(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-06
(54)【発明の名称】低いシグナル処理負荷において高い距離解像度を有するレーダ方法とレーダシステム
(51)【国際特許分類】
G01S 13/34 20060101AFI20230830BHJP
G01S 13/931 20200101ALN20230830BHJP
【FI】
G01S13/34
G01S13/931
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023507671
(86)(22)【出願日】2021-07-09
(85)【翻訳文提出日】2023-02-03
(86)【国際出願番号】 DE2021200092
(87)【国際公開番号】W WO2022033639
(87)【国際公開日】2022-02-17
(31)【優先権主張番号】102020210079.9
(32)【優先日】2020-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】322007626
【氏名又は名称】コンチネンタル・オートナマス・モビリティ・ジャーマニー・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】ヴィンターマンテル・マルクス
【テーマコード(参考)】
5J070
【Fターム(参考)】
5J070AB18
5J070AB21
5J070AB24
5J070AC02
5J070AC06
5J070AD06
5J070AF03
5J070AH31
5J070AK15
(57)【要約】
本件によれば、少なくとも近似的に同じシングルシグナルのシーケンスを包含している送信シグナルを出力するための送信手段を有している周辺を捕捉するためのレーダシステム用の方法であって、シングルシグナルのシーケンスに渡って、その特に中心周波数によって表される周波数シフト、並びに、その時間的間隔が、場合によっては、任意であり、変化し得、且つ、少なくとも近似的にゼロ平均である部分を除いて、少なくとも近似的に線形に変更される、但し、時間的間隔の相対的な変更の絶対値が、周波数シフトの相対的な変更の絶対値に対して、少なくとも近似的に二倍の大きさであり、これらの変更の符号が逆であることを特徴とする方法が、開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも近似的に同じシングルシグナルのシーケンスを包含している送信シグナルを出力するための送信手段を有している周辺を捕捉するためのレーダシステム用の方法であって、
シングルシグナルのシーケンスに渡って、その特に中心周波数によって表される周波数シフト、並びに、その時間的間隔が、任意であり、変化し得、且つ、少なくとも近似的にゼロ平均である部分を除いて、少なくとも近似的に線形に変更される、但し、時間的間隔の相対的な変更の絶対値が、周波数シフトの相対的な変更の絶対値に対して、少なくとも近似的に二倍の大きさであり、これらの変更の符号が逆であることを特徴とする方法。
【請求項2】
該周波数シフトが、時間的間隔、及び/或いは、シングルシグナルの位相シフトに、乱数的な、乃至、疑似乱数的な割合分、累積されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
シングルシグナルの周波数が、線形に変調され、周波数変調の傾きが、全てのシングルシグナルに対して少なくとも近似的に同じであることを特徴とする先行請求項のうち何れか一項に記載のレーダシステム用の方法、但し、個々の送信シグナルは、以下、周波数ランプと呼ばれる。
【請求項4】
以下、k=0,…,K-1と番号が振られるKヶの周波数ランプが、夫々、以下、i=0,…,I-1と番号が降られるIヶのデジタル受信値を、特に好ましくは、各々複数の受信チャンネルに対して収集し、各々I・Kヶの受信値に対して、二次元の離散フーリエ変換を、特に好ましくは、不完全に、一次元の高速フーリエ変換を用いて実施することを特徴とする請求項3に記載の方法、但し、以下、該受信値インデックス・次元iから転換後に得られる次元は、距離ゲートj=0,…,J-1と、そして、周波数ランプ・次元から得られる次元は、ドップラーゲートl=0,…,L-1と呼ばれる。
【請求項5】
周波数シフトの線形な変化、及び、個々の周波数ランプの時間的な間隔に起因して、オブジェクトによって反射した送信シグナルの受信シグナルが、二次元の離散フーリエ変換後、該オブジェクトが、レーダシステムへ近づく、乃至、これから遠ざかる様に動いている場合であっても、即ち、相対的なラジアル方向への挙動コンポーネントを有していても、鋭いパワーピークとなることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
周波数ランプの周波数シフトの線形変化が、オブジェクトのラジアル方向の相対速度の割出しのために、そのパワーピークのポジションを、二次元の離散フーリエ変換後に、距離ゲート・次元jに線形的に依存する分をドップラーゲート・次元Iにおいて修正することによって考慮され、線形性ファクタは、複数の周波数ランプに渡る周波数シフトの変化と個々の周波数ランプ中の受信期間内における周波数の変化の商から得られ、パワーピークの位置は、好ましくは、これにより、距離ゲート・次元j、及び/或いは、ドップラーゲート・次元I用に、通常は、整数ではない、値が得られるが、補間により得られることを特徴とする先行請求項4及び5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
個々の周波数ランプの周波数シフトの線形な変化が、周波数ランプk=0,…,K-1毎のIヶの受信値の一次元の離散フーリエ変換後に、距離ゲート・次元j内に得られる値の位相が、2π・j・k/Kの積に比例する位相部分の分修正されることによって、考慮され、比例ファクタが、複数の周波数ランプに渡る周波数シフトの変化と個々の周波数ランプ中の受信期間内の周波数の変化の商から得られ、更に、修正は、好ましくは、長さ1の複素のポインタと対応する位相を掛け合わせることによって実現できることを特徴とする先行請求項4及び5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
Kヶの個々の送信信号のシーケンスが、周期的に反復され、この際、個々の送信シグナルに渡る線形な周波数シフト変化の傾きが、シーケンス毎に、少なくとも複数のシーケンスのうちの一回において、特に、ラジアル方向の距離測定精度、及び/或いは、相対速度測定精度を高める、及び/或いは、他のレーダシステムに起因する妨害に対して堅牢にするために、変更されることを特徴とする先行請求項のうち何れか一項に記載の方法。
【請求項9】
個々の送信シグナルが、周波数ランプになっており、逆勾配の傾きを有する二つのサイクルが、オブジェクトのラジアル方向の距離測定精度、及び/或いは、相対速度測定精度を正確にするために使用され、該二つのサイクル内で得られるパワーピークのポジションからは、二次元の離散フーリエ変換後、本質的には、ドップラーゲート・次元内の合計と差のみが用いられ、距離ゲート・次元は、用いられないことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
Kヶの個々の周波数ランプのシーケンスが、周期的に反復され、その際、周波数ランプ自体の傾きが、シーケンス毎に、少なくとも一回のシーケンスにおいて、特に、他のレーダシステムからの妨害に対して堅牢にするために、変更されることを特徴とする先行請求項のうち何れか一項に記載の方法。
【請求項11】
Kヶの個々の送信シグナルのシーケンスが、周期的に反復され、時間的な間隔の平均がシーケンス毎に、少なくとも一回のシーケンスにおいて、特に、ラジアル方向の相対速度の割出しにおける多義性を解決するために、及び/或いは、他のレーダシステムからの妨害に対して堅牢にするために、変更されることを特徴とする先行請求項のうち何れか一項に記載の方法。
【請求項12】
複数の送信アンテナ及び/或いは受信アンテナによって、複数の受信チャンネルを実現し、I・K・受信値の二次元の離散フーリエ変換の他、受信チャンネルによる、乃至、受信チャンネルを生成するためのデジタルビームフォーミングも実施されることを特徴とする先行請求項のうち何れか一項に記載の方法。
【請求項13】
少なくとも近似的に同じシングルシグナルのシーケンスを包含している送信シグナルを出力するための送信手段を有している周辺を捕捉するためのレーダシステムであって、
シングルシグナルのシーケンスに渡って、その特に中心周波数によって表される周波数シフト、並びに、その時間的間隔が、任意であり、変化し得、且つ、少なくとも近似的にゼロ平均である部分を除いて、少なくとも近似的に線形に変更される、但し、時間的間隔の相対的な変更の絶対値が、周波数シフトの相対的な変更の絶対値に対して、少なくとも近似的に二倍の大きさであり、これらの変更の符号が逆であることを特徴とするレーダシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーダシステム用の方法(乃至、レーダシステムを稼働させるための方法)及び車両内のドライバーアシストシステムのために用いるレーダシステムに関する。本発明において、該レーダシステムは、低いシグナル処理負荷において高い距離解像度を有する。
【背景技術】
【0002】
従来の技術
車両にはますます、センサーシステムを用いて周辺部を捕捉し、それにより認識された交通状況から車両の自動的なリアクションを導き出す、及び/或いは、ドライバーに指示を出す、特に好ましくは、警告するドライバー・アシスタント・システムが装備される様になってきている。尚、これらは、快適機能と安全機能に分類される。
【0003】
快適機能としては、現時点の開発においては、全ての速度領域におけるアダプティブな速度回帰制御(FSRA=Full Speed Range Adaptive Cruise Control)が、重要な役割を果たしている。車両は、交通状況が許す場合、ドライバーが設定した希望速度に自己速度を制御するが、状況が適さない場合、その交通状況に自己速度を自動的に適合させる。更には、少なくとも部分的に自動化された車線変更機能が拡張された車線変更アシスタント(Lane Change Assist)の重要性も増してきている。
【0004】
快適性の向上に加え、安全機能にも更に焦点が向けられているが、緊急時における制動距離、乃至、停止距離の短縮も重要な課題である。このようなドライバー・アシスタント機能には、ブレーキが効き始めるまでの時間を短縮するために自動的にブレーキに与圧をかけておくもの(プレフィル機能)から自律的緊急ブレーキに至るまで様々なものがある。
【0005】
上記のようなドライバー・アシスタント・システム用には、現在、主にレーダセンサが採用されている。これは、悪い気象条件下でも信頼性高く機能し、オブジェクトへの間隔だけでなく、ドップラー効果によって、ラジアル方向の相対速度も直接的に測定できる。送信周波数としては、特に、24と77GHzが採用されている。
【0006】
上記の機能は、相応に長いセンサ到達範囲と高い距離測定精度・解像度、並びに、分解能を必要としている。高い距離解像度とその分解能は、車載レーダセンサ類が有する(その小さな寸法故の)少なくとも部分的に不十分な角解像度及びその分解能を補うことができるため重要である。しかしながら、長い到達距離と高い距離解像度とが同時に必要とされるが、その様な車載可能なシグナルプロセッサは、現時点では、限定的にしか使用できない、乃至、非常に高価であるため実現することが困難な程に高いデジタル・シグナル・プロセッシング・コストが必要となる。
【0007】
DE102013200404A1及びWO2018/086783A1には、程々のデジタル・シグナル・プロセッシング用のコストにおいて長い到達距離と高い距離解像度を可能にする方法が提案されている。しかしながら、これらの方法は、特に、ラジアル方向の相対速度が高い場合には、高い距離解像度と言う目標を達成できないのみならず、低い感度、即ち、短い到達距離に甘んじている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題、解決方法、並びに、長所
本発明の課題は、相対的に動いているオブジェクトに対しても、程々のデジタル・シグナル・プロセッシング用のコストにおいて、長い到達距離と高い距離解像度の両立を実現し得るレーダセンサ用の方法、並びに、レーダセンサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題は、原則的に、請求項1及び13に記載のレーダ方法及びレーダシステムによって解決される。本発明の目的にかなった実施形態は、従属請求項において請求される。本発明では、オブジェクトまでの距離と相対速度の双方に対して、高い測定精度と解像度を実現するために、レーダ変調とシグナル配線を如何にデザインするかが開示されている。
【0010】
本発明の長所は、長い到達距離と高い距離解像度の双方を有するセンサを、例えば、次世代の野心的なドライバーアシストシステムに実装するために、現時点において自動車用として使用可能、且つ、比較的安価なシグナルプロセッサによって、実現可能であるということである。この様なシグナルプロセッサは、通常、単純な構成、並びに、電力消費が少ないと言う長所も有している。
【0011】
発明の詳細な説明
周辺を捕捉するためのレーダシステム用の本発明に係る方法は、少なくとも近似的に同じシングルシグナルのシーケンスを包含している送信シグナルを出力するための送信手段を有している。シングルシグナルのシーケンスにおいて、その(特にその中央周波数によって示される)周波数シフト、並びに、その(場合によっては、それぞれ、変化し、少なくとも近似的にゼロ平均である部分を除く)時間的な間隔は、少なくとも近似的に線形に変更される。その際、時間的間隔の相対的変化の絶対値は、周波数シフトの相対変化と比較して少なくとも近似的に二倍大きいが、これら変化の正負の符号は、逆である。
【0012】
目的に適って、該周波数シフトは、時間的間隔、及び/或いは、シングルシグナルの位相シフトに、乱数的な、乃至、疑似乱数的な割合分、累積させることができる。
【0013】
シングルシグナルの周波数は、線形変調され、且つ、全てのシングルシグナル用の周波数変調の傾きは、少なくとも近似的に同じであることが好ましいが、ここで言う個々の送信シグナルとは、周波数ランプのことである。
【0014】
本方法の更なる有利な形態によれば、以下、k=0,…,K-1と番号が振られるKヶの周波数ランプに対しては、それぞれ、以下、i=0,…,I-1と番号が振られるIヶのデジタル受信値を、各々の受信チャンネルに対して収集することができる。続いて、それぞれのI・K・受信値に対しては、二次元の離散フーリエ変換、場合によっては、完全にではなく、好ましくは、一次元の高速フーリエ変換を実施することができる。この際、受信値インデックス・次元iから転換後に得られる次元は、距離ゲートj=0,…,J-1と、そして、周波数ランプ・次元から得られる次元は、ドップラーゲートl=0,…,L-1であると言う事ができる。
【0015】
更に、周波数シフトの線形な変化、及び、個々の周波数ランプの時間的な間隔に起因して、オブジェクトによって反射した送信シグナルの受信シグナルは、二次元の離散フーリエ変換後、該オブジェクトが、レーダシステムへ近づく、乃至、これから遠ざかる様に動いている場合であっても、即ち、相対的なラジアル方向への挙動コンポーネントを有していても、鋭いパワーピークとなる。
【0016】
周波数ランプの周波数シフトの線形な変化は、オブジェクトのラジアル方向の相対速度の割出しのために、本質的には、そのパワーピークのポジションを、二次元の離散フーリエ変換後に、距離ゲート・次元jに線形的に依存する分をドップラーゲート・次元Iにおいて修正することによって、有利に考慮することができる。その際、複数の周波数ランプに渡る周波数シフトの変化と個々の周波数ランプ中の受信期間内における周波数の変化の商から得られる線形性ファクタが、得られる。パワーピークのポジションは、好ましくは、補間によって割出され、これにより、距離ゲート・次元j、及び/或いは、ドップラーゲート・次元I用に、通常は、整数ではない、値が得られる。
【0017】
この目的のため、個々の周波数ランプの周波数シフトの線形な変化は、周波数ランプk=0,…,K-1毎のIヶの受信値の一次元の離散フーリエ変換後に、距離ゲート・次元j内に得られる値の位相が、2π・j・k/Kの積に比例する位相部分の分修正されることによって、考慮することができるが、比例ファクタは、本質的に、複数の周波数ランプに渡る周波数シフトの変化と個々の周波数ランプ中の受信期間内の周波数の変化の商から得られる。その際、該修正は、長さ1の複素のポインタと対応する位相を掛け合わせることによって実現できる。
【0018】
Kヶの個々の送信信号のシーケンスは、周期的に反復できるが、個々の送信シグナルに渡る線形な周波数シフト変化の傾きは、シーケンス毎に、少なくとも時折(即ち、少なくとも一回のシーケンス、或いは、複数のシーケンスのうちの一回において)、特に、ラジアル方向の距離測定精度、及び/或いは、相対速度測定精度を高める、及び/或いは、他のレーダシステムに起因する妨害に対して堅牢にするために、バリエーションを持たせてある。
【0019】
個々の送信シグナルは、周波数ランプになっていることが好ましいが、逆勾配の、要するに、ファクタ-1異なる傾きの二つのサイクルが、オブジェクトのラジアル方向の距離測定精度、及び/或いは、相対速度測定精度を正確にするために使用される。この際、二つのサイクル内で得られるパワーピークのポジションからは、二次元の離散フーリエ変換後、本質的には、ドップラーゲート・次元内の合計と差のみが用いられ、距離ゲート・次元は、用いられない。
【0020】
更に、Kヶの個々の周波数ランプのシーケンスも、反復できるが、該周波数ランプの傾きは、少なくとも時折、即ち、少なくとも一回のシーケンスにおいて、特に、他のレーダシステムによる妨害に対して堅牢にするために、自動的に変更される。
【0021】
目的に適うように、Kヶの個々の送信シグナルのシーケンスは、反復されるが、シーケンス間の時間的間隔の中央値は、少なくとも時折、即ち、少なくとも一回のシーケンスにおいては、特に、ラジアル方向の相対速度の割出しにおける多義性を解決するために、及び/或いは、他のレーダシステムによる妨害に対して堅牢にするために、変更される。
【0022】
尚好ましくは、複数の送信アンテナ及び/或いは受信アンテナによって、複数の受信チャンネルを実現することができる。I・K・受信値の二次元の離散フーリエ変換の他、受信チャンネルによる、乃至、受信チャンネルを生成するためのデジタルビームフォーミングを想定することも可能である。
【0023】
本発明は並列独立に、少なくとも近似的に同じシングルシグナルのシーケンスを包含している送信シグナルを照射するための送信手段を包含する周辺を捕捉するためのレーダシステムも請求している。本件のレーダシステムは、シングルシグナルのシーケンスにおいて、その(特にその中央周波数によって示される)周波数シフト、並びに、その(場合によっては、それぞれ、変化し、少なくとも近似的にゼロ平均である部分を除く)時間的な間隔が、少なくとも近似的に線形に変更されることを特徴としている。尚、時間的間隔の相対的変化は、絶対値的には、周波数シフトの相対変化と比較して少なくとも近似的に二倍大きいが、これら変化の正負の符号は、逆である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、レーダシステムの実施形態の一例を示している。
【
図2】
図2は、従来の技術に係る一定の周波数シフトを有する所謂「周波数ランプ」を表す送信シグナルの周波数を示している。
【
図3】
図3は、三つのオブジェクトと
図2の周波数推移に対する二次元の離散フーリエ変換後の絶対値範囲を示している。
【
図4】
図4は、線形に変化する周波数シフトを有する送信シグナルの周波数を示している。
【
図5】
図5は、三つのオブジェクトと
図4の周波数推移に対する二次元の離散フーリエ変換後の絶対値範囲を示している、但し、周波数ランプの間隔は、一定である。
【
図6】
図6には、WO2018/086783A1に従って周波数ランプの間隔が選択されたケースの絶対値範囲が示されている。
【
図7】
図7には、本発明に従って周波数ランプの間隔が選択されたケースの絶対値範囲が示されている。
【発明を実施するための形態】
【0025】
実施例
以下、
図1に概略的に示されているレーダシステムの実施例を説明する。該レーダシステムは、送信シグナルを放射するための一本の送信アンテナTX0、並びに、オブジェクトから反射して来る送信シグナルを受信するためのM=4本の受信アンテナRX0-RX3を備えている;これらのアンテナは、一枚の平らな基板1.1上にプレーナー技術によるパッチアンテナとして実施されているが、該基板は、車両の水平及び垂直方向に対して
図1に示した如く配置される。全てのアンテナ(送信アンテナと受信アンテナ)は、好ましくは、仰角と方位角においてそれぞれ、同じビーム特性を有している。該4本の受信アンテナ(相の中心、即ち、ビーム中心)は、全て、それぞれ互いに対して、横方向、即ち、水平方向にd=λ/2=1.96mmの間隔を有している、但し式中、λ=c/76.5GHz=3.92mmは、使用された周波数バンド76-77GHzにおける照射されたシグナルの波長中央値、c=3*10
8m/sは、光速である。
【0026】
該送信アンテナから放射される送信シグナルは、制御電圧vControlによって周波数を変更できる高周波・振動子1.2から、76-77GHz領域において得られる。該制御電圧は、制御手段1.7によって発生される、但し、該コントローラは、振動子の周波数推移が、望まれている周波数変調に対応している、例えば、位相帰還制御回路、或いは、デジタル・アナログ・変換器を包含している。
【0027】
該四本の受信アンテナによって受信されたシグナルも、並行して、実数値ミキサ1.3において、振動子1.2のシグナルと、低周波領域に下がるように混合される。続いて、該受信シグナルは、図示されている伝達関数を備えた帯域フィルター1.4、増幅器1.5、アナログ/デジタル変換器1.6を通過する。そして最後に、デジタルシグナル処理手段1.8によって更に処理される。
【0028】
ここで、オブジェクトまでの距離を測定できるようにするために-
図2に示す如く-高周波振動子の周波数f
TXを変更し、これに基づいて送信シグナルを急速に線形に変化させる(T
ch=51.2μs毎にB
ch=150MHz、但し、周波数中央値f
c=76.5GHzである);これを、周波数ランプと呼んでいる(「チャープ」と呼ばれることも多々ある)。該周波数ランプは、固定されたラスタT
Dc=70μsにおいて、周期的に反復される;合計、全て同じ周波数推移、即ち、同じ周波数傾きと同じ周波数シフト(特に、同じ開始周波数と同じ周波数中央値)を有するK=256ヶの周波数ランプがある。近年、車両における周辺捕捉様のレーダ技術においてこの様な変調方法が、普及してきている。
【0029】
各周波数ランプk=0,…,K-1毎において、それぞれのM=4 A/D-コンバータのm=0,…,M-1受信シグナルは、各々200ns(即ち、5MHz)の間隔でI=256回、走査されるが、該走査は、常にランプ開始に対して相対的に同じ時点(
図2参照)に開始される;その結果として得られるインデックスi=0,…,I-1の走査値は、s(i,k,m)と記述される。該シグナル走査は、オブジェクトからの受信シグナルが、興味のある距離範囲にあるオブジェクトからの時間範囲にある場合においてのみ有意義である-即ち、ランプスタート後は、少なくとも、興味のある最も遠い距離に対応するランタイム分、待機されなければならない(対象となる最遠距離を99mとすると0.66μsに相当する);但し、ここ、及び、これ以降において用いる距離と言う用語は、常に、ラジアル方向への距離とする。
【0030】
従来の技術から既知な如く、また、そこから簡単に導き出すことができる如く、該走査シグナルs(i,k,m)は、オブジェクトが間隔rを有する個々の点である場合、以下の様に優良に近似し得るサインカーブ状のインデックスiに対する振動となる。
s(i,k,m)=A(m)・sin(2π・i/I・r/(meter)・Bch/150MHz+φ(k)+φ0(m)),
(1)
即ち、振動の周波数は、オブジェクト距離rに比例するが、一般的に、センサに対してオブジェクトが、ラジアル方向に相対的に動いている場合は、サインカーブ状の振動の周波数に対しては、一定の距離を優良な近似として仮定しても良い。しかしながら、ラジアル方向の成分vを有する相対的な動きは、サインカーブ状の振動の位相シフトφ(k)に影響を与える:
φ(k)=2π・k・2TDcvfc/c,
(2)
即ち、位相シフトは、周波数ランプkに対して線形に変化するが、位相の変化速度は、オブジェクトのラジアル方向の相対速度vに比例している。受信手段の線形性から、複数の及び/或いは広がりのあるオブジェクトの場合、走査シグナルs(i,k,m)は、上述の形状のサインカーブ状の関数の線形な重なりとして得られる。
【0031】
このシグナル形状であれば、おのおの受信チャンネルmに適したシグナル窓掛けも含む二次元のフーリエ変換(DFT)によって更に処理できる、但し、この二次元のフーリエ変換DFTは、二つの一次元の高速フーリエ変換(FFT=Fast Fourier Transform)からなる二段式で実施されることが好ましい。この二次元のDFT後、結果として得られるスペクトルS(j,l,m)内に、それぞれ、帰属するオブジェクトとの距離rと相対速度vに対応する位置にパワーピークが表れる-三つの、同じレーダ断面、少なくとも近似的に同じ方位角を有し、且つ、下記の如き距離と相対速度を有するオブジェクト用の受信チャンネルmに依存しないスペクトル絶対値|S(j,l,m)/A(m)|(単位dB)が示されている
図3を参照:[r
1=29.5m,v
1=1.09m/s],[r
2=30m,v
2=1.09m/s]並びに[r
3=45m,v
3=60.4m/s];但し、該オブジェクトのシグナルには、該スペクトルにおいて、オブジェクト番号によって識別されているオブジェクトのパワーピークよりも有意に低い受信手段ノイズが、まだ被さった状態である。次元i(走査値・インデックス)から発生する次元j=0,…,J-1は、距離ゲート、そして、次元k(周波数ランプ)から発生する次元l=0,…,L-1は、ドップラーゲートと呼ばれるが、その理由は、パワーピークの位置が、次元jでは、本質的に、(ドップラー効果を基にした)相対速度から得られるからである-但しこのケースでは、パワーピーク位置が、他の二つの物理的な値である距離と相対速度以外からもおのおの多少は影響を受けることは、省略することができる。尚、ここでは、K=L=256ヶのドップラーゲートに対して28m/sの一義性範囲しか実現できない仕様であるため、パワーピークのドップラーゲートからは、速度を一義的に算出できないことは注釈しておく-多義性は、例えば、レーダサイクル毎の周波数ランプの間隔T
Dcのバリエーションによって実現され得る(後述のごとく)。
図3によれば、距離ゲートの数は、J=100のみであるため、走査値の数I=256よりも有意に少ない;その背景は、第一に、走査値が実数値であり、そのスペクトルが、対称である、要するに、DFTの上半分は、付加的な情報を包含していないこと、第二に、
図1に係るアナログ・バンドパスフィルタ1.4の上の移行領域が、周波数帯1.09MHz(56ヶの周波数ノードの領域に相当)を有していることである。ここで採用されている変調バンド幅B
ch=150MHzでは、距離ゲート幅B
ch/150MHz・1mは、高々=1mである、即ち、J=100ヶの距離ゲートでは、漸く最長到達距離99mが得られる。
【0032】
図3から明確なように、最初の二つのオブジェクト[r
1=29.5m,v
1=1.09m/s]及び[r
2=30m,v
2=1.09m/s]は、分離できないのみならず、同じ相対速度と少ししか異ならない距離-距離の差は、0.5mであり、これは、距離ゲート半分でしかない-を有しているため、パワーピークが、融合してしまっている。一般的には、距離ゲート二つ分の差が、同じ相対速度を有する二つの点状のオブジェクトを分離するには必要である。この様な二つのオブジェクトを距離的に分離する能力には、有意に高い、少なくともファクタ4は高い変調バンド幅B
ch、要するに、距離ゲート幅B
ch/150MHz・1m=0.25mを達成できるB
ch=600MHzが必要である。約99mと言う同じ最長センサ到達距離を有するものとすると、周波数ランプ毎に4倍の走査値が必要となる-これを実現するには、先ずは、高速なアナログ・デジタル・変換器が必要となる、且つ、更には問題なことには、デジタルシグナル処理手段に、凡そ4倍のプロセッサ性能とメモリが必要となる。
【0033】
これを回避するためには、代案的な、変調フォーム、例えば、DE102013200404A1より既知、且つ、
図4に示されているような、変調フォームを応用することができる。これまで見てきた
図2に係るものと比べてこの変調フォームの唯一の変更点は、周波数シフト、特に、開始周波数と中心周波数F
c(k)が、K=256ヶの周波数ランプに渡って周波数B
s/Kが、各々B
s=600MHzずつ高められ、これにより、実質より高い変調バンド幅と、それに基づいたより改善された距離測定精度を達成していることである。周波数ランプの間隔は、不変、即ち、T
D(k)=70μsで一定である。この変調フォームでは、シグナル処理は、二次元DFTのまま、変更せずとも可能である。上述の例に基づいた、該3つのオブジェクトの絶対値スペクトル|S(j,l,m)/A(m)|を
図5に示した。
図3に係る基となった絶対値スペクトルと比較すると、ドップラーゲート・次元l内のパワーピークの位置は、シフトしているが、距離ゲート・次元jは、していない。これは、周波数ランプの線形に高くなる周波数シフトにより、センサから各オブジェクトまで往復する照射パス内の波列の数が(波長は、周波数が上がると短くなるので)多くなり、これが、等式乃至関係式(1)に係る受信値s(i,k,m)の位相シフトφ(k)において、周波数ランプkに渡って線形に変化する部分として影響することに起因する;但し、これは、ラジアル方向の相対的な動きに作用する関係式(2)に係る同様にkヶの線形部分と重なり合い、双方が、本質的に同様に影響を与えることになる、即ち、ドップラーゲート・次元内のパワーピークがシフトする。後述する如く、周波数シフトの変更により影響を受けるドップラーゲート・次元Iのシフトは、近似的に、各々のオブジェクトの距離ゲート・次元jのB
s/B
ch-倍となる。
【0034】
図5のスペクトルから明らかなように、最初の双方のオブジェクト[r
1=29.5m,v
1=1.09m/s]及び[r
2=30m,v
2=1.09m/s]は、これにより分離された、即ち、二つの分離されたパワーピークを形成している、要するに、0.5mと僅かだった距離の差が周波数シフトの変化によってドップラーゲート二つ分に(ドップラーゲート・次元内の差が、距離ゲート半分分しかない距離ゲート・次元のそれと比較してB
s/B
ch倍、即ち、4倍大きく)なるために、ドップラーゲート・次元内において分離が起こる。
【0035】
図5のスペクトルにおける短所は、三つ目のオブジェクト[r
3=45m,v
3=60.4m/s]のパワーピークがシャープでなくなるのみならず、ドップラーゲート・次元において、幅が広がってしまうことである。これは更に、数々の短所の原因となる:第一に、検出領域のポテンシャルが下がる(レベルが下がるため)、第二に、相対速度測定が、不正確になる(パワーピークが曖昧になるため)、第三に、同じ相対速度且つ距離の差が僅かしかないの更なるターゲットを分離できなくなる(曖昧になったパワーピークが重なり合うため)。パワーピークの滲みは、相対速度の絶対値が大きければ多きほど著しくなる;それらの相対速度が小さいため、最初の二つのオブジェクトでは、その効果は、表れていない。
【0036】
WO2018/086783A1では、中心周波数F
c(k)を有する個々の周波数ランプk=0,…,K-1の間隔T
D(k)を一定とせず、
TD(k)・Fc(k)の積が一定となる様に変化させることが提案されている。上述の例では、
図6の絶対値スペクトル|S(j,l,m)/A(m)|が、得られる。
図5のスペクトルとは異なり、相対速度が大きい三つ目のオブジェクト[r
3=45m,v
3=60.4m/s]のパワーピークの滲みは、小さくなっている(半減している)が、未だに存在し、且つ、妥協し得ない程度に大きい。
【0037】
そのため本発明に係るアプローチにより、相対速度が大きな場合でも、パワーピークの滲みを回避している。
【0038】
高周波振動子、即ち、送信シグナルの周波数fTX(t,k)には、相対時間t∈[-Tch/2,Tch/2]の間、周波数ランプk内において以下が成り立つ:
fTX(t,k)=Fc(k)+Bch/Tch・t
(3)
周波数ランプk=0,…,K-1の中心周波数Fc(k)は:
Fc(k)=Fcc+Bs/K・(k-(K-1)/2),
(4)
であるが、式中、Fccは、全中心周波数Fc(k)の平均値である。積分により、振動子シグナル乃至送信シグナルの位相φTX(t,k)は:
φTX(t,k)=2π・(Fc(k)・t+1/2・Bch/Tch・t2),
(5)
の様に得られるが、ここでは、積分定数は、影響を有さないため、省略されている。
【0039】
最新の振動子シグナルと、オブジェクトから反射されランタイムΔt分遅れたシグナルとの位相差から個々の点状のオブジェクトに対するミキサの出力部における受信シグナルの位相φIF(t,k)は:
φIF(t,k)=(φTX(t,k)-φTX(t-Δt,k))・sch,
(6)
の様に得られるが、式中、schは、チャープ・変調バンド幅Bchの符号、即ち、上昇する周波数ランプでは、=+1、降下する周波数ランプでは、=-1となる。ミキサ後の受信シグナルは、中間周波数シグナルと呼ばれることもある(ドイツ語の「Zwischenfrequenz」(中間周波数)=英語の「Intermediate Frequency」、乃至、IF)。帰属する受信チャンネルmの走査シグナルs(i,k,m)は、t∈[-Tch/2,Tch/2]時間におけるインデックスi=0,…,I-1を有するIヶの走査値の算出によって得られる。
【0040】
ラジアル方向の相対速度vを有する一つのオブジェクト用のランタイムΔtは:
Δt=2(rc(k)+vt)/c;
(7)
の様に得られるが、式中、rc(k)は、周波数ランプkの中央におけるオブジェクトまでの距離であり:
rc(k)=r+v・Tc(k),
(8)
の様に得られるが、式中、rは、全周波数ランプに渡る平均距離、Tc(k)は、周波数ランプkの中央における絶対時間を表している(全ての周波数ランプの中央における絶対時間は、0と定義されている)。ここでは、Kヶの周波数ランプの全シーケンスは、非常に短い、例えば、≦20msであるため、一定な相対速度が、仮定されている。
【0041】
関係式(5)-(7)から、式変形し、且つ、無視できる小さな項を省略することにより中間周波数シグナルの位相は、以下式の様に得られる:
φIF(t,k)=2π・(sch・Fc(k)・2rc(k)/c
+|Bch|/Tch・2rc(k)/c・t+sch・Fc(k)・2v/c・t+|Bch|/Tch・2v/c・t2).
(9)
【0042】
中間周波数シグナル位相の平均値(即ち、t=0)は、周波数ランプkに渡って以下の様に得られる:
φIF(k)=2π・sch・Fc(k)・2rc(k)/c.
(10)
【0043】
関係式(9)からは、微分により、中間周波数シグナルの周波数、即ち、中間周波数自体が以下の様に得られる:
fIF(t,k)=|Bch|/Tch・2(rc(k)+v・t)/c+sch・(Fc(k)+Bch/Tch・t)・2v/c.
(11)
【0044】
周波数ランプkの中間周波数の平均値fIF(k)(即ち、t=0)は:
fIF(k)=|Bch|/Tch・2rc(k)/c+sch・Fc(k)・2v/c;
(12)
の様に得られるが、第一項は、線形周波数変調の距離に依存する効果を、第二項は、一般的には、距離に依存する項よりも有意に小さな、ドップラー効果、即ち、相対的な動きによる周波数のシフトを示している。全周波数ランプの平均では、平均距離r(関係式(8)参照)且つ平均中心周波数Fcc(関係式(4)参照)における中間周波数fIFは、以下の様に得られる:
fIF=|Bch|/Tch・2r/c+sch・Fcc・2v/c.
(13)
【0045】
周波数ランプkと受信チャンネルmの走査シグナルs(i,k,m)の一次元離散フーリエ変換を実施すると、距離ゲートj(k)=fIF(k)*Tch、即ち、関係式(12)におけるパワーピークが以下の様に得られ:
j(k)=|Bch|・2rc(k)/c+sch・Fc(k)・Tch・2v/c,
(14)
更に、(13)から全距離ゲートの平均における:
j=|Bch|・2r/c+sch・Fcc・Tch・2v/c,
(15)
が得られるが、一般的に、これは、j(k)乃至jの整数ではない値を表している、即ち、パワーピークの実際の最大値は、二つのDFTによって処理された整数の距離ゲートの間にあり、その整数ではない位置は、補間によって割出すことができる。二次元のDFT後、該パワーピークは、関係式(15)に示す中央の距離ゲートjにある。関係式(14)によって示される周波数ランプkに渡る距離ゲートj(k)の変化は、第一に、相対速度によって変化しやすい距離rc(k)に作用するが、これは、合計Kヶの周波数ランプにかかる(典型的には≦20msと言う)短時間では、距離も殆ど変わらないため、比較的僅かに過ぎない-二次元DFT後も、これは、距離ゲート・次元においてパワーピークの幅を少し広げるに過ぎない。関係式(15)における距離ゲートjの第一項は、オブジェクトの距離rから、第二項は、相対速度vから影響を受ける;但し、第二項は、通常、第一項と比べて非常に小さいため、距離ゲートは、大部分が距離によって定まる。
【0046】
関係式(10)の平均中間周波数シグナル位相φIF(k)からは、関係式(8)の平均距離rc(k)を用いて以下の関係が得られる:
φIF(k)=2π・(sch・Fc(k)・2r/c+sch・Tc(k)・Fc(k)・2v/c).
(16)
【0047】
第一項φ
IF(k)は、周波数ランプkに渡って線形に変化する(中心周波数F
c(k)が、線形に変化するため)。最初に検討した、周波数ランプが一定の間隔を持つ、即ち、周波数ランプ中央の時間T
c(k)が線形に変化するケースにおいては、相対速度v≠0における第二項は、それぞれ線形の項であるT
c(k)とF
c(k)とが、積に現れることから、線形ではない。φ
IF(k)の非線形な挙動により、周波数ランプ・次元kに渡る二回目の一次元DFT後、結果として得られるドップラーゲート・次元Iには、鮮明なパワーピークは得られない;即ち、パワーピークは、T
c(k)・F
c(k)・s
ch・2v/cに基づく非線形部分が高ければ高いほど、即ち、相対速度が高ければ高いほど(
図5の例でも見られた如く)滲む。
【0048】
相対速度に依存する滲みを回避するため、関係式(16)の第二項φIF(k)は、kにおいても線形でなければならない、即ち、以下の如くである:
sch・Tc(k)・Fc(k)・2v/c=(k-(K-1)/2)・const
個の等式をTc(k)に関して解き、関係式(4)のランプ周波数の平均Fc(k)を置き換え、小さな項を省略すると、以下が得られる:
Tc(k)=(k-(K-1)/2)・TDc/(1+(k-(K-1)/2)/K・Bs/Fcc)
(17)
但しTDc=const・sch/(2v/c・Fcc);
関係式(17)から明らかな如く、TDcは、周波数ランプの平均間隔の大きさである(即ち、ドップラーゲート・次元を得るための平均走査時間の二回目の不連続な一次元のフーリエ変換、要するに、TDcのインデックスである「D」がそれを示している)。周波数ランプのシーケンスに渡る変調バンド幅Bsが、送信周波数の平均Fccよりも非常に小さいため、関係式(17)の分子は、式にすると(1+x) mit |x|≪1となり、例えば二次までの、級数展開1/(1+x)=1-x+x2-+…は、非常に良好な近似として用いる事ができる。
Tc(k)=(k-(K-1)/2)・TDc・(1-(k-(K-1)/2)/K・Bs/Fcc)+(k-(K-1)/2)/K・Bs/Fcc)2).
(18)
【0049】
隣接する二つの周波数ランプの時間的間隔TD(k)=Tc(k)-Tc(k-1)は、関係式(18)を用い、無視できる小さな項を省略することで得られる:
TD(k)=TDc・(1-2((k-K/2)/K・Bs/Fcc)+3((k-K/2)/K・Bs/Fcc)2);
(19)
第三項が、非常に小さな比Bs/Fccを二乗の形で包含しており、通常、線形の第二項Bs/Fccよりもかなり小さいため、これも、省略乃至削除することができる:
TD(k)=TDc・(1-2(k-K/2)/K・Bs/Fcc).
(20)
【0050】
これにより、周波数ランプの時間的間隔は、少なくとも近似的に線形に、周波数ランプkに渡って変化する。この周波数ランプ間隔の関係式(20)に係る相対的な変化TD(k)=Tc(k)-Tc(k-1)は、周波数ランプk=1,…,K-1に渡っては、以下の様に得られる:
(TD(k)-TDc)/TDc=-2(k-K/2)/K・Bs/Fcc.
(21)
【0051】
関係式(4)から、周波数ランプk=0,…,K-1に渡って線形に変化する中心周波数Fc(k)の相対的な変化は、以下の様に得られる:
(Fc(k)-Fcc)/Fcc=+(k-K/2-1/2)/2)/K・Bs/Fcc.
(22)
【0052】
関係式21と22より明らかな如く、周波数ランプの中心周波数の線形な相対的変化の傾きは、=+Bs/Fcc、そして、その時間的間隔は、=-2Bs/Fccである、即ち、時間的間隔の相対的な変化の絶対値は、周波数ランプの周波数シフトと比較して二倍の大きさであるが、その符号は、逆向きである。時間的間隔を正確に割り出すという観点からは、例えば、関係式(19)に係る相対的な変化は、正確であると言えず、どちらかと言えば、近似値であることは、注釈しておく。変調バンド幅Bs=600MHz及び周波数中央値Fcc=76.5GHzである上述の例では、周波数シフトの相対的な変化は、Kヶの周波数帯のシーケンス全体において、約0.78%、時間的間隔の相対的な変化は、‐1.56%である。また、WO2018/086783A1の様にランプ間隔を設定する場合、時間的間隔と周波数ランプの周波数シフトの相対的な変化は、逆方向であり、絶対値は、同じになるはずであり、要するに、絶対値は、2倍にはならないであろうと言うことも特記しておく。
【0053】
この様に周波数ランプの時間的間隔を選択(即ち、関係式(20)のT
D(k))することにより、二次元のDFT後、
図7に示す絶対値スペクトル|S(j,l,m)/A(m)|が、得られる。
図6のスペクトルとは異なり、高い相対速度を持つ第三オブジェクト[r
3=45m,v
3=60.4m/s]のパワーピークも、シャープである、即ち、滲みは、回避され、これが、レベルが、約2dB高くなるように作用している。同じ相対速度を有し、距離の差も小さい双方のオブジェクト[r
1=29.5m,v
1=1.09m/s]と[r
2=30m,v
2=1.09m/s]は、変わることなく分離されている。
【0054】
よって、一つのオブジェクトのパワーピークのドップラーゲート・次元内の位置さえ割出せばよい。関係式(17)に基づいて先に求めた周波数ランプ中央の時間Tc(k)が、関係式(16)の中間周波数シグナル位相φIF(k)に代入される;この際、関係式(4)を用い、中心周波数Fc(k)が、重要ではない一定な位相部分を省略することにより以下の様に得られる:
φIF(k)=2π・sch・((k-(K-1)/2)/K・Bs・2r/c+(k-(K-1)/2)/K・Fcc・Ts・2v/c)
(23)
但し、全ての周波数ランプシーケンスの継続時間Tsは:
Ts=K・TDc;
(24)
但し、これが-要求に従い、対応するTc(k)を選択することにより実現される如く-kヶの線形な位相推移を表していることは、今一度、特記しておく。
【0055】
周波数ランプ・次元kに渡って第二の一次元離散フーリエ変換を形成すると、ドップラーゲートにおけるパワーピークl=(φIF(K)-φIF(0))/(2π)が得られるが、関係式(23)を用いると:
l=sch・(Bs・2r/c+Fcc・Ts・2v/c);
(25)
となり、この際、第一項は、オブジェクトの距離rから、第二項は、その相対速度vから得られる。関係式(15)の、一つの値、即ち、その距離に大きく影響される距離ゲートjとは異なり、ドップラーゲートは、相対速度と距離の影響を同等に受ける。
【0056】
関係式(25)と(15)を、ドップラーゲートIと距離ゲートjに関して比較することにより明らかな如く、距離は、ドップラーゲート・次元に対して、距離ゲート・次元に対してよりも、Bs/|Bch|倍強く作用し、これにより、それ相応の距離分離能力の改善が、得られる。
【0057】
更に、距離と相対速度をゲート長に合わせることで、距離ゲートとドップラーゲート用に特別に関係式(15)と(25)を式変形する:
j=r/RLch+sch・v/DLch
(26)
l=sch・r/RLs+sch・v/DLs
(27)
尚、距離ゲートとドップラーゲートの長さは、以下の如くである:
RLch=c/(2|Bch|),RLs=c/(2Bs),DLch=c/(2FccTch),DLs=c/(2FccTs).
(28)
【0058】
センサ・アプリケーションにおいてオブジェクトの距離と相対速度は、知られていないどころか、これらを、パワーピークの位置から、二次元DFT後に割出すことこそが、そのタスクである。よって、関係式(26)と(27)は、距離rと速度vに関して解かれなければならない;その結果:
r=RL・(j-l・Tch/Ts)
(29)
v=DL・sch(l-j・Bs/Bch)
(30)
が得られる、但し、変更されたゲート長は、以下の如くである:
RL=RLch/(1-Bs/Bch・Tch/Ts),DL=DLs/(1-Bs/Bch・Tch/Ts).
(31)
【0059】
あるオブジェクトの距離ゲートjとドップラーゲートIは、一般的に、整数ではなく、整数のゲートの値しか提供しない二次元DFTにおけるパワーピークの形状から補間によって求められる。
【0060】
更には、ドップラーゲートIは、典型的には、DFTの一義性領域L=Kよりも大きな値の範囲にあり得ることも考慮されなければならない;要するに、DFTのドップラーゲートは、Kの未知な整数倍であることしか割り出すことができない。多義性を解決するアプローチとしては、DE102009016480A1でも提案されているアプローチと同様に、周波数ランプ間隔の中央値TDcをレーダサイクル毎に変更する、即ち、現在のレーダサイクルにおいて送信されたKヶの周波数ランプのシーケンスでは、その前のシーケンスで用いたものとは異なる値をTDcとして用いる。関係式(27)の変更されたDLsより、その時点のレーダサイクルにおける相対速度が略同等である場合、ドップラーゲートに対して他の値が得られ、これにより、多義性を解決することができる(相対速度は、典型的には、レーダサイクル毎に僅かに、約50msほど変化し得る)。
【0061】
オブジェクトの相対速度を求めるための関係式(30)によれば、(Bs≠0を特徴とする)周波数ランプの線形に変化する周波数シフトによる効果は、結果として得られるパワーピークのドップラーゲートIのその距離ゲートに比例する部分j・Bs/Bchを引くことによって考慮される;加えて、Bs≠0は、関係式(31)のドップラーゲート幅DLにも多少影響を与える。
【0062】
代案的には、線形に変化する周波数シフトの影響を、周波数ランプk=0,…,K-1毎にIヶの受信値に対する一次元の離散フーリエ変換後、距離ゲート・次元内に得られる値の位相をそれぞれ、2π・j・Bs/Bch・k/K減算し、全ての(要するに、そこにオブジェクトがあるかないかに依存せずに、その時点においては、未知である筈の)jとkを補正することによって考慮することも可能である;尚、この補正は、長さ1の複素数のインデックスと対応する位相を積算することによって実現できる。
【0063】
先述の如く、一つのオブジェクトの距離ゲートとドップラーゲートを割り出すために、パワーピークの正確な位置を補間によって得る;特に、DFTにおいて用いられたシグナル窓掛けにより、パワーピークは、一つのゲートにおいてのみならず、少なくとも隣接するゲートにもレベルを有しており、これにより、パワーピークの形状、例えば、放物線状の補間により、或いは、パワーピークの既知の(窓掛けファンクションのDFTにより得られる)形状を用いることにより、実際の、通常整数ではない、位置を割り出すことができる。しかしながら、この補間は、任意に正確である;例えば、干渉するノイズ(特に、シグナル・ノイズ比が悪い場合)や広がりを有する、即ち、点状ではないオブジェクトにより、補間エラーが発生することがある。その結果、関係式(29)と(30)のオブジェクトの距離と相対速度の割出しが不正確になり得る。距離ゲートが、ファクタBs/Bch(上述の例では、ファクタ4)で考慮されるため、これは、関係式(30)の相対速度において、重大な問題となる。距離を割出す関係式(29)では、略距離ゲートのみが影響し(ドップラーゲートの比重は、Tch/Tsと非常に僅かである)、要するに、言うなれば、(距離ゲートの)補間エラーでしかない;しかしながら、このエラーは、一般的に有意に小さなゲート幅RLs=c/(2Bs)ではなく、ゲート幅RLch=c/(2|Bch|)に依存して考慮される、要するに、距離同定の精度は、大きな変調幅Bsや複数の周波数ランプに渡る周波数シフトの変化(これらは、これまで同じ相対速度のオブジェクトの本質的には、距離分離能力のみを改善している)の恩恵を受けるものではない。要するに、距離と相対速度の双方の不正確さの要因は、主に距離ゲートのエラーである。
【0064】
この距離と相対速度の割出しにおける距離ゲートエラーに起因する不正確さは、周波数ランプのシーケンスに渡る変調バンド幅Bsが、常に同じ符号を用いているのではなく、絶対値を一定に保ちつつ、レーダサイクル毎に変えることにより回避することが可能である;要するに、例えば、交互に+Bsと-Bsを用い、二回のレーダサイクル毎に周波数シフトを線形に高め、他のレーダサイクルでは、線形に低くしている。この様にすることで、関係式(27)のドップラーゲートIにおいて、距離の部分の符号は、変わっている。ここで、一つのオブジェクトのレーダサイクル二つ分の符号Bsの異なるドップラーゲートを合計すると、大まかにではあるが、距離の項は、互いに相殺され、相対速度が得られ、ドップラーゲートの差を取ると、逆になる。更には、先ず、相対速度v≠0の場合、距離が、レーダサイクル毎に僅かに変化すること、更には、周波数ランプTDcの間隔が、レーダサイクル間で変化することも、考慮されなければならない。幾つかの途中計算式と簡略化により、双方のサイクルで平均化された距離rmと相対速度vmは、以下の様に得ることができる:
vm=sch・DLs+-・(l++l-)/2/(1-DLs+-・t+-/(2|RLs|))
(32)
rm=|RLs|・(sch・(l+-l-)/2-vm/2・(1/DLs+-1/DLs-))
(33)
但し、l+は、第一レーダサイクルにおける正の変調バンド幅+Bsを有するドップラーゲート、そして、l-は、時間t+-後の次のレーダサイクルの負の変調バンド幅-Bsを有するドップラーゲートである;尚、「平均」ドップラーゲート幅DLs+-は、場合によっては異なる双方のレーダサイクルのドップラーゲート幅DLs+とDLs-から(平均周波数ランプが異なる場合)以下の様に得られる:
DLs+-=2/(1/DLs++1/DLs-).
(34)
【0065】
これにより、一つのオブジェクトの距離と相対速度を割り出すためには、これまでのアプローチにおいて有意なエラーの要因となっていた距離ゲートは、必要なくなり、双方のレーダサイクルのドップラーゲートのみが必要となる。よって、距離ゲートの割出しには、大きな変調バンド幅Bsの小さなゲート幅RLsも必要とされる、即ち、補間エラーの影響も相応に小さくなる。
【0066】
正確な距離ゲートは、特に、近距離領域において、例えば、車両側方にある障害物(例えば、ガードレール)や他の車両との衝突を回避するために、重要である。その際、該間隔は頻繁に、大きなゲート幅RLch=c/(2|Bch|)よりも小さい、即ち、通常、(バンパからの反射が重なる、及び/或いは、負の周波数部分の影響によって)補間が特にうまくいかない第一距離ゲート内にある。上述のアプローチによる距離割出しにより、反対のBsを有する二回のサイクルのドップラーゲートのみから、このような近い距離でも正確に同定することができる。
【0067】
上述の実施形態は、二回のレーダサイクルに渡って、絶対値を一定に保ちながら、変調バンド幅の符号Bsが、変えられる。本質的には、距離ゲートの影響を相殺するには、Bsの値、及び/或いは、線形的周波数シフト変化の傾きを、該二回のレーダサイクルに渡って変化させれば十分である。そうすると、必要とされるドップラーゲートの合計と差に、加重ファクタが表れる、即ち、二回のレーダサイクルに渡って得られるドップラーゲート値は、同様に加重されていない。
【0068】
他のレーダシステムからの妨害に対してレーダシステムを堅牢にするため、文献WO2008/040341A1やDE102009016480A1、EP2629113B1に開示されているアプローチ同様、変調のパラメータにバリエーションを与えている、例えば:
- サイクル毎の周波数ランプの平均間隔(上述の如く、速度多義性の解決も可能にする);
- サイクル毎の変調バンド幅Bs、及び/或いは、Bch(絶対値、及び/或いは、符号);
- 周波数ランプの時間的間隔TD(k)、関係式(19)及び(20)に従い、付加的にkヶバリエーションを有する偶発的乃至疑似偶発的なゼロ平均である部分、典型的には、マイクロ秒オーダー;この際、相対的に動いているオブジェクトに対しては、受信位相は、周波数ランプに渡って僅かに変化する部分を有しているが、非常に小さいため、これに起因する影響は、DFT(パワーピークのノイズとレベル低減)後、無視できる;
- 周波数ランプの周波数シフトFc(k)(即ち、平均周波数)、関係式(4)に従い、付加的にkヶバリエーションを有する偶発的乃至疑似偶発的なゼロ平均である部分;尚、この周波数シフトのバリエーションは、常に同じ周波数ランプを用い、但し、受信シグナルの走査値が得られる時点からは、変更させることによっても実現可能;また、これにより生成する受信シグナルの距離ゲートに比例する位相バリエーションは、対応する包括的な位相修正により、一度目の一次元DFT後に相殺できる;
- 送信手段内の付加的な位相変調手段による個々の送信信号の位相シフト、但し、周波数ランプに渡る位相シフトは、偶発的乃至疑似偶発的に変化し、これは、受信側において、好ましくは、デジタルシグナル処理手段によって、再び相殺される。
【0069】
考察されている
図1に示されているレーダシステムには、M=4本の受信アンテナとそれらに帰属する受信チャンネルm=0,…,M‐1が、存在している。二次元のDFT後、好ましくは、各々の距離・ドップラーゲート(j,l)内で、デジタルビームフォーミングが、例えば、再びDFTとして、或いは、FFTとして計算される;要するに、三次元フーリエ変換が、実施される。この場合、パワーピークは、三次元のスペクトル内において割出される。一つのオブジェクトの方位角は、受信チャンネルの次元mから派生した第三次元内のパワーピークの位置から得られる;距離と相対速度は、上述の脈絡では、他の双方の次元から得られる。角度形成のために更なるチャンネルを用いることができる様にするには、複数の受信アンテナだけでなく、複数の送信アンテナを用い、多くのバーチャル受信チャンネルを実現するために、全ての送信アンテナと受信アンテナの組み合わせのシグナルを評価することが好ましい。全ての或いは幾つかの送信アンテナ及び/或いは受信アンテナを同時に運用できない場合は、周波数ランプの上述の様な複数の好ましくは同様なシーケンスが、互いに噛み合うようにスイッチングされる。
【0070】
要約すると、ここに例示した方法により、高い精度と分離能力を有する距離測定が、高い変調バンド幅を用いることにより、相対的に動いているオブジェクトに対する測定クオリティや検出クオリティを下げること無く、且つ、更に、デジタルシグナル処理手段において(従来の方法において、高い変調バンド幅を用いると必要となる)高い計算能力を必要とされることなく可能になった。適度な計算能力しか必要とされない理由としては、先ずは、計算に、最も早い離散フーリエ変換であるFFTが用いられていること、更には、多次元FFTの次元が、高い距離解像度と距離測定精度を有する従来の方法よりも、距離測定を、相対速度を測定している次元に部分的にシフトさせることによって、少なくすましていることが挙げられる。この際、周辺捕捉用の車載レーダシステムが、高い距離分離能力を、主に、ラジアル方向の相対速度が同等なターゲットに対して必要としていると言うことを有効活用している。対応する自車両の周辺捕捉のためのレーダシステムに関する例としては、(通常、各々、多数の反射点をゆうしている)前方にある渋滞の最後尾、橋の下或いはガードレール脇に停車している車両、道路周辺部の動かないもの(ガードレール、樹木、建物など)、及び、他の車両の縦横寸法測定が挙げられる。良好な距離分離能力は、レーダシステムの角度分離能力が、(寸法的制限により)一般的に大きな照射幅に起因して比較的悪く、これにより、例えば、左右のガードレールからの反社を分離できず、測定された角度が、自車線上に来てしまう程に融合し、その結果、停止している障害物(例えば、停車している車両)が予測されてしまうと言う観点からも重要である。
【0071】
また、僅かに異なる相対速度と距離を有する複数のターゲットからなるシナリオに対して該方法は、捕捉ゲート、即ち、距離・ドップラーゲートの総数を、周波数ランプの線形な周波数シフト変更による変調幅上昇によっても高めることはできないため、その長所を部分的にしか活用できないことは、特記しておく。上述のドライバー・アシスタント機能用としては、この様なシナリオは、一般的に、あまり重要ではない。
【0072】
総括
上記の使用例によって開示された本発明に係る考察や実施が、一般的な測定作業やパラメータ設計に応用できる、即ち、該方法は、他の数値に対しても応用できることを、特記しておく。よって、式や図では、一般的なパラメータが記載されている。
【国際調査報告】