IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ミツビシ・エレクトリック・アールアンドディー・センター・ヨーロッパ・ビーヴィの特許一覧

特表2023-537648チャネルの集合を用いて無線周波数システムにおける干渉を推定する方法、コンピュータプログラム、デバイス及び無線周波数システム
<>
  • 特表-チャネルの集合を用いて無線周波数システムにおける干渉を推定する方法、コンピュータプログラム、デバイス及び無線周波数システム 図1
  • 特表-チャネルの集合を用いて無線周波数システムにおける干渉を推定する方法、コンピュータプログラム、デバイス及び無線周波数システム 図2
  • 特表-チャネルの集合を用いて無線周波数システムにおける干渉を推定する方法、コンピュータプログラム、デバイス及び無線周波数システム 図3
  • 特表-チャネルの集合を用いて無線周波数システムにおける干渉を推定する方法、コンピュータプログラム、デバイス及び無線周波数システム 図4
  • 特表-チャネルの集合を用いて無線周波数システムにおける干渉を推定する方法、コンピュータプログラム、デバイス及び無線周波数システム 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-04
(54)【発明の名称】チャネルの集合を用いて無線周波数システムにおける干渉を推定する方法、コンピュータプログラム、デバイス及び無線周波数システム
(51)【国際特許分類】
   H04B 17/345 20150101AFI20230828BHJP
【FI】
H04B17/345
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023532856
(86)(22)【出願日】2020-09-16
(85)【翻訳文提出日】2023-02-03
(86)【国際出願番号】 JP2020036498
(87)【国際公開番号】W WO2022059215
(87)【国際公開日】2022-03-24
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
(71)【出願人】
【識別番号】503163527
【氏名又は名称】ミツビシ・エレクトリック・アールアンドディー・センター・ヨーロッパ・ビーヴィ
【氏名又は名称原語表記】MITSUBISHI ELECTRIC R&D CENTRE EUROPE B.V.
【住所又は居所原語表記】Capronilaan 46, 1119 NS Schiphol Rijk, The Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 一宏
(74)【代理人】
【識別番号】100147566
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100161171
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 潤一郎
(72)【発明者】
【氏名】グレッセ、ニコラ
(72)【発明者】
【氏名】グエン、ヴィエト-ホア
(57)【要約】
本発明は、チャネルの集合を用いる無線周波数システムにおける干渉を推定する方法に関し、干渉は、伝送帯域の集合を用いる干渉システムの干渉体によって引き起こされ、伝送帯域の各々は、チャネルの集合の複数の連続チャネル上に延びる。本方法は、可能なベクトルの集合として定義される、伝送帯域の集合の占有又は非占有の全ての可能な構成の集合を求めることと、全ての可能なベクトルのスタッキングから行列を構築することと、チャネルの集合のうちの少なくとも一部の占有についての測定値を、それぞれの時点において取得することと、測定値に基づいて、伝送帯域ごとに、推定されるアクティベーションレートを求めるように、チャネル遷移関数を用いて確率を計算することとを含み、推定されるアクティベーションレートは、所与の観測時間窓内における干渉体による伝送帯域の占有率に対応し、確率計算は、ギブスの不等式から導出された制約を有する非線形最適化問題を反復的に解くことを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャネルの集合を用いる無線周波数システムにおける干渉を推定するようにコンピュータ手段によって実施される方法であって、前記干渉は、I個の伝送帯域の集合を用いる干渉システムの干渉体によって引き起こされ、前記伝送帯域の各々は、前記チャネルの集合の複数の連続チャネル上に延び、
前記方法は、
可能なベクトルの集合Z=[Z1,k,...,Zi,k,...ZI,k]として定義される、前記伝送帯域の集合の占有又は非占有のN個全ての可能な構成の集合Ωを求めることと、
全ての可能なベクトルZのスタッキングから行列Aを構築することと、
前記チャネルの集合のうちの少なくとも一部の占有についての測定値X,...,X,...,Xを、それぞれの時点kにおいて取得することであって、0<k≦Kであり、ここで、Kは所与の観測時間窓を規定することと、
前記測定値X,...,X,...,Xに基づいて、伝送帯域ごとに、推定されるアクティベーションレートτを求めるように、∀k,∀z∈Ω,P(X|Z=z)として定義される確率を計算することであって、ここで、P(X|Z)はチャネル遷移関数を定義し、前記推定されるアクティベーションレートτは、前記所与の観測時間窓内における干渉体による伝送帯域iの占有率に対応することと、
を含み、
前記確率を計算することは、各反復tにおいて、
【数1】
となるように定義された制約を有する非線形最適化問題を解くことであって、式中、ベクトルτ(t)は、反復インデックスtにおいて推定されたそれぞれの伝送帯域iにおけるアクティベーションレートの列であり、ベクトルθは隠れ変数であることと、
ベクトルφ=[φ,...,φ]を、
【数2】
の隠れ変数として計算することと、
次の反復インデックスt+1について、前記アクティベーションレートの前記ベクトルを、
【数3】
として更新することと、
を反復的に含む、方法。
【請求項2】
前記可能なベクトルZ=[Z1,k,...,Zi,k,...ZI,k]の集合Ωは、時点kにおいて、前記無線周波数システムの非重複条件を満たし、前記非重複条件は、I個の可能な干渉体の集合の中でも1個の干渉体iのみが、同じ時点kにおいて前記チャネルの集合の各チャネル上でアクティブになることができるということに対応し、連続チャネルを用いて伝送帯域iを形成する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記非重複条件は、前記無線周波数システムによって実行されるCSMA/CA多重アクセスの実施から導出され、前記CSMA/CA多重アクセスは通信タイムスロットを規定し、前記測定値Xは各タイムスロットkにおいて収集される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記可能なベクトルの集合Ωは、2個の要素を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記無線周波数システムは前記チャネル上で周波数ホッピングを実施し、前記測定値X,...,X,...,Xを取得するステップは、周波数ホッピングの実施に従って実行される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
伝送帯域を形成する前記連続チャネルの数は4個であり、前記チャネルの集合のチャネル総数は16個である、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記チャネルの各々は5MHzにわたって延び、一方、前記伝送帯域の各々は、拡散スペクトル技術の実施に伴って20MHzにわたって延びる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記無線周波数システムはISMタイプの通信を実施し、前記干渉システムはWiFiタイプの通信を実施する、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記チャネルの集合の中から少なくとも1つのチャネルを通信のために選択することであって、選択された前記チャネルは、前記推定されるアクティベーションレートτが最低である伝送帯域内にあることを更に含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
プロセッサによって実行されると、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法を実行する命令を含むコンピュータプログラム。
【請求項11】
チャネルの集合を用いる無線周波数システムにおける干渉を推定するデバイスであって、前記干渉は、伝送帯域の集合を用いる干渉システムの干渉体によって引き起こされ、前記伝送帯域の各々は、前記チャネルの集合の複数の連続チャネル上に延び、
前記デバイスは、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法を実行する処理回路を備える、デバイス。
【請求項12】
無線周波数通信システムであって、前記無線周波数通信システムによって用いられるチャネル上で発生しやすい干渉を推定する、請求項11に記載のデバイスを備える、無線周波数通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばISM公共帯域(ISMは「産業、科学及び医療無線帯域」を表す)における周波数ホッピング等、所与の無線周波数チャネルを用いることができるとともに、したがって、例えばWiFiデバイス等、他のデバイスからの干渉を受ける場合があるシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
干渉体からの被害を受ける可能性があるこのようなシステムの例としては、自動運転車のコンピュータ通信デバイスがあり、他には、無線技術通信デバイスを備える無線式列車制御がある。
【0003】
干渉問題は、こうした自動車両応用において重大な問題につながる可能性がある。
【0004】
コグニティブ無線に基づく干渉回避技術は更に改善することができる。例えば、車両移動ごとに、車両からサーバに、車両位置とともに、近隣の干渉についての測定値をフィードバックすることができる。サーバにおいて、(典型的には通常の車両経路の場合の)位置及び周波数チャネルのクラスターに属する測定値を統計的関数で収集するためのデータベースを構築することができる。このような実施タイプの例は、例えば特許文献1及び特許文献2に記載されている。
【0005】
したがって、この知識を、無線システムの無線リソース管理及びモニタリングを実行するために用いることができる。車両無線モニタリングの状況では、典型的には、或るWiFiデバイスが無線レベルにおいて発生している問題の原因であるか否かを判定する識別方法を実施することができる。しかしながら、この手法の欠点は、データベースに供給するために多くの測定値が必要となる、ということである。信号解析及び認識は、研究が盛んなテーマである。一般に、デバイスは、最高の検出性能を提供するように特別に設計されるものであるが、以降の本発明の背景において、通信システムは、自身の無線設計によって制約を受ける場合がある。
【0006】
本出願人によって行った実施の例として無線式列車制御(CBTC)のシステムがあるが、そのようなシステムは、ISM帯域を用いて列車と沿線との間の接続を確立する。しかしながら、この(公衆)帯域は、多くの他のデバイス(WiFi、Bluetooth等)によっても広く用いられており、CBTC信号に干渉を引き起こす可能性がある。特許文献3には、各WiFiチャネルにおける干渉のアクティベーションレートを特定することができる方法が提案されている。この情報は、フィードバックリンク内に存在する必要があり、これはサーバが効率的なリソース管理又は無線条件監視を行うのに十分な情報を収集するのに役立つ。
【0007】
より正確には、WiFi信号の周波数帯域より小さい周波数帯域における電力測定値を用いて、WiFi伝送帯域の総数の中からのいくつかの事前に未知な伝送帯域における1つ又はいくつかの干渉体による統計的占有率を求める既知の手法は、特許文献3において提案された手法以外には存在していない。1つの課題は、干渉体が他の伝送帯域でも影響力を及ぼすとともにアクティブである可能性があるため、こうした干渉体を区別することである。
【0008】
図5は、特許文献3において解決された問題を示している。無線周波数システムは、チャネル(図5に示す例では1個~16個)の集合を提供する。チャネルのインデックスはCHiとラベル付けされている。例えば、これらのチャネルの各々は5MHzの帯域幅を有することができる。
【0009】
干渉する無線周波数システム(例えばWiFiシステム等)は1つ又はいくつかの干渉体を有する可能性があり、こうした干渉体の各々は、いくつかの連続チャネルによって構成された伝送帯域上でアクティブになりやすい。図5の例では、干渉システムは、図5ではインデックスに「TBi」とラベル付けされた、1個~13個の伝送帯域を有することができる。
【0010】
より詳細には、図5の例では、各伝送帯域TBiは20MHzの帯域幅を有し、
TB1は4つの連続チャネル1~4上に延び、
TB2は4つの連続チャネル2~5上に延び、
TB3は4つの連続チャネル3~6上に延び、
以下同様であり、
TB13は4つの連続チャネル13、14、15、16上に延びる。
【0011】
ここで、インデックスTBiが、連続チャネルの第1のチャネルCHiと同じ値を有することは注目に値する。したがって、このインデックスは、以降の説明では単に「i」とだけラベル付けされ、干渉体インデックスに割り当てられる(1~Iまで、ただし、図5の例ではI=13である)。
【0012】
また、ここで、2つの干渉体は、例えば、3つのチャネル上で重複している2つの連続伝送帯域上でアクティブになる可能性があることも注目に値する。さらに、干渉体は、常時アクティブではなく、時々アクティブになる可能性がある。
【0013】
したがって、特許文献3において解決された難題は、所与の時間窓フレームにおいて、或る干渉体が最終的にいずれの伝送帯域上でアクティブであるかを区別し、その時間窓内で対応する伝送帯域において、典型的にはその干渉体のアクティベーションレートを与えることである。
【0014】
各WiFiチャネルにおける干渉のアクティベーションレートを推定するために、特許文献3は、競合が生じていないときにCSMA/CAプロトコルから結果として生じる干渉構造の知識に基づいていた。そして、期待値最大化アルゴリズムを実行して推定問題を解いた。アルゴリズムの最大化ステップは、劣決定系の解を計算する。この問題は、単純な近似を用いることによって解決された。しかしながら、この近似は、場合によっては、最適でない可能性がある。
【0015】
通常、特許文献3において提案される解決策の改善を行うことで、アクティベーションレート推定のより高速な収束でより良好な精度につながるようにすることが求められている。
【0016】
さらに、特許文献3は、非重複条件を満たす、伝送帯域の占有又は非占有のN個全ての可能な構成の集合Ωを構築することを提案している。この非重複条件は、I個の可能な干渉体の集合のうち1個の干渉体iのみが、同じ時点kにおいて各チャネル上でアクティブになることができるということに対応し、このチャネルは、図5に示すように、連続チャネルを用いて伝送帯域iを形成している。
【0017】
N個全ての可能な構成のこの集合Ωについては、図2に示し、本発明の可能な実施形態に依然として関係するものとして以下で更に詳細に説明する。
【0018】
この非重複条件は、特許文献3において提案された方法において、問題をより容易な方式で解決するために加えられた制約である。
【0019】
しかしながら、非常にまれであるが発生する可能性のあるケースとして、CBTCのようなシステムにオーバーラップが生じる可能性がある。いわゆる「隠れノード」の場合、そのようなノードは、2つの干渉体の中間において2つの重複した干渉体を「拾う」可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】国際特許公開第2017/122548号
【特許文献2】国際特許公開第2017/122549号
【特許文献3】欧州特許出願第18305112号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本発明は、この状況を改善することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
そのため、本発明は、チャネルの集合を用いる無線周波数システムにおける干渉を推定するようにコンピュータ手段によって実施される方法であって、上記干渉は、伝送帯域の集合を用いる干渉システムの干渉体によって引き起こされ、上記伝送帯域の各々は、上記チャネルの集合の複数の連続チャネル上に延びる方法を提唱する。
【0023】
方法は、
可能なベクトルの集合Z=[Z1,k,...,Zi,k,...ZI,k]として定義される、上記伝送帯域の集合の占有又は非占有のN個全ての可能な構成の集合Ωを求めることと、
全ての可能なベクトルZのスタッキングから行列Aを構築することと、
上記チャネルの集合のうちの少なくとも一部の占有についての測定値X,...,X,...,Xを、それぞれの時点kにおいて取得することであって、0<k≦Kであり、ここで、Kは所与の観測時間窓を規定することと、
上記測定値X,...,X,...,Xに基づいて、伝送帯域ごとに、推定されるアクティベーションレートτを求めるように、∀k,∀z∈Ω,P(X|Z=z)として定義される確率を計算することであって、ここで、P(X|Z)はチャネル遷移関数を定義し、上記推定されるアクティベーションレートτは、上記所与の観測時間窓内における干渉体による伝送帯域iの占有率に対応することと、
を含む。
【0024】
より詳細には、上記確率計算は、各反復tにおいて、
【数1】
となるように定義された制約を有する非線形最適化問題を解くことであって、式中、ベクトルτ(t)は、反復インデックスtにおいて推定されたそれぞれの伝送帯域iにおけるアクティベーションレートの列であり、ベクトルθは隠れ変数であることと、
ベクトルφ=[φ,...,φ]を、
【数2】
等の隠れ変数として計算することと、
次の反復インデックスt+1について、アクティベーションレートのベクトルを、
【数3】
として更新することと、
を反復的に含む。
【0025】
より詳細には、上記(1)で表した制約は、離散確率分布の数学的エントロピーに関するギブスの不等式から導出することができる(すなわち、情報エントロピーは、以降の詳細な説明において適用されるような任意の他の分布を有するクロスエントロピー以下である)。
【0026】
実施の形態の非限定的な例では、集合Ωの可能なベクトルZ=[Z1,k,...,Zi,k,...ZI,k]は、時点kにおいて、上記無線周波数システムの非重複条件を満たし、上記非重複条件は、I個の可能な干渉体の集合の中で1個の干渉体iのみが、同じ時点kにおいて上記チャネルの集合の各チャネル上でアクティブになることができ、連続チャネルを用いて伝送帯域iを形成するという事実に対応するものである。
【0027】
実施の形態の例において更に、上記非重複条件は、上記無線周波数システムによって実行される多重アクセス実施(CSMA/CA又はCSMA/CD)から導出することができ、上記多重アクセス実施は通信タイムスロットを定義し、上記測定値Xは各タイムスロットkにおいて収集される。
【0028】
しかしながら、上述した非重複条件が当てはまらない場合がある一般的な実施の形態において、以下の記載において詳細に説明するように、可能なベクトルの集合Ωは、最大で2個の要素(Iは、検討される伝送帯域の総数である)を含むことができる。
【0029】
上記通信システムが上記チャネル上で周波数ホッピングを実施する一実施の形態において、上記測定値X,...,X,...,Xを取得するステップは、周波数ホッピングの実施に従って実行される。
【0030】
一例として以降に詳述する可能な一実施の形態において、伝送帯域を形成する上記連続するチャネルの数は4個であり、上記チャネルの集合のチャネル総数は16個である。
【0031】
実施の形態の例では、上記チャネルの各々は5MHzにわたって延び、一方、上記伝送帯域の各々は、拡散スペクトル技術の実施に伴って20MHzにわたって延びる。
【0032】
この実施の形態例では、典型的には、上記無線周波数システムがISMタイプの通信システムに対応し、一方、上記干渉システムがWiFiタイプの通信システムに対応する一実施形態に対応することができる。
【0033】
上記方法は、上記チャネルの集合の中から少なくとも1つのチャネルを通信のために選択するステップであって、選択されたチャネルは、上記推定されるアクティベーションレートτが最低である伝送帯域内にある、選択するステップを更に含むことができる。
【0034】
本発明はまた、プロセッサによって実行されると、上記で提示した方法を実行する命令を含むコンピュータプログラムを目的とする。このようなコンピュータプログラムの一般的なアルゴリズムの例を、以下で詳述する図3に示す。
【0035】
本発明はまた、チャネルの集合を用いる無線周波数システムにおける干渉を推定するデバイスであって、上記干渉は、伝送帯域の集合を用いる干渉システムの干渉体によって引き起こされ、上記伝送帯域の各々は、上記チャネルの集合の複数の連続チャネル上に延びる、デバイスを目的とする。より詳細には、上記デバイスは、後述の図4の例に示すように、上記の方法を実行する処理回路を備える。
【0036】
本発明はまた、無線周波数通信システムであって、無線周波数通信システムによって用いられるチャネル上で発生しやすい干渉を推定するデバイスを備える、無線周波数通信システムを目的とする。
【0037】
本発明について、限定ではなく例として、添付の図面の図において、上述した図5よりも前の図で示す。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】本発明による無線周波数通信システムによって実施される、周波数ホッピング通信スキームDL、ULを、連続チャネル(ここでは4つのチャネル)のサブ集合における干渉体による雑音スキームWINTと比較して概略的に示す図である。このサブ集合は、時間にわたって(少なくともいくつかの連続したタイムスロットにわたって)安定しているとともに干渉システムの伝送帯域を規定する。
図2】チャネルの集合全体のうちのチャネルの、干渉体の占有又は非占有の集合Ωの全ての可能なN個の構成を示す図である。
図3】本発明による方法の主要ステップの一例を示す図である。
図4】本発明によるデバイスの処理回路の例を概略的に示す図である。
図5】特許文献3においてチャネルの集合を提供する無線周波数システムの例を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明によって解決される問題とは、無線システムによって実行される測定による、干渉の(WiFiか否かの)分類である。以下に開示される例では、当該無線周波数システムは以下の特性を有する。
・約4msのレートでの、5MHz帯域のチャネル上の周波数ホッピング
・1.5msのパケット
・4msの各スロット内における、CSMA/CA又はCSMA/CD多重アクセス(2回の伝送試行)
・各タイムスロットにおいて収集される測定値
【0040】
WiFiシステムの特性は、以下の通りである。
・20MHz伝送帯域における拡散スペクトル技術
・一般に200μsのWiFiのPHY層パケット(肯定応答ACKを含む)
・平均約100msの伝送フレーム持続時間(トランスポート層におけるパケット)
・CSMA/CA多重アクセス
【0041】
したがって、この実施例では、干渉システムの現在の各伝送帯域は、無線システムの16個のチャネルの中の5MHzの帯域についての観測値を有するものとみなされると仮定される。現在の各伝送帯域は、WiFiシステム特性により合計20MHzの帯域上に延び、この帯域は、ここでは無線システムの4つの連続チャネルに対応する。当然、16個のチャネル及び4つの連続チャネルという数は、ここで与えられた例であり、変形することができる。また、(以降「Wチャネル」とも呼ばれる)伝送帯域は重複することができ、したがって合計13個の伝送帯域を生成する。5MHz幅のチャネルに1~16をインデックス付けすることによって、伝送帯域を、[1 2 3 4],[2 3 4 5],...,[12 13 14 15],[13 14 15 16]というインデックス付きのチャネルの集合体として定義する。
【0042】
上記システムは、近隣の干渉体を検出し、衝突検出の場合に別の接続を試みることができる。こうした干渉体が、通常は送信機における指向性アンテナを使用する当該無線システムによって概して影響されないことは追記する価値がある。干渉体は、周波数ホッピング方式によってアクティブであるとみなされるのではなく、むしろ、後述の図1において示すようないくつかのチャネルの固定サブ集合上でアクティブであるとみなされる。しかしながら、これ以降に提示する実施形態において(たとえ本発明がいわゆる「非重複条件」なしで実施することができる場合であっても)、干渉体は通例、依然として非重複条件を遵守するとみなされる。非重複条件によれば、CSMA/CA多重アクセス方式の結果として、2つの干渉体が同じチャネル上で同時に重複することができない。これらの観測により、以下の概略的な文言が説明される。
-干渉体の各々は、チャネルの集合全体のうちの複数の連続チャネルによって形成された伝送帯域上では、特にそれぞれの時点kにおいてアクティブになりやすく、
-1つの干渉体のみが、同じ時点kにおいて各伝送帯域上でアクティブになることができ、
-例えば、(20MHzの幅を有する)2つの伝送帯域が、1つ又はいくつかのチャネル(各チャネルが5MHzの幅を有する1つ~3つのチャネル)上で重複する場合、追加の条件として、1つの干渉体のみが、同じ時点kにおいて各チャネル上でアクティブになることができる。
【0043】
以降、干渉システム(例えばWiFi)の伝送帯域と、通信システム(例えばISM)のチャネルとを区別するため、伝送帯域を以降では「Wチャネル」と呼び、一方、「チャネル」は通信システムのチャネルのままとする。
【0044】
無線システムパケット(アップリンクUL及びダウンリンクDL)とWiFi干渉(WINT)との共存の例示を図1に示し、図中、ISM帯域の周波数/時間使用量を例示する。WiFi干渉ゾーン内では、時間占有が、衝突回避メカニズムを有する小さいPHY WiFiパケットにスライスされる。周波数ホップのうちの約半分がダウンリンクのために用いられ、残りの半分はアップリンクのために用いられる。したがって、所与の観測時間窓を構成することによって、各チャネルについての干渉測定の数が異なる場合がある。チャネルによっては、その時間窓内に測定機会がない場合さえある。
【0045】
これ以降、以下の表記を用いる。
・kは時点、すなわち、当該無線システムのホップである。より正確には、K個の時点の時間窓が検討される。
・Xは、0<k≦Kである時点kにおける、本実施形態例では1つのチャネルにわたる干渉観測値である。各Xは、各チャネルにおいて計測される電力測定値、若しくは信号対雑音比の電力測定値、又は所与のスキームによるシミュレーションに対応することができる。
・fは、時点kにおいて計測される周波数チャネルのインデックスである。
・Zi,kは、干渉が、時点kにおいて(I個の中から)i番目のWチャネル上でアクティブであるか否かを明示する確率変数である。
【0046】
-ここで非限定的な例として提示される実施形態において、CSMA/CA多重アクセススキームの結果として、2つの干渉体は、同時に重複することができない。これは、数学的に以下のように書くことができる。
【数4】
【0047】
-確率変数は、時間において独立しており、すなわち、
【数5】
である。式中、E[・]は数学的期待値を表す。この期待値が値の有限集合に対して実行されなくてはならない場合、この期待値は、算術平均によって置換及び近似される。
【0048】
-これ以降でも、非重複条件が依然として適用されているため、最初は、時点kにおいてこの非重複条件を満たす、可能なベクトルZ=[Z1,k...ZI,k]の集合として定義される集合Ωが依然として検討される。
【0049】
図2は、80MHzのISM帯域における5MHzの16個のチャネルにわたる集合Ωを、ドットD1(薄い灰色)によって示している。この場合、1つのドットD1はWチャネルの起点インデックスiを示し、3つのドットD2(黒色のドット、可能である場合、ドットD1の上下にある)は、4つのチャネルi、i+1、i+2、i+3から構成された関連するWチャネルに対して20MHz幅帯域を有するWiFi干渉体に割り当てられたチャネルインデックスi+1、i+2、i+3も示している。
【0050】
例えば、X軸(1つの横座標は、集合Ω内のベクトルZについての1つの可能な構成を表す)の三分の一においてドットD1を有するチャネルインデックス9を取るとき、Wチャネル9は、チャネル9、10、11、12から構成されている。ドットD1は、チャネル9が、この20MHz幅のWチャネルを識別するのに用いられるインデックスであることを示している。2つのWチャネルが同時に重複することができないため、インデックス13、5、4、3、2、1で始まるWチャネルのみが、インデックス9で始まるWチャネルと同時に共存することができる、ということを観測することができる。集合Ωの別の可能性に対応する図2の別の例によれば、4つの干渉体が全て同時にアクティブである、インデックス1、5、9、13で始まるWチャネルを有する構成が可能であり、図2の右端にある最後の構成として示されている。
【0051】
少なくとも1つの干渉体を有すると、干渉体同士のCSMA/CA非重複特性を満たすN=95個の割り当てが可能である(X軸に沿って95個の横座標がある)ことを観測することができる。
【0052】
本実施形態において限られた数N個の可能な構成を有するこの集合Ωは、非重複条件の遵守により、一般的な方式において、単に、N=2に対応する数の要素を有することができる。ここで、Iは伝送帯域数であり、例えば、図1及び図5においてI=13である。この一般化は、2つの干渉体間の隠れノード等の重複事例を考慮に入れることを可能にする。本発明のアルゴリズムは、以下に記載する方法の高速な収束により、そのような一般化を実施することを可能にする。
【0053】
これ以降、表記Ωは、図2を参照するとき、上で提示した集合を意図することができ、又は一般的な場合、2個の可能なベクトルを有する集合を意図することができる。
【0054】
また、以下で用いられる1つの表記には、
・i番目の干渉体のアクティベーションレートであるτがあり、すなわち、τ=E[Zi,k]である。
式中、E[・]は、異なる時点にわたる数学的期待値を表す。この期待値が値の有限集合に対して実行されなくてはならない場合、すなわち、有限の時間窓を考慮する場合、この期待値は、算術平均によって置換及び近似される。
【0055】
解決すべき問題は、観測値のベクトルX=[X,...,X]から集合τを計算することである。
【0056】
最大事後確率
【数6】
は、全ての変数τが事前に等確率であるとみなすことによって最尤問題へと変換することができる。すなわち、
【数7】
である。
【0057】
これは、任意の観測値を受け取る前には、i番目のWチャネルについて、アクティベーションレートτのうちの1つが別のものより高いという情報が存在しない、ということを伴う。
【0058】
さらに、潜在変数Zも事前に等確率であり、その結果、
【数8】
となり、これによって、解決すべき新たな最適化問題が与えられる。
【0059】
問題
【数9】
は、可能なベクトルZ(∈Ω)及びτの集合の次元が高いため解決困難である。このため、特許文献3では、最尤解を反復的に近似した期待値最大化手法が用いられた。
【0060】
本発明の目標は、依然として、遷移確率P(X|Z)によって定義されたチャネルの出力における観測値{X}からランダムベクトルZの期待値を推定することであり、ここで、Zの実現値{Z}は、既知の有限集合Ω(これは、その全ての要素を行方向にスタックしたときの行列Aによって以下に表すことができる)に属する。
【0061】
図3を参照すると、本発明は、可能な実施形態において、以下のステップ、すなわち、
-ステップS1において、可能な構成(場合によっては2)の集合Ωを求め、より詳細には、
*ランダムベクトルZの可能な構成をスタックする行列Aを取得し、
*上記で紹介したように表記されたチャネル遷移関数:P(X|Z)を定義することであり、
-ステップS2において、ゼロ値を用いてτ(1)を初期化するとともに、tをt=1として設定し、ここで、tは、以下の反復処理における反復インデックスを表すこと、
-ステップS3において、測定値X,...,Xを収集すること、
-ステップS4において、確率∀k,∀z∈Ω,P(X|Z=z)を計算すること、
-ステップS5において、
【数10】
等の不等式制約非線形最適化問題(ICNLOP)を解くこと、
-ステップS6において、ベクトルφ=[φ,...,φ]を、
【数11】
として計算すること、
-ステップS7において、τ(t+1)=Aφを更新すること、
を含むことができる。
【0062】
ステップS5、S6、S7は、停止条件が満たされるまで反復して繰り返される。収束が満たされるまで、新たな反復ごとに、インデックス(t)は増加される(ステップS8)。
【0063】
特に、ステップS5は、最適化問題の初期目標の関数ではない中間結果を伴う。このため、中間結果の選択を誤ると、アルゴリズムの収束が遅くなり、限られた計算時間では、その精度が低下する。ここで、中間結果に頼るのではなく、τ(t+1)に対する制約を、Aθ=τ(t)による、制約された隠れ変数θの最大化に変換することが提案される。このことは、はるかに容易であり、最適化のいくつかの部分の閉形式を導出することができる、これにより、アルゴリズムの収束は改善される。
【0064】
確率過程Zの確率変数Xは、図3のステップS1に関して上記で提示したように、遷移確率p(X|Z)によって特徴化されたチャネルの出力において観測される。Zがとる値の離散集合はΩであり、濃度N=|Ω|を有する。パラメータτはチャネルに依存せず、すなわち、p(X|Z,τ)=p(X|Z)及びp(Z,X│τ)=p(X│Z)p(Z|τ)である。
【0065】
換言すれば、τ→Z→Xはマルコフ連鎖である。目標は、集合Ω内の|Ω|個全ての可能な値zについて確率p(Z=z|τ)の線形結合であるベクトルパラメータτを推定することである。
【0066】
このため、τに対する制約は、以下の固定点問題である。
【数12】
【0067】
式中、AはI×Nの行列であり、Iはτの長さである(すなわち、干渉体の推定数Iであり、これは、先行して述べたチャネルの数、すなわち上記の図5の例におけるI=13に対応することができる)。Aのj番目の列はzであり、I<Nを仮定すると、Aが可逆的でないことを含み、これがこの問題の主要な難点である。このため、変数τは、常に、必ずしも一意でない関数f(・)の固定点とみなされる。
【0068】
τの推定は、尤度p(X│τ)=E[p(Z,X│τ)]の最大化によって最適に行われる。これは、通常、Ωの高濃度、及びXがチャネルの多くの観測値のシーケンスであるため解決困難である。計算複雑性を低減するために、反復アルゴリズムを用いることができる。各反復t+1において、推定値τ(t+1)は、反復tの出力τ(t)の知識により改善される。1回の反復では、期待値の最大化ステップが通常用いられ、これは以下を含む。
・τ(t)の知識を用いて、全ての可能なz∈Ωについて確率p(Z=z│X,τ(t))を計算する。

【数13】
を用いることによって、確率p(Z=z│X,τ(t))の集合から推定値τ(t+1)を絞り込む。
【0069】
本明細書では、p(Z,X│τ)=p(X│Z)p(Z|τ)であり、式中、p(X│Z)はチャネルから既知であるが、Aが可逆的でないため、p(Z=z|τ)はτから一意に知ることができない。このため、いくつかのベクトル[p(Z=z│τ),...,p(Z=z│τ)]は制約条件(3)を満たす。しかしながら、f(・)の2つの異なるバージョンは、最適化問題(4)において同じ結果をもたらさない。
【0070】
特許文献3において、ベクトル[p(Z=z│τ),...,p(Z=z│τ)]は、ヒューリスティック関数に従って選択されており、すなわち、(4)を改善するように選択されなかった。
【0071】
このため、アルゴリズムの最良の収束を提供するために、[p(Z=z│τ),...,p(Z=z│τ)]をτと共同で最適化し、それによって最良のτ(t+1)を得ることが関心事である。この最適化を可能にするために、ここでは最適化問題(4)に別の項を加え、収束を保証するのみでなく、変数τ及び[p(Z=z│τ),...,p(Z=z│τ)]の対を最も効率的にτ(t+1)の選択に向かわせることを提案している。
【0072】
再び図2を参照すると、集合Ωは、16チャネルにおける配分の結果として得られる薄い灰色のドットD1で示される。集合Ωは、干渉構成行列Aに変換することができる。実際に、集合Ωは、最適化問題を解くための線形代数ツールを用いるために、行列形式Aで書き換えられる。このため、行列Aは、その列において、検討される帯域における全ての干渉体の同時のアクティベーションステータスの組合せを示す。各エントリの値は1又は0であり、そのチャネル上に干渉が存在するか否かを示す。Ωの濃度は、Aの列数である。Aの構造は、干渉体が用いているプロトコル(例えば、以下におけるCSMA/CA)を遵守しなくてはならない。
【0073】
τは、i番目のWiFiチャネルにおける干渉のアクティベーションレートであり、すなわち、τ=E[Zi,k]である。
【0074】
目標は、測定された観測値X=[X,...,X]から、アクティベーションレートベクトルτ=[τ,...,τ]を推定することである。
【0075】
汎用的な期待値最大化アルゴリズムを実施することができ、より詳細には、「期待値最大化」と呼ばれ、以下の式で想起される、対数尤度logP(X│τ)を改善する反復アルゴリズムを実施することができる。
【0076】
潜在変数Zを導入することによって、
【数14】
が得られる。
【0077】
Zにわたって周辺化することによって両辺を乗算することによって、
【数15】
が得られる。
【0078】
式中、H(τ|τ(t))は、τ(t)を所与とした、確率変数τの条件付きエントロピーであり、Q(τ|τ(t))は、
【数16】
であるような、Xを所与としたZの現在の条件付き分布及びパラメータの現在の推定値τ(t)に対する尤度関数の予測値である。
【0079】
式(6)は、τ(t)について成り立つ。
【数17】
【0080】
logP(X│τ)を最大化するために、アルゴリズムの各ステップにおいて増分logP(X|τ)-logP(X|τ(t))を最大にする反復手法を実施することができ、次式がもたらされる。
【数18】
【0081】
ギブスの不等式は、情報エントロピーが、任意の他の分布とのそのクロスエントロピー以下であること(すなわち、H(τ|τ(t))≧H(τ(t)|τ(t))))を宣言する。
このため次のように書くことができる。
【数19】
【0082】
(8)から、期待値最大化アルゴリズムを導出することができる。このアルゴリズムは、(8)の右辺が常に正であることを保証することによって各反復において対数尤度を向上させる。これを行うために、期待値はQ(τ|τ(t))として計算され、次に最大化問題が、
【数20】
として解かれる。結果として、対数尤度は反復的に改善される。
【0083】
より具体的には、本発明において対処される問題の特殊な特性が以下に利用され、期待値最大化アルゴリズムにおける通常の従来技術に対する改善を構成する。
【0084】
上記で説明したように、通常の期待値最大化アルゴリズムにおいて、最大化のステップは、τ(t)が前の反復の出力から既知であると仮定する。これは、本質的に、Q(τ|τ(t))が最大化され、固定のQ(τ(t)|τ(t))よりも大きくなることを含む。
【0085】
この手法において、Q(τ│τ(t))-Q(τ(t)│τ(t))は、f(・)の固定点になるように制約される、τの関数として表すことができると考えられる。このとき、問題は以下となる。
【数21】
【0086】
これは、以下で解くことができる2つの最適化を最終的にもたらす予測値最大化問題に加えられる更なる制約である。
【0087】
固定点制約下での最適化は困難である。これは、j番目のエントリθ=p(Z=z│τ)及びτ=Aθの隠れ変数θ、並びにj番目のエントリθ (t)=p(Z=z│τ(t))及びτ(t)=Aθ(t)のθ(t)を検討することによって解決する。θから(プロセスの出力である)τを求めることは、Aが射影(矩形行列)であるため可能であるが、τ(t)からθ(t)を一意に求めることは可能でないことに留意されたい。これは、τにおける最適化をθにおける最適化に置き換えることができること、及びθ(t)に対する追加の最適化が必要であるが、固定点制約を有する最適化アルゴリズムよりも簡単な最適化アルゴリズムを表すことができることを意味する。
【0088】
実際に、
・時間における観測値Xの時間における相互独立性、
・ベイズ法、
・可能なZの集合にわたる周辺化、
を用いることによって、以下を得ることができる。
【数22】
これは、θ=p(Z=z│τ)及びθ (t)=p(Z=z│τ(t))を表すことによって、等価な関数
【数23】
となる。
【0089】
このため、最適化問題は以下となる。
【数24】
【0090】
この手法は、各反復における改善を最大化するため、対数尤度の収束の加速に役立つ。
【0091】
典型的な期待値最大化アルゴリズムにおいて、最適化(9)は、実際には、τ値(最適化において役割を果たさない第2項Q(τ(t)|τ(t)))に対してのみ行われることに留意されたい。本発明の手法において、θ(t)の最適化に役立つ第2項が保持され、これにより、ひいてはθを得て、次にτ(t+1)に戻ることが可能になる。これは本発明の利点のうちの1つである。
【0092】
共同最適化は、以下のように導くことができる。まず、固定のθ(t)が検討される。最適化
【数25】
により、閉形式解
【数26】
となる。
【0093】
この最大化問題をθ(t)に代入することによって、
【数27】
を得ることができる。全ての制約を考慮に入れると、最適化問題は、
【数28】
となる。
【0094】
最後の式において定義されたこの最適化問題は、任意の数値最適化ツールボックスを用いて解くことができる。代替的に、最適化問題は、θ(t)のいくつかの値をランダムに生成し、制約
【数29】
、Aθ(t)=τ(t)、及び∀j,0≦θ (t)≦1を満たす(又はほぼ満たす)ものを選択し、値
【数30】
を計算し、最大の値をもたらすθ(t)のランダムな選択を保持することによって解くことができる。
【0095】
制約を「ほぼ満たす」の判断基準は、例えば、
【数31】
となるような閾値を制約に適用することに対応することができる。
【0096】
次に、最適化されたθ(t)から、
【数32】
を用いることによって、θ(t+1)を推論することができ、これによって、τ(t+1)=Aθ(t+1)を得ることが可能になる。
【0097】
収束は、特許文献3よりも高速であり、結果はより正確である。
【0098】
もちろん、図3のフローチャートによって表された全てのアルゴリズムは、実際面では、図3に表されたアルゴリズムのうちの1つに対応するアルゴリズムを有する適切なコンピュータプログラムを実行するコンピュータによって実行される。このようなコンピュータは、図4に示すように、
-測定値Xを受信する入力インターフェースINPと、
-少なくとも前述のコンピュータプログラムの命令を記憶するメモリMEMと、
-命令を読み込んだ後に対応するプログラムを実行するプロセッサPROCと、
-少なくとも干渉体による伝送帯域のアクティベーションレートに関連したデータ、及び、場合によってはこうした干渉体を回避するための推奨チャネル識別子を含む信号SIGを伝達する出力インターフェースOUTと、
を備える。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】