(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-01
(54)【発明の名称】ワイヤボンドの強固な封入を有するインクジェットプリントヘッド
(51)【国際特許分類】
B41J 2/14 20060101AFI20230825BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20230825BHJP
【FI】
B41J2/14 611
B41J2/01 307
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023509384
(86)(22)【出願日】2021-07-19
(85)【翻訳文提出日】2023-02-08
(86)【国際出願番号】 EP2021070190
(87)【国際公開番号】W WO2022033814
(87)【国際公開日】2022-02-17
(32)【優先日】2020-08-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522074028
【氏名又は名称】メムジェット テクノロジー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】弁理士法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】ペレズ,エルマー
(72)【発明者】
【氏名】タン,シー-フアット
(72)【発明者】
【氏名】ホロックス,グレン
(72)【発明者】
【氏名】ホサイン,モハマド
(72)【発明者】
【氏名】ウェッブ,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ブランケール,パスカル
(72)【発明者】
【氏名】クーレン,エリック
【テーマコード(参考)】
2C056
2C057
【Fターム(参考)】
2C056FA13
2C056HA07
2C057AF65
2C057AG85
2C057AN05
2C057AP90
(57)【要約】
電子アセンブリは、その上に実装されたダイ及びPCBを有する基板を含む。ワイヤボンドは、PCBの導体パッドにダイのボンドパッドを相互接続し、各ワイヤボンドは、それぞれのボンドパッドに接合された第1端部部分と、それぞれの導体パッドに接合された反対側の第2端部部分と、第1端部部分及び第2端部部分の間に延在する中間セクションと、を有する。ダム封入材は第1端部部分及び第2端部部分の各々を封入し、第1フィル封入材は、基板及びダム封入材に接触し、第2フィル封入材は第1フィル封入材を覆う。第1フィル封入材は、第2フィル封入材及びダム封入材よりも低い弾性率を有する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に実装された1以上のダイであって、各ダイは複数のボンドパッドを有する、1以上のダイと、
前記基板上に実装されたPCBであって、複数の導体パッドを有するPCBと、
前記ボンドパッドと前記導体パッドとを相互接続する複数のワイヤボンドであって、各ワイヤボンドは、それぞれのボンドパッドに接合された第1端部部分と、それぞれの導体パッドに接合された反対側の第2端部部分と、前記第1端部部分と前記第2端部部分との間に延在する中間セクションと、を有する、複数のワイヤボンドと、
前記第1端部部分、前記第2端部部分、前記ボンドパッド及び前記導体パッドの各々を封入するダム封入材と、
少なくとも前記基板及び前記ダム封入材に接触するように前記基板上に配置された第1フィル封入材と、
少なくとも前記第1フィル封入材及び前記ダム封入材に接触するように前記第1封入材上に配置された第2フィル封入材と、を備え、
前記第2フィル封入材は前記基板に接触せず、
前記第1フィル封入材及び前記第2フィル封入材のうちの少なくとも1つが前記ワイヤボンドの前記中間セクションを封入し、
前記第1フィル封入材は、前記第2フィル封入材及び前記ダム封入材よりも低い弾性率を有する、電子アセンブリ。
【請求項2】
前記ダイがプリントヘッドチップであり、前記電子アセンブリがプリントヘッドである、請求項1に記載の電子アセンブリ。
【請求項3】
前記基板が、前記プリントヘッドチップにインクを供給するためのインクマニホールドである、請求項2に記載の電子アセンブリ。
【請求項4】
前記プリントヘッドチップが、介在するシムを介して前記基板上に実装される、請求項3に記載の電子アセンブリ。
【請求項5】
前記シムが金属合金薄膜を含む、請求項4に記載の電子アセンブリ。
【請求項6】
前記PCBが前記基板上に直接実装される、請求項4に記載の電子アセンブリ。
【請求項7】
前記ダム封入材は、前記導体パッド及び前記ボンドパッドをそれぞれ覆う1対の対向する長壁と、その各端部で前記長壁を相互接続する1対の短壁と、を有する無端周壁として構成される、請求項1に記載の電子アセンブリ。
【請求項8】
前記第1フィル封入材及び前記第2フィル封入材は、前記ダム封入材がその液相堆積中に前記第1フィル封入材及び第2フィル封入材の流れを堰き止めるように、前記周壁内に配置される、請求項7に記載の電子アセンブリ。
【請求項9】
前記第2フィル封入材は、前記第1フィル封入材よりも薬品侵食に対して相対的に高い耐性を有する、請求項8に記載の電子アセンブリ。
【請求項10】
前記第1フィル封入材は20~200MPaの範囲の弾性率を有する、請求項1に記載の電子アセンブリ。
【請求項11】
前記第2フィル封入材は500~3000MPaの範囲の弾性率を有する、請求項1に記載の電子アセンブリ。
【請求項12】
前記ダム封入材は500~3000MPaの範囲の弾性率を有する、請求項1に記載の電子アセンブリ。
【請求項13】
前記ダム封入材、前記第1フィル封入材及び前記第2フィル封入材は各々、エポキシ樹脂から構成された群から選択される材料から構成される、請求項1に記載の電子アセンブリ。
【請求項14】
電子アセンブリ内にワイヤボンドを封入する方法であって、前記電子アセンブリは、
基板と、
前記基板上に実装された1以上のダイであって、各ダイは複数のボンドパッドを有する、1以上のダイと、
前記基板上に実装されたPCBであって、複数の導体パッドを有するPCBと、
前記ボンドパッドと前記導体パッドとを相互接続する複数のワイヤボンドであって、各ワイヤボンドは、それぞれのボンドパッドに接合された第1端部部分と、それぞれの導体パッドに接合された反対側の第2端部部分と、前記第1端部部分と前記第2端部部分との間に延在する中間セクションと、を有する、複数のワイヤボンドと、を有し、
前記方法は、
前記第1端部部分、前記第2端部部分、前記ボンドパッド及び前記導体パッドの各々上にダム封入材を堆積させるステップと、
前記ダム封入材を硬化させるステップと、
少なくとも前記基板と前記ダム封入材とに接触するように第1フィル封入材を堆積させるステップと、
前記第1フィル封入材を硬化させるステップと、
前記第1フィル封入材及び前記ダム封入材に接触するように前記第1フィル封入材上に第2フィル封入材を堆積させるステップと、
前記第2フィル封入材を硬化させるステップと、を含み、
前記第2フィル封入材は前記基板に接触せず、
前記第1フィル封入材及び前記第2フィル封入材のうちの少なくとも1つは前記ワイヤボンドの前記中間セクションを封入し、
前記第1フィル封入材は、前記第2フィル封入材及び前記ダム封入材よりも低い弾性率を有する、方法。
【請求項15】
各硬化させるステップが、熱硬化及びUV硬化から構成された群から選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記ダム封入材は、前記導体パッド及び前記ボンドパッドをそれぞれ覆う1対の対向する長壁と、その各端部で前記長壁を相互接続する1対の短壁と、を有する無端周壁として堆積される、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記第1フィル封入材及び前記第2フィル封入材が前記周壁内に配置され、前記ダム封入材が、そのそれぞれの堆積中に前記第1フィル封入材及び前記第2フィル封入材の流れを堰き止める、請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、PCBに接続された1以上のプリントヘッドダイを有するインクジェットプリントヘッドにおけるワイヤボンドの封入に関する。本発明は、主として、ダイクラックなどの問題につながる可能性のある熱機械的応力を最小限に抑えながら、ワイヤボンドの強固な化学的及び機械的保護を提供するために開発された。
【背景技術】
【0002】
本出願人は、以前に、インクジェットプリントヘッドにおいてワイヤボンドを封入する方法を説明した。例えば、米国特許第8,063,318号(その内容は参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているように、プリントヘッドチップ(又は「プリントヘッドダイ」)上の導体パッドとPCBとを接続するワイヤボンドは、ワイヤボンドの両端で導体パッドを被覆する「ダム」封入材ビーズと、それらの間に延在するワイヤボンドを封入する「フィル」封入材と、の組み合わせを使用して封入され得る。米国特許第8,063,318号に記載されるように、ダム封入材は、フィル封入材よりも相対的に高い弾性率を有し、このことが、機械的応力を十分に制御して、プリントヘッドの熱膨張/収縮中のワイヤボンドの破損を回避する。
【0003】
米国特許第10,442,200号(その内容は参照により本明細書に組み込まれる)は、金属合金(例えば、インバー)シムを介して金属合金マニホールドに取り付けられた複数のプリントヘッドダイを有するプリントヘッドを記載している。こうしたプリントヘッドは、顔料ベースのインクとともに使用するように設計されており、かつさらに、A3ページ幅のプリントヘッドなど、相対的に長いプリントヘッドの構築を可能にする。
【0004】
上述したように、インクジェットプリントヘッドにおけるワイヤボンド封入材の主な機能は、インクからワイヤボンドを保護することである。封入材が破損し、かつ、インクがワイヤボンドに接触すると、その後、短絡によりプリントヘッドが故障する。しかしながら、封入材自体が、製造中又は熱循環を介した通常の使用中のいずれかにワイヤボンドの破損又はダイクラックにつながる可能性のある熱機械的応力をプリントヘッドにもたらさないことも同様に重要である。
【0005】
相対的により硬い封入材料-すなわち、相対的に高い弾性率を有する封入材料-は、特に特定のインクジェットインクに見られる攻撃的な共溶媒及び界面活性剤に対して、機械的及び化学的堅牢性の点で一般的に好ましい。米国特許第10,442,200号に記載されているプリントヘッドで使用される顔料ベースのインクの場合、薬品侵食を回避するために相対的により硬い封入材料が必要であることがわかっている。一方で、これらの相対的により硬い材料は、プリントヘッドに望ましくない熱機械的応力をもたらす傾向がより大きい。特に、米国特許第10,442,200号に記載されているプリントヘッドは、相対的により硬い「フィル」封入材が使用される場合、製造中にダイクラックを非常に起こしやすい。これは、ダイとPCBとの間の封入材料によって提供される機械的結合の結果であると理解されている。
【0006】
したがって、ダイクラックの原因となり得るプリントヘッドの熱機械的応力を最小限に抑えながら、薬品侵食に耐性を有するワイヤボンド封入材を提供することが望ましい。
【発明の概要】
【0007】
電子アセンブリは、
基板と、
前記基板上に実装された1以上のダイであって、各ダイは複数のボンドパッドを有する、1以上のダイと、
前記基板上に実装されたPCBであって、複数の導体パッドを有するPCBと、
前記ボンドパッドと前記導体パッドとを相互接続する複数のワイヤボンドであって、各ワイヤボンドは、それぞれのボンドパッドに接合された第1端部部分と、それぞれの導体パッドに接合された反対側の第2端部部分と、前記第1端部部分と前記第2端部部分との間に延在する中間セクションと、を有する複数のワイヤボンドと、
前記第1端部部分、前記第2端部部分、前記ボンドパッド及び前記導体パッドの各々を封入するダム封入材と、
少なくとも前記基板及び前記ダム封入材に接触するように前記基板上に配置された第1フィル封入材と、
少なくとも前記第1フィル封入材及び前記ダム封入材に接触するように前記第1封入材上に配置された第2フィル封入材と、を備え、
前記第2フィル封入材は前記基板に接触せず、
前記第1フィル封入材及び前記第2フィル封入材のうちの少なくとも1つは前記ワイヤボンドの中間セクションを封入し、
前記第1フィル封入材は、前記第2フィル封入材及び前記ダム封入材よりも低い弾性率を有する。
【0008】
第1態様に係る電子アセンブリは、ダイクラック又はワイヤボンド破損につながる可能性のある熱機械的応力を最小限に抑えながら、ワイヤボンドの堅牢な保護を有利に提供する。特に、相対的により硬い第2フィル封入材は、機械的に堅牢かつ耐薬品性を有する外層を提供する一方で、相対的により柔らかい第1フィル封入材は、製造中又は通常の使用中のダイクラックを最小限に抑えるようにダイとPCBとの間の機械的結合を弱める。ダイとPCBとは機械的に完全に分離されていないが、相対的により柔らかい第1フィル封入材は、ダイクラックが問題にならない程度まで熱機械的応力を最小限に抑えるのに十分である。
【0009】
好ましくは、前記電子アセンブリはプリントヘッドであり、かつ、前記ダイはMEMSプリントヘッドチップなどのプリントヘッドチップである。
【0010】
好ましくは、前記基板は、前記プリントヘッドチップにインクを供給するためのインクマニホールドである。前記インクマニホールドは、例えば、液晶ポリマーなどのポリマー又はインバーなどの金属から構成されてもよい。
【0011】
好ましくは、前記プリントヘッドチップは、介在するシムを介して前記基板上に実装される。前記シムは、例えば、その内容が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,347,534号に記載されているように、ポリマー支持体上に配置された両側の接着剤層を有する両面接着テープの形態をとってもよい。代替的に、前記シムは、例えば、米国特許第10,442,200号に記載されているように、前記基板に接着された薄膜(例えば、金属合金薄膜)の形態をとってもよい。典型的には、前記シムは、前記インクマニホールドから前記プリントヘッドチップに前記インクを供給するために、その中に規定されたインク貫通孔を有する。
【0012】
典型的には、前記PCBは、例えば接着接合を介して前記基板上に直接実装される。前記基板は、前記PCBを収容するための段差実装面を有してもよい。
【0013】
好ましくは、前記ダム封入材は、前記導体パッド及び前記ボンドパッドをそれぞれ覆う1対の対向する長壁と、その両端で前記長壁を相互接続する1対の短壁と、を有する周壁として構成される。
【0014】
好ましくは、前記第1フィル封入材及び前記第2フィル封入材は、その液相堆積中に、前記ダム封入材が前記第1フィル封入材及び前記第2フィル封入材の流れを堰き止めるように、前記周壁内に配置される。
【0015】
好ましくは、前記第2フィル封入材は、前記第1フィル封入材よりも薬品侵食に対して相対的により高い耐性を有する。
【0016】
好ましくは、前記第1フィル封入材は、20~200MPa、又は好ましくは50~150MPaの範囲の弾性率を有する。
【0017】
好ましくは、前記第2フィル封入材は、500~3000MPa、又は好ましくは700~2000MPaの範囲の弾性率を有する。
【0018】
好ましくは、前記ダム封入材は、500~3000MPa、又は好ましくは700~2000MPaの範囲の弾性率を有する。前記第2フィル封入材及び前記ダム封入材は、同じ材料又は異なる材料から構成されてもよい。
【0019】
典型的には、前記ダム封入材、前記第1フィル封入材及び前記第2フィル封入材は各々、エポキシ樹脂から構成される。異なる弾性率を有するエポキシ樹脂封入材は、さまざまな供給業者(例えば、ResinLab,Chase Corporation,Engineering Materials Systems,Inc.など)から市販されており、かつ、当業者には周知である。
【0020】
関連する態様では、電子アセンブリ内にワイヤボンドを封入する方法が提供され、前記電子アセンブリは、
基板と、
前記基板上に実装された1以上のダイであって、各ダイは複数のボンドパッドを有する、1以上のダイと、
前記基板上に実装されたPCBであって、複数の導体パッドを有するPCBと、
前記ボンドパッドと前記導体パッドとを相互接続する複数のワイヤボンドであって、各ワイヤボンドは、それぞれのボンドパッドに接合された第1端部部分と、それぞれの導体パッドに接合された反対側の第2端部部分と、前記第1端部部分と前記第2端部部分との間に延在する中間セクションと、を有する、複数のワイヤボンドと、を備え、
前記方法は、
前記第1端部部分、前記第2端部部分、前記ボンドパッド及び前記導体パッドの各々上にダム封入材を堆積させるステップと、
前記ダム封入材を硬化させるステップと、
少なくとも前記基板及び前記ダム封入材に接触するように第1フィル封入材を堆積させるステップと、
前記第1フィル封入材を硬化させるステップと、
前記第1フィル封入材及び前記ダム封入材に接触するように前記第1フィル封入材上に第2フィル封入材を堆積させるステップと、
前記第2フィル封入材を硬化させるステップと、を含み、
前記第2フィル封入材は前記基板に接触せず、
前記第1フィル封入材及び前記第2フィル封入材のうちの少なくとも1つは前記ワイヤボンドの前記中間セクションを封入し、
前記第1フィル封入材は、前記第2フィル封入材及び前記ダム封入材よりも低い弾性率を有する。
【0021】
本明細書で使用される場合、「弾性率」という用語は、完全に硬化された後の摂氏25度での封入材料の弾性率を指す。
【0022】
本明細書で使用される場合、「PCB」という用語は、非導電性基板と、電気信号を伝える1以上の導電性トラックと、を有するタイプのプリント回路基板を意味するものと解釈される。非導電性基板は可撓性又は剛性を有してもよい。PCBは、追加の電子部品(例えば、コンデンサ、抵抗器など)を備えてもよく、又は代替として、PCBは、いかなる追加の電子部品を有していなくてもよく、かつ、その導電性トラックを介して電気信号を伝えるだけの役割を果たしてもよい。
【0023】
本明細書で使用される場合、「インク」という用語は、インクジェットプリントヘッドから印刷され得る任意の印刷流体を意味するものと解釈される。インクは着色剤を含んでもよく又は含まなくてもよい。したがって、「インク」という用語は、従来の染料ベース又は顔料ベースのインク、赤外線インク、固定剤(例えば、プレコート及びフィニッシャ)、3D印刷液(例えば、バインダ液)、生体液、機能液(例えば、センサインク、ソーラインクなど)などを含んでもよい。流体又は印刷流体に言及する場合、これは、本明細書における「インク」の意味を限定することを意図するものではない。
【0024】
本明細書で使用される場合、「実装される」という用語は、直接実装及び介在部分を介した間接実装の両方を含む。
【図面の簡単な説明】
【0025】
添付の図面を参照して単なる例として本発明の実施形態を説明する。
【0026】
【
図1】
図1は、インクジェットプリントヘッドの正面斜視図である。
【
図2】
図2は、プリントヘッドの底面斜視図である。
【
図3】
図3は、プリントヘッドの分解斜視図である。
【
図4】
図4は、プリントヘッドの一部の拡大断面斜視図である。
【
図5】
図5は、プリントヘッドの一部の底面斜視図である。
【
図6】
図6は、プリントヘッドチップの1列についてシールドプレート及び封入材が除去された状態のプリントヘッドの拡大底面斜視図である。
【
図7】
図7は、プリントヘッドチップとPCBとの間の接続領域の概略的な側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明は、その最も一般的な形態の電子アセンブリに関する。好ましい一実施形態では、電子アセンブリは、以下に詳細に説明されるインクジェットプリントヘッドの形態をとる。
【0028】
図1~
図3を参照すると、その内容が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第10,442,200号に記載されているようなインクジェットプリントヘッド1が示されている。プリントヘッド1は、その両端にインクコネクタを有する細長い成形プラスチック製のケーシング3を備える。マルチチャネルの入口カップリング8Aの入口コネクタ7Aは、ケーシング3の一端の開口部を通って上向きに突出しており;マルチチャネルの出口カップリング8Bの出口コネクタ7Bは、ケーシングの反対端の開口部を通って上向きに突出している(
図1には2つの入口コネクタ及び2つの出口コネクタのみが示されている)。入口コネクタ7A及び出口コネクタ7Bは、プリントヘッドにインクを供給し、かつ、プリントヘッドからインクを供給する相補的な流体カップリング(図示せず)に結合するように構成されている。
【0029】
ケーシング3は、中央ロケータ4の両側に位置決めされた第1部分3A及び第2部分3Bを有し、第1ケーシング部分3A及び第2ケーシング部分3Bは、その間で噛み合わせられたばねクリップ6によって互いに向かってかつ中央ロケータ4に向かって付勢されている。ばねクリップ6と組み合わせられた2部品のケーシング3は、ケーシングが少なくともある程度まで長手方向に拡張して、プリントヘッド1の本体17の長手方向の拡張の程度に対応することを可能にする。
【0030】
プリントヘッド1は、プリントヘッドのそれぞれの側壁に沿って延在する対向する列の電気接点13を介して電力及びデータ信号を受け取る。電気接点13は、以下にさらに詳細に説明するように、プリンタ(図示せず)又はプリントモジュールの相補的な接点から電力及びデータ信号を受け取り、かつ、それぞれのPCB18を介してプリントヘッドチップ70に電力及びデータを伝送するように構成される。
【0031】
図2に示すように、プリントヘッド1は、プリントヘッドの下方を通過する印刷媒体(図示せず)に印刷するためのプリントヘッドチップ70の第1列14及び第2列16を備える。プリントヘッド1が4つのインク色(CMYK)を重複して印刷することができるフルカラーページ幅のプリントヘッドであるように、プリントヘッドチップの各列は2色のインクを印刷するように構成されている。プリントヘッド1は、使用中のプリントヘッドのインク色が異なるにもかかわらず、プリントヘッドチップの第1列14及び第2列16を二等分する長手方向平面に関してほぼ対称である。
【0032】
図3に示す分解斜視図では、本体17が、さまざまな他の構成部品を実装するためのプリントヘッド1の剛体コアを形成することが分かる。特に、ケーシング3は本体17の上部にスナップ嵌めされ;入口カップリング8A及び出口カップリング8B(ケーシング3によって取り囲まれている)は本体の両端部に接続され;1対のPCB18が本体の下部に取り付けられ(これらはシールドプレート20によって覆われている);複数のリード線22(電気接点13を規定する)が本体の両側壁に実装されている。
【0033】
本体17は、細長いインクマニホールド25と、相補的なカバープレート27と、を備える2部品の機械加工構造である。インクマニホールド25は、プリントヘッドチップ70の第1列14及び第2列16並びにそれぞれのPCB18を実装するための単一の下面を有するキャリア基板として機能する。マニホールド25及びカバープレート27は、相対的に高い剛性と相対的に低い熱膨張係数を有する金属合金材料(例えば、インバー)から形成される。マニホールド25とカバープレート27とは、組み合わせにより、プリントヘッド1のコアに、その長手方向軸線に沿った膨張を最小限に抑えた堅固な剛体構造を提供する。上述したように、ケーシング3は、本体17の長手方向の膨張を拘束しないように構成され、かつそれによって、使用中のプリントヘッドの曲がりを最小限に抑える。したがって、プリントヘッド1は、A4長のプリントヘッド又はA3長のプリントヘッドとして提供されてもよい。
【0034】
図4を参照すると、インバーシム66がマニホールド25の下面52に接着され、かつ、第1列14及び第2列16に配列された複数のプリントヘッドチップ70がシム66(
図4に見えるプリントヘッドチップの第1列14のみ)に接着されている。プリントヘッドチップ70の各列は、シム66の貫通孔を介して、マニホールド25に規定された長手方向のインク供給チャネル40からインクを受け取る。
【0035】
1対の長手方向のPCB18は、その両側でプリントヘッドチップ70の第1列14及び第2列16に隣接し、各PCBは、マニホールド25の下面52に接合される。各PCB18は、さまざまな電子部品を実装するための剛体基板(例えば、FR-4基板)を備え、かつ、マニホールド25の下面52に規定された段差74に突き当たる1つの縁部を有している。各PCB18は、マニホールド25の側壁41を越えて横方向外側に延在する。シールドプレート20は、各PCB18の下面に接合され、かつ、プリントヘッドチップ70の第1列14及び第2列16並びに第1列及び第2列の間の中央長手方向領域を取り囲む。各PCB18及びシールドプレート20の突出部分は、プリントヘッド1の対向するウィング75を規定する一方で、シールドプレート20の均一に平坦な下面は、プリントヘッドチップの両方の列を取り囲む周縁キャッパ(図示せず)に係合するように構成される。
【0036】
引き続き
図4を参照すると、接続パッド80の列は、各PCB18の上面の遠位縁部分に沿って長手方向に延在する。各リード線22は、接続パッド80に接続された一端を有し、かつ、本体17のそれぞれの側壁に向かって上向きに延在する。リード線22は、そこに取り付けられたリード線保持器24を介してカバープレート27のそれぞれのフランジ29に取り付けられた上部と、接続パッド80に向かって横方向外側に広がる下部と、を有する。各リード線22はまた、プリンタの外部電源及びデータコネクタに接続するための電気接点13を規定する部分を有する。
【0037】
ここで
図5及び
図6を参照すると、プリントヘッドチップ70のそれぞれの列に近接する各PCB18の縁部は、導体パッド77の形態のピンアウトのそれぞれの列を有する。各導体パッド77は、ワイヤボンド接続(
図5及び
図6では見えない)を介してプリントヘッドチップのうちの1つのプリントヘッドチップ上のそれぞれのボンドパッド73に接続される。このようにして、プリントヘッドチップ70の各列は、リード線22及びプリントヘッドチップの列に隣接するそれぞれのPCB18を介して、電気接点13から電力及びデータを受け取る。
【0038】
ワイヤボンドは、導体パッド77を含む各PCB18の近接縁部と、ボンドパッド73を含むプリントヘッドチップ70の近接縁部との間に延在する封入材パッケージ79によって保護される。上で暗示したように、封入材パッケージ79が、特に、攻撃的な共溶媒及び界面活性剤を典型的に含む高pHインクからの薬品侵食に関して、ワイヤボンドの堅牢な保護を提供することが不可欠である。
【0039】
図7は、本発明に係る、PCB18とプリントヘッドチップ70との接続領域の側面断面図を概略的に示している。ボンドパッド73の長手方向列を有するプリントヘッドチップ70は、介在するシム66を介してインクマニホールド25の下面52に実装される。導体パッド77を有するPCB18は、プリントヘッドチップ70に隣接するインクマニホールド25の下面52に直接実装され、かつ、下面の段差部分74内に受け入れられる。ワイヤボンド90は、ボンドパッド73と導体パッド77とを相互接続する。ワイヤボンド90は、ボンドパッド73に接合された第1端部部分91、導体パッド77に接合された反対側の第2端部部分92、及び、第1端部部分と第2端部部分との間に延在する中間セクション93を有する。
【0040】
封入材パッケージ79は、ワイヤボンド90並びにボンドパッド73及び導体パッド77を保護し、かつ、以下の3つの構成要素:(1)ボンドパッド73の列及び導体パッド77の列に沿って長手方向に延在するダム封入材のビーズ95であって、その長手方向の各端部で横方向の相互接続部分を介して無端周縁ダムを形成するダム封入材のビーズ95;(2)インクマニホールド25の下面及びシム66の露出部分上のダム封入材95の周縁内に配置された相対的に低い弾性率を有する第1フィル封入材96;及び、(3)ダム封入材の周縁内で第1フィル封入材96上に配置された相対的に高い弾性率を有する第2フィル封入材97を備える。ダム封入材95は、ワイヤボンド90の第1端部部分91及び第2端部部分92並びにボンドパッド73及び導体パッド77を封入する一方で、第1フィル封入材96及び第2フィル封入材97はともにワイヤボンドの中間セクション93を封入する。
【0041】
重要なことは、第2フィル封入材97が、プリントヘッドチップ70及びPCB18のための共通の支持基板として機能するインクマニホールド25に接触しないことである。これは、封入材パッケージ79を介したプリントヘッドチップ70とPCB18との間の機械的結合を弱める効果を有する。相対的に低い弾性率を有する第1フィル封入材96のみがインクマニホールド25に接触するので、その結果、インクマニホールドの熱膨張によって引き起こされる機械的応力が最小限に抑えられる。他方で、相対的により硬い第2フィル封入材97は、機械的に頑丈な保護層を提供するだけでなく、薬品侵食に対して耐性を有する頑丈な外面を提供する。したがって、封入材パッケージ79は、インクジェットプリントヘッドに見られるような熱機械的応力及び薬品侵食を受ける過酷な環境でのダイパッケージングを大幅に改善する。
【0042】
実際には、ワイヤボンド90の中間セクション93は、第1フィル封入材96内に、第2フィル封入材97内に、又は、
図7に示すように、第1フィル封入材及び第2フィル封入材の両方内に、封入されてもよいことが分かった。相対的により柔らかい第1フィル封入材96により、接続領域における熱機械応力が最小限に抑えられ、かつ、第1フィル封入材又は第2フィル封入材のいずれがワイヤボンド90を封入するかにかかわらず、ワイヤボンドの破損が最小限に抑えられる。
【0043】
本発明に係る電子アセンブリを製造する例示的な方法は;(1)ダイのボンドパッド(例えば、プリントヘッドチップ70)とPCBの導体パッド(例えば、PCB18)との間にワイヤボンド接続を形成するステップと;(2)ボンドパッド及び導体パッド上にダム封入材のビーズを分配し、周壁を形成するステップと;(3)UV硬化及び/又は熱硬化を使用してダム封入材を硬化させるステップと;(4)第1フィル封入材を分配してダム封入材の周壁内に流すステップと;(5)UV硬化及び/又は熱硬化を使用して第1フィル封入材を硬化させるステップと;(6)第2フィル封入材を分配してダム封入材の周壁内に流すステップと;(7)UV硬化及び/又は熱硬化を使用して第2フィル封入材を硬化させるステップと、を含む。
【0044】
言うまでもなく、本発明は単なる例として説明されたものであり、添付の特許請求の範囲で定義される本発明の範囲内で詳細の変更がなされ得ることが理解される。
【国際調査報告】