(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-01
(54)【発明の名称】シリコン含有製品の合成
(51)【国際特許分類】
C01B 33/023 20060101AFI20230825BHJP
【FI】
C01B33/023
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023508019
(86)(22)【出願日】2021-08-05
(85)【翻訳文提出日】2023-03-02
(86)【国際出願番号】 US2021071124
(87)【国際公開番号】W WO2022032301
(87)【国際公開日】2022-02-10
(32)【優先日】2020-08-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515084719
【氏名又は名称】シックスケー インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】プーレン,エイドリアン
(72)【発明者】
【氏名】ホルマン,リチャード ケー.
【テーマコード(参考)】
4G072
【Fターム(参考)】
4G072AA01
4G072AA24
4G072BB05
4G072BB07
4G072GG01
4G072GG03
4G072HH17
4G072HH33
4G072JJ01
4G072JJ02
4G072JJ09
4G072MM38
4G072QQ01
4G072RR25
4G072UU30
(57)【要約】
本明細書に開示されるのは、安価なシリカ供給源からSi又はSiOxを生成させる実施形態である。幾つかの実施形態において、プラズマ加工が、シリカ供給源をシリコン製品に変換するために用いられ得る。独特の形態が、幾つかの実施形態において形成され得る。幾つかの実施形態において、還元剤、触媒、及び/又は塩が、有利な特性を提供するために用いられ得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリカ供給源から球状化粉末を製造する方法であって、
シリカ供給源供給材料をマイクロ波プラズマトーチに導入すること;ならびに
前記シリカ供給源供給材料を、前記マイクロ波プラズマトーチにより生成されたプラズマ内で溶融及び球状化して、球状化粉末を形成すること、
を含む、前記方法。
【請求項2】
さらに、前記球状化粉末からアノードを形成させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
さらに、前記アノードから電池を形成させることを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
高エネルギーミリングが用いられない、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
リソグラフィ加工が用いられない、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記シリコン球状化粉末がSi又はSiO
xである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記シリカ供給源供給材料が珪藻である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記シリカ供給源供給材料がシリカコロイドである、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記シリカ供給源供給材料がヒュームドシリカである、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記マイクロ波プラズマトーチが、水素、酸素、アルゴン、一酸化炭素及びメタンからなる群から選択される気体を使用する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記気体が高圧下にある、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
シリカ供給源供給材料をマイクロ波プラズマトーチに導入すること;ならびに
前記シリカ供給源供給材料を前記マイクロ波プラズマトーチにより生成されたプラズマ内で溶融及び球状化して、球状化粉末を形成すること、
を含む工程により形成された球状化粉末。
【請求項13】
プラズマを用いてシリカ材料を還元する方法であって、
シリカ供給源供給材料をマイクロ波プラズマトーチに導入すること;
還元性気体を前記マイクロ波プラズマトーチに導入すること;ならびに
前記シリカ供給源供給材料を前記マイクロ波プラズマトーチにより発生されたプラズマ内で溶融及び球状化して、球状化粉末を形成させること、
を含む、前記方法。
【請求項14】
プラズマを用いてシリカ材料を還元する方法であって、
シリカ供給源供給材料をマイクロ波プラズマトーチに導入し、前記シリカ供給源を1種又は複数の固体還元剤と接触させること;
還元性気体を前記マイクロ波プラズマトーチに導入すること;ならびに
前記シリカ供給源供給材料を前記マイクロ波プラズマトーチにより生成されたプラズマ内で溶融及び球状化して、球状化粉末を形成すること、
を含む、前記方法。
【請求項15】
前記プラズマがトーチを介してマイクロ波供給源により生成される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記シリカ材料が前記1種又は複数の固体還元剤を調合される、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記1種又は複数の固体還元剤が炭素を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記1種又は複数の固体還元剤が金属を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
シリカ供給源供給材料を前記マイクロ波プラズマ供給源に導入する前に、金属触媒を前記シリカ供給源供給材料に添加する、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
前記プラズマ内で溶融するために配合された塩組成物を前記マイクロ波プラズマトーチに添加する、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の参照
本出願は、2020年8月7日出願の米国特許仮出願第63/062,832号の、35U.S.C.§119(e)の下での優先権の利益を主張しており、該特許仮出願の全開示は、参照により本明細書に援用される。
【0002】
背景
分野
本開示は概して、低コストシリカ供給源からの貴重なシリコン製品の合成を対象とする。
【発明の概要】
【0003】
本明細書に開示されるのは、シリカ供給源から球状化粉末を製造する方法のための実施形態であり、該方法は、シリカ供給源供給材料をマイクロ波プラズマトーチに導入すること;ならびに該シリカ供給源供給材料を該マイクロ波プラズマトーチにより発生されたプラズマ内で溶融及び球状化して、球状化粉末を形成すること、を含む。
【0004】
幾つかの実施形態において、該方法はさらに、球状化粉末からアノードを形成することを含む。幾つかの実施形態において、該方法はさらに、アノードから電池を形成することを含む。幾つかの実施形態において、高エネルギーミリングは、用いられない。幾つかの実施形態において、リソグラフィ加工は、用いられない。
【0005】
幾つかの実施形態において、該シリコン球状化粉末は、Si又はSiOxである。幾つかの実施形態において、該シリカ供給源供給材料は、珪藻である。幾つかの実施形態において、該シリカ供給源供給材料は、シリカコロイドである。幾つかの実施形態において、n該シリカ供給源供給材料は、ヒュームドシリカである。
【0006】
幾つかの実施形態において、該マイクロ波プラズマトーチは、水素、酸素、アルゴン、一酸化炭素及びメタンからなる群から選択される気体を使用する。幾つかの実施形態において、該気体は、高圧下にある。
【0007】
本明細書の幾つかの実施形態は、シリカ供給源供給材料をマイクロ波プラズマトーチに導入すること;ならびに該シリカ供給源供給材料を該マイクロ波プラズマトーチにより発生されたプラズマ内で溶融及び球状化して、球状化粉末を形成させること、を含む工程により形成された球状化粉末を対象とする。
【0008】
本明細書の幾つかの実施形態は、シリカ供給源供給材料をマイクロ波プラズマトーチに導入すること;還元性気体を該マイクロ波プラズマトーチに導入すること;ならびに該シリカ供給源供給材料を該マイクロ波プラズマトーチにより発生されたプラズマ内で溶融及び球状化して、球状化粉末を形成させること、を含む工程により形成された球状化粉末を対象とする。
【0009】
本明細書の幾つかの実施形態は、シリカ供給源供給材料をマイクロ波プラズマトーチに導入するが、該シリカ供給源が1種又は複数の固体還元剤と接触されていること;還元性気体を該マイクロ波プラズマトーチに導入すること;ならびに該シリカ供給源供給材料を該マイクロ波プラズマトーチにより生成されたプラズマ内で溶融及び球状化して、球状化粉末を形成すること、を含む工程により形成された球状化粉末を対象とする。
【0010】
本明細書の幾つかの実施形態は、プラズマを用いてシリカ材料を還元する方法を対象とし、該方法は、シリカ供給源供給材料をマイクロ波プラズマトーチに導入すること;還元性気体を該マイクロ波プラズマトーチに導入すること;ならびに該シリカ供給源供給材料を該マイクロ波プラズマトーチにより生成されたプラズマ内で溶融及び球状化して、球状化粉末を形成すること、を含む。
【0011】
本明細書の幾つかの実施形態は、プラズマを用いてシリカ材料を還元する方法を対象とし、該方法は、シリカ供給源供給材料をマイクロ波プラズマトーチに導入し、該シリカ供給源を1種又は複数の固体還元剤と接触させること;還元性気体を該マイクロ波プラズマトーチに導入すること;ならびに該シリカ供給源供給材料を該マイクロ波プラズマトーチにより発生されたプラズマ内で溶融及び球状化して、球状化粉末を形成すること、を含む。
【0012】
幾つかの実施形態において、該プラズマは、トーチを介してマイクロ波供給源により生成される。幾つかの実施形態において、該シリカ材料は1種又は複数の固体還元剤を調合される。幾つかの実施形態において、該1種又は複数の固体還元剤は、炭素を含む。幾つかの実施形態において、該1種又は複数の固体還元剤は、金属を含む。
【0013】
幾つかの実施形態において、シリカ供給源供給材料をマイクロ波プラズマ供給源に導入する前に、金属触媒を該シリカ供給源供給材料に添加する。幾つかの実施形態において、プラズマ内で溶融するために配合された塩組成物を、マイクロ波プラズマトーチに添加する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、不活性ガス溶融法により測定された、水素含量と、粒子サイズと、還元の度合いの関連性を示す。
【0015】
【
図2】
図2は、本開示による、粉末を生成させる方法の例示的実施形態を示す。
【0016】
【
図3】
図3は、本開示の実施形態による、粉末の生成において使用され得るマイクロ波プラズマトーチの実施形態を示す。
【0017】
【
図4A】
図4Aは、本開示のサイドフィード式ホッパの実施形態による、粉末の生成において使用され得るマイクロ波プラズマトーチの実施形態を示す。
【
図4B】
図4Bは、本開示のサイドフィード式ホッパの実施形態による、粉末の生成において使用され得るマイクロ波プラズマトーチの実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
冶金級シリコンは、高温での炭素熱還元により作製され得る。還元状態では、該シリコンはその後、様々な純度に精製される。これらの工程は、財政及び環境の両方で高コストを負う。
【0019】
リチウムイオン電池のためのシリコンアノードは、既存のグラファイト材料を超えるセル容量の有意な増加を可能にするため、当該業界で注目の成長領域である。しかし、高い能力及び長いサイクル寿命の両方を提供するシリコンでは、複雑な形状及び小さなサイズが要求される。その形状及びサイズにより、リチウム化の際の膨潤を含有することができ、容量損失をもたらす破砕を回避することができる。そのような材料を形成させるのは、多くの場合、高価になり、リソグラフィ法、化学蒸着法及び規模の調整が困難な他の方法に依存する。
【0020】
幾つかの実施形態において、マイクロ波プラズマなどの還元性プラズマは、安価なシリカ供給源をSi又はSiOxのどちらかのシリコン製品に還元するために用いられ得る。
【0021】
そのようなシリカ供給源は、珪藻などの複雑な形状、又はシリカコロイドなどの非常に小さなサイズ(例えば、100nm未満)を有し得る。他の供給源としては、シラン又は四塩化ケイ素から作製され得る、例えば5~10nmサイズのヒュームドシリカが挙げられる。これらの形状は、リソグラフィの気相工程又は高エネルギーミリング操作のどちらかを要求し、どちらも高価で時間がかかるため、公知の方法を利用してアノード材料に製造することが困難になり得る。有利なことに、本開示は、予想外にこれらの問題を低減した。さらに、予想外の通常と異なる形態が、該シリコン製品に付与され得る。
【0022】
幾つかの実施形態において、珪藻(例えば、プランクトンの非晶質シリカ骨格)の還元が、アルゴン中に最大20%のマイクロ波プラズマなどの水素プラズマを用いて実施され得る。
図1は、不活性ガス溶融法により測定された、水素含量と、粒子サイズと、還元の度合いの関連性を示す。これらの結果から、還元が希釈水素というどちらかと言うと穏やかな条件であっても可能であることが示される。さらに有利なことに、これらの前駆物質の珪藻は、リチウム化の際にシリコンアノード材料に特有の膨潤を抑制し得るため、充分に循環し得る開放気孔を有している可能性がある。
【0023】
図1に示す通り、工程材料の酸素含量は、プラズマ中の水素含量の関数として表される(1=純粋なシリカ、0=シリコン)。そのため、プラズマ中の水素含量が増加するほど、より多くの還元が観察される(より低い酸素含量)。示された2つの曲線は、異なるサイズの切片のものであり、小さな粒子は、大きな粒子より多く還元されたことが示される。これは、気相還元が表面のみで起こるという事実と一致しており、そのため、より小さな粒子のより高い表面質量比(surface to mass ratio)が、より大きな還元を可能にする。
【0024】
幾つかの実施形態において、異なる水素濃度が、異なる成分を形成させるのに用いられ得る。例えば最大10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、又は99%(又は約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、又は約99%)の水素が、用いられ得る。幾つかの実施形態において、水素は、アルゴン、一酸化炭素、及びメタンなどの1種又は複数の他の気体で希釈され得る。幾つかの実施形態において、用いられる気体は、強力な(aggresive)還元剤であり得る。幾つかの実施形態において、該気体は、高圧下にあり得る。還元性気体は、トーチを通して供給される、又はトーチの下のプラズマプルームに注入される、のどちらかであり得る。
【0025】
幾つかの実施形態において、還元剤は、例えば固体形態の、シリカも添加され得る。これらは、例えば噴霧乾燥又はミリング/ペレット化を介して、シリカ原料に組み込まれ得る。そのような原料は、シリカ供給源と固体還元剤との密接な接触を提供することができ、それによりプラズマに供給されると、固相還元が起こり得る。還元剤は、コークスなどの任意の還元形態の炭素を含み得る。同様に、アルミニウム、チタン、マグネシウム又はカルシウムなどの金属が、用いられ得る。
【0026】
幾つかの実施形態において、触媒が、場合により固体還元剤原料に添加され得る。これらは、鉄がCO2からCOへの分解を促進することが知られるが、触媒がその分解を促進する場合に特に効果的になり得る。非限定的にFe、Mn、Co、Ni、Moをはじめとする種々の遷移金属が、この機能を果たし得る。これらは、塩化物又は硝酸塩などの金属又は塩形態のどちらかで提供され得る。さらに1つ又は複数の型の触媒が、用いられ得る
。
【0027】
幾つかの実施形態において、プラズマ温度で、塩が溶融形態になるように、固体還元剤原料が、追加的に塩配合物を配合され得る。そのような塩は、塩化物若しくはフッ化物などのハロゲン、又は硝酸塩若しくはリン酸塩などのオキソ陰イオンであり得る。どちらの型でも、陽イオンは、例えばナトリウム、リチウム、リン、セシウム、ルビジウム、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ元素及びアルカリ土類元素から選択され得る。これらの塩は、金属還元剤が用いられる場合に、還元率を上昇させるのに効果的になり得る。
【0028】
固体還元剤原料が用いられる場合、それらは、H2、COなどの還元性プラズマ又はN2などの中性プラズマのどちらかと共に用いられ得る。
【0029】
幾つかの実施形態において、該原料は、以下に議論されるプラズマシステムに、別個の粉末として供給され得る。幾つかの実施形態において、該原料は、スラリー又は噴霧乾燥された調合粉末として供給され得る。
【0030】
(プラズマ加工)
先に開示された粒子/構造/粉末/前駆物質は、複数の異なる加工手順で用いられ得る。例えば噴霧/火炎熱分解、高周波プラズマ加工、及び高温噴霧乾燥機の全てが、用いられ得る。以下の開示は、マイクロ波プラズマ加工に関するが、本開示は、それに限定されない。
【0031】
幾つかの例において、該原料は、液滴作製装置を通して供給され得る液体担体媒体中に懸濁された固体材料構成要素を含有する充分に混合されたスラリーを含んでもよい。液滴作製装置の幾つかの実施形態としては、ネブライザ及びアトマイザが挙げられる。液滴作製機は、およそ1μm~200μmの範囲内の直径を有する溶液前駆物質の液滴を生成し得る。液滴は、マイクロ波プラズマトーチ、マイクロ波プラズマトーチのプラズマプルーム、及び/又はマイクロ波プラズマトーチの排気中に供給され得る。各液滴は、マイクロ波プラズマトーチにより生成されたプラズマ高温ゾーンの中で加熱されると、担体液は跳ね飛ばされ、残りの乾燥成分が溶融して、構成要素を含有する溶融した液滴を形成する。プラズマ気体は、アルゴン、窒素、ヘリウム水素又はそれらの混合物であり得る。
【0032】
幾つかの実施形態において、液滴作製装置は、マイクロ波プラズマトーチの側部に存在し得る。原材料は、マイクロ波プラズマトーチの側部から液滴作製装置により供給され得る。液滴は、任意の方向からマイクロ波が発生したプラズマ中に供給され得る。
【0033】
前駆物質が所望の材料に加工され、その後、原子が結晶状態に達するのを防ぐのに充分な速度で冷却された後、非晶質材料が生成され得る。冷却速度は、高速気体流れの中での加工の0.05~2秒以内に材料をクエンチすることにより、実現され得る。高速気体流れの温度は、-200℃~40℃の範囲内であり得る。
【0034】
あるいは、原子が熱力学的に都合の良い結晶学的位置に拡散するのに必要となる時間及び温度を粒子に提供するために、プラズマ長及びリアクタ温度が充分であれば、結晶材料が生成され得る。プラズマの長さ及びリアクタ温度は、電力(2~120kW)、トーチ径(0.5~4’’)、リアクタの長さ(0.5~30’)、気体の流速(1~20CFM)、気体の流動特性(層流又は乱流)、及びトーチの型(層流又は乱流)などのパラメータで調整され得る。適温でより長い時間であれば、より大きな結晶性がもたらされる。
【0035】
工程パラメータは、原料の初期条件に応じて最大球状化を得るように最適化され得る。工程パラメータは、各原料の特徴に合わせて、個々の成果のために最適化される。米国特
許出願公開第2018/0297122号、米国特許第8748785号及び米国特許第9932673号各明細書には、詳細にはマイクロ波プラズマ加工のための、開示された工程で用いられ得る特定の加工技術が開示される。したがって米国特許出願公開第2018/0297122号、米国特許第8748785号及び米国特許第9932673号各明細書は、全体として参照により本明細書に援用され、その技術の記載は、本明細書に記載された原料に適用可能と見なされるべきである。
【0036】
本開示の一態様は、マイクロ波発生プラズマを利用した球状化の工程を含む。粉末原料は、気体環境に同伴されて、マイクロ波プラズマ環境に注入される。高温プラズマ(又はプラズマプルーム又は排気)中への注入により、原料は球状化されて、気体が充填されたチャンバーに放出され、ドラムに方向づけられて、そこで貯蔵される。この工程は、大気圧で、部分的に真空中で、又は大気圧より高圧で実行され得る。他の実施形態において、該工程は、低真空、中真空又は高真空環境で実行され得る。該工程は、連続で運転することができ、ドラムに球状化粒子が充満されれば、ドラムが交換される。
【0037】
有利なことに、種々の冷却加工パラメータが、目的粒子の特徴的微細構造を改変することが見出された。より高い冷却速度が、より微細な構造をもたらす。非平衡構造が、高い冷却速度により実現されてもよい。
【0038】
冷却加工パラメータとしては、冷却気体の流速、高温ゾーンでの球状化粒子の滞留時間、及び冷却気体の組成又は種類が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、冷却気体の流速を上昇させることにより、粒子の冷却速度又はクエンチング速度が上昇され得る。球状化粒子がプラズマを出た後に、冷却気体がより急速に流れるほど、クエンチング速度がより高くなり、それにより特定の所望の微細構造を閉じ込めることができる。プラズマの高温ゾーンでの粒子の滞留時間もまた、得られた微細構造の制御を提供するために適合され得る。高温ゾーンでの粒子注入速度及び流速(及び層流又は乱流などの条件)のような操作変数を適合させることにより、滞留時間が適合され得る。装置の変化もまた、滞留時間を適合させるのに用いられ得る。例えば、高温ゾーンの断面積を変化させることにより、滞留時間が適合され得る。
【0039】
変動又は制御され得る別の冷却加工パラメータは、冷却気体の組成である。特定の冷却気体は、他より熱伝導性がある。例えばヘリウムは、高熱伝導性の気体であると見なされる。冷却気体の熱伝導性がより高ければ、球状化粒子がより急速に冷却/クエンチングされ得る。冷却気体の組成を制御すること(例えば、高熱伝導性気体の量又は低熱伝導性気体に対する高熱伝導性気体の比を制御すること)により、冷却速度が制御され得る。
【0040】
1つの例示的実施形態において、不活性ガスが、粉末供給ホッパ内の酸素を除去するために連続でパージされる。連続容量の粉末供給物がその後、不活性ガスに同伴され、マイクロ波発生プラズマ中に供給されて、材料の過剰な酸化を予防する。一例において、マイクロ波発生プラズマは、それぞれが全体として参照により本明細書に援用される米国特許第8,748,785号、同第9,023,259号、同第9,206,085号、同第9,242,224号及び同第10,477,665号各明細書に記載されたマイクロ波プラズマトーチを用いて発生されてもよい。
【0041】
幾つかの実施形態において、該粒子は、マイクロ波発生プラズマ内で3727~7727℃(4,000~8,000K)の間の均一な(又は不均一な)温度プロファイルに暴露される。幾つかの実施形態において、該粒子は、マイクロ波発生プラズマ内で2727~7727℃(3,000~8,000K)の間の均一な温度プロファイルに暴露される。プラズマトーチ内では、粉末粒子が、急速に加熱及び溶融される。工程内の粒子は、アルゴンなどの気体に同伴されるため、一般に粒子間の接触は、最小限であり、粒子の凝集
の発生を大幅に低減する。こうして工程後の転移の必要性が、大幅に低減又は排除され、得られた粒度分布は、投入された供給材料の粒度分布と事実上、同じになり得る。例示的実施形態において、供給材料の粒度分布は、最終生成物中で維持される。
【0042】
プラズマ、プラズマプルーム、又は排気中では、溶融された材料は、本質的に液体表面張力により球状化される。マイクロ波発生プラズマは、実質的に均一な温度プロファイルを呈するため、90%を超える粒子球状化が、実現され得る(例えば、91%、93%、95%、97%、99%、100%)。粒子は、プラズマを出た後、回収容器に入る前に冷却される。回収容器が充填されると、工程を停止することなく、容器が取り出され得、必要に応じて空の容器と交換され得る。
【0043】
図2は、本開示の実施形態による、球状化粉末を生成させるための例示的方法(250)を示したフローチャートである。この実施形態において、工程(250)は、供給材料をプラズマトーチに導入することにより開始する(255)。幾つかの実施形態において、プラズマトーチは、マイクロ波発生プラズマトーチ又はRFプラズマトーチである。プラズマトーチ内では、供給材料が、先に記載された通りプラズマに暴露され、材料を溶融させる(260)。溶融された材料は、先に議論された通り、表面張力により球状化される(260b)。生成物は、プラズマを出た後、冷却して固化し、球の形状に閉じ込められ、その後、回収される(265)。
【0044】
幾つかの実施形態において、容器の環境及び/又は密封要件が、注意深く制御される。即ち、粉末の汚染又は潜在的酸化を予防するために、容器の環境及び/又は密封が、適用に合わせて調整される。一実施形態において、容器は、真空下にある。一実施形態において、容器は、本発明の技術に従って発生された粉末を充填された後、厳封される。一実施形態において、容器は、例えばアルゴンなどの不活性ガスが戻し充填される。工程の連続性のために、容器が充填されると、プラズマ工程を停止することなく、容器が必要に応じて取り出され得、空の容器と交換され得る。
【0045】
本開示による方法及び工程は、球状粉末などの粉末を作製するために用いられ得る。
【0046】
幾つかの実施形態において、マイクロ波プラズマ加工などの本明細書で議論された加工は、溶融の間に特定の元素が原料から漏出するのを防ぎ、及び/又は最小限にして、所望の組成/微細構造を維持し得るように制御され得る。
【0047】
図3は、本開示の実施形態による、粉末の生成において使用され得る例示的なマイクロ波プラズマトーチを示す。先に議論された通り、供給材料9、10は、マイクロ波発生プラズマ11を持続するマイクロ波プラズマトーチ3に導入され得る。一例の実施形態において、マイクロ波放射線源1を介したプラズマ11の点火の前に、同伴気体流及びシースフロー(下向きの矢印)が入口5を通して注入されて、プラズマトーチ内に流動条件を生成してもよい。
【0048】
幾つかの実施形態において、同伴の流れ及びシースフローは両者とも、軸対称で層流であるが、他の実施形態では気体流は、渦巻き状である。供給材料9は、軸方向にマイクロ波プラズマトーチ内に導入され、材料をプラズマに方向づける気体流に同伴される。マイクロ波発生プラズマ中では、供給材料が、材料を球状化するために溶融される。入口5は、工程の気体を導入して粒子9、10を軸12に沿ってプラズマ11に向かって同伴及び加速するために用いられ得る。第一に粒子9は、プラズマトーチ内の環状の溝を通って生成されたコア層状気体流(上の組合せの矢印)を用いて同伴により加速される。第二の層流(下の組合せの矢印)は、第二の環状の溝を通って生成されて、誘電性トーチ3の内壁に層流の遮蔽を提供し、プラズマ11からの熱放射によるトーチの溶融を防護することが
できる。例示的実施形態において、層流は、粒子9、10を軸12に可能な限り接近した通路に沿ってプラズマ11に方向づけて、粒子をプラズマ内の実質的に均一な温度に暴露する。
【0049】
幾つかの実施形態において、プラズマ付着が起こり得るプラズマトーチ3の内壁に粒子10が到達するのを防ぐために、適切な流動条件が存在する。粒子9、10は、マイクロ波プラズマ11に向かって気体流により案内され、そこで粒子のそれぞれが、均質な熱処理を受ける。マイクロ波発生プラズマの様々なパラメータ及び粒子パラメータが、所望の結果を実現するために適合されてもよい。これらのパラメータとしては、マイクロ波の能力、供給材料のサイズ、供給材料の挿入速度、気体の流速、プラズマ温度、滞留時間及び冷却速度を挙げることができる。幾つかの実施形態において、冷却又はクエンチング速度は、プラズマ11を出る際は10+3℃/秒以上である。先に議論された通り、この特別な実施形態において、気体流は、層状であるが、他の実施形態において、渦巻き流又は乱流が、供給材料をプラズマに方向づけるために用いられてもよい。
【0050】
図4A~4Bは、
図5の実施形態に示されたトップフィード式ホッパよりむしろサイドフィード式ホッパを含み、こうして下流の供給を可能にする例示的マイクロ波プラズマトーチを示す。したがってこの実行では、原料は、マイクロ波プラズマトーチの「プルーム」又は「排気」中での加工のためにマイクロ波プラズマトーチアプリケータの後に注入される。したがってマイクロ波プラズマトーチのプラズマは、プラズマトーチの出口の端部に引きつけられ、
図5に関して議論されたトップフィード式(又は上流供給)と反対の、原料の下流供給を可能にする。高温ゾーンが、高温ゾーンライナの壁への任意の材料堆積から無期限に保護されるため、この下流供給が、有利にはトーチの寿命を延長し得る。その上それは、温度レベル及び滞留時間の精密な目標を通して粉末の最適溶融に適した温度でプラズマプルームを下流に引きつけることができる。例えば、プラズマプルームを含有するクエンチングベッセル内のマイクロ波粉末、気体流及び圧力を利用して、プルームの長さをダイヤルする(dial)能力が存在する。
【0051】
一般に下流球状化方法は、米国特許出願公開第2018/0297122号明細書に記載されたような環状トーチ、又は米国特許第8748785号及び同第9932673号各明細書に記載される渦巻き状トーチである、安定したプラズマプルームを確立するための2種の主なハードウエア構成を利用し得る。
図4A及び
図4Bは、環状トーチ又は渦巻き状トーチのどちらかで実行され得る方法の実施形態を示す。プラズマトーチの出口でプラズマプルームと密に連結された供給システムが、粉末を軸対称に供給して工程の均質性を維持するために用いられる。
【0052】
他の供給構成としては、プラズマプルームを取り囲む1つ又は複数の個々の供給ノズルを挙げることができる。原料粉末は、任意の方向からあるポイントでプラズマに進入することができ、プラズマの周囲360℃の任意の方向からプラズマ内の該ポイントに供給され得る。原料粉末は、特定の温度が測定されるプラズマプルームの長さに沿った特定の位置で、そして粒子の充分な溶融のために推定される滞留時間で、プラズマに進入することができる。溶融された粒子は、プラズマを出て密封チャンバーに入り、クエンチされ、その後、回収される。
【0053】
供給材料314は、マイクロ波プラズマトーチ302に導入され得る。供給材料をマイクロ波プラズマトーチ302、プルーム、又は排気中に供給する前に、ホッパ306が、供給材料314を貯蔵するために用いられ得る。供給材料314は、プラズマトーチ302の長手方向に対して任意の角度で注入され得る。5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、又は55°。幾つかの実施形態において、原料は、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、又は55°を超える角度で注入され
得る。幾つかの実施形態において、原料は、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、又は55°未満の角度で注入され得る。他の実施形態において、原料は、プラズマトーチの長手方向軸に沿って注入され得る。
【0054】
マイクロ波放射線が、導波管304を通してプラズマトーチ中に取り込まれ得る。供給材料314は、プラズマチャンバー310に供給され、プラズマトーチ302により発生されたプラズマと接触される。供給材料は、プラズマ、プラズマプルーム、又はプラズマ排気と接触すると、溶融する。供給材料314は、プラズマチャンバー310の中でも、コンテナ312に回収される前に冷却して固化する。あるいは供給材料314は、溶融相のままプラズマチャンバー310を出て、プラズマチャンバーの外側で冷却して固化することができる。幾つかの実施形態において、クエンチングチャンバーが用いられてもよく、それが陽圧を利用しても、又は利用しなくてもよい。
図4A~4Bの実施形態は、
図5と別に記載されているが、
図5の実施形態と類似の特色及び条件を利用していることが理解される。
【0055】
幾つかの実施形態において、下流注入方法の実行は、下流渦巻き部分(downstream swirl)、拡張された球状化部分(extended spheroidization)、又はクエンチング部分(quenching)を使用してもよい。下流渦巻き部分は、管の壁を粉末から保護するためにプラズマトーチから下流に導入され得る追加的渦巻き状成分をいう。拡張された球状化部分は、粉末により長い滞留時間を与えるための拡張されたプラズマチャンバーをいう。幾つかの実行において、それは、下流渦巻き部分、拡張された球状化部分、又はクエンチング部分を使用しなくてもよい。幾つかの実施形態において、それは、下流渦巻き部分、拡張された球状化部分、又はクエンチング部分の1つを使用してもよい。幾つかの実施形態において、それは、下流渦巻き部分、拡張された球状化部分、又はクエンチング部分の2つを使用してもよい。
【0056】
下部からの粉末の注入は、マイクロ波領域内のプラズマ管被膜の低減又は排除をもたらし得る。被膜が過度に大きくなると、マイクロ波エネルギーが、プラズマ高温ゾーンへの進入を遮蔽され、プラズマ結合が、低減される。時には、プラズマが消火し、不安定になる場合さえある。プラズマ強度の低下は、粉末の球状化レベルの低下を意味する。したがって、原料をマイクロ波領域の下に供給すること、及びプラズマプルームをプラズマトーチの出口に引きつけることにより、この領域の被膜が排除され、プラズマへのマイクロ波粉末の結合が、工程を通して一定に保たれ、充分な球状化を可能にする。
【0057】
したがって有利には、下流アプローチは、被膜問題が低減されるため、長期間運転する方法を可能にし得る。さらに下流アプローチは、被膜を最小限にする必要がないため、より多くの粉末を注入することができる。
【0058】
前述の記載から、シリコン製品の形成のための発明的加工方法が開示されることが、察知されよう。複数の成分、技術及び態様が、特定の度合いの特性と共に記載されたが、本開示の主旨及び範囲を逸脱することなく、本明細書の先に記載された具体的設計、構築及び方法論に多くの変更がなされ得ることは、明白である。
【0059】
別の実行に関連して本開示に記載された特定の特色もまた、1つの実行と組み合わせて実行され得る。反対に、1つの実行に関連して記載された様々な特色もまた、複数の実行の中で別々に、又は任意の適切な部分的組み合わせで実行され得る。さらに、特色は、特定の組み合わせで作動するように先に記載され得るが、幾つかの例において、請求された組み合わせからの1つ又は複数の特色は、組み合わせから切り離すことができ、組み合わせは、任意の部分的組み合わせ、又は任意の部分的組み合わせの変形として請求され得る。
【0060】
さらに、方法は本明細書に特定の順序で図面に表され得る、又は記載され得るが、そのような方法は、所望の結果を実現するために、示された個々の順序又は連続的順序で実施される必要はなく、全ての方法が実施される必要はない。描写又は記載されない他の方法が、実施例の方法及び工程に組み込まれ得る。例えば1つ又は複数の追加的方法が、記載された方法のいずれかの前、後、同時、又は間に実施され得る。さらに該方法は、他の実行で再配列又は再整理され得る。同じく先に記載された実行の様々なシステム成分の分離が、全ての実行においてそのような分離を要求すると理解されるべきでなく、記載された成分及びシステムが一般に、1つの製品に一緒に統合され得ること、又は複数の製品に包装され得ることが、理解されるべきである。追加として他の実行は、本開示の範囲内である。
【0061】
「できる」、「できた」、「してもよかった」又は「してもよい」などの条件つき言語は、他に具体的に断りがない限り、又は用いられた文脈で他に理解されない限り、特定の実施形態が特定の特色、要素、及び/又はステップを含む、又は含まないことを伝えるものとする。したがってそのような条件つき言語は一般に、特色、要素、及び/又はステップが1種又は複数の実施形態に何らかの方法で必要とされることを示唆するものではない。
【0062】
語句「X、Y、及びZの少なくとも1つ」などの共同言語は、他に具体的に断りがない限り、別の方法では項目、用語などがX、Y、又はZのどれかであり得ることを伝えるために一般に用いられることが文脈で理解される。したがってそのような共同言語は一般に、特定の実施形態がXの少なくとも1つ、Yの少なくとも1つ、及びZの少なくとも1つの存在を要求することを示唆するものではない。
【0063】
本明細書で用いられる用語「およそ」、「約」、「概して」、及び「実質的に」などの本明細書で用いられる程度の言語は、所望の機能を実施する、又は所望の結果を実現する、言及された値、量、又は特徴に近い値、量、又は特徴を表す。例えば用語「およそ」、「約」、「概して」、及び「実質的に」は、言及された量の10%以下、5%以下、1%以下、0.1%以下、及び0.01%以下の範囲内の量をいってもよい。言及された量が、0である(例えば、無い、いずれも有さない)場合、先に列挙された範囲は、具体的範囲であり得、その値の個々の%以内でない可能性がある。例えば言及された量の10重量/容量%以下、5重量/容量%以下、1重量/容量%以下、0.1重量/容量%以下、及び0.01重量/容量%以下の範囲内である。
【0064】
様々な実施形態と結びつけた任意の個々の特色、態様、方法、特性、特徴、品質、属性、要素又は同様のものの本明細書の開示は、本明細書に示された全ての他の実施形態で用いられ得る。追加として、本明細書に記載された任意の方法が列挙されたステップを実施するのに適した任意の装置を用いて実行され得ることは、認識されるであろう。
【0065】
複数の実施形態及びその変形例が、詳細に記載されたが、それらを用いたほかの改良及び方法が、当業者に明白となるであろう。したがって、本明細書の本発明の独特で発明的な開示又は特許請求の範囲を逸脱することなく、様々な適用、改良、材料及び置換が行われ得ることが、理解されなければならない。
【国際調査報告】