(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-06
(54)【発明の名称】PIC入力を有するビーム走査器及びそれに基づくニアアイディスプレイ
(51)【国際特許分類】
G02B 26/10 20060101AFI20230830BHJP
G02B 26/08 20060101ALI20230830BHJP
G02B 27/02 20060101ALI20230830BHJP
G02B 6/42 20060101ALI20230830BHJP
G02B 6/32 20060101ALI20230830BHJP
G02B 6/125 20060101ALI20230830BHJP
G02B 6/12 20060101ALI20230830BHJP
G02B 5/30 20060101ALI20230830BHJP
【FI】
G02B26/10 104Z
G02B26/08 E
G02B27/02 Z
G02B6/42
G02B6/32
G02B6/125 301
G02B6/125
G02B6/12 301
G02B5/30
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023507552
(86)(22)【出願日】2021-08-16
(85)【翻訳文提出日】2023-04-03
(86)【国際出願番号】 US2021046093
(87)【国際公開番号】W WO2022040068
(87)【国際公開日】2022-02-24
(32)【優先日】2020-08-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-06-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515046968
【氏名又は名称】メタ プラットフォームズ テクノロジーズ, リミテッド ライアビリティ カンパニー
【氏名又は名称原語表記】META PLATFORMS TECHNOLOGIES, LLC
(74)【代理人】
【識別番号】110002974
【氏名又は名称】弁理士法人World IP
(72)【発明者】
【氏名】アミールソライマニ, ババク
(72)【発明者】
【氏名】コシェレフ, アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】ティン, イーミン
(72)【発明者】
【氏名】ウィールライト, ブライアン
(72)【発明者】
【氏名】グライフ, ダニエル グエンサー
(72)【発明者】
【氏名】カオ, ウェイチョアン
(72)【発明者】
【氏名】シュー, ミャオミャオ
(72)【発明者】
【氏名】ゴーリエ, ジャック
【テーマコード(参考)】
2H045
2H137
2H141
2H147
2H149
2H199
【Fターム(参考)】
2H045AB13
2H045AB73
2H045BA12
2H045DA02
2H045DA04
2H137AA04
2H137AA17
2H137AB11
2H137BA34
2H137BA44
2H137BA45
2H137BA46
2H137BB02
2H137BB17
2H137BC02
2H137BC25
2H137BC42
2H137BC45
2H137BC51
2H137BC52
2H137BC64
2H137CA34
2H137EA04
2H141MB24
2H141MD13
2H141MD16
2H141MD23
2H141MD24
2H141MD40
2H141ME06
2H141ME09
2H141ME15
2H141ME19
2H141ME24
2H141MG03
2H141MG06
2H141MZ06
2H141MZ16
2H147AB04
2H147AB16
2H147AB17
2H147BC05
2H147BD02
2H147BD03
2H147BE14
2H147BE15
2H147BE22
2H147BG02
2H147BG04
2H147CA08
2H147CA13
2H147CA15
2H147CA19
2H147CD02
2H147FC01
2H149DA04
2H149FC07
2H199CA05
2H199CA29
2H199CA32
2H199CA42
2H199CA46
2H199CA53
2H199CA62
2H199CA64
2H199CA66
(57)【要約】
ビーム走査器及び表示デバイスは、光を一対の対向する反射器に結合するフォトニック集積回路に基づいている。一方の反射器は、傾斜可能であり、かつ光がそこを通して結合される開口部を有し、他方の反射器は、例えば凹面反射器など、光を集束させるように構成されている。偏光折り畳み構成は、集束光を第1の反射器の開口部を通して伝播させ、第2の反射器によってコリメートさせ、第1の反射器によって走査させ、かつ第2の反射器を通って走査ビームの複数の横方向にオフセットされた平行部分を提供する瞳孔複製導光体に伝播させるために使用される。
【選択図】
図2C
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビーム走査器であって、
第1の光ビームを誘導するための第1の導波路を備えるフォトニック集積回路(PIC)と、
第1の反射器及び第2の対向する反射器と、
を備え、
前記第1の反射器が、制御信号の印加時に傾斜可能であり、かつ前記第1の導波路からアウトカップリングされた前記第1の光ビームをその中に受光するための開口部を有し、
前記第2の反射器が、前記第1の光ビームが前記第1の反射器の前記開口部を通って伝播した後に、前記第1の光ビームを少なくとも部分的に反射して前記第1の光反射器に向けて戻し、それによって、前記第1の反射器によって前記第2の反射器に向けて可変角度で反射される第1のコリメートビームを形成するように構成されており、前記第2の反射器が、前記第1の反射器によって反射された前記第1のコリメートビームの少なくとも一部を前記第2の反射器を通して伝播するように構成されている、
ビーム走査器。
【請求項2】
前記第1の反射器が、微小電気機械システム(MEMS)傾斜可能反射器を備える、請求項1に記載のビーム走査器。
【請求項3】
前記第1の反射器と前記第2の反射器との間の光路内に、前記第1の光ビームの第1の直線偏光を前記第1のコリメートビームの第2の直交直線偏光に変換するための1/4波長板(QWP)をさらに備え、前記第2の反射器が、偏光選択性である、請求項1又は2に記載のビーム走査器。
【請求項4】
前記開口部を通して前記第1の光ビームを集束させるために、前記PICと前記第1の反射器内の前記開口部との間の光路内にカップリングレンズをさらに備える、請求項1から3のいずれか一項に記載のビーム走査器。
【請求項5】
前記PICが、前記導波路からの前記第1の光ビームをアウトカップリングするためのアウトカプラを備える、請求項1から4のいずれか一項に記載のビーム走査器。
【請求項6】
前記アウトカプラが、前記第1の光ビームを前記PICの平面外に向け直すための折り返しミラーを備え、
好ましくは、前記折り返しミラーが、前記第1の反射器の前記開口部を通して前記光ビームを集束させるために凹状であり、
好ましくは、前記折り返しミラーによって反射された前記第1の光ビームを前記第1の反射器の前記開口部に伝達するための、前記PICから前記第1の反射器の前記開口部に向かって延在する補助導波路をさらに備える、
請求項5に記載のビーム走査器。
【請求項7】
前記PICが、第2の光ビームを誘導するための第2の導波路をさらに備え、前記第2の導波路からアウトカップリングされた前記第2の光ビームが、前記第1の反射器の前記開口部内に結合され、
前記第2の反射器が、前記第2の光ビームが前記第1の反射器の前記開口部を通って伝播した後に、前記第2の光ビームを少なくとも部分的に反射して前記第1の反射器に向けて戻し、それによって、前記第1の反射器によって前記第2の反射器に向けて可変角度で反射される第2のコリメートビームを形成するように構成されており、前記第2の反射器が、前記第1の反射器によって反射された前記第2のコリメートビームの少なくとも一部を前記第2の反射器を通して伝播するように構成されている、
請求項1から6のいずれか一項に記載のビーム走査器。
【請求項8】
前記PICが、種々の波長の複数の光源を前記第1の導波路に光学的に結合するためのコンバイナ素子をさらに備える、請求項1から7のいずれか一項に記載のビーム走査器。
【請求項9】
前記コンバイナ素子が、前記複数の光源によって放射された光ビームを合成するためのマルチモード干渉(MMI)カプラを備える、請求項8に記載のビーム走査器。
【請求項10】
前記コンバイナ素子が、
複数のリング共振器であって、前記複数のリング共振器の各リング共振器が、前記複数の光源のうちの光源を前記導波路に光学的に結合する、複数のリング共振器、又は
複数の方向性カプラであって、前記複数の方向性カプラの各方向性カプラが、前記複数の光源のうちの特定の光源を前記導波路に光学的に結合する、複数の方向性カプラ
を備える、請求項8又は9に記載のビーム走査器。
【請求項11】
前記コンバイナ素子が、複数の入力導波路と出力導波路とが結合されているキャビティを備え、前記複数の入力導波路の各入力導波路が、前記複数の光源のうちの光源を前記キャビティに光学的に結合し、
前記キャビティが、各光源によって放射された光を前記コンバイナ素子の前記出力導波路に結合するために最適化された実効誘電率の不均一な空間分布を提供するナノ構造を有する、
請求項8から10のいずれか一項に記載のビーム走査器。
【請求項12】
表示デバイスであって、
第1の光ビームを放射するための第1の光源と、
前記第1の光源に結合されたフォトニック集積回路(PIC)であって、前記PICが、前記第1の光ビームを誘導するための導波路を備える、フォトニック集積回路(PIC)と、
第1の反射器及び第2の対向する反射器と、
瞳孔複製導光体と、
を備え、
前記第1の反射器が、制御信号の印加時に傾斜可能であり、前記導波路からアウトカップリングされた前記第1の光ビームをその中に受光するための開口部を有し、
前記第2の反射器が、前記第1の光ビームが前記第1の反射器の前記開口部を通って伝播した後に、前記第1の光ビームを少なくとも部分的に反射して前記第1の反射器に向けて戻し、それによって、前記第1の反射器によって前記第2の反射器に向けて可変角度で反射されるコリメートビームを形成すように構成されており、前記第2の反射器が、前記第1の反射器によって反射された前記コリメートビームの少なくとも一部を前記第2の反射器を通して伝播するように構成されており、
前記瞳孔複製導光体が、前記第2の反射器を通して伝播された前記コリメートビームをインカップリングし、かつ前記コリメートビームの一部をアウトカップリング角度でアウトカップリングするように構成されており、前記一部が、前記表示デバイスのアイボックスの長さ寸法に沿ってオフセットされている、
表示デバイス。
【請求項13】
前記瞳孔複製導光体が、前記コリメートビームをインカップリングするためのインカップリング格子と、前記アイボックスの前記長さ寸法に沿って前記コリメートビームの前記一部をアウトカップリングするためのアウトカップリング格子と、を備え、
好ましくは、前記第1の光源及び前記第1の反射器に動作可能に結合されており、かつコリメートビーム部分を走査して前記アイボックスにおいて角領域の画像を形成するために前記第1の反射器に前記制御信号を印加することと連携して前記第1の光源の輝度を制御するように構成された、コントローラをさらに備え、
好ましくは、前記第1の光ビームとは異なる波長で第2の光ビームを放射するための第2の光源をさらに備え、前記PICが、前記第1の光ビームと前記第2の光ビームとを第1の導波路に光学的に結合するためのコンバイナ素子をさらに備える、
請求項12に記載の表示デバイス。
【請求項14】
光ビームを走査するための方法であって、前記方法が、
フォトニック集積回路(PIC)の導波路内の前記光ビームを、第1の反射器の開口部を通して、前記第1の反射器に対向する第2の反射器に誘導することであって、前記第1の反射器が、制御信号の印加時に傾斜可能である、前記光ビームを誘導することと、
前記開口部を通して伝播された前記光ビームを前記第1の反射器に向けて少なくとも部分的に反射し、それによってコリメートビームを形成することと、
前記コリメートビームを前記第1の反射器によって前記第2の反射器に向けて可変角度で反射して戻すことと、
前記第1の反射器によって反射された前記コリメートビームの少なくとも一部を前記第2の反射器を通して伝播させることと、
前記制御信号を前記第1の反射器に印加して前記第1の反射器を傾斜させ、それによって、前記第2の反射器を通して伝播された前記コリメートビームを角度走査することと、を含む、方法。
【請求項15】
前記PICの前記導波路によって誘導された前記光ビームを前記第1の反射器の前記開口部に結合するためにカップリングレンズを使用することをさらに含み、
好ましくは、前記第2の反射器が、偏光選択性であり、前記方法が、光路上の前記光ビームの偏光を、前記第2の反射器上への前記光ビームの第1の入射と第2の入射との間で、前記光ビームが前記第2の反射器によって反射される第1の偏光状態から、前記光ビームが前記第2の反射器を通して伝播される第2の偏光状態に変換することをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の参照
本出願は、2020年8月17日に出願された米国仮特許出願第63/066,592号「Compact Beam Scanner」からの、及び2021年6月15日に出願された米国仮特許出願第63/210,969号「MEMS Scanner with Input Beam Provided by Photonic Integrated Circuit」からの優先権を主張する。本出願は、2020年8月17日に出願された米国仮特許出願第63/066,592号「Compact Beam Scanner」からの優先権を主張する、2020年10月27日に出願された米国従来型特許出願第17/081,272号「Display with a Compact Beam Scanner」の一部継続出願であり、そこからの優先権を主張する。これらの出願は全て、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、画像プロジェクタ、ニアアイディスプレイを含む視覚ディスプレイ、及び関連する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
視覚ディスプレイは、静止画像、ビデオ、データなどを含む情報を視聴者に提供する。視覚ディスプレイは、ほんの数例を挙げると、娯楽、教育、エンジニアリング、科学、専門訓練、広告を含む多様な分野のアプリケーションを有する。TVセットなどのいくつかの視覚ディスプレイは、複数のユーザ向けであり、ニアアイディスプレイ又はNEDなどのいくつかの視覚ディスプレイシステムは、個々のユーザ向けである。
【0004】
人工現実システムは、一般に、コンテンツをユーザに提示するように構成されたNED(例えば、ヘッドセット又は一対の眼鏡)を含む。ニアアイディスプレイは、仮想現実(VR)、拡張現実(AR)、又は複合現実(MR)アプリケーションのように、仮想オブジェクトを表示し得、又は実オブジェクトの画像と仮想オブジェクトとを合成し得る。例えば、ARシステムでは、ユーザは、「コンバイナ」コンポーネントを通して見ることによって、仮想オブジェクト(例えば、コンピュータ生成画像(CGI))及び周囲環境の両方の画像が見られ得る。ウェアラブルディスプレイのコンバイナは、典型的には、外部光に対して透明であるが、ディスプレイ光をユーザの視野内に向けるための何らかの光ルーティング光学系を含む。
【0005】
HMD又はNEDのディスプレイは通常、ユーザの頭部に装着されるため、重いバッテリを有する大型で、かさばり、不安定で、かつ/又は重いディスプレイデバイスは、ユーザにとって装着するのが面倒かつ不快である。ヘッドマウントディスプレイデバイスは、光学ビームを走査することによって角領域において画像をレンダリングする小型で効率的なプロジェクタを必要とする。
【発明の概要】
【0006】
本開示の第1の態様によれば、ビーム走査器であって、第1の光ビームを誘導するための第1の導波路を備えるフォトニック集積回路(PIC)と、第1の反射器及び第2の対向する反射器と、を備え、第1の反射器が、制御信号の印加時に傾斜可能であり、かつ第1の導波路からアウトカップリングされた第1の光ビームをその中に受光するための開口部を有し、第2の反射器が、第1の光ビームが第1の反射器の開口部を通って伝播した後に、第1の光ビームを少なくとも部分的に反射して第1の光ビームに向けて戻すように構成されており、それによって、第1の反射器によって第2の反射器に向けて可変角度で反射される第1のコリメートビームを形成し、第2の反射器が、第1の反射器によって反射された第1のコリメートビームの少なくとも一部を第2の反射器を通して伝播するように構成されている、ビーム走査器が提供される。
【0007】
いくつかの実施形態では、第1の反射器は、微小電気機械システム(MEMS)傾斜可能反射器を備える。第1の光ビームの第1の直線偏光を第1のコリメートビームの第2の直交直線偏光に変換するために、第1の反射器と第2の反射器との間の光路内に1/4波長板(QWP)が配置され得る。第2の反射器は、偏光選択性であり得る。開口部を通して第1の光ビームを集束させるために、PICと第1の反射器の開口部との間の光路内にカップリングレンズが配置され得る。
【0008】
いくつかの実施形態では、PICは、導波路からの第1の光ビームをアウトカップリングするためのアウトカプラを備える。アウトカプラは、第1の光ビームをPICの平面外に向け直すための折り返しミラーを含み得る。折り返しミラーは、第1の反射器の開口部を通して光ビームを集束させるために凹状であり得る。ビーム走査器は、折り返しミラーによって反射された第1の光ビームを第1の反射器の開口部に伝達するために、PICから第1の反射器の開口部に向かって延在する補助導波路をさらに含み得る。PICは、第2の光ビームを誘導するための第2の導波路をさらに含み得、第2の導波路からアウトカップリングされた第2の光ビームは、第1の反射器の開口部内に結合される。第2の反射器は、第2の光ビームが第1の反射器の開口部を通して伝播された後、第2の光ビームを少なくとも部分的に反射して第1の反射器に向けて戻すように構成され得、それによって、第1の反射器によって第2の反射器に向けて可変角度で反射される第2のコリメートビームを形成する。第2の反射器は、第1の反射器によって反射された第2のコリメートビームの少なくとも一部を第2の反射器を通して伝播するように構成され得る。
【0009】
いくつかの実施形態では、PICは、種々の波長の複数の光源を第1の導波路に光学的に結合するためのコンバイナ素子をさらに備える。コンバイナ素子は、複数の光源によって放射された光ビームを合成するためのマルチモード干渉(MMI)カプラを含み得る。コンバイナ素子は、複数のリング共振器であって、複数のリング共振器の各リング共振器が、複数の光源のうちの光源を導波路に光学的に結合する、複数のリング共振器、又は複数の方向性カプラであって、複数の方向性カプラの各方向性カプラが、複数の光源のうちの特定の光源を導波路に光学的に結合する、複数の方向性カプラを含み得る。コンバイナ素子は、複数の入力導波路と出力導波路とが結合されているキャビティを含み得、複数の入力導波路の各入力導波路が、複数の光源のうちの光源をキャビティに光学的に結合する。キャビティは、各光源によって放射された光をコンバイナ素子の出力導波路に結合するために最適化された実効誘電率の不均一な空間分布を提供するナノ構造を含み得る。
【0010】
本開示の第2の態様によれば、第1の光ビームを放射するための第1の光源と、本明細書に記載のPICと、瞳孔複製導光体と、を備える表示デバイスが提供される。瞳孔複製導光体は、第2の反射器を通して伝播されたコリメートビームをインカップリングし、かつコリメートビームの一部をアウトカップリング角度でアウトカップリングするように構成されており、該一部が、表示デバイスのアイボックスの長さ寸法に沿ってオフセットされている。
【0011】
瞳孔複製導光体は、コリメートビームをインカップリングするためのインカップリング格子と、アイボックスの長さ寸法に沿ってコリメートビームの一部をアウトカップリングするためのアウトカップリング格子と、を含み得る。表示デバイスは、第1の光源及び第1の反射器に動作可能に結合されており、かつコリメートビーム部分を走査してアイボックスにおいて角領域の画像を形成するために第1の反射器に制御信号を印加することと連携して第1の光源の輝度を制御するように構成された、コントローラをさらに含み得る。表示デバイスが第1の光ビームとは異なる波長で第2の光ビームを放射するための第2の光源を含む実施形態では、PICは、第1の光ビーム及び第2の光ビームを第1の導波路に光学的に結合するためのコンバイナ素子をさらに含み得る。
【0012】
本開示の第3の態様によれば、光ビームを走査するための方法であって、方法が、フォトニック集積回路(PIC)の導波路内の光ビームを、第1の反射器の開口部を通して、第1の反射器に対向する第2の反射器に誘導することであって、第1の反射器が、制御信号の印加時に傾斜可能である、光ビームを誘導することと、開口部を通して伝播された光ビームを第1の反射器に向けて少なくとも部分的に反射し、それによってコリメートビームを形成することと、コリメートビームを第1の反射器によって第2の反射器に向けて可変角度で反射して戻すことと、第1の反射器によって反射されたコリメートビームの少なくとも一部を第2の反射器を通して伝播させることと、制御信号を第1の反射器に印加して第1の反射器を傾斜させ、それによって、第2の反射器を通して伝播されたコリメートビームを角度走査することと、を含む、方法が提供される。
【0013】
いくつかの実施形態では、方法は、PICの導波路によって誘導された光ビームを第1の反射器の開口部に結合するためにカップリングレンズを使用することを含む。第2の反射器が偏光選択性である実施形態では、方法は、光路上の光ビームの偏光を、第2の反射器上への光ビームの第1の入射と第2の入射との間で、光ビームが第2の反射器によって反射される第1の偏光状態から、光ビームが第2の反射器を通して伝播される第2の偏光状態に変換することをさらに含み得る。
【0014】
ここで、例を図面と併せて説明する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】走査型画像プロジェクタに基づくニアアイディスプレイの概略図である。
【
図2A】傾斜可能反射器が非傾斜位置にある状態の、本開示の小型走査型プロジェクタの概略断面図である。
【
図2B】傾斜可能反射器が傾斜位置にある状態の、
図2Aの走査型プロジェクタの概略断面図である。
【
図2C】
図2A及び
図2Bの走査型プロジェクタに基づくニアアイディスプレイの概略断面図である。
【
図3】いくつかの光入力を有する小型走査型プロジェクタの概略断面図である。
【
図4A】直線偏光選択反射器を有する走査型プロジェクタの偏光図である。
【
図4B】円偏光選択反射器を有する走査型プロジェクタの偏光図である。
【
図5】本開示の2D傾斜可能反射器の平面図である。
【
図6A】
図2A及び
図2Bの走査型プロジェクタ用のフォトニック集積回路(PIC)カプラの平面図である。
【
図6C】カップリングレンズを有する
図6AのPICカプラの側面断面図である。
【
図6D】
図6Cのカップリングレンズを通る光線伝播を示す光学的光線追跡図である。
【
図7A】波長分割多重化を伴う多波長エミッタ及びPIC構成の概略図である。
【
図7B】共通導波路内への個々のエミッタの波長分割多重化を伴うPICの概略上面図である。
【
図8A】種々の波長の光源を合成するためのマルチモード干渉(MMI)カプラの概略図である。
【
図8B】種々の波長の光源を合成するためのリング共振器ベースのカプラの概略図である。
【
図8C】種々の波長の光源を合成するための複合方向性カプラの概略図である。
【
図8D】カプラのキャビティの逆最適化を伴う、種々の波長の光源を合成するための小型マルチモードカプラの概略図である。
【
図9A】真っ直ぐなエッチングミラーを使用するPICアウトカプラの側面断面図である。
【
図9B】偏心凹面エッチングミラーを使用するPICアウトカプラの側面断面図である。
【
図9C】垂直に設置された補助導波路のアレイに基づくPIC光のアウトカプラの側面断面図である。
【
図9D】真っ直ぐなエッチングされたミラー及びビーム形成光学系を使用するPICアウトカプラの側面図及び正面図を含む。
【
図10】本開示による光ビームを走査するための方法のフローチャートである。
【
図11】一対の眼鏡の形状因子を有する本開示の拡張現実(AR)ディスプレイの図である。
【
図12】本開示のヘッドマウントディスプレイ(HMD)の3D図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本教示は、様々な実施形態及び例と併せて記載されているが、本教示がそのような実施形態に限定されることは意図されていない。それどころか、本教示は、当業者によって理解されるように、様々な代替物及び均等物を包含する。本開示の原理、態様、及び実施形態、並びにその特定の例を列挙する本明細書の全ての記述は、その構造的及び機能的均等物の両方を包含することが意図されている。さらに、そのような均等物は、現在知られている均等物及び将来開発される均等物の両方、すなわち、構造にかかわらず同じ機能を実行する開発されたあらゆる要素を含むことが意図されている。
【0017】
本明細書で使用される場合、「第1」、「第2」などの用語は、連続した順序を意味することを意図するものではなく、明示的に述べられていない限り、ある要素を別の要素から区別することを意図している。同様に、方法ステップの連続した順序は、明示的に述べられていない限り、それらの実行の連続した順序を意味しない。
【0018】
走査型プロジェクタディスプレイは、傾斜可能ミラーを使用して、強度変調された光ビームを1つ又は2つの軸を中心として角度的に走査し得る。光ビームが走査されると、その輝度及び/又は色は、角領域の画像を提供するために、走査と連携して変化し得る。光ビームは、2つの方向、例えばX及びY視野角にわたって走査され得る。フレームレートが十分に高い場合、眼は走査光ビームを統合し、ユーザが表示されたイメージを実質的にフリッカなしに見ることを可能にする。走査器は、ディスプレイの視野(FOV)全体にわたって光ビームを走査することができる場合がある。FOVは、画像光が視聴者に提供され得る立体角として画定され得る。
【0019】
画像を角領域でディスプレイのアイボックスに中継するために、中継導光体が設けられ得る。中継導光体は、中継された光の瞳孔複製を提供して、ディスプレイのアイボックスにわたって光を拡張するように構成され得る。そのような導光体は、瞳孔複製導光体と呼ばれる。瞳孔複製導光体は、同じ角度を有するビーム及び走査入力ビームの複数のオフセット部分を提供する。瞳孔複製導光体の背後に眼が設置されると、眼はラスタ画像を直接、すなわち接眼レンズなしで見ることができ、その結果、全体的なディスプレイ構造が小型で軽量になる。
【0020】
瞳孔複製導光体の入力カプラ上のビームウォークオフを最小限に抑えるために、走査ミラーを瞳孔複製導光体に近づけることが望ましい。さらに、傾斜可能ミラーの角度走査範囲を最大限に活用するためには、傾斜可能ミラーでの光ビームの垂直に近い入射が必要である。これらの要件の両方に適応するために、光ビームは、傾斜可能ミラー上に衝突する前に瞳孔複製導光体を通って伝播するように向けられ得る。瞳孔複製導光体を通してコリメート光ビームを伝播させることは、角領域における画像内の輝点アーチファクトが生成されるため望ましくない。
【0021】
本開示では、上記の制限のない走査型プロジェクタ構成が提示される。傾斜可能ミラーに小さな開口部が設けられ、強度変調された光ビームは、開口部を通って集束されて固定凹面ミラー上に衝突し、固定凹面ミラーは、反射時に光ビームをコリメートし、ビームを角度的に走査する傾斜可能ミラーに向け直して戻す。偏光構成を採用して、走査ビームを第2のパスで凹面ミラーを通して伝播させ、光ビームを瞳孔複製導光体に伝播させてもよい。フォトニック集積回路(PIC)を使用して、集束光ビームを傾斜可能ミラーの開口部にもたらす。PICは、複数の光源からの光を伝達し得、本明細書で説明するように、種々の色チャネルの光を傾斜可能ミラーの開口部に合成し得る。
【0022】
ここで
図1を参照すると、表示デバイス100は、光ビーム104を提供するための光源102を含む。電子ドライバ106が、光源102に電力を供給するために光源102に動作可能に結合されている。傾斜可能反射器、例えば微小電気機械(MEMS)傾斜可能反射器を含むビーム走査器108は、光源102によって生成された光ビーム104を走査するために光源102に光学的に結合されている。走査は、例えば、X軸及び/又はX軸に垂直なY軸を中心として一次元又は二次元で実行され得、X及びY軸は、その通常の、すなわち非給電位置においてMEMS反射器の平面内にある。瞳孔複製器110は、走査光ビーム104の複数の横方向にシフトされた平行部分を含む光照射野115を提供し、これは、場合によっては、光ビーム104が1つ又は2つの軸を中心に走査されたときに、ビーム角度、すなわち光ビーム104の伝播の方向を瞬間ごとに繰り返す。
【0023】
コントローラ112は、ビーム走査器108及び電子ドライバ106に動作可能に結合されている。コントローラ112は、ビーム走査器108を駆動すること及びその位置を読み取ることと連携して、光源102に電力を供給するために電子ドライバ106を動作させるように構成されている。例えば、コントローラ112は、表示される画像に従って電子ドライバ106に光源102の輝度を変更させるための電力信号111を印加しながら、ビーム走査器108に一連のビーム角度又は方向「A」~「G」を通じて光ビーム104を走査させるための制御信号113を印加し得、したがって、視聴者の眼114による直接観察のための角領域の画像を形成する。フィードバック回路は、現在のMEMSミラー位置をコントローラ112に示すためのフィードバック信号117を提供し得る。
【0024】
瞳孔複製器110は、図示のように、方向「A」~「G」において走査光ビーム104の複数の横方向に変位した平行部分を提供する。視聴者の眼114は、光照射野115を受け取り、図示のように、対応する複製光ビームから眼の網膜116に画像を形成する。眼の網膜116上のビーム部分の直線位置は、文字「a」~「g」で示されており、走査光ビーム104のビーム角度又は方向「A」~「G」に対応する。このようにして、眼114は、光照射野115によって形成された角領域の画像から眼の網膜116上に線形領域の画像を形成する。
【0025】
表示デバイス100に関連する1つの課題は、ビーム走査器108の斜めになった傾斜可能反射器上への光ビームの傾いた入射角によって引き起こされるFOVの減少である。斜角は、例えば、走査された、すなわち反射された光ビームから衝突する光ビームを物理的に分離するために用いられる光学的形状によって必要とされ得る。FOVの減少は、傾斜可能反射器における光ビームの傾いた入射角での走査の範囲を表す立体角の歪みによって引き起こされる。
【0026】
本開示のビーム走査器は、開口部を有する傾斜可能反射器と、開口部を透過させられた光を反射して走査反射器に向けて戻すように走査反射器に対向して配置された湾曲した反射器と、を備える。このような構成は、傾斜可能反射器上への光ビームのほぼ垂直な入射、及びビーム複製器に対する傾斜可能反射器のほぼ平行な位置決めを可能にするという点で、上記の欠点がない。
【0027】
図2Aを参照すると、ビーム走査器200は、
図1の表示デバイス100において、走査器の反射器上の光ビームの入射角がほぼ垂直な走査器として使用され得る。
図2のビーム走査器200は、光ビーム201を第1の反射器210に向けて誘導するための導波路204を有するフォトニック集積回路(PIC)202を含む。第1の反射器210は、制御信号の印加時に制御された量だけ傾斜可能である。第1の反射器210は、1軸又は2本の非平行軸を中心に傾斜可能であり得、例えば微小電気機械システム(MEMS)傾斜可能反射器を含み得る。第2の反射器220は第1の反射器210に対向して配置されている。
【0028】
動作中、光ビーム201は、PIC202の導波路204からアウトカップリングされ、任意選択の中継レンズ206によって第1の反射器210の後側211から第1の反射器210の開口部215内に再集束される。光ビーム201は、開口部215を通って伝播すると、光線213で示されるように発散する。第2の反射器220は、光ビーム201を少なくとも部分的に反射して第1の反射器210に向けて戻し、光ビーム201をコリメートして、第1の反射器210に向けて伝播するコリメート光ビーム203を形成するように構成されている。例えば、第2の反射器220は、
図2Aに示すように凹状であり得、第2の反射器220は、例えば放物線形状であり得る。
【0029】
コリメート光ビーム203は、第1の反射器210の傾斜角に応じた角度で、第1の反射器210によって反射されて第2の反射器210に向けて戻される。本明細書では走査ビーム205と呼ばれる二重反射ビームの少なくとも一部は、第2の反射器220を通って伝播し、瞳孔複製導光体240の入力カプラ225上に衝突する。入力カプラ225は、走査ビーム205を瞳孔複製導光体240に結合するように構成された1つ以上の回折格子を含み得る。開口部215の面積は、第1の反射器210全体の反射面積よりもはるかに小さいため、ビーム走査器200の光損失は小さい。例えば、開口部の面積は、第1の反射器210の反射面積の20%~0.001%であり得る。
【0030】
光ビーム201は、偏光素子を使用して折り畳まれ得る光路に沿って、第1の反射器210と第2の反射器220との間のキャビティ222内を進む。例えば、第2の反射器220のコーティング221は偏光選択性であり得、折り畳まれた光路は、簡潔にするために
図2A及び
図2Bに示されていない、光ビーム201の偏光状態を、その光が偏光選択性コーティング221によって反射されている第1の状態から、その光が偏光選択性コーティング221によって透過されている第2の状態に転換する光学素子を含み得る。ビーム走査器200におけるビーム経路の折り畳みのための偏光構成の非限定的な例は、
図2A~
図2Cから省略されており、
図4A及び
図4Bを参照して以下でさらに考察する。
【0031】
第2の反射器220は、第1の反射器210と瞳孔複製導光体240との間の距離dが小さくなるように、第1の反射器210の好適に近くに配置され得る。この距離は、第1の反射器210のサイズ及びその傾斜の角度範囲に依存し得る。一例として、第1の反射器210は、瞳孔複製導光体240対して1mm以下のように近くてもよい。
【0032】
図2Bを参照すると、第1の反射器210は、走査ビーム205を斜角で反射するように傾斜して示されている。開口部215は、集束光ビーム201のウエスト251を収容するのに十分な大きさでなければならない。開口部215は、光ビームの伝播を容易にするために片側又は両側から先細であり得る。入力カプラ225の領域227は、走査ビーム205を瞳孔複製導光体240内に結合するのに十分な幅である。領域227は、第1の反射器210が瞳孔複製導光体240に近接しているため、比較的小さい。
【0033】
図2Cを参照すると、表示デバイス250は、
図2A及び
図2Bのビーム走査器200を使用している。
図2Cの表示デバイス250は、光ビーム201を放射するための光源261と、光源261に結合されたPIC202と、対向する第1の反射器210及び第2の反射器220と、瞳孔複製導光体240と、を含む。第1の反射器210は、制御信号113の印加時に傾斜可能であり、導波路204からアウトカップリングされた光ビーム201を受光するための第1の反射器210を通る開口部215を有する。開口部215は、透明材料を含み得、集束光ビーム及び第1の反射器210の傾斜によりよく適応するように先細であり得る。第2の反射器220は、光ビーム201が第1の反射器210の開口部215を通って伝播した後に、光ビーム201を反射して第1の反射器210に向けて戻すように構成されており、それによって、第1の反射器210によって第2の反射器220に向けて可変角度で反射されたコリメートビームを形成し、走査ビーム205を形成する。走査ビーム205の少なくとも一部は、第2の反射器220を通って伝播し、瞳孔複製導光体240の入力カプラ225上に衝突する。瞳孔複製導光体240の入力カプラ225は、第2の反射器220を通って伝播した走査ビーム205をインカップリングするように構成されている。瞳孔複製導光体240は、走査ビーム205の一部をアウトカップリングするための少なくとも1つのアウトカップリング格子230(
図2Cには2つが示されている)をさらに含み得る。これらの一部は、表示デバイス250のアイボックス252の長さ寸法、すなわち
図2CのX寸法に沿ってオフセットされている。
【0034】
コントローラ255は、光源261及び第1の反射器210に動作可能に結合されており、瞳孔複製導光体240のアウトカップリング格子230によってアウトカップリングされたコリメートビーム部分を走査して、表示デバイス250のアイボックスに角領域の画像を形成するために、制御信号113を第1の反射器210に印加することと連携して、光源261の輝度又は色のうちの少なくとも一方を制御するように構成され得る。フィードバック信号117は、傾斜可能反射器210の現在の傾斜角に関する情報を取得するためにコントローラ255によって使用され得る。フィードバック信号117は、例えば、第1の反射器210のX及びY角度位置の時間的サンプリング、第1の反射器210の特定の所定の傾斜角における同期信号などを含み得る。光源261は、発光ダイオード(LED)、スーパールミネッセント発光ダイオード(SLED)、側面発光レーザダイオード、垂直キャビティ面発光レーザダイオード(VCSEL)などのソリッドステート単一モード又はマルチモード光源に基づき得る、1つ以上のエミッタを含み得る。
【0035】
マルチエミッタ光源は、互いに近接して位置付けされた複数の焦点に集束される、同じ色又は異なる色の複数の光ビームを提供する。例えば、
図3を参照すると、焦点301は、第1の反射器210の共通開口部215内に配置されている。複数の焦点301は、カラー画像の種々の色をサポートし得、かつ/又は表示されている画像の種々の画素又は種々の画素グループに対して種々のエミッタを使用することによって、走査型プロジェクタベースのディスプレイにおいて向上した画像解像度を提供し得る。
【0036】
次に、ビーム走査器200の偏光ベースのビーム折り畳み構成を考察する。最初に
図4Aを参照すると、ビーム走査器400Aは、第1の(傾斜可能)反射器210と、第1の反射器に面する反射偏光子420を含む第2の(コリメート)反射器と、を含む。図示の例では、反射偏光子420は、
図4Aの面内において偏光されたp偏光を反射し、
図4Aの面に対して垂直に偏光されたs偏光を透過するように構成された、直線反射偏光子である。反射偏光子420は、
図2A及び
図2Bのビーム走査器200の第2の反射器220上のコーティングとして実装され得る。収束/発散光ビーム201の光線401は、円偏光である。第1の反射器210と反射偏光子420との間の光路中に配置された好適に配向された1/4波長板(QWP)425は、光線401の偏光状態をp偏光状態に変換し、p偏光状態は反射偏光子420によって反射され戻されて反射光線403を形成する。QWP425を通る反射光線403の伝播により、p偏光状態が変換されて円偏光状態に戻る。第1の反射器210からの反射は、走査光ビーム205の走査光線405の円偏光状態を直交円偏光に反転させる。QWP425を通る3回目の通過により、直交円偏光状態が直線s偏光状態に変換される。この偏光状態で、走査光線405は、直線反射偏光子420を透過させられる。別の例では、反射偏光子BR420は、QWP425の配向及び入力光線401の偏光に対応する変更を伴って、s偏光を反射し、p偏光を透過させるように構成され得る。QWP425は、SR210とBR420との間のどこに位置決めされてもよく、いくつかの例では、第1の反射器210に面する反射偏光子420上、又は反射偏光子420に面する第1の反射器210上に積層され得る。
【0037】
図4Bに目を向けると、ビーム走査器400Bは、コレステリック液晶(ChLC)偏光子423を含む第2の(コリメート)反射器に対向する第1の(傾斜可能)反射器210を含む。ChLC偏光子423は、ChLC材料と同じヘリシティを有する円偏光を反射し、反対のヘリシティの円偏光を透過するように構成され得る。図示の例では、ChLC偏光子423は、円偏光入力光線401を反射し、反射光線403を形成するように構成されている。第1の反射器210からの反射は、走査光線405の円偏光を直交円偏光に反転させ、これは次にChLC偏光子423を透過させられる。したがって、
図4Bの例では、第1の反射器210とChLC偏光子423との間のQWPは不要である。
図4A及び
図4Bでは、右側の反射器420、423は平面として概略的に示されているが、上述のように、第1の反射器に面する凹状の反射面を有し得る。
【0038】
本明細書に記載の例及び実施形態のいずれにおいても、第1の反射器210は、MEMS傾斜可能反射器を含み得る。非限定的かつ例示的な例として、
図5のMEMS走査器500は、2つの直交する軸を中心に傾斜可能反射器510を含む。傾斜可能反射器510、例えばミラー又は回折格子は、反射器510をX軸を中心に傾斜させることを可能にする一対の第1のねじりヒンジ501によって支持され得る。第1のねじりヒンジ501は、傾斜可能反射器510からジンバルリング520まで延在し、ジンバルリング520は、ジンバルリング520を反射器510と一緒にY軸を中心に傾斜させるために、ジンバルリング520から固定ベース522又は媒介する任意選択の第2のジンバルリングまで延在する一対の第2のねじりヒンジ502によって支持されており、固定ベース522は、基板555によって支持され得る。アクチュエータが、X及びY軸を中心とした反射器510の傾斜を作動させるための力を提供するために、傾斜可能反射器510及び又はジンバルリング520の下に配置され得る。アクチュエータは、静電、電磁、圧電などであり得る。静電ミラー作動のために、櫛形駆動装置がねじりヒンジに位置付けされてもよい。例えば、一方のアクチュエータ(図示せず)が反射器510の縁部の下に配置されて、反射器510をX軸を中心に傾斜させ得、一方、他方のアクチュエータ(図示せず)がジンバルリング520の下に配置されて、ジンバルリング520を反射器510と一緒にY軸を中心に傾斜させ得る。
【0039】
反射器510は、入力光ビームが反射器510を通って伝播することを可能にする開口部515を有し得る。開口部515は、例えば、傾斜可能反射器510の中間部分の貫通開口部又は穴であり得、したがって、傾斜可能反射器510はドーナツ状の形状を有する。開口部515は、透明材料で充填され得る。少なくともいくつかの例では、開口部515は、
図5にX及びYで示される傾斜軸の交点における傾斜可能反射器510の中心に位置付けされ得、そのため、傾斜中にその場所は静止したままである。開口部515の中心から離れた場所もまた本開示の範囲内である。開口部515は円形の形状を有するように示されているが、正方形、長方形、スリット形状、又は一般に特定の例に適した任意の他の形状を含むがこれらに限定されない、種々の形状のアパーチャが使用されてもよい。非限定的な例として、傾斜可能反射器510は、1.5mmの直径を有する円形ミラーであり得、開口部515は、0.005~0.2mmの直径を有し得る。
図5はジンバル式反射器を示しているが、SR210を実装するために、ジンバルのないMEMS反射器を含む、開口部を有するジンバルのない傾斜反射器もまた使用され得る。いくつかの例では、リング形状の補強構造が傾斜可能反射器510の裏側に設けられ得る。
【0040】
次に、本開示の傾斜可能反射器の開口部に光を送達するPICの例示的な構成を考察する。
図6Aを参照すると、PIC602は、各々がマルチエミッタ光源660の個々のエミッタ655に光学的に結合された複数の導波路604を含む。導波路604は全て、
図6Bにより詳細に示されているPIC602のアウトカップリング領域662に通じている。各導波路604は、PIC602から導波路604内を伝播する光をアウトカップリングする格子アウトカプラ664によって終端する。アウトカップリング領域662は、
図6Cに示すカップリングレンズ670の焦点面内に配置されている。カップリングレンズ670は、PIC602と第1の反射器210の開口部215との間の光路内に配置されており、第1の(すなわち、傾斜可能である)反射器210の開口部215を通して個々の格子アウトカプラ664によってアウトカップリングされた光ビーム601を集束させる。開口部215は、図示のように先細であり得る。格子アウトカプラ664は互いに近くに配置されており、集束光ビーム601の焦点が互いの近くに配置されて、全て開口部215内に収まることを確実にする。
【0041】
種々のエミッタ655は、同じ色チャネルの波長で、又は種々の色チャネルの波長で光を放射し得る。種々のエミッタ655の放射波長が同じ色チャネルに属するか、又はモノクロ画像用の輝度チャネルに属する場合、PIC602に基づく走査型表示デバイスの空間分解能は、第1の反射器210の任意の瞬間傾斜角で画像のいくつかの画素を同時に投影することによって増加され得る。種々のエミッタ655の放射波長が種々の色チャネルに属する場合、カラー画像が生成され得る。
図6A及び
図6Bに示す例では、非エミッタ655の合計は3つの異なるグループに属しており、3つのエミッタ655Rは赤色チャネルの光を供給し、3つのエミッタ655Gは緑色チャネルの光を供給し、3つのエミッタ655Bは青色チャネルの光を供給する。したがって、3つの導波路604Rは赤色チャネルの光を搬送し、3つの導波路604Gは緑色チャネルの光を搬送し、3つの導波路604Bは青色チャネルの光を搬送する。3つのアウトカプラ664Rは赤色チャネルの光をアウトカップリングし、3つのアウトカプラ664Gは緑色チャネルの光をアウトカップリングし、3つのアウトカプラ664Bは青色チャネルの光をアウトカップリングする。チャネルごとのエミッタの実際の数は、1つのエミッタ及び1つの導波路から多くの(例えば18以上の)エミッタ及び導波路まで変動し得る。
【0042】
カップリングレンズ670は、図示のように片側又は両側で先細であり得る開口部215を通して全ての色チャネルの光ビーム601を再集束させる。次いで、全ての色チャネルの光ビーム601が、
図2A~
図2C、
図3、並びに
図4A及び
図4Bを参照して上記で説明したように伝播する。第2の反射器は、光ビーム601が第1の反射器210の開口部215を通って伝播した後に、全ての色チャネルの光ビーム601を少なくとも部分的に反射して第1の反射器に向けて戻すように構成されており、それにより、第1の反射器210によって第2の反射器220に向けて可変角度で反射されるコリメートビームを形成する(
図2A~
図2C)。第2の反射器220は、第1の反射器210によって反射された各コリメートビームの少なくとも一部を透過するように構成されている。マルチビームの共伝播は、
図3を参照して上述されている。
【0043】
共伝播するコリメートビームの正確な数は、使用されたエミッタの数に対応する。同じ又は異なる色チャネル、輝度チャネルなどの1つ、2つ、又はそれ以上のエミッタ及びビームが存在してもよい。種々のエミッタによって放射された同等の走査コリメートビームは、わずかに異なる伝播角度を有することとなるが、この違いは、全てのエミッタ及び走査ミラー(すなわち、第1の反射器210)のタイミングを制御するコントローラによって考慮され得る。光学設計ソフトウェアにおけるカップリングレンズ670のレンダリングは、3つの隣接する格子アウトカプラ664によってアウトカップリングされた3つの光ビームの場合について
図6Dに示されている。
【0044】
いくつかの例では、PICの同じ導波路内の伝播のために種々の色チャネルの光が合成され得、より小型で効率的な全体構成が得られる。非限定的な例について
図7Aを参照すると、PIC702のアウトカップリング領域762は、6つのアウトカプラ764を含み、各アウトカプラ764は、赤色チャネルエミッタ755R、緑色チャネルエミッタ755G、及び青色チャネルエミッタ755Bの光を含む合成光ビームをアウトカップリングする。合成は、
図7Aにおいて細く黒い矢印によって概略的に表されている。なお、合成機能は、アウトカプラ764ごとに波長分割マルチプレクサ素子によって提供され得る。これは、例えば、個々の色チャネルが多重化されていない
図6Bと比較して、より小型な全体構成をもたらし、かつ/又はより多くのアウトカップリングされた色チャネル光ビームを可能にする。
【0045】
図7Bに目を向けると、マルチエミッタ光源760は、赤色チャネルエミッタ755R、緑色チャネルエミッタ755G、及び青色チャネルエミッタ755Bを含む。簡潔にするために、各色チャネルの3つのエミッタのみが示されている。マルチエミッタ光源760は、赤色エミッタ755R、緑色エミッタ755G、及び青色エミッタ755Bの3つ組ごとに1つのコンバイナ素子774である、複数のコンバイナ素子774を含むPIC702に光学的に結合されている。各コンバイナ素子774は、対応する赤色エミッタ755R、緑色エミッタ755G、及び青色エミッタ755Bを、対応するアウトカプラ764で終端する共通導波路704内に光学的に結合する。少なくとも1つのコンバイナ素子774、導波路704、及びアウトカプラ764が設けられ得る。
【0046】
ここで、コンバイナ素子774の例示的な構成を考察する。
図8Aを参照すると、マルチモード干渉(MMI)カプラ874Aは、合成光をアウトカプラ764に誘導する共通導波路704内での伝播のために、赤色エミッタ755R、緑色エミッタ755G、及び青色エミッタ755Bの光ビームを合成する。MMIカプラ874Aは、対応する赤色エミッタ755R、緑色エミッタ755G、及び青色エミッタ755Bによって放射される赤色チャネル、緑色チャネル、及び青色チャネルの各々の光について、モード間干渉の最大値がMMIカプラ874A内の導波路704の先端の位置と一致するように、MMIカプラ874A内のいくつかの伝播モードを励起するように構成されている。
【0047】
図8Bに目を向けると、リングコンバイナ素子874Bは、複数のリング共振器875R、875G、及び875Bを含み、各リング共振器875R、875G、及び875Bは、それぞれ赤色エミッタ755R、緑色エミッタ755G、及び青色エミッタ755Bのうちの特定の1つの光を、光をアウトカプラ764に誘導する共通導波路704に光学的に結合する。各リング共振器875R、875G、及び875Bは、赤色エミッタ755R、緑色エミッタ755G、及び青色エミッタ755Bの特定の1つの光を高効率でインカップリング及びアウトカップリングする一方で、他のエミッタの光をインカップリング又はアウトカップリングしないように構成されている。
【0048】
ここで
図8Cを参照すると、方向性カプラコンバイナ素子874Cは、共通導波路704とともに形成された方向性カプラ881、882を含む。
図8Cに示す非限定的な例では、第1の方向性カプラ881は赤色エミッタ755Rに結合されており、第2の方向性カプラ882は青色エミッタ755Bに結合されており、共通導波路704は緑色エミッタ755Gに結合されている。
【0049】
図8Dを参照すると、コンバイナ素子874Dは、キャビティ890、複数の入力導波路891R、891G、891B、及び出力導波路892を含む。各入力導波路891R、891G、891Bは、赤色チャネル、緑色チャネル、及び青色チャネルの光源をそれぞれキャビティ890に光学的に結合する。光源は、簡潔にするために示されていない。キャビティ890は、実効誘電率ε(x,y)の不均一な空間分布を有する。実効誘電率ε(x,y)は、例えば一連のドットを含むナノ構造によって決定される。ナノ構造は、各光源によって放射された光を出力導波路892に結合するための逆最適化法を用いて最適化されている。
【0050】
コンバイナ素子874Dの逆最適化のプロセスは、
図8Dの上部のビュー894、894R、894G、及び894Bとそれぞれの下部のビュー895、895R、895G、及び895Bとの比較によって示されている。ビュー894は、キャビティ890内にシードナノ構造896を有する最適化されていないコンバイナ素子を示している。赤色チャネル、緑色チャネル、及び青色チャネルの光の波計算結果は、それぞれ上部の894R、894G、及び894Bビューに示されており、入力導波路891R、891G、891Bのうちの1つから出力導波路892への光伝播が発生している。赤色チャネル、緑色チャネル、及び青色チャネルの光は、ほとんどが出力導波路892を逸れていることが分かる。次いで、シミュレーションソフトウェアが、キャビティ890のシードナノ構造896を摂動及び最適化し、赤色チャネル、緑色チャネル、及び青色チャネルの光を再伝播し、ビュー895に示す最終ナノ構造898に到達するように構成されている。キャビティ890内の最終ナノ構造898は、それぞれ下部のビュー895R、895G、及び895Bに示すように、キャビティ890が入力導波路891R、891G、891Bから出力導波路892に赤色チャネル、緑色チャネル、及び青色チャネルの光を高効率で伝播することを可能にする、実効誘電率ε(x,y)の最適化された不均一な空間分布を有する。
【0051】
図9Aを参照すると、PIC902Aは、導波路904と、導波路904からの光ビーム901をアウトカップリングする斜めの平面折り返しミラー964Aと、を含む。折り返しミラー964Aは、例えば、PIC902の方向性エッチングによって製造され得、ここで、折り返しミラー964Aは、エッチングされたスリット状の開口部又は切り欠き984の平行面のうちの1つにすぎない。補助導波路986、例えば光ファイバ又はファイバ状導波路の薄いセクションは、折り返しミラー964Aによって反射された光ビーム901を第1の反射器210の開口部215に伝達する、すなわちその中で誘導するために、PIC902Aから第1の反射器210の開口部215に向けて延在し得る。補助導波路986は、補助導波路986によって支持されているか、又は補助導波路986から延在するレンズ素子988で終端し得る。レンズ素子988は、開口部215を通る光ビーム901の集束を容易にする。
【0052】
図9Bに目を向けると、PIC902Bは、
図9AのPIC902Aと類似しており、折り返しミラー964Bのみが湾曲し、光ビーム901を補助導波路986内に集束させる軸外凹面反射器を形成している。
【0053】
いくつかの補助導波路986が合成されて、例えばマルチエミッタ光源の種々のエミッタからの種々の光ビームを伝達し得る。一例として
図9Cを参照すると、3つの補助導波路986は、赤色チャネル、緑色チャネル、及び青色チャネル901R、901G、及び901Bの光をそれぞれアウトカップリングするために、格子及び/又は折り返しミラーであり得る3つのアウトカプラ964Cに光学的に結合されている。補助導波路986は、PIC902Cに対して非平行角度、例えば垂直に配置された共通基板987内に形成され得る。
【0054】
図9Dを参照すると、PICアウトカプラ902Dが側面図及び正面図で示されている。
図9DのPICアウトカプラ902Dは、導波路904のアレイと、導波路904からの光ビーム901をアウトカップリングする斜めの平面折り返しミラー964Aと、を含む。アウトカップリングは、
図9Dの上方向に生じる。折り返しミラー964Aは、例えば、アレイの全ての導波路904にわたるPIC902の方向性エッチングによって製造され得、折り返しミラー964Aは、エッチングされたスリット状の開口部又は切り欠き984の平行面のうちの1つにすぎない。PICアウトカプラ902Dは、
図9AのPIC902Aと類似しているが、補助導波路986の代わりにビーム形成光学系970を含む。形成光学系970(
図9D)は、瞳孔中継器として動作する。具体的には、形成光学系970は、開口部215において出力ビームを再集束させながら、折り返しミラー964Aによって折り返された出力ビーム901を開口部215に伝達する。
【0055】
ここで
図10、さらに
図2A~
図2C及び
図4Aを参照すると、例えば、
図2A~
図2Cのビーム走査器200を使用して光ビームを走査するための方法1000は、光ビーム、例えばPICの導波路、例えばPIC202の導波路204内の光ビーム201を、第1の反射器210の開口部215を通して、第1の反射器210に対向する第2の反射器220に誘導する(
図10;1002)ことを含む。第1の反射器210は、第1の反射器210に制御信号が印加されると傾斜可能である。開口部215を通り第1の反射器210に向けて伝播された光ビーム201は、少なくとも部分的に反射され(1004)、それによってコリメートビーム203を形成する。コリメートビーム203は、(印加された制御信号に応じて)第1の反射器210によって可変角度で反射されて(1006)、第2の反射器220に向けて戻される。次いで、第1の反射器210によって反射されたコリメートビーム203の少なくとも一部は、第2の反射器220を通って伝播される(1008)。制御信号は、第1の反射器210に印加されて(1010)、第1の反射器210を傾斜させ、それによって、第2の反射器220を通って伝播されたコリメートビーム205を角度走査する。
【0056】
いくつかの例では、カップリングレンズ、例えば
図2Aのカップリングレンズ206は、ステップ1002において、PIC202の導波路204によって誘導された光ビーム201を第1の反射器210の開口部215に結合するために使用される。第2の反射器220は、偏光選択性であり得、例えば、偏光選択性コーティング221(
図2A)及び/又は反射性偏光子420(
図4A)を含み得る。方法1000は、光路上の光ビーム201の偏光を、第2の反射器220上への光ビーム201の第1の入射と第2の入射との間で、光ビーム201が第2の反射器によって反射される第1の偏光状態から、コリメートされた走査光ビーム205が第2の反射器220を通って伝播する第2の偏光状態に変換することをさらに含み得る。第1の入射において、発散光ビーム201は、第2の反射器220又は420から少なくとも部分的に反射され(1004)、第2の入射において、コリメートされた走査光ビーム205は、第2の反射器220又は420を透過させられる(1008)。
【0057】
図11に目を向けると、拡張現実(AR)ニアアイディスプレイ1100は、
図2Cの表示デバイス250の一例である。ARニアアイディスプレイ1100は、一対の眼鏡の形状因子を有するフレーム1101を含む。フレーム1101は、各眼に対して、本明細書に記載のビーム走査器を含むプロジェクタ1108、プロジェクタ1108に光学的に結合された瞳孔複製導光体1110、視線追跡カメラ1104、及び複数の照明器1106を支持する。照明器1106は、アイボックス1112を照明するために瞳孔複製導光体1110によって支持され得る。プロジェクタ1108は、ユーザの眼に投影される角領域の画像を搬送する光ビームのファンを提供する。瞳孔複製導光体1110は、光ビームのファンを受光し、光ビームのファンの各ビームの複数の横方向にオフセットされた平行なコピーを提供し、それによって、投影された画像をアイボックス1112にわたって拡張する。
【0058】
プロジェクタ1108では、マルチエミッタレーザ源が使用され得る。マルチエミッタレーザチップの各エミッタは、同じ色チャネル又は異なる色チャネルの放射波長で画像光を放射するように構成され得る。同じマルチエミッタレーザチップの種々のエミッタの放射波長は、レーザ源のスペクトル幅を有するスペクトル帯域を占有し得る。
【0059】
いくつかの例では、プロジェクタ1108は、同じ色チャネル又は異なる色チャネルの波長で光を放射する2つ以上のマルチエミッタレーザチップを含み得る。ARアプリケーションでは、瞳孔複製導光体1110は、ユーザが、各眼に投影され外界ビューと重ね合わされた画像とともに、外界を見ることを可能にするために、透明又は半透明であり得る。各眼に投影された画像は、実世界のビューに没入しているように見えるように、シミュレートされた視差で配置されたオブジェクトを含み得る。
【0060】
視線追跡カメラ1104の目的は、ユーザの両眼の位置及び/又は向きを判定することである。ユーザの眼の位置及び向きが分かると、視線輻輳距離及び方向が決定され得る。プロジェクタ1108によって表示されるイメージは、ユーザの視線を考慮し、表示された拡張現実風景へのユーザの没入のより良好な忠実度のために、かつ/又は拡張現実との対話の特定の機能を提供するために、動的に調整され得る。動作中、照明器1106は、対応するアイボックス1112で眼を照明して、視線追跡カメラが眼の画像を取得することを可能にするとともに、基準反射、すなわちグリントを提供する。グリントは、取り込まれた眼の画像内の基準点として機能することができ、グリント画像に対する瞳孔画像の位置を判定することによって視線方向の判定を容易にする。照明光でユーザの注意をそらすことを回避するために、照明光はユーザに見えないようにされ得る。例えば、アイボックス1112を照明するために赤外光が使用され得る。
【0061】
視線追跡カメラコントローラ1107の機能は、視線追跡カメラ1104によって取得された画像を処理して、ユーザの両眼の視線方向をリアルタイムで判定することである。いくつかの例では、画像処理及び眼の位置/向き判定機能は、ARニアアイディスプレイ1100の図示されていない中央コントローラによって実行され得る。中央コントローラはまた、判定された眼の位置、眼の向き、視線方向、眼の輻輳などに応じて、ユーザに表示される画像を生成するためにプロジェクタ1108に制御信号を提供し得る。
【0062】
図12に目を向けると、HMD1200は、AR/VRウェアラブルディスプレイシステムの一例である。HMD1200は、
図2Cの表示デバイス250の別の例である。HMD1200の機能は、コンピュータ生成イメージで物理的な実世界の環境のビューを増強すること、及び/又は完全に仮想の3Dイメージを生成することである。HMD1200は、前部本体1202及びバンド1204を含み得る。前部本体1202は、確実かつ快適にユーザの眼前に設置されるように構成されており、バンド1204は、前部本体1202をユーザの頭部上に固定するために伸張され得る。ユーザにAR/VRイメージを提示するために、ディスプレイシステム1280は前部本体1202に配置され得る。前部本体1202の側面1206は、不透明又は透明であり得る。
【0063】
いくつかの例では、前部本体1202は、HMD1200の加速度を追跡するためのロケータ1208及び慣性計測ユニット(IMU)1210と、HMD1200の位置を追跡するための位置センサ1212と、を含む。IMU1210は、HMD1200の動きに応じて1つ以上の計測信号を生成する位置センサ1212のうちの1つ以上から受信した計測信号に基づいて、HMD1200の位置を示すデータを生成する電子デバイスである。位置センサ1212の例には、1つ以上の加速度計、1つ以上のジャイロスコープ、1つ以上の磁力計、動きを検出する別の好適なタイプのセンサ、IMU1210の誤り訂正に使用されるタイプのセンサ、又はそれらの何らかの組合せが含まれる。位置センサ1212は、IMU1210の外部、IMU1210の内部、又はそれらの何らかの組合せで位置付けされ得る。
【0064】
ロケータ1208は、仮想現実システムがHMD1200全体の位置及び向きを追跡できるように、仮想現実システムの外部撮像デバイスによって追跡される。IMU1210及び位置センサ1212によって生成された情報は、HMD1200の位置及び向きの追跡確度を向上させるために、ロケータ1208を追跡することによって取得された位置及び向きと比較され得る。正確な位置及び向きは、ユーザが3D空間内で移動及び旋回するときに適切な仮想風景をユーザに提示するために重要である。
【0065】
HMD1200は、HMD1200の一部又は全部を取り囲む局所領域の深度情報を記述するデータを取り込む深度カメラアセンブリ(DCA)1211をさらに含み得る。そのために、DCA1211は、レーザレーダ(LIDAR)又は同様のデバイスを含み得る。深度情報は、3D空間におけるHMD1200の位置及び向きの判定のよりよい確度のために、IMU1210からの情報と比較され得る。
【0066】
HMD1200は、リアルタイムでユーザの眼の向き及び位置を判定するための視線追跡システム1214をさらに含み得る。取得された眼の位置及び向きはまた、HMD1200がユーザの視線方向を判定し、それに応じて表示システム1280によって生成された画像を調整することを可能にする。一例では、ユーザの視線の輻輳角(vergence angle)、すなわち輻輳角(convergence angle)が判定される。判定された視線方向及び輻輳角はまた、視野角及び眼の位置に依存する視覚的アーチファクトのリアルタイム補償に使用され得る。さらに、決定された輻輳角及び凝視角は、ユーザとの対話、オブジェクトの強調、オブジェクトの前景への移動、追加のオブジェクト又はポインタの作成などに使用され得る。例えば、前部本体1202に組み込まれた小型スピーカのセットを含むオーディオシステムも提供され得る。
【0067】
本開示の実施形態及び例は、人工現実システムを含むか、又は人工現実システムとともに実装され得る。人工現実システムは、視覚情報、オーディオ、タッチ(体性感覚)情報、加速度、バランスなどの感覚を通じて取得された外界に関する感覚情報を、ユーザに提示する前に何らかの方法で調整する。非限定的な例として、人工現実は、仮想現実(VR)、拡張現実(AR)、複合現実(MR)、ハイブリッドリアリティ、又はそれらの何らかの組合せ及び/若しくは派生物を含み得る。人工現実コンテンツは、完全に生成されたコンテンツ又は取り込まれた(例えば、実世界の)コンテンツと合成されて生成されたコンテンツを含み得る。人工現実コンテンツは、ビデオ、オーディオ、体性若しくは触覚フィードバック、又はそれらの何らかの組合せを含み得る。このコンテンツのいずれも、視聴者に三次元効果を生成するステレオビデオなど、単一のチャネル又は複数のチャネルで提示され得る。さらに、いくつかの実施形態及び例では、人工現実はまた、例えば、人工現実でコンテンツを作成するために使用される、かつ/又はそうでなければ人工現実で使用される(例えば、人工現実でアクティビティを実行する)アプリケーション、製品、アクセサリ、サービス、又はそれらの何らかの組合せに関連付けられ得る。人工現実コンテンツを提供する人工現実システムは、ホストコンピュータシステムに接続されたHMDなどのウェアラブルディスプレイ、スタンドアロンHMD、眼鏡の形状因子を有するニアアイディスプレイ、モバイルデバイス若しくはコンピューティングシステム、又は1人以上の視聴者に人工現実コンテンツを提供することができる任意の他のハードウェアプラットフォームを含む、様々なプラットフォーム上に実装され得る。
【0068】
本開示は、本明細書に記載の特定の実施形態及び例によって範囲が限定されるものではない。実際、本明細書に記載されたものに加えて、他の様々な実施形態、例、及び修正が、前述の説明及び添付の図面から当業者には明らかであろう。したがって、そのような他の実施形態、例、及び修正は、本開示の範囲内に入ることが意図されている。さらに、本開示は、特定の目的のための特定の環境における特定の実施態様の文脈で本明細書に記載されているが、当業者は、その有用性がそれに限定されず、本開示が任意の数の目的のための任意の数の環境において有益に実装され得ることを認識するであろう。したがって、以下に記載される特許請求の範囲は、本明細書に記載される本開示の全範囲を考慮して解釈されるべきである。
【国際調査報告】