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特表2023-537818胎盤由来組成物を用いた心疾患を治療するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-06
(54)【発明の名称】胎盤由来組成物を用いた心疾患を治療するための方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/50 20150101AFI20230830BHJP
   A61P 9/06 20060101ALI20230830BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20230830BHJP
   A61K 35/51 20150101ALI20230830BHJP
【FI】
A61K35/50
A61P9/06
A61P9/00
A61K35/51
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022580491
(86)(22)【出願日】2021-08-10
(85)【翻訳文提出日】2023-02-15
(86)【国際出願番号】 US2021045392
(87)【国際公開番号】W WO2022035863
(87)【国際公開日】2022-02-17
(31)【優先権主張番号】63/064,251
(32)【優先日】2020-08-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521483940
【氏名又は名称】マスキュロスケレタル トランスプラント ファウンデーション
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】カールペイ,ザイン
(72)【発明者】
【氏名】ロング,マーク
(72)【発明者】
【氏名】ヒッツチェリック,パメラ
【テーマコード(参考)】
4C087
【Fターム(参考)】
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB58
4C087BB59
4C087CA03
4C087MA67
4C087NA14
4C087ZA36
(57)【要約】
本明細書では、心臓疾患を治療するための組成物及び方法が提供される。特に、本明細書では、それぞれが1つ以上の胎盤由来組成物を含む構築物、デバイス、及びシステム、並びに異常な心調律を伴う障害を治療し、損傷した心組織の修復を促進する際のそれらの使用が提供される。治療方法は、心臓の外科処置中又は処置後に、心臓及び/又は隣接組織の全部又は一部の表面上に1つ以上の構築物を適用することを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
心臓を有する対象における心障害、心疾患又は心損傷を治療、低減、又は予防するための方法であって、前記心臓、前記心臓の一部、前記心臓の構成要素、又はそれらの組み合わせを、1つ以上の胎盤由来組成物を含む少なくとも1つの構築物と接触させる工程を含む、方法。
【請求項2】
前記心障害が、心不整脈、前記心臓又はその一部若しくは構成要素上の瘢痕組織、前記心臓又はその一部若しくは構成要素上の創傷又は創傷閉鎖部位のうちの1つ以上である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記心臓又はその一部を接触させることが、前記少なくとも1つの構築物を、前記心臓、前記心臓の一部、前記心臓の構成要素、又はそれらの組み合わせの表面上に配置することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記1つ以上の胎盤由来組成物のそれぞれが、独立して、羊膜、絨毛膜、臍帯、及びそれらの組み合わせから選択される1つ以上の胎盤成分を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記1つ以上の胎盤膜成分のそれぞれが、独立して、生存可能であるか、生存不可能であるか、又はそれらの組み合わせである天然内因性細胞をさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つの構築物のそれぞれが、他の構築物とは独立して、シート、ディスク、小片、断片、微粒子、粉末、三次元形状、コーティング、層、フィルム、細長い要素、又はそれらの組み合わせの構成である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記心臓又はその一部を接触させることが、前記少なくとも1つの構築物を前記心臓、その一部、その構成要素、又はそれらの組み合わせの表面上に注入することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
外科処置に供されているか、又は供されたか、又は供されるであろう心臓を有する対象において、新規発症術後心房細動(NOPAF)のリスクを予防又は低減するための方法であって、前記方法は、前記心臓、前記心臓の一部、前記心臓の構成要素、又はそれらの組み合わせを、1つ以上の胎盤由来組成物を含む少なくとも1つの構築物と接触させることを含み、前記接触させることは、前記外科処置の前、間、若しくは後に、又はそれらの組み合わせで行われる、方法。
【請求項9】
前記心臓又はその一部を接触させることが、前記少なくとも1つの構築物を、前記心臓、前記心臓の一部、前記心臓の構成要素、又はそれらの組み合わせの表面上に配置することを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記少なくとも1つの構築物のそれぞれが、他の構築物とは独立して、シート、ディスク、小片、断片、微粒子、粉末、三次元形状、コーティング、層、フィルム、細長い要素、又はそれらの組み合わせの形態である、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記少なくとも1つの構築物が2つ以上の構築物を含み、各構築物が、独立して、他の構築物のうちの1つ以上と隣接している、重複している、又は接触していない、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記1つ以上の胎盤由来組成物のそれぞれが、独立して、羊膜、絨毛膜、及びそれらの組み合わせから選択される1つ以上の胎盤膜成分を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記外科処置が冠動脈バイパス移植手術(CABG)であり、前記少なくとも1つの構築物が、それぞれの層状シート構築物を形成するように配置された少なくとも1つの脱水羊膜シート及び少なくとも1つの脱水絨毛膜シートをそれぞれが含む、1つ以上の層状シート構築物を含み、前記接触させる工程が、前記外科処置中に行われる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記1つ以上の層状シート構築物のそれぞれが、前記CABG処置中に、前記心臓及び心膜に近接して、前記CABG処置が完了したときに前記1つ以上の層状シート構築物のそれぞれが前記心臓の表面の少なくとも一部に接触する位置及び向きに配置され、それによって、NOPAFが予防されるか、又はNOPAFのリスクが低減される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記CABG処置中、前記心膜が、前記心膜の前面及び前記心臓の一部を露出し及びそれらへのアクセスを可能にするように操作され、前記心臓の一部は、右心房、左心室前部、及び右心室下部を含み、前記1つ以上の層状シート構築物は、少なくとも第1の層状シート構築物及び第2のシート構築物を含み、前記接触させることは:
前記第1の層状シート構築物を、前記心臓の前記右心房の少なくとも一部に接触し且つそれを覆うように配置することと、
前記第2の層状シート構築物を、前記心臓の前記左心室前部に接触し且つそれを覆うように配置することと、
を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記第1の層状シート構築物が、前記右心房と直接接触して前記右心房上に配置することにより、又は、前記CABG処置の完了前に前記心膜が自然閉鎖位置に戻されたときに前記右心房上の配置に近似する向きで、固定デバイスを用い又は用いずに、前記心膜の縁部において前記心膜の前面上に配置することにより、配置され、
前記第2の層状構築物が、前記左心室前部と直接接触して前記左心室前部上に配置すること、又は、前記CABG処置の完了前に前記心膜が自然閉鎖位置に戻されるときに前記左心室前部上の配置に近似する向きで、固定デバイスを用い又は用いずに、前記心膜の縁部において前記心膜の前面上に配置することにより配置される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記1つ以上の層状シート構築物が第3の層状シート構築物をさらに含み、前記接触させることが:
前記第3の層状シート構築物を、前記右心室下部の少なくとも一部に接触し且つそれを覆うように配置することをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記第3の層状構築物が、固定デバイスを用い又は用いずに、前記心臓の基部に近接し及び整合して配置することにより、又は、固定デバイスを用い又は用いずに、前記心膜の縁部において前記心膜の前面に配置することにより、前記CABG処置の完了前に前記心膜が自然閉鎖位置に戻されたときに前記右心房下部上の配置に近似する向きで配置される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記1つ以上の層状シート構築物のそれぞれが幅及び長さを含む寸法を有し、それぞれが約3~約8センチメートルであり、前記1つ以上の層状シート構築物が、前記CABG処置が完了した後に、前記心臓の前記表面上の少なくとも約30~約150平方センチメートル(cm)の総面積を覆う、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
前記1つ以上の層状シート構築物が少なくとも第1の層状シート構築物及び第2の層状シート構築物を含み、それらのそれぞれが幅及び長さを含む寸法を有し、それらのそれぞれが約5~約7センチメートルであり、前記第1及び第2の層状シート構築物が、前記CABG処置が完了した後に、前記心臓の前記表面上の少なくとも約50~約150平方センチメートル(cm)の総面積を集合的に覆う、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[001] 本出願は2020年8月11日に出願された米国仮特許出願第63/064,251号の利益を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
開示の分野
[002] 本発明は、治療用組成物及びそれらの組成物を含む構築物、並びに心臓病を治療するための方法に関する。特に、胎盤由来組成物を含む構築物、組成物、及びシステム、並びに心障害の治療におけるそれらの使用のための方法が本明細書に提供される。
【背景技術】
【0003】
開示の背景
[003] 毎年、500,000人を超える米国人患者が、閉塞性冠動脈疾患を治療するために冠動脈バイパス移植手術(CABG)を受ける。CABGの最も一般的な合併症は新規発症術後心房細動(NOPAF)であり、これは、CABG患者の35人%までに発生し、過小評価される可能性が最も高い。NOPAFは心室性不整脈を誘発し、心拍出量を減少させ、腎不全を引き起こし、術後死亡率を悪化させる一方で、術後入院期間、薬理学的介入、資源利用、及び再入院率を増加させる。外科的外傷からの炎症誘発性メディエーターは、NOPAFを誘発する可能性が最も高く、内皮損傷/機能不全及び血小板活性化を促進することによって血栓形成促進状態を与え得ると考えられる。手術に続発する要因には、過剰なアドレナリン刺激、自律神経不均衡、神経上腕骨異常、伸展誘発現象、及び使用される外科処置のタイプが含まれる。
【0004】
[004] 周術期の外傷がNOPAFを誘発することは明らかであるが、予防(preventive)又は予防(prophylactic)の戦略の実施は薬物療法の有害作用によって複雑になる。
【0005】
[005] 経心筋血行再建術(TMR)は、虚血領域を有する心臓患者に症状の軽減を提供する外科処置である。この処置は、狭心症としても知られる冠動脈心疾患の胸痛又は不快感を低減する。狭心症は、心筋がしばしば身体的労作に起因して、それが得られるよりも多くの血液を必要とするときにしばしば起こる。この処置は、CABGの補助として、又は他の方法では治療に適していない可能性がある一部の心臓病患者の生活の質を改善するために使用することができる。
【0006】
[006] 術後不整脈及び他の心疾患を治療及び予防するためのさらなる組成物及び方法が必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
開示の概要
[007] 心臓を有する対象における心障害を治療又は低減するための方法であって、心臓又はその一部を、1つ以上の胎盤由来組成物を含む少なくとも1つの構築物と接触させることを含む方法が提供される。いくつかの実施形態では、心障害は、心不整脈、心臓上の瘢痕組織又はその一部のうちの1つ以上である。
【0008】
[008] 外科処置に供された心臓を有する対象において、新規発症術後心房細動(NOPAF)を治療又は低減するための方法であって、心臓又はその一部を、1つ以上の胎盤由来組成物を含む少なくとも1つの構築物と接触させることを含む方法が提供される。外科処置のタイプは限定されず、したがってNOPAFを治療するための構築物及び使用方法は、対象の心臓及び/又は心疾患を治療するために実施される任意の医療処置と共に(すなわち、前、中、又は後に)有益に使用され得る。
【0009】
[009] 心臓又はその一部の瘢痕組織を治療又は低減するための方法であって、1つ以上の胎盤由来組成物を含む少なくとも1つの構築物と瘢痕組織を接触させることを含む方法が提供される。
【0010】
[0010] いくつかの実施形態では、心臓又はその一部を接触させることは、少なくとも1つの構築物を心臓又はその一部の表面上に配置することを含む。いくつかの実施形態では、心臓上に配置される構築物のうちの1つ以上は、シート、層、粒子、コーティングなどであり得る。いくつかの実施形態では、心臓又はその一部を接触させることは、例えば心臓上に層又はコーティングを形成するように、少なくとも1つの構築物を(例えば、注射器又はカニューレを使用することによって)心臓の表面上に注入することを含む。いくつかの実施形態では、心臓を治療するための方法は、心臓の表面上に、又はそれに近接して、1つ以上のコーティング又は層を形成することを含み、コーティング又は層は2つ以上の構築物、2つ以上の材料(すなわち、異なる治療物質又は非治療物質)、及びそれらの組み合わせを含み得る。いくつかの実施形態では、心臓又はその一部を接触させることは、手術又は心筋を治療するための処置中に、心臓又はその一部に隣接する組織の表面上に少なくとも1つの構築物を配置することを含み、隣接する組織は自然の解剖学的構造において心臓と接触している(例えば、心膜弁)。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの構築物は2つ以上の構築物を含み、方法は構築物のそれぞれを心臓又はその一部と接触させることを含み、各構築物は独立して、1つ以上の他の構築物に隣接しているか、重複しているか、又は接触していなくてもよい。いくつかの実施形態では、外科処置は、冠動脈バイパス移植手術(CABG)又は心臓弁修復/置換術であり、心臓又はその一部を接触させることは、CABG又は心臓弁修復/置換術の間、少なくとも1つの構築物を心臓又はその一部の表面に配置することを含む。
【0011】
[0011] 胎盤由来組成物は、羊膜、絨毛膜、それらの一部、又はそれらの組み合わせなどの1つ以上の胎盤膜成分を含むが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、胎盤膜成分のそれぞれは、限定されないが、シート、ディスク、小片、断片、微粒子、粉末(例えば、微粒子)、三次元形状、コーティング、層、フィルム、細長い要素、及びそれらの組み合わせから選択される形態を有する。いくつかの実施形態では、1つ以上の胎盤膜成分は、生存可能であってもなくてもよい天然の内因性細胞をさらに含む。
【0012】
[0012] いくつかの実施形態では、胎盤由来組成物は羊膜シートを含む。いくつかの実施形態では、胎盤由来組成物は絨毛膜シートを含む。いくつかの実施形態では、胎盤由来組成物は臍帯シートを含む。いくつかの実施形態では、胎盤由来組成物は、羊膜シート、絨毛膜シート、及び臍帯シートのうちの少なくとも2つ以上を含む。いくつかのそのような実施形態において、羊膜シート、絨毛膜シート、及び臍帯シートのうちの1つ以上は、乾燥されるか、又は凍結乾燥される。いくつかの実施形態では、胎盤由来組成物は凍結乾燥羊膜シートを含む。いくつかの実施形態では、胎盤由来組成物は羊膜シート及び絨毛膜シートを含み、これらは両方とも凍結乾燥される。
【0013】
[0013] いくつかの実施形態では、胎盤由来組成物は、生存可能な天然の内因性細胞を含む羊膜シートを含む。いくつかの実施形態では、胎盤由来組成物は、生存可能な天然の内因性細胞を含む絨毛膜シートを含む。いくつかの実施形態では、胎盤由来組成物は、生存可能な天然の内因性細胞を含む臍帯シートを含む。いくつかの実施形態では、胎盤由来組成物は、生存可能な天然内因性細胞を含む羊膜シート、生存可能な天然内因性細胞を含む絨毛膜シート、及び生存可能な天然内因性細胞を含む臍帯シートのうちの少なくとも2つを含む。
【0014】
[0014] いくつかの実施形態では、胎盤由来組成物は、限定されないが、羊膜微粒子、絨毛膜微粒子、臍帯微粒子、又はそれらの組み合わせなどの1つ以上の胎盤成分由来の微粒子を含む。
【0015】
[0015] いくつかの実施形態では、胎盤由来組成物は、自己白血球の保持の有無にかかわらず、多血小板血漿などの患者自身の血液に由来する自己調製物と組み合わされる。
【0016】
図面の簡単な説明
[0016] 本発明は添付の図面を参照してさらに説明され、同様の構造はいくつかの図を通して同様の数字及び/又は文字によって参照される。図示された図面は必ずしも一定の縮尺ではなく、代わりに、本発明の原理を例示することに一般的に重点が置かれている。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1A】[0017]人間の心臓を含む例示的な手術部位を示す概略図であり、まず、心膜が開いており、心臓を露出しており、3つの構築物の相対的な配置を示す;
図1B】[0017]人間の心臓を含む例示的な手術部位を示す概略図であり、次いで、心膜が閉じており、心臓を覆っており、3つの構築物の術後位置を示す;
図2】[0018]対象の左心室前部への胎盤由来移植片(AMNIONBAND(登録商標))の外科的適用を示す;
図3】[0019]図2に示される対象の左心室前部に適用された胎盤由来移植片(AMNIONBAND(登録商標))の別の図を示す;
図4】[0020]図2に示される対象の右心房に適用された胎盤由来移植片(AMNIONBAND(登録商標))の別の図を示す
図5】[0021]図2に示される対象の右心室下部に隣接するように並置された、横隔膜上に適用された胎盤由来移植片(AMNIONBAND(登録商標))の別の図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
開示の詳細な説明
定義
[0022] 本明細書で使用される場合、用語「対象」は、本発明の方法又は組成物によって治療される個体(例えば、ヒト、動物、又は他の生物)を指す。対象は、ヒト、並びに、哺乳動物(例えば、ヒト、非ヒト霊長類、げっ歯類、ヒツジ、ウシ、反芻動物、ウサギ類、ブタ、ヤギ、ウマ、イヌ、ネコなど)、爬虫類、及び鳥類を含む非ヒト動物を含むが、これらに限定されない。
【0019】
[0023] 用語「適用」、「適用すること」、「配置」、「配置すること」、「投与」、「投与すること」、「埋め込み」、及び「埋め込むこと」は、本明細書に記載及び企図される胎盤由来組成物を使用する方法に関連して本明細書で使用される場合、対象の心筋、心臓、又はその構成要素(例えば、心膜、心外膜、心筋、心内膜、弁、大動脈、大静脈、心房、心室など)と少なくとも部分的に物理的に、直接的に、又は間接的に接触する1つ以上のそのような組成物の、固定(例えば、縫合糸、接着剤、ステープル、又は他の固定手段)の有無にかかわらず、配置と本質的に同義であり、配置を意味する。胎盤由来組成物を使用するための方法のいくつかの例示的な実施形態が本明細書において以下に提供されるが、本明細書に記載及び企図される方法は、それらの実施形態に限定されず、むしろ、1つ以上の胎盤由来組成物と対象の心筋、心臓、又はその構成要素との物理的接触を引き起こすか、又はもたらす組成物の適用、配置、又は投与を含む、任意の及び全ての実施形態がそのような方法に含まれ、包含される。
【0020】
[0024] 本明細書で使用される場合、用語「天然の内因性細胞」は、特定の組織タイプに天然に存在する(内因性)細胞を意味し、ドナーからの回収後にその型の特定の組織サンプル中に存在し、任意の処理又は操作(天然)後にその組織サンプル中に存在し続ける。例えば、羊膜は、典型的には、いくつかのタイプの1つ以上の細胞(例えば、限定されないが、間葉系幹細胞(MSC)及び線維芽細胞など)を、ドナーからの回収及び処理の前後の両方で含有する。羊膜のサンプルが回収され、分離され、サイズ縮小、洗浄、消毒、乾燥、及び他の技術に供された後、処理前にそのサンプル中に存在し、且つ前記処理後にその組織中に依然として残っている任意のMSC及び/又は線維芽細胞は、天然内因性細胞として特徴付けられる。
【0021】
[0025] 本明細書で使用される場合、用語「治療剤」は、対象(例えば、心臓疾患を有する対象)における感染性、罹患、又は死亡の開始を減少させる組成物を指す。本明細書で使用される場合、治療剤は、予防的に使用される薬剤を包含する。本明細書に記載及び企図される構築物は、それ自体、治療剤とみなされる。
【0022】
[0026] 本明細書で使用される場合、用語「サンプル」は、その最も広範な意味で使用される。1つの意味において、サンプルは、任意の供給源から得られたサンプル又は培養物、並びに生物学的及び環境的サンプルを含むことが意図される。生物学的サンプルは、動物(ヒトを含む)から得られ、流体、固体、組織及び気体を包含することができる。生物学的サンプルは、血漿、血清などのような血液産物を含む。しかしながら、そのような例は、本発明に適用可能なサンプルタイプを限定するものと解釈されるべきではない。
【0023】
[0027] 本明細書で使用される場合、用語「胎盤」及び「胎盤性」は、羊膜、絨毛膜、羊膜絨毛膜、尿膜、羊水、臍帯、及びワルトンゼリーを含むがこれらに限定されない、哺乳動物胎盤の任意の1つ以上の成分又は部分を意味する。胎盤成分の供給源は特に限定されず、ヒト、非ヒト霊長類、ブタ、ウマ、ウシ、及びそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。
【0024】
[0028] 以下にさらに詳細に記載されるように、冠動脈バイパス移植手術(CABG)中のヒト胎盤膜同種移植片/パッチ配置は、新規発症術後心房細動(NOPAF)の発生率を低下させることが実証されている。理論によって制限されることを望むものではないが、この利益はヒト羊膜、及びおそらく他の胎盤成分による炎症誘発性メディエーターの抑制によって達成されると考えられる。ヒト胎盤膜は免疫学的に特権があり、組織生成及び抗炎症に必要な基本成分を含む。例えば、ヒト羊膜組織は抗菌、抗癒着及び抗線維化能力を保持することが知られており、これはまた、ヒト羊膜を用いたNOPAFの減少が観察される機構であり得る。
【0025】
[0029] したがって、心臓又はその一部を、1つ以上の胎盤由来組成物を含む少なくとも1つの構築物と接触させることを含む、心臓を有する対象における心障害を治療又は低減するための方法が、本明細書において提供される。いくつかの実施形態では、心障害は、心不整脈、心臓上の瘢痕組織又はその一部のうちの1つ以上である。
【0026】
[0030] さらに、外科処置に供された心臓を有する対象において、新規発症術後心房細動(NOPAF)を治療又は低減するための方法が本明細書において提供され、この方法は、心臓又はその一部を、1つ以上の胎盤由来組成物を含む少なくとも1つの構築物と接触させることを含む。
【0027】
[0031] 瘢痕組織を1つ以上の胎盤由来組成物を含む少なくとも1つの構築物と接触させることを含む、心臓又はその一部の瘢痕組織を治療又は低減するための方法もまた、本明細書において提供される。
【0028】
[0032] いくつかの実施形態では、心臓又はその一部を接触させることは、少なくとも1つの構築物を心臓又はその一部の表面上に配置することを含む。いくつかの実施形態では、心臓又はその一部を接触させることは、微粒子形態の胎盤同種移植片を、懸濁液中で、乾燥粉末として、担体又は別の適切な製剤と共に、心臓又はその一部上の少なくとも1つの構築物上に送達することを含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの構築物は2つ以上の構築物を含み、方法は、構築物のそれぞれを心臓又はその一部と接触させることを含み、各構築物は独立して、他の構築物の1つ以上に隣接しているか、重複しているか、又は接触していなくてもよい。いくつかの実施形態では、外科処置は、冠動脈バイパス移植手術(CABG)であり、心臓又はその一部を接触させることは、CABG中に、少なくとも1つの構築物を心臓又はその一部の表面上に配置することを含む。
【0029】
[0033] 胎盤由来組成物は、限定されないが、羊膜、絨毛膜、それらの一部、又はそれらの組み合わせなどの1つ以上の胎盤膜成分を含む。そのような実施形態は、胎盤膜成分の特定の供給源に限定されない。いくつかの実施形態では、胎盤膜成分は、例えば、限定されないが、ヒト起源、又は成体若しくは胎児ブタ起源である。他の特徴の中でも、本明細書に記載及び企図される方法での使用に適した胎盤膜成分は、リムルス・アメボサイト溶解物(LAL)試験によって測定して、約0.05エンドトキシン単位/ミリリットル(EU/mL;ここで、1EUは約0.1~0.2ngエンドトキシン/mLに等しい)又は約20EU/組成エンドトキシンレベル以下を有する。当業者によって一般的に理解されるように、エンドトキシンはグラム陰性細菌の外側細胞膜の外層の成分であり、それらに曝露されるか、又はそれらと接触している対象において発熱を引き起こすことが多い。
【0030】
[0034] いくつかの実施形態では、胎盤膜成分のそれぞれは、互いに独立して、全体、不連続、穿孔又はメッシュ状、微粒子、及び/又は可溶化されている。さらに、胎盤膜成分のそれぞれは、例えば、限定されないが、シート、小片、断片、微粒子、粉末(例えば、微小粒子)、三次元形状、コーティング、層、フィルム、細長い要素、並びにそれらの複数及び組み合わせから選択される形態を有し得る。いくつかの実施形態では、1つ以上の胎盤膜成分は、生存可能であってもなくてもよい天然の内因性細胞をさらに含む。そのような細胞としては、限定されないが、間葉系幹細胞(MSC)、線維芽細胞、間質細胞、及び上皮細胞が挙げられる。
【0031】
[0035] いくつかの実施形態では、胎盤由来組成物は羊膜シートを含む。いくつかの実施形態では、胎盤由来組成物は絨毛膜シートを含む。いくつかの実施形態では、胎盤由来組成物は羊膜シート及び絨毛膜シートを含む。いくつかの実施形態では、胎盤由来組成物は凍結乾燥羊膜シートを含む。いくつかの実施形態では、胎盤由来組成物は羊膜シート及び絨毛膜シートを含み、これらは両方とも脱水又は凍結乾燥されている。理論によって制限されることを望むものではないが、羊膜、絨毛膜の2つ以上の層、又はそれぞれの少なくとも1つの層を含む構築物を、術後に心臓又はその一部と接触させることは、1つのみのそのような羊膜又は絨毛膜を含む構築物よりも、改善された抗炎症効果及びNOPAFのより効果的な低減を提供したと考えられる。
【0032】
[0036] いくつかの実施形態では、胎盤由来組成物は、生存可能な天然の内因性細胞を含む羊膜シートを含む。いくつかの実施形態では、胎盤由来組成物は、生存可能な天然の内因性細胞を含む羊膜シート、及び生存可能な天然の内因性細胞を含む絨毛膜シートを含む。いくつかの実施形態では、胎盤由来組成物は、生存可能な(そのうちの1つ以上は天然の内因性細胞を含む)羊膜シート、絨毛膜シート、及び臍帯を含む。
【0033】
[0037] いくつかの実施形態において、胎盤由来組成物は、凍結保存されるか、冷蔵されるか、又は周囲温度で保存される。
【0034】
[0038] 当業者によって容易に認識されるように、1つ以上の胎盤由来組成物に加えて、構築物は、1つ以上の追加の成分をさらに含み得る。そのような追加の成分は、ポリマー材料、治療剤(例えば、医薬化合物、成長因子、生存可能な細胞、失活細胞又は細胞成分、他の組織由来材料、コルチコステロイド、抗体、サイトカイン、タンパク質、形態形成タンパク質など)、抗菌剤、抗感染剤、抗炎症剤、ステロイド及びコルチコステロイド、抗接着剤、鎮痛剤、足場又は他の支持体若しくは担体材料などを含み得る。
【0035】
[0039] 例えば、いくつかの実施形態では、構築物は無細胞であってもなくてもよいポリマー材料をさらに含み得る。そのようなポリマー材料は、天然ポリマー、合成ポリマー、又はそれらの組み合わせであってもよい。ポリマー材料と胎盤膜成分との結合又は組み合わせの様式は特に限定されない。例えば、限定されないが、ポリマー材料は、構築物を形成するために、1つ以上の胎盤膜成分と複合体化、共役、カプセル化、吸収、吸着、又は混合され得る。いくつかの実施形態では、胎盤膜成分は、ポリマー材料上で50~90%コンフルエントに成長している。いくつかの実施形態では、得られた構築物は、哺乳動物(例えば、ヒト)対象の心筋組織上への適用に適したサイズ及び形状を有する。いくつかの実施形態では、構築物は、ヒアルロナン、コンドロイチン硫酸、グルコサミン、コラーゲン、絹、及びポリペプチドを含むがこれらに限定されない、1つ以上の他の天然又は天然由来の材料をさらに含み得る。
【0036】
[0040] いくつかの実施形態では、1つ以上の胎盤膜成分に加えて、構築物は1つ以上のタンパク質及び/又は成長因子(例えば、限定されないが、血管内皮成長因子、血小板由来成長因子、形質転換成長因子、フィブリノーゲン、コラーゲンα-3(VI)、フィブロネクチン、コラーゲンα-1(XII)鎖、ビメンチン、コラーゲンα-1(VII)鎖、形質転換成長因子β誘導タンパク質、プレラミン、ラミニンサブユニットα-3、ラミニンサブユニットα-5、デスモプラキン、デコリン、ペントラキシン関連タンパク質PTX3、フィブリリン-1、アネキシンA2、ルミカン、ムチン-16、又はエピプラキンを含む)などの追加の成分をさらに含んでもよい。
【0037】
[0041] いくつかの実施形態では、構築物は、剛性又は半剛性フレームをさらに含む。いくつかの実施形態では、フレームは、使い捨てであるか、又は埋め込み可能であり、再吸収可能である。いくつかの実施形態では、構築物は、哺乳動物組織(例えば、心外膜表面組織、心内膜表面組織、心筋組織、左心房組織、右心房組織、弁組織、プルキンエ網、心膜組織、血管、血管周囲(AV瘻)吻合、及び/又は管周囲組織などの心臓組織)と係合するように構成された同種移植片である。
【0038】
[0042] いくつかの実施形態では、構築物を形成するための胎盤由来組成物と組み合わされる追加の成分は、間質血管画分、細胞化心耳、脱細胞化心耳、接着材料、コルマトリクス、多血小板血漿、人工多能性幹細胞、新生児心室筋細胞、胚性幹細胞、心臓幹細胞、間葉系幹細胞(MSC)、線維芽細胞筋芽細胞、成体骨髄由来細胞、間葉系細胞、内皮前駆細胞、臍帯血細胞、T調節細胞、M2様マクロファージ、骨格筋サテライト細胞、筋筋芽細胞、C2C12筋筋芽細胞株、線維芽細胞、又はそれらの組み合わせのうちの1つ以上を含む。
【0039】
[0043] いくつかの実施形態では、1つ以上の胎盤膜成分に加えて、構築物は1つ以上の抗炎症治療薬などの追加の成分をさらに含み得る。いくつかの実施形態では、1つ以上の抗炎症治療薬は、例えば、コルチコステロイド(デキサメタゾン)、グルココルチコイド(プレドニゾロン)、抗血栓性、抗不整脈性(アミオドロン)、β遮断薬、ace阻害剤、アンギオテンシン受容体遮断薬、抗酸化剤(レスベラトロール;天然及び合成)、スタチン、抗炎症性ナノ粒子(抗原性)、抗体(免疫療法)、抗炎症性サイトカイン、又は遺伝子療法(プラスミド、AVV)を含み得る。
【0040】
[0044] いくつかの実施形態では、構築物は、所望の組織領域への直接的且つ標的化された適用のために構成される。いくつかの実施形態では、構築物は、塗布、ロールオン、又はスプレー適用のために構成される(すなわち、それらに適した上述した形態を有する)。いくつかの実施形態では、構築物は、粉末ベースの形態、乳化形態、流体ベースの形態、エアロゾルベースの形態、又はゲルベースの形態である。
【0041】
[0045] さらなる実施形態は、異常な心機能を特徴とする障害に罹患しているか、又は罹患するリスクがある対象を予防及び/又は治療するための方法であって、本明細書に記載の1つ以上の構築物を対象の心臓に適用することを含み、1つ以上の構築物のそれぞれの量が、障害を治療するのに有効な量である方法を提供する。いくつかの実施形態では、異常な心機能は、新規発症術後心房細動、心房性不整脈、心室性不整脈、心房細動、心房粗動、心外膜炎症、心筋炎症、異常な収縮機能、異常な心伝導、異常な心調律、心筋梗塞、鬱血性心不全、又は駆出率が維持された心不全のうちの1つ以上である。いくつかの実施形態では、異常な心機能を特徴とする障害は、冠動脈バイパス移植手術後の新規発症術後心房細動である。いくつかの実施形態では、構築物は、冠動脈バイパス移植手術中に対象の心臓に適用される。いくつかの実施形態では、対象の心臓に構築物を適用する時間は、2~10分以内である。いくつかの実施形態では、構築物は、冠動脈バイパス移植手術中に、心臓の基部まで延びる左心房上の血管移植部位に適用される。いくつかの実施形態では、2つ以上(例えば、2、3、4、5、6、7、又はそれ以上)の構築物が提供される。本明細書に記載の構築物は、様々な用途に使用される。例えば、いくつかの実施形態では、構築物は、弁置換及び/又は修復後に、心臓の基部まで延びる左心房上において対象の心臓に適用される。いくつかの実施形態では、対象の左心室は、その中に機械的循環支持デバイスを有し、構築物は、左心室内の機械的循環支持デバイスの部位に適用される。いくつかの実施形態では、構築物は、冠動脈バイパス移植手術後に、心臓の基部まで延びる左心房上の血管移植の部位に適用される。いくつかの実施形態では、構築物は、弁置換及び/又は修復後に、心臓の基部まで延びる左心房上において対象の心臓に適用される。いくつかの実施形態では、構築物は、合成又は生物学的材料を使用して、心膜腔で対象の心臓に適用される。いくつかの実施形態では、1つ以上の構築物は、低侵襲技術によって、例えば、内視鏡及び/又はトロカール技術によって、対象の心臓に適用(例えば、接触)される。
【0042】
[0046] さらなる実施形態は、本明細書に記載の1つ以上の構築物を対象の心臓組織に適用することを含む、対象(例えば、哺乳動物(例えば、ヒト)対象)における術後心房細動を治療する方法を提供する。理論によって制限されることを意図するものではないが、1つ以上の構築物を対象の心臓組織に適用することは、心機能の調節及び/又は心臓関連電気活動の調節を容易にすると考えられる。いくつかの実施形態では、1つ以上の構築物を対象の心臓組織に適用することは、1つ以上の構築物を対象の心臓組織に注入又は噴霧することである。
【0043】
[0047] いくつかの実施形態では、1つ以上の構築物が接触する心臓、心臓の一部、又は心臓組織は、限定されないが、心筋組織、心外膜表面組織、又は心内膜表面組織を含む。いくつかの実施形態では、術後心房細動は心筋梗塞治療に起因する。
【0044】
[0048] いくつかの実施形態では、1つ以上の構築物は、適用前に凍結され、微粉砕され、混合される。
【0045】
[0049] 特定の実施形態では、本発明は、(a)本明細書に記載の複数の構築物;及び(b)対象の組織領域に構築物を適用するための説明書を含むキットを提供する。
【0046】
[0050] さらなる実施形態は、対象における心血管リモデリング及び血管再生を改善するための方法を提供し、この方法は、本明細書に記載の構築物と経心筋血行再建術との組み合わせを前記対象の心臓に投与することを含む。そのような実施形態では、心臓又はその一部と接触させる1つ以上の構築物のうちの少なくとも1つは、幹細胞をさらに含む。この実施形態は、心臓組織上の瘢痕をリモデリング及び低減するための方法を提供する。
【0047】
[0051] 心臓不整脈の予防及び心臓の瘢痕領域の修復の促進に使用するための、ヒト羊膜及び/又はヒト絨毛膜などの1つ以上の胎盤由来組成物を含む構築物が本明細書で提供される。
【0048】
[0052]ヒトの胎盤膜は、非常に豊富で容易に入手可能な組織である。この羊膜組織は、再生医療の分野において魅力的な材料と考えられるかなり有利な特徴を有する。それは低い免疫原性、抗炎症特性を有し、それらの細胞はヒト胚を犠牲にすることなく単離することができる。それは分娩後に廃棄されるため、再生医療及び細胞療法に有用であり得る。ヒト羊膜は異なる発生学起源からの2つの細胞型を含み、これらは幹細胞のいくつかの特徴的な特性を示す。ヒト羊膜上皮細胞(hAEC)は胚性外胚葉に由来し、ヒト羊膜間葉系間質細胞(hAMSC)は胚性中胚葉に由来する。
【0049】
I. 構築物
[0053] 以下にさらに詳細に記載されるものなどの追加の成分を含むか又は含まない、1つ以上の胎盤由来組成物を含む構築物が本明細書で提供される。1つ以上の胎盤由来組成物のそれぞれは、互いに独立して、1つ以上の胎盤成分を含み得、そのそれぞれはシート、小片、断片、微粒子、粉末(例えば、微粒子)、三次元形状、コーティング、層、フィルム、細長い要素、及びそれらの組み合わせの形状又は形態を有し得る。
【0050】
[0054] 本発明の実施形態による構築物のサイズ及び形状は、構築物が使用される手術に応じて変化する。いくつかの実施形態では、構築物は、幅及び長さが1~10cm(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10cm又は他のサイズ)であり、幅及び長さは互いに等しいか又は異なり得る。構築物は、特定の形状に限定されない。本発明の実施形態によれば、シートの一般的な形態を有する構築物は、四辺形、正方形、矩形、楕円形、円形、ドーナツ形などの形状にさらに成形されてもよい。本発明の実施形態によれば、構築物は、任意選択で、手術部位への容易な適用、又は適用部位における静脈/血管若しくは他の組織の容易なアクセスを可能にする1つ以上のスリットを有してもよい。スリットは構築物が依然として湿っている間に、所望の位置で構築物を切断することによるなど、様々な方法によって形成することができる。
【0051】
[0055] 本開示は、胎盤由来組成物又はそれを含む構築物の特定の製剤に限定されない。例としては、流体ベースの形態、乳化形態、粉末ベースの形態、エアロゾルベースの形態、又はゲルベースの形態を含むが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、1つ以上の構築物は適用前に凍結され、微粉砕され、混合される。
【0052】
[0056] 本発明の一実施形態では、構築物の1つ以上の角部は、埋め込み中に角部が引っ掛かるのを防ぐために、丸められ、又は平坦化される。本開示を考慮して、当業者に公知の任意の方法を用いて、構築物の角部を丸め又は平坦化することができる。
【0053】
[0057] いくつかの実施形態では、構築物は、注射適用及び/又は噴霧適用のために構成される。いくつかの実施形態では、構築物は、粉末ベースの形態、乳化形態、流体ベースの形態、エアロゾルベースの形態、又はゲルベースの形態である。
【0054】
[0058] 本開示は、羊膜を得る特定の供給源又は方法に限定されない。ドナー対象からの排出又は回収の前に、羊膜は一般に、2つの表面:(1)絨毛膜組織と接触する外表面;及び(2)羊水と接触する内表面を有する。同様に、ドナー対象からの排出又は回収の前に、絨毛膜はまた、一般に、2つの表面:(1)母体細胞と接触する外表面;及び(2)羊膜組織と接触する内表面を有する。
【0055】
[0059] 羊膜は表面抗原の完全な欠如を有し、したがって、「異物」体又は対象に埋め込まれた場合、免疫応答を誘導せず、これは、ほとんどの他の同種移植片インプラントとは対照的である。羊膜はまた、炎症誘発性サイトカイン、IL-1α及びIL-1βの発現を著しく抑制する。羊膜はまた、線維芽細胞によるTGF-β及びその受容体発現を下方調節し、組織再構築を促進することによって創傷の治癒を調節する能力をもたらす。さらに、羊膜及び絨毛膜は、術後感染のリスクを低減するために、細菌、真菌、原虫、及びウイルスに対して広域スペクトル活性を有する抗菌化合物を含有する。
【0056】
[0060] 羊膜及び絨毛膜は、臍帯組織と同様に、妊娠雌哺乳動物(ヒト又は非ヒト)から調達された出生組織から、別々に又は一緒に調製することができる。外因性病原体による収集組織の汚染を防ぐために、組織の取り扱い、例えば、組織の調達、バンキング、移送などにおいて、滅菌技術及び処置を実際的に可能な限り使用するべきである。
【0057】
[0061] 胎盤及び羊水などの出生組織は、分娩室から回収され、滅菌プラスチックバッグ又はボトルなどの滅菌容器内の場所に移される。好ましくは、組織は、4℃~28℃の温度の断熱デバイス内、例えば、アイスバケット内で移送される。
【0058】
[0062] 本発明の一実施形態によれば、出生後の排出直後に、適切なヒト胎盤は、アイスバケット内に配置された滅菌バッグ内に配置され、別の場所に送達される。胎盤は、過剰な血餅を除去するために、例えば、滅菌生理食塩水ですすがれる。好ましくは、胎盤は、例えば、ペニシリン及び/又はストレプトマイシンなどの1つ以上の抗生物質をすすぎに含めることによって無菌処理に供される。無菌処理された胎盤は、アポトーシス及び汚染を防止又は阻害するために、低温条件などの制御された環境で保管される。
【0059】
[0063] 羊膜及び絨毛膜は、胎盤の他の組織から分離され、次いで、当技術分野で公知の方法を用いて、及び本開示を考慮して、互いに分離される。例えば、羊膜は、例えばピンセットによって、無菌溶液に浸漬された胎盤から機械的に剥がすことができる。単離された羊膜は、ジメチルスルホキシド(DMSO)及びグリセロールなどの凍結保護剤を含む凍結保護溶液中に保存し、急速な瞬間凍結法を用いることにより、又は速度制御凍結法により凍結保存することができる。好ましくは、単離された羊膜及び絨毛膜のそれぞれは、凍結保存の前に、独立して又は一緒に、ペニシリン及び/又はストレプトマイシンなどの1つ以上の抗生物質で処理される。
【0060】
[0064] 羊膜及び絨毛膜細胞外マトリックス成分は、重鎖ヒアルロン酸、成長因子、フィブロネクチン、及びコラーゲンを含み、凍結保存及び他の単離方法の間、膜と共に保存される。
【0061】
[0065] 単離された羊膜及び絨毛膜は、丈夫で、透明で、神経を含まず、血管を含まないシートである。それらは、様々な方法を用いて乾燥又は凍結乾燥することができる。例えば、これらの膜は滅菌メッシュ上で、例えば、滅菌ニトロセルロース濾紙上に置かれることにより(一緒に又は別々に)乾燥され得、滅菌環境中で50分間を超えて風乾され得る。それらはまた、滅菌、サイジング、カタログ化、及び輸送などの膜のその後の操作を容易にするであろう別の形態の支持材料上で乾燥又は凍結乾燥され得る。臍帯は胎盤の別の成分であり、臍帯静脈及び動脈の回復及び除去後に、上述の羊膜及び絨毛膜と同様に処理され得る。
【0062】
[0066] いくつかの実施形態では、構築物は、羊膜及び/又は絨毛膜及び無細胞材料を、埋め込み可能且つ再吸収可能なフレーム、例えば、ポリマーメッシュフレーム、又は使い捨て若しくはステンレス鋼フレームなどのフレーム上で必要な形状に乾燥させることによって作製することができる。好ましくは、フレームは剛性又は半剛性である。フレームは、手術に適した形状、例えば、三角形、矩形、四辺形、楕円形、ドーナツ形、円形、半円形などのいずれであってもよい。
【0063】
[0067] 本発明の一実施形態では、使い捨てフレームが使用される場合、乾燥組織はフレームから除去されたときにフレームの形状を保持するか、又は使い捨てフレームを伴い若しくは伴わずに包装及び滅菌され得る。使い捨てフレームは、組織の使用前に除去及び廃棄され得る。使い捨てフレームは、取り扱い及び除去を容易にするため、又は切開若しくは手術部位への適用を容易にするために、組織よりも長くすることができる。
【0064】
[0068] 本発明の別の実施形態では、埋め込み可能且つ再吸収可能なフレームが使用される。そのようなフレームは、全体にわたっていくつかの穴を有するメッシュ又は固体フレームであり得る。
【0065】
[0069] ヒト羊膜及び/又は絨毛膜は、例えば、フレーム上で組織を乾燥させること、再吸収性接着剤を使用すること、組織を湿らせてフレーム上に置くこと、又はフレーム上の組織を凍結させることなど、本開示を考慮して様々な方法によってフレームに結合される。例としては、複合体化、共役、カプセル化、吸収、吸着、又は混合が挙げられるがこれらに限定されない。いくつかの実施形態では、胎盤膜成分は、構築物上で50~90%のコンフルエントに成長している。
【0066】
[0070] いくつかの実施形態では、構築物は、凍結乾燥され、微粒子形態に粉砕又は微粉砕される。いくつかの実施形態では、構築物は、使い捨て又は埋め込み可能且つ再吸収可能なフレーム(剛性又は半剛性)、ポリマー材料(天然、合成、又はそれらの組み合わせ)、及び胎盤膜成分を含み、胎盤膜成分は羊膜細胞、絨毛膜細胞、又はそれらの組み合わせをさらに含み得る。そのような実施形態では、構築物は、胎盤膜成分がフレーム上で50~90%のコンフルエントに成長するように、ポリマー材料及び胎盤膜成分をフレームと結合させること;構築物を凍結乾燥すること、及び構築物を粉砕又は微粉砕して、微粒子形態の構築物を生成することによって生成され得る。
【0067】
[0071] いくつかの実施形態では、構築物は、限定されないが、成長増強剤、形態形成タンパク質、小分子化合物、医薬剤、抗菌剤、抗炎症剤、手術部位又はその近傍の内部組織の瘢痕化、癒着及び繋留を防止する薬剤、鎮痛剤などの1つ以上の追加の成分をさらに含んで、性能をさらに改善し、腹部手術の合併症を低減する。成長増強剤の例は、成長ホルモン、インスリン様成長因子I、ケラチノサイト成長因子、線維芽細胞成長因子、上皮成長因子、血小板由来成長因子及び形質転換成長因子、及び前述のいずれかの組み合わせを含むが、これらに限定されない。
【0068】
[0072] いくつかの実施形態では、構築物は、抗細菌化合物(殺菌及び静菌化合物を含む)、抗生物質(例えば、アドリアマイシン、エリスロマイシン、ゲンチマイシン、ペニシリン、トブラマイシン又はバンコマイシン)、抗真菌化合物、抗炎症剤、抗寄生虫化合物、抗ウイルス化合物、酵素、酵素阻害剤、糖タンパク質、成長因子(例えば、リンホカイン、サイトカイン)、ホルモン、ステロイド、グルココルチコステロイド、免疫調節剤、免疫グロブリン、ミネラル、神経遮断薬、タンパク質、ペプチド、リポタンパク質、殺腫瘍化合物、腫瘍抑制化合物、毒素及びビタミン(例えば、ビタミンA、ビタミンE、ビタミンB、ビタミンC、ビタミンD、又はそれらの誘導体)から選択されるがこれらに限定されない、1つ以上の追加の成分をさらに含む。上記のいくつか又は全部の選択された断片、部分、誘導体、又は類似体が使用され得ることも想定される。
【0069】
[0073] いくつかの実施形態では、本明細書に記載及び企図される方法は、心臓病の治療又は予防に使用するための構築物を含むキットを提供すること、及び任意選択で、構築物の使用方法に関する説明書を提供することを含む。本発明の実施形態による本明細書に記載の構築物のいずれも、キットに含めることができる。
【0070】
II. 使用方法
[0074] 本明細書に記載される胎盤性由来組成物及び1つ以上の胎盤性由来組成物を含む構築物は、様々な心疾患を治療、予防、又は調節することに関連する任意の数の使用において用途を見出す。構築物はさらに、研究及びスクリーニング用途において利用される。例示的な使用は、本明細書に記載される。
【0071】
[0075] いくつかの実施形態では、構築物は、冠動脈バイパス移植手術後の新規発症術後心房細動を予防するために使用される。心臓手術後の心房細動は患者の約3分の1で起こり、再入院率の増加、合併症、及び死亡と関連する。炎症及び酸化ストレスは、新規発症術後心房細動(NOPAF)の病態生理学において重要な役割を果たす可能性がある。
【0072】
[0076] NOPAFの予防に関連するいくつかの実施形態では、構築物は、冠動脈バイパス移植手術中に対象の心臓に適用される。いくつかの実施形態では、構築物は、冠動脈バイパス移植手術中に、心臓の基部まで延びる左心房上の血管移植の部位に適用される。
【0073】
[0077] いくつかの実施形態では、構築物は、弁置換及び/又は修復後に、心臓の基部まで延びる左心房上において対象の心臓に適用される。
【0074】
[0078] いくつかの実施形態では、構築物は、左心室内の機械的循環支持デバイスの部位に適用される。
【0075】
[0079] いくつかの実施形態では、構築物は、弁置換及び/又は修復後に、心臓の基部まで延びる左心房上において対象の心臓に適用される。
【0076】
[0080] いくつかの実施形態では、シート、層、又はパッチの形態をそれぞれ有する、1つ以上の胎盤由来組成物を含む構築物は、合成又は生物学的材料を使用して、対象の心臓、例えば心臓の心膜表面に適用される。例えば、いくつかの実施形態では、3つのそのような構築物が、対象の心臓の心膜の表面に、及び/又はそれに近接して適用される。例えば、限定するものではないが、3つのそのような構築物が使用される例示的な実施形態では、第1の構築物は右心膜にクリップ留めされ(又は固定デバイスで別様に固定され)、第2の構築物は横隔膜心膜にクリップ留めされ(又は固定デバイスで別様に固定され)て右心室下部に隣接し、第3の構築物は前右/左心室上に局所的に配置され、心膜が局所的に配置された第3の構築物上に配置されて、構築物を定位置に維持する。
【0077】
[0081] 3つのそのような構築物が使用される別の例示的な実施形態では、第1の構築物は、心膜が閉じられた後に、右心房上の配置に近似するために心膜縁部にクリップ留めされ(例えば、青色負荷媒体(3~5mm)金属クリップ)又は別の適切な金属クリップ留めデバイス若しくは手段を用いて、第2の構築物は、左心室前部上の配置に近似するために心膜縁部にクリップ留めされ、第3の構築物は、右心室下部を覆うために心臓の基部に配置され、そこにクリップ留めされるか、又は別様に固定される。2つ以上の構築物が心臓に適用される場合、それぞれは心臓に固定されていてもいなくてもよく、同じデバイス又は手段によって固定されていてもいなくてもよい。固定又はクリップ留めデバイス及びその構成材料は特に限定されず、構成物を心膜縁部に効果的に固定するのに適し、手術後に対象内に残るのに適した任意の生体適合性デバイスであり得る。
【0078】
[0082] いくつかの実施形態では、それぞれが1つ以上の胎盤由来組成物を含む少なくとも2つの構築物が対象の心臓に適用される。いくつかの実施形態では、3つのそのような構築物が心臓に適用される。2つ以上のそのような構築物が心臓に適用される実施形態では、構築物は、互いに接触し得るか、又は接触し得ないか、又は互いに重複し得るか、又は重複し得ない。いくつかの実施形態では、各胎盤由来組成物(ひいては、それを含む各構築物)は、独立して、例えば、限定されないが、約5×6cm、又は約5×7cm、又は約6×6cm、又は約7×7cm、又は約6×8cm、又は約6×10cm、又は約8×10cm、又は約10×10cmの長さx幅の寸法を有し得る。
【0079】
[0083] 2つ以上の構築物が対象の心臓に適用されるいくつかの実施形態では、各構築物は表面積を有し、適用される全ての構築物の表面積の合計は、有利には少なくとも約30~約150平方センチメートル(cm)であるべきである。いくつかの実施形態において、例えば、限定されないが、適用される構築物の全表面積は約10~約170cm、例えば、約10~約120cm、又は約30~約120cm、又は約40~約110cm、又は約40~約100cm、又は約50~約100cm、又は約20~約80cmである。例えば、限定されないが、3つの構築物の実施形態では、構築物のそれぞれが1つ以上の胎盤由来組成物を含み、表面積を有し、構築物の表面積の合計は少なくとも約90cmであり得る。
【0080】
[0084] いくつかの実施形態では、2つの構築物が対象の心臓に適用され、各構築物は約7×7cmの寸法を有する。いくつかの実施形態では、3つの構築物が対象の心臓に適用され、各構築物は約5×6cmの寸法を有する。2つ以上の構築物が心臓に適用される任意の実施形態では、構築物は、互いに同じサイズである必要はなく、互いに同じ組成である必要もないことに留意される。さらに、理論によって制限されることを望むものではないが、2つの構築物の使用は、心臓を治療するのに有効である(例えば、NOPAFを予防又は最小限にするなど)が、3つの構築物(そのそれぞれは、本明細書に記載及び企図される発明による)を心臓に適用することは、治療の有効性のさらなる改善を提供するであろうと考えられる。
【0081】
[0085] いくつかの実施形態では、構築物は、心臓の画定された範囲;最低でも、右心房、前右心室、右心室下部、前右心室及び左心室上に配置される。
【0082】
[0086] いくつかの実施形態では、構築物は、低侵襲技術、例えば、内視鏡、ロボット及び/又はトロカール技術によって、対象の心臓(又は隣接組織)に適用される(例えば、接触する)。
【0083】
[0087] いくつかの実施形態では、構築物は、心臓の表面、又は隣接組織の表面上への注入又は噴霧によって投与される。
【0084】
[0088] 本明細書に記載の構築物は、任意の数の異なる心臓組織への適用において用途を見出す。いくつかの実施形態では、心臓組織は、心筋組織、心外膜表面組織、又は心内膜表面組織である。
【0085】
[0089] いくつかの実施形態では、構築物は、瘢痕化した心臓組織の血管再生及びリモデリングを促進するための治療において用途を見出す。心臓瘢痕は、最初は壊死性心筋細胞及び組織からなり、それらは、フィブリン、フィブロネクチン、ラミニン、GAG及び他のマトリックスタンパク質からなる肉芽組織と置き換えられる。経時的に、筋線維芽細胞は組織に浸潤し、主にコラーゲンに基づく硬く、より線維性の瘢痕にリモデリングする。瘢痕化した心臓の領域に対する1つの従来の治療は、組織を穿孔して組織の血管再生及びリモデリングを誘発することである。そのような血管再生は、心筋細胞の生存を促進し、心臓幹細胞がその領域に再増殖することを可能にすることができる。この治療法の以前の型は、心筋を穿刺するために針状アレイを利用したが、現行の従来の治療法は組織を穿刺するためにCOレーザーを使用することである。経心筋血行再建術又はTMRと呼ばれるが、レーザーによって生成されるチャネルが実際に血管を許容又は局在化するという証拠はほとんどない。それにもかかわらず、治療後の心拍出量にはいくらかの改善がある。同様に、様々な起源の幹細胞の注入は、瘢痕化及び肥大した心臓における心機能を改善又は回復させるための別のアプローチであった。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される構築物は、TMRと組み合わせて(例えば、TMRの部位におけるパッチとして)使用される。
【0086】
[0090] いくつかの実施形態では、本明細書に記載の治療法のうちの1つ以上は、遺伝子治療治療と組み合わせて(例えば、アデノ随伴ウイルスベクター(AAV)又は他のベクターを使用して)提供される。遺伝子導入のためのアデノウイルスベクター及び方法の例は、公開されたPCT出願番号国際公開第00/12738号及び国際公開第00/09675号、並びに米国特許第6,033,908号、同第6,019,978号、同第6,001,557号、同第5,994,132号、同第5,994,128号、同第5,994,106号、同第5,981,225号、同第5,885,808号、同第5,872,154号、同第5,830,730号、及び同第5,824,544号(これらのそれぞれは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている。
【0087】
[0091] 例えば、いくつかの実施形態では、遺伝子治療は、羊膜成分治療時又は異なる時間に、(例えば、心臓の冠静脈洞を通して)心臓に局部的に送達される。いくつかの実施形態では、遺伝子治療アプローチは、融合タンパク質を生成しない(例えば、抗体を最小化しない)単一又は複数のプラスミド合成ヒト遺伝子を利用する。遺伝子治療における使用のための遺伝子の例としては、s-100、SDF又はVEGFが挙げられるが、これらに限定されない。
【0088】
[0092] 以下の説明は、本明細書に記載及び企図される方法の例示的な実施形態であり、対象の心臓の表面上に、又は対象の心臓に近接して1つ以上の胎盤由来組成物を含む構築物を適用することに適用される。ヒト心臓を含む例示的な手術部位を示す概略図を提供する図1A及び1Bを参照すると、最初に心膜を開き、心臓を露出し、3つの構築物10、20、30(図1A)の相対的な配置を示し、次いで、心膜を閉じ、心臓を覆い、3つの構築物10、20、30(図1B)の術後位置を示す。
【0089】
[0093] 以下の説明は、両方がヒト胎盤に由来し、両方が凍結乾燥されている羊膜由来組成物及び絨毛膜由来組成物(以下、「脱水羊膜/絨毛膜同種移植片」、以下「dHACA」と称する)をそれぞれが含む3つの構築物10、20、30を使用することに関するが、以下の方法は例示的な実施形態として提供され、したがって、上記で別様に記載及び企図されるように、互いに同じであっても又は異なっていてもよい任意の1つ以上の胎盤由来組成物を含む任意の1つ以上の構築物の使用に適用可能であることに留意される。
【0090】
手術前の準備
[0094] 1. 胎盤組織の無菌処理
[0095] エンドトキシンアッセイ試験(任意選択)
a. 胎盤由来組成物/構築物の供給源で行われる
【0091】
[0096] 2. グラム染色試験
a. 感染した創傷に入る場合
i 培養カップ中のヘパリン化生理食塩水中に膜を3回浸漬し、旋回させる
ii 溶液をグラム陽性/陰性染色及び培養のために送る
iii これは縦隔に配置する前に行うべきである
iv これは、手術野のバックテーブル上で行うことができる
【0092】
[0097] 3. 3つの5cm×6cmのdHACA構築物10、20、30(図1A~1Bを参照)(それぞれ、シート又はパッチ形状である(例えば、ヒト同種移植羊膜/絨毛膜の全90cm局所用量))は、手術野で開かれるべきである
【0093】
手術中の工程
[0098] 1. ヘパリン化生理食塩水
a. 配置の前に、開封されたパケットの中で、1つの乾燥した5cmx6cm dHACA構築物(10)の上に2mlのヘパリン化生理食塩水を配置する
【0094】
[0099] 2. 右心膜配置(右心房)、外科医側(患者の胸部の右側)から
a. ロシア鉗子x2を使用し、第1の湿潤dHACA構築物(10)bの縁部を拾う
b. 右心房の下半分を垂直に提示する
c. 心膜の縁部を切断するために、第1の湿潤dHACA構築物(10)を縦に近づける
d. 第1の湿潤dHACA構築物(10)上に3つの青色クリップを配置し、心膜の縁部を切断するためにクリップ留めする(図1Aを参照)
【0095】
[00100] 3. 横隔膜配置(右心室配置)、外科医側(患者の胸部の右側)から
a. ロシア鉗子x1を使用し、第2の湿潤dHACA構築物(20)の中央/中心を拾う
b. 左手を使用して横隔膜表面を覆う右心室縁部をやさしく押し戻す
c. 外科第1助手は、縁部を近づけ、第2の湿潤dHACA構築物(20)を横隔膜表面にクリップ留めするのを助けることができる
d. 3つの青色クリップ(3~5mmの金属クリップ)を使用して、内側クリップ、中間クリップ、及び外側クリップを、切断された横隔膜心膜縁部に近づけるべきである。
e. 横隔膜心膜縁部が乾燥しており、止血が良好であることを確認する。
f. 左縦隔胸腔チューブの配置と心室ワイヤの配置方法については、以下を参照
【0096】
[00101] 4. 心室前部配置(左心室前部配置)、外科医側(患者の胸部の右側)から
a. 外科第一助手は、左心膜の切断された心膜縁部上の心膜ステッチを持ち上げることによって補助する必要がある
b. 心室前部(左前下行動脈領域に近い方を特定する必要がある)
c. ロシア鉗子x2を使用して、第3の湿潤dHACA構築物(30)の縁部を拾うべきである
d. これは、右心室前部(1/3)及び左心室の前部(1/2)を含み得る左前下行動脈領域の下半分上に配置されるべきである。
e. 天然の心膜を、配置された第3のdHACA構築物(30)上に近づけ、dHACA構築物上に近づけた心膜がそれを定位置に固定する(以下を参照されたい)。
【0097】
[00102] 5. 心膜接近、外科医側(患者の胸部の右側)から
a. 1.0シルク心膜ステッチを使用し、大動脈の上、大動脈カニューレ挿入部位のすぐ上で左右の心膜を近づけ、大動脈-無名接合部のすぐ下に近づける。これを4ノットで結ぶ
b. 1.0シルク心膜ステッチを使用し、左右の心膜を大動脈の根元上で近づける。これを4ノットで結ぶ
c. 右心膜(第1)、横隔膜(第2)、及び心室前部(第3)dHACA構築物10、20、30のそれぞれが配置された後、1.0シルク心膜ステッチを使用して、右下の切断された心膜縁部を近づけ、次いで、横隔膜中央の切断縁部に近づけ、同じステッチを続けて、左の切断された心膜縁部の切断縁部を通る。この「v」形状のステッチを、縁部を一緒にするために近づける。これを4ノットで結ぶ。
【0098】
[00103] 6. ペーシングワイヤ、外科医側(患者の胸部の右側)から
a. 心房ワイヤ
i. 心房ワイヤ用の2本のバイポーラワイヤを心耳上に配置することができる
ii. ワイヤは、右縦隔溝(心膜反射及び下大静脈)に配置されるべきである
iii. ワイヤは、右心膜(第1)dHACA構築物(10)を配置する前に配置されるべきである
iv. 第1のdHACA構築物(10)が右心房組織への最大曝露を有することを確認する
b. 心室ワイヤ
i. 右下心室バイポーラワイヤ(X1)は、右下心室中腹部に配置されるべきである
ii. 心室ワイヤは、横隔膜心膜(第2)dHACA構築物(20)を配置する前に配置されるべきである
iii. ワイヤは、横隔膜の上方の鎖骨中線から出るべきであり、横隔膜に配置された(第2)dHACA構築物(20)に近づかないようにあらゆる試みがなされるべきである
【0099】
[00104] 7. 胸部チューブの配置、外科医側(患者の胸部の右側)から
a. 24 French心膜Blake縦隔胸部チューブx2(右及び左縦隔胸部チューブ)
b. 右心膜(第1)dHACA構築物(10)がクリップ留めされた後、右縦隔胸部チューブを配置する。
c. これを右縦隔溝に、下大静脈-右心房接合部のすぐ上で、第1の湿潤dHACA構築物(10)の下に配置し、切断した縦隔Blake胸部チューブの先端を上大静脈-右心房接合部の近くに向ける
d. 横隔膜心膜(第2)dHACA構築物(20)をクリップ留めした後、ロシア鉗子を右手に取り、左縦隔Blakeの切断先端を取り、左手を使用して右心室ワイヤ(横隔膜右心室表面上)上に人差し指を置き、心室を上方に押圧し、縦隔胸部チューブの先端を左心室の尖部の下方に置く。
e. 胸骨を閉じる前に、心膜縁部を近づけた後、縦隔胸部チューブの胸膜排出装置に-20cmのHOの吸引を配置する必要がある。
【0100】
[00105] 8. 胸骨ワイヤ配置及び胸骨閉鎖
a. ラップパッドは、胸骨を閉じる前に、近づけた心膜の上に配置されるべきである
b. 8本の外科用鋼線が使用される(又は外科医の通常の方法の好みによる閉鎖)
c. 良好な止血及び胸骨の最終的な接近後のラップパッドの除去
d. 胸骨閉鎖時の血行動態のモニタリング(心臓外科的適応のために必要であれば、動脈ライン及び/又はSwan-Ganzカテーテル配置;ヒト同種移植膜配置のためのSwan-Ganzカテーテルを有する必要はない)
e. 深、浅筋膜及び皮膚は、通常の外科的様式で層状に閉鎖される
【実施例
【0101】
実施例
[00106] 以下の実施例は、本開示の特定の実施形態を実証し、さらに例示するために提供され、その範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0102】
[00107] 実施例1
[00108] ヒト胎盤由来組成物の埋め込みは、新規発症術後心房細動(NOPAF)を減少させる。
[00109] 冠動脈バイパス(CABG)手術を受けている患者は、脱水ヒト胎盤(羊膜/絨毛膜)同種移植羊膜/絨毛膜(「PAM」)で治療されたか、又は治療されていず、すなわち、治療(+PAM)又は非治療(-PAM)であった。より具体的には、PAMは、無菌処理され、凍結乾燥され、積層された羊膜及び絨毛膜(Edison、New Jersey、U.S.A.のMusculoskeletal Transplant FoundationからAMNIOBAND(登録商標)Membraneの商品名で様々なサイズで市販されている、「MTF」)からなるdHACA構築物であった。サイズ5cm×6cmのPAM同種移植片をこの実験で使用した。患者が腎不全(糸球体濾過率が50%低下し、クレアチニン増加が0.3)、心不全(駆出率が35%未満)、心房細動の以前の治療を提示し、又は患者が併用治療(多血小板血漿、経心筋血行再建術、弁置換術を含むが、これらに限定されない)を必要とすることが医師によって決定された場合、その患者は分析から除外された。ほとんどの患者の人口統計は群間で類似しており、表1(独立サンプルT検定又はノンパラメトリック代替又は二分データに対するフィッシャーの正確検定)に要約されている。これまでに、32人のCABG(-PAM)患者及び14人のCABG(+PAM)患者が研究に含まれている。14人のCABG(+PAM)患者のそれぞれに対する治療は、3つのPAMパッチの配置を含み、2つは、1つのPAMパッチの配置を左心室前部(図2及び3)上に、また別のPAMパッチ(図4)の配置を右心房上に近づけるために、心膜にクリップ留めされ、第3のPAMパッチは、右心室下部を覆うように心臓の基部に配置された(図5)。CABG(-PAM)患者はPAM配置を受けなかった。PAMで治療された患者のうち、CABG(-PAM)患者の37.5%と比較して、1人のみがNOPAFを発症した(表2)。
【0103】
【表1】
【0104】
【表2】
【0105】
[00110] 実施例2
[00111] ヒト胎盤由来組成物の埋め込みは、心不全(HF)及び腎不全(RF)患者における新規発症術後心房細動(NOPAF)を減少させる。
【0106】
[00112] 冠動脈バイパス(CABG)手術を受け、腎不全(糸球体濾過率が50%低下し、クレアチニン増加が0.3)又は心不全(駆出率が35%未満)も有した患者を、実施例1に記載したように、PAMで治療したか又は治療せず、すなわち、治療(+PAM)又は非治療(-PAM)であった。それぞれ5cm×6cmのサイズの3つのPAM同種移植片をこの実験に使用し、実施例1に記載したのと実質的に同じ位置に埋め込んだ。患者が以前に心房細動の治療を受けたことがある場合、又は患者が併用治療(多血小板血漿、経心筋血行再建術、弁置換術を含むが、これらに限定されない)を必要とすることが医師によって決定された場合、その患者は分析から除外された。表3に要約された患者の人口統計(可能であれば、独立サンプルT検定又はノンパラメトリック代替又は二分データに対するフィッシャーの正確検定)。PAMで治療されたHF及びRFを有する患者の両方は、非治療の患者よりもNOPAFの発生率が低かった(表4)。
【0107】
【表3】
【0108】
【表4】
【0109】
[00113] 実施例3
[00114] PAMによる治療v多血小板血漿(PRP)による治療
[00115] 多血小板血漿(PRP)治療は、創傷治癒及び再生を促進し、炎症を低減するために使用されている。このため、CABG処置を受けている患者は、表5に記載されるように、PRP単独で(+PRP)、又はPAM治療と組み合わせて(+PRP+PAM)治療された。PRP治療は、患者の血液を単離し、まず1250Gで1~3分間遠心分離し、続いて1050Gで6~9分間遠心分離して高濃度のPRPを得ることを含んだ。次いで、10mLのPRPを、5000単位のトロンビンへの5mLの塩化カルシウムからなる5mLのCaCl/トロンビン混合物と合わせる。(これらの処置で使用されるPRPの詳細な説明及び具体的な調製については、以下のセクション-PRP調製を参照されたい)。
【0110】
[00116] PRPをCaCl/トロンビン(上記)と混合する前に、この混合物を経心筋レーザー(TMR)と共に使用し、PRP混合物の2mlの赤色画分(多血小板血漿、PRP調製物)0.5mlを次に、心停止を伴う心筋に、TMR損傷の中心の周囲0.5cmに注入した。TMR損傷は瘢痕領域の周囲に集中していたか、又は不十分な外科的標的(すなわち、血行再建のためのサブミリメートル血管)が存在する。操作者は、それぞれ8ワットのエネルギーバースト(Cryolife energy source、FDA認可装置、米国)で作製された10x損傷を作製する。TMRが実施されなかった場合、同じ体積のPRP混合物の赤色画分を、末梢境界のゾーン及び瘢痕又は不十分な外科的標的ゾーンに注入した。
【0111】
[00117] PRP治療単独では、NOPAFに関して患者に何らの利益ももたらさなかった。任意の形態のPAM治療はNOPAFの発生率を低下させたが、+PRP+PAMの組み合わせは、併用療法によるNOPAFの発生率がないことによって実証されるように、相乗効果を有するように思われた。
【0112】
【表5】
【0113】
[00118] 多血小板血漿(PRP)-説明及び調製
[00119] 多血小板血漿(PRP)は、ヒト全血と比較して異なる血小板濃度を有する血漿の画分である。PRPの血小板含有量は、典型的には6×1011血小板/mlである。PRPはヒトの全血を異なる遠心速度で繰り返し遠心分離及び洗浄し、異なる濃度の血小板及び抗凝固剤を混合することによって得られる。PRPは典型的には多くのサイトカイン、例えば、EGF、TGF-β、PDGF、及びIGF-1を含有する。本明細書で議論及び使用されるように、PRPは全血中の血小板の生理学的濃度よりも3~5倍高いヒト血小板の自己濃度を意味し、健康なヒト個体における正常な血小板数は、典型的には全血の150000~350000細胞/μLの範囲である。理論によって制限されることを望むものではないが、血小板が損傷組織又は傷害組織などの組織部位に到達すると、血小板は局部的に存在する幹細胞にシグナルを送り、活性化すると考えられる。幹細胞が活性化すると、それらは損傷細胞を認識し、組織部位における組織のタイプを産生、再建、及び/又は治癒するのに必要な細胞のタイプに変わる(例えば、分化する)。したがって、限定されないがCABGなどの外科処置中のPRPの導入又は埋め込みは、治癒を促進又は増強することとして有益であると考えられる。
【0114】
[00120] PRPの調製プロセス
デバイス/機械:Harvest Smart Prep 2、患者血液のサンプルからPRP/PPPを調製するために使用。
【0115】
[00122] 速度:
[00123] プロセス2500RPMへの1~3分(G力:1250)
[00124] プロセス2300RPMへの6~9分(G力:1050)
【0116】
[00125] 使用した製品/供給:
[00126] CaCl/トロンビン(より小さい注射器)-5mlの塩化カルシウムを5000単位のトロンビンへ。
【0117】
[00127] カルシウムは、2mlのACDA 58mlの患者全血と共に60ml注射器で使用されるACDAの抗凝固効果を逆転させるために使用される(ACDA=抗凝固剤クエン酸デキストロース溶液、溶液A、これはPRPの生成において自己PRP系を用いた体外処理において抗凝固剤として使用される)。
【0118】
[00128] トロンビンは血小板を活性化する
[00129] サイトカイン(細胞シグナル伝達におけるタンパク質)は血小板濃度と共に増加し、より多くの成長因子を有する。幹細胞は、細胞分裂を刺激するGFに誘引される。
【0119】
[00130] 成長因子:
[00131] PDGF、血小板由来成長因子:WBC及び幹細胞の化学誘引、
[00132] TGF-β、形質転換成長因子-β:有糸分裂を促進し、コラーゲン1型産生を増加させる
[00133] VEGF、血管内皮成長因子:血管新生(新しい血管の発生)を刺激する。
【0120】
[00134] CaCl/トロンビン(血小板ゲル)混合物に対するPRPの比: 1:2
[00135] 5mlのCaCl:10mlのPRP
[00136] PPP -イエローカップ:25mlの血小板不足血漿-血小板中の濃度が低い
[00137] PRP -レッドカップ:10mlの多血小板血漿-血小板がより濃縮されている
【0121】
[00138] 手順
[00139] PRPは、遠心分離の前に患者の血液から得た(58mlの全血を2mlのACDAで採取した)。PRPキットに提供された60mlカップを使用する遠心分離(Harvest Smart Prep 2を使用して14~16分)後、それらの異なる密度勾配に従って、血液成分(赤血球、PRP、及び血小板不足血漿[PPP])の分離が60mlカップ中で起こった。
【0122】
[00140] 25mlのPPPを、PRPキットに提供された黄色の注射器を用いて、60mlカップから吸引した。バフィーコート/PRP及び赤血球が60mlカップ中に残っていた。次いで10ml以下のPRPを60mlカップから、60mlカップの底部に堆積した赤血球(RBC)のコートと一緒に吸引する。次いで、PRP、PPP及びCaCl/トロンビン混合物を、適用の適切な時点で混合するために、滅菌野に別々に通した。
【0123】
[00141] 実施例4
[00142] PAMは、ブタMIモデルにおいて梗塞サイズを減少させ、機能の回復を促進する。
【0124】
[00143] 雄家畜ブタ(3~4ヶ月齢、S&S Farms、San Diego、CAから入手)を、心筋梗塞(MIのみ)(n=4)又はPAMを伴うMI(MI(+PAM)n=3)に無作為に割り当てた。PAMは上記の実施例1で使用したものと同じタイプの同種移植片であった(すなわち、Edison,N.J.のMTFからAMNIOBAND(登録商標)Membraneとして市販されている)。簡潔に述べると、カテーテル誘導血管形成バルーンを左前下行冠動脈内で45分間膨張させて閉塞を引き起こすことによって、経皮虚血再潅流プロトコルを介してMIを誘導した。MI誘導及び再潅流の成功後、MI(+PAM)群は、正中半胸骨切開を受けて左心室を露出させ、ここで単一のPAMを梗塞領域に縫合した。屠殺前に、手術前、手術直後、及び手術の2週間後に経胸心エコー検査を実施した。駆出率はMI直後に両群で減少したが、MIのみと比較してMI(+PAM)群ではMI後2週目に有意に回復した(それぞれ46.77±2.73対35.81±4.47、p=0.014)。さらに、屠殺後、心臓組織切片を2,3,4-トリフェニルテトラゾリウムクロリド(TTC)で染色して梗塞を可視化した。TTC染色は、MIのみと比較してMI(+PAM)ブタにおける梗塞サイズの有意な減少を示した(それぞれ11.03% v 22.02%、p=0.039)。ピクロシリウスレッド染色は、MIのみの群において、梗塞ゾーンと遠隔の健康ゾーンとの間のコラーゲン含有量の有意差を示し、線維性リモデリングを示唆した(p<0.01)。しかしながら、MI(+PAM)群では、梗塞ゾーンと健常ゾーンとの間でコラーゲン含有量に有意差はなく、損傷及び線維症の減少を示唆した(p=0.31)。切片はまた、M2a抗炎症性マクロファージのマーカーであるCD206について染色され、MI(+PAM)梗塞ゾーン組織はMI梗塞ゾーン及び健常対照と比較して、M2aマクロファージ浸潤の増加傾向を示し、MI後微小環境におけるPAMの免疫調節効果を示唆した。
【0125】
[00144] 実施例5
[00145] 心臓バイパス手術を受ける患者におけるPAM同種移植片の安全性及び有効性を評価するための前向き臨床試験。
【0126】
[00146] 研究集団:バイパス;冠動脈バイパス移植(CABG)を必要とする選択的オンポンプ心臓手術を受ける100人までの男性又は女性(60~80歳)成人を募集する。対象が術前評価を受け、臨床試験に適格であると判断された後、対象は試験デザインに組み入れられる。第1相は、PAM(すなわち、上記の実施例1及び2に記載及び使用された二重層dHACA構築物、Edison,NJのMTFから市販されている)の使用の安全性を試験するために実施される。試験の無作為化部分は、安全性データのレビュー後に実施される。前向き無作為化比較試験では、初回単独冠動脈バイパス移植を受けた対象に対して、開心術後のNOPAF発生率を低下させるPAM技術の有効性が評価される。処置の安全性及び有効性は、手術処置から処置後30日まで評価される。最初の8人の対象は、PAMを受けるように割り当てられる。2人以下の患者がPAMに関連すると考えられる有害事象(AE)を経験し、DSMBの承認を得た場合、試験は無作為化段階に進む。患者は、登録の30日前又は試験期間中に他の治験治療を受けてはならない。
【0127】
[00147] 介入及び無作為化:対象は、層別ブロック無作為化を用いて、サイズ4、6、又は8のブロックを用いて、1:1比で治療群又は偽群のいずれかに無作為化される。PAM治療に無作為化された対象は、閉鎖前に心外膜上に配置された3つのPAM同種移植片を有するが、偽群はPAM又は任意の他の移植片を配置することなく、自己心膜嚢の開放及び閉鎖を受ける。「プラセボ」パッチよりも偽治療を選択して、患者のリスクを最小限に抑える。無作為化後、対象は、治療群に組み入れられた場合、閉鎖前に心外膜上に3つのPAM同種移植片を受けるルーチンのCABGを受ける。Reveal LINQ (Medtronic)挿入可能心臓モニターを埋め込んでリズムをリアルタイムで分析する(又は心房細動の有無を確認するために、1つ又は2つのリード心電図を提供する任意の他のデバイス)。デバイスは、手術中に胸部の皮膚の下に配置され、3年までの心拍数、心拍変動、及び異常なリズムを記録する。
【0128】
[00148] エンドポイント:一次安全性エンドポイントは、術後30日以内に発生する処置関連の重篤な有害事象の複合である。二次安全性エンドポイントには、バイパス移植片不全、及び30日以内に起こる処置関連事象が含まれる。一次有効性エンドポイントは、術後10日以内のNOPAF又は退院のいずれか早い方である。さらなる有効性結果には、心膜炎症(術後3日目のT2強調MRI)、C反応性タンパク質、TNF-、IL-2、IL-6、及びIL-8を含む炎症性バイオマーカー、心房細動負荷、周術期MIの発生率、タンポナーデの発生率、並びにORにおける術前及び術後、並びに術後3日目の血液サンプルからのメタボロミクスが含まれる。
【0129】
[00149] 統計解析計画:ロジスティック回帰を用いて、治療企図解析におけるPAM治療に関連するNOPAF事象のオッズの減少を評価する。回帰モデルは切片(プラセボNOPAF率)、PAM治療効果、性別、及び年齢に関する用語を含み、これはNOPAF事象と強く関連している。Markov連鎖モンテカルロを用いたベイジアン推論を用いてPAM治療効果を評価する。log(0.2/0.8)を中心とする有益な事前確率をNOPAFのプラセボ対数オッズに使用し、一方、ゼロ(効果なし)を中心とするやや有益な事前確率をPAM治療効果に使用する。プラセボ事前分布はSTSデータ(表2)に基づくが、90%又は事前確率を0.1~0.35の比率とするようにダウンウェイトされており、したがって、ベースライン比率におけるより大きな不確実性を可能にする。この治験はPAM治療がプラセボと比較してNOPAFの発生率が少なくとも50%減少し、90%を超える事後確率を有する場合に、成功したとみなされる。
【0130】
[00150] 実施例6
[00151] PAM同種移植片の細胞及び分子機構。
[00152] PAM同種移植片は、I/R損傷後に心臓(虚血領域を含む心外膜)に直接適用される。
【0131】
[00153] PAM(すなわち、上記の実施例1及び2に記載され、Edison,NJのMTFからAMNIOBAND(登録商標)Membraneとして市販されている二層dHACA同種移植片)、及び生細胞を含有する生存可能な(湿潤/非脱水)羊膜同種移植片、PAM(V)(Edison,NJのMTFからAMNIOBAND(登録商標)Viableの商品名で入手可能)を評価のためにアッセイする。ブタを3群のうちの1群に無作為に割り当てる:(1)対照(MIのみ)、(2)PAM、又は(3)PAM(V)。ブタを60分間の虚血に供し、MI後60日目に屠殺する。再潅流の2時間後に血液を採取し、心筋トロポニンI(cTnI)を測定して心臓損傷の程度を検証する。非梗塞ブタも同種移植対照として含まれる。
【0132】
[00154] 心臓リモデリングを決定するための実験方法。
[00155] 連続経胸壁心エコー検査:心エコー検査は、LogicE超音波を用いて、MI手術の前と、MIの10日後、30日後、及び60日後に再度実施する。2次元Mモード心エコー画像は、中心室のレベルで傍胸骨短軸ビューから得られる。心腔寸法及び左心室壁厚が測定される。駆出率(EF)、左心室容積(LV Vol)、左心室後壁厚(LVPW)及び内部寸法(LVID)は、Mモード画像から測定される。Vevo 2100分析ソフトウェアを用いてデータを分析する。データは三連で得られ、平均化される。
【0133】
[00156] 組織学的分析:60日間の再潅流後、心臓を迅速に切除し、切片化し、エバンスブルー及び塩化トリフェニルテトラゾリウム(TTC)で二重染色して、梗塞サイズ、リスク領域及び壊死領域を規定し、組織学的及び免疫組織学的分析のために調製する。コラーゲンの評価のために、ピクロシリウス染色組織切片を偏光顕微鏡カメラ(Axio Imager M1、Zeiss、Oberkochen、Germany)で捕捉して、コラーゲン線維の複屈折を検出する。画像を半自動画像解析プログラム(AxioVision、Zeiss)によって定量化する。色閾値は、成熟コラーゲンを検出するように規定される。複屈折の領域は次に、関心対象の総面積により正規化される(Chen H,Hwang H,McKee LA,Perez JN,Regan JA, Constantopoulos E,Lafleur B,and Konhilas JP.Temporal and morphological impact of pressure overload in transgenic FHC mice.Frontiers in physiology.2013;4(205); Danilo CA,Constantopoulos E,McKee LA,Chen H,Regan JA,Lipovka Y,Lahtinen S,Stenman LK,Nguyen TV,Doyle KP,et al.Bifidobacterium animalis subsp.lactis 420 mitigates the pathological impact of myocardial infarction in the mouse.Beneficial microbes.2017;8(2):257-69;Konhilas JP,Watson PA,Maass A,Boucek DM,Horn T,Stauffer BL,Luckey SW,Rosenberg P,and Leinwand LA.Exercise can prevent and reverse the severity of hypertrophic cardiomyopathy.Circ Res.2006;98(4):540-8;Perez JN,Chen H,Regan JA,Emert A,Constantopoulos E,Lynn M,and Konhilas JP.Effects of chemically induced ovarian failure on voluntary wheel-running exercise and cardiac adaptation in mice.Comparative medicine.2013;63(3):233-43)。
【0134】
[00157] 心室リモデリングを特徴付けるために、炎症を測定するためのマクロファージマーカーであるCD68;筋細胞を同定するためのパンアクチン;線維芽細胞などの非上皮間葉系細胞集団を同定するためのビメンチン;血管新生のマーカーとしてのPecam1;及び間葉系幹細胞マーカーとしてのALDH1A1に対する抗体を用いて、心臓切片を評価する。炎症の全体的評価のために、記載されるように、切片を弾性線維、核、筋肉、フィブリノイド及びコラーゲンの示差染色のためのRussell Movatペンタクローム;筋肉、コラーゲン線維、フィブリン及び赤血球を評価するためのMassonのトリクローム、並びに弾性線維、核、筋肉及びコラーゲンのためのMillerの弾性染色で染色する(Khalpey Z,Penick K,Constantopoulos E,Garcia J,Sweitzer N,Runyan R,and Konhilas J.Meeting abstract submitted to American Heart Association.2014;Stelly M,and Stelly TC.Histology of CorMatrix bioscaffold 5 years after pericardial closure.The Annals of thoracic surgery.2013;96(5):e127-975;Zaidi AH,Nathan M,Emani S,Baird C,Del Nido PJ,Gauvreau K,Harris M,Sanders SP,and Padera RF.Preliminary experience with porcine intestinal submucosa(CorMatrix)for valve reconstruction in congenital heart disease:Histologic evaluation of explanted valves.J Thorac Cardiovasc Surg.2014)。切片はまた、幹細胞のためのc-kit、内皮細胞及び新生血管形成(血管新生_neovascularization_)のためのフォン・ウィルブランド因子、細胞増殖の証拠のためのテロメラーゼ、並びに樹状細胞、内皮細胞及び造血前駆細胞のためのCD34、T細胞のためのCD3、CD5及びCD8、並びにB細胞のためのCD20に対する抗体で染色される。最後に、壊死及び生存可能な心筋の界面は、境界ゾーンと呼ばれる強い細胞活性の領域である(Driesen RB,Verheyen FK,Dijkstra P,Thone F,Cleutjens JP,Lenders MH,Ramaekers FC,and Borgers M.Structural remodelling of cardiomyocytes in the border zone of infarcted rabbit heart.Mol Cell Biochem.2007;302(1-2):225-32;Gottlieb GJ,Kubo SH,and Alonso DR.Ultrastructural characterization of the border zone surrounding early experimental myocardial infarcts in dogs.Am J Pathol.1981;103(2):292-303)。I/R損傷は、梗塞/境界ゾーン及び生存可能な組織を画定することが主観的になるように非常に局所化される。組織学的分析を最適化するために、高分解能組織学及び免疫組織化学を用いて、免疫組織学的解釈を導く。
【0135】
[00158] 炎症応答。炎症は、存在する炎症細胞の密度及びタイプに基づいて、5ポイントスケール(なし、最小、軽度、中等度、又は重度)で半定量的に等級分けされる。同様のスコアリングシステムを用いて、細胞及び組織及び移植片への浸潤の程度を評価する。好酸球応答は、較正されたグリッド上で細胞を計数することによって測定される。移植片上及び周囲組織における組織厚は、較正された段階で測定される。心エコー検査により、収縮末期の左心室内部寸法(LVID)を測定する(Khalpey Z,Penick K,Constantopoulos E,Garcia J,Sweitzer N,Runyan R,and Konhilas J.Meeting abstract submitted to American Heart Association.2014)。
【0136】
[00159] 細胞及び分子分析:一部を切除した心臓を、細胞及び分子調査のために瞬間凍結(液体窒素)する。全RNA及びタンパク質を左心室から単離し、心肥大の病理学的マーカーの発現について分析する。リアルタイムPCRを、LightCycler 480システム(Roche)を用いたUniversal ProbeLibrary Assay(Roche)を介して行う;タンパク質分析を、以前に記載されているようにSDS-PAGE及びウェスタンブロット分析を用いて実施する(Chau et al.,supra;Konhilas JP,Watson PA,Maass A,Boucek DM,Horn T,Stauffer BL,Luckey SW,Rosenberg P,and Leinwand LA.Exercise can prevent and reverse the severity of hypertrophic cardiomyopathy.Circ Res.2006;98(4):540-8.48.Konhilas JP,Chen H,Luczak E,McKee LA,Regan J,Watson PA,Stauffer BL,Khalpey ZI,McKinsey TA,Horn T,et al.Diet and sex modify exercise and cardiac adaptation in the mouse.Am J Physiol Heart Circ Physiol.2015;308(2):H135-45)。心臓リモデリングの公知の病理学的指標とは別に、MI及びPAM同種移植片は、病理学的リモデリングの独特のパターンを誘導し得る。したがって、偏りのないプロテオミクス及びメタボロミクス分析を、以下に記載されるように行う。各時点で、梗塞群及び非梗塞群からの血液をラベンダートップEDTAチューブに入れ、遠心分離して血漿を得、液体窒素中で急速に凍結する。これは、循環サイトカイン及びケモカインの決定並びにメタボロミクス分析のための好ましい方法である(de Jager W,Bourcier K,Rijkers GT,Prakken BJ,and Seyfert-Margolis V.Prerequisites for cytokine measurements in clinical trials with multiplex immunoassays.BMC immunology.2009;10(52))。
【0137】
[00160] メタボロミクス
[00161] 最近のメタボロミクス研究は、心房細動及び新規発症心房細動の戦略などを実施する可能性を実証している((Alonso A,Yu B,Qureshi WT,Grams ME,Selvin E, Soliman EZ,Loehr LR,Chen LY,Agarwal SK,Alexander D,et al.Metabolomics and Incidence of Atrial Fibrillation in African Americans:The Atherosclerosis Risk in Communities(ARIC)Study.PLoS One.2015;10(11):e0142610;Ko D,Riles EM,Marcos EG,Magnani JW,Lubitz SA,Lin H,Long MT,Schnabel RB,McManus DD,Ellinor PT,et al.Metabolomic Profiling in Relation to New-Onset Atrial Fibrillation(from the Framingham Heart Study).Am J Cardiol.2016;118(10):1493-6;Mayr M,Yusuf S,Weir G,Chung YL,Mayr U,Yin X,Ladroue C,Madhu B,Roberts N,De Souza A,et al.Combined metabolomic and proteomic analysis of human atrial fibrillation.J Am Coll Cardiol.2008;51(5):585-94;Zhang Y,Blasco-Colmenares E,Harms AC,London B,Halder I,Singh M,Dudley SC,Gutmann R,Guallar E,Hankemeier T,et al.Serum amine-based metabolites and their association with outcomes in primary prevention implantable cardioverter-defibrillator patients.Europace.2016;18(9):1383-90)。これらの研究はまた、一貫性のない診断、部位特異的サンプリング、及び一様でない代謝産物の適用範囲などの、そのようなアプローチの限界及び落とし穴を特定する(Ko et al、上記)。さらに、メタボロミクスは、動的細胞系のマルチパラメトリック代謝応答を定量的に測定する。その結果、単一の時点からのサンプリングは、病態生理学的侵襲に応答する動的プロセスのスナップショットのみを捕捉する。本明細書に記載される戦略は、術前、術中、及び術後の連続体にわたって、各対象内の代謝産物の縦断的検査を実施することによって、これらの制限を克服する。CABG中に増加又は減少し、NOPAFを誘発する因子を同定する。CABG中のPAMの配置は、これらの不整脈誘発因子を術前レベルに戻す。さらに、左心耳を術中に獲得し、メタボロミクス及びプロテオミクス調査のために液体窒素中で急速凍結する。
【0138】
[00162] プロテオミクス及びメタボロミクス:心組織及び血漿の非標的化メタボロミクスをMetabolon(Durham、NC)によって実施する。確立されたデータベースを介して、代謝産物をフォローアップ評価のために関心対象のシグナル伝達経路とマッチングする(Guo L, Milburn MV,Ryals JA,Lonergan SC,Mitchell MW,Wulff JE,Alexander DC,Evans AM,Bridgewater B,Miller L,et al.Plasma metabolomic profiles enhance precision medicine for volunteers of normal health.Proc Natl Acad Sci U S A.2015;112(35):E4901-10)。実験群からの心臓組織(左心耳)を用いて、実験サンプルのゲル内消化後に質量分析(液体クロマトグラフィー-エレクトロスプレーイオン化-タンデム質量分析[LC-ESI-MS/ MS])を行う。
【0139】
実施例7
心臓外科処置に使用されるPAM同種移植片のエンドトキシンレベルの特徴付け
[00163] 上記の少なくとも実施例1~3に記載及び使用されたPAM同種移植片のいくつかのサンプル(すなわち、Edison,NJのMTFからAMNIOBAND(登録商標)Membraneとして市販されている)を、動力学的発色性Limulus Amebocyte Lysate(LAL)アッセイキット及び試薬(Wilmington, Massachusetts,U.S.A.に位置するCharles Riverから市販されている)、並びに以下に提供されるガイダンスを使用して、細菌エンドトキシンレベルについてアッセイした。米国保健福祉省(United States Department of Health and Human Services)、食品医薬品局(Food and Drug Administration)報告書:Guidance for Industry Pyrogen and Endotoxins Testing: Questions and Answers, June 2012 Compliance,2018年3月22日現在の内容(追加の貢献機関及び団体は、医薬品評価研究センター(Center for Drug Evaluation and Research)(CDER)、生物製剤評価研究センター(Center for Biologics Evaluation and Research)(CBER)、獣医学センター(Center for Veterinary Medicine)(CVM)、医療機器・放射線保健センター(Center for Devices and Radiological Health)(CDRH)、及び薬事局(Office of Regulatory Affairs)(ORA)を含む)。
【0140】
[00164] 標準的な処理に続いて、PAM同種移植片を最終乾燥工程の完了後(及びその最終包装中)に得て、Charles Riverからのキット及び試薬を用いてLAL含有量についてアッセイし、EndoScan-Vソフトウェア、バージョン5.5.5 sp1又は5.1.2を用いて、それに提供される指示に従って走査した。
【0141】
[00165] 一般に、LALアッセイに提供される説明書に従って以下の処置を行った。サンプルを40mlのLAL試薬水中で抽出した。次いで、得られた抽出物を96ウェルプレート上にプレーティングした。サンプルを、Charles Riverから購入した標準を用いて、2連で実行し、並びに2連でスパイクした。Charles Riverから購入した標準の連続希釈液を用いて、各プレート上で曲線を作成する。全てのサンプル及び標準をプレーティングした後、溶解物(Charles Riverから購入)を各ウェルに添加した。次いで、プレートを分光光度計に入れ、Charles Riverからの上記に特定したソフトウェアを使用して読み取った。
【0142】
[00166] 上記で引用したFDA報告書に提供された前述のガイダンスによれば、合格試験は、ストリンジェントなCSF(脳脊髄液)接触限界に対応する<0.05046EU/mL(1ミリリットル当たりのエンドトキシン単位)のエンドトキシン値をもたらすものである。このアッセイを用いて37のドナーロットを試験し、各ロットは<0.5046EU/mlのエンドトキシン値を有した。
【0143】
[00167] 上記の明細書において言及された全ての刊行物、特許、特許出願及び受入番号は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。本発明を特定の実施形態に関連して説明してきたが、特許請求される本発明はそのような特定の実施形態に過度に限定されるべきではないことを理解されたい。実際、本発明の記載された組成物及び方法の様々な改変及び変形が当業者には明らかであり、本開示及び企図される本発明の範囲内であることが意図される。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】