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特表2023-537483カテーテルベースのマルチモーダル画像における潜在的な偽陽性及び盲点の位置を特定するためのシステム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-01
(54)【発明の名称】カテーテルベースのマルチモーダル画像における潜在的な偽陽性及び盲点の位置を特定するためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/045 20060101AFI20230825BHJP
   A61B 1/00 20060101ALI20230825BHJP
【FI】
A61B1/045 618
A61B1/00 526
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023507610
(86)(22)【出願日】2021-08-05
(85)【翻訳文提出日】2023-03-30
(86)【国際出願番号】 US2021044701
(87)【国際公開番号】W WO2022031945
(87)【国際公開日】2022-02-10
(31)【優先権主張番号】63/062,226
(32)【優先日】2020-08-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】596130705
【氏名又は名称】キヤノン ユーエスエイ,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】CANON U.S.A.,INC
(74)【代理人】
【識別番号】100090273
【弁理士】
【氏名又は名称】國分 孝悦
(72)【発明者】
【氏名】國尾 美絵
【テーマコード(参考)】
4C161
【Fターム(参考)】
4C161AA22
4C161BB08
4C161CC06
4C161MM09
4C161NN05
4C161WW02
4C161WW04
4C161WW10
4C161WW13
4C161WW14
(57)【要約】
イメージングカテーテルによって取得されたマルチモダリティ画像内の盲点位置を検出するために、画像データを処理するように構成されたシステム、方法及びコンピュータ-可読媒体。本方法は、以下を含む:血管のマルチモダリティ画像を取得するステップであって、マルチモダリティ画像は、カテーテルを通して伝送された2つ以上の波長の光を用いて血管の内壁をスキャンすることによって同時に収集されコレジストレーションされた第1の画像データ及び第2の画像データを含む、取得するステップ;第1の画像データを分析して、血管の特徴的特性を特定するステップ;血管の特徴的特性に基づいて、マルチモダリティ画像の第2の画像データの潜在的盲点位置を検出するステップ;及び、第1の画像データに関して第2の画像データの潜在的盲点位置を示すマーカとともに、マルチモダリティ画像を表示装置に表示するステップ。
【選択図】図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
管腔サンプルのマルチモダリティ画像においてデータの潜在的盲点を検出するコンピュータ実施方法であって、
管腔サンプルのマルチモダリティ画像を取得するステップであって、前記マルチモダリティ画像は、マルチモダリティイメージングカテーテルを通して伝送された2つ以上の波長の光を用いて前記管腔サンプルの内壁をスキャンすることによって同時に収集されコレジストレーションされた第1の画像データ及び第2の画像データを含む、取得するステップと、
前記第1の画像データを分析して、前記管腔サンプルの特徴的特性を特定するステップと、
前記管腔サンプルの前記特徴的特性に基づいて、前記マルチモダリティ画像における前記第2の画像データの潜在的盲点の位置を検出するステップと、
表示装置上で、前記マルチモダリティ画像を、前記第1の画像データに関して前記第2の画像データの前記潜在的盲点の位置を示すマーカとともに、複数の画像ビューのうちの1つ以上に表示するステップと、
を含む方法。
【請求項2】
前記マルチモダリティ画像を表示するステップは、前記第1の画像データ及び前記第2の画像データを第1のビューに表示し、前記第1の画像データを前記第2の画像データとともに第2のビューに表示するステップ、を含み、
前記第1のビューと前記第2のビューの両方に、前記第2の画像データの前記潜在的盲点の位置を示すマーカが示される、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記潜在的盲点の位置は、潜在的偽陽性の第2の画像データの位置、及び/又は、潜在的偽陰性の第2の画像データの位置を含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記管腔サンプルは血管を含み、
前記第1の画像データは、前記血管の光干渉断層撮影(OCT)画像データを含み、前記第2の画像データは、前記血管の蛍光画像データを含み、
前記第1の画像データを分析する前記ステップは、前記OCT画像データを分析して、前記血管の前記特徴的特性を特定するステップ、を含み、
潜在的盲点の位置を検出するステップは、前記血管の前記特徴的特性に基づいて前記蛍光画像データを処理して、前記血管の前記マルチモダリティ画像における潜在的偽陽性の位置、及び/又は、潜在的偽陰性の位置の蛍光画像データを検出するステップ、を含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記OCT画像データを分析して、前記血管の特徴的特性を検出するステップは、プラークタイプと、外弾性板と、側枝と、最小直径と、前記血管内の残留血液量とのうちの1つ以上を検出するステップ、を含み、
前記第2のデータの潜在的盲点の位置を検出するステップは、前記蛍光画像データを分析して、前記プラークタイプと、前記外弾性板と、前記側枝と、前記最小直径と、前記血管内の前記残留血液量とのうちの前記1つ以上に対応する前記潜在的偽陽性の位置、及び/又は、前記潜在的偽陰性の位置の蛍光データを検出するステップ、を含む、
請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記第2の画像データの前記潜在的盲点の位置を示す前記マーカとともに前記マルチモダリティ画像を表示するステップは、前記表示装置上で、前記第1のビュー及び前記第2のビューにおいて、前記OCT画像データに対応するように、前記潜在的偽陽性の位置、及び/又は、前記潜在的偽陰性の位置の蛍光データを示す前記マーカとともに、前記OCT画像データ及び前記蛍光画像データを表示するステップ、を含む、
請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記表示装置上で前記OCT画像データを表示することは、前記OCT画像データを断層像に表示することを含み、前記蛍光画像データを表示することは、前記潜在的偽陽性の位置、及び/又は、前記潜在的偽陰性の位置の蛍光データを、前記断層像の縁の周りに配置された円弧又はリングとして表示することを含む、
請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記表示装置上で前記OCT画像データを表示することは、前記OCT画像データを縦断像に表示することを含み、前記蛍光画像データを表示することは、前記潜在的偽陽性の位置、及び/又は、前記潜在的偽陰性の位置の蛍光データを、前記OCTデータの前記縦断像に実質的に平行な縦断像に、又は前記OCTデータの前記縦断像と重ね合わされた縦断像に表示するステップを含む、
請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記表示装置上で前記OCT画像データを表示することは、前記OCT画像データを縦断像に表示することを含み、前記蛍光画像データを表示することは、前記潜在的偽陽性の位置、及び/又は、前記潜在的偽陰性の位置の蛍光データを、前記OCTデータの前記縦断像に重ね合わされるか又は前記OCTデータの前記縦断像に実質的に平行な2値ヒストグラムとして表示することを含み、
前記2値ヒストグラムを表示することは、前記潜在的偽陽性の位置、及び/又は、前記偽陰性の位置の蛍光画像データの各々について異なる色又は異なるパターンを用いて、2値マーカを表示することを含む、
請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記管腔サンプルは血管を含み、
前記第1の画像データは、前記血管の光干渉断層撮影(OCT)画像データを含み、前記第2の画像データは、前記血管の蛍光画像データを含み、
前記方法は、
前記OCT画像データから前記血管の管腔エッジを検出するステップと、
前記カテーテルが前記管腔エッジから最小距離以内に位置するかどうかを決定するステップと、
を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記カテーテルが前記管腔エッジの前記最小距離以内に位置すると決定した場合、前記潜在的盲点の位置を示すものとして前記蛍光画像データを保存及び/又は表示するステップ、
請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記管腔サンプルは血管を含み、
前記第1の画像データは、前記血管の光干渉断層撮影(OCT)画像データを含み、前記第2の画像データは、前記血管の蛍光画像データを含み、
前記方法は、
前記蛍光画像データを分析して、前記血管がその少なくとも特定領域に石灰化プラークを含むかどうかを決定するステップと、
前記血管の前記少なくとも特定領域が石灰化プラークを含むと決定された場合、前記血管の前記少なくとも特定領域を前記潜在的盲点の位置として保存及び/又は表示するステップと、
を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
コンピュータ実行可能命令を格納した非一時的なコンピュータ可読記憶媒体であって、前記コンピュータ実行可能命令は、1つ以上のプロセッサによって実行されたときに、前記1つ以上のプロセッサに請求項1に記載の方法を実行させる、非一時的なコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項14】
血管のマルチモダリティ画像内の盲点を検出するシステムであって、前記システムは、
実行可能命令を格納したメモリと、
前記メモリに格納された前記実行可能命令を実行するように構成されたプロセッサと、
を備え、
前記プロセッサは、
血管のマルチモダリティ画像を取得することであって、前記マルチモダリティ画像は、マルチモダリティイメージングカテーテルを通して伝送された2つ以上の波長の光を用いて前記血管の内壁をスキャンすることによって同時に収集されコレジストレーションされた第1の画像データ及び第2の画像データを含む、取得することと、
前記第1の画像データを分析して、前記血管の特徴的特性を特定することと、
前記血管の前記特徴的特性に基づいて、前記マルチモダリティ画像の前記第2の画像データの潜在的盲点位置を検出することと、
前記第1の画像データに関して前記第2の画像データの前記潜在的盲点位置を示すマーカとともに、前記マルチモダリティ画像を表示装置に表示することと、
を実行するように構成され、
前記プロセッサは、前記表示装置に対して、前記第2の画像データによって囲まれた前記第1の画像データを第1のビューに出力し、前記第2の画像データと並べた前記第1の画像データを第2のビューに出力することによって、前記マルチモダリティ画像を表示し、
前記プロセッサは、前記潜在的盲点位置が前記第1のビュー及び前記第2のビューにあることを示す前記マーカを、同じ色又はパターンで表示する、
システム。
【請求項15】
前記潜在的盲点位置は、潜在的偽陽性の第2の画像データの位置、及び/又は、潜在的偽陰性の第2の画像データの位置を含み、
前記プロセッサは、
ユーザから入力された、前記複数のイメージングモダリティのうちの少なくとも1つの前記表示された画像において前記1つ以上の特徴的特性に対応する潜在的偽陽性及び/又は前記潜在的偽陰性の前記位置の第2の画像データを表示する要求を受け取る
ように更に構成される、
請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
前記プロセッサは、
体腔の壁に同時に照射される少なくとも2つの異なる波長を用いて、前記体腔の領域をスキャンして、光干渉断層撮影(OCT)画像データ及び蛍光画像データを生成するイメージングプローブの回転及びプルバック、及び、
複数のイメージングモダリティの各々の画像としての、前記表示装置上での前記OCT画像データの表示及び前記蛍光画像データの表示、
を制御するように更に構成される、請求項14に記載のシステム。
【請求項17】
前記盲点位置は、潜在的偽陽性の蛍光画像データの位置、及び/又は、潜在的偽陰性の蛍光画像データの位置を含み、
プロセッサは、
前記OCT画像データに基づいて、前記体腔の前記1つ以上の特徴的特性を検出し、
前記体腔の前記1つ以上の特徴的特性に基づいて、前記潜在的偽陽性の位置、及び/又は、前記潜在的偽陰性の位置の蛍光画像データを検出する
ように更に構成される、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記プロセッサは、
前記OCT画像データを断層像として表示し、前記蛍光画像データを、前記断層像の縁の周りに配置された円弧又はリングとして表示することによって、前記OCT画像データ及び前記蛍光画像データを前記表示装置に表示するか、又は、
前記OCT画像データを、プルバック距離及び前記イメージングプローブのスキャン角度に応じた縦断像として表示し、前記蛍光画像データを、前記OCTデータの前記縦断像に重ね合わされるか又は前記縦断像に平行な2値ヒストグラムとして表示することによって、前記OCT画像データ及び前記蛍光画像データを前記表示装置に表示する、
ように更に構成される、請求項16に記載のシステム。
【請求項19】
前記プロセッサは、
前記OCT画像データから管腔エッジを検出し、
前記管腔エッジが前記イメージングプローブから特定距離以内にあるかどうかを決定する
ように更に構成される、請求項16に記載のシステム。
【請求項20】
前記管腔エッジが前記特定距離以内にある場合、前記プロセッサは、前記管腔エッジの位置を潜在的偽陽性の位置の蛍光データとしてマークすることによって、前記表示された画像を更新する、
請求項19に記載のシステム。
【請求項21】
前記プロセッサは、
前記蛍光画像データを分析して、前記体腔がその少なくとも特定領域に石灰化プラークを含むかどうかを決定し、
体腔の前記少なくとも特定領域が石灰化プラークを含む場合、前記プロセッサは、前記体腔の前記少なくとも特定領域を潜在的偽陰性の位置の蛍光画像データとしてマークすることによって、前記表示された画像を更新する
ように更に構成される、請求項16に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2020年8月6日に出願された米国仮出願第63/062226号に対する優先権を主張する。上記仮出願の開示は、あらゆる目的でその全体が参照により本明細書に援用される。優先権の利益は、米国特許法第119条(e)の下に主張される。
【0002】
本開示は、画像処理に関する。より具体的には、本開示は、マルチモダリティイメージングカテーテルによって解剖学的管腔から取得された医用画像のデータ処理と、当該画像内の盲点領域のアルゴリズム検出とを実施するように構成された方法、システム及びコンピュータ可読媒体を対象とする。
【背景技術】
【0003】
解剖学的管腔から画像データを取得するように構成されたイメージングカテーテルはよく知られている。光音響血管内超音波検査(IVUS)や光干渉断層撮影(OCT)等のイメージングシステムでは、カテーテルの近位端に結合されたモータが、カテーテルの遠位端に位置するイメージングプローブを、既知の速度で回転及び並進させる。これにより、カテーテルは、患者の血管内壁を光で周方向及び軸方向にスキャンすることによって、応答信号を生成することができる。応答信号は、時間に応じて光検出器によって収集される。モータがイメージングプローブを血管壁に関して回転及び並進させる速度は、先験的に既知であり、かつ/又は、手技中に正確にトラッキングされる。プロセッサは、検出器によって収集されたデータを受信し、モータがイメージングプローブを回転及び並進させる速度に基づいて、データが収集された位置を計算し、血管壁の当該位置をデータと関連付けて、患者の血管系の画像を生成する。次にプロセッサは、血管壁の位置と構造品質の関数としてデータを示す画像を表示する。例えば、米国特許第7292715号(あらゆる目的で参照により本明細書に援用される)を参照されたい。
【0004】
OCTは高解像度のイメージングモダリティであり、後方散乱光を用いて、組織微細構造の2次元(2D)画像と3次元(3D)画像を原位置で(in situ)かつリアルタイムに生成する。血管内OCTは、冠動脈疾患の調査、診断及び管理のために、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)に広く使用されている。例えば、米国特許第10109058号(あらゆる目的で参照により本明細書に援用される)を参照されたい。更に、最近では、脳動脈瘤の診断及び評価等、頭蓋内病変やアテローム閉塞症の評価のためのイメージングモダリティとして、OCTが提案されている。例えば、Gounis他の“Intravascular OCT for Neurointervention”(アメリカ心臓協会(AHA)により発行、Stroke、Volume 50、Issue 1、2019年1月;218~223頁)を参照されたい。
【0005】
OCTは、脆弱なプラークに関連する形態学的特徴の可視化において、かつてないレベルの形態学的詳細を提供するが、OCTには依然として限界がある(OCTは、壊死性コアや、プラークの進行及び破綻に関連する化学物質/分子を特定することができない)。例えば、血管組織やそこに含まれる流体(血管に含まれる血液等)は散乱性が高いので、OCTでは、撮像対象組織の重要な健康関連パラメータを特定することができない。OCTの機能を補完するために、2次モダリティとして蛍光を追加して、OCTと同時に画像を取得しコレジストレーションすることが提案されている。蛍光が提案される理由は、生体組織には内因性のフルオロフォアが含まれ、これが(特定の波長の光で照射されると)自然に蛍光を発する(すなわち光を吸収して再放出する)からである。例えば、蛍光により、壊死性コアに固有の分子が検出され、プラークタイプに近赤外自家蛍光(NIRAF)の強度が関連付けられる。したがって、OCTイメージングと蛍光イメージングモダリティ(近赤外自家蛍光(NIRAF)や近赤外蛍光(NIRF)等)を同時に使用することにより、in situかつリアルタイムでの組織微細構造の医用イメージングと診断結果の改善の可能性が示されている。例えば、Wang他の“Ex vivo catheter-based imaging of coronary atherosclerosis using multimodality OCT and NIRAF excited at 633 nm”(Biomedical Optics Express 6(4)、1363-1375(2015));Ughi他の“Dual modality intravascular optical coherence tomography (OCT) and near-infrared fluorescence (NIRF) imaging:a fully automated algorithm for the distance-calibration of NIRF signal intensity for quantitative molecular imaging”(Int.J.Cardiovascular.Imagine 31、259-268(2014));並びに、特許関連刊行物(US2016/0228097、US2017/0209049、US2019/0099079、米国特許第9557154号等)を参照されたい。
【0006】
しかしながら、画像の解釈は一般にユーザに依存するので、データが多すぎるとユーザの混乱や疲労につながり、撮像データが誤って解釈されるおそれがあることが、最近の研究で示されている。例えば、過剰なデータにより、実際は特定の疾患や状態がないのにも関わらず、そのような疾患や状態があることを示す“偽陽性”の結果が出るおそれがある。画像データの誤解釈を回避するために、“偽陽性”と“偽陰性”の結果を検出する技術が提案されている。例えば、米国付与前特許出願公開第2005/0283058号及び第2021/0110534号と、非特許文献(NPL)のTachtsidis他(Tachtsidis)による“False positives and false negatives in functional near-infrared spectroscopy:issues,challenges,and the way forward”(Neurophotonics、2016:3(3))を参照されたい。これらの方法は、一般に自動化されており、場合によっては機械学習技術も使用される。
【0007】
それでもなお、特定の領域が偽陽性や偽陰性のケースを含む可能性が残るような、完全に分類されないケース(すなわち未定義や盲点のケース)をユーザに通知する方法はない。このようなケースでは、アルゴリズムによって画像領域を真の偽陽性又は真の偽陰性に適切に分類することはできないので、ユーザが自身の専門知識に基づいて実際の判断を行う機会を与えることが有利になり得る。更に、臨床指導医や臨床チームの間では、安全かつ正確な画像解釈のために、ユーザに対してどの程度の情報が表示されるべきかという議論がある。したがって、ユーザの混乱や疲労、誤解釈や誤診の可能性につながる過剰な情報を提示することなく、偽陽性、偽陰性の可能性、及び/又は、潜在的な未定義(“盲点”)ケースを適時にユーザに通知できるシステム及び方法が必要である。
【発明の概要】
【0008】
本開示の少なくとも1つの実施形態によれば、物体又はサンプルの画像において組織を特性評価し、可能性のある盲点位置を決定するための1つ以上のシステム、方法及び/又は記憶媒体が提供される。画像は、複数のイメージングモダリティ(同時のOCT及び蛍光等)を有するカテーテルを用いて取得される。盲点位置は、未定義画像データ(偽陽性及び/又は偽陰性の画像データを含み得る)を伴う画像位置である。このように、システム、方法及び/又は記憶媒体は、偽陽性、偽陰性及び/又は盲点の問題の可能性をユーザに通知することができると同時に、そのような偽陽性、偽陰性及び/又は盲点のケースについて実際の(リアルタイムの)正確な判断をユーザが迅速に行うことを可能にすることができる。
【0009】
一実施形態によれば、方法は以下を含む:マルチモダリティカテーテルを用いて、サンプルのOCT-NIRAFデータを同時に取得するステップ;OCT-NIRAFデータのうちのOCTデータを分析して、サンプルの特徴的特性(characteristic feature)を特定するステップ;OCTデータの分析に基づいて、NIRAFデータの潜在的な偽陽性、偽陰性及び/又は盲点の位置を検出するステップ;及び、OCT-NIRAFデータとともに、検出された潜在的な偽陽性、偽陰性及び/又は盲点の位置を表示するステップ。
【0010】
1つ以上の実施形態によれば、マルチモダリティ画像において偽陽性及び/又は盲点の位置を検出するためのシステム(100)及び方法(400)は、以下を含む:複数のイメージングモダリティの各々の画像を表示装置(300)に表示するステップ(S402);複数のイメージングモダリティのうちの少なくとも1つの表示された画像を分析して、表示された画像の1つ以上の特徴的特性を検出するステップ(S408);1つ以上の特徴的特性について、潜在的な偽陽性及び/又は盲点の位置を検出するステップ(S410~S412);及び、1つ以上の特徴的特性について、可能性のある偽陽性及び/又は盲点の位置を示すマーカを用いて、複数のイメージングモダリティの各々の表示された画像を更新するステップ(S414)。一実施形態によれば、複数のイメージングモダリティは、同時に管腔をスキャンするように構成されたOCTモダリティ及び蛍光モダリティを含み、特徴的特性は、管腔の石灰化プラークを含む。
【0011】
別の実施形態によれば、マルチモダリティプローブの画像において偽陽性及び/又は盲点の位置を検出する方法(400)は、以下を含む:マルチモダリティプローブに含まれる複数のイメージングモダリティの各々の画像を取得するステップ(S401);第1のイメージングモダリティによって取得された第1の画像を分析し、第1の画像の1つ以上の特徴的特性を特定するステップ(S408);第1の画像の1つ以上の特徴的特性に基づいて、第2のイメージングモダリティによって取得された第2の画像において潜在的な偽陽性及び/又は盲点の位置を検出するステップ(S410~S412);及び、第1の画像内の1つ以上の特徴的特性に関して第2の画像の可能性のある偽陽性及び/又は盲点の位置を示すマーカ(325)とともに、第1の画像及び第2の画像を表示するステップ(S414)。
【0012】
本開示のこれら及び他の目的、特徴及び利点は、本開示の例示の実施形態の以下の詳細な説明を添付の図面及び提供された特許請求の範囲と併せて読むと、明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本開示の更なる目的、特徴及び利点は、本開示の例示の実施形態を示す添付の図と併せて解釈すると、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【0014】
図1図1は、干渉OCTモダリティ及び蛍光モダリティを含む例示のカテーテルベースのマルチモダリティイメージングシステム100を図示する。
図2図2A図2Bは、それぞれ、カテーテルベースのマルチモダリティイメージングシステム100のプルバック動作の長手方向図と軸方向図を示す。
図3図3は、マルチモダリティイメージングカテーテルによって生体サンプルをスキャンすることによって得られたマルチモダリティデータの潜在的な偽陽性、偽陰性及び/又は盲点の位置を表示するための例示のグラフィカルユーザインタフェース(GUI)321を備えた表示装置300を図示する。
図4図4は、本開示の一実施形態に係る、潜在的な偽陽性、偽陰性及び/又は盲点の位置を検出するための例示のアルゴリズム400を示す。
図5図5は、本開示の別の実施形態に係る、潜在的な偽陽性、偽陰性及び/又は盲点の位置を検出するためのワークフロープロセス500を示す。
図6図6は、本開示の更に別の実施形態に係る、潜在的な偽陽性、偽陰性及び/又は盲点の位置を検出するためのワークフロープロセス600を示す。
図7図7は、蛍光の潜在的な偽陽性、偽陰性及び/又は盲点の位置を特定するための、組織学的(H&E、マッソントリクローム)画像、OCT-NIRAF画像及び共焦点NIRAF画像の比較を示す。
図8図8Aは、OCT-NIRAF画像を共焦点NIRAF画像とレジストレーションするためのアルゴリズムを示す。図8Bは、特徴的特性を分析し、蛍光データの偽陽性、偽陰性及び/又は盲点の位置を検出するために、複数の区画に分割されたレジストレーション画像を示す。
図9-1】図9A図9Cは、カテーテルベースのイメージングシステム100によって取得されたマルチモダリティOCT-蛍光画像において潜在的な偽陽性、偽陰性及び/又は盲点の位置を表示するように構成されたグラフィカルユーザインタフェース(GUI)の例示の実施形態を図示する。
図9-2】図9D図9Fは、カテーテルベースのイメージングシステム100によって取得されたマルチモダリティOCT-蛍光画像において潜在的な偽陽性、偽陰性及び/又は盲点の位置を表示するように構成されたグラフィカルユーザインタフェース(GUI)の例示の実施形態を図示する。
図10図10A図10B図10C及び図10Dは、マルチモダリティOCT-蛍光画像において蛍光の潜在的な偽陽性、偽陰性及び/又は盲点の位置を表示するように構成されたグラフィカルユーザインタフェースの更なる実施形態の様々な例を図示する。
図11図11は、簡略化された2値パネルを用いて潜在的な偽陽性、偽陰性及び/又は盲点の位置を表示するように構成されたグラフィカルユーザインタフェース(GUI)321を備えた表示装置300を図示する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本開示は、組織を特性評価し、物体又はサンプルの画像において可能性のある偽陽性、偽陰性及び/又は盲点の位置を決定するために、画像データを分析するように構成された1つ以上のシステム、方法及び記憶媒体を提供する。画像は、単一のファイバベースカテーテル内に含まれる複数のイメージングモダリティ(同時のOCT及び蛍光等)を用いて取得される。図1図11を参照して、本開示のいくつかの実施形態(本開示のシステム、方法及び/又はコンピュータ可読記憶媒体の1つ以上の実施形態によって実施され得る)を図式的かつ視覚的に説明する。
【0016】
様々な実施形態が更に詳細に説明される前に、本開示は特定の実施形態に限定されないことを理解されたい。また、当然のことながら、本明細書において用いられる用語は、例示の実施形態を説明する目的のものにすぎず、限定することを意図するものではない。
【0017】
図全体を通して、別段の記載がない限り、同じ参照番号及び文字は、例示される実施形態の同様の特徴、要素、コンポーネント又は部分を示すために用いられる。更に、同封の図を参照して本開示を詳細に説明するが、それは、例示の実施形態に関連してなされる。添付の特許請求の範囲によって定義される本開示の真の範囲及び主旨から逸脱することなく、説明される例示の実施形態に対して変更及び修正を行うことができることが意図される。図面はいくつかの可能な構成及びアプローチを表すが、図面は必ずしも縮尺どおりではなく、本開示の特定の態様をより分かりやすく図示及び説明するために、特定の特徴が誇張、削除又は部分的に切断される場合がある。本明細書に記載の説明は、網羅的であること、そうでなければ、図面に示され以下の詳細な説明に開示される正確な形態及び構成に特許請求の範囲を限定又は制限することを意図するものではない。
【0018】
当業者には当然のことながら、一般に、本明細書、特に添付の特許請求の範囲(例えば添付の特許請求の範囲の本文)で使用される用語は、概して、“オープン”な用語として意図されている(例えば、「含む(including)」という用語は「含むが、これに限定されない」と解釈されるべきであり、「有する」という用語は「少なくとも有する」と解釈されるべきであり、「含む(includes)」は「含むが、これに限定されない」と解釈されるべきである、等)。更に、当業者には当然のことながら、導入された請求項記載の具体的な数字が意図されている場合、そのような意図は特許請求の範囲に明示的に記載され、また、そのような記載がない場合、そのような意図は存在しない。例えば、理解の助けとして、以下の添付の特許請求の範囲は、請求項記載を導入するために、「少なくとも1つの」や「1つ以上の」という導入句の使用を含む場合がある。ただし、そのような語句の使用は、同じ請求項に「1つ以上の」又は「少なくとも1つの」との導入句と、“a”又は“an”等の不定冠詞とが含まれている場合でも、不定冠詞“a”又は“an”による請求項記載の導入により、そのような導入された請求項記載を含む特定の請求項が、そのような記載を1つだけ含む請求項に限定されることを意味すると解釈されるべきではない(例えば、“a”及び/又は“an”は、典型的には、「少なくとも1つの」又は「1つ以上の」を意味すると解釈されるべきである)。請求項記載を導入するために使用される定冠詞の使用についても、同じことが言える。
【0019】
更に、導入された請求項記載の具体的な数字が明示的に記載されている場合であっても、当業者には当然のことながら、そのような記載は、典型的には、少なくとも記載された数を意味すると解釈されるべきである(例えば、他の修飾語を伴わずに「2つの記載」とだけ記載される場合、典型的には、少なくとも2つの記載、又は2つ以上の記載を意味する)。更に、「A、B及びC等のうちの少なくとも1つ」に類似した規定が使用される場合、概して、そのような構文は、当業者が該規定を理解し得るという意味で意図されている(例えば、「A、B及びCのうちの少なくとも1つを有するシステム」は、A単独で、B単独で、C単独で、AとBを併せて、AとCを併せて、BとCを併せて、かつ/又は、A、B及びCを併せて有するシステム等を含み得る)。「A、B又はC等のうちの少なくとも1つ」に類似した規定が使用される場合、概して、そのような構文は、当業者が該規定を理解し得るという意味で意図されている(例えば、「A、B又はCのうちの少なくとも1つを有するシステム」は、A単独で、B単独で、C単独で、AとBを併せて、AとCを併せて、BとCを併せて、かつ/又は、A、B及びCを併せて有するシステム等を含み得る)。更に、当業者には当然のことながら、典型的には、離接語、及び/又は2つ以上の代替用語を表す語句(明細書、特許請求の範囲、又は図面のいずれにおいても)は、文脈上別段の指示がない限り、該用語の一方、該用語のいずれか、又は該用語の両方を含む可能性を企図するものと理解されるべきである。例えば、「A又はB」という表現は、典型的には、「A」又は「B」又は「A及びB」の可能性を含むと理解される。
【0020】
本明細書において、特徴又は要素が別の特徴又は要素の「上」にあるとして言及されるとき、それは、当該他の特徴又は要素の直上に存在してよく、又は、介在する特徴及び/又は要素も存在してよい。対照的に、特徴又は要素が別の特徴又は要素の「直上」にあるとして言及されるとき、介在する特徴又は要素は存在しない。また、当然のことながら、特徴又は要素が別の特徴又は要素に「接続される」、「取り付けられる」、「結合される」等として言及されるとき、それは、当該他の特徴に直接的に接続されてよく、取り付けられてよく、又は結合されてよく、又は、介在する特徴又は要素が存在してもよい。対照的に、特徴又は要素が別の特徴又は要素に「直接的に接続される」、「直接的に取り付けられる」又は「直接的に結合される」として言及されるとき、介在する特徴又は要素は存在しない。一実施形態に関して説明又は図示したが、一実施形態においてそのように説明又は図示された特徴及び要素は、他の実施形態に適用することができる。また、当業者であれば理解できるように、別の特徴に「隣接」して配置されている構造又は特徴への言及は、当該隣接する特徴にオーバーラップするかその下にある部分をもつ場合がある。
【0021】
本明細書では、様々な要素、コンポーネント、領域、部品及び/又は部分を説明するために、第1、第2、第3等の用語が使用される場合がある。当然のことながら、これらの要素、コンポーネント、領域、部品及び/又は部分はこれらの指定の用語によって限定されない。これらの指定の用語は、ある要素、コンポーネント、領域、部品又は部分を別の領域、部品又は部分から区別するためにのみ使用されている。よって、後述する第1の要素、コンポーネント、領域、部品又は部分は、単に区別を目的として、しかし限定をすることなく、また、構造的又は機能的な意味から逸脱することなく、第2の要素、コンポーネント、領域、部品又は部分と呼ぶことができる。
【0022】
本明細書において用いられる場合、単数形は、文脈上明確に別段の指示がない限り、複数形も含むことを意図している。更に、当然のことながら、「含む」、「備える」、「成る」という用語は、本明細書及び特許請求の範囲において用いられる場合、記載の特徴、整数、ステップ、動作、要素及び/又はコンポーネントの存在を指定するが、明示的に記載されていない1つ以上の他の特徴、整数、ステップ、動作、要素、コンポーネント及び/又はそれらのグループの存在又は追加を排除するものではない。更に、本開示では、「~から成る」という移行句は、クレームで指定されていないいかなる要素、ステップ又はコンポーネントも除外する。更に、留意すべきこととして、一部のクレーム又はクレームの一部の特徴は、任意の要素を除外するように起草される場合があり、このようなクレームは、クレーム要素の記載に関連して「単独で」、「~のみ」等の排他的な用語を使用する場合があり、又は、「否定的な」限定を使用する場合がある。
【0023】
本明細書で使用される「約」又は「およそ」という用語は、例えば10%以内、5%以内又はそれ未満を意味する。一部の実施形態では、「約」という用語は、測定誤差内を意味することがある。これに関して、説明され又はクレームされる際に、用語が明示的に表示されていなくても、全ての数値は「約」又は「およそ」という語が前置されているかのように読まれてよい。「約」又は「およそ」という語句は、大きさ及び/又は位置を記述するとき、記載の値及び/又は位置が値及び/又は位置の妥当な予想範囲内にあることを示すために使用されることがある。例えば、数値は、記述された値(又は値の範囲)の±0.1%、記述された値(又は値の範囲)の±1%、記述された値(又は値の範囲)の±2%、記述された値(又は値の範囲)の±5%、記述された値(又は値の範囲)の±10%等である値を含み得る。本明細書に記載されている場合、あらゆる数値範囲は、具体的に別段の記載がない限り、終了値を含むことを意図しており、そこに属する全ての部分範囲を含む。本明細書で用いられる場合、「実質的に」という用語は、意図された目的に悪影響を及ぼさない、記述子からの逸脱を許容することを意味する。例えば、測定値の限定に由来する逸脱、製造公差内の差異、又は5%未満の変動は、実質的に同じ範囲内にあると見なすことができる。指定された記述子は、絶対値(例えば、実質的に球形、実質的に垂直、実質的に同心等)又は相対語(例えば、実質的に類似、実質的に同じ等)であり得る。
【0024】
具体的に別段の記載がない限り、以下の開示から明らかであるように、本開示を通して、「処理する」、「コンピュータで計算する」、「計算する」、「決定する」、「表示する」等の用語を用いた議論は、コンピュータシステム、又は同様の電子コンピューティングデバイス、又は、コンピュータシステムのレジスタ及びメモリ内の物理(電子)量として表されるデータを操作し、同様にコンピュータシステムのメモリ又はレジスタ又は他のそのような情報の記憶、伝送又は表示用のデバイス内の物理量として表される他のデータに変換するデータ処理デバイスの、動作及びプロセスを指すものと理解される。本明細書に記載されているか、若しくは添付の特許請求の範囲に記載されているコンピュータ動作又は電子動作は、文脈上別段の指示がない限り、一般に、任意の順序で実行することができる。また、様々な動作フロー図が順番に提示されているが、当然のことながら、各種動作は、図示又は特許請求されている順序以外の順序で実行することができ、或いは、動作を同時に実行することができる。そのような代替の順序付けの例としては、文脈上別段の指示がない限り、重複、インターリーブ、中断、再順序付け、増分、準備、補足、同時、逆、又は他の変形の順序付けが挙げられる。更に、「~に応答して」、「~に応えて」、「~に関連して」、「~に基づいて」等の用語、又は他の同様の過去形容詞は、文脈上別段の指示がない限り、通常、そのような変形を除外することを意図していない。
【0025】
本開示は、概して医療機器に関し、また、光干渉断層撮影(OCT)カテーテル等の光学プローブと蛍光イメージングプローブの組合わせ、すなわちマルチモダリティOCT(MMOCT)のカテーテル又はプローブの実施形態を例示する。光プローブ及びその部分の実施形態を、三次元空間におけるそれらの状態に関して説明する。本明細書で用いられる場合、「位置」という用語は、3次元空間における物体又は物体の一部の位置(例えばデカルトX、Y、Z座標に沿った3自由度の並進自由度)を指し、「向き」という用語は、物体又は物体の一部の回転配置(回転の3自由度―例えばロール、ピッチ、ヨー)を指し、「姿勢」という用語は、少なくとも1つの並進自由度にある物体又は物体の一部の位置と、少なくとも1つの回転自由度にある物体又は一部の物体の向きとを指し(合計で最大6つの自由度)、「形状」という用語は、物体の長尺体に沿って測定された一連の姿勢、位置及び/又は方向を指す。
【0026】
医療機器の分野において既知であるように、「近位」及び「遠位」という用語は、ユーザから手術部位又は診断部位まで延びる器具の端部の操作に関して用いられる。これに関して、「近位」という用語は、器具のユーザに近い部分(例えばハンドル)を指し、「遠位」という用語は、ユーザから離れており外科部位又は診断部位に近い器具の部分(先端)を指す。更に、当然のことながら、便宜上簡潔にするために、本明細書では、図面に関して「垂直」、「平行」、「上」、「下」等の空間用語が用いられる場合がある。ただし、手術器具は多くの向きと位置で使用されるものであり、これらの用語は限定的かつ/又は絶対的であることを意図していない。
【0027】
本明細書で用いられる場合、「カテーテル」との用語は、概して、広範囲の医療機能を実行するために、狭い開口を通して体腔(例えば血管)の中に挿入されるように設計された、医療グレードの材料から作られる軟性の薄い管状器具を指す。より具体的な「光学カテーテル」との用語は、医療グレード材料から作られた保護シース内に配置され光学イメージング機能をもつ1つ以上の軟性の光伝導ファイバの細長い束を含む医用器具を指す。光学カテーテルの特定の例は、シース、コイル、プロテクタ及び光学プローブを備える光ファイバカテーテルである。一部の用途では、カテーテルは、シースと同様に機能する「ガイドカテーテル」を含み得る。
【0028】
本開示では、「光ファイバ」又は単に「ファイバ」等の用語は、全反射として知られる効果によって一端から他端に光を伝導することができる、細長い軟性の光伝導管を指す。「導光コンポーネント」又は「導波管」との用語も、光ファイバを指す場合があり、又は光ファイバの機能をもつ場合がある。「ファイバ」との用語は、1つ以上の光伝導ファイバを指す場合がある。光ファイバは、一般に透明で均質なコアをもち、それを通して光が誘導され、また、コアは均質なクラッディングによって囲まれている。コアの屈折率は、クラッディングの屈折率よりも大きい。設計上の選択に応じて、一部のファイバは、コアを囲む複数のクラッディングをもつことができる。
【0029】
本明細書で用いられる場合、“偽陽性”の値は、ある状態が存在しないのに試験結果が誤って当該状態の存在を示すという、2項分類におけるエラーであり、“偽陰性”は、ある状態が実際には存在するのに試験結果が誤って当該状態の存在を示し損なうという逆のエラーである。これらは、2項試験における2種類の正しい結果(真陽性と真陰性)と対照的な2種類のエラーである。“潜在的な”偽陽性、偽陰性及び/又は盲点との用語は、自動(アルゴリズム)分析によって特定された候補位置を指す。本開示によれば、“潜在的”偽陽性、潜在的偽陰性及び/又は潜在的盲点の結果、発生又は事象は、システムによって決定され、ユーザによって承認又は拒否される。
【0030】
<マルチモダリティOCT(MMOCT)イメージングシステム>
一実施形態によれば、システムコンソールを含むマルチモダリティOCT-NIRAFイメージングシステムと、マルチモダリティカテーテルは、心臓血管等の管腔サンプルからOCT-NIRAF画像を取得するように構成される。OCT画像は、中心波長1310nm、帯域幅127nmの波長掃引型レーザを用いて取得することができる。NIRAF画像は、管腔サンプルを633nmで励起し、660nm~740nmの波長域の蛍光放射を検出することによって取得することができる。OCTとNIRAFの照明光は、カテーテル内のダブルクラッドファイバを介して血管まで送られた。カテーテルは、機械的なヘリカル走査を実現する患者インタフェースユニットを介して、イメージングシステムに接続された。システムは、プルバック速度10~40mm/sで毎秒200フレームの速さで、同期及びコレジストレーションされたOCTとNIRAFのデータを取得する。各OCT-NIRAF画像には、500個のAラインが含まれる。
【0031】
図1は、干渉OCTモダリティ及び蛍光モダリティを含む例示のマルチモダリティOCT(MMOCT)イメージングシステム100を示す。システム100は、血管内イメージングに使用されてもよいし、食道イメージングや他の同様の体腔のイメージング用のバルーンカテーテルとともに構成されてもよい。図1に示されるように、OCTモダリティは、サンプルアーム10及び参照アーム20を有する干渉計(例えばマイケルソン干渉計)と、OCT光源110と、検出部120と、データ取得(DAQ)部130と、コンピュータ200とから成る。コンピュータ200は、表示装置300や、画像保管通信システム(PACS)1400等の外部システムに接続される。サンプルアーム10は、患者インタフェースユニット(PIU)150と、ファイバベースのカテーテル160とを含む。蛍光モダリティは、励起光源180と、カテーテル160と、光検出器183と、データ取得(DAQ)部130と、コンピュータ200とから成る。蛍光モダリティでは、光源180は、光ファイバ181を介してPIU150に接続される。
【0032】
PIU150は、図示されていないビームコンバイナと、光ファイバ回転継手152と、プルバック部151(例えば精密リニアステージ)とを含む。一実施形態では、システム100は、OCTモダリティのOCT光源110として波長掃引型レーザ(1310nm±50nm)を用い、蛍光モダリティの励起光源180として中心波長約633nmのヘリウムネオン(He:Ne)レーザを用いる。カテーテル160は、ダブルクラッドファイバ(DCF)167と、遠位光学系アセンブリ168とから成るイメージングコアを含む。遠位光学系アセンブリは、側方ビューイメージングのために、DCF167の先端に研磨ボールレンズを含むことがある。或いは、遠位光学系アセンブリ168は、DCF167の先端に取り付けられた屈折率分布型(GRIN)レンズ及び反射要素(回折格子)を含むことがある。近位端では、カテーテル160は、カテーテルコネクタ161を介してPIU150に接続される。
【0033】
イメージングシステム100は、血管等の生体管腔を含み得るサンプル170から、OCT画像と蛍光画像を同時に取得するように構成される。そのために、OCT光源110からの光その他の電磁放射線(第1の波長の放射線)は、サンプルアーム10を通してサンプル170へ誘導され、参照アーム20を通して反射器140へ誘導され、光はそれぞれの光路に沿って戻り、それによってOCT干渉縞が生成される。具体的には、光源110からの光は、スプリッタ102(ファイバスプリッタ又はビームスプリッタ)によってサンプルビームと参照ビームに分割され(例えば50/50)、これらはそれぞれ、各光ファイバを介してサンプルアーム10と参照アーム20へ送られる。サンプルアーム10では、サンプルビームがサーキュレータ105に入り、シングルモード(SM)ファイバ106を介してファイバカプラ108に移動し、また、サンプルビームは、ダブルクラッドファイバ107を介してPIU150に送られる。カテーテル160はPIU150に接続され、PIU150はコンピュータ200に接続される(図示されていない電子接続部を介して)。コンピュータ200の制御下で、PIU150は、カテーテル160のイメージングコアの回転を制御して、スキャン方式でサンプル170にサンプルビームを照射する。サンプル170によって反射及び/又は散乱されたサンプルビームの光は、カテーテル160の遠位端に配置された遠位光学系168(光学プローブ)によって収集され、収集された光は、ダブルクラッドファイバ167を通ってPIU150に送り返される。収集された光(サンプルビーム)は、PIUから、ファイバ107を通してファイバカプラ108に進む。ファイバカプラ108は、返り光の一部を、SMファイバ106を介してサーキュレータ105へ送る。次に、サーキュレータ105は、該返り光の一部をコンバイナ104へ誘導する。更に、ファイバカプラ108は、返り光の別の部分を、マルチモードファイバ109を介して第2の検出器122に結合する。
【0034】
参照アーム20では、参照ビームの光がサーキュレータ103に入り、光ファイバ141を介して反射器140に送られる。時間領域OCT(TD-OCT)イメージングの場合、反射器140は、走査ミラー及び光遅延線(ODL)によって実装することができる。周波数領域OCT(FD-OCT)イメージングの場合、反射器140は固定ミラーとして実装することができる。反射器140から反射された参照ビームの光は、サーキュレータ103を通過し、コンバイナ104へ誘導される。このように、サンプルビームと参照ビームはビームコンバイナ104で結合されてから、検出器121によって検出されて、既知のOCT原理に従って干渉信号を生成する。
【0035】
検出器121(第1の検出器)は、フォトダイオードのアレイ、光電子増倍管(PMT)、マルチアレイカメラ、又は他の同様の干渉縞検出機器として実装される。少なくとも1つの実施形態では、検出器121はバランス光検出器であり得る。第1の検出器121から出力された信号は、データ取得電子機器(DAQ1)131によって前処理(デジタル化)され、コンピュータ200へ伝送される。コンピュータ200は、信号処理を実行して、既知の方法でOCT画像を生成する。干渉縞は、OCT光源110のコヒーレンス長の範囲内でサンプルアーム10の光路長が参照アーム20の光路長と一致する場合にのみ、生成される。偏光感受型OCT測定は、偏波保持(PM)光ファイバを用いて、或いはインラインのパドル型偏光コントローラ(PC)を通して、行うことができる。
【0036】
蛍光モダリティでは、励起光源180が、中心波長が633nmである励起光(第2の波長の放射線)を発する。他の実施形態では、励起光は、所望の用途に応じて異なる中心波長(485nm等)を有することができる。励起光は、ファイバ181、FORJ152、ダブルクラッドファイバ167及び遠位光学系168によって誘導されて、サンプル170に照射される。励起光の照射に応じて、サンプル170は、既知の蛍光放射原理に従って、励起波長よりも高い範囲の広帯域波長の近赤外自家蛍光(NIRAF)信号又は近赤外蛍光(NIRF)信号を発する(第3の波長(例えば633~800nm)の放射線)を発する。本明細書でいう蛍光とは、光子の形のエネルギーが分子に吸収されることにより、励起光よりも波長の長い蛍光光子が直ちに放出される光学現象である。
【0037】
一実施形態では、サンプル170によって生成された蛍光光は自家蛍光を含むことがあり、これは、染料や薬剤の添加なしに発生する内因性の蛍光である。他の実施形態では、サンプル170によって生成された蛍光は、(例えば管腔クリアランス時に)サンプルに添加された染料や造影剤の外因性蛍光によって生じた蛍光を含むことがある。自家蛍光(又は蛍光)の光は、カテーテル160の遠位光学系168によって収集され、PIU150に送り返され、そこでFORJ152及び図示されていないビームコンバイナ/スプリッタが、光ファイバ189を介して蛍光信号を検出器183へ送る。検出器183から出力された信号(蛍光強度信号)は、データ取得部(DAQ2)132によってデジタル化され、画像処理のためにコンピュータ200に送られる。OCTモダリティのOCT干渉縞と、蛍光モダリティの蛍光信号は、同時にコンピュータ200へ送られることが好ましい。
【0038】
第2の検出器122は、マルチモードファイバ109を介してファイバカプラ108から伝送されたサンプルビームの一部を検出する。第2の検出器122は、後方散乱光(後方散乱信号)の強度に対応するアナログ信号を出力する。サンプル170から返り第2の検出器122によって検出される後方散乱信号は、干渉信号ではない。検出器122から出力された信号は、データ取得電子機器(DAQ2)132によってデジタルデータに変換される。特に、後に詳述するように、後方散乱光の強度に対応するデジタル信号を用いて、カテーテルからの光がサンプル170に入射する距離及び/又は角度を計算することができる。また、後方散乱光の強度は、プルバック及び画像記録の動作を開始及び/又は終了のためのトリガ信号として用いることができる。したがって、検出器122から出力され、データ取得電子機器(DAQ2)132によってデジタルデータに変換された信号は、トリガ信号として直接用いることもできるし、或いは、処理を制御するためにコンピュータ200に転送することもできる。
【0039】
図1に示されるように、コンピュータ200は、中央処理装置(CPU)191と、記憶メモリ(ROM/RAM)192と、ユーザ入出力(I/O)インタフェース193と、システムインタフェース194とを含む。コンピュータ200の各種機能コンポーネントは、物理データ回線及び論理データ回線(データバス)195を介して作動的に接続され、互いに通信する。記憶メモリ192は、1つ以上のコンピュータ可読媒体及び/又はコンピュータ書込み可能媒体を含み、例えば、磁気ディスク(例えばハードディスクドライブHHDやソリッドステートドライブSSD)、光ディスク(例えばDVD(登録商標)、Blu-ray(登録商標)、又は配線)、光磁気ディスク、半導体メモリ(例えば不揮発性メモリカード、Flash(登録商標)メモリ、ソリッドステートドライブ、SRAM、DRAM)、EPROM、EEPROM等を含んでよい。記憶メモリ192は、オペレーティングシステム(OS)プログラムや、制御プログラム及び処理プログラム等、コンピュータ可読データ及び/又はコンピュータ実行可能命令を格納することができる。
【0040】
ユーザインタフェース193は、入出力(I/O)デバイスに対して通信インタフェース(電気接続)を提供し、入出力デバイスとしては、キーボード、表示装置300(LCD又はOLEDの表示画面等)、マウス、印刷装置、タッチスクリーン、ライトペン、外付け光記憶装置、スキャナ、マイクロフォン、カメラ、ドライブ、通信ケーブル及びネットワーク(有線又は無線のいずれか)が挙げられる。また、システムインタフェース194は、OCTモダリティの光源110、蛍光モダリティの励起光源180、OCTモダリティの1つ以上の検出器121、蛍光モダリティの検出器183、及びデータ取得(DAQ2)回路132、並びに患者インタフェースユニット(PIU)150のうちの1つ以上の電子インタフェース(電子接続回路)を提供する。システムインタフェース194は、プログラマブルロジックデバイス(PDL)(フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)その他のPLD等)と併用されるプログラマブルロジック、ディスクリートコンポーネント、集積回路(例えば特定用途向け集積回路(ASIC))、又は、それらの任意の組合わせを含む他のコンポーネントを含んでよい。ユーザインタフェース193及びシステムインタフェース194の機能は、記憶装置192に記録されCPU191によって実行されるコンピュータ実行可能命令(例えば1つ以上のプログラム)によって、或いは、ネットワークを介して遠隔地で実行されるプログラム(例えばクラウドコンピューティング)によって、少なくとも部分的に実現することができる。更に、コンピュータ200は、例えば、他の医療機器(ディスプレイ、プリンタ、PACS1400等)と通信するための通信手段やネットワークインタフェース等のコンポーネントのような、1つ以上の追加の機器を備えることがある、図1に示されるイメージングシステム100の機能動作は、コンピュータ200のCPU191が、記憶装置192のROM/RAMに格納された実行可能命令又はプログラムを実行することによって、実現される。
【0041】
図2A図2Bは、それぞれ、プルバック動作中の連続する位置におけるカテーテル160の遠位光学系168(光学プローブ)の例示の縦断面図と軸方向図を示す。図2Aに示されるように、遠位光学系168(又は光学プローブ)は、ダブルクラッドファイバ(DCF)167と、GRINレンズやボールレンズ等のレンズ166(集束部品)と、反射表面又は回折表面165(ビーム指向部品)とを含む。カテーテル160は、その近位端で、コネクタ161(図1に示される)を介してPIU150に接続される。トルクコイル163は、PIU150に位置する図示されていない回転モータからの回転トルクを、カテーテル160の遠位端に伝達する。カテーテル160の遠位端では、反射表面又は回折表面165(ミラー、プリズム、回折格子等)が、作動距離(Wd)に位置するサンプル170(管腔の壁)に向けて、照明光(照明光ビーム11)を径方向に偏向させる。図2Aに示されるように、イメージングプローブ168は側視イメージング用に構成されており、照明光ビーム11は、カテーテルからカテーテル軸Oxに関して角度θで出射され、カテーテル軸Oxを横断する線に沿ってサンプル表面171に入射する。ここで、OCTデータと蛍光データは共通プローブ168によって同時に得られるので、照明光ビーム11とは、サンプル170に入射する光を指す(ビーム11が、OCT光源110によって発せられた光、及び/又は、励起光源180によって発せられた光であるかどうかに関わらず)。
【0042】
照明ビーム11(OCT光と励起光を含む)が体腔(例えば血管壁)を照明する間、静止したままである保護シース162内で光学プローブがプルバックされる間に、カテーテル160がカテーテル軸Oxに関して回転又は振動する(矢印Rで示されるように)。このように、カテーテル160は、連続した径方向位置を通る回転方式で(図2Bに示されるように)、照明ビーム11によってサンプル170を連続的にスキャンすることができる。遠位光学系又はプローブ168は、サンプル170からの後方散乱光及び蛍光を含む返り光12(サンプルビーム)を収集する。返り光12は、内表面171(例えば血管壁)に関する情報を伝達する。干渉信号(干渉縞)は、干渉光ビーム(図示なし)とサンプル170から収集された後方散乱OCT光とを組み合わせることによって得られる。同時に、蛍光信号が収集、検出及び保存される。図1を参照して先に述べたように、干渉OCT信号と蛍光信号は電子信号に変換され、電子信号がデジタル化、保存及び/又は処理されて、検査中のサンプルの状態が分析される。サンプルビーム12からの後方散乱光と参照ビーム(図示なし)からの参照光を組み合わせると、サンプルビームと参照ビームの両方の光がほぼ同じ光学距離を進んだ場合にのみ、干渉信号が生じる(「ほぼ同じ光学距離」とは、光源のコヒーレンス長以下の差を指す)。
【0043】
サンプル170のうち、より多くの光を反射する領域は、反射する光が少ない領域よりも強い干渉信号を生じることになる。コヒーレンス長を超える光は、干渉信号に寄与しない。後方散乱光の強度プロファイルは、Aスキャン又はAラインとも呼ばれ、特徴的特性の空間次元と位置に関する情報を含む。情報としては、例えば、深さ組織層172、管腔(サンプル表面)171の壁又は層内に形成された石灰化プラーク173の位置、ステント174の位置及びサイズが挙げられる。OCT画像(すなわち一般にBスキャンと呼ばれる断層写真)は、管腔壁の長さに沿った異なる位置で取得された複数のAスキャンを組み合わせることによって形成され得る。
【0044】
図2Aの図は、プルバック経路に沿った対応するタイミングt1、t2、t3、t4等でのカテーテル位置(複数の長手方向位置T1、T2、T3、T4)を示し、照明光ビーム11によって固定角度θでサンプル170をスキャンする間に、異なるAスキャン(A1、A2、A3、A4…)が収集される。デルタ(δ)は、連続する1回転測定(又はAスキャン)間のプルバック中にカテーテルが移動する距離である。図2Aの例示のプルバックでは、プルバック位置T1での第1のAラインスキャン(A1)により、組織層及びアーチファクト形成(新生内膜形成)に関する情報を得ることができ、位置T2での第2のAラインスキャン(A2)により、ステント174に関する情報(ステント血栓、ステント圧着、ステント不完全圧着、ステントエッジ解離、ステントストラットのカバレッジ又は検出等)を得ることができ、位置T3での第3のAラインスキャン(A3)には、サンプル170の組織層のみからの情報が含まれる場合があり、位置T4の第4のAラインスキャン(A4)には、サンプル170の表面上に蓄積したプラーク175に関する情報(プラークタイプ、プラーク深さ等)が含まれる場合がある。Aラインスキャンから得られる情報は、診断結果を改善するために、蛍光信号から得られる情報と相関させることができる。
【0045】
図2Bは、カテーテル160の遠位端の軸方向図(X-Y平面図)を示し、例示の照明光11が、らせん経路に沿った複数の回転位置R1、R2、R3、4でサンプル170(例えば血管壁)に入射している。各回転位置R1~R4での測定は、固定(同一)角度θで光ビーム11によってサンプル170をスキャンする間に実行される。位置R1、R2、R3、R4の各々は、管腔内表面上で、カテーテル160が回転する間に測定が行われる異なる回転位置を表す。したがって、当然のことながら、各回転位置で検出される結果信号は、例えばカテーテル160とサンプル170の内表面171(管腔エッジ)との間の距離(Wd)に応じて、異なる特性を有し得る。この点について、管腔サンプル170が曲がりくねっていることが原因で、カテーテルが曲がり、管腔エッジに触れながら画像を取得するおそれがあることが知られている。この場合、取得される信号は、画像データの誤解釈を招き得る画像アーチファクトの原因になるおそれがある。例えば、カテーテル160が曲がって、カテーテル軸が管腔の中心から外れてしまい、カテーテルがステント174又はプラーク175(図2Aに示される)に接触している間に画像が取得された場合、収集される信号には、誤った蛍光強度信号(例えば偽陽性信号)が含まれる場合がある。したがって、そのような信号の真の特性をリアルタイムで確認するオプションをユーザに提供することが重要である。
【0046】
カテーテル160の-z方向でのプルバック動作と回転動作Rを組み合わせることにより、サンプル170の内表面171をヘリカルスキャンすることによって、Aラインを複数回生成することができる。複数のAラインスキャンを組み合わせて、サンプル170の2D画像(断面)を生成することが可能である。血管断面の各2D画像は、例えば、カテーテル160の全周(360度)スキャンに対応する、およそ500個かそれ以上のラインを組み合わせることによって形成することができる。このような全周スキャンは、「フレーム」と呼ばれることがある。内表面171の3次元(3D)イメージングは、カテーテルが回転しているときに、プルバック動作の長手方向並進運動中に得られる複数の2D画像フレームを組み合わせることによって、達成することができる。結果として、カテーテルスキャンは、連続するAラインのヘリカル経路となって、サンプル170の内表面171の完全な3Dデータセット(3Dボリューム)を形成する。連続するAラインスキャンから収集されたデータは、(例えば高速フーリエ変換その他の既知のアルゴリズムによって)処理されて、既知の方法でサンプル170のOCT画像が生成される。同時に、蛍光信号も収集、処理、保存/表示され、OCT画像に対応して分析される。
【0047】
<潜在的な偽陽性、偽陰性及び/又は盲点の位置の決定>
プルバック動作と画像記録動作の結果は、通常、“検出されたとおりに”表示される。すなわち、蛍光情報とOCTデータは、管腔サンプル及び/又はカテーテルパラメータに関する全ての利用可能な情報とともに、検出されたとおりに一緒に表示される。蛍光情報(NIRAF又はNIRF)の表示には、蛍光データをOCTデータと空間的に関連付けて示すことや、データが取得された特定のカテーテルパラメータを表示することが含まれる。この点について、カテーテル軸を中心とするOCTデータの断層像の周りに蛍光データのリングを表示することが一般的である。また、カテーテルイメージングコアがプルバック動作を実行する際の血管の縦断像を示すために、OCTデータと蛍光データを互いに並べて縦断像に表示することも知られている。他のシステムでは、断層像か縦断像のいずれかにおいて、2D表現か3D表現のいずれかで、OCTデータと蛍光データを重ね合わせて表示することができる。本開示は、蛍光イメージングデータとOCTイメージングデータの両方の画像データが空間的にレジストレーションされて表示され、潜在的な偽陽性、偽陰性及び/又は盲点の位置がユーザによって特定可能である限りは、特定の表示形式に限定されない。マルチモダリティOCT-蛍光データを表示する様々な方法の例は、本出願人の公開済みの特許公報及び特許出願公報の一部(US2019/0339850、US2019/0029624、US2018/0271614(現在米国特許第10,842,589号等)と、米国特許第10109058号に記載されている。これらの刊行物は全て、あらゆる目的で参照により本明細書に援用される。
【0048】
有利な点として、カテーテルベースのNIRAFが、OCTデータから決定されるプラーク内特性や他の特徴特性と相関される場合、形態的にリスクの高いプラークを特定できるだけでなく、病理学的にリスクの高いプラークを十分な精度で評価することができ、臨床結果が改善され、患者ケアにとってより良好な診断結果が得られる。
【0049】
しかしながら、カテーテルを通して取得された蛍光データの検出は、励起光のパワー、管腔サンプルに対するカテーテルの位置、サンプルの組織構造等に影響を受けることがある。例えば、一部の実施形態では、カテーテルは、単位面積当たりの光パワー(例えばW/ma2やW/cm2)として測定される低出力パワーで励起光を出力することがある。一部の医療用途では、励起レーザは、1ミリワットレベル未満の光パワー(すなわち光パワー<1mWの強度)で励起光を発することがある。このような場合、システムの検出感度が最適でないことがある。しかしながら、このような励起光の低出力は、患者の安全のために望ましいと思われる安全上の懸念を満たすように設計できるので、必ずしもマイナスの制約というわけではない。
【0050】
検出感度を最適化するために、本開示の様々な実施形態によれば、カテーテルと管腔との距離の適切な検出及び較正と、蛍光信号の正確な検出は、OCTデータ、カテーテルパラメータ、並びに、手技及び対象サンプルに関するその他の要因の分析に基づく。これにより、システムは、潜在的な偽陽性、偽陰性及び/又は盲点の領域を非NIRAF情報から特定することができる。“偽陽性”ケースを特定するために、システムは、管腔検出結果を利用し、管腔からカテーテルシースまでの距離を評価することができる。“盲点”ケースを特定するために、システムは、プラークタイプの特性評価(血管内OCT及び/又は分光OCT(S-OCT)の画像処理によって実施できる)を利用することができる。S-OCTは、OCT干渉法によって生成された生のインタフェログラムを用いて、サンプルの深さ分解分光プロファイルを調べる信号処理技術である。S-OCTによってもたらされる分光情報を用いて、OCT画像のコントラストを強調し、形態のみを描写するグレースケールOCT画像の制約を克服することができる。Hyeong Soo NamとHongki Yooの“Spectroscopic optical coherence tomography:A review of concepts and biomedical applications”(Applied Spectroscopy Reviews、53:2-4、91-111、2018、DOI:10.1080/05704928.2017.1324876)を参照されたい。
【0051】
蛍光信号を用いてサンプルのマルチモダリティデータを処理する場合、石灰化組織による信号減衰(減衰係数)が、NIRAF検出に最も大きい影響を与える。特徴的特性の他の情報としては、限定ではないが、図4図5及び図6の画像処理アルゴリズムを参照して後述するように、管腔直径、外弾性板(EEL)、管腔又はカテーテルの幾何学的特性(楕円化、圧潰等)、管腔フラッシング効率等を挙げることができる。
【0052】
カテーテルと管腔との距離の適切な検出及び較正の例は、本出願人の開示済み米国特許出願公開第2019/0298174号に開示されている。プラークタイプ特性評価の画像処理の例としては、限定ではないが、米国特許出願公開第2017/0209049号が挙げられる。これらの刊行物は両方とも、参照により全体として本明細書に援用される。簡単に説明すると、距離較正のために、取得されたOCT-NIRAFデータを後処理した。この後処理は、組織学的処理の後に実施した(後述)。まず、検出されたNIRAF信号からバックグラウンド信号を差し引いた。リン酸緩衝生理食塩水(PBS)溶液下で撮像された管腔サンプルからのNIRAF信号レベルを平均化することによって、バックグラウンド信号を評価した。次に、バックグラウンド減算信号を較正して、管腔エッジとカテーテル間の距離の影響を除去した。管腔エッジとカテーテルの間の距離は、蛍光データを用いず、OCT画像から評価した。
【0053】
システムは、取得されたマルチモダリティ画像内の潜在的な偽陽性、偽陰性及び/又は盲点のケース(位置)の警告を表示するように構成されてよい。警告は、ユーザの好みに応じてオン/オフを切り替えられるようにプログラムされてよい。カテーテル出力を考慮する場合、システムは、蛍光を最小検出閾値と比較することに基づいて、潜在的な偽陽性、偽陰性及び/又は盲点のケースの領域周辺に自動的にマークを付けるように構成されてよい。例えば、システム検出限界(LOD)値を閾値として用いることができる。次に、画像処理中、蛍光信号が閾値を満たさない場合、システムは、マルチモダリティ画像の該領域を潜在的な偽陽性、偽陰性及び/又は盲点としてマークする。更に、設定された閾値強度を満たさない領域をシステムが見つけた場合、システムは、この領域におけるカテーテルから管腔までの距離を考慮して、警告を生成することもできる。例えば、システムが弱い信号の領域を検出し、その領域における管腔からカテーテルまでの距離が閾値Aよりも大きく、信号が閾値Bよりも小さい場合、これが警告領域となる。ユーザの評価及び意思決定プロセスを単純化するために、システムは、図9図10A図10D及び図11に関して後述するように、異なる表示パターンや色、マークを利用して、潜在的な偽陽性、偽陰性及び/又は盲点の領域を示すように構成されてよい。
【0054】
1つ以上の実施形態によれば、図1のシステム100は、結合されたOCT-蛍光データを取得し、OCTデータを分析し、OCTデータの分析に基づいて蛍光データの潜在的な偽陽性、偽陰性及び/又は盲点の位置を検出し、検出された潜在的な偽陽性、偽陰性及び/又は盲点の位置とともにOCT-蛍光データを表示するように構成される。OCT-蛍光データの取得は、マルチモダリティカテーテルによってOCT-蛍光画像を同時に取得することと、in situかつリアルタイムでOCT分析を実行することと、を含み得る。一部の実施形態では、システムは、OCT分析のために、既に事前取得されたマルチモダリティOCT-蛍光データをインポートすることができる。当該プロセスの重要な態様には、OCTデータ(非蛍光データ)及び/又は非蛍光データの分析結果を用いて、蛍光データの特定の特徴の潜在的な偽陽性、偽陰性及び/又は盲点の位置を特定することが含まれる。蛍光データは、近赤外自家蛍光(NIRAF)又は近赤外蛍光(NIRF)のデータを含み得る。
【0055】
図3は、管腔サンプル170のマルチモダリティ画像データにおける潜在的な偽陽性、偽陰性及び/又は盲点の位置に関する情報をユーザに提供するために、表示装置300の画面に表示される例示のグラフィカルユーザインタフェース(GUI)321を図示する。マルチモダリティ画像データは、図1のMMOCTシステム100により、図2A及び図2Bに示される例示のプロセスに従って取得される。図3において、表示装置300に示されるGUI321は、コンピュータ200のCPU291により、カスタマイズされたアルゴリズム(図4図8B)に従って制御されて、コレジストレーションされたマルチモダリティ画像データ(例えば蛍光画像データとOCT画像データ)を複数の別々の表示パネル(第1のパネル321-1、第2のパネル321-2、第3のパネル321-3等)に表示する。第1のパネル321-1は、血管造影像340と、蛍光データ320と組み合わせられたOCTデータ310の断層像から成るマルチモダリティ画像と、を表示することができる。第2のパネル321-2は、管腔サンプルの縦断像を表示することができ、これは、管腔サンプルの構造特性を評価するためのOCTデータ310のみを示す。第3のパネル321-3は、蛍光データの縦断像を表示するように構成される。OCTデータ310の縦断像と蛍光データ320の縦断像は、管腔サンプルの長さに沿ってOCTデータに関する蛍光データの長手方向の対応を示すように、コレジストレーションされる。第1のパネル321-1に表示される断層像は、管腔サンプルの円周に沿って蛍光データ320とOCTデータ310がコレジストレーションされた円形の(極性)対応を示す。断層像が取得される管腔サンプルの位置は、縦断像では、第2のパネル321-2に示される線インジケータ315と、第3のパネル321-3に示されるボックスフレーム335とによって特定される。線インジケータ315は、GUI321の可動コンポーネントであってよく、マウスやジョイスティック等のポインタ316を用いて、或いは、ディスプレイ320の画面をタッチすることにより、縦断像の長さに沿って双方向に動くようにユーザによってインタラクティブに制御され得る。このように、ユーザは、管腔サンプルのうち特徴的特性を評価する必要のある長手方向位置をインタラクティブに選ぶことができる。ユーザがポインタ316を動かすと、境界ボックス335とともに線インジケータ315が移動し、線インジケータ315の位置に応じて断層像が変化する。
【0056】
第1のパネル321-1において、OCTデータ310の断層像は、管腔サンプルの軸方向像(第1の像)を示し、蛍光データ320は、断層像の縁に配置された円弧又は部分的リングとして示される。ただし、この蛍光データ320が潜在的な偽陽性、偽陰性及び/又は盲点であると疑われる場合、システムはマーカ325を追加する。システムは、例えば、蛍光信号が蛍光源に由来することをOCTデータ310の構造特性によって確認できない等の様々な理由から、蛍光データが真の陽性信号でないと決定することができる。言い換えれば、後に詳述するように、システムは、蛍光データ320が陽性の蛍光信号であることを確認することができない。したがって、システムは、蛍光データ320の周りに点線として示されるマーカ325を表示する。このマーカ325は、マルチモダリティ画像内の潜在的な偽陽性、偽陰性及び/又は盲点(アーチファクト)のデータの存在に関してユーザの注意を促すように、特徴的かつ目立つ方法で表示されるべきである。
【0057】
第2のパネル321-2と第3のパネル321-3では、OCTデータ310に関する蛍光データ320の位置が、互いに並んで縦断像(第2の像)に示される。言い換えれば、断層像の縁付近に表示される同じ蛍光データ320も、例えば第3のパネル321-3の縦断像における境界ボックス335により、潜在的な偽陽性、偽陰性及び/又は盲点の位置として示されている。ここで、留意すべきこととして、OCTデータ310と蛍光データ320は互いに別々に表示される必要はない。少なくとも一部の実施形態では、疑わしい偽陽性、偽陰性及び/又は盲点のデータの位置がユーザによって明確に識別可能である限り、OCTデータ310と蛍光データ320は、互いに重ね合わせて表示することができる。
【0058】
少なくとも一部の実施形態では、潜在的な偽陽性、偽陰性及び/又は盲点の情報の表示は、表示された情報を調べるユーザの能力に干渉しないように、ユーザの好みに応じてオン/オフを切り替えるように構成される。そのために、GUI321は、1つ以上のトグルボタン350(又はトグルスイッチ)を含むことができ、ユーザはこれを操作して、本明細書に記載のアルゴリズムのうちの1つ以上を実行して、潜在的な偽陽性、偽陰性及び/又は盲点の位置を特定することができる。更に、コンピュータ200は、所与の手技のイメージング結果を表示する前か後のいずれかに、潜在的な偽陽性、偽陰性及び/又は盲点の位置を表示するかどうかを選択するよう、ユーザに促すことができる。システムは、疑わしいデータの位置を画像フレーム毎に確認するのを好むか、或いは収集されたデータの画像フレーム数毎に確認するのを好むかを確認するよう、ユーザに促すことができる。少なくとも1つの実施形態では、システム100は、単一のフレーム又は複数のフレームにおいて可能性のある疑わしい位置を全て検出して、偽陽性、偽陰性及び/又は盲点のケースが存在するかどうかを決定するように構成されてよい。少なくとも1つの潜在的ケースが存在する場合、システムは、検出された潜在的な偽陽性、偽陰性及び/又は盲点の位置の各々の周りにマーカ325及び/又は境界ボックス335を表示することができる。
【0059】
或いは、少なくとも一部の実施形態では、画像データに偽陽性、偽陰性及び/又は盲点の位置が含まれ得るとユーザが疑った場合に、システムは、ユーザからの入力を受け取って、管腔サンプルのプルバック長さ全体に沿って任意のそのような位置をマークするように構成されてよい。画像データの取得後、ユーザが潜在的な偽陽性、偽陰性又は盲点の位置を疑う場合、ユーザは、第2のパネルに表示された管腔サンプルの長さに沿って線インジケータ315の位置を動かすことができ、ユーザが特定の位置で線インジケータ315をクリック又はドロップしたときに、システムは、対応する蛍光データに境界ボックス335を追加して、疑わしい位置をマークすることができる。
【0060】
<マルチモダリティOCT-蛍光画像のアルゴリズム分析>
図4は、本開示の一実施形態に係る、偽陽性、偽陰性及び/又は盲点の位置を検出するためのOCT-蛍光データの画像処理のための全体ワークフローの例示のアルゴリズム(プロセス400)を示す。一実施形態では、イメージングシステム100のプロセス400は、コンピュータ200のCPU191が、記憶装置192のROM/RAMに格納された実行可能命令又はプログラムを実行することによって、実現される。他の実施形態では、プロセス400は、CPU191以外の任意の適切な計算機器(リモートクラウドコンピューティング等)によって実行されてよい。本明細書で用いられる場合、プロセス又は「アルゴリズム」との用語は、論理的又は数学的な問題を解決するための、又は組織的プロセスを実行するためのステップの有限シーケンスを指す。アルゴリズムは、任意の理解可能な用語で記述されてよく(例えば数式、散文又はフローチャートとして)、或いは、先に述べたハードウェア構造とともに、本開示のブロック図及びフローチャートの様々な態様を実施するための十分な構造を提供する他の方式で記述されてよい。以下の詳細な説明の一部は、メモリに格納されたデータセットに対するプロセッサ(例えばCPUやMPU)の動作のアルゴリズム及び象徴的表現に関して提示される。これらのアルゴリズムの記述及び表現は、当業者が本明細書に開示される様々な実施形態を実施する際に用いることができる。本開示では、各フローチャートは、明確かつ固有の結果を生成する一連の工程を記述する。工程には、ハードウェア構造の物理的操作と、画像データセットのソフトウェア操作及び/又は数学演算との組合わせが含まれ得る。通常、必ずしもそうではないが、物理量は、具体的な有形の有用な結果を達成するために検出、保存、転送、結合、比較その他の操作が可能な、電気信号、光信号又は磁気信号の形をとる。本開示の記載全体を通して、処理、コンピューティング、計算、決定等の用語は、コンピュータシステム、論理回路構成、プロセッサ、或いは、情報をデータセットとして操作及び変換し、物理的(電子)出力(画像、テキスト、音、動き等)を表す結果を出力する他の類似の電子機器の作用及びプロセスを指す。
【0061】
再び図4を参照すると、偽陽性、偽陰性及び/又は盲点の検出のためのワークフロープロセス400には、一連のステップS402~S417が含まれる。説明を簡潔にする目的で、プロセス400は一連のステップとして図示及び記載されるが、当然のことながら、このようなプロセスは、当該ステップが提示される順序によって限定されるものではない。一部のステップは、異なる順序で、かつ/又は、互いに同時に発生する可能性があり、それは、図示及び記載のものとは異なる可能性がある。一部の実施形態では、所与のプロセスを実施するために必要となるブロック又はステップは、図示されるブロック又はステップの全てよりも少ないことがある。他の実施形態では、プロセスのステップ又はブロックは、組み合されてもよいし、或いは複数のサブステップ又はサブコンポーネントに分割されてもよい。更に、代替であるが均等であるステップ又はプロセスに、本開示全体から推論される追加の図示されていないブロックが採用される可能性がある。プロセス400において、ワークフローはステップS401から始まり、ここでは、コンピュータ200が、図1のOCTモダリティ及び蛍光モダリティを制御して、最初にプルバック動作を開始する。当業者には知られているように、プルバックの前に、システムは最初にクリアランスプロセスを実行して、カテーテル先端の周囲の血液を“洗い流す”。次に、ステップS402において、システムは、トリガ信号を用いて、OCT画像と蛍光画像のデータを同時に取得する。OCT-蛍光画像データは、同時に(すなわち、ほぼ同じ時間に)取得し、コレジストレーションする(すなわち、同じ位置から)ことができる。ただし、各タイプのデータは、図1に示される2つの別個のイメージングモダリティにより、別々に収集することができる。蛍光画像データは、NIRAF又はNIRFのデータセット(蛍光強度)を含むことができ、OCTデータは、複数のAスキャンから成る2D断層画像(ピクセルデータ)、或いは、複数の2D画像(Bスキャン)によって形成される3D画像ボリューム(ボクセルデータ)を含むことができる。
【0062】
ステップS404において、コンピュータ200は、取得された画像データを処理して、OCT画像データから管腔エッジを検出する。管腔エッジ検出は、OCTデータの各Aラインを分析し、OCTデータの各フレームを分析し、かつ/又は、OCTデータの3Dボリュームをスライス及び分析することによって、実行することができる。管腔エッジ検出の様々な例は、本出願人によって開示済みの米国付与前特許出願公開第2019/0374109号に記載されており、当該開示は、参照により全体として本明細書に援用される。
【0063】
ステップS406において、コンピュータ200は、NIRAF距離較正を実行する。NIRAF距離較正では、ステップS402で取得されたOCT-蛍光データセットから、OCT-蛍光データのセクションが選択される。データセクションは、ヘリカルスキャンデータの単一フレームから選択されてもよいし、複数のデータフレームから選択されてもよい。好ましくは、データセクションを選択する前に、例えば、ステップS402で取得されたOCT-蛍光データセットに平滑化フィルタを適用することにより、蛍光データ内の外れ値データ点を除去することができる。選択されたデータセクションから、最大蛍光値が計算され、蛍光検出閾値と比較される。一部の実施形態では、システム検出限界(LOD)値を蛍光検出閾値として用いることができる。LOD値は、システムパラメータに基づいてよく、或いは、ユーザによって実験的に決定されてよく、或いは、システム較正データを用いて決定されてよい(例えば、バックグラウンド信号の測定に基づいて)。最大蛍光値とLOD値の比較結果に基づいて、選択されたデータセクションに様々なアルゴリズムを適用して、NIRAF距離較正を実行することができる。例えば、出願人が以前出願した米国仮特許出願第62/925655号(現在は特許出願第17/077894号、米国付与前特許公開第2021/0121132号として公開)を参照されたい。また、出願人の米国付与前特許出願公開第2019/0298174号も参照されたい。これらは両方とも、あらゆる目的で参照により本明細書に援用される。距離較正の更なる例は、Ughi他の“Dual modality intravascular optical coherence tomography(OCT)and near-infrared fluorescence(NIRF)imaging:a fully automated algorithm for the distance-calibration of NIRF signal intensity for quantitative molecular imaging”(the International Journal of Cardiovascular Imaging volume 31、259~268頁(2015))に記載されている。
【0064】
ステップS408において、コンピュータ200は、OCTデータを分析し、OCT画像から管腔サンプル及び/又はカテーテルの特徴的特性を検出する。OCTの特徴的特性としては、プラークタイプ、外弾性板(EEL)、幾何学的特性(例えば血管側枝の存在)、フラッシングの適切性(例えば、管腔内に残留血液が残っているかどうかを決定すること)、シース直径(例えば、カテーテルシース直径に変形があるかどうかを決定すること)等が挙げられる。OCTデータ分析は、Aライン毎、或いはAライン10本(又は他の所定数)毎、或いは断層像全体について、フレーム毎に行うことができる。更に、分析の精度を高めるために、フレーム間分析が実行されてよい。フレーム間分析には、標的フレーム前後の近傍のフレーム(例えば10個のフレーム(又は所定数のフレーム))を比較することが含まれ得る。特徴的特性の検出の更なる改善は、図7A図8A及び図8Bを参照して後述するように、OCTデータを対応する組織学的画像及び/又は共焦点画像と比較することによって、達成することができる。
【0065】
ステップS410では、コンピュータ200が、ステップS408で検出された特徴的特性に基づいて、潜在的偽陽性ケース又は潜在的偽陰性ケースを検出し、各潜在的ケースに関連する情報をラベル付けして保存する。同様に、ステップS412において、コンピュータ200は、潜在的盲点ケースを検出し、各潜在的盲点ケースをラベル付けして保存する。潜在的な偽陽性、偽陰性及び/又は盲点のケースを検出する例示のプロセスは、図7図8A及び図8Bを参照して後述する。
【0066】
一実施形態では、盲点は、生物学的理由、病理学的理由及び/又は技術的理由から、MMOCTカテーテルが蛍光信号を検出できないスポットとして定義される。例えば、管腔壁の病変の光学的特性は様々であるので、特定のプラーク病変タイプでは、他のプラークタイプと比較して、カテーテルに蛍光信号が送られない場合がある。この場合、イメージングカテーテルを介して蛍光が検出されることはない。しかしながら、蛍光信号が検出されないような場所において、OCT信号による組織構造の変化の特定が陽性となる可能性がある。したがって、システムは、OCT画像データから、プラークタイプ等の特徴的特性に基づいて、潜在的な偽陽性、偽陰性及び/又は盲点の位置を伴う少なくとも1つの領域が画像に含まれるかどうかを決定するように構成される。所定のサイズよりも大きい(例えば、所定数のピクセル又はボクセルよりも多い)領域が潜在的な偽陽性、偽陰性及び/又は盲点の位置として決定された場合、システムは、管腔サンプル170の位置を記録し、後に、その蛍光の有無を確認できるようにユーザに対して当該位置を表示するように構成される。
【0067】
したがって、ステップS414において、コンピュータ200は、検出結果を保存し、かつ/又は、表示装置300に出力し、結果をグラフィカルユーザインタフェース(GUI)(例えばGUI321)に表示する。具体的には、図3に示されるように、コンピュータ200は、潜在的未定義データの長さ方向位置を示す縦断像に境界ボックス335を表示するようにプログラムされてよく、また、潜在的未定義データの径方向位置(例えば血管層)を示す断層像のエッジ周辺に点線の部分的なリングとして示されるマーカ325を表示することもできる。
【0068】
ステップS416において、コンピュータ200は、表示装置300を制御して、表示された位置が真の偽陽性又は真の偽陰性の信号であるかどうかを見直して確認するようユーザに促す。このステップ416では、コンピュータ200は、特に、盲点位置を見直し、当該位置が真陽性、真陰性又はその他(例えば画像アーチファクト)であるかどうかを視覚的に決定するようユーザに促すように構成されてよい。
【0069】
ステップS417において、コンピュータ200は、全てのフレーム、又は所定数のフレーム、又は完全な断層画像が処理されるまで、ステップS404~S416のプロセスを繰り返すかどうかを決定するよう、再びユーザに促すように構成される(又は、繰り返すかどうかを自動的に決定するように構成される)。
【0070】
図5は、本開示の別の実施形態に係る、偽陽性、偽陰性及び/又は盲点の位置を検出するためのワークフロープロセス500を図示する。イメージングシステム100のプロセス500は、コンピュータ200のCPU191が、記憶装置192のROM/RAMに格納された実行可能命令又はプログラムを実行することによって、実現される。ステップS502、S504、S506は、それぞれステップS402~S406と同様である。ステップS508において、コンピュータ200は、OCT画像内の管腔エッジがカテーテルシースから特定の距離以内に位置するかどうかを検出する。ここで、距離は、例えば10ミクロンのような短い距離であるはずであり、これはOCT分解能に依存する。ステップS508の結果がYESである(すなわち、管腔エッジがカテーテルシースから所定の距離以内にある)場合、システムは、ステップS510において蛍光レベル(蛍光強度値)を確認する。蛍光信号が陽性である場合、例えば、蛍光信号がシステム検出限界(LOD)を上回り、かつ/又は、ユーザ又はシステムによって設定された所定の閾値を上回る場合、システムは、その位置が潜在的偽陽性であると決定する。言い換えれば、ステップS510では、蛍光が陽性検出される理由は、カテーテルが管腔エッジに触れていることによる可能性が最も高い。この場合、システムは、ステップS512において、その位置を潜在的偽陽性ケースとして保存する。
【0071】
一方、ステップS508又はステップS510の結果がNOである場合、システムは、残りのステップに進んで、潜在的盲点ケースが存在するかどうかを決定する(ステップS514~S518)。盲点ケースの検出では、システムはまず、蛍光信号が検出されない理由があるかどうかを確認する。潜在的盲点の理由としては、生物学的理由、病理学的理由及び/又は技術的理由のうちの1つ以上が挙げられる。生物学的理由としては、例えば、分子蛍光源が励起光の届く範囲よりも離れた位置にあることや、分子蛍光源の量が少ないことがあり得る。すなわち、蛍光信号が検出されない生物学的理由が存在する。病理学的理由としては、例えば、管腔サンプルの一部の領域に石灰化プラークが存在することや、血栓が存在すること、蛍光を減衰させたりカテーテルに到達するのを妨げたりする他の構造物が存在することがあり得る。技術的理由としては、例えば、システム検出限界が高いことや、蛍光信号を陽性とみなすための閾値が高いこと、励起光のパワーが低いこと、カテーテルから管腔エッジまでの距離が遠すぎることがあり得る。
【0072】
したがって、ステップS514において、システムは、OCT信号を確認して、石灰化プラークが検出されるかどうかを決定する。代替の実施形態では、システムは、任意の他の因子を検出するように構成されてよい。システムがOCT画像データにおいて盲点の理由となり得るものを特定した(例えば石灰化プラークが検出された)場合、システムは、ステップS516において蛍光信号レベルを確認する。例えば、蛍光信号がシステム検出限界を下回り、かつ/又は、ユーザ又はシステムによって設定された所定の閾値を下回ることにより、蛍光信号が陰性である(すなわち蛍光信号が検出されない)場合、システムはステップS518に進み、ステップS518において、その位置を潜在的盲点としてマークする。ステップS508~S518の分析のプロセスは、プルバック動作の全体にわたってリアルタイムで連続的に実行されてよく、また、Aラインスキャン毎、所定数のAライン毎(例えば10個のAラインスキャン毎)、或いは断層画像全体で行われてよい。ステップS520において、コンピュータ200は、検出結果を表示装置300に出力し、図3に示されるように結果をグラフィカルユーザインタフェース321に表示する。ここでもコンピュータ200は、ステップ416と同様に、ユーザ自身の経験や示されたデータに関する知識に基づいて、マークされた各位置を確認するよう、能動的にユーザに促すことができる。すなわち、ユーザは、潜在的盲点ケースを真の偽陽性又は真の偽陰性のケースとすべきかどうかを確認することができる。
【0073】
図6は、本開示の更に別の実施形態に係る、偽陽性、偽陰性及び/又は盲点の位置を検出するためのワークフロープロセス600を図示する。イメージングシステム100のプロセス600は、コンピュータ200のCPU191が、記憶装置192のROM/RAMに格納された実行可能命令又はプログラムを実行することによって、実現される。ワークフロープロセス600は、主に“偽陽性”の検出に重点を置いている。ステップS602、S604、S606は、それぞれ図4のステップS402~S406と同様である。ステップS608は、ステップS508と同様である。すなわち、コンピュータ200は、管腔エッジがカテーテルシースから所定の距離以内にあるかどうかを決定する。所定の距離は、例えばおよそ10ミクロンのように小さいべきであり、主としてシステムのOCT最大分解能に依存する。カテーテルが管腔エッジから所定の距離以内にある場合(S608でYES)、プロセスはステップS610へ進む。ステップS610において、コンピュータ200は、“較正NIRAF”の信号が陽性であるかどうかを決定する。ここで、実際のNIRAF信号がカテーテルによって収集され、システムによって検出された場合に、NIRAF信号は“陽性”である。NIRAF信号が検出された場合(S610でYES)、プロセスはステップS612に進む。NIRAF信号が検出されなかった場合(S610でNO)、プロセスは、そのまま停止又は終了のステップに進む。すなわち、管腔エッジがカテーテルシースから所定の距離以内にないとコンピュータ200が決定するとすぐに、潜在的偽陽性ケースを検出するプロセスは終了する。ここでも、システムコンピュータ200は、特定の関心領域に関する信号強度閾値等の他のパラメータと組み合わせて、管腔エッジ距離を考慮することができる。
【0074】
ステップS612では、外れ値ケースを回避するために、コンピュータ200は、断層像においてNIRAF円弧のサイズ(角度)を確認することもできる。すなわち、システムは、断層像のNIRAF信号が最小(MIN)角度よりも大きいかどうかを決定する。NIRAF信号の円弧が特定の度数よりも大きい(例えば10度よりも大きい)場合(S612でYES)、NIRAF信号は確定され、それ以上処理される必要がないので、プロセスはプロセスの停止又は終了に進む。NIRAF信号が陽性である場合(S610でYES)、外れ値が除去された後(S612でNO)、コンピュータ200は、ステップS614において管腔の直径を確認する。管腔直径が小さい(最小閾値よりも小さい)場合、現在のOCT画像は、管腔サンプル内の病変がある領域から取得された可能性が高い。管腔サンプルの壁に病変がある場合、蛍光が観察される可能性が高い。したがって、ステップS614の結果がYESである(すなわち、管腔直径が予想よりも小さい)場合、コンピュータ200は、信号が適切であることを確認(データを認証)し、プロセスを終了する。
【0075】
ステップS616において、管腔直径が最小よりも小さくない場合、システムコンピュータ200は、近くのフレームがNIRAF信号を示すかどうかを確認する(フレーム間分析)。近くのフレームの多くがNIRAF信号を示す場合、現在のフレームが真の蛍光信号を示す可能性が高い。したがって、ステップS616(YES)において、フローはプロセスの停止又は終了に進む。ステップS616において、近くのフレームに陽性のNIRAF信号が存在しないと決定された場合、現在のフレーム(又はAスキャン)が潜在的偽陽性である(すなわち真の蛍光信号ではない)可能性が高い。ステップS612~S616の順序は、変更、入替え又は組合わせが可能であり、1つ以上のステップが選択又はスキップされてもよい。ステップS618において、コンピュータ200は、現在のフレームの位置を潜在的“偽陽性”ケースとしてマークする。ステップS620において、ステップS520と同様に、システムは、潜在的偽陽性位置を保存及び表示し、又は、当該位置の表示を確認するようユーザに促す。例えば、システムは、処理データ内に潜在的“偽陽性”情報を伴う位置が1つ以上存在することを、ユーザに知らせる(メッセージを表示する)ように構成(プログラム)されてよい。次に、ユーザは、スイッチ350を切り替えて、各偽陽性位置のステータスを手動で観察及び確認することができる。
【0076】
引き続き図6を参照すると、ステップS608では、管腔エッジとカテーテルシース(イメージングプローブ)の間の距離は、およそ10μmのように小さい距離である必要がある。この距離は、一般にOCT分解能、ビームスポット直径、光源パワー等に依存するので、管腔エッジとカテーテルの間の距離は、ユーザによって手動で設定されてもよいし、システムに予め保存されてもよい。ステップS612において、閾値円弧角度は、約5度、10度、20度等の所定の円弧であってよく、或いは、撮像される管腔のタイプ毎に異なってもよい。断層像の閾値円弧角度を定める目的は、管腔に対するカテーテルの付着やその他アーチファクトの外因による小さな信号スパイクを回避することである。ステップS614において、管腔直径サイズは、最小閾値直径よりも大きい可能性があり、例えば一部の例では、2mmの最小管腔直径が予想される場合がある。或いは、検査対象の管腔や、使用するカテーテルのサイズ/タイプに応じて、ユーザによって変更されてよい。参照OCTフレームが決まると、参照フレーム内の管腔直径に基づいて最小閾値直径を決定することができる。例えば、参照フレームの管腔直径の80%を、最小閾値直径として用いることができる。ステップS616において、“近くのフレーム”の数及び/又は距離は、システムによって予め決められてもよいし、ユーザによって設定されてもよい。例えば、ユーザによって、選択フレーム又は標的フレームの約1mm距離以内のフレームの数が設定されてよい。
【0077】
リスクの高い冠動脈プラークにおいて真の自家蛍光及び/又は潜在的盲点の位置を決定するために、本開示は、病理組織学的な相関分析によって近赤外自家蛍光(NIRAF)の発生源を確認することを提案する。この分析は、高リスクプラークに関連する形態学的特徴と、カテーテルベースのマルチモダリティOCT-NIRAFイメージングを介して得られた高NIRAF領域との間に、正の相関があることを示した先行研究に基づく。その後の生体外(ex vivo)研究では、NIRAFが高リスクプラークの指標のひとつであるプラーク内出血(IPH)のマーカであることが示唆された。本研究は、組織切片を用いて、高NIRAFの発生源及び/又はその盲点を明らかにすることを目的とする。ヒト死体冠動脈からのホルマリン固定パラフィン包埋サンプルから作製した連続切片の組織スライドを、グリコフォリンA(IPHマーカ)とズダンブラック(セロイドマーカ)で染色し、隣接する未染色スライドから635nmの励起光と655~755nmの蛍光放射によって得た共焦点NIRAF画像と比較した。各画像を、管腔のセントロイドを中心に8個の45度区画に分割した。NIRAF又は染色の陽性について、各区画を視覚的に分析した。この陽性とは、区画内の内膜の10%超がNIRAF、グリコフォリンA又はズダンブラック染色を含んだものと定義される。
【0078】
図7は、本明細書に開示される原理に従って本願の発明者によって実施された、例示の病理組織学的相関ケーススタディの例示の結果を図示する。これらの結果は、真の蛍光が検出された事例と、蛍光源の潜在的な偽陽性、偽陰性及び/又は盲点が検出された事例とを示す。この研究では、管腔サンプルの複数のマルチモダリティカテーテルベースの画像906を、対応するヘマトキシリン・エオジン(H&E)画像902、マッソン・トリクローム画像904、共焦点NIRAF画像908、及び共焦点管腔画像910と比較する。結果901は、図7の左端列の行A~Dに集計されている。H&E画像902には、第1の画像902A、第2の画像902B、第3の画像902C及び第4の画像902Dが含まれる。トリクローム画像904には、第1の画像904A、第2の画像904B、第3の画像904C及び第4の画像904Dが含まれる。OCT-NIRAF画像(カテーテル画像)906には、第1の画像906A、第2の画像906B、第3の画像906C及び第4の画像906Dが含まれる。共焦点NIRAF画像908には、第1の画像908A、第2の画像908B、第3の画像908C及び第4の画像908Dが含まれる。共焦点管腔画像910には、第1の画像910A、第2の画像910B、第3の画像910C及び第4の画像910Dが含まれる。
【0079】
H&E画像902とマッソン・トリクローム画像904は、両方とも組織構造画像であり、破綻プラーク、線維性アテローム、線維石灰化プラーク、病理学的内膜肥厚、線維性プラーク及び内膜過形成に分類される病変を明らかにする。共焦点NIRAF画像908と共焦点管腔画像910は、管腔サンプルの冠動脈壁におけるNIRAFの微小局在を評価するために、共焦点蛍光顕微鏡により、H&E切片とトリクローム切片の近く(例えば数ミクロン以内)の管腔切片から取得された画像である。2組の励起波長と放射波長を用いて、共焦点NIRAF画像と共焦点管腔画像を取得した。405nmの励起と425~475nmの放射を用いて、組織全体の形状及び向き(共焦点管腔画像910)を評価し、635nmの励起と655~755nmの放射を用いて、管腔エッジ付近の微視的なNIRAF分布を特定した(共焦点NIRAF画像908)。
【0080】
共焦点NIRAFとカテーテルベースNIRAFにおける蛍光の局在を決定するために、共焦点NIRAF画像908~910とOCT-NIRAF画像906とのレジストレーションを行った。レジストレーションには、(1)共焦点NIRAF画像とOCT-NIRAF画像をマッチングし、(2)共焦点NIRAF画像を変換してOCT-NIRAF画像と整合させるという、2つのステップがある。図8Aは、OCT-NIRAF画像906を共焦点管腔画像910及び共焦点NIRAF画像908とレジストレーションするための例示のプロセスを示す。マッチング(ステップ1)では、H&E画像とマッソン・トリクローム画像(組織構造画像)を用いて、管腔の特徴的特性を特定した。まず、線維石灰化プラーク及び/又は側枝を含む組織構造画像を選択し、それらの形態学的特性に基づいて、対応するOCT-NIRAF画像を見つけた。他の形態学的特性としては、管腔破綻、線維性アテローム、線維石灰化プラーク、病理学的内膜肥厚、線維性プラーク及び内膜過形成のうちの1つ以上等の、プラークタイプの特性が挙げられる。残りの組織構造画像(特定可能な形態学的特性(例えば線維石灰化プラーク及び/又は側枝)のない画像)については、管腔直径及びプルバック情報(スキャンの速度及び方向等)に基づいてマッチするペアに基づいて、対応するOCT-NIRAF画像を見つけた。マッチング後、変換(ステップ2)では、共焦点NIRAF画像を変換して、管腔エッジを一致させることによってOCT-NIRAF画像と整合させた。
【0081】
図8Aでは、共焦点NIRAF画像908がアフィン変換808によって変換されて、管腔エッジを一致させることによってOCT-NIRAF画像と整合されている。共焦点管腔画像と共焦点NIRAF画像は、管腔のほぼ同じ部分から取得されたので、先に述べたように、共焦点管腔画像で検出された管腔エッジを共焦点NIRAF画像からの管腔エッジとして使用した。このプロセスでは、まず、共焦点画像とOCT-NIRAF画像の両方において管腔エッジを特定し、両画像から、プラークタイプ及び/又は側枝に基づいて管腔エッジの特徴点を特定した。次に、共焦点NIRAF画像908にアフィン変換808を適用して、検出された管腔エッジを整合させるとともに、OCT-NIRAF画像906及び共焦点管腔画像910において特定された同じ特徴点を整合させた。結果として得られたレジストレーション済み画像810を、図8Aの下部に示す。
【0082】
共焦点NIRAF画像とカテーテルベースNIRAF画像の蛍光陽性を決定するために、レジストレーションされた共焦点NIRAF画像とOCT-NIRAF画像(レジストレーション済み画像810)は、等しい寸法の複数の区画に分割される。図8Bは、レジストレーションされたOCT-NIRAF・共焦点NIRAF画像810を複数の区画(S)に分割した例を示す。この例では、レジストレーション済み画像810を、OCT-NIRAF画像でのカテーテル位置を中心に、それぞれ45度の8つの区画(S1、S2、S3、S4、S5、S6、S7、S8)に分割した。
【0083】
45度の区画毎に、共焦点NIRAFとカテーテルベースNIRAFの陽性を以下のように評価した。共焦点NIRAF画像では、画像のZスタックの強度を平均した後、8ビットグレースケールレベルの上位50%の閾値を用いて画像を2値化した。この2値化の閾値は、有資格の病理学者が元の画像と2値化画像を比較することによって、許容可能であると見なされた。2値化後、45度の区画毎に、管腔エッジから深さ0.1mm刻みで共焦点NIRAF陽性信号の領域を評価した。2値化領域のサイズが血管壁領域の5%よりも大きい場合に、各区画を共焦点NIRAF陽性と見なした。血管壁領域は、45度区画内の実際の管腔直径の平均から計算し、内膜及び中膜の厚さが約1.0mmであると仮定した。カテーテルベースNIRAFは、45度区画内のAラインの60%超が、システム検出限界(LOD)よりも高い較正NIRAF強度を有する場合に、45度区画内で陽性であると見なした。当然のことながら、共焦点NIRAF画像における上記のパラメータ(区画の数及びサイズ、2値化領域のサイズ、内膜及び中膜の厚さ等)、及び/又は、カテーテルベースNIRAFのパラメータは、用途及び/又はユーザの好みに応じて変更されてよい。例えば、内膜及び中膜の厚さが約0.5mmである一部の実施形態では、45度円弧の少なくとも5%がシステム検出限界(LOD)を上回る場合に、45度区画を陽性と見なすことができる。すなわち、信号陽性の閾値は変更することができ、また、潜在的な偽陽性、偽陰性及び/又は盲点のケースを決定するためのデータ分析の一般概念から逸脱することなく、データを調節することができる。
【0084】
各45度区画について共焦点NIRAFとカテーテルベースNIRAFの陽性を評価した後、共焦点NIRAFをグラウンドトゥルースとして用いて、感度、特異度、陽性適中率(PPV)及び陰性適中率(NPV)に関して、共焦点NIRAFとカテーテルベースNIRAFの相関を評価した。ここで、感度は、真陽性(TP)を真陽性+偽陰性の合計で割った比率であり、すなわち、感度=TP/(TP+FN)である。特異度は、真陰性(TN)を真陰性+偽陽性の合計で割った比率であり、すなわち、特異度=TN/(TN+FP)である。PPV=TP/(TP+FP)であり、NPV=TN/(TN+FN)である。
【0085】
組織構造(H&E、マッソン・トリクローム)画像とOCT-NIRAF画像と共焦点顕微鏡画像との比較結果を、図7の列901に示す。行A:マーカ320によって示されるカテーテルベースNIRAFは、第1のOCT-NIRAF画像906Aにおいて、マーカ321によって示される同じ領域(第1の共焦点NIRAF画像908Aにおいて共焦点NIRAFが観察された)で観察された。すなわち、共焦点NIRAF画像908Aにおいて観察された線維性アテロームにより、OCT-NIRAF画像906AのNIRAFデータが確認された。したがって、これは真陽性ケースである。行B:第2の共焦点NIRAF画像908Bでは共焦点NIRAFが確認されなかったので、第2のOCT-NIRAF画像906BではカテーテルベースNIRAFが観察されなかった。したがって、これは真陰性ケースである。行C:第3の共焦点NIRAF画像908Cでは共焦点NIRAFは観察されなかったが、カテーテルベースNIRAFは、マーカ320によって示されるように、OCT-NIRAF画像906Cにおいて陽性を示した。このカテーテルベースNIRAFは、カテーテル160が管腔壁に付着(接触)したことが原因であると考えられる。したがって、このケースは、潜在的偽陽性ケースとしてマークされる。行D:第4のOCT-NIRAF画像906DではカテーテルベースNIRAFが観察されなかったが、共焦点画像908D、910Dでは、マーカ321によって示されるように、共焦点NIRAFが観察された。更に、組織学的画像902D、904Dも、マーカ319によって示されるように線維石灰化プラークを示している。したがって、このケースは、潜在的偽陰性ケースとして決定される。
【0086】
より具体的には、図7の左端列に、例えばコンピュータ200によって実行される自動データ分析からの検出結果901を示す。行Aでは、画像分析の結果として、蛍光の検出が“真陽性”であることが示されている。具体的には、行Aは、OCT-NIRAF画像(カテーテルNIRAF)のOCTデータの分析により、OCT-NIRAFデータを対応する共焦点顕微鏡画像(共焦点NIRAF)と比較することによって、真のNIRAFデータの存在が決定されたケースを表す。先に説明したように、組織学的画像を用いて、OCTデータによって検出された(又は、OCTデータに基づいて疑わしい)形態的な特徴的特性を確認することができる。行Bは、OCT-NIRAF画像のOCTデータの分析によってNIRAFデータの存在が検出されないケースを表す。これは、対応する共焦点NIRAF画像においてNIRAFが観察されない際に、組織学的画像と共焦点画像の分析によって確認される。行Cは、OCT-NIRA画像のOCTデータの分析がNIRAFデータの存在を示すように見えるケースを示す。しかしながら、対応する共焦点NIRAF画像では、NIRAFは明確に観察されない。更に、組織学的画像(H&Eとトリクローム)は、プラークや類似の構造を示す形態学的特性を示さない。したがって、この結果は、カテーテル160が管腔表面とほぼ接触している(例えば、カテーテルの遠位先端がサンプル表面に触れている)ことが原因である可能性が高い。したがって、OCT-NIRAF画像906Cは、ユーザによって確認される必要がある。したがって、システムは、該画像フレームを潜在的偽陽性としてマークし、その後、確認のためにこの情報をユーザに提示することができる。一方、列Dでは、共焦点NIRAF画像908Dと共焦点管腔画像910DにおいてNIRAFが観察されるが、OCT-NIRAF画像906DにおけるOCTデータの分析では、NIRAF信号は全く示されない。列Dでは、組織学的なH&E画像とトリクローム画像も、血管壁の石灰化が原因で管腔の直径が小さくなっていることを示しているように見える。それにも関わらず、OCT-NIRAFデータは蛍光データを示していない。OCT-NIRAF画像906Dにおいて蛍光が検出されない理由は、石灰化プラークのある血管の領域が、蛍光信号を減衰させたり、蛍光信号が血管からカテーテルに伝わるのを妨げたりしたことがあり得る。したがって、列Dは、生物学的理由、病理学的理由及び/又は技術的理由からMMOCTカテーテルが蛍光信号を検出できないという、潜在的な盲点又は偽陰性のケースを表す場合がある。このケースでも、OCT-NIRAF画像906Dは、ユーザによって確認される必要がある。ただし、ユーザの意思決定プロセスを緩和するために、システムは、このような潜在的な偽陽性、偽陰性及び/又は盲点のケースの位置を自動的にレジストレーション及び/又は表示する。
【0087】
図7を参照すると、カテーテルベースNIRAF検出の精度は、図4図5図6及び図8A図8Bに関して本開示に記載される画像処理アルゴリズムの1つ以上を適用することによって、より精確に確立することができる。管腔エッジに比較的近い領域に特定量の共焦点NIRAFが観察される場合に、カテーテルベースNIRAFが存在する。しかしながら、単にOCT-NIRAF画像を観察したり、(組織構造画像からの)形態学的特性に従って各OCT-NIRAF画像を自動的に分類したりしても、カテーテルベースNIRAFが存在するかどうかを確認することは困難である。したがって、所与の画像において潜在的な偽陽性、偽陰性及び/又は盲点の位置の実際のステータスをユーザが手動で確認できるように、グラフィカルユーザインタフェースを備えたマルチモダリティイメージングシステムを構成することが有利である。
【0088】
<潜在的な偽陽性、偽陰性及び/又は盲点の位置の簡易表示>
図9A図9Fは、マルチモダリティOCT-蛍光画像の潜在的な偽陽性、偽陰性及び/又は盲点の位置を表示する方法の例示の実施形態を図示する。図9A図9B図9C図9D図9E及び図9Fによれば、蛍光データの潜在的な偽陽性、偽陰性及び/又は盲点の位置の特定は、マルチモダリティ画像の断層像及び縦断像のうちの1つ以上に表示することができる。先に述べたように、断層像は、蛍光信号が陽性である位置を示す、或いは潜在的な偽陽性、偽陰性及び/又は盲点の位置が存在する位置を示す、回転位置又は円周方向位置を提供することができる。偽陽性、偽陰性及び/又は盲点の位置は、様々な方法で表示することができる。例えば、断層像内に潜在的な偽陽性位置が存在する場合、色分けされるか又は特定パターンをもつ線インジケータを、検出された又は疑わしいNIRAF位置の上や付近に表示することができる。システムが潜在的な盲点、偽陰性又は偽陽性の結果について特定のパラメータ(生物学的理由、病理学的理由、技術的理由等)を特定するようにプログラムされる場合、特定の原因、理由又はパラメータに従って、そのような結果の位置を表示することができる。例えば、各タイプの位置(偽陽性、偽陰性又は盲点)は、各タイプのケースを表す異なる色の線、異なるパターン、グレースケールレベルの異なる値等を用いて表示することができる。同様に、ある位置を偽陽性、偽陰性又は盲点として指定する理由(例えば生物学的、病理学的、又は技術的な理由)は、それぞれ、特定の色やグレースケールの値又はパターンを用いて示すことができる。
【0089】
図9Aは第1のケース(ケース1)を図示しており、システムは、蛍光信号の検出の陽性を確認し、その結果をマルチモダリティ画像の断層像及び/又は縦断像に表示することができる。図9Bは第2のケース(ケース2)を図示しており、システムは、蛍光信号の存在がないこと(すなわち非存在)を確実に確認し、その結果をマルチモダリティ画像の断層像及び/又は縦断像に表示することができる。蛍光信号の陽性検出(又は検出がないこと)を確認する方法又はプロセスは、例えば先に参照した刊行物US2014/01276107に記載されているように、既知である。この刊行物に記載されているように、蛍光信号の有無は、組織のタイプ、組織内の特定の物質の濃度、癌発症前の悪性度のレベル又はステージ等に対応する信号強度レベルに基づくことができる。本開示では、MMOCTシステムは、図7及び図8A図8Bを参照して前述したプロセスに従って、蛍光の陽性(又はその欠如)を決定するように構成される。更に、システムは、管腔サンプルのマルチモダリティ画像のOCTデータに関して、蛍光信号の位置をユーザに通知するように構成される。ユーザの混乱を最小限に抑えるために、システムは、蛍光データの位置を示す表現(マーカ)とともに、マルチモダリティ画像の簡易版(例えばサイズを縮小した画像)を表示する。
【0090】
図9Aでは、システムは、断層像としてマルチモダリティ画像906を表示し、OCTデータ310は、断層像の縁周囲のマーカ720(第1のマーカ)によって部分的に囲まれている。マーカ720は、管腔サンプルの壁上の12時と3時の間の領域で陽性蛍光信号が検出されたことを、ユーザに通知する。マーカ720は、縦断像においても、OCTデータ310の縦断像にオーバーレイされて(重ね合わされて)、或いは縦断像と並べられて示される。縦断像では、線インジケータ315は、管腔の長さに沿って断層像が撮影された位置を示す。OCTデータの断層像及び縦断像は、両画像において同じ色や同じ陰影、同じパターンを用いる第1のマーカ720とともに表示される。
【0091】
図9Bでは、システムは、蛍光データに関するいずれの種類のマーカも用いず、OCTデータの断層像を表示する。すなわち、第2のケースでは、線インジケータ315の位置に蛍光信号が存在しないことをシステムが確認すると、マーカ720を用いずに縦断像と断層像の両方が表示される。なぜなら、このケースは、真陰性の結果(すなわち、マルチモダリティ画像906が蛍光信号を含まないケース)を示すからである。
【0092】
図9Cは第3のケース(ケース3)を図示しており、システムは、マルチモダリティ画像が蛍光信号を含むが、蛍光信号は潜在的偽陽性の結果である可能性があると決定している。このケースでは、システムは、OCTデータの分析に基づいて、蛍光信号が“偽陽性”の結果である可能性が最も高いと決定している。例えば、OCTデータ310の縦断像では、線インジケータ315の位置に、蛍光信号を生成し得る構造的特徴は示されていない。それにも関わらず、陽性の蛍光信号が検出される。蛍光が存在する理由は、カテーテル160から管腔エッジまでの距離が所定の距離以内にあることがあり得る。この潜在的偽陽性ケースは、図7に示された前述の画像906Dのケースと同様である。このケースでは、マーカ720は、蛍光の存在を示すように表示される。更に、蛍光信号が潜在的偽陽性であることをユーザに通知するために、システムは、追加のマーカ(第2のマーカ)722を表示する。第2のマーカ722は、第1のマーカ720とは異なる別個の色や陰影、パターンで追加される。独特かつ固有のものであるために、断層像及び縦断像のうちの少なくとも1つの第2のマーカ722は、ユーザの注意を引くために、断続的に点滅したり、断続的にサイズを増減させたり、色を変えるように構成されてよい。
【0093】
図9Dは第4のケース(ケース4)を示し、マルチモダリティ画像906は、蛍光信号のないOCTデータの断層像を示す。しかしながら、OCTデータ310のシステム分析では、蛍光源となり得る特徴的な構造的特性が明らかになっている。このような特徴的な構造的特性(インジケータ324によって示される)としては、内膜肥厚、異常な外膜、損傷した外膜周囲組織が挙げられる。したがって、この場合、システムは、OCTデータの断層像と縦断像の両方に第2のマーカ722を表示する。この場合、第2のマーカ722は、潜在的偽陰性の結果(すなわち、蛍光信号は示されていないが、OCT画像のデータ分析では蛍光源の存在が明らかになっている)を示す。ケース4では、システムは、“偽陰性”結果に固有の明確で目立つ色やパターンで第2のマーカ722を表示する。これにより、ユーザは、線インジケータ315によって示される位置に蛍光が含まれるかどうかを分析して確認するよう促される。偽陰性値に対応する第2のマーカの表示に用いられる色やパターン、線は、第1のマーカ720とは異なる色やパターン、グレースケール値で表示されることが好ましい。
【0094】
図9Eは更なるケース(ケース5)を示し、マルチモダリティ画像906は、蛍光信号のないOCTデータの断層像を示す。しかしながら、OCTデータのシステム分析により、管腔サンプルの特徴的特性に、潜在的な蛍光源であり得る1つ以上のアーチファクト326が含まれることが明らかになっている。この場合、アーチファクト326としては、例えば、管腔サンプルの蓄積プラーク(動脈硬化性プラーク又はアテローム)、線維性プラーク、線維石灰化プラーク、壊死性コアが挙げられる。ケース5は、管腔サンプルの領域が潜在的な蛍光源を示すが、蛍光信号が検出されないという点で、ケース4に類似する。ただし、ケース5では、アーチファクト326のある領域に、石灰化プラークや他の未知の成分が含まれる可能性がある。したがって、システムは、アーチファクト326のある領域を、第1のマーカ720又は第2のマーカ722とは異なる特定の色又はパターンでマークする。更に、システムは、アーチファクト326の円周位置に対応して断層像の縁を囲む円弧としての第2のマーカ722とともに、マルチモダリティ画像を表示する。また、システムは、縦断像において、線インジケータ315の位置に対応するように、第2のマーカ722をOCTデータ310にオーバーレイして(或いは並べて)表示する。ケース5では、システムによって蛍光信号が検出されないが、OCT画像内にアーチファクト326が観察される場合、システムは、アーチファクト326を潜在的盲点ケースとして分類する(例えば、蛍光源が存在し得るが、蛍光励起光がプラーク領域に到達しなかったり、或いは蛍光信号がカテーテルに到達しなかったりするケース)。したがって、システムは、潜在的蛍光信号とOCTデータの対応を示すために、断層像内に、また縦断像の長さに沿って、第2のマーカ722及びアーチファクト326を表示する。この場合でも、第2のマーカ722は、アーチファクト326が偽陽性又は偽陰性又は盲点(未定義)の位置であるかどうかを確認するようユーザに促すために、目立つように表示されてよい。
【0095】
図9Fは、システムが潜在的な偽陽性、偽陰性及び/又は盲点の位置の複数のケースを表示するように構成される例を示す。図9Fにおいて、第1のマーカ720は蛍光信号の検出を示し、第2のマーカ722は、図9Cに示されるように、蛍光信号が潜在的偽陽性であり得ることを示す。ただし、ユーザが、線インジケータを縦断像の長さに沿って水平に、図9Fに示される位置まで動かすと、断層像は、管腔サンプルの異なる断面を示すように変化する。したがって、図9Fでは、システムは、第2のマーカ722をOCT画像データ310にオーバーレイして表示し、第3のマーカ730を追加して、第1のマーカ720Aによって示される蛍光データの新しい位置、或いは、第3のマーカ730によって示される潜在的な偽陽性、偽陰性及び/又は盲点の新しい位置を示す。すなわち、図9C図9Fの違いは、第2のマーカ722が管腔サンプルのOCT画像にオーバーレイされることと、追加の偽陽性、偽陰性及び/又は盲点の位置を示すために第3のマーカ730が追加されることである。
【0096】
図10A図10B図10C及び図10Dは、マルチモダリティOCT-蛍光画像において蛍光の潜在的な偽陽性、偽陰性及び/又は盲点の位置を表示するグラフィカルユーザインタフェースの更なる実施形態の様々な例を図示する。この実施形態によれば、蛍光画像データ(NIRAFプロファイル像)は、簡易な2値表示又はヒストグラムとして表示することができる。ヒストグラムの大まかな定義は、データの図式的表現である。ここで、「ヒストグラム」との用語は、蛍光強度データを絵を用いて表すことを指すように使用される。従来のヒストグラムは、0から255までの各強度値の頻度を、写真に相当するグレースケールに示すことができる。ヒストグラムでは、各強度値と、その値をもつピクセルの数がプロットされる。したがって、ヒストグラムは、様々な強度値の分布を簡易的な図で提供することができる。今回の場合、蛍光データ(NIRAFデータ)の有無の表示を簡略化するために、基本の2値表示(例えば2色、2つのグレースケール値、2つのパターン)を用いることができる。更に、蛍光データの有無とともに潜在的偽陽性、潜在的偽陰性、及び/又は盲点のケースを表示するには、更にいくつかの色、グレースケール値又はパターンを用いれば十分である。
【0097】
2値ヒストグラムは、断層像の角度情報を破棄し、蛍光強度の表示を高(H)及び低(L)の値に簡略化することにより、血管長さ像(縦断像)の長手方向に沿って表示することができる。そのために、各マルチモダリティ画像は、信号強度に対応する少数の値によって定義することができる。例えば、NIRAF強度は、高い閾値と低い閾値の間の中央値付近(例えば中央値の±25%)に定義することができる。一実施形態では、ヒストグラムは、管腔の長さに沿って蛍光の存在(値1)又は非存在(値0)を示すように、低い値と高い値をもつことができる。他の実施形態では、ヒストグラムは、管腔の長さに沿った各位置において各値が強度レベルを表すことができるように、3つ以上の値を有することができる。
【0098】
ユーザによる信号の迅速な評価を容易にするために、蛍光信号(ヒストグラムの高い値又は低い値の各々)は、蛍光の有無の各種可能性との対応を示すように、色分け又は陰影付けされてよい。ここでも、画像データの分析は、取得されたOCT-NIRAF画像の各々について、フレーム毎、又はAライン毎、又はAライン10本(又は他の所定数)毎に実施されてよく、或いは、断層像では、画像を所定数の区画に分割することによって実施されてよい。更に、分析の精度を高めるために、フレーム間分析(近くのフレーム(例えば標的フレーム前後の10個のフレーム)の比較)が実行されてよい。
【0099】
図10A及び図10Bは、ディスプレイ320の第3のパネル321-3が、図3に示されるカーペット像の代わりに(又は、カーペット像に加えて)、蛍光信号を2値形式で表示するように構成される方法の例を図示する。OCT管腔プロファイル(又はルーメノグラム(lumenogram))の概念と同様に、ユーザの評価を容易にするために、縦断像における蛍光信号の像を簡略化するために、蛍光信号はNIRAFプロファイル(又はニラフォグラム(Nirafogram))として表示することができる。縦断像では、カーペット像は、角度情報を破棄したヒストグラムに置き換えられて、プルバックの長さの観点からNIRAFの存在のみを示す。次に、この簡略化されたNIRAFプロファイル像に基づいてユーザが取り得るアクションは、(i)NIRAFのある各スライスに移動して、OCTを更に詳しく調べて、その位置で何が起こったのかを確認することと、(ii)NIRAF信号が確認されたサンプル領域を意図的に回避(又は標的化)することにより、どこで手技を行う(例えばステント留置する)かを決めること、である。
【0100】
NIRAFを表示するためのアルゴリズムとしては、以下が考えられる。NIRAF強度を表示する場合:(a)スライスに存在するNIRAF強度の合計を表示する。(b)スライスに存在するピークNIRAF強度を表示する。(c)(a)又は(b)を用いるが、閾値によって定義された単位(例えば高、中、低)で強度を表示する(例えば、低=2.5V、高=5V、中=高から低までの平均)。NIRAFの存在を表示する場合(2値NIRAF):(d)スライスのどこかにNIRAFが存在し、閾値(例えば5V)を上回る場合、そのスライスについてYES NIRAFと表示する。(e)スライスに存在するNIRAF強度の合計が閾値(例えば5V)を上回る場合、そのスライスについてYES NIRAFと表示する。(f)(c)又は(d)を用いるが、閾値を下回る場合にNO NIRAF又はBLIND SPOTを表示する。
【0101】
2値又はヒストグラムの表示を用いることの優位性及び利点としては、これに限定されないが、表示画面の活用可能範囲(real estate)を節約できることが挙げられる(NIRAFカーペット像は画面上の垂直空間を大きく占めるが、ヒストグラムや2値像は最小の空間で使用できる)。例えば、カーペット像は、角度情報を提供するために高さを2πr必要とするが、2値の縦断像は、単にNIRAFの有無を示すだけなので、異なる色、陰影又はパターンを用いて単線(数ピクセル幅)まで高さを低くすることができる。縦断血管像においてNIRAF表示が小さくなるほど、他の像のスペースが大きくなり、ユーザの混乱も低減される。これは、蛍光信号が偽陽性、偽陰性及び/又は未定義(盲点)であるかどうかを決定するために、いくつかのタイプの画像及び/又は特徴的特性を用いる場合(図7に示すように)、特に有利である。他の実施形態では、2値又はヒストグラムの表示では、使用される色も少ない。すなわち、NIRAFプロファイル像は、NIRAFの存在を示すだけなので1色で表示することができ、他の特徴を示すために他の色を残しておくことができ、かつ/又は、ユーザの混乱を最小限に抑えることができる。更に、最小限の画面活用可能範囲に1色か数色でNIRAFを表示することにより、システムは、将来の更新時に追加の用途(例えば分光OCT)を表示するように構成することができる。更に注目すべきは、このように変更された表示実施形態の簡潔さにより、ユーザの解釈に要する時間が短くなる。
【0102】
図10Aでは、プルバックの長さに沿って真陽性信号820、真陰性信号822、偽陽性信号824及び偽陰性(又は盲点)信号826が検出された具体的な位置を特定及び確認するために、パターンを用いることができる。図10Aは、血管の長さに沿った信号820~826の存在を、そのような分類の理由に関わらず表示している。ここで、全てのケースを同時に表示する必要があるわけではないことに留意されたい。一部の実施形態では、GUIは、真陽性信号820、真陰性信号822、偽陽性信号824及び偽陰性(又は盲点)信号826のうちの1つ以上の存在のみを選択的に表示するように制御されてよい。これは、血管の長さに沿った推定位置の有無に関わらず表示することができる。血管の長さに沿った所与の信号の位置がディスプレイに表示されない場合、ユーザが確認したい情報のタイプを選択(クリック)した場合にのみ、該位置はユーザが利用可能となる(ユーザに表示される)。例えば、図10Aのヒストグラムを見た後に、ユーザは「偽陽性」を選択することができる。次に、当該選択の後、システムは、血管像の長さに沿って潜在的偽陽性信号が検出された場所を示す長さ方向位置を表示する。これらのパターンを用いて、真陽性、真陰性、偽陽性、偽陰性(又は盲点)の信号がどこにあるのかを特定することができる。
【0103】
一方、図10Bに示される他の実施形態では、GUIは、偽陽性、偽陰性及び/又は盲点の位置1つ以上の存在を、各位置をそのような位置としてマークする具体的な理由とともに表示するように制御されてよい。図10Bは、陽性信号830(蛍光信号を確認済み)、陰性信号832(蛍光信号の非存在を確認済み)、偽陽性信号834(潜在的“偽陽性”ケース)、偽陰性信号836(潜在的“偽陰性”ケース)を示す表示を図示している。これらの信号(特に偽陽性と偽陰性のケース)は、その位置をそのようにマークする理由とともに、メモリに保存し、かつ/又は、ディスプレイに表示することができる。図1Bでは、ある特定の色又はパターンを用いて、どこが真陽性、真陰性、偽陽性、偽陰性(又は盲点)のケースであるのかを特定することができる。例えば、OCT-NIRAF画像全体は蛍光陽性を示すが、OCTデータ分析では「石灰化プラーク」又は「低レーザ出力」の存在が明らかになっている場合、そのような決定の理由と一致する特定のパターンで偽陰性信号836を表示することができる。この場合、ユーザが偽陽性、偽陰性及び/又は盲点の位置の存在を簡単に特定できるように、陽性信号830、陰性信号832、偽陽性信号834及び偽陰性信号836の各々には、固有の色又はパターンが割り当てられてよい。パターン又は色のタイプは、ユーザによって選択可能であってもよいし、或いは、所与の位置を偽陽性、偽陰性又は盲点(未定義)のいずれかとして指定する理由(生物学的、病理学的又は技術的)等に応じて、事前に割り当てられてもよい。図10Bは、偽陽性又は偽陰性の具体的理由が分かっている場合に使用できる例である。
【0104】
図10Cは、蛍光信号(陽性NIRAF)及び潜在的偽陽性ケースの存在をユーザに通知するために、マルチレベルヒストグラムを表示するように構成された表示画面の例を示す。図10Cでは、蛍光信号の存在は、第1の陽性信号830、第2の陽性信号832及び第3の陽性信号836によって示されており、それぞれ、マーカのサイズによって表される異なる強度をもつ。更に、図10Cは偽陽性信号844を示す。水平方向は、管腔の長さに沿った位置(血管像)を示し、垂直方向は強度レベルを示す。
【0105】
図10Dは、中心化された値を用いて2値ヒストグラムを表示パネル上に表示するように構成されたグラフィカルユーザインタフェースの例を示す。この例では、GUIは、蛍光信号850(陽性NIRAF)、真陰性信号852(NIRAFなし)、潜在的偽陽性信号854及び偽陰性信号856を表示するように構成することができる。他の実施形態に関して述べたように、全ての信号が同時に表示パネルに表示される必要はない。ただし、ユーザとGUIのインタラクションをより簡便かつ効率的にするには、特定の色やパターンで各タイプの信号を表示することが有利であり得る。
【0106】
図11は、簡略化された二値化方式で潜在的な偽陽性、偽陰性及び/又は盲点の位置を表示するように変更されたグラフィカルユーザインタフェース(GUI)321を備えた表示装置300を図示する。図11では、表示装置300に示されるGUI321は、以前説明したマルチモダリティ画像情報を表示するためのアルゴリズムに従って、コンピュータ200のCPU291によって制御される。この実施形態では、表示画面320は、複数の別々の表示パネル(第1のパネル321-1、第2のパネル321-2及び第3のパネル1121を含む)に分割される。第1のパネル321-1は、血管造影像340と、OCTデータ310及び蛍光データ320を示すマルチモダリティ画像906の断層像とを表示するように構成される。第2のパネル321-2は、管腔サンプルの縦断像(血管像)を表示するように構成され、これは、管腔サンプルの構造特性を視覚的に評価するためのOCTデータ310のみを示す。すなわち、第1のパネル321-1と第2のパネル321-2は、図3を参照して前述したGUI321と同様に機能する。
【0107】
第3のパネル1121は、蛍光データの有無とともに、潜在的な偽陽性、偽陰性及び/又は盲点の位置を簡易的に表示するように構成される。図11では、第2のパネル321-2は、第1のパネル321-1に示された断層像に表示された管腔サンプルの長さ方向位置を示すために、線インジケータ315を表示する。線インジケータ315は、GUI321の可動コンポーネントであってよく、マウスやジョイスティック等のポインタ316を用いて、或いは、ディスプレイ320の画面をタッチすることにより、水平方向に動くようにユーザによってインタラクティブに制御され得る。ユーザがOCTデータの縦断像に沿ってポインタ316をスライドすると、断層像は、線インジケータ315の位置に対応するOCTデータ及び蛍光データを表示するように連続的に変化する。このように、ユーザは、管腔サンプルの長さに沿って、構造特性を評価すべき管腔サンプルの位置を選ぶことができる。
【0108】
ユーザが観察し分析する必要のあるデータの量を減らすために、第3の表示パネル1121は、蛍光情報を2値方式で表示するように構成される。蛍光情報は、真陽性マーカ1321、偽陽性マーカ1322、真陰性マーカ1323、盲点マーカ1324及び偽陰性マーカ1325のうちの1つ以上として表示される。真陽性マーカ1321は、蛍光信号の真の存在を示す。偽陽性マーカ1322は、システムが潜在的偽陽性であると決定した蛍光信号の存在を示す。真陰性マーカ1323は、蛍光信号の真の非存在を示す。盲点マーカ1324は、システムが真の構成を決定できないデータ(画像アーチファクトを表すデータ等)を示す。偽陰性マーカ1325は、蛍光源であり得るがシステムが蛍光信号を検出しなかったデータを示す。したがって、偽陽性マーカ1322、偽陰性マーカ1325、盲点マーカ1324は、ユーザによって手動で確認される必要のある、マルチモダリティ画像内の潜在的な偽陽性、偽陰性及び/又は盲点の位置を示す。
【0109】
潜在的な偽陽性、偽陰性及び/又は盲点の情報は、表示された情報を調べるユーザの能力に干渉しないように、ユーザの好みに応じてオン/オフを切り替えられるようにする必要がある。そのために、GUI321は、1つ以上のトグルボタン350(又はトグルスイッチ)を含むことができ、ユーザはこれを操作して、前述の表示アルゴリズムのうちの1つ以上を実行することができる。図11では、トグルボタン350は、第3の表示パネル1121のみを切り替えて、図3に示されるような蛍光の縦断像か、又は簡易的な2値表示の1つ以上のマーカ(図11に示される)のいずれかを示すように構成されてよい。更に、図11において、システムは、ユーザがポインタ316を用いてOCTデータ310の縦断像に沿って線インジケータ315をスライドするときに、各マーカ1321~1325を切り替えるように構成されてよい。この場合、トグルボタン350は任意に除去(非表示)されてよく、マーカ1321、1322、1323、1324、1325のうちの1つ以上の切替えは、ユーザがポインタ316を用いて線インジケータ315をスライドするときに、自動的に発生してよい。
【0110】
1つ以上の実施形態では、システムの精度を高めるために、システムは、各手技中にユーザが作成したマークアップから学習するようにプログラムされてよい。例えば、ユーザは、システムによって特定されなかった盲点位置を調べた後に、偽陽性及び/又は偽陰性のデータの位置を追加することができる。これを行うには、表示装置300のGUI321は、具体的情報(例えば、よく盲点検出の原因となる生物学的理由及び/又は技術的理由)を任意に注釈又は入力するようユーザに促すために、ボタン又は誘導機能を有する必要がある。ユーザが、偽陽性及び/又は偽陰性のケースに関する情報とその原因を追加すると、システムは、OCTデータ(非蛍光データ)を用いてそのようなケースのパターンを特定することができ、特定されたパターンを今後の検出のために追加することができる。ユーザによって偽陽性又は偽陰性であると確認された盲点(アーチファクト)データは、システムによってデータベース(テーブル)に保存されてよい。そして、システムは、そのようなデータベースを用いて、訓練された機械学習ネットワークや人工知能(AI)システムを用いて、潜在的な偽陽性、偽陰性及び/又は盲点の検出の精度を更に改善することができる。
【0111】
本開示によれば、診断結果を改善するために、マルチモダリティ画像における潜在的な偽陽性、偽陰性及び/又は盲点の位置を特定することが有利である。上記の実施形態は、カテーテルベースの血管内イメージングの例を用いて説明されており、管腔サンプルは血管であり得る。当業者には当然のことながら、本明細書に記載の原理は、呼吸器や消火器の管腔等の他の管腔サンプルにも均等に適用され、これらは、盲点位置を含むコレジストレーションマルチモダリティ画像データを得る際に、マルチモダリティ内視鏡によって撮像することができる。そのような位置を検出した後、本明細書に開示されるシステムは、その結果をグラフィカルユーザインタフェースに表示するように構成され、ユーザは、結果を手動で確認するように促される。ただし、ユーザは、視覚的かつ手動の評価のみに頼ると、過剰な量のデータに圧倒され、混乱や誤解釈を招くおそれがあるので、そうする必要はない。代わりに、ユーザは、事前定義されたアルゴリズムと実用的なグラフィカルユーザインタフェースに頼って、潜在的な偽陽性、偽陰性及び盲点の位置をシステムに確認させることができる。次にユーザは、システムの出力結果を確認するよう、システムに促される。この技術は、ユーザの意思決定プロセスを軽減することに加えて、経験の浅いユーザにとって特に有益であり得る(例えば訓練目的で)。
【0112】
本開示は、非NIRAF情報を分析することにより、OCT-NIRAF画像データにおける蛍光データの潜在的な偽陽性、偽陰性及び/又は盲点のケースを特定することを提示してきた。一実施形態では、“偽陽性”検出のために、システムは、管腔検出結果を利用し、管腔からカテーテルシースまで(又はその逆)の距離を評価する。一実施形態では、“盲点”検出のために、システムはプラークタイプの特性評価を利用し、これは、組織学的情報と相関するOCT及び/又は分光OCTの画像処理によって実施することができる。一実施形態では、“偽陰性”検出のために、システムは、カテーテルNIRAFデータと組織学的画像データ(例えばH&E及びトリクローム)の相関を利用する。
【0113】
減衰係数に基づくと、石灰化組織は、NIRAF検出に最も大きい影響を及ぼす。他の情報としては、管腔直径、EEL(外弾性板)、幾何学的特性、フラッシング効率(フラッシングは十分か?;OCTフレーム内に残留血液はあるか?等)が挙げられる。血液細胞が強い蛍光を発することはよく知られているので、残留血液は、偽陽性NIRAF検出の重要な指標となり得る。識別は、フレーム毎に実行することができる。精度を高めるために、フレーム間分析を追加することができる。フレーム間分析では、NIRAF/NIRF情報を利用して、関連パラメータを決定することができる(長手方向においてフレームの特定の距離内にどの程度のNIRAF/NIRFが存在するか等)。
【0114】
システムは、潜在的な偽陽性、偽陰性及び/又は盲点のケースの検出を示す警告を表示するように構成される。警告は、ユーザの好みに応じてオン/オフを切り替えることができる。潜在的な偽陽性、偽陰性及び/又は盲点のケースの領域周辺のマークは、様々な構成で表示することができる。ある構成では、グラフィカルユーザインタフェースは、異なるパターンや異なる色、異なるマーキングを利用して、画像領域の各タイプを指定することができる。ある構成では、イメージングシステムは、潜在的な偽陽性、偽陰性及び/又は盲点の位置をマルチモダリティ画像に手動で追加するための入力を、ユーザから受け取るように構成されてよい。この構成は、ユーザが自身の経験に基づいて、システムによって特定されなかった潜在的なケースを見つける場合に、特に有利である。このような場合、ユーザは、潜在的な偽陽性、偽陰性及び/又は盲点の位置を、当該情報を追加する理由と併せて、画像に追加することができる。一部の実施形態によれば、システムは、非NIRAF情報に基づいて潜在的な偽陽性、偽陰性及び/又は盲点の位置を特定し、今後の検出のために、特定された位置にラベリングパターンを追加することができる(例えば、同じサンプルの最初の分析結果と後続又は後の分析結果を比較するために)。
【0115】
1つ以上の実施形態では、表示される情報の量を減らすために、偽陽性、偽陰性及び/又は盲点の位置に関するNIRAF情報を、2値表示形式で提示することができる。この目的のために、NIRAFデータは、中央(平均)強度値の周辺、かつ、高い閾値と低い値の範囲内に定義することができる。これにより、臨床医が決定を下す際に実際に必要とするよりも多くの情報を間違いなく表示する“NIRAFカーペット像”形式のように、NIRAF強度値の全域を表示する必要がなくなる。結果として得られる解決策では、角度情報を破棄し、強度の表示を血管長さに沿った位置のみに簡略化することにより、血管像でのNIRAFデータの簡易表示を用いて、NIRAFプロファイル像が提供される。変形実施形態では、2値表示の同じ概念をNIRFに適用することができる。NIRFとNIRAFが両方とも同じシステム上に表示され、互いに区別可能であると仮定すると、NIRAFプロファイル像とは異なる色や異なる陰影付け、異なるパターンをNIRFプロファイル像に使用することによって、NIRFプロファイル像が実現されることが最良である。どちらのオプションの像も、血管像のメニューで利用可能であり、これらのオプションは切替え可能である。
【0116】
説明に言及する際、開示する例を完全に理解できるようするために、具体的な詳細が記載される。他の例では、本開示を不必要に長くしないように、周知の方法、手順、コンポーネント及び回路は、詳細には説明されない。本明細書において別段の定義がされない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本発明の広さは、本明細書によって限定されるのではなく、むしろ、採用される特許請求の範囲の用語の平易な意味によってのみ限定される。
【0117】
図面に示された例示の実施形態を説明する際、分かりやすくするために、具体的な専門用語が使用される。しかしながら、本特許明細書の開示はそのように選択された具体的な専門用語に限定されることを意図するものではなく、当然ながら、具体的な要素の各々は、同様に機能する技術的な均等物を全て含む。
【0118】
本開示は、例示の実施形態を参照して説明されたが、当然のことながら、本開示は、開示された例示の実施形態に限定されない。以下の特許請求の範囲は、そのような変更並びに均等の構造及び機能を全て包含するように、最も広い解釈が与えられるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9-1】
図9-2】
図10
図11
【手続補正書】
【提出日】2023-04-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
管腔サンプルのマルチモダリティ画像においてデータの潜在的盲点を検出するコンピュータ実施方法であって、
管腔サンプルのマルチモダリティ画像を取得するステップであって、前記マルチモダリティ画像は、マルチモダリティイメージングカテーテルを通して伝送された2つ以上の波長の光を用いて前記管腔サンプルの内壁をスキャンすることによって同時に収集されコレジストレーションされた第1の画像データ及び第2の画像データを含む、取得するステップと、
前記第1の画像データを分析して、前記管腔サンプルの特徴的特性を特定するステップと、
前記管腔サンプルの前記特徴的特性に基づいて、前記マルチモダリティ画像における前記第2の画像データの潜在的盲点の位置を検出するステップと、
表示装置上で、前記マルチモダリティ画像を、前記第1の画像データに関して前記第2の画像データの前記潜在的盲点の位置を示すマーカとともに、複数の画像ビューのうちの1つ以上に表示するステップと、
を含む方法。
【請求項2】
前記マルチモダリティ画像を表示するステップは、前記第1の画像データ及び前記第2の画像データを第1のビューに表示し、前記第1の画像データを前記第2の画像データとともに第2のビューに表示するステップ、を含み、
前記第1のビューと前記第2のビューの両方に、前記第2の画像データの前記潜在的盲点の位置を示すマーカが示される、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記潜在的盲点の位置は、前記第2の画像データの潜在的偽陽性の位置、及び/又は、前記第2の画像データの潜在的偽陰性の位置を含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記管腔サンプルは血管を含み、
前記第1の画像データは、前記血管の光干渉断層撮影(OCT)画像データを含み、前記第2の画像データは、前記血管の蛍光データを含み、
前記第1の画像データを分析する前記ステップは、前記OCT画像データを分析して、前記血管の前記特徴的特性を特定するステップ、を含み、
前記潜在的盲点の位置を検出するステップは、前記血管の前記特徴的特性に基づいて前記蛍光データを処理して、前記血管の前記マルチモダリティ画像における前記蛍光データの潜在的偽陽性の位置、及び/又は、前記蛍光データの潜在的偽陰性の位置を検出するステップ、を含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記OCT画像データを分析して、前記血管の特徴的特性を検出するステップは、プラークタイプと、外弾性板と、側枝と、最小直径と、前記血管内の残留血液量とのうちの1つ以上を検出するステップ、を含み、
前記第2の画像データの潜在的盲点の位置を検出するステップは、前記蛍光データを分析して、前記プラークタイプと、前記外弾性板と、前記側枝と、前記最小直径と、前記血管内の前記残留血液量とのうちの前記1つ以上に対応する前記蛍光データの前記潜在的偽陽性の位置、及び/又は、前記蛍光データの前記潜在的偽陰性の位置を検出するステップ、を含む、
請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記第2の画像データの前記潜在的盲点の位置を示す前記マーカとともに前記マルチモダリティ画像を表示するステップは、前記表示装置上で、前記第1のビュー及び前記第2のビューにおいて、前記OCT画像データに対応するように、前記蛍光データの前記潜在的偽陽性の位置、及び/又は、前記蛍光データの前記潜在的偽陰性の位置を示す前記マーカとともに、前記OCT画像データ及び前記蛍光データを表示するステップ、を含む、
請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記表示装置上で前記OCT画像データを表示することは、前記OCT画像データを断層像に表示することを含み、前記蛍光データを表示することは、前記蛍光データの前記潜在的偽陽性の位置、及び/又は、前記蛍光データの前記潜在的偽陰性の位置を、前記断層像の縁の周りに配置された円弧又はリングとして表示することを含む、
請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記表示装置上で前記OCT画像データを表示することは、前記OCT画像データを縦断像に表示することを含み、前記蛍光データを表示することは、前記蛍光データの前記潜在的偽陽性の位置、及び/又は、前記蛍光データの前記潜在的偽陰性の位置を、前記OCT画像データの前記縦断像に実質的に平行な縦断像に、又は前記OCT画像データの前記縦断像と重ね合わされた縦断像に表示するステップを含む、
請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記表示装置上で前記OCT画像データを表示することは、前記OCT画像データを縦断像に表示することを含み、前記蛍光データを表示することは、前記蛍光データの前記潜在的偽陽性の位置、及び/又は、前記蛍光データの前記潜在的偽陰性の位置を、前記OCT画像データの前記縦断像に重ね合わされるか又は前記OCT画像データの前記縦断像に実質的に平行な2値ヒストグラムとして表示することを含み、
前記2値ヒストグラムを表示することは、前記蛍光データの前記潜在的偽陽性の位置、及び/又は、前記蛍光データの前記偽陰性の位置の各々について異なる色又は異なるパターンを用いて、2値マーカを表示することを含む、
請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記管腔サンプルは血管を含み、
前記第1の画像データは、前記血管の光干渉断層撮影(OCT)画像データを含み、前記第2の画像データは、前記血管の蛍光データを含み、
前記方法は、
前記OCT画像データから前記血管の管腔エッジを検出するステップと、
前記カテーテルが前記管腔エッジから最小距離以内に位置するかどうかを決定するステップと、
を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記カテーテルが前記管腔エッジの前記最小距離以内に位置すると決定した場合、前記潜在的盲点の位置を示すものとして前記蛍光データを保存及び/又は表示するステップ、
を更に含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記管腔サンプルは血管を含み、
前記第1の画像データは、前記血管の光干渉断層撮影(OCT)画像データを含み、前記第2の画像データは、前記血管の蛍光データを含み、
前記方法は、
前記蛍光データを分析して、前記血管がその少なくとも特定領域に石灰化プラークを含むかどうかを決定するステップと、
前記血管の前記少なくとも特定領域が石灰化プラークを含むと決定された場合、前記血管の前記少なくとも特定領域を前記潜在的盲点の位置として保存及び/又は表示するステップと、
を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
コンピュータ実行可能命令を格納した非一時的なコンピュータ可読記憶媒体であって、前記コンピュータ実行可能命令は、1つ以上のプロセッサによって実行されたときに、前記1つ以上のプロセッサに請求項1に記載の方法を実行させる、非一時的なコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項14】
血管のマルチモダリティ画像内の盲点を検出するシステムであって、前記システムは、
実行可能命令を格納したメモリと、
前記メモリに格納された前記実行可能命令を実行するように構成されたプロセッサと、
を備え、
前記プロセッサは、
血管のマルチモダリティ画像を取得することであって、前記マルチモダリティ画像は、マルチモダリティイメージングカテーテルを通して伝送された2つ以上の波長の光を用いて前記血管の内壁をスキャンすることによって同時に収集されコレジストレーションされた第1の画像データ及び第2の画像データを含む、取得することと、
前記第1の画像データを分析して、前記血管の特徴的特性を特定することと、
前記血管の前記特徴的特性に基づいて、前記マルチモダリティ画像の前記第2の画像データの潜在的盲点位置を検出することと、
前記第1の画像データに関して前記第2の画像データの前記潜在的盲点位置を示すマーカとともに、前記マルチモダリティ画像を表示装置に表示することと、
を実行するように構成され、
前記プロセッサは、前記表示装置に対して、前記第2の画像データによって囲まれた前記第1の画像データを第1のビューに出力し、前記第2の画像データと並べた前記第1の画像データを第2のビューに出力することによって、前記マルチモダリティ画像を表示し、
前記プロセッサは、前記潜在的盲点位置が前記第1のビュー及び前記第2のビューにあることを示す前記マーカを、同じ色又はパターンで表示する、
システム。
【請求項15】
前記潜在的盲点位置は、前記第2の画像データの潜在的偽陽性の位置、及び/又は、前記第2の画像データの潜在的偽陰性の位置を含み、
前記プロセッサは、
ユーザから入力された、数のイメージングモダリティのうちの少なくとも1つの前記表示された画像において前記1つ以上の特徴的特性に対応する前記第2の画像データの潜在的偽陽性及び/又は前記潜在的偽陰性の前記位置を表示する要求を受け取る
ように更に構成される、
請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
前記プロセッサは、
体腔の壁に同時に照射される少なくとも2つの異なる波長を用いて、前記体腔の領域をスキャンして、光干渉断層撮影(OCT)画像データ及び蛍光データを生成するイメージングプローブの回転及びプルバック、及び、
複数のイメージングモダリティの各々の画像としての、前記表示装置上での前記OCT画像データの表示及び前記蛍光データの表示、
を制御するように更に構成される、請求項14に記載のシステム。
【請求項17】
前記盲点位置は、前記蛍光データの潜在的偽陽性の位置、及び/又は、前記蛍光データの潜在的偽陰性の位置を含み、
前記プロセッサは、
前記OCT画像データに基づいて、前記体腔の前記特徴的特性を検出し、
前記体腔の前記特徴的特性に基づいて、前記蛍光データの前記潜在的偽陽性の位置、及び/又は、前記蛍光データの前記潜在的偽陰性の位置を検出する
ように更に構成される、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記プロセッサは、
前記OCT画像データを断層像として表示し、前記蛍光データを、前記断層像の縁の周りに配置された円弧又はリングとして表示することによって、前記OCT画像データ及び前記蛍光データを前記表示装置に表示するか、又は、
前記OCT画像データを、プルバック距離及び前記イメージングプローブのスキャン角度に応じた縦断像として表示し、前記蛍光データを、前記OCT画像データの前記縦断像に重ね合わされるか又は前記縦断像に平行な2値ヒストグラムとして表示することによって、前記OCT画像データ及び前記蛍光データを前記表示装置に表示する、
ように更に構成される、請求項16に記載のシステム。
【請求項19】
前記プロセッサは、
前記OCT画像データから管腔エッジを検出し、
前記管腔エッジが前記イメージングプローブから特定距離以内にあるかどうかを決定する
ように更に構成される、請求項16に記載のシステム。
【請求項20】
前記管腔エッジが前記特定距離以内にある場合、前記プロセッサは、前記管腔エッジの位置を前記蛍光データの潜在的偽陽性の位置としてマークすることによって、前記表示された画像を更新する、
請求項19に記載のシステム。
【請求項21】
前記プロセッサは、
前記蛍光データを分析して、前記体腔がその少なくとも特定領域に石灰化プラークを含むかどうかを決定し、
体腔の前記少なくとも特定領域が石灰化プラークを含む場合、前記プロセッサは、前記体腔の前記少なくとも特定領域を前記蛍光データの潜在的偽陰性の位置としてマークすることによって、前記表示された画像を更新する
ように更に構成される、請求項16に記載のシステム。
【国際調査報告】