(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-01
(54)【発明の名称】多特異性抗TCRデルタ可変1抗体
(51)【国際特許分類】
C07K 16/46 20060101AFI20230825BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20230825BHJP
C07K 16/32 20060101ALI20230825BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230825BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20230825BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20230825BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20230825BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20230825BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20230825BHJP
【FI】
C07K16/46
C07K16/28 ZNA
C07K16/32
A61P35/00
A61P35/02
A61P31/00
A61P29/00
A61K39/395 D
A61K39/395 E
A61K39/395 N
A61K39/395 T
A61K39/395 R
A61K39/395 Y
C12N15/13
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023510439
(86)(22)【出願日】2021-08-14
(85)【翻訳文提出日】2023-04-07
(86)【国際出願番号】 IB2021057509
(87)【国際公開番号】W WO2022034562
(87)【国際公開日】2022-02-17
(31)【優先権主張番号】PCT/GB2020/051959
(32)【優先日】2020-08-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(32)【優先日】2021-02-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(32)【優先日】2021-02-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】522058062
【氏名又は名称】ガンマデルタ セラピューティクス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100138911
【氏名又は名称】櫻井 陽子
(74)【代理人】
【識別番号】100218268
【氏名又は名称】及川 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】ウーデン,マーク
(72)【発明者】
【氏名】チュナ,ミフリバン
(72)【発明者】
【氏名】マウント,ナタリー
(72)【発明者】
【氏名】グッド,ロバート
(72)【発明者】
【氏名】フリードマン,ジョシュア
(72)【発明者】
【氏名】ブンブラ,シェファリ
(72)【発明者】
【氏名】ヌスバウマー,オリバー
(72)【発明者】
【氏名】メフタ,ラージ ジェイスクラル
【テーマコード(参考)】
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB36
4C085BB42
4C085CC22
4C085CC23
4C085DD62
4C085EE01
4C085GG01
4C085GG02
4C085GG03
4C085GG04
4C085GG06
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
4H045GA26
(57)【要約】
本発明は、ガンマデルタT細胞のT細胞受容体及び1つの他の抗原と特異的に結合する、多特異性抗体、特に二重特異性抗体、ならびにその断片及び変異体に関する。より詳細には、本発明は、γδT細胞受容体(TCR)の可変デルタ1(Vδ1)鎖及びがん抗原またはがん関連抗原と結合する二重特異性T細胞エンゲージャー、ならびにγδT細胞受容体(TCR)の可変デルタ1(Vδ1)鎖及び免疫調節性抗原と結合する二重特異性デュアル免疫調節薬(DI)という、少なくとも2つの新たなクラスの二重特異性抗体を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a. γδT細胞受容体(TCR)の可変デルタ1(Vδ1)鎖のエピトープである第1の標的エピトープ、及び
b. 第2の標的エピトープ
と特異的に結合する、多特異性抗体またはその断片。
【請求項2】
前記第1の標的エピトープが、配列番号1及び/または配列番号128のアミノ酸残基1~90内のエピトープである、先行請求項のいずれかに記載の多特異性抗体またはその断片。
【請求項3】
前記第1の標的エピトープが、
(i)配列番号1の3~20、及び/または
(ii)配列番号1の37~77
のアミノ酸領域内の1つまたは複数のアミノ酸残基を含むエピトープである、先行請求項のいずれかに記載の多特異性抗体またはその断片。
【請求項4】
前記第1の標的エピトープが、γδT細胞の活性化エピトープである、先行請求項のいずれかに記載の多特異性抗体またはその断片。
【請求項5】
前記活性化エピトープの結合が、(i)前記γδTCRを下方制御する、(ii)前記γδT細胞の脱顆粒を活性化する、及び/または(iii)γδT細胞媒介性殺傷を促進する、先行請求項のいずれかに記載の多特異性抗体またはその抗原結合性断片。
【請求項6】
前記第1の標的エピトープが、CD107a、CD25、CD69及び/またはKi67の発現を上方制御するエピトープである、先行請求項のいずれかに記載の多特異性抗体またはその断片。
【請求項7】
前記多特異性抗体またはその断片が、表面プラズモン共鳴によって測定した場合に1.5×10
-7M未満、1.3×10
-7M未満、1.0×10
-7M未満、または5.0×10
-8M未満の結合親和性(KD)で前記第1のエピトープと結合する、先行請求項のいずれかに記載の多特異性抗体またはその断片。
【請求項8】
前記第2のエピトープがVδ1+T細胞上にある、先行請求項のいずれかに記載の多特異性抗体またはその断片。
【請求項9】
前記第2のエピトープが、がん抗原またはがん関連抗原のエピトープである、先行請求項のいずれかに記載の多特異性抗体またはその断片。
【請求項10】
前記がん抗原またはがん関連抗原が、AFP、AKAP-4、ALK、アルファ-フェトプロテイン、アンドロゲン受容体、B7H3、BAGE、BCA225、BCAA、Bcr-abl、ベータカテニン、ベータHCG、ベータヒト絨毛性ゴナドトロピン、BORIS、BTAA、CA 125、CA 15-3、CA 195、CA 19-9、CA 242、CA 27.29、CA 72-4、CA-50、CAM 17.1、CAM43、カルボニックアンヒドラーゼIX、癌胎児抗原、CD22、CD33/IL3Ra、CD68\P1、CDK4、CEA、コンドロイチン硫酸プロテオグリカン4(CSPG4)、c-Met、CO-029、CSPG4、サイクリンB1、シクロフィリンC関連タンパク質、CYP1B1、E2A-PRL、EGFR、EGFRvIII、ELF2M、EpCAM、EphA2、エフリンB2、エプスタイン・バーウイルス抗原EBVA、ERG(TMPRSS2ETS融合遺伝子)、ETV6-AML、FAP、FGF-5、Fos関連抗原1、フコシルGM1、G250、Ga733\EpCAM、GAGE-1、GAGE-2、GD2、GD3、神経膠腫関連抗原、GloboH、糖脂質F77、GM3、GP 100、GP 100(Pmel 17)、H4-RET、HER-2/neu、HER-2/Neu/ErbB-2、高分子量黒色腫関連抗原(HMW-MAA)、HPV E6、HPV E7、hTERT、HTgp-175、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素、イディオタイプ、IGF-I受容体、IGF-II、IGH-IGK、インスリン成長因子(IGF)-I、腸カルボキシルエステラーゼ、K-ras、LAGE-1a、LCK、レクチン反応性AFP、レグマイン、LMP2、M344、MA-50、Mac-2結合タンパク質、MAD-CT-1、MAD-CT-2、MAGE、MAGE A1、MAGE A3、MAGE-1、MAGE-3、MAGE-4、MAGE-5、MAGE-6、MART-1、MART-1/MelanA、M-CSF、黒色腫関連コンドロイチン硫酸プロテオグリカン(MCSP)、メソテリン、MG7-Ag、ML-IAP、MN-CA IX、MOV18、MUC1、Mum-1、hsp70-2、MYCN、MYL-RAR、NA17、NB/70K、ニューロングリア抗原2(NG2)、好中球エラスターゼ、nm-23H1、NuMa、NY-BR-1、NY-CO-1、NY-ESO、NY-ESO-1、NY-ESO-1、OY-TES1、p15、p16、p180erbB3、p185erbB2、p53、p53突然変異体、Page4、PAX3、PAX5、PDGFRベータ、PLAC1、ポリシアル酸、前立腺癌腫瘍抗原-1(PCTA-1)、前立腺特異抗原、前立腺酸性ホスファターゼ(PAP)、プロテイナーゼ3(PR1)、PSA、PSCA、PSMA、RAGE-1、Ras、Ras-突然変異体、RCAS1、RGS5、RhoC、ROR1、RU1、RU2(AS)、SART3、SDCCAG16、sLe(a)、精子タンパク質17、SSX2、STn、サバイビン、TA-90、TAAL6、TAG-72、テロメラーゼ、チログロブリン、Tie 2、TLP、Tn、TPS、TRP-1、TRP-2、TRP-2、TSP-180、チロシナーゼ、VEGF、VEGFR2、VISTA、WT1、XAGE 1、43-9F、5T4、及び791Tgp72からなる群から選択される、請求項9に記載の多特異性抗体またはその断片。
【請求項11】
前記多特異性抗体が、T細胞エンゲージャー二重特異性抗体である、先行請求項のいずれかに記載の多特異性抗体またはその断片。
【請求項12】
前記抗体が、二重特異性抗体であり、前記第2のエピトープが、CD19、Her2(CD340)、EGFR、FAPαまたはメソテリンのエピトープである、先行請求項のいずれかに記載の多特異性抗体またはその断片。
【請求項13】
前記第2のエピトープが免疫細胞上にある、先行請求項のいずれかに記載の多特異性抗体またはその断片。
【請求項14】
前記第2のエピトープが、免疫調節性抗原のエピトープである、請求項1~8または請求項13のいずれか1項に記載の多特異性抗体またはその断片。
【請求項15】
前記免疫調節性抗原が、B7-1(CD80)、B7-2(CD86)、B7-DC(CD273)、B7-H1(CD274)、B7-H2(CD275)、B7-H3(CD276)、B7-H4(VTCN1)、B7-H5(VISTA)、BTLA(CD272)、4-1BB(CD137)、CD137L、CD24、CD27、CD28、CD38、CD40、CD40L(CD154)、CD54、CD59、CD70、CTLA4(CD152)、CXCL9、GITR(CD357)、HVEM(CD270)、ICAM-1(CD54)、ICOS(CD278)、LAG-3(CD223)、OX40(CD134)、OX40L(CD252)、PD-1(CD279)、PD-L1(CD274)、TIGIT、CD314、CD334、CD335、CD337、及びTIM-3(CD366)からなる群から選択され得る、請求項14に記載の多特異性抗体またはその断片。
【請求項16】
前記抗体が、二重特異性抗体であり、前記第2のエピトープが、PD-1、4-1BB、OX40またはTIGITのエピトープである、請求項1~8または13~15のいずれかに記載の多特異性抗体またはその断片。
【請求項17】
前記第2の標的エピトープが、細胞膜分化CD抗原のエピトープである、先行請求項のいずれかに記載の多特異性抗体またはその断片。
【請求項18】
前記CD抗原が、CD1a、CD1b、CD1c、CD1d、CD1e、CD2、CD3、CD3d、CD3e、CD3g、CD4、CD5、CD6、CD7、CD8、CD8a、CD8b、CD9、CD10、CD11a、CD11b、CD11c、CD11d、CD13、CD14、CD15、CD16、CD16a、CD16b、CD17、CD18、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD24、CD25、CD26、CD27、CD28、CD29、CD30、CD31、CD32A、CD32B、CD33、CD34、CD35、CD36、CD37、CD38、CD39、CD40、CD41、CD42、CD42a、CD42b、CD42c、CD42d、CD43、CD44、CD45、CD46、CD47、CD48、CD49a、CD49b、CD49c、CD49d、CD49e、CD49f、CD50、CD51、CD52、CD53、CD54、CD55、CD56、CD57、CD58、CD59、CD60a、CD60b、CD60c、CD61、CD62E、CD62L、CD62P、CD63、CD64a、CD65、CD65s、CD66a、CD66b、CD66c、CD66d、CD66e、CD66f、CD68、CD69、CD70、CD71、CD72、CD73、CD74、CD75、CD75s、CD77、CD79A、CD79B、CD80、CD81、CD82、CD83、CD84、CD85A、CD85B、CD85C、CD85D、CD85F、CD85G、CD85H、CD85I、CD85J、CD85K、CD85M、CD86、CD87、CD88、CD89、CD90、CD91、CD92、CD93、CD94、CD95、CD96、CD97、CD98、CD99、CD100、CD101、CD102、CD103、CD104、CD105、CD106、CD107、CD107a、CD107b、CD108、CD109、CD110、CD111、CD112、CD113、CD114、CD115、CD116、CD117、CD118、CD119、CD120、CD120a、CD120b、CD121a、CD121b、CD122、CD123、CD124、CD125、CD126、CD127、CD129、CD130、CD131、CD132、CD133、CD134、CD135、CD136、CD137、CD138、CD139、CD140A、CD140B、CD141、CD142、CD143、CD144、CDw145、CD146、CD147、CD148、CD150、CD151、CD152、CD153、CD154、CD155、CD156、CD156a、CD156b、CD156c、CD157、CD158、CD158A、CD158B1、CD158B2、CD158C、CD158D、CD158E1、CD158E2、CD158F1、CD158F2、CD158G、CD158H、CD158I、CD158J、CD158K、CD159a、CD159c、CD160、CD161、CD162、CD163、CD164、CD165、CD166、CD167a、CD167b、CD168、CD169、CD170、CD171、CD172a、CD172b、CD172g、CD173、CD174、CD175、CD175s、CD176、CD177、CD178、CD179a、CD179b、CD180、CD181、CD182、CD183、CD184、CD185、CD186、CD187、CD188、CD189、CD190、CD191、CD192、CD193、CD194、CD195、CD196、CD197、CDw198、CDw199、CD200、CD201、CD202b、CD203c、CD204、CD205、CD206、CD207、CD208、CD209、CD210、CDw210a、CDw210b、CD211、CD212、CD213a1、CD213a2、CD214、CD215、CD216、CD217、CD218a、CD218b、CD219、CD220、CD221、CD222、CD223、CD224、CD225、CD226、CD227、CD228、CD229、CD230、CD231、CD232、CD233、CD234、CD235a、CD235b、CD236、CD237、CD238、CD239、CD240CE、CD240D、CD241、CD242、CD243、CD244、CD245、CD246、CD247、CD248、CD249、CD250、CD251、CD252、CD253、CD254、CD255、CD256、CD257、CD258、CD259、CD260、CD261、CD262、CD263、CD264、CD265、CD266、CD267、CD268、CD269、CD270、CD271、CD272、CD273、CD274、CD275、CD276、CD277、CD278、CD279、CD280、CD281、CD282、CD283、CD284、CD285、CD286、CD287、CD288、CD289、CD290、CD291、CD292、CDw293、CD294、CD295、CD296、CD297、CD298、CD299、CD300A、CD300C、CD301、CD302、CD303、CD304、CD305、CD306、CD307、CD307a、CD307b、CD307c、CD307d、CD307e、CD308、CD309、CD310、CD311、CD312、CD313、CD314、CD315、CD316、CD317、CD318、CD319、CD320、CD321、CD322、CD323、CD324、CD325、CD326、CD327、CD328、CD329、CD330、CD331、CD332、CD333、CD334、CD335、CD336、CD337、CD338、CD339、CD340、CD344、CD349、CD351、CD352、CD353、CD354、CD355、CD357、CD358、CD360、CD361、CD362、CD363、CD364、CD365、CD366、CD367、CD368、CD369、CD370、及びCD371からなる群から選択される、請求項17に記載の多特異性抗体またはその断片。
【請求項19】
前記多特異性抗体またはその断片が、CrossMab、DAF(ツー・イン・ワン)、DAF(フォー・イン・ワン)、DutaMab、DT-IgG、ノブ・イン・ホール(KIH)、ノブ・イン・ホール(共通軽鎖)、電荷ペア、Fab-アーム交換、SEEDボディ、Triomab、LUZ-Y、Fcab、κλボディ、直交性Fab、DVD-IgG、IgG(H)-scFv、scFv-(H)IgG、IgG(L)-scFv、scFv-(L)IgG、IgG(L,H)-Fv、IgG(H)-V、V(H)-IgG、IgG(L)-V、V(L)-IgG、KIH IgG-scFab、2scFv-IgG、IgG-2scFv、scFv4-Ig、Zybody、DVI-IgG(フォー・イン・ワン)、ナノボディ、Nanoby-HAS、BiTE、ダイアボディ、DART、TandAb、scダイアボディ、scダイアボディ-CH3、ダイアボディ-CH3、トリプルボディ、Morrisonフォーマット、ミニ抗体、ミニボディ、TriBiミニボディ、scFv-CH3 KIH、Fab-scFv、scFv-CH-CL-scFv、F(ab’)2、F(ab)2-scFv2、scFv-KIH、Fab-scFv-Fc、四価HCAb、scダイアボディ-Fc、ダイアボディ-Fc、タンデムscFv-Fc、イントラボディ、ドック・アンド・ロック、ImmTAC、HSAボディ、scダイアボディ-HAS、タンデムscFv-毒素、IgG-IgG、ov-X-Body、デュオボディ、mab
2及びscFv1-PEG-scFv2からなる群から選択される多特異性抗体である、先行請求項のいずれかに記載の多特異性抗体またはその断片。
【請求項20】
前記多特異性抗体またはその断片が、ヒト抗体またはその抗原結合性断片である、先行請求項のいずれかに記載の多特異性抗体またはその断片。
【請求項21】
前記多特異性抗体またはその抗原結合性断片が、IgG多特異性抗体であり、場合により、前記多特異性抗体またはその抗原結合性断片が、IgG1多特異性抗体である、先行請求項のいずれかに記載の多特異性抗体またはその断片。
【請求項22】
前記多特異性抗体が、Fc有効型である、先行請求項のいずれかに記載の多特異性抗体またはその断片。
【請求項23】
前記多特異性抗体が、
a. Vδ1 T細胞上のTCRの下方制御を引き起こすこと、
b. CDCまたはADCCを示さないこと、及び
c. Vδ1 T細胞を枯渇させないこと
を特徴とする、先行請求項のいずれかに記載の多特異性抗体またはその断片。
【請求項24】
前記多特異性抗体が、ADCC及び/またはCDCを介して、生存可能なVδ1 T+細胞集団の約30%未満、または約20%未満、または約10%未満の枯渇を引き起こす、先行請求項のいずれかに記載の多特異性抗体またはその断片。
【請求項25】
先行請求項のいずれかに記載の組換え多特異性抗体を生成する方法であって、
a. 第1の標的エピトープと特異的に結合する第1の単特異性抗体を選択するステップであって、前記第1の標的エピトープが、γδT細胞受容体(TCR)の可変デルタ1(Vδ1)鎖のエピトープである、前記選択するステップと、
b. 前記第1の抗体の前記抗体またはその抗原結合性断片を、第2のエピトープをターゲティングする結合ドメインを含む抗体またはその断片と組み合わせて、前記組換え多特異性抗体を生成するステップと
を含み、場合により、前記組換え多特異性抗体が、請求項1~24のいずれか1項において定義されたような多特異性抗体である、前記方法。
【請求項26】
請求項1~24のいずれか1項において定義されたような前記多特異性抗体またはその断片と、薬学的に許容される希釈剤または担体とを含む、医薬組成物。
【請求項27】
対象の疾患もしくは障害を処置する方法、または対象の免疫応答を調節する方法であって、前記対象に、請求項1~24のいずれか1項に記載の多特異性抗体もしくはその断片、または請求項26に記載の医薬組成物を投与することを含む前記方法。
【請求項28】
前記疾患もしくは障害が、がん、感染性疾患もしくは炎症性疾患であるか、または免疫応答が調節される前記対象が、がん、感染性疾患もしくは炎症性疾患を有する、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
対象の免疫応答を調節することが、γδT細胞を活性化すること、γδT細胞の増殖を引き起こすまたは増加させること、γδT細胞の増大を引き起こすまたは増加させること、γδT細胞の脱顆粒を引き起こすまたは増加させること、γδT細胞殺傷活性を引き起こすまたは増加させること、γδT細胞傷害性を引き起こすまたは増加させること、γδT細胞の動員を引き起こすまたは増加させること、γδT細胞の生存を増加させること、及びγδT細胞の消耗に対する抵抗性を増加させることからなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項27または請求項28に記載の方法。
【請求項30】
疾患細胞は殺傷され、健康細胞は温存される、請求項27~29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
がん、感染性疾患または炎症性疾患の処置に使用するための、請求項1~24のいずれか1項に記載の多特異性抗体もしくはその断片、または請求項26に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガンマデルタT細胞のT細胞受容体及び1つの他の抗原と特異的に結合する、多特異性抗体、特に二重特異性抗体、ならびにその断片及び変異体に関する。
【背景技術】
【0002】
がんに対するT細胞免疫療法への関心の高まりは、CD8+及びCD4+アルファベータ(αβ)T細胞のサブセットががん細胞を認識し、特にPD-1、CTLA-4及び他の受容体により発揮される抑制経路の臨床的媒介拮抗作用によって抑制が解除された場合、宿主保護機能性を媒介する明らかな能力に焦点を当てている。しかし、αβT細胞は、移植片対宿主病を引き起こし得るMHC拘束性である。
【0003】
ガンマデルタT細胞(γδT細胞)は、表面に別個の典型的なγδT細胞受容体(TCR)を発現するT細胞のサブセットを表す。このTCRは1つのガンマ(γ)鎖と1つのデルタ(δ)鎖とで構成されており、鎖の各々は鎖の再構成を受けるが、αβT細胞と比較してV遺伝子の数が限られている。Vγをコードする主なTRGV遺伝子セグメントは、TRGV2、TRGV3、TRGV4、TRGV5、TRGV8、TRGV9及びTRGV11、ならびに非機能遺伝子TRGV10、TRGV11、TRGVA及びTRGVBである。最も頻度の高いTRDV遺伝子セグメントはVδ1、Vδ2、及びVδ3をコードし、更にVδ及びVαの両方の名称を有する幾つかのVセグメントをコードする(Adams et al.,296:30-40(2015)Cell Immunol.)。ヒトγδT細胞はTCR鎖に基づいて大まかに分類できる。これは、ある特定のγ型及びδ型が、1つまたは複数の組織型において排他的ではないがより一般的に細胞で見出されるためである。例えば、ほとんどの血液常在性γδT細胞は、Vδ2 TCR、一般的にはVγ9Vδ2を発現するが、これは、ガンマ鎖と対になる、例えば腸内ではしばしばVγ4と対になるVδ1 TCRをより頻繁に使用する、皮膚などに存在する組織常在性γδT細胞においてはあまり一般的ではない。
【0004】
γδT細胞は、免疫監視において重要な役割を果たし、ストレスマーカーのパターンを通じて悪性細胞または形質転換細胞(がん細胞など)を認識し、次いで強力かつ選択的な細胞傷害性を発揮する。したがってγδT細胞は、免疫応答を司るものとして作用し得る。これらの細胞をin situで調節すると、突然変異荷重の低い腫瘍においても免疫原性を増加させる可能性がもたらされるが、これは他の免疫療法では困難であることが判明している。腫瘍のγδT細胞による認識は、いずれかの単一の腫瘍抗原及びγδT細胞の調節因子に依存するものではなく、したがって、血液系悪性腫瘍と固形悪性腫瘍との両方を含む広範な疾患の兆候において可能性を有する。γδT細胞の認識メカニズムは、MHC拘束性ではない。
【0005】
WO2019147735の著者らは、一部のγδ細胞が腫瘍促進活性を有するか、またはαβT細胞によって媒介される抗がん免疫応答を阻害するとの仮説を立てている。同著者らは、γδT細胞が免疫抑制剤であると仮定し、したがって、がんの状況では抗体を用いてこれらを枯渇、阻害、または遮断すべきであると示唆している。
【0006】
しかしながら、抗γδ抗体がγδ細胞を遮断または殺傷することにより、このような細胞の機能を負に調節するという支配的な見解にもかかわらず、γδT細胞の浸潤と患者の予後及び/または生存との間に正相関が存在することが見出されている。
【0007】
αβ TCR受容体/リガンドの相互作用と比較して、vδ1 TCR受容体/リガンドの相互作用に関する理解は限られている。そのような理解がない中で、これまでのvδ1 TCRを認識する抗体は主に、この相互作用を調べるための探索的ツールである。このようなツールは通常、未精製の遮断抗体であり、TCR受容体/リガンドの相互作用がvδ1+細胞の遮断、抑制、またはアブレーションをもたらすことを示唆している。例えば、ツール抗体のTS8.2及びTS-1は複数の研究で抗γδ遮断抗体として用いられており、これらの研究は、前記抗体がvδ1細胞の細胞傷害性を低減させることを示唆している。これらの研究を他のものと合わせると、in situ疾患の状況においてこのような抗vδ1抗体を使用してvδ1細胞の細胞傷害性を良好に調節することは考えられず、したがって、vδ1細胞傷害性を低減させるのではなく増加させる抗体が必要であることが示唆される。
【0008】
免疫療法のためにγδT細胞を活用するには、細胞をin situで増大させるか、またはそれらを採取してそれらを再注入する前にex vivoで増大させるための手段が必要である。後者のアプローチは、外因性サイトカインの付加を使用するものが既報である。例えばWO2017/072367及びWO2018/212808を参照のこと。薬理学的に改変された形態のヒドロキシ-メチルブタ-2-エニルピロホスフェート(HMBPP)または臨床的に承認されたアミノビスホスホネートを使用する、患者自身のγδT細胞を増大させる方法が説明されている。これらのアプローチにより、250名を超えるがん患者が、一見したところ安全に処置されているが、完全寛解の発生はきわめて稀である。しかしながら、多数のγδT細胞を増大させる能力が証明されている活性化剤が依然として必要とされている。
【0009】
更に、in-situでVδ1+細胞を優先的にターゲティングする、またはそれと結合する、またはそれを認識する、またはそれを特異的に調節する、またはその数を増加させることができる結合剤または活性化剤は、薬物として非常に望ましい場合がある。
【0010】
しかしながら、Zometa(登録商標)(ゾレドロン酸)などのアミノビスホスホネートを含め、Vδ2+細胞を調節する可能性のある薬物は存在するが、前記医薬は主に、骨再吸収を緩徐化するために設計されている。また、前記Vδ2+の調節にかかわらず、Vδ1+細胞と結合する、それをターゲティングする、調節する、活性化する、またはその数を増加させるために特別に設計された医薬を開発する必要がある。その理由は、例えば、Vδ2+調節の繰り返しが、持続性で漸進的に消耗される表現型をもたらし得るためである。
【0011】
更に、Vδ1+細胞の優勢組織常在性を所与とすると、Vδ1+を調節することができる理想的な薬物はまた、「オフターゲット」の望ましくない効果をあまり示さず、急速な腎クリアランスを示すであろう。典型的に、前記の望ましくない効果は、小分子化学物質を用いる際に顕在化し得る。例えば、別個のクラスのVδ2+細胞を調節できることが示されている(骨に対する一次的な調節効果に対する二次的効果として)前述のアミノビスホスホネートは、腎機能の悪化及び潜在的な腎不全として顕在化する腎毒性に関連する(例えば、Markowitz et al.(2003)Kidney Int.64(1):281-289)。Zometaについて欧州医薬品庁が列挙した追加の望ましくない効果には、貧血、過敏反応、高血圧、心房細動、筋痛、全身痛、倦怠感、血中尿素増加、嘔吐、関節腫脹、胸痛などが含まれる。
【0012】
vδ1+細胞自体が見出されるin situ環境についても更なる検討を行わなければならない。例えば、非造血組織常在性γδT細胞は、組織から最初に分離されたときに強力な増殖応答を示したが、これは自己由来の線維芽細胞と直接的に細胞が接触していない場合に限られたことが以前に示されている。非造血組織常在性T細胞(γδT細胞)が機能するためには非造血性細胞(例えば間質細胞、特に線維芽細胞)から分離されていなければならないことが見出されている。その理由は、リンパ球の間質細胞または上皮細胞との直接接触が組織常在性γδT細胞の増大を阻害すると思われるためである。in situの活性化前の細胞が更に抑制された状態で存在するという観察は、vδ1細胞がこれまで有望な治療標的とみなされてこなかった別の理由である。実際、本明細書に記載される発見があるまで、血液及び組織のvδ1+細胞が「休止」、「活性化前」または「非活性化」状態と典型的にみなされる場合に、これらの細胞をin situで良好かつ選択的に調節し得る方法は考案されていない。
【0013】
様々なフォーマットの二重特異性抗体及び多特異性抗体が、種々の治療用途のために開発されてきた。二重特異性抗体及び多特異性抗体は、生物学的標的のタイプ及び作用様式に基づいて、重複するが別個のクラスに分けることができる。例えば、このような多特異性抗体は、細胞傷害性エフェクター細胞リダイレクター(二重特異性T細胞動員抗体、二重特異性T細胞エンゲージャー、TCE、またはBiTEとしても知られている)及びデュアル免疫調節薬(dual immunomodulator:DI)などのクラスに分けることができる。
【0014】
TCEは、T細胞を腫瘍細胞にターゲティングすることまたはその逆を行うことで、腫瘍に対する患者の免疫応答を増強することを意図しており、T細胞のT細胞受容体複合体の第1のエピトープ(通常はCD3)と、がん抗原または腫瘍関連抗原(TAA)などのがん関連抗原である第2のエピトープとをターゲティングすることによって働く。このような抗体は、腫瘍細胞及びT細胞に共局在化して腫瘍細胞殺傷を促進する。BiTEの例としては、CD3×CD19二重特異性抗体ブリナツモマブ、CD3×EpCAM二重特異性抗体カツマキソマブ、及びCD3×HER2二重特異性抗体エルツマキソマブが挙げられる。BiTEなどのTCEはscFvフォーマットで提供されるのが一般的だが、他のフォーマットも提供されている。例えば、BiKEはBiTEと類似しているが、CD3ではなくNK細胞のCD16をターゲティングする。
【0015】
このT細胞受容体は、哺乳動物免疫系の受容体構造で最も複雑なものと説明されている。これは、いくつかのCD3鎖に近接したT細胞受容体を含む膜貫通多タンパク質受容体複合体を含む。例えば、哺乳動物において、このような複合体の典型的なものは、T細胞受容体、CD3γ鎖、CD3δ鎖、及び2つのCD3ε鎖を含む。これらの鎖は、組み合わさったζ鎖(ゼータ鎖)と共にT細胞受容体(TCR)と会合し、次いでTリンパ球において典型的な活性化シグナルを生成する。しかしながら、代替的な複合体も報告されている。例えば、T細胞受容体及びゼータ鎖ホモ二量体を含むT細胞受容体複合体について説明されている。CD4及びCD8など、追加の共受容体もTCR機能を補助することができる。
【0016】
受容体複合体の組成にかかわらず、前記複合体が細胞表面結合事象を細胞内リン酸化シグナル伝達カスケードに翻訳することは十分に確立されている。これらのリン酸化事象は、最終的に、サイトカインならびにグランザイム及びパーフォリンなどのエフェクタータンパク質の発現増加につながるNFAT及びNFkBなどの転写因子の活性化をもたらす。しかしながら、このようなTCEを使用してがんを処置するのは依然として説得力のある概念であるが、これまで、初期臨床開発においてTCEを進展させようと30年間の協調努力がなされた後でさえ、このような二重特異性抗体の多くは、さえない安全性、有効性、及び製造性プロファイルを示している。実際、2020年1月の時点で、承認後撤回されていないTCEは依然としてブリナツモマブのみである。このTCE多特異性抗体断片は、T細胞受容体複合体と第1の結合アームで結合し、CD19標的と第2の結合アームで結合する。
【0017】
二重特異性T細胞動員抗体は、Lejeune et al.,2020,Front Immunol.,11:762に記述されている。しかしながら、このカテゴリにおける既存の二重特異性抗体、特にCD3結合を介してT細胞を動員するものは、シグナル伝達因子としてのCD3抗原の効力及び患者のT細胞集団におけるその遍在性を考慮すれば、重度の有害効果をもたらす著しいオフターゲット効果を有する。よって、カツマキソマブ(現在は撤回されている)などのCD3ターゲティング二重特異性薬の例については、全身送達(例えば静脈内)は現実的に不可能である。代わりに、術中、腹腔内、腹内などのような、より制限された送達が、より頻繁に企図される。これにより、薬物としての前記二重特異性薬の選択可能性及び使用が限定される。実際、エフェクター減弱型の抗CD3抗体(すなわち、CD3ターゲティングT細胞複合体エンゲージャーだが二重特異性薬ではない)でさえ、関連する毒性によって静脈内(I.V.)送達が困難になる。例えば、曝露を限定し毒性を低減させるために、現在は、抗CD3抗体のフォラルマブが経口送達のために(例えば腸疾患の処置において)企図されることがほとんどである。
【0018】
初期臨床試験においてこのようなTCEに関して観察される現在の問題の多くは、用いられる高親和性T細胞複合体結合ドメインに起因するものだとよく言われている。更に、その理由は、これらのTCEの設計者が天然のTCR複合体結合事象の低い親和性を十分に考慮せず、重度の用量制限毒性が妨げとなり、治療域がきわめて狭くなったためであると提唱されている。これに関して、初期TCE薬の開発者の多くが、OKT3、SP34、及びUCHT1に由来する3つの抗CD3 T細胞複合体結合ドメインに依存したことが明らかになっている。そして、これらの元の結合ドメインはすべて、天然結合事象と比べてほぼ1,000倍高い親和性に等しい、一桁から低い二桁のnM範囲における比較的高い親和性で結合する。この結果、T細胞の活性化が、T細胞受容体複合体の天然の結合と比較して著しく異なる(そして多くの場合で好ましくない)影響を受けると提唱されている。例えば、より親和性の高いOKT3に基づくプラットフォームを使用するTCE開発者は、OKT3がIL-2の存在下でT細胞のアポトーシスを誘導するということに困惑する可能性がある。
【0019】
これらの理由で、より低い親和性のT細胞複合体の結合は、T細胞と会合する二重特異性抗体治療薬の設計パラメータの決定に関する重要な検討事項であることが明らかになっている。
【0020】
前記TCEを設計する際の別の問題は、Fc機能を減弱させる必要性である。実際、Fcガンマ受容体(FcγR)に対するFcの結合は免疫エフェクター細胞の活性化につながるので、TCEは、治療有効性を最大化してオフターゲット毒性を最小限に抑えるために、Fc媒介性エフェクター機能の完全な抑制を必要とすることが一般的である。実際のところ、現在臨床に用いられているCD3ターゲティング二重特異性抗体の大多数は、FcγRに対する結合活性が低減したFcドメインを有するか、または意図的にFc領域を含まない二重特異性断片である。一般的には、減弱されていないFc機能を有するTCEは、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害性(ADCC)効果を誘導し、それにより、抗体によって認識されるγδT細胞集団を枯渇させると予想されるであろう。しかしながら、また繰り返しになるが、毒性/安全性の複雑さを回避するためにこのような機能性を減弱させると、例えば、CD16+免疫細胞もしくはCD32+免疫細胞もしくはCD64+免疫細胞と会合することにより、または二重特異性薬(例えば、BITEなどのより小さな二重特異性抗体断片を用いる場合)の半減期が低減することにより、重要な可能性がある有効性の観点も減弱し得る。FcγRとTCEとの相互作用を低減させる(例えば、前記相互作用を低減させるように設計されたIgGフォーマットを使用する)方法は、TCEのFc媒介性固定化を低減させるとともに、固定化されたTCEとの架橋によってTCRクラスター化を低減させると予想されるであろう。
【0021】
これらの問題点のすべてではないが一部に対処するために、Xencor(Pasadena,CA)、Macrogenics(Gaithersburg,MD)及びGenentech(San Francisco,CA)などの多くの企業が、それぞれのTCEプラットフォームにおけるT細胞受容体複合体結合アームの結合親和性を低減させることをつい最近報告している。しかしながら、前記結合の親和性を低減させると、TCEの設計及び機能性に関して有効性の低下及び選択可能性の低下が生じ得る。例えば、このようなTCEにおける結合ドメインの親和性はin vivoの分布プロファイルを駆動することが現在実証されている。具体的には、TCEの分布はその親和性の最も高い標的に偏っていることが通常観察される。よって、T細胞複合体に対するTCE結合ドメインの親和性を低減させると、まさにこのようなTCEの有効性を駆動するために必要な細胞であるT細胞から分布の偏りが遠ざかることが一般的である。TCEの治療域が「きわめて狭い」と言われるのは、部分的にはこのような理由のためである。
【0022】
よって、より高い選択可能性をもたらし、Fcドメインの非活性化もしくは減弱またはTCR複合体に対する特異的親和性に依存せず、有害副作用が低減したより安全な治療薬を提供するプラットフォームを含む、既存療法及び候補療法に関するこれらの問題に対処する向上したTCE型薬物が必要である。
【0023】
デュアル免疫調節薬抗体(DI)は、2つの異なる免疫調節性標的と結合する抗体である。免疫調節性標的は、例えば、免疫チェックポイント阻害薬PD-L1、PD-1、OX40、CTLA-4、LAG-3、TIM-3、TIGIT及びVISTAを含む(例えば、Qin et al.,2019,Molecular cancer,18:155を参照のこと)。このクラスの化合物の典型例は、2つの免疫調節性シグナル伝達経路のターゲティングを組み合わせる。このようなDIの例は、典型的には少なくとも2つの結合ドメインを含み、両ドメインは、T細胞などの免疫細胞に存在する2つの別個の標的タンパク質または複合タンパク質にあるエピトープをそれぞれターゲティングする。これまで、免疫抑制性腫瘍微小環境を克服してそれを「コールド」から「ホット」に変えるのに役立ち、炎症誘発性サイトカインの蓄積及びT細胞の浸潤、ならびに腫瘍細胞の殺傷を促進する、少なくとも2つの免疫調節性標的をターゲティングするDIであって、そのような標的の1つがTCRδ1鎖に対するものであるDIを生成することは、考案されることもなければ、実際に可能とみなされることもなかった。既存のDIアプローチは、併用療法に関連する高い毒性を低減させるまたは克服する(かつ、併用処置と比べて有効性を向上させる)試みにおいて研究されているが、その多くは注意深いモニタリングを必要とし、成功率はまちまちである。がんなどの状態を処置するための代替的な免疫調節性アプローチが依然として必要であり、本発明は、これまでに企図されなかったDI抗体の全く新しく代替的なアプローチを提供する。
【0024】
よって、感染症、自己免疫状態、及びがんを処置するための向上した薬物、特に多特異性抗体及び二重特異性抗体が必要とされている。
【発明の概要】
【0025】
本発明は、γδT細胞及び別の抗原をターゲティングする多特異性抗体に関する。したがって、本発明の第1の態様では、γδT細胞受容体(TCR)の可変デルタ(Vδ)鎖のエピトープである第1の標的エピトープ、及び第2の標的エピトープと特異的に結合する、多特異性抗体またはその断片が提供される。好ましい実施形態では、多特異性抗体は、γδT細胞受容体(TCR)の可変デルタ1(Vδ1)鎖のエピトープである第1の標的エピトープ、及び第2の標的エピトープと結合する。
【0026】
本発明の多特異性抗体は、2つのクラスに分けることができる。1つ目は、T細胞エンゲージャーである多特異性抗体である。2つ目は、デュアル免疫調節薬である多特異性抗体である。
【0027】
したがって、本発明の第2の態様では、第1の標的エピトープ及び第2の標的エピトープと特異的に結合する多特異性抗体が提供され、第1の標的エピトープは、γδT細胞受容体(TCR)の可変デルタ1(Vδ1)鎖のエピトープであり、第2の標的エピトープは、がん抗原またはがん関連抗原のエピトープである。
【0028】
本発明の第3の態様では、第1の標的エピトープ及び第2の標的エピトープと特異的に結合する多特異性抗体が提供され、第1の標的エピトープは、γδT細胞受容体(TCR)の可変デルタ1(Vδ1)鎖のエピトープであり、第2の標的エピトープは、免疫調節性抗原のエピトープである。
【0029】
本発明の第4の態様では、本発明の多特異性抗体またはその断片をコードするポリヌクレオチド配列が提供される。
【0030】
本発明の第5の態様では、本発明のポリヌクレオチド配列を含む発現ベクターが提供される。本発明のポリヌクレオチド配列または本発明の発現ベクターを含む宿主細胞も提供される。細胞培養培地中で本発明の宿主細胞を培養することを含む、本発明の多特異性抗体またはその断片のいずれかを産生するための方法も提供される。
【0031】
本発明の更なる態様において、本発明の多特異性抗体またはその断片を含む組成物が提供される。本発明の多特異性抗体またはその断片と、薬学的に許容される希釈剤または担体とを含む医薬組成物も提供される。
【0032】
本発明の更なる態様において、本発明の多特異性抗体もしくは断片または本発明の医薬組成物を含み、場合により使用説明書及び/または追加の治療活性剤を含むキットが提供される。
【0033】
本発明の更なる態様において、対象の疾患または障害を処置する方法であって、対象に、本発明の多特異性抗体もしくは断片、または本発明の医薬組成物を投与することを含む方法が提供される。対象の免疫応答を調節する方法であって、対象に、本発明の多特異性抗体もしくは断片、または本発明の医薬組成物を投与することを含む方法も提供される。
【0034】
本発明の更なる態様において、本発明の多特異性抗体または断片を調製する方法に従って調製された抗体を用意することと、多特異性抗体を少なくとも1つまたは複数の薬学的に許容される希釈剤または担体と合剤化することとを含む、医薬組成物を調製する方法が提供される。
【0035】
本発明の更なる態様において、本発明の多特異性抗体を生成する方法であって、第1の標的エピトープと特異的に結合する第1の単特異性抗体を選択するステップであって、第1の標的エピトープが、γδT細胞受容体(TCR)の可変デルタ1(Vδ1)鎖のエピトープである、選択するステップと、前記第1の抗体の抗体またはその抗原結合性断片を、第2のエピトープをターゲティングする結合ドメインを含む抗体またはその断片と組み合わせて、組換え多特異性抗体を生成するステップとを含む方法が提供される。
【0036】
本発明のなおも更なる態様では、医薬に使用するための、本発明の多特異性抗体もしくはその断片、または本発明の医薬組成物、または本発明のキットが提供される。薬物の製造における本発明の多特異性抗体またはその断片の使用も提供される。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】直接コーティングされた抗原の抗Vδ1Ab(REA173、Miltenyi Biotec)によるELISA検出。Vδ1ドメインを含有する抗原でのみ検出が見られた。ロイシンジッパー(LZ)フォーマットはFcフォーマットよりも強力であるように見受けられ、これはセルベースのフロー競合アッセイと一致している(データは示していない)。
【
図2】DV1選択のためのポリクローナルファージDELFIAデータ。(A)ヘテロ二量体選択:ラウンド1及び2でヘテロ二量体LZ TCRフォーマット、両ラウンドでヘテロ二量体LZ TCRの選択解除。(B)ホモ二量体選択:ラウンド1はホモ二量体Fc融合TCRを使用して行い、ヒトIgG1 Fcを選択解除し、続いてラウンド2はヘテロ二量体LZ TCRに対して行い、ヘテロ二量体LZ TCRを選択解除した。各グラフには、異なるライブラリからの選択を表すために、各標的に対して2つのバーが含まれている。
【
図3】IgG捕捉:左)抗L1 IgGとL1との相互作用のセンサグラム、右)利用可能な場合の定常状態のフィット。実験はすべて室温にてMASS-2機器で行った。定常状態のフィッティングはLangmuir 1:1結合に従う。
【
図4】クローン1245_P01_E07、1252_P01_C08、1245_P02_G04、1245_P01_B07及び1251_P02_C05(A)、またはクローン1139_P01_E04、1245_P02_F07、1245_P01_G06 1245_P01_G09、1138_P01_B09、1251_P02_G10及び1252_P01_C08(B)についてのTCR下方制御アッセイの結果。
【
図5】クローン1245_P01_E07、1252_P01_C08、1245_P02_G04、1245_P01_B07及び1251_P02_C05(A)、またはクローン1139_P01_E04、1245_P02_F07、1245_P01_G06、1245_P01_G09、1138_P01_B09、及び1251_P02_G10(B)についてのT細胞脱顆粒アッセイの結果。
【
図6】クローン1245_P01_E07、1252_P01_C08、1245_P02_G04、1245_P01_B07及び1251_P02_C05(A)、またはクローン1139_P01_E04、1245_P02_F07、1245_P01_G06、1245_P01_G09、1138_P01_B09、及び1251_P02_G10(B)についての殺傷アッセイ(THP-1フローベースのアッセイ)の結果。
【
図7】実施例10の実験1中の総細胞数。様々な濃度の本明細書に記載される抗Vδ1抗体と共に試料を培養し、コンパレータ抗体または対照と共に培養した試料と比較した。グラフは、(A)7日目、(B)14日目、及び(C)18日目の総細胞数を示す。
【
図8】実施例10の実験1中のVδ1 T細胞の分析。グラフは、18日目の試料中の(A)Vδ1 T細胞のパーセンテージ、(B)Vδ1 T細胞数、及び(C)Vδ1変化倍率を示す。
【
図9】実施例10の実験2中の総細胞数。様々な濃度の本明細書に記載される抗Vδ1抗体と共に試料を培養し、コンパレータ抗体または対照と共に培養した試料と比較した。グラフは、(A)7日目、(B)11日目、(C)14日目、及び(D)17日目の総細胞数を示す。
【
図10】実施例10の実験2中のVδ1 T細胞の分析。グラフは、17日目の試料中の(A)Vδ1 T細胞のパーセンテージ、(B)Vδ1 T細胞数、及び(C)Vδ1変化倍率を示す。
【
図11】細胞組成分析。実験2の17日目に試料(非Vδ1細胞を含む)に存在する細胞型を測定した。細胞を採取し、Vδ1、Vδ2及びαβTCRの表面発現についてフローサイトメトリーで分析した。パーセンテージ値は表7にも提示する。
【
図12】SYTOXフロー殺傷アッセイ結果。SYTOXフロー殺傷アッセイを使用して細胞の機能性を試験し、(A)10:1のエフェクター対標的(E:T)比の細胞を使用した実験1の14日目、ならびに(B)1:1及び10:1のE:T比の細胞を使用した実験2の17日目(凍結解凍後)について結果を提示している。
【
図13】凍結解凍後の総細胞数。グラフは、凍結前にB07、C08、E07、G04またはOKT-3抗体と接触させた培養物についての凍結解凍後に細胞を7日間培養した後の総細胞数を示す。
【
図14】細胞増大のモニタリング。凍結解凍後に培養した細胞について、総細胞数を42日目までモニタリングした。
【
図15】改変された抗Vδ1抗体の結合同等性研究。
【
図16】ヒト生殖系Vδ1抗原及びその多型変異体に対する抗Vδ1抗体結合同等性研究。
【
図17】抗Vδ1抗体は、Vδ1+細胞のサイトカイン分泌レベルの上昇を付与した。組織由来γδT細胞を示されている抗体と共にインキュベートした。(A)観察されたTNF-アルファのレベル。(B)観察されたIFN-ガンマのレベル。
【
図18】抗Vδ1抗体は、Vδ1+細胞グランザイムBレベル/活性の上昇を付与した。がん細胞を、1時間にわたり、組織由来γδT細胞と一定の1:20のT:E比で、かつ示されている抗体と共培養した。結果は、共培養終了時のがん細胞で検出されたグランザイムBの量を明らかにしている。
【
図19】抗Vδ1抗体は、ヒト組織における免疫細胞の調節及び増殖を付与した。ヒト皮膚パンチ生検(5名の異なるドナー由来)を、示されている抗体と共に培養下で21日間インキュベートした。(A)生存可能な汎γδ+細胞の数。(B)生存可能なVδ1+細胞の数。(C)生存可能な二重陽性Vδ1+CD25+細胞のパーセンテージ。
【
図20】抗Vδ1抗体は、ヒト腫瘍における腫瘍浸潤リンパ球(TIL)の調節及び増殖を付与した。腎細胞癌(RCC)±抗体に関する研究。(A)TIL Vδ1+細胞の増加倍率。(B)TIL Vδ1+細胞の総数。(C)ゲーティングストラテジーの例。(D)TIL Vδ1+細胞の細胞表面表現型プロファイルの比較。(E)TIL Vδ1陰性でゲーティングした画分の分析。
【
図21】抗Vδ1抗体は、Vδ1+媒介性細胞傷害性及び疾患細胞特異的細胞傷害性の増強を付与した。Vδ1+エフェクター細胞、THP-1単球性がん細胞、及び非疾患の健康な初代単球の三種培養を含むモデル系における細胞傷害性/効力アッセイ。(A)抗Vδ1 mAbまたは対照の存在下のγδT細胞を用いる三重共培養下のTHP-1及び単球細胞の数の数量化。(B)疾患細胞の特異的殺傷と非疾患健康との間のウィンドウを強調する棒グラフ表現:左側の棒グラフ;非疾患細胞(初代ヒト単球)の殺傷と対比した疾患細胞(THP-1)の殺傷の増加倍率;右側の棒グラフ;同じデータだが、対照に対する殺傷増強率として表されている。(C)THP-1標的細胞±mAbのVδ1+エフェクター細胞殺傷効力の向上率をまとめた表形式の結果。(D)50%のTHP-1細胞殺傷を付与するのに必要なγδT細胞数として表されている、図(A)から計算されたEC50値の表形式の結果。
【
図22】多特異性抗体は、Vδ1+エフェクター細胞媒介性細胞傷害性の増強を付与した。組織中心疾患関連抗原のターゲティング:(A~D)抗Vδ1 VL+VH結合ドメイン(第1の標的に対する)を抗EGFR結合部位(第2の標的に対する)のCH1-CH2-CH3ドメインと組み合わせた抗Vδ1×抗TAA(EGFR)二重特異性結合部位を含む多特異性抗体ありまたはなし(+/-)での、Vδ1+エフェクター細胞とA-431がん細胞との共培養の例。(E~H)抗Vδ1結合ドメイン(第1の標的に対する)が完全長抗体(VH-CH1-CH2-CH3/VL-CL)を含み、次いで抗EGFRセツキシマブ由来scFv結合部位(第2の標的に対する)と組み合わさった、抗Vδ1×抗TAA(EGFR)二重特異性結合部位を含む多特異性抗体ありまたはなしでの、Vδ1+エフェクター細胞とA-431がん細胞との共培養の例。(I~J)データを表現する代替的なアプローチ:構成部分に対して相対的なEGFR+細胞に対するVδ1+エフェクター細胞傷害性に多特異性抗体が付与する向上のパーセンテージ。
【
図23】多特異性抗体は、Vδ1+媒介性細胞傷害性及び疾患細胞特異的細胞傷害性の増強を付与した。造血疾患関連抗原のターゲティング。(A)50%のRaji細胞殺傷を誘導するのに必要なE:T比。(B)Vδ1-CD19多特異性抗体の付加による向上のパーセンテージ。
【
図24】抗Vδ1/CD19二重特異性抗体は、親モノクローナルVδ1 mAbに匹敵する、ヒトVδ1及びカニクイザルVδ1に対する高親和性結合を示す。Vδ1/CD19二重特異性薬を用いて表面プラズモン共鳴(SPR)分析を行い、ヒトVδ1及びCD19抗原への結合を評価した。二重特異性抗体はヒト及びカニクイザルの両方のVδ1と結合し、両抗原に対する親和性の低減はごくわずかである。
【
図25】Vδ1-CD19二重特異性T細胞エンゲージャーは、健康なCD19+B細胞を温存しながら、CD19+標的細胞傷害性及びγδT細胞の活性化を増強する。(A)フローサイトメトリーによって決定された、がん性NALM-6、Raji、B細胞、及びVδ1γδT細胞におけるCD19の発現。(B~D)NALM-6細胞(B)、Raji細胞(C)、及びB細胞傷害性(D)に対する抗Vδ1-CD19 BiTEの効果。1:1のE:T比のVδ1γδT細胞の存在下で12時間にわたって抗体を滴定した。生細胞率はハイコンテント共焦点顕微鏡法により計算し、Vδ1γδT細胞の非存在下での生細胞数に対して正規化した。(E)Vδ1γδT細胞を(B)、(C)及び(D)に提示したようにVδ1 BiTE及び対照の存在下でNALM-6、RajiまたはB細胞のいずれかと12時間共培養した後の生細胞数のパーセントを表す棒グラフ。(F~G)4時間の共培養後にフローサイトメトリーによって決定された、NALM-6標的細胞(F)及び健康なB細胞(G)の存在下でのVδ1 TCR表面発現に対するVδ1-CD19 BiTEの効果。(H)最高濃度(3μg/ml)における(F)及び(G)に提示したTCR下方制御の最大率を表す棒グラフ。(I~J)4時間の共培養後にフローサイトメトリーによって決定された、NALM-6標的細胞(I)及び健康なB細胞(J)の存在下でのVδ1細胞表面におけるCD107aの上方制御に対するVδ1-CD19二重特異性薬の効果。(K)B細胞及びNALM-6細胞におけるCD107aの上方制御。すべてのデータは平均±標準偏差を示し、n=3の代表である。すべてのアッセイでブリナツモマブ(CD3-CD19 BiTE)を対照として含めた。
【
図26】二重特異性フォーマットの親和性成熟Vδ1クローンは、Her2
+標的細胞に結合し、Vδ1γδT細胞への結合の増強、及びHer2
+標的細胞の細胞傷害性の増強を示す。乳癌細胞株及びVδ1γδT細胞におけるHer2(A)及びVδ1(B)の細胞表面発現。(C~E)Vδ1-Her2二重特異性抗体及びHer2 mAb対照(トラスツズマブ)の、Her2+(SK-BR-3(C)、BT-474(D))、Her2
-(MDA-MD-231(E))、及びVδ1
+細胞(F)に対する結合。(G~I)Vδ1-Her2二重特異性抗体の存在下にて、Vδ1γδT細胞及びSK-BR-3細胞(G)、BT-474(H)、ならびにMDA-MB-231細胞(I)と1:1のE:T比で24時間共培養した後に残存していた生細胞率。(J)24時間後のVδ1γδT細胞Vδ1-Her2二重特異性抗体における細胞傷害性の増加率を表す棒グラフ。
【
図27A】抗Vδ1/EGFR二重特異性抗体は、ヒトEGFRへの高親和性結合及びその親mAbに匹敵するヒトVδ1結合親和性を示す。Vδ1/EGFR二重特異性薬を用いて表面プラズモン共鳴(SPR)分析を行い、ヒトVδ1への結合を評価した。比較を目的として、親mAb、セツキシマブ、及び陰性対照mAbを含めた。
【
図27B】抗Vδ1/EGFR二重特異性抗体は、ヒトEGFRへの高親和性結合及びその親mAbに匹敵するヒトVδ1結合親和性を示す。Vδ1/EGFR二重特異性薬を用いて表面プラズモン共鳴(SPR)分析を行い、ヒトEGFR抗原への結合を評価した。比較を目的として、親mAb、セツキシマブ、及び陰性対照mAbを含めた。
【
図28】Vδ1/EGFR二重特異性抗体は、EGFR+A431標的細胞及びVδ1γδT細胞に結合する。(A~D)A431細胞株及び初代Vδ1γδT細胞におけるEGFRの細胞表面発現。(E、F)A431細胞株または初代Vδ1γδT細胞への抗Vδ1/EGFR二重特異性抗体による結合のレベル。標的細胞を様々な濃度の抗体で染色した後、蛍光抗ヒトIgG検出抗体で染色した。すべてのインキュベーションステップは4℃で行い、フローサイトメトリーを使用して蛍光レベル中央値を測定することでmAb結合を判定した。対数4パラメータ用量応答曲線のフィッティングはGraphPad Prism 9を使用して行った。
【
図29】Vδ1/EGFR二重特異性抗体は、EGFR特異的T細胞の活性化及び脱顆粒を誘導し、A431標的細胞のγδT細胞媒介性細胞傷害性の増加をもたらす。(A)A431細胞の存在下または非存在下で二重特異性抗体と共に24時間培養した後の初代Vδ1γδT細胞におけるγδTCRの細胞表面発現。(B、C)様々な濃度の抗体と併せて1:1の比で24時間共培養した後の生存可能なA431細胞の数(B)及び初代Vδ1γδT細胞の活性化状態。生存率は生死判別色素により測定し、活性化状態はCD25抗体を使用して測定した。(D)様々な濃度の抗体と併せて1:1の比でA431細胞と4時間共培養した後の初代Vδ1γδT細胞の脱顆粒。脱顆粒は、フルオロフォアにコンジュゲートした抗CD107α抗体を共培養開始時に細胞-抗体ミックスに直接加えることによって決定した。(E)10pMの抗体及び様々な量の初代Vδ1γδT細胞と24時間共培養した後の生存可能なA431細胞の数。(A~E)すべての場合において、蛍光レベル中央値を測定するためにフローサイトメトリーを使用して蛍光を決定した。対数4パラメータ用量応答曲線のフィッティングはGraphPad Prism 9を使用して行った。データは、2つの生物学的複製物の平均±SDとして表されている。
【
図30】CD3の下方制御。(A)mAb標的会合の指標としての抗体刺激時のvδ1 TCRのMFIを示す。(B)陽性ゲーティングされたvδ1細胞におけるCD3発現のMFIを示す。vδ1抗体による刺激はvδ1細胞を会合させ、vδ1細胞上のvδ1及びCD3の両方の下方制御をもたらした。
【
図31】Vδ1×FAPα二重特異性抗体は、Vδ1γδT細胞の活性化及びFAPα
+線維芽細胞の溶解を増強する。(A)表面プラズモン共鳴(SPR)によって決定された、組換えヒトVδ1及びFAPαに対する、抗Vδ1、抗FAPαモノクローナル、及び抗Vδ1×FAPα二重特異性抗体の結合動態を示す。(B、C)抗Vδ1抗体及び抗FAPα抗体の、FAPα
+線維芽細胞(B)及びVδ1γδT細胞(C)に対する結合。(D、E)FAPα
+線維芽細胞の非存在下(D)または存在下(E)でのVδ1γδT細胞におけるVδ1 TCRの下方制御に対する、抗Vδ1×FAPα二重特異性抗体及びモノクローナル対照の効果。(F~G)FAPα
+線維芽細胞の非存在下(F)または存在下(G)でのVδ1γδT細胞におけるCD107aの上方制御に対する、抗Vδ1×FAPα二重特異性抗体及びモノクローナル対照の効果。(H)24時間の共培養後のVδ1γδT細胞による線維芽細胞の溶解に対する、抗Vδ1×FAPα二重特異性抗体及びモノクローナル対照の効果。生細胞率はハイコンテント共焦点顕微鏡法により計算し、Vδ1γδT細胞の非存在下での生細胞数に対して正規化した。
【
図32】Vδ1×MSLN二重特異性抗体は、Vδ1γδT細胞の活性化及びMSLN
+標的細胞の溶解を増強する。(A)表面プラズモン共鳴(SPR)によって決定された、組換えヒトVδ1及びMSLNに対する、抗Vδ1、抗MSLNモノクローナル、及び抗Vδ1×MSLN二重特異性抗体の結合動態。(B、C)抗Vδ1抗体及び抗MSLN抗体の、MSLN
+HeLa細胞(B)及びVδ1γδT細胞(C)への結合。(D、E)MSLN
+OVCAR-3細胞の非存在下(D)または存在下(E)でのVδ1γδT細胞におけるVδ1 TCRの下方制御に対する、抗Vδ1×MSLN二重特異性抗体及びモノクローナル抗体の効果。(F、G)MSLN
+OVCAR-3細胞の非存在下(F)または存在下(G)でのVδ1γδT細胞におけるCD107aの上方制御に対する、抗Vδ1×MSLN二重特異性抗体及びモノクローナル対照の効果。(H)24時間の共培養後のVδ1γδT細胞によるHeLa細胞の溶解に対する、抗Vδ1×MSLN二重特異性抗体及びモノクローナル対照の効果。生細胞率はハイコンテント共焦点顕微鏡法により計算し、Vδ1γδT細胞の非存在下での生細胞数に対して正規化した。
【
図33】Vδ1×PD-1二重特異性抗体は、Vδ1γδT細胞の活性化を増強し、PD-1
+T細胞のチェックポイント遮断を阻害する。A)組換えヒトVδ1及びPD-1に結合する、抗Vδ1、抗PD-1、抗RSVIgG対照×抗PD-1、及び抗Vδ1×抗PD-1二重特異性抗体のSPR分析。B)SPRによって決定された、組換えヒトPD-1及びVδ1に対する抗Vδ1及び抗PD-1二重特異性抗体の二重結合。C)抗CD3/抗CD28 Dynabeadsで活性化されたCD4及びCD8 T細胞におけるPD-1の発現。D)PD-1
+活性化CD4及びCD8 T細胞ならびにVδ1γδT細胞に対する抗Vδ1及び抗PD-1抗体の結合。E)PD-1
+CD4 T細胞の非存在下または存在下でのVδ1γδT細胞におけるVδ1 TCRの下方制御に対する、抗Vδ1×PD-1二重特異性抗体及びモノクローナル対照の効果。F)PD-1
+CD4 T細胞の存在下または非存在下でのVδ1γδT細胞におけるVδ1 TCRの下方制御に対する、抗Vδ1×PD-1二重特異性抗体のEC50。G)PD-1
+T細胞の活性化に対する、Vδ1架橋型抗Vδ1×PD-1二重特異性抗体の効果。
【
図34】Vδ1×4-1BB二重特異性抗体は、Vδ1γδT細胞及び4-1BB
+T細胞の活性化を増強する。A)組換えヒトVδ1及び4-1BBに結合する、抗Vδ1、抗4-1BB、抗RSVIgG対照×抗4-1BB、及び抗Vδ1×抗4-1BB二重特異性抗体のSPR分析。B)SPRによって決定された、組換えヒト4-1BB及びVδ1に対する抗Vδ1及び抗4-1BB二重特異性抗体の二重結合。C)抗CD3/抗CD28 Dynabeadsで活性化されたCD4及びCD8 T細胞における4-1BBの発現。D)4-1BB
+活性化CD8 T細胞及びVδ1γδT細胞に対する抗Vδ1抗体及び抗4-1BB抗体の結合。E~F)4-1BB
+CD8 T細胞の非存在下(E)または存在下(F)でのVδ1γδT細胞におけるVδ1 TCRの下方制御に対する、抗Vδ1×4-1BB二重特異性抗体及びモノクローナル対照の効果。G)4-1BB
+T細胞の活性化に対する、Vδ1架橋型抗Vδ1×4-1BB二重特異性抗体の効果。
【
図35】Vδ1×OX40二重特異性抗体は、Vδ1γδT細胞及びOX40
+T細胞の活性化を増強する。A)組換えヒトVδ1及びOX40に結合する、抗Vδ1、抗OX40、抗RSVIgG対照×抗OX40、及び抗Vδ1×抗OX40二重特異性抗体のSPR分析。B)SPRによって決定された、組換えヒトOX40及びVδ1に対する抗Vδ1及び抗OX40二重特異性抗体の二重結合。C)抗CD3/抗CD28 Dynabeadsで活性化されたCD4及びCD8 T細胞におけるOX40の発現。D)OX40
+活性化CD4 T細胞及びVδ1γδT細胞に対する抗Vδ1及び抗OX40抗体の結合。E~F)OX40
+CD4 T細胞の非存在下(E)または存在下(F)でのVδ1γδT細胞におけるVδ1 TCRの下方制御に対する、抗Vδ1×OX40二重特異性抗体及びモノクローナル対照の効果。G)OX40
+T細胞の活性化に対する、Vδ1架橋型抗Vδ1×OX40二重特異性抗体の効果。
【
図36】Vδ1×TIGIT二重特異性抗体は、Vδ1γδT細胞の活性化を増強し、TIGIT
+T細胞のチェックポイント遮断を阻害する。A)組換えヒトVδ1及びTIGITに結合する、抗Vδ1、抗TIGIT、抗RSVIgG対照×抗TIGIT、及び抗Vδ1×抗TIGIT二重特異性抗体のSPR分析。B)SPRによって決定された、組換えヒトTIGIT及びVδ1に対する抗Vδ1及び抗TIGIT二重特異性抗体の二重結合。C)抗CD3/抗CD28 Dynabeadsで活性化されたCD4及びCD8 T細胞におけるTIGITの発現。D)TIGIT
+活性化CD4及びCD8 T細胞ならびにVδ1γδT細胞に対する抗Vδ1及び抗TIGIT抗体の結合。E)TIGIT
+CD8 T細胞の非存在下または存在下でのVδ1γδT細胞におけるVδ1 TCRの下方制御に対する、抗Vδ1×TIGIT二重特異性抗体及びモノクローナル対照の効果。F)TIGIT
+CD8 T細胞の存在下または非存在下でのVδ1γδT細胞におけるVδ1 TCRの下方制御に対する、抗Vδ1×TIGIT二重特異性抗体のEC50。G)TIGIT
+T細胞の活性化に対する、Vδ1架橋型抗Vδ1×TIGIT二重特異性抗体の効果。
【
図37】ADCCレポーターバイオアッセイは、抗vδ1抗体の結果としてADCCを示さない。標的細胞、すなわちγδ細胞を、抗vδ1抗体、抗vδ1 LAGA抗体(Fc無効型)、及びRSVアイソタイプ対照の存在下で、ADCCバイオアッセイエフェクター細胞と共にインキュベートした。発光シグナルは相対光単位(RLU)として記録し、誘導倍率は方法に記載するように計算した。「抗vδ1抗体」、「抗vδ1 LAGA抗体」、「RSV」、「OKT3」についてはN=2のγδドナー(技術的二連(technical duplicate)で行った)。「リツキシマブ+Raji」条件(技術的二連)についてはN=1のRaji細胞株、「抗vδ1抗体+エフェクター」及び「抗vδ1 LAGA抗体+エフェクター」条件(それぞれ技術的二連及び単回(singlicate)で行った)についてはn=1のγδドナー。エフェクター:標的比は3:1。
【
図38】Vδ1-CD19二重特異性T細胞エンゲージャーは、健康なCD19+B細胞を温存しながら、CD19+標的細胞傷害性及びγδT細胞の活性化を増強する。A~F)Raji細胞または健康な初代B細胞のγδT細胞またはαβT細胞媒介性溶解に対する、抗Vδ1×CD19及びCD3×CD19二重特異性抗体の効果。Raji細胞または健康な初代B細胞の陽性率は、Vδ1γδT細胞とRaji細胞(A)及び健康な初代B細胞(B)の三種培養物;αβT細胞とRaji細胞(C)及び健康な初代B細胞(D)の三種培養物;またはVδ1γδT細胞及びαβT細胞とRaji細胞(E)及び健康な初代B細胞(F)の四種培養物において、共焦点顕微鏡法によって24時間時点で決定した。G~I)抗Vδ1×CD19及びCD3×CD19二重特異性抗体による刺激の24時間後のγδT細胞またはαβT細胞からのIL-17A分泌の数量化。Raji細胞、初代B細胞、及びγδT細胞(G);またはαβT細胞(H);またはγδT細胞及びαβT細胞(I)の共培養物からの細胞培養上清を収集し、IL-17A分泌をMSDによって決定した。点線は数量化の最低レベルを表す。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明は、可変デルタ鎖、例えばγδT細胞受容体(TCR)の可変デルタ1(Vδ1)鎖、及び第2の抗原をターゲティングする、新たなクラスの多特異性抗体を提供する。第2の抗原は、例えば、がん抗原またはがん関連抗原(TAAなど)であり得、したがって本抗体は、T細胞エンゲージャー(TCE)と称され得る。あるいは、第2の抗原は、例えば、免疫調節性抗原であり得、したがって本抗体は、デュアル免疫調節性抗体であり得る。
【0039】
本発明のTCEは、先行技術のTCEと比べて幾つかの利点を提供する。特に、本件のTCEは、全く新規かつ独特のメカニズムを介してT細胞受容体複合体をターゲティングすることにより、先行技術のTCEに関連する課題の多くを克服し得る。実際、TRDV1ドメイン上のエピトープに結合することのみを介してT細胞受容体複合体を特異的にターゲティングする(及び活性化する)ことにより、以下を含む複数の利点が実現される:
・ すべてのT細胞ではなく一部のT細胞のみと会合する(例えば、がんの状況におけるT-regの会合は望ましくない場合がある);
・ 主に「組織常在性」であり、その存在が、がん/腫瘍の状況において良好な予後と正に相関することが多い、一部のT細胞(TRDV1+T細胞)のみと会合する;
・ TRDV1の会合を介してT細胞受容体複合体を活性化することによって、より高い選択可能性をもたらす(例えば、この結合ドメインの親和性を増加する)。例えば、CD3を介してではなく、TRDV1ドメインのみを介してT細胞受容体複合体と会合する組換えTCEを開発することにより、増加した親和性が、より好ましい機能性を駆動し得る。例えば、高親和性TRDV1結合性TCEは、T細胞を消耗させずに活性化し得る;及び/または
・ 前記新規手段を介して、かつ組換えTRDV1結合ドメインを介してTCE複合体と会合すると、有害効果が低下し得るので、前記TCE部位におけるFc機能性を減弱させる必要性が低減し得る。これは次いで、例えば、TRDV1 TCEに1つの結合ドメインを介してTRDV1+細胞と会合させること、第2の結合アームによって第2の細胞型(がん性細胞など)と会合すること、及び機能的なFcドメインを介してCD16+免疫細胞またはCD32+免疫細胞またはCD64+免疫細胞のような他のエフェクター細胞と会合することにより、追加の選択可能性をもたらし得る。
【0040】
よって、本発明者らは、本明細書に記載される発見を通して、新規のクラスの組換えTCEを生成した。具体的には、本発明者らは、前記T細胞受容体シグナル伝達複合体における他のドメインではなくTRDV1ドメインを介してT細胞受容体と会合する新たなクラスのTCEを発見した。より具体的には、本発明者らは、TRDV1の活性化エピトープを介してこの複合体と会合し、以前に報告されている高親和性T細胞受容体複合体の会合に関連した有害効果の一部を付与する可能性がなく、より高い親和性で結合し得る新たなクラスのTCEを発見した。更に、この新たなクラスのTCEは、野生型Fcの機能性も許容し得るかたちで会合することができ、それにより、追加の有効性の可能性ももたらされる。
【0041】
本発明のDIは、全くユニークなデュアル免疫調節性標的会合の完全に新規の方法を提供し、がんなどの免疫調節を必要とする広範な新規療法の可能性を提供する。本発明のDIプラットフォームは、既存のDIアプローチに対する重要な代替または改良をもたらし得る新たなクラスの治療薬を提供する。以前には、本明細書に記載されるTRDV1特異的結合機能がDIフォーマットに組み込まれ得るとは企図されていなかった。
【0042】
本発明の多特異性抗体は、同等の単特異性抗体と比較して向上した特性を呈する可能性もある。例えば、本発明の多特異性抗体は、多特異性抗体の構成部分と同じ抗原結合ドメインを有する単特異性抗体と比較して向上した特性を呈する可能性もある。一部の実施形態において、例えば、組換え多特異性抗体は、第2のエピトープを発現する疾患細胞に対して、同等量の前記第1の単特異性抗体によって付与される細胞傷害性と比較して増加したガンマデルタT細胞媒介性細胞傷害性を付与する。本発明の多特異性抗体はまた、依然として健康細胞を温存しながらも、疾患細胞に対する向上した細胞傷害性を呈し得る。
【0043】
定義
特に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般的に理解される意味を有する。本明細書で使用する場合、以下の用語は、下記のそれぞれ与えられる意味を有する。
【0044】
ガンマデルタ(γδ)T細胞は、表面に別個の典型的なT細胞受容体(TCR)を発現するT細胞の小さなサブセットを表す。このTCRは、1つのガンマ(γ)鎖及び1つのデルタ(δ)鎖から構成されている。各鎖には、可変(V)領域、定常(C)領域、膜貫通領域、及び細胞質尾部が含まれている。V領域には、抗原結合部位が含まれている。ヒトγδT細胞には2つの主要なサブタイプがあり、1つは末梢血で優勢であり、もう1つは非造血組織で優勢である。2つのサブタイプは、細胞に存在するδ及び/またはγの種類によって定義され得る。例えば、末梢血で優勢であるγδT細胞は、デルタ可変2鎖(Vδ2)を主に発現する。非造血組織で優勢である(すなわち組織常在性である)γδT細胞は、デルタ可変1鎖を主に発現する。「Vδ1 T細胞」または「Vδ1+T細胞」への言及は、Vδ1鎖を有するγδT細胞、すなわちVδ1+細胞を指す。
【0045】
「デルタ可変1」への言及は、Vδ1またはVd1と称されることもあり、この領域を含有するTCR鎖をコードするヌクレオチド、またはこの領域を含むTCRタンパク質複合体は、「TRDV1」と称されることがある。γδTCRのVδ1鎖と相互作用する抗体またはその断片はすべて、事実上、Vδ1に結合する抗体またはその断片であり、「抗TCRデルタ可変1抗体またはその断片」または「抗Vδ1抗体またはその断片」または「抗TRDV1抗体またはその断片」または「抗TRDV1抗体またはその断片」と称され得る。
【0046】
本明細書では、「デルタ可変2」鎖などの他のデルタ鎖にさらに言及する。これらは同様な様式で称され得る。例えば、デルタ可変2鎖は、Vδ2と称されることがあり、この領域を含有するTCR鎖をコードするヌクレオチド、またはこの領域を含むTCRタンパク質複合体は、「TRDV2」と称されることがある。好ましい実施形態において、γδTCRのVδ1鎖と相互作用する抗体またはその断片は、Vδ2のような他のデルタ鎖とは相互作用しない。本発明において、抗体は、TRDV1に特異的であり、TRDV2(配列番号174)またはTRDV3(配列番号175)のような他の抗原には結合しない。
【0047】
本明細書では、「ガンマ可変鎖」への言及もなされる。これらは、γ鎖またはVγと称されることがあり、この領域を含有するTCR鎖をコードするヌクレオチド、またはこの領域を含むTCRタンパク質複合体は、TRGVと称されることがある。例えば、TRGV4は、Vγ4鎖を指す。好ましい実施形態において、γδTCRのVδ1鎖と相互作用する抗体またはその断片は、Vγ4(TRGV4、配列番号173)などのガンマ鎖とは相互作用しない。好ましい実施形態では、抗体は、TRDJ、TRDC、TRGJまたはTRGCなど、γδTCR内に見出される他のドメインと結合することも相互作用することもない。
【0048】
「T細胞受容体複合体」という用語は、種々の抗原を認識することに関与するT細胞の表面に見出される「T細胞受容体」(または「TCR」)を含むタンパク質の複合体である。T細胞受容体複合体の正確な構成は様々であり得るが、T細胞受容体複合体は、T細胞受容体のアルファ鎖及びベータ鎖を含むか、またはガンマデルタT細胞の場合には、T細胞受容体のガンマ鎖及びデルタ鎖、ならびに最大6本またはそれ以上の追加の鎖、例えばCD3δ、CD3γ、CD3ε及びCD3ζを含むかのいずれかである。T細胞受容体複合体は、T細胞活性化につながり得る、T細胞における細胞内シグナル伝達を媒介する。
【0049】
「抗体」という用語は、少なくとも1つの抗原結合部位(ABS)を含む、少なくとも1つの抗体可変ドメインを含む、任意の抗体タンパク質構築物を含む。抗体は、IgA型、IgG型、IgE型、IgD型、IgM型(及びそれらのサブタイプ)の免疫グロブリンを含むが、これらに限定されない。2つの同一の重(H)鎖ポリペプチド及び2つの同一の軽(L)鎖ポリペプチドから組み立てられた免疫グロブリンG(IgG)抗体の全体的な構造は十分に確立されており、哺乳動物で高度に保存されている(Padlan(1994)Mol.Immunol.31:169-217)。
【0050】
従来の抗体または免疫グロブリン(Ig)は、4つのポリペプチド鎖、すなわち2つの重(H)鎖及び2つの軽(L)鎖を含むタンパク質である。各鎖は、定常領域と可変ドメインに分割される。重(H)鎖可変ドメインは本明細書ではVHと略され、軽(L)鎖可変ドメインは本明細書ではVLと略される。これらのドメイン、それに関連するドメイン及びそれに由来するドメインは、本明細書では免疫グロブリン鎖可変ドメインと称され得る。VHドメイン及びVLドメイン(VH領域及びVL領域とも称される)は、「フレームワーク領域」(「FR」)と称されるより保存されている領域と共に散在する、「相補性決定領域」(「CDR」)と称される領域に更に分割され得る。フレームワーク領域及び相補性決定領域は、明確に定義されている(Kabat et al.Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition U.S.Department of Health and Human Services,(1991)NIH Publication Number 91-3242)。CDR配列には、例えば、Chothia et al.(1989)Nature 342:877-883に提示されているもの、またはIMGT.orgによってまとめられているもののような、代替的な番号付け規則もある。従来の抗体において、各VH及びVLは、アミノ末端からカルボキシ末端へと次の順序に配置された3つのCDR及び4つのFRから構成されている:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。2つの免疫グロブリン重鎖及び2つの免疫グロブリン軽鎖をもつ従来の抗体四量体は、例えばジスルフィド結合によって相互接続された免疫グロブリン重鎖及び軽鎖、ならびに同様に接続された重鎖で形成される。重鎖定常領域は、3つのドメインCH1、CH2及びCH3を含む。軽鎖定常領域は、1つのドメインCLから成る。重鎖の可変ドメイン及び軽鎖の可変ドメインは、抗原と相互作用する結合ドメインである。抗体の定常領域は、通常、免疫系の様々な細胞(例えばエフェクター細胞)及び古典的補体系の第1成分(C1q)を含めた、宿主組織または因子への抗体の結合を媒介する。
【0051】
本明細書で使用する場合、抗体の断片(「抗体断片」、「免疫グロブリン断片」、「抗原結合性断片」または「抗原結合性ポリペプチド」とも称され得る)は、標的であるγδT細胞受容体のデルタ可変1(Vδ1)鎖に特異的に結合する抗体の一部(または前記一部を含有する構築物)(例えば、1つまたは複数の免疫グロブリン鎖が完全長ではないが標的に特異的に結合する分子)を指す。抗体断片という用語に包含される結合性断片の例には、以下が含まれる。
(i)Fab断片(VLドメイン、VHドメイン、CLドメイン及びCH1ドメインからなる一価の断片)、
(ii)F(ab’)2断片(ヒンジ領域におけるジスルフィド架橋により結合される2つのFab断片からなる二価の断片)、
(iii)Fd断片(VHドメイン及びCH1ドメインからなる)、
(iv)Fv断片(抗体の単一のアームのVLドメイン及びVHドメインからなる)、
(v)一本鎖可変断片scFv(組換え法を使用して、VL領域とVH領域とが対になって一価の分子を形成する1本のタンパク質鎖になることを可能にする合成リンカーによって結合したVLドメイン及びVHドメインからなる)、
(vi)VH(VHドメインからなる免疫グロブリン鎖可変ドメイン)、
(vii)VL(VLドメインからなる免疫グロブリン鎖可変ドメイン)、
(viii)ドメイン抗体(dAb、VHドメインまたはVLドメインのいずれかからなる)、
(ix)ミニボディ(CH3ドメインを介して連結された一対のscFv断片からなる)、
(x)ダイアボディ(1つの抗体のVHドメインが小さなペプチドリンカーによって別の抗体のVLドメインに接続されたものからなるscFv断片の非共有結合二量体からなる)。
【0052】
本明細書で言及される多特異性抗体の断片は、抗原結合性断片である。より具体的には、多特異性抗体の抗体断片は、完全な多特異性抗体が結合するものと同じ抗原と結合する。例えば、TRDV1及び第2の抗原と特異的に結合する多特異性抗体の断片も、TRDV1及び同じ第2の抗原と特異的に結合する。
【0053】
「ヒト抗体」とは、ヒト生殖系免疫グロブリン配列に由来する可変領域及び定常領域を有する抗体を指す。前記ヒト抗体を投与されたヒト対象は、前記抗体内に含有される一次アミノ酸に対する種間抗体応答(例えば、HAMA-ヒト抗マウス抗体-応答と称される)を生成しない。前記ヒト抗体は、例えばCDR、特にCDR3において、ヒト生殖系免疫グロブリン配列によってコードされないアミノ酸残基(例えば、ランダムもしくは部位特異的な突然変異誘発または体細胞突然変異によって導入される突然変異)を含み得る。しかしながら、この用語は、マウスなどの別の哺乳動物種の生殖系に由来するCDR配列がヒトフレームワーク配列にグラフトされている抗体を含むことは意図していない。宿主細胞内にトランスフェクトされた組換え発現ベクターを使用して発現した抗体、組換えコンビナトリアルヒト抗体ライブラリから単離された抗体、ヒト免疫グロブリン遺伝子についてトランスジェニックな動物(例えばマウス)から単離された抗体など、組換え手段により調製、発現、作出もしくは単離されたヒト抗体、または他のDNA配列へのヒト免疫グロブリン遺伝子配列のスプライシングを伴う任意の他の手段により調製、発現、作出もしくは単離された抗体は、「組換えヒト抗体」とも称され得る。
【0054】
非ヒト免疫グロブリン可変ドメインのフレームワーク領域における少なくとも1つのアミノ酸残基をヒト可変ドメイン由来の対応する残基で置換することは、「ヒト化」と称される。可変ドメインのヒト化は、ヒトにおける免疫原性を低下させ得る。
【0055】
「特異性」とは、特定の抗体またはその断片が結合できる異なるタイプの抗原または抗原決定基の数を指す。抗体の特異性は、特定の抗原を固有の分子実体として認識し、それを別の抗原と区別する抗体の能力である。抗原またはエピトープに「特異的に結合する」抗体は、当技術分野でよく理解されている用語である。分子が、他の標的との反応よりも特定の標的抗原またはエピトープとより頻繁に、より迅速に、より持続的に及び/またはより高い親和性で反応する場合、前記分子は「特異的結合」を示すと言われる。抗体が標的抗原またはエピトープに「特異的に結合する」のは、それが他の物質に結合するより高い親和性で、より高いアビディティで、より容易に、及び/またはより高い持続性で結合する場合である。
【0056】
本発明の抗体は多特異性抗体である。「多特異性抗体」は、複数の異なるエピトープに同時にまたは連続的に結合することができる抗体である。一般に、これらのエピトープは同じ抗原に存在しない。よって、多特異性抗体は、複数の異なる結合ドメインを介して異なる抗原に存在するエピトープに選択的に結合する能力を有する。これは、この能力を有しない従来の単特異性抗体とは対照的である。むしろ、「単特異性抗体」は、1つの抗原に特異的な結合性のみを有する。ただし、この1つの抗原に対して複数の結合部位を有してもよい(例えば、完全ヒトIgG抗体の結合価は2であり、他の抗体の結合価はより高い場合があるが、抗体が1つの抗原しか認識しない場合、これは依然として単特異性抗体と分類される)。よって、本発明の多特異性抗体は、複数の異なる抗原と同時に及び/または連続的に結合する。
【0057】
本発明の好ましい実施形態では、抗体は二重特異性抗体である。「二重特異性抗体」は、2つの異なるエピトープと同時に及び/または連続的に結合することができる抗体である。一般に、これらのエピトープは同じ抗原に存在しない。よって、二重特異性抗体は、2つの異なる結合ドメインを介して2つの異なる抗原に存在する2つの異なるエピトープに選択的に結合する能力を有する。これは、この能力を有しない従来の単特異性抗体とは対照的である。よって、本発明の二重特異性抗体は、2つの異なる抗原と同時に及び/または連続的に結合する。
【0058】
抗原と抗原結合性ポリペプチドとの解離に関する平衡定数(KD)によって表される「親和性」とは、抗原決定基と抗体(またはその断片)上の抗原結合部位との間の結合強度の尺度である。KDの値が小さいほど、抗原決定基と抗原結合性ポリペプチドとの間の結合強度は強くなる。あるいは、親和性は、親和定数(KA)、1/KDとして表すこともできる。親和性は、目的の特定の抗原に応じて、公知の方法で決定することができる。例えば、KDは、表面プラズモン共鳴によって決定され得る。
【0059】
10-6未満のKD値はいずれも、結合を示すとみなされる。抗原または抗原決定基に対する抗体またはその断片の特異的結合は、例えば、スキャッチャード分析及び/または競合結合アッセイ、例えばラジオイムノアッセイ(RIA)、酵素イムノアッセイ(EIA)及びサンドイッチ競合アッセイ、平衡透析、平衡結合、ゲル濾過、ELISA、表面プラズモン共鳴、または分光法(例えば蛍光アッセイを使用する)、ならびに当技術分野で公知のこれらの様々な変形を含む、任意の好適な公知の様式で決定することができる。
【0060】
「アビディティ」は、抗体またはその断片と、関連する抗原との間の結合の強さの尺度である。アビディティは、抗原決定基と抗体上のその抗原結合部位との間の親和性、及び抗体上に存在する適切な結合部位の数の両方に関連している。
【0061】
「in situ」は、別の場所に移されるのではなく、天然または元の場所にあることを意味する。例えば、患者においてin situのVδ1+細胞は、in vitroまたはex vivoの細胞ではなく、in vivoのvδ1細胞を指す。
【0062】
「ヒト組織Vδ1+細胞」、ならびに「造血及び血液Vδ1+細胞」及び「腫瘍浸潤リンパ球(TIL)Vδ1+細胞」は、それぞれヒト組織もしくは造血血液系もしくはヒト腫瘍のいずれかに含まれる、またはそれらに由来するVδ1+細胞と定義される。すべての前記細胞型は、それらの(i)位置またはそれらの由来、及び(ii)Vδ1+TCRのそれらの発現によって同定することができる。
【0063】
「調節性抗体」は、抗体が結合する標的を発現する細胞に接触または結合すると、細胞周期、及び/または細胞数、及び/または細胞生存率、及び/または1つもしくは複数の細胞表面マーカー、及び/または1つもしくは複数の分泌性分子(例えば、サイトカイン、ケモカイン、ロイコトリエンなど)の分泌、及び/または機能(標的細胞または疾患細胞に対する細胞傷害性など)における測定可能な変化を含むがこれらに限定されない、測定可能な変化を付与する抗体である。細胞またはその集団を「調節する」方法とは、前記細胞もしくは複数の細胞またはそれらからの分泌における少なくとも1つの測定可能な変化が誘起されて、1つまたは複数の「調節された細胞」を生成する方法を指す。
【0064】
「免疫応答」は、調節性抗体の付加に応じた、免疫系の少なくとも1つの細胞、または1つの細胞型、または1つの内分泌経路、または1つの外分泌経路における測定可能な変化である(細胞媒介性応答、体液性応答、サイトカイン応答、ケモカイン応答を含むがこれらに限定されない)。
【0065】
「免疫細胞」は、CD34+細胞、B細胞、CD45+(リンパ球共通抗原)細胞、アルファベータT細胞、細胞傷害性T細胞、ヘルパーT細胞、形質細胞、好中球、単球、マクロファージ、赤血球、血小板、樹状細胞、食細胞、顆粒球、自然リンパ球系細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、及びガンマデルタT細胞を含むがこれらに限定されない、免疫系の細胞と定義される。典型的には、コンビナトリアル細胞表面分子分析を用いて(例えば、フローサイトメトリーにより)免疫細胞を分類して、免疫細胞を同定する、または亜集団にグループ分けもしくはクラスター化して区別する。これらは次いで、追加の分析によってなおも更に細分され得る。例えば、CD45+リンパ球は、vδ陽性集団とvδ陰性集団とに更に細分され得る。
【0066】
「モデル系」は、抗体またはその断片などの医薬がどのように疾患の徴候または症状の改善において薬物として機能し得るかについての理解を助けるように設計された生物学的モデルまたは生物学的表現である。このようなモデルは通常、in vitro、ex vivo、及びin vivoの疾患細胞、非疾患細胞、健康細胞、エフェクター細胞、及び組織などの使用を含み、前記薬物の性能を研究し比較する。
【0067】
「疾患細胞」は、がんなどの疾患、ウイルス感染などの感染、または炎症性状態もしくは炎症性疾患の進行に関連する表現型を示す。例えば、疾患細胞は、腫瘍細胞、自己免疫組織、またはウイルスに感染した細胞であり得る。したがって、前記疾患細胞は、腫瘍状のもの、またはウイルスに感染したもの、または炎症性のものと定義され得る。
【0068】
「健康細胞」は、病的ではない正常細胞を指す。これらは「正常」細胞または「非疾患」細胞とも称され得る。非疾患細胞には、非がん性細胞、または非感染細胞、または非炎症性細胞が含まれる。前記細胞は、薬物によって付与される疾患細胞特異性を決定するため及び/または薬物の治療指数をよりよく理解するために、関連性のある疾患細胞と共に用いられることが多い。
【0069】
「疾患細胞特異性」は、エフェクター細胞またはその集団(例えば、Vδ1+細胞集団など)が、非疾患細胞または健康細胞を温存しながら、がん細胞などの疾患細胞を区別し殺傷するのに、どれほど効果的であるかの尺度である。この能力はモデル系で測定することができ、エフェクター細胞またはエフェクター細胞集団が疾患細胞を選択的に殺傷または溶解する傾向を、前記エフェクター細胞が非疾患細胞または健康細胞を殺傷または溶解する能力に対して比較することを含み得る。前記疾患細胞特異性は、薬物の潜在的な治療指数についての情報を提供し得る。
【0070】
「増強された疾患細胞特異性」は、疾患細胞を特異的に殺傷する能力を更に増加させるように調節されている、例えばVδ1+細胞などのエフェクター細胞またはその集団の表現型を表す。この増強は、疾患細胞の殺傷の特異性または選択性における、変化倍率または増加のパーセンテージを含む種々のかたちで測定することができる。
【0071】
「ADCC」または「抗体依存性細胞媒介性細胞傷害性」は、細胞の表面抗原に結合した抗体でコーティングされた細胞に対する免疫応答を表す。これは、免疫エフェクター細胞(例えばNK細胞など)が、細胞に結合した抗体を認識し、標的細胞の脱顆粒及び溶解を誘起する、細胞媒介性プロセスである。通常、これはFc-Fcγ相互作用によって媒介される。細胞に結合した抗体のFc領域が、Fcγ受容体を発現するエフェクター細胞(例えばNK細胞)を動員し、エフェクター細胞の脱顆粒及び標的細胞の死をもたらす。
【0072】
「Fc有効型」とは、機能的Fc領域(断片結晶化可能領域)、すなわち突然変異または別の方法で無効化されていないFc領域を含む抗体を指す。Fc有効型抗体は、減弱されていないFc機能を示す。Fc有効型抗体は、1つまたは複数のFcガンマ受容体に対する結合を低減させるように改変されても工学操作されても構築されてもいない、IMGTに収載されているヒトIGHC重鎖配列を含み得る。例えば、IGHCヒンジ突然変異を介するか、またはIgG1/IgG2AもしくはIgG1/IgG4 IGHC配列のキメラもしくはハイブリッドである重鎖定常ドメインを含む抗体の構築による。好適には、本発明の抗体またはその断片(すなわちポリペプチド)は単離されている。「単離された」ポリペプチドは、元の環境から除去されたものである。「単離された」という用語は、異なる抗原特異性を有する他の抗体を実質的に含まない抗体を指すように使用され得る(例えば、Vδ1と特異的に結合する単離された抗体またはその断片は、Vδ1以外の抗原と特異的に結合する抗体を実質的に含まない)。「単離された」という用語は、単離された抗体が、医薬組成物の活性成分として配合された場合、治療的に投与されるのに十分な純度である、または少なくとも70~80%(w/w)の純度、より好ましくは、少なくとも80~90%(w/w)の純度、更により好ましくは、90~95%の純度、かつ、最も好ましくは、少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、もしくは100%(w/w)の純度である調製物を指すように使用されることもある。
【0073】
好適には、本発明で使用されるポリヌクレオチドは単離されている。「単離された」ポリヌクレオチドは、元の環境から除去されたものである。例えば、天然に存在するポリヌクレオチドは、それが天然系で共存する材料のいくつかまたはすべてから分離されている場合に単離されている。ポリヌクレオチドは、例えば、それがその自然環境の一部ではないベクターにクローン化されている場合、またはそれがcDNA内に含まれている場合、単離されたとみなされる。
【0074】
抗体またはその断片は、天然に存在する対立遺伝子変異体及び突然変異体またはあらゆる他の天然に存在しない変異体も含む「機能的に活性な変異体」であり得る。当技術分野では公知であるように、対立遺伝子変異体は、ポリペプチドの生物学的機能を本質的に変化させない1つまたは複数のアミノ酸の置換、欠失、または付加を有することを特徴とする(ポリ)ペプチドの代替形態である。非限定的な例として、CDRを含有するフレームワークが改変されても、CDR自体が改変されても、前記CDRが代替のフレームワークにグラフトされても、またはN末端もしくはC末端の伸長が組み込まれても、前記機能的に活性な変異体は依然として機能し得る。更に、CDR含有結合ドメインは、別の抗体と共有されるものなどの異なるパートナー鎖と対になっていてもよい。いわゆる「共通」軽鎖または「共通」重鎖と共有されても、前記結合ドメインは依然として機能し得る。更に、前記結合ドメインは、多量体化されたときに機能し得る。更に、「抗体またはその断片」には、VHもしくはVLもしくは定常ドメインが異なるカノニカル配列(例えば、IMGT.orgに収載されているもの)から離れるように、またはそれに近づくように改変されており、かつ依然として機能する機能的変異体も含まれ得る。
【0075】
2つの密接に関連するポリペプチド配列を比較する目的で、第1のポリペプチド配列と第2のポリペプチド配列との間の「%の配列同一性」は、ポリペプチド配列の標準設定(BLASTP)を使用するNCBI BLAST v2.0を使用して計算され得る。2つの密接に関連するポリヌクレオチド配列を比較する目的で、第1のヌクレオチド配列と第2のヌクレオチド配列との間の「%の配列同一性」は、ヌクレオチド配列の標準設定(BLASTN)を使用するNCBI BLAST v2.0を使用して計算され得る。
【0076】
ポリペプチド配列またはポリヌクレオチド配列は、それらがその全長にわたって100%の配列同一性を共有する場合、他のポリペプチド配列またはポリヌクレオチド配列と同じまたは「同一」であると言われる。配列内の残基は、左から右に、すなわちポリペプチドの場合はN末端からC末端に、ポリヌクレオチドの場合は5’末端から3’末端に番号が付けられる。
【0077】
一部の実施形態において、配列の任意の特定の%の配列同一性は、抗体の6つすべてのCDRの配列なしで計算される。例えば、抗Vδ1抗体またはその抗原結合性断片は、特定の可変重鎖領域配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有する可変重鎖領域配列、及び/または特定の可変軽鎖領域配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有する可変軽鎖領域配列を含み得、あらゆるアミノ酸変異は、可変重鎖領域配列及び可変軽鎖領域配列のフレームワーク領域でのみ発生する。そのような実施形態において、ある特定の配列同一性を有する抗Vδ1抗体またはその抗原結合性断片は、対応する抗Vδ1抗体またはその抗原結合性断片の完全な重鎖及び軽鎖のCDR1、CDR2及びCDR3配列を保持する。
【0078】
配列間の「差異」とは、第1の配列と比較した、第2の配列のある位置における単一のアミノ酸残基の挿入、欠失または置換を指す。2つのポリペプチド配列は、1つ、2つまたはそれ以上のそのようなアミノ酸の差異を含むことができる。第1の配列と他の点では同一である(100%の配列同一性)第2の配列における挿入、欠失または置換により、配列同一性の割合が減少する。例えば、同一の配列が9アミノ酸残基長である場合、第2の配列における1つの置換により、配列同一性が88.9%になる。第1のポリペプチド配列及び第2のポリペプチド配列が9のアミノ酸残基長であり、6の同一の残基を共有する場合、第1のポリペプチド配列及び第2のポリペプチド配列は、66%を超える同一性を共有する(第1のポリペプチド配列及び第2のポリペプチド配列は、66.7%の同一性を共有する)。
【0079】
あるいは、第1の参照ポリペプチド配列を第2の比較ポリペプチド配列と比較する目的で、第2の配列を生成するために第1の配列に対して行われた付加、置換及び/または欠失の数は確認され得る。「付加」とは、第1のポリペプチドの配列への1つのアミノ酸残基の付加である(第1のポリペプチドのいずれかの末端での付加を含む)。「置換」とは、第1のポリペプチドの配列における1つのアミノ酸残基を1つの異なるアミノ酸残基で置換することである。前記置換は、保存的でも非保存的でもよい。「欠失」とは、第1のポリペプチドの配列からの1つのアミノ酸残基の欠失である(第1のポリペプチドのいずれかの末端での欠失を含む)。
【0080】
三文字コード及び一文字コードを使用すると、天然に存在するアミノ酸は、次のように称され得る:グリシン(GまたはGly)、アラニン(AまたはAla)、バリン(VまたはVal)、ロイシン(LまたはLeu)、イソロイシン(IまたはIle)、プロリン(PまたはPro)、フェニルアラニン(FまたはPhe)、チロシン(YまたはTyr)、トリプトファン(WまたはTrp)、リジン(KまたはLys)、アルギニン(RまたはArg)、ヒスチジン(HまたはHis)、アスパラギン酸(DまたはAsp)、グルタミン酸(EまたはGlu)、アスパラギン(NまたはAsn)、グルタミン(QまたはGln)、システイン(CまたはCys)、メチオニン(MまたはMet)、セリン(SまたはSer)及びスレオニン(TまたはThr)。残基がアスパラギン酸またはアスパラギンであり得る場合、記号AsxまたはBが使用され得る。残基がグルタミン酸またはグルタミンであり得る場合、記号GlxまたはZが使用され得る。残基が任意のアミノ酸であり得る場合、記号XaaまたはXが使用され得る。文脈上別段の定めがない限り、アスパラギン酸への言及にはアスパラギン酸塩が含まれ、グルタミン酸にはグルタミン酸塩が含まれる。
【0081】
「保存的」アミノ酸置換は、アミノ酸残基が類似の化学構造の別のアミノ酸残基で置き換えられ、ポリペプチドの機能、活性または他の生物学的特性にほとんど影響を及ぼさないと予想されるアミノ酸置換である。そのような保存的置換は、好適には、以下の群内の1つのアミノ酸が同じ群内からの別のアミノ酸残基によって置換される置換である。
【表1】
【0082】
好適には、疎水性アミノ酸残基は非極性アミノ酸である。より好適には、疎水性アミノ酸残基は、V、I、L、M、F、WまたはCから選択される。一部の実施形態において、疎水性アミノ酸残基は、グリシン、アラニン、バリン、メチオニン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、チロシン、またはトリプトファンから選択される。
【0083】
本明細書で使用される場合、ポリペプチド配列の番号付けならびにCDR及びFRの定義は、文脈で示されるように、EU及び/またはIMGTの番号付けシステムに従って定義されるとおりである。第1のポリペプチド配列と第2のポリペプチド配列との間の「対応する」アミノ酸残基は、文脈で示されるように、第2の配列におけるアミノ酸残基と、EU及び/またはIMGTの番号付けシステムに従って同じ位置を共有する、第1の配列親和性のアミノ酸残基であり、一方で第2の配列におけるアミノ酸残基は、第1の配列とは同一性が異なる場合がある。好適に対応する残基は、フレームワーク及びCDRがEUまたはIMGTの定義に従って同じ長さである場合、同じ番号(及び文字)を共有する。アラインメントは、手作業で、または例えば、標準設定を使用するNCBI BLAST v2.0(BLASTPまたはBLASTN)などの配列アラインメントのための公知のコンピューターアルゴリズムを使用することによって達成することができる。
【0084】
本明細書での「エピトープ」への言及は、抗体またはその断片によって特異的に結合される標的の一部を指す。エピトープは「抗原決定基」とも称され得る。抗体は、両方が同一または立体的に重複するエピトープを認識する場合、別の抗体と「本質的に同じエピトープ」に結合する。2つの抗体が同一または重複するエピトープに結合するかどうかを判断するために一般的に使用される方法は、競合アッセイである。これは、標識抗原または標識抗体のいずれかを使用して複数の様々なフォーマットで構成され得る(例えば、放射性標識もしくは酵素標識を使用したウェルプレート、または抗原発現細胞でのフローサイトメトリー)。抗体が別の抗体と「同じエピトープ」と結合するのは、両抗体が同一のエピトープを認識する(すなわち、抗原と抗体との間のすべての接触点が同じである)場合である。例えば、抗体/抗原架橋結合MS、HDX、X線結晶解析、クライオ電子顕微鏡、または突然変異誘発などの特性評価法を用いて、抗原の特定領域におけるすべての接触点が同じであると同定された場合、抗体は別の抗体と同じエピトープと結合し得る。
【0085】
更に、このような特性評価法を用いて、同一の接触点のすべてではないがいくつかを認識することによって、本質的に同じエピトープと結合する抗体を特性評価することも可能である。具体的には、このような抗体は、特定の抗原領域において十分な数の同一の接触点を共有して、ほぼ同等の技術的効果及び/または同等の抗原相互作用の選択性を提供し得る。更に、抗体が本質的に同じエピトープを認識し、ほぼ同等の技術的効果及び/または相互作用の選択性を付与するいくつかの場合において、最N末端の抗原接触点から最C末端の抗原接触点までを含む抗原接触の全体によってエピトープ結合フットプリントを定義することも有用であり得る。
【0086】
タンパク質標的に見られるエピトープは、「線状エピトープ」または「配座エピトープ」として定義され得る。線状エピトープは、タンパク質抗原のアミノ酸の連続配列によって形成される。配座エピトープは、タンパク質配列が不連続であるが、タンパク質がその三次元構造に折りたたまれると一緒になるアミノ酸で形成されている。
【0087】
本明細書で使用する場合「ベクター」という用語は、核酸分子であって、それが連結した別の核酸を輸送することができる核酸分子を指すよう意図されている。ベクターの一種には「プラスミド」があり、これは、追加のDNAセグメントがライゲーションされ得る環状の二本鎖DNAループを指す。別の種類のベクターはウイルスベクターであり、追加のDNAセグメントがウイルスゲノムにライゲーションされ得る。ある特定のベクターは、それらが導入される宿主細胞における自己複製が可能である(例えば、細菌複製起点を有する細菌ベクターならびにエピソーム哺乳動物ベクター及び酵母ベクター)。他のベクター(例えば、非エピソーム哺乳動物ベクター)は、宿主細胞に導入すると宿主細胞のゲノムに組み込まれることができ、それにより、宿主ゲノムと共に複製される。更に、ある特定のベクターは、それらが作動可能に連結された遺伝子の発現を指示することができる。このようなベクターは、本明細書において「組換え発現ベクター」(または単に「発現ベクター」)と称される。一般に、組換えDNA技法で利用される発現ベクターは、プラスミドの形態である場合が多い。プラスミドが最も一般的に使用されるベクターの形態であるため、本明細書において「プラスミド」及び「ベクター」は同義に使用され得る。しかしながら、本発明は、同等の機能を果たすウイルスベクター(例えば、複製欠損レトロウイルス、アデノウイルス及びアデノ随伴ウイルス)、ならびにバクテリオファージ及びファージミド系など、このような他の形態の発現ベクターを含むことが意図されている。本明細書で使用される場合、「組換え宿主細胞」(または単に「宿主細胞」)という用語は、組換え発現ベクターが導入されている細胞を指すことが意図されている。このような用語は、特定の対象細胞を指すだけでなく、例えば、そのような細胞の子孫が、細胞株または細胞バンクを作るために用いられ、次いで細胞株または細胞バンクが、本明細書に記載される抗体もしくは多特異性抗体またはそれらの断片を製造するために場合により貯蔵、提供、販売、譲渡、または利用される場合、前記子孫も指すことを意図している。
【0088】
「対象」、「患者」または「個体」への言及は、処置される対象、特に哺乳動物対象を指す。哺乳動物対象は、ヒト、非ヒト霊長類、家畜(ウシなど)、スポーツ用動物、または愛玩動物、例えばイヌ、ネコ、モルモット、ウサギ、ラットまたはマウスを含む。一部の実施形態において、対象はヒトである。代替的な実施形態において、対象はマウスなどの非ヒト哺乳動物である。
【0089】
「十分な量」という用語は、所望の効果を生成するのに十分な量を意味する。「治療上有効な量」という用語は、疾患または障害の症状を改善するのに有効な量である。予防は療法とみなすことができるため、治療上有効な量は「予防上有効な量」であり得る。
【0090】
疾患もしくは障害の徴候もしくは症状の重症度、このような徴候もしくは症状が対象によって経験される頻度、またはその両方が減少した場合、疾患または障害は「改善」されている。
【0091】
本明細書で使用する場合、「疾患または障害を処置すること」とは、対象が経験する疾患または障害の少なくとも1つの徴候または症状の頻度及び/または重症度を低減させることを意味する。
【0092】
本明細書で使用する場合、「がん」とは、細胞の異常な増殖または分裂を指す。一般的に、がん細胞の増殖及び/または寿命は、その周囲の正常な細胞及び組織の増殖及び/または寿命を超えており、協調していない。がんは、良性、前悪性または悪性であり得る。がんは、口腔(例えば、口、舌、咽頭など)、消化器系(例えば、食道、胃、小腸、結腸、直腸、肝臓、胆管、胆嚢、膵臓など)、呼吸器系(例えば、喉頭、肺、気管支など)、骨、関節、皮膚(例えば、基底細胞、扁平細胞、髄膜腫など)、乳房、生殖器系、(例えば、子宮、卵巣、前立腺、精巣など)、泌尿器系(例えば、膀胱、腎臓、尿管など)、眼、神経系(例えば、脳など)、内分泌系(例えば、甲状腺など)、及び造血系(例えば、リンパ腫、骨髄腫、白血病、急性リンパ球性白血病、慢性リンパ球性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病など)を含む、種々の細胞及び組織において発生する。
【0093】
本明細書で使用される場合、本明細書で使用されるときの「約」という用語には、指定された値より最大10%大きくこれを含む値及び最大10%低くこれを含む値が含まれ、好適には指定された値より最大5%大きくこれを含む値及び最大5%低くこれを含む値が含まれ、特に指定された値が含まれる。「間」という用語には、指定された境界の値が含まれる。
【0094】
多特異性抗体またはその断片
本明細書では、γδT細胞受容体(TCR)のデルタ可変1鎖(Vδ1)、及び別の抗原に特異的に結合することができる、多特異性(好適には二重特異性)抗体またはその断片が提供される。本発明は、処置される対象に投与するための薬物としての前記多特異性抗体の使用に関する。
【0095】
一実施形態において、多特異性抗体またはその断片は、scFv、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、可変ドメイン(例えばVHまたはVL)、ダイアボディ、ミニボディまたはモノクローナル抗体である。更なる実施形態において、抗体またはその断片はscFvである。
【0096】
本発明の多特異性抗体は、任意の種類、例えばIgG、IgA、IgM、IgE、IgDまたはこれらのアイソタイプであり得、カッパ軽鎖またはラムダ軽鎖を含むことができる。一実施形態において、多特異性抗体は、IgG抗体、例えば、アイソタイプ、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4のうちの少なくとも1つである。更なる実施形態において、多特異性抗体は、エフェクター機能を低減させる、半減期を延長する、ADCCを変化させる、またはヒンジ安定性を向上させるために突然変異したFcを有するなど所望の特性を付与するように改変されているIgGフォーマットなどのフォーマットであり得る。そのような改変は、当技術分野において周知である。
【0097】
一実施形態において、多特異性抗体またはその断片はヒトである。したがって、多特異性抗体またはその断片は、ヒト免疫グロブリン(Ig)配列に由来し得る。抗体(またはその断片)のCDR、フレームワーク及び/または定常領域は、ヒトIg配列、特にヒトIgG配列に由来し得る。CDR、フレームワーク及び/または定常領域は、ヒトIg配列、特にヒトIgG配列について実質的に同一であり得る。ヒト多特異性抗体を使用する利点は、それらがヒトにおいて低免疫原性または非免疫原性であることである。
【0098】
多特異性抗体またはその断片は、キメラ、例えばマウス-ヒト抗体キメラであってもよい。
【0099】
あるいは、多特異性抗体またはその断片は、マウスなどの非ヒト種に由来する。このような非ヒト抗体は、ヒトにおいて天然に産生される抗体変異体との類似性を高めるように改変することができ、したがって、抗体またはその断片は、部分的または完全にヒト化され得る。したがって、一実施形態において、抗体またはその断片はヒト化されている。
【0100】
多特異性抗体の配列
本発明の単離された抗Vδ1抗体またはその断片は、TRDV1結合を付与するそれらのCDR配列を参照して説明され得る。しかしながら、本発明は、例えばTCEプラットフォームまたはDIプラットフォームでTRDV1と結合するように、多特異性抗体を使用してTRDV1をターゲティングする全く新しい原理に基づくため、本発明は、このような配列に限定されない。同様に、本発明は、第2の抗原(がんもしくはがん関連抗原または免疫調節性抗原など)への結合を付与するドメインの特定の配列に限定されない。
【0101】
本発明の一態様によれば、
配列番号2~25のいずれか1つと少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含むCDR3、
配列番号26~37及び配列番号160~171のいずれか1つと少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含むCDR2、及び/または
配列番号38~61のいずれか1つと少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含むCDR1
のうちの1つまたは複数を含む、単離された多特異性抗Vδ1抗体またはその断片が提供される。
【0102】
本発明の一態様によれば、配列番号2~25のいずれか1つと少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含むCDR3を含む、単離された抗Vδ1多特異性抗体またはその断片が提供される。一実施形態において、多特異性抗体またはその断片は、配列番号26~37及び配列番号160~171のいずれか1つと少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含むCDR2を含む。一実施形態において、多特異性抗体またはその断片は、配列番号38~61のいずれか1つと少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含むCDR1を含む。
【0103】
一実施形態において、多特異性抗体またはその断片は、配列番号2~25のいずれか1つと少なくとも85%、90%、95%、97%、98%または99%の配列同一性を有する配列を含むCDR3を含む。一実施形態において、多特異性抗体またはその断片は、配列番号26~37及び配列番号160~171のいずれか1つと少なくとも85%、90%、95%、97%、98%または99%の配列同一性を有する配列を含むCDR2を含む。一実施形態において、多特異性抗体またはその断片は、配列番号38~61のいずれか1つと少なくとも85%、90%、95%、97%、98%または99%の配列同一性を有する配列を含むCDR1を含む。
【0104】
一実施形態において、多特異性抗体またはその断片は、配列番号2~25のいずれか1つと少なくとも85%、90%、95%、97%、98%または99%の配列同一性を有する配列からなるCDR3を含む。一実施形態において、多特異性抗体またはその断片は、配列番号26~37及び配列番号160~171のいずれか1つと少なくとも85%、90%、95%、97%、98%または99%の配列同一性を有する配列からなるCDR2を含む。一実施形態において、多特異性抗体またはその断片は、配列番号38~61のいずれか1つと少なくとも85%、90%、95%、97%、98%または99%の配列同一性を有する配列からなるCDR1を含む。
【0105】
本発明の更なる態様によれば、配列番号2~13のいずれか1つと少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含むCDR3を含むVH領域、及び/または配列番号14~25のいずれか1つと少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含むCDR3を含むVL領域を含む、多特異性抗体またはその断片が提供される。本発明の更なる態様によれば、配列番号2~13のいずれか1つと少なくとも80%の配列同一性を有する配列からなるCDR3を含むVH領域、及び/または配列番号14~25のいずれか1つと少なくとも80%の配列同一性を有する配列からなるCDR3を含むVL領域を含む、多特異性抗体またはその断片が提供される。
【0106】
本発明の特定の態様によれば、配列番号2~7、特に2~6、例えば2、3もしくは4のいずれか1つと少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含むCDR3を含むVH領域、及び/または配列番号14~19、特に14~18、例えば14、15もしくは16のいずれか1つと少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含むCDR3を含むVL領域を含む、多特異性抗体またはその断片が提供される。本発明の別の態様によれば、配列番号2~7、特に2~6、例えば2、3もしくは4のいずれか1つと少なくとも80%の配列同一性を有する配列からなるCDR3を含むVH領域、及び/または配列番号14~19、特に14~18、例えば14、15もしくは16のいずれか1つと少なくとも80%の配列同一性を有する配列からなるCDR3を含むVL領域を含む、多特異性抗体またはその断片が提供される。
【0107】
本発明の特定の態様によれば、配列番号8~13、特に8、9、10もしくは11のいずれか1つと少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含むCDR3を含むVH領域、及び/または配列番号20~25、特に20、21、22もしくは23のいずれか1つと少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含むCDR3を含むVL領域を含む、多特異性抗体またはその断片が提供される。本発明の別の態様によれば、配列番号8~13、特に8、9、10もしくは11のいずれか1つと少なくとも80%の配列同一性を有する配列からなるCDR3を含むVH領域、及び/または配列番号20~25、特に20、21、22もしくは23のいずれか1つと少なくとも80%の配列同一性を有する配列からなるCDR3を含むVL領域を含む、多特異性抗体またはその断片が提供される。
【0108】
本発明の更なる態様によれば、配列番号2~13のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含むCDR3を含むVH領域、及び/または配列番号14~25のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含むCDR3を含むVL領域を含む、多特異性抗体またはその断片が提供される。本発明の更なる態様によれば、配列番号2~13のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有する配列からなるCDR3を含むVH領域、及び/または配列番号14~25のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有する配列からなるCDR3を含むVL領域を含む、多特異性抗体またはその断片が提供される。
【0109】
本発明の特定の態様によれば、配列番号2~7、特に2~6、例えば2、3、4もしくは5のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含むCDR3を含むVH領域、及び/または配列番号14~19、特に14~18、例えば14、15、16もしくは17のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含むCDR3を含むVL領域を含む、多特異性抗体またはその断片が提供される。本発明の別の態様によれば、配列番号2~7、特に2~6、例えば2、3、4もしくは5のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有する配列からなるCDR3を含むVH領域、及び/または配列番号14~19、特に14~18、例えば14、15、16もしくは17のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有する配列からなるCDR3を含むVL領域を含む、多特異性抗体またはその断片が提供される。
【0110】
本発明の特定の態様によれば、配列番号8、9、10もしくは11のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含むCDR3を含むVH領域、及び/または配列番号20、21、22もしくは23のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含むCDR3を含むVL領域を含む、多特異性抗体またはその断片が提供される。本発明の別の態様によれば、配列番号8、9、10もしくは11のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有する配列からなるCDR3を含むVH領域、及び/または配列番号20、21、22もしくは23のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有する配列からなるCDR3を含むVL領域を含む、多特異性抗体またはその断片が提供される。
【0111】
本発明の更なる態様によれば、配列番号2~13のいずれか1つと少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含むCDR3を含むVH領域、及び/または配列番号14~25のいずれか1つと少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含むCDR3を含むVL領域を含む、多特異性抗体またはその断片が提供される。本発明の更なる態様によれば、配列番号2~13のいずれか1つと少なくとも95%の配列同一性を有する配列からなるCDR3を含むVH領域、及び/または配列番号14~25のいずれか1つと少なくとも95%の配列同一性を有する配列からなるCDR3を含むVL領域を含む、多特異性抗体またはその断片が提供される。
【0112】
本発明の特定の態様によれば、配列番号2~7、特に2~6、例えば2、3、4もしくは5のいずれか1つと少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含むCDR3を含むVH領域、及び/または配列番号14~19、特に14~18、例えば14、15、16もしくは17のいずれか1つと少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含むCDR3を含むVL領域を含む、多特異性抗体またはその断片が提供される。本発明の別の態様によれば、配列番号2~7、特に2~6、例えば2、3、4もしくは5のいずれか1つと少なくとも95%の配列同一性を有する配列からなるCDR3を含むVH領域、及び/または配列番号14~19、特に14~18、例えば14、15、16もしくは17のいずれか1つと少なくとも95%の配列同一性を有する配列からなるCDR3を含むVL領域を含む、多特異性抗体またはその断片が提供される。
【0113】
本発明の特定の態様によれば、配列番号8、9、10もしくは11のいずれか1つと少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含むCDR3を含むVH領域、及び/または配列番号20、21、22もしくは23のいずれか1つと少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含むCDR3を含むVL領域を含む、多特異性抗体またはその断片が提供される。本発明の別の態様によれば、配列番号8、9、10もしくは11のいずれか1つと少なくとも95%の配列同一性を有する配列からなるCDR3を含むVH領域、及び/または配列番号20、21、22もしくは23のいずれか1つと少なくとも95%の配列同一性を有する配列からなるCDR3を含むVL領域を含む、多特異性抗体またはその断片が提供される。
【0114】
本発明の更なる態様によれば、配列番号2~13のいずれか1つと少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含むCDR3を含むVH領域、及び配列番号14~25のいずれか1つと少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含むCDR3を含むVL領域を含む、多特異性抗体またはその断片が提供される。本発明の更なる態様によれば、配列番号2~13のいずれか1つと少なくとも80%の配列同一性を有する配列からなるCDR3を含むVH領域、及び配列番号14~25のいずれか1つと少なくとも80%の配列同一性を有する配列からなるCDR3を含むVL領域を含む、多特異性抗体またはその断片が提供される。
【0115】
本明細書で「少なくとも80%」または「80%以上」と言及している実施形態は、85%、90%、95%、97%、98%、99%または100%など、80%以上のすべての値の配列同一性を含むと理解されるであろう。一実施形態において、本発明の抗体または断片は、指定された配列に対して少なくとも85%、例えば、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を含む。
【0116】
配列同一性のパーセンテージの代わりに、1つまたは複数のアミノ酸変化、例えば、1つまたは複数の付加、置換及び/または欠失で実施形態が定義されることもある。一実施形態において、配列は、最大5つのアミノ酸変化、例えば最大3つのアミノ酸変化、特に最大2つのアミノ酸変化を含み得る。更なる実施形態において、配列は、最大5つのアミノ酸置換、例えば最大3つのアミノ酸置換、特に最大1つまたは2つのアミノ酸置換を含み得る。例えば、本発明の多特異性抗体またはその断片のCDR3は、配列番号2~25のいずれか1つと比較して、2つ以下、より好適には1つ以下の置換(複数可)を有する配列を含むか、またはより好適にはそれからなる。
【0117】
好適には、CDR1、CDR2またはCDR3の残基で、配列番号2~61及び配列番号160~171における対応する残基と異なるものはいずれも、それらの対応する残基に関して保存的置換である。例えば、配列番号2~25における対応する残基とは異なるCDR3の残基はいずれも、それらの対応する残基に関して保存的置換である。
【0118】
一実施形態において、多特異性抗体またはその断片は、
(i)配列番号2~13のいずれか1つと少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含むCDR3を含むVH領域、
(ii)配列番号26~37のいずれか1つと少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含むCDR2を含むVH領域、
(iii)配列番号38~49のいずれか1つと少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含むCDR1を含むVH領域、
(iv)配列番号14~25のいずれか1つと少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含むCDR3を含むVL領域、
(v)配列番号160~171のいずれか1つと少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含むCDR2を含むVL領域、及び/または
(vi)配列番号50~61のいずれか1つと少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含むCDR1を含むVL領域を含む。
【0119】
一実施形態において、多特異性抗体またはその断片は、
(i)配列番号2~13のいずれか1つと少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含むCDR3を含むVH領域、
(ii)配列番号26~37のいずれか1つと少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含むCDR2を含むVH領域、及び
(iii)配列番号38~49のいずれか1つと少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含むCDR1を含むVH領域を備えた重鎖を含む。
【0120】
一実施形態において、多特異性抗体またはその断片は、
(i)配列番号14~25のいずれか1つと少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含むCDR3を含むVL領域、
(ii)配列番号160~171のいずれか1つと少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含むCDR2を含むVL領域、及び
(iii)配列番号50~61のいずれか1つと少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含むCDR1を含むVL領域を備えた軽鎖を含む。
【0121】
一実施形態において、多特異性抗体またはその断片は、配列番号2、3、4、5または6、例えば2、3、4または5、特に2、3または4のいずれか1つと少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含むCDR3を含むVH領域を含む(またはTRDV1結合を付与する多特異性抗体の成分(すなわち結合ドメイン)は、それからなる)。一実施形態において、多特異性抗体またはその断片は、配列番号26、27、28、29または30、例えば26、27、28または29、特に26、27または28のいずれか1つと少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含むCDR2を含むVH領域を含む(またはTRDV1結合を付与する多特異性抗体の成分は、それからなる)。一実施形態において、多特異性抗体またはその断片は、配列番号38、39、40、41または42、例えば38、39、40または41、特に38、39または40のいずれか1つと少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含むCDR1を含むVH領域を含む(またはTRDV1結合を付与する多特異性抗体の成分は、それからなる)。
【0122】
一実施形態において、多特異性抗体またはその断片は、配列番号8、9、10または11のいずれか1つと少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含むCDR3を含むVH領域を含む(またはTRDV1結合を付与する多特異性抗体の成分は、それからなる)。一実施形態において、多特異性抗体またはその断片は、配列番号32、33、34または35のいずれか1つと少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含むCDR2を含むVH領域を含む(またはTRDV1結合を付与する多特異性抗体の成分は、それからなる)。一実施形態において、多特異性抗体またはその断片は、配列番号44、45、46または47のいずれか1つと少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含むCDR1を含むVH領域を含む(またはTRDV1結合を付与する多特異性抗体の成分は、それからなる)。
【0123】
一実施形態において、VH領域は、配列番号2の配列を含むCDR3、配列番号26の配列を含むCDR2、及び配列番号38の配列を含むCDR1を含む。一実施形態において、CDR3は配列番号2の配列からなり、CDR2は配列番号26の配列からなり、CDR1は配列番号38の配列からなる。
【0124】
一実施形態において、VH領域は、配列番号3の配列を含むCDR3、配列番号27の配列を含むCDR2、及び配列番号39の配列を含むCDR1を含む。一実施形態において、CDR3は配列番号3の配列からなり、CDR2は配列番号27の配列からなり、CDR1は配列番号39の配列からなる。
【0125】
一実施形態において、VH領域は、配列番号4の配列を含むCDR3、配列番号28の配列を含むCDR2、及び配列番号40の配列を含むCDR1を含む。一実施形態において、CDR3は配列番号4の配列からなり、CDR2は配列番号28の配列からなり、CDR1は配列番号40の配列からなる。
【0126】
一実施形態において、VH領域は、配列番号5の配列を含むCDR3、配列番号29の配列を含むCDR2、及び配列番号41の配列を含むCDR1を含む。一実施形態において、CDR3は配列番号5の配列からなり、CDR2は配列番号29の配列からなり、CDR1は配列番号41の配列からなる。
【0127】
一実施形態において、VH領域は、配列番号6の配列を含むCDR3、配列番号30の配列を含むCDR2、及び配列番号42の配列を含むCDR1を含む。一実施形態において、CDR3は配列番号6の配列からなり、CDR2は配列番号30の配列からなり、CDR1は配列番号42の配列からなる。
【0128】
一実施形態において、VH領域は、配列番号8の配列を含むCDR3、配列番号32の配列を含むCDR2、及び配列番号44の配列を含むCDR1を含む。一実施形態において、CDR3は配列番号8の配列からなり、CDR2は配列番号32の配列からなり、CDR1は配列番号44の配列からなる。
【0129】
一実施形態において、VH領域は、配列番号9の配列を含むCDR3、配列番号33の配列を含むCDR2、及び配列番号45の配列を含むCDR1を含む。一実施形態において、CDR3は配列番号9の配列からなり、CDR2は配列番号33の配列からなり、CDR1は配列番号45の配列からなる。
【0130】
一実施形態において、VH領域は、配列番号10の配列を含むCDR3、配列番号34のCDR2配列、及び配列番号46のCDR1配列を含む。一実施形態において、CDR3は配列番号10の配列からなり、CDR2は配列番号34の配列からなり、CDR1は配列番号46の配列からなる。
【0131】
一実施形態において、VH領域は、配列番号11の配列を含むCDR3、配列番号35のCDR2配列、及び配列番号47のCDR1配列を含む。一実施形態において、CDR3は配列番号11の配列からなり、CDR2は配列番号35の配列からなり、CDR1は配列番号47の配列からなる。
【0132】
一実施形態において、多特異性抗体またはその断片は、配列番号14~25、例えば配列番号14、15、16、17または18、例えば14、15、16または17、特に14、15または16のいずれか1つと少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含むCDR3を含むVL領域を含む(またはTRDV1結合を付与する多特異性抗体の成分は、それからなる)。一実施形態において、多特異性抗体またはその断片は、配列番号160~171、例えば配列番号160、161、162、163または164、例えば160、161、162または163、特に160、161または162のいずれか1つと少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含むCDR2を含むVL領域を含む(またはTRDV1結合を付与する多特異性抗体の成分は、それらからなる)。一実施形態において、多特異性抗体またはその断片は、配列番号50~61、例えば配列番号50、51、52、53または54、例えば50、51、52または53、特に50、51または52のいずれか1つと少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含むCDR1を含むVL領域を含む(またはTRDV1結合を付与する多特異性抗体の成分は、それらからなる)。
【0133】
一実施形態において、VL領域は、配列番号14の配列を含むCDR3、配列番号160の配列を含むCDR2、及び配列番号50の配列を含むCDR1を含む。一実施形態において、CDR3は配列番号14の配列からなり、CDR2は配列番号160の配列からなり、CDR1は配列番号50の配列からなる。
【0134】
一実施形態において、VL領域は、配列番号15の配列を含むCDR3、配列番号161の配列を含むCDR2、及び配列番号51の配列を含むCDR1を含む。一実施形態において、CDR3は配列番号15の配列からなり、CDR2は配列番号161の配列からなり、CDR1は配列番号51の配列からなる。
【0135】
一実施形態において、VL領域は、配列番号16の配列を含むCDR3、配列番号162の配列を含むCDR2、及び配列番号52の配列を含むCDR1を含む。一実施形態において、CDR3は配列番号16の配列からなり、CDR2は配列番号162の配列からなり、CDR1は配列番号52の配列からなる。
【0136】
一実施形態において、VL領域は、配列番号17の配列を含むCDR3、配列番号163の配列を含むCDR2、及び配列番号53の配列を含むCDR1を含む。一実施形態において、CDR3は配列番号17の配列からなり、CDR2は配列番号163の配列からなり、CDR1は配列番号53の配列からなる。
【0137】
一実施形態において、VL領域は、配列番号18の配列を含むCDR3、配列番号164の配列を含むCDR2、及び配列番号54の配列を含むCDR1を含む。一実施形態において、CDR3は配列番号18の配列からなり、CDR2は配列番号164の配列からなり、CDR1は配列番号54の配列からなる。
【0138】
一実施形態において、多特異性抗体またはその断片は、配列番号20、21、22または23のいずれか1つと少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含むCDR3を含むVL領域を含む(またはTRDV1結合を付与する多特異性抗体の成分は、それからなる)。一実施形態において、多特異性抗体またはその断片は、配列:166、167、168または169のいずれか1つと少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含むCDR2を含むVL領域を含む(またはTRDV1結合を付与する多特異性抗体の成分は、それからなる)。一実施形態において、多特異性抗体またはその断片は、配列番号56、57、58または59のいずれか1つと少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含むCDR1を含むVL領域を含む(またはTRDV1結合を付与する多特異性抗体の成分は、それからなる)。
【0139】
一実施形態において、VL領域は、配列番号20の配列を含むCDR3、配列番号166の配列を含むCDR2、及び配列番号56の配列を含むCDR1を含む。一実施形態において、CDR3は配列番号20の配列からなり、CDR2は配列番号166の配列からなり、CDR1は配列番号56の配列からなる。
【0140】
一実施形態において、VL領域は、配列番号21の配列を含むCDR3、配列番号167の配列を含むCDR2、及び配列番号57の配列を含むCDR1を含む。一実施形態において、CDR3は配列番号21の配列からなり、CDR2は配列番号167の配列からなり、CDR1は配列番号57の配列からなる。
【0141】
一実施形態において、VL領域は、配列番号22の配列を含むCDR3、配列番号168の配列を含むCDR2、及び配列番号58の配列を含むCDR1を含む。一実施形態において、CDR3は配列番号22の配列からなり、CDR2は配列番号168の配列からなり、CDR1は配列番号58の配列からなる。
【0142】
一実施形態において、VL領域は、配列番号23の配列を含むCDR3、配列番号169の配列を含むCDR2、及び配列番号59の配列を含むCDR1を含む。一実施形態において、CDR3は配列番号23の配列からなり、CDR2は配列番号169の配列からなり、CDR1は配列番号59の配列からなる。
【0143】
一実施形態において、VH領域は、配列番号2の配列を含むCDR3、配列番号26の配列を含むCDR2、配列番号38の配列を含むCDR1を含み、VL領域は、配列番号14の配列を含むCDR3、配列番号160の配列を含むCDR2、及び配列番号50の配列を含むCDR1を含む。一実施形態において、HCDR3は配列番号2の配列からなり、HCDR2は配列番号26の配列からなり、HCDR1は配列番号38の配列からなり、LCDR3は配列番号14の配列からなり、LCDR2は配列番号160の配列からなり、LCDR1は配列番号50の配列からなる。
【0144】
一実施形態において、VH領域は、配列番号3の配列を含むCDR3、配列番号27の配列を含むCDR2、配列番号39の配列を含むCDR1を含み、VL領域は、配列番号15の配列を含むCDR3、配列番号161の配列を含むCDR2、及び配列番号51の配列を含むCDR1を含む。一実施形態において、HCDR3は配列番号3の配列からなり、HCDR2は配列番号27の配列からなり、HCDR1は配列番号39の配列からなり、LCDR3は配列番号15の配列からなり、LCDR2は配列番号161の配列からなり、LCDR1は配列番号51の配列からなる。
【0145】
一実施形態において、VH領域は、配列番号4の配列を含むCDR3、配列番号28の配列を含むCDR2、配列番号40の配列を含むCDR1を含み、VL領域は、配列番号16の配列を含むCDR3、配列番号162の配列を含むCDR2、及び配列番号52の配列を含むCDR1を含む。一実施形態において、HCDR3は配列番号4の配列からなり、HCDR2は配列番号28の配列からなり、HCDR1は配列番号40の配列からなり、LCDR3は配列番号16の配列からなり、LCDR2は配列番号162の配列からなり、LCDR1は配列番号52の配列からなる。
【0146】
一実施形態において、VH領域は、配列番号5の配列を含むCDR3、配列番号29の配列を含むCDR2、配列番号41の配列を含むCDR1を含み、VL領域は、配列番号17の配列を含むCDR3、配列番号163の配列を含むCDR2、及び配列番号53の配列を含むCDR1を含む。一実施形態において、HCDR3は配列番号5の配列からなり、HCDR2は配列番号29の配列からなり、HCDR1は配列番号41の配列からなり、LCDR3は配列番号17の配列からなり、LCDR2は配列番号163の配列からなり、LCDR1は配列番号53の配列からなる。
【0147】
一実施形態において、VH領域は、配列番号6の配列を含むCDR3、配列番号30の配列を含むCDR2、配列番号42の配列を含むCDR1を含み、VL領域は、配列番号18の配列を含むCDR3、配列番号164の配列を含むCDR2、及び配列番号54の配列を含むCDR1を含む。一実施形態において、HCDR3は配列番号6の配列からなり、HCDR2は配列番号30の配列からなり、HCDR1は配列番号42の配列からなり、LCDR3は配列番号18の配列からなり、LCDR2は配列番号164の配列からなり、LCDR1は配列番号54の配列からなる。
【0148】
一実施形態において、VH領域は、配列番号7の配列を含むCDR3、配列番号31の配列を含むCDR2、配列番号43の配列を含むCDR1を含み、VL領域は、配列番号19の配列を含むCDR3、配列番号165の配列を含むCDR2、及び配列番号55の配列を含むCDR1を含む。一実施形態において、HCDR3は配列番号7の配列からなり、HCDR2は配列番号31の配列からなり、HCDR1は配列番号43の配列からなり、LCDR3は配列番号19の配列からなり、LCDR2は配列番号165の配列からなり、LCDR1は配列番号55の配列からなる。
【0149】
一実施形態において、VH領域は、配列番号8の配列を含むCDR3、配列番号32の配列を含むCDR2、配列番号44の配列を含むCDR1を含み、VL領域は、配列番号20の配列を含むCDR3、配列番号166の配列を含むCDR2、及び配列番号56の配列を含むCDR1を含む。一実施形態において、HCDR3は配列番号8の配列からなり、HCDR2は配列番号32の配列からなり、HCDR1は配列番号44の配列からなり、LCDR3は配列番号20の配列からなり、LCDR2は配列番号166の配列からなり、LCDR1は配列番号56の配列からなる。
【0150】
一実施形態において、VH領域は、配列番号9の配列を含むCDR3、配列番号33の配列を含むCDR2、配列番号45の配列を含むCDR1を含み、VL領域は、配列番号21の配列を含むCDR3、配列番号167の配列を含むCDR2、及び配列番号57の配列を含むCDR1を含む。一実施形態において、HCDR3は配列番号9の配列からなり、HCDR2は配列番号33の配列からなり、HCDR1は配列番号45の配列からなり、LCDR3は配列番号21の配列からなり、LCDR2は配列番号167の配列からなり、LCDR1は配列番号57の配列からなる。
【0151】
一実施形態において、VH領域は、配列番号10の配列を含むCDR3、配列番号34の配列を含むCDR2、配列番号46の配列を含むCDR1を含み、VL領域は、配列番号22の配列を含むCDR3、配列番号168の配列を含むCDR2、及び配列番号58の配列を含むCDR1を含む。一実施形態において、HCDR3は配列番号10の配列からなり、HCDR2は配列番号34の配列からなり、HCDR1は配列番号46の配列からなり、LCDR3は配列番号22の配列からなり、LCDR2は配列番号168の配列からなり、LCDR1は配列番号58の配列からなる。
【0152】
一実施形態において、VH領域は、配列番号11の配列を含むCDR3、配列番号35の配列を含むCDR2、配列番号47の配列を含むCDR1を含み、VL領域は、配列番号23の配列を含むCDR3、配列番号169の配列を含むCDR2、及び配列番号59の配列を含むCDR1を含む。一実施形態において、HCDR3は配列番号11の配列からなり、HCDR2は配列番号35の配列からなり、HCDR1は配列番号47の配列からなり、LCDR3は配列番号23の配列からなり、LCDR2は配列番号169の配列からなり、LCDR1は配列番号59の配列からなる。
【0153】
一実施形態において、VH領域は、配列番号12の配列を含むCDR3、配列番号36の配列を含むCDR2、配列番号48の配列を含むCDR1を含み、VL領域は、配列番号24の配列を含むCDR3、配列番号170の配列を含むCDR2、及び配列番号60の配列を含むCDR1を含む。一実施形態において、HCDR3は配列番号12の配列からなり、HCDR2は配列番号36の配列からなり、HCDR1は配列番号48の配列からなり、LCDR3は配列番号24の配列からなり、LCDR2は配列番号170の配列からなり、LCDR1は配列番号60の配列からなる。
【0154】
一実施形態において、VH領域は、配列番号13の配列を含むCDR3、配列番号37の配列を含むCDR2、配列番号49の配列を含むCDR1を含み、VL領域は、配列番号25の配列を含むCDR3、配列番号171の配列を含むCDR2、及び配列番号61の配列を含むCDR1を含む。一実施形態において、HCDR3は配列番号13の配列からなり、HCDR2は配列番号37の配列からなり、HCDR1は配列番号49の配列からなり、LCDR3は配列番号25の配列からなり、LCDR2は配列番号171の配列からなり、LCDR1は配列番号61の配列からなる。
【0155】
一実施形態において、多特異性抗体またはその断片は、表3に記載されるような1つまたは複数のCDR配列を含む。更なる実施形態において、多特異性抗体またはその断片は、表3に記載されるようなクローン1252_P01_C08の1つまたは複数の(例えばすべての)CDR配列を含む。代替的な実施形態において、多特異性抗体またはその断片は、表3に記載されるようなクローン1245_P01_E07の1つまたは複数の(例えばすべての)CDR配列を含む。代替的な実施形態において、多特異性抗体またはその断片は、表3に記載されるようなクローン1245_P02_G04の1つまたは複数の(例えばすべての)CDR配列を含む。代替的な実施形態において、多特異性抗体またはその断片は、表3に記載されるようなクローン1245_P02_B07の1つまたは複数の(例えばすべての)CDR配列を含む。代替的な実施形態において、多特異性抗体またはその断片は、表3に記載されるようなクローン1251_P02_C05の1つまたは複数の(例えばすべての)CDR配列を含む。代替的な実施形態において、多特異性抗体またはその断片は、表3に記載されるようなクローン1139_P01_E04の1つまたは複数の(例えばすべての)CDR配列を含む。代替的な実施形態において、多特異性抗体またはその断片は、表3に記載されるようなクローン1245_P02_F07の1つまたは複数の(例えばすべての)CDR配列を含む。代替的な実施形態において、多特異性抗体またはその断片は、表3に記載されるようなクローン1245_P01_G06の1つまたは複数の(例えばすべての)CDR配列を含む。代替的な実施形態において、多特異性抗体またはその断片は、表3に記載されるようなクローン1245_P01_G09の1つまたは複数の(例えばすべての)CDR配列を含む。代替的な実施形態において、多特異性抗体またはその断片は、表3に記載されるようなクローン1138_P01_B09の1つまたは複数の(例えばすべての)CDR配列を含む。代替的な実施形態において、多特異性抗体またはその断片は、表3に記載されるようなクローン1251_P02_G10の1つまたは複数の(例えばすべての)CDR配列を含む。
【0156】
好適には、上述のVH領域及びVL領域は各々、4つのフレームワーク領域(FR1~FR4)を含む。一実施形態において、多特異性抗体またはその断片は、配列番号62~85のいずれか1つのフレームワーク領域と少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含むフレームワーク領域(例えばFR1、FR2、FR3及び/またはFR4)を含む。一実施形態において、多特異性抗体またはその断片は、配列番号62~85のいずれか1つのフレームワーク領域と少なくとも90%、例えば少なくとも95%、97%または99%の配列同一性を有する配列を含むフレームワーク領域(例えばFR1、FR2、FR3及び/またはFR4)を含む。一実施形態において、多特異性抗体またはその断片は、配列番号62~85のいずれか1つの配列を含むフレームワーク領域(例えばFR1、FR2、FR3及び/またはFR4)を含む。一実施形態において、多特異性抗体またはその断片は、配列番号62~85のいずれか1つの配列からなるフレームワーク領域(例えばFR1、FR2、FR3及び/またはFR4)を含む。
【0157】
本明細書に記載される抗体は、TRDV1結合を付与する完全な軽鎖及び/または重鎖の可変配列によって定義され得る。したがって、本発明の更なる態様によれば、配列番号62~85のいずれか1つと少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、単離された多特異性抗Vδ1抗体またはその断片が提供される。本発明の更なる態様によれば、TRDV1結合を付与する多特異性抗体の成分が、配列番号62~85のいずれか1つと少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる、単離された多特異性抗Vδ1抗体またはその断片が提供される。
【0158】
一実施形態において、多特異性抗体またはその断片は、配列番号62~73のいずれか1つと少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVH領域を含む。一実施形態において、多特異性抗体またはその断片は、配列番号62~73のいずれか1つと少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるVH領域を含む。更なる実施形態において、VH領域は、配列番号62、63、64、65または66、例えば62、63、64または65、特に62、63または64のいずれか1つと少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。更なる実施形態において、VH領域は、配列番号62、63、64、65または66、例えば62、63、64または65、特に62、63または64のいずれか1つと少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる。更なる実施形態において、VH領域は、配列番号68、69、70、71、72または73、例えば68、69、70または71のいずれか1つと少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。更なる実施形態において、VH領域は、配列番号68、69、70、71、72または73、例えば68、69、70または71のいずれか1つと少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる。
【0159】
一実施形態において、多特異性抗体またはその断片は、配列番号74~85のいずれか1つと少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVL領域を含む。一実施形態において、多特異性抗体またはその断片は、配列番号74~85のいずれか1つと少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるVL領域を含む。更なる実施形態において、VL領域は、配列番号74、75、76、77または78、例えば74、75、76または77、特に74、75、または76のいずれか1つと少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。更なる実施形態において、VL領域は、配列番号74、75、76、77または78、例えば74、75、76または77、特に74、75、または76のいずれか1つと少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる。更なる実施形態において、VL領域は、配列番号80、81、82、83、84または85、例えば80、81、82または83のいずれか1つと少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。更なる実施形態において、VL領域は、配列番号80、81、82、83、84または85、例えば80、81、82または83のいずれか1つと少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる。
【0160】
更なる実施形態において、多特異性抗体またはその断片は、配列番号62~73のいずれか1つと少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVH領域、及び配列番号74~85のいずれか1つと少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVL領域を含む。更なる実施形態において、多特異性抗体またはその断片は、配列番号62~73のいずれか1つと少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるVH領域、及び配列番号74~85のいずれか1つと少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるVL領域を含む。
【0161】
更なる実施形態において、多特異性抗体またはその断片は、配列番号62~73のいずれか1つと少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVH領域、及び配列番号74~85のいずれか1つと少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVL領域を含む。更なる実施形態において、多特異性抗体またはその断片は、配列番号62~73のいずれか1つと少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるVH領域、及び配列番号74~85のいずれか1つと少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるVL領域を含む。
【0162】
更なる実施形態において、多特異性抗体またはその断片は、配列番号62~73のいずれか1つと少なくとも96%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVH領域、及び配列番号74~85のいずれか1つと少なくとも96%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVL領域を含む。更なる実施形態において、多特異性抗体またはその断片は、配列番号62~73のいずれか1つと少なくとも96%の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるVH領域、及び配列番号74~85のいずれか1つと少なくとも96%の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるVL領域を含む。
【0163】
一実施形態において、多特異性抗体またはその断片は、配列番号63のアミノ酸配列を含むVH領域(1252_P01_C08)を含む。代替的な実施形態において、多特異性抗体またはその断片は、配列番号62のアミノ酸配列を含むVH領域(1245_P01_E07)を含む。代替的な実施形態において、多特異性抗体またはその断片は、配列番号64のアミノ酸配列を含むVH領域(1245_P02_G04)を含む。代替的な実施形態において、多特異性抗体またはその断片は、配列番号68のアミノ酸配列を含むVH領域(1139_P01_E04)を含む。代替的な実施形態において、多特異性抗体またはその断片は、配列番号69のアミノ酸配列を含むVH領域(1245_P02_F07)を含む。代替的な実施形態において、多特異性抗体またはその断片は、配列番号70のアミノ酸配列を含むVH領域(1245_P01_G06)を含む。代替的な実施形態において、多特異性抗体またはその断片は、配列番号71のアミノ酸配列を含むVH領域(1245_P01_G09)を含む。
【0164】
一実施形態において、多特異性抗体またはその断片は、配列番号63のアミノ酸配列からなるVH領域(1252_P01_C08)を含む。代替的な実施形態において、多特異性抗体またはその断片は、配列番号62のアミノ酸配列からなるVH領域(1245_P01_E07)を含む。代替的な実施形態において、多特異性抗体またはその断片は、配列番号64のアミノ酸配列からなるVH領域(1245_P02_G04)を含む。代替的な実施形態において、多特異性抗体またはその断片は、配列番号68のアミノ酸配列からなるVH領域(1139_P01_E04)を含む。代替的な実施形態において、多特異性抗体またはその断片は、配列番号69のアミノ酸配列からなるVH領域(1245_P02_F07)を含む。代替的な実施形態において、多特異性抗体またはその断片は、配列番号70のアミノ酸配列からなるVH領域(1245_P01_G06)を含む。代替的な実施形態において、多特異性抗体またはその断片は、配列番号71のアミノ酸配列からなるVH領域(1245_P01_G09)を含む。
【0165】
一実施形態において、多特異性抗体またはその断片は、配列番号75のアミノ酸配列を含むVL領域(1252_P01_C08)を含む。代替的な実施形態において、多特異性抗体またはその断片は、配列番号74のアミノ酸配列を含むVL領域(1245_P01_E07)を含む。代替的な実施形態において、多特異性抗体またはその断片は、配列番号76のアミノ酸配列を含むVL領域(1245_P02_G04)を含む。代替的な実施形態において、多特異性抗体またはその断片は、配列番号80のアミノ酸配列を含むVL領域(1139_P01_E04)を含む。代替的な実施形態において、多特異性抗体またはその断片は、配列番号81のアミノ酸配列を含むVL領域(1245_P02_F07)を含む。代替的な実施形態において、多特異性抗体またはその断片は、配列番号82のアミノ酸配列を含むVL領域(1245_P01_G06)を含む。代替的な実施形態において、多特異性抗体またはその断片は、配列番号83のアミノ酸配列を含むVL領域(1245_P01_G09)を含む。
【0166】
一実施形態において、多特異性抗体またはその断片は、配列番号75のアミノ酸配列からなるVL領域(1252_P01_C08)を含む。代替的な実施形態において、多特異性抗体またはその断片は、配列番号74のアミノ酸配列からなるVL領域(1245_P01_E07)を含む。代替的な実施形態において、多特異性抗体またはその断片は、配列番号76のアミノ酸配列からなるVL領域(1245_P02_G04)を含む。代替的な実施形態において、多特異性抗体またはその断片は、配列番号80のアミノ酸配列からなるVL領域(1139_P01_E04)を含む。代替的な実施形態において、多特異性抗体またはその断片は、配列番号81のアミノ酸配列からなるVL領域(1245_P02_F07)を含む。代替的な実施形態において、多特異性抗体またはその断片は、配列番号82のアミノ酸配列からなるVL領域(1245_P01_G06)を含む。代替的な実施形態において、多特異性抗体またはその断片は、配列番号83のアミノ酸配列からなるVL領域(1245_P01_G09)を含む。
【0167】
一実施形態において、多特異性抗体またはその断片は、配列番号63のアミノ酸配列を含むVH領域(1252_P01_C08)及び配列番号75のアミノ酸配列を含むVL領域(1252_P01_C08)を含む。代替的な実施形態において、多特異性抗体またはその断片は、配列番号62のアミノ酸配列を含むVH領域(1245_P01_E07)及び配列番号74のアミノ酸配列を含むVL領域(1245_P01_E07)を含む。代替的な実施形態において、多特異性抗体またはその断片は、配列番号64のアミノ酸配列を含むVH領域(1245_P02_G04)及び配列番号76のアミノ酸配列を含むVL領域(1245_P02_G04)を含む。代替的な実施形態において、多特異性抗体またはその断片は、配列番号68のアミノ酸配列を含むVH領域(1139_P01_E04)及び配列番号80のアミノ酸配列を含むVL領域(1139_P01_E04)を含む。代替的な実施形態において、多特異性抗体またはその断片は、配列番号69のアミノ酸配列を含むVH領域(1245_P02_F07)及び配列番号81のアミノ酸配列を含むVL領域(1245_P02_F07)を含む。代替的な実施形態において、多特異性抗体またはその断片は、配列番号70のアミノ酸配列を含むVH領域(1245_P01_G06)及び配列番号82のアミノ酸配列を含むVL領域(1245_P01_G06)を含む。代替的な実施形態において、多特異性抗体またはその断片は、配列番号71のアミノ酸配列を含むVH領域(1245_P01_G06)及び配列番号83のアミノ酸配列を含むVL領域(1245_P01_G09)を含む。
【0168】
一実施形態において、多特異性抗体またはその断片は、配列番号63のアミノ酸配列からなるVH領域(1252_P01_C08)及び配列番号75のアミノ酸配列からなるVL領域(1252_P01_C08)を含む。代替的な実施形態において、多特異性抗体またはその断片は、配列番号62のアミノ酸配列からなるVH領域(1245_P01_E07)及び配列番号74のアミノ酸配列からなるVL領域(1245_P01_E07)を含む。代替的な実施形態において、多特異性抗体またはその断片は、配列番号64のアミノ酸配列からなるVH領域(1245_P02_G04)及び配列番号76のアミノ酸配列からなるVL領域(1245_P02_G04)を含む。代替的な実施形態において、多特異性抗体またはその断片は、配列番号68のアミノ酸配列からなるVH領域(1139_P01_E04)及び配列番号80のアミノ酸配列からなるVL領域(1139_P01_E04)を含む。代替的な実施形態において、多特異性抗体またはその断片は、配列番号69のアミノ酸配列からなるVH領域(1245_P02_F07)及び配列番号81のアミノ酸配列からなるVL領域(1245_P02_F07)を含む。代替的な実施形態において、多特異性抗体またはその断片は、配列番号70のアミノ酸配列からなるVH領域(1245_P01_G06)及び配列番号82のアミノ酸配列からなるVL領域(1245_P01_G06)を含む。代替的な実施形態において、多特異性抗体またはその断片は、配列番号71のアミノ酸配列からなるVH領域(1245_P01_G06)及び配列番号83のアミノ酸配列からなるVL領域(1245_P01_G09)を含む。
【0169】
VH領域及びVL領域の両方を含む断片の場合、これらは、共有結合(例えば、ジスルフィド結合またはリンカーを介して)または非共有結合のいずれで会合してもよい。本明細書に記載される多特異性抗体断片は、scFv、すなわち、リンカーによって結合されたVH領域及びVL領域を含む断片を含み得る。一実施形態において、VH領域及びVL領域は、(例えば合成)ポリペプチドリンカーによって結合されている。ポリペプチドリンカーは、(Gly4Ser)nリンカー(ここで、n=1~8、例えば2、3、4、5または7である)を含み得る。ポリペプチドリンカーは、[(Gly4Ser)n(Gly3AlaSer)m]pリンカー(ここで、n=1~8、例えば2、3、4、5または7であり、m=1~8、例えば0、1、2または3であり、p=1~8、例えば1、2または3である)を含み得る。更なる実施形態において、リンカーは配列番号98を含む。更なる実施形態において、リンカーは配列番号98からなる。
【0170】
一実施形態において、多特異性抗体またはその断片は、配列番号86~97のいずれか1つと少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。更なる実施形態において、多特異性抗体またはその断片は、配列番号86~97のいずれか1つのアミノ酸配列を含む。なおも更なる実施形態において、多特異性抗体またはその断片は、配列番号87のアミノ酸配列(1252_P01_C08)を含む。代替的な実施形態において、多特異性抗体またはその断片は、配列番号86のアミノ酸配列(1245_P01_E07)を含む。代替的な実施形態において、多特異性抗体またはその断片は、配列番号88のアミノ酸配列(1245_P02_G04)を含む。代替的な実施形態において、多特異性抗体またはその断片は、配列番号92のアミノ酸配列(1139_P01_E04)を含む。代替的な実施形態において、多特異性抗体またはその断片は、配列番号93のアミノ酸配列(1245_P02_F07)を含む。代替的な実施形態において、多特異性抗体またはその断片は、配列番号94のアミノ酸配列(1245_P01_G06)を含む。代替的な実施形態において、多特異性抗体またはその断片は、配列番号95のアミノ酸配列(1245_P01_G09)を含む。
【0171】
一実施形態において、TRDV1結合を付与する多特異性抗体の成分は、配列番号86~97のいずれか1つと少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる。更なる実施形態において、TRDV1結合を付与する多特異性抗体の成分は、配列番号86~97のいずれか1つのアミノ酸配列からなる。なおも更なる実施形態において、TRDV1結合を付与する多特異性抗体の成分は、配列番号87のアミノ酸配列(1252_P01_C08)からなる。代替的な実施形態において、TRDV1結合を付与する多特異性抗体の成分は、配列番号86のアミノ酸配列(1245_P01_E07)からなる。代替的な実施形態において、TRDV1結合を付与する多特異性抗体の成分は、配列番号88のアミノ酸配列(1245_P02_G04)からなる。代替的な実施形態において、TRDV1結合を付与する多特異性抗体の成分は、配列番号92のアミノ酸配列(1139_P01_E04)からなる。代替的な実施形態において、TRDV1結合を付与する多特異性抗体の成分は、配列番号93のアミノ酸配列(1245_P02_F07)からなる。代替的な実施形態において、TRDV1結合を付与する多特異性抗体の成分は、配列番号94のアミノ酸配列(1245_P01_G06)からなる。代替的な実施形態において、TRDV1結合を付与する多特異性抗体の成分は、配列番号95のアミノ酸配列(1245_P01_G09)からなる。
【0172】
当業者には、翻訳、精製、及び検出を助けるためにN末端及びC末端の改変を含むscFv構築物を設計及び作製できることが理解されるであろう。例えば、scFv配列のN末端において、カノニカルVH配列(例えばQVQまたはEVQで始まる)の前に、追加のメチオニン及び/またはアラニンアミノ酸残基を含めてもよい。C末端(すなわち、IMGT定義のとおりに終わるカノニカル成熟VLドメイン配列のC末端側)には、精製及び検出を助けるために、(i)定常ドメインの部分的配列、及び/または(ii)Hisタグ及びFlagタグなどのタグを含む追加の合成配列といった、追加の配列を含めてもよい。一実施形態において、配列番号124が、配列番号86、88~90、92~97のいずれか1つのC末端に付加される。一実施形態において、配列番号125が、配列番号86、88~90、92~97のいずれか1つのC末端に付加される。一実施形態において、配列番号126が、配列番号87または91のいずれか1つのC末端に付加される。一実施形態において、配列番号127が、配列番号87または91のいずれか1つのC末端に付加される。前記scFvのN末端配列またはC末端配列は任意であり、代替のscFv設計、翻訳、精製または検出ストラテジーが採用される場合には除去、改変、または置換され得ることが十分に理解されている。
【0173】
本明細書に記載されるように、抗体は任意のフォーマットであり得る。好ましい実施形態において、多特異性抗体はIgG1フォーマットである。したがって、一実施形態において、多特異性抗体またはその断片は、配列番号111~122のいずれか1つと少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。更なる実施形態において、多特異性抗体またはその断片は、配列番号111~122のいずれか1つのアミノ酸配列を含む。なおも更なる実施形態において、多特異性抗体またはその断片は、配列番号111~116、例えば配列番号111~113及び116のアミノ酸配列を含む。なおも更なる実施形態において、多特異性抗体またはその断片は、配列番号117~122、例えば配列番号117~120のアミノ酸配列を含む。なおも更なる実施形態において、多特異性抗体またはその断片は、配列番号111、112、116~120、例えば配列番号111、112もしくは116、または配列番号117~120のアミノ酸配列を含む。
【0174】
一実施形態において、TRDV1結合を付与する多特異性抗体の成分は、配列番号111~122のいずれか1つと少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる。更なる実施形態において、TRDV1結合を付与する多特異性抗体の成分は、配列番号111~122のいずれか1つのアミノ酸配列からなる。なおも更なる実施形態において、TRDV1結合を付与する多特異性抗体の成分は、配列番号111~116、例えば配列番号111~113及び116のアミノ酸配列からなる。なおも更なる実施形態において、TRDV1結合を付与する多特異性抗体の成分は、配列番号117~122、例えば配列番号117~120のアミノ酸配列からなる。なおも更なる実施形態において、TRDV1結合を付与する多特異性抗体の成分は、配列番号111、112、116~120、例えば配列番号111、112もしくは116、または配列番号117~120のアミノ酸配列からなる。
【0175】
一実施形態において、多特異性抗体は、本明細書で定義される抗体もしくはその断片と同じもしくは本質的に同じTRDV1エピトープに結合するか、または本明細書で定義される抗体もしくはその断片と競合する。当技術分野で公知の定型的方法を使用することにより、多特異性抗体が参照抗Vδ1抗体と同じTRDV1エピトープに結合するかどうか、または参照抗Vδ1抗体と結合を競合するかどうかを容易に決定することができる。例えば、試験抗体が本発明の参照抗Vδ1抗体と同じTRDV1エピトープに結合するかどうかを決定するためには、参照抗体を飽和条件下でVδ1タンパク質またはペプチドに結合させる。次に、Vδ1鎖に結合する試験多特異性抗体の能力を評価する。試験多特異性抗体が参照抗Vδ1抗体との飽和結合後にVδ1に結合することができれば、試験多特異性抗体は、参照抗Vδ1抗体とは異なるTRDV1エピトープに結合すると結論付けることができる。一方で、試験多特異性抗体が参照抗Vδ1抗体との飽和結合後にVδ1鎖に結合することができなければ、試験多特異性抗体は、本発明の参照抗Vδ1抗体が結合するエピトープと同じTRDV1エピトープに結合し得る。当然ながら、TRDV1エピトープへの結合は、TRDV1のエピトープである第1の標的エピトープへの結合を付与する多特異性抗体の成分を指す。同じまたは異なるエピトープに対する結合の試験は、代替的に、本明細書で提供される多特異性抗体の配列を使用して、しかし単特異性フォーマットで実施してもよい。
【0176】
本発明には、本明細書で定義される抗体もしくはその断片(多特異性または単特異性のいずれかのフォーマット)、または本明細書に記載される例示的な抗体のいずれかのCDR配列を有する抗体と、Vδ1への結合を競合する多特異性抗Vδ1抗体も含まれる。例えば、どのタンパク質、抗体、及び他のアンタゴニストがVδ1鎖への結合を本発明の抗体と競合するか及び/またはエピトープを共有するかを決定するために、本発明の抗体を用いて競合アッセイを行うことができる。これらのアッセイは、当業者には容易に分かる。これらは、タンパク質、例えばVδ1における限られた数の結合部位についてのアンタゴニスト間またはリガンド間の競合を評価する。抗体(またはその断片)は競合の前または後に固定化または不溶化され、Vδ1鎖に結合した試料は、例えば、デカント(抗体が事前に不溶化された場合)または遠心分離(抗体が競合反応後に沈殿した場合)によって非結合試料から分離される。また、競合結合は、タンパク質への抗体の結合または結合の欠如によって機能が変化するかどうか、例えば、抗体分子が標識などの酵素活性を阻害するか強化するかどうかによって決定され得る。当技術分野において公知であり、かつ本明細書に記載されるような、ELISA及び他の機能アッセイを使用することができる。
【0177】
2つの抗体は、各々が標的抗原への他方の結合を競合的に阻害(遮断)する場合、同じまたは重複するエピトープに結合する。すなわち、1倍、5倍、10倍、20倍、または100倍過剰の一方の抗体は、競合結合アッセイで測定した場合、他方の結合を少なくとも50%、ただし好ましくは75%、90%または更には99%阻害する。あるいは、一方の抗体の結合を低減または消失させる標的抗原における本質的にすべてのアミノ酸突然変異が、他方の結合を低減または消失させる場合、2つの抗体は同じエピトープを有する。
【0178】
次いで、追加の定型的実験(例えばペプチド突然変異及び結合分析)を行って、観察された試験抗体の結合の欠如が実際に参照抗体と同じエピトープへの結合によるものかどうか、または立体障害(または別の現象)が観察された結合の欠如の原因であるかどうかを確認できる。この類の実験は、ELISA、RIA、表面プラズモン共鳴、フローサイトメトリー、または当技術分野で利用可能な任意の他の定量的もしくは定性的な抗体結合アッセイを使用して行うことができる。
【0179】
一部の実施形態において、抗体またはその断片は、Asn 297(EU番号付けスキーム)に連結された糖の変異を介して改変されたエフェクター機能を含む。更なる前記改変において、Asn 297は、フコシル化されていないか、または低減したフコシル化を示す(すなわち、脱フコシル化抗体または非フコシル化抗体)。フコシル化には、分子への糖フコースの付加、例えば、N-グリカン、O-グリカン、及び糖脂質へのフコースの結合が含まれる。したがって、脱フコシル化抗体では、フコースが定常領域の炭水化物鎖に結合していない。抗体は、抗体のフコシル化を防止または阻害するために改変され得る。典型的に、グリコシル化改変は、ターゲティングされた工学操作によるか、またはターゲティングもしくは偶然による宿主もしくはクローンの選択による、代替のグリコシル化プロセシング機能を含む宿主細胞における前記抗体またはその断片の発現を含む(例えば実施例13を参照)。これら及び他のエフェクター改変は、本明細書に組み込まれているXinhua Wang et al.(2018)Protein & Cell 9:63-73及びPereira et al.(2018)mAbs 10(5):693-711などによる最近の概説に更に記述されている。
【0180】
抗体配列の改変
多特異性抗体及びその断片は、公知の方法を使用して改変することができる。本明細書に記載される抗体分子に対する配列改変、特にVδ1結合を付与する多特異性抗体の一部に対するものは、当業者であれば容易に取り入れることができる。以下の例は非限定的である。
【0181】
ファージライブラリからの抗体の発見及び配列の回収の間に、所望の抗体可変ドメインは、サブクローン化によって完全長IgGに再編成され得る。プロセスを加速するために、可変ドメインは制限酵素を使用して移されることがよくある。これらのユニークな制限部位は追加の/代替のアミノ酸を導入し、カノニカル配列から離れ得る(このようなカノニカル配列は、例えば、international ImMunoGeneTics[IMGT]情報システムに見出され得る。http://www.imgt.orgを参照)。これらは、カッパ軽鎖またはラムダ軽鎖の配列改変として導入され得る。
【0182】
カッパ軽鎖の改変
可変カッパ軽鎖の可変配列は、完全長IgGに再編成する際に制限部位(例えばNhe1-Not1)を使用してクローン化され得る。より具体的には、カッパ軽鎖のN末端に、クローン化をサポートするために追加のAla-Ser配列が導入された。好ましくは、この追加のAS配列は、その後、カノニカルN末端配列を生成するような更なる開発の間に除去される。よって、一実施形態において、本明細書に記載されるカッパ軽鎖含有抗体は、N末端にAS配列を含有しない。すなわち、配列番号74、76~78及び80~85は、最初のAS配列を含まない。更なる実施形態において、配列番号74及び76~78は、最初のAS配列を含まない。この実施形態は、本明細書に含まれる、この配列を含有する他の配列(例えば配列番号86、88~90及び92~97)にも適用されることが理解されよう。
【0183】
クローン化をサポートするために、追加のアミノ酸変化を行ってもよい。例えば、本明細書に記載される抗体では、カッパ軽鎖可変ドメイン/定常ドメインの境界で、バリンからアラニンへの変化を導入してクローン化をサポートした。これにより、カッパ定常ドメインが改変された。具体的には、これにより、定常ドメインが
【化1】
で(NotI制限部位から)始まることになる。好ましくは、この配列は、
【化2】
で始まるカノニカルカッパ軽鎖定常領域を生成するように、更なる開発中に改変され得る。よって、一実施形態において、本明細書に記載されるカッパ軽鎖含有抗体は、配列RTVで始まる定常ドメインを含有する。したがって、一実施形態において、配列番号111~114及び117~122の配列
【化3】
は、配列
【化4】
で置き換えられる。例えば、実施例13及び配列番号129、130を参照のこと。
【0184】
ラムダ軽鎖の改変
上述のカッパの例と同様に、ラムダ軽鎖可変ドメインも、完全長IgGに再編成する際に制限部位(例えばNhe1-Not1)を導入することによりクローン化され得る。より具体的には、ラムダ軽鎖のN末端に、クローン化をサポートするために追加のAla-Ser配列が導入され得る。好ましくは、この追加のAS配列は、その後、カノニカルN末端配列を生成するような更なる開発の間に除去される。よって、一実施形態において、本明細書に記載されるラムダ軽鎖含有抗体は、N末端にAS配列を含有しない。すなわち、配列番号75及び79は、最初のAS配列を含まない。この実施形態は、本明細書に含まれる、この配列を含有する他の配列(例えば配列番号87、91、115及び116)にも適用されることが理解されよう。一実施形態において、配列番号75は最初の6つの残基を含有しない。すなわち、ASSYEL配列が除去されている。
【0185】
別の例として、本明細書に記載される抗体では、ラムダ軽鎖可変ドメイン/定常ドメインの境界で、リジンからアラニンへの配列変化を導入してクローン化をサポートした。これにより、ラムダ定常ドメインが改変された。具体的には、これにより、定常ドメインが
【化5】
で(NotI制限部位から)始まることになる。好ましくは、この配列は、
【化6】
で始まるカノニカルラムダ軽鎖定常領域を生成するように、更なる開発中に改変され得る。よって、一実施形態において、本明細書に記載されるラムダ軽鎖含有抗体は、配列GQPKで始まる定常ドメインを含有する。したがって、一実施形態において、配列番号115または116の配列
【化7】
は、配列
【化8】
で置き換えられる。
【0186】
重鎖の改変
典型的に、ヒト可変重鎖配列は、塩基性グルタミン(Q)または酸性グルタミン酸(E)のいずれかで始まる。しかしながら、そのような配列は両方とも、その後、酸性アミノ酸残基であるピログルタミン酸(pE)に変換されることが知られている。QからpEへの変換は抗体の電荷を変化させるが、EからpEへの変換は抗体の電荷を変化させない。よって、経時的な電荷変化の変動を回避するための1つの選択肢は、開始重鎖配列の最初のQをEに改変することである。よって、一実施形態において、本明細書に記載される抗体の重鎖は、N末端にQからEへの改変を含有する。特に、配列番号62、64及び/または67~71の最初の残基は、QからEへ改変され得る。この実施形態は、本明細書に含まれる、この配列を含有する他の配列(例えば配列番号86、88、91~97及び111、112、115、117~120)にも適用されることが理解されよう。例えば、実施例13及び配列番号129、130を参照のこと。
【0187】
更に、IgG1定常ドメインのC末端はPGKで終わる。しかしながら、末端の塩基性リジン(K)は、次いで発現中に(例えばCHO細胞において)切断されることが多い。その結果、C末端リジン残基の様々な喪失により、抗体の電荷が変化する。したがって、1つの選択肢は、最初のリジンを除去して、PGで終わる均一かつ一貫した重鎖C末端配列をもたらすことである。よって、一実施形態において、本明細書に記載される抗体の重鎖は、そのC末端から末端Kが除去されている。特に、本発明の抗体は、末端リジン残基が除去されている配列番号111~122のいずれか1つを含み得る。例えば、配列番号141を参照のこと。
【0188】
任意のアロタイプの改変
抗体の発見中に、特定のヒトアロタイプが用いられ得る。場合により、抗体は、開発中に異なるヒトアロタイプに切り替えることができる。非限定的な例として、カッパ鎖には、3つのKm対立遺伝子を定義するKm1、Km1,2及びKm3と呼ばれる3つのヒトアロタイプがある(アロタイプ番号付けを使用)。Km1はバリン153(IMGT V45.1)及びロイシン191(IMGT L101)と相関し、Km1,2はアラニン153(IMGT A45.1)及びロイシン191(IMGT L101)と相関し、Km3はアラニン153(IMGT A45.1)及びバリン191(IMGT V101)と相関する。したがって、場合により、標準的なクローン化アプローチによって配列を1つのアロタイプから別のものに改変することができる。例えば、L191V(IMGT L101V)の変化により、Km1,2アロタイプがKm3アロタイプに変換される。このようなアロタイプの詳細については、Jefferis and Lefranc(2009)MAbs 1(4):332-8を参照のこと。同文献は参照により本明細書に組み込まれる。
【0189】
よって、一実施形態において、本明細書に記載される多特異性抗体は、同じ遺伝子の別のヒトアロタイプに由来するアミノ酸置換を含有する。更なる実施形態において、抗体は、c-ドメインをkm1,2からkm3アロタイプに変換するためのカッパ鎖のL191V(IMGT L101V)置換を含有する。例えば、実施例13及び配列番号129、130を参照のこと。
【0190】
TRDV1エピトープをターゲティングする抗体
本明細書では、γδTCRのVδ1鎖のエピトープに結合する(さらに、他の箇所に記述する第2のエピトープと結合する)抗体(またはその断片)が提供される。このような結合は、場合により、活性化などのγδTCR活性に影響を及ぼし得る。本発明の抗体は、好ましくはγδTCRのVδ1鎖に特異的であり、γδTCRのVδ2鎖またはγδTCRのVδ3鎖などの他の抗原のエピトープと結合しない。本発明の抗体は、少なくとも結合時にVδ1細胞に付与されるアゴニスト作用に関して、アゴニスト抗体とみなすことができる。
【0191】
一実施形態において、エピトープは、γδT細胞の活性化エピトープであり得る。「活性化」エピトープは、例えば、細胞の脱顆粒、TCR下方制御、細胞傷害性、増殖、動員、生存もしくは消耗に対する抵抗性の増加、細胞内シグナル伝達、サイトカインもしくは成長因子の分泌、表現型の変化、または遺伝子発現の変化などのTCR機能の刺激を含み得る。例えば、活性化エピトープの結合は、γδT細胞集団、好ましくはVδ1+T細胞集団の増大(すなわち増殖)を刺激し得る。したがって、これらの多特異性抗体を使用して、γδT細胞活性化を調節し、それによって免疫応答を調節することができる。したがって、一実施形態において、活性化エピトープの結合は、γδTCRを下方制御する。追加のまたは代替的な実施形態において、活性化エピトープの結合は、γδT細胞の脱顆粒を活性化する。更なる追加のまたは代替的な実施形態において、活性化エピトープの結合は、γδT細胞媒介性殺傷を促進する。
【0192】
一部の実施形態において、TRDV1の活性化エピトープは、抗体が結合すると受容体の下方制御をもたらし、場合によりVδ1細胞を活性化するものである。一部の実施形態において、受容体の前記下方制御は、関連するCD3分子の下方制御ももたらす。一部の実施形態において、活性化エピトープは、Vδ1細胞上の活性化マーカー、例えばCD107a、CD25、CD69及び/またはKi67の発現を上方制御するものである。一部の実施形態において、活性化エピトープは、Vδ1細胞上の活性化マーカー、例えばCD107及びCD25、ならびに場合によりCD69及び/またはKi67の発現を上方制御するものである。一部の実施形態において、1つまたは複数の活性化マーカー(CD107aなど)の上方制御は、がん細胞の存在下での上方制御であり得る。本発明の好ましい実施形態では、多特異性抗体は、TRDV1の活性化エピトープと、特にTRDV1結合ドメインを介して結合する。
【0193】
T細胞受容体は他のタンパク質と複合体を形成することが多いため、Vδ1抗体結合を介したT細胞受容体の下方制御は、T細胞受容体に関連する他のタンパク質の下方制御を引き起こし得る(すなわち、Vδ1抗体の結合は、T細胞受容体複合体の下方制御を引き起こす)。例えば、一部の実施形態では、TRDV1の活性化エピトープは、結合するとTCR/CD3受容体複合体を下方制御するものである。このように、本発明の抗体は、抗体が結合していないがT細胞受容体と複合体を形成している細胞表面タンパク質の間接的な下方制御を引き起こし得る。ガンマデルタ1鎖を発現するT細胞(すなわちVδ1細胞)が全T細胞集団のごく少数に相当することを考慮すると、本発明の抗体を使用して、CD3などのTCR複合体中のタンパク質をVδ1細胞のみで下方制御することにより、それらを選択的に(かつ間接的に)下方制御することができる。
【0194】
一部の実施形態において、T細胞受容体複合体の活性化エピトープは、活性化されるとT細胞受容体複合体を下方制御するが、前記TRDV1 TCR複合体に関連しないCD3分子は下方制御しないものである。
【0195】
このエピトープは、好ましくは、γδTCRのVδ1鎖の少なくとも1つの細胞外部分、可溶性部分、親水性部分、または外側部分から成る。
【0196】
特に、このエピトープは、γδTCRのVδ1鎖の超可変領域、特にVδ1鎖のCDR3に見出されるエピトープを含まない。好ましい実施形態において、このエピトープは、γδTCRのVδ1鎖の非可変領域内にある。このような結合は、高度に可変のTCRの配列(特にCDR3)に制限されることなく、Vδ1鎖のユニークな認識を可能にすることが理解されるであろう。抗原を認識する様々なγδTCR複合体は、このようなかたちで、Vδ1鎖の存在のみによって認識され得る。したがって、Vδ1鎖を含むγδTCRはいずれも、γδTCRの特異性に関係なく、本明細書で定義される抗体またはその断片を使用して認識され得ることが理解されよう。一実施形態において、エピトープは、配列番号1のアミノ酸領域1~24及び/または35~90内の1つまたは複数のアミノ酸残基、例えば、CDR1及び/またはCDR3配列の一部ではないVδ1鎖の一部を含む。一実施形態において、エピトープは、配列番号1のアミノ酸領域91~105(CDR3)内のアミノ酸残基を含まない。
【0197】
一部の実施形態において、エピトープは、TRDV-1 CDR2配列中のアミノ酸を含む。
【0198】
十分に特性評価されているαβT細胞と同様に、γδT細胞は、体細胞性に再構成された可変(V)遺伝子、多様性(D)遺伝子、結合(J)遺伝子、及び定常(C)遺伝子の独特のセットを利用するが、γδT細胞は、αβT細胞よりも少ないVセグメント、Dセグメント、及びJセグメントを含有する。一実施形態において、抗体(またはその断片)が結合するエピトープは、Vδ1鎖のJ領域(例えば、ヒトデルタ1鎖生殖系にコードされる4つのJ領域:配列番号152(J1*0)もしくは153(J2*0)もしくは154(J3*0)もしくは155(J4*0)のうちの1つ)またはVδ1鎖のC領域(例えばC末端膜近傍/膜貫通領域を含有する配列番号156(C1*0))に見出されるエピトープを含まない。一実施形態において、抗体(またはその断片)が結合するエピトープは、Vδ1鎖のN末端リーダー配列(例えば配列番号150)に見出されるエピトープを含まない。したがって、抗体または断片は、Vδ1鎖のV領域(例えば配列番号151)でのみ結合し得る。したがって、一実施形態において、エピトープは、γδTCRのV領域(例えば配列番号1のアミノ酸残基1~90)内のエピトープからなる。
【0199】
エピトープへの言及は、配列番号1として示される、Luoma et al.(2013)Immunity 39:1032-1042に記載の配列、ならびにRCSB Protein Data Bankエントリ:4MNH及び3OMZに由来するVδ1配列との関連でなされる。
AQKVTQAQSSVSMPVRKAVTLNCLYETSWWSYYIFWYKQLPSKEMIFLIRQGSDEQNAKSGRYSVNFKKAAKSVALTISALQLEDSAKYFCALGESLTRADKLIFGKGTRVTVEPNIQNPDPAVYQLRDSKSSDKSVCLFTDFDSQTNVSQSKDSDVYITDKTVLDMRSMDFKSNSAVAWSNKSDFACANAFNNSIIPEDTFFPSPESS(配列番号1)
【0200】
配列番号1は、V領域(可変ドメインとも称される)、D領域、J領域、及びTCR定常領域を含む可溶性TCRを表す。V領域はアミノ酸残基1~90を含み、D領域はアミノ酸残基91~104を含み、J領域はアミノ酸残基105~115を含み、定常領域(T細胞受容体アルファ由来)はアミノ酸残基116~209を含む。V領域内で、CDR1は配列番号1のアミノ酸残基25~34と定義され、CDR2は配列番号1のアミノ酸残基50~54と定義され、CDR3は配列番号1のアミノ酸残基93~104と定義される(Xu et al.,PNAS USA 108(6):2414-2419(2011))。
【0201】
したがって、本発明の一態様によれば、
(i)配列番号1の3~20、及び/または
(ii)配列番号1の37~77
のアミノ酸領域内の1つまたは複数のアミノ酸残基を含むγδT細胞受容体(TCR)の可変デルタ1(Vδ1)鎖のエピトープに結合する、単離された抗体またはその断片が提供される。
【0202】
更なる実施形態において、抗体またはその断片は、配列番号128のアミノ酸残基1~90のエピトープを含む多型V領域をさらに認識する。よって、配列番号1のアミノ酸1~90及び多型生殖系変異体配列(配列番号128のアミノ酸1~90)は、本明細書に記載されるエピトープを定義する際に同義とみなされ得る。本明細書で提示する研究は、本発明の抗体がこの生殖系配列の両方の変異体を認識できることを実証した。例として、本明細書で定義される抗体またはその断片が、配列番号1のアミノ酸領域1~24及び/または35~90内の1つまたは複数のアミノ酸残基を含むエピトープを認識すると記載される場合、これは、配列番号128の同じ領域、具体的には配列番号128のアミノ酸領域1~24及び/または35~90も指す。
【0203】
一実施形態において、抗体またはその断片は、配列番号1のアミノ酸領域1~90内の1つまたは複数のアミノ酸残基と、配列番号128の領域1~90で同等の位置にあるアミノ酸とを認識する。より具体的には、一実施形態において、本明細書で定義される抗体またはその断片は、ヒト生殖系エピトープを認識し、前記生殖系は、配列番号1の71位でアラニン(A)またはバリン(V)のいずれかをコードする。
【0204】
一実施形態において、エピトープは、記載された領域内における、1つまたは複数の、例えば2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個またはそれ以上のアミノ酸残基を含む。
【0205】
更なる実施形態において、エピトープは、配列番号1のアミノ酸領域3~20内の1つまたは複数の(例えば5個以上、例えば10個以上の)アミノ酸残基を含む。代替的な実施形態において、エピトープは、配列番号1のアミノ酸領域37~77(例えばアミノ酸領域50~54)内の1つまたは複数の(例えば5個以上、例えば10個以上の)アミノ酸残基を含む。なおも更なる実施形態において、エピトープは、配列番号1のアミノ酸領域3~20(例えば5~20または3~17)内の1つまたは複数の(例えば5個以上、例えば10個以上の)アミノ酸残基と、アミノ酸領域37~77(例えば62~77または62~69)内の1つまたは複数の(例えば5個以上、例えば10個以上の)アミノ酸残基とを含む。
【0206】
前記抗体(またはその断片)は、定義された範囲内のすべてのアミノ酸に結合する必要はないことが更に理解されよう。このようなエピトープは、線状エピトープと称され得る。例えば、配列番号1のアミノ酸領域5~20内のアミノ酸残基を含むエピトープに結合する抗体は、前記範囲内のアミノ酸残基のうちの1つまたは複数、例えば、場合により範囲内のアミノ酸(すなわちアミノ酸5、9、16及び20)を含む、範囲の両端のアミノ酸残基(すなわちアミノ酸5及び20)のみと結合し得る。
【0207】
一実施形態において、エピトープは、配列番号1のアミノ酸残基3、5、9、10、12、16、17、20、37、42、50、53、59、62、64、68、69、72または77のうちの少なくとも1つを含む。更なる実施形態において、エピトープは、配列番号1のアミノ酸残基3、5、9、10、12、16、17、20、37、42、50、53、59、62、64、68、69、72または77から選択される1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、または12個のアミノ酸を含む。
【0208】
一実施形態において、エピトープは、配列番号1(または上述のとおり配列番号128)の以下のアミノ酸領域内の1つまたは複数のアミノ酸残基を含む:
(i)3~17、
(ii)5~20、
(iii)37~53、
(iv)50~64、
(v)59~72、
(vi)59~77、
(vii)62~69、及び/または
(viii)62~77。
【0209】
更なる実施形態において、エピトープは、配列番号1のアミノ酸領域:5~20及び62~77、50~64、37~53及び59~72、59~77、または3~17及び62~69内の1つまたは複数のアミノ酸残基を含む。更なる実施形態において、エピトープは、配列番号1のアミノ酸領域:5~20及び62~77、50~64、37~53及び59~72、59~77、または3~17及び62~69内の1つまたは複数のアミノ酸残基からなる。
【0210】
更なる実施形態において、エピトープは、配列番号1のアミノ酸残基:3、5、9、10、12、16、17、62、64、68及び69を含むか、または好適には、配列番号1のアミノ酸残基:3、5、9、10、12、16、17、62、64、68及び69からなる。更なる実施形態において、エピトープは、配列番号1のアミノ酸残基:5、9、16、20、62、64、72及び77を含むか、または好適には、配列番号1のアミノ酸残基:5、9、16、20、62、64、72及び77からなる。なおも更なる実施形態において、エピトープは、配列番号1のアミノ酸残基:37、42、50、53、59、64、68、69、72、73及び77を含むか、または好適には、配列番号1のアミノ酸残基:37、42、50、53、59、64、68、69、72、73及び77からなる。更なる実施形態において、エピトープは、配列番号1のアミノ酸残基:50、53、59、62及び64を含むか、または好適には、配列番号1のアミノ酸残基:50、53、59、62及び64からなる。更なる実施形態において、エピトープは、配列番号1のアミノ酸残基:59、60、68及び72を含むか、または好適には、配列番号1のアミノ酸残基:59、60、68及び72からなる。
【0211】
一実施形態において、エピトープは、配列番号1のアミノ酸領域5~20及び/または62~77内の1つまたは複数のアミノ酸残基を含む。更なる実施形態において、エピトープは、配列番号1のアミノ酸領域5~20及び62~77内の1つまたは複数のアミノ酸残基からなる。代替的な更なる実施形態において、エピトープは、配列番号1のアミノ酸領域5~20または62~77内の1つまたは複数のアミノ酸残基を含む。このようなエピトープを有する抗体もしくはその断片は、1245_P01_E07の配列の一部もしくはすべてを有してもよく、またはこのような抗体もしくはその断片は、1245_P01_E07に由来してもよい。例えば、1245_P01_E07の1つもしくは複数のCDR配列または1245_P01_E07のVH配列及びVL配列の一方もしくは両方を有する抗体またはその断片は、このようなエピトープと結合し得る。
【0212】
一実施形態において、エピトープは、配列番号1のアミノ酸領域50~64内の1つまたは複数のアミノ酸残基を含む。更なる実施形態において、エピトープは、配列番号1のアミノ酸領域50~64内の1つまたは複数のアミノ酸残基からなる。このようなエピトープを有する抗体もしくはその断片は、1252_P01_C08の配列の一部もしくはすべてを有してもよく、またはこのような抗体もしくはその断片は、1252_P01_C08に由来してもよい。例えば、1252_P01_C08の1つもしくは複数のCDR配列または1252_P01_C08のVH配列及びVL配列の一方もしくは両方を有する抗体またはその断片は、このようなエピトープと結合し得る。
【0213】
一実施形態において、エピトープは、配列番号1のアミノ酸領域37~53及び/または59~77内の1つまたは複数のアミノ酸残基を含む。更なる実施形態において、エピトープは、配列番号1のアミノ酸領域37~53及び59~77内の1つまたは複数のアミノ酸残基からなる。代替的な更なる実施形態において、エピトープは、配列番号1のアミノ酸領域37~53または59~77内の1つまたは複数のアミノ酸残基を含む。このようなエピトープを有する抗体もしくはその断片は、1245_P02_G04の配列の一部もしくはすべてを有してもよく、またはこのような抗体もしくはその断片は、1245_P02_G04に由来してもよい。例えば、1245_P02_G04の1つもしくは複数のCDR配列または1245_P02_G04のVH配列及びVL配列の一方もしくは両方を有する抗体またはその断片は、このようなエピトープと結合し得る。
【0214】
一実施形態において、エピトープは、配列番号1のアミノ酸領域59~72内の1つまたは複数のアミノ酸残基を含む。更なる実施形態において、エピトープは、配列番号1のアミノ酸領域59~72内の1つまたは複数のアミノ酸残基からなる。このようなエピトープを有する抗体もしくはその断片は、1251_P02_C05の配列の一部もしくはすべてを有してもよく、またはこのような抗体もしくはその断片は、1251_P02_C05に由来してもよい。例えば、1251_P02_C05の1つもしくは複数のCDR配列または1251_P02_C05のVH配列及びVL配列の一方もしくは両方を有する抗体またはその断片は、このようなエピトープと結合し得る。
【0215】
一実施形態において、エピトープは、配列番号1のアミノ酸領域11~21内のアミノ酸残基を含まない。一実施形態において、エピトープは、配列番号1のアミノ酸領域21~28内のアミノ酸残基を含まない。一実施形態において、エピトープは、配列番号1のアミノ酸領域59及び60内のアミノ酸残基を含まない。一実施形態において、エピトープは、配列番号1のアミノ酸領域67~82内のアミノ酸残基を含まない。
【0216】
一実施形態において、エピトープは、TS-1またはTS8.2などの市販の抗Vδ1抗体が結合するエピトープと同じではない。WO2017197347に記載されているように、可溶性TCRに対するTS-1及びTS8.2の結合は、δ1鎖がVδ1 J1配列及びVδ1 J2配列を含んでいたときに検出されたが、Vδ1 J3鎖に対しては検出されず、TS-1及びTS8.2の結合にはデルタJ1及びデルタJ2領域内の重要な残基が関与することを示している。
【0217】
本明細書における「内(within)」への言及は、定義された範囲の両端を含む。例えば、「アミノ酸領域5~20内」は、残基5から残基20までを含むアミノ酸残基のすべてを指す。
【0218】
どのエピトープに抗体が結合するかを確定するための様々な技術が当技術分野では公知である。例示的な技法には、例えば、定型的なクロスブロッキングアッセイ、アラニンスキャニング突然変異分析、ペプチドブロット分析、ペプチド切断分析結晶学的実験、及びNMR分析が含まれる。更に、抗原のエピトープ切除、エピトープ抽出、及び化学修飾などの方法を用いることができる。抗体が相互作用するポリペプチド内のアミノ酸を同定するために使用できる別の方法は、質量分析によって検出される水素/重水素交換である(実施例9に記載のとおり)。一般論として、水素/重水素交換法は、目的のタンパク質を重水素で標識し、その後、重水素で標識したタンパク質に抗体を結合させることを含む。次に、タンパク質/抗体複合体は水に移動し、抗体複合体によって保護されているアミノ酸内の交換可能なプロトンは、界面の一部ではないアミノ酸内の交換可能なプロトンよりも遅い速度で重水素から水素への逆交換を受ける。その結果、タンパク質/抗体の界面の一部を形成するアミノ酸は、重水素を保持し得、そのため、界面に含まれていないアミノ酸と比較して比較的高い質量を示す。抗体の解離後、標的タンパク質をプロテアーゼ切断及び質量分析に供し、それにより、抗体が相互作用する特定のアミノ酸に対応する重水素標識残基を明らかにする。
【0219】
多特異性抗体及びその断片は、好適には、ヒトTRDV1(配列番号1及び配列番号128の多型変異体)とカニクイザルTRDV1(配列番号172)との両方に、TRDV1結合ドメインを介して特異的に結合する。
【0220】
第2の抗原のエピトープをターゲティングする抗体
本発明の抗体は多特異性抗体(好ましくは二重特異性抗体)であるため、TRDV1と特異的に結合することに加えて、第2の抗原と特異的に結合する。第2の抗原の同一性は、抗体が本明細書で記述される2つのカテゴリ:T細胞エンゲージャー(TCE)抗体またはデュアル免疫調節薬(DI)抗体のうちの1つであるかどうかを決定する。
【0221】
TCEに関する実施形態では、第2の抗原は、がん抗原またはがん関連抗原である。このような実施形態では、抗体は、第1の標的エピトープ及び第2の標的エピトープと特異的に結合し、第1の標的エピトープは、γδT細胞受容体(TCR)の可変デルタ1(Vδ1)鎖のエピトープであり、第2の標的エピトープは、がん抗原またはがん関連抗原のエピトープである。このカテゴリで考えられる特定の第2の抗原の同一性については、他の箇所に記述する。しかしながら、第2の抗原は、がん細胞によって発現され、前記がん細胞のVδ1-T細胞媒介性殺傷(例えば直接的な殺傷、または腫瘍細胞に結合した際の他の免疫細胞へのシグナル伝達の免疫ライセンシング効果を介した殺傷)を促進する任意の抗原であり得る。このようなVδ1細胞によるがん細胞の殺傷は、Vδ1-T細胞及びがん細胞の共局在化、ならびに、多特異性抗体の結合、特にVδ1-T細胞の活性化エピトープに対する結合を介した、Vδ1-T細胞の活性化によって促進される。本発明は、TCE型抗体のための完全に新規のプラットフォームを例示する。
【0222】
一部の実施形態において、第2の抗原は、卵巣癌の抗原ではない。一部の実施形態において、第2の抗原は、Mov19+卵巣癌の抗原ではない。一部の実施形態において、多特異性(好適には二重特異性)抗体は、Mov19+卵巣癌細胞に特異的に結合しない。一部の実施形態において、多特異性(好適には二重特異性)抗体は、アルファ葉酸受容体(アルファ-FR)に特異的に結合しない。アルファ-FRは、葉酸受容体1、FOLR1、葉酸受容体アルファ、またはFRαとしても知られている。これはFOLR1遺伝子(UniProtアクセッション番号P15328)によってコードされ、配列番号176の配列を有する。一部の実施形態において、多特異性(好適には二重特異性)抗体は、scFv MOV19が結合するエピトープに特異的に結合しない。
【0223】
一部の実施形態において、抗体またはその抗原結合性断片は二重特異性抗体であり、第2の抗原はアルファ葉酸受容体ではない。
【0224】
一部の実施形態において、多特異性抗体は、組換え宿主細胞から発現される組換え核酸の単数または複数のオープンリーディングフレームによってコードされるヒト組換え抗体である。一部の実施形態において、多特異性抗体は、B細胞融合ハイブリドーマ技術から導出された齧歯類抗体または他の非ヒト抗体ではない。一部の実施形態において、多特異性抗体は、齧歯類由来のハイブリドーマに見出される配列など、非ヒト動物種でのみ見出される非ヒトIgG定常ドメイン配列を含まない。
【0225】
DIに関する実施形態では、第2の抗原は免疫調節性抗原である。このような実施形態では、抗体は、第1の標的エピトープ及び第2の標的エピトープと特異的に結合し、第1の標的エピトープは、γδT細胞受容体(TCR)の可変デルタ1(Vδ1)鎖のエピトープであり、第2の標的エピトープは、免疫調節性抗原である。「免疫調節性」抗原は、抗体媒介性免疫及び/または細胞媒介性免疫を調節する(例えば促進する)抗原である。免疫調節性抗原は、T細胞の細胞表面に存在するものである。第2の抗原が免疫調節性抗原である本発明の実施形態では、第2の抗原はT細胞受容体でもT細胞受容体複合体の成分でもない。例えば、第2のエピトープが免疫調節性抗原のエピトープである本発明の実施形態では、第2のエピトープはTRDV1のエピトープではない。第2のエピトープが免疫調節性抗原のエピトープである本発明の好ましい実施形態において、第2のエピトープは、T細胞受容体複合体のエピトープではない。例えば、一部の実施形態において、第2のエピトープはCD3のエピトープではない。よって、これらの実施形態の抗体は、TRDV1を介してT細胞に特異的に結合し、さらに、T細胞受容体複合体のエピトープではない第2の異なるエピトープを介してT細胞に結合し得るので、「デュアル免疫調節薬」である。第2の抗原の例としては、例えば、免疫チェックポイント阻害薬PD-L1、PD-1、OX40、CTLA-4、LAG-3、TIM-3、TIGIT及びVISTAが挙げられる。例えば、固形腫瘍は、骨髄系由来サプレッサー細胞(MDSC)、腫瘍関連マクロファージ(TAM)、及び制御性T細胞(Treg)などの免疫抑制細胞を動員し、これらはすべて、細胞傷害性T細胞の活性を阻害する。したがって、固形腫瘍においてDIを最も効果的に使用するには、免疫抑制性TMEを克服し、免疫除外型(immune excluded)または免疫砂漠型(immune desert)の「コールドな」腫瘍を炎症性の「ホットな」ものにすることを助けるために、多特異性部位を使用して複数のT細胞調節経路を組み合わせてターゲティングすることがおそらく必要である。しかしながら、本発明は、DI型抗体のための完全に新規のプラットフォームを提示するため、特定の第2の免疫調節性抗原に限定されない。
【0226】
好ましい実施形態では、本発明の多特異性抗体(好適には二重特異性抗体)は、CD3と特異的に結合しない(または直接相互作用しない)。好ましい実施形態では、第2の抗原はCD3ではない。
【0227】
抗体結合
本発明の多特異性抗体またはその断片は、表面プラズモン共鳴によって測定した場合に1.5×10-7M(すなわち150nM)未満の結合親和性(KD)でγδTCRのVδ1鎖に結合し得る。好ましい実施形態において、KDは1.5×10-7M(すなわち150nM)未満である。更なる実施形態において、KDは、1.3×10-7M(すなわち130nM)以下、例えば1.0×10-7M(すなわち100nM)以下である。なおも更なる実施形態において、KDは、5.0×10-8M(すなわち50nM)未満、例えば4.0×10-8M(すなわち40nM)未満、3.0×10-8M(すなわち30nM)未満、または2.0×10-8M(すなわち20nM)未満である。例えば、一部の態様によれば、表面プラズモン共鳴によって測定した場合に1.5×10-7M(すなわち150nM)未満の結合親和性(KD)でγδTCRのVδ1鎖に結合するヒト多特異性抗体が提供される。
【0228】
本発明の一態様において、表面プラズモン共鳴によって測定した場合に4.0×10-8M(すなわち40nM)未満、3.0×10-8M(すなわち30nM)未満、または2.0×10-8M(すなわち20nM)未満の結合親和性(KD)でγδTCRのVδ1鎖に結合する多特異性抗体またはその断片が提供される。
【0229】
本発明の多特異性抗体またはその断片は、表面プラズモン共鳴によって測定した場合に1.5×10-7M(すなわち150nM)未満の結合親和性(KD)で第2の抗原(または第2の抗原のエピトープ)に結合し得る。好ましい実施形態において、KDは1.5×10-7M(すなわち150nM)未満である。更なる実施形態において、KDは、1.3×10-7M(すなわち130nM)以下、例えば1.0×10-7M(すなわち100nM)以下である。なおも更なる実施形態において、KDは、5.0×10-8M(すなわち50nM)未満、例えば4.0×10-8M(すなわち40nM)未満、3.0×10-8M(すなわち30nM)未満、または2.0×10-8M(すなわち20nM)未満である。例えば、一部の態様によれば、表面プラズモン共鳴によって測定した場合に1.5×10-7M(すなわち150nM)未満の結合親和性(KD)で第2の抗原(または第2の抗原のエピトープ)に結合するヒト多特異性抗体が提供される。
【0230】
本発明の一態様において、表面プラズモン共鳴によって測定した場合に4.0×10-8M(すなわち40nM)未満、3.0×10-8M(すなわち30nM)未満、または2.0×10-8M(すなわち20nM)未満の結合親和性(KD)で第2の抗原(または第2の抗原のエピトープ)に結合する多特異性抗体またはその断片が提供される。
【0231】
一実施形態において、多特異性抗体またはその断片の結合親和性は、抗体またはその断片を直接的または間接的に(例えば抗ヒトIgG Fcによる捕捉によって)センサ(例えばアミン高用量チップまたは同等物)の表面上にコーティングし、抗体またはその断片が結合した標的(例えばγδTCRのVδ1鎖)をチップ上に流して結合を検出することによって確定される。好適には、MASS-2機器(Sierra SPR-32とも称され得る)を30μl/分でPBS+0.02%Tween 20のランニングバッファー中25℃で使用する。
【0232】
本明細書には、抗体機能を定義するために使用され得る他のアッセイも記載する。例えば、本明細書に記載される抗体またはその断片は、γδTCRの会合により、例えば抗体結合時のγδTCRの下方制御を測定することで評価され得る。抗体またはその断片(場合により細胞の表面に提示される)の適用後のγδTCRの表面発現を、例えばフローサイトメトリーによって測定することができる。本明細書に記載される抗体またはその断片は、γδT細胞の脱顆粒を測定することで評価することもできる。例えば、抗体またはその断片(場合により細胞の表面に提示される)をγδT細胞に適用した後、細胞の脱顆粒のマーカーであるCD107aの発現を、例えばフローサイトメトリーによって測定することができる。本明細書に記載される抗体またはその断片は、γδT細胞殺傷活性を測定することによって(抗体がγδT細胞の殺傷活性に影響を与えるかどうかを試験するために)評価することもできる。例えば、標的細胞を、抗体またはその断片(場合により細胞の表面に提示される)の存在下でγδT細胞と共にインキュベートしてもよい。インキュベーション後、培養物を細胞生死判別色素で染色して、生きている標的細胞と死んでいる標的細胞を区別することができる。次いで、死細胞の割合を、例えばフローサイトメトリーによって測定することができる。
【0233】
多特異性抗体
本発明の抗体は二重特異性または多特異性である。多特異性抗体は、概して、1つの標的ポリペプチドの異なるエピトープに特異的である場合もあり、または複数の標的ポリペプチドに特異的である場合もある。しかしながら本発明では、抗体は概して、2つ(またはそれ以上)の異なる抗原と特異的に結合する。
【0234】
様々な実施形態において、第2の標的エピトープは、がん抗原またはがん関連抗原(例えば腫瘍関連抗原)のエピトープである。様々な実施形態において、がん抗原またはがん関連抗原は、AFP、AKAP-4、ALK、アルファフェトプロテイン、アンドロゲン受容体、B7H3、BAGE、BCA225、BCAA、Bcr-abl、ベータカテニン、ベータHCG、ベータヒト絨毛性ゴナドトロピン、BORIS、BTAA、CA 125、CA 15-3、CA 195、CA 19-9、CA 242、CA 27.29、CA 72-4、CA-50、CAM 17.1、CAM43、カルボニックアンヒドラーゼIX、癌胎児抗原、CD22、CD33/IL3Ra、CD68\P1、CDK4、CEA、コンドロイチン硫酸プロテオグリカン4(CSPG4)、c-Met、CO-029、CSPG4、サイクリンB1、シクロフィリンC関連タンパク質、CYP1B1、E2A-PRL、EGFR、EGFRvIII、ELF2M、EpCAM、EphA2、エフリンB2、エプスタイン・バーウイルス抗原EBVA、ERG(TMPRSS2ETS融合遺伝子)、ETV6-AML、FAP、FGF-5、Fos関連抗原1、フコシルGM1、G250、Ga733\EpCAM、GAGE-1、GAGE-2、GD2、GD3、神経膠腫関連抗原、GloboH、糖脂質F77、GM3、GP 100、GP 100(Pmel 17)、H4-RET、HER-2/neu、HER-2/Neu/ErbB-2、高分子量黒色腫関連抗原(HMW-MAA)、HPV E6、HPV E7、hTERT、HTgp-175、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素、イディオタイプ、IGF-I受容体、IGF-II、IGH-IGK、インスリン成長因子(IGF)-I、腸カルボキシルエステラーゼ、K-ras、LAGE-1a、LCK、レクチン反応性AFP、レグマイン、LMP2、M344、MA-50、Mac-2結合タンパク質、MAD-CT-1、MAD-CT-2、MAGE、MAGE A1、MAGE A3、MAGE-1、MAGE-3、MAGE-4、MAGE-5、MAGE-6、MART-1、MART-1/MelanA、M-CSF、黒色腫関連コンドロイチン硫酸プロテオグリカン(MCSP)、メソテリン、MG7-Ag、ML-IAP、MN-CA IX、MOV18、MUC1、Mum-1、hsp70-2、MYCN、MYL-RAR、NA17、NB/70K、ニューロングリア抗原2(NG2)、好中球エラスターゼ、nm-23H1、NuMa、NY-BR-1、NY-CO-1、NY-ESO、NY-ESO-1、NY-ESO-1、OY-TES1、p15、p16、p180erbB3、p185erbB2、p53、p53突然変異体、Page4、PAX3、PAX5、PDGFRベータ、PLAC1、ポリシアル酸、前立腺癌腫瘍抗原-1(PCTA-1)、前立腺特異抗原、前立腺酸性ホスファターゼ(PAP)、プロテイナーゼ3(PR1)、PSA、PSCA、PSMA、RAGE-1、Ras、Ras-突然変異体、RCAS1、RGS5、RhoC、ROR1、RU1、RU2(AS)、SART3、SDCCAG16、sLe(a)、精子タンパク質17、SSX2、STn、サバイビン、TA-90、TAAL6、TAG-72、テロメラーゼ、チログロブリン、Tie 2、TIGIT、TLP、Tn、TPS、TRP-1、TRP-2、TRP-2、TSP-180、チロシナーゼ、VEGF、VEGFR2、VISTA、WT1、XAGE 1、43-9F、5T4、及び791Tgp72から選択されるものである。
【0235】
一部の実施形態において、第2の標的エピトープは、ErbBサブファミリーのものである。Erb-B1(EGFR)、Erb-B2(HER2)は、受容体チロシンキナーゼ(RTK)のスーパーファミリーのサブクラスIのメンバーである。一部の実施形態において、第2の標的エピトープはRTKである。RTKは、細胞外リガンド結合ドメイン及び単一膜貫通ヘリックスから成る同様のタンパク質構造を共有する。これらは主に、それらの細胞内チロシンキナーゼドメイン(TKD)及びカルボキシル(C)末端尾部の性質により、別々のサブクラスに更に細分される。RTKの細胞外ドメイン領域は、免疫グロブリン(Ig)様ドメインまたは上皮成長因子(EGF)様ドメインを含む種々の保存されたエレメントを示す。一部の実施形態において、第2のエピトープは、受容体チロシンキナーゼのエピトープである。RTKファミリーの例としては、VEGFR2、EGFR、c-MET、IGF-I受容体、PDGFRベータ、CD115、CD117、CD140A、CD140B、CD167a、CD167b、CD172g、CD220、CD246、CD303 CD331、CD332、CD333及びCD340が挙げられる。
【0236】
例えば、一部の実施形態では、第2の標的エピトープはHER2(ヒト上皮成長因子受容体2)である。HER2(ErbB-2またはCD340としても知られている)は、がん関連抗原であり、ErbBサブファミリーの受容体チロシンキナーゼの一例である。HER2の発現は健康な組織では低く、Her2+がんでは正常組織と比較して最大40~100倍の発現増加がある。Her2の過剰発現は、多くの乳癌、胃癌、食道癌、卵巣癌、子宮体癌、NSCLC、及び大腸癌と関連している。多くのがんにおいて、HER2は他のErbB受容体と二量体化し、様々な下流シグナル伝達経路の活性化をもたらし、その結果、コントロールされない増殖及びアポトーシス抵抗性につながる。HER2の過剰発現は生存率の低下と相関するため、予後を向上させる標的であり、腫瘍マーカーでもある。HER2のエピトープに特異的に結合するモノクローナル抗体は、当技術分野において周知である。例えば、トラスツズマブは、HER2のエピトープに特異的に結合するモノクローナル抗体である。
【0237】
一部の実施形態において、第2の標的エピトープはEGFRである。EGFR(上皮成長因子受容体)は、がん関連抗原であり、ErbBサブファミリーの受容体チロシンキナーゼの一例である。EGFRは複数の臓器で発現し、上皮細胞及び上皮由来の腫瘍の挙動を司るシグナル伝達の開始において重要な役割を果たす。EGFR媒介性シグナル伝達は、多様な細胞経路を制御することにより、細胞の増殖、移動、生存、及び転移をコントロールすることにも関与している。他の受容体チロシンキナーゼと同様に、EGFR活性に影響を与えるまたはEGFR上方制御につながる突然変異は、多くのがんに関連している。実際、EGFRの遺伝子変異は固形腫瘍の最大30%で観察され、典型的に予後不良と関連している。細胞外ドメインへのEGFの結合を阻害すること、または細胞内チロシンキナーゼ活性を阻害することによってEGFRシグナル伝達を破壊すると、EGFR発現腫瘍の増殖を制限することができる。したがって、EGFR阻害薬は抗がん剤になり得る。実際、ある特定の腫瘍細胞はEGFRシグナル伝達に依存しており、したがって「癌遺伝子中毒」を有するため、この受容体は療法の標的として魅力的である。EGFRのエピトープに特異的に結合するモノクローナル抗体は、当技術分野において周知である。例えば、セツキシマブは、EGFRのエピトープに特異的に結合するモノクローナル抗体である。
【0238】
一部の実施形態において、第2の標的エピトープは、Bリンパ球抗原のエピトープである。B細胞で特に発現する抗原の例としては、CD1d、CD5、CD10、CD11b、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD24、CD32A、CD32B CD37、CD39、CD40、CD45、CD52、CD72、CD79a、CD79b、CD138、CD166、CD179A、CD179B、CD180、CD185、CD150、CD213a1、CD213a2、CD217、CD244、CD255、CD229、CD232、CD267、CD268、CD269、CD274、CD277、CD279、CD290、CD300A、CD300C、CD305、CD307a、CD307b、CD307c、CD307d、CD307e、CD316、CD319、CD327、CD352、及びCD361が挙げられる。例えば、一部の実施形態において、第2の標的エピトープはCD19である。CD19(細胞膜分化抗原19)は、がん関連抗原である。CD19は、免疫グロブリンスーパーファミリーのI型膜貫通糖タンパク質の一例でもある。一部の実施形態において、第2の標的は、免疫グロブリンスーパーファミリー(IgSF)のメンバーに存在するエピトープである。このファミリーの例としては、CD2、CD3、CD4、CD7、CD8、CD19、CD79A、CD79B、CD28、CD48、CD58、CD80、CD86、CD90、CD96、CD147、CD150、CD155、CD229、CD244、CD273、CD274、CD276が挙げられる。CD19はB細胞においてその発生過程で広く発現し、B細胞が成熟するにつれてCD19の表面密度が増加する。CD19は、細胞質からのシグナル伝達タンパク質の動員に関与している。CD19は、B細胞受容体シグナル伝達経路にも関与しており、B細胞受容体の機能に不可欠である。B細胞で発現するため、白血病及び腫瘍性リンパ球に対する有用な標的となるだけでなく、B細胞から発生するがんの診断バイオマーカーにもなる。CD19突然変異は抗体産生の低減及び免疫不全につながる可能性があり、したがってCD19は、自己免疫疾患の処置の標的にもなり得る。CD19のエピトープに特異的に結合するモノクローナル抗体は、当技術分野において周知である。例えば、ブリナツモマブは、CD19のエピトープに特異的に結合するモノクローナル抗体である。
【0239】
一部の実施形態において、第2の標的エピトープは、腫瘍間質抗原に存在する。腫瘍間質抗原の例としては、FAPアルファ、CD29、CD44、CD73、CD105及びCD166が挙げられる。例えば、一部の実施形態において、第2の標的エピトープはFAPα(線維芽細胞活性化タンパク質α)である。FAPαは、セプラーゼまたはプロリルエンドペプチダーゼFAPとしても知られるがん関連抗原であり、様々な上皮癌の間質で選択的に発現される。FAPαは、ジペプチジルペプチダーゼファミリーの細胞表面セリンプロテアーゼの一例である。FAPαは、腫瘍微小環境で重要な役割を果たす、がん関連線維芽細胞(CAF)によって発現される。CAFで選択的に発現される他の分子には、CD10、CD90、CD140A、及びCD140Bが含まれる。一部の実施形態において、第2のエピトープは、CAFで選択的に発現される分子に存在するエピトープである。上皮癌(乳癌、CRC皮膚癌、及び膵癌)の90%以上が、周囲の間質のCAFの表面にFAPαを発現することが分かっている。CAFは、T細胞上のCXCR4に結合する免疫抑制性のケモカインCXCL12を分泌する。FAPαは、侵襲性黒色腫細胞株で発現することが分かっており、乳癌の転帰及び生存率が不良な患者で著しく増加する。FAPαはコラゲナーゼ及びジペプチダーゼの両方の活性を有し、腫瘍の増殖、移動、浸潤、転移、及びECMの分解を促進する。正常で健康な成体組織では、組織リモデリングまたは創傷治癒の領域の外で検出可能なFAPα発現がなく、したがって、FAPαの発現がほぼ腫瘍間質のみに限られ、がん進行の様々な態様でFAPαが直接的役割を果たすため、FAPαは有望な抗がん標的である。FAPαのエピトープに特異的に結合するモノクローナル抗体は、当技術分野において周知である。例えば、シブロツズマブは、FAPαのエピトープに特異的に結合するモノクローナル抗体である。
【0240】
一部の実施形態において、第2の標的エピトープは、細胞表面糖タンパク質に存在する。タンパク質グリコシル化は、重要かつ一般的な翻訳後修飾である。ヒトタンパク質の50%超が、タンパク質の機能性を調節するためにグリコシル化されると考えられている。異常なグリコシル化は、炎症性皮膚疾患、真性糖尿病、循環器障害、関節リウマチ、アルツハイマー病及びプリオン病、ならびにがんなどの幾つかの疾患と相関している。細胞表面糖タンパク質の例としては、CD1a、CD1b、CD1c、CD1d、CD1e、CD3d、CD3e、CD3g、CD8a、CD8b、CD11a、CD21、CD36、CD42a、CD42b、CD42c、CD42d、CD43、CD66a、CD66f、CD177、CD235a、CD235b、CD236、CD238、CD243、CD227及びCD301が挙げられる。例えば、一部の実施形態において、第2の標的エピトープはメソテリン(MSLN)である。MSLNはがん関連抗原であり、細胞表面糖タンパク質の一例である。MSLNは、健康細胞での発現は限られるが(胸膜、腹膜、及び心膜を覆う中皮細胞)、いくつかのがん(悪性中皮腫及び膵臓、胆管細胞癌、卵巣腺癌及び肺腺癌、悪性中皮腫、膵癌、卵巣癌、子宮体癌、胆道癌、胃癌、ならびに小児急性骨髄性白血病)でも発現する。MSLNは腫瘍分化抗原の一例である。MSLNの生理学的機能は不明だが、MSLNはMSLN+腫瘍に療法を限局させるための有用な標的であり、または腫瘍マーカーとして利用することもできる。MSLNのエピトープに特異的に結合するモノクローナル抗体は、当技術分野において周知である。例えば、アネツマブは、MSLNのエピトープに特異的に結合するモノクローナル抗体である。
【0241】
様々な実施形態において、第2の標的エピトープは、免疫調節薬抗原のエピトープである。免疫調節薬抗原は、免疫系を調節する(活性化または抑制する)抗原である。一部の実施形態において、免疫調節薬抗原は、細胞表面タンパク質(すなわち、細胞の表面に発現する抗原、特にリンパ球、好中球、単球またはマクロファージなどの免疫細胞の表面に発現する抗原)である。免疫調節薬抗原は、Vδ1+T細胞で発現されることもあれば、異なる細胞、例えばCD4+細胞、CD8+細胞、または異なる免疫細胞によって発現されることもある。免疫調節性抗原は、B7-1(CD80)、B7-2(CD86)、B7-DC(CD273)、B7-H1(CD274)、B7-H2(CD275)、B7-H3(CD276)、B7-H4(VTCN1)、B7-H5(VISTA)、BTLA(CD272)、4-1BB(CD137)、CD137L、CD24、CD27、CD28、CD38、CD40、CD40L(CD154)、CD54、CD59、CD70、CTLA4(CD152)、CXCL9、GITR(CD357)、HVEM(CD270)、ICAM-1(CD54)、ICOS(CD278)、LAG-3(CD223)、OX40(CD134)、OX40L(CD252)、PD-1(CD279)、PD-L1(CD274)、TIGIT、CD314、CD334、CD335、CD337、及びTIM-3(CD366)からなる群から選択され得る。
【0242】
一部の実施形態において、第2の標的エピトープは、刺激性免疫チェックポイント分子のエピトープである。例えば、一部の実施形態において、第2の標的エピトープはOX40(CD134)である。OX40は免疫調節薬抗原であり、TNFRスーパーファミリー(TNFRSF)のメンバーの一例である。一部の実施形態において、第2の標的エピトープは、TNFRSF分子に存在するエピトープである。これらのタンパク質は、細胞外システインリッチドメインを介して腫瘍壊死因子(TNF)と結合する能力を特徴とするサイトカイン受容体のスーパーファミリーである。例としては、CD18、CD27、CD30、CD40、CD95、CD120a、CD120b、CD134、CD137、CD265、CD268、CD269、CD270、CD271、CD357及びCD358が挙げられる。そのような例の1つであるOX40(CD134)は、CD4+及びCD8+T細胞に発現する後期共刺激性免疫チェックポイント受容体である。OX40は、CD4+T細胞でより高度に発現され、OX40の発現はT細胞の完全な活性化に依存するため、ナイーブT細胞では構成的に発現されない。活性化されると(例えばOX40Lによって)、OX40は、CD4+/CD8+T細胞の活性化、エフェクター及びメモリーT細胞の生存及び増大を促進し、また、Treg活性を抑制する。これは、腫瘍による免疫回避を抑制する。OX40は刺激性標的であるため、OX40をターゲティングする療法は、OX40発現免疫細胞を活性化して、腫瘍に対する免疫応答(例えば、CD48+T細胞応答)を刺激する。OX40のエピトープに特異的に結合するモノクローナル抗体は、当技術分野において周知である。例えば、ポガリズマブは、OX40のエピトープに特異的に結合するモノクローナル抗体である。
【0243】
一部の実施形態において、第2の標的エピトープは、TNFスーパーファミリーメンバーに存在するエピトープである。例えば、一部の実施形態において、第2の標的エピトープは4-1BB(CD137)のエピトープである。4-1BBは、免疫調節薬抗原であり、TNFスーパーファミリーのメンバーの一例でもある。これは、CD70、CD137、CD153、CD154、CD252、CD253、CD254、CD256、CD257、及びCD258を含むTNF相同性ドメインを含有するII型膜貫通タンパク質のタンパク質スーパーファミリーである。4-1BB(CD137)は、T細胞、ならびにNK細胞、樹状細胞(DC)、単球、好中球及びB細胞で発現される誘導性の共刺激性免疫チェックポイント受容体である。4-1BBは、刺激性抗原であり、活性化CD8+T細胞で特に発現される。in vitroの4-1BBは、CD4+T細胞、CD8+T細胞、マクロファージ及びDCの増大、ならびにサイトカイン産生を刺激する。in vivoの4-1BBは、CD8+T細胞の活性化に偏っており、4-1BBの架橋がT細胞の増殖、IL-2の分泌、生存、及び細胞溶解活性を増強することが示されているため、強力な抗腫瘍活性を示す。4-1BBは刺激性標的であるため、4-1BBをターゲティングする療法は、4-1BB発現免疫細胞を活性化して、腫瘍に対する免疫応答(例えば細胞溶解性CD8+T細胞応答)を刺激する。4-1BBのエピトープに特異的に結合するモノクローナル抗体は、当技術分野において周知である。例えば、ウトミルマブは、4-1BBのエピトープに特異的に結合するモノクローナル抗体である。
【0244】
一部の実施形態において、第2の標的エピトープは、免疫チェックポイント阻害薬分子である。例えば、一部の実施形態において、第2の標的エピトープはTIGIT(Ig及びITIMドメインを有するT細胞免疫受容体)である。TIGITは免疫調節薬抗原であり、γδT細胞を含むT細胞、及びNK細胞に発現する免疫チェックポイント阻害薬の一例である。TIGITは、免疫恒常性に関与し、そのリガンド(PVR/CD155)に結合することにより自己免疫を防止して、T細胞を抑制する。TIGITは、腫瘍浸潤リンパ球で過剰発現する。TIGITの治療的遮断は、T細胞増殖、サイトカイン産生、及び脱顆粒を増加させるため望ましい。TIGITのエピトープに特異的に結合するモノクローナル抗体は、当技術分野において周知である。例えば、チラゴルマブは、TIGITのエピトープに特異的に結合するモノクローナル抗体である。
【0245】
一部の実施形態において、第2の標的エピトープは、免疫チェックポイント阻害薬分子である。例えば、一部の実施形態において、第2の標的エピトープはPD-1(プログラム細胞死タンパク質1)である。PD-1は免疫調節薬抗原であり、免疫グロブリンスーパーファミリーの細胞表面受容体メンバーの一例である。PD-1は、活性化CD4+/CD8+T細胞、ならびにγδT細胞、B細胞及びマクロファージなどの他のタイプの免疫細胞で発現される免疫チェックポイント阻害薬の一例である。PD-1がそのリガンドに結合すると、T細胞の活性化が阻害される。通常の状況下では、これは免疫恒常性に関与し、Tregのアポトーシスを減少させ抗原特異的T細胞のアポトーシスを増加させることにより、自己免疫から保護する。がんの状況では、これは細胞溶解性CD8+T細胞を不活性化することにより、腫瘍細胞の免疫回避をもたらす。したがって、PD-1の遮断は有望な治療標的である。PD-1のエピトープに特異的に結合するモノクローナル抗体は、当技術分野において周知である。例えば、ペムブロリズマブは、PD-1のエピトープに特異的に結合するモノクローナル抗体である。
【0246】
一部の実施形態において、第2の標的エピトープは、刺激性免疫チェックポイント分子である。刺激性免疫チェックポイント分子には、例えば、OX40、OX40L、4-1BB(CD137)、CD137L、CD27、CD70、CD28、GITR、ICOS、CD40及びCD40Lが含まれる。一部の実施形態において、第2の標的エピトープは、OX40、OX40L、4-1BB(CD137)、CD137L、CD27、CD70、CD28、GITR、ICOS、CD40及びCD40Lから選択される1つまたは複数である。一部の実施形態において、第2の標的エピトープは、OX40及び4-1BBから選択される1つまたは複数である。
【0247】
一部の実施形態において、第2の標的エピトープは、免疫チェックポイント阻害薬分子である。免疫チェックポイント阻害薬分子には、例えば、TIGIT、CD155、PD-1、PD-L1、CTLA-4、B7-H3、B7-H4、BTLA、LAG-3、VISTA及びTIM-3が含まれる。一部の実施形態において、第2の標的エピトープは、TIGIT、CD155、PD-1、PD-L1、CTLA-4、B7-H3、B7-H4、BTLA、LAG-3、VISTA及びTIM-3から選択される1つまたは複数である。一部の実施形態において、第2の標的エピトープは、TIGIT及びPD-1から選択される1つまたは複数である。
【0248】
本明細書において、細胞「上」にある抗原への言及は、細胞表面膜上で発現されるか、またはそのような細胞の細胞表面膜(その細胞外側)に関連する抗原を指す。
【0249】
様々な実施形態において、第2の標的エピトープは、細胞膜分化CD抗原のエピトープである。細胞膜分化抗原(CD)の命名法は、細胞表面分子を同定して命名するための統一体系である。典型的に、細胞表面タンパク質には、前記細胞表面タンパク質に対する少なくとも2つのモノクローナル抗体が産生されるまでCD番号が割り当てられない。したがって、この体系は、CD番号が割り当てられたすべての細胞表面タンパク質が特定のモノクローナル抗体またはその断片によって認識され結合されやすいことを保証する。様々な実施形態において、CD抗原は、CD1a、CD1b、CD1c、CD1d、CD1e、CD2、CD3、CD3d、CD3e、CD3g、CD4、CD5、CD6、CD7、CD8、CD8a、CD8b、CD9、CD10、CD11a、CD11b、CD11c、CD11d、CD13、CD14、CD15、CD16、CD16a、CD16b、CD17、CD18、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD24、CD25、CD26、CD27、CD28、CD29、CD30、CD31、CD32A、CD32B、CD33、CD34、CD35、CD36、CD37、CD38、CD39、CD40、CD41、CD42、CD42a、CD42b、CD42c、CD42d、CD43、CD44、CD45、CD46、CD47、CD48、CD49a、CD49b、CD49c、CD49d、CD49e、CD49f、CD50、CD51、CD52、CD53、CD54、CD55、CD56、CD57、CD58、CD59、CD60a、CD60b、CD60c、CD61、CD62E、CD62L、CD62P、CD63、CD64a、CD65、CD65s、CD66a、CD66b、CD66c、CD66d、CD66e、CD66f、CD68、CD69、CD70、CD71、CD72、CD73、CD74、CD75、CD75s、CD77、CD79A、CD79B、CD80、CD81、CD82、CD83、CD84、CD85A、CD85B、CD85C、CD85D、CD85F、CD85G、CD85H、CD85I、CD85J、CD85K、CD85M、CD86、CD87、CD88、CD89、CD90、CD91、CD92、CD93、CD94、CD95、CD96、CD97、CD98、CD99、CD100、CD101、CD102、CD103、CD104、CD105、CD106、CD107、CD107a、CD107b、CD108、CD109、CD110、CD111、CD112、CD113、CD114、CD115、CD116、CD117、CD118、CD119、CD120、CD120a、CD120b、CD121a、CD121b、CD122、CD123、CD124、CD125、CD126、CD127、CD129、CD130、CD131、CD132、CD133、CD134、CD135、CD136、CD137、CD138、CD139、CD140A、CD140B、CD141、CD142、CD143、CD144、CDw145、CD146、CD147、CD148、CD150、CD151、CD152、CD153、CD154、CD155、CD156、CD156a、CD156b、CD156c、CD157、CD158、CD158A、CD158B1、CD158B2、CD158C、CD158D、CD158E1、CD158E2、CD158F1、CD158F2、CD158G、CD158H、CD158I、CD158J、CD158K、CD159a、CD159c、CD160、CD161、CD162、CD163、CD164、CD165、CD166、CD167a、CD167b、CD168、CD169、CD170、CD171、CD172a、CD172b、CD172g、CD173、CD174、CD175、CD175s、CD176、CD177、CD178、CD179a、CD179b、CD180、CD181、CD182、CD183、CD184、CD185、CD186、CD187、CD188、CD189、CD190、CD191、CD192、CD193、CD194、CD195、CD196、CD197、CDw198、CDw199、CD200、CD201、CD202b、CD203c、CD204、CD205、CD206、CD207、CD208、CD209、CD210、CDw210a、CDw210b、CD211、CD212、CD213a1、CD213a2、CD214、CD215、CD216、CD217、CD218a、CD218b、CD219、CD220、CD221、CD222、CD223、CD224、CD225、CD226、CD227、CD228、CD229、CD230、CD231、CD232、CD233、CD234、CD235a、CD235b、CD236、CD237、CD238、CD239、CD240CE、CD240D、CD241、CD242、CD243、CD244、CD245[17]、CD246、CD247、CD248、CD249、CD250、CD251、CD252、CD253、CD254、CD255、CD256、CD257、CD258、CD259、CD260、CD261、CD262、CD263、CD264、CD265、CD266、CD267、CD268、CD269、CD270、CD271、CD272、CD273、CD274、CD275、CD276、CD277、CD278、CD279、CD280、CD281、CD282、CD283、CD284、CD285、CD286、CD287、CD288、CD289、CD290、CD291、CD292、CDw293、CD294、CD295、CD296、CD297、CD298、CD299、CD300A、CD300C、CD301、CD302、CD303、CD304、CD305、CD306、CD307、CD307a、CD307b、CD307c、CD307d、CD307e、CD308、CD309、CD310、CD311、CD312、CD313、CD314、CD315、CD316、CD317、CD318、CD319、CD320、CD321、CD322、CD323、CD324、CD325、CD326、CD327、CD328、CD329、CD330、CD331、CD332、CD333、CD334、CD335、CD336、CD337、CD338、CD339、CD340、CD344、CD349、CD351、CD352、CD353、CD354、CD355、CD357、CD358、CD360、CD361、CD362、CD363、CD364、CD365、CD366、CD367、CD368、CD369、CD370、及びCD371から選択されるものである。
【0250】
健康細胞の温存
γδT細胞が抗原を認識し、健康細胞と疾患細胞とを区別するメカニズムは完全には理解されていないが(Ming Heng and Madalene Heng,Antigen Recognition by γδ T-Cells.Madame Curie Bioscience Database[Internet],Austin(TX):Landes Bioscience;2000-2013)、γδT細胞が健康細胞と疾患細胞とを区別し、顕著な疾患細胞の多細胞傷害性(表1の細胞型の非限定的な例を参照のこと)を示すことができるという事実は、これらを活用して向上した治療域を有する向上した薬物を提供できることを意味する。更に、このようなγδT細胞の能力を活用することにより、特定のがん抗原、炎症性抗原、もしくは病原体抗原が未知である場合、または特定の患者の健康細胞上にも存在する場合でさえ、γδT細胞を疾患細胞と共局在化させることにより、健康細胞を温存しながら疾患を処置する機会が提供される。
【表2-1】
【表2-2】
【0251】
1つの非限定的な例として、CD3×HER2多特異性薬に関する最近の研究は、現在または従来のアプローチの課題を明らかにしている。具体的には、そのような従来のアプローチの使用は、あまり好ましくない毒性プロファイルをもたらし得る。その理由は、他の多くの腫瘍関連抗原(TAA)と同様に、HER2抗原が乳癌などのがんで発現されるだけでなく、心臓細胞などの健康な組織でも発現されるからである。よって、すべてのT細胞と会合してHER2陽性細胞と共局在化させるCD3×HER2薬物の使用により、あまり好ましくない治療域または治療指数がもたらされる可能性がある。その理由は、そのような薬物は、循環中の大部分がαβT細胞(CD4+陽性、CD8+陽性など)であるすべてのT細胞と会合するからである。そして、αβT細胞がHER2陽性細胞と共局在化すると、そのような従来のαβT細胞は、HER2+健康細胞を温存する能力の制限、及び罹患したHER2+疾患細胞のみを殺傷する能力の制限を示す。したがって、そしてこの例によれば、このようなCD3×HER2二重特異性薬を投与したカニクイザルの研究において、状況によっては(投薬当日であっても)早期安楽死が必要であった。更に、この研究例では(Staflin et al.(2020)JCI Insight 5(7):e133757を参照のこと)、HER2発現細胞を殺傷するためのT細胞のリターゲティングが、HER2発現組織に対する有害効果を誘導し得ると結論付けられた。肝臓を除いて、すべての影響を受けた組織または損傷した組織がHER2を発現したことが認められた。
【0252】
更なる非限定的な例において、第2の結合特異性は、免疫細胞機能のコントロールまたは調節にも関与する腫瘍関連部位に対するものであり得る。例えば、第2の特異性は、PD-L1(CD274)またはCD155などのいわゆる「チェックポイント阻害薬」をターゲティングするように設計され得る。繰り返しになるが、PDL-1もCD155も100%疾患特異的ではない。両方のタンパク質が健康細胞でも発現され得る。しかしながら、Vδ1+細胞をPD-L1陽性細胞またはCD155陽性細胞のいずれかに特異的に共局在化させるように設計された多特異性抗体は、PD-L1またはCD155陽性の疾患細胞またはがん性細胞の選択的殺傷をもたらし得る。がん細胞などの疾患細胞上に存在する疾患関連チェックポイント阻害薬を更にターゲティングすると、そのような腫瘍にVδ1+細胞を共局在化させるだけでなく、例えば、さもなければ疾患に対するT細胞媒介性免疫応答を負に制御し得るPD-1/PD-L1またはTIGIT/CD155シグナル伝達を調節または抑制することにより、追加の好ましい効果を付与することもできる。
【0253】
よって、そのような従来のアプローチを用いる代わりに、本明細書で提供されるのは、少なくとも1つの第1の結合特異性がVδ1+細胞と結合することができ、少なくとも1つの第2の結合特異性が疾患組織及び細胞上に存在する標的と結合することができる多特異性抗体である。このような多特異性抗体をこのように使用することで、第2の標的を発現する疾患細胞へのVδ1+細胞の共局在化がもたらされ得る。更に、このような疾患関連標的がしばしば100%疾患特異的ではないことを考慮すると、Vδ1+エフェクター細胞を特異的にターゲティングして共局在化させるこのアプローチは、従来のアプローチよりも好ましい可能性がある。その理由は、Vδ1+エフェクター細胞が疾患細胞または感染細胞におけるストレスパターンを認識でき、したがって同様に同じ標的を発現する健康細胞を温存しながら疾患細胞を選択的に殺傷できる可能性があるためである。
【0254】
したがって、本明細書で提示される多特異性抗体は、vδ1細胞のTCRに会合できるが、腫瘍細胞も存在しない限り完全な活性化は起こらない。本書で提示される抗体がTCRに完全に会合すると部分的な下方制御が生じ、本書で提示される抗体が結合したvδ1細胞は、腫瘍細胞などのストレスを受けた細胞の存在下でのみ完全に活性化され、細胞傷害性になると考えられる。これは例えば、
図25、I、J、K、及び
図38A~Fに示されている。これは、本明細書で提示されるアプローチに関する別の重要な安全上の利点を表す。なぜなら、オフターゲット細胞傷害性が低減し、vδ1細胞を活性化させる多特異性抗体の効力の全てが腫瘍細胞の存在下でのみ解放され、つまり健康細胞(更には多特異性抗体の第2の標的抗原を発現する健康細胞)が温存されるからである。
【0255】
γδT細胞が腫瘍細胞のストレスシグナルを検出できるメカニズムの1つは、それらが発現するNCR(天然細胞傷害性受容体)に起因すると考えられている。NCRは、腫瘍細胞上のNCRリガンドに会合することができる。したがって、腫瘍細胞を感知して完全な活性化及び細胞傷害性を有効にすることができるNCRを介するものを含む、TCR刺激を介してγδT細胞が活性化される、活性化のデュアルメカニズムが用いられ得る。
【0256】
これは、例えばCD3を介したαβT細胞の刺激とは対照的であり、αβT細胞の刺激は、すべての刺激がTCRを介する。したがって、そのような細胞は、例えばNCRを介した、抗原提示に依存しない腫瘍細胞の感知などのメカニズムを有しないため、健康細胞または形質転換細胞の区別がほぼ不可能である。したがって、CD3抗体がFc有効型であれば、それらは他の免疫細胞を誘引し、これがサイトカインストーム、免疫細胞の消耗及び更には過剰活性化といった予想外の望ましい事象のカスケードを誘起し、例えば、NK細胞によるT細胞の殺傷などをもたらすことができる。本件のアプローチでは、γδT細胞がそれらのNCR感知メカニズムを介するものを含めて健康細胞と腫瘍細胞とを区別することができ、したがってこの疾患細胞特異性のためにがん細胞またはウイルス感染細胞などのストレスを受けた細胞を選択的に殺傷することができるため、本書で提示される多特異性抗体によるγδT細胞の刺激は、このような懸念を生じない。
【0257】
更なる非限定的な例において、患者は肝臓癌を有し得、患者において肝臓癌特異的抗原は未知である。この場合、多特異性抗体の第2の特異性は、多数またはすべての肝臓細胞上に存在するエピトープ、例えばアシアロ糖タンパク質受容体1などに対するものであり得る。これは次いでγδT細胞を肝臓に共局在化させ、ここでγδT細胞は健康な肝臓細胞を温存しながら肝臓癌細胞を殺傷し得る。これは例えば、
図25、I、J、K及び
図38A~fに示されている。第3の非限定的な例として、患者が肺癌を有し、患者において肺癌抗原が未知の場合には、多特異性抗体の第2の特異性は、正常な肺細胞上のエピトープ、例えばSP-1などに対するものであり得る。これはγδT細胞を肺に共局在化させ、ここでγδT細胞は健康な肺細胞を温存しながら肺癌細胞を殺傷し得る。第4の非限定的な例として、患者がB細胞リンパ腫を有し、患者においてB細胞リンパ腫抗原が未知の場合には、多特異性抗体の第2の特異性は、正常なB細胞上のエピトープ、例えばCD19などに対するものであり得る。これはγδT細胞をB細胞に共局在化させ、ここでγδT細胞は健康なB細胞を温存しながらリンパ腫細胞を殺傷し得る。細胞特異的抗原、細胞関連抗原、組織特異的抗原、及び組織関連抗原は当技術分野において周知であり、そのような抗原はいずれも、本発明の多特異性抗体の第2の特異性によってターゲティングすることができる。
【0258】
第2の結合特異性は、Vδ1と同じ細胞上の、または同じ組織型もしくは異なる組織型の異なる細胞上の抗原をターゲティングし得る。ある特定の実施形態において、標的エピトープは、異なるT細胞、B細胞、腫瘍細胞、自己免疫組織細胞またはウイルス感染細胞を含む異なる細胞上にあり得る。あるいは、標的エピトープは同じ細胞上にあり得る。
【0259】
多特異性抗体またはその断片は、抗体またはその断片が複数の特異性を有する限り、任意のフォーマットで作製することができる。概して、本発明の多特異性(好適には二重特異性)抗体は、少なくとも2つの結合ドメイン、第1の結合ドメイン及び第2の結合ドメインを含む。第1の結合ドメインは、第1の標的抗原(または第1の標的抗原のエピトープ)に対する結合特異性を付与し、ここで第1の標的エピトープは、γδT細胞受容体(TCR)の可変デルタ1(Vδ1またはTRDV1)鎖のエピトープである。第2の結合ドメインは、第2の標的抗原(または第2の標的抗原のエピトープ)に対する結合特異性を付与する。第2の標的抗原は、がん抗原もしくはがん関連抗原でもよく、または第2の抗原は、免疫調節性抗原でもよい。
【0260】
多特異性抗体フォーマットの例は、CrossMab、DAF(ツー・イン・ワン)、DAF(フォー・イン・ワン)、DutaMab、DT-IgG、ノブ・イン・ホール(KIH)、ノブ・イン・ホール(共通軽鎖)、電荷ペア、Fab-アーム交換、SEEDボディ、Triomab、LUZ-Y、Fcab、κλボディ、直交性Fab、DVD-IgG、IgG(H)-scFv、scFv-(H)IgG、IgG(L)-scFv、scFv-(L)IgG、IgG(L,H)-Fv、IgG(H)-V、V(H)-IgG、IgG(L)-V、V(L)-IgG、KIH IgG-scFab、2scFv-IgG、IgG-2scFv、scFv4-Ig、Zybody、DVI-IgG(フォー・イン・ワン)、ナノボディ、Nanoby-HAS、BiTE、ダイアボディ、DART、TandAb、scダイアボディ、scダイアボディ-CH3、ダイアボディ-CH3、トリプルボディ、Morrisonフォーマット、ミニ抗体、ミニボディ、TriBiミニボディ、scFv-CH3 KIH、Fab-scFv、scFv-CH-CL-scFv、F(ab’)2、F(ab)2-scFv2、scFv-KIH、Fab-scFv-Fc、四価HCAb、scダイアボディ-Fc、ダイアボディ-Fc、タンデムscFv-Fc、イントラボディ、ドック・アンド・ロック、ImmTAC、HSAボディ、scダイアボディ-HAS、タンデムscFv-毒素、IgG-IgG、ov-X-Body、デュオボディ、mab2及びscFv1-PEG-scFv2を含むが、これらに限定されない(Spiess et al.(2015)Molecular Immunology 67:95-106を参照のこと)。
【0261】
本明細書に記載される抗体またはその断片は、二重特異性または三重特異性フォーマットなどの多特異性フォーマットでの機能性増強の能力を測定することによって評価することもできる。驚くべきことに、そのような研究を通じて、本明細書に記載される抗体またはその断片の性能におけるなおも更なる機能的向上を特定することが可能である(実施例20及び21を参照のこと)。
【0262】
様々な抗体由来の多特異性フォーマットが既報であり、典型的には成分結合部分から経験的に構築される。典型的には、本明細書に記載されるような多特異性または複数標的結合フォーマットが構築されたら、その性能を前述のモデル系(細胞殺傷、細胞増殖、健康細胞温存/疾患細胞特異的モデルなど)のうちの1つまたは複数で測定することができる。これらはまた、場合により、前記構成部分及び他のコンパレータ分子と比較される。
【0263】
このアプローチに限定されるものではないが、抗体を多特異性抗体として構築する場合は概して、各標的(第1、第2、第3など)に対する結合ドメインモジュールは、場合により、scFv、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、可変ドメイン(例えばVHまたはVL)、ダイアボディ、ミニボディまたは完全長抗体から構築される。例えば、前記結合ドメインまたはモジュールの各々は、可変ドメインを含む結合ドメイン、及び/または完全長抗体、及び/または抗体断片が連続して作動可能に連結されて多特異性抗体を生成する、以下の非限定的なフォーマットのうちの1つまたは複数において作出される。
【0264】
注目すべきことに、本明細書に記載されるようなγδTCRのVδ1鎖をターゲティングする少なくとも1つ(第1)の結合ドメインを含む多特異性抗体は、前記第1の結合ドメインが組織(「固体」)及び造血系(「液体」)の疾患または細胞型に関連する標的のいずれかに対する少なくとも1つの第2の結合ドメインを含む多特異性抗体フォーマットでフォーマットされる場合に更に増強される。
【0265】
多特異性抗体-非限定的な例:
アプローチの適用可能性を概説するために、多特異性抗体の一連の非限定的な例を構築した。これらの多特異性抗体は、γδTCRのVδ1鎖をターゲティングする少なくとも1つ(第1)の結合ドメインと、疾患関連標的をターゲティングする少なくとも1つ(第2)の結合ドメインとを含んでいた。
【0266】
第1の例;Vδ1-EGFR多特異性抗体:
この例では、1つの結合ドメイン(第1の標的に対する)は、インタクトな抗体部位、具体的には、VH-CH1-CH2-CH3及び同族のVL-CLパートナーを含み、第2の結合ドメイン(第2の標的に対する)は、抗体断片、具体的にはscFvフォーマットを含んでいた。次いで、リンカーを用いて2つの結合モジュールを融合させた。結果として得られる二重特異性フォーマットは、「Morrisonフォーマット」と呼ばれることがある。この事例において、第1の結合ドメインはγδTCRのVδ1鎖をターゲティングし、第2の結合ドメインはEGFRをターゲティングする(実施例20を参照のこと)。
【0267】
第2の例;Vδ1-EGFR多特異性抗体:
この例では、1つの結合ドメイン(第1の標的に対する)は、抗体可変ドメイン(具体的にはVH及び同族のVLドメインを含む)を含み、第2の結合ドメイン(第2の標的に対する)は、重鎖定常ドメイン(CH1-CH2-CH3)内の結合ドメインを含む(EP2546268 A1表1/EP3487885 A1も参照のこと)。結果として得られる二重特異性は、γδTCRのVδ1鎖をターゲティングする第1の結合ドメインと、EGF受容体をターゲティングする第2の結合ドメインとを含む(実施例20を参照のこと)。
【0268】
第3の例;Vδ1-CD19多特異性抗体:
この例では、1つの結合ドメイン(第1の標的に対する)は、インタクトな抗体部位、具体的にはVH-CH1-CH2-CH3及び同族のVL-CLパートナーを含み、第2の結合ドメイン(第2の標的に対する)は、抗体断片、具体的にはscFvフォーマットを含んでいた。次いで、リンカーを用いて2つの結合モジュールを融合させた。この例では、結果として得られる二重特異性は、γδTCRのVδ1鎖をターゲティングする第1の結合ドメインと、CD19をターゲティングする第2の結合ドメインとを含んでいた(実施例21を参照のこと)。
【0269】
第4の例;更なるVδ1-CD19多特異性抗体
この例では、TRDV1及びCD19の両方に特異的に結合する追加の多特異性抗体を調製し、抗原結合(ヒト及びカニクイザルTRDV1の両方を含む)、Vδ1細胞の活性化、及びVδ1細胞傷害性について試験した(実施例22及び23を参照のこと)。
【0270】
第5の例;Vδ1-Her2多特異性抗体
この例では、TRDV1及びHer2の両方に特異的に結合する多特異性抗体を調製し、抗原結合、Vδ1細胞の活性化、及びVδ1細胞傷害性について試験した(実施例24を参照のこと)。
【0271】
第6の例;更なるVδ1-EGFR多特異性抗体
この例では、TRDV1及びEGFRの両方に特異的に結合する追加の多特異性抗体を調製し、抗原結合、Vδ1細胞の活性化、及びVδ1細胞傷害性について試験した(実施例26及び27を参照のこと)。
【0272】
第7の例;Vδ1-FAPα多特異性抗体
この例では、1つの結合ドメイン(第1の標的に対する)は、インタクトな抗体部位、具体的にはVH-CH1-CH2-CH3及び同族のVL-CLパートナーを含み、第2の結合ドメイン(第2の標的に対する)は、抗体断片、具体的にはscFvフォーマットを含んでいた。次いで、リンカーを用いて2つの結合モジュールを融合させた。この例では、結果として得られる二重特異性は、γδTCRのVδ1鎖をターゲティングする第1の結合ドメインと、FAPαをターゲティングする第2の結合ドメインとを含んでいた(実施例29を参照のこと)。
【0273】
第8の例;Vδ1-メソテリン多特異性抗体
この例では、1つの結合ドメイン(第1の標的に対する)は、インタクトな抗体部位、具体的にはVH-CH1-CH2-CH3及び同族のVL-CLパートナーを含み、第2の結合ドメイン(第2の標的に対する)は、抗体断片、具体的にはscFvフォーマットを含んでいた。次いで、リンカーを用いて2つの結合モジュールを融合させた。この例では、結果として得られる二重特異性は、γδTCRのVδ1鎖をターゲティングする第1の結合ドメインと、メソテリンをターゲティングする第2の結合ドメインとを含んでいた(実施例30を参照のこと)。
【0274】
第9の例;Vδ1-PD-1多特異性抗体
この例では、1つの結合ドメイン(第2の標的に対する)は、インタクトな抗体部位、具体的にはVH-CH1-CH2-CH3及び同族のVL-CLパートナーを含み、第2の結合ドメイン(第1の標的に対する)は、抗体断片、具体的にはscFvフォーマットを含んでいた。次いで、リンカーを用いて2つの結合モジュールを融合させた。この例では、結果として得られる二重特異性は、PD-1をターゲティングする第1の結合ドメインと、γδTCRのVδ1鎖をターゲティングする第2の結合ドメインとを含んでいた(実施例32を参照のこと)。
【0275】
第10の例;Vδ1-4-1BB多特異性抗体
この例では、1つの結合ドメイン(第1の標的に対する)は、インタクトな抗体部位、具体的にはVH-CH1-CH2-CH3及び同族のVL-CLパートナーを含み、第2の結合ドメイン(第2の標的に対する)は、抗体断片、具体的にはscFvフォーマットを含んでいた。次いで、リンカーを用いて2つの結合モジュールを融合させた。この例では、結果として得られる二重特異性は、γδTCRのVδ1鎖をターゲティングする第1の結合ドメインと、4-1BBをターゲティングする第2の結合ドメインとを含んでいた(実施例33を参照のこと)。
【0276】
第11の例;Vδ1-OX40多特異性抗体
この例では、1つの結合ドメイン(第1の標的に対する)は、インタクトな抗体部位、具体的にはVH-CH1-CH2-CH3及び同族のVL-CLパートナーを含み、第2の結合ドメイン(第2の標的に対する)は、抗体断片、具体的にはscFvフォーマットを含んでいた。次いで、リンカーを用いて2つの結合モジュールを融合させた。この例では、結果として得られる二重特異性は、γδTCRのVδ1鎖をターゲティングする第1の結合ドメインと、OX40をターゲティングする第2の結合ドメインとを含んでいた(実施例34を参照のこと)。
【0277】
第12の例;Vδ1-TIGIT多特異性抗体
この例では、1つの結合ドメイン(第2の標的に対する)は、インタクトな抗体部位、具体的にはVH-CH1-CH2-CH3及び同族のVL-CLパートナーを含み、第2の結合ドメイン(第1の標的に対する)は、抗体断片、具体的にはscFvフォーマットを含んでいた。次いで、リンカーを用いて2つの結合モジュールを融合させた。この例では、結果として得られる二重特異性は、TIGITをターゲティングする第1の結合ドメインと、γδTCRのVδ1鎖をターゲティングする第2の結合ドメインとを含んでいた(実施例35を参照のこと)。
【0278】
注目すべきことに、γδTCRのVδ1鎖をターゲティングする少なくとも1つ(第1)の結合ドメインと、第2のエピトープをターゲティングする少なくとも1つの第2のドメインとを含む前記例のすべてにおいて、対照及び構成部分と比べて機能性の増強が観察された(本明細書の実施例20~35を参照のこと)。
【0279】
まとめると、これらの非限定的な例は、本明細書に記載される多特異性抗体またはその断片の柔軟性を明らかにしている。これらの非限定的な例は、生殖系Vδ1鎖(配列番号1のアミノ酸1~90)をターゲティングする抗体またはその断片を第2の結合ドメインと組み合わせて多特異性抗体を形成することによって更に増強できる多特異性抗体アプローチを概説する。非限定的な例として、本明細書では、機能性が増強され、インタクトな抗体(VH-CH1-CH2-CH3及びVL-CL)、及び/または可変ドメイン(VH及び同族のVLまたはVH-CH1及び同族のVL-CL)、及び/または抗体断片(scFv)を含む結合ドメインを含有する多特異性抗体が提供される。
【0280】
一実施形態において、γδTCRのVδ1鎖(第1の標的)をターゲティングする多特異性抗体結合ドメインは、(i)重鎖(VH-CH1-CH2-CH3)及び同族の軽鎖パートナー(VL-CL)を各々が含む1つもしくは2つ以上の抗体結合ドメイン、及び/または(ii)重鎖可変ドメイン(VH、またはVH-CH1)及び同族の軽鎖可変ドメインパートナー(VL、またはVL-VC)を各々が含む1つもしくは2つ以上の抗体結合ドメイン、及び/または(iii)CDR含有抗体断片を各々が含む1つもしくは2つ以上の抗体結合ドメインを含み得る。
【0281】
一実施形態において、γδTCRのVδ1鎖をターゲティングする少なくとも1つの第1の抗体由来結合ドメインを含み、これが第2のエピトープをターゲティングする少なくとも1つの第2の抗体結合ドメインに作動可能に連結している多特異性抗体が提供される。場合により、前記結合ドメインは、少なくとも1つもしくは複数のVH及び同族のVL結合ドメイン、または1つもしくは複数のVH-CH1-CH2-CH3及び同族のVL-CL結合ドメイン、または1つもしくは複数の抗体断片結合ドメインを含む。場合により、前記第2の結合ドメインは、細胞の細胞表面に関連する、または細胞表面上で発現される、第2のエピトープをターゲティングする。場合により、前記第2のエピトープは、疾患細胞または腫瘍細胞またはウイルス感染細胞または自己免疫組織細胞に関連する細胞表面ポリペプチド上に位置する。場合により、前記第2のエピトープまたは複数のエピトープは、疾患及び細胞型に関連するCD19、EGFR、Her2、FAPα、メソテリン、PD-1、4-1BB、OX40またはTIGIT抗原上に位置する。場合により、γδTCRのVδ1鎖をターゲティングする少なくとも1つの第1の抗体由来結合ドメインを含む前記多特異性抗体は、EGF受容体と結合し、EU命名法に従う以下の重鎖改変のうちの1つまたは複数を含む、第2の結合ドメインに作動可能に連結している;L358T及び/またはT359D及び/またはK360D及び/またはN361G及び/またはQ362P及び/またはN384T及び/またはG385Y及び/またはQ386G及び/またはD413S及び/またはK414Y及び/またはS415W及び/またはQ418Y及びまたはQ419K。
【0282】
場合により、γδTCRのVδ1鎖をターゲティングする少なくとも1つの第1の抗体由来結合ドメインを含む多特異性抗体は、配列番号147もしくは配列番号148もしくは配列番号149もしくは配列番号157またはそれらの機能的に同等な結合変異体を含み、EGFR、CD19、Her2、FAPα、メソテリン、PD-1、4-1BB、OX40またはTIGITをターゲティングする、第2の結合ドメインに作動可能に連結している。場合により、結果として得られる多特異性抗体は、配列番号140または配列番号141または配列番号142または配列番号144または配列番号145または配列番号146または配列番号158または配列番号159を含む。前記実体は、理解を助けるための非限定的な新規組成物としてここに含まれている。
【0283】
本発明の一態様において、本発明の多特異性抗体は、疾患または障害の少なくとも1つの徴候または症状を改善するような、疾患または障害を処置するために治療上有効な量で使用され得る。
【0284】
一実施形態において、多特異性抗体フォーマットにおけるγδTCRのVδ1鎖に結合する本明細書に記載される抗体またはその断片を選択する、または特性評価する、または比較する方法が提供され、ここで、前記多特異性抗体は、前記多特異性実体によってVδ1+細胞に対して(例えば、前記Vδ1+表現型及び/または細胞傷害性及び/または疾患細胞特異性及び/またはその増強に対して)付与される効果を測定するために、Vδ1+細胞に適用される。
【0285】
イムノコンジュゲート
本発明の多特異性抗体またはその断片は、細胞毒素または化学療法剤などの治療部位にコンジュゲートされ得る。このようなコンジュゲートは、イムノコンジュゲートと称され得る。本明細書で使用する場合、「イムノコンジュゲート」という用語は、細胞毒素、放射性薬剤、サイトカイン、インターフェロン、標的部位もしくはレポーター部位、酵素、毒素、ペプチドもしくはタンパク質または治療剤などの別の部位に化学的または生物学的に連結された抗体を指す。抗体は、その標的と結合することができる限り、分子に沿った任意の位置で、細胞毒素、放射性薬剤、サイトカイン、インターフェロン、標的部位もしくはレポーター部位、酵素、毒素、ペプチドまたは治療剤に連結されていてよい。イムノコンジュゲートの例には、抗体薬物コンジュゲート及び抗体-毒素融合タンパク質が含まれる。一実施形態において、薬剤は、Vδ1に対する第2の異なる抗体であり得る。ある特定の実施形態において、抗体は、腫瘍細胞またはウイルス感染細胞に特異的な薬剤にコンジュゲートされ得る。抗Vδ1抗体にコンジュゲートされ得る治療部位の種類は、処置すべき状態及び達成すべき所望の治療効果を考慮したものになる。一実施形態において、薬剤は、Vδ1以外の分子に結合する第2の抗体またはその断片であり得る。
【0286】
γδT細胞を調節するための薬物
本明細書に記載される多特異性抗体またはその断片は、TRDV1結合ドメインを介して、患者のデルタ可変1鎖(Vδ1)T細胞をin situ(すなわちin vivo)で調節するために使用され得るか、または調節するために有用であり得る。多特異性抗体またはその断片は、そのような目的のための薬物に含まれ得る。
【0287】
Vδ1 T細胞の調節は以下を含み得る:
- 例えばVδ1 T細胞の数を選択的に増加させることによるVδ1 T細胞の増大、またはVδ1 T細胞の生存の促進;
- 例えば、Vδ1 T細胞効力を増加させること、すなわち標的細胞の殺傷を増加させることによる、Vδ1 T細胞の刺激;
- 例えば、Vδ1 T細胞の持続性を増加させることによる、Vδ1 T細胞消耗の防止;
- Vδ1 T細胞の脱顆粒;
- NCR発現の増加;
- 例えば、Vδ1 TCR 細胞表面発現の下方制御による、すなわち、Vδ1 TCRの内部移行もしくはVδ1 TCRタンパク質の発現低下を引き起こすこと、またはVδ1 TCRの結合を遮断することによる、Vδ1 T細胞の免疫調節;及び/または
- TCR/CD3複合体の下方制御。
【0288】
Vδ1 T細胞の枯渇に焦点を当てる先行技術の抗Vδ1抗体とは異なり、本発明の多特異性抗体は、TRDV1結合ドメインを介したVδ1 T細胞の活性化に有用である。これらは、結合するT細胞上のTCRの下方制御を引き起こし得るが、Vδ1 T細胞の枯渇を引き起こすことはなく、むしろT細胞を刺激するため、T細胞のこのコンパートメントの活性化から恩恵を受ける治療状況において有用であり得る。Vδ1 T細胞の活性化は、TCR下方制御、CD3下方制御、CD25及びKi67などの活性化マーカーならびに脱顆粒マーカーCD107aの変化から明らかである。Vδ1 T細胞の活性化は、結果として、INFγ及びTNFαなどの炎症性サイトカインの放出を誘起して、免疫ライセンシングを促進する。
【0289】
本発明の一実施形態において、
a. Vδ1 T細胞上のTCRの下方制御を引き起こすこと、
b. CDCまたはADCCを示さないこと、及び
c. Vδ1 T細胞を枯渇させないこと
を特徴とする、多特異性抗Vδ1抗体またはその抗原結合性断片が提供される。
【0290】
一部の実施形態において、多特異性抗Vδ1抗体または抗原結合性断片は、Vδ1 T細胞の増殖も刺激する。
【0291】
T細胞枯渇は、T細胞死の除去または低減のプロセスである。Vδ1 T細胞を枯渇させない多特異性抗体または抗原結合性断片への言及は、コントロールされた研究において任意の好適な手段によって測定した場合の(例えば、コントロールされたフローサイトメトリー方法による、または他の確立されたコントロールされたアッセイによる)、本明細書に記載される本発明の抗体のうちの1つまたは複数による、インキュベート時の生存可能なVδ1 T+細胞集団の約30%未満または約20%未満(好ましくは約10%未満)の枯渇を指す。
【0292】
ADCC及びCDCは、T細胞枯渇を発生させ得るメカニズムである。本明細書における、ADCCまたはCDCを引き起こさない抗体または抗原結合性断片への言及は、任意の好適な手段によって測定した場合の(例えば、コントロールされたフローサイトメトリー方法による、または他の確立されたコントロールされたアッセイによる)、本明細書に記載される本発明の抗体のうちの1つまたは複数による、インキュベート時のADCC及び/またはCDCを介した、生存可能なVδ1 T+細胞集団の約30%未満または約20%未満(好ましくは約10%未満)の枯渇を指す。
【0293】
一実施形態において、IL-17Aの分泌を誘導しないことを特徴とする多特異性抗Vδ1抗体またはその抗原結合性断片が提供される。IL-17A(インターロイキン-17A)は、活性化されたT細胞によって産生される腫瘍形成促進性サイトカインである。IL-17Aは、腫瘍の増殖を増強し、抗がん免疫応答を抑制し得る。
図38、G~Iに示すように、抗vδ1抗体はIL-17Aの分泌を誘導しないが、抗CD3抗体は誘導する。本明細書における、IL-17Aの分泌を誘導しない抗体または抗原結合性断片への言及は、同等なCD3多特異性抗体によって誘導されるIL-17A分泌の約30%未満、または約20%未満、または約10%未満を誘導することを指す。
【0294】
以下のセクションの一部は、単特異性フォーマットで提供され、本発明では多特異性(好適には二重特異性)フォーマットでの使用が特に企図される、抗Vδ1抗体に関する。好適には、単特異性フォーマットで提供される場合の抗体の機能特性は、さらに第2の抗原に特異的に結合する本発明の多特異性抗体によって共有される。
【0295】
Vδ1+細胞上の免疫細胞マーカーを調節する薬物
多特異性抗体またはその断片は、患者に投与されると、Vδ1+細胞の免疫細胞マーカーを調節し得る。
【0296】
本明細書に記載される多特異性抗体またはその断片は、γδT調節を測定することにより、その治療的使用への適性について評価することもでき、そのような評価は、抗体が単特異性フォーマットで提供される場合に行うことができる。例えば、Vδ1+T細胞またはモデル系の細胞に存在するCD25またはCD69またはCD107aのレベルの変化を測定することによる。そのようなマーカーは、リンパ球調節(例えば増殖または脱顆粒)のマーカーとして使用されることが多く、本明細書に記載される抗体またはその断片の適用後、例えばフローサイトメトリーによって測定することができる。驚くべきことに、そのような評価において(例えば実施例7、17、18などを参照のこと)、本明細書に記載される多特異性抗体の単特異性バージョンは、標的Vδ1+T細胞における測定可能により高いレベルのCD25またはCD69またはCD107aレベルを付与したことが観察された。場合により、モデル系で試験したVδ1+細胞またはその集団の表現型の変化を、代替的なコンパレータ抗体(例えばOKT-3、TS8.2など)を前記同等なγδT細胞に適用したときの表現型の変化と比較してもよい。
【0297】
よって、本発明の一態様において、治療的使用のためのγδTCRのVδ1鎖に結合する抗体またはその断片を評価する方法であって、Vδ1+細胞を含む細胞集団に抗体またはその断片を投与することと、Vδ1+細胞の表面上のCD25及び/またはCD69及び/またはCD107aのレベルに対する効果を決定することとを含む方法が提供される。CD25、CD69及び/またはCD107aのレベルに対する効果は、一定期間にわたって決定/測定され得る。この効果は、同じ期間にわたって前記抗体を前記細胞に適用しない場合のVδ1+細胞の表面上のCD25及び/またはCD69及び/またはCD107aのレベルと比較して測定され得ることは理解されよう。本発明の更なる態様において、γδTCRのVδ1鎖に結合する本明細書に記載される抗体またはその断片を選択する、または特性評価する、または比較する方法であって、Vδ1+細胞を含む細胞集団に前記抗体を付加し、次いで前記Vδ1+細胞の表面上のCD25またはCD69またはCD107aのレベル(または発現)を測定することによって行われる方法が提供される。
【0298】
Vδ1+細胞の増殖特性または数を調節する薬物
多特異性抗体またはその断片は、患者に投与されると、Vδ1+細胞の増殖特性を調節し得る。例えば、多特異性抗体またはその断片は、Vδ1+細胞を増大させ得る。
【0299】
γδT増殖を測定するための代替のアプローチは、Vδ1+細胞を含有するモデル系に、本明細書に記載される抗体またはその断片を適用したときの前記細胞の相対数における経時的な変化を測定することを含み得る。驚くべきことに、そのような評価において、本明細書に記載される抗体は、単特異性フォーマットで提供された場合、前記Vδ1+T細胞の数を測定可能に増加させることができたことが観察された(例えば実施例10、17及び18などを参照のこと)。場合により、この数の変化は、代替的なコンパレータ抗体(例えば抗OKT3)を前記モデル系に適用したときに観察される数の変化と比較してもよい。
【0300】
よって、本発明の別の態様では、γδTCRのVδ1鎖に結合する抗体またはその断片を評価する方法であって、Vδ1+細胞を含む細胞集団に抗体またはその断片を投与することと、集団内のVδ1+細胞の数に対する効果を決定することとを含む方法が提供される。細胞数に対する効果は、一定期間にわたって決定/測定され得る。この効果は、同じ期間にわたって前記抗体を細胞集団に適用しない場合に観察される細胞数に対する効果と比較して測定され得ることは理解されよう。本発明の更なる態様において、γδTCRのVδ1鎖に結合する本明細書に記載される抗体またはその断片を選択する、または特性評価する、または比較する方法であって、Vδ1+細胞を含む細胞集団に前記抗体を適用し、次いで前記細胞の数を経時的に測定することによって行われる方法が提供される。
【0301】
Vδ1+細胞の増殖能力及び数を調節する薬物
γδTCRのVδ1鎖に結合する本明細書に記載される理想的な治療用多特異性抗体またはその断片は、in vivoでVδ1+細胞の増殖を増強できるものであり得る。そのような抗体は、対象または患者のVδ1+細胞数を特異的に増加させるように設計された薬物として用いることができる。例を以下に示す。
【0302】
がん:
Vδ1+細胞の数における相対的増加は、多くのがんについて転帰の向上に関連する正の予後指標として報告されている(例えば、Gentles et al(2015)Nature Immunology 21:938-945、Wu et al.(2019)Sci.Trans.Med.11(513):eaax9364、Catellani et al.(2007)Blood 109(5):2078-2085を参照のこと)。一実施形態において、本明細書で提示されるのは、がん患者においてin situでVδ1+細胞の相対数または絶対数を増加させることができる薬物である。
【0303】
病原性/寄生虫/ウイルス感染症:
Vδ1+細胞の濃縮は、多数の後天性病原性/寄生虫/ウイルス感染症に対する宿主防御中に観察される。最近の総説については、Zhao et al.(2018)Immunol.Res.2018:5081634を参照のこと。さらに、Vδ1+の数の増加は、種々のDNAウイルス及びRNAウイルスの感染を防ぐとも考えられている。例えば、数の増加は、同種異系移植片に関連するCMV感染においても防御的であると考えられている(van Dorp et al.(2011)Biology of Blood and Marrow Transplantation 17(2):S217を参照のこと)。さらに、Vδ+細胞数は、コロナウイルス感染患者において増加する(Poccia et al.(2006)J.Infect.Dis.193(9):1244-1249)。
【0304】
別の実施形態において、本明細書で提示されるのは、病原性感染症を有する対象または患者におけるVδ1+細胞の相対数または絶対数を増加させることができる薬物である。
【0305】
幹細胞移植:
Vδ1+細胞数の増加は、疾患再発の減少、ウイルス感染の減少、全生存率及び無病生存率の上昇、ならびに造血幹細胞移植中の全般的に良好な臨床転帰にも関連している(例えば、Aruda et al.(2019)Blood 3(21):3436-3448及びGodder et al.(2007)Bone Marrow Transplantation 39:751-757を参照のこと)。よって、別の実施形態で、本明細書で提示されるのは、幹細胞移植を支持する処置レジメンの一部として、対象におけるVδ1+細胞の相対数または絶対数を増加させることができる薬物である。
【0306】
したがって、in-situでVδ1+細胞の数を優先的または特異的に増加させることができる薬物が非常に望ましい。
【0307】
Vδ1+細胞のサイトカイン分泌を維持する、または誘導する、または増加させる薬物
サイトカインは、免疫系の特定の細胞によって分泌されるタンパク質、ペプチド、または糖タンパク質の大きなグループである。それらは、免疫、炎症、及び造血を媒介し制御するシグナル伝達分子のカテゴリである。いくつかのサイトカインは、腫瘍及び細胞の微小環境、自己免疫組織及び関連する微小環境、またはウイルスに感染した組織もしくは細胞の環境の直接的または間接的な調節を通じて、疾患の徴候及び症状を改善させることに関係付けられてきた。例示的な炎症誘発性サイトカインには、腫瘍壊死因子アルファ(TNFα)及びインターフェロン-ガンマ(IFNγ)が含まれる。
【0308】
しかしながら、そのようなサイトカインの多くは、全身投与すると好ましくない毒性を示す。例えば、TNFαは移植された腫瘍の出血性壊死を誘導することができ、他の化学療法薬と組み合わせると相乗的な抗腫瘍効果を発揮することが報告されているが、全身性組換えヒトTNFα(rhTNFα)を用いる様々な臨床試験は、低血圧、悪寒、静脈炎、血小板減少、白血球減少及び肝毒性、発熱、疲労、悪心/嘔吐、倦怠感及び脱力感、頭痛、胸部絞扼感、腰背痛、下痢ならびに息切れを含む重大な用量制限副作用を明らかにしている。
【0309】
組換えIFNγの使用にも同様の全身毒性の課題がある。例えば、がんの状況において、IFNγは、MHCクラスI及びIIの上方制御を含む好ましい多面的効果を発揮して、抗腫瘍免疫を刺激し、T細胞浸潤を増加させ、抗血管新生効果を付与し、ケモカイン/サイトカインの分泌を誘導し、直接的ながん細胞増殖抑制効果を発揮し得るが、有害な副作用も観察されている。これらには、発熱、頭痛、寒気、疲労、下痢、悪心、嘔吐、食欲不振、肝トランスアミナーゼの一時的増加、ならびに顆粒球数及び白血球数の一時的減少が含まれる。
【0310】
全身性組換えTNFα及びIFNγの可能性及び制限の両方に関する最近の概説については、Shen et al.(2018)Cell Prolif.51(4):e12441を参照のこと。
【0311】
よって、そのようなサイトカインの、よりin situでコントロールされた、より局所化された、より組織特異的または細胞特異的な産生が必要である。例えば、炎症誘発性サイトカインのよりコントロールされた発現または誘導が、「コールド」腫瘍を「ホット」に変えることができる1つのアプローチとして提唱されている。ホット腫瘍は、CD45+T細胞の数または密度の増加も観察されるため、「T細胞炎症性」と呼ばれることもある。最近の概説については、Bonaventura et al.(2019)Front.Immunol.10:168を参照のこと。
【0312】
このような理由で、γδTCRのVδ1鎖に結合する本明細書に記載される理想的な多特異性抗体またはその断片は、in vivoでVδ1+細胞におけるサイトカインの分泌を維持する、または増強する、または誘導することができるものであり得る。このような抗体は、対象または患者において、より局所的で全身的ではない様式でサイトカインを特異的に増加させるまたは誘導するように設計された薬物として、かつ前記対象または患者におけるVδ1+細胞の分布とよりよく相関するものとして用いられ得る。
【0313】
注目すべきことに、γδTCRのVδ1鎖に結合する本明細書に記載される多特異性抗体の単特異性バージョンをVδ1+細胞に適用すると、著しく高いレベルの分泌サイトカインが観察される。より具体的には、また非限定的な例として、著しく高いレベルのTNFα及びIFNγが観察される。例えば実施例15を参照のこと。
【0314】
よって、本発明の別の態様では、γδTCRのVδ1鎖に結合する抗体もしくは多特異性抗体またはそれらの断片を評価する方法であって、Vδ1+細胞を含む細胞集団に抗体またはその断片を投与することと、細胞集団によって産生された少なくとも1つのサイトカインの量を決定することとを含む方法が提供される。産生されたサイトカインの量は、一定期間にわたって決定/測定してもよく、場合により、同じ期間にわたって前記抗体を細胞集団に適用しない場合に観察される量と比較してもよい。一実施形態において、抗体を細胞集団に投与した場合に産生されるサイトカインの観察されるレベルは、抗体を適用しない場合に産生されるサイトカインのレベルに比して、約10%超、約20%超、約30%超、約50%超、約100%超、約150%超、約200%超、約250%超、約300%超、約350%超、約400%超、約450%超、約500%超、約1000%超である。本発明の更なる態様において、サイトカインは炎症誘発性サイトカインである。本発明の更なる態様において、サイトカインはTNF-αサイトカインである。本発明の更なる態様では、IFN-γサイトカインである。
【0315】
本発明の更なる態様において、γδTCRのVδ1鎖に結合する本明細書に記載される抗体もしくは多特異性抗体またはそれらの断片を選択する、または特性評価する、または比較する方法であって、Vδ1+細胞を含む細胞集団に前記抗体を適用し、次いで生成された少なくとも1つのサイトカインのレベルを測定することにより行われる方法が提供される。本発明の更なる態様において、測定されるサイトカインは、TNF-αサイトカイン及び/またはIFN-γサイトカインである。
【0316】
本発明の更なる態様において、γδTCRのVδ1鎖に結合する抗体もしくは多特異性抗体またはそれらの断片を評価する方法であって、Vδ1+細胞を含む細胞集団に前記抗体またはその断片を適用し、産生された炎症誘発性サイトカインの量及び/または腫瘍もしくは腫瘍微小環境に存在するCD45+T細胞の数もしくは密度を決定することによって、抗体がよりコールドまたはコールドな腫瘍を調節してよりホットまたはホットな腫瘍にする効果を測定することにより行われる方法が提供される。
【0317】
Vδ1+細胞のグランザイムB活性を維持する、または誘導する、または増加させる薬物
グランザイムBは、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)及び細胞傷害性T細胞の顆粒に一般的に見出されるセリンプロテアーゼである。グランザイムBは、これらの細胞によってポア形成タンパク質パーフォリンと共に分泌され、疾患細胞などの標的細胞のアポトーシスを媒介する。
【0318】
モデル系において標的疾患細胞(がん細胞など)との共培養物でVδ1+細胞をインキュベートすると、溶解前の標的疾患細胞においてグランザイムBレベル及び活性のレベルを測定することができる。注目すべきことに、このようなモデル系で、γδTCRのVδ1鎖に結合する本明細書に記載される抗体またはその断片を、Vδ1+細胞及びがん細胞のこのような共培養物に適用すると、細胞死前の疾患がん細胞においてより高いグランザイムBレベル及び活性が観察される(例えば実施例16を参照のこと)。
【0319】
よって、本発明の別の態様では、γδTCRのVδ1鎖に結合する抗体またはその断片を評価する方法であって、Vδ1+細胞及び疾患細胞(がん細胞など)を含む共培養物に抗体またはその断片を投与することと、共培養物中の疾患細胞によって産生されたグランザイムBの量に対する効果を測定することとを含む方法が提供される。産生されたサイトカインの量は、一定期間にわたって決定/測定してもよく、場合により、同じ期間にわたって前記抗体を前記共培養物に適用しない場合に観察される量と比較してもよい。一実施形態において、前記抗体を前記共培養物に適用した場合に測定されるグランザイムBのレベルは、前記抗体を適用しない場合に観察されるグランザイムBレベルに比して、約10%超、約20%超、約30%超、約40%超、約50%超、約70%超、約80%超、約90%超、約100%超、約200%超である。
【0320】
本発明の更なる態様において、γδTCRのVδ1鎖に結合する本明細書に記載される抗体またはその断片を選択する、または特性評価する、または比較する方法であって、Vδ1+細胞及び疾患細胞を含む共培養物に前記抗体を適用し、次いで疾患細胞におけるグランザイムBの量または活性を測定することによって行われる方法が提供される。
【0321】
ポリクローナルVδ1+細胞集団を増大させる薬物
理想的な多特異性抗体薬物は、Vδ1+細胞の増大が超可変CDR3配列レベルでクローン的に集中しすぎないことを保証するように設計されたものでもあり得る。よって、理想的な抗体薬物は、特定のまたは「プライベートな」δ1+CDR3配列パラトープに結合することによってVδ1+細胞の増殖を誘導することを回避するように設計され得る。むしろ、抗体は、一部のVδ1+細胞のみで提示される配列に結合するのではなく、すべてのVδ1+T細胞受容体に存在する保存された生殖系配列を介して、かつガンマ鎖に依存しない様式で結合し得る。
【0322】
よって、理想的な抗体薬物は、Vδ1+細胞の増大を刺激して、CDR3配列の混合物を含有する複数のVδ1+細胞を生成することができる。この結果、デルタ可変1鎖上に異なるCDR3配列を提示するVδ1+細胞のin vivoで増大した異種ポリクローナル集団が得られる。注目すべきことに、Vδ1+細胞を含有する免疫細胞の出発集団に本明細書に記載される抗体またはその断片を付加する方法によって生成された、増大したVδ1+細胞集団の分析中に、抽出されたRNAのCDR3超可変領域を通してシーケンシングするように設計されたRNAseqベースの方法によって、高度のポリクローナル性が観察されている(例えば実施例10を参照のこと)。
【0323】
したがって、一態様では、γδTCRのVδ1鎖に結合する抗体またはその断片を評価する方法であって、Vδ1+細胞を含む細胞集団に抗体またはその断片を投与することと、増大したVδ1+細胞のポリクローナル性を決定することとを含む方法が提供される。抗体薬物が、複数のVδ1+CDR3配列を含有する増大したポリクローナル集団を生成することが望ましい。ポリクローナル性は、当技術分野において公知の方法を使用して、例えば、前記Vδ1+細胞のVδ1鎖超可変CDR3含有量を分析することができる核酸シーケンシングアプローチによって決定することができる。
【0324】
ポリクローナルVδ1+細胞を長時間増大させる薬物
理想的な多特異性抗体薬物は、初代Vδ1+細胞をin vivoで消耗することなく、かかる細胞の増殖を増強する、または促進する、または刺激することができる可能性がある。例えば、比較として、OKT3などの抗CD3薬物(例えばムロノマブ)は、CD3陽性T細胞を増大させることができる一方で、消耗する、またはアネルギーを誘導することもある。本明細書に記載されるγδTCRのVδ1鎖に結合する多特異性抗体の単特異性バージョンが生存可能なVδ1+細胞の持続的な細胞分裂を駆動する能力を評価するために、単特異性抗体を使用してより長期の増殖研究を行った。注目すべきことに、これらの研究により、本明細書に記載される、γδTCRのVδ1鎖に結合する多特異性抗体の単特異性バージョンが、生存可能で依然として機能的に細胞傷害性であるVδ1+細胞の細胞分裂/増殖を40日以上駆動できることが明らかになった(例えば実施例10を参照のこと)。
【0325】
一実施形態において、γδTCRのVδ1鎖に結合する抗体またはその断片を評価する方法であって、抗体またはその断片を細胞集団に適用することと、Vδ1+細胞の分裂が起こる時間の長さをモニタリングすることとを含む方法が提供される。抗体は、5~60日間、例えば少なくとも7~45日間、7~21日間、または7~18日間にわたってVδ1+細胞の分裂を刺激することができるのが理想的である。
【0326】
更なる実施形態では、γδTCRのVδ1鎖に結合し、患者に投与されるとVδ1+細胞の分裂を刺激して、その数を少なくとも2倍の数、少なくとも5倍の数、少なくとも10倍の数、少なくとも25倍の数、少なくとも50倍の数、少なくとも60倍の数、少なくとも70倍の数、少なくとも80倍の数、少なくとも90倍の数、少なくとも100倍の数、少なくとも200倍の数、少なくとも300倍の数、少なくとも400倍の数、少なくとも500倍の数、600倍の数で、少なくとも1,000倍の数だけ増加させることができる、本明細書に記載される多特異性抗体またはその断片が提供される。
【0327】
本発明の更なる態様において、γδTCRのVδ1鎖に結合する本明細書に記載される抗体またはその断片を選択する、または特性評価する、または比較する方法であって、Vδ1+細胞、またはVδ1+細胞を含有する混合細胞集団に前記抗体を適用し、次いでVδ1+細胞数を経時的に測定することによって行われる方法が提供される。
【0328】
Vδ1+免疫細胞のターゲティングによって非Vδ1+免疫細胞を調節する薬物
本明細書に記載される多特異性抗体またはその断片は、他の免疫細胞のVδ1+細胞媒介性調節を測定することによって評価することもできる。例えば、非γδT細胞「画分」で観察される変化が、ヒト組織αβ細胞及びγδT細胞を含むものなどの免疫細胞の混合集団を含むモデル系に、本明細書に記載される抗体またはその断片を適用した後に測定され得る。更に、前記モデルにおける非γδ細胞型に対する効果は、フローサイトメトリーによって測定することができる。例えば、γδT細胞及び非γδT細胞を含む混合培養物に、本明細書に記載される抗体またはその断片を付加した際の、CD8+αβT細胞の数における相対的変化を測定することによる。場合により、非γδT細胞CD8+リンパ球集団の数または表現型において観察される変化を、代替的なコンパレータ抗体(例えばOKT-3)を前記混合集団に適用した場合の数の変化と比較してもよい。
【0329】
よって、本発明の別の態様では、γδTCRのVδ1鎖に結合する抗体またはその断片を評価する方法であって、Vδ1+細胞及びVδ1陰性免疫細胞を含む免疫細胞または組織の混合集団に抗体またはその断片を投与することと、Vδ1陰性免疫細胞に対する効果を測定することとを含む方法が提供される。この効果は、一定期間にわたって決定/測定してもよく、場合により、同じ期間にわたって前記抗体を適用しない場合にVδ1陰性細胞で観察される効果と比較してもよい。この効果は、Vδ1陰性免疫細胞の数の変化として測定され得る。例えば、抗体は、Vδ1陰性免疫細胞の数を、前記抗体を適用しない場合に観察されるレベルに比して、約10%超、約20%超、約30%超、約40%超、約50%超、約70%超、約80%超、約90%超、約100%超、約500%超増加させ得る。
【0330】
本発明の更なる態様において、調節されるVδ1陰性細胞は、CD45+細胞である。本発明の更なる態様において、調節される細胞は、αβT細胞である。本発明の更なる態様において、調節されるαβ+細胞は、CD8+リンパ球である。本発明の更なる態様において、調節されるαβT細胞またはその集団は、細胞分裂の増強の証拠を示す。本発明の更なる態様において、γδTCRのVδ1鎖に結合する本明細書に記載される抗体またはその断片を選択する、または特性評価する、または比較する方法であって、Vδ1+細胞及びVδ1陰性免疫細胞を含む免疫細胞の混合集団に前記抗体を投与し、次いで前記抗体またはその断片によって調節されたVδ1+細胞によりVδ1陰性細胞集団に付与された効果を測定することによって行われる方法が提供される。
【0331】
場合により、本明細書に記載される抗体またはその断片によって付与される「Vδ1+細胞媒介性免疫系調節」中に、Vδ1+細胞数の付随する増加も観察される。そして、この理論に束縛されるものではないが、Vδ1+細胞数における前記増加は、αβT細胞などの共存するVδ1陰性免疫細胞の同時増大を駆動する原因となり得る可能性がある。代替の仮説は、Vδ1+T細胞からの抗体誘導性サイトカイン分泌がVδ1陰性免疫細胞の増大を刺激するというものであり得る。
【0332】
本発明の更なる態様において、αβ+CD8+リンパ球集団で観察される増加は、OKT3抗体または代替の抗Vδ1抗体などのコンパレータ抗体と比較される。本発明の更なる態様において、γδTCRのVδ1鎖に結合する本明細書に記載される抗体またはその断片を選択する、または特性評価する、または比較する方法であって、Vδ1+T細胞及びαβT細胞を含む免疫細胞の混合集団に前記抗体を適用し、次いでCD8+αβ+T細胞リンパ球の数を経時的に測定することによって行われる方法が提供される。
【0333】
腫瘍浸潤リンパ球(TIL)を調節する薬物
本明細書に記載される多特異性抗体またはその断片は、モデル系において腫瘍浸潤集団(TIL)に付与される効果を測定することによって評価することもできる。驚くべきことに(例えば実施例18を参照のこと)、そのような評価において、本明細書に記載される多特異性抗体の単特異性バージョンは、ヒト腫瘍におけるTIL集団を測定可能に調節した。例えば、γδ+リンパ球TIL集団または非γδリンパ球TIL集団の数または表現型のいずれかにおける変化が、本明細書に記載される抗体またはその断片をヒト腎細胞癌などのヒト腫瘍に適用した後に測定される。場合により、γδ+リンパ球TIL集団または非γδリンパ球TIL集団のいずれかの数または表現型において観察される変化を、代替的なコンパレータ抗体(例えばOKT-3)を前記モデル系に適用した場合に観察される変化と比較してもよい。
【0334】
よって、本発明の別の態様では、γδTCRのVδ1鎖に結合する抗体またはその断片を評価する方法であって、ヒト腫瘍内に位置するまたはヒト腫瘍に由来するTILに抗体またはその断片を投与することと、TILの数に対する効果を決定することとを含む方法が提供される。この効果は、一定期間にわたって決定/測定してもよく、場合により、同じ期間にわたって前記抗体を適用しない場合に観察されるTIL数と比較してもよい。この効果は、TILの数の増加であり得る。例えば、抗体は、TILの数を、前記抗体を適用しない場合に観察されるTILの数に比して、約10%超、約20%超、約30%超、約40%超、約50%超、約70%超、約80%超、約90%超、約100%超増加させ得る。更なる態様において、数が観察されるTILは、γδ+リンパ球TIL細胞及び/または非γδリンパ球TIL細胞である。
【0335】
本発明の更なる態様において、γδTCR細胞抗体のVδ1鎖に結合する本明細書に記載される抗体またはその断片を選択する、または特性評価する、または比較する方法であって、ヒト腫瘍内に位置するまたはヒト腫瘍に由来するTILまたは複数のTILに前記抗体を適用し、次いでTILまたは複数のTILの数の変化を経時的に測定することによって行われる方法が提供される。
【0336】
ヒトVδ1+細胞傷害性を調節する薬物
本明細書に記載される多特異性抗体またはその断片は、Vδ1+媒介性細胞傷害性に付与される効果を測定することによって評価することもできる。驚くべきことに、本明細書に記載される多特異性抗体の単特異性バージョン及びいくつかの多特異性抗体自体のそのような評価において(例えば実施例19、23、24及び27などを参照のこと)、測定可能に増強されたVδ1+媒介性細胞傷害性が観察された。例えば、がん細胞の数の低減、または殺傷されたがん細胞の数の増加が、Vδ1+細胞及び前記がん細胞を含む混合培養物を含むモデル系に抗体またはその断片を適用した後に観察される。場合により、がん細胞の数の低減、または殺傷されたがん細胞の数の増加を、代替的なコンパレータ抗体(例えばOKT-3)を前記モデル系に適用した場合の転帰と比較してもよい。
【0337】
よって、本発明の別の態様では、γδTCRのVδ1鎖に結合する抗体またはその断片を評価する方法であって、Vδ1+細胞及びがん細胞を含む細胞の混合集団に抗体またはその断片を適用することと、がん細胞に対するVδ1+細胞の細胞傷害性を測定することとを含む方法が提供される。細胞傷害性は、一定期間にわたる死んだがん細胞の数の増加によって測定することができ、場合により、同じ期間にわたって前記抗体を細胞の混合集団に適用しない場合に観察される死んだがん細胞の数と比較してもよい。例えば、前記抗体を適用した場合の死細胞で観察される増加は、前記抗体を適用しない場合に観察される死細胞の数に比して、約10%超、約20%超、約30%超、約40%超、約50%超、約70%超、約80%超、約90%超、約100%超、約200%超、約500%超であり得る。
【0338】
本発明の更なる態様において、γδTCR細胞のVδ1鎖に結合する本明細書に記載される抗体またはその断片を選択する、または特性評価する、または比較する方法であって、ヒトVδ1+細胞及びがん細胞を含む免疫細胞の前記混合集団に前記抗体を付加し、次いで死んだがん細胞の増加を経時的に測定することによって行われる方法が提供される。
【0339】
Vδ1+細胞標的対エフェクター細胞比(T:E比)を調節する薬物
本明細書に記載される多特異性抗体またはその断片は、前記抗体を潜在的な薬物として評価するために、モデル系で標的細胞の50%(EC50)が殺傷される標的細胞対エフェクター細胞比を決定することにより、前記抗体がどのようにVδ1+媒介性がん細胞傷害性を増強するかを測定することによって評価することもできる。例えば、標的がん細胞とヒトVδ1+エフェクター細胞を含む混合培養物。驚くべきことに、そのような評価において(例えば実施例19s及び23などを参照のこと)、本明細書に記載される多特異性抗体(及びここに記載する多特異性抗体の単特異性バージョン)は、モデル系におけるEC50 T:E比を有利に改変する。そのような改変は、一定期間でがん細胞の50%の殺傷を観察するのに必要なVδ1+細胞の数として測定することができる。これはまた、前記がん細胞に対する細胞傷害性の変化または向上倍率または向上率として報告することもできる。場合により、本発明の抗体によって付与されるT:E比を、代替的なコンパレータ抗体(例えばOKT-3)を前記モデル系に適用した場合のT:E比と比較してもよい。いくつかのシナリオでは、本発明の多特異性抗体は、単特異性抗体と比較して、より低いE:T比でもがん細胞傷害性を向上させる機会を提示する。
【0340】
よって、本発明の別の態様では、γδTCRのVδ1鎖に結合する多特異性抗体またはその断片を評価する方法であって、ヒトVδ1+細胞及びがん細胞を含む細胞の混合集団に抗体またはその断片を適用することと、がん細胞の50%を殺傷するのに必要なVδ1+細胞の数を測定することとを含む方法が提供される。これは、場合により同じ期間にわたって、前記抗体を適用せずにがん細胞の50%を殺傷するのに必要なVδ1+細胞の数に比して測定され得る。例えば、前記抗体を適用した場合にがん細胞の50%を殺傷するのに必要なVδ1+細胞の数の低減は、前記抗体を適用しない場合にがん細胞の50%を殺傷するのに必要なVδ1+細胞の数に比して、約10%超、約20%超、約30%超、約40%超、約50%超、約70%超、約80%超、約90%超、約100%超、約200%超、約500%超であり得る。
【0341】
本発明の更なる態様において、Vδ1鎖に結合する本明細書に記載される抗体またはその断片を選択する、または特性評価する、または比較する方法であって、Vδ1+細胞とがん細胞を含む前記細胞集団に前記抗体を付加し、次いでがん細胞の50%を殺傷するのに必要なVδ1+細胞の数を測定することによって行われる方法が提供される。
【0342】
Vδ1+細胞のEC50細胞傷害性を増強する薬物
ヒトVδ1+細胞またはその集団の観察される細胞傷害性の増強を測定する代替方法は、条件A(例えば出発対照)で一定期間にわたってがん細胞の50%を殺傷するのに必要な細胞の数を測定し、これを条件B(例えば本明細書に記載される本発明の抗体の適用時)で一定期間にわたってがん細胞の50%を殺傷するのに必要な細胞の数と比較することである。
【0343】
そのようなパラメータを測定するには種々の方法があることは認識されているが、理解を助けるために、以下の非限定的な仮説例について概説する。
【0344】
仮説上、エフェクター細胞傷害性の増強は次のように測定できる:条件A(対照処置)では、一定期間(例えば5時間)にわたってがん細胞の50%を殺傷するのに1000個のVδ1+細胞が必要であることが観察される。条件B(例えば、本明細書に記載される本発明の多特異性抗体の適用)では、同じ期間にわたってがん細胞の50%を殺傷するのに500個のVδ1+細胞が必要であったと観察される。よって、この例では、抗体の適用によってVδ1+細胞集団の細胞傷害性が200%増強された:
(1000/500)×100=200%
【0345】
例えば(例えば実施例19を参照のこと)、驚くべきことに、本明細書に記載される本発明の抗体について、このようなパーセンテージの増強が観察された。
【0346】
本発明の更なる態様において、γδTCRのVδ1鎖に結合する本明細書に記載される抗体またはその断片を選択する、または特性評価する、または比較する方法であって、Vδ1+細胞及びがん細胞を含む免疫細胞の前記混合集団に前記抗体を付加し、細胞の前記混合物に前記抗体を適用しない同等または対照の実験に対する細胞傷害性の相対的変化または変化率を決定することによって行われる方法が提供される。
【0347】
健康細胞を温存しながらVδ1+細胞の疾患細胞特異性を増強する薬物
本明細書に記載されるその多特異性抗体を評価する別のアプローチは、前記抗体がどのように疾患細胞特異的な細胞傷害性を調節するかを測定することである。驚くべきことに、このような研究において、単特異性抗体及び多特異性抗体が、健康細胞または非疾患細胞を温存しながら、がん細胞などの疾患細胞のVδ1+細胞特異的殺傷を特異的に増強し得ることが発見された(例えば実施例19及び23などを参照のこと)。がんの症状を改善するために患者に投与される理想的な抗体薬物は、健康細胞を温存しながら、特に疾患細胞に対して増強された細胞傷害性を付与する。そして、特にがん細胞などの疾患細胞に対するエフェクター細胞傷害性を増強する薬物は、特に前記疾患細胞に対するエフェクター細胞傷害性を選択的に増強しない薬物よりも高い治療指数(TI)を示すと言うことができる。治療指数は、治療比とも称され、薬物の相対的安全性の定量的測定値である。これは、治療効果を引き起こす治療剤の量と、例えば関連するまたは関連性のある健康細胞集団に望ましくない死をもたらすことによって毒性を引き起こす量との比較である。本明細書に記載される多特異性抗体またはその断片は、モデル系において健康細胞以上に疾患細胞を選択的に殺傷するVδ1+細胞の能力を変化させる、または増強する、または倍増させる能力を測定することによって評価することができる。例えば、前記モデル系は、Vδ1+エフェクター細胞、がん細胞、及び対照細胞(健康細胞など)を含み得る。場合により、本発明の多特異性抗体によって付与される選択的な疾患細胞の殺傷における向上倍率を、代替的なコンパレータ抗体(例えばOKT-3)を前記モデル系に適用した場合に観察される向上倍率と比較してもよい。
【0348】
Vδ1+細胞の疾患細胞特異性及び疾患細胞特異性の増強は、Vδ1+細胞、疾患細胞、及び健康細胞を含む培養物において測定することができる。例えば、疾患細胞に対するVδ1+特異性は、Vδ1+細胞によって殺傷されるがん細胞の数を観察し、次いでVδ1+細胞によって殺傷される健康細胞の数を比較することによって測定することができる。このような比較は、Vδ1+細胞も含むモデル系に同数の疾患細胞及び健康細胞を含めること、例えば「三種培養」によってコントロールすることができる。例えば、分析または機器の制限により、3つ以上の細胞型のすべてを単一のアッセイ(Vδ1+細胞、疾患細胞、及び非疾患細胞を含む)で並列に区別し追跡する能力が低減する場合には、代替的な比較方法を検討することもできる。前記の事例では、1つの実験において疾患細胞に対するVδ1+細胞傷害性を比較し、次いで別個の同等な実験において健康細胞に対するVδ1+細胞傷害性を比較することで、このような研究の代替アプローチが提供される。
【0349】
本発明の別の態様では、γδTCRのVδ1鎖に結合する多特異性抗体またはその断片を評価する方法であって、Vδ1+細胞及び標的細胞を含む細胞集団に多特異性抗体またはその断片を投与することと、標的細胞に対する細胞傷害性特異性を測定することとを含む方法が提供される。一実施形態において、第1の標的細胞型に対する細胞傷害性特異性を、第2の標的細胞型に対して観察される細胞傷害性と比較してもよく、したがって、この方法は、異なる標的細胞型を使用して繰り返してもよい。本発明の更なる態様において、第1の標的細胞型は疾患細胞であり、第2の標的細胞型は、健康細胞、または第1の標的細胞型とは異なる疾患を有する細胞などの対照細胞である。
【0350】
本発明の更なる態様において、γδTCRのVδ1鎖に結合する本明細書に記載される多特異性抗体またはその断片を選択する、または特性評価する、または比較する方法であって、前記抗体が(i)第1の細胞型及び(ii)第2の細胞型に対するVδ1+細胞傷害性に付与する効果が測定及び比較される方法が提供される。本発明の更なる態様において、第2の細胞型に対するものよりも第1の細胞型に対する特異的細胞傷害性を増強する抗体がこれによって選択される。本発明の更なる態様において、第1の細胞型は疾患細胞であり、第2の細胞型は健康細胞である。
【0351】
本明細書に記載されるように、アッセイで使用される多特異性抗体またはその断片は、表面に、例えばFc受容体を含む細胞などの細胞の表面に提示され得る。例えば、抗体またはその断片は、TIB-202(商標)細胞(American Type Culture Collection(ATCC)から入手可能)などのTHP-1細胞の表面に提示され得る。あるいは、多特異性抗体またはその断片は、アッセイで直接使用してもよい。
【0352】
このような機能アッセイにおいて、「EC50」または「50パーセント有効濃度」とも称される最大半量濃度を計算することによって、出力を測定できる。「IC50」という用語は、阻害濃度を指す。EC50及びIC50はいずれも、フローサイトメトリー法など、当技術分野において公知の方法を使用して測定することができる。いくつかの事例では、EC50及びIC50は同じ値であるか、または同等とみなすことができる。例えば、ある特定の細胞型の50%を阻害する(例えば殺傷する)のに必要なエフェクター細胞の有効濃度(EC)は、50%阻害濃度(IC)とみなすこともできる。疑義を避けるために付言すると、抗体に関する場合、本願におけるEC50の値は、IgG1フォーマットの抗体を使用して提供されている。このような値は、抗体フォーマットの分子量に基づいて、次のように同等の値に容易に変換できる:
(μg/ml)/(kDa単位のMW)=μM
【0353】
抗体(または断片)結合時のγδTCRの下方制御についてのEC50は、0.50μg/ml未満、例えば0.40μg/ml未満、0.30μg/ml未満、0.20μg/ml未満、0.15μg/ml未満、0.10μg/ml未満、0.06μg/ml未満または0.05μg/ml未満であり得る。好ましい実施形態において、抗体(または断片)結合時のγδTCRの下方制御についてのEC50は、0.10μg/ml未満である。特に、抗体(または断片)結合時のγδTCRの下方制御についてのEC50は、0.06μg/ml未満、例えば0.05μg/ml未満、0.04μg/ml未満または0.03μg/ml未満であり得る。特に、前記EC50値は、抗体がIgG1フォーマットで測定された場合のものである。例えば、γδTCR下方制御のEC50値は、フローサイトメトリーを使用して測定することができる(例えば実施例6及び23などのアッセイに記載のとおり)。
【0354】
抗体(または断片)結合時のγδT細胞脱顆粒についてのEC50は、0.050μg/ml未満、例えば0.040μg/ml未満、0.030μg/ml未満、0.020μg/ml未満、0.015μg/ml未満、0.010μg/ml未満または0.008μg/ml未満であり得る。特に、抗体(または断片)結合時のγδT細胞脱顆粒についてのEC50は、0.005μg/ml未満、例えば0.002μg/ml未満であり得る。好ましい実施形態において、抗体(または断片)結合時のγδT細胞脱顆粒についてのEC50は、0.007μg/ml未満である。特に、前記EC50値は、抗体がIgG1フォーマットで測定された場合のものである。例えば、γδT細胞脱顆粒のEC50値は、フローサイトメトリーを使用してCD107a発現(すなわち細胞脱顆粒のマーカー)を検出することによって測定することができる(例えば実施例7のアッセイに記載のとおり)。一実施形態において、CD107a発現は、抗ヒトCD107a BV421(クローンH4A3)(BD Biosciences)などの抗CD107a抗体を使用して測定される。
【0355】
抗体(または断片)結合時のγδT細胞殺傷についてのEC50は、0.50μg/ml未満、例えば0.40μg/ml未満、0.30μg/ml未満、0.20μg/ml未満、0.15μg/ml未満、0.10μg/ml未満または0.07μg/ml未満であり得る。好ましい実施形態において、抗体(または断片)結合時のγδT細胞殺傷についてのEC50は、0.10μg/ml未満である。特に、抗体(または断片)結合時のγδT細胞殺傷についてのEC50は、0.060μg/ml未満、例えば0.055μg/ml未満、特に0.020μg/ml未満であり得る。特に、前記EC50値は、抗体がIgG1フォーマットで測定された場合のものである。例えば、γδT細胞殺傷のEC50値は、抗体、γδT細胞及び標的細胞のインキュベーション後のフローサイトメトリーを使用して、死細胞の割合を(すなわち細胞生死判別色素を使用して)検出することによって測定することができる(例えば実施例8のアッセイに記載のとおり)。一実施形態において、標的細胞の死は、細胞生死判別色素であるViability Dye eFluor(商標)520(ThermoFisher)を使用して測定される。
【0356】
これらの態様で説明されるアッセイにおいて、抗体またはその断片は、THP-1細胞、例えばTIB-202(商標)(ATCC)などの細胞の表面に提示され得る。THP-1細胞は、CellTracker(商標)Orange CMTMR(ThermoFisher)などの色素で場合により標識される。
【0357】
Vδ1 TCRに関連するCD3分子を下方制御する薬物。
現在の多特異性TCEフォーマットの薬物は、典型的には、CD3結合事象を介してT細胞に会合し、それを活性化させる。これは、T細胞の表面からのCD3分子複合体の下方制御をもたらし得る。しかしながら、TCEがこのような会合及び下方制御を介してT細胞を過剰に刺激する可能性もあることも十分に理解されている。CD3分子複合体は、1つのクラスのT細胞に特異的ではないため、正確に狙える標的ではない。CD3を介してすべてのT細胞(主にαβサブタイプ)を刺激すると、結果としてサイトカインの過剰産生が起こり、急性のサイトカインフレア(いわゆるサイトカインストーム)につながり得る。さらに、CD3を介してすべてのT細胞に会合して活性化する標的を定めないアプローチでは、逆説的にT細胞が過剰に活性化される可能性があり、これは慢性的なT細胞消耗及び/またはT細胞死につながる。実際、本明細書で提示するアプローチはエフェクター集団と特異的に相互作用するのに対し、この非特異的な汎T細胞活性化は、エフェクターT細胞及び制御性T細胞の両方の活性化につながる。したがって、この「スレッジハンマー」アプローチは、選択的なT細胞のみを上方制御することが望まれ得る場合には決して理想的とは言えない。
【0358】
対照的に、本明細書で提示されるのは、T細胞/CD3複合体と別様に会合する多特異性抗体、特にT細胞エンゲージャーである。具体的には、これらのTCEは、Vδ1+細胞上でのみ発現されるVδ1 TCRのTRDV1ドメインを介して会合することができる。そうすることで、このようなTCEベースの薬物は別様に機能する。まず、これらのTCEは、TRDV-1エピトープとの会合を介してTCRを下方制御することができる。その結果、この会合事象は、TCR関連CD3分子複合体を下方制御することができる。このようなCD3の下方制御は、T細胞の活性化と同義である。しかしながら、このようにTRDV1ドメインを介してT細胞/CD3複合体と会合することにより、Vδ1 TCRに関連するCDR3分子のみが下方制御される。Vδ1細胞を特異的にターゲティングして活性化するこのアプローチにより、上記の問題(例えばサイトカインストーム、T細胞の消耗/枯渇、及びADCC)の多くを回避することができる。このメカニズムは
図30に明示されている。
【0359】
CD3「スレッジハンマー」アプローチによるT細胞の刺激は、ADCCなどのFcガンマ受容体が駆動するメカニズムを介したT細胞の枯渇にも寄与し得る。したがって、現在臨床に用いられているCD3ターゲティング二重特異性抗体の大多数は、FcγRに対する結合活性が低減したFcドメインを有するか、または意図的にFc領域を含まない二重特異性断片である。CD3ターゲティング療法では、T細胞受容体複合体結合アームの結合親和性が低減する場合もある。
【0360】
この親和性の低減は、TCEの設計及び機能性に関して有効性の低減及び選択可能性の低下をもたらし得る。例えば、このようなTCEにおける結合ドメインの親和性はin vivoの分布プロファイルを駆動することが知られている。具体的には、TCEの分布はその親和性の最も高い標的に偏っていることが通常観察される。よって、T細胞複合体に対するTCE結合ドメインの親和性を低減させると、まさにこのようなTCEの有効性を駆動するために必要な細胞であるT細胞から分布の偏りが遠ざかることが一般的である。TCEの治療域が「きわめて狭い」と言われるのは、部分的にはこのような理由のためである。
【0361】
ここで提示するアプローチは、vδ1細胞を特異的にターゲティングして活性化し、場合により、Fc機能を除去するまたは親和性を低減させる必要を回避する。
【0362】
さらに、ここで提示するアプローチでは、抗体はvδ1細胞のTCRに会合するが、腫瘍細胞も存在しない限り完全な活性化は起こらない。本明細書で提示される抗体がTCRに完全に会合すると部分的な下方制御が生じ、本明細書で提示される抗体が結合したvδ1細胞は、腫瘍微小環境でのみ完全に活性化され、細胞傷害性になる。これは、本件のアプローチに関する別の重要な安全上の利点を表す。なぜなら、オフターゲット細胞傷害性が低減し、vδ1細胞を活性化させる本抗体の効力の全てが腫瘍細胞の存在下でのみ解放されるからである。
【0363】
γδT細胞が腫瘍細胞のストレスシグナルを検出できるメカニズムの1つは、それらが発現するNCR(天然細胞傷害性受容体)に起因すると考えられている。NCRは、腫瘍細胞上のNCRリガンドに会合することができる。したがって、TCR刺激を介してγδT細胞が活性化され、NCRが腫瘍細胞を感知して完全な活性化及び細胞傷害性を有効にする、活性化のデュアルメカニズムが用いられる。
【0364】
これは、CD3を介したαβT細胞の刺激とは対照的であり、αβT細胞の刺激は、すべての刺激がTCRを介する。したがって、そのような細胞は、NCRを介した抗原提示に依存しない腫瘍細胞の感知をしないため、健康細胞または形質転換細胞の区別がほぼ不可能である。したがって、CD3抗体がFcであれば、それらは他の免疫細胞を誘引し、これがサイトカインストーム、免疫細胞の消耗及び更には過剰活性化といった予想外の望ましい事象のカスケードを誘起し、例えば、NK細胞によるT細胞の殺傷などをもたらすことができる。本件のアプローチでは、両方のγδT細胞(及びNK細胞などの他の免疫細胞)が健康細胞と腫瘍細胞とを区別することができるため、本明細書で提示される抗体によるγδT細胞の刺激は、このような懸念を生じない。例えば、それらのNCR感知メカニズムを介し、したがって互いを殺傷しない。
【0365】
例えば、ヒト及びカニクイザルの両方のvδ1抗原(配列番号1及び配列番号172)に対する特異性を有する、本明細書で提示される抗vδ1 Fc有効型多特異性抗体を用いた初期のカニクイザル研究では、用量漸増反復投与in-vivo研究において、測定されたすべてのパラメータにより、安全かつ忍容性良好であることが見出された。サイトカインの放出または体重減少など、T細胞活性化に通常関連する副作用は観察されなかった。
【0366】
これらの所見は、本明細書に記載されるアプローチの別の利点も明らかにしている。具体的には、CD3エンゲージャーなどに代表されるTCEとは異なり、本発明のTCE二重特異性薬は、場合により、例えばVL-CLフォーマットの同族軽鎖を伴うVH-CH1-CH2-CH3フォーマットの重鎖を含む完全長抗体として設計され得る。より小さい二重特異性フォーマット(例えば70KDa未満)とは異なり、このような完全長二重特異性フォーマットは、in-vivoでより長い半減期を示すことができ、したがって必要な投薬レジメンの頻度が減る。このようなフォーマットによって観察される半減期がより長いのは、サイズの増加(>70KDa)を含む種々の理由によるものであり、サイズの増加は、このようなフォーマットが腎臓によって濾過されないことを意味する(糸球体の孔径のカットオフは60~70KDa)。一実施形態において、多特異性抗体は、約70KDaより大きくてもよく、IMGTに収載されているヒトIGHC配列(例えばIGHA、IGHD、IGHD、IGHM、IGHG配列)を含み得る。このようなIgG1フォーマットは、FcRnメカニズムによって再循環することもできる。特にTCE二重特異性薬に関するこのような完全長抗体フォーマットの明らかな欠点は、このようなフォーマットが、クリアランス率の低下、曝露の増加、及びより慢性的な曝露に起因する好ましくない安全性プロファイルを示すことである。
【0367】
したがって、本件のアプローチは、NK細胞がγδT細胞を殺傷することまたはその逆のような、オフターゲット効果の懸念のないFc機能性の可能性を可能にする。したがって、本件のアプローチは、腫瘍環境外の付帯的損傷を制限するためにCD3親和性の低減、Fc機能の消失などのような対策が必要であるという制約をもつCD3指向性アプローチよりも優れている。ここで提示する多特異性抗体、特にT細胞エンゲージャーは、損傷の可能性なしにvδ1細胞に結合することができ、完全な活性化及び細胞傷害性の増強は、vδ1細胞が腫瘍細胞と密接に接触している場合にのみ起こる。
【0368】
よって、一実施形態において、TCE多特異性抗体によって細胞表面上のTRDV1含有Vδ1 TCR及び関連するCD3分子複合体を下方制御する方法、ならびにこの目的のためのそのような多特異性抗体の使用が提供される。
【0369】
ポリヌクレオチド及び発現ベクター
本発明の一態様において、本発明の多特異性抗体または断片をコードするポリヌクレオチドが提供される。一実施形態において、ポリヌクレオチドは、配列番号99~110のいずれか1つと少なくとも70%、例えば少なくとも80%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも99%の配列同一性を有する配列を含むか、またはそれからなる。一実施形態において、発現ベクターは、配列番号99~110のいずれか1つのVH領域を含む。別の実施形態において、発現ベクターは、配列番号99~110のいずれか1つのVL領域を含む。更なる実施形態において、ポリヌクレオチドは、配列番号99~110を含むか、またはそれからなる。更なる態様において、前記ポリヌクレオチドを含むcDNAが提供される。ポリヌクレオチドは、第2の結合ドメインをコードする配列を更に含んでもよく、第2の結合ドメインは、第2の抗原に対する特異性を付与し得る。
【0370】
本発明のポリヌクレオチド及び発現ベクターは、コードされるアミノ酸配列を参照して記載されることもある。したがって、一実施形態において、ポリヌクレオチドは、配列番号62~85のいずれか1つのアミノ酸配列をコードする配列を含むか、またはそれからなる。一実施形態において、発現ベクターは、配列番号62~73のいずれか1つのアミノ酸配列をコードする配列を含む。別の実施形態において、発現ベクターは、配列番号74~85のいずれか1つのアミノ酸配列をコードする配列を含む。ポリヌクレオチド及び発現ベクターは、更なる結合ドメインをコードする配列を更に含んでもよく、更なる結合ドメインは、第2の抗原に対する特異性を付与し得る。
【0371】
抗体またはその断片を発現させるには、遺伝子が転写制御配列及び翻訳制御配列に作動可能に連結されるように、本明細書に記載されるような軽鎖及び重鎖の一部または完全長をコードするポリヌクレオチドを発現ベクターに挿入する。したがって、本発明の一態様において、本明細書で定義されるポリヌクレオチド配列を含む発現ベクターが提供される。
【0372】
本明細書に記載されるヌクレオチド配列は、翻訳、精製及び検出を助けるためにアミノ酸残基をコードする追加の配列を含んでもよいが、使用される発現系に応じて代替的な配列が使用され得ることは理解されよう。例えば、配列番号99~110の最初(5’末端)の9ヌクレオチド、及び配列番号99~100、102~103、105~110の最後(3’末端)の36ヌクレオチド、または配列番号101及び104の最後(3’末端)の39ヌクレオチドは、任意選択の配列である。これらの任意選択の配列は、代替の設計、翻訳、精製または検出ストラテジーが採用される場合には除去、改変、または置換されてもよい。
【0373】
ポリペプチドをコードするDNAまたはcDNAに対して、ポリペプチドのアミノ酸配列に関してサイレントであるが特定の宿主における翻訳のために好ましいコドンを提供する突然変異を起こしてもよい。例えば、E.coli及びS.cerevisiae、ならびに哺乳動物、特にヒトにおける核酸の翻訳のための好ましいコドンは公知である。
【0374】
ポリペプチドの突然変異は、例えば、ポリペプチドをコードする核酸に対する置換、付加または欠失によって達成され得る。ポリペプチドをコードする核酸に対する置換、付加または欠失は、例えば、エラープローンPCR、シャッフリング、オリゴヌクレオチド指定突然変異誘発、アセンブリPCR、PCR突然変異誘発、in vivo突然変異誘発、カセット突然変異誘発、再帰アンサンブル突然変異誘発、指数アンサンブル突然変異誘発、部位特異的突然変異誘発、遺伝子再構築、人工遺伝子合成、遺伝子部位飽和突然変異誘発(GSSM)、合成ライゲーション再構築(SLR)、またはこれらの方法の組み合わせを含む多くの方法によって導入され得る。核酸に対する改変、付加または欠失も、組換え、再帰的配列組換え、ホスホチオエート改変DNA突然変異誘発、ウラシル含有テンプレート突然変異誘発、ギャップ二重鎖突然変異誘発、ポイントミスマッチ修復突然変異誘発、修復欠損宿主株突然変異誘発、化学的突然変異誘発、放射性突然変異誘発、欠失突然変異誘発、制限選択突然変異誘発、制限精製突然変異誘発、アンサンブル突然変異誘発、キメラ核酸多量体作製、またはこれらの組み合わせを含む方法によって導入され得る。
【0375】
特に、人工遺伝子合成を使用することができる。本発明のポリペプチドをコードする遺伝子は、例えば、固相DNA合成によって合成的に生成することができる。前駆体テンプレートDNAを必要とせずに、遺伝子全体をde novoに合成することができる。所望のオリゴヌクレオチドを得るために、構成要素は、生成物の配列によって必要とされる順序で、成長するオリゴヌクレオチド鎖に連続的に結合される。鎖構築が完了すると、生成物は固相から溶液に放出され、脱保護され、収集される。高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により生成物を単離し、所望のオリゴヌクレオチドを高純度で得ることができる。
【0376】
発現ベクターには、例えば、プラスミド、レトロウイルス、コスミド、酵母人工染色体(YAC)及びエプスタイン・バーウイルス(EBV)由来エピソームが含まれる。ポリヌクレオチドは、ベクター内の転写制御配列及び翻訳制御配列がポリヌクレオチドの転写及び翻訳を制御する意図された機能を果たすように、ベクターにライゲーションされる。発現及び/または制御配列は、プロモーター、エンハンサー、転写ターミネーター、コード配列の5’側の開始コドン(すなわちATG)、イントロンのスプライシングシグナル、及び停止コドンを含み得る。発現ベクター及び発現制御配列は、使用する発現宿主細胞と適合するように選択される。配列番号99~110には、合成リンカー(配列番号98をコードする)によって結合されたVH領域及びVL領域を含む、本発明の多特異性抗体に含まれ得る一本鎖可変断片をコードするヌクレオチド配列が含まれる。本発明のポリヌクレオチドまたは発現ベクターは、VH領域、VL領域、またはその両方(場合によりリンカーを含む)を含み得ることが理解されるであろう。したがって、VH領域及びVL領域をコードするポリヌクレオチドが別々のベクターに挿入されてもよく、あるいは両方の領域をコードする配列が同じ発現ベクターに挿入される。ポリヌクレオチド(複数可)は、標準的な方法(例えば、ポリヌクレオチド及びベクターの相補的制限部位のライゲーション、または制限部位が存在しない場合は平滑末端ライゲーション)によって発現ベクターに挿入される。
【0377】
簡便なベクターは、機能的に完全なヒトCHまたはCL免疫グロブリン配列をコードするものであり、本明細書に記載されるように、任意のVH配列またはVL配列を容易に挿入及び発現できるように工学操作された適切な制限部位を備える。発現ベクターはまた、宿主細胞からの抗体(またはその断片)の分泌を促進するシグナルペプチドをコードすることができる。ポリヌクレオチドは、シグナルペプチドが抗体のアミノ末端にインフレームで連結されるようにベクターにクローン化され得る。シグナルペプチドは、免疫グロブリンシグナルペプチドまたは異種シグナルペプチド(すなわち、非免疫グロブリンタンパク質からのシグナルペプチド)であり得る。
【0378】
本発明の一態様において、本明細書で定義されるポリヌクレオチドまたは発現ベクターを含む細胞(例えば、組換え宿主細胞などの宿主細胞)が提供される。細胞は、抗体またはその断片の軽鎖をコードする第1のベクター、及び抗体またはその断片の重鎖をコードする第2のベクターを含み得ることが理解されよう。あるいは、重鎖及び軽鎖の両方が、細胞に導入される同じ発現ベクター上にコードされる。
【0379】
一実施形態において、ポリヌクレオチドまたは発現ベクターは、抗体またはその断片に融合された膜アンカーまたは膜貫通ドメインをコードし、抗体またはその断片は細胞の細胞外表面に提示される。
【0380】
形質転換は、ポリヌクレオチドを宿主細胞に導入するための任意の公知の方法によることができる。異種ポリヌクレオチドを哺乳動物細胞に導入する方法は当技術分野で周知であり、デキストラン媒介性トランスフェクション、リン酸カルシウム沈殿、ポリブレン媒介性トランスフェクション、プロトプラスト融合、電気穿孔、リポソームへのポリヌクレオチド(複数可)の封入、微粒子銃注入、及び核へのDNAの直接マイクロインジェクションを含む。更に、核酸分子をウイルスベクターによって哺乳動物細胞に導入してもよい。
【0381】
発現のための宿主として利用可能な哺乳動物細胞株は当技術分野で周知であり、American Type Culture Collection(ATCC)から入手可能な多くの不死化細胞株を含む。これらには、とりわけ、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、NSO、SP2細胞、HeLa細胞、ベビーハムスター腎臓(BHK)細胞、サル腎臓細胞(COS)、ヒト肝細胞癌細胞(例えばHep G2)、A549細胞、3T3細胞、及びいくつかの他の細胞株が含まれる。哺乳動物宿主細胞には、ヒト、マウス、ラット、イヌ、サル、ブタ、ヤギ、ウシ、ウマ及びハムスターの細胞が含まれる。特に好ましい細胞株は、どの細胞株が高い発現レベルを有するかを決定することによって選択される。使用できる他の細胞株は、Sf9細胞などの昆虫細胞株、両生類細胞、細菌細胞、植物細胞及び真菌細胞である。scFv断片及びFv断片などの抗体の抗原結合性断片は、当技術分野で公知の方法を使用して単離し、E.coliで発現させることができる。
【0382】
抗体は、宿主細胞における抗体の発現、またはより好ましくは宿主細胞が増殖する培地への抗体の分泌を可能にするのに十分な期間、宿主細胞を培養することによって産生される。抗体は、標準的なタンパク質精製法を使用して培地から回収され得る。
【0383】
本発明の抗体(または断片)は、例えば、Green and Sambrook,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(2012)4th Edition Cold Spring Harbour Laboratory Pressに開示されている技法を使用して取得及び操作することができる。
【0384】
モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ技術を使用して、特定の抗体産生B細胞を、組織培養で増殖する能力及び抗体鎖合成の欠如のために選択された骨髄腫(B細胞癌)細胞と融合させることによって産生され得る。
【0385】
決定された抗原に対するモノクローナル抗体は、例えば、
a)ハイブリドーマを形成するために、決定された抗原で、不死細胞で及び好ましくは骨髄腫細胞で以前に免疫化された動物の末梢血から得られたリンパ球を不死化すること、
b)形成された不死化細胞(ハイブリドーマ)を培養し、所望の特異性を有する抗体を産生する細胞を回収すること
によって取得することができる。
【0386】
あるいは、ハイブリドーマ細胞を使用する必要はない。本明細書に記載の標的抗原に結合することができる抗体は、例えば、当技術分野で公知のファージディスプレイ、酵母ディスプレイ、リボソームディスプレイ、または哺乳動物ディスプレイ技術を使用する、定型的手法を介して好適な抗体ライブラリから単離することができる。したがって、モノクローナル抗体は、例えば、
a)ベクターに、特にファージ及びより具体的には糸状バクテリオファージに、リンパ球、特に動物(好適には決定された抗原で以前に免疫されている)の末梢血リンパ球から取得されたDNAまたはcDNA配列をクローン化するステップ、
b)抗体の産生を可能にする条件で、上記のベクターで原核細胞を形質転換するステップ、
c)抗体を抗原親和性選択にかけることにより、抗体を選択するステップ、
d)所望の特異性を有する抗体を回収するステップ
を含むプロセスによって取得することができる。
【0387】
場合により、本明細書に記載される多特異性抗体またはその断片をコードする単離されたポリヌクレオチドは、疾患の徴候または症状を改善するための薬物として用いられるのに十分な量を作製するように容易に製造することもできる。このように薬物として用いられる場合、通常、目的のポリヌクレオチドはまず、対象または患者において前記抗体またはその断片を発現するように設計された発現ベクターまたは発現カセットに作動可能に連結される。このような発現カセット及びポリヌクレオチドまたはしばしば「核酸系」薬物と呼ばれるものの送達方法は、当技術分野では周知である。最近の概説については、Hollevoet and Declerck(2017)J.Transl.Med.15(1):131を参照のこと。
【0388】
細胞内でプラスミドまたはベクターのコード核酸配列を発現させる条件下で細胞培養培地中で本発明の組換え宿主細胞を培養することを含む、多特異性抗体またはその抗原結合性断片もしくは変異体の産生のための方法も提供される。両方の結合ドメインが同じ組換え細胞で産生される場合、この方法は、多特異性抗体またはその抗原結合性断片もしくは変異体を細胞培養上清から取得することを更に含み得る。取得された多特異性抗体またはその断片は、次いで、医薬組成物へと更に処理及び/または製剤され得る。あるいは、多特異性抗体の結合ドメインが別個の組換え宿主細胞で生成される場合、多特異性抗体は、まず別個の細胞上清をそれぞれの組換え宿主細胞から収集した後に、前記結合ドメインを組み合わせて多特異性抗体にすることによって取得してもよく、次いでこれを医薬組成物へと更に処理及び/または製剤してもよい。更に、多特異性抗体またはその断片もしくは変異体を発現する組換え宿主細胞を産生する方法であって、本発明のプラスミドまたはベクターを前記細胞にトランスフェクトすることを含む方法が提供される。次いで、多特異性抗体またはその断片もしくは変異体を産生するために前記細胞を培養することができる。
【0389】
医薬組成物
本発明の更なる態様によれば、本明細書で定義される多特異性抗体またはその断片を含む組成物が提供される。このような実施形態において、組成物は、場合により他の賦形剤と組み合わせて、多特異性抗体を含み得る。1つまたは複数の追加の活性剤(例えば、本明細書で言及される疾患を処置するのに好適な活性剤)を含む組成物も含まれる。
【0390】
本発明の更なる態様によれば、本明細書で定義される多特異性抗体またはその断片を、薬学的に許容される希釈剤または担体と共に含む医薬組成物が提供される。本発明の多特異性抗体は、対象に投与するのに好適な医薬組成物に組み込むことができる。典型的に、医薬組成物は、本発明の抗体と、薬学的に許容される担体とを含む。本明細書で使用する場合、「薬学的に許容される担体」には、生理的に適合するありとあらゆる溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤及び抗真菌剤、等張剤、ならびに吸収遅延剤などが含まれる。薬学的に許容される担体の例には、水、生理食塩水、塩、リン酸緩衝生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールなどのうちの1つまたは複数、ならびにこれらの組み合わせが含まれる。多くの場合、等張剤、例えば糖類、マンニトール、ソルビトールなどのポリアルコール、または塩化ナトリウムを組成物に含めることが好ましい。抗体またはその断片の貯蔵寿命または有効性を増強する、湿潤剤などの薬学的に許容される物質、または湿潤剤もしくは乳化剤、防腐剤もしくはバッファーなどの微量の補助物質。
【0391】
本発明の組成物は種々の形態であり得る。これらには、例えば、液体、半固体、及び固体の剤形、例えば溶液(例えば注射可能及び注入可能な溶液)、分散液または懸濁液、錠剤、丸剤、粉末、リポソーム、及び坐薬が含まれる。好ましい形態は、意図される投与様式及び治療用途に依存する。典型的な好ましい組成物は、注射可能または注入可能な溶液の形態である。
【0392】
好ましい投与様式は、非経口(例えば、静脈内、皮下、腹腔内、筋肉内、鞘内)である。好ましい実施形態において、抗体は静脈内注入または注射によって投与される。別の好ましい実施形態において、抗体は筋肉内注射または皮下注射によって投与される。
【0393】
治療用組成物は、通常、製造及び貯蔵条件下で無菌かつ安定でなければならない。組成物は、溶液、マイクロエマルション、分散系、リポソーム、または高い薬物濃度に好適な他の秩序構造として製剤され得る。
【0394】
本明細書に記載の疾患の処置のための治療方法において、このような疾患の処置に通常使用される他の確立された療法の補助として、またはそれと併せて、本発明の医薬組成物を使用することは、本発明の範囲内にある。
【0395】
本発明の更なる態様において、抗体、組成物または医薬組成物は、少なくとも1つの活性剤と共に、連続的に、同時にまたは別々に投与される。
【0396】
処置方法
本発明の更なる態様によれば、薬物として使用するための、本明細書で定義される単離された多特異性抗体またはその断片が提供される。本明細書における、薬物としてまたは療法において「使用するための」多特異性抗体またはその断片への言及は、対象への抗体またはその断片の投与に限定される。そのような使用には、細胞培養物への(すなわちin vitroまたはex vivoの)多特異性抗体またはその断片の投与は含まれず、前記細胞培養物または派生細胞療法生成物は治療薬として使用される。
【0397】
一実施形態において、多特異性抗体またはその断片は、がん、感染性疾患または炎症性疾患の処置に使用するためのものである。一実施形態において、本発明は、多特異性抗体またはその断片を対象に投与するステップを含む、それを必要とする対象の疾患または障害を処置する方法である。様々な実施形態において、疾患または障害は、がん、感染性疾患または炎症性疾患である。一実施形態において、多特異性抗体またはその断片は、がん、感染性疾患または炎症性疾患の処置に使用するためのものであり、健康細胞を温存しながら疾患細胞の死をもたらす。更なる実施形態において、多特異性抗体またはその断片は、がんの処置に使用するためのものである。
【0398】
一実施形態において、多特異性抗体またはその断片は、がん、感染性疾患または炎症性疾患の処置に使用するためのものである。更なる実施形態において、多特異性抗体またはその断片は、がんの処置に使用するためのものである。
【0399】
本発明の更なる態様によれば、薬剤として使用するための本明細書で定義される医薬組成物が提供される。一実施形態において、医薬組成物は、がん、感染性疾患または炎症性疾患の処置に使用するためのものである。更なる実施形態において、医薬組成物は、がんの処置に使用するためのものである。
【0400】
本発明の更なる態様によれば、本明細書で定義される治療上有効な量の単離された多特異性抗体またはその断片を投与することを含む、それを必要とする対象の免疫応答を調節する方法が提供される。様々な実施形態において、対象の免疫応答を調節することは、γδT細胞と結合するもしくはγδT細胞をターゲティングすること、γδT細胞を活性化すること、γδT細胞の増殖を引き起こすもしくは増加させること、γδT細胞の増大を引き起こすもしくは増加させること、γδT細胞の脱顆粒を引き起こすもしくは増加させること、γδT細胞媒介性殺傷活性を引き起こすもしくは増加させること、健康細胞を温存しながらγδT細胞媒介性殺傷活性を引き起こすもしくは増加させること、γδT細胞傷害性を引き起こすもしくは増加させること、健康細胞を温存しながらγδT細胞傷害性を引き起こすもしくは増加させること、γδT細胞の動員を引き起こすもしくは増加させること、γδT細胞の生存を増加させること、またはγδT細胞の消耗に対する抵抗性を増加させることを含む。対象の免疫応答を調節することは、第2の抗原と結合するまたは第2の抗原をターゲティングすることを更に含み得る。例えば、一部の実施形態では、第2の抗原の結合は、特にそれが免疫調節性抗原である場合、TRDV1への多特異性抗体の結合による免疫調節に加えて、第2の抗原による免疫調節を刺激し得る。よって、免疫応答の調節は、TRDV1抗原の会合を介して調節される第1のシグナル伝達経路と、第2の免疫調節性抗原の会合を介して調節される第2のシグナル伝達経路との、2つの異なるシグナル伝達経路を介する調節を含み得る。
【0401】
本発明の更なる態様によれば、本明細書で定義される治療上有効な量の単離された多特異性抗体またはその断片を投与することを含む、それを必要とする対象のがん、感染性疾患または炎症性疾患を処置する方法が提供される。あるいは、治療上有効な量の医薬組成物が投与される。
【0402】
本発明の更なる態様によれば、例えばがん、感染性疾患または炎症性疾患の処置における、薬物の製造のための本明細書で定義される多特異性抗体またはその断片の使用が提供される。
【0403】
一実施形態において、多特異性抗体またはその断片が対象に投与され、対象は、がん、感染性疾患または炎症性疾患を有する。
【0404】
本発明の更なる態様によれば、薬剤として使用するための本明細書で定義される医薬組成物が提供される。一実施形態において、医薬組成物が対象に投与され、対象は、がん、感染性疾患または炎症性疾患を有する。
【0405】
本発明の更なる態様によれば、本明細書で定義される治療上有効な量の単離された多特異性抗体またはその断片を対象に投与する方法が提供され、対象は、がん、感染性疾患または炎症性疾患を有する。あるいは、治療上有効な量の医薬組成物が投与される。
【0406】
本発明の更なる態様によれば、例えば対象に投与するための、薬物の製造のための本明細書で定義される多特異性抗体またはその断片の使用が提供され、対象は、がん、感染性疾患または炎症性疾患を有する。
【0407】
様々な実施形態において、開示される方法及び組成物によって処置され得るがんは、急性リンパ芽球性、急性骨髄性白血病、副腎皮質癌、虫垂癌、基底細胞癌、胆管癌、膀胱癌、骨癌、骨肉腫及び悪性線維性組織球腫、脳幹神経膠腫、脳腫瘍、脳腫瘍、脳幹神経膠腫、中枢神経系非定型奇形腫様/ラブドイド腫瘍、中枢神経系胚芽腫、小脳星状細胞腫、大脳星状細胞腫/悪性神経膠腫、頭蓋咽頭腫、上衣芽細胞腫、上衣腫、髄芽細胞腫、髄上皮腫、中間型松果体実質腫瘍、テント上原始神経外胚葉性腫瘍及び松果体芽腫、視覚路及び視床下部神経膠腫、脳脊髄腫瘍、乳癌、気管支腫瘍、バーキットリンパ腫、カルチノイド腫瘍、消化管カルチノイド腫瘍、中枢神経系非定型奇形腫様/ラブドイド腫瘍、中枢神経系胚芽腫、中枢神経系リンパ腫、小脳星状細胞腫大脳星状細胞腫/悪性神経膠腫、子宮頸癌、脊索腫、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性骨髄増殖性障害、結腸癌、大腸癌、頭蓋咽頭腫、皮膚T細胞リンパ腫、食道癌、ユーイングファミリー腫瘍、性腺外生殖細胞腫瘍、肝外胆管癌、眼内黒色腫、網膜芽細胞腫、胆嚢癌、胃癌(胃がん)、消化管カルチノイド腫瘍、消化管間質腫瘍(gist)、生殖細胞腫瘍、妊娠性絨毛性腫瘍、神経膠腫、神経膠腫脳幹、神経膠腫大脳星状細胞腫、視覚路及び視床下部の神経膠腫、ヘアリーセル白血病、頭頸部癌、肝細胞(肝臓)癌、ランゲルハンス細胞組織球症、ホジキンリンパ腫、下咽頭癌、視床下部及び視覚路の神経膠腫、眼内黒色腫、膵島細胞腫瘍、腎臓(腎細胞)癌、ランゲルハンス細胞組織球症、喉頭癌、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、ヘアリーセル白血病、口唇癌及び口腔癌、肝臓癌、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、エイズ関連リンパ腫、バーキットリンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、原発性中枢神経系リンパ腫、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、骨の悪性線維性組織球腫及び骨肉腫、髄芽細胞腫、黒色腫、メルケル細胞癌、中皮腫、原発不明の転移性頸部扁平上皮癌、口腔癌(mouth cancer)、多発性内分泌腫瘍症候群、多発性骨髄腫/形質細胞腫瘍、真菌症、菌状息肉腫、骨髄異形成症候群、骨髄異形成/骨髄増殖性疾患、骨髄性白血病、骨髄性白血病、急性骨髄性白血病、多発性骨髄腫、骨髄増殖性障害、鼻腔癌及び副鼻腔癌、鼻咽腔癌、神経芽細胞腫、非小細胞肺癌、口腔癌(oral cancer)、口腔癌(oral cavity cancer)、中咽頭癌、骨肉腫及び骨の悪性線維性組織球腫、卵巣癌、卵巣上皮癌、卵巣生殖細胞腫瘍、卵巣低悪性度腫瘍、膵癌、膵癌、乳頭腫症、副甲状腺癌、陰茎癌、咽頭癌(pharyngeal cancer)、褐色細胞腫、中間型松果体実質腫瘍、松果体芽腫及びテント上原始神経外胚葉性腫瘍、下垂体腫瘍、形質細胞腫瘍/多発性骨髄腫、胸膜肺芽腫、原発性中枢神経系リンパ腫、前立腺癌、直腸癌、腎細胞(腎臓)癌、腎盂及び尿管、第15染色体のnut遺伝子が関与する呼吸器癌、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、唾液腺癌、肉腫、ユーイングファミリー腫瘍、カポジ肉腫、軟部組織肉腫、子宮肉腫、セザリー症候群、皮膚癌(非黒色腫)、皮膚癌(黒色腫)、メルケル細胞皮膚癌、小細胞肺癌、小腸癌、軟部組織肉腫、扁平上皮癌、頸部扁平上皮癌、胃がん(胃癌)、テント上原始神経外胚葉性腫瘍、T細胞リンパ腫、精巣癌、咽頭癌(throat cancer)、胸腺腫及び胸腺癌、甲状腺癌、腎盂及び尿管の移行細胞癌、妊娠性絨毛性腫瘍、尿道癌、子宮癌、子宮肉腫、膣癌、外陰癌、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、ならびにウィルムス腫瘍を含むが、これらに限定されない。様々な実施形態において、開示される方法及び組成物によって処置され得るがんは処置され、健康細胞は温存される。
【0408】
様々な実施形態において、開示される方法及び組成物によって処置され得る炎症性疾患は、アカラシア、急性散在性脳脊髄炎(ADEM)、急性運動性軸索型ニューロパチー、急性呼吸促迫症候群(ARDS)、アジソン病、有痛脂肪症、成人スチル病、成人発症スチル病、無ガンマグロブリン血症、円形脱毛症、アミロイドーシス、筋萎縮性側索硬化症、強直性脊椎炎、抗GBM/抗TBM腎炎、抗N-メチル-D-アスパラギン酸(抗NMDA)受容体脳炎、抗リン脂質症候群、抗リン脂質症候群(APS、APLS)、抗シンテターゼ症候群、抗尿細管基底膜腎炎、再生不良性貧血、アトピー性アレルギー、アトピー性皮膚炎、自己免疫性血管浮腫、自己免疫性共存症、自己免疫性自律神経異常、自己免疫性脳脊髄炎、自己免疫性腸症、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性肝炎、自己免疫性内耳疾患(AIED)、自己免疫性リンパ増殖症候群、自己免疫性心筋炎、自己免疫性好中球減少症、自己免疫性卵巣炎、自己免疫性精巣炎、自己免疫性膵炎(AIP)、自己免疫性末梢性ニューロパチー、自己免疫性多内分泌症候群(APS)1型、自己免疫性多内分泌症候群(APS)2型、自己免疫性多内分泌症候群(APS)3型、自己免疫性網膜症、自己免疫性血小板減少性紫斑病、自己免疫性甲状腺炎、自己免疫性蕁麻疹、自己免疫性ブドウ膜炎、自己免疫性血管炎、軸索型及び神経型ニューロパチー(AMAN)、バロー同心円性硬化症、バロー病、ベーチェット病、良性粘膜類天疱瘡、ビッカースタッフ脳炎、ブラウ症候群、水疱性類天疱瘡、キャッスルマン病(CD)、セリアック病、シャーガス病、慢性疲労症候群、慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIDP)、慢性閉塞性肺疾患、慢性再発性多発性骨髄炎(CRMO)、チャーグ・ストラウス症候群(CSS)または好酸球性肉芽腫症(EGPA)、瘢痕性類天疱瘡、コーガン症候群、寒冷凝集素症、補体成分2欠乏症、複合性局所疼痛症候群、先天性心ブロック、結合組織、全身性、及び多臓器、接触性皮膚炎、コクサッキー心筋炎、CREST症候群、クローン病、クッシング症候群、皮膚白血球破砕性血管炎、デゴス病、疱疹状皮膚炎、皮膚筋炎、デビック病(視神経脊髄炎)、真性糖尿病1型、消化器系、円板状ループス、ドレスラー症候群、薬剤誘発性ループス、湿疹、子宮内膜症、付着部炎関連関節炎、好酸球性食道炎(EoE)、好酸球性筋膜炎、好酸球性胃腸炎、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)、好酸球性肺炎、後天性表皮水疱症、結節性紅斑、胎児赤芽球症、食道アカラシア、本態性混合型クリオグロブリン血症、エバンス症候群、外分泌、フェルティ症候群、進行性骨化性線維異形成症、線維筋痛症、線維性肺胞炎、胃炎、胃腸類天疱瘡、巨細胞性動脈炎(側頭動脈炎)、巨細胞性心筋炎、糸球体腎炎、グッドパスチャー症候群、多発血管炎性肉芽腫症、グレーブス眼症、グレーブス病、ギラン・バレー症候群、橋本甲状腺炎、橋本脳症、溶血性貧血、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病(HSP)、妊娠性ヘルペスまたは妊娠性類天疱瘡(PG)、化膿性汗腺炎(HS)(反転型ざ瘡)、低ガンマグロブリン血症、特発性巨細胞性心筋炎、特発性炎症性脱髄疾患、特発性肺線維症、IgA腎症、IgA血管炎(IgAV)、IgG4関連疾患、IgG4関連硬化性疾患、免疫性血小板減少性紫斑病(ITP)、封入体筋炎(IBM)、炎症性腸疾患、中間部ブドウ膜炎、間質性膀胱炎(IC)、間質性肺疾患、IPEX症候群、若年性関節炎、若年性糖尿病(1型糖尿病)、若年性筋炎(JM)、川崎病、ランバート・イートン症候群、白血球破砕性血管炎、扁平苔癬、硬化性苔癬、木質性結膜炎、線状IgA病(LAD)、ループス、ループス腎炎、ループス血管炎、慢性ライム病、マジード症候群、メニエール病、顕微鏡的多発血管炎(MPA)、混合性結合組織病(MCTD)、モーレン潰瘍、限局性強皮症、ムッハ・ハーベルマン病、多巣性運動ニューロパチー(MMN)またはMMNCB、多発性硬化症、重症筋無力症、心筋炎、筋炎、ナルコレプシー、新生児ループス、神経系、視神経脊髄炎、神経性筋強直症、好中球減少症、眼瘢痕性類天疱瘡、オプソクローヌス・ミオクローヌス症候群、視神経炎、オード甲状腺炎、オシュトラン症候群、回帰性リウマチ(PR)、傍腫瘍性小脳変性症(PCD)、発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)、パリー・ロンベルグ症候群、パーソネージ・ターナー症候群、毛様体扁平部炎(末梢性ブドウ膜炎)、連鎖球菌に関連する小児自己免疫性神経精神障害(PANDAS)、骨盤内炎症性疾患(PID)、天疱瘡、尋常性天疱瘡、末梢性ニューロパチー、静脈周囲脳脊髄炎、悪性貧血(PA)、急性痘瘡状苔癬状粃糠疹、POEMS症候群、結節性多発動脈炎、多腺性症候群I型、II型、III型、リウマチ性多発筋痛症、多発性筋炎、心筋梗塞後症候群、心膜切開後症候群、原発性胆汁性胆管炎(PBC)、原発性胆汁性肝硬変、原発性免疫不全症、原発性硬化性胆管炎、プロゲステロン皮膚炎、進行性炎症性ニューロパチー、乾癬、乾癬性関節炎、真性赤血球系無形成症(PRCA)、壊疽性膿皮症、ラスムッセン脳炎、レイノー現象、反応性関節炎、反射性交感神経性ジストロフィー、再発性多発軟骨炎、レストレスレッグ症候群(RLS)、後腹膜線維症、リウマチ熱、関節リウマチ、リウマチ性血管炎、サルコイドーシス、統合失調症、シュミット症候群、シュニッツラー症候群、強膜炎、強皮症、血清病、シェーグレン症候群、精液精巣自己免疫、脊椎関節症、全身硬直症候群(SPS)、亜急性細菌性心内膜炎(SBE)、スザック症候群、スイート症候群、シデナム舞踏病、交感性眼炎(SO)、全身性エリテマトーデス(SLE)、高安動脈炎、側頭動脈炎/巨細胞性動脈炎、血小板減少、血小板減少性紫斑病(TTP)、甲状腺、トロサ・ハント症候群(THS)、横断性脊髄炎、1型糖尿病、潰瘍性大腸炎(UC)、未分化結合組織病(UCTD)、未分化脊椎関節症、蕁麻疹様血管炎、蕁麻疹(Uticaria)、ブドウ膜炎、血管炎、白斑、ならびにフォークト・小柳・原田病を含むが、これらに限定されない。様々な実施形態において、開示される方法及び組成物によって処置され得る炎症性疾患は処置され、健康細胞は温存される。
【0409】
様々な実施形態において、開示される方法及び組成物によって処置され得る感染性疾患は、アシネトバクター感染症、放線菌症、急性弛緩性脊髄炎(AFM)、アフリカ睡眠病(アフリカトリパノソーマ症)、AIDS(後天性免疫不全症候群)、アメーバ感染症、アメーバ症、Anaplasma phagocytophilum感染症、アナプラズマ症、住血線虫症、アニサキス症、炭疽、アルボウイルス病、神経浸潤性及び非神経浸潤性、Arcanobacterium haemolyticum感染症、アルゼンチン出血熱、回虫症、アスペルギルス症、アストロウイルス感染症、トリインフルエンザ、バベシア症、Bacillus cereus感染症、細菌感染症、細菌性髄膜炎、細菌性肺炎、細菌性膣症、バクテロイデス感染症、バランチジウム症、バルトネラ症、Baylisascaris感染症、BKウイルス感染症、黒色砂毛症、ブラストシスチス症、ボリビア出血熱、ボツリヌス症、ボツリヌス症(食品由来)、ボツリヌス症(乳児)、ボツリヌス症(その他)、ボツリヌス症(創傷)、ブラジル出血熱、ブルセラ症、腺ペスト、バークホルデリア感染症、ブルーリ潰瘍、カリシウイルス感染症(ノロウイルス及びサポウイルス)、カリフォルニア血清型ウイルス病、カンピロバクター、カンピロバクター症、Candida auris、臨床、カンジダ症(モニリア症;鵞口瘡)、毛細虫症、カルバペネマーゼ産生カルバペネム耐性腸内細菌(CP-CRE)、カルバペネム耐性感染症(CRE/CRPA)、カリオン病、猫ひっかき病、蜂巣炎、シャーガス病(トリパノソーマ症)、軟性下疳、水痘、チクングニアウイルス感染症(チクングニア)、クラミジア、Chlamydia trachomatis、Chlamydophila pneumoniae感染症、コレラ、黒色分芽菌症、ツボカビ症、シガテラ、肝吸虫症、Clostridium difficile大腸炎、Clostridium Difficile感染症、Clostridium perfringens、コクシジオイデス症真菌感染症(渓谷熱)、コロラドダニ熱(CTF)、普通感冒(急性ウイルス性鼻咽喉炎;急性コリーザ)、先天性梅毒、結膜炎、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)、CP-CRE、エンテロバクター菌種、CP-CRE、Escherichia coli(E.coli)、CP-CRE、クレブシエラ菌種、クロイツフェルト・ヤコブ病、伝達性海綿状脳症(CJD)、クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)、クリミア・コンゴ出血熱(CCHF)、カキ殻状疥癬、クリプトコッカス症、クリプトスポリジウム症(クリプト)、皮膚幼虫移行症(CLM)、サイクロスポラ、サイクロスポラ症、嚢虫症、サイトメガロウイルス感染症、デングウイルス感染症、デング、1,2,3,4(デング熱)、デング様疾患、Desmodesmus感染症、下痢性疾患、二核アメーバ症、ジフテリア、裂頭条虫症、メジナ虫症、E.coli、E.coli感染症、志賀毒素産生(STEC)、東部ウマ脳炎ウイルス疾患、エボラ出血熱(エボラ)、エキノコックス症、Ehrlichia chaffeensis感染症、Ehrlichia ewingii感染症、エーリキア症、アナプラズマ症、脳炎、アルボウイルス脳炎または傍感染性脳炎、腸蟯虫症(蟯虫感染)、エンテロコッカス感染症、エンテロウイルス感染症、D68(EV-D68)、エンテロウイルス感染症、非ポリオ(非ポリオエンテロウイルス)、発疹チフス、エプスタイン・バーウイルス伝染性単核球症(モノ)、伝染性紅斑(第五病)、突発性発疹(第六病)、肝蛭症、肥大吸虫症、致死性家族性不眠症(FFI)、第五病、フィラリア症、感冒(季節性)、食中毒、Clostridium perfringensによる食中毒、自由生息アメーバ感染症、真菌感染症、フソバクテリウム感染症、ガス壊疽(クロストリジウム性筋壊死)、性器ヘルペス、性器疣贅、ゲオトリクム症、風疹、ゲルストマン・シュトロイスラー・シャインカー症候群(GSS)、ジアルジア症、鼻疽、顎口虫症、淋病、鼠径肉芽腫、鼠径肉芽腫(ドノバン症)、A群連鎖球菌感染症、A群連鎖球菌、B群連鎖球菌感染症、ガナリトウイルス、Haemophilus Influenza疾患、B型(HibまたはH-flu)、Haemophilus influenzae感染症、手足口病(HFMD)、ハンセン病、ハンタウイルス感染症、ハンタウイルス肺症候群(HPS)、ハートランドウイルス疾患、Helicobacter pylori感染症、溶血性尿毒症症候群(HUS)、腎症候性出血熱(HFRS)、ヘンドラウイルス感染症、A型肝炎(Hep A)、B型肝炎(Hep B)、C型肝炎(Hep C)、D型肝炎(Hep D)、E型肝炎(Hep E)、ヘルペス、ヘルペスBウイルス、単純ヘルペス、帯状ヘルペス、帯状疱疹VZV(シングルス)、Hib病、ヒストプラスマ症感染症(ヒストプラスマ症)、鉤虫感染症、HPV(ヒトパピローマウイルス)、ヒトボカウイルス感染症、ヒトEhrlichia ewingii症(Human ewingii ehrlichiosis)、ヒト顆粒球性アナプラズマ症(HGA)、ヒト免疫不全ウイルス/AIDS(HIV/AIDS)、ヒトメタニューモウイルス感染症、ヒト単球性エーリキア症、ヒトパピローマウイルス(HPV)感染症、ヒトパラインフルエンザウイルス感染症、膜様条虫症、膿痂疹、インフルエンザ(感冒)、インフルエンザ(季節性)、侵襲性肺炎球菌症、イソスポーラ症、フニンウイルス、川崎症候群、角膜炎、Kingella kingae感染症、クールー、ラッサ熱、ラッサウイルス、レジオネラ症(レジオネラ病)、リーシュマニア症、ライ病(ハンセン病)、レプトスピラ症、リステリア症(リステリア)、ルジョウイルス、ライム病、リンパ性フィラリア症(象皮症)、リンパ球性脈絡髄膜炎(LCMV)、性病性リンパ肉芽腫感染症(LGV)、マチュポウイルス、マラリア、マールブルグウイルス感染症、麻疹、類鼻疽(ウィットモア病)、髄膜炎、細菌性髄膜炎、ウイルス性髄膜炎、髄膜炎菌性疾患、横川吸虫症、微胞子虫症、中東呼吸器症候群(MERS)、伝染性軟属腫(MC)、サル痘、単核球症、蚊媒介性疾患、MRSA、ムンプス、発疹熱(地方病性発疹熱)、菌腫、Mycoplasma genitalium感染症、マイコプラズマ肺炎、ハエ幼虫症、Neisseria meningitidis、新生児結膜炎(新生児眼炎)、ニパウイルス感染症、ノカルジア症、ノロウイルス、オンコセルカ症(河川盲目症)、オピストルキス症、オーフウイルス(ただれ口)、パラコクシジオイデス症(南アメリカブラストミセス症)、肺吸虫症、麻痺性貝中毒(麻痺性貝中毒、シガテラ)、パスツレラ症、PEP、寄生虫感染症、百日咳(疫咳)、ピンクアイ、肺炎球菌疾患、肺炎球菌感染症、ニューモシスチス肺炎(PCP)、肺炎、肺ペスト、灰白髄炎(ポリオ)、麻痺性灰白髄炎、ポリオウイルス感染症、ポンティアック熱、ポワッサンウイルス疾患、プレボテラ感染症、原発性アメーバ性髄膜脳炎(PAM)、進行性多巣性白質脳症、原虫感染症、オウム病(オウム熱)、膿疱性発疹症(天然痘、サル痘、牛痘)、狂犬病、アライグマ回虫、鼠咬熱、レクリエーション用水疾患、再帰熱、呼吸器合胞体ウイルス感染症、ライエ症候群、リノスポリジウム症、ライノウイルス感染症、リケッチア感染症、リケッチア症(ロッキー山紅斑熱)、リフトバレー熱(RVF)、白癬、ロタウイルス感染症、三日はしか、サビアウイルス、サルモネラ、Salmonella Paratyphi感染症、Salmonella typhi感染症、サルモネラ症、SARS(重症急性呼吸器症候群)、疥癬、猩紅熱、住血吸虫症、サバ亜目、敗血症、敗血症性ショック、敗血症性ペスト、重症急性呼吸器症候群(SARS)、志賀毒素産生Escherichia coli、赤痢菌、細菌性赤痢、シングルス、シングルス(帯状疱疹)、天然痘、ただれ口(オーフウイルス)、スポロトリクム症、紅斑熱リケッチア症、セントルイス脳炎ウイルス疾患、ブドウ球菌感染症、ブドウ球菌感染症(メチシリン耐性(MRSA))、ブドウ球菌性食中毒、ブドウ球菌感染症(バンコマイシン中等度耐性(VISA))、連鎖球菌性咽頭炎、A群連鎖球菌症(侵襲性)(Strep A(侵襲性))、B群連鎖球菌症(Strep-B)、連鎖球菌毒素ショック症候群、糞線虫症、亜急性硬化性全脳炎、梅毒、テニア症、破傷風感染症、マダニ媒介疾患、白癬性毛瘡、頭部白癬、体部白癬、股部白癬、手白癬、黒癬、足白癬、爪白癬、癜風、毒素ショック症候群、トキソカラ症(眼幼虫移行症(OLM))、トキソカラ症(内臓幼虫移行症(VLM))、トキソプラズマ症、トラコーマ、旋毛虫症、トリコモナス症、旋毛虫感染症(旋毛虫症)、鞭虫症(鞭虫感染症)、結核(TB)、野兎病(ウサギ熱)、チフス熱、D群チフス熱、チフス、発疹チフス、Ureaplasma urealyticum感染症、膣症、渓谷熱、変異体クロイツフェルト・ヤコブ病(vCJD、nvCJD)、水疱瘡(水痘)、ベネズエラウマ脳炎、ベネズエラ出血熱、Vibrio cholerae(コレラ)、Vibrio parahaemolyticus腸炎、Vibrio vulnificus感染症、ビブリオ症、ウイルス感染症、ウイルス性出血熱、ウイルス性出血熱(エボラ、ラッサ、マールブルグ)、ウイルス性出血熱(VHF)、ウイルス性肺炎、西ナイルウイルス病、西部ウマ脳炎ウイルス疾患、白色砂毛(tinea blanca)、疫咳、黄熱病、エルセニア(エルシニア)、Yersinia pseudotuberculosis感染症、エルシニア症、ジアスポラ(Zeaspora)、ジカ熱、ジカウイルス、先天性ジカウイルス病、非先天性ジカウイルス病、ジカウイルス感染症(ジカ)、先天性ジカウイルス感染症、非先天性ジカウイルス感染症、ならびに接合真菌症を含むが、これらに限定されない。様々な実施形態において、開示される方法及び組成物によって処置され得る感染性疾患は処置され、健康細胞は温存される。
【0410】
一実施形態において、本発明は、本明細書で定義される多特異性抗体またはその断片を投与するステップを含む、対象における少なくとも1つのγδT細胞を活性化する方法である。
【0411】
一実施形態において、本発明は、本明細書で定義される多特異性抗体またはその断片を対象に投与するステップを含む、対象におけるγδT細胞の増殖を引き起こすまたは増加させる方法である。
【0412】
一実施形態において、本発明は、本明細書で定義される多特異性抗体またはその断片を対象に投与するステップを含む、対象におけるγδT細胞の脱顆粒を引き起こすまたは増加させる方法である。
【0413】
一実施形態において、本発明は、本明細書で定義される多特異性抗体またはその断片を対象に投与するステップを含む、対象におけるγδT細胞殺傷活性(例えばT細胞媒介性殺傷活性)を引き起こすまたは増加させる方法である。一実施形態において、本発明は、本明細書で定義される多特異性抗体またはその断片を対象に投与するステップを含む、健康細胞を温存しながら対象におけるγδT細胞殺傷活性(例えばT細胞媒介性殺傷活性)を引き起こすまたは増加させる方法である。
【0414】
一実施形態において、本発明は、本明細書で定義される多特異性抗体またはその断片を対象に投与するステップを含む、対象におけるγδT細胞傷害性を引き起こすまたは増加させる方法である。一実施形態において、本発明は、本明細書で定義される多特異性抗体またはその断片を対象に投与するステップを含む、健康細胞を温存しながら対象におけるγδT細胞傷害性を引き起こすまたは増加させる方法である。
【0415】
一実施形態において、本発明は、本明細書で定義される多特異性抗体またはその断片を対象に投与するステップを含む、対象におけるγδT細胞の動員を引き起こすまたは増加させる方法である。
【0416】
一実施形態において、本発明は、本明細書で定義される多特異性抗体またはその断片を対象に投与するステップを含む、対象におけるγδT細胞の生存を増加させる方法である。
【0417】
一実施形態において、本発明は、本明細書で定義される多特異性抗体またはその断片を対象に投与するステップを含む、対象におけるγδT細胞の消耗に対する抵抗性を増加させる方法である。
【0418】
本発明の更なる態様によれば、対象の免疫応答を刺激する方法が提供され、この方法は、免疫応答を刺激するのに有効な量で多特異性抗体またはその断片を対象に投与することを含む。
【0419】
抗体またはその断片の使用
本発明の更なる態様によれば、γδT細胞(特にVδ1 T細胞)の抗原認識、活性化、シグナル伝達または機能を研究するための、本明細書に記載される多特異性抗体またはその断片の使用が提供される。本明細書に記載されるように、抗体は、γδT細胞機能を調査するために使用され得るアッセイにおいて活性があることが示されている。このような多特異性抗体は、γδT細胞の増殖を誘導するのにも有用であり得、したがってγδT細胞(Vδ1 T細胞など)を増大させる方法で使用することができる。
【0420】
Vδ1鎖に結合する多特異性抗体は、γδT細胞を検出するために使用できる。例えば、抗体を検出可能な標識もしくはレポーター分子で標識してもよく、または試料中のVδ1 T細胞を選択的に検出及び/または単離するための捕捉リガンドとして使用してもよい。標識抗体は、例えば、免疫組織化学及びELISAといった当技術分野で公知の多くの方法で使用されている。
【0421】
検出可能な標識またはレポーター分子は、3H、14C、32P、35Sもしくは125lなどの放射性同位元素、フルオレセインイソチオシアネートもしくはローダミンなどの蛍光部位または化学発光部位、またはアルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼもしくはルシフェラーゼなどの酵素であり得る。本発明の抗体に適用された蛍光標識は、次いで、蛍光活性化細胞選別(FACS)法で使用され得る。
【0422】
したがって、様々な実施形態において、本発明は、γδT細胞を調節するin vivo法、γδT細胞と結合する方法、γδT細胞をターゲティングする方法、γδT細胞を活性化する方法、γδT細胞を増殖させる方法、γδT細胞を増大させる方法、γδT細胞を検出する方法、γδT細胞の脱顆粒を引き起こす方法、γδT細胞殺傷活性を引き起こす方法、抗体またはその断片を選択する方法を含み、これらの方法は、本明細書に記載されるように対象に多特異性抗体またはその断片を投与するステップを含む。
【0423】
本発明の他の特徴及び利点は、本明細書で提供される説明から明らかになるであろう。しかしながら、この説明及び特定の例は、本発明の好ましい実施形態を示してはいるが、当業者には様々な変更及び修正が明らかになるので、例示のためにのみ与えられていることが理解されよう。次に、本発明を、以下の非限定的な実施例を用いて説明する。
【実施例】
【0424】
実施例1.材料及び方法
ヒト抗体の発見
ヒトファージディスプレイを用いて、本明細書に記載されるヒト抗ヒト可変Vδ1+ドメイン抗体を生成した。ライブラリは、Schofield et al(Genome biology 2007,8(11):R254)に記載されているように構築され、約400億個のヒトクローンの一本鎖断片可変(scFv)提示ライブラリを含んでいた。このライブラリを、本明細書に記載される抗原、方法、選択、選択解除、スクリーニング、及び特性評価のストラテジーを使用してスクリーニングした。
【0425】
抗原の調製
以下の実施例で使用されるTCRα及びTCRβ定常領域を含む可溶性γδTCRヘテロ二量体の設計は、Xu et al.(2011)PNAS 108:2414-2419に従って生成された。VγドメインまたはVδドメインは、膜貫通ドメインを欠くTCRαまたはTCRβ定常領域にインフレームで融合され、ロイシンジッパー配列またはFc配列、及びヒスチジンタグ/リンカーが続いた。
【0426】
発現構築物を哺乳動物EXPI HEK293浮遊細胞に一過性にトランスフェクトした(ヘテロ二量体の単一トランスフェクションまたは同時トランスフェクションとして)。分泌された組換えタンパク質は、親和性クロマトグラフィーによって培養上清から回収及び精製された。モノマー抗原の良好な回収を確実にするために、試料は分取サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を使用して更に精製された。精製された抗原の純度をSDS-PAGEによって分析し、凝集状態を分析SECによって分析した。
【0427】
抗原の機能検証
デルタ可変1(Vδ1)鎖を含有する抗体の特異性を、DELFIAイムノアッセイ(Perkin Elmer)、及びREA173-Miltenyi Biotec抗Vδ1抗体を使用したγδT細胞と競合するフローベースのアッセイで確認した。
【0428】
解離増強ランタニド蛍光イムノアッセイ(DELFIA)
抗原の特異性を確認するために、プレートに直接コーティングした抗原(50μLのPBS中3μg/mLの抗原、4℃で一晩(Nunc#437111)及び300nMから始まる一次抗体の系列希釈を用いてDELFIAイムノアッセイを行った。検出のために、DELFIA Eu-N1抗ヒトIgG(Perkin Elmer #1244-330)を、50μLの3%MPBS(PBS+3%(w/V)脱脂粉乳)中1/500の希釈度で二次抗体として使用した。展開には50μLのDELFIA増強溶液(Perkin Elmer #4001-0010)を用いた。
【0429】
DELFIAイムノアッセイを使用して目的の抗体の親和性のランク付けを行った。DELFIAイムノアッセイでは、プレート上にコーティングしたGタンパク質により抗体を捕捉し、可溶性ビオチン化L1(DV1-GV4)抗原を50μL(3MPBS)中5nMで加えた。検出には50μLのストレプトアビジン-Eu(アッセイバッファー中1:500、Perkin Elmer)を使用し、DELFIA増強溶液でシグナルを発生させた。D1.3 hIgG1(England et al.(1999)J.Immunol.162:2129-2136に記載されている)を陰性対照として使用した。
【0430】
ファージディスプレイ選択出力をscFv発現ベクターpSANG10(Martin et al.(2006)BMC Biotechnol.6:46)にサブクローン化した。可溶性scFvを発現させ、直接固定化した標的に対するDELFIAでの結合についてスクリーニングした。ヒットは、3000蛍光単位を超えるDELFIAシグナルとして定義した。
【0431】
抗体の調製
選択したscFvを、市販のプラスミドを使用してIgG1フレームワークにサブクローン化した。expi293F浮遊細胞に前記プラスミドをトランスフェクトして抗体を発現させた。便宜上、別段の記載がない限り、これらの実施例で特性評価した抗体は、scFvとしてファージディスプレイから選択されたIgG1フォーマットの抗体を指す。しかしながら、本発明の抗体は、前述のように任意の抗体フォーマットであり得る。
【0432】
抗体精製
IgG抗体は、プロテインAクロマトグラフィーを使用して上清からバッチ精製した。次いで、濃縮されたプロテインA溶出液を、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を使用して精製した。精製されたIgGの質を、ELISA、SDS-PAGE及びSEC-HPLCを使用して分析した。
【0433】
γδT細胞の調製
濃縮されたγδT細胞の集団を、WO2016/198480(すなわち血液由来γδT細胞)またはWO2020/095059(すなわち皮膚由来γδT細胞)に記載の方法に従って調製した。簡潔に述べると、血液由来γδT細胞については、PBMCを血液から取得し、αβT細胞の磁気枯渇に供した。次いで、αβが枯渇したPBMCを、CTS OpTmiser培地(ThermoFisher)中、OKT-3(またはそれぞれの抗Vδ1抗体)、IL-4、IFN-γ、IL-21及びIL-1βの存在下で、7日間培養した。培養7日目に、培地にOKT-3(またはそれぞれの抗Vδ1抗体)、IL-21及びIL-15を補い、更に4日間おいた。培養11日目に、培地にOKT-3(またはそれぞれの抗Vδ1抗体)及びIL-15を補い、更に3日間おいた。培養14日目に、培地の半分を新鮮なComplete OpTmizerと交換し、OKT-3(またはそれぞれの抗Vδ1抗体)、IL-15及びIFN-γを補った。培養17日目以降、培養物にOKT-3(またはそれぞれの抗Vδ1抗体)及びIL-15を3~4日毎に補い、培地の半分を7日毎に新鮮な培地と交換した。
【0434】
皮膚由来γδT細胞については、皮下脂肪を除去して皮膚試料を調製し、3mm生検パンチを使用して複数のパンチを作製する。パンチをカーボンマトリックスグリッド上に置き、G-REX6(Wilson Wolf)のウェルに入れる。各ウェルは、AIM-V培地(Gibco、Life Technologies)、CTS Immune Serum Replacement(Life Technologies)、IL-2及びIL-15を含有する完全単離培地で満たす。培養の最初の7日間は、アンホテリシンB(Life Technologies)を含有する完全単離培地を使用した(「+AMP」)。プレートまたはバイオリアクターの底部にある細胞を乱さないようにしながら、上方の培地を穏やかに吸引し、2X完全単離培地(AMPなし)と交換することにより、培地を7日毎に交換した。培養下で3週間を超えてから、得られた放出細胞を、新しい組織培養容器ならびに組換えIL-2、IL-4、IL-15及びIL-21を加えた新鮮な培地(例えばAIM-V培地またはTexMAX培地(Miltenyi))で継代培養した後に採取する。場合により、培養物中に同じく存在するαβT細胞を、Miltenyiによって提供されているものなどのαβT細胞枯渇キット及び関連するプロトコルを用いて除去する。詳細については、WO2020/095059を参照のこと。
【0435】
γδT細胞結合アッセイ
一定濃度の精製抗体を250000個のγδT細胞と共にインキュベートすることにより、γδT細胞への抗体の結合を試験した。このインキュベーションは、Fc受容体を介した抗体の非特異的結合を防止する遮断条件下で行った。検出は、ヒトIgG1に対する二次蛍光色素コンジュゲート抗体の添加によって行った。陰性対照については、a)アイソタイプ抗体のみ(組換えヒトIgG)、b)蛍光色素コンジュゲート抗ヒトIgG抗体のみ、ならびにc)a)及びb)の組み合わせを用いて細胞を調製した。完全に染色されていない細胞の対照ウェルも調製し、分析した。陽性対照として、精製されたマウスモノクローナルIgG2抗ヒトCD3抗体と、精製されたマウスモノクローナルIgG1抗ヒトTCR Vδ1抗体とを2つの異なる濃度で使用し、蛍光色素コンジュゲートヤギ抗マウス二次抗体で染色した。より低い濃度の陽性対照のFITCチャネルにおける平均蛍光強度が、最も高い陰性対照の少なくとも10倍高ければ、アッセイを合格とした。
【0436】
SPR分析
アミン大容量チップを備えたMASS-2機器(両方ともSierra Sensors,Germany製)を使用してSPR分析を行った。Gタンパク質により、15nMのIgGをアミン大容量チップ(TS8.2で100nM)に捕捉した。L1(DV1-GV4)抗原を、2000nM~15.625nMの1:2希釈系列で、会合180秒、解離600秒、流速30μL/分、ランニングバッファーPBS+0.02%Tween 20のパラメータを用いて細胞上に流した。実験はすべて室温にてMASS-2機器で行った。定常状態のフィッティングは、ソフトウェアSierra Analyzer 3.2を使用したLangmuir 1:1結合に従って決定した。
【0437】
コンパレータ抗体
本発明の抗体を、記載される試験アッセイにおいて市販の抗体と比較した。
【表3】
【0438】
γδTCR下方制御及び脱顆粒アッセイ
試験抗体の負荷ありまたはなしのTHP-1(TIB-202(商標)、ATCC)標的細胞を、CellTracker(商標)Orange CMTMR(ThermoFisher、C2927)で標識し、CD107a抗体(抗ヒトCD107a BV421(クローンH4A3)BD Biosciences 562623)の存在下でγδT細胞と2:1の比でインキュベートした。2時間のインキュベーション後、フローサイトメトリーを使用して、γδT細胞におけるγδTCRの表面発現(TCR下方制御を測定するため)及びCD107aの発現(脱顆粒を測定するため)を評価した。
【0439】
殺傷アッセイ(例えば
図6)
ガンマデルタT細胞殺傷活性及びγδT細胞の殺傷活性に対する試験抗体の効果をフローサイトメトリーによって入手した。γδT細胞とCellTracker(商標)Orange CMTMR(ThermoFisher、C2927)で標識したTHP-1細胞(抗体の負荷ありまたはなし)とを20:1の比で4時間in vitro共培養した後、Viability Dye eFluor(商標)520(ThermoFisher、520 65-0867-14)で染色して標的THP-1細胞の生死を区別した。試料の取得中に、CellTracker(商標)Orange CMTMR陽性で標的細胞をゲーティングし、Viability Dyeの取り込みに基づいて細胞死を検査した。CMTMR及びeFluor(商標)520二重陽性細胞は、死んだ標的細胞として認識された。γδT細胞の殺傷活性を、死んだ標的細胞の割合として提示した。
【0440】
エピトープマッピング
エピトープマッピングに使用したすべてのタンパク質試料(抗原L1(DV1-GV4)ならびに抗体1245_P01_E07、1245_P02_G04、1252_P01_C08、1251_P02_C05及び1141_P01_E01)を、タンパク質の完全性及び凝集レベルについて、高質量MALDIを使用して分析した。
【0441】
L1(DV1-GV4)/1245_P01_E07、L1(DV1-GV4)/1245_P02_G04、L1(DV1-GV4)/1252_P01_C08、L1(DV1-GV4)/1251_P02_C05、及びL1(DV1-GV4)/1141_P01_E01複合体のエピトープを高分解能で決定するために、タンパク質複合体を重水素化架橋剤とインキュベートし、トリプシン、キモトリプシン、Asp-N、エラスターゼ及びサーモリシンを使用した多酵素タンパク分解に供した。架橋ペプチドを濃縮した後、試料を高分解能質量分析(nLC-LTQ-Orbitrap MS)で分析し、生成されたデータをXQuest及びStavroxソフトウェアを使用して分析した。
【0442】
SYTOXフロー殺傷アッセイ
SYTOXアッセイは、フローサイトメトリーを使用して標的細胞のT細胞媒介性細胞溶解の数量化を可能にする。原形質膜が損なわれた細胞にのみ浸透し、健康細胞のインタクトな細胞膜は通過できない死細胞染色剤(SYTOX(登録商標)AADvanced(商標)、Life Technologies、S10274)により、死んだ/瀕死の細胞が検出される。NALM-6標的細胞は、CTV色素(Cell Trace Violet(商標)、Life Technologies、C34557)で標識したため、未標識のエフェクターT細胞から区別可能であった。死んだ/瀕死の標的細胞は、死細胞色素及び細胞トレース色素の二重染色によって識別される。
【0443】
示されているエフェクター対標的比(E:T、1:1または10:1)でエフェクター及びCTV標識標的細胞を16時間in vitro共培養した後、細胞をSYTOX(登録商標)AADvanced(商標)で染色し、FACSLyric(商標)(BD)で取得した。殺傷結果は、エフェクター細胞を加えていない対照ウェル中の生きている標的細胞(最大数)に対する、試験試料中の生きている標的細胞の数(試料数)を考慮することにより計算される標的細胞低減率(%)として提示される:
標的低減%=100-((試料数/最大数)×100)
【0444】
実施例2.抗原の設計
ガンマデルタ(γδ)T細胞は、CDR3ポリクローナル性を備えたポリクローナルである。生成された抗体がCDR3配列に対して選択される状況を回避するために(CDR3配列はTCRクローンごとに異なるため)、抗原設計には異なるフォーマットで一貫したCDR3を維持することが含まれていた。この設計は、生殖細胞系にコードされ、したがってすべてのクローンで同じである可変ドメイン内の配列を認識する抗体を生成し、γδT細胞のより広いサブセットを認識する抗体を提供することを目的とした。
【0445】
抗原調製プロセスの別の重要な態様は、タンパク質としての発現に好適な抗原を設計することであった。γδTCRは、鎖間及び鎖内にジスルフィド結合を備えたヘテロ二量体を含有する複雑なタンパク質である。ロイシンジッパー(LZ)フォーマット及びFcフォーマットを使用して、ファージディスプレイの選択で使用する可溶性TCR抗原を生成した。LZフォーマット及びFcフォーマットはどちらも良好に発現し、TCR(特にヘテロ二量体TCR、例えばVδ1Vγ4)の提示に成功した。
【0446】
γδTCRの公開データベースエントリからのCDR3配列は、タンパク質として良好に発現することが見出された(RCSBタンパク質データバンクエントリ:3OMZ)。したがって、これを抗原調製のために選択した。
【0447】
デルタ可変1鎖を含有する抗原を、LZフォーマットでヘテロ二量体として(すなわち、異なるガンマ可変鎖との組み合わせ-「L1」、「L2」、「L3」)、また、Fcフォーマットでヘテロ二量体として(「F1」、「F2」、「F3」)、またはホモ二量体として(すなわち、別のデルタ可変1鎖との組み合わせ-「Fc1/1」)のいずれかで発現させた。抗原のデルタ可変1鎖はすべて、3OMZ CDR3を含有していた。同様のフォーマットを使用して、異なるデルタ可変鎖(デルタ可変2及びデルタ可変3など)を含有する別の一連のγδTCR抗原を設計し、非特異的またはオフターゲットの結合を示す抗体(「L4」、「F9」、「Fc4/4」、「Fc8/8」)を選択解除するために使用した。また、これらの抗原は、CDR3領域内で結合する抗体も選択解除されることを確実にするために3OMZ CDR3を含むように設計した。
【0448】
設計された抗原が抗TRDV1(TCRデルタ可変1)抗体及び多特異性抗体を生成するのに好適であることを確認するために、抗原の機能検証を行った。δ1ドメインを含有する抗原でのみ検出が見られた(
図1)。
【0449】
実施例3.ファージディスプレイ
ヒトscFvのライブラリに対し、ラウンド1及び2でいずれかのヘテロ二量体LZ TCRフォーマットを使用してファージディスプレイ選択を行い、両ラウンドでヘテロ二量体LZ TCRを選択解除した。または、ホモ二量体Fc融合TCRを使用し、ヒトIgG1 Fcを選択解除するラウンド1を行い、続いてラウンド2はヘテロ二量体LZ TCRに対して行い、ヘテロ二量体LZ TCRを選択解除した(表2参照)。
【表4】
【0450】
選択は、100nMのビオチン化タンパク質を使用して溶液相で行った。選択解除は、1μMの非ビオチン化タンパク質を使用して行った。
【0451】
ファージディスプレイ選択の成功をポリクローナルファージELISA(DELFIA)によって分析した。すべてのDV1選択出力が、標的Fc1/1、L1、L2、L3、F1及びF3に対する所望の結合を示した。非標的L4、F9、Fc4/4、Fc8/8及びFcに対しては様々な程度の結合が検出された(
図2A及びBを参照のこと)。
【0452】
実施例4.抗体及び多特異性抗体の選択
実施例3で得られたヒットをシーケンシングした(当技術分野において公知の標準的方法を使用した)。VH及びVL CDR3のユニークな組み合わせを示した、130のユニークなクローンが同定された。これら130のユニークなクローンのうち、125はユニークなVH CDR3を示し、109はユニークなVL CDR3を示した。
【0453】
ユニークなクローンを再整列させ、特異性をELISA(DELFIA)によって分析した。TRDV1(L1、L2、L3、F1、F2、F3)とは結合するがTRDV2(L4)とは結合しない94のユニークなヒトscFvバインダーのパネルが、選択から同定された。
【0454】
先に進めるクローンの選択を助けるために、選択されたバインダーの親和性のランク付けを含めた。多数のバインダーがナノモル範囲の親和性を示し、25~100nMのビオチン化抗原と反応した。少数のバインダーは5nMの抗原との強い反応を示し、1桁のナノモル親和性の可能性を示した。いくつかのバインダーは100nMの抗原との反応を示さず、マイクロモル範囲の親和性を示した。
【0455】
IgG変換に進むクローンを選択するために、できるだけ多くの生殖細胞系列及びできるだけ多くの異なるCDR3を含めることが目的であった。更に、グリコシル化、インテグリン結合部位、CD11c/CD18結合部位、不対システインなどの配列傾向は避けた。更に、種々の親和性を含めた。
【0456】
選択されたクローンを、天然の細胞表面発現γδTCRへの結合について、異なるドナーから取得された皮膚由来γδT細胞を使用してスクリーニングした。IgGに変換するために選択されたクローンを表3に示す。さらに、前記抗TRDV1バインダーを、標準的な組換え、発現、プロセシング、及び単離方法により、多特異性抗体へとフォーマットした。その後、第1の標的抗原(TRDV1)及び第2の抗原の両方への結合を前記多特異性フォーマットで確認した。
【表5】
【0457】
実施例5:抗体SPR分析
調製したIgG抗体をγδ細胞結合アッセイにかけ、更なる機能的及び生物物理学的な特性評価のために5つを選択した。SPR分析を行って、平衡解離定数(K
D)を決定した。試験した抗体と分析物との相互作用のセンサグラムを、定常状態のフィット(利用可能な場合)と共に
図3に提示する。80RUのIgGがチップ上に捕捉されたTS8.2については結合が検出されなかった。結果を表4にまとめる。
【表6】
【0458】
実施例6:TCR会合アッセイ
本発明者らは、選択された抗体の機能的特性評価のために使用される幾つかのアッセイを設計した。第1のアッセイでは、抗体結合時のγδTCRの下方制御を測定することにより、γδTCRの会合を評価した。選択された抗体を、陽性対照として使用した市販の抗CD3抗体及び抗Vδ1抗体に対して、または陽性対照としての(1139_P01_E04、1245_P02_F07、1245_P01_G06及び1245_P01_G09のための)1252_P01_C08に対して試験した。市販の抗汎γδは、可変鎖に関係なくすべてのγδT細胞を認識する汎γδ抗体であり、したがって異なる作用機序を有する可能性が高いため、これを陰性対照として使用した。
【0459】
このアッセイは、3つの異なるドナー試料(純度94%、80%及び57%の試料)から取得された皮膚由来γδT細胞を使用して行った。結果を
図4に示す。EC50値は以下の表4にまとめる。
【0460】
実施例7:T細胞脱顆粒アッセイ
第2のアッセイではγδT細胞の脱顆粒を評価した。γδT細胞は、アポトーシスのパーフォリン-グランザイム媒介性活性化によって標的細胞の殺傷を媒介し得ると考えられている。γδT細胞の細胞質内の溶解性顆粒は、T細胞が活性化すると標的細胞に向かって放出され得る。したがって、CD107aに対する抗体による標的細胞の標識、及びフローサイトメトリーによる発現の測定を使用することで、脱顆粒しているγδT細胞を同定することができる。
【0461】
実施例6に関しては、選択された抗体を、陽性対照としての市販の抗CD3抗体及び抗Vδ1抗体に対して、または陽性対照としての(1139_P01_E04、1245_P02_F07、1245_P01_G06及び1245_P01_G09のための)1252_P01_C08に対して試験した。IgG2a、IgG1、及びD1.3抗体を陰性対照として使用した。このアッセイは、3つの異なるドナー試料(純度94%、80%及び57%の試料)から取得された皮膚由来γδT細胞を使用して行った。結果を
図5に示す。EC50値は以下の表5にまとめる。
【0462】
実施例8:殺傷アッセイ
第3のアッセイでは、選択された抗体で活性化されたγδT細胞が標的細胞を殺傷する能力を評価した。
【0463】
実施例6に関しては、選択された抗体を、陽性対照としての市販の抗CD3抗体及び抗Vδ1抗体に対して、または陽性対照としての(1139_P01_E04、1245_P02_F07、1245_P01_G06及び1245_P01_G09のための)1252_P01_C08及び陰性対照としての抗汎γδに対して試験した。IgG2a、IgG1、及びD1.3抗体もアイソタイプ対照として使用した。このアッセイは、2名のドナーから取得した皮膚由来γδT細胞(純度94%及び80%)を使用して行った。結果を
図6に示す。
【0464】
実施例6~8で試験した3つの機能アッセイの結果を表5にまとめる。
【表7】
【0465】
実施例9:エピトープマッピング
抗原/抗体複合体のエピトープを高分解能で決定するために、タンパク質複合体を重水素化架橋剤とインキュベートし、多酵素切断に供した。架橋ペプチドを濃縮した後、試料を高分解能質量分析(nLC-LTQ-Orbitrap MS)で分析し、生成されたデータをXQuest(バージョン2.0)及びStavrox(バージョン3.6)ソフトウェアを使用して分析した。
【0466】
重水素化されたd0d12と共にタンパク質複合体L1(DV1-GV4)/1245_P01_E07をトリプシン、キモトリプシン、Asp-N、エラスターゼ及びサーモリシンでタンパク分解した後、nLC-orbitrap MS/MS分析により、L1(DV1-GV4)と抗体1245_P01_E07との間に13個の架橋ペプチドが検出された。結果を
図7に提示する。
【0467】
重水素化されたd0d12と共にタンパク質複合体L1(DV1-GV4)/1252_P01_C08をトリプシン、キモトリプシン、Asp-N、エラスターゼ及びサーモリシンでタンパク分解した後、nLC-orbitrap MS/MS分析により、L1(DV1-GV4)と抗体1252_P01_C08との間に5個の架橋ペプチドが検出された。結果を
図8に提示する。
【0468】
重水素化されたd0d12と共にタンパク質複合体L1(DV1-GV4)/1245_P02_G04をトリプシン、キモトリプシン、Asp-N、エラスターゼ及びサーモリシンでタンパク分解した後、nLC-orbitrap MS/MS分析により、L1(DV1-GV4)と抗体1245_P02_G04との間に20個の架橋ペプチドが検出された。結果を
図9に提示する。
【0469】
重水素化されたd0d12と共にタンパク質複合体L1(DV1-GV4)/1251_P02_C05をトリプシン、キモトリプシン、Asp-N、エラスターゼ及びサーモリシンでタンパク分解した後、nLC-orbitrap MS/MS分析により、L1(DV1-GV4)と抗体1251_P02_C05との間に5個の架橋ペプチドが検出された。結果を
図10に提示する。
【0470】
別の抗体、クローンID 1141_P01_E01でもエピトープ結合を試験した。重水素化されたd0d12と共にタンパク質複合体L1(DV1-GV4)/1141_P01_E01をトリプシン、キモトリプシン、Asp-N、エラスターゼ及びサーモリシンでタンパク分解した後、nLC-orbitrap MS/MS分析により、L1(DV1-GV4)と抗体1141_P01_E01との間に20個の架橋ペプチドが検出された。結果を
図11に提示する。
【0471】
エピトープマッピング結果の概要を表6に提示する。
【表8】
【0472】
実施例10:Vδ1 T細胞の増大
単離されたγδT細胞の増大について、選択された抗体及びコンパレータ抗体の存在下で調査した。コンパレータ抗体は、陽性対照としてのOKT3抗CD3抗体、陰性対照としての無抗体、またはアイソタイプ対照としてのIgG1抗体から選択した。市販の抗Vδ1抗体であるTS-1及びTS8.2も比較のために試験した。
【0473】
実験1:
最初の調査は、実施例1の血液由来γδT細胞に関する「γδT細胞の調製」に記載されているようにComplete Optimizer及びサイトカインと共に70,000細胞/ウェルを播種することによって実施した。選択された抗体及びコンパレータ抗体を4.2ng/ml~420ng/mlの範囲の様々な濃度で試験した。この実験は、プラスチックへの抗体の結合/固定化を可能にする組織培養プレートを使用して実施した。
【0474】
7日目、14日目、及び18日目に細胞を採取し、細胞計数器(NC250、ChemoMetec)を使用して総細胞数を決定した。結果を
図7に示す。各採取時にVδ1 T細胞の細胞生存率も測定したところ、すべての抗体が実験全体を通して細胞生存率を維持したことが示された(データは示していない)。18日目には、Vδ1 T細胞のパーセンテージ、細胞数、及び変化倍率も分析した。結果を
図8に示す。
【0475】
図7から分かるように、抗体を含む培養物中で産生された細胞の総数は培養中絶えず増加し、市販の抗Vδ1抗体に匹敵するかそれよりも良好であった。18日目に、1245_P02_G04(「G04」)、1245_P01_E07(「E07」)、1245_P01_B07(「B07」)及び1252_P01_C08(「C08」)の各抗体の存在下でのVδ1陽性細胞の割合は、試験したほとんどの濃度において、OKT3、TS-1またはTS8.2の対照抗体が存在した培養物中よりも大きかった(
図8A参照)。
【0476】
実験2:
実施例1の「γδT細胞の調製」に記載したようなサイトカインを含む培養容器中の単離細胞に対して、後続の実験を行った。実験1と比較して、表面が抗体の結合/固定化を促進しない異なる培養容器を使用した。選択された抗体及びコンパレータ抗体を、42pg/ml~42ng/mlの範囲の様々な濃度で試験した。実験2では、三連で実行した実験から結果を得た。
【0477】
7日目、11日目、14日目及び17日目に細胞を採取し、前出の細胞計数器を使用して総細胞数を決定した。結果を
図9に示す。17日目には、Vδ1 T細胞のパーセンテージ、細胞数、及び変化倍率も分析した。結果を
図10に示す。
【0478】
実験2では、非Vδ1細胞を含む細胞組成も測定した。17日目の細胞を採取し、Vδ1、Vδ2及びαβTCRの表面発現についてフローサイトメトリーで分析した。各培養における各細胞型の割合を
図11にグラフで示し、パーセンテージ値を表6に提示する。
【表9】
【0479】
これらの結果から分かるように、Vδ1陽性細胞の割合は、OKT3、TS-1またはTS8.2の対照と比較すると、B07、C08、E07及びG04が存在する培養物中でより大きい。したがって、試験された抗体は、培養物中に低濃度で存在する場合でも、市販の抗体よりも効率的にVδ1陽性細胞を産生し増大させる。
【0480】
実験2の17日目の細胞を、CD3-CD56+を含む追加の細胞マーカーについても分析して、ナチュラルキラー(NK)細胞及びCD27を発現する(すなわちCD27+)Vδ1 T細胞の存在を同定した。結果を表7にまとめる。
【表10】
【0481】
実施例11:Vδ1 T細胞の機能性
選択された抗体の存在下で増大したVδ1 T細胞は、CDR3領域のポリクローナルレパートリーを保持し、SYTOXフロー殺傷アッセイを使用して機能性についても試験した。結果は、10:1のエフェクター対標的(E:T)比の細胞を使用した実験1の14日目に得られた細胞(
図12A)、ならびに1:1及び10:1のE:T比の細胞を使用した実験2の17日目(凍結解凍後)に得られた細胞(
図12B)について提示している。
【0482】
図12から分かるように、すべての抗体の存在下で増大したVδ1陽性細胞が標的細胞を効果的に溶解し、細胞を凍結し解凍した後でもそれらが機能的であることが示された。
【0483】
実施例12:貯蔵後の細胞の機能性
凍結した後に解凍する貯蔵ステップ後の細胞の機能性についても調査した。実験2の17日目に細胞の一部を培養物から取り出し、凍結した。次いで、細胞を解凍し、IL-15を含む培養物中で更に増大させた。
図13は、凍結前にB07、C08、E07、G04またはOKT-3抗体と接触させた培養物についての凍結解凍後に細胞を7日間培養した後の総細胞数を示す。すべての培養物が貯蔵後に増殖する能力を示した。培養は42日目まで継続し、この期間中、総細胞数をモニタリングした(結果を
図14に示す)。総細胞数は、選択された抗体に以前に曝露された培養物中では維持されたか、または増加した。
【0484】
実施例13:改変された抗Vδ1抗体の結合同等性研究
ELISAベースの抗原滴定結合研究を行って、HEKで製造された1245_P02_G04抗体を、CHOで製造されたその配列変異体及びグリコシル化変異体と比較した。具体的には、フレームワーク、アロタイプ、ヒンジ媒介性エフェクター機能性、Asn 297グリコシル化、及び/または製造方法に改変を行い、次いでこの研究に含めた。アッセイELISAのセットアップは次のとおりであった:抗原は抗原L1(TRDV1/TRGV4)を含んでいた;ブロッキングバッファーは2%Marvel/PBS;mAbは5μg/mlから始まる1/2希釈系列で希釈;ELISAプレートでの抗原-抗体のインキュベーションは1時間;非特異的結合を除去するための洗浄は3×PBS-Tween、次いで3×PBS;用いた二次抗体は1/500希釈のDELFIA Eu標識抗ヒトIgG(PerkinElmer;カタログ番号:1244-330;50μg/ml);その後1時間インキュベーションしてからDELFIA増強溶液を添加(PerkinElmer、説明どおりに使用);時間分解蛍光測定法(TRF)により測定。CHOで作られた抗体については、重鎖及び軽鎖カセットを含有する標準的な発現ベクターをアニオン交換クロマトグラフィーに基づく内毒素の低い条件下で調製した。DNA濃度は、260nmの波長で吸収を測定することによって決定した。配列はサンガーシーケンシングで検証した(cDNAのサイズに応じてプラスミド毎に最大2つのシーケンシング反応を用いた)。懸濁に適合させたCHO K1細胞(元々ATCCからのものを懸濁培養での無血清増殖に適合させた)を製造に用いた。シード細胞は、既知組成で動物成分を含まない無血清培地で増殖させた。次いで細胞にベクター及びトランスフェクション試薬をトランスフェクトし、細胞を更に増殖させた。上清を遠心分離及びその後の濾過(0.2μmフィルタ)によって採取し、MabSelect(商標)SuRe(商標)を使用して抗体を精製した後に製剤した。例示的な脱フコシル化抗体を生成するために、von Horsten HH et al.(2010)Glycobiology 20(12):1607-18に最初に記載されたプロトコルを、発現及び精製の前に上述のCHO発現プラットフォームに導入した。製造及び精製の後、mAbの脱フコシル化をMSベースの分析によって確認した。
【0485】
この研究の結果を
図15にまとめる。図中、y軸はELISAシグナルを示し、x軸は用いられたVδ1抗原濃度(ug/ml)を示す。この滴定研究に含まれた抗体は概説されており、更に詳述すると、RSVは抗RSV対照mAb対照である(CHOで作製)。G04は1245_P02_G04である(HEKで作製、配列番号112)。AD3は変異体G04である(CHOで作製;配列番号129、かつ可変ドメイン配列の配列番号131及び配列番号132を含み、定常ドメインの配列番号133及び配列番号134を含む)。AD4はヒンジ改変AD3である(CHOで作製;配列番号130、かつ定常ドメインの配列番号133及び配列番号135を含む)。AD3glyは、工学操作されたCHOで作製された脱フコシル化AD3である。すべての滴定において、すべての変異体で同等の抗原結合が観察された。
【0486】
実施例14:ヒト生殖系Vδ1抗原及びその多型変異体に対する抗Vδ1抗体結合同等性研究。
ELISAベースの結合研究比較を行って、IMGTデータベースによるヒト生殖系Vδ1抗原(配列番号1を参照)への抗Vδ1抗体の結合を、多型ヒト生殖系Vδ1抗原(配列番号128)への結合と対比して調べた。具体的には、抗原L1(カノニカルなTRDV1/TRGV4生殖系配列を含有する)及びL1AV(前記TRDV1生殖系多型を含む変異体TRDV1/TRGV4)との抗体結合及び交差反応性の比較を行った。結果を
図16に提示する。示されている抗体は次のとおりである:G04=1245_P02_G04(配列番号112);G04 LAGA=ヒンジFc改変を有するG04(L235A、G237AEU番号付け;配列番号136)。E07 LAGA=L235A、G237Aを有する1245_P01_E07、配列番号137。C08 LAGA=L235A、G237Aを有する1252_P01_C08、配列番号138、D1.3=対照。前記抗原に対する各抗体の系列希釈を行ったところ、すべての希釈度で、各抗体変異体について、両抗原に対する同等の結合が観察された。示されているのは、前記系列の1つの希釈例(1nM抗体)で観察された同等の結合である。
【0487】
実施例15:抗Vδ1抗体の結合は、Vδ1+細胞のサイトカイン分泌の増加を付与した
手短に述べると、すべての抗体を10μg/mlに希釈し、一晩インキュベートして抗体をプレートに結合させた後、洗浄した。2つの異なる皮膚のドネーションから、本明細書の他の箇所に概説されるように(実施例1;特に、皮膚由来γδT細胞の調製に関するセクションを参照のこと)、皮膚由来γδT細胞を調製した。次いで、これらの皮膚細胞を、示されている結合抗体を含む組織培養プレートに加えた(ウェル当たり細胞100,000個)。次いで、細胞を1日放置してから上清を採取し、-80℃で貯蔵した。上清のサイトカイン分析には、MSD U-PLEX Human Assay:K151TTK-1、K151UCK-1を用いた(Mesoscale Diagnostics,Maryland)。この研究で用いた抗体には、IgG1(非Vδ1結合対照)、B07(1245_P01_B07)、E07(1245_P01_E07)、G04(1245_P02_G04;1245)、及びC08(1252_P01_C08)が含まれていた。この研究の結果は
図17に提示する。具体的には、
図17(A)及び(B)はそれぞれ、皮膚由来γδT細胞の上清で検出されたTNF-アルファ及びIFN-ガンマの量、ならびに示されている抗Vδ1抗体を適用したときに観察されたより高いレベルを概説している。
【0488】
実施例16:抗Vδ1抗体は、Vδ1+細胞のグランザイムBレベル/活性の増加を付与した
本明細書の他の箇所に概説されるように(実施例1;皮膚由来γδT細胞の調製に関するセクションを参照のこと)、皮膚由来γδT細胞を調製した。まずTHP-1細胞に、GranToxiLuxプローブ(細胞透過性の蛍光発生基質は、標的細胞におけるグランザイムB活性を検出するように設計されている)を製造元の説明書(OncoImmunin,Inc.Gaithersburg,US)に従ってロードした。次いで、THP-1細胞を
図18に示される抗体10μg/mlでパルスしてから、1:20の標的/エフェクター比で皮膚由来γδTと混合した。次いで、共培養物を手短に遠心分離して、迅速なコンジュゲート形成を確実にし、その後、1時間の共培養を行い、GranToxiLuxプロトコルに従って後続のフロー分析を行った。この研究で用いた抗体には、IgG1(非Vδ1結合対照)、B07(1245_P01_B07)、E07(1245_P01_E07)、G04(1245_P02_G04;1245)、及びC08(1252_P01_C08)が含まれていた。結果は
図18に提示されており、示されている抗Vδ1抗体をこのVδ1+/THP-1共培養モデル系に適用したときに観察された標的がん細胞中のグランザイムBのより高いレベルを明らかにしている。
【0489】
実施例17:抗Vδ1抗体は、ヒト組織における免疫細胞の調節及び増殖を付与した。
ヒト皮膚パンチ生検(5名の異なるドナー由来)を、示されている抗体と共に培養下で21日間インキュベートした。皮膚試料は、本明細書の他の箇所に記載されるように(実施例1;皮膚由来γδT細胞の調製に関するセクションを参照のこと)、皮下脂肪などを除去することによって調製した。次いで、各ドネーションからのパンチ複製物をカーボンマトリックスグリッド上に置き、次いでこれらをG-REX6(Wilson Wolf)のウェルに入れた。本明細書の他の箇所にも記載されているように、各ウェルを完全培地で満たした。異なる抗体の効果を調査し比較するために、これらを0日目、7日目、14日目に加えて100ng/mlの使用濃度とした。21日間の培養後、細胞を採取し、フローサイトメトリーによって分析した。前記研究の結果は
図19に提示されており、異なる抗体の調節効果における顕著な差異を特に明らかにしている:左から右への順序:Vd1 TS8.2=TS8.2(Thermo Fisher);OKT-3(Biolegend);C08 IgG1=1252_P01_C08;E07=1245_P01_E07;G04=1245_P02_G04。
図19(A)は、培養終了時に観察された生存可能な汎γδTCR陽性細胞の平均量を明らかにしている;結果は、フローサイトメトリーによって分析された総生細胞集団のうちのゲーティングした画分(パーセント平均+標準偏差)として提示されている。汎γδ含有量分析のフローゲーティングストラテジーは次のとおりである:一重項>生細胞>汎γδ抗体(Miltenyi、130-113-508)。
図19(B)は、培養終了時に観察された生存可能なVδ1+TCR陽性細胞の平均量を明らかにしている;結果は、フローサイトメトリーによって分析された総生細胞集団のうちのゲーティングした画分率(パーセント平均+標準偏差)として提示されている。Vδ1+細胞含有量分析に関して、フローゲーティングストラテジーは次のとおりである:一重項>生細胞>汎γδ(Miltenyi、130-113-508)>Vδ1(Miltenyi、130-100-553)。
図19(C)は、培養終了時に観察された生存可能な二重陽性Vδ1+CD25+細胞の数を明らかにしている;結果は、総生細胞集団のうちのゲーティングした画分(パーセント平均+標準偏差)として提示されている。CD25+Vδ1+細胞含有量分析に関して、フローゲーティングストラテジーは次のとおりである:一重項>生細胞>汎γδ(Miltenyi、130-113-508)>Vδ1(Miltenyi、130-100-553)>CD25(Miltenyi、130-113-286。この研究の複合結果は、コンパレータ抗体TS8.2及びOKT3に比して異なる、本明細書に記載される本発明の抗体の効果を要約している。また、この理論に束縛されるものではないが、TS8.2またはOKT3がVδ1+細胞にあまり好ましくない効果を付与する可能性の1つは、このモデル系でこれらのコンパレータ分子が免疫細胞機能に経時的に付与する有害効果に起因するものであり得る。
【0490】
実施例18:抗Vδ1抗体は、TILにおける免疫細胞の調節及び増殖を付与した。
抗Vδ1抗体によって付与されるヒト腫瘍浸潤リンパ球(TIL)の調節及び増殖を調査するために、複数の研究を行った。これらの研究では、ヒト腎細胞癌(RCC)腫瘍生検が新鮮な状態で輸送され、受領時に処理された。具体的には、組織を約2mm
2に細断した。最大1gの組織を、4.7mLのRPMI及びMiltenyiのTumour Dissociation Kitの酵素(関連細胞表面分子の切断を防止するために0.2倍濃度で使用した酵素Rを除いては製造元が推奨する濃度)と共に、各Miltenyi Cチューブに入れた。Cチューブをヒーター付きgentleMACS(商標)Octo Dissociatorに配置した。軟部腫瘍の解離のためのプログラム37C_h_TDK_1を選択した。次いで、消化物を70mMフィルタで濾過して単一細胞懸濁液を生成した。10%FBSを含有するRPMIを消化物に加えて、酵素活性をクエンチした。細胞をRPMI/10%FBSで2回洗浄し、計数のために再懸濁した。次いで、得られた細胞をTCウェル(24ウェルG-REX、Wilson Wolf)にウェル当たり2.5×10e6で播種した。次いで、サイトカインなしまたはなしで、そして抗体ありまたはなしで、細胞を18日間インキュベートした。この研究に含まれた抗体を
図20に概説する。これらには、OKT3(50ng/mlまで)、及び本明細書では「C08」ともいう1252_P01_C08(500ng/mlまで)が含まれる。含まれた場合、これらの抗体のボーラス添加は、0日目、7日目、11日目、及び14日目に加えた。前記インキュベーション中、11日目及び14日目に培地を新鮮な培地と交換した。フローサイトメトリー分析を0日目及び18日目に行って、リンパ球表現型及び細胞数の変化倍率を決定した。細胞はまず、生きているCD45+細胞でゲーティングし、次いで示されているようにゲーティングした。組換えサイトカインが含まれたアームでは、これらは次のように添加した。0日目:IL-4、IFN-γ、IL-21、IL-1β。追加のIL-15は7日目、11日目、14日目に含めた。追加のIL-21及びIFN-γは、それぞれ7日目及び14日目に含めた。
図20(A)は、示されているようなサイトカイン補助(CK)あり及びなしで、C08またはOKT3の存在下で18日間培養した後のTIL Vδ1+細胞の増加倍率を示す。これらの結果は、抗体またはサイトカイン単独と比較した、サイトカインの存在下でC08またはコンパレータOKT3抗体のいずれかを適用したTIL Vδ1+細胞における実質的な増加倍率を示す。
図20(B)は、次の採取時の総Vδ1細胞数の増加を示す。これらの結果は、抗体またはサイトカイン単独と比較した、サイトカインの存在下でC08またはコンパレータOKT3抗体と共に培養した後のTIL Vδ1+細胞数における実質的な増加を示す。
図20(C)は、細胞のフローサイトメトリー分析で使用されるゲーティングストラテジーの一例を提示する。生きているCD45+細胞集団から、細胞をそれらの前方散乱及び側方散乱の特性(図示せず)に基づいてリンパ球でゲーティングし、次いでγδT細胞をT細胞受容体の染色によりαβT細胞から分離した。最後に、総γδT細胞集団内のVδ1細胞の割合を決定した。18日目の実施例データが、図示の2つの条件(±1252_P01_C08)について示されている:64.3%の細胞はCD45+であり、これらのCD45%細胞のうち、53.1%はγδ+であり、γδ細胞のうち、89.7%はVδ1+であった。
図20(D)は、採取時のTIL Vδ1+細胞の細胞表面表現型プロファイルを提示する。C08抗体を用いた培養後、より高いレベルのCD69が観察された。
図20(E)は、採取時の生きているCD45陽性ゲート内のTIL γδ陰性、CD8陽性リンパ球画分の分析を提示する。まとめると、複合結果は、本明細書に記載される本発明の抗Vδ1抗体によってTIL集団に付与される調節効果を明らかにしている。
【0491】
実施例19:抗Vδ1抗体は、Vδ1+細胞媒介性細胞傷害性及び疾患細胞特異的細胞傷害性の増強を付与した。
図21に示されるように、Vδ1+エフェクター細胞、THP-1単球性がん細胞、及び健康な初代単球±本明細書に記載される抗Vδ1抗体(1245_P02_G04;1245_P01_E07;1252_P01_C08)の三種培養物を含み、対照(mAbなしまたはD1.3)を含むモデル系において、細胞傷害性/効力アッセイ及び研究を行った。手短に述べると、すべての抗体をPBSで10μg/mlに希釈し、384ウェルウルトライメージングアッセイプレート(Perkin Elmer)で一晩4℃でインキュベートして抗体をプレートに結合させた後、PBSで洗浄した。磁気活性化細胞選別(MACS;Miltenyi Biotec)を使用した負の選択により、健康な対照単球を末梢血単核細胞(PBMC;Lonza)から単離した。単球及び培養したTHP-1細胞(ATCC)をそれぞれ[0.5μM]CellTrace Violet及びCellTrace CFSE生細胞色素で20分間染色した後、1:1の比で混合した。増大した皮膚由来Vδ1γδT細胞を組織培養フラスコから剥離し、ある範囲のエフェクター対標的比(E:T)となるように系列希釈した後、THP1:単球細胞懸濁液に加えた。細胞懸濁液を384ウェルアッセイプレートに播種して、最終的な細胞播種密度をウェル当たりTHP-1細胞1,000個、ウェル当たり単球1,000個、及びある範囲のγδT細胞(最高E:T比60:1)とした。24時間後の生きているTHP-1及び健康な対照単球の数を決定するために、9つの視野を10倍拡大率でキャプチャするOpera Phenixハイコンテントプラットフォームを使用して共焦点像を取得した。生細胞数は、生細胞染色のサイズ、形態、質感、及び強度に基づいて数量化した。結果を
図21に提示する。
図21(A)は、示されているようにプレートに結合したmAbまたは対照の存在下のγδT細胞を用いる三重共培養下の24時間後のTHP-1及び単球細胞の数を提示する。細胞数は、生細胞イメージングを使用したハイコンテント共焦点顕微鏡法を使用して計算した。
図21(B)は、最高E:T比(60:1)における24時間の共培養後の疾患細胞の特異的殺傷と非疾患健康細胞の温存との間のウィンドウを強調するように設計された棒グラフ表現を提示する。左側の棒グラフ;非疾患細胞(初代ヒト単球)の殺傷と対比した疾患細胞(THP-1)の殺傷の増加倍率。右側の棒グラフ;同じデータだが、対照に対する殺傷増強率として表されている。
図21(C)は、図(A)から計算されたmAbなしの対照と比較した、Vδ1 mAbの存在下でTHP-1標的細胞を殺傷するVδ1 γδT細胞の効力の向上率をまとめた表形式の結果を提示する。
図21(D)は、50%のTHP-1細胞殺傷を付与するのに必要なγδT細胞数として表されている、図(A)から計算されたEC50値の表形式の結果を提示する。
図21に概説される複合結果及び発見は、本明細書に記載される抗体がVδ1+細胞の細胞傷害性及び疾患細胞特異性を増強する能力を明らかにしている。
【0492】
実施例20:多特異性抗体は、Vδ1+エフェクター細胞媒介性細胞傷害性の増強を付与した;組織中心疾患関連抗原のターゲティング。
細胞傷害性/効力アッセイ研究を行って、Vδ1+エフェクター細胞及びA-431がん細胞の共培養物に対する多特異性抗体の効果を調査した。A-431(EGFR
++;ATCC)標的細胞を384ウェルイメージングプレート(Perkin Elmer)に1,000細胞/ウェルで播種し、DMEM(10%FCS)において37℃で一晩インキュベートした。示されている抗体及び多特異性抗体を10μg/mlに希釈してアッセイプレートに加えた(最終アッセイ濃度2μg/ml)。増大した皮膚由来Vδ1γδT細胞を組織培養フラスコから剥離し、ある範囲のE:T比(最高E:T比60:1)となるように系列希釈した後、アッセイプレートに加えた。A-431細胞をVδ1γδT細胞と共に、抗体または対照の存在下、30℃、5%CO
2でインキュベートした。24時間のインキュベーション後、Hoechst 33342(ThermoFisher)を加えて細胞を染色した(最終2μM)。生きているA-431細胞の数を決定するため、9つの視野を10倍拡大率でキャプチャするOpera Phenixハイコンテントプラットフォームを使用して共焦点像を取得した。生細胞数は、生細胞染色のサイズ、形態、質感、及び強度に基づいて数量化した。示されている対照、コンパレータ、抗体及び多特異性抗体ありまたはなしのモデル系において標的細胞の50%が殺傷されるET比を決定するためのエフェクター/標的(E:T)時間経過研究。結果を
図22に提示する。
【0493】
第1に、
図22(A~D)は、抗Vδ1 VL+VH結合ドメイン(第1の標的に対する)を抗EGFR結合部位(第2の標的に対する)のCH1-CH2-CH3ドメインと組み合わせた抗Vδ1×抗TAA(EGFR)二重特異性結合部位を含む多特異性抗体ありまたはなしで、Vδ1+/A-431共培養物を研究した共培養結果の例を提示する。用いた対照及びコンパレータは示されているとおりである;左から右:mAbなし=抗体の添加なし;D1.3=D1.3対照;D1.3 IgG LAGA=D1.3+L235A、G237A;D1.3 FS1-67=EGFR結合定常ドメインとL235A、G237Aを含むD1.3可変ドメイン(配列番号139);セツキシマブ(インハウスで生成した)。より具体的には、
図22(A)は、前述の対照、コンパレータ、及び次の試験品:C08-LAGA=L235A、G237Aを含む1252_P01_C08(配列番号138);C08 FS1-67=L235A、G237Aを含有するEGFR結合ドメインと組み合わせた1252_P01_C08(配列番号140)を用いた5時間の共培養の結果を提示する。
図22(B)は、前述の対照、コンパレータ、及び次の試験品:G04-LAGA=L235A、G237Aを含む1245_P02_G04;G04 FS1-67=L235A、G237Aを含有するEGFR結合ドメインと組み合わせた1245_P02_G04(配列番号141)を用いた5時間の共培養の同等のデータを提示する。
図22(C)は、対照、コンパレータ、及び次の試験品:E07-LAGA=L235A、G237Aを含む1245_P01_E07;E07 FS1-67=L235A、G237Aを含有するEGFR結合ドメインと組み合わせた1245_P01_E07(配列番号142)を用いた5時間の共培養の同等のデータを提示する。
図22(D)は、5時間、12時間、及び24時間にわたる、対照、コンパレータ、及び試験品の存在下のVδ1γδT細胞の細胞傷害性の向上率をまとめた表を提示する。本明細書に記載される抗体またはその断片を多特異性フォーマットで提示した場合、450%を超える増強が観察され得る。
【0494】
第2に、
図22(E~H)は、抗Vδ1結合ドメイン(第1の標的に対する)が完全長抗体(VH-CH1-CH2-CH3/VL-CL)を含み、次いで抗EGFR scFv結合部位(第2の標的に対する)と組み合わさった、抗Vδ1×抗TAA(EGFR)二重特異性結合部位を含む多特異性抗体ありまたはなしで、Vδ1+/A-431共培養物を研究した結果の例を提示する。用いた対照及びコンパレータは示されているとおりである;左から右:mAbなし=抗体の添加なし;D1.3=対照;D1.3 IgG LAGA=D1.3+L235A、G237A;D1.3 LAGAセツキシマブ=L235A、G237AとC末端セツキシマブ由来scFvを含むD1.3(配列番号143);セツキシマブ(インハウスで生成した)。より具体的には、
図22(E)は、前述の対照、コンパレータ、及び次の試験品:C08-LAGA=L235A、G237Aを含む1252_P01_C08;C08 LAGAセツキシマブ=L235A、G237A及びC末端セツキシマブ由来scFvを含む1252_P01_C08(配列番号144)を用いた5時間の共培養を提示する。
図22(F)は、前述の対照、コンパレータ、及び次の試験品:G04-LAGA=L235A、G237Aを含む1245_P02_G04;G04 LAGAセツキシマブ=L235A、G237A及びC末端セツキシマブ由来scFvを含む1245_P02_G04(配列番号145)を用いた5時間の培養を提示する。
図22(G)は、対照、コンパレータ、及び次の試験品:E07-LAGA=L235A、G237Aを含む1245_P01_E07;E07 LAGAセツキシマブ=L235A、G237A及びC末端セツキシマブ由来scFvを含む1245_P01_E07(配列番号146)を用いた5時間の培養を提示する。
図22(H)は、5時間、12時間、及び24時間にわたる、対照、コンパレータ、及び試験品の存在下のVδ1γδT細胞の効力の向上率をまとめた表を提示する。本明細書に記載される抗体またはその断片を多特異性フォーマットで提示した場合、300%を超える増強が観察され得る。
【0495】
第3に、
図22(I及びJ)は、データを表現する代替的なアプローチの一例を概説する。具体的には、示されているすべての構成部分及びコンパレータに対して相対的な24時間の時点でのEGFR+細胞に対するVδ1+エフェクター細胞傷害性に多特異性抗体E07 FS1-67(I)またはC08 FS1-67(J)が付与する向上のパーセンテージが示されている。
【0496】
実施例21:多特異性抗体は、Vδ1+媒介性細胞傷害性及び疾患細胞特異的細胞傷害性の増強を付与した;造血系中心疾患関連抗原のターゲティング。
二重特異性フォーマットの腫瘍関連抗原(TAA)に連結したVδ1モノクローナル抗体が特定の標的細胞のVδ1γδT細胞殺傷を増強し得るかどうかを判定するために、三種培養のVδ1+エフェクター細胞、及びRajiがん細胞、及び健康な初代単球±抗Vδ1×抗TAA(CD19)多特異性抗体を含む多特異性抗体を含むモデル系において細胞傷害性/効力アッセイ及び研究を行った。具体的には、Raji細胞(CD19++;ATCC)をVδ1×CD19多特異性抗体の存在下でVδ1γδT細胞と共にインキュベートした。すべての抗体を4μg/mlに希釈し(最終アッセイ濃度1μg/ml)、384ウェルイメージングプレート(Perkin Elmer)に加えた。増大した皮膚由来Vδ1γδT細胞を組織培養フラスコから剥離し、ある範囲のエフェクター対標的比(E:T)となるように系列希釈した。Raji細胞を[0.5μM]CellTrace Far Redで染色した後、滴定したVδ1γδT細胞と1:1の比で混合した。細胞懸濁液を384ウェルアッセイプレートに播種して、最終的な細胞播種密度をウェル当たりRaji細胞1,000個、及びある範囲のγδT細胞(最高E:T比30:1)とした。24時間後の生きているRajiの数を決定するため、9つの視野を10倍拡大率でキャプチャするOpera Phenixハイコンテントプラットフォームを使用して共焦点像を取得した。生細胞数は、生細胞染色のサイズ、形態、質感及び強度に基づいて数量化した。結果は
図23に記録してある。ここで用いた抗体及びコンパレータは示されているとおりである。具体的には、RSV IgGは、モタビズマブ非結合対照であり、G04は、1245_P02_G04であり、E07は、1245_P01_E07であり、D1.3 VHVLは、重鎖C末端抗CD19 scFvを含むD1.3 HELであり(用いたscFv結合モジュールについては配列番号157を参照のこと)、G04 VHVLは、重鎖C末端抗CD19 scFvを含む1245_P02_G04 LAGA(配列番号158)であり、E07 VHVLは、重鎖C末端抗CD19 scFvを含む1245_P01_E07 LAGA(配列番号159)である。
図23(A)は、(i)50%のRaji細胞殺傷を誘導するのに必要なγδT細胞数またはE:T比として表されているEC50計算値、及び(ii)mAbなしの対照と比較したEC50における向上のパーセンテージをまとめた表である。
図23(B)は、Vδ1-CD19多特異性抗体の存在下でRaji標的細胞の50%を溶解するγδT細胞の能力における向上のパーセンテージを表す棒グラフである。
【0497】
実施例24:ヒト及びカニクイザルVδ1に対するVδ1-CD19二重特異性抗体の結合親和性
標的(すなわち、γδTCRのVδ1鎖、ヒト及びカニクイザルの両方の抗原)に対する抗体の結合親和性は、Reichert 4SPR機器(Reichert Technologies)を使用したSPR分析によって確立される。抗体をPlanar Protein A Sensor Chip(Reichert Technologies)にコーティングして、およそ500uRIUのベースラインの増加をもたらす。組換えヒトVδ1ヘテロ二量体またはカニクイザルVδ1ヘテロ二量体を細胞上に流した。実験はすべて室温で行った。これらのデータは、二重特異性抗体がヒト及びカニクイザルの両方のVδ1と結合することを実証する。
【0498】
実施例25A:Vδ1γδT細胞活性化及び細胞傷害性アッセイにおけるVδ1-CD19二重特異性抗体。
負の磁気活性化細胞選別(MACS;MiltenyiBiotec)を使用して、健康なB細胞をPBMC(Lonza)から単離した。がん性NALM-6細胞(ATCC)、Raji細胞(ATCC)、及び健康な単離B細胞におけるCD19の発現を決定した。簡潔に述べると、5×10^4個の細胞をCD19抗体(Biolegend)と共に15分間4℃でインキュベートした後、洗浄し固定した。CD19の発現をフローサイトメトリー(MACSQuant10、MiltenyiBiotec)によって決定した。結果を
図25Aに示す。
【0499】
CD19
+標的細胞傷害性及びCD19
+健康細胞の温存に対するCD19-Vδ1二重特異性抗体の効果を、Opera Phenix(Perkin Elmer)のハイコンテント共焦点イメージングを使用して決定した。NALM-6、Raji、及びB細胞を[0.5μM]CellTrace CFSE生細胞色素で20分間染色した。二重特異性抗体及び対照をPBSに系列希釈した後、384ウェルイメージングアッセイプレート(Perkin Elmer)に加えた。増大した皮膚由来Vδ1γδT細胞を組織培養フラスコから剥離し、基礎増殖培地に再懸濁した後、懸濁状態でNALM-6、Raji、またはB細胞のいずれかと1:1で混合した。細胞懸濁液を384ウェルアッセイプレートに播種して、最終的な細胞播種密度をウェル当たりNALM-6細胞、Raji細胞またはB細胞2,000個、及びウェル当たりVδ1γδT細胞2,000個とした。最終アッセイ抗体濃度は6.6nM~66pMの範囲であった。細胞を24時間共培養した後にDRAQ7(1:300最終、Abcam)で染色した。生きている標的細胞の数を決定するため、9つの視野を10倍拡大率でキャプチャするOpera Phenixハイコンテントプラットフォームを使用して共焦点像を取得した。生細胞数は、CFSE染色のサイズ、形態、質感及び強度、ならびにDRAQ7染色の非存在に基づいて数量化した。結果を
図25、B~Eに示す。
【0500】
Vδ1γδT細胞の活性化及び脱顆粒に対するCD19-Vδ1二重特異性抗体の効果を決定するため、Vδ1 TCRの下方制御及びCD107aの上方制御をCD19
+標的細胞及びCD19
+健康細胞の存在下で数量化した。簡潔に述べると、抗体をPBSで系列希釈した後、U底96ウェルプレートに加えた。NALM-6及び単離B細胞を[0.5μM]CellTrace CFSE生細胞色素で20分間染色した。皮膚由来Vδ1γδT細胞を培養フラスコから剥離し、細胞懸濁液をNALM-6またはB細胞と0.5:1で混合した。細胞懸濁液をウェル当たりNALM-6またはB細胞5×10^4個に対してウェル当たりVδ1γδT細胞2.5×10^4個でアッセイプレートに播種した。最終アッセイ抗体濃度は60nM~3pMの範囲である。細胞を37℃、5%CO
2で4時間インキュベートした。細胞を洗浄し、死細胞(eFlour 520、Invitrogen)、Vδ1 TCR(MiltenyiBiotec)、及びaCD107a(Miltenyi)の表面発現について30分間4℃で染色した。細胞をFACSバッファーで洗浄し、Cell Fix(BD sciences)に再懸濁した後、4℃の暗所で一晩インキュベートした。翌日、MACS Quant Analyzer 16を使用したフローサイトメトリーにより、VD1 TCR発現レベルを測定した。結果を
図25、F~Kに示す。
【0501】
結論:Vδ1-CD19二重特異性抗体は、健康なCD19+細胞を温存しながら、CD19+標的細胞のγδT細胞媒介性細胞傷害性を増強する。
【0502】
実施例38:Vδ1-CD19二重特異性抗体は、健康細胞を温存しながら、がん細胞に対するVδ1γδT細胞の細胞傷害性効果を選択的に増強する
CD19+標的細胞傷害性及びCD19+健康細胞の温存に対するCD19-Vδ1二重特異性抗体の効果を、Opera Phenix(Perkin Elmer)のハイコンテント共焦点イメージングを使用して決定した。負の磁気活性化細胞選別(MACS;MiltenyiBiotec)を使用して、健康なB細胞をPBMC(Lonza)から単離した。Raji細胞及び健康な初代B細胞をCellTrace色素で染色した。増大した皮膚由来Vδ1γδT細胞及びドナー適合αβT細胞を培養物から取り出し、洗浄し、培養培地に再懸濁した後、Raji細胞及びB細胞と1:1で混合した。二重特異性抗体及び対照をPBSで系列希釈した後、384ウェルイメージングアッセイプレート(Perkin Elmer)に加えた。γδT細胞、Raji細胞、及びB細胞、またはαβT細胞、Raji細胞、及びB細胞、またはVδ1γδT細胞、αβT細胞、Raji細胞、及びB細胞のいずれかの細胞懸濁液を384ウェルイメージングアッセイプレートに加えて、ウェル当たり各細胞型2,000個、及び6.6nM~66pMの範囲の最終的な抗体アッセイ濃度を達成した。生きている標的細胞の数を決定するため、9つの視野を10倍拡大率でキャプチャするOpera Phenixハイコンテントプラットフォームを使用して共焦点像を取得した。生細胞数は、24時間時点のCFSE染色のサイズ、形態、質感及び強度に基づいて数量化した。結果を
図38、A~Fに示す。
【0503】
Vδ1γδT細胞またはαβT細胞の活性化が腫瘍形成促進性サイトカインIL-17の産生上昇をもたらすかどうかを判定するために、24時間時点で画像を取得した後、上清をイメージングプレートから収集した。上清をU-Plex 10-plex Meso Scale Discovery(MSD)に流し、IL-17Aレベルを数量化した。結果を
図38、G~Iに示す。
【0504】
IL-17A(インターロイキン-17A)は、活性化されたT細胞によって産生される腫瘍形成促進性サイトカインである。IL-17Aは、腫瘍の増殖を増強し、抗がん免疫応答を抑制し得る。
図38、G~Iに示すように、抗vδ1抗体はIL-17Aの分泌を誘導しないが、抗CD3抗体は誘導する。
【0505】
結論:Vδ1-CD19二重特異性抗体は、健康なCD19+細胞を温存しながら、CD19+標的細胞のγδT細胞媒介性細胞傷害性を増強する。対照的に、抗CD3×CD19二重特異性薬は、γδT細胞及びαβT細胞の両方によるCD19+標的細胞の溶解を増強させたが、αβT細胞の活性化は、健康な初代CD19+B細胞の溶解、及び腫瘍形成促進性サイトカインIL-17Aの分泌も増強させた。
【0506】
実施例26:結合アッセイ及びハイコンテント細胞傷害性アッセイにおけるVδ1-Her2二重特異性抗体。
Her2及びVδ1の発現を、SK-BR-3細胞(Caltag-Medsystems Ltd)、BT-474細胞(ATCC)、MDA-MB-231-Luc細胞(Creative Biogene Biotechnology)、及びVδ1γδT細胞で測定した。簡潔に述べると、5×10^4個の細胞をHer2及びVδ1抗体(MiltenyiBiotec)と共に15分間4℃でインキュベートした後、洗浄し固定した。Her2及びVδ1の発現をフローサイトメトリー(MACSQuant10、MiltenyiBiotec)によって決定した。結果を
図26A及び26Bに示す。ある範囲の濃度の抗Vδ1抗体もしくはVδ1二重特異性抗体または対照(IgG対照またはトラスツズマブ)と共に標的細胞を15分間インキュベートすることにより、Her2-Vδ1二重特異性抗体の結合を決定した。洗浄後、細胞を抗ヒトIgG二次抗体と共に更に15分間インキュベートしてから、洗浄し固定した。各細胞型に結合した抗体の量をフローサイトメトリーによって決定した。結果を
図26、C~Fに示す。
【0507】
Her2
+/Her2
-標的細胞傷害性に対するHer2-Vδ1二重特異性抗体の効果を、Opera Phenix(Perkin Elmer)のハイコンテント共焦点イメージングを使用して決定した。簡潔に述べると、SK-BR-3、BT-474及びMDA-MB-231細胞を384ウェルイメージングプレート(Perkin Elmer)に播種して最終的な播種密度をウェル当たり標的細胞2,000個とした後、37℃、5%CO
2で一晩インキュベートした。抗体をPBSに希釈し、1:10に系列希釈した後、アッセイプレートに加えて最終アッセイ濃度を333nM~0.33pMとした。増大した皮膚由来Vδ1γδT細胞を組織培養フラスコから剥離し、基礎増殖培地に再懸濁した後、アッセイプレートに1:1のエフェクター:標的比でウェル当たり細胞2,000個を加えた。細胞を24時間共培養した後にHoechst(1:1000最終、Invitrogen)及びDRAQ7(1:300最終、Abcam)で染色した。生きている標的細胞の数を決定するため、9つの視野を10倍拡大率でキャプチャするOpera Phenixハイコンテントプラットフォームを使用して共焦点像を取得した。生細胞数は、生細胞染色のサイズ、形態、質感及び強度、ならびにDRAQ7染色の非存在に基づいて数量化した。結果を
図26、G~Jに示す。
【0508】
結論:Vδ1-Her2二重特異性抗体は、Her2-細胞を温存しながら、Her2+標的細胞のγδT細胞媒介性細胞傷害性を増強する。
【0509】
実施例27:ヒトVδ1及びヒトEGFR抗原に対するVδ1-EGFR二重特異性抗体の結合親和性
標的(すなわち、γδTCRのVδ1鎖及びEGFR)に対する抗体の結合親和性は、Reichert 4SPR機器(Reichert Technologies)を使用したSPR分析によって確立される。抗体(1.5ug/mL)をPlanar Protein A Sensor Chip(Reichert Technologies)にコーティングして、およそ500uRIUのベースラインの増加をもたらす。組換えヒトVδ1ヘテロ二量体またはヒトEGFRを、100nMの濃度で、会合180秒、解離480秒、流速25μL/分、ランニングバッファーPBS+0.05%Tween 20のパラメータを用いて細胞上に流した。実験はすべて室温で行った。結果を
図27A及び27Bに示す。
【0510】
結論:このデータは、Vδ1/EGFR二重特異性抗体が、ヒトEGFR結合能力の導入に加えて、その親単特異性抗体に匹敵するヒトVδ1への結合を示すことを実証する。
【0511】
実施例28:Vδ1-EGFR二重特異性抗体の標的細胞結合
EGFR/Vδ1二重特異性抗体の結合の特異性及び親和性を決定するために、EGFR陽性A431及びVδ1陽性初代γδT細胞をアッセイした。標的細胞を組織培養フラスコから剥離し、PBSに再懸濁し、v底96ウェルプレートにウェル当たり細胞100,000個の最終密度で播種した。細胞を遠心分離にかけ、製造元の説明書に従って細胞ペレットをFcRブロッキング試薬に再懸濁し、4℃で20分間インキュベートしてから更に洗浄した。抗体をPBSで500nMに希釈し、PBSで1:10に系列希釈して50pMとし、細胞に加えた後、4℃で20分間のインキュベーションを行った。細胞表面に結合したmAbの量を決定するために、生死判別色素に加えて、APCにコンジュゲートされたマウス抗ヒトIgG二次抗体(製品コード..、希釈度1:100)で細胞を染色した。4℃で20分間のインキュベーション後、細胞を2回洗浄し、MACSQuantを使用して蛍光を測定した。結果を
図28、A~Fに示す。
【0512】
結論:このデータは、Vδ1/EGFR二重特異性抗体が、EGFR陽性A431細胞株への結合の導入に加えて、その親単特異性mAbに匹敵するVδ1γδT細胞への結合を示すことを実証する。
【0513】
実施例29:in vitroでのγδT細胞の活性化及び標的細胞傷害性の評価
増大した皮膚由来Vδ1γδT細胞及びA431細胞を組織培養フラスコから剥離し、基礎増殖培地に再懸濁し、所望のエフェクター:標的比に応じた適切な細胞希釈度で96ウェルプレートに播種した。mAbを希釈し、規定濃度で各ウェルに加えた。次いで培養物を37℃、5%CO
2で4時間(D)または24時間(A~C、E)インキュベートした。生細胞の数を決定するために、細胞を採取し、1:1000の希釈度の生死判別色素で20分間染色した。CD25の状態を決定するために、細胞を採取した後、細胞表面を抗CD25抗体で染色した。脱顆粒を測定するために、フルオロフォアにコンジュゲートした抗CD107α抗体を共培養開始時に細胞-抗体ミックスに直接加えた。2回の洗浄及び細胞固定の後、MACSQuantを使用して蛍光を測定し、生細胞数及び蛍光強度中央値を決定した。結果を
図29、A~Eに示す。
【0514】
結論:このデータは、Vδ1/EGFR二重特異性抗体が初代Vδ1陽性γδT細胞の活性化及び脱顆粒を誘導し、EGFR陽性A431細胞株の細胞媒介性溶解を増加させることを実証する。
【0515】
実施例30:抗vδ1抗体は、vδ1細胞におけるCD3下方制御を引き起こす。
複数の研究を行って、vδ1細胞におけるCD3の下方制御に関する、抗vδ1抗体によるvδ1細胞の刺激/活性化の効果を調査した。これは、抗vδ1クローンADT1-4-2をPBMCと共にインキュベートし、次いで表現型解析によりTCRを分析することによって試験した。
【0516】
凍結保存されたヒト末梢血単核細胞(PBMC)を商業的に調達し、丸底96ウェル組織培養プレートに、10ng/mlのIL15を含む250ulの完全培地(10%FCS、pen/strep、非必須アミノ酸、ピルビン酸ナトリウム、及びHEPESを補ったRPMI)中、250,000細胞/ウェルで播種した。滴定vδ1抗体ADT1-4-2を、1ug/ml(6.67nM)、0.01ug/ml(0.067nM)、または0.0001ug/ml(0.00067nM)の最終濃度まで加えた。一致する濃度の対照としてRSV IgG抗体を含めた。3日毎に培地及び抗体を補充しながら、培養物を14日間インキュベートした。各条件でvδ1細胞及びTCR発現の表現型解析を行うために、エンドポイントでフローサイトメトリー分析を行った。細胞はまず、生きている一重項でゲーティングし、続いて汎γδ(Miltenyi REA592;130-113-508)でゲーティングし、これはvδ1(Miltenyi REA173;130-100-553)のための親ゲートであり、これ自体がCD3(Miltenyi REA613;130-113-142)のための親ゲートであった。細胞集団を陽性染色によって同定し、次いでMFIによって試料間の各マーカーの相対的な発現レベルを同定した。
【0517】
図30Aは、mAb標的会合の指標としての抗体刺激時のvδ1 TCRのMFIを示す。
図30Bは、陽性ゲーティングされたvδ1細胞におけるCD3発現のMFIを示す。vδ1抗体クローンADT1-4-2による刺激はvδ1細胞を会合させ、vδ1細胞上のvδ1及びCD3の両方の下方制御をもたらした。
【0518】
実施例31:Vδ1-FAPα二重特異性抗体は、Vδ1γδT細胞の活性化及びFAPα+線維芽細胞の溶解を増強する。
抗Vδ1抗体、抗FAPα抗体、及び抗Vδ1×FAPα抗体のそれらの標的(すなわち、γδTCRのVδ1鎖及びFAPα)に対する結合の結合動態は、Reichert 4SPR機器(Reichert Technologies)を使用したSPR分析によって確立される。抗体(1.5ug/mL)をPlanar Protein A Sensor Chip(Reichert Technologies)にコーティングして、およそ500uRIUのベースラインの増加をもたらす。組換えヒトVδ1ヘテロ二量体またはヒトFAPαを、100nMの濃度で、会合180秒、解離480秒、流速25μL/分、ランニングバッファーPBS+0.05%Tween 20のパラメータを用いて細胞上に流した。実験はすべて室温で行った。結果を
図31、Aに示す。
【0519】
ある範囲の濃度の抗Vδ1抗体もしくはVδ1二重特異性抗体または対照(IgG対照または抗FAPα)と共にFAPα
+標的細胞またはVδ1
+エフェクター細胞を15分間インキュベートすることにより、Vδ1-FAPα二重特異性抗体の結合を決定した。洗浄後、細胞を抗ヒトFc二次抗体と共に更に15分間インキュベートしてから、洗浄し固定した。各細胞型に結合した抗体の量をフローサイトメトリーによって決定した。結果を
図31、B~Cに示す。
【0520】
Vδ1γδT細胞の活性化及び脱顆粒に対するVδ1-FAPα二重特異性抗体の効果を決定するため、Vδ1 TCRの下方制御及びCD107aの上方制御をFAPα
+標的細胞の存在下で数量化した。簡潔に述べると、抗Vδ1、抗FAPα、及び抗Vδ1×FAPα二重特異性抗体をPBSで系列希釈した後、U底96ウェルプレートに加えた。FAPα
+標的細胞(BJ線維芽細胞またはヒト皮膚線維芽細胞)を[0.5μM]CellTrace CFSE生細胞色素で20分間染色した。皮膚由来Vδ1γδT細胞を培養フラスコから剥離し、細胞懸濁液をFAPα
+標的細胞と1:1で混合したか、または培地で1:1に希釈した。細胞懸濁液を、ウェル当たりFAPα
+標的細胞2.5×10^4個の存在下または非存在下にて、ウェル当たりVδ1γδT細胞2.5×10^4個でアッセイプレートに播種した。最終アッセイ抗体濃度は200nM~2pMの範囲である。細胞を37℃、5%CO
2で4時間インキュベートしてから洗浄し、死細胞(eFlour 520、Invitrogen)、Vδ1 TCR(MiltenyiBiotec)、及びaCD107a(Miltenyi)の表面発現について30分間4℃で染色した。細胞をFACSバッファーで洗浄し、Cell Fix(BD sciences)に再懸濁した後、4℃の暗所で一晩インキュベートした。翌日、MACS Quant Analyzer 16を使用したフローサイトメトリーにより、蛍光強度中央値(MFI)により決定されるVD1 TCR及びCD107aの発現レベルを測定した。結果を
図31D~Gに示す。
【0521】
FAPα
+線維芽細胞の非存在下では中程度のVδ1 TCR下方制御が観察される(
図31、D)。しかしながら、FAPα
+線維芽細胞の存在下では、抗FAPα-Vδ1二重特異性抗体はTCR下方制御を大幅に増強する(
図31、E)。これは、Vδ1γδT細胞におけるVδ1 TCRの下方制御に対する抗FAPα-Vδ1二重特異性抗体の効果が、隣接細胞上のFAPαなどの腫瘍特異的抗原への結合を介して増強されることを示す。
【0522】
抗Vδ1×FAPα二重特異性抗体及びFAPα
+線維芽細胞の存在下では、CD107a(脱顆粒のマーカー)がVδ1γδT細胞においてモノクローナル対照と比較して上方制御される(
図31、G)。FAPα
+線維芽細胞が存在しない場合、CD107aはVδ1γδT細胞においてモノクローナル対照と比較して上方制御されない(
図31、F)。これは、Vδ1γδT細胞におけるCD107aの上方制御に対する抗FAPα-Vδ1二重特異性抗体の効果が特異的であり、抗FAPα-Vδ1二重特異性抗体がFAPα
+細胞の存在下でVδ1γδT細胞の脱顆粒及び活性化を増強することを示す。
【0523】
FAPα
+標的細胞傷害性に対するFAPα-Vδ1二重特異性抗体の効果を、Opera Phenix(Perkin Elmer)のハイコンテント共焦点イメージングを使用して決定した。FAPα
+標的細胞(BJ線維芽細胞、ヒト皮膚線維芽細胞)を384ウェルイメージングプレート(Perkin Elmer)に播種し、24時間インキュベートした。二重特異性抗体及び対照をPBSに系列希釈した後、アッセイプレートに加えた。増大した皮膚由来Vδ1γδT細胞を組織培養フラスコから剥離し、基礎増殖培地に再懸濁した後、アッセイプレートに1:1のエフェクター:標的比で加えた。最終アッセイ抗体濃度は6.6nM~66fMの範囲であった。細胞を24時間共培養した後にDRAQ7(1:300最終、Abcam)及びHoechst(1:1,000、Invitrogen)で染色した。生きている標的細胞の数を決定するため、9つの視野を10倍拡大率でキャプチャするOpera Phenixハイコンテントプラットフォームを使用して共焦点像を取得した。生細胞数は、Hoechst染色のサイズ、形態、質感及び強度、ならびにDRAQ7染色の非存在に基づいて数量化した。結果を
図31、Hに示す。抗FAPα-Vδ1二重特異性抗体の存在下では、抗Vδ1及び抗FAPα対照と比較して、線維芽細胞傷害性の顕著な増加が観察された(
図31、H)。これは、Vδ1γδT細胞を標的細胞と直接架橋すると、Vδ1γδT細胞の活性化及び細胞傷害性効果を特異的に増強できることを示している。
【0524】
結論:抗Vδ1-FAPα二重特異性抗体は、Vδ1+γδT細胞及びFAPα+標的細胞に特異的に結合し、上昇したVδ1 TCR下方制御、CD107a上方制御、及びFAPα+線維芽細胞の溶解によって示されるように、FAPα+細胞の存在下のVδ1γδT細胞の活性化を増強させる。
【0525】
実施例32:Vδ1-MSLN二重特異性抗体は、Vδ1γδT細胞の活性化及びMSLN
+標的細胞の溶解を増強する。
抗Vδ1抗体、抗MSLN(メソテリン)抗体、及び抗Vδ1×MSLN抗体のそれらの標的(すなわち、γδTCRのVδ1鎖及びMSLN)に対する結合の結合動態は、Reichert 4SPR機器(Reichert Technologies)を使用したSPR分析によって確立される。抗体(1.5ug/mL)をPlanar Protein A Sensor Chip(Reichert Technologies)にコーティングして、およそ500uRIUのベースラインの増加をもたらす。組換えヒトVδ1ヘテロ二量体またはヒトMSLNを、100nMの最高濃度で、会合180秒、解離480秒、流速25μL/分、ランニングバッファーPBS+0.05%Tween 20のパラメータを用いて細胞上に流した。実験はすべて室温で行った。結果を
図32、Aに示す。
【0526】
ある範囲の濃度の抗Vδ1抗体もしくはVδ1二重特異性抗体または対照(IgG対照または抗MSLN)と共にMSLN
+標的細胞またはVδ1
+エフェクター細胞を15分間インキュベートすることにより、MSLN-Vδ1二重特異性抗体の結合を決定した。洗浄後、細胞を抗ヒトIgG二次抗体と共に更に15分間インキュベートしてから、洗浄し固定した。各細胞型に結合した抗体の量をフローサイトメトリーによって決定した。結果を
図32、B~Cに示す。
【0527】
Vδ1γδT細胞の活性化及び脱顆粒に対するMSLN-Vδ1二重特異性抗体の効果を決定するため、Vδ1 TCRの下方制御及びCD107aの上方制御をMSLN
+標的細胞の存在下で数量化した。簡潔に述べると、抗Vδ1、抗MSLN、及び抗Vδ1×MSLN二重特異性抗体をPBSで系列希釈した後、U底96ウェルプレートに加えた。MSLN
+標的細胞(OVCAR-3またはHeLa)を[0.5μM]CellTrace CFSE生細胞色素で20分間染色した。皮膚由来Vδ1γδT細胞を培養フラスコから剥離し、細胞懸濁液をMSLN
+標的細胞と1:1で混合したか、または培地で1:1に希釈した。細胞懸濁液を、ウェル当たりMSLN
+標的細胞2.5×10^4個の存在下または非存在下にて、ウェル当たりVδ1γδT細胞2.5×10^4個でアッセイプレートに播種した。最終アッセイ抗体濃度は200nM~2pMの範囲である。細胞を37℃、5%CO
2で4時間インキュベートしてから洗浄し、死細胞(eFlour 520、Invitrogen)、Vδ1 TCR(MiltenyiBiotec)、及びaCD107a(Miltenyi)の表面発現について30分間4℃で染色した。細胞をFACSバッファーで洗浄し、Cell Fix(BD sciences)に再懸濁した後、4℃の暗所で一晩インキュベートした。翌日、MACS Quant Analyzer 16を使用したフローサイトメトリーにより、蛍光強度中央値(MFI)により決定されるVD1 TCR及びCD107aの発現レベルを測定した。結果を
図32D~Gに示す。
【0528】
MSLN
+標的細胞の非存在下では中程度のVδ1 TCR下方制御が観察される(
図32、D)。しかしながら、MSLN
+OVCAR-3細胞の存在下では、抗MSLN-Vδ1二重特異性抗体はTCR下方制御を大幅に増強する(
図32、E)。これは、Vδ1γδT細胞におけるVδ1 TCRの下方制御に対する抗MSLN-Vδ1二重特異性抗体の効果が、隣接細胞上のMSLNなどの腫瘍特異的抗原への結合を介して増強されることを示す。
【0529】
抗Vδ1×MSLN二重特異性抗体及びMSLN
+OVCAR-3細胞の存在下では、CD107a(脱顆粒のマーカー)がVδ1γδT細胞においてモノクローナル対照と比較して上方制御される(
図32、G)。MSLN
+OVCAR-3細胞が存在しない場合、CD107aはVδ1γδT細胞においてモノクローナル対照と比較して上方制御されない(
図32、F)。これは、Vδ1γδT細胞におけるCD107aの上方制御に対する抗MSLN-Vδ1二重特異性抗体の効果が特異的であり、抗MSLN-Vδ1二重特異性抗体がMSLN
+細胞の存在下でVδ1γδT細胞の脱顆粒及び活性化を増強することを示す。
【0530】
MSLN
+標的細胞傷害性に対するMSLN-Vδ1二重特異性抗体の効果を、Opera Phenix(Perkin Elmer)のハイコンテント共焦点イメージングを使用して決定した。MSLN
+標的細胞(HeLaまたはOVCAR-2)を384ウェルイメージングプレート(Perkin Elmer)に播種し、24時間インキュベートした。二重特異性抗体及び対照をPBSに系列希釈した後、アッセイプレートに加えた。増大した皮膚由来Vδ1γδT細胞を組織培養フラスコから剥離し、基礎増殖培地に再懸濁した後、アッセイプレートに1:1のエフェクター:標的比で加えた。最終アッセイ抗体濃度は6.6nM~66fMの範囲であった。細胞を24時間共培養した後にDRAQ7(1:300最終、Abcam)及びHoechst(1:1,000、Invitrogen)で染色した。生きている標的細胞の数を決定するため、9つの視野を10倍拡大率でキャプチャするOpera Phenixハイコンテントプラットフォームを使用して共焦点像を取得した。生細胞数は、Hoechst染色のサイズ、形態、質感及び強度、ならびにDRAQ7染色の非存在に基づいて数量化した。結果を
図32、Hに示す。抗MSLN-Vδ1二重特異性抗体の存在下では、抗Vδ1及び抗MSLN対照と比較して、標的細胞傷害性の顕著な増加が観察された(
図32、H)。これは、Vδ1γδT細胞を標的細胞と直接架橋すると、Vδ1γδT細胞の活性化及び細胞傷害性効果を特異的に増強できることを示している。
【0531】
結論:抗Vδ1×MSLN二重特異性抗体は、Vδ1+γδT細胞及びMSLN+標的細胞に特異的に結合し、上昇したVδ1 TCR下方制御、CD107a上方制御、及びMSLN+標的細胞の溶解によって示されるように、MSLN+細胞の存在下のVδ1γδT細胞の活性化を増強させる。
【0532】
実施例33:Vδ1-PD-1二重特異性抗体は、Vδ1γδT細胞活性化を増強し、PD-1/PD-L1チェックポイント阻害を遮断する
抗Vδ1抗体、抗PD-1抗体、及び抗Vδ1×PD-1抗体が結合する(すなわち、γδTCRのVδ1鎖及びPD-1)結合の結合動態は、Reichert 4SPR機器(Reichert Technologies)を使用したSPR分析によって確立される。抗体(1.5ug/mL)をPlanar Protein A Sensor Chip(Reichert Technologies)にコーティングして、およそ500uRIUのベースラインの増加をもたらす。組換えヒトVδ1ヘテロ二量体またはヒトPD-1を100nMの最高濃度で細胞上に流した。結果を
図33Aに示す。
【0533】
両方の標的リガンドに対する二重特異性抗体の二重結合を評価するため、組換えPD-1をまずCarboxymethyl Dextran Sensor Chip(Reichert Technologies)に10ug/mlで固定化してから、二重特異性抗体を100nMで流した。次いで、組換えヒトVδ1ヘテロ二量体を100nMで流すことにより、その後にVδ1γδTCRに結合する能力を評価した。実験はすべて室温で行った。結果を
図33Bに示す。
【0534】
Vδ1γδT細胞及びPD-1
+免疫細胞に対する抗Vδ1×PD-1二重特異性抗体の結合をフローサイトメトリーによって評価した。最初に、全血から抽出されたPBMCバフィーコートからの磁気選別により、CD4及びCD8 T細胞の負の選択を行った。Dynabeads(Invitrogen)にコンジュゲートされた抗CD3/抗CD28抗体による活性化の後、CD4及びCD8 T細胞におけるPD-1の細胞表面発現を検出した。活性化されたT細胞及びVδ1γδT細胞を、ある範囲の濃度の抗Vδ1×PD-1二重特異性抗体または対照(IgG対照または抗PD-1)と共に15分間インキュベートした。洗浄後、細胞を抗ヒトIgG二次抗体と共に更に15分間インキュベートしてから、洗浄し固定した。各細胞型に結合した抗体の量をフローサイトメトリーによって決定した。結果を
図33C、Dに示す。
【0535】
Vδ1γδT細胞の活性化に対する抗Vδ1×PD-1二重特異性抗体の効果を決定するため、Vδ1 TCRの下方制御をPD-1
+T細胞の存在下で数量化した。簡潔に述べると、抗Vδ1、抗PD-1、及び抗Vδ1×PD-1二重特異性抗体をPBSで系列希釈した後、アッセイプレートに加えた。PD-1
+T細胞をCellTrace CFSE生細胞色素で染色し、皮膚由来Vδ1γδT細胞と1:1で混合したか、または培地で1:1に希釈した。細胞懸濁液を、ウェル当たりPD-1
+T細胞2.5×10^4個の存在下または非存在下にて、ウェル当たりVδ1γδT細胞2.5×10^4個でアッセイプレートに播種した。最終アッセイ抗体濃度は200nM~2pMの範囲である。細胞を37℃、5%CO
2で4時間インキュベートしてから洗浄し、死細胞(eFlour 520、Invitrogen)及びVδ1 TCR(MiltenyiBiotec)について染色した。細胞を洗浄し、Cell Fix(BD sciences)に再懸濁した。MACS Quant Analyzer 16を使用したフローサイトメトリーで測定した蛍光強度中央値(MFI)により、VD1 TCR発現レベルを決定した。結果を
図33E、Fに示す。
【0536】
PD-1
+T細胞の活性化に対する抗Vδ1×PD-1二重特異性抗体の効果を評価するため、PD-1
+NFAT Jurkat細胞(Promega、JA2191)を抗Vδ1×PD-1二重特異性抗体または対照(PD-1モノクローナル抗体または抗RSVIgG×抗PD-1)と共に、37℃、5%CO
2で5時間インキュベートした。このアッセイは、不透明な白色96ウェルプレートに1μg/ウェルで予めコーティングした組換えVδ1タンパク質の存在下または非存在下で行った。5時間後、Bio-Glo Luciferase試薬(Promega)を細胞に1:1の比で加えた。室温で5分間インキュベートした後、発光シグナルをBioTek Synergyプレートリーダーで検出した。生の発光シグナルを相対発光単位(RLU)の倍率に変換した。結果を
図33Gに示す。
【0537】
結論:抗Vδ1×PD-1二重特異性抗体は、例えば、PD-1+CD4またはCD8 T細胞を介して架橋すること、及びCD4またはCD8 T細胞におけるPD-1/PD-L1免疫チェックポイント阻害を遮断することにより、Vδ1γδT細胞の活性化を増強する。
【0538】
実施例34:Vδ1-4-1BB二重特異性抗体は、Vδ1γδT細胞及びCD8 T細胞の活性化を増強する
抗Vδ1抗体、抗4-1BB抗体、及び抗Vδ1×4-1BB抗体のそれらの標的(すなわち、γδTCRのVδ1鎖及び4-1BB)に対する結合の結合動態は、Reichert 4SPR機器(Reichert Technologies)を使用したSPR分析によって確立される。抗体(1.5ug/mL)をPlanar Protein A Sensor Chip(Reichert Technologies)にコーティングして、およそ500uRIUのベースラインの増加をもたらす。組換えヒトVδ1ヘテロ二量体またはヒト4-1BBを100nMの最高濃度で細胞上に流した。結果を
図34Aに示す。
【0539】
両方の標的リガンドに対する二重特異性抗体の二重結合を評価するため、組換え4-1BBをまずCarboxymethyl Dextran Sensor Chip(Reichert Technologies)に10ug/mlで固定化してから、二重特異性抗体を100nMで流した。次いで、組換えヒトVδ1ヘテロ二量体を100nMで流すことにより、その後にVδ1γδTCRに結合する能力を評価した。実験はすべて室温で行った。結果を
図34Bに示す。
【0540】
Vδ1γδT細胞及び4-1BB
+免疫細胞に対する抗Vδ1×4-1BB二重特異性抗体の結合をフローサイトメトリーによって評価した。最初に、全血から抽出されたPBMCバフィーコートからの磁気選別により、CD8
+T細胞の負の選択を行った。Dynabeads(Invitrogen)にコンジュゲートされた抗CD3/抗CD28抗体による活性化の後、CD8 T細胞における4-1BBの細胞表面発現は上昇していた。活性化された4-1BB
+CD8 T細胞及びVδ1γδT細胞を、ある範囲の濃度の抗Vδ1×4-1BB二重特異性抗体または対照(IgG対照または抗4-1BB)と共に15分間インキュベートした。洗浄後、細胞を抗ヒトIgG二次抗体と共に更に15分間インキュベートしてから、洗浄し固定した。各細胞型に結合した抗体の量をフローサイトメトリーによって決定した。結果を
図34C、Dに示す。
【0541】
Vδ1γδT細胞の活性化に対する抗Vδ1×4-1BB二重特異性抗体の効果を決定するため、Vδ1 TCRの下方制御を4-1BB
+T細胞の存在下で数量化した。簡潔に述べると、抗Vδ1、抗4-1BB、及び抗Vδ1×4-1BB二重特異性抗体をPBSで系列希釈した後、アッセイプレートに加えた。4-1BB
+CD8 T細胞をCellTrace CFSE生細胞色素で染色し、皮膚由来Vδ1γδT細胞と1:1で混合したか、または培地で1:1に希釈した。細胞懸濁液を、ウェル当たり4-1BB
+CD8 T細胞2.5×10^4個の存在下または非存在下にて、ウェル当たりVδ1γδT細胞2.5×10^4個でアッセイプレートに播種した。最終アッセイ抗体濃度は200nM~2pMの範囲である。細胞を37℃、5%CO
2で4時間インキュベートしてから洗浄し、死細胞(eFlour 520、Invitrogen)及びVδ1 TCR(MiltenyiBiotec)について染色した。細胞を洗浄し、Cell Fix(BD sciences)に再懸濁した。MACS Quant Analyzer 16を使用したフローサイトメトリーで測定した蛍光強度中央値(MFI)により、VD1 TCR発現レベルを決定した。結果を
図34、E、Fに示す。
【0542】
4-1BB
+T細胞の活性化に対する抗Vδ1×4-1BB二重特異性抗体の効果を評価するため、4-1BB
+NFAT Jurkat細胞(Promega、JA2191)を抗Vδ1×4-1BB二重特異性抗体または対照(抗4-1BBモノクローナル抗体または抗RSVIgG×抗4-1BB)と共に、37℃、5%CO
2で5時間インキュベートした。アッセイは、不透明な白色96ウェルプレートに1μg/ウェルで予めコーティングした組換えVδ1タンパク質の存在下または非存在下で行った。5時間後、Bio-Glo Luciferase試薬(Promega)を細胞に1:1の比で加えた。室温で5分間インキュベートした後、発光シグナルをBioTek Synergyプレートリーダーで検出した。生の発光シグナルを相対発光単位(RLU)の倍率に変換した。結果を
図34、Gに示す。
【0543】
結論:抗Vδ1×4-1BB二重特異性抗体は、例えば、4-1BB+CD8 T細胞に架橋すること、及び4-1BB+T細胞を活性化することにより、Vδ1γδT細胞の活性化を増強する。
【0544】
実施例35:Vδ1-OX40二重特異性抗体は、Vδ1γδT細胞及びCD4 T細胞の活性化を増強する
抗Vδ1抗体、抗OX40抗体、及び抗Vδ1×OX40抗体のそれらの標的(すなわち、γδTCRのVδ1鎖及びOX40)に対する結合の結合動態は、Reichert 4SPR機器(Reichert Technologies)を使用したSPR分析によって確立される。抗体(1.5ug/mL)をPlanar Protein A Sensor Chip(Reichert Technologies)にコーティングして、およそ500uRIUのベースラインの増加をもたらす。組換えヒトVδ1ヘテロ二量体またはヒトOX40を100nMの最高濃度で細胞上に流した。結果を
図35、Aに示す。
【0545】
両方の標的リガンドに対する二重特異性抗体の二重結合を評価するため、組換えOX40をまずCarboxymethyl Dextran Sensor Chip(Reichert Technologies)に10ug/mlで固定化してから、二重特異性抗体を100nMで流した。次いで、組換えヒトVδ1ヘテロ二量体を100nMで流すことにより、その後にVδ1γδTCRに結合する能力を評価した。実験はすべて室温で行った。結果を
図35、Bに示す。
【0546】
Vδ1γδT細胞及びOX40
+免疫細胞に対する抗Vδ1×OX40二重特異性抗体の結合をフローサイトメトリーによって評価した。最初に、全血から抽出されたPBMCバフィーコートからの磁気選別により、CD4
+T細胞の負の選択を行った。Dynabeads(Invitrogen)にコンジュゲートされた抗CD3/抗CD28抗体による活性化の後、CD4 T細胞におけるOX40の細胞表面発現は上昇していた。活性化されたOX40
+CD4 T細胞及びVδ1γδT細胞を、ある範囲の濃度の抗Vδ1×OX40二重特異性抗体または対照(IgG対照または抗OX40)と共に15分間インキュベートした。洗浄後、細胞を抗ヒトIgG二次抗体と共に更に15分間インキュベートしてから、洗浄し固定した。各細胞型に結合した抗体の量をフローサイトメトリーによって決定した。結果を
図35、C、Dに示す。
【0547】
Vδ1γδT細胞の活性化に対する抗Vδ1×OX40二重特異性抗体の効果を決定するため、Vδ1 TCRの下方制御をOX40
+T細胞の存在下で数量化した。簡潔に述べると、抗Vδ1、抗OX40、及び抗Vδ1×OX40二重特異性抗体をPBSで系列希釈した後、アッセイプレートに加えた。OX40
+CD4 T細胞をCellTrace CFSE生細胞色素で染色し、皮膚由来Vδ1γδT細胞と1:1で混合したか、または培地で1:1に希釈した。細胞懸濁液を、ウェル当たりOX40
+CD4 T細胞2.5×10^4個の存在下または非存在下にて、ウェル当たりVδ1γδT細胞2.5×10^4個でアッセイプレートに播種した。最終アッセイ抗体濃度は200nM~2pMの範囲である。細胞を37℃、5%CO
2で4時間インキュベートしてから洗浄し、死細胞(eFlour 520、Invitrogen)及びVδ1 TCR(MiltenyiBiotec)について染色した。細胞を洗浄し、Cell Fix(BD sciences)に再懸濁した。MACS Quant Analyzer 16を使用したフローサイトメトリーで測定した蛍光強度中央値(MFI)により、VD1 TCR発現レベルを決定した。結果を
図35、E、Fに示す。
【0548】
OX40
+T細胞の活性化に対する抗Vδ1×OX40二重特異性抗体の効果を評価するため、OX40
+NFAT Jurkat細胞(Promega、JA2191)を抗Vδ1×OX40二重特異性抗体または対照(OX40L(OX40リガンド)、抗OX40または抗RSVIgG×抗OX40)と共に、37℃、5%CO
2で5時間インキュベートした。アッセイは、不透明な白色96ウェルプレートに1μg/ウェルで予めコーティングした組換えVδ1タンパク質の存在下または非存在下で行った。5時間後、Bio-Glo Luciferase試薬(Promega)を細胞に1:1の比で加えた。室温で5分間インキュベートした後、発光シグナルをBioTek Synergyプレートリーダーで検出した。生の発光シグナルを相対発光単位(RLU)の倍率に変換した。結果を
図35、Gに示す。
【0549】
結論:抗Vδ1×OX40二重特異性抗体は、例えば、OX40+CD4 T細胞に架橋すること、及びOX40+T細胞を活性化することにより、Vδ1γδT細胞の活性化を増強する。
【0550】
実施例36:Vδ1-TIGIT二重特異性抗体は、Vδ1γδT細胞活性化を増強し、TIGIT/PVR(CD155)チェックポイント阻害を遮断する
抗Vδ1抗体、抗TIGIT抗体、及び抗Vδ1×TIGIT抗体のそれらの標的(すなわち、γδTCRのVδ1鎖及びTIGIT)に対する結合の結合動態は、Reichert 4SPR機器(Reichert Technologies)を使用したSPR分析によって確立される。抗体(1.5ug/mL)をPlanar Protein A Sensor Chip(Reichert Technologies)にコーティングして、およそ500uRIUのベースラインの増加をもたらす。組換えヒトVδ1ヘテロ二量体またはヒトTIGITを100nMの最高濃度で細胞上に流した。結果を
図36、Aに示す。
【0551】
両方の標的リガンドに対する二重特異性抗体の二重結合を評価するため、組換えTIGITをまずCarboxymethyl Dextran Sensor Chip(Reichert Technologies)に10ug/mlで固定化してから、二重特異性抗体を100nMで流した。次いで、組換えヒトVδ1ヘテロ二量体を100nMで流すことにより、その後にVδ1γδTCRに結合する能力を評価した。実験はすべて室温で行った。結果を
図36、Bに示す。
【0552】
Vδ1γδT細胞及びTIGIT
+免疫細胞に対する抗Vδ1×TIGIT二重特異性抗体の結合をフローサイトメトリーによって評価した。最初に、全血から抽出されたPBMCバフィーコートからの磁気選別により、CD4及びCD8 T細胞の負の選択を行った。Dynabeads(Invitrogen)にコンジュゲートされた抗CD3/抗CD28抗体による活性化の後、CD4及びCD8 T細胞における4-1BBの細胞表面発現を検出した。活性化されたT細胞及びVδ1γδT細胞を、ある範囲の濃度の抗Vδ1×4-1BB二重特異性抗体または対照(IgG対照または抗4-1BB)と共に15分間インキュベートした。洗浄後、細胞を抗ヒトIgG二次抗体と共に更に15分間インキュベートしてから、洗浄し固定した。各細胞型に結合した抗体の量をフローサイトメトリーによって決定した。結果を
図36、C、Dに示す。
【0553】
Vδ1γδT細胞の活性化に対する抗Vδ1×TIGIT二重特異性抗体の効果を決定するため、Vδ1 TCRの下方制御をTIGIT
+T細胞の存在下で数量化した。簡潔に述べると、抗Vδ1、抗TIGIT、及び抗Vδ1×TIGIT二重特異性抗体をPBSで系列希釈した後、アッセイプレートに加えた。TIGIT
+CD8 T細胞をCellTrace CFSE生細胞色素で染色し、皮膚由来Vδ1γδT細胞と1:1で混合したか、または培地で1:1に希釈した。細胞懸濁液を、ウェル当たりTIGIT
+CD8 T細胞2.5×10^4個の存在下または非存在下にて、ウェル当たりVδ1γδT細胞2.5×10^4個でアッセイプレートに播種した。最終アッセイ抗体濃度は200nM~2pMの範囲である。細胞を37℃、5%CO
2で4時間インキュベートしてから洗浄し、死細胞(eFlour 520、Invitrogen)及びVδ1 TCR(MiltenyiBiotec)について染色した。細胞を洗浄し、Cell Fix(BD sciences)に再懸濁した。MACS Quant Analyzer 16を使用したフローサイトメトリーで測定した蛍光強度中央値(MFI)により、VD1 TCR発現レベルを決定した。結果を
図36、E、Fに示す。
【0554】
TIGIT
+T細胞の活性化に対する抗Vδ1×TIGIT二重特異性抗体の効果を評価するため、TIGIT
+NFAT Jurkat細胞(Promega、JA2191)を抗Vδ1×TIGIT二重特異性抗体または対照(抗TIGITモノクローナル抗体または抗RSVIgG×抗TIGIT)と共に、37℃、5%CO
2で5時間インキュベートした。アッセイは、不透明な白色96ウェルプレートに1μg/ウェルで予めコーティングした組換えVδ1タンパク質の存在下または非存在下で行った。5時間後、Bio-Glo Luciferase試薬(Promega)を細胞に1:1の比で加えた。室温で5分間インキュベートした後、発光シグナルをBioTek Synergyプレートリーダーで検出した。生の発光シグナルを相対発光単位(RLU)の倍率に変換した。結果を
図36、Gに示す。
【0555】
結論:抗Vδ1×TIGIT二重特異性抗体は、TIGIT+CD8 T細胞を介して架橋すること、及びCD8 T細胞におけるTIGIT/CD155免疫チェックポイント阻害を遮断することにより、Vδ1γδT細胞の活性化を増強する。
【0556】
実施例37:抗vδ1抗体はADCCを誘導しない。
ADCC Reporter Bioassay(Promega)を使用して、抗vδ1抗体によって誘導されるADCC(抗体依存性細胞媒介性細胞傷害性)のレベルを対照抗体と比較して評価した。
【0557】
ADCCとは、抗体によってタグ付けされた標的細胞をエフェクター細胞が殺傷する生物学的現象を指す。エフェクター細胞は、Fcγ受容体を介して抗体に結合し、続いて標的細胞を殺傷する。ここで提示するADCCレポーターバイオアッセイは、NFAT(活性化T細胞核内因子)経路による遺伝子転写の活性化を介してADCCの早期開始を検出することにより、アッセイ内で試験される抗体の潜在的なADCC作用メカニズムを明らかにする。このレポーターアッセイは、NFAT経路に連結した高親和性FcγRIIIa受容体を発現するエフェクター細胞(Jurkats)を利用する工学操作系であり、活性化されるとホタルルシフェラーゼ酵素のさらなる活性化を誘導するように、さらに工学操作されている。ルシフェラーゼ活性は、発生するADCCのレベルに相関し得る発光の読み取り値によって数量化される。
【0558】
このアッセイは、抗vδ1抗体、または好適には多特異性抗体の抗vδ1アームが、ADCC反応を駆動するかどうかを理解するために利用した。利用した標的細胞は、vδ1γδTCRを介して抗vδ1抗体に結合するγδ細胞であった。ADCC作用メカニズムが存在する場合、抗vδ1抗体は、アッセイエフェクター細胞上のFcγ受容体と結合し、発光シグナルを生成する。シグナルが生成されなければ、これはADCCが発生していないことを示唆する。
【0559】
このアッセイには、ADCC Reporter Bioassay Kit(Promega)を用いた。Bio-Glo Luciferaseアッセイバッファーのボトル1本を解凍し、基質ボトルに移した。この混合物を4~6時間室温に保った。次の抗体:本発明の抗vδ1抗体、同じ抗vδ1抗体だがFc無効型(L235A、G237A)、リツキシマブ、RSV及びOKT3について、10nM~0.01nM(最終濃度)の範囲の抗体濃度(3X濃度)で希釈プレートを調製した。標的細胞(γδ細胞)をウェル当たり25μlで2つのアッセイプレートに播種した。次いで、抗体希釈プレートから適切な抗体溶液25μlを適切なウェルに移した。エフェクター細胞(工学操作されたJurkat細胞)を温かいアッセイバッファーに解凍し、4mlのアッセイバッファーに再懸濁し、25μlのエフェクター細胞溶液を各ウェルにピペットで入れた。次いで、プレートを37℃で4.5時間インキュベートした。インキュベーション期間の後、プレートを室温まで平衡化させ、その後、75μlのBio-Glo Luciferase Assay試薬を各ウェルに加え、プレートを室温で10分間インキュベートした。次いで、Biotek H4プレートリーダーを使用してプレートを読み取り、プレートから発光シグナル(相対光単位RLUとして)を収集した。誘導倍率は、次の等式を使用して計算した:誘導倍率=RLU(誘導-バックグラウンド)/RLU(無抗体対照-バックグラウンド)。
【0560】
陽性対照として、OKT3(抗CD3抗体)を使用した。追加の陽性対照として、対照ウェルにはγδ細胞の代わりにRaji細胞を播種した。Raji細胞は、抗CD20抗体であるリツキシマブと併用すると強力なADCC反応を示すように使用される一般的に許容されている細胞株である。内部対照として、かつ抗vδ1抗体がγδ細胞におけるvδ1結合の非存在下でADCCを駆動するかどうかを理解するために、本発明の抗vδ1抗体と、同じ抗vδ1抗体だがFc無効型(L235A、G237A)とを、エフェクター細胞単独と共に加えた。
【0561】
【0562】
結論:Raji細胞と共にリツキシマブを使用した陽性対照では強力なADCC反応が示され、γδ細胞に対するOKT3ではさらに強力なADCC反応が示された。対照的に、本発明の抗vδ1抗体、同じ抗vδ1抗体だがFc無効型でもあるL235A、G237A、またはRSV陰性対照を使用したいずれの条件でもADCC反応は検出されなかった。これは、この系において、vδ1に結合する本発明の抗体(抗vδ1 mAbまたは抗vδ1多特異性抗体など)が、ADCC作用メカニズムの証拠を示さないことを実証する。注目すべきことに、Fc有効型抗Vδ1抗体でさえγδT細胞を枯渇させず、そのため、例えば高Fcγ腫瘍環境において、本明細書で提示される抗Vδ1抗体のFc機能を維持し、機能性を付加するオプションが提供される。これは、かかる抗Vδ1抗体が本明細書に記載されるような二重特異性抗体フォーマットに含まれる適性をさらに明らかにしている。
【0563】
好適には、単特異性フォーマットで提供される場合の抗体の機能特性は、さらに第2の抗原に特異的に結合する本発明の多特異性抗体によって共有される。
【0564】
実施形態
本発明は、少なくとも以下の番号付けされた実施形態を含む。
【0565】
1.
a. γδT細胞受容体(TCR)の可変デルタ1(Vδ1)鎖のエピトープである第1の標的エピトープ、及び
b. 第2の標的エピトープ
と特異的に結合する、多特異性抗体またはその断片。
【0566】
2.
前記多特異性抗体が、二重特異性抗体である、実施形態1に記載の多特異性抗体またはその断片。
【0567】
3.
前記第2の標的エピトープが、γδT細胞受容体(TCR)の前記可変デルタ1(Vδ1)鎖のエピトープではない、先行実施形態のいずれかに記載の多特異性抗体またはその断片。
【0568】
4.
前記第2の標的エピトープが、T細胞受容体(TCR)のエピトープではない、先行実施形態のいずれかに記載の多特異性抗体またはその断片。
【0569】
5.
前記第1の標的エピトープが、γδTCRのVδ1鎖のV領域内のエピトープである、先行実施形態のいずれかに記載の多特異性抗体またはその断片。
【0570】
6.
前記第1の標的エピトープが、配列番号1及び/または配列番号128のアミノ酸残基1~90内のエピトープである、先行実施形態のいずれかに記載の多特異性抗体またはその断片。
【0571】
7.
前記第1の標的エピトープが、
(i)配列番号1の3~20、及び/または
(ii)配列番号1の37~77
のアミノ酸領域内の1つまたは複数のアミノ酸残基を含むエピトープである、先行実施形態のいずれかに記載の多特異性抗体またはその断片。
【0572】
8.
前記第1の標的エピトープが、配列番号1のアミノ酸残基3、5、9、10、12、16、17、20、37、42、50、53、59、62、64、68、69、72または77のうちの少なくとも1つを含む、先行実施形態のいずれかに記載の多特異性抗体またはその断片。
【0573】
9.
前記第1の標的エピトープが、配列番号1のアミノ酸領域:5~20及び62~77、50~64、37~53及び59~72、59~77、または3~17及び62~69内の1つまたは複数のアミノ酸残基を含む、先行実施形態のいずれかに記載の多特異性抗体またはその断片。
【0574】
10.
前記第1の標的エピトープが、配列番号1のアミノ酸領域:5~20及び62~77、50~64、37~53及び59~72、59~77、または3~17及び62~69内の1つまたは複数のアミノ酸残基からなる、先行実施形態のいずれかに記載の多特異性抗体またはその断片。
【0575】
11.
前記第1の標的エピトープが、配列番号1のアミノ酸領域5~20及び62~77内の1つまたは複数のアミノ酸残基を含む、先行実施形態のいずれかに記載の多特異性抗体またはその断片。
【0576】
12.
前記第1の標的エピトープが、配列番号1のアミノ酸領域50~64内の1つまたは複数のアミノ酸残基を含む、先行実施形態のいずれかに記載の多特異性抗体またはその断片。
【0577】
13.
前記第1の標的エピトープが、配列番号1のアミノ酸領域37~53及び59~77内の1つまたは複数のアミノ酸残基を含む、先行実施形態のいずれかに記載の多特異性抗体またはその断片。
【0578】
14.
前記第1の標的エピトープが、γδTCRのVδ1鎖のCDR3に見出されるエピトープではない、先行実施形態のいずれかに記載の多特異性抗体またはその断片。
【0579】
15.
前記第1の標的エピトープが、配列番号272のアミノ酸領域91~105(CDR3)内のエピトープではない、先行実施形態のいずれかに記載の多特異性抗体またはその断片。
【0580】
16.
前記第1の標的エピトープが、γδT細胞の活性化エピトープである、先行実施形態のいずれかに記載の多特異性抗体またはその断片。
【0581】
17.
前記活性化エピトープの結合が、(i)前記γδTCRを下方制御する、(ii)前記γδT細胞の脱顆粒を活性化する、及び/または(iii)γδT細胞媒介性殺傷を促進する、先行実施形態のいずれかに記載の多特異性抗体またはその抗原結合性断片。
【0582】
18.
前記第1の標的エピトープが、CD107a、CD25、CD69及び/またはKi67の発現を上方制御するエピトープである、先行実施形態のいずれかに記載の多特異性抗体またはその断片。
【0583】
19.
前記多特異性抗体またはその断片が、表面プラズモン共鳴によって測定した場合に1.5×10-7M未満の結合親和性(KD)で前記第1のエピトープと結合する、先行実施形態のいずれかに記載の多特異性抗体またはその断片。
【0584】
20.
前記多特異性抗体またはその断片が、1.3×10-7M未満またはそれ以下、例えば1.0×10-7M未満、特に5.0×10-8M未満のKDで前記第1のエピトープと結合する、先行実施形態のいずれかに記載の多特異性抗体またはその断片。
【0585】
21.
前記多特異性抗体またはその断片が、結合時のγδTCRの下方制御について0.5μg/ml未満であるEC50値を有する、先行実施形態のいずれかに記載の多特異性抗体またはその断片。
【0586】
22.
前記多特異性抗体またはその断片が、結合時のγδTCRの下方制御について0.06μg/ml未満であるEC50値を有する、先行実施形態のいずれかに記載の多特異性抗体またはその断片。
【0587】
23.
前記多特異性抗体またはその断片が、結合時のγδT細胞の脱顆粒について0.05μg/ml未満であるEC50値を有する、先行実施形態のいずれかに記載の多特異性抗体またはその断片。
【0588】
24.
前記多特異性抗体またはその断片が、結合時のγδT細胞の脱顆粒について0.005μg/ml未満、例えば0.002μg/ml未満であるEC50値を有する、先行実施形態のいずれかに記載の多特異性抗体またはその断片。
【0589】
25.
前記γδT細胞の脱顆粒のEC50値が、CD107a発現を検出することによって測定される、先行実施形態のいずれかに記載の多特異性抗体またはその断片。
【0590】
26.
前記多特異性抗体またはその断片が、結合時のγδT細胞媒介性殺傷について0.5μg/ml未満であるEC50値を有する、先行実施形態のいずれかに記載の多特異性抗体またはその断片。
【0591】
27.
前記多特異性抗体またはその断片が、結合時のγδT細胞媒介性殺傷について0.055μg/ml未満、例えば0.020μg/ml未満であるEC50値を有する、先行実施形態のいずれかに記載の多特異性抗体またはその断片。
【0592】
28.
前記多特異性抗体またはその断片が、結合時のγδTCRの下方制御について0.5μg/ml未満であるEC50値、結合時のγδT細胞の脱顆粒について0.05μg/ml未満であるEC50値、及び/または結合時のγδT細胞媒介性殺傷について0.5μg/ml未満であるEC50値を有する、いずれかの先行実施形態のいずれか1つに記載の多特異性抗体またはその断片。
【0593】
29.
前記EC50値がフローサイトメトリーを使用して測定される、実施形態21~28のいずれか1つに記載の多特異性抗体またはその断片。
【0594】
30.
前記第2のエピトープが細胞表面タンパク質である、先行実施形態のいずれかに記載の多特異性抗体またはその断片。
【0595】
31.
前記第2のエピトープがVδ1+T細胞上にある、先行実施形態のいずれかに記載の多特異性抗体またはその断片。
【0596】
32.
前記第2のエピトープがVδ1+T細胞上にはない、実施形態1~30のいずれか1つに記載の多特異性抗体またはその断片。
【0597】
33.
前記第2のエピトープが免疫細胞上にある、先行実施形態のいずれかに記載の多特異性抗体またはその断片。
【0598】
34.
前記第2のエピトープが、がん抗原またはがん関連抗原のエピトープである、先行実施形態のいずれかに記載の多特異性抗体またはその断片。
【0599】
35.
前記がん抗原またはがん関連抗原が腫瘍関連抗原(TAA)である、実施形態34に記載の多特異性抗体またはその断片。
【0600】
36.
前記がん抗原またはがん関連抗原が、AFP、AKAP-4、ALK、アルファ-フェトプロテイン、アンドロゲン受容体、B7H3、BAGE、BCA225、BCAA、Bcr-abl、ベータカテニン、ベータHCG、ベータヒト絨毛性ゴナドトロピン、BORIS、BTAA、CA 125、CA 15-3、CA 195、CA 19-9、CA 242、CA 27.29、CA 72-4、CA-50、CAM 17.1、CAM43、カルボニックアンヒドラーゼIX、癌胎児抗原、CD22、CD33/IL3Ra、CD68\P1、CDK4、CEA、コンドロイチン硫酸プロテオグリカン4(CSPG4)、c-Met、CO-029、CSPG4、サイクリンB1、シクロフィリンC関連タンパク質、CYP1B1、E2A-PRL、EGFR、EGFRvIII、ELF2M、EpCAM、EphA2、エフリンB2、エプスタイン・バーウイルス抗原EBVA、ERG(TMPRSS2ETS融合遺伝子)、ETV6-AML、FAP、FGF-5、Fos関連抗原1、フコシルGM1、G250、Ga733\EpCAM、GAGE-1、GAGE-2、GD2、GD3、神経膠腫関連抗原、GloboH、糖脂質F77、GM3、GP 100、GP 100(Pmel 17)、H4-RET、HER-2/neu、HER-2/Neu/ErbB-2、高分子量黒色腫関連抗原(HMW-MAA)、HPV E6、HPV E7、hTERT、HTgp-175、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素、イディオタイプ、IGF-I受容体、IGF-II、IGH-IGK、インスリン成長因子(IGF)-I、腸カルボキシルエステラーゼ、K-ras、LAGE-1a、LCK、レクチン反応性AFP、レグマイン、LMP2、M344、MA-50、Mac-2結合タンパク質、MAD-CT-1、MAD-CT-2、MAGE、MAGE A1、MAGE A3、MAGE-1、MAGE-3、MAGE-4、MAGE-5、MAGE-6、MART-1、MART-1/MelanA、M-CSF、黒色腫関連コンドロイチン硫酸プロテオグリカン(MCSP)、メソテリン、MG7-Ag、ML-IAP、MN-CA IX、MOV18、MUC1、Mum-1、hsp70-2、MYCN、MYL-RAR、NA17、NB/70K、ニューロングリア抗原2(NG2)、好中球エラスターゼ、nm-23H1、NuMa、NY-BR-1、NY-CO-1、NY-ESO、NY-ESO-1、NY-ESO-1、OY-TES1、p15、p16、p180erbB3、p185erbB2、p53、p53突然変異体、Page4、PAX3、PAX5、PDGFRベータ、PLAC1、ポリシアル酸、前立腺癌腫瘍抗原-1(PCTA-1)、前立腺特異抗原、前立腺酸性ホスファターゼ(PAP)、プロテイナーゼ3(PR1)、PSA、PSCA、PSMA、RAGE-1、Ras、Ras-突然変異体、RCAS1、RGS5、RhoC、ROR1、RU1、RU2(AS)、SART3、SDCCAG16、sLe(a)、精子タンパク質17、SSX2、STn、サバイビン、TA-90、TAAL6、TAG-72、テロメラーゼ、チログロブリン、Tie 2、TLP、Tn、TPS、TRP-1、TRP-2、TRP-2、TSP-180、チロシナーゼ、VEGF、VEGFR2、VISTA、WT1、XAGE 1、43-9F、5T4、及び791Tgp72からなる群から選択される、実施形態35に記載の多特異性抗体またはその断片。
【0601】
37.
前記多特異性抗体が、T細胞エンゲージャー二重特異性抗体である、先行実施形態のいずれかに記載の多特異性抗体またはその断片。
【0602】
38.
前記抗体が、二重特異性抗体であり、前記第2のエピトープが、CD19、Her2(CD340)、EGFR、FAPαまたはメソテリン(MSLN)のエピトープである、先行実施形態のいずれかに記載の多特異性抗体またはその断片。
【0603】
39.
前記抗体が、二重特異性抗体であり、前記第2のエピトープが、CD19のエピトープである、先行実施形態のいずれかに記載の多特異性抗体またはその断片。
【0604】
40.
前記抗体が、二重特異性抗体であり、前記第2のエピトープが、Her2(CD340)のエピトープである、実施形態1~37のいずれか1つに記載の多特異性抗体またはその断片。
【0605】
41.
前記抗体が、二重特異性抗体であり、前記第2のエピトープが、EGFRのエピトープである、実施形態1~37のいずれか1つに記載の多特異性抗体またはその断片。
【0606】
42.
前記抗体が、二重特異性抗体であり、前記第2のエピトープが、FAPαのエピトープである、実施形態1~37のいずれか1つに記載の多特異性抗体またはその断片。
【0607】
43.
前記抗体が、二重特異性抗体であり、前記第2のエピトープが、メソテリン(MSLN)のエピトープである、実施形態1~37のいずれか1つに記載の多特異性抗体またはその断片。
【0608】
44.
前記第2のエピトープが、免疫調節性抗原のエピトープである、実施形態1~33のいずれか1つに記載の多特異性抗体またはその断片。
【0609】
45.
前記免疫調節性抗原が、B7-1(CD80)、B7-2(CD86)、B7-DC(CD273)、B7-H1(CD274)、B7-H2(CD275)、B7-H3(CD276)、B7-H4(VTCN1)、B7-H5(VISTA)、BTLA(CD272)、4-1BB(CD137)、CD137L、CD24、CD27、CD28、CD38、CD40、CD40L(CD154)、CD54、CD59、CD70、CTLA4(CD152)、CXCL9、GITR(CD357)、HVEM(CD270)、ICAM-1(CD54)、ICOS(CD278)、LAG-3(CD223)、OX40(CD134)、OX40L(CD252)、PD-1(CD279)、PD-L1(CD274)、TIGIT、CD314、CD334、CD335、CD337、及びTIM-3(CD366)からなる群から選択され得る、実施形態44に記載の多特異性抗体またはその断片。
【0610】
46.
前記抗体が、二重特異性抗体であり、前記第2のエピトープが、刺激性免疫チェックポイント分子である、実施形態44または45に記載の多特異性抗体またはその断片。
【0611】
47.
前記抗体が、二重特異性抗体であり、前記第2のエピトープが、阻害性免疫チェックポイント分子である、実施形態44または45に記載の多特異性抗体またはその断片。
【0612】
48.
前記抗体が、二重特異性抗体であり、前記第2のエピトープが、PD-1、4-1BB(CD137)、OX40またはTIGITのエピトープである、実施形態44または45に記載の多特異性抗体またはその断片。
【0613】
49.
前記抗体が、二重特異性抗体であり、前記第2のエピトープが、PD-1のエピトープである、実施形態44または45に記載の多特異性抗体またはその断片。
【0614】
50.
前記抗体が、二重特異性抗体であり、前記第2のエピトープが、4-1BB(CD137)のエピトープである、実施形態44または45に記載の多特異性抗体またはその断片。
【0615】
51.
前記抗体が、二重特異性抗体であり、前記第2のエピトープが、OX40のエピトープである、実施形態44または45に記載の多特異性抗体またはその断片。
【0616】
52.
前記抗体が、二重特異性抗体であり、前記第2のエピトープが、TIGITのエピトープである、実施形態44または45に記載の多特異性抗体またはその断片。
【0617】
53.
前記第2の標的エピトープが、細胞膜分化CD抗原のエピトープである、先行実施形態のいずれかに記載の多特異性抗体またはその断片。
【0618】
54.
前記CD抗原が、CD1a、CD1b、CD1c、CD1d、CD1e、CD2、CD3、CD3d、CD3e、CD3g、CD4、CD5、CD6、CD7、CD8、CD8a、CD8b、CD9、CD10、CD11a、CD11b、CD11c、CD11d、CD13、CD14、CD15、CD16、CD16a、CD16b、CD17、CD18、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD24、CD25、CD26、CD27、CD28、CD29、CD30、CD31、CD32A、CD32B、CD33、CD34、CD35、CD36、CD37、CD38、CD39、CD40、CD41、CD42、CD42a、CD42b、CD42c、CD42d、CD43、CD44、CD45、CD46、CD47、CD48、CD49a、CD49b、CD49c、CD49d、CD49e、CD49f、CD50、CD51、CD52、CD53、CD54、CD55、CD56、CD57、CD58、CD59、CD60a、CD60b、CD60c、CD61、CD62E、CD62L、CD62P、CD63、CD64a、CD65、CD65s、CD66a、CD66b、CD66c、CD66d、CD66e、CD66f、CD68、CD69、CD70、CD71、CD72、CD73、CD74、CD75、CD75s、CD77、CD79A、CD79B、CD80、CD81、CD82、CD83、CD84、CD85A、CD85B、CD85C、CD85D、CD85F、CD85G、CD85H、CD85I、CD85J、CD85K、CD85M、CD86、CD87、CD88、CD89、CD90、CD91、CD92、CD93、CD94、CD95、CD96、CD97、CD98、CD99、CD100、CD101、CD102、CD103、CD104、CD105、CD106、CD107、CD107a、CD107b、CD108、CD109、CD110、CD111、CD112、CD113、CD114、CD115、CD116、CD117、CD118、CD119、CD120、CD120a、CD120b、CD121a、CD121b、CD122、CD123、CD124、CD125、CD126、CD127、CD129、CD130、CD131、CD132、CD133、CD134、CD135、CD136、CD137、CD138、CD139、CD140A、CD140B、CD141、CD142、CD143、CD144、CDw145、CD146、CD147、CD148、CD150、CD151、CD152、CD153、CD154、CD155、CD156、CD156a、CD156b、CD156c、CD157、CD158、CD158A、CD158B1、CD158B2、CD158C、CD158D、CD158E1、CD158E2、CD158F1、CD158F2、CD158G、CD158H、CD158I、CD158J、CD158K、CD159a、CD159c、CD160、CD161、CD162、CD163、CD164、CD165、CD166、CD167a、CD167b、CD168、CD169、CD170、CD171、CD172a、CD172b、CD172g、CD173、CD174、CD175、CD175s、CD176、CD177、CD178、CD179a、CD179b、CD180、CD181、CD182、CD183、CD184、CD185、CD186、CD187、CD188、CD189、CD190、CD191、CD192、CD193、CD194、CD195、CD196、CD197、CDw198、CDw199、CD200、CD201、CD202b、CD203c、CD204、CD205、CD206、CD207、CD208、CD209、CD210、CDw210a、CDw210b、CD211、CD212、CD213a1、CD213a2、CD214、CD215、CD216、CD217、CD218a、CD218b、CD219、CD220、CD221、CD222、CD223、CD224、CD225、CD226、CD227、CD228、CD229、CD230、CD231、CD232、CD233、CD234、CD235a、CD235b、CD236、CD237、CD238、CD239、CD240CE、CD240D、CD241、CD242、CD243、CD244、CD245、CD246、CD247、CD248、CD249、CD250、CD251、CD252、CD253、CD254、CD255、CD256、CD257、CD258、CD259、CD260、CD261、CD262、CD263、CD264、CD265、CD266、CD267、CD268、CD269、CD270、CD271、CD272、CD273、CD274、CD275、CD276、CD277、CD278、CD279、CD280、CD281、CD282、CD283、CD284、CD285、CD286、CD287、CD288、CD289、CD290、CD291、CD292、CDw293、CD294、CD295、CD296、CD297、CD298、CD299、CD300A、CD300C、CD301、CD302、CD303、CD304、CD305、CD306、CD307、CD307a、CD307b、CD307c、CD307d、CD307e、CD308、CD309、CD310、CD311、CD312、CD313、CD314、CD315、CD316、CD317、CD318、CD319、CD320、CD321、CD322、CD323、CD324、CD325、CD326、CD327、CD328、CD329、CD330、CD331、CD332、CD333、CD334、CD335、CD336、CD337、CD338、CD339、CD340、CD344、CD349、CD351、CD352、CD353、CD354、CD355、CD357、CD358、CD360、CD361、CD362、CD363、CD364、CD365、CD366、CD367、CD368、CD369、CD370、及びCD371からなる群から選択される、実施形態53に記載の多特異性抗体またはその断片。
【0619】
55.
前記多特異性抗体またはその断片が、CrossMab、DAF(ツー・イン・ワン)、DAF(フォー・イン・ワン)、DutaMab、DT-IgG、ノブ・イン・ホール(KIH)、ノブ・イン・ホール(共通軽鎖)、電荷ペア、Fab-アーム交換、SEEDボディ、Triomab、LUZ-Y、Fcab、κλボディ、直交性Fab、DVD-IgG、IgG(H)-scFv、scFv-(H)IgG、IgG(L)-scFv、scFv-(L)IgG、IgG(L,H)-Fv、IgG(H)-V、V(H)-IgG、IgG(L)-V、V(L)-IgG、KIH IgG-scFab、2scFv-IgG、IgG-2scFv、scFv4-Ig、Zybody、DVI-IgG(フォー・イン・ワン)、ナノボディ、Nanoby-HAS、BiTE、ダイアボディ、DART、TandAb、scダイアボディ、scダイアボディ-CH3、ダイアボディ-CH3、トリプルボディ、Morrisonフォーマット、ミニ抗体、ミニボディ、TriBiミニボディ、scFv-CH3 KIH、Fab-scFv、scFv-CH-CL-scFv、F(ab’)2、F(ab)2-scFv2、scFv-KIH、Fab-scFv-Fc、四価HCAb、scダイアボディ-Fc、ダイアボディ-Fc、タンデムscFv-Fc、イントラボディ、ドック・アンド・ロック、ImmTAC、HSAボディ、scダイアボディ-HAS、タンデムscFv-毒素、IgG-IgG、ov-X-Body、デュオボディ、mab2及びscFv1-PEG-scFv2からなる群から選択される多特異性抗体である、先行実施形態のいずれかに記載の多特異性抗体またはその断片。
【0620】
56.
前記多特異性抗体またはその断片が、ヒト抗体またはその抗原結合性断片である、先行実施形態のいずれかに記載の多特異性抗体またはその断片。
【0621】
57.
前記多特異性抗体またはその断片抗体が、二重特異性抗体コンジュゲート(例えばIgG2、scFv、タンデムscFv、F(ab’)2、KiH二重特異性抗体、Morrisonフォーマット二重特異性抗体(IgG-HC-scFv)、ダイアボディ、トリアボディ、ミニボディ、または完全長二重特異性抗体である、先行実施形態のいずれかに記載の多特異性抗体またはその断片。
【0622】
58.
前記多特異性抗体が、約70KDaよりも大きい、先行実施形態のいずれかに記載の多特異性抗体またはその断片。
【0623】
59.
前記多特異性抗体またはその抗原結合性断片が、IgA、IgD、IgE、IgG、IgMまたはIgYの多特異性抗体である、先行実施形態のいずれかに記載の多特異性抗体またはその断片。
【0624】
60.
前記多特異性抗体またはその抗原結合性断片が、IgG多特異性抗体であり、例えば、前記多特異性抗体またはその抗原結合性断片が、IgG1多特異性抗体である、先行実施形態のいずれかに記載の多特異性抗体またはその断片。
【0625】
61.
前記多特異性抗体またはその抗原結合性断片が、モノクローナル多特異性抗体である、先行実施形態のいずれかに記載の多特異性抗体またはその断片。
【0626】
62.
前記多特異性抗体が、Fc有効型である、先行実施形態のいずれかに記載の多特異性抗体またはその断片。
【0627】
63.
前記多特異性抗体が、
a. Vδ1 T細胞上のTCRの下方制御を引き起こすこと、
b. CDCまたはADCCを示さないこと、及び
c. Vδ1 T細胞を枯渇させないこと
を特徴とする、先行実施形態のいずれかに記載の多特異性抗体またはその断片。
【0628】
64.
前記多特異性抗体が、ADCC及び/またはCDCを介して、生存可能なVδ1 T+細胞集団の約30%未満、または約20%未満、または約10%未満の枯渇を引き起こす、先行実施形態のいずれかに記載の多特異性抗体またはその断片。
【0629】
65.
前記多特異性抗体が、IL-17Aの分泌を誘導しない、先行実施形態のいずれかに記載の多特異性抗体またはその断片。
【0630】
66.
前記多特異性抗体が、同等のCD3多特異性抗体によって誘導されるIL-17A分泌の約30%未満、または約20%未満、または約10%未満を誘導する、先行実施形態のいずれかに記載の多特異性抗体またはその断片。
【0631】
67.
配列番号2~25のいずれか1つと少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含むCDR3、
配列番号26~37及び配列番号160~171のいずれか1つと少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含むCDR2、及び/または
配列番号38~61のいずれか1つと少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含むCDR1
のうちの1つまたは複数を含む、先行実施形態のいずれかに記載の多特異性抗体またはその断片。
【0632】
68.
配列番号2~13のいずれか1つと少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含むHCDR3、
配列番号26~37のいずれか1つと少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含むHCDR2、
配列番号38~49のいずれか1つと少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含むHCDR1、
配列番号14~25のいずれか1つと少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含むLCDR3、
配列番号160~171のいずれか1つと少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含むLCDR2、及び/または
配列番号50~61のいずれか1つと少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含むLCDR1
を含む、実施形態67に記載の多特異性抗体またはその断片。
【0633】
69.
配列番号2~13のいずれか1つの配列を含むHCDR3、
配列番号26~37のいずれか1つの配列を含むHCDR2、
配列番号38~49のいずれか1つの配列を含むHCDR1、
配列番号14~25のいずれか1つの配列を含むLCDR3、
配列番号160~171のいずれか1つの配列を含むLCDR2、及び/または
配列番号50~61のいずれか1つの配列を含むLCDR1
を含む、実施形態67に記載の多特異性抗体またはその断片。
【0634】
70.
配列番号62~85のいずれか1つと少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、先行実施形態のいずれかに記載の多特異性抗体またはその断片。
【0635】
71.
配列番号62~73のいずれか1つと少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVH領域を含む、先行実施形態のいずれかに記載の多特異性抗体またはその断片。
【0636】
72.
配列番号62~73のいずれか1つと少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVH領域を含む、先行実施形態のいずれかに記載の多特異性抗体またはその断片。
【0637】
73.
配列番号62~73のいずれか1つと少なくとも96%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVH領域を含む、先行実施形態のいずれかに記載の多特異性抗体またはその断片。
【0638】
74.
配列番号74~85のいずれか1つと少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVL領域を含む、先行実施形態に記載の多特異性抗体またはその断片。
【0639】
75.
配列番号74~85のいずれか1つと少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVL領域を含む、先行実施形態のいずれかに記載の多特異性抗体またはその断片。
【0640】
76.
配列番号74~85のいずれか1つと少なくとも96%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVL領域を含む、先行実施形態のいずれかに記載の多特異性抗体またはその断片。
【0641】
77.
前記多特異性抗体が、配列番号62~73のいずれかに対して少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含むVH領域、及び配列番号74~85のいずれかに対して少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含むVL領域を含む、先行実施形態のいずれかに記載の多特異性抗体またはその断片。
【0642】
78.
前記多特異性抗体が、配列番号62~73のいずれかに対して少なくとも96%の同一性を有するアミノ酸配列を含むVH領域、及び配列番号74~85のいずれかに対して少なくとも96%の同一性を有するアミノ酸配列を含むVL領域を含む、先行実施形態のいずれかに記載の多特異性抗体またはその断片。
【0643】
79.
前記多特異性抗体が、配列番号62~73のいずれかのアミノ酸配列を含むVH領域、及び配列番号74~85のいずれかのアミノ酸配列を含むVL領域を含む、先行実施形態のいずれかに記載の多特異性抗体またはその断片。
【0644】
80.
先行実施形態のいずれかにおいて定義されたような前記多特異性抗体またはその断片をコードするポリヌクレオチド配列。
【0645】
81.
実施形態80において定義されたような前記ポリヌクレオチド配列を含む発現ベクター。
【0646】
82.
実施形態80において定義されたような前記ポリヌクレオチド配列または実施形態81において定義されたような前記発現ベクターを含む宿主細胞。
【0647】
83.
前記宿主細胞が組換え宿主細胞である、実施形態82に記載の宿主細胞。
【0648】
84.
前記第1のエピトープに特異的に結合する抗体または抗体断片配列をコードする第1のポリヌクレオチド配列と、前記第2のエピトープに特異的に結合する抗体または抗体断片配列をコードする第2のポリヌクレオチド配列とを含む、実施形態82または実施形態83に記載の宿主細胞。
【0649】
85.
前記第1のエピトープに特異的に結合する抗体または抗体断片配列をコードする第1のポリヌクレオチド配列を含む第1の発現ベクターと、前記第2のエピトープに特異的に結合する抗体または抗体断片配列をコードする第2のポリヌクレオチド配列を含む第2の発現ベクターとを含む、実施形態82または実施形態83に記載の宿主細胞。
【0650】
86.
前記第1のエピトープに特異的に結合する抗体または抗体断片配列をコードする第1のポリヌクレオチド配列と、前記第2のエピトープに特異的に結合する抗体または抗体断片配列をコードする第2のポリヌクレオチド配列とを含む発現ベクターを含む、実施形態82または実施形態83に記載の宿主細胞。
【0651】
87.
実施形態82~86のいずれか1つに記載の宿主細胞を細胞培養培地中で培養することを含む、実施形態1~79のいずれか1つに記載のいずれかの多特異性抗体またはその断片を産生する方法。
【0652】
88.
前記多特異性抗体またはその断片を前記培養培地から単離することを更に含む、実施形態87に記載の方法。
【0653】
89.
先行実施形態のいずれかに記載の組換え多特異性抗体を生成する方法であって、
a. 第1の標的エピトープと特異的に結合する第1の単特異性抗体を選択するステップであって、前記第1の標的エピトープが、γδT細胞受容体(TCR)の可変デルタ1(Vδ1)鎖のエピトープである、前記選択するステップと、
b. 前記第1の抗体の前記抗体またはその抗原結合性断片を、第2のエピトープをターゲティングする結合ドメインを含む抗体またはその断片と組み合わせて、前記組換え多特異性抗体を生成するステップと
を含む前記方法。
【0654】
90.
前記第1の単特異性抗体が、実施形態5~18のいずれか1つにおいて定義されたようなエピトープと結合する、実施形態89に記載の方法。
【0655】
91.
前記第1の単特異性抗体が、実施形態19~20のいずれか1つにおいて定義されたようなKDでTRDV1に結合する、及び/または前記第1の単特異性抗体が、実施形態21~29のいずれか1つにおいて定義されたようなEC50を有する、実施形態89または実施形態90に記載の方法。
【0656】
92.
前記第1の単特異性抗体が、請求項67~79のいずれか1項において定義されたような配列を含む、実施形態89~91のいずれか1つに記載の方法。
【0657】
93.
第2のエピトープをターゲティングする結合ドメインを含む前記抗体またはその断片が、実施形態34~55のいずれか1つにおいて定義されたようなエピトープをターゲティングする、実施形態89~91のいずれか1つに記載の方法。
【0658】
94.
前記組換え多特異性抗体が、請求項1~79のいずれか1項において定義されたような多特異性抗体である、実施形態89に記載の方法。
【0659】
95.
前記組換え多特異性抗体が、前記第2のエピトープを発現する疾患細胞に対して、同等量の前記第1の単特異性抗体によって付与される細胞傷害性と比較して増加したガンマデルタT細胞媒介性細胞傷害性を付与する、実施形態89~94のいずれか1つに記載の方法。
【0660】
96.
実施形態89~95のいずれか1つに記載の方法に従って調製された、または調製可能である、多特異性抗体またはその断片。
【0661】
97.
実施形態1~79または96のいずれか1つにおいて定義されたような前記多特異性抗体またはその断片を含む組成物。
【0662】
98.
実施形態1~79または96のいずれか1つにおいて定義されたような前記多特異性抗体またはその断片と、薬学的に許容される希釈剤または担体とを含む、医薬組成物。
【0663】
99.
実施形態1~79もしくは96のいずれか1つに記載の多特異性抗体もしくはその断片または実施形態98に記載の医薬組成物を含むキット。
【0664】
100.
追加の治療活性剤を更に含む、実施形態99に記載のキット。
【0665】
101.
使用説明書を更に含む、実施形態99または実施形態100に記載のキット。
【0666】
102.
対象の疾患または障害を処置する方法であって、前記対象に、実施形態1~79もしくは961のいずれか1つに記載の多特異性抗体もしくはその断片、または実施形態98に記載の医薬組成物を投与することを含む前記方法。
【0667】
103.
前記疾患または障害が、がん、感染性疾患または炎症性疾患である、実施形態102に記載の方法。
【0668】
104.
同時にまたは任意の順序で連続的に、第2の薬剤を前記対象に投与することを更に含む、実施形態102~103のいずれか1つに記載の方法。
【0669】
105.
対象の免疫応答を調節する方法であって、前記対象に、実施形態1~79もしくは96のいずれか1つに記載の多特異性抗体もしくはその断片、または実施形態98に記載の医薬組成物を投与することを含む前記方法。
【0670】
106.
前記対象が、がん、感染性疾患または炎症性疾患を有する、実施形態105に記載の方法。
【0671】
107.
対象の免疫応答を調節することが、γδT細胞を活性化すること、γδT細胞の増殖を引き起こすまたは増加させること、γδT細胞の増大を引き起こすまたは増加させること、γδT細胞の脱顆粒を引き起こすまたは増加させること、γδT細胞殺傷活性を引き起こすまたは増加させること、γδT細胞傷害性を引き起こすまたは増加させること、γδT細胞の動員を引き起こすまたは増加させること、γδT細胞の生存を増加させること、及びγδT細胞の消耗に対する抵抗性を増加させることからなる群から選択される少なくとも1つを含む、実施形態105または実施形態106に記載の方法。
【0672】
108.
疾患細胞は殺傷され、健康細胞は温存される、実施形態102~107のいずれか1つに記載の方法。
【0673】
109.
医薬に使用するための、実施形態1~79もしくは96のいずれか1つに記載の多特異性抗体もしくはその断片、または実施形態98に記載の医薬組成物、または実施形態99~101のいずれか1つに記載のキット。
【0674】
110.
がん、感染性疾患または炎症性疾患の処置に使用するための、実施形態1~79~96のいずれか1つに記載の多特異性抗体もしくはその断片、または実施形態98に記載の医薬組成物、または実施形態99~101のいずれか1つに記載のキット。
【0675】
111.
薬物の製造における、実施形態1~79または96のいずれか1つに記載の多特異性抗体またはその断片の使用。
【0676】
112.
がん、感染性疾患または炎症性疾患の処置のための薬物の製造における、実施形態1~79または96のいずれか1つに記載の多特異性抗体またはその断片の使用。
【配列表】
【国際調査報告】