(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-01
(54)【発明の名称】調整可能円柱レンズおよびそれを含む頭部搭載型ディスプレイ
(51)【国際特許分類】
G02B 27/02 20060101AFI20230825BHJP
G02C 7/02 20060101ALI20230825BHJP
G02C 11/00 20060101ALI20230825BHJP
G02C 7/08 20060101ALI20230825BHJP
A61B 5/1171 20160101ALI20230825BHJP
G02B 26/08 20060101ALN20230825BHJP
【FI】
G02B27/02 Z
G02C7/02
G02C11/00
G02C7/08
A61B5/1171 300
G02B26/08 J
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023507626
(86)(22)【出願日】2021-08-06
(85)【翻訳文提出日】2023-02-15
(86)【国際出願番号】 US2021045110
(87)【国際公開番号】W WO2022032198
(87)【国際公開日】2022-02-10
(32)【優先日】2020-08-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514108838
【氏名又は名称】マジック リープ, インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Magic Leap,Inc.
【住所又は居所原語表記】7500 W SUNRISE BLVD,PLANTATION,FL 33322 USA
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ラッセル, アンドリュー イアン
(72)【発明者】
【氏名】ハドック, ジョシュア ナアマン
【テーマコード(参考)】
2H006
2H141
2H199
4C038
【Fターム(参考)】
2H006CA00
2H141MA11
2H141MB37
2H141MB54
2H141MC09
2H199CA12
2H199CA50
2H199CA54
2H199CA67
2H199CA74
2H199CA92
2H199CA93
2H199CA94
2H199CA95
2H199CA96
4C038VA07
4C038VB04
4C038VC20
(57)【要約】
非正視力の矯正のための頭部搭載型ディスプレイ、特に、仮想現実用頭部搭載型ディスプレイの接眼レンズの中に統合され得る、調整可能レンズを提供する。システムは、光軸に沿って配列される、3つの光学要素を含み、それぞれは、異なる円柱軸と、可変円柱屈折力とを有する。集合的に、3つの要素は、処方箋(Rx)に従って変動され得る、全体的な球面屈折力(SPH)と、円柱屈折力(CYL)と、円柱軸(Axis)とを有する、合成光学要素を形成する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
システムであって、
光軸に沿って配列される第1の屈折要素と、第1の制御信号に応答して、前記第1の屈折要素の円柱屈折力を変動させるように配列される第1のアクチュエータとを備える、第1の光学要素であって、前記第1の屈折要素は、前記光軸に対して直角である、第1の半径方向に沿って前記第1の屈折要素と関連付けられる第1の円柱軸を有する、第1の光学要素と、
光軸に沿って配列される第2の屈折要素と、第2の制御信号に応答して、前記第2の屈折要素の円柱屈折力を変動させるように配列される第2のアクチュエータとを備える、第2の光学要素であって、前記第2の屈折要素は、前記光軸に対して直角である、第2の半径方向に沿って前記第2の屈折要素と関連付けられる第2の円柱軸を有する、第2の光学要素と、
光軸に沿って配列される第3の屈折要素と、第3の制御信号に応答して、前記光軸に対して直角である第3の半径方向に沿って前記第3の屈折要素の円柱屈折力を変動させるように配列される第3のアクチュエータとを備える、第3の光学要素であって、前記第1、第2、および第3の半径方向は、異なる、第3の光学要素と、
前記第1、第2、および第3のアクチュエータと通信している電子コントローラであって、前記電子コントローラは、それぞれ、動作の間、前記第1、第2、および第3の制御信号を前記第1、第2、および第3のアクチュエータに提供するように構成され、それによって、前記第1、第2、および、第3の屈折要素は、集合的に、処方箋(Rx)に従う、全体的な球面屈折力(SPH)と、円柱屈折力(CYL)と、円柱軸(Axis)とを有する、光学要素を形成する、電子コントローラと
を備える、システム。
【請求項2】
前記第1の半径方向と第2の半径方向との間の角度分離は、前記第2の半径方向と第3の半径方向との間の角度分離に等しい、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記光軸に対して直角であるデカルト座標系に対し、前記第1の半径方向は、30°にあり、前記第2の半径方向は、90°にあり、前記第3の半径方向は、150°にある、請求項1または請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記第1の円柱屈折力C
30、前記第2の円柱屈折力C
90、および前記第3の円柱屈折力C
150、ならびにS、C、およびAに対する値は、以下の公式に従って関連する、請求項3に記載のシステム。
【数10】
【請求項5】
前記屈折要素のうちの少なくとも1つは、変形可能な光学材料を含む、請求項1-4のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項6】
前記変形可能な光学材料は、固体の光学材料である、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記固体の光学材料は、エラストマ系材料である、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記エラストマ系材料は、シリコンエラストマである、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記屈折要素のうちの少なくとも1つは、前記変形可能な光学材料に隣接する変形可能な透明膜を備え、前記少なくとも1つの屈折要素の前記アクチュエータは、前記少なくとも1つの屈折要素の前記円柱屈折力を変動させるために、前記変形可能な透明膜の形状を変形させるように配列される、請求項5-8のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項10】
前記アクチュエータは、前記少なくとも1つの屈折要素の前記円柱屈折力を変動させるために、前記少なくとも1つの屈折要素の前記円柱軸を中心として前記膜を湾曲させる、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記屈折要素のうちの少なくとも1つは、前記変形可能な光学材料から前記屈折要素の反対側に、前記変形可能な光学材料に隣接する、剛性の透明な基板を備える、請求項9または請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記屈折要素のうちの少なくとも1つのものの前記光学要素は、前記変形可能な光学材料の縁に剛性ガスケットを備え、前記変形可能な透明膜は、前記アクチュエータによって作用されるとき、前記剛性ガスケット上で枢動する、請求項9-11のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項13】
前記第1、第2、および第3の光学要素のそれぞれの前記円柱屈折力は、-5D~+5Dの範囲を通して可変である、請求項1-12のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項14】
前記光学要素は、1cm
2またはそれを上回る面積を有する開口を有する、請求項1-13のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項15】
前記屈折要素のそれぞれは、10mmまたはそれを下回る前記光軸に沿った厚さを有する、請求項1-14のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項16】
各光学要素は、対の屈折要素を備え、前記対の各屈折要素は、前記光学要素の前記半径方向における軸に沿って配向される立方体外形を有し、前記対応する光学要素の前記アクチュエータは、前記光軸に対して直角である反対方向に前記対の屈折要素を摺動させるように配列される、請求項1-15のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項17】
頭部搭載型ディスプレイシステムであって、
可変球面屈折力(SPH)を有する、第1の光学要素と、
可変SPHと、可変円柱屈折力(CYL)と、可変円柱軸(Axis)とを有する、第2の光学要素と、
前記第1の光学要素と前記第2の光学要素との間に配列される、シースルーディスプレイと、
前記第1の光学要素と、前記第2の光学要素と、前記シースルーディスプレイと通信している電子コントローラであって、前記電子コントローラは、前記頭部搭載型ディスプレイの個々のユーザの処方箋(Rx)に従って、前記第1の光学要素の前記SPH、ならびに前記第2の光学要素の前記SPH、CYL、およびAxisを調節するようにプログラミングされる、電子コントローラと
を備える、頭部搭載型ディスプレイシステム。
【請求項18】
前記第1の光学要素と、第2の光学要素と、シースルーディスプレイとを相互に対して、かつ使用中は前記頭部搭載型ディスプレイのユーザに対して搭載するためのフレームをさらに備える、請求項17に記載の頭部装着型ディスプレイ。
【請求項19】
前記第2の光学要素は、前記頭部搭載型ディスプレイの使用中、前記シースルーディスプレイと前記ユーザとの間に配列される、請求項17または請求項18に記載の頭部装着型ディスプレイ。
【請求項20】
前記第1の光学要素は、相互に対して直角である、その個別の円柱軸を有する、2つの可変円柱レンズを備える、請求項17-19のいずれか1項に記載の頭部装着型ディスプレイ。
【請求項21】
眼追跡モジュールをさらに備え、前記電子コントローラは、前記頭部搭載型ディスプレイのユーザが前記眼追跡モジュールから見ている場所に関する情報に基づいて、前記第2の光学要素の前記処方箋を変動させるようにプログラミングされる、請求項17-20のいずれか1項に記載の頭部装着型ディスプレイ。
【請求項22】
前記電子コントローラは、前記ユーザが見ている場所に依存して、近視力の処方箋から遠視力の処方箋まで、前記第2の光学要素の前記SPH、CYL、およびAxis変動させるようにプログラミングされる、請求項21に記載の頭部装着型ディスプレイ。
【請求項23】
生体認証モジュールをさらに備え、前記電子コントローラは、前記生体認証モジュールからの情報に基づいて、ユーザの身元確認を行い、前記ユーザの身元に基づいて、前記第2の光学要素の処方箋を調節するようにプログラミングされる、請求項17-22のいずれか1項に記載の頭部装着型ディスプレイ。
【請求項24】
前記生体認証モジュールは、虹彩による身元確認モジュールである、請求項23に記載の頭部装着型ディスプレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(優先権の主張)
本願は、米国特許法第119条(e)下、参照することによってその内容全体が本明細書によって組み込まれる、2020年8月7日に出願された、米国特許出願第63/062,746号の優先権を主張する。
【0002】
(開示の分野)
本開示は、調整可能レンズに関し、より具体的には、ユーザの屈折異常を矯正するための調整可能レンズを組み込む、頭部搭載型ディスプレイに関する。
【背景技術】
【0003】
(背景)
拡張現実のための装着可能ディスプレイシステムは、それを通して、ユーザがその世界を視認し得、それを用いて、ディスプレイシステムが、デジタル画像をユーザに投影し得る、1つまたは2つの接眼レンズを含み得る。接眼レンズは、多くの場合、高度屈折性材料を使用して形成され、典型的には、正視力を有する、すなわち、屈折異常を伴わないユーザを考慮するように設計される。
【0004】
近眼(近視)または遠眼(遠視)ユーザ等の非正視力を有するユーザのために、カスタムされた挿入物が、例えば、その眼科処方箋(Rx)に従って、ユーザの屈折異常を矯正する、装着可能ディスプレイ内に提供され得る。代替として、ディスプレイの形状因子は、装着者とディスプレイの接眼レンズとの間に眼鏡を収容するように設計され得る。しかしながら、ヘッドセットのカスタム化は、時間がかかり、かつ高価であり得、眼鏡を収容する形状因子は、重過ぎて扱いにくく、審美的に魅力的ではなくあり得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
(要約)
本開示は、非正視力の矯正のための頭部搭載型ディスプレイ、特に、仮想現実用頭部搭載型ディスプレイの接眼レンズの中に統合され得る、調整可能レンズを特徴とする。接眼レンズは、ユーザにデジタル画像を投影するために使用される導波管に対して配列される、完全統合型の視野構成可能光学部品を含み得、本光学部品は、可変球面屈折力(SPH)、円柱屈折力(CYL)、および円柱軸(Axis)の値を含む、ユーザのための調整可能なRxを提供することができる。ある構成では、各調整可能接眼レンズは、2つの可変複合レンズを含み、1つは、可変球面、円柱、および軸を伴う導波管のユーザ側にあり、2つ目は、可変球面を伴う導波管の世界側にある。集合的に、可変複合レンズは、乱視を含む、ユーザの屈折異常を矯正することができ、環境に対して適切な深度水準で、かつユーザの固視の深度に対応する、デジタル画像を位置付けることができる。
【0006】
いくつかの実施形態では、各複合レンズは、複数の(例えば、2つまたは3つの)可変円柱レンズから成る。例えば、各可変円柱レンズは、アクチュエータと統合される、変形可能な屈折要素を含むことができる。アクチュエータは、レンズの1つまたは2つの表面の曲率を変動させるために、変形可能な屈折要素に力を印加し、それによって、円柱レンズの光学倍率を変動させる。その円柱軸が直角に配向される、2つのそのような可変円柱レンズのアセンブリは、調節可能な球面倍率を伴う複合レンズを提供するために使用され得る。その円柱軸が60°の間隔で配向される、3つの可変円柱レンズのアセンブリは、調節可能なSPH、CYL、およびAxisを伴う複合レンズを提供するために使用され得る。
【0007】
第1の側面では、本明細書に開示されるのは、システムであって、光軸に沿って配列される第1の屈折要素と、第1の制御信号に応答して、第1の屈折要素の円柱屈折力を変動させるように配列される第1のアクチュエータとを含む、第1の光学要素であって、第1の屈折要素は、光軸に対して直角である、第1の半径方向に沿って第1の屈折要素と関連付けられる第1の円柱軸を有する、第1の光学要素と、光軸に沿って配列される第2の屈折要素と、第2の制御信号に応答して、第2の屈折要素の円柱屈折力を変動させるように配列される第2のアクチュエータとを含む、第2の光学要素であって、第2の屈折要素は、光軸に対して直角である、第2の半径方向に沿って第2の屈折要素と関連付けられる第2の円柱軸を有する、第2の光学要素と、光軸に沿って配列される第3の屈折要素と、第3の制御信号に応答して、光軸に対して直角である、第3の半径方向に沿って第3の屈折要素の円柱屈折力を変動させるように配列される第3のアクチュエータとを含む、第3の光学要素であって、第1、第2、および第3の半径方向は異なる、第3の光学要素と、第1、第2、および第3のアクチュエータと通信している電子コントローラであって、電子コントローラは、それぞれ、動作の間、第1、第2、および第3の制御信号を第1、第2、および第3のアクチュエータに提供するように構成され、それによって、第1、第2、および、第3の屈折要素は、集合的に、処方箋(Rx)に従う、全体的な球面屈折力(SPH)と、円柱屈折力(CYL)と、円柱軸(Axis)とを有する、光学要素を形成する、電子コントローラとを含む。
【0008】
いくつかの実装では、第1の半径方向と第2の半径方向との間の角度分離は、第2の半径方向と第3の半径方向との間の角度分離に等しくあり得る。光軸対して直角であるデカルト座標系に対し、第1の半径方向は、30°にあり得、第2の半径方向は、90°にあり得、第3の半径方向は、150°にあり得る。第1の円柱屈折力C
30、第2の円柱屈折力C
90、および第3の円柱屈折力C
150、ならびにS、C、およびAに対する値は、以下の公式に従って関連する。
【数1】
【0009】
屈折要素のうちの少なくとも1つは、変形可能な光学材料を含み得る。変形可能な光学材料は、固体の光学材料であり得る。固体の光学材料は、エラストマ系材料であり得る。エラストマ系材料は、シリコンエラストマであり得る。屈折要素のうちの少なくとも1つは、変形可能な光学材料に隣接する変形可能な透明膜を含み、少なくとも1つの屈折要素のアクチュエータは、少なくとも1つの屈折要素の円柱屈折力を変動させるために、変形可能な透明膜の形状を変形させるように配列される。アクチュエータは、少なくとも1つの屈折要素の円柱屈折力を変動させるために、少なくとも1つの屈折要素の円柱軸を中心として膜を湾曲させる。屈折要素のうちの少なくとも1つは、変形可能な光学材料から屈折要素の反対側に、変形可能な光学材料に隣接する、剛性の透明な基板を含み得る。屈折要素のうちの少なくとも1つのものの光学要素は、変形可能な光学材料の縁に剛性ガスケットを含み得、変形可能な透明膜は、アクチュエータによって作用されるとき、剛性ガスケット上で枢動する。第1、第2、および第3の光学要素のそれぞれの円柱屈折力は、-5D~+5Dの範囲を通して可変であり得る。光学要素は、1cm2またはそれを上回る(例えば、5cm2またはそれを上回る、10cm2またはそれを上回る、16cm2またはそれを上回る)面積を有する開口を有する。屈折要素のそれぞれは、10mmまたはそれを下回る(例えば、6mmまたはそれを下回る、4mmまたはそれを下回る、3mmまたはそれを下回る、2mmまたはそれを下回る、1mmまたはそれを下回る)光軸に沿った厚さを有する。
【0010】
各光学要素は、対の屈折要素を備え得、対の各屈折要素は、光学要素の半径方向における軸に沿って配向される立方体外形を有し、対応する光学要素のアクチュエータは、光軸に対して直角である反対方向に対の屈折要素を摺動させるように配列される。
【0011】
第2の側面では、本明細書に開示されるのは、頭部搭載型ディスプレイシステムであって、可変球面屈折力(SPH)を有する、第1の光学要素と、可変SPHと、可変円柱屈折力(CYL)と、可変円柱軸(Axis)とを有する、第2の光学要素と、第1の光学要素と第2の光学要素との間に配列される、シースルーディスプレイと、第1の光学要素と、第2の光学要素と、シースルーディスプレイと通信している電子コントローラであって、電子コントローラは、頭部搭載型ディスプレイの個々のユーザの処方箋(Rx)にしたがって、第1の光学要素のSPH、ならびに第2の光学要素のSPH、CYL、およびAxisを調節するようにプログラミングされる、電子コントローラとを含む。
【0012】
頭部搭載型ディスプレイはさらに、第1の光学要素と、第2の光学要素と、シースルーディスプレイとを相互に対して、かつ使用中は頭部搭載型ディスプレイのユーザに対して搭載するためのフレームを含み得る。第2の光学要素は、頭部搭載型ディスプレイの使用中、シースルーディスプレイとユーザとの間に配列され得る。第1の光学要素は、相互に対して直角である、その個別の円柱軸を有する、2つの可変円柱レンズを含み得る。頭部搭載型ディスプレイはさらに、眼追跡モジュールを含み得、電子コントローラは、頭部搭載型ディスプレイのユーザが眼追跡モジュールから見ている可能性がある場所に関する情報に基づいて、第2の光学要素の処方箋を変動させるようにプログラミングされる。電子コントローラは、ユーザが見ている可能性がある場所に依存して、近視力の処方箋から遠視力の処方箋まで、第2の光学要素のSPH、CYL、およびAxisを変動させるようにプログラミングされ得る。頭部搭載型ディスプレイはさらに、生体認証モジュールを含み、電子コントローラは、生体認証モジュールからの情報に基づいて、ユーザの身元確認を行い、ユーザの身元に基づいて、第2の光学要素の処方箋を調節するようにプログラミングされる。生体認証モジュールは、虹彩による身元確認モジュールであり得る。
【0013】
他の利点の中でもとりわけ、調整可能接眼レンズは、乱視を含む、ユーザの一意の光学処方箋を矯正する一方、電力消費および電気機械オーバヘッドを最小限にすることができる。調整可能接眼レンズは、ユーザ毎にカスタムされた精密な接眼レンズを加工する必要性を軽減し、非正視力を有する、複合現実製品のユーザの可用性を増加させ得る。内蔵される生体認証モジュールは、その一意の虹彩パターンに基づいてユーザの身元確認を行い、視野内の複数のユーザの処方箋に適応させるために、調整可能接眼レンズを調節し得る。
【0014】
他の利点は、説明、図面、および請求項から明白であろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、装着可能ヘッドセットディスプレイの概略図である。
【0016】
【
図2】
図2は、近位および遠位調整可能光学要素を伴う、調整可能接眼レンズの後方への眼の設置を表す、概略図である。
【0017】
【
図3】
図3Aは、球面および円柱レンズを含む、非正視力を矯正するために使用される、複合レンズの図である。
図3Bは、非正視力を矯正するための代替手段を表す、3つの円柱レンズの図である。
【0018】
【
図4】
図4Aは、作動されてない例示的屈折要素の側面図を描写する概略図である。
図4Bは、ガスケットを伴う、位置合わせされたアクチュエータと組み合わせられる、例示的屈折要素の側面図を描写する概略図である。
【0019】
【
図5】
図5Aは、プラノ構成における屈折要素の3つのコンポーネントの斜視図である。
図5Bは、正の円柱倍率を提供するように作動される、
図5Aに示される、屈折要素のコンポーネントの斜視図である。
図5Cは、負の円柱倍率を提供するように作動される、
図5Aに示される、屈折要素のコンポーネントの斜視図である。
【0020】
【
図6】
図6は、摺動構成における、鏡像立方体外形を伴う6対の屈折要素の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図において、同様の記号は、同様の要素を示す。
【0022】
(詳細な説明)
図1は、シースルーディスプレイ70と、そのディスプレイ70の機能を支持するための種々の機械的および電子モジュール、ならびにシステムを含む、例示的頭部搭載型ディスプレイシステム60を図示する。ディスプレイ70は、ディスプレイシステムユーザ90によって装着可能であり、ユーザ90の眼の正面にディスプレイ70を位置付けるように構成される、フレーム80内に収容される。いくつかの実施形態では、ディスプレイ70は、眼鏡類と見なされ得る。いくつかの実施形態では、スピーカ100が、フレーム80に結合され、ユーザ90の外耳道に隣接して位置付けられる。ディスプレイシステムはまた、音を検出するために、1つ以上のマイクロフォン110を含んでもよい。マイクロフォン110は、ユーザが、入力またはコマンド(例えば、ボイスメニューコマンドの選択、自然言語質問等)をシステム60に提供することを可能にし得る、および/または他の人物と(例えば、類似するディスプレイシステムの他のユーザと)の音声通信を可能にし得る。マイクロフォン110はまた、ユーザの周囲の状況から音声データ(例えば、ユーザおよび/または環境からの音)を収集することができる。いくつかの実施形態では、ディスプレイシステムはまた、フレーム80とは別個であり、ユーザ90の身体(例えば、頭部、胴部、四肢等)に取り付けられ得る、周囲センサ120aを含んでもよい。いくつかの実施形態では、周囲センサ120aは、ユーザ90の生理的状態を特徴付けるデータを入手し得る。
【0023】
いくつかの実施形態では、ディスプレイシステムはまた、眼追跡モジュール125aを含み得る。いくつかの実施形態では、眼追跡モジュール125aは、ユーザ90の生体認証データを入手するために、生体認証モジュールを含むことができる。いくつかの実施形態では、生体認証モジュールは、虹彩による身元確認モジュールであり得る。
【0024】
いくつかの実施形態では、眼追跡モジュール120aは、固視の深度データを入手し得る。眼追跡モジュール120aは、ローカルプロセッサおよびデータモジュール140への通信リンク125b(例えば、有線の導線または無線接続)によって、動作可能に結合され得る。眼追跡モジュール120aは、生体認証および固視の深度データをローカルプロセッサおよびデータモジュール140に通信し得る。
【0025】
ディスプレイ70は、フレーム80に固定して取り付けられる、ユーザによって装着されるヘルメットまたは帽子に固定して取り付けられる、ヘッドホン内に埋設される、または(例えば、リュックサック型構成において、またはベルト結合型構成において)ユーザ90に取外可能に取り付けられる等の様々な構成において搭載され得る、ローカルデータ処理モジュール140に、有線の導線または無線接続によって等、通信リンク130によって、動作可能に結合される。同様に、センサ120aは、通信リンク120b(例えば、有線の導線または無線接続)によって、ローカルプロセッサおよびデータモジュール140に動作可能に結合され得る。ローカル処理およびデータモジュール140は、ハードウェアプロセッサ、ならびに不揮発性メモリ(例えば、フラッシュメモリまたはハードディスクドライブ)等のデジタルメモリを含み得、その両方が、データの処理、キャッシング、および記憶を支援するために利用され得る。本データは、(例えば、フレーム80に動作可能に結合される、または別様にユーザ90に取り付けられ得る)画像捕捉デバイス(例えば、カメラ)、マイクロフォン、慣性測定ユニット、加速度計、コンパス、GPSユニット、無線デバイス、ジャイロスコープ、および/または本明細書に開示される他のセンサ等のセンサから捕捉されるデータ、ならびに/もしくは2)場合によっては、処理または読出後のディスプレイ70への通過のために(仮想コンテンツに関連するデータを含む)遠隔処理モジュール150および/または遠隔データリポジトリ160を使用して入手および/または処理されるデータを含み得る。ローカル処理およびデータモジュール140は、通信リンク170、180によって、有線または無線通信リンクを介して等、遠隔処理モジュール150および遠隔データリポジトリ160に動作可能に結合され得、それによって、これらの遠隔モジュール150、160は、相互に動作可能に結合され、ローカル処理およびデータモジュール140に対するリソースとして使用可能である。いくつかの実施形態では、ローカル処理およびデータモジュール140は、画像捕捉デバイス、マイクロフォン、慣性測定ユニット、加速度計、コンパス、GPSユニット、無線デバイス、および/またはジャイロスコープのうちの1つ以上を含み得る。いくつかの他の実施形態では、これらのセンサのうちの1つ以上は、フレーム80に取り付けられ得る、または有線もしくは無線の通信経路によって、ローカル処理およびデータモジュール140と通信する、スタンドアロンデバイスであり得る。
【0026】
遠隔処理モジュール150は、画像および音声情報等のデータを分析および処理するために、1つ以上のプロセッサを含み得る。いくつかの実施形態では、遠隔データリポジトリ160は、デジタルデータ記憶設備であり得、これは、「クラウド」リソース構成におけるインターネットまたは他のネットワーク構成を通して使用可能であり得る。いくつかの実施形態では、遠隔データリポジトリ160は、1つ以上の遠隔サーバを含み、これは、ローカル処理およびデータモジュール140ならびに/もしくは遠隔処理モジュール150に情報(例えば、拡張現実コンテンツを生成するための情報)を提供し得る。他の実施形態では、全てのデータが、記憶され、全ての算出が、ローカル処理およびデータモジュールにおいて実施され、遠隔モジュールから完全に自律した使用を可能する。
【0027】
ディスプレイの接眼レンズとともに含まれる、可変接眼レンズのコンポーネントは、ユーザのための固視の深度をユーザの視力と整合させるために、接眼レンズの屈折力を調節する。可変コンポーネントの屈折力は、可能性として考えられる値の範囲を横断して、異なる値で設定され、制御可能な矯正の追加された柔軟性を伴って、固定されたレンズの機能を果たすことができる。屈折異常を矯正するためのユーザの光学処方箋(Rx)は、ヘッドセットコントローラの中にロードされ、可変コンポーネントは、その中のパラメータの一意のセットを矯正するために修正され得る。ヘッドセットは、新しいユーザ毎に本修正を実施し、ひいては、一意のRxをそれぞれ矯正することができる。
【0028】
図2を参照すると、頭部搭載型ディスプレイシステムの接眼レンズ200は、プロジェクタ220からの光をユーザの眼210に指向する。プロジェクタ220および接眼レンズ200は、フレームまたは筐体(図示せず)によって、相互に、かつユーザの眼210に対して位置付けられる。プロジェクタ220は、ユーザのこめかみの傍に位置し、ユーザのこめかみを通り越して延在する、接眼レンズ200の端部に光を指向する。示されるように、接眼レンズ200は、平面導波管240と、入力結合回析格子(ICG)230と、外部結合要素(OCE)250とを含むが、しかしながら、より複雑な配列(例えば、複数の積み重ねられた導波管から成る)も、可能である。第1の可変焦点アセンブリ270aは、導波管240の世界側に位置し、第2の可変焦点アセンブリ270bは、ユーザ側に位置する。集合的に、可変焦点アセンブリ270aおよび270bの屈折力は、仮想画像の深度平面およびユーザのRxを考慮するために、接眼レンズの光学性質を並行して矯正するように調節される。
【0029】
ICG230は、プロジェクタ220からの光を受光し、プロジェクタ220からの光の接眼レンズ200の中への内部結合を促進するために位置付けられる、表面回析格子である。ICG230は、プロジェクタ220に最近傍の接眼レンズ200の縁に、またはその近傍に位置する。ICG230は、プロジェクタ220からの光を接眼レンズ200の平面導波管基板240内の導波モードの中に指向する。
【0030】
平面導波管基板240は、外部結合要素(OCE)250に、その表面における全内部反射を通して、接眼レンズ200に沿って、内部結合された光を誘導する。OCE250は、平面導波管基板240の外に光を抽出し、これをユーザの眼210に向かって再指向するように構成される、第2の表面回析格子である。OCE250は、射出瞳エクスパンダ(EPE)もしくは直交瞳エクスパンダ(OPE)、またはその両方を含み得る。OCE250は、ユーザの眼210の正面に位置し、ユーザの瞳孔212が、OCE150から出力される光を受光するように位置付けられ得る領域に、プロジェクタからの光を送達する。本領域は、アイボックスと称される。OCE250はさらに、アイボックスの側方位置の範囲を収容するための側方寸法を有し得る。例えば、OCE250の側方寸法251の非限定的な範囲は、30mmまたはそれを下回る(例えば、25mmまたはそれを下回る、20mmまたはそれを下回る、15mmまたはそれを下回る)ものであり得る。
【0031】
接眼レンズ200のユーザに面した表面上に配列される、可変焦点アセンブリ270bは、乱視を含む、ユーザの非正視力を矯正する。可変焦点アセンブリ270bは、加えて、仮想画像を表示するために、矯正された深度平面において、接眼レンズ200の焦点を設置する。本焦点の設置はまた、ディスプレイを通してユーザに通過する、実画像の焦点にも影響を及ぼす。接眼レンズ200の世界に面した表面上に配列される、可変焦点アセンブリ270aは、可変焦点アセンブリ270bの矯正から結果としてもたらされる、実画像の焦点設置を矯正する。可変焦点アセンブリ270aは、2つの光学要素271aおよび271bを含み、可変焦点アセンブリ270bは、3つの光学要素271c、271d、および271eを含む。
【0032】
いくつかの実施形態では、各光学要素271a-eは、変形可能な膜に接触する変形可能な光学材料を組み込む、屈折要素を含む。屈折要素は、
図4にさらに説明される、接続された光学要素271a-eの屈折力を変化させるために動作する、アクチュエータ272a-eに結合される。アクチュエータ272は、例えば、単一軸に沿って、対応する屈折要素の少なくとも1つの表面を変形させ、それによって、光学要素271の屈折要素に可変円柱レンズの機能を果たすことができる。いくつかの実施形態では、アクチュエータは、圧電性のアクチュエータであり得る。
【0033】
アクチュエータ272a-eは、コントローラ274からの制御信号に応答して、力を印加する。ある実装では、ヘッドセットコントローラ274は、光学要素271a-e毎の屈折力を判定するために計算を実施する。各光学要素271a-eのレンズ外形は、可変焦点アセンブリ270aまたは270bの屈折力を確立するために組み合わせられる。可変焦点アセンブリに対する光学倍率は、ユーザのRx、ユーザ環境、投影された画像、および/またはこれらのパラメータの組み合わせを含む、様々な考慮点に基づいて変動し得る。
【0034】
いくつかの実施形態では、コントローラ274は、眼追跡モジュールからの生体認証データを受信し、その生体認証に基づいて、ユーザのRxを矯正するために、可変焦点アセンブリ270bの屈折力を調節し得る。いくつかの実施形態では、コントローラ274は、眼追跡モジュールから、ユーザの固視の深度データを受信し、ユーザの近視力または遠視力のRxを矯正するために、可変焦点アセンブリ270bの屈折力を調節し得る。同様に、コントローラ274は、眼追跡モジュールからのユーザの固視の深度データを受信し、ユーザのために固視の深度を整合させるために、仮想画像の光学深度を調節するために、可変光学要素270aのレンズ外形を調節し得る。
【0035】
一般に、ヒトの眼は、近視、遠視、乱視、またはその組み合わせ等の疾患につながる、屈折異常を有し得る。入射光線を修正するために矯正レンズを使用することによって、これらの屈折異常を矯正する。近視または遠視の屈折異常は、眼の投影された画像が、眼の後部平面と焦点が合っていないときに生じ、典型的には、眼と入射光との間に設置される「球面」外形を伴うレンズを通して矯正される。広義には、プラノ球面レンズ外形は、2つの対向表面、すなわち、湾曲表面および平面表面を伴うレンズ外形を結果としてもたらす、球面の表面の平面区分と見なされ得る。球面レンズの湾曲表面は、平面表面に直角に配向される中心軸の周囲において、半径方向に対称である。ユーザの眼の光軸に沿って配列される、球面外形を伴うレンズは、これらの屈折異常を矯正する。
【0036】
乱視の屈折異常は、異なる方向に沿って差分曲率を有する、眼の水晶体に起因する。「円柱」外形を有するレンズは、このタイプの異常を矯正することができる。プラノ円柱レンズ外形は、円柱の縦軸に平行に捉えられる、円柱の平面区分と見なされ得る。これは、対向する湾曲表面(例えば、凸面)および平面表面を伴うレンズを結果としてもたらす。平面表面の中心に沿った縦軸は、円柱軸と称される。湾曲表面は、円柱外形の長さに沿って等しい曲率半径を有する。
【0037】
典型的には、球面コンポーネントおよび円柱コンポーネントを有するレンズが、乱視の非正視眼の屈折異常を矯正するために使用される。眼科処方箋(Rx)は、球面コンポーネント、円柱コンポーネント、および円柱軸コンポーネント(SPH、CYL、Axis)を組み合わせ、それらは、それぞれ、球面および円柱レンズの屈折力、ならびに円柱軸の配向である。水平に指向される、0°を有する光軸に直角に配向されるデカルト座標系は、円柱軸を画定するために使用され得る。
【0038】
球面または円柱レンズは、個別の度数または屈折力を有し、典型的には、ジオプタ(D)で測定される。レンズの屈折力は、ゼロ、負の(例えば、発散)数、または正の(例えば、収束)数であり得る。理論によって拘束されることを所望するわけではないが、屈折力は、焦点距離(f)の逆数に等しくあり得、すなわち、D=1/fである。例えば、+3Dの屈折力を伴うレンズは、1/3メートルにおいて焦点を合わせるために、光学的無限遠から平行な光線を導く。さらに例えば、平坦なまたはプラノレ/ンズは、0Dの屈折力を有し、光を収束または発散させない。
【0039】
Rxは、
図3Aに示されるように、球面レンズおよび円柱レンズの組み合わせによって表され得る。描写されるのは、屈折力Sの球面レンズ310と、屈折力Cの円柱レンズ312の例示的アセンブリである。水平面に対して角度Aで配向される、円柱レンズ312の円柱軸313が、示される。理論によって拘束されることを所望するわけではないが、任意のRxの表面上のある点(x、y)における位相外形は、
【数2】
に比例し、式中、Sは、球面レンズの屈折力であり、Cは、円柱レンズの屈折力であり、Aは、円柱レンズの角度配向である。
【0040】
球面レンズ310の矯正力は、代替として、その円柱軸が、相互から90°で配向される、対の円柱レンズ312によって達成され得る。故に、
図3Aに示される、球面レンズ310および円柱レンズ312の組み合わせも同様に、3つの円柱レンズの組み合わせを通して達成可能である。
図3Bは、個別の屈折力C
30、C
90、およびC
150を伴って、その円柱軸が、眼の水平面から30°、90°、および150°の半径方向において配列される、3つの円柱レンズ312a、312b、および312cの配列を描写する。理論によって拘束されることを所望するわけではないが、球面および円柱コンポーネントを用いてRxを矯正するために必要な屈折力C
30、C
90、およびC
150は、個別のレンズ毎に、以下を使用して判定され得る。
【数3】
【0041】
上記に基づいて、
図2に説明される光学要素271a-eは、円柱レンズの機能を果し得、それらは、所望のRxを遂行するために、配向され、光学要素内に組み合わせられ得る。
【0042】
30°、90°、および150°の半径方向に配列される円柱軸の配列が、説明され、3つの要素Rx(例えば、SPH、CYL、Axis)に対して機能するであろうが、これらの配向は、乱視の非正視力に対する矯正を提供することができる唯一の解決策ではない。一般に、Rxの3つのパラメータを整合させるために、十分な自由度を与えるであろう、角度の多くのセットが存在する。例えば、(例えば、眼の水平面から)0°、60°、および120°で配向される3つの円柱軸もまた、そのようなRxを矯正し得る。本配列は、
図3Bに説明される円柱軸間に、60°の分離を維持する。しかし、さらなる実施例として、45°によって分離される(例えば、0°、45°、90°)円柱軸を伴う3つの円柱レンズもまた、3つの要素Rxにとって必要な矯正を提供し得る。
【0043】
一般に、円柱レンズのあるセットの3つの円柱軸間の角度分離の合計は、円柱レンズの2つ以上の間の冗長性を除外するために十分であり得る。例えば、3つの円柱軸間の角度分離の合計は、45°~180°の範囲内であり得る。3つの円柱軸の中央の角度変位は、他の2つの円柱軸からほぼ等しくあり得る(例えば、90°の角度分離の合計に対し、中央軸は、他の2つから45°であり得る)、または円柱軸は、不等角度によって分離され得る。
【0044】
一般に、可変円柱レンズを提供することができる様々な光学要素が、
図2に描写される可変焦点アセンブリのために使用され得る。ある実施例が、
図4Aおよび4Bに示され、これは、変形可能な透明膜410と、透明な基板412と、変形可能な光学材料414と、変形可能な光学材料414の縁の周囲にあるガスケット416とから成る、光学要素400を示す。変形可能な透明膜410、変形可能な光学材料414、および基板412はともに、円柱軸に対して直角である、光軸420を伴う可変円柱レンズを形成し、これは、図の平面に対して直角に延在する。光学要素400の厚さは、10mmまたはそれを下回る(例えば、6mmまたはそれを下回る、4mmまたはそれを下回る、3mmまたはそれを下回る、2mmまたはそれを下回る、1mmまたはそれを下回る)。比較的薄い光学要素が、望ましく、頭部搭載型ディスプレイに組み込むために好適なコンパクトで軽いデバイスを提供し得る。
【0045】
光学要素400はまた、光学要素の円柱屈折力を変化させるために配列される、アクチュエータ472も含む。
【0046】
変形可能な透明膜410は、剛性ガスケット416の上縁および光学材料414の上側表面と接触して位置付けられる。アクチュエータ472の接触要素は、膜410の反対側と接触して位置付けられる。透明膜410は、力が印加されるとき、変形(例えば、湾曲)することが可能な透明な材料から成る。例示的材料は、ホウケイ酸ガラス等の無機ガラス、または薄膜ポリカーボネート等のプラスチックフィルムを含む。透明膜410の厚さは、光学材料416に対する保護を提供するために十分である一方、依然として、可撓性のままである。例えば、透明膜は、約0.1mmまたはそれよりも薄い厚さであり得る。
【0047】
ガスケット416は、縁を取り囲み、共通の高さまで光学材料414を包囲する。ガスケット416は、光学要素271が作動されるとき、材料414の側方膨張および収縮を抑制する。ガスケット416はさらに、それを通して、光が光軸420に沿って通過する、開口を形成するために、部分的に、透明な基板412を包み込む。いくつかの実施形態では、本開口は、1cm2またはそれを上回る(例えば、5cm2またはそれを上回る、10cm2またはそれを上回る、16cm2またはそれを上回る)視認面積を有し得る。
【0048】
基板412と膜410との間に配列されるのは、変形可能な光学材料414である。光学材料414は、可視光において、光に対して実質的に透明である、低硬度材料から成る。いくつかの実施形態では、本光学材料は、エラストマ系材料等の固体の光学材料であり得る。例えば、シリコンエラストマまたはジェル等の材料は、光学材料414のために使用され得る。000スケールのショア硬度計上で10~50(例えば、10~40、10~30、10~20、20~50、30~50、または40~50)を測定する他の材料もまた、検討され得る。
【0049】
剛性の透明な基板412は、変形可能な光学材料414のための剛体基礎を提供し、剛性ガスケット416の全内側幅を横断して延在する。剛性の透明な基板412は、変形可能な光学材料414によって印加される力の下、その形状を保持し、可視光において光に対して実質的に透明である材料から成る。例えば、基板412は、プラスチックまたは無機ガラスから形成され得る。基板412は、1mm厚またはそれを下回る(例えば、0.8mmまたはそれを下回る、0.6mmまたはそれを下回る、0.4mmまたはそれを下回る、0.2mmまたはそれを下回る)厚さを有し得る。
【0050】
図4Aでは、光学要素400が、変形可能な膜410が、無限の曲率半径、例えば、0の屈折力を有する、作動していない状態で示される。アクチュエータ472による作動に応じて、膜410の変形は、光学材料414を圧縮または膨張させ、それによって、光学要素の屈折力を変化させる。
【0051】
ここで
図4Bを参照すると、剛性ガスケット416と位置合わせされ、かつ屈折要素400の膜410の外縁と接触した状態で配列される、アクチュエータ272機構が、示される。アクチュエータ272は、平行かつ共通方向の力を印加するために、ガスケット416上で枢動し、それによって、ガスケット416の縁と平行な軸およびその中心に沿って、膜410を変形させる。本変形は、これを湾曲させる膜410の曲率半径を変化させる。アクチュエータ272は、膜410を凹面または凸面にさせ、それぞれ、正または負の屈折力に相関する。その周囲に変形が生じる軸は、光学要素の円柱軸である。
図4Bの実施例では、軸は、ページの平面から外に垂直に延在する。
【0052】
これらの変形の例証が、
図5A-Cに示される。
図5Aは、
図4Aおよび4Bに描写されるものに類似する、屈折要素500を描写し、透明膜510、剛性基板512、および光学材料514のみを示す。デカルト座標系530が、文脈のために、
図5Aの左側に示される。屈折要素500のための光軸は、座標系530のz軸に平行である。光軸に対して直角である、円柱軸520に対する膜510の曲率半径の変化は、屈折要素500の屈折力の変化を結果としてもたらす、光学材料514の圧縮または膨張を引き起こす。膜510の曲率半径の変化は、正または負の円柱屈折力を引き起こす。例えば、円柱屈折力は、-5D~+5Dの範囲(例えば、-4D、-3D、-2D、-1D、0D、1D、2D、3D、または4D)を通して可変であり得る。円柱屈折力は、例えば、-5Dから+5Dまで、0.1Dまたはそれを上回る(例えば、0.25Dまたは0.5D等の0.2Dまたはそれを上回る)漸増的な段階で変動され得る。
【0053】
図5Aは、作動していない状態の屈折要素500を描写するが、
図5Bおよび5Cは、作動された状態の屈折要素500を描写する。
図5Bは、凸面プラノ円柱レンズを作成する、円柱軸520に沿って作動される、屈折要素500を示す。
図5Bのレンズは、正の円柱屈折力(例えば、1D、2D、3D、または4D)を提供する。
図5Cは、負の円柱屈折力(例えば、-4D、-3D、-2D、または-1D)を提供する、凹面プラノ円柱レンズを形成するために作動される、同一の例示的屈折要素500を示す。
【0054】
可変円柱レンズとして動作する他のアセンブリもまた、可能である。例えば、別の実施形態では、可変焦点アセンブリは、摺動する対の剛性屈折要素(例えば、ガラスまたはプラスチックから形成される、成型または研磨された要素)から成り、各対は、可変円柱レンズとして動作する。実施例が、
図6に示され、屈折要素の3つの対620、621、および622を含む、可変焦点アセンブリ600を描写する。具体的には、対620は、屈折要素620aおよび620bから成り、対621は、屈折要素621aおよび621bから成り、対622は、屈折要素622aおよび622bから成る。
図6のx軸、y軸、およびz軸を配向する挿入投影軸が、示される。
【0055】
各屈折要素(620a、b、および621a、b、および622a、b)は、平面表面と、対向する2次元立方体表面とを有する。一般に、立方体表面は、3次の多項式、例えば、3次多項式によって定義される表面である。立方体表面を有する屈折要素は、類似する曲率半径の正および負の円柱レンズ外形の組み合わせによって構築され得る。結果として生じる表面は、3次多項式に緊密に従う。対の1つの屈折要素の立方体表面は、その立方体表面が、第1の屈折要素の鏡像である、対の第2の屈折要素に対向する。整合された立方体頂点を伴う、対の屈折要素は、ゼロ屈折力のレンズの機能を果たす。レンズの立方体頂点が、平行移動的に不整合であるとき、屈折要素は、焦線上へそれを通して通過する光を屈折させ、それによって、可変円柱レンズの効果を果たすであろう。
【0056】
各対の屈折要素、例えば、屈折要素620aおよび620bは、立方体表面が接触することなく、屈折要素が、相互に対して平行移動することを可能にする距離によって分離される。
図6の例示的実施形態では、屈折要素620aおよび620bは、立方体表面が接触することなく、ある距離によってx軸に沿って平行移動することができる。本距離は、対屈折要素の立方体外形の深度に依存する。屈折要素620aおよび620b、ならびに621aおよび621b、ならびに622aおよび622bは、概して、無機ガラス(例えば、ホウケイ酸ガラス)等の剛性の透明な材料または好適なプラスチック(例えば、ポリカーボネート)から成る。
【0057】
代表的な実施例として光学要素620を使用すると、光学要素620の全厚は、10mmまたはそれを下回り得、上記に説明されるように、屈折要素620sおよび620の個別の厚さと、その分離距離とを含む。屈折要素620aおよび620bの立方体外形は、上記に説明される円柱軸と同等に、光軸に対して直角である、共通の放射軸に沿って配向される。本様式では、光学要素620は、可変円柱レンズの機能を果たすことができる。線形アクチュエータ630と接触している光学要素620が、示される。アクチュエータ630は、光軸に対して直角である、共通軸に沿って反対方向に、屈折要素620aおよび620bを平行移動させるために動作する。
【0058】
例えば、線形アクチュエータ630は、正または負の屈折力を作成するために、620aに対して屈折要素620bを平行移動させることができる。一方向における屈折要素の鏡像立方体外形の不整合は、正の屈折力(例えば、1D、2D、3D、4D、または5D)を結果としてもたらすであろう。反対方向における屈折要素の鏡像立方体外形の不整合は、負の円柱屈折力(例えば、-1D、-2D、-3D、-4D、または-5D)を結果としてもたらすであろう。
【0059】
3つの光学要素620、621、および622が、
図3Bのレンズと同様に、眼の水平面から150°、90°、および30°に対応する円柱軸を伴って、示される。言い換えると、円柱軸は、それぞれ、x軸から150°、90°、および30°で、x-y平面上に配向される。屈折要素620b、621b、および622bの立方体表面上の破線は、光学要素620、621、および622の個別の円柱軸と整合される。各光学要素620、621、および622が、線形アクチュエータ630、631、および632と接触した状態で示される。上記に説明されるように、眼の水平面から150°、90°、および30°に対応する、その個別の立方体外形を伴う、任意の3つの屈折要素は、
図6の例示的システムのように、任意のユーザの眼科処方箋に対する矯正を実施する。同様に、直角に配向される、立方体頂点を伴う任意の2つのそのような光学要素は、球面レンズの機能を果たすであろう。例えば、そのような配列は、可変焦点アセンブリ270aのための仮想画像平面の調節を実施するために使用され得る。
【0060】
いくつかの実施形態が、説明される。他の実施形態も、以下の請求項内にある。
【国際調査報告】