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特表2023-537791光半透明の人工・合成皮革の一種とその調製方法、複合・合成皮革の一種、および自動車のインテリア
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-06
(54)【発明の名称】光半透明の人工・合成皮革の一種とその調製方法、複合・合成皮革の一種、および自動車のインテリア
(51)【国際特許分類】
   D06N 3/00 20060101AFI20230830BHJP
   B60R 13/02 20060101ALI20230830BHJP
【FI】
D06N3/00
B60R13/02 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2021517785
(86)(22)【出願日】2020-03-30
(85)【翻訳文提出日】2021-03-30
(86)【国際出願番号】 CN2020082141
(87)【国際公開番号】W WO2021195866
(87)【国際公開日】2021-10-07
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521102188
【氏名又は名称】カナディアン ジェネラル-タワー(チャンシュー)カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079980
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 伸行
(74)【代理人】
【識別番号】100167139
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ハオ チェン
(72)【発明者】
【氏名】チィァン グゥオ
(72)【発明者】
【氏名】ウェイフェン ソン
(72)【発明者】
【氏名】ジャンホン リュウ
(72)【発明者】
【氏名】シャオリン スン
(72)【発明者】
【氏名】マーク ローマス
【テーマコード(参考)】
3D023
4F055
【Fターム(参考)】
3D023BA01
3D023BE07
3D023BE12
3D023BE31
4F055AA01
4F055AA21
4F055BA10
4F055BA13
4F055BA19
4F055CA05
4F055DA13
4F055FA15
4F055GA26
(57)【要約】
【構成】本発明は、光半透明の人工・合成皮革、その調製方法、および自動車インテリア用の複合・合成皮革である。光半透明の人工・合成皮革は、表面処理剤層と多層ポリマー材料構造とからなる。多層ポリマー材料構造は、少なくとも、着色層である表皮層と、表皮層に取り付けられた表面処理剤層とを含む。光半透明の人工・合成皮革は遮光層をさらに含み、当該遮光層内には逆マスクまたは光透明のパターン付き構造が組み込まれている。遮光層は、それに隣接する多層ポリマー構造の2つのラミネートの間に配置される。本発明の光半透明人工・合成皮革では、遮光層は、それに隣接する多層ポリマー構造の2つのラミネートの間に直接配置され、当該遮光層には逆マスクパターンが埋め込まれている。光源は逆マスク構造を照らし、これにより、光半透明の人工・合成皮革表面上に逆マスクパターンを示すことができる。このように、人工・合成皮革表面の下に均一な照明を配置することで、光半透明の人工・合成皮革の表面に必要に応じて表面パターンを投影することができ、パターンを鮮明に表示することができる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面処理剤層と、
色素沈着層である表皮層と、前記表皮層に取り付けられた前記表面処理剤層と、を少なくとも含む多層ポリマー構造と、
逆マスクまたは光透過構造が組み込まれた遮光層であって、前記遮光層に隣接する前記多層ポリマー構造の2つのラミネートの間に配置された遮光層と、からなることを特徴とする光半透明の人工・合成皮革。
【請求項2】
前記多層ポリマー構造は、前記表皮層に取り付けられた支持層をさらに含み、
前記遮光層は、前記表皮層と前記支持層との間に配置される、請求項1に記載の光半透明の人工・合成皮革。
【請求項3】
前記多層ポリマー構造は、前記表皮層に取り付けられた接着層をさらに含み、
前記遮光層は、前記表皮層と前記接着層との間に配置される、請求項1に記載の光半透明の人工・合成皮革。
【請求項4】
前記多層ポリマー構造は、生地層と、前記表皮層に取り付けられた支持層と、前記生地層に取り付けられた接着層と、をさらに含み、
前記遮光層は、前記支持層と前記接着層との間に配置される、請求項1に記載の光半透明の人工・合成皮革。
【請求項5】
前記支持層は非発泡またはマイクロ発泡構造であり、
前記マイクロ発泡構造の発泡比は1.5以下である、請求項2または4に記載の光半透明の人工・合成皮革。
【請求項6】
前記遮光層は、前記遮光層に隣接する前記多層ポリマー構造の2つのラミネートのうちの一方の表面に印刷される、請求項1から5のいずれか1項に記載の光半透明の人工・合成皮革。
【請求項7】
前記印刷は、UV印刷、グラビア印刷、熱伝達プロセスおよびスクリーン印刷のいずれかの方法で行われる、請求項6に記載の光半透明の人工・合成皮革。
【請求項8】
前記印刷プロセスにおいて用いるスラリーは、主に、前記光半透明の人工・合成皮革を構成する主な材料と同一の材料を含む、請求項6および7のいずれか1項に記載の光半透明の人工・合成皮革。
【請求項9】
前記遮光層は、前記遮光層に隣接する前記多層ポリマー構造のポリマー材料層の全面を覆う、請求項1に記載の光半透明の人工・合成皮革。
【請求項10】
光半透明の人工・合成皮革を作成する方法(調製方法)であり、
多層ポリマー構造を形成するステップと、
表面処理剤層を形成するステップと、
遮光層を形成するステップと、
前記遮光層に隣接する多層ポリマー構造の2つのラミネートの間に前記遮光層を配置するステップと、
前記遮光層に逆マスクまたは光半透明構造を組み込むステップと、を含むことを特徴とする方法。
【請求項11】
前記遮光層の形成は、前記多層ポリマー構造の2つのラミネートのうちの一方の表面に前記遮光層を印刷するステップをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記印刷は、前記光半透明の人工・合成皮革を構成する主な材料と同一の材料を主に含むスラリーを前記印刷に用いるステップをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
表皮層スラリーを剥離紙に塗布して表皮層を生成するステップS20と、
前記表皮層の表面に前記遮光層を印刷するステップS30と、
前記遮光層の表面に支持層スラリーを塗布して支持層を作成するステップS40と、をさらに含む請求項10に記載の方法。
【請求項14】
カレンダリングによって支持層を形成するステップS300と、
支持層に遮光層を印刷することにより、前記支持層の表面上に前記遮光層を形成するステップS400と、
カレンダリングにより前記遮光層の表面上に表皮層を形成するステップS500と、をさらに含む請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記支持層は、非発泡加工によって加工、またはマイクロ発泡技術で加工し、前記マイクロ発泡技術の発泡比は1.5以下である、請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
互いに貼り付けられたラミネート層と、請求項1から9のいずれか1項に記載の光半透明の人工・合成皮革、と含む複合・合成皮革。
【請求項17】
前記ラミネート層は三次元スペーサ生地またはポリウレタンフォームで形成されており、前記三次元スペーサ生地の透過率は70%以上であり、
前記ポリウレタンフォームの透過率は8%から15%である、請求項16に記載の複合・合成皮革
【請求項18】
請求項1から9のいずれか1項に記載の光半透明の人工・合成皮革、または請求項16および17のいずれか1項に記載の複合・合成皮革を用いた自動車のインテリア。
【請求項19】
前記光半透明の人工・合成皮革または前記複合・合成皮革によって覆われた光源をさらに含み、光源から放出された光の一部は、前記光半透明の人工・合成皮革または前記複合・合成皮革に組み込まれた逆マスクまたは光透過構造を透過する、請求項18に記載の自動車のインテリア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工・合成皮革の技術分野に関する。特に、本発明は、光半透明の人工・合成皮革、光半透明の人工・合成皮革を作成する方法、複合・合成皮革、および光半透明の人工・合成皮革と複合・合成皮革とを取り入れた自動車のインテリアに関する。
【背景技術】
【0002】
人工・合成皮革は、見た目も手触りも革のようであり、革に取って代わることのできるプラスチック製品である。高い柔軟性と耐摩耗性を特徴として有する人工・合成皮革は、バッグの製造や自動車のインテリア装飾に広く使用することができる。
【0003】
自動車用のインテリア産業の発展に伴い、自動車のインテリアの雰囲気および人と車の相互作用に対する人々の要求はますます高くなっている。従来の人工・合成皮革は、その独特の材料特性により、光を遮断する効果があり、光を通すことができない。その結果、インテリアの透過率を高めるには、表面に穴を開ける必要がある。人工・合成皮革の表面に穴を開けると、光が人工・合成皮革を完全に透過することができる。しかしながら、特定のパターンを示す必要がある場合には、これに応じて下の光源の形状を変更する必要がある。例えば、S字型の光源は、図1に示すように、人工・合成皮革の表面にS字型パターンを示すことができる。人工・合成皮革の強度を確保するには、穴の密度が高くなり過ぎないようにする必要がある(これは形成されるパターンを曖昧にする可能性があるためである)。これにより、サイズの小さいパターンをうまく表示することができないなどのデメリットを回避することができる。加えて、人工・合成皮革には一定の厚みがあるため、実際の使用(例えば、自動車のインテリアでの使用)においては、通常、人工・合成皮革の底部に厚さ1~10mmの発泡体を設けて複合・合成皮革の手触り感を向上させる必要がある。光が複合・合成皮革の底部から上部に透過すると、光がさまざまな度合いで散乱し、光が遠くに散乱するほど散乱がより明らかになり、パターンが非常に曖昧になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本明細書に説明するように、従来技術の有する問題点に鑑みて、本発明の主な目的は、光半透明の人工・合成皮革、当該光半透明の人工・合成皮革を作成する方法(調製方法)、複合・合成皮革、および前記光半透明の人工・合成皮革および/または複合・合成皮革を取り入れた自動車のインテリアを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために、本発明は以下の技術スキームを採用する。第1の態様では、本発明は、表面処理剤層と多層ポリマー構造とを含む光半透明の人工・合成皮革である。多層ポリマー構造は、少なくとも着色層である表皮層を含む。当該表皮層には表面処理剤層が取り付けられている。また、光半透明の人工・合成皮革には遮光層も含まれており、その上に逆マスクまたは光透明構造が設けられている。当該遮光層は、多層ポリマー構造の2つの隣接するラミネートの間、または多層ポリマー構造の最も内側のラミネートの内側に貼り付けられる。
【0006】
本発明の好ましい実施形態では、多層ポリマー構造は、表皮層と当該表皮層に取り付けられた支持層とを含み、遮光層が当該表皮層と支持層との間に貼り付けられている。
【0007】
本発明の別の好ましい実施形態では、多層ポリマー構造は、表皮層と当該表皮層に取り付けられた接着層とを含み、遮光層が当該表皮層と接着層との間に貼り付けられている。
【0008】
本発明のさらに別の好ましい実施形態では、多層ポリマー構造は、表皮層と、当該表皮層に取り付けられた支持層と、当該支持層に取り付けられた接着層とを含み、遮光層が当該支持層と接着層との間に貼り付けられている。
【0009】
本発明の好ましい実施形態では、支持層は非発泡またはマイクロ発泡構造であり、マイクロ発泡構造の発泡比は1.5以下である。
【0010】
本発明の好ましい実施形態では、遮光層は、多層ポリマー構造の2つの隣接するラミネートの一方の表面に印刷される。
【0011】
本発明の好ましい実施形態では、印刷方法は、様々な印刷方法の1つであり、これには、例えば、UV印刷、グラビア印刷、熱伝達プロセス、スクリーン印刷などが含まれる。
【0012】
本発明の好ましい実施形態では、印刷プロセスで用いるスラリーの主要材料は、光半透明の人工・合成皮革の主要材料と同一である。
【0013】
本発明の好ましい実施形態では、遮光層は、隣接するポリマー材料層の全面を覆う。
【0014】
本発明の好ましい実施形態では、多層ポリマー構造は、接着層と、支持層の内側に設けられたベース生地層とをさらに含み、遮光層は、表皮層と支持層の間、支持層と接着層の間、接着層とベース生地層の間、またはベース生地層の内側に貼り付けられる。
【0015】
第2の態様では、本発明は、光半透明の人工・合成皮革を作成する方法(調製方法)である。当該調製方法は、多層ポリマー構造をフォーマットするステップと、表面処理剤層を形成するステップと、を含む。また、調製方法は、遮光層を形成するステップを含み、これにより多層ポリマー構造の2つの隣接するラミネートの間に遮光層が形成され、当該遮光層上に逆マスクまたは光半透明構造が作成される。
【0016】
本発明の好ましい実施形態では、遮光層の形成は、調製した遮光層を、多層ポリマー構造の2つの隣接するラミネートの一方の表面に印刷するステップを含む。
【0017】
本発明の好ましい実施形態では、遮光層スラリーの主要材料は、光半透明の人工・合成皮革の主要材料と同一である。
【0018】
本発明の好ましい実施形態では、調製方法は、以下のステップを含む。
ステップS20:表皮層スラリーを剥離紙に塗布して表皮層を形成する。
ステップS30:表皮層の表面に遮光層を印刷して遮光層を形成する。
ステップS40:遮光層の表面に支持層スラリーを塗布して支持層を形成する。
【0019】
本発明の好ましい実施形態では、調製方法は、以下のステップを含む:
S300:カレンダリングによって支持層を形成する。

S400:印刷により支持層の表面上に遮光層を形成する。
S500:カレンダリングにより遮光層の表面上に表皮層を形成する。
【0020】
本発明の好ましい実施形態では、支持層は発泡技術で加工しない、またはマイクロ発泡技術で加工し、マイクロ発泡比は1.5以下である。
【0021】
第3の態様では、本発明は、互いに取り付けられたラミネート層と、本発明の実施形態の光半透明の人工・合成皮革と、を含む複合・合成皮革である。
【0022】
本発明の好ましい実施形態では、ラミネート層は三次元スペーサ生地またはポリウレタンフォームで形成されており、ここで、三次元スペーサ生地の透過率は70%以上であり、ポリウレタンフォームの透過率は8%から15%である。
【0023】
第4の態様では、本発明は、上述の光半透明の人工・合成皮革または上述の複合・合成皮革を用いた自動車のインテリアである。
【0024】
本発明の好ましい実施形態では、自動車のインテリアは、さらに、光半透明の人工・合成皮革または複合・合成皮革によって覆われたまたは目隠しされた光源を含む。これにより、光源から放射された光の一部は、光半透明の人工・合成皮革の逆マスクまたは光透過構造を透過することができる。
【0025】
本発明の一実施形態の光半透明の人工・合成皮革では、遮光層は多層ポリマー構造の2つの隣接するラミネート間に直接設けられ、当該遮光層に逆マスクまたは光半透明構造が設けられる。当該逆マスクまたは光半透明構造に光源を設けて、光半透明の人工・合成皮革に逆マスクパターンを示すことにより、特定の形状の光源を必要とすることなく、自由にパターンを表示することができる。本発明の別の実施形態では、遮光層を光半透明の人工・合成皮革に配置した後、当該遮光層は光半透明の人工・合成皮革の表面に非常に近くなる。これにより、光の散乱の発生が制限され、パターンが鮮明に表示される。光半透明の人工・合成皮革を三次元スペーサ生地やポリウレタンフォームなどのラミネート層に取り付けて複合構造を形成した場合であっても、パターン表示の鮮明さに影響はない。本発明のいくつかの実施形態では、遮光層が他の構造と接触するのを防ぐことができ、それによって遮光層を十分に保護することができる。遮光層を光半透明の人工・合成皮革の外側に接着する本発明の実施形態と比較した場合、遮光層が2つの隣接するラミネートの間に位置するこの構成は、遮光層が脱落したり、遮光層に結合された他の構造によって損傷したりするのを効果的に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
本発明の好ましい実施形態を、以下の図面を参照して説明する。当該図面には、以下が含まれる。
【0027】
図1】従来技術による光透過スキームを示す図である。
図2】本発明の実施形態に係る光半透明の人工・合成皮革の層を含む遮光層の構造図を示す図である。
図3】本発明の実施形態に係る光半透明の人工・合成皮革の光透過スキームを示す図である。
図4】本発明の実施形態に係る光半透明の人工・合成皮革の光透過スキームを示す図である。
図5】本発明の実施形態に係る光半透明の人工・合成皮革の構造図を示す図である。
図6】本発明の実施形態に係る光半透明の人工・合成皮革の構造図を示す図である。
図7】本発明の実施形態に係る光半透明の人工・合成皮革を作成する方法のフローチャートを示す図である。
図8】本発明の実施形態に係る光半透明の人工・合成皮革を作成する方法のフローチャートを示す図である。
図9】本発明の実施形態に係る光半透明の人工・合成皮革を作成する方法のフローチャートを示す図である。
図10】本発明の実施形態に係る光半透明の人工・合成皮革を作成する方法のフローチャートを示す図である。
【0028】
添付の図面では、以下の構成要素には以下の通り参照番号を付す。
表面処理剤層100
表皮層200
支持層300
接着層400
ベース生地500
遮光層600
逆マスク構造601
光源700
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明を様々な実施形態に基づいて以下に説明するが、本明細書に列挙するもの以外にも多くの本発明の実施形態が存在するものとする。本明細書における本発明の詳細な説明では、一部の特定の特徴のみを具体的かつ詳細に説明するものとする。本発明の本質についての混乱を回避するために、当技術分野において周知の方法、プロセス、手順、または構成要素は、本明細書においては詳細に説明しない。
【0030】
さらに、本明細書で参照する図面はすべて例示のみを目的としたものであり、すべての図面が必ずしも一定の縮尺で描画されているわけではないことは当業者には明らかである。
【0031】
別途明示しない限り、あるいは文脈上指定しないかぎり、「有する」、「包含する」および「含む」などの語、ならびにこれらと同様の語や文言は、排他的または網羅的な語ではなく、包括的な語として解釈すべきものとする。すなわち、これらの語ならびに同様の語および文言は、「~を含むが、これに限定されるものではない」と解釈すべきものとする。
【0032】
本明細書中の本発明の説明における「第1の」および「第2の」という語は、説明の目的にのみ使用され、相対的な重要性を示したり示唆したりするものではない。さらに、本明細書中の本発明の説明における「いくつかの」、「複数の」などの語は、2つ以上を意味するものとする。
【0033】
本明細書の説明における「透過率」の試験方法は、ASTMインターナショナルのASTME1348に従うものとする。
【0034】
既存の従来技術による人工・合成皮革が直面する問題(具体的には、任意のパターンの透過率に利用する成形光源の要件の問題、および透過率のパターンが不明瞭なパターンになるという問題)に鑑みて、本発明はこれらの問題を解決するものである。本発明は、多層ポリマー構造と、最も外側のポリマー材料層を覆う表面処理剤層100と、を含む光半透明の人工・合成皮革である。光半透明の人工・合成皮革はさらに遮光層600を含む。図2に示すように、逆マスク構造601は遮光層600に組み込まれてパターンを形成する。表面処理剤層100の厚さは薄いため、遮光層600を表面処理剤層100と多層ポリマー構造の間に貼り付けた場合、遮光層600の色が露出する。したがって、遮光層600は、多層ポリマー構造の2つのラミネートの間に、これらのラミネートに隣接して設けられる。遮光層600は、逆マスク構造601でのみ光半透明であり、光が逆マスク構造601を照らした場合、光半透明の人工・合成皮革の表面上にパターンが形成される。このパターンは、光源が特定の形状を有さない場合であっても表示することができる。さらに、遮光層600を光半透明の人工・合成皮革内に配置する本発明の実施形態では、遮光層600が光半透明の人工・合成皮革の表面に非常に近くなり、その結果、光の散乱が実質的に発生しないという利点があり、これによりパターンが非常に鮮明に表示される。三次元スペーサ生地やポリウレタンフォームなどの緩衝層に光半透明の人工・合成皮革を取り付けて複合構造を形成した場合でも、パターンの鮮明さに影響はない。このような本発明の実施形態の別の利点として、遮光層600が他の構造に接触するのを防ぐことができ、その結果、遮光層600を十分に保護することができる。これは、遮光層を光半透明の人工・合成皮革内に配置することによって、遮光層600を効果的に保護し、遮光層600が摩耗するのを防ぐことができる、あるいは遮光層600に結合された他の構造によって破損するのを防止することができるため、遮光層を人工・合成皮革の外側に設ける場合と比較して特に有益である。
【0035】
例えば、図2に示すように、遮光層600上のメッシュライン領域は遮光性であり、白色の領域(S字型逆マスク構造)は光半透明である。このため、光半透明の人工・合成皮革の表面に非常に鮮明なS字型のパターンを表示することができる。
【0036】
本発明の実施形態では、遮光層600上に逆マスク構造601が存在しない場合でも、光半透明構造を遮光層600に組み込んでパターンを形成するなどしてパターンを形成することができる。例えば、半透明性の材料を所望のパターン領域に設け、一方で、遮光(不透明)性の材料を別の位置に設けることができる。
【0037】
多層ポリマー構造は、少なくとも表皮層200と、接着層400および/または支持層300とを含む。表皮層200は着色層であり、表面処理剤100が表皮層200に用いられる。この構成によれば、光がオフの場合には光半透明の人工・合成皮革は通常通りに見え、光をオンにした場合に光半透明の人工・合成皮革の表面上にパターンが現れる。表皮層200の生成に用いる着色剤中の顔料の含有量を下げて顔料を着色剤内でより広く分散させることもできる。しかしながら、これは色カバー効果が影響を受ける可能性がある。したがって、本発明の実施形態では、表皮層200の生成に用いるスラリー内の顔料の粒度は、0.5~10nmなどのナノサイズであることが好ましい。これにより、顔料の含有量が比較的多くても、透過率に影響を与えることなく、効果的な色カバーを実現することができる。
【0038】
さらに、発泡は人工・合成皮革の透過率に影響を及ぼす可能性があるため、支持層300は非発泡またはマイクロ発泡構造で作成し、この場合の任意のマイクロ発泡構造の発泡比は1.5以下とすることが好ましい。
【0039】
本発明の一実施形態では、図3に示すように、多層ポリマー構造は、ラミネートとして規則性を有して配置された表皮層200、支持層300および接着層400からなる。ベース生地500は、接着層400の内側に接近して配置される。ベース生地500は、高透過率のニット生地または不織生地であり、表皮層200は表面処理剤100で覆われ、遮光層600は、表皮層200と支持層300の間、または支持層300と接着層400の間に配置することができる。遮光層600を光半透明の人工・合成皮革の表面近傍に配置した場合、光の散乱のイメージングへの影響は小さくなり、光半透明の人工・合成皮革の表面上においてより鮮明にパターンが表示される。本発明の好ましい実施形態では、図5に示すように、遮光層600は、表皮層200と支持層300の間に配置される。
【0040】
本発明の別の実施形態では、図4に示すように、多層ポリマー構造は、表皮層200と支持層300を含み、当該表皮層200と支持層300の間に遮光層600が配置される。本発明のこの実施形態により、鮮明なパターンを形成および表示することができる。
【0041】
本発明のさらに別の実施形態では、多層ポリマー構造は、表皮層200と接着層400を含み、接着層400が表皮層200の内面に接近して配置され、遮光層600が表皮層200と接着層400の間に配置および貼付される。
【0042】
作成した遮光層600は、多層ポリマー構造の対応するラミネートに貼り付けることができる。遮光層600と多層ポリマー構造の接着性を向上させるには、遮光層600を、遮光層に隣接して配置された多層ポリマー構造の2つのラミネートのうちの一方の表面に印刷することが好ましい。例えば、遮光層600を表皮層200と支持層300の間に貼付および配置すると、遮光層600は、表皮層200または支持層300の表面に印刷される。当然ながら、多層ポリマー構造の2つのラミネート間に配置された遮光層600は、多層ポリマー構造の2つのラミネートのうちの一方の表面に印刷されることになる。印刷方法については、様々な種類の印刷方法を用いることができ、例えば、UV印刷、グラビア印刷、熱伝達プロセスおよびスクリーン印刷のうちの1つを用いてもよい。従来技術に対する本発明の実施形態の利点として、印刷方法は、多色グラデーションやトゥルーカラー表示などの単純なプロセスを含むことができる。一例として、UV印刷は、光透過構造を有する遮光層の印刷に特に適している。さらなる利点として、遮光層600と多層ポリマー構造の融合を向上させるために、遮光層600のスラリーは、光半透明の人工・合成皮革の主要材料と同一の主要材料で形成されている。例えば、光半透明の人工・合成皮革がPVC(ポリ塩化ビニル)皮革として形成されている場合、光半透明の人工・合成皮革の主要材料はPVC粉末である。したがって、そのような本発明の実施形態における遮光層600のスラリーの主要材料もPVC粉末である必要がある。このように、遮光層600のスラリーは、PVC粉末および遮光粉末を含む。本発明の別の実施形態では、遮光層600のスラリーの主要材料および光半透明の人工・合成皮革の主要材料は、他の1つまたは複数の材料であってもよく、例えば、CPE(塩素化ポリエチレン)、AA、PU(ポリウレタン)、シリカゲル、カーボンブラックのうちの1つまたは複数の材料であってもよい。
【0043】
また、遮光層600の位置も、本発明を作成するプロセスにおいて決定する必要がある。当該プロセスを簡素化するために、この遮光層600に隣接する多層ポリマー構造のラミネートの全面を遮光層600で覆うことができる。例えば、本発明の実施形態では、遮光層600を多層ポリマー構造の全面に接着してもよい。
【0044】
さらに、本発明は、光半透明の人工・合成皮革を作成する方法である。光半透明の人工・合成皮革の作成方法は、多層ポリマー構造を形成し、表面処理剤層を形成し、遮光層を形成するステップを含む。さらに、遮光層に関するステップは、遮光層600層を隣接する多層ポリマー構造の2つのラミネート間に配置し、逆マスクまたは光半透明構造を遮光層上に作成してパターンを形成することを含む。
【0045】
さらに、表面処理剤層に関するステップは、表皮層の表面に表面処理剤を塗布することを含む。
【0046】
本発明の一実施形態では、遮光層600に関するステップは、遮光層を調製し、次に遮光層を多層ポリマー構造の対応するラミネートの表面に取り付けるステップを含んでもよい。本発明の好ましい実施形態では、遮光層600と多層ポリマー構造の接着を向上させるために、遮光層600が多層ポリマー構造の表面に印刷される。印刷は、例えば、UV印刷、グラビア印刷、熱伝達プロセスまたはスクリーン印刷のいずれかによって多層ポリマー構造の表面上に行われる。そのような遮光層の印刷は、調製した遮光層を多層ポリマー構造の2つのポリマー材料層のうちの一方の表面に印刷するステップを含んでもよい。本発明の実施形態によるこの印刷の利点は、単純なプロセス、多色グラデーションおよびトゥルーカラー表示を特徴とする点である。本発明の実施形態では、UV印刷は、光透過構造で作成した遮光層の印刷に特に適している。
【0047】
本発明の別の好ましい実施形態では、遮光層600と多層ポリマー構造の融合を向上させるために、遮光層600のスラリーは、光半透明の人工・合成皮革の主要材料と同一の主要材料で作られている。例えば、光半透明の人工・合成皮革がPVC人工・合成皮革である本発明の実施形態では、半透明の人工・合成皮革の主要材料はPVC粉末である。本発明のこの実施形態によれば、遮光層用のスラリーの主要材料もPVC粉末である。したがって、遮光層用のスラリーは、PVC粉末および遮光粉末を含む。本発明の別の実施形態では、遮光層用のスラリーの主要材料および光半透明人工・合成皮革の主要材料は、1つまたは複数の他の材料であってもよく、例えば、CPE、AA、PU、シリカゲルおよびカーボンブラックなどのうちの1つまたは複数であってもよい。
【0048】
多層ポリマー構造の作成は、多層ポリマー構造のすべてのラミネートを作成するために必要なステップからなる。例えば、多層ポリマー構造のラミネートはすべて剥離紙コーティング法またはカレンダリング法によって作成することができる。多層ポリマー構造が、ラミネートとして規則性を有して配置された表皮層、支持層および接着層からなる本発明の一実施形態では、多層ポリマー構造の作成は、当該接着層、支持層および表皮層を作成するステップからなる。多層ポリマー構造が表皮層および支持層のみからなる本発明の一実施形態では、多層ポリマー構造の作成は、当該表皮層と支持層を作成するステップからなる。多層ポリマー構造が表皮層および接着層のみからなる本発明の一実施形態では、多層ポリマー構造の作成は、表皮層を作成し、接着層を作成する工程からなる。そのような実施形態では、表皮層および接着層を作成するとともに、遮光層も作成する。光の散乱がイメージングに及ぼす影響が減少するとともに、遮光層600が光半透明の人工・合成皮革の表面のより近くに位置するため、光半透明の人工・合成皮革の表面上により鮮明なパターンが表示される。本発明の好ましい実施形態では、表皮層および支持層を作成するとともに、遮光層も作成する。
【0049】
例えば、多層ポリマー構造が(図6に示すように)表皮層と支持層のみからなる場合、図7に示すように、以下のステップを含む剥離紙コーティング方法を実行することができる:
ステップS10:スラリーを調製するステップであり、光半透明の表皮層スラリー、支持層スラリーおよび遮光層スラリーを調製するステップ。
ステップS20:表皮層を形成するステップであり、表皮層スラリーを剥離紙に塗布して表皮層を形成するステップ。
ステップS30:遮光層を形成するステップであり、表皮層の表面上に遮光層スラリーを印刷するステップ。
ステップS40:支持層を形成するステップであり、支持層スラリーを遮光層に塗布して支持層を形成するステップ。
ステップS70:形成した各層を剥離紙から分離するステップ。
ステップS80:処理剤層を形成するステップであり、表皮層の表面に処理剤を塗布し、次に表皮層の表面をエンボス加工して光半透明の人工・合成皮革を作成するステップ。
【0050】
図8に示すように、本発明の別の実施形態では、カレンダリング方法は、以下のステップを含んで実行することができる:
ステップS100:スラリーを調製するステップであり、光半透明の表皮層スラリー、支持層スラリーおよび遮光層スラリーを調製するステップ。
ステップS300:支持層を形成するステップであり、支持層粉末をカレンダリングして支持層を形成するステップ。
ステップS400:遮光層を形成するステップであり、支持層の支持体上に遮光層スラリーを印刷するステップ。
ステップS500:表皮層を形成するステップであり、遮光層上で表皮層粉末をカレンダリングして表皮層を形成するステップ。
ステップS600:処理剤層を形成するステップであり、表皮層の表面に表面処理剤を塗布し、次に表皮層の表面をエンボス加工して光半透明の人工・合成皮革を作成するステップ。
【0051】
多層ポリマー構造が(図5に示すように)表皮層、支持層および接着層からなる本発明の実施形態では、図9に示すように、剥離紙コーティング法は以下のステップを含んで実行することができる:
ステップS10:スラリーを調製するステップであり、光半透明の表皮層スラリー、支持層スラリー、接着層スラリーおよび遮光層スラリーを調製するステップ。
ステップS20:表皮層を形成するステップであり、表皮層スラリーを剥離紙に塗布して表皮層を形成するステップ。
ステップS30:遮光層を形成するステップであり、表皮層の表面上に遮光層スラリーを印刷するステップ。
ステップS40:支持層を形成するステップであり、支持層スラリーを遮光層に塗布して支持層を形成するステップ。
ステップS50:接着層を形成するステップであり、接着層スラリーを支持層に塗布して接着層を形成するステップ。
ステップS60:ベース生地を接着層に貼り付けるステップ。
ステップS70:形成した各層を剥離紙から分離するステップ。
ステップS80:処理剤層を形成するステップであり、表皮層の表面に処理剤を塗布し、次に表皮層の表面をエンボス加工して光半透明の人工・合成皮革を作成するステップ。
【0052】
図10に示すように、本発明の別の実施形態において、カレンダリング方法は、以下のステップを含んで実行することができる:
ステップS100:スラリーを調製するステップであり、光半透明の表皮層スラリー、支持層スラリー、接着層スラリーおよび遮光層スラリーを調製するステップ。
ステップS200:接着層を形成するステップであり、ベース生地に接着層スラリーを塗布して接着層を形成するステップ。
ステップS300:支持層を形成するステップであり、接着層上で支持層スラリーをカレンダリングして支持層を形成するステップ。
ステップS400:遮光層を形成するステップであり、支持層の支持体上に遮光層スラリーを印刷するステップ。
ステップS500:表皮層を形成するステップであり、遮光層上で表皮層粉末をカレンダリングして表皮層を形成するステップ。
ステップS600:処理剤層を形成するステップであり、表皮層の表面に表面処理剤を塗布し、次に表皮層の表面をエンボス加工して光半透明の人工・合成皮革を作成するステップ。
【0053】
図11に示すように、カレンダリング/キャスティング方法は、本発明の別の実施形態において、以下のステップを含んで実行することができる:
ステップS100:スラリーを調製するステップであり、光半透明の表皮層スラリー、支持層スラリー、接着層スラリー、および遮光層スラリーを調製するステップ。
ステップS200:表皮層を形成するステップであり、表皮層をカレンダリングするステップ。
ステップS300:遮光層を形成するステップであり、表皮層に遮光層スラリーを印刷するステップ。
ステップS400:処理剤層を形成するステップであり、表皮層の表面に表面処理剤を塗布するステップ。
ステップS500:支持層と接着層を形成するステップであり、支持層スラリーをキャストして支持層を形成し、接着層スラリーを支持層上にキャストするステップ。
ステップS600:生地層を張り付けるステップであり、生地層を接着層に貼り付けるステップ。
ステップS700:複合構造を形成するステップであり、支持層、接着層および生地層で形成された構造に表皮層を塗布し、表皮層の表面をエンボス加工して光半透明の人工・合成皮革を作成するステップ。
【0054】
発泡は人工・合成皮革の透過率に影響を与えるため、本発明の好ましい実施形態では、支持層は発泡技術で加工しない、またはマイクロ発泡技術で加工し、そのマイクロ発泡技術のマイクロ発泡比は1.5以下である。支持層の発泡加工を行わない本発明の実施形態では、支持層の原材料中に発泡剤は存在しない。一方、支持層の発泡加工を行う本発明の実施形態では、支持層の原材料には、発泡比が1.5以下になるように少量の(微量の)発泡剤が含まれている。
【0055】
本発明の一実施形態は、複合・合成皮革である。図示するように、複合・合成皮革は、互いに取り付けられた緩衝層と、本明細書に説明した光半透明の人工・合成皮革とを含む。複合・合成皮革では、緩衝層は、光透過率が70%以上である三次元スペーサ生地で形成することができる。光半透明の人工・合成皮革が表皮層、支持層、接着層、およびベース生地からなる本発明の実施形態の場合、そのように作成した複合・合成皮革の透過率は、評価方法に応じて最大8%~15%に達する可能性がある。光半透明の人工・合成皮革が、表皮層、支持層および接着層からなり、三次元スペーサ生地を接着層に取り付けた本発明の実施形態では、そのように作成した複合・合成皮革の透過率は、最大9%~17%に達する可能性がある。光半透明の人工・合成皮革が表皮層と支持層からなり、支持層を半透明の接着剤によって三次元スペーサ生地に結合した本発明の実施形態では、そのように作成した複合・合成皮革の透過率は、最大10%~18%に達する可能性がある。また、本発明の実施形態では、緩衝層は約8%~15%の光透過率を有するポリウレタンフォームから形成することもできる。従来技術では、ポリウレタンフォームは、火炎または接着剤ラミネート技術によって人工・合成皮革に結合される。しかしながら、この結合モードでは複合・合成皮革の全体的な透過率に影響があるため、本発明の実施形態では、ポリウレタンフォームは、結合技術によって光半透明の人工・合成皮革に結合する。これにより、光半透明の人工・合成皮革が、表皮層、支持層、接着層、およびベース生地からなる本発明の実施形態では、そのように作成した複合・合成皮革の透過率が最大5%~11%に達する可能性がある。光半透明の人工・合成皮革が表皮層、支持層および接着層からなり、ポリウレタンフォームを接着層に取り付けた本発明の実施形態では、そのように作成した複合・合成皮革の透過率は、最大6%~12%に達する可能性がある。光半透明の人工・合成皮革が表皮層と支持層からなり、当該支持層を半透明の接着剤によって三次元スペーサ生地に結合した本発明の実施形態では、そのように作成した複合・合成皮革の透過率は、最大7%~13%に達する可能性がある。本発明の複合・合成皮革は、自動車のインテリアおよび他の目的に使用することができる。
【0056】
本発明の実施形態では、三次元スペーサ生地は、互いに平行で間隔を置いて配置した2つの生地層と、これらの2つの生地層を繋ぎ合わせる支持層とからなる。支持層は結合細糸で形成されている。三次元スペーサ生地の透過率を向上させるために、2つの生地層の一方のメッシュを他方の生地層のメッシュと位置合わせするように設定するか、または、メッシュのずれの度合いがメッシュのスパンサイズの最大値の30%を超えないようにする。両方の生地層のメッシュは、互いに位置合わせされ、またはほぼ位置合わせされ、ずれを最小限に抑えるように構成される。これは、より多くの光が三次元スペーサ生地を通過することができるようにするためのものである。2つの生地層の間の結合糸を「I」形状に配置し、当該結合糸を生地層に垂直な方向に見て最大限引き下げることで、より多くの光を透過させることができるようにする。結合糸のI字型の配置が三次元スペーサ生地の支持性能に影響を与えるのを防ぐために、支持層の厚さと結合糸とを同時に制限して三次元スペーサ生地の機械的特性を確保する。本発明の好ましい実施形態では、結合糸の直径に対する支持層の厚さの比は、6:55、より好ましくは18:20に設定する。
【0057】
光半透明の生地の透過率を改善するために、従来技術では、メッシュ密度が高すぎると光を厳しく遮断してしまうため、より多くの光が光半透明生地を透過できるようにするには、メッシュ密度を最小化する必要がある。しかしながら、本発明者は、メッシュ密度が極端に低い場合、光半透明生地の支持能力および弾性に深刻な影響を与えることを見出した。したがって、本発明者は、三次元スペーサ生地の支持能力および弾性を確保するには、生地糸400の厚さを増加させるか、またはメッシュの側面の全体的なの厚さを増加させる必要があることを見出した。この結果、光を当てた場合、メッシュの輪郭が人工・合成皮革の表面に浮かびやすくなり、見た目が悪くなる。また、本発明者は、透過率が向上すると、自動車のインテリアを快適に保つには、弾性および支持能力を確保しなければならないことを見出した。本発明の実施形態では、生地層内の生地糸および結合糸はすべて半透明または半透明のモノフィラメントで形成されている。メッシュの最大スパンサイズの生地糸の直径に対する比率は8:32であり、メッシュサイズは10メッシュを超えている。本発明のこのような実施形態により、三次元スペーサ生地の支持強度と機械的特性を確保すると同時に、高い透過率を達成することができる。
【0058】
本明細書に開示する光半透明の人工・合成皮革および複合・合成皮革は、自動車または車両のインテリア(自動車のインテリア)に用いることができる。半透明の人工・合成皮革は、センターコンソールやボタンなどに用いることができる。一方で、複合・合成皮革はシートやハンドルに用いることができる。
【0059】
自動車のインテリアは、光半透明の人工・合成皮革または複合・合成皮革によって覆われた、またはこれらの皮革に隣接する光源をさらに取り入れることもできる。例えば、光半透明の人工・合成皮革が車両のフレームを覆い、光源がフレームの内側に隣接して配置され、光が点灯して光半透明の人工・合成皮革または複合・合成皮革に向けられた場合、光源から放出された光の一部は、光半透明の人工・合成皮革または複合・合成皮革内に組み込まれた逆マスクまたは光半透明構造を透過することができる。本発明のこのような実施形態によれば、光がオンの場合に、逆マスク構造の形状を光半透明の人工・合成皮革の表面上に示すことができ、これにより鮮明なパターンを示すことができる。本発明は、(従来技術とは異なり)特定の形状の光源を必要としない構造を含む。その結果、例えば、パネル光源など、設置が容易であり、かつ従来技術に比べてコスト削減効果のある任意の構成の(特定の形状を有さない)光源を採用することができる。
【0060】
相互に相反する特徴がないという前提の下で、本明細書に開示する実施形態は、それぞれ自由に組み合わせることができる、または互いに重ね合わせることができることは、当業者には明らかである。
【0061】
本明細書に開示する実施形態は、例示的な実施形態を示すことのみを目的としており、限定を意図したものではない。当業者によってなされた上記の詳細の明らかなまたは均等な変形または置換は、本発明の基本原理から逸脱することなく、本発明の範囲および請求の範囲に含まれるものとする。
【符号の説明】
【0062】
100 表面処理剤層
200 表皮層
300 支持層
400 接着層
500 ベース生地
600 遮光層
601 逆マスク構造
700 光源
図1
図7
図8
図9
図10
図11
【図
【図
【図
【図
【図
【図
【図
【図
【図
【図
【国際調査報告】