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特表2023-537631眼障害を処置するためのプラスミドベクターおよびナノ粒子
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-04
(54)【発明の名称】眼障害を処置するためのプラスミドベクターおよびナノ粒子
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/85 20060101AFI20230828BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20230828BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20230828BHJP
   A61K 47/69 20170101ALI20230828BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20230828BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20230828BHJP
   A61K 47/20 20060101ALI20230828BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20230828BHJP
   A61K 31/713 20060101ALI20230828BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20230828BHJP
   C12N 15/88 20060101ALI20230828BHJP
【FI】
C12N15/85 Z
A61K48/00 ZNA
A61P27/02
A61K47/69
A61K9/14
A61K47/18
A61K47/20
A61K47/34
A61K31/713
A61K47/26
C12N15/88 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023511610
(86)(22)【出願日】2021-08-16
(85)【翻訳文提出日】2023-04-04
(86)【国際出願番号】 US2021046137
(87)【国際公開番号】W WO2022036318
(87)【国際公開日】2022-02-17
(31)【優先権主張番号】63/065,860
(32)【優先日】2020-08-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
(71)【出願人】
【識別番号】597138069
【氏名又は名称】ケース ウエスタン リザーブ ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ル,ゼン-ロン
(72)【発明者】
【氏名】サン,ウェンユ
(72)【発明者】
【氏名】サン,ダ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA16
4C076AA29
4C076AA95
4C076BB11
4C076BB24
4C076CC10
4C076DD50
4C076DD52
4C076EE23
4C076FF16
4C076FF36
4C076FF63
4C076FF68
4C084AA13
4C084AA17
4C084MA05
4C084MA21
4C084MA41
4C084MA66
4C084NA13
4C084NA14
4C084ZA331
4C084ZA332
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086EA16
4C086MA02
4C086MA05
4C086MA21
4C086MA41
4C086MA66
4C086NA13
4C086NA14
4C086ZA33
(57)【要約】
網膜または眼を処置するように構成された機能性治療用タンパク質をコードする1つまたは複数の異種核酸または遺伝子を含むプラスミドベクターは、桿体および錐体の光受容体の両方で異種遺伝子を発現するためにヒトGRK1プロモータおよびヒトS/MARエンハンサを含む。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
網膜または眼障害を処置するように構成された機能性治療用タンパク質をコードする1つまたは複数の異種核酸を含むプラスミドベクターであって、桿体および錐体の光受容体の両方で異種遺伝子を発現するためにヒトGRK1プロモータおよびヒトS/MARエンハンサを含む、プラスミドベクター。
【請求項2】
前記GRK1プロモータが、前記異種遺伝子の上流にあり、前記S/MARエンハンサが、前記異種遺伝子の下流にある、請求項1に記載のプラスミドベクター。
【請求項3】
ヒトベータ-グロビンポリアデノシン(ポリA)シグナル配列をさらに含む、請求項1に記載のプラスミドベクター。
【請求項4】
前記ベータ-グロビンポリAシグナル配列が、前記異種遺伝子の下流で、前記S/MARエンハンサの上流にある、請求項1に記載のプラスミドベクター。
【請求項5】
前記網膜障害が、眼タンパク質をコードする遺伝子の突然変異により引き起こされた遺伝性網膜障害である、請求項1に記載のプラスミドベクター。
【請求項6】
前記遺伝性網膜障害が、シュタルガルト病、レーバー先天性黒内障(LCA)、弾性線維性仮性黄色腫、桿体錐体ジストロフィー、滲出性硝子体網膜症、ジュベール症候群、CSNB-1C、網膜色素変性症、スティックラー症候群、小頭症、脈絡網膜炎(choriorretinopathy)、CSNB2、アッシャー症候群、ワーグナー症候群、または加齢黄斑変性から選択される、請求項1に記載のプラスミドベクター。
【請求項7】
前記異種遺伝子が、網膜色素上皮特異的65kDaタンパク質(RPE65)、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)阻害剤または可溶性VEGF受容体1(sFif1)、(Rabエスコートタンパク質-1)REP1、L-オプシン、ロドプシン(Rho)、ホスホジエステラーゼ6(3(PDE6I3)、ATP-結合カセットサブファミリーAメンバー4(ABCA4)、レシチンレチノールアシルトランスフェラーゼ(LRAT)、遅延型網膜変性/ペリフェリン(RDS/ペリフェリン)、チロシンタンパク質キナーゼMer(MERTK)、イノシン-5’-一リン酸デヒドロゲナーゼI型(IMPDHI)、グアニル酸シクラーゼ2D(GUCY2D)、アリール炭化水素相互作用タンパク質様1(AIPL1)、網膜色素変性症GTPアーゼレギュレータ相互作用タンパク質1(PRGRIPI)、イノシン-5’-一リン酸デヒドロゲナーゼI型(IMPDHI)、グアニンヌクレオチド結合タンパク質、アルファトランスデューシングアクティビティポリペプチド2(GNAT2)、環状ヌクレオチド作動性チャネルベータ3(CNGB3)、レチノスキシン1(Rs1)、眼白皮症1型(OA1)、眼皮膚白皮症1型(OCA1)、チロシナーゼ、P21 WAF-1/Cip1、血小板由来成長因子(PDGF)、エンドスタチン、アンギオスタチン、アリールスルファターゼB、13-グルクロニダーゼ、アッシャリン2A(USH2A)、CEP290、ABCC、RIMS1、LRP5、CC2D2A、TRPM1、IFT-172、COL11A1、TUBGCP6、KIAA1549、CACNA1F、MYO7A、VCAN、またはHMCN1から選択される、請求項1に記載のプラスミドベクター。
【請求項8】
前記網膜障害が、シュタルガルト病である、請求項1に記載のプラスミドベクター。
【請求項9】
前記異種遺伝子が、ABCA4である、請求項8に記載のプラスミドベクター。
【請求項10】
配列番号1の前記核酸配列を有する、請求項1に記載のプラスミドベクター。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載の1つまたは複数のプラスミドベクターと複合体化した複数のpH応答性多官能性カチオン性脂質を含む、自己組織化ナノ粒子。
【請求項12】
前記pH応答性多官能性カチオン性脂質が、pH応答性多官能性アミノ脂質を含む、請求項11に記載の自己組織化ナノ粒子。
【請求項13】
約4から約12、好ましくは約6から約10のアミン対リン酸(N/P)比を有する、請求項12に記載の自己組織化ナノ粒子。
【請求項14】
前記pH応答性多官能性カチオン性脂質が、網膜または視覚のタンパク質を標的化するおよび/またはそれに結合する少なくとも1つの標的基をさらに含む、請求項11から13のいずれか一項に記載の自己組織化ナノ粒子。
【請求項15】
前記少なくとも1つの標的基が、光受容体間レチノイド結合タンパク質を標的化するおよび/またはそれに結合するレチノイドまたはレチノイド誘導体を含む、請求項14に記載の自己組織化ナノ粒子。
【請求項16】
前記少なくとも1つの標的基が、全トランス型レチニルアミンまたは(1R)-3-アミノ-1-[3-(シクロヘキシルメトキシ)フェニル]プロパン-1-オールを含む、請求項14に記載の自己組織化ナノ粒子。
【請求項17】
前記pH応答性多官能性カチオン性脂質が、システイン残基を含み、前記少なくとも1つの標的基が、システイン残基のチオール基にリンカーにより共有結合している、請求項14から16のいずれか一項に記載の自己組織化ナノ粒子。
【請求項18】
前記リンカーが、ポリアミノ酸基、ポリアルキレン基、またはポリエチレングリコール基を含む、請求項17に記載の自己組織化ナノ粒子。
【請求項19】
前記リンカーが、酸不安定結合を含む、請求項18に記載の自己組織化ナノ粒子。
【請求項20】
さらに、PEG化されている、請求項14から19のいずれか一項に記載の自己組織化ナノ粒子。
【請求項21】
前記pH応答性多官能性カチオン性脂質が、(1-アミノエチル)イミノビス[N-(オレオイルシステイニル-1-アミノ-エチル)プロピオンアミド)(ECO)またはそれらの類縁体もしくは誘導体を含む、請求項14から20のいずれか一項に記載の自己組織化ナノ粒子。
【請求項22】
前記pH応答性多官能性カチオン性脂質が、式(I):
【化1】
(式中、Rは、アルキルアミノ基または少なくとも1つの芳香族基を含む基である;
およびRは、独立して脂肪族基または疎水基である;
およびRは、独立してH、置換もしくは非置換アルキル基、アルケニル基、アシル基、または芳香族基であるか、ポリマー、標的基、もしくは検出可能な部分を含む;
a、b、c、およびdは、独立して1から10の整数である)
を有する化合物;およびその薬学的に許容される塩を含む、請求項14に記載の自己組織化ナノ粒子。
【請求項23】
が:
【化2】
(式中、R、R、R、R、R10、R11、R12、R13、およびR14は、独立して水素、アルキル基、疎水基、または窒素含有置換基である;ならびに
e、f、g、i、j、k、およびlは、1から10の整数である)
の少なくとも1つを含む、請求項22に記載の自己組織化ナノ粒子。
【請求項24】
およびRが、独立してオレイン酸またはリノール酸に由来する疎水基である、請求項22に記載の自己組織化ナノ粒子。
【請求項25】
およびRが同じである、請求項22に記載の自己組織化ナノ粒子。
【請求項26】
およびRの少なくとも1つが、網膜または視覚のタンパク質を標的化するおよび/またはそれに結合する標的基を含む、請求項22に記載の自己組織化ナノ粒子。
【請求項27】
またはRの少なくとも1つが、光受容体間レチノイド結合タンパク質を標的化するおよび/またはそれに結合するレチノイドまたはレチノイド誘導体を含む、請求項22に記載の自己組織化ナノ粒子。
【請求項28】
またはRの少なくとも1つが、全トランス型レチニルアミンまたは(1R)-3-アミノ-1-[3-(シクロヘキシルメトキシ)フェニル]プロパン-1-オールを含む、請求項22に記載の自己組織化ナノ粒子。
【請求項29】
a、b、c、およびdが、それぞれ2である、請求項22に記載の自己組織化ナノ粒子。
【請求項30】
が、CHCHNH、CHCHNHCHCHNHCHCHNH、またはCHCHNHCHCHCHCHNHCHCHCHNHの少なくとも1つを含む、請求項22に記載の自己組織化ナノ粒子。
【請求項31】
前記標的基が、システイン残基のチオール基にリンカーにより共有結合している、請求項22に記載の自己組織化ナノ粒子。
【請求項32】
前記リンカーが、ポリアミノ酸基、ポリアルキレン基、またはポリエチレングリコール基を含む、請求項22に記載の自己組織化ナノ粒子。
【請求項33】
前記リンカーが、酸不安定結合を含む、請求項22に記載の自己組織化ナノ粒子。
【請求項34】
さらにPEG化されている、請求項22から33のいずれか一項に記載の自己組織化ナノ粒子。
【請求項35】
約4から約12、好ましくは約6から約10のN/P比を有する、請求項22から24のいずれか一項に記載の自己組織化ナノ粒子。
【請求項36】
請求項22から35のいずれか一項に記載の自己組織化ナノ粒子の水溶液を含む、医薬組成物。
【請求項37】
さらに、異なる貯蔵温度下、前記ナノ粒子の前記安定性を強化するのに有効な量のスクロースを含む、請求項36に記載の医薬組成物。
【請求項38】
前記異なる貯蔵温度が、約-20℃から約4℃の範囲である、請求項37に記載の医薬組成物。
【請求項39】
約5%から約20%のスクロースを含む、請求項36から38のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項40】
実質的に中性のpHを有する、請求項36から39のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項41】
前記実質的に中性のpHが、約6.0から約8.0、約6.2から約7.8、約6.5から約7.5、約6.8から約7.2、または約7である、請求項40に記載の医薬組成物。
【請求項42】
賦形剤を含まない、請求項36から41のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項43】
約50ng/μlから約500ng/μl、約100ng/μlから約300ng/μl、または約150ng/μlから約250ng/μlの自己組織化ナノ粒子の濃度を有する、請求項36から42のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項44】
それを必要とする被験者において異種遺伝子のエピソーム発現を誘導する方法であって、
請求項1から10のいずれか一項に記載のプラスミドベクター、請求項11から35のいずれか一項に記載の自己組織化ナノ粒子、または請求項36から43のいずれか一項に記載の医薬組成物を前記被験者に投与することを含む、方法。
【請求項45】
被験者における障害を処置する方法であって、
請求項1から10のいずれか一項に記載のプラスミドベクター、請求項11から35のいずれか一項に記載の自己組織化ナノ粒子、または請求項36から43のいずれか一項に記載の医薬組成物を前記被験者に投与することを含む、方法。
【請求項46】
前記プラスミドベクター、前記自己組織化ナノ粒子、または前記医薬組成物が、反復投与される、請求項44または45に記載の方法。
【請求項47】
前記プラスミドベクター、前記自己組織化ナノ粒子、または前記医薬組成物が、単回用量で投与される、請求項44または45に記載の方法。
【請求項48】
前記プラスミドベクター、前記自己組織化ナノ粒子、または前記医薬組成物が、局所投与される、請求項44から47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
前記プラスミドベクター、前記自己組織化ナノ粒子、または前記医薬組成物が、硝子体内投与される、請求項44から48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
前記プラスミドベクター、前記自己組織化ナノ粒子、または前記医薬組成物が、網膜下投与される、請求項44から48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
前記プラスミドベクター、前記自己組織化ナノ粒子、または前記医薬組成物が、脈絡膜上に投与される、請求項44から48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
前記障害が、眼障害である、請求項45から51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
前記障害が、遺伝性網膜障害である、請求項45から52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
前記障害が、シュタルガルト病、レーバー先天性黒内障(LCA)、弾性線維性仮性黄色腫、桿体錐体ジストロフィー、滲出性硝子体網膜症、ジュベール症候群、CSNB-1C、網膜色素変性症、スティックラー症候群、小頭症、脈絡網膜炎(choriorretinopathy)、網膜色素変性症、CSNB2、アッシャー症候群、ワーグナー症候群、または加齢黄斑変性から選択される、請求項45から52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
前記医薬組成物中の前記自己組織化ナノ粒子の前記濃度が、約50ng/μlから約500ng/μl、約100ng/μlから約300ng/μl、または約150ng/μlから約250ng/μlである、請求項44から54のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
前記被験者に投与される前記医薬組成物の前記体積が、約0.1μLから約2μL、約0.2μLから約1.5μL、または約0.5μLから約1μLである、請求項44から55のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
前記プラスミドベクター、前記自己組織化ナノ粒子、または前記医薬組成物が、前記被験者の視覚機能を処置するのに有効である、請求項44から56のいずれか一項に記載の方法。
【請求項58】
視覚機能が、マイクロペリメトリ、暗順応ペリメトリ、視覚の機動性の評価、視力、ERG、またはリーディング評価により評価される、請求項57の方法。
【請求項59】
前記方法が、結果として前記眼障害の進行による前記被験者の視覚機能の低下の進行を防止または遅延することとなる、請求項44から58のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2020年8月14日に出願された米国仮出願第63/065,860号の優先権を主張しており、その主題は、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。
【背景技術】
【0002】
突然変異した遺伝子の健康なコピーを標的細胞に送達し、コードされた機能性タンパク質を発現してその正常な機能を修復する遺伝子置換治療は、シュタルガルト病または他の遺伝性眼疾患の効果的な処置にとって将来性を示している。第1のFDA承認遺伝子治療は、レーバー先天性黒内障2型(LCA2)を処置するためのhRPE65を発現するアデノ随伴ウイルス(AAV)である。近年の成功により、以前は治療不可能であった遺伝性疾患を治療するための遺伝子治療を開発する熱意が再燃した。多数の遺伝子治療が開発されており、いくらかは、現在臨床試験のさまざまなフェーズにある。臨床開発中のほとんどの遺伝子治療は、AAVに基づいている。しかし、AAVベースの遺伝子治療の幅広い用途は、その積荷容量により限定されている。これにより、シュタルガルト病(STGD)およびアッシャー症候群などの大きい遺伝子における突然変異により引き起こされた眼の遺伝性疾患を処置するためのウイルス遺伝子治療の用途が大幅に制限された。ウイルス系の場合、デュアルAAV、マルチAAVベクター、およびレンチウイルスベクターなどの戦略は、制限を克服するために試験されている。これらの治療の臨床用途は、機能性タンパク質全体の発現不良および免疫原性を含む種々の制限により妨害されている。非ウイルス遺伝子送達システムは、遺伝子パッケージ容量における制限を有しておらず、また幅広い範囲の遺伝子サイズをカバーする種々の網膜遺伝性疾患を処置するために開発されている。
【0003】
網膜遺伝性疾患における遺伝子治療のチャレンジは、正常な視覚機能を保持するために、長期間の安定したタンパク質発現を維持することである。臨床的に、AAV治療の1つの網膜下投与は、LCA2患者において数年間継続することができるが、臨床的知見から、経時的に治療効果が減衰することが示唆されている。反復投与は、網膜の構造および機能におけるレスキュー効果を維持するために必要である可能性がある。残念なことに、初期のウイルス遺伝子治療後の免疫応答の進展は、後に続くウイルスベクターの反復注射の効果を喪失させる。非ウイルス遺伝子治療は、低免疫原性を示し、治療効果を延長させるために反復投与することができる。しかし、非ウイルス遺伝子送達システムは、効率の低下を被る可能性がある。
【発明の概要】
【0004】
本明細書に記載の実施形態は、網膜障害または眼障害を処置するように構成された機能性治療用タンパク質の発現における使用のためのプラスミドベクターに関する。網膜障害または眼障害は、網膜または眼のタンパク質をコードする遺伝子の突然変異により引き起こされた遺伝性網膜障害であり得る。いくらかの実施形態において、遺伝性の網膜障害は、シュタルガルト病、レーバー先天性黒内障(LCA)、弾性線維性仮性黄色腫、桿体錐体ジストロフィー、滲出性硝子体網膜症、ジュベール症候群、CSNB-1C、網膜色素変性症、スティックラー症候群、小頭症、脈絡網膜炎(choriorretinopathy)、CSNB2、アッシャー症候群、ワーグナー症候群、または加齢黄斑変性から選択される。
【0005】
プラスミドベクターは、網膜障害または眼障害を処置するように構成された機能性治療用タンパク質をコードする1つまたは複数の異種核酸または遺伝子、ヒトGRK1プロモータ、および桿体および錐体の光受容体の両方で異種遺伝子を発現するためのヒトS/MARエンハンサを含む。
【0006】
いくらかの実施形態において、ヒトGRK1プロモータは、異種遺伝子の上流にあり、S/MARエンハンサは、異種遺伝子の下流にある。
【0007】
いくらかの実施形態において、プラスミドベクターは、ヒトベータ-グロビンポリアデニル化(ポリA)シグナル配列をさらに含むことができる。ヒトベータ-グロビンポリAシグナル配列は、異種遺伝子の下流で、S/MARエンハンサの上流にあり得る。
【0008】
いくらかの実施形態において、異種遺伝子は、網膜色素上皮特異的65kDaタンパク質(RPE65)、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)阻害剤または可溶性VEGF受容体1(sFif1)、(Rabエスコートタンパク質-1)REP1、L-オプシン、ロドプシン(Rho)、ホスホジエステラーゼ6(3(PDE6I3)、ATP-結合カセットサブファミリーAメンバー4(ABCA4)、レシチンレチノールアシルトランスフェラーゼ(LRAT)、網膜変性遅延/ペリフェリン(RDS/ペリフェリン)、チロシンタンパク質キナーゼMer(MERTK)、イノシン-5’-一リン酸デヒドロゲナーゼI型(IMPDHI)、グアニル酸シクラーゼ2D(GUCY2D)、アリール炭化水素相互作用タンパク質様1(AIPL1)、網膜色素変性症GTPアーゼレギュレータ相互作用タンパク質1(PRGRIPI)、グアニンヌクレオチド結合タンパク質、アルファトランスデューシングアクティビティポリペプチド2(GNAT2)、環状ヌクレオチド作動性チャネルベータ3(CNGB3)、レチノスキシン1(Rs1)、眼白皮症1型(OA1)、眼皮膚白皮症1型(OCA1)、チロシナーゼ、P21 WAF-1/Cip1、血小板由来成長因子(PDGF)、エンドスタチン、アンギオスタチン、アリールスルファターゼB、13-グルクロニダーゼ、アッシャリン2A(USH2A)、中心体タンパク質290(CEP290)、調節シナプス膜エキソサイトーシス1(RIMS1)、LDL受容体関連タンパク質5(LRP5)、コイルドコイルおよびC2ドメイン含有2A(CC2D2A)、一過性受容体電位型カチオンチャネルサブファミリーMメンバー1(TRPM1)、繊毛内タンパク質輸送172(IFT-172)、コラーゲンタイプ1アルファ1チェーン(COL11A1)、チューブリンガンマ複合体会合タンパク質6(TUBGCP6)、KIAA1549、電圧依存性カルシウムチャネルサブユニットアルファ1F(CACNA1F)、ミオシンVIIA(MYO7A)、バーシカン(VCAN)、またはヘミセンチン1(HMCN1)から選択される。
【0009】
いくらかの実施形態において、異種遺伝子はABCA4であり、網膜障害は、シュタルガルト病または加齢黄斑変性である。
【0010】
いくらかの実施形態において、プラスミドは、配列番号1の核酸配列を有する。
【0011】
本明細書に記載の他の実施形態は、本明細書に記載の1つまたは複数のプラスミドベクターと複合体化した複数のpH応答性多官能性カチオン性脂質を含む自己組織化ナノ粒子に関する。
【0012】
いくらかの実施形態において、pH応答性多官能性カチオン性脂質は、pH応答性多官能性アミノ脂質を含むことができる。
【0013】
いくらかの実施形態において、自己組織化ナノ粒子は、アミン対リン酸(N/P)比が約4から約12、好ましくは約6から約10であり得る。
【0014】
いくらかの実施形態において、pH応答性多官能性カチオン性脂質は、網膜または視覚のタンパク質を標的化するおよび/またはそれに結合する少なくとも1つの標的基をさらに含むことができる。少なくとも1つの標的基は、光受容体間レチノイド結合タンパク質を標的化するおよび/またはそれに結合するレチノイドまたはレチノイド誘導体を含むことができる。例えば、少なくとも1つの標的基には、全トランス型レチニルアミンまたは(1R)-3-アミノ-1-[3-(シクロヘキシルメトキシ)フェニル]プロパン-1-オールが含まれる。
【0015】
いくらかの実施形態において、pH応答性多官能性カチオン性脂質は、システイン残基を含み、少なくとも1つの標的基は、システイン残基のチオール基にリンカーにより共有結合している。リンカーは、例えばポリアミノ酸基、ポリアルキレン基、またはポリエチレングリコール基を含む可能性がある。場合によっては、リンカーは、酸不安定結合を含む可能性がある。
【0016】
いくらかの実施形態において、自己組織化ナノ粒子はPEG化されている。
【0017】
いくらかの実施形態において、pH応答性多官能性カチオン性脂質には、(1-アミノエチル)イミノビス[N-(オレオイルシステイニル-1-アミノ-エチル)プロピオンアミド)(ECO)またはそれらの類縁体もしくは誘導体が含まれ得る。
【0018】
いくらかの実施形態において、ECOおよびその類縁体または誘導体は、式(I):
【0019】
【化1】
【0020】
(式中、Rは、アルキルアミノ基または少なくとも1つの芳香族基を含む基である;
およびRは、独立して脂肪族基または疎水基である;
およびRは、独立してH、置換もしくは非置換アルキル基、アルケニル基、アシル基、または芳香族基であるか、ポリマー、標的基、もしくは検出可能な部分を含む;
a、b、c、およびdは、独立して1から10の整数である)
を有する化合物、およびその薬学的に許容される塩を含むことができる。
【0021】
いくらかの実施形態において、Rは:
【0022】
【化2】
【0023】
(式中、R、R、R、R、R10、R11、R12、R13、およびR14は、独立して水素、アルキル基、疎水基、または窒素含有置換基である;ならびに
e、f、g、i、j、k、およびlは、1から10の整数である)
の少なくとも1つを含む。
【0024】
他の実施形態において、RおよびRは、独立してオレイン酸またはリノール酸に由来する疎水基である。
【0025】
いくらかの実施形態において、RおよびRは同じである。
【0026】
いくらかの実施形態において、RおよびRの少なくとも1つは、網膜または視覚のタンパク質を標的化するおよび/またはそれに結合する標的基を含む。RまたはRの少なくとも1つは、光受容体間レチノイド結合タンパク質を標的化するおよび/またはそれに結合するレチノイドまたはレチノイド誘導体を含むことができる。例えば、RまたはRの少なくとも1つには、全トランス型レチニルアミンまたは(1R)-3-アミノ-1-[3-(シクロヘキシルメトキシ)フェニル]プロパン-1-オールが含まれる。
【0027】
いくらかの実施形態において、a、b、c、およびdはそれぞれ2である。
【0028】
他の実施形態において、Rは、CHCHNH、CHCHNHCHCHNHCHCHNH、またはCHCHNHCHCHCHCHNHCHCHCHNHの少なくとも1つを含む。
【0029】
いくらかの実施形態において、標的基は、システイン残基のチオール基にリンカーにより共有結合している。リンカーは、ポリアミノ酸基、ポリアルキレン基、またはポリエチレングリコール基、場合によっては、酸不安定結合を含む可能性がある。
【0030】
さらに他の実施形態は、本明細書に記載の自己組織化ナノ粒子の水溶液および/または本明細書に記載のプラスミドベクターを含む医薬組成物に関する。
【0031】
いくらかの実施形態において、医薬組成物は、異なるまたは異なっている貯蔵温度下での安定性を強化するのに有効な量のスクロースを含むことができる。異なるまたは異なっている貯蔵温度は、約-20℃から約4℃の範囲であり得る。例えば、医薬組成物は、約5%から約20%のスクロースを含むことができる。
【0032】
いくらかの実施形態において、医薬組成物は、実質的に中性のpHを有することができる。実質的に中性のpHは、約6.0から約8.0、約6.2から約7.8、約6.5から約7.5、約6.8から約7.2、または約7である。
【0033】
いくらかの実施形態において、医薬組成物は、スクロース以外の賦形剤を含まない。
【0034】
他の実施形態において、医薬組成物は、約50ng/μlから約500ng/μl、約100ng/μlから約300ng/μl、または約150ng/μlから約250ng/μlの自己組織化ナノ粒子の濃度を含む。
【0035】
本明細書に記載の他の実施形態は、それを必要とする被験者において異種遺伝子のエピソーム発現を誘導する方法に関する。方法は、被験者にプラスミドベクター、自己組織化ナノ粒子、または記載の医薬組成物を投与することを含むことができる。
【0036】
本明細書に記載のさらに他の実施形態は、被験者における障害を処置する方法に関する。方法は、被験者にプラスミドベクター、自己組織化ナノ粒子、または記載の医薬組成物を投与することを含む。
【0037】
いくらかの実施形態において、プラスミドベクター、自己組織化ナノ粒子、または医薬組成物は、反復投与される。
【0038】
他の実施形態において、プラスミドベクター、自己組織化ナノ粒子、または医薬組成物は、単回用量で投与される。
【0039】
いくらかの実施形態において、プラスミドベクター、自己組織化ナノ粒子、または医薬組成物は、局所投与される。例えば、自己組織化ナノ粒子、または医薬組成物は、硝子体内、網膜下、または脈絡膜上に投与することができる。
【0040】
いくらかの実施形態において、方法により処置される障害は、網膜または眼のタンパク質をコードする遺伝子の突然変異により引き起こされた遺伝性網膜障害であり得る。いくらかの実施形態において、遺伝性網膜障害は、シュタルガルト病、レーバー先天性黒内障(LCA)、弾性線維性仮性黄色腫、桿体錐体ジストロフィー、滲出性硝子体網膜症、ジュベール症候群、CSNB-1C、網膜色素変性症、スティックラー症候群、小頭症、脈絡網膜炎(choriorretinopathy)、CSNB2、アッシャー症候群、ワーグナー症候群、または加齢黄斑変性から選択される。
【0041】
いくらかの実施形態において、医薬組成物中の自己組織化ナノ粒子の濃度は、約50ng/μlから約500ng/μl、約100ng/μlから約300ng/μl、または約150ng/μlから約250ng/μlである。
【0042】
他の実施形態において、被験者に投与される医薬組成物の体積は、約0.1μLから約200μL、約0.2μLから約150μL、または約0.5μLから約100μLである。
【0043】
いくらかの実施形態において、プラスミドベクター、自己組織化ナノ粒子、または医薬組成物は、被験者の視覚機能を処置するのに有効であり得る。視覚機能は、マイクロペリメトリ、暗順応ペリメトリ、視覚の機動性の評価、視力、ERG、またはリーディング評価により評価することができる。
【0044】
いくらかの実施形態において、方法は、結果として、眼障害の進行による被験者の視覚機能の低下の進行を防止または遅延することとなる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1図1は、pGRK1-ABCA4-SMARプラスミドの図である。GRK1プロモータは、MluI制限部位とAgeI制限部位との間に挿入された。S/MAR DNAは、NotI制限部位とNheI制限部位との間に挿入された。グロビンポリA DNAは、NEB HiFiアセンブリクリーニングキットを使用することによりNotI制限部位とSpeI制限部位との間に挿入された。
図2図2(A~B)は、標的プラスミドにおける正確なサイズのDNAフラグメントを検証するために複数の制限酵素消化のアガロースゲル電気泳動を図解する。(A)プロモータGRK1(400bp)、GFP(700bp)、ABCA4フラグメント(6.8kb)、ポリA+SMAR(2.9kb)、およびベクターバックボーン(約2.5kb)を用いた消化後の4つのDNAフラグメントを分離するためのアガロースゲル(1%)。(B)より鮮明な図のためのバックボーンおよびpA+SMARフラグメントを分離するための同じアガロースゲルの延長した泳動。(複数の酵素消化のために4つの制限酵素:MluI、AgeI、NotIおよびNheIを使用した。)
図3図3は、ECO/pGRK1-ABCA4-S/MARナノ粒子の調製の概略図である。ECOは、水溶液中、所定のpDNA濃度およびアミン/リン酸(N/P)比でpGRK1-ABCA4-S/MARを用いて自己組織化し、安定なナノ粒子を形成する。
図4】ECO/pGRK1-ABCA4-S/MARナノ粒子(N/P=8)の形成。サイズ分布のDLS(A)、ゼータ電位分布(B)およびアガロースゲル電気泳動によるプラスミドカプセル化(C)。
図5】ECO/pGRK1-ABCA4-S/MARナノ粒子(200ng/μL、1μL)の7日間の網膜下投与後のabca4-/-マウスにおけるABCA4発現。網膜の異なる位置(A)および網膜全体(B)でのABCA4発現の共焦点顕微鏡画像。ポリクローナルABCA4抗体を用いる免疫染色。ABCA4発現は、白色で示した。PBS注射眼試料を対照として使用した。
図6図6は、ECO/pGRK1-ABCA4-S/MARナノ粒子(400ng/μL、0.5μL)の8日間の網膜下投与後のabca4-/-マウスにおけるABCA4発現を図解する。ABCA4 mRNA発現のqRT-PCR分析。ABCA4 mRNAレベルを反対側のPBS対照に対して正規化し、個々に示した。
図7図7は、ECO/pGRK1-ABCA4-S/MAR(10%スクロース)ナノ粒子(200ng/μL、1μL)の7日間の網膜下投与後のabca4-/-マウスにおけるABCA4発現を図解する。ABCA4 mRNA発現のqRT-PCR分析。ABCA4 mRNAレベルを反対側のPBS対照に対して正規化し、個々に示した。
図8図8は、PEG化PEG-ECO/pGRK1-ABCA4-S/MARナノ粒子の調製の概略図である。PEG-MALリガンド(2.5モル%)を最初に混合し、水溶液中で30分間ECO分子と反応させる。その後、安定なナノ粒子を形成するためにpGRK1-ABCA4-S/MARを所定のpDNA濃度およびアミン/リン酸(N/P)比で溶液に添加した際、PEG化ナノ粒子は、自己組織化により形成された。
図9図9(A~D)は、異なる貯蔵温度下、10%スクロースの有無でのECO/pGRK1-ABCA4-S/MARおよびPEG-ECO/pGRK1-ABCA4-S/MARナノ粒子の安定性を図解する。0日、7日および1ヶ月で試験した、4℃および-20℃で貯蔵したECO/pGRK1-ABCA4-S/MARナノ粒子(A)、PEG-ECO/pGRK1-ABCA4-S/MARナノ粒子(B)、ECO/pGRK1-ABCA4-S/MARナノ粒子(10%スクロース)(C)およびPEG-ECO/pGRK1-ABCA4-S/MAR(10%スクロース)ナノ粒子(D)のサイズ分布のDLS。
図10図10は、0日、7日および1ヶ月での4℃または-20℃下、10%スクロースの有無でのECO/pGRK1-ABCA4-S/MARおよびPEG-ECO/pGRK1-ABCA4-S/MARナノ粒子のアガロースゲル電気泳動を図解する。
図11図11は、ECO/pGRK1-ABCA4-S/MAR、PEG化(2.5%PEG)PEG-ECO/pGRK1-ABCA4-S/MARおよびECO/pGRK1-ABCA4-S/MAR(5%スクロース)ナノ粒子の網膜下投与後のabca4-/-マウスにおけるABCA4発現を、ABCA4 mRNA発現のqRT-PCR分析を用いて図解する。(NP1のmRNAレベルをNP2に対して正規化した。NP3のmRNAレベルをNP1に対して正規化した。)
図12図12は、同じ用量であるが異なる体積のPEG化PEG-ECO/pGRK1-ABCA4-S/MARナノ粒子の網膜下投与後のabca4-/-マウスにおけるABCA4発現を図解する。1μL注射体積のABCA4 mRNAレベルを用いるABCA4 mRNA発現のqRT-PCR分析を、0.5μL注射体積に対して正規化した。
図13図13は、PEG化(2.5%)PEG-ECO/pGRK1-ABCA4-S/MARナノ粒子の網膜下注射7日後のABCA4 mRNA発現を図解する。mRNAレベルを50ng用量群に対して正規化した。
図14図14は、PEG化PEG-ECO/pGRK1-ABCA4-S/MAR(2.5%PEG)ナノ粒子の網膜下注射7日後の異なる齢のabca4-/-マウスにおけるABCA4 mRNA発現を図解する。
図15図15は、ABCA4 mRNA発現のqRT-PCR分析により説明された、-20℃で1週間、2週間および1ヶ月貯蔵したPEG化(2.5%PEG)PEG-ECO/pGRK1-ABCA4-S/MARナノ粒子の網膜下投与後のabca4-/-マウスにおけるABCA4発現を図解する(新しく調製したナノ粒子を対照として使用した)。
図16図16は、ABCA4 mRNA発現のqRT-PCR分析を用いて、PEG化(2.5%PEG)PEG-ECO/pGRK1-ABCA4-S/MARナノ粒子の網膜下投与後のabca4-/-マウスにおけるABCA4発現を図解する。(mRNAレベルを非処置対照マウスに対して正規化した。)
図17図17は、ABCA4 mRNA発現のqRT-PCR分析を用いて、PEG化(2.5%PEG)PEG-ECO/pGRK1-ABCA4-S/MARナノ粒子の硝子体内投与後のabca4-/-マウスにおけるABCA4発現を図解する。(mRNAレベルを非処置対照マウスに対して正規化した。)
図18図18は、ABCA4 mRNA発現のqRT-PCR分析を用いて、PEG化(2.5%PEG)PEG-ECO/pGRK1-ABCA4-S/MARナノ粒子の網膜下および硝子体内投与後のabca4-/-マウスにおけるABCA4発現の比較を図解する。(mRNAレベルを非処置対照マウスに対して正規化した。)
図19図19は、abca4-/-マウスにおけるA2E蓄積を防止するためのPEG-ECO/pGRK1-ABCA4-S/MARナノ粒子の有効性を図解する。網膜下注射の8ヶ月後の対照マウスに対するPEG-ECO/pGRK1-ABCA4-S/MARナノ粒子処置abca4-/-マウスの定量的A2Eレベル。
図20図20は、abca4-/-マウスにおけるA2E蓄積を防止するためのPEG-ECO/pGRK1-ABCA4-S/MARナノ粒子の有効性を図解する。網膜下注射の8ヶ月後の対照およびナノ粒子処置abca4-/-マウスからのA2EのHPLCクロマトグラム。
図21図21は、PEG-ECO/pGRK1-ABCA4-S/MARナノ粒子(100ng)の網膜下投与の8ヶ月後のabca4-/-マウスにおけるABCA4発現を図解する。ABCA4発現を緑色で示した。RPE65は赤で標識した。
図22図22は、abca4-/-マウスにおけるA2E蓄積を防止するためのPEG-ECO/pGRK1-ABCA4-S/MARナノ粒子の有効性を図解する。網膜下注射1年後の対照マウスに対するPEG-ECO/pGRK1-ABCA4-S/MARナノ粒子処置abca4-/-マウスの定量的A2Eレベル。
図23図23は、abca4-/-マウスにおけるPEG-ECO/pGRK1-ABCA4-S/MARナノ粒子の有効性を図解する。網膜下注射1年後のABCA4 mRNA発現。
図24図24は、多重処置後のabca4-/-マウスにおけるA2E蓄積を防止するためのPEG-ECO/pGRK1-ABCA4-S/MARナノ粒子の有効性を図解する。最初の網膜下処置の8ヶ月後の対照マウスに対するPEG-ECO/pGRK1-ABCA4-S/MARナノ粒子処置abca4-/-マウスの定量的A2Eレベル。(*p<0.05、**p<0.005、***p<0.0005、****p<0.0001)
図25図25は、多重処置後のabca4-/-マウスにおけるA2E蓄積を防止するためのPEG-ECO/pGRK1-ABCA4-S/MARナノ粒子の有効性を図解する。最初の網膜下注射の8ヶ月後の対照およびナノ粒子処置Abca4-/-マウスからのA2EのHPLCクロマトグラム。
図26図26は、多重処置後のabca4-/-マウスにおけるPEG-ECO/pGRK1-ABCA4-S/MARナノ粒子の有効性を図解する。最初の網膜下処置8年後のABCA4 mRNA発現。
図27図27は、PEG-ECO/pGRK1-ABCA4-S/MARナノ粒子の安全性を図解する。PEG-ECO/pGRK1-ABCA4-S/MARナノ粒子の遺伝子治療を受けているabca4-/-マウスのインビボ安全性は、走査型レーザ検眼鏡(SLO)画像により示された。画像は、100ngの単回用量網膜下注射の7ヶ月後に蛍光(F)および赤外線(IR)チャネルを通じて撮影された。対照は、非処置マウスである。処置マウスでは有害作用は観察されなかった。
図28図28は、多重処置後のPEG-ECO/pGRK1-ABCA4-S/MARナノ粒子の安全性を図解する。PEG-ECO/pGRK1-ABCA4-S/MARナノ粒子の遺伝子治療を受けているabca4-/-マウスのインビボ安全性は、走査型レーザ検眼鏡(SLO)画像により示された。画像は、100ngの最初の用量の網膜下注射の8ヶ月後に蛍光(F)および赤外線(IR)チャネルを通じて撮影された。マウスは、3ヶ月ごとに合計2回の注射を受けた。
図29図29は、PEG-ECO/pDNAナノ粒子の安全性を図解する。眼の状態および5%スクロースを有するACU-PEG-HZ-ECO/pCMV-GFPナノ粒子で処置されたBALB/cマウスの眼におけるGFP発現。AAV2-CMV-GFPを陽性対照として使用した。処置の1ヶ月後、2ヶ月後および3ヶ月後の眼の状態およびGFP発現の走査型レーザ検眼鏡(SLO)画像。白点(GFP)、大きい白色領域(潜在的な炎症)。
図30図30は、動的光散乱により測定された、スクロースおよびソルビトールの存在下でのpCMV-ABCA4、pCMV-ABCA4-SV40、pRHO-ABCA4、およびpRHO-ABCA4-SV40を有するECOのナノ粒子のサイズ分布を図解する。
図31図31は、安定剤としてスクロースおよびソルビトールが存在するpCMV-ABCA4、pCMV-ABCA4-SV40、pRHO-ABCA4、およびpRHO-ABCA4-SV40を有するECOのナノ粒子製剤のゼータ電位を図解する。
【発明を実施するための形態】
【0046】
従来の分子生物学技術を含む方法が本明細書に記載されている。そのような技術は、一般に当業者に既知であり、Current Protocols in Molecular Biology,ed.Ausubel et al.,Greene Publishing and Wiley-Interscience,ニューヨーク,1992(定期的な更新あり)など、方法論の論文に詳細に記載されている。別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語は、本発明が関係する当業者により一般的に理解されているものと同じ意味を有する。分子生物学用語の一般に理解されている定義は、例えば、Rieger et al.,Glossary of Genetics:Classical and Molecular,第5版,Springer-Verlag:ニューヨーク,1991、およびLewin,Genes V,オックスフォード大学出版:ニューヨーク,1994に見つけることができる。本明細書に提供される定義は、本明細書で頻繁に使用される、ある特定の用語の理解を容易にするためのものであり、本発明の範囲を限定することを意味しない。
【0047】
明細書および添付の特許請求の範囲において使用されるように、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈が明確に他のものを指示しない限り、複数の指示対象を含むことに注意する必要がある。したがって、例えば「医薬担体」への言及は、2つまたはそれ以上の担体の混合物などを含む。「任意選択の」または「場合によっては」は、後述された事象または状況が生じる可能性があるか生じる可能性がない、ならびにその説明がその事象または状況が生じる可能性がある場合、そうでない場合を含むことを意味する。例えば、成句「場合によっては置換された低級アルキル」は、低級アルキル基が置換される可能性があるか可能性がないこと、ならびに説明が非置換低級アルキルおよび置換がある低級アルキルの両方を含むことを意味する。
【0048】
用語「アルキル基」は、少なくとも1つのC=C二重結合を保持しているC~C20アルキル基として本明細書で定義される。
【0049】
本明細書で使用されるような用語「アルキル基」は、1から25の炭素原子の分岐または非分岐の飽和炭化水素基、例えばメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、t-ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、デシル、テトラデシル、ヘキサデシル、エイコシル、テトラコシルなどである。「低級アルキル」基は、1から6の炭素原子を含むアルキル基である。
【0050】
本明細書で使用されるような用語「アシル」基は、式C(O)Rにより表され、式中、Rは、例えば、本明細書で定義されたようなアルキルまたは芳香族基などの有機基である。
【0051】
本明細書で使用されるような用語「アルキレン基」は、互いに結合した2つまたはそれ以上のCH基を有する基である。アルキレン基は、式(CHにより表すことができ、式中、aは、2から25の整数である。
【0052】
本明細書で使用されるような用語「芳香族基」は、ベンゼン、ナフタレンなどを含むがこれらに限定されない芳香族基を含む任意の基である。用語「芳香族」はまた、芳香族基の環内に組み込まれた少なくとも1つのヘテロ原子を有する芳香族基として定義されている「ヘテロアリール基」を含む。ヘテロ原子の例には、窒素、酸素、硫黄、およびリンが含まれるがこれらに限定されない。アリール基は、置換または非置換であり得る。アリール基は、アルキル、アルキニル、アルケニル、アリール、ハライド、ニトロ、アミノ、エステル、ケトン、アルデヒド、ヒドロキシ、カルボン酸、またはアルコキシが含まれるがこれらに限定されない1つまたは複数の基で置換することができる。
【0053】
成句「窒素含有置換基」は、任意のアミノ基として本明細書で定義される。用語「アミノ基」は、一級、二級、または三級アミノ基として本明細書で定義される。代わりに、窒素含有置換基は、四級アンモニウム基であり得る。窒素含有置換基は、芳香族または脂環式基であり得、窒素原子は、環の一部であるか、1つまたは複数の原子により環に直接または間接的に結合している(すなわちペンダント)。窒素含有置換基は、式RNHを有するアルキルアミノ基であり得、Rは、分岐または直鎖のアルキル基であり、アミノ基は、置換されていても置換されていなくてもよい。
【0054】
用語「核酸」、「核酸分子」、「ヌクレオチド」、「ヌクレオチド配列」、および「ポリヌクレオチド」は、交換可能に使用され、リボヌクレオシド(アデノシン、グアニン、ウリジンまたはシチジン;「RNA分子」)もしくはデオキシリボヌクレオチド(デオキシアデノシン、デオキシグアノシン、デオキシチミジン、またはデオキシシチジン;「DNA分子」)のリン酸エステルポリマー形状、またはそれらの任意のホスホエステル類縁体、例えばいずれも一本鎖の形状または二重螺旋のホスホロチオエートおよびチオエステルを指す。一本鎖核酸配列は、一本鎖DNA(ssDNA)または一本鎖RNA(ssRNA)を指す。二本鎖DNA-DNA、DNA-RNAおよびRNA-RNAヘリックスが可能である。用語の核酸分子、特にDNAまたはRNA分子は、分子の一次構造と二次構造のみを指し、特定の三次の形状に限定するものではない。したがって、この用語には、とりわけ、直鎖または環状のDNA分子(例えば制限フラグメント)、プラスミド、スーパーコイルDNAおよび染色体に見られる二本鎖DNAが含まれる。特定の二本鎖DNA分子の構造を議論する際、配列は、DNAの非転写鎖に沿って5’から3’の方向の配列のみ(すなわち、mRNAと配列相同性を有する鎖)を与える通常の慣例にしたがって、本明細書に記載することができる。「組換えDNA分子」は、分子生物学的操作を受けているDNA分子である。DNAには、cDNA、ゲノムDNA、プラスミドDNA、合成DNA、および半合成DNAが含まれるがこれらに限定されない。本開示の「核酸組成物」は、本明細書に記載されるような1つまたは複数の核酸を含む。
【0055】
本明細書で使用されるように、「コーディング領域」または「コーディング配列」は、アミノ酸に翻訳可能なコドンからなるポリヌクレオチドの一部である。「ストップコドン」(TAG、TGA、またはTAA)が典型的にアミノ酸に翻訳されないが、コーディング領域の一部とみなすことができるが、任意の隣接配列、例えばプロモータ、リボソーム結合部位、転写ターミネータ、イントロンなどは、コーディング領域の一部ではない。コーディング領域の境界は、得られるポリペプチドのアミノ末端をコードする5’末端の開始コドン、および得られるポリペプチドのカルボキシル末端をコードする3’末端の翻訳停止コドンにより典型的に決定される。2つまたはそれ以上のコーディング領域は、例えば単一のベクター上の単一のポリヌクレオチドコンストラクト中、または例えば別個の(異なる)ベクター上の別個のポリヌクレオチドコンストラクト中に存在することができる。したがって、単一のベクターには単一のコーディング領域のみを含むことができるか、2つまたはそれ以上のコーディング領域を含むことができる。
【0056】
用語「下流」は、参照ヌクレオチド配列の3’に位置しているヌクレオチド配列を指す。ある特定の実施形態において、下流のヌクレオチド配列は、転写の開始点に続く配列に関する。例えば、遺伝子の翻訳開始コドンは、翻訳の開始部位の下流に位置している。
【0057】
用語「上流」は、参照ヌクレオチド配列の5’に位置しているヌクレオチドを指す。ある特定の実施形態において、上流のヌクレオチド配列は、コーディング領域の5’側または転写の開始点に位置している配列に関する。例えば、ほとんどのプロモータは、翻訳の開始部位の上流に位置している。
【0058】
本明細書で使用されるような用語「発現」は、ポリヌクレオチドが、遺伝子産物、例えばRNAまたはポリペプチドを産生するプロセスを指す。それには、限定されないがポリヌクレオチドのメッセンジャーRNA(mRNA)、転移RNA(tRNA)、小ヘアピンRNA(shRNA)、低分子干渉RNA(siRNA)または任意の他のRNA産物への転写、およびmRNAのポリペプチドへの翻訳が含まれる。発現により、「遺伝子産物」が産生される。本明細書で使用されるように、遺伝子産物は、核酸、例えば遺伝子の転写により産生されたメッセンジャーRNA、または転写物から翻訳されるポリペプチドのいずれかであり得る。本明細書に記載の遺伝子産物には、転写後修飾、例えばポリアデニル化もしくはスプライシングを伴う核酸、または翻訳後修飾、例えばメチル化、グリコシル化、脂質の付加、他のタンパク質サブユニットとの会合、もしくはタンパク質切断を伴うポリペプチドがさらに含まれる。本明細書で使用されるような用語「収量」は、遺伝子の発現により産生されたポリペプチドの量を指す。
【0059】
「ベクター」は、核酸の宿主細胞へのクローン化および/または転写のための任意のビヒクルを指す。ベクターは、別の核酸セグメントが結合したセグメントの複製をもたらすように結合することができるレプリコンであり得る。「レプリコン」は、インビボで自律的な複製単位として機能する、すなわち独自の制御下で複製することができる任意の遺伝子エレメント(例えばプラスミド、ファージ、コスミド、染色体、ウイルス)を指す。用語「ベクター」は、インビトロ、エクスビボまたはインビボで核酸を細胞に導入するためのビヒクルを含む。例えばプラスミド、修飾された真核ウイルス、または修飾された細菌ウイルスを含む多数のベクターは既知であり、当技術分野において使用される。ポリヌクレオチドの適切なベクターへの挿入は、適切なポリヌクレオチドフラグメントを、相補的な付着末端を有する選択されたベクターに結合することにより達成することができる。
【0060】
ベクターは、ベクターを組み込んでいる細胞の選択または同定のために提供される選択マーカーまたはレポーターをコードするように操作することができる。選択マーカーまたはレポーターの発現は、ベクターに含まれる他のコーディング領域を組み込み、発現する、宿主細胞の同定および/または選択を可能にする。当技術分野において既知であり、使用されている選択マーカー遺伝子の例には、アンピシリン、ストレプトマイシン、ゲンタマイシン、カナマイシン、ハイグロマイシン、ビアラホス除草剤、スルホンアミドなどへの耐性を提供する遺伝子;ならびに表現型マーカーとして使用されている遺伝子、すなわちアントシアニン調節遺伝子、イソペンタニルトランスフェラーゼ遺伝子などが含まれる。当技術分野において既知であり、使用されているレポーターの例には、ルシフェラーゼ(Luc)、緑色蛍光タンパク質(GFP)、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、β-ガラクトシダーゼ(LacZ)、β-グルクロニダーゼ(Gus)などが含まれる。選択マーカーはまた、レポーターであるとみなすことができる。
【0061】
用語「異種」は、比較される、または導入もしくは組み込まれる実体の残りと遺伝子的に異なる実体に由来することを意味する。例えば、異なる細胞のタイプに遺伝子工学的技術により導入されたポリヌクレオチドは、異種ポリヌクレオチドである(そして、発現された場合、異種ポリペプチドをコードすることができる)。同様に、ウイルスベクターに組み込まれている細胞配列(例えば、遺伝子またはその一部)は、ベクターに関して異種ヌクレオチド配列である。
【0062】
用語「異種遺伝子」または「異種核酸」は、交換可能に使用され、ウイルスゲノムの一部として自然には発生しない遺伝子または核酸を指す。例えば、異種遺伝子は、哺乳動物遺伝子、例えば治療遺伝子、例えば治療用タンパク質をコードする哺乳動物遺伝子であり得る。いくらかの実施形態において、異種遺伝子は、標的細胞および/または被験者に欠落しているか存在しないタンパク質またはその一部をコードする。いくらかの実施形態において、異種遺伝子は、標的細胞および/または被験者に欠落しているか存在しないタンパク質をコードする1つまたは複数のエクソンを含む。例えば、いくらかの実施形態において、異種遺伝子は、例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれている、国際公開第2017/087900号に記載されているような1つまたは複数のトランススプライシング分子を含む。いくらかの実施形態において、異種遺伝子は、治療用核酸、例えば治療用RNA(例えばマイクロRNA)を含む。
【0063】
用語「プロモータ」は、プロモータに動作可能に結合した異種遺伝子の転写を調節する配列を指す。プロモータは、RNAポリメラーゼおよび効率的な転写に必要な他の転写因子の転写および/または認識部位を誘導するのに十分な配列を提供し、細胞特異的発現を誘導することができる。転写を誘導するのに十分な配列に加えて、プロモータ配列はまた、転写の調節に関与している他の調節エレメントの配列(例えばエンハンサ、コザック配列、およびイントロン)を含むことができる。
【0064】
用語「標的細胞」は、標的遺伝子を発現し、ベクターが感染する、または感染することを意図する任意の細胞を指す。ベクターは、被験者に存在する標的細胞(インサイチュ)または培養中の標的細胞に感染することができる。いくらかの実施形態において、本発明の標的細胞は、有糸分裂後の細胞である。標的細胞は、脊椎動物および無脊椎動物の細胞(および動物由来の細胞系統)の両方を含む。脊椎動物細胞の代表的な例には、哺乳動物細胞、例えばヒト、齧歯類(例えばラットおよびマウス)、および有蹄類(例えばウシ、ヤギ、ヒツジおよびブタ)が含まれる。標的細胞は、眼細胞、例えば網膜細胞を含む。代わりに、標的細胞は、幹細胞(例えば多能性細胞(すなわちその子孫が造血幹細胞または他の幹細胞などのいくらかの制限された細胞のタイプに分化することができる細胞)または全能細胞(すなわちその子孫が生物のあらゆる細胞のタイプ、例えば胚性幹細胞、および造血細胞などの体性幹細胞になることができる細胞))であり得る。さらに他の実施形態において、標的細胞には、卵母細胞、卵子、胚の細胞、受精卵、精子細胞、および肝細胞、神経細胞、筋細胞および血液細胞(例えばリンパ球)などの多種多様の臓器または組織からの体性(非幹性)成熟細胞が含まれる。
【0065】
本明細書で使用されるような用語「宿主細胞」は、例えば、ssDNAまたはベクターのレシピエントとして使用することができるか使用されている、微生物、酵母細胞、昆虫細胞、および哺乳動物細胞を指す。その用語は、形質導入された元の細胞の子孫を含む。したがって、本明細書で使用されるような「宿主細胞」は、一般に外因性DNA配列を用いて形質導入されている細胞を指す。単一の親細胞の子孫が、自然、偶発的、または意図的な突然変異のために、元の親と形態学またはゲノムもしくは総DNA相補体が必ずしも完全に同一であるとは限らないことが理解される。いくらかの実施形態において、宿主細胞は、インビトロ宿主細胞であり得る。
【0066】
用語「突然変異に関連する障害」または「障害に関連する突然変異」は、障害と突然変異との間の相関を指す。いくらかの実施形態において、突然変異に関連する障害は、突然変異により、完全にもしくは部分的にまたは直接もしくは間接的に引き起こされていることが既知であるか、疑いがある。例えば、突然変異を有する被験者は、障害が進行するリスクがあり得、リスクは、他の因子、例えば他の(例えば独立した)突然変異(例えば同じかまたは異なる遺伝子において)、または環境的因子にさらに依存している可能性がある。
【0067】
用語「被験者」は、特定の処置のレシピエントになる、ヒトおよび非ヒト動物(例えば齧歯類、節足動物、昆虫、魚(例えばゼブラフィッシュ))、非ヒト霊長類、ヒツジ、ウシ、反芻動物、ウサギ類、ブタ、ヤギ、ウマ、イヌ、ネコ、鳥類など)が含まれるが限定されないあらゆる動物を指すことができる。典型的に、用語「患者」および「被験者」は、ヒト被験者に関して本明細書で交換可能に使用されている。
【0068】
用語「約」または「おおよそ」は、基準の数量、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、サイズ、量、重量または長さに対して、15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%または1%変動する数量、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、サイズ、量、重量または長さを指す。一実施形態において、用語「約」または「おおよそ」は、基準の数量、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、サイズ、量、重量または長さについて数量、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、サイズ、量、重量または長さ±15%、±10%、±9%、±8%、±7%、±6%、±5%、±4%、±3%、±2%、または±1%の範囲を指す。
【0069】
本明細書で使用されたすべてのパーセンテージおよび比は、別段の指定がない限り、重量によるものである。
【0070】
本明細書に記載の実施形態は、網膜または眼障害を処置するように構成されている機能的治療用タンパク質、本明細書に記載の1つまたは複数のプラスミドベクターと複合体化した複数のpH応答性多官能性カチオン性脂質を含む自己組織化ナノ粒子、本明細書に記載の自己組織化ナノ粒子および/または本明細書に記載のプラスミドベクターの水溶液を含む医薬組成物を発現する際の使用のためのプラスミドベクター、ならびに異種遺伝子のエピソーム発現を誘導するまたはそれを必要とする被験者における網膜もしくは眼障害を処置する方法に関する。
【0071】
いくらかの実施形態において、プラスミドベクターは、ベクターの異種遺伝子の長期の転写または発現を提供することができる。いくらかの実施形態において、プラスミドベクターの持続性は、参照ベクターよりも5%から50%高い、50%から100%高い、1倍から5倍、または5倍から10倍(例えば、少なくとも5%、10%、20%、30%、40%、50%、75%、1倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、またはそれ以上)高い。いくらかの実施形態において、本明細書に記載のプラスミドベクターは、1週間から4週間、1ヶ月から4ヶ月、4ヶ月から1年、1年から5年、5年から20年、または20年から50年(例えば少なくとも1週間、少なくとも2周間、少なくとも1ヶ月、少なくとも4ヶ月、少なくとも1年、少なくとも2年、少なくとも5年、少なくとも10年、少なくとも20年、少なくとも30年、少なくとも40年、または少なくとも50年)持続する。
【0072】
プラスミドベクターは、環状プラスミドベクターであり得る。環状プラスミドベクターは、単量体、二量体、三量体、四量体、五量体、六量体などであり得る。好ましくは、環状プラスミドベクターは、単量体または二量体である。他の実施形態において、環状プラスミドベクターは、単量体のスーパーコイル環状分子である。いくらかの実施形態において、プラスミドベクターは、切れ目が入っている可能性がある。いくらかの実施形態において、プラスミドベクターは、開環状であり得る。いくらかの実施形態において、プラスミドベクターは、二本鎖の環であり得る。
【0073】
本明細書に記載のプラスミドベクターは、異種遺伝子を標的細胞に挿入または発現するように使用することができる。本明細書に開示されるように、広範な異種遺伝子は、存在するベクターにより標的細胞に送達され得る。いくらかの実施形態において、異種遺伝子は、異種遺伝子、例えば治療用タンパク質をコードする遺伝子、例えば標的細胞および/または被験者に欠落しているか存在しないタンパク質の発現により処置することができる疾患に関連する突然変異を有する標的細胞をトランスフェクトするように構成されている。
【0074】
いくらかの実施形態において、異種遺伝子または核酸は、標的組織において自然に発現する欠陥タンパク質を置換するように実行可能な治療用タンパク質をコードすることが可能である。典型的に、置き換えることができる欠陥遺伝子には、網膜色素変性症(RP)、レーバー先天性黒内障(LCA)、劣性RP、優性網膜色素変性症、X連鎖性劣性網膜色素変性症、優性不完全型X連鎖性劣性網膜色素変性症、優性レーバー先天性黒内障、劣性運動失調症、網膜色素変性症を伴う後柱、RPEの側細動脈蓄積を伴う劣性網膜色素変性症(Recessive retinitis pigmentosa with para-arteriolar preservation of the RPE)、網膜色素変性症RP12、アッシャー症候群、感音難聴を伴う優性網膜色素変性症、劣性網膜点状白斑、劣性アルストロム症候群、劣性バルデー・ビードル症候群、黄斑ジストロフィーまたは網膜変性を伴う優性脊髄小脳失調症、劣性無ベータリポタンパク血症、黄斑変性を伴う劣性網膜色素変性症、成人型劣性レフサム病、幼児型劣性レフサム病、劣性増強型S錐体症候群、精神遅滞を伴う網膜色素変性症、ミオパチーを伴う網膜色素変性症、劣性ニューファンドランド桿体錐体ジストロフィー、無色素性網膜色素変性症(Retinitis pigmentosa sinpigmento)、扇形網膜色素変性症、局所網膜色素変性症、セニオール・ローケン症候群、ジュベール症候群、若年性シュタルガルト病、遅発性シュタルガルト病、シュタルガルト型優性黄斑ジストロフィー、優性シュタルガルト様黄斑ジストロフィー、劣性黄斑ジストロフィー、劣性黄色斑眼底、劣性錐体桿体ジストロフィー、X連鎖進行性錐体桿体ジストロフィー、優性錐体桿体ジストロフィー、錐体桿体ジストロフィー;ド・グルーシー症候群(de Grouchy syndrome)、優性錐体ジストロフィー、X連鎖錐体ジストロフィー、劣性錐体ジストロフィー、過剰桿体網膜電図検査を伴う劣性錐体ジストロフィー、X連鎖性萎縮性黄斑ジストロフィー、X連鎖性網膜分離症、優性黄斑ジストロフィー、優性の放射状黄斑ドルーゼン、優性牛眼状黄斑ジストロフィー、優性蝶形黄斑ジストロフィー、優性成人卵黄状黄斑ジストロフィー、優性ノースカロライナ型黄斑ジストロフィー、優性網膜錐体ジストロフィー1、優性嚢胞様黄斑ジストロフィー、優性非典型的卵黄型黄斑ジストロフィー、Foveo黄斑性萎縮症(Foveomacular atrophy)、優性ベスト型黄斑ジストロフィー、進行性の優性ノースカロライナ様黄斑ジストロフィー、貧毛症を伴う劣性若年性黄斑ジストロフィー、劣性の中心窩形成不全および前眼部形成不全、劣性錐体順応遅延、青錐体一色型色覚異常の黄斑ジストロフィー、II型糖尿病および難聴を伴う黄斑性パターンジストロフィー、神鳥斑点網膜、パターンジストロフィー、優性スティックラー症候群、優性マーシャル症候群、優性硝子体網膜変性、優性家族性滲出性硝子体網膜症、優性硝子体網脈絡膜症;優性血管新生炎症性硝子体網膜症(Dominant neovascular inflammatory vitreoretinopathy)、ゴールドマン-ファーブル症候群、劣性色覚異常、優性第三色覚異常、劣性桿体一色型色覚異常、先天性赤緑色覚異常、緑第二色覚異常、赤第一色覚異常、緑色弱、第一色弱、劣性小口病、優性遅発性黄斑ジストロフィー、劣性脳回転状萎縮、優性極大萎縮(Dominant atrophia greata)、優性中心性輪紋状脈絡膜ジストロフィー、X連鎖性コロイデレミア、中心性輪紋状、中心性、乳頭周囲の網脈絡膜萎縮、進行性の優性二巣状網脈絡膜萎縮(Dominant progressive bifocal chorioretinal atrophy)、進行性の二状性網脈絡膜萎縮(Progresive bifocal Choroioretinal atrophy)、優性ドインの蜂巣状網膜変性(マラッティア・レベンティネーズ(Malattia Leventinese))、エナメル質形成不全、劣性ビエッティ結晶角膜網膜ジストロフィー、レイノー現象および偏頭痛を伴う優性遺伝性血管網膜症、優性ワーグナー病およびびらん性硝子体網膜症(erosive vitreoretinopathy)、劣性小眼球症および網膜疾患症候群;劣性真性小眼球症、劣性精神遅滞、痙性および網膜変性、劣性ボスニアジストロフィー、劣性弾力線維性仮性黄色腫、優性弾力線維性仮性黄色腫;劣性若年性バッテン病(セロイドリポフスチン症)、優性アラジール症候群、マクージック・カウフマン症候群、低ベータリポタンパク血症、有棘赤血球増加症、パラダイアル(palladial)変性症;劣性ハラーホルデン・スパッツ症候群;優性ソースビー眼底変性症、オレゴン眼病(Oregon eye disease)、カーンズ・セイヤー症候群、発達異常および神経異常を伴う網膜色素変性症、バッセン・コーンツヴァイク症候群(Basseb Korenzweig Syndrome)、ハーラー病、サンフィリッポ病、シャイエ病(Scheie disease)、黒色腫随伴網膜症、シーン網膜ジストロフィー(Sheen retinal dystrophy)、デュシェンヌ型黄斑ジストロフィー(Duchenne macular dystrophy)、ベッカー型黄斑ジストロフィー(Becker macular dystrophy)、およびバードショット網脈絡膜症(Birdshot Retinochoroidopathy)などの網膜変性疾患の原因となる遺伝子が含まれるがこれらに限定されない。
【0075】
網膜または眼障害に関連する欠損タンパク質を置換するために、実行可能な治療用タンパク質をコードする異種遺伝子の例は、網膜色素上皮特異的65kDaタンパク質(RPE65)、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)阻害剤または可溶性VEGF受容体1(sFif1)、(Rabエスコートタンパク質-1)REP1、L-オプシン、ロドプシン(Rho)、ホスホジエステラーゼ6(3(PDE6I3)、ATP-結合カセットサブファミリーAメンバー4(ABCA4)、レシチンレチノールアシルトランスフェラーゼ(LRAT)、遅延型網膜変性/ペリフェリン(RDS/ペリフェリン)、チロシンタンパク質キナーゼMer(MERTK)、イノシン-5’-一リン酸デヒドロゲナーゼI型(IMPDHI)、グアニル酸シクラーゼ2D(GUCY2D)、アリール炭化水素相互作用タンパク質様1(AIPL1)、網膜色素変性症GTPアーゼレギュレータ相互作用タンパク質1(PRGRIPI)、グアニンヌクレオチド結合タンパク質、アルファトランスデューシングアクティビティポリペプチド2(GNAT2)、環状ヌクレオチド作動性チャネルベータ3(CNGB3)、レチノスキシン1(Rs1)、眼白皮症1型(OA1)、眼皮膚白皮症1型(OCA1)、チロシナーゼ、P21 WAF-1/Cip1、血小板由来成長因子(PDGF)、エンドスタチン、アンギオスタチン、アリールスルファターゼB、13-グルクロニダーゼ、アッシャリン2A(USH2A)、中心体タンパク質290(CEP290)、調節シナプス膜エキソサイトーシス1(RIMS1)、LDL受容体関連タンパク質5(LRP5)、コイルドコイルおよびC2ドメイン含有2A(CC2D2A)、一過性受容体電位型カチオンチャネルサブファミリーMメンバー1(TRPM1)、繊毛内タンパク質輸送172(IFT-172)、コラーゲンタイプ1アルファ1チェーン(COL11A1)、チューブリンガンマ複合体会合タンパク質6(TUBGCP6)、KIAA1549、電圧依存性カルシウムチャネルサブユニットアルファ1F(CACNA1F)、ミオシンVIIA(MYO7A)、バーシカン(VCAN)、またはヘミセンチン1(HMCN1)から選択される。
【0076】
治療用タンパク質の他の例には、増殖因子、インターロイキン、インターフェロン、抗アポトーシス因子、サイトカイン、抗糖尿病因子、抗アポトーシス剤、凝固因子、抗腫瘍因子からなる群より選択される1つまたは複数のポリペプチドが含まれる。種々の網膜由来神経栄養因子は、変性した光受容体細胞をレスキューする可能性を有しており、本明細書に記載されるようなベクターを使用して発現させることができる。好ましい生物活性剤は、VEGF、アンギオテンシン、アンジオポエチン-1、DeM、酸性または塩基性線維芽細胞増殖因子(aFGFおよびbFGF)、FGF-2、フォリスタチン、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、肝細胞増殖因子(HGF)、散乱係数(SF)、レプチン、ミッドカイン、胎盤増殖因子(PGF)、血小板由来内皮細胞増殖因子(PD-ECGF)、血小板由来増殖因子-BB(PDGF-BB)、プレイオトロフィン(PTN)、RdCVF(桿体由来錐体生存性因子)、プログラニュリン、プロリフェリン、トランスフォーミング増殖因子-アルファ(TGF-アルファ)、PEDF、トランスフォーミング増殖因子-ベータ(TGF-ベータ)、腫瘍壊死因子-アルファ(TNF-アルファ)、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、血管透過性因子(VPF)、CNTF、BDNF、GDNF、PEDF、NT3、BFGF、アンジオポエチン、エフリン、EPO、NGF、IGF、GMF、aFGF、NT5、Gax、成長ホルモン、[アルファ]-1-アンチトリプシン、カルシトニン、レプチン、アポリポタンパク質、ビタミンの生合成酵素、ホルモンまたは神経伝達物質、ケモカイン、IL-1、IL-8、IL-10、IL-12、IL-13などのサイトカイン、それらの受容体、前記受容体のいずれか1つを遮断する抗体、TIMP-1、TIMP-2、TIMP-3、TIMP-4などのTIMP、アンギオアレスチン、エンドスタチンXVIIIおよびエンドスタチンXVなどのエンドスタチン、ATF、アンギオスタチン、エンドスタチンおよびアンギオスタチンの融合タンパク質、マトリックスメタロプロテアーゼ-2のC末端ヘモペキシンドメイン、ヒトプラスミノーゲンのクリングル5ドメイン、エンドスタチンおよびヒトプラスミノーゲンのクリングル5ドメインの融合タンパク質、胎盤リボヌクレアーゼ阻害剤、プラスミノーゲン活性化因子阻害剤、血小板因子-4(PF4)、プロラクチンフラグメント、プロリフェリン関連タンパク質(PRP)、抗血管新生アンチトロンビンIII、軟骨由来阻害剤(CDI)、CD59補体フラグメント、C3aおよびC5a阻害剤、複合攻撃膜阻害剤、因子H、ICAM、VCAM、カベオリン、PKCゼータ、結合タンパク質、JAM、CD36、MERTKバスキュロスタチン(vasculostatin)、バソスタチン(カルレティキュリンフラグメント)、トロンボスポンジン、フィブロネクチン、特にフィブロネクチンフラグメントgro-ベータ、ヘパリナーゼ、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)、インターフェロンアルファ/ベータ/ガンマ、インターフェロン誘導性タンパク質(IP-10)、インターフェロンガンマによるモノカイン誘発(Mig)、インターフェロン-アルファ誘導性タンパク質10(IP10)、MigおよびIP10の融合タンパク質、可溶性Fms様チロシンキナーゼ1(FLT-1)受容体、キナーゼ挿入ドメイン受容体(KDR)、Bcl-2、Bad、Bak、Bax、Bik、BcI-XショートアイソフォームおよびGaxなどのアポトーシスの調節因子、それらのフラグメントもしくは誘導体などから選択することができる。
【0077】
他の実施形態において、異種遺伝子は、例えばエンドヌクレアーゼが、網膜疾患に関連する対立遺伝子をノックアウトする、遺伝子機能の部位特異的ノックダウンのために提供される部位特異的エンドヌクレアーゼをコードすることができる。例えば、優性対立遺伝子は、野生型の場合、網膜構造タンパク質である、および/または正常な網膜機能を提供する遺伝子の欠陥コピーをコードし、部位特異的エンドヌクレアーゼ(例えばTALEヌクレアーゼ、メガヌクレアーゼまたはジンクフィンガーヌクレアーゼ)は、欠陥対立遺伝子を標的とし、欠陥対立遺伝子をノックアウトすることができる。欠陥対立遺伝子をノックアウトすることに加えて、部位特異的ヌクレアーゼはまた、欠陥対立遺伝子によりコードされるタンパク質の機能的コピーをコードするドナーDNAとの相同組換えを刺激するためにも使用することができる。したがって、例えば、本発明の方法は、欠陥対立遺伝子をノックアウトする部位特異的エンドヌクレアーゼの両方を送達するために使用することができ、欠陥対立遺伝子の機能的コピーを送達するために使用することができ、結果として欠陥対立遺伝子の修復となり、それによって、機能性網膜タンパク質(例えば、機能性レチノスキシン、機能性RPE65、機能性ペリフェリンなど)の産生を提供する。例えば、Li et al.(2011)Nature475:217を参照されたい。いくらかの実施形態において、ベクターは、部位特異的エンドヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチド;および欠陥対立遺伝子の機能的コピーをコードするポリヌクレオチドを含み、機能的コピーは、機能性網膜タンパク質をコードする。機能性網膜タンパク質には、例えばレチノスキシン、RPE65、網膜色素変性症GTPアーゼ調節因子(RGPR)相互作用タンパク質1、ペリフェリン、ペリフェリン-2などが含まれる。使用に適している部位特異的エンドヌクレアーゼには、例えばジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN);および転写活性化因子様エフェクタヌクレアーゼ(TALEN)が含まれ、そのような部位特異的エンドヌクレアーゼは、天然に存在せず、特定の遺伝子を標的とするように修飾されている。そのような部位特異的ヌクレアーゼは、ゲノム内の特定の位置を切断するように操作することができ、非相同末端結合は、いくらかのヌクレオチドを挿入または削除しながら破断を修復することができる。そのような部位特異的エンドヌクレアーゼ(「INDEL」とも呼ばれる)は、その後、タンパク質をフレームの外に放り出し、効果的に遺伝子をノックアウトする。例えば、米国特許公開第2011/0301073号を参照されたい。
【0078】
他の実施形態において、異種遺伝子は、抗体、またはその一部、フラグメント、もしくは変異体をコードすることができる。抗体は、Fv、一本鎖Fv(scFv)、Fab、Fab’、ジ-scFv、sdAb(シングルドメイン抗体)および(Fab’)(化学的に結合したF(ab’)を含む)などの抗原に結合することができるフラグメントを含む。抗体のパパイン消化により、それぞれ単一の抗原結合部位を有する「Fabフラグメント」と呼ばれる2つの同一の抗原結合フラグメント、ならびに名前が容易に結晶化する能力を反映した残りの「Fc」フラグメントを生成する。ペプシン処置により、2つの抗原結合部位を有しており、依然として抗原を架橋することができるF(ab’)フラグメントが生じる。抗体はまた、キメラ抗体およびヒト化抗体も含む。さらに、本明細書で提供されるすべての抗体コンストラクトについて、他の生物からの配列を有する変異体も考慮される。したがって、抗体のヒトバージョンが開示される場合、当業者は、ヒト配列ベースの抗体をマウス、ラット、ネコ、イヌ、ウマなどの配列に変換する方法を理解するであろう。抗体フラグメントにはまた、単鎖scFv、タンデムジ-scFv、ダイアボディ、タンデムトリ-sdcFv、ミニボディなどのいずれかの方向も含まれる。いくらかの実施形態において、例えば、抗体がscFvである場合、異種遺伝子の単一のポリヌクレオチドは、一緒に結合された重鎖および軽鎖の両方を含む単一のポリペプチドをコードする。抗体フラグメントにはまた、ナノボティ(例えば、sdAb、単一の単量体ドメイン、例えば軽鎖がない重鎖の一対の可変ドメインを有する抗体)が含まれる。多重特異性抗体(例えば二重特異性抗体、三重特異性抗体など)は、当技術分野において既知であり、本発明の異種遺伝子の発現産物として考えられる。
【0079】
いくらかの実施形態において、異種遺伝子には、例えば特定の細胞および組織における異種遺伝子の発現を検証するのに有用であり得るレポーター配列が含まれる。導入遺伝子において提供される可能性があるレポーター配列には、β-ラクタマーゼ、β-ガラクトシダーゼ(LacZ)、アルカリホスファターゼ、チミジンキナーゼ、緑色蛍光タンパク質(GFP)、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、ルシフェラーゼ、および当技術分野において周知である他のものをコードするDNA配列が含まれるが限定されない。発現を駆動する調節エレメントに関連付けられている場合、レポーター配列は、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、および免疫組織染色を含む、酵素アッセイ、放射線写真アッセイ、比色アッセイ、蛍光アッセイまたは他の分光アッセイ、蛍光活性化細胞選別アッセイおよび免疫学的アッセイを含む、従来の手段による検出可能なシグナルを提供する。例えば、マーカー配列がLacZ遺伝子である場合、シグナルを運搬するベクターの存在は、β-ガラクトシダーゼ活性についてのアッセイにより検出される。導入遺伝子が緑色蛍光タンパク質またはルシフェラーゼである場合、シグナルを運搬するベクターは、ルミノメータでの色または光生成により視覚的に測定することができる。
【0080】
いくらかの実施形態において、異種遺伝子は、コーディング配列を含まない。shRNA、プロモータ、エンハンサ、DNAをマークする配列(例えば抗体認識用)、PCR増幅部位、制限酵素部位を定義する配列、部位特異的リコンビナーゼ認識部位、核酸に結合および/または修飾するタンパク質により認識される配列、ならびにリンカーなどの非コーディング配列は、ベクターに含まれ得る。異種遺伝子がトランススプライシング分子である場合、非コーディング配列は、標的イントロンを結合する結合ドメインを含む。
【0081】
いくらかの実施形態において、異種遺伝子は、長さが0.1Kbから100Kbである(例えば、異種遺伝子は、長さが0.2Kbから90Kb、0.5Kbから80Kb、1.0Kbから70Kb、1.5Kbから60Kb、2.0Kbから50Kb、2.5Kbから45Kb、3.0Kbから40Kb、3.5Kbから35Kb、4.0Kbから30Kb、4.5Kbから25Kb、4.6Kbから24Kb、4.7Kbから23Kb、4.8Kbから22Kb、4.9Kbから21Kb、5.0Kbから20Kb、5.5Kbから18Kb、6.0Kbから17Kb、6.5Kbから16Kb、7.0Kbから15Kb、7.5Kbから14Kb、8.0Kbから13Kb、8.5Kbから12.5Kb、9.0Kbから12.0Kb、9.5Kbから11.5Kb、もしくは10.0Kbから11.0Kb、例えば、長さが0.1Kbから0.5Kb、0.5Kbから1.0Kb、1.0Kbから2.5Kb、2.5Kbから4.5Kb、4.5Kbから8Kb、8Kbから10Kb、10Kbから15Kb、15Kbから20Kb、またはそれより大きい、例えば、長さが0.1Kbから0.25Kb、0.25Kbから0.5Kb、0.5Kbから1.0Kb、1.0Kbから1.5Kb、1.5Kbから2.0Kb、2.0Kbから2.5Kb、2.5Kbから3.0Kb、3.0Kbから3.5Kb、3.5Kbから4.0Kb、4.0Kbから4.5Kb、4.5Kbから5.0Kb、5.0Kbから5.5Kb、5.5Kbから6.0Kb、6.0Kbから6.5Kb、6.5Kbから7.0Kb、7.0Kbから7.5Kb、7.5Kbから8.0Kb、8.0Kbから8.5Kb、8.5Kbから9.0Kb、9.0Kbから9.5Kb、9.5Kbから10Kb、10Kbから10.5Kb、10.5Kbから11Kb、11Kbから11.5Kb、11.5Kbから12Kb、12Kbから12.5Kb、12.5Kbから13Kb、13Kbから13.5Kb、13.5Kbから14Kb、14Kbから14.5Kb、14.5Kbから15Kb、15Kbから15.5Kb、15.5Kbから16Kb、16Kbから16.5Kb、16.5Kbから17Kb、17Kbから17.5Kb、17.5Kbから18Kb、18Kbから18.5Kb、18.5Kbから19Kb、19Kbから19.5Kb、19.5Kbから20Kb、20Kbから21Kb、21Kbから22Kb、22Kbから23Kb、23Kbから24Kb、24Kbから25Kb、またはそれより大きい、例えば、長さが約4.5Kb、約5.0Kb、約5.5Kb、約6.0Kb、約6.5Kb、約7.0Kb、約7.5Kb、約8.0Kb、約8.5Kb、約9.0Kb、約9.5Kb、約10Kb、約11Kb、約12Kb、約13Kb、約14Kb、約15Kb、約16Kb、約17Kb、約18Kb、約19Kb、約20Kb、またはそれより大きい)。
【0082】
異種遺伝子に加えて、本明細書に記載のプラスミドベクターは、標的細胞における転写、翻訳、および/または発現を可能にする方法で異種遺伝子に動作可能に結合している従来の制御エレメントを含むことができる。
【0083】
発現制御配列には、適切な転写開始、終結、プロモータ、およびエンハンサ配列;効率的なRNA処理シグナル、例えばスプライシングおよびポリアデニル化(ポリA)シグナル;細胞質mRNAを安定化する配列;転写効率を強化する配列(すなわちコザックコンセンサス配列);タンパク質安定性を強化する配列;およびコードされた産物の分泌を強化する配列が含まれる。天然型、構成的、誘導性、および/または組織特異的であるプロモータを含む種々の発現制御配列は、当技術分野において既知であり、利用することができる。得られた転写物が所望のタンパク質またはポリペプチドに翻訳される可能性があるように、プロモータ領域がその遺伝子の転写を実行することができる場合、プロモータ領域は、異種遺伝子に動作可能に結合している。本明細書に記載のベクターの一部として有用なプロモータには、構造的および誘導性プロモータが含まれる。
【0084】
網膜特異的遺伝子発現を誘導するヒト配列に基づくプロモータの例には、桿体および錐体のためのロドプシンキナーゼ(GRK1)、錐体のみのためのPR2.1、および網膜色素上皮のためのRPE65が含まれる。
【0085】
いくらかの実施形態において、遺伝子発現は、ヒトGRK1プロモータを使用して達成することができる。したがって、ある特定の実施形態において、プロモータは、ヒトロドプシンキナーゼ(GRK1)プロモータである。
【0086】
いくらかの実施形態において、本開示のGRK1プロモータ配列は、292のヌクレオチド長を含むか、それからなり、GRK1遺伝子のヌクレオチド-109から+183を含むか、それからなる。
【0087】
いくらかの実施形態において、GRK1プロモータベクターは、異種遺伝子の上流のプラスミドベクターに位置している可能性がある。例えば、GRK1は、異種遺伝子の5’末端部分に動作可能に結合している可能性がある。
【0088】
プラスミドベクターはまた、異種遺伝子の下流の3’方向に位置したヒトスカフォールド/マトリックスアタッチメント領域S/MARエンハンサを含むことができる。S/MARエレメントは、核マトリックスとの相互作用を通じて長期的な遺伝子発現を確立するために使用され、ヘテロクロマチンコアから外側に延びるクロマチンループドメインを生成する。S/MARエレメントが明らかなコンセンサスまたは認識可能な配列を含まないが、それらの最も一貫した特徴は、全体的に高いA/T含有量であり、C塩基は1つの鎖で優勢であるように見える(Bode J,Schlake T,RiosRamirez M,Mielke C,Stengart M,Kay VおよびKlehrWirth D,「Scaffold/matrix-attached regions:structural propreties creating transcriptionally active loci」,Structural and Functional Organization of the Nuclear Matrix:International Review of Citology,162A:389453,1995)。これらの領域は、鎖が分離しやすい可能性がある曲がった二次構造を形成する傾向がある。それらは多くの場合、塩基不対領域(BUR)と呼ばれ、鎖分離の核形成点を表す可能性のあるコア巻き戻しエレメント(CUE)を含む(Benham C and al.,Stress induced duplex DNA destabilization in scaffold/matrix attachment regions,J.MoL BioL,274:181-196,1997)。いくらかの単純ATリッチ配列モチーフは、多くの場合MAR配列内に見出されているが、ほとんどの場合、それらの機能的重要性および潜在的な作用機序は不明のままである。
【0089】
本明細書に記載されるようなS/MARエンハンサは、1つまたは複数(例えば2つ、3つまたは4つ)の特徴、例えば自然に発生する「S/MAR」を有する上述したものを共有するヌクレオチド配列である。S/MARエンハンサは、前記S/MARにより影響された任意の遺伝子のタンパク質発現を促進する少なくとも1つの特性を有する。S/MARエンハンサはまた、一般に、好ましくはS/MAR活性を呈示する、特に転写調節、好ましくは増強活性を呈示するが、例えば発現安定化活性および/または他の活性も呈示する、単離および/または精製された核酸である特徴を有する。
【0090】
S/MARエンハンサは、異種遺伝子が動作可能に結合されている、または動作可能に結合することができるプロモータ領域の下流に挿入することができる。しかし、ある特定の実施形態において、S/MARエンハンサが目的の異種遺伝子配列の上流、下流、またはすぐ下流に位置していることが好都合である。シスおよび/またはトランスの両方の他の多重S/MAR配置はまた、本開示の範囲内である。
【0091】
タンパク質をコードする異種遺伝子の場合、ヒトポリアデニル化(ポリA)シグナル配列は、異種遺伝子の後または下流に挿入される可能性がある。例えば異種遺伝子の3’に配置されたポリアデニル化シグナル配列により、宿主因子が転写中に初期のmRNAの末端にポリアデノシン(ポリA)テールを追加することができる。ポリAテールは、mRNAを酵素的分解から保護し、また翻訳を支援する300以下のアデノシンリボヌクレオチドのストレッチである。したがって、本明細書に記載のプラスミドベクターは、ヒトベータグロビンまたはウサギベータグロビンポリAシグナル、サルウイルス40(SV40)初期または後期ポリAシグナル、ヒトインスリンポリAシグナル、またはウシ成長ホルモンポリAシグナルなどのポリAシグナル配列を含む可能性がある。一実施形態において、ポリAシグナル配列は、ヒトベータグロビンポリAシグナルである。
【0092】
図1に図解されるように、GRK1プロモータ、異種遺伝子、ポリAシグナル配列、およびS/MARエンハンサは、異種遺伝子の上流の5’方向でGRK1プロモータ、ならびに異種遺伝子から下流の3’方向でポリAシグナル配列およびS/MARエンハンサの順に、またはその逆順に、プラスミドベクター上の適切に追加された制限酵素部位を使用してクローン化することが可能である。例えば、プラスミドベクターは、5’から3’方向で動作可能に結合した:(i)ヒトGRK1プロモータ、(ii)異種遺伝子、(iii)ポリアデニル化部位、および(iv)S/MARエンハンサを含む可能性がある。
【0093】
いくらかの実施形態において、本明細書で提供されたプラスミドベクターは、例えば、ITR、LTR、または、例えば、環化の結果として他の末端構造に由来している可能性がある末端反復配列を含む。末端反復配列は、少なくとも10塩基対(bp)長(例えば、10bpから500bp、12bpから400bp、14bpから300bp、16bpから250bp、18bpから200bp、20bpから180bp、25bpから170bp、30bpから160bp、または50bpから150bp、例えば、10bpから15bp、15bpから20bp、20bpから25bp、25bpから30bp、30bpから35bp、35bpから40bp、40bpから45bp、45bpから50bp、50bpから55bp、55bpから60bp、60bpから65bp、65bpから70bp、70bpから80bp、80bpから90bp、90bpから100bp、100bpから150bp、150bpから200bp、200bpから300bp、300bpから400bp、または400bpから500bp、例えば、10bp、11bp、12bp、13bp、14bp、15bp、16bp、17bp、18bp、19bp、20bp、21bp、22bp、23bp、24bp、25bp、26bp、27bp、28bp、29bp、30bp、31bp、32bp、33bp、34bp、35bp、36bp、37bp、38bp、39bp、40bp、41bp、42bp、43bp、44bp、45bp、46bp、47bp、48bp、49bp、50bp、51bp、52bp、53bp、54bp、55bp、56bp、57bp、58bp、59bp、60bp、61bp、62bp、63bp、64bp、65bp、66bp、67bp、68bp、69bp、70bp、71bp、72bp、73bp、74bp、75bp、76bp、77bp、78bp、79bp、80bp、81bp、82bp、83bp、84bp、85bp、86bp、87bp、88bp、89bp、90bp、91bp、92bp、93bp、94bp、95bp、96bp、97bp、98bp、99bp、100bp、101bp、102bp、103bp、104bp、105bp、106bp、107bp、108bp、109bp、110bp、111bp、112bp、113bp、114bp、115bp、116bp、117bp、118bp、119bp、120bp、121bp、122bp、123bp、124bp、125bp、126bp、127bp、128bp、129bp、130bp、131bp、132bp、133bp、134bp、135bp、136bp、137bp、138bp、139bp、140bp、141bp、142bp、143bp、144bp、145bp、146bp、147bp、148bp、149bp、150bp、またはそれ以上)であり得る。
【0094】
いくらかの実施形態において、1つまたは複数(例えば1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、またはそれ以上)の核酸は、2つの隣接するエレメント間で重複する。例えば、第1のエレメントの3’末端の1つまたは複数の核酸が、その3’末端に結合した第2のエレメントの5’末端の1つまたは複数の核酸と一致するいくらかの実施形態において、重複した核酸は、繰り返す必要がない。
【0095】
本開示は、本明細書に記載の核酸配列のコドン最適化変異体を包含する。コドン最適化は、遺伝コードにおける冗長性を利用して、コードされたタンパク質の同じアミノ酸配列を維持しながら、ヌクレオチド配列が変更するのを可能にする。
【0096】
コドン最適化は、コードされたタンパク質の発現における増加または減少を促進するために実行することができる。これは、ヌクレオチド配列内のコドン使用を特定の細胞のタイプのものに合わせて調整し、したがって、その細胞のタイプにおける特定のtRNAの相対的存在量の偏りに対応する細胞のコドン偏りを利用することにより実行することができる。対応するtRNAの相対的存在量に一致するように調整するようにヌクレオチド配列におけるコドンを変更することにより、発現を高めることができる。逆に、対応するtRNAが特定の細胞のタイプにおいて稀であることが既知であるコドンを選択することにより発現を低下させることができる。核酸配列のコドン最適化のための方法は、当技術分野において既知であり、当業者は熟知している。
【0097】
本明細書に記載の他の実施形態は、本明細書に記載の1つまたは複数のプラスミドベクターと複合体化した複数のpH応答性多官能性カチオン性脂質を含む自己組織化ナノ粒子に関する。pH応答性多官能性カチオン性脂質は、プラスミドベクターを凝縮することができ、眼の細胞にプラスミドベクターを送達することができる。pH応答性多官能性カチオン性脂質は、プラスミドベクターと複合体化することができるプロトン化可能なアミノヘッド基、疎水性縮合に参加することができる脂肪酸または脂質テール、自己酸化を介してジスルフィド架橋を形成することができる2つのシステイン残基、ならびに光受容体間レチノイド結合タンパク質などの網膜または視覚のタンパク質を標的化するおよび/またはそれに結合することができる任意選択の標的基を含むことができる。
【0098】
プロトン化可能なアミノヘッド基は、眼の細胞にプラスミドベクターを送達するために、プラスミドベクターと複合体化して自己組織化ナノ粒子を形成することができる。ヘッド基内のアミンは、核酸のエンドソーム脱出を改善するために重要である担体系の本質的なpH応答性特性に寄与する。アミノヘッド基の大きなプロトン化は、細胞取り込み後のエンドソームおよびリソソーム部位の比較的酸性である環境(pH=5~6)で生じる可能性がある。これは、プラスミドベクターペイロードの効率的な細胞基質放出に必要な二重層の不安定化およびナノ粒子の電荷中和イベントを促進する、カチオン担体とエンドソーム/リソソーム膜のアニオンリン脂質との間の静電相互作用を強化する。カチオン担体のアミンの数、したがって全pKaに影響することにより、ヘッド基の選択は、最終的に、そのようなプロトン化が生じることができる程度を決定することができる。担体系のpH応答性は、ナノ粒子が細胞外膜の完全性に影響したり、細胞死を引き起したりするのではなく、エンドソームおよびリソソーム膜と選択的に融合し、不安定化することができるようにするために不可欠である。
【0099】
システイン残基は、自己酸化を介してジスルフィド架橋を形成することができ、チオール基を含むものなど、他の化合物の官能基と反応することができる。プラスミドベクターがpH応答性多官能性カチオン性脂質と複合体化して自己組織化ナノ粒子を形成すると、チオール基は、自己酸化によりジスルフィド(S-S)結合または架橋を生成し、オリゴマーおよびポリマーまたは架橋を形成することができる。ジスルフィド結合は、プラスミドベクターおよびpH応答性多官能性カチオン性脂質の自己組織化ナノ粒子を安定化させることができ、ナノ粒子が細胞内に入ると、プラスミドベクターの放出を達成するのを支援することができる。
【0100】
例えば、還元細胞質におけるナノ粒子内のジスルフィド結合の開裂は、プラスミドベクターの細胞質特異的放出を促進することができる。pH応答性多官能性カチオン性脂質およびプラスミドベクターを含むナノ粒子は、血漿中、非常に低い遊離チオール濃度(例えば15μM)で安定している。ナノ粒子が標的細胞に組み込まれている場合、細胞(例えば原形質)に存在する高濃度のチオールは、核酸の解離および放出を促進するためにジスルフィド結合を還元する。
【0101】
ジスルフィド結合は、プラスミドベクターとの複合体化の前または酸化剤の存在下での複合体化中に、同じまたは異なるpH応答性多官能性カチオン性脂質を反応させることにより容易に生成することができる。酸化剤は、空気、酸素または他の化学酸化剤であり得る。選択されたジチオール化合物および酸化状態に応じて、ジスルフィド形成の度合いは、遊離ポリマーまたはプラスミドベクターとの複合体で変化することができる。したがって、2つのシステイン残基を含むpH応答性多官能性カチオン性脂質は単量体であり、単量体は、反応条件に応じて二量体化、オリゴマー化、または重合化することができる。
【0102】
脂肪酸または脂質テール基は、疎水性縮合に参加することができ、プラスミドベクターを有するコンパクトで安定したナノ粒子を形成するのを支援することができ、エンドソームおよびリソソーム部位からのナノ粒子のpH応答性脱出を促進するために両親媒性の特性を導入することができる。これは、化合物がインビボ送達デバイスとして使用される場合に特に有用である。
【0103】
一般に、ナノ粒子のトランスフェクション効率は、脂質テール基のアルキル鎖長および飽和の増加に伴って減少することが示されている。飽和の場合、脂肪族鎖が短い(C12およびC14)と、より高い膜間脂質混合が好ましく、インビボと比較してインビトロでより良好なトランスフェクション効率を可能にすると報告されているが、より長い鎖(C16およびC18)ではその逆が当てはまる。典型的に、14より多い炭素鎖の飽和脂肪酸は、不飽和のものより上昇した相転移温度および全体的な低い流動性のために核酸トランスフェクションに適していない。しかし、主に、ある程度の剛性が、脂質ナノ粒子製剤におけるコレステロールの広範な使用により証明されるように、粒子安定性に必要であるので、不飽和性および脂質流動性における増加が、トランスフェクション効率と逆相関する限界点が存在することが発見された。
【0104】
いくらかの実施形態において、pH応答性多官能性カチオン性脂質は、(1-アミノエチル)イミノビス[N-(オレオイルシステイニル-1-アミノ-エチル)プロピオンアミド)(ECO)またはその類縁体もしくは誘導体を含むことができる。ECOの類縁体および誘導体は、例えばECL、SCO、TCO、EHCO、SHCOを含むことができ、それらの全体が参照により本明細書にすべて組み込まれている、米国特許出願公開第2010/0004316号、第2016/0145610号、および第2019/0091347号、ならびに米国特許第10,792,374号に記載されている。他のpH応答性多官能性カチオン性脂質は、それらの全体が参照によりすべて組み込まれている、「A novel environment-sensitive biodegradable polydisulfide with protonable pendants for nucleic acid deliver」,Lu et al.,J Control Release,120(3):250-8(2007);「New amphiphilic carriers forming pH-sensitive nanoparticles for nucleic acid delivery」,Lu et al.,Langmuir,26(17)13874-82(2010)lおよび「Design and evaluation of new-pH-sensitive amphiphilic cationic lipids for SiRNA delivery,Lu et al.J Control Release,171(3):296-307(2013)に記載されている。
【0105】
いくらかの実施形態において、pH応答性多官能性カチオン性脂質は、光受容体間レチノイド結合タンパク質などの網膜または視覚のタンパク質を標的化するおよび/またはそれに結合する標的基を含むことができる。標的基は、例えばシステイン残基のチオール基により、pH応答性多官能性カチオン性脂質のシステイン残基に結合することができる。標的基は、例えばレチニルアミン(例えば、全トランス型レチニルアミン)またはレチノイド誘導体、例えば(1R)-3-アミノ-1-[3-(シクロヘキシルメトキシ)フェニル]プロパン-1-オール;塩酸塩などのレチノイドを含むことができる。いくらかの実施形態において、標的基は、全トランス型レチニルアミンである。他の実施形態において、標的基は、(1R)-3-アミノ-1-[3-(シクロヘキシルメトキシ)フェニル]プロパン-1-オール;塩酸塩である。さらに他の実施形態において、標的基は、合成レチノイド誘導体、例えば、それらの全体が参照によりすべて組み込まれている、米国特許第7,951,841号または第7,982,071号および国際出願番号PCT/US2015/062343に記載されている合成レチノイド誘導体である。
【0106】
例えば、標的基は、式:
【0107】
【化3】
【0108】
(式中、Rは、環状または多環状の環であり、環は、置換または非置換のアリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、またはヘテロシクリルである;
n=1~3;
、R、R、R、R、およびRは、それぞれ個々に水素、置換または非置換C~C24アルキル、C~C24アルケニル、C~C24アルキニル、C~C20アリール、ヘテロアリール、5~6の環原子を含むヘテロシクロアルケニル(環原子の1~3は、独立してN、NH、N(C~Cアルキル)、NC(O)(C~Cアルキル)、O、およびSから選択される)、C~C24アルカリル、C~C24アラルキル、ハロ、-Si(C~Cアルキル)、ヒドロキシル、スルフヒドリル、C~C24アルコキシ、C~C24アルケニルオキシ、C~C24アルキニルオキシ、C~C20アリールオキシ、アシル、アシルオキシ、C~C24アルコキシカルボニル、C~C20アリールオキシカルボニル、C~C24アルキルカルボナト、C~C20アリールカルボナト、カルボキシ、カルボキシラト、カルバモイル、C~C24アルキル-カルバモイル、アリールカルバモイル、チオカルバモイル、カルバミド、シアノ、イソシアノ、シアナト、イソシアナト、イソチオシアナト、アジド、ホルミル、チオホルミル、アミノ、C~C24アルキルアミノ、C~C20アリールアミノ、C~C24アルキルアミド、C~C20アリールアミド、イミノ、アルキルイミノ、アリールイミノ、ニトロ、ニトロソ、スルホ、スルホナト、C~C24アルキルスルファニル、アリールスルファニル、C~C24アルキルスルフィニル、C~C20アリールスルフィニル、C~C24アルキルスルホニル、C~C20アリールスルホニル、ホスホノ、ホスホナート、ホスフィナート、ホスホ、またはホスフィノまたはそれらの組み合わせであり、
およびRは、結合して環状または多環状の環を形成することができ、環は、置換または非置換のアリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、またはヘテロシクリルである)
の一級アミン化合物;およびその薬学的に許容される塩を含むことができる。
【0109】
標的基は、ナノ粒子の形成の前またはその間に、pH応答性多官能性カチオン性脂質のシステイン残基のチオール基に直接またはリンカー(例えばポリエチレングリコール)を介して間接的に共役することができる。標的基の選択に応じて、標的基は、システイン残基のチオール基のいずれかに共役結合することができる。
【0110】
一態様において、標的基は、リンカーによりpH応答性多官能性カチオン性脂質に間接的に結合している。リンカーの例には、ポリアミン基、ポリアルキレン基、ポリアミノ酸基またはポリエチレングリコール基が含まれるがこれらに限定されない。リンカーおよびリンカーの分子量の選択は、所望の特性に応じて変更することができる。一態様において、リンカーは、分子量が500~10,000、500~9,000、500~8,000、500~7,000、または2,000~5,000のポリエチレングリコールである。ある特定の態様において、標的基は、標的基がリンカーに共有結合するような方法で最初にリンカーと反応する。例えば、リンカーは、標的基に存在するアミノ基と反応することができる1つまたは複数の基を保持することができる。リンカーはまた、本明細書に記載の化合物と反応し、共有結合を形成する追加の基を保持する。例えば、リンカーは、チオール基と容易に反応するマレイミド基を保持することができる。リンカーに存在する官能基の選択は、化合物および標的基に存在する官能基に応じて変更することができる。一態様において、標的基は、例えばレチニルアミン(例えば、全トランス型レチニルアミン)またはレチノイド誘導体、例えば(1R)-3-アミノ-1-[3-(シクロヘキシルメトキシ)フェニル]プロパン-1-オール;塩酸塩などのポリエチレングリコールに共有結合しているレチノイドである。
【0111】
いくらかの実施形態において、リンカーは、ヒドラゾンをリンカーに組み込むことにより形成されるような酸不安定結合を含むことができ、それは、網膜または網膜色素上皮細胞などの細胞に取り込まれた後、エンドリソーム環境で加水分解される。例えば、リンカーは、共有加水分解性エステル、共有加水分解性アミド、共有光分解性ウレタン、共有加水分解性エステル、または共有加水分解性アクリル酸チオール結合の少なくとも1つにより化合物に共有結合することができる。化合物の細胞取り込みに続いて、後期エンドソーム内で、ますます酸性になる環境は、酸不安定結合を開裂してPEGなどのポリマーリンカーの脱落を促進することができ、化合物/核酸複合ナノ粒子のコアを曝露することができる。
【0112】
いくらかの実施形態において、pH応答性多官能性カチオン性脂質は、式(I):
【0113】
【化4】
【0114】
(式中、Rは、アルキルアミノ基または少なくとも1つの芳香族基を含む基である;RおよびRは、独立して、例えば脂肪酸に由来する脂肪族基または疎水基である;
およびRは、独立してH、置換もしくは非置換アルキル基、アルケニル基、アシル基、または芳香族基であるか、ポリマー、標的基、もしくは検出可能な部分を含む;a、b、c、およびdは、独立して1から10の整数である(例えば、a、b、c、およびdはそれぞれ2である);およびその薬学的に許容される塩を有することができる。
【0115】
いくらかの実施形態において、Rは:
【0116】
【化5】
【0117】
(式中、R、R、R、R、R10、R11、R12、R13、およびR14は、独立して水素、アルキル基、疎水基、または窒素含有置換基である;ならびにe、f、g、i、j、k、およびlは、1から10の整数である)
の少なくとも1つを含むことができる。
【0118】
例えば、Rは、CHNH、CHCHNH、CHCHCHNH、CHCHCHCHNH、CHCHCHCHCHNH、CHNHCHCHCHNH,CHCHNHCHCHCHNH、CHCHCHNHCHCHCHCHNHCHCHCHNH、CHCHNHCHCHCHCHNH、CHCHNHCHCHCHNHCHCHCHHN、またはCHCHNH(CHCHNH)CHCHNHの少なくとも1つを含むことができる(式中、dは、0から10である)。
【0119】
いくらかの実施形態において、Rは、CHCHNHまたはCHCHNHCHCHCHNHCHCHCHHNであり得る。
【0120】
他の実施形態において、RおよびRは、独立してオレイン酸またはリノール酸などの脂肪酸に由来する脂肪族基または疎水基であり、同じまたは異なっている。リノール酸における追加の二重結合は、炭化水素骨格に余分なキンクを導入し、オレイン酸よりも広い円錐形を化合物に与え、その流動性を高める。ナノ粒子構造に組み込まれた場合、余分の不飽和度は、細胞取り込みの切迫した膜融合事象中、六方相を形成する傾向を高める。
【0121】
いくらかの実施形態において、RまたはRの少なくとも1つは、レチニルアミン(例えば、全トランス型レチニルアミン)またはレチノイド誘導体、例えば(1R)-3-アミノ-1-[3-(シクロヘキシルメトキシ)フェニル]プロパン-1-オール;塩酸塩などのポリマーリンカー、例えばポリエチレングリコールに共有結合しているレチノイドを含む。
【0122】
一般式Iを有するpH応答性多官能性カチオン性脂質は、当技術分野において既知の固相技術を使用して合成することができる。一般に、アプローチには、ジチオール化合物を生成するための体系的保護/伸長/脱保護が含まれる。疎水基は、オレイン酸をシステイン残基に存在するアミノ基と反応させることにより生成される。標的基は、PEGスペーサに共役し、その後マイケル付加反応を介して化合物に共役する。
【0123】
本明細書に記載のpH応答性多官能性カチオン性脂質はいずれも存在することができるか、その塩に変換され得る。一態様において、塩は、薬学的に許容される塩である。塩は、遊離酸を適切な量の化学的または薬学的に許容される塩基で処置することにより調製することができる。代表的な化学的または薬学的に許容される塩基は、水酸化アンモニウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化第一鉄、水酸化亜鉛、水酸化銅、水酸化アルミニウム、水酸化第二鉄、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、エタノールアミン、2-ジメチルアミノエタノール、2-ジエチルアミノエタノール、リジン、アルギニン、ヒスチジンなどである。一態様において、反応は、水単独または不活性水混和性有機溶媒と組み合わせた中、約0℃から100℃の温度、例えば室温で実行される。化合物の使用される塩基に対するモル比は、任意の特定の塩について望ましい比を提供するように選択される。例えば遊離酸出発物質のアンモニウム塩を調製するため、出発物質は、おおよそ1等量の塩基で処理され、塩を得ることができる。
【0124】
別の態様において、本明細書に記載のpH応答性多官能性カチオン性脂質はいずれも存在することができるか、そのルイス塩基を用いて塩に変換することができる。化合物は、適切な量のルイス塩基を用いて処理することができる。代表的なルイス塩基は、水酸化アンモニウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化第一鉄、水酸化亜鉛、水酸化銅、水酸化アルミニウム、水酸化第二鉄、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、エタノールアミン、2-ジメチルアミノエタノール、2-ジエチルアミノエタノール、リジン、アルギニン、ヒスチジン、THF、エーテル、チオール試薬、アルコール、チオールエーテル、カルボン酸塩、フェノラート、アルコキシド、水などである。一態様において、反応は、水単独または不活性水混和性有機溶媒と組み合わせた中、約0℃から100℃の温度、例えば室温で実行される。化合物の使用される塩基に対するモル比は、任意の特定の複合体について望ましい比を提供するように選択される。例えば遊離酸出発物質のアンモニウム塩、出発物質は、おおよそ1等量の化学的または薬学的に許容されるルイス塩基で処理され、複合体を得ることができる。
【0125】
pH応答性多官能性カチオン性脂質がカルボン酸基を保持する場合、これらの基は、当技術分野において既知の技術を使用して薬学的に許容されるエステルまたはアミドに変換することができる。代わりに、エステルがデンドリマーに存在する場合、エステルは、エステル交換技術を使用して薬学的に許容されるエステルに変換することができる。
【0126】
プラスミドベクターは、プラスミドベクターおよびpH応答性多官能性カチオン性脂質を混合することにより、本明細書に記載のpH応答性多官能性カチオン性脂質に複合体化することができる。反応のpHは、本明細書に記載のpH応答性多官能性カチオン性脂質に存在するアミノ基をカチオン基に変換するように修飾することができる。例えば、pHはアミノ基をプロトン化するように調節することができる。pH応答性多官能性カチオン性脂質でのカチオン基の存在で、プラスミドは、化合物に静電気的に結合(すなわち複合体化)することができる。一態様において、pHは、6から7.4である。別の態様において、N/P比は、0.5から100であり得、Nは、正電荷を形成することができる化合物に存在するアミノまたは窒素原子の数であり、Pは、プラスミドベクターに存在するリン酸基の数である。したがって、pH応答性多官能性カチオン性脂質をヘッド基の適切な数のアミノ基で修飾することにより、プラスミドベクターとpH応答性多官能性カチオン性脂質との間の結合(例えば結合のタイプおよび強度)を調整することができる。N/P比は、プラスミドベクターが送達されるべき細胞のタイプに応じて調節することができる。細胞が光受容体であるいくらかの実施形態において、N/P比は、少なくとも約6、少なくとも約10、または少なくとも約15であり得る。他の実施形態において、N/P比は、約6から約20であり得る。いくらかの実施形態において、自己組織化ナノ粒子は、アミン対リン酸(N/P)比が約4から約12、好ましくは約6から約10であり得る。
【0127】
いくらかの実施形態において、自己組織化ナノ粒子は、直径が約1000ナノメートル以下、または約50nmから約500nm、約100nmから約400nm、または約150nmから約300nmであり得る。
【0128】
他の態様において、本明細書に記載の自己組織化ナノ粒子は、プラスミドベクターが、エンドソームおよび/またはリソソーム部位をエンドソーム-リソソームpHで脱出するようにデザインすることができる。例えば、自己組織化ナノ粒子は、その構造および両親媒性がエンドソーム-リソソームpH(5.0~6.0)で変化し、エンドソーム-リソソーム膜を破壊し、ナノ粒子が細胞質に入ることを可能にするようにデザインすることができる。一態様において、本明細書に記載の自己組織化ナノ粒子の特定のエンドソーム-リポソーム膜破壊の能力は、プロトン化可能なアミンおよび親油性基の数および構造を変更することによりそれらのpH応答性両親媒性を修飾することによって調整することができる。例えば、プロトン化可能なアミノ基の数が減少すると、pH応答性多官能性カチオン性脂質により中性pHで生成されるナノ粒子の両親媒性を低下させることができる。一態様において、本明細書に記載のpH応答性多官能性カチオン性脂質は、1から50、1から40、1から30、1から20、1から10、1から8、1から6、1から4、または2のプロトン化可能なアミノ基または置換されたアミノ基を有する。pH応答性多官能性カチオン性脂質およびpH応答性多官能性カチオン性脂質により生成されたナノ粒子のpH応答性両親媒性は、ナノ粒子の全体的なpKaを微調整するために使用することができる。生理的pHでのナノ粒子の低両親媒性は、核酸/MFC系の非特異的細胞膜破壊および非特異的組織取り込みを最小化することができる。ある特定の態様において、担体は、生理的pHで低両親媒性であり、エンドソーム-リソソームpHで高両親媒性であり、ナノ粒子での選択的エンドソーム-リソソーム膜破壊のみを引き起こすことが望ましい。
【0129】
場合によっては、ナノ粒子複合体の表面は、例えば、ナノ粒子の重合していない遊離チオールを反応させることによりポリエチレングリコールを共有結合的に組み込むことにより修飾することができ、インビボでの非特異的組織取り込みを低下させることができる。例えばPEG-マレイミドは、遊離チオール基と迅速に反応する。PEGの分子量は、担体に付与される所望の親水性の量に応じて変更することができる。担体のPEG修飾はまた、細胞による取り込み時に核酸で構成されたナノ粒子を酵素的分解(例えばエンドヌクレアーゼ)から保護することができる。
【0130】
いくらかの実施形態において、ナノ粒子の表面に提供された、または結合した標的基の量またはモルパーセントは、ナノ粒子を形成する化合物の約1モル%から約10モル%、例えばナノ粒子を形成する化合物の約1モル%から約5モル%(例えば約2.5モル%)であり得る。
【0131】
好都合には、化合物を使用して形成された多官能性pH応答性担体は、被験者に全身投与された場合、改善された安定性を有し、縮合したプラスミドベクターを変性から保護し、細胞取り込み時にエンドソーム脱出および細胞基質放出を促進する。
【0132】
プラスミドベクターおよび/または自己組織化ナノ粒子は、医薬組成物に製剤化することができる。これらの組成物は、プラスミドベクターおよび/または自己組織化ナノ粒子に加えて、薬学的に許容される担体、希釈剤、賦形剤、緩衝液、安定剤または当技術分野において周知の他の物質を含むことができる。そのような物質は、非毒性である必要があり、プラスミドベクターおよび/または自己組織化ナノ粒子の有効性に干渉しない必要がある。担体または他の物質の正確な性質は、投与経路、例えば網膜下、直接網膜、脈絡膜上または硝子体内注射に応じて当業者により決定することができる。
【0133】
医薬組成物は液状であり得る。液体医薬組成物は、液体担体、例えば水、石油、動物油または植物油、鉱油または合成油を含む。生理食塩水溶液、塩化マグネシウム、デキストロースもしくは他の糖類溶液、またはグリコール、例えばエチレングリコール、プロピレングリコールもしくはポリエチレングリコールを含めることができる。
【0134】
患部への注射のために、医薬組成物は、発熱物質を含まず、適切なpH、等張性および安定性を有する水溶液の形状であり得る。当業者は、例えば塩化ナトリウム注射液、リンゲル注射液もしくは乳酸リンゲル注射液またはTMN200などの等張ビヒクルを使用して適切な溶液を十分に調整することができる。保存料、安定剤、緩衝液、抗酸化剤および/または他の添加物は、必要に応じて含めることができる。
【0135】
緩衝液は、遺伝子治療のための貯蔵後および注射デバイスの通過後、本明細書に記載のプラスミドベクターおよびナノ粒子の安定性および生体適合性に影響を有する可能性がある。いくらかの実施形態において、本明細書に記載のプラスミドベクターおよび/または自己組織化ナノ粒子は、TMN200緩衝液に希釈して、生体適合性および安定性を維持することができる。TMN200緩衝液は、20mMトリス(pHを8.0に調整)、1mM MgClおよび200mM NaClをpH8で含む。
【0136】
いくらかの実施形態において、医薬組成物は、異なるまたは異なっている貯蔵温度下で、自己組織化ナノ粒子の安定性を強化するのに有効な量のスクロースを含むことができる。異なるまたは異なっている貯蔵温度は、約-20℃から約4℃の範囲であり得る。例えば、医薬組成物は、約5%から約20%のスクロースを含むことができる。
【0137】
一実施形態において、医薬組成物は、実質的に中性のpHを有することができる。実質的に中性のpHは、約6.0から約8.0、約6.2から約7.8、約6.5から約7.5、約6.8から約7.2、または約7である。
【0138】
いくらかの実施形態において、医薬組成物は、スクロース以外の賦形剤を含まない。
【0139】
他の実施形態において、医薬組成物は、約50ng/μlから約500ng/μl、約100ng/μlから約300ng/μl、または約150ng/μlから約250ng/μlの自己組織化ナノ粒子の濃度を含む。
【0140】
遅延放出のため、プラスミドベクターおよび/または自己組織化ナノ粒子は、場合によっては、徐放性用に製剤化されている医薬組成物に、例えば当技術分野において既知の方法にしたがって生体適合性のあるポリマーから形成されたマイクロカプセル内に含まれる可能性がある。
【0141】
本明細書に記載のプラスミドベクター、自己組織化ナノ粒子、または医薬組成物は、それを必要とする被験者における異種遺伝子のエピソーム発現を誘導する方法において使用することができる。方法は、一般に、細胞を本明細書に記載のプラスミドベクター、自己組織化ナノ粒子、または医薬組成物と接触させることを含み、プラスミドベクターは、細胞内に取り込まれる。一態様において、本明細書に記載のプラスミドベクター、自己組織化ナノ粒子、または医薬組成物は、遺伝子疾患を処置するために欠落または不在の遺伝子産物を供給することにより、または遺伝子発現をサイレンシングすることにより、遺伝子疾患の治療としてのプラスミドベクターの送達を容易にすることができる。当技術分野において既知の技術を使用して、本明細書に記載の化合物が核酸を細胞に送達させる効率を測定することができる。
【0142】
いくらかの実施形態において、標的細胞は、眼内の細胞であり得る。眼内の細胞の例には、神経節細胞層(GCL)、内網状層内側(IPL)、内顆粒層(INL)、外網状層(OPL)、外顆粒層(ONL)、桿体および錐体の外節(OS)、網膜色素上皮(RPE)、桿体および錐体の内節(IS)、結膜の上皮、虹彩、毛様体、角質、および眼皮脂腺の上皮に位置する細胞が含まれ得る。
【0143】
好都合には、プラスミドベクター、自己組織化ナノ粒子、または医薬組成物は、形質導入された細胞において、ABCA4などの完全長網膜タンパク質の驚くべき高レベルの発現を提供し、網膜タンパク質の不要な切断フラグメントの生成が制限されている。
【0144】
いくらかの実施形態において、本明細書に記載のプラスミドベクターまたは自己組織化ナノ粒子は、視覚を増強および/または正常な視覚を回復するのに有効な量で、視覚サイクルタンパク質、例えばABCA4またはRPE65の発現を増加させることができる。前述の方法のいずれかのある特定の実施形態において、本明細書に記載のプラスミドベクターまたは自己組織化ナノ粒子は、遺伝性網膜障害(IRD)(例えばシュタルガルト病またはLCA)のナンセンスまたはミスセンス突然変異に関連する視覚サイクルタンパク質(例えばABCA4またはRPE65)の発現を増加させる可能性がある。例えば、ある特定の実施形態において、細胞は、ミスセンスまたはナンセンス突然変異のない細胞と比較して、約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、または約90%の遺伝子産物を含む。ある特定の実施形態において、細胞は、ミスセンスまたはナンセンス突然変異のない細胞と比較して、約5%から約80%、約5%から約60%、約5%から約40%、約5%から約20%、約5%から約10%、約10%から約80%、約10%から約60%、約10%から約40%、約10%から約20%、約20%から約80%、約20%から約60%、約20%から約40%、約40%から約80%、約40%から約60%、または約60%から約80%の遺伝子産物を含む。ある特定の実施形態において、細胞内に検出可能な遺伝子産物はない。遺伝子産物の量または発現は、当技術分野において既知の任意の方法、例えばウェスタンブロットまたはELISAにより測定することができる。
【0145】
ある特定の実施形態において、遺伝子は、視覚サイクルタンパク質をコードするナンセンス突然変異を有するIRD関連遺伝子(例えばABCA4またはRPE65遺伝子)であり、本明細書に記載のプラスミドベクターまたは自己組織化ナノ粒子は、細胞における視覚サイクルタンパク質(例えばABCA4またはRPE65)発現を、ナンセンス突然変異がない細胞、組織、または被験者に対して、少なくとも約4%、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約100%、約110%、約120%、約130%、約140%、約150%、約160%、約170%、約180%、約190%、約200%、約250%、約300%、約350%、約400%、約450%、約500%、約600%、約700%、約800%、約900%、または約1000%増加させるために選択することができる。
【0146】
ある特定の実施形態において、細胞における視覚サイクルタンパク質(例えばABCA4またはRPE65)発現を、RPE65突然変異を有する細胞、組織、または被験者に対して約20%から約200%、約20%から約180%、約20%から約160%、約20%から約140%、約20%から約120%、約20%から約100%、約20%から約80%、約20%から約60%、約20%から約40%、約40%から約200%、約40%から約180%、約40%から約160%、約40%から約140%、約40%から約120%、約40%から約100%、約40%から約80%、約40%から約60%、約60%から約200%、約60%から約180%、約60%から約160%、約60%から約140%、約60%から約120%、約60%から約100%、約60%から約80%、約80%から約200%、約80%から約180%、約80%から約160%、約80%から約140%、約80%から約120%、約80%から約100%、約100%から約200%、約100%から約180%、約100%から約160%、約100%から約140%、約100%から約120%、約120%から約200%、約120%から約180%、約120%から約160%、約120%から約140%、約140%から約200%、約140%から約180%、約140%から約160%、約160%から約200%、約160%から約180%、または約180%から約200%増加させる本明細書に記載のプラスミドベクターまたは自己組織化ナノ粒子を選択することができる。
【0147】
遺伝子がナンセンス突然変異を有するABCA4遺伝子である、ある特定の実施形態において、本明細書に記載のプラスミドベクターまたは自己組織化ナノ粒子は、網膜細胞または網膜色素上皮細胞におけるABCA4発現を、ナンセンス突然変異がない網膜細胞または網膜色素上皮細胞に対して、少なくとも約4%、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約100%、約110%、約120%、約130%、約140%、約150%、約160%、約170%、約180%、約190%、約200%、約250%、約300%、約350%、約400%、約450%、約500%、約600%、約700%、約800%、約900%、または約1000%増加させることができる。
【0148】
ある特定の実施形態において、方法は、網膜細胞または網膜色素上皮細胞におけるABCA4発現を、ABCA4突然変異を有する網膜細胞または網膜色素上皮細胞に対して、約20%から約200%、約20%から約180%、約20%から約160%、約20%から約140%、約20%から約120%、約20%から約100%、約20%から約80%、約20%から約60%、約20%から約40%、約40%から約200%、約40%から約180%、約40%から約160%、約40%から約140%、約40%から約120%、約40%から約100%、約40%から約80%、約40%から約60%、約60%から約200%、約60%から約180%、約60%から約160%、約60%から約140%、約60%から約120%、約60%から約100%、約60%から約80%、約80%から約200%、約80%から約180%、約80%から約160%、約80%から約140%、約80%から約120%、約80%から約100%、約100%から約200%、約100%から約180%、約100%から約160%、約100%から約140%、約100%から約120%、約120%から約200%、約120%から約180%、約120%から約160%、約120%から約140%、約140%から約200%、約140%から約180%、約140%から約160%、約160%から約200%、約160%から約180%、または約180%から約200%増加させる。
【0149】
最適化された組換えを用いて、完全長タンパク質ABCA4は、突然変異網膜タンパク質を有する被験者における光受容体外節において、ビスレチノイド形成を低減し、網膜イメージングで自己蛍光表現型を修正するのに十分なレベルで発現することができる。これらの観察は、シュタルガルト病を処置するための遺伝子治療のためのプラスミドベクターアプローチを支持する。
【0150】
ABCA4遺伝子における突然変異から得られるシュタルガルト病は、最も一般的な遺伝性黄斑ジストロフィーであり、8,000~10,000人に1人が罹患し、ABCA4遺伝子における突然変異に起因する。ABCA4突然変異は、シュタルガルト病ならびに他の錐体および錐体-桿体ジストロフィーの原因である。ABCA4遺伝子における突然変異に起因するシュタルガルト病は、先進国の小児の失明の最も一般的な原因である。疾患は多くの場合、小児期に発症し、患者の生涯にわたって徐々に悪化し、そのため治療介入はいつでも、さらなる失明を防止または遅延させることができる。この疾患は進行性であり、多くの場合、小児期に症状が提示されるようになるが、視力の発達期の後、さらなる失明を防止または遅延させるための治療介入の十分な機会が提供される。
【0151】
ABCA4は、光受容体の外節ディスクから毒性のある代謝物を取り除く。機能性ABCA4がないと、光受容体の変性となる。光受容体外節ディスクは、光感知タンパク質ロドプシンおよび膜貫通タンパク質ABCA4を含む。ABCA4は、ある特定の毒性のある視覚サイクル副産物の排出を制御する。視覚色素は、オプシンおよび発色団、例えば11-シス-レチナールなどのレチノイドを含む。レチノイドサイクルとも呼ばれることもある視覚サイクルにおいて、レチノイドは漂白され、光受容体と網膜色素上皮(RPE)との間で再利用される。光伝達中のロドプシンの活性化で、11-シス-レチナールは、全トランス型レチナールに異性体化し、オプシンから解離される。全トランス型レチナールは、RPEに輸送され、貯蔵されるか、11-シス-レチナールに変換され、光受容体に戻され、視覚サイクルを完了する。
【0152】
ABCA4における突然変異は、光受容体細胞ディスク外膜から網膜色素上皮(RPE)にレチノイドを輸送し、これにより、光受容体の外節に、不要なレチノイド誘導体の蓄積がもたらされる。光受容体外節の一定の生成のため、古いディスクがより末端になるにつれて、RPEにより消費される。光受容体細胞運搬突然変異体、非機能性ABCA4において、ディスク膜に保持されたビスレチノイドは、RPE細胞に蓄積し、毒性化合物A2E、リポフスチンの重要なエレメントの形成をもたらすさらなる生化学的プロセスが行われる。ABCA4突然変異は、光受容体およびRPEにおける毒素の蓄積と関連している。代表的な毒素には、全トランス型レチナール、ビスレチノイドおよびリポフスシンが含まれるがこれらに限定されない。
【0153】
機能性ABCA4の欠如は、管腔から光受容体細胞ディスク外膜の細胞質側への遊離レチンアルデヒドの輸送を防止し、結果として、レチノイド二量体(ビスレチノイド)の形成を高めるか、その形成を増幅させることになる。網膜色素上皮(RPE)による光受容体細胞の遠位外節の毎日の食作用で、レチノイド誘導体は、さらに処理され、ビスレチノイドの蓄積がもたらされる。レチノイド誘導体は処理されるが、不溶性であり、蓄積する。この蓄積の結果は、RPE細胞の機能不全および最終的には死をもたらし、変性およびその後の死を通じた、重なっている光受容体のその後の二次的喪失を伴う。
【0154】
いくらかの実施形態において、プラスミドベクター、自己組織化ナノ粒子、または医薬組成物は、被験者の眼の1つまたは複数の細胞において完全長ABCA4導入遺伝子を生成する。いくらかの実施形態において、被験者は、シュタルガルト病を有している。いくらかの実施形態において、1つまたは複数の細胞は、光受容体細胞を含む。いくらかの実施形態において、1つまたは複数の細胞は、RPE細胞を含む。いくらかの実施形態において、1つまたは複数の細胞は、RPE細胞、光受容体細胞、またはそれらの組み合わせを含む。
【0155】
いくらかの実施形態において、被験者の眼の1つまたは複数の細胞におけるABCA4遺伝子の発現は、光受容体細胞の変性を示す。いくらかの実施形態において、1つまたは複数の細胞は、RPE細胞、光受容体細胞、またはそれらの組み合わせを含む。いくらかの実施形態において、被験者の眼の1つまたは複数の細胞におけるABCA4導入遺伝子の発現は、光受容体細胞の死を防止する。いくらか実施形態において、被験者の眼の1つまたは複数の細胞におけるABCA4導入遺伝子の発現は、光受容体細胞の変性を防止する。いくらかの実施形態において、被験者の眼の1つまたは複数の細胞におけるABCA4導入遺伝子の発現は、光受容体細胞を健康なまたは生存可能な光受容体細胞に修復する。
【0156】
いくらかの実施形態において、被験者の眼の1つまたは複数の細胞におけるABCA4導入遺伝子の発現は、RPE細胞の死を防止する。いくらかの実施形態において、被験者の眼の1つまたは複数の細胞におけるABCA4導入遺伝子の発現は、RPE細胞の死および光受容体細胞の変性を防止する。
【0157】
いくらかの実施形態において、標的細胞におけるヒトABCA4タンパク質を発現する方法は、被験者に、本明細書に記載のプラスミドベクター、自己組織化ナノ粒子、または医薬組成物を、被験者の眼に投与することを含み、プラスミドベクターは、機能性ABCA4タンパク質が標的細胞で発現するように、標的細胞に形質導入する。
【0158】
いくらかの実施形態において、本明細書に記載のプラスミドベクター、自己組織化ナノ粒子、または医薬組成物は、網膜下、直接網膜、脈絡膜上または硝子体内注射により、被験者の眼に投与することができる。
【0159】
当業者は、個々の網膜下、直接網膜、脈絡膜上または硝子体内注射に精通しており、十分に実行することができる。
【0160】
網膜下注射は、網膜下腔、すなわち、神経感覚網膜の下への注射である。網膜下注射の間、注射された物質は、光受容体細胞および網膜色素上皮(RPE)層に向けられ、それらの間に空間を生成する。
【0161】
小さい網膜切開を通じて注射が実行される場合、網膜剥離を生じる可能性がある。注射された物質により生成される網膜が剥離して隆起した層は、「ブレブ」と呼ばれる。
【0162】
網膜下注射により生成された穴は、投与後に、注射された溶液が硝子体腔に大きく逆流することがないように十分に小さい可能性がある。そのような逆流は、薬剤の効果が標的ゾーンから離れるように向けられるので、薬剤が注射される場合に問題になる。好ましくは、注射は、神経感覚網膜に自己封止型入口点を生成する、すなわち、注射針が取り除かれると、針により生成された穴は、注射された物質が穴からほとんどまたは実質的に放出されないように再封止される。
【0163】
このプロセスを容易にするため、専門の網膜下注射針が市販されている(例えばDORC 41Gテフロン網膜下注射針、Dutch Ophthalmic Research Center International BV、ザイドラント、オランダ)。これらは、網膜下注射を実行するようにデザインされた針である。
【0164】
いくらかの実施形態において、網膜下注射は、ハミルトンシリンジおよび34ゲージ針(ESSラボ、UK)を用いて後極を通って上網膜までの強膜トンネルアプローチを含む。代わりに、またはさらに、網膜下注射は、WPIシリンジおよび傾斜した35G針システム(World Precision Instruments、UK)を使用して、網膜下注射の前に33G針を用いて前房穿刺を実行することを含むことができる。
【0165】
動物被検体は、例えば、ケタミン(80mg/kg)およびキシラジン(10mg/kg)を含む腹腔内注射により麻酔をかけられ、トロピカミド点眼薬(マイドリアティカム1%、ボシュロム、UK)およびフェニレフリン点眼薬(フェニレフリン塩酸塩2.5%、ボシュロム、UK)を用いて瞳孔を完全に拡張することができる。プロキシメタカイン点眼薬(プロキシメタカイン塩酸塩0.5%、ボシュロム、UK)はまた、網膜下注射の前に適用することもできる。注射後、クロラムフェニコール点眼薬を適用し(クロラムフェニコール0.5%、ボシュロム、UK)、アチパメゾール(2mg/kg)を用いて麻酔を解除し、カルボマーゲルを適用して(ヴィスコティアーズ、ノバルティス、UK)白内障形成を防止することができる。注射中に網膜への損傷が発生する場合を除いて、十分に小さい針が使用される限り、注射された物質は剥離した神経感覚網膜と局在性網膜剥離部位でのRPEとの間に局在したままである(すなわち、硝子体腔に逆流しない)。確かに、短い時間枠のブレブの持続性は、注射された物質が硝子体にほとんど脱出しない可能性があることを示唆する。ブレブは、注射された物質が吸収されるにつれて、より長い時間枠で消失する可能性がある。
【0166】
例えば光干渉断層撮影を使用して、眼、例えば網膜の視覚化を術前に行うことができる。
【0167】
いくらかの実施形態において、記載のプラスミドベクター、自己組織化ナノ粒子、または医薬組成物は、第1の溶液の網膜下注射により局在化した網膜剥離が生成される二段階法を使用することにより、正確で安全に送達することができる。第1の溶液は、ベクターを含まない。第2の網膜下注射は、その後、プラスミドベクター、自己組織化ナノ粒子、または医薬組成物を含む薬剤を、第1の網膜下注射により生成されたブレブの網膜下液に送達するために使用される。プラスミドベクター、自己組織化ナノ粒子、または医薬組成物を送達する注射が網膜を剥離するために使用されないので、特定の体積の溶液をこの第2のステップで注射することができる。
【0168】
網膜を少なくとも部分的に剥離するために注射された溶液の体積は、例えば約10~1000μL、例えば約50~1000μL、100~1000μL、250~1000μL、500~1000μL、10~500μL、50~500μL、100~500μL、250~500μLであり得る。体積は、例えば約10μL、50μL、100μL、200μL、300μL、400μL、500μL、600μL、700μL、800μL、900μLまたは1000μLであり得る。
【0169】
注射された医薬組成物の体積は、例えば約0.1~500μL、例えば約0.5~500μL、1~500μL、2~500μL、3~500μL、4~500μL、5~250μL、1~250μL、2~250μLまたは5~150μLであり得る。他の実施形態において、被験者に投与された医薬組成物の体積は、約0.1μLから約2μL、約0.2μLから約1.5μL、または約0.5μLから約1μLである。
【0170】
いくらかの実施形態において、医薬組成物中の自己組織化ナノ粒子の濃度は、約50ng/μLから約500ng/μL、約100ng/μLから約300ng/μL、または約150ng/μLから約250ng/μLである。
【0171】
いくらかの実施形態において、例えば末期の網膜変性の間、網膜が薄く、透明であり、その上に存在する破壊され、ひどく色素沈着した上皮に対して見ることが困難であるので、網膜を同定することは困難である。青色生体色素の使用が、網膜剥離処置のために作られた網膜円孔の同定を容易にすることができ、そのため、硝子体腔に逆流するリスクがなく同じ穴を通って医薬組成物を投与することができる。
【0172】
青色生体色素の使用はまた、これらの構造のいずれかを通じた注射が網膜下腔への清潔なアクセスを妨げる可能性があるので、肥厚した内境界膜または網膜上膜がある網膜の任意の領域を同定することができる。さらに、手術期直後のこれらの構造のいずれかの収縮は、硝子体腔への薬剤の逆流をもたらす可能性がある、網膜の入口穴の伸縮をもたらす可能性がある。
【0173】
いくらかの実施形態において、本明細書に記載のプラスミドベクター、自己組織化ナノ粒子、または医薬組成物は、脈絡膜上注射を介して投与することができる。脈絡膜上注射の任意の手段は、本明細書に記載のプラスミドベクター、自己組織化ナノ粒子、または医薬組成物のための潜在的な送達システムとして想定される。脈絡膜上注射は、脈絡膜と強膜との間の空間である脈絡膜上腔への注射である。したがって、脈絡膜上腔への注射は、網膜、網膜色素上皮(RPE)または黄斑などの近位眼構造への組成物の送達のための潜在的な投与経路である。いくらかの実施形態において、脈絡膜上腔への注射は、マイクロニードル、マイクロカニューレ、またはマイクロカテーテルを使用して眼の前方部分で行われる。眼の前方部分は、眼の赤道より前方の領域を含むか、それからなる可能性がある。本明細書に記載のプラスミドベクターまたは自己組織化ナノ粒子は、脈絡膜上経路を介して注射部位から後方に拡散する可能性がある。いくらかの実施形態において、後眼の脈絡膜上腔は、カテーテルシステムを使用して直接注射される。この実施形態において、脈絡膜上腔は、毛様体扁平部の切開を介してカテーテルを挿入することができる。いくらかの実施形態において、脈絡膜上経路を介した注射または注入は、脈絡膜、ブルッフ膜および/またはRPE層を横断して、本明細書に記載のプラスミドベクター、自己組織化ナノ粒子、または医薬組成物を網膜下腔に送達する。いくらかの実施形態において、本明細書に記載のプラスミドベクター、自己組織化ナノ粒子、または医薬組成物が脈絡膜上経路を介して網膜下腔に送達されるものを含め、強膜、扁平部、脈絡膜、ブルッフ膜、およびRPE層のうちの少なくとも1つに1回または複数回の注射が行われる。いくらかの実施形態において、本明細書に記載のプラスミドベクター、自己組織化ナノ粒子、または医薬組成物が脈絡膜上経路を介して網膜下腔に送達されるものを含め、二段階手順を使用して、本明細書に記載のプラスミドベクター、自己組織化ナノ粒子、または医薬組成物の送達の前に脈絡膜上腔または網膜下腔にブレブを作成する。
【0174】
いくらかの実施形態において、プラスミドベクター、自己組織化ナノ粒子、または医薬組成物は反復投与される。
【0175】
他の実施形態において、プラスミドベクター、自己組織化ナノ粒子、または医薬組成物は、単回用量で投与される。
【0176】
いくらかの実施形態において、プラスミドベクター、自己組織化ナノ粒子、または医薬組成物は、被験者の視覚機能の処置において有効であり得る。視覚機能は、マイクロペリメトリ、暗順応ペリメトリ、視覚の機動性の評価、視力、ERG、またはリーディング評価により評価することができる。
【0177】
ベースラインまたは被験者の改善された視力は、被験者が回避するための1つまたは複数の障害物を含む、低照度または暗所条件を特徴とする囲いを被験者が通り抜けることにより測定することができる。被験者は、場合によっては本開示の処置の方法により提供される、本開示の組成物を必要としている可能性がある。被験者は、場合によっては1つまたは複数の用量および/または手順/注射で1つまたは両方の眼における処置の方法により提供される、プラスミドベクター、自己組織化ナノ粒子、または医薬組成物を受け取っている可能性がある。エンクロージャは、屋内または屋外である可能性がある。エンクロージャは、昼光を再現するレベルから完全な暗所をシミュレートするレベルまでの範囲の制御された光レベルにより特徴づけられる。この範囲内で、エンクロージャの制御された光レベルは、好ましくは、本開示の組成物を受け取る前に本開示の被験者が視力を低下させている可能性がある自然の夕暮れまたは夕方の光レベルを再現するように設定することができる。本開示の組成物の投与に続いて、被験者は、すべての光レベルで視力が改善する可能性があるが、改善は、自然な夕暮れまたは夕方の光レベル (屋内または屋外) を再現するものを含め、より低い光レベルで測定することが好ましい。
【0178】
エンクロージャのいくらかの実施形態において、1つまたは複数の障害物は、エンクロージャ内の1つまたは複数の指定された経路および/またはコースと一致する。被験者によるエンクロージャの通過の成功は、指定された経路を通過すること、および指定されていない経路の通過を回避することを含む可能性がある。被験者によるエンクロージャの通過の成功は、経路内または経路の近くのいずれかに配置された1つまたは複数の障害物との接触を回避しながら、指定された経路を含む任意の経路を横断することを含む可能性がある。被験者によるエンクロージャの通過の成功または改善は、経路内または経路の近くのいずれかに配置された1つまたは複数の障害物との接触を回避し、指定された開始位置から指定された終了位置まで経路を横断するのに必要な時間を短縮しながら(例えば、正常な視力を有する健康な個体と比較した場合、または被験者による以前の横断と比較した場合)指定された経路を含む任意の経路を横断することを含む可能性がある。いくらかの実施形態において、エンクロージャは、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9または10の経路もしくは指定された経路を含む可能性がある。指定された経路は、意図された開始位置および意図された終了位置を含むものとしての実験者による指定された経路の識別により、指定されていない経路とは異なる可能性がある。
【0179】
エンクロージャのいくらかの実施形態において、1つまたは複数の障害物は、本開示の表面に固定されていない。いくらかの実施形態において、1つまたは複数の障害物は、本開示の表面に固定されている。いくらかの実施形態において、1つまたは複数の障害物は、エンクロージャの床、壁および天井を含むがこれらに限定されないエンクロージャの内面に固定されている。いくらかの実施形態において、1つまたは複数の障害物は、個体の物体を含む。いくらかの実施形態において、1つまたは複数の障害物は、液体の物体(例えば「ウォーターハザード」)を含む。いくらかの実施形態において、1つまたは複数の障害物は、少なくとも1つの経路に沿って、または経路に近接して、任意の組み合わせまたは順序で、被験者が迂回する物体;被験者がまたがる物体;歩いたり立ったりしてバランスをとる物体;傾斜、下降、またはそれらの組み合わせを有する物体;触れられる物体(例えば奥行きを知覚および/または判断する被験者の能力を決定するため);ならびにその下を歩いたり立ったりすることにより横切られる物体(例えば物体を回避するために1つまたは複数の方向を曲げることを含む)を含む。エンクロージャのいくらかの実施形態において、1つまたは複数の障害物は、指定された順序で被験者により遭遇する必要がある。
【0180】
ある特定の実施形態において、ベースラインまたは被験者の改善された視力は、低照度または暗所条件を特徴とし、被験者が回避するための1つまたは複数の障害物を含むコースまたはエンクロージャを被験者が通り抜けることにより測定することができ、コースまたはエンクロージャは、設備内に存在する。特定の実施形態において、設置は、モジュラー照明システムおよび一連の異なるモビリティコース床レイアウトを含む。ある特定の実施形態において、1つの部屋は、1セットの照明器具を備えたすべてのモビリティコースを収容する。例えば、モビリティ試験中、一度に1つのコースを設定することができ、同じ部屋/照明器具は、使用中のコース(床レイアウト)に関係なく、モビリティ試験のために使用することができる。特定の実施形態において、試験のために提供された異なるモビリティコースは、難易度を変更するようにデザインされ、経路のコントラストが低く障害物が見えにくい特徴の難しいコース、および経路のコントラストが高く障害物が見えやすい容易なコースを有する。
【0181】
エンクロージャのいくらかの実施形態において、被験者は、プラスミドベクター、自己組織化ナノ粒子、または医薬組成物の投与の前に、例えば精度および/または速度のベースライン測定値を確立するため、または被験者が、網膜疾患もしくは網膜疾患の発症のリスクを有すると診断するために試験される可能性がある。いくらかの実施形態において、被験者は、プラスミドベクター、自己組織化ナノ粒子、または医薬組成物の投与に続いて、(例えば、視力を改善するための組成物の有効性をモニターする/試験するため)ベースライン測定値からの変化または健康な個体からのスコアとの比較を決定するために試験され得る。
【0182】
ベースラインまたは被験者の網膜細胞生存率の改善された測定値はまた、1つまたは複数のAOSLO技術により測定することができる。走査型レーザ検眼鏡(SLO)は、被験者の眼の網膜の別個の層を観察するために使用することができる。好ましくは、補償光学(AO)は、SLOに組み込まれ(AOSLO)、典型的に、眼の角膜および水晶体を含むがこれらの限定されない前眼の構造により引き起こされるSLOのみからの画像におけるアーティファクトを補正する。SLOのみを使用することにより生じるアーティファクトは、結果の画像の解像度を低下させる。補償光学は、網膜の層の単一細胞の分析を可能にし、正常または無傷の網膜細胞(例えば正常または無傷の光受容体細胞)からの指向性後方散乱光(導波光)を検出する。
【0183】
本開示のいくらかの実施形態において、AOSLO技術を使用することで、無傷の細胞は、導波および/または検出可能なシグナルを生じる可能性がある。いくらかの実施形態において、無傷ではない細胞は、導波および/または検出可能なシグナルを生じない。
【0184】
AOSLOは、画像化、好ましくは、被験者の網膜またはその一部を評価するために使用することができる。いくらかの実施形態において、被験者は、AOSLO技術を使用して画像化された1つまたは両方の網膜を有する。いくらかの実施形態において、被験者は、本開示の組成物の投与の前に(例えば処置後の後に続く比較のためのベースライン測定値を決定するため、ならびに/または網膜疾患の存在および/もしくは重症度を決定するために)AOSLO技術を使用して画像化された1つまたは両方の網膜を有する。いくらかの実施形態において、被験者は、本開示の組成物の投与に続いて(例えば組成物の有効性を決定するためおよび/または処置から得られる改善について投与に続いて被験者をモニターするために)AOSLO技術を使用して画像化された1つまたは両方の網膜を有する。
【0185】
いくらかの実施形態において、網膜は、共焦点または非共焦点(分割検出器)AOSLOのいずれかにより画像化され、1つまたは複数の網膜細胞の密度を評価する。いくらかの実施形態において、1つまたは複数の網膜細胞には、光受容体細胞が含まれるがこれらに限定されない。いくらかの実施形態において、1つまたは複数の網膜細胞には、錐体光受容体細胞が含まれるがこれらに限定されない。いくらかの実施形態において、1つまたは複数の網膜細胞には、桿体光受容体細胞が含まれるがこれらに限定されない。いくらかの実施形態において、密度は、ミリリットルあたりの細胞の数として測定される。いくらかの実施形態において、密度は、ミリリットルあたりの生細胞または生存細胞の数として測定される。いくらかの実施形態において、密度は、ミリリットルあたりの無傷の細胞(プラスミドベクターまたは自己組織化ナノ粒子を含む細胞)の数として測定される。いくらかの実施形態において、密度は、ミリリットルあたりの応答細胞の数として測定される。いくらかの実施形態において、応答細胞は、機能性細胞である。
【0186】
いくらかの実施形態において、AOSLOは、被験者の網膜内の光受容体細胞のモザイクの画像をキャプチャするために使用することができる。いくらかの実施形態において、モザイクには、無傷の細胞、無傷ではない細胞またはそれらの組み合わせが含まれる。いくらかの実施形態において、モザイクは、網膜全体、内節、外節、またはその一部を表す画像の合成またはモンタージュを含む。いくらかの実施形態において、モザイクの画像は、プラスミドベクターまたは自己組織化ナノ粒子を含むか接触している網膜の一部を含む。いくらかの実施形態において、モザイクの画像は、プラスミドベクターまたは自己組織化ナノ粒子を含むか接触している網膜の一部に併置された網膜の一部を含む。いくらかの実施形態において、モザイクの画像は、処置済みの領域および非処置の領域を含み、処置済みの領域は、プラスミドベクターまたは自己組織化ナノ粒子を含むか接触しており、非処置の領域は、プラスミドベクターまたは自己組織化ナノ粒子を含まないか接触していない。
【0187】
いくらかの実施形態において、AOSLOは、単独または光干渉断層撮影(OCT)と組み合わせて使用され、被験者の網膜、網膜の一部または網膜細胞を直接視覚化することができる。いくらかの実施形態において、補償光学は、OCT(AO-OCT)と組み合わせて使用され、被験者の網膜、網膜の一部または網膜細胞を直接視覚化することができる。
【0188】
本開示のいくらかの実施形態において、外節または内節は、共焦点または非共焦点(分割検出器)AOSLOのいずれかにより画像化され、その中の細胞の密度または外節、内節もしくはそれらの組み合わせの完全性のレベルを評価する。いくらかの実施形態において、AOSLOを使用して、内節、外節またはそれらの組み合わせの直径を検出することができる。
【0189】
本明細書に記載のこれらおよび他の実施形態の機能および利点は、以下の実施例からより完全に理解されるであろう。以下の実施例は、本発明の利益を図解し、特定の実施形態を説明することを意図しているが、本発明の全範囲を例示することを意図していない。したがって、実施例が本発明の範囲を限定することを意味していないことが理解されるであろう。
【0190】
実施例
プラスミドコンストラクション:シュタルガルト病を処置するためのヒトGRK1プロモータおよびヒトポリAおよびヒトS/MARエンハンサを有するABCA4プラスミドDNA
ヒトプロモータおよびエンハンサを有する新規ABCA4プラスミドDNAは、臨床使用のために、錐体および桿体の光受容体の両方でABCA4の特異的発現を促進するように構築されている。ヒトGRK1(-109から+108)プロモータのDNAフラグメントを、以前の刊行物「A photoreceptor enhancer upstream of the GRK1 gene」,IOVS,2003にしたがってヒトゲノムDNAから増幅させた。ヒトベータ-グロビンポリAを、ヒトゲノムDNAから同様に増幅させた。ヒトエンハンサS/MAR DNAもまた、プラスミドコンストラクトで使用して、遺伝子発現を強化した。全プラスミドマップを図1に示した。Pubmedデータベースに寄託されたpEPIプラスミド配列に基づいて配列を分析した。GRK1プロモータをMluIおよびAgeI制限部位に挿入した。S/MAR DNAをNotIおよびNheI制限部位に挿入した。最後に、デザインされたプライマの挿入部位の上流および下流での重複した配列のため、グロビンポリA DNAを、NEB HiFiアセンブリクローニングキットを使用することにより挿入した。同時に、SpeI制限部位をポリAとS/MARとの間に導入した。
【0191】
プラスミド構造は、図2に示されたように、異なる制限部位での選択的消化反応のアガロースゲル電気泳動により確認された。MluI、AgeI、NotIおよびNheIの4つの制限酵素は、複数の酵素消化反応において使用された。アガロースゲル(1%)を調製して、消化後に4つのDNAフラグメントを分離した。対照のGFPプラスミドにおいて、消化およびゲル泳動の後に、プロモータGRK1(400bp)、GFP(700bp)、ポリA+S/MAR(2.9kb)およびベクターバックボーン(約2.5kb)を分離した。ABCA4プラスミドにおいて、ABCA4フラグメント(6.8kb)を同定した(図2A)。同じアガロースゲルの延長した泳動の後、バックボーンおよびpA+SMARフラグメントの分離が観察された(図2B)。これらの結果から、プラスミドコンストラクションの成功が確認された。完全長配列決定もまた、新規ABCA4プラスミドに対して実行された。結果は、配列内にあった。
【0192】
ECO/pGRK1-ABCA4-S/MARナノ粒子の調製
図3に示すように、水溶液中でのECOおよびpGRK1-ABCA4-S/MARの自己組織化を通じてECO/pGRK1-ABCA4-S/MARナノ粒子を調製した。特に、ECO原液(エタノール中25mM)およびpGRK1-ABCA4-S/MAR原液(0.5μg/μL)を混合し、水溶液中、所定の濃度(25ng/μL、50ng/μL、100ng/μL、または200ng/μL)およびN/P比(6、8または10)で30分間、室温で振盪させてpGRK1-ABCA4-S/MARナノ粒子を与えた。
【0193】
ECO/pGRK1-ABCA4-S/MARナノ粒子の特徴づけ
ECO-pGRK1-ABCA4-S/MARナノ粒子を、種々のN/P比(6、8および10)で異なるDNA濃度(25ng/μL、50ng/μL、100ng/μLおよび200ng/μL)を用いて製剤化した。N/P比に基づいた所定の量でECO原液(エタノール中25mM)およびプラスミドDNA原液(0.5μg/μL)を混合し、30分間室温でボルテックスした。ECOを用いたpDNAのナノ粒子への縮合は、120Vで25分間泳動される0.7%アガロースゲル中で調製されたアガロースゲル電気泳動により検証された。ナノ粒子のサイズおよびゼータ電位は、Anton Paar Litesizer 500(Anton Paar USA、アッシュランド、VA)を用いる動的光散乱(DLS)を使用して決定された。異なるpGRK1-ABCA4-S/MAR濃度を用いてN/P比8で製剤化されたナノ粒子についての特徴づけのために実施例を以下に与えた(図4)。
【0194】
ECO/pGRK-ABCA4-S/MARナノ粒子製剤の結果を図4に示した。ECOおよびpGRK1-ABCA4-S/MARは、サイズが200nmであり、正のゼータ電位が40mVである安定したナノ粒子を形成することができた(図4A図4B)。製剤化されたナノ粒子もまた、中性のpHを示した。プラスミドカプセル化もまた、アガロースゲル電気泳動により確認された(図4C)。ECOは、pGRK1-ABCA4-S/MARを高濃度(200ng/μL)で効率的にカプセル化することができた。
【0195】
マウスにおいて光受容体細胞特異的ABCA4発現を誘導したECO/pGRK1-ABCA4-S/MARナノ粒子
ECO/pGRK1-ABCA4-S/MARナノ粒子のABCA4発現をAbca4-/-マウスにおいて評価した。ECO/pGRK1-ABCA4-S/MARナノ粒子を、pDNA濃度200ng/μLで、N/P=8で製剤化した。ナノ粒子(1μL)を右眼の網膜下腔に注射し、PBS1μLを対照として左眼に注射した。1週間後、マウスを犠牲にし、免疫組織染色を実行した。結果を図5に示した。
【0196】
免疫組織染色は、注射部位またはその近くで明らかなABCA4発現を示した(図5A)。ABCA4発現は、主に光受容体細胞がある外節(OS)で観察された。網膜全体では、注射部位から網膜の縁にかけてABCA4発現の減衰が観察された(図5B)。しかし、PBS注射の対照の眼については、ABCA4発現が観察されない。
【0197】
ABCA4発現はまた、qRT-PCRを使用して検証された。溶解緩衝液中でホモジナイザを使用して、眼組織を手動でホモジナイズした。メーカーの説明にしたがってキアゲンRNeasyキットを使用して、RNA抽出を実行した。mRNA転写物は、miScriptIIリバーストランスクリプターゼキット(キアゲン、ジャーマンタウン、MD)を使用してcDNAに変換された。エッペンドルフMastercycler機中、SYBRグリーンマスターミクス(AB Biosciences、オールストン、MA)を用いてqRT-PCRを実行した。PBS注射の眼を対照として用いて、倍率変化を18Sに対して正規化した。
【0198】
ABCA4 mRNA発現は、200ngのナノ粒子を用いて処置されたほぼすべての眼で確認された(図6)。
【0199】
マウスにおいてABCA4発現を誘導した、賦形剤(10%スクロース)を用いて製剤化されたECO/pGRK1-ABCA4-S/MARナノ粒子
ECO/pGRK1-ABCA4-S/MARナノ粒子を、以前記載されたように調製した。スクロース(10%)をナノ粒子溶液に添加し、30分間さらに混合した。ECO/pGRK1-ABCA4-S/MARナノ粒子を、pDNA濃度200ng/μLで、N/P=8で製剤化した。ナノ粒子溶液(1μL)を右眼の網膜下腔に注射し、PBS1μLを対照として左眼に注射した。1週間後、マウスを犠牲にし、qRT-PCRを実行した。
【0200】
ABCA4 mRNA発現は、処置された眼のすべてで観察された(図7)。処置マウスについては、PBS処置対照よりも有意に高いABCA4 mRNA発現が観察された。
【0201】
PEG化PEG-ECO/pGRK1-ABCA4-S/MARナノ粒子の調製
PEG-ECO/pGRK1-ABCA4-S/MARナノ粒子を図8に記載されたように製剤化した。ECO原液(エタノール中25mM)およびPEG-MAL標的化リガンド(水中0.625mM)(ECOの2.5モル%)を最初に混合し、水溶液中で30分間反応させた。N/P比(アミン対リン酸比)6、8または10を有する所定量のプラスミドDNA原液(0.5μg/μL)を、ECOおよびPEG-MAL混合物に添加し、混合して、30分間室温で振盪させ、PEG-ECO/pGRK1-ABCA4-S/MARナノ粒子を与えた。
【0202】
PEG化PEG-ECO/pGRK1-ABCA4-S/MARナノ粒子の特徴づけ:異なる温度(-20℃または4℃)下でのサイズ、ゼータ電位、賦形剤(10%スクロース)中のカプセル化および安定性
PEG-ECO/pGRK1-ABCA4-S/MARナノ粒子を、以前記載されたように製剤化した。ECO原液(エタノール中25mM)およびPEG-MAL標的化リガンド(水中0.625mM)(ECOの2.5モル%)を最初に混合し、水溶液中で30分間反応させた。N/P比(アミン対リン酸比)6、8または10を有する所定量のプラスミドDNA原液(0.5μg/μL)を、ECOおよびPEG-MAL混合物に添加し、混合して、30分間室温で振盪させ、PEG-ECO/pGRK1-ABCA4-S/MARナノ粒子を与えた。スクロース(10%)をPEG-ECO/pGRK1-ABCA4-S/MARナノ粒子溶液に添加し、さらに30分間振盪させ、ECO/pGRK1-ABCA4-S/MAR(10%)ナノ粒子を与えた。ECO/pGRK1-ABCA4-S/MAR(10%スクロース)ナノ粒子を以前のセクションで記載されたように調製した。
【0203】
サイズおよびゼータ電位を、以前記載されたように評価した。ナノ粒子の安定性を、異なる貯蔵条件下で評価した。全ナノ粒子製剤を-20℃または4℃のいずれかで貯蔵した。ナノ粒子のサイズおよびゼータ電位は、Anton Paar Litesizer 500(Anton Paar USA、アッシュランド、VA)を用いる動的光散乱(DLS)を使用して決定された。pDNAカプセル化は、アガロースゲル電気泳動を使用して評価された。
【0204】
ECO/pGRK1-ABCA4-S/MAR、PEG-ECO/pGRK1-ABCA4-S/MAR、PEG-ECO/pGRK1-ABCA4-S/MAR(10%スクロース)およびPEG-ECO/pGRK1-ABCA4-S/MAR(10%スクロース)ナノ粒子のサイズ分布のDLSを図9に要約した。ECO/pGRK1-ABCA4-S/MARナノ粒子は、より広いサイズ分布が図9Aに示された場合、-20℃下で1ヶ月後に凝集体の形成の開始を示した。PEG-ECO/pGRK1-ABCA4-S/MAR、PEG-ECO/pGRK1-ABCA4-S/MAR(10%スクロース)およびPEG-ECO/pGRK1-ABCA4-S/MAR(10%スクロース)ナノ粒子について、有意な変化は観察されなかった(図9B図9Cおよび図9D)。サイズおよびゼータ電位もまた、表1に要約した。10%スクロース中のECO/pGRK1-ABCA4-S/MARナノ粒子製剤およびPEG化PEG-ECO/pGRK1-ABCA4-S/MARナノ粒子および10%スクロース中のその製剤は、一貫したサイズおよびゼータ電位を示した。
【0205】
【表1】
【0206】
アガロースゲル電気泳動を使用して、ECO/pGRK1-ABCA4-S/MAR、PEG-ECO/pGRK1-ABCA4-S/MAR、PEG-ECO/pGRK1-ABCA4-S/MAR(10%スクロース)およびPEG-ECO/pGRK1-ABCA4-S/MAR(10%スクロース)ナノ粒子のカプセル化および安定性を評価した。結果を図10に示した。全ナノ粒子は、4℃および-20℃の両方で、試験された全時点について効率的なpDNAカプセル化および優れた安定性を示した。
【0207】
ECO/pGRK1-ABCA4-S/MARおよびECO/pGRK1-ABCA4-S/MAR(5%スクロース)ナノ粒子と比較してマウスにおいて高いABCA4発現を誘導した、PEG化PEG-ECO/pGRK1-ABCA4-S/MARナノ粒子
異なる製剤化ナノ粒子のABCA4発現を、Abca4-/-マウスにおいて評価した。ECO/pGRK1-ABCA4-S/MAR、PEG化(2.5%PEG)PEG-ECO/pGRK1-ABCA4-S/MARおよびECO/pGRK1-ABCA4-S/MAR(5%スクロース)ナノ粒子を、以前記載されたようにpDNA濃度200ng/μLで、N/P=8で製剤化した。5匹のマウスには、一方の眼にECO/pGRK1-ABCA4-S/MARナノ粒子0.5μLが、反対側の眼にはECO/pGRK1-ABCA4-S/MAR(5%スクロース)0.5μLが注射された。5匹のマウスには、一方の眼にECO/pGRK1-ABCA4-S/MARナノ粒子(5%スクロース)0.5μLが、反対側の眼にPEG化(2.5%PEG)PEG-ECO/pGRK1-ABCA4-S/MARナノ粒子0.5μLが注射された。注射の1週間後、マウスを犠牲にした。ABCA4 mRNA発現の分析のために、qRT-PCRを使用した。
【0208】
ECO/pGRK1-ABCA4-S/MAR(5%スクロース)ナノ粒子は、ECO/pGRK1-ABCA4-S/MARナノ粒子と比較して強化されたABCA4 mRNA発現を示した。PEG化PEG-ECO/pGRK1-ABCA4-S/MARナノ粒子は、ECO/pGRK1-ABCA4-S/MAR(5%スクロース)ナノ粒子よりもさらに多くのABCA4 mRNA発現を誘導した(図11)。PEG化(2.5%)PEG-ECO/pGRK1-ABCA4-S/MARナノ粒子を、発現および処置の研究のためのリード製剤として選択した。
【0209】
マウスにおいて異なるABCA4発現を誘導したPEG-ECO/pGRK1-ABCA4-S/MARナノ粒子の異なる注射体積
PEG化(2.5%PEG)PEG-ECO/pGRK1-ABCA4-S/MARナノ粒子をabca4-/-マウスにおいて試験した。PEG-ECO/pGRK1-ABCA4-S/MARナノ粒子を、pDNA濃度100ng/μLまたは200ng/μLのいずれかで、N/P=8で製剤化した。5匹のマウスには、一方の眼に100ng/μLのナノ粒子1μLが、反対側の眼に200ng/μLのナノ粒子0.5μLが注射された。マウスは6週齢で注射され、注射の1週間後、犠牲にした。ABCA4 mRNA発現の分析のために、qRT-PCRを使用した。
【0210】
ABCA4 mRNA発現は、すべての処置眼について観察された(図12)。注射体積は、ABCA4発現の有効性において重要な役割を果たした。注射体積が小さいほど、より高いABCA4 mRNA発現が誘導されるように見えた。1μLの注射体積は、0.5μLの注射体積と比較して、わずかに65%の発現レベルを示した。
【0211】
マウスにおけるABCA4発現に対するPEG化PEG-ECO/pGRK1-ABCA4-S/MARの投与の効果
投与の効果を評価するため、PEG化(2.5%PEG)PEG-ECO/pGRK1-ABCA4-S/MARナノ粒子をabca4-/-マウスにおいて試験した。PEG-ECO/pGRK1-ABCA4-S/MARナノ粒子を、pDNA濃度50ng/μL、100ng/μLまたは200ng/μLのいずれかで、N/P=8で製剤化した。5匹のマウスには、一方の眼に50ng/μLのナノ粒子0.5μLが、反対側の眼に100ng/μLのナノ粒子0.5μLが注射された。5匹のマウスには、一方の眼に100ng/μLのナノ粒子0.5μLが、反対側の眼に200ng/μLのナノ粒子0.5μLが注射された。マウスは5週齢で注射され、注射の1週間後、犠牲にした。ABCA4 mRNA発現の分析のために、qRT-PCRを使用した。
【0212】
ABCA4 mRNA発現は、すべての処置眼について観察された(図13)。同じ注射体積では、用量とともにABCA4 mRNA発現の増加が観察された。
【0213】
異なる齢のマウスにおいて異なるABCA4発現を誘導したPEG化PEG-ECO/pGRK1-ABCA4-S/MAR
PEG化(2.5%)PEG-ECO/pGRK1-ABCA4-S/MARナノ粒子を異なる齢のabca4-/-マウスにおいて試験した。PEG化PEG-ECO/pGRK1-ABCA4-S/MARナノ粒子を、以前記載されたようにpDNA濃度200ng/μLで、N/P=8で製剤化した。マウスには、一方の眼に200ng/μLのナノ粒子0.5μLが、反対側の眼にPBS0.5μLが注射された。マウスは5週齢、8週齢、12週齢、22週齢および58週齢で注射され、注射の1週間後、犠牲にした。ABCA4 mRNA発現の分析のために、qRT-PCRを使用した。
【0214】
マウスが新しく生まれたか若年期であった場合、ABCA4 mRNA発現は低い。マウスが幼若期であった場合またはわずかに齢が高かった場合、ABCA4 mRNA発現は増加した。マウスが老齢期であった場合、ABCA4 mRNA発現は低下した(図14)。
【0215】
PEG化(2.5%PEG)PEG-ECO/pGRK1-ABCA4-S/MARナノ粒子は、-20℃で最大1ヶ月間貯蔵後、同等の遺伝子発現を誘導することができる
-20℃で異なる期間貯蔵されたPEG化(2.5%PEG)PEG-ECO/pGRK1-ABCA4-S/MARナノ粒子の有効性を研究するため、PEG化(2.5%PEG)PEG-ECO/pGRK1-ABCA4-S/MARナノ粒子をabca4-/-マウスにおいて試験した。PEG-ECO/pGRK1-ABCA4-S/MARナノ粒子を、pDNA濃度200ng/μLで、N/P=8で製剤化した。ナノ粒子を-20℃で1週間、2週間および1ヶ月間維持した。その後、ナノ粒子をabca4-/-マウスに、0.5μL(100ng用量)の注射体積で網膜下注射を通じて注射した。マウスは、3ヶ月齢で注射され、注射の2週間後および1ヶ月後、犠牲にした。ABCA4 mRNA発現の分析のために、qRT-PCRを使用した。
【0216】
ABCA4 mRNA発現は、PEG化(2.5%PEG)PEG-ECO/pGRK1-ABCA4-S/MARナノ粒子の網膜下注射により処置されたほぼすべての眼について観察された(図15)。ABCA4 mRNA発現は、1週間、2週間および1ヶ月間貯蔵されたナノ粒子について、平均で有意差を示さなかった。しかし、作りたてのナノ粒子と比較して、-20℃で維持されたすべてのナノ粒子について、平均でABCA4 mRNA発現における低下が観察された。しかし、統計的に有意差はなかった。
【0217】
PEG化(2.5%PEG)PEG-ECO/pGRK1-ABCA4-S/MARナノ粒子は、網膜下および硝子体内注射の両方を通じて遺伝子発現を誘導することができる
異なる注射経路を通じてPEG化(2.5%PEG)PEG-ECO/pGRK1-ABCA4-S/MARナノ粒子の有効性を示すために、PEG化(2.5%PEG)PEG-ECO/pGRK1-ABCA4-S/MARナノ粒子をabca4-/-マウスにおいて試験した。PEG-ECO/pGRK1-ABCA4-S/MARナノ粒子を、pDNA濃度200ng/μLで、N/P=8で製剤化した。10匹のマウスには、一方の眼に網膜下注射を通じて200ng/μLのナノ粒子0.5μL(以前同定した用量および注射体積)が、反対側の眼に硝子体内注射を通じて200ng/μLのナノ粒子0.5μLが注射された。マウスは2ヶ月齢で注射され、注射の2週間後および1ヶ月後、犠牲にした。ABCA4 mRNA発現の分析のために、qRT-PCRを使用した。
【0218】
網膜下注射を通じたABCA4 mRNA発現の結果を、図16に要約した。10匹のマウスのうち9匹が、非処置対照マウスよりも有意に多くのABCA4 mRNA発現を示した。A2E分析は、評価の時間枠(6ヶ月)のため、以前選択された100ng/眼の処置用量および0.5μLの注射体積を使用して現在進行中である。
【0219】
異なる注射経路を通じたPEG化(2.5%PEG)PEG-ECO/pGRK1-ABCA4-S/MARナノ粒子の有効性を示すため、PEG化(2.5%PEG)PEG-ECO/pGRK1-ABCA4-S/MARナノ粒子をabca4-/-マウスにおいて試験した。PEG-ECO/pGRK1-ABCA4-S/MARナノ粒子を、pDNA濃度200ng/μLで、N/P=8で製剤化した。10匹のマウスには、一方の眼に網膜下注射を通じて200ng/μLのナノ粒子0.5μL(以前同定した用量および注射体積)が、反対側の眼に硝子体内注射を通じて200ng/μLのナノ粒子0.5μLが注射された。マウスは、2ヶ月齢で注射され、注射の2週間後および1ヶ月後、犠牲にした。ABCA4 mRNA発現の分析のために、qRT-PCRを使用した。
【0220】
硝子体内注射を通じたABCA4 mRNA発現の結果を、図17に要約した。10匹のマウスのうち6匹が、非処置対照マウスよりも有意に多くのABCA4 mRNA発現を示した。網膜下注射と硝子体内注射との間の比較を、図18に要約した。全体として、網膜下注射は、硝子体内注射よりも良好な有効性を示した。驚いたことに、PEG-ECO/pGRK1-ABCA4-S/MARナノ粒子の硝子体内投与はまた、外側の網膜でABCA4発現を誘導し、硝子体内投与のためのECOベースのナノ粒子製剤の潜在的な適用を高めることができた。しかし、網膜下注射経路と比較して有効性が限られているため、A2E分析は、以前決定された用量100ng/眼および0.5μLの注射体積で、PEG化ECOナノ粒子のための網膜下注射経路を使用してのみ実行された。
【0221】
PEG-ECO/pGRK1-ABCA4-S/MARナノ粒子を使用するECOベースの遺伝子治療は、8ヶ月間および1年間の単回処置でabca4 -/- マウスにおいてA2E蓄積を防止することができる
単回処置後のECOベースの遺伝子治療の有効性を示すため、A2E上のPEG化(2.5%PEG)PEG-ECO/pGRK1-ABCA4-S/MARナノ粒子をabca4-/-マウス(1~2.5ヶ月齢)において試験した。PEG-ECO/pGRK1-ABCA4-S/MARナノ粒子を、pDNA濃度100ngまたは200ng/μLで、N/P=8で製剤化した。その後、ナノ粒子をabca4-/-マウスに0.5μLの注射体積(100ngおよび50ng用量)で網膜下注射を通じて注射した。注射の8ヶ月後または1年後、マウスを犠牲にした。HPLCを使用して、各眼球でのA2E量を分析した。qRT-PCRを使用して、ABCA4 mRNA発現を評価し、免疫組織染色を使用して、ABCA4タンパク質発現を示した。結果を図19図20図21図22および図23に示した。
【0222】
非処置対照と比較して高用量(100ng/眼)のナノ粒子処置abca4-/-マウスについてA2E蓄積における約25%の低下が観察された。低用量(50ng/眼)のナノ粒子処置マウスについてA2E蓄積における20%の低下が観察された。平均して、高用量の遺伝子治療は、結果として良好な予防となり得るが、この実験で選択された低用量と有意差がなかった(図19)。HPLC分析からのクロマトグラムはまた、対照群よりも処置群でより小さいピークを示した(図20)。
【0223】
ABCA4タンパク質発現はまた、abca4-/-マウスにおいて、EG-ECO/pGRK1-ABCA4-S/MARナノ粒子の単回処置の8ヶ月後に観察された。免疫組織染色の助けを借りて、ABCA4タンパク質(緑色で標識)発現は、細胞特異的プロモータGRK1の取り込みのため、主に光受容体外節(OS)で観察することができた(図21)。
【0224】
A2E蓄積における20%の同様の低下は、高用量(100ng/眼)のナノ粒子処置abca4-/-マウスで観察された。A2E蓄積の僅かな低下は、低用量(50ng/眼)のナノ粒子処置マウスで観察されたが、対照群と有意差がなかった。平均して、高用量の遺伝子治療は、結果として良好な予防となり得る(図22)。
【0225】
ABCA4 mRNA発現はまた、abca4-/-マウスにおいて、EG-ECO/pGRK1-ABCA4-S/MARナノ粒子の単回処置の1年後にも観察され、平均して低用量で処置されたマウスよりも高い用量で処置されたマウスでより高いmRNA発現を有していたが、有意差はなかった(図23)。
【0226】
PEG-ECO/pGRK1-ABCA4-S/MARナノ粒子を使用するECOベースの遺伝子治療は、最初の処置から8ヶ月後の多重処置でabca4 -/- マウスにおいてA2E蓄積を防止することができる
単回処置後のECOベースの遺伝子治療の有効性を示すため、A2E上のPEG化(2.5%PEG)PEG-ECO/pGRK1-ABCA4-S/MARナノ粒子を、abca4-/-マウス(1~2.5ヶ月齢)において試験した。PEG-ECO/pGRK1-ABCA4-S/MARナノ粒子を、pDNA濃度100ngまたは200ng/μLで、N/P=8で製剤化した。網膜下注射を通じて0.5μLの注射体積(100ng)でナノ粒子をabca4-/-マウスに注射した。単回注射では、マウスは1回のみ注射された。複数注射では、マウスは3ヶ月ごとに注射された。最初の処置の8ヶ月後、マウスを犠牲にした。HPLCを使用して各眼球におけるA2E量を分析した。qRT-PCRを使用して、ABCA4 mRNA発現を評価した。結果を図19図20図21および図22に示した。
【0227】
ナノ粒子の単回注射で処置されたabca4-/-マウスでA2E蓄積における約16%の低下が観察された。ナノ粒子の2回用量で注射されたマウスで約30%の低下が観察された。両方とも対照群と有意差があった。防止効果は、単回注射よりも多重処置群で有意に良好である(図24)。HPLC分析からのクロマトグラムはまた、対照群よりも処置群、特に多重処置群でより小さいピークを示した(図25)。
【0228】
ABCA4 mRNA発現はまた、abca4-/-マウスの単回および多重処置群の両方について観察された。2群についてRNAレベルに対して発現の有意差は観察されなかった(図26)。さらなる組織学的研究は、タンパク質レベルに対してABCA4発現を評価するために実行される。
【0229】
単回または多重処置後のabca4 -/- マウスにおいて優れた安全性プロファイルを示したPEG-ECO/pGRK1-ABCA4-S/MARナノ粒子を使用するECOベースの遺伝子治療
単回処置後のECOベースの遺伝子治療の安全性を評価するため、A2E上のPEG化(2.5%PEG)PEG-ECO/pGRK1-ABCA4-S/MARナノ粒子をabca4-/-マウス(1~2.5ヶ月齢)において試験した。PEG-ECO/pGRK1-ABCA4-S/MARナノ粒子を、pDNA濃度200ng/μLで、N/P=8で製剤化した。その後、網膜下注射を通じて0.5μLの注射体積(100ng)でナノ粒子をabca4-/-マウスに注射した。走査型レーザ検眼鏡(SLO)を使用して、単回用量注射の7ヶ月後または2回注射の8ヶ月後、眼の状態を評価した。遺伝子治療について、処置に関連する副作用は観察されなかった。対照群については、視神経の近くの暗い領域により示されるいくらかの網膜変性イベントが観察された(図27)。
【0230】
同様に、遺伝子治療について、処置に関連する有意な副作用は観察されなかった。わずかに暗い領域がSLO画像で観察され、回復することができた(図28)。
【0231】
2型アデノ随伴ウイルス(AAV2)ベースのシステムよりも良好な安全性プロファイルを示したECOベースのナノ粒子プラットフォーム
AAV2ベースのシステムと比較してECOベースのナノ粒子システムの安全性を評価するため、対照としてAAV2-CMV-GFPを用いるレポーターGFPプラスミド(pCMV-GFP)を使用して、5%スクロース中で製剤化したPEG化ECOナノ粒子を選択した。ACU-PEG-HZ-ECO/pCMV-GFPナノ粒子を、5%スクロースを有するpDNA濃度50ng/μLで、N/P=8で製剤化した。ナノ粒子(0.5μL)をBALB/cマウスの一方の眼の網膜下腔に注射した。反対側の眼には、同じ用量のAAV2-CMV-GFPを注射した。非処置マウスを対照として使用した。走査型レーザ検眼鏡(SLO)を使用して眼の状態およびGFP発現を1ヶ月、2ヶ月および3ヶ月で評価した(図29)。GFP発現は、製剤化されたECOナノ粒子およびAAV2システムの両方についてすべての時点で観察された。
【0232】
AAV2は、飽和した白色領域により示されるECOナノ粒子よりも多くの病変および潜在的な炎症を誘導するように見えた。ECOベースのナノ粒子プラットフォームは、深刻な有害事象を示さず、眼の状態は、処置から回復することができた。
【0233】
ECOは、ソルビトールと比較して賦形剤として5%スクロース中で異なるサイズのpDNAを有する安定したナノ粒子を製剤化することができる
pRHO-ABCA4-SV40およびpCMV-ABCA4-SV40のECO/pDNAナノ粒子を、アミン/リン酸(N/P)比6、8および10でプラスミドを用いるECOの自己組織化により最初に調製した。プラスミドpRHO-ABCA4およびpCMV-ABCA4を対照として使用した。その後、スクロースまたはソルビトールを賦形剤として5%または10%の濃度で添加してナノ粒子を安定化させた。ナノ粒子は、異なる賦形剤条件下、それらのサイズ分布(図30)およびゼータ電位分布(図31)について、動的光散乱(DLS)により特徴づけられた。図30に示されるように、ECOおよびpABCA4は、5%および10%の内容量の両方で、スクロースの存在下、すべてのN/P比で安定したナノ粒子を製剤化した。サイズは、220nmから250nmであり、分布は、凝集ピークが無視できる単一のピークとして見られ、賦形剤による影響を受けなかった。しかし、ソルビトール添加は、いくらかのECO/pABCA4製剤に影響した。例えば、N/P比が6のECO/pRHO-ABCA4、N/P比が8のECO/pRHO-ABCA4-SV40、N/P比が10のECO/pCMV-ABCA4、およびN/P比が10のECO/pCMV-ABCA4-SV40は、ソルビトール添加後にサイズ分布の拡大を示した。ゼータ電位分布は、ECO/pABCA4ナノ粒子製剤についてスクロース添加後に顕著な変化がなかったことを示した(図31)。ECO/pABCA4ナノ粒子は、スクロース条件下、すべてのN/P比にわたって+20mVの周囲で均一な分布を示した。しかし、ECO/pABCA4ナノ粒子製剤へのソルビトール添加は、結果としてゼータ電位分布においていくらかの顕著な変化となった。
【0234】
本発明の上記の説明から、当業者は、改善、変更および修飾を理解するであろう。当技術分野の技術内のそのような改善、変更および修飾は、添付の特許請求の範囲によりカバーされることが意図されている。本出願で引用されるすべての参考文献、刊行物、および特許は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれている。
図1
図2A-B】
図3
図4A-C】
図5A-B】
図6
図7
図8
図9A-D】
図10A-C】
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
【手続補正書】
【提出日】2023-04-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】追加
【補正の内容】
【配列表】
2023537631000001.app
【国際調査報告】