(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-06
(54)【発明の名称】バッテリーセルの製造方法および設備
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0585 20100101AFI20230830BHJP
H01M 4/139 20100101ALI20230830BHJP
H01M 50/591 20210101ALI20230830BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20230830BHJP
H01M 10/054 20100101ALI20230830BHJP
H01M 10/0565 20100101ALI20230830BHJP
H01G 11/86 20130101ALI20230830BHJP
H01G 11/84 20130101ALI20230830BHJP
H01G 13/00 20130101ALI20230830BHJP
H01M 4/62 20060101ALN20230830BHJP
【FI】
H01M10/0585
H01M4/139
H01M50/591 101
H01M10/052
H01M10/054
H01M10/0565
H01G11/86
H01G11/84
H01G13/00 381
H01M4/62 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023502955
(86)(22)【出願日】2021-07-13
(85)【翻訳文提出日】2023-03-08
(86)【国際出願番号】 IB2021056298
(87)【国際公開番号】W WO2022013741
(87)【国際公開日】2022-01-20
(32)【優先日】2020-07-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(32)【優先日】2020-09-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523015138
【氏名又は名称】ぺランク エナジー
【氏名又は名称原語表記】PELLENC ENERGY
(74)【代理人】
【識別番号】100080447
【氏名又は名称】太田 恵一
(72)【発明者】
【氏名】ぺランク,ロジェ
【テーマコード(参考)】
5E078
5E082
5H029
5H043
5H050
【Fターム(参考)】
5E078AA03
5E078AB01
5E078BB33
5E078KA08
5E082AB09
5H029AJ06
5H029AJ14
5H029AK03
5H029AK05
5H029AL06
5H029AL11
5H029AL12
5H029AL13
5H029AM16
5H029BJ12
5H029CJ03
5H029CJ08
5H029CJ22
5H029DJ08
5H029DJ09
5H029EJ04
5H029EJ11
5H029EJ12
5H043AA04
5H043AA19
5H043BA20
5H043GA23
5H050AA12
5H050AA19
5H050BA15
5H050BA16
5H050CA08
5H050CA09
5H050CA11
5H050CB07
5H050CB11
5H050CB12
5H050DA10
5H050DA13
5H050EA08
5H050EA22
5H050EA23
5H050GA03
5H050GA10
5H050GA22
5H050GA29
5H050HA04
(57)【要約】
本発明は、バッテリーセルの組立てのための方法および設備に関し、該方法は、導電性支持体上にペースト状態の電極層を形成するステップを含み、これらの電極層は、イオン伝導性液体電解質混合物、モノマーまたはポリマー混合物、およびモノマーまたはポリマー混合物の重合または架橋開始剤を含み、電極層は、それらの凝固を開始する放射に曝露され、その後、液体電解質バッテリーセルに近い特性を有する固体電解質バッテリーセルを得るような形で、それぞれの凝固の前に液体状態で分離層と接触させられる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気化学的形態でのエネルギー貯蔵セルの製造方法において、
- 第1のハーフセル(10a)を形成するステップであって、
a1)第1の導電性支持体(14a)を提供するステップ(214a)、
a2)カソード活物質、導電性カーボン充填材、第1のイオン伝導性液体電解質混合物、第1のモノマーまたはポリマー混合物および第1のモノマーまたはポリマー混合物の第1の重合または架橋開始剤を含む、ペースト状態のカソード層(16a)を、第1の導電性支持体(14a)の一方の面上に被着させるステップ(220a)、および
a3)カソード層(16a)の凝固を開始させる形で、第1のモノマー混合物の第1の重合または架橋開始剤に適応された第1の放射を用いて、ペースト状態のカソード層を曝露するステップ(224a)、
というステップa1)、a2)、a3)を含むステップと、
- 第2のハーフセル(10b)を形成するステップであって、
b1)第2の導電性支持体(14b)を提供するステップ(214b)、
b2)アノード活物質、導電性カーボン充填材、第2のイオン伝導性液体電解質混合物、第2のモノマーまたはポリマー混合物および第2のモノマーまたはポリマー混合物の第2の重合または架橋開始剤を含む、ペースト状態のアノード層(16b)を、第2の導電性支持体(14b)の一方の面上に被着させるステップ(220b)、および
b3)アノード層(16b)の凝固を開始させる形で、第2のモノマー混合物の第2の重合または架橋開始剤に適応された第2の放射を用いて、ペースト状態のアノード層を曝露するステップ(224b)、
というステップb1)、b2)、b3)を含むステップと、
- a4)曝露された第1の電極層の凝固が完了する前に曝露されたカソード層上に、第1のイオン伝導性分離用液体電解質混合物、第1の分離用モノマーまたはポリマー混合物、および第1の分離用モノマーまたはポリマー混合物の第1の重合または架橋開始剤を含む第1の液体状態の分離用混合物で形成された第1の分離層(18a)を、被着させ(230a)かつ曝露する(234a)ステップ、および
- c4)電気絶縁性グリッドフィルム(20)上に、第3のイオン伝導性分離用液体電解質混合物、第3の分離用モノマーまたはポリマー混合物、および第3の分離用モノマーまたはポリマー混合物の第3の重合または架橋開始剤を含む第3の液体状態の分離用混合物で形成された第3の分離層(18c)を、被着させ(230c)かつ曝露する(234c)ステップ、
- b4)曝露されたアノード層の凝固が完了する前に曝露されたアノード層上に、第2のイオン伝導性分離用液体電解質混合物、第2の分離用モノマーまたはポリマー混合物、および第2の分離用モノマーまたはポリマー混合物の第2の重合または架橋開始剤を含む第2の液体状態の分離用混合物で形成された第2の分離層(18b)を、被着させ(230b)かつ曝露する(234b)ステップ、
というステップa4)、b4およびc4)のうちの少なくとも1つのステップを実施するステップであって、
ステップa4)、b4)およびc4)の曝露が、それぞれの分離用モノマーまたはポリマー混合物の重合または架橋開始剤に適応されかつ第1、第2および第3の分離層の凝固を開始させるように適応された第3の放射を用いて実施されるステップと、
- 2つのハーフセル(10a、10b)の間に、ステップa4)、b4)およびc4)の分離層(18a、18b、18c)の少なくとも1つを間置することによって、第1のハーフセル(10a)および第2のハーフセル(10b)を組立てるステップ(242)であって、組立てには、
d1)曝露された第1の分離層(18a)を曝露された第2の分離層(18b)と直接接触させるステップ、
d2)曝露された第1の分離層(18a)を曝露されたアノード層(16b)と直接接触させるステップ、
d3)曝露された第2の分離層(18b)を曝露されたカソード層(16a)と直接接触させるステップ、
d4)曝露されたカソード層(16a)と曝露されたアノード層(16b)の間に曝露された第3の分離層(18c)を挟み込むステップ、
というステップd1)、d2)、d3)およびd4)のうちの1つが含まれ、これらのステップd1)、d2)、d3)およびd4)において、接触させられた層のそれぞれの凝固が完了していない、ステップと、
を含む方法。
【請求項2】
- 第1の分離層(18a)の被着(230a)前に、第2の分離層(18b)の被着(230b)前にそれぞれ、カソード層(16a)、アノード層(16b)それぞれの厚みを校正するステップ(226a、226b)および/または、
- ハーフセル(10a、10b)の組立て(242)前に、第1の分離層(18a)、第2の分離層(18b)それぞれの厚みを校正するステップ(236a、236b)、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第1の支持体(14a)および第2の支持体(14b)が、それぞれ第1の支持帯状物および第2の支持帯状物であり、
第1の支持体(14a)の供給(214a)および第2の支持体(14b)の供給(214b)が、それぞれ第1の繰出しロール(112a)および第2の繰出しロール(112b)からのそれぞれ第1の支持帯状物の繰出しおよび第2の支持帯状物の繰出しを含んでいる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
- 第1のハーフセル(10a)および第2のハーフセル(10b)の組立て後に、第1の支持体または第2の支持体上に電気絶縁性フィルム(30)を適用するステップと、
- 組立てられた第1のハーフセル(10a)および第2のハーフセル(10b)、ならびに第1の支持体または第2の支持体上に適用された電気絶縁性フィルム(30)を、巻付けロール(150)の周りに巻付けるステップと、
を含む、請求項1から3のいずれか一つに記載の方法。
【請求項5】
カソード層の被着(220a)およびアノード層の被着(220b)が、それぞれ第1の混合物の第1の被着ヘッド(120a)および第2の混合物の第2の被着ヘッド(120b)の前を第1の帯状物および第2の帯状物が進行することによって、連続的に行なわれる、請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
第1の分離層(18a)の被着(230a)および第2の分離層(18b)の被着(230b)が、それぞれ第3の電解質被着ヘッド(130a)の前および第4の電解質被着ヘッド(130b)の前を第1の帯状物および第2の帯状物が進行することによって連続的に行なわれる、請求項3から5のいずれか一つに記載の方法。
【請求項7】
カソード層(16a)の曝露(224a)およびアノード層(16b)の曝露(224b)が、それぞれ少なくとも1つの第1の放射源(124a)および少なくとも1つの第2の放射源(124b)の前をそれぞれ第1の帯状物および第2の帯状物が進行することによって行なわれる、請求項3から6のいずれか一つに記載の方法。
【請求項8】
第1の分離層(18a)の曝露(234a)および第2の分離層(18b)の曝露(234b)が、それぞれ第3の放射源(134a)および第4の放射源(134b)の前を第1の帯状物および第2の帯状物が進行することによって行なわれる、請求項3から7のいずれか一つに記載の方法。
【請求項9】
第1の支持体および第2の支持体がそれぞれ、第1の支持帯状物および第2の支持帯状物であり、
カソード層(16a)、アノード層(16b)の厚みの校正(226a)はそれぞれ、第1の校正ロール対(126a)および第2の校正ロール対(126b)を通してカソード層を備えた第1の支持帯状物、アノード層を備えた第2の支持帯状物それぞれが通過することによって行なわれる、
請求項2に記載の方法。
【請求項10】
第1の分離層(18a)の厚みの校正(236a)、第2の分離層(18b)の校正(236b)それぞれが、第3の校正ロール対(136a)および第4の校正ロール対(136b)を通して第1のハーフセル(10a)、第2のハーフセル(10b)それぞれが通過することによって行なわれる、請求項2から9のいずれか一つに記載の方法。
【請求項11】
ステップa4)およびb4)の実施を含み、かつ第1のハーフセル(10a)および第2のハーフセル(10b)の組立ての際に、分離層(18a、18b)間に電気絶縁性グリッド分離フィルム(20)の設置を含む、請求項1から10のいずれか一つに記載の方法。
【請求項12】
ハーフセルの組立ての後に、バッテリーセルをフォーマットされたセル(1010、1011、1012、1013、1014、1015)に切断することを含むセルのフォーマット作業(250)を含む、請求項1から11のいずれか一つに記載の方法。
【請求項13】
フォーマットされたバッテリーセル(1010)の少なくとも1つの周縁端部上での保護用電気絶縁性材料のコーティング(1024)の設置を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
カソード層(16a)の第1の液体電解質混合物、アノード層(16b)の第2の液体電解質混合物、第1の分離層(18a)の第1の液体電解質混合物、第2の分離層(18b)の第2の液体電解質混合物および第3の分離層(18c)の第3の液体電解質混合物が、場合によって同一である、請求項1から13のいずれか一つに記載の方法。
【請求項15】
請求項11または12に記載の方法にしたがった複数のバッテリーセル(1011、1012、1013、1014、1015)の製造、およびバッテリーセルの重なり(1000)の形成を含むバッテリーの製造方法において、重なりの形成には、フォーマットされたバッテリーセル(1011)の第1の支持体(14a)の伝導性自由面と重なり(1000)の後続するフォーマットされたバッテリーセル(1012)の第2の支持体(14b)の伝導性自由面との接触が含まれる方法。
【請求項16】
- 第1のハーフセル(10a)製造用の第1の製造ライン(110a)、
- 第2のハーフセル(10b)製造用の第2の製造ライン(110b)、
- 第1の製造ライン(110a)上に形成された第1のハーフセル(10a)および第2の製造ライン(110b)上に形成された第2のハーフセル(10b)を組立てるための組立てロール対(142)、
- 組立てロール対(142)の下流側に配置されたバッテリーセルの巻付けロール(150)、
を含む請求項1から13のいずれか一つに記載のバッテリーセルの製造用設備において、
第1の製造ライン(110a)および第2の製造ライン(110b)のうちの少なくとも一方が、
- 支持帯状物(14a、14b)の繰出しのための繰出しロール(112a、112b)、そして繰出しロールと組立てロール対(142)との間で順番に、
- カソード層、アノード層それぞれの形成のための第1の被覆モジュール(320a、320b)、
- 第1の圧延モジュール(326a、326b)、
- 分離層(18a、18b)の形成のための第2の被覆モジュール(330a、330b)、および
- 第2の圧延モジュール(336a、336b)、
を含み、
第1および第2の圧延モジュールが、それぞれ校正ロール対(126a、126b、136a、136b)および、それぞれ校正ロール対に結び付けられた厚みセンサー(128a、128b、138a、138b)を含み、
第1の被覆モジュールおよび第2の被覆モジュールが、それぞれ、被着ヘッド(120a、120b、130a、130b)および被着ヘッドに結び付けられた少なくとも1つの放射源(124a、124b、134a、134b)を含んでいる、
設備。
【請求項17】
巻付けロール(150)が、駆動ロールである、請求項16に記載の設備。
【請求項18】
第1の製造ライン(110a)および第2の製造ライン(110b)のうちの少なくとも一方が、
- 支持帯状物(14a、14b)の繰出しのための繰出しロール(112a、112b)、
そして繰出しロールと組立てロール対(142)の間で順番に、
- カソード層、アノード層それぞれの形成のための第1の被覆モジュール(320a、320b)、
- 第1の圧延モジュール(326a、326b)、
- 分離層(18a、18b)の形成のための第2の被覆モジュール(330a、330b)、および
- 第2の圧延モジュール(336a、336b)、
を含む、
請求項16または17に記載の設備。
【請求項19】
繰出しロール(112a、112b)が、被制動ロールである、請求項18に記載の設備。
【請求項20】
第1の被覆モジュールおよび第2の被覆モジュールが、各々、カソード層、アノード層それぞれの被着ヘッド(120a、120b、130a、130b)、および被着ヘッドに結び付けられた少なくとも1つの放射源(124a、124b、134a、134b)を含む、請求項18または19に記載の設備。
【請求項21】
第1および第2の圧延モジュールが各々、校正ロール対(126a、126b、136a、136b)および校正ロール対にそれぞれ結び付けられた厚みセンサー(128a、128b、138a、138b)を含む、請求項18または20のいずれか一つに記載の設備。
【請求項22】
巻付けロール(150)、第1の被覆モジュール(320a、320b)、第2の被覆モジュール(330a、330b)、第1の圧延モジュール(326a、326b)および第2の圧延モジュール(336a、336b)のうちの少なくとも1つの制御ユニット(101)を含む、請求項18から21のいずれか一つに記載の設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリーセル、ひいては、複数のセルで構成された電気バッテリーの製造方法および設備に関する。
【0002】
電気バッテリーまたはバッテリーの各セルは、電気エネルギーの蓄電池を構成する。バッテリーは、バッテリーセルを並列および/または直列に配置することによって形成され得る。各セルは、集電体に結び付けられた正極および別の集電体に結び付けられた負極を含む。正極および負極は、「カソード」および「アノード」とも呼ばれる。集電体は、セルの電気端子を構成する。
【0003】
電極は各々、所与のイオンタイプと相互作用しこれを保持する能力を有するいわゆる「活性」電極材料、集電体から付随する電極の活性材料に向かう電子の通過を確実に行うカーボンブラックなどの導電剤または電子伝導性添加剤、そして概して、電極の機械的保持と集電体上の材料の接着を可能にする結合剤を含む。
【0004】
本発明は、詳細には、リチウムイオン、ナトリウムイオン、またはリチウム-硫黄タイプのセルに関する。
【0005】
これは特に、NMC(ニッケルマンガンコバルト)、NCA(ニッケル、コバルト、アルミニウム)またはLi2S(硫化リチウム)などのリチウムを含むカソード材料と、炭素、ケイ素、炭素に結び付けられたケイ素、遷移金属または遷移金属合金、または遷移金属と炭素を合金化した複合材料をベースとするアノード材料とを結び付けるセルである。
【0006】
より一般的には、本発明はさらに、金属リチウム、金属ナトリウム、金属アルミニウムおよび金属マグネシウムタイプのセル、およびそれらの製造用設備にも関する。
【0007】
本発明は、液体電解質の凝固によって得られた大きな表面を有する固体電解質を有する薄いバッテリーセルの製造のために利用される。本発明は、詳細には、ロールツーロール(roll to roll)タイプの連続方法による、固定幅で非常に長いセルの連続的製造に適している。本発明にしたがって製造されたセルは、切断され、例えば重なりによって直列に結び付けられかつ/または並列に結び付けられてよい。したがって、本発明は、非限定的に、電気自動車、電動工具、携帯型通信機器、ドローン、さらには電気エネルギー貯蔵用の定置施設のために使用可能な電気バッテリーの製造においても利用される。
【0008】
本発明の設備は、液体電解質の凝固によって得られる固体電解質を有するスーパーキャパシタセルの製造のためにも使用可能である。
【背景技術】
【0009】
液体電解質バッテリーセルは、公知である。
【0010】
これらのセルにおいては、液体電解質が、アノード電極とカソード電極の間ならびにこれらの電極各々の内部でのイオン伝導を確実に行う。電気絶縁性分離フィルムが、アノード電極とカソード電極の間に配置される。これにより、イオンの循環を可能にしながらカソードとアノードの間の直接的電気接触を回避することができる。
【0011】
液体電解質バッテリーセルには、電極を収納する能力を有するタンクを形成する密閉されたエンクロージャが具備されている。したがって、これらのセルの製造における問題点は、密閉されたエンクロージャの製作およびその密封に関係する。
【0012】
もう1つの問題点は、危険性、引火性および汚染性製品であることが判明している液体電解質によるセルの充填に関係する。
【0013】
液体電解質セルについては、液漏れの危険性以外に、セルの温度上昇時の液体電解質の引火の危険性という別の問題が提起される。
【0014】
最後に、セル内で使用される液体電解質は、電解質蒸気が気道に影響を及ぼす可能性があることから、概して健康に有害であることが明らかになっている。電解質の毒性は、セルの製造時点のみならず、それらの再生利用の時点でも難点となる。
【0015】
液体電解質バッテリーセルの液体電解質と同じ役割を果たす固体電解質バッテリーセル、より厳密には凝固電解質バッテリーセルも公知である。
【0016】
このタイプのセルの製造は、典型的に、集電体基板上での正極の加工、別の集電体基板上での負極の加工、および固体電解質で形成された分離層の加工、それからバッテリーセルの形へのこれらの層の組立てを含む。異なる構成要素の加工、詳細には固体電解質層(ゲルまたはポリマー)の加工は、紫外線の作用下での、当初液体である電解質の架橋または重合によって行なわれ得る。
【0017】
同様に、正極および負極は、電極インクの溶剤の乾燥によって、または紫外線の下でかまたは加熱によるポリマーの架橋によって得ることができる。
【0018】
このタイプのバッテリーセルの例示として、例えば欧州特許第3341987号明細書を参照することができる。
【0019】
米国特許出願公開第2006/0016549号明細書は、集電体を形成することのできる導電性の支持フィルム上での電極シートの層状化方法および設備を記述している。層状化は、支持フィルムそして場合によっては電極シートを加熱して軟化させることで行なわれる。加熱後、電極シートおよび支持フィルムは、プレスロールの間を通過させることによって組立てられる。
【0020】
米国特許出願公開第2005/0236732号明細書は、正極を形成する複合フィルムの押出し加工、および所望の厚みに到達するためのフィルムのカレンダー加工の方法および設備について記述している。複合フィルムは、電極活物質、電子伝導性添加剤およびイオン伝導性ポリマー電解質の混合物を含む。固体電解質バッテリーセルにおいて、正極と負極を分離する固体電解質層は、2重の機能を有する。主たる機能は、バッテリーセルの充電または放電の間に、反対符号の電極間のイオン伝導を確実に行うことにある。もう1つの機能は、反対符号の電極を離して維持し、こうして、セルの短絡を結果としてもたらすと考えられる電極間の電子伝導を回避することにある。この第2の電気的絶縁の機能は、電解質層が電子を通さないことから、液体電解質セルの電気的分離フィルムの機能に類似している。
【0021】
しかしながら、全てのバッテリーは内部抵抗を有しており、効率を増大させるためにはそれを削減することが望ましい。
【0022】
さらに、バッテリーの信頼性および使用の安全性レベルを増大させながら、それらの製造コストを削減することも望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0023】
【特許文献1】欧州特許第3341987号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2006/0016549号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2005/0236732号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
本発明の目的は、固体電解質バッテリーの内部抵抗を削減すること、ならびに同じタイプの従来のバッテリーに比べて低い内部抵抗を有する固体電解質バッテリーの経済的な製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0025】
したがって本発明は、電気化学的形態でのエネルギー貯蔵セルの製造方法において:第1のハーフセルを形成するステップであって:a1)第1の導電性支持体を提供するステップ;a2)カソード活物質、導電性カーボン充填材、第1のイオン伝導性液体電解質混合物、第1のモノマーまたはポリマー混合物および第1のモノマーまたはポリマー混合物の第1の重合または架橋開始剤を含む、ペースト状態のカソード層を、第1の導電性支持体の一方の面上に被着させるステップ;a3)カソード層の凝固を開始させる形で、第1のモノマー混合物の第1の重合または架橋開始剤に適応された第1の放射を用いて、ペースト状態のカソード層を曝露するステップ;というステップa1)、a2)、a3)を含むステップと;第2のハーフセルを形成するステップであって:b1)第2の導電性支持体を提供するステップ;b2)アノード活物質、導電性カーボン充填材、第2のイオン伝導性液体電解質混合物、第2のモノマーまたはポリマー混合物および第2のモノマーまたはポリマー混合物の第2の重合または架橋開始剤を含む、ペースト状態のアノード層を、第2の導電性支持体の一方の面上に被着させるステップ;b3)アノード層の凝固を開始させる形で、第2のモノマー混合物の第2の重合または架橋開始剤に適応された第2の放射を用いて、ペースト状態のアノード層を曝露するステップ;というステップb1)、b2)、b3)を含むステップと;a4)曝露された第1の電極層の凝固が完了する前に曝露されたカソード層上に、第1のイオン伝導性分離用液体電解質混合物、第1の分離用モノマーまたはポリマー混合物、および第1の分離用モノマーまたはポリマー混合物の第1の重合または架橋開始剤を含む第1の液体状態の分離用混合物で形成された第1の分離層を、被着させかつ曝露するステップ;b4)曝露されたアノード層の凝固が完了する前に曝露されたアノード層上に、第2のイオン伝導性分離用液体電解質混合物、第2の分離用モノマーまたはポリマー混合物、および第2の分離用モノマーまたはポリマー混合物の第2の重合または架橋開始剤を含む第2の液体状態の分離用混合物で形成された第2の分離層を、被着させかつ曝露するステップ;c4)電気絶縁性グリッドフィルム(2c)上に、第3のイオン伝導性分離用液体電解質混合物、第3の分離用モノマーまたはポリマー混合物、および第3の分離用モノマーまたはポリマー混合物の第3の重合または架橋開始剤を含む第3の液体状態の分離用混合物で形成された第3の分離層を、被着させかつ曝露するステップ;というステップa4)、b4およびc4)のうちの少なくとも1つのステップを実施するステップであって;ステップa4)、b4)およびc4)の曝露が、それぞれの分離用モノマーまたはポリマー混合物の重合または架橋開始剤に適応されかつ第1、第2および第3の分離層の凝固を開始させるように適応された第3の放射を用いて実施されるステップと;2つのハーフセルの間に、ステップa4)、b4)およびc4)の分離層の少なくとも1つを間置することによって、第1のハーフセルおよび第2のハーフセルを組立てるステップであって、組立てには、d1)曝露された第1の分離層を曝露された第2の分離層と直接接触させるステップ;d2)曝露された第1の分離層を曝露されたアノード層と直接接触させるステップ;d3)曝露された第2の分離層を曝露されたカソード層と直接接触させるステップ;d4)曝露されたカソード層と曝露されたアノード層の間に曝露された第3の分離層を挟み込むステップ;というステップd1)、d2)、d3)およびd4)のうちの1つが含まれ、これらのステップd1)、d2)、d3)およびd4)において、接触させられた層のそれぞれの凝固が完了していない、ステップと;を含む方法に関する。
【0026】
発明者らは、正極と負極を互いに機械的および電気的に分離し以下では分離層と呼んでいる固体電解質で形成された分離層を通した正極と負極間のイオン伝導が不完全であるという事実の確認から始めた。
【0027】
発明者らは、従来は、電解質と接触させられたシートの形態をしている電解質活物質間のイオン伝導が不十分であることも確認した。
【0028】
それゆえに、本発明は、電極と分離層の間ならびに活物質と電極層の電解質の間の界面においてのみならず、活物質の内部および分離層の内部においても、イオン伝導の特性を改善するバッテリーセルの製造方法を提案することも目的としている。
【0029】
したがって本発明は、液体電解質セルに匹敵するイオン伝導の性能を有する固体バッテリーセルを得ることを目的としている。
【0030】
したがって本発明は、液体電解質を使用するセルに匹敵する電極内部の電子およびイオン伝導の品質を有する固体電解質を含む分離層を伴うセルを得ることを目的とする。
【0031】
本発明は、あらゆる電子伝導を回避しながら、分離層を通した電極から反対符号の電極へのイオン伝導を改善することも目的としている。
【0032】
本発明は、特に気密性、引火の危険性および健康上の危険性の観点から見た安全性が大幅に改善された、「全固体」タイプすなわち液体電解質無しのセルを提案することを目的とする。
【0033】
セルの安全性は、その製造、その使用の時点、その耐用期間全体にわたってのみならず、その再生利用のための寿命の終りにもわたるものである。
【0034】
本発明は、製造コストを削減しながらバッテリーセルの連続的かつ自動的な製造を可能にするバッテリーセルの製造方法および設備を提案することも目的としている。
【0035】
本発明はさらに、改善された比容量を有し、電極に結合剤、詳細には「PVDF」(ポリフッ化ビニリデン)タイプの結合剤を含まないバッテリーセルの製造方法を提案することも目的としている。
【0036】
本発明はさらに、セル外に接続リンクを必要としない固体電解質セルの、特にスタッキングによるバッテリーの製造方法を提案することを目的とする。
【0037】
最後に、本発明は、固体電解質バッテリーセルの製造用設備を提案することを目的としている。
【0038】
本発明の特定の実施形態の詳細な説明
本発明は、一方ではカソード層と分離層の間、他方ではアノード層と分離層の間、そして場合によってはその組合せが分離層を形成している副層の間の優れた接触界面を保証することのできる方法を実施する。その上、カソードおよびアノード活物質ならびに導電性カーボン充填材は、カソード層およびアノード層の電解質との優れた接触を有しており、アノード層およびカソード層の中で優れたイオン伝導が確実に行われる。実際、これらの電極層の形成に際しては、活物質および導電性カーボン充填材が、液体状態のイオン伝導性電解質混合物内に分散させられていることから、密な接触だけでなく、電極層の凝固の際に維持される特性である、電解質との大きな接触表面も保証される。
【0039】
本発明の方法は、カソード層のみの上、またはアノード層のみの上、またはアノード層およびカソード層の上に、活物質を含まない電解質で形成される分離層を形成することによって実施され得る。
【0040】
識別を目的として、分離層は、カソード層上に被着させられた場合「第1の分離層」と呼ばれ、アノード層上に被着させられた場合「第2の分離層」と呼ばれる。
【0041】
第1の分離層および第2の分離層が両方存在する場合、第1のハーフセルおよび第2のハーフセルの組立ては、これら2つの層の密な接触によって行なわれる。
【0042】
第1の分離層のみが第1のハーフセルのカソード層上に形成されている場合、ハーフセルの組立ては、第1の分離層を第2のハーフセルのアノード層と接触させることによって行なわれる。
【0043】
逆に、第2の分離層のみが第2のハーフセルのアノード層上に形成される場合、ハーフセルの組立ては、第2の分離層を第1のハーフセルのカソード層と接触させることによって行なわれる。
【0044】
あらゆる場合において、ハーフセルの組立てのために接触させられる層は、それらの凝固の完了前にそのように接触されており、以下でさらに説明される通り、こうして物質の一定の相互浸透および層間の密な接触を可能にするようになっている。
【0045】
別段の詳述の無いかぎり、以下の説明は、各々のハーフセルが活物質を含まない電解質層を表面に含んでいる実施形態を基準にしているが、活物質を含まない第1および第2の電解質層のうちの一方しか取り上げないという可能性について速断することはない。
【0046】
その上、カソード層からアノード層へと延在する製造方法の最後で得られる分離層は、電子を通さないものの、イオン伝導性を有する。
【0047】
第1および第2の支持体は、その導電性のため、それぞれ第1および第2のハーフセルの集電体を形成する。この方法において、ステップa2およびa3は、第1の導電性支持体上に正極(カソード)を製作することを目的とする。第1の導電性支持体は、正極のためのバッテリーセルの集電体を構成する機能を有する。この導電性支持体は、単数または複数の導電性物質層を含み得る。これらの導電性物質は、金属、導電性ポリマーおよび製織または不織炭素繊維フィルムの中から選択され得る。使用可能な金属としては、例えば銅、アルミニウム、ステンレス鋼およびニッケルを挙げることができる。ステップb2およびb3の際に製作される負極(アノード)のための集電体として役立つ第2の導電性支持体についても同様である。第1の導電性支持体および第2の導電性支持体は、詳細には、ロールから繰出された帯状物の形態で供給され得る。この態様は、以下でさらに詳述される。
【0048】
ただし、シートまたはプレートの形態による第1および第2の導電性支持体に基づく方法の実施は排除されず、以下で説明するロール-ツー-ロール法に対する代替案で有り得る。
【0049】
作業a1およびb1を参照すると、それぞれ正極の形成用のカソード活物質および負極の形成用のアノード活物質を含有するカソード層およびアノード層は、インクに匹敵するペーストの形態で導電性支持体上に被着される。この粘稠性は、カソード層およびアノード層の固体粒子の内容に起因するものである。
【0050】
これらの層は、より厳密には、電極(場合によってカソードまたはアノード)の活物質、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、またはカーボンナノファイバ、グラフェン、または酸化グラフェンなどの導電性カーボン添加剤、およびイオン伝導特性を有する凝固可能な液体、例えばイオン伝導性液体電解質混合物、モノマーまたはポリマー混合物および第1のモノマーまたはポリマー混合物の第1の重合または架橋開始剤を含む混合体を含む混合物で構成されている。この混合体は、凝固可能な電解質混合物またはより単純に凝固可能な電解質とみなすことのできるものである。これらの液体、半液体またはペースト状の混合物は、包括的に液体とみなされ得、その構成成分間の優れた凝集力を可能にし、モノマーまたはポリマー混合物の重合または架橋によるその凝固の後、優れたイオン伝導特性を有する固体層を結果としてもたらす。
【0051】
例えば各層のそれぞれの機能の最適化を目的として、カソード層、アノード層および分離層について異なる組成の凝固可能な液体電解質を使用することが可能である。
【0052】
代替的には、含有し得る添加剤を除いて、同じ凝固可能な液体電解質を、該方法の全ての作業のために使用して、カソード層、アノード層および分離層を形成するために同じ凝固可能な液体電解質が利用されるようにすることが可能である。
【0053】
同じ凝固可能な液体電解質を使用することは、接触する異なる層間の適合性および均質な架橋の獲得を促進することを可能にして、製造方法の調節を容易にし生産コストを削減する。
【0054】
別段の指示の無いかぎり、簡潔さを維持するために、本明細書の以下の部分は、この最後の場合について論じており、この同一の凝固可能な液体電解質は、「凝固可能な液体電解質」と称される。
【0055】
第1の混合物および第2の混合物は、ミキサー内で、好ましくは中性雰囲気下で調製され得、このことはすなわち、中性雰囲気を構成する単数または複数の気体が、電極の構成成分と化学的に相互作用せず、詳細にはこれらの電極の活物質と反応しないことを意味する。
【0056】
導電性添加剤は、カソード層およびアノード層内での電子の伝導を改善する機能を有する。導電性添加剤の割合は、好ましくは、考慮対象のカソード層またはアノード層の20質量%未満であり得る。この割合は例えば、カーボンブラックの場合には5~20%、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバまたはグラフェンの場合には1~5%である。
【0057】
イオン伝導は、イオン伝導性塩を含み得る電解質によって確保される。
【0058】
活物質の中心におけるそのイオン伝導機能に加えて、カソード層およびアノード層を形成することを目的とする混合物の組成に入る電解質は、集電体を形成する支持体に対するこれらの層の連結にも介入する。まだ液体状態の電解質は、その表面張力により、第1の支持体および第2の支持体の湿潤剤を構成し、こうしてこれらの支持体上での活物質を含む混合物の接着を促進する。その結果、凝固の後、集電体上のアノード層およびカソード層の優れた連結がもたらされる。
【0059】
「液体」なる用語は、粘性について速断するものではなく、ペースト状または半液体層を呼称するために用いることができるということを明確にしておくことが必要である。詳細には、カソード層およびアノード層を形成するために使用される混合物は、その固体元素の内容に起因して、ペースト状の粘稠性を有することができ、一方、活物質を含まずに分離層を形成している電解質は、より薄い厚みで被着されていることから、さらに流動性を有し得る。「液体」なる品質を示す語は、これらの層各々に適用可能である。
【0060】
したがって、アノード層の厚みおよびアノード層の厚みは、50μm~300μmであり得、分離層の厚みは20μm~60μmであり得る。
【0061】
カソードおよびアノードの電極層はそれぞれ、バッテリーの充電サイクルおよび放電サイクル時に伝導性イオンを貯蔵し放出するための電極活物質65~80%、層内の電子伝導率を改善するための導電性カーボン添加剤1~20%、および可動イオンを供給しそれらの支持体として役立つ凝固可能な液体電解質10~50%を各々含む第1の混合物および第2の混合物で構成され得、ここで百分率は、電極層の質量割合を表わしている。
【0062】
ここでは凝固可能な液体電解質である液体電解質は、リチウム塩10~30%、中にイオンが溶解したカーボネート溶媒またはエーテル溶媒などの溶媒50~75%、モノマー10~30%そして電極層を凝固させるようにモノマーを架橋または重合するための光開始剤0.1~5%を含む混合物で構成され得、ここで百分率は、凝固可能な液体電解質の質量割合を表わしている。
【0063】
より一般的には、本明細書において、リチウム塩は、包括的に、特にリチウム塩およびナトリウム塩を含むバッテリー電解質のアルカリ塩によって置換され得ると考えられる。
【0064】
モノマーは任意には、例えば企図されている製造方法により適応した粘度を得るために、明確に異なる複数のモノマーで構成されたモノマー混合物によって置換され得る。
【0065】
カソード層およびアノード層を形成する第1の混合物および第2の混合物の組成に入る凝固可能な液体電解質は、例えば、LiTFSI(リチウムビス(トリフルオロメタン)スルホンイミド)タイプの塩、例えばリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドを伴うゲル/ポリマー電解質、すなわちSolvionic社により市販されているN-ブチル-N-メチルピロリジニウムビス(フルオロスルホニル)イミド、またはカルボネートを伴う標準的な液体電解質(1M LiPF6 EC/DMCまたはEC/DEC)を含み得る。
【0066】
例えばカーボネート溶媒、またはエーテル、またはイオン液体、またはイオン伝導性ポリマーまたはイオン伝導性ガラスおよびセラミックと組合されたリチウム塩を使用する他の組合せは排除されない。
【0067】
モノマーは、例えばトリメチルロールプロパンエトキシレートトリアクリレート(ETPTA4)であり得る。
【0068】
凝固可能な液体電解質の光開始剤は、放射、特に光放射に対する曝露の作用下で、それぞれモノマーまたはポリマーの重合または架橋を開始させ、高分子ゲル電解質の形成により凝固可能な液体電解質を含む層の凝固を導くことを可能にする。モノマーの重合の場合、ここではそれはラジカル重合である。
【0069】
例えば、これは、Darocur 1173さらには2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン(DMPA)の呼称で市販されているようなHMPP(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン)タイプの光開始剤である。
【0070】
他の光開始剤は、排除されない。
【0071】
カソード層用に使用される第1の混合物は、NMC(ニッケルマンガンコバルト)、NCA(ニッケルコバルトアルミニウム)、硫黄またはLi2Sの粉末形態のカソード活物質を含み得る。
【0072】
凝固可能な液体電解質は、混合物の体積%で10%~50%、例えば20%の割合で、第1の混合物中に含まれる。
【0073】
混合物の体積%で5%~15%であり得る割合の導電性カーボン充填材は、特にカーボンナノチューブ、カーボンナノファイバおよび/またはカーボンブラックを含むことができる。
【0074】
活性粉末および導電性充填材は、凝固可能な液体電解質と混合される。
【0075】
アノード層用に使用される第2の混合物は、例えば、凝固可能な液体電解質、黒鉛粒子、LTO(チタン酸リチウム)または、リチウムを含むかまたは含まないケイ素粒子のアノード活物質を含み得る。これらの粒子は場合によって、カーボンナノチューブまたはナノファイバなどのカーボン粒子に結び付けられ得る。
【0076】
凝固可能な液体電解質は、混合物の体積%で10%~50%、例えば20%の割合で、第2の混合物中に含まれる。
【0077】
第2の混合物の体積%で5%~15%であり得る割合の導電性カーボン充填材は、特にカーボンナノチューブ、カーボンナノファイバおよび/またはカーボンブラックを含むことができる。
【0078】
活性粉末および導電性充填材は、凝固可能な液体電解質と混合される。
【0079】
本発明の方法は、セルの正極および負極の製造に関して逆転させることができるという点を明確にしておくことが必要である。
【0080】
換言すると、ステップa2は、負極を伴うハーフセルの製作のためにアノード活物質を用いて実施可能であり、ステップb2は、正極を伴うハーフセルの製作のためにカソード活物質を用いて実施可能である。
【0081】
有利には、カソード層およびアノード層を形成する混合物中で凝固可能な電解質の存在のため、これらの電極は、電極の機械的強度のための結合剤を形成する添加剤を援用することなく形成され得る。詳細には、これらの電極は、従来のバッテリー内で、通常一般的に使用されている「PVDF」(ポリフッ化ビニリデン)タイプの結合剤を含まない。これによりその重量は低減され、これらの電極を使用する蓄電池の比容量、すなわち質量単位あたりの貯蔵可能な電気エネルギーは増加する。「PVDF」タイプの結合剤を含む電極を有するセルと比較して、同じ電荷容量に対しておよそ10%の軽量化を得ることができる。
【0082】
導電性基板上の混合物層の被着は、混合物が液体である場合、またはより具体的にペースト状である場合に行なわれる。
【0083】
これは特に、導電性基板の進行する帯状物上で連続的に層を被着できるようにする表面被覆(英語では「slot die coating」)のヘッドの形状をした被着ヘッドを用いて行なわれ得る。押出し加工ヘッドによる他の被覆技術が排除されないということを明確にしておくことが必要である。
【0084】
カソード層およびアノード層の凝固は、凝固可能な液体電解質の光開始剤が感応性を有する開始の放射に対してこれらの層を曝露することによって開始される。
【0085】
放射は、光放射であり得る。これは、例えば、UVランプによって生成される紫外線(UV)、UV発光ダイオードまたはUVレーザビームである。光放射は、可視または近赤外スペクトル内の放射であってもよい。光放射は、凝固の開始機能を有するものの、加熱機能は有さないということを明確にしておくことが必要である。非加熱性放射は、凝固可能な液体電解質の熱改変のあらゆる危険性を回避する目的で、逆に好ましい。
【0086】
選択される放射の波長は、アノード層またはカソード層を形成する混合物中で使用される凝固可能な液体電解質中に含有される光開始剤によって決定される。
【0087】
凝固すべき物質内への放射の良好な浸透を確実に行うために、放射は好ましくは100nm~1600nmの波長を有し得る。
【0088】
凝固は、層の構成成分、特にモノマーの劣化を回避するために好ましくは100kGray未満の線量で300keVにまで至るエネルギー浸透性の高い電子ビームの形態をした放射を用いても開始され得る。
【0089】
当然のことながら、凝固速度は、考慮対象の混合物の組成とこの凝固を開始させる放射に対する曝露線量に左右され、したがって、層がそれぞれの凝固の完了前に効果的に接触させられることを確実に行うために、当然これらのパラメータについての調整を行なわなければならない。
【0090】
カソード層は、カソードまたはアノードの活物質を含まない凝固可能な液体電解質の第1の層で覆われている。同様にして、アノード層は、カソードまたはアノード活物質を同じく含まない凝固可能な液体電解質の第2の層で覆われている。
【0091】
先に記した通り、カソード層およびアノード層のうちの一方のみを、活物質を含まずかつ凝固され得る液体電解質層で覆うことも可能である。
【0092】
これらの液体電解質層は、先に言及したステップa4およびb4の中に含まれる、それらの凝固を開始させる放射に付される。電解質層は、第1の支持体および第2の支持体上へのカソード層およびアノード層の被着のために使用されるものに匹敵する被着ヘッドを用いて被着され得る。
【0093】
被着ヘッドの特性および寸法決定は、被着される物質の多少とも流動的である性質に適応され得る。活物質を含まない電解質は、実際、活物質の不在と同時に、電極(カソードそして場合によってはアノード)層中に見い出すことのできるカーボン粒子の不在を理由として、カソード層およびアノード層を形成するために使用される混合物に比べてより流動的であることが分かる。必要な場合には、流動性調整用の無機充填材といった補正用添加剤を用いてペースト性をさらに高めることにより、活物質を含まない電解質の流動性を調整することが可能である。
【0094】
重要なことに、活物質を含まない第1の電解質層および/または活物質を含まない第2の電解質層の被着は、それぞれ、カソード層およびアノード層の凝固の開始後、ただしその凝固の完了前に行なわれる。
【0095】
この特性は、活物質を含む下にあるカソード層またはアノード層上での活物質を含まない液体電解質層の密な接触および完全な連結を促進する。
【0096】
ところで、これらの層間の接触の性質は、完成したバッテリーセル内で、電極とこれらの電極上に形成された液体電解質層によって形成される分離層との間のバッテリーの充電または放電作業中のイオン伝導を改善することを可能にする。
【0097】
本発明の方法は、電極層と分離層との間の界面における分子の一定の相互浸透を可能にし、障壁も界面も無い物質の連続性を保証する。
【0098】
その結果、内部抵抗の削減、充電速度および放電速度のみならず、セルを使用する電気エネルギーの蓄電池の負荷容量の観点から見た利得が得られる。
【0099】
任意には、第1および第2の分離層の形成のために使用される凝固可能な液体電解質は、活物質を含みカソード層およびアノード層を形成するために使用される第1の混合物および第2の混合物の組成中に入る凝固可能な液体電解質と同じであり得る。
【0100】
実際、同じ凝固可能な液体電解質を使用することによって、連続する層間で物質の非常に優れた連続性を得ることが容易になる。
【0101】
したがって、カソード層の凝固可能な液体電解質、アノード層の凝固可能な液体電解質、第1の電解質分離層の凝固可能な液体電解質および第2の分離層の凝固可能な液体電解質は、同一であり得、好ましくは同一である。
【0102】
同一の液体電解質の使用は、粘稠剤または流動化剤さらには、カソード層またはアノード層の組成中に入り得る先に触れた導電性ナノ材料などの、性質または割合の異なる補助剤を、異なる層(アノード層、カソード層、分離層)中に、場合によって添加することについて速断するものではない。これらの補助剤は、異なる層中での電解質の使用に応じて、かつ層形成のレオロジー制約条件に応じて、異なるものであるかまたは異なる数量で存在し得る。
【0103】
詳細には、第1および第2の分離層は、好ましくは、組立て時のバッテリーセルの反対符号の電極間の自己放電の危険性を回避するため、あらゆる導電性/電子伝導性添加剤そして活物質を含まない液体電解質で形成されている。
【0104】
活物質を含む混合物層と活物質を含まない電解質層とを備えた第1および第2の支持体は、バッテリーセルを形成するために組立てられるハーフセルを構成する。
【0105】
活物質を含まない第1および第2の電解質層の相互接触を伴う組立ては、同様に、電解質の凝固の開始後、その凝固の開始直後、そしていずれにせよその凝固の完了前に行なわれる。
【0106】
ここでもまた、この措置は、活物質を含まない電解質層の密な接触および完全な連結を促進する。
【0107】
この措置は、充電または放電サイクル中の最終的なセル内での一方の電極から他方の電極への電解質層を通ったイオン伝導における連続性を保証することを可能にする。
【0108】
活物質を含まない第1の電解質層と活物質を含まない第2の電解質層との接触は、好ましくは直接的接触である。
【0109】
しかしながら、一変形形態として、該方法は、第1のハーフセルおよび第2のハーフセルの組立ての際に、活物質を含まない複数の電解質層間、または活物質を含まない電解質層とアノード層およびカソード層のうちの一方との間に、追加の電気絶縁性グリッド分離フィルムの設置を含むことができる。この場合、これらの層の接触は、このフィルムを通して行なわれる。
【0110】
詳細には、2~4mmのピッチの粗い網目を伴うヘアネット形状のポリマー材料でできた電気絶縁性グリッド分離フィルムは、活物質を含まない第1および第2の電解質層の間に挿入され得る。分離材には、凝固可能な液体電解質が含浸されていてよく、組立ての際にハーフセル間にはさみ込まれる直前に液体電解質の凝固を開始させる放射に曝露され得る。この特定の実施形態において、カソード層およびアノード層を覆う活物質を含まない液体電解質層の製作のために使用されるものと同じ、活物質を含まずかつカーボン充填材を含まない液体電解質のことである。
【0111】
グリッド分離フィルムに予め含浸が行われてもいなくても、グリッド分離フィルムの両側にあるなおも液体状態の活物質を含まない電解質は、グリッド分離フィルムを通過することができる。これにより、活物質を含まない電解質層のグリッド分離材を通した相互浸透が可能になる。
【0112】
活物質を含まない電解質層の相互浸透は、それらの組立てを実現するロール対の間をハーフセルが通過することによって促進される。
【0113】
活物質を含む混合物の層の凝固の完了前の、活物質を含まない電解質層の被着、および凝固前の電解質層の相互接触により、セルの組立て後に凝固を完了させることが可能になる。先に触れた通り、その結果として、バッテリーセルの連続層の一定の分子相互浸透および物質の連続性がもたらされる。これらの措置により、結果として得られるバッテリーセルの充電および放電時の異なる層間の優れたイオン伝導を得ることが可能になる。これらの措置により、アノード層とカソード層の間の短絡を回避することも可能になる。
【0114】
一方ではステップa1、a2、a3およびa4そして他方ではステップb1、b2、b3、b4は、同時に実現される。2つのハーフセルの形成ステップを完全に同期させていることが不可欠でない場合には、しかしながら、これらのステップは、層の凝固の完了前に層を結び付けることができるようにするため十分に短い時間内で実現される。
【0115】
この点に関して、凝固はその開始後数秒以内で完了され得、こうしてステップの同時性は秒単位で理解されるという点を指摘することができる。
【0116】
有利には、該方法はさらに:
- 活物質を含まない第1の電解質層の被着前に、活物質を含まない第2の電解質層の被着前にそれぞれ、カソード層、アソード層それぞれの厚みを校正するステップおよび/または、
- ハーフセルの組立て前に活物質を含まない第1の電解質層および活物質を含まない第2の電解質層の厚みを校正するステップ、
を含むことができる。
【0117】
層の校正により、支持体の広がり全体にわたり層の厚みを均一化することが可能となり、その広がり全体にわたる最終的なセルの電気的特性を改善することが可能となる。その上、校正は、校正ロール間に製造中のハーフセルを通過させることによって行なわれる場合、層に圧縮を加え活物質内への電解質の浸透を完璧なものにすることを可能にする。校正は、望まれない考えられる多孔性を解消することをも可能にする。
【0118】
なお、校正は、まだ凝固していない層間の良質な接触には必要でないものの、品質および均一性をさらに増大させることを可能にし得ることが理解される。
【0119】
校正ロールは、こうして、圧延機も構成することができる。ロールは、層の凝固を活性化させることのできる加熱ロールであり得る。
【0120】
該方法の好ましい一実施形態によると、第1の支持体および第2の支持体は、それぞれ第1の支持帯状物および第2の支持帯状物であってよい。
【0121】
この場合、第1の支持体の供給および第2の支持体の供給は、それぞれ第1の繰出しロールおよび第2の繰出しロールからのそれぞれ第1の支持帯状物の繰出しおよび第2の支持帯状物の繰出しを含むことができる。
【0122】
作業全体は、繰出しロールと巻付けロールの間のいわゆるロールツーロール(roll to roll)法にしたがって行なわれ得る。
【0123】
詳細には、カソード層の被着およびアノード層の被着は、それぞれ第1の混合物の第1の被着ヘッドおよび第2の混合物の第2の被着ヘッドの前を第1の帯状物および第2の帯状物が進行することによって、連続的に行なわれ得る。
【0124】
同様にして、活物質を含まない第1の電解質層の被着および活物質を含まない第2の電解質層の被着は、それぞれ第3の電解質被着ヘッドの前および第4の電解質被着ヘッドの前を第1の帯状物および第2の帯状物が進行することによって連続的に行なわれ得る。
【0125】
製造設備内での被着ヘッドの編成および該方法の異なる作業に対応するモジュールの配設については後述する。
【0126】
先に触れた通り、被着ヘッドは、被着ヘッドの前を帯状物が通過するにつれて帯状物の幅全体にわたり異なる物質層をそれぞれ被着させる能力を有するスリットのある押出し加工ヘッドであり得る。異なる層の被着の時点で、被着ヘッドから出る物質は、多少とも流動的な粘稠性を有する液体である。
【0127】
被着ヘッドは、リチウム-イオンバッテリーを製造するための活物質の被着用機械の中で一般的に使用されるようなヘッドであってもよい。
【0128】
「被着」および「被着ヘッド」なる用語の使用は、被着技術について速断するものではない。これらの用語は、支持体上に物質を供給する機能のみならず支持体の被覆機能すなわち、物質が上に被着される支持体の表面上での物質の分布をも包含するものとして理解される。
【0129】
その上、該方法の特定の実施可能性によると、カソード層の曝露およびアノード層の曝露は、それぞれ少なくとも1つの第1の放射源および少なくとも1つの第2の放射源の前をそれぞれ第1の帯状物および第2の帯状物が進行することによって行なわれ得る。
【0130】
さらに、第1の分離層の曝露および第2の分離層の曝露は、それぞれ第3の放射源および第4の放射源の前を第1の帯状物および第2の帯状物が進行することによって行なわれ得る。
【0131】
上述の層の曝露は、それぞれ、カソード層の製造に役立つ第1の混合物の電解質中、アノード層の製造に役立つ第2の混合物の電解質中、および/または活物質を含まない電解質中に含有され、重合および/または架橋によるこれらの層の凝固を開始させることのできる光開始剤に適応された放射に対するそれらの曝露として理解される。
【0132】
先に触れた通り、放射源はランプ、LEDダイオードのみならず、レーザ源または凝固させるべき物質を走査する電子ビームを発出する能力を有する電子源でもあり得る。これは、紫外線スペクトル内のみならず可視および赤外線スペクトル内でも発出する放射源であり得る。
【0133】
赤外線およびこのスペクトル内で感応性を有する光開始剤を使用することにより、放射によるより優れた物質浸透が可能となる。
【0134】
該方法の作業順番および順序は、第1の支持帯状物および第2の支持帯状物上に形成されるハーフセルを組立てる繰出しロールとプレスロールの間で第1の支持帯状物および第2の支持帯状物によって実施される行程に沿った物質被着ヘッドおよび放射源の配設によって定められ得る。
【0135】
第1の支持体および第2の支持体がそれぞれ、第1の支持帯状物および第2の支持帯状物である場合、カソード層、アノード層の厚みの校正はそれぞれ、第1の校正ロール対および第2の校正ロール対を通してカソード層を備えた第1の支持帯状物、アノード層を備えた第2の支持帯状物それぞれが通過することによって行なわれ得る。カソード層の厚みおよびアノード層の厚みは同一でないものの、相互に依存することが可能であるということを明確にしておくことが必要である。同様に、校正ロールは、集電体を構成する支持帯状物の厚みを考慮して、層のそれぞれの厚みを制御するような形で制御用コンピュータによって制御され得る。
【0136】
さらに、活物質を含まない第1の電解質層および活物質を含まない第2の電解質層の厚みの校正は、第3の校正ロール対および第4の校正ロール対を通して第1のハーフセル、第2のハーフセルそれぞれが通過することによって行なわれ得る。
【0137】
2つのハーフセルの組立てにより得られるセルは、エネルギー蓄電池を構成する。上述の通りのロールツーロール製造は、ほぼ無制限のエネルギー貯蔵能力を有する大きな寸法、特に大きい長さの帯状のセルを得ることを可能にする。このようなセルは、電気エネルギー貯蔵用の定置施設を有用に装備することができる。
【0138】
しかしながら、セルを単に切断することによって、より小さいセルを得ることが可能である。実際、該方法は、ハーフセルの組立ての後に、バッテリーセルをフォーマットされたセルに切断することを含むセルのフォーマット作業を含み得る。切断は、第1の支持体および第2の支持体に対して横断方向であり、またこれに対し直交するものと理解される。切断は、織物の切断のために使用されるものに類似したレーザ切断テーブル上で実施され得る。レーザ切断は、材料の局所的融解を伴うカット品質を可能にし、特に集電体間の電気的短絡のあらゆる危険性を回避することを可能にする。したがって、大きな寸法の唯一のセルから、複数のフォーマットされたセルを得ることができる。
【0139】
セルは液体電解質を含まないことから、電解質の流出のあらゆる危険性が取り除かれ、切断には、電解質に関する特別な配慮は必要とされない。
【0140】
最終的に得られたフォーマットされたセルは、好ましくは、矩形の主要面および隅の脆性を回避するように丸味の付いた隅を伴うセルであり得る。
【0141】
最後に該方法は、フォーマットされたバッテリーセルの少なくとも1つの切断縁端部上での保護用電気絶縁性材料のコーティングの設置を含むことができる。フォーマットされたセルへのセルの切断の結果としてもたらされる単数または複数の縁端部の保護は、それ自体、セルの機能にとって不可欠ではない。しかしながら、およそ数百マイクロメートルというセルの厚みが非常に薄いので、集電体間の予期せぬ短絡のあらゆる危険性を回避するために、こうして縁端部を保護することが望ましい。切断縁端部上の絶縁性材料も、液体の形態で設置され、放射に対する曝露によって凝固させられてよい。これは、この場合、光重合可能な電気絶縁体である。
【0142】
最後に、フォーマットされたバッテリーセルの縁端部は、セル単体またはスタッキングされた複数のセルの厚みに対応する幅を有する粘着テープを縁端部上に設置することによって保護され得る。
【0143】
本発明は、バッテリーの製造方法にも関する。該方法は、前述の方法でフォーマットされた複数のバッテリーセルの製造、およびフォーマットされたバッテリーセルの重なりの形成を含み、重なりの形成には、フォーマットされたバッテリーセルの第1の支持体の伝導性自由面と重なりの後続するフォーマットされたバッテリーセルの第2の支持体の伝導性自由面との接触が含まれる。
【0144】
セルの第1の支持体は、集電体を形成し、カソード層と接触する面および反対側の導電性自由面を有する。同様にして、セルの第2の支持体はまた、集電体を形成し、アノード層と接触する面および反対側の導電性自由面を有する。ここで「自由面」とは、集電体支持体の電極を担持しない面を意味する。
【0145】
集電体の自由面は、バッテリーの中で、セルの電気的相互連結のためのコネクタとして役立つ。
【0146】
バッテリーは、正および負の活物質層を伴うハーフセルの交互、すなわちカソード-アノードの交互を伴って直列に置かれた複数のフォーマットされたセルの重なりを含むことができる。これらのフォーマットされたセルをスタッキングすることによって、集電体を形成する支持体の自由面を物理的または電気的に接触させてそれらの相互接続を直接実現することが可能となる。
【0147】
蓄電池バッテリーを実現するためにフォーマットされたセルを直列および/または並列に配置する他の設計は、当然排除されない。セルがスタッキングされていない場合、所望の相互連結設計にしたがってセルの集電体を電気的に接続するために、追加の導電体を想定することができる。
【0148】
最後に本発明は、前述のようなバッテリーセルの形成に適した設備に関する。該設備は、以下のものを含む:
- 第1のハーフセル製造用の第1の製造ライン;
- 第2のハーフセル製造用の第2の製造ライン;
- 第1の製造ライン上に形成された第1のハーフセルおよび第2の製造ライン上に形成された第2のハーフセルを組立てるための組立てロール対;および
- 組立てロール対の下流側に配置されたバッテリーセルの巻付けロール。
【0149】
駆動ロールであり得る巻付けロールは、第1の製造ラインに由来するハーフセルおよび第2の製造ラインに由来するハーフセルで形成された完了したバッテリーを巻付けるように想定されている。
【0150】
第1の製造ラインおよび第2の製造ラインとは、互いに類似し2つのハーフセルの同時製造専用の設備と同等の施設を意味する。製造ラインは、ハーフセルが組立てられる組立てロールのレベルで合流する。
【0151】
詳細には、第1の製造ラインおよび第2の製造ラインのうちの少なくとも1つが以下のものを含む:
支持帯状物の繰出しに適した繰出しロール;そして繰出しロールと組立てロール対との間で順番に:
- カソード層、アノード層それぞれの形成に適した第1の被覆モジュール;
- 第1の圧延モジュール;
- 活物質を含まない電解質層の形成に適した第2の被覆モジュール;および
- 第2の圧延モジュール。
【0152】
各モジュールは、該製造方法の単数または複数の作業を実行するのに必要な機構を含む。
【0153】
製造ラインを構成する異なるモジュールは、互いとの関係において、および組立てロール対との関係において移動させられて、連続するモジュールの離隔距離をそれぞれ調整できるようにすることができる。
【0154】
この距離の修正および制御は、支持帯状物および支持帯状物上に形成されるハーフセルが、繰出しロールと巻付けロールの間でロールツーロールの1つのモジュールから別のモジュールへ固定された進行速度で循環することを知った上で、各モジュールによって行なわれる作業の間の経過時間を定めることを可能にする。
【0155】
したがって、一方では層の被着および放射に対する曝露と他方ではその圧延との間でかかる時間を調整することが可能である。層の被着および/またはこれらの層の凝固を開始させる放射に対する層の曝露とハーフセルの組立てとの間でかかる時間を調整することも可能である。
【0156】
第1の被覆モジュールおよび第2の被覆モジュールは、各々、カソード層、アノード層それぞれの被着ヘッドおよび被着ヘッドに結び付けられた少なくとも1つの放射源を含んでいる。
【0157】
第1および第2の圧延モジュールは、校正ロール対および、校正ロール対にそれぞれ結び付けられた厚みセンサーをそれぞれ含む。圧延モジュールの機能は多数ある。第1の機能は、被着された層の厚みを定めることである。別の機能は、層の厚みを均一化することである。特に第2の圧延モジュールのさらに別の機能は、活物質を含まない電解質層を、下にあるカソード層またはアノード層上で押圧して、層の溶接を改善することにある。最後に、校正ロールが加熱する場合、1つの機能は、層の凝固速度を高めることであり得る。
【0158】
圧延モジュールの校正ロールに結び付けられた厚みセンサーは、他のモジュールの他の厚みセンサーまたは繰出しロールの後に配置された支持帯状物の厚みセンサーに組合せることのできる信号を発出する。
【0159】
演算ユニット内でこれらの信号全体を組合せることにより、異なる層またはハーフセルの厚みをそれらの製造中に決定し、必要であれば予め決定された設定値に達するように校正ロールの間隔を調整することが可能になる。
【0160】
支持帯状物の進行速度の制御と結び合わせたハーフセルの行程上のモジュールの位置付けおよび間隔によって、明確に異なる2つの作業を離隔する時間的間隔、ひいてはセル製造の後続する作業の前の液体またはペーストの形態で配置された層の凝固の度合いを緻密に制御することが可能となる。
【0161】
詳細には、こうして、i)凝固を開始させるUV放射または電子ビームに対する曝露による当初はペースト状であった電極層の曝露と、ii)例えば曝露されたアノード層またはカソード層上の分離層を形成することを目的とする凝固可能な液体電解質層の被着の際のような、この電極層の別の層との接触と、を離隔する時間的間隔を制御することが可能である。時間的間隔の制御により、2つの層の間の接触が、当初それらが液体またはペースト状であるときに発生し、こうしてこれらの層間の密な接触が可能になるように保証することができる。
【0162】
同じ原理は、曝露後の、カソード層とアノード層の間に間置された分離層を共に形成することを目的とする活物質を含まない2つの電解質層の接触にも当てはまる。
【0163】
考慮される時間的間隔は、支持帯状物の所与の場所における製造ステップの適用に対応すること、そして進行速度は、それぞれバッテリーの製造方法の異なる作業に対応する1つのモジュールから別のモジュールまでの進路に沿った所与の場所の移動速度に対応することが理解される。したがって、製造方法の2ステップの適用を離隔する時間的間隔Δtは、Δt=d/Vにより推定され、式中、dは、製造方法のこれら2つのステップの2つの実施モジュールの間で支持帯状物が走行する距離であり、Vは支持帯状物の線形進行速度である。したがって、
図1により例示されているもののような連続的製造方法においては、2つの作業が連続的に適用されるというのは、これら2つの作業が支持体、帯状物または進行中のフィルムの所与の場所において連続的に適用されるとの意味合いで理解される。
【0164】
被覆モジュールの放射源は、必要であれば、凝固すべき物質をより良く曝露するために複数の放射源に増やされ得る。したがって、例えば、層の進行方向で40mmにわたって延在する出口の開口部を各々有する5つの別個の放射源のセットで構成された、層の進行方向で200mmの開口部を有する放射源と等価の放射源を想定することができる。
【0165】
放射源は、例えば紫外線、近赤外線また可視光線の放射源、そしてより一般的には、凝固されるべき液体物質内に存在する光開始剤との適合性がある放射源である。その上、放射源により発出される放射の調節は、層の厚み、それらの組成および密度、モジュールの前の支持帯状物/ハーフセルの進行速度、モジュールの隔たりなどのパラメータに応じてその強度を調整するように想定され得る。
【0166】
詳細には、カーボン充填材は、UVおよび電子放射を停止させる傾向にあり、したがって層内のカーボン充填材の割合の増加は、凝固を正しく開始させるための曝露放射量の増加を必要とし、この曝露放射量は、出力、放射源による照射を受ける表面の数ならびにロール-ツー-ロール製造の際に制御ユニットによって制御される支持体の進行速度によって制御される放射量である。
【0167】
適切な進行速度は、UV放射による曝露の場合1~10m/minであり、UV放射よりも強力でより浸透性の高い電子ビームによる曝露の場合には3~30m/minである。
【0168】
その上、設備は、縁部切断用工具を含むことができる。設備は、それぞれ、各製造ラインの第2の圧延モジュールと組立てロール対との間に配置され得る。縁部切断用工具は、組立てロール対の後に配置されてもよい。各々の切断用工具には、進行する帯状物の相対する2つの側縁を同時に切断することを可能にする2枚の二重反転ブレードが具備され得る。この工具によって、ハーフセルの幅を、それらの組立て前に定めることが可能になる。
【0169】
一変形形態によると、ブレード付き縁部切断用工具は、レーザビームによる切断設備で置換可能である。
【0170】
それぞれ第1のハーフセルの製造および第2のハーフセルの製造のために使用される2本の製造ラインを、帯状物の前進の制御が同期化された単一の機械にまとめることが可能である。
【0171】
有利な一実施形態によると、巻付けロールは駆動ロールであり得る。巻付けロールは、巻付けロール上へのバッテリーセルの巻付けが、繰出しロールの帯状物の繰出し、および帯状物ならびに帯状物上に形成されたハーフセルの繰出しロールから巻付けロールに向かう前進を誘発するのに十分な引張り力をバッテリーセルおよびその構成要素上に加えるために有効利用される場合に、駆動ローラであるとみなされる。詳細には、駆動巻付けロールの使用によって帯状物の前進を、同期化することができる。
【0172】
繰出しロールは、被制動ロールであり得る。被制動繰出しロールを、特に駆動巻付けロールと併用することにより、帯状物およびハーフセルに一定の張力を確保することができ、それらの繰出しにおける揺れを回避することができる。繰出しロールの制動は、摩擦制動または電磁制動であり得る。
【0173】
他の機構、例えば圧延モジュールまたは被覆モジュールも、中央制御ユニットを用いて帯状物の前進と同期化され得る。
【0174】
中央制御ユニットは、例えば、設備の異なる機構の制御のために構成された専用の電子制御回路を含むことができる。詳細には、設備は、巻付けロール、第1の被覆モジュール、第2の被覆モジュール、第1の圧延モジュールおよび第2の圧延モジュールのうちの少なくとも1つの制御ユニットを含むことができる。制御ユニットは、構成要素の駆動モータまたは被覆モジュールの流量を抑制するように構成され得る。制御ユニットは、支持帯状物の張力を制御するように、繰出しロールの制動の強度を制御するためにも有効に利用可能である。
【0175】
制御ユニットは、製造ラインの単数または複数のロールに結び付けられた単数または複数の回転速度センサーから信号を受信することができる。これらの信号は、帯状物およびハーフセルの進行速度を決定するために制御ユニットによって使用され得る。信号はまた、繰出しロールの制動および/または巻付けロールの動力駆動を抑制して、帯状物およびハーフセルの恒常な進行速度および恒常な張力を固定するためにも使用可能である。
【0176】
先に触れたように、本発明の設備は、液体電解質の凝固によって得られた固体電解質を有するバッテリーセルの製作に適している。この設備は、「ロールツーロール」(roll to roll)タイプの方法にしたがって、液体電解質の凝固によって得られる固体電解質を有する大表面のスーパーキャパシタのセルの実現にも適することが分かっている。
【0177】
蓄電池バッテリーを形成するためにバッテリーセルを直列または並列に接続できるのと同様に、スーパーキャパシタのセルは、スーパーキャパシタのバッテリーを形成するために直列または並列に接続可能である。
【0178】
本発明の他の特徴および利点は、図面の図を参照して、以下の説明から明らかになるものである。この説明は、限定的なものではなく例示を目的として提供されている。
【図面の簡単な説明】
【0179】
【
図1】本発明に係るセルの製造設備の異なる機構の概略図である。この図は、セルの製造方法の異なるステップも表示する。
【
図2】
図1のものに匹敵するセル製造設備の製造ラインの概略図であり、設備の機構のモジュール式組織を例示する。
【
図3】本発明にしたがって製造されたフォーマットされたバッテリーセルの主要面に沿った概略図である。
【
図4】本発明にしたがって製造され蓄電池バッテリーを構成するフォーマットされたセルの重なりの一部分の概略的断面図である。
【0180】
図は、自由縮尺で表現されている。
【発明を実施するための形態】
【0181】
以下の説明において、異なる図の同一の、類似のまたは等価の部分は、1つの図から別の図へと参照を行なえるように、同じ参照番号で印付けされている。
【0182】
図1は、本発明に係るバッテリーセル10の製造のための設備100を示す。
【0183】
設備100には、同じ機構を含み、2つのハーフセル10a、10bを同時に形成することを目的とした、同等の2つの製造ライン110a、110bが備わっている。製造ライン110a、110bは、ハーフセル10a、10bから1つのバッテリーセル10を形成するための、1対の組立てロール142において合流する。2本の製造ライン110a、110bは、それぞれ正極(カソード)を伴うハーフセル10aおよび負極(アノード)を伴うハーフセル10bを形成するように構成されている。
【0184】
ただし、正極または負極を伴うハーフセルを形成する選択は、設備に左右されるのではなく、むしろ使用材料に左右され、したがって、正極または負極を伴って製造されたハーフセルの性質は、製造ラインとは無関係である。したがって、第2の製造ライン110b上で正極を伴うハーフセルを製作し、第1の製造ライン110a上で負極を伴うセルを実現することが可能である。
【0185】
各々の製造ライン110a、110bは、当該ハーフセルの集電体として役立つ導電性支持体を供給するための繰出しロールを含む。
【0186】
したがって、第1の繰出しロール112aは、第1の支持帯状物14aを送出し、第2の繰出しロール112bは、第2の支持帯状物14bを送出する。第1の支持体14aの供給および第2の支持体14bの供給の作業は、それぞれ参照番号214a、214bと共に矢印により象徴的に表示されている。
【0187】
簡略化して、第1の支持体および第2の支持体ならびにそれらをそれぞれに構成する帯状物は、同じ参照記号14a、14bで印付けされている。支持帯状物14a、14bは、バッテリーセル10の集電体を形成するためのものである。これらの支持帯状物は、例えば銅、アルミニウム、ステンレス鋼、ニッケル製の金属フィルムのみならず、伝導性ポリマーフィルム、伝導性繊維のスライバであってもよく、あるいは、機械的強度および電気伝導を確実に行う物質の複数の層を含むことができる。支持帯状物の厚みは、およそ10~200マイクロメートルであり得る。
【0188】
帯状物の長さは、例えば数百メートルと長いものであり得る。この長さは、ロールのサイズによってのみ制限される。その上、説明されている実施例において、支持帯状物の幅は1200mmである。より大きいかまたはより小さい他の幅を選択することもできる。
【0189】
繰出しロール112a、112bの下流側では、各製造ラインは、ロールによって送出される支持帯状物14a、14bの張力を制御できるようにする、図示されていない1組のアイドラロールならびに厚みセンサー118a、118bを含み得る。
【0190】
製造ライン全体に沿って支持帯状物を支持するために、図示されていない他の搬送用ロールを想定することができる。
【0191】
ステンレス鋼またはPVCタイプのポリマーのシートで覆われた搬送用テーブルも、支持帯状物を支持するために想定可能である。
【0192】
支持帯状物14a、14bは、それぞれ、第1および第2の製造ラインのそれぞれ第1の被着ヘッド120aおよび第2の被着ヘッド120bと合流する。
【0193】
これらの被着ヘッドにはそれぞれ、カソード活物質、導電性カーボン充填材および液体状態の電解質を含む第1の混合物、およびアノード活物質、導電性カーボン充填材および液体状態の電解質を含む第2の混合物が補給される。
【0194】
同様に、第1の被着ヘッド120aの前における第1の支持帯状物14aの進行、および第2の被着ヘッド120bの前における第2の支持帯状物14bの進行につれて、カソード活物質を含む第1の混合物の第1の層は、第1の支持帯状物14a上に被着され、これがカソード層16aである。
【0195】
同様にして、アノード活物質を含む第2の混合物の第2の層が、第2の支持帯状物14b上に被着され、これが、アノード層16bである。層は、
図1に詳細に示されていないが、
図4で見ることができる。
【0196】
帯状物のアイドラロール122a、122bがそれぞれ、被覆時に支持帯状物14a、14bを良好に維持できるような形で、各被着ヘッド120a、120bと対面しているということを指摘することができる。
【0197】
カソード層およびアノード層を形成する第1の混合物および第2の混合物は、ペースト状の粘稠性を伴って被着ヘッドから出てくる。これらの混合物は各々、活物質および場合によっては既に触れた導電性カーボン充填材の他に、凝固し得る液体状態の電解質を含む。
【0198】
カソード層の厚みおよびアノード層の厚みは、およそ50~300マイクロメートルであり得る。
【0199】
カソード層およびアノード層の被着作業は、矢印220a、220bによって象徴的に表示されている。被着は、支持帯状物の幅全体にわたって実施され得る。しかしながら、説明される例中では、被着は、1160mmの幅に制限されて、帯状物14a、14bの縁部を被着の無いままに残す。
【0200】
この措置により、帯状物の側縁上で液体混合物がはみ出す偶発的危険性を回避することができる。
【0201】
第1の被着ヘッド120aの両側には、カソード層16aの凝固を開始させるための放射をカソード層16aに適用するための第1のUV放射源124aがある。
図1の実施例において、これは、カソード層16aの両面を曝露できるようにする2つに分割された放射源である。
【0202】
層16aの凝固は、この層が含有する凝固可能な液体電解質の凝固に起因するものである。実際、電解質には、第1の放射源124aの放射と適合性を有する光開始剤を含んでいる。
【0203】
同様にして、第2の製造ライン110b上で、第2のUV放射源124bは、アノード層16bの凝固を開始させるために第2の被着ヘッド120bの両側に配置されている。
【0204】
凝固を開始させる放射に対するカソード層16aの曝露およびアノード層16bの曝露の作業は、矢印224a、224bによって表示されている。
【0205】
有利にも、説明されている実施例において、層の照射は、それが支持帯状物上に被着された時点で、またはこの被着の直後に行なわれるということを指摘することができる。
【0206】
被着後の曝露も同様に企図できるが、これは、被着された層の両面の上での曝露を可能にしない。
【0207】
これらの作業の後、2本の製造ライン110a、110bの帯状物は、それぞれ第1の校正ロール対126aと第2の校正ロール対126bの間を通過する。
【0208】
電極活物質を含有する層、すなわちそれぞれカソード層およびアノード層を備えた帯状物は、混合物層の厚みを校正し多孔性を回避することを目的とするカレンダー加工を受ける。
【0209】
その電極層を備えた帯状物の厚みは、厚みセンサー128a、128bを用いて校正ロールの出口で測定される。厚みセンサーは、例えば、三角形に分割された光ビームセンサーである。
【0210】
校正ロールの出口で厚みセンサー128aを用いて行なわれる測定と、繰出しロール112a、112bの出口で厚みセンサー118a、118bにより行なわれる測定を区別することにより、混合物層の厚みを知ることができる。
【0211】
校正ロール対126a、126bおよび被着ヘッド120a、120bの離隔距離の抑制的制御を行なうためにこの厚みを、設定厚みと比較することができる。
【0212】
正極(カソード)を形成する層の厚みは、負極を形成する層の厚みと同様、60~300マイクロメートルであり得る。
【0213】
カソード層16aおよびアノード層16bの厚み校正作業は、矢印226a、226bによって表示されている。
【0214】
この第1の厚み校正の後、電極活物質を含むカソード層16aおよびアノード層16bを備えた支持帯状物14a、14bはそれぞれ、第3の被着ヘッド130aおよび第4の被着ヘッド130bの前を通過する。第3の被着ヘッド130aは、第1の製造ライン110aの一部を構成し、第4の被着ヘッド130bは、第2の製造ライン110bの一部を構成する。これらの被着ヘッドはそれぞれ、第1の支持帯状物14aのカソード層16a上に活物質を含まない電解質の形態で第1の分離層18aを、そして第2の支持帯状物14bのアノード層16b上に活物質を含まない電解質の形態で第2の分離層18bを被着させる。
【0215】
電解質で形成された分離層18aおよび18bの被着作業は、それぞれ矢印230a、230bによって表示されている。電解質は、好ましくは、カソード層16aおよびアノード層16bの幅に等しい幅にわたり、液体の形態で被着される。同じ凝固可能な液体電解質を、2本の製造ライン110a、110b上の分離層18a、18bの被着のために使用することができる。これは特に、下にあるカソード層16aおよびアノード層16bの組成中に入る凝固可能な液体電解質であり得る。電解質は、光放射の作用下でのその凝固の開始を可能にする光開始剤を含有する。これは、例えば紫外線、可視光線または近赤外線であり得る。
【0216】
活物質を含まない電解質層の厚みは、例えばおよそ10~60マイクロメートルである。
【0217】
一方では第1および第3の被着ヘッドの間の距離、そして他方では第2および第4の被着ヘッドの間の距離は、下にあるカソード層16aおよびアノード層16bの凝固の完了前に分離層18a、18bを被着させるために、十分短いものであり、支持帯状物の進行速度は、十分に高速である。層の凝固は、製造ライン110a、110bに沿った帯状物の数メートルの前進に対応する数秒以内で発生し得る。
【0218】
分離層18a、18bの凝固の開始は、それらの被着直後に、光放射に対する新たな曝露によって発生する。帯状物は、それぞれ第3および第4の被着ヘッド130a、130bの後に配置された第3のUV放射源134aおよび第4のUV放射源134bの前を進行する。
【0219】
分離層18a、18bの曝露は、矢印234a、234bによって表示される。この曝露は、分離層18a、18bの凝固を開始させる効果を有する。
【0220】
これらの作業の後、前述の層が備わった第1の支持帯状物14aおよび第2の支持帯状物14bは、改めて校正ロールを通過する。これはより厳密には、それぞれ、第3の校正ロール対136aおよび第4の校正ロール対136bである。
【0221】
第1および第2の校正ロール対と全く同じように、第3の校正ロール対および第4の校正ロール対には、厚みセンサー138a、138bが後続している。第1および第2の校正ロール対に結び付けられたセンサー128a、128bの測定値と比較したこれらの厚みセンサーの測定値によって、分離層18a、18bの厚みを定め、必要であれば校正ロールの離隔距離を調整することが可能となる。
【0222】
分離層18a、18bの厚みの校正は、それぞれ矢印236aおよび236bによって表示された作業である。最終厚みは、例えば10~60マイクロメートルであり得る。好ましくは、最終厚みは30マイクロメートルであり得る。
【0223】
校正後、それぞれ電極活物質を含む層16a、16bおよび分離層18a、18bを備えた支持帯状物14a、14bは、ハーフセル10a、10bを形成する。
【0224】
この作業の後、帯状のハーフセル10a、10bは、既に触れた組立てロール対142に到達する。ハーフセルは、それぞれの分離層18a、18bを接触させることにより組立てられる。組立ては、直接的組立てであっても、繰出しロール112cから繰出される追加の電気絶縁性グリッド分離フィルム20の層の間置を伴う組立てであってもよい。これは、例えば電気絶縁性ポリマーワイヤーグリッドであり得る。ハーフセルの組立て作業は、矢印242で表示されている。分離層間の優れた接触界面を保証するために、フィルム20の間置によって、分離層18aと18bの間の直接的接触が妨げられてはならない。
【0225】
任意には、矢印230cによって表示されているように、電気絶縁性分離フィルム20上への分離層18cの被着作業を行なうことが可能である。電解質は、第5の被着ヘッドの前を進行中のフィルム20上、好ましくは、電気絶縁性グリッド分離フィルムの幅に等しい幅上で、このフィルムに含浸させるように、第5の被着ヘッド130cによって液体の形態で被着される。分離層18a、18bの被着の場合と同じ液体電解質を使用することができ、これらの層が受ける作業と類似の形で、光放射に対する曝露により、その被着の直後にフィルム20の凝固が開始される。フィルム20は、第5の被着ヘッド130cの後に配置された第5のUV放射源134cの前を進行して、矢印234cにより表示された曝露作業の間、放射に対し曝露される。
【0226】
組立てロール142をそれぞれ第3、第4および第5の放射源から離隔する距離は、ハーフセルの組立てが分離層18a、18bそして場合によっては18cの凝固の完了の前に行なわれ得るように、十分短く、帯状物の進行速度は十分に高速である。したがって、凝固は、セルの組立て後、少しの間続行する。
【0227】
分離層18a、18bおよび18cは各々、単独であるいは他の分離層のいずれかまたは両方と組合せた形で使用可能であるということを指摘しておかなければならない。したがって、2つの層18aおよび18bを共に直接接触した状態で、層18a、18bおよび18cを単独で、層18cを層18aおよび18bのいずれか一方と組合せた形で、またはこれら2つの層18aおよび18bと組合せた形で、使用することができる。重要なのは、一方では、カソード層16aとアノード層16bの間の分離層(場合によって層18a、18bおよび18cの何らかの組合せで構成されている)の存在、そして他方では、カソードとアノードの間のイオンの移動における優れた連続性を確保するためのこれらの層間の密な接触を確実に行うことである。
【0228】
分離層は、同じ組成または異なる組成を有することができるが、各々が、イオン伝導性分離用液体電解質を含む凝固可能な液体電解質混合物、分離用モノマーまたはポリマー混合物および第1の分離用モノマーまたはポリマー混合物の重合または架橋開始剤を含む。カソード層およびアノード層についてと同様、モノマーまたはポリマーならびにこのモノマーまたはこのポリマーの重合または架橋開始剤の存在は、分離層が凝固可能であるという側面を保証する。
【0229】
組立てロール142に後続する厚みセンサー144が、組立て済みセルの厚みを測定し、必要な場合には、組立てロール142の離隔距離を調整することを可能にする。
【0230】
第1のハーフセルおよび第2のハーフセルの組立て後に、第1の支持体または第2の支持体上に巻出しロール160により供給される電気絶縁性フィルム30を適用することができ、組立てられた第1のハーフセルおよび第2のハーフセル、ならびに第1の支持体または第2の支持体上に適用された電気絶縁性フィルムを、巻付けロール150の周りに巻付けて、セルを互いに絶縁することになる。このことは、バッテリーが、その製造時に充電されしたがって放電の可能性を予防するために互いに絶縁することが好ましいナトリウム-硫黄またはリチウム-硫黄タイプのものである場合に、特に有利である。
【0231】
ハーフセル10a、10bの組立ての後に、セル10は縁切断用工具140を通過する。これは、回転ブレードまたはレーザヘッド付きの工具である。図中に矢印238で表示されている切断は、セルの側縁上で、その幅を固定するような形で行なわれる。これにより、セルが完全でバリの無い状態である中央部分のみを保存するため、電極活物質および/または電解質を収容していないはずの支持帯状物14a、14bの側縁を除去することが可能になる。
【0232】
組立てられたセル10は、最終的に巻付けロール150上に巻付けられる。巻付けロール150には、複数の機能がある。第1の機能は、組立て済みのバッテリーセルを巻付けることである。別の機能は、駆動機能である。実際、巻付けロール150の回転は、組立て済みバッテリーセル上ひいてはハーフセル上、支持帯状物上、そして該当する場合には電気絶縁性グリッド分離フィルム20上に引張り力を及ぼす効果を有する。こうして、製造ラインに沿った帯状の構成要素の前進は、巻付けロールを回転させることによって確実に行なわれる。
【0233】
繰出しロールは、被駆動および/または被制動ロールまたは自由回転ロールであり得る。自由回転ロールの場合、繰出しは単に、駆動巻付けロール150により及ぼされる引張り力の結果もたらされる。繰出しロールが被制動または被駆動ロールである場合、制動または駆動は、製造ラインに沿って循環する支持帯状物および帯状構成要素の張力を調整するような形で駆動巻付けロール150の回転によって抑制され得る。
【0234】
巻付け速度、支持帯状物の張力などの様々なパラメータの抑制のためだけでなく、支持帯状物の被覆または前述したカレンダー加工作業のためにも、設備の制御ユニット101を想定することができる。したがって、制御ユニットは、巻付けロール、第1の被覆モジュール、第2の被覆モジュール、第1の圧延モジュールおよび第2の圧延モジュールのうちの少なくとも1つを制御する。
【0235】
制御ユニットは、例えば、駆動モータMの速度設定に作用することによって、駆動巻付けロール150を抑制する。
【0236】
こうして、
図1中で矢印により表示されているステップ248の間、制御ユニット101は、駆動巻付けロール150の巻付け速度を制御することによって支持帯状物の進行速度を制御し、したがって、支持帯状物の所与の場所において該製造方法の2つの連続する作業の適用を離隔する時間的間隔を制御する。
【0237】
(i)2つの液体層の凝固を開始する放射に対するこれら2つの層の曝露と、(ii)これら2つの層の接触とを離隔する時間的間隔を制御することで、それぞれの凝固の完了前に介入する接触の際のこれら2つの層間の液体界面を確認することが可能になる。
【0238】
詳細には、ステップ248の間に、制御ユニット101を用いて、以下のステップを実施することができる:
- d1)第1の分離層(18a)を第2の分離層(18b)と直接接触させ、第1の分離層の被着の時点でカソード層の凝固が完了しないような形で、(i)ステップa3)におけるカソード層の曝露と(ii)ステップa4)における第1の分離層の被着とを離隔する第1の時間的間隔を、そして第2の分離層の被着の時点でアノード層の凝固が完了しないような形で、(i)ステップb3)におけるアノード層の曝露と(ii)ステップb4)における第2の分離層の被着とを離隔する第2の時間的間隔を、ステップd1)の接触の時点で第1および第2の分離層のそれぞれの凝固が完了しないような形で、(i)ステップa4)における第1の分離層の曝露と(ii)ステップd1)の接触とを離隔する第3の時間的間隔および、(i)ステップb4)の第2の分離層の曝露と(ii)ステップd1)の接触とを離隔する第4の時間的間隔を、制御するステップ(248);
- d2)第1の分離層(18a)をアノード層(16b)と直接接触させ、第1の分離層の被着の時点でカソード層の凝固が完了しないような形で、(i)ステップa3)におけるカソード層の曝露と(ii)ステップa4)における第1の分離層の被着とを離隔する第1の時間的間隔を、ステップd2)の接触の時点で第1の分離層の凝固が完了しないような形で、(i)ステップa4)における第1の分離層の曝露と(ii)ステップd2)の接触とを離隔する第2の時間的間隔および、(i)ステップb3)のアノード層の曝露と(ii)ステップd2)の接触とを離隔する第3の時間的間隔を、制御するステップ(248);
- d3)第2の分離層(18b)をカソード層(16a)と接触させ、第2の分離層の被着の時点でアノード層の凝固が完了しないような形で、(i)ステップb3)におけるアノード層の曝露と(ii)ステップb4)における第2の分離層の被着とを離隔する第1の時間的間隔を、ステップd3)の接触の時点で第2の分離層の凝固が完了しないような形で、(i)ステップb4)における第2の分離層の曝露と(ii)ステップd3)の接触とを離隔する第2の時間的間隔および、(i)ステップa3)におけるカソード層の曝露と(ii)ステップd3)の接触とを離隔する第3の時間的間隔を、制御するステップ(248);および
- d4)カソード層(16a)とアノード層(16b)の間に第3の分離層(18C)を挟み込み、第3の分離層をカソード層およびアノード層と接触させ、ステップd4)の接触の時点でカソード層、アノード層および第3の凝固層それぞれの凝固が完了しないような形で、(i)ステップa3)におけるカソード層の曝露と(ii)ステップd4)の接触とを離隔する第1の時間的間隔、(i)ステップb3)におけるアノード層の曝露と(ii)ステップd4)の接触とを離隔する第2の時間的間隔、そして(i)ステップc4)の第3の分離層の曝露と(ii)ステップd4)の接触とを離隔する第3の時間的間隔を、制御するステップ(248)。
【0239】
好ましくは、製造設備全体は、セルの劣化をひき起こし得る空気中の水分を伴うなおも液体である電解質のあらゆる反応を回避する無水雰囲気を有する建物内に設置され得る。
【0240】
図1に関連して説明されている異なる機構は、独立した複数のモジュールにまとめることができ、製造ライン上のその位置付けおよび離隔距離は必要に応じて修正可能である。
【0241】
モジュールは、いわばハーフセルの製造用のハーフマシンに対応する製造ライン110a、110bのうちの1つを表わす
図2に表示されている。設備が対称であることおよび2本の製造ラインが極めて類似していることから、2つの製造ライン110a、110bの参照番号が同じ
図2に表示されている。
図2にしたがった1本の製造ラインが、カソードを含むハーフセルの製造のためおよびアノードを含むハーフセルのために使用可能であることが理解される。
【0242】
図2では1本しか見えない組立てロール142と繰出しロール112a、112bの間で、帯状物は複数のモジュールを経由する。順番に、第1の被覆モジュール320a、320b、第1の圧延モジュール326a、326b、第2の被覆モジュール330a、330b、および第2の圧延モジュール336a、336bがある。第1の被覆モジュール320a、320bは、
図1に関連して説明されている第1の被覆ヘッド120aまたは第2の被覆ヘッド120b、ならびにそれに結び付けられた放射源124a、124bを含む。第1のモジュールの被覆ヘッドに結び付けられた放射源が2つに分割されていることを指摘することができる。単独の放射源の使用も企図可能である。
【0243】
第2の被覆モジュール330a、330bは、
図1に関連して説明された第3の被覆ヘッド130aまたは第4の被覆ヘッド130b、およびそれに結び付けられた放射源134a、134bを含む。
【0244】
第1の圧延モジュール326a、326bは、関係する製造ラインに応じて、アノード層またはカソード層の厚みを定めることを目的とする校正ロール126a、126bを含む。第1の圧延モジュールは、校正ロールの出口で製造中のハーフセルの厚みを測定するため、校正ロールの下流側に厚みセンサー128a、128bも含む。
【0245】
第2の圧延モジュール336a、336bは、活物質を含まない電解質層の被着後に製造中のハーフセルの厚みを定めることを目的とする校正ロール136a、136bを含む。第2の圧延モジュールは、第1の圧延モジュールと同様に、校正ロールの下流側に厚みセンサー138a、138bを含む。厚みセンサーは、ハーフセルの組立て直前にハーフセルの厚みを測定することを可能にする。
【0246】
繰出しロール112a、112bおよび巻付けロール150と同様、異なるモジュール320a、320b、326a、326b、330a、330b、336a、336bは、概略的に表わされ異なる機構の同期化を可能にする制御ユニット101に連結されている。
【0247】
先に示した通り、本発明の実施は、活物質を含まない電解質層のアノード層およびカソード層のうちの一方のみを覆うことによって可能である。この場合、第2の被覆モジュール330a、330bのうちの一方および第2の圧延モジュール336a、336bのうちの一方を省略することが可能である。
【0248】
巻付けロール150は、象徴的に表示されたモータMによって動かされる駆動ロールである。
【0249】
図1に関連して説明されている一定数の任意の機構は、簡略化を理由として、
図2では表されていない。
【0250】
図3は、フォーマットされたバッテリーセル1010を示す。フォーマットされたセルは、参照番号250で象徴的に表示されているフォーマット作業の終了時に
図1の帯状のセル10から得られる。この作業は、特に、
図3により示されている例において、フォーマットされたセル1010の周縁の切断を含む。セルは、端から端まで、すなわちセルの厚み全体にわたり、およそ数百マイクロメートルだけ切断される。
【0251】
切断は、有利には、レーザ切断テーブル上で実施され得る。カッターによる切断も企図可能である。
【0252】
図3に示されている例において、フォーマットされたセル1010は、矩形の主要面および丸味のある隅を伴った形をしている。別のより複雑なパターンにしたがった切断が当然可能であり、これにより、例えば設備の専用スペース内へのセルの収納性が改善され得る。
【0253】
セルは、液体物質、詳細には液体電解質を含有しないことから、切断作業に特別な配慮は不要である。集電体として役立つ導電性支持体は、電気的に絶縁された状態、すなわち固体電解質層の存在のため電子流による伝導に対して絶縁された状態にとどまる。この点において、切断は、好ましくは層の凝固が完了した後に行われ得る。
【0254】
図3の実施例において、切断の結果としてのフォーマットされたセル1010の周縁端部は、例えばワニスなどの電気絶縁性保護コーティング1024で覆われている。このワニスは、例えばガラス繊維またはバサルト繊維などで強化され得る。保護コーティングは、好ましくは、重なりの側面を覆うように複数の同一のフォーマットされたセル1010をスタッキングした後に形成され得る。
【0255】
図4は、
図3に見られるセル1010と同一の複数のフォーマットされたセル1011、1012、1013、1014、1015の重なりの一部を示す。フォーマットされたセルの各々は、
図1に関連して触れられた通りの帯状のバッテリーセル10に切断され得る。
図4の重なりは、蓄電池バッテリー1000を構成する。
【0256】
図4には、複数のフォーマットされたセルについて、第1および第2の導電性支持体14a、14b、カソード層16aおよびアノード層16b、第1の分離層18aおよび第2の分離層18bが表示されている。
【0257】
フォーマットされた各セルを構成する層は、ほぼ同一であり、同じ参照番号で表示されている。しかしながら、重なりの第1のフォーマットされたセル1011の第1の導電性支持体14aおよび重なりの最後のフォーマットされたセル1015の第2の導電性支持体14bは、他の導電性支持体よりも厚みが大きいということを指摘することができる。より厚みが大きいこれらの導電性支持体は、複数の導電性副層で形成されている。これらは、より高い機械的強度を有し、このことは、バッテリー1000の外部ケーシングとしてのそれらの機能に適している。重なりの最初と最後のセルのより厚みが大きい伝導性支持体は、バッテリー1000の外部電気接続端子をも構成する。
【0258】
重なりの中で、フォーマットされた異なるセルのカソード層およびアノード層すなわち正極および負極は、交番状態にある。したがって、重なりの各セルは、その集電体を形成する伝導性支持体14a、14bを介して、重なりの他のセルと直列接続されている。端部セル1011および1015の伝導性層14a、14bの端子における電圧は、個別のセルの電圧の合計に等しく、またバッテリー1000の電圧に対応する。
【0259】
フォーマットされたセルの他の相互連結、詳細には並列接続または直列/並列または並列/直列の組合せが可能であることを明確にしておくことが必要である。この場合、個別のフォーマットされたセルの集電体を連結するために補足的導電体を具備することが可能である。
【0260】
以上で詳述した実施形態は、進行による連続的方法を使用したロール-ツー-ロールタイプのものである。代替的には、個別のプレートを製造することにより逐次的製造を実施することが可能である。プレートの操作は、例えば把持手段を備えたロボットアームなどによる従来の方法によって行なうことができる。この場合、時間の制御は、プレートの操作の瞬間を制御することによって行なわれる。
【0261】
本発明は、以上で説明された実施形態に限定され得ず、修正を行なうことも可能であり、そのために本発明の枠から逸脱することはない。
【符号の説明】
【0262】
10a 第1のハーフセル
10b 第2のハーフセル
14a 第1の導電性支持体
14b 第2の導電性支持体
16a カソード層
16b アノード層
18a 第1の分離層
18b 第2の分離層
18c 第3の分離層
【手続補正書】
【提出日】2021-10-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気化学的形態でのエネルギー貯蔵セルの製造方法において、
- 第1のハーフセル(10a)を形成するステップであって、
a1)第1の導電性支持体(14a)を提供するステップ(214a)、
a2)カソード活物質、導電性カーボン充填材、第1のイオン伝導性液体電解質混合物、第1のモノマーまたはポリマー混合物および第1のモノマーまたはポリマー混合物の第1の重合または架橋開始剤を含む、ペースト状態のカソード層(16a)を、第1の導電性支持体(14a)の一方の面上に被着させるステップ(220a)、および
a3)カソード層(16a)の凝固を開始させる形で、第1のモノマー混合物の第1の重合または架橋開始剤に適応された第1の放射を用いて、ペースト状態のカソード層を曝露するステップ(224a)、
というステップa1)、a2)、a3)を含むステップと、
- 第2のハーフセル(10b)を形成するステップであって、
b1)第2の導電性支持体(14b)を提供するステップ(214b)、
b2)アノード活物質、導電性カーボン充填材、第2のイオン伝導性液体電解質混合物、第2のモノマーまたはポリマー混合物および第2のモノマーまたはポリマー混合物の第2の重合または架橋開始剤を含む、ペースト状態のアノード層(16b)を、第2の導電性支持体(14b)の一方の面上に被着させるステップ(220b)、および
b3)アノード層(16b)の凝固を開始させる形で、第2のモノマー混合物の第2の重合または架橋開始剤に適応された第2の放射を用いて、ペースト状態のアノード層を曝露するステップ(224b)、
というステップb1)、b2)、b3)を含むステップと、
- a4)曝露された
カソード層の凝固が完了する前に曝露されたカソード層上に、第1のイオン伝導性分離用液体電解質混合物、第1の分離用モノマーまたはポリマー混合物、および第1の分離用モノマーまたはポリマー混合物の第1の重合または架橋開始剤を含む第1の液体状態の分離用混合物で形成された第1の分離層(18a)を、被着させ(230a)かつ曝露する(234a)ステップ、および
- c4)電気絶縁性グリッドフィルム(20)上に、第3のイオン伝導性分離用液体電解質混合物、第3の分離用モノマーまたはポリマー混合物、および第3の分離用モノマーまたはポリマー混合物の第3の重合または架橋開始剤を含む第3の液体状態の分離用混合物で形成された第3の分離層(18c)を、被着させ(230c)かつ曝露する(234c)ステップ、
- b4)曝露されたアノード層の凝固が完了する前に曝露されたアノード層上に、第2のイオン伝導性分離用液体電解質混合物、第2の分離用モノマーまたはポリマー混合物、および第2の分離用モノマーまたはポリマー混合物の第2の重合または架橋開始剤を含む第2の液体状態の分離用混合物で形成された第2の分離層(18b)を、被着させ(230b)かつ曝露する(234b)ステップ、
というステップa4)、b4およびc4)のうちの少なくとも1つのステップを実施するステップであって、
ステップa4)、b4)およびc4)の曝露が、それぞれの分離用モノマーまたはポリマー混合物の重合または架橋開始剤に適応されかつ第1、第2および第3の分離層の凝固を開始させるように適応された第3の放射を用いて実施されるステップと、
- 2つのハーフセル(10a、10b)の間に、ステップa4)、b4)およびc4)の分離層(18a、18b、18c)の少なくとも1つを間置することによって、第1のハーフセル(10a)および第2のハーフセル(10b)を組立てるステップ(242)であって、組立てには、
d1)曝露された第1の分離層(18a)を曝露された第2の分離層(18b)と直接接触させるステップ、
d2)曝露された第1の分離層(18a)を曝露されたアノード層(16b)と直接接触させるステップ、
d3)曝露された第2の分離層(18b)を曝露されたカソード層(16a)と直接接触させるステップ、
d4)曝露されたカソード層(16a)と曝露されたアノード層(16b)の間に曝露された第3の分離層(18c)を挟み込むステップ、
というステップd1)、d2)、d3)およびd4)のうちの1つが含まれ、これらのステップd1)、d2)、d3)およびd4)において、接触させられた層のそれぞれの凝固が完了していない、ステップと、
を含む方法。
【請求項2】
- 第1の分離層(18a)の被着(230a)前に、第2の分離層(18b)の被着(230b)前にそれぞれ、カソード層(16a)、アノード層(16b)それぞれの厚みを校正するステップ(226a、226b)および/または、
- ハーフセル(10a、10b)の組立て(242)前に、第1の分離層(18a)、第2の分離層(18b)それぞれの厚みを校正するステップ(236a、236b)、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第1の支持体(14a)および第2の支持体(14b)が、それぞれ第1の支持帯状物および第2の支持帯状物であり、
第1の支持体(14a)の供給(214a)および第2の支持体(14b)の供給(214b)が、それぞれ第1の繰出しロール(112a)および第2の繰出しロール(112b)からのそれぞれ第1の支持帯状物の繰出しおよび第2の支持帯状物の繰出しを含んでいる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
- 第1のハーフセル(10a)および第2のハーフセル(10b)の組立て後に、第1の支持体または第2の支持体上に電気絶縁性フィルム(30)を適用するステップと、
- 組立てられた第1のハーフセル(10a)および第2のハーフセル(10b)、ならびに第1の支持体または第2の支持体上に適用された電気絶縁性フィルム(30)を、巻付けロール(150)の周りに巻付けるステップと、
を含む、請求項1から3のいずれか一つに記載の方法。
【請求項5】
カソード層の被着(220a)およびアノード層の被着(220b)が、それぞれ第1の混合物の第1の被着ヘッド(120a)および第2の混合物の第2の被着ヘッド(120b)の前を第1の帯状物および第2の帯状物が進行することによって、連続的に行なわれる、請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
第1の分離層(18a)の被着(230a)および第2の分離層(18b)の被着(230b)が、それぞれ第3の電解質被着ヘッド(130a)の前および第4の電解質被着ヘッド(130b)の前を第1の帯状物および第2の帯状物が進行することによって連続的に行なわれる、請求項3から5のいずれか一つに記載の方法。
【請求項7】
カソード層(16a)の曝露(224a)およびアノード層(16b)の曝露(224b)が、それぞれ少なくとも1つの第1の放射源(124a)および少なくとも1つの第2の放射源(124b)の前をそれぞれ第1の帯状物および第2の帯状物が進行することによって行なわれる、請求項3から6のいずれか一つに記載の方法。
【請求項8】
第1の分離層(18a)の曝露(234a)および第2の分離層(18b)の曝露(234b)が、それぞれ第3の放射源(134a)および第4の放射源(134b)の前を第1の帯状物および第2の帯状物が進行することによって行なわれる、請求項3から7のいずれか一つに記載の方法。
【請求項9】
第1の支持体および第2の支持体がそれぞれ、第1の支持帯状物および第2の支持帯状物であり、
カソード層(16a)、アノード層(16b)の厚みの校正(226a)はそれぞれ、第1の校正ロール対(126a)および第2の校正ロール対(126b)を通してカソード層を備えた第1の支持帯状物、アノード層を備えた第2の支持帯状物それぞれが通過することによって行なわれる、
請求項2に記載の方法。
【請求項10】
第1の分離層(18a)の厚みの校正(236a)、第2の分離層(18b)の校正(236b)それぞれが、第3の校正ロール対(136a)および第4の校正ロール対(136b)を通して第1のハーフセル(10a)、第2のハーフセル(10b)それぞれが通過することによって行なわれる、請求項2から9のいずれか一つに記載の方法。
【請求項11】
ステップa4)およびb4)の実施を含み、かつ第1のハーフセル(10a)および第2のハーフセル(10b)の組立ての際に、分離層(18a、18b)間に電気絶縁性グリッド分離フィルム(20)の設置を含む、請求項1から10のいずれか一つに記載の方法。
【請求項12】
ハーフセルの組立ての後に、バッテリーセルをフォーマットされたセル(1010、1011、1012、1013、1014、1015)に切断することを含むセルのフォーマット作業(250)を含む、請求項1から11のいずれか一つに記載の方法。
【請求項13】
フォーマットされたバッテリーセル(1010)の少なくとも1つの周縁端部上での保護用電気絶縁性材料のコーティング(1024)の設置を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
カソード層(16a)の第1の液体電解質混合物、アノード層(16b)の第2の液体電解質混合物、第1の分離層(18a)の第1の液体電解質混合物、第2の分離層(18b)の第2の液体電解質混合物および第3の分離層(18c)の第3の液体電解質混合物が
、同一である、請求項1から13のいずれか一つに記載の方法。
【請求項15】
請求項11または12に記載の方法にしたがった複数のバッテリーセル(1011、1012、1013、1014、1015)の製造、およびバッテリーセルの重なり(1000)の形成を含むバッテリーの製造方法において、重なりの形成には、フォーマットされたバッテリーセル(1011)の第1の支持体(14a)の伝導性自由面と重なり(1000)の後続するフォーマットされたバッテリーセル(1012)の第2の支持体(14b)の伝導性自由面との接触が含まれる方法。
【請求項16】
- 第1のハーフセル(10a)製造用の第1の製造ライン(110a)、
- 第2のハーフセル(10b)製造用の第2の製造ライン(110b)、
- 第1の製造ライン(110a)上に形成された第1のハーフセル(10a)および第2の製造ライン(110b)上に形成された第2のハーフセル(10b)を組立てるための組立てロール対(142)、
- 組立てロール対(142)の下流側に配置されたバッテリーセルの巻付けロール(150)、
を含む請求項1から13のいずれか一つに記載のバッテリーセルの製造用設備において、
第1の製造ライン(110a)および第2の製造ライン(110b)のうちの少なくとも一方が、
- 支持帯状物(14a、14b)の繰出しのための繰出しロール(112a、112b)、そして繰出しロールと組立てロール対(142)との間で順番に、
- カソード層、アノード層それぞれの形成のための第1の被覆モジュール(320a、320b)、
- 第1の圧延モジュール(326a、326b)、
- 分離層(18a、18b)の形成のための第2の被覆モジュール(330a、330b)、および
- 第2の圧延モジュール(336a、336b)、
を含み、
第1および第2の圧延モジュールが、それぞれ校正ロール対(126a、126b、136a、136b)および、それぞれ校正ロール対に結び付けられた厚みセンサー(128a、128b、138a、138b)を含み、
第1の被覆モジュールおよび第2の被覆モジュールが、それぞれ、被着ヘッド(120a、120b、130a、130b)および被着ヘッドに結び付けられた少なくとも1つの放射源(124a、124b、134a、134b)を含んでいる、
設備。
【請求項17】
巻付けロール(150)が、駆動ロールである、請求項16に記載の設備
。
【請求項18】
繰出しロール(112a、112b)が、被制動ロールである、請求項
16に記載の設備。
【請求項19】
第1の被覆モジュール
(320a)の被着ヘッド(120a)がカソード層の被着ヘッド(120a)であり、第2の被覆モジュール(320b)の被着ヘッド(120b)がアノード層の被着ヘッドであり、少なくとも1つの放射源(124a)がカソード層の被着ヘッド(120a)に結び付けられ、少なくとも1つの放射源(124b)がアノード層の被着ヘッド(120b)に結び付けられている、請求項
16に記載の設備
。
【請求項20】
巻付けロール(150)、第1の被覆モジュール(320a、320b)、第2の被覆モジュール(330a、330b)、第1の圧延モジュール(326a、326b)および第2の圧延モジュール(336a、336b)のうちの少なくとも1つの制御ユニット(101)を含む、請求項
16から
19のいずれか一つに記載の設備。
【国際調査報告】