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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-01
(54)【発明の名称】銅電気めっき浴
(51)【国際特許分類】
   C25D 3/38 20060101AFI20230825BHJP
   C25D 7/12 20060101ALI20230825BHJP
【FI】
C25D3/38
C25D7/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022580981
(86)(22)【出願日】2021-06-29
(85)【翻訳文提出日】2022-12-27
(86)【国際出願番号】 EP2021067788
(87)【国際公開番号】W WO2022002899
(87)【国際公開日】2022-01-06
(31)【優先権主張番号】20182963.7
(32)【優先日】2020-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511188635
【氏名又は名称】アトテック ドイチェランド ゲーエムベーハー ウント コ カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ハイコ・ブルナー
(72)【発明者】
【氏名】サンドラ・ハイド
(72)【発明者】
【氏名】ペーター・ハーク
(72)【発明者】
【氏名】アンジェラ・ラヴォナ-セラーノ
【テーマコード(参考)】
4K023
4K024
【Fターム(参考)】
4K023AA19
4K023BA06
4K023BA09
4K023BA19
4K023CB07
4K023CB32
4K024AA09
4K024AB01
4K024AB08
4K024BB11
4K024BB12
4K024CA02
4K024FA05
(57)【要約】
本発明は、プリント配線基板、IC基板、電子工学的用途のための半導体装置及びガラス装置の製造における銅及び銅合金の電気めっきのための水性酸性めっき浴に関する。本発明のめっき浴は、銅イオン、少なくとも1つの酸及びウレイレンポリマーを含有する。上記めっき浴は、銅による凹構造の埋め込み及びピラーバンプ構造のビルドアップに特に有用である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅イオン源、酸、並びに式(I)、式(II)及び/又は式(III)のポリマーから選択される少なくとも1つのウレイレンポリマーを含む水性酸性銅電気めっき浴。
【化1】
(式中、nは整数、好ましくは1~40、より好ましくは1~10を表し、
Aは下記式(IV)、式(V)、式(VI)及び/又は式(VII)のジアミノ化合物に由来する構成単位を表し、
【化2】
(式中、R1、R2、R5、R6は1~10個の炭素原子を有する置換若しくは非置換の炭化水素残基、又は-CH2CH2(OCH2CH2)a-OHからなる群より独立して選択され、ここでaは0~4の整数であり、
R3、R4は、pが2~12の整数である(CH2)p基、又はmが1~40の整数である-[CH2CH2O]m-CH2CH2-基より独立して選択され、
Zは同じであっても異なっていてもよく、O又はSを表し、
x及びyは整数であり、同じであっても異なっていてもよく、
R7及びR8はpが1~12の整数である(CH2)p基、又はmが1~40の整数である-[CH2CH2O]m-CH2CH2-基より独立して選択され、式VIIにおいて、R7、R8はピリジン環に含まれる窒素原子に対してメタ位又はパラ位で前記ピリジル部分に結合していてよい)
単一の構成単位Aは同じであっても異なっていてもよく、
B及びB'は下記式(VIII)、式(IX)、式(X)又は式(XI)の化合物に由来する構成単位を表し、
【化3】
(式中、R5、R6は1~10個の炭素原子を有する置換若しくは非置換の炭化水素残基、及び-CH2CH2(OCH2CH2)a-OHからなる群より独立して選択され、ここでaは0~4の整数であり、
R3は、pが2~12の整数である(CH2)p基、又はmが1~40の整数である-[CH2CH2O]m-CH2CH2-基より選択され、
ZはO又はSを表し、
xは整数であり、
R7は、pが1~12の整数である(CH2)p基、又はmが1~40の整数である-[CH2CH2O]m-CH2CH2-基より選択され、式XIにおいて、R7はピリジン環に含まれる窒素原子に対してメタ位又はパラ位で前記ピリジル部分に結合していてよく、
R9は水素、直鎖状若しくは分岐状の1~10個の炭素原子を有する置換若しくは非置換の炭化水素残基、-CH2CH2(OCH2CH2)a-OR10及び-CH2CH2(OCH2CH2)a-(OCH2CHCH3)b-OR10からなる群より選択され、ここでaは0~10の整数、bは0~10の整数であり、R10は直鎖状若しくは分岐状の1~10個の炭素原子を有する置換若しくは非置換の炭化水素残基の群より選択されるか、
又はR9若しくはR10は置換されていても非置換であってもよい、1つ又は複数のヘテロ原子を含んでもよいアリール残基若しくはアルカリル残基からなる群より選択される)
B及びB'は異なっており、
Lは
【化4】
からなる群より選択される二価の構成単位であり、
(式中、R11はアルキレン-(CH2)c-及びキシレニルからなる群より選択され、ここでcは2~10、好ましくは2~6の整数であり、
それぞれのR12は水素、アルキル、アリール、アルカリルからなる群より互いに独立して選択され、
Mは0~3の整数であり、φは1~100の整数であり、Kは1~3の整数である)
前記単一の構成単位Lは同じであっても異なっていてもよい)
【請求項2】
式(IV)におけるR1、R2、R5及びR6がメチル、エチル、ヒドロキシエチル、及び-CH2CH2(OCH2CH2)a-OHからなる群より独立して選択され、ここでaが1~4の整数である、且つ/又は
式(VIII)におけるR5及びR6がメチル、エチル、ヒドロキシエチル、及び-CH2CH2(OCH2CH2)a-OHからなる群より独立して選択され、ここでaが1~4の整数である、請求項1に記載の水性酸性銅電気めっき浴。
【請求項3】
式(IV)、式(V)、及び/若しくは式(VI)におけるR3及びR4がエチレン、プロピレン、-(CH2)2-O-(CH2)2-、及び-(CH2)2-O-(CH2)2-O-(CH2)2-からなる群より独立して選択される、且つ/又は
式(VIII)、式(IX)、及び/若しくは式(X)におけるR3がエチレン、プロピレン、-(CH2)2-O-(CH2)2-、及び-(CH2)2-O-(CH2)2-O-(CH2)2-からなる群より選択される、請求項1又は2に記載の水性酸性銅電気めっき浴。
【請求項4】
式(VII)におけるR7及びR8がメチレン基、エチレン基、プロピレン基、-(CH2)2-O-(CH2)2-基、若しくは-(CH2)2-O(CH2)2-O-(CH2)2-基からなる群より独立して選択される、且つ/又は
式(XI)におけるR7がメチレン基、エチレン基、プロピレン基、-(CH2)2-O-(CH2)2-基、若しくは-(CH2)2-O(CH2)2-O-(CH2)2-基からなる群より選択される、請求項1から3のいずれか一項に記載の水性酸性銅電気めっき浴。
【請求項5】
式(VIII)、式(IX)、式(X)及び/又は式(XI)におけるR9及び/又はR10がメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、ヒドロキシエチル、フェニル、又はベンジルから独立して選択される、請求項1から4のいずれか一項に記載の水性酸性銅電気めっき浴。
【請求項6】
式(I)、式(II)及び式(III)のウレイレンポリマーが有機的に結合したハロゲンを有さない、請求項1から5のいずれか一項に記載の水性酸性銅電気めっき浴。
【請求項7】
前記水性酸性銅電気めっき浴が意図的に添加された亜鉛イオンを含まない、請求項1から6のいずれか一項に記載の水性酸性銅電気めっき浴。
【請求項8】
式(I)、式(II)及び式(III)のウレイレンポリマーの重量平均分子量Mwが1000~20000Daの範囲内である、請求項1から7のいずれか一項に記載の水性酸性銅電気めっき浴。
【請求項9】
式(I)、式(II)及び/又は式(III)のウレイレンポリマーの濃度が0.001mg/l~200mg/lの範囲内である、請求項1から8のいずれか一項に記載の水性酸性銅電気めっき浴。
【請求項10】
前記水性酸性銅電気めっき浴が更にハロゲン化物イオン源又はハロゲン化物イオンを含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の水性酸性銅電気めっき浴。
【請求項11】
ハロゲン化物イオンの濃度が20mg/l~200mg/lの範囲内である、請求項10に記載の水性酸性銅電気めっき浴。
【請求項12】
前記水性酸性銅電気めっき浴が、更に、有機チオール化合物、有機スルフィド化合物、有機ジスルフィド化合物及び有機ポリスルフィド化合物を含む群より選択される促進剤-漂白剤添加物を含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の水性酸性銅電気めっき浴。
【請求項13】
基板上に銅を析出させる方法であって、
a.基板を用意する工程、及び
b.前記基板を請求項1から12のいずれか一項に記載の水性酸性銅電気めっき浴に接触させる工程、
c.前記基板と少なくとも1つの陽極との間に電流を流し、それにより前記基板上に銅を析出させる工程
をこの順で含む、基板上に銅を析出させる方法。
【請求項14】
前記基板がプリント配線基板、IC基板、半導体ウエハ及びガラス基板を含む群より選択される、請求項13に記載の基板上に銅を析出させる方法。
【請求項15】
銅がトレンチ、ブラインドマイクロビア、シリコン貫通ビア及びガラス貫通ビアを含む群より選択される凹構造中に析出される、請求項13及び14に記載の基板上に銅を析出させる方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銅又は銅合金の電気めっきのためのめっき浴に関する。上記めっき浴は、プリント配線基板、IC基板等の製造、並びに半導体基板及びガラス基板の金属化に適している。
【背景技術】
【0002】
銅の電解析出のための水性酸性めっき浴が、プリント配線基板及びIC基板を製造するために用いられている。そこでは、トレンチ、スルーホール(TH)、ブラインドマイクロビア(BMV)及びピラーバンプのような微細な構造が、銅により埋め込み又はビルドアップされる必要がある。そのような銅の電解析出の別の用途は、凹構造、例えばシリコン貫通ビア(TSV)の埋め込み、及びデュアルダマシンめっき、又は半導体基板内及び半導体基板上の再配線層(RDL)及びピラーバンプの形成である。より要求が厳しくなっている更に別の用途は、ガラス貫通ビア、即ちガラス基板における穴及び関連する凹構造の、電気めっきによる銅又は銅合金での埋め込みである。
【0003】
特許出願EP1069211A2は、銅イオン源、酸、担体添加剤、漂白添加剤及びレベリング添加剤を含有する水性酸性銅めっき浴であって、そのレベリング添加剤が少なくとも1つの末端に有機結合ハロゲン化物原子(例えば共有結合性C-Cl結合)を含むポリ[ビス(2-クロロエチル)エーテル-alt-1,3-ビス[3-(ジメチルアミノ)プロピル]尿素(CAS-No.68555-36-2)であることのできる、水性酸性銅めっき浴を開示している(比較調製例1参照)。
【0004】
それぞれ多量のウレイレンポリマーを含有する亜鉛めっき浴が、WO2011/029781A1及びUS2009/205969A1に開示されている。
【0005】
EP2518187A1は、ルテニウム系レベリング剤を含有する銅めっき浴を教示している。酸性銅めっき浴におけるそのようなレベリング添加剤は、進歩したプリント配線基板、IC基板の製造、並びに半導体基板及びガラス基板の金属化における現在及び将来の要求を満たすためには適さない。電気回路の配置に応じて、プリント配線基板及びIC基板におけるBMVは、銅により等角なだけでなく完全に埋め込まれる必要がある。BMVの埋め込みについての典型的な要求は、例えば、完全に埋め込まれたBMVを得る一方で、隣接する平面基板領域に10~15μm以下の銅を析出させ、同時に埋め込まれたBMVの外面に0~10μm以下のくぼみを作製することである。
【0006】
半導体ウエハの金属化において、TSVの埋め込みでは、銅による完全で隙間のない埋め込みの一方で、隣接する平面領域にビア直径の1/5以下のオーバープレーティングされた銅を作製しなければならない。銅によるガラス貫通ビアの埋め込みについても同様の要求がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】EP1069211A2
【特許文献2】WO2011/029781A1
【特許文献3】US2009/205969A1
【特許文献4】EP2518187A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、特にプリント配線基板及び/又はIC基板の製造の分野における、更に特にTSVの埋め込み、デュアルダマシンめっき、再配線層の析出若しくはピラーバンピング及び/又はガラス貫通ビアの埋め込みのような半導体基板の金属化における、上述した用途の要求を満たす銅又は銅合金の電解析出のための水性酸性銅めっき浴を提供することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的は、銅イオン源、酸、並びに式(I)、式(II)及び/又は式(III)のポリマーから選択される少なくとも1つのウレイレンポリマーを含む水性酸性銅電気めっき浴により解決される。
【0010】
【化1】
【0011】
(式中、nは整数、好ましくは1~40、より好ましくは1~10を表し、
Aは下記式(IV)、式(V)、式(VI)及び/又は式(VII)のジアミノ化合物に由来する構成単位を表し、
【0012】
【化2】
【0013】
(式中、R1、R2、R5、R6は1~10個の炭素原子を有する置換若しくは非置換の炭化水素残基、好ましくはメチル、エチル、ヒドロキシエチル、又は-CH2CH2(OCH2CH2)a-OHからなる群より独立して選択され、ここでaは0~4、好ましくは1~4の整数であり、
R3、R4は、pが2~12の整数である(CH2)p基、好ましくはエチレン基若しくはプロピレン基、又はmが1~40の整数である-[CH2CH2O]m-CH2CH2-基、好ましくは-(CH2)2-O-(CH2)2-基若しくは-(CH2)2-O(CH2)2-O-(CH2)2-基より独立して選択され、
Zは同じであっても異なっていてもよく、O又はSを表し、好ましくはZは同じであり、最も好ましくはZはOであり、
x及びyは整数であり、同じであっても異なっていてもよく、好ましくは1、2及び3から選択される整数であり、より好ましくはx及びyは両方が2であり、
R7及びR8は、pが1~12の整数である(CH2)p基、好ましくはメチレン基、エチレン基若しくはプロピレン基、又はmが1~40の整数である-[CH2CH2O]m-CH2CH2-基、好ましくは-(CH2)2-O-(CH2)2-基若しくは-(CH2)2-O(CH2)2-O-(CH2)2-基より独立して選択され、式VIIにおいて、R7、R8はピリジン環に含まれる窒素原子に対してメタ位又はパラ位で上記ピリジル部分に結合していてよい)
単一の構成単位Aは同じであっても異なっていてもよく、
B及びB'は下記式(VIII)、式(IX)、式(X)又は式(XI)の化合物に由来する構成単位を表し、
【0014】
【化3】
【0015】
(式中、R5、R6は1~10個の炭素原子を有する置換若しくは非置換の炭化水素残基、好ましくはメチル、エチル、ヒドロキシエチル、又は-CH2CH2(OCH2CH2)a-OHからなる群より独立して選択され、ここでaは0~4の整数であり、
R3は、pが2~12の整数である(CH2)p基、好ましくはエチレン基若しくはプロピレン基、又はmが1~40の整数である-[CH2CH2O]m-CH2CH2-基、好ましくは-(CH2)2-O-(CH2)2-基若しくは-(CH2)2-O(CH2)2-O-(CH2)2-基より選択され、
ZはO又はSを表し、好ましくはZはOであり、
xは整数であり、好ましくは1、2及び3から選択される整数であり、より好ましくはxは2であり、
R7は、pが1~12の整数である(CH2)p基、好ましくはメチレン基、エチレン基若しくはプロピレン基、又はmが1~40の整数である-[CH2CH2O]m-CH2CH2-基、好ましくは-(CH2)2-O-(CH2)2-基若しくは-(CH2)2-O(CH2)2-O-(CH2)2-基より選択され、式XIにおいて、R7はピリジン環に含まれる窒素原子に対してメタ位又はパラ位で上記ピリジル部分に結合していてよく、
R9は水素、直鎖状若しくは分岐状の1~10個の炭素原子を有する置換若しくは非置換の炭化水素残基、好ましくはアルキル、より好ましくはメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、ヒドロキシエチル、-CH2CH2(OCH2CH2)a-OR10及び-CH2CH2(OCH2CH2)a-(OCH2CHCH3)b-OR10からなる群より選択され、ここでaは0~10の整数、bは0~10の整数であり、R10は直鎖状若しくは分岐状の1~10個の炭素原子を有する置換若しくは非置換の炭化水素残基、好ましくはメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、ヒドロキシエチルの群より選択されるか、
又はR9及び/若しくはR10は置換されていても非置換であってもよいアリール残基若しくはアルカリル残基、好ましくは置換若しくは非置換のフェニル若しくはベンジルからなる群より選択され、1つ又は複数のヘテロ原子、好ましくはN、S若しくはOを含んでもよい)
単一の構成単位Bは同じであっても異なっていてもよく、
B及びB'は異なっており、
Lは
【0016】
【化4】
【0017】
からなる群より選択される二価の構成単位であり、
(式中、R11はアルキレン-(CH2)c-及びキシレニルからなる群より選択され、ここでcは2~10、好ましくは2~6の整数であり、
それぞれのR12は水素、アルキル、アリール、アルカリルからなる群より互いに独立して選択され、
Mは0~3の整数であり、φは1~100の範囲内の整数であり、Kは1~3の範囲内の整数である)
単一の構成単位Lは同じであっても異なっていてもよい)
【0018】
凹構造、例えばトレンチ、ブラインドマイクロビア(BMV)、シリコン貫通ビア(TSV)及びガラス貫通ビアが、本発明の水性酸性銅めっき浴から析出された銅により埋め込まれうる。銅により埋め込まれた凹構造は、好ましくは隙間がなく、又は少なくともより少ない隙間を含み、許容可能なくぼみ、即ち平面又はほぼ平面である表面を有する。更に、ピラーバンプ構造のビルドアップが可能である。
【0019】
本発明のウレイレンポリマーによれば、均一な反応生成物が得られ、原理上は、疎水性基(例えばヘキシル基又は芳香族基)がまた、ポリマー又はオリゴマーの両端に導入されうる。このことは、実施例に示される銅めっきにおいて、利益、特にBMVのより良好な埋め込み性を得ることが示されている。
【発明を実施するための形態】
【0020】
下記記載において、「ウレイレンポリマー」はまた、「ポリマー」とも表される。
【0021】
式(I)のポリマーは、ポリマー鎖の一端に構成単位Bを有し、式(II)のポリマーは、ポリマー鎖の両端に構成単位Bを有し、式(III)のポリマーは、ポリマー鎖の一端に構成単位Bを、他端に構成単位B'を有し、ここでB及びB'は式(VIII)、式(IX)、式(X)又は式(XI)の化合物から選択され、B及びB'は異なっている。
【0022】
B及びB'の両方が式(VIII)、式(IX)、式(X)又は式(XI)の化合物に由来する構成単位を表すことから、両端にB'を有するポリマーは、両端にBを有するポリマー、即ち式(II)のポリマーと同等である。
【0023】
R1、R2、R5又はR6のうちの1つ又は複数が置換された炭化水素残基である場合、C1~C6アルキル(直鎖状又は分岐状、好ましくは-CH3、-CH2CH3)、アリール(好ましくはフェニル)又はアラルキル(好ましくはベンジル)で置換されることが好ましい。
【0024】
好ましい実施形態では、式(IV)におけるR1、R2、R5及びR6は、メチル、エチル、ヒドロキシエチル、及び-CH2CH2(OCH2CH2)a-OHからなる群より独立して選択され、ここでaは1~4の整数である。
【0025】
好ましい実施形態では、式(VIII)におけるR5及びR6は、メチル、エチル、ヒドロキシエチル、及び-CH2CH2(OCH2CH2)a-OHからなる群より独立して選択され、ここでaは1~4の整数である。
【0026】
好ましい実施形態では、式(IV)、式(V)、及び/又は式(VI)におけるR3及びR4は、エチレン、プロピレン、-(CH2)2-O-(CH2)2-、及び-(CH2)2-O-(CH2)2-O-(CH2)2-からなる群より独立して選択される。
【0027】
好ましい実施形態では、式(VIII)、式(IX)、及び/又は式(X)におけるR3は、エチレン、プロピレン、-(CH2)2-O-(CH2)2-、及び-(CH2)2-O-(CH2)2-O-(CH2)2-からなる群より選択される。
【0028】
好ましい実施形態では、式(VII)におけるR7及びR8は、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、-(CH2)2-O-(CH2)2-基、又は-(CH2)2-O(CH2)2-O-(CH2)2-基からなる群より独立して選択される。
【0029】
好ましい実施形態では、式(XI)におけるR7は、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、-(CH2)2-O-(CH2)2-基、又は-(CH2)2-O(CH2)2-O-(CH2)2-基からなる群より選択される。
【0030】
好ましい実施形態では、式(VIII)、式(IX)、式(X)及び/又は式(XI)におけるR9及び/又はR10は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチルから独立して選択され、ここでR9及び/又はR10は直鎖状であってもよいし、可能であれば、分岐状、ヒドロキシエチル、フェニル、又はベンジルであってもよい。
【0031】
用語「ポリマー」は、本発明に関連して幅広い意味で理解されるべきである。それは、n=1である式(I)、式(II)又は式(III)のいずれの化合物も含む。
【0032】
用語「ポリマー」は、特に、典型的にオリゴマーと表される化合物、例えばnが1~5である式(I)、式(II)又は式(III)の化合物を含む。
【0033】
式(I)、式(II)及び式(III)のウレイレンポリマーは、1つ又は複数の式(IV)、式(V)、式(VI)及び/又は式(VII)のジアミノ化合物を、1つ又は複数の下記式(XIIa)又は式(XIIIa)の化合物と反応させることで得られうる。
【0034】
【化5】
【0035】
ここで、式XIIa又は式XIIIaにおけるLGは、同じであっても異なっていてもよく、置換反応において式(IV)、式(V)、式(VI)若しくは式(VII)の化合物のN原子、又は式(VIII)、式(IX)、式(X)若しくは式(XI)の化合物のN原子により置き換えられうる脱離基である。そのような置換反応において、式(I)、式(II)、及び/又は式(III)のポリマーが形成される。
【0036】
上記ポリマーにおいて、構成単位AとL、又はBとL(又はB'とL)の間の結合は、四級アンモニウム基を介して生じ、これは二価の残基Lを式(IV)、式(V)、式(VIII)又は式(IX)の化合物の三級アミノ基と連結して形成され、又はイミダゾイル部分
【0037】
【化6】
【0038】
を介して生じ、これは二価の残基Lを式(VI)又は式(X)の化合物の三級アミノ基と連結して形成され、又はピリジル部分
【0039】
【化7】
【0040】
を介して生じ、これは二価の残基Lを式(VII)又は式(XI)の化合物のピリジン環における窒素と連結して形成される。
【0041】
上記ポリマーは正電荷を持つウレイレンポリマーであり、対イオンLGが存在する。
【0042】
好ましくは、LGは、ハロゲン又は擬ハロゲンから選択され、好ましくはメシラート、トリフラート、ノナフラート、アルキルスルホナート、例えばメタンスルホナート、アリールスルホナート、トシラート、又はハロゲン化合物、好ましくはCl又はBrから選択される。
【0043】
得られたポリマーの種類は、主に以下のパラメーターにより操作されうる。
【0044】
i)上記ポリマーの構成単位Aの前駆体である式(IV)、式(V)、式(VI)及び/又は式(VII)の化合物の使用した総物質量(nA)の、上記ポリマーの構成単位Lの前駆体である式(XIIa)及び/又は式(XIIIa)の化合物の総物質量(nL)に対するモル比(nA:nL)
【0045】
ii)上記ポリマーの構成単位Aの前駆体である式(IV)、式(V)、式(VI)及び/又は式(VII)の化合物の使用した総物質量(nA)の、上記ポリマーの(端部の)構成単位B又はB'の前駆体である式(VIII)、式(IX)、式(X)又は式(XI)の化合物の総物質量(nB)に対するモル比(nA:nB)
【0046】
iii)式(VIII)、式(IX)、式(X)又は式(XI)の化合物の少なくとも2つを選択する場合、式(IV)、式(V)、式(VI)又は式(VII)の第1の化合物(nB)の、式(IV)、式(V)、式(VI)又は式(VII)の第2の化合物(nB')に対するモル比(nB:nB')、ここで第2の化合物は第1の化合物とは異なる。
【0047】
パラメーターi)は、例えば、上記ポリマーの(平均)鎖長及び(平均)モル質量、又は下記に示すような中間体ポリマーの構造に影響を与える。
【0048】
パラメーターii)は、例えば、ポリマー(I)とポリマー(II)の間の比に影響を与える。nAに対してnBが大きいほど、より多くのポリマー(II)が形成される。
【0049】
パラメーターiii)は、例えば、ポリマー(II)とポリマー(III)の間の比に影響を与える。nBに対して同等のnB'であれば、ポリマー(III)の形成を促進する。
【0050】
上記ポリマーを製造する方法において、式(IV)、式(V)、式(VI)及び/又は式(VII)の化合物の使用した総物質量(nA)の、式(XIIa)及び/又は式(XIIIa)の化合物の総物質量(nL)に対するモル比(nA:nL)は、好ましくは1:2~1:1の範囲内である。
【0051】
上記ポリマーを製造する方法において、式(IV)、式(V)、式(VI)及び/又は式(VII)の化合物の使用した総物質量(nA)の、式(VIII)、式(IX)、式(X)又は式(XI)の化合物の総物質量(nB)に対するモル比(nA:nB)は、好ましくは1:1~3:1の範囲内である。
【0052】
これらのモル比は、好ましくは、非連続的な方法において、例えば式(IV)、式(V)、式(VI)及び/又は式(VII)の化合物(構成単位Aの前駆体)、並びに式(VIII)、式(IX)、式(X)又は式(XI)の化合物(構成単位B、B'の前駆体)が、式(XIIa)及び/又は式(XIIIa)の化合物に添加される(又は実施例に示すように逆に添加される)場合において用いられる。
【0053】
ポリマー(I)、(II)及び(III)を得るためのこれらの方法は、包括的であるものとして理解されない。例えば、第1の工程において、構成単位A及びLから構成される中間体ポリマーが形成され、第2の工程において、そのような中間体ポリマーがB、又はB及びB'と反応させられる連続的な方法が可能である。
【0054】
式(I)のウレイレンポリマーは、1つ又は複数の式(IV)、式(V)、式(VI)及び/又は式(VII)のジアミノ化合物(モル量nA)を、1つ又は複数の式(XIIa)及び/又は式(XIIIa)の化合物(モル量nL)と反応させることで得ることができ、ここで式(IV)、式(V)、式(VI)及び/又は式(VII)の化合物の使用した総物質量(nA)の、式(XIIa)及び/又は式(XIIIa)の化合物の総物質量(nL)に対するモル比(nA:nL)は1:1である。得られる中間体ポリマーは式(XIV)を有し、ここでnは整数、好ましくは1~40、より好ましくは1~10を表す。
【0055】
【化8】
【0056】
式(VIX)のウレイレンポリマーは、更に、式(I)のウレイレンポリマーを得るために式(VIII)、式(IX)、式(X)又は式(XI)の化合物と反応させられる。
【0057】
式(II)のウレイレンポリマーは、1つ又は複数の式(IV)、式(V)、式(VI)及び/又は式(VII)のジアミノ化合物(モル量nA)を、1つ又は複数の式(XIIa)及び/又は式(XIIIa)の化合物(モル量nL)と反応させることで得ることができ、ここで式(IV)、式(V)、式(VI)及び/又は式(VII)の化合物の使用した総物質量(nA)の、式(XIIa)及び/又は式(XIIIa)の化合物の総物質量(nL)に対するモル比(nA:nL)は、少なくとも1:1.1、より好ましくは少なくとも1:1.3、最も好ましくは少なくとも1:1.5である。得られる中間体ポリマーは式(XV)を有し、ここでnは整数、好ましくは1~40、より好ましくは1~10を表す。
【0058】
【化9】
【0059】
式(XV)の中間体ウレイレンポリマーは、式(II)のウレイレンポリマーを得るために式(VIII)、式(IX)、式(X)又は式(XI)の1つの化合物と更に反応させられるか、或いは式(III)のウレイレンポリマーを得るために式(VIII)、式(IX)、式(X)又は式(XI)の2つの異なる化合物と更に反応させられる。
【0060】
式(I)、式(II)及び式(III)のウレイレンポリマーは、好ましくは、重量平均分子量Mwが1000~20000Da、より好ましくは2000~15000Daである。
【0061】
上記ウレイレンポリマーを形成するための反応は、好ましくは、水性若しくは水性-アルコール性の溶液において、又は溶媒を含まない物質において、好ましくは20~100℃の温度で行われうる。
【0062】
式(I)、式(II)及び式(III)のウレイレンポリマーは、好ましくは、いかなる有機的に結合したハロゲン(例えば共有結合性C-Cl部分)を有さない。
【0063】
式(I)、式(II)及び/又は式(III)の少なくとも1つのウレイレンポリマーの上記水性酸性銅めっき浴における濃度は、好ましくは、0.001mg/l~200mg/l、より好ましくは0.005mg/l~100mg/l、最も好ましくは0.01mg/l~50mg/lの範囲内である。
【0064】
用語、酸性とは、7未満のpH値を意味する。上記水性酸性銅めっき浴は、好ましくは、2以下、より好ましくは1以下のpH値を有する。
【0065】
上記水性酸性銅めっき浴は、更に、硫酸銅及びアルキルスルホン酸銅、例えばメタンスルホン酸銅を含む群より好ましくは選択される少なくとも1つの銅イオン源を含む。上記水性酸性銅めっき浴における銅イオン濃度は、好ましくは、4g/l~90g/lの範囲内である。
【0066】
上記水性酸性銅めっき浴は、更に、硫酸、ホウフッ化水素酸(fluoro boric acid)、リン酸及びメタンスルホン酸を含む群より好ましくは選択される少なくとも1つの酸供給源を含み、好ましくは、10g/l~400g/l、より好ましくは20g/l~300g/lの濃度で添加される。
【0067】
上記水性酸性銅めっき浴は、好ましくは、更に、有機チオール化合物、有機スルフィド化合物、有機ジスルフィド化合物及び有機ポリスルフィド化合物からなる群より選択される少なくとも1つの促進剤-漂白剤添加物を含む。好ましい促進剤-漂白剤添加物は、3-(ベンゾチアゾリル-2-チオ)-プロピルスルホン酸、3-メルカプトプロパン-1-スルホン酸、エチレンジチオジ-プロピルスルホン酸、ビス-(p-スルホフェニル)-ジスルフィド、ビス-(ω-スルホブチル)-ジスルフィド、ビス-(ω-スルホヒドロキシプロピル)-ジスルフィド、ビス-(ω-スルホプロピル)-ジスルフィド、ビス-(ω-スルホプロピル)-スルフィド、メチル-(ω-スルホプロピル)-ジスルフィド、メチル-(ω-スルホプロピル)-トリスルフィド、O-エチル-ジチオ炭酸-S-(ω-スルホプロピル)-エステル、チオグリコール酸、チオリン酸-O-エチル-ビス-(ω-スルホプロピル)-エステル、チオリン酸-トリス-(ω-スルホプロピル)-エステル及びそれらの対応する塩を含む群より選択される。上記水性酸性銅浴に任意に存在する全ての促進剤-漂白剤添加物の濃度は、好ましくは、0.01mg/l~100mg/l、より好ましくは0.05mg/l~10mg/lの範囲内である。
【0068】
上記水性酸性銅めっき浴は、任意に、更に、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ステアリン酸ポリグリコールエステル、アルコキシル化ナフトール、オレイン酸ポリグリコールエステル、ステアリルアルコールポリグリコールエーテル、ノニルフェノールポリグリコールエーテル、オクタノールポリアルキレングリコールエーテル、オクタンジオール-ビス-(ポリアルキレングリコールエーテル)、ポリ(エチレングリコール-ran-プロピレングリコール)、ポリ(エチレングリコール)-block-ポリ(プロピレングリコール)-block-ポリ(エチレングリコール)、及びポリ(プロピレングリコール)-block-ポリ(エチレングリコール)-block-ポリ(プロピレングリコール)を含む群より好ましくは選択される少なくとも1つの担体-抑制剤添加物を含む。より好ましくは、上記任意の担体-抑制剤添加物は、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ(エチレングリコール-ran-プロピレングリコール)、ポリ(エチレングリコール)-block-ポリ(プロピレングリコール)-block-ポリ(エチレングリコール)、及びポリ(プロピレングリコール)-block-ポリ(エチレングリコール)-block-ポリ(プロピレングリコール)含む群より選択される。上記任意の担体-抑制剤添加物の濃度は、好ましくは、0.005g/l~20g/l、より好ましくは0.01g/l~5g/lの範囲内である。
【0069】
任意に、上記水性酸性銅めっき浴は、式(I)、式(II)又は式(III)のウレイレンポリマーに加えて、窒素含有有機化合物、例えば、ポリエチレンイミン、アルコキシル化ポリエチレンイミン、アルコキシル化ラクタム及びそのポリマー、ジエチレントリアミン及びヘキサメチレンテトラミン、有機染料、例えばJanus Green B、Bismarck Brown Y及びAcid Violet 7、硫黄含有アミノ酸、例えばシステイン、フェナジニウム塩及びその誘導体を含む群より選択される少なくとも1つの更なるレベリング添加剤(leveler additive)を含む。好ましい更なるレベリング添加剤は窒素含有有機化合物から選択される。上記任意のレベリング添加剤は、上記水性酸性銅めっき浴に0.1mg/l~100mg/lの量で添加される。
【0070】
上記水性酸性銅めっき浴は、任意に、更に、少なくとも1つのハロゲン化物イオン源又はハロゲン化物イオン、好ましくは塩化物イオンを、好ましくは、20mg/l~200mg/l、より好ましくは30mg/l~60mg/lの量で含む。適切なハロゲン化物イオン源は、例えば、アルカリハロゲン化物、例えば塩化ナトリウムである。
【0071】
上記任意のハロゲン化物イオンは、対イオンがハロゲン化物イオンである場合には式(I)、式(II)又は式(III)のウレイレンポリマーにより単独で又は部分的に供給されてよい。
【0072】
別の態様において、本発明は、基板上に銅を析出させる方法であって、
a.基板を用意する工程、及び
b.上記基板を上述したような水性酸性銅電気めっき浴に接触させる工程、
c.上記基板と少なくとも1つの陽極との間に電流を流し、それにより上記基板上に銅を析出させる工程
をこの順で含む、基板上に銅を析出させる方法を提供する。
【0073】
上記基板は、プリント配線基板、IC基板、半導体ウエハ及びガラス基板を含む群より選択されうる。
【0074】
銅は、トレンチ、ブラインドマイクロビア、シリコン貫通ビア及びガラス貫通ビアを含む群より選択される凹構造中に析出されうる。
【0075】
上記水性酸性銅めっき浴は、好ましくは、上記基板及び少なくとも1つの陽極に電流を流すことにより、15℃~50℃の範囲の温度、より好ましくは25℃~40℃の範囲の温度で本発明の方法において操作される。好ましくは、0.0005A/dm2~12A/dm2、より好ましくは0.001A/dm2~7A/dm2の範囲の陰極電流密度が付与される。
【0076】
本発明のめっき浴は、DCめっき及び逆パルスめっきに用いられうる。不活性陽極及び可溶性陽極の両方が、本発明のめっき浴から銅を析出させる際に利用されうる。
【0077】
本発明の1つの実施形態では、レドックス対、例えばFe2+/3+イオンが上記めっき浴に添加される。そのようなレドックス対は、銅析出のために不活性陽極と組み合わせて逆パルスめっきが用いられる場合に特に有用である。逆パルスめっき及び不活性陽極と組み合わせてレドックス対を用いる適切な銅めっきプロセスは、例えばUS5,976,341及びUS6,099,711に開示されている。
【0078】
上記水性酸性銅めっき浴は、従来の垂直又は水平のめっき装置のいずれかにおいて用いられうる。
【0079】
本発明の水性酸性銅めっき浴は、本質的に亜鉛イオンを含まない。「本質的に含まない」とは、本明細書において「意図的には添加されていない」と定義される。「意図的には添加されていない」とは、上記浴は亜鉛イオンを含まないが、汚染物質として加えられた非常に少量の亜鉛イオンは含みうることを意味する。従って、本発明の水性酸性銅めっき浴は、2ppm未満の亜鉛イオン、好ましくは0.5ppm未満の亜鉛イオンを含むか又は亜鉛イオンを含まない。
【0080】
上記水性酸性銅めっき浴からの電気めっきにより得られた金属層は、銅層又は銅合金層である。従って、上記浴が亜鉛イオンを含まないことから、亜鉛層及び亜鉛合金層は上記水性酸性銅めっき浴からは得られない。
【0081】
以下の限定されない実施例を参照することにより、ここに本発明を説明する。
【実施例
【0082】
RI検出器及びAgilent 1260 pumpを備えたSECurity GPC System PSSからのGPC装置、Tosoh TSK 2500+3000カラム、並びにMw=400~40000g/molのプルラン及びPEGスタンダードを用いて、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によりウレイレンポリマーの重量平均分子量Mwを測定した。使用した溶媒は、0.5%酢酸及び0.1MのNa2SO4を含むMillipore水であった。
【0083】
1. ウレイレンポリマーの調製
1.1 製造例1
23.04g(100mmol)の1,3-ビス(3-(ジメチルアミノプロピル)尿素及び4.84g(33.33mmol)の1-(3-(ジメチルアミノプロピル)尿素)を61mlの蒸留水に溶解し、80℃まで10分間加熱した。透明溶液を得た後、32.2g(100mmol)のトリエチレングリコールジメシラートを1時間かけて滴下し、混合物を10時間、80℃で撹拌した。次いで、反応混合物を25℃まで冷却した。
【0084】
1.2 製造例2
5.61g(33.33mmol)の1-(3-(1H-イミダゾール-1-イル)プロピル尿素及び27.63g(100mmol)の1,3-ビス(3-(1H-イミダゾール-1-イル)プロピル尿素を67mlの蒸留水に溶解し、80℃まで10分間加熱した。透明溶液を得た後、32.2g(100mmol)のトリエチレングリコールジメシラートを43分かけて滴下し、混合物を更に93時間、80℃で撹拌した。次いで、反応混合物を撹拌し、25℃まで冷却した。
【0085】
127.8gのオレンジ色ポリマー水溶液(48.3質量%)を得た(Mw=1150Da)。
【0086】
1.3 製造例3
2.52g(16.67mmol)の1-(ピリジン-3-イルメチル)尿素及び12.11g(50mmol)の1,3-ビス(ピリジン-3-イルメチル)尿素を29mLの蒸留水に溶解し、80℃まで10分間加熱した。透明溶液を得た後、16.12g(50mmol)のトリエチレングリコールジメシラートを7分かけて滴下し、混合物を更に20時間、80℃で撹拌した。次いで、反応混合物を25℃まで冷却した。
【0087】
60gのオレンジ色ポリマー水溶液(51.8質量%)を得た(Mw=1580Da)。
【0088】
1.4 製造例4
13.79g(59.9mmol)の1,3-ビス(3-(ジメチルアミノプロピル)尿素及び8.70g(59.9mmol)の1-(3-(ジメチルアミノプロピル)尿素を47.3mLの蒸留水に溶解し、80℃まで10分間加熱した。透明溶液を得た後、29g(90mmol)のトリエチレングリコールジメシラートを1時間かけて滴下し、混合物を10時間、80℃で撹拌した。次いで、反応混合物を25℃まで冷却した。
【0089】
100gのオレンジ色ポリマー水溶液(51.3質量%)を得た(Mw=1130Da)。
【0090】
1.5 製造例5
7.51g(32.6mmol)の1,3-ビス(3-(ジメチルアミノプロピル)尿素及び2.49g(10.87mmol)の1-(3-(ジメチルアミノプロピル)-3-ヘキシル尿素を20mLの蒸留水に溶解し、80℃まで10分間加熱した。透明溶液を得た後、10.5g(32.6mmol)のトリエチレングリコールジメシラートを32分かけて滴下し、混合物を5時間、80℃で撹拌した。次いで、反応混合物を25℃まで冷却した。
【0091】
40gのオレンジ色ポリマー水溶液(49.9質量%)を得た(Mw=1510Da)。
【0092】
1.6 製造例6
7.55g(32.8mmol)の1,3-ビス(3-(ジメチルアミノプロピル)尿素及び2.42g(10.87mmol)の1-(3-(ジメチルアミノプロピル)-3-フェニル尿素を20mLの蒸留水に溶解し、80℃まで10分間加熱した。透明溶液を得た後、10.6g(32.8mmol)のトリエチレングリコールジメシラートを12分かけて滴下し、混合物を5時間、80℃で撹拌した。次いで、反応混合物を25℃まで冷却した。
【0093】
40gのオレンジ色ポリマー水溶液(49.3質量%)を得た(Mw=1390Da)。
【0094】
1.7 製造例7
5.06g(21.95mmol)の1,3-ビス(3-(ジメチルアミノプロピル)尿素及び4.86g(21.95mmol)の1-(3-(ジメチルアミノプロピル)-3-フェニル尿素を20mLの蒸留水に溶解し、80℃まで10分間加熱した。透明溶液を得た後、10.62g(32.9mmol)のトリエチレングリコールジメシラートを9分かけて滴下し、混合物を5時間、80℃で撹拌した。次いで、反応混合物を25℃まで冷却した。
【0095】
40gのオレンジ色ポリマー水溶液(47.9質量%)を得た(Mw=1250Da)。
【0096】
2. 適用例
装置:2.5l容量のMini Sparger Cell、ポンプで浴を撹拌、空気注入なし、酸化イリジウムでコーティングされたチタン陽極。
【0097】
60g/lのCu2+イオン(硫酸銅として添加)、50g/lの硫酸、45mg/lのCl-イオン、300mg/lの担体-抑制剤添加物としてポリエチレングリコール、及び1.0ml/lの有機漂白剤添加物含有溶液を含む銅めっき浴貯蔵溶液を用いた。この貯蔵溶液にウレイレンポリマーを添加した(適用例1~6)。
【0098】
適用例1~6の全体をとおして1.9A/dm2の電流密度を付与した。基板の上面にめっきされた銅の厚みは、平均で15μmであった。めっき時間は45分であった。試験板は、銅の電気めっき前にきれいにして洗い流した。
【0099】
適用例1~6の全体をとおして使用した試験板は、BMV(深さx直径:70x75μm、及び70x100)を有していた。試験板の大きさは8.6x9.6cmであった。
【0100】
比較例
Mirapol WT(登録商標)(Solvay社)は、N,N'-ビス[3-(ジメチルアミノ)プロピル]-尿素及び1,1'-オキシビス[2-クロロエタン]に由来するポリマーである。
【0101】
本発明の例は、本発明の例がより深いくぼみをもたらすという点でMirapol WT(登録商標)よりもかなり良好な結果を示す。
【0102】
結果を以下の表に示す。
【0103】
【表1】
【0104】
【表2】
【国際調査報告】