(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-05
(54)【発明の名称】特に多変量の状況において異常個体を統計的に検出するため、個体の異常レベルを決定する方法
(51)【国際特許分類】
G06F 16/28 20190101AFI20230829BHJP
G06F 17/18 20060101ALI20230829BHJP
G06F 11/22 20060101ALI20230829BHJP
A61K 39/00 20060101ALN20230829BHJP
【FI】
G06F16/28
G06F17/18 D
G06F11/22 673Z
A61K39/00 H
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022540925
(86)(22)【出願日】2021-08-03
(85)【翻訳文提出日】2022-07-01
(86)【国際出願番号】 EP2021071671
(87)【国際公開番号】W WO2022029122
(87)【国際公開日】2022-02-10
(32)【優先日】2020-08-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】511188222
【氏名又は名称】イッポン・イノベーション
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】アルシャンボー,オーロル
(72)【発明者】
【氏名】ルイーズ,アンヌ
(72)【発明者】
【氏名】スアル,キャロル
【テーマコード(参考)】
4C085
5B048
5B056
5B175
【Fターム(参考)】
4C085AA03
4C085BB11
4C085EE01
5B048CC17
5B048EE08
5B056BB64
5B175FB04
(57)【要約】
本発明は、特に、複数の測定システムによって取得した個体のパラメータの測定から得られた、事前に収集したデータ・セットにおいて異常個体を統計的に検出するため、個体の異常レベルを決定する方法に関し、方法は、-データを事前処理するステップ100と、-多変量異常指数を決定するステップ200であって、前記指数は、事前処理データに基づき、各個体に関する測定のセットについて、0から1の間に含まれるように関数fによって変換する、ステップ200と、異常個体を識別するステップ300とを含むことを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
異常電子構成要素を識別する方法であって、前記方法は、電子構成要素のサンプル内の異常電子構成要素を検出するために使用するコンピュータによって実施し、特に、前記電子構成要素のパラメータ又は物理特性上で事前に収集したデータ・セットにおいて異常構成要素を統計的に検出することを可能にし、前記データ・セットは、複数の測定システムによって実行する前記電子構成要素のパラメータ又は物理特性の測定から得られる、方法において、前記方法は、
-前記データを事前処理するステップ100と、
-多変量異常指数を決定するステップ200であって、前記指数は、前記事前処理データから、各電子構成要素に関する全ての測定について、0から1の間に含まれるように関数fによって変換される、ステップ200と、
-前記異常電子構成要素を識別するステップ300と
を含む、方法。
【請求項2】
前記事前処理ステップは、標準化ステップによって実行し、前記標準化ステップでは、各測定パラメータjに対して、各電子構成要素x(i、j)は、前記パラメータjの値セットの経験平均μjによって中心化し、経験標準偏差σjによって除算する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記事前処理ステップ100は、ロバスト統計指標を実装するロバスト標準化ステップによって実行する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記決定ステップ200の後、異常指数がゼロである電子構成要素のサブセットを識別、選択するステップを実行する、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
多変量異常指数を決定する前記ステップ200の間、生多変量異常指数を決定するため、各電子構成要素iについて、各変数pに対する平均からの絶対値の偏差を合計し、各前記差は、基準値kを超えるものである、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
以下の変換:
【数1】
を前記生多変量異常指数に適用し、Φは、逆ガウスの法則の分布関数である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
多変量異常指数を決定する前記ステップ200は、「基準サブセット」と呼ばれるサブセットを形成する電子構成要素の異常指数を決定するサブステップと、新たな電子構成要素の多変量異常指数を決定するサブステップとを含み、異常電子構成要素を識別する前記ステップ300は、後に、前記基準サブセットの電子構成要素の異常指数に関して、前記新たな電子構成要素に適用し、次に、前記新たな電子構成要素が異常ではないとみなされた場合、前記新たな電子構成要素を前記基準サブセットに統合し、前記新たな電子構成要素が異常であるとみなされた場合、前記新たな電子構成要素を排除する、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
異常電子構成要素を識別する前記ステップ300は、
-決定された前記電子構成要素の異常指数z
iを昇順で選別するサブステップと、
-2つの連続する異常指数z
iの間の偏差を測定するサブステップと、
-統計的に同様の異常指数を有する電子構成要素の群を決定するサブステップと、
-許容可能な異常電子構成要素に対する既定最大率に基づき、前記異常電子構成要素を識別するサブステップと
を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記異常電子構成要素を識別する前記ステップ300の間、前記電子構成要素が最高異常指数を有する前記電子構成要素の群が、前記既定最大率の関数として所定の許容可能な異常電子構成要素の最大閾値よりも低い電子構成要素数を含むかどうかを決定し、前記ケースに当てはまる場合、第1の群と次の群(複数可)とを含む群のセットを連続して降順に決定することに進み、前記セットの群の電子構成要素の和が、前記予め決定した閾値よりも低いようにする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
プロセッサであって、前記プロセッサは、
-複数の測定システムによって実行される、電子構成要素のパラメータの測定から得た、前記電子構成要素の特性に関して事前に収集したデータを事前処理し、
-多変量異常指数を決定し、前記指数は、前記事前処理データから、各電子構成要素に関する全ての測定について、0から1の間に含まれるように関数fによって変換され、
-電子構成要素のサンプル内で異常電子構成要素を識別する
ように構成される、プロセッサ。
【請求項11】
プログラム・コード命令を備えるコンピュータ・プログラム製品であって、前記コンピュータ・プログラム製品は、前記プログラム・コード命令を1つ又は複数のプロセッサによって実行する際、プロセッサ(複数可)が請求項1から9のいずれか一項に記載の方法を実施するように構成する、コンピュータ・プログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子構成要素又は製薬産業からの製品、例えばワクチンの品質管理等、品質管理の分野に関する。詳細には、本発明は、個体の異常レベルを決定する方法に関し、方法は、特に、多変量の状況、即ち、個体がいくつかの検査又は測定によって特徴付けられる状況において異常個体を統計的に検出することを可能にする。
【背景技術】
【0002】
本出願では、用語「個体」は、産業生産手段等によって小規模、中規模又は大規模のシリーズで生産されたあらゆる部品又はバッチを指す。
【0003】
特に、異常個体は、全ての検査に首尾よく合格しているが、統計的に異常な個体であるため、準拠していない可能性がある個体である。実際、電子構成要素又はワクチンでの経験では、品質管理検査に首尾よく合格している部品又はバッチでさえ、統計的異常が、潜在的な品質問題又は信頼性の問題を現す可能性があることを示している。
【0004】
有利には、本発明は、半導体産業部門に適用し得る。この産業は、「電子構成要素」と呼ばれる集積回路を生産し、集積回路は、シリコン・ウエハ・バッチ上に製造され、各ウエハは、数百個の電子構成要素を備える。
【0005】
これらの電子構成要素の動作を保証するため、構成要素が依然としてウエハの一部である間、構成要素のそれぞれに対して一連の検査が実施される。
【0006】
1つ又は2つの規格限界(複数可)がこれらの検査のそれぞれに付随する。
【0007】
少なくとも1つの検査に対する反応がこの検査の規格に準拠しない電子構成要素、即ち、反応が前記規格限界の範囲外にある電子構成要素は、欠陥があるとみなされ、ウエハから電子構成要素を分離する際に排除される。
【0008】
この従来の品質管理は、例えば自動車産業を対象とする構成要素内で、顧客によって知覚される品質問題を最小化するため、異常を検出する統計的方法により完全にすることができる。この場合、重要な事は、(全ての検査に合格している)良好な部品を排除することである。というのは、これらの良好な部品が、統計的には異常であり、顧客にとっては不良であると判明することがあるためである。このゼロ欠陥目標は、いわゆる「一変量」又は「二変量」方法を使用する。
【0009】
例えば、パット(PAT、Part Average Testing)と呼ばれる一変量方法は、ある電子構成要素の検査の反応を、他の電子構成要素に対するこの検査の反応の平均分布と比較し、反応が他の電子構成要素の反応分布から遠すぎる電子構成要素を、異常電子構成要素とみなすものである。
【0010】
概して、この方法は、多くのフォールス・アラームをもたらすことが多いため、実際には満足のいくものではない。というのは、個体のp個のパラメータのうち、たった1つのパラメータで1つの値が平均から遠くk標準偏差を超える場合、異常とみなされるには十分であるためである。パラメータの数pがより増大するほど、少なくとも1つの検査で個体が異常である可能性がより高まる。
【0011】
したがって、非常に多数の検査に対し、こうした一変量方法(PAT等)又は二変量方法(1つの検査と別の検査との間の単回帰、及びこれらの回帰に基づく異常個体の検出)を使用すると、製造業者は、多くの適切な構成要素を含めて多すぎる構成要素を排除し、これにより、生産の数パーセントから適切な構成要素が奪われる一方で、依然として、全ての欠陥の可能性のある構成要素を排除することを製造業者に保証していない。
【0012】
実際、こうした方法は、検査の各測定に対して独立して適用され、したがって、フォールス・アラーム率は、測定数と共に激増する。このフォールス・アラーム数(したがって、検出に関連する費用)を制限するため、統計限界は、かなり寛大に選択されることが多く、十分ではない危険性を伴う。
【0013】
したがって、これらの方法は、顧客が利用する状況において、部品の使用中に明らかになるおそれがある潜在的な欠陥を伴う電子構成要素が、信頼でき、顧客に引き渡し可能であるとみなされる危険性を呈する。
【0014】
一方で、この欠点は不都合である。というのは、潜在的な欠陥が特定された場合、製造業者は、新たな取替え部品を顧客に送らざるを得なく、顧客によって知覚される品質レベルを低下させるためであるが、更には、こうした構成要素の一部は、低単価であるにもかかわらず、より複雑なシステム、例えば、エンジン制御器又はABS制動システムの動作における重大な構成要素であるためである。この場合、構成要素の故障は、深刻な事故をもたらすことがあり、この結果、構成要素の単純な金銭上の価値をはるかに越えることになる。
【0015】
したがって、これらの方法は、いくつかの功績を既に特徴としているが、ゼロ欠陥を達成するには十分ではない。
【0016】
したがって、このニーズを満たすため、いくつかの解決策が、多変量統計的方法、特に、主成分分析方法又はマハラノビス距離及びホテリングのT2の実施により展開されている。
【0017】
とはいえ、これらの解決策は、産業製造状況での期待を部分的にしか満たさない。実際、主成分分析方法は、異常個体を検出するように特別に設計されていないため、そのような任務の達成が困難であることが多い。
【0018】
より詳細には、マハラノビス距離及びホテリングのT2は、個体の類似性に関する多変量距離であり、したがって、異常個体の識別に使用し得る。とはいえ、これらの方法は、所望の品質に対して高い基準が仮定されると、異常が唯一のサブセットによるものであって、測定の大部分によるものではない場合、問題となる。実際には、このことは、産業製造状況での現実である。
【0019】
「局所外れ値因子法(local outlier factor)」を意味する英語頭文字「LOF」による、当業者に公知の方法等、他の多変量方法がある。とはいえ、この方法は、いくつかの大きな欠点:異常個体を識別するための明確な統計規則がないこと、アルゴリズム(近傍数)に固有のパラメータの最適化を必要とすること、データ量が増大するにつれてより一層多量の計算能力を必要とすること、を有し、無視できない制約条件となる。特に、これらの欠点を考えると、生産ライン上でのリアルタイムでの使用は不可能である。
【0020】
次に、いくつかの方法は、検出すべき欠陥に対する知識に基づく。これらは、「教師あり」方法と呼ばれ、製造業者に、それぞれの新たな製品及び/又は検査範囲改善工程における検査の追加に対して方法を再較正することを強いる。
【0021】
多くの方法は、異常個体を実際に識別せずに、各個体に異常指標を割り当てるという内容である。具体的には、これらの方法は、最も異常な個体から最も異常ではない個体まで個体を選別又は分類するものであるが、最初の個体が実際に異常であることを保証できない。
【0022】
最後に、概して、これらの方法の最も大きな制限は、これらの方法が、一般に、測定数が個体数を超える場合、又は変数の間に相関関係がある場合、もはや適用可能ではないことにある。このことは、産業又は製薬の状況では一般的である。実際、分析データは、各電子構成要素又は個体に対して、一定数の検査、典型的には数百又は更には数千の検査によって実行される多数の測定から得られることが多い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
本発明の一目的は、上述の欠点を克服することである。
【課題を解決するための手段】
【0024】
この目的で、本発明は、個体の異常レベルを決定する方法に関し、方法は、特に、事前に収集したデータ・セット内で異常個体を統計的に検出することを可能にし、データ・セットは、複数の測定システムによって実行される個体パラメータの測定から得られる。好ましくは、個体は、電子構成要素である。
【0025】
方法は、
-データを事前処理するステップと、
-多変量異常指数を決定するステップであって、前記指数は、事前処理データから、各個体に関する全ての測定について、0から1の間に含まれるように関数fによって変換する、ステップと、
-異常個体を識別するステップと
を含む。
【0026】
特定の実施形態では、本発明は、個別に又は技術的に有効な組合せのいずれかで実施される以下の特徴も組み込む。
【0027】
本発明のいくつかの実装形態では、事前処理ステップは、標準化ステップによって実行され、標準化ステップでは、各測定パラメータjに対して、各個体x(i、j)は、パラメータjの値セットの経験平均μjによって中心化し、経験標準偏差σjによって除算する。
【0028】
本発明のいくつかの実装形態では、事前処理ステップは、ロバスト統計指標を実装するロバスト標準化ステップによって実行される。
【0029】
本発明のいくつかの実装形態では、決定ステップの後、異常指数がゼロである個体のサブセットを識別、選択するステップを実行する。
【0030】
本発明のいくつかの実装形態では、多変量異常指数を決定するステップの間、各電子構成要素iについて、各変数pに対する平均からの絶対値の偏差を合計し、各差は、基準値kを超えるものである。
【0031】
本発明のいくつかの実装形態では、以下の変換:
【0032】
【0033】
を生多変量異常指数に適用し、Φは、逆ガウスの法則の分布関数である。
【0034】
本発明のいくつかの実装形態では、多変量異常指数を決定するステップは、「基準サブセット」と呼ばれるサブセットを形成する個体の異常指数を決定するサブステップと、新たな個体の多変量異常指数を決定するサブステップとを含み、異常個体を識別するステップは、後に、基準サブセットの個体の異常指数に関して、新たな個体に適用し、次に、新たな個体が異常ではないとみなされた場合、前記新たな固体を基準サブセットに統合し、新たな個体が異常であるとみなされた場合、新たな個体を排除する。
【0035】
本発明のいくつかの実装形態では、異常個体を識別するステップは、
-決定された個体の異常指数ziを昇順で選別するサブステップと、
-2つの連続する異常指数ziの間の偏差を測定するサブステップと、
-統計的に同様の異常指数を有する個体群を決定するサブステップと、
-異常個体、より詳細には個体群を、許容可能な異常個体に対する規定最大率に基づき識別するサブステップと
を含む。
【0036】
本発明のいくつかの実装形態では、異常個体を識別するステップの間、個体が最高異常指数を有する個体群が、既定最大率の関数として所定の許容可能な異常個体の最大閾値よりも低い個体数を含むかどうかが決定される。このケースに当てはまる場合、第1の群と次の群(複数可)とを含む群のセットを連続して降順に決定することに進み、セット群の個体の和が、所定の閾値よりも低いようにする。
【0037】
別の態様によれば、本発明は、ワクチン・バッチのサンプル内で異常ワクチン・バッチを検出するための、上記で説明した方法の使用にも関する。このことは、個体がワクチン・バッチであることを意味する。
【0038】
別の態様によれば、本発明は、電子構成要素のサンプル内で異常電子構成要素を検出するための、上記で説明した方法の使用にも関する。このことは、個体が電子構成要素であることを意味する。
【0039】
別の態様によれば、本発明は、生産機器又は測定機器上に設置したセンサから発信されるデータから得た異常測定を検出するための、上記で説明した方法の使用にも関する。
【0040】
したがって、本発明の状況において、用語「個体」は、測定を表すデータにも拡張する。
【0041】
これらの特徴は、有利には、本発明を予測的な整備の用途に統合することを可能し、測定値の異常は、データが発信される生産機器又は測定機器の潜在的な欠陥の指標とし得る。
【0042】
本発明は、プロセッサにも関し、プロセッサは、
-複数の測定システムによって実行される、電子構成要素のパラメータの測定から得た、電子構成要素の特性に関して事前に収集したデータを事前処理し、
-多変量異常指数を決定し、前記指数は、事前処理データから、各電子構成要素に関する全ての測定について、0から1の間に含まれるように関数fによって変換され、
-電子構成要素のサンプル内で異常電子構成要素を識別する
ように構成される。
【0043】
したがって、このプロセッサは、電子構成要素のサンプル内で異常電子構成要素を識別することを可能にする。
【0044】
本発明は、プログラム・コード命令を備えるコンピュータ・プログラム製品にも関し、コンピュータ・プログラム製品は、プログラム・コード命令を1つ又は複数のプロセッサによって実行する際、プロセッサ(複数可)が既に説明した方法を実施するように構成する。
【0045】
有利には、このコンピュータ・プログラム製品は、プロセッサが電子構成要素のサンプル内で異常電子構成要素を識別することを可能にする。
【0046】
本発明は、非限定的な例としてもたらし、図面を参照する以下の説明を読めば、より良好に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【
図1】本発明による方法のステップを表すフローチャートである。
【
図2】異常指数に従って昇順で分類された個体のサンプルを表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0048】
これらの図面において、互いの図面に対して同じ参照番号は、同じ又は同様の要素を指す。更に、明確にするため、図面は、別段に記載されていない限り一定の縮尺ではない。
【0049】
本発明は、コンピュータ・ソフトウェアによって実施され、コンピュータ・ソフトウェアは、プロセッサ等のコンピュータの計算器によって実行される。
【0050】
特に、本発明による、異常個体を統計的に検出することを可能にする個体の異常レベルを決定する方法は、データ・セットに適用され、データ・セットは、事前に収集され、複数の個体に対して測定システムによって実行された1つ又は複数の測定を特徴とする。
【0051】
本出願において、測定システムは、電気テスタ、生物学的測定システム、物理的測定センサ、又は測定の実行に適合するより一般的なあらゆるツールとし得る。
【0052】
例えば、このデータ・セットは、データ表の形態で構成することができ、データ表の行は、n個の個体を表し、データ表の列は、個体に対して実施された測定に対応するp個の変数を表す。これらの測定値は、数値又は二値である。
【0053】
有利には、データ・セットは、本発明による方法の適切な動作を損なわずに、各個体に対して異なる数の測定を含み得る。更に、本発明による方法の動作に影響を与えることなく、測定数が個体数以上であっても、逆に、個体数が測定数以上であってもよい。
【0054】
データ・セットは、少なくとも3つの個体のサンプルから得られ、変数の数は、1から数千の間に含むことができ、唯一の制限は、本発明を実施することが意図されるコンピュータ手段の計算能力である。
【0055】
非限定的な用途の一例として、個体は、電子構成要素、ワクチン・バッチ等とし得る。好ましくは、個体は、電子構成要素である。
【0056】
更に、測定は、工業生産により生産された個体のパラメータ又は物理特性について、例えば生産終了時に、前記個体の品質管理の状況で実行し得る。
【0057】
生産終了時、電子構成要素の品質管理は、いくつかのステップを含む。まず、ウエハ検査とも呼ばれる管理動作を、微細針によって、いくつかの電子構成要素が一緒にまとまっているウエハに対して実行する。機器は、構成要素の動作をシミュレートし、動作中の構成要素の物理特性及びパラメータを測定する。前記検査は、低温、周囲温度又は高温等の様々な環境条件下で実行し得る。
【0058】
したがって、一構成要素に対して実行される検査数は、10から数千まで様々とし得る。1枚のウエハは、数百から数千の電子構成要素を備え得る。
【0059】
別の管理動作は、通常、組立て段階の後に実行され、最終検査と呼ばれる。
【0060】
物理特性及びパラメータは、電流、電圧、周波数、遅延だけでなく、加速度又は輝度とし得る。
【0061】
方法は、前記電子構成要素の管理動作のそれぞれの間、異常電子構成要素を識別することを目的とする。
【0062】
図1のフローチャートに示すように、方法は、連続的に、
-データを事前処理するステップ100と、
-多変量異常指数を決定するステップ200であって、前記指数は、各個体に関する全ての測定について、0から1の間に含まれるように関数fによって変換する、ステップ200と、
-異常個体を識別するステップ300と
を含む。
【0063】
データ事前処理は、データの単位又は測定規模とは無関係に、データを得ることを可能にする。
【0064】
以下の文において、x1、・・・、xnを規定し、nは、p個の定量変数を特徴とする観察数である。より詳細には、本発明による方法の適用例では、xiは、部品iに対して実行された測定の全てを表す。
【0065】
この事前処理ステップ100において、新たなデータyi、jを得るため、初期データxi、jの標準化を試みる。
【0066】
本発明の一実施形態では、事前処理ステップ100は、以下で説明するように特徴付けることができる非ロバスト標準化ステップによって実行し得る。
【0067】
各測定パラメータjに対して、各個体xi、jをパラメータjの値の全ての経験平均μjによって中心化し、経験標準偏差σjによって除算する:
【0068】
【0069】
本発明の別の実施形態では、事前処理ステップ100は、ロバスト標準化ステップによって実行し得る。
【0070】
より詳細には、ロバスト標準化ステップは、位置パラメータとして、中央値又は切捨て平均等のロバスト統計指標を実装し得る。即ち、上記で公式化した式の経験平均μj、及び尺度パラメータのための四分位数間領域又は絶対中央偏差の代わりに、即ち、上記で公式化した式の経験標準偏差σjの代わりに、ロバスト統計指標を実装し得る。
【0071】
具体的には、非ロバスト標準化ステップは、正規分布に追従しないデータの存在下、又はこれらのデータの値がかなり極端である場合、ロバスト標準化ステップよりも好ましい。実際、平均等の非ロバスト推定値は、中央値とは異なり、極値の存在に反応する。
【0072】
その後、多変量異常指数を決定するステップ200を各個体の全ての測定に対して実施する。
【0073】
より詳細には、このステップにおいて、事前処理データyi、jから、各部品又は個体iに対して生多変量異常指数を決定しようとする。
【0074】
この目的で、各個体iに対して、基準値kを超えるあらゆる偏差について、各変数pに対する平均からの絶対値の偏差を加算する。但し、
【0075】
【0076】
【0077】
【0078】
内の値を有する生異常指数は、[0、1]の間で生異常指数を推定する変換fを受ける。値が0から1の間に含まれる異常指数ziが得られ、これにより、異常指数ziを互いに対して比較可能にする。
zi=f(指数i)(式4)
【0079】
以前の変換の代替として、生異常指数に以下の変換:
【0080】
【0081】
を適用することが可能である。
【0082】
但し、Φは、1に等しい平均及び分散を有する逆ガウスの法則の分布関数である。
【0083】
有利には、多変量異常指数を決定するステップ200は、低い一変量異常でさえ、一変量異常を集約する指数の生成を可能にする。
【0084】
より詳細には、異常指数は、可能性のある異常個体として、一方で、多数のパラメータにわたる弱い異常を一変量式に識別し、他方で、1つ又はいくつかのパラメータにわたる強い異常を識別することを可能にする。
【0085】
異常指数がゼロである個体は、異常を一切有せず、個体が1に近い異常指数を有するほど、個体は、異常である可能性が高いことに留意されたい。
【0086】
本明細書では、異常指数が非ゼロである個体は、非異常又は異常のいずれかとし得ることを理解されたい。
【0087】
したがって、本発明は、有利には、個体の異常指数がゼロであり得る程度まで、異常のない個体を検出することを可能にする。全ての個体がゼロの異常指数を有する場合、分析される個体サンプル内に異常個体はない。
【0088】
したがって、決定ステップ200の後、異常指数がゼロである個体を識別、選択することによって、確かに異常ではない個体のサブセットを識別、選択することが可能である。
【0089】
このサブセットを本明細書では「基準サブセット」と呼ぶ。個体が異常を有さないという意味で最良である、この「最良」個体の選択は、全ての異常個体を排除することにある手順とちょうど対称をなすものではない。というのは、後者の手順は、異常レベルを統計的に評価するものである一方で、基準サブセットの選択は、統計的に証明されていないが、わずかな異常を有する個体を排除することによる、更に踏み込んだものであるためである。
【0090】
基準サブセットの選択は、特に、異常のない部品を分離し、これらの部品を使用可能にするので、特に有利である。このことは、ある種の産業、例えば、異常を一切有さない部品のみが宇宙に送られる宇宙産業又は大型宇宙プログラムでは、必須である。
【0091】
要約すると、本発明による方法は、異常個体及び異常のない個体の識別を可能にする。
【0092】
更に、多変量異常指数は、ほとんどの多変量検出方法とは異なり、観察数よりも多くの変数がある場合でさえ、計算可能である。
【0093】
この特異性は、特に、観察数と比較して多すぎる変数がノイズを生成し得る程度まで、有利である。このノイズは、異常個体の識別を妨げる又は複雑にすることがある。
【0094】
最後に、これらの特徴は、有利には、消失データを含むデータ・セットに方法を適用することを可能にする。
【0095】
異常指数の0から1の間の標準化は、前記指数を決定するステップ200の終了時、特に生産後の品質管理の間に部品のトレーサビリティが保証されない場合、大きな産業上の利点を与える。
【0096】
実際、本発明による方法のおかげで、本発明の特定の実施形態では、多変量異常指数を決定するステップ200は、サブセット、いわゆる「基準サブセット」を形成する個体に対して異常指数を決定するサブステップと、新たな個体の異常指数を決定するサブステップとを含む。
【0097】
その後、異常個体を識別するステップ300を、基準サブセットの個体の異常指数に関して新たな個体に適用する。
【0098】
この場合、前記新たな個体は、異常とみなされた場合、直接排除される。
【0099】
代替的に、多変量異常指数を決定するステップ200は、基準サブセットを形成する個体の異常指数を決定するサブステップと、次に、この個体の異常指数に基づき、前記基準サブセットの異常指数の限度を決定するサブステップとを含み得る。例えば、これらの限度は、種類μ±kσの基準サブセットの標準偏差に従って定義され、k=3であり、例えば、μ及びσは、基準サブセットの値に従って決定される。
【0100】
その後、前に説明したものと同様に、新たな個体の異常指数を決定するサブステップを実行する。
【0101】
したがって、「先入れ先出し(first in first out)」を意味する頭文字「FIFO」によって当業者に公知である「先入れ、先出し」型の回転を達成することが可能である。
【0102】
したがって、産業生産工程で、あらゆる異常部品を連続して一体式に排除することが可能である。
【0103】
こうした本発明の動的実装モードは、生産中、生産される個体のトレーサビリティが物理的に保証されないケース、及び異常個体を検出する従来の方法、いわゆる「後処理」方法により検出された異常個体を除くことができないケースにおいて、特に有利である。
【0104】
この後処理方法は、個体サンプルからの異常個体を統計的に識別し、次に、異常個体を物理的に識別し、異常個体を排除することである。したがって、この後処理方法は、それぞれ生産された個体のトレーサビリティ及び個体サンプルの処理を必要とする。本発明は、この制約条件を阻止し、その場で個体を排除可能にする。
【0105】
異常指数の標準化のおかげで、観察した新たな個体の異常指数は、新たな個体が新たなバッチからもたらされる場合でさえ、他の個体の異常指数と比較可能であることを留意されたい。このことは、必ずしも公知の統計検出方法には当てはまるものではない。
【0106】
異常個体を識別するステップ300は、好ましくは、以下:
-
図2のグラフに示すように、決定された個体の異常指数z
iを昇順で選別するサブステップと、即ち:
z
(1)≦・・・≦z
(n)(式6)
-2つの連続する異常指数z
iの間の偏差を測定するサブステップと:
w
i=Z
(i)-Z
(i-1)(式7)
-全ての個体と比較して異常である個体を識別するサブステップと
を実施することから構成し得、上記差w
iは、以下の分布則:
F(w)=1-(1-w)
n(式8)に追従し、平均
【0107】
【0108】
を有する。
【0109】
この最後のサブステップは、統計的に同様の異常指数を有する個体群を識別することによって実行される。この識別は、2つの連続する異常指数の間の偏差に従って実行される。
【0110】
図2のグラフでは、個体群は、水平破線によって分離されている。
【0111】
より詳細には、αパーセンタイル順位を超える2つの連続する異常指数の間の偏差が識別される:
【0112】
【0113】
図2に表される実施形態では、選択されるパーセンタイル値は、α=90%である。
【0114】
これらの偏差は、理論上、偏差の差が式7で既に説明した分布則に追従し、方法が個体群を識別するための理論閾値に基づき得るため、計算される。
【0115】
したがって、個体間の比較は、有利には、個体が統計的に異常であるが他の個体ほど著しく多くない場合、異常と識別しないように実行される。
【0116】
この識別動作のおかげで、実質的に同様又は同じレベルの異常を有する個体群が決定される。このようにすると、群を形成する個体の全てが、異常又は非異常とみなされる。したがって、異常個体を検出する信頼性が、方法が非常に近い異常指数を有する2つの個体が共に異常又は非異常と識別されることを保証する程度まで、かなり増大する。また、したがって、異常個体の検出の先を行くことが可能である。というのは、同種の異常指数を有する個体サブセットの生成が可能であるためである。
【0117】
有利には、したがって、本発明の方法の手法は、異常個体群を識別することである。
【0118】
実質的に同様又は同じレベルの異常を有する個体群が決定され、決定された個体の異常指数z
iが昇順で分類され、群は、実際に、
図2に示すようにそれぞれの個体の異常レベルに従って昇順で分類される。
【0119】
方法の次のステップは、許容可能な異常個体の所定最大率に従った異常個体群の識別である。
【0120】
図2に表される実施形態では、許容可能な異常個体の最大率は、10%である。57の個体を表すグラフでは、許容可能な異常個体の最大閾値は、5である。
【0121】
より詳細には、このステップの間、「第1の群」と呼ばれる、個体が最高異常指数を有する個体群が、許容可能な異常個体の所定の最大閾値以下の個体数を含むかどうかが決定される。
【0122】
このケースに当てはまる場合、この群の個体の全てが異常と識別され、それ以外の場合、この群の個体の全ては、非異常とみなされる。
【0123】
第1の群の個体が異常と識別されるケースでは、個体(複数可)がすぐ次に低い異常指数を有する群の識別に進み、次の群のそれぞれは、連続的に、前記群の個体の和、又は前記群の全ての和が最大閾値以下である限り、前記識別された群(複数可)の個体は、異常と識別される。
【0124】
言い換えれば、第1の群の個体が異常と識別された場合、個体が第1の群の異常指数のすぐ次に低い異常指数を有する群の個体も異常であるかどうかを知ろうとする。この群を「第2の群」と呼ぶ。
【0125】
図2に表される例では、第1の群は、固有の個体を含み、したがって、異常個体の探索は、次の群、即ち、第2の群に拡張される。
【0126】
その後、第1の群及び第2の群の個体数が加算される。
【0127】
第1の群及び第2の群の個体の和が最大閾値以下である場合、第2の群の個体の全ても、異常と識別される。それ以外の場合、第2の群の個体の全ては、非異常とみなされる。
【0128】
図2で表される例では、第2の群は3つの個体を含み、第1の群及び第2の群の個体の和は4に等しく、異常個体の探索は、次の群、即ち第3の群に拡張される。第1の群及び第2の群の個体は、異常とみなされる。
【0129】
これらの動作は、個体が異常ではない群が識別されるまで、即ち、調査した群の個体の和が最大閾値を超えるまで、反復される。したがって、この群から、全ての次の群、即ち、異常指数が調査した群の異常指数よりも低い個体を有する群は、非異常個体から構成される。
【0130】
図2で表される例では、第3の群が固有の個体を含むため、第1の群から第3の群までの個体の和は、5に等しい。第1の群から第3の群までの個体は、異常とみなされ、他の群の個体は、非異常とみなされる。
【0131】
有利には、これらの動作のおかげで、フォールス・アラーム率、即ち、異常個体の識別エラー率は、実質的に低減し、このことにより、満たすべき厳密な異常個体率を課す必要性をなくす。
【0132】
検出後、異常個体は、物理的トレーサビリティのおかげで最終的に識別されるか、又は動的実装モードのおかげで直接排除し得る。
【0133】
代替的に、本発明による方法の別の実装モードでは、異常個体を識別するステップ300は、異常個体を検出するため、異常指数に統計方法を適用することとし得る。
【0134】
例えば、これらの限度は、種類μ±kσの限度を計算することが可能であり、k=3であり、例えば、μ及びσは、サンプルの値に従って決定される。次に、個体の生産工程が生産個体のトレーサビリティを可能にする場合、これらの異常個体は、生産から排除される。
【0135】
この場合、本発明は、個体につき唯一の異常指数がある範囲内で、しかし、従来技術の統計的な検出方法と比較してフォールス・アラームを排除するか又はかなり制限することによって、一変量のケースに戻すことが可能である。
【0136】
次に、プロセッサの一例を説明する。前記プロセッサは、
-複数の測定システムによって実行される、電子構成要素のパラメータの測定から得た、電子構成要素の特性に関して事前に収集したデータを事前処理し、
-多変量異常指数を決定し、前記指数は、事前処理データから、各電子構成要素に関する全ての測定について、0から1の間に含まれるように関数fによって変換し、
-電子構成要素のサンプル内の異常電子構成要素を識別する
ように構成される。
【0137】
プロセッサは、いくつかの計算コアを含み、数ギガヘルツのクロック周波数を有し得る。
【0138】
プロセッサは、コンピュータに統合し、互換性があるマザーボードに接続し得る。
【0139】
また、いくつかのプロセッサは、様々なステップを並行して実行するのに必要な計算の全てを処理するように構成し得る。このことは、計算能力の増大を可能にし、したがって、様々なステップの完了を加速させ、より多くのデータを処理可能であり、プロセッサの過熱を制限する。
【0140】
次に、コンピュータ・プログラム製品の一例を説明する。前記コンピュータ・プログラム製品は、プログラム・コード命令を備え、コンピュータ・プログラム製品は、プログラム・コード命令が1つ又は複数のプロセッサによって実行される際、プロセッサ(複数可)があらゆるモードで方法のいずれかを実施するように構成する。前記プログラム・コード命令は、例えば、Python又はC++言語でコード化し得る。
【0141】
より一般的には、上記で考慮した本発明の実装形態及び実施形態は、非限定的な例として説明しており、したがって、他の変形形態を考慮し得ることを留意されたい。
【国際調査報告】