(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-04
(54)【発明の名称】ポリオキシメチレンコポリマーを製造するためのバイオマスの使用
(51)【国際特許分類】
C08G 2/10 20060101AFI20230828BHJP
【FI】
C08G2/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023511583
(86)(22)【出願日】2021-08-13
(85)【翻訳文提出日】2023-04-05
(86)【国際出願番号】 US2021045840
(87)【国際公開番号】W WO2022036163
(87)【国際公開日】2022-02-17
(32)【優先日】2020-08-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512225379
【氏名又は名称】セラニーズ・インターナショナル・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100129458
【氏名又は名称】梶田 剛
(72)【発明者】
【氏名】クルツ,クラウス
(72)【発明者】
【氏名】マルクグラフ,キルステン
(72)【発明者】
【氏名】ホフモッケル,ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】トンネス,カイ-ウーベ
【テーマコード(参考)】
4J032
【Fターム(参考)】
4J032AA02
4J032AA05
4J032AA32
4J032AB02
4J032AB04
4J032AB31
4J032AC16
4J032AD51
4J032AF04
4J032AF08
(57)【要約】
本開示は、ポリオキシメチレンポリマーまたはパラホルムアルデヒドを環境に優しく持続可能な方法で製造する方法に関する。ポリオキシメチレンポリマーまたはパラホルムアルデヒドは、カーボンニュートラルまたはカーボンネガティブをも実現するよう製造されうる。一態様において、ポリオキシメチレンポリマーまたはパラホルムアルデヒドは、バイオガスまたは再生ガスから形成される。バイオガスおよび再生ガスは、ポリマーの形成に必要とされる成分の製造に使用される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオキシメチレンポリマーを製造する方法であって、
バイオガスまたは再生ガスを含む少なくとも1つのカーボンネガティブ成分から環状アセタールを形成する工程と、
少なくとも1つのカーボンネガティブ成分からコモノマーを形成する工程と、
触媒の存在下で前記環状アセタールを前記コモノマーと重合してポリオキシメチレンコポリマーを形成する工程とを含む方法。
【請求項2】
少なくとも1つのカーボンネガティブ成分から連鎖移動剤を形成する工程と、前記触媒の存在下で前記環状アセタールを前記コモノマーおよび前記連鎖移動剤と重合して前記ポリオキシメチレンコポリマーを形成する工程とをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも1つのカーボンネガティブ成分は、前記環状アセタール、前記コモノマー、および前記連鎖移動剤を製造するためのホルムアルデヒド水溶液の形成のために使用される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記カーボンネガティブ成分は、最初にメタノールの形成のために使用される、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記環状アセタールは、トリオキサンを含む、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記コモノマーは、ジオキソランを含む、請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記ポリオキシメチレンコポリマーは、0.5から5モル%のコモノマーを含有する、請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記コモノマーは、1,3-ジオキソランを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記連鎖移動剤は、メチラールまたはグリコールを含む、請求項2または3に記載の方法。
【請求項10】
前記連鎖移動剤は、前記ポリオキシメチレンポリマーの重量に対し100ppmから1500ppmの量で使用される、請求項1から9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記ポリオキシメチレンコポリマーは、末端水酸基を含み、かつ前記ポリオキシメチレンコポリマーの末端水酸基含有量は、約5mmol/kgから約150mmol/kg、例えば約25mmol/kgから約150mmol/kgである、請求項1から10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記ポリオキシメチレンポリマーは、アルコキシ基から構成されている末端基をさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ポリオキシメチレンコポリマーは、末端基を含み、前記末端基は、メトキシ基、エトキシ基、ホルメート基、およびヘミアセタール基を含む、請求項1から12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記ポリオキシメチレンコポリマーに含有される炭素の約80重量%超が前記カーボンネガティブ成分に由来する、請求項1から13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
ポリオキシメチレンポリマーを製造する方法であって、
二酸化炭素副生成物を工業プロセスから集める工程と、
二酸化炭素と水素源とを合わせてメタノールを形成する工程と、
ホルムアルデヒド溶液を形成する工程と、
前記ホルムアルデヒド溶液から環状アセタールを形成する工程と、
触媒の存在下で前記環状アセタールを重合してポリオキシメチレンポリマーを形成する工程とを含む方法。
【請求項16】
二酸化炭素からコモノマーを形成する工程と、
連鎖移動剤および触媒の存在下で前記環状アセタールを前記コモノマーと重合してポリオキシメチレンポリマーを形成する工程とをさらに含み、
前記ポリオキシメチレンポリマーは、ポリオキシメチレンコポリマーを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記環状アセタールは、トリオキサンを含む、請求項15または16に記載の方法。
【請求項18】
前記コモノマーは、ジオキソランを含む、請求項16または17に記載の方法。
【請求項19】
前記ポリオキシメチレンコポリマーは、0.5から5モル%のコモノマーを含有する、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記コモノマーは、1,3-ジオキソランを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記ポリオキシメチレンコポリマーは、末端水酸基を含み、かつ前記ポリオキシメチレンコポリマーの末端水酸基含有量は、約25mmol/kgから約150mmol/kg、例えば約40mmol/kgから約150mmol/kgである、請求項15から20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
前記ポリオキシメチレンポリマーは、アルコキシ基から構成されている末端基をさらに含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記ポリオキシメチレンコポリマーに含有される炭素の約50重量%超が二酸化炭素に由来する、請求項15から22のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
パラホルムアルデヒドを製造する方法であって、
バイオガスまたは再生ガスを含む少なくとも1つのカーボンネガティブ成分からホルムアルデヒドを形成する工程と、
触媒の存在下で前記ホルムアルデヒドを重合してパラホルムアルデヒドを形成する工程とを含む方法。
【請求項25】
前記カーボンネガティブ成分は、最初にメタノールの形成のために使用される、請求項24に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本出願は、参照により本明細書に組み込まれる、出願日が2020年8月14日である米国仮特許出願第63/065,767号に基づき、その優先権を主張する。
[0002]一般にポリオキシメチレンポリマーと呼ばれるポリアセタールポリマーは、様々な用途において特に有用な工学材料として確立されている。例えば、ポリオキシメチレンポリマーは優れた機械特性、耐疲労性、耐摩耗性、耐薬品性、および成形性を有するため、ポリオキシメチレンポリマーは、自動車産業、電機産業、家電産業、医療産業などで使用される物品といったポリマー物品の構成に幅広く使用される。
【0002】
[0003]ポリオキシメチレンポリマーは、様々な性質を変化および/または向上させる種々の添加物と配合されうる。例えば、ポリオキシメチレンポリマーは、低摩擦表面が望まれる用途において、トライボロジー調整剤と合わせられうる。他の実施形態において、強度および靭性特性を高めるために、補強フィラーおよび補強繊維をポリマーに組み込むことができる。別の態様において、衝撃改質剤をポリマーに添加して耐衝撃性を高めることができる。
【0003】
[0004]ポリオキシメチレンポリマーは、通常、化石産物由来のホルムアルデヒドモノマーから製造される。ポリオキシメチレンポリマーの製造は、炭素排出すらもたらしうる。しかし、近年、一定の期間内にカーボンニュートラルを実現することを大小の多くの企業が誓約している。例えば、マイクロソフト社は、2030年までにカーボンネガティブを実現することを公約している。一方、アマゾン社は、2040年までにカーボンニュートラルを実現することを誓約している。数万もの消費財を製造するユニリーバ社も、2039年までにカーボンニュートラルを実現することを誓約している。
【0004】
[0005]カーボンニュートラルを実現するために、企業は、大気中に排出される量と同量の二酸化炭素を除去し、ネットゼロカーボンエミッションを達成する必要がある。一方、カーボンネガティブ企業は、放出するよりも多くの炭素を大気中から除去する。
【0005】
[0006]世界中でカーボンニュートラルまたはカーボンネガティブを達成しようと企業が多大な努力を尽くしている中、より持続可能な方法でポリマーを製造する方法およびプロセスが求められる。この観点から、カーボンニュートラルまたはカーボンネガティブなポリオキシメチレンポリマーを製造するプロセスおよび方法が求められる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
[0007]本開示は、全体として、カーボンオフセットをもたらすポリオキシメチレンポリマー、特にポリオキシメチレンコポリマーの製造に関する。
[0008]本開示の一態様は、ポリオキシメチレンポリマーを製造する方法に関する。方法は、少なくとも1つのカーボンネガティブ成分から環状アセタールを形成する工程を含む。少なくとも1つのカーボンネガティブ成分からコモノマーも形成される。環状アセタールおよびコモノマーは、次いで、触媒の存在下で重合されてポリオキシメチレンコポリマーを形成する。本開示によると、カーボンネガティブ成分は、例えば工業プロセスから集められうるバイオガスまたは再生ガス(recycled gas)を含みうる。バイオガスは、例えば、嫌気性消化またはガス化技術を利用して有機廃棄物から形成されるメタンといったガスでありうる。代わりに、ガスは、環境中に放出されずに工業プロセスから集められる二酸化炭素または一酸化炭素といった再生ガスでありうる。
【0007】
[0009]一態様において、カーボンネガティブ成分は、メタノールの製造に使用されうる。メタノールは、次いで、環状アセタールおよび/またはコモノマーに変換されうる。メタノールは、バイオマスから製造されうるか、またはバイオガスもしくは再生ガスといった前述のカーボンネガティブガスから製造されうる。
【0008】
[0010]一実施形態において、方法は、少なくとも1つのカーボンネガティブ成分から連鎖移動剤(chain transfer agent)を形成する工程、および環状アセタールとコモノマーおよび連鎖移動剤とを触媒の存在下で重合させてポリオキシメチレンコポリマーを形成する工程をさらに含む。連鎖移動剤は、例えば、メチラールを含みうる。代わりに、連鎖移動剤はグリコールでありうる。一方、環状アセタールはトリオキサンでありえ、コモノマーはジオキソランを含みうる。一態様において、ポリオキシメチレンコポリマーは、約0.1%から約5mol%の量でコモノマーを含有する。
【0009】
[0011]本開示の方法に従って製造されるポリオキシメチレンコポリマーは、様々な異なる末端基を含みうる。例えば、一実施形態において、約5mmol/kgから約150mmol/kg、例えば約25mmol/kgから約150mmol/kgの量で末端水酸基がポリマーに存在しうる。
【0010】
[0012]ポリオキシメチレンポリマーに存在してよい他の末端基として、メトキシ基またはエトキシ基といったアルコキシが挙げられる。ポリマーは、ホルメート基およびヘミアセタール基も含んでよい。
【0011】
[0013]一態様において、ポリオキシメチレンコポリマーに含有される炭素の約80重量%超、例えば約90重量%超、さらには例えば100重量%が1つまたは複数のカーボンネガティブ成分に由来しうる。
【0012】
[0014]別の態様において、本開示は、パラホルムアルデヒドを製造する方法に関する。方法は、少なくとも1つのカーボンネガティブ成分からホルムアルデヒドを形成する工程を含む。例えば、カーボンネガティブ成分は、例えば工業プロセスから集められうるバイオガスまたは再生ガスを含みうる。バイオガスまたは再生ガスは、最初にメタノールに変換されうる。メタノールは、次いで、ホルムアルデヒドの製造に使用されうる。ホルムアルデヒドは、次いで、触媒の存在下で重合されてパラホルムアルデヒドを形成する。パラホルムアルデヒドは、HO(CH2O)nHの構造を有し、ここでnは約8から約100である。パラホルムアルデヒドの純度は、重合度nに依存し、90から99%の間でありえ、残余は結合水または遊離水である。パラホルムアルデヒドは、次いで、フェノール、尿素、フルフラールアルコール、レゾルシノール樹脂、メラミン樹脂、およびホルムアルデヒド樹脂の合成に使用されうる。これらの生成物は、工業用コーティング、木材製品、繊維製品、鋳物用樹脂、油井添加剤、潤滑油添加剤、接着樹脂、および電気部品成形材料に使用されうる。
【0013】
[0015]本開示の他の特徴および態様は、下記に詳細に説明される。
[0016]本開示の完全で実施可能な程度の開示は、添付の図面への参照を含む明細書の残りの部分において、より具体的に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本開示に従って調製される組成物を含むコーヒーメーカー装置の一実施形態を示す図である。
【
図2】本開示に従って調製される組成物を含むコーヒーメーカー装置の部品の一実施形態を示す図である。
【
図3】本開示に従って調製される組成物を含む医療装置の一実施形態を示す図である。
【
図4】本開示に従って調製される組成物を含む医療装置の別の実施形態を示す図である。
【
図5】本開示に従って調製される組成物を含む搬送装置の一実施形態を示す図である。
【
図6】本開示に従って調製される組成物を含む化粧料クロージャ装置の一実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[0017]本開示が例示的な実施形態の説明に過ぎず、本開示のより広い態様の制限を意図しないことは、当業者によって理解される。
[0018]本開示は、全体として、より持続可能な方法でポリオキシメチレンポリマーまたはパラホルムアルデヒドを製造する方法に関する。本開示によると、カーボンネガティブ成分からポリオキシメチレンポリマーまたはパラホルムアルデヒドが形成される。ポリオキシメチレンポリマーまたはパラホルムアルデヒドの製造に使用される原料は、天然ガスといった化石由来ガスではなく、バイオガスおよび/または再生ガスでありうる。バイオガスまたは再生ガスは、例えば、メタノールの製造に使用されうる。メタノールは、次いで、ホルムアルデヒドの製造に使用されうる。ホルムアルデヒドは、その後、トリオキサンまたは他のモノマーに変換されうる。メタノールは、コモノマー、連鎖移動剤などの製造にも使用されうる。これらの成分は、次いで、互いに重合され、前述したようにバイオガスおよび/または再生ガスから形成されるポリオキシメチレンポリマーを形成しうる。代わりに、パラホルムアルデヒドは、ホルムアルデヒドから直接形成されうる。そのため、形成されたポリオキシメチレンポリマーまたはパラホルムアルデヒドは、はるかに小さいカーボンフットプリントを有し、さらには、全体としてカーボンニュートラルまたはカーボンネガティブをも実現するよう製造されうる。再生可能エネルギーを使用することにより、または再生可能エネルギーと他のエネルギーとを組み合わせて使用することにより、カーボンフットプリントの削減をさらに進めることができる。
【0016】
[0019]本開示に従って製造されるポリオキシメチレンポリマーまたはパラホルムアルデヒドは、多くの製造業者および消費者の持続可能性に対する要望を満足させうる。ポリオキシメチレンポリマーまたはパラホルムアルデヒドは、様々なあらゆる分野において、様々なあらゆる種の製品および物品の製造に使用されうる。ポリオキシメチレンポリマーは、例えば、自動車分野、電気分野、医療分野などで使用される成形部品および成形物品の製造に使用されうる。製造業者は、再生可能またはバイオ含有量の目標を達成するためにポリオキシメチレンポリマーをその製品に組み込むことができる。全般的に、本開示に従って製造されるポリオキシメチレンポリマーまたはパラホルムアルデヒドは、品質または機械特性をいかなる理由によっても犠牲にすることなく、製造業者がカーボンフットプリントを削減するのに役立つことができる。
【0017】
[0020]最終的に、本開示に従って製造されるポリオキシメチレンポリマーまたはパラホルムアルデヒドは、任意の適切な規格に従って認証されうる。そのような認証の一つは、国際持続可能性カーボン認証(ISCC:International Sustainability and Carbon Certification)である。ISCCは、世界的に適用可能な持続可能性認証システムであり、農業および森林バイオマス、循環型バイオ材料、および再生可能エネルギーを含む、あらゆる持続可能性原料を対象とする。ISCCは、ポリマーの再生可能含有量を検証可能なマスバランス方式に従う。マスバランスにおいて、再生可能原料は、全ての収量および損失を考慮し、個々の組成に従って選択された製品に帰属される。製造のために(エネルギーを目的とせずに)原料として使用される原料物質のみが、マスバランスで考慮される。マスバランス方式の適用に使用される重要な基準として、原料の適格性、加工流通過程の管理、および製品主張が挙げられる。
【0018】
[0021]実際の製品に含まれるバイオ含有量を計算する場合がある他の方法と対照的に、マスバランス方式は、過去数年間にわたり、化学産業において持続可能な製品を認証するための好ましい方法として広まっている。マスバランス方式によって、価値連鎖における再生原料および/またはバイオ原料の量および持続可能特性を追跡し、検証可能な方法で最終製品に帰属させることが可能となる。
【0019】
[0022]単なる例示を目的として、例えば、マスバランス方式において、天然ガスといった化石燃料からのメタノールの形成は、温室効果ガスフットプリントを生じさせ、カーボンポジティブである。環境中に放出される炭素の量は、製造、燃焼、および輸送を考慮して計算されうる。メタノールを燃焼させない場合、燃焼に関する排出は考慮されず、カーボンフットプリントは、製造で約16gCO2eq/MJ、輸送で約1.4gCO2eq/MJとなる。一方、メタノールがバイオガスまたは再生ガス(例えば工業プロセスからの再生ガスなど)から製造される場合、メタノールを化学用途に使用することで、最終製品をカーボンナチュラルまたはカーボンネガティブにもすることができる。バイオガスまたは再生ガスをメタノール製造へ使用することは、例えば、カーボンシンクであると考えられうる。カーボンシンクは、約40gCO2eq/MJと算出されうる。カーボンシンクの算出は、次いで、前述のように算出された製造カーボンフットプリントおよび輸送カーボンフットプリントから差し引かれる。その結果、この算出例に従うと、バイオガスまたは再生ガス由来のメタノールの使用は、約-30gCO2eq/MJから約-45gCO2eq/MJの負のカーボンフットプリントをもたらし、カーボンシンクは、-0.860KGCO2/kgにも達しうる可能性がある。
【0020】
[0023]本開示に従ってポリオキシメチレンポリマーを製造するため、最初にバイオガスまたは再生ガスからメタノールが形成される。メタノールは、例えば、ポリオキシメチレンポリマー製造における一次原材料である。従来、メタノールは、当分野で「グレー」メタノールとして知られるメタノールを形成する、化石天然ガスから製造されていた。一般的に、1kgのポリオキシメチレンポリマーを製造するのに約1.1kgから約1.3kgのメタノールが必要とされる。メタノールは、最初にホルムアルデヒドの形成のために使用され、ホルムアルデヒドは、次いでトリオキサンといった環状アセタールの形成のために使用され、環状アセタールは、次いで重合されてポリオキシメチレンポリマーを形成する。ポリオキシメチレンコポリマーを製造する際、ポリオキシメチレンポリマーは、通常、約0.1mol%から約5mol%の量のコモノマーを含有しうる。一態様において、コモノマーは1,3-ジオキソランである。コモノマーは、メタノールからホルムアルデヒドおよびエチレングリコールを介しても製造されうる。
【0021】
[0024]本開示に従うと、バイオガスまたは再生ガスからメタノールが製造される。一態様において、バイオガスは、固形廃棄物埋立地および嫌気性消化設備から生じるメタンである。バイオガスの使用は、グリセリンといった他のバイオ源よりもはるかに高効率であることが見出された。
【0022】
[0025]メタンバイオガスからメタノールへの変換は、様々な過程および工程を使用して実施されうる。一実施形態において、例えば、メタンは、金属含有ゼオライト触媒の存在下でのメタンの部分酸化を介してメタノールへ直接変換されうる。この実施形態において、1モルのメタンは、0.5モルの酸素分子と反応してメタノールを生じさせる。
【0023】
[0026]代替の実施形態において、バイオガスメタンは、メタンの水蒸気改質によって製造される合成ガスに変換されうる。合成ガスは、例えば、一酸化炭素または二酸化炭素を含有しうる。次いで、下記の反応スキーム:
CO+2H2→CH3OH
CO2+3H2→CH3OH+H2O
によって一酸化炭素または二酸化炭素からメタノールが製造されうる。
【0024】
[0027]上記の反応は、銅系触媒を使用して行われうる。
[0028]メタンバイオガスの使用に加え、メタノールは、本開示に従う再生ガスを使用しても製造されうる。再生ガスは、例えば、工業プロセスから得られうる。再生ガスは、例えば、通常大気中に放出され、炭素を含有する気体を表す。これらの気体を集め、メタノールの製造に使用することで、結果として得られるポリマーのカーボンフットプリントは、大きく削減される。
【0025】
[0029]再生ガスは、例えば、二酸化炭素、一酸化炭素、または二酸化炭素と一酸化炭素の組合せを含みうる。そして、上記の反応スキームは、再生ガスからメタノールへの変換に使用されうる。
【0026】
[0030]前述の方法を通し、完全に持続可能な資源から形成されるメタノール生成物が製造される。ポリオキシメチレンポリマーを製造するため、メタノールは、ホルムアルデヒドへ変換され、次いでトリオキサンといった環状アセタールモノマーへ変換されうる。メタノールは、コモノマーおよび連鎖移動剤の製造にも使用されうる。
【0027】
[0031]メタノールからのホルムアルデヒドの調製は、種々の過程および技術を使用しても行われうる。一実施形態において、例えば、ホルムアルデヒドの形成は、酸化鉄および酸化モリブデンを含む触媒の下、300℃から450℃で、下記の反応スキーム:
CH3OH+1/2O2→CH2O+H2O
による酸化を通して行われる。別の実施形態において、600℃から720℃で、下記の反応スキーム:
CH3OH→CH2O+H2
H2+1/2O2→H2O
に従う酸化的脱水素化がメタノールの製造に使用される。
【0028】
[0032]さらに別の実施形態において、ホルムアルデヒドは、下記の式:
【0029】
【0030】
に従う非酸化プロセスにおける脱水素化によってメタノールから製造されうる。
[0033]適切な触媒は、例えば、文献(例えば、Chem.Eng.Technol.1994、17、34参照)で知られている。
【0031】
[0034]適切な金属は、例えばLi、Na、K、Cs、Mg、Al、In、Ga、Ag、Cu、Zn、Fe、Ni、Co、Mo、Ti、Pt、またはそれらの化合物である。例えば、S、Se、VおよびFeといった遷移金属のリン酸塩、ならびにモリブドリン酸といったヘテロポリ酸も適切である。
【0032】
[0035]具体的な触媒の例は、
ナトリウムまたはナトリウム化合物(DE-A-37 19 055およびDE-A-38 19 509)
酸化アルミニウム、アルカリ金属アルミン酸塩、および/またはアルカリ土類金属アルミン酸塩(EP-A04 05 348)
酸化銀(JP-A60/089 441、Derwent Report85-15 68 91/26)
銅、亜鉛、および硫黄を含む触媒(DE-A-25 25 174)
銅、亜鉛、およびセレンを含む触媒(米国特許第4,054,609号)
亜鉛および/またはインジウムを含む触媒(EP-A 0 130 068)
銀(US特許第2,953,602)
銀、銅、およびケイ素(米国特許第2,939,883号)
亜鉛、カドミウム、セレン、テルル、またはインジウムを含有する化合物
である。
【0033】
[0036]a)ナトリウムアルコキシド、
b)カルボン酸ナトリウム、
c)C-H酸化合物のナトリウム塩、ならびに
d)酸化ナトリウム、水酸化ナトリウム、窒化ナトリウム、ナトリウムアセチリド、炭化ナトリウム、水素化ナトリウム、およびカルボニルナトリウム
からなる群から選択されるナトリウム化合物が特に好ましい。
【0034】
[0037]メタノールからホルムアルデヒドが製造されると、ホルムアルデヒドは、次いで、ポリオキシメチレンポリマーの重合時に使用されるモノマー、コモノマー、および任意の他の成分の製造に使用されうる。一実施形態において、ホルムアルデヒドは、ポリオキシメチレンポリマーを製造するための一次モノマーとして環状アセタールの製造に使用される。環状アセタールを製造するため、ホルムアルデヒド源は、触媒の存在下で反応するか、または変換する。触媒は、ブレンステッド酸またはルイス酸といったカチオン触媒でありうる。
【0035】
[0038]触媒は、環状アセタール、特にトリオキサンおよび/またはテトロキサンへのホルムアルデヒド源の変換(反応)のための触媒である。
[0039]環状アセタールは、ホルムアルデヒド由来の環状アセタールに関する。典型的な代表例は、以下の式:
【0036】
【0037】
を示し、ここでaは1から3の範囲の整数である。
[0040]好ましくは、本方法によって製造される環状アセタールは、トリオキサン(a=1)および/またはテトロキサン(a=2)である。トリオキサンおよびテトロキサンは、通常、本方法によって形成される環状アセタールの大部分(少なくとも80重量%、好ましくは少なくとも90重量%)を形成する。
【0038】
[0041]テトロキサンに対するトリオキサンの重量比は、使用される触媒によって変化する。通常、テトロキサンに対するトリオキサンの重量比は、約3:1から約40:1、好ましくは約4:1から約20:1の範囲で変動する。
【0039】
[0042]一実施形態において、前述の反応は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第9,604,956号に記載されるような非プロトン性化合物の存在下で起こりうる。非プロトン性化合物は、例えば、環状または脂環式有機スルホキシド、脂環式または環状スルホンなどでありうる。一実施形態において、非プロトン性化合物はスルホランである。非プロトン性化合物の存在は、変換率を著しく向上させうる。
【0040】
[0043]一次モノマーの製造に加え、バイオガスまたは再生ガス由来の本開示のメタノールは、1つまたは複数のコモノマーの製造にも使用されうる。1つまたは複数のコモノマーは、環状エーテルまたはアセタールを含んでよい。一実施形態において、コモノマーは、1,3-ジオキソランといったジオキソランである。特に有用には、コモノマーは、バイオガスまたは再生ガスから製造される本開示のメタノールからも製造されうる。一実施形態において、コモノマーは、当該メタノールから得られるかまたは当該メタノール由来のホルムアルデヒドを介して製造されうる。ホルムアルデヒドに加え、エチレングリコールといったグリコールもコモノマーの製造に使用されうる。エチレングリコールは、1つまたは複数のカーボンネガティブ成分から製造されうる。
【0041】
[0044]ポリオキシメチレンポリマーの重合中、分子量を制御するために、および/または末端基の組成を制御するために、一般的に連鎖移動剤も使用される。特に有用には、本方法で使用される連鎖移動剤は、メタノールを介してバイオガスまたは再生ガスからも形成されうる。例えば、連鎖移動剤の1つであるメチラールは、メタノールの酸化によって、またはホルムアルデヒドとメタノールの反応によって形成されうる。
【0042】
[0045]バイオガスおよび/または再生ガスからポリマーのビルディングブロックが製造された後に、他の成分を使用してポリオキシメチレンポリマーを製造することができる。
[0046]ポリオキシメチレンポリマーの調製は、例えば、トリオキサン、またはトリオキサンとジオキソランといった環状アセタールとの混合物などのポリオキシメチレン形成モノマーの重合によって、グリコールまたはメチラールといった分子量調節剤の存在下で行われうる。ポリマー組成物に使用されるポリオキシメチレンポリマーは、ホモポリマーまたはコポリマーを含んでよい。ホモポリマーが製造されうるが、本開示は、基本的に、-CH2O-繰り返し単位を少なくとも50モル%、例えば少なくとも75モル%、例えば少なくとも90モル%、さらには例えば少なくとも97モル%含むポリオキシメチレンコポリマーの製造に関する。
【0043】
[0047]一実施形態において、ポリオキシメチレンコポリマーが使用される。コポリマーは、繰り返し単位であって、飽和もしくはエチレン性不飽和の、少なくとも2個の炭素原子を有するアルキレン基またはシクロアルキレン基を含み、これらは硫黄原子もしくは酸素原子を鎖中に有し、かつアルキル シクロアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、ハロゲン、もしくはアルコキシからなる群から選択される1つもしくは複数の置換基を含んでよい、繰り返し単位を、約0.01モル%から約20モル%、特に約0.5モル%から約10モル%含有しうる。一実施形態において、開環反応を介してコポリマーに導入されうる環状エーテルまたはアセタールが使用される。
【0044】
[0048]好ましい環状エーテルまたはアセタールは、式:
【0045】
【0046】
で表されるものであり、ここでxは、0または1であり、R2は、C1-C4アルキル基であるか、またはC1-C4アルコキシ基であるか、かつ/またはハロゲン原子、好ましくは塩素原子である置換基を、適切な場合1つまたは複数有するC2-C4アルキレン基である。例示に過ぎないが、エチレンオキシド、プロピレン1,2-オキシド、ブチレン1,2-オキシド、ブチレン1,3-オキシド、1,3-ジオキサン、1,3-ジオキソラン、および1,3-ジオキセパンが環状エーテルとして挙げられ、ポリジオキソランまたはポリジオキセパンといった直鎖オリゴまたはポリホルマールがコモノマーとして挙げられる。99.5から95モル%のトリオキサン、および0.01から5モル%、例えば0.5から4モル%の前述のコモノマーの1つからなるコポリマーを使用することが特に有利である。一実施形態において、ポリオキシメチレンポリマーは、比較的少量のコモノマーを含有する。例えば、コモノマーは、約2モル%未満、例えば約1.5モル%未満、例えば約1モル%未満、例えば約0.8モル%未満、例えば約0.6モル%未満の量で存在しうる。
【0047】
[0049]重合は、沈殿重合または溶融重合で達成される。重合時間または分子量調節剤の量といった重合パラメータを適切に選択することで、結果として得られるポリマーの分子量、ひいてはMVR値が調節されうる。
【0048】
[0050]一実施形態において、ポリマー組成物中で使用されるポリオキシメチレンポリマーは、比較的多量の反応性基または官能基を末端位置に含有してよい。反応性基は、例えば、-OHまたは-NH2基を含んでよい。
【0049】
[0051]一実施形態において、ポリオキシメチレンポリマーは、末端水酸基、例えばヒドロキシエチル末端基および/またはヘミホルマール末端基を、ポリマー上の全末端部位の少なくとも約50%を超える量で有しうる。例えば、ポリオキシメチレンポリマーが有する末端基のうち、存在する末端基の総数に基づき、少なくとも70%、例えば少なくとも約80%、例えば少なくとも約85%が水酸基であってよい。存在する末端基の総数は、全ての末端および側末端基を含むことを理解すべきである。
【0050】
[0052]一実施形態において、ポリオキシメチレンポリマーの末端水酸基含有量は、少なくとも15mmol/kg、例えば少なくとも18mmol/kg、例えば少なくとも20mmol/kgである。一実施形態において、末端水酸基含有量は、18から50mmol/kgの範囲で変動する。代替実施形態において、ポリオキシメチレンポリマーは、20mmol/kg未満、例えば18mmol/kg未満、例えば15mmol/kg未満の量で末端水酸基を含有してよい。例えば、ポリオキシメチレンポリマーは、約5mmol/kgから約20mmol/kg、例えば約5mmol/kgから約15mmol/kgの量で末端水酸基を含有してよい。例えば、より少ない末端水酸基含有量のポリオキシメチレンポリマーが形成されてよい。
【0051】
[0053]末端水酸基に加えて、または末端水酸基の代わりに、ポリオキシメチレンポリマーは、他の末端基も有してよい。その例は、アルコキシ基、ホルメート基、アセテート基、またはアルデヒド基である。一実施形態によると、ポリオキシメチレンは、少なくとも50モル%、例えば少なくとも75モル%、例えば少なくとも90モル%、例えばさらには少なくとも95モル%の-CH2O-繰り返し単位を含むホモポリマーまたはコポリマーである。
【0052】
[0054]一実施形態において、ポリオキシメチレンポリマーは、カチオン重合過程を使用し、続いて溶液加水分解によってあらゆる不安定末端基を除去して製造されうる。カチオン重合において、グリコール、例えばエチレングリコールまたはメチラールなどが連鎖停止剤(chain terminating agent)として使用されうる。ヘテロポリ酸、トリフルオロメタンスルホン酸、またはホウ素化合物が触媒として使用されてよい。
【0053】
[0055]ポリオキシメチレンポリマーは、任意の適切な分子量を有しうる。ポリマーの分子量は、例えば、1モル当たり約4,000グラムから約20,000g/molでありうる。しかし、他の実施形態において、分子量は、20,000g/molを上回り、例えば約20,000g/molから約100,000g/molなどでありうる。
【0054】
[0056]通常、組成物中に存在するポリオキシメチレンポリマー、ISO1133に従って190℃、2.16kgで測定されるメルトフローインデックス(MFI)は、約0.1から約120cm3/10分の範囲で変動しうる。一実施形態において、ポリオキシメチレンポリマーのメルトフローインデックスは、約1cm3/10分を超え、例えば約2cm3/10分を超え、例えば約5cm3/10分を超え、例えば約10cm3/10分を超え、例えば約20cm3/10分を超え、例えば約30cm3/10分を超えてよい。場合により、ポリマーのメルトフローインデックスは、約55cm3/10分未満、例えば約45cm3/10分未満、例えば約35cm3/10分未満、例えば約25cm3/10分未満、例えば約15cm3/10分未満、例えば約10cm3/10分未満、例えば約5cm3/10分未満である。
【0055】
[0057]ポリオキシメチレンポリマーに加え、本開示は、パラホルムアルデヒドを製造する方法にも関する。本方法は、少なくとも1つのカーボンネガティブ成分からホルムアルデヒドを形成する工程を含む。例えば、カーボンネガティブ成分は、例えば工業プロセスから集められうるバイオガスまたは再生ガスを含みうる。バイオガスまたは再生ガスは、最初にメタノールに変換されうる。前述したように、メタノールは、次いで、ホルムアルデヒドの製造に使用されうる。ホルムアルデヒドは、次いで、触媒の存在下で重合されてパラホルムアルデヒドを形成する。パラホルムアルデヒドは、HO(CH2O)nHで表される構造を有し、ここでnは約8から約100である。パラホルムアルデヒドの純度は、重合度nに依存し、90から99%の間でありえ、残余は結合水または遊離水である。パラホルムアルデヒドは、次いで、フェノール、尿素、フルフラールアルコール、レゾルシノール樹脂、メラミン樹脂、およびホルムアルデヒド樹脂の合成に使用されうる。これらの生成物は、工業用コーティング、木材製品、繊維製品、鋳物用樹脂、油井添加剤、潤滑油添加剤、接着樹脂、および電気部品成形材料に使用されうる。
【0056】
[0058]本開示のポリオキシメチレンポリマーは、純粋な形態で使用されうるか、または様々な添加剤および成分と組み合わされうる。例えば、一実施形態において、ポリオキシメチレンポリマーは、トライボロジー調整剤と組み合わされうる。
【0057】
[0059]例えば、ポリオキシメチレンポリマーの調節に超高分子量シリコーン(UHMW-Si)が使用されてよい。一般的に、UHMW-Siの平均分子量は、100,000g/molを超え、例えば約200,000g/molを超え、例えば約300,000g/molを超え、例えば約500,000g/molを超え、かつ約3,000,000g/mol未満、例えば約2,000,000g/mol未満、例えば約1,000,000g/mol未満、例えば約500,000g/mol未満、例えば約300,000g/mol未満でありうる。一般的に、DIN51562に従って測定されるUHMW-Siの40℃における動粘性率は、100,000mm2s-1を超え、例えば約200,000mm2s-1を超え、例えば約1,000,000mm2s-1を超え、例えば約5,000,000mm2s-1を超え、例えば約10,000,000mm2s-1を超え、例えば約15,000,000mm2s-1を超え、かつ約50,000,000mm2s-1未満、例えば約25,000,000mm2s-1未満、例えば約10,000,000mm2s-1未満、例えば約1,000,000mm2s-1未満、例えば約500,000mm2s-1未満、例えば約200,000mm2s-1未満でありうる。
【0058】
[0060]さらに別の実施形態において、トライボロジー調整剤は、ポリテトラフルオロエチレンを含んでよい。ポリテトラフルオロエチレンは、粉末の形態であってよく、約1重量%から約10重量%の量でポリマー組成物中に存在しうる。
【0059】
[0061]本開示に従うと、他の様々なトライボロジー調整剤がポリオキシメチレンポリマー組成物に組み込まれてよい。これらのトライボロジー調整剤の例として、炭酸カルシウム粒子、超高分子量ポリエチレン(UHMW-PE)粒子、ステアリン酸ステアリル粒子、シリコーンオイル、ポリエチレンワックス、アミドワックス、脂肪酸および1価アルコールからなる脂肪族エステルワックスを含むワックス粒子、オレフィンポリマーをグラフトの幹とするグラフトコポリマー、またはそれらの組合せが挙げられる。これらのトライボロジー調整剤は、以下を含む。
【0060】
[0062](1)0.1~50重量%、例えば1~25重量%の、炭酸カルシウム(チョーク)粉末といった炭酸カルシウム粒子。
[0063](2)0.1~50重量%、例えば1~25重量%、例えば2.5~20重量%、例えば5から15重量%の超高分子量ポリエチレン(UHMW-PE)粉末。UHMW-PEは、粉末、特にマイクロ粉末として使用されうる。一般的なUHMW-PEの(光散乱によって測定される、体積基準の)平均粒子径D50は、1から5000μm、好ましくは10から500μm、特に好ましくは10から150μm、例えば30から130μm、例えば80から150μm、例えば30から90μmの範囲内である。
【0061】
[0064]粘度測定法で決定されるUHMW-PEの平均分子量は、1.0・106g/molを超え、例えば2.0・106g/molを超え、例えば4.0・106g/molを超え、例えば1.0・106g/molから15.0・106g/molの範囲、例えば3.0・106g/molから12.0・106g/molの範囲でありうる。好ましくは、UHMW-PEの粘度数は、1000ml/gより大きく、例えば1500ml/gより大きく、例えば1800ml/gから5000ml/gの範囲、例えば2000ml/gから4300ml/gの範囲で変動する(ISO1628-3に従って決定、デカヒドロナフタリン中の濃度:0.0002g/ml)。
【0062】
[0065](3)0.1~10重量%、例えば0.1~5重量%、例えば0.5~3重量%のステアリン酸ステアリル。
[0066](4)0.1~10重量%、例えば0.5~5重量%、例えば0.8~2重量%のシリコーンオイル。代わりに、一実施形態において、例えばシリコーンオイルが約0.1重量%未満、例えば約0.05重量%未満、例えば約0.01重量%未満、例えば約0重量%の量で存在するよう、組成物は、実質的にシリコーンオイルを含まなくてもよい。
【0063】
[0067](5)0.1~5重量%、例えば0.5~3重量%の酸化ポリエチレンワックスといったポリエチレンワックス。
[0068](6)0.1~5重量%、例えば0.2~2重量%のアミドワックス。
【0064】
[0069](7)0.1~5重量%、例えば0.5~3重量%の、脂肪酸および1価アルコールからなる脂肪族エステルワックス。
[0070]本開示のポリマー組成物は、例えば、抗酸化剤、ホルムアルデヒド捕捉剤、酸捕捉剤、UV安定化剤または熱安定化剤、強化繊維といった、他の既知の添加剤も含有してよい。加えて、組成物は、加工助剤、例えば接着促進剤、潤滑剤、成核剤、脱型剤、フィラー、または帯電防止剤、および組成物およびその物品または部品に所望の特性を付与する添加剤を含有しうる。
【0065】
[0071]一実施形態において、紫外線安定化剤が存在してよい。紫外線安定化剤は、ベンゾフェノン、ベンゾトリアゾール、または安息香酸エステルを含んでよい。UV光吸収剤は、存在する場合、少なくとも約0.01重量%、例えば少なくとも約0.05重量%、例えば少なくとも約0.075重量%、かつ約1重量%未満、例えば約0.75重量%未満、例えば約0.5重量%未満の量でポリマー組成物中に存在してよく、ここで重量は、各ポリマー組成物の総重量に基づく。
【0066】
[0072]一実施形態において、窒素含有化合物といったホルムアルデヒド捕捉剤が存在してよい。これらの大部分は、アミノ置換炭素原子またはカルボニル基に隣接する窒素原子を少なくとも1個ヘテロ原子として有する複素環化合物、例えばピリジン、ピリミジン、ピラジン、ピロリドン、アミノピリジン、およびそれらから誘導される化合物である。特に有用な他の化合物は、トリアミノ-1,3,5-トリアジン(メラミン)ならびにメラミン-ホルムアルデヒド縮合物およびメチロールメラミンといったその誘導体である。原則として、オリゴマーポリアミドも、ホルムアルデヒド捕捉剤としての使用に適切である。ホルムアルデヒド捕捉剤は、個別にまたは組み合わせて使用されてよい。
【0067】
[0073]さらに、ホルムアルデヒド捕捉剤は、脂肪族グアナミン系化合物、脂環式グアナミン系化合物、芳香族グアナミン系化合物、ヘテロ原子含有グアナミン系化合物などを含んでよいグアナミン化合物であってよい。ホルムアルデヒド捕捉剤は、少なくとも約0.01重量%、例えば少なくとも約0.05重量%、例えば少なくとも約0.075重量%、かつ約1重量%未満、例えば約0.75重量%未満、例えば約0.5重量%未満の量でポリマー組成物中に存在してよく、ここで重量は、各ポリマー組成物の総重量に基づく。
【0068】
[0074]一実施形態において、酸捕捉剤が存在してよい。酸捕捉剤は、例えば、アルカリ土類金属塩を含んでよい。例えば、酸捕捉剤は、クエン酸カルシウムといったカルシウム塩を含んでよい。酸捕捉剤は、少なくとも約0.001重量%、例えば少なくとも約0.005重量%、例えば少なくとも約0.0075重量%、かつ約1重量%未満、例えば約0.75重量%未満、例えば約0.5重量%未満の量で存在してよく、ここで重量は、各ポリマー組成物の総重量に基づく。
【0069】
[0075]一実施形態において、成核剤が存在してよい。成核剤は、結晶性を高めるものであってよく、オキシメチレンターポリマーを含んでよい。特定の一実施形態において、例えば、成核剤は、ブタンジオールジグリシジルエーテル、エチレンオキシド、およびトリオキサンのターポリマーを含んでよい。成核剤は、少なくとも約0.01重量%、例えば少なくとも約0.05重量%、例えば少なくとも約0.1重量%、かつ約2重量%未満、例えば約1.5重量%未満、例えば約1重量%未満の量で組成物中に存在してよく、ここで重量は、各ポリマー組成物の総重量に基づく。
【0070】
[0076]一実施形態において、立体障害フェノールといった抗酸化剤が存在してよい。市販されている例は、ペンタエリスリチルテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート]、トリエチレングリコールビス[3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオナート]、3,3’-ビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン酸ヒドラジド]、およびヘキサメチレングリコールビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート]である。抗酸化剤は、少なくとも約0.01重量%、例えば少なくとも約0.05重量%、例えば少なくとも約0.075重量%、かつ約1重量%未満、例えば約0.75重量%未満、例えば約0.5重量%未満の量でポリマー組成物中に存在してよく、ここで重量は、各ポリマー組成物の総重量に基づく。
【0071】
[0077]一実施形態において、紫外線安定化剤に加え、立体障害アミンといった光安定化剤が存在してよい。使用されてよい立体障害アミン光安定化剤として、N-メチル化オリゴマー立体障害アミン化合物が挙げられる。例えば、立体障害アミン光安定化剤は、高分子量立体障害アミン安定化剤を含んでよい。光安定化剤は、存在する場合、少なくとも約0.01重量%、例えば少なくとも約0.05重量%、例えば少なくとも約0.075重量%、かつ約1重量%未満、例えば約0.75重量%未満、例えば約0.5重量%未満の量でポリマー組成物中に存在してよく、ここで重量は、各ポリマー組成物の総重量に基づく。
【0072】
[0078]一実施形態において、前述のトライボロジー調整剤を含まない潤滑剤が存在してよい。潤滑剤は、ポリマーワックス組成物を含んでよい。さらに、一実施形態において、ポリエチレングリコールポリマー(加工助剤)が組成物中に存在してよい。ポリエチレングリコールの分子量は、例えば、約1000から約5000、例えば約3000から約4000であってよい。一実施形態において、例えば、PEG-75が存在してよい。別の実施形態において、エチレンビス(ステアラミド)といった脂肪酸アミドが存在してよい。潤滑剤は、一般的に、少なくとも約0.01重量%、例えば少なくとも約0.05重量%、例えば少なくとも約0.075重量%、かつ約1重量%未満、例えば約0.75重量%未満、例えば約0.5重量%未満の量でポリマー組成物中に存在してよく、ここで重量は、各ポリマー組成物の総重量に基づく。
【0073】
[0079]一実施形態において、着色剤が存在してよい。使用されてよい着色剤として、二酸化チタン、ウルトラマリンブルー、コバルトブルーといった任意の望ましい無機顔料、ならびにフタロシアニン、アントラキノンなどといった他の有機顔料および染料が挙げられる。他の着色剤として、カーボンブラックまたは様々な他のポリマー可溶性染料が挙げられる。着色剤は、少なくとも約0.01重量%、例えば少なくとも約0.05重量%、例えば少なくとも約0.1重量%、かつ約5重量%未満、例えば約2.5重量%未満、例えば約1重量%未満の量で組成物中に存在してよく、ここで重量は、各ポリマー組成物の総重量に基づく。
【0074】
[0080]一実施形態において、強化繊維が存在してよい。本発明に従って使用されてよい強化繊維として、鉱物繊維、ガラス繊維、アラミド繊維といったポリマー繊維、スチール繊維といった金属繊維、炭素繊維、または天然繊維が挙げられる。これらの繊維は、非改質であっても、改質されていてもよく、例えばポリマーに対する接着性を向上させるためにサイジング処理または化学処理されていてもよい。繊維径は、使用される具体的繊維に、かつ繊維がチョップド繊維であるか連続繊維であるかに依存して変動しうる。繊維径は、例えば、約5μmから約100μm、例えば約5μmから約50μm、例えば約5μmから約15μmでありうる。存在する場合、各組成物は、少なくとも1重量%、例えば少なくとも5重量%、例えば少なくとも7重量%、例えば少なくとも10重量%、例えば少なくとも15重量%、かつ一般的には約50重量%未満、例えば約45重量%未満、例えば約40重量%未満、例えば約30重量%未満、例えば約20重量%未満の量で強化繊維を含有してよく、ここで重量は、各ポリオキシメチレンポリマー組成物の総重量に基づく。
【0075】
[0081]ポリマー組成物は、熱可塑性エラストマーといった衝撃改質剤も含んでよい。熱可塑性エラストマーは、熱可塑性およびエラストマー性の両方を有する材料である。熱可塑性エラストマーは、スチレンブロックコポリマー、熱可塑性オレフィンエラストマーと称されるポリオレフィンブレンド、エラストマー合金、熱可塑性ポリウレタン、熱可塑性コポリエステル、および熱可塑性ポリアミドを含む。
【0076】
[0082]本開示における使用によく適する熱可塑性エラストマーは、ポリエステルエラストマー(TPE-E)、熱可塑性ポリアミドエラストマー(TPE-A)、および特に熱可塑性ポリウレタンエラストマー(TPE-U)である。
【0077】
[0083]代わりに、衝撃改質剤は、コアシェル型衝撃改質剤でありうる。例えば、衝撃改質剤は、メタクリラート-ブタジエン-スチレンコポリマー粒子を含みうる。
[0084]ポリマー組成物に含有される熱可塑性エラストマーの量は、様々な要因に依存して変動しうる。例えば、熱可塑性エラストマーは、約0.5重量%から約50重量%の範囲の量で存在しうる。一実施形態において、例えば、熱可塑性エラストマーまたは衝撃改質剤は、約25重量%未満の量で、例えば約15重量%未満の量で、例えば約10重量%未満の量で組成物中に存在してよい。熱可塑性エラストマーまたは衝撃改質剤は、一般的に、約2重量%を超える量で、例えば約5重量%を超える量で、例えば約8重量%を超える量で、例えば約10重量%を超える量で存在する。
【0078】
[0085]本開示のポリマー組成物は、様々な成形部品の製造に使用されうる。部品は、射出成形法またはブロー成形法といった任意の適切な成形方法で成形されうる。本開示に従って製造されてよいポリマー物品として、限定されないが、ノブ、ドアハンドル、自動車用装飾トリムピースなどが挙げられる。本開示に従って製造されてよい他のポリマー物品の例として、ラッチ、レバー、ギア、ピボットハウジング、スピーカーグリルなどが挙げられる。
【0079】
[0086]具体的な一実施形態において、ポリマー組成物は、
図1に示すようなコーヒーメーカー10の製造に使用される。コーヒーメーカーは、液体を非常に急速に加熱し、加温飲料を製造するよう設計される。そのため、コーヒーメーカーの動作環境、特に内部動作環境は、室温から高温まで比較的速く変化しうる。
図1に示すコーヒーメーカー10のようなコーヒーメーカーは、多くの部品も有する。本開示に従うと、コーヒーメーカーの様々な内部および外装部品、特に高温水に曝される部品が、本開示のポリマー組成物から製造されうる。
【0080】
[0087]コーヒー製造装置は、通常、水加熱ユニット、コーヒー供給ユニット、およびコーヒー抽出アセンブリを含む。加温飲料を製造するため、コーヒーがコーヒー供給ユニットから、加熱された水が水加熱ユニットから、抽出アセンブリに供給される。典型的な抽出アセンブリは、抽出ヘッド、上部クロージャ要素、下部クロージャ要素、および少なくとも1つの直線ガイド要素を含む。
【0081】
[0088]
図2を参照すると、コーヒーメーカー10は、第一の部材22および第二の部材24を含みうる。一実施形態において、第一の部材22および第二の部材24は、抽出アセンブリの一部、またはコーヒー供給ユニットの一部でありうる。例えば、部材22および部材24は、コーヒー飲料を製造するために、コーヒーを受け、かつカプセルといった指定領域にコーヒーを投入するための部材でありうる。加熱された水に非常に近接するため。部材22および部材24は、30℃を上回る、例えば40℃を超える、例えば50℃を超える、例えば60℃をも超える動作環境に置かれることがある。
【0082】
[0089]
図3を参照すると、ポリオキシメチレンポリマーから製造されてよい吸入器30が示される。吸入器30は、マウスピース34に取り付けられる筐体32を含む。吸入される組成物を含有するキャニスタを受けるためのプランジャ36が筐体32と共同して動作する。組成物は、噴霧液または粉末を含む。
【0083】
[0090]使用中、吸入器30は、定量の薬剤、例えばぜんそく薬を患者に投与する。ぜんそく薬は、噴射剤中に懸濁または溶解されてよく、または粉末中に含有されてよい。患者が吸入器を作動させて薬剤を吸い込む際、バルブが開いて薬剤をマウスピースから排出させる。本開示に従うと、筐体32、マウスピース34、およびプランジャ36は、全て前述のポリマー組成物から製造されうる。
【0084】
[0091]
図4を参照すると、本開示に従って製造されてよい別の医療製品が示される。
図4において、医療用注入器40が示される。医療用注入器40は、プランジャ44共同して動作する筐体42を含む。筐体42は、プランジャ44に対して摺動してよい。医療用注入器40は、ばねで留められてよい。医療用注入器は、患者の、通常大腿部または臀部に薬を注入するためのものである。医療用注入器は、無針でありえ、または針を含有してよい。針を含有する場合、針先は、通常、注入前に筐体内に遮蔽される。一方、無針注入器は、針を使用せずに皮膚を介して薬剤を押し出す加圧ガスシリンダを含有しうる。本開示に従うと、筐体42および/またはプランジャ44は、前述のポリマー組成物から製造されうる。
【0085】
[0092]一実施形態において、本開示に従って製造されるポリマー物品は、運搬システム部品の製造に使用されうる。例えば、運搬システムは、通常、トラック上を移動する運搬チェーンを含む。このような運搬システムは、あらゆる種の製品および品物の移動に使用されうる。例えば、一実施形態において、そのような運搬装置は、食品の輸送に使用される。
【0086】
[0093]
図5を参照すると、例えば、運搬チェーン50の一部の一実施形態が示される。示されるように、運搬チェーン50は、複数の運搬部品52またはリンクから作られる。各運搬部品52は、食品を受け、かつ輸送するための上面を含む。本開示に従うと、運搬部品52は、本開示のポリマー組成物から製造されうる。特に有利には、運搬部品52は、部品に所望の外観をもたらす1つまたは複数の着色剤を含みうる。有利には、本開示に従って調製される組成物を含む部品が、厳しい清掃条件に曝された際に排出および浸出されるホルムアルデヒドは、少ない可能性がある。
【0087】
[0094]本開示のさらに別の実施形態において、ポリマー組成物は、金属で被覆されて化粧料クロージャを製造しうる。例えば、
図6は、本開示に従って製造されてよい化粧料クロージャ60の一実施形態を示す。
【0088】
[0095]本発明に対するこれらおよび他の改良および変形は、添付の特許請求の範囲により具体的に記載される本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、当業者によって実施されうる。また、様々な実施形態の態様は、全体または部分的に交換されてよいことが理解されるべきである。さらに、当業者であれば、前述の説明は例示に過ぎず、このような添付の特許請求の範囲にさらに記載される発明を限定することを意図しないことを理解するであろう。
【国際調査報告】