(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-06
(54)【発明の名称】化合物と凝縮体またはその成分との相互作用を特定する方法、及びその使用
(51)【国際特許分類】
G01N 33/68 20060101AFI20230830BHJP
G01N 33/50 20060101ALI20230830BHJP
【FI】
G01N33/68
G01N33/50 P
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023505910
(86)(22)【出願日】2021-08-11
(85)【翻訳文提出日】2023-01-27
(86)【国際出願番号】 US2021045592
(87)【国際公開番号】W WO2022035989
(87)【国際公開日】2022-02-17
(32)【優先日】2020-08-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521336185
【氏名又は名称】デューポイント セラピューティクス, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ミトレア, ダイアナ マリア
(72)【発明者】
【氏名】ミタシュ, マテウス
(72)【発明者】
【氏名】ダンドライカー, ピーター ジェフリー
(72)【発明者】
【氏名】ビューテル, ブルース アーロン
(72)【発明者】
【氏名】ボチェク, エドガー エリック
【テーマコード(参考)】
2G045
【Fターム(参考)】
2G045DA13
2G045DA14
2G045DA36
2G045FA14
2G045FA15
2G045FA16
2G045FA26
2G045FA27
2G045FA36
2G045FA40
(57)【要約】
いくつかの態様では、本明細書で提供するのは、化合物と凝縮体またはその成分との相互作用を特定する方法、及びその使用である。他の態様では、本明細書で提供するのは、凝縮体またはその成分と所望の相互作用を有する化合物またはその一部分を特定する(またはスクリーニングもしくは設計する)方法である。さらに他の態様では、本明細書で提供するのは、本明細書に記載の方法の適用、例えば、既知のまたは予測される特性を有する化合物のライブラリ、及び疾患の治療に有用な化合物を特定する方法である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験化合物またはその一部分と標的凝縮体またはその成分との1つまたは複数の相互作用を特定する方法であって、
(i)前記標的凝縮体に対する前記試験化合物もしくは前記その一部分の分配特性、
(ii)軽相中の前記標的凝縮体の前記成分に対する前記試験化合物もしくは前記その一部分の結合親和特性、または
(iii)前記試験化合物もしくは前記その一部分の存在下での前記標的凝縮体の前記成分の相境界特性、
のうちの2つ以上を得ること、ならびに
前記1つもしくは複数の相互作用を特定するために(i)、(ii)、及び(iii)のうちの2つ以上を比較することに基づいて、前記試験化合物または前記その一部分と前記標的凝縮体またはその前記成分との前記1つまたは複数の相互作用を特定すること
を含む、前記方法。
【請求項2】
前記試験化合物または前記その一部分と前記標的凝縮体または前記その成分との前記1つまたは複数の相互作用を特定することが、前記標的凝縮体に対する前記試験化合物または前記その一部分の前記分配特性と、前記軽相中の前記標的凝縮体の前記成分に対する前記試験化合物またはその一部分の前記結合親和特性とを比較することに基づいている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記試験化合物または前記その一部分と前記標的凝縮体または前記その成分との前記1つまたは複数の相互作用を特定することが、前記標的凝縮体に対する前記試験化合物または前記その一部分の前記分配特性と、前記試験化合物またはその一部分の存在下での前記標的凝縮体の前記成分の前記相境界特性とを比較することに基づいている、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記試験化合物または前記その一部分と前記標的凝縮体または前記その成分との前記1つまたは複数の相互作用を特定することが、前記軽相中の前記標的凝縮体の前記成分に対する前記試験化合物または前記その一部分の前記結合親和特性と、前記試験化合物または前記その一部分の存在下での前記標的凝縮体の前記成分の前記相境界特性とを比較することに基づいている、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記試験化合物または前記その一部分と前記標的凝縮体または前記その成分との前記1つまたは複数の相互作用を特定することが、前記標的凝縮体に対する前記試験化合物または前記その一部分の前記分配特性と、前記軽相中の前記標的凝縮体の前記成分に対する前記試験化合物またはその一部分の前記結合親和特性と、前記試験化合物または前記その一部分の存在下での前記標的凝縮体の前記成分の前記相境界特性とを比較することに基づいている、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記試験化合物または前記その一部分と、前記標的凝縮体または前記その成分との前記相互作用が、
(1)濃厚相と比較したときの、前記試験化合物または前記その一部分と前記軽相中の前記標的凝縮体の前記成分との優先的会合、
(2)前記軽相と比較したときの、前記試験化合物または前記その一部分と前記濃厚相中の前記標的凝縮体の前記成分との優先的会合、
(3)前記軽相と比較したときの、前記標的凝縮体の前記濃厚相への前記試験化合物または前記その一部分の優先的溶解性、
(4)前記濃厚相と比較したときの、前記軽相への前記試験化合物または前記その一部分の優先的溶解性、
(5)前記軽相と比較したときの、前記試験化合物または前記その一部分と前記標的凝縮体の前記濃厚相中の構造体との優先的会合、
(6)前記試験化合物または前記その一部分の、前記標的凝縮体の前記成分に対する相分離駆動相互作用と競合する能力、
(7)前記試験化合物または前記その一部分の、前記標的凝縮体の前記成分に対する相分離駆動相互作用をもたらす能力、
(8)前記標的凝縮体の前記成分と比較したときの、前記試験化合物または前記その一部分と前記標的凝縮体の別の成分との優先的会合であって、前記試験化合物またはその一部分と前記標的凝縮体の前記他の成分との前記優先的会合が、前記標的凝縮体の前記成分に対する相分離駆動相互作用を妨げる、前記優先的会合、
(9)前記標的凝縮体の前記成分と比較したときの、前記試験化合物または前記その一部分と前記標的凝縮体の別の成分との優先的会合であって、前記試験化合物またはその一部分と前記標的凝縮体の前記他の成分との前記優先的会合が、前記標的凝縮体の前記成分に対する相分離駆動相互作用をもたらす、前記優先的会合、
(10)相分離駆動相互作用に関与する前記成分の部位と比較したときの、前記試験化合物または前記その一部分の、相分離駆動相互作用に関与しない前記成分の部位での優先的会合、及び
(11)前記試験化合物または前記その一部分と、前記軽相中及び前記濃厚相中の両方での前記凝縮体の前記成分との実質的に等しい会合、からなる群から選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記標的凝縮体に対する前記試験化合物または前記その一部分の前記分配特性が、前記標的凝縮体中の前記試験化合物または前記その一部分の分配の存在または非存在を示す、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記標的凝縮体中の前記試験化合物または前記その一部分の分配の存在または非存在が、分配特性閾値に基づいて決定される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記標的凝縮体中の前記試験化合物または前記その一部分の分配の存在または非存在が、1より大きい前記分配特性を有することに基づいて決定される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記標的凝縮体に対する前記試験化合物または前記その一部分の前記分配特性が、前記標的凝縮体中の前記試験化合物または前記その一部分の分配の程度を示す、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記標的凝縮体に対する前記試験化合物または前記その一部分の前記分配特性が、前記軽相中の前記試験化合物または前記その一部分に対する前記標的凝縮体の前記濃厚相中の前記試験化合物または前記その一部分の比率に基づいている、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記軽相中の前記標的凝縮体の前記成分に対する前記試験化合物または前記その一部分の前記結合親和特性が、前記試験化合物または前記その一部分と前記軽相中の前記標的凝縮体の前記成分との結合会合の存在または非存在を示す、請求項1~11に記載の方法。
【請求項13】
前記結合会合の存在または非存在が、結合親和性閾値に基づいて決定される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記試験化合物または前記その一部分と前記軽相中の前記標的凝縮体の前記成分との前記結合会合の存在が、およそ10mM以下の前記結合親和性を有することに基づいて決定される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記軽相中の前記標的凝縮体の前記成分に対する前記試験化合物または前記その一部分の前記結合親和特性が、前記試験化合物または前記その一部分と前記軽相中の前記標的凝縮体の前記成分との前記結合会合の程度を示す、請求項1~14に記載の方法。
【請求項16】
前記軽相中の前記標的凝縮体の前記成分に対する前記試験化合物または前記その一部分の前記結合親和特性が、前記軽相中の前記標的凝縮体の前記成分に対する前記試験化合物またはその一部分の解離定数(K
d)に基づいている、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記標的凝縮体の前記成分の前記相境界特性が、前記試験化合物または前記その一部分の存在に起因する、前記標的凝縮体に対する前記標的凝縮体の前記成分の調節された分配の存在または非存在を示す、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記相境界特性が相図に基づく、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
(i)、(ii)、及び(iii)のうちの2つ以上を比較することに基づいて前記試験化合物または前記その一部分と前記標的凝縮体または前記その成分との前記1つまたは複数の相互作用を特定することが、参照と比較することをさらに含む、実施形態1~18のいずれか1つに記載の方法。
【請求項20】
前記参照が、参照化合物を使用して得られた情報を含み、前記情報が、前記標的凝縮体に対する前記参照化合物の分配特性、前記軽相中の前記標的凝縮体の前記成分に対する前記参照化合物の結合親和特性、及び前記参照化合物の存在下での前記標的凝縮体の前記成分の相境界特性のうちの1つまたは複数に関する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記参照が、複数の参照化合物を使用して得られた情報を含む、請求項19または20に記載の方法。
【請求項22】
前記複数の参照化合物が、前記試験化合物と同じ化学クラスの化合物を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記複数の参照化合物が、前記試験化合物と異なる化学クラスの化合物を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記複数の参照化合物が、少なくとも5つの参照化合物を含む、請求項21~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記試験化合物と前記標的凝縮体の前記成分との結合様式を得ることをさらに含む、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記結合様式が、多相リンケージ形式法を介して決定される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記標的凝縮体に対する前記試験化合物または前記その一部分の前記分配特性を測定することをさらに含む、請求項1~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記標的凝縮体に対する前記試験化合物または前記その一部分の前記分配特性を測定することが、前記標的凝縮体中の前記試験化合物または前記その一部分の量を測定することを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記標的凝縮体中の前記試験化合物または前記その一部分の量を測定することが、凝縮体外の溶液中の前記試験化合物または前記その一部分の量を測定することを介して決定される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記標的凝縮体に対する前記試験化合物または前記その一部分の前記分配特性が、共焦点顕微鏡分析または蛍光分光法を使用して測定される、請求項27~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記標的凝縮体に対する前記試験化合物または前記その一部分の前記分配特性が、
(a)前記試験化合物と、前記標的凝縮体及び凝縮体外の溶液を含むまたはその形成に供される組成物とを合わせること、
(b)参照対照を得ること、
(c)前記凝縮体外の溶液または前記その一部分中の前記試験化合物の質量分析(MS)シグナルを、MS法を使用して測定すること、
(d)前記参照対照またはその一部分中の前記試験化合物のMSシグナルを、MS法を使用して測定すること、及び
(e)前記凝縮体外の溶液からの前記試験化合物の前記MSシグナルと、前記参照対照からの前記試験化合物の前記MSシグナルを比較すること、
によって測定される、請求項27~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記軽相中の前記標的凝縮体の前記成分に対する前記試験化合物または前記その一部分の前記結合親和特性を測定することをさらに含む、請求項1~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記軽相中の前記凝縮体の前記成分に対する前記試験化合物または前記その一部分の前記結合親和特性を測定することが、前記軽相中の前記凝縮体の前記成分に対する前記試験化合物または前記その一部分の前記解離定数(K
d)を測定することを含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記軽相中の前記凝縮体の前記成分に対する前記試験化合物または前記その一部分の前記結合親和特性を測定することが、マイクロスケール熱泳動(MST)、等温滴定熱量測定(ITC)、表面プラズモン共鳴(SPR)、核磁気共鳴(NMR)、または蛍光偏光(FP)法を使用することを含む、請求項32または33に記載の方法。
【請求項35】
前記試験化合物または前記その一部分の存在に起因する前記標的凝縮体の前記成分の前記相境界特性を測定することをさらに含む、請求項1~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記相境界特性が、前記標的凝縮体に対する前記標的凝縮体の前記成分の分配特性を表している、請求項1~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記試験化合物または前記その一部分の存在下での前記標的凝縮体の前記成分の前記相境界特性が、顕微鏡分析、蛍光分光、紫外-可視(UV-Vis)分光、蛍光退色後回復測定(FRAP)、静的及び動的光散乱(SLS/DLS)、または質量分析に基づく技法を使用して測定される、請求項35または36に記載の方法。
【請求項38】
前記標的凝縮体の前記成分が高分子である、請求項1~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記標的凝縮体の前記成分がポリペプチドを含む、請求項1~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記標的凝縮体の前記成分が核酸を含む、請求項1~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
参照凝縮体に対する前記試験化合物または前記その一部分の分配特性に関連する1つまたは複数の寄与因子を決定することをさらに含む、請求項1~40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記標的凝縮体に対する前記試験化合物または前記その一部分の前記分配特性に関連する前記1つまたは複数の寄与因子を、前記参照凝縮体に対する前記試験化合物または前記その一部分の前記分配特性に関連する前記1つまたは複数の寄与因子と比較することをさらに含む、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
標的凝縮体またはその成分と1つまたは複数の所望の相互作用を有する化合物を設計する方法であって、
(a)請求項1~42のいずれか一項に記載の方法に従って、候補化合物またはその一部分と前記標的凝縮体またはその成分との1つまたは複数の相互作用を特定すること、及び
(b)前記特定された1つまたは複数の相互作用に関連する前記候補化合物または前記その一部分に基づいて前記化合物を設計すること、
を含む、前記方法。
【請求項44】
所望の相互作用プロファイルを有する化合物を設計する方法であって、前記化合物の前駆体を、前記前駆体にある部分を付着させることによって改変することを含み、前記部分が、請求項1~42のいずれか一項に記載の方法に従って特定された、標的凝縮体またはその成分との1つまたは複数の所望の相互作用を有する特性を含む、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年8月12日に出願された米国仮出願第63/064,867号の優先権利益を主張するものであり、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本出願は、生物学的凝縮体の分野に関する。
【背景技術】
【0003】
膜に結合したオルガネラに加えて、細胞及び生物は別個の構造体を含有し、その構造体は、それを直接取り囲む溶液から分離する膜に囲まれていない分子を含有する。これらの非膜分子集合体は、液-液相分離(LLPS)または凝縮と呼ばれるプロセスを通して形成されることが示されている。非膜構造体、例えば凝縮体は、ある濃度の分子、例えば、ポリペプチド及び核酸を含めた生体高分子を含有する濃厚相を形成し、相分離していない軽相によって直接取り囲まれている。場合によっては、凝縮体は動的な細胞構造体であり、例えば、存在、組成、物理的状態、及び形態的構造が、経時的に、及び異なる条件/刺激の下で変化することを示す。細胞、細胞外、及びインビトロ凝縮体のいずれも含めたいくつもの凝縮体が、当技術分野でよく認識されている。例えば、Alberti et al.,J Mol Biol,430,2018,4806-4820、及びMuiznieks et al.,J Mol Biol,430,2018,4741-4753を参照されたい。
凝縮体は、ある種の細胞プロセスの機能に関与することが知られており、ある種の治療剤の効能及び安全性に、ある程度、影響を及ぼすことがある。凝縮体は、内在性分子及び外因性分子を含めたある種の分子を周囲の軽相に対して高い濃度で集めることができる。場合によっては、ある種の分子が局在化すると、ある種の分子を共に近接させることによって、凝縮体内部の反応が可能になる及び/または加速することがある。場合によっては、ある種の分子が局在化すると、ある種の分子が周囲の軽相から隔離され、例えば、その分子がある種の様式で作用する能力が阻害されることがある。生物学的凝縮体の新進分野では、凝縮体の分配を支配する機構及び化合物が凝縮体に及ぼす作用についてはまだ不明なことが多く、化合物(またはその一部分)と凝縮体(またはその成分)との間の相互作用を研究するための技法はほとんど存在しない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Alberti et al.,J Mol Biol,430,2018,4806-4820
【非特許文献2】Muiznieks et al.,J Mol Biol,430,2018,4741-4753
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、一態様において、試験化合物またはその一部分と標的凝縮体またはその成分との1つまたは複数の相互作用を特定する方法であって、(i)標的凝縮体に対する試験化合物もしくはその一部分の分配特性、(ii)軽相中の標的凝縮体の成分に対する試験化合物もしくはその一部分の結合親和特性、または(iii)試験化合物もしくはその一部分の存在下での標的凝縮体の成分の相境界特性のうちの2つ以上を得ること、ならびに1つまたは複数の相互作用を特定するために(i)、(ii)、及び(iii)のうちの2つ以上を比較することに基づいて、試験化合物またはその一部分と標的凝縮体またはその成分との1つまたは複数の相互作用を特定することを含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、試験化合物またはその一部分と標的凝縮体またはその成分との1つまたは複数の相互作用を特定することは、標的凝縮体に対する試験化合物またはその一部分の分配特性と、軽相中の標的凝縮体の成分に対する試験化合物またはその一部分の結合親和特性とを比較することに基づいている。いくつかの実施形態では、試験化合物またはその一部分と標的凝縮体またはその成分との1つまたは複数の相互作用を特定することは、標的凝縮体に対する試験化合物またはその一部分の分配特性と、試験化合物またはその一部分の存在下での標的凝縮体の成分の相境界特性とを比較することに基づいている。いくつかの実施形態では、試験化合物またはその一部分と標的凝縮体またはその成分との1つまたは複数の相互作用を特定することは、軽相中の標的凝縮体の成分に対する試験化合物またはその一部分の結合親和特性と、試験化合物またはその一部分の存在下での標的凝縮体の成分の相境界特性とを比較することに基づいている。いくつかの実施形態では、試験化合物またはその一部分と標的凝縮体またはその成分との1つまたは複数の相互作用を特定することは、標的凝縮体に対する試験化合物またはその一部分の分配特性と、軽相中の標的凝縮体の成分に対する試験化合物またはその一部分の結合親和特性と、試験化合物またはその一部分の存在下での標的凝縮体の成分の相境界特性とを比較することに基づいている。
【0006】
上記の方法のいずれか1つによるいくつかの実施形態では、試験化合物またはその一部分と標的凝縮体またはその成分との相互作用は、(1)濃厚相と比較したときの、試験化合物またはその一部分と軽相中の標的凝縮体の成分との優先的会合、(2)軽相と比較したときの、試験化合物またはその一部分と濃厚相中の標的凝縮体の成分との優先的会合、(3)軽相と比較したときの、標的凝縮体の濃厚相への試験化合物またはその一部分の優先的溶解性、(4)濃厚相と比較したときの、軽相への試験化合物またはその一部分の優先的溶解性、(5)軽相と比較したときの、試験化合物またはその一部分と標的凝縮体の濃厚相中の構造体との優先的会合、(6)試験化合物またはその一部分の、標的凝縮体の成分に対する相分離駆動相互作用と競合する能力、(7)試験化合物またはその一部分の、標的凝縮体の成分に対する相分離駆動相互作用をもたらす能力、(8)標的凝縮体の成分と比較したときの、試験化合物またはその一部分と標的凝縮体の別の成分との優先的会合、ここでは、試験化合物またはその一部分と標的凝縮体の他の成分との優先的会合が、標的凝縮体の成分に対する相分離駆動相互作用を妨げる、(9)標的凝縮体の成分と比較したときの、試験化合物またはその一部分と標的凝縮体の別の成分との優先的会合、ここでは、試験化合物またはその一部分と標的凝縮体の他の成分との優先的会合が、標的凝縮体の成分に対する相分離駆動相互作用をもたらす、(10)相分離駆動相互作用に関与する成分の部位と比較したときの、試験化合物またはその一部分の、相分離駆動相互作用に関与しない成分の部位での優先的会合、及び(11)試験化合物またはその一部分と、軽相中及び濃厚相中の両方の凝縮体の成分との実質的に等しい会合、からなる群から選択される。
【0007】
上記の方法のいずれか1つによるいくつかの実施形態では、標的凝縮体に対する試験化合物またはその一部分の分配特性は、標的凝縮体中の試験化合物またはその一部分の分配の存在または非存在を示す。いくつかの実施形態では、標的凝縮体中の試験化合物またはその一部分の分配の存在または非存在は、分配特性閾値に基づいて決定される。いくつかの実施形態では、標的凝縮体中の試験化合物またはその一部分の分配の存在または非存在は、1より大きい分配特性を有することに基づいて決定される。
【0008】
上記の方法のいずれか1つによるいくつかの実施形態では、標的凝縮体に対する試験化合物またはその一部分の分配特性は、標的凝縮体中の試験化合物またはその一部分の分配の程度を示す。
【0009】
上記の方法のいずれか1つによるいくつかの実施形態では、標的凝縮体に対する試験化合物またはその一部分の分配特性は、軽相中の試験化合物またはその一部分に対する標的凝縮体の濃厚相中の試験化合物またはその一部分の比率に基づいている。
【0010】
上記の方法のいずれか1つによるいくつかの実施形態では、軽相中の標的凝縮体の成分に対する試験化合物またはその一部分の結合親和特性は、試験化合物またはその一部分と軽相中の標的凝縮体の成分との結合会合の存在または非存在を示す。いくつかの実施形態では、結合会合の存在または非存在は、結合親和性閾値に基づいて決定される。いくつかの実施形態では、試験化合物またはその一部分と軽相中の標的凝縮体の成分との結合会合の存在は、およそ10mM以下の結合親和性(例えば、Kd)を有することに基づいて決定される。
【0011】
上記の方法のいずれか1つによるいくつかの実施形態では、軽相中の標的凝縮体の成分に対する試験化合物またはその一部分の結合親和特性は、試験化合物またはその一部分と軽相中の標的凝縮体の成分との結合会合の程度を示す。
【0012】
上記の方法のいずれか1つによるいくつかの実施形態では、軽相中の標的凝縮体の成分に対する試験化合物またはその一部分の結合親和特性は、軽相中の標的凝縮体の成分に対する試験化合物またはその一部分の解離定数(Kd)に基づいている。
【0013】
上記の方法のいずれか1つによるいくつかの実施形態では、標的凝縮体の成分の相境界特性は、試験化合物またはその一部分の存在に起因する、標的凝縮体に対する標的凝縮体の成分の調節された分配の存在または非存在を示す。
【0014】
上記の方法のいずれか1つによるいくつかの実施形態では、相境界特性は、相図に基づいている。
【0015】
上記の方法のいずれか1つによるいくつかの実施形態では、(i)標的凝縮体に対する試験化合物またはその一部分の分配特性、(ii)軽相中の標的凝縮体の成分に対する試験化合物またはその一部分の結合親和特性、及び(iii)試験化合物またはその一部分の存在下での標的凝縮体の成分の相境界特性、のうちの2つ以上に基づいて試験化合物またはその一部分と標的凝縮体またはその成分との1つまたは複数の相互作用を特定することは、参照と比較することをさらに含む。いくつかの実施形態では、参照は、参照化合物を使用して得られた情報を含み、該情報は、標的凝縮体に対する参照化合物の分配特性、軽相中の標的凝縮体の成分に対する参照化合物の結合親和特性、及び参照化合物の存在下での標的凝縮体の成分の相境界特性のうちの1つまたは複数に関する。いくつかの実施形態では、参照は、複数(例えば、2、3、4、5、またはそれ以上)の参照化合物を使用して得られた情報を含む。いくつかの実施形態では、複数の参照化合物は、試験化合物と同じ化学クラスの化合物を含む。いくつかの実施形態では、複数の参照化合物は、試験化合物と異なる化学クラスの化合物を含む。いくつかの実施形態では、複数の参照化合物は、少なくとも5つの参照化合物を含む。
【0016】
上記の方法のいずれか1つによるいくつかの実施形態では、試験化合物と標的凝縮体の成分との結合様式を得ることをさらに含む。いくつかの実施形態では、結合様式は、多相リンケージ形式(polyphasic linkage formalism)法を介して決定される。
【0017】
上記の方法のいずれか1つによるいくつかの実施形態では、標的凝縮体に対する試験化合物またはその一部分の分配特性を測定することをさらに含む。いくつかの実施形態では、標的凝縮体に対する試験化合物またはその一部分の分配特性を測定することは、標的凝縮体中の試験化合物またはその一部分の量を測定することを含む。いくつかの実施形態では、標的凝縮体中の試験化合物またはその一部分の量を測定することは、凝縮体外の溶液中の試験化合物またはその一部分の量を測定することを介して決定される。いくつかの実施形態では、標的凝縮体に対する試験化合物またはその一部分の分配特性は、共焦点顕微鏡分析または蛍光分光法を使用して測定される。いくつかの実施形態では、標的凝縮体に対する試験化合物またはその一部分の分配特性は、(a)試験化合物と、標的凝縮体及び凝縮体外の溶液を含むまたはそれらの形成に供される組成物とを合わせること、(b)参照対照を得ること、(c)MS法を使用して、凝縮体外の溶液またはその一部分中の試験化合物の質量分析(MS)シグナルを測定すること、(d)MS法を使用して、参照対照またはその一部分中の試験化合物のMSシグナルを測定すること、ならびに(e)凝縮体外の溶液からの試験化合物のMSシグナルと参照対照からの試験化合物のMSシグナルとを比較すること、によって測定される。
【0018】
上記の方法のいずれか1つによるいくつかの実施形態では、軽相中の標的凝縮体の成分に対する試験化合物またはその一部分の結合親和特性を測定することをさらに含む。いくつかの実施形態では、軽相中の凝縮体の成分に対する試験化合物またはその一部分の結合親和特性を測定することは、軽相中の凝縮体の成分に対する試験化合物またはその一部分の解離定数(Kd)を測定することを含む。いくつかの実施形態では、軽相中の凝縮体の成分に対する試験化合物またはその一部分の結合親和特性を測定することは、マイクロスケール熱泳動(MST)、等温滴定熱量測定(ITC)、表面プラズモン共鳴(SPR)、核磁気共鳴(NMR)、または蛍光偏光(FP)法を使用することを含む。
【0019】
上記の方法のいずれか1つによるいくつかの実施形態では、試験化合物またはその一部分の存在に起因する標的凝縮体の成分の相境界特性を測定することをさらに含む。いくつかの実施形態では、試験化合物またはその一部分の存在下での標的凝縮体の成分の相境界特性は、顕微鏡分析、蛍光分光、紫外-可視(UV-Vis)分光、蛍光退色後回復測定(FRAP)、静的及び動的光散乱(SLS/DLS)、または質量分析に基づく技法を使用して測定される。
【0020】
上記の方法のいずれか1つによるいくつかの実施形態では、相境界特性は、標的凝縮体に対する標的凝縮体の成分の分配特性を表している。いくつかの実施形態では、試験化合物またはその一部分の存在下での標的凝縮体の成分の相境界特性は、顕微鏡分析、蛍光分光、紫外-可視(UV-Vis)分光、蛍光退色後回復測定(FRAP)、静的及び動的光散乱(SLS/DLS)、または質量分析に基づく技法を使用して測定される。
【0021】
上記の方法のいずれか1つによるいくつかの実施形態では、標的凝縮体の成分は高分子である。
【0022】
上記の方法のいずれか1つによるいくつかの実施形態では、標的凝縮体の成分はポリペプチドを含む。
【0023】
上記の方法のいずれか1つによるいくつかの実施形態では、標的凝縮体の成分は核酸を含む。
【0024】
上記の方法のいずれか1つによるいくつかの実施形態では、参照凝縮体に対する試験化合物またはその一部分の分配特性に関連する1つまたは複数の寄与因子を決定することをさらに含む。いくつかの実施形態では、本方法は、標的凝縮体に対する試験化合物またはその一部分の分配特性に関連する1つまたは複数の寄与因子を、参照凝縮体に対する試験化合物またはその一部分の分配特性に関連する1つまたは複数の寄与因子と比較することをさらに含む。
【0025】
本発明は、別の態様において、標的凝縮体またはその成分と1つまたは複数の所望の相互作用を有する化合物を設計する方法であって、(a)上記の方法のいずれか1つに従って、候補化合物またはその一部分と標的凝縮体またはその成分との1つまたは複数の相互作用を特定すること、及び(b)特定された1つまたは複数の相互作用に関連する候補化合物またはその一部分に基づいて化合物を設計すること、を含む方法を提供する。
【0026】
本発明は、別の態様において、所望の相互作用プロファイルを有する化合物を設計する方法であって、該化合物の前駆体を、該前駆体にある部分を付着させることによって改変することを含み、該部分が、上記の方法のいずれか1つに従って特定された、標的凝縮体またはその成分との1つまたは複数の所望の相互作用を有する特性を含む方法を提供する。
【0027】
当業者であれば、本明細書に記載される実施態様の形態及び詳細の変更を本開示の範囲から逸脱することなく行うことができることも理解するであろう。加えて、様々な実施態様を参照して様々な利点、態様、及び目的を説明してきたが、本開示の範囲は、そのような利点、態様、及び目的を参照することによって限定されるものではない。
【0028】
特許出願及び出版物を含めた本明細書に引用されたすべての参考文献は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】試験化合物と標的凝縮体及び/またはそのタンパク質成分との例示的な相互作用を特定するための例示的な実験戦略を示す。
【
図2】凝縮体に対する凝縮体のタンパク質成分の分配特性によって表されるタンパク質成分の相境界特性(PC-タンパク質)に対する、凝縮体に対する化合物の分配特性(PC-化合物)の理論上のグラフを示す。
【
図3A】本明細書に記載の方法を使用した、ローダミンB(RhoB)及びFUS成分を含む凝縮体の分析からの例示的な測定値を示す。軽相である凝縮体外の溶液(上清)中のRhoBの割合によって反映される、インビトロで形成されたFUS-SNAP凝縮液に対する2つの濃度のRhoBの分配の、蛍光分光(RhoB-FL)及び質量分析(RhoB-MS)分析を示す。
【
図3B】明細書に記載の方法を使用した、ローダミンB(RhoB)及びFUS成分を含む凝縮体の分析からの例示的な測定値を示す。軽相中のRhoBとFUS-SNAPとの結合親和性分析を示す。
【
図3C】明細書に記載の方法を使用した、ローダミンB(RhoB)及びFUS成分を含む凝縮体の分析からの例示的な測定値を示す。凝縮体中へのFUS(FUS-EGFP)の分配が減少することによって、RhoBの存在下でFUS(FUS-EGFP)の相挙動が調節されることを示す。
【
図4】一連のRho800濃度での、FUS含有凝縮体(FUS-mEGFP/RNA液滴)中のRho800及びFUS(FUS-mEGFP)の分配を示すグラフを示す。
【
図5】Aは、FUS-RRMドメインの三次元モデルを示す。Bは、Rho800の結合に関与するFUSの残基を示すグラフを示す。
【
図6】4つの化合物の分配を、凝縮体の成分との結合会合に関する情報に重ね合わせた棒グラフを示す。「NB」は「非結合剤」を示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本出願は、いくつかの態様において、化合物(またはその一部分)と凝縮体(またはその成分)との1つまたは複数の相互作用を特定する方法を提供する。いくつかの実施形態では、該相互作用は、濃厚相及び/または軽相(希薄相としても知られる)中で評価したときに、化合物またはその一部分と凝縮体またはその成分とが互いに影響を及ぼす様式である。いくつかの実施形態では、相互作用(複数可)は、凝縮体に対する化合物またはその一部分の分配特性に全体的または部分的に関与する駆動力を含み、これは、様々な「原因因子」(駆動力への寄与因子など)、例えば、化合物またはその一部分と凝縮体の成分との間の直接的な結合親和性、凝縮体の濃厚相(濃厚相環境または濃厚相微小環境としても知られている)中への化合物またはその一部分の優先的溶解性、及び濃厚相に優勢に存在する新たな結合部位などを包含し得る。いくつかの実施形態では、相互作用(複数可)は、化合物またはその一部分の存在下での凝縮体に対する凝縮体の成分の相境界特性、例えば分配特性に全体的または部分的に関与する駆動力を含み、これは、化合物またはその一部分が凝縮体の相挙動に結果的に及ぼす影響に役割を果たし得る。
【0031】
ある種の態様では、本出願の開示は、少なくとも部分的に、化合物またはその一部分と凝縮体またはその成分との間の特異的な相互作用(及びそのような相互作用を駆動するより詳細な原因因子)を特定する方法に関する本発明者らの独自の洞察及び知見に基づいている。本明細書に記載するように、(i)凝縮体に対する化合物またはその一部分の分配特性、(ii)軽相中の凝縮体の成分に対する化合物またはその一部分の結合親和特性、及び(iii)化合物またはその一部分の存在下での凝縮体の成分の相境界特性の個々の測定値は、化合物またはその一部分と凝縮体及び/またはその成分との間の相互作用に関する複雑な及び/または不完全な情報を提供することがある。よって、そのような測定値を個別に使用するだけだと(または本明細書に記載の教示された方法を用いないと)、化合物またはその一部分と凝縮体またはその成分との間の相互作用に関与する1つまたは複数の原因因子が明かされないことがある。例えば、いくつかの実施形態では、凝縮体中での化合物またはその一部分の分配の存在は、化合物またはその一部分と凝縮体またはその成分との間の相互作用を駆動する複数の原因因子の結果であり、それによって、観察される化合物またはその一部分の分配が生じる。そのような原因因子は、例えば、濃厚相中でのみ露出する凝縮体成分の結合モチーフへの化合物(またはそのその一部分)の優先的結合、または濃厚相環境(特定の凝縮体の濃厚相、または任意の凝縮体の濃厚相などであり得る)に対する化合物(またはその一部分)の選好(より高い溶解性など)であり得る。分配の測定を単独で行ってもそのような原因因子は特定されない。上記の測定を個別に使用すると(または本明細書に記載の教示された方法を用いないと)、化合物(またはその一部分)が凝縮体(またはその成分)とどのように相互作用するかが反映されないこともある。例えば、凝縮体中の化合物またはその一部分の分配の存在は、凝縮体の成分の相境界特性を調節することも、凝縮体(またはその成分)にまったく影響を及ぼさないこともある。本明細書に教示されるように、(i)凝縮体に対する化合物もしくはその一部分の分配特性、(ii)軽相中の凝縮体の成分に対する化合物もしくはその一部分の結合親和特性、または(iii)化合物もしくはその一部分の存在下での凝縮体の成分の相境界特性の任意の組み合わせを比較することによって、化合物の性質の部分的解析を含めて、原因因子情報を解析することが可能になる。よって、提供するのは、化合物またはその一部分と凝縮体またはその成分との1つまたは複数の特異的な相互作用を特定するための方法である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、化合物(またはその一部分)と凝縮体(またはその成分)との相互作用に関与する1つまたは複数の駆動力を特定することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、化合物(またはその一部分)と凝縮体(またはその成分)との相互作用に寄与しない1つまたは複数の駆動力を特定することができる。
【0032】
場合によっては、そのような方法によって、凝縮体またはその成分との所望の相互作用を有する、例えば、所望の分配特性を有する、化合物またはその一部分を特定することが可能になる(例えば、化合物ライブラリのスクリーニングを介して)。いくつかの実施形態では、そのような情報を使用して、1つまたは複数の化合物のさらなる特定及び/または設計を導くことができる。よって、いくつかの実施形態では、提供するのは、例えば、改善された効力、治療係数、及び/または安全性を有する標的化合物を特定または設計するための方法である。加えて、そのような方法は、特定された化学モチーフまたは化学クラスに基づいて、化合物またはその一部分の凝縮体関連特性の迅速かつ正確な予測を可能にする。
【0033】
例示を目的として述べると、凝縮体中への化合物の分配を含めた、化合物と凝縮体(またはその成分)との間の相互作用は、例えば、次のうちの1つまたは複数によって影響を受ける可能性がある:(1)化合物と凝縮体の成分との間の特異的結合、ここでは、化合物が結合するコンフォメーションは、成分が軽相中(例えば、凝縮体の外側)に存在する場合と凝縮体の濃厚相中(例えば、凝縮体の内側)に存在する場合のいずれにおいても成分に存在する、(2)軽相と比較したときの、凝縮体の濃厚相への化合物の溶解性の増大(すなわち、この相互作用は、凝縮体の成分との間の特異的結合によって駆動されない)、(3)化合物と、凝縮体の濃厚相中に優勢に存在する1つまたは複数の標的との優先的結合(例えば、凝縮体の濃厚相中にある場合の成分のコンフォメーション、凝縮体の濃厚相中に形成された、新たに形成された結合構造体、及び/または凝縮体中の別の分子の存在)、及び(4)反発力、例えば、軽相への化合物の溶解性の減少、または化合物またはその一部分に不都合な軽相の条件。化合物と凝縮体との間の相互作用は、化合物が凝縮体(またはその成分)の相挙動に及ぼす影響にも役割を果たすことがあり、それには、次の変化のうちの1つまたは複数が含まれる:濃厚相の組成(例えば、2つ以上の成分が存在するなら、その比率)、凝縮体の成分の相分離(または相分離の破壊)、凝縮体の成分の飽和濃度、材料特性(例えば、タンパク質動力学、粘度)、凝縮体の存在または非存在、及び凝縮体の液滴形態(例えば、球形度、サイズ、形状)。
【0034】
本明細書に教示されるように、本明細書に記載のそのような相互作用を特定する方法は、この情報のさらなる使用を可能にし、それらには、所望の化合物の活性、例えば、所望の分配特性、及び/または化合物が凝縮体の相挙動に及ぼす所望の影響に基づいた、化合物の知的スクリーニング及び/または設計が含まれる。例えば、凝縮体の特定の標的成分(例えば、構造化結合ポケット、線状モチーフ、過渡的構造の構造体)に結合し、標的成分を含む凝縮体中に優先的に分配され(すなわち、所望の凝縮体中に優先的に蓄積される)、そして凝縮体の相挙動に影響を及ぼさない(例えば、化合物は、凝縮体の形成及び/または存在を妨害しない)化合物を特定及び/または設計することが望ましいことがある。そのような相互作用を特定するのに有用である本明細書に開示される方法は、任意のそのような所望の活性、所望の分配特性、及び化合物が凝縮体の相挙動に及ぼす所望の影響を有する化合物のスクリーニング及び/または設計を可能にする。
【0035】
ある種の態様では、本出願の開示は、少なくとも部分的に、凝縮体に対する化合物の分配特性を得る方法、例えば測定する(例えば、凝縮体中に分配された化合物の量を測定する)方法、及びその使用に関する本発明者らの独自の洞察及び知見に基づいている。いくつかの態様では、本出願の開示は、少なくとも部分的に、化合物及び/または凝縮体の成分の分配特性を決定するための、例えば、質量分析(MS)、蛍光分光、ラマン分光、顕微鏡分析、及び核磁気共鳴(NMR)を使用する、定量的技法に関する本発明者らの知見及び開発に基づいている。このような方法は、例えば、単純な系と複雑な系の両方での使用に適した迅速かつハイスループットな様式で、標的凝縮体に対する試験化合物の分配特性の正確かつ信頼できる決定を可能にする。加えて、記載の質量分析に基づく方法は、仮説不要であり(すなわち、既知の標識化合物または凝縮体もしくはその成分を必要としない)、化合物の高度な多重化に適合し、化合物の濃厚化を必要とせず、ホモタイプ及びヘテロタイプの系に使用することができ、そして少量の化合物及び/または凝縮体成分で実行することができる。これらによって、より生物学的に関連性のあるモデルとなり、出発物質及び試薬の使用が低減する。
【0036】
よって、いくつかの態様では、本出願は、試験化合物またはその一部分と標的凝縮体またはその成分との1つまたは複数の相互作用を特定する方法を提供する。
【0037】
他の態様では、本出願は、凝縮体に対する化合物またはその一部分の分配特性を得る方法、例えば、決定または測定する方法、及び化合物またはその一部分の存在下での凝縮体の成分の相境界特性を得る方法、例えば、決定または測定する方法、及び軽相中の凝縮体の成分に対する化合物またはその一部分の結合親和特性を得る方法、例えば、決定または測定する方法を提供する。
【0038】
他の態様では、本出願は、複数の化合物(例えば、2、3、4、またはそれ以上の化合物)を含むライブラリであって、複数の化合物のうちの各化合物がある部分を含み、その部分が、標的凝縮体及び/またはその成分とその部分との所望の相互作用、例えば、本明細書に記載の方法のいずれかに従って特定された相互作用に関連する、ライブラリを提供する。
【0039】
他の態様では、本出願は、標的凝縮体またはその成分と1つまたは複数の所望の相互作用を有する化合物を設計する方法であって、(a)本明細書に記載の方法に従って、候補化合物またはその一部分と標的凝縮体またはその成分との1つまたは複数の相互作用を特定すること、及び(b)特定された1つまたは複数の相互作用に関連する候補化合物またはその一部分に基づいて化合物を設計すること、を含む方法を提供する。
【0040】
他の態様では、本出願は、所望の相互作用プロファイルを有する化合物を設計する方法であって、該化合物の前駆体にある部分を付着させることによって該前駆体を改変することを含み、該部分が、標的凝縮体またはその成分との1つまたは複数の所望の相互作用、例えば、本明細書に記載の方法のいずれかに従って特定された相互作用を有する特性を含む方法を提供する。
【0041】
本明細書で使用される節の見出しは、構成目的のみのためであり、記載される主題を限定するものと解釈されるべきではない。例えば、本開示のいくつかの態様はモジュール形式で提示されており、そのような提示は、本明細書に教示される手法の可能な組み合わせを限定するものと解釈されるべきではない。
【0042】
I.定義
本明細書を解釈する目的において、以下の定義が適用され、適切な場合はいつでも、単数形で使用される用語は複数形も含み、その逆も同様である。以降に記載されるいずれかの定義が、参照により本明細書に組み込まれるいずれかの文献と矛盾する場合には、記載される定義が優先されるものとする。
【0043】
本明細書で使用される場合、「凝縮体」は、1つもしくは複数のタンパク質及び/または他の高分子の相分離(相分離のすべての段階が含まれる)によって形成される、膜に封入されていない区画を意味する。
【0044】
「ポリペプチド」及び「タンパク質」という用語は、本明細書で使用される場合、アミノ酸残基を含むポリマーを指すために交換可能に使用することができ、最小の長さに限定されない。そのようなポリマーは、天然もしくは非天然のアミノ酸残基、またはそれらの組み合わせを含有してもよく、それらとして、アミノ酸残基のペプチド、ポリペプチド、オリゴペプチド、二量体、三量体、及び多量体が挙げられるが、これらに限定されない。全長のポリペプチドまたはタンパク質、及びそれらの断片が、この定義に包含される。この用語には、それらの改変種、例えば、1つまたは複数の残基の翻訳後修飾、例えば、メチル化、リン酸化、グリコシル化、シアリル化、またはアセチル化も含まれる。
【0045】
「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含有する(containing)」、及び「含む(including)」という用語、ならびに他の類似の形態、ならびにそれらの文法的同等物は、本明細書で使用される場合、意味が同等であること、かつこれらの語のいずれか1つに続く1つもしくは複数の項目が、そのような1つもしくは複数の項目の網羅的な列挙であることを意味しないか、または列挙された1つもしくは複数の項目のみに限定されることを意味しないという点でオープンエンドであることが意図される。例えば、構成要素A、B、及びCを「含む」物品は、構成要素A、B、及びCからなってもよく(すなわち、それらのみを含有する)、または構成要素A、B、及びCだけでなく1種もしくは複数の他の構成要素を含有してもよい。したがって、「含む」及びその類似の形態、ならびにそれらの文法的同等物には、「~から本質的になる」または「~からなる」の実施形態の開示が含まれることが意図され、理解される。
【0046】
値の範囲が示される場合、文脈が明らかに他に指示しない限り、その範囲の上限と下限との間の、下限の単位の10分の1に至るまでの各介在値、ならびにその表示範囲内の任意の他の表示値または介在値が、表示範囲内の何らかの具体的に除外される限界に従って、本開示内に包含されることが理解される。表示範囲が一方または両方の限界値を含む場合、それらの含まれる限定値の片方または両方を除外する範囲もまた、本開示に含まれる。
【0047】
本明細書における「およそ」の値またはパラメータへの言及は、その値またはパラメータ自体に対する変動を含む(かつ記載する)。例えば、「およそX」について言及する記載は、「X」の記載を含む。
【0048】
添付の特許請求の範囲を含めて、本明細書で使用される場合、単数形「a」、「または(or)」、及び「the」は、文脈が明らかに他に指示しない限り、複数の指示対象を含む。
【0049】
II.化合物またはその一部分と凝縮体またはその成分との1つまたは複数の相互作用を特定する方法
いくつかの態様では、本明細書で提供するのは、試験化合物またはその一部分と標的凝縮体またはその成分との1つまたは複数の相互作用を特定する方法である。いくつかの実施形態では、相互作用は、濃厚相及び/または軽相中で評価したときに、化合物またはその一部分と凝縮体またはその成分とが互いに影響を及ぼす様式である。いくつかの実施形態では、相互作用は、凝縮体に対する化合物またはその一部分の分配特性の側面を含み、これは、化合物またはその一部分の凝縮体分配に関連する様々な原因因子を包含する。いくつかの実施形態では、相互作用は、化合物またはその一部分の存在下での凝縮体に対する凝縮体の成分の分配特性の側面を含み、これは、化合物またはその一部分が凝縮体の相挙動に及ぼす影響に役割を果たす様々な原因因子を包含する。いくつかの実施形態では、化合物は試験化合物である。いくつかの実施形態では、化合物は参照化合物(例えば、標的凝縮体を調節する/調節しないことが既知である、または標的凝縮体中に分配される/分配されないことが既知である、または標的凝縮体の成分に結合する/結合しないことが既知である化合物)である。いくつかの実施形態では、凝縮体は標的凝縮体である。いくつかの実施形態では、凝縮体は参照凝縮体(例えば、試験化合物によって調節される/調節されないことが既知である、または試験化合物の分配を有する/有さないことが既知である凝縮体)である。
【0050】
いくつかの実施形態では、本方法は、凝縮体に対する化合物またはその一部分の分配特性を得ること、例えば、決定または測定することを含む。いくつかの実施形態では、凝縮体に対する化合物またはその一部分の分配特性は、軽相(例えば、凝縮体外の溶液)中の化合物またはその一部分に対する凝縮体の濃厚相中の化合物またはその一部分の比率に基づいている。いくつかの実施形態では、化合物は試験化合物である。いくつかの実施形態では、化合物は参照化合物である。いくつかの実施形態では、凝縮体は標的凝縮体である。いくつかの実施形態では、凝縮体は参照凝縮体である。
【0051】
いくつかの実施形態では、凝縮体に対する化合物またはその一部分の分配特性は、凝縮体中への化合物またはその一部分の分配の存在または非存在を示す(または存在または非存在である)。いくつかの実施形態では、凝縮体に対する化合物またはその一部分の分配特性は、凝縮体中への化合物またはその一部分の分配の程度(例えば、量)を示す。いくつかの実施形態では、本方法は、凝縮体中の化合物またはその一部分の分配の存在または非存在を決定することを含む。いくつかの実施形態では、1超の分配特性は、化合物またはその一部分が凝縮体の濃厚相を選好することを示している(例えば、凝縮体中に化合物もしくはその一部分を駆動する1つもしくは複数の引力が存在する、または軽相の外側に化合物もしくはその一部分を駆動する1つもしくは複数の反発力が存在する)。いくつかの実施形態では、1未満の分配特性は、化合物またはその一部分が凝縮体の外側の軽相を選好することを示している(例えば、凝縮体の外側に化合物もしくはその一部分を駆動する1つもしくは複数の反発力が存在する、または軽相中に化合物もしくはその一部分を駆動する1つもしくは複数の引力が存在する)。いくつかの実施形態では、1の分配特性は、化合物またはその一部分が軽相または濃厚相を選好しないことを示している(例えば、化合物は、凝縮体を通って自由に拡散することができる、引力または反発力が存在しない、引力及び反発力が互いに打ち消し合う)。
【0052】
いくつかの実施形態では、凝縮体中の化合物またはその一部分の分配の存在または非存在の決定は、分配特性閾値に基づいている。ある種の実施形態では、分配特性閾値は、分配特性を得るために使用される技法に依存することがあり、化合物またはその一部分が凝縮体中に分配されているかどうかを正確に結論付けるために、及び化合物またはその一部分が凝縮体中にどの程度分配されているかを決定するために閾値を容易に調整することができることを、当業者であれば理解するであろう。いくつかの実施形態では、閾値を満たすことに基づいて存在または非存在を分類することが望ましい場合もある。例えば、閾値は、凝縮体に対する化合物またはその一部分の分配特性を決定するために使用される技法に関連する信号対雑音比(S/N)に基づいてもよい。いくつかの実施形態では、閾値は、所望の信頼度で、例えば5%以下の偽発見率(FDR)で、分配特性を決定することを可能にする。
【0053】
いくつかの実施形態では、分配の存在(例えば、凝縮体中に化合物またはその一部分を駆動する引力に基づいた優先的分配)は、分配特性閾値(例えば、1)より大きい化合物分配特性に基づいて決定される。いくつかの実施形態では、分配特性は、1超、例えばおよそ、2以上、3以上、4以上、5以上、10以上、15以上、20以上、25以上、30以上、35以上、40以上、45以上、50以上、60以上、70以上、80以上、90以上、100以上、200以上、300以上、400以上、500以上、600以上、700以上、800以上、900以上、または1,000以上のいずれかである。いくつかの実施形態では、分配の非存在は、1未満の分配特性など、分配特性閾値未満の化合物分配特性に基づいて決定される。例えば、いくつかの実施形態では、凝縮体に対する化合物の分配特性は、蛍光に基づく技法によって測定され、分配特性閾値はおよそ2である(測定された分配特性が2以上であるということは、軽相中と比較したときに凝縮体中で化合物またはその一部分が濃厚化していることを示し、測定された分配特性が2未満であるということは、軽相中と比較したときに凝縮体中で化合物またはその一部分が濃厚化されていないことを示す)。いくつかの実施形態では、凝縮体に対する化合物の分配特性は、質量分析に基づく技法(質量分析枯渇アッセイなど)を使用して測定され、分配特性閾値はおよそ2である(測定された分配特性が2以上であるということは、軽相中と比較したときに凝縮体中で化合物またはその一部分が濃厚化していることを示し、測定された分配特性が2未満であるということは、軽相中と比較したときに凝縮体中で化合物またはその一部分が濃厚化されていないことを示す)。いくつかの実施形態では、凝縮体に対する化合物の分配特性は、質量分析に基づく技法(質量分析枯渇アッセイなど)を使用して測定され、分配特性閾値はおよそ50である(測定された分配特性が50以上であるということは、軽相中と比較したときに凝縮体中で化合物またはその一部分が濃厚化していることを示し、測定された分配特性が50未満であるということは、軽相中と比較したときに凝縮体中で化合物またはその一部分が濃厚化されていないことを示す)。いくつかの実施形態では、本方法は、分配の存在を決定するために分配特性閾値を使用すること、及び分配の非存在を決定するために第2の分配特性閾値を使用することを含む。
【0054】
いくつかの実施形態では、凝縮体中に分配されている化合物またはその一部分の存在(またはその欠如)は、凝縮体中の化合物またはその一部分の分配の程度に基づいて決定される。例えば、分配の程度は、例えば、化合物の弱い、中程度の、及び強い分配(それぞれ、弱い分配剤、中程度の分配剤、及び強い分配剤)を特徴付ける閾値によって、カテゴリに基づいて評価することができる。いくつかの実施形態では、分配特性が10未満であれば、化合物は弱い分配剤として特徴付けられる。いくつかの実施形態では、分配特性が10以上100未満であれば、化合物は中程度の分配剤として特徴付けられる。いくつかの実施形態では、分配特性が100以上、例えば1000以上であれば、化合物は強い分配剤として特徴付けられる。
【0055】
いくつかの実施形態では、凝縮体中の化合物またはその一部分の分配の存在は、次のうちのいずれか1つまたは複数を示す:(i)化合物またはその一部分は、軽相と比較したときに凝縮体の濃厚相中に優先的に溶媒和する、(ii)化合物またはその一部分は、軽相中の凝縮体の成分と比較したときに実質的に同様の親和性で濃厚相中の凝縮体の成分と会合する、例えば特異的に結合する、(iii)化合物またはその一部分は、軽相中の凝縮体の成分と比較したときに優先的に濃厚相中の凝縮体の成分と会合する、例えば特異的に結合する、及び(iv)化合物またはその一部分は、濃厚相中の構造体(例えば、軽相と比較したときに優先的に凝縮体中に見出される凝縮体の成分のコンフォメーション)、または凝縮体中に優先的に存在する新たな結合構造体(例えば、凝縮体中の別の分子の存在もしくは凝縮体の2つ以上の成分の会合に基づいて形成された部位)と優先的に会合する、例えば特異的に結合する。
【0056】
いくつかの実施形態では、凝縮体中の化合物またはその一部分の分配の非存在(閾値を満たさないことに基づく非存在が含まれる)は、次のうちのいずれか1つまたは複数を示す:(i)化合物またはその一部分は、軽相と比較したときに凝縮体の濃厚相中に優先的に溶媒和しない、(ii)化合物またはその一部分は、凝縮体の成分に会合しない、例えば特異的に会合しない、(iii)化合物またはその一部分は、濃厚相と比較したときに優先的に軽相中に見出される凝縮体の成分と優先的に会合する、例えば特異的に結合する、及び(iv)化合物またはその一部分は、凝縮体の濃厚相と比較したときに優先的に軽相中に溶媒和する。
【0057】
いくつかの実施形態では、本方法は、軽相中の凝縮体の成分に対する化合物またはその一部分の結合親和特性を得ること、例えば、決定または測定することを含む。いくつかの実施形態では、化合物は試験化合物である。いくつかの実施形態では、化合物は参照化合物である。いくつかの実施形態では、凝縮体は標的凝縮体である。いくつかの実施形態では、凝縮体は参照凝縮体である。
【0058】
いくつかの実施形態では、軽相中の凝縮体の成分に対する化合物またはその一部分の結合親和特性は、化合物またはその一部分と軽相中の凝縮体の成分との結合会合の存在または非存在(解離定数を介して測定される特異的結合親和性など)を示す。いくつかの実施形態では、凝縮体の成分に対する化合物またはその一部分の結合親和特性は、化合物またはその一部分と軽相中の凝縮体の成分との結合会合の程度を示す。いくつかの実施形態では、軽相中の凝縮体の成分に対する化合物またはその一部分の結合親和特性は、軽相中の凝縮体の成分に対する化合物またはその一部分の解離定数値(Kd)に基づいている。いくつかの実施形態では、本方法は、軽相中の凝縮体の成分に対する化合物またはその一部分の結合会合の存在または非存在を決定することを含む。いくつかの実施形態では、結合の存在または非存在の決定は、結合親和性閾値に基づいている。当業者であれば、結合親和性閾値が、結合親和性を得るために使用される技法に依存することがあることを理解するであろう。いくつかの実施形態では、閾値を満たすことに基づいて結合会合の存在または非存在を分類することが望ましい場合もある。いくつかの実施形態では、化合物またはその一部分が軽相中の凝縮体の成分に会合しているかどうかを結論付けるために、及び/または化合物またはその一部分が軽相中の凝縮体の成分にどの程度会合しているかを決定するために、閾値を容易に調整することができる。いくつかの実施形態では、閾値は、化合物またはその一部分と軽相中の凝縮体の成分との結合親和特性を、所望の信頼度で、例えば、5%以下のFDRで決定することを可能にする。いくつかの実施形態では、閾値は、結合親和性を評価するために使用される技法の最小レベルの感度に基づいて決定される。
【0059】
いくつかの実施形態では、化合物またはその一部分と軽相中の凝縮体の成分との結合会合の存在は、結合親和性閾値(例えば、10mM)未満の結合親和性(例えば、解離定数(Kd))に基づいて決定される。いくつかの実施形態では、化合物またはその一部分と軽相中の凝縮体の成分との結合親和性は、およそ10mM以下であり、例えばおよそ、1mM以下、100μM以下、10μM以下、1μM以下、100nM以下、10nM以下、1nM以下、100pM以下、10pM以下、または1pM以下のいずれかである。
【0060】
いくつかの実施形態では、化合物またはその一部分と軽相中の凝縮体の成分との結合会合の存在(またはその欠如)は、化合物またはその一部分と軽相中の凝縮体の成分との結合親和性の程度に基づいて決定される。例えば、結合親和性の程度は、例えば、化合物の弱い、中程度の、及び強い結合(それぞれ、弱い結合剤、中程度の結合剤、及び強い結合剤)を特徴付ける閾値によって、カテゴリに基づいて評価することができる。いくつかの実施形態では、Kdが100μM以上であれば、化合物は弱い結合剤として特徴付けられる。いくつかの実施形態では、Kdが10μM以上100μM未満であれば、化合物は中程度の結合剤として特徴付けられる。いくつかの実施形態では、Kdが10μM未満であれば、化合物は強い結合剤として特徴付けられる。
【0061】
いくつかの実施形態では、化合物またはその一部分と軽相中の凝縮体の成分との結合会合の存在は、次のうちのいずれか1つまたは複数を示す:(i)化合物またはその一部分は、軽相中の凝縮体の成分と(例えば、軽相中に優先的に存在する凝縮体の成分のコンフォメーションを介して)会合する、例えば特異的に結合する、及び(ii)化合物またはその一部分は、軽相及び濃厚相中の凝縮体の成分と会合する、例えば、特異的または非特異的に結合する。いくつかの実施形態では、化合物(またはその一部分)と軽相中の凝縮体の成分との結合親和特性は、化合物(またはその一部分)と軽相中の凝縮体の成分との結合会合が特異的であるのかまたは非特異的であるのかを決定するために、化合物(またはその一部分)と別の高分子(例えば、軽相中の凝縮体の別の成分)との結合親和特性とさらに比較される。
【0062】
いくつかの実施形態では、化合物またはその一部分と軽相中の凝縮体の成分との結合会合の非存在(閾値を満たさないことに基づく非存在が含まれる)は、次のうちのいずれか1つまたは複数を示す:(i)化合物またはその一部分は、軽相中の凝縮体の成分と(例えば、軽相中に優先的に存在する凝縮体の成分のコンフォメーションを介して)会合しない、例えば特異的に結合しない、(ii)化合物またはその一部分は、濃厚相中の凝縮体の成分と(例えば、濃厚相中に優先的に存在する凝縮体の成分のコンフォメーションを介して)会合する、例えば特異的に結合する、及び(iii)化合物またはその一部分は、軽相中または濃厚相中のいずれの凝縮体の成分とも会合しない、例えば特異的に結合しない。
【0063】
いくつかの実施形態では、凝縮体の成分の相境界特性は、化合物またはその一部分の存在に起因する、凝縮体に対する凝縮体の成分の調節された分配の存在または非存在を示す。いくつかの実施形態では、本方法は、化合物またはその一部分の存在下での凝縮体の成分の相境界特性を得ること、例えば、決定または測定することを含む。いくつかの実施形態では、本方法は、化合物またはその一部分の非存在下での凝縮体の成分の相境界特性を得ること、例えば、決定または測定することを含む。いくつかの実施形態では、相境界特性は、1つまたは複数の相図から得られる1つまたは複数の情報を含む。いくつかの実施形態では、相境界特性は、凝縮体に対する凝縮体の成分の分配特性を示す。いくつかの実施形態では、相境界特性は、化合物またはその一部分の存在/非存在、またはその量などの条件の変化に起因する相図の相違などの、相境界シフトを含む。いくつかの実施形態では、本方法は、(例えば、ある量の)化合物またはその一部分の存在に起因する凝縮体の成分の相境界シフトを得ること、例えば、決定または測定することを含む。いくつかの実施形態では、本方法は、化合物またはその一部分の存在下での凝縮体の成分の相境界特性(例えば、飽和濃度)の用量依存的な調節を得ること、例えば、決定または測定することを含む。いくつかの実施形態では、化合物は試験化合物である。いくつかの実施形態では、化合物は参照化合物である。いくつかの実施形態では、凝縮体は標的凝縮体である。いくつかの実施形態では、凝縮体は参照凝縮体である。
【0064】
いくつかの実施形態では、化合物またはその一部分の存在に起因する凝縮体の成分の相境界特性、例えば、相境界シフトは、改変された相挙動の存在または非存在に役割を果たす。いくつかの実施形態では、化合物またはその一部分の存在に起因する改変された相挙動は、化合物またはその一部分が存在しない場合と比較したときに、濃厚相中の凝縮体の成分に対する軽相中の凝縮体の成分の比率を増加または減少させる。いくつかの実施形態では、本方法は、(例えば、ある量の)化合物またはその一部分の存在に起因する凝縮体の成分の相境界シフトの存在または非存在を決定することを含む。いくつかの実施形態では、化合物またはその一部分の存在に起因する凝縮体の成分の相境界シフトの存在または非存在は、凝縮体(またはその成分)の相挙動の観察された変化に基づいており、例えば、次のうちの1つまたは複数の変化に基づいている:濃厚相の組成(例えば、どんな成分が凝縮体中に存在するか、及び凝縮体の成分の選択的排除、2つ以上の成分が存在するなら、その比率)、凝縮体の材料特性(例えば、流動性、またはタンパク質動力学、粘度)、凝縮体の成分の相分離(または相分離の破壊)、凝縮体を形成する成分の飽和濃度、凝縮体の存在または非存在、凝縮体の形態(例えば、サイズ、形状、球形度)。いくつかの実施形態では、本方法は、(例えば、ある量の)化合物またはその一部分の存在下での凝縮体に対する凝縮体の成分の分配特性の存在または非存在を決定することを含む。いくつかの実施形態では、化合物の存在下での凝縮体の成分の相境界特性は、化合物が相境界シフトを引き起こさないことを示している。いくつかの実施形態では、化合物の存在下での凝縮体の成分の相境界特性は、化合物が相境界シフトを引き起こすことを示している。
【0065】
いくつかの実施形態では、相境界特性の存在または非存在は、相境界特性閾値に基づいて決定される。ある種の実施形態では、相境界特性閾値は、相境界特性を得るために使用される技法に依存することがあり、例えば、凝縮体の成分が凝縮体中に分配されているかどうかを正確に結論付けるために、及び凝縮体の成分が凝縮体中にどの程度分配されているかを決定するために、閾値を容易に調整することができることを、当業者であれば理解するであろう。いくつかの実施形態では、閾値を満たすことに基づいて、相境界シフトなどの相境界特性の存在または非存在を分類することが望ましい場合もある。例えば、閾値は、化合物の成分の分配特性を決定するために使用される技法に関連する信号対雑音比(S/N)に基づいてもよい。いくつかの実施形態では、閾値は、所望の信頼度で、例えば5%以下のFDRで、分配特性を決定することを可能にする。
【0066】
いくつかの実施形態では、化合物またはその一部分の存在下での凝縮体の成分の相境界特性(例えば、凝縮体中への凝縮体の成分の分配)の調節の存在(またはその欠如)は、EC50などを介して決定されるような、化合物またはその一部分の存在下での凝縮体中への凝縮体の成分の分配の調節の程度に基づいて決定される。EC50(半数効果濃度)とは、凝縮体に及ぼす観察される最大効果の50%を誘導するのに(例えば、凝縮体から成分の50%を追い出す、または凝縮体の50%を破壊するのに)要する化合物濃度である。例えば、凝縮体中へ成分の分配の調節の程度は、例えば、成分による凝縮体中への成分の分配の弱い、中程度の、及び強い調節(それぞれ、弱い調節剤、中程度の調節剤、及び強い調節剤)を特徴付ける閾値によって、カテゴリに基づいて評価することができる。いくつかの実施形態では、EC50が100μM以上であれば、化合物は弱い相境界特性調節剤として特徴付けられる。いくつかの実施形態では、EC50が10μM以上100μM未満であれば、化合物は中程度の相境界特性調節剤として特徴付けられる。いくつかの実施形態では、EC50が10μM未満であれば、化合物は強い相境界特性調節剤として特徴付けられる。
【0067】
いくつかの実施形態では、化合物またはその一部分の存在下での凝縮体の成分の相境界シフトの存在は、次のうちのいずれか1つまたは複数を示す:(i)化合物またはその一部分は、軽相または濃厚相中の凝縮体の成分と会合して、例えば特異的に結合して、それによって相分離駆動相互作用との競合が生じる、(ii)化合物またはその一部分は、軽相または濃厚相中の凝縮体の成分と会合して、例えば特異的に結合して、それによって相分離駆動相互作用がもたらされる、増幅される、または追加される、及び(iii)化合物またはその一部分は、軽相または濃厚相中の凝縮体の別の成分と会合して、例えば特異的に結合して、それによって相分離駆動相互作用が妨げられるか、または相分離駆動相互作用がもたらされる、増幅される、もしくは追加される。
【0068】
いくつかの実施形態では、化合物またはその一部分の存在下での凝縮体の成分の相境界シフトの非存在(閾値を満たさないことに基づく非存在が含まれる)は、次のうちのいずれか1つまたは複数を示す:(i)化合物またはその一部分は、軽相または濃厚相中の凝縮体の成分と会合しない、例えば特異的に結合しない、(ii)化合物またはその一部分は、相分離駆動相互作用に関与しない部位で凝縮体の成分と会合する、例えば特異的に結合する、及び(iii)化合物またはその一部分は、濃厚相または軽相の特性を実質的に変化させない。
【0069】
本明細書に例示するように、(i)凝縮体に対する化合物またはその一部分の分配特性、(ii)軽相中の凝縮体の成分に対する化合物またはその一部分の結合親和特性、及び(iii)化合物またはその一部分の存在下での凝縮体の成分の相境界特性、の各々に関する情報は、例えば、化合物またはその一部分と凝縮体(またはその成分)との相互作用の1つまたは複数の原因因子などの複雑な情報をもたらすことができる。例えば、いくつかの実施形態では、凝縮体中での化合物またはその一部分の分配の存在は、化合物またはその一部分と凝縮体またはその成分との間の相互作用を駆動する複数の原因因子の結果であり、それによって、観察される化合物またはその一部分の分配が生じる。例えば、化合物またはその一部分と凝縮体またはその成分(軽相中であれ濃厚相中であれ)との間の相互作用は、例えば、次のうちの1つまたは複数によって影響を受ける可能性がある:(1)化合物またはその一部分と凝縮体の成分との間の特異的結合、ここでは、化合物またはその一部分が会合するコンフォメーションは、凝縮体の軽相(例えば、凝縮体の外側)中の場合と濃厚相(例えば、凝縮体の内側)中の場合のいずれにおいても、凝縮体の成分中に存在する、(2)軽相と比較したときの、凝縮体の濃厚相への化合物の溶解性の増大(すなわち、この相互作用は、凝縮体の成分との間の特異的結合によって駆動されない)、(3)化合物と、凝縮体の濃厚相に優勢に存在する1つまたは複数の標的との優先的結合(例えば、凝縮体の濃厚相中にある場合の成分のコンフォメーション、凝縮体の濃厚相中で形成された、新たに形成された結合構造体、及び/または凝縮体中の別の分子の存在)、ならびに(4)反発力、例えば、軽相への化合物の溶解性の減少、または化合物またはその一部分に不都合な軽相の条件。化合物と凝縮体との間の相互作用は、化合物が凝縮体(またはその成分)の相挙動に及ぼす影響にも役割を果たすことがあり、それには、濃厚相の組成、凝縮体の成分の相分離(または相分離の破壊)、凝縮体の成分の飽和濃度、材料特性、凝縮体の存在または非存在、及び凝縮体の液滴形態が含まれる。
【0070】
本明細書に教示されるように、(i)凝縮体に対する化合物もしくはその一部分の分配特性、(ii)軽相中の凝縮体の成分に対する化合物もしくはその一部分の結合親和特性、または(iii)化合物もしくはその一部分の存在下での凝縮体の成分の相境界特性の任意の組み合わせを比較することによって、相互作用情報(例えば、相互作用の原因因子(複数可))を解析することが可能になり、それによって化合物またはその一部分と凝縮体またはその成分との1つまたは複数の相互作用を特定することが可能になり、化合物の性質を解析する(完全にまたは部分的に)ことも可能になる。例えば、
図1に示すように、(i)凝縮体に対する化合物もしくはその一部分の分配特性、(ii)軽相中の凝縮体の成分に対する化合物もしくはその一部分の結合親和特性、または(iii)化合物もしくはその一部分の存在下での凝縮体の成分の相境界特性(相挙動の調節を介して得られるようなもの)からの情報を使用すると、例えば、標的凝縮体への化合物の送達を可能にする化合物の側面(例えば、部分特性)、凝縮体中の化合物と凝縮体の成分との結合及び/または化合物の活性を可能にする化合物の側面、凝縮体の成分の相境界特性に基づいた凝縮体の相挙動(例えば、凝縮体の組成、材料特性、凝縮体内の化学環境など)の調節(その欠如が含まれる)、ならびに化合物の凝縮体への送達及び/または凝縮体に対する活性に加えて凝縮体相挙動の調節、のうちの1つまたは複数の特定が可能になる。
【0071】
いくつかの実施形態では、化合物またはその一部分と凝縮体またはその成分との1つまたは複数の相互作用を特定することは、凝縮体に対する化合物またはその一部分の分配特性と、軽相中の凝縮体の成分に対する化合物またはその一部分の結合親和特性とを比較することに基づいている。
【0072】
いくつかの実施形態では、化合物またはその一部分と凝縮体またはその成分との1つまたは複数の相互作用を特定することは、凝縮体に対する化合物またはその一部分の分配特性と、化合物またはその一部分の存在下での凝縮体の成分の相境界特性、例えば相境界シフトとを比較することに基づいている。
【0073】
いくつかの実施形態では、化合物またはその一部分と凝縮体またはその成分との1つまたは複数の相互作用を特定することは、軽相中の凝縮体の成分に対する化合物またはその一部分の結合親和特性と、化合物またはその一部分の存在下での凝縮体の成分の相境界特性、例えば相境界シフトとを比較することに基づいている。
【0074】
いくつかの実施形態では、化合物またはその一部分と凝縮体またはその成分との1つまたは複数の相互作用を特定することは、凝縮体に対する化合物またはその一部分の分配特性と、軽相中の凝縮体の成分に対する化合物またはその一部分の結合親和特性と、化合物またはその一部分の存在下での凝縮体の成分の相境界特性、例えば相境界シフトとを比較することに基づいている。
【0075】
いくつかの実施形態では、化合物またはその一部分と凝縮体またはその成分との相互作用は、次のうちの1つまたは複数から選択される:(i)濃厚相と比較したときの、化合物またはその一部分と軽相中の凝縮体の成分との優先的会合、(ii)軽相と比較したときの、化合物またはその一部分と濃厚相中の凝縮体の成分との優先的会合、(iii)軽相と比較したときの、凝縮体の濃厚相への化合物またはその一部分の優先的溶解性、(iv)濃厚相と比較したときの、軽相への化合物またはその一部分の優先的溶解性、(v)軽相と比較したときの、化合物またはその一部分と凝縮体の濃厚相中の構造体との優先的会合、(vi)化合物またはその一部分の、凝縮体の成分に対する相分離駆動相互作用と競合する能力、(vii)化合物またはその一部分の、凝縮体の成分に対する相分離駆動相互作用をもたらす能力、(viii)凝縮体の成分と比較したときの、化合物またはその一部分と凝縮体の別の成分との優先的会合、ここでは、化合物またはその一部分と凝縮体の他の成分との優先的会合が、凝縮体の成分に対する相分離駆動相互作用を妨げる、(ix)凝縮体の成分と比較したときの、化合物またはその一部分と凝縮体の別の成分との優先的会合、ここでは、化合物またはその一部分と凝縮体の他の成分との優先的会合が、凝縮体の成分に対する相分離駆動相互作用をもたらす、(x)相分離駆動相互作用に関与する成分の部位と比較したときの、化合物またはその一部分の、相分離駆動相互作用に関与しない成分の部位での優先的会合、及び(xi)化合物またはその一部分と、軽相中及び濃厚相中の両方の凝縮体の成分との実質的に等しい会合。いくつかの実施形態では、濃厚相中の構造体は、凝縮体の別の成分である。いくつかの実施形態では、濃厚相中の構造体は、凝縮体中に形成された新たな結合ポケット(または軽相と比較したときに濃厚相中に優勢に見出される結合ポケット)であり、それには、凝縮体の成分と凝縮体の別の成分との相互作用によって形成されるような、凝縮体の成分内の新たな結合ポケットが含まれる。いくつかの実施形態では、濃厚相中の構造体は、凝縮体の成分の新しい構造(または軽相と比較したときに濃厚相中に優勢に見出される成分の構造)である。いくつかの実施形態では、濃厚相中の構造体は、凝縮体中に形成された好適な微小環境である。
【0076】
いくつかの実施形態では、(i)凝縮体に対する化合物またはその一部分の分配特性、(ii)軽相中の凝縮体の成分に対する化合物またはその一部分の結合親和特性、及び(iii)化合物またはその一部分の存在下での凝縮体の成分の相境界特性のうちの2つ以上を比較することは、凝縮体に対する化合物またはその一部分の分配特性の存在または非存在、軽相中の凝縮体の成分に対する化合物またはその一部分の結合親和特性の存在または非存在、及び/または化合物またはその一部分の存在下での凝縮体の成分の相境界特性、例えば相境界シフトの存在または非存在に基づいた、本明細書に記載の方法によって実行される。
【0077】
例えば、いくつかの実施形態では、凝縮体中への化合物またはその一部分の分配の存在及び軽相中の凝縮体の成分に対する化合物またはその一部分の結合会合の存在は、凝縮体に対する化合物(またはその一部分)の分配特性が、少なくとも部分的に、凝縮体の成分に対する化合物(またはその一部分)の結合会合に基づいていることを示している。いくつかの実施形態では、化合物またはその一部分の存在に起因する凝縮体の成分の相境界特性、例えば相境界シフトの存在は、化合物またはその一部分が、凝縮体の成分の相境界を調節する(例えば、凝縮体を形成するための成分の飽和濃度を調節する)ことをさらに示している。いくつかの実施形態では、化合物またはその一部分の存在に起因する凝縮体の成分の相境界特性、例えば相境界シフトの非存在は、化合物またはその一部分が、凝縮体の成分の相境界を実質的に調節しないことをさらに示している。
【0078】
いくつかの実施形態では、凝縮体中への化合物またはその一部分の分配の存在及び軽相中の凝縮体の成分に対する化合物またはその一部分の結合会合の非存在は、凝縮体に対する化合物(またはその一部分)の分配特性が、少なくとも部分的に、凝縮体の濃厚相への化合物(またはその一部分)の溶解性が軽相と比較したときに増大していること、及び/または凝縮体に関連する構造体(例えば、凝縮体の別の成分)への化合物(またはその一部分)の結合に基づいていることを示している。いくつかの実施形態では、化合物またはその一部分の存在に起因する凝縮体の成分の相境界特性、例えば相境界シフトの存在は、化合物またはその一部分が凝縮体の成分の相境界を調節することをさらに示している。いくつかの実施形態では、化合物またはその一部分の存在に起因する凝縮体の成分の相境界特性、例えば相境界シフトの非存在は、化合物またはその一部分が、凝縮体の成分の相境界を実質的に調節しないことをさらに示している。
【0079】
いくつかの実施形態では、凝縮体中への化合物またはその一部分の分配の非存在及び軽相中の凝縮体の成分に対する化合物またはその一部分の結合会合の存在は、凝縮体に対する化合物(またはその一部分)の分配特性が、少なくとも部分的に、化合物及び凝縮体の成分が軽相中にある場合と比較したときの濃厚相中の凝縮体の成分と結合する化合物の能力の減少に基づいていることを示している。いくつかの実施形態では、化合物またはその一部分の存在に起因する凝縮体の成分の相境界特性、例えば相境界シフトの存在は、化合物またはその一部分が凝縮体の成分の相境界を調節することをさらに示している。いくつかの実施形態では、化合物またはその一部分の存在に起因する凝縮体の成分の相境界特性、例えば相境界シフトの非存在は、化合物またはその一部分が、凝縮体の成分の相境界を実質的に調節しないことをさらに示している。
【0080】
いくつかの実施形態では、凝縮体中への化合物またはその一部分の分配の非存在及び軽相中の凝縮体の成分に対する化合物またはその一部分の結合会合の非存在は、凝縮体の化合物(またはその一部分)の分配特性が、少なくとも部分的に、凝縮体への化合物の溶解性が実質的に増大しないこと、及び/または凝縮体に関連する構造体への凝縮体の成分の実質的な結合が存在しないことに基づいていることを示している。いくつかの実施形態では、化合物またはその一部分の存在に起因する凝縮体の成分の相境界特性、例えば相境界シフトの存在は、化合物またはその一部分が凝縮体の成分の相境界を調節することをさらに示している。いくつかの実施形態では、化合物またはその一部分の存在に起因する凝縮体の成分の相境界特性、例えば相境界シフトの非存在は、化合物またはその一部分が、凝縮体の成分の相境界を実質的に調節しないことをさらに示している。
【0081】
いくつかの実施形態では、(i)凝縮体に対する化合物またはその一部分の分配特性、(ii)軽相中の凝縮体の成分に対する化合物またはその一部分の結合親和特性、及び(iii)化合物またはその一部分の存在下での凝縮体の成分の相境界特性のうちの2つ以上を比較することは、凝縮体に対する化合物もしくはその一部分の分配特性、軽相中の凝縮体の成分に対する化合物もしくはその一部分の結合親和特性、及び/または化合物もしくはその一部分の存在下での凝縮体の成分の相境界特性、例えば相境界シフトのうちの2つ以上の座標値をプロットすることに基づいた、本明細書に記載の方法によって実行される。例えば、
図2に示すように、化合物またはその一部分の存在下で凝縮体のタンパク質成分を分配することによって反映される凝縮体のタンパク質成分の相境界特性(PCタンパク質)に対する、凝縮体に対する化合物またはその一部分の分配特性(PC化合物)のグラフから、化合物またはその一部分と凝縮体またはそのタンパク質成分との1つまたは複数の相互作用を示す関係性が明らかになる。いくつかの実施形態では、
図2に示すように、何の選好もなく軽相及び濃厚相中で凝縮体のタンパク質成分に結合する化合物は、凝縮体中へのタンパク質成分の分配に比例する量で凝縮体中に分配されることとなる(この相関関係を表す例示的な破線を参照されたい)。いくつかの実施形態では、PC化合物値の増加は、化合物またはその一部分が、軽相と比較したときに濃厚相中の凝縮体のタンパク質成分に優先的に結合することを示している。いくつかの実施形態では、PC化合物値の減少は、化合物またはその一部分が、濃厚相と比較したときに軽相中の凝縮体のタンパク質成分に優先的に結合することを示している。
【0082】
いくつかの実施形態では、グラフは、凝縮体に対する化合物またはその一部分の分配特性に対する、軽相中の凝縮体の成分に対する化合物またはその一部分の結合親和特性(例えば、Kd)を含む。いくつかの実施形態では、凝縮体の濃厚相中への分配が、予め組織化された結合部位への結合によってのみ駆動され、そのような結合が軽相中と濃厚相中の両方で一致している化合物(試験化合物及び/または参照化合物など)についてのグラフ上の座標は、導出できる相関関係(線形または非線形相関関係など)を生じることとなる。いくつかの実施形態では、この相関関係の勾配または形状は、異なる化学クラスからの化合物間で異なり得る。いくつかの実施形態では、試験化合物及び参照化合物は、同じ化学クラスに属する。いくつかの実施形態では、ある種の参照化合物は、試験化合物と比較したときに異なる化学クラスに属する。いくつかの実施形態では、化学系列内で、濃厚相中への分配が溶解性の差によって影響を受ける化合物は、化学系列内の他の類似体または誘導体よりグラフ上で高くなる場合または低くなる場合があり、よって観察された相関関係より上または下になることが想定される。いくつかの実施形態では、化学系列のメンバーのすべてではなくいくつかが、軽相中及び濃厚相中で異なる固有親和性を有する別個の結合部位に結合するならば、これらの化合物も、その化学系列についての相関関係よりグラフ上で高くなる場合または低くなる場合があり、軽相中及び濃厚相中での異なる溶解性の差によって異なるものと区別することができない。いくつかの実施形態では、化学系列のすべてのメンバーの分配が、標的凝縮体の成分の個別の結合部位の結合についてのKdの相違及び/または溶解性の差によって同程度に影響を受ける場合、すべての化合物は、グラフ上で相関関係の範囲内であることが予想されるが、その曲線の形状/勾配/特徴は他の化学系列についての曲線と異なる場合があり、それによって濃厚相の分配に影響を及ぼす化合物の有用な構造要素/部分を経験的に発見することが可能になる。
【0083】
いくつかの実施形態では、1つまたは複数の相互作用は、(i)凝縮体に対する化合物またはその一部分の分配特性、(ii)軽相中の凝縮体の成分に対する化合物またはその一部分の結合親和特性、及び(iii)化合物またはその一部分の存在下での凝縮体の成分の相境界特性、の任意の組み合わせに関する情報を、参照から導出された相関関係と比較することに基づいて決定される。いくつかの実施形態では、比較は、試験化合物に関する情報が相関関係と比較したときに異常値であるかどうかを決定することを含む。いくつかの実施形態では、相関関係は、複数の参照化合物の対応する情報から導出される。いくつかの実施形態では、本方法は、四分位数間範囲(IQR)技法に基づいて異常値を決定することを含む。いくつかの実施形態では、本方法は、主成分分析(PCA)に基づいて異常値を決定することを含む。
【0084】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法に基づいて化合物またはその一部分と凝縮体またはその成分との1つまたは複数の相互作用を特定することは、参照と比較することを含む。いくつかの実施形態では、参照は、参照化合物を使用して得られた情報を含み、該情報は、凝縮体に対する参照化合物の分配特性、軽相中の凝縮体の成分に対する参照化合物の結合親和特性、及び参照化合物の存在下での凝縮体の成分の相境界特性のうちの1つまたは複数に関する。いくつかの実施形態では、参照は、複数の参照化合物を使用して得られた情報を含む。いくつかの実施形態では、複数の参照化合物は、試験化合物と同じ化学クラスの化合物を含む。いくつかの実施形態では、複数の参照化合物は、試験化合物と異なる化学クラスの化合物を含む。いくつかの実施形態では、複数の参照化合物は、少なくともおよそ5つ、例えば、少なくともおよそ、10、15、20、25、30、35、40、45、50、75、100、125、150、200、250、300、400、500、100、5,000、10,000、15,000、または20,000のいずれかの参照化合物を含む。
【0085】
いくつかの実施形態では、本方法は、化合物と凝縮体の成分との結合様式を得ることをさらに含む。いくつかの実施形態では、結合様式は、凝縮体に対する化合物またはその一部分の分配特性、及び化合物またはその一部分の存在下での凝縮体の成分の相境界特性(例えば、相境界シフト)に関する情報から導出される。いくつかの実施形態では、結合様式は、軽相中の凝縮体の成分に対する化合物またはその一部分の結合親和特性(例えば、Kd)、及び化合物またはその一部分の存在下での凝縮成分の相境界特性(例えば、相境界シフト)に関する情報から導出される。いくつかの実施形態では、結合様式は、ステッカー及び/またはリンカー、価数、または強化された溶解性を介する直接結合に基づいている。いくつかの実施形態では、結合様式は、多相リンケージ形式法を介して決定される。
【0086】
A.分配特性を得ること
いくつかの態様では、本明細書で提供するのは、凝縮体、例えば標的凝縮体または参照凝縮体に対する化合物、例えば試験化合物または参照化合物の分配特性を得る、例えば、決定または測定するための技法である。いくつかの実施形態では、分配特性は、以前の実験または公表された文献値から得られたものなどの既知の値である。いくつかの実施形態では、分配特性は、例えば本明細書に開示される方法を使用して、測定される。
【0087】
いくつかの実施形態では、凝縮体に対する化合物またはその一部分の分配特性を得ること、例えば決定することは、凝縮体中の化合物またはその一部分の量を測定することを含む。いくつかの実施形態では、凝縮体中の化合物またはその一部分の量を測定することは、凝縮体外の溶液中、例えば軽相中の化合物またはその一部分の量を決定すること、例えば測定することを介して決定される。
【0088】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供するのは、凝縮体に対する化合物またはその一部分の分配特性を得る、例えば、決定または測定するための方法である。いくつかの実施形態では、凝縮体に対する化合物またはその一部分の分配特性は、軽相中の化合物またはその一部分に対する濃厚相中の化合物またはその一部分の比率に基づいている。
【0089】
いくつかの実施形態では、凝縮体に対する化合物またはその一部分の分配特性を測定することは、凝縮体中の化合物またはその一部分の量を測定することを含む。いくつかの実施形態では、凝縮体中の化合物またはその一部分の量を決定することは、凝縮体に対する化合物またはその一部分の分配特性を決定する。いくつかの実施形態では、凝縮体中の化合物またはその一部分の量を測定することは、系内及び凝縮体の外側、例えば凝縮体外の溶液中の化合物またはその一部分の量を測定することを介して決定される。いくつかの実施形態では、化合物またはその一部分の系内の量は既知であり、凝縮体の外側、例えば凝縮体外の溶液中の化合物またはその一部分の量を決定すると、例えば測定すると、凝縮体中に分配された化合物の量が得られる。
【0090】
化合物の量を決定するための技法は既知であり、本明細書に記載の方法を容易にするために利用することができる。いくつかの実施形態では、化合物の量を決定することは、化合物を定量的に検出することを含む。いくつかの実施形態では、化合物の量を決定することは、化合物に会合された化合物標識を定量的に検出することを含む。いくつかの実施形態では、化合物の量を決定することは、化合物の活性を検出し、それによって、検出された活性に基づいて化合物の量を決定することを含む。いくつかの実施形態では、化合物の量は、質量分析、液体クロマトグラフィー、及び/または紫外-可視分光測光によって決定される。いくつかの実施形態では、化合物の量は、蛍光顕微鏡分析によって決定される。いくつかの実施形態では、標準曲線を使用して、化合物の量を決定するのを助けてもよい。代替的にまたは追加的に、化合物の量を、参照化合物などの参照と比較してもよい。いくつかの実施形態では、参照化合物は化合物標識である。
【0091】
いくつかの態様では、凝縮体中の化合物、例えば試験化合物または参照化合物の量を決定することを含む本明細書に記載の方法は、凝縮体中の化合物の量を決定するための直接的及び間接的な技法を包含することを想定している。いくつかの実施形態では、凝縮体中の化合物の量は、直接的に決定される。いくつかの実施形態では、凝縮体中の化合物の量は、間接的に決定される。いくつかの実施形態では、凝縮体中の化合物の量は、凝縮体に会合されていない化合物の量、例えば、軽相(例えば、凝縮体外の溶液)中の化合物の量を決定することを介して決定される。いくつかの実施形態では、凝縮体中の化合物の量は、レポーター化合物の量を決定することを介して決定される。いくつかの実施形態では、レポーター化合物は凝縮体と会合している。いくつかの実施形態では、レポーター化合物は凝縮体と会合していない。
【0092】
いくつかの実施形態では、凝縮体中の化合物またはその一部分の量は、他の溶液中の化合物またはその一部分の量、あるいは凝縮体及び/またはその成分を含む系(例えば、同量の化合物及び成分を与えられるが、凝縮体の形成に供されない系)に添加された量と比較することができる。したがって、いくつかの実施形態では、本方法は、凝縮体中の化合物もしくはその一部分の量を、系に添加された量、及び/または凝縮体外の溶液中の化合物もしくはその一部分の量、及び/または細胞中の化合物もしくはその一部分の量、及び/または別の凝縮体中の化合物の量と比較することを含む。いくつかの実施形態では、本方法は、全系から枯渇した化合物またはその一部分の量の比率またはパーセンテージを決定することを含む。
【0093】
いくつかの実施形態では、本方法は、凝縮体中の化合物の量を、凝縮体の1つまたは複数の成分の量と比較することを含む。いくつかの実施形態では、比較することは、凝縮体中の化合物の量及び凝縮体の1つまたは複数の成分の量の比率またはパーセンテージを決定することを含む。いくつかの実施形態では、本方法は、凝縮体中の凝縮体の1つまたは複数の成分の量を決定することを含む。
【0094】
凝縮体を形成するための技法は既知であり、本明細書に記載の方法を容易にするために利用することができる。例えば、凝縮体は、凝縮体の成分(複数可)を含む組成物の温度を変えることによって、例えば、組成物をより低いもしくはより高い温度に曝すことによって、組成物の塩含有量を変えることによって、例えば、組成物中の塩を希釈することもしくは組成物に塩を添加することによって、前駆体高分子の濃度を増大させることによって、例えば、組成物に核酸、例えば、RNAを添加することによって、組成物中の緩衝液を添加もしくは変更することによって、組成物のイオン強度を変えることによって、pHを変えることによって、温度を調整することによって、ストレス要因、例えばヒ酸塩を添加することによって、凝縮体の形成を駆動することが既知の凝縮体の成分を導入するもしくは発現させることによって、またはクラウディング剤、例えば、PEGもしくはデキストランを添加することによって形成することができる。凝縮体を形成するいくつかの例示的な方法は、Alberti et al.,J Mol Biol,430(23),2018,4806-4820(参照により本明細書に組み込まれる)にも開示されている。
【0095】
いくつかの実施形態では、化合物またはその一部分の量を決定する方法は、質量分析に基づく技法の使用を含む(例えば、軽相中の化合物の量を決定するため)。いくつかの実施形態では、化合物またはその一部分の量を決定する方法は、液体クロマトグラフィー(例えば、HPLC)、顕微鏡分析(蛍光顕微鏡分析または共焦点顕微鏡分析法など)、定量的画像解析、定量的蛍光顕微鏡分析及び分光、核磁気共鳴分光、ラマン分光、及び/または紫外-可視分光測光のうちの任意の1つまたは複数の使用を含む。当業者であれば、凝縮体に対する化合物またはその一部分の分配特性を決定するための技法の使用を可能にするために、系及びその成分を選択することができることを容易に理解するであろう。例えば、技法が蛍光顕微鏡分析法を含む場合、化合物もしくはその一部分及び/または凝縮体もしくはその成分を、蛍光顕微鏡分析法によって検出し、定量化することができる。
【0096】
いくつかの実施形態では、本方法は、化合物またはその一部分と、凝縮体及び/またはその成分ならびに凝縮体外の溶液を含む組成物とを混合することを含む。いくつかの実施形態では、本方法は、化合物またはその一部分を、凝縮体及び/またはその成分ならびに凝縮体外の溶液を含む組成物に添加することを含む。いくつかの実施形態では、本方法は、凝縮体の形成を引き起こすことを含む。いくつかの実施形態では、本方法は、化合物またはその一部分と凝縮体の成分を含む組成物とを混合すること、及び次いで凝縮体形成条件に組成物を供することを含む。いくつかの実施形態では、本方法は、化合物またはその一部分を凝縮体の成分を含む組成物に混合すること、及び次いで凝縮体の形成を引き起こすことを含む。いくつかの実施形態では、凝縮体の成分及び/または凝縮体を含む組成物は、化合物またはその一部分と混合する前に、凝縮体形成条件に供される。いくつかの実施形態では、凝縮体の成分及び/または凝縮体を含む組成物は、化合物またはその一部分と混合した後に、凝縮体形成条件に供される。
【0097】
いくつかの実施形態では、凝縮体及び/またはその成分を含む組成物は、細胞を含む。いくつかの実施形態では、本方法は、化合物またはその一部分を細胞の内部に送達することを含む。いくつかの実施形態では、本方法は、化合物またはその一部分を細胞に入り込ませることを含む。
【0098】
いくつかの実施形態では、本方法は、例えば、凝縮体中及び/または凝縮体外の溶液中の化合物またはその一部分を定量化することを目的として、凝縮体を凝縮体外の溶液から分離することを含む。例えば、無細胞組成物では、凝縮体は、例えば遠心分離法を使用して、凝縮体外の溶液から沈殿させるまたは分離することができる。したがって、いくつかの実施形態では、凝縮体を凝縮体外の溶液から分離することは、沈殿物から上清を分離することを含む。いくつかの実施形態では、本方法は、組成物を遠心分離することを含む。いくつかの実施形態では、本方法は、凝縮体を沈殿させることを含む。
【0099】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供する方法は、凝縮体に対する化合物またはその一部分のうちの1つまたは複数の分配特性を測定するために、2つ以上の化合物を、凝縮体及び/またはその成分ならびに凝縮体外の溶液を含む組成物に添加することを含む。いくつかの実施形態では、2つ以上の試験化合物は、順次または同時に添加される。
【0100】
いくつかの実施形態では、凝縮体に対する化合物またはその一部分の分配特性を得ること、例えば決定することは、凝縮体の存在及び/または形成に起因して系から枯渇した化合物またはその一部分の量を測定することを含む。いくつかの実施形態では、本方法は、凝縮体外の溶液中にあり、軽相中の凝縮体の成分に会合していない化合物またはその一部分の量を決定することを含む。いくつかの実施形態では、本方法は、凝縮体と、例えば凝縮体中で、会合している化合物またはその一部分の量を決定することを含む。いくつかの実施形態では、本方法は、軽相中の凝縮体の成分と会合している化合物またはその一部分の量を決定することを含む。いくつかの実施形態では、凝縮体の存在及び/または形成に起因して系から枯渇した化合物またはその一部分の量は、凝縮体関連特性、例えば、凝縮体に対する化合物の分配特性を決定するために使用される。
【0101】
いくつかの実施形態では、本方法は、凝縮体外の溶液またはその一部分からの化合物またはその一部分の質量分析(MS)シグナルと、参照対照またはその一部分からの化合物またはその一部分のMSシグナルとを比較すること、例えば、凝縮体外の溶液またはその一部分からの化合物またはその一部分のMSシグナルと、参照対照またはその一部分からの化合物またはその一部分のMSシグナルとの比率を介して比較することを含む。いくつかの実施形態では、凝縮体外の溶液からの化合物またはその一部分のMSシグナルと、参照対照からの化合物またはその一部分のMSシグナルとの比率は、枯渇値を表す。いくつかの実施形態では、枯渇値は、凝縮体の存在及び/または形成に起因して系から枯渇した化合物またはその一部分の量を表す。いくつかの実施形態では、本方法は、質量分析法を使用して、凝縮体外の溶液またはその一部分中の化合物またはその一部分のMSイオンシグナルを得ること、例えば測定することをさらに含む。いくつかの実施形態では、本方法は、質量分析法を使用して、参照対照またはその一部分中の化合物またはその一部分のMSイオンシグナルを得ること、例えば測定することをさらに含む。いくつかの実施形態では、本方法は、化合物またはその一部分と、凝縮体及び凝縮体外の溶液を含む組成物とを合わせることをさらに含む。いくつかの実施形態では、本方法は、化合物またはその一部分の存在下で凝縮体の形成を引き起こして凝縮体及び凝縮体外の溶液を含む組成物を得ることをさらに含む。いくつかの実施形態では、本方法は、凝縮体及び凝縮体外の溶液を含む組成物中の凝縮体を、例えば、組成物中の凝縮体のペレット化または粒子分離法を介して分離することをさらに含む。いくつかの実施形態では、本方法は、参照対照を得ること、例えば生成することをさらに含む。
【0102】
いくつかの実施形態では、凝縮体及び凝縮体外の溶液、またはその前駆体、例えば高分子を含む組成物に添加される化合物またはその一部分の量は、凝縮体外の溶液からの化合物またはその一部分の全量の比較的少ない枯渇を決定することができる(例えば、凝縮体外中の化合物の量の測定値と参照対照中の化合物の量の測定値とを比較することによって決定される)ような量に基づいている。いくつかの実施形態では、凝縮体及び凝縮体外の溶液を含む組成物に添加される化合物またはその一部分の量は、組成物中の凝縮体及び/またはその1つもしくは複数の成分、例えば高分子の量に基づいている。いくつかの実施形態では、凝縮体及び凝縮体外の溶液を含む組成物に添加される化合物またはその一部分の量は、凝縮体の化合物許容量に基づいている。いくつかの実施形態では、化合物またはその一部分の量は、およそ100μM以下、例えばおよそ、90μM、80μM、70μM、60μM、50μM、40μM、30μM、20μM、10μM、9μM、8μM、7μM、6μM、5μM、4μM、3μM、2μM、1.5μM、1μM以下のいずれかである。いくつかの実施形態では、化合物またはその一部分の量は、およそ1μM以下、例えばおよそ、900nM以下、800nM以下、700nM以下、600nM以下、500nM以下、450nM以下、400nM以下、350nM以下、300nM以下、250nM以下、200nM以下、150nM以下、125nM以下、100nM以下、90nM以下、80nM以下、70nM以下、60nM以下、50nM以下、40nM以下、30nM以下、20nM以下、10nM以下、9nM以下、8nM以下、7nM以下、6nM以下、5nM以下、4nM以下、3nM以下、2nM以下、または1nM以下のいずれかである。いくつかの実施形態では、化合物またはその一部分の下限は、化合物またはその一部分の量を測定するために使用される分析方法に基づいている。いくつかの実施形態では、組成物中の凝縮体の高分子の量は、およそ1nM~およそ100μMの間、例えば、およそ1μM~およそ10μMの間であり、化合物またはその一部分は、およそ100μM以下、例えばおよそ、90μM、80μM、70μM、60μM、50μM、40μM、30μM、20μM、10μM、9μM、8μM、7μM、6μM、5μM、4μM、3μM、2μM、1.5μM、1μM以下のいずれか、例えばおよそ、900nM以下、800nM以下、700nM以下、600nM以下、500nM以下、450nM以下、400nM以下、350nM以下、300nM以下、250nM以下、200nM以下、150nM以下、125nM以下、100nM以下、90nM以下、80nM以下、70nM以下、60nM以下、50nM以下、40nM以下、30nM以下、20nM以下、10nM以下、9nM以下、8nM以下、7nM以下、6nM以下、5nM以下、4nM以下、3nM以下、2nM以下、または1nM以下のいずれかである。
【0103】
いくつかの実施形態では、本方法は、参照対照の使用及び/または参照対照を調製する方法を含む。本明細書に記載の参照対照は、凝縮体の存在及び/または形成に起因して系から枯渇した化合物またはその一部分の量を決定するのに有用な参照測定値を提供する。いくつかの実施形態では、ここでは、組成物は、(a)ある量の凝縮体、(b)凝縮体外の溶液、(c)ある量の、例えば濃度の、凝縮体外の溶液中の凝縮体の高分子、及び(d)ある量の、例えばある濃度の、化合物またはその一部分を組成物中に含み、その化合物またはその一部分は、(i)凝縮体と会合し、凝縮体中に含まれているある量の化合物またはその一部分、及び(ii)凝縮体外の溶液中のある量の、例えばある濃度の、化合物またはその一部分を含み、参照対照は、その量の、例えばその濃度の、凝縮体外の溶液中の凝縮体の高分子、及びその量の、例えばその濃度の、化合物またはその一部分を組成物中に含む。いくつかの実施形態では、本方法は、凝縮体及び凝縮体外の溶液を含む組成物からの、凝縮体外の溶液またはその一部分中の凝縮体の高分子の量、例えば濃度を測定することを含む。
【0104】
いくつかの実施形態では、参照対照は、組成物が凝縮体のペレット化に供された後に凝縮体外の溶液中に存在する高分子の量に基づいた、ある量の凝縮体の高分子を含む。いくつかの実施形態では、参照対照は、組成物が凝縮体のペレット化に供された後の凝縮体外の溶液中の高分子の濃度と同じ濃度の高分子を有する。いくつかの実施形態では、参照対照は、化合物またはその一部分を、凝縮体及び凝縮体外の溶液を含む組成物と合わせたものと同じ濃度で含む。いくつかの実施形態では、参照対照は、凝縮体を実質的に含まない。いくつかの実施形態では、本方法は、参照対象中の化合物またはその一部分の量を決定することを含む。いくつかの実施形態では、参照対照中の化合物またはその一部分の量を決定することは、質量分析に基づく技法を使用して、参照対照またはその一部分中の化合物またはその一部分の量を測定することを含む。
【0105】
種々の質量分析に基づく技法が、本明細書に記載の方法に適している。いくつかの実施形態では、質量分析に基づく技法は、1つまたは複数の化合物の1つまたは複数のイオン種のMSシグナルを測定することを含む。いくつかの実施形態では、MSシグナルは、化合物またはその一部分の1つまたは複数のイオン種のものであり、例えば、化合物またはその一部分のイオンの1つまたは複数の電荷状態である。いくつかの実施形態では、MSシグナルは、質量-電荷(m/z)測定から導出される。いくつかの実施形態では、MSシグナルはイオン化強度である。いくつかの実施形態では、MSシグナルはピーク高さである。いくつかの実施形態では、MSシグナルは、ピーク面積、例えば、MSイオンシグナルに対応するシグナルの積分である。いくつかの実施形態では、MSシグナルは、ピーク体積、例えば、MSイオンシグナルに対応するシグナルの積分である。いくつかの実施形態では、MSシグナルは、化合物またはその一部分のイオンの測定シグナルの累積測定値である。いくつかの実施形態では、質量分析に基づく技法は、液体クロマトグラフィー/質量分析(LC/MS)法、液体クロマトグラフィー/タンデム質量分析(LC/MS)法、及び/または直接試料導入法(例えば、直接噴霧)を含む。いくつかの実施形態では、質量分析に基づく技法は、ガスクロマトグラフィー/質量分析(GC/MS)を含む。いくつかの実施形態では、質量分析に基づく技法は、データ依存型取得、データ非依存型取得、選択反応モニタリング(SRM)、及び多重反応モニタリング(MRM)から選択される取得法を含む。
【0106】
本出願によって企図される液体クロマトグラフィー法は、質量分析法に適合した、高分子及び/または化合物もしくはその一部分を分離するための方法を含む。いくつかの実施形態では、液体クロマトグラフィー法は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)法を含む。いくつかの実施形態では、液体クロマトグラフィー法は、高流量液体クロマトグラフィー法を含む。いくつかの実施形態では、液体クロマトグラフィー法は、低流量液体クロマトグラフィー法、例えば、マイクロ流量液体クロマトグラフィー法またはナノ流量液体クロマトグラフィー法を含む。いくつかの実施形態では、液体クロマトグラフィー法は、質量分析計と連結されたオンライン液体クロマトグラフィー法を含む。いくつかの実施形態では、キャピラリー電気泳動(CE)法、またはエレクトロスプレーもしくはMALDI法を使用して、試料を質量分析計に導入してもよい。いくつかの実施形態では、直接試料導入法を使用して、試料を質量分析計に導入してもよい。いくつかの実施形態では、質量分析法はイオン化法を含む。本出願によって企図されるイオン化法は、高分子及び/または化合物もしくはその一部分を帯電させることができる技法を含む。いくつかの実施形態では、イオン化法はエレクトロスプレーイオン化である。いくつかの実施形態では、イオン化法はナノエレクトロスプレーイオン化である。いくつかの実施形態では、イオン化法は大気圧化学イオン化である。いくつかの実施形態では、イオン化法は大気圧光イオン化である。いくつかの実施形態では、イオン化法は、マトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)である。いくつかの実施形態では、質量分析法は、エレクトロスプレーイオン化、ナノエレクトロスプレーイオン化、またはマトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)法を含む。
【0107】
オンライン液体クロマトグラフィー法に連結することができる、本出願によって企図される質量分析計には、高分解能質量分析計及び低分解能質量分析計が含まれる。よって、いくつかの実施形態では、質量分析計は、飛行時間型(TOF)質量分析計である。いくつかの実施形態では、質量分析計は、四重極飛行時間型(Q-TOF)質量分析計である。いくつかの実施形態では、質量分析計は、四重極イオントラップ飛行時間型(QIT-TOF)質量分析計である。いくつかの実施形態では、質量分析計は、イオントラップである。いくつかの実施形態では、質量分析計は、シングル四重極である。いくつかの実施形態では、質量分析計は、トリプル四重極(QQQ)である。いくつかの実施形態では、質量分析計は、オービトラップである。いくつかの実施形態では、質量分析計は、四重極オービトラップである。いくつかの実施形態では、質量分析計は、フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴(FT)質量分析計である。いくつかの実施形態では、質量分析計は、四重極フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴(Q-FT)質量分析計である。いくつかの実施形態では、質量分析法は、陽イオンモードを含む。いくつかの実施形態では、質量分析法は、陰イオンモードを含む。いくつかの実施形態では、質量分析法は、飛行時間型(TOF)質量分析法を含む。いくつかの実施形態では、質量分析法は、四重極飛行時間型(Q-TOF)質量分析法を含む。いくつかの実施形態では、質量分析法は、イオン移動度質量分析法を含む。いくつかの実施形態では、低分解能質量分析法、例えばイオントラップ、またはシングルもしくはトリプル四重極手法が適切である。
【0108】
いくつかの実施形態では、質量分析に基づく技法は、高分子及び/または化合物もしくはその一部分の得られたMSシグナルを処理することを含む。いくつかの実施形態では、質量分析に基づく技法は、ピーク検出を含む。いくつかの実施形態では、質量分析に基づく技法は、イオン化強度を決定することを含む。いくつかの実施形態では、質量分析に基づく技法は、ピーク高さを決定することを含む。いくつかの実施形態では、質量分析に基づく技法は、ピーク面積を決定することを含む。いくつかの実施形態では、質量分析に基づく技法は、ピーク値を決定することを含む。
【0109】
いくつかの実施形態では、質量分析に基づく技法は、化合物またはその一部分を特定することを含む。
【0110】
よって、例えば、いくつかの実施形態では、凝縮体中の化合物またはその一部分の分配特性を決定する方法であって、凝縮体外の溶液からの化合物またはその一部分のイオンのMSシグナルと、参照対照からの化合物またはその一部分のイオンのMSシグナルとを比較すること、それによって凝縮体中の化合物またはその一部分の分配特性を決定することを含む方法が提供される。いくつかの実施形態では、凝縮体中の化合物またはその一部分の分配特性を決定する方法は、(a)質量分析法を使用して、凝縮体外の溶液またはその一部分中の化合物またはその一部分のMSシグナルを得ること、例えば測定すること、(b)質量分析法を使用して、参照対照またはその一部分中の化合物またはその一部分のMSイオンシグナルを得ること、例えば測定すること、及び(c)凝縮体外の溶液からの化合物またはその一部分のイオンのMSシグナルと、参照対照からの化合物またはその一部分のイオンのMSシグナルとを比較すること、それによって凝縮体中の化合物またはその一部分の分配特性を決定することを含む。
【0111】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供するのは、小分子化合物またはその一部分(例えば、1,000Da以下であり、及び/またはリピンスキーのルールオブファイブを満たす治療用小分子)の凝縮体関連特性を決定する方法であって、凝集体の存在、形成、及び/または調節に起因して凝縮体外の溶液から枯渇した小分子またはその一部分の量を決定すること(枯渇の欠乏が存在しないことを決定することが含まれる)を含む方法である。いくつかの実施形態では、凝縮体中の小分子化合物またはその一部分の分配特性を決定する方法であって、凝縮体外の溶液からの小分子化合物またはその一部分のイオンのMSシグナルと、参照対照からの小分子化合物またはその一部分のイオンのMSシグナルとを比較すること、それによって凝縮体中の小分子化合物またはその一部分の分配特性を決定することを含む方法が提供される。いくつかの実施形態では、凝縮体中の小分子化合物またはその一部分の分配特性を決定する方法は、(a)質量分析法を使用して、凝縮体外の溶液またはその一部分中の小分子化合物またはその一部分のMSシグナルを得ること、例えば測定すること、(b)質量分析法を使用して、参照対照またはその一部分中の小分子化合物またはその一部分のMSイオンシグナルを得ること、例えば測定すること、及び(c)凝縮体外の溶液からの小分子化合物またはその一部分のイオンのMSシグナルと、参照対照からの小分子化合物またはその一部分のイオンのMSシグナルとを比較すること、それによって凝縮体中の小分子化合物またはその一部分の分配特性を決定することを含む。
【0112】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供するのは、治療用化合物(例えば、外因性化合物、小分子、ポリペプチド、オリゴヌクレオチド、核酸、抗体もしくはその断片、細胞培養で生成された化合物を含めた合成的に生成された化合物、または凝縮体前駆体高分子ではない化合物のうちのいずれか、あるいはそれらのうちのいずれかの組み合わせ)の凝縮体関連特性を決定する方法であって、凝集体の存在、形成、及び/または調節に起因して凝縮体外の溶液から枯渇した治療用化合物またはその一部分の量を決定すること(枯渇の欠乏が存在しないことを決定することが含まれる)を含む方法である。いくつかの実施形態では、凝縮体中の治療用化合物の分配特性を決定する方法であって、凝縮体外の溶液からの治療用化合物またはその一部分のイオンのMSシグナルと、参照対照からの治療用化合物またはその一部分のイオンのMSシグナルとを比較すること、それによって凝縮体中の治療用化合物またはその一部分の分配特性を決定することを含む方法が提供される。いくつかの実施形態では、凝縮体中の治療用化合物またはその一部分の分配特性を決定する方法は、(a)質量分析法を使用して、凝縮体外の溶液またはその一部分中の治療用化合物またはその一部分のMSシグナルを得ること、例えば測定すること、(b)質量分析法を使用して、参照対照またはその一部分中の治療用化合物またはその一部分のMSイオンシグナルを得ること、例えば測定すること、及び(c)凝縮体外の溶液からの治療用化合物またはその一部分のイオンのMSシグナルと、参照対照からの治療用化合物またはその一部分のイオンのMSシグナルとを比較すること、それによって凝縮体中の治療用化合物またはその一部分の分配特性を決定することを含む。
【0113】
いくつかの実施形態では、凝縮体中の化合物またはその一部分の分配特性を決定する方法であって、(a)化合物またはその一部分と、凝縮体及び凝縮体外の溶液を含むまたはそれらの形成に供される組成物とを合わせること、(b)参照対照を得ること、例えば調製すること、(c)質量分析法を使用して、凝縮体外の溶液またはその一部分中の化合物またはその一部分のMSシグナルを測定すること、(d)質量分析法を使用して、参照対照またはその一部分中の化合物またはその一部分のMSシグナルを測定すること、(e)凝縮体外の溶液からの化合物またはその一部分のMSシグナルと、参照対照からの化合物またはその一部分のMSシグナルとを比較すること、それによって凝縮体中の化合物またはその一部分の分配特性を決定することを含む、方法。いくつかの実施形態では、本方法は、(a)と(c)の間に、凝縮体形成条件に組成物を供して、化合物の存在下で凝縮体及び凝縮体外の溶液を形成するステップをさらに含む。
【0114】
いくつかの実施形態では、凝縮体中の化合物またはその一部分の分配特性を決定する方法であって、(a)化合物またはその一部分と、凝縮体及び凝縮体外の溶液を含むまたはそれらの形成に供される組成物とを合わせること、(b)参照対照を得ること、例えば調製すること、(c)質量分析法を使用して、凝縮体外の溶液またはその一部分中の化合物またはその一部分のMSシグナルを測定すること、(d)質量分析法を使用して、参照対照またはその一部分中の化合物またはその一部分のMSシグナルを測定すること、(e)凝縮体外の溶液からの化合物またはその一部分のMSシグナルと、参照対照からの化合物またはその一部分のMSシグナルとを比較すること、それによって凝縮体中の化合物またはその一部分の分配特性を決定することを含む方法。いくつかの実施形態では、本方法は、(a)と(c)の間に、凝縮体形成条件に組成物を供して、化合物の存在下で凝縮体及び凝縮体外の溶液を形成するステップをさらに含む。
【0115】
いくつかの実施形態では、凝縮体中の化合物またはその一部分の分配特性を決定する方法であって、(a)化合物またはその一部分と、凝縮体及び凝縮体外の溶液を含むまたはそれらの形成に供される組成物とを合わせること、(b)化合物またはその一部分及び組成物をインキュベートすること(例えば、凝縮体形成条件下で)、(c)遠心分離法を使用して、組成物中の凝縮体をペレット化すること、(d)参照対照を得ること、例えば調製すること、(e)質量分析法を使用して、凝縮体外の溶液またはその一部分中の化合物またはその一部分のMSシグナルを測定すること、(f)質量分析法を使用して、参照対照またはその一部分中の化合物またはその一部分のMSシグナルを測定すること、(g)凝縮体外の溶液からの化合物またはその一部分のMSシグナルと、参照対照からの化合物またはその一部分のMSシグナルとを比較すること、それによって凝縮体中の化合物またはその一部分の分配特性を決定することを含む方法。
【0116】
いくつかの実施形態では、凝縮体中の化合物またはその一部分の分配特性を決定する方法であって、(a)化合物またはその一部分と、凝縮体及び凝縮体外の溶液を含むまたはそれらの形成に供される組成物とを合わせること、(b)化合物またはその一部分及び組成物をインキュベートすること(例えば、凝縮体形成条件下で)、(c)遠心分離法を使用して、組成物中の凝縮体をペレット化すること、(d)参照対照を得ること、例えば調製すること、(e)質量分析法を使用して、凝縮体外の溶液またはその一部分中の化合物またはその一部分のMSシグナルを測定すること、(f)質量分析法を使用して、参照対照またはその一部分中の化合物またはその一部分のMSシグナルを測定すること、(g)凝縮体外の溶液からの化合物またはその一部分のMSシグナルと、参照対照からの化合物またはその一部分のMSシグナルとを比較すること、それによって凝縮体中の化合物またはその一部分の分配特性を決定することを含む方法。
【0117】
本明細書に記載の方法または方法ステップのいずれかのいくつかの実施形態では、本方法は、凝縮体を含む単一の組成物中の複数の化合物の各々またはそれらの各々の一部分についての凝縮体関連特性を決定するのに適している。例えば、いくつかの実施形態では、(a)複数の化合物と、凝縮体及び凝縮体外の溶液を含む組成物とを合わせること、ならびに(b)凝縮体外の溶液からの複数の化合物のうちの第1の化合物またはその一部分のイオンのMSシグナルと、参照対照からの第1の化合物またはその一部分のイオンのMSシグナルとを比較することを含む方法が提供される。いくつかの実施形態では、凝縮体外の溶液からの複数の化合物のうちの各化合物またはその一部分のイオンのMSシグナルは、参照対照からのそれぞれの各化合物またはその一部分のイオンのそれぞれのMSシグナルと比較される。いくつかの実施形態では、参照対照は、複数の化合物を含む。いくつかの実施形態では、複数形の化合物における化合物の数は、各化合物の分量を測定するために使用される分析方法の許容量によってのみ制限される。いくつかの実施形態では、複数の化合物は、少なくとも5つ、例えば、少なくとも、10、15、20、25、30、35、40、45、50、75、100、125、150、175、200、250、300、350、400、450、500、600、700、800、900、または1,000の化合物のいずれかを含む。いくつかの実施形態では、本方法は、質量分析法を使用して、凝縮体外の溶液またはその一部分中の化合物の各々のMSシグナルを得ること、例えば測定することをさらに含む。いくつかの実施形態では、本方法は、質量分析法を使用して、参照対照またはその一部分中の化合物の各々のMSシグナルを得ること、例えば測定することをさらに含む。いくつかの実施形態では、凝縮体外の溶液または参照対照中の化合物の各々のMSシグナルは、単一の質量分析で得られる。
【0118】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の技法を適用して、化合物、例えば試験化合物または参照化合物の存在下で凝縮体に対する凝縮体の成分の分配特性を得る、例えば、決定または測定することができる。
【0119】
B.結合親和特性を得ること
いくつかの態様では、本明細書で提供するのは、軽相中(例えば、凝縮体の外側、非凝縮相中、凝縮体外の溶液中)の凝縮体の成分に対する化合物、例えば試験化合物または参照化合物の結合親和特性を得る、例えば、決定または測定するための技法である。いくつかの実施形態では、結合親和特性は、凝縮体の成分に対する化合物の直接的な結合会合(例えば、別個の結合部位への化合物の結合)である。いくつかの実施形態では、結合親和特性は、凝縮体の成分に対する化合物の非特異的会合である。いくつかの実施形態では、結合親和特性は解離定数(Kd)である。いくつかの実施形態では、結合親和特性は、以前の実験または公表された文献値から得られたものなどの既知の値である。いくつかの実施形態では、結合親和特性は、例えば本明細書に開示される方法を使用して、測定される。
【0120】
いくつかの実施形態では、結合親和特性は、凝縮体外の溶液中の凝縮体の成分への化合物の結合親和特性(例えば、Kd)を測定することによって得られる、例えば決定される。いくつかの実施形態では、結合親和特性は、凝縮体をいずれも有さないか、または凝縮体形成条件(例えば、適切な塩濃度、またはストレス)をいずれももたらさない凝縮体の成分への化合物の結合親和特性(例えば、Kd)を測定することによって得られる、例えば決定される。
【0121】
いくつかの実施形態では、結合親和特性(例えば、結合親和性または結合会合)は、軽相中の凝縮体の成分のみへの化合物またはその一部分の結合親和特性を測定することによって得られる、例えば決定される。いくつかの実施形態では、結合親和特性は、軽相中の凝縮体の1つまたは複数の他の成分(例えば、凝縮体中で凝縮体の試験成分と一緒に共存することが知られている凝縮体の1つもしくは複数の他の成分、またはインビボで凝縮体の試験成分と複合体(例えば、メディエーター複合体)を形成することが知られている凝縮体の1つもしくは複数の他の成分)の存在下で、凝縮体の成分への化合物またはその一部分の結合親和特性を測定することによって得られる、例えば決定される。いくつかの実施形態では、凝縮体の1つまたは複数の他の成分を最初に凝縮体の試験成分とインキュベートし(例えば、インビボと同様に複合体を形成させる)、次いで化合物(またはその一部分)を与え、続いて凝縮体の試験成分への化合物(またはその一部分)の結合親和特性を測定する。いくつかの実施形態では、最初に凝縮体の試験成分及び化合物(またはその一部分)をインキュベートし、次いで凝縮体の1つまたは複数の他の成分を与え、続いて凝縮体の試験成分に対する化合物(またはその一部分)の結合親和性を測定する。
【0122】
「結合親和性」とは一般に、分子の単一の結合部位(例えば、化合物の化学基)とその結合相手(例えば、凝縮体の成分の結合ポケット)の間の結合相互作用(例えば、非共有結合相互作用)の合計の強さを指す。いくつかの実施形態では、別段の指示がない限り、「結合親和性」は、結合対のメンバー間の1:1の相互作用を反映する固有の結合親和性を指す。結合親和性は、Kd、Koff、Kon、またはKaによって示すまたは反映することができる。「Koff」という用語は、本明細書で使用される場合、速度論的選択性設定から決定される、凝縮体複合体の化合物/成分からの化合物の解離についての解離速度定数を指すことが意図され、s-1の単位で表される。「Kon」という用語は、本明細書で使用される場合、凝縮体複合体の化合物/成分を形成するための凝縮体の成分への化合物の会合についての会合速度定数を指すことが意図され、M-1s-1の単位で表される。平衡解離定数「KD」または「Kd」という用語は、本明細書で使用される場合、特定の化合物-凝縮体の成分の相互作用の解離定数を指し、平衡時に凝縮体の成分の溶液中に存在する凝縮体の成分のすべての半分を占めるのに必要とされる化合物の濃度を表し、Koff/Konに等しく、Mの単位で表される。Kdの測定は、すべての結合剤が溶液中にあることを前提とする。凝縮体の成分が固定化されている場合、対応する平衡速度定数は半数効果濃度(EC50)として表され、Kdの良い近似値となる。親和性定数Kaは、解離定数Kdの逆数であり、M-1の単位で表される。解離定数(KDまたはKd)は、凝縮体の成分への化合物の結合親和性を示す指標として使用される。これらの方法を使用して導出することができるKd値は、M(モル/リットル)の単位で表される。
【0123】
いくつかの実施形態では、軽相中の凝縮体の成分に対する化合物またはその一部分の結合親和特性を得ること、例えば決定することは、軽相中の凝縮体の成分に対する試験化合物またはその一部分の解離定数(Kd)を測定することを含む。いくつかの実施形態では、化合物またはその一部分と凝縮体の成分との間の結合のKdは、およそ、≦10-1M、≦10-2M、≦10-3M、≦10-4M、≦10-5M、≦10-6M、≦10-7M、≦10-8M、≦10-9M、≦10-10M、≦10-11M、または≦10-12Mのいずれかである。
【0124】
軽相中の凝縮体の成分に対する化合物またはその一部分の結合親和特性は、当技術分野で知られる任意の適切な方法、例えば、マイクロスケール熱泳動(MST)、等温滴定熱量測定(ITC)、表面プラズモン共鳴(SPR)、核磁気共鳴(NMR)、蛍光偏光(FP)、または蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)法によって測定することができる。例示的な方法については、Vuignier et al.“Drug-protein binding:a critical review of analytical tools”(Anal Bioanal Chem,2010)及びBasturea,G.N.(“Biological Condensates,”MATER METHODS 2019、9:2794)も参照されたい。
【0125】
例えば、SPRアッセイ(Biacore(登録商標))では、EDC/NHS化学を使用して凝縮体の成分をCM-5センサーチップの表面に結合させることができ、次いで化合物(連続希釈されてもよい)を流し、凝縮体の成分に結合させ、化合物が結合した応答単位(RU)を化合物濃度に対してプロットしてEC50値を決定する。
【0126】
いくつかの実施形態では、軽相中の凝縮体の成分に対する化合物またはその一部分の結合親和特性は、Protein Binding Affinity Analyzer-Dianthusなどによる温度関連強度変化(TRIC)によって決定される。簡潔に述べれば、凝縮体の成分を蛍光色素で標識し、化合物と混合した後、非常に正確で短時間のレーザー誘起温度変化を適用する。化合物が凝縮体の成分に結合するならば、蛍光強度の変化が生じて増幅される。これを測定し、化合物濃度に対してプロットして、解離定数またはKdを得ることができる。
【0127】
いくつかの実施形態では、軽相中の凝縮体の標的成分に対する化合物またはその一部分の結合親和特性は、軽相中の1つまたは複数の参照生体分子に対する化合物またはその一部分のそれとさらに比較される。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の参照生体分子は、凝縮体中で標的成分と共存する。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の参照生体分子は、いずれの凝縮体も形成しない。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の参照生体分子は、標的成分を含有しない異なる凝縮体を形成する。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の参照生体分子は、同様に標的成分を含有する異なる凝縮体を形成する。いくつかの実施形態では、軽相中の凝縮体の成分に対する試験化合物またはその一部分の結合親和特性は、凝縮体の成分に対する参照化合物(例えば、軽相中の成分への親和性が少ないか、またはないもの)またはその一部分のそれとさらに比較される。
【0128】
C.凝縮成分の相境界特性を得ること
いくつかの態様では、本明細書で提供するのは、化合物、例えば試験化合物または参照化合物の存在下で凝縮体の成分、例えば高分子の相境界特性を得る、例えば、決定または測定するための技法である。いくつかの実施形態では、化合物またはその一部分の存在に起因する凝縮体の成分の相境界特性の調節(例えば、相境界シフト)は、化合物またはその一部分の存在下での凝縮体の相挙動の変化の存在または非存在に役割を果たす。いくつかの実施形態では、化合物またはその一部分の存在に起因する凝縮体(例えば、凝縮体の成分)の相境界シフトの存在または非存在は、凝縮体の相挙動の観察された変化に基づいており、例えば、次のうちの1つまたは複数の変化に基づいている:濃厚相の組成(例えば、どんな成分が凝縮体中に存在するか、及び凝縮体の成分の選択的排除、2つ以上の成分が存在するなら、その比率)、凝縮体の成分の相分離(または相分離の破壊)、凝縮体を形成する成分の飽和濃度、凝縮体の物理的性質(例えば、流動性または動力学、粘度、表面積)、凝縮体の存在または非存在、凝縮体の形態(例えば、サイズ、形状、球形度)。いくつかの実施形態では、本方法は、(例えば、ある量の)化合物またはその一部分の存在下での凝縮体に対する凝縮体の成分の分配特性の存在または非存在を決定することを含む。
【0129】
いくつかの実施形態では、相境界特性は、相図(例えば、飽和濃度、バイノーダル曲線、スピノーダル曲線)に基づくか、または相図で表される。いくつかの実施形態では、相図は、温度、塩濃度、または存在する化合物の濃度などの相分離制御パラメータの下で、凝縮体の成分が相分離を起こす濃度を表す。相図中の相転移線は相境界とも呼ばれ、希薄/軽相及び濃厚相が平衡状態で共存し得る条件(例えば、化合物濃度、または凝縮体成分濃度)を示している。いくつかの実施形態では、相境界シフトは、化合物による凝縮体の形成の調節を示すことができる。例示の目的で述べると、いくつかの実施形態では、化合物の存在下で凝縮体成分の飽和濃度が高くなり(すなわち、同じ相分離制御パラメータで、今では相分離して凝縮体を形成するのにより多くの凝縮体成分が必要とされる)、このとき化合物は凝縮体の形成について阻害活性を有する。
【0130】
相図を得るための技法は当技術分野でよく知られており、それとして、限定するものではないが、蛍光分光、濁度/紫外-可視光分光、蛍光顕微鏡分析、動的光散乱、または静的光散乱が挙げられる。いくつかの実施形態では、化合物またはその一部分の存在に起因する凝縮体の成分の相境界特性、例えば、相境界シフトは、細胞内で決定または測定される(例えば、顕微鏡分析によって)。いくつかの実施形態では、化合物またはその一部分の存在に起因する凝縮体の成分の相境界特性、例えば、相境界シフトは、インビトロで決定または測定される。
【0131】
いくつかの実施形態では、化合物(またはその一部分)は、凝縮体の標的成分の相境界特性を調節する。いくつかの実施形態では、化合物(またはその一部分)は、1つまたは複数の他の生体分子の相境界特性を調節する。例えば、いくつかの実施形態では、化合物(またはその一部分)は、標的成分の相境界特性を変化させることなく、凝縮体の1つまたは複数の他の成分の相境界特性を調節する。いくつかの実施形態では、化合物(またはその一部分)は、標的成分の相境界特性を調節するのに加えて、凝縮体の1つまたは複数の他の成分の相境界特性を調節する。いくつかの実施形態では、化合物(またはその一部分)は、1つまたは複数の他の生体分子が凝縮体の追加成分になる(すなわち、凝縮体中に分配される)ように、あるいは凝縮体の標的成分と競合する及び/または置き換わるように、1つまたは複数の他の生体分子の相境界特性を調節する。よって、いくつかの実施形態では、本方法は、(例えば、ある量の)化合物またはその一部分の存在下での凝縮体に対する凝縮体の標的成分の分配特性を決定または測定する。いくつかの実施形態では、本方法は、(例えば、ある量の)化合物またはその一部分の存在下での凝縮体に対する1つまたは複数の他の生体分子(例えば、凝縮体の1つまたは複数の他の成分)の分配特性を決定または測定する。
【0132】
いくつかの実施形態では、相境界シフトの存在は(例えば、相挙動変化に役割を果たすものとしての)、化合物またはその一部分が凝縮体の相調節剤であることを示している。いくつかの実施形態では、相境界シフトの非存在は、化合物またはその一部分が凝縮体の相調節剤ではないことを示している。いくつかの実施形態では、相境界シフトの存在または非存在は、化合物(またはその一部分)の相シフト閾値に基づいて決定される。いくつかの実施形態では、相境界シフトの存在または非存在は、凝縮体の標的成分または凝縮体の1つもしくは複数の他の成分など、凝縮体の相シフト閾値に基づいて決定される。
【0133】
化合物またはその一部分の存在に起因する凝縮体の成分の相境界特性、例えば相境界シフトは、当技術分野で知られる方法、例えば、顕微鏡分析(例えば、凝縮体の成分の分配量を研究するため)、蛍光分光(蛍光相関分光(FCS)など)、蛍光退色後回復測定(FRAP、例えば、凝縮体の流動性の変化を研究するため)、紫外-可視(UV-Vis)分光、X線小角散乱、または静的及び動的光散乱(SLS/DLS)法によって決定または測定することができる。例えば、動的光散乱(DLS)、静的光散乱(STS)、及び小角光散乱(SLS)のような光散乱法を使用して、凝縮体のサイズ及び形状を決定することができる。成分分析、例えば、免疫蛍光検査、蛍光インサイツハイブリダイゼーション(FISH)、質量分析(MS)、RNA-seq、NMR分光も、化合物(またはその一部分)の存在下での凝縮体の相挙動変化、特に凝縮体の組成変化または凝縮体外の溶液の組成変化を研究するために適用することができる。Basturea,G.N.(“Biological Condensates,” MATER METHODS 2019、9:2794)に記載される様々なインビトロ及び細胞内凝縮体分析法も参照されたい。
【0134】
いくつかの実施形態では、化合物またはその一部分の存在に起因する凝縮体の成分の相境界シフトは、化合物の用量依存的な相境界シフトアッセイによって決定または測定される。いくつかの実施形態では、凝縮体の成分及び化合物(またはその一部分)を共にインキュベートし、次いで凝縮体形成条件(例えば、適切な塩濃度またはストレス)を与え、化合物(またはその一部分)が凝縮体(または凝縮体の成分)の相境界特性に及ぼす作用を観察する、例えば、凝縮体成分の分配特性を測定する。いくつかの実施形態では、凝縮体の成分及び様々な濃度の化合物(またはその一部分)を共にインキュベートし、次いで凝縮体形成条件(例えば、適切な塩濃度またはストレス)を与え、化合物(またはその一部分)が凝縮体の成分の相境界特性に及ぼす作用(例えば、用量依存的な作用)を決定する。いくつかの実施形態では、相境界特性の変化(複数可)が最初に起こる化合物濃度が、相境界シフト閾値(例えば、相境界特性を調節するのに必要な化合物またはその一部分の量)として記録される。いくつかの実施形態では、様々な濃度の凝縮体の成分及び固定濃度の化合物(またはその一部分)を共にインキュベートし、次いで凝縮体形成条件(例えば、適切な塩濃度またはストレス)を与え、化合物(またはその一部分)が凝縮体(または凝縮体の成分)の相境界特性に及ぼす作用を決定する。いくつかの実施形態では、相境界特性の変化(複数可)が最初に起こる凝縮体成分濃度が、相境界シフト閾値として記録される。いくつかの実施形態では、相境界シフト閾値はEC50濃度である。
【0135】
本明細書で使用される場合、「EC50」とは、生物学的プロセス、生化学的プロセス、もしくは生物物理学的プロセス、またはプロセスの構成要素の50%の活性化または強化(または阻害)に必要とされる物質(例えば、化合物)の濃度を指すことが意図される。例えば、EC50は、標的活性の適切なアッセイにおいてベースラインと最大応答の中間の応答を誘発する(または阻害する)化合物の濃度を指すことができる。
【0136】
いくつかの実施形態では、凝縮体の成分から(例えば、適切な塩濃度またはストレスの下で)凝縮体を形成させ、次いで化合物(またはその一部分)を凝縮体に与え、化合物(またはその一部分)が凝縮体(または凝縮体の成分)の相境界特性に及ぼす作用を観察する、例えば、凝縮体成分の分配特性を測定する。いくつかの実施形態では、凝縮体の成分から(例えば、適切な塩濃度またはストレスの下で)凝縮体を形成させ、次いで様々な濃度の化合物(またはその一部分)を凝縮体に与え(例えば、別々の系で)、化合物(またはその一部分)が凝縮体(または凝縮体の成分)の相境界特性に及ぼす作用(例えば、用量依存的な作用)を決定する。いくつかの実施形態では、凝縮体の様々な濃度の成分から(例えば、適切な塩濃度またはストレスの下で、別々の系で)凝縮体を形成させ、次いで固定の量の化合物(またはその一部分)を凝縮体に与え、化合物(またはその一部分)が凝縮体(またはその成分)の相境界特性に及ぼす作用を決定する。
【0137】
いくつかの実施形態では、凝縮体の成分(例えば、標的成分、または化合物もしくはその一部分の存在下で凝縮体の成分となる1つもしくは複数の他の生体分子)の分配特性は、凝縮体の内側にある成分の量(強度-イン、「Icomponent-in」)を測定すること、及び/または凝縮体の外側にある成分の量(すなわち、凝縮体外の溶液、強度-アウト、「Icomponent-out」)を測定することによって決定される。いくつかの実施形態では、凝縮体の成分の分配特性は、Icomponent-inをIcomponent-outで割ったものとして算出され、「PCcomponent」と呼ばれる。凝縮体の成分の分配特性は、Icomponent-inをIcomponent-totalで割ったもの、Icomponent-outをIcomponent-totalで割ったもの、またはIcomponent-outをIcomponent-inで割ったものとしても算出できる。
【0138】
いくつかの実施形態では、化合物またはその一部分の存在に起因する凝縮体の成分の相境界特性、例えば相境界シフトは、これらに限定されないが:(i)成分(例えば、標的成分、または化合物もしくはその一部分の存在下で凝縮体の成分となる1つもしくは複数の他の生体分子)を含む及び/または含まない凝縮体の数、(ii)凝縮体のサイズ、形状、及び/または球形度、(iii)凝縮体の位置(例えば、細胞アッセイにおける)、(iv)凝縮体の成分の位置(例えば、標的成分は、凝縮体中にもっと引き寄せられるか、もしくは凝縮体から排除される、例えば、凝縮体から細胞中の別のオルガネラへ移動する、または化合物もしくはその一部分の存在下で1つもしくは複数の他の生体分子が凝縮体中に分配されるようになる)、(v)凝縮体の表面積、(vi)凝縮体の組成、(vii)凝縮体の流動性(または動力学)(例えば、FRAPによる測定)、(viii)凝縮体の凝固、(ix)凝縮体の分離、(x)繊維形成の存在及び/または量、(xi)凝縮体成分の凝縮体中への分配、ならびに(xii)凝縮体の成分の凝集を含めた相挙動特性のうちの1つまたは複数を決定または測定することによって得られる。
【0139】
いくつかの実施形態では、試験化合物またはその一部分の存在に起因する標的凝縮体の標的成分の相境界特性、例えば相境界シフトは、参照化合物またはその一部分の存在によって誘導される相境界特性、例えば相境界シフトとさらに比較される。いくつかの実施形態では、試験化合物またはその一部分の存在に起因する標的凝縮体の標的成分の相境界特性、例えば相境界シフトは、試験化合物またはその一部分の存在に起因する参照凝縮体の成分のそれとさらに比較される。いくつかの実施形態では、試験化合物またはその一部分の存在に起因する標的凝縮体の標的成分の相境界特性、例えば相境界シフトは、試験化合物またはその一部分の存在に起因する標的凝縮体の参照成分(例えば、化合物によって相シフトされない別の生体分子)のそれとさらに比較される。
【0140】
D.結合様式を得ること
いくつかの態様では、本明細書で提供するのは、化合物、例えば試験化合物または参照化合物と、凝縮体(例えば、凝縮体の成分)、例えば標的凝縮体または参照凝縮体との結合様式を得る、例えば、決定または測定するための技法である。いくつかの実施形態では、結合様式は、凝縮体に対する化合物またはその一部分の分配特性(例えば、凝縮体の成分)、及び化合物またはその一部分の存在下での凝縮体の成分の相境界シフトに関する情報から導出される。いくつかの実施形態では、結合様式は、軽相中の凝縮体の成分に対する化合物またはその一部分の結合親和性、及び化合物またはその一部分の存在下での凝縮体の成分の相境界シフトに関する情報から導出される。いくつかの実施形態では、結合様式は、凝縮体に対する化合物またはその一部分の分配特性(例えば、凝縮体の成分)、軽相中の凝縮体の成分に対する化合物またはその一部分の結合親和性、及び化合物またはその一部分の存在下での凝縮体の成分の相境界シフトに関する情報から導出される。いくつかの実施形態では、結合様式は、ステッカー及び/またはリンカー、価数、または強化された溶解性を介する直接結合に基づいている。いくつかの実施形態では、結合様式は、多相リンケージ形式法を介して決定される。いくつかの実施形態では、結合様式は、PCAを介して決定される。
【0141】
多相リンケージ形式、リンケージ解析、PCA、マルチスケールシミュレーション、または階層的クラスタリングなどの、当技術分野で知られる任意の方法を結合様式解析に使用することができる。多相リンケージ形式は、軽相中での結合親和性と相挙動との間の関係性について研究している、Tisel et al.(“Polyphasic linkage between protein solubility and ligand binding in the hemoglobin-polyethylene glycol system,” J Biol Chem,1980,255(19):8975-8)、Gill et al.(“Ligand-linked phase equilibria of sickle cell hemoglobin,” J Mol Biol.1980,140(2):299-312)、Ruff et al.(“Ligand effects on phase separation of multivalent macromolecules,” Proc Natl Acad Sci U S A.2021 Mar 9、118(10):e2017184118)、またはPosey et al.(“Profilin reduces aggregation and phase separation of huntingtin N-terminal fragments by preferentially binding to soluble monomers and oligomers,” J Biol Chem,2018,293(10):3734-3746)に記載されているのと同様に適用することができる。また、原子価及びアミノ酸配列とタンパク質の相挙動との相関関係を研究するために数値的なステッカー及びスペーサーモデルを確立する方法(Martin et al.,“Valence and patterning of aromatic residues determine the phase behavior of prion-like domains,” Science 2020、367(6478):694-699)、及び顕微鏡画像からの熱力学的パラメータの抽出に広く利用することができる、多相相互作用熱力学的解析(PITA)(Riback et al.,“Composition dependent phase separation underlies directional flux through the nucleolus,” bioRxiv,2019、Riback et al.,“Composition-dependent thermodynamics of intracellular phase separation,” Nature.2020 May、581(7807):209-214)も参照されたい。
【0142】
E.アッセイシステム
凝縮体は、本明細書に記載の方法を様々な設定及びアッセイ系で使用して形成及び研究することができる。いくつかの実施形態では、本方法はインビボアッセイを含む。いくつかの実施形態では、アッセイは細胞に基づくアッセイである。いくつかの実施形態では、本方法はインビトロアッセイを含む。いくつかの実施形態では、インビトロアッセイは、ヒトによって生成された凝縮体の使用を含む。いくつかの実施形態では、本方法は、インビボアッセイ及びインビトロアッセイの両方の使用を含む。
【0143】
いくつかの実施形態では、アッセイ系は組成物を含み、ここでは、該組成物は、化合物もしくはその一部分、凝縮体、凝縮体外の溶液、または凝縮体の成分のうちの任意の1つまたは複数を含む。いくつかの実施形態では、組成物は細胞を含む。いくつかの実施形態では、凝縮体またはその成分は細胞内にある。いくつかの実施形態では、凝縮体外の溶液は、サイトゾルまたはヌクレオソルなどの細胞内液である。いくつかの実施形態では、凝縮体またはその成分は細胞内にない。いくつかの実施形態では、凝縮体は、細胞外マトリックス中の凝縮体などの細胞外の凝縮体である。いくつかの実施形態では、細胞外液は、間質液または血漿である。いくつかの実施形態では、本方法は、凝縮体の形成を引き起こす、例えばトリガーすることを含む。
【0144】
いくつかの実施形態では、細胞は、微生物または動物細胞に由来するか、またはそれらに位置する。いくつかの実施形態では、細胞はヒト細胞である。いくつかの実施形態では、細胞はニューロンである。いくつかの実施形態では、細胞はがん細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は、人工多能性幹細胞(iPS細胞)、HeLa細胞、またはHEK293細胞であるか、またはそれらに由来する。いくつかの実施形態では、細胞は、正常な健康状態と比較して調節不全であると決定された凝縮体またはその成分を含む。いくつかの実施形態では、細胞は、遺伝子突然変異などの、疾患に関連する突然変異を含む。いくつかの実施形態では、細胞は、突然変異したポリペプチドなどの、疾患に関連する突然変異を発現する。いくつかの実施形態では、細胞は、神経変性または増殖性疾患の1つまたは複数の特徴を有する。いくつかの実施形態では、細胞は、ヒ酸塩(及び/または凝縮体を調節することが知られている別の化合物)、温度変化、またはpH変化で処理されている。いくつかの実施形態では、細胞は、蛍光ポリペプチドなどの蛍光成分で標識されたタンパク質を発現する。いくつかの実施形態では、タンパク質は、凝縮体中で濃縮されることが知られているタンパク質である。
【0145】
いくつかの実施形態では、組成物は、細胞を含まない。いくつかの実施形態では、組成物は、無細胞組成物である。いくつかの実施形態では、組成物は、凝縮体中に組み込むことができる及び/または凝縮体中に組み込まれている、凝縮体の非相分離成分を含む。いくつかの実施形態では、組成物は緩衝液を含む。いくつかの実施形態では、組成物は、凝縮体の形成に有用な成分、例えば、1つもしくは複数の塩、及び/または1つもしくは複数のクラウディング剤(例えば、PEGまたはデキストラン)を含む。
【0146】
いくつかの実施形態では、組成物は、複数の凝縮体を含む。いくつかの実施形態では、複数の凝縮体は、単一種の凝縮体(例えば、凝縮体の共有タイプの成分または共通機能によって定義される)である凝縮体を含む。いくつかの実施形態では、複数の凝縮体は、2種以上の凝縮体を含む。
【0147】
F.化合物、凝縮体、及び凝縮体の成分
本明細書に記載の方法は一般に、数多くの多様な化合物(試験化合物、及び参照化合物など)、凝縮体(標的凝縮体、及び参照凝縮体など)、及び高分子などの凝縮体の成分に適用可能である。
【0148】
いくつかの実施形態では、試験化合物または参照化合物などの化合物は、小分子、ポリペプチド、ペプチド模倣体、脂質、核酸、またはそれらの任意の組み合わせである。いくつかの実施形態では、化合物は、1,000Da未満、例えば500Da以下の分子量を有する。いくつかの実施形態では、化合物は、リピンスキーのルールオブファイブを満たす。いくつかの実施形態では、化合物は小分子(1,000Da以下であり、及び/またはリピンスキーのルールオブファイブを満たす治療用小分子など)である。いくつかの実施形態では、化合物は核酸を含む。いくつかの実施形態では、化合物は、RNA、例えば、siRNA、miRNA、mRNA、もしくはlnRNA、またはそれらの類似体を含む。いくつかの実施形態では、化合物は、DNAまたはその類似体を含む。いくつかの実施形態では、化合物は、天然に存在しない化合物である。いくつかの実施形態では、化合物は、外因性化合物である。いくつかの実施形態では、化合物は、ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、化合物は、抗体を含む。いくつかの実施形態では、化合物は、米国食品医薬品局(FDA)によって医療用に承認された薬剤など、規制機関によって承認された治療用化合物である。いくつかの実施形態では、化合物は、新規化合物である。
【0149】
いくつかの実施形態では、化合物またはその一部分は、荷電している。いくつかの実施形態では、化合物またはその一部分は、疎水性である。いくつかの実施形態では、化合物またはその一部分は、親水性である。いくつかの実施形態では、化合物またはその一部分は、アルカロイド、グリコシド、フェナジン、フェノール、ポリケチド、テルペン、またはテトラピロールを含む。
【0150】
いくつかの実施形態では、化合物は、標識を含む。いくつかの実施形態では、標識は、放射性標識、比色標識、発光標識、化学反応性標識(クリックケミストリーで使用される成分部分など)、または蛍光標識である。いくつかの実施形態では、化合物は、標識を含む小分子である。いくつかの実施形態では、化合物は、フルオロフォアを含む小分子である。いくつかの実施形態では、化合物は、標識を含むポリペプチドである。いくつかの実施形態では、化合物は、フルオロフォアを含むポリペプチドである。いくつかの実施形態では、化合物は、標識を含む核酸である。いくつかの実施形態では、化合物は、フルオロフォアを含む核酸である。化合物標識は、化合物に共有結合的または非共有結合的にコンジュゲートすることができる。
【0151】
いくつかの実施形態では、標的凝縮体または参照凝縮体などの凝縮体は、インビボ凝縮体である。いくつかの実施形態では、凝縮体は、細胞凝縮体である。いくつかの実施形態では、凝縮体は、細胞外凝縮体である。いくつかの実施形態では、凝縮体は、インビトロ凝縮体である。いくつかの実施形態では、凝縮体は、インビボ凝縮体のモデルである。いくつかの実施形態では、凝縮体は、疾患または病気に関連する凝縮体のモデルである。
【0152】
いくつかの実施形態では、凝縮体は、天然に存在しない。いくつかの実施形態では、凝縮体は、天然に存在する。いくつかの実施形態では、凝縮体は、細胞源から得られる。いくつかの実施形態では、凝縮体は改変される、例えば、1つまたは複数の凝縮体成分を追加、除去、及び/または置換することによって改変される。
【0153】
本開示に関連する凝縮体のタイプの例として、開裂体、P顆粒、ヒストン遺伝子座体、多小胞体、神経RNA顆粒、核ジェム、核孔、核スペックル、核ストレス体、核小体、Oct1/PTF/転写(OPT)ドメイン、パラスペックル、核周囲コンパートメント、PML核体、PML発がん性ドメイン、ポリコーム体、プロセシング体、シグナル伝達クラスター、ウイルス凝縮体、Sam68核体、ストレス顆粒、またはスプライシングスペックルが挙げられる。
【0154】
本明細書に開示される凝縮体は、高分子などの成分を含む。いくつかの実施形態では、凝縮体の成分の記載は、凝縮体中の分子など、凝縮体に関連する分子を包含する。いくつかの実施形態では、凝縮体の成分の記載は、凝縮体と会合することができる、または会合することが知られている分子を包含し、前記分子は、軽相(例えば、凝縮体の外側)に位置する。いくつかの実施形態では、凝縮体は、1つもしくは複数のタイプのポリペプチド(1つもしくは複数のポリペプチド配列など)及び/または1つもしくは複数のタイプの核酸(1つもしくは複数の核酸配列など)を含めた、一連の高分子を含む。いくつかの実施形態では、高分子は、ポリペプチドまたはその断片である。いくつかの実施形態では、ポリペプチドまたはその断片は、低複雑性ドメインまたは天然変性配列を含む。いくつかの実施形態では、高分子は、転写因子またはRNA結合タンパク質を含む。いくつかの実施形態では、高分子は、タウ、FUS、ハンチンチンタンパク質、hnRNPA1、TDP43、PGL-3、またはそれらの断片もしくは凝集体を含む。いくつかの実施形態では、高分子は、RNAまたはDNAなどの核酸を含む。いくつかの実施形態では、高分子はRNAである。
【0155】
いくつかの実施形態では、凝縮体の成分は、高分子などの2つ以上の分子の複合体、例えば安定な複合体である。いくつかの実施形態では、複合体は、軽相中に存在する。いくつかの実施形態では、複合体は、濃厚相中に存在する。
【0156】
いくつかの実施形態では、凝縮体は均一な凝縮体であり、例えば、実質的に単一の種類の成分を含有する。いくつかの実施形態では、凝縮体は不均一であり、例えば、2種類以上の成分を含有する。
【0157】
いくつかの実施形態では、凝縮体は、細胞凝縮体である。いくつかの実施形態では、細胞凝縮体は、開裂体、P顆粒、ヒストン遺伝子座体、多小胞体、神経RNA顆粒、核ジェム、核孔、核スペックル、核ストレス体、核小体、Oct1/PTF/転写(OPT)ドメイン、パラスペックル、核周囲コンパートメント、PML核体、PML発がん性ドメイン、ポリコーム体、プロセシング体、シグナル伝達クラスター、ウイルス凝縮体、Sam68核体、ストレス顆粒、またはスプライシングスペックルである。
【0158】
いくつかの実施形態では、凝縮体は、細胞外凝縮体である。細胞外凝縮体は、細胞外マトリックスまたは血漿などの細胞の外側の生体液中に形成されて、分子の反応または隔離を容易にすることができる。Muiznieks et al.,J Mol Biol,43,2018,4741-4753を参照されたい。
【0159】
様々な凝縮体の調節不全は、疾患に関連し得る。例えば、細胞及び無細胞凝縮体実験に基づいて、タンパク質フューズドインサルコーマ(fused in sarcoma)(FUS)の疾患関連突然変異が、運動神経疾患である筋萎縮性側索硬化症(ALS)の発症に直接寄与する異常な相分離挙動を引き起こすことが示されている。Naumann et al.,Nat Commun,9,2018,335を参照されたい。いくつかの実施形態では、凝縮体は、疾患関連凝縮体である。いくつかの実施形態では、疾患関連凝縮体は、例えば、関連する非疾患関連凝縮体と比較したときに、次のうちの1つまたは複数の変質を含む:凝縮体のサイズ、凝縮体の形状、凝縮体の1つまたは複数の成分の濃度、及び凝縮体中の成分の不均一な分布、例えば、凝縮体のシェルの代わりにコアに位置する成分。
【0160】
いくつかの実施形態では、凝縮体の特定は、標識の使用によって容易にすることができる。したがって、いくつかの実施形態では、凝縮体は、例えばその成分を介して、Dendra2、GFP、またはRFPなどの色素または標識部分を含む。いくつかの実施形態では、色素または標識化合物は、凝縮体中に優先的に分配される。いくつかの実施形態では、標識は、放射性標識、比色標識、化学反応性標識、または蛍光標識である。いくつかの実施形態では、色素または標識部分は、凝縮体の成分、例えば高分子に会合する、例えばコンジュゲートする。
【0161】
III.本明細書に記載の方法によって可能になるさらなる態様
いくつかの態様では、本願は、本明細書に記載の方法によって可能になるさらなる態様を提供する。例えば、化合物またはその一部分と凝縮体またはその成分とのそのような相互作用を特定することは、この情報のさらなる使用を可能にし、それらには、所望の化合物の活性、所望の分配特性、及び/または化合物が凝縮体の相挙動に及ぼす所望の影響に基づいた化合物の知的スクリーニング及び/または設計が含まれる。いくつかの実施形態では、化合物またはその一部分の所望の挙動は、疾患関連凝縮体を調節して疾患の1つまたは複数の原因または症状を緩和することについての考察に基づいている。
【0162】
いくつかの態様では、本明細書で提供するのは、本明細書に記載の方法のいずれかを使用して各化合物と凝縮体またはその成分との1つまたは複数の相互作用を特定することに基づいて、複数の試験化合物またはその一部分の中から候補化合物をスクリーニングする方法である。いくつかの実施形態では、候補化合物またはその一部分は、標的凝縮体またはその成分と少なくとも1つの所望の相互作用を有していること(例えば、一連の化合物またはその一部分のそれと比較して)に基づいて選択される。
【0163】
いくつかの実施形態では、試験化合物(またはその一部分)と標的凝縮体(またはその成分)との相互作用は、(i)濃厚相と比較したときの、試験化合物またはその一部分と軽相中の標的凝縮体の成分との優先的会合、(ii)軽相と比較したときの、試験化合物またはその一部分と濃厚相中の標的凝縮体の成分との優先的会合、(iii)軽相と比較したときの、標的凝縮体の濃厚相への試験化合物またはその一部分の優先的溶解性、(iv)濃厚相と比較したときの、軽相への試験化合物またはその一部分の優先的溶解性、(v)軽相と比較したときの、試験化合物またはその一部分と標的凝縮体の濃厚相中の構造体との優先的会合、(vi)試験化合物またはその一部分が、標的凝縮体の成分に対する相分離駆動相互作用と競合する、(vii)試験化合物またはその一部分が、標的凝縮体の成分に対する相分離駆動相互作用をもたらす、(viii)標的凝縮体の成分と比較したときの、試験化合物またはその一部分と標的凝縮体の別の成分との優先的会合であって、標的凝縮体の成分に対する相分離駆動相互作用と競合する、優先的会合(ix)標的凝縮体の成分と比較したときの、試験化合物またはその一部分と標的凝縮体の別の成分との優先的会合であって、標的凝縮体の成分に対する相分離駆動相互作用をもたらす、優先的会合(x)相分離駆動相互作用に関与する成分の部位と比較したときの、試験化合物またはその一部分の、相分離駆動相互作用に関与しない成分の部位での優先的会合、及び(xi)試験化合物またはその一部分と、軽相中及び濃厚相中の両方の凝縮体の成分との実質的に等しい会合からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、濃厚相中の構造体は、凝縮体の別の成分である。いくつかの実施形態では、濃厚相中の構造体は、凝縮体中に形成された新たな結合ポケット(または軽相と比較したときに濃厚相中に優勢に見出される結合ポケット)であり、それには、凝縮体の成分と凝縮体の別の成分との相互作用によって形成されるような、凝縮体の成分内の新たな結合ポケットが含まれる。いくつかの実施形態では、濃厚相中の構造体は、凝縮体の成分の新しい構造(または軽相と比較したときに濃厚相中に優勢に見出される成分の構造)である。いくつかの実施形態では、濃厚相中の構造体は、凝縮体中に形成された好適な微小環境である。
【0164】
いくつかの実施形態では、スクリーニング方法は、複数の化合物にわたるそのような相互作用の比較を可能にし、それによって、そのような相互作用の1つまたは複数に関与するある種の部分(化学部分など)または化学クラスの特定を可能にする。例えば、スクリーニング方法を使用して、所望の特性を強化する化合物またはその一部分、例えば、(i)標的凝縮体中に強く分配される、(ii)軽相中の凝縮体の成分への弱い結合親和性を有する、及び(iii)凝縮体の成分の相境界を調節しない化合物またはその一部分を特定することができる。そのような候補化合物は、例えば、標的成分を含む凝縮体中に優先的に分配されること、軽相中の標的凝縮体の成分に弱く結合するか結合しない(すなわち、化合物は、軽相と比較して濃厚相中の成分に優先的に結合する)こと、及び凝縮体の相挙動に影響を及ぼさないことを目的として使用することができる。
【0165】
いくつかの態様では、本明細書で提供するのは、標的凝縮体またはその成分との所望の相互作用の1つまたは複数を有する候補化合物を設計する方法である。いくつかの実施形態では、設計方法は、1つまたは複数の部分を候補化合物中に組み込むことを含み、ここでは、各部分は所望の相互作用を駆動する。例えば、いくつかの実施形態では、候補化合物は、凝縮体中への分配を駆動する第1の部分、及び得られた凝縮体の相挙動の調節を(例えば、その成分の相境界特性の調節に基づいて)駆動する第2の部分を有するように設計することができる。いくつかの実施形態では、設計方法は、所望の化合物特性の1つもしくは複数に関連する部分を置換、除去、もしくは追加すること、及び/または標的凝縮体もしくはその成分との1つもしくは複数の所望の相互作用を駆動することを含む。いくつかの実施形態では、設計方法は、設計された候補化合物について本明細書に記載の化合物特性の1つもしくは複数を得ること、及び/または設計された候補化合物と標的凝縮体(またはその成分)との相互作用の1つもしくは複数を特定すること、ならびにそのような化合物特性及び/または相互作用が所望の必要性(複数可)を満たすかどうかを決定することをさらに含む。いくつかの実施形態では、設計方法は、所望の必要性/形質が達成されるまで、設計及び試験ステップを繰り返すことをさらに含む。いくつかの実施形態では、設計方法は、候補化合物を合成することを含む。
【0166】
いくつかの態様では、本明細書で提供するのは、2つ以上の部分を組み合わせることを含む、候補化合物を設計する方法であって、各部分が、1つもしくは複数の所望の化合物特性及び/または標的凝縮体もしくはその成分との1つもしくは複数の所望の相互作用に関連する方法である。いくつかの実施形態では、設計方法は、本明細書に記載の方法を介して特定された所望の特性を含む部分を任意の数の位置及び/または立体化学的配向で付着させることを含む。いくつかの実施形態では、得られた候補化合物は、所望の化合物特性及び/または標的凝縮体もしくはその成分との1つもしくは複数の所望の相互作用の組み合わせを含む。例えば、いくつかの実施形態では、候補化合物は、軽相中の凝縮体の成分への低い結合親和性及び凝縮体に対する強い分配特性に関連する第1の部分と、凝縮体の相挙動の所望の調節に関連する第2の部分とを含有するように設計される。いくつかの実施形態では、設計方法は、所望の必要性/形質が達成されるまで、設計及び試験ステップを繰り返すことをさらに含む。いくつかの実施形態では、設計方法は、候補化合物を合成することを含む。
【0167】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法を使用して、達成された所望の化合物特性に基づいた1つまたは複数のルールセットを確立することができる。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のルールセットは、モデリング、コンピュータ及び/または計算に基づく技法、例えば、バイオインフォマティクス、ケモインフォマティクス、及び/または人工知能(AI)に基づく所望の分配特性を有する化合物の特定を含む手法を使用する、1つもしくは複数の化合物の特定及び/または設計の基礎として使用することができる。提供するのはまた、1つもしくは複数のルールセットを決定及び/または適用するためのコンピュータソフトウェアである。
【0168】
いくつかの態様では、本明細書で提供するのは、複数の化合物を含むライブラリであって、複数の化合物のうちの各化合物が、化合物またはその一部分と標的凝縮体及び/またはその成分との所望の相互作用を駆動する構造体を有する、ライブラリである。いくつかの実施形態では、ライブラリは複数の化合物を含み、ここでは、複数の化合物のうちの各化合物がある部分を含み、その部分が、標的凝縮体及び/またはその成分とその部分との所望の相互作用に関連する。いくつかの態様では、本明細書で提供するのは、複数の化合物を含むライブラリであって、複数の化合物のうちの各化合物が1つまたは複数の部分を含み、その部分が、同じ(または類似の、例えば、±10%の活性差以内)1つもしくは複数の化合物(部分)特性、及び/または本明細書に記載するような1つもしくは複数の部分と標的凝縮体(またはその成分)との同じ(または類似の、例えば、±10%の活性差以内)1つまたは複数の相互作用に関連する、ライブラリである。例えば、いくつかの実施形態では、複数の化合物を含むライブラリであって、複数の化合物のうちの各化合物が、標的凝縮体の成分への同じ(または類似の、例えば、±10%の活性差以内)結合親和性に関連する1つまたは複数の部分を含む、ライブラリが提供される。別の例として、いくつかの実施形態では、複数の化合物を含むライブラリであって、複数の化合物のうちの各化合物が、標的凝縮体の成分に対する相分離駆動相互作用と競合する同じ(または類似の、例えば、±10%の活性差以内)活性に関連する1つまたは複数の部分を含む、ライブラリが提供される。このようなライブラリは、同じ(または類似の)化合物特性/相互作用に対応する化学的構造体を有する化合物を提供し、それによって、より迅速でより費用対効果の高いスクリーニングが容易になり得る。
【0169】
いくつかの態様では、本明細書で提供するのは、凝縮体の活性に関連する疾患または障害を治療するための候補化合物を特定する方法である。いくつかの実施形態では、凝縮体の活性に関連する疾患または障害とは、次のうちのいずれかの1つまたは複数が起こる疾患または障害を指す:1)凝縮体が形成する、2)凝縮体が消失する(例えば、分解する)、3)凝縮体またはその成分が、健康な状態では凝縮体またはその成分が通常位置しない場所に分布している(例えば、疾患状態で細胞質に移動する)、4)凝縮体の数が増加または減少する、5)成分(例えば、標的成分、または凝縮体の成分になる1つもしくは複数の他の生体分子)を含む及び/または含まない凝縮体の数の増加または減少、6)凝縮体のサイズ、形状、及び/または球形度が変化する、7)凝縮体の組成の変化、8)凝縮体の流動性(または動力学)の変化、9)凝縮体の凝固の変化、10)繊維形成の存在及び/または量の変化、11)凝縮体成分の凝縮体中への分配の変化、ならびに12)凝縮体の成分の凝集。例えば、ALS及びアルツハイマー病などの多くの神経変性疾患は、凝縮体の活性に関連することが知られている。
【0170】
疾患状態下の凝縮体特性の1つまたは複数に基づいて(及び健康な状態でのそれを比較して)、本明細書に記載の方法のいずれかを使用して、1つもしくは複数の所望の化合物特性(複数可)及び/または候補化合物と標的凝縮体(またはその成分)との所望の相互作用(複数可)を有する候補化合物を特定する/スクリーニングする/改変する/設計することができる。
【0171】
例えば、生体分子が健康な状態では細胞質全体に比較的自由に拡散するが、疾患状態では凝縮体を形成する/凝縮体中に分配される場合、考えられる治療戦略は、次の通りである:1)凝縮体を破壊して、生体分子を軽(拡散)相中に放出して戻す、2)形成された凝縮体から生体分子を除外する、3)生体分子が凝縮体に分配されるのを防止する、4)凝縮体を共形成するのに必要なパートナー生体分子を凝縮体から除外する、及び/または5)凝縮体を共形成するのに必要なパートナー生体分子が、凝縮体形成のために生体分子と相互作用するのを防止するなど。したがって、候補化合物を特定/スクリーニング/改変/設計して、治療戦略の1つまたは複数を達成することができる。例えば、候補化合物は、所望の化合物特性及び/または凝縮体(またはその成分、または凝縮体の形成に関係する他の生体分子)との所望の相互作用:(i)標的凝縮体への化合物の強い分配特性、(ii)軽相中の凝縮体の標的生体分子への弱い結合親和性、及び(iii)凝縮体(または凝縮体成分)に対する強い相境界シフト、例えば、形成された凝縮体から標的生体分子を除外することのうちの1つまたは複数を有することが特定される/それらを有するように設計される。このような候補化合物は、軽相と比較して濃厚相中の標的生体分子に優先的に結合することができるため、オフターゲット活性を回避し、標的生体分子を疾患凝縮体から放出して、それが通常属する場所に戻すことができる。
【0172】
例示的な実施形態
実施形態1.試験化合物またはその一部分と標的凝縮体またはその成分との1つまたは複数の相互作用を特定する方法であって、(i)前記標的凝縮体に対する前記試験化合物もしくはその一部分の分配特性、(ii)軽相中の前記標的凝縮体の前記成分に対する前記試験化合物もしくはその一部分の結合親和性、または(iii)前記試験化合物もしくはその一部分の存在に起因する前記標的凝縮体の前記成分の相境界シフトのうちの2つ以上を得ること、ならびに(a)前記1つもしくは複数の相互作用を特定するために、前記標的凝縮体に対する前記試験化合物もしくはその一部分の前記分配特性と、前記軽相中の前記標的凝縮体の前記成分に対する前記試験化合物もしくはその一部分の前記結合親和性とを比較すること、(b)前記1つもしくは複数の相互作用を特定するために、前記標的凝縮体に対する前記試験化合物もしくはその一部分の前記分配特性と、前記試験化合物もしくはその一部分の存在下での前記標的凝縮体の前記成分の前記相境界とを比較すること、(c)前記1つもしくは複数の相互作用を特定するために、前記軽相中の前記標的凝縮体の前記成分に対する前記試験化合物もしくはその一部分の前記結合親和性と、前記試験化合物もしくはその一部分の存在下での前記標的凝縮体の前記成分の前記相境界とを比較すること、または(d)前記1つもしくは複数の相互作用を特定するために、前記標的凝縮体に対する前記試験化合物もしくはその一部分の前記分配特性と、前記軽相中の前記標的凝縮体の前記成分に対する前記試験化合物もしくはその一部分の前記結合親和性と、前記試験化合物もしくはその一部分の存在下での前記標的凝縮体の前記成分の前記相境界とを比較することに基づいて、前記試験化合物またはその一部分と前記標的凝縮体またはその成分との前記1つまたは複数の相互作用を特定することを含む、前記方法。
【0173】
実施形態2.前記試験化合物またはその一部分と前記標的凝縮体またはその成分との前記相互作用が、(i)前記濃厚相と比較したときの、前記試験化合物またはその一部分と前記軽相中の前記標的凝縮体の前記成分との優先的会合、(ii)前記軽相と比較したときの、前記試験化合物またはその一部分と前記濃厚相中の前記標的凝縮体の前記成分との優先的会合、(iii)前記軽相と比較したときの、前記標的凝縮体の前記濃厚相への前記試験化合物またはその一部分の優先的溶解性、(iv)前記濃厚相と比較したときの、前記軽相への前記試験化合物またはその一部分の優先的溶解性、(v)前記軽相と比較したときの、前記試験化合物またはその一部分と前記標的凝縮体の前記濃厚相中の構造体との優先的会合、(vi)前記試験化合物またはその一部分が、前記標的凝縮体の前記成分に対する相分離駆動相互作用と競合する、(vii)前記試験化合物またはその一部分が、前記標的凝縮体の前記成分に対する相分離駆動相互作用をもたらす、(viii)前記標的凝縮体の前記成分と比較したときの、前記試験化合物またはその一部分と前記標的凝縮体の別の成分との優先的会合であって、前記標的凝縮体の前記成分に対する相分離駆動相互作用と競合する、前記優先的会合(ix)前記標的凝縮体の前記成分と比較したときの、前記試験化合物またはその一部分と前記標的凝縮体の別の成分との優先的会合であって、前記標的凝縮体の前記成分に対する相分離駆動相互作用をもたらす、前記優先的会合(x)相分離駆動相互作用に関与する部位と比較したときの、前記試験化合物またはその一部分の、相分離駆動相互作用に関与しない部位での優先的会合、及び(xi)前記試験化合物またはその一部分と、前記軽相中及び前記濃厚相中の両方の前記凝縮体の成分との実質的に等しい会合、からなる群から選択される、実施形態1に記載の方法。
【0174】
実施形態3.前記標的凝縮体に対する前記試験化合物またはその一部分の前記分配特性が、前記標的凝縮体中の前記試験化合物またはその一部分の分配の存在または非存在を含む、実施形態1または2に記載の方法。
【0175】
実施形態4.前記標的凝縮体中の前記試験化合物またはその一部分の分配の存在または非存在が、分配特性閾値に基づいて決定される、実施形態3に記載の方法。
【0176】
実施形態5.前記標的凝縮体中の前記試験化合物またはその一部分の分配の存在または非存在が、1以上の前記分配特性閾値を有することに基づいて決定される、実施形態4に記載の方法。
【0177】
実施形態6.前記標的凝縮体に対する前記試験化合物またはその一部分の前記分配特性が、前記標的凝縮体中の前記試験化合物またはその一部分の分配の程度を含む、実施形態1~5のいずれか1つに記載の方法。
【0178】
実施形態7.前記軽相中の前記標的凝縮体の前記成分に対する前記試験化合物またはその一部分の前記結合親和性が、前記試験化合物またはその一部分と前記標的凝縮体の前記成分との結合会合の存在または非存在を含む、実施形態1~6のいずれか1つに記載の方法。
【0179】
実施形態8.前記結合会合の存在または非存在が、結合親和性閾値に基づいて決定される、実施形態7に記載の方法。
【0180】
実施形態9.前記試験化合物またはその一部分と前記標的凝縮体の前記成分との前記結合会合の存在が、10mM以下の前記結合親和性閾値を有することに基づいて決定される、実施形態8に記載の方法。
【0181】
実施形態10.前記標的凝縮体の前記成分に対する前記試験化合物またはその一部分の前記結合親和性が、前記試験化合物またはその一部分と前記標的凝縮体の前記成分との前記結合会合の程度を含む、実施形態1~9のいずれか1つに記載の方法。
【0182】
実施形態11.前記試験化合物またはその一部分の存在に起因する前記標的凝縮体の前記成分の前記相境界シフトが、相挙動の存在または非存在を含む、実施形態1~10のいずれか1つに記載の方法。
【0183】
実施形態12.(a)~(d)のうちの1つを比較することに基づいて前記試験化合物またはその一部分と前記標的凝縮体またはその成分との前記1つまたは複数の相互作用を特定することが、参照と比較することをさらに含む、実施形態1~11のいずれか1つに記載の方法。
【0184】
実施形態13.前記参照が、参照化合物を使用して得られた情報を含み、前記情報が、前記標的凝縮物に対する前記参照化合物の分配特性、前記軽相中の前記凝縮体の前記成分に対する前記参照化合物の結合親和性、及び前記参照化合物の存在に起因する前記標的凝縮体の前記成分の相境界シフトのうちの1つまたは複数に関する、実施形態12に記載の方法。
【0185】
実施形態14.前記参照が、複数の参照化合物を使用して得られた情報を含む、実施形態12または13に記載の方法。
【0186】
実施形態15.前記複数の参照化合物が、前記試験化合物と同じ化学クラスの化合物を含む、実施形態14に記載の方法。
【0187】
実施形態16.前記複数の参照化合物が、前記試験化合物と異なる化学クラスの化合物を含む、実施形態14または15に記載の方法。
【0188】
実施形態17.前記複数の参照化合物が、少なくとも5つの化合物を含む、実施形態14~16のいずれか1つに記載の方法。
【0189】
実施形態18.前記試験化合物と前記標的凝縮体の前記成分との結合様式を得ることをさらに含む、実施形態1~17のいずれか1つに記載の方法。
【0190】
実施形態19.前記結合様式が、多相リンケージ形式法を介して決定される、実施形態18に記載の方法。
【0191】
実施形態20.前記標的凝縮体に対する前記試験化合物またはその一部分の前記分配特性を測定することをさらに含む、実施形態1~19のいずれか1つに記載の方法。
【0192】
実施形態21.前記標的凝縮体に対する前記試験化合物またはその一部分の前記分配特性を測定することが、前記標的凝縮体中の前記試験化合物またはその一部分の量を測定することを含む、実施形態20に記載の方法。
【0193】
実施形態22.前記標的凝縮体中の前記試験化合物またはその一部分の量を測定することが、凝縮体外の溶液中の前記試験化合物またはその一部分の量を測定することを介して決定される、実施形態21に記載の方法。
【0194】
実施形態23.前記標的凝縮体に対する前記試験化合物またはその一部分の前記分配特性が、共焦点顕微鏡分析または蛍光分光法を使用して測定される、実施形態20~22のいずれか1つに記載の方法。
【0195】
実施形態24.前記標的凝縮体に対する前記試験化合物またはその一部分の前記分配特性が、(a)前記試験化合物と、前記標的凝縮体及び凝縮体外の溶液を含む組成物とを合わせること、(b)参照対照を得ること、(c)質量分析法を使用して、前記凝縮体外の溶液またはその一部分中の前記試験化合物のMSシグナルを測定すること、(d)質量分析法を使用して、前記参照対照またはその一部分中の前記試験化合物のMSシグナルを測定すること、ならびに(e)前記凝縮体外の溶液からの前記試験化合物の前記MSシグナルと前記参照対照からの前記試験化合物の前記MSシグナルとを比較することによって測定される、実施形態20~22のいずれか1つに記載の方法。
【0196】
実施形態25.軽相中の前記標的凝縮体の前記成分に対する前記試験化合物またはその一部分の前記結合親和性を測定することをさらに含む、実施形態1~24のいずれか1つに記載の方法。
【0197】
実施形態26.前記軽相中の前記凝縮体の前記成分に対する前記試験化合物またはその一部分の前記結合親和性を得ることが、前記軽相中の前記凝縮体の前記成分に対する前記試験化合物またはその一部分の前記解離定数(Kd)を測定することを含む、実施形態25に記載の方法。
【0198】
実施形態27.前記軽相中の前記凝縮体の前記成分に対する前記試験化合物またはその一部分の前記結合親和性を測定することが、マイクロスケール熱泳動(MST)、等温滴定熱量測定(ITC)、表面プラズモン共鳴(SPR)、核磁気共鳴(NMR)、または蛍光偏光(FP)法を含む、実施形態25または26に記載の方法。
【0199】
実施形態28.前記試験化合物またはその一部分の存在に起因する前記標的凝縮体の前記成分の前記相境界シフトを測定することをさらに含む、実施形態1~27のいずれか1つに記載の方法。
【0200】
実施形態29.前記相境界シフトが、前記標的凝縮体に対する前記標的凝縮体の前記成分の前記分配特性である、実施形態28に記載の方法。
【0201】
実施形態30.前記試験化合物またはその一部分の存在に起因する前記標的凝縮体の前記成分の前記相境界シフトが、顕微鏡分析、蛍光分光、紫外-可視(UV-Vis)分光、蛍光退色後回復測定(FRAP)、静的及び動的光散乱(SLS/DLS)、または質量分析に基づく技法を使用して測定される、実施形態28または29に記載の方法。
【0202】
実施形態31.前記標的凝縮体の前記成分が高分子である、実施形態1~30のいずれか1つに記載の方法。
【0203】
実施形態32.前記標的凝縮体の前記成分がポリペプチドを含む、実施形態1~31のいずれか1つに記載の方法。
【0204】
実施形態33.前記標的凝縮体の前記成分が核酸を含む、実施形態1~32のいずれか1つに記載の方法。
【0205】
実施形態34.参照凝縮体に対する前記試験化合物またはその一部分の分配特性に関連する1つまたは複数の寄与因子を決定することをさらに含む、実施形態1~33のいずれか1つに記載の方法。
【0206】
実施形態35.前記標的凝縮体に対する前記試験化合物またはその一部分の前記分配特性に関連する前記1つまたは複数の寄与因子を、前記参照凝縮体に対する前記試験化合物またはその一部分の分前記配特性に関連する前記1つまたは複数の寄与因子と比較することをさらに含む、実施形態34に記載の方法。
【0207】
実施形態36.複数の化合物を含むライブラリであって、前記複数の化合物のうちの各化合物がある部分を含み、前記部分が、標的凝縮体及び/またはその成分と前記部分との所望の相互作用に関連する、前記ライブラリ。
【0208】
実施形態37.標的凝縮体またはその成分と1つまたは複数の所望の相互作用を有する化合物を設計する方法であって、(a)実施形態1~35のいずれか1つに従って、候補化合物またはその一部分と前記標的凝縮体またはその成分との1つまたは複数の相互作用を特定すること、及び(b)前記特定された1つまたは複数の相互作用に関連する前記候補化合物またはその一部分に基づいて前記化合物を設計することを含む、前記方法。
【0209】
実施形態38.所望の相互作用プロファイルを有する試験化合物を設計する方法であって、前記試験化合物の前駆体を、前記化合物にある部分を付着させることによって改変することを含み、前記部分が、標的凝縮体またはその成分との1つまたは複数の所望の相互作用を有する特性を含む、前記方法。
【0210】
当業者であれば、いくつかの実施形態が本願の開示の範囲及び趣旨内で可能であることを認識するであろう。本開示は、以降の実施例によってさらに説明されるが、これらは、範囲または趣旨において本開示を本明細書に記載の特定の手順に限定するものと解釈されるべきではない。
【実施例】
【0211】
実施例1
本実施例は、本明細書に記載の方法を使用するローダミンB(RhoB)とFUS成分を含む凝縮体との分析からの例示的な測定値を示す。軽相中のFUSタンパク質へのRhoBの結合親和性、FUS凝縮体へのRhoBの分配特性、及びFUS凝縮体を調節するRhoBの能力について調査した。
【0212】
SNAPタグ付きFUSタンパク質(「FUS-SNAP」)とRhoBとを混合し、相分離条件に供した。反応物中のRhoBの最終濃度は、5μM及び1.25μMであった。対照実験では、RhoBを添加しなかった。次いで、FUS-SNAP凝縮体へのRhoBの分配特性を、蛍光分光及び本明細書に記載の質量分析に基づく技法の両方によって測定した。
【0213】
RhoBを適切に設定するために、共焦点顕微鏡を用いて凝縮体液滴の画像を取得した。RhoBの非存在下でのFUS-SNAP液滴のバックグラウンドシグナルも記録した。FUS-SNAP凝縮体の内側及びFUS-SNAP凝縮体に隣接する(外側の)領域で蛍光強度を測定し、バックグラウンドシグナル(RhoBなしの対照)について補正して、凝縮体外の溶液(すなわち、上清)中のRhoBの割合を算出した。
【0214】
質量分析に基づく方法を使用してRhoBの分配特性を測定し、上記の蛍光に基づくアッセイを使用して得られた測定値と比較した。RhoBがFUS-SNAP凝縮体中に分配されると、外側(凝縮体外の溶液または軽相中のRhoB)の濃度の低減、及び内側(FUS-SNAP液滴中のRhoB)の濃度の増加が引き起こされることになる。相分離インキュベーションの後、反応物を遠心分離によって処理して凝縮体を上清(軽相)から分離した。上清中及び参照反応物中のRhoBの量を、質量分析を使用して測定した。次いで、凝縮体外の溶液(すなわち、上清)中のRhoBの割合に基づいて分配特性を算出した。
【0215】
図3Aに示すように、蛍光分光(RhoB-FL)及び質量分析(RhoB-MS)の両分析から、軽相である凝縮体外の溶液(上清)中のRhoBの割合によって反映されるように、RhoB(両方の濃度下の)がインビトロで形成されたFUS-SNAP凝縮体中に分配されることが実証された。2つの測定タイプは一致している。
【0216】
軽相中のFUS-SNAPタンパク質へのRhoBの結合親和性(K
d)は、Dianthus MST技術を使用して測定した。
図3Bからわかるように、RhoBは、軽相中のFUS-SNAPタンパク質に17.1μMのK
dで結合する。
【0217】
EGFPタグ付きFUSタンパク質(「FUS-EGFP」)とRhoBとを混合し、相分離条件に供した。反応物中のRhoBの最終濃度は、1.5μMであった。対照実験では、RhoBを添加しなかった。共焦点顕微鏡を用いて画像を取得し、FUS-EGFP凝縮体の内側(I-イン)及び外側(I-アウト)のEGFPシグナルを上記のように測定した。
【0218】
図3Cからわかるように、EGFP標識FUSは、RhoBの存在下(1.5μM)では凝縮体中への分配が少なくなったことから、RhoBがFUS凝縮体に対してある種の相調節活性を有することが示される。
【0219】
これらの測定値に基づいて、RhoBとFUS凝縮体またはその成分(つまりFUS)との1つまたは複数の相互作用に関する情報をさらに抽出することができる。例えば、RhoBとFUSとの間の結合親和性が存在することから、これがFUS凝縮体中に観察されたRhoBの分配に対する駆動力であり得ることが示される。
【0220】
実施例2
本実施例は、本明細書に記載の方法を使用する化合物(Rho800)と凝縮体またはその成分との相互作用の特定を実証する。具体的には、FUSを含有する凝縮体(FUS-mEGFP/RNA液滴)の存在下でのRho800の滴定実験、及びその結果としてのRho800及びFUSの分配への影響を示す。さらに、FUS及びRho800が関与する結合実験を示す。
【0221】
分配試験では、低付着性384ウェルプレート中で液滴を調製した。液滴の調製は、示した濃度のRho800の存在下で、組換えFUS-mEGFPタンパク質を合成PrD RNAと混合することによって、1mMのFUS-mEGFP及び250nMのPrD RNAの最終濃度で、自動液体ハンドラーを使用して行った。液滴を室温、暗所で4時間インキュベートし、ハイコンテント共焦点蛍光顕微鏡を使用して画像化した。
図4のy軸に示した値(n=3)は、定量的画像分析によって得られたものであり、分かれた液滴の内側のFUS-mEGFP及びRho800のウェル当たりの平均強度を表している。
【0222】
結合試験では、組換え15N同位体及び15N/13C標識FUS-RRMタンパク質をE.coliで発現させ、公表されている方法を使用して精製した。NMRピークの割り当ては、公表されているデータリポジトリから転送し、標準的な3D NMR方法を使用して確認した。100mMのタンパク質をRho800で滴定し、1H/15N-HSQC(異核種単一量子コヒーレンス)を記録し、化学シフト摂動(CSP)を±180mMのRho800のスペクトルから算出した。
【0223】
図4に示すように、Rho800の濃度が増加すると、凝縮体の液滴中への化合物の分配が増加した。対照的に、Rho800の濃度が増加すると、凝縮液の液滴からFUS-mEGFPが分配解除される。凝縮体中のFUS-mEGFRがある特定のレベルを下回ると、凝縮体中へのRho800の分配も減少する(
図4の最高Rho800濃度のデータ点を他のものと比較する)。
図5Bに示すように、
1H/
15N-HSQC 2D-NMRによって得られたCSPから、FUS-RRMドメインへのRho800の結合部位をマッピングした。FUS-RRMに対するRho800の親和性は、およそ50mM~およそ500mMであると推定された。Rho800の結合に関与するFUS残基を、
図5Aにさらに示す(点線の円)。このデータから、Rho800がFUS-RRMドメインに直接結合することが示される。よって、分配データを考慮して、直接結合がRho800の分配の駆動力の1つであると結論付けることができる。増加量のRho800の存在下で凝縮体中へのFUS-mEGFPの分配が少なくなるということは、Rho800が、例えば、軽相中のFUSに直接結合して凝縮体中へのFUSの分配を防止することによる、及び/またはRho800の存在下では相分離制御パラメータが同じでも相分離して凝縮体を形成するのにより多くのFUSが必要とされるようにFUSの相境界をシフトすることによるなどの、FUS凝縮体に対するある種の相調節活性を有することを示している。
【0224】
実施例3
本実施例は、FUS含有凝縮体またはその成分に対する4つの化合物の1つまたは複数の相互作用を特定し、よって小分子の分配(またはその非存在)に関与する駆動力に関するより詳細な情報を特定するための、本明細書に記載の方法の使用を実証する。
【0225】
分配は、共焦点蛍光顕微鏡を使用して、前の実施例に従って測定した。結合会合(Kd)は、MSTを使用して測定した。特性の分類は、以下の通りである。結合親和特性:強い(++)(Kd<10μM)、(+)中程度(10μM≦Kd<100μM)、(-)弱い(Kd≧≧100μM)。分配特性:(++)強い(PC≧100)、(+)中程度(100>PC≧10)、(-)弱い(PC<10)。相境界特性:(++)強い(EC50<10μM)、(+)中程度(10μM≦EC50<100μM)、(-)弱い(EC50≧100μM)。
【0226】
図6に示すように、化合物1は凝縮体中に強く分配され、また化合物1は軽相中の凝縮体の成分と強く結合する。さらに、化合物1は、凝縮体の成分の相境界特性に作用を及ぼさないことが観察された。よって、化合物1の直接結合は分配の駆動力であり、化合物1の存在は凝縮体の成分の相境界特性に影響を及ぼさない。
【0227】
図6に示すように、化合物2は凝縮体中に分配されず、化合物2は軽相中の凝縮体の成分の中程度の結合剤である。さらに、化合物2は、凝縮体の成分の相境界特性に作用を及ぼさないことが観察された。よって、化合物2の中程度の結合会合は分配の駆動力ではなく、化合物2の存在は凝縮体の成分の相境界特性に影響を及ぼさない。
【0228】
図6に示すように、化合物3は凝縮体中に分配され、化合物3は軽相中の凝縮体の成分と結合しない(ND:検出されず)。さらに、化合物3は、凝縮体の成分の相境界特性に弱い作用を及ぼすことが観察された。よって、結合会合(またはその欠如)は、分配の駆動力として関与していない。
【0229】
図6に示すように、化合物4は凝縮体中に分配され、化合物4は軽相中の凝縮体の成分と結合しない(ND:検出されず)。さらに、化合物4は、凝縮体の成分の相境界特性に作用を及ぼさないことが観察された。よって、結合会合(またはその欠如)は、分配の駆動力として関与していない。
【0230】
上で考察した結果を以下の表1に提示する。
【表1】
【国際調査報告】