(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-01
(54)【発明の名称】流体浸潤および生理学的パラメータを測定するための埋設されたセンサを伴うIV包帯
(51)【国際特許分類】
A61B 5/022 20060101AFI20230825BHJP
A61B 5/0215 20060101ALI20230825BHJP
【FI】
A61B5/022 400M
A61B5/0215 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023509396
(86)(22)【出願日】2021-08-10
(85)【翻訳文提出日】2023-03-06
(86)【国際出願番号】 US2021045342
(87)【国際公開番号】W WO2022035822
(87)【国際公開日】2022-02-17
(32)【優先日】2020-08-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591013229
【氏名又は名称】バクスター・インターナショナル・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BAXTER INTERNATIONAL INCORP0RATED
(71)【出願人】
【識別番号】501453189
【氏名又は名称】バクスター・ヘルスケヤー・ソシエテ・アノニム
【氏名又は名称原語表記】Baxter Healthcare S.A.
【住所又は居所原語表記】Thurgauerstr.130 CH-8152 Glattpark (Opfikon) Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】バネット, マシュー
(72)【発明者】
【氏名】ディロン, マーク
(72)【発明者】
【氏名】タング, エリック
(72)【発明者】
【氏名】ディロン, マーシャル
(72)【発明者】
【氏名】マッキャナ, ジェイムズ
(72)【発明者】
【氏名】エレスワルプ, チェタンヤ
(72)【発明者】
【氏名】マルトゥッチ, ジェイムズ ピー.
(72)【発明者】
【氏名】ビバンズ, マシュー エー.
(72)【発明者】
【氏名】バッキンガム, ジャスティン
(72)【発明者】
【氏名】シーゼル, アーレン
(72)【発明者】
【氏名】ニーダム, マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ヘイワード, ローレン
【テーマコード(参考)】
4C017
【Fターム(参考)】
4C017AA08
4C017AB01
4C017AC03
4C017BC07
4C017BC11
4C017BD05
4C017FF05
4C017FF08
(57)【要約】
本発明は、IVカテーテルを患者に固着させながら、同時に、埋設された末梢静脈圧(PVP)、インピーダンス、温度、光学、および運動センサを使用して、IVシステムの性質(例えば、浸潤、溢出、閉塞)および患者の生理学的パラメータ(例えば、心拍数、SpO2、呼吸数、温度、および血圧)を特性評価することに役立つ、静脈内(IV)包帯システムを提供する。着目すべきこととして、本システムは、PVP波形を動脈BP値(例えば、収縮期および拡張期血圧)に変換する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
動脈血圧値を患者から決定するためのシステムであって、
前記患者の静脈系の中に挿入するように構成されるカテーテルと、
前記カテーテルに接続され、前記患者の静脈系内の圧力を示す生理学的信号を測定するように構成される圧力センサと、
処理システムであって、前記処理システムは、i)前記生理学的信号を前記圧力センサから受信し、ii)前記生理学的信号をアルゴリズムを用いて処理し、前記動脈血圧値を決定するように構成される、処理システムと
を備える、システム。
【請求項2】
前記処理システムはさらに、呼吸成分を前記生理学的信号からフィルタ除去し、前記動脈血圧値を決定するアルゴリズムを動作させるように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記アルゴリズムはさらに、帯域通過フィルタを動作させ、呼吸成分を前記生理学的信号からフィルタ除去するように構成される、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記アルゴリズムはさらに、ウェーブレットに基づいて、フィルタを動作させ、呼吸成分を前記生理学的信号からフィルタ除去するように構成される、請求項2に記載のシステム。
【請求項5】
前記処理システムは、直接、前記患者に取り付けるように構成されるエンクロージャによって封入される、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記処理システムはさらに、運動検出センサを備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記運動検出センサは、加速度計およびジャイロスコープのうちの1つである、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記処理システムはさらに、信号を前記運動検出センサから受信し、それらを処理し、前記患者の運動度を決定するように構成される、請求項6に記載のシステム。
【請求項9】
前記処理システムはさらに、集合的に、前記患者の運動度および前記生理学的信号を処理し、前記動脈血圧値を決定するように構成される、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記処理システムはさらに、信号を前記運動検出センサから受信し、それらを処理し、前記患者と関連付けられる身体部分と関連付けられる相対的高さを決定するように構成される、請求項6に記載のシステム。
【請求項11】
前記身体部分は、前記患者の腕である、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記処理システムはさらに、集合的に、前記患者と関連付けられる身体部分と関連付けられる前記相対的高さおよび前記生理学的信号を処理し、前記動脈血圧値を決定するように構成される、請求項10に記載のシステム。
【請求項13】
前記処理システムはさらに、較正血圧値を外部源から受信するように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
前記処理システムはさらに、前記較正血圧値を前記生理学的信号を用いて処理し、前記動脈血圧値を決定するように構成される、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記外部源は、血圧カフおよび動脈カテーテルのうちの1つである、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
前記処理システムはさらに、静脈血圧と動脈血圧との間の患者特有の関係を、前記較正血圧値および前記生理学的信号とともに処理し、前記動脈血圧値を決定するように構成される、請求項14に記載のシステム。
【請求項17】
前記処理システムはさらに、前記生理学的信号を処理し、静脈血圧と動脈血圧との間の前記患者特有の関係を決定するように構成される、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記処理システムはさらに、前記患者に対応する生体測定情報を処理し、静脈血圧と動脈血圧との間の前記患者特有の関係を決定するように構成される、請求項16に記載のシステム。
【請求項19】
動脈血圧値を患者から決定するためのシステムであって、
前記患者の静脈系の中に挿入するように構成されるカテーテルと、
前記カテーテルに接続され、前記患者の静脈系内の圧力を示す生理学的信号を測定するように構成される圧力センサと、
運動信号を測定するように構成される運動センサと、
処理システムであって、前記処理システムは、i)前記生理学的信号を前記圧力センサから受信し、ii)前記運動信号を前記運動センサから受信し、iii)前記運動信号を、それらと所定の閾値を比較することによって処理し、前記患者が比較的に低運動度を有するときを決定し、iv)前記生理学的信号を処理し、前記動脈血圧値を決定するように構成される、処理システムと
を備える、システム。
【請求項20】
動脈血圧値を患者から決定するためのシステムであって、
前記患者の静脈系の中に挿入するように構成されるカテーテルと、
前記カテーテルに接続され、前記患者の静脈系の圧力を示す生理学的信号を測定するように構成される圧力センサと、
運動信号を測定するように構成される運動センサと、
処理システムであって、前記処理システムは、i)前記生理学的信号を前記圧力センサから受信し、ii)前記運動信号を前記運動センサから受信し、iii)前記運動信号を処理し、前記患者と関連付けられる身体部分と注入システムとの間の相対的高さを決定し、iv)前記生理学的信号および前記相対的高さを処理し、前記動脈血圧値を決定するように構成される、処理システムと
を備える、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(優先権の主張および関連出願の相互参照)
本願は、その全内容が、参照することによってその全体として本明細書に組み込まれ、依拠される、2020年8月12日に出願され、「IV DRESSING WITH EMBEDDED SENSORS FOR MEASURING FLUID INFILTRATION AND PHYSIOLOGICAL PARAMETERS」と題された、米国仮特許出願第63/064,690号の優先権および利益を主張する。
【0002】
本明細書に説明される発明は、薬物および流体送達のためのシステムに関し、例えば、病院および医療診療所において患者を監視するためのシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
用語が、語句「本明細書「______」」または類似する文言を使用して本明細書に明確に定義されない限り、その用語の意味をその平易または通常の意味以外に限定するいかなる意図も、存在しない。任意の用語が、単一の意味と一貫する様式で本書に言及される範囲について、それは、明確化のためにのみ行われ、そのような請求項用語が、その単一の意味に限定されることを意図していない。最後に、請求項要素が、任意の構造の列挙を伴わずに単語「手段」および機能を列挙することによって定義されない限り、任意の請求項要素の範囲が、35U.S.C.§112(f)(米国特許法112条(f))の適用に基づいて解釈されることを意図していない。
【0004】
入院患者の適切な処置は、典型的には、1)静脈内(本明細書では「IV」)カテーテルおよび注入ポンプを使用する薬品および流体の送達、および2)患者モニタを用いたバイタルサインおよび血行動態パラメータの測定を要求する。典型的には、IVカテーテルは、患者の手または腕における静脈の中に挿入され、患者モニタは、患者の身体上に装着される(または内に挿入される)センサに接続される。IVカテーテルは、典型的には、大接着性絆創膏または包帯を使用して、定位置に保持され、その最も一般的ものは、「Tegaderm」の商標名を有し、(Saint Paul, MN)を拠点とする、3M Corporationによって市販されている。その接着剤基材に加え、Tegadermは、抗菌性コーティングを含み、IV部位における感染症の発症を低減させ得る。Tegadermおよび関連IV包帯は、典型的には、上記に説明されるもの等の生理学的パラメータを測定するための任意のセンサを欠いている。
【0005】
IVシステムは、典型的には、注入ポンプまたはIVバッグを使用して、流体の送達を制御する。注入ポンプまたはIVバッグは、管類または「IVセット」を通して、カテーテルに接続され、患者の静脈内に挿入される。ある場合には、カテーテルは、静脈から外に滑動し、流体を周囲組織に誤って送達し得る。本事例は、本明細書では、「IV浸潤」と称される。IV浸潤の一般的兆候は、炎症、皮膚のつっぱり感、およびカテーテルが挿入された部位の周囲の疼痛を含む。確認および治療されないままにされると、IV浸潤は、深刻な疼痛、感染症、コンパートメント症候群、および影響される四肢の切断さえもたらし得る。浸潤からの漏出された溶液が、壊死起因性抗癌剤(組織傷害、疱疹、または深刻な組織損傷を引き起こすもの)であるとき、これは、「溢出」と称される。本タイプのIV故障からの傷害は、深刻であり得、四肢における機能の喪失に、損傷が十分に深刻である場合には、組織死亡(壊死としても知られる)につながり得る。さらに他の症例では、カテーテルの先端が、血餅または投薬療法物で詰まり、したがって、患者の静脈の中への液体の流動を妨害し得、これは、本明細書では、「IV閉塞」と称される。
【0006】
IV浸潤は、IVシステムに関わる一般的合併症および源である(可能性として、浸潤に起因する末梢IVライン故障の23%にも及ぶ)(Helm RE, Klausner JD, Klemperer JD, Flint LM, Huang E., “Accepted but unacceptable: peripheral IV catheter failure.”, J Infus. Nurs. 2015;38(3):189-203)。IV設置の間の臨床医過誤、カテーテルの先端を脱落させる、またはそれに静脈壁を貫通させる、四肢移動、高流率に起因する、脆弱静脈の破裂、および静脈壁に及ぼす酸性または高オスモル濃度薬物の影響を含む、多くのIV浸潤源が存在する。溢出が、ひいては、化学療法を受ける患者の0.1~6%で生じる(Al-Benna S, O’Boyle C, Holley J., “Extravasation injuries in adults.”, ISRN Dermatol. 2013;2013:856541)。
【0007】
無数の原因に起因して、IV浸潤の発生率は、患者母集団および処置設定によって変動する。IV浸潤は、小児科および新生児母集団において、特に、本人口統計に応対する集中治療室において、最高発生率を有する。ここでは、末梢IVは、一般的であるが、患者のより小さい血管系およびそれに相当するカテーテルゲージが、それらを設置することをより困難にし、IV浸潤の比較的に高発症につながる。高齢者または病的肥満者のような他の患者母集団もまた、脆弱静脈および設置の困難性等の源に起因して、IV浸潤のより高いリスクに曝される。
【0008】
大部分の病院設定では、患者モニタが、IVシステムとともに使用され、バイタルサインおよび血行動態パラメータを患者から測定する。従来の患者モニタは、典型的には、胴体装着型電極を使用して、心電図(本明細書では「ECG」)およびインピーダンスニューモグラフィ(本明細書では「IP」)波形を測定し、それから、心拍数(本明細書では「HR」)、心拍数変動性(本明細書では「HRV」)、および呼吸数(本明細書では「RR」)を計算する。殆どの従来のモニタはまた、典型的には、患者の指または耳たぶにクリップ留めされるセンサを用いて、光電式指尖容積脈波(本明細書では「PPG」)波形と呼ばれる、光学信号を測定する。そのようなセンサは、これらのPPG波形から血中酸素レベル(本明細書では「SpO2」)および脈拍数(本明細書では「PR」)を計算することができる。より高度なモニタはまた、血圧(本明細書では「BP」)、とりわけ、収縮期(本明細書では「SYS」)、拡張期(本明細書では「DIA」)、および平均(本明細書では「MAP」)BPを測定することができる。ポータブルおよび身体装着型デバイスのいずれかであり得る、デジタル聴診器は、心音および心雑音を示す心音図(本明細書では「PCG」)波形を測定することができる。
【0009】
BPは、特に測定することが困難であり得る、臨床的に重要なバイタルサインである。BP測定値に関する「至適基準」は、動脈ラインであって、これは、直接、動脈圧を測定する、トランスデューサを特徴とする、侵襲性カテーテルである。カテーテルは、動脈(典型的には、橈骨、上腕、または大腿動脈)の中に挿入され、トランスデューサが、機械的圧力を検出し、それを動態エネルギーに変換し、これは、患者モニタ上に表示されることができる。表示される測定値は、SYS、DIA、およびMAPの値を、時間依存圧力波形とともに、含むことができる。動脈ラインは、直接心拍間測定値として広く使用されるが、高度に侵襲性である。したがって、感染症等の合併症のリスクに曝され、患者にとって疼痛を伴い得る。
【0010】
動脈ラインと対照的に、BPを検出する間接的非侵襲性方法は、血圧計であって、これは、制御された方法において、下層動脈を圧潰および解放する、膨脹可能カフである。血圧計は、臨床医が、橈骨動脈を触診しながら、カフを患者の上腕(例えば、二頭筋)上で膨張させることを伴う、手動触診方法に依拠する。臨床医は、カフを脈波を消失させる圧力まで膨脹させ、カフが収縮されるにつれて、そこで脈波が動脈が解放されることに起因して再現する、圧力は、SYSである。
【0011】
血圧計を使用する別の手動方法は、聴診であって、これは、患者の二頭筋の周囲に巻着される、カフが、膨脹され、次いで、収縮される間、聴診器を介して、動脈を聴取することを伴う。触診方法と同様に、聴診の間、臨床医は、カフを患者の動脈圧の上方で膨脹させる。臨床医は、次いで、カフをゆっくりと収縮させ、これは、SYSを信号伝達する、「Korotkoff音」の出現をもたらす。Korotkoff音は、動脈の内圧がカフの内圧を上回って上昇するとき、血液のボーラスが閉塞された動脈を通して噴出するにつれて発生される。血液の噴出は、乱流を生成し、可聴音を生成する。いったんカフが、十分に収縮されると、Korotkoff音は、消失し、動脈を通した積層血流が復元されるにつれて、DIAを信号伝達する。
【0012】
血圧計に類似する、カフベースのシステムを使用する自動方法もまた、BPを測定するために広く使用されている。最も一般的方法のうちの1つは、振動測定である。ここでは、カフは、カフ圧力の時間依存変化を検出する圧力トランスデューサを特徴とする。測定の間、各動脈脈波に伴って、血流は、患者の腕の体積を若干変化させ、それによって、圧力トランスデューサが検出する、小圧力脈波をカフ内で生成する。カフが、膨脹するにつれて、デバイスは、血流が脈波の不在によって停止されているときを検出することができる。デバイスは、次いで、カフをゆっくりと収縮させ、その時点で、小圧力脈波の出現は、SYSを示し、それらの脈波の後続消失は、DIAおよび積層血流の復帰を示す。
【0013】
聴診および振動測定を使用する方法は、非侵襲性であるが、カフの不快な本質に起因して、依然として、患者間で許容度のレベルが変動する。加えて、これらの方法は、断続的であって、持続的血圧測定が昇圧薬用量調整等の臨床上有用であろう状況に関して、限定された価値を有する。
【0014】
最近の進歩はまた、持続的でもある、非侵襲性BP測定につながっている。そのような方法は、体積クランプ技法、動脈圧平圧力測定法、光学センサ、および「収縮期時間間隔」を測定し、次いで、アルゴリズムを使用して、これらをBP値に変換する、マルチセンサ技法を使用することを伴う。
【0015】
「Clearsight」(Irvine, CAを拠点とする、Edwards Scientific製)によって使用されるもの等の体積クランプ技法は、指カフと、光源およびフォトダイオードを含む、光学センサとを特徴とする。指カフは、膨脹され、指内の動脈の一貫した直径を維持し、これは、次いで、光学センサによって測定される。指カフは、圧力を調節し、動脈の直径を維持する。これらの調節は、SYSおよびDIAに対応する、圧力曲線を計算するために使用されることができる。
【0016】
動脈圧平圧力測定法は、骨にわたって配置される、動脈(典型的には、橈骨動脈)にわたって、圧力センサを設置することを伴う。測定の間、デバイスによって印加される圧力は、センサを動脈に対して押圧させる。圧力センサは、動脈壁を平坦化するために必要とされる圧力を測定し、SYSおよびDIAの測定値につながる。
【0017】
非侵襲性かつ持続的の両方である、さらに別の技法では、同時に、PPGおよびECG波形を測定する、センサが、収縮期時間間隔、すなわち、信号が患者内の2つの点間を伝搬するためにかかる持続時間を測定することによって、BPの推定値をもたらし得る。脈波伝播時間(本明細書では「PTT」)と呼ばれる、具体的技法は、PPGまたはPCG波形内の心拍動誘発脈波(典型的には、胸部または腕から測定される)および身体上の異なる場所において測定された脈波(典型的には、指において測定されるPPG波形)を分離する、時間である。脈波到着時間(本明細書では「PAT」)は、ECGR波(典型的には、胸部から測定される)およびPPG波形内の脈波(典型的には、指において測定される)を分離する、時間を測定することを除き、類似概念を使用する。PATは、前駆出期(本明細書では「PEP」)と、等容性収縮時間(本明細書では「ICT」)とを含むという点で、PTTと異なる。PTTおよびPATは両方とも、BPに反比例し、これらの技法に基づく大部分の測定値は、カフベースのシステム、典型的には、振動測定に基づく、自動化されたシステムを用いて較正され、SYSおよびDIAの絶対測定値をもたらす。「ViSi」システム(San Diego, CAを拠点とする、Sotera Wireless製)は、PATに基づく、市販のBP測定デバイスである。
【0018】
いくつかの患者モニタは、完全に身体装着型である。これらは、典型的には、ECG、HR、HRV、およびある場合には、RRを測定するパッチの形状をとる。そのようなパッチはまた、運動(本明細書では「ACC」)波形を測定する、加速度計を含むことができる。アルゴリズムが、ACC波形から患者の姿勢、運動の程度、転倒、および他の関連パラメータを決定することができる。患者は、典型的には、病院において、これらのタイプのパッチを装着する。代替として、それらは、歩行および自宅使用のためにも使用される。パッチは、典型的には、比較的に短い時間周期(例えば、数日から数週間)にわたって装着される。それらは、典型的には、無線であり、通常、Bluetooth(登録商標)送受信機等の技術を含み、情報を短距離にわたって二次「ゲートウェイ」デバイスに伝送し、これは、典型的には、情報をクラウドベースのシステムに伝送するためのセルラーまたはWi-Fi無線を含む。
【0019】
さらにより複雑な患者モニタは、Swan-Ganzまたは肺動脈カテーテルと呼ばれる侵襲性センサを使用して、1回拍出量(本明細書では「SV」)、心拍出量(本明細書では「CO」)、および心楔入圧等のパラメータを測定する。測定を行うために、これらのセンサは、患者の左心内に位置付けられ、それらは、バルーンカテーテルを使用して、小さい肺血管の中に「楔留め」される。本非常に侵襲性の測定の代替として、患者モニタは、類似するパラメータを測定するために、生体インピーダンスおよび生体リアクタンス等の非侵襲性技法を使用することができる。これらの方法は、身体部分上で身体装着型電極を展開し(典型的には、患者の胸部、脚、および/または頸部上に展開される)、生体インピーダンスプレチスモグラム(本明細書では「IMP」)および/または生体リアクタンス(本明細書では「BR」)波形を測定する。IMPおよびBR波形の分析は、SV、CO、および胸部インピーダンスをもたらし、これは、患者の胸部内の流体の代理となる(本明細書では「FLUIDS」)。着目すべきこととして、IMPおよびBR波形は、概して、類似する形状を有し、類似する測定技法を使用して感知され、したがって、本明細書では同義的に使用される。
【0020】
BP、あまり一般的ではないが、SV、CO、およびFLUIDSを測定するデバイスは、臨床医が、患者の血液体積、流体応答性、およびある場合には、中心静脈圧(本明細書では「CVP」)等の関連計測値を推定することを可能にする、計測値をもたらすことができる。まとめると、これらのパラメータは、ある医学的条件を診断し、蘇生活動を誘導することができる。しかし、Swan-Ganzおよび肺動脈カテーテルの非常に侵襲的な性質は、不利であり得、高い感染リスクを伴う。加えて、CVP測定値は、循環系が、末梢を犠牲にして中枢循環系の血液体積レベルを保護することによって、血液体積不均衡(特に、循環血液量減少)を補償することを試みるとき等、ある急性条件に応答して、変化がより緩慢になり得る。例えば、末梢血管における収縮は、中枢系に対する流体損失の効果を低減させ、それによって、従来のCVP測定において血液損失を一時的に隠蔽し得る。そのような隠蔽は、患者条件の認識および治療の遅れにつながり、それによって、転帰を悪化させ得る。
【0021】
これらおよび他の欠点に対処するために、末梢静脈波形分析(本明細書では「PIVA」)と呼ばれる測定技法が、米国特許出願第14/853,504号(2015年9月14日に出願され、米国特許公開第2016/0073959号(特許文献1)として公開された)およびPCT出願第PCT/US16/16420号(2016年2月3日に出願され、第WO2016/126856号(特許文献2)として公開された)(その内容は、参照することによって本明細書に組み込まれる)に説明されるように、開発された。これらの文書は、患者の静脈系内に挿入された留置カテーテルから信号を受信し、それから発生された信号を処理する遠隔電子機器にケーブルを通して接続する、圧力トランスデューサを特徴とするセンサ(本明細書では「PIVAセンサ」)を説明している。PIVAセンサは、典型的には、生理食塩水点滴装置または注入ポンプに取り付けられるIV管類を含む、既存のIVラインを使用して、末梢静脈圧(本明細書では「PVP」)を示す時間依存波形を測定する。PVP波形は、フィルタリングされ、比較的に高周波数信号成分(本明細書では「PVP-AC」波形)と、低周波信号成分(本明細書では「PVP-DC」波形)とを示すことができる。用語「AC」は、通常、交流電流を説明するために使用されるが、本明細書では、時間的に急速に変化する、信号成分を示すために使用される。同様に、PVP波形の低周波成分は、比較的に安定し、経時的に変動せず、したがって、用語「DC」によって示され、これは、通常、時間に伴って急速に変化しない、直流および対応する信号を説明するために使用される。PIVAセンサを用いて行われる測定は、典型的には、高速フーリエ変換(本明細書では「FFT」)と呼ばれる方法論を使用して、遠隔コンピュータを用いて実施される、周波数ドメインへのPVP波形(典型的には、PVP-AC波形)の数学的変換を特徴とする。FFTを用いて発生される周波数ドメインスペクトルの分析は、それぞれ、患者のHRおよびRRを示す、RR周波数(本明細書では「F0」)およびHR周波数(本明細書では「F1」)をもたらすことができる。F0およびF1のより詳細な分析、例えば、これらのピークの振幅を決定する、または代替として、最大ピーク振幅を中心とする曲線下の面積を積分するためのコンピュータアルゴリズムの使用は、これらの特徴の「エネルギー」を決定する。これらのエネルギーのさらなる処理は、患者の血液体積ステータスのインジケーションをもたらす。そのような測定は、例えば、以下の参考文献(その内容は、参照することによって本明細書に組み込まれる)、すなわち、1)Hocking et al., 「Peripheral venous waveform analysis for detecting hemorrhage and iatrogenic volume overload in a porcine model.」, Shock. 2016 Oct;46(4):447-52、2)Sileshi et al., 「Peripheral venous waveform analysis for detecting early hemorrhage: a pilot study.」, Intensive Care Med. 2015 Jun;41(6):1147-8、3)Miles et al., 「Peripheral intravenous volume analysis (PIVA) for quantitating volume overload in patients hospitalized with acute decompensated heart failure - a pilot study.」, J Card Fail. 2018 Aug;24(8):525-532、および4)Hocking et al., 「Peripheral i.v. analysis (PIVA) of venous waveforms for volume assessment in patients undergoing haemodialysis.」, Br J Anaesth. 2017 Dec 1;119(6):1135-1140に説明される。
【0022】
残念ながら、PIVAセンサを用いた典型的な測定の間、HRおよびRR事象によって誘発されるPVP波形(典型的には、5~20mmHg)は、それらの動脈圧の相対物(典型的には、60~150mmHg)よりもはるかに弱い。これは、従来の圧力トランスデューサによって測定される時間依存PVP波形における対応する信号の大きさが、多くの場合、非常に弱い(典型的には、5~50□V)ことを意味する。加えて、PVP波形は、典型的には、患者から遠隔に位置する電子システムを用いて増幅され、調整され、デジタル化され、最終的に処理される。したがって、これらのステップに先立って、波形のアナログバージョンが、ケーブルを通して進行し、これは、それらを減衰させ、(例えば、運動に起因して)雑音を追加し得る。また、ある場合には、PVP波形は、単純に、F0およびF1に対応するシグネチャが欠如する。または、一方の一次周波数のピークは、他方の一次周波数の「高調波」(すなわち、所与の周波数の整数倍)によって不明瞭にされる。これは、自動化医療デバイスがF0およびF1およびこれらの特徴と関連付けられるエネルギーを正確に決定することを困難または不可能にし得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0023】
【特許文献1】米国特許出願公開第2016/0073959号明細書
【特許文献2】国際公開第2016/126856号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0024】
前述に照らして、Tegaderm様包帯、すなわち、IVを患者に固着させる、絆創膏様構成要素の機能を提供し、同時に、IVシステムの性質(例えば、浸潤、溢出、閉塞)および患者の生理学的パラメータ(例えば、HR、HRV、SpO2、RR、TEMP、およびBP)を特性評価する、IV包帯システム(本明細書では「IVDS」)を提供することが有益であろう。特に、IVDSが、患者の静脈系から生じる、PVP信号を測定し、それらを動脈BP値(例えば、SYS、MAP、DIA)に変換し得る場合、有益となるであろう。
【0025】
そのような測定を行うために、IVDSは、弱雑音PVP波形に関連するこれまでの問題を克服し、また、同時に、IVシステムおよび患者に関連する信号を測定する、センサのセットを組み込むように、従来のPIVAセンサを改良するであろう。そのようなシステムは、患者が病院および医療診療所において監視される方法を改良し得る。これらおよび他の欠点を是正するために、IVDSは、埋設されたインピーダンス、温度、および運動センサを特徴とし、拡張および改良されたPVPセンサは、圧力センサがそれらを検出直後(例えば、直接、患者の身体上で)、PVP波形を増幅させ、フィルタリングし、デジタル化する、留置静脈カテーテルに近接近して位置する、回路基板を特徴とする。
【0026】
加えて、本発明によると、PVPセンサからの測定値は、血行動態パラメータ、例えば、SV、CO、およびFLUIDSの独立測定値(パッチセンサまたは同等の患者モニタを用いて行われることができる)と結合され、患者の流体ステータスの改良された理解をもたらすことができる。
【0027】
本明細書に説明されるIVDSは、従来のIVシステムと協働するように設計され、可撓性かつ接着性である、包帯構成要素を特徴とし、これは、留置カテーテルを患者に接続する。IVシステム、包帯、およびカテーテルは全て、病院において使用される標準的機器である。包帯は、典型的には、いくつかのIV治療の間、患者の静脈の外側に誤って堆積され、周囲組織内に蓄積する、流体の蓄積を感知する、インピーダンス測定を実施する、典型的には、ヒドロゲルベースの材料から作製される、少なくとも4つの埋設された電極を含む。加えて、包帯は、それぞれ、蓄積する流体に関連する、温度および光学吸収変化を検出する、温度センサと、光学センサとを含んでもよい。IVDS内の運動センサ(例えば、加速度計および/またはジャイロスコープ)は、患者の運動を特性評価し、偽陰性および偽陽性読取値を排除し、同時に、患者の姿勢(例えば、立位、座位、仰臥位)および活動レベル(例えば、歩行、睡眠、転倒)を特性評価する。カテーテルは、アナログPVP波形を増幅、フィルタリング、およびデジタル化する、複雑な回路網を特徴とする、PVP調整回路基板を封入する、患者の身体に近接して、またはその上に、典型的には、その腕または手上に装着される、筐体を含む。回路基板はまた、デジタル化された信号を処理および記憶し、情報を無線で伝送する、構成要素(例えば、Bluetooth(登録商標)送信機)を含んでもよい。このように、回路基板は、IVDSからの情報を表示し、患者の生理学およびIVシステムに関連するアラームおよびアラートを発生させ、集合的に、他の患者装着型デバイス、例えば、パッチセンサからの相補的情報を分析し得る、遠隔プロセッサ(例えば、サーバ、ゲートウェイ、タブレット、スマートフォン、コンピュータ、注入ポンプ、またはそれらのある組み合わせ)と統合することができる。
【0028】
本明細書に説明されるIVDSは、複数のデバイスを伴い得、遂行するために数分かかり得る、IVを患者に固着させ、IVの性能を特性評価し、バイタルサインおよび血行動態パラメータの従来の測定値を測定する、プロセスを簡略化する。IVDSと無線で結合する、遠隔プロセッサは、加えて、病院の電子医療記録(本明細書では「EMR」)システム等の既存の病院インフラストラクチャおよび通知システムと統合することができる。そのようなシステムは、介護者に、患者の条件の変化をアラームおよびアラートし、それによって、彼らが介入することを可能にし得る。
【0029】
IVDSは、典型的には、煩わしいケーブルを要求せずに、それを患者の身体に固着させる、電極をその底部表面上に含む、低コスト使い捨てシステムを特徴とする。使い捨てシステムは、典型的には、マイクロプロセッサ、メモリ、感知電子機器、無線送信機、および再充電可能リチウムイオンバッテリを特徴とする、印刷回路基板(本明細書では「PCB)等の比較的に高価な電子構成要素を特徴とする、再使用可能システムに接続する。実施形態では、使い捨て構成要素は、磁石を用いて、再使用可能構成要素に接続し、したがって、一方の構成要素が、除去される場合でも、他方の中に適切に容易に嵌め戻ることを可能にする。IVDS全体、すなわち、再使用可能および使い捨て構成要素は両方とも、典型的には、軽量であって、約20グラムである。リチウムイオンバッテリは、従来のケーブル(例えば、遠隔注入ポンプまたはディスプレイモジュールに接続するもの)を用いて、または無線機構を使用して、再充電されることができる。
【0030】
上記を前提として、一側面では、本発明は、動脈BP値(すなわち、SYS、DIA、およびMAP)を患者から決定するためのシステムを提供する。本システムは、1)患者の静脈系の中に挿入する、カテーテルと、2)患者の静脈系内の圧力を示す、生理学的信号を測定する、カテーテルに接続される、圧力センサと、3)i)生理学的信号を圧力センサから受信し、ii)アルゴリズムを用いて、生理学的信号を処理し、動脈BP値を決定するように構成される、処理システムとを特徴とする。
【0031】
実施形態では、処理システムはさらに、呼吸成分を生理学的信号からフィルタ除去し、動脈BP値を決定する、アルゴリズムを動作させるように構成される。例えば、本フィルタリングを実施するために、アルゴリズムは、帯域通過フィルタを動作させ、またはウェーブレット(例えば、連続ウェーブレット変換(本明細書では「CWT」)、離散ウェーブレット変換(本明細書では「DWT」)、または別のセンサ、例えば、パッチセンサから決定されたパラメータを使用する、適応フィルタ)に基づく、フィルタリングアプローチを使用して、呼吸成分をフィルタ除去してもよい。
【0032】
他の実施形態では、IVDSは、直接、患者に取り付けられ、典型的には、マイクロプロセッサを特徴とする、回路基板である、処理システムを被覆する、エンクロージャを含む。処理システムはさらに、加速度計(典型的には、3-軸加速度計)またはジャイロスコープ等の運動検出センサを含むことができる。実施形態では、処理システムはさらに、信号を運動検出センサから受信し、それらを処理し、患者の運動度を決定するように構成される。処理システムは、次いで、集合的に、本パラメータおよび患者の生理学的信号を処理し、BPを決定する。他の実施形態では、処理システムはさらに、運動検出センサからの信号を処理し、患者と関連付けられる身体部分(例えば、腕、手首、または手)と関連付けられる、相対的高さを決定するように構成される。ここでは、例えば、信号は、3-軸加速度計の1つの軸に沿って検出されたものであってもよい。処理システムは、次いで、集合的に、身体部分と関連付けられる相対的高さおよび生理学的信号を処理し、動脈BP値を決定することができる。
【0033】
他の実施形態では、本システムは、確立された従来の技術を用いてBPを測定する、外部較正源(例えば、血圧カフまたは動脈カテーテル)とインターフェースを取る。ここでは、処理システムはさらに、較正BP値を外部源から受信し、次いで、較正BP値を生理学的信号を用いて処理し、動脈BP値を決定するように構成される。関連実施形態では、処理システムはさらに、静脈BPと動脈BPとの間の患者特有の関係を決定し、次いで、較正BP値および生理学的信号とともに処理し、動脈BP値を決定するように構成される。ここでは、静脈BPと動脈BPとの間の患者特有の関係は、圧力センサが測定する、生理学的信号から、または患者(例えば、患者の性別、年齢、体重、身長、またはBMI)に対応する、生体測定情報から、導出されることができる。
【0034】
他の実施形態では、本システムは、加えて、較正BP値を外部源から無線で受信する、無線送受信機(例えば、Bluetooth(登録商標)、Wi-Fi、またはセルラー送受信機)を含み、これは、ひいては、ペアリングされた無線送受信機を含む。加えて、無線送受信機はまた、動脈BP値を外部ディスプレイシステム(例えば、注入ポンプ、遠隔ディスプレイ、コンピュータ、携帯電話、または医療記録システム)に無線で伝送することができる。
【0035】
別の側面では、本発明は、静脈内送達システムによって提供される液体溶液(例えば、生理食塩水または生理食塩水のような液体と混合される投薬療法物)が患者内の静脈の外側に送達されるときを決定するためのシステムを提供する。本システムは、1)静脈の中に挿入する、カテーテルと、2)静脈内の圧力を示す、圧力信号を測定する、カテーテルに接続される、圧力センサと、3)静脈の近位の組織の電気インピーダンスを示す、インピーダンス信号を測定する、インピーダンス測定システムと、4)i)圧力信号を圧力センサから受信し、ii)インピーダンス信号をインピーダンス測定システムから受信し、iii)集合的に、アルゴリズムを用いて、圧力信号およびインピーダンス信号を処理し、静脈内送達システムによって提供される液体溶液が静脈の外側に送達されているときを決定するように構成される、処理システムとを特徴とする。
【0036】
実施形態では、アルゴリズムは、圧力信号の時間依存変化を評価し、静脈内送達システムによって提供される液体溶液が静脈の外側に送達されているときを決定するように構成される。例えば、時間依存変化は、圧力が静脈内で増加または減少する(典型的には、高速様式において)ことを示し得る。またはそれらは、患者の心臓によって誘発される、短期圧力脈波の突然の有無、または静脈内送達システムによって誘発される、長期圧力脈波の有無であってもよい。
【0037】
関連実施形態では、アルゴリズムはさらに、インピーダンス信号の時間依存変化を評価し、静脈内送達システムによって提供される液体溶液が静脈の外側に送達されているときを決定するように構成される。例えば、インピーダンス信号の時間依存変化は、静脈の近位の組織から測定される、電気インピーダンスの増加または減少であってもよい。関連実施形態では、処理システムはさらに、静脈内送達システムによって提供される液体溶液の電気伝導性を評価するように構成される。これは、比較的に高電気伝導性(患者の組織と比較して)を伴う、液体が、測定されたインピーダンスを減少させるであろう一方、比較的に低伝導性を伴う液体が、それを増加させるであろうためである。
【0038】
他の実施形態では、本システムは、カテーテルを患者に固着させる、可撓性基板(例えば、接着性パッドまたは絆創膏)を含む。可撓性基板は、電極のセット(例えば、ヒドロゲル材料から作製されるもの)を含むことができる。実施形態では、電極のセット内の各電極は、インピーダンス測定システムと電気接触しており、少なくとも1つの電極は、電気電流を静脈の近位の組織の中に注入するように構成される一方、電極のセット内の少なくとも1つの他の電極は、電気電流によって誘発される信号を測定するように構成される。例えば、実施形態では、電極のセット内の少なくとも2つの電極は、電気電流によって誘発される、電圧変化を測定するように構成される。
【0039】
実施形態では、インピーダンス測定システムは、離散回路構成要素の集合から成る。代替として、これは、単一集積回路のみであってもよい。
【0040】
他の実施形態では、本システムはさらに、静脈の近位の組織内の温度を示す、時間依存温度信号を測定する、温度センサを含む。典型的には、IV浸潤は、浸潤性流体が、典型的には、室温(例えば、約70°F)にある一方、人体が、より比較的に高い温度(例えば、約98~99°F)を特徴とするため、温度の高速降下によって特徴付けられる。しかしながら、ある場合には、温度の増加が、IV浸潤を示す。いずれの症例でも、本実施形態では、処理システムはさらに、1)温度信号を温度センサから受信し、ii)集合的に、温度信号を、圧力信号およびインピーダンス信号とともに、アルゴリズムを用いて処理し、静脈内送達システムによって提供される液体溶液が静脈の外側に送達されているときを決定するように構成される。
【0041】
他の実施形態では、処理システムはさらに、圧力信号またはインピーダンス信号またはそれらのある組み合わせを処理し、患者に対応する、少なくとも1つの生理学的パラメータ(例えば、HR、RR、またはFLUIDS)を決定するように構成される。
【0042】
実施形態では、処理システムは、加えて、患者のHRおよびRRに関連する信号成分を処理し、患者の流体ステータスを示す生理学的パラメータ(例えば、楔入圧、中心静脈圧、血液体積、流体体積、および肺動脈圧)を決定する。
【0043】
実施形態では、処理システムは、生理学的パラメータを決定することに先立って、信号を周波数ドメインに変換し、周波数ドメイン信号を発生させる。変換のための方法は、典型的には、典型的には、FFT、CWT、またはDWTである。
【0044】
実施形態では、低域通過フィルタは、典型的には、増幅された信号から、HRおよびRR成分を含有する信号成分を分離する。低域通過フィルタは、典型的には、10~30Hzのフィルタカットオフを発生させる、回路構成要素を含む。他の実施形態では、回路システムは、加えて、2回増幅された信号を受信し、応答して、2回フィルタリングされた信号を発生させる、高域通過フィルタを含む。この場合では、高域通過フィルタは、典型的には、0.01~1Hzのフィルタカットオフを発生させる、回路構成要素を含む。
【0045】
実施形態では、回路システムは、加えて、2回増幅された信号を受信し、応答して、3回フィルタリングされた信号を発生させる、二次低域通過フィルタを含む。この場合では、二次低域通過フィルタは、典型的には、10~30Hzのフィルタカットオフを発生させる、回路構成要素を含む。
【0046】
他の実施形態では、本システムは、加えて、2回増幅された信号またはそれから導出された信号のデジタル表現を記憶する、フラッシュメモリシステムを含む。
【0047】
実施形態では、生体インピーダンスシステムは、生体リアクタンス感知システムによって置換されることができる。他の実施形態では、システムによって測定された生理学的パラメータは、BP、SpO2、SV、1回拍出係数、CO、心係数、胸部インピーダンス、FLUIDS、細胞間流体、および細胞外流体を含む、群から選択される。他の実施形態では、第2のパラメータのセットは、F0、F1、F0およびF1と関連付けられるエネルギー、F0およびF1の数学的組み合わせ、およびこれらから決定されたパラメータを含む、群から選択される。
【0048】
処理システムは、線形数学的モデルを動作させ、集合的に、上記に説明される信号を処理することができる。代替として、人工知能に基づいて、アルゴリズムを動作させ、集合的に、第1および第2のパラメータのセットを処理することができる。
【0049】
別の側面では、本発明は、患者からの生理学的パラメータを監視し、静脈挿入カテーテルによって提供される液体溶液が静脈の外側に送達されているときを決定するためのシステムを提供する。本システムは、カテーテルを患者に固着させるための可撓性基板(例えば、絆創膏タイプ構成要素)を特徴とし、少なくとも1つのセンサを含む。センサは、生理学的パラメータを示す、信号を測定し、液体溶液が静脈の外側に送達されているときを決定する。本システムはまた、i)信号をセンサから受信し、ii)第1のアルゴリズムを用いて、信号を処理し、生理学的パラメータを決定し、iii)第2のアルゴリズムを用いて、信号を処理し、カテーテルによって提供される液体溶液が静脈の外側に送達されているときを決定する、処理システムを含む。
【0050】
実施形態では、センサは、少なくとも1つの電極(例えば、ヒドロゲル構成要素を特徴とする、電極)である。より典型的には、センサは、少なくとも4つの電極を含み、本システムは、加えて、4つの電極のそれぞれに電気的に接続する、電気インピーダンス回路を含む。電気インピーダンス回路は、電気電流を第1の電極のセットの中に注入し、生体電気信号を第2の電極のセットから測定することができる。測定の間、回路は、第2の電極のセットからの生体電気信号を処理し、時間依存IMP波形を発生させる。処理システムは、次いで、時間依存IMP波形を受信し、それが動作させる、第1のアルゴリズムが、時間依存IMP波形を処理し、HR、RR、または流体の値を決定する。それが動作させる、第2のアルゴリズムが、加えて、時間依存IMP波形を処理し、カテーテルによって提供される液体溶液が静脈の外側に送達されているときを決定する。
【0051】
別の実施形態では、センサは、温度センサ(例えば、サーミスタ、熱電対、抵抗温度検出器、温度計、光学センサ、および熱流動センサ)である。ここでは、本システムはさらに、温度センサに電気的に接続する、温度測定回路を含む。測定の間、温度測定回路は、温度センサからの信号を処理し、時間依存温度波形を発生させる。処理システムは、次いで、時間依存IMP波形を受信し、それが動作させる、第1のアルゴリズムが、それを処理し、皮膚温度または深部温度の値を決定する。それが動作させる、第2のアルゴリズムが、加えて、時間依存温度波形を処理し、カテーテルによって提供される液体溶液が静脈の外側に送達されているときを決定する。
【0052】
他の実施形態では、本システムは、運動センサ(例えば、加速度計またはジャイロスコープ)を含み、運動センサは、時間依存運動波形を発生させる(例えば、その3つの軸のうちの1つに沿って)。処理システムは、時間依存運動波形を受信し、それおよびセンサ発生信号を分析し、生理学的パラメータを決定する。加えて、処理システムはさらに、時間依存運動波形を受信し、それおよびセンサ発生信号を分析し、カテーテルによって提供される液体溶液が静脈の外側に送達されているときを決定するように構成される。
【0053】
本明細書の開示に照らして、本発明の範囲をいかようにも限定することなく、別様に規定されない限り、本明細書に列挙された任意の他の側面と組み合わせられ得る、本開示の第1の側面では、動脈血圧値を患者から決定するためのシステムは、カテーテルと、圧力センサと、処理システムとを含む。カテーテルは、患者の静脈系の中に挿入するように構成される。圧力センサは、カテーテルに接続され、患者の静脈系の内圧を示す、生理学的信号を測定するように構成される。処理システムは、i)生理学的信号を圧力センサから受信し、ii)アルゴリズムを用いて、生理学的信号を処理し、動脈血圧値を決定するように構成される。
【0054】
別様に規定されない限り、本明細書に列挙された任意の他の側面と組み合わせられ得る、本開示の第2の側面では、処理システムはさらに、呼吸成分を生理学的信号からフィルタ除去し、動脈血圧値を決定する、アルゴリズムを動作させるように構成される。
【0055】
別様に規定されない限り、本明細書に列挙された任意の他の側面と組み合わせられ得る、本開示の第3の側面では、アルゴリズムはさらに、帯域通過フィルタを動作させ、呼吸成分を生理学的信号からフィルタ除去するように構成される。
【0056】
別様に規定されない限り、本明細書に列挙された任意の他の側面と組み合わせられ得る、本開示の第4の側面では、アルゴリズムはさらに、ウェーブレットに基づいて、フィルタを動作させ、呼吸成分を生理学的信号からフィルタ除去するように構成される。
【0057】
別様に規定されない限り、本明細書に列挙された任意の他の側面と組み合わせられ得る、本開示の第5の側面では、処理システムは、直接、患者に取り付けるように構成される、エンクロージャによって封入される。
【0058】
別様に規定されない限り、本明細書に列挙された任意の他の側面と組み合わせられ得る、本開示の第6の側面では、処理システムはさらに、運動検出センサを備える。
【0059】
別様に規定されない限り、本明細書に列挙された任意の他の側面と組み合わせられ得る、本開示の第7の側面では、運動検出センサは、加速度計およびジャイロスコープのうちの1つである。
【0060】
別様に規定されない限り、本明細書に列挙された任意の他の側面と組み合わせられ得る、本開示の第8の側面では、処理システムはさらに、信号を運動検出センサから受信し、それらを処理し、患者の運動度を決定するように構成される。
【0061】
別様に規定されない限り、本明細書に列挙された任意の他の側面と組み合わせられ得る、本開示の第9の側面では、処理システムはさらに、集合的に、患者の運動度および生理学的信号を処理し、動脈血圧値を決定するように構成される。
【0062】
別様に規定されない限り、本明細書に列挙された任意の他の側面と組み合わせられ得る、本開示の第10の側面では、処理システムはさらに、信号を運動検出センサから受信し、それらを処理し、患者と関連付けられる身体部分と関連付けられる、相対的高さを決定するように構成される。
【0063】
別様に規定されない限り、本明細書に列挙された任意の他の側面と組み合わせられ得る、本開示の第11の側面では、身体部分は、患者の腕である。
【0064】
別様に規定されない限り、本明細書に列挙された任意の他の側面と組み合わせられ得る、本開示の第12の側面では、処理システムはさらに、集合的に、患者と関連付けられる身体部分と関連付けられる相対的高さおよび生理学的信号を処理し、動脈血圧値を決定するように構成される。
別様に規定されない限り、本明細書に列挙された任意の他の側面と組み合わせられ得る、本開示の第13の側面では、処理システムはさらに、較正血圧値を外部源から受信するように構成される。
【0065】
別様に規定されない限り、本明細書に列挙された任意の他の側面と組み合わせられ得る、本開示の第14の側面では、処理システムはさらに、較正血圧値を生理学的信号を用いて処理し、動脈血圧値を決定するように構成される。
【0066】
別様に規定されない限り、本明細書に列挙された任意の他の側面と組み合わせられ得る、本開示の第15の側面では、外部源は、血圧カフおよび動脈カテーテルのうちの1つである。
【0067】
別様に規定されない限り、本明細書に列挙された任意の他の側面と組み合わせられ得る、本開示の第16の側面では、処理システムはさらに、静脈血圧と動脈血圧との間の患者特有の関係を、較正血圧値および生理学的信号とともに処理し、動脈血圧値を決定するように構成される。
【0068】
別様に規定されない限り、本明細書に列挙された任意の他の側面と組み合わせられ得る、本開示の第17の側面では、処理システムはさらに、生理学的信号を処理し、静脈血圧と動脈血圧との間の患者特有の関係を決定するように構成される。
【0069】
別様に規定されない限り、本明細書に列挙された任意の他の側面と組み合わせられ得る、本開示の第18の側面では、処理システムはさらに、患者に対応する、生体測定情報を処理し、静脈血圧と動脈血圧との間の患者特有の関係を決定するように構成される。
【0070】
別様に規定されない限り、本明細書に列挙された任意の他の側面と組み合わせられ得る、本開示の第19の側面では、生体測定情報は、患者の性別、年齢、体重、身長、およびBMIのうちの少なくとも1つを含む。
【0071】
別様に規定されない限り、本明細書に列挙された任意の他の側面と組み合わせられ得る、本開示の第20の側面では、本システムはさらに、較正血圧値を外部源から無線で受信するように構成される、無線送受信機を含む。
【0072】
別様に規定されない限り、本明細書に列挙された任意の他の側面と組み合わせられ得る、本開示の第21の側面では、無線送受信機は、Bluetooth(登録商標)、Wi-Fi、またはセルラー送受信機のうちの1つである。
【0073】
別様に規定されない限り、本明細書に列挙された任意の他の側面と組み合わせられ得る、本開示の第22の側面では、本システムはさらに、動脈血圧値を外部ディスプレイシステムに無線で伝送するように構成される、無線送受信機を含む。
【0074】
別様に規定されない限り、本明細書に列挙された任意の他の側面と組み合わせられ得る、本開示の第23の側面では、外部ディスプレイシステムは、注入ポンプ、遠隔ディスプレイ、コンピュータ、携帯電話、または医療記録システムのうちの1つである。
【0075】
別様に規定されない限り、本明細書に列挙された任意の他の側面と組み合わせられ得る、本開示の第24の側面では、動脈血圧値を患者から決定するためのシステムは、カテーテルと、圧力センサと、運動センサと、処理システムとを含む。カテーテルは、患者の静脈系の中に挿入するように構成される。圧力センサは、カテーテルに接続され、患者の静脈系内の圧力を示す、生理学的信号を測定するように構成される。運動センサは、運動信号を測定するように構成される。処理システムは、i)生理学的信号を圧力センサから受信し、ii)運動信号を運動センサから受信し、iii)運動信号を、それらと所定の閾値を比較することによって処理し、患者が比較的に低運動度を有するときを決定し、iv)生理学的信号を処理し、動脈血圧値を決定するように構成される。
【0076】
別様に規定されない限り、本明細書に列挙された任意の他の側面と組み合わせられ得る、本開示の第25の側面では、動脈血圧値を患者から決定するためのシステムは、カテーテルと、圧力センサと、運動センサと、処理システムとを含む。カテーテルは、患者の静脈系の中に挿入するように構成される。圧力センサは、カテーテルに接続され、患者の静脈系の内圧を示す、生理学的信号を測定するように構成される。運動センサは、運動信号を測定するように構成される。処理システムは、i)生理学的信号を圧力センサから受信し、ii)運動信号を運動センサから受信し、iii)運動信号を処理し、患者と関連付けられる身体部分と注入システムとの間の相対的高さを決定し、iv)生理学的信号および相対的高さを処理し、動脈血圧値を決定するように構成される。
【0077】
別様に規定されない限り、本明細書に列挙された任意の他の側面と組み合わせられ得る、本開示の第26の側面では、静脈内送達システムによって提供される液体溶液が患者内の静脈外に送達されているときを決定するためのシステムは、カテーテルと、圧力センサと、インピーダンス測定システムと、処理システムとを含む。カテーテルは、静脈の中に挿入するように構成される。圧力センサは、カテーテルに接続され、静脈内の圧力を示す、圧力信号を測定するように構成される。インピーダンス測定システムは、静脈の近位の組織の電気インピーダンスを示す、インピーダンス信号を測定するように構成される。処理システムは、i)圧力信号を圧力センサから受信し、ii)インピーダンス信号をインピーダンス測定システムから受信し、iii)集合的に、アルゴリズムを用いて、圧力信号およびインピーダンス信号を処理し、静脈内送達システムによって提供される液体溶液が静脈の外側に送達されているときを決定するように構成される。
【0078】
別様に規定されない限り、本明細書に列挙された任意の他の側面と組み合わせられ得る、本開示の第27の側面では、アルゴリズムは、圧力信号の時間依存変化を評価し、静脈内送達システムによって提供される液体溶液が静脈の外側に送達されているときを決定するように構成される。
【0079】
別様に規定されない限り、本明細書に列挙された任意の他の側面と組み合わせられ得る、本開示の第28の側面では、圧力信号の時間依存変化は、静脈内の圧力の増加および減少のうちの1つである。
【0080】
別様に規定されない限り、本明細書に列挙された任意の他の側面と組み合わせられ得る、本開示の第29の側面では、圧力信号の時間依存変化は、患者の心臓によって誘発される圧力脈波の有無のうちの1つである。
【0081】
別様に規定されない限り、本明細書に列挙された任意の他の側面と組み合わせられ得る、本開示の第30の側面では、圧力信号の時間依存変化は、静脈内送達システムによって誘発される、圧力脈波の有無のうちの1つである。
【0082】
別様に規定されない限り、本明細書に列挙された任意の他の側面と組み合わせられ得る、本開示の第31の側面では、アルゴリズムはさらに、インピーダンス信号の時間依存変化を評価し、静脈内送達システムによって提供される液体溶液が静脈の外側に送達されているときを決定するように構成される。
【0083】
別様に規定されない限り、本明細書に列挙された任意の他の側面と組み合わせられ得る、本開示の第32の側面では、インピーダンス信号の時間依存変化は、静脈の近位の組織からの電気インピーダンスの増加および減少のうちの1つである。
【0084】
別様に規定されない限り、本明細書に列挙された任意の他の側面と組み合わせられ得る、本開示の第33の側面では、処理システムはさらに、静脈内送達システムによって提供される、液体溶液の電気伝導性を評価するように構成される。
【0085】
別様に規定されない限り、本明細書に列挙された任意の他の側面と組み合わせられ得る、本開示の第34の側面では、本システムはさらに、カテーテルを患者に固着させるように構成される、可撓性基板を含む。
【0086】
別様に規定されない限り、本明細書に列挙された任意の他の側面と組み合わせられ得る、本開示の第35の側面では、可撓性基板は、電極のセットを備える。
【0087】
別様に規定されない限り、本明細書に列挙された任意の他の側面と組み合わせられ得る、本開示の第36の側面では、電極のセット内の各電極は、ヒドロゲル材料を含む。
【0088】
別様に規定されない限り、本明細書に列挙された任意の他の側面と組み合わせられ得る、本開示の第37の側面では、電極のセット内の各電極は、インピーダンス測定システムと電気接触している。
【0089】
別様に規定されない限り、本明細書に列挙された任意の他の側面と組み合わせられ得る、本開示の第38の側面では、電極のセット内の少なくとも1つの電極は、電気電流を静脈の近位の組織の中に注入するように構成される。
【0090】
別様に規定されない限り、本明細書に列挙された任意の他の側面と組み合わせられ得る、本開示の第39の側面では、電極のセット内の少なくとも1つの電極は、電気電流によって誘発される、信号を測定するように構成される。
【0091】
別様に規定されない限り、本明細書に列挙された任意の他の側面と組み合わせられ得る、本開示の第40の側面では、電極のセット内の少なくとも2つの電極は、電気電流によって誘発される、電圧変化を測定するように構成される。
【0092】
別様に規定されない限り、本明細書に列挙された任意の他の側面と組み合わせられ得る、本開示の第41の側面では、インピーダンス測定システムは、離散回路構成要素の集合から成る。
【0093】
別様に規定されない限り、本明細書に列挙された任意の他の側面と組み合わせられ得る、本開示の第42の側面では、インピーダンス測定システムは、単一集積回路から成る。
【0094】
別様に規定されない限り、本明細書に列挙された任意の他の側面と組み合わせられ得る、本開示の第43の側面では、本システムはさらに、静脈の近位の組織内の温度を示す、時間依存温度信号を測定するように構成される、温度センサを含む。
【0095】
別様に規定されない限り、本明細書に列挙された任意の他の側面と組み合わせられ得る、本開示の第44の側面では、時間依存温度信号は、静脈の近位の温度の増加および減少のうちの1つである。
【0096】
別様に規定されない限り、本明細書に列挙された任意の他の側面と組み合わせられ得る、本開示の第45の側面では、処理システムはさらに、1)温度信号を温度センサから受信し、ii)集合的に、アルゴリズムを用いて、温度信号を、圧力信号およびインピーダンス信号とともに処理し、静脈内送達システムによって提供される液体溶液が静脈の外側に送達されているときを決定するように構成される。
【0097】
別様に規定されない限り、本明細書に列挙された任意の他の側面と組み合わせられ得る、本開示の第46の側面では、処理システムはさらに、圧力信号を処理し、患者に対応する、少なくとも1つの生理学的パラメータを決定するように構成される。
【0098】
別様に規定されない限り、本明細書に列挙された任意の他の側面と組み合わせられ得る、本開示の第47の側面では、生理学的パラメータは、心拍数および呼吸数のうちの1つである。
【0099】
別様に規定されない限り、本明細書に列挙された任意の他の側面と組み合わせられ得る、本開示の第48の側面では、処理システムはさらに、インピーダンス信号を処理し、患者に対応する、少なくとも1つの生理学的パラメータを決定するように構成される。
【0100】
別様に規定されない限り、本明細書に列挙された任意の他の側面と組み合わせられ得る、本開示の第49の側面では、生理学的パラメータは、心拍数および呼吸数のうちの1つである。
【0101】
別様に規定されない限り、本明細書に列挙された任意の他の側面と組み合わせられ得る、本開示の第50の側面では、静脈内送達システムによって提供される液体溶液が患者内の静脈外に送達されているときを決定するためのシステムは、カテーテルと、圧力センサと、インピーダンス測定システムと、温度測定システムと、処理システムとを含む。カテーテルは、静脈の中に挿入するように構成される。圧力センサは、カテーテルに接続され、静脈内の圧力を示す、圧力信号を測定するように構成される。インピーダンス測定システムは、静脈の近位の組織の電気インピーダンスを示す、インピーダンス信号を測定するように構成される。温度測定システムは、静脈の近位の組織の温度を示す、温度信号を測定するように構成される。処理システムは、i)圧力信号を圧力センサから受信し、ii)インピーダンス信号をインピーダンス測定システムから受信し、iii)温度信号を温度センサから受信し、iii)集合的に、アルゴリズムを用いて、圧力信号、インピーダンス信号、および温度信号を処理し、静脈内送達システムによって提供される液体溶液が静脈の外側に送達されているときを決定するように構成される。
【0102】
別様に規定されない限り、本明細書に列挙された任意の他の側面と組み合わせられ得る、本開示の第51の側面では、患者からの生理学的パラメータおよび静脈内送達システムによって提供される液体溶液が患者内の静脈の外側に送達されているときを決定するためのシステムは、カテーテルと、圧力センサと、インピーダンス測定システムと、処理システムとを含む。カテーテルは、静脈の中に挿入するように構成される。圧力センサは、カテーテルに接続され、静脈内の圧力を示す、圧力信号を測定するように構成される。インピーダンス測定システムは、静脈の近位の組織の電気インピーダンスを示す、インピーダンス信号を測定するように構成される。処理システムは、i)圧力信号を圧力センサから受信し、ii)インピーダンス信号をインピーダンス測定システムから受信し、iii)集合的に、アルゴリズムを用いて、圧力信号およびインピーダンス信号を処理し、静脈内送達システムによって提供される液体溶液が静脈の外側に送達されているときを決定し、iv)圧力信号およびインピーダンス信号のうちの少なくとも1つを処理し、生理学的パラメータを患者から決定するように構成される。
【0103】
別様に規定されない限り、本明細書に列挙された任意の他の側面と組み合わせられ得る、本開示の第52の側面では、患者からの生理学的パラメータを監視し、患者内の静脈の中に挿入するように構成される、カテーテルによって提供される液体溶液が、静脈の外側に送達されているときを決定するためのシステムは、可撓性基板と、センサと、処理システムとを含む。可撓性基板は、少なくとも1つのセンサを含み、カテーテルを患者に固着させるように構成される。センサは、生理学的パラメータを示し、液体溶液が静脈の外側に送達されているときを決定する、信号を測定するように構成される。処理システムは、i)信号をセンサから受信し、ii)第1のアルゴリズムを用いて、信号を処理し、生理学的パラメータを決定し、iii)第2のアルゴリズムを用いて、信号を処理し、カテーテルによって提供される液体溶液が静脈の外側に送達されているときを決定するように構成される。
【0104】
別様に規定されない限り、本明細書に列挙された任意の他の側面と組み合わせられ得る、本開示の第53の側面では、センサは、少なくとも1つの電極である。
【0105】
別様に規定されない限り、本明細書に列挙された任意の他の側面と組み合わせられ得る、本開示の第54の側面では、電極は、ヒドロゲル成分を含む。
【0106】
別様に規定されない限り、本明細書に列挙された任意の他の側面と組み合わせられ得る、本開示の第55の側面では、センサは、少なくとも4つの電極を備える。
【0107】
別様に規定されない限り、本明細書に列挙された任意の他の側面と組み合わせられ得る、本開示の第56の側面では、本システムはさらに、4つの電極のそれぞれに電気的に接続するように構成される、電気インピーダンス回路を含む。
【0108】
別様に規定されない限り、本明細書に列挙された任意の他の側面と組み合わせられ得る、本開示の第57の側面では、電気インピーダンス回路は、電気電流を第1の電極のセットの中に注入し、生体電気信号を第2の電極のセットから測定するように構成される。
【0109】
別様に規定されない限り、本明細書に列挙された任意の他の側面と組み合わせられ得る、本開示の第58の側面では、電気インピーダンス回路は、第2の電極のセットからの生体電気信号を処理し、時間依存インピーダンス波形を発生させるように構成される。
【0110】
別様に規定されない限り、本明細書に列挙された任意の他の側面と組み合わせられ得る、本開示の第59の側面では、処理システムは、時間依存インピーダンス波形を受信し、処理システムによって動作される第1のアルゴリズムは、時間依存インピーダンス波形を処理し、心拍数の値を決定する。
【0111】
別様に規定されない限り、本明細書に列挙された任意の他の側面と組み合わせられ得る、本開示の第60の側面では、処理システムは、時間依存インピーダンス波形を受信し、処理システムによって動作される第1のアルゴリズムは、時間依存インピーダンス波形を処理し、呼吸数の値を決定する。
【0112】
別様に規定されない限り、本明細書に列挙された任意の他の側面と組み合わせられ得る、本開示の第61の側面では、処理システムは、時間依存インピーダンス波形を受信し、処理システムによって動作される第1のアルゴリズムは、時間依存インピーダンス波形を処理し、流体の値を決定する。
【0113】
別様に規定されない限り、本明細書に列挙された任意の他の側面と組み合わせられ得る、本開示の第62の側面では、処理システムは、時間依存インピーダンス波形を受信し、処理システムによって動作される第2のアルゴリズムは、時間依存インピーダンス波形を処理し、カテーテルによって提供される液体溶液が静脈の外側に送達されているときを決定する。
【0114】
別様に規定されない限り、本明細書に列挙された任意の他の側面と組み合わせられ得る、本開示の第63の側面では、センサは、温度センサである。
【0115】
別様に規定されない限り、本明細書に列挙された任意の他の側面と組み合わせられ得る、本開示の第64の側面では、温度センサは、サーミスタ、熱電対、抵抗温度検出器、温度計、光学センサ、および熱流動センサのうちの1つである。
【0116】
別様に規定されない限り、本明細書に列挙された任意の他の側面と組み合わせられ得る、本開示の第65の側面では、本システムはさらに、温度センサに電気的に接続するように構成される、温度測定回路を含む。
【0117】
別様に規定されない限り、本明細書に列挙された任意の他の側面と組み合わせられ得る、本開示の第66の側面では、温度測定回路は、温度センサからの信号を処理し、時間依存温度波形を発生させるように構成される。
【0118】
別様に規定されない限り、本明細書に列挙された任意の他の側面と組み合わせられ得る、本開示の第67の側面では、処理システムは、時間依存温度波形を受信し、処理システムによって動作される第1のアルゴリズムは、時間依存温度波形を処理し、皮膚温度の値を決定する。
【0119】
別様に規定されない限り、本明細書に列挙された任意の他の側面と組み合わせられ得る、本開示の第68の側面では、処理システムは、時間依存温度波形を受信し、処理システムによって動作される第1のアルゴリズムは、時間依存温度波形を処理し、深部温度の値を決定する。
【0120】
別様に規定されない限り、本明細書に列挙された任意の他の側面と組み合わせられ得る、本開示の第69の側面では、処理システムは、時間依存温度波形を受信し、処理システムによって動作される第2のアルゴリズムは、時間依存温度波形を処理し、カテーテルによって提供される液体溶液が静脈の外側に送達されているときを決定する。
【0121】
別様に規定されない限り、本明細書に列挙された任意の他の側面と組み合わせられ得る、本開示の第70の側面では、本システムはさらに、運動センサを含む。
【0122】
別様に規定されない限り、本明細書に列挙された任意の他の側面と組み合わせられ得る、本開示の第71の側面では、運動センサは、加速度計またはジャイロスコープのうちの1つである。
【0123】
別様に規定されない限り、本明細書に列挙された任意の他の側面と組み合わせられ得る、本開示の第72の側面では、運動センサは、時間依存運動波形を発生させるように構成される。
【0124】
別様に規定されない限り、本明細書に列挙された任意の他の側面と組み合わせられ得る、本開示の第73の側面では、処理システムはさらに、時間依存運動波形を受信し、それおよびセンサからの信号を分析し、生理学的パラメータを決定するように構成される。
【0125】
別様に規定されない限り、本明細書に列挙された任意の他の側面と組み合わせられ得る、本開示の第74の側面では、処理システムはさらに、時間依存運動波形を受信し、それおよびセンサからの信号を分析し、カテーテルによって提供される液体溶液が静脈の外側に送達されているときを決定するように構成される。
【0126】
開示されるデバイス、システム、および方法の付加的特徴および利点が、以下の詳細な説明および図に説明され、そこから明白となるであろう。本明細書に説明される特徴および利点は、包括的ではなく、特に、多くの付加的特徴および利点が、図および説明に照らして、当業者に明白となるであろう。また、任意の特定の実施形態は、本明細書に列挙された利点の全てを有する必要はない。さらに、明細書において使用される言語は、可読性および教示目的のために選択されており、本発明の主題の範囲を限定するものではないことに留意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0127】
【
図1】
図1は、本発明による、IVDSの図面である。
【0128】
【
図2A】
図2Aは、
図1のIVDSを使用して、IV浸潤前および後に測定された時間依存運動、温度、IMP、およびPVP波形を示す、グラフである。
【0129】
【
図2B】
図2B、2C、および2Dは、それぞれ、IVDSセンサ内のPVP、IMP、および温度センサが、対応する信号を患者から測定する方法を示す、概略図である。
【
図2C】
図2B、2C、および2Dは、それぞれ、IVDSセンサ内のPVP、IMP、および温度センサが、対応する信号を患者から測定する方法を示す、概略図である。
【
図2D】
図2B、2C、および2Dは、それぞれ、IVDSセンサ内のPVP、IMP、および温度センサが、対応する信号を患者から測定する方法を示す、概略図である。
【0130】
【
図3】
図3Aは、
図2Aの時間依存PVP波形のグラフである。
図3Bおよび3Cは、それぞれ、IV浸潤前および後に測定された、
図3Aの時間依存PVP波形のグラフである。
【0131】
【
図4A】
図4Aは、カフベースのシステムと、脈波伝播時間に基づく先行技術のカフレス技法との両方によって測定された、SYS BPのグラフである。
【0132】
【
図4B】
図4Bは、ブタ対象の動脈の中に挿入される、カテーテルと、
図1のIVDSにおいて使用されるPVP波形を処理するための技法との両方によって測定された、SYS BPのグラフである。
【0133】
【
図5】
図5は、
図1のIVDSと、病院ベッド内の患者に取り付けられる、注入ポンプとの概略図である
【0134】
【
図6】
図6は、
図1のIVDSが、患者に取り付けられ、PVP波形を測定する、方法を示す、概略図である。
【0135】
【
図7A】
図7Aは、
図1のIVDSにおいて使用され、
図6Bに示されるセンサによって発生されたPVP信号を増幅および調整する、PVP調整回路基板の画像である。
【0136】
【
図7B】
図7Bは、
図7Aに示される画像によって示される、PVP調整回路基板の写真である。
【0137】
【
図8】
図8は、PVP-ACおよびPVP-DC波形をフィルタリング、増幅、およびデジタル化するための回路を特徴とする、
図7Aおよび7BのPVP調整回路基板を説明する、電気回路図である。
【0138】
【
図9】
図9Aは、
図8の電気回路図によって説明される、第1の増幅器段後に測定された第1のPVP-AC波形の時間依存プロットである。
図9Bは、
図8の電気回路図によって説明される、第2の増幅器/フィルタ段後に測定された第2のPVP-AC波形の時間依存プロットである。
【0139】
【
図10A】
図10Aは、従来のビートピッキングアルゴリズムによって発生された、「ビートピック」を特徴とする、時間依存PVP波形のグラフである。
【0140】
【
図10B】
図10Bは、
図1のIVDSにおいて使用されるビートピッキングアルゴリズムによって発生された、ビートピックを特徴とする、時間依存PVP波形のグラフである。
【0141】
【
図11-1】
図11Aは、
図10Bによって示されるビートピッキングアルゴリズムによって発生された、ビートピックを特徴とする、時間依存動脈BP波形のグラフである。
図11Bは、
図11Aの比較的に短時間区画から測定される、時間依存動脈BP波形のグラフであって、心臓および呼吸成分の両方を示す。
【0142】
【
図11-2】
図11Cは、
図10Bによって示される、ビートピッキングアルゴリズムによって発生された、ビートピックを特徴とする、時間依存PVP波形のグラフである。
図11Dは、
図11Cの比較的に短時間区画から測定される、時間依存PVP波形のグラフであって、心臓および呼吸成分の両方を示す。
【0143】
【
図12】
図12A-Eは、5匹の異なるブタ対象から測定される、時間依存動脈BPおよびPVP波形のグラフである。
【0144】
【
図13A】
図13Aは、圧力と体積との間の関係がヒト静脈および動脈に関して変化することを示す、グラフである。
【0145】
【
図13B】
図13Bは、血管コンプライアンスを低減させる、血管平滑筋収縮の周期の間(例えば、呼吸の間)、圧力と体積との間の関係がヒト静脈および動脈に関して変化する様子を示す、グラフである。
【0146】
【
図14】
図14Aおよび14Bは、それぞれ、呼吸アーチファクトを除去するためのフィルタ未処理およびフィルタリング済みの両方における、時間依存動脈BPおよびPVP波形から発生された、ビートピックのグラフである。
【0147】
【
図15】
図15は、Bluetooth(登録商標)を通して、そのBP測定値を較正する、BPカフと、それが発生させる情報を表示する、注入ポンプとの両方に接続される、
図1のIVDSの概略図である。
【0148】
【
図16】
図16は、対象の腕が異なる位置に配置されている間に測定された、時間依存運動およびPVP波形のグラフである。
【0149】
【
図17】
図17は、
図1のIVDSによって、SYSおよびDIA値をPVP波形から決定するために使用される、アルゴリズムを示す、フローチャートである。
【0150】
【
図18】
図18A-Eは、
図17に示されるアルゴリズムを用いて処理された、動脈BP波形およびPVP波形の両方から測定される、時間依存SYS BP値のグラフである。
【0151】
【
図19】
図19は、
図17に示されるアルゴリズムを用いて処理された、動脈BP波形およびPVP波形の両方から測定される、SYS値間の一致を示す、
図18A-Eにおけるグラフ内でプロットされる情報から導出される、グラフである。
【0152】
【
図20】
図20は、異なる姿勢およびタイプの運動を行っている患者から測定された、時間依存運動、温度、IMP、およびPVP波形を示す、グラフである。
【0153】
【
図21】
図21Aおよび21Bは、それぞれ、
図1のIVDSを用いて測定され、バイタルサインを患者から計算するために使用される、時間依存PPGおよびIMP波形を示す、グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0154】
詳細な説明
1.概要
以下の文章は、多数の異なる実施形態の詳細な説明を記載するが、本明細書に説明される本発明の法的範囲が、本特許の終わりに記載される請求項の言語によって定義されることを理解されたい。詳細な説明は、例示的としてのみ解釈されるものであり、これは、これが不可能ではないにしても、非実践的であろうため、全ての可能性として考えられる実施形態を説明するわけではない。当業者は、多数の代替実施形態を実装し得、これは、依然として、請求項の範囲内に該当するであろう。
【0155】
2.IVDS
図1を参照すると、本発明による、IVDS80は、3つの主要機能、すなわち、1)IVカテーテル21を患者の身体構成要素(例えば、腕23)に固着させ、流体(例えば、生理食塩水、生理食塩水中に溶解された投薬療法物)をその静脈系の中に送達することと、2)同時に、そのような送達の有効性を低減させ得る、IVカテーテルと関連付けられる問題(すなわち、浸潤、溢出、および閉塞)を検出することと、3)同時に、いったん処理されると、患者からの生理学的パラメータ(例えば、HR、RR、TEMP、SpO
2)、最も着目すべきこととして、SYSおよびDIAをもたらす、生体測定信号を測定することとを提供する。病院内のコンピュータシステムは、これらの生理学的パラメータを分析し、続いて、患者への流体の送達に影響を及ぼし、したがって、潜在的に、患者処置を改良する、「閉ループ」システムを可能にする。
【0156】
IVDSは、IVカテーテル21を定位置に固着させる、生体適合性接着剤を片側に伴う、大型の絆創膏において使用されるものに類似する、可撓性の通気性ポリマー基部89を特徴とする。
図1では、IVカテーテル21は、暴露されるが、医療手技の間、患者の腕23内の静脈の中に挿入される。ポリマー基部89は、従来のヒドロゲル材料から成る、電極のセット83(典型的には、4つ)を含み、これらは、ケーブル88内に埋設された第1の電気トレースのセット84を通して接続し、最終的には、腕装着型筐体20内に封入された電子機器モジュール94内のインピーダンス回路につながる。電極83は、典型的には、線形構成に配列され、静脈の径間に沿って配置される。代替として、それらは、それらをポリマー基部89の4つの角に位置付ける、「正方形」構成に配列されることができる。電子機器モジュール94は、印刷回路基板を特徴とし、これは、ひいては、上記に説明される測定を可能にする、種々の電子構成要素(例えば、信号増幅および電力管理のための回路、患者運動を特性評価するための加速度計、センサ発生情報を処理するためのマイクロプロセッサおよび関連付けられるメモリ、情報を外部ディスプレイに伝送するための無線送信機、およびシステムに給電するための再充電可能バッテリ)を支持する。電子機器モジュール94の近位に位置するものは、
図6-9を参照して下記にさらに詳細に説明される、典型的には、第1のコネクタ91内に位置する、一連のアナログ増幅器と、圧力センサ97からの信号を処理する、フィルタとを含む、PVP調整回路基板95である。PVP調整回路基板95は、後続処理のためのPVP-ACおよびPVP-DC信号を発生させる。
【0157】
使用の間、電極のセット83は、患者の皮膚に取り付けられ、いったん電子機器モジュール94を用いて処理されると、ポリマー基部89の真下に配置される、組織の電気インピーダンスを示す、生体電気信号を測定する。ポリマー基部89は、加えて、第2の電気トレースのセット86を通して、電極83および温度センサ85からの電気信号を第1のコネクタ91にポート接続する、ケーブル88に接続する、温度センサ85を含む。第1のコネクタ91は、電気信号を腕装着型筐体20内の電子機器モジュール94にポート接続する、第2のコネクタ92と噛合する。典型的には、第2のコネクタ92、電子機器モジュール94、および腕装着型筐体は、IVDSの「再使用可能」構成要素と見なされる一方、
図1に示される他の構成要素は、「使い捨て」構成要素と見なされる。
【0158】
使用の間、カテーテル21は、患者の静脈の中に挿入し、IV管類18aの区画を通して、注入ポンプ(図には図示されないが、
図15に示される)に接続する。管類18bの一部は、管類18bの区画内の「流体柱」の圧力を測定する、小圧力センサ97を特徴する、コネクタ91を通して通過する。患者の静脈系内の小圧力変動は、ひいては、流体柱内の圧力を変調させる。圧力センサ97は、これらの圧力変動を測定し、それに応答して、電気信号を発生させ、これは、第1のコネクタ91、第2のコネクタ92を通して、電子機器モジュール94の中に通過し、そこで、それらは、下記にさらに詳細に説明されるように、PVP調整回路基板95を用いて、調整(例えば、フィルタリング、増幅)され、次いで、処理され、同時に、IVシステムの性能および患者の生理学に関連するパラメータを測定する。
【0159】
図2A-Dは、
図1に示されるIVDSがカテーテル21からの浸潤を特性評価し得る方法を示す。より具体的には、
図2Aは、IVDSによって測定された、時間依存運動、温度、IMP、およびPVP波形のグラフを示す。これらの測定のために、60ml/時のレートで流体を送達する、注入ポンプが、浸潤を促進するように、特殊腕装着型リグを身に着けた、患者に接続された。温度、IMP、PVP、および患者運動を測定する、センサが、直接、腕装着型リグに取り付けられ、
図1に関して説明されるものに類似するケーブルを通して、腕装着型筐体20内の電子機器モジュールに接続された。
【0160】
グラフに示されるように、浸潤が、約60秒の時点で開始された。運動波形における変動は、本時点において、患者が移動し、それによって、カテーテル21を、腕装着型リグ内の静脈124の中から、典型的には、伝導性のゼラチン状材料である、寒天から成る、周囲組織122の中に押動させたことを示す。腕装着型リグは、加えて、骨126と、皮膚120とを表す、合成成分を含む。加えて、制御回路およびモータ式ポンプ(図には図示せず)が、静脈に取り付けられ、伝導性の血液状液体を、約60拍/分である、「心拍数」で圧送する。
【0161】
図2Cを参照すると、電極83a-dが、腕装着型リグの皮膚120に接続し、電子機器モジュール内のインピーダンス回路を用いて処理され、それらの真下の組織の電気インピーダンスを決定する、信号を感知する。より具体的には、インピーダンス測定のために、外側電極83a、83bが、高周波数(典型的には、20~100kHz)かつ低アンペア数(典型的には、10~1,000□A)の電流を、皮膚120を通して、周囲組織122の中に注入する。注入された電流は、周囲組織の中に伝搬し、これは、ヒト組織に合致される、電気伝導性を有する。周囲組織の抵抗は、電流流動に影響を及ぼし、これは、一対の内側電極83c、83dによって測定される、電圧降下によって露見される。本電圧降下は、インピーダンスシステムによってデジタル化され、IMP波形をもたらす。
【0162】
図2Aにおけるグラフに示されるように、浸潤に先立って、IMP波形は、比較的に安定する。浸潤直後、値が定常的に減少する。本傾向は、少なくとも600秒にわたって継続し、その時点で、試験は、終了される。これは、浸潤に先立って、注入ポンプが流体(この場合は、伝導性である)を直接静脈の中に送達し、そこで、制御回路およびモータ式ポンプによって駆動される血液状液体の流動が、それを急速に取り除き、それによって、周囲組織122のインピーダンスに及ぼされるその影響を最小限にするためである。しかしながら、カテーテルが静脈124を通して押動された後、注入ポンプからの流体は、直接、周囲組織122の中に流動する。また、流体が伝導性であるため、組織のインピーダンス(すなわち、抵抗)を降下させ、それによって、IMP波形を徐々に減少させる。
【0163】
図2Aにおけるグラフに示されるように、温度波形に関しても、類似状況が存在する。ここでは、注入ポンプから送達される流体の温度は、腕装着型リグ内の成分より低温の約20°Fに保たれ、これは、流体および投薬療法物が、典型的には、IVシステムを用いて送達されるとき、室温(約72°F)に保たれる一方、人体が、20°F上回る温かさである、典型的病院環境内で生じる状況を模倣することを意図する。静脈124から周囲組織122の中に浸潤する、注入ポンプからの比較的に低い温度の流体は、周囲組織の温度を降下させる。これは、
図2Dに示されるように、温度センサ85によって測定される。
図2Aに示されるように、これは、浸潤後、IMP波形に類似する様式において、ゆっくりと減少する、温度波形をもたらす。
【0164】
PVP波形は、
図1に示されるように、構成される、圧力センサを用いて測定され、浸潤に続いて変化する、いくつかの信号成分を特徴とする。
図2A、2B、および3A-3Cによって示されるように、PVP波形は、温度およびIMP波形のように、浸潤に先立って、比較的に安定する。
図3Aにおける円形142内の時間周期から得られた、PVP波形の拡大図である、
図3B示されるように、浸潤に先立って、PVP波形は、小周期的脈波のセット144を特徴とし、これは、制御回路およびモータ式ポンプによって静脈を通して駆動される、血液状液体の流動を表す。
図3Bでは、周期的脈波144は、制御回路によって設定されるように、約60拍/分の周波数で生じることに留意されたい。加えて、浸潤に先立って、PVP波形は、高周波数雑音の周期146を特徴とし、これは、周期的に、60mL/時のレートで、液体を静脈に送達する、注入ポンプによって引き起こされる。
【0165】
いくつかのものが、浸潤後、PVP波形に起こる。
図3Aおよび3Cを具体的に参照すると、その後者は、浸潤直後の、
図3Aにおける円形140内の時間周期から得られた、PVP波形の拡大図であって、注入ポンプからの流体は、もはや静脈に送達されず、周囲組織の中に流動している。これは、浸潤に先立った約20mmHgから浸潤後の約300mmHgの高速圧力増加として露見する。加えて、カテーテルは、もはや静脈内に配置されていないため、
図3Bにおいて明白な心拍動誘発脈波は、もはや存在しない。さらに、周囲組織が、流体を取り除く際に、明らかに効率的ではないため、注入ポンプによって送達される各ボーラスは、周囲組織の中に拡散する流体を表す様式において、減弱する前に、約250mmHgのベースラインから約300mmHgのピークまで上昇する、圧力脈波150を引き起こす。各圧力脈波150は、注入ポンプによって完全に引き起こされ、したがって、
図3Bにおける成分146に類似する、高周波数雑音148を特徴とする。
【0166】
要するに、PVP波形内には、アルゴリズムが、処理し、IV浸潤を特性評価し得る、いくつかの信号成分、すなわち、圧力の高速上昇、心拍動誘発脈波およびその後続消失、大圧力脈波が存在する。そのようなアルゴリズムは、集合的に、PVP波形を、IMP、温度、および運動波形とともに処理し、本事象をより良好に検出することができる。加えて、光学、音響、生体リアクタンス、および他の波形を測定するもの等の他のセンサも、本事象をより良好に検出するために、IVDSに追加されることができる。
【0167】
付加的アルゴリズムはまた、静脈圧を表す、PVP波形を処理し、
図10-13および16-18および下記のこれらの図の関連付けられる説明によって示されるように、動脈血圧を決定することができる。
図4Bは、特に、PTTおよびPAT等の技術に基づく先行技術の「カフレス」アプローチと比較するとき、血圧のそのような測定の正確度を示す。例えば、
図4Aに示されるグラフは、PTTベースのアプローチを使用して測定される際のSYSに関する典型的結果を示す。図は、参照測定間の合理的相関値を示す(この場合、ペアにされた臨床医が聴診を使用して血圧を測定することで行われる)。しかしながら、PTTベースのアプローチは、参照測定値が検出する、血圧における高速揺動に比較的に鈍感である。対照的に、
図4Bは、留置動脈ラインを使用して対象から測定される、持続的動脈血圧(具体的には、SYS)を、本明細書に説明されるアルゴリズムを使用して同一対象から同時に測定された対応するPVP波形から計算される、血圧とともに示す。ここでは、SYSのPVP決定値は、血圧における高速の短期上昇および降下に関してさえ、参照測定値のものに非常に相関する。類似測定値は、特に、
図11、12、14、および18を参照して、下記にさらに詳細に説明される。これは、本明細書に説明されるIVDSが、カテーテルを定位置に固着させることに加え、加えて、BP値を測定し、同時に、IV浸潤を検出することができることを示す。
【0168】
図5は、本明細書に説明されるIVDS80システムが、病院設定の中に組み込まれ、患者11を測定し得る方法を示す。ここでは、IVDS80は、IV関連パラメータおよび病院ベッド24に横たわっている患者11からのバイタルサインを特性評価するためのIVシステム19を特徴とする、システム10内で展開される。IVDS80内の腕装着型筐体20は、PVP信号を増幅、フィルタリング、およびデジタル化するように構成される、電子機器モジュールおよびPVP調整回路基板を封入する。腕装着型筐体20は、患者の手または腕内の静脈の中に挿入される、静脈カテーテル21で終端する。遠隔プロセッサ36(例えば、同等の機能性を伴う、タブレットコンピュータまたはデバイス)が、無線インターフェース(例えば、Bluetooth(登録商標))を通して、腕装着型筐体20に接続する。実施形態では、遠隔プロセッサ36はまた、有線(例えば、ケーブル)手段を通して、腕装着型筐体に接続することもできる。これは、例えば、電子機器モジュール内のリチウムイオンバッテリを充電するために使用されてもよい。測定の間、遠隔プロセッサ36は、情報をIVシステム19およびIVDS80から受信し、集合的に、本明細書に詳細に説明されるように分析し、患者を監視する。
【0169】
IVシステム19は、患者のための医薬品化合物および/または流体(本明細書では「投薬療法物」17)を含有する、バッグ16を特徴とする。バッグ16は、第1の管14を通して、注入ポンプ12に接続する。標準的IVポール28が、バッグ16と、注入ポンプ12と、遠隔プロセッサ36とを支持する。注入ポンプ12の正面パネル上のディスプレイ13は、患者に送達される投薬療法物のタイプ、その流率、測定値時間等を示す。投薬療法物17は、バッグ16から、第1の管14を通して、注入ポンプ12の中に通過する。そこから、適切に計測され、第2の管18を通して、圧力センサを特徴とする、コネクタ91を通して、最後に、静脈カテーテル21を通して、患者の静脈系23の中に通過する。腕装着型筐体20は、コネクタ91に接続し、典型的には、例えば、医療テープまたは使い捨て電極等の接着剤を使用して、患者の腕または手に添着される。
【0170】
静脈カテーテル21は、標準的静脈アクセスデバイスであってもよく、したがって、針、カテーテル、カニューレ、または他の手段を含み、カテーテル21と患者の末梢静脈系23との間の流体接続を確立してもよい。静脈アクセスデバイスは、静脈カテーテル21に接続される、別個の構成要素であってもよい、またはその一体型部分として形成されてもよい。このように、IVシステム19は、投薬療法物17を患者の静脈系23に供給する一方、圧力測定システムを特徴とし、下記により詳細に説明される、IVDS80は、同時に、患者のPVPおよびバイタルサインに関連する信号を測定する。
【0171】
重要なこととして、下記にさらに詳細に説明されるように、IVDS80は、患者の身体に近接して(または直接その上に)展開されている間、患者の循環系(特に、静脈系)と一定「流体接続」状態にあるように設計される。これは、患者の静脈系内のアナログ圧力信号を測定し、PVP波形を発生させ、次いで、これらを増幅およびフィルタリングし、その信号対雑音比を最適化するための電子システムを特徴とする。腕装着型筐体内のアナログ/デジタルコンバータは、それらをケーブルを通して伝送することに立って、アナログPVP波形をデジタル化し、それによって、通常、伝送されるアナログ信号に影響を及ぼし、最終的には、不正確性を下流で測定された値(例えば、BP、HR、RR、F0、およびF1の値)の中に導入するであろう、任意の雑音(例えば、ケーブルの運動によって引き起こされる)を最小限にする。着目すべきこととして、本設計は、PVP波形が、最初に、検出され、次いで、処理およびデジタル化される場所間に比較的に短伝導経路を提供し、最終的には、これは、楔入圧の高度に正確な値(および実施形態では、肺動脈圧、特に、本圧力上の拡張期成分、血液体積、および他の流体関連パラメータ)をもたらす可能性がより高い、信号をもたらす。
【0172】
図6は、腕装着型筐体20、その動作方法、およびその内部構成要素(電子機器モジュールおよびPVP調整回路基板)がその中で機能する方法をさらに詳細に示す。筐体20は、1)IVシステムからの流体(および/または投薬療法物)が患者の静脈系の中に流動する(矢印25によって示されるように)ことを可能にし(ボックス27)、2)患者の静脈系からの圧力信号を圧力センサを用いて測定し(ボックス29)、3)圧力信号をアナログ増幅器およびフィルタとして機能する回路を用いてフィルタリング/増幅させ(ボックス31)、4)フィルタリング/増幅された信号をアナログ/デジタルコンバータを用いてデジタル化(ボックス33)し、5)遠隔プロセッサによるさらなる処理のために、Bluetooth(登録商標)送受信機を使用して、デジタル化された信号を伝送する(矢印35)間、患者に近接して、またはその上に、快適に静置するように設計される。
【0173】
3.PVP調整回路基板
図7Aおよび7Bは、それぞれ、腕装着型筐体内のPVP調整回路基板62の画像および写真を示す。回路基板62は、
図8(具体的には、構成要素100)に示され、下記にさらに詳細に説明される、電気回路図に従って加工された。図に示される回路基板62は、他の構成要素の中でもとりわけ、アナログ/デジタルコンバータ68、加速度計75、演算増幅器71a-f、および電力調整器72a-bにはんだ付けされる、金属パッドを含む、4-層ファイバガラス/金属構造である。より具体的には、演算増幅器71a-dは、アナログ高および低域通過フィルタを構成し、演算増幅器71e-fおよび電力調整器72a-bは、集合的に、回路基板62内の種々の構成要素のための電力レベルを調整する。加速度計75は、回路基板62の運動を測定し、そうすることによって、それが取り付けられている、患者の身体の任意の部分の運動を測定する。アナログ/デジタルコンバータ68は、それらがフィルタリングされた後、アナログPVP波形をデジタル化し、それらを、16ビット分解能および200Kサンプル/秒(本明細書では「Ksps」)の最大デジタル化率を伴う、デジタル波形に変換する。
【0174】
PVP調整回路基板62は、加えて、4-ピンコネクタ69と、2つの6-ピンコネクタ77、78と、3-ピンコネクタ79とを支持する、金属鍍着された孔のセットを含む。より具体的には、コネクタ69は、直接、変圧器に接続し、そこで、共通接地信号と、患者の静脈系の内圧を表すアナログPVP波形とを受信する。これらの波形は、下記でさらに詳細に説明されるように、フィルタリングおよびデジタル化される。コネクタ79を通して、回路基板は、電力(+5V、+3.3V、および接地)を外部電力供給源、例えば、腕装着型筐体内に位置するバッテリまたは電力供給源から受容する。これらの電力レベルは、本発明の他の実施形態では、異なり得る。アナログ/デジタルコンバータ68からのデジタル信号および対応する接地は、コネクタ78で終端され、それらは、本時点で、例えば、
図2Cに示されるケーブル区画37を通して、回路基板62からである。コネクタ77は、主に、試験およびデバッギング目的のために使用され、アナログPVP信号が、いったんそれらがアナログ高および低域通過フィルタを通して通過すると、オシロスコープ等の外部デバイスを用いて測定されることを可能にする。
【0175】
PVP調整回路基板62は、典型的には、シリアルインターフェース(例えば、SPI、I2C)を通して、電子機器モジュールに接続し、これは、アナログ/デジタルコンバータ68によってデジタル化されたデータを処理、記憶、および伝送するための構成要素を含む。例えば、電子機器モジュールは、典型的には、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、または類似集積回路を含み、加えて、IVDSのためのアナログおよびデジタル回路網を提供することができる。実施形態では、その上のマイクロプロセッサまたはマイクロコントローラは、コンピュータコードを動作させ、PVP-AC、PVP-DC、PPG、IMP、BP、および他の時間依存波形を処理し、バイタルサイン(例えば、HR、HRV、RR、BP、SpO2、TEMP)、血行動態パラメータ(CO、SV、FLUIDS)、PVP波形の成分(例えば、F0、F1、およびそれと関連付けられる振幅およびエネルギー)、および患者の流体ステータスに関連する、関連付けられるパラメータ(例えば、楔入圧、中心静脈圧、血液体積、流体体積、および肺動脈圧)を決定することができる。本明細書で使用されるようなこのようなマイクロプロセッサによる「処理」は、コンピュータコードまたは同等のアプローチを使用して、波形およびパラメータおよびそこから導出される構築物をデジタル的にフィルタリングし(例えば、高域通過、低域通過、および/または帯域通過フィルタを用いて)、転換し(例えば、FFT、CWT、および/またはDWTを使用して)、数学的に操作し、概して、当技術分野において公知のアルゴリズムを用いて、処理および分析することを意味する。そのようなアルゴリズムの実施例は、その内容が参照することによって本明細書に組み込まれる、以下、すなわち、2015年12月18日に出願された、「NECK-WORN PHYSIOLOGICAL MONITOR」第U.S.S.N.14/975,646号、2014年8月21日に出願された、「NECKLACE-SHAPED PHYSIOLOGICAL MONITOR」第U.S.S.N14/184,616号、および2014年7月3日に出願された、「BODY-WORN SENSOR FOR CHARACTERIZING PATIENTS WITH HEART FAILURE」第U.S.S.N14/145,253号の同時係属中および交付済み特許に説明されるものを含む。
【0176】
関連実施形態では、電子機器モジュールは、マイクロプロセッサによる処理の前または後のいずれかにおいて、時間依存波形および数値を記憶するために、フラッシュメモリおよびランダムアクセスメモリの両方を含むことができる。さらに他の実施形態では、回路基板は、情報の伝送および受信の両方のために、Bluetooth(登録商標)および/またはWi-Fi送受信機を含むことができる。
【0177】
本明細書に説明されるシステムを用いて測定されたPVP波形は、時間に伴って急速に変動し得る、心拍動および呼吸事象に関連する、信号成分を特徴とする。
図9は、PVP-AC波形の実施例と、それらが、腕装着型筐体20内のPVP調整回路基板62によって増幅および調整され、その信号対雑音比を改良する方法とを示す。
【0178】
より具体的には、PVP波形は、典型的には、処理することが困難であり得る、比較的に弱振幅である、5-50□V範囲内の信号レベルを有する。そのような信号は、例えば、米国特許出願第16/023,945号(2018年6月29日に出願され、米国特許公開第2019/0000326号として公開されている)、米国特許出願第第14/853,504号(2015年9月14日に出願され、米国特許公開第2016/0073959号として公開されている)、およびPCT出願第PCT/US16/16420号(2016年2月3日に出願され、第WO2016/126856号として公開されている)において以前に説明される。これらの係属中の特許出願の内容は、参照することによって本明細書に組み込まれる。測定の間、これらの文書に説明されるように、患者の近位の圧力センサが、PVP波形を測定し、対応するアナログ信号を発生させる。これらは、典型的には、比較的に長ケーブルを通して通過し、患者から遠隔に位置するシステムを用いて、増幅、フィルタリング、およびデジタル化される。しかしながら、PVP波形は、非常に弱く、低信号対雑音比によって特徴付けられるため、それらは、測定するにことが非常に困難であり得る。したがって、それらが長くて「損失の多い」ケーブルを通して伝搬する前に、これらの信号をデジタル化することが有利である。
【0179】
図8は、
図7A-Bに示される回路基板62の概略
図100を示す。概略
図100は、1)PVP-AC波形を増幅およびフィルタリングするように設計される、第1の回路要素のセット102と、2)PVP-DC波形を増幅およびフィルタリングように設計される、第2の回路要素のセット104と、3)PVP-ACおよびPVP-DC波形の両方をデジタル化するための16ビット、200Kspsアナログ/デジタルコンバータ106とを含む。
【0180】
より具体的には、概略
図100によって説明される回路は、以下の機能を到着PVP波形上で順次実施するように設計される。
【0181】
到着PVP波形
1)ゼロ-ドリフト増幅器を使用して、信号を100X利得で増幅させる
2)信号を付加的10X利得で差動増幅させる
3)増幅された信号を25Hz、2-極低域通過フィルタでフィルタリングする
【0182】
回路の本第1の部分は、到着PVP波形のための約1000xの組み合わせられた利得を提供し、それによって、入力信号(典型的には、□V範囲内)をより大きい信号(mV範囲内)に増幅させる。後続低域通過フィルタは、任意の高周波数雑音を除去する。最終的には、これらのステップは、下記に説明されるように、PVP-ACおよびPVP-DC波形の両方の処理を促進する。
【0183】
本明細書に提供される説明では、用語「差動増幅」は、回路が正の端子(
図8ではP_IN)と負の端子(
図8ではN_IN)との間の差異を測定する、プロセスを指す。着目すべきこととして、差動増幅器の出力は、本システムの中点電圧においてゼロにされる、シングルエンド信号である。代替として、0Vでゼロにされ得るが、電圧レール間の中心点は、概して、より正確かつより鮮明な出力信号を提供する。
【0184】
同様に、用語「ゼロ-ドリフト増幅器」は、1)温度および他の形態の低周波信号誤差を内部から補正し、2)非常に高入力インピーダンスを有し、3)非常に低オフセット電圧を有する、増幅器を指す。ゼロ-ドリフト増幅器によって受信される到着信号は、典型的には、極度に小さく、干渉、利得偏移、または発生された電流から漏出する増幅器入力を被り得ることを意味し、増幅器のゼロ-ドリフトアーキテクチャは、これを低減または排除することに役立つ。
【0185】
入力PVP波形を処理後、概略
図100によって説明される回路は、以下の機能をPVP-ACおよびPVP-DC波形上で順次実施するように設計される。
【0186】
PVP-AC波形のみ
1)信号を0.1Hz、2-極高域通過フィルタでフィルタリングする
2)信号を15Hz、2-極低域通過フィルタでフィルタリングする
3)信号を50X利得で増幅させる
【0187】
PVP-DC信号のみ
1)信号を0.07Hz、2-極低域通過フィルタでフィルタリングする
2)信号を0.13Hz、2-極低域通過フィルタでフィルタリングする
3)信号を10X利得で増幅させる
【0188】
PVP-ACおよびPVP-DC波形の両方
1)信号を16ビット、200Kspsデルタ-シグマアナログ/デジタルコンバータでデジタル化する
【0189】
本レベルのデジタル信号処理を用いることで、回路基板62は、直接、患者の身体上で、PVP波形、より具体的には、IV浸潤、呼吸数、および心拍数と関連付けられる、信号を処理することができる。これは、雑音および他の信号アーチファクトを追加し、したがって、これらのパラメータの測定値に悪影響を及ぼし得る、アプローチである、外部ケーブルを通して信号を送信する必要なく、これらの機能を実施する。
【0190】
当業者によって理解されるように、
図8に示される回路要素102、104、および106は、本明細書に説明されるものと若干異なる、概略図を用いて、上記に説明されるステップを遂行する、同等の設計を有してもよい。加えて、他の集積回路および構成要素を含み、PVP信号の測定値を改良し、したがって、追加される機能性を提供してもよい。例えば、回路基板62はまた、温度/湿度センサ、多軸加速度計、統合されたジャイロスコープ、または患者と関連付けられる運動信号(例えば、患者の腕、手首、または手の移動)を感知するように構成される、他の運動検出センサを含んでもよい。実施形態では、例えば、運動信号は、PVP波形と並行して処理され、適応フィルタとして使用され、運動成分を除去することができる。代替として、これらの構成要素のうちの1つによって測定された運動信号は、処理され、既存の閾値と比較されることができ、信号が、所定の閾値を超える場合、患者が、あまりに移動しており、正確な測定を行うことができないことを示し得、信号が、所定の閾値未満である場合、患者が、安定しており、正確な測定が行われ得ることを示し得る。
【0191】
そのような回路要素102、104、および106は、典型的には、小コネクタ(例えば、
図1における構成要素91)の内側に嵌合するように設計される寸法によって特徴付けられる、
図7に示されるもの等の小ファイバガラス回路基板上に加工される。
【0192】
図9A-Cは、回路基板62および関連付けられる回路要素102が、それぞれ、
図7A、7B、および8に示されるように、PVP-AC波形のアナログバージョンを増幅し、概して、改良する方法を示す。より具体的には、
図9Aは、初期アナログフィルタリングおよび増幅段に対応する、回路要素102内の場所130において測定されるPVP-AC波形の時間依存プロットを示す。図から明白であるように、本時点におけるPVP-AC波形の信号対雑音比は、比較的に弱く、実際の生理学的成分、例えば、心拍動または呼吸誘発脈波に対応する、任意の特徴を検出することを困難にする(不可能ではないにしても)。対照的に、3つの付加的増幅/フィルタリング段、すなわち、1)付加的10X利得を伴う、差動増幅器、2)25Hz、2-極低域通過フィルタ、次いで、0.1Hz、2-極高域通過フィルタ、次いで、15Hz、2-極低域通過フィルタを伴う、フィルタ、および3)50X利得を伴う、増幅器を通して通過後、信号は、著しく改良された。
図9Bは、第2の場所132において回路の増幅器鎖をさらに辿って測定された、時間依存波形を示す。これは、比較的に高信号対雑音比および鮮明な心拍動誘発脈波を特徴とする(すなわち、HRに対応する、明確に定義された時間ドメイン信号を示す)。そのような波形は、上記に説明されるような周波数ドメイン内で処理されると、IV浸潤に関連する事象を検出するIVDSの能力を改良する、鮮明な特徴をもたらすであろう。
【0193】
重要なこととして、上記に説明されるように、
図9A-Cにおいて示されるアナログ信号処理およびPVP波形のデジタル化は、理想的には、可能な限り信号源に近接して、すなわち、腕装着型筐体内で実施される。そのような構成は、信号が長くて損失の多いケーブル(加えて、運動を受けやすい)を通して遠隔フィルタ/増幅回路まで伝搬することによって引き起こされる、雑音および減衰を最小限にする。最終的には、本アプローチは、最高可能信号対雑音比を伴う、時間依存波形をもたらし、それによって、IV浸潤およびバイタルサインが最終的に決定され得る、正確度を最大限にする。
【0194】
4.血圧測定値
PVP調整回路基板を用いて処理された後も、測定されたPVP波形は、低信号対雑音比を特徴とし、それによって、本明細書に説明されるアルゴリズムを使用して、動脈BPを推定するために要求される、個々の心拍動誘発脈波を抽出することを困難にし得る。
図10Aおよび10Bを参照すると、典型的用途では、時間依存波形(例えば、PPGおよびIMP波形)における心拍動誘発脈波が、典型的には、周期的ピークを識別する、アルゴリズムを使用して識別される。しかしながら、そのようなピークは、
図10A示されるように、波形の信号対雑音比が低いときを見出す困難であり得る。この場合、アルゴリズムは、心拍動誘発脈波毎に、複数のピーク(白丸によって示される)を識別する。これらの大部分は、単一ピークのみが心拍動誘発脈波毎に識別されるべきため、誤っている。
【0195】
図10Bは、その内容が参照することによって本明細書に組み込まれる、以下の参考文献、すなわち、Scholkmann F, Boss J, Wolf M.; “An Efficient Algorithm for Automatic Peak Detection in Noisy Periodic and Quasi-Periodic Signals”, Algorithms. 2012; 5(4):588-603において概略される、代替ビートピッキングアルゴリズムの結果を示す。本アプローチでは、時間依存脈波含有波形内の各点が、その近傍と比較される。アルゴリズムは、ピークに関して試験する間、時間依存「窓」のサイズを反復的に増加させる。これは、窓毎に試験を通過する、場所の追跡を保ち、窓サイズの幅は、信号の周期(例えば、脈波率)に基づいて最適化されることができる。アルゴリズムは、それらが全ての窓サイズを横断して存在する場合、「真」のピークを確認する。
図10Bは、
図10Aに示される同一PVP波形に印加されるときの、本明細書では、「IVDSビートピッキングアルゴリズム」と称される、本ビートピッキングアルゴリズムの結果を示す。
図10Aにおける波形を処理するために使用される、従来のアルゴリズムと対照的に、IVDSビートピッキングアルゴリズムは、
図10Bにおける白丸によって示されるように、各心拍動誘発脈波を正しくかつ1つのみ識別する。
【0196】
理想的には、PVP波形の典型的低信号対雑音比のため、本明細書に説明されるIVDSは、前述の参考文献に説明され、
図10Bに示されるデータで実証されるように、IVDSビートピッキングアルゴリズムを使用する。典型的には、本アルゴリズムは、CまたはC++等のコンピュータコードを使用して、IVDSの電子モジュール内のマイクロプロセッサ上で展開される。
【0197】
図11A-Dは、IVDSを用いて測定および処理された、時間依存動脈BPおよびPVP波形を示し、そうすることによって、以下の重要な点を実証する。
【0198】
点1:IVDSビートピッキングアルゴリズムは、時間依存動脈BPおよびPVP波形の両方を効果的に処理し、ビートピックを識別することができる。
【0199】
点2:本明細書に説明されるシステムを用いて測定および処理される際、時間依存動脈およびPVP波形の変化の間に強固な一致が存在する。
【0200】
点3:患者の呼吸事象が、動脈BP波形と比較して、より有意に顕著な様式において、PVP波形を変調させる。
【0201】
点1に関して、
図11Aおよび11Cにおけるグラフは、それぞれ、IVDSビートピッキングアルゴリズムで処理された、時間依存動脈BPおよびPVP波形を示す。各波形の上部部分の近傍の白丸は、アルゴリズムが識別する、心拍動誘発脈波を示す。それぞれ、破線丸170および172によって示される、波形の部分を示す、
図11Bおよび11Dは、波形およびビートピックの両方をさらに詳細に示す。これらのデータから明白であるように、IVDSビートピッキングアルゴリズムは、動脈BPおよびPVP波形の両方において、心拍動誘発脈波を識別することに成功している。これは、特に、対象の静脈系に由来する信号が、対象の動脈系に由来するものと比較して、著しく不明瞭に定義された心拍動誘発脈波を有するため、
図11Cおよび11Dに示されるPVP波形に関して困難である。
【0202】
点2および3に関して、
図11Aおよび11Bに示されるグラフと11Cおよび11Dにおけるものの比較は、時間依存動脈BPとPVP波形との間の高一致度が存在するが、PVP波形が、対象の呼吸によってより有意に影響されることを示す。これは、それぞれ、
図11Bおよび11Dに示される、破線ボックス173および174に明確に示される。動脈BP波形を示す、
図11Bでは、全体的圧力は、呼吸によって若干のみ変調される。したがって、心拍動誘発脈波(「o」マーキングによって示される)と呼吸変調の比率は、大きい。対照的に、PVP波形を示す、
図11Dでは、全体的圧力は、呼吸によって著しく変調され、心拍動誘発脈波は、比較的に弱い。これは、心拍動誘発脈波(「x」マーキングによって示される)と呼吸変調の比率が小さいことを意味する。呼吸変調を伴っても、2つの波形間には、強固な一致が存在し、呼吸に起因するアーチファクトをデジタル的に除去するアルゴリズムが、一致を改良し、したがって、比例して、PVP波形から計算されるBPの正確度を改良し得ることを示す。
【0203】
図12A-Eはさらに、これらの点を実証する。各図は、臨床研究に参加した異なるブタ対象に対応する、2つのグラフ、すなわち、1)比較的に短時間区画にわたって、「o」マーカで示される、IVDSビートピッキングアルゴリズムを用いて行われた対応するビートピックとともに測定された、時間依存動脈BP波形(上側グラフ)と、2)「x」マーカで示される、IVDSビートピッキングアルゴリズムを用いて行われた対応するビートピックを伴う、同一時間区画にわたって測定された時間依存PVP波形(下側グラフ)とを示す。これらのグラフに関して、x-軸(「時間」)は、サンプル単位であって、サンプリング率は、50サンプル/秒であることに留意されたい。
【0204】
これらの図におけるデータは、上記で述べられた3つの「点」を確証する。すなわち、全ての症例において、IVDSビートピッキングアルゴリズムは、特に、比較的に困難であるPVP波形において、心臓脈波を位置特定する際に効果的である。動脈BPおよびPVP波形の変化の間に強固な相関が存在する。さらに、全ての症例において、2つの波形は両方とも、対象の呼吸によって、一貫した様式で変調され、変調は、より有意に顕著であって、PVP波形の比較的に大変化をもたらす。重要なこととして、2つの波形間の一致は、呼吸誘発変調が存在しない、周期の間でも、存続する。例えば、
図12Aおよび12Dでは、対象は、呼吸が存在しない、幾分長時間周期を呈する(両図において、約1.125~1.135x10
5サンプルまたは20秒)が、まだ依然として、2つの信号における圧力変動間の一致が存在する。
【0205】
任意の特定の理論に拘束されるわけではないが、
図11および12によって示されるように、動脈BP波形と比較して、PVP波形内に存在する比較的に大変調は、静脈のコンプライアンスが動脈のものを約10~20倍上回るという証明された理論に起因し得る(例えば、Richard E. Klabunde Ph.D.による「Cardiovascular Physiology Concepts」( https://www.cvphysiology.com/)参照)。
図13Aを参照すると、コンプライアンスは、血管壁が圧力の変化に伴って受動的に拡張および収縮する能力である。典型的には、静脈は、圧力のわずかな変化のみを伴って、血液体積の大変化に適応することができ、それらがより大きいコンプライアンスを有することを意味する。静脈のより大きいコンプライアンスは、主として、10mmHg未満の圧力で生じる、静脈圧潰の結果である。より高い圧力および体積では、静脈コンプライアンス(コンプライアンス曲線の傾き)は、動脈コンプライアンスに類似する。
【0206】
血管に関して、コンプライアンス曲線が1つであるわけではない。例えば、
図13B示されるように、血管緊張度を増加させる、血管平滑筋収縮は、血管コンプライアンス(図における破線)を低減させ、体積-圧力関係を下向きに偏移させる。逆に言えば、平滑筋弛緩は、コンプライアンスを増加させ、コンプライアンス曲線を上向きに偏移させる。これは、特に、静脈血管系において、静脈圧および心臓前負荷の調整のために重要である。動脈内の平滑筋の収縮は、そのコンプライアンスを低減させ、それによって、動脈血液体積を減少させ、動脈系に伴って、BPを増加させる。
【0207】
コンプライアンスは、上記に説明されるように、脈管を既知の体積だけ拡張させ、定常状態における圧力の変化を測定することによって発生される、静的コンプライアンスを表す。典型的には、脈管(動脈または静脈のいずれか)のコンプライアンスはまた、それによって体積の変化が生じる、レートに依存する、すなわち、コンプライアンスに対する動的成分が存在する。これは、
図11および12において、動脈および静脈圧波形の両方に及ぼされる呼吸の影響によって示される。すなわち、呼吸事象は、動脈および静脈の両方の血管コンプライアンスに影響を及ぼすが、静脈内の比較的に低圧のため、呼吸は、その中の血圧により顕著に影響を及ぼす。
【0208】
動脈BPおよびPVP波形の両方の呼吸誘発変調が、例えば、デジタルフィルタリング技法を使用して、除去されると、2つの信号間の一致は、増加される。例えば、
図14Aおよび14Bは、これらの2つの波形のビートピックの時間依存プロットを示す、グラフである(
図11および12に示されるように、ビートピックに加え、全てのデータ点を含む、完全-分解能波形とは対照的である)。
図14Aは、「o」マーカによって示される、動脈BPビートピックを示す一方、
図14Bは、「x」マーカによって示される、PVPビートピックを示す。全ての症例では、ビートピックは、上記に説明されるように、IVDSビートピッキングアルゴリズムを使用して行われる。
【0209】
図14Aおよび14Bは両方とも、圧力変動を示す、暗色実線を含み、呼吸アーチファクトは、デジタル的にフィルタ除去される。ここでは、使用されるフィルタは、デジタル帯域通過フィルタであって、フィルタの限界は、そこで呼吸が典型的に生じる、周波数(例えば、約3~20呼吸/分)と一貫する。図から明白であるように、実線は、概して、呼吸変調ビートピックを通して通過し、重要なこととして、呼吸に関連する成分が除去されると、これらの信号に関する圧力変動における強固な一致を図示する。
【0210】
実施形態では、呼吸成分を除去するために使用されるフィルタは、帯域通過フィルタ以外の何らかのものであることができる。他の候補フィルタは、ウェーブレット(例えば、CWTまたはDWT)に基づくフィルタ、呼吸が、別の技法を用いて(例えば、IMP波形から)測定され、次いで、PVP波形のための別個のフィルタ内で使用される、適応フィルタ、周波数ドメインに基づくフィルタ(例えば、時間ドメイン波形がFFTを使用して、周波数ドメイン波形に変換された後に適用されるもの)、または単純平滑化アルゴリズムを含む。呼吸変調に起因する、信号アーチファクトを除去または低減させるための他の同等のデジタルフィルタリングまたはデジタル信号処理技法も、本発明の範囲内である。
【0211】
PVP波形からのビートピックは、静脈内の収縮期圧力に対応し、典型的には、10~30mmHgの範囲内の圧力値を有する一方、動脈BPからのものは、直接、SYSに対応し、比較的に高く、例えば、典型的には、70~150mmHgの範囲内である。さらに、全ての患者に当てはまる、静脈圧と動脈圧との間の普遍関係が存在するとは考えられない。これは、動脈BPをPVP波形から推定するために、較正が実施されなければならないことを意味する。
【0212】
図15を参照すると、動脈BP値(SYS、MAP、およびDIA)を推定するために使用され得るように、PVP波形を「較正」するためのシステムは、
図1を参照して詳細に説明されるように、患者11の腕23に取り付けられる、本発明によるIVDS80を特徴する。典型的には、測定値の開始時に生じる、較正周期の間、BPの振動測定を行う、血圧カフ181が、患者の上腕領域(例えば、二頭筋)に取り付けられる。血圧カフ181は、二頭筋の周囲に巻着する、可撓性カフ180を含み、これは、膨脹可能ブラダを特徴とし、典型的には、一時的にそれに固着させるために使用される、Velcro(登録商標)パッチを伴う、ナイロンタイプ材料から成る。制御モジュール182が、血圧カフ181を制御し、マイクロプロセッサと、無線Bluetooth(登録商標)送受信機と、圧力センサと、電力回路網と、アナログ/デジタル信号調整電子機器と、電子ポンプと、バッテリとを含有する、回路基板を特徴とする。
【0213】
測定を開始するために、臨床医(または実際の患者11)が、血圧カフ181上のオン/オフボタン184を押下する。これは、制御モジュール182内のポンプをアクティブ化し、それにカフ内のブラダを膨脹させ、圧力信号を患者の二頭筋から収集し、概して、振動測定を使用して、標準的血圧測定を実施する。これは、SYS、DIA、およびMAPの初期値をもたらす。加えて、血圧カフ181内の圧力センサは、患者の上腕動脈に可撓性カフ180によって印加される圧力を示す、時間依存圧力波形を測定する。いったん測定されると、これらのパラメータ、すなわち、SYS、DIA、およびMAPの値は、時間依存圧力波形とともに、血圧カフ181内のBluetooth(登録商標)送受信機によって、腕装着型筐体20によって封入された電子機器モジュール94内のペアリングされたBluetooth(登録商標)送受信機に無線で伝送される。より具体的には、電子機器モジュール94内の特徴である、マイクロプロセッサが、下記にさらに詳細に説明されるように、これらのパラメータを、IVDS80によって測定された他の時間依存波形とともに受信および処理し、患者特有の較正を決定する。
【0214】
血圧カフ181とIVDS80内の電子機器モジュール94との間のBluetooth(登録商標)通信は、図中の矢印188によって示されるように、双方向接続であって、上記に説明されるように、血圧カフ181は、SYS、DIA、およびMAPの値および時間依存圧力波形をIVDS80に送信し、本システムは、本情報を処理し、患者特有の較正を発生させ、また、情報(肯定応答、エラーコード、または新しい較正測定を開始するための命令等)を血圧カフ181に送信することができる。
【0215】
患者特有の較正は、典型的には、集合的に、血圧カフ181からの時間依存圧力波形を、IVDS80によって収集された時間依存波形、例えば、IMP、温度、PPG、および運動波形、およびPVP調整回路基板95によって測定された時間依存PVP-ACおよびPVP-DC波形とともに、分析することによって決定される。類似技法は、その内容が参照することによって本明細書に組み込まれる、以下の米国特許、すなわち、Banet et al. 「Body-worn system for continuous, noninvasive measurement of cardiac output, stroke volume, cardiac power, and blood pressure」米国特許第10,722,131号、 Banet et al.「Handheld physiological sensor」米国特許第10,206,600号、 McCombie et al.「System for calibrating a PTT-based blood pressure measurement using arm height」米国特許第8,672,854号、 Banet et al.「Cuffless system for measuring blood pressure」米国特許第7,179,228号、およびBanet et al.「Blood-pressure monitoring device featuring a calibration-based analysis」米国特許第7,004,907号に説明される。
【0216】
より具体的には、患者特有の較正を決定するために、複数のPVP値および動脈BP値の値が、収集および分析され、PVPの変化とSYS、DIA、およびMAPの変化を関連させる、患者特有の傾きを決定することができる。患者特有の傾きはまた、臨床研究からの所定の値を使用して、次いで、これらの測定値と臨床研究の間に収集された生体測定パラメータ(例えば、年齢、性別、身長、体重)を組み合わせることによって、決定されることができる。さらに他の実施形態では、患者特有の傾きは、PVPの変化(PVP調整回路基板95を用いて測定される)を、上腕に印加される圧力の変化(血圧カフ181内の制御モジュール182を用いて測定される)とともに検出することによって、決定されることができる。ここでは、動脈圧は、血圧カフ181によって印加された可変圧力から推定され、次いで、カフの膨脹の間に測定された可変PVPと相関されることができる。本関係は、次いで、患者特有の較正を推定するために使用されることができる。患者の生体測定パラメータに基づき、前述の特許に説明されるような実験的方法等の他の較正アプローチもまた、本発明の範囲内である。
【0217】
いったん測定が完了すると、IVDS80は、数値を、Bluetooth(登録商標)インターフェースを通して、矢印189によって示されるように、注入ポンプ192等の外部ディスプレイに無線で伝送することができる。本タイプの通信は、例えば、閉ループシステムを可能にし、注入ポンプ192が、流体を患者に送達し、そのBP、血液体積、および他の生理学的パラメータに影響を及ぼし、IVDS80が、流体が、患者の静脈系に送達されているか、または下層組織の中に浸潤しているかどうか、および加えて、患者が送達される流体に応答している程度を決定する。他の実施形態では、IVDS80は、情報を、類似無線インターフェースを通して、モバイル電話、コンピュータ、タブレットコンピュータ、テレビ、病院EMR、または別の同等のディスプレイデバイス等の別の遠隔ディスプレイに送信する。
【0218】
図16は、患者の腕の高さが、PVP波形、特に、信号のベースライン(
図16における肉眼的変化から容易に明白である)および各心拍動誘発インピーダンス脈波の大きさ(データの細密検査に応じて存在する、特徴であるが、
図16ではあまり明白ではない)の両方の変化に影響を及ぼし得る様子を示す。
図16におけるグラフは、グラフィック200a-dによって示されるように、4つの異なる腕位置において測定される、時間依存PVPおよび運動(加速度計z-軸から求められる)波形を示す。最初の60秒間、患者の腕は、グラフィック200aによって示されるように、真下に向けられており、PVP波形は、約20mmHgの初期ベースラインを有する。次の60秒にわたって、患者は、グラフィック200bによって示されるように、その腕を約45
o上昇させ、PVP波形ベースラインを約20mmHg降下させる。本傾向は、患者がその腕を90
o(グラフィック200cによって示されるように)、最後に、135
o(グラフィック200dによって示されるように)まで上昇させるにつれて継続する。
図16はまた、加速度計測定運動信号(この場合、z-軸に沿って)が、腕の高さに伴って相当する方法において変化する様子を示し、したがって、本信号が実際の腕の高さを推定するために処理され得ることを示す。
【0219】
腕の高さに伴うPVP信号の変化および加速度計を用いて相対的腕の高さを自動的に特性評価する能力は、いくつかの理由から、重要である。第1に、PVPおよび動脈BPの両方が、腕の高さの変化に伴って、持続的に、明確に定義された様式において変化するため、腕の高さの系統的変動を伴うプロセスが、上記に説明されるように、PVPに基づいて血圧測定値を較正するために使用されてもよい。第2に、PVP信号(ベースラインおよび心拍動誘発脈波の両方)が、腕の高さに伴って変動するため、それらに基づく正確な動脈BP測定値は、加速度計を用いて測定されるにつれて、腕の高さを考慮する必要があるであろう。
【0220】
IVDSに関して、腕の高さを加速度計信号から計算するステップは、好ましくは、可変人口統計(例えば、身長、体重、BMI、性別、年齢)の対象を伴う臨床試験を用いて特性評価されるような両方のパラメータに関する別個のエントリを特徴とする、一連の「ルックアップテーブル」を事前に発生させることによって行われる。ルックアップテーブルは、好ましくは、製造の間、IVDSのソフトウェアの中にコード化される。実際の測定の間、加速度計信号は、測定され、適切なルックアップテーブルと比較され、腕の高さを推定する。
【0221】
図14(デジタルフィルタリングを使用した呼吸変調の除去)、
図15(カフベースのシステムを用いた較正)、および
図16(腕の高さの考慮)に示される結果に基づく、アルゴリズムが、動脈BPをPVPから推定するために使用されることができる。
図17は、アルゴリズムの主要ステップを示す、フローチャートを示す。アルゴリズムは、
図1および15に示されるもののようなIVDSを使用して、PVP波形を測定するステップ(ステップ270)から開始する。そのようなシステムは、例えば、従来のIVシステムに接続される、入院または外科手術患者上で展開されるであろう。IVDSがPVP波形を測定後、
図10を参照して上記に説明されるIVDSビートピッキングアルゴリズム等のビートピッカを用いて、それらを処理し、SYS/DIA値の点の集合(すなわち、「ベクトル」)を決定する(ステップ271)。IVDS上で動作する、埋設されたコンピュータコードを使用して、アルゴリズムは、次いで、SYS/DIA値のベクトルをフィルタリングし、前述のデジタル信号処理技法、例えば、帯域通過フィルタ、適応フィルタ、ウェーブレットフィルタ(例えば、CWTまたはDWT)、単純多点平滑化関数のうちの1つを使用して、呼吸変調を除去する(ステップ272)。いったんフィルタリングされると、IVDSは、
図16に関して概略されたアプローチに従って、その内部多軸加速度計を使用して、対象とIVシステムとの間の垂直距離の変化を推定する(ステップ276)。垂直距離の変化は、次いで、IVDSによって処理され、SYS/DIA値のベクトルを調節し、患者とIVシステムとの間の垂直距離の変化を考慮する(ステップ273)。これが完了されると、IVDSは、
図15を参照して上記に説明されるように、較正測定を開始し、血圧カフに、SYSおよびDIA値および時間依存圧力波形を測定するように命令する(ステップ278)。アルゴリズムは、カフベースのシステムからのこれらの値を使用して、測定値を効果的に較正する、すなわち、SYSおよびDIAの初期値を決定し、患者特有の較正を発生させる(ステップ274)。本較正およびPVP波形を用いることで、IVDSは、SYS/DIAの後続値を推定することができる(ステップ275)。
【0222】
図18および19は、
図17に示されるアルゴリズムのバージョンを使用して5つの異なるブタ対象からのPVPデータを処理する結果を示す。
図18A-Eにおけるプロットは、PVP(すなわち、推定されるSYS)および動脈BP波形(実際のSYS)から得られるSYSの時間依存値を示す。いずれの場合も、推定されるSYSと実際のSYSとの間の一致は、大きいことかつ高速であることの両方である、血圧スイングの周期の間でも、良好である。
【0223】
図19は、
図18A-Eから得られるような推定SYS値と実際のSYS値との間の一致を示す、グラフを示す。データ点は、30分毎に選択され、本グラフを発生させた。プロットを発生させるために使用されるプールされた対合された値から、全体的バイアスが、0.81mmHgとして計算され、標準偏差は、3.93mmHgであった。相関を示す、r-値は、0.98であって、優れた一致を示し、データ点の傾きは、0.96であって、ほぼ1の値および任意の系統的変動の一般的欠如を示す。まとめると、これらのデータは、本明細書に説明される血圧測定の有効性を示す。
【0224】
5.IVDSを用いた運動および姿勢の測定
IVDSにおいて腕の高さを推定するために使用される同一加速度計はまた、例えば、入院の間、患者の運動および姿勢を検出することができる。また、重要なこととして、これは、運動関連アーチファクトのため、本明細書に説明される測定、すなわち、IV浸潤およびPVPベースのBPを困難または不可能にし得る、運動の周期を特性評価するためにも使用されることができる。要するに、加速度計は、運動を検出することができ、これは、それ自体で患者を特性評価するために有用である一方、加えて、患者が比較的に無運動であって、測定値が理想的に行われ得るときの周期を示す。
【0225】
図20は、例えば、以下の事象、すなわち、腕屈曲、痙攣、腕挙上および下垂(45
oおよび90
o)、仰臥位から座位および座位から仰臥位への遷移、歩行、および立位から仰臥位への遷移の間に測定された、時間依存PVP、IMP、温度、および運動(加速度計のz-軸から)波形を示す。図中の破線は、時間の関数として、各事象を境界する。
図19は、各波形が運動によってある程度影響されることを示す。IMP波形は、特に、比較的に弱信号から成り、運動によって最も顕著に影響され、特に、歩行等の大腕移動が関わる、活動は、大量の雑音を波形上に与える。
【0226】
好ましい実施形態では、IVDSの電子機器モジュール上に位置付けられる、マイクロプロセッサが、加速度計の全3つの軸からの信号を持続的に処理する、アルゴリズムを動作させる。これらのデータと所定のルックアップテーブル内のもの、または代替として、第一原理モデルを比較することによって、アルゴリズムは、1)患者が行っている運動のタイプ、および2)運動がPVPベースの血圧測定値に影響を及ぼすために十分に深刻であるかどうか、および下記に説明されるような他のバイタルサインの測定値を決定する。IVDSは、運動がアルゴリズムが測定が行われ得ることを決定するようなものであるとき、値のセットを報告する。
【0227】
他の実施形態では、加速度計からの情報を使用して、IVDSは、患者が病院ベッド内で動き回る、およびベッドから出る準備をしている等、生じようとしている事象を決定することができる。これらおよび他の事例では、IVDSは、「アラーム」または「アラート」を遠隔ディスプレイ、例えば、
図15に示されるような注入ポンプに無線で伝送することができる。
6.IVDSを用いた他のバイタルサインおよび生理学的パラメータの測定
【0228】
IV浸潤、最も着目すべきこととしてIMP、温度、およびPVP信号を処理するために使用されるPVP調整回路基板を検出するために使用される、本明細書に説明される同一センサは、「2つの役割」を実施し、加えて、HR、HRV、RR、およびTEMP等の他のバイタルサインをもたらす、波形を測定することができる。加えて、IVDSは、光学信号の時間依存変化を使用して、IV浸潤を特性評価するために使用され得る、反射光学システム(典型的には、
図1における可撓性の通気性ポリマー基部(構成要素89)内に配置される)を含むことができる。本同一光学信号は、同時に、PRおよびSpO
2の値をもたらすことができる。これらの測定値は、本明細書に説明されるPVPベースのBP測定値と組み合わせられると、IVDSが、潜在的に、典型的には、患者を特性評価するために使用される、全5つのバイタルサイン(HR、RR、TEMP、SpO
2、およびBP)を測定することができることを意味する。
【0229】
電極(すなわち、
図1における構成要素83)が、IVDSの生体インピーダンス(または、代替として、生体リアクタンス)測定のために使用される、信号を感知し、これは、HRおよびRRに関連する特徴を含む、時間依存IMP波形をもたらす。ここでは、IVDSのポリマー基部内の1つの対の電極が、高周波数(例えば、20~100kHz)低振幅(例えば、10~1,000□A)電流を患者の身体の中に注入する。2つの電極によって注入される電流は、180
o位相がずれている。他の対の電極は、後続処理に伴って、注入される電流によって遭遇される抵抗(またはインピーダンス)を示す、電圧を測定する。電圧は、オームの法則を通して、抵抗(またはインピーダンス)に関連する。典型的には、電子モジュール内の生体インピーダンス回路が、IMP波形を測定し、これは、比較的に高周波数特徴(典型的には、□Z(t)と呼ばれる)を特徴とする、AC波形と、比較的に低周波特徴(典型的には、Z0と呼ばれる)を特徴とする、DC波形とに分離される。□Z(t)およびZ0を測定するための本技法は、その内容が参照することによって本明細書に組み込まれる、以下の同時係属中の特許出願、すなわち、2014年9月11日に出願された、「NECK-WORN PHYSIOLOGICAL MONITOR」米国第62/049,279号、2014年2月19日に出願された、「NECKLACE-SHAPED PHYSIOLOGICAL MONITOR」米国第14/184,616号、および2013年12月31日に出願された、「BODY-WORN SENSOR FOR CHARACTERIZING PATIENTS WITH HEART FAILURE」米国第14/145,253号、および「PHYSIOLOGICAL MONITORING SYSTEM FEATURING FLOORMAT AND WIRED HANDHELD SENSOR」に詳細に説明される。
【0230】
患者の腕内の生理学的プロセスは、IVDSの生体インピーダンス測定システムによって感知される、□Z(t)およびZ0波形を変調させる。したがって、これらの波形を処理することは、生理学的プロセスに対応する、パラメータをもたらし得る。例えば、呼吸努力(すなわち、呼吸)は、□Z(t)に影響を及ぼし、一連の低周波起伏(典型的には、5~30起伏/分)を波形上に与える。IVDSの電子機器モジュールは、これらの発振を処理し、RRを決定する。血液は、良好な電気導体であって、したがって、患者の腕内の血流は、心拍動誘発心臓脈波として□Z(t)波形上に露見する。それらは、当技術分野において公知の技法を用いて処理され、HRおよびHRVを決定することができる。
【0231】
腕内の生理学的流体はまた、注入される電流を伝導する。それらは、本領域内に蓄積し(はるかに低速な時間スケールにもかかわらず、IV浸潤を検出するための流体蓄積と同様に)、低周波(すなわち、ゆっくりと変化する)様式において、電極の伝導経路内のインピーダンスに影響を及ぼし得る。Z0波形を処理することは、したがって、それらを検出することができる。典型的には、Z0波形は、約10~50オームの平均値を特徴とし、10オームは、比較的に低インピーダンス、したがって、高流体含有量(例えば、患者が「湿潤」している)を示し、50オームは、比較的に高インピーダンス、したがって、低流体含有量(例えば、患者は、「乾燥」している)を示す。Z0の平均値の時間依存変化は、患者の流体レベルが増加または減少しているかいずれかであることを示し得る。流体レベルの増加は、例えば、鬱血性心不全または腎不全の発症を示し得る。
【0232】
光学信号を測定するために、IVDSは、□=660nmおよび□=908nm領域内の赤色および赤外線光学波長を発生させる、光源、例えば、透過または反射モード幾何学形状において動作する、二重発光LEDと、光検出器(例えば、フォトダイオード)とを含んでもよい。これらの構成要素は、概して、当技術分野において公知のように、IV部位の近位にある、患者の腕またはその指のうちの1つ(例えば、親指)のいずれかから、赤色および赤外線放射線の両方を使用して、PPG波形を測定する。電子機器モジュールは、波形を処理し、SpO2を決定する。そのような測定は、その内容が参照することによって本明細書に組み込まれる、以下の同時係属中の特許出願、すなわち、2014年9月11日に出願された、「NECK-WORN PHYSIOLOGICAL MONITOR」米国第62/049,279号、2014年2月19日に出願された、「NECKLACE-SHAPED PHYSIOLOGICAL MONITOR」米国第14/184,616号、および2013年12月31日に出願された、「BODY- WORN SENSOR FOR CHARACTERIZING PATIENTS WITH HEART FAILURE」米国第14/145,253号にさらに詳細に説明される。一般に、これらの組み込まれる参考文献においてより詳細に解説されるように、SpO2測定の間、デジタルシステムは、交互に、二重発光LED内で赤色および赤外線LEDに給電する。本プロセスは、2つの明確に異なるPPG波形を発生させる。デジタルおよびアナログフィルタの両方を使用して、デジタルシステムは、ACおよびDC成分を赤色(RED(AC)およびRED(DC))および赤外線(IR(AC)およびIR(DC))PPG波形から抽出し、これをデジタルシステムが、次いで、上記に言及される特許出願に説明されるように、処理し、SpO2を決定する。光学信号を向上させるために、IVDSは、埋設された電気導体が、例えば、蛇行パターンで配列される、Kapton(登録商標)フィルム等の薄膜加熱要素を含んでもよい。典型的には、加熱要素の温度は、閉ループ様式において、41~42oCのレベルで調整され、これは、最小限の影響を下層組織に及ぼし、米国食品医薬品局(FDA)によって安全と見なされている。
【0233】
そのような光学システムおよび薄膜加熱要素は、その内容が参照することによって本明細書に組み込まれる、以下の特許出願、すなわち、2018年7月24日に出願された、「PATCH-BASED PHYSIOLOGICAL SENSOR」米国第16/044386号に説明される。
【0234】
図21Aおよび21Bは、
図1に示されるIVDSのバージョンを用いて、臨床研究に参加する対象から測定された、IMPおよびPPG波形を示す、グラフを示す。類似結果が、研究に参加した13名の他の対象からも取得された。ここでは、IVDSは、従来のIV部位の近位の各対象の腕に適用された。対象は、次いで、通常のレートで呼吸し、次いで、その呼吸を保持し、次いで、高速レートで呼吸し、次いで、再び、その呼吸を保持するように命令された。
図21Aは、本プロセスの間に測定されたIMP波形を示す。データから明白であるように、比較的に小心拍動誘発脈波が、測定周期全体を通して存在する。これらは、IV部位の近傍の血流に起因する。加えて(幾分驚くべきことに)、腕から測定されるインピーダンス信号は、呼吸数に非常に敏感であった。これらのデータから、他の対象から収集されたものとともに、HR、HRV、およびRR値が、合理的正確度を伴って計算され得る。重要なこととして、これらの測定のために使用される電極および回路要素は、上記で詳細に説明される、IV浸潤を検出するために使用されるものと同一である。
【0235】
同様に、IVDS内の光学センサは、赤色およびIR放射線の両方を使用して、PPG波形を測定した。典型的には、IR放射線を用いて測定された波形は、比較的に高信号対雑音比を有していた。PPG波形から、PRおよびSpO2値が、上記に説明されるように計算された。上記に説明される電極と同様に、これらの測定のために使用される光学システムは、上記に説明されるように、IV浸潤を検出するために使用されるものと同一である。
【0236】
加えて、PVP波形は、HR、RR、および他の血行動態パラメータを決定するために処理されることができる。これらの測定値は、
図21を参照して説明されるように、IMPおよびPPG波形を用いて行われるものを相殺または改良するために使用されることができる。例えば、PVP波形のFFTを計算することは、HR(F1)およびRR(F0)に対応するピークを特徴とする、周波数ドメインスペクトルをもたらす。F0およびF1と関連付けられる特徴(例えば、その振幅またはエネルギー)は、異なる方法で処理され、流体関連パラメータ、例えば、楔入圧および/または肺動脈圧を推定してもよい。エネルギーのさらなる処理は、次いで、適切な流体関連パラメータをもたらす。そのような処理の実施例は、その内容が参照することによって本明細書にすでに組み込まれている、以下の参考文献に説明される。
【0237】
1)Hocking et al., “Peripheral venous waveform analysis for detecting hemorrhage and iatrogenic volume overload in a porcine model.”, Shock. 2016 Oct;46(4):447-52
【0238】
2) Sileshi et al., “Peripheral venous waveform analysis for detecting early hemorrhage: a pilot study.”, Intensive Care Med. 2015 Jun;41(6):1147-8
【0239】
3)Miles et al., “Peripheral intravenous volume analysis (PIVA) for quantitating volume overload in patients hospitalized with acute decompensated heart failure - a pilot study.”, J Card Fail. 2018 Aug;24(8):525-532
【0240】
4) Hocking et al., “Peripheral i.v. analysis (PIVA) of venous waveforms for volume assessment in patients undergoing haemodialysis.”, Br J Anaesth. 2017 Dec 1;119(6):1135-1140
【0241】
他の実施形態では、IVDSは、患者を蘇生させながら(例えば、敗血症および/または流体過負荷の周期の間)、集合的に、PVP波形によって測定された血行動態パラメータ(例えば、F0、F1、またはそれらのある組み合わせと関連付けられる、エネルギーと相関され得る、楔入圧および血液体積)を、IVDS内の他のセンサによって測定されたもの(例えば、BP、SpO2)とともに処理し、患者の流体ステータスを決定し、流体の送達を事実上認知してもよい。一般に、PVP波形およびIVDSの両方からの情報を使用することによって、臨床医は、命を脅かす条件を特性評価することによって、患者11をより良好に管理し、その蘇生を誘導することに役立てることができる。
【0242】
より具体的実施例として、実施形態では、IVDSによって測定されたBPおよびSpO2の値は、PVP波形から決定された体積ステータスと組み合わせられ、患者の血流および灌流を推定することができる。これらのパラメータの知識は、ひいては、臨床医が蘇生に応じて送達する必要がある、流体の量の推定値を認知することができる。同様に、IVDSによって測定されたBPおよびSpO2は、PVP波形から測定されるF0およびF1エネルギーの比率とともに、それぞれ、患者の灌流のレベルを示す。それらはまた、数学的「インデックス」において組み合わせられ、本条件をより良好に推定することができる。次いで、これらのパラメータまたはインデックスは、患者が、重症人物におけるさらなる蘇生輸液の必要性を評価するための試験である、「受動的脚部挙上」と呼ばれる技法を受けている間、測定されることができる。受動的脚部挙上は、患者の脚部を挙上させる(典型的には、その能動的参加を伴わずに)ことを伴い、これは、重力に血液を脚部から中心器官の中に引動させ、それによって、心臓に利用可能な循環器系体積(典型的には、「心臓前負荷」と呼ばれる)を静脈貯蔵槽の量に応じて約150~300ミリリットル増加させる。IVDSによって測定された前述のパラメータまたはインデックスが、増加する場合、これは、脚部挙上が、患者の中心器官内の灌流を事実上増加させることを示し、それによって、彼らが流体に応答するであろうことを示すことができる。臨床医は、患者に流体のボーラスをIVシステムを通して提供し、次いで、IVDSによって測定されたパラメータまたはインデックスの増加または減少を監視することによって、類似試験を実施することができる。
【0243】
実施形態では、臨床研究からの結果と組み合わせられた、単純線形算出方法が、IVDSによって発生されたデータを集合的に処理する、モデルを開発するために使用されることができる。他の実施形態では、人工知能および/または機械学習を伴うもの等のより高度な算出モデルが、集合的処理のために使用されることができる。
【0244】
7.他の実施形態
他の実施形態では、IMP、PPG、PVP、および運動波形の時間および周波数ドメイン分析が、咳嗽、喘鳴等の呼吸事象を区別し、呼吸1回換気量を測定するために使用されることができる。特に、呼吸1回換気量は、IMPまたはBR波形(
図21Aに示されるもの等)内の「呼吸脈波」の真下の面積を積分し、次いで、これと所定の較正を比較することによって決定される。そのような事象は、IVDSからの情報と組み合わせられ、患者代償不全を予測することに役立ち得る。他の実施形態では、IVDSは、バイタルサインおよび血行動態パラメータを決定するために、上記に説明されるアルゴリズムの変形例を使用してもよい。例えば、IMPおよびPPG波形内の脈波の信号対雑音比を改良するために、パッチセンサ上で動作する、埋設されたファームウェアが、「ビートスタッキング」と呼ばれる、信号処理技法を動作させることができる。ビートスタッキングを用いることで、例えば、平均脈波が、IMP波形からの複数の(例えば、7つの)連続脈波から計算され、これは、境界され、次いで、ともに平均される。IMP波形のAC成分の導関数が、次いで、7-サンプル窓にわたって、アンサンブル平均として計算され、次いで、上記に説明されるように使用される。
【0245】
他の実施形態も、本発明の範囲内である。例えば、IVDS内のセンサを用いて測定された信号の他の成分、特に、PVP波形を測定するために使用されるものが、患者を評価するために分析されることができる。
【0246】
実施形態では、例えば、動脈脈圧(本明細書では「PP」)が、上記に説明されるように、SYSおよびDIAから計算され、次いで、分析され、患者の体積ステータスの変化を推定することができ、血液体積が小さいほど、より低い動脈脈圧は低くなり得、血液体積が大きいほど、動脈脈圧は上昇し得る。加えて、静脈系は、血液体積の60~70%を貯蔵し、体積貯蔵槽としての役割を果たし、圧力の最小限変化を伴って、体積の大変化に適応し得る、高度に応従性の低圧システムである。PVP波形の振幅および形状は、最近の研究において、血管内体積の変化に敏感であることが実証されている。ヒトおよびブタの両方における血管内体積ステータスの変化が、動脈BP、HR、および肺動脈拡張期圧力の変化前に、PVP波形の変化につながり、PVP波形が、標準的バイタルサインより血管内体積の変化により敏感であることを示唆した。
【0247】
所与の心周期の間の静脈区画のPVP波形は、その静脈区画内で生じる血液体積変化および静脈区画のコンプライアンスの直接結果である。静脈区画のコンプライアンスは、所与の心周期の間、一定であることが予期され、心周期の持続時間にわたる対応するコンプライアンス値は、所与の静脈区画に関する血液流入および流出によって決定される。したがって、静脈区画のPVPの間、所与の心周期の変化は、所与の心周期の間に生じる、静脈区画内の血液体積の変化の結果である(すなわち、静脈区画の内外に流動する血液から生じる体積変化への正味影響)。解剖学的考慮点および生理学的モデルに基づく引用される研究の結果に基づいて、末梢静脈区画内で検出されたPVP波形の変化は、各心周期の過程にわたる区画の血液体積の正味変化に起因する。
【0248】
静脈区画内の周期的血液体積変化(および対応する周期的圧力変化)は、静脈区画の内外の流動の心臓誘発周期的変化から生じるため、静脈区画の血液体積変化は、流入圧力、流出圧力、および管腔内圧の相互作用から生じる。したがって、IVDSを用いて測定されるようなPVP波形からのこれらのパラメータの分析は、患者の血行動態状態に関する情報をもたらし得る。
【0249】
静脈還流への下流抵抗が、増加すると(例えば、心房収縮の間または三尖弁が閉鎖するとき)、流出圧力は、増加するであろう。これは、所与の静脈区画から隣接する下流静脈区画の中への血流の低減(いったん近位静脈区画弁が閉鎖すると、最終的停止)を引き起こす。同時に、隣接する上流区画から静脈区画の中への血流は、継続するが、また、減少(いったん近位静脈区画弁が閉鎖すると、最終的に停止)するであろう。これらの2つの作用の正味影響は、(PVPセンサが位置する)静脈区画内の血液体積を増加させ、その壁を外向きに膨張させ、管腔内圧を増加させるであろう(PVP波形の立ち上がりに対応する)。静脈区画内のピーク管腔内圧は、圧力が流出圧力を上回る状態になる直前に生じるであろう。
【0250】
対照的に、静脈還流に対する下流抵抗が、減少すると(例えば、心房弛緩の間または三尖弁が開放するとき)、流出圧力は、減少するであろう。これは、所与の静脈区画から隣接する下流静脈区画の中への血流の増加(いったん近位静脈区画弁が閉鎖すると、最終的停止)を引き起こす。同時に、隣接する上流区画から静脈区画の中への血流は、増加し始める(いったん近位静脈区画弁が閉鎖すると、最終的に停止)であろう。これらの2つの作用の正味影響は、(PVPセンサが位置する)静脈区画内の血液体積を減少させ、その壁が反跳し、管腔内圧が減少することを可能にするであろう(PVP波形の立ち下がりに対応する)。静脈区画管腔内圧最下点は、管腔内圧が流出圧力未満状態になる直前に生じるであろう。
【0251】
要するに、静脈区画から測定されるPVP波形は、i)心房体積、故に、心房圧を改変し、ひいては、静脈還流(すなわち、所与の末梢静脈区画のための静脈流出量)を決定付ける、右心のサイクル、ii)隣接する上流静脈区画から隣接する下流静脈区画の中への血流(すなわち、所与の末梢静脈区画のための静脈流入量)、およびiii)静脈緊張度の変化によって影響され得る、その静脈区画内の静脈壁のコンプライアンスに大きく依存する。全ての組み合わせは、PVP波形の振幅および形状を定義する。
【0252】
循環血液量減少(例えば、血液損失、脱水)は、PVP波形の振幅を低減させることが示されている。これらの所見に関する潜在的機構は、低動脈血流を含み、毛細管に給送する血圧は、より低い静脈流入量および圧力につながり、より低速および/または低減された静脈充填を引き起こし、より漸次的上り傾きおよび/またはより低いピーク静脈圧を引き起こし得る。最初に、循環血液量減少は、静脈流入(上流)圧力を静脈流出(下流)圧力より降下させ得る。これは、静脈区画から外への血流に関して、低減された圧力勾配に起因して、PVP波形のより漸次的下り傾きにつながり得る。循環血液量減少に応答した血管収縮は、血管収縮が静脈より動脈に影響を及ぼす場合、本影響を悪化させる場合がある。
【0253】
より低い静脈流入(上流)圧力はまた、より低速の静脈充填率が、右心房が、弛緩するか、または三尖弁が、開放するかのいずれかが生じ、下流静脈が空になり始めることを可能にする前に、区画が最大潜在的管腔内圧/膨張に到達することを可能にしない場合、PVPのより漸次的上り傾きにつながり得る。
【0254】
末梢静脈コンパートメントから中心静脈コンパートメントまでの血流が、低下するにつれて、低減された下流静脈圧は、末梢静脈区画内で達成され得る最大圧力変化が低減されるように、流出圧力を降下させ得る。
【0255】
絶対血液体積を変化させなくても、血管運動神経緊張度を減少させることは、絶対循環血液量減少のものに類似するいくつかの血行動態変化を伴って、循環血液量減少をシミュレートする(例えば、静脈還流を発生させる、応力がかけられた循環器系体積を低減させることによって低減された中心圧力、低減された静脈流入圧力につながり得る、低減された平均動脈圧および潜在的に低減された心拍出量、および低減された静脈管腔内圧)。より低い静脈緊張度はまた、より多くの体積が、脈管直径が増加されると、静脈区画の内圧を増加させるために要求されるため、PVP波形のより漸次的立ち上がりおよび立ち下がりにつながり得る。同様に、増加された静脈緊張度は、真逆の影響、すなわち、静脈区画PVP波形のより急峻な立ち上がりおよび立ち下がりにつながり得る。
【0256】
要するに、PVP波形の振幅および形状は、主に、右心の周期的収縮-弛緩によって駆動される、下流または中心静脈体積/圧力変化における変化の結果として、血液流入および血液流出の相互作用から生じる、静脈区画(PVPセンサが位置する)の体積の変化を反映させる。測定されたPVP波形は、絶対血液体積より近似的に有効血管内体積(「応力がかけられた体積」または静脈還流および心拍出量に寄与する体積)を反映させる可能性が高い。
【0257】
他の実施形態も、本発明の範囲内である。例えば、上記に説明されるもの以外の(またはそれに加え)信号処理技法も、PVP波形を処理し、PVP-ACおよびPVP-DC信号成分、特に、PVP-AC成分の信号対雑音比を単離および改良することができる。1つのそのような信号処理技法は、「ウェーブレット分解」と称され、ウェーブレット変換に基づく前述の技法に関連する。ウェーブレット分解アルゴリズムは、それぞれ、異なる周波数(通常、相互からオクターブ)で生じる、「ウェーブレット」の集合を用いて、PVP-AC信号を近似させる。アルゴリズムは、所望の信号内に理論的に存在する、ある明確に定義された周波数のウェーブレットのみを選択し、次いで、これらを再び組み合わせ、PVP-AC信号を近似させる。ウェーブレット分解は、多くの場合、帯域通過および低域通過フィルタにおいて一般に使用される、無限インパルス応答(本明細書では「IIR」)フィルタ等の従来の信号処理技法に優る様式において、心臓および呼吸脈波を示す、再構成されたPVP-AC信号をもたらすことができる。加えて、ウェーブレット分解は、典型的には、特に、ポンプ活動に起因する圧力変動、すなわち、「ポンプ雑音」が、存在し、PVP-AC信号と比較して、類似周波数成分を特徴するとき、PVP-AC脈波を単離する際に効果的である。
【0258】
PVP-AC信号の信号対雑音比をさらに増加させることに照準を当てる、他の実施形態では、静脈カテーテルを変圧器に結合するために使用される管類が、最適化されてもよい。例えば、静脈カテーテルにおいて使用される典型的には医療グレードの管類の硬度(例えば、堅度)は、約50~55ショアAである。従来の動脈ラインのために使用される管類の硬度と一貫するように、これを約25%増加させることは、それらが、最小限の損失を伴って、管類内で事実上伝搬し、より容易に検出されるように、高周波数PVP-AC脈波の伝導性を増加させる。関連実施形態では、管類内の「流体柱」が、加圧され(例えば、管類に接続される、生理食塩水で充填される外部の加圧されたIVバッグを使用して)、PVP-AC信号の管の伝導性をさらに増加させてもよい。
【0259】
PVP信号を分析する1つの目的は、患者の体積ステータス、より具体的には、患者が流体に応答するであろう方法を推定することである。より具体的には、患者が、1回拍出量(例えば、流量)対前負荷(例えば、血液体積)をプロットする、Frank-Starling曲線上で「低下」する場所を決定することが有用であり得る。曲線上で比較的に「低」である、患者は、流体に優先的に応答する可能性が高く、その1回拍出量が、体積の増加に伴って増加し、これが、ひいては、流体を増加させることによって促進され得ることを意味するであろう。逆に言えば、曲線上で比較的に「高」である、患者は、体積が増加されると、流動の増加を殆ど示し得ない。したがって、増加された体積は、患者を鬱血性心不全等の有害な鬱血性状態にもたらし得る。
【0260】
この目的を達成するために、PVP-AC信号の分析は、患者が注入される流体に対して行うであろう応答性を示す、計測値をもたらし得る。これは、例えば、PVP-AC信号からの心臓および呼吸成分の分析を含み得、信号は、最初に、上記に説明されるように、ウェーブレット分解を使用して処理され、次いで、結果として生じる信号をFFTまたはIIRフィルタに基づくアプローチを用いて処理し、心臓および呼吸成分の両方の相対的大きさを評価する。典型的には、例えば、患者は、心臓成分の大きさが呼吸成分と比較して比較的に小さいとき、流体に応答するであろう(例えば、そのSVは、続いて、増加するであろう)。そのようなデータ(典型的には、臨床研究の間に収集される)を使用することによって、本発明の実施形態は、流体に対する患者の応答度を示す、単純「インデックス」を特徴としてもよい。そのようなインデックスは、例えば、数値(例えば、1~10のスケール)、比色分析(例えば、流体を必要とする患者を示すための「赤色」と、流体を必要としない患者を示すための「緑色」とを使用する)、または何らか均等物であってもよい。
【0261】
さらに他の実施形態では、患者の流体体積および/または応答度を推定するためのインデックスまたは他の好適な計測値は、PVP信号の平均値(本明細書では「PVP-平均」)に基づいてもよく、これは、PVP-DCに同等である。PVP-平均は、PVP信号の平均圧力を示す。これは、常時、患者から提示され、主に、患者の心臓または呼吸作用に関連する発振成分を欠いているため、処理が比較的に容易であるという利点を有する。本明細書に説明されるシステムを用いた臨床研究は、PVP-平均が、例えば、下半身負圧(本明細書では「LBNP」)臨床プロトコルを用いて評価されるとき、患者の流体に対する応答度を追跡することを示す。LBNPは、出血の代用としての役割を果たす、実験手法であって、LBNPの間、対象の下肢は、体系的に変化する真空に暴露される。本プロセスは、出血に類似する様式において、流体を対象の胴体から引動させる。真空が、解放されると、血液および他の流体は、対象の胴体の中に急速に戻り、これは、血液を患者に戻るように輸血することに類似する。本明細書に説明されるシステムを使用して、健康な対象に適用されるLBNP手法の驚くべき結果は、PVP-平均が、PVP-ACの心臓成分とともに、LBNP真空の増加に伴って体系的に増加され、次いで、いったん真空が解放されると、正常値に急速に戻ることであった。したがって、PVP-平均自体を含む、または代替として、PVP-ACから抽出される成分と組み合わせられる、インデックスが、本発明に従って、患者の流体に対する応答度を示す、インデックスを提供するために使用されることができる。
【0262】
本発明のさらに別の側面では、「信号品質インデックス」(本明細書では「SQI」)が、上記に説明されるパラメータ(例えば、PVP-ACおよびその中の信号成分、すなわち、PVP-平均)と併用され、同等のインデックスを発生させてもよい。SQIは、典型的には、PVP-AC信号内の心臓成分の分布率を示す、計測値であって、低SQIは、低心臓成分量を示す一方、高SQIは、高心臓成分量を示す。したがって、低SQI値は、典型的には、流体を必要とする患者を示す一方、高SQI値は、典型的には、適正な流体を伴う患者を示す。
【0263】
本発明のさらに他の実施形態では、本明細書に説明されるPVP監視構成要素は、他の患者装着型センサに結合されてもよい。例えば、患者は、静脈カテーテルを定位置に保持し、同時に、静脈から静脈穿刺部位の近傍の第3の空間の中へのIV「浸潤」によって送達される流体または投薬療法物の程度を監視する、包帯または接着性ラップを含んでもよい。包帯によって測定された信号は、本明細書に説明されるように、PVP-AC信号をより良好に処理するために使用されてもよい。逆に言えば、PVP-AC信号の存在は、静脈カテーテルが、実際に、患者の静脈内の適切に存在することを示し、したがって、患者に送達される流体および/または投薬療法物がその第3の空間の中に浸潤しているかどうかを決定するために、包帯によって発生された信号と併用されてもよい。
【0264】
本発明のこれらおよび他の実施形態は、以下の請求項の範囲内であると見なされる。
【国際調査報告】