IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ライテン・インコーポレイテッドの特許一覧

<>
  • 特表-強化炭素含有ガラス材料 図1
  • 特表-強化炭素含有ガラス材料 図2
  • 特表-強化炭素含有ガラス材料 図3A
  • 特表-強化炭素含有ガラス材料 図3B
  • 特表-強化炭素含有ガラス材料 図3C
  • 特表-強化炭素含有ガラス材料 図4
  • 特表-強化炭素含有ガラス材料 図5
  • 特表-強化炭素含有ガラス材料 図6
  • 特表-強化炭素含有ガラス材料 図7
  • 特表-強化炭素含有ガラス材料 図8A
  • 特表-強化炭素含有ガラス材料 図8B
  • 特表-強化炭素含有ガラス材料 図8C
  • 特表-強化炭素含有ガラス材料 図9A
  • 特表-強化炭素含有ガラス材料 図9B
  • 特表-強化炭素含有ガラス材料 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-05
(54)【発明の名称】強化炭素含有ガラス材料
(51)【国際特許分類】
   C03C 23/00 20060101AFI20230829BHJP
【FI】
C03C23/00 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023507730
(86)(22)【出願日】2021-07-23
(85)【翻訳文提出日】2023-03-23
(86)【国際出願番号】 US2021042994
(87)【国際公開番号】W WO2022031463
(87)【国際公開日】2022-02-10
(31)【優先権主張番号】63/061,066
(32)【優先日】2020-08-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/138,690
(32)【優先日】2020-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/138,715
(32)【優先日】2020-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/138,735
(32)【優先日】2020-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519124844
【氏名又は名称】ライテン・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】LYTEN, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ストウェル,マイケル・ダブリュ
(72)【発明者】
【氏名】ラニング,ブルース
【テーマコード(参考)】
4G059
【Fターム(参考)】
4G059AA01
4G059AA04
4G059AC16
(57)【要約】
いくつかの実施態様では、炭素含有ガラス材料は、表面/空気接触面と、表面/空気接触面からある方向に沿って炭素含有ガラス材料中の深さまで延在する相間領域とを含む。表面/空気接触面は周囲空気に曝され得、相間領域は、相間領域内に注入された複数の炭素含有ラジカルの再結合及び/または自己核生成に応答して形成された複数の数層グラフェン(FLG)ナノプレートレットを含み得る。FLGナノプレートレットは、炭素含有ガラス材のマイクロクラック及び/またはマイクロボイドの形成または伝搬を少なくとも部分的に抑制するように構成された非周期的配向を有する。ガラス材料は、また、炭素含有ガラス材料の相間領域と表面/空気接触面との間に配置された圧縮応力層も含み得、圧縮応力層は、複数のイオン化不活性ガス粒子によって炭素含有ガラス材料のイオン衝撃によって誘発される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素含有ガラス材料であって、
周囲空気に曝される表面/空気接触面と、
前記表面/空気接触面からある方向に沿って前記炭素含有ガラス材料中の深さまで延在する相間領域と、を含み、
前記相間領域は、前記相間領域内に注入された複数の炭素含有ラジカルの再結合及び/または自己核生成に応答して形成された複数の数層グラフェン(FLG)ナノプレートレットを含み、
前記複数のFLGナノプレートレットは、前記炭素含有ガラス材のマイクロクラック及び/またはマイクロボイドの形成または伝搬を少なくとも部分的に抑制するように構成された非周期的配向を有する、前記炭素含有ガラス材料。
【請求項2】
前記複数のFLGナノプレートレットの密度は、前記表面/空気接触面から前記相間領域の前記深さに向かって延在する前記方向に沿って徐々に減少する、請求項1に記載の炭素含有ガラス材料。
【請求項3】
前記炭素含有ガラス材料の前記相間領域と前記表面/空気接触面との間に配置された圧縮応力層をさらに含み、前記圧縮応力層は、複数のイオン化不活性ガス粒子による前記炭素含有ガラス材料のイオン衝撃によって誘発される、請求項1に記載の炭素含有ガラス材料。
【請求項4】
前記イオン化不活性ガス粒子は、前記相間領域に形成された前記FLGナノプレートレット間に複数のマイクロクラックまたはマイクロボイドを形成するように構成される、請求項3に記載の炭素含有ガラス材料。
【請求項5】
前記マイクロクラックまたは前記マイクロボイドは、約5ナノメートル(nm)~10nmのサイズを有する、請求項4に記載の炭素含有ガラス材料。
【請求項6】
前記マイクロクラックまたは前記マイクロボイドの少なくとも一部は、前記炭素含有ガラス材料の1つ以上のクラック先端で受ける破壊エネルギーを消散するように構成される、請求項4に記載の炭素含有ガラス材料。
【請求項7】
前記相間領域に配置された過剰炭素の単分子層をさらに含む、請求項1に記載の炭素含有ガラス材料。
【請求項8】
前記相間領域内に形成された前記FLGナノプレートレット内の隣接するグラフェン層の間にインターカレートされた添加剤をさらに含む、請求項1に記載の炭素含有ガラス材料。
【請求項9】
前記添加剤は、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、または他のアルカリ金属のうちの任意の1つ以上を含む、請求項8に記載の炭素含有ガラス材料。
【請求項10】
前記添加剤は、銅、鉄、または他の遷移金属のうちの任意の1つ以上を含む、請求項8に記載の炭素含有ガラス材料。
【請求項11】
前記添加剤は、前記添加剤が前記周囲空気に曝されると、前記炭素含有ガラス材料に形成されたクラックを自己修復するように構成される、請求項8に記載の炭素含有ガラス材料。
【請求項12】
前記添加剤は、前記周囲空気中に存在する1つ以上の反応物への曝露に基づいて酸化添加剤を形成するように構成される、請求項8に記載の炭素含有ガラス材料。
【請求項13】
前記酸化添加剤は、前記炭素含有ガラス材料の1つ以上のクラック及び/または表面欠陥に広がるように構成される、請求項12に記載の炭素含有ガラス材料。
【請求項14】
前記相間領域の前記深さは約1ミクロンである、請求項1に記載の炭素含有ガラス材料。
【請求項15】
前記複数のFLGナノプレートレットは、前記相間領域内に150メガパスカル(MPa)よりも大きい圧縮残留応力を誘発するように構成される、請求項1に記載の炭素含有ガラス材料。
【請求項16】
前記複数のFLGナノプレートレットは、前記炭素含有ガラス材料の約2%の合計重量を有する、請求項1に記載の炭素含有ガラス材料。
【請求項17】
前記表面/空気接触面に近接する前記相間領域の上部内に形成された前記FLGナノプレートレットは約20ナノメートル(nm)のサイズを有し、前記表面/空気接触面の遠位にある前記相間領域の下部内に形成された前記FLGナノプレートレットは約2nmのサイズを有する、請求項1に記載の炭素含有ガラス材料。
【請求項18】
前記相間領域に形成された前記FLGナノプレートレットのそれぞれは、互いに垂直に積み重ねられた3~5のグラフェン層を含む、請求項1に記載の炭素含有ガラス材料。
【請求項19】
前記炭素含有ガラス材料は、可視周波数スペクトルにわたって少なくとも96%の光透過率を有する、請求項1に記載の炭素含有ガラス材料。
【請求項20】
前記炭素含有ガラス材料の前記相間領域は第1の屈折率を有し、前記炭素含有ガラス材料の他の部分は前記第1の屈折率とは異なる第2の屈折率を有する、請求項1に記載の炭素含有ガラス材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、ガラス材料に関し、具体的には、ガラス材料の1つ以上の部分全体にわたって分散された数層グラフェン(FLG)ナノプレートレットを伴うガラス材料を製造、強化、及び/または補強することに関する。
【背景技術】
【0002】
ガラスは、例えば、窓、デジタルスクリーンディスプレイ、光学機器、及び医薬品保管容器を含む、様々な分野で使用できる非結晶性固体材料である。ガラスは、主要な構成材料として、シリカとも呼ばれる二酸化ケイ素(SiO)を含み得る。概して、混合物が軟化した半固体状態に達するまで、他の固体原料との乾燥粒状二酸化ケイ素の混合物を加熱し、次に、混合物が結晶構造を形成するのを防止するために混合物を急速に冷却することによって、ガラスが形成され得る。ガラスは他の固体材料と比較して比較的壊れやすく、他の固体材料よりもスクラッチ、クラック、及び/または粉砕が生じやすくなり得る。したがって、従来のガラス及びガラス材料よりも頑丈で、壊れにくく、クラックの影響を受けにくいガラス及びガラス材料が必要とされている。
【発明の概要】
【0003】
本開示のシステム、方法、及びデバイスは、それぞれ、いくつかの革新的な態様を有し、それらのうちの単一のものが単独で本明細書に開示される望ましい特性の役割を果たしていない。
【0004】
本開示に説明される主題の1つの革新的な態様は、製造方法として実施できる。様々な実施態様では、本方法を使用して、炭素含有ガラス材料を製造、強化、及び/または補強し得る。いくつかの実施態様では、本方法は、炭化水素ガス及びシランを反応器に流入させることを含み得る。本方法は、リチウム、ニッケル、マンガン、銅、トリメチルアルミニウム(TMA)、トリメチルガリウム(TMG)、または硫黄のうちの任意の1つ以上を含む添加剤を、反応器に提供することを含み得る。本方法は、マイクロ波エネルギーによる炭化水素ガス及びシランの励起に基づいて非熱平衡プラズマを生成することを含み得、非熱平衡プラズマは複数のメチルラジカルを含む。本方法は、炭素含有ガラス材料の表面/空気接触面に、少なくともメチルラジカルによるイオン衝撃を与えることを含み得、イオン衝撃は、炭素含有ガラス材料中に相間領域を作成するように構成される。本方法は、複数のメチルラジカルの再結合または自己核生成に基づいて、様々な濃度レベルで炭素含有ガラス材料の相間領域内に複数の数層グラフェン(FLG)ナノプレートレットを形成することを含み得る。複数のFLGナノプレートレットは、炭素含有ガラス材料におけるクラック及び/または表面欠陥の形成または伝播を少なくとも部分的に抑制できる非周期的配向で相間領域全体にわたって分散され得る。本方法は、相間領域に形成されたFLGナノプレートレットの少なくとも一部の1つ以上の表面に添加剤をドープすることを含み得る。本方法は、炭素含有ガラス材料の相間領域内に形成されたFLGナノプレートレットの少なくとも一部の内部の隣接するグラフェン層の間に添加剤をインターカレートすることを含み得る。
【0005】
様々な実施態様では、炭素含有ガラス材料は、ケイ酸塩ガラス、ソーダ石灰ガラス、アルカリアルミノケイ酸ガラス、またはホウケイ酸ガラスのうちの任意の1つ以上を含み得る。いくつかの実施態様では、アルカリアルミノケイ酸ガラスは、約57%~60%のSiO、約10%~25%のAl、及び約10%のアルカリ土類金属から成る。シランは、シラン含有液体前駆体またはシランガスであり得る。一実施態様では、相間領域に形成されたFLGナノプレートレットは、炭素含有ガラス材料の2%未満の合計重量を有する。場合によっては、添加剤は、アルカリ金属(リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、フッ素、または臭素等)、遷移金属(銅または鉄等)、またはそれらの任意の組み合わせを含み得る。他の例では、添加剤は、リチウム、ニッケル、マンガン、銅、トリメチルアルミニウム(TMA)、トリメチルガリウム(TMG)、硫黄、またはそれらの任意の組み合わせを含み得る。
【0006】
相間領域は、炭素含有ガラス材料の表面/空気接触面から、炭素含有ガラス材料中の約1ミクロンの深さまで延在し得る。いくつかの実施態様では、表面/空気接触面に近接する相間領域の上部は、FLGナノプレートレットの濃度が比較的高く、表面/空気接触面の遠位にある相間領域の下部は、FLGナノプレートレットの濃度が比較的低い。いくつかの態様では、相間領域の上部内のFLGナノプレートレットは約20ナノメートル(nm)のサイズを有し、相間領域の下部内のFLGナノプレートレットは約2nmのサイズを有する。いくつかの実施態様では、相間領域の上部と下部との間に位置付けられた相間領域の勾配部分におけるFLGナノプレートレットは、相間領域の深さに向かう方向に沿ってサイズが徐々に減少する。いくつかの態様では、相間領域の下部のFLGナノプレートレットは、相間領域の下部の平面全体に均一に分布する。加えて、または代替では、複数のFLGナノプレートレットの密度は、表面/空気接触面から相間領域の深さまで延在する方向に沿って徐々に減少し得る。
【0007】
様々な実施態様では、添加剤は、添加剤が周囲空気に曝されると、炭素含有ガラス材料に形成されたクラックを自己修復するように構成され得る。例えば、添加剤は、周囲空気中に存在する反応物(ガス状酸素、O、及び/または水分(HO)等)に曝されるとき酸化し得、結果として生じる酸化添加剤は、炭素含有ガラス材料に形成されたクラック及び/または表面欠陥に広がることができる。いくつかの態様では、酸化添加剤は、また、炭素含有ガラス材料に形成されたクラック及び/または表面欠陥の表面を被覆することもできる。場合によっては、後処理操作中にFLGナノプレートレットの隣接するグラフェン層の間にインターカレートされ得る。後処理操作は、真空中または不活性雰囲気中の恒温処理を含み得る。
【0008】
本開示に説明される主題の別の革新的な態様は、製造方法として実施できる。様々な実施態様では、本方法を使用して、炭素含有ガラス材料を製造、強化、及び/または補強し得る。いくつかの実施態様では、本方法は、複数の正荷電ガス粒子及び複数のイオン化不活性ガス粒子を含む非熱平衡プラズマを、反応室に供給することを含み得る。本方法は、非熱平衡プラズマへの外部電位の印加に基づいて、反応室を通る少なくとも複数の正荷電ガス粒子を加速することを含み得る。本方法は、炭素含有ガラス材料の表面/空気接触面に、加速された正荷電ガス粒子及びイオン化不活性ガス粒子による衝撃を与えることを含み得る。本方法は、加速された正荷電ガス粒子及びイオン化不活性ガス粒子による衝撃に応答して、炭素含有ガラス材料の相間領域を形成することを含み得る。表面/空気接触面から、表面/空気接触面に直交する方向に沿って、炭素含有ガラス材料中の約1ミクロンの深さまで延在し得る相間領域は、衝撃により、複数のマイクロクラックまたはマイクロボイドが内部に形成される可能性がある。場合によっては、マイクロクラックまたはマイクロボイドは、約5ナノメートル(nm)~10nmのサイズを有し得る。本方法は、少なくともイオン化不活性ガス粒子による衝撃に応答して、炭素含有ガラス材料に圧縮応力層を形成することを含み得る。圧縮応力層は、炭素含有ガラス材料の相間領域と表面/空気接触面との間に配置され得る。炭素含有ガラス材料は、ケイ酸塩ガラス、ソーダ石灰ガラス、アルカリアルミノケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス、またはそれらの任意の組み合わせを含み得る。一実施態様では、アルカリアルミノケイ酸ガラスは、約57%~60%のSiO、約10%~25%のAl、及び約10%のアルカリ土類金属から成る。
【0009】
場合によっては、非熱平衡プラズマは固有電位を含み得る。いくつかの態様では、非熱平衡プラズマに固有の電位は、外部電位が反応室に印加されることなく、正荷電ガス粒子及び/またはイオン化不活性ガス粒子の少なくとも一部がガラス材料の表面/空気接触面に浸透するのに十分であり得る。
【0010】
本方法は、また、加速された正荷電ガス粒子及びイオン化不活性ガス粒子によって表面/空気接触面に衝撃を与えると同時に、非熱平衡プラズマから分離された複数の炭素系ラジカルを炭素含有ガラス材料の相間領域に注入することも含み得る。本方法は、複数の注入された炭素系ラジカルの再結合及び/または自己核生成に基づいて、炭素含有ガラス材料の相間領域内に複数の数層グラフェン(FLG)ナノプレートレットを形成することを含み得る。炭素系ラジカルは、1つ以上の様々な入射角で相間領域に注入され得る。いくつかの態様では、表面/空気接触面に近接する相間領域の上部は、FLGナノプレートレットの濃度が比較的高くなり得、表面/空気接触面の遠位にある相間領域の下部は、FLGナノプレートレットの濃度が比較的低くなり得る。加えて、相間領域の上部のFLGナノプレートレットは約20ナノメートル(nm)のサイズを有し得、相間領域の下部のFLGナノプレートレットは約2nmのサイズを有し得る。一実施態様では、相間領域の上部と下部との間に位置付けられた相間領域の勾配部分に形成されたFLGナノプレートレットは、相間領域の深さに向かう方向に沿ってサイズが徐々に減少する。いくつかの態様では、相間領域の下部のFLGナノプレートレットは、相間領域の下部の平面全体に均一に分布され得る。
【0011】
いくつかの実施態様では、本方法は、また、相間領域に形成されたFLGナノプレートレット内に隣接するグラフェン層の間に添加剤をインターカレートすることも含み得る。場合によっては、添加剤は、アルカリ金属(リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、フッ素、または臭素等)、遷移金属(銅または鉄等)、またはそれらの任意の組み合わせを含み得る。他の例では、添加剤は、リチウム、ニッケル、マンガン、銅、トリメチルアルミニウム(TMA)、トリメチルガリウム(TMG)、硫黄、またはそれらの任意の組み合わせを含み得る。一実施態様では、相間領域の上部内に形成されたFLGナノプレートレットにインターカレートされた添加剤の第1の部分は約50%のモル分率を有し、相間領域の下部内に形成されたFLGナノプレートレットにインターカレートされた添加剤の第2の部分は約2%のモル分率を有する。上部と下部との間の相間領域のエリアに注入された添加剤の他の部分は、相間領域の深さに向かう方向に沿って徐々に減少するモル分率を有し得る。
【0012】
添加剤は、添加剤が周囲空気中に存在する反応物(ガス状酸素、O、及び/または水分(HO)等)に曝されると、炭素含有ガラス材料に形成されたクラックを自己修復するように構成され得る。例えば、添加剤は、周囲空気中でそのような反応物に曝されるとき酸化し得、結果として生じる酸化添加剤は、炭素含有ガラス材料に形成されたクラック及び/または表面欠陥に広がることができる。いくつかの態様では、酸化添加剤は、また、炭素含有ガラス材料に形成されたクラック及び/または表面欠陥の表面を被覆することもできる。
【0013】
本開示に説明される主題の別の革新的な態様は、炭素含有ガラス材料で実施できる。いくつかの実施態様では、炭素含有ガラス材料は、表面/空気接触面及び相間領域を含み得る。相間領域は、表面/空気接触面から、表面/空気接触面に直交する方向に沿って、炭素含有ガラス材料中の約1ミクロンの深さまで延在し得る。相間領域は、相間領域内に注入された複数の炭素含有ラジカルの再結合及び/または自己核生成に応答して形成された複数の数層グラフェン(FLG)ナノプレートレットを含み得る。複数のFLGナノプレートレットは、炭素含有ガラス材料におけるクラック及び/または表面欠陥の形成または伝播を少なくとも部分的に抑制するように構成された非周期的配向を有し得る。
【0014】
いくつかの実施態様では、表面/空気接触面に近接する相間領域の上部内に形成されたFLGナノプレートレットは約20ナノメートル(nm)のサイズを有し得、表面/空気接触面の遠位にある相間領域の下部内に形成されたFLGナノプレートレットは約2nmのサイズを有し得る。いくつかの態様では、相間領域に形成されたFLGナノプレートレットの密度は、表面/空気接触面から相間領域の深さに向かって延在する方向に沿って徐々に減少する。場合によっては、相間領域は、50ギガパスカル(GPa)未満の破壊靱性を有し得る。加えて、または代替では、ガラス材料の相間領域に形成されたFLGナノプレートレットは、相間領域内に150メガパスカル(MPa)よりも大きい圧縮応力(CS)を誘発するように構成され得る。いくつかの態様では、相間領域に形成されたFLGナノプレートレットのそれぞれは、互いの上部に積み重ねられた3~5個のグラフェン層を含み、炭素含有ガラス材料の2%未満の合計重量を有する。
【0015】
様々な実施態様では、相間領域は、また、相間領域に形成されたFLGナノプレートレット内に隣接するグラフェン層の間にインターカレートされた添加剤も含み得る。場合によっては、添加剤は、アルカリ金属(リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、フッ素、または臭素等)、遷移金属(銅または鉄等)、またはそれらの任意の組み合わせを含み得る。他の例では、添加剤は、リチウム、ニッケル、マンガン、銅、トリメチルアルミニウム(TMA)、トリメチルガリウム(TMG)、硫黄、またはそれらの任意の組み合わせを含み得る。添加剤は、添加剤が周囲空気に曝されると、炭素含有ガラス材料に形成されたクラックを自己修復するように構成され得る。例えば、添加剤は、周囲空気中に曝されるとき酸化し得、結果として生じる酸化添加剤は、炭素含有ガラス材料に形成されたクラック及び/または表面欠陥に広がることができる。いくつかの態様では、酸化添加剤は、また、炭素含有ガラス材料に形成されたクラック及び/または表面欠陥の表面を被覆することもできる。
【0016】
いくつかの実施態様では、炭素含有ガラス材料は、また、表面/空気接触面の下に形成された圧縮応力層も含み得る。一実施態様では、圧縮応力層は、炭素含有ガラス材料の表面/空気接触面に、複数のイオン化不活性ガス粒子による衝撃を与えることによって形成され得る。イオン化不活性ガス粒子は、炭素含有ガラス材料の表面/空気接触面に浸透し、相間領域の1つ以上の部分にマイクロクラックまたはマイクロボイドを形成できる。場合によっては、マイクロクラックまたはマイクロボイドは、約5ナノメートル(nm)~10nmのサイズを有し得る。
【0017】
本開示に説明される主題の1つ以上の実施態様の詳細は、添付の図面及び以下の説明に記載される。他の特徴、態様、及び利点は説明、図面、及び特許請求の範囲から明らかになる。以下の図の相対寸法が縮尺どおりに描かれていない場合があることに留意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】いくつかの実施態様による、炭素含有ガラス材料の例を示す。
図2】いくつかの実施態様による、図1の炭素含有ガラス材料に形成できるFLGナノプレートレットの例を示す。
図3A】いくつかの実施態様による、図1の炭素含有ガラス材料で使用できる強靱化機構の例を示す。
図3B】いくつかの実施態様による、図1の炭素含有ガラス材料で使用できる強靱化機構の別の例を示す。
図3C】いくつかの実施態様による、図1の炭素含有ガラス材料で使用できる強靱化機構の別の例を示す。
図4】いくつかの実施態様による、2つ以上の相間領域を有する炭素含有ガラス材料の例を示す。
図5】いくつかの実施態様による、図1の炭素含有ガラス材料の一部を示す。
図6】いくつかの実施態様による、炭素含有ガラス材料を製造、強化、及び/または補強するために使用できる反応器の例を示す。
図7】いくつかの他の実施態様による、炭素含有ガラス材料を製造、強化、及び/または補強するために使用できる反応器の別の例を示す。
図8A】いくつかの実施態様による、炭素含有ガラス材料を補強するための操作例を示すフローチャートを示す。
図8B】いくつかの実施態様による、炭素含有ガラス材料を補強するための別の操作例を示すフローチャートを示す。
図8C】いくつかの実施態様による、炭素含有ガラス材料を補強するための別の操作例を示すフローチャートを示す。
図9A】いくつかの他の実施態様による、炭素含有ガラス材料を形成するための操作例を示すフローチャートを示す。
図9B】いくつかの他の実施態様による、炭素含有ガラス材料を形成するための操作例を示すフローチャートを示す。
図10】いくつかの他の実施態様による、炭素含有ガラス材料を形成するための別の操作例を示すフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
様々な図面における同様の参照番号及び参照記号は同様の要素を示す。
本開示の態様は、例証の目的で提供される様々な例に向けられた以下の説明及び関連する図面において提供される。本開示の範囲から逸脱することなく、代替の態様を考案し得る。さらに、本開示の周知の要素は、詳細に説明されない、または本開示の関連する詳細を曖昧にしないように省略される。
【0020】
材料の靱性は、機械的破壊を受けることなく加えられた力に耐える材料の能力を示し得、材料の圧縮強度、引張強度、及び破壊靱性に少なくとも部分的に依存し得る。材料の圧縮強度は、加えられた力に耐える材料の能力を示し得、パスカル(Pa)の単位で測定できる。材料の極限引張強度(UTS)は、材料が機械的故障の前に(粉々になる前に等)引き伸ばされている間、または引っ張られている間に耐えることができる最大応力を示し得る。材料の破壊靱性は、破壊及び/またはクラックに抵抗する材料の固有能力を示す。
【0021】
また、ガラス及びガラス含有材料は、さらに、外力によって(物体がガラスに衝突することによって等)生じるクラックの影響を受けやすい。例えば、一定の破壊エネルギー以上の外力がガラス材料に加えられるとき、外力は、ガラス含有材料にクラックの形成を生じさせ得、及び/またはガラス材料全体にわたって既存のクラックを広がらせて、伝播させ得る。また、ガラス材料が圧縮応力または引張応力を受けるとき、ガラス材料の既存の欠陥(スクラッチまたは表面欠陥等)により、加えられた圧縮応力及び/または引張応力が悪化し得、これにより、次に、既存の欠陥に、またはその近くに比較的高い応力集中が生じ得る。比較的高い応力集中に関連付けられたガラス材料の部分は、ガラス材料の他の部分よりもクラックの形成及び伝播の影響をさらに受けやすくなり得る。
【0022】
従来のガラスの引張強度は約7メガパスカル(MPa)であり、理論上の最大引張強度は約17ギガパスカル(GPa)であり、一般的な引張強度よりも桁違いに大きい。ガラスの理論上の最大引張強度の比較的高い値は、多くのガラス材料の主成分を形成する二酸化ケイ素(SiO)分子のケイ素と酸素との強い化学結合に起因し得る。しかしながら、従来の製造技術中にガラス材料に導入された欠陥及び表面の傷(マイクロクラック、裂け目、及びスクラッチ等)により、通常、ガラス材料の測定された引張強度は、理論上の最大引張強度から約7MPaの一般的な引張強度に低下する。
【0023】
出願人は、脆弱性が比較的高いガラスは、従来の製造プロセス中にガラスに不純物が導入することによって生じる可能性があることを確認している。これらの不純物は、強化機構としてガラスに導入されることが多く、ガラス材料の圧縮強度、引張強度、及び/または破壊靱性を減少させ得る。例えば、ガラスが加熱されるとき、そのような不純物の未溶融部分または未溶解部分が、ガラス材料の上または中に1つ以上の積層の形成を生じさせ得、次に、ガラス材料の力全体を減少させるガラス材料中に内部応力をもたらし得る。これらの不純物の未溶融部分または未溶解部分は、また、ガラス全体にわたってクラックを形成及び/または伝播するための核生成場及び成長場を意図せず提供し得る。さらに、従来の熱強化プロセス及び化学強化プロセスは、溶融ガラスを周辺の周囲空気中の水分、ほこり、及び他の粒子に曝し得、それによって、ガラスを追加の不純物に曝すことにより、ガラス材料の圧縮強度、引張強度、及び/または破壊靱性をさらに減少させる可能性がある。
【0024】
本明細書に開示される主題の様々な実施態様によれば、ガラス材料の表面/空気接触面は、炭素系ラジカル、イオン化不活性ガス粒子、添加剤、正荷電粒子、またはそれらの任意の組み合わせによって衝撃を受ける可能性がある。ガラス材料は、イオン化不活性ガス粒子及び/または正荷電粒子による衝撃を受ける可能性があり、これにより、ガラス材料の表面/空気接触面に浸透し、ガラス材料の相間領域にマイクロクラック及び/またはマイクロボイドが作成される可能性がある。炭素系ラジカルは、衝撃によって相間領域に作成されたマイクロクラック及び/またはマイクロボイドに注入できる。いくつかの態様では、炭素系ラジカルは、また、ガラス材料の他の部分に注入することもできる。注入された炭素系ラジカルは、再結合及び/または自己核生成し、相間領域全体にわたって複数のFLGナノプレートレットを形成できる。FLGナノプレートレットは、炭素含有ガラス材料におけるクラックの形成または伝播を抑制するランダム配向または非周期的配向の相間領域全体にわたって分散できる。いくつかの態様では、相間領域に形成されたFLGナノプレートレットの1つ以上の表面に添加剤をドープできる。
【0025】
添加剤は、相間領域全体にわたって分散されたFLGナノプレートレットの隣接するグラフェン層の間にインターカレートできる。その後、ガラス材料に加えられた外力に応答してガラス材料が1つ以上のクラックを発生させるとき、1つ以上のクラックに、またはその近くにFLGナノプレートレット内にインターカレートされた添加剤の部分が周囲空気に曝され得る。曝された添加剤と周囲空気との化学反応により、ガラス材料に形成された1つ以上のクラックの表面に広がる及び/または被覆する金属酸化物を生成することができる。クラック内への金属酸化物の膨張、及びクラックの露出面に形成された金属酸化物被覆は、ガラス材料のクラックのさらなる伝播を防止できる、または少なくとも抑制できる。このように、本明細書に開示される技術を使用して、ガラスまたはガラス材料の圧縮強度、引張強度、及び/または破壊靱性を減少させる可能性がある望ましくない不純物を導入することなく、ガラス及びガラス材料を製造、強化、及び/または補強できる。
【0026】
図1は、本明細書に開示される主題の1つ以上の態様に従って製造、強化、及び/または補強できる炭素含有ガラス材料100を示す。炭素含有ガラス材料100は、任意の適切なタイプのガラス、ガラス含有材料、または炭素含有ガラス材料であり得る。いくつかの実施態様では、ガラス材料100は、約57~60%のSiO、約10~25%のAl、及び約10%のアルカリ土類金属の組成を有するアルカリアルミノケイ酸ガラスであり得る、またはそれを含み得る。いくつかの態様では、ガラス材料100は、9.8×10-6/Kの熱膨張を有し得る。他の実施態様では、ガラス材料100は、(限定ではないが)ホウケイ酸ガラス、ケイ酸ガラス、またはソーダ石灰ガラスであり得る、またはそれらを含み得る。場合によっては、ガラス材料100は、本明細書に開示される様々なガラス強化技術を適用する前に、1つ以上の従来のガラス強化プロセスを使用して化学的に強化され得る。例えば、ガラス材料100は、熱処理、表面結晶化によって、及び/またはガラス材料100への他の化学物質の適用によって、化学的に強化され得る。他の例では、ガラス材料100は、Corning,Inc.,Corning,New Yorkから市販されているGorilla(登録商標)ガラス等の化学的に強化されたガラスであり得る。いくつかの他の例では、ガラス材料100は、Asahi Glass Co.,Tokyo,Japanから入手可能なドラゴントレイルガラスであり得る。
【0027】
ガラス材料100は、表面/空気接触面110、相間領域120、及び基板領域130を含むように示される。表面/空気接触面110は、周囲空気102を含む外部環境に曝され得、炭素系ラジカル、イオン化不活性ガス粒子、添加剤、正荷電粒子、及び他の粒子または混合物が製造中にガラス材料100に浸透できる及び/またはそれに注入できる接触面を提供し得る。相間領域120は、表面/空気接触面110から、表面/空気接触面110に直交する方向150に沿ってガラス材料100の深さ122まで延在し、ガラス材料100を強化及び/または補強する1つ以上の機構で構成され得る。いくつかの態様では、相間領域120の深さ122は約1ミクロンであり得る一方、他の態様では、相間領域120の深さ122は約1~10ミクロンであり得る。いくつかの実施態様では、過剰炭素の単分子層112は、相間領域120に堆積及び/または配置され得る。過剰炭素の単分子層は、いくつかの態様では、衝突または他の源からのエネルギーを吸収及び/または消散するために利用可能な補強材または物質を提供することによって、相間領域120の強化及び/または強靱化を支援し得る。
【0028】
様々な実施態様では、相間領域120は、炭素系ラジカル、イオン化不活性ガス粒子、添加剤、正荷電粒子、及び/または他の適切な粒子もしくは材料により表面/空気接触面110に衝撃を与えることによって、ガラス材料100の中に形成され得る。炭素系ラジカルは(限定ではないが)メチルラジカルであり得る。いくつかの実施態様では、炭素系ラジカル及びイオン化不活性ガス粒子は、反応室内の非熱平衡プラズマによって提供され得る(または反応室から抽出され得る)。非熱平衡プラズマは、例えば、図6及び図7を参照してより詳細に説明されるように、反応室内で炭化水素ガス及びシランをマイクロ波エネルギーで励起することによって生成され得る。
【0029】
(限定ではないが)アルゴン及び/またはヘリウムであり得るイオン化不活性ガス粒子は、表面/空気接触面110に浸透し、例えば、ガラス材料100にボイドを作成することによって、ガラス材料100の1つ以上の部分を「軟化」し得る。より具体的には、イオン化不活性ガス粒子は、ガラス材料100の様々な原子、分子、及び粒子に激突し、激突された原子、分子、及び粒子の少なくとも一部を置換することによってボイドを作成し得る。イオン化不活性ガス粒子は、イオン浸透の深さ及び/または濃度を増加させることができる、異なる質量及び/または異なるサイズを有し得る。場合によっては、イオン化不活性ガス粒子によって作成されたボイドは、相間領域120と表面/空気接触面110との間に圧縮応力層115を形成し得る。いくつかの実施態様では、圧縮応力層115は、複数のイオン化不活性ガス粒子(図6及び図7に関して提示及び説明されたもののいずれか等)によるガラス材料100のイオン衝撃によって誘発され得る。
【0030】
炭素系ラジカルは、イオン化不活性ガス粒子によるガラス材料100の衝撃によって生成されたボイド及び/または小さな裂け目に注入され得る。ガラス材料100に注入されると、炭素系ラジカルは再結合し、自己核生成し、相間領域120の全体にわたって分散された複数の数層グラフェン(FLG)ナノプレートレット140を形成し得る。FLGナノプレートレット140の形成により相間領域120のヤング率の値が低下し得ることによって、ガラス材料100の破壊靱性は増加する。いくつかの態様では、FLGナノプレートレット140により、ヤング率の値は約50GPa~約150MPaに低下し得る。
【0031】
FLGナノプレートレット140は、ガラス材料100におけるクラック及び/または表面欠陥の形成または伝播を少なくとも部分的に抑制するランダム配向または非周期的配向の相間領域120の全体にわたって分散され得る。FLGナノプレートレット140は、また、ガラス材料100のクラック及びクラック先端に、またはその近くに発生する外力(破壊エネルギー等)を吸収及び/または消散できるエネルギー貯蔵部としても機能し得る。いくつかの実施態様では、表面/空気接触面110に近接する相間領域120の上部120Aに形成されたFLGナノプレートレット140は約20ナノメートル(nm)のサイズを有し得、表面/空気接触面110の遠位にある相間領域120の下部120Bに形成されたFLGナノプレートレット140は約2nmのサイズを有し得る。いくつかの態様では、相間領域120の上部120Aと下部120Bとの間に位置付けられた相間領域120の勾配部分120CにおけるFLGナノプレートレットは、相間領域120の深さ122に向かう方向150に沿ってサイズが徐々に減少する。場合によっては、相間領域120の内部に形成されたFLGナノプレートレット140は、ガラス材料100の2%未満の合計重量を有し得る。
【0032】
相間領域120に形成された複数のFLGナノプレートレット140の密度は、表面/空気接触面110からガラス材料100の深さ122まで方向150に沿って徐々に減少し得る。例えば、FLGナノプレートレット140の密度は、単位深さあたり、約0~5%、約5~10%、約10~15%、約15~20%、約20%~25%、約25%~30%、約30%~35%、約35%~40%、約40%~45%、約45%~50%、約50%~55%、約55%~60%、約60%~65%、約65%~70%、約70%~75%、約75%~80%、約80%~85%、約85%~90%、約90%~95%、及び95%~100%で減少し得る。いくつかの態様では、単位あたりの深さは、約10nm~50nmであり得る。他の態様では、単位あたりの深さは、約50nm~100nmであり得る。
【0033】
様々な実施態様では、ガラス材料100の相間領域120の内部に形成されたFLGナノプレートレット140の密度は、炭素系ラジカルがガラス材料100に注入されるプロセスの1つ以上の態様を調整することによって制御及び微調整できる。相間領域120の圧縮残留応力は、相間領域120に形成されたFLGナノプレートレット140の密度と正の相関があり得る。したがって、相間領域120の圧縮残留応力は、その内部に形成されたFLGナノプレートレット140の密度を増加させることによって増加し得(または比較的高い値に設定され得)、相間領域120の圧縮残留応力は、その内部に形成されたFLGナノプレートレット140の密度を減少させることによって減少し得る(または比較的低い値に設定され得る)。このように、相間領域110の圧縮残留応力を離散レベルに調整し得る。例えば、いくつかの態様では、相間領域110の圧縮残留応力は、約0~25MPa、約25~50MPa、約50~75MPa、約75~100MPa、約100~125MPa、または約125MPaのレベルに調整され得る。
【0034】
添加剤は、ガラス材料100の中に注入でき、ガラス材料100に形成されたクラックまたは表面欠陥を自己修復するように構成できる任意の適切な材料、粒子、または混合物であり得る。場合によっては、添加剤は、アルカリ金属(リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、フッ素、または臭素等)、遷移金属(銅または鉄等)、またはそれらの任意の組み合わせを含み得る。他の例では、添加剤は、リチウム、ニッケル、マンガン、銅、トリメチルアルミニウム(TMA)、トリメチルガリウム(TMG)、硫黄、またはそれらの任意の組み合わせを含み得る。添加剤は、任意の適切な方式でガラス材料100の1つ以上の部分の中に注入され得る。例えば、いくつかの態様では、相間領域120への炭素系ラジカルの注入と同時に、添加剤はガラス材料100の中に注入され得る一方、他の態様では、炭素系ラジカルとは独立して、添加剤はガラス材料100の中に注入され得る。一実施態様では、添加剤は、ガラス材料100に形成されたFLGナノプレートレット140の1つ以上の表面上にドープされ得る。ガラス材料100の中に注入されると、添加剤は、FLGナノプレートレット140の隣接するグラフェン層の間にインターカレートされ得る。
【0035】
その後、添加剤が周囲空気に曝されるとき、添加剤と周囲空気の特定の成分(HO分子及びO分子等)との化学反応により、添加剤を酸化し得る。酸化添加剤は、インターカレートされたFLGナノプレートレット140に近接するクラック、裂け目、及び表面欠陥の表面に広がり得る、及び/またはそれらを被覆し得る。例えば、ガラス材料100に加えられた外力に応答してガラス材料100が1つ以上のクラックを発生させるとき、クラック、裂け目、及び表面欠陥、またはそれらの近くでFLGナノプレートレット140の内部にインターカレートされた添加剤の部分が周囲空気102に曝され得る。曝された添加剤と周囲空気102との化学反応は、ガラス材料100に形成されたクラック、裂け目、及び表面欠陥の表面に広がる及び/または被覆する金属酸化物を生成できる。クラック、裂け目、及び表面欠陥への金属酸化物の広がり、ならびにクラック、裂け目、及び表面欠陥の露出面における金属酸化物被覆は、ガラス材料100のクラック、裂け目、表面欠陥のさらなる伝播を防止できる、または少なくとも抑制できる。このように、本明細書に開示される技術を使用して、ガラスまたはガラス材料の圧縮強度、引張強度、及び/または破壊靱性を減少させる可能性がある望ましくない不純物を導入することなく、ガラス及びガラス材料を製造、強化、及び/または補強できる。
【0036】
いくつかの実施態様では、非熱平衡プラズマは、また、反応室の炭素系ラジカル及びイオン化不活性ガス粒子から分離できる複数の正荷電粒子も含み得る。外部電場または電位を使用して、反応室を通る正荷電粒子を加速し得、それによって、正荷電粒子がガラス材料100の表面/空気接触面110に衝突できる速度及びエネルギーを増加させる。このように、加速された粒子は、より大きなエネルギーでガラス材料100に浸透し、さらに、相間領域120を画定するガラス材料100の1つ以上の部分を軟化させ得る。
【0037】
一実施態様では、相間領域120の内部のFLGナノプレートレット140の形成を制御して、相間領域120の内部の固有歪み場の時間相及び空間様相を調整し得る。例えば、ガラス材料100に注入された炭素系ラジカルは再結合し、表面/空気接触面110の下に、約1mm未満の相間領域120の領域内に定義された密度及びサイズ分布を有する整列された2D spのFLGナノプレートレットを形成し得る。いくつかの態様では、固有歪み場は、ガラス材料100の相間領域120に注入する前に、反応室内で自己核生成及び2D spグラフェンナノ粒子の成長が制御された結果として生じ得る。反応室内での2D spグラフェンナノ粒子の自己核生成及び成長の制御は、炭素系ラジカルが生成される非平衡プラズマ内の励起された炭素系ラジカルの過飽和レベルの存在から生じ得る。
【0038】
いくつかの他の実施態様では、追加の炭素系粒子は反応室に流入し、その後、ガラス材料100の相間領域120の内部に注入され得る。これらの追加の炭素系粒子は、さらに、相間領域120の破壊靱性を増加させ得、及び/または、さらに、ガラス材料100の全体にわたってクラックの形成及び伝播を抑制し得る。いくつかの態様では、二次炭素粒子と呼ばれ得るこれらの追加の炭素系粒子は、相間領域120の上部120Aの内部に注入され得る。
【0039】
いくつかの態様では、異なる炭化水素前駆体供給ガス(メタン、異なるC/H比を伴うエタノール、異なる酸素含有量を伴うエタノール等)を使用して、特定のプラズマ化学反応(C+、C、CH、O等)を作成し得、それから、炭素系ラジカルが生成され、その後、ガラス材料100の相間領域120に注入される。いくつかの態様では、FLGナノプレートレット140のサイズは、結果として生じるグラフェン形成の特定の目的に基づいて選択または調整され得る。例えば、ガラス材料100の様々な量子効果を調整するために使用されたFLGナノプレートレットは5nm未満のサイズを有し得る一方、ガラス材料100の光透過特性または光吸収特性を調整するために使用されたFLGナノプレートレットは約5~50nmのサイズを有し得る。
【0040】
FLGナノプレートレット140により、相間領域120がガラス材料100の基板部分130とは異なる屈折率を有するようになる。一実施態様では、相間領域120に形成されたFLGナノプレートレット140は、ガラス材料100の表面/空気接触面110での散乱によって生じる光透過変化率が約0.5%未満になるように構成され得る。
【0041】
相間領域120の内部でのFLGナノプレートレット140の形成、及びそこへ励起されたイオンの浸透により、線形からガウス分布を示す加工勾配を有する相間領域120が生じ得る。いくつかの態様では、相間領域120の内部に形成されたFLGナノプレートレット140の濃度に基づいて、1つ以上の機械的特性、化学的特性、電気的特性、及び/または光学的特性を調整できる。相間領域120の内部に形成されたFLGナノプレートレット140は、また、ガラス材料100に加えられた破壊エネルギー及び他の外力を消散させることによって、ガラス材料100の破壊靱性を増加させ得る。このように、本明細書に開示される技術に基づいて相間領域120の内部にFLGナノプレートレット140を形成することは、望ましくない不純物をガラス材料100に導入することなく、ガラス材料100を補強し得る。
【0042】
図2は、いくつかの実施態様による、図1の炭素含有ガラス材料100の中に形成され得るFLGナノプレートレット200の例を示す。図1のガラス材料100に形成されたFLGナノプレートレット140の一例であり得るFLGナノプレートレット200は、よじれまたはしわのある構造を有し得、炭素-炭素結合原子のグループは、外力、圧力、または荷重に応答して屈曲し得るまたは折り曲がり得る。例えば、ガラス材料100に外力が加えられるとき、相間領域120にFLGナノプレートレット140が存在することにより、加えられた力(クラックまたは破砕によるものではない力等)に応答して、ガラス材料100は屈曲し、曲がり、または折り曲がり得る。このように、本明細書に開示される技術を使用して製造、強化、及び/または補強されたガラス及びガラス材料は、加えられた力、圧力、及び荷重に関連付けられたエネルギー及び応力を吸収及び/または消散でき、それによって、ガラス材料100が受ける全体的な圧縮応力を低下させることができる。
【0043】
図2の例では、FLGナノプレートレット200は、互いの上部に積み重ねられた(垂直に、または実質的に垂直に等)4つのグラフェン層201~204を含むように示される。他の実施態様では、FLGナノプレートレット200は、他の数のグラフェン層を含み得る。FLGナノプレートレット200におけるグラフェン層の数は、FLGナノプレートレット200の1つ以上の特性に影響を及ぼし得る。これらの特性は、限定ではないが、エネルギーを吸収または消散する能力、電気を伝導する能力、ならびにガラス及びガラス材料に形成されたクラックを自己修復する能力を含み得る。例えば、FLGナノプレートレット200のグラフェン層の数が増加すると、エネルギーを吸収または消散するガラス材料100の能力が向上し得、電気を伝導するガラス材料100の能力が向上し得、そして、クラック及び他の表面欠陥を自己修復する材料100のガラス材料100の能力が向上し得る。したがって、少なくとも、いくつかの実施態様に関して、図1のガラス材料100に形成されたFLGナノプレートレット140は、例えば、エネルギーを吸収し、エネルギーを消散し、電気を伝導し、クラックを自己修復するガラス材料100の能力を最大化するために、比較的多数のグラフェン層(10以上のグラフェン層等)を有し得る。
【0044】
しかしながら、FLGナノプレートレット200のグラフェン層の数が増加すると、FLGナノプレートレット200の厚さが増加し、これにより、次に、FLGナノプレートレット200の不透明度が増加する。概して、不透明度は、電磁放射線及び光に対する不浸透性の尺度である。例えば、不透明材料は、透過的(受けた光の全てが材料を通過することが可能になる等)でも、半透過的(受けた光の一部だけが材料を通過することが可能になる等)でもなく、むしろ、受けた光の全てを反射、散乱、及び/または吸収する。さらに、光が2つの層、材料、構成、及び/または材料の物質の間の接触面に当たるとき、光の一部は接触面を通して伝わらない場合がある。すなわち、光の一部は接触面によって吸収され得、光の一部は接触面によって吸収され得、光の一部は接触面によって散乱され得る(光の残りの部分は材料を通して伝わる)。結果として、FLGナノプレートレット200が一定数よりも多いグラフェン層を含む、または一定厚さを超えるとき、FLGナノプレートレット200の不透明度が閾値を超え得、それにより、FLGナノプレートレット200のネットワークが内部に形成されたガラス材料は、いくつかの光学的用途に適切ではない。例えば、それにより、強化ガラス材料100は、光学的用途に適切ではない場合がある。
【0045】
出願人は、ガラス材料(図1の炭素含有ガラス材料100等)の中に形成されたとき、3層~5層のグラフェン層を有するFLGナノプレートレット200は、エネルギーを吸収し、エネルギーを消散し、電気を伝導し、ガラス材料のクラック及び光透過性を自己修復するガラス材料の能力(損失及び/または屈折の閾値未満で光を通過させる能力等)の所望の調和をもたらすことを確認している。また、出願人は、ガラス材料100の相間領域120の内部に形成されたFLGナノプレートレット200が、約1nm~3nmの厚さを有し、約100nm~100μmの横寸法(長さ及び幅等)を有することを確認している。一実施態様では、相間領域120の上部120Aに形成されたFLGナノプレートレット200は約20nmの横寸法を有し、相間領域120の下部120Bに形成されたFLGナノプレートレット200は約2nmの横寸法を有する。
【0046】
図3Aは、いくつかの実施態様による、ガラス材料を強靱化するための機構300Aの例を示す。ガラス材料は、表面/空気接触面302及び相間領域304を含む。図1の表面/空気接触面110の一例であり得る表面/空気接触面302は、様々な粒子及び材料がガラス材料に衝撃を与える、注入される、及び/またはドープされることができる接触面を提供し得る。図1の相間領域120の一例であり得る相間領域304は、例えば、図1及び図2を参照して上記に説明したように、その内部に形成された複数のFLGナノプレートレット200を含む。図3Aに示されるように、ガラス材料は、また、表面/空気接触面302を横切る幅Wと、ガラス材料中に延在する深さDとを有するクラック310を含む。クラック310は、また、クラック先端312を含むことも示される。
【0047】
図3AにFLGナノプレートレット200Aとして示されるFLGナノプレートレット200の1つは、クラック310を「橋渡し」するように示される。すなわち、FLGナノプレートレット200Aの第1の端はクラック310の右側のガラス材料の部分に結合され、FLGナノプレートレット200Aの第2の端はクラック310の左側のガラス材料の部分に結合される。この橋渡しの結果として、FLGナノプレートレット200Aは、クラック310の近くのガラス材料の部分に加えられた力、応力、及び荷重を吸収及び/または消散できる。さらに、クラック310が、クラック310の反対側を互いに引き離す引張応力に応答して垂直下方向305に伝播する可能性が最も高いため、クラック310に対するFLGナノプレートレット200Aの位置及び向きにより、垂直方向305に直交し、ガラス材料の表面/空気接触面302に平行な横方向315にクラック310の伝播の方向を指向できる。
【0048】
様々な実施態様では、ガラス材料に形成されたFLGナノプレートレット200の隣接するグラフェン層の間に添加剤をインターカレートし得る(簡略化するために、添加剤は図3Aには示されない)。場合によっては、添加剤は、FLGナノプレートレット200の少なくとも一部の1つ以上の表面上にドープされ得る。添加剤は、周囲空気に曝されると酸化し、ガラス材料に形成されたクラック310の表面に広がる及び/またはその表面を覆う酸化材料を形成し得る。場合によっては、添加剤は、アルカリ金属(リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、フッ素、または臭素等)、遷移金属(銅または鉄等)、またはそれらの任意の組み合わせを含み得る。他の例では、添加剤は、リチウム、ニッケル、マンガン、銅、トリメチルアルミニウム(TMA)、トリメチルガリウム(TMG)、硫黄、またはそれらの任意の組み合わせを含み得る。このように、FLGナノプレートレット200の内部でインターカレートされたそのような添加剤の存在は、ガラス材料に形成されたクラック310(及び簡略化するために示されない他のクラック)を自己修復できる。
【0049】
いくつかの実施態様では、表面エネルギー効果により、インターカレートされた添加剤は、それぞれのFLGナノプレートレット200の表面に、またはその表面の近くに球体を形成し得る。場合によっては、金属球は、約1~5nmの直径を有し得る。金属球は、外力を加えると拡散し、FLGナノプレートレット200の間にボイドを作成し得る(カーケンドール効果等に基づいて生じる)。ボイドの少なくとも一部は、クラック先端312に存在する破壊エネルギーを吸収及び/または消散し得ることによって、ガラス材料中への、またはガラス材料を横切るクラック310のさらなる伝播を防止する。
【0050】
図3Bは、他の実施態様による、ガラス材料を強靱化するための機構300Bの例を示す。ガラス材料は、表面/空気接触面302及び相間領域304を含む。図1の表面/空気接触面110の一例であり得る表面/空気接触面302は、様々な粒子及び材料がガラス材料に衝撃を与える、注入される、及び/またはドープされることができる接触面を提供し得る。図1の相間領域120の一例であり得る相間領域304は、例えば、図1及び図2を参照して上記に説明したように、その内部に形成された複数のFLGナノプレートレット200を含む。図3Bに示されるように、ガラス材料は、また、表面/空気接触面302を横切る幅Wと、ガラス材料中に延在する深さDとを有するクラック320を含む。クラック320は、また、クラック先端322を含むことも示される。
【0051】
図3BにFLGナノプレートレット200Bとして示されるFLGナノプレートレット200の1つは、クラック先端322の下に位置付けられ、クラック320の深さDに対して実質的に直交して配向される。クラック320が加えられた力を受けることで、クラック320が垂直下方向305に伝播し始めるとき、クラック先端322の下に位置するFLGナノプレートレット200Bは、加えられた力の量または一部を吸収及び/または拡散し得、その結果、クラックがFLGナノプレートレット200Bよりも遠くに伝播しない。場合によっては、クラック320に対するFLGナノプレートレット200Bの直交配向により、クラック320が「分岐」し、クラック先端322に、またはその近くに1つ以上のマイクロクラックが形成され得る。マイクロクラックは比較的小さく、クラック320と比較してエネルギーは比較的低いため、したがって、FLGナノプレートレット201を越えて方向315において横方向に伝播しない場合がある、またはFLGナノプレートレット202を越えて方向316において横方向に伝播しない場合がある。より具体的には、FLGナノプレートレット201及び202が横方向のマイクロクラックに対して直交して配向されているため、横方向のマイクロクラックは、FLGナノプレートレット201及び202に浸透または破壊するのに十分なエネルギーを有しない場合がある。このように、FLGナノプレートレット200Bは、ガラス材料を通るクラック320(及び簡略化するために示されない他のクラック)の垂直方向の伝播を抑制し得、FLGナノプレートレット201及び202は、ガラス材料を通るマイクロクラックの横方向の伝播を抑制し得る。
【0052】
図3Cは、いくつかの実施態様による、ガラス材料を強靱化するための機構300Cの例を示す。ガラス材料は、表面/空気接触面302及び相間領域304を含む。図1の表面/空気接触面110の一例であり得る表面/空気接触面302は、様々な粒子及び材料がガラス材料に衝撃を与える、注入される、及び/またはドープされることができる接触面を提供し得る。図1の相間領域120の一例であり得る相間領域304は、例えば、図1及び図2を参照して上記に説明したように、その内部に形成された複数のFLGナノプレートレット200を含む。図3Cに示されるように、ガラス材料は、また、表面/空気接触面302を横切る幅Wと、ガラス材料中に延在する深さDとを有するクラック330を含む。クラック330は、また、クラック先端332を含むことも示される。
【0053】
図3CにFLGナノプレートレット200Cとして示されるFLGナノプレートレット200の1つは、クラック先端332に隣接し、クラック330に対して実質的に平行に配向される。クラック330が加えられた力を受けることで、クラック330がFLGナノプレートレット200Cに向かって横方向315に伝播し始めるとき、FLGナノプレートレット200Cの内部のグラフェン層は、例えば、加えられた力の少なくとも一部を吸収及び/または消散できる互いに対する滑り運動を示し、それによって、ガラス材料を通るクラック330のさらなる伝播を抑制する。
【0054】
図4は、いくつかの他の実施態様による、2つ以上の相間領域を有する炭素含有ガラス材料400の例を示す。示されるように、ガラス材料400は、第1の相間領域420(1)、第2の相間領域420(2)、及び第3の領域430を含み得る。第1の相間領域420(1)及び第2の相間領域420(2)のそれぞれは、複数のFLGナノプレートレット(ガラス材料に注入されたまたは衝撃を与えた炭素系ラジカルの再結合または自己核生成によって形成される等)を含み得る。いくつかの実施態様では、第1の相間領域420(1)及び第2の相間領域420(2)のそれぞれは、図1のガラス材料100の相間領域120の例であり得る。すなわち、第1の相間領域420(1)及び第2の相間領域420(2)のそれぞれは、ガラス材料400を強化及び/または補強するために、それらの内部に形成された複数のFLGナノプレートレット402、404を有し得る。FLGナノプレートレット402、404の位置合わせは、いくつかの態様では、第1相間領域420(1)及び第2相間領域420(2)の潜在的な表面欠陥または損傷を減らし得る。いくつかの態様では、第1の相間領域420(1)及び第2の相間領域420(2)の内側のFLGナノプレートレット402、404は、異なる配向に形成され得る。例えば、第1のFLGナノプレート402は第1の配向を有し得、第2のFLGナノプレート404は第1の配向とは異なる第2の配向を有し得る。第1の相間領域420(1)は、また、第1の配向及び第2の配向とは異なる1つ以上の配向を有する他のFLGナノプレートレット(簡略化するために示されない)も含み得る。
【0055】
ガラス材料400の様々な部分の中に形成されたFLGナノプレートレット402、404は、ガラス材料400の様々な分子構造内に統合されたグラフェンネットワークを形成し得る。いくつかの態様では、ナノ結晶マトリックス構造で観察された粒界に類似し得るグラフェンネットワークは、ガラス材料400を横切って(幅及び長さに沿って等)横方向に延在し得、ガラス材料400の圧縮強度、引張強度、破壊靱性を増加させることができる強靱化機構または強化機構を形成し得る。
【0056】
図5は、いくつかの他の実施態様による、炭素含有ガラス材料500の一部を示す。図1のガラス材料100の一例であり得るガラス材料500は、表面/空気接触面510、相間領域520、自己修復層530、ガラス材料500に形成されたクラック540、及びガラス材料500に形成された複数のFLGナノプレートレット550を含むように示される。簡略化するために、相間領域520の下にあるガラス材料500の部分は、図5には示されない。
【0057】
示されるように、自己修復層530は、ガラス材料の相間領域520の内部に配置され得、ガラス材料500の表面/空気接触面510まで延在し得る。ガラス材料中に形成されたFLGナノプレートレット550のうちの少なくとも一部の隣接するグラフェン層552の間に、1つ以上の添加剤560をインターカレートし得る(簡略化するために、図5には、FLGナノプレートレット550のうち1つだけのグラフェン層552が示される)。場合によっては、添加剤は、アルカリ金属(リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、フッ素、または臭素等)、遷移金属(銅または鉄等)、またはそれらの任意の組み合わせを含み得る。他の例では、添加剤は、リチウム、ニッケル、マンガン、銅、トリメチルアルミニウム(TMA)、トリメチルガリウム(TMG)、硫黄、またはそれらの任意の組み合わせを含み得る。
【0058】
クラック540がガラス材料500の表面/空気接触面510から垂直下方向501に自己修復層530へ伝播するとき、クラック540は、クラック先端542に、またはその近くにFLGナノプレートレット550のグループを周囲空気に曝す。FLGナノプレートレット550のグループ内でインターカレートされた添加剤と、周囲空気の特定成分(酸素(O)分子570及び水(HO)分子572等)との化学反応により、クラック540の露出面541の内部に広がる及び/またはそれを被覆する酸化物(金属酸化物580及び/または金属酸化物-水酸化物582)を生成する。酸化物580及び/または酸化物582のクラック540の内部への広がり、及びクラック540の露出面541に結果として生じる被覆は、ガラス材料500を通るクラック540のさらなる伝播を防止する、または少なくとも抑制する。このように、本明細書に開示される技術を使用して、ガラス材料500の圧縮強度、引張強度、及び/または破壊靱性を減少させる可能性がある望ましくない不純物を導入することなく、ガラス材料500を製造、強化、及び/または補強できる。
【0059】
いくつかの実施態様では、製造中に(反応室内で等)ガラス材料500に熱エネルギーまたはマイクロ波エネルギーを加えて、クラック先端542への添加剤560の拡散を増加させ得、これにより、金属酸化物580及び金属水酸化物582が生成される速度が速くなる。
【0060】
図6は、いくつかの実施態様による、炭素含有ガラス材料を製造、強化、及び/または補強するために使用できる反応器600の例を示す。場合によっては、本明細書に説明される技術を使用して強化及び/または補強されたガラス材料は、ガラス材料650に外力が加えられたとき、既存のクラックの伝播及び/または新しいクラックの形成に対してより復元力が大きくなり得る。加えて、または代替では、反応器600はプラズマトーチとして実装され得る。
【0061】
反応器600は、マイクロ波エネルギー源610、入力ガス入口615、反応容器620、電位源630、及び金属基板640を含み得る。反応容器620は、反応室622、下流領域624、及びコレクター626を含み得る。反応室622は、反応室622に平行な方向602に沿って長さLを有する。入力ガス入口615は、反応容器620と加工材料源(簡略化のために示されない)との間に結合され、材料605(1つ以上のガス、液体、粒子等)を反応室622に流入させる、またはそうでなければ提供するために使用され得る。例えば、場合によっては、材料605は、(限定ではないが)CNT、フラーレン等の様々な構造化炭素を含み得る。
【0062】
マイクロ波エネルギー源610は、材料605を励起して、炭素系ラジカルを分離または抽出できるプラズマを生成できるマイクロ波エネルギー612を生成し得る。場合によっては、例えば、共同で保有される米国特許第9,767,992号及び第10,314,512号に説明されるように、マイクロ波エネルギー源610はパルスマイクロ波エネルギーを生成し得る。他の例では、マイクロ波エネルギー源610は、連続マイクロ波エネルギーを生成し得る。マイクロ波エネルギー源610は、1つ以上の制御信号(CTRL)に基づいて、マイクロ波エネルギー612の様々な特性を調整できる制御回路を含み得る。例えば、CTRL信号により、マイクロ波エネルギー612のパルス持続時間、パルス周波数、デューティサイクル、瞬時電力レベル、または平均電力レベルのうちの1つ以上が決定され得る。このように、反応器600は、反応室622に非熱平衡プラズマを作成するために生成されたマイクロ波エネルギー612のパルス持続時間、パルス周波数、デューティサイクル、瞬時電力レベル、及び/または平均電力レベルを調整することによって、ガラス材料650に形成されるFLGナノプレートレットのグラフェン層のサイズ、数、及び濃度を構成し得る。非熱平衡プラズマに適用されるエネルギーを制御する能力は、目標の反応が起こることを可能にし、ガラス材料650の全体にわたってFLGナノプレートレット及び他の粒子の分布を促進する。
【0063】
いくつかの実施態様では、炭化水素ガス及びシランの混合物は、適切な流量で入力ガス入口615を通して反応室622に流入し得る。炭化水素ガスは、(限定ではないが)メタンガス等の任意の適切な炭素含有ガスであり得る。シランは、任意の適切なシランガスまたはシラン含有液体前駆体であり得る。いくつかの態様では、シランは、約1標準リットル/分(slm)~10slm/分の流量で反応室622に流入し得る。いくつかの態様では、例えば混合物を反応室622に流入させると同時に、添加剤を反応室622に提供し得る。場合によっては、添加剤は、アルカリ金属(リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、フッ素、または臭素等)、遷移金属(銅または鉄等)、またはそれらの任意の組み合わせを含み得る。他の例では、添加剤は、リチウム、ニッケル、マンガン、銅、トリメチルアルミニウム(TMA)、トリメチルガリウム(TMG)、硫黄、またはそれらの任意の組み合わせを含み得る。添加剤は、炭化水素ガスの流量の約1%~75%の流量で反応器に流入し得る。
【0064】
マイクロ波エネルギー源610によって生成されたマイクロ波エネルギー612は、炭化水素ガス及びシランの混合物を含む反応室622の部分に向けることができる。約300ワット(W)~25キロワット(kW)の電力レベルを有し得るマイクロ波エネルギー612は、炭化水素ガス及びシランの混合物を励起して、非熱平衡プラズマを生成できる。いくつかの態様では、マイクロ波エネルギー源610は、クライストロンまたは進行波管増幅器(TWTA)であり得る。非熱平衡プラズマは、炭素系ラジカル(メチルラジカル等)、正荷電粒子、イオン化不活性ガス粒子、またはそれらの任意の組み合わせを含み得る。様々な実施態様では、コレクター626を介して反応室622から出力された炭素系ラジカル、正荷電粒子、及び/またはイオン化不活性ガス粒子660は、衝撃及び/または注入によって、ガラス材料650の表面/空気接触面に向けることができる。ガラス材料650は、ガラス材料650の1つ以上の部分を形成、強化、及び/または補強するために、炭素系ラジカル、正荷電粒子、及び/またはイオン化不活性ガス粒子によって衝撃を受け得る。本明細書に開示される技術に従って形成、強化、または補強されたガラス材料650の部分では、圧縮強度、引張強度、及び破壊靱性が向上し得、したがって、従来のガラス材料よりもクラック及び表面欠陥に対して復元力が大きくなる。
【0065】
より具体的には、ガラス材料650の表面/空気接触面は、反応室622の非熱平衡プラズマから分離された炭素系ラジカル及びイオン化不活性ガス粒子による衝撃を受け得る。イオン化不活性ガス粒子は、ガラス材料650の表面/空気接触面に浸透し、表面/空気接触面の下にあるガラス材料650の部分の中にマイクロクラック、マイクロボイド、及び/または表面欠陥が形成され得る。いくつかの態様では、ガラス材料650のイオン衝撃によって形成されたマイクロクラック、マイクロボイド、及び/または表面欠陥は、ガラス材料650の相間領域を画定し得る。ガラス材料650の表面/空気接触面に浸透した炭素系ラジカルは、相間領域内に注入され得る。
【0066】
いくつかの実施態様では、外部電場は、反応室622に印加され、ガラス材料650に向かって方向604に沿って反応室622を通して正荷電粒子が加速され得、それによって、正荷電粒子がガラス材料650の表面/空気接触面110に衝突できる速度及びエネルギーを増加させる。例えば、電位源630は、金属基板640に位置するガラス材料650に向かって方向604に沿って正荷電粒子を加速できる負の電場または電位を生成し得る。いくつかの態様では、電位源630によって生成された負電位は、電気極性に基づいて非熱平衡プラズマから正荷電ガス粒子を抽出または分離するように構成され得る。このように、負の電場または電位により、正荷電粒子ならびにイオン化不活性ガス粒子及び炭素系ラジカルが、ガラス材料650の相間領域により深く浸透することが可能になり得る。
【0067】
ガラス材料650の相間領域内に注入された炭素系ラジカルは再結合及び自己核生成し、複数のFLGナノプレートレットを形成し得る。FLGナノプレートレットは、ガラス材料650におけるクラックの形成または伝播を少なくとも部分的に抑制する非周期的配向でガラス材料650の相間領域の全体にわたって分散され得る。いくつかの態様では、相間領域に形成されたFLGナノプレートレットは、(限定ではないが)約50GPa~約150MPa等の相間領域のヤング率の値を低下させることによって、ガラス材料650の破壊靱性を増加させ得る。相間領域に形成されたFLGナノプレートレットは、また、ガラス材料650の既存のクラック及び/またはクラック先端に加えられた外力を吸収及び/または消散するエネルギー貯蔵部としても機能し得る。
【0068】
説明されるように、ガラス材料650に形成されたFLGナノプレートレットの濃度及びサイズは、方向604に沿って相間領域の深さまで減少し得る。例えば、いくつかの実施態様では、ガラス材料650の相間領域の上部に形成されたFLGナノプレートレットは約20ナノメートル(nm)のサイズを有し得、ガラス材料650の相間領域の下部に形成されたFLGナノプレートレットは約2nmのサイズを有し得る。場合によっては、相間領域の上部と下部の間に形成されたFLGナノプレートレットのサイズは、方向604に沿ってサイズが徐々に減少し得る。
【0069】
いくつかの実施態様では、上記に説明したように、ガラス材料650の相間領域に形成されたFLGナノプレートレットの1つ以上の表面に添加剤がドープされ得る。例えば、図1図2図3A図3C図4、及び図5を参照して上記に説明したように、ガラス材料650の相間領域内に形成されたFLGナノプレートレットの少なくとも一部の隣接するグラフェン層の間にインターカレートされ得る添加剤は、周囲空気に曝されたとき、ガラス材料650のクラック及び他の表面欠陥を自己修復できる。
【0070】
様々な実施態様では、反応器600は円筒形状であり得、最大1インチの直径を伴う。いくつかの実施態様では、反応器600はガウス反応器として構成され得る一方、他の実施態様では、反応器600は非ガウス反応器として構成され得る(例えば、非ガウス反応器で生成されたプラズマは、通常、ガウス反応器で生成されたプラズマよりも優れたエネルギー散逸及びエネルギー分布を示す)。
【0071】
図7は、いくつかの他の実施態様による、炭素含有ガラス材料を製造、強化、及び/または補強するために使用できる反応器700の別の例を示す。いくつかの態様では、反応器700は図6の反応器600と同様であり得、他の態様では、図6の反応器600とは異なり得る。例えば、反応器700は、マイクロ波エネルギー源610、入力ガス入口615、反応容器720、電位源730、金属基板640、及びコレクター626を含み得る。反応器700が反応器600と異なる一態様では、反応室720の1つ以上の部分の内部に電場を生成するための電位源630を有するのではなく、反応器700が反応室720の1つ以上の部分の反対側に位置付けられた複数の電極728を含む。電極728は、例えば、複数の正荷電粒子を加速できる(例えば、電気供給部732によって提供された電流及び/または電圧に基づいて)内部電場を生成するように構成され得、その結果、加速した正荷電粒子は、ガラス材料650の中で衝撃を受けるとき、速度が大きくなり、エネルギーが大きくなる。加えて、または代替では、反応器700は、また、方向704に沿って反応室722を横切って負電位が発生し、反応室722の内側に面する壁に沿って電流の流れ732を誘発するように位置付けられた追加の電位源(簡略化するために示されない)も含み得る。反応室722内で誘発された電流の流れ732は、反応室722を通してコレクター626からガラス材料650に向かって出力される、少なくとも正荷電ガス粒子を引き付けて加速できる磁場を作成し得る。
【0072】
炭素系ラジカルを生成するために反応器600及び反応器700に加えられるメタンガスに加えて、炭素含有前駆体は、「Nanotechnologies-Vocabulary-Part 13:Graphene and related two-dimensional(2D)materials」と題されたISO/TS80004-13:2017(en)に開示されもの等の任意の既知の炭素粒子または粒子構造を含み得る。
【0073】
いくつかの態様では、反応器700に流入した炭化水素ガスは短鎖炭化水素ガスであり得る一方、他の態様では、反応器700に流入した炭化水素ガスは長鎖炭化水素ガスであり得る。場合によっては、炭化水素ガスは、メタン(CH)及び/またはブタン(C10)を含み得る。様々な実施態様では、非熱平衡プラズマからの適切な炭素系ラジカルの生成は、以下のうちの1つ以上に基づき得る。
・100標準立方センチメートル/分(sccm)-5標準リットル/分(slm)の入力炭素含有ガス流量。
・低流量は、通常、忠実度及び調整能力の向上をもたらし、したがって、反応室622及び反応室710を通る炭素系種を加速するのに貢献し得る。これにより、複数の添加剤604及び添加剤704のドーピング速度の低下をもたらし得る。
・高流量は、通常、より高出力をもたらすが、FLGナノプレートレットの忠実度及び/または指向性を低下させ得る。
・シラン、及び/またはヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)もしくはヘキサメチルジシラザン(HMDSN)等のシラン含有液体前駆体、ならびに純粋なシランは反応器600及び反応器700に流入し、様々な適切なシリコン源流量を提供し得る。いくつかの実施態様では、シリコン源流量は、1~10リットル/分、11~20リットル/分、21~30リットル/分、31~40リットル/分、41~50リットル/分、51~60リットル、61~70リットル/分、71~80リットル/分、81~90リットル/分、91~100リットル/分、101~200リットル/分、または201~530リットル/分のうちの1つであり得、高流量は、加速されたイオン化粒子616及び716に対応する追加の添加材の被覆を可能にし得る。
・リチウム(Li)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)、銅(Cu)、トリメチルアルミニウム(TMA)、トリメチルガリウム(TMG)、及び硫黄(S)を含むガス種は反応器600及び反応器700に流入し、1~10リットル/分、11~20リットル/分、21~30リットル/分、31~40リットル/分、41~50リットル/分、51~60リットル/分、61~70リットル/分、71~80リットル/分、81~90リットル/分、91~100リットル/分、101~200リットル/分、または201~530リットル/分のうちの1つのシリコン源流量を提供し得、高流量は、FLGナノプレートレット316A及び316Bへの添加剤のより厚い被覆を可能にし得る。
・シリカを含む添加剤は、メタンガスの流量の約1%~75%の割合で、反応器600及び反応器700に流入し、及び/または粒子形状で分散され得る。
・添加剤は、加速イオン化粒子660を被覆及び/または装飾するように構成され得る。
・炭素含有ガラス材料650の好ましい化学的性質は、約0.1%~5%の添加剤と、約65%~99%のシリカとを含み、残りの部分は炭素含有材料(FLGナノプレートレット等)に起因し得る。
・反応器600及び反応器700は、可視周波数スペクトルにわたって炭素含有ガラス材料650の部分の光透過率が少なくとも96%を達成するように、及び/または炭素含有ガラス材料650の屈折率を調整するように調整され得る。
・グラフェンが概してニュートラルな光透過密度を示すことを考慮すると、炭素含有ガラス材料650の均一な着色が提供される。
【0074】
図8Aは、いくつかの実施態様による、ガラス材料を補強するための操作800の例を示すフローチャートを示す。様々な実施態様では、操作800は、(限定ではないが)図6の反応器600または図7の反応器700等の反応室で行われ得る。他の実施態様では、操作800は、別の適切な反応室または化学処理装置で行われ得る。いくつかの実施態様では、例えば、図1図7のうちの1つ以上を参照して説明したように、操作800を使用して、表面/空気接触面と、表面/空気接触面から、表面/空気接触面に直交する方向に沿って、炭素含有ガラス材料の深さまで延在する相間領域とを含む炭素含有ガラス材料に粒子を注入し得る。いくつかの態様では、操作800はブロック802で始まり、複数の正荷電ガス粒子及び複数のイオン化不活性ガス粒子を含む非熱平衡プラズマを、反応室に供給する。操作800はブロック804に進み、非熱平衡プラズマへの外部電位の印加に基づいて、反応室を通る少なくとも複数の正荷電ガス粒子を加速する。操作800はブロック806に進み、炭素含有ガラス材料の表面/空気接触面に、加速された正荷電ガス粒子及びイオン化不活性ガス粒子による衝撃を与える。操作800はブロック808に進み、加速された正荷電ガス粒子及びイオン化不活性ガス粒子による衝撃に応答して、炭素含有ガラス材料に相間領域を形成し、相間領域は複数のボイドが形成され、表面/空気接触面から、表面/空気接触面に直交する方向に沿って、炭素含有ガラス材料の深さまで延在する。操作800はブロック810に進み、少なくともイオン化不活性ガス粒子による衝撃に応答して、炭素含有ガラス材料に圧縮応力層を形成し、圧縮応力層は、相間領域と、炭素含有ガラス材料の表面/空気接触面との間に配置される。
【0075】
様々な実施態様では、炭素含有ガラス材料は、ケイ酸塩ガラス、ソーダ石灰ガラス、アルカリアルミノケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス、またはそれらの任意の組み合わせを含み得る。いくつかの実施態様では、アルカリアルミノケイ酸ガラスは、約57%~60%のSiO、約10%~25%のAl、及び約10%のアルカリ土類金属から成る。
【0076】
いくつかの実施態様では、外部電位は、正荷電ガス粒子を加速するように構成され得る。加えて、または代替では、非熱平衡プラズマはまた固有電位も含み得る。いくつかの態様では、非熱平衡プラズマに固有の電位は、外部電位が反応室に印加されることなく、FLGナノプレートレットの少なくとも一部を相間領域に注入するのに十分であり得る。様々な実施態様では、衝撃により、複数のマイクロクラックまたはマイクロボイドが、炭素含有ガラス材料の1つ以上の部分に形成され得る。
【0077】
図8Bは、いくつかの実施態様による、ガラス材料を補強するための例示的なプロセス820を示すフローチャートを示す。様々な実施態様では、操作820は、図8Aのブロック806において、加速された正荷電ガス粒子及びイオン化不活性ガス粒子により表面/空気接触面に衝撃を与えた後に行われ得る。他の実施態様では、操作820は、図8Aのブロック810で圧縮応力層を形成すると同時に行われ得る。例えば、操作820はブロック822で始まり、加速された正荷電ガス粒子及びイオン化不活性ガス粒子によって表面/空気接触面に衝撃を与えると同時に、非熱平衡プラズマから分離された複数の炭素系ラジカルを炭素含有ガラス材料の相間領域に注入する。操作820はブロック824に進み、複数の炭素系ラジカルの再結合及び/または自己核生成に基づいて、炭素含有ガラス材料の相間領域内に複数の数層グラフェン(FLG)ナノプレートレットを形成する。いくつかの実施態様では、炭素系ラジカルは、1つ以上の様々な入射角で相間領域に注入され得る。
【0078】
様々な実施態様では、表面/空気接触面に近接する相間領域の上部は、FLGナノプレートレットの濃度が比較的高くなり、表面/空気接触面の遠位にある相間領域の下部は、FLGナノプレートレットの濃度が比較的低くなる。いくつかの実施態様では、表面/空気接触面に近接する相間領域の上部のFLGナノプレートレットは約20ナノメートル(nm)のサイズを有し、表面/空気接触面の遠位にある相間領域の下部のFLGナノプレートレットは約2nmのサイズを有する。相間領域の下部のFLGナノプレートレットは、相間領域の下部の平面全体に均一に分布され得る。一実施態様では、相間領域の上部と下部との間に位置付けられた相間領域の勾配部分に形成されたFLGナノプレートレットは、相間領域の深さに向かう方向に沿ってサイズが徐々に減少する。いくつかの態様では、各FLGナノプレートレットは、3層~5層のグラフェンを含み得る。他の態様では、FLGナノプレートレットは、炭素含有ガラス材料の2%未満の合計重量を有し得る。
【0079】
図8Cは、いくつかの実施態様による、ガラス材料を補強するための例示的なプロセス830を示すフローチャートを示す。様々な実施態様では、操作830は、図8Aのブロック806において、加速された正荷電ガス粒子及びイオン化不活性ガス粒子により表面/空気接触面に衝撃を与えた後に行われ得る。他の実施態様では、操作830は、図8Aのブロック810で圧縮応力層を形成すると同時に行われ得る。例えば、操作830はブロック832で始まり、各FLGナノプレートレット内の隣接するグラフェン層の間に添加剤をインターカレートする。場合によっては、添加剤は、アルカリ金属(リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、フッ素、または臭素等)、遷移金属(銅または鉄等)、またはそれらの任意の組み合わせを含み得る。他の例では、添加剤は、リチウム、ニッケル、マンガン、銅、トリメチルアルミニウム(TMA)、トリメチルガリウム(TMG)、硫黄、またはそれらの任意の組み合わせを含み得る。
【0080】
様々な実施態様では、相間領域の上部内にあるFLGナノプレートレットにインターカレートされた添加剤の第1の部分は約50%のモル分率を有し、相間領域の下部内にあるFLGナノプレートレットにインターカレートされた添加剤の第2の部分は約2%のモル分率を有する。いくつかの実施態様では、第1の部分と第2の部分との間の相間領域のエリアに注入された添加剤の他の部分は、相間領域の深さに向かう方向に沿って徐々に減少するモル分率を有する。
【0081】
様々な実施態様では、添加剤は、周囲空気への添加剤の曝露に基づいて、炭素含有ガラス材料を自己修復するように構成される。例えば、添加剤は、周囲空気に曝露すると酸化し、周囲空気への曝露に基づいて酸化添加剤(酸化金属等)を形成できる。酸化添加剤は、炭素含有ガラス材料に形成されたマイクロクラック及び/またはマイクロボイドに広がり得る。酸化添加剤は、また、炭素含有ガラス材料に形成されたマイクロクラック及び/またはマイクロボイドの表面を被覆し得る。
【0082】
図9A及び図9Bは、いくつかの実施態様による、炭素含有ガラス材料を形成するための操作900の例を示すフローチャートを示す。様々な実施態様では、操作900は、(限定ではないが)図6の反応器600または図7の反応器700等の反応室で行われ得る。他の実施態様では、操作900は、別の適切な反応室または化学処理装置で行われ得る。いくつかの実施態様では、例えば、図1図7の1つ以上を参照して説明したように、操作900を使用して、表面/空気接触面を含む炭素含有ガラス材料に粒子を注入し得る。様々な実施態様では、操作900はブロック902で開始し、炭化水素ガス及びシランを反応器に流入させる。操作900はブロック904に進み、リチウム、ニッケル、マンガン、銅、トリメチルアルミニウム(TMA)、トリメチルガリウム(TMG)、または硫黄のうちの任意の1つ以上を含む添加剤を、反応器に提供する。操作900はブロック906に進み、マイクロ波エネルギーによる炭化水素ガス及びシランの励起に基づいて非熱平衡プラズマを生成し、非熱平衡プラズマは複数のメチルラジカルを含む。操作900はブロック908に進み、炭素含有ガラス材料の表面/空気接触面に少なくともメチルラジカルによるイオン衝撃を与え、イオン衝撃は、炭素含有ガラス材料中に相間領域を作成するように構成される。操作900はブロック910に進み、複数のメチルラジカルの再結合または自己核生成に基づいて、様々な濃度レベルで炭素含有ガラス材料の相間領域内に複数の数層グラフェン(FLG)ナノプレートレットを形成し、複数のFLGナノプレートレットは、炭素含有ガラス材料におけるクラック及び/または表面欠陥の形成または伝播を少なくとも部分的に抑制するように構成された非周期的配向で相間領域全体にわたって分散される。操作900はブロック912に進み、添加剤をFLGナノプレートレットの少なくとも一部の1つ以上の表面にドープする。操作900はブロック914に進み、炭素含有ガラス材料の相間領域内に形成されたFLGナノプレートレットの少なくとも一部の内部の隣接するグラフェン層の間に添加剤をインターカレートする。
【0083】
様々な実施態様では、ガラス材料は、ケイ酸塩ガラス、ソーダ石灰ガラス、アルカリアルミノケイ酸ガラス、またはホウケイ酸ガラスのうちの任意の1つ以上を含み得る。いくつかの実施態様では、アルカリアルミノケイ酸ガラスは、約57%~60%のSiO、約10%~25%のAl、及び約10%のアルカリ土類金属から成る。いくつかの他の実施態様では、シランは、シラン含有液体前駆体またはシランガスであり得る。一実施態様では、相間領域に形成されたFLGナノプレートレットは、炭素含有ガラス材料の2%未満の合計重量を有する。
【0084】
様々な実施態様では、相間領域は、表面/空気接触面から、炭素含有ガラス材料中の約1ミクロンの深さまで広がる。いくつかの実施態様では、複数のFLGナノプレートレットの密度は、表面/空気接触面から相間領域の深さまで延在する方向に沿って徐々に減少する。
【0085】
様々な実施態様では、表面/空気接触面に近接する相間領域の上部は、FLGナノプレートレットの濃度が比較的高くなり、表面/空気接触面の遠位にある相間領域の下部は、FLGナノプレートレットの濃度が比較的低くなる。いくつかの実施態様では、相間領域の上部と下部との間に位置付けられた相間領域の勾配部分におけるFLGナノプレートレットは、相間領域の深さに向かう方向に沿ってサイズが徐々に減少する。いくつかの態様では、相間領域の下部のFLGナノプレートレットは、相間領域の下部の平面全体に均一に分布する。
【0086】
いくつかの実施態様では、添加剤は、真空中または不活性雰囲気中での製造後の恒温処理中に、FLGナノプレートレットの隣接するグラフェン層の間にインターカレートされ得る。添加剤は、周囲空気への添加剤の曝露に基づいて、炭素含有ガラス材料を自己修復するように構成され得る。例えば、添加剤は、周囲空気への添加剤の暴露に基づいて酸化し、酸化添加剤を形成し得る。酸化添加剤は、炭素含有ガラス材料の1つ以上のクラック及び/または表面欠陥に広がり得、また、炭素含有ガラス材料のクラック及び/または表面欠陥の1つ以上の表面を被覆し得る。
【0087】
図10は、いくつかの実施態様による、炭素含有ガラス材料を形成するための操作1000の例を示すフローチャートを示す。様々な実施態様では、操作1000は、図9A及び図9Bの操作900の例の1つ以上のプロセスと同時に行われ得る。例えば、操作1000はブロック1002で始まり、相間領域にFLGナノプレートレットが形成される前に、炭素含有ガラス材料にマイクロクラック及び/またはマイクロボイドの形成を誘発する。いくつかの実施態様では、マイクロクラック及び/またはマイクロボイドは、ガラス材料の表面/空気接触面に、加速された荷電粒子及び/またはイオン化不活性ガス粒子による衝撃を与えることによって、ガラス材料に形成され得、それらの粒子は、ガラス材料の強度または破壊靱性を減少させることなく、ガラス材料に小さな裂け目、マイクロクラック、またはボイドを作成するのに十分な力で、表面/空気接触面に浸透できる及び/または表面/空気接触面に衝突できる。
【0088】
本明細書で使用されるとき、要素のリストの「~の少なくとも1つ(at least one of)」を指す語句は、単一の構成要素を含む、それらの要素の任意の組み合わせを指す。例として、「a、b、またはcの少なくとも1つ」は、a、b、c、a-b、a-c、b-c、及びa-b-cを対象として含むことを意図している。本明細書に開示される実施態様に関連して説明される様々な例示的なロジック、論理ブロック、モジュール、回路、及びアルゴリズムのプロセスは、電子ハードウェア、コンピューターソフトウェアとして、またはそれら両方の組み合わせとして実施され得る。ハードウェア及びソフトウェアの互換性は概して機能に関して説明されており、上記に説明した様々な例示的なコンポーネント、ブロック、モジュール、回路、及びプロセスで説明されている。そのような機能がハードウェアまたはソフトウェアとして実装されるかどうかは、特定のアプリケーション、及びシステム全体に対して課される設計制約によって決まる。
【0089】
本開示に説明される実施態様に対する様々な修正は、当業者にとって容易に明らかであり得、本明細書で定義される一般的な原理は、本開示の主旨または範囲から逸脱することなく他の実施態様に適用され得る。したがって、特許請求の範囲は本明細書に示される実施態様に限定されることが意図されないが、本開示、本明細書に開示される原理及び新規の特徴と一致する最も広い範囲が許容される。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図9A
図9B
図10
【国際調査報告】