(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-06
(54)【発明の名称】軟骨置換のための医療用インプラント及びそのようなインプラントの製造方法
(51)【国際特許分類】
A61F 2/38 20060101AFI20230830BHJP
A61F 2/46 20060101ALI20230830BHJP
A61L 31/06 20060101ALI20230830BHJP
A61L 31/02 20060101ALI20230830BHJP
A61L 31/18 20060101ALI20230830BHJP
A61L 31/14 20060101ALI20230830BHJP
【FI】
A61F2/38
A61F2/46
A61L31/06
A61L31/02
A61L31/18
A61L31/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022569556
(86)(22)【出願日】2021-05-28
(85)【翻訳文提出日】2023-01-06
(86)【国際出願番号】 EP2021064318
(87)【国際公開番号】W WO2021239932
(87)【国際公開日】2021-12-02
(32)【優先日】2020-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503220392
【氏名又は名称】ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ.
【氏名又は名称原語表記】DSM IP ASSETS B.V.
【住所又は居所原語表記】Het Overloon 1, NL-6411 TE Heerlen,Netherlands
(71)【出願人】
【識別番号】522444508
【氏名又は名称】マーストリヒト ウニヴェルシテール メディッシュ セントルム プラス
【氏名又は名称原語表記】MAASTRICHT UNIVERSITAIR MEDISCH CENTRUM+
(71)【出願人】
【識別番号】519003952
【氏名又は名称】テクニシェ ウニベルシテイト エイントホーフェン
【氏名又は名称原語表記】Technische Universiteit Eindhoven
(71)【出願人】
【識別番号】517079043
【氏名又は名称】マーストリヒト ユニバーシティー
【氏名又は名称原語表記】MAASTRICHT UNIVERSITY
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【氏名又は名称】野田 雅一
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(72)【発明者】
【氏名】オエベリング, ヘンドリック
(72)【発明者】
【氏名】ゲリッセン, フランシスカス, ウィルヘルムス, マリア
(72)【発明者】
【氏名】ティーズ, イェンス, クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】エマンズ, ピーター
(72)【発明者】
【氏名】ロス, アレックス, クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】ファン ドンケラール, コリヌス, コルネリス
(72)【発明者】
【氏名】アシク, エミン, エルカン
【テーマコード(参考)】
4C081
4C097
【Fターム(参考)】
4C081AC03
4C081BB01
4C081BB02
4C081BB09
4C081CA161
4C081CA181
4C081CA201
4C081CA211
4C081CF122
4C081DC03
4C081DC13
4C097AA07
4C097BB01
4C097BB04
4C097CC01
4C097DD02
4C097EE08
4C097EE09
4C097MM02
4C097MM03
4C097MM04
4C097SC07
(57)【要約】
本発明は、生体安定性熱可塑性ポリウレタン(TPU)と15~70質量%のジルコニアを含む無機粒子とを含むポリマー組成物を含む骨固定部を有する整形外科用インプラントに関する。この比較的剛性の固定部は、予め穿孔された骨孔にインプラントを挿入して、例えばX線又はMRI法で可視化することができる、骨に対する堅固で耐久性のある接続を形成することを可能にすることが見出された。熱可塑性ポリウレタン組成物は、好ましい特性を示し、インプラントの設計及び寸法決定の自由度、並びに射出成形のような一般的な技術を用いてインプラントを作製する自由度を提供する。特に、インプラントが、より柔軟なTPU組成物のようなポリウレタン-ジルコニア組成物に適合する弾性熱可塑性材料から作製された軟骨置換部を含む場合、インプラントは、2成分射出成形技術を用いて作製され得る。他の態様では、本発明は、多成分射出成形プロセスを用いて骨固定部を含む当該整形外科用インプラントを製造する方法に関する。本発明は更に、本発明の整形外科用インプラントを含む部品の外科用キット、及び整形外科手術における本発明のインプラント又は外科用キットの使用に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体安定性熱可塑性ポリウレタン(TPU)と15~70質量%のジルコニアを含む無機粒子とを含むポリマー組成物を含む骨固定部を有する整形外科用インプラント。
【請求項2】
前記TPUが50~90ShD、好ましくは60~85ShDの硬度を有する、請求項1に記載の整形外科用インプラント。
【請求項3】
前記TPUが、脂肪族ポリエーテル、脂肪族ポリエステル、脂肪族ポリカルボナート又はそれらの組み合わせをソフトブロックとして含み、好ましくは前記TPUが脂肪族ポリカルボナートを含む、請求項1又は2に記載の整形外科用インプラント。
【請求項4】
前記ジルコニア粒子が、0.03~10μm、好ましくは0.1~5μmの範囲の平均粒径を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の整形外科用インプラント。
【請求項5】
前記骨固定部が、少なくとも1μmの粗さRaを有する表面テクスチャを有する外面を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の整形外科用インプラント。
【請求項6】
前記骨固定部が、その表面に生物活性粒子又は生物活性コーティングを有し、好ましくは骨伝導特性を誘導するための生物活性セラミック粒子を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の整形外科用インプラント。
【請求項7】
前記インプラントが、弾性で耐摩耗性の生体適合性材料、好ましくは脂肪族ポリエーテル、脂肪族ポリエステル、脂肪族ポリカルボナート又はそれらの組み合わせをソフトブロックとして含む生体安定性TPUから作製された軟骨置換部を更に含み、より好ましくは前記TPUが脂肪族ポリカルボナートを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の整形外科用インプラント。
【請求項8】
前記TPUが55~100ShA、好ましくは70~90ShAの硬度を有する、請求項7に記載の整形外科用インプラント。
【請求項9】
前記TPUが平均2つの末端基を含み、好ましくは前記末端基が疎水性である、請求項7又は8に記載の整形外科用インプラント。
【請求項10】
前記インプラントの軟骨置換部が0.2~5mm、好ましくは0.8~3.4mmの厚さを有する、請求項7~9のいずれか一項に記載の整形外科用インプラント。
【請求項11】
前記軟骨置換部が、互いに直交する方向の2つの異なる半径によって特徴付けられる湾曲を有する輪郭形成された上面を有する、請求項7~10のいずれか一項に記載の整形外科用インプラント。
【請求項12】
前記インプラントが、骨固定部及び軟骨置換部を含み、前記骨固定部が、前記軟骨置換部と接触する表面を有し、前記表面が、高さ及び/又は深さ及び幅が0.05~3.0mmの突起及び/又はくぼみで構造化されている、請求項1~11のいずれか一項に記載の整形外科用インプラント。
【請求項13】
前記インプラントが、配向マーカ、好ましくは細長い放射線不透過性マーカを更に含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の整形外科用インプラント。
【請求項14】
多成分射出成形プロセスを用いて請求項1~13のいずれか一項に記載の整形外科用インプラントを製造する方法であって、生体安定性熱可塑性ポリウレタンと15~70質量%のジルコニアを含む無機粒子とを含むポリマー組成物を、前記軟骨置換部の形態のインサートを含む鋳型内に射出して、前記骨固定部を形成する工程と、その後、前記鋳型からインサートを除去する工程と、弾性の耐摩耗性の生体適合性材料を、前記ポリマー組成物が部分的に充填された前記鋳型内に射出して、前記軟骨置換部を形成する工程と、を含む、方法。
【請求項15】
請求項1~13のいずれか一項に記載の少なくとも1つの整形外科用インプラントを含む部品の外科用キットであって、好ましくは、前記キットが、異なるサイズを有する少なくとも2つのインプラントのセットを含み、任意選択的に、前記キットは、整形外科用インプラントを受け入れるためのインプラント位置を準備し、整形外科用インプラントを骨孔に挿入するための補助ツールを更に含む、外科用キット。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[技術分野]
開示された発明は、損傷した関節面のリサーフェシングに使用するための整形外科用インプラント、例えば軟骨置換装置、複合材料を含む骨固定部を有するインプラント、整形外科用インプラントの製造方法、そのようなインプラントを含む外科用キット、及び損傷した関節面のリサーフェシングにおけるインプラント及びキットの使用に関する。
【0002】
[背景]
整形外科用インプラントは、ヒト又は動物の筋骨格系に関与する状態に関する整形外科手術において使用される医療用インプラントである。この系は、身体の形態、安定性及び運動を提供し、身体の骨(骨格)、筋肉、軟骨、腱、靭帯、関節、及びその他の結合組織(組織及び器官を一緒に支持且つ結合する組織)を作り上げている。筋骨格系の主要な機能としては、身体を支持すること、運動を可能にすること、及び重要器官を保護することが挙げられる。ヒトの身体の関節及び筋骨格組織は、外傷、疾患及び変性プロセスを受ける可能性があり、これらは経時的に関節の劣化若しくは障害を引き起こすことがあり、重度の疼痛又は不動状態を惹起する。一般に、関節が無痛の関節接合を提供し、荷重を運搬する能力は、安定した接合部を提供する健常な骨、軟骨、及び関連する筋骨格組織の存在に依存する。本開示に関連して、整形外科手術は更に、ヒトの身体の様々な関節における運動を維持することにも関する。整形外科用インプラントとしては、部分又は完全人工関節形成術において使用されるデバイス、人工膝関節及び人工股関節、並びに骨軟骨用インプラントが挙げられる。整形外科用インプラントの例としては、人工軟骨及び腱のような、インプラントを固定するために適用される骨アンカー、プラグ及びスクリュー、半月板又は関節唇置換用デバイス、並びに軟骨置換用デバイスが挙げられる。
【0003】
軟骨は、それらが会合して関節を形成する場所である骨の末端の表面上の平滑な結合組織であり、骨を保護して衝撃を和らげ、全身を通して伝達される力を吸収する。軟骨は、関節の平滑な運動を可能にする弾性組織であるが、直接的な血液供給は行われないため、疲労若しくは外傷の症例では、自己治癒能力に限界がある。疼痛及び/又は不動性を惹起する頻回且つ重大な軟骨損傷は、大腿骨と脛骨との間に形成された関節内にある膝関節における関節軟骨への損傷である。長期に及ぶそのような初期の局所的欠陥は、もし未治療で放置されると、関節における軟骨の更なる変性及び損傷を引き起こし、人工関節を用いた、部分又は完全人工膝関節置換術手術(UKR/TKR、半/全人工膝関節置換術若しくはHKA/TKAとも呼ばれる)が必要になることがある。しかしながら、そのような全人工関節置換術では、大多数の人工関節は耐久性が限られており、引き続いて必要になる再置換術の手技に、より長い手術時間及び入院期間が伴うので、特に高齢患者においては合併症が誘発されることがある。TKRのような関節置換術を先延ばしにするため、及びその必要を回避さえするために、損傷した軟骨を局所的に置換し、それにより損傷部位に新規の平滑な関節表面を作り出すための、整形外科用インプラントが開発されてきた。そのようなインプラントは、軟骨プラグと呼ばれることが多い。
【0004】
骨軟骨構築物、軟骨置換用デバイス、又はリサーフェシングインプラントとも呼ばれるそのような公知の軟骨プラグは、典型的には、チタンなどの金属から製造される。しかしながら、金属製インプラントの使用は高い割合で再置換術を引き起こすが、これは金属と軟骨(下)骨及び軟骨組織との間の、剛性や変形性のような機械的特性における差が大きいことに関連する。数多くの刊行物において、天然及び/又は合成材料から製造された代替器具が記載又は提案されてきた。軟骨プラグは、円筒状又はマッシュルーム様の形態を有することが多く、少なくとも2つのパーツ、軟骨置換パーツ及び骨固定パーツを含み得る。軟骨置換パーツは、典型的には、天然軟骨の一部の特性を模倣する、可撓性で弾力的且つ耐摩耗性である生体適合性材料から製造されるが、他方、骨固定パーツは、金属を含むより剛性且つ硬い材料から製造されてよい。
【0005】
天然材料から軟骨プラグを製造するための1つのアプローチは、患者から骨及び軟骨(自家移植片(autogenous graft若しくはautograft))を採取し、同一種の遺伝的には似ていないドナー由来の組織(同種移植片(allograft若しくはhomograft))を使用することである。米国特許第5782835号明細書では、例えば、そのような同種移植片アプローチを実行するための装置及び方法が記載されている。しかしながら、そのような移植片の使用は、感染症又は疾患の伝播のリスクを提示する。
【0006】
又は、軟骨プラグのような整形外科用インプラントは、生分解性又は生体内安定性であり得る生体適合性ポリマーのような合成材料から製造することができる。合成ポリマーの使用は、ポリマーが極めて広範囲の特性を提供し、接触組織に損傷を生じさせることが少なく、磁性ではないために、MRIのような医療イメージング技術とより適合性であるので、金属製インプラントに比して利点を提示するであろう。
【0007】
米国特許出願公開第2008/0249632A1号明細書は、4つ以上の層を含む段付きショルダー形状を有し、移植されるプラグ及び周囲組織により良好な負荷を分布させ、望ましくない運動を低減することを目的とする、軟骨プラグについて記載している。プラグの異なる層は、数多くの天然及び合成材料から選択することができ、多孔性又は非多孔性であってよい、同一材料又は異なる材料から製造することができる。
【0008】
米国特許出願公開第2011/0218647A1号明細書は、親水性ポリマー、線維性充填剤及び40~80質量%の水を含有する、ヒドロゲルを含む軟骨プラグについて開示している。ポリマーは、好ましくは架橋ポリビニルアルコールである。このインプラントは、適正な取り付けのために開口部内への配置及びその後の拡張を可能にするための初期の圧縮を可能にする、0.75~50MPa、好ましくは23~30MPaのヤング弾性率を有するであろう。
【0009】
米国特許第6626945B2号明細書は、修復部位の生理学的要件に適合するように、積層構造に形成されている軟骨プラグについて記載している。このプラグは、円筒形状であってよく、1つに融合又は結合されている3種の材料から形成され得る。一実施形態では、移植後に軟骨下骨に最も近くなる第1層は、ショア硬度75ShDの生体内安定性の熱可塑性ポリウレタン(TPU)から製造される。インプラントの中間層は、硬度55ShDのTPUから製造されるが、他方移植されたプラグを取り囲む軟骨の表面に最も近い第3層は、硬度80ShAのTPUのような、より可撓性の材料又は熱可塑性ヒドロゲルから製造される。この最後の層は、連接型関節の外面での軟骨のタイプであるヒアリン軟骨の特性に類似する特性を示すと述べられており、75ShDの材料は、軟骨下骨に類似する弾性係数を有する。
【0010】
国際公開第2011/098473A1号パンフレットは、各々が異なる、しかし化学的に関連するポリマー材料を含む2つ以上の別個の区間を有するが、それらの区間が相互に、前記材料間の相互作用によって接触面で付着している、半月板若しくは脊椎円板インプラントのような整形外科用インプラントについて記載している。好ましくは、材料は、熱可塑性ポリウレタン(TPU)のようなブロックコポリマーから選択される。これらのインプラントは、多成分成形技術によって作成することができる。それぞれ最大で100MPa及び少なくとも101MPaの引張弾性率を有する2種の非再吸収性ポリマー材料から製造された異なるパーツを含む半月板補綴具は、国際公開第2015/0135907A1号パンフレットにも記載されている。実験では、ショア硬度80ShA及び75ShDを備えるTPU材料が使用された。この材料は、TPU及び25質量%までの硫酸バリウムのような放射線不透過性充填剤粒子を含むポリマー組成物であってよいと指示されている。
【0011】
中国特許第1215890号は、抗凝固特性を示し、縫合糸、カテーテル及びプロテーゼのような外科製品の製造に適したポリウレタン組成物を開示している。これらの組成物は、0.1~30質量%の酸化亜鉛、酸化チタン又は二酸化ジルコニウムナノ粒子を含み、粒子の80~99%が50nm未満のサイズを有する。
【0012】
国際公開第2007/007062A2号パンフレットでは、弾力性の層が固定相に結合しており、その固定パーツが、骨の内包成長を促進するカルシウムイオンを含有するアクリレート系ポリマーを含む骨セメント組成物から製造される、軟骨修復用インプラントが記載されている。
【0013】
米国特許出願公開第2008/0081061A1号パンフレットは、その中に分散しているセラミック粒子を有する生体適合性ポリマーをベースとする複合材料を含み、更に複合材料に完全に結合したセラミックフリーポリマーを更に含み得る整形外科用デバイスについて開示している。セラミック材料は、粒子又は繊維の形態にあってよく、ポリマーのように、広大なリストから選択することができる。一実施形態では、ポリマーは、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)であり、セラミックとしては、ハイドロキシアパタイト(HA)粒子が挙げられる。そのような複合パーツは、UHMWPE粉末を(任意選択によりコーティングされた)HA粒子と混合し、その混合物を圧縮成形することによって製造される。
【0014】
Gearyらは、Mater.Sci.Mater.Med(2008)19:3355-3363(DOI 10.1007/s10856-008-3472-8)において、市販で入手できるBionate(登録商標)ポリカーボネートウレタングレードのような熱可塑性ポリウレタンが、極めて優れた加水分解及び耐老化性を有すること;及び例えば罹患若しくは損傷した関節を置換する際に使用するためのデバイス、生体内(in vivo)生物医学デバイスを製造する際に使用するための好適な生体内安定性材料であることを記載している。溶融配合を介してそのようなポリウレタン内に炭素繊維又はヒドロキシアパタイト(HA)粒子を組み込むことは、ポリマー材料の機械的特性の改善を生じさせ得る。しかしながら、更に、そのような配合工程がポリマーの劣化を増強し、ポリマー組成物中のポリマーのモル質量の有意な低減を生じさせることも指摘されている。特にポリウレタンをHAと配合する場合には、前記の劣化は、射出成形のような溶融加工工程中においてより顕著になることが証明されている。炭素繊維とは対照的に、TPU及びHA粒子をベースとするポリウレタン組成物は、引張特性の改善を示さなかった。
【0015】
米国特許第2009/043398号には、交換プラグ等の関節面インプラントの製造方法が記載されており、密度、多孔性及び/又は濃度の勾配は、スピンキャスティングによる等、粘性材料に遠心力を加えることによってインプラントに作り出される。粘性材料は、ポリマーマトリックスと、その中に分散された粒子又は繊維と、を含む複合材料であってもよく、方法は、粒子又は繊維の濃度勾配、したがって剛性の勾配を有する物品をもたらす。
【0016】
米国特許第2004/0188011号は、炭素繊維強化ポリマーから作製され、軟質エラストマーポリウレタンベアリングライナを支持する剛性バッキングを含む人工装具ベアリング要素を作製する方法を開示しており、この方法では、ベアリングライナへのバッキングの接合を改善し、レーザ溶接によって達成され、すなわち、レーザ光を透明な軸受ライナに通過させて、ライナとレーザ不透明なバッキングとの界面で熱融着を生じさせる。
[発明の概要]
【0017】
文献には様々なアプローチが提案又は記載されているが、合成材料から作製された骨固定部及び軟骨置換部を含む整形外科用インプラントが依然として必要とされているようであり、このインプラントは、関節内の局所軟骨欠損の置換デバイスとしての耐久性のある解決策を提供することができ、一般的な医療技術を用いて移植中及び移植後にモニタリングすることができる。
【0018】
本開示の目的は、局所的に損傷を受けた軟骨組織の場合に関節のリサーフェシングに使用するためのそのような整形外科用インプラントを提供することを含み、インプラントは、骨組織への耐久性のある監視可能な接続を可能にする骨固定部を含む。
【0019】
本明細書で以下に記載され、特許請求の範囲で特徴付けられる本発明の態様及び実施形態は、骨組織に適合する良好な生体適合性及び機械的特性を示す骨固定部を有する外科用インプラント、X線及びMRI等の医療撮像技術を用いて移植中及び/又は移植後にモニタリングすることができる整形外科用インプラント、並びに当該インプラントを作製する方法に関する。したがって、本発明の一態様は、請求項1に記載の整形外科用インプラント、より具体的には、関節内の損傷軟骨組織を置換するための装置としての使用に適した整形外科用インプラントであって、生体安定性熱可塑性ポリウレタンと15~70質量%のジルコニアを含む無機粒子とを含むポリマー組成物を含む骨固定部を有する整形外科用インプラントである。
【0020】
開示された整形外科用インプラントは、軟骨置換プラグのように、実質的に円筒形又はキノコ状の形状を有することができ、少なくとも2つの部品を含むことができ、当該骨固定部及び軟骨置換部は、典型的には弾性及び耐摩耗性の生体適合性材料から作製される。ジルコニア粒子を含む当該TPU組成物を含むか又はそれから実質的に作製された場合の比較的剛性の固定部は、予め穿孔された骨孔にインプラントを挿入して周囲の骨組織への堅固で耐久性のある接続を形成することを可能にし、そのインプラント部及び骨へのその接続は、例えばX線又はMRI方法で経時的に視覚化又は監視することができることが分かった。熱可塑性ポリウレタン組成物は、好ましい結晶化挙動を示し、組成物の(機械的)特性は、例えばHA充填剤粒子に基づく同様の組成物の特性よりも良好である。熱可塑性ポリウレタン組成物を使用することの更なる利点は、インプラントの設計及び寸法決定の自由度、並びに(多成分)射出成形のような一般的な技術を用いてインプラントを作製することの自由度を含み、より複雑な形状も可能にする。特に、インプラントが、より柔軟な又は充填されていないTPU組成物のような、ポリウレタン-ジルコニア組成物に適合する熱可塑性材料から作製された軟骨置換部を含む場合、インプラントは、多成分射出成形技術を用いて作製されてもよく、これは、例えば接着剤成分を使用することなく、一般に骨固定部と軟骨置換部との間に十分な接着をもたらす比較的単純な方法である。
【0021】
他の態様では、本発明は、生体安定性熱可塑性ポリウレタンと15~70質量%のジルコニアを含む無機粒子とを含むポリマー組成物、及び当該組成物の製造方法に関する。
【0022】
更なる態様では、本発明は、骨固定部を含む当該整形外科用インプラントを製造する方法に関し、生体安定性熱可塑性ポリウレタンと15~70質量%のジルコニアを含む無機粒子とを含むポリマー組成物から骨固定部を成形する工程を含む多成分射出成形プロセスによってインプラントを形成することを含む。
【0023】
更なる態様では、本発明は、骨固定部及び軟骨置換部を含む整形外科用インプラントであって、骨固定部は剛性ポリマー組成物を含み、軟骨置換部と接触する骨固定部の表面は、0.05~3.0mmの突出及び/又はくぼみを有する等に構造化されている整形外科用インプラント、並びにそのような整形外科用インプラントの製造方法に関する。
【0024】
別の態様では、本発明は、本発明の少なくとも1つの整形外科用インプラントを含む部品の外科用キット、特に、異なるサイズを有する少なくとも2つのインプラントのセットを含むキットに関する。
【0025】
更なる態様は、哺乳動物の膝関節等、軟骨組織が局所的に変性又は損傷した関節のリサーフェシングにおける本発明の整形外科用インプラントの使用及び本発明の外科用キットの使用を含む。関節内の損傷軟骨を局所的に置換するためのそのような使用は、TKRのような全関節置換手術の必要性を遅延させ、場合によっては回避さえし得る。
【0026】
本発明は、以下の例示的な図面に限定されることなく、以下の例示的な図面によって更に説明される。図面において、同様の番号は同様の要素を表す。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】2つの部分からなる円筒形の軟骨プラグを概略的に示す図である。
【
図2A】キノコ状軟骨プラグを概略的に示す図である。
【
図2B】キノコ状軟骨プラグを概略的に示す図である。
【
図3】均一な厚さの二平面輪郭軟骨置換部2の一部を示す斜視図である。
【
図4】2つの「ステム」(3b’及び3b’’)を有する骨固定部を含むキノコ状プラグの断面図を概略的に示す図である。
【
図5A】2つの「ステム」を有する骨固定部と、外形表面を有する軟骨置換部とを備える軟骨プラグを示す概略図である。
【
図5B】2つの「ステム」を有する骨固定部と、外形表面を有する軟骨置換部とを備える軟骨プラグを示す概略図である。
【
図5C】2つの「ステム」を有する骨固定部と、外形表面を有する軟骨置換部とを備える軟骨プラグを示す概略図である。
【
図6A】骨固定部(3a及び3b)及び(透明な)軟骨置換部(2)を含む軟骨プラグの概略図を示し、3aの表面は滑らかである。
【
図6B】骨固定部(3a及び3b)及び(透明な)軟骨置換部(2)を含む軟骨プラグの概略図を示し、3aの表面は隆起部で構造化されている。
【
図6C】骨固定部(3a及び3b)及び(透明な)軟骨置換部(2)を含む軟骨プラグの概略図を示し、3aの表面は複数の小さな突起で構造化されている。
【
図7】3グレードのジルコニア上で測定した粒径分布を示す図である。
【
図8】無充填ポリウレタン上及び20、40及び60質量%のジルコニア(SA)を含有する対応するポリマー組成物上で得られたDSC曲線(加熱-冷却-再加熱)を表す図である。
【
図9】ヤギの膝関節に移植されてから6カ月後の、移植されたプラグM(金属)、U(無充填ポリウレタン)及びI(発明;ジルコニア充填ポリウレタン、BCPコーティング)についてのオッセオインテグレーション(骨性結合)の指標としての骨対インプラント接触率(BIC、%)のスコアリングを示すグラフである。
【
図10A】ヤギに移植されたプラグM、U及びI(6カ月後)から採取した組織学的切片の代表的な顕微鏡写真を示す図である。
【
図10B】ヤギに移植されたプラグM、U及びI(6カ月後)から採取した組織学的切片の代表的な顕微鏡写真を示す図である。
【
図10C】ヤギに移植されたプラグM、U及びI(6カ月後)から採取した組織学的切片の代表的な顕微鏡写真を示す図である。
【
図11】疑似手術関節と比較した(6及び12カ月後の)移植されたプラグM、I及びUを有する関節の対向する骨表面上の連接型軟骨の品質の修正Mankinスコア(MMS)の結果を示す図である。
【0028】
[詳細な説明]
本開示の状況内では、生体適合性材料は、生体組織と接触する時に毒性の、有害な、又は免疫学的応答を生じないことによって生物学的に適合性である。生分解性とは、材料が、生物学的手段によって、例えば酵素作用によって、生理学的条件下でより単純な成分への化学的分解又は変質を受けることを意味する。生体内安定性又は生体不活性は、材料が、生体組織と接触した場合に、意図された使用の条件及び時間において実質的に生分解性ではないことを意味する。
【0029】
一態様によれば、本発明は、整形外科用インプラント、例えば損傷軟骨組織の修復における使用に適した生体安定性インプラントを提供し、インプラントは、生体安定性熱可塑性ポリウレタンと15~70質量%のジルコニアを含む無機粒子とを含むポリマー組成物を含む骨固定部を有する。
【0030】
骨固定パーツ内のポリマー組成物は、生体内安定性の熱可塑性ポリウレタン(TPU)を含む。熱可塑性ポリウレタンは、本質的に線状ポリマー鎖を有し、良好な溶媒中では可溶性であり、温度を上昇させると溶融させることができ、その後に冷却すると再固化させることができ;例えば、押出成形又は射出成形を介する溶融加工を可能にする非架橋ポリウレタンである。熱可塑性ポリウレタンは、典型的には、ブロックコポリマーである(セグメント化コポリマーとも呼ばれる)。
【0031】
ブロックコポリマーは、化学的に別個であり、且つ異なる熱特性及び機械特性並びに異なる溶解度を示すポリマー(オリゴマーを含む)の複数のブロック(セグメントとも呼ばれる)を含むポリマーである。しばしば、2つ(又はそれ以上)の種類のブロックを含むブロックコポリマー中のブロックは、「ハード」及び「ソフト」ポリマーブロックと記載され、そのような(化学的に)異なるブロックは、ハード又はソフトいずれかのブロックが富裕であるドメインへのミクロ相分離をもたらす。ブロックコポリマー内のハードブロックは、典型的には、約35~40℃の、使用温度よりも高い溶融温度(Tm)若しくはガラス転移温度(Tg)を備える剛性若しくは高弾性のポリマーを含む。ブロックコポリマー内のソフトブロックは、一般に25℃未満、好ましくは0℃未満のTgを備える可撓性の低弾性非晶質ポリマーを含む。大多数の機械的特性に関しては、Tm及びTgのような熱パラメータは一般に、DSC若しくはDMAのような周知の技術を用いて、乾燥サンプル上で決定される。そのような相分離ブロックコポリマーでは、ハードセグメントは、可撓性のソフトセグメントのための物理的(及び非磁性の)架橋として機能し、及び例えばハードブロック対ソフトブロックの比率に依存して、非常に剛性であるものから可撓性で弾性のものまでの範囲の特性を有する材料が生じる。ハードブロックの種類及び含量に依存して、ポリウレタンブロックコポリマーは、化学的架橋を必要とすることなく、所望の温度範囲において良好な安定性及び弾性を示し得、及び熱可塑性物質として一般に処理され得る。熱可塑性ポリウレタンという用語は、基本的に、ジイソシアネート、ジオール連鎖延長剤及びポリマージオール又はマクログリコールである少なくとも3つの主成分の反応生成物を含む主鎖を有するポリマーの系統群を意味する。任意選択的に、単官能基化合物が、連鎖停止剤として機能し、且つ(非反応性)末端基を形成する更なる成分として使用されてもよい。実施形態では、本発明で適用されたポリウレタン若しくはTPUの主鎖は、実質的に線状である。
【0032】
実施形態では、TPUは、繰返し単位中に、ジイソシアネートの反応性連鎖延長剤としてのジオール及び任意選択的にジアミンとの反応から得られたウレタン基及び任意選択的に尿素基を含むハードブロックを含む。
【0033】
好適なジイソシアネートは、1分子あたり平均1.9~2.1個のイソシアネート基を有する芳香族、脂肪族及び脂環式化合物を含む。一実施形態では、ジイソシアネートは、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、2,4-トルエンジイソシアネート、2,6-トルエンジイソシアネート(TDI)、1,4-フェニレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、テトラメチレン-1,4-ジイソシアネート、シクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート(CHMDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)又はそれらの混合物を含む。一実施形態では、ジイソシアネートは、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン4,4’-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート又はそれらの混合物を含む。一実施形態では、ジイソシアネートは、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン4,4’-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート又はそれらの混合物からなる。別の実施形態では、ジイソシアネートは、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4-トルエンジイソシアネート、2,6-トルエンジイソシアネート又は1,4-フェニレンジイソシアネートを含む。一実施形態では、ジイソシアネートは、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4-トルエンジイソシアネート、2,6-トルエンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート又はそれらの混合物からなる。一実施形態では、ジイソシアネートのモル質量は、100~500g/molである。一実施形態では、ジイソシアネートのモル質量は、150~260g/molである。
【0034】
連鎖延長剤は、典型的には2個以上、好ましくは2個のヒドロキシル基又はアミン基を有する低モル質量脂肪族化合物である。二官能基連鎖延長剤は、線状、一般に熱可塑性ポリマーをもたらすが、他方多官能基連鎖延長剤及び/又はイソシアネートは、分枝状又は架橋生成物を導く。一実施形態では、二官能基連鎖延長剤は、少なくとも60g/mol、少なくとも70g/mol、少なくとも80g/mol、少なくとも90g/mol、又は少なくとも100g/molのモル質量を有する。一実施形態では、連鎖延長剤は、最大で500g/mol、最大で400g/mol、最大で300g/mol、最大で200g/mol、又は最大で150g/molのモル質量を有する。一実施形態では、連鎖延長剤は、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、又は1,8-オクタンジオール、及び/又はそのような対応するジアミンを含む。実施形態では、熱可塑性ポリウレタンは、ジオール連鎖延長剤しか含まない。
【0035】
他の実施形態では、TPUは、ウレタン及び尿素結合の両方を有するハードブロックを含む。その利点はハードブロック間の強化された相互作用であり、より高い軟化温度及び/又はより高いソフトブロックの含有量を許容し;強化された可撓性及び弾性、並びに優れた曲げ強さ又は疲労抵抗を示すブロックコポリマーが得られる。ジオール/ジアミンの比率次第で、ポリウレタン鎖はそのような強度の相互作用を示し得るため、溶融加工温度において熱分解があり得、最適性能のために溶液加工が好ましい。ポリウレタン尿素とも呼ばれることもある、ウレタン及び尿素結合の両方を含むそのようなポリウレタンの商業的に入手可能な例には、Biospan(登録商標)製品(例えば、DSM Biomedical BV,Sittard-Geleen NLから入手可能)が挙げられる。
【0036】
更なる実施形態では、熱可塑性ポリウレタンは、ポリマーがヒドロキシ(又はアミン)末端基を有する二官能性である、ポリエーテル、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリオレフィン及びポリシロキサン(シリコーンとも呼ばれる)からなる群から選択される、少なくとも1種の脂肪族ポリマージオール又はポリオールから誘導されるソフトブロックを含む。ソフトブロックのためのそのようなポリマージオールは、本明細書中では、オリゴマー、ホモポリマー及びコポリマーを含むと理解されており、及びポリエステルはポリカーボネートを含むと考えられている。これらのコポリマーを調製するために一般に既知のポリウレタンブロックコポリマー及び方法は、とりわけ米国特許第4739013号明細書、同第4810749号明細書、同第5133742号明細書及び同第5229431号明細書に記載されている。
【0037】
本開示の実施形態では、熱可塑性ポリウレタンは、脂肪族ポリエステルジオール、脂肪族ポリエーテルジオール、ポリ(イソブチレン)ジオール及びポリシロキサンジオールから選択される少なくとも1種のポリマージオールをソフトブロックに含む。連鎖延長剤に関しては、追加的な尿素結合がもたらされる一部のアミン官能性ソフトブロックを使用することができる。ヒトの身体内でのそのようなポリウレタンブロックコポリマーの生体適合性及び生体内安定性は証明されている。
【0038】
熱可塑性ポリウレタンの機械的特性及びその他の特性は、ブロックの化学的組成及び/又はモル質量を変化させることによって調整することができる。本発明の組成物中に含有される熱可塑性ポリウレタンのハードブロックは、約160~10,000Da、より好ましくは約200~2000Daのモル質量を有し得る。ソフトセグメントのモル質量は、典型的には、200~100,000Da、及び好ましくは少なくとも約400、600、800若しくは1000Da、及び最大で約10,000、7500、5000、4000、3000若しくは2500Daであり得る。本開示の内容の範囲内では、ポリマー内のブロックを形成するポリマー及びオリゴマーのモル質量は、例えばGPC測定値から誘導される、数平均モル質量(Mn)を指す。ソフトブロック対ハードブロックの比率は、ポリウレタンの所定の剛性又は硬度をもたらすように選択することができる。典型的には、A若しくはDスケールを使用するショアデュロメータ硬度試験によって測定されるポリウレタンの硬度は、一般に約10~2000のMPaの曲げ弾性率範囲を表す、40ShA~90ShDであってよい。実施形態では、熱可塑性ポリウレタンは、45ShA~90ShA、好ましくは少なくとも50、55又は60ShAの硬度を有する。相当に低硬度のTPUを用いる利点は、更にジルコニアを含む、結果として生じる組成物のより高い強靭性である可能性がある。他の実施形態では、ポリマー組成物中のTPUは、組成物のより高い剛性を生じさせるであろうから、90ShA~90ShDの硬度を有する。更なる実施形態では、TPUは、剛性と加工挙動との間の良好なバランスのために、少なくとも40、50若しくは60ShDの剛性及び最大で85若しくは80ShDの硬度を有する。
【0039】
本発明の更なる実施形態では、熱可塑性ポリウレタンは、ソフトブロック内に、脂肪族ポリエーテル、脂肪族ポリエステル又は脂肪族ポリカーボネート、より特別には脂肪族ポリカーボネートを含む。ソフトブロックの組成物は、好ましくは、10、0及び好ましくは-10℃未満のTgを有する本質的に非晶質のオリゴマー又はポリマーが生じるように選択される。適切な脂肪族ポリエーテルとしては、ポリ(プロピレンオキシド)ジオール、ポリ(テトラメチレンオキシド)ジオール、及びそれらのコポリマーが挙げられる。好適な脂肪族ポリエステルは、一般に少なくとも1種の脂肪族ジカルボン酸及び少なくとも1種の脂肪族ジオールから製造される。脂肪族ポリカーボネートジオールは、ポリエステルジオールのために使用されるものと類似の脂肪族ジオールをベースとしており、当該技術分野において公知の様々な経路を介して合成することができる。好適な例としては、ポリ(ヘキサメチレンカーボネート)ジオール及びポリ(テトラヒドロフランカーボネート)ジオールが挙げられる。そのようなポリカーボネート系TPUは、血液適合性のような好都合な生体適合性及び強化された生体内安定性を示す。一実施形態では、TPUのソフトブロックは、ポリ(ヘキサメチレンカーボネート)ジオール、ポリ(ポリテトラヒドロフランカーボネート)ジオール、又はそれらの混合物をベースとする。好ましい実施形態では、TPUは、ソフトブロック中にポリ(ヘキサメチレンカーボネート)ジオールを含むか、又は実質的にそれをベースとする。
【0040】
更なる実施形態では、TPUのソフトブロックは、ポリ(ジメチルシロキサン)ジオール、ポリカーボネートジオール、又はポリ(テトラメチレンオキシド)ジオールなどのポリシロキサンジオールを含む。一実施形態では、ソフトブロックは、ポリシロキサンジオール、ポリカーボネートジオール、ポリ(テトラメチレンオキシド)ジオール、又はそれらの混合物をベースとする。一実施形態では、ソフトブロックは、ポリシロキサンジオール、ポリカーボネートジオール、又はポリ(テトラメチレンオキシド)ジオールの2種以上の混合物を含む。そのような混合物は、高い強靭性と結合された加水分解安定性の強化を示す生体適合性ポリウレタンの製造を可能にする。一実施形態では、ソフトブロックは、ポリシロキサンジオール、ポリカーボネートジオール又はポリ(テトラメチレンオキシド)ジオールの2種以上の混合物をベースとする。一実施形態では、ソフトブロックは、ポリシロキサンジオール、並びにポリカーボネートジオール及びポリ(テトラメチレンオキシド)ジオールの1種以上を含む。一実施形態では、ソフトブロックは、ポリシロキサンジオール、並びにポリカーボネートジオール及びポリ(テトラメチレンオキシド)ジオールの1種以上をベースとする。
【0041】
一実施形態では、ソフトブロックは、C2~C16フルオロアルキルジオール又はC2~C16フルオロアルキルエーテルジオールを更に含み得る。一実施形態では、ポリウレタン主鎖中のソフトブロックは、1H,1H,4H,4H-ペルフルオロ-1,4-ブタンジオール、1H,1H,5H,5H-ペルフルオロ-1,5-ペンタンジオール、1H,1H,6H,6H-ペルフルオロ-1,6-ヘキサンジオール、1H,1H,8H,8H-ペルフルオロ-1,8-オクタンジオール、1H,1H,9H,9H-ペルフルオロ-1,9-ノナンジオール、1H,1H,10H,10H-ペルフルオロ-1,10-デカンジオール、1H,1H,12H,12H-ペルフルオロ-1,12-ドデカンジオール、1H,1H,8H,8H-ペルフルオロ-3,6-ジオキサオクタン-1,8-ジオール、1H,1H,11H,11H-ペルフルオロ-3,6,9-トリオキサウンデカン-1,11-ジオール、フッ素化トリエチレングリコール、又はフッ素化テトラエチレングリコールの残基を含む。
【0042】
一実施形態では、C2~C16フルオロアルキルジオール又はC2~C16フルオロアルキルエーテルジオールは、少なくとも150g/mol、少なくとも250g/mol又は少なくとも500g/molのMnを有する。一実施形態では、フルオロアルキルジオール又はフルオロアルキルエーテルジオールは、最大で1500g/mol、最大で1000g/mol、又は最大で850g/molのモル質量を有する。一実施形態では、C2~C16フルオロアルキルジオール又はC2~C16フルオロアルキルエーテルジオールは、ポリウレタンの全質量に基づき、少なくとも1質量%、少なくとも2質量%又は少なくとも5質量%の量で存在する。一実施形態では、C2~C16フルオロアルキルジオール又はC2~C16フルオロアルキルエーテルジオールは、ポリウレタンの全質量に基づき、最大で15質量%、最大で10質量%、又は最大で8質量%の量で存在する。
【0043】
実施形態では、ポリウレタンは、1種以上の疎水性又は親水性末端基を含み得る。一般に、末端基は、分子の末端に存在する非反応性の部分である。一実施形態では、ポリウレタンは、主鎖の各終点で末端基を含み;即ち、ポリウレタンは、平均約2個の末端基を有する。一実施形態では、末端基は、線状化合物である。別の実施形態では、末端基は、分岐状である。末端基は、ポリマー主鎖の形成中又は形成後に存在する末端イソシアネート基を、連鎖停止剤とも呼ばれる単官能化合物上の共反応性基と反応させることによって形成された可能性がある。例えば、ポリウレタンを形成するための配合物は、ジイソシアネート、ポリマー脂肪族ジオール、連鎖延長剤、及びC8アルキル末端基を形成するための1-オクタノール若しくはオクチルアミンのような単官能性アルコール又はアミンを含み得る。
【0044】
一実施形態では、末端基は、例えば、それらのコポリマーを含めて、C2~C20アルキル、C2~C16フルオロアルキル、C2~C16フルオロアルキルエーテル、疎水性ポリ(アルキレンオキシド)又はポリシロキサンを含む疎水性末端基である。一実施形態では、疎水性ポリ(アルキレンオキシド)は、ポリ(プロピレンオキシド)、ポリ(テトラメチレンオキシド)又はそれらのコポリマーである。一実施形態では、疎水性末端基は、ポリ(ジメチルシロキサン)のようなポリシロキサンである。一実施形態では、末端基は、C2~C20アルキル、C2~C16フルオロアルキル、C2~C16フルオロアルキルエーテル又は疎水性ポリ(アルキレンオキシド)を含む。そのような末端基は、カルビノールを含む単官能性アルコール又は上記のアミン類を用いて形成され得る。疎水性末端基を有するそのようなポリウレタンエラストマーは、ポリウレタンの特性、並びにポリオレフィンなどの他のポリマーを含む他の材料並びに体組織及び血液のような体液とのその相互作用に肯定的に影響を及ぼすことは判明している。
【0045】
一実施形態では、疎水性末端基は、C2~C16フルオロアルキル又はC2~C16フルオロアルキルエーテルを含む。そのような末端基は、C2~C16フルオロアルキル又はC2~C16フルオロアルキルエーテルを含む単官能性アルコール又はアミンによって形成され得る。一実施形態では、末端基は、1H,1H-ペルフルオロ-3,6-ジオキサヘプタン-1-オール、1H,1H-ノナフルオロ-1-ペンタノール、1H,1H-ペルフルオロ-1-ヘキシルアルコール、1H,1H-ペルフルオロ-3,6,9-トリオキサデカン-1-オール、1H,1H-ペルフルオロ-1-ヘプチルアルコール、1H,1H-ペルフルオロ-3,6-ジオキサデカン-1-オール、1H,1H-ペルフルオロ-1-オクチルアルコール、1H,1H-ペルフルオロ-1-ノニルアルコール、1H,1H-ペルフルオロ-3,6,9-トリオキサトリデカン-1-オール、1H,1H-ペルフルオロ-1-デシルアルコール、1H,1H-ペルフルオロ-1-ウンデシルアルコール、1H,1H-ペルフルオロ-1-ラウリルアルコール、1H,1H-ペルフルオロ-1-ミリスチルアルコール、又は1H,1H-ペルフルオロ-1-パルミチルアルコールから形成される。
【0046】
また別の実施形態では、末端基は、親水性単官能性アルコール又はアミン化合物から形成される親水性末端基である。そのような化合物は、典型的には水溶性であり、ポリエチレンオキシド若しくはスルホネート官能性化合物のように、界面活性を示し得る。そのような親水性末端基は、他の材料との相互作用又は他の材料に影響を及ぼし、例えば、所定の無機充填剤粒子の分散を強化し得る。
【0047】
また別の実施形態では、ポリウレタンは、疎水性末端基と親水性末端基との混合物を含む。そのような修飾は、ポリマーの疎水性対親水性のバランスの調節を可能にする。末端基を有するTPUを使用する一般的利点は、ポリマー及びインプラントからの移動の潜在的問題を導入し得る添加剤を組み込まずに、ポリマーの特性を修飾且つ制御することである。
【0048】
一実施形態では、末端基はモノマー性であり、200g/mol以上、300g/mol以上、又は500g/mol以上、及び1,000g/mol以下又は800g/mol以下のモル質量を有する。他の実施形態では、末端基は、ポリマー性であり、10,000g/mol以下、8,000g/mol以下、6,000g/mol以下又は4,000g/mol以下のモル質量を有する。一実施形態では、末端基はポリマー性であり、500g/mol以上、1,000g/mol以上又は2,000g/mol以上のモル質量を有する。
【0049】
一実施形態では、末端基は、ポリウレタンの全質量に基づくと、少なくとも0.1質量%、少なくとも0.2質量%、少なくとも0.3質量%、又は少なくとも0.5質量%の量で存在する。一実施形態では、末端基は、ポリウレタンの全質量に基づくと、最大で3質量%、最大で2質量%又は最大で1質量%の量で存在する。一実施形態では、末端基は、ポリウレタンの全質量に基づくと、少なくとも0.1質量%、少なくとも0.2質量%、少なくとも0.3質量%、又は少なくとも0.5質量%の量で、且つ最大で3質量%、最大で2質量%又は最大で1質量%の量で存在する。
【0050】
一実施形態では、ポリウレタンは、ポリウレタンの全重量に基づくと、0.1質量%未満の末端基を含む。一実施形態では、ポリウレタンは、実質的に末端基を含まない。一実施形態では、ポリウレタンは、末端基を含まない。
【0051】
TPU中のハードブロックは、典型的には、トルエンジイソシアネート(TDI)又はメチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)のような芳香族ジイソシアネート及び1,4-ブタンジオールのような低モル質量の脂肪族ジオールをベースとする。ポリエーテル及びポリカーボネートポリウレタンは、それらの可撓性、強度、生体内安定性、生体適合性及び耐摩耗性を考慮して、生物医学的用途のために適切に使用され得る。ソフトブロック中にポリエーテルとポリシロキサン又はポリカーボネートとポリシロキサンの組み合わせを含有するTPUは、ユニークな特性の組み合わせを示し、且つポリマー組成物中でポリウレタンとして有利に使用され得る。そのようなポリマーの商業的に入手可能な例としては、Pursil(登録商標)及びCarbosil(登録商標)製品(DSM Biomedical BV,Sittard-Geleen NLから入手可能)が挙げられる。
【0052】
更なる実施形態では、TPUは、2つ以上のポリマーのブレンド、例えば、80ShA及び75ShDグレードの組み合わせのような、少なくとも異なる硬度を有する2つの生体適合性TPUグレードのブレンドであってもよい。
【0053】
他の実施形態において、TPUは、例えば触媒残留物に加えて、インプラントにおけるTPU及びポリマー組成物の標的化された使用のために許容される1つ又は複数の慣用的な添加剤を含み得る。添加剤の例としては、安定剤、酸化防止剤、加工助剤、潤滑剤、界面活性剤、帯電防止剤、着色剤等が挙げられる。添加剤は、ポリウレタンの量に基づいて0.01~5質量%、好ましくは0.1~2質量%等、当技術分野で公知の典型的に有効な量で存在してもよい。別の実施形態では、TPUは、添加剤を実質的に含まない。
【0054】
いくつかの実施形態において、ポリマー組成物は、a)30~85質量%の生体安定性熱可塑性ポリウレタン、及びb)15~70質量%のジルコニア粒子から実質的になるか、又はそれらからなり、a)及びb)の合計は、100質量%である。
【0055】
他の実施形態では、ポリマー組成物は、a)20~85質量%の生体安定性熱可塑性ポリウレタン、b)15~70質量%のジルコニア粒子、及びc)0~10質量%の他の化合物からなり、a)及びb)の合計は100質量%である。他の化合物の例としては、抗菌剤又は抗炎症剤のような生物活性化合物、疼痛を軽減するか又は治癒若しくは骨形成を改善する活性剤又は薬物;或いは例えば、使用される洗浄装置を含む、組成物の製造に使用され得る残留量の溶媒を含む、或いは分散剤又は意図的に添加された他の化合物が挙げられる。当該(生体)活性化合物は、組成物中にそのまま存在してもよく、又は周囲組織への活性化合物の放出を制御する製剤として存在してもよい。このような他の化合物は、一般に、比較的少量、例えばポリマー組成物全体に基づいて約0.1~5質量%で存在する。いくつかの実施形態において、組成物及びその一部は、多くとも5、4、3又は2質量%の他の化合物と、多くとも1000ppmの溶媒、好ましくは多くとも800、600、500又は400ppmの溶媒とを含む。
【0056】
骨固定部に含まれるポリマー組成物は、15~70質量%のジルコニアを含む無機粒子を含む。ジルコニアは、二酸化ジルコニウム又はジルコニウムの白色結晶性酸化物であるZrO2とも呼ばれる。ジルコニアは、放射線不透過性であることが知られており、一定量の粒状材料をそのようなマトリックスに混合することによって有機ポリマーに放射線不透過性を付加することができる。
【0057】
いくつかの実施形態において、ポリマー組成物中の無機粒子は、ジルコニアから実質的になるか、又はジルコニアからなる。
【0058】
いくつかの実施形態において、ジルコニア粒子は、ポリマー組成物中の無機粒子の総量の少なくとも60、70又は75質量%及び多くとも98、95、90、85又は80質量%を形成する。ジルコニアの主要な使用は、例えば、高温での焼結によるなどの、硬質セラミックスの製造においてである。生物医学分野内でのそのようなセラミックスの使用は、典型的には、歯科における歯冠及びブリッジとしてである。その他の使用としては、保護的、光学的及び遮熱コーティング、セラミックス製ナイフ及び宝飾品におけるダイヤモンド類似物としてが挙げられる。多数の他の鉱物粒子とは異なり、ジルコニアは、熱可塑性ポリマー組成物(ポリマー化合物とも呼ばれる)における充填剤又は強化剤として使用されることは滅多にない。
【0059】
ジルコニア自体は化学的に安定性であるが、高温では;つまり、本組成物の射出成形中又はそれから製造されたインプラントの使用中に、熱可塑性ポリウレタンとの配合中よりもはるかに高い温度では、相変化に曝される可能性がある。商業的に入手可能なジルコニアグレードは、所定の層へ熱的に安定化させるためのドーパントとしての、1~10mol%超までの量で添加されるMgO、Y2O3、CaO若しくはCe2O3などの他の要素を含有する可能性がある。更に、ジルコニアグレードは、Al、Si、Fe、Naのような元素を少量含み得る。したがって本開示の状況内では、ジルコニアは、実質的に純粋なZrO2並びにZrO2及び約20質量%まで、好ましくは最大の15、10若しくは5質量%の他の無機酸化物を含む混合酸化物を含むと理解されている。
【0060】
他の実施形態では、ポリマー組成物中の無機粒子は、無機粒子としての遷移金属塩粒子又は好ましくは遷移金属酸化物粒子のような、放射線不透過性の生体適合性遷移金属化合物粒子である。
【0061】
実施形態では、生体適合性遷移金属化合物粒子は、チタン(Ti)、亜鉛(Zn)、イットリウム(Y)、ジルコニウム(Zr)、ランタン(La)、イッテルビウム(Yb)、ハフニウム(Hf)、及びタンタル(Ta)のうちの少なくとも1つの塩、好ましくは酸化物を含む。他の実施形態では、無機粒子は、Ti、Zn、Y、Zr、及びTaの少なくとも1つの塩、好ましくは酸化物を含む。或いは、ポリマー組成物は、当該塩又は酸化物の1つ又は複数から実質的になる無機粒子を含む。
【0062】
いくつかの実施形態において、ポリマー組成物は、チタンの酸化物を含む無機粒子を含み、好ましくは、粒子は、チタニアから実施者になるか、又はチタニアからなり、チタニアは、二酸化チタン又はTiO2とも呼ばれる。チタニアは、ルチル及びアナターゼのような異なる鉱物形態で存在し、主に塗料、プラスチック、食品、練り歯磨きペースト及び丸剤中の白色顔料として使用される。
【0063】
いくつかの実施形態において、ポリマー組成物は、亜鉛の酸化物を含む粒子を含み、好ましくは、ポリマー組成物は、酸化亜鉛(ZnO)から実質的になるか、又は酸化亜鉛(ZnO)からなる粒子を含む。自然界に存在するZInc酸化物は、典型的には多数の不純物を含有するため、一般に金属亜鉛から合成される。純粋な酸化亜鉛は、白色粉末であり、プラスチック、ゴム及びセメント、セラミック、並びに歯科及びスキンケア製品(その抗菌特性の観点から)の充填剤として、塗料を含む多くの異なる用途に適用される。
【0064】
ポリウレタン、ジルコニア、並びに場合により他の無機粒子及び他の化合物を含むポリマー組成物から作製された部品は、放射線不透過性であり、MRI適合性であり、したがって、そのようなインプラント部品は、医療用X線技術を用いて他の材料及び組織と区別することができる。放射線不透過性(radiopacity又はradiodensity、及びradiopaque又はradiodense)は、そのような無機粒子を含む部分が、電磁スペクトルの電波及びX線部分の通過を阻害(又は吸収)して、自然組織との十分なコントラストが医療用X線撮像技術(放射線撮像とも呼ばれる)で見えるように拡張することを意味する。放射線不透過性に寄与する因子は、電子密度及び原子番号である。MRI適合性又は適合可能性は、材料が全てのMRI環境において既知の危険をもたらさないことを意味し、すなわち、非導電性、非金属性及び非磁性である。ジルコニアは磁性ではなく、MRI環境において既知の危険性をもたらさない。したがって、ポリウレタンにジルコニアを添加することにより、MRI技術を用いて本組成物から作製された部品を画像化することも可能になる。したがって本ポリマー組成物から製造されたインプラントは、X線及びMRIのような一般的医療用イメージング技術を用いて可視化することができ、外科手技中に標的移植部位でのインプラントの位置の適正な監視並びに周囲組織と関連させてその位置の術後検査を可能にする。
【0065】
ポリマー組成物中のジルコニアを含む無機粒子は、典型的には、0.03~10μm、好ましくは0.1~5μmの範囲内の平均粒径を有する。本開示の範囲内では、無機粒子の粒径は、D50値、即ち、例えばMalvern Mastersizer 2000を用いて、ISO 13320:2009に従った光回折により測定して、メジアン径又は粒径分布の中央値である。測定した粒径とは、一次粒子は(より粘性のある)ポリマーとの混合中に同一方法では脱凝集若しくは分散しない可能性があるので、ポリマー組成物中の粒径分布とは異なる可能性がある、水中に分散した粒子のサイズを指す。
【0066】
ポリマー組成物中の無機粒子は、異なるタイプの粒子形状を有する可能性があり、規則的形態又は不規則な形態の可能性がある。粒子の形状は、円形、楕円形、三角形、四角形であり得る断面、及び少なくとも1、2、4,6、8又は10超までの平均縦横比とともに、実質的に球状からより細長い、又は平坦な形状;葉巻様、血小板形、針状又は繊維状の形状に及ぶ。実質的に円形の粒子の利点は、組成物の等方性の特性であるが、他方細長い形状は、より優れた機械的特性を備える組成物を生じさせる可能性があるが、これは前記粒子の配向性に左右されることが多い。実施形態では、ポリマー組成物は、ほぼ球状の粒子と細長い粒子との混合物のような、様々な形状の粒子の混合物を含む。
【0067】
実施形態では、粒子は、一般に粒径に伴って向上する、流動挙動及び投与挙動のような操作性として、少なくとも0.05、0.10、0.15、0.20、0.25若しくは0.30μmのD50サイズを有する。ポリウレタンにおける分散性及びポリマー組成物の機械的特性を考えると、無機粒子の粒径は、最大で8、7、6、5、4、3又は2μmである。組成物中の無機粒子は、更にまた、例えば組成物の密度及び剛性又は強靭性のような機械的特性を最適化するために、前記範囲の下端にあるサイズと上端にあるサイズを有する粒子の混合物のような様々なサイズの混合物であり得る。
【0068】
実施形態では、骨固定部に含まれるポリマー組成物は、生体内安定性の熱可塑性ポリウレタン及び15~70質量%のジルコニア粒子を含む無機粒子を含有する。相当に大量のそのような粒子は、本組成物から製造されたパーツの剛性、例えば引張弾性率を強化するであろうが、本組成物の伸展性及び強靭性を悪化させる可能性がある。更に、組成物を製造するための配合中のせん断に起因するポリマー分解は、大量の粒子によって増強される場合がある。したがって実施形態では、本組成物は、少なくとも20、25、30、又は35質量%及び最大68、66、64、62、60、58、56、54、52、50、48又は46質量%の無機粒子を含有する。
【0069】
実施形態では、骨固定部内のポリマー組成物は、ジルコニア粒子と、上で定義した他の遷移金属化合物粒子及び/又は(ナノ)クレー、マイカ、タルク等の天然鉱物粒子を含む1つ又は複数の他の生体適合性無機粒子との組み合わせを15~70質量%含み、これらはポリウレタン中に分散されていてもよい。他の無機粒子は、典型的には、ジルコニアと同様の粒径範囲を有するが、例えば球状粒子と針状又は繊維状粒子との組み合わせをもたらすために、異なるサイズであってもよく、異なる粒子形状を有してもよい。存在又は繊維様又は他の細長い粒子は、ポリマー組成物の機械的特性を高めることができる。他の粒子は、バイオガラス又は他のケイ化バイオセラミックのような、不活性であってもよく、又は骨伝導性のような生物活性を示してもよい。実施形態では、ポリマー組成物中に存在するジルコニア及び他の充填剤粒子の総量の最大で40質量%は、好ましくは最大で30、25、20、15、10又は5質量%の他の無機粒子によって形成される。
【0070】
更なる実施形態では、ポリマー組成物は、文献に報告された、及びそのようなポリウレタン組成物の製造後に観察される(実験を参照されたい)ような分解が増強されるとの観点から、ハイドロキシアパタイトのようなリン酸カルシウムをベースとする粒子を実質的に含まない。より一般的には、実施形態では、本組成物は実質的にポリウレタンの(加水分解性)分解を開始又は強化する可能性のある無機粒子又は他の化合物を含まないが、それはそのような粒子又は化合物がそのような分解を促進する反応性基を含む、又はそのような吸湿特性を有するので、それらを例えば250、150若しくは100ppm未満などの十分に低含水量まで適切に乾燥させることができないからである。
【0071】
骨固定部に含まれるポリマー組成物は、例えば、溶媒支援混合プロセス又は溶融混合プロセスを使用することによって、当業者に知られているように、異なる混合装置及びプロセスを使用して製造することができる。
【0072】
一態様において、本発明は、全ての変形及び好ましい実施形態並びにそれらの組み合わせを含む上記のポリマー組成物を製造する方法を提供し、
・最大300ppmの水分含有量を有する生体安定性熱可塑性ポリウレタンを提供する工程と、
・250ppm以下の水分含有量のジルコニアを含む無機粒子を提供する工程と、
・場合により、無機粒子を機械的又は化学的に処理する工程と、
・場合により多くとも250ppmの水分含有量を有する他の化合物を提供する工程と、
・ポリウレタン、無機粒子及び任意の他の化合物を混合する工程と、
を含む。
【0073】
一般に、添加されるポリウレタンポリマー及び任意のジルコニア又は他の無機粒子は、混合前に十分に乾燥される。典型的には、ポリウレタンは、最大300ppm、好ましくは最大250、200又は150ppmの水分レベルを得るために、その軟化点又は融点未満の温度で数時間、例えば4~30時間乾燥される。ジルコニア及び他の粒子は、最大250ppm、好ましくは最大150又は100ppmの水分レベルを得るために、長時間にわたって、例えば100~200℃で20~40時間、比較的高温で乾燥されてもよい。
【0074】
実施形態では、本方法は、生じるポリマー組成物の特性を更に強化するために、(乾燥した)無機粒子を機械的又は化学的に(予備)処理する工程を含む。実施形態では、機械的に処理する工程は、任意選択的に補助成分の存在下で、粒子をミリングする、又はグラインドする工程を含む。そのような補助成分は、それぞれが生体適合性でポリウレタンと適合する、低粘度若しくは低粘性の液体、分散助剤及び/又はポリマーであってよい。そのような処理は、粒子の凝集体を破壊する及び/又は分散を強化するための音波処理を用いて促進され得る。そのような機械的処理工程は、無機粒子を含む粉末、分散剤、ペースト又は固体組成物を生じさせることができ、それらの使用は、その後の混合工程におけるポリウレタン中の粒子の改善された分散レベルを生じさせ得る。処理した無機粒子は、最大で250ppmの水分レベルに達するように乾燥させることができる。
【0075】
更なる実施形態では、本方法は、粒子の表面での官能性基のタイプ及び/又は量;及びそれとともに粒子のポリウレタン中の分散性及び/又はポリウレタンへの界面接着を変化させるために、(乾燥した)ジルコニア及び任意選択の無機粒子を化学的に処理する工程を含む。この処理は、コロナ処理、プラズマ処理、及び/又は湿式化学処理を含み得る。コロナ若しくはプラズマ処理自体が、当業者には公知であるように粒子の表面を就職することができるが、更に湿式化学的修飾と組み合わせることができる。湿式化学処理では、粒子は、典型的には最初に好適な液体中に分散させられ、次に試薬が、一般に粒子に対して5~300質量%の量で添加される。分散は、粒子の凝集体を破壊するために音波処理を用いて促進することができる。好適な試薬は、例えば、アルキル、アミン、カルボン酸若しくは過酸化物官能基、又はシラン化合物である。例としては、二酸化炭素、酸素、不飽和炭化水素、アルキルアミン、カルボン酸、及び様々なアミン官能性及び/又は3-アミノプロピルトリエトキシシランのようなアルコキシ官能性シランが挙げられる。そのような化合物は、当該技術分野においてはカップリング剤とも呼ばれる。ポリマー組成物の目的とされる医学的使用を考慮すると、触媒のような他の成分の添加は、除外されるのが好ましく、液体は、予備処理後には実施的に完全に除去され、水分レベルは最大で250ppmにされる。当業者であれば、一般的知識及び任意選択的に一部の日常的実験に基づいて、試薬及び好適な処理条件を選択することができるであろう。
【0076】
実施形態では、ポリマー組成物のための上述した他の化合物が提供されてよいが、それらの化合物は、最大で250ppmの含水量を有する。他の化合物の例としては、生物活性化合物、安定剤及び混合中のTPU内の無機粒子の分散を補助する化合物が挙げられる。
【0077】
実施形態では、生体内安定性ポリウレタン及び15~70質量%の無機粒子を含むポリマー組成物を製造するための方法は、ポリウレタンの合成中に乾燥した(ジルコニア)粒子又はそのような粒子を含む乾燥したマスターバッチを添加する工程を含む。例えば、そのような添加は、第1工程-重合反応の前に、例えば、液体、出発化学薬品と混合することによって、又は第2工程-重合中に、例えば第2の重合工程前又は重合工程中に粒子をプレポリマーと混合することによって実施することができる。
【0078】
他の実施形態では、生体内安定性の熱可塑性ポリウレタン及び無機粒子を含むポリマー組成物を製造するための方法は、重合したポリウレタンを提供する工程及び溶媒支援混合工程を使用する工程を含み、例えば、最初にTHFのようなポリマーのための優れた溶媒中の乾燥したポリウレタンの溶液が作製され、その後に液体中、好ましくは同一の優れた溶媒中に乾燥した粒子又は事前に分散させた粒子と混合する工程が行われる。実施形態では、生体適合性分散剤は、粒子を均質に分散させるのに役立つように、任意選択的に添加することができる。ポリウレタンの濃度及び混合物中の粒子の量に依存して、液体分散剤又はペースト様混合物を入手することができる。その後の工程では、溶媒は、好ましくは高温及び/又は減圧下で、蒸発のような公知の方法によって除去することができる。得られた固化したポリマー組成物は、次に圧縮成形又は射出成形のような成形工程において使用するために、例えば切断又は研磨することによって好適な形態に作成することができる。そのような溶媒支援混合法の利点としては、相当に低いせん断力及び低温、つまりポリマー分解のリスクが低いこと、及びそれを操作できる相当に小規模が挙げられる。
【0079】
更なる実施形態では、ポリマー組成物を製造する方法は、配合とも呼ばれる、成分をポリウレタンの軟化点又は融点を超える温度で、バッチ型ミキサー又は一軸若しくはニ軸スクリュー押出機などの連続式ミキサーのような公知の装置を使用して溶融混合する工程を含む。任意選択的に、粒子の分散を強化するために、溶融混合の前又は溶融混合中に生体適合性湿潤剤又は分散剤を添加することができる。溶融混合前に、ポリウレタン及びジルコニアを含む無機粒子は、上記で指摘したように、溶融中中の加水分解性分解を最小限に抑えるために、完全に乾燥させられる。同様の理由のため、溶融混合装置及び混合条件は、組成物の温度ができる限り低く維持されるように選択される。実施形態では、ポリマー組成物は、過熱及びポリマー鎖切断及び/又はモル質量の低減を最小限に抑えながらポリウレタン内の無機粒子の適正な分散のために十分なせん断若しくはトルクを生じさせる、スクリュー速度、押し出し量及び温度設定のような条件を適用しながら、ニ軸スクリュー押出機上で乾燥した成分を混合する工程によって製造される。実施形態では、ニ軸スクリュー押出機のバレルの温度設定は、最大で210℃、好ましくは約205又は200℃である。そのような条件下でポリウレタンをジルコニアを含む乾燥した無機粒子と溶融混合する工程が、ハイドロキシアパタイト及び酸化ビスマスのような同一の熱可塑性ポリウレタンについて見出されるよりも、有意に低いポリマー分解を生じさせることが観察された。
【0080】
実施形態では、インプラントの骨固定部を作製することができるか、又はインプラント部品が作製されたポリマー組成物中のTPUは、少なくとも70kDaの重量平均分子量Mwを有する。モル質量及びモル質量分布は、典型的には、実験部に記載されているようにGPC法を用いて測定される。本開示では、依然として一般的に使用される用語「分子量」ではなく、ISO用語「モル質量」が一般的に使用されることに留意されたい。TPUとジルコニア粒子を(溶融)混合する工程によって製造されるポリマー組成物から製造されたパーツは、組成物中のTPUがそのような最小モル質量を有する場合は、所定の破断点伸びのような所定の最小所望特性を示すことが見出されている。好ましい実施形態では、組成物中のTPUは、少なくとも75、80、85、90、95若しくは100kDaのモル質量Mwを有する。本組成物を製造するために使用されるTPUのモル質量Mwもまたそのような最小値を満たすが、典型的にはより高い;それでも好ましくはその溶融粘度がジルコニアを含む粒子との加工処理及び混合を妨害するであろうほどは高くない;これは更に、得られるポリマー組成物中のTPUのモル質量も制限する。実施形態では、製造されたポリマー組成物中のTPUは、加工性及び機械的特性のバランスの取れた組み合わせを生じさせるために、最大で400、300、250、又は200kDaのモル質量を有する。
【0081】
実施形態では、ポリマー組成物は、成形時に乾燥させたサンプル上で20℃で測定して、少なくとも800~3000Mpa、好ましくは少なくとも850若しくは900Mpa、及び最大で2500、2000、1800又は1600Mpaの弾性率を有する。或いは、ポリマー組成物は、インプラントにおけるその標的化された使用の生物学的条件を模倣するために37℃で湿潤状態に調整された試料で測定したときに200~700のE弾性率を有することを特徴とする。いくつかの実施形態において、このような湿潤状態のE-弾性率は、少なくとも225MPaであり、多くとも600、550、500又は450MPaである。何らかの理論に拘束されることを望まなくても、本発明者らは、インプラントの骨固定パーツがより耐久性の結果を得るためには、周囲の骨組織の機械的特性、特に剛性又は弾性率を模倣すべきであると考える。この点において、本発明者らは、インプラントの骨固定パーツが、骨の軟骨下の硬質層及び骨の硬い外層各々を形成する、軟骨下骨又は皮質骨とよりもむしろ海綿骨(小柱骨又は海綿骨質とも呼ばれる)と主として接触するであろうこと;硬い外層及び骨の硬質外層と接触するであろうことに注目した。例えば、固定パーツが前記レベルを下回る弾性率を有する場合は、インプラントと周囲の骨との間の微動が、所望の直接的接合の代わりに線維組織界面の形成を誘導する可能性がある。インプラントが低すぎる剛性を有する場合、インプラントはまた、装填時に変形又は損傷する可能性がある。インプラント部の弾性率が高すぎると、応力遮蔽が発生する可能性があり、その場合、インプラント、例えば軟骨置換キャップへの負荷は、周囲の骨組織に負荷をかけることなく、インプラント自体の内部で主に伝播され得る。骨が負荷されていない場合、骨は負荷なしの領域で再モデル化及び/又は再吸収され得、最終的にインプラントの緩みをもたらす。更に、本ポリマー組成物は、未充填ポリウレタンのような材料と比較して、低減したクリープ変形及び可塑性変形を示す;これはインプラントのより良好な安定性に寄与する。
【0082】
実施形態では、及び上記の段落に類似して、ポリマー組成物は、少なくとも5%、好ましくは少なくとも10、20、30、40若しくは50%の引張試験中の破断点伸び(Eab;乾燥時/20℃)、又は少なくとも10、20、30、40若しくは50%のEab(湿潤時/37℃)を示す。実施形態では、ポリマー組成物は、少なくとも30、35若しくは40Mpaの破断点引張強度(TS;乾燥時/20℃)、又は状態調節後に少なくとも15、20若しくは25MPaのTS(湿潤時/37℃)を有する。海綿骨のそれらと同一指標で状態調節された状態にある本組成物のそのような剛性及び強度の特性は、本組成物から製造されたインプラントとそのような生体組織との経時的な適合性及び接着を強化することが見出された。それは更に、組織を損傷させるリスクを低く抑えて、金属から製造されたインプラントと比較して、骨穴内へのインプラントの挿入を容易にする、又は改善する。更に、ポリマー組成物から製造されたインプラントは、整形外科医によって適用され得る典型的な移植手技、すなわち、欠損した軟骨部位でハンマー及び更に浸透深さを制限する可能性があるディレクショナルガイド及び典型的には彼の知覚の反応性(ハンマリング中の音響の変化に気づくなど)を使用して、骨内に穿孔された穴の中にインプラントを挿入する、などに耐えるほど十分に強いことが見出されている。
【0083】
実施形態において、ポリマー組成物は、76~85ShD、典型的には78~82ShD(乾燥/20℃)のショア硬度を有する。いくつかの実施形態において、整形外科用インプラントは、生体安定性熱可塑性ポリウレタン及び15~70質量%の無機粒子を含むポリマー組成物から実質的になる骨固定部を有する。そのような部品は、例えば射出成形プロセスによってポリマー組成物から作製することができる。骨固定部は、例えば、身体組織との相互作用に影響を及ぼすための、滑らかな外面又はテクスチャ加工された外面を有してもよく、任意選択的に表面コーティングが設けられていてもよい。
【0084】
実施形態では、インプラントの骨固定部の外面は、移植後に周囲の骨組織との相互作用を高めるために、少なくとも1μmの表面粗さRaを有する表面等のテクスチャ付き表面を有する。そのような表面粗さは、例えば、特定の表面テクスチャを有する型を適用することによって、例えば、業界で一般的に使用されているVDI3400スケールによって定義されるように、部品の製造中又は製造後に導入されている可能性がある。このようなテクスチャ表面を有するポリマーインプラントの一例及びそれを作製する方法は、本明細書において国際公開第2019/068903号が参照される。更なる実施形態では、インプラントの骨固定部は、少なくとも2、3、4、5、6、8、10、12、14、16、18又は20μm及び最大25μmの表面粗さRaを有する。
【0085】
いくつかの実施形態において、整形外科用インプラントは、例えば骨伝導性を誘導するために、生体安定性熱可塑性ポリウレタン及び15~70質量%の無機粒子を含むポリマー組成物と、場合により、その(滑らかな又はテクスチャ加工された)表面上の機能性粒子又は機能性コーティングのような他の成分とを含む骨固定部を有する。いくつかの実施形態では、骨固定部は、組織との相互作用を更に促進するための生物活性コーティング、好ましくは骨伝導性コーティングを有する。有機及び無機の両方の生物活性材料に基づき、当技術分野で記載されているような、様々な生物活性又は骨伝導性コーティングが、本インプラントの骨固定部に存在し得る。
【0086】
更なる実施形態では、生物活性セラミック粒子は、骨固定部の任意選択的にテクスチャ加工された表面に存在し、この粒子は、例えばインプラントの当該部分に骨伝導特性を提供する。好適な生物活性セラミック粒子としては、例えば、粒子表面と周囲の体液との相互作用又は化学反応を通して生物活性骨様アパタイトの形成によって、生体骨への直接的に接着する能力を示す全ての無機材料が挙げられる。好適な骨伝導性材料の例としては、様々なリン酸カルシウム、いわゆるバイオガラス及びその他のシリカをベースとするセラミックス(いわゆるシリカ被覆セラミックス)が挙げられる。そのような用途のために、リン酸二カルシウム無水物(CaHPO4;DCPA)、リン酸二カルシウム二水和物(CaHPO4.2H2O;DCPD)、リン酸オクタカルシウム(Ca8(HPO4)2.5H2O;OCP)、リン酸三カルシウム(Ca3(PO4)2;TCP)、及びハイドロキシアパタイト(Ca10(PO4)6(OH)2;HA)のような様々なタイプのリン酸カルシウムが記載されてきた。更に、HA及びTCP又はHA及びバイオガラスの混合物のような異なるタイプのブレンドも適用することができる、又は利点さえ示し得る。セラミック粒子は、更にそれらの主要構成要素に加えて、粒子の特定の特性を改善し得る、Si、Na、Mg、Fe、Zn、Ti、Ag、Cu若しくは-SO4、又は-CO3のような少量又は微量の他の(無機)元素若しくはイオンを含む。
【0087】
商業的Bioglass(登録商標)製品を含む用語「バイオガラス」は、組織と適合性の表面反応性ガラスフィルムを有する;及び医療用及び歯科インプラントにおける表面コーティングとして使用され得る、混合無機酸化物若しくはケイ酸塩セラミックスを指す。例えば、Bioglass(登録商標)45S5グレードは、45質量%のSiO2、24.5質量%のCaO、24.5質量%のNa2O、及び6.0質量%のP2O5から構成されるガラスであると述べられている。この材料中のカルシウム対リンの高い比率は、アパタイト結晶の形成を促進するであろう;カルシウムイオンとシリカイオンは、結晶化核として機能し得る。ガラスは、一般に少量の他の無機元素を含むシリカをベースとする材料から構成される、非結晶状の非晶質固体である。コーティング材料としてこれらを基材に塗布するための適切な生物活性セラミック及び方法の概要は、例えばG.Brunello et al.;DOI:10.3390/ma12182929によって提供されている。
【0088】
一実施形態では、生物活性セラミック粒子は、0.1~10μmの範囲内の粒径を有する。粒径及び粒径分布は、SEM若しくは光学顕微鏡を用いて、又は(レーザ)光屈折技術を用いて測定され得る。本開示の範囲内では、例えば、Malvern Mastersizer 2000を用いてISO 13320:2009に従った光屈折法によって測定されるD50値が、バイオセラミック粒子の粒径であると規定されている。この粒径は、特に重要であるとは思われないが、体液及び細胞と相互作用する際にはより大きな粒子がより効果的な可能性がある。操作性を考えると、少なくとも0.2μm、又は少なくとも0.3、0.4、若しくは0.5μmの粒径を有するセラミック粒子が好ましい。更なる実施形態では、インプラントは、骨固定パーツの表面で、最大で10、8、6、5、4、3、2μm、又は最大で1μmの粒径を有するセラミック粒子を有する。
【0089】
骨固定部を含む整形外科用インプラントは、プラグ又はねじ等の骨アンカーであってもよく、縫合糸、人工靭帯又は腱、半月板、寛骨臼唇置換デバイス、並びに軟骨置換部等の更なる部分を骨に固定するために使用することができる。実施形態では、そのような更なる部分はインプラントの一体部分を形成する。実施形態では、インプラントは少なくとも2つの部分を含み、すなわち軟骨置換部を更に含む。軟骨置換部は、典型的には、骨固定部に永続的に接続され、少なくとも部分的に弾性且つ耐摩耗性の生体適合性材料から作製される。実施形態では、軟骨置換部は、それが置換する天然軟骨層の特性と適合性で同等の弾性率及び硬度等の機械的特性を有する生体安定性、生体適合性ポリマーから作製される。例えば、米国特許出願公開第2011/0218647号に記載されているように、生体安定性又は生分解性であり得る水膨潤性又は水溶性の親水性ポリマーに基づくヒドロゲル等、軟骨置換の様々ないわゆるヒドロゲルが提案されている。典型的には、ヒドロゲルは、架橋された非熱可塑性材料である。
【0090】
本発明の実施形態では、インプラントは、ポリエステル、ポリアミド又はポリウレタンをベースとするハードセグメントを有するセグメント化ブロックコポリマー等の生体安定性で弾力性のある熱可塑性ポリマーから作製された軟骨置換部を有する。実施形態では、軟骨置換部は、生体安定性、弾性熱可塑性ポリウレタン(TPU)から作製される。インプラントの骨固定部及び軟骨置換部の両方にTPU材料を適用する利点は、例えば、インサート成形法を適用することによって、又は多成分若しくは2成分成形法によって、2つの部分を射出成形して、2つの接着部分又は一体化された部分を有する物品を形成することができることである。或いは、部品は、例えばレーザ源を使用して互いに溶接されていてもよく、又はポリウレタン系組成物を含む生体安定性及び生体適合性の接着促進組成物を使用して互いに接合されていてもよい。
【0091】
実施形態では、インプラントの一部を軟骨置換部は、55~100ShAのショア硬度を有する弾性の生体安定性熱可塑性ポリウレタンから作製される。ポリウレタンは、典型的には、化学的に異なり、異なる熱的及び機械的特性、並びに異なる溶解度を示すポリマー(オリゴマーを含む)の複数のブロック(セグメントとも呼ばれる)を含むブロックコポリマーである。多くの場合、2種類(又はそれを超える)のブロックを含むブロックコポリマー中のブロックは、「ハード」及び「ソフト」ポリマーブロックと呼ばれ、そのような(化学的に)異なるブロックは、ハードブロックとソフトブロックのミクロ相分離をもたらす。ブロックコポリマー中のハードブロックは、典型的には、使用温度より高い、典型的には約35~40℃の溶融温度(Tm)又はガラス転移温度(Tg)を有する剛性又は高弾性率ポリマーを含む。ブロックコポリマー中のソフトブロックは、一般に、25℃未満、好ましくは0℃未満のTgを有する柔軟で低弾性率の非晶質ポリマーを含む。ほとんどの機械的特性に関して、Tm及びTgのような熱パラメータは、一般に、DSC又はDMAのような周知の技術を使用して、乾燥試料で決定される。このような相分離ブロックコポリマーでは、ハードセグメントは可撓性ソフトセグメントの物理的架橋として機能し、その結果、ハードブロックとソフトブロックとの比に応じて、かなり剛性及び剛性から可撓性及び弾性までの範囲の特性を有する材料が得られる。ハードブロックの種類及び含有量に応じて、ポリウレタンブロックコポリマーは、化学的架橋を必要とせずに所望の温度範囲にわたって良好な安定性及び弾性を示し得、一般に、熱可塑性物質として処理することができる。熱可塑性ポリウレタンは、基本的に、少なくとも3つの主成分の反応生成物を含む主鎖を有するポリマーのファミリであり、これは、ジイソシアナート、ジオール鎖延長剤及びポリマージオール又はマクログリコールである。任意選択的に、単官能化合物は、鎖停止剤として機能し、(非反応性)末端基を形成する更なる成分として使用されてもよい。実施形態において、軟骨置換部に適用されるTPUの骨格は、実質的に直線状である。
【0092】
いくつかの実施形態において、軟骨置換部のTPUは、ハードブロック及びソフトブロック、並びに任意選択で末端基を含み、これらは本明細書中上で定義されるような骨固定部のポリマー組成物中に存在するTPUに含まれるブロック及び末端基と(化学的に)類似しているが、典型的には、少なくとも、ハードブロックとソフトブロックとの異なる比率及び/又は異なるブロック長を有する。そのような同様のTPUは、インプラントの部分間の界面強度を高めることができる。
【0093】
いくつかの実施形態において、TPUは、繰返し単位中にウレタン基及び任意選択的に尿素基を含むハードブロックを含み、これらの基は、ジイソシアネートと、それぞれの鎖延長剤としてのジオール及び任意選択的にジアミンとの反応から得られる。
【0094】
適切なジイソシアナートには、1分子当たり平均1.9~2.1個のイソシアネート基を有する芳香族、脂肪族及び脂環式化合物が含まれる。一実施形態では、ジイソシアネートは、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、2,4-トルエンジイソシアネート、2,6-トルエンジイソシアネート(TDI)、1,4-フェニレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、テトラメチレン-1,4-ジイソシアネート、シクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート(CHMDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、又はそれらの混合物を含む。一実施形態では、ジイソシアネートは、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン4,4’-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、又はそれらの混合物を含む。一実施形態では、ジイソシアネートは、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン4,4’-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、又はそれらの混合物からなる。別の実施形態では、ジイソシアネートは、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4-トルエンジイソシアネート、2,6-トルエンジイソシアネート、又は1,4-フェニレンジイソシアネートを含む。一実施形態では、ジイソシアネートは、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4-トルエンジイソシアネート、2,6-トルエンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、又はそれらの混合物からなる。一実施形態では、ジイソシアネートのモル質量は、100~500g/molである。一実施形態では、ジイソシアネートのモル質量は、150~260g/molである。
【0095】
鎖延長剤は、典型的には、2つ以上、好ましくは2つのヒドロキシル基又はアミン基を有する低モル質量脂肪族化合物である。二官能性鎖延長剤は、直鎖の一般的に熱可塑性ポリマーをもたらすが、多官能性鎖延長剤及び/又はイソシアネートは、分岐又は架橋生成物をもたらす。一実施形態では、二官能性鎖延長剤は、少なくとも60g/mol、少なくとも70g/mol、少なくとも80g/mol、少なくとも90g/mol、又は少なくとも100g/molのモル質量を有する。一実施形態では、鎖延長剤は、最大500g/mol、最大400g/mol、最大300g/mol、最大200g/mol、又は最大150g/molのモル質量を有する。一実施形態では、鎖延長剤は、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、又は1,8-オクタンジオール、並びに/或いは上記の対応するジアミンを含む。いくつかの実施形態において、熱可塑性ポリウレタンは、ジオール鎖延長剤のみを含む。
【0096】
他の実施形態では、TPUは、ウレタン結合及び尿素結合の両方を有するハードブロックを含む。その利点は、ハードブロック間の相互作用が強化され、その結果、より高い軟化温度をもたらし、及び/又はより高いソフトブロック含有量を可能にし、向上した柔軟性及び弾性、並びに優れた柔軟性寿命又は耐疲労性を示すブロックコポリマーが得られる。ジオール/ジアミンの比に応じて、ポリウレタン鎖は、溶融加工温度で熱分解が起こり得るような強い相互作用を示すことがあり、溶液加工が最適性能のために好ましいものとなる。ポリウレタン尿素とも呼ばれる、ウレタン結合及び尿素結合の両方を含むこのような比較的低硬度のポリウレタンの市販例としては、Biospan(登録商標)製品(例えば、DSM Biomedical BV,Sittard-Geleen NLから入手可能)が挙げられる。
【0097】
更なる実施形態では、熱可塑性ポリウレタンは、ポリエーテル、ポリエステル、ポリアクリラート、ポリオレフィン及びポリシロキサン(シリコーンとも呼ばれる)からなる群から選択される、少なくとも1つの脂肪族ポリマージオール又はポリオールに由来するソフトブロックを含み、ポリマーはヒドロキシル(又はアミン)末端基により二官能性である。ソフトブロックのためのこのようなポリマージオールは、本明細書ではオリゴマー、ホモポリマー及びコポリマーを含むと理解され、ポリエステルはポリカルボナートを含むと考えられる。一般的に知られているポリウレタンブロックコポリマー及びこれらのコポリマーを調製する方法は、とりわけ、米国特許第4739013号、同第4810749号、同第5133742号及び同第5229431号に記載される。
【0098】
本開示の実施形態において、熱可塑性ポリウレタンは、脂肪族ポリエステルジオール、脂肪族ポリカルボナートジオール、脂肪族ポリエーテルジオール、ポリ(イソブチレン)ジオール及びポリシロキサンジオールから選択される少なくとも1つのポリマージオールをソフトブロックとして含む。同様に又は鎖延長剤、いくつかのアミン官能性ソフトブロックも使用することができ、追加の尿素結合をもたらす。人体におけるこのようなポリウレタンブロックコポリマーの生体適合性及び生体安定性が証明されている。
【0099】
熱可塑性ポリウレタンの機械的及び他の特性は、ブロックの化学組成及び/又はモル質量を変えることによって調整することができる。本発明の組成物に含まれる熱可塑性ポリウレタンのハードブロックは、約160~10,000Da、より好ましくは約200~2000Daのモル質量を有し得る。ソフトセグメントのモル質量は、典型的には約200~100,000Da、好ましくは少なくとも約400、600、800又は1000Da、及び多くとも約10,000、7500、5000、4000、3000又は2500Daであり得る。本開示の文脈内で、ポリマー中のブロックを形成するポリマー及びオリゴマーのモル質量は、例えばGPC測定から得られる数平均モル質量(Mn)を指す。ソフトブロックとハードブロックとの比は、ポリウレタンの特定の剛性又は硬度をもたらすように選択することができる。ショアデュロメータ硬さ試験で測定されるポリウレタンの硬さは、55ShA~100ShAであり得、一般に約10~100MPa(乾式成形)の引張弾性率範囲を表す。実施形態において、熱可塑性ポリウレタンは、少なくとも60、65、又は70ShAの硬度を有する。比較的低い硬度のTPUを使用する利点は、接合部におけるより良好なクッション効果であり得る。より高い硬度は、より耐久性のある耐摩耗性をもたらし得る。他の実施形態では、弾性と耐摩耗性との間の良好なバランスのために、軟骨置換部のTPUは、最大で95、90又は85ShAの硬度を有する。他の実施形態では、軟骨置換部中のTPUは、約2~50MPa、好ましくは5~40又は8~30MPaの引張弾性率(37℃で湿潤状態)を有する。
【0100】
本発明の更なる実施形態では、熱可塑性ポリウレタンは、脂肪族ポリエーテル、脂肪族ポリエステル、脂肪族ポリカルボナート又はそれらの組み合わせを、ソフトブロック、より具体的には脂肪族ポリカルボナートとして含む。ソフトブロックの組成物は、好ましくは、10℃未満、0℃未満、好ましくは-10℃未満のTgを有する本質的に非晶質のオリゴマー又はポリマーが生じるようなものである。適切な脂肪族ポリエーテルには、ポリ(プロピレンオキシド)ジオール、ポリ(テトラメチレンオキシド)ジオール、及びそれらのコポリマーが含まれる。適切な脂肪族ポリエステルは、一般に、少なくとも1つの脂肪族ジカルボン酸及び少なくとも1つの脂肪族ジオールから作製される。脂肪族ポリカルボナートジオールは、ポリエステルジオールに使用されるのと同様の脂肪族ジオールに基づいており、当技術分野で公知の異なる経路を介して合成することができる。好適な例としては、ポリ(ヘキサメチレンカルボナート)ジオール及びポリ(テトラヒドロフランカルボナート)ジオールが挙げられる。このようなポリカルボナート系TPUは、血液適合性のような好ましい生体適合性及び向上した生体安定性を示す。一実施形態では、TPUのソフトブロックは、ポリ(ヘキサメチレンカルボナート)ジオール、ポリ(ポリテトラヒドロフランカルボナート)ジオール、又はそれらの混合物に基づく。好ましい実施形態では、TPUは、ソフトブロックとしてポリ(ヘキサメチレンカルボナート)ジオールを含む。
【0101】
更なる実施形態では、TPUのソフトブロックは、ポリ(ジメチルシロキサン)ジオール、ポリカルボナートジオール、又はポリ(テトラメチレンオキシド)ジオール等のポリシロキサンジオールを含む。一実施形態では、ソフトブロックは、ポリシロキサンジオール、ポリカルボナートジオール、ポリ(テトラメチレンオキシド)ジオール、又はそれらの混合物に基づく。一実施形態では、ソフトブロックは、ポリシロキサンジオール、ポリカルボナートジオール、又はポリ(テトラメチレンオキシド)ジオールの2つ以上の混合物を含む。このような混合物は、高い靭性と組み合わせて加水分解安定性の向上を示す生体適合性ポリウレタンの製造を可能にする。一実施形態では、ソフトブロックは、ポリシロキサンジオール、ポリカルボナートジオール、又はポリ(テトラメチレンオキシド)ジオールの2つ以上の混合物に基づく。一実施形態において、ソフトブロックは、ポリシロキサンジオールと、ポリカルボナートジオール及びポリ(テトラメチレンオキシド)ジオールの1つ又は複数とを含む。一実施形態において、ソフトブロックは、ポリシロキサンジオールと、ポリカルボナートジオール及びポリ(テトラメチレンオキシド)ジオールの1つ又は複数とに基づく。
【0102】
一実施形態では、ソフトブロックは、C2-C16フルオロアルキルジオール又はC2-C16フルオロアルキルエーテルジオールを更に含んでもよい。一実施形態では、ポリウレタン主鎖中のソフトブロックは、1H,1H,4H,4H-ペルフルオロ-1,4-ブタンジオール、1H,1H,5H,5H-ペルフルオロ-1,5-ペンタンジオール、1H,1H,6H,6H-ペルフルオロ-1,6-ヘキサンジオール、1H,1H,8H,8H-ペルフルオロ-1,8-オクタンジオール、1H,1H,9H,9H-ペルフルオロ-1,9-ノナンジオール、1H,1H,10H,10H-ペルフルオロ-1,10-デカンジオール、1H,1H,12H,12H-ペルフルオロ-1,12-ドデカンジオール、1H,1H,8H,8H-ペルフルオロ-3,6-ジオキサオクタン-1,8-ジオール、1H,1H,11H,11H-パーフルオロ-3,6,9-トリオキサウンデカン-1,11-ジオール、フッ素化トリエチレングリコール、又はフッ素化テトラエチレングリコールを含む。
【0103】
一実施形態では、C2-C16フルオロアルキルジオール又はC2-C16フルオロアルキルエーテルジオールは、少なくとも150g/mol、少なくとも250g/mol、又は少なくとも500g/molのMnを有する。一実施形態では、フルオロアルキルジオール又はフルオロアルキルエーテルジオールは、最大1500g/mol、最大1000g/mol、又は最大850g/molのモル質量を有する。一実施形態では、C2-C16フルオロアルキルジオール又はC2-C16フルオロアルキルエーテルジオールは、ポリウレタンの総質量に基づいて、少なくとも1質量%、少なくとも2質量%、又は少なくとも5質量%の量で存在する。一実施形態では、C2-C16フルオロアルキルジオール又はC2-C16フルオロアルキルエーテルジオールは、ポリウレタンの総質量に基づいて、最大で15質量%、最大で10質量%、又は最大で8質量%の量で存在する。
【0104】
いくつかの実施形態において、ポリウレタンは、1個以上の疎水性末端基又は親水性末端基を含んでいてもよい。末端基は、一般に、分子の末端に存在する非反応性部分である。一実施形態では、ポリウレタンは、主鎖の各末端に末端基を含み、すなわち、これは平均約2個の末端基を有する。一実施形態では、末端基は直鎖化合物である。別の実施形態では、末端基は分岐である。末端基は、ポリマー骨格の形成中又は形成後に存在する末端イソシアネート基を、連鎖停止剤とも呼ばれる単官能化合物上の共反応性基と反応させることによって形成されていてもよい。例えば、ポリウレタンを形成するための配合物は、ジイソシアナート、ポリマー脂肪族ジオール、鎖延長剤、及び1-オクタノール又はオクチルアミンのような単官能性アルコール又はアミンを含んで、C8アルキル末端基を形成する。
【0105】
実施形態において、末端基は、疎水性末端基であり、例えば、C2-C20アルキル、C2-C16フルオロアルキル、C2-C16フルオロアルキルエーテル、疎水性ポリ(アルキレンオキシド)又はポリシロキサン(これらのコポリマーを含む)を含む。一実施形態では、疎水性ポリ(アルキレンオキシド)は、ポリ(プロピレンオキシド)、ポリ(テトラメチレンオキシド)又はそれらのコポリマーである。一実施形態では、疎水性末端基は、ポリ(ジメチルシロキサン)のようなポリシロキサンである。一実施形態では、末端基は、C2-C20アルキル、C2-C16フルオロアルキル、C2-C16フルオロアルキルエーテル、又は疎水性ポリ(アルキレンオキシド)を含む。そのような末端基は、カルビノール又は前述のアミンを含む単官能性アルコールで形成され得る。疎水性末端基を有するそのようなポリウレタンエラストマーは、ポリウレタンの特性、並びにポリオレフィン等の他のポリマー並びに身体組織及び血液等の流体を含む他の材料とのその相互作用に正の影響を及ぼすことが見出されている。
【0106】
一実施形態では、疎水性末端基は、C2-C16フルオロアルキル又はC2-C16フルオロアルキルエーテルを含む。そのような末端基は、C2-C16フルオロアルキル又はC2-C16フルオロアルキルエーテルを含む単官能性アルコール又はアミンを用いて形成され得る。一実施形態では、末端基は、1H,1H-ペルフルオロ-3,6-ジオキサヘプタン-1-オール、1H,1H-ノナフルオロ-1-ペンタノール、1H,1H-ペルフルオロ-1-ヘキシルアルコール、1H,1H-ペルフルオロ-3,6,9-トリオキサデカン-1-オール、1H,1H-ペルフルオロ-1-ヘプチルアルコール、1H,1H-ペルフルオロ-3,6-ジオキサデカン-1-オール、1H,1H-ペルフルオロ-1-オクチルアルコール、1H,1H-ペルフルオロ-1-ノニルアルコール、1H,1H-ペルフルオロ-3,6,9-トリオキサトリデカン-1-オール、1H,1H-ペルフルオロ-1-デシルアルコール、1H,1H-ペルフルオロ-1-ウンデシルアルコール、1H,1H-ペルフルオロ-ラウリルアルコール、1H,1H-パーフルオロ-1-ミリスチルアルコール、又は1H,1H-パーフルオロ-1-パルミチルアルコールから形成される。
【0107】
別の実施形態では、末端基は、親水性単官能性アルコール又はアミン化合物から形成される親水性末端基である。このような化合物は、ポリエチレンオキシド又はスルホネート官能性化合物のように、典型的には水に可溶性であり、表面活性を示し得る。そのような親水性末端基は、生体組織又は体液を含む他の材料との相互作用にプラスの影響を及ぼし得る。
【0108】
別の実施形態において、ポリウレタンは、疎水性末端基と親水性末端基との混合物を含む。そのような修飾は、ポリマーの疎水性対親水性のバランスを制御することを可能にする。末端基を有するTPUを使用する一般的な利点は、ポリマー及びインプラントからの移動に潜在的な問題をもたらし得る添加剤を組み込むことなく、ポリマーの特性を改変及び制御することである。
【0109】
一実施形態では、末端基は単量体であり、200g/mol以上、300g/mol以上、又は500g/mol以上、及び1,000g/mol以下又は800g/mol以下のモル質量を有する。一実施形態では、末端基はポリマー性であり、10,000g/mol以下、8,000g/mol以下、6,000g/mol以下、又は4,000g/mol以下のモル質量を有する。一実施形態では、末端基はポリマー性であり、500g/mol以上、1,000g/mol以上、又は2,000g/mol以上のモル質量を有する。
【0110】
一実施形態では、末端基は、ポリウレタンの総質量に基づいて、少なくとも0.1質量%、少なくとも0.2質量%、少なくとも0.3質量%、又は少なくとも0.5質量%の量で存在する。一実施形態では、末端基は、ポリウレタンの総質量に基づいて、最大3質量%、最大2質量%又は最大1質量%の量で存在する。一実施形態では、末端基は、ポリウレタンの総質量に基づいて、少なくとも0.1質量%、少なくとも0.2質量%、少なくとも0.3質量%、又は少なくとも0.5質量%、及び最大で3質量%、最大で2質量%、又は最大で1質量%の量で存在する。
【0111】
一実施形態では、ポリウレタンは、ポリウレタンの総重量に基づいて、0.1質量%未満の末端基を含む。一実施形態では、ポリウレタンは末端基を実質的に含まない。一実施形態では、ポリウレタンは末端基を含まない。
【0112】
TPU中のハードブロックは、典型的には、トルエンジイソシアネート(TDI)又はメチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)のような芳香族ジイソシアネート、及び1,4-ブタンジオールのような低モル質量脂肪族ジオールに基づく。ポリエーテル及びポリカルボナートポリウレタンは、それらの柔軟性、強度、生体安定性、生体適合性及び耐摩耗性の観点から、生物医学的用途に好適に使用され得る。ソフトブロック中にポリエーテルとポリシロキサン又はポリカルボナートとポリシロキサンの組み合わせを含有するTPUは、固有の特性の組み合わせを示し、ポリマー組成物中のポリウレタンとして有利に使用することができる。このようなポリマーの市販例としては、Pursil(登録商標)及びCarbosil(登録商標)製品(DSM Biomedical BV,Sittard-Geleen NLから入手可能)が挙げられる。
【0113】
更なる実施形態では、TPUは、2つ以上のポリマーのブレンド、例えば、50ShA及び50ShDグレードの組み合わせのような、異なる硬度を有する2つの生体適合性TPUグレードのブレンドであってもよく、又はソフトブロック及び/又は末端基が異なる2つのTPUグレードのブレンドである。TPUはまた、TPUと別の生体適合性ポリマー、好ましくは別の低弾性率エラストマー材料とのブレンドであり得る。典型的には、そのような他の生体適合性ポリマーは、TPU内に分散され、最大40体積%、好ましくは最大30、20又は10体積%のブレンドを形成する。
【0114】
他の実施形態において、TPUは、例えば触媒残留物に加えて、インプラントにおけるTPUの標的化された使用のために許容される1つ又は複数の慣用的な添加剤を含み得る。添加剤の例としては、安定剤、酸化防止剤、加工助剤、潤滑剤、界面活性剤、帯電防止剤、抗炎症剤のような生物学的に活性な化合物、例えば骨固定部のポリマー組成物に含まれるような無機粒子を含む充填剤粒子等が挙げられる。添加剤は、ポリウレタンの量に基づいて0.01~10質量%、好ましくは最大で8、6、4、3、又は2質量%等、当技術分野で公知の典型的に有効な量で存在してもよい。別の実施形態では、TPUは、添加剤を実質的に含まない。
【0115】
インプラントの軟骨置換部は、一般に、局所置換となる関節の軟骨層の厚さと同様又は実質的に一致する厚さを有する。このような厚さは、移植後に、軟骨置換部の側面が実質的に隣接する元の軟骨にのみ接触し、一方、部分の上面は、関節内の反対側の軟骨表面に隣接することが利用可能であることを目的とする。そのような設計は、天然の軟骨との良好な一体化をもたらし、より硬い骨組織に接触することによって損傷するリスクを低減することが見出されている。同様に、インプラントは、より剛性の骨固定部と天然軟骨との接触が制限されるか又は更に防止されて、損傷の対応するリスクを低減するように設計される。これは、以下を参照して、
図1~
図3に更に示されている。
【0116】
実施形態では、インプラントの軟骨置換部は、約0.2~5mm、好ましくは少なくとも0.4、0.6、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4又は1.5mm、最大で4.5、4.0、3.8、3.6、3.4、3.2、3.0、2.9又は2.8mmの厚さを有する。実施形態では、軟骨置換のための整形外科用インプラントの軟骨置換部は、関節におけるその特性及び性能がその表面積にわたって同様であるように、実質的に一定又は均一な厚さの層である。
【0117】
実施形態では、例えば、キャップ及びステム部分、キャップ、したがって軟骨置換部又は層にキノコ状の設計を有するインプラントは、それが配置される関節の表面のように、湾曲した又は起伏のある上面を有する。そのような湾曲は、1つの半径によって、又は二平面湾曲のように異なる方向の2つ以上の異なる半径によって特徴付けられてもよい。湾曲は、典型的には凸状であるが、関節のサドル状表面の場合のように、凸状と凹状との組み合わせであってもよい。複数の輪郭半径を有する軟骨置換部又は層は、当該厚さ範囲内で幾分変化する厚さを有することができ、好ましくは層の厚さは実質的に均一である。整形外科用インプラントの軟骨置換部が実質的に均一な厚さである場合、骨固定の上面は、軟骨置換部について上述したのと同様の湾曲を有する。
【0118】
関節の骨の湾曲は、とりわけ、関節、その中の位置、性別及び年齢に応じて、人によって大きく異なり、膝関節では、例えば湾曲は、15~70mmの半径によって特徴付けられ得る。欠陥が関節の中央部分で最も頻繁に発生することを考慮すると、本発明の実施形態は、半径が20~60mmの範囲の少なくとも1つの表面湾曲を有するインプラントを含み、そのようなインプラントはほとんどの患者での使用に適し得る。
【0119】
骨固定部及び任意選択的に軟骨置換部を含む整形外科用インプラントは、様々な形態又は形状を有することができ、好ましくは、インプラント、又は骨固定部のようなインプラントの少なくとも一部は、軸対称性を有する。
【0120】
実施形態では、インプラント1は、実質的に一定の直径を備える円筒形状であり、ここで円筒形の大きな区間3は骨固定パーツを表し、軟骨置換パーツは円筒形の1つの末端での区間(又は層)2である。円筒の直径は、5~20mm、10~18mm、12~17mm、又は典型的には約15mmであってよい。或いは、実質的な円筒形態は、上部から下部へのある程度のテーパリングを示し得るが、軟骨置換パーツ若しくは層は、骨固定パーツの最小直径より最大で10%大きい直径を有する。わずかにテーパリングされた骨固定パーツは、それがその中で製造される金型からパーツを離型する際だけではなく、骨穴にそれを配置して、移植後に骨との接触を保証する際にも有益であることが見出されている。固定パーツの縦方向と比較して、外側は、1~5°、好ましくは少なくとも1.5、若しくは2.0°及び最大で4.5、4.0、3.5若しくは3.0°のテーパリングを示し得る。
【0121】
図1には示されていないが、円筒の縁部は、負荷時の応力集中を低減するために幾分丸みを帯びていてもよく、部分2は湾曲していてもよい。軟骨置換部、又は少なくともその上面は、実質的に平坦であってもよいが、好ましくは、移植される関節接合部の湾曲を模倣するように湾曲又は起伏がある。実施形態では、上部湾曲は、互いに矩形方向の2つの半径等、少なくとも2つの異なる半径によって画定され、すなわち、表面は二平面湾曲を有する。このようにして、関節内の骨の関節面の典型的な湾曲を比較的簡単な方法でシミュレートすることができる。これは、鋳型及びインプラントの製造を単純化するだけでなく、異なるサイズ及び/又は幾何学的形状を有するインプラントプラグ、すなわち異なる湾曲及び任意選択的に異なる直径を有するプラグの数を減少させ、所与の患者に最も適したインプラントを選択することを可能にするために在庫に保持されるか又はキットに存在する必要がある。
【0122】
他の実施形態では、インプラント1は、キャップ及び少なくとも1つのステムを有するキノコ状の形状を有し、キャップはより幅広であり、例えばステムよりも大きい直径を有する。そのようなインプラントは、円形キャップを有する基本的な軸対称性を有することができるが、キャップはまた楕円形又は長円形であってもよく、並びに/或いはインプラントは2つ以上のステムを有してもよい。実施形態では、インプラントは、骨固定部の少なくとも1つのステムにおいて実質的な軸対称性を有する。
図2A及び
図2Bに示す簡略図は、このようなキノコ状インプラントの斜視上面図及び側面図を概略的に表す。これらの図では、ステム3bは、実質的に一定の直径を有する円筒形であるが、代替的にテーパ状又は円錐状であってもよく、キャップの下部3aと共に骨固定部3を形成する。その長手方向の向きに対して、ステムの外側は、上述のように1~5°のテーパを示すことができ、ステムの直径は、キャップから底端までわずかに減少する。骨固定部3を形成する両方の部分3a及び3bは、好ましくは、本開示に記載の組成物のように、同じポリマー組成物から作製される。キャップの上部(又は層)2は、例えば弾性TPUから作製され、骨固定部の部分3aによって支持され接着された軟骨置換部を表す。ステムの直径は、約5~15mm、典型的には約6~10mmであり得、キャップは、約5~25、10~20、12~18、又は約15mmの直径を有することができる。実際には、典型的には、特に異なるキャップサイズを有する、異なるサイズの一連のインプラントが、例えばキットの一部として利用可能にされ得、治療される患者に応じて、手術前又は手術中に適切なインプラントを選択することを可能にする。プラグの縁部、並びにキャップからステム及びステムの側壁から底部への移行部等は、好ましくは丸みを帯びており、移植及び/又は使用中の負荷時の応力集中を低減する(
図2には示されていない。)。
【0123】
実施形態では、インプラントは丸みを帯びた縁部及び/又は移行部を有し、これはインプラントの他の寸法にも依存して、0.1~4.0mmの丸め半径を有し得る。例えば、有限要素解析(FEA;有限要素モデリング、FEMとも呼ばれる)を適用することによる、埋め込まれたプラグ上の荷重分布シミュレーションは、軟骨置換部の表面に加えられる力がインプラント全体にわたってより良好に分散され得、当該縁部及び移行部の寸法決定を最適化することによって高い局所応力集中が防止され得ることを示した。実施形態では、インプラントの縁部及び移行部は、少なくとも0.2、0.5、1.0、1.5、又は2.0mm、最大3.5又は3.0mmの半径で丸みを帯びている。
【0124】
実施形態では、上述のように、インプラントの軟骨置換部2の上面は、それが埋め込まれ得る関節接合部の湾曲を模倣するように少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つの方向に湾曲又は輪郭付けられてもよい。実施形態では、キャップは二平面表面湾曲を有し、すなわち上部湾曲は、互いに矩形方向の2つの異なる半径によって特徴付けられる。そのような実施形態は、
図3によって更に示されており、二平面湾曲を有し、実質的に均一な厚さである、インプラントの軟骨置換部2の一部のみを示している。二平面湾曲を有するそのようなインプラントは、自然な湾曲を完全に再現することはできないが、そのような近似は、比較的簡単な方法で関節における骨の接合面の典型的な湾曲をシミュレートすることを可能にする。更に、二平面湾曲は、鋳型及びそれによるインプラントの製造を単純化し、所与の患者に最も適したインプラントを選択するために在庫に保持されるか又は部品キットに存在する必要がある、異なる湾曲及び任意選択的に異なる直径のステム及び/又はキャップを有するような、異なる幾何学的形状及びサイズのプラグの数を制限する。
【0125】
他の実施形態では、インプラントは、1つの半径によって説明することができる表面湾曲を有する。更なる実施形態では、インプラントは、3つ以上の半径によって説明することができる表面湾曲を有して、関節の特定の位置で複雑な表面湾曲により密接に追従する表面を画定することができる。更に、上面は、典型的には、1つ又は複数の方向に凸状の湾曲を有するが、関節表面のサドル形状部分のように、凸状及び凹状の湾曲の組み合わせを有してもよい。一般に、本開示のインプラントの一軟骨置換部の湾曲の半径(複数可)は、関節の種類及び患者に依存し得、当業者は適切な範囲を選択することができる。実施形態では、湾曲の半径は15~70mmの範囲にあり、好ましくは半径は少なくとも20又は25mm、最大で65、60、55又は50mmである。
【0126】
実施形態において、再び
図2を参照すると、骨固定部の一部を形成するキャップ3aの下面の少なくとも一部は、基本的に平坦である。この部分3aは、当該層に作用する力を分散させることを含む、軟骨置換部2を支持し、部分2とステム部3bとを接続し、骨への固定において役割を果たす。移植する際、骨孔は、プラグのステム3bの寸法と同じ(又はそれよりもわずかに小さい)寸法で作製されるが、損傷軟骨は、海綿骨組織が露出し、部分3aの側面及び下面が患者の骨組織に接触するような直径及び深さで除去される。ステム3bも同様である。次いで、軟骨置換部2は、主にその側面で、又はその側面単独のみで、天然軟骨に接触する。
【0127】
厚さ3a並びに直径及び長さ3bのような骨固定部3の寸法は、インプラントとして機能する関節、典型的な負荷、及び軟骨置換部のサイズのような様々な要因に依存する。当業者は、例えばいくつかのモデル計算の助けを借りて、上記の考慮事項に基づいて適切な寸法を選択することができる。実施形態では、部分3aは、約1~5mm、好ましくは少なくとも1.5又は2mm、最大で4.5、4、3.5又は3mmの厚さを有することができる。実質的に一定の厚さの湾曲した軟骨置換部の場合、骨固定部3の3aの上面は同様の湾曲を有し、その厚さは一定でなくてもよく、縁から中心に向かって逆であってもよい。厚さは約1~7mmであってもよく、好ましくは少なくとも1.5又は2mm、最大で6.5、6.0、5.5、5.0、4.5、4、3.5又は3mmであり、とりわけキャップ部の寸法(特に直径)に依存する。任意選択的に、大きいキャップを有する比較的大きいプラグの場合、3aと3bとの間の接続又は転写ゾーンは、キャップの部分2の縁部ゾーンに荷重をより良好に分散させるために、比較的大きい半径で丸みを帯びていてもよく、又は段階的又は円錐状のように緩やかであってもよい。或いは、3aと3bとを接続する補強リブを使用して、部分3aを更に支持し、インプラント及びその耐久性を更に強化することができる。
【0128】
他の実施形態では、整形外科用インプラントは、全体として軸対称性を有さないが、例えば、シャム双生児のように、キャップと共に部分的に融合した軸対称性を有する2つの同様のインプラント部を含むと考えることができる。そのようなインプラントの例は、キノコ状の形状を有し、輪郭形成された上面及び2つの実質的に同一の円筒形又はテーパ状のステムを有する実質的に楕円形又は長円形のキャップを有し、
図4の断面図に概略的に示されている。ここで、キャップの最上層2は、実質的に均一な厚さを有し、軟骨置換部を形成し、キャップ3aの下側は、2つのステム3b’及び3b’’と共に骨固定部3を形成する。丸みを帯びた縁部及び3aから3bへの移行に留意されたい。
図5において、そのようなインプラントは、異なる概略図によって更に例示される。
図5A及び
図5Bは、非円筒状インプラントのそれぞれの長辺及び短辺の側面図を提供し、単一のキャップ及びステムの両方又は一方のみをそれぞれ示す図である。
図5Cは、楕円形キャップの二平面輪郭表面を示すインプラントの斜視上面図を表す。
【0129】
実施形態では、例えば
図1及び
図2にそれぞれ示すように、インプラントの骨固定部3、又はその部分3a及び3bのサイズは、適切な骨孔を準備する等の外科的処置を単純化し、在庫に保持される、又は部品のキットに含まれるインプラントの数を制限するために、標準的な長さ及び/又は直径の限定されたセットから選択される。典型的には、そのような骨固定部は、約5~10mm、例えば約7mmの長さを有し、直径は、円筒状インプラントでは5~20mm、キノコ状設計では5~15mmであり得る。
【0130】
実施形態では、整形外科用インプラントは、骨固定部及び軟骨置換部を含み、骨固定部は、軟骨置換部に接触する表面を有し、表面は、高さ及び/又は深さ、並びに幅0.05~3.0mmを有する突起及び/又はくぼみで構造化される。実施形態では、当該寸法は、少なくとも0.1、0.2、0.3、0.4又は0.5mm、最大で2.5、2.0、1.5又は1.0mmである。幅は、(半)円形の突出又はくぼみ構造の断面寸法に関し、細長い構造の場合はより小さい寸法に関する(長さは、例えば屈曲又は螺旋構造の場合にはより長くてもよく、円形構造の場合には無限大であってもよい)。これらの構造は、一般に、鋭い縁部を有さず、丸みを帯びた縁部を有し、例えば、0.1~0.5mmの丸み半径である。このような表面構造を有する骨固定部は、接続された軟骨置換部が同様の構造を有する表面を正負の関係で有することを意味する。換言すれば、そのようなインプラントは、骨固定部と軟骨置換部との間の構造化された界面を有する。
【0131】
別の態様では、本発明は、損傷した軟骨組織の修復に使用するのに適した生体安定性インプラントのような整形外科用インプラントを提供し、インプラントは、骨固定部及び軟骨置換部を含み、軟骨置換部に接触する骨固定部の表面は、0.05~3.0mmの高さ及び/又は深さ並びに幅を有する突出及び/又はくぼみを有して構造化されている。幅は、(半)円形の突出又はくぼみ構造の断面寸法に関し、細長い構造の場合はより小さい断面寸法に関する(長さは、例えば屈曲又は螺旋構造の場合にはより長くてもよく、円形構造の場合には無限大であってもよい)。これらの構造は、一般に、丸みを帯びた縁部を有し、例えば、約0.2mmの丸み半径を有する。このような表面構造を有する骨固定部は、接続された軟骨置換部が同様の構造を有する表面を正負の関係で有することを意味する。換言すれば、そのようなインプラントは、骨接触部と軟骨置換部との間の構造化された界面を有する。
【0132】
構造化表面を有する骨固定部を有する整形外科用インプラントの実施形態では、骨固定部は、生体安定性熱可塑性ポリウレタン(TPU)と15~70質量%のジルコニア粒子を含む無機粒子とを含むポリマー組成物等の剛性ポリマー組成物を含み、本明細書の上記の様々な実施形態に記載の特徴のいずれか及び任意の可能な組み合わせを含む。
【0133】
更なる実施形態では、構造化表面を有する骨固定部を有する当該整形外科用インプラントは、上記の様々な実施形態に記載されているような特徴を含む生体安定性TPUからのような弾性の耐摩耗性の生体適合性材料から、任意の可能な組み合わせで作製された軟骨置換部を含む。
【0134】
いかなる理論にも束縛されることを望むものではないが、本発明者らは、骨接触部と軟骨置換部との間の構造化された界面が、より大きな接触面をもたらし、変化する荷重下で弾性軟骨置換層の変形を抑制又は低減し、部品間の接着性が向上すると考える。更に、構造(突起及び/又はくぼみ)の種類、サイズ及び数は、軟骨置換部の表面に加えられる荷重の骨固定部への分布に影響を及ぼし、例えば、部品間の界面での層間剥離の開始である、局所的な欠陥を誘発し得る応力集中の発生を防止するように選択することができる。構造化界面は、1つの設計の構造を有することができるが、異なる突出構造及び/又はくぼみ構造の組み合わせが存在してもよい。適切な突出構造及び/又はくぼみ構造並びにそれらの効果の識別及び選択は、例えばFEAツールを使用したモデル計算によって支持され得る。
【0135】
実施形態では、整形外科用インプラントは、突出及び/又はくぼみを有する構造化表面を有する骨固定部を有し、突出は、延長している丘又は隆起部、及び/又は表面にくぼんだ谷を含み、隆起部又は谷部は、連続的又は不連続的であってもよく、
図6に概略的に示されているように直径が減少する円の中にあるように、インプラントの外側輪郭に多かれ少なかれ追従してもよい。
図6Aは、骨固定部3の部分3aの滑らかな(構造化されていない)表面に接触する(任意選択的に透明又は半透明の)軟骨置換部2を有するキノコ状インプラント1を示す。
図6Bでは、多数の同心リッジ4(4’、4’’等)が、3aの表面から部分2(対応する谷部を有する)内に突出するように示されている。別の例示的な実施形態が
図6Cに示されており、多数の個々の円錐状突起(4’、4’’等)が3aの表面に存在する(部分2の対応するくぼみを有する)。
【0136】
実施形態では、整形外科用インプラントは、突出及び/又はくぼみ4を有する構造化表面を有する骨固定部を有し、突出構造は、それらが突出する軟骨置換部2の厚さの最大50%の高さを有し、好ましくは当該高さは軟骨置換層の厚さの最大45、40、35、30又は25%である。同様に、くぼみ構造4は、骨固定部の断面3aの厚さの最大50、45、40、35、30又は25%の深さを有することができる。
【0137】
実施形態では、整形外科用インプラントは、0.05~3.0mmの高さ及び/又は深さ並びに幅を有する突起及び/又はくぼみ4を有する構造化表面を有する骨固定部を有する。実施形態では、当該寸法は、少なくとも0.10、0.15、0.20、0.25、0.30、0.35、0.40又は0.45mm、最大で2.5、2.0、1.8、1.6、1.4、1.2又は1.0mmである。他の実施形態では、これらの構造は、鋭い縁部を有さず、丸みを帯びた縁部を有し、例えば、0.1~0.5mmの丸み半径である。
【0138】
別の態様では、本発明は、損傷した軟骨組織の修復に使用するのに適した生体安定性インプラントのような整形外科用インプラントを提供し、インプラントは、骨固定部及び軟骨置換部を有し、軟骨置換部は、生体安定性熱可塑性ポリウレタンのような弾性及び耐摩耗性生体適合性材料の層を含み、層は、約0.2~5mm、好ましくは少なくとも0.4、0.6、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4又は1.5mm、及び最大4.5、4.0、3.8、3.6、3.4、3.2、3.0、2.9又は2.8mmの実質的に一定又は均一な厚さを有し、軟骨置換部及びその上面は、2つ以上の方向に輪郭付けられている。実施形態では、そのような整形外科用インプラントは、本開示の様々な実施形態に記載されたものに対応する1つ又は複数の更なる特徴を、任意の可能な組み合わせで有することができる。
【0139】
インプラントの更なる実施形態では、インプラントの軟骨置換部の上面は、2つ以上の方向に輪郭付けられ、その結果、プラグ等のインプラントは軸対称性を有さない。そのような場合、インプラントは、標的インプラント部位での骨湾曲に対して当該輪郭形成の適切な向きで配置され得ることが重要である。手術中にそのような所望の向きでのインプラントを容易にするか、又は可能にするために、整形外科用インプラントは、眼で及び/又は撮像技術で見ることができる配向マーカを更に含むことができる。
【0140】
実施形態では、インプラントは、透明又は半透明の軟骨置換層を有し、骨固定部と軟骨置換部との界面に配向マーカが存在する。例えば、インプラントが上述のような突出及び/又はくぼみを有する構造化表面を有する骨固定部を含む場合、当該突出及び/又はくぼみは、それらが視覚配向マーカとしても機能するように配置されてもよい。代替的に及び他の実施形態では、インプラントの他の部分と区別可能な色等の光学特性を有する小さな細長い部分が当該界面に存在し、この細長い部分は、後述するように、当該部分を作製する後続の工程の間に挿入されていてもよい。
【0141】
更なる実施形態では、短い長さの薄い金属ワイヤ又は一列に並ぶ多数の小さな金属片のように、比較的小さい放射線不透過性の細長い部分が、配向マーカとして存在する。金属ワイヤのような配向マーカは、例えば、約2~6mmの長さを有することができ、タンタルワイヤであってもよい。実施形態では、そのような細長い放射線不透過性マーカは、骨固定部と軟骨置換部との間に存在し、例えば、その長さは軟骨置換部の上面のより大きな湾曲半径の方向に向けられる。そのような配向マーカは、
図2bの線5として表される。そのような場合、外科医は、したがって、手術中にプラグを所望の向きに配置することができるだけでなく、適切な医療撮像技術を使用して、術後にその位置及びその中の任意の潜在的変化を確認することもできる。
【0142】
更なる態様では、本発明は、骨固定部を含む当該整形外科用インプラントを製造する方法に関し、上記で定義されたポリマー組成物から骨固定部を成形する工程を含む射出成形プロセスでインプラントを形成することを含み、好ましくは生体安定性熱可塑性ポリウレタンと15~70質量%のジルコニア粒子とを含む。そのような方法は、当業者に周知である。
【0143】
他の態様では、本発明は、骨固定部及び軟骨置換部を含む当該整形外科用インプラントを作製する方法に関し、方法は、本明細書で上に定義されるような、好ましくは生体安定性熱可塑性ポリウレタンと15~70質量%のジルコニアを含む無機粒子とを含むポリマー組成物を、軟骨置換部の形態のインサートを含む鋳型に注入して骨固定部を形成する工程と、その後、鋳型からインサートを除去する工程と、TPUのような弾力及び耐摩耗性の生体適合性材料を、ポリマー組成物が部分的に充填された鋳型に注入して、軟骨置換部を形成する工程と、を含む多成分射出成形プロセスでインプラントを形成することを含む。異なるポリマーグレードからの多成分成形技術によってインプラントを作製することは、当技術分野において公知である。例えば、国際公開第2011/098473号は、異なるTPUグレードのような、それぞれが異なるが化学的に関連するポリマー材料を含む2つ以上の別個の部分を有する半月板インプラント又は椎間板インプラントのような整形外科用インプラントの作製を記載している。
【0144】
更なる態様では、本発明は、骨固定部及び軟骨置換部を含む整形外科用インプラントを作製する方法に関し、方法は、軟骨置換部の形態のインサートを含み、形成される骨固定部の上部に接触する表面に高さ及び/又は深さ並びに幅が0.05~3.0mmの突起及び/又はくぼみを有する鋳型に剛性ポリマー組成物を注入する工程と、その後、鋳型からインサートを除去する工程と、ポリマー組成物が部分的に充填された鋳型に弾性及び耐摩耗性生体適合性材料を注入してインプラントの軟骨置換部を形成する工程と、を含む多成分射出成形プロセスでインプラントを形成することを含む。
【0145】
いくつかの実施形態において、方法は、生体安定性熱可塑性ポリウレタンと15~70質量%のジルコニアを含む無機粒子とを含む堅牢なポリマー組成物を注入する工程と、弾性及び耐摩耗性の生体適合性材料を注入する工程と、を含み、組成物及び材料は、本明細書で上に定義した通りであり、任意の特徴及びそれらの組み合わせを含む。
【0146】
他の実施形態では、整形外科用インプラントを作製する様々な方法は、好ましくはポリマー組成物を注入して骨固定部を形成する工程と、生体適合性材料を鋳型に注入する工程との間に、放射線不透過性マーカのような配向マーカをインプラントに挿入する更なる工程を含み得る。放射線不透過性マーカは、一片の薄いタンタルワイヤのように、好ましくは、輪郭形成された上面の2つ以上の異なる湾曲半径のうちの1つの方向と一直線に配置されて、例えば移植中及び移植後のインプラントの向き及び適切な位置決めを監視することを可能にする。
【0147】
実施形態では、当該方法で使用される鋳型は、例えばVDI3400 36による粗さを有する画定された表面粗さを有する骨固定形成部に提供されて、少なくとも5μmの表面粗さRaを有する骨固定部を有する成形部品をもたらし、例えば、国際公開第2019/068903号に記載されている方法を参照されたい。
【0148】
更なる実施形態では、当該整形外科用インプラントを作製する方法は、成形インプラントの骨固定部の表面に、生物活性、好ましくは骨伝導性の粒子又は生物活性、好ましくは骨伝導性のコーティングを、例えば、ポリマー組成物に含まれるポリウレタンのための溶媒中で、リン酸カルシウムのような生物活性セラミック粒子の分散液で、テクスチャ加工されていてもよい表面を処理することによって、提供する工程を更に含む。このような溶剤系表面処理の詳細は、国際公開第2019/068903号に記載されている。
【0149】
別の態様では、本発明は、本明細書で上述した少なくとも1つの整形外科用インプラントを含む部品の外科用キットに関し、より具体的には、異なるサイズを有する少なくとも2つのインプラントのセットを含む外科用キットに関する。異なるサイズを有するインプラントは、例えば、軟骨置換部のサイズ及び/若しくは湾曲、並びに/或いは骨固定部の寸法が異なり得る。そのような外科用キットは、骨孔を形成するための誘導及び穿孔ツール、並びに整形外科用インプラントを骨孔に挿入するためのツールのような、1つ又は複数の整形外科用インプラントを受け入れるためのインプラント位置を準備するための補助ツールを更に含み得る。
【0150】
更なる態様は、哺乳動物の膝関節等の変性又は損傷した軟骨組織を修復する際の、本明細書で上述した整形外科用インプラントの使用及び本明細書で上述した外科用キットの使用を含む。関節内の損傷軟骨の局所治療のためのそのような使用は、TKRのような全関節置換手術の必要性を遅延させ、場合によっては回避さえし得る。
【0151】
上記のような本発明を実施する様々な態様、実施形態及び方法は、以下、一連の例示的な実施形態によって更に要約される。
[1]生体安定性熱可塑性ポリウレタン(TPU)と15~70質量%のジルコニアを含む無機粒子とを含むポリマー組成物を含む骨固定部を有する整形外科用インプラント。
[2]骨固定部と軟骨置換部とを有する整形外科用インプラントであって、骨固定部の軟骨置換部と接触する面は、高さ及び/又は深さ、及び幅0.05~3.0mmの突起及び/又はくぼみで構成される、整形外科用インプラント。
[3]骨固定部及び軟骨置換部を有する整形外科用インプラントであって、軟骨置換部は、弾性及び耐摩耗性の生体適合性材料で作製された層を含み、層は0.2~5mmの実質的に一定又は均一な厚さを有し、2つ以上の方向に輪郭付けられている、骨固定部及び軟骨置換部を有する整形外科用インプラント。
[4]骨固定部が、剛性ポリマー組成物、好ましくは生体安定性TPUと15~70質量%のジルコニアを含む無機粒子とを含むポリマー組成物を含む、実施形態2又は3のインプラント。
[5]骨固定部を含む整形外科用インプラントを製造する方法であって、生体安定性TPUと15~70質量%のジルコニアを含む無機粒子とを含むポリマー組成物から骨固定部を成形する工程を含む射出成形プロセスでインプラントを形成することを含む、骨固定部を含む整形外科用インプラントを製造する方法。
[6]骨固定部及び軟骨置換部を含む整形外科用インプラントを作製する方法であって、生体安定性TPUと15~70質量%のジルコニアを含む無機粒子とを含むポリマー組成物を、軟骨置換部の形態のインサートを含む鋳型に注入して、骨固定部を形成する工程と、その後、鋳型からインサートを除去する工程と、ポリマー組成物が部分的に充填された鋳型に弾性及び耐摩耗性生体適合性材料を注入してインプラントの軟骨置換部を形成する工程と、を含む多成分射出成形プロセスでインプラントを形成することを含む、骨固定部及び軟骨置換部を含む整形外科用インプラントを作製する方法。
[7]生体安定性インプラントが、損傷軟骨組織の修復における使用に適している、実施形態1~6のいずれか1つのインプラント又は方法。
[8]TPUが、複数の「ハード」及び「ソフト」ポリマーブロックを含む相分離ブロックコポリマーである、実施形態1~7のいずれか1つのインプラント又は方法。
[9]TPUが、それぞれの鎖延長剤としてのジイソシアナートとジオール及び任意選択的にジアミンとの反応から生じるウレタン基及び任意選択的に尿素基を繰返し単位に含むハードブロックを含む、実施形態1~8のいずれか1つのインプラント又は方法。
[10]ジイソシアネートが、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4-トルエンジイソシアネート、2,6-トルエンジイソシアネート、又は1,4-フェニレンジイソシアネートを含む、実施形態9のインプラント又は方法。一実施形態では、ジイソシアネートは、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4-トルエンジイソシアネート、2,6-トルエンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、又はそれらの混合物からなる。
[11]鎖延長剤が、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、又は1,8-オクタンジオール、並びに/或いは上記の対応するジアミンを含む、実施形態9のインプラント又は方法。
[12]TPUがジオール鎖延長剤のみを含む、実施形態9~11のいずれか1つのインプラント又は方法。
[13]TPUが、ウレタン結合及び尿素結合の両方を有するハードブロックを含む、実施形態9~11のいずれか1つのインプラント又は方法。
[14]TPUが、ポリエーテル、ポリエステル、ポリアクリラート、ポリオレフィン及びポリシロキサン(シリコーンとも呼ばれる)からなる群から選択される、少なくとも1つの脂肪族ポリマージオール又はポリオールに由来するソフトブロックを含み、ポリマーはヒドロキシル(又はアミン)末端基により二官能性である、実施形態8~13のいずれか1つのインプラント又は方法。
[15]TPUが、脂肪族ポリエステルジオール、脂肪族ポリカルボナートジオール、脂肪族ポリエーテルジオール、ポリ(イソブチレン)ジオール及びポリシロキサンジオールから選択される少なくとも1つのポリマージオールに由来するソフトブロックを含む、実施形態8~14のいずれか1つのインプラント又は方法。
[16]TPUのハードブロックが、約160~10,000Da、又は約200~2000Daのモル質量を有する、実施形態8~15のいずれか1つのインプラント又は方法。
[17]ソフトブロックのモル質量が、約200~100,000Da、又は少なくとも約400、600、800又は1000Da、及び最大で約10,000、7500、5000、4000、3000又は2500Daである、実施形態8~16のいずれか1つのインプラント又は方法。
[18]TPUが、A又はDスケールを使用してショアデュロメータ試験で測定した場合に40ShA~90ShDの硬度を有する、実施形態1から17のいずれか1つのインプラント又は方法。
[19]TPUが、少なくとも45、50、55又は60ShA及び多くとも90ShAの硬度を有する、実施形態1~17のいずれか1つのインプラント又は方法。
[20]TPUが、少なくとも90ShA、40ShD、50ShD又は60ShD、及び多くとも85又は80ShDの硬度を有する、実施形態1~17のいずれか1つのインプラント又は方法。
[21]TPUが、ソフトブロック中に脂肪族ポリエーテル、脂肪族ポリエステル又は脂肪族ポリカルボナート、好ましくは脂肪族ポリカルボナート、例えばポリ(ヘキサメチレンカルボナート)、ポリ(ポリテトラヒドロフランカルボナート)又はそれらの混合物を含む、実施形態8~20のいずれか1つのインプラント又は方法。
[22]TPUが本質的に非晶質であるソフトブロックを含み、TPUが10、0、又は-10℃未満のTgを示す、実施形態8~21のいずれか1つのインプラント又は方法。
[23]TPUが、ポリシロキサンジオール、ポリカルボナートジオール、ポリ(テトラメチレンオキシド)ジオール、又はそれらの混合物に由来するソフトブロックを含む、実施形態8~22のいずれか1つのインプラント又は方法。
[24]ソフトブロックがポリシロキサンジオール並びにポリカルボナートジオール及びポリ(テトラメチレンオキシド)ジオールの1つ又は複数に由来する、実施形態8~22のいずれか1つのインプラント又は方法。
[25]ソフトブロックがC2-C16フルオロアルキルジオール又はC2-C16フルオロアルキルエーテルジオールを更に含む、実施形態8~24のいずれか1つのインプラント又は方法。
[26]C2-C16フルオロアルキルジオール又はC2-C16フルオロアルキルエーテルジオールが、少なくとも150、250又は500g/mol及び多くとも1500、1000又は850g/molのMnを有する、実施形態25のいずれか1つのインプラント又は方法。
[27]C2-C16フルオロアルキルジオール又はC2-C16フルオロアルキルエーテルジオールが、ポリウレタンの総質量に基づいて、少なくとも1、2又は5質量%及び多くとも15、10又は8質量%の量で存在する、実施形態25~26のいずれか1つのインプラント又は方法。
[28]TPUが1つ又は複数の疎水性又は親水性末端基を含む、実施形態8~27のいずれか1つのインプラント又は方法。
[29]TPUが骨格の各末端に末端基を含む、実施形態8~28のいずれか1つのインプラント又は方法。
[30]末端基が疎水性末端基である、実施形態28~29のいずれか1つのインプラント又は方法。
[31]末端基が、C2-C20アルキル、C2-C16フルオロアルキル、C2-C16フルオロアルキルエーテル、疎水性ポリ(アルキレンオキシド)又はポリシロキサン(それらのコポリマーを含む)を含む、実施形態30のいずれか1つのインプラント又は方法。
[32]末端基が、ポリエチレンオキシド又はスルホネート官能性化合物のような親水性末端基である、実施形態28~29のいずれか1つのインプラント又は方法。
[33]TPUが疎水性末端基と親水性末端基との混合物を含む、実施形態28~29のいずれか1つのインプラント又は方法。
[34]末端基がモノマーであり、少なくとも200、300、500g/mol及び多くとも1,000又は800g/molのモル質量を有する、実施形態28~33のいずれか1つのインプラント又は方法。
[35]末端基がポリマー性であり、少なくとも5,00、1,000又は2,000g/mol及び多くとも10,000、8,000、6,000又は4,000g/molのモル質量を有する、実施形態28~33のいずれか1つのインプラント又は方法。
[36]末端基が、TPUの総質量に基づいて、少なくとも0.1、0.2、0.3又は0.5質量%及び多くとも3、2又は1質量%の量で存在する、実施形態28~35のいずれか1つのインプラント又は方法。
[37]TPUが、TPUの総重量に基づいて0.1重量%未満の末端基を含むか、又は末端基を実質的に欠いている、実施形態28~35のいずれか1つのインプラント又は方法。
[38]TPUが、安定剤、酸化防止剤、加工助剤、潤滑剤、界面活性剤、帯電防止剤又は着色剤等の1つ又は複数の慣用的な添加剤を含む、実施形態1~37のいずれか1つのインプラント又は方法。
[39]添加剤が、TPUの量に基づいて0.01~5質量%、好ましくは0.1~2質量%の量で存在する、実施形態38のいずれか1つのインプラント又は方法。
[40]TPUが、2つ以上のポリマーのブレンド、例えば、80ShA及び75ShDグレードの組み合わせのような、少なくとも異なる硬度を有する2つの生体適合性TPUグレードのブレンドである、実施形態1~39のいずれか1つのインプラント又は方法。
[41]ポリマー組成物が、a)30~85質量%の生体安定性TPU及びb)15~70質量%の無機粒子から実質的になるか、又はこれらからなり、a)及びb)の合計は100質量%である、実施形態1~40のいずれか1つのインプラント又は方法。
[42]ポリマー組成物が、a)20~85質量%の生体安定性TPU、b)15~70質量%の無機粒子、及びc)0~10質量%の他の化合物からなり、a)及びb)の合計が100質量%である、実施形態1~40のいずれか1つのインプラント又は方法。
[43]他の化合物が、抗菌剤、抗炎症剤若しくは活性剤、分散剤又は残留量の溶媒のような生物活性化合物を含む、実施形態42のいずれか1つのインプラント又は方法。
[44]組成物が、最大5、4、3又は2質量%の他の化合物と、最大1000ppmの溶媒、好ましくは最大800、600、500又は400ppmの溶媒とを含む、実施形態42~43のいずれか1つのインプラント又は方法。
[45]ポリマー組成物中の無機粒子がジルコニアから実質的になるか、又はジルコニアからなる、実施形態1~44のいずれか1つのインプラント又は方法。
[46]ジルコニア粒子が、ポリマー組成物中の無機粒子の総量の少なくとも60、70又は75質量%及び多くとも98、95、90、85又は80質量%を形成する、実施形態1~44のいずれか1つのインプラント又は方法。
[47]ジルコニアが、実質的に純粋なZrO2、又はZrO2と最大約20質量%、好ましくは最大15、10又は5質量%の他の無機酸化物とを含む混合酸化物である、実施形態1から46のいずれか1つのインプラント又は方法。
[48]無機粒子が、遷移金属酸化物粒子のような遷移金属塩粒子のような放射線不透過性の生体適合性遷移金属化合物粒子を更に含む、実施形態1~44及び46~47のいずれか1つのインプラント又は方法。
[49]無機粒子が、チタン(Ti)、亜鉛(Zn)、イットリウム(Y)、ランタン(La)、イッテルビウム(Yb)、ハフニウム(Hf)、及びタンタル(Ta)のうちの少なくとも1つの塩、好ましくは酸化物を更に含む、実施形態1~44及び46~47のいずれか1つのインプラント又は方法。
[50]無機粒子が、ジルコニアと、Ti、Zn、Y、及びTaの少なくとも1つの、塩、好ましくは酸化物とを含むか、又はそれらからなる、実施形態48のいずれか1つのインプラント又は方法。
[51]ジルコニアを含む無機粒子が、0.03~10μm、好ましくは0.1~5μmの範囲の平均粒径(ISO13320:2009による光回折を用いてD50値として決定される)を有する、実施形態1~50のいずれか1つのインプラント又は方法。
[52]ポリマー組成物中の無機粒子が、葉巻状、血小板状、針状又は繊維様の形状のような、実質的に球形からより細長い形状又は平坦な形状にまで及ぶ規則的又は不規則な形状である、実施形態1~51のいずれか1つのインプラント又は方法。
[53]ポリマー組成物が、実質的に球形の粒子と少なくとも1、2、4、6、8又は10の平均アスペクト比を有する細長い粒子との混合物のような、異なる形状の無機粒子の混合物を含む、実施形態52のいずれか1つのインプラント又は方法。
[54]ジルコニアを含む無機粒子が、少なくとも0.05、0.10、0.15、0.20、0.25又は0.30μm及び多くとも8、7、6、5、4、3又は2μmの平均粒径D50を有する、実施形態1~53のいずれか1つのインプラント又は方法。
[55]無機粒子が、ジルコニア粒子、並びに遷移金属化合物粒子及び(ナノ)クレー、マイカ及びタルカムのような天然鉱物粒子から選択される1つ又は複数の他の生体適合性無機粒子である、実施形態1~54のいずれか1つのインプラント又は方法。
[56]無機粒子の総量の少なくとも60、70、75、80、85、90又は95質量%がジルコニア粒子である、実施形態1~55のいずれか1つのインプラント又は方法。
[57]ポリマー組成物が、少なくとも20、25、30、又は35質量%の無機粒子と、多くとも68、66、64、62、60、58、56、54、52、50、48、又は46質量%とを含有する、実施形態1~56のいずれか1つのインプラント又は方法。
[58]ポリマー組成物中のTPUが、実験部に記載のGPC法で測定した場合に、少なくとも70、75、80、85、90、95又は100kDa及び多くとも400、300、250又は200kDaのモル質量Mwを有する、実施形態1~57のいずれか1つのインプラント又は方法。
[59]ポリマー組成物が、乾式成形サンプル(乾燥/20℃)で測定した場合に、800~3000MPaのE弾性率を有するか、又はE弾性率が少なくとも850又は900MPa及び最大で2500、2000、1800又は1600MPaである、実施形態1~58のいずれか1つのインプラント又は方法。
[60]ポリマー組成物が、調整された試料(湿潤/37℃)で測定した場合に、200~700のE弾性率を有するか、又はE弾性率は少なくとも225MPa、最大で600、550、500又は450MPaである、実施形態1~59のいずれか1つのインプラント又は方法。
[61]ポリマー組成物が、少なくとも5%、又は少なくとも10、20、30、40若しくは50%(乾燥/20℃)の引張試験中の破断伸びEabを有する、実施形態1~60のいずれか1つのインプラント又は方法。
[62]ポリマー組成物が、調整された場合(湿潤/37℃)、少なくとも10%、又は少なくとも20、30、40又は50%のEabを有する、実施形態1~61のいずれか1つのインプラント又は方法。
[63]ポリマー組成物が、少なくとも30MPa、又は少なくとも35若しくは40MPa(乾燥/20℃)の引張破断強度TSを有する、実施形態1~62のいずれか1つのインプラント又は方法。
[64]ポリマー組成物が、調整された場合(湿潤/37℃)、少なくとも15MPa、又は少なくとも20又は25MPaのTSを有する、実施形態1~63のいずれか1つのインプラント又は方法。
[65]ポリマー組成物が、76~85ShD、又は78~82ShDのショア硬度(乾燥/20℃)を有する、実施形態1~64のいずれか1つのインプラント又は方法。
[66]インプラントの骨固定部が、少なくとも1、2、3、4、5、6、8、10、12、14、16、18又は20μm及び最大25μmの表面粗さRaを有するテクスチャ付き外面を有する、実施形態1~65のいずれか1つのインプラント又は方法。
[67]インプラントの骨固定部が生物活性コーティング、好ましくは骨伝導性コーティングを有する、実施形態1~66のいずれか1つのインプラント又は方法。
[68]リン酸カルシウム、バイオガラス又はケイ化セラミックのような生物活性セラミック粒子が、骨固定部の表面に存在する、実施形態66又は67のいずれか1つのインプラント又は方法。
[69]生物活性セラミック粒子が、リン酸二カルシウム無水物(CaHPO4;DCPA)、リン酸二カルシウム二水和物(CaHPO4 2H2O;DCPD)、リン酸八カルシウム(Ca8(HPO4)2 5H20;OCP)、リン酸三カルシウム(Ca3(PO4)2;TCP)、ヒドロキシアパタイト(Ca10(PO4)6(OH)2;HA)、及びバイオガラスから選択されるか、又はそれらの2つ以上の混合物である、実施形態68のいずれか1つのインプラント又は方法。
[70]生物活性セラミック粒子が0.1~10μmの範囲の粒径D50を有し、好ましくはD50が少なくとも0.2、0.3、0.4又は0.5μmであり、最大で10、8、6、5、4、3、2又は1μmである、実施形態68~69のいずれか1つのインプラント又は方法。
[71]骨固定部が、プラグ又はスクリューのような骨アンカーであり、更なる部分を骨に固定するために使用することができる、実施形態1~70のいずれか1つのインプラント又は方法。
[72]インプラントが、少なくとも骨固定部及び軟骨置換部を含む、実施形態1~71のいずれか1つのインプラント又は方法。
[73]軟骨置換部が、骨固定部に永続的に接続され、弾性且つ耐摩耗性の生体適合性材料から作製される、実施形態72のいずれか1つのインプラント又は方法。
[74]軟骨置換部が、ポリエステル、ポリアミド又はポリウレタンに基づくハードセグメントを有する生体安定性、弾力性、熱可塑性ブロックコポリマーから作製される、実施形態72~73のいずれか1つのインプラント又は方法。
[75]軟骨置換部が、55~100ShAのショア硬度を有する生体安定性、弾性、熱可塑性ポリウレタン(TPU)から作製される、実施形態72~74のいずれか1つのインプラント又は方法。
[76]軟骨置換部のTPUが、実施形態8~17及び21~39のいずれか1つにおけるポリマー組成物のTPUについて定義されるような、ハードブロック及びソフトブロック、並びに場合により末端基を含むブロックコポリマーである、実施形態75のいずれか1つのインプラント又は方法。
[77]軟骨置換部のTPUが、50ShA~50ShDの範囲の異なる硬度を有する2つの生体適合性TPUグレードのブレンド、又はソフトブロック及び/又は末端基が異なる2つのTPUグレードのブレンドのような、2つ以上のポリマーのブレンドである、実施形態72~76のいずれか1つのインプラント又は方法。
[78]軟骨置換部のTPUが、ポリウレタンと別の生体適合性の低弾性率ポリマーとのブレンドであり、好ましくは他の生体適合性ポリマーがブレンドの最大40体積%、好ましくは最大30、20又は10体積%を形成する、実施形態72~76のいずれか1つのインプラント又は方法。
[79]軟骨置換部のTPUが、骨固定部のポリマー組成物中のTPUに含まれるようなブロック及び末端基と(化学的に)類似しているハードブロック及びソフトブロック、並びに任意選択的に末端基を含む、実施形態72~78のいずれか1つのインプラント又は方法。
[80]軟骨置換部のTPUが、少なくともハードブロック対ソフトブロックの比及び/又はブロック長においてポリマー組成物中のTPUとは異なる、実施形態79のいずれか1つのインプラント又は方法。
[81]軟骨置換部のTPUが、少なくとも60、65、又は70ShA、及び多くとも95、90、又は85ShAの硬度を有する、実施形態72~80のいずれか1つのインプラント又は方法。
[82]軟骨置換部のTPUが、10~100MPa(乾燥/20℃)及び2~50MPa(湿潤/37℃)の引張弾性率を有する、実施形態72~81のいずれか1つのインプラント又は方法。
[83]インプラントの軟骨置換部が、局所置換となる関節の軟骨層の厚さと同様又は一致する厚さを有する、実施形態72~82のいずれか1つのインプラント又は方法。
[84]インプラントの軟骨置換部が、実質的に一定又は均一な厚さの層であり、層が骨固定部に接続され、骨固定部によって支持される、実施形態72~83のいずれか1つのインプラント又は方法。
[85]インプラントの軟骨置換部が、0.2~5mm、好ましくは少なくとも0.4、0.6、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4又は1.5mm、及び最大で4.5、4.0、3.8、3.6、3.4、3.2、3.0、2.9又は2.8mmの厚さを有する、実施形態84のいずれか1つのインプラント又は方法。
[86]軟骨置換部が、15~70mm、好ましくは少なくとも20又は25mm、及び最大で65、60、55又は50mmの少なくとも1つの半径を特徴とする湾曲を有する、少なくとも一方向に湾曲した、又は傾斜のある上面を有する、実施形態72~85のいずれか1つのインプラント又は方法。
[87]軟骨置換部が、少なくとも二方向の少なくとも二種類の異なる半径を特徴とする表面湾曲を有し、好ましくは部分が二平面湾曲を有する、実施形態86のいずれか1つのインプラント又は方法。
[88]骨固定部及び任意選択的に軟骨置換部を含むインプラントが軸対称性を有する、実施形態1~85のいずれか1つのインプラント又は方法。
[89]インプラントが、直径5~20mm及び長さ5~15mmの円筒形状を有し、上部が軟骨置換部を形成し、残りの部分が骨固定部を形成する、実施形態1~88のいずれか1つのインプラント又は方法。
[90]骨固定部が、軟骨置換部から底端まで1~5°のテーパリングを有し、好ましくは、テーパリングは、少なくとも1.5又は2.0°及び多くとも4.5、4.0、3.5又は3.0°である、実施形態89のいずれか1つのインプラント又は方法。
[91]インプラントが、キャップ及び少なくとも1つのステムを有するキノコ状の形状を有し、キャップの上部が軟骨置換部を形成し、キャップの残りの部分及び少なくとも1つのステムが一緒になって骨固定部を形成する、実施形態1~88のいずれか1つのインプラント又は方法。
[92]インプラントが、5~25mm、好ましくは10~20、12~18、又は約15mmの直径を有する円形キャップと、5~15mm、好ましくは6~10mmの直径を有する1つのステムと、を有する、実施形態91のいずれか1つのインプラント又は方法。
[93]インプラントが、5~25mmの幅及び10~40mmの長さを有する楕円形キャップと、各々が5~15mmの直径を有する2つのステムとを有する、実施形態91のいずれか1つのインプラント又は方法。
[94]ステムは、キャップから下端まで1°~5°のテーパを示し、好ましくは、テーパは、少なくとも1.5°又は2.0°及び最大で4.5、4.0、3.5又は3.0°である、実施形態91~93のいずれか1つのインプラント又は方法。
[95]インプラントが、0.1~4.0mmの丸め半径、好ましくは少なくとも0.2、0.5、1.0、1.5、又は2.0mm、及び最大で3.5又は3.0mmのコーナー半径で丸められた縁部及びある部分から別の部分への移行部を有する、実施形態1~94のいずれか1つのインプラント又は方法。
[96]インプラントが、構造化界面を有する骨固定部及び軟骨置換部を含み、軟骨置換部と接触する骨固定部の表面が、高さ及び/又は深さ、及び0.05~3.0mm、好ましくは少なくとも0.1、0.2、0.3、0.4又は0.5mm、及び最大で2.5、2.0、1.5又は1.0mmの幅を有する突出構造及び/又はくぼみ構造を有する、実施形態2~95のいずれか1つのインプラント又は方法。
[97]構造が、0.1~0.5mmの丸み半径を有する丸みを帯びた縁部を有する、実施形態96のいずれか1つのインプラント又は方法。
[98]構造が、表面から突出する丘又は隆起部並びに/或いは表面にくぼんだ谷を含み、構造が連続的及び/又は不連続的である、実施形態96~97のいずれか1つのインプラント又は方法。
[99]構造が、直径が減少する円形パターン等、インプラントの外側輪郭に従う、実施形態96~98のいずれか1つのインプラント又は方法。
[100]構造が、軟骨置換部の厚さの最大50%の高さ及び/又は深さを有し、好ましくは、当該高さは、軟骨置換部の厚さの最大45、40、35、30又は25%である、実施形態96~99のいずれか1つのインプラント又は方法。
[101]軟骨置換部の表面が2つ以上の方向に輪郭付けられており、インプラントが、眼及び/又は撮像技術で見ることができる配向マーカを更に含む、実施形態1~100のいずれか1つのインプラント又は方法。
[102]軟骨置換層が透明又は半透明であり、視覚的配向マーカが骨固定部と軟骨置換部との界面にある、実施形態101のいずれか1つのインプラント又は方法。
[103]配向マーカが放射線不透過性の細長い部分である、実施形態101のいずれか1つのインプラント又は方法。
[104]軟骨置換部の形態のインサートを含み、形成される骨固定部に接触する表面に高さ及び/又は深さ及び幅が0.05~3.0mmの突起及び/又はくぼみを有する鋳型内に剛性ポリマー組成物を注入する工程と、その後、鋳型からインサートを除去する工程と、ポリマー組成物で部分的に充填された鋳型内に弾性及び耐摩耗性生体適合性材料を注入してインプラントの軟骨置換部を形成する工程と、を含む多成分射出成形プロセスでインプラントを形成することを含む、実施形態2及び96~100のいずれか1つのインプラントを製造する方法。
[105]剛性ポリマー組成物が、生体安定性熱可塑性ポリウレタンと15~70質量%のジルコニアを含む無機粒子とを含む、実施形態104のいずれか1つの方法。
[106]ポリマー組成物を注入して骨固定部を形成する工程と、生体適合性材料を鋳型に注入する工程との間に配向マーカを挿入する更なる工程を含む、実施形態1~105のいずれか1つの方法。
[107]配向マーカが、軟骨置換部の輪郭形成された上面の少なくとも2つの異なる湾曲半径のうちの一方の方向と一直線に配置される、実施形態106のいずれか1つの方法。
[108]鋳型が、その骨固定形成部に、例えばVDI3400 36による粗さを有する表面粗さを有して、少なくとも5μmの表面粗さRaを有する骨固定部を有する成形部分をもたらす、実施形態1~107のいずれか1つの方法。
[109]インプラントの骨固定部の表面に生物活性、好ましくは骨伝導性の粒子、又は生物活性、好ましくは骨伝導性のコーティングを提供する工程を更に含む、実施形態1~107のいずれか1つの方法。
[110]更なる工程が、ポリマー組成物に含まれるポリウレタンのための溶媒中の生物活性セラミック粒子の分散液で表面を処理することを含む、実施形態109のいずれか1つの方法。
[111]実施形態1~110のいずれか1つの少なくとも1つの整形外科用インプラントを含む部品の外科用キット。
[112]外科用キットが、異なるサイズを有する少なくとも2つのインプラントのセットを含み、インプラントが、軟骨置換部のサイズ及び/若しくは湾曲、並びに/或いは骨固定部の寸法が異なる、実施形態111のいずれか1つのキット。
[113]外科用キットが、骨孔を形成するための誘導及び穿孔ツール、並びに整形外科用インプラントを骨孔内に配置するためのツールのような、1つ又は複数の整形外科用インプラントを受け入れるためのインプラント位置を準備するための補助ツールを更に含む、実施形態111~112のいずれか1つのキット。
[114]哺乳動物の膝関節等の変性又は損傷した軟骨組織を修復する際の、実施形態1~109のいずれか1つに記載の整形外科用インプラントの使用及び実施形態110~113のいずれか1つの外科用キットの使用。
【0152】
本発明の記載に関連する(特に以下の特許請求の範囲に関連する)用語「1つの(a)」、及び「1つの(an)」、及び「その」並びに類似の使用は、本明細書中に他に示されない限り又は明らかに文脈上相反しない限り、単数及び複数の両方を含むものとして解釈される。「含む」、「有する」、「包含する」及び「含有する」という用語は、特に明記されない限り、非限定的な用語として解釈される(即ち「含むが、限定されない」ことを意味する)。本明細書中の値の範囲の詳述は、単に、範囲内に含まれるそれぞれの別個の値を個々に参照する簡単な方法として役立つように意図され、及びそれぞれの別個の値は、それが本明細書中に個々に記載されるように、明細書中に組み込まれる。他に請求されない限り、本明細書に提供される任意の、及び全ての実施例、又は例示的な言語(例えば、「など」又は「のような」))の使用は、単に本発明をより良好に説明するためにのみ意図されており、本発明の範囲に対する制限を課すものではない。明細書中の言語は、本発明を実行するために本質的な任意の請求されない要素を示すものとして解釈されてはならない。
【0153】
本発明を実行するための本発明者に既知の最良のモードを含む、本発明の好ましい実施形態は、本明細書中に記載されている。それらの好ましい実施形態の変形形態は、上記の記載を読むと、当業者には明らかになり得る。本発明者らは、当業者がそのような変形を適切に使用することを期待し、本発明者らは、本明細書に具体的に記載されている以外の方法で本発明を実施することを意図している。したがって、本発明は、適用法によって容認される、本明細書に添付された特許請求の範囲に記載される主題の全ての修正形態及び均等物を含む。特定の任意の特徴が本発明の実施形態として記載されるが、この記載は、特に別途示されるか又は物理的に不可能でない限り、これらの実施形態の全ての組み合わせを含み、特に開示するように意味される。
【0154】
以下の実験及びサンプルは、本発明の実施形態を更に説明するが、もちろん、いずれかの様式において特許請求の範囲を制限するように解釈されてはならない。
【0155】
[実験の部]
[方法]
[モル質量]
サンプルのモル質量及びモル質量分布は、ASTM D5296-11に記載されているように、TDA302トリプル検出器アレイ及び3基のPhenogel(商標)カラム(10μmの10E6A、10μmの10E4A、及び10μmの100A)を装備したViscotek GPCMax VE2001システム上で、GPC(ゲル透過クロマトグラフィー、又はサイズ排除クロマトグラフィー若しくはSECとも呼ばれる)によって測定した。検出器及びカラムは、80℃で作動させた。ポリマーサンプルは、最大で4時間にわたり70℃で0.05質量%のLiBr及び300mg/lのDHTを含有するDMF中に1.0mg/mlの濃度で溶解させ、0.2μmのPTFE膜に通して濾過した。この溶媒組成物を溶出液としても使用した。モル質量の計算は、EasyCalポリスチレン標準物質を用いて得られた校正曲線に基づき、公知のモル質量を備えるポリウレタンサンプルを用いて結果を調整した。
【0156】
[硬度]
成形サンプルの硬度は、ISO868に従ってZwickショア硬度計3131を使用して測定した(測定時間15秒間、20.9℃/相対湿度51.1%で平均5回の検査)。
【0157】
[引張特性]
引張弾性率、(絶対)引張強度及び破断点伸びは、ISO 527に基づく方法を用いて、2.5kNの空気圧式つかみ具及び温度チャンバを装備したZwick Z010万能引張試験装置上で測定した。射出成形したテストバー(ISO 527の1BA型)は、成形品として乾燥した状態で20℃で及び37℃の水中で状態調節した後に37℃で試験した。成形品として乾燥した状態で測定するためのサンプルは、小さなN2流量を備える80℃の真空オーブンを用いて一晩乾燥させ、シリカゲルを充填した密閉した箱中に保管した。サンプルは37℃に維持した水中にサンプルを浸漬することにより変化が0.1質量%未満になるまで(典型的には少なくとも360時間)状態調節し、24時間毎に質量の増加を測定した。各サンプルは、引張試験機の温度チャンバ内にそれを配置する前の短時間、前記条件で保管した。試験の直前に、サンプルの幅及び厚みを試験片の中央部で測定した。サンプルは、開始位置で54mmのつかみ具間距離をあけたつかみ具に配置した。引張実験を開始する前に0.5Nの予荷重を適用した。サンプルの弾性率は、1mm/分の速度で最初の0.05~0.25%の歪み間に決定した。その後、応力及び歪みの測定は、サンプルが破断するまで50mm/分で、伸びは伸縮計で60%の歪みが測定されるまで実施した。
【0158】
[粒径]
粒径分布及び粒径(D10、D50及びD90)は、ISO 13320:2009に従って、Malvern Mastersizer 2000を用いて水中に分散させたサンプル上で測定した。
【0159】
[結晶化挙動]
示差走査熱量測定(DSC)は、Mettler Toledoの標準熱流束DSCを用いて実施した。約5mg質量のサンプルをペレットから切断し、精密てんびんを用いて計量し、公知の質量の(圧着)アルミニウム製鍋の中に封入した。参照物質として同一の空の鍋を使用した。窒素を50ml/分の速度でパージした。調査対象の材料の熱挙動を数値により特徴付けるパラメータを決定するために、加熱-冷却-加熱サイクルを適用した。適用した温度プログラムは:[1]0.0~70.0℃、10.00K/分;[2]70.0℃、60.00分;[3]70.0~90.0℃、-10.00K/分;[4]-90.0℃、10.00分;[5]-90.0~240.0℃、10.00K/分;[6]240.0℃、2.00分;[7]240.0~90.0℃、-10.00K/分;[8]-90.0℃、10.00分;[9]-90.0~240.0℃、10.00K/分であった。
【0160】
[ポリマー組成物]
[実験1~3]
実験では、MDI、ブタンジオール及びポリ(ヘキサメチレンカーボネート)ジオールをベースとする、75ShDの硬度及び388kDaの質量平均モル質量Mwを有するポリカーボネートウレタンを、24時間中に80℃で含水量113ppmへ乾燥させた後に使用した。粒径5μmのハイドロキシアパタイト(Merck、バイオセラミックス用のハイドロキシアパタイト)を約2650ppmの水分レベルに達するまで120℃で24時間乾燥させた。
【0161】
ポリウレタン及び充填剤成分は、2基のColortronic LabLineフィーダーを装備し、3mmの開口部1つを備えるダイ・プレートを有するCoperion ZSK Mc18二軸スクリュー押出機上で溶融混合した。ポリウレタン顆粒を取り込みバレルに投入し、HA粉末をバレル2への取り込みサイドフィーダー上にTPU/HAの80/20の質量比で投入した。全てのゾーンの温度設定は、190℃であった。スクリューは、150~200rpmで回転し、押し出し量は約2.5kg/hであり、トルクレベルは50~70%の範囲内である程度変動した。押出条件は、平滑且つ規則的なストランドを生じさせる安定した配合を可能にするために、最大で約200℃の溶融温度が生じるように選択した。押し出したストランドは、2mの全冷却長さを備える水浴中で冷却し、次に電動式ストランドピックアップ及びScheer 50Eペレタイザー(低速で作動させた)を用いてペレットに切断した。
【0162】
押出機は、2kg/hの押し出し量で5~10分間中のポリウレタンを用いた混合実験の前後にすすぎ洗いした。
【0163】
得られたペレットは、ペレットを24時間中に120℃で真空/N2下で乾燥させた後、Xplore IM12マイクロインジェクション成形機上で試験バーに射出成形した。バレル温度は200℃、成形温度は100℃に設定した。少なくとも5分間の溶融時間後、材料は2.2秒間中に10barの射出圧力及び10秒間中に10barの充填圧力で通気式金型内に射出した。
【0164】
引張特性は、成形時に乾燥させた試験片上で室温(20℃)で、並びにインプラント材料として使用される場合の条件を模倣するために湿潤状態の37℃で決定した。
【0165】
表1には、結果を(比較)実験2として要約した。この表には、更にペレット及び成形試験片上で決定したモル質量データ(Mw)も提示した。
【0166】
実験1は、上記の実験2と同様に射出成形及び試験されたが、成形温度が235℃及び15barの圧力が適用された、未充填ポリウレタンペレット上で実施された参照試験の結果に関する。
【0167】
実験3は、実験2と同様に実施されたが、押出機に投入されたHAの量は、40質量%であった。
【0168】
表1に要約した引張試験測定結果は、ヒドロキシアパタイト粒子がポリウレタン中の非補強充填剤として作用することを示唆している;乾燥時弾性率は有意には変化せず、引張強度及び伸びは顕著に減少したが、水の取り込みは減少し、特性への作用はほとんど及ぼさなかった(20℃/乾燥時対37℃/湿潤時)。成形バーのショア硬度は、75.7ShD(実験1)~80.2ShD(実験2)へ増加した。GPCの結果は、おそらく溶融加工処理工程中;主として配合工程中のポリマーの分解を誘導する結晶状HA粒子に含有される残留含水量によって誘発される、未充填材料と比較して、モル質量における有意な低下を示している。さもなければ安定性のストランド押し出しが可能ではないために、配合中の溶融温度が200℃未満に維持されなければならないという観察は、そのような説明を支持するであろう。
【0169】
[実験4]
実験2及び3の配合手法に類似して、HAの代わりに、24時間中に120℃で153ppmの含水量に乾燥させた、粒径4μmの酸化ビスマス粒子(Bi2O3)(D50;5N Plus Productデータシート(Helos/Rodos)を使用した。加工処理条件における様々な変化を試したが、安定性の加工処理が出現するのが不可能になった時、及び/又は押出物の発泡及び変色が観察された時点に実験を停止した。これは、おそらくポリウレタンの過剰な分解によって誘発される。この材料を用いたそれ以上の実験は、実施しなかった。
【0170】
[実験5~6]
これらの実験では、(一次)粒径が0.04μm(Tosoh社のパンフレットによる)の自由流動粉末である酸化ジルコニウムTZ-0(Tosoh Europe BV))を配合中のポリウレタンに充填剤として添加した。サンプルは24時間中に120℃で乾燥させ、実験2及び3の手法を適用して同一の75ShDのポリウレタンと配合した。バレルの温度を200℃に設定し、スクリュー速度を300rpmに上昇させることによって、配合中のストランド破断が防止され、粒径分布が改良されるように思われた。トルクのレベルは60~70%に制限され、溶融温度は最大で212℃であった。粉末の投与挙動は極めて良好であったが、押出ストランドにおいて厚-薄の変動が観察され、これは粒子が良好に分散していないことを示唆している。
【0171】
20及び40質量%の荷重でのこれらのジルコニア粒子の添加は、強度の低下を生じさせる;40質量%の荷重では、組成物は脆性ですらある。これは、ポリウレタンマトリックス内の凝集した一次粒子の不十分な分散によって誘発される可能性が高い。分散性を強化するためには、及び機械的特性を改善するためには、粒子の前処理及び/又は分散剤の添加を適用することができる。
【0172】
[実験7~8]
実験5~6と同一の条件及び手法を適用して、酸化ジルコニウムTZ-Y3-E(Tosoh)を含む75ShDのポリウレタンの組成物を製造した。このジルコニアグレードTZ-Y3は、3モル%のイットリウムを含有しており、(一次)粒径が0.04μmの自由流動粉末としても市販されている。加工処理は、TZ-0粉末について観察されたものと類似であった。純粋ジルコニアグレードの場合と同様に、ポリウレタン組成物は、特に60質量%の荷重では、引張試験中に脆性破損を示す傾向が見られた。決定して
図6に示したTZ-0及びTZ-Y3グレードの粒径分布は、粒子がそれらの一次粒子よりはるかに大きく、最大値はそれぞれ約60及び50μmであり、より小さな最大値が約1μmであることを確証している。これは再び、これらの粒子がポリマーと混合する前に前処理及び/又は(部分的に)脱凝集化されていれば、及び/又は混合中に分散助剤が添加されていれば、観察された加工処理及び脆性問題が克服され得ることを示唆している。更に、使用した小型の実験室規模の装置ではなくより高い出力を可能にする混合装置を適用することもまた分散を強化する可能性がある。
【0173】
[実験9~11]
これらの実施例では、Sigma Aldrichから入手した医療用グレードの酸化ジルコニウム(本明細書では、ZrO/SAと記す)は、24時間中に120℃で乾燥させた後に使用した。これらの粒子は、約1.8μmの粒径D
50を有することが見出された;これは
図6にも示したような、上記の実験5~8において使用した粒子について見出された粒径よりはるかに小さい。配合は、同様に実施したが、乾燥させて、いくらか粘性の粉末の適正な投入を保証するために、フィーダー内で幾つかの追加の混合素子を使用した。安定性プロセスにおいてポリマーストランド及び顆粒を作製した。製造した組成物は、ジルコニア荷重に伴う引張弾性率の増加(20、40及び60質量%)を示したが、引張強度及び伸びは低下した。全サンプルは、骨アンカーを製造する際の組成物を使用するためには(状態調節状態においても)好適であろう引張特性プロファイルを示している。ジルコニアの添加は、硬度を75.7ShD(実験1)~81.1及び80.2ShD(実施例10及び11)へ増加させた。
【0174】
GPCの測定値は、溶融加工処理後、特に配合中のモル質量の低下を示している;しかしこれらの低下は、HA粒子を含む組成物について観察された低下より有意に小さいと思われる。未充填ポリウレタンは、射出成形後のより高いモル質量を示している;しかしこの材料は、先行する配合工程を受けていなかった。
【0175】
選択したサンプルの結晶化挙動を従来型DSCを用いて調査した;関連する結果(温度及びエンタルピー、J/gサンプル)を表2にまとめ、実験1及び9-10-11についてのDSC曲線を
図7に示した。組成物TPU/HA 80/20(実験2)については、結晶化は参照ポリウレタン(実験1)のための温度より高温での冷却中に開始すると思われ、これは分解したポリウレタンの低モル質量及び/又はハイドロキシアパタイト粒子のある程度の核形成作用に関連する可能性がある。他方では、特に大量の充填剤粒子について見られる結晶化及び溶融ピークの広がりは、ポリマー結晶化の妨害(速度を下げる)を指摘するであろう。ジルコニア粒子を含む組成物は、冷却における核形成作用及び再加熱スキャンにおけるより高い溶融温度を示す。
【0176】
[軟骨プラグ]
図2A~Bに示したマッシュルーム様形状を有するプロトタイプの軟骨プラグは、2パーツ金型を含有する金型ホルダーパーツを用い、2成分成形を可能にするために1セットのインサートを適用して、ベンチトップ型Xplore IM12マイクロインジェクション成形機上で作製した。
【0177】
使用した材料は、60質量%のジルコニア(実験11)及び硬度が80ShAの未充填の末端基修飾ポリカーボネートウレタン(Bionate(登録商標)II 80A;DSM Biomedical BV,Sittard-Geleen,NL)を含むTPU組成物であった。材料は、使用前にそれぞれ120℃で24時間中又は80℃で72時間中、真空/窒素ガスフラッシュ下で乾燥させた。
【0178】
異なる金型のパーツは一緒に、次の基本的寸法:長さ6.5mm、直径6.1mm、及び45℃の角度で丸みを帯びた下端部を備えるステム区間;直径10.1mm、2つの半径11及び18mmを備える相互に矩形の輪郭の上面、3.5mmの総キャップ高さを備える、その下方1.0mmが剛性ポリマー組成物から製造されたステムへ結合するキャップ区間を備えるインプラントパーツを定義する。全てのその他の辺縁は、半径0.5mmで丸められた。ステム区間を定義する金型パーツは、粗さVDI3400 36を備えるテクスチャを生じさせるためにエッチング加工された。
【0179】
【0180】
【0181】
第1工程では、ポリウレタン/ジルコニア組成物は、210℃のバレル温度、80℃の金型温度、2.2秒間中の10barの射出圧、及び10秒間中の充填圧を適用して、キャップ区間内にインサートを含む金型に射出された。次にインサートが金型から取り外され、キャップの18mm半径を用いて配向された、250℃に設定したホットプレート上で予備加熱された長さ4mmのタンタル線が射出表面上の金型内に配置された。引き続いて、弾力性のポリウレタン材料が、キャップのトップ区間を形成するために、2.2秒間中の235℃のバレル温度、80℃の金型温度、12barの射出圧及び10秒間中の12barの充填圧を適用して射出された。
【0182】
成形されたプラグは、ステム及びキャップの下側をTHF中のBCP粒子(二相性リン酸カルシウム;Cam BioCeramics)の分散液でコーティングし;サンプルを風乾させ、エタノールを用いた複数回の(50℃の減圧下で)すすぎ洗及び乾燥することによりバイオセラミック粒子を用いて官能化した。本発明によるこれらのプラグは、プラグI)と指定した。
【0183】
上記の手法に類似して、プラグは対応する未充填材料から、即ちステム区間は75ShDの硬度のポリカーボネートウレタン(Bionate(登録商標)75D;DSM Biomedical BV,Sittard-Geleen NL)及びキャップ区間はBionate(登録商標)II 80A材料から成形した。これらの未充填プラグは、下記ではプラグUと呼ぶ。
【0184】
更に、ポリマー製プラグに対応する形状及び寸法を備える金属製プラグを製造したが、この場合、ステムパーツはチタンから、キャップパーツはコバルト-クロムから製造され、及びステムは、コランダム噴射加工によって後処理した(プラグMと指定した)。
【0185】
[In vivo試験]
上述した3つのタイプのプラグは、動物試験において、326匹の雌のオランダ産乳用山羊の膝関節内に器具を移植することにより評価した。本試験は、プロジェクトライセンス番号PV2015-018-003の下で地元及び国の動物倫理委員会によって承認された。
【0186】
動物の膝関節(32×2)を4群に分け、そのうち3群に各16個のプラグI、U及びMを移植した;及び残りの群は、天然軟骨変性の参照として、疑似手術(プラグを挿入しないプラセボ手術)を実施した。
【0187】
外科手技は、内側膝蓋骨周囲の皮膚切開の作製、内側大腿顆を露出させるための関節包の開口、及びその体重のかかるパーツの中心の位置決めを含んでいた。プラグを移植するために、Kワイヤの誘導下で挿管ドリルを用いて骨軟骨欠損を作製した。ドリル穴の深さは、インプラントが隣接軟骨に対して同一平面上又はいくらか凹んでいるように調節した。プラグは次に、膝関節の形態に対応させるために、配向マーカを用いて、キャップの二重曲がりを調整しながら圧入固定を用いて挿入した。術中又は術後合併症は全く発生しなかった。
【0188】
Maastricht大学の実験動物試験施設での26週間(6カ月間)後、各群の動物4匹は、ペントバルビタールの過量投与(200mg/kg(体重))により安楽死させた。膝関節を切除し、その後に解剖した。内側大腿顆及び脛骨プラトーを単離し、中性緩衝ホルマリン液中で固定した。固定した試験片は、エタノール水溶液中で100%のエタノールまで濃度を上昇させながらインキュベーションすることによって脱水させた。大腿骨内側顆は、真空下でヒドロキシエチルメタクリレート系樹脂(Technovit 8100,Hereaus Kulzer,Hanua,DE)に埋め込んだ。次に、腫脹を防止するために、各ブロックについてポリメチルメタクリレート(PMMA,Technovit 3040,Hereaus Kulzer,Hanua,DE)製マントルを作製した。次にプラスチック製ブロックは、インプラントを水平に配向するために帯のこを用いて切断し、ブロックは、超低粘度のシアノアクリレート糊を用いてダイヤモンドソー(SP1600,Leica Biosystems,Nussloch,DE)に取り付けた。インプラントの中央に通して切断した。サフラニン-O/ファスト・グリーン(Carl Roth,Karlsruhe,DE)染色を適用した。組織を乾かすために緩徐に拭き、5~10分間風乾させた。ガラス製カバースリップは、シアノアクリレート糊を用いて組織に接着させた。50~70μmの区間を切断し、シアノアクリレート糊を用いてスライドガラスに接着させた。これらの区間は、倍率200倍で高照度光学顕微鏡(M8 Microscope,Precipoint,Freising,DE)を用いてスキャンした。特注のMATLABスクリプト(MathWorks,Natick MA,US)を使用して、骨と直接接触しているインプラント表面のパーセンテージであると規定された、骨-インプラント-接触率(BIC)を決定した。
【0189】
残りの16匹の動物は、手術の12カ月後に安楽死させ、膝関節及びインプラントは、上述の手法を用いて評価した。
【0190】
平均の数値スコア(%)として表示した6及び12カ月後のインプラントのBICスコアリングの結果を、
図9に示す。ジルコニア-TPU複合材料から製造されたステムを有し、表面上にBCP粒子が提供されたプラグIは、最高平均BICスコアを示した;このタイプのプラグは、プラグM及びUについて観察されたよりも良好な骨-インプラント接触又はプラグの生体内オステオインテグレーションを示している。1つのプラグM及び1つのIは、6カ月後に骨接触をほとんど示さないことが認められた。これは、金属製プラグのミスアラインメント又は傾斜、及び例えば充填されたポリマー組成物をベースとするプラグ内の空気封入場所で開始された亀裂によって誘発されたと思われた。全体が未充填ポリウレタンから製造されたインプラント8個中4個は、おそらく相対的に柔らかいプラグの荷重による変形によって誘発された、極めて低いBICスコアを有していた。
【0191】
移植の12ヶ月後、8個のプラグMのうち1個、8個のプラグIのうち4個、及び8個のプラグUのうち8個は、(ほぼ)0%のBICスコアを有していた。やはり、充填されていないプラグは、十分な剛性を欠いているように見え、金属プラグ及び複合プラグの場合、低いオッセオインテグレーションのスコアは、適切に製造及び配置されたプラグの実際の性能からではなく、適用された小規模配合及び/又は成形プロセスによって、又は動作中のプラグ挿入の方法によって引き起こされる欠陥に由来するように見えた。他のプラグM及びIは両方とも良好に機能し、写真は6ヶ月の結果と比較して骨結合の増加を示している。金属プラグの場合、最初は金属プラグが骨への比較的遅い結合を示すことが知られているので、これは予想外ではなかったが、数年後、いわゆる応力遮蔽効果は一般に剥離を引き起こす。上述の誤った結果を無視すれば、12ヶ月の時点(
図9に示すように)でのMプラグ及びIプラグのBICスコアは35~60%程度であり、プラグIの平均スコアはより高い(46±13対40±5%)。ポリマー組成物の製造及び複合プラグIの成形がアップスケーリング及び改善され、プラグの注入が最適化されたツールでより良好に制御される場合、観察される欠陥及び負の結果が低減又は更には防止され得ることが予想される。
【0192】
上記は、各プラグタイプ(6ヶ月後、透過光を使用)について
図10に示すような組織学的スライスの代表的な写真によって更に示される。これらの写真は、元のカラー写真のグレースケールバージョンであることに留意されたい。それにもかかわらず、プラグIは、界面又は組織における空隙又は他の不規則性なしに、周囲の組織との密接な嵌合を示すと明確に結論付けることができる。TPUベースのプラグの上部軟骨置換部と骨固定部との間の明確に目に見える区別、及び両方の部分の界面におけるタンタル配向マーカ(暗いドットとして示されており、細長いマーカはスライスに対して垂直に向けられている)の存在にも留意されたい。
【0193】
更に、移植の6カ月後のインプラントを含む膝関節について撮影されたMRI画像はプラグIとUとの間に実質的な差を示さなかったが、プラグIの画像は、プラグと組織とのより明確なコントラストを示したことも認められた。どちらのプラグも関節内の軟骨のMRI評価を妨害するとは思えなかったが、他方金属プラグMと隣接軟骨のMRIイメージングは、金属製パーツによって惹起されたアーチファクトのために実現可能ではなかった。プラグMと同様に、プラグIのステムパーツはX線写真上で明瞭に可視化できたが、プラグUは、部分的にのみ、かすかにしか可視化できなかった。
【0194】
脛骨プラトーの固定及び脱水後、6及び12カ月間後に、厚さ3~4mmの冠状の骨軟骨スラブを脛骨プラトーから帯のこを用いて切断した。次に個々のスラブは、少なくとも6週間中に室温のギ酸中で脱灰させた。試験片を次にパラフィン中に包埋し、厚さ5μmの切片を標準のマイクロトーム(Leica RM2245,Leica Biosystems, Nussloch,DE)を使用して作製した。切片はサフラニン-O/ファスト・グリーン(Carl Roth,Karlsruhe,DE)を用いて染色し、続いて倍率200倍(M8 Microscope,Precipoint,Freising,DE)で高照度光学顕微鏡スライドスキャナーを用いてデジタル化した。最後に、脛骨軟骨品質のスコアリングは、Little et al.(DOI:10.1016/j.joca.2010.04.016)によって記載されたように、修正Mankinスコアリング(MMS)システムを用いて実施した。
図11には、対向する骨表面上での軟骨損傷若しくは変性の数値によるスコアリングの結果を要約した。これらの場合では、金属製インプラントは、TPUをベースとするプラグ及び疑似手術群よりも実質的に重篤な軟骨損傷を惹起したことが見出された。ジルコニア充填ポリウレタン製ステム及び未充填ポリウレタン製の軟骨接触パーツを有するプラグIは、疑似手術された、即ちそれらの膝関節内に天然の軟骨しか有していない山羊と同様に機能することが見出された。プラグUは、損傷を誘発していない、軟質ポリウレタンであるプラグIと同様のスコアリングを示したが、簡略化のため
図11に示していない。
【0195】
要約すると、ジルコニア/TPU組成物から作製されたステムと、強化されていないTPU(プラグI)から作製された軟骨置換キャップとを有する軟骨プラグは、最良の全体的性能を示し、適切な取り扱い性及び移植性を有し、良好なオッセオインテグレーションを示し、反対側の軟骨表面にほとんど損傷を引き起こさず、マイクロCT、X線及びMRI技術を有するインプラントとして画像化可能である。更に、本開示では、充填TPU組成物の特性、それを用いて作製された軟骨プラグの設計、及びしたがってそのようなインプラントの性能を更に改善するためのいくつかの選択肢も記載されている。
【国際調査報告】