(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-01
(54)【発明の名称】エボラウイルスワクチンに関連する組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/40 20060101AFI20230825BHJP
C07K 14/08 20060101ALI20230825BHJP
A61K 39/12 20060101ALI20230825BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20230825BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20230825BHJP
【FI】
C12N15/40 ZNA
C07K14/08
A61K39/12
A61P37/04
A61P31/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023509430
(86)(22)【出願日】2021-08-09
(85)【翻訳文提出日】2023-03-15
(86)【国際出願番号】 US2021045178
(87)【国際公開番号】W WO2022035739
(87)【国際公開日】2022-02-17
(32)【優先日】2020-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】501244222
【氏名又は名称】ザ スクリプス リサーチ インスティテュート
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100172683
【氏名又は名称】綾 聡平
(74)【代理人】
【識別番号】100219265
【氏名又は名称】鈴木 崇大
(74)【代理人】
【識別番号】100203208
【氏名又は名称】小笠原 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】ヒー,リンリン
(72)【発明者】
【氏名】ジュ,ジアン
(72)【発明者】
【氏名】チャウダリー,アンシュル
(72)【発明者】
【氏名】ウィルソン,イアン
【テーマコード(参考)】
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C085AA03
4C085BA51
4C085DD62
4C085EE01
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA01
4H045DA86
4H045EA31
4H045FA72
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、新規に設計されたエボラウイルスGPタンパク質及びポリペプチド、並びに設計されたタンパク質を提示する足場の形成されたワクチン組成物を提供する。本発明はまた、様々な治療用途、例えば、エボラウイルス感染症を予防又は治療するために、そのような人工のエボラウイルスのGPタンパク質及びワクチン組成物を使用する方法を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人工のエボラウイルスの糖タンパク質(GP)タンパク質であって、(a)ヘプタッドリピート2(HR2)中の残基W615がより小さい疎水性残基で置換され、さらに(b)ヘプタッドリピート1Cセグメント(HR1
C)中に1つ以上のプロリン置換を含み、アミノ酸の番号付けが、UniProt ID Q05320(配列番号1)を有するザイールエボラウイルスのGPの配列に沿っている、タンパク質。
【請求項2】
エボラウイルスが、ザイールエボラウイルス(EBOV)、スーダンウイルス(SUDV)、タイフォレストウイルス(TAFV)、ブンディブギョウイルス(BDBV)又はレストンエボラウイルス(RESTV)である、
請求項1に記載の人工のエボラウイルスGPタンパク質。
【請求項3】
残基W615がL、A、V、I又はFで置換されている、
請求項1に記載の人工のエボラウイルスのGPタンパク質。
【請求項4】
前記プロリン置換に、T577P又はL579Pが含まれる、
請求項1に記載の人工のエボラウイルスのGPタンパク質。
【請求項5】
その膜近位外部領域(MPER)のC末端が切り詰められている、
請求項1に記載の人工のエボラウイルスのGPタンパク質。
【請求項6】
(a)GP1サブユニットからムチン様ドメイン(MLD)が欠失しており、さらに/又は(b)GP2サブユニットからMPERが欠失している、
請求項5に記載の人工のエボラウイルスのGPタンパク質。
【請求項7】
人工のエボラウイルスの糖タンパク質(GP)タンパク質であって、
(a)GP1サブユニットからムチン様ドメイン(MLD)が欠失しており、さらにGP2サブユニットから膜近位外部領域(MPER)が欠失している、エボラウイルスの切り詰められた可溶性のGPと、
(b)ヘプタッドリピート2(HR2)中の残基W615がより小さい疎水性残基で置換されており、アミノ酸の番号付けが、UniProt ID Q05320(配列番号1)に対応するザイールエボラウイルスのGPの配列に沿っている、タンパク質。
【請求項8】
(i)C末端におけるHR2の伸長、(ii)ヘプタッドリピート1Cセグメント(HR1
C)中に1つ以上のプロリン置換及び(iii)GPの間での1つ以上の人工のジスルフィド結合から選択される1つ以上の改変をさらに含む、
請求項7に記載の人工のエボラウイルスのGPタンパク質。
【請求項9】
エボラウイルスが、ザイールエボラウイルス(EBOV)、スーダンウイルス(SUDV)、タイフォレストウイルス(TAFV)、ブンディブギョウイルス(BDBV)又はレストンエボラウイルス(RESTV)である、
請求項7に記載の人工のエボラウイルスのGPタンパク質。
【請求項10】
前記切り詰められた可溶性のGPが、配列番号2若しくは配列番号3又はそれらの保存的に改変された若しくはそれらと実質的に同一の変異形を含む、
請求項7に記載の人工のエボラウイルスのGPタンパク質。
【請求項11】
N末端リーダー配列をさらに含む、
請求項7に記載の人工のエボラウイルスのGPタンパク質。
【請求項12】
前記リーダー配列が、配列番号41又はその保存的に改変された変異形を含む、
請求項11に記載の人工のエボラウイルスのGPタンパク質。
【請求項13】
残基W615がL、A、V、I又はFで置換されている、
請求項7に記載の人工のエボラウイルスのGPタンパク質。
【請求項14】
配列番号4の配列、その保存的に改変された変異形又はそれと実質的に同一の配列を含む、
請求項7に記載の人工のエボラウイルスのGPタンパク質。
【請求項15】
C末端におけるHR2の伸長をさらに含む、
請求項7に記載の人工のエボラウイルスのGPタンパク質。
【請求項16】
HR2の伸長が、(a)前記エボラウイルスの糖タンパク質の隣接膜近位外部領域(MPER)のN末端断片でHR2のC末端を伸長すること又は(b)HR2のC末端断片をより長いロイシンジッパーモチーフで置換することを含む、
請求項15に記載の人工のエボラウイルスのGPタンパク質。
【請求項17】
HR2の伸長が、(a)MPER中の残基632位から残基637位までHR2のC末端を伸長させること(すなわち残基KTLPD(配列番号32)の付加)、(b)MPER中の残基632位から残基643位までHR2のC末端を伸長させること(すなわち残基KTLPDQGDNDN(配列番号33)の付加)又は(c)残基617位から632位を(配列番号34)で表されるGCN4ロイシンジッパー配列で置換することを含む、
請求項15に記載の人工のエボラウイルスのGPタンパク質。
【請求項18】
W615の置換が、W615Lの置換又はP612G/W615F二重変異を含む、
請求項15に記載の人工のエボラウイルスのGPタンパク質。
【請求項19】
(a)W615Lの置換及び(b)エボラウイルスのGPのMPER中の残基632位から残基637位までのHR2のC末端の伸長を含む、
請求項15に記載の人工のエボラウイルスのGPタンパク質。
【請求項20】
(a)HR2におけるP612G/W615F二重変異及び(b)配列番号34に表されるGCN4ロイシンジッパー配列による残基617位から632位の置換を含む、
請求項18に記載の人工のエボラウイルスのGPタンパク質。
【請求項21】
配列番号5から8のいずれか1つに記載のアミノ酸配列、その保存的に改変された変異形又はそれと実質的に同一の配列を含む、
請求項15に記載の人工のエボラウイルスのGPタンパク質。
【請求項22】
C末端の三量体化モチーフをさらに含む、
請求項15に記載の人工のエボラウイルスのGPタンパク質。
【請求項23】
C末端の三量体化モチーフが、配列番号29若しくは配列番号30又はそれらの保存的に改変された変異形若しくはそれらと実質的に同一の配列を含む、
請求項22に記載の人工のエボラウイルスのGPタンパク質。
【請求項24】
HR1
Cセグメントに1つ以上のプロリン置換をさらに含む、
請求項7に記載の人工のエボラウイルスのGPタンパク質。
【請求項25】
前記プロリン置換に、T577P又はL579Pが含まれる、
請求項24に記載の人工のエボラウイルスのGPタンパク質。
【請求項26】
W615がL、A、V、I又はFで置換されている、
請求項24に記載の人工のエボラウイルスのGPタンパク質。
【請求項27】
配列番号9から16のいずれか1つに記載のアミノ酸配列、それらの保存的に改変された変異形又はそれらと実質的に同一の配列を含む、
請求項24に記載の人工のエボラウイルスのGPタンパク質。
【請求項28】
HR2のC末端の伸長をさらに含む、
請求項24に記載の人工のエボラウイルスのGPタンパク質。
【請求項29】
HR2のC末端の伸長が、MPER中の残基632位から残基637位までの伸長である、
請求項28に記載の人工のエボラウイルスのGPタンパク質。
【請求項30】
配列番号17及び20のいずれか1つに記載のアミノ酸配列、それらの保存的に改変された変異形又はそれらと実質的に同一の配列を含む、
請求項28に記載の人工のエボラウイルスのGPタンパク質。
【請求項31】
C末端の三量体化モチーフをさらに含む、
請求項28に記載の人工のエボラウイルスのGPタンパク質。
【請求項32】
C末端の三量体化モチーフが、配列番号29若しくは配列番号30又はそれらの保存的に改変された変異形若しくはそれらと実質的に同一の配列を含む、
請求項31に記載の人工のエボラウイルスのGPタンパク質。
【請求項33】
(a)W615Lの置換と、(b)T577P又はL579Pのプロリン置換と、(c)MPER中の残基632位から残基637位までのHR2の伸長とを有する、
請求項32に記載の人工のエボラウイルスのGPタンパク質。
【請求項34】
配列番号18、19、21及び22のいずれか1つに記載のアミノ酸配列、それらの保存的に改変された変異形又はそれらと実質的に同一の配列を含む、
請求項31に記載の人工のエボラウイルスのGPタンパク質。
【請求項35】
2つの隣接するGPプロトマー間に人工のジスルフィド結合をさらに有する、
請求項7に記載の人工のエボラウイルスのGPタンパク質。
【請求項36】
前記人工のジスルフィド結合が、残基G91/A575(SS2)、F153/Y534(SS1)、T520/A575(SS3)、G157/I532(SS4)、D522/A575(SS5)又はK56/G599(SS6)の間で人工的に形成される、
請求項35に記載の人工のエボラウイルスのGPタンパク質。
【請求項37】
配列番号23から28のいずれか1つに記載のアミノ酸配列、それらの保存的に改変された変異形又はそれらと実質的に同一の配列を含む、
請求項35に記載の人工のエボラウイルスのGPタンパク質。
【請求項38】
請求項1又は請求項7に記載の人工のエボラウイルスのGPタンパク質をコードするポリヌクレオチド。
【請求項39】
前記人工のエボラウイルスのGPタンパク質が、N末端にリーダーペプチド配列をさらに含む、
請求項38に記載のポリヌクレオチド。
【請求項40】
請求項7に記載の人工のエボラウイルスのGPタンパク質及び薬学的に許容される担体を含む、
医薬組成物。
【請求項41】
請求項7に記載の人工のエボラウイルスのGPタンパク質を含み、これが自己組織化するナノ粒子の表面上に提示される、
ワクチン組成物。
【請求項42】
請求項7に記載の人工のエボラウイルスのGPタンパク質のC末端が、前記自己組織化するナノ粒子のサブユニットのN末端に融合している、
請求項41に記載のワクチン組成物。
【請求項43】
前記人工のエボラウイルスのGPタンパク質のC末端が、リンカー配列GGGGS(配列番号43)又は(GGGGS)
2(配列番号42)を介して自己組織化するナノ粒子のサブユニットに融合されている、
請求項42に記載のワクチン組成物。
【請求項44】
請求項7に記載の人工のエボラウイルスのGPタンパク質が、配列番号4から28のいずれか1つに記載のアミノ酸配列、それらの保存的に改変された変異形又はそれらと実質的に同一の配列を含む、
請求項41に記載のワクチン組成物。
【請求項45】
前記自己組織化するナノ粒子のサブユニットが、配列番号36(E2p)、配列番号37(I3-01v9)若しくは配列番号38(フェリチン)に示されるポリペプチド、それらの保存的に改変された変異形又はそれらと実質的に同一の配列を含む、
請求項41に記載のワクチン組成物。
【請求項46】
NPのサブユニットのC末端に融合されたロッキングドメイン(LD)をさらに含む、
請求項41に記載のワクチン組成物。
【請求項47】
前記LDが、配列番号39又は40、保存的に改変された変異形又はそれらと実質的に同一の配列を含む、
請求項46に記載のワクチン組成物。
【請求項48】
前記ロッキングドメインのC末端に融合されたT細胞エピトープをさらに含む、
請求項46に記載のワクチン組成物。
【請求項49】
前記T細胞エピトープが、配列番号31、その保存的に改変された変異形又はそれらと実質的に同一の配列を含む、
請求項48に記載のワクチン組成物。
【請求項50】
(1)N末端からC末端に向かって、
(a)人工のエボラウイルスのGPタンパク質、リンカー配列G
4S(配列番号43)、ナノ粒子配列であるフェリチン、
(b)人工のエボラウイルスのGPタンパク質、リンカー配列G
4S(配列番号43)、ナノ粒子配列であるE2p、若しくは
(c)人工のエボラウイルスのGPタンパク質、リンカー配列(G
4S)
2(配列番号42)、ナノ粒子配列I3-01v9、
を含むポリペプチド配列;又は
(2)前記ポリペプチド配列の保存的に改変された変異形、
を有し;ここで
前記人工のエボラウイルスのGPタンパク質は、(a)W615Lの置換と、(b)T577Pのプロリン置換と、(c)MPER中の残基632位から残基637位までのHR2の伸長とを有する、
請求項41に記載のワクチン組成物。
【請求項51】
前記ナノ粒子のサブユニットの配列のC末端に融合されたロッキングドメイン及び/又はT細胞エピトープをさらに含む、
請求項50に記載のワクチン組成物。
【請求項52】
(1)N末端からC末端に向かって、
(a)配列番号17に示される人工のエボラウイルスのGPタンパク質、配列番号36(E2p)に示されるナノ粒子サブユニット配列、配列番号39に示されるロッキングドメイン(LD4)及び配列番号31に示されるT細胞エピトープ(PADRE)、又は
(b)配列番号17に示される人工のエボラウイルスのGPタンパク質、配列番号37に示されるナノ粒子配列(I3-01v9)、配列番号40に示されるロッキングドメイン(LD7)、
を含むポリペプチド配列;又は
(2)前記ポリペプチド配列の保存的に改変された変異形、
を有する、
請求項51に記載のワクチン組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の参照 本特許出願は、米国仮特許出願第63/063,530号(2020年8月10日出願;現在係属中)に対する優先権の利益を主張する。優先権出願の完全な開示は、その全体があらゆる目的のために、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
政府支援の説明 本発明は、国立衛生研究所によって与えられたAI129698及びAI123861の下で政府の支援を受けてなされた。米国政府は、本発明においてある種の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
ザイールエボラウイルス(Zaire Ebola virus,EBOV)やマールブルグウイルス(Marburg virus)などのフィロウイルスは、ヒトやヒト以外の霊長類(NHPs)に致死的な出血熱を引き起こすことがある。ウイルスの糖タンパク質、GP、は、付着及び膜融合を開始することによって細胞侵入を媒介する。ヒト生存者由来のGP結合中和抗体(NAb)の構造から、現在までに知られている全てのNAbエピトープをGPが占めており、ワクチン設計のための唯一の標的であることが実証された。HIV-1のエンベロープの糖タンパク質(Env)と同様に、フィロウイルスのGPは準安定性であり、また様々な細胞株において発現された時には非機能的形態となる。
【0004】
EBOV及びマールブルグウイルス(MARV)などの他のフィロウイルスのNAbを同定し、特性を分析するために、永続的なキャンペーンが行われている。結果として、NAbの大規模なパネルが、ヒト生存者、ワクチン接種されたヒト及び免疫された動物から抽出された。結晶構造解析及び電子顕微鏡検査(EM)により、EBOV GP上の受攻性のある部位が複数個明らかになった。171個のモノクローナル抗体(mAb)を対象にした最近の研究では8つのエピトープクラスが定義されたが、そのうちの6つは、広く中和する抗体(broadly neutralizing antibodies,bNAb)によって認識され得る。組換えウイルス様粒子(VLP)は動物においてEBOVからの攻撃に対して防御をできるが、製造の困難さはヒトワクチンとしてのそれらのさらなる開発を妨げている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
フィロウイルスに対する医療レジメンの開発において最近の進歩はあるが、エボラウイルスによって引き起こされるヒト感染及び死亡を治療及び予防するためのより効果的な手段が、当技術分野において強く必要とされている。本発明は、当技術分野におけるこれに対するものであり、また他の満たされていない需要に応えるものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様では、本発明は人工の((遺伝子)操作された、engineered)又は再設計されたエボラウイルスの糖タンパク質(GP)の配列を提供する。野生型エボラウイルスのGPの配列と比較して、人工の配列は、(a)ヘプタッドリピート2(HR2)中の残基W615に対する比較的小さな疎水性残基による置換及び(b)ヘプタッドリピート1Cセグメント(HR1C)中での1つ又は複数のプロリン置換を含む。アミノ酸の番号付けは、UniProt ID Q05320(配列番号1)によって同定される外部ドメインの配列を有するザイールエボラウイルスのGPの配列に基づく。様々な実施形態において、人工のエボラウイルスのGPの配列は、ザイールエボラウイルス(EBOV)、スーダンウイルス(SUDV)、タイフォレストウイルス(Tai forest virus,TAFV)、ブンディブギ
ョウイルス(Bundibugyo virus,BDBV)又はレストンエボラウイルス(Reston Ebolavirus,RESTV)の野生型のGPの配列を改変したものでよく、またこれらから派生したものでもよい。
【0007】
いくつかの実施形態では人工のエボラウイルスのGPの配列中の残基W615が残基L、A、V、I又はFで置換され得る。いくつかの実施形態ではHR1C中のプロリン置換がT577P及び/又はL579Pを含む。いくつかの実施形態では、人工のエボラウイルスのGPの配列が膜近位外部領域(membrane proximal external region,MPER)のC末端が切り詰められている(truncation)。これらの実施形態のいくつかにおいて、人工のエボラウイルスのGPの配列には、(a)GP1サブユニットからのムチン様ドメイン(MLD)の欠失及び/又は(b)GP2サブユニットからのMPERの欠失があってもよい。
【0008】
別の態様において、本発明は、人工のエボラウイルスのGPの配列であって(a)エボラウイルスの切り詰められた可溶性のGPであって、GP1サブユニットからのMLDの欠失と、GP2サブユニットからのMPERの欠失と、(b)HR2及びHR1領域における1つ又は複数の改変と、を含むものを提供する。様々な実施形態において、HR2及びHR1領域におけるさらなる改変として、(i)ヘプタッドリピート2(HR2)のW615に対する比較的小さい疎水性残基による置換と、(ii)C末端におけるHR2の伸長と、(iii)ヘプタッドリピート1Cセグメント(HR1C)における1つ又は複数のプロリン置換と、(iv)1つ又は複数の人工のGPの間でのジスルフィド結合とがあってもよい。再び、アミノ酸の番号付けは、UniProt ID Q05320(配列番号1)を有するザイールエボラウイルスのGPの配列に基づく。様々な実施形態において、これらの人工のEbolavirus GP配列は、ザイールエボラウイルス(EBOV)、スーダンウイルス(SUDV)、タイフォレストウイルス(TAFV)、ブンディブギョウイルス(BDBV)又はレストンエボラウイルス(RESTV)から得られる。いくつかの人工のエボラウイルスのGPの配列は、配列番号2若しくは配列番号3に示される切り詰められた可溶性のGPの配列又はそれらの保存的に改変された若しくは実質的に同一の変異形に基づく。いくつかの実施形態において、人工のGPの配列は、N末端リーダー配列を有し得る。例として、N末端リーダー配列は、配列番号41又は保存的に改変された変異形を含み得る。
【0009】
いくつかの人工の可溶性のエボラウイルスのGPの配列は、残基W615の置換を含む。これらの実施形態のいくつかにおいて、残基W615はL、A、V、I又はFで置換され得る。これらの人工のエボラウイルスのGPタンパク質のいくつかは配列番号4に示されるアミノ酸配列、保存的に改変された変異形又はそれらと実質的に同一の配列を有する。いくつかの実施形態では、人工の可溶性のエボラウイルスのGPタンパク質のC末端においてHR2が伸長していてもよい。これらの実施形態のいくつかにおいて、HR2の伸長は、(a)エボラウイルスの糖タンパク質の隣接するMPERのN末端断片でHR2のC末端を伸長させること又は(b)HR2のC末端断片をより長いロイシンジッパーモチーフで置換することであり得る。例として、人工の可溶性のエボラウイルスのGPタンパク質におけるHR2の伸長は、(a)MPERにおける残基632位から残基637位に至るHR2のC末端の伸長、すなわち残基KTLPD(配列番号32)の付加、(b)MPERにおける残基632位から残基643位までのHR2のC末端の伸長、すなわち残基KTLPDQGDN(配列番号33)の付加又は(c)配列番号34に示されるGCN4ロイシンジッパー配列による残基617から632位の置換を含み得る。
【0010】
本発明のいくつかの人工の可溶性のエボラウイルスのGPの配列は、上記のHR2の伸長及びHR2におけるW615の置換の両方を含む。これらの実施形態のいくつかにおいて、W615の置換は、W615L又はP612G/W615F二重変異であり得る。いくつかの態様において、人工のGPの配列は、(a)W615Lの置換及び(b)エボラウイルスのGPのMPERにおける残基632位から残基637位に至るHR2のC末端の伸長を含む。いくつかの他の実施形態では、人工のGPの配列が(a)HR2におけるP612G/W615F二重変異及び(b)配列番号34に示されるGCN4ロイシンジッパー配列による残基617から632位の置換を含む。いくつかの特定の人工の可溶性のエボラウイルスのGPの配列は、配列番号5から8のいずれか1つに示されるアミノ酸配列、保存的に改変された変異形又はそれらと実質的に同一の配列を含む。
【0011】
HR2の伸長及び/又はW612の置換に加えて、いくつかの実施形態における人工のGPの配列は、C末端の三量体化モチーフも有していてもよい。これらの実施形態のいくつかにおいて、C末端の三量体化モチーフは、配列番号29若しくは配列番号30又はその保存的に改変された変異形若しくは実質的に同一の配列を含み得る。W612の置換に加えて、いくつかの実施形態では、人工のGPの配列がHR1Cセグメント中に1つ又は複数のプロリン置換を含むこともできる。HR1C中の任意の残基をプロリン残基で置き換えることができる。これらの実施形態のいくつかにおいて、プロリン置換は、T577P又はL579Pを含む。HR2におけるW612の置換及びHR1C におけるプロリン置換を有する人工のエボラウイルスのGPの配列のいくつかの具体的な実例は、配列番号9から16のいずれか1つに記載のアミノ酸配列、保存的に改変された変異形又はそれらと実質的に同一の配列を含む。
【0012】
いくつかの人工のGPの配列では、HR2の伸長、HR1Cにおけるプロリン置換及び残基W615における置換がある。これらの実施形態のいくつかにおいて、W615残基はL、A、V、I又はFで置換され得る。実施形態のいくつかにおいて、人工のエボラウイルスのGPの配列では、MPERにおいて残基632位から残基637位に至るHR2のC末端が伸長していてもよい。そのような人工のエボラウイルスのGPの配列のいくつかの具体例としては、配列番号17及び20のいずれか1つに記載のアミノ酸配列、保存的に改変された変異形又はそれらと実質的に同一の配列がある。いくつかの実施形態において、人工のエボラウイルスのGPの配列は、C末端の三量体化モチーフをさらに有していてもよい。例えば、人工のエボラウイルスのGPタンパク質は、配列番号29若しくは配列番号30に示されるC末端の三量体化モチーフ又はその保存的に改変された変異形若しくは実質的に同一の配列を有していてもよい。
【0013】
いくつかの人工のエボラウイルスのGPの配列では、(a)W615Lの置換、(b)プロリン置換T577P又はL579P及び(c)MPERにおける残基632位から残基637位に至るHR2の伸長がある。これらの人工のエボラウイルスのGPの配列のいくつかの具体例としては、配列番号18、19、21及び22のいずれか1つに記載のアミノ酸配列、保存的に改変された変異形又はそれらと実質的に同一の配列がある。
【0014】
いくつかの人工のエボラウイルスのGPの配列は、2つの隣接するGPのプロトマーの間に1つ以上の人工のジスルフィド結合を有する。様々な実施形態において、人工のジスルフィド結合は、残基対G91/A575(SS2)、F153/Y534(SS1)、T520/A575(SS3)、G157/I532(SS4)、D522/A575(SS5)及び/又はK56/G599(SS6)でのシステインによる置換によって作製される。これらの人工のエボラウイルスのGPの配列のいくつかの具体的な例としては、配列番号23から28のいずれか1つ、保存的に改変された変異形又はそれらと実質的に同一の配列に示されるアミノ酸配列がある。
【0015】
いくつかの関連する観点において、本発明は、本明細書に記載の人工の完全長の又は切り詰められたエボラウイルスのGPタンパク質の配列をコードする核酸又はポリヌクレオチド配列を提供する。いくつかの人工のエボラウイルスのGPの配列はまた、5’にリーダーペプチドをコードする配列を含む。また、本発明では、本明細書に記載の人工のエボラウイルスのGPタンパク質又はコード化されたポリヌクレオチド配列及び薬学的に許容される担体を有する医薬組成物が提供される。
【0016】
別の態様において、本発明は、自己組織化性ナノ粒子の表面上に提示される、人工のエボラウイルスのGPタンパク質を有するワクチン組成物を提供する。いくつかの実施形態において、人工のエボラウイルスのGPタンパク質のC末端は、自己組織化性ナノ粒子(NP)のサブユニットのN末端に融合される。いくつかの実施形態では、人工のエボラウイルスのGPタンパク質のC末端がリンカー配列GGGGS(配列番号43)又は(GGGGS)2(配列番号42)を介して自己組織化性ナノ粒子のサブユニットに融合される。いくつかの態様において、NPワクチン組成物中の人工のエボラウイルスのGPタンパク質は、配列番号:4から28のいずれか1つに示されるアミノ酸配列、保存的に改変された変異形又はそれらと実質的に同一の配列を含む。いくつかの実施形態では、自己組織化性ナノ粒子のサブユニットが配列番号36(E2p)、配列番号37(I3-01v9)又は配列番号38(フェリチン)に示されるポリペプチド配列、保存的に改変された変異形又はそれらと実質的に同一の配列を含む。
【0017】
本発明のいくつかのNP足場ワクチン(NP scaffold vaccine)組成物は、NPサブユニット配列のC末端に融合されたロッキングドメイン(locking domain,LD)をさらに有してもよい。これらの実施形態のいくつかにおいて、使用されるLDは、配列番号39又は40に示される配列、保存的に改変された変異形又はそれらと実質的に同一の配列を含む。足場ワクチンのいくつかは、ロッキングドメインのC末端に融合されたT細胞エピトープをさらに有していてもよい。これらの実施形態のいくつかにおいて、使用されるT細胞エピトープは、配列番号31に示される配列、保存的に改変された変異形又はそれらと実質的に同一の配列を含む。
【0018】
本発明のいくつかのNPワクチン組成物は、(1)ポリペプチド配列であってN末端からC末端までの間に(a)人工のエボラウイルスのGPタンパク質、リンカー配列G4S(配列番号43)、ナノ粒子配列フェリチンを有するもの、(b)人工のエボラウイルスのGPタンパク質、リンカー配列G4S(配列番号43)、ナノ粒子配列E2pを有するもの、若しくは(c)人工のエボラウイルスのGPタンパク質、リンカー配列(G4S)2(配列番号42)、ナノ粒子配列I3-01v9を有するもの又は(2)(1)のポリペプチド配列の保存的に改変された変異形を含有する。これらの実施形態のいくつかにおいて、人工のエボラウイルスのGPの配列は、W615Lの置換、プロリン置換T577Pの及びMPERにおける残基632位から残基637位に至るHR2の伸長を有する。これらの人工のエボラウイルスのGPの配列は、ナノ粒子サブユニット配列のC末端に融合されたロッキングドメイン及び/又はT細胞のエピトープをさらに有してもよい。いくつかの実施形態では、ワクチン組成物が(1)ポリペプチド配列であってN末端からC末端までの間に(a)配列番号17に示される人工のエボラウイルスのGPタンパク質、配列番号36(E2p)に示されるナノ粒子サブユニット配列、配列番号39(LD4)に示されるロッキングドメイン及び配列番号31(PADRE)に示されるT細胞エピトープを有するもの又は(b)配列番号17に示される人工のエボラウイルスのGPタンパク質、配列番号37(I3から01v9)に示されるナノ粒子配列、配列番号40(LD7)に示されるロッキングドメインを有するもの又は(2)ポリペプチド配列の保存的に改変された変異形を含有する。
【発明の効果】
【0019】
本発明の性質及び利点のさらなる理解のため、本明細書及び特許請求の範囲の残りの部分を参照されたい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は(A)エボラウイルスの糖タンパク質(GP)の構造の概略及び(B)本発明の人工のエボラウイルスのGPワクチンの免疫原となるタンパク質を生成するための一般的な再設計の戦略を示す。
【0021】
【
図2】
図2は、5種の全てのエボラウイルス、すなわちブンディブギョエボラウイルス(AYI50316)、ザイールエボラウイルス(AER59712)、レストンエボラウイルス(ASU06443)、スーダンエボラウイルス(ALH21228)及びタイフォレストエボラウイルス(AWK96625)から無作為に選択された株の糖タンパク質(GP)のH1(配列番号44から48)及びHR2(配列番号49から53)領域の配列アラインメントを示す。
【0022】
【
図3-1】
図3は、ストークとHR1
Cが改変されたEBOV GPΔmuc三量体の設計、スクリーニング及び抗原特性評価を示す。(A)ムチン欠失GP(GPΔmuc)及び3つのストークの設計(GPΔmuc-2WPZ、GPΔmuc-L及びGPΔmuc-Ext)の模式図。(B)250mlのHEK293F細胞中にて一過性で発現させmAb114による精製を行った後のSuperdex 200 10/300カラムから得た4つのGPΔmucコンストラクトのSECプロファイル。左:黒線で示されたGPΔmucのSEC曲線;右:各々GPΔmuc-2WPZ、-L及び-Extについて示された3つのストークの設計。(C)mAb114(左)及びmAb110(右)カラムによって精製されたGPΔmucタンパク質のBN-PAGE。8-aa HR1
Cを可撓性(GS)
4ループに置き換えた追加のGPΔmucコンストラクトが、比較のために含まれていることに留意する。(D)10種の抗体に結合する4つのmAb100/SEC精製ストーク改変EBOV GP/GPΔmuc-フォールドン(foldon)三量体のELISA曲線。(E)EBOV GP/GPΔmuc-フォールドン三量体の10種の抗体への結合のEC
50値(μg/ml)の概要。(F)mAb100/SEC精製されたストーク/HR1
C改変EBOV GP/GPΔmuc-フォールドン三量体の10種の抗体への結合のELISA曲線。(G)ストーク/HR1
C-改変EBOV GP/GPΔmuc-フォールドン三量体の10種の抗体への結合のEC
50値(μG/ml)の概要。
【
図3-2】(H)5つのGP/GPΔmuc-フォールドン三量体の10種の抗体への結合のEC
50値(μg/ml)の値のプロット。エボラウイルス共通の4つのNAbが示されている。(E)及び(G)では、Prismバージョン8.4.3にて全ELISAデータについてEC
50値を計算した。
【0023】
【
図4-1】
図4は、多層EBOV GPΔmuc-提示NPの設計及び特性の分析を示す。(A)NP形成界面を安定化させるためのタンパク質データバンク(PDB)から同定されたロッキングドメイン(LD)。図には、同定されたLDのPDB ID及びそれらの全配列(配列番号54から62)が示されている。本明細書の研究で使用される実際のLDを生成するための元の配列のN末端及び/又はC末端で欠失した残基は、配列に記載されている。(B)-(C)ELISAによる抗原性評価。FR並びに再度人工的に生成されたE2P(E2P-LD4-PADRE又はE2P-L4P)及びI3-01(I3-01-LD7-PADRE,I3-01-L7P)のNPとの結合により提示されたGPΔmuc-WL
2P
2三量体の10種の抗体に対する安定的な固定の提示が(B)に示すELISAカーブによって示され、EC
50値が(C)に概略で示される。すべてのGP-NPをExpiCHO細胞にて一過性で発現させ、mAb100カラムによって精製し、さらにSuperose 6 10/300 GLカラムでSECによって精製した。
【
図4-2】(D)-(G)Octet96を用いたBLIによる抗原性評価。GPΔmuc-WL
2P
2-フォールドン(D)とFR(E)、E2P-L4P(F)及びI3-01-L7P(G)のNPと結合したGPΔmuc-WL
2P
2との10種の抗体に対するの結合動態。Octet RED96の機器からBLIセンサーグラムを得たが、この時、6点の連続する濃度(GPΔmucについては400から12.5nM、FR及びE2p-L4p/I3-01-L7Pについては各々25から0.78nM及び2倍希釈では10から0.31nM)と定量バイオセンサー(材料及び方法を参照されたい)を用いた。
【
図4-3】(H)GPΔmuc-WL
2P
2-10GS-I3-01v9-LD7のSECプロファイル。I3-01v9は、PDB構造(1VLW)に基づき再設計されたNP形成境界面を有するI3-01の変異形である。I3-01v9は、我々の以前の研究において、コンストラクト名「1VLW-V9」として報告された。
【0024】
【
図5-1】
図5は、BALB/cマウスにおけるEBOV GP/GPΔmuc三量体及びGPΔmuc-提示NPの免疫原性評価を示す。(A)WT GP-フォールドン、GPΔMuc-フォールドン及びGPΔMuc-WL
2P
2-折り畳み-三量体でマウスを免疫した3つの三量体群並びにGPΔMuc-WL
2P
2を提示する示すFR、E2P-L4P及びI3-01v9-L7P NPでマウスを免疫した3つのNP群から得たマウス血清の、GPΔMuc-WL
2P
2に対する、w2、w5、w8及びw11における、ELISA結合曲線。(B)3つの三量体群について測定したEC
50タイター。
【
図5-2】(C)EC
50タイターは3群で測定した。EC
50タイターは、希釈倍率を尺度として表した。留意すべき点は、w2での血清の結合が、EC
50タイターの正確な決定を可能にするためのプラトー(又は飽和)に達しなかったことである。しかしながら、Prismにおいて計算されたEC
50値を、結合抗体力価の定量的尺度として使用することで、第2週における様々なワクチン群の比較を容易にした。(D)TZM-bl細胞における10種のエボラウイルス特異的抗体によるエボラウイルス-pp(Makona C15)の中和。(E)293T細胞における10種のエボラウイルス特異抗体によるMLV-ppの中和。(F)293T細胞における精製マウス血清IgGによるMLV-ppの中和。マウスIgGを、6つのワクチン群すべてから第11週に収集した。
【0025】
【
図6-1】
図6は、ウサギにおけるEBOV GP/GPΔmuc三量体及びGPΔmuc-提示NPの免疫原性評価を示す。(A)GPΔMuc-フォールドン及びGPΔMuc-WL
2P
2-折り畳み三量体でウサギを免疫した2つの三量体群並びにGPΔMuc-WL
2P
2を提示するFR、E2P-L4P及びI3-01v9-L7P NPでウサギを免疫した3つのNP群から得たウサギ血清の、GPΔMuc-WL
2P
2に対する、w0、w2、w5、w8、w11及びw13におけるELISA結合曲線。(B)2つの三量体群と3つのNP群について測定したEC
50タイター。EC
50タイターは、希釈倍数を尺度として表した。留意すべき点は、w2での血清の結合はプラトー(又は飽和)に達しなかったが、OD
450は(完全にプラトー化している)w5で得られたものとほぼ同じ濃度であったことである。従って、Prismで計算されたEC
50値は、w2での様々なワクチン群の比較を容易にするのに十分に正確であると考えられた。
【
図6-2】293T細胞におけるw2、w5及びw8由来の精製ウサギIgGによるエボラウイルス-pp(EBOV-Makona及びBDBV)及びMLV-ppの中和を(C)、(D)、(E)及び(F)に示す。シグモーダルな用量応答モデルに適合しないデータ点は破線で示す。2つのGPΔmuc三量体基、FR基及び2つの多層60量体NP基におけるADEは各々、w2、w5及びw8において現れており、破線の長方形で強調されている。
【0026】
【
図7-1】
図7は、バルクソーティングされたエボラGP特異的マウス脾臓B細胞に対する不偏性のNGSレパートリー分析を示す。(A)ビオチン化されAvi標識が付加されたエボラGPΔmuc三量体のSECプロファイル、GPΔmuc-WL
2P
2-1TD0-Avi-Biotと称し、HiLoad Superdex 200 16/600カラムから得られたもの。1TD0はGPΔmucを三量体状態で安定化させ、B細胞を選択解除させることで2つの三量体基をフォールドンさせるために使用される三量体の足場(scaffold)である。(B)5つのワクチン群から得たマウス脾臓B細胞のエボラGPΔmuc特異的バルク選別の概要。(C)エボラGPΔmuc特異的マウス脾臓B細胞に対して得られたNGSデータのアンタイボディオミクス(Antibodyomics)分析。(D)GPΔmuc-フォールドン、(E)GPΔmuc-WL
2P
2-5GS-FR及び(F)GPΔmuc-WL
2P
2-10GS-I3-01v9-L7Pで免疫した3つのワクチン群に関し、特に重要なB細胞特性の分布を示す。
【
図7-2】各群について、生殖系列におけるVH/VK遺伝子の頻度(usage)(上)、生殖系列のVH/VKの遺伝的相違(divergence)(左下)及びCDRH/K3のループ長(右下)について分布を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
I 概要
エボラウイルスは、重度の出血熱を引き起こすことがある。エボラウイルス属には、エボラウイルス(aka Zaire Ebolavirus; EBOV)、スーダンウイルス(SUDV)、タイフォレストウイルス(TAFV)、ブンディブギョウイルス(BDBV)及びレストンエボラウイルス(RESTV)の5種のウイルスが存在する。これらのうち、EBOV、SUDV、TAFV及びBDBVは全て、ヒトにおいてパンデミックの可能性を有する。例えば、EBOVは単独で、2013から2016年の間に歴史上最大のフィロウイルス大流行の原因となったが、これはアフリカの9カ国に広がり、28,600例の症例と11,325例の死亡があった。以前のEBOV流行は2103人の死亡をもたらし、世界保健機関(WHO)によって2019年7月17日に国際緊急事態が宣言された。近年、この致命的なウイルスに対抗するための著しい進歩があった。中和抗体(NAb)は、現在、EBOV感染の有効な治療薬として確立されている。多様な送達系に基づくワクチンがヒトにおいて試験されており、Zaire EBOV糖タンパク質(GP)を発現する複製可能な組換え型水疱性口内炎ウイルス(VSV)であるrVSV-ZEBOVは、2018から2019年のアウトブレイクの間に展開された最も進んだワクチン候補である。しかしながら、GP特異的抗体力価は、ヒトにおけるrVSV-ZEBOVのワクチン接種から7日後に顕著には増加せず、非ヒト霊長類(NHP)における以前の知見とは対照的であった。加えて、最近の研究は、新生児マウスにおいて眼及び脳に損傷を引き起こしたrVSV-ZEBOVの神経親和性を報告した。ヒト生存者から単離されたEBOV抗体について、感染の抗体依存性増強(ADE)が見出され、準最適ワクチンによって誘導される弱い又は非NAbが有害作用を引き起こし得ることが示唆された。現在、ヒトに使用するための米国食品医薬品局(FDA)によって承認されたEBOVワクチンはない。
【0028】
エボラウイルス(EBOV)糖タンパク質(GP)は中和抗体(NAb)によって認識することができ、ワクチン設計の主要な標的である。本発明は一部にはエボラウイルスの糖タンパク質を合理的に再設計し、ワクチン候補として単一成分多層ナノ粒子を操作する我々の研究に由来する。本明細書に詳述されるように、我々はEBOV GPの準安定性(metastability)の原因を探索し、インビボ評価のために多層NPワクチンを設計した。GP精製を容易にするために、我々は、天然型の三量体GPに特異的なmAb100に基づく免疫親和性カラムを開発した。我々は最初に、GP2における2つの領域、すなわち、HR2(いわゆる「ストーク」)領域及びヘプタッドリピート1C(HR1C)セグメントの、ムチン欠失Zaire EBOV GPコンストラクト(GPΔmuc)におけるGPの準安定性に対する寄与を調べた。我々はHR2ストークを残基637位まで拡張し、EBOV及びMARV GPの比較に基づいてW615L変異を導入した。我々は、HR1Cにおけるプロリン変異が融合前後のコンフォメーション変化を防止できるかどうかを評価した。ストークの変異とHR1C-プロリン変異の両方において三量体の収率が増加したが、後者はGPの熱安定性に複雑な影響を示すようであった。GPの分子間でのジスルフィド結合(SS)もまた、三量体の安定性を増加させることが見出された。2つの再設計されたGPΔmucコンストラクトについて結晶構造を決定し、ストークの変異及びHR1C-プロリン変異を原子レベルで検証した。次いで、我々は、フェリチン、E2p及びI3-01の各NPに対して、再設計されたGPΔmuc三量体を提示させた。ロッキングドメイン(LD)及びヘルパーT細胞エピトープをE2p及びI3-01の60量体に組み込んで、NPシェルを内側から安定化することで、多層化されたNP担体を作製した。
【0029】
マウス及びウサギにおいて、GPの三量体及びNPは、別個の抗体応答を誘導し得ることが観察された。GPに特異的なB細胞の次世代シークエンシング(NGS)により、大きな三量体スパイクを提示するNPと、C型肝炎ウイルス(HCV)のE2コアなどの提示する小さな抗原を提示するNPとで異なるプロファイルが示された。これらの研究によりEBOV GP準安定性の重要な因子が示され、VLP型ワクチンを設計するための2つの単一成分多層自己組織化NPが可能になり、NHP及びヒトにおけるさらなる評価を受けるに値するEBOVワクチンの候補が提供された。
【0030】
これらの研究に従い、本発明は、本明細書に開示される様々な改変を含む新規な人工のエボラウイルスのGPの配列を提供する。本発明のいくつかの実施形態は、本明細書に記載の再設計されたエボラウイルスのGPの配列に由来する免疫原ポリペプチド及びポリヌクレオチドワクチンに関する。また、本発明において提供されるのは、人工のエボラウイルスのGP免疫原のうちの1つ以上を提示する、自己組織化性ナノ粒子を含む、提示プラットフォームを有するエボラウイルスワクチン組成物である。人工のエボラウイルスのGPの免疫原ポリペプチド及び関連するナノ粒子ワクチン組成物の治療的用途、例えばエボラウイルス感染の治療又は予防も、本発明において提供される。
【0031】
本明細書において別段の指定がない限り、本発明のワクチン免疫原、コードするポリヌクレオチド、発現ベクター及び宿主細胞並びに関連する治療用途はすべて、本明細書において例示される手順又は当技術分野において周知の日常的に実施される方法に従って作製又は実施できる。例えば次の文献が挙げられる。Methods in Enzymology, Volume 289: Solid-Phase Peptide Synthesis, J. N. Abelson, M. I. Simon, G. B. Fields (Editors), Academic Press, 1st edition (1997) (ISBN-13: 978-0121821906); U.S. Pat. Nos. 4,965,343, and 5,849,954; Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Press, N.Y., (3rd ed., 2000); Brent et al., Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, Inc. (ringbou ed., 2003); Davis et al., Basic Methods in Molecular Biology, Elsevier Science Publishing, Inc., New York, USA (1986); or Methods in Enzymology: Guide to Molecular Cloning Techniques Vol. 152, S. L. Berger and A. R. Kimmerl Eds., Academic Press Inc., San Diego, USA (1987); Current Protocols in Protein Science (CPPS) (John E. Coligan, et. al., ed., John Wiley and Sons, Inc.); Current Protocols in Cell Biology (CPCB) (Juan S. Bonifacino et. al. ed., John Wiley and Sons, Inc.); Culture of Animal Cells: A Manual of Basic Technique by R. Ian Freshney, Publisher: Wiley-Liss, 5th edition, (2005); Animal Cell Culture Methods, Methods in Cell Biology, Vol. 57, Jennie P. Mather and David Barnes editors, Academic Press, 1st edition (1998)。以下のセクションは、本発明の組成物及び方法を実施するためのさらなる指針を提供する。
【0032】
II. 定義
別途定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。以下の参考文献は、本願で使用される用語の多くの一般的な定義を当業者に提供する:Academic Press Dictionary of Science and Technology, Morris (Ed.), Academic Press (1st ed., 1992); Oxford Dictionary of Biochemistry and Molecular Biology, Smith et al. (Eds.), Oxford University Press (revised ed., 2000); Encyclopaedic Dictionary of Chemistry, Kumar (Ed.), Anmol Publications Pvt. Ltd. (2002); Dictionary of Microbiology and Molecular Biology, Singleton et al. (Eds.), John Wiley & Sons (3rd ed., 2002); Dictionary of Chemistry, Hunt (Ed.), Routledge (1st ed., 1999); Dictionary of Pharmaceutical Medicine, Nahler (Ed.), Springer-Verlag Telos (1994); Dictionary of Organic Chemistry, Kumar and Anandand (Eds.), Anmol Publications Pvt. Ltd. (2002); and A Dictionary of Biology (Oxford Paperback Reference), Martin and Hine (Eds.), Oxford University Press (4th ed., 2000)。本発明に具体的に適用される、これらの用語のいくつかのさらなる明確化が、本明細書において提供される。
【0033】
本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」及び「the」は文脈が明らかにそわないことを示さない限り、単数形及び複数形の両方を指す。例えば、「Env由来の三量体」は単一又は複数のEnv由来の三量体分子の両方を指すことができ、「少なくとも1つのEnv由来の三量体」という語句と等価であると考えることができる
【0034】
本明細書で使用される場合、「抗原」又は「免疫原」という用語は、対象において免疫応答を誘導できる物質、典型的にはタンパク質を指すために互換的に使用される。この用語はまた、対象に投与されると(直接的に又はタンパク質をコードするヌクレオチド配列又はベクターを対象に投与することによって)、そのタンパク質に対する液性及び/又は細胞型の免疫応答を誘発できるという意味で、免疫学的に活性であるタンパク質を指す。特に明記しない限り、「ワクチン免疫原」という用語は、「タンパク質抗原」又は「免疫原ポリペプチド」と互換的に使用される。
【0035】
「保存的に改変された変異形」という用語は、アミノ酸配列及び核酸配列の両方に適用される。特定の核酸配列に関して、保存的に改変された変異形とは、同一又は本質的に同一のアミノ酸配列をコードする核酸を指すか、あるいは核酸がアミノ酸配列をコードしていなければ、本質的に同一の配列のことを指す。遺伝暗号が縮重しているため、多数の機能的に同一の核酸が、任意の所与のタンパク質をコードしている。ポリペプチド配列について、「保存的に改変された変異形」は保存的アミノ酸置換を有する変異形を指し、アミノ酸残基は、類似の電荷を有する側鎖を有する他のアミノ酸残基で置き換えられる。類似の電荷を有する側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当技術分野において定義されている。これらのファミリーは塩基性側鎖(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、β分枝側鎖(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)及び芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を有するアミノ酸を含む。
【0036】
エピトープは、抗原決定基を指す。これらは特異的免疫応答を誘発するような抗原性を有する分子上の特定の化学基又はペプチド配列であり、例えば、エピトープはB及び/又はT細胞が応答する抗原の領域である。エピトープは、連続するアミノ酸又はタンパク質の三次元折り畳みによって並ぶように配置された連続していないアミノ酸の両方から形成され得る。
【0037】
ウイルス感染などの状態又は疾患の徴候又は症状を低減又は排除するなど、所望の応答を生じるのに十分なワクチン又は他の薬剤の有効量。例えば、これは、ウイルス複製を阻害するため又はウイルス感染についての外観上の症状を測定可能な程度に変化させるために必要な量であり得る。一般に、この量はウイルス(例えば、エボラウイルス)の複製又は感染性を測定可能な程度に阻害するのに十分である。対象に投与される場合、一般に、ウイルス複製のインビトロ阻害に十分であることが示されている標的濃度を達成する用量が使用される。いくつかの実施形態では、「有効量」が例えばエボラウイルス感染を治療するために、障害又は疾患のいずれかの1つ又は複数の症状及び/又は根本的原因を治療する(予防を含む)ものである。いくつかの実施形態において、有効量は、治療上の有効量である。いくつかの実施形態では、有効量が特定の疾患又は状態の1つ又は複数の徴候又は症状、例えばエボラウイルス感染に関連する1つ又は複数の徴候又は症状の発症を予防する量である。
【0038】
本明細書で使用される場合、融合タンパク質は単一のタンパク質を作製するために、ペプチド結合を介して一緒に連結された少なくとも2つの無関係のタンパク質由来のアミノ酸配列を有する組換えタンパク質である。無関係のアミノ酸配列は互いに直接結合することができ又はリンカー配列を使用して結合できる。本明細書で使用される場合、タンパク質は、それらのアミノ酸配列がそれらの天然環境(例えば、細胞内)においてペプチド結合を介して一緒に連結されていることが通常見出されない場合、無関係である。例えば、B. stearothermophilus dihydrolipoyl acyltransferase(E2p)などの細菌酵素のアミノ酸配列及びエボラウイルスのGPのアミノ酸配列は、通常、ペプチド結合を介して一緒に連結されて見出されない。
【0039】
用語「エボラウイルス」はフィロウイルス科のメンバーを指し、これは、ヒト及び非ヒト霊長類における非常に致死性の出血熱のアウトブレイクに関連する。ヒトエボラウイルス病原体には、エボラウイルス(EBOV)、スーダンウイルス(SUDV)、ブンディブギョウイルス(BDBV)及びタイフォレストウイルス(TAFV)が含まれる。レストンウイルス(RESTV)はサル病原体であり、現在ヒト病原体とは考えられていない。エボラウイルスの天然の保有宿主は不明であり、エボラウイルス感染のための利用可能なワクチン又は有効な治療処置は現在存在しない。エボラウイルスゲノムは、長さが約19kbの一本鎖マイナス鎖RNA(ウイルス、single strand of negative sense RNA)からなる。このRNAは、感染時に8つのmRNAを産生する7つの連続して配列された遺伝子を含む。エボラビリオンは、7つのタンパク質:表面糖タンパク質(GP)、核タンパク質(NP)、4つのビリオン構造タンパク質(VP40、VP35、VP30及びVP24)及びRNA依存性RNAポリメラーゼ(L)を含む(Feldmann et al.(1992) Virus Res. 24, 1-19; Sanchez et al.,(1993) Virus Res. 29, 215-240; reviewed in Peters et al. (1996) In Fields Virology, Third ed. pp. 1161-1176. Fields, B. N., Knipe, D. M., Howley, P. M., et al. eds. Lippincott-Raven Publishers, Philadelphia)。
【0040】
「エボラウイルスの糖タンパク質(GP)」という用語は、ウイルス表面上で三量体として発現されるエボラウイルスの唯一の表面抗原を指す。珍しいことに2つのオープンリーディングフレームにコードされている。ビリオンに組み込まれる膜貫通型を発現させるためには、転写における編集(transcriptional editing)が必要である(Sanchez et al. (1996) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93, 3602-3607; Volchkov et al, (1995) Virology 214, 421-430)。未編集型からは構造タンパク質ではなく分泌型の糖タンパク質(sGP)が生じ、感染の過程の初期に大量に合成される。エボラウイルスのGPは膜貫通型糖タンパク質(GP)であり、受容体結合及び膜融合の両方に関与する。ウイルスの集合の間、糖タンパク質は、フューリンなどの宿主プロテアーゼによるタンパク質分解性切断を受け、ジスルフィド結合によって連結された2つのサブユニットGP1及びGP2を生じる。GP1サブユニット(33から501位のアミノ酸)は、糖タンパク質のコア、受容体結合ドメイン(RBD)、グリカンキャップ及びRBDの周囲に延びる大きなムチン様ドメイン(MLD)を含む。GP2(502から676位のアミノ酸)サブユニットは、内部融合ループ(IFL)、ヘプタッドリピート1及び2(HR1及びHR2)、膜近位外部領域(MPER)、膜貫通領域(TM)及び細胞質側末端(CT)を含む。後期エンドソームへのエボラウイルス粒子の輸送中、pHが低いことでカテプシンなどの宿主システインプロテアーゼによるGPのタンパク質の分解をもたらし、タンパク質として分解されたGPの露出した受容体結合部位は宿主受容体であるニーマンピック(Niemann Pick)C1と相互作用し、続いて膜融合すると考えられる。特に断りのない限り、ザイールエボラウイルス株Mayinga-76由来のGPのアミノ酸残基の番号付けを参照し本明細書で使用しする。これは、GenBank ID、AF272001によって特定される完全なゲノム配列を有する。そのGPの外部ドメイン(ectodomain)の配列(UniProt ID Q05320; GenBank ID AAG40168.1)を本明細書の配列番号1に示す。
【0041】
本明細書で使用される場合、対応する残基とは、整列させた遺伝子座における残基を指す。関連ポリペプチド又は変異ポリペプチドは、当業者に公知の任意の方法によって整列される。そのような方法では一致を最大化することが典型的であり、手動アラインメントの使用及び利用可能な多数のアラインメントプログラム(例えば、BLASTP)及び当業者に公知の他のものを使用することなどの方法を含む。ポリペプチドの配列を整列させることによって、当業者は、保存された同一のアミノ酸残基をガイドとして使用して、対応する残基を同定できる。例えば、異なるエボラウイルス種又は同じ種であるが異なる単離ウイルス由来のGPポリペプチドの配列を整列させることによって、当業者は、保存された同一のアミノ酸残基をガイドとして使用して、対応する残基を同定できる。対応する位置(残基)はまた構造アラインメントに基づいて決めてもよく、例えば、コンピュータシミュレーションによるタンパク質構造に対するアラインメントを使用してもよい。
【0042】
本明細書で使用される免疫原とは、哺乳動物において免疫応答を誘導できるタンパク質又はその一部を指し、哺乳動物とは例えば病原体に感染した哺乳動物又は感染のリスクがある哺乳動物である。免疫原の投与により、目的の病原体に対する防御的な(protective)免疫及び/又は予防的な(proactive)免疫を導くことができる。
【0043】
免疫応答は、刺激に対する、B細胞、T細胞又は単球などの免疫系の細胞の応答を指す。いくつかの態様において、応答は、特定の抗原に特異的である(「抗原特異的応答」)。いくつかの実施形態では、免疫応答がCD4+応答又はCD8+応答などのT細胞応答である。いくつかの他の実施形態では、応答はB細胞応答であり、特異的抗体の産生をもたらす。
【0044】
免疫原性組成物は、免疫原性ポリペプチドを発現するウイルスに対する測定可能なCTL応答を誘導するか又は免疫原性ポリペプチドに対する測定可能なB細胞応答(抗体の産生など)を誘導する免疫原性ポリペプチドを含む組成物を指す。
【0045】
2つ以上の核酸配列若しくは2つ以上のアミノ酸配列間の配列の相同性又は類似性は、配列間の相同性又は類似性の観点で表される。配列相同性は相同性のパーセンテージで評価でき、パーセンテージが高いほど、配列はより同一に近い。2つの配列は「実質的に同一である」場合とは、2つの配列が同一であるみなされるアミノ酸残基又はヌクレオチドの特定のパーセンテージを有している場合であり、(すなわち、特定の領域にわたって60%の相同性、場合により65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%若しくは99%の相同性又は特定されていない場合には、配列全体にわたる相同性を有している場合であり)、特定のパーセンテージは、比較の対象となるウィンドウにわたって最大限の対応をとるように比較及びアラインメントした時、又は後述する配列比較アルゴリズムのうちの1つを使用して測定される指定の領域で比較及びアラインメントした時若しくは手動アラインメント及び目視検査によって測定される指定の領域で比較及びアラインメントした時のものである。場合により、相同性が見られる領域は、少なくとも約50ヌクレオチド(又は10アミノ酸)の長さである領域にわたる、又はより好ましくは100から500若しくは1000又はそれ以上のヌクレオチド(又は20、50、200若しくはそれ以上のアミノ酸)の長さである領域にわたる。
【0046】
核酸又はアミノ酸配列のホモログ又はオルソログが、標準的な方法を用いてアラインメントされた場合、比較的高い程度の配列相同性/類似性を有する。比較のための配列のアラインメントの方法は、当技術分野においてよく知られたている。さまざまなプログラムとアライメントアルゴリズムが以下に記載されている:Smith & Waterman, Adv. Appl. Math. 2:482, 1981;Needleman & Wunsch, J. Mol. Biol. 48:443, 1970;Pearson & Lipman, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:2444, 1988;Higgins & Sharp, Gene, 73:237-44, 1988;Higgins & Sharp, CABIOS 5:151-3, 1989;Corpet et al., Nuc. Acids Res. 16:10881-90, 1988;Huang et al. Computer Appls. in the Biosciences 8, 155-65, 1992;及びPearson et al., Meth. Mol. Bio. 24:307-31, 1994。またAltschul et al., J. Mol. Biol. 215:403-10, 1990には、配列アラインメント法及び相同性計算の詳細な考察が示されている。
【0047】
「対象(subject)」という用語は哺乳動物として分類される任意の動物、例えば、ヒトと、非ヒト哺乳動物とを指す。非ヒト動物の例としては、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ウサギなどが挙げられる。特に明記しない限り、「患者」及び「対象」という用語は、本明細書では互換的に使用される。好ましくは、対象はヒトである。
【0048】
「治療する」又は「緩和する」という用語には対象への化合物又は薬剤の投与であって、疾患(例えば、エボラウイルス感染症)の症状、合併症若しくは生化学的徴候の発生を予防又は遅延させるもの、症状を緩和するもの又は疾患、状態若しくは障害のさらなる発症を停止又は阻害するものを含む。治療を必要とする対象には、疾患又は障害に既に罹患している対象と障害を発症するリスクがある対象とが含まれる。治療は、予防的なもの(疾患の発症を予防若しくは遅延させるため又はその臨床的若しくは無症状の発現を予防するためのもの)又は疾患の発現後の症状の治療的抑制のためのもの若しくは緩和のためのものであり得る。
【0049】
ワクチンは、対象において予防的又は治療的免疫応答を誘発する医薬組成物を指す。いくつかの場合において、免疫応答は防御免疫応答である。典型的には、ワクチンが病原体、例えばウイルス病原体の抗原又は病理学的状態と相関する細胞成分に対する抗原特異的免疫応答を誘発する。ワクチンはポリヌクレオチド(例えば、本明細書に開示されるエボラウイルスのGPポリペプチドをコードする核酸)、ペプチド又はポリペプチド(例えば、開示されるエボラウイルスのGPポリペプチド抗原)、ウイルス、細胞又は1つ以上の細胞構成要素を含んでいてもよい。本発明のいくつかの実施形態では、ワクチン又はワクチン免疫原又はワクチン組成物が融合コンストラクトから発現され、自己組織化することで表面上に免疫原ポリペプチド又はタンパク質を提示するナノ粒子となる。
【0050】
ウイルス様粒子(VLP)は、自己複製することはないウイルスの殻であっていずれかのウイルスに由来するものである。VLPは一般に1つ又は複数のウイルスタンパク質から構成され、例えば、以下に限定されないが、カプシド、コート、シェル、表面タンパク質及び/若しくはエンベロープタンパク質又はこれらのタンパク質に由来する粒子形成ポリペプチドと呼ばれるタンパク質である。VLPは、適切な発現系におけるタンパク質の組換え発現の際に自発的な形成がなされる。特定のVLPを産生するための方法は、当技術分野において公知である。ウイルスタンパク質の組換え発現後において、VLPの存在を、当技術分野で公知の従来の技術、例えば電子顕微鏡法、生物物理学的特性評価を利用して検出できる。例えばBaker et al. (1991) Biophys. J. 60:1445-1456; and Hagensee et al. (1994) J. Virol. 68:4503-4505参照。例えばVLPは密度勾配遠心分離によって単離することができ、さらに/あるいは特徴的な密度のバンドによって同定できる。あるいは、当該VLP調製物のガラス化水性試料に対して凍結電子顕微鏡法を実施し、適切な露光条件下で画像を記録できる。
【0051】
自己組織化性ナノ粒子とは、直径が数十ナノメートルで明確な表面形状を有する球形タンパク質シェルであり、自動的に組織化してVLPと同様の外観を有するナノ粒子となる非ウイルスタンパク質の同一のコピーによって形成されるものを指す。既知の例としてはフェリチン(FR)があり、これは種間で保存され、24量体を形成するが、同様にB. stearothermophilusのジヒドロリポイルアシルトランスフェラーゼ(E2p)、Aquifex aeolicusのルマジン(lumazine)合成酵素(LS)及びThermotoga maritimaのencapsulinが挙げられ、これらはいずれも60量体を形成する。自己組織化性ナノ粒子は、適切な発現系でタンパク質を組換え発現させることで自然に形成される。ナノ粒子の生成、検出及び特性評価のための方法は、VLPのために開発された技術と同じものを使用して行うことができる。
III. 人工のエボラウイルスのGPの配列
【0052】
本発明は、エボラウイルスワクチンを産生するためにエボラウイルスの糖タンパク質(GP)の配列(ポリペプチド又はポリヌクレオチド配列を人工操作したもの又は再設計したもの)を提供する。野生型のGPの配列と比較して、これらの人工のGPポリペプチドは、種々の改変、特にGP2サブユニットにおける改変を有していてもよい。エボラウイルスのGPのGP2サブユニットは、N末端ペプチド、内部融合ループ、2つの連続する2つのヘプタッドリピート領域(HR1及びHR2)、膜近位外部領域(MPER)及びC末端膜貫通ドメインを含む(
図1A参照)。HR1は次に、構造的に4つのセグメント、HR1
A、HR1
B、HR1
C及びHR1
Dに分割される。最初の2つのセグメント、HR1
A及びHR1
B(残基554から575位)は565位のThrで約40°のねじれを有するα-ヘリックスを形成し、これによりHR1
BからのHR1
Aを。HR1
Cは、HR1
BセグメントとHR1
Dセグメントとの間に延在するコイルリンカーを形成する。HR1
Dは両親媒性ヘリックスを形成し、三量体の3つのヘリックスの疎水性面が一緒になってペプロマーの界面を形成する。HR1
C及びHR1
Dは各々残基576から582位及び残基583から598位に対応するものとして最初に定義された(Lee et al., Future Virol. 2009; 4: 621?635)。Zhao et al. Nature 535, 169-172, 2016において報告されたGPのより高い分解能及びより完全な結晶構造に基づき、HR1
Cは本明細書において、アミノ酸576位から583位を包含するように再定義される。またHR1
Dはアミノ酸584位から598位を指す。HR2は大部分がタンパク質のアルファヘリックスであり、「HR2ストーク」とも呼ばれ、GPコアをウイルス膜に接続する。EBOV配列において、HR2ストークは、アミノ酸残基599位から632位を包含する。
【0053】
本明細書に詳述されるように、人工のエボラウイルスのGPポリペプチドは、主にHR1
C及びHR2モチーフの中及び周囲に様々な変異又は改変を含む(
図1B)。特に断りのない限り、エボラウイルスのGPの様々なドメイン又は領域に関する組織化及びアミノ酸の番号付けは、GenBank ID AAG40168.1(配列番号1)によって記載される外部ドメイン配列を有するザイールエボラウイルス株Mayinga-76のGPの配列に基づく。異なるエボラウイルス及び同じエボラウイルス種の異なる株の間の構造モチーフにおける実質的な配列保存のために、任意の他のエボラウイルス及び株由来の、エボラウイルスのGPの様々なドメイン、領域及びループの境界に対応するアミノ酸残基を、(例えば、配列アラインメントによって)容易に決定できるか又は当技術分野で公知の他の方法で容易に決定できる。例として、EBOVのHR1及びHR2領域と他のエボラウイルスとの配列アラインメントを
図2に示す。HR1+HR2領域全体の配列は、5種の異なるエボラウイルス、EBOV、SUDV、TAFV、BDBV及びRESTVにわたって約84.8%の相同性を有する。図に示されるように、HR1
Cセグメントの残基は、種々のエボラウイルスの間で高度に保存されている。本明細書に記載のHR2の伸長のためのMPERモチーフにおける最初の数個のN-末端残基も、異なるエボラウイルス種の間で高度に保存されている。置換のために本書に例示したW615残基は、すべてのエボラウイルス種において保存されている。さらに、以下の実施例に記載されるHR2ストークの配列保存のロゴ(logo)分析は、W615がエボラウイルス属の全6種の全株にわたって100%保存されていることを示した。したがって、EBOVで例示されるエボラウイルスのGPの配列の改変は、他のエボラウイルス種及び同じウイルス種の異なる株に容易に適用できることが明らかである。
【0054】
野生型エボラウイルスのGPの全長(例えば、
図1Aを参照されたい)と比較して、本発明の人工のエボラウイルスのGPの配列は、本明細書に記載される突然変異又は改変に加えて、N末端リーダー、MLD及びMPERを伴わないGPの外部ドメイン(ectodomain)に対応する構造モチーフを含むことが典型的である(例えば、配列番号2を参照されたい)。様々な実施形態において、本発明の人工のエボラウイルスのGPの配列は、配列番号2に存在する構造成分を超えて、全長GP中の構造モチーフ又はドメインを追加的に有していてもよい。したがって、本発明のいくつかの人工のエボラウイルスのGPの配列は、(1)リーダー配列、(2)MLDの一部又は全部、(3)MPERの全部の一部、(4)膜貫通ドメインの一部又は全部及び(5)細胞質側末端の一部又は全部のうちの1つ又は複数をさらに含んでいてもよい。
【0055】
本発明のいくつかの実施形態は、エボラウイルスのGPの全長に対応する人工のエボラウイルスのGPの配列に関するものであり、本明細書に記載されてように、この配列はHR2及びHR1領域における1つ又は複数の安定化のための改変又は変異を有している。いくつかの実施形態では、人工のエボラウイルスのGPの配列が野生型のGPの配列のHR2中の残基W615における置換を有していてもよい。これらの実施形態のいくつかにおいて、W615残基は小さな疎水性残基、例えば、L、A、V、I又はFで置き換えることができる。加えて又は代わりに、人工のエボラウイルスのGPの配列は、HR1Cセグメントにおいて1つ又は複数のプロリン置換を有していてもよい。本明細書において例示されるように、HR1Cセグメントにおける任意の残基、T576、T577、E578、L579、R580、T581、F582及びS583は、プロリンで置換され得る。これらの実施形態のいくつかにおいて、人工のエボラウイルスのGPの配列は、HR1CにT577P及び/又はL579P置換を含む。いくつかの実施形態では、さらなるシステイン置換をGPの配列に導入することで、本明細書に例示されるGPの間でのジスルフィド結合を生成できる。様々な実施形態において、GPの配列のN末端のリーダーペプチド配列を除去できる。いくつかの他の実施形態は、人工のエボラウイルスのGPタンパク質を発現するポリヌクレオチド配列又はベクターに関するが、これらにおいて、リーダーペプチドをコードする配列(例えば、配列番号41)が人工のエボラウイルスのGPポリヌクレオチド配列の5’末端に導入される。
【0056】
いくつかの実施形態では、本発明の人工のエボラウイルスのGPの配列が外部ドメイン(すなわち、C末端のMPER)のみを有するか、さもなければエボラウイルスのGPタンパク質の可溶性部分であって本明細書に記載のHR1及びHR2領域の改変を伴っているものを有する。これらの実施形態のいくつかにおいて、切り詰められた又は改変された可溶性のエボラウイルスのGPの配列ではまた、MLDの欠失がある。いくつかの実施形態において、短縮された可溶性のGPの配列はさらに、GPの外部ドメインのC末端のMPERが除去されている。様々な実施形態において、発現され、組み立てられた三量体タンパク質はまた、リーダーペプチド配列(配列番号41)を含まない。ザイールエボラウイルス(EBOV)のGPの外部ドメイン配列(配列番号1)に基づくそのような短縮GP可溶性配列の例を配列番号2に示すが、この配列では、野生型の外部ドメイン配列から、リーダー、MLD及びMPER配列が欠失している。いくつかの実施形態において、短縮可溶性のGPの配列は、GP1塩基モチーフ(base motif)におけるT42A変異(GPΔmuc;配列番号3)をさらに含む。
【0057】
C末端での切り詰めに加えて、本発明の人工の可溶性のエボラウイルスのGPの配列では、可溶性のGPの配列(例えば、配列番号2又は3)のHR1及びHR2領域にさらなる配列改変を含むことが典型的である。様々な実施形態において、さらなる配列改変としては、HR2における残基W615の置換と、(1)MPERにおける1つ以上の隣り合う残基を付加することによるHR2の伸長又は(2)いくつかのC末端HR2残基をより長い異種配列で置換することによるHR2の伸長と、HR1Cセグメントにおける1つ以上の残基をプロリンで置換することと、1つ以上のジスルフィド結合の導入とを含む。本明細書に記載されるように、これらの追加の配列改変を単独で用いることで又は任意に組み合わせることで、GPの三量体形成を促進し、準安定性を低下させ、さらに天然型の三量体構造にてエボラウイルスのGPを安定化させることができる。
【0058】
いくつかの実施形態では、本発明の人工のエボラウイルスのGPの配列は切り詰められた又は短くなった可溶性のGPの配列(例えば、配列番号2若しくは配列番号3又はその保存的に改変された又は実質的に同一の変異形)を含み、またHR2に改変が追加されている。例示されたEBOV外部ドメインGPの配列(配列番号1)において、HR2モチーフは、残基599から632位を包含する。これらの実施形態のいくつかにおいて、3次元構造W615における内向きの残基は、より小さく、より疎水性であるアミノ酸残基で置換される。様々な実施形態において、W615残基はHR2ストークのパッキングを改善するために、Leu、Phe、Ala、Val又はIleで置き換えることができる。これらの置換は、エボラウイルスのGPの三量体を安定化させることを意図している。いくつかの例示的な実施形態では、配列置換はW615Lである。いくつかの他の実施形態では、HR2がW615の置換に加えて、残基612位でさらなる置換を有していてもよい。これらの実施形態のいくつかにおいて、アミノ酸置換は、P612G/W615Fである。W615の置換を含む人工のエボラウイルスのGPの配列のいくつかの具体例を、配列番号4及び5に示す。
【0059】
HR2における置換に加えて、人工の可溶性のエボラウイルスのGPの配列は代替的に又は追加的に、HR2モチーフの伸長を有していてもよい。いくつかのこれらの実施形態では、HR2モチーフ(残基632位で終わる)の伸長がエボラウイルスのGPの配列中に天然に存在するMPERモチーフ(残基633位で開始する)中の1つ以上の隣接する残基を付加することを含む。様々な実施形態において、HR2の伸長は、MPER中のそのC末端の隣接する残基の、残基635、636、637、638、639、640、641、642、643、644、645、646位まで又はそれ以上までの付加であり得る。いくつかの例示的な実施形態では、HR2の伸長がMPERにおけるTACE切断部位(残基637位)への伸長を含み、すなわち、MPERのN末端残基KTLPD(配列番号32)を有するようになることも含まれる。TACE切断部位は、宿主のTACEを切断後のビリオン表面からのGP放出に関与する。いくつかの他の実施形態では、HR2の伸長がMPERモチーフ中に6つの追加の隣接する残基を含むことができ、すなわち、MPERのN末端残基KTLPDQGDNDN(配列番号33)を有していてもよい。いくつかの実施形態では、HR2モチーフの伸長がHR2のC末端残基のいくつかをより長い異種配列で置換することを含む。これらの実施形態のいくつかにおいて、HR2のC末端残基のいくつかは、より長いGCN4ロイシンジッパー配列で置換され得る。例えば、HR2を伸長させることができるが、これはHR2中の残基617から632位を、GCN4ロイシンジッパー、本明細書に例示されるようなPDB ID 2WPZを有するもの、に由来する31個のアミノ酸配列(配列番号34)で置換することで行われる。HR2の伸長を含む人工のエボラウイルスのGPタンパク質のいくつかの特定の実施形態は、配列番号5から7に示される。HR2の伸長及び残基W615の置換の両方を含む人工のエボラウイルスのGPタンパク質の具体的な実施形態は、配列番号6及び8に示される。
【0060】
HR2領域における上記の改変に加えて又はその代わりに、本発明の人工のエボラウイルスのGPタンパク質はまた、HR1領域のCセグメント(HR1C)に変異を有していてもよい。典型的には、HR1Cにおける変異がGPの三量体を安定化し、準安定性を低下させることができる1つ以上のプロリン置換を含む。様々な実施形態において、プロリン置換は、HR1Cの各々の位置にあってもよい。EBOV GP配列(配列番号1)で本明細書に例示されるように、プロリン置換は、残基576から583(TTELRTFS;配列番号35)の各々に導入できる。したがって、様々な実施形態において、本発明の人工のエボラウイルスのGPタンパク質は、T576P、T577P、E578P、L579P、R580P、T581P、F582P及びS583Pのうちの1つ又は複数のHR1C変異を含んでいてもよい。いくつかの例示的な実施形態では、本発明の人工のエボラウイルスのGPタンパク質がHR1CにT577P(P2)又はL579P(P4)変異を含む。HR1Cセグメント中に1つ以上のプロリン置換を含む人工のエボラウイルスのGPの配列の具体的な実施形態は、配列番号9から16に示される。
【0061】
いくつかの実施形態では、本発明の人工のエボラウイルスのGPの配列がHR1Cにおけるプロリン置換及び上記のHR2における改変の両方を含む。例えば、人工のGPタンパク質は、プロリン置換並びにW615の置換及び/又はMPERにおけるさらなるHR2の伸長を有していてもよい。プロリン置換はHR1Cの任意の残基(例えば、残基577又は579)であり得る。W615の置換は、W615L、W615F、W615A、W615V又はW615Iのいずれかであり得る。これらの人工のGPタンパク質におけるこれらのHR2の伸長は例えば、MPERにおける残基637位(すなわち、TACE切断部位)への伸長であり得る。HR1Cにおけるプロリン置換及びHR2改変の両方を含む人工のエボラウイルスのGPの配列の具体的な実施形態は、配列番号17から22に示される。
【0062】
上記のヘプタッド領域における改変以外に、本発明のいくつかの人工のエボラウイルスのGPの配列は、GPの間でのジスルフィド結合を形成するための1つ又は複数の人工のシステイン残基を代替的に又は追加的に有していてもよい。GPの三量体の隣接するプロトマー間にジスルフィド結合を形成することによって、これらのCys置換及び得られる人工のジスルフィド結合は同様に機能して、三量体形成を促進し、天然型の三量体立体配座でGPを安定化できる。使用されるべき特定のGPの配列に応じて、1つ以上のGPの間でのジスルフィド結合を導入するための適切な位置を容易に決定できる。これは、例えば、GPの3次元構造中の潜在的アミノ酸対を分析し、続いて本明細書に記載のように生化学的及び免疫学的な特性を分析することによって行うことができる。本明細書のEBOV GP配列(配列番号1)で例示されるように、人工のGPの三量体タンパク質は、G91/A575(SS2)、F153/Y534(SS1)、T520/A575(SS3)、G157/I532(SS4)、D522/A575(SS5)及びK56/G599(SS6)の中で1つ又は複数の人工のプロトマー間SS結合を有していてもよい。いくつかの実施形態では、本発明の人工のGPの三量体タンパク質がG91/A575に人工のジスルフィド結合を有する。そのような人工のジスルフィド結合を有する人工のエボラウイルスのGPタンパク質の特定の実施形態は、配列番号23から28に示される。
【0063】
いくつかの実施形態では、本発明の人工のエボラウイルスのGPの配列がC末端の三量体化モチーフを有していてもよい。このモチーフは、三量体をさらに安定化させ、また、総タンパク質収量中の三量体の比率を増加させるように機能する。本発明に適した三量体化モチーフとしては、例えば、T4フィブリチンフォールドン(PDB ID: 4NCV)及びウイルスカプシドのタンパク質SHP(PDB: 1TD0)が挙げられる。T4フィブリチン(フォールドン)は当技術分野において周知であり、バクテリオファージT4から得られた三量体タンパク質フィブリチンのC末端30アミノ酸残基で構成され、フィブリチンのフォールディング及び三量体化を促進する機能を果たす。例えば、Papanikolopoulou et al., J. Biol. Chem. 279: 8991-8998, 2004;及びGuthe et al., J. Mol. Biol. 337: 905-915, 2004を参照されたい。同様に、SHPタンパク質及び機能的三量体化モチーとして使用されるそのタンパク質も、当技術分野において周知である。例えば、Dreier et al., Proc Natl Acad Sci USA 110: E869?E877, 2013;及びHanzelmann et al., Structure 24: 140?147, 2016を参照されたい。いくつかの例示的な実施形態では、人工のGPタンパク質中の三量体化モチーフが配列番号29に示されるフォールドン配列又は配列番号30に示される1TD0タンパク質配列を含む。いくつかの他の実施形態では、使用される三量体化モチーフが、例示した配列の保存的に改変された変異形又はそれらと実質的に同一(例えば、少なくとも90%、95%又は99%同一)の配列である配列を有していてもよい。いくつかの実施形態では、三量体化モチーフを、短いGSリンカーを用いて挿入できる。様々な実施形態において、リンカーは、GSの1から6個のタンデムリピートを有していてもよい。いくつかの実施形態では、His6標識を三量体化モチーフのC末端に付加して、例えばニッケルカラムを使用することによって、タンパク質精製を容易にできる。
【0064】
配列番号4から28に示されるGPポリペプチドの具体例に加えて、本発明の人工のエボラウイルスのGPの配列はまた、保存的に改変された変異形の配列を含む、これらの配列の1つと実質的に同一であるアミノ酸配列を有する配列を包含する。様々な実施形態において、本発明の人工のエボラウイルスのGPタンパク質は配列番号4から28のいずれかと同一であるアミノ酸配列を有していてもよく、またその例外として異なるエボラウイルス種若しくは株の間でのHR1及びHR2における非保存残基に対する1つ又は複数のアミノ酸残基の置換があってもよく、又は異なるエボラウイルス種若しくは株のGPの配列の非保存領域若しくはモチーフにおける置換があってもよい。
【0065】
EBOV株Mayinga-76(配列番号1)を用いて本明細書に例示されるように、異なるエボラウイルス種及び株由来のGPの配列はすべて、本明細書に記載される戦略に沿って人工のエボラウイルスのGPの配列を生成するために容易に使用できる。本発明に適したエボラウイルスには、EBOV、SUDV、TAFV、BDBV及びRESTVのいずれか並びに所与のエボラウイルス種のいずれかの株が含まれる。本発明のいくつかの実施形態では、人工のエボラウイルスのGPタンパク質はキメラである。これらのキメラエボラウイルスのGPタンパク質又は免疫原ポリペプチドは、複数のエボラウイルス種又は同じエボラウイルス種の複数の株に由来する異なるサブユニット又はドメインを有するキメラGPの配列を有していてもよい。例えば、キメラ操作エボラウイルスのGPの配列中のGP1及びGP2サブユニット配列は2つの異なるエボラウイルス種(例えば、EBOV由来のGP2及びSUDV若しくはTAFV由来のGP1)又は同じエボラウイルス種の2つの異なる株(例えば、2つの異なるEBOV株)に由来し得る。
【0066】
5つの異なるエボラウイルス種の多くのGPの配列及び所与のエボラウイルス種の多数の異なる株が当技術分野で公知である。例えば、そのような配列情報は、ロスアラモス国立研究所(LANL)によって維持されるエボラデータベース及びウイルス病原体リソース(ViPR)などの他のエボラウイルス関連データベースから容易に得ることができる。例えば、Kuiken et al., Nucleic Acids Res. 40: D587-92, 2012; Pickett et al., Nucleic Acids Res. 40: D593-98, 2012; 及びSwetha et al., Adv Bioinformatics. 2016: 1673284を参照されたい。確かに、異なるエボラウイルス種のGPの配列と同じエボラウイルス種の異なる株のGPの配列との間にはかなりの程度のばらつきがある。しかしながら、上記のように、一定数の保存された残基及びモチーフが全てのエボラウイルス種においてHR1及びHR2に存在し、これらは、変異又は改変が本発明の人工のGPタンパク質に導入される場所となる。本発明の人工のエボラウイルスのGPタンパク質では、改変のための適切な残基の決定は容易であり、配列アラインメントを行い当技術分野で公知の保存されたエボラウイルスのGPモチーフ及び残基も考慮することで行われる。例えばLeroy et al., J. General Virol. 83: 67?73, 2002; Arslan et al., Bioinformatics. 32: 151-154, 2017;Wec et al., Cell 169: 878?890, 2017; Jun et al., FEMS Microbiol Rev. 39: 764?778, 2015;Pappalardo et al., Sci. Rep. 6: 23743, 2016;及びRuedas et al., J. Virol. 91: e00392-17, 2017を参照されたい。他のエボラウイルス種及び株のいずれか又は異なる株若しくは種の組み合わせに基づく人工のエボラウイルスのGPの配列は、すべて、EBOV GP配列(配列番号1)について本明細書に例示されるものと同じ戦略を使用して作製できる。
【0067】
以下に詳述するように、人工のエボラウイルスのGPタンパク質は様々な手段を介して提示プラットフォーム(例えば、ナノ粒子又はVLP)とコンジュゲートを形成できる。好ましくは、コンジュゲート形成が共有結合、例えば、タンパク質融合又は挿入を介して達成される。いくつかの好ましい実施形態では、タンパク質配列がリンカー配列を介して提示プラットフォーム配列と融合される。様々な実施形態では、安定性又は抗原性を改善するために、人工のエボラウイルスのGPタンパク質又はコンジュゲートを形成する相手に他の改変を行うこともできる。
【0068】
本発明の種々の人工のエボラウイルスのGP分子は、本明細書に例示されるプロトコール又は当技術分野で周知の方法に従って得るか又は生成できる。例えば、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Press, N.Y., (3rd ed., 2000);及びBrent et al., Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, Inc. (ringbou ed., 2003)を参照されたい。組換え発現(例えば、本明細書に詳細に記載されているHEK293F細胞中)により、タンパク質は、通常実施される手順のいずれかよって精製できる。例えば、Guide to Protein Purification, Ed. Deutscher, Meth. Enzymol. 185, Academic Press, San Diego, 1990;及びScopes, Protein Purification: Principles and Practice, Springer Verlag, New York, 1982を参照されたい。実質的な精製は、他のタンパク質又は細胞成分からの精製を意味する。実質的に精製されたタンパク質は、純度が少なくとも60%、70%、80%、90%、95%又は98%である。一旦精製された後、人工のエボラウイルスのGPタンパク質の抗原性及び他の特性もまた、標準的な方法、例えば、既知のbNAb及び非NAbを用いた抗原プロファイリング、示差走査熱量測定(DSC)、電子顕微鏡法、ELISAによる結合分析、バイオレイヤー干渉法(BLI)、表面プラズモン共鳴(SPR)及び本明細書に例示される共結晶解析によって容易に検査できる。
IV. 足場を付与したエボラウイルスのGPワクチン組成物
【0069】
本発明は、本明細書に記載の人工のエボラウイルスのGPタンパク質を提示又は組み込む異種性の足場を有するエボラウイルスのGPベースのワクチン組成物を提供する。任意の異種性の足場を使用して、本発明のワクチンの構築において人工のエボラウイルスのGPタンパク質を提示できる。これらには、ナノ粒子、ウイルス様粒子、タンパク質担体(例えば、Fc、KLH、BSA、破傷風トキソイド及びジフテリアトキソイドなどの免疫グロブリン鎖又はドメイン)並びに様々な化学的足場が含まれる。いくつかの実施形態では、バクテリオファージQβVLP及びナノ粒子などのウイルス様微粒子(VLP)を使用できる。いくつかの好ましい実施形態において、人工のエボラウイルスのGPタンパク質を提示又は提示するための異種性の足場はナノ粒子である。様々なナノ粒子プラットフォームを、本発明のワクチン組成物の生成に用いることができる。一般に、本発明において使用されるナノ粒子は、単一のサブユニットの複数のコピーによって形成される必要がある。ナノ粒子は典型的には球状であり及び/又は回転対称性(例えば、3回軸のものや5回軸のもの)を有し、例えば、本明細書に例示される二十面体構造を有する。加えて又は代替的に、粒子サブユニットのアミノ末端は3回軸に対して露出し、近接していなければならず、3つのアミノ末端の間隔はエボラウイルスのGPタンパク質のカルボキシル末端の間隔とよく一致しなければならない。いくつかの好ましい実施形態では、免疫原は約20nm以下の直径(通常、12、24又は60個のサブユニットで組み立てられる)及び粒子表面上の3回軸を有する自己組織化性ナノ粒子を含む。
【0070】
いくつかの好ましい実施形態では、人工のエボラウイルスのGPタンパク質が本明細書に例示されるように、E2p、I3-01v9及びフェリチン(FR)から誘導される自己組織化性ナノ粒子などの自己組織化性ナノ粒子上に提示される。E2pはバチルス・ステアロサーモフィルス(Bacillus stearothermophilus)から得られたジヒドロリポイルアシルトランスフェラーゼの再設計された変異形であり、熱安定性を有する60量体のナノ粒子に自己組織化することが示されている。例えば、He et al., Nat. Commun. 7:12041, 2016を参照されたい。同様に、I3-01は、超安定ナノ粒子に自己組織化できる人工のタンパク質である。例えば、Hsia et al., Nature 535, 136-139, 2016を参照されたい。ここでは、例示として、I3-01、I3-01v9の改変されたものを使用する。フェリチンは、すべての動物、細菌及び植物に見られる球状タンパク質である。フェリチンの球状形態は、約17から20kDaの分子量を有するポリペプチドである単量体サブユニットタンパク質(単量体フェリチンサブユニットとも呼ばれる)から構成される。本明細書に例示されるE2p、I3-01v9及びフェリチンナノ粒子サブユニットのアミノ酸配列は、各々配列番号36から38に示される。元の配列と比較して、配列番号36に示されるE2p配列は以下の配列で強調されるように、残基92位にAla置換を含む。いくつかの他の適切なナノ粒子配列の配列もまた、当技術分野において公知である。例えば、WO2017/192434、WO2019/089817及びWO19/241483を参照されたい。様々な実施形態において、本発明のエボラウイルスナノ粒子ワクチンはこれらの公知のナノ粒子のいずれか並びにそれらの保存的に改変された変異形又はそれらと実質的に同一(例えば、少なくとも90%、95%又は99%同一)の配列を有する変異形を使用できる。
【0071】
E2pサブユニット配列(配列番号36)
AAAKPATTEGEFPETREKMSGIRRAIAKAMVHSKHTAPHVTLMDEADVTKLVAHRKKFKAIAAEKGIKLTFLPYVVKALVSALREYPVLNTAIDDETEEIIQKHYYNIGIAADTDRGLLVPVIKHADRKPIFALAQEINELAEKARDGKLTPGEMKGASCTITNIGSAGGQWFTPVINHPEVAILGIGRIAEKPIVRDGEIVAAPMLALSLSFDHRMIDGATAQKALNHIKRLLSDPELLLM
【0072】
I3-01v9サブユニット配列(配列番号37)
MKMEELFKKHKIVAVLRANSVEEAKMKALAVFVGGVHLIEITFTVPDADTVIKELSFLKELGAIIGAGTVTSVEQCRKAVESGAEFIVSPHLDEEISQFCKEKGVFYMPGVMTPTELVKAMKLGHTILKLFPGEVVGPQFVKAMKGPFPNVKFVPTGGVNLDNVCEWFKAGVLAVGVGSALVKGTIAEVAAKAAAFVEKIRGCTE
【0073】
フェリチン配列(配列番号38)
DIIKLLNEQVNKEMNSSNLYMSMSSWCYTHSLDGAGLFLFDHAAEEYEHAKKLIIFLNENNVPVQLTSISAPEHKFEGLTQIFQKAYEHEQHISESINNIVDHAIKSKDHATFNFLQWYVAEQHEEEVLFKDILDKIELIGNENHGLYLADQYVKGIAKSRK
【0074】
これらの例示されたナノ粒子配列に加えて、当技術分野で公知の多くの他のナノ粒子又はVLPもまた、本発明の実施において使用され得る。これらには、例えば、Aquifex aeolicusのルマジン合成酵素、Thermotoga Maritimaのエンカプセリン、Myxococcus xanthusのエンカプセリン、バクテリオファージQβウイルスの粒子、フロックハウスウイルス(FHV)の粒子、オルセーウイルス粒子及び伝染性ファブリキウス嚢病ウイルス(IBDV)粒子が含まれる。本発明のナノ粒子ワクチンの提示プラットフォームとして使用され得る他の分子としては、例えば、以下のPDB IDを有する分子が挙げられる:1JIG(炭疽菌Bacillus anthracis由来の12量体Dlp-2)、1UVH(スメグマ菌Mycrobacterium smegmatis由来の12量体DPS)、2YGD(24量体の眼水晶体シャペロンαB-クリスタリン)、3CS0(24量体DegP24)、3MH6及び3MH7(24量体HtrAプロテアーゼ)、3PV2(12量体HtrAホモログDegQ WT)、4A8C(大腸菌E. Coli.由来の12量体DegQ)、4A9g(大腸菌E. Coli.由来の24量体DegQ)、4EVE(ヘリコバクターピロリ株YS29由来の12量体HP-NAP)及び4GQU(Mycobacterium tuberculosis由来の24量体HisB)。
【0075】
様々な実施形態において、ナノ粒子プラットフォーム上に提示されるエボラウイルスのGPタンパク質は任意選択で、上記の三量体化モチーフ、例えば、フォールドン又はSHPを有していてもよい。いくつかのエボラウイルスナノ粒子ワクチン組成物は、提示された免疫原の安定性及び抗原性をさらに増強するように機能する他の構造成分をさらに有していてもよい。いくつかの実施形態では、ロッキングタンパク質領域を例えば、ナノ粒子サブユニットのC末端に共有結合的に融合させることによって、ナノ粒子コンストラクトに挿入できる。ロッキングドメインは、疎水性(ファンデルワールス)接触、水素結合及び/又は塩橋などの特異的相互作用を介して界面を形成できる任意の二量体タンパク質であり得る。ロッキングドメインの選択に関する一般的なガイダンス及び具体的な例は当技術分野、例えば、PCT2019/036917に記載されている。いくつかの例示的な実施形態では、本発明のエボラウイルスナノ粒子ワクチンで使用されるロッキングドメインが本明細書で例示されるロッキングドメインLD4又はLD7を有していてもよい。
【0076】
いくつかの実施形態では、本発明のエボラウイルスナノ粒子ワクチンが強い(robust)T細胞応答を促進し、B細胞の発達をbNAbに向けるためのT細胞エピトープを有してもよい。T細胞エピトープはナノ粒子表面上の免疫原ポリペプチドの提示に影響を与えない限り、他の構造成分に関して任意の位置に配置できる。当技術分野で公知の任意のT細胞エピトープ配列又はペプチドが、本発明の実施において使用できる。それらは、MHCクラスIIエピトープを有し、免疫付与の際にCD4+及びCD8+のT細胞を効果的に活性化できる任意のポリペプチド配列、例えば、CD4+のヘルパーT細胞を活性化するヘルパーTエピトープを含む。例えば、Alexander et al., Immunity 1, 751-761,1994;Ahlers et al., J. Clin. Invest. 108:1677?1685, 2001;Fraser et al., Vaccine 32, 2896-2903, 2014;De Groot et al., Immunol. Cell Biol. 8:255?269, 2002;及びGene Ther. 21: 225?232, 2014を参照されたい。いくつかの実施形態では、エボラウイルスナノ粒子ワクチンコンストラクトに挿入されるT細胞エピトープはユニバーサルパンDRエピトープ(PADRE)のペプチドである。例えば、Hung et al., Mole. Ther. 15: 1211-19, 2007;Wu et al., J. Biomed. Sci. 17: 88, 2010;及び Bissati et al., npj Vaccines 2: 24, 2017を参照されたい。好適なT細胞エピトープの他の実例、例えば、D及びTpDエピトープも当技術分野で明らかにされている(Fraser et al., Vaccine 32, 2896-2903, 2014)。いくつかの実施形態では、使用されるPADREペプチドが配列AKFVAAWTLKAAA(配列番号31)、その保存的に改変された変異形又はそれらと実質的に同一(例えば、少なくとも90%、95%又は99%同一)の配列を含む。これらの実施形態のいくつかにおいて、PADREエピトープはロッキングドメイン、例えば、本明細書に例示されるLD4又はLD7のC末端に挿入される。これらの実施形態のいくつかにおいて、GS制限部位は、LDとPADREエピトープとの間に付加され得る。
【0077】
本発明の足場を付与されたエボラウイルスワクチン組成物は標準的な組換え技術及び本明細書に記載の方法(例えば、本明細書の実施例を参照されたい)及び/又は当技術分野で記載されている他の方法、例えば、He et al., Nat. Comm. 7, 12041, 2016;Kong et al., Nat. Comm. 7, 12040, 2016;He et al., Sci Adv. 4(11):eaau6769, 2018;並びにPCT公開WO2017/192434, WO2019/089817及びWO19/241483に従って作製できる。様々な実施形態において、人工のエボラウイルスのGPタンパク質のいずれかを提示するナノ粒子はエボラウイルスのGPポリペプチドをナノ粒子のサブユニット(例えば、E2pサブユニット)に融合させることによって構築できる。好ましくは、エボラウイルスのGPポリペプチドのC末端がナノ粒子サブユニットのN末端に融合される。いくつかの実施形態では、短いペプチドスペーサーを使用して、エボラウイルスのGPポリペプチドとナノ粒子とを連結できる。例えば、スペーサーは本明細書に例示されるように、GS制限部位及び/又はより長いG4S(配列番号43)又は(G4S)2(配列番号42)リンカーを有していてもよい。本発明のいくつかの実施形態は、ナノ粒子サブユニット配列、ロッキングドメイン配列及び/又はT細胞エピトープの様々な組合せを有する、人工のエボラウイルスのGPタンパク質GP?muc-WL2P2タンパク質(配列番号17)を提示するナノ粒子に関する。このようなナノ粒子ワクチン組成物のいくつかの具体的な例はGPΔmuc-WL2P2-AS-G4S-フェリチン、GP△muc-WL2P2-AS-E2p-LD4-PADRE,
及びGP△muc-WL2P2-AS-(G4S)2-I3-01v9-LD7-PADREである。
【0078】
一旦構築されると、ナノ粒子提示エボラウイルスのGPポリペプチドの抗原性及び構造的完全性は標準的なアッセイ、例えば、抗体結合アッセイ、バイオレイヤー干渉法及びネガティブ染色電子顕微鏡法(EM)を介して容易に分析できる。ここで例示するように、様々な核融合分子は全て自己組織化してナノ粒子になり、エボラウイルスGPタンパク質の免疫原性エピトープを示す。強力な(robust)中和抗体応答を誘発することによって、これらのナノ粒子は、広範囲のエボラウイルス感染に対する個体のワクチン接種に有用である。
V. ポリヌクレオチド及び発現コンストラクト
【0079】
本発明の人工のエボラウイルスのGPタンパク質及びナノ粒子ワクチン組成物は本明細書に記載の様々な構造成分の操作が可能なように連結されたコード配列を含む発現コンストラクト(すなわち、発現ベクター)を最初に生成することによって作製されることが典型的である。したがって、いくつかの関連する態様では、本発明は人工のエボラウイルスのGPタンパク質又はポリペプチドをコードし、さらに本明細書に記載の人工のエボラウイルスのGPポリペプチドが提示されるナノ粒子のサブユニットをコードするポリヌクレオチド(DNA又はRNA)を提供し、またそのようなポリヌクレオチドを有する発現ベクターを提供し、またエボラウイルスのGPの免疫原ポリペプチドを産生するための宿主細胞(例えば、本明細書に例示されるHEK293F細胞及びExpiCHO細胞)を提供し、またワクチン組成物を提供する。またポリヌクレオチドによってコードされた、又はベクターから発現される融合ポリペプチドもまた本発明に含まれる。
【0080】
ポリヌクレオチド及び関連ベクターは、標準的な分子生物学技術又は本明細書に例示されるプロトコールを用いて容易に作製できる。例えば、クローニング、遺伝子導入、すなわち一過性遺伝子発現又は安定な遺伝子導入のされた細胞株を得るための一般的なプロトコールは当技術分野の、例えば、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Press, N.Y., (3rd ed., 2000);及びBrent et al., Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, Inc. (ringbou edition, 2003に記載されている。PCRによるポリヌクレオチド配列への変異の導入は例えば、PCR Technology: Principles and Applications for DNA Amplification, H.A. Erlich (Ed.), Freeman Press, NY, NY, 1992;PCR Protocols: A Guide to Methods and Applications, Innis et al. (Ed.), Academic Press, San Diego, CA, 1990;Mattila et al., Nucleic Acids Res. 19:967, 1991;及びEckert et al., PCR Methods and Applications 1:17, 1991に記載されている。
【0081】
特定のベクターの選択は、融合ポリペプチドの意図される使用に依存する。例えば、選択されたベクターは、その細胞型が原核生物であろうと真核生物であろうと、所望の細胞型における融合ポリペプチドの発現を誘導できなければならない。多くのベクターは、原核生物ベクター複製及び機能するように連結された真核生物の遺伝子配列の発現の両方を可能にする配列を含む。本発明に有用なベクターは自律的に複製でき、すなわち、ベクターは染色体外に存在し、その複製は、必ずしも宿主細胞のゲノムの複製に直接関連しない。あるいは、ベクターの複製が宿主の染色体DNAの複製に関連してもよく、例えば、ベクターはレトロウイルスベクターによって及び安定にトランスフェクトされた細胞株において達成されるように、宿主細胞の染色体に組み込まれてもよい。ウイルスベース及び非ウイルス発現ベクターの両方を使用して、哺乳動物宿主細胞中で免疫原を産生できる。非ウイルスベクター及び系はプラスミド、典型的にはタンパク質又はRNAを発現するための発現カセットを有するエピソームベクター及びヒト人工染色体を含む(例えば、Harrington et al., Nat. Genet. 15:345, 1997を参照されたい)。有用なウイルスベクターとしては、レンチウイルス又は他のレトロウイルスに基づくベクター、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、サイトメガロウイルス、ヘルペスウイルス、SV40に基づくベクター、パピローマウイルス、HBP、エプスタインバーウイルス、ワクシニアウイルスベクター及びセムリキフォレストウイルス(SFV)が挙げられる。例えばBrent et al., supra; Smith, Annu. Rev. Microbiol. 49:807, 1995;及びRosenfeld et al., Cell 68:143, 1992を参照されたい。
【0082】
融合ポリペプチドを発現させるために使用される特定のベクターに応じて、種々の公知の細胞又は細胞株を本発明の実施に使用できる。宿主細胞は、本発明の融合物を運ぶ組換えベクターが導入され得る任意の細胞であってよく、ここで、ベクターは融合ポリペプチドの発現を駆動することが可能であり、本発明に有用である。それは、原核細胞、例えば、多数の細菌株のいずれかであってもよく又は真核細胞、例えば、酵母若しくは他の真菌細胞、昆虫若しくは両生類の細胞又は哺乳動物細胞、例えば、齧歯類、サル若しくはヒトの細胞であってもよい。本発明の融合ポリペプチドを発現する細胞は、初代培養細胞であってもよく又は樹立細胞株であってもよい。したがって、本明細書に例示される細胞株(例えば、CHO細胞)に加えて、当技術分野で周知の能力を有するいくつかの他の宿主細胞株もまた、本発明の実施において使用され得る。これらには、例えば、様々なCos細胞株、HeLa細胞、HEK293、AtT20、BV2及びN18細胞、骨髄腫細胞株、形質転換B細胞及びハイブリドーマが含まれる。
【0083】
ポリペプチドを発現させるための哺乳動物組織細胞培養物の使用は例えば、Winnacker, From Genes to Clones, VCH Publishers, N.Y., N.Y., 1987において一般的に論じられている。融合ポリペプチド発現ベクターは、当業者に公知の多くの適切な方法のいずれかによって、選択された宿主細胞に導入され得る。融合ポリペプチドをコードするベクターを哺乳動物細胞に導入するために、使用される方法は、ベクターの形態に依存する。プラスミドベクターの場合、融合ポリペプチド配列をコードするDNAは例えば、脂質媒介トランスフェクション(「リポフェクション」)、DEAE-デキストラン媒介トランスフェクション、エレクトロポレーション又はリン酸カルシウム沈殿を含む、多数のトランスフェクション方法のいずれかによって導入され得る。これらの方法は例えば、上記のBrent et alに詳述されている。多種多様な形質転換細胞及び非形質転換細胞又は初代細胞の一過性トランスフェクションに適したリポフェクション試薬及び方法が広く利用可能であり、リポフェクションを、培養中の真核細胞、特に哺乳動物細胞にコンストラクトを導入する魅力的な方法である。例えば、LipofectAMINE(商標)(Life Technologies)又はLipoTaxi(商標)(Stratagene)キットが利用可能である。リポフェクションのための試薬及び方法を提供する他の会社には、Bio-Rad Laboratories、Clontech、Glen Research、Life Technologies、JBL Scientific、MBI Fermentas、PanVera、Promega、Quantum Biotechnologies、Sigma-Aldrich及びWako Chemicals USAがある。
【0084】
組換え融合ポリペプチドの長期の高収率生産のためには、安定した発現が好ましい。ウイルス複製起点を含む発現ベクターを使用するのではなく、宿主細胞を適切な発現制御エレメント(例えば、プロモーター、エンハンサー、配列、転写ターミネーター、ポリアデニル化部位など)によって制御される融合ポリペプチドをコードする配列と選択マーカーとで形質転換され得る。組換えベクター中の選択マーカーは選択に対する耐性を付与し、細胞がベクターをそれらの染色体に安定に組み込むことを可能にする。一般的に使用される選択マーカーには、アミノグリコシドG-418に対する耐性を付与するneo(Colberre-Garapin、et al、JMolBiol.、150:1、1981);及びハイグロマイシンに対する耐性を付与するhygro(Santerre et al、Gene、30: 147、1984)が挙げられる。適切な選択を通じて、形質転換細胞は、融合ポリペプチドコード配列の組み込まれたコピーを有することができる。
VI. 医薬組成物及び治療用途
【0085】
本発明は、医薬の又は免疫原性のある組成物及びこれらに関連する方法であって人工のエボラウイルスのGPの配列及びGPタンパク質を提示するナノ粒子を使用するものを提供するが、本明細書に記載される通りであり、エボラウイルス感染の予防及び治療ためのものである。いくつかの実施形態において、人工のエボラウイルスのGPの配列(ポリペプチド又はポリヌクレオチド配列)又は人工のタンパク質を提示するナノ粒子は、医薬組成物に含まれる。医薬組成物は、治療用製剤又は予防用製剤のいずれかであり得る。典型的には、組成物が1つ以上の薬学的に許容されるビヒクル及び任意に他の治療成分(例えば、抗生物質又は抗ウイルス薬)をさらに含む。様々な薬学的に許容される添加剤もまた、組成物中で使用できる。
【0086】
本発明の医薬組成物のいくつかは、ワクチンである。ワクチン組成物については、適切なアジュバントをさらに含めることができる。好適なアジュバントとしては、例えば、水酸化アルミニウム、レシチン、フロイントアジュバント、MPL(商標)及びIL-12が挙げられる。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される人工のエボラウイルスのGPの配列及び関連ワクチンが徐放性(controlled-release)又は持続放出(time-release)製剤として製剤化できる。これは、徐放性ポリマーを有する組成物中で又はマイクロカプセル化送達系若しくは生体接着性ゲルを介して達成できる。種々の医薬組成物は、当技術分野で周知の標準的な手順に従って調製できる。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences, 19.sup.th Ed., Mack Publishing Company, Easton, Pa., 1995;Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems, J. R. Robinson, ed., Marcel Dekker, Inc., New York, 1978); U.S. Pat. Nos. 4,652,441 and 4,917,893;U.S. Pat. Nos. 4,677,191 and 4,728,721;及びU.S. Pat. No. 4,675,189を参照されたい。
【0087】
本発明の治療方法は本発明の人工のエボラウイルスのGPの配列又はポリペプチドを有する医薬組成物を、エボラウイルス感染症(例えば、EBOV感染症)を有するか又は発症するリスクがある対象に投与することを含む。いくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物が対象におけるエボラウイルス感染を治療するため又はエボラウイルス種若しくは株に対する防御免疫応答を誘発するための治療的又は予防的適用において使用される。例えば、組成物を対象に投与して、エボラウイルス種に対する免疫応答を誘導し、例えば、エボラウイルス種に対する広範な中和抗体の産生を誘導できる。エボラウイルス感染症を発症するリスクがある対象には、本発明のワクチン組成物を投与して、ウイルス感染症に対する予防的防御を提供できる。特定の対象及び条件に応じて、本発明の医薬組成物は当業者に公知の様々な投与様式、例えば、筋肉内、皮下、静脈内、動脈内、関節内、腹腔内又は非経口経路によって対象に投与できる。一般に、医薬組成物は、選択された疾患若しくは状態又はその1つ若しくは複数の症状を予防、阻害及び/又は改善するのに十分な時間及び条件下で、そのような治療を必要とする対象に投与される。エボラウイルス曝露又は感染の症状には、例えば、肝臓の炎症、食欲減退、疲労、腹痛、黄疸、インフルエンザ様症状、かゆみ、筋肉痛、関節痛、断続的な軽度の発熱、睡眠障害、悪心、消化不良、認知変化、抑うつ性頭痛及び気分変化が含まれる。
【0088】
典型的には、本発明の免疫原性組成物がエボラウイルスに対する免疫応答を誘導するのに十分な量で投与される。治療的適用のために、組成物は、治療上の有効量に相当する、本明細書に記載の人工のエボラウイルスのGPの配列又はナノ粒子ワクチン組成物を含有する。予防的適用のために、組成物は、予防上の有効量に相当する、人工のエボラウイルスのGPの配列又はGPタンパク質を提示するナノ粒子を含有する。ポリペプチド免疫原又はナノ粒子組成物の適切な量は治療又は予防される特定の疾患又は状態、対象の重症度、年齢及び特定の対象の他の個人的属性(例えば、対象の健康の一般状態及び対象の免疫系の頑健性)に基づいて決定できる。有効量の決定はさらに、動物モデル研究とその後のヒト臨床試験を追加的な指針として、また対象における対象疾患の症状若しくは病態の発生又は重症度を有意に低減する投与プロトコールを指針とする。
【0089】
予防的適用のために、免疫原性組成物は、任意の症状に先立って、例えば感染に先立って提供される。免疫原性組成物の予防的投与は、任意のその後の感染を予防又は改善するのに役立つ。したがって、いくつかの実施形態では、処置される対象は、例えばエボラウイルスへの曝露又は曝露の可能性のために、エボラウイルス感染を有するか又はエボラウイルス感染を発症するリスクがある対象である。開示される治療組成物を治療上の有効量投与後、対象は、エボラウイルス感染、エボラウイルス感染に関連する症状又はその両方についてモニターされ得る。
【0090】
治療的適用のために、免疫原性組成物は、疾患又は感染症の症状の発症時又は発症後、例えばエボラウイルス感染症の症状の発症後又はエボラウイルス感染症の診断後に提供される。したがって、免疫原性組成物はエボラウイルスへの予期される曝露の前に提供でき、これにより感染及び/又は関連する疾患症状の予期される重症度、期間又は程度を減弱させることを、ウイルスへの曝露後若しくは曝露の疑いの後に又は感染の実際の開始後に実施できる。
【0091】
本発明の医薬組成物は、エボラウイルス感染を治療又は予防するための当技術分野で公知の他の薬剤と組み合わせることができる。医薬組成物及び公知の抗ウイルス剤の投与は、同時に又は連続してのいずれかであり得る。
【0092】
本発明の人工のエボラウイルスのGPタンパク質又はナノ粒子ワクチンを有する医薬組成物は、キットの構成要素として提供できる。必要に応じてそのようなキットには、包装、説明書及び様々な他の試薬、例えば緩衝液、基質、抗体又はリガンド、例えば対照抗体又はリガンド、さらに検出試薬を含む構成要素が追加される。キットには、任意に取扱説明書を追加できる。
VII. いくつかの人工のエボラウイルスのGPポリペプチド又は構造モチーフの配列
EBOV GP外部ドメイン配列(GenBank AAG40168.1)(配列番号1):
MGVTGILQLP RDRFKRTSFFLWVIILFQRTFSI-PLGVIHN STLQVSDVDK LVCRDKLSST NQLRSVGLNL EGNGVATDVP SATKRWGFRS GVPPKVVNYE AGEWAENCYN LEIKKPDGSE CLPAAPDGIR GFPRCRYVHK VSGTGPCAGD FAFHKEGAFF LYDRLASTVI YRGTTFAEGV VAFLILPQAK KDFFSSHPLR EPVNATEDPS SGYYSTTIRY QATGFGTNET EYLFEVDNLT YVQLESRFTP QFLLQLNETI YTSGKRSNTT GKLIWKVNPE IDTTIGEWAF WETKKNLTRK IRSEELSFTV VSNGAKNISG QSPARTSSDP GTNTTTEDHK IMASENSSAM VQVHSQGREA AVSHLTTLAT ISTSPQSLTT KPGPDNSTHN TPVYKLDISE ATQVEQHHRR TDNDSTASDT PSATTAAGPP KAENTNTSKS TDFLDPATTT SPQNHSETAG NNNTHHQDTG EESASSGKLG LITNTIAGVA GLITGGRRTR REAIVNAQPK CNPNLHYWTT QDEGAAIGLA WIPYFGPAAE GIYIEGLMHN QDGLICGLRQ LANETTQALQ LFLRATTELR TFSILNRKAI DFLLQRWGGT CHILGPDCCI EPHDWTKNIT DKIDQIIHDFVD - KTLPDQGD NDNWWTGWRQ WIPAGIGVTG VIIAVIALFC ICKFVF
短縮型EBOV GPECTO 配列(リーダー/MLD/MPERの欠失)(配列番号2):
PLGVIHNSTLQVSDVDKLVCRDKLSSTNQLRSVGLNLEGNGVATDVPSATKRWGFRSGVPPKVVNYEAGEWAENCYNLEIKKPDGSECLPAAPDGIRGFPRCRYVHKVSGTGPCAGDFAFHKEGAFFLYDRLASTVIYRGTTFAEGVVAFLILPQAKKDFFSSHPLREPVNATEDPSSGYYSTTIRYQATGFGTNETEYLFEVDNLTYVQLESRFTPQFLLQLNETIYTSGKRSNTTGKLIWKVNPEIDTTIGEWAFWETKKNLTRKIRSEELSFTVVSTHHQDTGEESASSGKLGLITNTIAGVAGLITGGRRTRREAIVNAQPKCNPNLHYWTTQDEGAAIGLAWIPYFGPAAEGIYIEGLMHNQDGLICGLRQLANETTQALQLFLRATTELRTFSILNRKAIDFLLQRWGGTCHILGPDCCIEPHDWTKNITDKIDQIIHDFVD
リーダーレスGPΔmuc(リーダー/MLD/MPER欠失+T42AのGPECTO)(配列番号3)
PLGVIHNSALQVSDVDKLVCRDKLSSTNQLRSVGLNLEGNGVATDVPSATKRWGFRSGVPPKVVNYEAGEWAENCYNLEIKKPDGSECLPAAPDGIRGFPRCRYVHKVSGTGPCAGDFAFHKEGAFFLYDRLASTVIYRGTTFAEGVVAFLILPQAKKDFFSSHPLREPVNATEDPSSGYYSTTIRYQATGFGTNETEYLFEVDNLTYVQLESRFTPQFLLQLNETIYTSGKRSNTTGKLIWKVNPEIDTTIGEWAFWETKKNLTRKIRSEELSFTVVSTHHQDTGEESASSGKLGLITNTIAGVAGLITGGRRTRREAIVNAQPKCNPNLHYWTTQDEGAAIGLAWIPYFGPAAEGIYIEGLMHNQDGLICGLRQLANETTQALQLFLRATTELRTFSILNRKAIDFLLQRWGGTCHILGPDCCIEPHDWTKNITDKIDQIIHDFVD
リーダーレスGPΔmuc-W615L(配列番号4)
PLGVIHNSALQVSDVDKLVCRDKLSSTNQLRSVGLNLEGNGVATDVPSATKRWGFRSGVPPKVVNYEAGEWAENCYNLEIKKPDGSECLPAAPDGIRGFPRCRYVHKVSGTGPCAGDFAFHKEGAFFLYDRLASTVIYRGTTFAEGVVAFLILPQAKKDFFSSHPLREPVNATEDPSSGYYSTTIRYQATGFGTNETEYLFEVDNLTYVQLESRFTPQFLLQLNETIYTSGKRSNTTGKLIWKVNPEIDTTIGEWAFWETKKNLTRKIRSEELSFTVVSTHHQDTGEESASSGKLGLITNTIAGVAGLITGGRRTRREAIVNAQPKCNPNLHYWTTQDEGAAIGLAWIPYFGPAAEGIYIEGLMHNQDGLICGLRQLANETTQALQLFLRATTELRTFSILNRKAIDFLLQRWGGTCHILGPDCCIEPHDLTKNITDKIDQIIHDFVD
リーダーレスGPΔmuc-2WPZ(612/615二重変異+2WPZ伸長)(配列番号5)
PLGVIHNSALQVSDVDKLVCRDKLSSTNQLRSVGLNLEGNGVATDVPSATKRWGFRSGVPPKVVNYEAGEWAENCYNLEIKKPDGSECLPAAPDGIRGFPRCRYVHKVSGTGPCAGDFAFHKEGAFFLYDRLASTVIYRGTTFAEGVVAFLILPQAKKDFFSSHPLREPVNATEDPSSGYYSTTIRYQATGFGTNETEYLFEVDNLTYVQLESRFTPQFLLQLNETIYTSGKRSNTTGKLIWKVNPEIDTTIGEWAFWETKKNLTRKIRSEELSFTVVSTHHQDTGEESASSGKLGLITNTIAGVAGLITGGRRTRREAIVNAQPKCNPNLHYWTTQDEGAAIGLAWIPYFGPAAEGIYIEGLMHNQDGLICGLRQLANETTQALQLFLRATTELRTFSILNRKAIDFLLQRWGGTCHILGPDCCIEGHDFTKQLEDKVEENLSKVYHNENEVARLKKLVGER
リーダーレスGPΔmuc-L(残基637位へのC末端の伸長)(配列番号6)
PLGVIHNSALQVSDVDKLVCRDKLSSTNQLRSVGLNLEGNGVATDVPSATKRWGFRSGVPPKVVNYEAGEWAENCYNLEIKKPDGSECLPAAPDGIRGFPRCRYVHKVSGTGPCAGDFAFHKEGAFFLYDRLASTVIYRGTTFAEGVVAFLILPQAKKDFFSSHPLREPVNATEDPSSGYYSTTIRYQATGFGTNETEYLFEVDNLTYVQLESRFTPQFLLQLNETIYTSGKRSNTTGKLIWKVNPEIDTTIGEWAFWETKKNLTRKIRSEELSFTVVSTHHQDTGEESASSGKLGLITNTIAGVAGLITGGRRTRREAIVNAQPKCNPNLHYWTTQDEGAAIGLAWIPYFGPAAEGIYIEGLMHNQDGLICGLRQLANETTQALQLFLRATTELRTFSILNRKAIDFLLQRWGGTCHILGPDCCIEPHDWTKNITDKIDQIIHDFVDKTLPD
リーダーレスGPΔmuc-Ext(残基643位へのC末端の伸長)(配列番号7)
PLGVIHNSALQVSDVDKLVCRDKLSSTNQLRSVGLNLEGNGVATDVPSATKRWGFRSGVPPKVVNYEAGEWAENCYNLEIKKPDGSECLPAAPDGIRGFPRCRYVHKVSGTGPCAGDFAFHKEGAFFLYDRLASTVIYRGTTFAEGVVAFLILPQAKKDFFSSHPLREPVNATEDPSSGYYSTTIRYQATGFGTNETEYLFEVDNLTYVQLESRFTPQFLLQLNETIYTSGKRSNTTGKLIWKVNPEIDTTIGEWAFWETKKNLTRKIRSEELSFTVVSTHHQDTGEESASSGKLGLITNTIAGVAGLITGGRRTRREAIVNAQPKCNPNLHYWTTQDEGAAIGLAWIPYFGPAAEGIYIEGLMHNQDGLICGLRQLANETTQALQLFLRATTELRTFSILNRKAIDFLLQRWGGTCHILGPDCCIEPHDWTKNITDKIDQIIHDFVDKTLPDQGDNDN
リーダーレスGPΔmuc-W615L-L-(別名GPΔmuc-WL2-フォールドン)(配列番号8)
PLGVIHNSALQVSDVDKLVCRDKLSSTNQLRSVGLNLEGNGVATDVPSATKRWGFRSGVPPKVVNYEAGEWAENCYNLEIKKPDGSECLPAAPDGIRGFPRCRYVHKVSGTGPCAGDFAFHKEGAFFLYDRLASTVIYRGTTFAEGVVAFLILPQAKKDFFSSHPLREPVNATEDPSSGYYSTTIRYQATGFGTNETEYLFEVDNLTYVQLESRFTPQFLLQLNETIYTSGKRSNTTGKLIWKVNPEIDTTIGEWAFWETKKNLTRKIRSEELSFTVVSTHHQDTGEESASSGKLGLITNTIAGVAGLITGGRRTRREAIVNAQPKCNPNLHYWTTQDEGAAIGLAWIPYFGPAAEGIYIEGLMHNQDGLICGLRQLANETTQALQLFLRATTELRTFSILNRKAIDFLLQRWGGTCHILGPDCCIEPHDLTKNITDKIDQIIHDFVDKTLPDASGYIPEAPRDGQAYVRKDGEWVLLSTFL
リーダーレスGPΔmuc-W615L-P1(T576P)(配列番号9)
PLGVIHNSALQVSDVDKLVCRDKLSSTNQLRSVGLNLEGNGVATDVPSATKRWGFRSGVPPKVVNYEAGEWAENCYNLEIKKPDGSECLPAAPDGIRGFPRCRYVHKVSGTGPCAGDFAFHKEGAFFLYDRLASTVIYRGTTFAEGVVAFLILPQAKKDFFSSHPLREPVNATEDPSSGYYSTTIRYQATGFGTNETEYLFEVDNLTYVQLESRFTPQFLLQLNETIYTSGKRSNTTGKLIWKVNPEIDTTIGEWAFWETKKNLTRKIRSEELSFTVVSTHHQDTGEESASSGKLGLITNTIAGVAGLITGGRRTRREAIVNAQPKCNPNLHYWTTQDEGAAIGLAWIPYFGPAAEGIYIEGLMHNQDGLICGLRQLANETTQALQLFLRAPTELRTFSILNRKAIDFLLQRWGGTCHILGPDCCIEPHDLTKNITDKIDQIIHDFVD
リーダーレスGPΔmuc-W615L-P2(T577P)(配列番号10)
PLGVIHNSALQVSDVDKLVCRDKLSSTNQLRSVGLNLEGNGVATDVPSATKRWGFRSGVPPKVVNYEAGEWAENCYNLEIKKPDGSECLPAAPDGIRGFPRCRYVHKVSGTGPCAGDFAFHKEGAFFLYDRLASTVIYRGTTFAEGVVAFLILPQAKKDFFSSHPLREPVNATEDPSSGYYSTTIRYQATGFGTNETEYLFEVDNLTYVQLESRFTPQFLLQLNETIYTSGKRSNTTGKLIWKVNPEIDTTIGEWAFWETKKNLTRKIRSEELSFTVVSTHHQDTGEESASSGKLGLITNTIAGVAGLITGGRRTRREAIVNAQPKCNPNLHYWTTQDEGAAIGLAWIPYFGPAAEGIYIEGLMHNQDGLICGLRQLANETTQALQLFLRATPELRTFSILNRKAIDFLLQRWGGTCHILGPDCCIEPHDLTKNITDKIDQIIHDFVD
リーダーレスGPΔmuc-W615L-P3(E578P)(配列番号11)
PLGVIHNSALQVSDVDKLVCRDKLSSTNQLRSVGLNLEGNGVATDVPSATKRWGFRSGVPPKVVNYEAGEWAENCYNLEIKKPDGSECLPAAPDGIRGFPRCRYVHKVSGTGPCAGDFAFHKEGAFFLYDRLASTVIYRGTTFAEGVVAFLILPQAKKDFFSSHPLREPVNATEDPSSGYYSTTIRYQATGFGTNETEYLFEVDNLTYVQLESRFTPQFLLQLNETIYTSGKRSNTTGKLIWKVNPEIDTTIGEWAFWETKKNLTRKIRSEELSFTVVSTHHQDTGEESASSGKLGLITNTIAGVAGLITGGRRTRREAIVNAQPKCNPNLHYWTTQDEGAAIGLAWIPYFGPAAEGIYIEGLMHNQDGLICGLRQLANETTQALQLFLRATTPLRTFSILNRKAIDFLLQRWGGTCHILGPDCCIEPHDLTKNITDKIDQIIHDFVD
リーダーレスGPΔmuc-W615L-P4(L579P)(配列番号12)
PLGVIHNSALQVSDVDKLVCRDKLSSTNQLRSVGLNLEGNGVATDVPSATKRWGFRSGVPPKVVNYEAGEWAENCYNLEIKKPDGSECLPAAPDGIRGFPRCRYVHKVSGTGPCAGDFAFHKEGAFFLYDRLASTVIYRGTTFAEGVVAFLILPQAKKDFFSSHPLREPVNATEDPSSGYYSTTIRYQATGFGTNETEYLFEVDNLTYVQLESRFTPQFLLQLNETIYTSGKRSNTTGKLIWKVNPEIDTTIGEWAFWETKKNLTRKIRSEELSFTVVSTHHQDTGEESASSGKLGLITNTIAGVAGLITGGRRTRREAIVNAQPKCNPNLHYWTTQDEGAAIGLAWIPYFGPAAEGIYIEGLMHNQDGLICGLRQLANETTQALQLFLRATTEPRTFSILNRKAIDFLLQRWGGTCHILGPDCCIEPHDLTKNITDKIDQIIHDFVD
リーダーレスGPΔmuc-W615L-P5(R580P)(配列番号13)
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リーダーレスGPΔmuc-W615L-P6(T581P)(配列番号14)
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リーダーレスGPΔmuc-W615L-P7(F582P)(配列番号15)
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リーダーレスGPΔmuc-W615L-P8(S583P)(配列番号16)
PLGVIHNSALQVSDVDKLVCRDKLSSTNQLRSVGLNLEGNGVATDVPSATKRWGFRSGVPPKVVNYEAGEWAENCYNLEIKKPDGSECLPAAPDGIRGFPRCRYVHKVSGTGPCAGDFAFHKEGAFFLYDRLASTVIYRGTTFAEGVVAFLILPQAKKDFFSSHPLREPVNATEDPSSGYYSTTIRYQATGFGTNETEYLFEVDNLTYVQLESRFTPQFLLQLNETIYTSGKRSNTTGKLIWKVNPEIDTTIGEWAFWETKKNLTRKIRSEELSFTVVSTHHQDTGEESASSGKLGLITNTIAGVAGLITGGRRTRREAIVNAQPKCNPNLHYWTTQDEGAAIGLAWIPYFGPAAEGIYIEGLMHNQDGLICGLRQLANETTQALQLFLRATTELRTFPILNRKAIDFLLQRWGGTCHILGPDCCIEPHDLTKNITDKIDQIIHDFVD
リーダーレスGPΔmuc-W615L-L-P2(配列番号17)
PLGVIHNSALQVSDVDKLVCRDKLSSTNQLRSVGLNLEGNGVATDVPSATKRWGFRSGVPPKVVNYEAGEWAENCYNLEIKKPDGSECLPAAPDGIRGFPRCRYVHKVSGTGPCAGDFAFHKEGAFFLYDRLASTVIYRGTTFAEGVVAFLILPQAKKDFFSSHPLREPVNATEDPSSGYYSTTIRYQATGFGTNETEYLFEVDNLTYVQLESRFTPQFLLQLNETIYTSGKRSNTTGKLIWKVNPEIDTTIGEWAFWETKKNLTRKIRSEELSFTVVSTHHQDTGEESASSGKLGLITNTIAGVAGLITGGRRTRREAIVNAQPKCNPNLHYWTTQDEGAAIGLAWIPYFGPAAEGIYIEGLMHNQDGLICGLRQLANETTQALQLFLRATPELRTFSILNRKAIDFLLQRWGGTCHILGPDCCIEPHDLTKNITDKIDQIIHDFVDKTLPD
リーダーレスGPΔmuc-W615L-L-P2+制限部位「AS」及びフォールドン(配列番号18)
PLGVIHNSALQVSDVDKLVCRDKLSSTNQLRSVGLNLEGNGVATDVPSATKRWGFRSGVPPKVVNYEAGEWAENCYNLEIKKPDGSECLPAAPDGIRGFPRCRYVHKVSGTGPCAGDFAFHKEGAFFLYDRLASTVIYRGTTFAEGVVAFLILPQAKKDFFSSHPLREPVNATEDPSSGYYSTTIRYQATGFGTNETEYLFEVDNLTYVQLESRFTPQFLLQLNETIYTSGKRSNTTGKLIWKVNPEIDTTIGEWAFWETKKNLTRKIRSEELSFTVVSTHHQDTGEESASSGKLGLITNTIAGVAGLITGGRRTRREAIVNAQPKCNPNLHYWTTQDEGAAIGLAWIPYFGPAAEGIYIEGLMHNQDGLICGLRQLANETTQALQLFLRATPELRTFSILNRKAIDFLLQRWGGTCHILGPDCCIEPHDLTKNITDKIDQIIHDFVDKTLPDASGYIPEAPRDGQAYVRKDGEWVLLSTFL
リーダーレスGPΔmuc-W615L-L-P2+制限部位「AS」+G4Sリンカー+1TD0(配列番号19)
PLGVIHNSALQVSDVDKLVCRDKLSSTNQLRSVGLNLEGNGVATDVPSATKRWGFRSGVPPKVVNYEAGEWAENCYNLEIKKPDGSECLPAAPDGIRGFPRCRYVHKVSGTGPCAGDFAFHKEGAFFLYDRLASTVIYRGTTFAEGVVAFLILPQAKKDFFSSHPLREPVNATEDPSSGYYSTTIRYQATGFGTNETEYLFEVDNLTYVQLESRFTPQFLLQLNETIYTSGKRSNTTGKLIWKVNPEIDTTIGEWAFWETKKNLTRKIRSEELSFTVVSTHHQDTGEESASSGKLGLITNTIAGVAGLITGGRRTRREAIVNAQPKCNPNLHYWTTQDEGAAIGLAWIPYFGPAAEGIYIEGLMHNQDGLICGLRQLANETTQALQLFLRATPELRTFSILNRKAIDFLLQRWGGTCHILGPDCCIEPHDLTKNITDKIDQIIHDFVDKTLPDASGGGGSEVRIFAGNDPAHTATGSSGISSPTPALTPLMLDEATGKLVVWDGQKAGSAVGILVLPLEGTETALTYYKSGTFATEAIHWPESVDEHKKANAFAGSALSHAA
リーダーレスGPΔmuc-W615L-L-P4(別名GPΔmuc-WL2P4)(配列番号20)
PLGVIHNSALQVSDVDKLVCRDKLSSTNQLRSVGLNLEGNGVATDVPSATKRWGFRSGVPPKVVNYEAGEWAENCYNLEIKKPDGSECLPAAPDGIRGFPRCRYVHKVSGTGPCAGDFAFHKEGAFFLYDRLASTVIYRGTTFAEGVVAFLILPQAKKDFFSSHPLREPVNATEDPSSGYYSTTIRYQATGFGTNETEYLFEVDNLTYVQLESRFTPQFLLQLNETIYTSGKRSNTTGKLIWKVNPEIDTTIGEWAFWETKKNLTRKIRSEELSFTVVSTHHQDTGEESASSGKLGLITNTIAGVAGLITGGRRTRREAIVNAQPKCNPNLHYWTTQDEGAAIGLAWIPYFGPAAEGIYIEGLMHNQDGLICGLRQLANETTQALQLFLRATTEPRTFSILNRKAIDFLLQRWGGTCHILGPDCCIEPHDLTKNITDKIDQIIHDFVDKTLPD
リーダーレスGPΔmuc-W615L-L-P4+制限部位「AS」及びフォールドン(配列番号21)
PLGVIHNSALQVSDVDKLVCRDKLSSTNQLRSVGLNLEGNGVATDVPSATKRWGFRSGVPPKVVNYEAGEWAENCYNLEIKKPDGSECLPAAPDGIRGFPRCRYVHKVSGTGPCAGDFAFHKEGAFFLYDRLASTVIYRGTTFAEGVVAFLILPQAKKDFFSSHPLREPVNATEDPSSGYYSTTIRYQATGFGTNETEYLFEVDNLTYVQLESRFTPQFLLQLNETIYTSGKRSNTTGKLIWKVNPEIDTTIGEWAFWETKKNLTRKIRSEELSFTVVSTHHQDTGEESASSGKLGLITNTIAGVAGLITGGRRTRREAIVNAQPKCNPNLHYWTTQDEGAAIGLAWIPYFGPAAEGIYIEGLMHNQDGLICGLRQLANETTQALQLFLRATTEPRTFSILNRKAIDFLLQRWGGTCHILGPDCCIEPHDLTKNITDKIDQIIHDFVDKTLPDASGYIPEAPRDGQAYVRKDGEWVLLSTFL
リーダーレスGPΔmuc-W615L-L-P4+制限部位「AS」+G4Sリンカー+1TD0(配列番号22)
PLGVIHNSALQVSDVDKLVCRDKLSSTNQLRSVGLNLEGNGVATDVPSATKRWGFRSGVPPKVVNYEAGEWAENCYNLEIKKPDGSECLPAAPDGIRGFPRCRYVHKVSGTGPCAGDFAFHKEGAFFLYDRLASTVIYRGTTFAEGVVAFLILPQAKKDFFSSHPLREPVNATEDPSSGYYSTTIRYQATGFGTNETEYLFEVDNLTYVQLESRFTPQFLLQLNETIYTSGKRSNTTGKLIWKVNPEIDTTIGEWAFWETKKNLTRKIRSEELSFTVVSTHHQDTGEESASSGKLGLITNTIAGVAGLITGGRRTRREAIVNAQPKCNPNLHYWTTQDEGAAIGLAWIPYFGPAAEGIYIEGLMHNQDGLICGLRQLANETTQALQLFLRATTEPRTFSILNRKAIDFLLQRWGGTCHILGPDCCIEPHDLTKNITDKIDQIIHDFVDKTLPDASGGGGSEVRIFAGNDPAHTATGSSGISSPTPALTPLMLDEATGKLVVWDGQKAGSAVGILVLPLEGTETALTYYKSGTFATEAIHWPESVDEHKKANAFAGSALSHAA
リーダーレスGPΔmuc-SS1(Y534C/F153C,rCβ-Cβ=3.819A)(配列番号23)
PLGVIHNSALQVSDVDKLVCRDKLSSTNQLRSVGLNLEGNGVATDVPSATKRWGFRSGVPPKVVNYEAGEWAENCYNLEIKKPDGSECLPAAPDGIRGFPRCRYVHKVSGTGPCAGDFACHKEGAFFLYDRLASTVIYRGTTFAEGVVAFLILPQAKKDFFSSHPLREPVNATEDPSSGYYSTTIRYQATGFGTNETEYLFEVDNLTYVQLESRFTPQFLLQLNETIYTSGKRSNTTGKLIWKVNPEIDTTIGEWAFWETKKNLTRKIRSEELSFTVVSTHHQDTGEESASSGKLGLITNTIAGVAGLITGGRRTRREAIVNAQPKCNPNLHYWTTQDEGAAIGLAWIPCFGPAAEGIYIEGLMHNQDGLICGLRQLANETTQALQLFLRATTELRTFSILNRKAIDFLLQRWGGTCHILGPDCCIEPHDWTKNITDKIDQIIHDFVD
リーダーレスGPΔmuc-SS2(A538C/G91C,rCβ-Cα=3.994A)(配列番号24)
PLGVIHNSALQVSDVDKLVCRDKLSSTNQLRSVGLNLEGNGVATDVPSATKRWGFRSCVPPKVVNYEAGEWAENCYNLEIKKPDGSECLPAAPDGIRGFPRCRYVHKVSGTGPCAGDFAFHKEGAFFLYDRLASTVIYRGTTFAEGVVAFLILPQAKKDFFSSHPLREPVNATEDPSSGYYSTTIRYQATGFGTNETEYLFEVDNLTYVQLESRFTPQFLLQLNETIYTSGKRSNTTGKLIWKVNPEIDTTIGEWAFWETKKNLTRKIRSEELSFTVVSTHHQDTGEESASSGKLGLITNTIAGVAGLITGGRRTRREAIVNAQPKCNPNLHYWTTQDEGAAIGLAWIPYFGPCAEGIYIEGLMHNQDGLICGLRQLANETTQALQLFLRATTELRTFSILNRKAIDFLLQRWGGTCHILGPDCCIEPHDWTKNITDKIDQIIHDFVD
リーダーレスGPΔmuc-SS3(T520C/A575C,rCβ-Cβ=4.008A)(配列番号25)
PLGVIHNSALQVSDVDKLVCRDKLSSTNQLRSVGLNLEGNGVATDVPSATKRWGFRSGVPPKVVNYEAGEWAENCYNLEIKKPDGSECLPAAPDGIRGFPRCRYVHKVSGTGPCAGDFAFHKEGAFFLYDRLASTVIYRGTTFAEGVVAFLILPQAKKDFFSSHPLREPVNATEDPSSGYYSTTIRYQATGFGTNETEYLFEVDNLTYVQLESRFTPQFLLQLNETIYTSGKRSNTTGKLIWKVNPEIDTTIGEWAFWETKKNLTRKIRSEELSFTVVSTHHQDTGEESASSGKLGLITNTIAGVAGLITGGRRTRREAIVNAQPKCNPNLHYWTCQDEGAAIGLAWIPYFGPAAEGIYIEGLMHNQDGLICGLRQLANETTQALQLFLRCTTELRTFSILNRKAIDFLLQRWGGTCHILGPDCCIEPHDWTKNITDKIDQIIHDFVD
リーダーレスGPΔmuc-SS4(I532C/G157C,rCβ-Cα=4.202A)(配列番号26)
PLGVIHNSALQVSDVDKLVCRDKLSSTNQLRSVGLNLEGNGVATDVPSATKRWGFRSGVPPKVVNYEAGEWAENCYNLEIKKPDGSECLPAAPDGIRGFPRCRYVHKVSGTGPCAGDFAFHKECAFFLYDRLASTVIYRGTTFAEGVVAFLILPQAKKDFFSSHPLREPVNATEDPSSGYYSTTIRYQATGFGTNETEYLFEVDNLTYVQLESRFTPQFLLQLNETIYTSGKRSNTTGKLIWKVNPEIDTTIGEWAFWETKKNLTRKIRSEELSFTVVSTHHQDTGEESASSGKLGLITNTIAGVAGLITGGRRTRREAIVNAQPKCNPNLHYWTTQDEGAAIGLAWCPYFGPAAEGIYIEGLMHNQDGLICGLRQLANETTQALQLFLRATTELRTFSILNRKAIDFLLQRWGGTCHILGPDCCIEPHDWTKNITDKIDQIIHDFVD
リーダーレスGPΔmuc-SS5(D522C/A575C,rCβ-Cβ=4.410A)(配列番号27)
PLGVIHNSALQVSDVDKLVCRDKLSSTNQLRSVGLNLEGNGVATDVPSATKRWGFRSGVPPKVVNYEAGEWAENCYNLEIKKPDGSECLPAAPDGIRGFPRCRYVHKVSGTGPCAGDFAFHKEGAFFLYDRLASTVIYRGTTFAEGVVAFLILPQAKKDFFSSHPLREPVNATEDPSSGYYSTTIRYQATGFGTNETEYLFEVDNLTYVQLESRFTPQFLLQLNETIYTSGKRSNTTGKLIWKVNPEIDTTIGEWAFWETKKNLTRKIRSEELSFTVVSTHHQDTGEESASSGKLGLITNTIAGVAGLITGGRRTRREAIVNAQPKCNPNLHYWTTQCEGAAIGLAWIPYFGPAAEGIYIEGLMHNQDGLICGLRQLANETTQALQLFLRCTTELRTFSILNRKAIDFLLQRWGGTCHILGPDCCIEPHDWTKNITDKIDQIIHDFVD
リーダーレスGPΔmuc-SS6(K56C/G599C,rCβ-Cα=4.597A)(配列番号28)
PLGVIHNSALQVSDVDCLVCRDKLSSTNQLRSVGLNLEGNGVATDVPSATKRWGFRSGVPPKVVNYEAGEWAENCYNLEIKKPDGSECLPAAPDGIRGFPRCRYVHKVSGTGPCAGDFAFHKEGAFFLYDRLASTVIYRGTTFAEGVVAFLILPQAKKDFFSSHPLREPVNATEDPSSGYYSTTIRYQATGFGTNETEYLFEVDNLTYVQLESRFTPQFLLQLNETIYTSGKRSNTTGKLIWKVNPEIDTTIGEWAFWETKKNLTRKIRSEELSFTVVSTHHQDTGEESASSGKLGLITNTIAGVAGLITGGRRTRREAIVNAQPKCNPNLHYWTTQDEGAAIGLAWIPYFGPAAEGIYIEGLMHNQDGLICGLRQLANETTQALQLFLRATTELRTFSILNRKAIDFLLQRWGCTCHILGPDCCIEPHDWTKNITDKIDQIIHDFVD
フォールドン(配列番号29)
GYIPEAPRDGQAYVRKDGEWVLLSTFL:
1TD0(配列番号30)
EVRIFAGNDPAHTATGSSGISSPTPALTPLMLDEATGKLVVWDGQKAGSAVGILVLPLEGTETALTYYKSGTFATEAIHWPESVDEHKKANAFAGSALSHAA:
GCNロイシンジッパーモチーフ(配列番号34)
KQLED KVEEN LSKVY HNENE VARLK KLVGE R
ロッキングドメインLD4(配列番号39): FSEEQKKALDLAFYFDRRLTPEWRRYLSQRLGLNEEQIERWFRRKEQQIGWSHPQFEK
ロッキングドメインLD7(配列番号40): SPAVDIGDRLDELEKALEALSAEDGHDDVGQRLESLLRRWNSRRAD
EBOV GPのリーダー配列(配列番号41)
MGVTGILQLPRDRFKRTSFFLWVIILFQRTFSI
【実施例】
【0093】
以下の実施例は本発明を説明するために提供されるが、本発明を限定するものではない。
実施例1 EBOV GP三量体の標識フリー免疫親和性精製
【0094】
EBOV GPは、高度にグリコシル化されたムチン様ドメイン(MLD)を有し、GP1及びGP2におけるグリカンキャップ及び中和エピトープを遮蔽する。高分解能結晶構造を生成するZaire EBOV GPの可溶性ムチン欠失型(GPΔmuc)(Zhao et al., Nature 535: 169-172, 2016)をGPの準安定性を調査するための基本コンストラクトとして使用した。HIV-1ワクチン研究では、bNAb2G12及びPGT145(67、68)に基づく免疫アフィニティークロマトグラフィー(IAC)カラムが天然型のエンベロープ(Env)三量体の精製のために広く使用されている。2G12は単一のgp120上のグリカンパッチを標的とするが、PGT145は三量体頂点に結合し、閉じた三量体を、部分的に開いた状態で誤って折り畳まれたEnvから分離できる。これらの2つのbNAbカラムはまた、HIV-1のgp140を提示するNPを精製するために使用されている。このようなGP特異的抗体カラムは、EBOVワクチン研究では報告されていない。最近、Cortiらは、ヒト生存者から2つの強力なNAb、mAb114及びmAb100を同定した(Science 351, 1339-1342, 2016)。Misasiらは、受容体結合部位(RBS)を標的とするmAb114及び2つのGPサブユニットのGP1/GP2界面及び内部融合ループ(IFL)と相互作用するmAb100による中和の構造的基盤を解明した(Science 351, 1343-1346, 2016)。
【0095】
ここでは、IACカラムとしてのmAb114及びmAb100の有用性を調べた。C末端の三量体化モチーフであるフォールドンを有するGPΔmucコンストラクト及び有さないGPΔmucコンストラクトを、250mlのHEK293F細胞中で一過的に発現させ、抗体カラムで精製した後、Superdex 200 10/300 GLカラム及びブルーネイティブポリアクリルアミドゲル電気泳動(BN-PAGE)を使用してサイズ排除クロマトグラフィーを行った。mAb114では両方のGPΔmucサンプルがSECプロファイルで凝集体(から9ml)、二量体(から12ml)及び単量体(から13.5-14ml)ピークを示したが、GPΔmucフォールドンのみがSECで目に見える三量体ピーク(から10.5-11ml)を示し、BNゲル上で440 kDよりわずかに小さいかすかなバンドを示した。mAb100精製後、GPΔmucの収率は全体的に低かったが、GPΔmuc-フォールドンは高い三量体純度を示し、二量体及び単量体ピークを有していなかった。一貫して、GPΔmuc-フォールドンは,BNゲル上の単一の三量体バンドを残した。まとめると、mAb114及びmAb100カラムの両方をGP精製に使用できるが、mAb100はGPエピトープの四次構造wp認識するため、天然型に近いGPの三量体を精製するのに有効なIAC法とすることができる。2つの可溶性のGPΔmucコンストラクト間の三量体の収率の著しい差は、三量体解離の強い傾向を示唆する。
実施例2 EBOV GP準安定性に及ぼすHR2ストークの影響
【0096】
EBOV GPは長く伸長したHR2ストークを有する。高分解能におけるGPΔmuc構造においてさえ、HR2ストークは依然としてデータベース中のほとんどのコイルドコイルよりヘリカル構造の含有量が少なく、から15aa対から30aaとなっており、C末端に向かって巻きが戻されるため、HR2において固有の不安定性のあることが示唆される。最近、Kingらは、治療用ヒトmAb、MR191(Cell Host Microbe 23, 101-109.e104, 2018)との複合体中のMARV GPΔmuc三量体の構造を分解能3.17Åで解き明かした。意外なことに、MARV HR2ストークではコイルドコイルが良好に形成されており、3つの折り畳み軸に沿ってカノニカルな側鎖のパッキングが見られる。この差異の原因を同定するために、ウイルス病原体データベース及び分析リソース(ViPR)からEBOV及びMARV GP配列を得た。全部で274のEBOV GPと87のMARV GPの配列保存解析に使用し、各々CX6CCモチーフとHR2ストークにまたがる領域を解析し、EBOVではaa 601から632、MARVではaa 602から633であった。EBOV中のW615又はMARV中のL616を除いて、ほとんどの内向きアミノ酸は保存されていた。実際、構造解析により、このポジションに決定的な違いがあることが判明し、EBOV GP(PDB: 5JQ3)における3つのW615がコイルドコイルの頸部において広角三角形を形成しており、Cα距離が11.1ÅでありCβ距離が9.0Åであった。対照的に、より小さくより疎水性のL616では、MARV GP(PDB: 6BP2)において、Cα距離が10.5Åであり、及びCβ距離が8.3Åであることが観察された。
【0097】
この知見に基づいて、W615L変異がEBOV GP三量体を安定化する可能性があると仮定した。ストークの効果をさらに調べるために、3つのGPΔmucコンストラクトを作製したが、aa 617-632をGCN4ロイシンジッパー(PDB:2WPZ,aa 3-33)で置き換え、C末端を637及び643まで伸長させ、新たに同定されたbNAbエピトープ(King et al., Nat Commun 10, 1788, 2019)であって、HR2及び膜近位外部領域(MPER)にまたがるものを含んでおり、各々「L」及び「Ext」と称した(
図3A)。二重変異P612G/W615Fを、CX
6CCモチーフとコイルドコイルとの間のGPΔmuc-2WPZコンストラクトに導入することで、この部位における任意の構造的歪みを減少させた。これらのコンストラクトを、250mlの293F細胞における一過性発現及びmAb114精製後のSEC及びBN-PAGEによって特性を分析した。実際、3つの設計すべてにおいて三量体の収量が増加し、GPΔmuc-2WPZはSECにおいて最も目に見える三量体ピークを示した(
図3B)。一貫して、三量体バンドは、GPΔmuc-L及び-Extの強度がより低かったものの、BNゲル上の3つのコンストラクトすべてについて観察された(
図3C、左)。mAb100精製の際、3つのGPΔmuc変異形はすべて、野生型のGPΔmucよりも濃い三量体バンドを呈したことで(
図3C、右)、HR2ストークがGPの三量体の安定性に重要であるという考えが支持された。
【0098】
次に、我々は、GPΔmuc-W615L-L-フォールドン又は単にGPΔmuc-WL
2-フォールドンと命名された単一のコンストラクトにおいて、W615L変異及び「L」伸長を組み合わせた。このコンストラクトはGPΔmuc-フォールドンと共に、1リットルの293F細胞中で一過性に発現され、mAb100カラムを用いて精製された後、HiLoad Superdex 200 16/600 GLカラムで精製した。3回の製造試験において、GPΔmuc-WL
2-フォールドンは一貫して野生型コンストラクトより優れており、SECプロファイルにおいて2倍高い三量体ピークを示し、SEC後に三量体収量が約2.6倍高かった(1.3mg対0.5mg)。熱安定性は、2つの精製GPの三量体について示差走査熱量測定(DSC)によって評価した。ストーク安定化三量体の熱変性中間点(Tm)は野生型三量体のそれより3℃高かった(67℃対64℃)。一貫して、ストーク安定化はまた、開始点(Ton)を52.4℃から62.5℃に上昇させ、野生型三量体(3.8℃対5.1℃)よりも狭い半値幅のピーク(ΔT
1/2)が見られた。酵素免疫測定法(ELISA)において、4種のmAb100/SECで精製したEBOV GP三量体について抗原性を評価した(
図3D-E)。塩基を標的とする3つのNAb(KZ52、c2G4及びc4G7)、2つのヒトNAb-mAb100(IFL)及びmAb114(RBS)、グリカンキャップを標的とする非NAb(c13C6)並びにHR2-MPERエピトープを標的とする4つの汎エボラウイルスbNAb(BDBV223)及びIFL(ADI-15878、ADI-15946及びCA45)を含む10種の抗体のパネルを使用した。GPΔmuc三量体はGP
ECTO三量体と比較して抗体の結合性が顕著に改善されており、また最大半量の実効濃度(EC
50)では最大7.6倍の差異があり、MLDがGPを抗体認識から効果的に遮蔽できることを示した。2つのHR2ストーク改変はmAb114によるRBSの認識とCA45による及びIFLによる認識とを各々さらに増強したが、EC
50値は中程度の変化を示したに過ぎなかった。EC
50の約40%の減少が、BDBV223へのGP?muc-WL
2-フォールドンの結合について観察された。まとめると、2つのHR2ストーク変異により、EBOV GPの三量体の収率、熱安定性及び抗原性を効果的に改善できる。
実施例3 EBOV GP準安定性に及ぼすHR1
Cベンドの影響
【0099】
HR1CがEBOV GPの準安定性に必須であると仮定した。野生型EBOV GPのHR1Cは融合前に最適化されたHIV-1のEnvにおける切り詰められたHR1Nと長さが等しい(8 aa)ので、EBOV GPにおける準安定性はHR1Cの長さに影響されるのではなく、おそらく別の解決策を必要になる可能性が高い。このように、HR1Cのプロリン変異(P1-8)は、HR1Cのベンドを固定し、EBOV GP三量体の安定性を改善すると仮定した。
【0100】
この可能性を調べるために、各々がHR1Cにプロリン変異を有するが、C末端L伸長及びフォールドンを有さない8つのGPΔmuc-W615L変異形を実験的に検証した。全てのコンストラクトを250mlの293F細胞中で一過性に発現させ、全てのGP種を捕捉するmAb114カラムを用いて精製した。HR1Cのほとんどの位置のプロリン変異は、SECプロファイルで11 ml付近に顕著な三量体ピークを示すT577P(P2)とL579P(P4)を除いてGP種の構成にほとんど影響を与えなかった。別の実験では、8つのコンストラクト全てを250mlの293F細胞中で一過性に発現させ、mAb100カラムを用いて精製した。P2及びP4のみが三量体の収率を測定可能であったが、P4に顕著に高いSECピークが観察され、良好に形成された三量体に相当するものであった。また、mAb100で精製したGPをBN-PAGEにより分析し、P2及びP4の三量体のバンドを示した。全体として、T577P変異P2は三量体の収率を実質的に増大させることができ、一方、L579P変異P4は、それほど顕著な影響を示さなかった。
【0101】
次に、T577P変異(P2)をGPΔmuc-WL2-フォールドンコンストラクトに組み込み、GPΔmuc-WL2P2-フォールドンと命名されたコンストラクトを得た。このコンストラクトを1リットルの293F細胞中で一過性に発現させ、HiLoad Superdex 200 16/600 GLカラムでSEC特性評価のためにmAb100カラムを用いて精製した。3回の実際のランにおいてGPΔmuc-WL2P2-フォールドンはGPΔmuc-WL2-フォールドン、野生型のGPΔmuc-フォールドンよりも各々2倍、4倍の三量体ピークを示し、SEC後の平均収量は2.6mgであった。55.5から62.0mlのSEC範囲で収集されたタンパク質を、BN-PAGEによって分析したところ、全ての画分にわたって不純物の痕跡のない三量体バンドが示された。GPΔmuc-WL2P2-フォールドンの熱安定性を、mAb100及びSEC精製後にDSCにより測定した。
【0102】
予想外に、2つの転移ピークがサーモグラムで観察され、一方は61.6℃のより低いTmで記録され、他方は68.2℃のより高いTmで記録された。この目的のために、GPΔmuc-WL
2P
4-フォールドンと呼ばれるL579P変異(P
4)を有する第2のコンストラクトもまた、DSCによって評価した。Tmが67.0℃のサーモグラムでは1つのピークしか観察されなかったが、ピークの開始時にわずかに広がることから加熱時に同様のアンフォールディングの挙動が示唆された。このように、DSCはプロリンで剛性化されたHR1
Cのベンドの複雑性を明らかにしたが、GPの熱安定性を低下させる代償として三量体の収率を増大させる可能性がある。GPΔmuc-WL
2P
2-フォールドンの抗原性は、ELISA法(
図3F-G)とバイオレイヤー干渉法(BLI)を用いて、同じ10種類の抗体を用いて評価した。T577P変異(P
2)はGPΔmuc-WL
2-フォールドン(
図3G)に関して、ほとんどの抗体に対するGP結合を改善するようであり、HR2-MPERを標的とするbNAb BDBV223ではEC
50の40%の減少が観察された。BLIプロファイルは野生型と再設計されたGPΔmuc-フォールドン三量体の間でほとんど区別できなかったが、いずれも速いオンレートと平坦な解離曲線を備えており、最低濃度(12.5nM)での2倍高いシグナルがGPΔmuc-WL
2P
2-フォールドンのbNAb BDBV223への結合において観察され、ELISAデータと一致した。
【0103】
以上より、HR1CのEBOV GPの準安定性が重要なこと及び予想外にプロリン変異に対するHR1Cの感受性のあることが示された。近年、RuttenらはHR1Cにおけるプロリン変異をK588F変異と共に試験し、フィロウイルスGPの三量体を安定化させた(Cell Rep. 30, 4540?50, 2020)。T577P変異形では三量体収量の増加という類似のパターンが観察されたが、報告された熱安定性データは我々のDSC測定と一致しないようであった。フィロウイルス-細胞融合におけるHR1Cの役割及びそのGP安定性への影響を十分に理解するためには、さらなる研究が必要である。
実施例4 ジスルフィド結合変異によるGP安定化
【0104】
EBOV GPはGP1及びGP2を連結する内因性SS結合(C53-C609)をすでに含むので、我々はGPの間でのSS結合が三量体形成を促進し、「閉じた」三量体においてGPを固定するために使用され得るかどうかを調べた。高分解能EBOV GPΔmuc(PDB: 5JQ3)に基づいて、Cα-Cαの間隔が4.72Åのカットオフ内にあるGPの間でのアミノ酸対を同定した。合計9対を同定した。目視検査後、既存のSS結合又は疎水性クラスターと干渉する可能性があるため、3対を除去した。残りの6対は、IFL-head群(SS1/2/4)、IFL-NHR群(SS5)及びHR2群(SS6)の3群に分けた。6つのGPΔmuc-SSコンストラクトを設計し、次いで、250mlの293F細胞における一過性発現及びmAb114精製後のSECによって特性を分析した。多様なSECプロファイルが観察されたが、SS2が実質的な三量体ピークを示しており、BNゲル上の440kDよりわずかに低いバンドで確認された。また、mAb100精製したものをBN-PAGEによって分析し、SS2、SS3及びSS5について三量体バンドを観察した。抗原性は、6つの抗体を用いてELISAにおける3つのSSの変異形について評価した。3つ全てのSS変異形は野生型のGPΔmucよりも優れていたが、SS2は塩基(base)及びIFLを標的とするNAbに対してより高い親和性を示した。まとめると、適切に配置されたGPの間でのSS結合は、天然型のような三量体立体配座においてEBOV GPを効果的に安定化できる。
実施例5 再設計されたEBOV GPΔΔmucトリマーの結晶解析
【0105】
ストークとHR1C変異がどのようにEBOV GPに影響するかを理解するために非配位のGPΔmucフォールドン三量体の結晶構造を解析したが、WL2とWL2P2は各々2.3Åと3.2Åであった。いずれのタンパク質も3つの切れ目のあるカリス(聖杯、chalice)のような構造を示し、0.92から1.14ÅのCα二乗平均平方根偏差(r.m.s.d.)を持ち、高分解能の構造(PDB: 5JQ3)に対するものであり、単一サブユニットレベルにおけるものである。WL2P2では、グリカンキャップ(R302-V310)及びHR2ストーク(.I627-D637)において、WL2よりも完全な構造が得られた。WL2P2構造において、グリカンキャップはGP1におけるN238/N257/N268及びGP2におけるN563に見られるグリカン部分でRBSを覆い、一方、WL2構造においてはGP1のN238/N257及びGP2のN563/N618であった。GP1は主にβ鎖からなり、広い半円形の溝を形成し、これによりGP2中のα3ヘリックス及びβ19-β20鎖をクランプする。T577P変異はHR1Cのベンドの立体配座に最小限の影響を及ぼすと思われるが、これは8-aaのセグメントに対してCα r.m.s.d.が0.19Åであると示されていることによる。
【0106】
WL2P2構造では1つのサブユニットのR574、A575及びT576の主鎖カルボニル(CO)基が中程度から強い水素結合を形成したのは、隣り合うサブユニットのR164側鎖の極性基(head groupu)である一方、野生型のGPΔmucでは1つのCO-NHの距離だけが3.5Åのカットオフ内であった。W615L変異は、HR2ストークに目に見える構造的影響を及ぼした。コイルドコイルの上部にあるかさばる内向きのW615がHR2ストークを不安定化し、W615L変異がそのパッキングを改善すると推測した。実際、野生型のGPΔmucにおける2つの隣接するサブユニットのW615間のCα-Cα/Cβ-Cβの間隔は11.1/9.0Åであるが、WL2及びWL2P2では各々10.1/8.0Å及び10.6/8.2Åに減少した。結果として、EBOV HR2のストークのコイルドコイル領域には、もう1つのヘリカルターンが追加され、MARV HR2ストークに似るものとなった。WL2P2構造の「L」伸長はD637について完全にモデル化でき、それはC末端のフォールドンモチーフに固定され良好に秩序化されたループとしてのものであり、完全なHR2ストーク及び部分的なMPERがレンダリングされる。HR2ストークの重ね合わせにより1.46Å、2.05Å及び1.85ÅのCα r.m.s.d.値が得られ、各々EBOV-Mayinga(PDB: 5JQ3)、SUDV(PDB: 3S88)及びBDBV(PDB: 6EA5)GPに関するものであり、この領域におけるある程度の構造的なばらつきが示唆された。
【0107】
次いで、WL2P2構造を、T577P/K588F変異を含む最近報告されたMakona GPΔmuc構造(PDB: 6VKM)と比較した。全部でWL2P2構造の398残基のうち353残基は二重変異形と一致し、Cα r.m.s.d.は0.89Åであった。以前の構造よりも完全に近いカテプシン開裂ループがWL2P2においてモデル化され(aa 197-210対aa 193-213)、このループがIFL上で架橋し、mAb100(42)などのIFLに向けられたNAbと相互作用することを示唆する。さらに、グリカンキャップ(aa 294-310)とHR2ストーク中のβ18ループの電子密度は二重変異形よりも高かった。HR1Cのベンドの場合、WL2P2はより好ましい水素結合パターンを示し、Ca r.m.s.dが0.26Åであった。2つの構造間のIFL領域に対して1.7ÅのCa r.m.s.dを得た。最後に、WL2P2構造を、公知のGP/抗体複合体のパネルにドッキングした。全般的に、WL2P2は、全ての重要なGP-抗体接触を保存している。mAb100/GP複合体は、mAb100が実質的な純度でGP精製のために使用されているので、最も興味深い。Cryo-EMはmAn100軽鎖付近の電子密度をさらに明らかにし、β13-β14ループ(aa 190-210)の部分におそらく対応する(Misari et al., Science 351: 1343-46, 2016)。しかし、この密度は同じ錯体(PDB: 5FHC)の6.7Åの分解能の結晶構造では観察されなかった。WL2P2構造ではH197まで密度が認められ、これはドッキングされたWL2P2/mAb100モデルのmAb100軽鎖の近傍のものと考えられた。まとめると、我々の構造は合理的に設計された変異を検証し、以前の構造では利用できない領域の原子の詳細な姿を提供した。WL2P2構造はまた、三量体収量の増加を潜在的に説明しているが、2ピークからなるサーモグラムの原因はいまだ不明である。
実施例6 多層超安定ナノ粒子上のEBOV GPΔΔmuc三量体の表示
【0108】
自己組織化NPは、ワクチン開発のための組換えVLPの代替物を提供する。我々は、いくつかのタンパク質NPを「多価担体」として試験して、インビボ評価のために再設計されたGPΔmuc三量体を提示した。具体的には、フェリチン(FR)、E2p及びI3-01上のGPΔmuc三量体構造をモデル化し、各々34.5nm、45.9nm及び49.2nmのGPを提示するNPを得た。FR及びE2pのN末端へのGPΔmucのC末端の重ね合わせにより、7.0Å及び5.5ÅのCα r.m.s.d.が得られたが、GPΔmucが各々、短いG4SリンカーでFRにまたリンカーなしでE2pに融合され得ることが示唆された。しかしながら、I3-01サブユニットのN末端間の間隔が大きいため(約50.5Å)、長いリンカーによってGPΔmuc三量体のC末端と連結されなければならいことから、長くて、狭いストークが形成される。計算モデリングに基けば、10-aaの(G4S)2リンカーで十分であり、0.8ÅのCα r.m.s.d.が得られた。ここで、我々は最初に2種のGPΔmuc三量体、野生型及びWL2P2をFR、E2P及びI3-01上に提示するため各々5-aaリンカー、リンカーなし及び10-aaリンカーとした。全ての6つのGP-NPコンストラクトを、100mlのExpiCHO細胞中で一過性に発現させ、続いてmAb100精製を行い、Superose 6 10/300 GLカラムでSECを行った。全般的に、WL2P2は野生型のGPΔmucよりもNP収率及び純度で優れていた。分子量(m.w.)に基づけば、15mlを中心とするSECピークは、まだ組織化されていないGP-NP種かもしれないため、野生型E2p及びI3-01に固有の不安定性が示唆された。mAb100で精製したGPΔmuc-WL2P2を提示するNP試料をネガティブ染色EMによってさらに分析したところ、NPに不純物が混入していた。
【0109】
以前に、我々はリンカーとしてもまた組み込みT細胞としても、広く反応性のある(pan-reactive)T細胞エピトープの使用を披露したが、そこではI3-01(55)に基づくHIV-1のNPコンストラクトの助けになっており、今回も構造的及び機能的成分をさらにこのような大きな60量体に組み込むことができることを示唆している。ここでは、エンジニアリングを介してE2p及びI3-01のNPを安定化させようとした。この目的のために、我々は、二量体ロッキングドメイン(LD)をNPサブユニットのC末端に融合させ、次いでT細胞エピトープをLDのC末端に融合させた。我々はLDが非共有結合性NP形成界面を安定化することができ、T細胞エピトープがNPコアでクラスターを形成してワクチン接種時に強力なT細胞応答を誘発できると仮定した。この仮説を検証するために、我々は、タンパク質データベース(PDB)中の815のホモ二量体から9つのLDを選択した(
図4A)。構造モデリングに基づいて、LD1から7をE2Pについて試験し、5種のLD(4から5及び7から9)をI3-01について試験したところ、すべてGPΔmuc-WL
2P
2を提示した。100mlのExpiCHO細胞における一過性発現及びmAb100精製の後、12種のLDを含有するNP試料をSECによって特性を分析した。特に、LD4及びLD7はNPのピーク(UV
280値)を増加させ、E2p及びI3-01について各々5倍及び2.5倍となり、NPの純度は実質的に改善された。T細胞エピトープであるPADREのさらなる取り込みは、NP収率及び純度を変化させなかったか、わずかな改善しかみられなかった。
【0110】
各60量体について3つの変異形を有する合計7つのGP-NP試料を、BN-PAGEによってさらに分析した。FR及び2つのE2p変異形は良好に形成されたNPに対応する単一の高い分子量(m.w.)のバンドを示したが、野生型E2p及び3つのI3-01試料すべてはゲル上の232-440 kDにさらに低い分子量(m.w.)のバンドを示しており、これは組織化されていないGP-NP種と考えられた。mAb100/SECで精製したGPΔmuc-WL
2P
2-を提示するFR、E2P-LD4-PADRE(E2P-L4P)及びI3-01-LD7-PADRE(I3-01-L7P)の試料を陰性染色EMにより分析した。3つの試料すべてについての高純度NPに加えて、良好に形成されたGPΔmucスパイクのアレイがFR及びE2p-L4P NPの表面上に容易に見られ、SEC及びBN-PAGEと一致していた。抗原性は、同じ抗体パネルに対するELISAによって、これら3つの精製NP試料について評価した(
図4BからC)。個々のWL
2P
2三量体と比較して、3つのNPはエピトープ特異的結合パターンを示した。全体として、NPによる提示はGP1におけるRBS及びグリカンキャップへの抗体結合を改善し、GP1/GP2インターフェース及びGP2ストークにおいて塩基(base)及びIFLを標的とするbNAbへの抗体結合を低減するようであった。この知見から懸念されるのはは、NP提示三量体上のGPの塩基(base)及びIFLにおけるこれらの保存されたbNAbエピトープは、可溶性三量体上と同じようにアクセス可能なわけではない場合があるという懸念を提起した。この目的のために、BLIを実施して、様々なGPエピトープの抗体認識をさらにプローブした(
図4DからG)。GPのモル濃度を比較すると、3つのNPは可溶性三量体よりもかなり高い結合シグナルを示し、結合活性(avidity)効果によるBCRクラスター形成を促進する上でGPを提示するNPがより効果的である可能性を示唆した。しかしながら、FR、E2p-L4P及びI3-01v9-L7Pに基づく3つのNP(
図4H)を、ここでI3-01v9は以前に報告された変異形のI3-01であるが、マウス及びウサギにおけるin vivoでの三量体に関する評価及び比較のために選択した
実施例7 BALB/cマウスにおけるEBOV GP三量体及びNPの免疫原性
【0111】
BALB/cマウスを3週間隔で4回免疫し、3つのEBOV GP/GPΔmuc三量体及び3つのNPに対する免疫原性の最初の測定値(readout)を得た。可溶性のGP
ECTO三量体であるGP-フォールドンは、臨床試験においてEBOVワクチンによって使用される野生型のGP(MLDを伴う)を表すために含むものとした。I3-01v9-L7P群について、マウスを、50μgのmAb100/SEC精製タンパク質の代わりに20μgのmAb100-精製タンパク質で免疫したが、これはこのNPの収率が低いためである。まずマウス血清中のGP特異的抗体応答を評価したが、GPΔmuc-WL
2P
2-1TD0をプローブとして用い、ここで1TD0(PDB: 1TD0)は三量体化モチーフである(
図5A-C)。両GPΔmuc群は免疫処置によりP<0.0064でGP
ECTO群よりも有意に優れており、このことは、MLDがGPを抗体認識から保護できることを示唆している。対照的に、2つのGPΔmuc群の間にはほとんど差異が見られず、WL
2P
2はw2及びw5でわずかに高いEC
50タイターの平均値を示し、それは後の時点で逆転した。GPΔmuc-WL
2P
2三量体群と比較して、すべてのNP群ではw2においてE2P-L4P NP群を除きEC
50タイターが低く、このためP値は0.0381であった。
【0112】
最近のHCVワクチン研究(He et al., Sci. Adv. 6: eaaz6225, 2020)において、w2及びw5の両方でE2コア群とNP群の間に有意差が認められたことから、この所見はやや予想外であり、抗原提示NPによって誘導される抗体価が抗原のサイズ、構造及びエピトープ分布に大きく影響される可能性が示唆された。NPディスプレイは、多くのbNAbの標的である塩基(base)のエピトープ及びストークのエピトープへの抗体アクセスを遮断し得る。この結果は、投与量などの他の要因にも起因し得る。NP担体はNPワクチンの総質量の21から33%を占め、I3-01v9-L7P NP群を除く全てのワクチン群について同じ用量(50μgタンパク質)が使用されているので、NP群のマウスは、三量体群のマウスよりも有意に少ないGP抗原を受け取ることになる。
【0113】
次に、293T細胞におけるEBOV-Makona及びBDBV株に対する10種の抗体のパネルを用いて、エボラウイルス疑似粒子(エボラウイルス-pp)中和アッセイを検証した。予想通り、初期のEBOV NAbであるKZ52、c2G4及びc4G7はEBOVを中和したが、BDBVは中和しなかった。NAbであるmAb100及びmAb114は、両方のエボラウイルス種を異なる効力で中和した。4つのbNAb(3つはIFLに向けられ、1つはHR2-MPERを標的とする)は、EBOV及びBDBVを交差中和し標識リカンキャップに結合し、治療用抗体カクテルの一部である非NAbのc13C6はウイルス感染を増強するようであり、潜在的なADE効果を示唆した。エボラウイルス-ppアッセイは、低分子阻害剤をスクリーニングするために使用されたTZM-bl細胞でも実施された(
図5D)。試験したすべてのNAbs/bNAbsは疑似ウイルス感染を阻止したが、c13C6は同様のADEパターンを示した。マウス白血病ウイルス(MLV)Env、MLV-ppsを有する疑似粒子に対して試験したところ、c13C6は感染の増強を示したが、NAb及びbNAbは非反応性のままであった(
図5E)。
【0114】
次に、我々は、エボラウイルス-ppアッセイにおいて、EBOV及びBDBVに対する免疫付与マウスサンプルを評価した。最後の時点(w11)でマウス血清から免疫グロブリンG(IgG)を精製して、非特異的な抗ウイルス活性を除去した。抗体応答の異なるパターンが観察され、NAb及びc13C6に似たADEを引き起こす非NAbの誘発が示唆された。3つの三量体群の中で、GP
ECTOは2から4匹のマウスで観察されたADEで中程度のNAb応答を示したが、GPΔmucではNAb及びc13C6の両方に似た応答の実質的な増大が観察され、MLDの除去がNAbエピトープ及びグリカンキャップを等しく露出させることを示唆しており、これが自然感染におけるADEを引き起こす抗体の主な標的となっている。WL
2P
2変異は、MLDの消失による副作用(adversary effect)を大幅に逆転させたと考えられた。3つのNP群の中で、E2p-L4Pが最良のパフォーマンスを示し、ADEの兆候はほとんどなく、主にNAb応答を示した。しかし、FR群の2から3匹のマウスまたI3-01v9-L7P群の全てのマウスで、c13C6に似た抗体応答が観察された。c13C6はMLV-ppsと反応したが、NAb/bNAbは反応しなかった(
図5E)ので、MLV-ppアッセイを用いて、異なるワクチンによって誘導されるc13C6に似た抗体応答を「測定(gauge)」しようとした(
図5F)。実際、我々は、エボラウイルス-ppアッセイで観察されたADE効果と非常によく一致するMLV-pp感染の増強を観察した。MLV-pp分析はまた、E2p-L4P NPが、MLD遮蔽を有するGP
ECTOに匹敵する最小のc13C6に似た応答を誘導することを示した。GPΔmuc及びI3-01v9-L7P群について観察された高レベルのADE効果は、各々、開いた三量体及び組織化されていないGP-NP種の存在と関連しているようであった。
【0115】
マウスデータから、ワクチン誘導性の抗体応答に対する様々なGPの形態及びNP担体の効果についての重要な洞察が得られた。簡単に述べると、表面上に20個の閉じたGPΔmuc三量体を有する多層E2pのNPから、有望なワクチン候補が得られる。NPによる提示の利点は結合抗体力価だけで十分に評価できない可能性があり、誘発される抗体のタイプによって判断されるべきである。グリカンキャップを標的とし、小分泌GP(ssGP)と交差反応するc13C6に似た抗体は、ワクチン接種において有害作用を引き起こし得る。
実施例8 ウサギにおけるEBOV GP三量体及びNPの免疫原性
【0116】
2つのGPΔmuc三量体、野生型及びWL
2P
2並びにWL
2P
2三量体を提示する3つのNPも、ウサギにおいて、3週間隔で4回の注射をして評価した。免疫期間の6つの時点で採取したウサギ血清を、同じ三量体プローブを用いてELISAにより分析した(
図6A-B)。注目すべきことに、ウサギをmAb100/SECで精製した20μgのI3-01v9-L7PのNPで免疫することで、c13C6に似た応答が減少した。GPΔmuc群の間で、WL
2P
2群はw11を除く6つの全ての時点でより高いEC
50タイターを示し、w5(2回目の注射の2週間後)について得られたP値は0.0229でありこれが有意なことを示した。3つのNP群の中で、一貫したパターンが観察され、この免疫付与においてI3-01v9群は最高のEC
50層を示し、FR群は最低であった。I3-01v9-L7P群とE2P-L4P群との間には、w8、w11及びw13(最後の注射の4週間後)について有意差が認められ、P値は0.0021から0.0053であった。
【0117】
GPΔmuc-WL
2P
2三量体群と比較して、I3-01v9-L7P NP群は6つ全ての時点でより高いEC
50層を示し、w8、w11及びw13について有意性を示すP値が得られた。対照的に、FR群及びE2P-L4P群はw2及びw5で各々の三量体群よりも低いEC
50タイターを示したが、w8及びw11でこの傾向は逆転し、w8で有意性を示すP値(FR及びE2Pで各々0.0421及び0.0492)を示した。しかしながら、これら2つのNP群の優位性はw11で減少し、最後の時点w13での三量体基よりも低いEC
50タイターを示した。Pre、w2、w5、w8及びw11の時点の生体より精製IgGを、エボラウイルス-pp及びMLV-ppアッセイにおいて分析した(
図6CからF)。最後の時点で、全てのワクチン群は両方のエボラウイルス種に対してNAbの応答を示し、ADEの徴候はなく、マウスにおける混合NAb/c13C6と似た応答と比較して異なるパターンであることが示唆された。注目すべきことに、I3-01v9-L7PのNP群はEBOV及びBDBVについて各々211.3μg/ml及び11.72μg/mlで、他の群よりも高い平均IC
50(50%阻害濃度)の力価をもたらし、NPそのものではなく、組織化されていないGP-NP種がマウス免疫付与におけるADEの原因であることが確認された。
【0118】
一貫して、w11の全てのワクチン群はマウスのデータとは対照的に、MLV-pp感染の増強を示さなかった(
図5F)。したがって、c13C6に似た抗体は、ウサギに対する免疫付与の終わる頃には血清中に存在しないようであった。しかし、初期の時点で得られたウサギIgGでは、Nabの応答が増大するとともに、c13C6に似た抗体応答が低下した(
図6C-F)。EBOV-Makonaに対するエボラウイルス-pp中和試験において、ADEは2つの三量体群、FR群及び2つの多層NP群について、w2、w5及びw8で最初に観察されたが、その後、各々w5、w8及びw11で消失した。このように、我々の分析は、ウサギにおけるワクチン誘導性のc13C6に似た抗体の独特のパターンを明らかにしたが、これにより、抗原刺激を繰り返した時に「遺伝子変換」の機構を介してエピトープ特異性が変化させ得るものである。
実施例9 EBOV GP三量体及びNPに関連するB細胞応答プロファイル
【0119】
以前、我々は抗原特異的B細胞選別とNGSを組み合わせて、HCV E2コア(E2cm3)及びE2cm3-E2p NPによって誘発されるB細胞の応答の定量的な測定を行った(He et al., Sci. Adv. 6: eaaz6225, 2020)。多様な重鎖可変遺伝子(V
H)を使用すること、V
Hの変異の頻度が高いこと及びより広範囲の重鎖相補性決定領域3(HCDR3)の長さがE2pについて観察されたことから、効果的なNPワクチンに関しB細胞で共通するメカニズムの存在を示唆している。この機構は、EBOV NPワクチンに一般化できるだろうか? ここでは、異なるEBOVワクチンプラットフォームについてGP特異的B細胞応答プロファイルを得るために同じ戦略を適用した。最初に、GPに特異的なマウス脾臓B細胞を選別するために、Avi標識を付したGPΔmuc-WL
2P
2-1TD0三量体プローブを作製した(
図7A)。群当たり5匹の25匹のマウスから選別したB細胞を、Ion GeneStudio S5上でNGSに供した(
図7B)。NGSデータはマウスのアンタイボディオミクスパイプラインで解析した(
図7C)。詳細なB細胞プロファイルは、異なるワクチンプラットフォームの比較を容易にするために導かれた(
図7D-F)。
【0120】
GPΔmuc-WL2P2-フォールドン群と多層E2P群に主に注目し、可溶型のGPΔmucとNP提示型のGPΔmucにより誘導されるB細胞応答を比較した。生殖系列遺伝子の使用に関しては、VH及びVK遺伝子について同様の様式が観察された。すなわち、安定化したGPΔmuc三量体はそのNP型(6/7)よりも多くのVH /VL(9.4/9.4)を活性化し、VH及びVLの有意なPは各々0.0163及び0.0076であった。対照的に、60個のHCV E2コアで改変したE2p NPはE2コアよりも多くのVHを活性化したが、VL は活性化しなかった。体細胞超変異(SHM)の程度に関しては、2群間で有意差は認められなかった。それにもかかわらず、NP群ではSHM分布について目に見える変化があり、生殖細胞系列のVH/VKの多様化度合い(divergence)が平均6.4%/2.9%であり、
三量体群の平均5.3%/2.6%よりも高かった。HCDR3の解析では、平均ループ長とループ長のr.m.s.変動(r.m.s.f)の2つの測定基準を比較のために計算した。HCVワクチンの研究ではHCDR3のr.m.s.f.がE2コア群とNP群の間でP値が<0.0001となったが、これとは異なり、EBOV三量体群とNP群の間で有意差は見られず、E2P-L4P NPはより長いHCDR3ループを有する抗体を誘導していた。全体として、EBOV及びHCV NPは、個々の抗原に関して異なるB細胞パターンを示した。B細胞プロファイルとワクチン誘導性NAb/c13C6に似た応答との間に明らかな相関はなかった。我々の結果は、多価NPディスプレイ以外の抗原サイズ、構造、グリコシル化及びエピトープ分布もまた、B細胞応答を形成するために重要であり得ることを示唆する。
実施例9 いくつかの例示的な材料及び方法
【0121】
EBOV GPΔmuc及びGPΔmuc-提示型のNPの発現及び精製:野生型及び再設計されたGPΔmucコンストラクトを、HEK293F細胞(Thermo Fisher)において、生化学的分析、生物物理学的分析及び抗原分析のために一過性に発現させた。簡単に説明すると、293F細胞を解凍し、37℃、135rpm及び8% CO2の振盪インキュベーター中でFreeStyle(商標)293発現培地(ライフテクノロジーズ、カリフォルニア州)と共にインキュベートした。細胞が2.0×106/mlの密度に達したとき、ポリエチレンイミン(PEI)(ポリサイエンス社)でトランスフェクションするために、発現培地を加えて、細胞密度を1.0×106mlの-1に減少させた。次に、25mlのOpti-MEMトランスフェクション培地(Life Technologies、CA)中の900μgのプラスミドを、25mlのOpti-MEM中の5mlのPEI-MAX(1.0mg/ml)と混合した。30分間のインキュベーション後、DNA-PEI-MAX複合体を1Lの293F細胞に添加した。培養上清を、トランスフェクションの5日後に回収し、2200rpmで22分間の遠心分離によって清澄化し、0.45μmフィルター(Thermo Scientific)を用いて濾過した。GPΔmucタンパク質を、mAb114抗体カラム又はmAb100抗体カラムを用いて上清から抽出した。結合したタンパク質を各々5mlの0.2Mグリシン(pH=2.2)で3回溶出し、0.5mlのTris塩基(pH=9.0)で中和した。タンパク質を、Superdex 200 Increase 10/300 GLカラム又はHiLoad Superdex 200 16/600カラム(GE Healthcare)上のサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によってさらに精製した。GPΔmuc-提示ナノ粒子を、ExpiCHO細胞(Thermo Fisher)中で産生した。簡潔に述べると、ExpiCHO細胞を解凍し、37℃、135rpm及び8% CO2の振盪インキュベーター中でExpiCHOTM発現培地(Thermo Fisher)と共にインキュベートした。細胞が10×106mlの密度に達したとき、トランスフェクションのために、細胞密度を6×106mlの-1に減少させるために、ExpiCHO(商標)発現培地を加えた。ExpiFectamine(商標)CHO/プラスミドDNA複合体を、メーカーの説明書に従って、ExpiCHO細胞における100mlトランスフェクションのために調製した。これらのナノ粒子コンストラクトについて、100μgのプラスミド及び320μlのExpiFectamine(商標)CHO試薬を、7.7mlの冷やしたOptiPRO(商標)培地(サーモフィッシャー)中で混合した。1日目の最初の導入(feed)の後、ExpiCHO細胞を、33℃、115rpm及び8% CO2にて振盪インキュベーター中で培養し、Max Titerプロトコールに従って5日目の追加的に導入(feed)した(Thermo Fisher)。培養上清をトランスフェクションの13から14日後に回収し、4000rpmで25分間の遠心分離によって清澄化し、0.45μmフィルター(Thermo Fisher)を用いて濾過した。mAb100抗体カラムを使用して、上清からナノ粒子を抽出し、次いで、Superose 6 10/300 GLカラムでSECした。GPΔmuc及びGPΔmuc-提示ナノ粒子について、タンパク質濃度を、UV280の吸光度を用いてその理論的な吸光係数に基づき決定した。
【0122】
ブルーネイティブポリアクリルアミドゲル電気泳動(BN-PAGE): EBOV GPΔmuc及びGPΔmuc-提示ナノ粒子をブルーネイティブポリアクリルアミドゲル電気泳動(BN-PAGE)によって分析し、クーマシーブルーで染色した。このタンパク質を試料緩衝液及びG250ローディング色素と混合し、4から12%のビス-トリスNativePAGE(商標)ゲル(ライフテクノロジーズ)に添加した。BN-PAGEゲルは、メーカーの指示に従って、NativePAGE(商標)ランニングバッファー(ライフテクノロジーズ)を用いて、150 Vで2から2.5時間実行した。
【0123】
酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA):Costar(商標)96ウェルアッセイプレート(コーニング)の各々のウェルを、最初に、0.2μgの適切な抗原を含む50μlのPBSでコーティングした。プレートを4℃で一晩インキュベートし、次いでPBS及び0.05%(v/v)Tween 20を含む洗浄緩衝液で5回洗浄した。次いで、各々のウェルを、PBS、40mg mlの-1ブロッティンググレードのブロッカー(Bio-Rad)及び5%(v/v)FBSからなるブロッキング緩衝液150μlでコーティングした。プレートをブロッキング緩衝液と共に室温で1時間インキュベートし、次いで洗浄緩衝液で5回洗浄した。抗原結合のために、抗体をブロッキング緩衝液中で10μg ml -1の最高濃度まで希釈し、次いで10倍希釈系列とした。各抗体希釈について、合計50μlの容量を適切なウェルに添加した。動物試料分析のために、血清又は血漿を、ブロッキング緩衝液中でマウスについては10倍、ウサギについては50倍に希釈し、10倍希釈系列に供した。各サンプル希釈について、合計50μlの容量をウェルに加えた。各プレートを室温で1時間インキュベートし、次いで0.05% Tween 20を含むPBSで5回洗浄した。抗体結合のために、ヤギ抗ヒトIgG抗体(Jackson ImmunoResearch Laboratories,Inc)の1:5000希釈物又は動物試料分析のために、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)標識ヤギ抗マウス又は抗ウサギIgG抗体(Jackson ImmunoResearch Laboratories)の1:2000希釈物を、次いで、洗浄緩衝液(0.05% Tween 20を有するPBS)中で作製し、この希釈二次抗体50μlを各ウェルに添加した。プレートを二次抗体と共に室温で1時間インキュベートし、次いで0.05% Tween 20を含むPBSで5回洗浄した。最後に、ウェルを50μlのTMB(Life Sciences)で3から5分間反応させた(developed)後、50μlの2N硫酸で反応を停止させた。得られたプレート読取り値を、450nmの波長で測定した。注目すべきことに、第2週の血清結合はEC50タイターの正確な決定を可能にするために、プラトー(又は飽和)に達しなかった。それにもかかわらず、Prismで計算されたEC50値は第2週の様々なワクチン群の比較を容易にするために、抗体価の定量的尺度として使用された。
【0124】
バイオレイヤー干渉法(BLI):10種の抗体のパネルへのGPΔmuc及びGPΔmuc-提示ナノ粒子結合の反応速度(kinetics)を、Octet Red96装置(forteBio、Pall Life Sciences)を用いて測定した。全てのアッセイは、forteBioの1×キネティックバッファー中で撹拌を1000rpmに設定し行った。全ての溶液の最終体積は、ウェル当たり200μlであった。アッセイは、硬質の黒色96ウェルプレート(Geiger Bio-One)中にて30℃で行った。5μgml?1の抗体を含んだ1×キネティックバッファーを、GPΔmuc用の抗ヒトFc捕捉バイオセンサー(AHC)及び300秒間のナノ粒子用の抗ヒトFc定量バイオセンサー(AHQ)の表面上にロードした。60秒のバイオセンサーベースラインステップを適用した後、バイオセンサー上の抗体と溶液中の抗原との会合の分析を200秒間行った。抗原の2倍濃度勾配を、開始の濃度はGPΔmuc三量体について400nM、FR NPについて25nM及びE2p/I3-01v9 NPについて10nMとし、タイトレーションの系列を6回として使用した。相互作用の解離を300秒間追跡した。ベースラインドリフトの補正を行うために、抗体をロードしたが抗原とはインキュベートしないセンサーに対して記録されたシフトと、抗体を含まないが抗原とはインキュベートしたセンサーに対して記録されたシフトとの平均値を差し引いた。Octetデータは、ForteBioのデータ収集ソフトウェアv.8.1によって処理された。実験データを2:1の相互作用を記述する結合方程式に当て嵌めることで、最適な当て嵌めが行われた。注目すべき点は、GPΔmuc三量体の結合もAHQを用いて測定するることで、ナノ粒子との抗体結合の比較を容易にしたことである。
【0125】
示差走査熱量測定(DSC):WT及び再設計されたGPΔmuc三量体の熱融解曲線を、MicroCal VP-キャピラリー熱量計(Malvern)を用いて取得した。293F細胞から産生された精製GPΔmucを1×PBSにてバッファー交換し、27から50μMに濃縮した後、機器による分析を行った。融解は、25℃から110℃までの90℃・h?1の走査速度で調べた。バッファー補正、正規化及びベースライン減算を含むデータ処理を、Origin 7.0ソフトウェアからの標準化されたプロトコールを用いて行った。
【0126】
タンパク質産生、結晶化及びデータ収集:2つのZaire EBOV GPΔmuc-フォールドンコンストラクト、1つはW615L変異とL伸長(aa637まで)を有するもの、もう1つは追加のT577P変異を有するものを、HEK293 S細胞において発現させた。発現されたGPを、mAB100抗体カラム、続いてHiLoad Superdex 200 16/600カラム(GE Healthcare)上のサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を用いて精製した。新たに精製したGPのサンプルを結晶化に使用した。結晶化実験は自動化されているCrystalMation(商標)ロボットシステム(リガク)上で、4℃及び20℃の両方で、Scripps研究所(TSRI)で、シッティングドロップ蒸気拡散法を用いて行った(Elsliger et al., Acta Crystallogr. Sect. F Struct. Biol. Cryst. Commun. 66, 1137-1142, 2010)。EBOV GPを、50mM Tris-HCl pH 8.0中で約10mg/mlに濃縮した。リザーバー溶液は、12%(w/v)PEG 6000及び0.1Mクエン酸ナトリウム、pH 4.5を含有していた。20℃で2週間後に回折で分析可能な(diffractable)結晶が得られた。EBOV GPの結晶を25%グリセロールで凍結保護し、ナイロンループにマウントし、液体窒素中で急速凍結した。GPΔmuc-WL2-フォールドンとGPΔmuc-WL2P2-フォールドンの2つの結晶について、Advanced Photon Source(APS)ビームライン23IDBでデータを収集し、各々2.3Åと3.2Åの分解能に回折した。回折データセットをHKL-2000で処理した。結晶は菱面体晶H32と正方晶P321の空間群に属し、格子の寸法はGPΔmuc-WL2-フォールドンがa=114.58Å、b=114.58Å、c=312.38Å、GPΔmuc-WL2P2-フォールドンがa=114.06Å、b=114.06Å、c=136.22Åであった。2つのデータセットの全体的な完全性は、各々95.77%及び99%であった。
【0127】
構造決定及び精密化:EBOV GPの構造はPhaserを使用した分子置換(MR)によって決定したが、これはZaire Ebola GP(PDB: 5JQ3)の座標系を備えたCCP4iスイート及びプログラムMOLREPによるものである。ポリペプチド鎖を、Cootを用いて手動で調整しながら電子密度に変換し(adjusted into)、MolProbityを用いて構造検証を行った。微細構造の最終的なRcrystとRfreeの値は、GPΔmuc-WL2-フォールドンとGPΔmuc-WL2P2-フォールドンとで各々19.2%及び22.9%と25%及び29.3%とであった。データ処理及び微細化のパラメータを表S1に列挙する。
【0128】
ナノ粒子コンストラクトの電子顕微鏡(EM)評価:EBOV GPΔMucナノ粒子の最初のEM評価は、Scripps Core Microscopy Facilityで行った。簡単に説明すると、ナノ粒子試料を0.01mg/mlの濃度で調製した。炭素被覆銅グリッド(400メッシュ)をグロー放電し、各試料8μLを2分間吸着させた。過剰の試料を除去し、グリッドを2%ギ酸ウラニルで2分間ネガティブ染色した。余分な染みを取り除き、グリッドを乾燥させた。試料をTalos L120C透過型電子顕微鏡(Thermo Fisher)で80kVにて分析し、CETA 16M CMOSカメラで画像を取得した。
【0129】
マウスに対する免疫付与及びサンプル収集:Institutional Animal Care and Use Committee(IACUC)ガイドラインに従い、免疫付与研究において試験された動物対象を追跡した。8週齢BALB/cマウスを、Jackson Laboratoryから購入した。マウスは、承認されたIACUCプロトコール及びAAALACガイドラインに準拠して、Scripps Researchの環境制御室の換気ケージに収容した。マウスを、0、3、6及び9週目に合計4回免疫した。各免疫は、腹腔内(i.p.)経路を介して、50μgのワクチン抗原(又はI3-01v9 NPについては20μg)及び100μlのアジュバント、AddaVax又はAdju-Phos(InvivoGen)を含有する200μlの抗原/アジュバント混合物で行った。各免疫付与の2週間後に血液を採取した。全ての血液の採取(all bleed)は、ランセット(Goldenrod)を使用して顔面静脈(顎下出血)を通して行った。抗凝固剤なしで途中の血液を採取した(intermediate bleeds)が、EDTA被覆チューブを用いて最終の血液を採取した(terminal bleeds)。血清及び血漿を56℃で30分間加熱不活性化し、1000RPMで10分間回転させ、滅菌濾過した。細胞をPBSで一度洗浄し、その後ACK赤血球溶解バッファー(Lonza)1mlに再懸濁した。PBSで2回洗浄した後、末梢血単核細胞(PBMC)を2mlのBambanker Freezing Media(Lymphotec)に再懸濁した。さらに、脾臓も採取し、70μmのセルストレーナー(BD Falcon)にてすりつぶして、脾臓細胞を細胞懸濁用液中に放出させた。脾臓細胞を遠心分離し、PBS中で洗浄し、5mlの赤血球細胞溶解緩衝液Hybri-Max(Sigma-Aldrich)で処理し、FBS中の10%のDMSOで凍結した。血清及び血漿をEBOV中和アッセイに使用したが、11週目の個々のマウス由来の血漿の80%を、0.2mlのプロテインGスピンキット(Thermo Scientific)を用いて、メーカーの指示書に従って精製した。11週目(w11)の精製マウスIgGを、疑似ウイルス中和アッセイにおいて評価した。ウサギの免疫付与及び採血は、ProSci(San Diego、CA)に外注して行った。1群当たり4匹の雌ニュージーランドホワイト種のウサギの5つの群を、筋肉内投与(i.m.)にて免疫付与したが、50μg(I3-01v9 NPについては20μg)のワクチン抗原を用い、250μlのアジュバント、AddaVax又はAdju-Phos(InvivoGen)で調製することで総量500μlとし、0週目、3週目、6週目及び9週目に行った。毎回20mlの血液試料を、0日目(免疫付与前)、2週目、5週目、8週目及び11週目に耳介動脈から採取した。最後の時点(第13週)では、100mlを超える血液を心臓穿刺によって採取した。血清を血液から分離し、ELISA結合アッセイのために熱不活性化した。精製ウサギIgGを疑似ウイルス中和アッセイで評価した。
【0130】
疑似ウイルス中和アッセイ:エボラウイルスの疑似ウイルス粒子(エボラウイルス-pp)中和アッセイを利用して、以前に報告されたmAbの中和活性及びマウス及びウサギにおけるワクチン誘導抗体応答を評価した。エボラウイルス-ppは、HEK293T細胞をpNL4-3.lucR-Eplasmid(NIH AIDS試薬プログラム)と、EBOV Makona株(GenBank受付番号: KJ660346)又はBDBV Uganda株(GenBank受付番号: KR063673)のGP遺伝子をコードする発現プラスミドとを、リポフェクタミン3000(Thermo Fisher Scientific)によって4:1の比で共トランスフェクションすることによって作製した。48から72時間後、エボラウイルス-ppを4000rpmで10分間遠心分離することによって上清から回収し、アリコートし、使用前に-80℃で保存した。出発濃度10μg/mlのmAb又は出発濃度300μg/mlのマウス及び1000μg/mlのウサギの精製IgGを、エボラウイルス-ppsを含む上清と混合し、白色固体底96ウェルプレート(コーニング)中、37℃で1時間インキュベートした。様々な細胞株におけるEBOV感染性に関する最近の研究に基づいて、HEK293T細胞又はTZM-bl細胞をエボラウイルス-pp中和アッセイに使用した。簡潔に述べると、1×104のHEK293T細胞又はTZM-bl細胞を各々のウェルに添加し、プレートを37℃で48時間インキュベートした。インキュベーション後、上にある培地を除去し、細胞を溶解した。感染細胞からのホタルルシフェラーゼシグナルを、Bright-Glo Luciferase Assay System(Promega)を用いて、メーカーの説明書に従って決定した。Gen 5ソフトウェアを用いてBioTekマイクロプレートリーダーからデータを取り出し、一連の非感染ウェルからの平均バックグラウンド発光を各ウェルから差し引き、GraphPad Prism 8.4.3を用いて中和曲線を作成し、ウェルからの値をエボラウイルス-ppのみを含むウェルと比較した。MLV-ppsと呼ばれるマウス白血病ウイルス(MLV)Env遺伝子で偽型化したレンチウイルスベクターを、HEK293T細胞中で産生し、陰性対照として中和アッセイに含めた。非NAb c13C6は、MLV-pp感染の増強を示したので、MLV-ppアッセイを用いて、免疫した動物試料中のc13C6に似たADEを引き起こす抗体応答を検出した。
【0131】
EBOV GPΔmuc特異的マウスB細胞のバルク選別:最後の免疫付与の15日後に免疫付与マウスから脾臓を採取し、細胞懸濁液を調製した。細胞を以下のように染色した:死細胞を、Fixable Aqua Dead Cell Stainキット(Thermo Fisher L34957)で染色することによって除外した。受容体FcγIII(CD16)及びFcγII(CD32)を、20μlの2.4G2 mAb(BD Pharmigen N553142)を添加することによってブロックした。次いで、細胞を10μg/mlのビオチン化GPΔmuc、WT又はUFOg2と共にインキュベートした。簡潔に述べると、GPΔmucは、ビオチンリガーゼBirAをメーカーの説明書(Avidity LLC)に従って使用して、個々のAvi標識付きEBOV GPΔmucのビオチン化に伴い生成された過剰なビオチンを、HiLoad Superdex 200 16/600カラム(GE Healthcare)でSECにより除去した。SECプロファイルにおいて、Avi標識付きGPΔmucのピークは14.5mlを中心とし、ビオチンリガーゼのより広いピークは、65から70ml(WT)又は60から65ml(UFOg2)で見出すことができる。細胞及びビオチン化タンパク質を4℃で5分間インキュベートし、続いてFITC(Jackson ImmunoResearch 115-095-071)で蛍光標識した抗マウスIgG2.5μlを添加し、4℃で15分間インキュベートした。最後に、5μlのプレミアムグレードのアロフィコシアニン(APC)で標識したストレプトアビジンを細胞に添加し、4℃で15分間インキュベートした。各工程において、細胞をDPBSで洗浄したが、選別バッファーを0.5mlのFACS緩衝液とした。FITC+ APC+ GPΔmuc-特異的B細胞を、500μlのFACS緩衝液を含むエッペンドルフチューブ中にBD FACSAria IIを用いて選別した。
【0132】
マウスB細胞の次世代シーケンシング(NGS)及びバイオインフォマティクス解析:マウスB細胞のレパートリーを偏りなく配列決定するため、5’-rapid amplification of cDNA ends(RACE)のプロトコールが報告されている。ここでは、このプロトコールを、大量選別されたE2特異的マウス脾臓B細胞に適用した。簡潔に述べると、5'-RACE cDNAを、SMART-Seq v4 Ultra Low Input RNA Kit for Sequencing(TaKaRa)を用いて各マウスのバルク選別脾臓B細胞から得た。免疫グロブリンPCRを、5μlの鋳型としてのcDNA、1μlの5’-RACEプライマー及び1μlの10μMリバースプライマーを用いて、全容量50μl中のPlatinum Taq High-Fidelity DNA Polymerase(Life Technologies)でセットアップした。5’-RACEプライマーはPGM/S5 P1アダプターを有し、一方、リバースプライマーはPGM/S5 Aアダプターを有していた。重鎖と軽鎖(κ)の5’-RACE-PCRプロセシングのためのリバースプライマーとして、マウス3’-Cγ 1-3/3’-Cμ内部プライマーと3’-mCκ外部プライマーを用いた。合計25サイクルのPCRを実施し、予想されるPCR産物(500から600bp)をゲル精製した(Qiagen)。NGSは、Ion S5 GeneStudioシステムで実施した。簡潔に述べると、同じマウス由来の重鎖及び軽鎖(κ)ライブラリーを、Qubit(登録商標)2.0 Fluorometer with Qubit(登録商標)dsDNA HS Assay Kitを用いて定量し、次いで、3:1の比を用いて混合した後、配列決定のために等しい比で他のマウスの抗体ライブラリーとプールした。テンプレート調製及び(Ion 530)チップローディングを、Ion 520/530 Ext Kitを使用してIon Chef上で実施し、続いて、デフォルト設定でIon S5システム上で配列決定した。マウスAntibodyomicsパイプラインを使用して、生データを処理し、生殖系列遺伝子使用、体細胞超変異(SHM)、生殖系列の多様化及びH/KCDR3ループ長の分布を決定した。
【0133】
したがって、本発明は、上記の代表的な実施形態を参照して広く開示され、例示されている。本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、本発明に様々な変更を加えることができることが理解される。
【0134】
本明細書に引用される全ての刊行物、配列受付番号、特許及び特許出願は各々が個々にそのように示されるかのように、その全体がすべての目的のために、参照により本明細書に明示的に組み込まれることにさらに留意されたい。参照により組み込まれる本文に含まれる定義は、それらが本開示における定義と矛盾する範囲で除外される。
【配列表】
【国際調査報告】