(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-06
(54)【発明の名称】排気ガスシステム用電気加熱ユニット及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H05B 3/42 20060101AFI20230830BHJP
H05B 3/03 20060101ALI20230830BHJP
B01D 53/94 20060101ALI20230830BHJP
【FI】
H05B3/42
H05B3/03
B01D53/94 222
B01D53/94 245
B01D53/94 280
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023500256
(86)(22)【出願日】2021-08-19
(85)【翻訳文提出日】2023-02-02
(86)【国際出願番号】 GB2021052146
(87)【国際公開番号】W WO2022038357
(87)【国際公開日】2022-02-24
(32)【優先日】2020-08-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590004718
【氏名又は名称】ジョンソン、マッセイ、パブリック、リミテッド、カンパニー
【氏名又は名称原語表記】JOHNSON MATTHEY PUBLIC LIMITED COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【氏名又は名称】江間 晴彦
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【氏名又は名称】式見 真行
(72)【発明者】
【氏名】ベネット、クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】エドガー、ジョナサン
(72)【発明者】
【氏名】フォンテ、カルロス マニュエル ペレイラ ダ
(72)【発明者】
【氏名】オコネル、ティモシー
【テーマコード(参考)】
3K092
4D148
【Fターム(参考)】
3K092PP15
3K092PP20
3K092QA02
3K092QA04
3K092QB02
3K092QB26
3K092QB27
3K092RD02
3K092RD03
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3K092RD07
4D148AA06
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4D148BA30Y
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4D148EA10
(57)【要約】
排気ガスシステムで使用するための電気加熱ユニットの製造のための方法、及びこの方法によって得られる電気加熱ユニットの使用が記載される。本方法は、積層造形によって電気加熱ユニットを単一部品として形成することを含む。電気加熱ユニット及び下流の触媒物品を備える排気ガスシステムも記載される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気ガスシステムで使用するための電気加熱ユニットの製造のための方法であって、前記方法は、積層造形によって前記電気加熱ユニットを単一部品として形成することを含み、前記電気加熱ユニットは、
使用時に、加熱される排気ガスの流れを導くための壁を含む管状体と、
前記管状体の前記壁に接触することなく、前記管状体の前記壁の孔を通って延在する第1の電極と、
前記管状体の前記壁と接触する第2の電極と、
使用時に、排気ガスの流れを加熱するために、前記第1の電極から前記管状体の前記壁まで延在する前記管状体内に配置された抵抗加熱素子と、を備え、
前記電気加熱ユニットは、少なくとも1000℃の融点を有する金属から形成される、方法。
【請求項2】
前記金属は、FeCr合金、NiCr合金、ステンレス鋼、及びインコネルからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第2の電極は、前記第1の電極に接触することなく前記第1の電極の周りに同軸状に配置され、好ましくは、前記方法は、前記第1の電極と前記第2の電極との間に絶縁スリーブを提供することを更に含む、請求項1~2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
前記抵抗加熱素子は、前記管状体の直径より大きい長さを有する実質的に平面の連続ストリップの形態である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記抵抗加熱素子は、前記管状体の中心付近で交わる一対の螺旋の形態であり、第1の螺旋は前記第1の電極から延在し、第2の螺旋は前記管状体の前記壁から延在する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記抵抗加熱素子は、前記管状体の前記壁の円周の少なくとも5%に接触する、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記抵抗加熱素子は、前記管状体の軸方向に少なくとも5mmの厚さを有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記抵抗加熱素子は、前記管状体の軸方向に垂直な平面内に少なくとも5mmの幅を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記抵抗加熱素子は、前記管状体の軸方向に垂直な平面において、前記管の断面積の少なくとも25%を占有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記抵抗加熱素子は、前記抵抗加熱素子を通る複数の貫通チャネルを提供する反復格子構造体を有し、好ましくは、前記反復格子構造体は、前記管状体の軸方向に直交する複数の貫通チャネルを更に提供する、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
積層造形によって前記電気加熱ユニットを単一部品として形成する前記工程は、形成された前記第1の電極と前記第2の電極との間のブリッジ材料の除去を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記方法は、前記抵抗加熱素子を触媒組成物、好ましくは1つ以上の白金族金属を含む触媒組成物でコーティングすることを更に含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載の方法によって得られる、電気加熱ユニット。
【請求項14】
排気ガスシステムで使用するための電気加熱ユニットであって、前記電気加熱ユニットは、
使用時に、加熱される排気ガスの流れを導くための壁を含む管状体と、
前記管状体の前記壁に接触することなく、前記管状体の前記壁の孔を通って延在する第1の電極と、
前記管状体の前記壁と接触する第2の電極と、
使用時に、排気ガスの流れを加熱するために、前記第1の電極から前記管状体の前記壁まで延在する前記管状体内に配置された抵抗加熱素子と、を備え、前記抵抗加熱素子は、前記抵抗加熱素子を通る複数の貫通チャネルを提供する反復格子構造を有し、
前記電気加熱ユニットは、少なくとも1000℃の融点を有する金属から形成される、電気加熱ユニット。
【請求項15】
請求項13又は請求項14に記載の電気加熱ユニットと、下流の触媒物品と、を備える、排気ガスシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気システムにおける処理に適した温度に排気ガスを加熱するための電気加熱ユニットに関する。特に、本発明は、積層造形の加熱器及びその製造方法に関する。
【0002】
自動車排気などの排気ガス処理システムにおける触媒物品は、最適な動作温度を有することが知られている。よって、コールドスタートでは、排気ガスは、触媒処理され得る温度よりも低い温度で触媒物品に供給され得る。したがって、コールドスタートでのこれらの低温ガスが容易に処理され得ることを確実にし、未処理のガス成分のスリップを回避するための対策を講じることが望ましい。
【0003】
ガスが適切に処理されることを確実にする1つのアプローチは、システム内のその熱を電気的に補うことである。これは、ガスが処理可能な温度により迅速に到達し、スリップを最小化することを確実にする。ジュール加熱は、(通常)ガス又は水を加熱するために消費者用途及び産業用途で使用される。電力が適切な伝導体に供給され、電流の流れに対する抵抗により、周囲の媒体を加熱し得る熱エネルギーが生成される。
【0004】
排気ガスの処理のためのジュール加熱は、自動車分野において知られている。具体的には、ホイルベースの設計が、Emitec及び関連会社によって自動車基材用に市販されている。この基材は、少なくとも20年間市販されている。
【0005】
国際公開第1989010470(A1)号は、電気によって直接加熱され得る金属触媒担体を開示している。触媒担体(80)は、自動車が始動した直後に加熱され得るため、触媒反応に必要な動作温度により迅速に到達する。したがって、排気ガスの放出は、自動車の始動段階中に既に低減されている。
【0006】
欧州特許第0603227(B1)号は、ハニカム体(90)、特に、流体のための複数の流路(98)を形成する少なくとも部分的に構造化されたシートメタル層(97)からなる自動車用の電気加熱可能な触媒コンバータを開示している。本体は、互いに機械的に締め付けられているが、絶縁層(95)によって互いに電気的に絶縁されている少なくとも2つのシートメタル層(91、93)からなる電気絶縁中間層(91、92、93、94)を有する。締め付け(93)により、電気絶縁中間層(91、92、93、94)は、機械的引張荷重を受ける可能性もある。したがって、開示されたハニカム体は、特に交番熱応力を受けたときに機械的に堅牢であり、通常の製造プロセスによって製造され得る。これらのハニカム体は、自動車用の電気加熱可能な触媒コンバータとして使用されることが好ましい。
【0007】
ドイツ特許出願第19537131(A1)号は、ガス、特に内燃機関からの排気ガスの触媒変換のための電気加熱可能なハニカム素子(1)を開示している。該素子は、流体によって透過され得る複数のチャネル(4)を有し、その断面及び/又は軸方向の延伸に沿って電気的に分割され、特に蛇行及び/又は螺旋状である。少なくとも2つのほぼ半殻状の電流分配構造体(6、7)が外側ジャケット表面(5)上に提供され、ジャケットパイプ(20)から環状ギャップによって完全に分離され、それぞれの電流分配構造体(6、7)は、円周の周りに半径方向外向き又は内向きに延在する少なくとも1つのカラー(8)を有する。この設計は、高い動作負荷における電流分配構造体(6、7)の変形を防止する。
【0008】
国際公開第1994017290(A1)号は、内燃機関からの排気ガスが一方向に流れ得る少なくとも1つのハニカム体配列(10)を収容するハウジングを有する電気加熱触媒コンバータを開示している。ハニカム配列(10)は、導電性であり、少なくとも部分領域において電気加熱可能であり、少なくともいくつかの部分領域上に触媒活性コーティングを有する。ハニカム体配列(10)は、スロット(16)及び/又は低導電性領域によって細分され、その結果、異なる軸方向長さ(LH1、LH2、LH3)及び/又は異なる電気抵抗を有する少なくとも2つの連続した導電性部分領域(11、13、15)が流れ方向に生じる。この設計は、良好な機械抵抗を保持しながら、異なる直径及び電力により容易に適合可能である。また、この設計は、コールドスタート段階における汚染物質の放出を最小限に抑えるために、全く異なる限界条件に対する構造形状の標準化を可能にする。
【0009】
米国特許出願公開第2019/316507号は、別個に提供される管状エンクロージャ内に収容された電気加熱部材、加熱プレート33を開示している。加熱プレート33は、積層造形を含む任意の方法によって得られ得る。加熱プレート33は、電気絶縁締結具によって管状エンクロージャ15内に取り付けられる。
【0010】
米国特許出願公開第2015087497号は、電気加熱可能な基材を含む第1の触媒の使用を伴う圧縮点火機関用の排出制御装置を開示している。
【0011】
ドイツ特許出願第102012000496号は、自動車の排気システムにおいて使用される電気加熱可能なハニカム構造体を開示している。
【0012】
したがって、処理される排気ガスを加熱するための改善された加熱素子を提供すること、及び/若しくは先行技術に関連付けられた問題の少なくともいくつかに取り組むこと、又は少なくとも、採算の合う代替案を提供することが望ましい。セラミックハニカムモノリスを含む任意の従来の触媒物品と共に使用され得る加熱ユニットを提供することが特に望ましい。
【0013】
第1の態様によれば、本発明は、排気ガスシステムで使用するための電気加熱ユニットの製造のための方法に関し、方法は、積層造形によって電気加熱ユニットを単一部品として形成することを含み、電気加熱ユニットは、
使用時に、加熱される排気ガスの流れを導くための壁を含む管状体と、
管状体の壁に接触することなく、管状体の壁の孔を通って延在する第1の電極と、
管状体の壁と接触する第2の電極と、
使用時に、排気ガスの流れを加熱するために、第1の電極から管状体の壁まで延在する管状体内に配置された抵抗加熱素子と、を備え、
電気加熱ユニットは、少なくとも1000℃の融点を有する金属から形成される。
【0014】
ここで、本発明を更に説明する。以下の節において、本発明の異なる態様は、より詳細に定義される。そのように定義された各態様は、別途明確に示されていない限り、任意の他の態様又は複数の態様と組み合わせることができる。特に、好ましい又は有利であると示された任意の特徴は、好ましい又は有利であると示された任意の他の特徴又は複数の特徴と組み合わせることができる。
【0015】
排気ガスシステムは、排気ガスの取り扱い及び処理を意図したシステムである。特に、排気ガスシステムは、ガスが大気に放出される前に分解又は変換される必要がある1つ以上の種(CO、炭化水素(HC又は全炭化水素(THC))又はNOxなど)を含有するガスを提供する。以下の説明では、燃焼機関、好ましくはガソリン又はディーゼルエンジンからの排気ガスに焦点を当てている。しかしながら、電気加熱ユニットは、他の供給源からの排気ガスの処理に応用できることを理解されたい。
【0016】
本発明は、排気ガスシステムで使用するための電気加熱ユニットを提供する。すなわち、供給された電圧に基づいて加熱効果を生成し、これを使用してシステム内の排気ガスを加熱し得る加熱ユニットが提供される。特に、加熱ユニットを通過する排気ガスを加熱し、それによって排気ガスの温度を後続の触媒物品の処理温度まで上昇させるのに役立つ別個の加熱ユニットが提供される。
【0017】
本方法は、積層造形(additive layer manufacturing、ALM)によって電気加熱ユニットを単一部品として形成することを含む。ALMは、3Dプリンティング又はラピッドプロトタイピングの別名である。積層造形(AML)は、材料を除去して所望の形状に到達させる切削造形(subtractive manufacturing)の反対である。ALMでは、3D部品が、コンピュータ制御下で材料の連続した層に構築される。積層造形は、デジタルモデルから層ごとに作製された製品を見る。これは、金属部品の機械加工など、材料を減じることを伴う従来の製造プロセスとは異なる。
【0018】
積層造形技術のタイプとしては、ポリマーのためのステレオリソグラフィ、並びにナイロンなどのポリマー、又は鋼、チタン、及び他の合金を含む積層造形金属を使用し得る選択的レーザ焼結が挙げられる。
【0019】
積層造形(ALM)の使用は、新しい構造体、新しい組成物、新しい経路、材料のより効率的な使用、より調整可能な抵抗及び熱伝達特性の生成を可能にする。特に、ALMの使用は、加熱性能を維持しながら、材料の使用の低減を可能にするより効率的な使用を可能にする。ユニット内での混合合金を使用することには、ホイル又はワイヤプロセスでは実現できない利点があると考えられる。
【0020】
電気加熱ユニットは、使用時に、加熱される排気ガスの流れを導くための壁を含む管状体を備える。使用時に、管状体は、排気ガスを提供するための第1の管、及び排気ガスを処理するための触媒物品を収容する第2の管に、溶接などによって接続される。電気加熱ユニットの管状体は、典型的には、20~100mm、好ましくは4~8cmの直径を有する円形断面を有する。管状体のガス流方向の長さは、抵抗加熱素子を収容するための任意の好適な長さであってもよいが、典型的には10~50mm、例えば15~25mmである。
【0021】
電気加熱ユニットは、管状体の壁に接触することなく、管状体の壁の孔を通って延在する第1の電極を備える。この第1の電極は、支持のために管状体の壁に関連して形成され、一時的なブリッジ材料によって所定の位置に保持されてもよい。しかしながら、そのようなブリッジ材料は、電気的短絡を防止するために使用前に除去される必要がある。すなわち、好ましくは、積層造形によって電気加熱ユニットを単一部品として形成する工程は、形成された第1の電極と第2の電極との間のブリッジ材料の除去を含む。
【0022】
電気加熱ユニットは、管状体の壁と接触する第2の電極を備える。第2の電極は、管状体の外側に延在する材料であり、好ましくは、第1の電極に接触せずに第1の電極の周りに同軸状に配置される。この構成は、加熱器への単一の電気接続を可能にし、単純化されたシステム設計を可能にする。
【0023】
好ましくは、本方法は、第1の電極と第2の電極との間に絶縁スリーブを提供することを更に含む。これは、加熱ユニットに追加の剛性を提供する一方で、電気的短絡も防止する。このスリーブは、第1の電極が管状体に直接接触しないことを確実にする。
【0024】
電気加熱ユニットは、使用時に排気ガスの流れを加熱するために、第1の電極から管状体の壁まで延在する管状体内に配置された抵抗加熱素子を備える。したがって、抵抗加熱素子を介して第1の電極と第2の電極との間に回路が形成される。抵抗加熱素子は、電流を受けたときに熱を生成する構成要素である。第1の電極及び第2の電極は、抵抗加熱素子を駆動するために直流電源に接続されることが好ましい。代わりに交流電流が使用されてもよいが、自動車用途で利用可能な電源のために直流が好ましい。
【0025】
電気加熱ユニットは、少なくとも1000℃の融点を有する金属から形成される。好ましくは、金属は、1000~1500℃、好ましくは1300~1400℃の融点を有する。多くの材料が、ALMによる製造での使用に適していることが知られており、これらは、それらの電気的、熱的及び物理的特性に基づいて選択され得る。特に、材料は、熱を生成するのに好適な耐性を有する一方で、排気ガスシステム内のそのような構成要素が受ける高温条件下で分解も劣化もしないことが必要である。
【0026】
好ましくは、金属は、FeCr合金、NiCr合金、ステンレス鋼、及びインコネルからなる群から選択される。これらは全て、ALMに使用され得る好適な導電性材料である。これらのうち、FeCrは、その有利な特性を考慮すると特に好適であることが分かっている。
【0027】
抵抗加熱素子の設計及び構成は、ガスを加熱する際のその性能にとって重要である。ALMの利点を考慮すると、他の製造プロセスでは達成できないような数々の異なる構成が利用され得る。
【0028】
好ましくは、抵抗加熱素子は、管状体の軸方向に少なくとも5mmの厚さを有する。抵抗素子は、一般に、管状体の軸方向に5~25mm、好ましくは7~15mm、最も好ましくは約10mmの厚さを有する。
【0029】
好ましくは、抵抗加熱素子は、管状体の直径より大きい長さを有する実質的に平面の連続ストリップの形態である。すなわち、抵抗加熱素子は、管の内腔を横切って少なくともある程度前後に蛇行するはずである。抵抗加熱素子は、排気ガスを加熱するのに適していなければならないので、第1の電極と第2の電極との間を単に直接短絡するのではなく、抵抗加熱素子の長さが長いほど、達成され得る加熱効果が大きくなる。好ましくは、抵抗加熱素子は、管状体を横切って第1の電極から第2の電極への曲がりくねった経路を有する。
【0030】
好ましくは、抵抗加熱素子は、管状体の中心付近で交わる一対の螺旋の形態であり、第1の螺旋は第1の電極から延在し、第2の螺旋は管状体の壁から延在する。好ましくは、それぞれの螺旋は少なくとも1回転、好ましくは2~10回転を完了する。
【0031】
好ましくは、抵抗加熱素子は、管状体の軸方向に垂直な平面内で少なくとも5mmの幅を有する。好ましくは、幅は実質的に一定であるので、これは一定の幅値である。好ましくは、管状体の軸方向に垂直な平面内の幅は、5~20mm、好ましくは10~15mmである。
【0032】
好ましくは、抵抗加熱素子は、管状体の軸方向に垂直な平面において、管の断面積の少なくとも25%を占有する。より好ましくは、抵抗加熱素子は、管状体の軸方向に垂直な平面において、管の断面積の25~75%、より好ましくは40~60%を占有する。管を占有する素子を指すことで、素子の境界間の空間と比較して素子の境界を指し、素子が中実であると見なしているが、好ましくは、ガスが素子自体の中を流れることを可能にするため、実際には素子は多孔質である。
【0033】
好ましくは、抵抗加熱素子は、管状体の壁の円周の少なくとも5%に接触する。好ましくは、抵抗加熱素子は、管状体の壁の円周の5~50、より好ましくは20~30%に接触する。接触が多いほど抵抗加熱素子の剛性が大きくなり、破損に抵抗するのに役立つ。加えて、管状体の壁との接触が多いほど、電流が第2の電極に到達する経路の数が多くなる。
【0034】
好ましくは、抵抗加熱素子は、抵抗加熱素子を通る複数の貫通チャネルを提供する反復格子構造体を有する。これらの貫通チャネルを提供することによって、増加した表面積によって提供され得る効果的な加熱が増加する一方、必要とされる材料は減少する。また、構造体の剛性を高めることができる。好ましくは、貫通チャネルは、規則的なハニカム構造体を提供するなど、均一かつ反復型である。
【0035】
好ましくは、反復格子構造体は、管状体の軸方向に直交する複数の貫通チャネルを更に提供する。例えば、格子はノード及びビームの構造を有してもよい。この種の細孔の3D構造によって、表面積及び加熱効果が更に増加する一方、必要とされる材料は減少する。また、加熱されるガス内の熱伝達を改善する静的混合効果が達成され得ると考えられる。
【0036】
好ましくは、貫通チャネルは、抵抗加熱部材内に少なくとも25%、好ましくは25~90%、好ましくは35~75%の多孔率を提供する。
【0037】
好ましくは、本方法は、抵抗加熱素子を触媒組成物、好ましくは1つ以上の白金族金属を含む触媒組成物でコーティングすることを更に含む。このような触媒組成物は、排気ガス処理システムの技術分野において周知である。
【0038】
本発明の好ましい態様によれば、排気ガスシステムで使用するための電気加熱ユニットの製造のための方法が提供され、電気加熱ユニットは、
使用時に、加熱される排気ガスの流れを導くための壁を含む管状体と、
管状体の壁に接触することなく、管状体の壁の孔を通って延在する第1の電極と、
管状体の壁と接触する第2の電極と、
使用時に、排気ガスの流れを加熱するために、第1の電極から管状体の壁まで延在する管状体内に配置された抵抗加熱素子と、を備え、好ましくは、抵抗加熱素子は、管状体の壁の円周の少なくとも5%と接触し、
電気加熱ユニットは、少なくとも1000℃の融点を有する金属から形成され、
本方法は、積層造形によって電気加熱ユニットを単一部品として形成することと、形成された第1の電極と第2の電極との間のブリッジ材料を除去することと、好ましくは、第1の電極と第2の電極との間に絶縁スリーブを提供することと、を含む。
【0039】
更なる態様によれば、本明細書に記載の方法によって得られ得る電気加熱ユニットが提供される。ALM処理の制約を考慮すると、電気加熱ユニットがALMによって製造されたかどうかを決定することが可能である。特に、全ての構成要素は、固定具を必要とせず、いかなる破断部又は接合部も有しない単一部品構造として提供される。
【0040】
更なる態様によれば、排気ガスシステムで使用するための電気加熱ユニットが提供され、電気加熱ユニットは、
使用時に、加熱される排気ガスの流れを導くための壁を含む管状体と、
管状体の壁に接触することなく、管状体の壁の孔を通って延在する第1の電極と、
管状体の壁と接触する第2の電極と、
使用時に、排気ガスの流れを加熱するために、第1の電極から管状体の壁まで延在する管状体内に配置された抵抗加熱素子と、を備え、抵抗加熱素子は、抵抗加熱素子を通る複数の貫通チャネルを提供する反復格子構造体を有し、
電気加熱ユニットは、少なくとも1000℃の融点を有する金属から形成される。
【0041】
上記の方法に関連して開示された全ての特徴は、本明細書に記載される電気加熱ユニットに等しく適用される。理解されるように、反復格子構造体は、ALMによってのみ達成され得る。
【0042】
電気加熱ユニットは、ALMによって得られ、その結果、単一部品として形成される。その結果、材料は構成要素全体にわたって均一であり、接合部がない。これにより、熱的に変化する動作条件を考慮すると重大である、製品におけるあらゆる潜在的弱点が回避される。
【0043】
更なる態様によれば、本明細書に記載の電気加熱ユニット及び下流の触媒物品を備える排気ガスシステムが提供される。好適な触媒物品は、処理される排気ガスに応じて異なり、当該技術分野において周知である。任意の好適な触媒物品が採用され得るが、典型的には、CO、HC、THC及びNOxのうちの1つ以上を処理するのに適したものが選択される。
【図面の簡単な説明】
【0044】
ここで、以下の図を参照して、本発明を更に説明する。
【
図1】本発明の電気加熱ユニットを備える排気ガス処理システムの断面を示す。
【
図2】本発明の電気加熱ユニットの端部断面を示す。
【
図3A】本発明の電気加熱ユニットの異なる構成を示す。
【
図3B】本発明の電気加熱ユニットの異なる構成を示す。
【
図3C】本発明の電気加熱ユニットの異なる構成を示す。
【
図3D】本発明の電気加熱ユニットの異なる構成を示す。
【0045】
図1は、排気ガス処理システム1を示す。排気ガス処理システム1は、使用時に、処理される排気ガス10が流されるダクト5を備える。ダクト5は、排気ガス10を処理するための触媒物品15を含む。
【0046】
触媒物品15は、典型的には、多孔質ハニカム体上に設けられた触媒ウォッシュコートを含むフロースルーモノリスである。触媒物品15は、典型的には、最適動作温度を有し、ガソリン又はディーゼルエンジンからの排気ガスの状況では、これは、一般に、200℃を超える温度となる。
【0047】
触媒物品15の上流には、加熱構成要素20が提供される。これは、典型的には入口ダクト部分30及び触媒含有ダクト部分35に溶接されたダクト5のセクション25として提供される。
【0048】
セクション25は、リターン電極45に直接接続された管状体40を含む。管状体40はまた、抵抗加熱素子55を介して供給電極50に接続される。リターン電極45は、管状形態を有し、供給電極50の周りに同軸状に提供される。リターン電極45は、短絡を防止するために絶縁リング60によって供給電極50から離間される。リターン電極45及び供給電極50は、直流電源65に接続される。
【0049】
抵抗加熱素子55は、排気ガス10を加熱するためにダクト5の内腔70を横切って提供される。したがって、有利なことに、供給電極50と管状体40との間を横断する長い経路をとる。これにより、抵抗加熱素子55の表面積が拡張され、ガスに提供され得る加熱量が増加する。好ましい2D設計は、一対の螺旋が内腔70の中央で交わるものである。抵抗加熱素子55の長さを延ばすために、積み重ねられた螺旋など、より複雑な3D設計も想定され得る。それにもかかわらず、抵抗加熱素子55の剛性が維持されることが重要である。
【0050】
使用時に、直流電源65は、供給電極50とリターン電極45との間に電圧を提供し、抵抗加熱素子55を加熱させる。加熱効果は、排気ガス10を、200℃を超えるような触媒物品15の動作温度まで加熱する。これにより、触媒物品15の温度が所望の動作温度に迅速に到達し、触媒物品15上の触媒ウォッシュコートが排気ガス15中の種の分解を触媒する。
【0051】
セクション25は、積層造形(ALM)によって形成される。これは、管状体40の全体、供給電極50及びリターン電極45、並びに抵抗加熱素子55が、FeCr合金などの単一の材料から単一の工程で形成されることを意味する。供給電極50とリターン電極45との間などにブリッジ支持構成要素を構築する必要がある場合があるが、これらは使用前に除去される。
【0052】
有利には、抵抗加熱素子55は、それ自体が多孔質構造体、好ましくは規則的な反復マトリックスを有し得る。このようなマトリックスは、排気ガス10が抵抗加熱素子55を通って流れることを可能にするとともに、抵抗素子55によって占有されていない内腔70内を流れることを可能にする。これは、達成され得る熱伝達の効率及び速度を増加させる。そのような拡張された格子又はマトリックスは、抵抗加熱素子55の構造的一体性を損なうことなく、ALMによって容易に達成され得る。
【0053】
図3A~
図3Dは、抵抗加熱素子55の異なる構成を示す。特に、
【0054】
図3Aは、管状体40の内腔70の中心付近で交わる一対の螺旋によって形成された抵抗加熱素子55を示し、第1の螺旋は供給電極50から延在し、第2の螺旋は管状本体40の壁から延在する。抵抗加熱素子55は、管状体40の軸に平行及び直交する複数の規則的な貫通チャネルを提供する非常に微細な拡張構造体を有する。抵抗加熱素子55の剛性を高めるために、抵抗加熱素子55は管状壁40の約40%に接続される。
【0055】
図3Bは、管状体40の内腔70の中心付近で交わる一対の螺旋によって形成された抵抗加熱素子55を示し、第1の螺旋は供給電極50から延在し、第2の螺旋は管状本体40の壁から延在する。
図3Aと比較して、抵抗加熱素子55は、管状体40の内腔のより大きな割合を閉塞する。抵抗加熱素子55は、管状体40の軸に平行及び直交する(すなわち、図の平面内及び平面中に)複数の規則的な貫通チャネルを提供する非常に微細な拡張構造体を有する。抵抗加熱素子55の剛性を高めるために、抵抗加熱素子55は管状壁40の約40%に接続される。
【0056】
図3Cは、管状体40の内腔70の中心付近で交わる一対の螺旋によって形成された抵抗加熱素子55を示し、第1の螺旋は供給電極50から延在し、第2の螺旋は管状本体40の壁から延在する。
図3A及び
図3Bと比較して、抵抗加熱素子55は、管状体40の軸に平行する複数の規則的な貫通チャネルのみを提供するより粗い拡張構造体を有する。抵抗加熱素子55の剛性を高めるために、抵抗加熱素子55は管状壁40の約40%に接続される。
【0057】
図3Dは、管状体40の内腔70の中心付近で交わる一対の螺旋によって形成された抵抗加熱素子55を示し、第1の螺旋は供給電極50から延在し、第2の螺旋は管状本体40の壁から延在する。
図3A及び
図3Bと比較して、抵抗加熱素子55は、管状体40の軸に平行及び直交する複数の規則的な貫通チャネルを提供するより粗い拡張構造体を有する。抵抗加熱素子55の剛性を高めるために、抵抗加熱素子55は管状壁40の約40%に接続される。
【0058】
ここで、以下の非限定的な実施例に関連して本発明を更に説明する。
【0059】
加熱器は、FeCrAlloy 1.4767粉末供給を有するレーザ焼結付加プロセスを使用して印刷された。電極パターンを
図3A~
図3Dに示す。加熱器のいくつかは、ワイヤ供給プロセス又はホイルプロセスでは作製され得ない構造で設計された。加熱器は、空気流中にて低電力及び高電力で試験された。高電力試験では、加熱器の上流で炭化水素を燃焼させて、実際の排気システムで経験される温度と同様の温度を発生させた。加熱器は、試験された様々な電力にわたって一定の電気抵抗を示した。加熱器は、電力入力と温度出力との間に比例関係を示しているため、熱伝達率が計算され得る。
【0060】
エンジン試験作業のために高電源を購入し、試験セル/DPGリグが開いているときにシャットダウンするための安全装置を取り付けた。定常状態試験が開発され、使用された。定常状態試験には限界がある。しかしながら、この試験は、自動車排気の組成及び過渡的要素を有する加熱ガス供給を表す。DPG試験は、部品のサイズと比較して高い空気流を有し、周囲温度から250℃までの急速な熱勾配を有する。電力は、試験ごとに一貫した方法で起動され得る。高電力試験は、Vitesco-Emitec製の基準EHC及びSandvik製のALMを使用して製造されたプロトタイプ加熱器の全ての設計について完了した。
【0061】
排気用途のためのガス流の抵抗加熱は、加熱が印加される電力に依存することを示す。したがって、熱伝達率は、それぞれの加熱器設計に適用され得る。この用途では、低い熱伝達率が良好である。試験したALM部品のうちの3つは、基準抵抗加熱器より低い熱伝達率を示した。
【0062】
ALM加熱器は、基準部品より低い抵抗を有していた。低抵抗加熱器は、高電流に対処するために堅牢性の課題を有する。加熱機能のための所望の温度に必要な電力を供給するためには、高電流が必要である。高電流は、融解事象によるか、あるいは破壊事象によるかにかかわらず、いくつかの部品を故障させた。したがって、設計は熱伝達率と抵抗の好適な組合せを有することが必要である。
【0063】
【0064】
実施例1、3及び4は、この用途に望ましい特性を示した。実施例2は、特定の構成が十分な剛性を欠いていることを示唆する故障を被った。
【0065】
本発明の好ましい実施形態について本明細書で詳細に説明してきたが、本発明の範囲又は添付の特許請求の範囲から逸脱することなく、変形がなされ得ることが当業者には理解されるであろう。
【手続補正書】
【提出日】2023-03-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気ガスシステムで使用するための電気加熱ユニットの製造のための方法であって、前記方法は、積層造形によって前記電気加熱ユニットを単一部品として形成することを含み、前記電気加熱ユニットは、
使用時に、加熱される排気ガスの流れを導くための壁を含む管状体と、
前記管状体の前記壁に接触することなく、前記管状体の前記壁の孔を通って延在する第1の電極と、
前記管状体の前記壁と接触する第2の電極と、
使用時に、排気ガスの流れを加熱するために、前記第1の電極から前記管状体の前記壁まで延在する前記管状体内に配置された抵抗加熱素子と、を備え、
前記電気加熱ユニットは、少なくとも1000℃の融点を有する金属から形成され、
前記抵抗加熱素子は、前記抵抗加熱素子を通る複数の貫通チャネルを提供する反復格子構造体を有する、方法。
【請求項2】
前記金属は、FeCr合金、NiCr合金、ステンレス鋼、及びインコネルからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記反復格子構造体は、前記管状体の軸方向に直交する複数の貫通チャネルを更に提供する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記方法は、前記抵抗加熱素子を触媒組成物、好ましくは1つ以上の白金族金属を含む触媒組成物でコーティングすることを更に含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
排気ガスシステムで使用するための電気加熱ユニットであって、前記電気加熱ユニットは、
使用時に、加熱される排気ガスの流れを導くための壁を含む管状体と、
前記管状体の前記壁に接触することなく、前記管状体の前記壁の孔を通って延在する第1の電極と、
前記管状体の前記壁と接触する第2の電極と、
使用時に、排気ガスの流れを加熱するために、前記第1の電極から前記管状体の前記壁まで延在する前記管状体内に配置された抵抗加熱素子と、を備え、前記抵抗加熱素子は、前記抵抗加熱素子を通る複数の貫通チャネルを提供する反復格子構造を有し、
前記電気加熱ユニットは、少なくとも1000℃の融点を有する金属から形成され、
前記抵抗加熱素子は、前記抵抗加熱素子を通る複数の貫通チャネルを提供する反復格子構造体を有する、電気加熱ユニット。
【請求項6】
請求項5に記載の電気加熱ユニットと、下流の触媒物品と、を備える、排気ガスシステム。
【国際調査報告】