(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-31
(54)【発明の名称】バイオマスの高固形分酵素分解率向上方法
(51)【国際特許分類】
C12P 19/02 20060101AFI20230824BHJP
【FI】
C12P19/02
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023509787
(86)(22)【出願日】2021-11-30
(85)【翻訳文提出日】2023-02-10
(86)【国際出願番号】 CN2021134584
(87)【国際公開番号】W WO2022116978
(87)【国際公開日】2022-06-09
(31)【優先権主張番号】202011403739.9
(32)【優先日】2020-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520401745
【氏名又は名称】浙江▲華▼康葯▲業▼股▲フン▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】ZHEJIANG HUAKANG PHARMACEUTICAL CO., LTD.
(71)【出願人】
【識別番号】515126422
【氏名又は名称】浙江工▲業▼大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】李 勉
(72)【発明者】
【氏名】柳 志強
(72)【発明者】
【氏名】曽 徐浩
(72)【発明者】
【氏名】胡 昌輝
(72)【発明者】
【氏名】王 静
(72)【発明者】
【氏名】蔡 雪
(72)【発明者】
【氏名】張 曉健
(72)【発明者】
【氏名】鄭 裕国
【テーマコード(参考)】
4B064
【Fターム(参考)】
4B064AF02
4B064CA11
4B064CA21
4B064CB07
4B064CC06
4B064CC12
4B064CC15
4B064DA16
(57)【要約】
本発明は、バイオマス基質の粒度を篩分けし、バイオマス粗粒子基質とバイオマス微粒子基質に異なる水分制御方式を採用し、バイオマス粗粒子基質とバイオマス微粒子基質を混合したもの全体の含水量を制御することにより、酵素分解初期の粘度を低下させ、液化速度を高め、最終的にバイオマスの高固形分酵素分解率を向上させるバイオマスの高固形分酵素分解率向上方法に関する。本発明の酵素分解系は製造されやすく、装置への要件が低く、省エネで、酵素分解効率を向上させ、操作されやすく、工業化生産と応用に有利である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオマス原料を前処理して含水量50%~70%のバイオマス基質を得て、該バイオマス基質をスクリーンで篩分けし、10メッシュ以上のバイオマス粗粒子基質及び10メッシュ以下~50メッシュのバイオマス微粒子基質を得るステップ1と、
バイオマス微粒子基質の含水量を60%~65%、バイオマス粗粒子基質の含水量を50%~70%に調整し、異なる含水量のバイオマス微粒子基質とバイオマス粗粒子基質を混合して、混合基質の含水量を50%~65%に制御するステップ2と、
混合基質を酵素分解タンクに入れて、pH4.6~5.5のクエン酸塩緩衝溶液及びセルラーゼを加えて酵素分解するステップ3とを含むことを特徴とするバイオマスの高固形分酵素分解率向上方法。
【請求項2】
ステップ3では、添加される混合基質の乾燥物質量が15%~25%であることを特徴とする請求項1に記載のバイオマスの高固形分酵素分解率向上方法。
【請求項3】
ステップ3では、添加されるセルラーゼの量が、酵素分解系中の乾燥物質量の4%~6%であることを特徴とする請求項1に記載のバイオマスの高固形分酵素分解率向上方法。
【請求項4】
ステップ3では、添加されるセルラーゼはノボザイムズ製Cellic CTec2であることを特徴とする請求項1に記載のバイオマスの高固形分酵素分解率向上方法。
【請求項5】
ステップ3では、酵素分解タンクは、温度が45℃~50℃に制御され、酵素分解タンクでの撹拌装置の撹拌速度が50rpm~300rpmであり、酵素分解時間が48h~96hであることを特徴とする請求項1に記載のバイオマスの高固形分酵素分解率向上方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は糖アルコール製造の技術分野に関し、特にバイオマスの高固形分酵素分解率向上方法に関する。
【背景技術】
【0002】
バイオマス資源で開発されたエタノールなどの燃料は現在、グリーン新エネルギーの研究における焦点となっている。このエネルギーの開発は主に前処理、酵素分解、発酵の3つの主要なステップに関わる。このうち、酵素分解はリグノセルロース中のセルロース、ヘミセルロースを発酵可能な糖に変換し、その後の発酵に用いてエタノールを生産することである。酵素分解のセルロース転化率及び酵素分解液のグルコース濃度は酵素分解効率を評価する重要な要素である。
【0003】
低基質含有量の酵素分解の場合、セルロース転化率は高いが、酵素分解液のグルコース濃度は低く、工業化生産や応用に不利であり、高基質含有量の酵素分解の場合、酵素分解液のグルコース濃度は高いが、セルロース転化率は低く、また酵素分解初期では系の粘度は大きく、酵素分解装置に対する要求が高く、酵素分解効率は低い。開示番号CN110343727Aの特許は高固形分形分バイオマス原料の連続酵素分解方法及びシステムを開示しており、装置の性能を向上させることにより高固形分形分酵素分解の操作性を高めているが、このシステムは複雑であり、多段搬送装置が必要であり、エネルギー消費量が多い。開示番号CN110157755Aの特許は、高固形分形分農林バイオマスの酵素分解による糖生産方法を開示しており、回分補給及び界面活性剤の補助により酵素分解効率を高めているが、この方法の操作過程は複雑である。従来技術は更なる改良と向上が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする技術的課題は、簡単に行えるバイオマスの高固形分酵素分解率向上方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は以下のように達成される。
バイオマス原料を前処理して含水量50%~70%のバイオマス基質を得て、該バイオマス基質をスクリーンで篩分けし、10メッシュ以上のバイオマス粗粒子基質及び10メッシュ以下~50メッシュのバイオマス微粒子基質を得るステップ1と、
バイオマス微粒子基質の含水量を60%~65%、バイオマス粗粒子基質の含水量を50%~70%に調整し、異なる含水量のバイオマス微粒子基質とバイオマス粗粒子基質を混合して、混合基質の含水量を50%~65%に制御するステップ2と、
混合基質を酵素分解タンクに入れて、pH4.6~5.5のクエン酸塩緩衝溶液及びセルラーゼを加えて酵素分解するステップ3とを含むことを特徴とするバイオマスの高固形分酵素分解率向上方法を提供する。
【0006】
バイオマス酵素分解系を構築するときに、高固形分にするために材料の含水量を制御する必要がある。前処理材料を直接乾燥処理すると、材料の多孔質構造が崩壊し、セルラーゼ酵素分解効率に悪影響を及ぼす。本発明では、実験によれば、前処理材料中の粗粒子の乾燥操作(含水量変化)は酵素分解に与える影響が小さく、微粒子が乾燥されると酵素分解率は急激に低下することを見出した。本発明に係る方法では、まず、バイオマス基質の粒度を篩分けし、次に、篩分けにより得られた微粒子と粗粒子のバイオマス基質の含水量を別々区別して制御した後、微粒子と粗粒子のバイオマス基質を混合し、酵素分解系に加える混合基質の含水量を制御することによって、酵素分解初期の粘度を低下させ、液化速度を高め、最終的にバイオマスの高固形分酵素分解率を向上させる。
【発明の効果】
【0007】
従来技術と比べ、本発明のバイオマスの高固形分酵素分解率向上方法はまた、以下の特徴を有する。
(1)酵素分解系は初期粘度が低く、液化速度が速くなり、酵素分解装置への要件が低くなり、省エネが図られる。
(2)酵素分解系では、グルコース濃度及びセルロース転化率のいずれも向上し、工業化生産と応用に有利である。
(3)材料の含水量を制御することにより、高固形分酵素分解系を構築しやすくし、分回補充によって高基質含有量の条件を作ることが不要になり、これによって、操作の複雑性が低下する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施例10の酵素分解比較試験の結果の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明が解決しようとする技術的課題、技術的解決手段及び有益な効果をより明確にするために、以下、図面及び実施例を参照して、本発明をさらに詳細に説明する。なお、ここで説明される特定実施例は本発明を解釈するために過ぎず、本発明を限定するものではない。
【0010】
本発明のバイオマスの高固形分酵素分解率向上方法の好適実施例は、ステップ1~ステップ3を含む。
ステップ1、バイオマス原料を前処理して含水量50%~70%のバイオマス基質を得て、該バイオマス基質をスクリーンで篩分けし、10メッシュ以上のバイオマス粗粒子基質及び10メッシュ以下~50メッシュのバイオマス微粒子基質を得る。
ステップ2、バイオマス微粒子基質の含水量を60%~65%、バイオマス粗粒子基質の含水量を50%~70%に調整し、異なる含水量のバイオマス微粒子基質とバイオマス粗粒子基質を混合して、混合基質の含水量を50%~65%に制御する。
ステップ3、混合基質を酵素分解タンクに入れて、pH4.6~5.5のクエン酸塩緩衝溶液及びセルラーゼを加えて酵素分解する。
ステップ3では、添加される混合基質の乾燥物質量が15%~25%である。添加されるセルラーゼの量が、酵素分解系中の乾燥物質量の4%~6%である。添加されるセルラーゼはノボザイムズ製Cellic CTec2である。酵素分解タンクは、温度が45℃~50℃に制御され、酵素分解タンク上の撹拌装置の撹拌速度が50rpm~300rpmであり、酵素分解時間が48h~96hである。
バイオマス原料はトウモロコシ茎葉、トウモロコシ穂軸、バガス及び他の農林廃棄物を含む。
【0011】
以下、特定実施例を参照して本発明の方法をさらに説明する。
【0012】
<実施例1>
本発明のバイオマスの高固形分酵素分解率向上方法の第1実施例はステップ11~ステップ14を含む。
ステップ11、前処理により材料の含水量が70%のトウモロコシ穂軸滓(セルロース含有量70%)を得る。
ステップ12、10メッシュのスクリーンを用いて粗粒子材料と微粒子材料を篩分けして分離し、10メッシュ以上の材料と10メッシュ以下の材料をそれぞれ60℃及び40℃で乾燥させた。
ステップ13、ステップ12で得られた粗粒子材料と微粒子材料を所定の割合で混合し、混合材料全体の含水量を60%に制御した。
10メッシュ以上の材料と10メッシュ以下の材料の含水量はそれぞれ60%に制御され、混合割合は1:1である。或いは、10メッシュ以上の材料の含水量は55%に制御され、10メッシュ以下の材料の含水量は65%に制御され、1:1で混合される。或いは、10メッシュ以上の材料の含水量は50%に制御され、10メッシュ以下の材料の含水量は65%に制御され、約3:7で混合される。このことから類推する。
ステップ14、混合材料をクエン酸塩緩衝溶液(pH4.6~5.5)に加えて、酵素分解系の乾燥物質量を20%とした後、乾燥物質量の4%のセルラーゼCellic CTec2を加えて酵素分解する。ここで、酵素分解タンクは温度が50℃、撹拌速度が200rpm、酵素分解時間が72hに制御される。
【0013】
<実施例2>
本発明のバイオマスの高固形分酵素分解率向上方法の第2実施例は、ステップ21~ステップ24を含む。
ステップ21、前処理により材料の含水量が50%のトウモロコシ穂軸滓(セルロース含有量70%)を得る。
ステップ22、10メッシュ、50メッシュのスクリーンを用いて粗粒子材料と微粒子材料を篩分けして分離し、10メッシュ以上の材料を50℃で乾燥させ、10メッシュ~50メッシュの材料と50メッシュ以下の材料をそれぞれ30℃で乾燥させた。
ステップ23、ステップ22で得られた粗粒子材料と微粒子材料を所定の割合で混合し、前処理材料全体の含水量を50%に制御した。
3種類の材料の含水量の制御及び混合割合は実施例1のステップ13の方法を参照する。
ステップ24、混合材料をクエン酸塩緩衝溶液(pH4.6~5.5)に加え、酵素分解系の乾燥物質量を20%とした後、乾燥物質量の5%のセルラーゼCellic CTec2を加えて酵素分解した。ここで、酵素分解タンクは温度が45℃、撹拌速度が180rpm、酵素分解時間が48hに制御される。
【0014】
<実施例3>
本発明のバイオマスの高固形分酵素分解率向上方法の第3実施例は、ステップ31~ステップ34を含む。
ステップ31、前処理により材料の含水量が70%のトウモロコシ穂軸滓(セルロース含有量70%)を得た。
ステップ32、10メッシュ、30メッシュ、50メッシュのスクリーンを用いて粗粒子材料と微粒子材料を篩分けして分離し、10メッシュ以上の材料を70℃で乾燥させ、10メッシュ~30メッシュ材料、30メッシュ~50メッシュ材料及び50メッシュ以下の材料をそれぞれ40℃で乾燥させた。
ステップ33、ステップ32で得られた粗粒子材料と微粒子材料を所定の割合で混合し、前処理材料全体の含水量を65%に制御した。
ステップ34、混合材料をクエン酸塩緩衝溶液(pH4.6~5.5)に加え、酵素分解系の乾燥物質量を20%とした後、乾燥物質量の6%のセルラーゼCellic CTec2を加えて酵素分解した。ここで、酵素分解タンクは温度が50℃、撹拌速度が180rpm、酵素分解時間が96hに制御された。
【0015】
<実施例4>
該実施例の操作ステップは実施例1と同様であるが、実施例1と比べ、その酵素分解系の乾燥物質量は15%であった。
【0016】
<実施例5>
該実施例の操作ステップは実施例2と同様であるが、実施例2と比べ、その酵素分解系の乾燥物質量は15%であった。
【0017】
<実施例6>
該実施例の操作ステップは実施例3と同様であるが、実施例3と比べ、その酵素分解系の乾燥物質量は15%であった。
【0018】
<実施例7>
該実施例の操作ステップは実施例1と同様であるが、実施例1と比べ、その酵素分解系の乾燥物質量は25%であった。
【0019】
<実施例8>
該実施例の操作ステップは実施例2と同様であるが、実施例2と比べ、その酵素分解系の乾燥物質量は25%であった。
【0020】
<実施例9>
該実施例の操作ステップは実施例3と同様であるが、実施例3と比べ、その酵素分解系の乾燥物質量は25%であった。
【0021】
<比較例1>
該比較例はステップ(11)とステップ(12)を含む。
ステップ(11)、前処理により材料の含水量が70%のトウモロコシ穂軸滓(セルロース含有量70%)を得た。
ステップ(12)、前処理材料をクエン酸塩緩衝溶液(pH4.6~5.5)に加え、酵素分解系の乾燥物質量を20%とした後、乾燥物質量の4%のセルラーゼCellic CTec2を加えて酵素分解した。ここで、酵素分解タンクは温度が50℃、撹拌速度が200rpm、酵素分解時間が72hに制御された。
【0022】
<比較例2>
該比較例はステップ(21)~ステップ(23)を含む。
ステップ(21)、前処理により材料の含水量が70%のトウモロコシ穂軸滓(セルロース含有量70%)を得た。
ステップ(22)、前処理材料を60℃で乾燥させ、材料の含水量を60%に制御した。
ステップ(23)、前処理材料をクエン酸塩緩衝溶液(pH4.6~5.5)に加え、酵素分解系の乾燥物質量を20%とした後、乾燥物質量の4%のセルラーゼCellic CTec2を加えて酵素分解した。ここで、酵素分解タンクは温度が50℃、撹拌速度が200rpm、酵素分解時間が72hに制御される。
【0023】
<比較例3>
該比較例はステップ(31)~ステップ(33)を含む。
ステップ(31)、前処理により材料の含水量が70%のトウモロコシ穂軸滓(セルロース含有量70%)を得た。
ステップ(32)、前処理材料を60℃で乾燥させ、材料の含水量を65%に制御した。
ステップ(33)、前処理材料をクエン酸塩緩衝溶液(pH 4.6~5.5)に加え、酵素分解系の乾燥物質量を15%とした後、乾燥物質量の4%のセルラーゼCellic CTec2を加えて酵素分解した。ここで、酵素分解タンクは温度が50℃、撹拌速度が200rpm、酵素分解が72hに制御される。
【0024】
<比較例4>
該比較例はステップ(41)~ステップ(43)を含む。
ステップ(41)、前処理により材料の含水量が70%のトウモロコシ穂軸滓(セルロース含有量70%)を得た。
ステップ(42)、前処理材料を60℃で乾燥させ、材料の含水量を55%に制御した。
ステップ(43)、前処理材料をクエン酸塩緩衝溶液(pH4.6~5.5)に加え、酵素分解系の乾燥物質量を25%とした後、乾燥物質量の4%のセルラーゼCellic CTec2を加えて酵素分解した。ここで、酵素分解タンクは温度が50℃、撹拌速度が200rpm、酵素分解が72hに制御される。
【0025】
<比較例5>
該比較例の操作ステップは比較例1と同様であるが、比較例1と比べ、その酵素分解系の乾燥物質量は15%であった。
【0026】
<比較例6>
該比較例の操作ステップは比較例1と同様であるが、比較例1と比べ、その酵素分解系の乾燥物質量は25%であった。
【0027】
実施例1~実施例9及び比較例1~比較例6の酵素分解過程及び酵素分解効果を観察し、酵素分解終了後、高速液体クロマトグラフィーによって酵素分解液中のグルコース含有量を測定し、セルロース転化率を算出し、結果を表1~表3に示す。
【0028】
【0029】
【0030】
【表3】
注:*酵素分解初期の材料粘度が極めて大きく、遊離可能な水が極めて小さく、72h後にも泥状であり、明らかな液化現象がない。
【0031】
表1から明らかなように、20%高固形分系では、材料の水分制御によって酵素分解初期の粘度を低下させる役割を果たし、系の液化を顕著に促進し、また、酵素分解効果を高め、セルロース転化率を向上させることができる。その結果から、粒度が細く分級されるほど、酵素分解効果が高いことが明らかになった。それは、低温で微粒子の水分を制御するか、微粒子の水分を変更しないと、前処理後の材料の多孔質特性を維持することができ、セルラーゼ酵素分解に有利であるためである。粒度を篩分けせずに水分を制御すると、各粒度の水分制御においてむらが大きくなり、そして、微粒子の構造が崩壊しやすく後の酵素分解の効果が悪影響を受ける。
【0032】
表2から明らかなように、15%高固形分系では、粒度を篩分け、水分を制御することによって、初期含水量を低下させ、酵素分解効率を向上させることができ、その傾向が20%系と類似しており、粒度が細く分級されると、酵素分解効果が高い。
【0033】
表3から明らかなように、25%高固形分系では、水分制御が行われないと、酵素分解効率が極めて低く、操作性が低く、篩分けを行わずに水分を制御すると、系の液化が遅くなり、全体の酵素分解率が低く、一方、粒度を篩分けして水分をバッチごとに管理すると、酵素分解初期の粘度が明らかに低下し、液化速度も向上し、セルロース転化率もある程度高まり、このことから、粒度が多く分級されるほど、酵素分解効果が高い。
【0034】
<実施例10>
各粒度材料の様々な水分条件下での酵素分解について比較試験を行い、その操作ステップは以下のとおりである。
ステップ(1)、前処理により材料の含水量が70%のトウモロコシ穂軸滓(セルロース含有量70%)を得た。
ステップ(2)、材料を60℃オーブンにて乾燥させ、水分の含有量をそれぞれ65%、60%、55%、50%に制御した。
ステップ(3)、上記材料をすべて10メッシュのスクリーンで篩分けし、10メッシュ以上、10メッシュ以下及び混合材料を酵素分解した。乾燥物質量が20%の1kgの系を構築し、乾燥物質量の4%のセルラーゼCellic CTec2を加えて酵素分解した。ここで、酵素分解タンクは温度が50℃、撹拌速度が200rpm、酵素分解時間が72hに制御される。
【0035】
酵素分解過程及び酵素分解効果を観察しながら、酵素分解液中のグルコース濃度を測定し、セルロース転化率を算出し、結果を
図1に示す。
【0036】
図1から分かるように、60%水分では、材料の酵素分解効果が最も高く、微粒子(10メッシュ以下)の含水量は酵素分解効率への影響が大きく、粗粒子(10メッシュ以上)の影響が小さい。
【0037】
以上は本発明の好適な実施例に過ぎず、本発明を限定するものではなく、本発明の趣旨及び原則を逸脱することなく行われる全ての修正、同等置換及び改良などは全て本発明の特許範囲に含まれるものとする。
【国際調査報告】