707BS10
3C707GS04
3C707HS27
3C707HT04
3C707HT24
3C707JT04
3C707JU02
4C130AA24
4C130AA34
4C130AA44
4C130AB02
4C130CA16
(57)【要約】
開示された実施形態は、外科用ツール又は外科用ロボットシステムのためのシステム及び方法に関する。外科用ツールの係合解除を検出するための1つの例示的なシステムは、ツールドライバのケーブルに接続され、かつそれによって駆動されるエンドエフェクタと、ケーブルに関連付けられた力を検出するように構成されたセンサと、1つ以上のプロセッサとを含む。1つ以上のプロセッサは、センサによって検出された力から導出されたケーブルの張力を識別し、張力を張力閾値と比較し、ケーブルの各々の速度値を含むベクトルに基づいて速度ノルム値を計算し、速度ノルム値を統計速度閾値と比較し、第1の比較及び第2の比較に基づいて複数のケーブルのうちの少なくとも1つのケーブルの係合解除を識別する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外科用ツールの係合解除を検出するための装置であって、
ツールドライバの複数のケーブルに接続され、かつそれによって駆動されるエンドエフェクタと、
前記複数のケーブルに関連付けられた力を検出するように構成された複数のセンサと、
1つ以上のプロセッサであって、
前記複数のセンサによって検出された前記力のうちの少なくとも1つの力から導出された、前記複数のケーブルのうちの少なくとも1つのケーブルの張力を識別し、
前記複数のケーブルのうちの前記少なくとも1つのケーブルの前記張力と張力閾値との第1の比較を実行し、
前記複数のケーブルの各々の速度値を識別し、
前記複数のケーブルの各々の前記速度値を含むベクトルに基づいて速度ノルム値を計算し、
前記速度ノルム値と統計速度閾値との第2の比較を実行し、
前記第1の比較及び前記第2の比較に基づいて、前記複数のケーブル又は関連する構成要素のうちの少なくとも1つのケーブル又は関連する構成要素の係合解除を識別するように構成されている、1つ以上のプロセッサと
を備える装置。
【請求項2】
前記速度ノルム値が、前記複数のケーブルの各々の前記速度値を含む前記ベクトルの大きさである、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
1つ以上のプロセッサが、
前記統計速度閾値を、一部、命令された速度から計算する
ように構成されている、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記統計速度閾値が、一部、ベイジアンフィルタから計算される、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記統計速度閾値が、一部、第1の時間における前記速度ノルム値と第2の時間における前記速度ノルム値との平均から計算される、請求項3に記載の装置。
【請求項6】
前記統計速度閾値が、一部、前記第1の時間における前記速度ノルム値及び前記第2の時間における前記速度ノルム値を含む時系列データの標準偏差から計算される、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
1つ以上のプロセッサが、
前記時系列データについてカイ二乗値を計算する
ように構成されている、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記複数のケーブルにそれぞれ結合された複数のモータを更に備え、前記複数のセンサが、前記複数のモータのそれぞれにおけるトルクを検出する、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
1つ以上のプロセッサが、
前記外科用ツールの逆運動学モデルから前記複数のケーブルのうちの少なくとも1つのケーブルの前記張力を計算する
ように構成されている、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記逆運動学モデルが、逆運動学行列に従って、前記複数のモータのそれぞれで検出された前記トルクと、前記複数のケーブルのうちの前記少なくとも1つのケーブルの前記張力との間の関係を含む、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
1つ以上のプロセッサが、
逆運動学モデルから前記複数のケーブルの各々について前記速度値を計算する
ように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
1つ以上のプロセッサが、
前記複数のケーブル又は関連する構成要素のうちの少なくとも1つのケーブル又は関連する構成要素の前記係合解除に応答してメッセージを生成する
ように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項13】
前記メッセージが、前記外科用ツールのユーザに対する指示を伴うユーザアラートである、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記メッセージが、前記外科用ツールのためのサービスを派遣する、請求項12に記載の装置。
【請求項15】
前記メッセージが、前記外科用ツールを無効にするエラーコマンドである、請求項12に記載の装置。
【請求項16】
外科用ツールの係合解除を検出する方法であって、
複数のセンサによって検出された少なくとも1つの力から導出された複数のケーブルのうちの少なくとも1つのケーブルの張力を識別することと、
前記複数のケーブルのうちの前記少なくとも1つのケーブルの前記張力と張力閾値との第1の比較を実行することと、
前記複数のケーブルの各々の速度値を識別することと、
前記複数のケーブルの各々の前記速度値を含むベクトルに基づいて速度ノルム値を計算することと、
前記速度ノルム値と統計速度閾値との第2の比較を実行することと、
前記第1の比較及び前記第2の比較に基づいて係合解除を識別することと
を含む方法。
【請求項17】
前記速度ノルム値が、前記複数のケーブルの各々の前記速度値を含む前記ベクトルの大きさである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記統計速度閾値が、少なくとも一部、命令された速度に基づく、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記統計速度閾値が、少なくとも一部、第1の時間における前記速度ノルム値及び第2の時間における前記速度ノルム値に基づく、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
装置であって、
張力閾値及び統計速度閾値を記憶するように構成されたメモリと、
複数のケーブルのうちの前記少なくとも1つのケーブルの張力と前記張力閾値との第1の比較を実行し、速度ノルム値と前記統計速度閾値との第2の比較を実行するように構成された制御部であって、前記第1の比較及び前記第2の比較に基づいて係合解除が判定される、制御部と
を備える装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、外科用ツールを駆動するためのケーブルの係合解除、破損、又は他の故障の検出に関する。
【背景技術】
【0002】
腹腔鏡手術などの低侵襲手術(MIS)は、外科手術中の組織損傷を低減することを意図した技術を伴う。例えば、腹腔鏡手術は、典型的には、患者に(例えば、腹部に)いくつかの小さな切開部を作成することと、切開部を通して患者に、1つ以上の外科用ツール(例えば、エンドエフェクタ又は内視鏡)を導入することと、を伴う。次いで、導入された外科用ツールを使用し、内視鏡によって提供される視覚化補助を用いて、外科手術を実行することができる。
【0003】
一般に、MISは、患者に残る傷跡が小さく、患者の疼痛が少なく、患者の回復期間が短縮され、患者の回復に関連する医療コストが低減できるなど、複数の利点を提供する。近年の技術開発により、遠隔操作者からのコマンドに基づいて外科用ツールを操作するための1つ以上のロボットアームを含むロボットシステムを用いて、より多くのMISを実行することが可能になる。ロボットアームは、例えば、その遠位端で、外科用エンドエフェクタ、撮像デバイス、患者の体腔及び器官へのアクセスを提供するためのカニューレなどの種々のデバイスを支持してもよい。ロボットMISシステムでは、ロボットアームによって支持される外科用器具の高い位置精度を確立及び維持することが望ましい場合がある。
【0004】
外科用ロボットシステムでは、外科用ツールは外科用ロボットアームに取り付けることができる。そのようなツールを使用して、患者の内部解剖学的構造に入る、それを見る、又は操作することができる。外科用ツールは、移動を行うためにケーブルで駆動することができる。ケーブルで不具合が生じることがある。例えば、1つ以上のケーブルが、外科用ツール又は駆動システムから係合解除されることがある。1つ以上のケーブルが高張力下で破断することがある。これらの事象を検出することで、ツールの制御されない動きからの潜在的な被害を回避することができる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書では、外科医が低侵襲手術を行うように設計されたロボット支援外科用電気機械システムが開示される。一連の互換性のあるツールは、ロボットアームの遠位端に取り付けられた器具ドライバから着脱することができ、外科医が様々な外科手術作業を実行することを可能にする。器具ドライバは、手術部位への体内アクセス、滅菌インターフェースを通した適合ツールの機械的作動、並びに滅菌インターフェース及びユーザタッチポイントを通した適合ツールとの通信を提供することができる。システムは、ツールによる障害物又はハードストップ経験を検出する。
【0006】
開示された実施形態は、外科用ツール又は外科用ロボットシステムのためのシステム及び方法に関する。外科用ツールの係合解除を検出するための1つの例示的なシステムは、ツールドライバのケーブルに接続され、かつそれによって駆動されるエンドエフェクタと、ケーブルに関連付けられた力を検出するように構成されたセンサと、1つ以上のプロセッサとを含む。1つ以上のプロセッサは、センサによって検出された力から導出されたケーブルの張力を識別し、張力を張力閾値と比較し、ケーブルの各々の速度値を含むベクトルに基づいて速度ノルム値を計算し、速度ノルム値を統計速度閾値と比較し、第1の比較及び第2の比較に基づいて複数のケーブルのうちの少なくとも1つのケーブルの係合解除を識別する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】外科用ロボットシステムを含む例示的な手術室環境を示す図である。
【
図2】ロボットアームと、ツールドライバと、外科用ツールが装填されたカニューレとを含む例示的な外科用ロボットシステムを示す図である。
【
図3A】装填された外科用ツールを有する例示的なツールドライバを示す図である。
【
図3B】装填された外科用ツールを有さない例示的なツールドライバを示す図である。
【
図4A】ロボット手首と、一対の対向する顎部と、ロボット手首及び一対の顎部をツールドライバのアクチュエータに結合するためのプーリ及びケーブルシステムとを有する例示的な把持器のエンドエフェクタを示す図である。
【
図4B】ロボット手首と、一対の対向する顎部と、ロボット手首及び一対の顎部をツールドライバのアクチュエータに結合するためのプーリ及びケーブルシステムとを有する例示的な把持器のエンドエフェクタを示す図である。
【
図5】ロボット手首、ツールドライバ及び/又は外科用ツールの制御部を示す図である。
【
図6】ツールドライバの外科用ツールへのマッピングを示す図である。
【
図7】外科用ツールのためのケーブル駆動システムを示す図である。
【
図8】ケーブル駆動システムのより詳細な図である。
【
図9】センサアレイと制御部の詳細な実施形態とを示す図である。
【
図10】ケーブル駆動システム及び外科用ツールのための例示的なケーブル係合解除検出アルゴリズムを示す図である。
【
図11】制御部の例示的な動作の例示的なフローチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下の実施形態は、ケーブル駆動型外科用ツールに関する。手首の通常動作中に手首ケーブルの係合解除を検出するアルゴリズムを説明する。手首のケーブルは、モータ又はアクチュエータによって駆動される。ケーブル係合解除検出アルゴリズムは、測定された張力及びアクチュエータ速度を使用して、ケーブル係合解除が発生した可能性がある時点を決定することができる。ケーブル駆動型ツール上では、ケーブルは、ツールの通常動作中に駆動モータから係合解除されることがある。是正措置がなければ、予期せぬ手首の挙動が損傷を引き起こす可能性がある。ケーブル係合解除検出アルゴリズムは、制御された方法で適時にモータが無効化されることを確実にする。
【0009】
図1は、外科用ロボットシステム100を有する例示的な手術室環境を示す図である。
図1に示すように、外科用ロボットシステム100は、ユーザコンソール110と、制御塔130と、外科用プラットフォーム124(例えば、テーブル又はベッドなど)上に取り付けられた1つ以上の外科用ロボットアーム122を有する外科用ロボット120とを備え、エンドエフェクタを有する外科用ツールが、外科手術を実行するためにロボットアーム122の遠位端に取り付けられる。ロボットアーム122は、テーブルに取り付けられたものとして示されているが、他の構成では、ロボットアームは、カート、天井、側壁、又は別の好適な支持面に取り付けられてもよい。
【0010】
一般に、外科医又は他の操作者などのユーザは、ユーザコンソール110に着座して、ロボットアーム122及び/又は外科用器具を遠隔操作することができる(例えば、テレオペレーション)。ユーザコンソール110は、
図1に示すように、ロボットシステム100と同じ手術室内に配置されてもよい。その他の環境では、ユーザコンソール110は、隣接する部屋若しくは近くの部屋に配置されてもよく、又は異なる建物、都市、若しくは国の遠隔地から遠隔操作されてもよい。ユーザコンソール110は、シート112と、ペダル114と、1つ以上の手持ち式ユーザインターフェースデバイス(UID)116と、例えば、患者内の手術部位の視野を表示するように構成されたオープンディスプレイ118とを備えてもよい。例示的なユーザコンソール110に示すように、シート112に座ってオープンディスプレイ118を見ている外科医は、ペダル114及び/又は手持ち式ユーザインターフェースデバイス116を操作して、ロボットアーム122及び/又はアーム122の遠位端に取り付けられた外科用器具を遠隔制御することができる。
【0011】
いくつかの変形形態では、ユーザはまた、外科用ロボットシステム100を「ベッド対面」(OTB)モードで動作させてもよく、このモードでは、ユーザは患者の側にいて、(例えば、片手に保持された手持ち式ユーザインターフェースデバイス116を用いて)ロボット駆動ツール/それに取り付けられたエンドエフェクタ及び手動式腹腔鏡ツールを同時に操作する。例えば、ユーザの左手は、手持ち式ユーザインターフェースデバイス116を操作してロボット外科用構成要素を制御していてもよく、一方、ユーザの右手は、手動式腹腔鏡ツールを操作していてもよい。したがって、これらの変形形態では、ユーザは、患者に対してロボット支援型低侵襲手術(MIS)及び手動腹腔鏡手術の両方を実施することができる。
【0012】
エンドエフェクタは、切断、把持、突き刺し、又はエネルギー放出などの外科的操作を実行するように構成されてもよい。外科用ツールは、手術中に、手動で、ロボットで、又はその両方で操作されてもよい。例えば、外科用ツールは、患者の内部解剖学的構造に入る、それを見る、又は操作するために使用されるツールであってもよい。一実施形態では、外科用ツールは、患者の組織を把持することができる把持器である。外科用ツールは、ベッドわきの操作者の手によって手動で直接制御されてもよく、又は移動を作動させるための電子コマンドを送信することによってロボット制御されてもよい。
【0013】
例示的な処置又は手術の間、患者は、麻酔を達成するために、滅菌されて準備され覆われている。手術部位への最初のアクセスは、手術部位へのアクセスを容易にするために、収容構成又は撤収構成にあるロボットシステム100を用いて手動で実行されてもよい。アクセスが完了すると、ロボットシステムの初期配置及び/又は準備を行うことができる。処置中、ユーザコンソール110内の外科医は、ペダル114及び/又はユーザインターフェースデバイス116を利用して、様々なエンドエフェクタ及び/又は撮像システムを操作し、手術を行うことができる。手動支援はまた、滅菌ガウンを着用した人員によって処置台で提供されてもよく、この人員は、組織を後退させること、又は1つ以上のロボットアーム122を伴う手動の再配置若しくはツール交換を行うことを含むが、それらに限定されない作業を行うことができる。また、ユーザコンソール110の外科医を支援するために、非滅菌要員が存在してもよい。処置又は手術が完了すると、ロボットシステム100及び/又はユーザコンソール110は、ロボットシステム100の洗浄及び/若しくは滅菌、並びに/又は電子的であるかハードコピーであるかにかかわらず、ユーザコンソール110を介するような、医療記録の入力若しくは印刷を含むがこれらに限定されない、1つ以上の術後処置を容易にする状態に構成又は設定されてもよい。
【0014】
いくつかの態様では、外科用ロボット120とユーザコンソール110との間の通信は、ユーザコンソール110からのユーザ入力をロボット制御コマンドに変換し、制御コマンドを外科用ロボット120に送信することができる制御塔130を介してもよい。制御塔130はまた、ロボット120からユーザコンソール110に、ステータス及びフィードバックを送信し返してもよい。外科用ロボット120と、ユーザコンソール110と、制御塔130との間の接続は、有線及び/又は無線接続を介してもよく、独自のものであってもよく、及び/又は様々なデータ通信プロトコルのいずれかを用いて実行されてもよい。任意の有線接続が、手術室の床及び/又は壁若しくは天井に任意選択的に内蔵されていてもよい。外科用ロボットシステム100は、手術室内のディスプレイ、並びにインターネット又はその他のネットワークを介してアクセス可能な遠隔ディスプレイを含む、1つ以上のディスプレイにビデオ出力を提供してもよい。ビデオ出力又はフィードはまた、プライバシーを確保するために暗号化されてもよく、ビデオ出力のすべて又は部分は、サーバ又は電子医療記録システムに保存されてもよい。
【0015】
外科用ロボットシステムで手術を開始する前に、外科チームは術前セットアップを実行することができる。術前セットアップ中、外科用ロボットシステムの主要な構成要素(テーブル124及びロボットアーム122、制御塔130、並びにユーザコンソール110)が手術室に位置付けられ、接続され、電力が供給される。外科用プラットフォーム124及びロボットアーム122は、保管及び/又は輸送の目的のために、外科用プラットフォーム124の下にアーム122を有する完全に収納された構成にあってもよい。外科チームは、滅菌ドレーピングのためにアームを収容位置から延ばすことができる。
【0016】
ドレーピング後、使用に必要になるまで、アーム122を部分的に引き込むことができる。トロカールの配置及び設置を含む、いくつかの従来の腹腔鏡工程を実施してもよい。例えば、各スリーブは、閉塞具の助けを借りて、小さな切開部に、かつ体壁を介して挿入することができる。スリーブ及び閉塞具は、挿入中の組織層の視覚化のための光学的入口を可能にして、配置中の損傷のリスクを最小限に抑える。通常、内視鏡が最初に配置されて、その他のトロカールの配置のための手持ち式カメラの視覚化を提供する。
【0017】
吹送後、必要に応じて手動器具をスリーブを通して挿入して、任意の腹腔鏡工程を手動で行うことができる。次に、外科チームは、ロボットアーム122を患者の上に配置し、各アーム122をその対応するスリーブに取り付けることができる。外科用ロボットシステム100は、各ツール(内視鏡及び外科用器具)が取り付けられるとすぐにそれを一意に識別し、ユーザコンソール110のオープンディスプレイ又は没入型ディスプレイ118上と、制御塔130上のタッチスクリーンディスプレイ上とに、ツールの種類及びアーム位置を表示する能力を有する。対応するツール機能が有効化され、マスタUID116及びフットペダル114を使用して起動することができる。患者側の補助者は、処置全体を通して、必要に応じて、ツールを取り付けたり取り外したりすることができる。ユーザコンソール110に着座した外科医は、2つのマスタUID116及びフットペダル114によって制御されているツールを使用して手術を開始することができる。システムは、マスタUID116を介した外科医の手、手首、及び指の動きを、外科用ツールの正確なリアルタイムの動きに変換する。したがって、システムは、外科医のすべての外科的操作を常に監視し、システムが外科医の手の動きを正確に反映することができない場合、器具の動きを一時停止する。手術中に内視鏡が1つのアームから別のアームに移動された場合、システムは、器具の位置合わせのためにマスタUID116を調整し、器具の制御及び動きを継続することができる。フットペダル114を使用して、マスタUID116から外科医の手を離すことなく、内視鏡制御並びに単極及び双極焼灼を含む様々な器具機能などの様々なシステムモードを起動させることができる。
【0018】
外科用プラットフォーム124は、手術中に再配置することができる。安全上の理由から、すべてのツールチップは、ユーザコンソール110において外科医によって視認され、能動的に制御されるべきである。外科医の能動的な制御下にない器具は取り外され、テーブルの脚がロックされる。テーブルの移動中、一体化されたロボットアーム122は、テーブルの動きに受動的に追従することができる。オーディオキュー及び視覚キューを使用して、テーブル移動中に外科チームを案内することができる。オーディオキューは、トーン及び音声プロンプトを含んでもよい。ユーザコンソール110及び制御塔130におけるディスプレイ上の視覚的メッセージングは、外科チームにテーブル移動ステータスを通知することができる。
【0019】
図2は、ロボットアームと、ツールドライバと、ロボット外科用ツールが装填されたカニューレとの、1つの例示的な設計を示す概略図である。
図2に示すように、例示的な外科用ロボットアーム200は、複数のリンク(例えば、リンク202)と、複数のリンクを互いに対して作動させるための複数の作動ジョイントモジュール(例えば、ジョイント204)とを含んでもよい。ジョイントモジュールは、ピッチジョイント又はロールジョイントなどの様々なタイプを含んでもよく、それらは、隣接するリンクの動きを他の軸に対して特定の軸の周りに実質的に制限し得る。
図2の例示的な設計には、ロボットアーム200の遠位端に取り付けられたツールドライバ230も示されている。ツールドライバ230は、外科用器具(例えば、内視鏡、ステープラなど)を受け入れて案内するために、その端部に結合されたカニューレ214を含んでもよい。外科用器具220(又は「ツール」)は、ツール220の遠位端にエンドエフェクタ222を含んでもよい。ロボットアーム200の複数のジョイントモジュールは、ロボット手術のためにツール220を作動させるツールドライバ230を位置決め及び配向するように作動させることができる。
【0020】
図3A及び
図3Bは、それぞれ、本技術の態様による、装填されたツールが隣接している、及び隣接していない例示的なツールドライバを示す概略図である。
図3A及び
図3Bに示すように、一変形形態では、ツールドライバ230は、長手方向トラック313と、長手方向トラック313と摺動可能に係合するツールキャリッジ320とを有する、細長い基部(又は「ステージ」)310を含んでもよい。ステージ310は、ロボットアームの遠位端に結合するように構成されてもよく、これによって、ロボットアームの関節接合は、ツールドライバ230を空間内に位置決め及び/又は配向する。更に、ツールキャリッジ320は、遠位端にエンドエフェクタ222が配置された状態で、ツール基部352からカニューレ214を通って延在するツールシャフト354も含み得るツールのツール基部352を受け入れるように構成されてもよい。
【0021】
更に、ツールキャリッジ320は、作動駆動部によって操作及び制御されるケーブルシステム又はワイヤなどを通して、エンドエフェクタの一連の関節運動を作動させてもよい。ツールキャリッジ320は、異なる構成の作動駆動部を含んでもよい。例えば、回転軸駆動部は、中空ロータを有するモータと、中空ロータ内に少なくとも部分的に配置された遊星歯車伝達装置とを含んでもよい。複数の回転軸駆動部は、任意の適切な方法で配置されてもよい。例えば、ツールキャリッジ320は、基部に沿って長手方向に延在する2列に配置された6つの回転駆動部322A~322Fを含んでもよく、これらの回転駆動部は、キャリッジの幅を低減し、ツールドライバのコンパクト性を高めるために、わずかに互い違いに配置される。
図3Bに示すように、回転駆動部322A、322B、及び322Cは、一般に、第1の列に配列されてもよく、回転駆動部322D、322E、及び322Fは、一般に、第1の列からわずかに長手方向にオフセットされた第2の列に配列されてもよい。
【0022】
図4A及び
図4Bは、ロボット手首と、一対の対向する顎部と、ロボット手首及び一対の顎部をツールドライバのアクチュエータに結合するためのプーリ及びケーブルシステムとを有する例示的なツールのエンドエフェクタを示す概略図である。以下のツールモデル及び制御部設計は、例示的な外科用ロボット把持器を参照して説明されるが、位置及び把持力制御のための提案された制御システムは、エンドエフェクタの多軸運動(例えば、ピッチ及びヨー)を可能にするロボット手首を介してツールシャフトに結合されたエンドエフェクタを含む任意のツールに適合され得ることに留意されたい。同様のツールとしては、針ドライバ、単極鋏、単極フック、双極鉗子、及び他の器具が挙げられるが、これらに限定されない。針ドライバ又は針ホルダは、針を保持するための対向するグリッパを含み、本明細書で詳細に説明する把持器と同様に動作する(例えば、開閉、ヨー、及びピッチ)。一組の単極鋏は、把持器と同様に動作する(例えば、開閉、ヨー、及びピッチ)、湾曲面を有する複動式鋏である。一組の双極鉗子は、選択された組織を把持し、操作し、凝固させ、また、把持器と同様に動作(例えば、開閉、ヨー、及びピッチ)するように設計された、2つの先端部を含む。
【0023】
図4Aに示すように、一対の対向する顎部401A及び401Bは、第1の軸410に沿った延在する心棒412を介してロボット手首の第1のヨーク402に移動可能に結合される。第1のヨーク402は、第2の軸420に沿った第2の延在する心棒422を介してロボット手首の第2のヨーク403に移動可能に結合されてもよい。一対の顎部401A及び401Bはそれぞれ、両方の顎部が軸410を中心に回転することができるように、延在する心棒412を介してプーリ415A及び415Bとそれぞれ結合されるか又は一体的に形成されてもよい。プーリ425A、425B、425C及び425Dは、延在する心棒422に結合され、軸420の周りを回転する。プーリ425A、425B、425C及び425Dは、ヨーク402の一方の側の第1のセットのプーリ425B及び425Cと、ヨーク402の他方の側の第2のセットのプーリ425A及び425Dとに配置されている。プーリ425A及び42Cは外側プーリであり、プーリ425B及び425Dは内側プーリである。同様に、第3のセットのプーリ435A、435B、435C及び435Dは、第3の延在する心棒432に結合され、軸420に平行な軸430の周りを回転する。
【0024】
エンドエフェクタ222(把持器)を作動させて、顎部401A及び401Bの一方又は両方を軸410の周りで様々な方法で動かすことができる。例えば、顎部401A及び401Bは、互いに対して開閉してもよい。顎部401A及び401Bはまた、エンドエフェクタ222(把持器)のヨー運動を提供するために、対として一緒に回転するように作動されてもよい。加えて、第1のヨーク402、プーリ415A及び415B、並びに顎部401A及び401Bは、軸420を中心に回転して、エンドエフェクタ222(把持器)のピッチ運動を提供することができる。ツールのロボット手首及び/又は顎部のこれらの運動は、4つの独立したケーブル405A~405Dを制御することによって達成することができる。
図4Aに示すように、ケーブル405Aは、プーリ415Aの一方の側から始まり(又は終端し)、プーリ425A及び435Aに沿って進むことができ、ケーブル405Bは、プーリ415Aの他方の側で終端し、プーリ425B及び435Bを通って進むように構成される。同様に、別の一対のケーブル405C及び405Dを顎部401Bに結合することができる。例えば、ケーブル405Cは、プーリ415Bの一方の側からプーリ425C及び435Cに延び、ケーブル405Dは、プーリ425D及び435Dを通ってプーリ415Bの他方の側で終端する。第3のセットのプーリ435A、435B、435C及び435Dは、ケーブル405A~405Dを第2のセットのプーリ425A~425Dに固定したままにし、ケーブルがプーリ425A~425Dに対してスリップ又は摺動するのを防止するように配置されている。
【0025】
4つの独立したケーブルを介してエンドエフェクタ222(把持器)の動きを制御することには、いくつかの利点がある。1つの利点は、6つのケーブル(又は6つのケーブル端部を有する3つのケーブルループ)を使用する典型的な市販の設計と比較して、ツール基部352からロボット手首まで延在するケーブルの数が減少することであり得る。ケーブルの数が少ないことで、ツールサイズ及び手首アセンブリの複雑性を低減させることができ、低侵襲性の外科手術又は非外科的用途に有益であり得る。更に、2つ又は3つのケーブルループの代わりに4つの独立したケーブルを配置することにより、ケーブルに予め張力をかける必要なしに各ケーブルの張力を独立して制御することができるだけでなく、手首ジョイントの可変コンプライアンス及び外部負荷に対する感度の向上も可能になる。更に、各ケーブルの張力を独立して再調節することが可能であり、ツール性能を更に向上させることができる。
【0026】
図4A及び4Bに示すように、エンドエフェクタ222(把持器)を作動させて、プーリ415A、415B、425A、425B、425C、及び425Dのうちの1つ以上に運動を付与し、それによって第1のヨーク402及び/又は顎部401A及び401Bの一方又は両方に運動を付与することによって、把持(例えば、顎部が軸410を中心に独立して回転)、ヨー(例えば、顎部が軸410を中心に共に回転)、及びピッチ(例えば、顎部が軸420を中心に回転)などの様々な方法で顎部401A及び401Bを動かすことができる。ケーブル405A~405Dは、2つの拮抗対にグループ化することができ、すなわち、拮抗対の一方のケーブルが作動又は張力をかけられ、他方のケーブルが緩められると、顎部は一方向に回転する。一方、他方のケーブルのみに張力がかけられると、顎部は反対方向に回転する。
【0027】
例えば、ケーブル405A及び405Bは、顎部401Aを動かすための第1の拮抗対であり、ケーブル405C及び405Dは、顎部401Bを制御するための第2の拮抗対である。ケーブル405Aに張力がかかり(例えば、回転駆動部322A~322Fのうちの少なくとも1つによって)、一方、ケーブル405Bが緩められると、顎部401Aは閉じる(反対側の顎部401Bに向かって動く)。一方、ケーブル405Bに張力がかかり、ケーブル405Aが緩められると、顎部401Aが開く(反対側の顎部401Bから離れる)。同様に、張力が加えられると、ケーブル405Cは顎部401Bを閉じ(反対側の顎部401Aに向かって動く)、ケーブル405Dは顎部401Bを開き(反対側の顎部401Aから離れるように動く)、他方のケーブルは緩む。別の例として、顎部401Aと顎部401Bとの間の把持力は、顎部が閉じられた(互いに接触した)後、(ケーブル405B及びケーブル405Dを緩めると共に)ケーブル405A及びケーブル405Cの両方に張力をかけ続けることによって達成することができる。
【0028】
拮抗対の両方のケーブルが同時に張力をかけられ、他方の対の両方のケーブルが緩められている場合、プーリ415A又はプーリ415Bは回転しない。代わりに、第1のヨーク402は、顎部401A及び401Bと共に、プーリ415A及び415Bによって軸420の周りにピッチするように付与される。例えば、一対のケーブル405A及び405Bが両方とも同時に張力をかけられ、一対のケーブル405C及び405Dが緩められるとき、顎部は(ヨーク402と共に)紙面外へピッチする。一方、ケーブル405C及び405Dの両方が同時に張力をかけられ、一対のケーブル405A及び405Bが緩められたままであるとき、顎部は紙面内へピッチする。
【0029】
図4Bは、エンドエフェクタ221(把持器)の様々な動きに対する例示的な角度定義を示す概略図である。角度は、軸410及び軸420、並びに第1のヨーク402の軸452及び第2のヨーク403の軸453を基準として定義される。例えば、
図4Bに示すように、軸452と軸453との間の角度(θ
1)は、軸420の周りのヨーク402の回転角を表すことができ、これはまた、エンドエフェクタ222(把持器)のピッチ角(θ
pitch)として定義することができる(一方、
図4Aでは、顎部が基準位置に留まっている、すなわち、ピッチ運動がないため、ヨーク402の軸452は、ヨーク403の軸453の上に重ね合わせられている)。加えて、角度(θ
2)及び(θ
3)は、それぞれ、顎部401A及び401Bの各々と、(原点としての)ヨーク402の軸452との間の角度を表すことができる。軸452からの方向を区別するために、角度(θ
2)及び(θ
3)は、異なる符号をとることができる。例えば、
図4Bに示すように、角度(θ
2)は負であり、角度(θ
3)は正である。
【0030】
制御作業を実行するために、ジョイント角に対して一貫した座標フレームを定義することが有益であることが多い。例えば、顎部角(θjaw)は、2つの顎部401Aと401Bとの間の角度として定義でき、ヨー角(θyaw)は、軸452と顎部角の二等分線との間の角度として定義することができる。これらの角度は、式1~3に従って定義することができる。
θpitch=θ1 式1
θyaw=1/2(θ2+θ3) 式2
θjaw=θ2-θ3 式3
【0031】
図4Bの角度と定義された角度との間の変換は、式4に記載される通りである。
【0032】
【0033】
図4A及び
図4Bのプーリ及びケーブルシステムのプーリは、プーリの幾何学的形状に対して以下の命名法を確立して説明することができる。
a)r11は、ケーブル405A及び405Cがそれぞれ存在する外側プーリ425A及び425Cの半径である。
b)r12は、ケーブル405B及び405Dがそれぞれ存在する内側プーリ425B及び425Dの半径である(r11はr12に等しくても等しくなくてもよい)。
c)r21は、ケーブル405Aが存在する側のプーリ415Aの半径である(
図4Aに示すプーリ415A及び心棒412の中心を基準とする)。
d)r22は、ケーブル405Bが存在する側のプーリ415Aの半径である(
図4Aに示すプーリ415A及び心棒412の中心を基準とする)。
e)r31は、ケーブル405Cが存在する側のプーリ415Bの半径である。
f)r32は、ケーブル405Dが存在する側のプーリ415Bの半径である。
【0034】
上記の例示的な対称設計では、(
図4Aに示すように)r31=r21、r32=r22、かつr21であるが、他のいくつかの設計では、r31=r21=r32=r22、並びにr11=r12であることが可能である。
【0035】
ケーブル張力(ξ[4×1])又はケーブル内の力(F[4×1])をジョイントトルク(τ[3×1])に関連付ける基本方程式は、式5で表される。
τ[3×1]=B[3×4]・ξ[4×1] 式5a
ここで、行列(B)は、式5bによって与えられる形式を有する。
【0036】
【0037】
ジョイントトルクは、ピッチジョイントτ
pitch、ヨージョイントτ
yawを含んでもよく、これらは、
図4A及び
図4Bの例ではτ
yaw=τ
jaw1+τ
jaw2であってもよく、ケーブル張力は、式6に示すように、ケーブル内の力(F[4×1])であってもよい。
【0038】
【0039】
理想的なケーブル変位(ケーブル弾性がないと仮定)と顎部角との関係を示す運動学的関係は、式7に記載される。
q
[4×1]=B
T
[4×3]θ
[3×1] 式7
ここで、q=[q
1 q
2 q
3 q
4]
Tは、ケーブルが剛性である理想的な場合におけるケーブルの変位である。したがって、展開した形の関係式は、式8として記述される。
q
1=-r
11θ
1-r
21θ
2
q
2=-r
12θ
1+r
22θ
2
q
3=+r
11θ
1+r
31θ
3
q
4=+r
12θ
1-r
31θ
3
ここで、θ
1はピッチジョイント角であり、θ
2及びθ
3はそれぞれ顎部A及び顎部Bのジョイント角である(
図3参照)。実際には、ケーブルはある程度弾性的であってもよく、ケーブルの力及び伸びは、式9に示すフックの法則に従う。
ξ
1=k(x
1-q
1)
ξ
2=k(x
2-q
2)
ξ
3=k(x
3-q
3)
ξ
4=k(x
4-q
4)
ここで、kはケーブル弾性(4本のケーブルが同様であると仮定)であり、xはアクチュエータの変位である。この場合、アクチュエータの変位は、2つの異なる座標フレームにおけるエンドエフェクタ222のジョイント角に関連し得る。
【0040】
ケーブルが弾性であると仮定することができない場合、上記の式は、ケーブルの伸びと力との関係を示す非線形の式に置き換えることができる。
【0041】
ロボット外科用器具の遠位エンドエフェクタの角度位置及び把持力。エンドエフェクタは、ロボット手首と、一対の対向部材(例えば、顎部又は爪)とを含んでもよく、各々は、2つの拮抗ケーブルによって作動される開位置と閉位置との間で可動である。合計4本のケーブルの各々を、独立したアクチュエータ又はモータによって駆動することができる。制御システムは、所望の位置及び把持力をもたらすために、アクチュエータからの位置及び速度フィードバック並びに4本のケーブルで測定された力フィードバックを伴うフィードバックループを含んでもよい。いくつかの実装形態では、アクチュエータ制御部は、位置プラスフィードフォワード電流モードを実行していてもよい。例えば、位置制御部は、位置フィードバックに基づいて、遠位エンドエフェクタを空間内の所望の角度位置に駆動してもよく、一方、把持力制御部は、対向部材間の所望の把持力を達成するために、4本のケーブル上のロードセルによって測定された把持力に基づいて、追加のフィードフォワード電流を提供する。
【0042】
図5は、外科用ロボットアーム122のツールドライバ230(ツールドライバ)に対する外科用ツール240の係合を検出するための、外科用ロボットシステム100のサブシステム又は一部の図である。外科用ロボットアーム122は、
図1に関して図示及び考察された外科用ロボットシステム100の外科用ロボットアームのうちの1つであってもよい。制御ユニット210は、例えば、
図1の制御塔の一部であってもよい。本明細書でより詳細に考察されるように、係合は、ツールドライバ230における1つ以上のアクチュエータ(例えば、アクチュエータ238-j)の1つ以上の回転モータ動作パラメータに基づいて、制御ユニット210によって検出され得る。
【0043】
異なる外科用ツール(例えば、外科用ツール240、並びに内視鏡カメラの回転、把持顎部の枢動、又は針の並進のための他の取り外し可能な外科用ツール)を選択的に(一度に1つずつ)取り付けることができるツールドライバ230が存在する。これは、例えば、人間のユーザが外科用ツール240のハウジングを手で保持し、この外科用ツール240を、1つ以上のツールディスク(例えば、ツールディスク244-i)が存在する外科用ツール240の外面が、1つ以上の駆動ディスク(例えば、駆動ディスク234-j)が存在するツールドライバ230の外面と接触するまで、矢印280の方向に移動させることによって行われてもよい。1つ以上のツールディスク及び/又は1つ以上の駆動ディスクは、プラスチック又は別の耐久性のある材料から形成することができるパックによって実装されてもよい。図示の例では、ツールドライバ230は、外科用ロボットアーム122の遠位端部分における外科用ロボットアーム122のセグメントである。アームの近位端部分は、上述の
図1に示す手術台などの外科用ロボットプラットフォームに固定されている。
【0044】
制御ユニット210は、外科用ロボットアーム122(駆動ディスク234を含む)における様々な電動ジョイントの運動を制御するように構成され、これを通じて、ユーザ入力デバイスの動作を模倣するエンドエフェクタ222の動作(その位置及び向き並びに開放、閉鎖、切断、圧力の印加などのその外科的機能)が達成される。これは、外科用ツール240がツールドライバ230から力又はトルク(例えば、トルクはねじり力である)を伝達するように係合されているときに、外科用ツール240における機械的伝達を介して達成される。制御ユニット210は、例えば、
図1の制御塔130の一部として、プログラムされたプロセッサとして実装され得る。制御ユニット210は、ローカル又は遠隔ユーザ入力(例えば、ジョイスティック、タッチ制御装置、ウェアラブルデバイス、又はコンソールコンピュータシステムを介して通信する他のユーザ入力デバイス)を介して受信された1つ以上のユーザコマンドに応答することができる。代替的に、制御ユニット210は、(例えば、制御ユニット210によって、若しくはコンソールコンピュータシステムによって実行されている訓練された外科用機械学習モデルから受信した)1つ以上の自律コマンド若しくは制御、又はそれらの組み合わせに応答することができる。コマンドは、ロボットアーム122の動き及びその取り付けられたエンドエフェクタ222の動作を指示する。
【0045】
エンドエフェクタ222は、顎部(例えば、
図4A及び
図4Bに示すように)、切断ツール、内視鏡、スプレッダ、インプラントツールなどの任意の外科用器具であってもよい。異なるエンドエフェクタを各々有する異なる外科用ツールは、外科処置又は他の医療処置中に使用するために、ロボットアーム122に選択的に取り付ける(一度に1つずつ)ことができる。エンドエフェクタ222は、外科用ツール240の遠位端に位置し、図示のようにカニューレ(例えば、外科手術を受けている患者に挿入され得る薄いチューブ)内に引き込まれ得るか、又はそこから伸長し得る顎部であってもよい。
【0046】
ロボットアーム122は、アクチュエータ238-jなどの1つ以上のアクチュエータが内部に存在するツールドライバ230を備える。各アクチュエータは、1つ以上のそれぞれの電気モータ(例えば、ブラシレス永久磁石モータ)を有する線形又は回転アクチュエータであり得、その駆動シャフトは、伝達装置(例えば、所与の歯車減少比を達成する歯車列)を介してそれぞれの駆動ディスク234-jに結合され得る。ツールドライバ230は、ツールドライバ230の平面又は平坦な表面上に配置され得る1つ以上の駆動ディスク234を含み、この図は、平坦な表面の同じ平面上に配置されたいくつかのそのような駆動ディスクを示している。各駆動ディスク(例えば、駆動ディスク234-j)は、ツールドライバ230の外面上に露出されており、(例えば、スナップ、摩擦、又は他の嵌合特徴部を介してしっかりと締結するために)外科用ツール240の嵌合ツールディスク244-jを機械的に係合するように設計されており、これら2つの間の直接トルク伝達を可能にする。トルク伝達は、例えば、外科用ツール240の平面又は平坦な表面と、ツールドライバ230の対応する又は嵌合する平面若しくは平坦な表面とを互いに接触させたときに起こり得る。
【0047】
更に、モータドライバ回路(例えば、ツールドライバ230内に、又は外科用ロボットアーム122内の他の場所に設置される)は、アクチュエータ238のうちの1つ以上の構成モータの入力駆動端子に電気的に結合されている。モータドライバ回路は、制御ユニット210によって設定又は制御することができるモータドライバ回路入力に従って、例えば、モータ又はそのトルクの速さを調節するためにモータによって引き出される動力を操作し、これにより、関連付けられた駆動ディスク(例えば、駆動ディスク234-j)の電動回転がもたらされる。
【0048】
嵌合駆動ディスク234-jがそれぞれのツールディスク244-jに機械的に係合されると、駆動ディスク234-jの電動回転は、ツールディスク244-jを回転させ、例えば、これら2つのディスクが、一体となって回転し、それにより、伝達デバイスに機械的に結合され得るエンドエフェクタ222の動き及び動作を制御するための、外科用ツール240内の、例えば、連結部、歯車、ケーブル、チェーン、又は他の伝達デバイスに運動を付与してもよい。
【0049】
異なる外科用ツールは、回転、関節接合、開放、閉鎖、伸長、引き込み、圧力印加などの動きのタイプ及びこれらの動きがエンドエフェクタによって実施される自由度に基づいて、異なる数のツールディスクを有し得る。
【0050】
更に、外科用ツール240内で、2つ以上のツールディスク244が、嵌合駆動ディスク234をそれぞれ駆動している2つ又は3つ以上のモータによる負荷分散などの目標を達成するために、エンドエフェクタ222の単一の運動に寄与し得る。別の態様では、ツールドライバ230内には、2つ又は3つ以上のモータが存在してもよく、それらの駆動シャフトは、負荷を分散させるために(伝達装置を介して)結合されて同じ出力シャフト(又は駆動ディスク234)を回転させる。
【0051】
更に別の態様では、外科用ツール240内には、同じ自由度で相補的な動作を実施するために、(それぞれのツールディスク244を介して)2つの駆動ディスク234からのトルクを変換する伝達装置が存在し得、例えば、第1の駆動ディスク234-jは、外科用器具240のハウジング内のドラムを回転させて、ロッドの一端を取り込み、第2の駆動ディスク234-iは、外科用器具240のハウジング内の別のドラムを回転させて、ロッドの他端を取り込む。別の例として、単一の軸に沿ったエンドエフェクタの伸長及び短縮は、2つのツールディスク234-i、234-jを使用して達成されてもよく、1つのケーブルは伸長を実施して、別のケーブルは引き込みを実施する。これは、同様に1つの自由度(例えば、単一の動き軸に沿って長手方向に伸長及び短縮する)で動くが、その全運動範囲を制御するために単一のツールディスクのみを必要とするエフェクタとは対照的である。別の例として、複数の自由度(例えば、手関節運動する(wristed)動き、複数の軸に沿った動き、エンドエフェクタの動きに加えてエネルギーエミッタの作動など)で動くエフェクタは、いくつかのツールディスク(各々がそれぞれの駆動ディスクに係合されている)の使用を必要とし得る。別のタイプの外科用ツール240では、単一のツールディスク244が、直接入力(例えば、歯車)を介して、伸長運動及び引き込み運動の両方を実施するのに十分である。別の例として、エンドエフェクタ222が顎部である場合、2つ又は3つ以上のツールディスク244は、本明細書でより詳細に考察されるように、負荷分散のために、顎部の運動を協働的に制御することができる。
【0052】
更に別の態様では、外科用ツール240内には、同じ自由度で相補的な動作を実施するために、(それぞれのツールディスク244を介して)2つの駆動ディスク234からのトルクを変換する伝達装置が存在し得、例えば、第1の駆動ディスク234-iは、外科用ツール240のハウジング内のドラムを回転させて、ケーブルの一端を取り込み、第2の駆動ディスク234-jは、外科用ツール240のハウジング内の別のドラムを回転させて、ケーブルの他端を取り込む。別の例として、単一の軸に沿ったエンドエフェクタの伸長及び短縮は、2つのツールディスク234-i、234-jを使用して達成されてもよく、例えば、異なるケーブルを介して、1つのケーブルは伸長を実施して、別のケーブルは引き込みを実施する。これは、同様に1つの自由度(例えば、単一の動き軸に沿って長手方向に伸長及び短縮する)で動くが、その全運動範囲を制御するために単一のツールディスクのみを必要とするエフェクタとは対照的である。別の例として、複数の自由度(例えば、手関節運動する(wristed)動き、複数の軸に沿った動き、エンドエフェクタの動きに加えてエネルギーエミッタの作動など)で動くエフェクタは、いくつかのツールディスク(各々がそれぞれの駆動ディスクに係合されている)の使用を必要とし得る。別のタイプの外科用ツール240では、単一のツールディスク244が、直接入力(例えば、歯車)を介して、伸長運動及び引き込み運動の両方を実施するのに十分である。別の例として、エンドエフェクタ246が顎部である場合、2つ又は3つ以上のツールディスク244は、本明細書でより詳細に考察されるように、負荷分散のために、顎部の運動を協働的に制御することができる。
【0053】
図6は、ツールディスクTD1~5(この例ではTD6は使用されていない)のための回転デバイス割当て又はマッピングを含む外科用ツール240の例を示す。この例では、ツールディスクTD5はエンドエフェクタのロール軸258にマッピングされ、エンドエフェクタは顎部251として示され、第1の対向する顎部401Aと第2の対向する顎部401Bとを備えてもよい。ツールディスクTD5は、手首をロール軸の周りで回転駆動する1つ以上の歯車に結合されてもよい。対向する各顎部には、2つのツールディスクが割り当てられる。例えば、第1の対向する顎部401Aは、顎部を開く(すなわち、第1の対向する顎部401Aと第2の対向する顎部401Bとの間の角度を増大させる)ためのツールディスクTD1と、顎部を閉じる(すなわち、第1の対向する顎部401Aと第2の対向する顎部401Bとの間の角度を減少させる)ためのツールディスクTD3とに割り当てられてもよい。ツールディスクTD1は、プーリ415Aを第1の方向に回転させるケーブルに結合されてもよく、ツールディスクTD3は、プーリ415Aを第2の方向に回転させるケーブルに結合されてもよい。
【0054】
同様に、第2の対向する顎部401Bは、顎部を開く(すなわち、第1の対向する顎部401Aと第2の対向する顎部401Bとの間の角度を増大させる)ためのツールディスクTD2と、顎部を閉じる(すなわち、第1の対向する顎部401Aと第2の対向する顎部401Bとの間の角度を減少させる)ためのツールディスクTD4とに割り当てられてもよい。ツールディスクTD2は、プーリ415Bを第1の方向に回転させるケーブルに結合されてもよく、ツールディスクTD4は、プーリ415Bを第2の方向に回転させるケーブルに結合されてもよい。
【0055】
いくつかの実施形態では、ツールディスクが実質的に同一平面上にもたらされ、対応する駆動ディスクと同軸に整列するように、外科用ツール240が最初にツールドライバ230に取り付けられるか、又はツールドライバ230上に設置されると(ツール及び駆動ディスクはおそらく、まだ首尾よく係合されていないが)、制御ユニット210は、最初に外科用ツール240のタイプを検出する。一実施形態では、外科用ツール240は、ツール又はエンドエフェクタタイプの識別、固有のツール又はエンドエフェクタID、使用されるツールディスクの数、使用されているそれらのツールディスクの場所(例えば、合計6つの可能性のあるツールディスク244-e、244-f、244-g、244-h、244-i、244-jから)、ツールディスクのための伝達装置のタイプ(例えば、直接的な駆動装置、ケーブル駆動型など)、ツールディスクがエンドエフェクタに与える運動あるいは作動、1つ以上のツール較正値(例えば、ツールの係数試験/組み立て中に決定されるような、ツールディスクの回転位置)、エンドエフェクタの運動が最大又は最小の動きによって制約されているかどうか、並びに他のツール属性のうちの1つ以上など、そのツール又はエンドエフェクタ情報を識別する、ソリッドステートメモリ、無線周波数識別(radio frequency identification:RFID)タグ、バーコード(二次元若しくはマトリックスバーコードを含む)などの情報記憶ユニット242を有する。一実施形態では、情報記憶ユニット242は、ツールIDなどの最小情報を識別し、その制御ユニット210は、様々なツール属性のルックアップを実施するために使用され得る。
【0056】
ツールドライバ230は、情報記憶ユニット242から情報を読み取り、かつ情報を制御ユニット210に送るための通信インターフェース232(例えば、メモリライタ、近距離の通信手段、近距離通信(near field communication:NFC)、トランシーバ、RFIDスキャナ、バーコードリーダなど)を含み得る。更に、いくつかの実施形態では、各ツールディスク244と関連付けられた1つの情報記憶ユニットなど、外科用ツール240内に2つ以上の情報記憶ユニットが存在し得る。この実施形態では、ツールドライバ230はまた、所与のツールに存在するであろう各可能な情報記憶ユニットのための対応するセンサを含み得る。
【0057】
ツールディスクが整列させられ、対応する駆動ディスクに重ね合わせられるように(必ずしも機械的に係合される必要はないが)外科用ツール240がツールドライバ230に取り付けられた後、また、ツールディスク情報が得られた後、例えば、制御ユニット210によって読み取られた後、制御ユニット210は、それぞれの駆動ディスクに取り付けられることが予想されるツールディスクのすべてが、それらの対応の駆動ディスクと機械的に係合される(例えば、それらの機械的係合が達成されているか、又はツールドライバ230が、ここで、ツールと係合したと見なされる)ときを検出するための係合プロセスを実施する。すなわち、外科用ツール240をツールドライバ230に取り付けることは、必ずしも、対応する駆動ディスクとのツールディスクの機械的係合に必要な適切な嵌合を保証しない(例えば、嵌合特徴部の位置ずれによって)。係合プロセスは、対応する駆動ディスク234-jを駆動するアクチュエータ(例えば、アクチュエータ238-j)の1つ又は2つ以上のモータを作動させることを含み得る。次に、アクチュエータ238-jの1つ以上の監視されたモータ動作パラメータに基づいて、アクチュエータ238-jが駆動ディスク234-jを駆動している間、ツールディスク244-iと駆動ディスク234-jとの機械的係合を検出することができる。このプロセスは、(例えば、現在取り付けられている特定の外科用ツール240について得られたツールディスク情報に基づいて決定して)それぞれのツールディスク244に現在取り付けられていると予想される(ツールドライバ230の)すべての駆動ディスク234に対して繰り返され得る。
【0058】
特定のタイプの外科用ツール240がツールドライバ230に取り付けられていることを検出すると、制御ユニット210は、そのタイプの外科用ツール240と前もって関連付けられているツールドライバ230の1つ以上のアクチュエータ(例えば、モータ)を作動させる。いくつかの実施形態では、外科用ツール240の対応する駆動ディスク234と関連付けられた各アクチュエータは、同時に、連続的に、又は同時作動と連続的な作動との組み合わせで作動され得る。
【0059】
図7は、外科用ツール240のためのケーブル駆動システムを示す図である。本明細書の他の実施形態に記載されるように、4つのケーブル405A~Dは、ツールドライバ230によって駆動されて、手首223及びエンドエフェクタ222を含むツールに所望の位置又は動きを提供する。ケーブル405A~Dは、ケーブルインターフェース224で手首223に接続する。手首223は、エンドエフェクタ222に接続されるか、又はエンドエフェクタ222を含む。ケーブル405A~Dは、シャフト239によって収容され、保護されている。ケーブルは、ツール取付けインターフェース205でロボットアーム200の遠位端に接続する。以下でより詳細に説明するように、制御ユニット210は、外科用ツール240の1つ以上の構成要素にデータを提供し、外科用ツール240からフィードバックデータを受信する。
【0060】
図8は、ケーブル駆動システムのより詳細な図である。モータ231は、ケーブル405を動作させる。モータ231は、手首223を動かすために、特定の順序でケーブル405を巻き取るためのシャフトに直接接続されてもよい。
図8に示す例では、モータ231は、歯車列235を駆動して、ケーブルが巻き付くキャプスタン237を回転させる。様々なセンサがケーブル駆動システムに含まれてもよい。位置エンコーダ233は、モータシャフト位置を監視し、現在のモータシャフト位置を、例えば角度位置を表す値に符号化する回転位置エンコーダであってもよい。センサ236は、それぞれのケーブルに結合された張力センサ、又はケーブルに結合されたそれぞれのモータのトルクを測定するトルクセンサを含んでもよい。測定されたトルク(回転力)を、張力(直線的な力)に変換することができる。各ケーブルは、ツールの開始「弛緩」位置で初期張力(予張力)を有することができる。いくつかの実施形態では、予張力は10Nである。いくつかの実施形態では、ツールがケーブル予張力を必要としない場合、予張力の値は、0他の低い値に設定されてもよい。
【0061】
図9は、ハウジングの嵌合表面上に同一平面的に配置された、ツールディスク244-e、244-f、244-g、244-i、244-jなどの5つのツールディスクを利用する外科用ツール240の例を示す。各ツールディスクは、エンドエフェクタ222の動き及び/又は作動の少なくとも一部に寄与する。外科用ツール240とツールドライバ230との取付け(例えば、それぞれのハウジングの嵌合面の接合)を検出すると、制御ユニット210(又はメモリ314に記憶されている指示を実行している間のプロセッサ312)は、駆動ディスク234e、234f、234g、234i、234jなどの対応する5つの駆動ディスクのみを回すべきである(対応するアクチュエータ238が作動される)と決定するプロセスを実施して、係合プロセスを実施する。
【0062】
いくつかの実施形態では、制御ユニット210(センサ236を介して)によって監視されるモータ動作パラメータは、ツールディスクと駆動ディスクとの機械的係合の成功を意味すると解釈される。制御ユニット210は、存在センサ341、トルクセンサ342、位置センサ343、電気センサ345、光学センサ347、及び力センサ348の任意の組み合わせを含む例示的なセンサアレイ内のセンサ236と通信し、そこからセンサデータを受信する。センサアレイは、外科用ツールの異なる自由度(例えば、閉鎖ジョイント、ロールジョイント、又は外科用ツールの他の動作)のための別個のセンサを含んでもよい。すなわち、センサアレイ又はその1つ以上のセンサは、ツールドライバ230内の複数のツールディスク244に対して繰り返されてもよい。
【0063】
測定値は、トルクセンサ342又は力センサ348によって測定されるような、アクチュエータ238-jによって印加されるトルク(例えば、ねじり力)の測定値、ある特定の速度で動くようにアクチュエータを駆動しようと試みるとき(例えば、センサ236-jが、モータ入力駆動端子と直列の電流感知抵抗を含み得る場合)にアクチュエータ238-jのモータ231に供給される電気センサ345による電流の測定値、ある特定の速度で動くようにモータを駆動しようと試みるとき(例えば、センサ236-jが、モータ入力駆動端子の電圧を測定するための電圧感知回路も含み得る場合)に、アクチュエータ238のモータ231の入力駆動端子に見られるような電気センサ345による電気インピーダンスの測定値、アクチュエータ238-jの速度(例えば、光学センサ347が、アクチュエータ238-jの出力シャフト上又はモータ231の駆動シャフト上に位置エンコーダを含み得る場合)、並びに、本明細書ではモータ動作パラメータと呼ばれる他のパラメータを含むことができる。測定値は、センサアレイ236内の任意のセンサから暗示された、又は情報記憶ユニット242と通信インターフェース232との間の相互作用から決定された、存在センサ341からの存在データを含んでもよい。位置センサ343は、別個に示されているが、存在センサ341、トルクセンサ342、電気センサ345、光学センサ347、及び力センサ348の組み合わせを使用して実装されてもよい。一例では、同じタイプの追加のセンサを位置センサ343に使用してもよい。
【0064】
特定のアクチュエータの1つ又は2つ以上のモータ動作パラメータを監視する間、これらのパラメータのうちの1つ又は2つ以上が所定の条件又は閾値を満たす(例えば、クリアするか、又はこれらに達する)とき、そのような状況の検出は、制御ユニット210によって機械的係合事象と解釈されることができる。所定の条件を満たすことは、例えば、監視されている動作パラメータが、同じアクチュエータ238-jの一部であるか、又は係合検出プロセス中に制御ユニット210によって同時に制御されている別のアクチュエータ238-iの一部である別のモータの動作パラメータに対して、閾値に従って特定の変化を示すことを意味する場合があることに留意されたい。
【0065】
いくつかの実施形態では、i)トルク閾値を満たす(例えば、上昇し、到達する)トルク、ii)電流閾値を満たす(例えば、上昇し、到達する)モータ電流、iii)インピーダンス閾値を下回るインピーダンス、iv)モータ速度閾値を下回るモータ速度、又はそれらの組み合わせ、のうちの1つ又は2つ以上など、アクチュエータ238-jの動作中のある特定のモータ動作パラメータの検出は、駆動ディスク234-jに対するツールディスク244-jの機械的係合が生じたことを決定するために、制御ユニット210によって使用される。以下は、そのようなプロセスのいくつかの例である。
【0066】
プログラムされたプロセッサ312を含む制御ユニット210は、例えば、制御塔130内の共有マイクロプロセッサ及びプログラムメモリとして、外科用ロボットシステム100(
図1)に組み込まれてもよい。代替的に、制御ユニット210は、手術室とは異なる部屋、又は
図1に示される手術室とは異なる建物などにある遠隔コンピュータに実装されてもよい。更に、制御ユニット210はまた、図示されていないが、ロボットアーム及びその取り付けられた外科用ツール240、電源デバイス(例えば、バッテリ)、並びに外科用ロボットシステムを制御するための電子デバイスと典型的に関連付けられた他の構成要素の手動制御を可能にし得るユーザインターフェースハードウェア(例えば、キーボード、タッチスクリーン、マイクロフォン、スピーカ)も含んでもよい。
【0067】
メモリ314は、1つ以上のプロセッサ312(簡略化するために本明細書ではプロセッサと総称的に呼ばれる)に結合されて、プロセッサ312による実行のための指示を記憶する。いくつかの実施形態では、メモリは、非一時的であり、張力評価制御316及び速度評価制御315を含む1つ以上のプログラムモジュールを記憶し得、その指示は、本明細書に記載の較正及び較正評価プロセスを実施するようにプロセッサ312を構成する。言い換えれば、プロセッサ312は、張力評価制御316及び速度評価制御315の一部としてメモリ314に記憶されたプログラム、ルーチン、又は指示の実行の制御下で動作して、本明細書に記載される態様及び特徴に従って方法又はプロセスを実行してもよい。
【0068】
メモリ314は、外科用ツール240及び/又はツールドライバ230のための1つ以上の設定、係数値、閾値、許容値、較正値を含んでもよい。メモリ314は、後述する張力閾値及び/又は速度閾値の特定の値を含んでもよい。これらの値は、構成ファイル、テーブル、又は行列としてメモリ314に記憶されてもよい。構成ファイル内のいくつかの値は、ユーザによって提供されてもよく、いくつかは、外科用ツール240又はツールドライバ230の識別子に基づいてアクセス又は検索されてもよく、他の値は、制御ユニット210によって設定されてもよい。
【0069】
図10は、本明細書に記載のシステムのいずれかによって、例えば制御ユニット210などの制御部によって実行され得る手順又は技術のブロック図を示す。各動作又はブロックは、多くの工程を有することができる別個のプロセスを指すことができる。図示のシーケンスは一例にすぎず、任意の順序で工程を実行してもよい。追加の、異なる、又はより少ないブロックが含まれてもよい。
【0070】
上述したように、アクチュエータ238又はモータ231の各々又は1つ以上は、トルクセンサ342などのセンサと関連付けられてもよい。それぞれのトルクセンサ342は、アクチュエータ238のトルクを測定する。アクチュエータ238に結合されたケーブルの張力は、測定されたトルクに基づいて決定される。トルクセンサ342によって測定されたアクチュエータ238のトルクにアクチュエータ238の半径を乗算して、それぞれの結合されたケーブルの張力に等しくすることができる。制御ユニット210は、対応するアクチュエータ及び/又はアクチュエータとケーブルとの間の駆動列上のトルクからの張力値を含むケーブル張力501A~Dのセットを計算することができる。
【0071】
制御ユニット210は、外科用ツール240の逆運動学モデルからケーブルのうちの少なくとも1つのケーブルの張力を計算することができる。例えば、入力デバイス317からのユーザ入力は、ジョイント空間における特定の位置又は動きの方向を要求することができる。制御ユニット210は、命令された位置を上述のB行列を含む逆運動学モデルから変換して、命令された位置をアクチュエータ空間に変換するか、又は直接、ケーブル空間に変換する。逆運動学モデルは、逆運動学行列に従って、複数のモータのそれぞれで検出されたトルクと、複数のケーブルのうちの少なくとも1つのケーブルの張力との間の関係を含む。
【0072】
あるいは、制御ユニット210は、それぞれのケーブルに結合された張力センサから少なくとも1本のケーブルの張力を受け取ってもよい。これらの例のすべてにおいて、制御ユニット210は、センサによって検出された力のうちの少なくとも1つの力から導出された、複数のケーブルのうちの少なくとも1つのケーブルの張力を識別する。
【0073】
制御ユニット210は、張力閾値比較503(例えば、張力評価制御316に含まれる)を実行して、ケーブルのうちの少なくとも1つのケーブルの張力を張力閾値と比較する。閾値比較503の出力は、張力が張力閾値より小さい場合の第1の値(例えば、高い値又は1)と、張力が張力閾値より大きい場合の第2の値(例えば、低い値又は0)とに対応する2値であってもよい。
【0074】
制御ユニット210は、対応するアクチュエータ238のセンサデータに基づいてケーブル速度502A~Dのセットを決定することもできる。一例では、位置エンコーダ233は、アクチュエータ238の位置に関するセンサデータを提供する。アクチュエータ238の回転位置の変化は、ケーブルの線速度に変換される。あるいは、ケーブル502A~Dの設定速度は、モータトルクに関するセンサデータに基づく。例えば、モータトルク??
【0075】
ケーブル速度502A~Dのセットの計算の別の例は、キャプスタン237及び/又は歯車列を考慮する。ケーブル速度502A~Dのセットは、アクチュエータ位置及びキャプスタン237の半径に基づいて決定されてもよい。キャプスタン半径は、キャプスタン237が回転するときにそれぞれのケーブルが固定されて巻き付く距離である。キャプスタンの回転は、モータ231の回転運動をキャプスタン237の回転運動に変換する1つ以上の歯車を介して行うことができる。キャプスタンが回転すると、回転量及び回転方向に応じてケーブル位置及びケーブル張力が変化する。
【0076】
いくつかの実施形態では、測定されたケーブル位置(C)は、式10によって示されるように、アクチュエータ位置(x)と半径(r)との積によって決定される。半径(r)は、アクチュエータの半径又はキャプスタンの半径とすることができ、これは歯車列の歯車比によって調整することができる。
C=x*r 式10
【0077】
ケーブル位置(C)の変化は、式11に示すようにケーブルの速度(V)である。時間に関するケーブル位置の導関数はケーブル速度である。同様に、時間に関するアクチュエータ位置の導関数に半径を乗じたものがケーブル速度である。
V=dC/dt=dx/dt*r 式10
【0078】
制御ユニット210は、ケーブル速度502A~Dのセットから(例えば、速度評価制御315を使用して)速度ベクトル504を生成する。制御ユニット210は、上述の技術のいずれかから計算された複数のケーブルの各々の速度値を識別することができる。速度ベクトル504には、ケーブル駆動システム内の各ケーブルに対する成分が含まれる。速度ベクトル504は、ケーブルの拮抗対が速度ベクトル504内の所定の位置にあるように配置されてもよい。例えば、ケーブルの拮抗対の速度値は、速度ベクトル504において隣接していてもよい。
【0079】
制御ユニット210は、測定された速度ノルム値506を速度ベクトル504から計算することができる。式11に示すように、速度ベクトル504の成分は二乗されて合計され、その結果の平方根が、速度ノルム値506である。速度ベクトル504の大きさは、測定された速度ノルム値506である。したがって、測定された速度ノルム値(Vmeasured)は、ケーブル駆動システム内のすべてのケーブルの測定された速度(MV1,MV2,...MVn)を表す単一の値である。
【0080】
【0081】
測定された速度ノルム値506は、命令された速度と比較することができる。命令された速度は、アクチュエータ238に送信されたコマンドに基づくケーブルの予想速度である。命令された速度が測定された速度と異なる場合、予期しない挙動があった。アクチュエータと滅菌アダプタとの間の係合は、係合解除されているか、又は他の方法で損なわれている可能性がある。これが起こると、張力として1つ以上のケーブルに蓄えられたエネルギーが、予期せぬ方法で手首を動かす可能性がある。
【0082】
制御ユニット210は、ユーザ入力に基づいて、ケーブルの命令された速度値から命令された速度ノルム値を計算することができる。式12に示すように、命令された速度値は二乗されて合計され、その結果の平方根が、命令された速度ノルム値(Vcommand)である。命令された速度ノルム値は、ケーブル駆動システム内のすべてのケーブルの命令された速度(CV1,CV2,...CVn)を表す単一の値である。
【0083】
【0084】
制御ユニット210は、(例えば、速度評価制御315を使用して)速度閾値比較510を実行して、速度ノルム値を統計速度閾値と比較する。統計速度閾値は、比較が直接比較であるように、命令された速度ノルム値に等しく設定されてもよい。閾値比較503の出力は、速度が統計速度閾値より大きい場合の第1の値(例えば、高い値又は1)と、張力が統計速度閾値より小さい場合の第2の値(例えば、低い値又は0)とに対応する2値であってもよい。
【0085】
統計速度閾値は、測定された速度ノルム値と命令された速度ノルム値との、統計的に有意な差であってもよい。例えば、測定された速度ノルム値及び/又は命令された速度ノルム値を、制御ユニット210によって経時的に監視して、測定された速度ノルム値及び/又は命令された速度ノルム値のどの程度の変化が、ケーブルのうちの1つ以上が、単にデータにおける重大でない変動ではなく、断線又は破損によるエネルギーの放出を経験したことを示すかを判定することができる。
【0086】
統計速度閾値は、一部、ベイジアンフィルタから計算されてもよい。例えば、ベイジアンフィルタは、測定された速度ノルム値、命令された速度ノルム値、又は測定された速度ノルム値と命令された速度ノルム値との間の差からの時系列データを分析することができる。ベイジアンフィルタは、時間的にこれらの変数のいずれかに対する同時確率分布を決定して、変数の統計的に有意な変化を識別し、単なるノイズである変動を除外することができる。
【0087】
統計速度閾値は、統計的仮説検定(例えば、カイ二乗検定)から決定することができる。統計的仮説は、測定された速度ノルム値と、命令された速度ノルム値からの期待値との間に統計的に有意な差があるかどうかを判定する。
【0088】
統計速度閾値は、一部、第1の時間における速度ノルム値と第2の時間における速度ノルム値との平均から計算される。例えば、統計速度閾値は、一部、第1の時間における速度ノルム値及び第2の時間における速度ノルム値を含む時系列データの標準偏差から計算される。
【0089】
単にグラフィック表示のために含まれ得るANDゲート505は、張力閾値比較503及び速度比較閾値510の出力に対する論理演算を表す。ゲート505に対応する構成要素はなくてもよく、これは単なるグラフィック表示であってもよい。速度閾値比較510の出力が、速度が統計速度閾値より大きいことを示し、張力閾値比較503が、測定された張力が張力閾値より小さいことを示す場合、ANDゲート505の出力は高くてもよく、制御ユニット210に1つ以上のメッセージを生成させることができる。制御ユニット210は、第1の比較及び第2の比較に基づいて、複数のケーブル又は関連するモータのうちの少なくとも1つのケーブル又は関連するモータの係合解除を識別するように構成される。
【0090】
メッセージは、ケーブルの係合解除、又はケーブルの係合解除をもたらす滅菌アダプタからのモータの係合解除を示してもよい。制御ユニット210は、ケーブルのうちの少なくとも1つのケーブルの係合解除に応答してメッセージを生成することができる。メッセージはケーブルを指定してもよい。例えば、ケーブルは、対応するアクチュエータ238上のトルクに基づいて、又は外科用ツール240の逆運動学モデルから、ケーブル張力501A~Dのセットの最低張力値によって識別されてもよい。
【0091】
メッセージは、ユーザへのアラート507であってもよい。例えば、メッセージは、エラーが発生したことを示してもよい。メッセージは、係合解除されたケーブル又は係合解除されたモータを再接続するなど、エラーに対処するための指示をユーザに提供してもよい。メッセージは、ツールを取り外すようにユーザに指示してもよい。メッセージは、ツールを新しいツールと交換するようにユーザに指示してもよい。
【0092】
メッセージは、外科用ツール240を無効にするように制御ユニット210に指示する内部メッセージであってもよい。これにより、係合解除が検出された場合には、外科用ツール240が無効化される。制御ユニット210は、係合解除が検出された場合、メッセージに応答して外科用ツール240を無効にするエラーコマンドを生成してもよい。ツールを再有効化するには、外科用ツール240にコードを入力するか、又は外科用ツール240に係数リセットコマンドを提供する必要があってもよい。
【0093】
メッセージは、外部デバイスに通信される外部メッセージであってもよい。例えば、メッセージは、外科用ツールのサービスを派遣する製造業者又は他の事業体に送信されてもよい。外部デバイス又は制御ユニット210は、外科用ツール240におけるメッセージ又はアラートの発生を追跡してもよく、設定された数のメッセージが発生したとき、致命的エラーが外科用ツール240に割り当てられてもよく、外科用ツール240が恒久的に無効化されてもよい。メッセージは、外科用ツールの特定のモデルの展開の傾向を識別するために、他の外科用ツールと共に外部デバイスによって記録されてもよい。
【0094】
図11は、ケーブル不具合を検出するためのプロセスを説明する図である。プロセスは、メモリに記憶された指示に従って構成されているプログラムされたプロセッサ(本明細書ではプロセッサ又は制御部とも呼ばれる)によって実施され得る(例えば、
図8のプロセッサ312及びメモリ314であり、プロセッサ312は、張力評価制御316及び速度評価制御315の指示に従って構成されている)。
図11に比べて追加の動作、異なる動作、又はより少ない動作が実行されてもよい。
【0095】
動作S101において、プロセッサ312は、外科用ツールのケーブルの張力を識別する。プロセッサ312は、張力の値を計算してもよく、又は直接若しくは間接的にセンサから値を受信してもよい。張力値は、所定の時間間隔などで繰り返し受信又は計算してもよい。張力値は、1秒毎、100ミリ秒毎、又は10ミリ秒毎などのサンプルレートで識別してもよい。張力値は、外科用ツール内の任意の数のケーブル又はすべてのケーブルについて受信されてもよい。
【0096】
一例では、張力は、特定の時間にのみ測定又は受信される。例えば、プロセッサ312は、エンドエフェクタの動きに基づいて、ケーブルに張力がかけられていると判定することができる。いくつかの例では、自由度(例えば、ロール、ピッチ、ヨー、又は顎部)が方向を変えるとき、ケーブル又はケーブルのサブセットに張力をかけなくてもよい。自由度の対応する角度が値の増加から値の減少へ、又は値の減少から値の増加へ遷移するときに、自由度の方向が変化する。
【0097】
動作S103において、プロセッサ312は、少なくとも1つのケーブルの張力と、メモリ314から抽出された張力閾値との比較を実行する。張力閾値は、ユーザ又は製造業者によって設定されてもよい。あるいは、張力閾値は、経時的に可変であってもよい。閾値張力は、時間窓にわたる過去の張力値の平均の2倍など、過去の張力値の平均に基づいてもよい。張力閾値は、ケーブル毎に異なってもよい。張力閾値は、ケーブル対毎に異なってもよい。一例では、拮抗ケーブルの各対について、一度に拮抗対の一方についてのみ比較が行われる。別の例では、張力閾値は、一対の拮抗ケーブルに割り当てられ、比較は、一対の拮抗ケーブルの張力値の合計に対するものである。
【0098】
動作S105において、プロセッサ312は、外科用ツールのケーブルの各々、又は外科用ツールの少なくとも複数のケーブルの速度を識別する。プロセッサ312は、速度の値を計算してもよく、又は直接若しくは間接的にセンサから値を受信してもよい。速度値は、所定の時間間隔などで繰り返し受信又は計算してもよい。速度値は、1秒毎、100ミリ秒毎、又は10ミリ秒毎などのサンプルレートで識別してもよい。
【0099】
動作S107において、プロセッサ312は、外科用ツールのすべてのケーブル又は外科用ツールの複数のケーブルについて速度ノルム又は代表値を計算する。速度ノルムは、速度値の和であってもよい。速度ノルムは、速度値の二乗和を含んでもよい。速度マム(mum)は、速度値の二乗和の平方根であってもよい。外科用ツールのケーブルの相対速度を組み合わせる速度の他の例も可能である。
【0100】
動作S109において、プロセッサ312は、速度ノルムを速度閾値と比較する。速度閾値は、ユーザ又は製造業者によって設定されてもよい。あるいは、速度閾値は、経時的に可変であってもよい。速度閾値は、時間窓にわたる速度ノルムの平均の2倍など、過去の値に基づいて設定されてもよい。
【0101】
動作S111において、プロセッサ312は、外科用ツールの不具合を検出する。不具合は、張力の比較及び速度の比較に基づく。張力が張力閾値を下回り、速度が閾値を上回る場合、プロセッサ312は、ケーブルの不具合を識別する。不具合は、滅菌アダプタと外科用ツールとの間の係合解除を示し得る。不具合は、少なくとも1つのケーブルの係合解除であり得る。
【0102】
プロセッサ312は、外科用ツールの不具合の判定に応答して、是正措置のためのコマンドを生成することができる。是正措置は、外科用ツールを無効にすることができる。外科用ツールは、ユーザ介入(例えば、リセットスイッチ)が行われるまで、又は外科用ツールが再構成されるまで、所定の時間、無効にされてもよい。外科用ツールの再構成は、ホーミング及び/又は較正を含んでもよい。外科用ツールの再構成は、1つ以上のケーブルを交換することを含んでもよい。
【0103】
本明細書では、「と結合される」という語句は、直接接続されるか、又は1つ以上の中間構成要素を介して間接的に接続されることを意味するように定義される。そのような中間構成要素は、ハードウェアベースの構成要素とソフトウェアベースの構成要素の両方を含んでもよい。更に、係属中の特許請求の範囲における使用を明確にし、本明細書によって公衆に通知するために、「<A>、<B>、...及び<N>のうちの少なくとも1つ」又は「<A>、<B>、...<N>のうちの少なくとも1つ、又はそれらの組み合わせ」という語句は、本出願人によって最も広い意味で定義され、出願人によって明示的に反対に主張されない限り、A、B、...及びNを含む群から選択される1つ以上の要素、すなわち、任意の1つの要素を単独で含むか、又は列挙されていない追加の要素も組み合わせで含み得る1つ以上の他の要素との組み合わせを含む、要素A、B、...又はNのうちの1つ以上の任意の組み合わせを意味するように、上記又は下記の暗示的な任意の定義に取って代わる。
【0104】
開示されたメカニズムは、関連する情報/データ(例えば、メッセージトラフィック及びそれに対する応答)が、監視若しくは流され得る、又は他の方法でアクセス可能若しくは測定可能である、任意の論理的及び/若しくは物理的ポイント、又はそれらの組み合わせで実装されてもよく、これには、1つ以上のデートウェイデバイス、モデム、1以上の市場参加者のコンピュータ又は端末、例えば、クライアントコンピュータなどが含まれる。
【0105】
当業者は、本明細書に記載の1つ以上のモジュールが、とりわけ、コンピュータ実行可能指示(例えば、実行可能ソフトウェアコード)を含む有形コンピュータ可読媒体を使用して実装され得ることを理解するであろう。あるいは、モジュールは、ソフトウェアコード、ファームウェアコード、特別に構成されたハードウェア若しくはプロセッサ、及び/又は前述のものの組み合わせとして実装されてもよい。
【0106】
図1~
図25に示すコンピュータデバイス及びシステムの動作は、非一時的コンピュータ可読媒体上に記憶されたコンピュータ実行可能指示によって制御することができる。例えば、例示的なコンピュータデバイス又は制御ユニット210は、コンピュータ実行可能指示を記憶し、電子メッセージを生成し、電子メッセージから情報を抽出し、電子メッセージに関連する動作を実行し、及び/又は電子メッセージから値を計算して、本明細書に記載のアルゴリズム又は動作のいずれかを容易にすることができる。多数の追加のサーバ、コンピュータ、手持ち式デバイス、携帯情報端末、電話及び他のデバイスもまた、制御ユニット210に接続されてもよい。
【0107】
図3に示すように、コンピュータシステムは、中央処理装置(CPU)、グラフィック処理装置(GPU)、又はその両方によって実装されるプロセッサ312を含んでもよい。プロセッサ312は、様々なシステムの構成要素であってもよい。例えば、プロセッサ312は、標準的なパーソナルコンピュータ又はワークステーションの一部であってもよい。プロセッサ312は、1つ以上の汎用プロセッサ、デジタル信号プロセッサ、特別に構成されたプロセッサ、特定用途向け集積回路、フィールドプログラマブルゲートアレイ、サーバ、ネットワーク、デジタル回路、アナログ回路、それらの組み合わせ、又はデータを分析及び処理するための他の現在知られているデバイス若しくは今後開発されるデバイスであってもよい。プロセッサ312は、手動で生成された(すなわち、プログラムされた)コードなどのソフトウェアプログラムを実装することができる。
【0108】
コンピュータシステムは、バスを介して通信することができるメモリ314を含む。メモリ314は、メインメモリ、スタティックメモリ、又はダイナミックメモリであってもよい。メモリ314は、限定はしないが、ランダム・アクセス・メモリ、読み出し専用メモリ、プログラマブル読み出し専用メモリ、電気的プログラマブル読み出し専用メモリ、電気的消去可能読み出し専用メモリ、フラッシュメモリ、磁気テープ又はディスク、光媒体などを含む、様々なタイプの揮発性及び不揮発性記憶媒体などのコンピュータ可読記憶媒体を含むことができるが、これらに限定されない。一実施形態において、メモリ314は、プロセッサ312のためのキャッシュ又はランダム・アクセス・メモリを含む。代替実施形態では、メモリ314は、プロセッサのキャッシュメモリ、システムメモリ、又は他のメモリなど、プロセッサ312とは別個のものである。メモリ314は、データを記憶するための外部記憶デバイス又はデータベースであってもよい。例としては、ハードドライブ、コンパクトディスク(「CD」)、デジタル・ビデオ・ディスク(「DVD」)、メモリカード、メモリスティック、フロッピーディスク、ユニバーサル・シリアル・バス(「USB」)メモリデバイス、又はデータを記憶するように動作する任意の他のデバイスが挙げられる。メモリ314は、プロセッサ312によって実行可能な指示を記憶するように動作可能である。図に示されている、又は本明細書で説明されている機能、動作、又は作業は、メモリ314に記憶された指示を実行するプログラムされたプロセッサ312によって実行されてもよい。機能、動作、又は作業は、特定のタイプの指示セット、記憶媒体、プロセッサ、又は処理戦略から独立しており、単独で又は組み合わせて動作するソフトウェア、ハードウェア、集積回路、ファームウェア、マイクロコードなどによって実行されてもよい。同様に、処理戦略は、マルチプロセッシング、マルチタスキング、並列処理などを含んでもよい。
【0109】
コンピュータシステムは、液晶ディスプレイ(LCD)、有機発光ダイオード(OLED)、フラット・パネル・ディスプレイ、ソリッドステートディスプレイ、陰極線管(CRT)、プロジェクタ、プリンタ、又は決定された情報を出力するための他の現在知られている又は今後開発されるディスプレイデバイスなどのディスプレイユニット319を更に含んでもよい。ディスプレイ319は、ユーザがプロセッサ312の機能を見るためのインターフェースとして、又は具体的には、メモリ314若しくは制御ユニット210内の他の場所に記憶された指示とのインターフェースとして作用することができる。
【0110】
更に、コンピュータシステムは、ユーザがシステムの構成要素のいずれかと対話することを可能にするように構成された入力デバイス317を含むことができる。入力デバイス317は、数字パッド、キーボード、又はマウスなどのカーソル制御デバイス、又はジョイスティック、タッチスクリーンディスプレイ、リモートコントロール、又は制御ユニット210と対話するように動作する任意の他のデバイスであってもよい。
【0111】
本開示は、ネットワークに接続されたデバイスがネットワークを介して音声、ビデオ、オーディオ、画像、又は任意の他のデータを通信することができるように、指示を含むか、又は信号に応答して指示を受信及び実行するコンピュータ可読媒体を企図する。更に、指示は、通信インターフェース318を介してネットワーク上で送信又は受信することができる。通信インターフェース318は、プロセッサ312の一部であってもよく、別個の構成要素であってもよい。通信インターフェース218は、ハードウェアにおける物理的接続であってもよい。通信インターフェース318は、ネットワーク、外部媒体、ディスプレイユニット319、若しくはシステム内の任意の他の構成要素、又はそれらの組み合わせと接続するように構成される。ネットワークとの接続は、有線イーサネット接続などの物理的接続であってもよく、又は無線で確立してもよい。同様に、システムの他の構成要素との追加の接続は、物理的接続であってもよく、又は無線で確立してもよい。
【0112】
本明細書に記載の実施形態の例示は、様々な実施形態の構造の一般的な理解を提供することを意図している。例示は、本明細書に記載の構造又は方法を利用する装置及びシステムの要素及び特徴のすべての完全な説明として役立つことを意図するものではない。多くの他の実施形態は、本開示を検討すれば当業者には明らかであろう。本開示の範囲から逸脱することなく構造的及び論理的な置換及び変更を行うことができるように、他の実施形態を利用し、本開示から導出することができる。更に、図は単に代表的なものであり、縮尺通りに描かれていない場合がある。図中の特定の比率は誇張されている場合があり、他の比率は最小化されている場合がある。したがって、本開示及び図面は、限定ではなく例示と見なされるべきである。
【0113】
本明細書は、多くの詳細を含むが、これらは本発明の範囲又は主張され得るものの範囲に対する限定としてではなく、むしろ、本発明の特定の実施形態に特有の形態の説明として解釈されるべきである。別個の実施形態の文脈の中で本明細書で記載される特定の形態はまた、単一の実施形態において組み合わされて実施され得る。逆に、単一の実施形態の文脈の中で記載される様々な形態はまた、複数の実施形態において別個に、又は任意の適切な部分的組み合わせで実施され得る。更には、特徴が特定の組み合わせで機能するものとして記載され得、更には最初にそのように主張され得るが、主張された組み合わせからの1つ以上の形態が、場合によってはこの組み合わせから削除され得、並びに主張された組み合わせが、部分的組み合わせ又は部分的組み合わせの変形を目的としてもよい。
【0114】
同様に、操作が特定の順序で図面中に示され、かつ本明細書に記載されるとはいえ、これは、このような操作が、所望の結果を達成するために、示された特定の順序で若しくは順次に実施されること、又は図示するすべての操作が実施されることが必要であると理解されるべきではない。特定の環境では、多重タスキング及び並行処理が有利である場合がある。更に、記載された実施形態における様々なシステム構成要素の分離は、すべての実施形態においてこのような分離が必要であると理解されるべきではなく、記載されるプログラム構成要素及びシステムが、一般的に、単一のソフトウェア製品内に一緒に一体化され得るか又は複数のソフトウェア製品にパッケージ化され得ることが理解されるべきである。
【0115】
〔実施の態様〕
(1) 外科用ツールの係合解除を検出するための装置であって、
ツールドライバの複数のケーブルに接続され、かつそれによって駆動されるエンドエフェクタと、
前記複数のケーブルに関連付けられた力を検出するように構成された複数のセンサと、
1つ以上のプロセッサであって、
前記複数のセンサによって検出された前記力のうちの少なくとも1つの力から導出された、前記複数のケーブルのうちの少なくとも1つのケーブルの張力を識別し、
前記複数のケーブルのうちの前記少なくとも1つのケーブルの前記張力と張力閾値との第1の比較を実行し、
前記複数のケーブルの各々の速度値を識別し、
前記複数のケーブルの各々の前記速度値を含むベクトルに基づいて速度ノルム値を計算し、
前記速度ノルム値と統計速度閾値との第2の比較を実行し、
前記第1の比較及び前記第2の比較に基づいて、前記複数のケーブル又は関連する構成要素のうちの少なくとも1つのケーブル又は関連する構成要素の係合解除を識別するように構成されている、1つ以上のプロセッサと
を備える装置。
(2) 前記速度ノルム値が、前記複数のケーブルの各々の前記速度値を含む前記ベクトルの大きさである、実施態様1に記載の装置。
(3) 1つ以上のプロセッサが、
前記統計速度閾値を、一部、命令された速度から計算する
ように構成されている、実施態様2に記載の装置。
(4) 前記統計速度閾値が、一部、ベイジアンフィルタから計算される、実施態様3に記載の装置。
(5) 前記統計速度閾値が、一部、第1の時間における前記速度ノルム値と第2の時間における前記速度ノルム値との平均から計算される、実施態様3に記載の装置。
【0116】
(6) 前記統計速度閾値が、一部、前記第1の時間における前記速度ノルム値及び前記第2の時間における前記速度ノルム値を含む時系列データの標準偏差から計算される、実施態様5に記載の装置。
(7) 1つ以上のプロセッサが、
前記時系列データについてカイ二乗値を計算する
ように構成されている、実施態様6に記載の装置。
(8) 前記複数のケーブルにそれぞれ結合された複数のモータを更に備え、前記複数のセンサが、前記複数のモータのそれぞれにおけるトルクを検出する、実施態様1に記載の装置。
(9) 1つ以上のプロセッサが、
前記外科用ツールの逆運動学モデルから前記複数のケーブルのうちの少なくとも1つのケーブルの前記張力を計算する
ように構成されている、実施態様8に記載の装置。
(10) 前記逆運動学モデルが、逆運動学行列に従って、前記複数のモータのそれぞれで検出された前記トルクと、前記複数のケーブルのうちの前記少なくとも1つのケーブルの前記張力との間の関係を含む、実施態様9に記載の装置。
【0117】
(11) 1つ以上のプロセッサが、
逆運動学モデルから前記複数のケーブルの各々について前記速度値を計算する
ように構成されている、実施態様1に記載の装置。
(12) 1つ以上のプロセッサが、
前記複数のケーブル又は関連する構成要素のうちの少なくとも1つのケーブル又は関連する構成要素の前記係合解除に応答してメッセージを生成する
ように構成されている、実施態様1に記載の装置。
(13) 前記メッセージが、前記外科用ツールのユーザに対する指示を伴うユーザアラートである、実施態様12に記載の装置。
(14) 前記メッセージが、前記外科用ツールのためのサービスを派遣する、実施態様12に記載の装置。
(15) 前記メッセージが、前記外科用ツールを無効にするエラーコマンドである、実施態様12に記載の装置。
【0118】
(16) 外科用ツールの係合解除を検出する方法であって、
複数のセンサによって検出された少なくとも1つの力から導出された複数のケーブルのうちの少なくとも1つのケーブルの張力を識別することと、
前記複数のケーブルのうちの前記少なくとも1つのケーブルの前記張力と張力閾値との第1の比較を実行することと、
前記複数のケーブルの各々の速度値を識別することと、
前記複数のケーブルの各々の前記速度値を含むベクトルに基づいて速度ノルム値を計算することと、
前記速度ノルム値と統計速度閾値との第2の比較を実行することと、
前記第1の比較及び前記第2の比較に基づいて係合解除を識別することと
を含む方法。
(17) 前記速度ノルム値が、前記複数のケーブルの各々の前記速度値を含む前記ベクトルの大きさである、実施態様16に記載の方法。
(18) 前記統計速度閾値が、少なくとも一部、命令された速度に基づく、実施態様16に記載の方法。
(19) 前記統計速度閾値が、少なくとも一部、第1の時間における前記速度ノルム値及び第2の時間における前記速度ノルム値に基づく、実施態様16に記載の方法。
(20) 装置であって、
張力閾値及び統計速度閾値を記憶するように構成されたメモリと、
複数のケーブルのうちの前記少なくとも1つのケーブルの張力と前記張力閾値との第1の比較を実行し、速度ノルム値と前記統計速度閾値との第2の比較を実行するように構成された制御部であって、前記第1の比較及び前記第2の比較に基づいて係合解除が判定される、制御部と
を備える装置。
【国際調査報告】