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特表2023-537813頭蓋内圧と眼内圧との間の関係の非侵襲評価のための方法およびシステム
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  • 特表-頭蓋内圧と眼内圧との間の関係の非侵襲評価のための方法およびシステム 図1a
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-06
(54)【発明の名称】頭蓋内圧と眼内圧との間の関係の非侵襲評価のための方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/14 20060101AFI20230830BHJP
   A61B 5/00 20060101ALI20230830BHJP
   A61B 3/16 20060101ALI20230830BHJP
【FI】
A61B3/14
A61B5/00 101P
A61B3/16
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022577665
(86)(22)【出願日】2020-06-17
(85)【翻訳文提出日】2023-01-31
(86)【国際出願番号】 DK2020050174
(87)【国際公開番号】W WO2021254570
(87)【国際公開日】2021-12-23
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517251199
【氏名又は名称】スタツマヌ・アイシーピー・エーピーエス
【氏名又は名称原語表記】StatuManu ICP ApS
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100212705
【弁理士】
【氏名又は名称】矢頭 尚之
(74)【代理人】
【識別番号】100219542
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 郁治
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】マドセン、ヤコブ・フィンド・ムンク
【テーマコード(参考)】
4C117
4C316
【Fターム(参考)】
4C117XB01
4C117XD03
4C117XD06
4C117XE13
4C117XE24
4C117XE27
4C117XE43
4C117XG19
4C117XK09
4C316AA09
4C316AA10
4C316AA20
4C316AA25
4C316AA30
4C316AB16
4C316FB26
4C316FC28
4C316FZ03
(57)【要約】
頭蓋内圧と眼内圧との間の関係の非侵襲評価のための方法およびシステムである。方法は、人の眼球の網膜部分の複数の画像を記録するステップと、少なくとも1つの静脈を識別するステップと、第1の静脈位置における識別された静脈についての第1の複数の特徴的な静脈直径を決定するステップと、第1の時間期間中に少なくとも1つの静脈が静脈虚脱を受けたか決定するステップと、第1の時間期間中の眼内圧と頭蓋内圧との間の関係を決定するステップと、を備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像記録デバイスを用いる頭蓋内圧と眼内圧との間の関係の非侵襲評価のための方法であって、
a)前記画像記録デバイスを用いて人の眼球の網膜部分の複数の画像を第1の時間期間にわたって記録するステップと、
b)少なくとも1つの静脈を前記複数の画像内で識別するステップと、
c)第1の静脈位置における前記識別された静脈についての第1の複数の特徴的な静脈直径を前記第1の時間期間にわたって記録された前記複数の画像から第1の複数の画像内で決定するステップと、
d)前記第1の時間期間中に前記少なくとも1つの静脈が静脈虚脱を受けたか前記第1の複数の特徴的な静脈直径に基づいて決定するステップと、
e)前記第1の時間期間中の眼内圧と頭蓋内圧との間の関係を決定するステップと、を備え、前記少なくとも1つの静脈が静脈虚脱を受けた場合、前記眼内圧は、前記頭蓋内圧を上回ることが決定される、方法。
【請求項2】
前記ステップd)は、
d.1)前記静脈と関連した少なくとも1つの動脈を前記複数の画像内で識別することと、
d.2)第1の動脈位置における前記識別された動脈についての第1の複数の特徴的な動脈直径を前記第1の時間期間にわたって記録された前記複数の画像から前記第1の複数の画像内で決定することと、
d.3)動脈直径挙動を前記第1の複数の特徴的な動脈直径に基づいて決定することと、
d.4)静脈直径挙動を前記第1の複数の特徴的な静脈直径に基づいて決定することと、
d.5)前記静脈直径挙動を前記動脈直径挙動と比較することと、
d.6)前記第1の時間期間中に前記少なくとも1つの静脈が静脈虚脱を受けたかを前記静脈直径挙動と前記動脈直径挙動との間の前記比較に基づいて決定することと、をさらに備える、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
さらに、前記眼球の前記網膜部分の前記複数の画像は、前記眼球の視神経乳頭であり、前記ステップd)は、
d.7)前記視神経乳頭の位置を前記第1の時間期間にわたって記録された前記複数の画像から前記第1の複数の画像内で決定することと、
d.8)第2の静脈位置における前記識別された静脈についての第2の複数の特徴的な静脈直径を前記第1の時間期間にわたって記録された前記複数の画像から前記第1の複数の画像内で決定することと、ここにおいて、前記第2の静脈位置は、前記第1の静脈位置よりも前記視神経乳頭からさらに遠く離れており、
d.9)第1の静脈直径挙動を前記第1の複数の特徴的な静脈直径に基づいて決定することと、
d.10)第2の静脈直径挙動を前記第2の複数の特徴的な静脈直径に基づいて決定することと、
d.11)前記第1の静脈直径挙動を前記第2の静脈直径挙動と比較することと、
d.12)前記第1の時間期間中に前記少なくとも1つの静脈が静脈虚脱を受けたか前記第1の静脈直径挙動と前記第2の静脈直径挙動との間の前記比較に基づいて決定することと、をさらに備える、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第2の静脈位置は、前記視神経乳頭から離れた前記視神経乳頭の直径に対応する少なくとも距離である、請求書3に記載の方法。
【請求項5】
前記ステップd)は、
d.13)前記第1の時間期間中の静脈直径の変化を前記第1の複数の特徴的な静脈直径に基づいて決定することと、
d.14)前記静脈直径の変化を閾値と比較することと、
d.15)前記第1の時間期間中に前記少なくとも1つの静脈が静脈虚脱を受けたかを前記静脈直径の変化と前記閾値との間の前記比較に基づいて決定することと、をさらに備える、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
f)前記ステップa~e)を繰り返すことをさらに備え、前記ステップa)は、第2の時間期間にわたって繰り返される、
請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
g)前記静脈と関連した少なくとも1つの動脈を前記複数の画像内で識別することと、
h)第1の動脈位置における前記識別された動脈についての第1の複数の特徴的な動脈直径を前記第1の時間期間にわたって記録された前記複数の画像から前記第1の複数の画像内で決定することと、
i)前記第1の複数の特徴的な動脈直径および前記第1の複数の特徴的な静脈直径に基づいて動静脈比を計算することと、
j)前記動静脈比を前記第1の時間期間中の眼内圧と頭蓋内圧との間の前記関係と比較することと、
をさらに備える、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
k)前記ステップg~i)を繰り返すことと、ここにおいて、前記ステップg~i)は、前記第2の時間期間にわたって繰り返され、
l)前記第1の時間期間と前記第2の時間期間との間の動静脈比の変化を決定することと、
m)前記動静脈比の変化を前記第1の時間期間中の眼内圧と頭蓋内圧との間の前記関係と、および前記第2の時間期間中の眼内圧と頭蓋内圧との間の前記関係と比較することと、
をさらに備える、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の時間期間および/または第2の時間期間は、前記人の1心拍周期および/または前記人についての少なくとも1つの呼吸周期の持続期間に少なくとも等しい、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記第1の複数の特徴的な静脈直径に基づいて、前記人の少なくとも1つの心拍周期および/または前記人の少なくとも1つの呼吸周期の前記持続期間を決定すること
をさらに備える、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
頭蓋内圧と眼内圧との間の関係の非侵襲評価を行うためのシステムであって、
人の眼球の網膜部分の複数の画像を第1の時間期間にわたって記録するように構成された画像記録デバイスと、
前記画像記録デバイスに通信的に接続可能な処理ユニットと、を備え、前記処理ユニットは、
前記画像記録デバイスによって記録された前記複数の画像を受信し、
少なくとも1つの静脈を前記複数の画像内で識別し、
第1の静脈位置における前記識別された静脈についての第1の複数の特徴的な静脈直径を前記第1の時間期間にわたって記録された前記複数の画像から第1の複数の画像内で決定し、
前記第1の時間期間中に前記少なくとも1つの静脈が静脈虚脱を受けたか前記第1の複数の特徴的な静脈直径に基づいて決定し、
前記第1の時間期間中の眼内圧と頭蓋内圧との間の関係を決定するように構成され、前記少なくとも1つの静脈が静脈虚脱を受けた場合、前記眼内圧は、前記頭蓋内圧を上回ることが決定されるように構成される、システム。
【請求項12】
前記人の心拍周期を決定するための手段をさらに備え、前記処理ユニットは、第1の静脈位置における前記識別された静脈についての前記第1の複数の特徴的な静脈直径を決定するときに、前記心拍周期についての時間情報を考慮に入れるようにさらになされる、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記患者の呼吸周期を決定するための手段をさらに備え、前記処理ユニットは、第1の静脈位置における前記識別された静脈についての前記第1の複数の特徴的な静脈直径を決定するときに、前記呼吸周期についての時間情報を考慮に入れるようにさらになされる、請求項11または12に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、頭蓋内圧(ICP)と眼内圧(IOP)との間の関係の非侵襲評価のための方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
ICPの測定は、過圧が潜在的に致命的であるので、頭部外傷、脳卒中浮腫、頭蓋内出血などの異なる健康障害の診断に関して重要なツールである。従来から、ICPは、頭蓋骨に穴を開け、圧力計を挿入することによって決定されてきた。言うまでもなく、そのような侵襲的方法は、それ自体だけでなく、感染のリスクによっても間接的に、潜在的に危険である。したがって、ICPの非侵襲測定のための様々な先行技術の方法が提案されており、その一部は、眼球に血液を供給する眼の動脈の検査に頼る。これらの動脈は、頭蓋骨の内側から眼球へ延び、したがって、頭蓋骨内の圧力によって影響を受ける。
【0003】
非侵襲の方法の一種は、WO2016/11637に開示されている。WO2016/11637は、ICPの非侵襲評価のための方法を開示する出願人による先行出願である。先行技術の方法は、人の眼球の少なくとも1つの画像を記録するステップと、少なくとも1つの動脈と少なくとも1つの静脈とを識別するステップと、動静脈比(AVR)を計算するステップと、頭蓋内圧を推定するためにAVRを閾値と比較するステップとを備える。そのような方法は、高速と効率的の両方であり、非侵襲評価を受ける人に最小のストレスをかける。
【0004】
先行技術の方法は、静脈および動脈の壁が異なる強度であることを認知することに頼る。静脈は、一般に、動脈よりも低い強度を示し、したがって、静脈圧の増大または減少でより変形されやすい傾向にある。したがって、静脈内の高圧は、動脈よりも多く静脈拡張をもたらし、したがって、AVRを下げ、これは、高いICPを示し得る。
【0005】
さらに、網膜静脈が脈動し、時々虚脱することが長く知られている。静脈の脈動は、ICPと相関している。静脈の脈動とICPとの間の相関関係は、網膜静脈脈動は、ICPに関するフェーズであり、IOPではないことを示したWilliam H.Morgan、Christopher R.P.Lind、Samuel Kain、Naeem Fatehee、Arul Bala、Dao-Yi Yu、「Retinal Vein Pulsation Is in Phase with Intracranial Pressure and Not Intraocular Pressure」、Investigative Ophthalmology & Visual Science、2012年;53(8):4676~4681、doi:10.1167/iovs.12-9837によってさらに説明される。
【0006】
より古い研究は、どういうわけで静脈脈動の存在が180から190mmH2O(13.2mmHgから14mmHg)未満のICPの信頼できる指標であり得るのかについても資料として提供している(Barry E.Levin、「The Clinical Significance of Spontaneous Pulsations of the Retinal Vein」、Archives of neurology、1978年;35(1):37~40、doi:10.1001/archneur.1978.00500250041009を参照)。
【0007】
より新しい研究は、実際には、どのようにして静脈脈動が、それが篩状板を横切るときに網膜静脈に沿った圧力勾配の変化によって引き起こされるのかを説明する(A.S.Jacks、N.R.Miller「Spontaneous retinal venous pulsation: aetiology and significance」、Journal of Neurology,Neurosurgery&Psychiatry、2003年;74:7~9、doi:10.1136/jnnp.74.1.7を参照)。圧力勾配は、眼球内空間と脳脊髄液との間の脈圧の違いのために変わる。この重要性は、ICPが上昇すると、頭蓋内脈圧が、眼球内脈圧に等しくなるように上昇し、自発的な静脈の脈動が停止することである。したがって、自発的な静脈脈動の停止は、高くされたICPの感度のよいマーカである。
【0008】
ICPとIOPとの間の関係が存在し、それが静脈脈動に影響を与えることが明らかにされているが、この情報の使用は、いまだに有意義なやり方で実施されていない。これについての理由は、簡単な、高速の、および効率的なやり方でICPとIOPとの間の関係を評価するための信頼できる方法が今まで開発されていなかったことにあり得る。
【発明の概要】
【0009】
先行技術に基づき、本開示の第1の態様による目的は、簡単な、高速の、および効率的なやり方でICPとIOPとの間の関係を評価するための非侵襲の方法を提供することである。
【0010】
本開示の第1の態様によれば、この目的は、画像記録デバイスを用いたICPとIOPとの間の関係の非侵襲評価のための方法であって、
a)画像記録デバイスを用いて人の眼球の網膜部分の複数の画像を第1の時間期間にわたって記録するステップと、
b)少なくとも1つの静脈を第1の複数の画像内で識別するステップと、
c)第1の静脈位置における識別された静脈についての第1の複数の特徴的な静脈直径を第1の時間期間にわたって記録された複数の画像から第1の複数の画像内で決定するステップと、
d)第1の時間期間中に少なくとも1つの静脈が静脈虚脱を受けたか第1の複数の特徴的な静脈直径に基づいて決定するステップと、
e)第1の時間期間中のIOPとICPとの間の関係を決定するステップと、を備え、少なくとも1つの静脈が静脈虚脱を受けた場合、IOPは、ICPを上回ることが決定される、方法によって実現される。
【0011】
一の画像の画像を簡単に記録し、静脈が虚脱したかを決定することによってIOPとICPとの間の関係を決定することができることにより、ICPとIOPとの間の関係を評価するための簡単な、高速の、および効率的な方法を可能にする。これは、引き換えに、人が高いICPを有するか決定するのを助けることができる。さらに、参照により本明細書に組み込まれる出願人の先行出願WO2016/11637A1によって提示されるようなICPの決定のためにAVRを測定することに頼る方法は、静脈脈動がちょうど1心拍周期中のAVRの大きい変化という結果になり得るときに改善され得る。したがって、静脈虚脱が起こったか決定することができることは、AVRを測定するときにこれを考慮に入れることを可能にする。
【0012】
本開示の文脈では、非侵襲評価は、いずれの外科手術も必要とせず、評価を受ける人へ最小の物理的接触を必要とするないし物理的接触を必要としない、人を害しない評価として理解されるべきである。
【0013】
本開示の文脈では、IOPは、眼球の内側の流体圧力として理解されるべきである。IOPは、mmHgの単位で基準として測定され、いくつかの条件は22mmHgを超えるIOPという結果になる眼の高血圧をもたらし得るとともに、他の条件は12mmHg未満のIOPという結果になる眼の低血圧をもたらし得るが、通常のIOPは、12mmHgと22mmHgとの間である。
【0014】
本開示の文脈では、ICPは、頭蓋骨の内側の流体圧力として理解されるべきである。ICPは、mmHgの単位で基準として測定され、いくつかの条件は15mmHgを超えるICPという結果になる頭蓋内の高血圧をもたらし得るとともに、他の条件は、7mmHg未満のICPという結果になる頭蓋内の低血圧をもたらし得るが、通常のICPは、7mmHgと15mmHgとの間である。
【0015】
本開示の文脈では、画像記録デバイスは、任意の適切なデバイスであり得る。これは、この特定目的のための専用デバイスであり得る。それは上記方法によるとりわけ画像データを処理し、場合によっては(少なくとも一時的に)記録された画像のための記憶容量を与えるためのパーソナルコンピュータ(PC)などの処理ユニットと好ましくは組み合わされた適切な光学を有するデジタルカメラとすることもできる。詳細には、しかしながら、画像記録デバイスは、適切なレンズアダプタが取り付けられたスマートフォンの内蔵カメラであってもよい。したがって、スマートフォンは、画像の記録のためと本方法による続く画像データ処理のための両方に使用されてもよく、記録された画像のための記憶容量を与えるために使用されてもよい。眼球画像を記録するための適切なレンズアダプタは、iExaminer(登録商標)など、Welch Allyn,Inc.,4341 State Road,Skaneateles Falls,NY13153,USAから市販されている。
【0016】
上記方法によれば、人の眼球の網膜部分の複数の画像が記録される。複数の画像は、画像の網膜部分の2つの画像によって構成されてもよい。複数の画像は、網膜部分の2つ以上の画像によって構成されてもよく、好ましくは、複数の画像内の画像の枚数は、第1の時間期間にわたる平均または中央のAVRを決定するのに十分であるはずである。複数の画像内の画像の枚数は、画像記録デバイスの取り込み速度と第1の時間期間の長さとに依存し得る。好ましくは、画像記録デバイスの取り込み速度は、ナイキストレートを少なくとも満足させるように決定され得る。ナイキストレートを満足させることによって、エイリアスフリー信号サンプリングが、実現され得る。取り込み速度は、例えば、記録用に最新のカメラを使用することによって、最小として3~6フレーム毎秒(fps)であり得、3~60fpsの取り込み速度を可能にする。取り込み速度は、本開示による方法で使用されるのに十分な品質の画像を撮るために必要な露出時間に応じて選ぶことができる。
【0017】
第1の時間期間は、好ましくは、本出願で心拍周期とも呼ばれる少なくとも1つの心周期に対応する。1心拍周期に少なくとも対応する第1の時間期間を有することで、画像は静脈内の最大圧力と最小圧力との両方で静脈の画像を記録することができることを保証する。いくつかの実施形態では、第1の時間期間は、2心拍周期、3心拍周期、4心拍周期、5心拍周期以上に対応することもできる。より長い期間にわたって画像を記録することによって、より多くの使用可能な画像を与えるのを助けることができ、したがって、記録された時間期間中に静脈が虚脱したか決定することの改善をもたらす。さらに、記録された画像がAVRを決定するために使用される場合、より長い時間にわたって記録することにより、結果としてAVRのより良い決定になり得る。しかしながら、いくつかの環境の下では、例えば、高速測定が好ましいものであり得る緊急の状況において、記録時間を短く維持することが好ましい場合がある。好ましくは、画像が記録される時間期間は、20~60秒、10~120秒、または5~180秒であり得る。
【0018】
少なくとも1つの静脈は、記録された複数の画像を人が外観検査することによって識別され得るが、これは、専用デバイス上、関連した処理ユニット上、またはスマートフォン上で実行する画像処理ソフトウェアによる自動化プロセスにおいて実行されることが好ましい。
【0019】
少なくとも1つの静脈を識別する好ましいやり方は、エッジだけを示すエッジフィルタ処理された画像を残すエッジフィルタリング方法を使用することである。これは、明らかに望みは、画像におけるトランジションの鋭いエッジを有することであり、圧縮により人工的にぼやけたエッジではないので、圧縮された画像が不要である理由の1つである。同じ理由で、カメラにおける任意の自動フィルタリングおよびエッジ強調が、処理され、抑制され、または他の方法で避けられるべきであることが好ましい。これは、そのような特徴が普通である、特に、カメラがスマートフォンの内蔵カメラである場合である。
【0020】
記録された画像が使用可能であるかフィルタにかけるために、平均フィルタリングが、エッジフィルタ処理された画像に適用され得る。平均フィルタリングでは、エッジフィルタ処理された画像は、例えば、10x10ピクセル、25x25ピクセル、50x50ピクセル、または100x100ピクセルのブロックに分けられる。これらのブロックでは、画像処理ソフトウェアは、各ブロック内のエッジの周波数を決定する。次いで、画像は、低周波数のエッジを有するブロックと高い周波数のエッジを有するブロックとの間の分布に従って分類され得る。記録された画像がぼやけている場合、エッジフィルタ処理された画像は、高い周波数のエッジを有するブロックをまさにごくわずかしかまたは全くもたらさず、したがって、予め設定された閾値に基づいて画像処理ソフトウェアによって拒絶または受容され得る。
【0021】
記録された画像の品質が適切であると決定した場合、血管は、記録された画像内の他の特徴の間で識別される。血管のこの識別は、画像を外観検査する人によって行うこともできる。しかしながら、好ましくは、識別は、専用デバイス上、関連した処理ユニット上、またはスマートフォン上で実行する画像処理ソフトウェアによって自動化プロセスにおいて行われる。
【0022】
他の特徴の間の血管の識別は、知られている画像解析方法に基づいて、または人による画像の外観検査によって、様々なやり方で行われ得る。人は、記録された画像内の血管を識別する問題を通常有さない。血管として人によって識別されるエリアは、人がディスプレイ上で記録された画像を見るときに、マウスのクリックなどによって簡単にマークすることができる。しかしながら、デバイスで実施することができる完全に自動化された方法が望まれるので、ガウス線解析を使用することが現在好ましい。ガウス線解析は、よく知られており、MVTec Software GmbHからのHalcon 12などの既存の画像処理ソフトウェアにおいて実施される。
【0023】
ガウス線解析は、画像内の線を発見するように画像処理ソフトウェアによって完全に自動化および実行され得る。線という用語は、一次元の直線のような狭い数学的意味で理解されるべきではなく、ある幅を有する線、ならびに曲線および他の特徴として理解されるべきであることに留意されたい。線の幅は、血管、すなわち、静脈または動脈の特徴的な直径に対応する。動脈と静脈の両方があり、これらのタイプの血管の両方は分岐しているので、実線ではない多かれ少なかれ一定の幅を有する線分が、識別される。ガウス線解析は、全てのこれらの線分に沿った各点で幅をもたらす。しかしながら、ガウス線解析は、動脈と静脈との間を区別せず、これは、別個のステップで行われなければならない。
【0024】
ガウス線解析の第1の代替として、WO2006/042543に説明されるように、続く判別分析を伴うテクスチャ解析は、例えば、視神経乳頭と底の間のエッジなど、画像エリアから底、視神経乳頭などの大きい方の血管および他の特徴と小さい方の血管および他の特徴とを識別するために使用され得る。したがって、視神経乳頭の識別は、本開示による方法の別個の続くステップとして実行される必要がないことを理解されたい。テクスチャに加えて、他のパラメータ、色(R、G、B)の平均値、および色(R、G、B)の分散が、画像データをクラスに変換するために使用され得る。しかしながら、このテクスチャ解析自体は、動脈と静脈との間の任意の区別をもたらさず、これは、やはり別個のステップで実行されなければならない。
【0025】
第2の代替は、画面上で画像を外観検査し、コンピュータマウスおよびポインタ、タッチスクリーン上のスタイラス等などのそれ自体知られている適切なマーカを使用して血管をマークする人による手動選択である。
【0026】
より多くの代替が存在し、実際には、Halcon 12ソフトウェアのライブラリは、血管検出のためのいくつかの事前にプログラムされたソフトウェアアルゴリズムを備える。
【0027】
画像内で血管を発見するための様々な画像処理方法の効率および信頼性は、実際の画像、またはその品質に依存し得る。つまり、一の方法は、ある画像に対して使用されるときに信頼できる結果を与えることができ、別の画像に対して使用されるときに、あいまいな結果などの信頼性が低い結果、またはそれどころか完全に失敗を与えることができる。したがって、利用可能な画像解析方法のいくつかに各画像をかけ、増加した信頼性についての結果を組み合わせることが好ましいものであり得る。
【0028】
血管を識別するプロセスでは、経験を積んだ人は、同時に、静脈と動脈との間で区別するとともに、対応する動脈と静脈とのペアを識別することができる。そうすることで、外観検査にだけでなく、あらゆる自動化プロセスにも役立ついくつかの原則がある。画像内の静脈および動脈の最大のペアは、ほとんどの人において、静脈動脈が視神経に沿って眼球に入る視神経乳頭から概して垂直方向上向きに延び、次に大きな対は、視神経乳頭の中心から下向きに延びる。これは原則であり、人同士の間の個人差および例外がある。静脈と動脈のそれぞれのペアでは、静脈は、動脈よりも大きい直径を概して有し、したがって画像内でより幅広い。動脈と静脈の両方は、幾分扇形のやり方で分岐し、動脈血管は、画像内で互いに交差せず、静脈血管は、画像内で互いに交差しないことを意味する。したがって、血管が交差する場合、一方は動脈のはずであり、他方は静脈であり、または逆もまた然りである。視神経乳頭の中心の上方および下方に視神経乳頭の中心から垂直方向上向きおよび下向きに延びる大きい方の静脈および動脈に関しては、それらは、概して、少なくとも1つのセグメントにわたって互いに比較的近くであり、およびペアとして容易に識別可能である。
【0029】
しかしながら、自動化システムについては、静脈が、概して、その対応する動脈よりも大きい直径を有することで始まることが好都合である。したがって、血管直径は、視神経乳頭の中心から(または代替として、静脈および動脈が概して集束する視神経における点から)1つまたは複数の距離で決定される。
【0030】
少なくとも1つの静脈が識別される必要があるが、方法は、たった1つの静脈に限定されず、複数の静脈で続けられることも可能である。いくつかの実施形態では、複数の静脈が識別され、複数の識別された静脈が、1つまたは複数の静脈が虚脱したか識別するために使用される。いくつかの実施形態では、複数の静脈が虚脱した場合、方法は、静脈虚脱を受けた複数の静脈から静脈の本数を出力することもできる。複数の静脈を識別することによって、より信頼できる測定がなされ得る。
【0031】
第1の複数の画像は、複数の記録された画像からの2つ以上の画像によって構成され得る。第1の複数の画像は、第1の静脈位置における特徴的な静脈直径の決定についての複数の画像であり、好ましくは、第1の動脈位置における特徴的な動脈直径の決定について適切なものでもある。第1の複数の画像は、第1の時間期間内の異なる時間ウィンドウで撮られる少なくとも2つの画像を備える。いくつかの実施形態によれば、収縮期中の静脈の画像と拡張期中の静脈の画像とからなる第1の複数の画像を有することは、十分であり得る。
【0032】
第1の複数の特徴的な静脈直径の決定は、人によって手動で実行され得る。手動決定は、例えば、第1の複数の画像から少なくとも2つの異なる画像上に2つの異なる点をマークし、次いで専用デバイス、関連した処理ユニット、またはパーソナルコンピュータをマークされた点の間の距離戻らせる人によって実行され得る。好ましくは、複数の特徴的な静脈直径の決定は、専用デバイス、関連した処理ユニット、またはパーソナルコンピュータ上で実行する適切な画像ソフトウェアによって自動的に実行される。複数の特徴的な静脈直径は、静脈上の2点間で決定される静脈の距離または静脈の幅にわたっての静脈の平均直径であり得る。
【0033】
特徴的な静脈/動脈の直径は、本発明の文脈では、撮像された平面内で見られるように、静脈/動脈の幅として理解されるべきである。直径の文言が使用されるにも関わらず、それは、円または楕円にのみ適用可能であるとして狭く解釈されるべきではない。本発明の文脈では、直径は、動脈および/または静脈は円形または楕円形でない断面を帯びるが、撮像された平面内の静脈/動脈の幅として理解されるべきである。
【0034】
第1の静脈位置は、静脈を備える撮像された眼球の網膜上の任意の位置であり得る。
【0035】
本開示の文脈では、静脈虚脱は、例えば、実質的に円形断面を有することから実質的に楕円形断面またはそれ以外の平坦化された断面を有することまで行く断面の平坦化を受ける静脈として理解されるべきである。もちろん、身体内の血管は、円形断面とは異なる断面を帯びることができ、本開示では、円形断面および楕円形断面の言及は、理解を容易にするために意味されるに過ぎず、しかしながら、本開示は、これらの断面に単に限定されない。本開示の文脈では、静脈虚脱は、断面の平坦化を受ける任意の静脈である。
【0036】
静脈虚脱は、概して、撮像された平面内で起こり、したがって、虚脱した静脈が撮像されるときに、それは、楕円形断面の長半径に沿って概して撮像される。したがって、静脈が虚脱を受けるとき、楕円形断面の偏心の結果として、特徴的な静脈直径は増大する。静脈虚脱は、IOPがICPを上回ることによって引き起こされる。
【0037】
第1の時間期間中に少なくとも1つの静脈が静脈虚脱を受けたかの決定は、過多のやり方で実行されてもよい。静脈が虚脱したかを決定する簡単なやり方は、第1の時間期間にわたって特徴的な静脈直径の変化を追跡すること、例えば、収縮期の血圧から拡張期の血圧になるときに、特徴的な静脈直径が増大するか追跡することであり得る。静脈が第1の時間期間中に静脈虚脱を受けたかを決定する他のやり方が、本出願において後で示される。
【0038】
第1の時間期間中のIOPとICPとの間の関係を決定することは、明示されたさらなるステップとして実行される必要はないが、代わりに、静脈が虚脱を受けたかの決定の結果として行われる暗黙のステップとして考えられてもよい。
【0039】
代替として、IOPとICPとの間の関係は、方法の一部として明示的に出力されてもよい。出力は、画像記録デバイスと関連したディスプレイ上のメッセージであってもよい。
【0040】
一実施形態では、ステップd)は、
d.1)静脈と関連した少なくとも1つの動脈を複数の画像内で識別することと、
d.2)第1の動脈位置における識別された動脈についての第1の複数の特徴的な動脈直径を第1の時間期間にわたって記録された複数の画像から第1の複数の画像内で決定することと、
d.3)動脈直径挙動を第1の複数の特徴的な動脈直径に基づいて決定することと、
d.4)静脈直径挙動を第1の複数の特徴的な静脈直径に基づいて決定することと、
d.5)静脈直径挙動を動脈直径挙動と比較することと、
d.6)第1の時間期間中に少なくとも1つの静脈が静脈虚脱を受けたかを静脈直径挙動と動脈直径挙動との間の比較に基づいて決定することと、をさらに備える。
【0041】
動脈の壁の強度が静脈のものよりも数倍高いので、動脈は、静脈内で見られるような虚脱を受けない。ふだが、動脈の断面のサイズの均一な変化は、異なる圧力でそれでもなお観察される。動脈断面の変化は、圧力が動脈内で増大するときに均一な拡張であり、圧力が動脈内で減少するときに均一な収縮である。動脈断面の均一な増大または減少は、特徴的な動脈直径の対応する増大または減少をもたらす。静脈が虚脱しない状況では、静脈の一般的な挙動は、動脈の挙動と同等であり、すなわち、静脈内の圧力の増大および減少は、特徴的な静脈直径の対応する増大または減少をもたらす。しかしながら、静脈が虚脱にかかるとき、静脈と動脈との間の挙動は異なる。ICPが減少し、IOPよりも低い値に到達するときに、静脈は虚脱する。静脈の虚脱は、特徴的な静脈直径の増大をもたらす。特徴的な静脈直径の増大の原因は、静脈が像平面内で虚脱することであり、したがって、静脈虚脱によって引き起こされる楕円形形状の偏心により、特徴的な静脈直径の増大がもたらされる。したがって、静脈が虚脱する状況では、動脈は特徴的な直径の減少を受ける一方、静脈は特徴的な直径の増大を受けるので、静脈は、動脈とは異なる挙動を示す。したがって、両方が第1の時間期間中に類似する挙動を示すか異なる挙動を示すか見るために、静脈直径挙動を動脈直径挙動と比較することによって、第1の時間期間中に静脈が虚脱したか決定することが可能である。
【0042】
動脈直径挙動および静脈直径挙動は、本開示の文脈では、所与の時間期間にわたっての特徴的な動脈直径の挙動および特徴的な静脈直径の挙動として理解されるべきである。挙動は、所与の時間期間にわたっての特徴的な動脈直径および特徴的な静脈直径の絶対的変化または相対的変化として理解することができる。
【0043】
少なくとも1つの静脈と関連した少なくとも1つの動脈は、少なくとも1つの静脈と対応するやり方で識別および解析されてもよい。
【0044】
一実施形態では、さらに、眼球の網膜部分の複数の画像は、眼球の視神経乳頭であり、ステップd)は、
d.7)視神経乳頭の位置を第1の時間期間にわたって記録された複数の画像から第1の複数の画像内で決定することと、
d.8)第2の静脈位置における識別された静脈についての第2の複数の特徴的な静脈直径を第1の時間期間にわたって記録された複数の画像から第1の複数の画像内で決定することと、ここにおいて、第2の静脈位置は、第1の静脈位置よりも視神経乳頭からさらに遠く離れており、
d.9)第1の静脈直径挙動を第1の複数の特徴的な静脈直径に基づいて決定することと、
d.10)第2の静脈直径挙動を第2の複数の特徴的な静脈直径に基づいて決定することと、
d.11)第1の静脈直径挙動を第2の静脈直径挙動と比較することと、
d.12)第1の時間期間中に少なくとも1つの静脈が静脈虚脱を受けたか第1の静脈直径挙動と第2の静脈直径挙動との間の比較に基づいて決定することと、をさらに備える。
【0045】
観察から、静脈虚脱時、それが、静脈が眼球から出る視神経乳頭の近くで生じることが観察された。視神経乳頭の近くの静脈の虚脱は、虚脱より上流の静脈内で圧力の増大をもたらす。虚脱より上流の圧力の増大は、虚脱が静脈のさらに上流で伝播するのを防ぎ、したがって、虚脱をもたらすのは、単に静脈上の局所的な出来事である。したがって、第1の静脈位置における特徴的な静脈直径挙動を観察し、次いでそれを第2の静脈位置における特徴的な静脈直径挙動と比較することによって、静脈虚脱が生じたか決定することが可能である。2つの位置の間の挙動が異なる場合、それは、静脈虚脱が起こったことを示すからである。
【0046】
視神経乳頭は、静脈および/または動脈と同様のやり方で識別され得る。視神経乳頭は底それ自体よりもずっと明るいので、視神経乳頭は、大変容易に区別可能である。視神経乳頭は、底の残りよりもずっと明るいので、それを識別することは、画像処理ソフトウェアを使用した自動化プロセスにおいてやはり大変容易に実行される。視神経乳頭、または少なくともその代表的な位置は、視神経乳頭の中心で視神経に沿って眼球に全て入る血管に基づいて識別され得る。視神経乳頭は、画像処理ソフトウェアによる形状検索によって発見され得る。視神経乳頭は、画像処理ソフトウェアが円形の乳頭の画像を用いて画像における最良の相関関係を探す画像相関法によって発見され得る。静脈および/または動脈識別と同様に、いくつかの異なる画像処理方法が、画像ごとに使用されてもよく、組み合わされた結果が使用されてもよい。
【0047】
第1の静脈位置および第2の静脈位置だけが言及されてきたが、本開示は、これに限定されず、第3の静脈位置、第4の静脈位置などが使用されることも可能である。代替として、静脈の特徴的な直径は、静脈の一部にわたって継続的に決定されてもよい。
【0048】
一実施形態では、第2の静脈位置は、視神経乳頭から離れた視神経乳頭の直径に対応する少なくとも距離である。
【0049】
眼科の分野では、人々の解剖学的構造は異なるので、絶対的な用語の使用は、滅多に使用されない。したがって、視神経乳頭の直径などの相対的な用語が、より一般的である。視神経乳頭から離れた視神経乳頭の直径に少なくとも対応する距離で第2の静脈位置を有するとき、第2の静脈位置は、虚脱を受けないように視神経乳頭から十分遠く離れていることが確実になり、したがって、存在する場合、虚脱は、第1の静脈位置で唯一存在することを確実にさせる。
【0050】
一実施形態では、ステップd)は、
d.13)第1の時間期間中の静脈直径の変化を第1の複数の特徴的な静脈直径に基づいて決定することと、
d.14)静脈直径の変化を閾値と比較することと、
d.15)第1の時間期間中に少なくとも1つの静脈が静脈虚脱を受けたかを静脈直径の変化と閾値との間の比較に基づいて決定することと、をさらに備える。
【0051】
静脈虚脱の結果として生じる静脈直径の変化は、静脈が心周期中に圧力を変化させることによって引き起こされる均一な拡張と均一な収縮とを受けるときに観察される変化をかなり上回ることが、本出願人によって観察されたものである。したがって、第1の時間期間中の静脈直径の変化を閾値と比較することにより、静脈が第1の時間期間中に虚脱したか、または第1の時間期間中に虚脱しなかったかの検出が可能である。
【0052】
静脈が均一な拡張と均一な収縮とを受けるときの特徴的な静脈直径の相対的変化は、概して2%未満であり、ここで、静脈が虚脱を受けるときの特徴的な静脈直径の相対的変化は、2%を超え、5~6%以上に到達することさえもできる。したがって、閾値は、2%、3%、4%、5%、または6%の特徴的な静脈直径の相対的変化に設定され得る。
【0053】
決定される静脈直径の変化は、第1の時間期間中の静脈直径の最大変化として決定されることが好ましい。
【0054】
一実施形態では、方法は、
f)ステップa~e)を繰り返すことをさらに備え、ステップa)は、第2の時間期間にわたって繰り返される。
【0055】
第2の時間期間にわたって上記方法のステップを繰り返すことは、第2の時間期間にわたってIOPとICPとの間の関係を決定することを可能にする。2つの異なる時間期間にわたってIOPとICPとの間の関係を有することにより、ICPが上昇しているのか減少しているのかを代わりに示し得るIOPとICPとの間の推移を決定することを可能にする。
【0056】
第2の時間期間は、長さが実質的に第1の時間期間に等しくてもよく、または第2の時間期間は、長さが第1の時間期間とは異なってもよい。第1の時間期間および第2の時間期間は、かなりの時間量によって、例えば、1日、2日、3日、1週間、2週間、3週間、1カ月、2カ月、3カ月、さらにより長く、または述べた時間の間の任意の持続期間によって隔てられた時間期間であり得る。かなりの量の時間離して時間期間を有することは、長期の時間ウィンドウにわたって人をモニタすることを可能にし得る。第1の時間期間および第2の時間期間は、より短い時間量、例えば、1分、2分、15分、30分、1時間、2時間、3時間、または述べた時間の間の任意の持続期間によって隔てられた時間期間であり得る。互いに近い時間期間を有することは、状況が急に生じ得る緊急の状況における人のモニタすることを可能にし得る。
【0057】
方法のステップは、第2の時間期間にわたって繰り返されることだけに限定されず、第3の時間期間、第4の時間期間、第5の時間期間、またはさらなる時間期間にわたってさらに繰り返されてもよい。
【0058】
一実施形態では、方法は、
g)静脈と関連した少なくとも1つの動脈を複数の画像内で識別することと、
h)第1の動脈位置における識別された動脈についての第1の複数の特徴的な動脈直径を第1の時間期間にわたって記録された複数の画像から第1の複数の画像内で決定することと、
i)第1の複数の特徴的な動脈直径および第1の複数の特徴的な静脈直径に基づいてAVRを計算することと、
j)AVRと第1の時間期間中のIOPとICPとの間の関係と比較することと、さらに備える。
【0059】
IOPとICPとの間の関係とAVRとの両方を決定することにより、人が高い頭蓋圧を有するかを決定するのに十分な情報を与えることができる。さらに、AVRはIOPとICPとの間の関係に本来的にリンクされるので、決定されたAVRは、決定された関係に観点で解釈され得る。計算されたAVRは、閾値と比較されることも可能である。AVRと閾値の比較は、人のICPの非侵襲評価を可能にし得る。閾値は、ICPとIOPとの間の関係に基づいて一部において設定され得る。本出願人による先の出願WO2016/11637A1は、AVRおよび閾値がICPを評価するためにどのように使用できるのかを説明する。
【0060】
計算されたAVRは、記録された時間期間にわたって平均AVRとして計算され得る。計算されたAVRは、記録された時間期間にわたって中央AVRとして計算され得る。
【0061】
一実施形態では、方法は、
k)ステップg~i)を繰り返すことと、ここにおいて、ステップg~i)は、第2の時間期間にわたって繰り返され、
l)第1の時間期間と第2の時間期間との間のAVRの変化を決定することと、
m)AVRの変化を第1の時間期間中のIOPとICPとの間の関係と、および第2の時間期間中のIOPとICPとの間の関係と比較することと、をさらに備える。
【0062】
2つの異なる時間期間にわたってAVRの変化とIOPとICPとの間の関係との両方を有することにより、時間期間同士の間のICPの推移に関する正確な評価を可能にする。
【0063】
一実施形態では、第1の時間期間および/または第2の時間期間は、人の1心拍周期および/または人についての少なくとも1つの呼吸周期の持続期間に少なくとも等しい。
【0064】
人の1心拍周期の持続期間および/または人についての少なくとも1つの呼吸周期にわたって記録することにより、静脈の内側の圧力が最大であるときに、および静脈の内側の圧力が最小であるときに、静脈を記録することを可能にする。したがって、静脈が虚脱を受ける場合、それが記録されることを確実にする。
【0065】
人の心拍周期および/または人についての少なくとも1つの呼吸周期は、心電図機、パルスオキシメータ、または心拍センサなどの外部デバイスによって測定され得る。
【0066】
一実施形態では、方法は、
第1の複数の特徴的な静脈直径に基づいて、人の少なくとも1つの心拍周期および/または人の少なくとも1つの呼吸周期の持続期間を決定することをさらに備える。
【0067】
したがって、呼吸および/または心拍周期を決定するための外部デバイスの必要性は、記録された画像から持続期間を直接決定することが可能であるので、もはや用いられない。決定は、記録された時間期間にわたって第1の複数の特徴的な静脈直径の変化を追跡することによってなされ得る。
【0068】
本開示の第2の態様では、ICPとIOPとの間の関係の非侵襲評価を行うためのシステムであって、
人の眼球の網膜部分の複数の画像を第1の時間期間にわたって記録するように構成された画像記録デバイスと、
画像記録デバイスに通信的に接続可能な処理ユニットと、を備え、処理ユニットは、
画像記録デバイスによって記録された複数の画像を受信し、
少なくとも1つの静脈を複数の画像内で識別し、
第1の静脈位置における識別された静脈についての第1の複数の特徴的な静脈直径を第1の時間期間にわたって記録された複数の画像から第1の複数の画像内で決定し、
第1の時間期間中に少なくとも1つの静脈が静脈虚脱を受けたか第1の複数の特徴的な静脈直径に基づいて決定し、
第1の時間期間中のIOPとICPとの間の関係を決定するように構成され、少なくとも1つの静脈が静脈虚脱を受けた場合、IOPは、ICPを上回ることが決定される、システムを提供することが目的である。
【0069】
一実施形態では、システムは、人の心拍周期を決定するための手段をさらに備え、処理ユニットは、第1の静脈位置における識別された静脈についての第1の複数の特徴的な静脈直径を決定するときに、心拍周期についての時間情報を考慮に入れるようにさらになされる。
【0070】
心拍周期についての時間情報を考慮に入れることによって、決定された第1の複数の特徴的な静脈直径は、心拍周期と相関することができ、これにより、決定された特徴的な静脈直径の有効性を検証するのを助けることができる。例えば、第1の特徴的な静脈直径が、収縮期中に測定され、第2の特徴的な静脈直径が、拡張期と収縮期との中間後すぐに測定される場合、特徴的な静脈直径の減少を見ることが予期され得る。
【0071】
心拍周期を決定するための手段は、心電図機または心拍センサであり得る。
【0072】
一実施形態では、システムは、患者の呼吸周期を決定するための手段をさらに備え、処理ユニットは、第1の時間期間中にIOPとICPとの間の関係を決定するときに、呼吸周期についての時間情報および画像の記録を考慮に入れるようにさらになされる。
【0073】
呼吸周期についての時間情報を考慮に入れることによって、決定された第1の複数の特徴的な静脈直径は、呼吸周期と相関することができ、これにより、決定された特徴的な静脈直径の有効性を検証するのを助けることができる。
【0074】
呼吸周期を決定するための手段は、圧力トランスデューサに接続されたオキシメータまたは鼻カニューレであり得る。
【0075】
態様の1つに関して説明された特徴は、他の態様に組み込まれることもでき、特徴の利点は、それが組み込まれる全ての態様に適用可能である。
【0076】
例示のために、本発明は、添付図面に示された本発明の実施形態を参照して、以下により近く詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0077】
図1a】異なる圧力における眼球内の動脈および静脈の断面と、IOPとICPとの間の異なる関係とを示す図。
図1b】異なる圧力における眼球内の動脈および静脈の断面と、IOPとICPとの間の異なる関係とを示す図。
図2】人体の簡単にされた圧力ブロックモデルを示す図。
図3】本開示によるシステムの一実施形態を示す図。
図4】ICPとIOPとの間の2つの異なる関係下の心周期中の静脈および関連した動脈の断面を示す図。
図5】視神経乳頭から出る虚脱した静脈と、第1の静脈位置および第2の静脈位置における静脈の2つの断面とを示す図。
図6】時間およびICPの関数として特徴的な静脈直径を示すグラフ。
図7a】ICPの関数としてのAVRの測定のグラフ。
図7b】ICPの関数としてのAVRの測定のグラフ。
図8】本開示の第1の態様の一実施形態によるブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0078】
以下の詳細な説明では、本発明の好ましい実施形態が説明される。しかしながら、異なる実施形態の特徴は、実施形態間で交換可能であり、何か他に具体的に示されない限り、異なるやり方で組み合わされてもよいことを理解されたい。明確にするために、図面に示されたある要素の寸法は、実生活の実施における対応する寸法とは異なっていてもよいことにも留意されたい。
【0079】
まず、図1aおよび図1bを参照して、異なる圧力およびIOPとICPとの間の異なる関係における眼球内の動脈2および静脈1の断面を示す。図1aは、ICPがIOPを上回る状況を示す。静脈1は、第1の特徴的な静脈直径dv1を有し、動脈2は、第1の特徴的な動脈直径da1を有する。図1aに示されるように、特徴的な静脈直径dv1、dv2は、例外が生じ得るが、静脈1の壁がより低い強度であるため、通常、特徴的な動脈直径da1、da2を上回る。血管圧力が増大するとき、動脈2と静脈1との両方は、その断面で均一な増大を受け、したがって、その特徴的な直径も増大する。本発明の文脈では、血管圧力は、血管の内側の圧力として理解されるべきである。特徴的な直径の増大により、動脈2が第2の特徴的な動脈直径da2を有するとともに、静脈1が第2の特徴的な静脈直径dv2を有することをもたらす。さらに、静脈1の強度が動脈2の強度よりも概して低いので、特徴的な直径の増大は、静脈1についてよりも大きい。血管圧力が減少するとき、動脈2と静脈1との両方は、その断面で均一な減少を受け、したがって、その特徴的な直径も減少する結果となる。特徴的な直径の減少により、動脈2は第1の特徴的な動脈直径da1に戻るとともに、静脈1は第1の特徴的な静脈直径dv1に戻ることがもたらされる。図1bは、IOPがICPを上回る状況を示す。動脈2の一般的な挙動は、IOPがICPを上回るときには変わらない。しかしながら、静脈1の挙動は変わる。血管圧力が減少するとき、静脈1が虚脱する結果となる。静脈1の虚脱により、静脈1が楕円形断面に近づくことがもたらされ、特徴的な静脈直径は、楕円形の長半径に沿って測定され、静脈1が第3の特徴的な静脈直径dv3を有する結果となる。虚脱状態における静脈1の第3の特徴的な直径dv3は、第1の特徴的な直径dv1および第2の特徴的な直径dv2のものを上回る。概して、虚脱状態における静脈の特徴的な直径は、非虚脱状態における静脈の特徴的な直径を上回る。
【0080】
異なる状況にある静脈1および動脈2の断面が示されるが、動脈2および静脈1の変化が経時的に継続的に起こり、それによって静脈1と動脈2との両方について複数の異なる断面を生じさせることを理解することが大切である。
【0081】
図2を参照すると、図2は、人体の簡単にされた圧力ブロックモデルを示す。なぜ静脈1が眼球内で虚脱するのかに関する本質を理解することは、伴われる異なる圧力と、それらの相互作用の仕方とを理解することに非常に関連している。示された圧力ブロックモデルは、心臓5と、頭蓋4と、眼球3と、動脈2と、静脈1とだけを含むように簡単にされている。静脈1および動脈2内の圧力は、心臓5が循環系を通じて血液をポンピングすることよって発生する。心臓5のポンピングは、圧力波を発生させ、これにより循環系を通じて血液を駆動し、血管内の血液循環を確実にする。心臓5が発生させる血管内の圧力は、図1aおよび図1bに示されるように、血管を拡張および収縮させる。血液循環の開始には、動脈2を通じて心臓5から頭蓋4へポンピングされる。人の頭蓋4内の動脈2および静脈1は、頭蓋4内の静脈1および動脈2に圧力を及ぼす外部圧力を受ける。頭蓋4内の外部圧力は、ICPとして知られている。頭蓋4から、血液は、動脈2を介して眼球3の中に進む。眼球3内の動脈2および静脈1は、外部圧力も受ける。眼球4内の外部圧力は、IOPとして知られている。ICPとIOPは、滅多に等しくなく、大抵の場合、互いに異なる。血液が眼球3から循環されて戻るとき、それは、静脈1を介して行われる。静脈1は、眼球3から頭蓋4の中に戻り、次いで心臓5へ戻るように進む。理解するために重要なことは、血管は硬質の管ではなく、拡張および収縮し、特に、静脈の強度が動脈2の強度よりも低いので、静脈1はサイズの変化を受けるということである。したがって、変形できる可撓性の管として、血管、特に静脈1を見ることはより間違いがない。したがって、静脈1を押す外部圧力IOPまたはICPのどちらかが静脈1内の圧力を上回るとき、静脈1は、虚脱する。さらに、静脈1を通じて眼球3から頭蓋4の中に血液が流れるために、静脈1内の圧力は、ICPを上回らなければならず、さもなければ、頭蓋4の中への血液の流れは、存在しない。心臓5のポンピングによって発生する圧力は、静脈1内の血圧がICPを上回ることを確実にし、眼球3から頭蓋4の中への血流を確実にする。心臓5が発生させる圧力は、心周期によって説明され得る。心臓が発生させる圧力は、血圧が高い収縮期と血圧が低い拡張期に大雑把に分けることができる圧力波として見ることができる。ICPがIOPを上回る状況では、静脈1内の血圧がIOPを上回るので静脈1は虚脱せず、さもなければ、適切な血流が存在しない。しかしながら、IOPがICPを上回る状況では、外部圧力、すなわちIOPが静脈1に圧を加える(pressing down on)ので、静脈1内の血圧は、IOPを下回り、静脈1の虚脱を引き起こす可能性がある。しかしながら、静脈虚脱が起きるためにIOPが静脈内の圧力を上回る必要があるので、場合によっては、静脈虚脱が起きることなく、IOPがICPを上回る場合がある。したがって、静脈内の圧力がIOPを上回る場合、静脈虚脱が起きることなく、IOPがICPを上回る場合がある。したがって、静脈が虚脱するときにだけ、IOPがICPを上回ることが確実にされ得る。静脈1の虚脱は、血圧が低いときの拡張期中に通常起こる。収縮期中に静脈1は、その虚脱から戻る。もちろん、圧力波の最中、血圧はIOPをすぐに下回るので、IOPがICPに対して高くなるにつれて、静脈1が心周期中に虚脱状態で費やす時間量は大きくなる。
【0082】
図3を参照すると、図3は、本開示によるシステム6の一実施形態を示す。システム6は、処理ユニット63に接続された画像記録デバイス61を備える。画像記録デバイス61は、眼科測定のために構成されたアドオン、または眼科測定のために特に構成されたカメラを備えたスマートフォンであり得る。画像記録デバイス61と処理デバイス63との間の接続62は、有線接続または無線接続であり得る。いくつかの実施形態では、画像記録デバイス61および処理デバイスは、同じデバイス、例えば、スマートフォン、または他の専用デバイスに備えられることも可能である。処理デバイス63は、処理ユニット63によって決定される結果を表示するためのディスプレイ65をさらに備えることができる。ディスプレイ65は、有線または無線接続64を介して処理ユニット63に接続され得る。画像記録デバイス61は、眼球3の網膜部分の画像を記録するために構成される。画像は、眼球3の水晶体32を通じて記録される。画像が記録されるは、眼球3の網膜部分に静脈1と動脈2とを結像することについて意味される。いくつかの実施形態では、記録された画像は、眼球3の視神経乳頭31の画像を備えることもできる。記録された画像から決定された静脈および/または動脈の特徴的な直径は、眼球3の網膜部分にわたって延びる静脈1および/または動脈2の直径である。したがって、静脈1が虚脱するとき、静脈1は、眼球3の網膜部分に対して虚脱し、したがって、眼球3の網膜部分にわたって延びる静脈1の直径が増大する結果となり、特徴的な静脈直径の増大という結果になる。
【0083】
図4を参照すると、図4は、ICPとIOPとの間の2つの異なる関係下の心周期中の静脈1および関連した動脈2の断面を示す。図4には、グラフ7は、第1の軸に沿った時間と、第2の軸に沿った静脈1内の圧力と、を有して示される。グラフ7は、心周期中の静脈1内の圧力を示す。グラフ7に示された静脈1内の圧力は、心周期中の動脈の圧力と同じ傾向に実質的に従い、静脈1内の他の圧力挙動も可能である。心周期中、静脈1内の圧力は、かなり変化し、静脈1内の最大圧力は、収縮期の血圧71で起こる。収縮期の血圧71において、動脈2および静脈内の圧力は、最大である。ICPがIOPを上回る状況では、静脈1と動脈2との両方は、収縮期の血圧71でそれらの最大の特徴的な直径を有する。血圧が減少するにつれて、拡張期の血圧72でそれらの最小の特徴的な直径に到達するまで、動脈2と静脈1との両方の特徴的な直径は減少する。したがって、動脈2と静脈1との両方は、ICPがIOPを上回るとき、マッチング挙動を示す。IOPがICPを上回る状況では、動脈2の挙動は変化しない。しかしながら、静脈1の挙動は変化する。血圧が拡張期の血圧72に向けて減少するにつれて、静脈1内の血圧がIOPによって上回られる結果として、静脈1は虚脱する。静脈1の虚脱は、拡張期の血圧72で減少した特徴的な直径を有する動脈2について監察されるものとは反対である、拡張期の血圧72で特徴的な直径の増大をもたらす。したがって、動脈2および静脈1は、異なる挙動を示す。静脈1の虚脱により生じる静脈1の特徴的な直径は、収縮期の血圧71における静脈1のさらに特徴的な直径を通常上回る。したがって、挙動が動脈2と静脈1との間で異なる場合、それは静脈1が虚脱を受けたことを合図するので、静脈1と動脈2との両方の直径挙動を観察し、決定し、比較し、続いてこれらを互いと比較することによって、静脈1が虚脱を受けたのか決定することが可能である。
【0084】
図5を参照すると、図5は、視神経乳頭31から出る虚脱した静脈1と、第1の静脈位置11および第2の静脈位置12における静脈1の2つの断面とを示す。静脈1が虚脱するとき、静脈1は、視神経乳頭31の近くで虚脱することが観察されている。視神経乳頭31の近くの静脈1の虚脱は、虚脱の上流で圧力が増大するという結果になり、これにより虚脱が静脈1の残りに伝播するのを防ぐ。図5には、静脈は、視神経乳頭31の近くの第1の静脈位置11で虚脱しており、虚脱により、静脈1は、第1の静脈位置11で楕円形断面A-Aを有する結果になる。視神経乳頭31からさらに遠く離れるにつれて、第2の静脈位置12において、虚脱により引き起こされる圧力の増大の結果として、虚脱は起こっていない。虚脱は第2の静脈位置12で起こらないので、断面B-Bに見られるように、第2の静脈位置における静脈1の断面は、円形である。断面B-Bは、円形断面を保持するので、断面B-Bの特徴的な直径は、血管圧力に従って現れ、すなわち、血管圧力が減少するたびに、特徴的な直径は減少し、血管圧力が増大するたびに、特徴的な直径は増大する。一方、断面A-Aにおいて、血管圧力の減少により、虚脱する結果となり得、これにより特徴的な直径の増大をもたらす。したがって、挙動が第1の静脈位置11と第2の静脈位置12との間で異なる場合、それは静脈1が虚脱を受けたことを合図するので、第1の静脈位置11および第2の静脈位置12における静脈1の挙動を観察し、決定し、比較することによって、静脈1が虚脱を受けたか決定することが可能である。
【0085】
図6を参照すると、図6は、時間とICPの関数として特徴的な静脈直径の測定値を示すグラフを示す。測定値は、低いICPにおける特徴的な静脈直径は、経時的に大きい変化を受けることを示す。大きい変化は、静脈の虚脱によって引き起こされる。静脈の虚脱により、グラフ上に見られる大きい変動に対応する特徴的な静脈直径の大きい変化という結果になる。ICPが増大するにつれて、特徴的な静脈直径の変化はあまり目立たなくなり、これは、ICPがIOPを上回り始め、静脈が虚脱しないことをもたらすからである。しかしながら、静脈内の変化する血圧のため、小さい変動がさらに存在する。2~3%を超える特徴的な静脈直径の相対的変化に対応する特徴的な静脈直径のより大きい変化が、本出願人によって測定されており、一方、あまり目立たなかった変化は、2~3%未満の特徴的な静脈直径の相対的変化に対応した。
【0086】
図7aおよび図7bを参照すると、図7aおよび図7bは、ICPの関数としてAVRの測定値を示すグラフ8を示す。図7aには、人のAVRの2つの例示的な測定値81、82が示される。測定値81、82の両方について、ICPは、IOPよりも低かった。第1の測定81は、第1の時間期間にわたって行われ、第2の測定82は、第1の時間期間の次の第2の時間期間にわたって行われた。両測定値81、82は、複数の画像を記録し、1つの静脈とこの静脈と関連した少なくとも1つの動脈とを識別し、次いで第1の動脈位置における識別された動脈についての第1の複数の特徴的な動脈直径を決定し、第1の静脈位置における識別された静脈についての第1の複数の特徴的な静脈直径を決定することによって実行された。静脈および動脈の決定された特徴的な直径に基づいて、AVRが、動脈の決定された特徴的な直径と静脈の決定された特徴的な直径との間の比として計算された。AVRは、記録された時間期間にわたって中央AVRまたは平均AVRとして計算され得る。静脈が動脈よりも大きい特徴的な直径を概して示すとき、通常、AVRは、1と0の間の値である。ICPがIOPを上回る状況では、AVRの増大は、人のICPの減少を示唆する。ICPがIOPを上回る場合、AVRの増大が人のICPの減少に対応する理由は、静脈が動脈よりも圧力に関して大きい程度まで変形することである。したがって、ICPが下がるとき、静脈は、より小さい程度まで変形し、それによって動脈により近く似せ、1に近いAVRをもたらす。しかしながら、反対のものは、第1の測定81と第2の測定82との間で観察されるように、IOPがICPを上回るときに観察され、AVRの増大がICPの増大に対応する。IOPがICPを上回る状況では、AVRの増大は、ICPの増大を示唆する。この挙動は、静脈が虚脱するので観察される。静脈の虚脱は、特徴的な直径の大きい変化を生じさせ、したがって、静脈と動脈との間の大きな違いを与える。したがって、ICPが増大するとしても、AVRが第1の測定値81と第2の測定値との間で増大する理由は、ICPが増大するにつれて、心周期中に静脈が虚脱状態にある時間が減少することにある。したがって、ICPがIOPに向けて増大し始めるにつれて、静脈は、動脈にますます似始める。したがって、IOPがICPを上回る状況に人がいる場合、IOPとICPとの間の関係に気付いていない場合、ICPの推移の間違った印象が生じ得る。
【0087】
図7bには、人のAVRの別の2つの例示的な測定値83、84が示される。第3の測定83は、第3の時間期間にわたって行われ、第4の測定84は、第3の時間期間の次の第4の時間期間にわたって行われた。両測定値83、84は、図7aの測定値81、82との関連で説明されるように同様に実行された。しかしながら、両測定値について、ICPはIOPを上回る。IOPを上回るICPの結果は、静脈が虚脱しないことである。したがって、ICPを増大させるにつれて、静脈が動脈に対してますます変形し始めるので、ICPが増加するにつれてAVRは減少する。したがって、AVRの推移がICPの推移にどのように相関するのか正しく決定されるためにIOPとICPとの間の関係を知ることが必要とされるので、図7aおよび図7bから、ICPとIOPとの間の関係を知るべき重要性が強調される。
【0088】
図8を参照すると、図8は、本開示の第1の態様の一実施形態によるブロック図100を示す。第1のステップ10では、患者が準備される。患者の準備は、自発的であることができ、実行すべき必要なステップはない。この準備では、患者の眼球の底の良好な品質の画像を記録するために、患者の眼球の瞳を広げることが望ましいものであり得る。病院環境では、例えば、患者の眼球にベラドンナを滴らせることによって瞳を化学的に広げるための時間および人員が存在し得る。これは、例えば、脳水腫の患者、神経外科的疾患を有する患者、肝臓病患者、腎臓病患者、または脳震盪について観察される患者などの特定の疾患に苦しむ患者が知られている場合であり得る。他方で、患者が事故の犠牲者であり、利用可能な時間がほとんどないが、救急隊員またはパラメディカルが、成長する血腫などの頭部外傷を疑う場合、暗い環境に患者を置く時間しかない場合があり、例えば、画像を記録する人の肩越しに暗闇を覗き込むように彼に頼む。患者の準備は、記録を開始する前に記録位置にさらに時間量にわたって患者を座らせる/横にさせることを含むこともでき、これにより記録を開始する前に患者の血流が正常化することを可能にし得る。時間量は変わり得るが、好ましくは、5~300秒である。
【0089】
第2のステップ11において、人の眼球の網膜部分の複数の画像が、第1の時間期間にわたって記録される。画像の記録は、画像記録デバイスを使用することによって実行される。好ましくは、記録された画像は、動脈および静脈が視神経に沿ってそれぞれ眼球に出入りする真ん中に視神経乳頭を有する眼球の底であるべきであり、そこからそれらは底にわたって全ての方向に分岐する。原理では、記録された画像は、任意の適切なデバイスを用いて記録することができる。これは、この特定目的のための専用デバイスであり得る。それは、本方法によるとりわけ画像データを処理し、場合によっては(少なくとも一時的に)記録された画像のための記憶容量を与えるためのパーソナルコンピュータ(PC)などのデータ処理デバイスと好ましくは組み合わされた適切な光学を有するデジタルカメラとすることもできる。詳細には、しかしながら、画像記録デバイスは、適切なレンズアダプタが取り付けられたスマートフォンの内蔵カメラであってもよい。したがって、スマートフォンは、画像の記録のためと本方法による続く画像データ処理のための両方に使用されてもよく、記録された画像のための記憶容量を与えるために使用されてもよい。眼球画像を記録するための適切なレンズアダプタは、iExaminer(登録商標)など、Welch Allyn,Inc.,4341 State Road,Skaneateles Falls,NY13153,USAから市販されている。概して、しかし、画像記録デバイスとしてスマートフォンを使用するときに特に、画像記録デバイスは、ビットマップ(.bmp)、タグドイメージファイル(.tiff)、ロスレス設定におけるJPEG2000(.JP2、.JPF、.JPX)などの非圧縮形式で画像を記録すべきであることに留意されたい。圧縮は、画像をぼやけさせる可能性があり、したがって、本開示による方法の続く画像データ処理に悪影響を及ぼし、したがって望ましくない。
【0090】
第3のステップ12において、少なくとも1つの静脈が、記録された複数の画像内で識別される。もちろん、方法は、1本の静脈に限定されず、複数の静脈が、少なくとも1つの静脈と同じやり方で識別され、解析されることも可能である。少なくとも1つの静脈が、複数の記録された画像を解析する人員によって手動で識別され得る。代替として、または組合せで、少なくとも1つの静脈の識別が、適切な画像解析ソフトウェアを用いる処理ユニットによって実行されてもよい。
【0091】
第4のステップ13において、第1の静脈位置における識別された静脈についての第1の複数の特徴的な静脈直径が、第1の時間期間にわたって記録される複数の画像から第1の複数の画像内で決定される。
【0092】
第5のステップ14において、第1の複数の特徴的な静脈直径に基づいて、第1の時間期間中に少なくとも1つの静脈が静脈虚脱を受けたか決定される。少なくとも1つの静脈が第1の時間期間中に静脈虚脱を受けたかの決定は、たくさんのやり方で実行され得る。ブロック図には、第1の時間期間内に静脈が虚脱したかを決定する3つの異なる方法141~146、147~1412、1413~1415が示される。異なる方法は、全て互いに並列に実行されてもよく、方法の組合せが並列に実行されるように選ばれてもよく、または示された方法のたった1つが使用されてもよい。
【0093】
第1の方法141~146において、静脈と関連した少なくとも1つの動脈が、識別される141。動脈が、静脈と対応するやり方で識別され得る。第1の動脈位置における識別された動脈についての第1の複数の特徴的な動脈直径は、第1の時間期間にわたって記録された複数の画像から第1の複数の画像内で決定される142。第1の複数の特徴的な動脈直径に基づいて、動脈直径挙動が決定される143。第1の複数の特徴的な静脈直径に基づいて、静脈直径挙動が決定される144。静脈直径挙動は、動脈直径挙動と比較される145。静脈直径挙動と動脈直径挙動との間の比較に基づいて、少なくとも1つの静脈が第1の時間期間中に静脈虚脱を受けたか決定される146。第1の方法141~146の背後の作業は、図4に関連してより詳細に示される。
【0094】
第2の方法147~1412において、視神経乳頭の位置が、第1の複数の画像内で決定される147。第2の静脈位置における識別された静脈についての第2の複数の特徴的な静脈直径は、第1の時間期間にわたって記録された複数の画像から第1の複数の画像内で決定される148。第1の複数の特徴的な静脈直径に基づいて、第1の静脈直径挙動が決定される149。第2の複数の特徴的な静脈直径に基づいて、第2の静脈直径挙動が決定される1410。第1の静脈直径挙動は、第2の静脈直径挙動と比較される1411。第1の静脈直径挙動と第2の静脈直径挙動との間の比較に基づいて、少なくとも1つの静脈が第1の時間期間中に静脈虚脱を受けたか決定される1412。第2の方法147~1412の背後の作業は、図5に関連してより詳細に示される。
【0095】
第3の方法1413~1415において、第1の時間期間中の静脈直径の変化が、第1の複数の特徴的な静脈直径に基づいて決定される1413。静脈直径の変化は、閾値と比較される1414。静脈直径の変化と閾値との間の比較に基づいて、少なくとも1つの静脈が第1の時間期間中に静脈虚脱を受けたか決定される1415。第3の方法1413~1415の背後の作業は、図6に関連してより詳細に示される。
【0096】
したがって、第5のステップ14においてなされる決定は、第1の方法141~146、第2の方法147~1412、第3の方法1413~1415、またはこれらの任意の組合せに頼り、例えば、記録された画像内で動脈を識別することができなかった場合、第2の方法147~1412および/または第3の方法1413~1415は、少なくとも1つの静脈が静脈虚脱を受けたか決定するためになお使用され得る。代替として、動脈が識別されたが、画像品質が第1の静脈位置における特徴的な静脈直径を測定するのに十分なだけであった場合、第1の方法141~146および/または第3の方法が使用されてもよい。いくつかの方法に頼ることができることで、結果の検証を可能にし、記録された画像の要件を下げる。
【0097】
第6のステップ15において、第1の時間期間中のIOPとICPとの間の関係が決定される。決定は、第1の時間期間中に少なくとも1つの静脈が虚脱したかに基づいてなされ、少なくとも1つの静脈が静脈虚脱を受けた場合に、IOPがICPを上回ることが決定される。
【0098】
非強制的な第7のステップ16において、先のステップ10~15が、第2の時間期間にわたって繰り返され得、より長い持続期間の時間にわたって患者をモニタリングすることが可能である。
【0099】
第1の時間期間中にIOPとICPとの間の関係を決定することと並列に、患者についてのAVRがある。
【0100】
第8のステップ17において、静脈と関連した少なくとも1つの動脈が、複数の画像内で識別される。このステップは、第1の方法が少なくとも1つの静脈と関連した少なくとも1つの動脈を識別すること141を含むので、第1の方法141~146が適用される場合、場合によっては、スキップされてもよい。
【0101】
第9のステップ18において、第1の動脈位置における識別された動脈についての第1の複数の特徴的な動脈直径が、第1の時間期間にわたって記録された複数の画像から第1の複数の画像内で決定される。第8のステップ17と同様に、第9のステップ19は、第1の方法が第1の動脈位置における識別された動脈についての第1の複数の特徴的な動脈直径を決定すること142を含むので、第1の方法141~146が適用される場合、スキップされることも可能である。
【0102】
第10のステップ19において、AVRが、第1の複数の特徴的な動脈直径および第1の複数の特徴的な静脈直径に基づいて計算される。計算されたAVRは、決定された特徴的な直径に基づいて平均値または中央値として計算され得る。
【0103】
第11のステップ20において、計算されたAVRは、第6のステップ15において決定されたIOPとICPとの間の関係と比較される。
【0104】
第12のステップ21において、第8のステップ17、第9のステップ18、および第10のステップ19は、第2の時間期間にわたってAVRを決定するために第2の時間期間にわたって繰り返されることが可能である。
【0105】
第13のステップ22において、第1の時間期間と第2の時間期間との間のAVRの変化が決定される。
【0106】
第14のステップ23において、AVRの変化は、第1の時間期間中のIOPとICPとの間の関係と、および第2の時間期間中のIOPとICPとの間の関係と比較される。
【0107】
本開示の特定の実施形態が説明されてきた。しかしながら、当業者に明らかなように、いくつかの代替が可能である。そのようなおよび他の明らかな修正例は、それが添付の特許請求の範囲によって定められるように、本開示の範囲内にあるとみなされるべきである。
図1a
図1b
図2
図3
図4
図5
図6
図7a
図7b
図8
【国際調査報告】