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特表2023-537426充電式ニューロモジュレーション装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-31
(54)【発明の名称】充電式ニューロモジュレーション装置
(51)【国際特許分類】
   A61N 1/378 20060101AFI20230824BHJP
【FI】
A61N1/378
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023511645
(86)(22)【出願日】2021-08-13
(85)【翻訳文提出日】2023-04-13
(86)【国際出願番号】 AU2021050895
(87)【国際公開番号】W WO2022032352
(87)【国際公開日】2022-02-17
(31)【優先権主張番号】2020902899
(32)【優先日】2020-08-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.JAVA
(71)【出願人】
【識別番号】513144730
【氏名又は名称】サルーダ・メディカル・ピーティーワイ・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ピーター・スコット・ヴァラック・シングル
(72)【発明者】
【氏名】ディーン・カラントニス
【テーマコード(参考)】
4C053
【Fターム(参考)】
4C053JJ06
4C053JJ27
4C053KK01
4C053KK07
(57)【要約】
植込み型パルス発生装置(110)は、充電モードでは充電装置(102)から電磁放射線(106)を受信し、ここで、電磁放射線(106)は、エネルギー貯蔵装置(104)を充電するために、エネルギーを植込み型装置(110)に伝送し、測定モードでは神経応答を表す電場パラメータ信号を測定し、電場パラメータ信号の測定中に、植込み型装置(110)が充電装置(102)から電磁放射線(106)を受信しないように、充電モードと測定モードとの間で選択的に移行するように構成されたプロセッサ(117)を備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植込み型パルス発生装置であって、
(i)充電モードにおいて、電磁放射線を充電装置から受信し、前記電磁放射線が、エネルギー貯蔵装置を充電するために前記植込み型装置にエネルギーを伝送し、
(ii)測定モードにおいて、神経応答を表す電場パラメータ信号を測定し、
(iii)前記電場パラメータ信号の測定中に前記植込み型装置が前記充電装置から電磁放射線を受信しないように、前記充電モードと前記測定モードとの間で選択的に移行する
ように構成されたプロセッサを備える、植込み型パルス発生装置。
【請求項2】
前記プロセッサは、前記充電モードおよび前記測定モードのうちの少なくとも1つにおいて、神経経路に神経刺激信号を印加するように更に構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記プロセッサは、前記電場パラメータ信号の測定の前に、前記電磁放射線の伝達を停止するように前記充電装置に信号を送るよう更に構成される、請求項1から2のいずれか一項に記載の装置。
【請求項4】
前記電磁放射線の伝達を停止するための前記充電装置への前記信号は、充電されたエネルギー貯蔵装置を表す反射インピーダンスである、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記反射インピーダンスは、神経刺激信号が印加され、対応する電場パラメータ信号が測定される刺激記録期間にわたって維持される、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記電磁放射線の伝達を停止するための前記充電装置への前記信号は、ワイヤレス電磁無線周波数信号である、請求項1から5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記無線周波数信号は、医療用インプラント通信サービス(MICS)帯域内にある、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記電磁放射線の伝達を停止する前記充電装置への前記信号は、前記測定モードにある間維持される、請求項1から7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記プロセッサは、周期的に前記測定モードで作動する、請求項1から8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記プロセッサは、前記充電器が電磁放射線を能動的に伝送し始める時間と、前記植込み型装置が前記電場パラメータ信号を測定するように指示される時間とのうちの1つまたは複数を含むランダムな事例において、前記測定モードへのアドホックな移行を実行するように構成される、請求項1から8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
前記電場パラメータ信号の前記測定は、ECAP、非誘発CAP、局所電場電位(LFP)、緩徐応答、刺激アーチファクト、生理学的パラメータ、または同様の電場パラメータのうちの少なくとも1つの測定を含み得る、請求項1から10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
エネルギー貯蔵装置を充電するために植込み型パルス発生装置のプロセッサによって実行される方法であって、前記方法は、
(i)充電モードにおいて、電磁放射線を充電装置から受信し、前記電磁放射線が、前記エネルギー貯蔵装置を充電するために前記植込み型装置にエネルギーを伝送する、ステップと、
(ii)測定モードにおいて、神経応答を表す電場パラメータ信号を測定するステップと、
(iii)前記電場パラメータ信号の前記測定中に前記植込み型装置が前記充電装置から電磁放射線を受信しないように、前記充電モードと前記測定モードとの間で選択的に移行するステップとを備える方法。
【請求項13】
植込み型パルス発生装置であって、
(i)充電モードにおいて、電磁放射線を充電装置から受信し、前記電磁放射線が、エネルギー貯蔵装置を充電するために前記植込み型装置にエネルギーを伝送し、
(ii)測定モードにおいて、神経応答を表す電場パラメータ信号を測定し、
(iii)前記電場パラメータ信号の前記測定中に前記植込み型装置が前記充電装置から電磁放射線を受信しないように、前記充電モードと前記測定モードとの間で選択的に移行する
ように構成されたプロセッサを備える植込み型パルス発生装置と、
前記埋込み型装置からの信号の受信に応答して、動作状態から待機状態に移行するように構成された充電器であって、前記動作状態では前記充電器が電磁放射線を前記エネルギー貯蔵装置に伝達し、前記待機状態では前記充電器が電磁放射線を前記エネルギー貯蔵装置に伝達しない、充電器と、を備えるシステム。
【請求項14】
実行時にプロセッサに請求項12に記載の方法を実行させるソフトウェア命令を記憶するように構成された非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項15】
所定の周波数における所定のデューティサイクルに従って動作状態から待機状態に移行するように構成されたプロセッサを備える充電器であって、前記動作状態では前記充電器が電磁放射線を植込み型パルス発生装置に伝達し、前記待機状態では前記充電器が電磁放射線を前記植込み型装置に伝達しない、充電器。
【請求項16】
前記充電器は、
前記植込み型装置からの割込み信号を受信し、
前記受信された割込み信号に応答して、前記植込み型装置への電磁放射線の伝達を停止すること、および前記植込み型装置への電磁放射線の伝達を開始することのうちの少なくとも1つを実行する
ように更に構成される、請求項15に記載の充電器。
【請求項17】
前記所定のデューティサイクルは、受信された構成信号に基づいて構成可能である、請求項15から16のいずれか一項に記載の充電器。
【請求項18】
前記構成信号は、前記植込み型装置から受信される、請求項17に記載の充電器。
【請求項19】
充電モードおよび測定モードのうちの1つで選択的に動作するように構成されたプロセッサを備える植込み型パルス発生装置であって、前記プロセッサは、
充電装置からの電磁放射線を検出し、前記電磁放射線は、エネルギー貯蔵装置を充電するために前記植込み型装置にエネルギーを伝送し、前記電磁放射線は、充電サイクルの第1の部分の間にエネルギーを伝送し、充電サイクルの第2の部分の間にエネルギーの伝送を停止するために、所定の周波数およびデューティサイクルで伝送され、
前記充電モードでは前記充電サイクルの前記第1の部分の間に前記充電装置から電磁放射線を受信し、
神経刺激を神経経路に印加し、
前記測定モードでは前記充電サイクルの前記第2の部分の間に電場パラメータ信号を測定する
ように更に構成される、植込み型パルス発生装置。
【請求項20】
前記プロセッサは、
前記電磁放射線から前記所定の周波数およびデューティサイクルを決定し、
前記所定の周波数で刺激サイクルを実行して、前記刺激サイクルを前記充電サイクルの前記第2の部分と同期させ、各刺激サイクルは、神経刺激を前記神経経路に印加すること、および前記測定モードでは前記電場パラメータ信号を測定することを含む
ように更に構成される、請求項19に記載の装置。
【請求項21】
前記プロセッサは、
前記植込み型装置の充電距離内の発信装置の存在を検出し、前記発信装置が前記植込み型装置に電磁放射線を伝達し、
前記検出された発信装置が前記充電装置であるかどうかを検証し、
前記充電装置としての前記発信装置の肯定的な検証に応答して、前記植込み型装置を、任意の他の動作ルーチンから、前記プロセッサがステップ(i)~(iii)を実行するスマート充電動作ルーチンに移行させる
ように更に構成される、請求項1から11のいずれか一項に記載の植込み型パルス発生装置。
【請求項22】
前記プロセッサは、前記植込み型装置の充電コイルに関連するセンサから受信される検出信号を処理することによって、前記発信装置の存在を検出する、請求項21に記載の植込み型パルス発生装置。
【請求項23】
前記プロセッサは、前記植込み型装置の増幅構成要素から受信された検出信号を処理することによって前記発信装置の前記存在を検出し、
前記増幅構成要素は、前記発信装置から受信された前記電磁放射線に関連するノイズ信号を測定するように構成される、請求項21に記載の植込み型パルス発生装置。
【請求項24】
前記発信装置を前記充電装置として検証することは、前記充電装置に関連するノイズシグネチャを認識するために前記ノイズ信号を処理することを含む、請求項23に記載の植込み型パルス発生装置。
【請求項25】
前記プロセッサは、1つまたは複数の割込み信号を前記発信装置に伝達し、前記1つまたは複数の割込み信号に対する前記発信装置の応答を検出して、前記発信装置が前記充電装置であるかどうかを検証するように更に構成される、請求項21から24のいずれか一項に記載の植込み型パルス発生装置。
【請求項26】
前記プロセッサが前記充電装置として前記発信装置を肯定的に検証することを可能にする前記発信装置の前記応答は、前記発信装置による前記電磁放射線の伝達の停止を伴う確認応答である、請求項25に記載の植込み型パルス発生装置。
【請求項27】
前記プロセッサは、
第1の所定の時間内に、前記発信装置の前記確認応答がないことを検出し、
前記第1の所定の時間内に前記確認応答がないことに応答して、前記植込み型装置を、任意の他の動作ルーチンから、前記プロセッサがステップ(i)~(iii)を実行せず、その代わりに、
電場パラメータ信号の対応する測定なしに神経刺激を印加するステップ
を実行する静的刺激動作ルーチンに移行させる、
ように更に構成される、請求項26に記載の植込み型パルス発生装置。
【請求項28】
前記プロセッサは、
前記第1の時間の後に発生する第2の所定の時間内に前記発信装置の前記確認応答の前記存在を検出し、
前記第2の時間における前記確認応答の前記検出に応答して、前記充電装置として前記発信装置を肯定的に検証して、前記植込み型装置を前記静的刺激動作ルーチンから前記スマート充電動作ルーチンに移行させるように更に構成される、請求項27に記載の植込み型パルス発生装置。
【請求項29】
前記植込み型装置の充電距離内の発信装置の存在を検出し、前記発信装置が前記植込み型装置に電磁放射線を伝達する、ステップと、
前記検出された発信装置が前記充電装置であるかどうかを検証するステップと、
前記充電装置としての前記発信装置の肯定的な検証に応答して、前記植込み型装置を、任意の他の動作ルーチンから、前記プロセッサがステップ(i)~(iii)を実行するスマート充電動作ルーチンに移行させるステップとを更に含む、請求項12に記載の方法。
【請求項30】
1つまたは複数の割込み信号を前記発信装置に伝達するステップと、前記1つまたは複数の割込み信号に対する前記発信装置の応答を検出するステップと、前記発信装置の応答に基づいて、前記発信装置が前記充電装置であるかどうかを検証するステップとを更に備える、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
第1の所定の時間内に前記発信装置の確認応答がないことを検出し、前記確認応答が、前記発信装置による前記電磁放射線の伝達の停止を伴う、ステップと、
前記第1の所定の時間内に前記確認応答がないことに応答して、前記植込み型装置を、任意の他の動作ルーチンから、前記プロセッサがステップ(i)~(iii)を実行せず、その代わりに、
電場パラメータ信号の対応する測定なしに神経刺激を印加するステップ
を実行する静的刺激動作ルーチンに移行させるステップと、を更に備える、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記第1の時間の後に発生する第2の所定の時間内に、前記発信装置の前記確認応答の存在を検出するステップと、
前記第2の時間における前記確認応答の前記検出に応答して、前記充電装置として前記発信装置を肯定的に検証して、前記植込み型装置を前記静的刺激動作ルーチンから前記スマート充電動作ルーチンに移行させるステップとを更に含む、請求項31に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年8月14日に出願されたオーストラリア仮特許出願第2020902899号の優先権を主張し、その内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、充電式の植込み型ニューロモジュレーション装置に関し、特に、神経活動を測定するように構成されるニューロモジュレーション装置に関する。
【背景技術】
【0003】
複合活動電位(CAP)を発生させるために、神経刺激を印加することが望ましい様々な状況がある。例えば、ニューロモジュレーションは、慢性疼痛、パーキンソン病、および片頭痛を含む様々な障害を治療するために使用される。ニューロモジュレーションシステムは治療効果を生むために、組織に電気パルスを印加する。慢性疼痛を緩和するために使用される場合、電気パルスは、脊髄の後柱(DC)に印加される。このようなシステムは、通常、植込み型電気パルス発生器と、経皮的誘導伝送によって充電可能であり得るバッテリーのような電源とを備える。電極アレイは、パルス発生器に接続され、後柱より上の背側硬膜外腔内に配置される。電極アレイは後柱に電気パルスを印加し、これは、ニューロンの脱分極、および伝播する活動電位の生成を引き起こす。これにより神経線維が刺激され、その結果、脊髄のそのセグメントから脳への痛みの伝達を阻害する。電極アレイは、鎮痛効果を維持するために、刺激を連続的に印加する。
【0004】
脊髄刺激療法(SCS)の臨床効果は確立されているが、関与する正確なメカニズムはほとんど解明されていない。DCは、関心対象の求心性Aβ線維を含むので、電気刺激の対象となる。Aβ線維は、皮膚からの接触、振動および圧力の感覚を媒介し、非侵害刺激に応答する厚く有髄化された機械受容器である。SCSはDC中の少数のAβ線維のみを刺激するといのが一般的な見解である。SCSの疼痛緩和メカニズムには、抑制効果を有するAβ線維の誘発性逆行作用、および疼痛抑制に関与するAβ線維の誘発性順行作用があると考えられる。また、SCSは主に、広範なダイナミックレンジのニューロンに抑制的にシナプスを形成すると考えられるDCから背角への誘発反応の逆行する伝播によって、DC中にAβ神経線維を動員させると考えられている。
【0005】
ニューロモジュレーションはまた、例えば運動機能を誘導するために、遠心性線維を刺激するために使用され得る。一般に、ニューロモジュレーションシステムにおいて生成される電気刺激は神経活動電位を誘発し、その上、神経活動電位は抑制効果または興奮効果のいずれかを有する。抑制効果は、疼痛の伝達のような望ましくないプロセスを調整するために、または筋肉の収縮のような所望の効果を引き起こすために使用することができる。
【0006】
多数の線維間で生成された活動電位が足し合わされ、複合活動電位(CAP)を形成する。CAPは、多数の単一線維の活動電位からの応答の総和である。記録されたCAPは、多数の異なる繊維が脱分極した結果である。伝播速度は主に線維の直径によって決定され、後根進入部(DREZ)および近くの後柱に見られるような大きな有髄線維の場合、速度は60ms-1を超えることができる。類似線維群から放たれ生成されるCAPは、正のピーク電位P1、次いで負のピークN1、続いて第2の正のピークP2として測定される。これは、活動電位が個々の線維に沿って伝播するにつれて、記録電極を通過する活性化領域によって引き起こされる。
【0007】
効果的かつ快適な動作のためには、誘導刺激の振幅または送達電荷を、動員閾値を超えて維持することが有用であり、これを下回ると誘導刺激は、いかなる神経応答も動員できなくなり得る。また、急性疼痛、寒さおよび圧覚に関連する薄く有髄化された感覚神経線維であるAδ線維の動員の増加に起因して、快適閾値を超えると不快または痛みの知覚が生じる、その閾値を下回る刺激を誘発することも有用である。ほとんどすべてのニューロモジュレーションの用途において、単一クラスの線維応答が望ましいが、用いられる刺激波形は、運動線維が動員される場合に、筋肉収縮のような望ましくない副作用を引き起こす他のクラスの線維を動員できる。適切な刺激振幅を維持するタスクは、インプラント受容者の電極移動および/または姿勢変化によってより困難になり、そのいずれかが、電極位置またはユーザの姿勢の変化の前または後に刺激が印加されるかどうかに応じて、所与の刺激に起因する神経動員を大きく変化させる可能性がある。体位変換だけでは、快適かつ効果的な刺激体制が、無効または痛みを伴うようになる可能性がある。
【0008】
通常、フィードバック信号に基づいて印加される刺激の振幅を調整することによって、治療効果のある範囲内(動員閾値を上回りかつ快適閾値を下回る)で刺激を送達することができる。フィードバック信号は、刺激電極の上流の神経線維に接続された電極によって検出される、測定されたCAP信号に基づく。CAP信号に基づいて、神経刺激を治療効果のある範囲内に維持するように、印加される刺激の振幅を調整することができる。これを達成するための方法は、米国特許第9,381,356(B2)号および米国特許第10,500,399(B2)号に開示されており、その内容は本明細書に組み込まれる。
【0009】
本明細書に含まれる文書、行為、材料、装置、物品などのあらゆる考察は、本発明のための文脈を提供することのみを目的とする。これらの事項のいずれかまたはすべてが、先行技術ベースの一部を形成すること、または、本出願の各請求項の優先日前に存在したために、本発明に関連する分野における共通の一般知識であったことを認めるものとして解釈されるべきではない。
【0010】
本明細書を通して、単語「含む(comprise)」、または「含む(comprises)」もしくは「含んでいる(comprising)」等の変形は、記載された要素、整数もしくはステップ、または要素、整数もしくはステップの群の包含を意味するが、他のいかなる要素、整数もしくはステップ、または要素、整数もしくはステップの群の除外も意味するものではないと理解されよう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第9,381,356(B2)号
【特許文献2】米国特許第10,500,399(B2)号
【特許文献3】米国特許第9386934号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
植込み型パルス発生装置であって、
(i)充電モードにおいて、電磁放射線を充電装置から受信し、電磁放射線が、エネルギー貯蔵装置を充電するために植込み型装置にエネルギーを伝送し、
(ii)測定モードにおいて、神経応答を表す電場パラメータ信号を測定し、
(iii)電場パラメータ信号の測定中に植込み型装置が充電装置から電磁放射線を受信しないように、充電モードと測定モードとの間で選択的に移行する
ように構成されたプロセッサを備える植込み型パルス発生装置が提供される。
【0013】
いくつかの実施形態では、プロセッサは、充電モード、および測定モードのうちの少なくとも1つにおいて、神経経路に神経刺激信号を印加するように更に構成される。
【0014】
いくつかの実施形態では、プロセッサは、電場パラメータ信号の測定の前に、電磁放射線の伝達を停止するように充電装置に信号を送るよう更に構成される。
【0015】
いくつかの実施形態では、電磁放射線の伝達を停止するための充電装置への信号は、充電されたエネルギー貯蔵装置を表す反射インピーダンスである。
【0016】
いくつかの実施形態では、反射インピーダンスは、神経刺激信号が印加され、対応する電場パラメータ信号が測定される刺激記録期間にわたって維持される。
【0017】
いくつかの実施形態では、電磁放射線の伝達を停止するための充電装置への信号は、ワイヤレス電磁無線周波数信号である。
【0018】
いくつかの実施形態では、無線周波数信号は、医療用インプラント通信サービス(MICS)帯域内にある。
【0019】
いくつかの実施形態では、電磁放射線の伝達を停止する充電装置への信号は、測定モードにある間維持される。
【0020】
いくつかの実施形態では、プロセッサは、周期的に測定モードで作動する。
【0021】
いくつかの実施形態では、プロセッサは、充電器が電磁放射線を能動的に伝送し始める時間と、植込み型装置が電場パラメータ信号を測定するように指示される時間とのうちの1つまたは複数を含むランダムな事例において、測定モードへのアドホックな移行を実行するように構成される。
【0022】
いくつかの実施形態では、電場パラメータ信号の測定は、ECAP、非誘発CAP、局所電場電位(LFP)、緩徐応答、生理学的パラメータ、または同様の神経応答パラメータのうちの少なくとも1つの測定を含み得る。
【0023】
エネルギー貯蔵装置を充電するために植込み型パルス発生装置のプロセッサによって実行される方法が更に提供され、この方法は、
(i)充電モードにおいて、電磁放射線を充電装置から受信し、電磁放射線が、エネルギー貯蔵装置を充電するために植込み型装置にエネルギーを伝送する、ステップと、
(ii)測定モードにおいて、神経応答を表す電場パラメータ信号を測定するステップと、
(iii)電場パラメータ信号の測定中に植込み型装置が充電装置から電磁放射線を受信しないように、充電モードと測定モードとの間で選択的に移行するステップとを備える。
【0024】
植込み型パルス発生装置であって、
(i)充電モードにおいて、電磁放射線を充電装置から受信し、電磁放射線がエネルギー貯蔵装置を充電するために、植込み型装置にエネルギーを伝送し、
(ii)測定モードにおいて、神経応答を表す電場パラメータ信号を測定し、
(iii)電場パラメータ信号の測定中に植込み型装置が充電装置から電磁放射線を受信しないように、充電モードと測定モードとの間で選択的に移行するように構成されたプロセッサを備える植込み型パルス発生装置と、
埋込み型装置からの信号の受信に応答して、動作状態から待機状態に移行するように構成された充電器であって、動作状態では充電器が電磁放射線をエネルギー貯蔵装置に伝達し、待機状態では充電器が電磁放射線をエネルギー貯蔵装置に伝達しない、充電器と、を備えるシステムが更に提供される。
【0025】
実行時にプロセッサに上記方法を実行させるソフトウェア命令を記憶するように構成された非一時的コンピュータ可読媒体が更に提供される。
【0026】
所定の周波数における所定のデューティサイクルに従って動作状態から待機状態に移行するように構成されたプロセッサを備える充電器が更に提供され、動作状態では充電器が電磁放射線を植込み型装置に伝達し、待機状態では充電器が電磁放射線を植込み型装置に伝達しない。
【0027】
いくつかの実施形態では、充電器は、植込み型装置から割込み信号を受信し、受信された割込み信号に応答して、植込み型装置への電磁放射線の伝達を停止すること、および植込み型装置への電磁放射線の伝達を開始することのうちの少なくとも1つを実行するように更に構成される。
【0028】
いくつかの実施形態では、所定のデューティサイクルは、受信された構成信号に基づいて変更可能である。
【0029】
いくつかの実施形態では、構成信号は、植込み型装置から受信される。
【0030】
充電モードおよび測定モードのうちの1つにて選択的に作動するように構成されるプロセッサを備える植込み型パルス発生装置が更に提供され、プロセッサは、
充電装置からの電磁放射線を検出し、ここで、電磁放射線は、エネルギー貯蔵装置を充電するために、植込み型装置にエネルギーを伝送し、電磁放射線は、充電サイクルの第1の部分の間にエネルギーを伝送し、充電サイクルの第2の部分の間にエネルギーの伝送を停止するために、所定の周波数およびデューティサイクルで伝送され、
充電モードでは充電サイクルの第1の部分の間に充電装置から電磁放射線を受信し、
神経刺激を神経経路に印加し、
測定モードでは充電サイクルの第2の部分の間の電場パラメータ信号を測定するように更に構成される。
【0031】
いくつかの実施形態では、プロセッサは、
電磁放射線から所定の周波数およびデューティサイクルを決定し、
所定の周波数で刺激サイクルを実行して、刺激サイクルを充電サイクルの第2の部分と同期させ、各刺激サイクルは、神経刺激を神経経路に印加すること、および測定モードでは電場パラメータ信号を測定することを含む、ように更に構成される。
【0032】
いくつかの実施形態では、植込み型パルス発生装置のプロセッサは、
植込み型装置の充電距離内の発信装置の存在を検出し、発信装置が植込み型装置に電磁放射線を伝達し、
検出された発信装置が充電装置であるかどうかを検証し、
充電装置としての発信装置の肯定的な検証に応答して、植込み型装置を、任意の他の動作ルーチンから、プロセッサがステップ(i)~(iii)を実行するスマート充電動作ルーチンに移行させるように更に構成される。
【0033】
いくつかの実施形態では、プロセッサは、植込み型装置の充電コイルに関連するセンサから受信される検出信号を処理することによって、発信装置の存在を検出するように更に構成される。
【0034】
いくつかの実施形態では、プロセッサは、植込み型装置の増幅構成要素から受信された検出信号を処理することによって、発信装置の存在を検出するように更に構成され、増幅構成要素は、発信装置から受信された電磁放射線に関連するノイズ信号を測定するように構成され得る。
【0035】
いくつかの実施形態では、発信装置を充電装置として検証することは、充電装置に関連するノイズシグネチャを認識するためにノイズ信号を処理することを含む。
【0036】
いくつかの実施形態では、プロセッサは、1つまたは複数の割込み信号を発信装置に伝達し、1つまたは複数の割込み信号に対する発信装置の応答を検出して、発信装置が充電装置であるかどうかを検証するように更に構成される。
【0037】
いくつかの実施形態では、プロセッサが充電装置として発信装置を肯定的に検証することを可能にする発信装置の応答は、発信装置による電磁放射線の伝達の停止を伴う確認応答である。
【0038】
いくつかの実施形態では、プロセッサは、
第1の所定の時間内に、発信装置の確認応答がないことを検出し、
第1の所定の時間内に確認応答がないことに応答して、植込み型装置を、任意の他の動作ルーチンから、プロセッサがステップ(i)~(iii)を実行せず、その代わりに、
電場パラメータ信号の対応する測定なしに神経刺激を印加するステップ
を実行する静的刺激動作ルーチンに移行させる
ように更に構成される。
【0039】
いくつかの実施形態では、プロセッサは、
第1の時間の後に発生する第2の所定の時間内に発信装置の確認応答の存在を検出し、
第2の時間における確認応答の検出に応答して、発信装置を充電装置として肯定的に検証して、植込み型装置を静的刺激動作ルーチンからスマート充電動作ルーチンに移行させるように更に構成される。
【0040】
いくつかの実施形態では、エネルギー貯槽装置を充電する方法は、
植込み型装置の充電距離内の発信装置の存在を検出し、発信装置が植込み型装置に電磁放射線を伝達するステップと、
検出された発信装置が充電装置であるかどうかを検証するステップと、
充電装置としての発信装置の肯定的な検証に応答して、植込み型装置を、任意の他の動作ルーチンから、プロセッサがステップ(i)~(iii)を実行するスマート充電動作ルーチンに移行させるステップとを更に備える。
【0041】
いくつかの実施形態では、本方法は、1つまたは複数の割込み信号を発信装置に伝達するステップと、1つまたは複数の割込み信号に対する発信装置の応答を検出するステップと、発信装置の応答に基づいて、発信装置が充電装置であるかどうかを検証するステップとを更に備える。
【0042】
いくつかの実施形態では、本方法は、
第1の所定の時間内に発信装置の確認応答がないことを検出し、確認応答が発信装置による電磁放射線の伝達の停止を伴うステップと、
第1の所定の時間内に確認応答がないことに応答して、植込み型装置を、任意の他の動作ルーチンから、プロセッサがステップ(i)~(iii)を実行せず、その代わりに、
電界信号の対応する測定のない神経刺激を印加するステップ
を実行する開ループ動作ルーチンに移行させるステップと、を更に備える。
【0043】
いくつかの実施形態では、本方法は、
第1の時間の後に発生する第2の所定の時間内に、発信装置の確認応答の存在を検出するステップと、
第2の時間における確認応答の検出に応答して、充電装置として発信装置を肯定的に検証して、植込み型装置を静的刺激動作ルーチンからスマート充電動作ルーチンに移行させるステップと、を更に備える。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】植込み型ニューロモジュレーション装置および充電器を示した図である。
図2】ニューロモジュレーション装置の概略図である。
図3図2の装置によって実行される方法のフローチャートである。
図4A図3の方法に従った例示的なタイミングシーケンスを示す図である。
図4B図3の方法に従った例示的なタイミングシーケンスを示す図である。
図4C図3の方法に従った例示的なタイミングシーケンスを示す図である。
図4D図3の方法に従った例示的なタイミングシーケンスを示す図である。
図4E図3の方法に従った例示的なタイミングシーケンスを示す図である。
図5】充電装置の概略図である。
図6図5の装置によって実行される方法のフローチャートである。
図7図2の装置によって実行される方法のフローチャートである。
図8】ニューロモジュレーション装置の概略図である。
図9】ニューロモジュレーション装置の概略図である。
図10図2の装置によって実行される方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0045】
上記のように、効果的かつ快適な神経刺激を維持するために、刺激振幅を治療効果のある範囲内に維持することが有用である。即ち、刺激は、動員閾値を上回り、かつ快適閾値を下回る。神経調節装置は、刺激に反応して誘発される複合活動電位(CAP)信号(「ECAP信号」と呼ばれる)の測定に基づいて、印加される刺激の振幅を調整して、刺激をこの治療効果のある範囲内に保つことができる。このように作動する神経調節装置は、閉ループモードで(即ち、一種のフィードバック信号としてのECAPの使用に関して)作動していると言われる。これは、閉ループ神経刺激(CLNS)とも呼ばれ得る。ECAP信号は、通常、マイクロボルトの範囲の最大振幅を有するが、CAPを誘発する印加刺激信号は通常数ボルトである。
【0046】
CLNSを実行する植込み型装置はバッテリー式であり、バッテリーの断続的な充電を使用して、作動状態を維持する。図1は、埋込み型ニューロモジュレーション装置内のバッテリーを充電するためのワイヤレス充電システム100を示す図である。ワイヤレス充電システム100は、電磁放射線106を使用して、植込み型装置110のエネルギー貯蔵装置104(例えば、バッテリー)にエネルギーを伝送するための充電装置(または「充電器」)102を備える。電磁放射線は、エネルギー貯蔵装置104を充電するために使用できる植込み型装置110内の充電電流を誘導する。植込み型装置110は、下腹部領域または後上臀部領域のような患者108の中の適切な位置に植え込まれる。
【0047】
充電器102は、エネルギー貯蔵装置104の充電レベルを反射インピーダンスとして検出する。この反射されたインピーダンスを使用して、エネルギー貯蔵装置104の充電レベルが最大に達したことに応答して、充電器102は、エネルギー貯蔵装置が充電されたことを検出し、電磁放射線106の伝達を自動的に停止する。
【0048】
図2は、エネルギー貯蔵装置104および遠隔測定モジュール114を備える植込み型装置110のブロック図である。エネルギー貯蔵装置104は、バッテリーまたはキャパシタのような任意の適切なエネルギー貯蔵装置であり得る。遠隔測定モジュール114は、外部装置と装置110の他のモジュールとの間で電力および/またはデータを伝送する。例えば、遠隔測定モジュール114は、充電器102からエネルギー貯蔵装置104に電力を受け取り得る。遠隔測定モジュール114は、容量および誘導伝送を含む、赤外線(IR)および他の電磁放射線のような任意の適切な種類の経皮的通信を利用し得る。
【0049】
モジュールコントローラ116は、患者設定120、制御プログラム122などを記憶する関連メモリ118を有する。コントローラ116は、パルス発生器モジュール124を制御して、患者設定120および制御プログラム122に従って電流パルスの形で刺激を発生させる。電極選択モジュール126は、選択された電極を取り囲む組織に電流パルスを送達するために、生成されたパルスを電極アレイ150の適切な電極に切り替える。測定回路128は、電極選択モジュール126によって選択された電極アレイの感知電極で感知された神経応答の測定値を取り込むように構成される。
【0050】
神経応答は、測定回路128の構成要素による電場パラメータ信号の測定によって決定される。例えば、電場パラメータ信号の測定には、誘発神経複合活動電位(ECAP)、非誘発神経複合活動電位(nECAP)、局所電場電位(LFP)、緩徐応答、または生理学的パラメータ(EMG、ECoG、およびEKGなど)のうちの少なくとも1つの測定が含まれ得る。本明細書に記載の実施形態はECAP信号の測定に関するが、当業者は、神経応答を示す任意の他の種類の電場パラメータの測定が代替的にまたは追加的に実行され得ることを理解するであろう。
【0051】
充電電位の所望の大きさは、バッテリーの種類に依存し、通常1~5ボルトのオーダーである。これにより、ECAP信号の検出または正確な測定を妨げるECAP信号(マイクロボルト)よりも数桁大きい誘導電位が測定電極中に発生する。結果として、いくつかのニューロモジュレーション装置は、バッテリーの充電中に、ECAPの測定値に基づく印加神経刺激を変更するように作動することができない(即ち、閉ループ動作)。代わりに、装置は、「開ループ」制御に限定され、そこでは、印加刺激に使用される振幅が、動的に測定されたECAP信号の検討に基づくものではなく、その結果、誘導刺激が治療効果のある範囲外になり、患者に対して不快感などの望ましくない効果をもたらすことになり得る。
【0052】
この問題に対処するために、本開示は、装置110の充電に応答して誘発神経複合活動電位(ECAP)信号の測定を制御するように動作する、「植込み型パルス発生器」(IPG)装置110とも呼ばれる植込み型神経刺激装置を提供する。植込み型装置110による神経経路への神経刺激の印加に応答してECAP信号が生成される場合、これは、装置110が充電装置(例えば、充電器102)によって充電されている間にCLNSを実行することを可能にする。植込み型神経刺激装置110は、図3の方法300を実行するように構成されるプロセッサ117を有するコントローラ116を備える。方法300を実行するとき、プロセッサ117は、充電モードおよび測定モードのうちの1つにて選択的に作動する。
【0053】
ステップ302において、プロセッサ117は充電モードにあり、充電器102から電磁放射線106を受信するように構成される。電磁放射線106は、上記のようにエネルギー貯蔵装置104を充電するために、埋込み型装置110にエネルギーを伝送する。
【0054】
プロセッサ117は、神経経路への神経刺激信号の印加を指示する。具体的には、埋込み型装置110は、電極150を通して神経経路に神経刺激信号を生成して印加する。印加刺激信号は、刺激信号が印加された神経経路から神経経路に沿った点で測定される神経経路における複合活動電位(ECAP)信号応答を誘発する。このECAP信号は測定され、神経刺激信号の振幅を調整するためのフィードバック信号として使用され得る。
【0055】
神経刺激信号の印加に対応するECAP信号を測定する前に、プロセッサ117は、ECAPの測定中に植込み型装置110が充電器102から電磁放射線106を受信しないように、充電モードから測定モードに選択的に移行する。一実施形態では、測定モードは、プロセッサ117が充電装置102に信号を送り、電磁放射線106の伝達を停止することを伴う。その結果、充電装置102は、植込み型装置110がECAP信号を測定する期間中、電磁放射線106を伝達しない。次いで、ステップ306において、神経経路に沿った点でECAP信号が検出され、測定される。これは、ECAP信号が神経刺激信号を調整する(即ち、CLNSを実行する)ためのフィードバック信号として使用されることを可能にする。充電装置102は、ECAPの測定後に電磁放射線106の伝達を再開することができる。この場合、プロセッサ117は、充電モードに選択的に戻り、エネルギー貯蔵装置104の充電が可能になる。
【0056】
いくつかの実施形態では、植込み型装置110は、神経刺激信号を生成して印加する前に、充電装置102に信号を送って、電磁放射線の伝達を停止する。即ち、プロセッサ117は、神経刺激信号を印加する前に、測定モードに移行する。そのような実施形態では、植込み型装置110は、充電コントローラおよび刺激モジュールを備える。刺激モジュールは、充電コントローラに接続された「イネーブル」入力を有する。充電コントローラは、刺激を無効にする「イネーブル」信号を消去し、次いで、電磁放射線を伝達するために充電装置102に信号を送る。刺激パルス間の計算された時間のような期間の後、充電コントローラは、電磁放射線の伝達を停止するために充電装置102に信号を送り、刺激を使用可能にするために「イネーブル」信号を設定する。
【0057】
いくつかの実装形態では、伝達を停止するために充電装置102に信号を送った後、埋込み型装置110は、刺激およびその後のECAP信号の測定を可能にする前に、充電装置102からの承認を待つか、または電磁放射線の実際の停止を検出する。
【0058】
これらのプロセスのタイミングシーケンスを図4A図4Eに示す。図4Aは、充電器102の出力であり、一方、図4B図4Cおよび図4Dは、装置110において行われる。
【0059】
初期時間t1において、充電器102は、伝達信号402によって示されるように、電磁放射線106を伝達している。伝達信号402は、電磁放射線が通常250KHz~400KHzの周波数を有する高周波交流電流(AC)信号であるが、5MHzと同程度の周波数が使用されているので、矩形断面として例示されている。この時点で、プロセッサ117は、充電モードにて作動し、方法300のステップ302を実行している。後の時間t2において、プロセッサ117は、刺激信号404を印加し、後の時間t3において誘発CAP信号406を測定する。上記のように、CAP信号406は、将来の刺激波形404’の振幅を調整するためのフィードバックとして使用される。t3より前の時間t4において、プロセッサ117は、割込み信号408を充電器102に伝達し、402’においてゼロに降下する送電電圧によって示されるように(即ち、測定モード中に)、電磁放射線の伝達を停止する。
【0060】
図4Cおよび図4Dは、刺激信号404およびECAP信号406が時間的に重ならないものとして例示する。しかしながら、実際には、刺激信号404およびECAP信号406は、電極の物理的配置および神経線維に沿った刺激信号404の伝播速度に応じて重なり得る。いくつかの実施形態では、ECAP信号406は、刺激信号404が印加されるのと同時に測定される。即ち、t2とt3が同時に発生する。
【0061】
充電器102は、ECAP信号406が測定されているときに、時間t3において電磁放射線を伝達していないので、植込み型装置110は、ECAP信号406を検出し、正確に測定して、それをフィードバック信号として使用することができる。
【0062】
図4A図4Dは、ECAP信号406が測定される前だけでなく、刺激信号404が神経経路に印加される前にも割込み信号408が伝達されるときの方法300の実施態様を例示する。即ち、t4は、t3およびt2の前にある。
【0063】
ある後の時間t5において、充電器102は、電磁放射線106の伝達を再開して、エネルギー貯蔵装置104の充電を継続する。いくつかの実施形態では、プロセッサ117は、ECAP信号406が測定された後に再開信号(図示せず)を伝達し、充電器102に電磁放射線106の伝達を再開させる。
【0064】
他の実施形態では、神経刺激信号は、電磁放射線の伝達中(即ち、充電モード中)に印加され、プロセッサ117は、刺激信号の印加後、対応するECAP信号の測定前に、充電モードから測定モードに移行する。前述のように、充電装置102は、装置110がECAP信号を測定した後にのみ、電磁放射線106の伝達を再開する。これは、図4Bに示される植込み型装置110の割込み信号409、および図4Eに示される充電器102の伝達信号出力410によって例示される(両方の信号が破線で示される)。本実施形態では、プロセッサ117は、伝達信号410に従って電磁放射線106の伝達を停止するために、時間t4’(図4Bおよび図4Eにのみ示される)において、割込み信号409を充電器102に伝達する。時間t4’は時間t2の後に発生し、これはプロセッサ117が刺激信号404を印加するときであるが、プロセッサ117が誘発CAP信号406を測定する時間t3より前に発生する。
【0065】
いくつかの実施形態では、プロセッサ117は、刺激信号404を印加し、対応するECAP信号406を測定するのに必要な時間の間、割込み信号408を連続的に伝達する。この期間は、刺激記録期間と呼ばれる。刺激記録期間の終了時に、プロセッサ117は、充電装置102に電磁放射線106の伝達を再開させる割込み信号408の伝達を停止する。図4A図4Eに例示される実施例では、刺激記録期間は2ミリ秒である。
【0066】
いくつかの実施形態では、充電器102は、伝達を停止する信号を送る第1の割込み信号を受信してから所定の期間の後に、電磁放射線106の伝達を自動的に再開する。所定の時間は、充電器102に記憶され、または割込み信号408を介して、もしくは別個の通信を介して、植込み型装置110から充電器102に通信され得る。
【0067】
割込み信号408は、多くの形態をとることができることが理解されよう。一実施例では、割込み信号408は、充電されたエネルギー貯蔵装置を示す反射インピーダンスである。即ち、プロセッサ117は、エネルギー貯蔵装置104が完全に充電された場合に経験されるであろう電気的負荷に等しい遠隔測定モジュール114上の電気的負荷をシミュレートする。この反射インピーダンスは、充電器102によって検出され、充電器102に電磁放射線106の伝達を停止させる。
【0068】
反射インピーダンスを割込み信号408として使用する利点は、そのような充電器が既に使用されている場合、充電器102を修正する必要がないことである。
【0069】
別の実施例では、割込み信号408は、ワイヤレス電磁無線周波数信号である。例えば、それは、医療用インプラント通信サービス(MICS)帯域内の無線周波数信号であり得る。
【0070】
装置110のプロセッサ117は、患者108に長期にわたる治療効果を提供するために、周期的に測定モードにて作動し得る。図4A図4Dに例示される実施例では、プロセッサ117は、20ミリ秒の周期(50ヘルツの周波数に対応する)で、充電モードと測定モードとを周期的に交互に行う。この場合、プロセッサ117は、2ミリ秒の刺激記録期間の間、測定モードで作動し、次いで、20ミリ秒の期間の残り(即ち、18ミリ秒)の間、充電モードで作動する。測定モードと充電モードとの間に重なりはない。
【0071】
他の実施形態では、プロセッサ117は、測定モードへの1つまたは複数のアドホックな移行を実行し得る。これらの移行は、例えば、充電器102が電磁放射線106を植込み型装置110に能動的に伝送し始めるときはいつでも、ランダムなインスタンスで起こり得る。いくつかの実施形態では、プロセッサ117の移行は、植込み型装置110がECAP、非誘発CAP、局所電場電位(LFP)、緩徐応答、生理学的パラメータ(EMG、ECoG、およびEKGなど)、または同様のパラメータのような、神経応答を表す電気パラメータを測定するように指示されるときに起こり得る。
【0072】
いくつかの実装形態では、プロセッサ117は、エネルギー貯蔵装置104の充電レベルを監視する。充電レベルが所定の閾値を上回る間、プロセッサ117は、割込み信号408を連続的に生成する。この場合、装置110が充電器102の動作範囲に入った場合、充電装器は、割込み信号408を検出することになるので、電磁放射線を伝達しなくなる。充電レベルが所定の閾値を下回ると、プロセッサ117は、上記のように方法300を実行することになり、測定されたECAP信号に基づいて刺激信号の調整も可能にしながら、エネルギー貯蔵装置104の充電器102による充電が可能になる。
【0073】
いくつかの実装形態では、プロセッサ117は、装置110が充電器102の動作範囲内で移動するたびに、エネルギー貯蔵装置104の充電を連続的に可能にする方法300を実行する。
【0074】
方法300の命令は、制御プログラム122中に記憶され、C++またはJavaなどのプログラミング言語で書かれたソフトウェアプログラムとして具現化される。次いで、結果として得られるソースコードは、コンパイルされ、コンピュータ実行可能命令として記憶される。
【0075】
図5は、関連メモリ504およびアンテナ506を有するコントローラ502を備える充電装置102の概略図である。コントローラ502は、メモリ504上の充電制御プログラム510に記憶された命令を実行するためのプロセッサ508を備える。アンテナ506は、電磁放射線106を植込み型装置110に伝達するように構成される。充電制御プログラム510は、図6に例示される方法600を実行するための命令を含む。
【0076】
ステップ602において、コントローラ502は、充電装置102を制御して、電磁放射線を植込み型装置110に伝達する。上述のように、充電器102は、エネルギーをエネルギー貯蔵装置104に伝達する。割込み信号408は、ステップ604で受信され、コントローラ502に、電磁放射線102の伝達を停止することによってステップ606を実行させる。
【0077】
いくつかの実施形態では、方法600は、ステップ602がステップ606の後に再度実行されるように、ループにて実行される。
【0078】
いくつかの実施形態では、方法600は、割込み信号408がもはや受信されないとき、ループしてステップ602に戻る。即ち、コントローラ502は、割込み信号408が受信されている間はステップ606を実行し、割込み信号408が受信されていないときにはステップ602を実行する。
【0079】
いくつかの実施形態では、方法600は、伝達を停止する所定の期間の後、ループしてステップ602に戻る。所定の期間は、充電制御プログラム510に記憶され得る。あるいは、所定の期間は、割込み信号408から導出可能であるか、または植込み型装置110から別の通信として受信され得る。
【0080】
いくつかの実施形態では、方法600は、別の再開信号(図示せず)が受信されると、ループしてステップ602に戻る。
【0081】
いくつかの実施形態では、充電装置102は、所定のデューティサイクルおよび所定の周波数に従って電気エネルギー(即ち、電磁放射線106)を伝達するように構成される。即ち、充電器102は、所定のデューティサイクルに従って、充電サイクルの第1の部分における動作状態から充電サイクルの第2の部分における待機状態に移行するように構成される。動作状態では、充電器102は植込み型装置110に電磁放射線を伝達し、待機状態では、充電装置102は植込み型装置に電磁放射線を伝達しない。デューティサイクルは、充電サイクルの第1の部分の持続時間と充電サイクルの第2の部分の持続時間との間の関係によって定義される。第1および充電サイクルの第2の部分は、所定の周波数で繰り返される。
【0082】
いくつかの実装形態では、充電器102は、割込み信号を受信することなく、所定のデューティサイクルおよび周波数に従って電気エネルギーの伝達を実行する。即ち、方法600を参照すると、充電装置102は、植込み型装置110から割込み信号を受信することなく、動作状態(ステップ602において)と待機状態(ステップ606において)との間で前後に移行するように構成され得る。ステップ602から606への充電器102の直接の移行、および対応する逆の移行は、図6に点線として示されている。
【0083】
いくつかの実施形態では、充電器102は、植込み型装置110の検出時に、所定のデューティサイクルおよび周波数に従って電気エネルギーの伝達を自動的に開始するように構成される。充電器102は、植込み型装置110の検出を可能にするように構成された検出回路を含む。例えば、充電器102は、充電器102のコイルまたは同様の構成要素内で検出された反射インピーダンスの変化を介して植込み型装置110の存在を感知し、所定のデューティサイクルに従って充電を開始し得る。
【0084】
充電器102は、所定のデューティサイクルおよび周波数に従って電気エネルギーの伝達を始めるための割込み信号を受信する必要はないが、充電器102は依然としてそのような割込み信号を受信し得る。いくつかの実装形態では、充電器102は、予め指定されたやり方で電気エネルギーの伝達を変更するために、受信された割込み信号に応答するように構成される。例えば、充電器102は、電気エネルギーの伝達を完全に停止し(例えば、ターンオフ機能を呼び出し)、電気エネルギーの伝達が即座に停止された後に所定のデューティサイクルに従ってクールオフ期間の終了時に再開される所定のクールオフ期間を開始し、現在の充電サイクルの第2の部分に進み、および/またはデューティサイクルをリセットすることによって、応答するように構成され得る。議論のために、本実施形態で作動するときには、充電器102をマスター充電装置102と呼ぶことにする。
【0085】
いくつかの実装形態では、所定の周波数およびデューティサイクルは、受信された構成信号に基づいて構成可能である。例えば、充電器のデューティサイクルおよび周波数は、植込み型装置110から、または植込み型装置を制御するために患者によって使用される遠隔制御装置から充電器に伝達され得ることがあり、または、周波数およびデューティサイクルが臨床医によって診療所にて定められ得る。
【0086】
いくつかの実施形態では、植込み型装置110は、上述の充電器102から電磁放射線を受信するように構成される。プロセッサ117は、充電器102が充電サイクルの第1の部分にあるか充電サイクルの第2の部分にあるかに基づいて、充電モードおよび測定モードのうちの1つにて選択的に作動する。プロセッサ117は、電磁放射線の受信に応答して第1および充電サイクルの第2の部分を検出し、充電サイクルの第1の部分の間、充電モードにて作動する。前述のように、充電モードにあるとき、エネルギー貯蔵装置104を充電するために、電磁放射線を充電装置102から受信する。
【0087】
いくつかの実施形態では、プロセッサ117は、マスター充電器102からの電磁放射線を監視することによって、マスター充電器102の所定の周波数およびデューティサイクルを決定する。一実施形態では、プロセッサ117は、連続する充電サイクルの第1の部分の間の時間を測定して、所定の周波数(測定された時間期間の逆数である)を決定し、充電サイクルの第1の部分の持続時間を測定して、所定のデューティサイクルを決定する。
【0088】
プロセッサ117を、刺激サイクルが充電サイクルの第2の部分と同期するように、所定の周波数で刺激サイクルを周期的に実行するように構成することができる。各刺激サイクルでは、プロセッサ117は、神経刺激を神経経路に印加し、ECAP応答信号を測定する。この結果、プロセッサ117は、マスター充電器102が電磁放射線の伝達を停止するたびに刺激サイクルを実行する。
【0089】
いくつかの実施形態では、プロセッサ117は、充電サイクルの各第2の部分の間、完全な刺激サイクルを実行しない。そうではなく、プロセッサ117は、充電サイクルの第2の部分の間にのみ神経刺激を印加し、誘発神経活動電位を測定しないことによって、不完全な刺激サイクルを実行するように構成される。プロセッサ117は、刺激のレベルを調整するために、完全な刺激サイクルを周期的に実行し得る。即ち、プロセッサ117は、完全な刺激サイクルが散在する不完全な刺激サイクルを実行し得る。プロセッサ117が完全な刺激サイクルを時折実行するのみの結果として、エネルギー貯蔵装置104は、プロセッサ117が不完全な刺激サイクルを実行するときには、より少ないエネルギーを消費するので、より速く充電することができる。
【0090】
検出された電磁放射線を使用して、プロセッサ117は、充電サイクルの第2の部分も所定の周波数で繰り返されるので、マスター充電装置102がいつ充電サイクルの第2の部分にあるかを予測することができる。そして、刺激サイクルの同期は、所定の周波数で、かつ刺激サイクルが充電サイクルの第2の部分に入ることを可能にする位相オフセットを用いて、プロセッサ117が刺激サイクルを実行することに相当する。位相オフセットは、所定のデューティサイクルによって決定され、事実上、タイミングオフセットである。
【0091】
例えば、プロセッサ117は、検出された充電サイクルの第1の部分と、連続する開始の間の測定された時間とを使用して、各来るべき充電サイクルの開始を決定する。次いで、充電サイクルの第1の部分の存続期間に等しい位相遅延、またはタイミングオフセットをこれらの時間に加算して、充電サイクルの第2の部分の予測時間を得る。
【0092】
いくつかの実施形態では、位相遅延は一度だけ計算され、次いで、刺激サイクルは所定の周波数で実行される。他の実施形態では、位相オフセットは、刺激サイクルが充電サイクルの第2の部分と同期したままであることを確実にするために、周期的に決定される。
【0093】
いくつかの実施形態では、ECAPの測定値は、上記の実施形態に関して、フィードバックループではなく上下の刺激閾値を決定するために使用されて、それぞれの閾値レベルの間で刺激を維持する。関連する閾値を決定することで、ECAP応答信号の検出をもたらさない強度での刺激の送達を可能にする。
【0094】
例えば、ECAP測定値は、検出可能な応答を誘発するために必要とされる刺激の最小レベルを決定するために使用され得る(即ち、ECAPは刺激のレベルに対して記録され得、植込み型装置は、ECAPが検出可能でなくなるまで刺激レベルを下げるように構成され得る)。この値を下回る強度で刺激を印加することは、閾値下の刺激とみなすことができる。閾値下の刺激は、対応する誘発複合活動電位を測定することなく実行され得る。そうではなく、この実施形態では、プロセッサ117は、植込み型装置110が充電器102によって充電されているとき(即ち、充電モードにあるとき)に起こり得る神経経路にのみ神経刺激を印加するように構成される。
【0095】
いくつかの実施形態では、充電モードまたは測定モードのいずれかで作動するときには、プロセッサ117は神経経路に神経刺激を印加しない。そうではなく、プロセッサ117は、測定モードにおいて非誘発神経活動のみを測定するように構成される。即ち、プロセッサ117は、非誘発神経活動の測定を介して、植込み型装置110によって生成または誘発されない電場信号パラメータを検出するように構成され得る。例えば、神経経路に沿って通過する信号は、患者の膀胱がいっぱいであることを示し得る。この信号の測定値は、充電器102が電磁放射線を装置110に伝達していないときに、測定モード中に取得され得る。
【0096】
プロセッサ117が充電モードでの動作と測定モードでの動作との間で選択的に移行する前述の実施形態の機能は、「スマート充電」動作ルーチンの一部として植込み型装置110によって実行される。いくつかの実施形態では、植込み型装置110は、スマート充電動作ルーチンと、いかなる充電動作を補正することなくECAP測定値に基づいて刺激信号が変更される従来のフィードバックベースの動作ルーチンと(例えば、植込み型装置110が充電器102なしで作動するとき)、神経刺激信号のいかなる動的調整なしに神経経路に神経刺激が印加される静的刺激動作ルーチンと(印加刺激によって誘発される対応する神経複合活性電位応答の測定が実行されるかどうかにかかわらず)、を含む、様々な動作ルーチン間で移行するように構成される。場合によっては、植込み型装置110は、静的刺激を印加しながら、患者108の組織に関連する電気パラメータを測定し得る。植込み型装置110は、静的刺激の印加を停止し、電場パラメータを測定し、次いで、静的刺激の印加を再開し得る。この場合、測定された電場パラメータは、神経刺激の調整にも変更にも使用されない。
【0097】
いくつかの実施形態では、植込み型装置110は、充電する植込み型装置110の近傍にある充電装置102の存在を検出し、検出に応答してスマート充電動作ルーチンに自動的に移行するように構成される。即ち、植込み型装置110は、その動作環境、および植込み型装置110が発信装置(即ち、充電器102または別の装置のいずれか)から電磁(EM)放射線106を受信しているかどうかに応じて、その機能を最適化するために、動作ルーチン間で移行し得る。
【0098】
例えば、植込み型装置110は、充電器102が利用できないとき、および植込み型装置110が別の発信装置(例えば、アーク溶接機)によって生成されるノイズ形態での電磁放射線106を受けるとき、静的刺激動作ルーチンにて機能することが望ましいことがあり得る。この状況では、印加刺激のフィードバックベースの制御を実行する目的などのためにECAP応答信号を測定しようとすると、静的アプローチよりも悪い結果(即ち、誘発されたCAP信号の不正確な測定が誘導刺激の強度の調整不良となる場合)をもたらし得る。
【0099】
植込み型装置110が充電器102または他のいかなる発信装置からも電磁放射線を受信しない場合といった他の状況では、刺激および充電サイクル機能なしの動作ルーチンが有利であり得る(例えば、ECAPの測定が充電サイクル外の任意の特定の期間内に発生するように時間的に制限されないので)。
【0100】
図7は、充電器102の検出時にスマート充電動作ルーチンに自動的に移行するために植込み型装置110によって実行されるプロセス700を例示する。ステップ702において、植込み型装置110は、植込み型装置110の充電距離内の発信装置の存在を検出する。充電距離は、発信装置が植込み装置110に充電電流を誘導することができ、したがって、(上記のように)CAP信号の検出に影響を及ぼすような測定電極中の電位を誘導できる最大距離である。充電距離は、植込み型装置および発信装置の特性に応じて変化する。
【0101】
図8は、充電器102から受信した電磁放射線106を植込み型装置110内の充電電流に変換するように構成された充電コイル130と、充電コイル130に関連するセンサ132とを含む植込み型装置110の例示的な構成を示した図である。いくつかの実施形態では、充電コイル130は、リッツ線、または1本のケーブルにつき少なくとも100本のストランド線を有する他の種類のマルチストランド線から形成される。センサ132は、充電距離内で、電磁放射線106、したがって充電器102または他の発信装置の存在を検出するように構成される。例えば、センサ132は、充電器102からのEM放射線106によって誘導される電圧および/または電流を感知する構成要素であり得る。
【0102】
いくつかの実施形態では、センサ132は、コイル130に電気的に接続され、EM放射線106によって誘導される電荷を測定するように構成される。他の実施形態では、センサ132は、コイル130の近くに物理的に位置する独立した検出構成要素であり得る。この場合、センサ132に入射するEM放射線の強度は、センサ132が充電器102の装置110への接近を判定することを可能にする目的で、コイル130の強度に対応する。センサ132は、入射するEM放射線106の強度に基づいて検出信号を出力するように構成される。プロセッサ117は、検出信号の値が所定の検出閾値を超えることに応答して、充電器102の肯定的な検出を判定する。
【0103】
別の例示的な構成では、図9によって示されるように、植込み型装置110のコントローラ116は、EM放射線106から生じるノイズを感知するように構成された増幅器134を含む。増幅器は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第9386934号に記載されているような差動増幅器である。増幅器134は、発信装置(即ち、図8に示されるような充電器102)から受信される電磁放射線106に関連するノイズを感知する。プロセッサ117は、増幅器134から出力雑音信号を受信し、ノイズ信号に少なくとも部分的に基づいて、発信装置(例えば、充電器102)の存在を検出する。即ち、EM感知増幅器134は、入射するEM放射線106から生じるノイズを通して、植込み型装置110の近くにある充電器102または他の発信装置を検出し、それによって、誘導電荷の測定に変わるものを提供する。
【0104】
図7を再び参照すると、ステップ704およびステップ706において、植込み型装置110は、(ステップ702で検出された)発信装置が充電器102であるかどうかを検証する。具体的には、植込み型装置110は、例えば上記のセンサ132を介すように、EM放射線源106として機能する任意の発信装置を検出するように構成される。いくつかの実施形態では、充電器102の検証は、発信装置への少なくとも1つの割込み信号の伝達、および発信装置が充電器102であるか否かを示す発信装置の対応する応答の検出に基づく。
【0105】
ステップ704において、プロセッサ117は、1つまたは複数の割込み信号を発信装置に伝達する。割込み信号の形態およびその伝達は、装置110の異なる実施形成に従って変化し得る。例えば、いくつかの実施形態では、プロセッサ117は、所定の期間の間、単一の割込み信号を連続的に伝達する。他の実施形態では、プロセッサ117は、所定の期間にわたって短時間のパルス信号として各割込み信号を伝達する。プロセッサ117は、割込み信号を伝達する所定の期間は、割込み期間と呼ばれる。
【0106】
ステップ706において、プロセッサ117は、1つまたは複数の割込み信号に対する発信装置の応答を検出するように構成される。プロセッサ117が発信装置を充電器102として肯定的に検証することを可能にする応答は、確認応答と呼ばれる。記載される実施形態では、確認応答は、発信装置によるEM放射線106の伝達の停止を伴う。即ち、充電器102としての発信装置の肯定的な検証は、割込み信号の伝達が発信装置による(即ち、確認応答として)伝達EM放射線106の停止させるときに達成される。プロセッサ117は、同様に上記の実施形態に関して、植込み型装置110の割込み信号に対する応答として、EM放射線106の伝達の停止を検出する。
【0107】
いくつかの実施形態では、確認応答はまた、発信装置による電磁放射線106の伝達の再開も含む。例えば、確認応答は、発信装置がEM放射線106の伝達を停止し、次いで、所定のデューティサイクルおよび所定の周波数に従って伝達を再開することを伴い得る。1つまたは複数の割込み信号の伝達に続いて、プロセッサ117は(上記のように)、電気エネルギーの伝達が周期的な繰り返しによって断続的に生じる所定のデューティサイクルに従って、EM放射線106の伝達に関連する対応するパターンを検出し、その後、充電器102として発信装置を検証する。いくつかの実施形態では、プロセッサ117は、発信装置の不在と、所定のデューティサイクルに従って作動する充電器102の存在とを区別するために、単一の承認期間内に、伝達の最初の停止に続いて、EM放射線106の伝達の再開の検出を利用するように構成される。
【0108】
いくつかの実施形態では、プロセッサ117が確認応答の存在またはその反対を判定する期間は、確認期間と呼ばれる。確認期間は、例えば割込み信号が単一の連続信号である場合などに、割込み期間に続いて開始し得る。或いは、他の構成では、確認期間は割込み期間と重なり得る。
【0109】
ステップ708において、プロセッサ117が発信装置を充電装置102として肯定的に検証することに応答して、プロセッサ117は、埋込み型装置110を任意の他の動作ルーチンからスマート充電動作ルーチンに移行させる(即ち、プロセッサ117が本明細書に記載される測定モードおよび充電モードに従って作動するように)。
【0110】
いくつかの実施形態では、充電装置としての発信装置の検証は、植込み型装置110による割込み信号の伝送なしに実行される。コントローラ116が感知増幅器134を含むいくつかの実施形態では、プロセッサ117は、充電装置102に関連するものとしてノイズを判定するように構成される。即ち、プロセッサ117は、装置110の充電距離内に位置するときに、充電器102によって生成されるEMノイズ特性を示すノイズプロファイルを維持する。
【0111】
例えば、ノイズプロファイルは、ノイズ信号の特徴空間の1つまたは複数のパラメータによって定められる数値または統計モデルの形態であり得る。ノイズプロファイルは、外部コンピュータシステム上で実行される分類および/またはモデルトレーニング動作によって、および、その後、出力プロファイルをコントローラ116のメモリ118にロードすることによって作成され得る。プロセッサ117は、増幅器134によって出力されたノイズ信号の特徴値(即ち、発信装置のノイズシグネチャ)をノイズプロファイルの対応するパラメータと比較して、ノイズシグネチャが充電器102のものとして認識されるかどうか(即ち、ノイズプロファイルによって表されるように)を判定するように構成される。ノイズシグネチャの認識を介した充電器102の識別は、プロセッサ117が発信装置による割込み信号の適切な受信に依存する必要がなく、肯定的な検証を達成するために、発信装置が確認応答を提供するのを待つ必要がないという点で有利である。
【0112】
また、植込み型装置110は、発信装置が充電器102ではないと判定したことに応答して、他の動作ルーチンに自動的に移行するように構成される。例えば、図10は、静的刺激信号ベースのルーチンに自動的に切り換えるために植込み型装置110によって実行されるプロセス1000を例示する。ステップ1002およびステップ1004において、プロセッサ117は、植込み型装置110の充電距離内の発信装置の存在を検出し、(ステップ702およびステップ704について上述したように)1つまたは複数の割込み信号を発信装置に伝達する。
【0113】
ステップ1006において、プロセッサ117は、1つまたは複数の割込み信号に対する発信装置の応答を検出することを試みる。即ち、プロセッサ117は、第1の割込み期間中に1つまたは複数の割込み信号を発信装置に伝達し、次いで、対応する第1の確認期間中に確認応答を判定することを試みる。いくつかの実施形態では、第1の確認期間は、所定の長さ(例えば、20~1000ms)であり、割込み期間の直後に始まり得る。図10の例示的なプロセスでは、第1の確認期間は、プロセッサ117が充電器102の確認応答の存在を判定することなく終了する(即ち、発信装置による伝達EM放射線106の停止を伴う)。即ち、この場合、プロセッサ117は、第1の確認期間内に発信装置の確認応答の不在を検出する。
【0114】
ステップ1008において、第1の確認期間内に確認応答の不在を検出したことに応答して、プロセッサ117は、植込み型装置110を、任意の他の動作ルーチンから、ECAP信号の測定に応答して刺激信号が修正されない静的刺激動作ルーチンに移行させる。
【0115】
いくつかの実施形態では、植込み型装置110が静的刺激動作ルーチンにあるとき、プロセッサ117は、神経刺激信号の印加に関連するECAP信号を測定しないように阻止される。即ち、プロセッサ117は、印加刺激から生じるECAPの対応する測定なしに、1つまたは複数の神経経路に神経刺激を印加するように構成される。即ち、プロセッサ117は、発信装置が充電器102ではないと判定し、植込み型装置110がEM放射線106の存在に起因してECAP信号を測定することを阻止する。これは、EM放射線に関連するノイズが(従来の閉ループ制御ルーチンにおいて生じ得るように)誘発されたCAP信号の測定およびその後の使用を損なうことを防止する。
【0116】
いくつかの他の実施形態では、植込み型装置110が静的刺激動作ルーチンにあるとき、プロセッサ117は、神経刺激信号の印加に関連するECAP信号を測定し得るが、ECAP測定に基づいて神経刺激信号を変更することは阻止される(即ち、EM放射線に関連するノイズが測定を損なう可能性があるため)。
【0117】
いくつかの実施形態では、植込み型装置110は、所定の期間の間、静的刺激動作ルーチンを維持するように構成される。これは、バックオフ期間と呼ばれる。バックオフ期間の終了に続いて、プロセッサ117は、(図10の破線によって示されるように)割込み伝達および確認応答サイクルを繰り返し得る。即ち、プロセッサ117は、第2の割込み期間中に1つまたは複数の割込み信号を発信装置に再伝達し、対応する第2の確認期間中に確認応答を判定することを試みる。プロセッサ117が第2の確認期間中に確認応答を検出した場合(即ち、ステップ1010)、次いで、発信装置は充電器102として肯定的に検証される。この場合、プロセッサ117は、同様に上記の実施形態に関しては、植込み型装置110を静的刺激動作ルーチンからスマート充電動作ルーチンに(即ち、ステップ1012において)移行させる。そうでない場合、プロセッサ117は、更なるバックオフ期間を開始する。
【0118】
いくつかの実施形態では、プロセッサ117は、充電器102が検出されるまで、割込み伝達および確認応答サイクルを繰り返すように構成され、上記のように、スマート充電動作ルーチンへの自動的な移行を可能にする。プロセッサ117は、充電器102の検出を容易にするために、各サイクルのそれぞれの割込み、承認、およびバックオフ期間の持続時間および開始時間を制御するように構成される。例えば、確認期間は割込み期間の直後に開始し、充電器102の充電サイクルの持続時間以上に設定された持続時間を有するように設定され得る。これは、(充電サイクルの第2の部分の少なくとも一部が確認期間内に入ることになるので)対応する確認期間内の充電器102による電磁放射線の伝達のいかなる停止の検出を可能にする。
【0119】
本開示の広範な一般的範囲から逸脱することなく、上記の実施形態に対して多くの変形および/または修正を行い得るが、当業者によって理解されるであろう。したがって、本実施形態はあらゆる点で例示的であり、限定的ではないとみなされるべきである。
【0120】
本開示の技術は、様々な技術を使用して実施し得ることを理解されたい。例えば、本明細書で記載される方法は、適切なコンピュータ可読媒体上に存在する一連のコンピュータ実行可能命令によって実施され得る。適切なコンピュータ可読媒体は、揮発性(例えば、RAM)および/または不揮発性(例えば、ROM、ディスク)メモリ、搬送波、ならびに伝達媒体を含み得る。
【0121】
また、以下の説明から明らかなように、特に別段の記載がない限り、理解されるべきであり、以下の説明全体を通して、「推定する」、「処理する」、「計算する」もしくは「算出する」、または、「最適化する」、「判定する」、「表示する」もしくは「最大化する」などの用語を利用する議論は、コンピュータシステム、または類似の電子コンピューティングデバイスの動作およびプロセスを指し、それは、コンピュータシステムのレジスタおよびメモリ内の物理(電子的な)量として表されるデータを、コンピュータシステムメモリ、レジスタ、または他のそのような情報ストレージ、伝達、もしくは表示装置内の物理量として同様に表される他のデータへと処理および変換することを理解されたい。
【0122】
したがって、本実施形態はあらゆる点で例示的であり、限定的ではないとみなされるべきである。
【符号の説明】
【0123】
100 ワイヤレス充電システム
102 充電装置
102 充電器
104 エネルギー貯蔵装置
106 電磁放射腺
108 患者
110 植込み型神経刺激装置
110 植込み型装置
114 遠隔測定モジュール
116 コントローラ
117 プロセッサ
118 メモリ
120 患者設定
124 パルス発生器モジュール
126 電極選択モジュール
128 測定回路
130 充電コイル
130 コイル
132 センサ
134 増幅器
150 電極アレイ
150 電極
402 伝達信号
404 刺激信号
406 ECAP信号
408 割込み信号
409 割込み信号
410 伝達信号出力
502 コントロ-ラ
506 アンテナ
508 プロセッサ
510 充電制御プログラム
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【国際調査報告】