(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-06
(54)【発明の名称】クラフトプロセス回収サイクルを処理して、クラフトプロセスにおける金属レベルを低減する方法
(51)【国際特許分類】
D21C 11/00 20060101AFI20230830BHJP
【FI】
D21C11/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022571871
(86)(22)【出願日】2021-05-24
(85)【翻訳文提出日】2023-01-20
(86)【国際出願番号】 BR2021050222
(87)【国際公開番号】W WO2021232133
(87)【国際公開日】2021-11-25
(32)【優先日】2020-05-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521023425
【氏名又は名称】スザノ・エス.エー.
【氏名又は名称原語表記】SUZANO S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100212705
【氏名又は名称】矢頭 尚之
(74)【代理人】
【識別番号】100219542
【氏名又は名称】大宅 郁治
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】ラミレス、エロイザ・オグシ・ロメイロ
(72)【発明者】
【氏名】デ・ファリア、チアゴ・シルバ・ピント
【テーマコード(参考)】
4L055
【Fターム(参考)】
4L055AG03
4L055AG07
4L055AG08
4L055BC11
4L055BD15
4L055CC03
4L055CC05
4L055CC14
4L055EA32
4L055FA22
4L055FA23
(57)【要約】
本発明は、パルプ化操作に戻される黒液にマグネシウムを添加することを含むクラフトパルプ化プロセスにおいて金属含有量を減少させる方法;特定のマグネシウム:アルミニウムのモル比を有する緑液を提供するようにマグネシウムを黒液に添加することによってパルプ化プロセスにおいてアルミニウム含有量を減少させる方法;マグネシウムを黒液、弱黒液、強黒液に添加することによって特定のマグネシウム:アルミニウムのモル比を有する緑液を生成または処理する方法;および弱黒液、強黒液またはそれらの組合せに存在する少なくとも0.04から5.0モルのマグネシウム:アルミニウムの添加によってハイドロタルサイトを生成する方法に関する。他の部分の中でも、蒸解釜(1)、洗浄機(2)、場合によりパルプ漂白、弱黒液濃縮機(4)を含むパルプミルも提供される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルプ化操作に戻される黒液に少なくともマグネシウムを添加することを含む、クラフトプロセスにおける無機金属含有量を低減する方法。
【請求項2】
少なくとも1、好ましくは少なくとも3、より好ましくは少なくとも4の無機金属に対するマグネシウムのモル比を有する緑液を提供するように少なくともマグネシウムを黒液に添加することによって、クラフトプロセスにおける無機金属含有量を低減する方法。
【請求項3】
前記マグネシウムは、前記黒液において各無機金属モルに対して0.04から4モルのマグネシウム割合で添加される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記マグネシウムは、前記黒液において各無機金属モルに対してマグネシウム1モルの割合で、好ましくは前記黒液において各無機金属モルに対してマグネシウム3モルの割合で、より好ましくは前記黒液において各無機金属モルに対してマグネシウム4モルの割合で添加される、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
少なくともマグネシウムを黒液に添加して、60ppmまで、好ましくは30ppmまで、より好ましくは20ppmまでの無機金属量を有する処理された白液を提供することによって、パルプ化プロセスにおける無機金属含有量を低減する方法。
【請求項6】
前記マグネシウムは、前記黒液において各無機金属モルに対してマグネシウム0.04から4ppmの割合で添加される、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記マグネシウムは、前記黒液において無機金属の各ppmに対してマグネシウム1ppmの割合で、好ましくは前記黒液において無機金属の各ppmに対してマグネシウム3ppmの割合で、より好ましくは前記黒液において無機金属の各ppmに対してマグネシウム4ppmの割合で添加される、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
無機金属に対するマグネシウムのモル比は、少なくとも0.04から5.0、好ましくは3.0から5.0、より好ましくは4.0である、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記マグネシウムは、回収操作の前に前記黒液に添加される、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記マグネシウムは、蒸発工程の前に弱黒液に添加される、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記マグネシウムは、回収ボイラーステップの前に強黒液に添加される、請求項1から10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
少なくともマグネシウムを黒液、弱黒液、強黒液に添加することにより、無機金属に対する少なくとも1、好ましくは少なくとも3、より好ましくは少なくとも4のマグネシウムのモル比を有する緑液を生成する方法。
【請求項13】
蒸解釜1、洗浄プラント2、濃縮プラント4、ボイラープラント5、苛性化プラント6、場合によりパルプ事前漂白プラント3a、場合によりパルプ漂白プラント3b、及びマグネシウム添加ユニットを含むクラフトパルプミル。
【請求項14】
前記マグネシウム添加ユニットは、前記濃縮プラント4、前記ボイラープラント5、又はそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つに含まれる、請求項13に記載のミル。
【請求項15】
前記弱黒液、強黒液又は緑液に存在する無機金属に対するマグネシウムの0.04から5.0モル、好ましくは3.0から5.0モル、より好ましくは4モルのモル比で、前記マグネシウムを添加する、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
マグネシウムは、遊離形態、カチオン形態、塩形態、酸化物形態、水酸化物形態、又はそれらの混合物の形態である、請求項1から15のいずれか一項に記載のマグネシウム。
【請求項17】
マグネシウムは、塩形態のマグネシウムである、請求項1から16のいずれか一項に記載のマグネシウム塩。
【請求項18】
前記マグネシウムは、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、又はそれらの混合物である、請求項17に記載のマグネシウム塩。
【請求項19】
弱黒液、強黒液、又はそれらの組み合わせに存在するアルミニウムモルに対して少なくとも0.04から5.0モルのマグネシウム、好ましくは前記アルミニウムモルに対して3.0から5.0モルのマグネシウム、より好ましくは前記アルミニウムモルに対して4.0モルのマグネシウムを添加することによって、ハイドロタルサイトを生成する方法。
【請求項20】
前記マグネシウムは、少なくとも前記弱黒液、強黒液、又はそれらの組み合わせに添加される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記マグネシウムは、少なくとも前記弱黒液に添加される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
アルミニウムに対する少なくとも1、好ましくは少なくとも3、より好ましくは少なくとも4のマグネシウムの割合を有する緑液を提供する弱黒液に、前記マグネシウムは添加される、ハイドロタルサイトを製造する方法。
【請求項23】
前記無機金属は、アルミニウム、鉄及び/又はマンガンである、請求項1から22のうちのいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[001]本発明は、クラフトプロセスにおける金属レベルを低下させるためのクラフトプロセス廃液の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
[002]クラフトパルプ化プロセスおよび回収サイクルにおける高レベルの無機金属、特にアルミニウムは、プロセスにとって極めて有害である。
【0003】
[003]アルミニウムは、酸化カルシウム、木材、土壌、水、化学薬品などのアルミニウムで汚染された製造投入物からクラフトプロセスに導入される可能性がある。例えば、アルミニウムは、最大150,000ppmのアルミニウムを有している可能性がある、一般に土壌に由来する木材を介してクラフトプロセスに導入される可能性がある。アルミニウムは、丸太の表面に付着してクラフトプロセスに導入される可能性があり、これは、最終的には蒸解釜に供給されるチップに組み込まれる。
【0004】
[004]高レベルのアルミニウム汚染は、パルプ化プロセスにとって有害である。例えば、操作パイプラインにおけるアルミニウム、鉄およびマンガンの蓄積は、局所的な温度差を引き起こし、これは、パイプラインシェルの脆弱化及び/又はシステムのさらなる破損もしくは目詰まりにつながる可能性があり、これは、高いパルプ質量流を課し、その結果、アルミニウム蓄積を加速させる非常に高スループット操作に関連する傾向がある。例えば、キルン炉では、本方法の適用の前に、平均固形濃度900ppmの泥の洗浄パージにより、合計約2,300kgのアルミニウムが検出された。
【0005】
[005]アルミニウム汚染に関係する1つの特定の問題は、アルミニウム汚染がシリカと反応したときに蒸発中に堆積物を生じさせ、効率の損失及びシステムの停止の可能性を生じさせることがあることである。苛性化の間、過剰に蓄積されたときの、泥フィルターにおける濾過性の損失は、アルミニウム汚染に関連する別の一般的な問題である。さらに、それが白液中で起こるとき、最終生成物中の濃度の増加が観測される。
【0006】
[006]アルミニウムは白液に可溶性であり、蒸解の前または間に白液を直接処理してアルミニウムを除去することは、典型的には、困難である。なぜなら、蒸解工程の直前または直後に除去されることがあるアルミニウム残留物をもたらす濃縮工程が存在せず、1つのそのような操作を導入することは、コストの増加につながることがあるからである。
【0007】
[007]無機金属、特にアルミニウムの除去を調査する多くの研究が公開されている。例えば、Ulmgren,1987は、溶解タンクに硫酸マグネシウムを添加することによって、緑液中の可溶性アルミニウムの濃度を低下させることが可能であることを記載している。同様に、Wannenmacherら2005は、クラフト緑液および白液(それぞれGLおよびWL)中のアルミノケイ酸塩の溶解性を研究した。具体的には、緑液への硫酸マグネシウムの添加を評価した。この研究は、AlおよびSiが沈殿プロセスを通してGLから除去されたことを明らかにした。しかしながら、プロセスのこれらの時点での硫酸マグネシウムの使用は、アルミニウムの除去には有効ではなく、加えて、液の濾過性の損失のリスクをもたらすかもしれない。
【0008】
[008]したがって、無機金属、特にアルミニウムの除去に有効な方法を開発することが依然として必要であり、その結果、そのような特定の方法を使用するとき、濾過性の損失およびシステムの停止のリスクが低減される。
【0009】
[009]本発明者らは、黒液回収操作中にアルミニウムを捕捉する方法を開発し、アルミニウムはクラフト操作に戻され、クラフト操作はより有利であることが見出され、パルプ化プロセス全体でより良好なアルミニウム除去をもたらした。
【発明の概要】
【0010】
[010]本発明は、少なくとも1つの形態のマグネシウムをクラフトパルプ化操作に戻される黒液に添加することを含む、クラフトパルプ化プロセスにおけるアルミニウム含有量を低減するための方法に関する。また、アルミニウムに対して0.04から5.0、好ましくは3.0から5.0、より好ましくは4.0のマグネシウムのモル比割合を有する緑液を提供するように少なくとも1つの形態のマグネシウムを黒液に添加することによって、パルプ化プロセスにおいてアルミニウム含有量を低減する方法、および少なくとも1つのマグネシウム形態を黒液、弱黒液、または強黒液に添加することによって、アルミニウムに対して少なくとも1.0、好ましくは4.0のマグネシウムのモル比を有する緑液を生成または処理する方法が提供される。蒸解プラント1、洗浄プラント2、場合によりパルプ漂白プラント、弱黒液濃縮プラント4、回収ボイラープラント5、苛性化プラント6およびマグネシウム添加ユニットを含むクラフトパルプミルも提供される。少なくとも0.04から5.0、好ましくは3.0から5.0、より好ましくは4.0のマグネシウムモルを、弱黒液、強黒液、またはそれらの組み合わせに存在するアルミニウムモルに添加することによってハイドロタルサイトを生成する方法も明らかにされている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】[011]
図1は、クラフトパルプミルを描いている。
【
図2】[012]
図2は、時間内の緑液中のアルミニウム含有量の減少を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[013]本発明者らは、黒液回収操作中にアルミニウムを捕捉する方法を開発し、これは、より良好なアルミニウム除去およびより低レベルのアルミニウムを用いるクラフトプロセスをもたらし、より好ましいことが発見された。さらに、本発明の方法は、クラフトプロセスにおける濾過性の損失および停止のリスクを低減する。
【0013】
[014]本発明の方法は、鉄及びマンガンレベルを低下させるために等しく適用可能である。
【0014】
[015]本発明の目的のために、アルミニウムは、遊離アルミニウム、カチオン、酸化物、水酸化物、及び/又は塩としてのアルミニウムなどの任意の形態のアルミニウムとして理解されるべきである。例えば、Al3+、Al2O3としてのアルミニウムである。
【0015】
[016]アルミニウムを除去することは、アルミニウムを水不溶性化合物など、すなわちハイドロタルサイトとして物理的に除去または提供することによって、アルミニウムを媒体でより利用可能でなくすること、すなわち、媒体(すなわち黒液)中のアルミニウム量を減少させることとして理解されることを意味する。
【0016】
[017]白液は、主に水酸化ナトリウムおよび水硫化ナトリウムの強アルカリ性溶液である。
これは、パルプを製造するためにセルロース繊維からリグニンおよびヘミセルロースを分離するクラフトプロセスの第1段階で使用される。白液は、リグニンとセルロースとの間の結合を破壊するのに役立つ。
【0017】
[018]
図1に示すように、クラフトパルプミルでは、木材チップは、木材チップからリグニンを分解して除去するために、ミルの苛性化プラント6で生成される白液(水酸化ナトリウムと水硫化ナトリウムとの混合物)を用いて高温高圧(典型的には、それぞれ145から160℃及び7から11バールまで)で蒸解釜1内で蒸解される。
【0018】
[019]このプロセスを使用して、大部分がセルロースおよびヘミセルロースから構成される繊維は、典型的には、主に廃液およびセルロースパルプの褐色パルプの形態で製造され、これはさらに典型的には3aで予備漂白され、3bで漂白され、乾燥され、様々な紙製品の製造のために市場に販売される。パルプ化およびその後のパルプ洗浄プロセスの間に木材チップから除去されたリグニンは、典型的には、濃縮プラント4において多重効用蒸発器を使用して15から80パーセントの固形分に濃縮される残留パルプ化液(弱黒液)になり、強黒液を生成する。
【0019】
[020]次いで、強黒液はボイラープラント5に導かれ、そこで強黒液中の有機物が燃焼され、それによって二酸化炭素、水および熱が生成される。回収炉で生成された熱は、内部ミル使用のための蒸気および電力を生成するために使用される。燃焼プロセスの間、強黒液中の無機物は炭酸ナトリウムおよび硫化ナトリウムに変換され、これらは溶融スメルトの形態で回収炉から出てくる。このスメルトを水(または他の水性ミル流)に溶解して緑液(炭酸ナトリウムおよび硫化ナトリウムの溶液)を形成する。次いで、硫化ナトリウムは、石灰キルンからの酸化カルシウムをミルの苛性化装置6に添加することを通して白液(水酸化ナトリウムおよび硫化ナトリウムの溶液)に変換される。
【0020】
[021]この反応の副生成物は炭酸カルシウムであり、これは、高温で焼成することによって酸化カルシウムに再変換するために苛性化装置6に送り返される。このようにして、木材チップパルプ化プロセス1で再利用するための白液が生成される。この化学的回収プロセスを使用すると、典型的にはパルプ化に必要な化学薬品の95%以上を回収することができる。この回収サイクルは、現在、黒液回収操作として理解されている。少量のプロセス薬品がパルプ洗浄中に失われ(パルプと共に漂白プラントに持ち越される)、その結果、クラフト回収サイクルからの他の損失、例えば、異なる機器からのこぼれ及び漏れ、並びに埋立地に送られる残留物及びグリットが生じる。失われたナトリウムおよび硫黄値は、通常、ミルの二酸化塩素発生器からの購入された水酸化ナトリウムおよび硫酸ナトリウム副産物の化学的回収サイクルへの添加を通して補われる。典型的な1000トン/日のクラフトパルプミルは、10から20トン/日の水酸化ナトリウムおよび約20から40トン/日の硫酸ナトリウムを補給薬品として薬品回収サイクルに添加する。添加されるべき正確な量は、液損失に関する薬品回収サイクルの緊密性に基づいて決定される一方で、2つの補給薬品の比は、通常一定に保たれるミルの白液中のNa/S比に基づく。
【0021】
[022]パルプ洗浄プロセスの間、硫酸が使用され、続いて水洗浄2が行われる。このプロセスにおいて、硫酸は、ナトリウムリグニネート(リグニン中のフェノール基およびカルボキシル基に関係するナトリウムカチオン)および重炭酸ナトリウムと反応して、それらを硫酸ナトリウムに変換し、これは、リグニン脱水および洗浄工程からの濾過を介してクラフト回収サイクルに至る。ナトリウムリグニネートおよび炭酸ナトリウムは、硫酸にさらされていない場合、水酸化ナトリウムに変換されているので、リグニンプラントを有するミルの水酸化ナトリウムの必要量は、リグニン洗浄プロセスで使用される硫酸の量によって大部分が決定される程度まで増加する。
【0022】
[023]本発明の目的は、クラフトパルプ化プロセスにおいてアルミニウム含有量を低減するための方法であって、具体的には、弱黒液または強黒液に少なくともマグネシウム形態を添加することによって、クラフト操作に戻される黒液に少なくともマグネシウムを添加することを含む、方法を提供することである。
【0023】
[024]また、本発明の目的は、クラフトパルプ化プロセスにおいて鉄およびマンガン含有量を低減するための方法を提供することである。
【0024】
[025]本発明の目的のために、アルミニウムは、遊離形態、カチオン形態などの任意の形態で見出されるアルミニウムか、塩、酸化物若しくは水和物、溶媒和物などの任意の化合物にまたは任意の他の形態に又はそれらの混合物に組み込まれるアルミニウムとして理解されるべきである。したがって、マグネシウムはまた、マグネシウム元素として理解されるべきであり、マグネシウムの任意の形態、すなわち、遊離形態、カチオン形態、塩形態、酸化物形態、または任意の他の形態、またはそれらの混合物であってもよい。
【0025】
[026]マグネシウムの添加は、任意の手段によって実施することができ、典型的には、硫酸マグネシウムを使用して、すなわち、マグネシウムを運ぶ供給ベルトを使用して、又は処理される媒体中にマグネシウムを含む化合物を単に溶解することによって実施される。
【0026】
[027]上述のように、パルプ化操作から得られる黒液は回収操作で処理され、無機物はパルプ化プロセスでさらに再使用するために変換される。また、場合によっては、黒液は、クラフトパルプ化プロセスの任意の工程で、またはクラフトパルプ化ミルの任意のプラントで、投入物として直接使用されてもよい。いずれの場合においても、黒液は残留副産物として廃棄される代わりにパルプ化操作に戻すことができる。
【0027】
[028]黒液は、パルプ材を紙パルプに蒸解するときのクラフトプロセスからの廃棄物であり、木材からリグニン、ヘミセルロースおよび他の抽出物を除去してセルロース繊維を遊離させる。黒液は、使用済み液から得られる黒液、処理されるときに緑液となる弱黒液または強黒液であると理解される。
【0028】
[029]典型的には、アルミニウムで汚染された投入材料を使用するとき、黒液はこの汚染を運び、低レベルであってもパルプ化プロセスに有害な影響をもたらす。
【0029】
[030]この意味で、本発明の一態様では、マグネシウムは、好ましくは典型的には緑液をもたらす黒液回収操作の後に、クラフト操作に戻される黒液に添加される。
【0030】
[031]前記態様において、クラフトプロセスにおけるアルミニウム含有量を低減する方法は、パルプ化操作に戻される黒液に少なくともマグネシウムを添加することによって達成される。クラフトプロセスは、蒸解プロセスおよび全廃液回収サイクルとして理解されるべきである。
【0031】
[032]例えば、黒液が弱黒液である場合、マグネシウムは、蒸発工程の前に、強黒液を生成するための濃縮プラント4に入る前に、または濃縮プラント4において、弱黒液に添加されてもよい。黒液が強黒液である場合、マグネシウムは、濃縮工程の前に、緑液を生成する前のボイラープラント5に入る前に、またはボイラープラント5において、強黒液に添加されてもよい。これは、専用のマグネシウム供給ラインによって、または操作時に既に存在する任意の他の供給ラインを使用して行うことができる。一態様では、マグネシウムはセスキ硫酸塩供給ラインで添加される。
【0032】
[033]弱黒液は、濃縮プラント4において蒸発のために導かれ、マグネシウムは、弱黒液中に存在するアルミニウムに対するマグネシウムのモル比が少なくとも1、好ましくは少なくとも3、より好ましくは少なくとも4で弱黒液に添加されてもよい。
【0033】
[034]あるいは、強黒液は、ボイラープラント5での濃縮のために導かれ、マグネシウムは、強黒液中に存在するアルミニウムに対してマグネシウムのモル比が少なくとも1、好ましくは少なくとも3、より好ましくは少なくとも4で強黒液に添加されてもよい。
【0034】
[035]したがって、弱黒液および強黒液の両方がマグネシウムを受け取ることができる。
【0035】
[036]一形態においては、本発明の方法は、黒液において、各アルミニウムモルに対して0.04から5.0モル、好ましくは3.0から5.0モル、より好ましくは4.0モルのマグネシウムのモル比割合でのマグネシウムの添加を開示する。したがって、弱黒液および強黒液の両方がマグネシウムを受け取ることができる。
【0036】
[037]例えば、黒液が弱黒液である場合、弱黒液蒸発工程の前に、すなわち、強黒液を生成するための蒸発プラント4に入る前に、または蒸発プラント4において、弱黒液にマグネシウムを添加してもよい。弱黒液は、ボイラープラント4での蒸発のために導かれ、マグネシウムは、弱黒液に存在するアルミニウムの各モル当たり0.04から5.0モル、好ましくは3.0から5.0モル、より好ましくは4.0モルのマグネシウムの量で弱黒液に添加されてもよい。一態様では、マグネシウムは、弱黒液においてアルミニウムの各モルに対してマグネシウム1モルのモル比割合で、好ましくは弱黒液においてアルミニウムの各モルに対してマグネシウム3モルのモル比割合で、より好ましくは弱黒液においてアルミニウムの各モルに対してマグネシウム4モルのモル比割合で添加される。
【0037】
[038]例えば、黒液が強黒液である場合、強黒液濃縮工程の前に、すなわち、緑液を生成するためのボイラープラント5に入る前に、またはボイラープラント5において、強黒液にマグネシウムを添加されてもよい。強黒液は、ボイラープラント5において濃縮のために導かれ、マグネシウムは、強黒液に存在するアルミニウムの各モル当たり0.04から5.0モル、好ましくは3.0から5.0モル、より好ましくは4.0モルのマグネシウムの量で強黒液に添加されてもよい。一態様では、マグネシウムは、黒液においてアルミニウムの各モルに対して0.3モルのマグネシウムの割合で、好ましくは黒液においてアルミニウムの各モルに対して3モルのマグネシウムの割合で、より好ましくは黒液においてアルミニウムの各モルに対して4モルのマグネシウムの割合で添加される。
【0038】
[039]典型的には、本発明の黒液に少なくともマグネシウムを添加することによってクラフトプロセスにおけるアルミニウム含有量を低減するための方法は、アルミニウムに対して少なくとも1、好ましくは少なくとも3、より好ましくは少なくとも4のマグネシウムのモル比を有する緑液を提供する。
【0039】
[040]したがって、少なくともマグネシウムを黒液に添加することによってパルプ化プロセスにおけるアルミニウム含有量を低減するための方法は、60ppmまで、好ましくは30ppmまで、より好ましくは20ppmまでのアルミニウム量を有する処理された白液を提供する。典型的には、黒液でアルミニウムを処理すると、アルミニウムのレベルがより低い白液が得られ、その結果、クラフト蒸解操作および回収サイクルで存在するアルミニウムが少なくなる。
【0040】
[041]一実施形態において、本発明の方法は、少なくともマグネシウムを黒液に添加して、アルミニウムに対して少なくとも1、好ましくは少なくとも4のマグネシウムのモル比を有する緑液を提供することを開示し、これは、より低いレベルのアルミニウムを有するパルプ化プロセスをもたらす傾向がある。
【0041】
[042]そのような結果を達成するために、本方法は、アルミニウムに対して少なくとも3、好ましくは少なくとも4のマグネシウムのモル比を有する緑液を生成する。マグネシウムが緑液に添加される場合、本方法は、アルミニウムに対して少なくとも3、好ましくは少なくとも4のマグネシウムのモル比を有する処理された緑液を提供する。
【0042】
[043]本発明の別の態様では、蒸解釜1と、洗浄プラント2と、濃縮プラント4と、ボイラープラント5と、苛性化プラント6と、任意選択のパルプ事前漂白プラント3aと、任意選択のパルプ漂白プラント3bと、マグネシウム添加ユニットとを有するクラフトパルプミルも提供される。典型的には、プラントは、操作のための1つ以上の機器を有することができ、すなわち、蒸解釜1は、1つ以上の蒸解釜を有することができ、洗浄プラント2は、1つ以上の洗浄機、1つ以上の脱水機などを有することができる。
【0043】
[044]マグネシウム添加ユニットは、洗浄プラント2、濃縮プラント4、ボイラープラント5、苛性化プラント6、またはそれ以上のうちの少なくとも1つに含まれる。例えば、マグネシウム添加ユニットがボイラープラント5に位置付けられる場合、供給パイプラインを介してマグネシウムを導くポンプ輸送は、セスキ硫酸塩供給と関連してもよく、既に設置されたものを利用して、弱黒液をボイラーに供給し、ボイラーに入る前にマグネシウムを弱黒液に添加する。別の実施形態では、マグネシウム添加ユニットは、濃縮プラント4に位置付けられてもよい。いずれの場合においても、操作は最終的に、アルミニウムに対して少なくとも3、好ましくは4のマグネシウムのモル比を有する緑液を生成する。
【0044】
[045]いずれの場合も、本発明は、少なくともマグネシウムを黒液、弱黒液、または強黒液に添加することによって、アルミニウムに対して少なくとも1、好ましくは少なくとも3、より好ましくは少なくとも4のマグネシウムのモル比を有する緑液を生成する方法を開示する。
【0045】
[046]パルプ化プロセスにおいて酸化カルシウム、白液、木材、土壌などから導入されるアルミニウム含有量のレベルの変動に起因して、プロセス変動に関連して、マグネシウムの過剰が望ましいかもしれない。例えば、本発明の方法は、弱黒液、強黒液または緑液に存在するアルミニウムに対してマグネシウムの0.04から5.0モル、好ましくは3.0から5.0、より好ましくは4.0のモル比でのマグネシウムの添加を用いることができる。
【0046】
[047]開示されるように、本発明のマグネシウムは、任意の形態のマグネシウム、例えば、遊離形態、酸化物形態、カチオン形態、塩形態、水酸化物形態、又はこれらの混合物のマグネシウムであってよい。例えば、本発明のマグネシウムは、塩形態のマグネシウムであってもよい。好適なマグネシウム塩は、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、又はこれらの混合物である。あるいは、例示的な水酸化物源は、水酸化マグネシウムである。
【0047】
[048]酸化カルシウム、白液、木材などの製造投入物に存在するアルミニウムは、好ましくは、アルミニウムに富む残留物の形成を介して、ボイラープラント5での燃焼工程の間にパルプ化プロセスから除去される。残留物は、例えばX-フィルター、k7を使用する濾過手順において、緑液からほとんど容易に除去される。除去される、形成された好ましい化合物は、ハイドロタルサイト(Mg6Al2(OH)16CO3.4H2O)であり、ハイドロタルサイトに富む残留物をもたらす。
【0048】
[049]一形態においては、本発明の方法は、弱黒液、強黒液、又はこれらの組合せ中に存在するアルミニウムモルに対して少なくとも0.04から5.0マグネシウムモル、好ましくはアルミニウムモルに対して3.0から5.0マグネシウムモル、より好ましくはアルミニウムモルに対して4.0マグネシウムモルの添加によって、ハイドロタルサイトを生成する添加によって、黒液からハイドロタルサイトを生成する方法である。
【0049】
[050]好ましくは、マグネシウムは、黒液の回収操作中に添加される。マグネシウムは、弱黒液、強黒液、またはそれらの組み合わせに添加することができる。本発明の方法の好ましい一実施形態では、1モルのマグネシウムの添加は、少なくとも弱黒液に対してである。この意味で、弱黒液にマグネシウムを添加してハイドロタルサイトを形成する方法が提供され、アルミニウムに対してマグネシウムの割合が少なくとも1、好ましくは少なくとも3、より好ましくは4である緑液を提供する。そのような比を達成するために、マグネシウムは、アルミニウムのモルに対して0.04から5モルのマグネシウム、好ましくはアルミニウムのモルに対して3.0から5.0モルのマグネシウム、より好ましくはアルミニウムのモルに対して4.0モルのマグネシウムが添加される。
【0050】
[051]上述したように、強黒液は燃焼されて無機物を生成し、この無機物は最終的に処理され変換されて白液を形成する。この回収操作により、緑液のアルミニウム含有量を減少させ、回収操作へのマグネシウムの添加から形成されるアルミニウムに富む残留物を除去し、低レベルのアルミニウムを有する白液を達成することができ、パルプ化プロセスに存在する全アルミニウム量を減少させ、濾過性の損失および前記プロセスにおける停止のリスクも減少させる。
例
【0051】
[052]以下の例は、アルミニウムについて本明細書に記載の方法を使用したときに本発明者らによって達成されたいくつかの実験及び結果を図示する。
a.アルミニウム:
【0052】
[053]参照工業用緑液を使用して異なるモル比で行われた実験室試験は、より高いモル比の添加が緑液からのアルミニウムの除去をもたらさなかったことを示した。加えて、それを濾過する時間は負の影響を受け、これは以下の表1に見ることができる。
【表1】
【0053】
[054]アルミニウムの1モル当たり硫酸マグネシウム4モルを、本発明の方法に従って黒液に添加した。
【0054】
[055]結果として生じた緑液のアルミニウム含有量を工業的に監視することによって、黒液中に硫酸マグネシウムを添加した後の含有量(ppm)の時間的な減少を検証することが可能である(
図2)。
【0055】
[056]前述の例は、特許請求される特徴を理解し、教示するのを支援するためにのみ提示される。本開示の利点、実施形態、例、機能、特徴、構造、及び/又は他の態様は、特許請求の範囲によって定義される本開示に対する限定、または特許請求の範囲の均等物に対する限定と見なされるべきではなく、本開示の範囲及び/又は趣旨から逸脱することなく、他の実施形態が利用されてもよく、修正が行われてもよいことを理解されたい。様々な実施形態は、開示された要素、構成要素、特徴、部分、工程、手段などの様々な組合せを適切に含むか、それらからなるか、またはそれらから本質的になることができる。加えて、本開示は、現在特許請求されていないが、将来特許請求されるかもしれない他の発明を含む。
【国際調査報告】