(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-01
(54)【発明の名称】再帰反射器を用いて光シートを生成するための方法、光学装置およびレトロフィットキット
(51)【国際特許分類】
G02B 21/06 20060101AFI20230825BHJP
【FI】
G02B21/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023510455
(86)(22)【出願日】2021-08-12
(85)【翻訳文提出日】2023-03-13
(86)【国際出願番号】 EP2021072502
(87)【国際公開番号】W WO2022034174
(87)【国際公開日】2022-02-17
(31)【優先権主張番号】102020210369.0
(32)【優先日】2020-08-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511079735
【氏名又は名称】ライカ マイクロシステムズ シーエムエス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Leica Microsystems CMS GmbH
【住所又は居所原語表記】Ernst-Leitz-Strasse 17-37, D-35578 Wetzlar, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】フローリアン ファールバッハ
【テーマコード(参考)】
2H052
【Fターム(参考)】
2H052AA07
2H052AC15
2H052AC16
2H052AC34
(57)【要約】
本発明は、光シート(102)を生成するための光学装置(100)および方法と、光シートを生成するための、光シート顕微鏡のためのレトロフィットキットと、に関する。光学装置は、光学サブシステム(104)を有し、光学サブシステムは、当該光学サブシステムの出力側(106)において複数のコリメートされた光ビーム(108)を有し、複数のコリメートされた光ビームは、1つの共通の点(110)に到達する。さらに、再帰反射器(112)が設けられており、再帰反射器は、光ビームが当該再帰反射器に入射するビーム入力側(114)と、光ビームが当該再帰反射器から出射するビーム出力側(116)と、を有する。再帰反射器内においてビーム入力側とビーム出力側との間で光ビームが辿る経路長(118)は、ビーム入力側におけるそれぞれの光ビームの入射角(120)に依存している。最後に、光学装置は、光シート光学系(122)を有し、再帰反射器のビーム出力側から発せられた光ビームは、光シート光学系内へと延在し、光シート光学系の出力側(124)において、それぞれの光ビームからそれぞれ異なるように方向付けられた光シートが成形されている。本装置により、脆弱な機構を使用することなく複数の異なる光シートを迅速に生成することが可能となる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光シート(102)を生成するための光学装置(100)であって、
前記光学装置(100)は、光学サブシステム(104)を有し、前記光学サブシステム(104)は、前記光学サブシステム(104)の出力側(106)において複数のコリメートされた光ビーム(108)を有し、前記複数のコリメートされた光ビーム(108)は、1つの共通の点(110)に到達し、
前記光学装置(100)は、再帰反射器(112)を有し、前記再帰反射器(112)は、前記光ビーム(108)が前記再帰反射器(112)に入射するビーム入力側(114)と、前記光ビーム(108)が前記再帰反射器(112)から出射するビーム出力側(116)と、を有し、
前記再帰反射器(112)内において前記ビーム入力側(114)と前記ビーム出力側(116)との間で前記光ビーム(108)が辿る経路長(118)は、前記ビーム入力側(114)におけるそれぞれの前記光ビームの入射角(120)に依存しており、
前記光学装置(100)は、光シート光学系(122)を有し、前記再帰反射器(112)の前記ビーム出力側(116)から発せられた前記光ビーム(108)は、前記光シート光学系(122)内へと延在し、前記光シート光学系(122)の出力側(124)において、それぞれの前記光ビーム(108)からそれぞれ異なるように方向付けられた光シート(102)が成形されている、
光学装置(100)。
【請求項2】
前記複数の光ビーム(108)は、前記再帰反射器(112)内においてそれぞれ異なる経路長(118)を有する、
請求項1記載の光学装置(100)。
【請求項3】
前記複数の光ビーム(108)は、前記光学サブシステム(104)と前記光シート光学系(122)との間において少なくとも部分的に1つの平面(300)内に位置している、
請求項1または2記載の光学装置(100)。
【請求項4】
前記光ビーム(108)のうちの、前記ビーム出力側(116)から前記光シート光学系(122)に向けられる部分は、前記共通の点(110)から発せられる、
請求項1から3までのいずれか1項記載の光学装置(100)。
【請求項5】
複数の異なる光ビーム(108)から生成された光シート(102)は、それぞれ異なる伝播方向(126)を有する、
請求項1から4までのいずれか1項記載の光学装置(100)。
【請求項6】
前記光シート同士は、同一平面上にある、
請求項1から5までのいずれか1項記載の光学装置(100)。
【請求項7】
前記ビーム入力側(114)と前記ビーム出力側(116)とは、一致する、
請求項1から6までのいずれか1項記載の光学装置(100)。
【請求項8】
前記共通の点(110)は、前記ビーム入力側(114)と一致する、
請求項1から7までのいずれか1項記載の光学装置(100)。
【請求項9】
前記複数の光ビーム(108)のうちの少なくともいくつかの光ビームにおいて、前記再帰反射器(112)に入射した前記光ビーム(108)のうちの、前記ビーム入力側(114)において終了する部分(134)と、前記再帰反射器(112)から出射する同一の前記光ビーム(108)のうちの、前記ビーム出力側(116)において開始する部分(136)と、は合同である、
請求項1から8までのいずれか1項記載の光学装置(100)。
【請求項10】
前記再帰反射器(112)は、互いに傾けられた2つのミラー(138,140)を有し、
前記光ビーム(108)は、前記再帰反射器(112)内において、前記光ビーム(108)の方向が反転する反転箇所(142)を有する、
請求項1から9までのいずれか1項記載の光学装置(100)。
【請求項11】
前記複数の光ビーム(108)が到達する前記共通の点(110)は、前記光シート光学系(122)の後焦点面(150)内に、または、前記後焦点面(150)に対して光学的に共役な平面内に位置する、
請求項1から10までのいずれか1項記載の光学装置(100)。
【請求項12】
前記複数の光ビーム(108)の光は、前記複数の光ビーム(108)の経路長(118)同士の間の最短の差(156)よりも短いコヒーレンス長(154)を有する、
請求項1から11までのいずれか1項記載の光学装置(100)。
【請求項13】
前記光学サブシステム(104)は、1つの入力ビームを前記複数の光ビーム(108)に分割するように構成された光学装置(160)を有する、
請求項1から12までのいずれか1項記載の光学装置(100)。
【請求項14】
前記光学装置(160)は、少なくとも1つのシリンドリカルレンズ(163)を有するレンズアセンブリ(162)を有する、
請求項13記載の光学装置(100)。
【請求項15】
照明ビーム路(182)に、請求項1から14までのいずれか1項記載の光学装置(100)を有する、光シート顕微鏡(180)。
【請求項16】
光シート顕微鏡(180)のためのレトロフィットキットであって、
前記レトロフィットキットは、光学サブシステム(104)を有し、前記光学サブシステム(104)は、前記光学サブシステム(104)の出力側(106)において複数のコリメートされた光ビーム(108)を有し、前記複数のコリメートされた光ビーム(108)は、1つの共通の点(110)に到達し、
前記レトロフィットキットは、再帰反射器(112)を有し、前記再帰反射器(112)は、前記光ビーム(108)が前記再帰反射器(112)に入射するビーム入力側(114)と、前記光ビーム(108)が前記再帰反射器(112)から出射するビーム出力側(116)と、を有し、
前記再帰反射器(112)内において前記ビーム入力側(114)と前記ビーム出力側(116)との間で前記光ビーム(108)が辿る経路長(118)は、前記ビーム入力側(114)における前記光ビームのそれぞれの入射角(120)に依存しており、
前記レトロフィットキットは、前記光シート顕微鏡(184)の照明ビーム路(182)に配置可能となるように構成されている、
レトロフィットキット。
【請求項17】
好ましくは請求項1から14までのいずれか1項記載の光学装置(100)を使用して、光シート(102)を生成するための方法であって、
1つ共通の点に到達する複数のコリメートされた光パルス(158a,158b)が、再帰反射器(112)に入射し、前記再帰反射器(112)内において、前記再帰反射器(112)内における入射角(120)に依存している経路長(118)を辿り、その後、前記再帰反射器(112)から出射して、それぞれ1つの光シート(102)へと変形される、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば光シート顕微鏡法において使用されるような、光シートを生成するための方法および光学装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光シートは、1つの空間方向のみに光ビーム、特にレーザビームを集束させることによって生成可能である。この種の集束によって、試料の1つの薄い層のみを照明するシート状の光が生じる。光シートの厚さは、典型的には約数100ナノメートルから数マイクロメートルの間にある。
【0003】
試料を走査するために、またはシェーディングを回避するために、それぞれ異なるように方向付けられた複数の光シートが生成される。このために、通常、可動の要素、例えば可動のミラーを有する機構が使用される。このような機構は、高価であり、調整に手間がかかり、故障しやすい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、光シートを簡単に生成することが可能であって、かつ摩耗しにくい装置および方法を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の1つの態様によれば、このことは、光シートを生成するための光学装置であって、光学装置は、光学サブシステムを有し、光学サブシステムは、当該光学サブシステムの出力側において複数のコリメートされた光ビームを有し、複数のコリメートされた光ビームは、1つの共通の点に到達し、光学装置は、再帰反射器を有し、再帰反射器は、光ビームが当該再帰反射器に入射するビーム入力側と、光ビームが当該再帰反射器から出射するビーム出力側と、を有し、再帰反射器内においてビーム入力側とビーム出力側との間で光ビームが辿る経路長は、ビーム入力側におけるそれぞれの光ビームの入射角に依存しており、光学装置は、光シート光学系を有し、再帰反射器のビーム出力側から発せられた光ビームは、光シート光学系内へと延在し、光シート光学系の出力側において、それぞれの光ビームからそれぞれ異なるように方向付けられた光シートが成形されている、光学装置によって可能となる。
【0006】
本発明のさらなる態様によれば、光シート顕微鏡のためのレトロフィットキットであって、レトロフィットキットは、光学サブシステムを有し、光学サブシステムは、当該光学サブシステムの出力側において複数のコリメートされた光ビームを有し、複数のコリメートされた光ビームは、1つの共通の点に到達し、レトロフィットキットは、再帰反射器を有し、再帰反射器は、光ビームが当該再帰反射器に入射するビーム入力側と、光ビームが当該再帰反射器から出射するビーム出力側と、を有し、再帰反射器内においてビーム入力側とビーム出力側との間で光ビームが辿る経路長は、ビーム入力側における光ビームのそれぞれの入射角に依存しており、レトロフィットキットは、光シート顕微鏡の照明ビーム路に配置可能となるように構成されている、レトロフィットキットが提供される。
【0007】
最後に、好ましくは上で提示した光学装置を使用して、光シートを生成するための方法であって、1つ共通の点に到達する複数のコリメートされた光パルスが、再帰反射器に入射し、再帰反射器内において、再帰反射器内における入射角に依存している経路長を辿り、その後、再帰反射器から出射して、それぞれ1つの光シートへと変形される、方法が企図されている。
【0008】
そのような光学装置、そのようなレトロフィットキットおよびそのような方法を用いることにより、摩耗しやすい機構を使用することなく複数の光シートを作成することが可能となる。
【0009】
この場合、再帰反射器内において光ビームがコリメートされていることが有利であり、それにより、経路長が大きい場合であっても光シートを鮮明に集束させることができる。1つの点に到着する複数の光ビームがコリメートされるおかげで、一般的に、光シートを生成するための通常の光シート光学系を使用することができる。入射角に依存している経路長は、とりわけパルス光源を用いた使用を可能にする。なぜなら、それぞれ異なる経路長は、伝播時間差につながり、ひいては、それぞれ異なる時点に生成される複数の光シートをもたらすからである。再帰反射器の前では依然としてコヒーレントである光ビームから、インコヒーレントな光シートを生成するため、または時間的および空間的に、例えば深さ方向において段階付けられた複数の光シートを生成するために、このことを利用することができる。これにより、全体として、複数の光シートを瞬時に、光路上で単独で、ひいては摩耗することなく生成する装置が得られる。
【0010】
上記の意味における光ビームとは、ビーム光学系という意味において、光学装置またはレトロフィットキットのビーム路を表すか、または(コリメートされた)ビーム束が沿って進んでいる光軸を表し、この際、光ビームに沿って進んでいる光子ビームまたは電磁波は、具体的に存在していなくてもよい。光学装置が動作中でない場合であっても、ビーム路および光ビームが存在している。光ビームに沿って光が進んでいるので、以下では「光ビーム」という表現は、ビーム路に対しても、ビーム路に沿って進んでいる光に対しても使用される。
【0011】
本発明は、それぞれ単独で有利であって、互いに独立しており、かつ互いに任意に組み合わせることができる以下の特徴によってさらに改善可能である。この場合、それぞれの特徴は、光学装置のためにも、レトロフィットキットのためにも、方法のためにも一律に使用可能である。
【0012】
第1の有利な実施形態によれば、複数の光ビーム、とりわけ全ての光ビームは、再帰反射器内においてそれぞれ互いに異なる経路長を有することができる。
【0013】
さらに、それぞれの光ビームがそれぞれ異なる入射角を有し、この入射角で光ビームが再帰反射器に入射すると有利である。この場合の入射角とは、光ビームと、再帰反射器の、光ビームが衝突するミラー平面上の垂線と、の間の角度である。
【0014】
複数の光ビームが1つの点に到達する場合に、それぞれの光ビームが再帰反射器内においてそれぞれ異なる経路長を辿ることを保証するために、再帰反射器内における光ビームの経路長を、入射角の狭義単調関数とすることができる。したがって、入射角を小さくすればするほど、経路長を短くすることができる。
【0015】
これらの3つの手段により、互いに独立して、それぞれ異なる波長に基づいて、それぞれの光ビームがそれぞれ異なる時点に光シート光学系に入射することとなり、ひいては、光軸に対する各自の姿勢および向きに関しても位相姿勢に関しても区別可能になり、これにより、特定の光シートを生成するために狙いを定めて使用することが可能となる。
【0016】
さらなる有利な実施形態では、ビーム出力側における光ビームは、ビーム入力側における光ビームと同一の角度で互いに相対的に延在することができる。このことは、ビーム出力側における光ビームが共通の点に向かって集まるという可能性と、これらの光ビームが共通の点から互いに離れる方向に進行するという可能性と、の2つの可能性を含んでいる。両方とも、光ビーム同士の互いの相対的な延在が再帰反射器によって損なわれないという利点を有する。とりわけ、光ビームのうちの、ビーム出力側から光シート光学系に向けられる部分は、共通の点から発せられることができる。
【0017】
1つの実施形態では、試料によるシェーディングが軽減されるように、またはそれどころか除去されるように互いに重ね合わされる光シートを生成するために、光学装置または後付けセットが使用される。このために、複数の異なる光ビームから生成された光シートが、それぞれ異なる伝播方向を有すると有利である。これに代えてまたはこれに加えて、光シート同士は、同一平面上にあってよい。
【0018】
個々の光ビーム、好ましくは全ての光ビームは、光学サブシステムと光シート光学系との間において少なくとも部分的に1つの平面内に位置することができ、すなわち互いに同一平面上に延在することができる。とりわけ、光ビーム同士は、光シート光学系の直前(すなわち、光源側)では、例えば光シート光学系のシリンドリカルレンズによって光ビームが集束される空間方向に対して平行な方向または平面内において隣り合って位置している。このようにして、光シート光学系の対物レンズと協働して、それぞれ異なる向きを有する複数の同一平面上の光シートが生成される。
【0019】
複数の光シートの焦点同士が、対物レンズに対してそれぞれ異なる間隔で位置することがないようにするために、光ビームは、ビーム出力側においてもコリメートされているべきである。
【0020】
ビーム入力側とビーム出力側とが一致する場合、すなわち、光ビームが再帰反射器に入射するその箇所において、光ビームが再帰反射器から再び出射もする場合には、コンパクトな構造形式を実現することができる。このような構造形式の場合には、ビーム出力側と光シート光学系との間にビームスプリッタを設けることができる。再帰反射器から出射した光ビームは、好ましくはビームスプリッタによって光シート光学系へと偏向されている。ビーム入力側に向けられた光ビームは、ビームスプリッタを通って延在することができる。
【0021】
さらなる有利な実施形態によれば、共通の点は、ビーム入力側と一致することができる。このことは、ビーム入力側の寸法を小さく保つことを可能にする。共通の点は、とりわけ再帰反射器のミラー表面上に位置することができる。共通の点は、好ましくは光学サブシステムの、好ましくは光シート光学系の光軸と一致する光軸上に位置している。
【0022】
光学装置またはレトロフィットキットのコンパクトな構造形式のためには、複数の光ビームのうちの少なくともいくつかの光ビームにおいて、再帰反射器に入射した光ビームのうちの、ビーム入力側において終了する部分と、再帰反射器から出射する同一の光ビームのうちの、ビーム出力側において開始する部分と、が合同であると有利である。
【0023】
特に簡単かつコンパクトな構造形式によれば、再帰反射器は、2つの平坦なミラーおよび/または1つの空間方向のみを中心として互いに傾けられた2つのミラーを有することができる。光ビームは、再帰反射器内において、光ビームの伝播方向が反転する反転箇所を有することができる。この実施形態では、光ビームは、再帰反射器内において、まず始めに反転箇所まではビーム入力側から離れる方向に反射され、次いで、反転箇所からは再びビーム入力側へと反射されて戻される。この場合、ミラー同士は、いずれの箇所においても互いに離間されていてよい。これらのミラー同士は、反転箇所では、好ましくはビーム入力側および/またはビーム出力側におけるよりもわずかな間隔で互いに離間されている。構造寸法を小さく保つために、ビーム入力側とビーム出力側とを、再帰反射器の同一の端部に配置することができる。反転箇所は、他方の端部の方向においてビーム入力側およびビーム出力側から離間されている。この場合、ビーム入力側および/またはビーム出力側から反転箇所までの距離は、光ビームの入射角に依存することができる。
【0024】
再帰反射器内においてできるだけ大きい経路長または経路長差を生成するために、ミラー同士が互いに傾けられている角度は、好ましくは、最も遠くに離れて位置する光ビーム同士の間の角度よりも小さい。例えば、ミラー同士が互いに傾けられている角度は、10-2radよりも小さく、かつ/または10-4radよりも大きくてよい。他の実施形態では、ミラー同士が互いに傾けられている角度は、10度未満または5度未満である。ミラー同士が互いに傾けられている角度は、再帰反射器内における光ビーム同士の間の経路長差を決定する。経路長差、ひいてはミラー同士が互いに傾けられている角度は、大抵の場合、光源の光のコヒーレンス長に依存して設定される。
【0025】
さらなる実施形態によれば、少なくともいくつかの、好ましくは全ての光ビームの入射角は、ミラー同士が互いに傾けられている角度のそれぞれ異なる整数倍であってよい。このような実施形態では、ビーム入力側において再帰反射器に入射した光ビームと、ビーム出力側において再帰反射器から出射する光ビームと、が合同に延在する。
【0026】
光学装置もしくはレトロフィットキットは、ミラー同士の間の角度を調整するように構成された、とりわけモータ駆動式の調整装置を有することができる。調整装置を制御するために、電子制御ユニットを設けることができる。調整装置は、少なくとも1つのミラーに作用する駆動要素、例えばモータまたは他のアクチュエータを有することができる。調整装置は、光シート光学系に入射する光ビームの相対的な姿勢および/または向きおよび/または再帰反射器内における経路長および/または経路長差を、その時々の要求に適合させることを可能にする。例えば、再帰反射器の2つのミラー同士が互いに傾けられている角度を、光ビームの光のコヒーレンス長、すなわち光ビームの光のスペクトルのコヒーレンス長および/または生成されるべき光シートの数、向きおよび/または姿勢に依存して、調整装置を用いて自動的に変化させることができる。
【0027】
2つのミラー平面の間において、再帰反射器は、気体状の媒体または真空によって充填されたボリュームを有することができ、このボリュームを外部に対して密閉することができる。これに代えて、光ビームが、再帰反射器内においてガラスを通って延在することもできる。例えば、再帰反射器は、ガラスから、とりわけガラスブロックから、例えばモノリシックな構造形式で製造可能である。ガラスブロックの2つの対向する表面上にミラーを被着させることができるか、またはガラスブロックの2つの対向する表面をミラー加工することができる。
【0028】
複数の光ビームが到達する共通の点は、好ましくは、光シート光学系の、とりわけ光シート光学系のシリンドリカルレンズの(光源側の)後焦点面内に、または後焦点面に対して光学的に共役な平面内に位置する。シリンドリカルレンズは、光シート光学系のうちの、再帰反射器の方を向いている端部に、すなわち光シート光学系の入力側に位置することができる。シリンドリカルレンズは、とりわけ再帰反射器と顕微鏡対物レンズとの間に位置することができる。
【0029】
元々は互いにコヒーレントであった光ビームから光シートを生成し、干渉なしに同一平面上で重ね合わせるために、光学装置およびレトロフィットキットを使用することができる。このような重ね合わせは、例えばシェーディングを回避するために使用可能である。このことは、1つの有利な実施形態では、複数の異なる光ビームの経路長の間の最短の差を、光ビームの光のコヒーレンス長よりも大きくすることによって達成可能である。シェーディングを回避するために、光シート同士は、好ましくは同一平面上にある。
【0030】
光源は、光学装置の一部であってよい。
【0031】
さらに、光源が光パルスを生成するように構成されているか、または光源がパルス光源であると有利である。この実施形態では、光学装置、とりわけ再帰反射器は、ビーム入力側では光ビームに沿って元々同期していた光パルスから、再帰反射器内におけるそれぞれ異なる経路長に基づいて、ビーム出力側では光ビームに沿って時間的に順次連続する光パルスを生成するように構成されている。順次連続する光パルスの間の時間間隔は、再帰反射器内における経路長差から生じる。光シート光学系は、光ビームに沿って伝播する時間的に順次連続する光パルスから、時間的に順次連続するパルス状の光シートを生成するように構成されている。それぞれ異なる光ビームに沿った光パルスは、再帰反射器のビーム出力側において時間的に互いにオフセットされている。このようにして、光シート光学系に順次到着する光パルスから光シートが生成される。このような手段により、故障しやすい機構を必要とすることなく、複数の順次連続する光シートを用いて試料を走査することが可能となる。
【0032】
光源は、好ましくはレーザ、例えばガスレーザまたはダイオードレーザである。
【0033】
光学サブシステムは、1つの入力ビーム、例えば1つのレーザビームを複数の光ビームに分割するように構成可能である。例えば、光学サブシステムは、とりわけ線形のレンズアセンブリ、とりわけマイクロレンズアセンブリおよび/または格子または半透鏡のような1つまたは複数のビームスプリッタを有することができ、これらをカスケード接続して配置することもできる。レンズアセンブリのレンズは、シリンドリカルレンズであってよい。光シート光学系がシリンドリカルレンズを有する場合には、光学サブシステムにおいてシリンドリカルレンズを使用する必要はない。
【0034】
光学サブシステムの出力側では、複数の光ビームが、好ましくは1つの平面内において隣り合って位置している。
【0035】
光学サブシステムは、当該光学サブシステムの出力側においてレンズまたはレンズシステムを有することができ、このレンズまたはレンズシステムを通って光ビームが通過し、このレンズまたはレンズシステムは、光ビームのコリメートを保証し、個々の光ビームを、これらが光軸上の共通の点を通って延在するように各自の間隔に応じて光軸に向かって偏向させる。
【0036】
コリメートされた光ビームを生成するために、光学サブシステムは、コリメート装置を有することができる。
【0037】
上述した実施形態のうちの1つにおける光学装置を、顕微鏡の一部として、とりわけ照明ビーム路に配置することができる。顕微鏡は、検出器光学系を有することができ、この検出器光学系の光軸は、好ましくは光シート光学系によって生成された光シートの平面に対して垂直に方向付けられている。
【0038】
さらなる実施形態では、顕微鏡は、所定のコヒーレンス長を有する光を生成するように構成された光源を有することができ、光ビームは、この光源の光から生成されている。
【0039】
以下では、本発明を1つの実施形態に基づいて図面を参照しながら例示的に説明する。本明細書および図面においては、構造および/または機能に関して互いに対応する特徴に対して同一の参照符号が使用されている。
【0040】
上記の実施形態によれば、例示的な実施形態において実現される個々の特徴は、それらの技術的効果が特定の用途において重要でない場合には省略可能である。これとは逆に、上記の説明からの特徴を、これらの特徴に結び付いた技術的効果が特定の用途において重要である場合には、例示的な実施形態に追加することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図2】
図1の視線方向II-IIにおける光学装置の概略図である。
【
図3】矢印IIIに沿った
図1の光学装置の概略平面図である。
【
図4】光シートを生成するための方法についてのフローチャートの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
図1~
図3に基づいて、以下では、光学装置100の構造および機能が説明されている。
【0043】
光学装置100は、複数の光シート102を生成するために使用される。好ましくは、光学装置100は、光ビーム108から、とりわけ光パルス158,158a,158bから、それぞれ異なる伝播方向126を有する同一平面上のインコヒーレントな複数の光シート102を生成するために使用される。この場合、それぞれの光ビーム108から1つの光シート102が生成される。これに代えて、光学装置100を使用して、複数の光ビーム108から複数の互いに離間された平行な光シート102を生成することもできる。
【0044】
光学装置100は、光学サブシステム104を有し、この光学サブシステム104は、当該光学サブシステム104の出力側106において複数のコリメートされた光ビーム108を有し、これら複数のコリメートされた光ビーム108は、1つの共通の点110に到達する。この場合、光ビーム108は、コリメートされたビーム束が沿って進んでいる光軸を表す。光ビームは、光学サブシステムの出力側に位置しており、この出力側において、光学サブシステムから再帰反射器112の方向に複数の光ビームが、好ましくは1つの平面内において隣り合うように出射する。
【0045】
光学サブシステム104は、当該光学サブシステム104の出力側106においてレンズ107を有することができ、このレンズ107は、光学サブシステム104から再帰反射器112へと出射した光ビーム108がコリメートされて点110に到達することを保証する。
【0046】
光学装置100は、再帰反射器112をさらに有する。再帰反射器112のビーム入力側114において、光ビーム108が再帰反射器112に入射する。光ビーム108は、ビーム出力側116において再帰反射器112から再び出射する。再帰反射器内において、光ビームは、ビーム入力側114とビーム出力側116との間で経路長118を辿り、この経路長118は、ビーム入力側114におけるそれぞれの光ビームの入射角120に依存している。
【0047】
図1は、2つの光ビームを例示的に示す。しかしながら、光ビーム108の数は、任意の数であり、例えば、光学装置100のその時々の使用目的と、必要とされる光シート102の数と、に依存している。経路長118は、これらの経路長をより簡単に相互比較することができるようにするために、
図1では再帰反射器112から右側に繰り出されて図示されている。実際には、経路長118は、再帰反射器112内におけるそれぞれの光ビーム108のジグザグ状のビーム路によって決定されている。
【0048】
光学装置100は、光シート光学系122をさらに有し、光ビーム108は、再帰反射器112のビーム出力側116からこの光シート光学系122内へと延在する。光シート光学系122は、当該光シート光学系122の出力側124において、光ビーム108からそれぞれ異なるように方向付けられた光シート102を生成する。
【0049】
光学装置100は、光シート顕微鏡180の一部であってよく、例えば、光シート顕微鏡180の照明ビーム路182を形成することができるか、または照明ビーム路に配置可能である。
【0050】
光学装置100は、光学装置100がまだ設けられていない光シート顕微鏡180のためのレトロフィットキットとしても構成可能である。レトロフィットキットは、光学装置100、または光学装置100のうちのさらに組み立てられるべき構成部分を有し、光シート顕微鏡の照明ビーム路182に配置可能となるように構成されている。
【0051】
光シート顕微鏡180には、検出器光学系184を設けることができ、この検出器光学系184の光軸186は、光シート光学系122の光軸188に対して垂直に方向付けられている。
【0052】
光学装置100は、光源152を有することができる。光源152は、光パルス158を生成するパルス光源であってよい。例えば、光源は、ガスレーザまたはダイオードレーザのようなレーザであってよい。
【0053】
光源152は、好ましくは光源の構造形式および/または動作形式に依存しているコヒーレンス長154を有する光を生成する。
【0054】
図示の変形例では、光学サブシステム104は、入力光ビーム170から複数の光ビーム108を生成するように構成されている。このために、光ビームを分割するための光学装置160、例えば、マイクロレンズアセンブリのようなとりわけ線形のレンズアセンブリ162および/または例えば格子または半透鏡のようなビームスプリッタのアセンブリを設けることができる。ビームスプリッタを、カスケード接続して配置することもできる。
図1には、単なる例としてマイクロレンズアセンブリが図示されている。レンズアセンブリ162のレンズ163は、シリンドリカルレンズであってよい。この場合、光ビームは、図平面において集束されており、かつ図平面に対して垂直にコリメートされている。
【0055】
レンズアセンブリ162のレンズ163がシリンドリカルレンズである場合、レンズ107を使用するだけでは、図平面に対して垂直にコリメートされた複数のビームが(おおよそ点110に)集束されることになり、これは望ましくない。したがって、この場合には、有利にはレンズ107の光源側に、さらなる(シリンドリカル)レンズまたは(シリンドリカル)レンズアセンブリをさらに設けることができ、さらなる(シリンドリカル)レンズまたは(シリンドリカル)レンズアセンブリは、図平面に対して垂直な方向においてレンズ107の(光源側の)後焦点面へと集束させるが、ただし、試料内に光シートが生じるように、図平面においてレンズアセンブリ162またはレンズアセンブリのレンズ163よりも強力に集束させる。
【0056】
光源152から入力光ビーム170に沿って光パルス158が生成されると、この光パルス158は、光学装置160によって複数の異なる光パルス158a,158bに分割され、これらの光パルス158a,158bは、とりわけ互いに同期していてよく、それぞれ異なる光ビーム108に沿って伝播することができる。
【0057】
図1および
図3から分かるように、これらの個々の光ビーム108は、少なくとも部分的に、好ましくは照明ビーム路182全体にわたって、ただし、少なくとも光シート光学系122に入射する前では、
図3では図平面に対して垂直に位置していて破線で示されている平面300内において隣り合って位置している。とりわけ、光ビーム108は、再帰反射器112のビーム出力側116と光シート光学系122との間においても同様に、1つの平面内に、好ましくは平面300内に、または平面300に対して回転させられた1つの平面内にも位置している。
【0058】
光シート光学系122は、後焦点面150、または後焦点面150に対して光学的に共役な平面を有し、これらの平面内には、光学サブシステム104によって生成されたコリメートされた光ビーム108が到達する点110が位置している。
【0059】
光シート光学系122は、シリンドリカルレンズ164を有することができる。点110は、とりわけ、このシリンドリカルレンズ164の後焦点面150内に、または後焦点面150に対して光学的に共役な平面内に位置することができる。
【0060】
さらに、光シート光学系122は、顕微鏡対物レンズと称することもできる対物レンズ166を有することができる。対物レンズ166の瞳200(
図2)内では、複数の光ビーム108が隣り合って位置している。光ビーム108に沿って伝播する光は、瞳200内においてそれぞれの光ビーム108に関して楕円形の断面202を有する。
【0061】
光シート光学系によって生成された光シート102同士は、互いに交差する。好ましくは、光シート102は、互いに同一平面上に配置されており、それぞれ異なる伝播方向126を有する。すなわち、これらの光シート102の伝播方向126は、1つの共通の平面内に位置している。次いで、これらの光シートは、好ましくは試料ボリューム168内において互いに交差し、この試料ボリューム168は、とりわけ検出器光学系184の光軸186上に位置することができる。このことは、例えば平面300が、シリンドリカルレンズ164が集束させる平面190に対して平行に延在する場合に当てはまる。
図1では、これは、図平面である。
【0062】
シリンドリカルレンズ164は、
図2に示されているように楕円形の焦点を生成する。焦点の楕円形の断面は、対物レンズ166を通過する際に90度回転する。その場合、光シートは、上下に重なり合っており、楕円の長軸に沿った方向により強力に集束されており、すなわちより薄くなっている。このことは、対物レンズの後焦点面において、すなわち光源側において、楕円形の断面を有する複数の光シートが互いに平行に位置することであるとも説明可能である。楕円は、対物レンズ166を通過した後に90度回転させられ、その場合、対物レンズの焦点面において上下に重なり合っている。
【0063】
複数の互いに旋回させられる同一平面上の光シート102により、試料ボリューム168内の物体に起因して光シートのシェーディングおよび屈折によって生成されるストリップ状アーチファクトが回避される。試料ボリューム168は、複数の光シート102によってそれぞれ異なる角度から、ただし同一平面上に照明され、これによってシェーディングが最小限になる。
【0064】
光シート102が上下に重なり合っている場合には、干渉を回避するために個々の光シート102が互いにインコヒーレントであることに注意すべきである。このことは、光シート102を生成するために使用される全ての光ビーム108の間の最小の経路長差156を、光ビーム108の光のコヒーレンス長154よりも大きくすることによって簡単に達成される。
【0065】
光源152が、例えばコヒーレンス長154を有する入力光パルス158の時間t的なシーケンスを生成する場合には、この入力光パルス158が光学サブシステム104によって分割されてできた、光シート102を生成するために使用される個々の光パルス158a,158b同士は、少なくとも1つのコヒーレンス長154を互いに時間的に離間されているべきである。
【0066】
すなわち、再帰反射器112は、ビーム入力側114では互いにコヒーレントである光ビーム108から、ビーム出力側116では互いにインコヒーレントである光ビーム108を生成するために使用される。
【0067】
このことは、複数の光ビーム108がそれぞれ異なる入射角120で再帰反射器112に入射し、再帰反射器112内における経路長118がそれらの入射角120に依存していることによって達成される。したがって、再帰反射器112は、入射角120の差を、経路長差156に変換する。再帰反射器112内における光ビーム108間の全ての経路長差156がコヒーレンス長154よりも大きい場合には、光ビーム108に沿って伝播する光がインコヒーレントとなる。
【0068】
基本的に、再帰反射器112は、任意の構造形式を有することができ、例えばトリプルミラーまたはトリプレットプリズムとして、キャッツアイとして、またはリューネブルクレンズとしての構造形式を有することができる。しかしながら、再帰反射器は、隣り合う光ビーム同士の入射角がわずかに変化しただけでもそれらの光ビームの間に大きな経路長差156が生成されるように構成されていることが好ましい。さらに、ビーム入力側114において個々のコリメートされた光ビームの間に存在する角度比率が、ビーム出力側116においても保たれることが好ましい。すなわち、再帰反射器112は、個々の光ビーム108の互いの相対的な位置および向きを変化させるべきではない。最後に、コンパクトな構造形式が可能であるまま維持されるように、ビーム入力側114が再帰反射器112のビーム出力側116から遠く離れていないと有利であろう。
【0069】
図1に例示的に図示されている再帰反射器112は、これらの要求を満たすものである。
【0070】
再帰反射器112は、図示の実施例では2つの平坦なミラー138,140を有し、これら2つの平坦なミラー138,140は、各自の平行な姿勢から、好ましくは10-4~10-2radである角度144だけ互いに傾けられている。10度未満または5°未満の角度も可能である。2つのミラー138,140が互いに傾けられるときの中心の軸は、平面300に対して垂直に位置しており、かつミラー平面に対して平行に延在する。2つのミラーの間のボリューム192は、気体または空気によって充填可能であり、外部に対して密閉可能である。これに代えて、再帰反射器112をガラスブロックから製造することもでき、これにより、光ビーム108は、再帰反射器112内においてガラスを通って延在する。この場合には、ミラー138,140は、ガラスブロックの2つの対向する互いに傾けられた平面によって形成されている。
【0071】
ビーム入力側114は、図示の実施例ではミラー138の表面132に位置している。2つのミラー138,140の間の、対向するミラー138,140から等間隔にある中心平面148は、平面300に対して垂直であり、かつ照明ビーム路182に対して斜めに延在する。
【0072】
コリメートされた光ビーム108が順次に到達する点110は、再帰反射器112の前または中に位置することができる。
図1に示されている実施形態では、この点110は、ミラー表面132上に、すなわちビーム入力側114に位置している。この箇所には、ビーム出力側も位置している。
【0073】
図1には、再帰反射器112内における2つの光ビーム108のビーム路が概略的に示されている。
【0074】
光ビーム108は、2つのミラー138,140の間で往復反射される。2つのミラーの間隔は、ビーム入力側から離れる方向に減少していくので、光ビーム108は、再帰反射器112内へとビーム入力側から離れる方向に反射される。この場合、入射角は、角度144に基づいて、ミラー138,140のうちの一方において反射されるたびにますます減少する。すなわち、光ビーム108は、反射回数が増加するにつれてますます急峻にミラー138,140に衝突し、それから反転箇所142において、再帰反射器112内における光ビーム108の方向が反転し、光ビーム108は、再びビーム入力側114へと反射されて戻される。
【0075】
反転箇所142からビーム入力側114への経路上では、ミラー138,140に対する入射角は、ミラー138,140のうちの一方において反射されるたびに再び増大する。再帰反射された光ビーム108は、ビーム入力側114において再帰反射器112から再び出射する。したがって、
図1に示されている実施形態では、ビーム入力側114とビーム出力側116とが空間的に一致している。
【0076】
この再帰反射器112内における光ビーム108のジグザグ形の反射を空間波として見なすと、この空間波の周波数は、反転点までは増加して、その後、再び減少する。角度144が非常に小さいことに基づいて多数の反射が発生し、これにより、角度144を調整することによって経路長差156をコヒーレンス長154に適合させることができる。
【0077】
ビーム入力側114における光ビーム108の入射角が角度144の整数倍である場合には、光ビーム108は、再帰反射器112内において合同に反射されて戻される。したがって、光学装置100の1つの実施形態では、光ビームの全ての入射角120は、角度144の整数倍である。これにより、再帰反射器112に入射した光ビーム134,108は、再帰反射された光ビーム136,108と合同になる。
【0078】
照明ビーム路182におけるビームスプリッタ130は、ビーム出力側116から到来した光ビーム108,136を光シート光学系122へと反射し、その一方で、ビーム入力側114の方向に伝播する光ビーム108,134は、ビームスプリッタ130を通過する。
【0079】
光シート光学系122に入射する光ビーム108同士は、再帰反射器112内における反射経路の長さがそれぞれ異なることに基づき、既に上述したように時間的に互いにオフセットされているか、またはデコヒーレントである。
【0080】
図4によれば、光シートを生成するために、第1のステップ400において、共通の点110に到達する複数のコリメートされた光パルス158a,158bが再帰反射器112に入射する。ステップ402において、これらの光パルスは、再帰反射器112内において各自の入射角120に依存している経路長118を辿る。
【0081】
続いて、光パルスは、ステップ404において再帰反射器112から出射して、それぞれ1つの光シート102へと変形される。ステップ406において、複数の光シート102を、試料ボリューム168内において互いに交差するそれぞれ異なる伝播方向を有するように同一平面上に生成することができる。
【0082】
光学装置100は、角度144を変更するように、またはミラー138,140のうちの少なくとも一方を傾けるように構成された調整装置194を有することができる。調整装置194は、ミラー138,140のうちの少なくとも一方に作用する駆動要素196、例えばモータまたはアクチュエータと、駆動要素196を制御する制御装置198と、を有することができる。角度144を調整することにより、例えば光シート102の数または経路長差156を適合させることができる。
【0083】
本明細書で使用されるように、用語「および/または(かつ/または)」は、関連する記載項目のうちの1つまたは複数の項目のあらゆる全ての組み合わせを含んでおり、「/」として略記されることがある。
【0084】
いくつかの態様を装置の文脈において説明してきたが、これらの態様が、対応する方法の説明も表していることが明らかであり、ここではブロックまたは装置がステップまたはステップの特徴に対応している。同様に、ステップの文脈において説明された態様は、対応する装置の対応するブロックまたは項目または特徴の説明も表している。
【符号の説明】
【0085】
100 光学装置
102 光シート
104 光学サブシステム
106 光学サブシステムの出力側
107 光学サブシステムの出力側におけるレンズ
108 光ビーム
110 光ビームが到達する共通の点
112 再帰反射器
114 再帰反射器のビーム入力側
116 再帰反射器のビーム出力側
118 再帰反射器内における光ビームの経路長
120 再帰反射器への光ビームの入射角
122 光シート光学系
124 光シート光学系の出力側
126 光シートの伝播方向
130 ビームスプリッタ
132 ミラー表面
134 光ビームの区間
136 光ビームの区間
138 ミラー
140 ミラー
142 反転箇所
144 ミラー同士が互いに傾けられている角度
146 時間オフセット
148 中心平面
150 光シート対物レンズまたは光シート光学系の後焦点面
152 光源
154 コヒーレンス長
156 経路長差
158 入力光パルス
158a,158b 入力光パルスから生成された光パルス
160 光ビームを分割するための光学装置
162 レンズアセンブリ
163 レンズアセンブリのシリンドリカルレンズ
164 シリンドリカルレンズ
166 対物レンズ
168 試料ボリューム
170 入力光ビーム
180 光シート顕微鏡
182 照明ビーム路
184 検出器光学系
186 検出器光学系の光軸
188 光シート光学系の光軸
190 シリンドリカルレンズが集束させる平面
192 ミラー同士の間のボリューム
194 調整装置
196 駆動要素
198 制御装置
200 瞳
202 楕円形の断面
300 光ビームの平面
400 光ビームの入射
401 入射角に依存している光ビームの反射
404 光シートを生成する
406 複数の互いに交差する同一平面上の光シートを形成する
【国際調査報告】