IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ スーチョウ プラジュナ バイオテック カンパニー リミテッドの特許一覧

特表2023-537643突然変異型オルフウイルス及びその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-04
(54)【発明の名称】突然変異型オルフウイルス及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/39 20060101AFI20230828BHJP
   C12N 7/01 20060101ALI20230828BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230828BHJP
   A61K 35/768 20150101ALI20230828BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20230828BHJP
   A61K 9/02 20060101ALI20230828BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20230828BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20230828BHJP
   A61K 9/70 20060101ALI20230828BHJP
【FI】
C12N15/39 ZNA
C12N7/01
A61P35/00
A61K35/768
A61K9/06
A61K9/02
A61K9/10
A61K9/14
A61K9/70 401
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023511666
(86)(22)【出願日】2021-08-13
(85)【翻訳文提出日】2023-02-22
(86)【国際出願番号】 CN2021112408
(87)【国際公開番号】W WO2022033573
(87)【国際公開日】2022-02-17
(31)【優先権主張番号】202010813096.9
(32)【優先日】2020-08-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】319004434
【氏名又は名称】スーチョウ プラジュナ バイオテック カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フー,ミンジェ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AA95X
4B065AA95Y
4B065AB01
4B065BA02
4B065BA21
4B065BD16
4B065CA44
4C076AA01
4C076AA06
4C076AA22
4C076AA30
4C076AA72
4C076BB11
4C076BB13
4C076BB15
4C076BB16
4C076BB21
4C076BB29
4C076BB30
4C076BB31
4C076CC27
4C076FF01
4C076FF11
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC83
4C087CA09
4C087CA12
4C087MA16
4C087MA28
4C087MA32
4C087MA43
4C087MA56
4C087MA60
4C087MA63
4C087MA66
4C087NA14
4C087ZB26
(57)【要約】
本発明は、突然変異型オルフウイルス(ORFV)及びその医薬組成物の癌を治療するための使用を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遺伝子ORFV112及び/又は遺伝子ORFV111の機能性発現産物を欠失することを特徴とする突然変異型オルフウイルス。
【請求項2】
遺伝子ORFV112の機能性発現産物の欠失は、遺伝子ORFV112の完全欠失又は一部欠失により引き起こされる請求項1に記載のウイルス。
【請求項3】
遺伝子ORFV111の機能性発現産物の欠失は、遺伝子ORFV111の完全欠失又は一部欠失により引き起こされる請求項1に記載のウイルス。
【請求項4】
発現産物がタンパク質及び/又は核酸である請求項1~3のいずれか1項に記載のウイルス。
【請求項5】
遺伝子ORFV112を完全欠失又は一部欠失するか、及び/又は遺伝子ORFV111を完全欠失又は一部欠失することを特徴とする突然変異型オルフウイルス。
【請求項6】
遺伝子ORFV112の発現産物の発現及び/又は活性を低下又は除去すること、及び/又は遺伝子ORFV111の発現産物の発現及び/又は活性を低下又は除去すること
を含むオルフウイルスの操作方法。
【請求項7】
遺伝子ORFV112を完全又は一部削除することを含む請求項6に記載の方法。
【請求項8】
遺伝子ORFV111を完全又は一部削除することを含む請求項6に記載の方法。
【請求項9】
発現が転写及び/又は翻訳である請求項6~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
遺伝子ORFV112を完全又は一部削除すること、及び/又は遺伝子ORFV111を完全又は一部削除することを含むオルフウイルスの操作方法。
【請求項11】
請求項6~10のいずれか1項に記載の方法により得られるウイルス。
【請求項12】
遺伝子ORFV002(NF-κB核阻害剤)、ORFV005(Hypothetical protein)及びORFV007(dUTPase)を完全欠失する請求項1~5及び11のいずれか1項に記載のウイルス。
【請求項13】
複製及び腫瘍溶解性能力を備える請求項1~5、11及び12のいずれか1項に記載のウイルス。
【請求項14】
CCTCC受託番号V202029で受託されたオルフウイルス。
【請求項15】
請求項1~5及び11~14のいずれか1項に記載のウイルスのゲノム。
【請求項16】
請求項1~5及び11~14のいずれか1項に記載のウイルスと薬学的に許容されるベクターとを含む、組成物。
【請求項17】
粉剤、液剤、経皮パッチ、軟膏、又は座薬の形式である請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
静脈内、腫瘍内、筋肉内、皮下、直腸内、膣内、又は腹腔内の路径により投与される請求項16に記載の組成物。
【請求項19】
請求項1~5及び11~14のいずれか1項に記載のウイルス製造の、癌を治療するための薬物への使用。
【請求項20】
前記癌が固形腫瘍である請求項19に記載の使用。
【請求項21】
前記固形腫瘍が、子宮頸癌、膀胱癌、肝臓癌、卵巣癌、メラノーマ、結腸直腸癌、肺癌、乳癌、胃癌、子宮癌、頭頚部癌、甲状腺癌、食道癌、前立腺癌、膵臓癌、肉腫又は脳腫瘍である請求項20に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、2020年8月13日により提出されて出願番号第202010813096.9号の中国出願の優先権を主張する。
【0002】
本発明は、バイオテクノロジー分野に関し、具体的に突然変異型オルフウイルス(ORFV)及びその医薬組成物の癌を治療するための使用に関する。
【背景技術】
【0003】
オルフウイルス(ORFVと略称)は、ポックスウイルス科(Poxviridae)におけるパラポックスウイルス属(Parapoxvirus)に属する。この属には、さらにウシ丘疹性口内炎ウイルス(Bovine papular stomatitis virus)、偽ウシポックスウイルス(pseudocowpox virus)、ニュージーランドアカシカパラポックスウイルス(parapox virus of
red deer in New Zealand)、アザラシボックスウイルス(Sealpox)等、複数種のウイルスが含まれ、ヒツジとヤギの接触伝染性、上皮向性の疾患を引き起こす。ウイルスがヒツジを感染した後、その病気の経過は、まず、ヤギやヒツジの口唇、舌、鼻、乳房等の部位から紅斑が発生し、さらに丘疹、水疱、膿疱に発展し、最後に結痂し、過形成性炎症を典型的な特徴とする。
【0004】
中国特許CN104017776Bには、分離及び細胞継代培養された弱毒化ORFVをワクチン創製に用いることが開示されている。中国特許公開CN108026542Aには、ウイルス株D1701を用いて組み換えORFVベクターの構築を行い、ウイルス抗原、腫瘍抗原等を発現させてワクチン製造に用いることが記載されている。
【0005】
腫瘍溶解性ウイルス療法(oncolytic viral therapy)は、天然に存在するウイルス又は操作されたウイルスを選択、使用して腫瘍を治療する全身療法である。そもそも腫瘍細胞の増殖及び生存を促進する特定の遺伝子突然変異は、ちょうど溶解機能を有するウイルスがその中での成長を促進することができ、これは、腫瘍溶解性ウイルスが腫瘍細胞を精確に攻撃する原因の1つである[1、2、3]。癌細胞を感染した腫瘍溶解性ウイルスは、ウイルスライフサイクル内の適切な時点で癌細胞の溶解、死亡を促進させ、感染性ウイルス粒子を放出して、周囲の感染されていない癌細胞を感染することができる。また、癌細胞の溶解により放出されたネオアンチゲン(neoantigen)が、免疫系を活性化することにより、癌に対して後続の攻撃を行う[4]。現在、世界中で腫瘍溶解性ウイルスを用いてヒト悪性腫瘍を治療する臨床試験が90つ以上であり、中でも、T-Vec腫瘍溶解性ウイルス薬物がFDAの承認を取得した[5]
【0006】
ORFVウイルスは、二本鎖DNAウイルスであり、長さが約134~139kbである。ウイルス粒子の長さが230~280nm、幅が150~200nmであり、楕円形のコイル状をしている[6]。ORFVウイルスは以下の特徴を有する。1)同じファミリのポックスウイルス科メンバーに類似して、ORFVウイルスは、宿主細胞の細胞質のみにおいて複製し、細胞核に入らないため、宿主細胞のゲノムに取り込まないので、安全性が高く、発癌性の確率が極めて低い[7、10]。2)破損した皮膚を通して動物の感染部位と接触し、ヒトを感染することができ、感染部位(一般的に指である)において、臨床上、症状が軽いの膿疱が発生し、ほとんど他の好ましくない副反応がなく、一般的に致命的な疾患を引き起こさず、6~8週間後、自己治癒できる[8、11]。3)感染時に細胞表面の関連受容体により制限されず[9、10]、固形腫瘍の高ヘテロジェニティ
ーを克服するためのルートを提供する見込みがある。4)ゲノムが膨大であり、外来遺伝子の挿入及び高効率な発現に有利である。5)ウイルスゲノムが安定し、複製の忠実度が高い。6)宿主の体内で中和抗体がほとんど又は全く発生せず、複数回、感染を繰り返すことができ[11]、繰り返しの静脈内注射を実現することができる。7)生体の先天性(Innate)及び適応性(Adaptive)抗腫瘍免疫反応を誘発することができる[12]。8)同じファミリにおけるワクシニアウイルスを抗天然痘ワクチンとして、既に全世界で数十億人に使用されており、臨床適用のリスクが低い。9)それ自体の特性に基づき、コールド(Cold)腫瘍をホット(Hot)腫瘍に形質転換する能力を有する[18]。以上の特徴により、当該種属のウイルスは、新規な腫瘍溶解性ウイルスとして固形腫瘍治療に用いられる見込みがある。
【0007】
ORFVウイルス株は、一般的に約130~134個の遺伝子をコードする。現在、既に確認された毒性因子は、主にウイルスインターフェロン阻害タンパク質(OVIFNR,ORFV020)、ケモカイン結合タンパク質(CBP,ORFV112)、GM-CSF/IL-2阻害タンパク質(GIF,ORFV117)、ウイルスインターロイキン10(vIL-10,ORFV127)及び血管内皮成長因子様タンパク質(VEGF-like protein,ORFV132)等が挙げられる[11]。これらの遺伝子がコードするタンパク質は、生体の免疫反応を調節することもできる[13]
【0008】
遺伝子ORFV002は、タンパク質合成後に細胞核内に局在して細胞核内でNF-κB経路を阻害するウイルス後期遺伝子であり、ORFVウイルスにより産生する最初のNF-κB核阻害剤であると同定されている[19]
【0009】
遺伝子ORFV005は、仮想タンパク質(Hypothetical protein)遺伝子であり、その作用メカニズムは、まだ明らかにされていない。
【0010】
遺伝子ORFV007は、長さが約483bpであり、デオキシウリジントリホスファターゼ(duTPase)をコードする[15]。当該タンパク質は、dNTP(デオキシリボヌクレオシド三リン酸)の合成における重要な酵素である。通常、正常な細胞におけるdNTP濃度が厳密に調節されているので、ウイルスの複製に不利である。しかしながら、癌細胞では、比較的高い濃度のdNTPがあり、ウイルスの複製を促進することができる[16]。ORFV007遺伝子を欠失することにより、当該ウイルスは、正常な細胞における複製が妨害されるが、腫瘍細胞における増幅には影響が及ぼされず、ORFVウイルスの、癌細胞における選択的複製の目的が達成される。
【0011】
遺伝子ORFV111は、仮想タンパク質(Hypothetical protein)遺伝子であり、その作用メカニズムは、まだ明らかにされていない。
【0012】
CBPタンパク質をコードする遺伝子ORFV112(chemokine-binding protein,ケモカイン結合タンパク質)は、長さが約864bpであり、その機能が免疫細胞の抗ウイルスメカニズムを阻害することである[14]。当該タンパク質は、構造及び機能において他のポックスウイルスのCBP-IIタンパク質に類似し、DC細胞の炎症部位への移動を抑制することができるとともに、DC細胞がT細胞を活性化することを阻害することもできる。
【0013】
現在、公開され、かつ腫瘍溶解性ウイルスの研究に用いられるORFVウイルス株は、NZ-2、NZ-7、D1701、NA1/11等が挙げられる。従来技術において、ORFVウイルスは、比較的膨大な外来性DNA断片が挿されすることができるので、通常、それをベクターとして、ある種類の腫瘍特異性抗原又はウイルス抗原、サイトカイン等に挿入し、遺伝子組み換えウイルスを取得し、研究に供する。
【0014】
国際公開WO2012122649A1には、特定の宿主範囲遺伝子(SPI-1、K1L、C7L、B5R、p28/N1R、E3L等)を含有する腫瘍細胞を感染して、癌薬物の創製に用いる組み換えOFRVウイルス(ワクシニアウイルスE3L遺伝子を挿入した)が開示されている。中国特許公開CN108220251Aには、組み換え伝染性膿疱性腫瘍溶解性ウイルス及びその製造方法ならびに使用が開示されており、主にNA1/11ウイルス株のORFV132(VEGF)遺伝子をノックアウトした後、同一位置にP53-EGFP融合タンパク質遺伝子を挿入し、癌薬物の創製に用いることである。上記の2つの特許文献に記載されているウイルス株は、いずれもORFV112遺伝子の欠失が報告されておらず、ORFV007遺伝子の欠失も報告されていない。
【0015】
本明細書は、遺伝子ORFV112及び/又は遺伝子ORFV111の機能性発現産物を欠失することを特徴とする突然変異型オルフウイルスを提供し、機能性発現産物の欠失は、CBPをコードする遺伝子ORFV112、及び/又は仮想タンパク質111をコードする遺伝子ORFV111の完全欠失又は一部欠失により引き起こされる。本発明者は、驚くべきことに、前記ORFV112遺伝子及び/又はORFV111遺伝子の完全欠失又は一部欠失がウイルスの抗腫瘍効果に対して明らかな強化作用を有することを見出した。さらに、前記突然変異型オルフウイルスのゲノム配列を、他の開示されている全てのORFVウイルス株のゲノム配列と比較したところ、前記突然変異型オルフウイルスはORFV007 dUTPase遺伝子を完全欠失していることを見出した。さらに、上記比較により、前記オルフウイルスもORFV002及びORFV005遺伝子を完全欠失していることも実証されている。
【0016】
従って、本公開の突然変異型オルフウイルスは、このようなウイルスの抗腫瘍薬物の創製への使用に対して有益な指導的役割を有する。
【発明の概要】
【0017】
発明者は、驚くべきことに、遺伝子ORFV112(CBPタンパク質をコードする)及び/又は遺伝子ORFV111(仮想タンパク質をコードし、以下、仮想タンパク質111と称する)の完全欠失又は一部欠失(特に、遺伝子ORFV112の5’部分の欠失、及び遺伝子ORFV111の3’部分の欠失)は、オルフウイルスの抗腫瘍活性を強化できることを見い出した。さらに、発明者は、また、驚くべきことに、前記突然変異型オルフウイルスが遺伝子ORFV007を完全欠失していることを見い出した。機能性CBPタンパク質及び/又は仮想タンパク質111を欠失するオルフウイルスは、通常の分子生物学的手法(例えば、分子クローニング、DNA組み換え、相同組み換え、PCR、制限ヌクレアーゼ、遺伝子ノックアウト、サイレンシング等)又は新興の分子生物学的手法(例えば、遺伝子編集等)により得られる。
【0018】
1つの態様において、本発明は、遺伝子ORFV112及び/又は遺伝子ORFV111の機能性発現産物を欠失することを特徴とする突然変異型オルフウイルスを提供する。1つの実施形態において、遺伝子ORFV112の機能性発現産物の欠失は、遺伝子ORFV112の全部又は一部(例えば、5’部分又は3’部分、特に、5’部分)欠失により引き起こされる。1つの実施形態において、遺伝子ORFV112の発現産物の成熟配列は、SEQ ID NO:2で示される通りである。1つの実施形態において、遺伝子ORFV112の完全配列は、SEQ ID NO:3で示される通りである。1つの実施形態において、SEQ ID NO:3を完全欠失する。1つの実施形態において、SEQ ID NO:3を一部欠失し、例えば1~1161個、1~1140個、1~538個、539~1139個又は1141~1160個の5’端塩基を欠失する。1つの実施形態において、一部欠失型遺伝子ORFV112は、SEQ ID NO:4又はSEQ ID NO:57で示される通りである。1つの実施形態において、遺伝子ORFV
111の機能性発現産物の欠失は、遺伝子ORFV111の全部又は一部(例えば、5’部分又は3’部分、特に3’部分)欠失により引き起こされる。1つの実施形態において、遺伝子ORFV111の発現産物の配列は、SEQ ID NO:58で示される通りである。1つの実施形態において、遺伝子ORFV111の完全配列は、SEQ ID NO:59で示される通りである。1つの実施形態において、SEQ ID NO:59を完全欠失する。1つの実施形態において、SEQ ID NO:59を一部欠失し、例えば1~793個、1~309個又は310~792個の3’端塩基を欠失する。1つの実施形態において、一部欠失型遺伝子ORFV111は、SEQ ID NO:60で示される通りである。1つの実施形態において、SEQ ID NO:3及びSEQ ID
NO:59を完全欠失する。1つの実施形態において、発現産物は、タンパク質及び/又は核酸(特に、機能性核酸)である。1つの実施形態において、本発明は、前記ウイルスのゲノムを提供する。
【0019】
1つの態様において、本発明は、遺伝子ORFV112及び/又は遺伝子ORFV111の発現産物の発現及び/又は活性を低下又は除去することを含むオルフウイルスの操作方法を提供する。1つの実施形態において、当該方法は、遺伝子ORFV112を完全又は一部(例えば、5’部分又は3’部分、特に、5’部分)削除することを含む。1つの実施形態において、遺伝子ORFV112の発現産物の成熟配列は、SEQ ID NO:2で示される通りである。1つの実施形態において、遺伝子ORFV112の完全配列は、SEQ ID NO:3で示される通りである。1つの実施形態において、当該方法は、SEQ ID NO:3を完全に削除することを含む。1つの実施形態において、当該方法は、SEQ ID NO:3を一部削除することを含み、例えば1~1161個、1~1140個、1~538個、539~1139個又は1141~1160個の5’端塩基を削除する。1つの実施形態において、当該方法により、SEQ ID NO:4又はSEQ ID NO:57で示される一部欠失型遺伝子ORFV112を発生させる。1つの実施形態において、当該方法は、遺伝子ORFV111を完全又は一部(例えば、5’部分又は3’部分、特に3’部分)削除することを含む。1つの実施形態において、遺伝子ORFV111の発現産物の配列は、SEQ ID NO:58で示される通りである。1つの実施形態において、遺伝子ORFV111の完全配列は、SEQ ID NO:59で示される通りである。1つの実施形態において、当該方法は、SEQ ID NO:59を完全に削除することを含む。1つの実施形態において、当該方法は、SEQ
ID NO:59を一部削除すること、例えば1~793個、1~309個又は310~792個の3’端塩基を削除することを含む。1つの実施形態において、当該方法により、SEQ ID NO:60で示される一部欠失型遺伝子ORFV111を発生させる。1つの実施形態において、当該方法は、SEQ ID NO:3及びSEQ ID NO:59を完全に削除することを含む。1つの実施形態において、発現は、転写及び/又は翻訳である。1つの態様において、本発明は、前記方法により得られたウイルスを提供する。1つの実施形態において、本発明は、前記ウイルスのゲノムを提供する。本発明の方法は、一般的な分子生物学的技術(例えば、分子クローニング、DNA組み換え、相同組み換え、PCR、制限ヌクレアーゼ、遺伝子ノックアウト、サイレンシング等)又は新興の分子生物学的技術(例えば、遺伝子編集等)により行われてもよい。
【0020】
もう1つの態様において、本発明は、前記突然変異型オルフウイルス及び/又はそのゲノムを同定する方法、特に、遺伝子ORFV112及び/又は遺伝子ORFV111(の存在又は配列)及び/又はその発現産物(の存在及び/又は活性)を検出する方法を提供する。本発明の方法は、タンパク質の存在及び/又は活性、及び/又は核酸の存在、及び/又は配列を検出する一般的な分子生物学的技術(例えば、活性測定法、ハイブリダイゼーション(例えば、Southernハイブリダイゼーション、Northernハイブリダイゼーション、又はWesternハイブリダイゼーション)、制限エンドヌクレアーゼ、PCR、電気泳動(例えば、ゲル電気泳動であり、タンパク質電気泳動及び核酸電
気泳動を含み、アガロース電気泳動及びPAGE電気泳動を含み、還元電気泳動及び非還元電気泳動を含む)、配列決定(タンパク質配列決定及び核酸配列決定を含む)等)又は新興の分子生物学的技術(例えば、次世代配列決定等)により行われてもよい。本発明は、特に、遺伝子ORFV112及び/又は遺伝子ORFV111の完全性を検出する方法を提供する。1つの実施形態において、当該方法は、PCR及びゲル電気泳動により行われる。1つの実施形態において、当該方法は、ハイブリダイゼーション又は配列決定により行われてもよい。
【0021】
もう1つの態様において、本発明は、前記突然変異型オルフウイルス及び/又はそのゲノムを使用して被験者に対して癌を治療する方法を提供する。もう1つの態様において、本公開は、前記突然変異型オルフウイルス及び/又はそのゲノムの、被験者に対する癌治療への使用を提供する。もう1つの態様において、本公開は、前記突然変異型オルフウイルス及び/又はそのゲノムの、被験者に対する癌治療のための薬物の製造への使用を提供する。もう1つの態様において、本公開は、被験者に対する癌治療のための前記突然変異型オルフウイルス及び/又はそのゲノムを提供する。もう1つの態様において、本公開は、前記突然変異型オルフウイルス及び/又はそのゲノムの、被験者に対する癌治療のための薬物の製造への使用を提供する。1つの実施形態において、前記癌が固形腫瘍である。1つの実施形態において、前記固形腫瘍が子宮頸癌、膀胱癌、肝臓癌、卵巣癌、メラノーマ、結腸直腸癌、肺癌、乳癌、胃癌、子宮癌、頭頚部癌、甲状腺癌、食道癌、前立腺癌、膵臓癌、肉腫、脳腫瘍等である。1つの実施形態において、前記被験者が哺乳類であり、げっ歯類(例えば、マウス及びラット)、非ヒト霊長類(例えば、カニクイザル)及びヒトである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、ORFV112遺伝子特異的フォワードプライマー及びリバースプライマー(SEQ ID NO:5及び6)を使用してPCR増幅を行った後、PCR産物のアガロースゲル電気泳動結果を示す。図中、番号1のサンプルはORFV112遺伝子を欠失するウイルス株POV-601-1A1であり、番号2のサンプルはORFV112遺伝子が完全なウイルス株POV-601-3F8であり、MがDNAサイズmarkerである。
図2図2は、ORFV112遺伝子を欠失するウイルス株POV-601-1A1及びPOV-604-1D1の、MB49マウス由来膀胱癌モデルにおける腫瘍抑制効果を示す。
図3図3は、ORFV112遺伝子を欠失するウイルス株POV-601-1A1とPOV-604-1D1、及びORFV112遺伝子が完全なウイルス株POV-601-3F8の、B16-F10マウス由来メラノーマ腫瘍モデルにおける腫瘍抑制効果を示す。
図4図4は、POV-601-1A1ウイルスの、異なる投与量及び投与経路条件下でのマウス体重への影響を示す。
図5図5は、POV-601-1A1ウイルス株を投与した後、ヒトC-33A子宮頸癌両側腫瘍播種モデルにおけるマウス免疫系の変化状況を示す。図5A及び図5Bにおいて、正方形は、右側に腫瘍内投与を行った結果を示し、円は、左側に投与を行わなかった結果を示す。腫瘍内投与により、腫瘍内のCD45及びNK細胞の活性化割合が向上した。図5Cは、血液中のNK細胞の活性化状況を示し、静脈内投与により、NK細胞の活性化割合が向上した。
図6図6は、本発明の遺伝子ORFV112ヌクレオチドの完全配列と一部欠失配列の実施例の比較を示す。
図7図7は、本発明のCBPタンパク質の完全配列と他のパラポックスウイルス株のCBPタンパク質の完全配列との比較を示す。図中、「3F8」はPOV-601-3F8 Strainを表し、「B029」はORFV Strain B029を表し、「GO」はORFV Strain GOを表し、「NA11」はORFV Strain NA1/11を表し、「NZ2」はORFV Strain NZ2を表し、「NA17」はORFV Strain NA17を表し、「OV-SA00」はORFV Strain OV-SA00を表し、「OV-IA82」はORFV Strain OV-IA82を表し、「SJ1」はORFV Strain SJ1を表し、「SY17」はORFV Strain SY17を表し、「OV-NH3_12」はORFV Strain OV-HN3/12を表し、「NP」はORFV Strain NPを表し、「YX」はORFV Strain YXを表す。
図8-1】図8は、本発明のORFV112遺伝子の完全配列と他のパラポックスウイルス株ORFV112遺伝子の完全配列との比較を示す。図中、「3F8」はPOV-601-3F8 Strainを表し、「B029」はORFV Strain B029を表し、「GO」はORFV Strain GOを表し、「NA11」はORFV Strain NA1/11を表し、「NZ2」はORFV Strain NZ2を表し、「NA17」はORFV Strain NA17を表し、「OV-SA00」はORFV Strain OV-SA00を表し、「OV-IA82」はORFV Strain OV-IA82を表し、「SJ1」はORFV Strain SJ1を表し、「SY17」はORFV Strain SY17を表し、「OV-NH3_12」はORFV Strain OV-HN3/12を表し、「NP」はORFV Strain NPを表し、「YX」はORFV Strain YXを表す。
図8-2】図8(続き)
図9図9は、本発明の遺伝子ORFV111ヌクレオチドの完全配列と一部欠失配列の実施例の比較を示す。
図10図10は、本発明の仮想タンパク質111の完全配列と他のパラポックスウイルス株の仮想タンパク質111の完全配列の比較を示す。図中、「POV-601-3F8」はPOV-601-3F8 Strainを表し、「B029」はORFV Strain B029を表し、「GO」はORFV Strain GOを表し、「NA11」はORFV Strain NA1/11を表し、「NZ2」はORFV Strain NZ2を表し、「NA17」はORFV Strain NA17を表し、「OV-SA00」はORFV Strain OV-SA00を表し、「OV-IA82」はORFV Strain OV-IA82を表し、「SJ1」はORFV Strain SJ1を表し、「SY17」はORFV Strain SY17を表し、「OV-NH3_12」はORFV Strain OV-HN3/12を表し、「NP」はORFV Strain NPを表し、「YX」はORFV Strain YXを表す。
図11-1】図11は、本発明のORFV111遺伝子の完全配列と他のパラポックスウイルス株ORFV111遺伝子の完全配列の比較を示す。図中、「POV-601-3F8」はPOV-601-3F8 Strainを表し、「B029」はORFV Strain B029を表し、「GO」はORFV Strain GOを表し、「NA11」はORFV Strain NA1/11を表し、「NZ2」はORFV Strain NZ2を表し、「NA17」はORFV Strain NA17を表し、「OV-SA00」はORFV Strain OV-SA00を表し、「OV-IA82」はORFV Strain OV-IA82を表し、「SJ1」はORFV Strain SJ1を表し、「SY17」はORFV Strain SY17を表し、「OV-NH3_12」はORFV Strain OV-HN3/12を表し、「NP」はORFV Strain NPを表し、「YX」はORFV Strain YXを表す。
図11-2】図11(続き)
図12図12は、本発明の遺伝子ORFV111アミノ酸の完全配列と一部欠失配列の実施例の比較を示す。
図13図13は、本発明の遺伝子ORFV112アミノ酸の完全配列と一部欠失配列の実施例の比較を示す。
図14図14は、ORFV112遺伝子を欠失するウイルス株POV-601-1A1及びORFV112遺伝子が完全なウイルス株POV-601-3F8の、CT-26マウス由来結腸癌腫瘍モデルにおける腫瘍抑制効果を示す。
図15図15は、POV-601-1A1及び構築物v611aの、B16-F10マウス由来メラノーマ腫瘍モデルにおける腫瘍抑制効果を示す。
図16図16は、POV-601-1A1及び構築物v615a及びv616aの、B16-F10マウス由来メラノーマ腫瘍モデルにおける腫瘍抑制効果を示す。
図17図17は、POV-601-1A1及び構築物v617a及びv618aの、B16-F10マウス由来メラノーマ腫瘍モデルにおける腫瘍抑制効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、突然変異型オルフウイルス(ORFV)及びその医薬組成物の、癌治療への使用を提供する。
【0024】
文献の報告によれば、野生型オルフウイルスの毒性遺伝子は、主にOVIFNR(orf virus interferon resistance gene,インターフェロン阻害タンパク質)、CBP(chemokine-binding protein,ケモカイン結合タンパク質)、GIF(GM-CSF/IL-2 inhibitory protein,GM-CSF/IL-2阻害タンパク質)、vIL-10(viral interleukin 10,ウイルスインターロイキン10)及びVEGF-like protein(vascular endothelial growth factor like protein,血管内皮成長因子様タンパク質)等である[11,13]。通常、分子及び/又は細胞生物学的手法により、当該ウイルスのある毒性因子遺伝子を削除することにより、弱毒株を得ることができる。例えば、中国特許CN104878043Bには、オルフウイルス株SHZ1に毒性遺伝子OVIFNRを欠失させることにより、その毒性の迅速な低下を実現することにより、弱毒株を取得する方法、及び弱毒ワクチンの製造への使用が開示されている。
【0025】
本発明に開示されている突然変異型オルフウイルスは、中国典型培養物保蔵中心(CCTCC)で受託(受託番号:V201713)されたオリジナルPOV-601ウイルス株を改変、スクリーニングして得られる。
【0026】
発明者は、文献[17]に基づいて、ORFV112遺伝子の特異的プライマーを設計した。フォワードプライマー(SEQ ID NO:5)が番号ORFV111の遺伝子コーディング領域に設計されており、リバースプライマー(SEQ ID NO:6)が番号ORFV112の遺伝子コーディング領域に設計されており、これにより、POV-601弱毒株ORFV112遺伝子の完全性を同定するために、PCRを基礎とした分子生物学的同定技術を構築した。その後、オリジナルPOV-601ウイルス株でアフリカミドリザル腎臓細胞CV-1を感染し、ウイルスで感染された細胞を収集し、フローサイトメトリーを用いて単一細胞スクリーニング及び培養増幅を行う。上記のORFV112遺伝子特異的プライマー対を用いて、増幅された、ウイルスで感染された細胞からウイルスゲノムDNAを抽出し、構築された分子生物学的同定技術により、前記ORFV112遺伝子を一部欠失するORFVウイルス弱毒株を得、POV-601-1A1と命名した。当該ウイルス株は、ORFV112遺伝子コーディング領域配列において5’端の312個の塩基を欠失し、552個の塩基が残り、3’端の非コーディング領域において72個の塩基が残り、合計624個の塩基が残りSEQ ID NO:4に示す。また、ORFV112遺伝子が完全なウイルス株POV-601-3F8をも取得しており、そのコーディング領域及び非コーディング領域が合計1162個の塩基を有し、そのORFV112遺伝子の完全配列をSEQ ID NO:3に示す。
【0027】
前記POV-601-1A1ウイルス弱毒株に対して動物腫瘍薬力学的モデル評価を行
ったところ、驚くべきことに、前記ウイルス株はORFV112遺伝子が完全なウイルス株POV-601-3F8よりも優れる抗腫瘍効果を有することを見い出した。
【0028】
もう1つの態様において、本発明者は、前記POV-601-1A1ウイルス株に対して、さらに人為的に遺伝子編集手段を使用し、ウイルス株の遺伝子ORFV112の残りのコーディング領域を全てノックアウトしてみた。実施例において、遺伝子ORFV112の残りのコーディング領域が全てノックアウトされ(3’端の非コーディング領域の22個の塩基のみを残し、配列SEQ ID NO:57参照)、DNA配列決定で実証された。これにより得られたウイルス株をPOV-604-1D1と命名する。動物腫瘍薬力学的モデル評価を行う際に、驚くべきことに、当該弱毒株もORFV112遺伝子が完全なウイルス株POV-601-3F8よりも優れる抗腫瘍効果を有することを見い出した。さらに、CBPタンパク質を発現させない任意の方法(例えば、遺伝子ORFV112のコーディング領域及び非コーディング領域の幾つかの配列をノックアウト又は改変する)でも同様の効果を得ることができる。
【0029】
POV-601-1A1ウイルス株は、2020年05月19日にブダペスト条約の規定に従い、中国典型培養物保蔵中心(CCTCC)(武漢)に受託され、CCTCC受託番号がV202029であった。
【0030】
実施例において、本公開の突然変異型オルフウイルスは、メラノーマ細胞(B16-F10)、膀胱癌細胞(MB49)、肝臓癌細胞(Hepa1-6)、結腸癌細胞(CT26)、ヒト子宮頸癌細胞(C-33A)、ヒト卵巣癌細胞(SK-OV-3)等を選択的に感染し、その中で複製することができる。
【0031】
実施例において、本公開の突然変異型オルフウイルスは、驚くべきことに、遺伝子ORFV007を完全欠失することが見出されたが、NCBIで公布されている全てのオルフウイルスのウイルス株(例えば、NZ-2、NZ-7、D1701、NA1/11株等)も遺伝子ORFV007が完全である。ORFV007遺伝子は、デオキシウリジントリホスファターゼ(duTPase)をコードする。当該タンパク質は、dNTP合成における重要な酵素である。通常、正常な細胞におけるdNTP濃度が厳密に調節されているので、ウイルスの複製に不利である。しかしながら、癌細胞では、比較的高い濃度のdNTPがあり、ウイルスの複製を促進することができる[16]。ORFV007遺伝子の欠失により、当該ウイルスの、正常細胞における複製が妨害されるが、腫瘍細胞中での増幅に影響が及ぼさず、ORFVウイルスの癌細胞における選択的複製の目的を達成する。
【0032】
野生型ORFVウイルスは、通常、ウシ、ヒツジ類動物組織初代細胞(CN103952377A)中で培養することができ、国際公開WO2012122649A1には、当該ウイルスはヒト子宮頸癌細胞Hela中で増殖して拡大培養することができることが初めて開示されている。さらに、本発明は、哺乳類細胞系を宿主細胞として使用し、好ましくは、アフリカミドリザル腎臓細胞CV-1を宿主細胞として使用して、ウイルスの感染、増幅に用いる、前記突然変異型オルフウイルスの製造方法を提供する。
【0033】
さらに、上述したウイルスの個体癌治療への使用を提供する。前記癌は、任意の固形腫瘍癌である。前記固形腫瘍癌の種類は、子宮頸癌、膀胱癌、肝臓癌、卵巣癌、メラノーマ、結腸直腸癌、肺癌、乳癌、胃癌、子宮癌、頭頚部癌、甲状腺癌、食道癌、前立腺癌、膵臓癌、肉腫、脳腫瘍等を含む。また、さらに、前記個体が哺乳類動物であり、げっ歯類動物及び人類を含む。
【0034】
腫瘍溶解性ウイルスが腫瘍成長を阻害するメカニズムは、通常、1)感染された腫瘍細胞内で複製、増幅し、癌細胞を溶解し、腫瘍溶解性の目的を達成すること、2)腫瘍溶解
した後、癌細胞に格納されている特異的情報(例えば、腫瘍ネオアンチゲン)を放出し、免疫系を活性化することにより、残存の癌細胞に対して全身攻撃を行う。
【0035】
実施例において、本公開の突然変異型オルフウイルスは、NK細胞を代表とする自己免疫系を効果的に活性化することができる。両側に腫瘍を播種したヒトC-33A子宮頸癌細胞モデルにおいて、ウイルスを腫瘍内注射及び/又は静脈内注射することにより、腫瘍及び/又は血液内のCD45及びNK細胞の活性化割合を増加させることができる。
【0036】
I.汎用技術
別途説明がない限り、本発明の実施は、分子生物学(組み換え技術を含む)、ウイルス学、微生物学、細胞生物学、生化学、及び免疫学の一般的な技術を採用し、これらはいずれも本分野の技術範囲内にある。
【0037】
II.定義
●「OV」という用語は、Oncolytic virusであり、すなわち、腫瘍溶解性ウイルスの略称である。
【0038】
●「固形腫瘍」という用語は、血液学的腫瘍と区別するために使用されて複数の細胞から構成される腫瘍の実体を指し、子宮頸癌、膀胱癌、肝臓癌、卵巣癌、メラノーマ、結腸直腸癌、肺癌、乳癌、胃癌、子宮癌、頭頚部癌、甲状腺癌、食道癌、前立腺癌、膵臓癌、肉腫、脳腫瘍等であってもよい。癌は、初期又は末期段階でありうる。
【0039】
●「連続細胞株」という用語について、初代培養物又は細胞系から得られた特別な遺伝的特性、生化学的特性又は特異的マーカを有する細胞集団を、細胞株(Cell line)と称し、連続的に継代する細胞株を連続細胞株と称する。
【0040】
●「CPE」という用語は、細胞変性効果(cytopathic effect)であり、すなわち、ウイルスで培養細胞を感染した後に発生する細胞変性である。インビトロ試験において、細胞殺傷性ウイルスを細胞培養及び播種し、一定時間経過後、顕微鏡で細胞が丸くなり、壊死し、フラスコ壁から剥がれるなどの現象が観察され、細胞変性効果と称される。
【0041】
●「オルフウイルス(ヒツジ伝染性膿疱性皮膚炎ウイルス)」という用語は、ヒツジ口瘡ウイルス、口瘡ウイルス、ORFV、orf virus等とも称され、ヒツジ及びヤギの接触伝染性、上皮向性疾患を引き起こすポックス科のウイルスである。
【0042】
●「有効量」という用語は、必要な投与量及び時間で所望の治療又は予防効果を実現する量を指す。治療有効量は、さらに治療上の有益な効果が任意の毒性又は有害な結果を上回る治療剤の量を指す。
【0043】
●「PBS」という用語は、phosphate buffer saline、すなわち、リン酸塩緩衝液の略称である。
【0044】
●「MOI」という用語は、感染多重度(Multiplicity of Infection)であり、ウイルスが細胞を感染する過程において、ウイルス粒子の数と標的細胞の総細胞数との比率(pfu/cell)を指す。
【0045】
●「POV-601-1A1ウイルス株」という用語において、「POV」は、「Prajna Oncolytic Virus」の略称であり、当該ウイルス株が蘇州般若生物科技有限公司から得られたことを意味し、蘇州般若生物科技有限公司の内部試験記録
では、POV-601-1A1、v601-1A1、v601-p0-1A1及び1A1は、いずれも同一ウイルス株を表す。当該ウイルス株のCCTCC受託登録表中での名称が「オルフウイルスPOV-601-1A1」であり、ポックスウイルス科のパラポックスウイルス属におけるオルフウイルスに属する。
【0046】
●「POV-601-3F8ウイルス株」という用語において、「POV」は、「Prajna Oncolytic Virus」を表し、当該ウイルス株が蘇州般若生物科技有限公司から得られたことを表し、蘇州般若生物科技有限公司の内部試験記録では、POV-601-3F8、v601-3F8、v601-p0-3F8及び3F8はいずれも同一ウイルス株を表す。
【0047】
●「POV-604-1D1ウイルス株」という用語において、「POV」は、「Prajna Oncolytic Virus」を表し、当該ウイルス株が蘇州般若生物科技有限公司から得られたことを表し、蘇州般若生物科技有限公司の内部試験記録では、POV-604-1D1、v604-1D1及び1D1はいずれも同一ウイルス株を表す。
【0048】
●「ウイルス保管緩衝液」という用語について、その調製方法は以下の通りである。500mLのPBS(すなわち、リン酸塩緩衝液、CORNING、品番:21-040-CVR)を吸い取り、1.25mLの1MmgCl・6HO(生工生物工程(上海)股▲分▼有限公司、品番:A610328-0500)を添加し、MgCl・6HOの最終濃度を2.48mMにし、次いで、2.5mLの1M Tris-HCl(pH9.0)(生工生物工程(上海)股▲分▼有限公司、品番:B548128-0500)を添加し、Tris-HClの最終濃度を4.96mMにし、均一に混合し、ウイルス保管緩衝液(MgCl・6HOの理論最終濃度が2.5mMであり、Tris-HClの理論最終濃度が5mMである)を得る。
【0049】
III.組成物及び方法
1.ORFV112遺伝子の発現産物、CBPタンパク質
本発明は、(天然型)CBPタンパク質に関する。1つの実施形態において、(天然型)CBPタンパク質は、SEQ ID NO:1で示されるもの又はそれと同じもしくは近似する生物学的ソース(例えば、株、種、属、科)に由来してそれと少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の相同性を有する配列を含む(又は有する)か、あるいは、SEQ ID NO:2で示されるもの又はそれと同じもしくは近似する生物学的ソース(例えば、株、種、属、科)に由来してそれと少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の相同性の成熟配列を含む(又は有する)か、あるいは(実質的に)それにより構成される。もう1つの実施形態において、(天然型)CBPタンパク質は、SEQ ID NO:31-42で示されるもの又はそれと同じもしくは近似する生物学的ソース(例えば、株、種、属、科)に由来してそれと少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の相同性を有する完全配列、及び相応する成熟配列を含む(又は有する)。
【0050】
本発明は、さらに、突然変異型CBPタンパク質に関する。1つの実施形態において、突然変異は、天然型配列に対して1個又は複数個のアミノ酸残基の添加、削除もしくは置き換え、又はそれらの任意の組み合わせである。1つの実施形態において、突然変異型CBPタンパク質の機能が低下又は欠失する。
【0051】
本発明は、さらに、CBPタンパク質(例えば、天然型CBPタンパク質又は突然変異型CBPタンパク質)の発現の低下又は欠失に関する。
【0052】
例えば、低下とは、天然型の機能及び/又は発現と比べて少なくとも50%、60%、70%、75%、80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%低下し、100%となるまで低下することをいう。
【0053】
2.ORFV112遺伝子
本発明は、(天然型)ORFV112遺伝子に関する。1つの実施形態において、(天然型)ORFV112遺伝子は、SEQ ID NO:1で示されるもの又はそれと同じもしくは近似する生物学的ソース(例えば、株、種、属、科)に由来してそれと少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の相同性を有する完全配列を含む(又は有する)か、あるいは、SEQ ID NO:2で示されるもの又はそれと同じもしくは近似する生物学的ソース(例えば、株、種、属、科)に由来してそれと少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の相同性を有する成熟配列を含む(又は有する)か、あるいは(実質的に)それにより構成されるCBPタンパク質をコードする。もう1つの実施形態において、(天然型)CBPタンパク質は、SEQ ID
NO:31~42で示されるもの又はそれと同じもしくは近似する生物学的ソース(例えば、株、種、属、科)に由来してそれと少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の相同性を有する完全配列、及び相応する成熟配列を含む(又は有する)。
【0054】
本発明は、(天然型)ORFV112遺伝子に関し、1つの実施形態において、(天然型)ORFV112遺伝子は、SEQ ID NO:3で示され(又はそのコーディング領域)、それと同じアミノ酸配列をコードするか又はそれ同じもしくは近似する生物学的ソース(例えば、株、種、属、科)に由来してそれと少なくとも75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の相同性を有するヌクレオチド配列を含む(又は有する)か、あるいは(実質的に)それにより構成される。SEQ ID NO:3の全長が1162個の塩基であり、中でも、第1~226位の塩基が5’非コーディング領域であり、第227~1090位の塩基がタンパク質コーディング領域であり、第1091~1162位の塩基が3’非コーディング領域である。もう1つの実施形態において、(天然型)ORFV112遺伝子は、SEQ ID NO:43-54で示され(又はそのコーディング領域)、それと同じアミノ酸配列をコードするか又はそれ同じもしくは近似する生物学的ソース(例えば、株、種、属、科)に由来してそれと少なくとも75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の相同性を有するヌクレオチド配列を含む(又は有する)。
【0055】
本発明は、さらに突然変異型ORFV112遺伝子に関する。1つの実施形態において、突然変異体は、天然型配列に対して1個又は複数個の塩基の添加、削除もしくは置き換え、又はそれらの任意の組み合わせである。1つの実施形態において、突然変異型ORFV112遺伝子は、完全欠失型ORFV112遺伝子である。完全欠失型ORFV112遺伝子は、ORFV112遺伝子を全部欠失する。1つの実施形態において、突然変異型ORFV112遺伝子は、一部欠失型ORFV112遺伝子である。一部欠失型ORFV112遺伝子は、ORFV112遺伝子の1個又は複数個の塩基(全ての塩基ではない)を欠失する。1つの実施形態において、一部欠失型ORFV112遺伝子は、5’非翻訳領域、コーディング領域及び/又は3’非翻訳領域の1個又は複数個の塩基、又はそれらの任意の組み合わせを欠失する。1つの実施形態において、一部欠失型ORFV112遺伝子は、5’端欠失型ORFV112遺伝子であり、すなわち、5’端の1個又は複数個の塩基を欠失し、例えば5’非翻訳領域の全部又は一部を欠失するか、5’非翻訳領域の全部とコーディング領域の全部又は一部を欠失するか、あるいは、5’非翻訳領域の全部、コーディング領域の全部及び3’非翻訳領域の全部又は一部を欠失する。1つの実施形
態において、ORFV112遺伝子の欠失は、上流側(ORFV111/112遺伝子間領域に入り、もし存在すれば、及び/又はORFV111遺伝子、特に3’端)及び/又は下流側(ORFV112/113遺伝子間領域に入り、もし存在すれば、及び/又はORFV113遺伝子、特に、5’端)に伸張する。
【0056】
天然型ORFV112遺伝子は、SEQ ID NO:3で示されるヌクレオチド配列(又はそのコーディング領域)を含む(又は有する)か、あるいは(実質的に)それにより構成される場合において、1つの実施形態において、一部欠失型ORFV112遺伝子は、SEQ ID NO:3で示される配列の1個又は複数個の塩基、例えば1~1161個の塩基を欠失する。天然型ORFV112遺伝子は、SEQ ID NO:3で示されるヌクレオチド配列(又はそのコーディング領域)を含む(又は有する)か、あるいは(実質的に)それにより構成される場合において、1つの実施形態において、5’端欠失型ORFV112遺伝子は、SEQ ID NO:3で示される配列の5’端の1個又は複数個の塩基、特に、5’端の1~1161個、1~1140個、1~538個、539~1139個又は1141~1160個の塩基を欠失する。1つの実施形態において、5’端欠失型ORFV112遺伝子は、SEQ ID NO:4又はSEQ ID NO:57で示されるヌクレオチド配列(又はそのコーディング領域)を含む(又は有する)か、あるいは(実質的に)それにより構成される。天然型ORFV112遺伝子は、SEQ
ID NO:43-54で示されるヌクレオチド配列(又はそのコーディング領域)を含む(又は有する)か、あるいは(実質的に)それにより構成される場合において、1つの実施形態において、5’端欠失型ORFV112遺伝子は、SEQ ID NO:43-54で示される配列の5’端の1個又は複数個の塩基、特に、SEQ ID NO:3の5’端の1140個又は538個の塩基に対応するセグメントの1個又は複数個の塩基を欠失する。5’非翻訳領域及び/又は開始コドンを欠失するので、これらの欠失型遺伝子は、タンパク質を発現できない。
【0057】
1つの実施形態において、本発明の突然変異型ORFV112遺伝子は、機能性CBPタンパク質の低下又は欠失(CBPタンパク質の発現及び/又は活性の低下又は欠失を含む)を引き起こす。例えば、低下とは、天然型の機能及び/又は発現と比べて少なくとも50%、60%、70%、75%、80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%低下し、100%となるまで低下することをいう。
【0058】
3.ORFV111遺伝子の発現産物、仮想タンパク質111
本発明は、(天然型)仮想タンパク質111に関する。1つの実施形態において、(天然型)仮想タンパク質111は、SEQ ID NO:58で示されるもの又はそれと同じもしくは近似する生物学的ソース(例えば、株、種、属、科)に由来してそれと少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の相同性を有する配列を含む(又は有する)か、あるいは(実質的に)それにより構成される。もう1つの実施形態において、(天然型)仮想タンパク質111は、SEQ ID NO:61-72で示されるもの又はそれと同じもしくは近似する生物学的ソース(例えば、株、種、属、科)に由来してそれと少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の相同性を有する配列を含む(又は有する)。
【0059】
本発明は、さらに突然変異型仮想タンパク質111に関する。1つの実施形態において、突然変異は、天然型配列に対して1個又は複数個のアミノ酸残基の添加、削除もしくは置き換え、又はそれらの任意の組み合わせである。1つの実施形態において、突然変異型仮想タンパク質111の機能が低下又は欠失する。
【0060】
本発明は、さらに仮想タンパク質111(例えば、天然型仮想タンパク質111又は突然変異型仮想タンパク質111)の発現の低下又は欠失に関する。
【0061】
例えば、低下とは、天然型の機能及び/又は発現と比べて、少なくとも50%、60%、70%、75%、80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%低下し、100%となるまで低下することをいう。
【0062】
4.ORFV111遺伝子
本発明は、(天然型)ORFV111遺伝子に関する。1つの実施形態において、(天然型)ORFV111遺伝子は、SEQ ID NO:58で示されるもの又はそれと同じもしくは近似する生物学的ソース(例えば、株、種、属、科)に由来してそれと少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の相同性を有する配列を含む(又は有する)か、あるいは(実質的に)それにより構成される仮想タンパク質111をコードする。もう1つの実施形態において、(天然型)仮想タンパク質111は、SEQ ID NO:61-72で示されるもの又はそれと同じもしくは近似する生物学的ソース(例えば、株、種、属、科)に由来してそれと少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の相同性を有する配列を含む(又は有する)。
【0063】
本発明は、(天然型)ORFV111遺伝子に関し、1つの実施形態において、(天然型)ORFV111遺伝子は、SEQ ID NO:59で示され(又はそのコーディング領域)、それと同じアミノ酸配列をコードするか、又はそれと同じもしくは近似する生物学的ソース(例えば、株、種、属、科)に由来してそれと少なくとも75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の相同性を有するヌクレオチド配列を含む(又は有する)か、あるいは(実質的に)それにより構成される。SEQ ID NO:59の全長は794個の塩基であり、中でも、第1~28位の塩基が5’非コーディング領域であり、第29~568位の塩基がタンパク質コーディング領域であり、第569~794位の塩基が3’非コーディング領域である。もう1つの実施形態において、(天然型)ORFV111遺伝子は、SEQ ID NO:73-84で示され(又はそのコーディング領域)、それと同じアミノ酸配列をコードするか、又はそれと同じもしくは近似する生物学的ソース(例えば、株、種、属、科)に由来してそれと少なくとも75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の相同性を有するヌクレオチド配列を含む(又は有する)。
【0064】
本発明は、さらに突然変異型ORFV111遺伝子に関する。1つの実施形態において、突然変異体は、天然型配列に対して1個又は複数個の塩基の添加、削除もしくは置き換え、又はそれらの任意の組み合わせである。1つの実施形態において、突然変異型ORFV111遺伝子は、完全欠失型ORFV111遺伝子である。完全欠失型ORFV111遺伝子は、ORFV111遺伝子を全部欠失する。1つの実施形態において、突然変異型ORFV111遺伝子は、一部欠失型ORFV111遺伝子である。一部欠失型ORFV111遺伝子は、ORFV111遺伝子の1個又は複数個の塩基(全ての塩基ではない)を欠失する。1つの実施形態において、一部欠失型ORFV111遺伝子は、3’非翻訳領域、コーディング領域及び/又は5’非翻訳領域の1個又は複数個の塩基、あるいはそれらの任意の組み合わせを欠失する。1つの実施形態において、一部欠失型ORFV111遺伝子は、3’端欠失型ORFV111遺伝子であり、すなわち、3’端の1個又は複数個の塩基を欠失し、例えば3’非翻訳領域の全部又は一部を欠失するか、3’非翻訳領域の全部とコーディング領域の全部又は一部を欠失するか、あるいは3’非翻訳領域の全部、コーディング領域の全部および5’非翻訳領域の全部又は一部を欠失する。1つの実施形態において、ORFV111遺伝子欠失が下流側(ORFV111/112遺伝子間
領域に入り、もし存在すれば、及び/又はORFV112遺伝子、特に、5’端)及び/又は上流側(ORFV110/111遺伝子間領域に入り、もし存在すれば、及び/又はORFV110遺伝子、特に3’端)に伸張する。
【0065】
天然型ORFV111遺伝子は、SEQ ID NO:59で示されるヌクレオチド配列(又はそのコーディング領域)を含む(又は有する)か、あるいは(実質的に)それにより構成される場合において、1つの実施形態において、一部欠失型ORFV111遺伝子は、SEQ ID NO:59で示される配列の1個又は複数個の塩基、例えば1~793個の塩基を欠失する。天然型ORFV111遺伝子は、SEQ ID NO:59で示されるヌクレオチド配列(又はそのコーディング領域)を含む(又は有する)か、あるいは(実質的に)それにより構成される場合において、1つの実施形態において、3’端欠失型ORFV111遺伝子は、SEQ ID NO:59で示される配列の3’端の1個又は複数個の塩基、特に3’端の1~793個、1~309個又は310~792個の塩基を欠失する。1つの実施形態において、3’端欠失型ORFV111遺伝子は、SEQ ID NO:60で示されるヌクレオチド配列(又はそのコーディング領域)を含む(又は有する)か、あるいは(実質的に)それにより構成される。天然型ORFV111遺伝子は、SEQ ID NO:73-84で示されるヌクレオチド配列(又はそのコーディング領域)を含む(又は有する)か、あるいは(実質的に)それにより構成される場合において、1つの実施形態において、3’端欠失型ORFV111遺伝子は、SEQ ID NO:73-84で示される配列の3’端の1個又は複数個の塩基、特に、SEQ
ID NO:59の3’端の309個の塩基に対応するセグメントの1個又は複数個の塩基を欠失する。3’非翻訳領域を欠失するので、これらの欠失型遺伝子はタンパク質を発現できない可能性がある。
【0066】
1つの実施形態において、本発明の突然変異型ORFV111遺伝子は、機能性仮想タンパク質111の低下又は欠失(仮想タンパク質111の発現及び/又は活性の低下又は欠失を含む)を引き起こす。例えば、低下とは、天然型の機能及び/又は発現と比べて、少なくとも50%、60%、70%、75%、80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%低下し、100%となるまで低下することをいう。
【0067】
5.ORFVウイルスゲノム
本発明は、ORFVウイルスゲノムに関する。1つの実施形態において、ORFVウイルスゲノムは、上述したORFV112遺伝子及び/又はORFV111遺伝子(天然型ORFV112遺伝子及び/又はORFV111遺伝子と、突然変異型ORFV112遺伝子及び/又はORFV111遺伝子を含む)を有する。本発明は、特にORFV112遺伝子及び/又はORFV111遺伝子欠失型ORFVウイルスゲノムに関する。1つの実施形態において、ORFV112遺伝子及び/又はORFV111遺伝子欠失型ORFVウイルスゲノムは、上述した突然変異型ORFV112遺伝子及び/又はORFV111遺伝子を含む。1つの実施形態において、ORFVウイルスゲノム(例えば、ORFV112遺伝子及び/又はORFV111遺伝子欠失型ORFVウイルスゲノム)は、ORFV007遺伝子を完全欠失する。1つの実施形態において、ORFV111遺伝子の3’非コーディング領域がORFV112遺伝子の5’非コーディング領域と重なる。
【0068】
6.ORFVウイルス
本発明は、ORFVウイルスに関する。1つの実施形態において、ORFVウイルスは、上述したCBPタンパク質及び/又は仮想タンパク質111(天然型CBPタンパク質及び/又は仮想タンパク質111及び突然変異型CBPタンパク質及び/又は仮想タンパク質111を含む)を有する。本発明は、特にCBPタンパク質及び/又は仮想タンパク質111欠失型ORFVウイルスに関する。1つの実施形態において、CBPタンパク質
及び/又は仮想タンパク質111欠失型ORFVウイルスは、機能性CBPタンパク質及び/又は仮想タンパク質111の低下又は欠失を引き起こす。機能性CBPタンパク質及び/又は仮想タンパク質111の低下又は欠失は、CBPタンパク質及び/又は仮想タンパク質111の発現及び/又は活性の低下又は欠失であってもよい。
【0069】
本発明は、ORFVウイルスに関する。1つの実施形態において、ORFVウイルスは、上述したORFV112遺伝子及び/又はORFV111遺伝子(天然型ORFV112遺伝子及び/又はORFV111遺伝子及び突然変異型ORFV112遺伝子及び/又はORFV111遺伝子を含む)を有する。1つの実施形態において、ORFVウイルスは、上述したORFVウイルスゲノム(ORFV112遺伝子及び/又はORFV111遺伝子欠失型ORFVウイルスゲノムを含む)を有する。本発明は、特に上述した突然変異型ORFV112遺伝子及び/又はORFV111遺伝子又は上述したORFV112遺伝子及び/又はORFV111遺伝子欠失型ORFVウイルスゲノムを含む、CBPタンパク質及び/又は仮想タンパク質111欠失型ORFVウイルスに関する。
【0070】
1つの実施形態において、ORFVウイルス(例えば、CBPタンパク質及び/又は仮想タンパク質111欠失型ORFVウイルス)欠失型遺伝子ORFV007の機能性転写及び/又は翻訳産物は、発現及び/又は活性の欠失を含む。
【0071】
7.ORFVウイルスの操作方法
本発明は、ORFVウイルスゲノム又はORFVウイルスの操作方法に関する。1つの実施形態において、当該方法は、ORFVウイルスゲノムにおけるORFV112遺伝子及び/又はORFV111遺伝子を突然変異体させることを含む。1つの実施形態において、当該方法は、添加、削除もしくは置き換えを含み、特に、ORFV112遺伝子及び/又はORFV111遺伝子の1個又は複数個の塩基、特に、ORFV112遺伝子の5’端の1個又は複数個の塩基及び/又はORFV111遺伝子の3’端の1個又は複数個の塩基を削除することを含む。天然型ORFV112遺伝子は、SEQ ID NO:3で示されるヌクレオチド配列(又はそのコーディング領域)を含む(又は有する)か、あるいは(実質的に)それにより構成される場合において、1つの実施形態において、当該方法は、SEQ ID NO:3で示される配列の1個又は複数個の塩基、例えば1~1162個の塩基を削除することを含む。天然型ORFV112遺伝子は、SEQ ID NO:3で示されるヌクレオチド配列(又はそのコーディング領域)を含む(又は有する)か、あるいは(実質的に)それにより構成される場合において、1つの実施形態において、当該方法は、SEQ ID NO:3で示される配列の5’端の1個又は複数個の塩基、特に、5’端の1~1161個、1~1140個、1~538個、539~1139個又は1141~1160個の塩基、例えば538個又は1140個の塩基を削除することを含む。天然型ORFV112遺伝子は、SEQ ID NO:3で示されるヌクレオチド配列(又はそのコーディング領域)を含む(又は有する)か、あるいは(実質的に)それにより構成される場合において、1つの実施形態において、当該方法は、SEQ ID NO:3を完全に削除すること、又はSEQ ID NO:3の1140個又は538個の5’端塩基を削除することを含む。天然型ORFV112遺伝子は、他のヌクレオチド配列(又はそのコーディング領域)を含む(又は有する)か、あるいは(実質的に)それにより構成される場合において、1つの実施形態において、当該方法は、前記ヌクレオチド配列を完全に削除すること、又は前記ヌクレオチド配列のうちSEQ ID NO:3の1140個又は538個の5’端塩基に対応するセグメントを削除することを含む。天然型ORFV111遺伝子は、SEQ ID NO:59で示されるヌクレオチド配列(又はそのコーディング領域)を含む(又は有する)か、あるいは(実質的に)それにより構成される場合において、1つの実施形態において、当該方法は、SEQ ID NO:59で示される配列の1個又は複数個の塩基、例えば1~794塩基を削除することを含む。天然型ORFV111遺伝子は、SEQ ID NO:59で示されるヌクレオ
チド配列(又はそのコーディング領域)を含む(又は有する)か、あるいは(実質的に)それにより構成される場合において、1つの実施形態において、当該方法は、SEQ ID NO:59で示される配列の3’端の1個又は複数個の塩基、特に3’端の1~793個、1~309個又は310~792個の塩基、例えば309個の塩基を削除することを含む。天然型ORFV111遺伝子は、SEQ ID NO:59で示されるヌクレオチド配列(又はそのコーディング領域)を含む(又は有する)か、あるいは(実質的に)それにより構成される場合において、1つの実施形態において、当該方法は、SEQ ID NO:59を完全に削除すること、又はSEQ ID NO:59の309個の3’端塩基を削除することを含む。天然型ORFV111遺伝子は、他のヌクレオチド配列(又はそのコーディング領域)を含む(又は有する)か、あるいは(実質的に)それにより構成される場合において、1つの実施形態において、当該方法は、前記ヌクレオチド配列を完全に削除すること、又は前記ヌクレオチド配列のうちSEQ ID NO:59の309個の3’端塩基に対応するセグメントを削除することを含む。天然型ORFV111遺伝子及び天然型ORFV112遺伝子は、他のヌクレオチド配列(又はそのコーディング領域)を含む(又は有する)か、あるいは(実質的に)それにより構成される場合において、1つの実施形態において、当該方法は、SEQ ID NO:3及びSEQ ID
NO:59を完全に削除することを含む。1つの実施形態において、当該方法は、さらにORFVウイルスゲノム(特に、ORFV112遺伝子及び/又はORFV111遺伝子欠失型ORFVウイルスゲノム)におけるORFV007遺伝子を突然変異(例えば、削除(完全削除又は一部削除を含む))させることを含む。1つの実施形態において、ORFV111遺伝子の3’非コーディング領域がORFV112遺伝子の5’非コーディング領域と重なる。本発明の方法は、一般的な分子生物学的技術(例えば、分子クローニング、DNA組み換え、相同組み換え、PCR、制限ヌクレアーゼ、遺伝子ノックアウト、サイレンシング等)又は新興の分子生物学的技術(例えば、遺伝子編集等)により行うことができる。本発明は、前述した方法により得られたORFVウイルスゲノム(例えば、ORFV112遺伝子及び/又はORFV111遺伝子欠失型ORFVウイルスゲノム)及びORFVウイルス(例えば、CBPタンパク質及び/又は仮想タンパク質111欠失型ORFVウイルス)に関する。
【0072】
8.ORFVウイルスゲノム及びORFVウイルスを同定する方法
本発明は、ORFVウイルスゲノム又はORFVウイルスを同定する方法、特に、CBPタンパク質及び/又は仮想タンパク質111(特に、突然変異型CBPタンパク質及び/又は仮想タンパク質111)(の存在又は活性)及び/又は遺伝子ORFV112及び/又はORFV111遺伝子(特に、突然変異型ORFV112遺伝子及び/又はORFV111遺伝子)(の存在又は配列)を検出する方法に関する。本発明の方法は、タンパク質の存在及び/又は活性、及び/又は核酸の存在、及び/又は配列を検出する一般的な分子生物学的技術(例えば、活性測定法、ハイブリダイゼーション(例えば、Southernハイブリダイゼーション、Northernハイブリダイゼーション、又はWesternハイブリダイゼーション)、制限ヌクレアーゼ、PCR、電気泳動(例えば、ゲル電気泳動(タンパク質電気泳動及び核酸電気泳動を含み、アガロース電気泳動及びPAGE電気泳動を含み、還元電気泳動及び非還元電気泳動を含む)、配列決定(タンパク質配列決定及び核酸配列決定を含む)等)又は新興の分子生物学的技術(例えば、次世代配列決定等)により行われる。本発明は、特に遺伝子ORFV112及び/又はORFV111完全性(又は長さ)を検出する方法を提供する。1つの実施形態において、当該方法は、PCR及びゲル電気泳動により行われる。1つの実施形態において、当該方法は、核酸ハイブリダイゼーション又は配列決定により行われてもよい。
【0073】
プライマー及びプローブの設計は、当業者の能力範囲内である。当業者であれば、プライマー及びプローブの標的配列における標的領域をどのように選択するかがはっきりわかる。例えば、遺伝子ORFV112の完全性を検出するために、1つの態様において、上
流側プライマーの標的領域は、遺伝子ORFV112の5’端に設けるか、あるいは上流側に伸張するように設けてもよいが、これらに限られず、例えばORFV111/112遺伝子間領域に入り、もし存在すれば、又は遺伝子ORFV111(特に、遺伝子ORFV111の3’端、例えば3’非翻訳領域)に入らせる。もう1つの態様において、下流側プライマーの標的領域は、遺伝子ORFV112の3’端に設けるか、あるいは下流側に伸張するように設けてもよく、例えばORFV112/113遺伝子間領域に入り、もし存在すれば、又は遺伝子ORFV113(特に、遺伝子ORFV113の5’端、例えば5’非翻訳領域)に入らせる。同様に、類似する原則に基づいてプライマー/プローブの標的を設計することができる。
【0074】
9.ORFVウイルスゲノム及びORFVウイルスの用途
本発明は、一定量、特に、有効量、例えば治療有効量又は予防有効量の本発明のORFVウイルスゲノム(例えば、ORFV112遺伝子及び/又はORFV111遺伝子欠失型ORFVウイルスゲノム)及び/又はORFVウイルス(例えば、CBPタンパク質及び/又は仮想タンパク質111欠失型ORFVウイルス)を含む薬物組成物を提供する。1つの実施形態において、前記組成物は、薬学的に許容されるベクターを含む。
【0075】
1つの実施形態において、前記組成物は、粉剤、液剤、経皮パッチ、軟膏、又は座薬の形式である。1つの実施形態において、前記組成物は、静脈内、腫瘍内、筋肉内、皮下、直腸内、膣内又は腹腔内経路により投与される。
【0076】
本発明は、被験者に対して疾患を治療するか、又は疾患の発展を遅延させる方法に関し、当該方法は、一定量、特に、有効量、例えば治療有効量又は予防有効量の本発明のORFVウイルスゲノム(例えば、ORFV112遺伝子及び/又はORFV111遺伝子欠失型ORFVウイルスゲノム)及び/又はORFVウイルス(例えば、CBPタンパク質及び/又は仮想タンパク質111欠失型ORFVウイルス)を投与することを含む。
【0077】
本発明は、一定量、特に、有効量、例えば治療有効量又は予防有効量の本発明のORFVウイルスゲノム(例えば、ORFV112遺伝子及び/又はORFV111遺伝子欠失型ORFVウイルスゲノム)及び/又はORFVウイルス(例えば、CBPタンパク質及び/又は仮想タンパク質111欠失型ORFVウイルス)の、薬物の製造への使用に関する。1つの実施形態において、前記薬物は、被験者に対して疾患を治療すること又は疾患の発展を遅延させるために用いられる。
【0078】
本発明は、被験者に対して疾患を治療すること又は疾患の発展を遅延させるために用いられる、一定量、特に、有効量、例えば治療有効量又は予防有効量の本発明のORFVウイルスゲノム(例えば、ORFV112遺伝子及び/又はORFV111遺伝子欠失型ORFVウイルスゲノム)及び/又はORFVウイルス(例えば、CBPタンパク質及び/又は仮想タンパク質111欠失型ORFVウイルス)に関する。
【0079】
1つの実施形態において、前記疾患が癌である。1つの実施形態において、前記癌が固形腫瘍である。1つの実施形態において、前記固形腫瘍が子宮頸癌、膀胱癌、肝臓癌、卵巣癌、メラノーマ、結腸直腸癌、肺癌、乳癌、胃癌、子宮癌、頭頚部癌、甲状腺癌、食道癌、前立腺癌、膵臓癌、肉腫、脳腫瘍等である。
【0080】
1つの実施形態において、前記被験者が哺乳類であり、げっ歯動物(例えば、マウス及びラット)、非ヒト霊長類(例えば、カニクイザル)及びヒトを含む。
【0081】
実施例
実施例1:突然変異型オルフウイルススクリーニング精製方法
●ウイルス株由来:POV-601ウイルス株(中国典型培養物保蔵中心(CCTCC)、受託番号:V201713)
宿主細胞由来:アフリカミドリザル腎臓細胞CV-1(中国科学院典型培養物保蔵委員会細胞庫/中国科学院上海生命科学研究院)
【0082】
●フローサイトメトリー及びモノクローン性スクリーニング方法
1)POV-601ウイルス株でアフリカミドリザル腎臓細胞CV-1を感染した後、ウイルスで感染された細胞をフローサイトメトリー(BD)でスクリーニングし、スクリーニングされた細胞を96ウェルプレートに播種し、1ウェル当たり1個の細胞を接種した。
【0083】
2)スクリーニングされた96ウェルプレートを37℃、5%CO濃度の二酸化炭素培養器(Thermo,160i)に移動して培養を行った。毎日、ウイルスの感染状況を観察した。
【0084】
3)ウイルスで感染された細胞において十分なCPEが現れた場合、ウイルスを収集、凍結保存した。
【0085】
4)収集されたモノクローン性ウイルスに対して、QuickExtractTM DNA Extraction Solution(cat#:QE09050,Lucigen)を用いてそれぞれウイルスゲノムDNAを抽出した。
【0086】
5)設計したORFV112遺伝子特異的フォワード、リバースプライマー(SEQ ID NO:5及び6)を用いて、モノクローン性ウイルスから抽出されたゲノムDNAをテンプレートとして、それぞれ目的断片の増幅及びアガロースゲル電気泳動を行った。図1は、モノクローン性ウイルス株POV-601-1A1及びPOV-601-3F8の電気泳動結果を示し、これらのバンドのサイズがそれぞれ約500bp及び約1000bpである。また、ORFV112遺伝子特異的フォワード、リバースプライマー(SEQ ID NO:5と6)及びPOV-601-3F8フォワード、リバースプライマー(SEQ ID NO:55と56)をそれぞれ用いて、PCR増幅を行い、PCR産物に対してサンガー配列決定(Sanger Sequencing)(蘇州金維智生物科技有限公司)を行い、POV-601-1A1ORFV112遺伝子コーディング領域が5’端の538個の塩基(5’端の非コーディング領域の226個の塩基及び5’端のORFV112タンパク質コーディング領域の312個の塩基を含む)を欠失したことが確認された(SEQ ID NO:4を参照)。また、POV-601-3F8は、完全なORFV112遺伝子配列を有する(SEQ ID NO:3を参照)。
【0087】
●PCRプログラムパラメータ:94℃で5min予備変性を行い、94℃で30s変性を行い、62℃で30sアニーリングを行い、68℃で1min伸張を行う工程を30回繰り返し、68℃で7min最終伸張を行った。
【0088】
実施例2:突然変異型オルフウイルスの種、属の確認
POV-601-1A1ウイルス株に対してウイルスゲノム抽出を行い(Mouse Tail Genomic DNA Kit,Cat#:CW2094S)、第三者配列決定会社に送って次世代配列決定を行った(蘇州金維智生物科技有限公司)。配列決定結果に対して組み立てを行った。当該ウイルス株のB2L遺伝子[21](ORFV011遺伝子)の完全配列結果に対してBLAST核酸配列で検索した後、配列決定結果との類似性が高いほうがOV/HLJ/04であり、類似性が99.91%であり、分離されたウイルス株がORFVであることを確認した。
【0089】
【表1】
【0090】
実施例3:突然変異型オルフウイルスの構築
●ウイルス株由来:POV-601-1A1ウイルス株(中国典型培養物保蔵中心(CCTCC)、受託番号:V202029)
宿主細胞由来:アフリカミドリザル腎臓細胞CV-1(ATCC No.CCL-70TM
【0091】
●組み換えオルフウイルスの構築方法は、主に以下の工程を含む。
1)特別に設計され、HindIII及びEcoRI制限エンドヌクレアーゼ部位をそれぞれ末端に有するプライマー(SEQ ID NO:7-12)を採用し、PCR方法によりORFV112遺伝子のフランキング配列(左相同性アーム及び右相同性アーム)及びEGFPレポーター遺伝子をクローニングする。
2)HindIII及びEcoRIを用いてpUC19プラスミドを酵素切断する。
3)工程1)におけるPCR産物と酵素切断後のpUC19プラスミドとを連結し、CBPシャトルプラスミドを取得する。
4)工程3)で得られたCBPシャトルプラスミド連結産物をテンプレートとして、EcoRI及びAgeI制限エンドヌクレアーゼ部位をそれぞれ末端に有する特定のプライマー(SEQ ID NO:13-14)を用いて、PCR方法により増幅を行い、線形CBPシャトルベクターを取得する。
5)px330プラスミドベクターをテンプレートとして、EcoRI及びAgeI制限エンドヌクレアーゼ部位をそれぞれ末端に有する特定のプライマー(SEQ ID NO:15-18)を採用し、PCR方法により、核局在化シグナル(NLS)Cas9を有さない新しいpx330プラスミドベクター及びpx330プラスミドベクター骨格(px330 backbone)を増幅させる。
6)EcoRI及びAgeIを用いて工程5)における新しいpx330プラスミドベクター及びpx330プラスミドベクター骨格(px330 backbone)を酵素切断し、T4 DNA ligaseで酵素切断産物を連結し、連結産物をスクリーニング宿主菌DH5αに形質転換し、陽性モノクローナルを得、さらに拡大培養を行い、プラスミドを抽出する。Sanger配列決定の同定を行い、核局在化シグナル(NLS)を有さない組み換えプラスミド(px330-ΔNLS)を取得する。
7)CBP gRNAsを合成し、BbsIを用いて組み換えプラスミド(px330-ΔNLS)を酵素切断し、CBP gRNAsと、酵素切断した組み換えプラスミド(px330-ΔNLS)とを連結し、宿主菌DH5α(上海生工、B528413-0020)に形質転換して、陽性モノクローナルを得、さらに拡大培養を行い、プラスミドを抽出する。px330-ΔNLS-CBP gRNA発現プラスミドを取得する。
8)得られたpx330-ΔNLS-CBP gRNA発現プラスミドで特定のパラポ
ックスウイルス宿主細胞CV-1をトランスフェクションし、その後、トランスフェクションされたCV-1細胞をPOV-601-1A1ウイルス株で感染する。工程(4)で得られた線形CBPシャトルベクターを、トランスフェクションされたpx330-ΔNLS-CBP gRNAプラスミドと、POV-601-1A1ウイルスを感染したCV-1細胞とにトランスフェクションする。
9)EGFP蛍光ウイルスを含む標的細胞を濃縮培養して収集し、その後、フローサイトメトリーでスクリーニングして96ウェルプレートに播種し、1ウェル当たり1個の細胞を播種し、培養、増幅を行う。EGFP蛍光ウイルスリッチのウェルから標的細胞を収集し、ウイルスゲノムDNAを抽出し、PCR方法を用いて同定を行い(プライマーSEQ ID NO:19-30)、標的バンドが現れたウイルスで再びCV-1細胞を感染し、拡大培養を行う。
10)ウイルス播種、スクリーニング、ウイルス収集、PCR同定を複数回行い、最後に、ORFV112遺伝子が完全欠失する精製モノクローン性ウイルスを得、POV-604-1D1と命名する。
【0092】
実施例4:突然変異型オルフウイルスの増幅培養
宿主細胞由来:アフリカミドリザル腎臓細胞CV-1(ATCC No.CCL-70TM
ウイルス株由来:POV-601、POV-601-1A1、POV-604-1D1及びPOV-601-3F8ウイルス株
【0093】
●ウイルス感染細胞:
1)必要な量に応じてCV-1細胞継代培養を行い、一定量となるまで増幅した場合、培養ボトル中の細胞飽和度が90%程度となった場合に、ウイルス感染を行うことができる。
2)ウイルス液を2%FBSのDMEM完全培地で適切に希釈した。
3)培養ボトル中の古い培地を廃棄し、適量の新鮮な2%FBSのDMEM完全培地を補充した。
4)MOI 0.5に従って、希釈されたウイルス液を加え、培養ボトルを軽く揺るぎ、ウイルス液を均一に分布させ、培養ボトルにマークを付け、37℃、5% COの培養器で培養した。
【0094】
●ウイルスで感染された細胞の凍結保存
1)ウイルスで感染された細胞の90%以上は、CPEが現れた場合、ウイルスを採取できる。
2)ウイルスで感染された細胞を細胞培養器から取り出し、上清を収集し、まだ壁に付着している細胞を消化した後、上清に合併した。
3)3000rpm、4℃で10min遠心した。
4)PBSで1回すすいだ。
5)適量のPBSで再び細胞を再懸濁した。
6)-80℃に移動して貯蔵した。
【0095】
●ウイルスによる溶解、放出:
1)ウイルスで感染された細胞を-80℃から37℃の水浴鍋に移動して解凍した。
2)超音波処理(型番:FB120,Thermo):「APLITUDE」が100%であり、「Time」が1minであり、合計3回行った。
3)ベンゾナーゼ(1ミリリットルの細胞溶解液懸濁液当たり、25単位)を添加し、均一に混合し、37℃で30min処理した。
4)1300rpmで10min遠心した。
5)ウイルス上清を収集し、-80℃に移動して貯蔵した。
【0096】
実施例5:突然変異型オルフウイルスの、マウス由来膀胱癌腫瘍モデルにおける抗腫瘍活性の評価
【0097】
A.試験設計
【表2】
【0098】
B.試験動物:オスC57BL/6マウス、6W、浙江維通利華試験動物技術有限公司から得られた。
【0099】
C.試験過程
オスC57BL/6マウスの右側背部に、PBS中で再懸濁したMB49細胞(広州吉▲尼▼欧生物科技有限公司)を皮下播種し、細胞密度が2×10/mlであり、播種量が0.1ml/匹であった。細胞を播種する日をDay0と定義した。対照群の腫瘍の体積平均値が100mm程度となった場合、腫瘍サイズに応じて無作為にグループ分けし、表1の説明に従って投与処理を行い、細胞播種後のDay30、全てのマウスを安楽死させた。
【0100】
研究全体にわたって、毎週、マウスの体重秤量、腫瘍測定を2回行った。ノギス(型番:16ER; Mahr GmbH)を用いて腫瘍体積を測定し、結果を図2に示した。
【0101】
下記の式で腫瘍体積を算出する。長さ及び幅を垂直に測定した。
腫瘍体積(mm)=a×b/2
(式中、aは腫瘍の長さ(mm)であり、bは、腫瘍の幅(mm)である。)
【0102】
下記の式で相対平均腫瘍体積を測定した。
RTV(Relative Tumor Volume)=V/V
(式中、Vは、グループ分けて投与する時に測定した平均腫瘍体積であり、Vは、毎回測定した平均腫瘍体積である。)
相対腫瘍増殖率T/C(%)=TRTV/CRTV×100%
(TRTVは、治療群RTVであり、CRTVは、対照群RTVである。)
腫瘍抑制率TGI%=(1-T/C)×100%。
【0103】
ANOVA統計を使用してデータを分析する
ANOVA検定方法を用いて治療群の腫瘍体積と対照群の腫瘍体積とに有意差があるか
否かを比較した。全てのデータをSPSS 17で分析した。P<0.05は、有意差を有することを意味する。
【0104】
D.結果
【表3】
【0105】
実施例6:突然変異型オルフウイルスの、マウス由来メラノーマモデルにおける抗腫瘍活性の評価
A.試験設計
【表4】
【0106】
B.試験動物-メスC57BL/6マウス、6-8W、浙江維通利華試験動物技術有限公司から得られた。
【0107】
C.試験過程
メスC57BL/6マウスの右側背部に、PBS中で再懸濁したB16-F10細胞(中国科学院典型培養物保蔵委員会細胞庫)を皮下播種し、細胞密度が5×10/mlであり、播種量が0.1ml/匹であった。細胞を注射する日をDay0を定義した。対照群の腫瘍体積平均値が100mm程度となった場合、腫瘍サイズに応じて無作為にグループ分けし、表3の説明に従って投与処理を行い、細胞播種後のDay15、全てのマウスを安楽死させた。
【0108】
研究全体にわたって、毎週、マウスの体重秤量、腫瘍測定を2回行った。ノギス(型番
:16ER; Mahr GmbH)を用いて腫瘍体積を測定し、結果を図3に示した。
【0109】
下記の式で腫瘍体積を算出する。長さ及び幅を垂直に測定した。
腫瘍体積(mm)=a×b/2
(式中、aは腫瘍の長さ(mm)であり、bは腫瘍の幅(mm)である。)
【0110】
下記の式で相対平均腫瘍体積を算出した。
RTV(Relative Tumor Volume)=V/V
(式中、Vは、グループ分けて投与する時に測定した平均腫瘍体積であり、Vは、毎回測定した平均腫瘍体積である。)
相対腫瘍増殖率T/C(%)=TRTV/CRTV×100%
(TRTVは、治療群RTVであり、CRTVは、対照群RTVである。)
腫瘍抑制率TGI%=(1-T/C)×100%。
【0111】
ANOVA統計を使用してデータを分析する
ANOVA検定方法を用いて治療群の腫瘍体積と対照群の腫瘍体積とに有意差があるか否かを比較した。全てのデータもSPSS 17で分析した。P<0.05は、有意差を有することを意味する。
【0112】
D.結果
【表5】
【0113】
実施例7:突然変異型オルフウイルスの安全性評価
A.試験設計
【表6】

【0114】
B.測定品及び対照品
測定品-腫瘍溶解性ウイルスPOV-601-1A1、対照品-リン酸塩緩衝液
【0115】
C.試験動物:メスC57BL/6マウス、6-8W、浙江維通利華試験動物技術有限公司
【0116】
D.試験操作
メスC57BL/6マウスの右側背部に、測定品及び対照品を皮下又は尾静脈内注射した。1回目注射する日をDay0と定義した。マウスを完全に無作為にグループ分けし、表5の説明に従って投与処理を行い、全てのマウスに対して、投与後の15日目、観察を終了した。全研究期間にわたって、1週間目、毎日マウスの体重を秤量し、その後、2~3日間につきマウスの体重を秤量した。
【0117】
マウスの体重変化をモニタリングした。ML1602T電子天秤(Mettler)を用いて動物の体重を測定した。以下の式で相対体重変化率を算出し、結果を図4に示した。
相対体重変化(%)=[重量日新/重量日0]×100。
【0118】
実施例8:突然変異型オルフウイルスの免疫系に対する調節作用
A.試験設計
【表7】
【0119】
B.測定品及び対照品:
測定品-腫瘍溶解性ウイルスPOV-601-1A1
対照品-リン酸塩緩衝液
【0120】
C.試験動物:メスBalb/c-nudeマウス、6W、北京華阜康生物科技股▲分▼有限公司
【0121】
D.試験方法
メスBalb/c-nudeマウスの両側の背部に、PBS中で再懸濁したC-33A細胞(中国科学院典型培養物保蔵委員会細胞庫)を皮下播種し、細胞密度が1×10/mlであり、播種量が0.1ml/匹であった。細胞を注射する日をDay0と定義した。腫瘍体積平均値が100mm程度となった場合、表6の説明に従って投与処理を行った。最終回の投与後24h、試験を終了し、マウス全血、腫瘍を収集し、組織を切断して消化し、単一細胞懸濁液に調製し、蛍光抗体標識(Anti-mouse CD45 APC-eFluor 780、Anti-mouse CD49b-PE、Anti-mouse CD69 APC)を行い、その後、フロー検出(AFC2,Thermo)を行い、図5(同図のA~C)を示した。
【0122】
実施例9:突然変異型オルフウイルスのインビトロ細胞に対する感染作用
ウイルス株:POV-601-1A1
1)培養された各腫瘍細胞を消化した後に収集してカウントし、1.5x10cell/ウェルで96ウェルプレートに播種し、24h培養した後に播種した。
2)2% FBSの完全培地でウイルス液をそれぞれ1.5×10pfu/ml、1.5×10pfu/ml、1.5×10pfu/ml、1.5×10pfu/mlの4つの濃度に希釈した。
3)希釈されたウイルス液を96ウェル細胞プレートに添加し、各ウェルに添加されるウイルスのMOIをそれぞれ1000、100、10、1となるまで1ウェル当たり100μl添加し、各濃度について3つの重複ウェルを設置した。
4)3つのウェルを設置し、ウイルス液を含まない2%FBSの完全培地を添加して、陰性対照とした。
5)軽く揺るがしてウイルス液を単層細胞表面に均一に被覆させ、隅々まで被覆されることを確保した。
6)対照品又はウイルスを播種した96ウェルプレートを37℃、5%COの培養器に戻して72h培養した。
7)培養器から96ウェルプレートを取り出し、1ウェル当たり10μlのAlamar Blue Cell Viability Reagent(Invitrogen,Cat#:2072060)を添加し、培養プレートを軽く揺るがして染料を均一に分散させ、アルミ箔で96ウェルプレートを被覆して37℃で培養器中で遮光培養した。
8)培養終了後、カバーを取り除き、96ウェルプレートをエライザ(SPECTRAMAX M4,Molecular Devices)中に配置し、励起波長を560nm、発光波長を590nmに設置し、吸光度検出を行い、下記の換算式で細胞死亡率換算を行い、結果を分析した。
【数1】

9)その結果、POV-601-1A1ウイルスは、メラノーマ細胞(B16-F10)、膀胱癌細胞(MB49)、肝臓癌細胞(Hepa1-6)、結腸癌細胞(CT26)、ヒト子宮頸癌細胞(C-33A)、ヒト卵巣癌細胞(SK-OV-3)等の細胞に対して感染性を有し、MOI値の上昇につれて、ウイルス感染性が増加したが、vero細胞に対してほとんど感染しなかったことがわかった。
【0123】
【表8】
【0124】
実施例8:突然変異型オルフウイルスの、マウス由来結腸癌モデルにおける抗腫瘍活性の評価
A.試験設計
【表9】
【0125】
B.試験動物-メスBalb/cマウス、6-8W、浙江維通利華試験動物技術有限公司から得られた。
【0126】
C.試験過程
メスBalb/cマウスの右側背部に、PBS中で再懸濁したCT-26細胞(中国科学院典型培養物保蔵委員会細胞庫)を皮下播種し、細胞密度が5×10/mlであり、播種量が0.1ml/匹であった。細胞を注射する日をDay0とした。対照群の腫瘍体積平均値が100mmとなった場合、腫瘍サイズに応じて無作為にグループ分けし、表8の説明に従って投与処理を行い、細胞播種後のDay25、全てのマウスを安楽死させた。
【0127】
研究全体にわたって、毎週、マウスの体重秤量、腫瘍測定を2回行った。ノギス(型番:16ER; Mahr GmbH)を用いて腫瘍体積を測定し、結果を図14に示す。
【0128】
下記の式で腫瘍体積を算出する。長さ及び幅を垂直に測定した。
腫瘍体積(mm)=a×b/2
(式中、aは、腫瘍の長さ(mm)であり、bは、腫瘍の幅(mm)である。)
【0129】
下記の式で相対平均腫瘍体積を算出した。
RTV(Relative Tumor Volume)=V/V
(式中、Vは、グループ分けて投与する時に測定した平均腫瘍体積であり、Vは、毎回測定した平均腫瘍体積である。)
相対腫瘍増殖率T/C(%)=TRTV/CRTV×100%
(TRTVは、治療群RTVであり、CRTVは、対照群RTVである。)
腫瘍抑制率TGI%=(1-T/C)×100%。
【0130】
ANOVA統計を使用してデータを分析し、治療群の腫瘍体積と対照群の腫瘍体積比に有意差があるか否かを比較した。全てのデータをSPSS 17で分析した。P<0.05は、有意差があることを意味する。
【0131】
D.結果
【表10】
【0132】
実施例9:組み換え突然変異型オルフウイルスの、マウス由来メラノーマモデルにおける抗腫瘍活性の評価
組み換え方法により、ORFV111遺伝子及び/又はORFV112遺伝子コーディング領域及び/又は非コーディング領域を完全又は一部削除したオルフウイルスを構築し
、別途説明がない限り、実施例6に記載されている方法で効果を測定した。
【0133】
【表11】
【0134】
【表12】
【0135】
【表13】
【0136】
材料受託
以下の材料は、ブダペスト条約の規定に従って中国典型培養物保蔵中心(CCTCC)(中国,武漢,武漢大学,430072)で受託されている。
【0137】
【表14】
【0138】
引用文献
1. Hanahan, D., Weinberg, R.A.(2011). Hallmarks of cancer: the next generation.Cell, 144(5): 646-74.
2. Miest, T.S., Cattaneo, R.(2014). New viruses for cancer therapy: meeting clinical needs.Nat Rev Microbiol, 12(1): 23-34.
3. Burke, J., Nieva, J., Borad, M.J., Breitbach, C.J.(2015). Oncolytic viruses: perspectives on clinical development.Curr Opin Virol, 13: 55-60.
4. Seymour, L.W., Fisher, K.D.(2016). Oncolytic viruses: finally delivering.Br
J Cancer, Feb 16; 114(4): 357-361.
5. Harrington, K.J., Puzanov, I., Hecht, J.R., Hodi, F.S., Szabo, Z., Murugappan, S., Kaufman, H.L.(2015). Clinical development of talimogene Laherparepvec(T-VEC): a modified herpes simplex virus type-1-derived oncolytic immunotherapy.Expert Rev Anticancer Ther, 15(12): 1389-1403.
6. 殷震, 劉景華(1997). 動物ウイルス学(第二版), 科学出版社, 977-978.
7. 王志軍(2018). バイオテクノロジー薬物研究創製及び品質制御(第三版), 科学出版社.
8. CDC(2006). Orf Virus Infection in Humans-New York, Illinois, California, and Tennessee, 2004-2005.Morbidity and Mortality Weekly Report, 55(3): 65-68.
9. Kirn, D.H., Thorne, S.H.(2009). Targeted and armed oncolytic poxviruses: a novel multi-mechanistic therapeutic class for cancer.Nat Rev Cancer, 9: 64-71.
10. McFadden, G.(2005). Poxvirus tropism.Nat Rev Microbiol, 3(3): 201-213.
11. Wang, R., Wang, Y., Liu, F., Luo, S.(2018). Orf virus: A promising new therapeutic agent.Rev Med Virol, e2013.
12. Rintoul, J.L., Lemay, C.G., Tai, L.H., Stanford, M.M., Falls, T.J., Bridle, B.W., Souza, C.T., Daneshmand, M., Ohashi, P.S., Wan, Y., Lichty, B.D., Mercer, A.A., Auer, R.C., Atkins, H.L., Bell, J.C.(2012). ORFV: a novel oncolytic and immune stimulating parapoxvirus therapeutic.Mol Ther, 20(6): 1148-1157.
13. Seet, B.T., McCaughan, C.A., Handel, T.M., Mercer, A., Brunetti, C., McFadden, G., Fleming, S.B.(2003). Analysis of an orf virus chemokine-binding protein: shifting ligand specificities among a family of poxvirus viroceptors.Proceedings of the National Academy of Sciences, 100(25): 15137-15142.
14. Bergqvist, C., Kurban, M., Abbas, O.(2017). Orf virus infection.Rev Med Virol, 27(4).
15. 劉偉, 楊侃侃, 殷冬冬, 王元紅, 兪趙栄, 蒋書東, 李伝峰, 李永東, 王勇(2018). オルフウイルスdUTPase遺伝子の原核発現及び細胞内局在化, 中国獣医科学, 7: 818-823.
16. Irwin, C.R., Hitt, M.M., Evans, D.H.(2017). Targeting Nucleotide Biosynthesis: A Strategy for Improving the Oncolytic Potential of DNA Viruses.Front Oncol, 7: 229.
17. Fleming, S.B., McCaughan, C., Lateef, Z., Dunn, A., Wise, I.M., Real, N.C., Mercer, A.A.(2017). Deletion of chemokine binding protein gene from the parapoxvirus orf virus reduces virulence and pathogenesis in sheep.Front Microbiol, 8: 46.
18. Twumasi-Boateng, K., Jessica, L.P., Eunice Kwok, Y.Y., John, C.B., Nelson,
B.H.(2018). Oncolytic viruses as engineering platforms for combination immunotherapy.Nat Rev Cancer, 18: 419-432.
19. Diel, D.G., Lou, S., Delhon, G., Peng, Y., Flores, E.F., Rock, D.L.(2011).
A nuclear inhibitor of NF-kappaB encoded by a poxvirus.J Virol, 85(1): 264-275.
20. Son, S.J., Harris, P.W., Squire, C.J., Baker, E.N., Kent, S.B., Brimble, M.A.(2014). Total Chemical Synthesis of an Orf Virus Protein, ORFV002, an Inhibitor of the Master Gene Regulator NF-κB.Biopolymers(Peptid Science), 102(2): 137-144.
21. 王光祥, 尚佑軍, 陳江涛, 呂占禄, 張克山, 劉湘涛(2012). 湖北省オルフウイルスの分離同定, 動物医学発展, 033(011): 37-40.
【0139】
【表15】

【表16】

【表17】

【表18】

【表19】

【表20】

【表21】

【表22】

【表23】

【表24】

【表25】

【表26】

【表27】

【表28】

【表29】

【表30】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8-1】
図8-2】
図9
図10
図11-1】
図11-2】
図12
図13
図14
図15
図16
図17
【配列表】
2023537643000001.app
【国際調査報告】