(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-06
(54)【発明の名称】逆設計プロセスにおいて静的領域を判定及び使用するための技術
(51)【国際特許分類】
G06F 30/10 20200101AFI20230830BHJP
G06F 30/20 20200101ALI20230830BHJP
【FI】
G06F30/10
G06F30/20
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022575330
(86)(22)【出願日】2021-07-28
(85)【翻訳文提出日】2023-02-13
(86)【国際出願番号】 US2021043411
(87)【国際公開番号】W WO2022035592
(87)【国際公開日】2022-02-17
(32)【優先日】2020-08-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516326438
【氏名又は名称】エックス デベロップメント エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100126480
【氏名又は名称】佐藤 睦
(72)【発明者】
【氏名】アドルフ,ブライアン
(72)【発明者】
【氏名】プレヴィット,パトリシア
【テーマコード(参考)】
5B146
【Fターム(参考)】
5B146AA22
5B146DC04
5B146DC05
5B146DJ01
(57)【要約】
【課題】 改善されたフォトニックデバイスの設計を提供することである。
【解決手段】 いくつかの実施形態では、コンピュータ可読媒体に記憶されたロジックは、実行に応答して、コンピューティングシステムに、複数のデバイス仕様に対応する複数のセグメント化設計を生成するための逆設計プロセスを行うことと、複数のセグメント化設計に基づいて、少なくとも1つの影響が大きい設計エリアを判定することと、少なくとも1つの影響が大きい設計エリアを静的設計エリアとして指定することと、を行わせる。いくつかの実施形態では、複数の物理デバイスを備える製品ラインが提供される。複数の物理デバイスの各物理デバイスは、静的設計エリア及びカスタマイズ設計エリアを含む設計領域を含む。各物理デバイスに対する静的設計エリアは、複数の物理デバイスの各物理デバイスに対して同じであり、各物理デバイスに対するカスタマイズ設計エリアは、複数の物理デバイスの各物理デバイスに対して異なる。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロジックが記憶されている非一時的なコンピュータ可読媒体であって、前記ロジックが、コンピューティングシステムの1つ以上のプロセッサによる実行に応答して、前記コンピューティングシステムに、
複数のデバイス仕様に対応する複数のセグメント化設計を生成するための逆設計プロセスを行うことと、
前記複数のセグメント化設計に基づいて、少なくとも1つの影響が大きい設計エリアを判定することと、
前記少なくとも1つの影響が大きい設計エリアを静的設計エリアとして指定することと、を含むアクションを行わせる、非一時的なコンピュータ可読媒体。
【請求項2】
前記複数のセグメント化設計に基づいて、前記少なくとも1つの影響が大きい設計エリアを判定することが、前記複数のセグメント化設計の対応する領域におけるフィールドの大きさを分析することを含む、請求項1に記載の非一時的なコンピュータ可読媒体。
【請求項3】
前記複数のセグメント化設計の前記対応する領域が、少なくとも1つの入力ポートの近くの少なくとも1つの領域と、少なくとも1つの出力ポートの近くの少なくとも1つの領域と、を含む、請求項2に記載の非一時的なコンピュータ可読媒体。
【請求項4】
前記複数のセグメント化設計に基づいて、前記少なくとも1つの影響が大きい設計エリアを判定することが、前記フィールドの大きさに基づいて、少なくとも1つの入力ポートの近くの前記少なくとも1つの領域又は少なくとも1つの出力ポートの近くの前記少なくとも1つの領域のサイズを増加又は減少させることを含む、請求項3に記載の非一時的なコンピュータ可読媒体。
【請求項5】
前記アクションが、前記複数のセグメント化設計に基づいて、前記静的設計エリアにおいて使用される設計部分を判定することを更に含む、請求項1に記載の非一時的なコンピュータ可読媒体。
【請求項6】
前記複数のセグメント化設計に基づいて、前記静的設計エリアにおいて使用される前記設計部分を判定することが、
所望の性能特性を有する前記複数のセグメント化設計のうちのセグメント化設計を判定することと、
前記静的設計エリア内の前記判定されたセグメント化設計の一部分を、前記静的設計エリアにおいて使用される前記設計部分として使用することと、を含む、請求項5に記載の非一時的なコンピュータ可読媒体。
【請求項7】
前記所望の性能特性を有する前記複数のセグメント化設計のうちの前記セグメント化設計を判定することが、前記影響が大きい設計エリア内の最大フィールドの大きさを有する前記複数のセグメント化設計のうちの前記セグメント化設計を判定することを含む、請求項6に記載の非一時的なコンピュータ可読媒体。
【請求項8】
前記所望の性能特性を有する前記複数のセグメント化設計の前記セグメント化設計を判定することは、その対応するデバイス仕様に関して最大性能を有する前記複数のセグメント化設計の前記セグメント化設計を判定することを含む、請求項6に記載の非一時的なコンピュータ可読媒体。
【請求項9】
前記アクションが、
前記静的設計エリアに対して前記判定された設計部分を使用しながら、前記複数のデバイス仕様に対する前記逆設計プロセスを繰り返して、複数の更新されたセグメント化設計を生成することと、を更に含む、請求項5に記載の非一時的なコンピュータ可読媒体。
【請求項10】
前記アクションが、
前記複数の更新されたセグメント化設計の性能特性を検証することと、
少なくとも1つの更新されたセグメント化設計が所望の性能特性を達成することができないと判定したことに応答して、前記静的設計エリアにおいて使用される異なる設計部分を判定することと、を更に含む、請求項9に記載の非一時的なコンピュータ可読媒体。
【請求項11】
前記アクションが、
新しいデバイスに対する新しいデバイス仕様を受信することと、
前記新しいデバイス仕様に対応する新しいセグメント化設計を生成するための逆設計プロセスを行うことと、を更に含み、前記新しいセグメント化設計は、前記静的設計エリアに対して前記判定された設計部分を使用する、請求項5に記載の非一時的なコンピュータ可読媒体。
【請求項12】
物理デバイスの逆設計のためのコンピュータ実装方法であって、
デバイス仕様を受信することと、
静的設計エリアにおいて使用するための設計部分を判定することと、
前記デバイス仕様に対応するセグメント化設計を生成するための逆設計プロセスを行うことと、を含み、前記逆設計プロセスは、前記静的設計エリアにおける前記設計部分を使用する、コンピュータ実装方法。
【請求項13】
前記静的設計エリアにおいて使用するために前記設計部分を判定することが、コンピュータ可読媒体から前記設計部分を取得することを含む、請求項12に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項14】
前記静的設計エリアにおいて使用するために前記設計部分を判定することが、
逆設計プロセスを実施して、複数のデバイス仕様に対応する複数のセグメント化設計を生成することと、
前記複数のセグメント化設計に基づいて、少なくとも1つの影響が大きい設計エリアを判定することと、
前記少なくとも1つの影響が大きい設計エリアを静的設計エリアとして指定することと、を含む、請求項12に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項15】
前記複数のセグメント化設計に基づいて、前記少なくとも1つの影響が大きい設計エリアを判定することが、前記複数のセグメント化設計の対応する領域におけるフィールドの大きさを比較することを含む、請求項14に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項16】
前記複数のセグメント化設計の前記対応する領域が、少なくとも1つの入力ポートの近くの少なくとも1つの領域と、少なくとも1つの出力ポートの近くの少なくとも1つの領域とを含む、請求項15に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項17】
前記複数のセグメント化設計に基づいて、前記少なくとも1つの影響が大きい設計エリアを判定することが、前記フィールドの大きさに基づいて、少なくとも1つの入力ポートの近くの前記少なくとも1つの領域又は少なくとも1つの出力ポートの近くの前記少なくとも1つの領域のサイズを増加又は減少させることを含む、請求項16に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項18】
前記静的設計エリアにおいて使用するために前記設計部分を判定することが、前記複数のセグメント化設計に基づいて、前記静的設計エリアにおいて使用される設計部分を判定することを更に含む、請求項14に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項19】
前記複数のセグメント化設計に基づいて、前記静的設計エリアにおいて使用される前記設計部分を判定することが、
所望の性能特性を有する前記複数のセグメント化設計のうちのセグメント化設計を判定することと、
前記静的設計エリア内の前記判定されたセグメント化設計の一部分を、前記静的設計エリアにおいて使用される前記設計部分として使用することと、を含む、請求項18に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項20】
複数の物理デバイスを備える製品ラインであって、
前記複数の物理デバイスの各物理デバイスが、設計領域を含み、
各物理デバイスの前記設計領域が、静的設計エリア及びカスタマイズ設計エリアを含み、
各物理デバイスに対する前記静的設計エリアが、逆設計プロセスによって判定されたセグメント化設計によって指定され、前記静的設計エリアに対する前記セグメント化設計が、前記複数の物理デバイスの各物理デバイスに対して同じであり、
各物理デバイスに対する前記カスタマイズ設計エリアが、逆設計プロセスによって判定されたセグメント化設計によって指定され、前記カスタマイズ設計エリアに対する前記セグメント化設計が、前記複数の物理デバイスの各物理デバイスに対して異なる、製品ライン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、フォトニックデバイスに関し、特に、排他的ではないが、光マルチプレクサ及びデマルチプレクサに関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバ通信は、通常、情報を搬送するように変調された光を介して、ある場所から別の場所に情報を送信するために用いられる。例えば、多くの電気通信会社は、電話信号、インターネット通信、及びケーブルテレビ信号を送信するために光ファイバを使用する。しかし、光ファイバ通信のために光ファイバを展開するコストは法外なものになることがある。したがって、単一の光ファイバ内で利用可能な帯域幅をより効率的に使用するための技術が開発されている。波長分割多重化は、異なる波長を使用して複数の光搬送波信号を単一の光ファイバ上にバンドルする1つのそのような技術である。
【発明の概要】
【0003】
いくつかの実施形態では、ロジックが記憶された非一時的なコンピュータ可読媒体が提供される。ロジックは、コンピューティングシステムの1つ以上のプロセッサによる実行に応答して、コンピューティングシステムに、複数のデバイス仕様に対応する複数のセグメント化設計を生成するための逆設計プロセスを行うことと、複数のセグメント化設計に基づいて、少なくとも1つの影響が大きい設計エリアを判定することと、少なくとも1つの影響が大きい設計エリアを静的設計エリアとして指定することと、を含むアクションを実行させる。
【0004】
いくつかの実施形態では、物理デバイスの逆設計のためのコンピュータ実装方法が提供される。デバイス仕様が受信される。静的設計エリアにおいて使用するための設計部分が判定される。デバイス仕様に対応するセグメント化設計を生成するための逆設計プロセスが行われ、逆設計プロセスは、静的設計エリアにおける設計部分を使用する。
【0005】
いくつかの実施形態では、複数の物理デバイスを備える製品ラインが提供される。複数の物理デバイスの各物理デバイスは、設計領域を含む。各物理デバイスの設計領域は、静的設計エリア及びカスタマイズ設計エリアを含む。各物理デバイスに対する静的設計エリアは、逆設計プロセスによって判定されたセグメント化設計によって指定される。静的設計エリアのためのセグメント化設計は、複数の物理デバイスの各物理デバイスに対して同じである。各物理デバイスに対するカスタマイズ設計エリアは、逆設計プロセスによって判定されたセグメント化設計によって指定され、カスタマイズ設計エリアに対するセグメント化設計は、複数の物理デバイスの各物理デバイスに対して異なる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
本発明の非限定的かつ非網羅的な実施形態は、以下の図を参照して説明され、同様の参照番号は、別段の指定がない限り、様々な図全体を通して同様の部分を指す。適切な場合に図面を混乱させないように、要素の全てのインスタンスが必ずしもラベル付けされているわけではない。図面は、必ずしも縮尺通りではなく、代わりに、説明される原理を例示することに重点が置かれている。いかなる特定の要素又は作用の考察も容易に識別するために、参照番号における最上位桁(単数又は複数)は、その要素が最初に導入される図番号を指す。
【
図1】本開示の実施形態による、光信号を介した2つの光通信デバイス間の光通信のためのシステムを例示する機能ブロック図である。
【
図2A】それぞれ、本開示の実施形態による、例示的なデマルチプレクサ及びマルチプレクサを例示する。
【
図2B】それぞれ、本開示の実施形態による、例示的なデマルチプレクサ及びマルチプレクサを例示する。
【
図2C】本開示の実施形態による、マルチチャネル光信号の例示的な別個の波長チャネルを例示する。
【
図3A】本開示の実施形態による、例示的なフォトニックデマルチプレクサの異なる図を例示する。
【
図3B】本開示の実施形態による、例示的なフォトニックデマルチプレクサの異なる図を例示する。
【
図3C】本開示の実施形態による、例示的なフォトニックデマルチプレクサの異なる図を例示する。
【
図3D】本開示の実施形態による、例示的なフォトニックデマルチプレクサの異なる図を例示する。
【
図4A】本開示の実施形態による、例示的なフォトニックデマルチプレクサの分散領域のより詳細な横断面図を例示する。
【
図4B】本開示の実施形態による、例示的なフォトニックデマルチプレクサの分散領域のより詳細な横断面図を例示する。
【
図5】本開示の実施形態による、フォトニック集積回路の設計を生成するためのシステムを例示する機能ブロック図である。
【
図6A】本開示の実施形態による、フォトニック集積回路を説明する例示的なシミュレーション環境を例示する。
【
図6B】本開示の実施形態による、フォトニック集積回路の例示的な動作シミュレーションを例示する。
【
図6C】本開示の実施形態による、損失値を逆伝播させることによる、シミュレーション環境内の例示的なアドジョイントシミュレーションを例示する。
【
図7A】本開示の様々な態様による、動作シミュレーション及びアドジョイントシミュレーションのための例示的な時間ステップを例示するフローチャートである。
【
図7B】本開示の実施形態による、動作シミュレーションの更新動作とアドジョイントシミュレーション(例えば、逆伝播)との間の関係を例示するチャートである。
【
図8】本開示の様々な態様による、フォトニック集積回路などの物理デバイスの設計を生成するための方法の非限定的な例示的な実施形態を例示するフローチャートである。
【
図9A】本開示の様々な態様による、静的設計エリアを使用する物理デバイスの非限定的な例示的な実施形態の概略図である。
【
図9B】本開示の様々な態様による、静的設計エリアを使用する物理デバイスの非限定的な例示的な実施形態の概略図である。
【
図9C】本開示の様々な態様による、静的設計エリアを使用する物理デバイスの非限定的な例示的な実施形態の概略図である。
【
図9D】本開示の様々な態様による、静的設計エリアを使用する物理デバイスの非限定的な例示的な実施形態の概略図である。
【
図9E】本開示の様々な態様による、静的設計エリアを使用する物理デバイスの非限定的な例示的な実施形態の概略図である。
【
図10】本開示の様々な態様による、物理デバイスの設計を生成する方法の非限定的な例示的な実施形態を例示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
フォトニック集積回路(マルチチャネルフォトニックデマルチプレクサを含む)の設計を生成する文脈において、物理デバイスの逆設計のための技術の実施形態が本明細書で説明される。以下の説明では、実施形態の完全な理解を提供するために、多数の特定の詳細が記載される。しかしながら、当業者は、本明細書で説明される技術が、特定の詳細のうちの1つ以上なしで、又は他の方法、構成要素、材料などを用いて実施され得ることを認識するであろう。
【0008】
本明細書全体を通して、「一実施形態」又は「実施形態」への言及は、実施形態に関連して説明される特定の特徴、構造、又は特性が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体を通して様々な場所で「一実施形態では」又は「実施形態では」という句が出現しても、必ずしも全てが同じ実施形態を指すわけではない。更に、特定の特徴、構造、又は特性は、1つ以上の実施形態では任意の好適な方法で組み合わされ得る。
【0009】
波長分割多重化及びその変形(例えば、高密度波長分割多重化、粗波長分割多重化など)は、複数の光キャリア信号を単一の光ファイバに束ねることによって、光ファイバの帯域幅を利用する。複数のキャリア信号が一緒に束ねられると、それらは、単一の光ファイバを介して1つの場所から別の場所に送信され、そこで、それらは、光通信デバイスによって読み出されるように逆多重化され得る。しかしながら、キャリア信号を互いに分離するデバイスは、コスト、サイズなどの点で依然として法外なものである。
【0010】
更に、光通信に使用されるようなフォトニックデバイスの設計は、所定の設計又はビルディングブロックからの少数の設計パラメータが特定の用途への好適性のために調整される単純な推測及びチェック方法又は手動でガイドされたグリッドサーチを通して判定されることがある従来の技術を介して伝統的に設計されている。しかしながら、実際には、これらのデバイスは、デバイスサイズ及び機能性に応じて、数百から数十億以上の範囲の設計パラメータを有し得る。したがって、フォトニックデバイスの機能性が増加し、製造公差が改善されてより小さいデバイス特徴サイズが可能になるにつれて、最適化されたデバイス設計を介してこれらの改善を十分に利用することがますます重要になる。
【0011】
逆設計プロセスによって得られる設計を有するフォトニック集積回路(例えば、マルチチャネルフォトニックデマルチプレクサ及び/又はマルチプレクサ)の実施形態が本明細書に説明される。より具体的には、本明細書の実施形態で説明される技術は、フォトニック集積回路の動作を支配すると予想される基礎となる物理学の理解から設計を生成するために、第1の原理シミュレーションと組み合わせて勾配ベースの最適化を利用する。他の実施形態では、勾配ベースの技術を用いないフォトニック集積回路の設計最適化も使用され得ることが理解される。逆設計は、性能メトリックが提供され、設計が性能メトリックを最大化するように作成される、任意の技術を含み得る。本明細書での考察は、主に、性能メトリックを最大化するために順伝播シミュレーション/逆伝播技術とともに勾配降下を使用する逆設計技術に関する。しかしながら、これらの技術の説明は、限定するものとみなされるべきではない。いくつかの実施形態では、性能メトリックに基づいて設計の性能を最大化するために使用され得る他の逆設計技術は、遺伝子設計、生成設計、工学最適化、形状最適化、及びトポロジ最適化を含むが、これらに限定されない。
【0012】
有利に、本明細書で説明される実施形態及び技術は、フォトニックデバイスの設計に使用される従来の技術に限定されず、所定のビルディングブロックの少数の設計パラメータが、特定の用途への好適性に基づいて調整される。むしろ、本明細書で説明される第1原理ベースの設計は、必ずしも人間の直感に依存せず、概して、性能、サイズ、ロバスト性、又はそれらの組み合わせにおいて現在の最先端の設計を凌駕する設計をもたらし得る。更に、従来の技術に起因する少数の設計パラメータに限定されるのではなく、本明細書で説明される実施形態及び技術は、ほぼ無制限の数の設計パラメータのスケーラブルな最適化を提供し得る。フォトニック集積回路の設計及び製造が本明細書全体にわたって説明されているが、同様の逆設計技術を使用して、他のタイプの物理デバイスの設計を生成し得ることも理解されよう。
【0013】
図1は、本開示の様々な態様による、光信号110を介した光通信デバイス102と光通信デバイス120との間の通信(例えば、波長分割多重化又は他の技術を介した)光通信のためのシステム100を例示する機能ブロック図である。より一般的には、光通信デバイス102は、1つ以上の光源からの光をマルチチャネル光信号110(例えば、複数の別個の波長チャネルを含む単一の光信号)に変調することによって情報を送信するように構成されており、このマルチチャネル光信号は、その後、光ファイバ、光ガイド、導波管、又は他のフォトニックデバイスを介して、光通信デバイス102から光通信デバイス120に送信される。光通信デバイス120は、マルチチャネル光信号110を受信し、マルチチャネル光信号110から複数の別個の波長チャネルの各々を逆多重化して、送信された情報を抽出する。いくつかの実施形態では、光通信デバイス102及び光通信デバイス120は、別個の個別のデバイスであり得る(例えば、光トランシーバ又は送信機は、1つ以上の光ファイバを介して個別の光トランシーバ又は受信機に通信可能に結合される)ことが理解される。しかしながら、他の実施形態では、光通信デバイス102及び光通信デバイス120は、単一の構成要素又はデバイスの一部であり得る(例えば、スマートフォン、タブレット、コンピュータ、光学デバイスなど)ことが理解される。例えば、光通信デバイス102及び光通信デバイス120は両方とも、モノリシック集積回路内に埋め込まれ、光通信デバイス102と光通信デバイス120との間で光信号110を搬送するか、又は他の方法で光信号をある場所と別の場所との間で送信するように適合されている導波路を介して互いに結合されたモノリシック集積回路上の構成要素であり得る。
【0014】
例示される実施形態では、光通信デバイス102は、互いに結合された、コントローラ104、1つ以上のインターフェースデバイス112(例えば、光ファイバカプラ、光ガイド、導波路など)、マルチプレクサ(mux)、デマルチプレクサ(demux)、又はそれらの組み合わせ(MUX/DEMUX114)、1つ以上の光源116(例えば、発光ダイオード、レーザなど)、及び1つ以上の光センサ118(例えば、フォトダイオード、フォトトランジスタ、フォトレジスタなど)を含む。コントローラは、1つ以上のプロセッサ106(例えば、1つ以上の中央処理装置、特定用途向け回路、フィールドプログラマブルゲートアレイ、又は別のもの)と、メモリ108(例えば、DRAM及びSAMなどの揮発性メモリ、ROM、フラッシュメモリなどの不揮発性メモリなど)と、を含む。光通信デバイス120は、明確にするために省略されている、光通信デバイス102と同じ又は同様の要素を含み得ることが理解される。
【0015】
コントローラ104は、光信号110(例えば、複数の別個の波長チャネル又は別のものを有するマルチチャネル光信号)を送信及び/又は受信するために、光通信デバイス102の動作を調整する。コントローラ104は、コントローラ104によって実行されると、コントローラ104及び/又は光通信デバイス102に動作を実行させるソフトウェア(例えば、プロセッサ106に結合されたメモリ108に含まれる命令)及び/又はハードウェアロジック(例えば、特定用途向け集積回路、フィールドプログラマブルゲートアレイなど)を含む。
【0016】
一実施形態では、コントローラ104は、光通信デバイス102の動作を振り分けて、光源116に複数の別個の波長チャネルを生成させ得、複数の別個の波長チャネルは、MUX/DEMUX114を介してマルチチャネル光信号110に多重化され、マルチチャネル光信号は、その後、インターフェースデバイス112を介して光通信デバイス120に送信される。言い換えれば、光源116は、情報を表す複数の別個の波長チャネルを生成するためにコントローラ104を介して変調又はパルス化され得る異なる波長(例えば、1271nm、1291nm、1311nm、1331nm、1511nm、1531nm、1551nm、1571又は別のもの)を有する光を出力し得る。複数の別個の波長チャネルは、その後、MUX/DEMUX114を介して、インターフェースデバイス112を介して光通信デバイス120に送信されるマルチチャネル光信号110に組み合わされるか、又は他の方法で多重化される。同じ又は別の実施形態では、コントローラ104は、光通信デバイス102の動作を振り分けて、複数の別個の波長チャネルが、光通信デバイス120からインターフェースデバイス112を介して受信されるマルチチャネル光信号110からMUX/DEMUX114を介して逆多重化されるようにし得る。
【0017】
いくつかの実施形態では、本開示のいくつかの態様を不明瞭にすることを回避するために、光通信デバイス102及び/又は光通信デバイス120の特定の要素が省略され得ることが理解される。例えば、光通信デバイス102及び光通信デバイス120は、光信号110の送信及び受信を容易にする増幅回路、レンズ、又は構成要素を含み得る。更に、いくつかの実施形態では、光通信デバイス102及び/又は光通信デバイス120は、
図1に例示される全ての要素を必ずしも含まない場合があることが理解される。例えば、一実施形態では、光通信デバイス102及び/又は光通信デバイス120は、複数の別個の波長チャネルをマルチチャネル光信号110に受動的に多重化し、及び/又はマルチチャネル光信号110から複数の別個の波長チャネルを逆多重化し得る中間デバイスとして動作する受動デバイスである。
【0018】
図2A及び
図2Bはそれぞれ、本開示の様々な態様による、例示的なデマルチプレクサ206及びマルチプレクサ208を例示する。デマルチプレクサ206及びマルチプレクサ208は、
図1に例示されるMUX/DEMUX114の可能な実施形態であり、集積光回路、シリコンフォトニックデバイス、又は他のものの一部であり得る。
【0019】
図2Aに例示されるように、デマルチプレクサ206は、入力領域202及び複数の出力領域204を含む。デマルチプレクサ206は、複数の別個の波長チャネル(例えば、Ch.1、Ch.2、Ch.3、...Ch.Nであって、各々、λ
1、λ
2、λ
3、...λ
Nにそれぞれ対応する中心波長を有する)を含むマルチチャネル光信号110を入力領域202(例えば、
図1に例示されるインターフェースデバイス112に対応し得る複数の導波路)を介して受信して、マルチチャネル光信号110から複数の別個の波長チャネルの各々を光学的に分離し、複数の別個の波長チャネルの各々を複数の出力領域204(例えば、
図1に例示されるインターフェースデバイス112に対応し得る複数の導波路)のうちの対応する1つにそれぞれガイドするように構成されている。より具体的には、例示される実施形態では、出力領域204の各々は、複数の光信号(例えば、λ
1、λ
2、λ
3、...λ
N)として出力され得る複数の別個の波長チャネルのうちの1つに対応するか、又はそうでなければそれを表すマルチチャネル光信号の一部分を受信する。複数の出力領域204は各々、それぞれの光センサ(例えば、
図1に例示される光センサ118に対応する)に結合され得、光センサは、マルチチャネル光信号110から逆多重化された光信号を更なる処理のために電気信号に変換するために利用され得る。
【0020】
図2Bの例示される実施形態では、マルチプレクサ208は、複数の入力領域216及び出力領域210を含む。マルチプレクサは、複数の別個の光信号(例えば、λ
1、λ
2、λ
3、...λ
N)を、各々、複数の入力領域216(例えば、
図1に例示されるインターフェースデバイス112に対応し得る複数の導波路)のうちのそれぞれ1つで受信するように構成されている。マルチプレクサ208は、複数の別個の波長チャネルの各々を、出力領域210(例えば、
図1に例示されるインターフェースデバイス112に対応し得る導波路)にガイドされるマルチチャネル光信号110に光学的に結合する(すなわち、多重化する)ように構造化されるか、又は他の方法で構成されている。いくつかの実施形態では、
図2Aに例示されるデマルチプレクサ206及び
図2Bに例示されるマルチプレクサ208は、各デバイスがデマルチプレクサ及びマルチプレクサの両方として機能し得るように、双方向であり得ることが理解される。
【0021】
図2Cは、本開示の様々な態様による、マルチチャネル光信号の例示的な別個の波長チャネル(例えば、Ch.Nは、
図1、
図2A、及び
図2Bに例示されるマルチチャネル光信号110である)を例示する。例示的なチャネルは、
図2Aのデマルチプレクサ206及び/又は
図2Bのマルチプレクサ208によって逆多重化及び/又は多重化され得るマルチチャネル光信号の複数の別個の波長チャネルに含まれる個々のチャネルを表し得る。別個の波長チャネルの各々は、1271nm、1291nm、1311nm、1331nm、1511nm、1531nm、1551nm、若しくは1571nm、又は他のもののうちの少なくとも1つを含む異なる中心波長(λ
N)を有し得る。
図2Cの例示される実施形態では、別個の波長チャネルは、約13nm幅のチャネル帯域幅212を有する。しかしながら、他の実施形態では、チャネル帯域幅は、13nm幅とは異なり得る。むしろ、チャネル帯域幅は、
図1のMUX/DEMUX114、
図2Aのデマルチプレクサ206、及び/又は
図2Bのマルチプレクサ208の構造に応じた構成可能なパラメータとみなされ得る。例えば、いくつかの実施形態では、複数の別個の波長チャネルの各々は、13nm又は他のものに対応し得る共通の帯域幅を共有し得る。再び
図2Cを参照すると、チャネル帯域幅212は、通過帯域領域218(すなわち、PB
1とPB
2との間にあるものとして定義される)の幅として定義され得る。通過帯域領域218は、デマルチプレクサ又はマルチプレクサの近似的な電力送信を表し得る。いくつかの実施形態では、通過帯域領域218は、通過帯域領域218内の変動に対応する、
図2Cに例示されるようなリプルを含み得ることが理解される。1つ以上の実施形態では、中心値214の周りの通過帯域領域内のリプルは、+/-2dB以下、+/-1dB以下、+/-0.5dB以下、又は他のものであり得る。いくつかの実施形態では、チャネル帯域幅212は、通過帯域領域218によって定義され得る。他の実施形態では、チャネル帯域幅212は、閾値(例えば、dB
th)を上回る測定された電力として定義され得る。例えば、
図2Aに例示されるデマルチプレクサ206は、マルチチャネル光信号110からチャネルNを光学的に分離し、チャネルNにマッピングされた出力領域204に送信される閾値を超える波長の範囲に等しいチャネルNの対応するチャネル帯域幅(すなわち、λ
N)を有し得る。同じ又は他の実施形態では、設計を最適化するときに、(すなわち、チャネル帯域幅212によって定義される)チャネルのアイソレーションも考慮され得る。アイソレーションは、通過帯域領域218と阻止帯域領域(例えば、SB
1より小さくSB
2より大きい領域)との間の比として定義され得る。遷移帯域領域(例えば、SB
1とPB
1との間の第1の遷移領域、及びPB
2とSB
2との間の第2の遷移領域)は例示的なものであり、例示の目的で誇張され得ると更に理解されたい。いくつかの実施形態では、フォトニックデマルチプレクサの設計の最適化はまた、遷移帯域領域の勾配、幅などの目標メトリックを含み得る。
【0022】
図3A~
図3Dは、本開示の一実施形態による例示的なフォトニックデマルチプレクサの異なる図を例示する。フォトニックデマルチプレクサ316は、
図1に例示されるMUX/DEMUX114及び
図2Aに例示されるデマルチプレクサ206の1つの可能な実装形態である。以下の考察は、マルチチャネル光信号から複数の別個の波長チャネルを逆多重化することが可能なフォトニック集積回路を対象とし得るが、他の実施形態では、本開示の実施形態に従って、デマルチプレクサ(例えば、デマルチプレクサ316)はまた、又は代替的に、複数の別個の波長チャネルをマルチチャネル光信号に多重化することが可能であり得ることが更に理解される。
【0023】
図3Aは、デマルチプレクサ316の幅320及び長さ322によって定義される活性層内の横平面に沿ったデマルチプレクサ316の横断面図を例示する。例示されるように、デマルチプレクサ316は、入力領域302(例えば、
図2Aに例示される入力領域202に相当する)と、複数の出力領域304(例えば、
図2Aに例示される複数の出力領域204に相当する)と、入力領域302と複数の出力領域304との間に光学的に配設された分散領域と、を含む。入力領域302及び複数の出力領域304(例えば、出力領域308、出力領域310、出力領域312、及び出力領域314)は各々、導波路の経路に沿って光を伝播することができる導波路(例えば、スラブ導波路、ストリップ導波路、スロット導波路など)であり得る。分散領域332は、各々が分散領域332の屈折率の変化に対応し、入力領域302がマルチチャネル光信号を受信するときに、マルチチャネル光信号(例えば、
図2Aに例示される光信号110)から複数の別個の波長チャネル(例えば、
図2Aに例示されるCh.1、Ch.2、Ch.3、...Ch.N)の各々を光学的に分離し、複数の別個の波長チャネルの各々を複数の出力領域304のうちの対応する1つにそれぞれガイドするように分散領域332を集合的に構造化する複数の界面を形成するように、不均一に散在した第1の材料及び第2の材料を含む(例えば、
図3Dを参照)。言い換えれば、入力領域302は、複数の別個の波長チャネルを含むマルチチャネル光信号を受信するように適合されており、複数の出力領域304は各々、分散領域332を介してマルチチャネル光信号から逆多重化された複数の別個の波長チャネルのうちの対応する1つを受信するように適合されている。
【0024】
図3Aに例示されるように、
図3D及び
図4A~
図4Bにより明確に示されるように、不均一に散在する第1及び第2の材料の形状及び配置は、第2の材料を含む周辺境界領域318によって少なくとも部分的に取り囲まれる分散領域332の断面エリアに沿って材料界面パターンを集合的に形成する複数の界面を作成する。いくつかの実施形態では、周辺領域318は、第2の材料を含む実質的に均質な組成を有する。例示される実施形態では、分散領域332は、各々が内側境界(すなわち、分散領域332と周辺領域318の外側境界に対応する一点鎖線との間に配設された周辺領域318のラベル付けされていない破線)と界面を有する第1の側面328及び第2の側面330を含む。第1の側面328及び第2の側面330は、分散領域332の対向する側面に対応して配設される。入力領域302は、第1の側面328に近接して配設される(例えば、入力領域302の1つの側面が分散領域332の第1の側面328に当接する)が、複数の出力領域304の各々は、第2の側面330に近接して配設される(例えば、複数の出力領域304の各々の1つの側面が分散領域332の第2の側面330に当接する)。
【0025】
例示される実施形態において、複数の出力領域304の各々は、複数の出力領域304のうちの1つの互いに平行である。しかしながら、他の実施形態では、複数の出力領域304は、互いに平行でない場合があるか、又は同じ側面にさえ配設されない場合がある(例えば、複数の出力領域304及び/又は入力領域302のうちの1つ以上が、第1の側面328及び/又は第2の側面330に隣接する分散領域332の側面に近接して配設され得る)。いくつかの実施形態では、複数の出力領域が少なくとも3つの出力領域を含むときに、複数の出力領域のうちの隣接するものは、共通の分離距離だけ互いに分離される。例えば、例示されるように、隣接する出力領域308及び出力領域310は、距離306だけ互いに分離されており、この距離は、隣接する出力領域の他の対の間の分離距離と共通であり得る。
【0026】
図3Aの実施形態に例示されるように、デマルチプレクサ316は、4つの出力領域304(例えば、出力領域308、出力領域310、出力領域312、出力領域314)を含み、これらは各々、複数の別個の波長チャネルに含まれる4つのチャネルのうちのそれぞれ1つに(すなわち、分散領域332の構造によって)マッピングされている。より具体的には、第1の材料及び第2の材料の不均一な散在によって定義される分散領域332の複数の界面は、分散領域332の断面エリアに(例えば、
図3A、
図4A、又は
図4Bに示されるように)沿って材料界面パターンを形成して、入力領域302がマルチチャネル光信号を領域分割するときに、分散領域332に、マルチチャネル光信号から4つのチャネルの各々を光学的に分離させ、4つのチャネルの各々を4つの出力領域304のそれぞれ1つにルーティングさせる。
【0027】
分散領域332の第1の材料及び第2の材料は、材料界面パターンが逆設計プロセスで得られる設計に実質的に比例するように、分散領域内に配置及び成形されることに留意する。逆設計プロセスについては、本開示において後でより詳細に考察する。より具体的には、いくつかの実施形態では、逆設計プロセスは、設計を生成するために反復勾配ベース最適化を介して低減又は他の方法で調整される(例えば、機能を実施するために)性能損失及び(例えば、第1の材料及び第2の材料の製造性及び二値化を実施するために)製造損失を組み込む損失関数に少なくとも部分的に基づいて設計の反復勾配ベース最適化を含み得る。同じ又は他の実施形態では、勾配ベースの最適化の代わりに、又は勾配ベースの最適化とともに、他の最適化技術が使用され得る。有利に、これは、ほぼ無制限の数の設計パラメータの最適化を可能にして、従来の設計技術では可能でなかった可能性がある所定のエリア内での機能及び性能を達成する。
【0028】
例えば、一実施形態では、分散領域332は、入力領域302がマルチチャネル光信号を受信するときに、(例えば分散領域332の幅324及び長さ326によって定義されるように)35μm×35μmの所定のエリア内でマルチチャネル光信号から4つのチャネルの各々を光学的に分離するように構造化される。同じ又は別の実施形態では、分散領域は、4つのチャネルの各々に対して共通の帯域幅を収容するように構造化され、4つのチャネルの各々は、異なる中心波長を有する。一実施形態では、共通の帯域幅は約13nm幅であり、異なる中心波長は、1271nm、1291nm、1311nm、1331nm、1511nm、1531nm、1551nm、及び1571nmからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、デマルチプレクサ316の構造全体(例えば、入力領域302、周辺領域318、分散領域332、及び複数の出力領域304を含む)は、(例えば、幅320及び長さ322によって定義されるような)所定のエリア内に収まる。一実施形態では、所定のエリアは、35μm×35μmである。他の実施形態では、分散領域332及び/又はデマルチプレクサ316は、35μm×35μmより大きい又は小さい他のエリア内に適合し、これは、分散領域332の構造(例えば、第1及び第2の材料の配列及び形状及び/又はデマルチプレクサ316の他の構成要素)に対する変化をもたらし得ることが理解される。
【0029】
同じ又は他の実施形態では、分散領域は、複数の別個の波長チャネルのうちの1つの所与の波長に対して、入力領域302から分散領域332を通って複数の出力領域304のうちの対応する1つまで-2dB以上の電力送信を有するように構造化されている。例えば、マルチチャネル光信号のチャネル1が出力領域308にマッピングされる場合、デマルチプレクサ316が入力領域302でマルチチャネル光信号を受信するときに、分散領域332は、マルチチャネル光信号からチャネル1を光学的に分離し、チャネル1に対応するマルチチャネル光信号の一部分を-2dB以上の電力送信で出力領域308にガイドする。同じ又は別の実施形態では、分散領域332は、入力領域から複数の出力領域のうちの対応する1つ以外の複数の出力領域のいずれかへの所与の波長に対する不利な電力送信(すなわち、アイソレーション)が-30dB以下、-22dB以下、又は他のものであるように構造化される。例えば、マルチチャネル光信号のチャネル1が出力領域308にマッピングされる場合、入力領域302から、複数の出力領域のうちの対応する1つ(例えば、出力領域308)以外の複数の出力領域のうちの任意の他の1つ(例えば、出力領域310、出力領域312、出力領域314)への不利な電力送信は、-30dB以下、-22dB以下、又は他のものである。いくつかの実施形態では、入力領域(例えば、入力領域302)で受信される入力信号(例えば、マルチチャネル光信号)のデマルチプレクサ316からの最大電力反射は、分散領域332によって入力領域に反射し戻されるか、又はそうでなければ、-40dB以下、-20dB以下、-8dB以下、又は他のものである。他の実施形態では、電力送信、不利な電力送信、最大電力、又は他の性能特性は、本明細書で考察されるそれぞれの値とは異なり得、分散領域332の構造は、デマルチプレクサ316の構造、機能、及び性能間の固有の関係に起因して変化し得ることが理解される。
【0030】
図3Bは、デマルチプレクサ316の例示される実施形態に含まれる様々な層の垂直概略図又はスタックを例示する。しかしながら、例示される実施形態は網羅的ではなく、本発明の特定の態様を不明瞭にすることを回避するために、特定の特徴又は要素が省略され得ることが理解される。例示される実施形態では、デマルチプレクサ316は、基板334、誘電体層336、(例えば、
図3Aの横断面図に示されるような)活性層338、及びクラッド層340を含む。いくつかの実施形態では、デマルチプレクサ316は、部分的に又は他の方法で、従来の製造技術(例えば、フォトリソグラフィ、電子ビームリソグラフィなどのリソグラフィ技術、スパッタリング、熱蒸着、物理及び化学蒸着など)と互換性がある、フォトニック集積回路又はシリコンフォトニックデバイスであり得る。
【0031】
一実施形態では、シリコンオンインシュレータ(silicon on insulator、SOI)ウェハが最初に提供され得、これは、基板334に対応する(例えば、シリコン基板)支持基板、誘電体層336に対応する二酸化シリコン誘電体層、シリコン層(例えば、真性、ドープされた、又は他のもの)、及び酸化物層(例えば、真性、成長、又は他のもの)を含む。一実施形態では、活性層338内のシリコンは、シリコンの部分を除去するために、ドライエッチングプロセスを介して(例えば、フォトレジストマスク又は他のハードマスクを介して)SOIウェハに転写されるパターンをSOIウェハ上にリソグラフィで作成することによって選択的にエッチングされ得る。シリコンは、誘電体層336までずっとエッチングされてボイドを形成し得、ボイドは、その後、二酸化ケイ素で埋め戻され得、二酸化ケイ素は、その後、クラッド層340を形成するために二酸化ケイ素でカプセル化される。一実施形態では、目標構造を得るために、シリコンの完全なエッチング深さを含むいくつかのエッチング深さがあり得る。一実施形態では、シリコンは、206nmの厚さであり得、したがって完全なエッチング深さは、206nmであり得る。いくつかの実施形態では、これは、2つの二酸化ケイ素堆積が、平坦な表面をもたらすために使用される中間化学機械平坦化とともに実行される、2ステップカプセル化プロセスであり得る。
【0032】
図3Cは、
図3Aの入力領域302を含む周辺領域318の一部分に沿った(
図3Bに対する)活性層338のより詳細な図を例示する。例示される実施形態では、活性層338は、ε
1の屈折率を有する第1の材料342と、ε
1とは異なるε
2の屈折率を有する第2の材料344と、を含む。第1の材料342及び第2の材料344の均質な領域は、
図3A及び
図3Cに例示されるように、入力領域302及び複数の出力領域304に対応する導波路又は導波路の一部を形成し得る。
【0033】
図3Dは、分散領域332に沿った(
図3Bに対する)活性層338のより詳細な図を例示する。前述したように、活性層338は、材料界面パターンを集合的に形成する複数の界面346を形成するように不均一に散在する第1の材料342(例えば、シリコン)及び第2の材料344(例えば、二酸化シリコン)を含む。界面パターンを形成する複数の界面346の各々は、分散領域332の屈折率の変化に対応して分散領域(すなわち、第1の材料342及び第2の材料344の形状及び配置)を構造化して、デマルチプレクサ316の機能(すなわち、入力領域302がマルチチャネル光信号を受信するときのマルチチャネル光信号からの複数の別個の波長チャネルの光分離及び複数の別個の波長チャネルの各々の複数の出力領域304の対応する1つへのそれぞれのガイド)を少なくとも部分的に提供する。
【0034】
図3A~
図3Dに示されるように、デマルチプレクサ316の例示される実施形態では、屈折率の変化は、垂直方向に一貫しているものとして示されている(すなわち、第1の材料342及び第2の材料344は、デマルチプレクサ316の横平面又は横断面に対して実質的に垂直又は直角である界面を形成することが理解される。しかしながら、同じ又は他の実施形態では、複数の界面(例えば、
図3Dに例示される界面346)は、デマルチプレクサ316の横平面又は横断面と実質的に直角でない場合がある。
【0035】
図4Aは、本開示の実施形態による、例示的なフォトニックデマルチプレクサ400の分散領域のより詳細な横断面図を例示する。
図4Bは、
図4Aのフォトニックデマルチプレクサ400の分散領域のための第1の材料410及び第2の材料412の形状及び配置によって形成された界面パターンのより詳細な図を例示する。フォトニックデマルチプレクサ400は、
図1に例示されるMUX/DEMUX114、
図2Aに例示されるデマルチプレクサ206、及び
図3A~
図3Dに例示されるデマルチプレクサ316の1つの可能な実装形態である。
【0036】
図4A及び
図4Bに例示されるように、フォトニックデマルチプレクサ400は、入力領域402と、複数の出力領域404と、入力領域402と複数の出力領域404との間に光学的に配設された分散領域406と、を含む。分散領域406は、内側境界414及び外側境界416を含む周辺領域408によって少なくとも部分的に囲まれている。フォトニックデマルチプレクサ400の同様の名称又はラベル付けされた要素は、同様に、本開示の実施形態において説明される他のデマルチプレクサの同様の名称又はラベル付けされた要素に対応し得ることが理解される。
【0037】
フォトニックデマルチプレクサ400の第1の材料410(すなわち、分散領域406内の黒色領域)及び第2の材料412(すなわち、分散領域406内の白色領域)は、
図4Bに例示されるような材料界面パターン420を集合的に形成する複数の界面を作成するように、不均一に散在している。より具体的には、反復勾配ベース最適化、マルコフ連鎖モンテカルロ最適化、又は他の最適化技術を利用する逆設計プロセスが、第1原理シミュレーションと組み合わされて、フォトニックデマルチプレクサ400が所望の機能を提供するように比例又はスケーリングされた方式で分散領域406によって実質的に複製される設計を生成する。例示される実施形態では、分散領域406は、入力領域402がマルチチャネル光信号を受信するときに、マルチチャネル光信号から複数の別個の波長チャネルの各々を光学的に分離し、複数の別個の波長チャネルの各々を複数の出力領域404のうちの対応する1つにそれぞれガイドするように構造化されている。より具体的には、複数の出力領域404-A、404-B、404-C、及び404-Dは、1271nm、1291nm、1311nm、及び1331nmに対応する中心波長を有する波長チャネルにそれぞれマッピングされる。別の実施形態では、出力領域404-A、404-B、404-C、及び404-Dは、1511nm、1531nm、1551nm、及び1571nmに対応する中心波長を有する波長チャネルにそれぞれマッピングされる。
【0038】
図4Bに例示されるように、分散領域406内の黒い線によって画定され、分散領域406内の屈折率の変化に対応する材料界面パターン420は、複数の突出部422を含む。第1の突出部422-Aは、第1の材料410から形成され、周辺領域408から分散領域406内に延在する。同様に、第2の突出部422-Bは、第2の材料412から形成され、周辺領域408から分散領域406内に延在する。
図4Bに更に例示されるように、分散領域406は、第1の材料410又は第2の材料412のいずれかから形成された複数のアイランド424を含む。複数のアイランド424は、第1の材料410から形成され、かつ第2の材料412によって囲まれた第1のアイランド424-Aを含む。複数のアイランド424はまた、第2の材料412から形成され、かつ第1の材料412によって囲まれた第2のアイランド424-Bを含む。
【0039】
いくつかの実施形態では、材料界面パターン420は、1つ以上の樹枝状形状を含み、1つ以上の樹枝状形状の各々は、第1の材料410又は第2の材料412から形成され、かつ対応する方向に沿ってサイズが交互に増加及び減少する幅を有する分岐構造として定義される。
図4Aに戻って参照すると、明確にするために、樹枝状構造418は、黒い境界を有し、白い矢印でラベル付けされている。分かるように、樹枝状構造418の幅は、代替的に、分岐構造を生成するために、対応する方向(すなわち、樹枝状構造418の長さに重なる白色の矢印)に沿ってサイズが増加及び減少する。他の実施形態では、突出部がない場合があるか、アイランドがない場合があるか、樹枝状構造がない場合があるか、又はゼロを含む任意の数の突出部、分散領域406に含まれる任意の材料のアイランド、樹枝状構造、若しくはこれらの組み合わせがあり得ることが理解される。
【0040】
いくつかの実施形態では、逆設計プロセスは、設計の製造可能性を保証するために、最小特徴サイズを実施する製造損失を含む。
図4A及び
図4Bに例示されるフォトニックデマルチプレクサ400の例示される実施形態では、材料界面パターン420は、第1の材料410及び第2の材料412で形成された横断面エリア内の複数の界面が閾値サイズ未満の大きさの曲率半径を有しないように、分散領域406内に最小特徴サイズを実施するように成形される。例えば、最小特徴サイズが150nmである場合、複数の界面のいずれかのための曲率半径は、最小特徴サイズの半分の逆数(すなわち、1/75nm
-1)に対応する閾値サイズ未満の大きさを有する。そのような最小特徴サイズの実施は、逆設計プロセスが、製造制約、限界、及び/又は歩留まりを考慮することによって製造可能でない設計を生成することを防止する。同じ又は他の実施形態では、製造可能性に関連するメトリクスに対する異なる又は追加のチェックを利用して、最小特徴サイズとして最小幅又は間隔を実施し得る。
【0041】
図5は、本開示の一実施形態による、フォトニック集積回路(すなわち、フォトニックデバイス)の設計を生成するためのシステム500を例示する機能ブロック図である。システム500は、フォトニック集積回路の動作を支配する基礎物理を考慮する反復勾配ベース最適化を用いて設計を生成する逆設計プロセスを実行するために利用され得る。より具体的には、システム500は、第1原理シミュレーション(例えば、励起源に対するフォトニックデバイスのフィールド応答を判定するための電磁シミュレーション)及び反復勾配ベース最適化に基づいて、フォトニック集積回路の構造パラメータ(例えば、本開示における実施形態の分散領域内の第1の材料及び第2の材料の形状及び配置)を最適化するために利用され得る設計ツールである。言い換えれば、システム500は、
図3A及び
図4Aにそれぞれ例示されるデマルチプレクサ316及びフォトニックデマルチプレクサ400の分散領域332及び分散領域406によって実質的に複製される(すなわち、比例してスケーリングされる)逆設計プロセスによって得られる設計を提供し得る。
【0042】
例示されるように、システム500は、コントローラ512、ディスプレイ502、入力デバイス504、通信デバイス506、ネットワーク508、リモートリソース510、バス534、及びバス520を含む。コントローラ512は、プロセッサ514、メモリ516、ローカルストレージ518、及びフォトニックデバイスシミュレータ522を含む。フォトニックデバイスシミュレータ522は、動作シミュレーションエンジン526、製造損失計算ロジック528、計算ロジック524、アドジョイントシミュレーションエンジン530、及び最適化エンジン532を含む。いくつかの実施形態では、コントローラ512は分散システムであり得ることが理解される。
【0043】
コントローラ512は、フォトニックデバイスすなわち、デマルチプレクサ)の構造パラメータを最適化するためにシステム500を利用するユーザに情報を表示するために、バス520を通してバス534に結合されたディスプレイ502(例えば、発光ダイオードディスプレイ、液晶ディスプレイなど)に結合されている。入力デバイス504は、情報及びコマンド選択をプロセッサ514に通信するために、バス520を通してバス534に結合されている。入力デバイス504は、ユーザとコントローラ512との間の相互作用を容易にするために、マウス、トラックボール、キーボード、スタイラス、又は他のコンピュータ周辺機器を含み得る。これに応答して、コントローラ512は、ディスプレイ502を通して相互作用の検証を提供し得る。
【0044】
任意選択的にコントローラ512に結合され得る別のデバイスは、ネットワーク508を介して分散システムのリモートリソース510にアクセスするための通信デバイス506である。通信デバイス506は、イーサネット、インターネット、又は広域ネットワークなどに結合するために使用されるものなど、任意の数のネットワーキング周辺デバイスを含み得る。通信デバイス506は、コントローラ512と外部世界との間の接続性を提供するメカニズムを更に含み得る。
図5に例示されるシステム500の構成要素及び関連するハードウェアのいずれか又は全てが、本開示の様々な実施形態において使用され得ることに留意されたい。リモートリソース510は、分散システムの一部であり得、任意の数のプロセッサ、メモリ、及びフォトニックデバイスの構造パラメータを最適化するための他のリソースを含み得る。
【0045】
コントローラ512は、フォトニックデバイスの構造パラメータを最適化するためのシステム500の動作を編成する。プロセッサ514(例えば、1つ以上の中央処理ユニット、グラフィックス処理ユニット、及び/又はテンソル処理ユニットなど)、メモリ516(例えば、DRAM及びSRAMなどの揮発性メモリ、ROM、フラッシュメモリなどの不揮発性メモリなど)、ローカルストレージ518(例えば、コンピュータディスクドライブなどの磁気メモリ)、並びにフォトニックデバイスシミュレータ522は、バス520を通して互いに結合されている。コントローラ512は、コントローラ512によって実行されるときに、コントローラ512又はシステム500に動作を実行させるソフトウェア(例えば、プロセッサ514に結合されたメモリ516に含まれる命令)及び/又はハードウェアロジック(例えば、特定用途向け集積回路、フィールドプログラマブルゲートアレイなど)を含む。動作は、メモリ516、ローカルストレージ518、物理デバイスシミュレータ522、及びネットワーク508を通してアクセスされるリモートリソース510のうちのいずれか1つ又はそれらの組み合わせ内に記憶された命令に基づき得る。
【0046】
例示される実施形態では、フォトニックデバイスシミュレータ522の構成要素は、フォトニックデバイス(例えば、
図1のMUX/DEMUX114、
図2Aのデマルチプレクサ206、
図2Bのマルチプレクサ208、
図3A~
図3Dのデマルチプレクサ316、及び
図4A~
図4Bのフォトニックデマルチプレクサ400)の構造パラメータを最適化するために利用される。いくつかの実施形態では、システム500は、有限差分時間領域(finite-difference time-domain、FDTD)法を利用してフィールド応答(例えばフォトニックデバイス内の電場及び磁場)をモデル化するシミュレーション(例えば、動作シミュレーション及びアドジョイントシミュレーション)をとりわけ介して、フォトニックデバイスの構造パラメータを最適化し得る。動作シミュレーションエンジン526は、シミュレーション環境内の励起源に応答して動作するフォトニックデバイスの電磁シミュレーションを実行するための命令を提供する。特に、動作シミュレーションは、(例えば、複数のボクセルを有するシミュレーション環境内のフォトニックデバイスの構造パラメータを記述するフォトニックデバイスの初期記述又は入力設計に基づいて)物理デバイスの性能メトリックを判定するための励起源に応答して、シミュレーション環境(したがって、シミュレーション環境によって記述されるフォトニックデバイス)のフィールド応答を判定する。構造パラメータは、例えば、物理デバイスの特定の設計、材料組成、寸法などに対応し得る。製造損失計算ロジック528は、製造可能性を保証するために最小特徴サイズを実施するために利用される製造損失を判定するための命令を提供する。いくつかの実施形態では、製造損失は、設計の二値化を実施するためにも使用される(すなわち、フォトニックデバイスが、複数の界面を形成するように散在する第1の材料及び第2の材料を含むようにする)。計算ロジック524は、性能メトリック及び製造損失に基づいて、性能損失を組み込む損失関数を介して判定される損失メトリックをコンピューティングする。アドジョイントシミュレーションエンジン530は、フォトニックデバイスのアドジョイントシミュレーションを実行して、損失関数を介してシミュレーション環境を通して損失メトリックを逆伝播させて、フォトニックデバイスの構造パラメータの変化が損失メトリックにどのように影響するかを判定するために、動作シミュレーションエンジン526と併せて利用される。最適化エンジン532は、フォトニックデバイスの構造パラメータを更新して損失メトリックを低減し、フォトニックデバイスの改訂された記述を生成する(すなわち、設計を改訂する)ために利用される。
【0047】
図6A~
図6Cは、それぞれ、フォトニックデバイスを記述し、シミュレーション環境610内の励起源に応答してフォトニックデバイスの動作シミュレーションを実行し、かつシミュレーション環境608内のフォトニックデバイスのアドジョイントシミュレーションを実行するシミュレーション環境の初期セットアップを例示する。シミュレーション環境の初期セットアップ、シミュレーション環境の1次元表現、物理デバイスの動作シミュレーション、及び物理デバイスのアドジョイントシミュレーションは、
図5に例示されるシステム500を用いて実装され得る。
図6A~
図6Cに例示されるように、シミュレーション環境は二次元で表される。しかしながら、シミュレーション環境及びフォトニックデバイスを説明するために、他の次元数(例えば、三次元空間)も使用され得ることが理解される。いくつかの実施形態では、
図6A~
図6Cに例示されるフォトニックデバイスの構造パラメータの最適化は、有限差分時間領域(FDTD)法を利用して、励起源に対するフィールド応答(例えば電場及び磁場)をモデル化するシミュレーション(例えば、動作シミュレーション及びアドジョイントシミュレーション)をとりわけ含む逆設計プロセスを介して達成され得る。
【0048】
図6Aは、本開示の実施形態による、フォトニック集積回路(すなわち、導波路、デマルチプレクサなどのフォトニックデバイス)を説明する例示的なシミュレーション環境606を例示する。より具体的には、1つ以上の構造パラメータ(例えば、入力設計)によって定義されるフォトニックデバイスの初期記述を受信することに応答して、システム(例えば、
図5のシステム500)は、フォトニックデバイスを表すようにシミュレーション環境606を構成する。例示されるように、シミュレーション環境606(及びその後のフォトニックデバイス)は、二次元(又は他の次元)空間の個々の(すなわち、離散化された)要素を表す複数のボクセル612によって記述される。ボクセルの各々は、二次元正方形として例示されている。しかしながら、ボクセルは、三次元空間において立方体又は他の形状として表され得ることが理解される。複数のボクセル612の特定の形状及び寸法は、シミュレーション環境606及びシミュレートされるフォトニックデバイスに応じて調整され得ることが理解される。シミュレーション環境606の他の態様を不明瞭にすることを回避するために、複数のボクセル612の一部分のみが例示されていることに更に留意する。
【0049】
複数のボクセル612の各々は、構造値、フィールド値、及びソース値に関連付けられ得る。集合的に、シミュレーション環境606の構造値は、フォトニックデバイスの構造パラメータを記述する。一実施形態では、構造値は、フォトニックデバイスの構造(すなわち、材料)境界又は界面(例えば、
図4Bの界面パターン420)を集合的に記述する比誘電率、透磁率、及び/又は屈折率に対応し得る。例えば、界面616は、シミュレーション環境606内で比誘電率が変化する場所を表し、第1の材料が第2の材料と接触するか、又は他の方法で界面を生じるフォトニックデバイスの境界を定義し得る。フィールド値は、ソース値によって記述される励起源に応答して(例えば、マクスウェルの方程式を介して)計算されるフィールド(又は損失)応答を記述する。フィールド応答は、例えば、複数のボクセル612の各々に対する特定の時間ステップでの電場及び/又は磁場(例えば、1つ以上の直交方向における)を記述するベクトルに対応し得る。したがって、フィールド応答は、フォトニックデバイス及び励起源の構造パラメータに少なくとも部分的に基づき得る。
【0050】
例示される実施形態では、フォトニックデバイスは、設計領域614(例えば、
図3Aの分散領域332及び/又は
図4Aの分散領域406に対応する)を有する光デマルチプレクサに対応し、物理デバイスの構造パラメータが更新されるか、又は他の方法で修正され得る。より具体的には、逆設計プロセスを通して、損失関数から判定される損失メトリックの反復的な勾配ベースの最適化が実行されて、マルチチャネル光信号が逆多重化され、入力ポート602から出力ポート604のうちの対応する1つにガイドされることを機能的に引き起こすフォトニックデバイスの設計を生成する。したがって、フォトニックデバイスの入力ポート602(例えば、
図3Aの入力領域302、
図4Aの入力領域402などに対応する)は、出力(例えば、ガウスパルス、波、導波モード応答など)を提供するための励起源の位置に対応する。励起源の出力は、構造パラメータに基づいてフォトニックデバイスと相互作用する(例えば、励起源に対応する電磁波は、波がシミュレーション環境606内のフォトニックデバイスを通って伝播する際に、摂動、再送信、減衰、屈折、反射、回折、散乱、吸収、分散、増幅、又は他のことが行われ得る)。言い換えれば、励起源は、フォトニックデバイスのフィールド応答を変化させ得、これは、フォトニックデバイスの物理領域及び構造パラメータを支配する基礎物理に依存する。励起源は、入力ポート602から始まるか、又は他の方法でそれに近接しており、設計領域614を通ってフォトニックデバイスの出力ポート604に向かって伝播する(又は他の方法で複数のボクセルのフィールド値に影響を及ぼす)ように位置決めされる。例示される実施形態では、入力ポート602及び出力ポート604は、設計領域614の外側に位置決めされている。言い換えれば、例示される実施形態では、フォトニックデバイスの構造パラメータの一部分のみが最適化可能である。
【0051】
しかしながら、他の実施形態では、構造パラメータがフォトニックデバイスの設計の任意の部分又は全体を表し得るように、フォトニックデバイスの全体が設計領域614内に置かれ得る。シミュレーション環境606内の電場及び磁場(及びその後のフォトニックデバイス)は、励起源に応答して変化し得る(例えば、シミュレーション環境のフィールド応答に集合的に対応する個々のボクセルの場値によって表される)。光デマルチプレクサの出力ポート604は、励起源(例えば、入力ポート602から出力ポート604のうちの特定の1つへの電力送信)に応答して、フォトニックデバイスの性能メトリックを判定するために使用され得る。初期構造パラメータ、励起源、性能パラメータ又はメトリック、及びフォトニックデバイスを記述する他のパラメータを含むフォトニックデバイスの初期記述は、システム(例えば、
図5のシステム500)によって受信され、フォトニックデバイスの第1原理ベースのシミュレーションを実行するためのシミュレーション環境606を構成するために使用される。これらの特定の値及びパラメータは、ユーザ(例えば、
図5のシステム500のユーザ)によって直接的に、間接的に(例えば、コントローラ512を介して、メモリ516、ローカルストレージ518、若しくはリモートリソース510に記憶された所定の値をカリングすることによって)、又はそれらの組み合わせによって定義され得る。
【0052】
図6Bは、本開示の様々な態様による、シミュレーション環境610内の励起源に応答したフォトニックデバイスの動作シミュレーションを例示する。例示される実施形態では、フォトニックデバイスは、入力ポート602で受信されたマルチチャネル光信号に含まれる複数の別個の波長チャネルの各々を光学的に分離し、複数の別個の波長チャネルの各々を複数の出力ポート604のうちの対応する1つにそれぞれガイドするように構造化された光デマルチプレクサである。励起源は、複数の別個の波長チャネルから(ランダムに又は他の方法で)選択され得、指定された空間、位相、及び/又は時間プロファイルを有する入力ポート602から始まる。動作シミュレーションは、例示される時間ステップを含む複数の時間ステップにわたって行われる。動作シミュレーションを実行するときに、複数のボクセル612の各々のフィールド応答(例えば、フィールド値)に対する変化は、複数の時間ステップにわたって励起源に応答して増分的に更新される。特定の時間ステップでのフィールド応答の変化は、複数の時間ステップに含まれる直前の時間ステップにおけるシミュレーション環境610の構造パラメータ、励起源、及びフィールド応答に少なくとも部分的に基づく。同様に、いくつかの実施形態では、複数のボクセル612のソース値が更新される(例えば、励起源を記述する空間プロファイル及び/又は時間プロファイルに基づいて)。動作シミュレーションは増分的であり、シミュレーション環境610のフィールド値(及びソース値)は、動作シミュレーション中に複数の時間ステップの各々に対して時間が進むにつれて、各時間ステップで増分的に更新されることが理解される。いくつかの実施形態では、更新は反復プロセスであり、各フィールド及びソース値の更新は、各フィールド及びソース値の以前の更新に少なくとも部分的に基づくことに更に留意する。
【0053】
動作シミュレーションが定常状態に達するか例えば、励起源に応答したフィールド値の変化が実質的に安定するか、若しくは無視できる値に減少する)、又は他の方法で終了すると、1つ以上の性能メトリックが判定され得る。一実施形態では、性能メトリックは、励起源によってシミュレートされている別個の波長チャネルにマッピングされた出力ポート604のうちの対応する1つでの電力送信に対応する。言い換えれば、いくつかの実施形態では、性能メトリックは、出力ポート604の特定の位置における目標モード形状における(1つ以上の関心対象の周波数での)電力を表す。性能メトリックに少なくとも部分的に基づく入力設計(例えば、初期設計及び/又は構造パラメータが更新された任意の洗練された設計)の損失値又はメトリックは、損失関数を介して判定され得る。損失メトリックは、アドジョイントシミュレーションと併せて、損失メトリックを低減するすなわち、性能メトリックを増加させる)ように構造パラメータを更新するか、又は他の方法で修正するための構造勾配(例えば、損失メトリックに対する構造パラメータの影響)を判定するために利用され得る。損失メトリックは、デバイスの製造可能性を促進するために、フォトニックデバイスの最小特徴サイズを実施するために利用される製造損失値に更に基づくことに留意する。
【0054】
図6Cは、本開示の様々な態様による、損失メトリックを逆伝播させることによるシミュレーション環境608内の例示的なアドジョイントシミュレーションを例示する。より具体的には、アドジョイントシミュレーションは、損失メトリックが、フォトニックデバイスと相互作用して損失応答を引き起こす励起源として扱われる時間後方シミュレーションである。言い換えれば、損失メトリックに基づくアドジョイント(又は仮想源)は、出力領域(例えば、出力ポート604)又は性能メトリックを判定するときに使用される位置に対応する他の位置に置かれる。アドジョイント源は、アドジョイントシミュレーション中に物理的刺激又は励起源として扱われる。シミュレーション環境608の損失応答は、アドジョイントソースに応答して複数の時間ステップの各々に対して(例えば、時間的に後方に)計算される。損失応答は、複数の時間ステップにわたってアドジョイントソースに応答して増分的に更新される複数のボクセルの損失値を集合的に指す。損失メトリックに基づく損失応答の変化は、損失勾配に対応し得、損失勾配は、物理デバイスのフィールド応答の変化が損失メトリックにどのように影響するかを示す。損失勾配及びフィールド勾配は、フォトニックデバイス/シミュレーション環境の構造勾配(例えば、シミュレーション環境内のフォトニックデバイスの構造パラメータの変化が損失メトリックにどのように影響するか)を判定するために適切な方法で組み合わされ得る。特定のサイクル(例えば、動作シミュレーション及びアドジョイントシミュレーション)の構造勾配が分かると、構造パラメータを更新して損失メトリックを低減し、フォトニックデバイスの修正された記述又は設計を生成し得る。
【0055】
いくつかの実施形態では、動作シミュレーション及びアドジョイントシミュレーションを実行し、構造勾配を判定し、損失メトリックを低減するために構造パラメータを更新する反復サイクルは、反復勾配ベース最適化を利用する逆設計プロセスの一部として連続的に実行される。勾配降下などの最適化スキームを利用して、損失メトリックを増分的に低減するようにフォトニックデバイスの構造パラメータに対する変化の特定の量又は程度を判定し得る。より具体的には、各サイクルの後、構造パラメータは、損失メトリックを低減するように更新される(例えば、最適化される)。動作シミュレーション、アドジョイントシミュレーション、及び構造パラメータの更新は、フォトニックデバイスが製造可能性を維持しながら所望の性能を提供するように、損失メトリックが実質的に収束するか、そうでなければ閾値又は範囲を下回るか又はその範囲内になるまで、反復的に繰り返される。
【0056】
図7Aは、本開示の様々な態様による、動作シミュレーション702及びアドジョイントシミュレーション704のための例示的な時間ステップを例示するフローチャート700である。フローチャート700は、システム(例えば、
図5のシステム500)が、フォトニック集積回路(例えば、フォトニックデマルチプレクサなどの電磁領域で動作する光デバイス)を記述するシミュレーション環境(例えば、
図6A~
図6Cのシミュレーション環境)の動作シミュレーション702及びアドジョイントシミュレーション704を実行することを使用し得る1つの可能な実装形態である。例示される実施形態では、動作シミュレーション702は、有限差分時間領域(FDTD)法を利用して、励起源及び/又はアドジョイント源に対応する物理刺激に応答して、複数の時間ステップに対して複数のボクセル(例えば、
図6A~
図6Cに例示される複数のボクセル612)の各々でのフィールド応答(電気及び磁気の両方)又は損失応答をモデル化する。
【0057】
図7Aに示すように、フローチャート700は、動作シミュレーション702及びアドジョイントシミュレーション704の一部分に対する更新動作を含む。動作シミュレーション702は、複数の時間ステップにわたって(例えば、指定された時間ステップサイズを有する所定の又は条件付きの数の時間ステップにわたる初期時間ステップから最終時間ステップまで)行われ、フィールド応答に集合的に対応するシミュレーション環境及び/又はフォトニックデバイスを記述する複数のボクセルの電場及び磁場における(例えば、初期フィールド値712からの)変化をモデル化する。より具体的には、更新動作(例えば、更新動作714、更新動作716、及び更新動作718)、反復的であり、フィールド応答、構造パラメータ708(すなわち、摂動構造パラメータ706のうちの選択された1つに対するもの)、及び1つ以上の励起源710に基づく。各更新動作は、別の更新動作によって後続され、複数の時間ステップ内で時間的に順方向に連続するステップを表す。例えば、更新動作716は、前の更新動作714、励起源710、及び構造パラメータ708から判定されたフィールド応答に基づいてフィールド値740(例えば、
図7Bを参照)を更新する。同様に、更新動作718は、更新動作716から判定されたフィールド応答に基づいてフィールド値742(例えば、
図7Bを参照)を更新する。言い換えれば、動作シミュレーションの各時間ステップで、フィールド値(したがって、フィールド応答)が、フォトニックデバイスの以前のフィールド応答及び構造パラメータに基づいて更新される。
【0058】
動作シミュレーション702の最終時間ステップが実行されると、損失メトリック724が(例えば、所定の性能損失関数720に基づいて)判定され得る。ブロック726から判定された損失勾配は、アドジョイント源又は仮想源(例えば、出力領域又はポートから始まる物理刺激又は励起源)として扱われ得、これらは、構造勾配734を判定するために、後方に(複数の時間ステップを通して最終時間ステップから増分的に、更新動作728、更新動作732、及び更新動作730を介して初期時間ステップに到達するまで)逆伝播される。
【0059】
例示される実施形態では、FDTD解(例えば、動作シミュレーション702)及び後方解(例えば、アドジョイントシミュレーション704)問題は、「更新」及び「損失」演算並びにそれらの対応する勾配動作のみを使用して、高レベルから図式的に説明される。シミュレーションは、初期セットアップされ、シミュレーション環境(及びフォトニックデバイス)の構造パラメータ、物理刺激(すなわち、励起源)、及び初期フィールド状態が(例えば、初期記述及び/又は入力設計を介して)提供される。先で考察されるように、フィールド値は、構造パラメータに基づいて励起源に応答して更新される。より具体的には、更新動作はφによって与えられ、i=1,...,nについて、xi+1=φ(xi,bi,z)である。ここで、nは、動作シミュレーションのための時間ステップ(例えば、複数の時間ステップ)の総数に対応し、xiは、時間ステップiでのシミュレーション環境のフィールド応答(複数のボクセルの各々の電場及び磁場に関連付けられたフィールド値)に対応し、biは、時間ステップiでのシミュレーション環境の励振源(複数のボクセルの各々に対する電場及び磁場に関連付けられたソース値)に対応し、zは、物理デバイスのトポロジ及び/又は材料特性を記述する構造パラメータ(例えば、相対誘電率、屈折率など)に対応する。
【0060】
FDTD法を使用すると、更新動作は、具体的に以下のように記載され得ることに留意する。
【0061】
【0062】
すなわち、FDTD更新は、フィールド項及びソース項に関して線形である。具体的には、
【0063】
【数2】
は、構造パラメータzに依存し、フィールドx
i及びソースb
iにそれぞれ作用する線形演算子である。ここで、
【0064】
【数3】
であると仮定し、Nは、動作シミュレーションにおけるFDTDフィールド成分の数である。追加的に、損失動作(例えば、損失関数)は、L=f(x
i,...,x
n)によって与えられ得、これは、コンピューティングされたフィールドを入力として取り、低減及び/又は最小化され得る単一の実数値スカラー(例えば、損失メトリック)を生成する。
【0065】
物理デバイスの構造パラメータを修正するか、そうでなければ最適化する項では、生成する関連量は、
【0066】
【数4】
であり、これは、損失値に対する初期設計736の構造パラメータの変化の影響を記述するために使用され、
図7Aに例示される構造勾配734として示される。
【0067】
図7Bは、本開示の実施形態による、動作シミュレーションのための更新動作とアドジョイントシミュレーション(例えば、逆伝播)との間の関係を例示するチャート738である。より具体的には、
図7Bは、構造勾配
【0068】
【数5】
のコンピューティングに関与する動作及びアドジョイントシミュレーション関係を要約し、構造勾配は、
【0069】
【数6】
を含む。動作シミュレーション702の更新動作716は、i番目の時間ステップでの複数のボクセルのフィールド値740、x
iを、次の時間ステップ(すなわち、i+1時間ステップ)に更新し、これは、フィールド値742、x
i+1に対応する。勾配744は、逆伝播(例えば、時間的に後方の更新動作732)のために
【0070】
【数7】
を判定するために利用され、これは、勾配746と組み合わされて使用され、少なくとも部分的に、構造勾配
【0071】
【0072】
【数9】
は、損失メトリック、Lに対する各フィールドの寄与である。これは偏導関数であり、したがって、x
i→x
i+1のカーソル関係を考慮しない。したがって、x
i→x
i+1の関係を包含する
【0073】
【0074】
【0075】
【数12】
をコンピューティングするために使用され得、損失値、Lに関するフィールドの全導関数に対応する。特定の時間ステップ、iでの損失勾配
【0076】
【0077】
【0078】
【数15】
は、フィールド勾配に対応し、これは、各時間/更新ステップからどれが、
【0079】
【0080】
特に、
【0081】
【数17】
を直接コンピューティングするためのメモリフットプリントは非常に大きいので、少数の状態テンソルよりも多くを記憶することは困難である。状態テンソルは、単一のシミュレーション時間ステップに対するFDTDセル(例えば、複数のボクセル)の全ての値を記憶することに対応する。「テンソル」という用語は、数学的な意味での、又はAlphabet,Inc.によって開発されたTensorFlowフレームワークによって説明されるようなテンソルを指し得ることが理解される。いくつかの実施形態では、「テンソル」という用語は、特定の変換法則に従う多次元配列に対応する数学的テンソルを指す。しかしながら、ほとんどの実施形態では、「テンソル」という用語は、TensorFlowテンソルを指し、テンソルは、ベクトル及び行列を潜在的により高い次元(例えば、ベースデータタイプのn次元配列)に一般化するものとして説明され、必ずしも特定の変換法則に限定されない。例えば、一般損失関数fの場合、全ての時間ステップ、iに対して、フィールドx
iを記憶する必要があり得る。これは、fのほとんどの選択に対して、勾配がのfの引数の関数になるためである。この困難性は、iのより大きな値に対する
【0082】
【数18】
の値が、フィールド応答の増分更新に起因して、及び/又は損失メトリックの逆伝播を通してより小さいiに対する値より前に必要とされるという事実に度を増し、これは、即時の時間ステップで値
【0083】
【数19】
のみを記憶しようとするスキームの使用を妨げ得る。
【0084】
構造勾配、
【0085】
【数20】
をコンピューティングするときに追加の困難性が更に例示され、この構造勾配は、以下によって与えられる:
【0086】
【0087】
完全性のために、和、
【0088】
【0089】
【0090】
式(1)によって説明されるようなφの定義に基づいて、
【0091】
【数24】
を式(3)に代入して、逆伝播のためのアドジョイント更新(例えば、更新動作732などの更新動作)に到達することができ、これは、以下として表され得ることに留意する:
【0092】
【0093】
【0094】
アドジョイント更新は、より遅い時間ステップからより早い時間ステップへの損失勾配(例えば損失メトリックからの)逆伝播であり、
【0095】
【数27】
に対する後方解と称され得る。より具体的には、損失勾配は、最初に、損失関数を用いた動作シミュレーションから判定される損失メトリックの逆伝播に基づき得る。和の構造勾配、
【0096】
【数28】
の第2項は、フィールド勾配に対応し、式(1)によって記述される特的の形式のφに対して、
【0097】
【数29】
として示される。したがって、関連する和
【0098】
【数30】
の各項は、i>=i
0及びi<i
0に対して両方とも
【0099】
【数31】
に依存する。これらの2つの項の依存チェーンは反対方向であるので、このように
【0100】
【数32】
をコンピューティングすることは、全てのiに対してx
iの値の記憶を必要とする。いくつかの実施形態では、全てのフィールド値を記憶する必要性は、フィールドの低減された表現によって軽減され得る。
【0101】
図8は、本開示の様々な態様による、フォトニック集積回路などの物理デバイスの設計を生成するための方法800の非限定的な例示的な実施形態を例示するフローチャートである。方法800は、少なくとも性能損失及び製造損失を含む損失関数から判定される損失メトリックの反復勾配ベースの最適化を実行するために、システム(例えば、
図5のシステム500)で動作を実行することによって達成され得る逆設計プロセスであることが理解される。同じ又は他の実施形態では、方法800は、マシンによって実行されるときに、マシンにフォトニック集積回路の設計を生成する、及び/又は改善するための動作を実行させる、少なくとも1つのマシンアクセス可能な記憶媒体(例えば、非一時的なメモリ)によって提供される命令として含まれ得る。方法800においてプロセスブロックのいくつか又は全てが現れる順序は、限定的なものとみなされるべきではないことが更に理解される。むしろ、本開示の利益を有する当業者は、プロセスブロックのうちのいくつかが、例示されていない様々な順序で、又は並列でさえ実行され得ることを理解するであろう。
【0102】
開始ブロックから、方法800はブロック802に進み、ここで、フォトニック集積回路などの物理デバイスの初期設計が受け取られる。いくつかの実施形態では、物理デバイスは、最適化後に特定の機能を有する(例えば、光デマルチプレクサとして実行する)ことが予想され得、方法800に提供される初期設計は、方法800の出力に対する所望の性能特性を含み得る。いくつかの実施形態では、初期設計は、シミュレーション環境内の物理デバイスの構造パラメータを記述し得る。シミュレーション環境は、物理デバイスの構造パラメータを集合的に記述する複数のボクセルを含み得る。複数のボクセルの各々は、構造パラメータを記述するための構造値と、物理刺激(例えば、1つ以上の励起源)に対するフィールド応答(例えば、1つ以上の直交方向における電場及び磁場)を記述するためのフィールド値、及び物理刺激を記述するためのソース値に関連付けられる。
【0103】
いくつかの実施形態では、初期設計は、物理デバイスの第1の記述であり得、構造パラメータの値が、初期(例えば第1の)設計に対するバイアスがないように入力領域及び出力領域の外側のランダム値又はヌル値であり得る。初期記述又は入力設計は、相対的な用語であり得ることが理解される。したがって、いくつかの実施形態では、初期記述は、シミュレーション環境のコンテキスト内で記述される物理デバイスの第1の記述であり得る(例えば、第1の動作シミュレーションを実行するための第1の入力設計)。しかしながら、他の実施形態では、初期記述という用語は、(例えば、動作シミュレーション702を実行すること、アドジョイントシミュレーション704を動作させること、及び構造パラメータを更新すること)の初期記述を指し得る。そのような実施形態では、初期設計又はその特定のサイクルの設計は、(例えば、以前のサイクルから生成された)改訂された記述又は洗練された設計に対応し得る。
【0104】
いくつかの実施形態では、シミュレーション環境は、物理デバイスの構造パラメータを最適化するために更新、改訂、又は他の方法で変更され得る構造パラメータを有する複数のボクセルの一部分を含む設計領域を含む。同じ又は他の実施形態では、構造パラメータは、シチュエーション環境の材料特性(例えば、比誘電率、屈折率など。)に基づいて物理デバイスの幾何学的境界及び/又は材料組成に関連付けられる。いくつかの実施形態では、設計領域は、「ロック」されるか、又は他の方法で方法800によって更新されない構造パラメータを含む1つ以上の静的設計エリアを含み得る。静的設計エリアの判定及び使用については、以下で更に詳細に説明する。
【0105】
ブロック804では、シミュレーション環境は、物理デバイス(例えば、フォトニックデバイス)の初期設計を表すように構成されている。構造パラメータが受信されるか又は他の方法で得られると、シミュレーション環境が構成される(例えば、ボクセルの数、ボクセルの形状/配置、並びにボクセルの構造値、フィールド値、及び/又はソース値の特定の値が、摂動された構造パラメータに基づいてセットされる)。
【0106】
いくつかの実施形態では、シミュレーション環境は、第1の通信領域と複数の第2の通信領域との間に光学的に結合された設計領域を含む。いくつかの実施形態では、第1の通信領域は、入力領域又はポート(例えば、励起源が始まる)に対応し得、第2の通信は、(例えば、入力ポートで受信されたマルチチャネル光信号に含まれる複数の別個の波長チャネルを光学的に分離し、別個の波長チャネルの各々を複数の出力ポートのうちの対応する1つにそれぞれガイドする光デマルチプレクサを設計するときに)複数の出力領域又はポートに対応し得る。しかしながら、他の実施形態では、第1の通信領域は出力領域又はポートに対応し得、複数の第2の通信領域は、(例えば、複数の入力ポートのそれぞれで受信された複数の別個の波長信号を光学的に組み合わせて、出力ポートにガイドされるマルチチャネル光信号を形成する光マルチプレクサを設計するときに)複数の入力ポート又は領域に対応する。
【0107】
ブロック806は、複数の別個の波長チャネルの各々を複数の第2の通信領域のそれぞれの1つにマッピングすることを示す。別個の波長チャネルは、物理デバイスの初期設計によって第2の通信領域にマッピングされ得る。例えば、物理デバイスの性能メトリックを、マッピングされたチャネルに対する入力ポートから個々の出力ポートへの電力送信に関連付ける損失関数が選択され得る。一実施形態では、複数の別個の波長チャネルに含まれる第1のチャネルは、第1の出力ポートにマッピングされ、これは、第1のチャネルに対する物理デバイスの性能メトリックが第1の出力ポートに結び付けられることを意味する。同様に、他の出力ポートは、別個の波長チャネルの各々がシミュレーション環境内の複数の出力ポート(すなわち、第2の通信領域)のうちのそれぞれ1つにマッピングされるように、複数の別個の波長チャネルに含まれる同じ又は異なるチャネルにマッピングされ得る。一実施形態では、複数の第2の通信領域は4つの領域を含み、複数の別個の波長チャネルは、4つの領域のうちの対応する1つにそれぞれマッピングされる4つのチャネルを含む。他の実施形態では、異なる数の第2の通信領域(例えば、8つの領域)及び第2の通信領域のそれぞれ1つに各々マッピングされる異なる数のチャネル(例えば、8つのチャネル)があり得る。
【0108】
ブロック808は、性能損失値を判定するために、1つ以上の励振源に応答して動作するシミュレーション環境内の物理デバイスの動作シミュレーションを実行することを例示する。より具体的には、いくつかの実施形態では、物理デバイスのフィールド応答が励起源に起因してどのように変化するかを判定するために、フォトニック集積回路のフィールド応答が複数の時間ステップにわたって増分的に更新される電磁シミュレーションが実行される。複数のボクセルのフィールド値は、励起源に応答して、集積フォトニック回路の構造パラメータに少なくとも部分的に基づいて更新される。追加的に、特定の時間ステップでの各更新動作はまた、前の(例えば、直前の)時間ステップに少なくとも部分的に基づき得る。
【0109】
その結果、動作シミュレーションは、物理刺激に応答した(例えば、出力ポート又は領域のうちの1つ以上での)フォトニックデバイスのシミュレートされた出力を判定するために、フォトニックデバイス(すなわち、フォトニック集積回路)と物理刺激(すなわち、1つ以上の励起源)との間の相互作用をシミュレートする。相互作用は、フォトニックデバイスの構造パラメータ及びフォトニックデバイスの動作を支配する基礎物理に少なくとも部分的に起因する、電磁領域内の物理刺激の摂動、再送信、減衰、分散、屈折、反射、回折、吸収、散乱、増幅、又は他のもののうちのいずれか1つ又はそれらの組み合わせに対応し得る。したがって、動作シミュレーションは、シミュレーション環境のフィールド応答が複数の時間ステップにわたって(例えば、所定のステップサイズを有する初期時間ステップから最終時間ステップまで)励起源に起因してどのように変化するかをシミュレートする。
【0110】
いくつかの実施形態では、シミュレートされた出力は、物理デバイスの1つ以上の性能メトリックを判定するために利用され得る。例えば、励起源は、複数の出力ポートの1つに各々マッピングされる複数の別個の波長チャネルのうちの選択された1つに対応し得る。励起源は、動作シミュレーションを実行するときに、第1の通信領域(すなわち、入力ポート)で始まるか、又は第1の通信領域に近接して配設され得る。動作シミュレーション中に、複数の別個の波長チャネルのうちの選択された1つにマッピングされた出力ポートでのフィールド応答が、選択された別個の波長チャネルに対するフォトニック集積回路のシミュレートされた電力送信を判定するために利用され得る。言い換えれば、動作シミュレーションは、第1の通信領域から、設計領域を通って、複数の別個の波長チャネルのうちの選択された1つにマッピングされた複数の第2の通信領域のうちのそれぞれの1つへの励起源のシミュレートされた電力送信を判定することを含む性能メトリックを判定するために利用され得る。いくつかの実施形態では、励起源は、フォトニック集積回路の別個の波長チャネルの各々に関連付けられた性能メトリック(すなわち、シミュレートされた電力送信)を判定するために、複数の出力ポートの全てのスペクトルをカバーし得る(例えば、励起源は、少なくとも、複数の別個の波長チャネルの各々の帯域通過領域、及び対応する遷移帯域領域、及び対応する阻止帯域領域の少なくとも一部分の目標周波数範囲に及ぶ)。いくつかの実施形態では、複数の別個の波長チャネルのうちの所与の1つの通過帯域に及ぶ1つ以上の周波数は、設計を最適化するためにランダムに選択される(例えば、目標仕様を満たす通過帯域内のリプルを含む各通過帯域の全幅を有しながらのバッチ勾配降下)。同じ又は他の実施形態では、複数の別個の波長チャネルの各々は、異なる中心波長を有する共通の帯域幅を有する。次いで、性能メトリックを使用して、構造パラメータ708のセットに対する性能損失値を生成し得る。性能損失値は、性能メトリックと物理デバイスの目標性能メトリックとの間の差に対応し得る。
【0111】
ブロック810は、例えば最小特徴サイズに関連付けられた性能損失値及び製造損失に基づいて損失メトリックを判定することを示す。いくつかの実施形態では、損失メトリックは、性能損失値及び製造損失の両方を入力値として含む損失関数を介して判定される。いくつかの実施形態では、シミュレーション環境の設計領域のための最小特徴サイズが、逆設計プロセスによって生成される設計の製作可能性を促進するために提供され得る。製造損失は、最小特徴サイズ及び設計領域の摂動構造パラメータに少なくとも部分的に基づく。より具体的には、製造損失は、設計領域が最小特徴サイズ未満の直径を有する構造要素を有しないように、設計の最小特徴サイズを実施する。これは、このシステムが特定の製造可能性及び/又は歩留まり要件を満たす設計を提供するのに役立つ。いくつかの実施形態では、製造損失はまた、設計の二値化を実施するのに役立つ(すなわち、第1及び第2の材料を一緒に混合して第3の材料を形成するのではなく、設計は、不均一に散在する第1の材料及び第2の材料の領域を含む)。
【0112】
いくつかの実施形態では、製造損失は、最小特徴サイズに等しい幅を有する畳み込みカーネル(例えば、円形、正方形、八角形、又は他のもの)を生成することによって判定される。次いで、畳み込みカーネルは、シミュレーション環境の設計領域を通ってシフトされて、設計領域を超えて延在することなく、設計領域内の畳み込みカーネルに適合する設計領域内のボクセル位置すなわち、個々のボクセル)を判定する。次いで、畳み込みカーネルは、ボクセル位置の各々において、ボクセル位置に関連付けられた構造パラメータと畳み込まれて、第1の製造値を判定する。次いで、構造パラメータが逆数にされ、畳み込みカーネルが、ボクセル位置の各々において、逆数にされた構造パラメータと再び畳み込まれて、第2の製造値が判定される。次いで、第1及び第2の製造値が続いて組み合わされて、設計領域の製造損失を判定する。製造損失を判定するこのプロセスは、より小さい曲率半径を有する設計領域の構造要素が閾値サイズ未満の大きさを有することを促進し得る(すなわち、最小特徴サイズの半分の逆数)。
【0113】
ブロック812は、損失メトリックに対する構造パラメータの変化の影響(すなわち、構造勾配)を判定するために、シミュレーション環境を通じた損失関数を介して損失メトリックを逆伝播させることを例示する。損失メトリックはアドジョイントソース又は仮想ソースとして扱われ、物理デバイスの構造勾配を判定するために、後方シミュレーションにおいて最終時間ステップからより早い時間ステップへ増分的に逆伝播される。
【0114】
ブロック814は、損失メトリックを調整するために初期設計の構造パラメータを更新することによって物理デバイスの設計を修正する(例えば、修正された記述が生成される)ことを示す。いくつかの実施形態では、損失メトリックを調整することは、損失メトリックを低減し得る。しかしながら、他の実施形態では、損失メトリックは、必ずしも損失メトリックを低減しない方法で調整され得るか、又は他の方法で補償され得る。一実施形態では、損失メトリックを調整することは、パラメータ化空間内に一般的な方向を提供しながら製造可能性を維持して、デバイス製造可能性及び目標性能メトリックも維持しながら最終的に性能の増加をもたらす設計を得ることができる。いくつかの実施形態では、改訂された記述は、勾配降下アルゴリズム、マルコフ連鎖モンテカルロアルゴリズム、又は他の最適化技術を介した動作及びアドジョイントシミュレーションのサイクル後に、最適化方式を利用することによって生成される。別の言い方をすれば、物理デバイスをシミュレートし、損失メトリックを判定し、損失メトリックを逆伝播させ、構造パラメータを更新して損失メトリックを調整する反復サイクルは、性能メトリックと目標性能メトリックとの間の差が閾値範囲内にあるように損失メトリックが実質的に収束するまで、連続的に実行され得、同時に製造損失に起因する製造可能性及び二値化も考慮する。いくつかの実施形態では、「収束する」という用語は、単に、差が閾値範囲内にあること、及び/又は何らかの閾値を下回ることを示し得る。以下で更に詳細に考察されるように、構造パラメータに対する更新は、1つ以上の静的エリア領域内の構造パラメータが変更されないままにし得る。
【0115】
決定ブロック816では、性能メトリックと目標性能メトリックとの間の差が閾値範囲内にあるように損失メトリックが実質的に収束するかどうかに関する判定が行われる。複数の別個の波長チャネルから選択された励起源を有する物理デバイスをシミュレートし、損失メトリックを逆伝播させ、性能メトリックと目標性能メトリックとの間の差が閾値範囲内になるように損失メトリックが実質的に収束するまで、構造パラメータを更新して損失メトリックを低減することによって設計を修正する反復サイクル。いくつかの実施形態では、フォトニック集積回路の設計領域に、第1の通信領域を介して受信されたマルチチャネル光信号から複数の別個の波長チャネルの各々を光学的に分離させ、複数の別個の波長チャネルの各々を複数の第2の通信領域のうちの対応する1つにガイドさせるサイクルを実行するときに、集積フォトニック回路の設計領域の構造パラメータが改訂される。
【0116】
損失メトリックが収束していないと判定された場合、決定ブロック816の結果は、いいえであり、方法800はブロック806に戻って、改訂された初期設計に対して反復する。そうではなく、損失メトリックが収束したと判定された場合、決定ブロック816の結果は、はいであり、方法800はブロック818に進む。
【0117】
ブロック818は、物理デバイスの最適化された設計を出力することを例示し、構造パラメータは、性能メトリックと目標性能メトリックとの間の差を閾値範囲内に有するように更新され、同時に、最小特徴サイズ及び二値化も実施する。次いで、方法800は終了ブロックに進み、終わる。出力最適化設計は、物理デバイスを製造するために製造システムに提供され得る。
【0118】
上述したデバイス及び技術は効果的であることが分かっているが、追加の改善を行うこともできる。例えば、製造可能性の制約以外に、上記の技術は、設計領域614内の構造パラメータの設計に対していかなる制限も課さない。したがって、異なる初期設計を使用する物理デバイスのために生成されるセグメント化設計は、設計領域614内でほとんど又は全く類似性を有しないことがある。この特性は、複数の欠点を有し得る。例えば、全ての異なる初期設計に対して設計領域614全体を再最適化することは、複数の初期設計に対して良好に機能し得る設計領域614の部分に対する最適化を再利用する可能性を無視し、したがってコンピューティング作業負荷を低減する。別の例として、上記の技術を用いて設計された全ての物理デバイスが完全に固有の設計領域614を有する場合、物理デバイスの設計の偽造又は他の侵害を検出することが困難になる。
【0119】
これらの欠点に対処するために、本開示のいくつかの実施形態は、設計領域614のいくつかの部分の設計が予め判定され、最適化中に変化しない静的設計エリアを使用する。静的設計エリアを使用することによって、複数の利点を得ることができる。例えば、いくつかの実施形態では、静的設計エリアの内容は、新しい物理デバイスのための逆設計プロセス中に最適化されず、したがって、コンピューティングコストが低減される。別の例として、いくつかの実施形態では、静的設計エリアの内容は、訴えられた偽造デバイスの対応するエリアの内容と比較され得、偽造は、設計領域614全体の比較の代わりに、この縮小された比較に基づいて確立され得る。
【0120】
図9A~
図9Eは、本開示の様々な態様による、静的設計エリアを使用する物理デバイスの非限定的な例示的な実施形態の概略図である。
図9A~
図9Eは、
図3Aの例示されるものと同様の特徴を含む。すなわち、これらの図は、幅920及び長さ922を有し、周辺領域918によって囲まれた幅924及び長さ926を有する分散領域932を有するデマルチプレクサ916を示す。デマルチプレクサ916は、第1の側面928の入力領域302で入力を受け入れ、分散領域932は、入力を、距離906だけ分離された出力領域908、出力領域910、出力領域912、及び出力領域914を含む複数の出力領域904に分離する。上述したように、分散領域932は、
図6A~
図6Cに例示される設計領域614と共存し得、逆設計プロセスによって設計されたデマルチプレクサ916の一部分であり得る。
図3Aに関して上記に考察したように、1つの入力領域902及び4つの出力領域904を有するデマルチプレクサ916のレイアウトは、非限定的な例にすぎない。いくつかの実施形態では、より多くの又はより少ない出力領域904が存在し得、より多くの又はより少ない入力領域902が存在し得る。いくつかの実施形態では、物理デバイスはマルチプレクサであり得、その場合、入力領域の数は、出力領域の数よりも多い場合がある。
【0121】
図9Aでは、入力領域902に近い領域は、第1の静的設計エリア934と指定されており、出力領域908、出力領域910、出力領域912、及び出力領域914に近い領域は、それぞれ、第2の静的設計エリア936、第3の静的設計エリア938、第4の静的設計エリア940、及び第5の静的設計エリア942と指定されている。これらの静的設計エリアの各々では、所定の構造パラメータがエリア内の分散領域932に対して提供され得、分散領域932の残りの構造パラメータを判定する逆設計プロセス(上記に考察した方法800など)中に、静的設計エリア内の所定の構造パラメータが変化しないようにする。
【0122】
静的設計エリアのサイズは、任意の好適な技術を使用して判定され得る。例えば(以下で更に詳細に考察されるように)、逆設計プロセス中に分散領域932内のフィールド値の強度が判定され得、強いフィールド値を有する1つ以上の領域が選択され得る。強いフィールド値を有する領域は、デマルチプレクサ916の全体的な性能に強い影響を及ぼすことが予想される。したがって、そのような実施形態では、静的設計エリアは、分散領域932の残りの部分の設計に対してより大きな影響を有し得る。これは、静的設計エリアの内容を正確にコピーすることなく、分散領域932の残りの部分の偽造バージョンを作成することをより困難にする。
【0123】
そのような技術が静的設計エリアのサイズを判定するために使用される場合、静的設計エリアを判定するために使用される特定の設計に応じて、異なるサイズの静的設計エリアが生じ得る。例えば、
図9Aの第1の静的設計エリア934、第2の静的設計エリア936、第3の静的設計エリア938、第4の静的設計エリア940、及び第5の静的設計エリア942は、
図9Bの対応する静的設計エリアよりも大きい。これは、含まれるべき十分に強いフィールド値を有する
図9Bの分散領域932内のより小さいエリアに起因し得るか、又は静的設計エリアに含まれるべきフィールド値に対して使用されるより高い閾値に起因し得る。
【0124】
図9A及び
図9Bは、サイズがほぼ等しい静的設計エリアを例示する。しかしながら、これは、非限定的な例にすぎない。
図9Cは、第1の静的設計エリア934が比較的大きく、第2の静的設計エリア936、第3の静的設計エリア938、第4の静的設計エリア940、及び第5の静的設計エリア942が比較的小さい例を例示する。サイズはフィールド値に基づいて判定され得るので、サイズの差は、分散領域932全体にわたるフィールド値の差を反映し得る。
【0125】
図9A~
図9Cは、入力領域902及び出力領域904の各々が単一の関連する静的設計エリアを有する例示的な実施形態を例示する。これは、設計決定(例えば、入力領域若しくは出力領域の近くの高いフィールド値を有するエリアが選択され得る)に起因して生じ得るか、又は自然設計プロセスに起因して生じ得る。
図9Dは、出力領域904の各々に関連付けられた個別の静的設計エリアの代わりに、単一の第6の静的設計エリア944が分散領域932の第2の側面930に位置決めされ、出力領域904の全てに関連付けられている別の例示的な実施形態を例示する。繰り返しになるが、これは、設計決定に起因して生じ得るか、又は自然設計プロセスに起因して生じ得る。
【0126】
図9A~
図9Dは各々、静的設計エリアが第1の側面928又は第2の側面930に関連付けられている例示的な実施形態を例示する。他の実施形態では、1つ以上の静的設計エリアが、他の場所に位置し得る。
図9Eは、入力領域902又は出力領域904のいずれにも近接して位置決めされていない第7の静的設計エリア946を例示する。このような実施形態は、分散領域932の中央部分のフィールド値が特に高い場合に生じ得る。
【0127】
図10は、本開示の様々な態様による、物理デバイスの設計を生成する方法の非限定的な例示的な実施形態を例示するフローチャートである。方法1000では、1つ以上の静的設計エリアの適切なエリアが静的設計エリアの内容とともに判定される。次いで、生成された設計の全てが静的設計エリア内で共通の設計を共有するように、それらの静的設計エリアが複数の物理デバイスのための生成された設計内で使用される。
【0128】
開始ブロックから、方法1000はブロック1002に進み、複数の物理デバイスのデバイス仕様が受信される。デバイス仕様は、上記の方法800において説明された初期設計と同様であり得、ここで、デバイス仕様が物理デバイスに対する所望の性能特性を含み得るか、物理デバイスの初期構造パラメータを含み得るか、又は任意の他の好適な方法で物理デバイスの設計に対する所望の結果を指定し得る。いくつかの実施形態では、デバイス仕様は各々、一致する寸法、一致する数の入力ポート及び/又は一致する数の出力ポート等のいくつかの類似特性、並びに所望の波長利得特性などのいくつかの類似しない特性を用いて物理的デバイスを記述し得る。いくつかの類似特性を有するデバイス仕様を使用することは、物理デバイスによって実行されるアクションにおける類似性に起因して、より効果的な静的設計エリアをもたらし得る。いくつかの実施形態では、一致する数の入力ポート又は出力ポートを共有しないデバイス仕様が使用され得る。
【0129】
次いで、方法1000は、フォー・ループ開始ブロック1004とフォー・ループ終了ブロック1008との間に定義されたフォー・ループに進み、各デバイス仕様が処理される。フォー・ループ開始ブロック1004から、方法1000はサブルーチンブロック1006に進み、逆設計プロセスが行われて、デバイス仕様に対応するセグメント化設計を生成し、セグメント化設計は、セグメント化設計における各セグメントの材料(例えば、構造パラメータ)及びフィールドの大きさを含む。上記で考察した方法800は、サブルーチンブロック1006でデバイス仕様に基づいてセグメント化設計を生成するために使用され得る逆設計プロセスの1つの非限定的な例であるが、いくつかの実施形態では、他の技術が使用され得る。
【0130】
次いで、方法1000は、フォー・ループ終了ブロック1008に進む。処理すべき更なるデバイス仕様が残っている場合、方法1000は、フォー・ループ開始ブロック1004にループバックして、次のデバイス仕様を処理する。そうではなく、デバイス仕様の全てが処理された場合、方法1000はブロック1010に進む。
【0131】
この時点で、方法1000は、複数のデバイス仕様に基づいて複数のセグメント化設計を判定している。ブロック1010では、少なくとも1つの影響が大きい設計エリアが、セグメント化設計のフィールドの大きさに基づいて判定される。少なくとも1つの影響が大きい設計エリアを判定する1つの目的は、変更された場合にセグメント化設計の全体的な性能を大きく変化させるセグメント化設計の部分を見出すことである。方法1000は、セグメント化設計にわたって影響が大きいと一般に見出されるエリアを見出すために、セグメント化設計の全てを考慮し得る。
【0132】
いくつかの実施形態では、方法1000は、セグメント化設計の対応する領域におけるフィールドの大きさを分析し得る。例えば、方法1000は、セグメント化設計の対応するセグメントにおける平均フィールドの大きさを判定し得、領域を選択することによって影響が大きいエリアを見出し得、平均フィールドの大きさは、所定の閾値よりも大きいか、そうでなければ他の領域の平均フィールドの大きさと比較したときに高い。
【0133】
いくつかの実施形態では、方法1000は、設計領域614全体内のフィールドの大きさを考慮し得る。いくつかの実施形態では、方法1000は、入力ポート又は出力ポートの近くの領域など、所定の領域におけるフィールドの大きさを考慮し得る。方法1000は、(入力ポート又は出力ポートの近くの領域などの)影響が大きい設計エリアに対する初期領域を指定することによって開始し得、その後、平均フィールド値に基づいて領域のサイズを増加させるか、サイズを減少させるか、又は形状を変化させ得る。
【0134】
ブロック1012では、少なくとも1つの影響が大きい設計エリアが、少なくとも1つの静的設計エリアとして指定される。本明細書の説明は、様々な動作を説明する際に明確にするために、影響が大きい設計エリアの判定と静的設計エリアの指定とを個別に説明する。いくつかの実施形態では、ブロック1012の動作は、ブロック1010の動作と組み合わされ得、方法1000は、最初に影響が大きい設計エリアを別途判定することなく、静的設計エリアを直接指定し得る。
【0135】
この時点で、方法1000では、静的設計エリアが指定されていても、各セグメント化設計は、静的設計エリア内に異なるセグメントを依然として含む可能性が高い。したがって、ブロック1014では、少なくとも1つの設計部分が、セグメント化設計に基づいて少なくとも1つの静的設計エリアに対して判定される。各設計部分は、各静的設計エリア内のセグメントに対する構造パラメータをそれぞれ指定する。設計部分は、任意の好適な技術を使用して判定され得る。典型的には、設計部分は、所望の性能特性を有するセグメント化設計を判定し、判定されたセグメント化設計の部分を静的設計エリアに対する設計部分として使用することによって判定され得る。対応するデバイス仕様に関して最大の全体的性能を有すること、及び影響が大きい設計エリア内で最大フィールドの大きさを有することを含むが、これらに限定されない任意の所望の性能特性が使用され得る。いくつかの実施形態では、2つ以上の静的設計エリアが存在する場合、セグメント化設計が、各静的設計エリアに対して別々に判定され得る。いくつかの実施形態では、2つ以上の静的設計エリアが存在する場合、単一のセグメント化設計が判定され得、単一のセグメント化設計からの設計部分が静的設計エリアの各々に使用され得る。
【0136】
次いで、方法1000は、フォー・ループ開始ブロック1016とフォー・ループ終了ブロック1020との間に定義されたフォー・ループに進み、デバイス仕様の各々が再び処理される。いくつかの実施形態では、フォー・ループは、同じセグメント化設計が静的設計エリアの全てに使用された場合、静的設計エリアに対する設計部分として使用するために判定されたセグメント化設計に関連付けられたデバイス仕様の処理をスキップし得る。
【0137】
フォー・ループ開始ブロック1016から、方法1000はサブルーチンブロック1018に進み、逆設計プロセスが行われて、少なくとも1つの静的設計エリアに対する少なくとも1つの設計部分を含むデバイス仕様に対応するセグメント化設計を生成する。いくつかの実施形態では、上述の方法800は、サブルーチンブロック1018で使用される。方法800では、少なくとも1つの静的設計エリアに対する設計部分が初期設計の一部として提供され、ブロック814では、少なくとも1つの静的設計エリア内のセグメントに対する構造パラメータは更新されない。
【0138】
次いで、方法1000は、フォー・ループ終了ブロック1020に進む。処理すべき更なるデバイス仕様が残っている場合、方法1000は、フォー・ループ開始ブロック1016にループバックして、次のデバイス仕様を処理する。そうではなく、デバイス仕様の全てが処理された場合、方法1000は、決定ブロック1022に進む。
【0139】
決定ブロック1022では、新たに生成されたセグメント化設計の性能が許容可能であるかどうかに関する判定が行われる。いくつかの実施形態では、新たに生成されたセグメント化設計の性能は、新たに生成されたセグメント化設計の全てが、サブルーチンブロック1018によって首尾よく生成されることができた場合、及び新たに生成されたセグメント化設計の全てが、その対応するデバイス仕様において指定された所望の性能の所定の閾値内にある計算された性能を有する場合、許容可能であり得る。
【0140】
新たに生成されたセグメント化設計の性能が許容可能でないと判定された場合、決定ブロック1022の結果は、いいえであり、方法1000は、ブロック1010に戻る。いくつかの実施形態では、ブロック1010に戻った後、生成されたセグメント化設計の性能が許容可能である可能性を増加させるために、異なる少なくとも1つの影響が大きい設計エリアが選択され得る。例えば、影響が大きい設計エリアのサイズを縮小して、逆設計プロセスによって最適化されるべきより大きなエリアを残し得る。いくつかの実施形態では、ブロック1010で選択された少なくとも1つの影響が大きい設計エリアが同じであり得るが、ブロック1014で判定された少なくとも1つの設計部分が異なり得る。
【0141】
決定ブロック1022では、新たに生成されたセグメント化設計の性能が許容可能であると判定された場合、決定ブロック1022の結果ははいであり、方法1000はブロック1024に進み、少なくとも1つの静的設計エリアに対する少なくとも1つの設計部分が後で使用するために記憶される。いくつかの実施形態では、生成されたセグメント化設計のうちの1つ以上はまた、後の使用のために記憶され得、及び/又は製造のために製造システムに送信され得る。
【0142】
ブロック1026では、新しい物理デバイスに対する新しいデバイス仕様が受信される。新しいデバイス仕様は、ブロック1002で受信されたデバイス仕様と内容が類似しているが、ブロック1002で受信されたデバイス仕様に含まれていないという意味で新しい。
【0143】
サブルーチンブロック1028では、少なくとも1つの静的設計エリアを使用し、新しいデバイス仕様に対応するセグメント化設計を生成するために、逆設計プロセスが行われる。繰り返しになるが、サブルーチンブロック1028は、上記の説明方法800を使用して、初期設計の一部として提供される少なくとも1つの静的設計エリアに対する設計部分を用いて、ブロック814における少なくとも1つの静的設計エリア内のセグメントに対する構造パラメータを更新することなく、新しいデバイス仕様に対するセグメント化設計を生成し得る。サブルーチンブロック1028が完了すると、新しい物理デバイスのためのセグメント化設計は、製造のために製造システムに送信され得る。
【0144】
次いで、方法1000は終了ブロックに進み、終わる。
【0145】
前述の説明では、本開示の様々な実施形態の完全な理解を提供するために、多数の特定の詳細が記載されている。しかしながら、当業者は、本明細書で説明される技術が、特定の詳細のうちの1つ以上なしで、又は他の方法、構成要素、材料などを用いて実施され得ることを認識するであろう。
【0146】
本明細書全体を通して、「一実施形態」又は「実施形態」への言及は、実施形態に関連して説明される特定の特徴、構造、又は特性が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体を通して様々な場所で「一実施形態では」又は「実施形態では」という句が出現しても、必ずしも全てが同じ実施形態を指すわけではない。更に、特定の特徴、構造、又は特性は、1つ以上の実施形態では任意の好適な方法で組み合わされ得る。
【0147】
ブロックのいくつか又は全てが各方法フローチャートに現れる順序は、限定するものとみなされるべきではない。むしろ、本開示の利益を有する当業者は、ブロックのうちのいくつかに関連付けられたアクションが、例示されていない様々な順序で、又は並列でさえ実行され得ることを理解するであろう。
【0148】
上記で説明したプロセスは、コンピュータソフトウェア及びハードウェアに関して説明されている。説明される技術は、マシンによって実行されるときに、マシンに説明された動作を実行させる、有形又は非一時的なマシン(例えば、コンピュータ)可読記憶媒体内に具現化されるマシン実行可能命令を構成し得る。追加的に、プロセスは、特定用途向け集積回路(「application specific integrated circuit、ASIC」)又は他のものなどのハードウェア内で具現化され得る。
【0149】
要約書に説明されているものを含め、本発明の例示される実施形態の上記の説明は、網羅的であること、又は本発明を開示された厳密な形態に限定することを意図していない。本発明の特定の実施形態及び例が例示の目的で本明細書に説明されているが、当業者が認識するように、本発明の範囲内で様々な修正が可能である。
【0150】
これらの変更は、上記の詳細な説明に照らして本発明に対して行うことができる。一般に、以下の特許請求の範囲において使用される用語は、本明細書に開示される特定の実施形態に本発明を限定するものと解釈されるべきではない。むしろ、本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲によって完全に判定されるべきであり、特許請求の範囲は、請求項の解釈の確立された原則に従って解釈されるべきである。
【国際調査報告】