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  • 特表-消毒システム 図1
  • 特表-消毒システム 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-04
(54)【発明の名称】消毒システム
(51)【国際特許分類】
   A61L 2/10 20060101AFI20230828BHJP
【FI】
A61L2/10
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023507870
(86)(22)【出願日】2021-07-23
(85)【翻訳文提出日】2023-03-01
(86)【国際出願番号】 EP2021070702
(87)【国際公開番号】W WO2022033840
(87)【国際公開日】2022-02-17
(31)【優先権主張番号】102020004883.8
(32)【優先日】2020-08-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】598051819
【氏名又は名称】メルセデス・ベンツ グループ アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Mercedes-Benz Group AG
【住所又は居所原語表記】Mercedesstrasse 120,70372 Stuttgart,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100090583
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 清
(74)【代理人】
【識別番号】100098110
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 みどり
(72)【発明者】
【氏名】アスミル・ザルキク
【テーマコード(参考)】
4C058
【Fターム(参考)】
4C058AA23
4C058BB06
4C058DD03
4C058DD11
4C058DD13
4C058DD16
4C058KK02
4C058KK22
(57)【要約】
本発明は、車両(1)用の消毒システム(2)に関する。この消毒システム(2)は、車両(1)の車室内(5)に、UV-B領域及び/又はUV-C領域の放射線を生成するための第1の光源(3)を有する。本発明によれば、消毒システム(2)は、UV-C領域の放射線を生成するための第2の光源(4)を有する。また、本発明は、消毒システム(2)を制御するための方法(9)に関する。また、本発明は、消毒システム(2)を備えた車両(1)に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(1)用の消毒システム(2)であって、前記消毒システム(2)は、UV領域の放射線を生成するための前記車両(1)の車室内(5)用の第1の光源(3)を有し、前記第1の光源(3)は、UV-B領域及び/又はUV-C領域の放射線を生成するように構成され、かつ前記消毒システム(2)は、UV-C領域の放射線を生成するための第2の光源(4)を有する、前記消毒システム(2)において、
前記第1の光源(3)は、100~300nmの範囲、好適には200~300nmの範囲の放射線を生成するように構成されていること、及び/又は、
前記第2の光源(4)は、210~230nmの範囲、好適には222nmの放射線を生成するように構成されていること、
を特徴とする、前記消毒システム(2)。
【請求項2】
前記第2の光源(4)は、少なくとも12mJ/cmの放射光量の放射線を生成するように構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の消毒システム。
【請求項3】
前記消毒システム(2)は、前記第1の光源(3)と前記第2の光源(4)を制御するコントローラ(8)を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の消毒システム。
【請求項4】
前記消毒システム(2)は、前記車両(1)内の乗客を確認するために、好適にはカメラ又はレーダーである少なくとも1つの確認ユニット(7a、7b)を有することを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載の消毒システム。
【請求項5】
前記第1の光源(3)及び/又は前記第2の光源(4)は、一体式であるか、又は複数の部品からなることを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載の消毒システム。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の消毒システム(2)を制御するための方法(9)であって、
前記消毒システム(2)のコントローラ(8)は、好適にはカメラ又はレーダーである少なくとも1つの確認ユニット(7a、7b)により、前記車両(1)内に乗客がいるかどうかを判断し、
前記コントローラ(8)は、前記車両(1)内に乗客がいるかどうかに応じて、前記第1の光源(3)又は前記第2の光源(4)をオンにする、
前記方法(9)。
【請求項7】
前記車両(1)内に乗客がいない場合、前記コントローラ(8)は、前記第1の光源(3)を少なくとも6秒間オンにし、
前記車両(1)内に乗客がいる場合、前記コントローラ(8)は、前記第2の光源(4)を少なくとも2.5秒間オンにすること、
を特徴とする、請求項6に記載の方法
【請求項8】
請求項1から5のいずれか1項に記載の消毒システム(2)を備える車両(1)であって、
前記第1の光源(3)及び前記第2の光源(4)は、前記車両(1)の車室内(5)において前記車両(1)のルーフ(6)及び/又は前記車両(1)の支柱及び/又は前記車両(1)のコンソールに取り付けられている、
前記車両(1)。
【請求項9】
前記第1の光源(3)及び前記第2の光源(4)は、前記車両(1)の前記車室内(5)で前記第1の光源(3)からの放射線の伝搬と前記第2の光源(4)からの放射線の伝搬とが同一になるように互いに隣接して配置されることを特徴とする、請求項8に記載の車両。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1のプリアンブルに記載の車両用の消毒システムに関する。また、本発明は、消毒システムを制御するための方法に関する。また、本発明は、消毒システムを備えた車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の車両は、自動かつ迅速な消毒を可能にする消毒システムを有していない。そのため、車両は、必要に応じて化学薬品を使い手作業で費用が掛かる消毒が行われている。特に、レンタカーでは、ある乗客から別の乗客へのウイルスと細菌の感染を防止するため、自動かつ迅速な消毒に対する需要がある。
【0003】
紫外領域の電磁波が消毒効果を有することが知られている。ウイルス、バクテリア又は原生動物が波長200~300nmの紫外光に曝露されると、それらは増殖と感染の能力を失う。紫外光は、環境に優しく、化学薬品を使用せず、かつ高く効果的な消毒にますます使用されるようになっている。不利なことに、波長200~300nmの紫外光は、人間の皮膚や眼に潜在的にも有害である。
【0004】
特許文献1では、UV-B領域の電磁放射線を生成するために車両内で光源を使用することが提案されている。これは、乗客のビタミンD生産を強化し、病原菌、すなわちウイルスとバクテリアを死滅させ得る。不利なことに、UV-B領域の放射線は、消毒効果が弱い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】DE 10 2017 115 060 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の課題は、記述した欠点が克服される一般的な消毒システムのための、改善された、又は少なくとも代替の実施形態を提供することである。また、本発明の課題は、消毒システムを制御するための方法を提供することである。さらに、本発明の課題は、消毒システムを備えた自動車を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、これらの課題は、独立請求項の主題により解決される。有利な実施形態は、従属請求項の主題である。
【0008】
消毒システムは、車両用に意図されている。この場合、消毒システムは、車両内部に第1の光源を有しており、第1の光源は、紫外線領域の放射線を生成するように構成されている。本発明によれば、第1の光源は、UV-B領域及び/又はUV-C領域の放射線を生成するように構成されている。さらに、消毒システムは、UV-C領域の放射線を生成するように設計された第2の光源も有する。
【0009】
本発明では、用語「放射線」は、電磁波又は光を意味するものと常に理解される。略語「UV」は、用語「紫外線(Ultraviolet)」の略である。指定したUV-B領域及び指定したUV-C領域とは、紫外領域の電磁波の波長を指す。通常の定義に従えば、UV-B領域の電磁放射線の波長は、315~280nmであり、UV-C領域の電磁放射線の波長は、280~100nmである。本明細書で使用される単位「nm」は、ナノメートルの略である。
【0010】
ここで、第1の光源は、100~300nmの範囲の放射線を生成するように設計されている。好適には、第1の光源は、200~300nmの範囲の放射線を生成するように設計されている。ここで、第2の光源は、210~230nmの範囲の放射線を生成するように設計されている。好適には、第2の光源は、222nmの放射線を生成するように設計されている。
【0011】
第1の光源は、幅広いUV領域で発光し、空の車両、詳しく言えば乗客のいない車両を消毒するために使用され得る。第2の光源は、狭いUV領域で発光し、したがって、人間の皮膚及び人間の眼に優しい。したがって、第2の光源は、乗車中の車両、詳しく言えば乗客のいる車両を消毒するために使用され得る。本発明の消毒システムを使用することで、車両の車室内は、非接触で、化学薬品を使用せず、かつ効果的に消毒され得る。また消毒は、有利には、乗車中の車両、詳しく言えば乗客のいる車両でも高い効果をもって実行され得る。
【0012】
有利には、第2の光源は、放射光量が少なくとも12mJ/cmの放射線を生成するように構成されていることが意図され得る。これにより、効率的にウイルスやバクテリアの増殖を防止し得る。ここで、放射線の正確な放射光量は、フィールドテスト又はバイオアッセイの検証に基づき決定され得る。本明細書で使用される単位「mJ」は、ミリジュールの略である。本明細書で使用される単位「cm」は、センチメートルの略である。
【0013】
有利には、消毒システムは、第1の光源と第2の光源を制御するコントローラを有し得る。特に、プロセスを実行するためのコントローラは、消毒システムを制御するように設計され得る。例えば、消毒システムのコントローラは、人工知能(AI)の一部である。特に、コントローラは、2つの光源のオンとオフとを切り替えし得る。各光源のオンとオフの切り替えは、空の車両、詳しく言えば乗客のいない車両の消毒、又は乗車中の車両、詳しく言えば乗客のいる車両の消毒に応じて行われ得る。有利には、消毒システムは、車両内の乗客を確認するための少なくとも1つの確認ユニットを有し得る。好適には、確認ユニットは、カメラ又はレーダーである。
【0014】
有利には、第1の光源及び/又は第2の光源は、一体式であるか、又は複数の部品からなる。言い換えると、第1の光源及び/又は第2の光源は、各々が1つの照明ユニット又は複数の照明ユニットからなり得る。有利には、第1の光源及び/又は第2の光源は、複数の部品からなり得、車両の車室内に分散配置され得る。個別の照明ユニットは、車両の車室内全体が第1の光源又は第2の光源で照射され得るように、車両の車室内に配置され得る。
【0015】
要約すれば、本発明の消毒システムは、車両の車室内の非接触かつ安全な消毒を提供し得る。消毒は、環境に優しく、化学薬品を使用せず、持続可能で、効果が高い方法で実行され得る。本発明の消毒システムは、有毒な化学薬品の保管、輸送と取り扱いを排除し、いかなる化学的な副生成物、特に発がん性をもつ副生成物を生成しない。また、車両の腐食リスクも存在しない。
【0016】
また、本発明は、上記消毒システムを制御するための方法にも関する。この方法では、消毒システムのコントローラがまず、少なくとも1つの確認ユニットにより車両内に乗客がいるかどうかを判断する。確認ユニットは、好適には、カメラ又はレーダーである。コントローラは、車両内に乗客がいるかどうかに応じて、第1の光源又は第2の光源をオンにする。
【0017】
有利には、車両内に乗客がいない場合、コントローラは、第1の光源を少なくとも6秒間オンにすることが意図され得る。上記説明したように、第1の光源は、100~300nmの範囲の放射線を生成するように設計され得る。好適には、第1の光源は、200~300nmの範囲の放射線を生成するように設計されている。第1の光源を使用することにより、ウイルス及びバクテリアの安全でほぼ完全な死滅が達成され得る。200~300nmの範囲の放射線は、人間の皮膚と人間の眼に有害であるため、第1の光源は、車両内に乗客がいない場合にオンにされる。これにより、乗客が害されることを防止できる。
【0018】
有利には、車両内に乗客がいる場合、コントローラは、第2の光源を少なくとも2.5秒間オンにすることが意図され得る。上記説明したように、第2の光源は、210~230nmの範囲の放射線を生成するように設計され得る。好適には、第2の光源は、222nmの放射線を生成するように提供される。222nmの放射線は、幅広い200~300nmの放射線に比べ、人間の皮膚及び人間の眼への有害性が少ない。しかしながら、ほとんどのウイルスとバクテリアは死滅される。
【0019】
本発明の方法を使用して、空の車両、詳しく言えば乗客のいない車両、又は乗車中の車両、詳しく言えば乗客のいる車両で消毒が行われ得る。これにより、消毒は適宜行うことができ、乗客はウイルス及びバクテリアからよりよく保護され得る。消毒システムは、自動で操作され得る。加えて、消毒システムは、エネルギー効率に優れた方法で動作され得るか、又は最小のエネルギー消費で最大の消毒効果が達成され得る。
【0020】
また、本発明は、上記消毒システムを備えた車両にも関する。この場合、第1の光源及び第2の光源は、車両の車室内において車両のルーフ及び/又車両の支柱及び/又は車両のコンソールに取り付けられる。有利には、第1の光源及び第2の光源は、車両の車室内で第1の光源からの放射線の伝搬と第2の光源からの放射線の伝搬とが同一となるように互いに隣接して配置され得る。これにより、車両の車室内の全ての領域が、第1の光源及び第2の光源を使い照射される。その結果、車室内の消毒は、第1の光源及び第2の光源を使い、同じ方法で完全かつ効率的に実施され得る。
【0021】
本発明のさらに重要な機能と利点は、従属請求項、図面及び図面に基づいた関連する図面の説明から明らかである。
【0022】
上記機能と以下に説明され得る機能は、各実施例で示される組み合わせだけでなく、他の組み合わせ又は、それ自身で、本発明の範囲を逸脱することなく使用され得ることは理解されるであろう。
【0023】
本発明の好適な実施形態は、図面に示されており、以下の記述で詳細に説明される。ここで、同じ参照符号は、同一又は同様又は機能的に同一の構成要素を指す。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の消毒システムを備えた車両の模式図である。
図2】本発明の消毒システムを制御するための方法の制御スキームの図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は、本発明の消毒システム2を備えた車両1の模式図を示す。ここで、消毒システム2は、車両1の車室内5のルーフ6に取り付けられた第1の光源3及び第2の光源4を有する。ここで、第1の光源3及び第2の光源4は、車両1の車室内5で第1の光源3からの放射線の伝搬と第2の光源4からの放射線の伝搬とが同一になるように互いに隣接して配置される。
【0026】
第1の光源は、UV-B領域及び/又はUV-C領域の放射線を生成するように構成されている。有利には、第1の光源3は、100~300nmの範囲の放射線を生成するように構成されている。好適には、第1の光源3は、200~300nmの範囲の放射線を生成するように設計されている。第1の光源3は、幅広いUV領域で発光し、空の車両、詳しく言えば乗客のいない車両を消毒するために使用され得る。
【0027】
第2の光源4は、UV-C領域の放射線を生成するように構成されている。有利には、第2の光源4は、210~230nmの範囲の放射線を生成するように構成されている。好適には、第2の光源は、222nmの放射線を生成するように設計されている。第2の光源4は、狭いUV領域で発光し、乗車中の車両、詳しく言えば乗客のいる車両を消毒するために使用され得る。第2の光源4は、放射光量が少なくとも12mJ/cmの放射線を生成するように適切に構成され、車室内5の安全な消毒を可能にする。
【0028】
また、消毒システム2は、2つの確認ユニット7a及び7bを有し、確認ユニット7a及び7bは、カメラ/レーダーである。確認ユニット7a及び7bにより、消毒システム2は、車室内5に乗客がいるかどうかを判断し得る。これに基づき、消毒システム2のコントローラ8は、光源3及び4を制御し得る。
【0029】
消毒システム2の制御は、本発明の方法9により行われる。図2は、方法9の制御スキームを示す。開始ステップ10の後、コントローラ8は、確認ステップ11で、確認ユニット7a及び7bにより、車両1の車室内5内に乗客がいるか又はとどまっているかどうかを判断する。
【0030】
車両1の車室内5内に乗客がいない場合、図2では「-」記号で示されており、消毒ステップ12aが実行される。この場合、車室内5を消毒するために、第1の光源3が少なくとも6秒間オンにされ、車室内5の徹底的な消毒が実行される。車両1の車室内5内に乗客がいる場合、図2では「+」記号で示されており、消毒ステップ12bが実行される。この場合、車室内5を消毒するために、第2の光源4が少なくとも2.5秒間オンにされ、人間の皮膚と人間の眼に優しい車室内5の消毒が実行される。


図1
図2
【国際調査報告】