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特表2023-537902大型鏡像タンパク質の化学合成及びその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-06
(54)【発明の名称】大型鏡像タンパク質の化学合成及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/10 20060101AFI20230830BHJP
   C12N 9/10 20060101ALI20230830BHJP
   C07K 1/04 20060101ALI20230830BHJP
   C07K 2/00 20060101ALI20230830BHJP
   C12Q 1/6876 20180101ALI20230830BHJP
   C12Q 1/6844 20180101ALI20230830BHJP
   C12Q 1/686 20180101ALI20230830BHJP
   C12Q 1/6869 20180101ALI20230830BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20230830BHJP
   C12N 15/11 20060101ALI20230830BHJP
【FI】
C12N15/10 Z
C12N9/10 ZNA
C07K1/04
C07K2/00
C12Q1/6876 Z
C12Q1/6844 Z
C12Q1/686 Z
C12Q1/6869 Z
C12M1/00 A
C12N15/11 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023507742
(86)(22)【出願日】2021-05-13
(85)【翻訳文提出日】2023-03-24
(86)【国際出願番号】 IB2021054106
(87)【国際公開番号】W WO2022029512
(87)【国際公開日】2022-02-10
(31)【優先権主張番号】63/061,844
(32)【優先日】2020-08-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】513322718
【氏名又は名称】清華大学
【氏名又は名称原語表記】TSINGHUA UNIVERSITY
【住所又は居所原語表記】1 Qinghuayuan, Haidian District, Beijing 100084, China
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジュー ティン
(72)【発明者】
【氏名】ファン チュヤオ
(72)【発明者】
【氏名】デン チアン
(72)【発明者】
【氏名】シュー ユアン
【テーマコード(参考)】
4B029
4B063
4H045
【Fターム(参考)】
4B029AA07
4B029AA23
4B029FA10
4B063QA01
4B063QA13
4B063QQ42
4B063QQ52
4B063QR08
4B063QR55
4B063QR62
4B063QS32
4B063QX02
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045AA40
4H045DA89
4H045EA50
4H045FA33
4H045FA34
(57)【要約】
RNA/DNAを操作する酵素を含む、大型の(400aa長を超える)D-アミノ酸タンパク質であって、(その天然に存在するL-アミノ酸対応物に対して)鏡像タンパク質とも称されるもの、を製造するための一般的な方法、並びに広範囲にわたる研究、実用的なデータストレージ及び医薬利用におけるその使用が提供される。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンパク質を化学的に製造する方法であって、前記タンパク質の少なくとも2つのライゲーション誘導性セグメントを連結することを含み、前記ライゲーション誘導性セグメントの各々が化学的に合成可能であり、且つ
i.前記タンパク質のアミノ酸配列中の少なくとも1つのライゲーション誘導性配列を同定し、前記タンパク質の前記アミノ酸配列を前記ライゲーション誘導性配列でパースすることで、複数のライゲーション誘導性セグメントを得ること、及び
ii.前記ライゲーション誘導性セグメントの各々が化学的に合成可能である場合、前記ライゲーション誘導性セグメントの各々を化学的に合成すること、
iii.前記ライゲーション誘導性セグメントのいずれか1つが化学的に合成可能でない場合、前記ライゲーション誘導性セグメント中の少なくとも1つの構造喪失セクションを同定し、前記構造喪失セクション中の少なくとも1つのアミノ酸をライゲーション誘導性アミノ酸残基で置換して、前記構造喪失セクション中にライゲーション誘導性配列を導入し、前記タンパク質の前記アミノ酸配列を前記ライゲーション誘導性配列でパースし、そして前記ライゲーション誘導性セグメントの各々を化学的に合成すること
によって得ることが可能な、方法。
【請求項2】
ステップ(i)において、前記ライゲーション誘導性配列の少なくとも1つが前記タンパク質中の構造喪失セクションにある、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップ(iii)を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
ステップ(i)の前に、
a)前記タンパク質の前記アミノ酸配列を少なくとも2つのドメイン形成セグメントに分割すること、
b)前記ドメイン形成セグメントの各々が化学的に合成可能である場合、前記ドメイン形成セグメントの各々を化学的に合成すること、及び
c)前記ドメイン形成セグメントを一緒に折り畳み、それにより前記タンパク質を得ること
を更に含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
ステップ(a)を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記ドメイン形成セグメントの1つが化学的に合成可能でない場合、
d)前記ドメイン形成セグメント中の少なくとも1つのライゲーション誘導性配列を同定し、そして前記ドメイン形成セグメントのアミノ酸配列を前記ライゲーション誘導性配列でパースすることで、複数の化学的に合成可能なライゲーション誘導性セグメントを得、
e)前記ドメイン形成セグメントが本質的にライゲーション誘導性配列を欠いている場合、又は前記ライゲーション誘導性セグメントのいずれか1つが化学的に合成可能でない場合、前記ドメイン形成セグメント又は前記ライゲーション誘導性セグメント中の少なくとも1つの構造喪失セクションを同定し、
f)前記構造喪失セクション又は前記ライゲーション誘導性セグメント中の少なくとも1つのアミノ酸をライゲーション誘導性アミノ酸残基で置換して、前記構造喪失セクション又は前記ライゲーション誘導性セグメント中にライゲーション誘導性配列を導入し、そして前記ドメイン形成セグメントの前記アミノ酸配列を前記ライゲーション誘導性配列でパースすることにより、化学的に合成可能なライゲーション誘導性セグメントの複数の配列を得、 g)前記化学的に合成可能なライゲーション誘導性セグメントの各々を化学的に合成する、
請求項4に記載の方法。
【請求項7】
ステップ(f)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記タンパク質が、対応する生物学的に製造されたタンパク質の活性の少なくとも5%を呈する、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記活性が、触媒活性、特異的結合活性及び構造活性からなる群から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記タンパク質が少なくとも240アミノ酸残基を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記タンパク質が少なくとも約400アミノ酸残基を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記ライゲーション誘導性セグメントの少なくとも1つにおいて、以下の疎水性の順序:Ile>Leu>Phe>Val>Met>Pro>Trp>His(0)>Thr>Glu(0)>Gln>Cys>Tyr>Ala>Ser>Asn>Asp(0)>Arg+>Gly>His+>Glu>Lys+>Asp-に従い、少なくとも1つの疎水性アミノ酸残基をより疎水性の低いアミノ酸で置換することを更に含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記タンパク質が、少なくとも90%がGly以外のD-アミノ酸残基を使用して製造される、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記タンパク質が、対応する生物学的に製造されたタンパク質の3次元構造と比較して本質的に鏡像を成す3次元構造を有する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
少なくとも1つのIle残基を、D-Ala残基、D-Val残基、D-Leu残基、D-Thr残基、D-Phe残基、D-Met残基、Gly残基及びD-Pro残基からなる群から選択されるD-アミノ酸残基で置換することを更に含む、請求項13又は14に記載の方法。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか一項に記載の方法によって調製されるタンパク質であって、少なくとも約240アミノ酸残基長であるタンパク質。
【請求項17】
非共有結合的に取り付けられたポリペプチド鎖である少なくとも2つのドメイン形成セグメントを含み、前記ドメイン形成セグメントが、少なくとも1つの対応する生物学的に製造されたタンパク質中における共有結合的に取り付けられたポリペプチド鎖である、請求項16に記載のタンパク質。
【請求項18】
酵素、輸送タンパク質、構造/機構タンパク質、ホルモン、シグナル伝達タンパク質、抗体、体液平衡化タンパク質、pH平衡化タンパク質、細胞チャネル及び細胞ポンプからなる群から選択される、請求項16又は17に記載のタンパク質。
【請求項19】
酵素であり、前記酵素が、対応する生物学的に製造された酵素によって触媒される反応を触媒することができる、請求項18に記載のタンパク質。
【請求項20】
前記酵素が、DNAテンプレートを用いてリボヌクレオチドからRNAを合成することができるRNAポリメラーゼである、請求項19に記載のタンパク質。
【請求項21】
前記RNAポリメラーゼがT7 RNAポリメラーゼ又はPfu DNAポリメラーゼ変異体である、請求項20に記載のタンパク質。
【請求項22】
前記Pfu DNAポリメラーゼ変異体が、V93Q、E102A、D141A、E143A、Y410G、A486L及びE665Kからなる群から選択される少なくとも1つの変異を有している、請求項21に記載のタンパク質。
【請求項23】
前記酵素が、デオキシリボヌクレオチドからDNAを合成することができるDNAポリメラーゼである、請求項19に記載のタンパク質。
【請求項24】
前記DNAポリメラーゼがPfu DNAポリメラーゼである、請求項23に記載のタンパク質。
【請求項25】
D-アミノ酸タンパク質を化学的に製造する方法であって、前記D-アミノ酸タンパク質の少なくとも2つのライゲーション誘導性セグメントを連結することを含み、前記ライゲーション誘導性セグメントの各々が少なくとも90%がGly以外のD-アミノ酸残基を含み、且つ化学的に合成可能であり、且つ
i.対応するL-アミノ酸タンパク質のアミノ酸配列中の少なくとも1つのライゲーション誘導性配列を同定し、前記アミノ酸配列を前記ライゲーション誘導性配列でパースすることで、複数のライゲーション誘導性セグメントを得ること、及び
ii.前記ライゲーション誘導性セグメントの各々が化学的に合成可能である場合、少なくとも90%がGly以外のD-アミノ酸残基を使用して前記ライゲーション誘導性セグメントの各々を化学的に合成すること、
iii.前記ライゲーション誘導性セグメントのいずれか1つが化学的に合成可能でない場合、前記ライゲーション誘導性セグメント中の少なくとも1つの構造喪失セクションを同定し、前記構造喪失セクション中の少なくとも1つのアミノ酸をライゲーション誘導性アミノ酸残基で置換して、前記構造喪失セクション中にライゲーション誘導性配列を導入し、前記ライゲーション誘導性セグメントのアミノ酸配列を前記ライゲーション誘導性配列でパースし、そして少なくとも90%がGly以外のD-アミノ酸残基を使用して前記ライゲーション誘導性セグメントの各々を化学的に合成すること
によって得ることが可能な、方法。
【請求項26】
ステップ(i)において、前記ライゲーション誘導性配列の少なくとも1つが、前記対応するL-アミノ酸タンパク質中の構造喪失セクションにある、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
ステップ(iii)を含む、請求項25又は26に記載の方法。
【請求項28】
ステップ(i)の前に、
a)前記L-アミノ酸タンパク質の前記アミノ酸配列を少なくとも2つのドメイン形成セグメントに分割すること、
b)前記ドメイン形成セグメントの各々が化学的に合成可能である場合、少なくとも90%がGly以外のD-アミノ酸残基を使用して前記ドメイン形成セグメントの各々を化学的に合成すること、及び
c)前記ドメイン形成セグメントを一緒に折り畳み、それにより前記D-アミノ酸タンパク質を得ること
を更に含む、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
前記ドメイン形成セグメントの1つが化学的に合成可能でない場合、
d)前記ドメイン形成セグメント中の少なくとも1つのライゲーション誘導性配列を同定し、そして前記ドメイン形成セグメントのアミノ酸配列を前記ライゲーション誘導性配列でパースすることで、複数の化学的に合成可能なライゲーション誘導性セグメントを得、
e)前記ドメイン形成セグメントが本質的にライゲーション誘導性配列を欠いている場合又は前記ライゲーション誘導性セグメントのいずれか1つが化学的に合成可能でない場合、前記ドメイン形成セグメント又は前記ライゲーション誘導性セグメント中の少なくとも1つの構造喪失セクションを同定し、
f)前記構造喪失セクション又は前記ライゲーション誘導性セグメント中の少なくとも1つのアミノ酸をライゲーション誘導性アミノ酸残基で置換して、前記構造喪失セクション又は前記ライゲーション誘導性セグメントにライゲーション誘導性配列を導入し、そして前記ドメイン形成セグメントの前記アミノ酸配列を前記ライゲーション誘導性配列でパースし、
g)少なくとも90%がGly以外のD-アミノ酸残基を使用して前記ライゲーション誘導性セグメントの各々を化学的に合成し、それにより前記ドメイン形成セグメントを得る、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
ステップ(iii)を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項31】
前記D-アミノ酸タンパク質が前記L-アミノ酸タンパク質の活性の少なくとも10%を呈する、請求項25~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記活性が、触媒活性、特異的結合活性及び構造活性からなる群から選択される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記D-アミノ酸タンパク質が少なくとも240アミノ酸残基を含む、請求項25~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記D-アミノ酸タンパク質が少なくとも400アミノ酸残基を含む、請求項25~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記ライゲーション誘導性セグメントの少なくとも1つにおいて、以下の疎水性の順序:D-Ile>D-Leu>D-Phe>D-Val>D-Met>D-Pro>D-Trp>D-His(0)>D-Thr>D-Glu(0)>D-Gln>D-Cys>D-Tyr>D-Ala>D-Ser>D-Asn>D-Asp(0)>D-Arg+>Gly>D-His+>D-Glu>D-Lys+>D-Asp-に従い、少なくとも1つの疎水性D-アミノ酸残基をより疎水性の低いアミノ酸で置換することを更に含む、請求項25~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記D-アミノ酸タンパク質が、前記L-アミノ酸タンパク質の3次元構造と比較して本質的に鏡像を成す3次元構造を有する、請求項25~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
少なくとも1つのIle残基を、D-Ala残基、D-Val残基、D-Leu残基、D-Thr残基、Gly残基、D-Phe残基、D-Met残基及びD-Pro残基からなる群から選択されるD-アミノ酸残基で置換することを更に含む、請求項25~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
請求項13~15又は25~37のいずれか一項に記載の方法によって調製されるD-アミノ酸タンパク質。
【請求項39】
対応するL-アミノ酸タンパク質の3次元構造と比較して本質的に鏡像を成す3次元構造を有している、請求項38に記載のD-アミノ酸タンパク質。
【請求項40】
非共有結合的に取り付けられたポリペプチド鎖である少なくとも2つのドメイン形成セグメントを含み、前記ドメイン形成セグメントが、少なくとも1つの対応するL-アミノ酸タンパク質中における共有結合的に取り付けられたポリペプチド鎖である、請求項38又は39に記載のD-アミノ酸タンパク質。
【請求項41】
酵素、輸送タンパク質、構造/機構タンパク質、ホルモン、シグナル伝達タンパク質、抗体、体液平衡化タンパク質、pH平衡化タンパク質、細胞チャネル及び細胞ポンプからなる群から選択される、請求項38又は39に記載のD-アミノ酸タンパク質。
【請求項42】
D-アミノ酸酵素であり、前記酵素が、対応するL-アミノ酸酵素と比較してエナンチオマー反応を触媒することができる、請求項41に記載のD-アミノ酸タンパク質。
【請求項43】
前記D-アミノ酸酵素が、L-DNAテンプレートを使用してL-リボヌクレオチドからL-RNAを合成することができるD-アミノ酸RNAポリメラーゼである、請求項42に記載のD-アミノ酸タンパク質。
【請求項44】
前記D-アミノ酸RNAポリメラーゼがD-アミノ酸T7 RNAポリメラーゼ又はD-アミノ酸Pfu DNAポリメラーゼ変異体である、請求項43に記載のD-アミノ酸タンパク質。
【請求項45】
前記D-アミノ酸Pfu DNAポリメラーゼ変異体が、V93Q、E102A、D141A、E143A、Y410G、A486L及びE665Kからなる群から選択される少なくとも1つの変異を有する、請求項44に記載のD-アミノ酸タンパク質。
【請求項46】
少なくとも1つの分裂部位と、K363とP364との間の第1の分裂部位と、N601とT602との間の第2の分裂部位とを含むT7 RNAポリメラーゼである、請求項44に記載のD-アミノ酸タンパク質。
【請求項47】
前記分裂部位が、357位~366位及び/又は564位~607位に位置するように選択される、請求項46に記載のD-アミノ酸タンパク質。
【請求項48】
前記D-アミノ酸酵素が、L-デオキシリボヌクレオチドからL-DNAを合成することができるD-アミノ酸DNAポリメラーゼである、請求項42に記載のD-アミノ酸タンパク質。
【請求項49】
前記D-アミノ酸DNAポリメラーゼがD-アミノ酸Pfu DNAポリメラーゼである、請求項48に記載のD-アミノ酸タンパク質。
【請求項50】
K363とP364との間の分裂及び/又はN601とT602との間の分裂によって形成される少なくとも2つのポリペプチド鎖を含むT7 RNAポリメラーゼ。
【請求項51】
I6V、I14L、I74V、I82V、I109V、I117L、I141V、I210M、I244L、I281V、I320V、I322L、I330V及びI367Lからなる群から選択される少なくとも1つの変異を更に含む、請求項50に記載のT7 RNAポリメラーゼ。
【請求項52】
配列番号83と比較して少なくとも80~90%の配列同一性によって特徴付けられるアミノ酸配列を有するT7 RNAポリメラーゼ。
【請求項53】
K467とM468との間の分裂によって形成される少なくとも2つのポリペプチド鎖を含むPfu DNAポリメラーゼ。
【請求項54】
E102A、E276A、K317G、V367L及びI540Aからなる群から選択される少なくとも1つの変異を更に含む、請求項53に記載のPfu DNAポリメラーゼ。
【請求項55】
V93Q、D141A、E143A、Y410G、A486L及びE665Kからなる群から選択される少なくとも1つの変異を更に含む、請求項44、53、又は54のいずれか一項に記載のPfu DNAポリメラーゼ。
【請求項56】
D215A、A486Y及びL490Wからなる群から選択される少なくとも1つの変異(配列番号77)を更に含む、請求項44、53、又は54に記載のPfu DNAポリメラーゼ。
【請求項57】
DNA結合構造ドメインを更に含み、前記DNA結合構造ドメインがsso7d構造ドメイン(配列番号78)である、請求項44、53、又は54に記載のPfu DNAポリメラーゼ。
【請求項58】
RNA重合活性を呈する、請求項55に記載のPfu DNAポリメラーゼ。
【請求項59】
3’から5’のエキソヌクレアーゼ活性の欠損及びジデオキシヌクレオシド三リン酸(ddNTP)選択性の増加を呈する、請求項56に記載のPfu DNAポリメラーゼ。
【請求項60】
増幅速度及び伸長能力の向上を呈する、請求項57に記載のPfu DNAポリメラーゼ。
【請求項61】
配列番号51と比較して少なくとも80~90%の配列同一性によって特徴付けられるアミノ酸配列を有するか、又は配列番号79と比較して少なくとも80%若しくは少なくとも90%の配列同一性によって特徴付けられるアミノ酸配列を有する、Pfu DNAポリメラーゼ。
【請求項62】
D-アミノ酸タンパク質の使用であって、前記D-アミノ酸タンパク質が、対応するL-アミノ酸酵素によって合成される分子のエナンチオモルフである産物の合成を触媒する、又は対応するL-アミノ酸酵素の対応する基質のエナンチオモルフである基質の反応を触媒する酵素である、請求項38に記載のD-アミノ酸タンパク質の使用。
【請求項63】
L-ポリデオキシリボ核酸分子を酵素的に製造するプロセスであって、
請求項13~15又は25~37のいずれか一項に記載の方法によって調製され、且つL-デオキシリボヌクレオチドからL-DNAを合成することができる、D-アミノ酸DNAポリメラーゼを提供すること、及び
前記D-アミノ酸DNAポリメラーゼをテンプレートL-DNA分子、L-DNAプライマー及び複数のL-デオキシリボヌクレオチドと反応させて、前記L-DNA分子を酵素的に製造すること
を含む、プロセス。
【請求項64】
前記D-アミノ酸DNAポリメラーゼがPfu DNAポリメラーゼである、請求項63に記載のプロセス。
【請求項65】
前記Pfu DNAポリメラーゼが、本質的に本明細書で提供するとおりである、請求項64に記載のプロセス。
【請求項66】
L-ポリリボ核酸(L-RNA)分子を酵素的に製造するプロセスであって、
請求項13~15又は25~37のいずれか一項に記載の方法によって調製され、且つL-リボヌクレオチドからL-RNAを合成することができるD-アミノ酸RNAポリメラーゼを提供すること、及び
前記D-アミノ酸RNAポリメラーゼをテンプレートL-DNA分子、L-DNA/RNAプライマー及び複数のL-リボヌクレオチドと反応させ、前記L-RNA分子を酵素的に製造すること
を含む、プロセス。
【請求項67】
前記D-アミノ酸RNAポリメラーゼがT7 RNAポリメラーゼ又はPfu DNAポリメラーゼ変異体であり、前記Pfu DNAポリメラーゼ変異体が、V93Q、E102A、D141A、E143A、Y410G、A486L及びE665Kからなる群から選択される少なくとも1つの変異を有している、請求項66に記載のプロセス。
【請求項68】
前記T7 RNAポリメラーゼが、本質的に本明細書で提供するとおりである、請求項67に記載のプロセス。
【請求項69】
ラセミ結晶を形成する方法であって、目的の分子及び前記目的の分子のエナンチオモルフを共結晶化させ、それによりエナンチオマー対の前記ラセミ結晶を形成することを含み、前記目的の分子の前記エナンチオモルフが、請求項38に記載のD-アミノ酸タンパク質又はその産物である、方法。
【請求項70】
請求項38に記載のD-アミノ酸タンパク質を含む分子プローブであって、それに取り付けられた標識部分を有し、且つ分析物に対する親和性を有し、前記分析物が対応するL-アミノ酸タンパク質の対応する分析物のエナンチオモルフである、分子プローブ。
【請求項71】
L-核酸アプタマー又はD-ペプチド結合部分を製造する方法であって、
請求項13~15又は25~37のいずれか一項に記載の方法によって調製されるD-アミノ酸タンパク質を提供すること、及び
前記D-アミノ酸タンパク質を試験管内進化法に供すること
を含み、それにより前記L-核酸アプタマー又はD-ペプチド結合部分を得る、方法。
【請求項72】
DNA配列又はRNA配列を増幅する方法であって、前記DNA又はRNA配列のテンプレートを、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法によって調製したDNA又はRNAポリメラーゼと反応させることを含み、前記反応が、本質的に天然酵素及び/又は天然DNA/RNAの混入なしに達成される、方法。
【請求項73】
本明細書で提供するとおりのD-アミノ酸DNA又はD-アミノ酸RNAポリメラーゼと、ホスホロチオエート L-dNTP又はホスホロチオエート L-NTPと、2つの異なる色素で5’-標識された2つのプライマーとを使用して、L-DNA又はL-RNAをシーケンシングする方法。
【請求項74】
本明細書で提供するとおりのD-アミノ酸DNAポリメラーゼと、L-ジデオキシヌクレオシド三リン酸と、2つの異なる色素で5’-標識された2つのプライマーとを使用して、L-DNAをシーケンシングする方法。
【請求項75】
前記色素がFAM及びCy5である、請求項73又は74に記載の方法。
【請求項76】
データストレージシステムであって、
情報データをコードする配列を有する少なくとも1つのL-核酸分子と、
前記L-DNA分子を合成及び/又はシーケンシングするためのD-アミノ酸RNAポリメラーゼ及び/又はD-アミノ酸DNAポリメラーゼであって、請求項13~15又は25~37のいずれか一項に記載の方法によって製造されるD-アミノ酸RNAポリメラーゼ及び/又はD-アミノ酸DNAポリメラーゼと
を含むデータストレージシステム。
【請求項77】
前記L-核酸分子が化学的に調製されたか、又は鏡像酵素触媒反応によって調製されたものである、請求項76に記載のシステム。
【請求項78】
前記L-核酸分子が化学的にシーケンシングされるか、又は鏡像酵素を使用するシーケンシング・バイ・シンセシス方法によってシーケンシングされる、請求項76に記載のシステム。
【請求項79】
前記D-アミノ酸RNAポリメラーゼが、請求項50~52のいずれか一項に記載のT7 RNAポリメラーゼである、請求項76に記載のシステム。
【請求項80】
前記D-アミノ酸DNAポリメラーゼが、請求項53~61のいずれか一項に記載のPfu DNAポリメラーゼである、請求項76に記載のシステム。
【請求項81】
キラル・ステガノグラフィー手法であって、
カバー情報データをコードする配列を有する少なくとも1つのD-核酸分子と、
ステゴ情報データを解読するための暗号鍵をコードする配列を有する少なくとも1つのL-核酸分子及び/又はD-/L-キメラ核酸分子と、
前記L-DNA分子を合成及び/又はシーケンシングするためのD-アミノ酸RNAポリメラーゼ及び/又はD-アミノ酸DNAポリメラーゼであって、請求項13~15又は25~37のいずれか一項に記載の方法によって製造されたD-アミノ酸RNAポリメラーゼ及び/又はD-アミノ酸DNAポリメラーゼと
を含む、キラル・ステガノグラフィー手法。
【請求項82】
前記L-核酸分子が化学的に調製されたもの、又は鏡像酵素触媒反応によって調製されたものである、請求項81に記載のシステム。
【請求項83】
前記L-核酸分子が化学的にシーケンシングされるか、又は鏡像酵素を使用するシーケンシング・バイ・シンセシス方法によってシーケンシングされる、請求項81に記載のシステム。
【請求項84】
前記D-/L-キメラ核酸分子が化学的に調製されたもの、又は天然/鏡像酵素触媒反応によって調製されたものである、請求項81に記載のシステム。
【請求項85】
D-/L-キメラ核酸分子のL-DNA/RNA部分が化学的にシーケンシングされるか、又は鏡像酵素を使用するシーケンシング・バイ・シンセシス方法によってシーケンシングされる、請求項81に記載のシステム。
【請求項86】
前記D-アミノ酸RNAポリメラーゼが、請求項50~52のいずれか一項に記載のT7 RNAポリメラーゼである、請求項81に記載のシステム。
【請求項87】
前記D-アミノ酸DNAポリメラーゼが、請求項53~61のいずれか一項に記載のPfu DNAポリメラーゼである、請求項81に記載のシステム。
【請求項88】
DNAクリプトグラフィーと組み合わされて、暗号化されたデータを使用した追加のセキュリティ層を提供し得る、請求項81に記載のシステム。
【請求項89】
L-RNAの加水分解を研究する方法であって、
高次化構造及び長い鎖長の配列を有する少なくとも1つのL-RNA分子と、
前記L-RNA分子を合成するためのD-アミノ酸RNAポリメラーゼ及び/又はD-アミノ酸DNAポリメラーゼであって、請求項13~15又は25~37のいずれか一項に記載の方法によって製造されるD-アミノ酸RNAポリメラーゼ及び/又はD-アミノ酸DNAポリメラーゼと
を含む方法。
【請求項90】
RNA分解を研究する方法であって、
高次化構造及び長い鎖長の配列を有する少なくとも1つのL-RNA分子と、
前記L-RNA分子を合成するためのD-アミノ酸RNAポリメラーゼ及び/又はD-アミノ酸DNAポリメラーゼであって、請求項13~15又は25~37のいずれか一項に記載の方法によって製造されるD-アミノ酸RNAポリメラーゼ及び/又はD-アミノ酸DNAポリメラーゼと
を含む方法。
【請求項91】
RNアーゼ阻害試薬の有効性を評価するために使用され得る、請求項90に記載の方法。
【請求項92】
請求項13~15又は25~37のいずれか一項に記載の方法によって製造されるD-アミノ酸RNAポリメラーゼを含む、転写AND論理。
【請求項93】
前記D-アミノ酸RNAポリメラーゼが、請求項50~52のいずれか一項に記載のT7 RNAポリメラーゼである、請求項92に記載のシステム。
【請求項94】
前記D-アミノ酸RNAポリメラーゼが少なくとも1つの分裂部位と、K363とP364との間の第1の分裂部位と、N601とT602との間の第2の分裂部位とを含む、請求項92に記載のシステム。
【請求項95】
前記D-アミノ酸RNAポリメラーゼが少なくとも1つの分裂部位を含み、前記部位が357位~366位及び/又は564位~607位の同じループ内にある、請求項92に記載のシステム。
【請求項96】
L-RNAマーカー/ラダーを製造する方法であって、
L-リボヌクレオチドからL-RNAを合成することができる、請求項13~15又は25~37のいずれか一項に記載の方法によって調製されたD-アミノ酸RNAポリメラーゼを提供すること、及び
前記D-アミノ酸RNAポリメラーゼを、それぞれ長さの異なるテンプレートL-DNA分子、L-DNA/RNAプライマー及び複数のL-リボヌクレオチドと反応させること
を含み、それぞれ異なる長さのL-RNA分子を酵素的に製造し、それらを精製後に一定の濃度で一緒に混合する、方法。
【請求項97】
前記D-アミノ酸RNAポリメラーゼが、本質的に本明細書で提供するとおりのT7 RNAポリメラーゼである、請求項96に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、2020年8月6日に出願された米国仮特許出願第63/061,844号明細書の優先権の利益を主張するものであり、その内容は、全体として参照により本明細書に援用される。
【0002】
配列表に関する記載
本願の出願と同時に提出された、87597_ST25.txtという名称の2021年5月6日作成の180,286バイトを含むASCIIファイルは、参照により本明細書に援用される。
【0003】
本発明は、その一部の実施形態において、生化学に関し、より詳細には、限定されないが、大型タンパク質及びその鏡像対応物の化学的全合成のための方法並びにその使用に関する。
【背景技術】
【0004】
全てが非天然のD-アミノ酸及びアキラルなアミノ酸であるグリシンで構成されるタンパク質は、その自然(native)のL-タンパク質対応物の鏡像体である。近年の化学的タンパク質合成の進歩により、ドメインサイズの鏡像D-タンパク質を独自に簡便に合成で利用できるようになったため、「鏡の国」に入り、これまで達成できなかった方法でタンパク質研究を行うことが可能となっている。D-タンパク質は、結晶化が困難なその自然のL体の構造決定を容易にすることができ(ラセミ体X線結晶構造解析)、D-タンパク質は、ライブラリスクリーニングのベイトとしての役割を果たし、最終的に薬理学的に優れたD-ペプチド/D-タンパク質治療薬をもたらすことができ(鏡像ファージディスプレイ)、さらにD-タンパク質は、生物学、創薬及び免疫学における分子イベントを探索する強力な機構的手段としても使用することができる。
【0005】
160年余り前に、パスツールが苦心して初めて酒石酸塩の左右晶を分離して以来、科学者も一般人も、生体分子が一方の利き手のみを有することに大いに興味をかき立てられてきた。近年、幾つもの理論的及び実験的調査により、恐らく前生物的ラセミ体世界であったと思われるものから、どのように一方のエナンチオマーが他方より優位を占めるようになったかについてのモデルの記述が促進されている。Blackmond, D.G.[“The Origin of Biological Homochirality”, Cold Spring Harb Perspect Biol., 2010, 2(5), a002147]は、化学的過程又は物理的過程のいずれか一方又は両方の組み合わせを含むエナンチオ濃縮機構に強調している。かかる試みを促す科学的原動力の1つは、生体分子のホモキラリティーが生命の刻印であることを踏まえて、生命の起源を理解したいという関心から生じている。他の動機は、例えば、安全なデータストレージのための、自然不透過性の分子システムを提供することのできる直交性の生物学的ツールなど、実際的及び応用科学的な関心から生じている。
【0006】
核酸の最前線では、ホスホロアミデート化学により、DNAで最大約150nt及びRNAで約70ntのオリゴヌクレオチド(オリゴ)合成が可能となっている。タンパク質の最前線では、固相ペプチド合成(SPPS)とネイティブケミカルライゲーション(NCL)との連携により、様々なタンパク質の化学的全合成を可能にする強力な方法がもたらされている(5、14~20)。具体的には、鏡像バージョンの174aaアフリカ豚コレラウイルスポリメラーゼX(ASFV pol X)(5)、続いてより効率的で熱安定性の高い352aaのSulfolobus solfataricus P2のDNAポリメラーゼIV(Dpo4)(17~19)をベースとする鏡像遺伝子複製及び転写システムが実現しており、鏡像ポリメラーゼ連鎖反応(MI-PCR)並びに鏡像遺伝子転写及び逆転写の実現につながっている(21)。詳細には、変異体バージョンのD-Dpo4で完全長5S rRNAが120ntで酵素的に転写されており、これは、他の場合には長過ぎて化学的に合成できなかった偉業である(21)。
【0007】
鏡像タンパク質は、構造生物学、ペプチド/タンパク質ドラッグデザイン及び生物学的過程の機構研究において幅広い応用性のある強力なツールである。化学的タンパク質合成技法がよりロバストになり、異分野の科学者にも容易に利用できるようになれば、化学的、生物学的及び生物医学的研究における鏡像タンパク質の莫大な可能性が余すところなく解放されることになるであろう。ネイティブケミカルライゲーション及び鏡像ファージディスプレイという2つの実施可能な技術は特に魅力的であり、様々なヒト疾患の治療に向けた新規クラスの薬理学的に優れたペプチド及びタンパク質治療薬の創薬に多大な影響を及ぼすことになるであろう。
【0008】
レビュー“Mirror image proteins”[Zhao, L. and Lu, W., Current Opinion in Chemical Biology, 2014, 22, pp. 56-61]は、構造生物学、創薬及び免疫学への鏡像タンパク質の応用における最近の進展を調べている。
【0009】
Hartrampf, N. et al.[“Synthesis of proteins by automated flow chemistry”, Science, 2020, 368(6494), pp. 980-987]は、327回の連続反応で164アミノ酸長のペプチド鎖を直接製造するための自動ファストフロー機器に適合する極めて高効率の化学を報告し、ここでは、酵素、構造単位及び制御因子に相当する9つの異なるタンパク質鎖の化学合成によって実証されるとおり、ペプチド鎖伸長が数時間で完了する。この研究者らは、精製及び折り畳み後、この合成材料が、生物学的に発現したタンパク質に匹敵する生物物理学的及び酵素的特性を示すことを報告しており、忠実度の高い自動化されたフロー化学、即ち自動ファストフローペプチド合成(AFPS)が、リボソームを用いずにシングルドメインタンパク質を製造する代替技術であることを示している。
【0010】
しかしながら、鏡像タンパク質は、依然として比較的小さいタンパク質に限られている。一方、約400アミノ酸(aa)残基を超える大型タンパク質の合成を実現することは、ペプチドセグメントの合成及びライゲーション効率に限界があることを主な原因として、はるかに困難となっている。最近開発された自動ファストフローペプチド合成(AFPS)技術は、これまで常法どおりの標準的なSPPSによって到達可能であったものの3倍を超える長さのペプチド鎖をもたらすことができるが、一見して大型鏡像分子を合成する適切な方法論はなく、そのため、鏡像バイオロジーシステムの開発及び情報ストレージなどでのその応用は、極端に制約されている。
【発明の概要】
【0011】
本発明の態様は、そのアミノ酸残基のL型及びD型の両方の利き手で比較的大型の(400aaより長い)タンパク質の化学的全合成方法及び本明細書に開示される方法によって調製されるD-アミノ酸タンパク質への応用に関する。本発明の実施形態によれば、多重配列アラインメント及び/又は構造情報に基づき、タンパク質の機能に悪影響を及ぼすことなくアミノ酸残基を置換ること(変異)のできるアミノ酸配列中のセクションを探すことにより、大型タンパク質が生化学的巨大分子の関与又は存在なしに化学的に合成される。本明細書に開示される発明によれば、タンパク質配列への変異の導入により、タンパク質配列に分裂部位及び/又はライゲーション部位が挿入されると共に、ライゲーション誘導性ポリペプチドの疎水性も減少し、且つタンパク質中のIle残基の数が減少することにより、D-アミノ酸タンパク質の調製コストが減少する。また、限定なしに、バイオ直交性の分子データストレージ、アプタマー開発のためのSELEX及びX線タンパク質結晶構造解析における結晶成長戦略など、D-アミノ酸タンパク質の使用も提供される。
【0012】
このように、本発明の一部の実施形態のある態様によれば、タンパク質を化学的に製造する方法であって、タンパク質の少なくとも2つのライゲーション誘導性セグメントを連結することによって実行する方法が提供され、ここで、ライゲーション誘導性セグメントの各々は、化学的に合成可能であり、且つ
i.タンパク質のアミノ酸配列中の少なくとも1つのライゲーション誘導性配列を同定し、タンパク質のアミノ酸配列をライゲーション誘導性配列でパースすることで、複数のライゲーション誘導性セグメントを得ること、及び
ii.ライゲーション誘導性セグメントの各々が化学的に合成可能である場合、ライゲーション誘導性セグメントの各々を化学的に合成すること、
iii.ライゲーション誘導性セグメントのいずれか1つが化学的に合成可能でない場合、ライゲーション誘導性セグメント中の少なくとも1つの構造喪失セクション(structurally-lose section)を同定し、構造喪失セクション中の少なくとも1つのアミノ酸をライゲーション誘導性アミノ酸残基で置換して、構造喪失セクション中にライゲーション誘導性配列を導入し、タンパク質のアミノ酸配列をライゲーション誘導性配列でパースし、そしてライゲーション誘導性セグメントの各々を化学的に合成すること
によって得ることが可能である。
【0013】
本発明の一部の実施形態では、ステップ(i)において、ライゲーション誘導性配列の少なくとも1つは、タンパク質中の構造喪失セクションにある。
【0014】
本発明の一部の実施形態において、本願で提供する方法は、ステップ(iii)を含む。
【0015】
本発明の一部の実施形態において、本願で提供する方法は、ステップ(i)の前に、
a)タンパク質のアミノ酸配列を少なくとも2つのドメイン形成セグメントに分割すること、
b)ドメイン形成セグメントの各々が化学的に合成可能である場合、ドメイン形成セグメントの各々を化学的に合成すること、及び
c)ドメイン形成セグメントを一緒に折り畳み、それによりタンパク質を得ること
を更に含む。
【0016】
本発明の一部の実施形態において、本願で提供する方法は、タンパク質のアミノ酸配列を少なくとも2つのドメイン形成セグメントに分割するステップ(a)を含む。
【0017】
本発明の一部の実施形態によれば、ドメイン形成セグメントの1つが化学的に合成可能でない場合、本方法は、さらに、
d)ドメイン形成セグメント中の少なくとも1つのライゲーション誘導性配列を同定し、そしてドメイン形成セグメントのアミノ酸配列をライゲーション誘導性配列でパースすることで、複数の化学的に合成可能なライゲーション誘導性セグメントを得、
e)ドメイン形成セグメントが本質的にライゲーション誘導性配列を欠いている場合又はライゲーション誘導性セグメントのいずれか1つが化学的に合成可能でない場合、ドメイン形成セグメント又はライゲーション誘導性セグメント中の少なくとも1つの構造喪失セクションを同定し、
f)構造喪失セクション又はライゲーション誘導性セグメント中の少なくとも1つのアミノ酸をライゲーション誘導性アミノ酸残基で置換して、構造喪失セクション又はライゲーション誘導性セグメント中にライゲーション誘導性配列を導入し、且つドメイン形成セグメントのアミノ酸配列をライゲーション誘導性配列でパースすることで、化学的に合成可能なライゲーション誘導性セグメントの複数の配列を得、
g)化学的に合成可能なライゲーション誘導性セグメントの各々を化学的に合成する
ことによって実行する。
【0018】
本発明の一部の実施形態において、本願で提供する方法は、ステップ(f)を含む。
【0019】
本発明の一部の実施形態によれば、合成タンパク質は、対応する生物学的に製造されたタンパク質の活性の少なくとも1%、5%又は少なくとも10%を呈する。
【0020】
本発明の一部の実施形態によれば、活性は、触媒活性、特異的結合活性及び構造活性からなる群から選択される。
【0021】
本発明の一部の実施形態によれば、タンパク質は、少なくとも240アミノ酸残基を含む。
【0022】
本発明の一部の実施形態によれば、タンパク質は、少なくとも約400アミノ酸残基を含む。
【0023】
本発明の一部の実施形態によれば、本願で提供する方法は、ライゲーション誘導性セグメントの少なくとも1つにおいて、以下の疎水性の順序:Ile>Leu>Phe>Val>Met>Pro>Trp>His(0)>Thr>Glu(0)>Gln>Cys>Tyr>Ala>Ser>Asn>Asp(0)>Arg+>Gly>His+>Glu>Lys+>Asp-に従い、少なくとも1つの疎水性アミノ酸残基をより疎水性の低いアミノ酸で置換することを更に含む。
【0024】
本発明の一部の実施形態によれば、合成タンパク質は、少なくとも90%がGly以外のD-アミノ酸残基を使用して製造される。
【0025】
本発明の一部の実施形態によれば、タンパク質は、対応する生物学的に製造されたタンパク質の3次元構造と比較して本質的に鏡像を成す3次元構造を有する。
【0026】
本発明の一部の実施形態によれば、本願で提供する方法は、少なくとも1つのIle残基を、D-Ala残基、D-Val残基、D-Leu残基、D-Thr残基、D-Phe残基、D-Met残基、Gly残基及びD-Pro残基からなる群から選択されるD-アミノ酸残基で置換することを更に含む。
【0027】
本発明の一部の実施形態の別の態様によれば、本願で提供する方法によって調製されるタンパク質であって、少なくとも約240アミノ酸残基長であるタンパク質が提供される。
【0028】
本発明の一部の実施形態によれば、本願で提供する化学的に合成されたタンパク質は、非共有結合的に取り付けられたポリペプチド鎖である少なくとも2つのドメイン形成セグメントを含み、このドメイン形成セグメントは、少なくとも1つの対応する生物学的に製造されたタンパク質中における共有結合的に取り付けられたポリペプチド鎖である。
【0029】
本発明の一部の実施形態によれば、本願で提供するタンパク質は、酵素、輸送タンパク質、構造/機構タンパク質、ホルモン、シグナル伝達タンパク質、抗体、体液平衡化タンパク質、pH平衡化タンパク質、細胞チャネル及び細胞ポンプからなる群から選択される。
【0030】
本発明の一部の実施形態によれば、タンパク質は、対応する生物学的に製造された酵素によって触媒される反応を触媒することができる酵素である。
【0031】
本発明の一部の実施形態によれば、化学的に合成された酵素は、DNAテンプレートを用いてリボヌクレオチドからRNAを合成することができるRNAポリメラーゼである。
【0032】
本発明の一部の実施形態によれば、化学的に合成されたRNAポリメラーゼは、T7 RNAポリメラーゼ又はPfu DNAポリメラーゼ変異体である。
【0033】
本発明の一部の実施形態によれば、化学的に合成されたPfu DNAポリメラーゼ変異体は、V93Q、E102A、D141A、E143A、Y410G、A486L及びE665Kからなる群から選択される少なくとも1つの変異を有している。
【0034】
一部の実施形態において、Pfu DNAポリメラーゼは、D215A、A486Y及びL490Wからなる群から選択される少なくとも1つの変異(配列番号77)を更に含む。
【0035】
一部の実施形態において、Pfu DNAポリメラーゼは、DNA結合構造ドメインを更に含み、DNA結合構造ドメインは、sso7d構造ドメイン(配列番号78)である。
【0036】
本発明の一部の実施形態によれば、化学的に合成された酵素は、デオキシリボヌクレオチドからDNAを合成することができるDNAポリメラーゼである。
【0037】
本発明の一部の実施形態によれば、化学的に合成されたDNAポリメラーゼは、Pfu DNAポリメラーゼである。
【0038】
本発明の実施形態の別の態様によれば、D-アミノ酸タンパク質(鏡像タンパク質)を化学的に製造する方法であって、D-アミノ酸タンパク質の少なくとも2つのライゲーション誘導性セグメントを連結することを含む方法が提供され、ここで、ライゲーション誘導性セグメントの各々は、少なくとも90%がGly以外のD-アミノ酸残基を含み、且つ化学的に合成可能であり、且つ
i.対応するL-アミノ酸タンパク質のアミノ酸配列中の少なくとも1つのライゲーション誘導性配列を同定し、アミノ酸配列をライゲーション誘導性配列でパースすることで、複数のライゲーション誘導性セグメントを得ること、及び
ii.ライゲーション誘導性セグメントの各々が化学的に合成可能である場合、少なくとも90%がGly以外のD-アミノ酸残基を使用してライゲーション誘導性セグメントの各々を化学的に合成すること、
iii.ライゲーション誘導性セグメントのいずれか1つが化学的に合成可能でない場合、ライゲーション誘導性セグメント中の少なくとも1つの構造喪失セクションを同定し、構造喪失セクション中の少なくとも1つのアミノ酸をライゲーション誘導性アミノ酸残基で置換して、構造喪失セクション中にライゲーション誘導性配列を導入し、ライゲーション誘導性セグメントのアミノ酸配列をライゲーション誘導性配列でパースし、そして少なくとも90%がGly以外のD-アミノ酸残基を使用してライゲーション誘導性セグメントの各々を化学的に合成すること
によって得ることが可能である。
【0039】
本発明の一部の実施形態によれば、鏡像タンパク質を製造する方法は、ステップ(i)において、ライゲーション誘導性配列の少なくとも1つが、対応するL-アミノ酸タンパク質中の構造喪失セクションにあることを含む。
【0040】
本発明の一部の実施形態によれば、鏡像タンパク質を製造する方法は、ステップ(iii)を含む。
【0041】
本発明の一部の実施形態によれば、鏡像タンパク質を製造する方法は、ステップ(i)の前に、
a)L-アミノ酸タンパク質のアミノ酸配列を少なくとも2つのドメイン形成セグメントに分割すること、
b)ドメイン形成セグメントの各々が化学的に合成可能である場合、少なくとも90%がGly以外のD-アミノ酸残基を使用してドメイン形成セグメントの各々を化学的に合成すること、及び
c)ドメイン形成セグメントを一緒に折り畳み、それによりD-アミノ酸タンパク質を得ること
を更に含む。
【0042】
本発明の一部の実施形態によれば、鏡像タンパク質を製造する方法において、ドメイン形成セグメントの1つが化学的に合成可能でない場合、
d)ドメイン形成セグメント中の少なくとも1つのライゲーション誘導性配列を同定し、そしてドメイン形成セグメントのアミノ酸配列をライゲーション誘導性配列でパースすることで、複数の化学的に合成可能なライゲーション誘導性セグメントを得、
e)ドメイン形成セグメントが本質的にライゲーション誘導性配列を欠いている場合又はライゲーション誘導性セグメントのいずれか1つが化学的に合成可能でない場合、ドメイン形成セグメント又はライゲーション誘導性セグメント中の少なくとも1つの構造喪失セクションを同定し、
f)構造喪失セクション又はライゲーション誘導性セグメント中の少なくとも1つのアミノ酸をライゲーション誘導性アミノ酸残基で置換して、構造喪失セクション又はライゲーション誘導性セグメントにライゲーション誘導性配列を導入し、そしてドメイン形成セグメントのアミノ酸配列をライゲーション誘導性配列でパースし、
g)少なくとも90%がGly以外のD-アミノ酸残基を使用してライゲーション誘導性セグメントの各々を化学的に合成し、それによりドメイン形成セグメントを得る。
【0043】
本発明の一部の実施形態によれば、鏡像タンパク質を製造する方法は、ステップ(iii)を含む。
【0044】
本発明の一部の実施形態によれば、鏡像タンパク質を製造する方法において、D-アミノ酸タンパク質は、対応するL-アミノ酸タンパク質の活性の少なくとも1%、少なくとも5%又は少なくとも10%を呈する。
【0045】
本発明の一部の実施形態によれば、鏡像タンパク質の活性は、触媒活性、特異的結合活性及び構造活性からなる群から選択される。
【0046】
本発明の一部の実施形態によれば、本願で提供するD-アミノ酸タンパク質は、少なくとも240、300、400又は少なくとも500アミノ酸残基を含む。
【0047】
本発明の一部の実施形態によれば、鏡像タンパク質を製造する方法は、ライゲーション誘導性セグメントの少なくとも1つにおいて、以下の疎水性の順序:D-Ile>D-Leu>D-Phe>D-Val>D-Met>D-Pro>D-Trp>D-His(0)>D-Thr>D-Glu(0)>D-Gln>D-Cys>D-Tyr>D-Ala>D-Ser>D-Asn>D-Asp(0)>D-Arg+>Gly>D-His+>D-Glu>D-Lys+>D-Asp-に従い、少なくとも1つの疎水性D-アミノ酸残基をより疎水性の低いアミノ酸で置換することを更に含む。
【0048】
本発明の一部の実施形態によれば、D-アミノ酸タンパク質は、対応するL-アミノ酸タンパク質の3次元構造と比較して本質的に鏡像を成す3次元構造を呈する。
【0049】
本発明の一部の実施形態によれば、鏡像タンパク質を製造する方法は、少なくとも1つのIle残基を、D-Ala残基、D-Val残基、D-Leu残基、D-Thr残基、Gly残基、D-Phe残基、D-Met残基及びD-Pro残基からなる群から選択されるD-アミノ酸残基で置換することを更に含む。
【0050】
本発明の一部の実施形態の別の態様によれば、本願で提供する方法によって調製されるD-アミノ酸タンパク質が提供される。
【0051】
本発明の一部の実施形態において、D-アミノ酸タンパク質は、対応するL-アミノ酸タンパク質(例えば、対応する生物学的に製造されたタンパク質)の3次元構造と比較して本質的に鏡像を成す3次元構造を有している。
【0052】
本発明の一部の実施形態によれば、D-アミノ酸タンパク質は、非共有結合的に取り付けられたリペプチド鎖である少なくとも2つのドメイン形成セグメントを含み、このドメイン形成セグメントは、少なくとも1つの対応するL-アミノ酸タンパク質中における共有結合的に取り付けられたポリペプチド鎖である。
【0053】
本発明の一部の実施形態によれば、D-アミノ酸タンパク質は、酵素、輸送タンパク質、構造/機構タンパク質、ホルモン、シグナル伝達タンパク質、抗体、体液平衡化タンパク質、pH平衡化タンパク質、細胞チャネル及び細胞ポンプからなる群から選択される。
【0054】
本発明の一部の実施形態によれば、D-アミノ酸タンパク質は、対応するL-アミノ酸酵素と比較してエナンチオマー反応を触媒することができる、即ち、対応する基質のエナンチオモルフを用いて、対応する産物のエナンチオモルフを形成する、対応する生物学的に製造された酵素の酵素反応に匹敵する反応の触媒能を有するD-アミノ酸酵素である。
【0055】
本発明の一部の実施形態によれば、D-アミノ酸酵素は、L-DNAテンプレートを使用してL-リボヌクレオチドからL-RNAを合成することができるD-アミノ酸RNAポリメラーゼである。
【0056】
本発明の一部の実施形態によれば、D-アミノ酸RNAポリメラーゼは、D-アミノ酸T7 RNAポリメラーゼ又はD-アミノ酸Pfu DNAポリメラーゼ変異体である。
【0057】
本発明の一部の実施形態によれば、D-アミノ酸Pfu DNAポリメラーゼ変異体は、V93Q、E102A、D141A、E143A、Y410G、A486L及びE665Kからなる群から選択される少なくとも1つの変異を有する。
【0058】
本発明の一部の実施形態によれば、D-アミノ酸タンパク質は、少なくとも1つの分裂部位と、K363とP364との間の第1の分裂部位と、N601とT602との間の第2の分裂部位とを含む、T7 RNAポリメラーゼである。
【0059】
本発明の一部の実施形態によれば、D-アミノ酸酵素は、L-デオキシリボヌクレオチドからL-DNAを合成することができるD-アミノ酸DNAポリメラーゼである。
【0060】
本発明の一部の実施形態によれば、D-アミノ酸DNAポリメラーゼは、D-アミノ酸Pfu DNAポリメラーゼである。
【0061】
本発明の一部の実施形態の別の態様によれば、K363とP364との間の分裂及び/又はN601とT602との間の分裂によって形成される少なくとも2つのポリペプチド鎖を含むT7 RNAポリメラーゼが提供される。
【0062】
一部の実施形態において、本願で提供するT7 RNAポリメラーゼは、I6V、I14L、I74V、I82V、I109V、I117L、I141V、I210M、I244L、I281V、I320V、I322L、I330V及びI367Lからなる群から選択される少なくとも1つの変異を更に含む。
【0063】
本発明の実施形態の別の態様によれば、配列番号83と比較して少なくとも80%又は少なくとも90%の配列同一性によって特徴付けられるアミノ酸配列を有する、T7 RNAポリメラーゼが提供される。
【0064】
本発明の一部の実施形態の別の態様によれば、K467とM468との間の分裂によって形成される少なくとも2つのポリペプチド鎖を含む、Pfu DNAポリメラーゼが提供される。これらの2つのポリペプチド鎖は、互いにその主鎖間の共有結合によって結び付いているのではない。
【0065】
一部の実施形態において、Pfu DNAポリメラーゼは、E102A、E276A、K317G、V367L及びI540Aからなる群から選択される少なくとも1つの変異を更に含む。
【0066】
一部の実施形態において、本願で提供するPfu DNAポリメラーゼは、I38F、I62V、I65V、I80V、I127V、I137M、I158L、I171A、I176V、I191V、I197V、I198V、I205V、I206V、I228V、I232L、I244M、I256V、I264A、I268L、I282V、I331A、I401V、I434V、I446F、I478K、I557V、I598V、I605T、I611V、I619A、I631L、I643V、I648T、I656V、I677T、I716Y、I734V、I745V及びI772Pからなる群から選択される少なくとも1つの変異を更に含む。
【0067】
一部の実施形態において、Pfu DNAポリメラーゼは、V93Q、D141A、E143A、Y410G、A486L及びE665Kからなる群から選択される少なくとも1つの変異を更に含む。
【0068】
一部の実施形態において、Pfu DNAポリメラーゼは、RNA重合活性を呈する。
【0069】
一部の実施形態において、Pfu DNAポリメラーゼは、D215A、A486Y及び/又はL490Wからなる群から選択される変異を更に含む。
【0070】
一部の実施形態において、Pfu DNAポリメラーゼは、3’から5’のエキソヌクレアーゼ活性の欠損及びジデオキシヌクレオシド三リン酸(ddNTP)選択性の増加を呈する。
【0071】
一部の実施形態において、Pfu DNAポリメラーゼは、DNA結合構造ドメインを更に含み、DNA結合構造ドメインは、sso7d構造ドメイン(配列番号78)である。
【0072】
一部の実施形態において、sso7d構造ドメインで修飾されたPfu DNAポリメラーゼは、PCR増幅活性の向上を呈する。
【0073】
本発明の一部の実施形態の別の態様によれば、配列番号51と比較して少なくとも80%若しくは少なくとも90%の配列同一性によって特徴付けられるアミノ酸配列を有するか、又は配列番号79と比較して少なくとも80%若しくは少なくとも90%の配列同一性によって特徴付けられるアミノ酸配列を有するPfu DNAポリメラーゼが提供される。
【0074】
本発明の一部の実施形態の別の態様によれば、本願で提供するD-アミノ酸タンパク質の使用を提供する。ここで、D-アミノ酸タンパク質は酵素であり、対応するL-アミノ酸酵素によって合成される分子のエナンチオモルフである産物の合成を触媒する、又は対応するL-アミノ酸酵素の対応する基質のエナンチオモルフである基質の反応を触媒するための使用である。
【0075】
本発明の一部の実施形態の別の態様によれば、L-ポリデオキシリボ核酸分子を酵素的に製造するプロセスであって、本願で提供する方法によって調製され、且つL-デオキシリボヌクレオチドからL-DNAを合成することができる、D-アミノ酸DNAポリメラーゼを提供すること、及びD-アミノ酸DNAポリメラーゼをテンプレートL-DNA分子、L-DNAプライマー及び複数のL-デオキシリボヌクレオチドと反応させて、L-DNA分子を酵素的に製造することによって実行するプロセスが提供される。
【0076】
本プロセスの態様の一部の実施形態において、D-アミノ酸DNAポリメラーゼは、Pfu DNAポリメラーゼである。
【0077】
本プロセスの態様の一部の実施形態において、Pfu DNAポリメラーゼは、本質的に本明細書で提供するとおりである。
【0078】
本発明の一部の実施形態の別の態様によれば、L-ポリリボ核酸(L-RNA)分子を酵素的に製造するプロセスであって、本願で提供する方法によって調製され、且つL-リボヌクレオチドからL-RNAを合成することができる、D-アミノ酸RNAポリメラーゼを提供すること、及びD-アミノ酸RNAポリメラーゼをテンプレートL-DNA分子、L-DNA/RNAプライマー及び複数のL-リボヌクレオチドと反応させて、L-RNA分子を酵素的に製造すること、によって実行するプロセスが提供される。
【0079】
本プロセスの態様の一部の実施形態において、D-アミノ酸RNAポリメラーゼは、T7 RNAポリメラーゼ又はPfu DNAポリメラーゼ変異体であり、Pfu DNAポリメラーゼ変異体は、V93Q、E102A、D141A、E143A、Y410G、A486L及びE665Kからなる群から選択される少なくとも1つの変異を有している。
【0080】
本プロセスの態様の一部の実施形態において、T7 RNAポリメラーゼは、本質的に本明細書で提供するとおりである。
【0081】
本発明の一部の実施形態の別の態様によれば、目的の分子のラセミ結晶を形成する方法であって、目的の分子及び目的の分子のエナンチオモルフを共結晶化させ、それによりエナンチオマー対のラセミ結晶を形成することによって実行する方法が提供され、ここで、目的の分子のエナンチオモルフは、本明細書に提示される方法によって提供されるD-アミノ酸タンパク質又はかかるD-アミノ酸タンパク質の産物である。
【0082】
本発明の一部の実施形態の別の態様によれば、本明細書で提供するとおりのD-アミノ酸タンパク質を含む分子プローブであって、それに取り付けられた標識部分を有し、且つ対応するL-アミノ酸タンパク質の対応する分析物のエナンチオモルフである分析物に対する親和性を有する分子プローブが提供される。
【0083】
本発明の一部の実施形態の別の態様によれば、L-核酸アプタマー又はD-ペプチド結合部分を製造する方法であって、
本明細書に提示される方法によって調製されるD-アミノ酸タンパク質を提供すること、及び
D-アミノ酸タンパク質を試験管内進化法に供し、それによりL-核酸アプタマー又はD-ペプチド結合部分を得ること
によって実行する方法が提供される。
【0084】
本発明の一部の実施形態の別の態様によれば、DNA配列又はRNA配列を増幅する方法であって、DNA又はRNA配列のテンプレートを、本願で提供する方法によって調製されるDNA又はRNAポリメラーゼと反応させることを含む方法が提供され、ここで、この反応は、本質的に天然酵素及び/又は天然DNA/RNAの混入なしに達成される。
【0085】
本発明の一部の実施形態の別の態様によれば、本明細書で提供するとおりのD-アミノ酸DNA又はD-アミノ酸RNAポリメラーゼと、ホスホロチオエートL-dNTP又はホスホロチオエートL-NTPと、2つの異なる色素で5’-標識された2つのプライマーとを使用して、L-DNA又はL-RNAをシーケンシングする方法が提供される。
【0086】
本発明の一部の実施形態の別の態様によれば、本明細書で提供するとおりのD-アミノ酸DNAポリメラーゼと、L-ジデオキシヌクレオシド三リン酸と、2つの異なる色素で5’-標識された2つのプライマーとを使用して、L-DNAをシーケンシングする方法が提供される。
【0087】
一部の実施形態において、色素は、FAM及びCy5である。
【0088】
本発明の一部の実施形態の別の態様によれば、データストレージシステムであって、
情報データをコードする配列を有する少なくとも1つのL-核酸(例えば、L-DNA、L-RNA及びこれらのD-核酸セグメントとの任意のキメラ)分子と、
L-核酸を合成及び/又はシーケンシングするためのD-アミノ酸RNAポリメラーゼ及び/又はD-アミノ酸DNAポリメラーゼであって、本願で提供する方法によって製造されるD-アミノ酸RNAポリメラーゼ及び/又はD-アミノ酸DNAポリメラーゼと
を含むデータストレージシステムが提供される。
【0089】
本システムの一部の実施形態において、L-核酸分子は、化学的に調製されたか、又は鏡像酵素触媒反応によって調製さたものである。L-DNAデータストレージシステムの一部の実施形態において、情報格納用L-DNAセグメントは、D-酵素を使用する鏡像アセンブリPCRによって調製されたものである。
【0090】
本システムの一部の実施形態において、L-核酸分子は、化学的にシーケンシングされるか、又は鏡像酵素を使用するシーケンシング・バイ・シンセシス方法によってシーケンシングされる。
【0091】
本システムの一部の実施形態において、D-アミノ酸RNAポリメラーゼは、本願で提供するT7 RNAポリメラーゼである。
【0092】
本システムの一部の実施形態において、D-アミノ酸DNAポリメラーゼは、本願で提供するPfu DNAポリメラーゼである。
【0093】
本発明の一部の実施形態の別の態様によれば、キラル・ステガノグラフィー手法であって、
カバー情報データをコードする配列を有する少なくとも1つのD-核酸分子と、
ステゴ情報データを解読するための暗号鍵をコードする配列を有する少なくとも1つのL-核酸分子及び/又はD-/L-キメラ核酸分子と、
L-DNA分子を合成及び/又はシーケンシングするためのD-アミノ酸RNAポリメラーゼ及び/又はD-アミノ酸DNAポリメラーゼであって、本明細書で提供するとおりに製造されるD-アミノ酸RNAポリメラーゼ及び/又はD-アミノ酸DNAポリメラーゼと
によって実行する、キラル・ステガノグラフィー手法が提供される。
【0094】
一部の実施形態において、L-核酸分子は、化学的に調製されたもの、又は鏡像酵素触媒反応によって調製されたものである。
【0095】
一部の実施形態において、L-核酸分子は、化学的にシーケンシングされるか、又は鏡像酵素を使用するシーケンシング・バイ・シンセシス方法によってシーケンシングされる。
【0096】
一部の実施形態において、D-/L-キメラ核酸分子は、化学的に調製されたもの、又は天然/鏡像酵素触媒反応によって調製されたものである。
【0097】
一部の実施形態において、D-/L-キメラ核酸分子のL-DNA/RNAパートは、化学的にシーケンシングされるか、又は鏡像酵素を使用するシーケンシング・バイ・シンセシス方法によってシーケンシングされる。
【0098】
一部の実施形態において、D-アミノ酸RNAポリメラーゼは、本明細書で提供するとおりのT7 RNAポリメラーゼである。
【0099】
一部の実施形態において、D-アミノ酸DNAポリメラーゼは、本明細書で提供するとおりのPfu DNAポリメラーゼである。
【0100】
一部の実施形態において、本システムは、DNAクリプトグラフィーと組み合わされて、暗号化されたデータを使用して追加のセキュリティ層を提供し得る。
【0101】
本発明の一部の実施形態の別の態様によれば、L-RNA加水分解を研究する方法であって、
高次化構造及び長い鎖長の配列を有する少なくとも1つのL-RNA分子と、
L-RNA分子を合成するためのD-アミノ酸RNAポリメラーゼ及び/又はD-アミノ酸DNAポリメラーゼであって、本願で提供する方法によって製造されるD-アミノ酸RNAポリメラーゼ及び/又はD-アミノ酸DNAポリメラーゼ
によって実行する方法が提供される。
【0102】
本発明の一部の実施形態の別の態様によれば、RNA分解を研究する方法であって、
高次化構造及び長い鎖長の配列を有する少なくとも1つのL-RNA分子、
L-RNA分子を合成するためのD-アミノ酸RNAポリメラーゼ及び/又はD-アミノ酸DNAポリメラーゼであって、本願で提供する方法によって製造されるD-アミノ酸RNAポリメラーゼ及び/又はD-アミノ酸DNAポリメラーゼと
によって実行する方法が提供される。
【0103】
一部の実施形態において、本方法を使用して、RNアーゼ阻害試薬の有効性を評価することができる。
【0104】
本発明の一部の実施形態の別の態様によれば、転写AND論理であって、D-アミノ酸RNAポリメラーゼであって、本願で提供する方法によって製造されるD-アミノ酸RNAポリメラーゼによって実行する転写AND論理が提供される。
【0105】
一部の実施形態において、D-アミノ酸RNAポリメラーゼは、本願で提供するT7 RNAポリメラーゼである。
【0106】
一部の実施形態において、D-アミノ酸RNAポリメラーゼは、少なくとも1つの分裂部位、K363とP364との間の第1の分裂部位及びN601とT602との間の第2の分裂部位を含む。
【0107】
一部の実施形態において、D-アミノ酸RNAポリメラーゼは、少なくとも1つの分裂部位を含み、上述の部位は、同じループ、即ち357位~366位及び/又は564位~607位にある。
【0108】
本発明の一部の実施形態の別の態様によれば、L-RNAマーカー/ラダーを製造する方法であって、
L-リボヌクレオチドからL-RNAを合成することができる、本願で提供する方法によって調製されたD-アミノ酸RNAポリメラーゼを提供すること、及び
D-アミノ酸RNAポリメラーゼを、それぞれ長さの異なるテンプレートL-DNA分子、L-DNA/RNAプライマー及び複数のL-リボヌクレオチドと反応させること
を含み、それぞれ異なる長さのL-RNA分子を酵素的に製造し、それらを精製後に特定の濃度で一緒に混合する、方法が提供される。
【0109】
一部の実施形態において、D-アミノ酸RNAポリメラーゼは、本質的に本明細書で提供するとおりのT7 RNAポリメラーゼである。
【0110】
特に定義しない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び/又は科学用語は、本発明が関係する技術分野の当業者が一般に理解するのと同じ意味を有する。本発明の実施形態の実施又は試験では、本明細書に記載されるものと同様の又は同等な方法及び材料を使用し得るが、例示的方法及び/又は材料を以下に記載する。矛盾が生じる場合、本特許明細書が定義を含めて優先するものとする。加えて、材料、方法及び例は、例示的に過ぎず、必ずしも限定することを意図するわけではない。
【0111】
本発明の一部の実施形態は、本明細書において、単に例として添付の図を参照して説明される。ここで、具体的にそれらの図を詳細に参照するが、示される詳細は、例であり、本発明の実施形態の例示的な考察を目的としていることが強調される。この点において、この説明を図と併せて解釈すると、本発明の実施形態をどのように実施し得るかについて当業者に明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0112】
図1】本発明の一部の実施形態による、本願で提供する方法を図解するフローチャートである。
図2A】追加的なNCL部位(E102A、E276A、K317G、V367L)を導入してライゲーション誘導性セグメントを形成し、25個のイソロイシン残基を置換した変異体Pfu-N断片の合成経路の設計フロー(図2A)、及び追加的なNCL部位(I540A)を導入すると共に、他の15個のイソロイシン残基の変異も導入した変異体Pfu-C断片の合成経路の設計フロー(図2B)を提示する。これらの変異を導入することにより、SPPSでのタンパク質合成及びライゲーションプロセスを容易にし、鏡像バージョンの合成コストを削減する。
図2B】同上
図3A】置換369aa(N末端に付加されるHisタグを含む)変異体T7-分裂-N断片(図3A)、238aa変異体T7-分裂-M断片(図3B)、及び282aa変異体T7-分裂-C断片(図3C)の合成経路の設計フローを提示する。設計フローには、イソロイシン残基の置換、新規NCL及びK363とP364との間の新規分裂部位が含まれ、これら変異は、SPPSでのタンパク質合成及びライゲーションプロセスを容易にし、且つ鏡像バージョンの合成コストを削減するために導入した。
図3B】同上
図3C】同上
図4】L-DNAをXNAの例示的の一種として使用した、本発明の一部の実施形態による分子データストレージについて図解するフローチャートである。
図5】本発明の一部の実施形態によるDNAベースのステガノグラフィーを図解するフローチャートであって、一見して通常のD-DNAストレージライブラリにキメラD-DNA/L-DNA鍵分子を埋め込んで秘密のメッセージを運ぶものを提示する。
【発明を実施するための形態】
【0113】
本発明は、その一部の実施形態において、生化学に関し、より詳細には、限定されないが、大型タンパク質及びその鏡像対応物の化学的全合成方法並びにその使用に関する。
【0114】
本発明の原理及び動作は、図及び付随する説明を参照してよりよく理解され得る。
【0115】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本発明は、その応用の点で、以下の説明に示されるか又は実施例に例示される詳細に必ずしも限定されないことが理解されるべきである。本発明は、他の実施形態が可能であるか、又は様々な方法での実施若しくは実行が可能である。
【0116】
タンパク質の基本的なビルディングブロックであるα-アミノ酸は、2つの形態、即ち、L-エナンチオマー(左旋性又は左利きの「L」)及びD-エナンチオマー(右旋性又は右利きの「D」)として存在するキラル分子である。利き手又はキラリティーが異なる、これらの2つの重ね合わせることができない形態のアミノ酸は、互いの鏡像であり、他の点では同一の物理的及び化学的特性を有する。しかしながら、地球上の生命は、多様な生物学的機能を果たすタンパク質の構築にL-アミノ酸及びアキラルなアミノ酸であるグリシンのみを使用する。D-アミノ酸は、自然界に存在し、特に細胞壁のペプチドグリカン及び細菌起源のペプチド抗生物質、昆虫、カタツムリ及び両生類などの下等動物のタンパク質、更に神経伝達物質として脳にまで存在するものの、様々な生物において、それは、親のL-エナンチオマーから酵素触媒による翻訳後反応を通して変換されると考えられている。どうして、そしてどのように地球上の生命がこれらの左利き分子を好むのかという興味をそそる問いは、数十年にわたり、化学者、物理学者、生物学者、更に天文学者までも巻き込む激しい論争のテーマとなっている。α-アミノ酸のホモキラリティーの起源は、引き続き謎のままであるが、科学者は、キラルD-アミノ酸のみを有する非天然の又は人工的なD-ペプチド及びD-タンパク質の物理化学的及び生物学的特性を研究することにより、既に多くのことを学んでいる。
【0117】
本発明者らは、本発明を実施化する中で、合理的に考えて、実験室で鏡像バイオロジーシステムを構築するための中核となる工程が、2つの技術的柱としての鏡像核酸及びタンパク質の化学合成の利点を生かして(5)、キラル反転バージョンの分子生物学におけるセントラルドグマを構築することであると判断した(5~7)。本発明者らは、合理的に考えて、長いL-核酸分子を合成する際の障害を克服する1つの方法が、鏡像ポリメラーゼによる酵素的重合を通した方法であると判断しており、これは、本発明の企図するところにつながるものであり、概念実証の実現につながるものである。それにもかかわらず、以前のバージョンの鏡像ポリメラーゼシステムは、ポリメラーゼの活性とサイズとの間の消極的な妥協案としての化学的全合成のモデルとして選択されたものであった(5)。ASFV pol X及びDpo4など、小さいポリメラーゼに固有のプロセシビティ及び忠実度の低さ(10-4~10-2程度の大きさのエラー率)のため、長い鏡像遺伝子の正確なアセンブリ、増幅及び転写には、これらは不適とされてきた(5、17、18、21)。
【0118】
このように、本発明者らは、一見していかなるタンパク質でも化学的全合成を可能にし得る方法を企図し、それによりD-アミノ酸タンパク質への道を開いた。
【0119】
本発明の実施形態による大型タンパク質の化学的全合成方法は、本分野でこれまで乗り越えられなかった障害を系統的に取り除くことであり、標的タンパク質のアミノ酸配列に特異的変異を導入して、タンパク質の特異的活性を無効にすることなく長さの問題を緩和しようとすることに基づいている。
【0120】
分裂タンパク質の設計:
本発明者らは、合理的に考えて、分裂タンパク質設計の利点を生かすことにより、大型タンパク質の化学的合成の問題が、インビトロで一緒に折り畳んで機能的にインタクトな酵素にすることのできる2つの又は更に細かいタンパク質断片の合成へと劇的に単純になり得ると判断した。更に、この分裂タンパク質戦略では、分裂タンパク質断片毎の合成、精製、ライゲーション及び脱硫を並行して実施することが可能になるため、大型タンパク質の合成に必要な全体的な時間並びに1つ又は複数のある種の断片にエラーが発生したときの修正にかかるコスト及び時間が削減されることになる。一部の酵素は、Pfu DNAポリメラーゼを含め、天然の又は操作された分裂バージョンを有し、例えば、そのフィンガードメインのコイルドコイルモチーフにおけるK467とM468との間の既知の分裂部位は、ポリメラーゼを2つの断片(467aaのPfu-N断片及び308aaのPfu-C断片へと、そのPCR活性及び忠実度を大きく改変することなく分割する。上述の分裂部位は、Pfu DNAポリメラーゼのフィンガードメインのコイルドコイルモチーフにおける上述の配列位置の近傍、例えば449位と498位との間でも選択され得る。
【0121】
このように、本発明の一部の実施形態によれば、タンパク質を化学的に製造する方法は、タンパク質のアミノ酸配列を少なくとも2つのドメイン形成セグメントに分割することを含み、その各々は、より小さいポリペプチドセグメントのライゲーションから化学的に合成するのに十分に短く、しかしドメイン形成セグメントが折り畳み誘導性条件下で一緒に折り畳まれて一体になると、機能タンパク質中の機能ドメインに折り畳まれるのに十分に長い。
【0122】
本発明の一部の実施形態によれば、ドメイン形成セグメントがSPPS又はAFPSにより化学的に合成可能である場合又は約120、150又は200アミノ酸残基長以下である場合、それは、典型的には、それを化学的に合成することができ、他のドメイン形成セグメントと一緒に折り畳むのに好適であるため、従ってそのタンパク質を入手し得ることを意味する。
【0123】
用語「化学的に合成可能」は、本明細書で使用されるとき、主に、固相ペプチド合成(SPPS)又は自動ファストフローペプチド合成(AFPS)など、任意の非生物学的合成プロセスにより実現し得るポリペプチドの長さを指す。一般に、約10~120アミノ酸残基長のポリペプチドを固相ペプチド合成(SPPS)によって製造することができ、約10~180アミノ酸残基長のポリペプチドを自動ファストフローペプチド合成(AFPS)によりもたらし得ることが公知である。一部の実施形態において、用語「化学的に合成可能」は、約120、150又は200アミノ酸長のポリペプチド鎖を指す。一部の実施形態において、用語「化学的に合成可能」は、化学的に合成されたポリペプチドを精製し、且つ任意選択で単離する能力も指す。
【0124】
ドメイン形成セグメントが化学合成に好適なものよりも長い場合、それは、ライゲーション誘導性セグメントに更にセグメント化され、それらが連結されることにより、(比較的長い)ドメイン形成セグメントが形成される。
【0125】
本発明の実施形態との関連において、用語「断片」は、本説明および本明細書全体を通して、用語「ドメイン形成セグメント」と同義的に使用される。用語「ドメイン形成セグメント」は、本明細書で使用されるとき、この用語が当技術分野で公知であるとおり、認識可能な1つ又は複数のタンパク質ドメインに折り畳まれる連続したポリペプチド鎖を指す。一部の実施形態によれば、ドメイン形成セグメントは、そのポリペプチドがインビボ又は生物学的/生理的条件下で折り畳まれたときのそれらのドメインの構造と類似する又は本質的に同一の1つ以上のドメインにインビトロで折り畳まれ得る。
【0126】
本発明の実施形態との関連において、ドメイン形成セグメントは、マルチドメインタンパク質であり得るか、又は単一の認識可能なドメインを含み得る。ドメインの認識又は同定は、当業者の能力の範囲内であり、典型的には、多重配列アラインメント、SCOP[scop(dot)berkeley(dot)edu/]、CATH[www(dot)cathdb(dot)info]、ExPASy[www(dot)expasy(dot)org]、BLAST[blast(dot)ncbi(dot)nlm(dot)nih(dot)gov]、PFAM[pfam(dot)xfam(dot)org]、PDB[www(dot)rcsb(dot)org]等(これらは、全て当業者の範囲及び判断の範囲内にある)、1つ以上の公的に利用可能なバイオインフォマティクスツールを用いて行われる。
【0127】
以上で考察したとおり、一部のタンパク質は、天然で2つ以上のポリペプチド鎖で構築され、それらは、本明細書で考察される多ドメイン又はドメイン形成セグメントと同等である。本明細書に提示される方法では、ドメイン形成セグメントへのかかる天然の又は意図的な分裂を活用することができる。
【0128】
一部のタンパク質は、1つの連続したポリペプチド鎖で構築され得るが、しかしながら、その進化上のファミリーメンバーには、2つ以上のポリペプチド鎖で構築されるように進化したものも含まれ得る。可能性のある分裂に関する情報は、ファミリーメンバーの多重配列アラインメントから生じるものであり得、且つ化学的製造のために目的のタンパク質のファミリーメンバーを意図的に分割することから生じるものであり得る。任意選択の分裂部位に関する別の情報源は、構造アラインメントによって補助される、目的のタンパク質又はタンパク質のファミリーメンバーの構造情報からもたらされ得る - タンパク質中のある種のセクションは、保存性が低く、従ってその配列中に分裂部位が意図的に導入された場合にもタンパク質の活性を乱さないと予想されることが明らかとなる。
【0129】
可能性のある分裂部位としての役割を果たし得るタンパク質中のセクションは、その同定につながる情報が配列データからもたらされるか、及び/又は構造データからもたらされるかにかかわらず、本明細書では、構造喪失セクションと称される。このように、「構造喪失セクション」は、多重配列アラインメントを用いることにより、及び/又は目的のタンパク質並びに/若しくはタンパク質のファミリーのメンバーからの構造情報から同定可能である。
【0130】
本発明の一部の実施形態によれば、SPPS又はSPPSとライゲーションとの組み合わせによって実際に化学的に直接製造するには、タンパク質が長過ぎる場合、目的のタンパク質の配列に分裂部位を導入することができ、それらのドメイン形成セグメントは、化学的に合成されると、一緒に折り畳まれてタンパク質になるであろうことが見込まれる。
【0131】
化学的ライゲーション:
本発明者らが本発明を実施化する間に見出したとおり、一緒に折り畳むことによってタンパク質が実現できたとしても、分裂設計手法の実施後、ドメイン形成セグメントの各々又はその1つが、化学合成によって実現するには長過ぎることもあり得る。
【0132】
ネイティブケミカルライゲーション(NCL)は、化学的ライゲーション分野の延長線上にあり、2つ以上の保護されていないペプチドセグメントのアセンブリによって形成される大型ポリペプチドを構築するという概念である。特に、NCLは、小型及び中程度のサイズの天然骨格タンパク質又は修飾されたタンパク質を合成する強力なライゲーション方法である。ネイティブケミカルライゲーションでは、保護されていないペプチドのN末端システイン残基のチオール基が、第2の保護されていないペプチドのC末端チオエステルを攻撃する。この可逆的チオエステル交換ステップは、化学選択的且つ位置選択的であり、チオエステル中間体の形成につながる。この中間体が分子内S,N-アシルシフトにより転位する結果、ライゲーション部位に天然アミド(ペプチド)結合が形成されることになる。
【0133】
本発明の実施形態との関連において、用語「ライゲーション誘導性配列」は、タンパク質配列中において、NCLによって形成され得るアミノ酸配列を呈する箇所を指す。例えば、N末端システイン残基を使用すると、既知の条件下で化学的ライゲーションを実行することができる。ライゲーション誘導性配列の同定及び利用については、十分に当業者の範囲内にあり、文献中に追加情報が容易に得ることが可能である(例えば、レビュー論文“Native Chemical Ligation and Extended Methods: Mechanisms, Catalysis, Scope, and Limitations” 、Agouridas, V. et al.著[Chem Rev. 2019,119(12), pp. 7328-7443])。
【0134】
このように、本発明の一部の実施形態によれば、タンパク質又はその長鎖ドメイン形成セグメントは、初めにタンパク質のアミノ酸配列中にライゲーション誘導性配列を同定し、次に配列をそれらのライゲーション誘導性配列又はその少なくとも一部でパースすることで、各々が実際に化学的に合成及び精製するのに十分な短さの、タンパク質のライゲーション誘導性セグメントの複数の配列を得ることにより合成し得る。その後、化学的に合成することのできるライゲーション誘導性セグメントの各々が連結されると、タンパク質又はドメイン形成セグメントが形成される。
【0135】
一般に、本発明の一部の実施形態によれば、ライゲーション誘導性配列/セグメントは、化学的に合成可能であるか、又は約10~120、約10~150若しくは約10~200アミノ酸長である。
【0136】
セグメントの長さに基づいて、タンパク質が望ましい位置にライゲーション誘導性配列を呈しない場合、タンパク質のアミノ酸配列の変異によってライゲーション誘導性配列を導入することができる。このように、本発明の一部の実施形態によれば、ライゲーション誘導性セグメントのいずれか1つが化学的に合成可能でない場合、即ち、約120、150若しくは200アミノ酸残基長より長い場合又は実際に合成及び精製できない他の長さである場合、この方法は、ライゲーション誘導性配列中の少なくとも1つの構造喪失セクションを同定し、前記構造喪失セクション中の少なくとも1つのアミノ酸をライゲーション誘導性アミノ酸残基で置換することにより、前記構造喪失セクション中にライゲーション誘導性配列を導入し、それに続いて変異によってもたらされるライゲーション誘導性配列でタンパク質のアミノ酸配列をパースし、それに更に続いて前記ライゲーション誘導性セグメントの各々を化学的に合成することによって実行する。
【0137】
例えば、352aa(40kDa)のDpo4よりはるかに大きい467aa(54kDa)のPfu-N断片単独の合成は、なおも大きい課題を突き付ける。課題の1つは、SPPSによって調製される合成ペプチドのNCLでは、ライゲーション部位にN末端システイン残基が必要であるが、野生型(WT)Pfu DNAポリメラーゼには、4個のシステイン残基しかない(Pfu-N断片(配列番号57)のC429及びC443、Pfu-C断片(配列番号67)のC507及びC510)という点である。本発明者らは、既報告の金属フリーラジカルベースの脱硫手法の利点を生かし、NCL後に保護のないシステインをアラニン残基に変換して、アラニン残基のある別の8ヵ所のライゲーション部位(Pfu-N断片のA40、A163、A223及びA408、Pfu-C断片のA501、A596、A652及びA715)も使用できるようにしたが、これらのペプチドセグメントの一部は、SPPSによって調製するにはなおも長過ぎた。従って、本発明者らは、配列アラインメントに基づき、5個の点変異(Pfu-N断片のE102A、E276A、K317G及びV367L、Pfu-C断片のI540A)を有する変異型のPfu DNAポリメラーゼを設計して、ポリメラーゼのPCR活性を大きく改変することなく、追加のライゲーション部位又はライゲーション誘導性配列を導入した(分裂Pfu-5m、配列番号48)。
【0138】
疎水性及びバルク:
別の課題は、水性条件下での疎水性ペプチドセグメントの合成及びライゲーションである。この問題を克服する現行の方法は、高度に疎水性の及び/又はかさ高いアミノ酸残基の数を減らすため、標的ペプチドに様々な変異及び/又は化学修飾を導入することに主な焦点が置かれている。本発明の一部の実施形態によれば、化学修飾は、例えば、Hmb-Nα保護、除去可能な可溶化タグ、シュードプロリン及びデプシペプチド(O-アシルイソペプチド)によって実行するが、これらを実際に使用すると、骨の折れる手順、低収率及び高価なアミノ酸誘導体の必要性によって制約を受けることが多い。
【0139】
本発明の一部の実施形態によれば、化学合成、ライゲーション及び化学的に製造されたタンパク質の様々なセグメントが一緒に折り畳まれるのを容易にするために、一部の高度に疎水性の及び/又はかさ高い残基を、疎水性の低い及び/又はあまりかさ高くない残基に置換する(変異させる)。かかる置換の判断基準は、MSA、構造情報及び他の変異データに依拠し得る。
【0140】
疎水性とかさ高さとは、互いに関わりがあり、ほとんどの場合に密接に関連しているものの、必ずしも同じ特性ではなく、それらの特性は、異なる環境下では、pH、イオン強度、対イオン、水分活性、温度及び他の要因に応じて異なって変わり得る。ポリペプチド鎖に関連して、アミノ酸残基の疎水性及びかさ高さの値及び順位は、いずれの文献中に示されるものを参照するかによってやや異なるが、イソロイシンが「群を抜いてかさ高さ及び疎水性の高いアミノ酸の1つ」であるという一般的な見解がいずれでも成立している。疎水性及びかさ高さに関する例示的情報源としては、これに限定されるものではないが、Kyte, J. and Doolittle, R.F., “A simple method for displaying the hydropathic character of a protein”[J. Mol. Biol., 1982, 157(1), pp. 105-132]及びEllington, A. and Cherry, J.M., “Characteristics of amino acids”[Curr Protoc Mol Biol, 2001, A.1C.1-A.1C.12]が挙げられる。例えば、本発明の実施形態は、アミノ酸の変異に関する基本的な判断基準として、以下の非限定的な例示的順序:I>L>C>T>V>P>S>A>Gに従ってかさ高さを減少させ、以下の非限定的な例示的順序:I>V>L>F>C>M>A>G>Tに従って疎水性を減少させる得る。
【0141】
一般に、当技術分野で公知のとおり、残基を置換する指針は、以下の疎水性の順序:Ile>Leu>Phe>Val>Met>Pro>Trp>His(0)>Thr>Glu(0)>Gln>Cys>Tyr>Ala>Ser>Asn>Asp(0)>Arg+>Gly>His+>Glu>Lys+>Asp-に従うものとなる。
【0142】
本明細書に提示される方法がD-アミノ酸タンパク質の化学的合成に用いられるとき、この方法は、その一部の実施形態によれば、以下の疎水性の順序:D-Ile>D-Leu>D-Phe>D-Val>D-Met>D-Pro>D-Trp>D-His(0)>D-Thr>D-Glu(0)>D-Gln>D-Cys>D-Tyr>D-Ala>D-Ser>D-Asn>D-Asp(0)>D-Arg+>Gly>D-His+>D-Glu>D-Lys+>D-Asp-に従い、ライゲーション誘導性セグメントの少なくとも1つにおける少なくとも1つの疎水性D-アミノ酸残基をより疎水性の低いアミノ酸で置換することを更に含み得る。
【0143】
例えば、Pfu-C-4セグメントは、アセトニトリル又は6MのGn・HCl水溶液中での溶解度が低く、標準的なFmoc-SPPSによる合成が困難であった。イソロイシンは、群を抜いてかさ高さ及び疎水性の高いタンパク質原性アミノ酸の1つであると考えられたことから、疎水性ペプチド中の1つ又は複数のイソロイシンを、代わりとなるが、潜在的にかさ高さ又は疎水性の低いアミノ酸(例えば、バリン、アラニン、ロイシン、トレオニン、グリシン、フェニルアラニン、メチオニン又はプロリン等)に変異させるか、又は1つ以上の他のかさ高い又は疎水性のアミノ酸(バリン、トレオニン、フェニルアラニン及びロイシン等)を、より極性の高いアミノ酸などのかさ高さ又は疎水性の低い他のものに変異させれば、そのペプチドセグメントの物理化学的特性が変わるはずであった。
【0144】
本発明の一部の実施形態によれば、配列アラインメント及び構造情報に基づいた系統的なイソロイシン置換手法を開発し、ポリメラーゼのPCR活性を大きく改変することなく、このセグメントの7個のイソロイシン残基の全てを変異させた(I598V、I605T、I611V、I619A、I631L、I643V及びI648T)。実際、これらの7個の点変異により、このペプチドセグメントの合成が容易に実現し、これは、下流精製及びNCLのためのアセトニトリル及び6MのGn・HCl水溶液中への可溶化も可能になったため、その合成のために他の化学修飾を用いる必要を回避することが可能になった。
【0145】
コスト削減:
技術的課題に加えて、大型鏡像(D-アミノ酸)タンパク質の合成は、全体的に見て低い収率及び高い試薬コストに起因して経済的障害にも直面する。鏡像バージョンのタンパク質原性アミノ酸は、いずれも市販されており、ほとんどは、その天然の対応物と同程度の価格であるが、D-イソロイシンは、L-イソロイシン及び他のD-アミノ酸と比べて約50~300倍高価であり、その原因は、主に、2つのキラル中心が存在するため、その合成及び精製が困難であり、損失が大きくなることにある。鏡像タンパク質を合成するときは、D-アミノ酸のコストが80~90%を占める(典型的には約5%である、天然タンパク質中のイソロイシンの存在量に依存する)。このように、本発明の一部の実施形態によれば、配列アラインメント及び構造情報に基づいて系統的なイソロイシン置換手法を適用することにより、ポリメラーゼのPCR活性を大きく改変することなく、Pfu DNAポリメラーゼ中の多数(71個中41個、即ち58%)のイソロイシンをバリン、ロイシン及びアラニン等の他のアミノ酸に変異させる(分裂Pfu-5m-30I、配列番号51)。
【0146】
この系統的なIle減量手法の結果、このポリメラーゼを合成する際のD-アミノ酸コストはほぼ半分に減少し、これは、将来のその大規模合成及び適用にとって有益となり得る。
【0147】
一部の実施形態によれば、D-アミノ酸タンパク質を化学的に製造する方法は、少なくとも1つのIle残基をAla残基、Val残基、Leu残基、Gly残基、Thr残基、Phe残基、Met残基又はPro残基に置換することを含む。従って、結果として得られるD-アミノ酸タンパク質は、一部又は全てのIle残基位置が、D-Ala残基、D-Val残基、D-Leu残基、Gly残基、D-Thr残基、D-Phe残基、D-Met残基及びD-Pro残基からなる群から選択される非Ile D-アミノ酸残基を呈する。
【0148】
大型タンパク質の化学的全合成方法:
上記に説明し、且つ以下に続く実施例の節で実証するとおり、本願で提供する方法を実施することにより、忠実度の高い90kDaのD-アミノ酸Pfu DNAポリメラーゼの化学的全合成がもたらされた。これは、L-DNA配列の正確な書き込み及び読み取り並びにキロベースサイズの鏡像遺伝子の正確なアセンブリを実行した。天然酵素タンパク質の平均サイズは、約300~500aaであり、約0.9~1.5kbのコード遺伝子配列に対応する。このように、Pfu DNAポリメラーゼのような大型の鏡像型の酵素タンパク質を合成可能であり、従って長い鏡像遺伝子をアセンブリ可能であることは、鍵となる実現技術であり、生命の鏡像体を構築することに向けた重要な足掛かりである。第1世代鏡像ポリメラーゼASFV pol X、第2世代Dpo4から現在の第3世代Pfu DNAポリメラーゼに至るまで、技術の向上に伴い、自然が提供する最良の酵素的手段を利用する大型鏡像タンパク質の化学的全合成は、現実のものとなっている。これらの効率的な次世代鏡像酵素は、一層洗練された鏡像バイオロジーシステムの実現並びにバイオテクノロジー及び医学用分子ツールボックスの拡大に向けた機会の新しい扉を開く。
【0149】
このように、本発明の一部の実施形態のある態様によれば、比較的大型の機能タンパク質の化学的全合成方法であって、タンパク質の少なくとも2つのライゲーション誘導性セグメントを連結することによって実行する方法が提供される。ここで、ライゲーション誘導性セグメントの各々は、化学的に合成可能であるか、又は典型的には、SPPSのために約10~120アミノ酸残基長であり、ライゲーション誘導性セグメントは、以下によって得ることが可能である。
【0150】
i.タンパク質のアミノ酸配列中の少なくとも1つのライゲーション誘導性配列を同定し、タンパク質のアミノ酸配列をそれらのライゲーション誘導性配列でパース(分割)し、それによりライゲーション誘導性セグメントの複数の配列を得る。一部の実施形態によれば、天然に存在するライゲーション誘導性配列の少なくとも1つは、タンパク質の構造喪失セクションに見出される。
【0151】
ii.ライゲーション誘導性セグメントの各々の配列をSPPS及び/又はAFPSによって実際に合成することができ、実際に精製することができる場合、ライゲーション誘導性セグメントの各々を化学的に合成して、ライゲーションのために準備することができる。
【0152】
iii.ライゲーション誘導性セグメントの配列のいずれか1つが化学的に合成可能でない場合、即ち約120、150若しくは200アミノ酸残基長よりも長い場合又は実際に合成及び精製できない他の長さである場合、そうした配列を分析して、その中の少なくとも1つの構造喪失セクションを同定する。この分析については、以上に説明し、且つ当技術分野で公知のとおりである。ライゲーション誘導性配列を変異によって導入するために、構造喪失セクション中の少なくとも1つのアミノ酸をライゲーション誘導性アミノ酸残基(例えば、システイン)で置換して、構造喪失セクション中にライゲーション誘導性配列を導入する。その後、この新たに導入されたライゲーション誘導性配列でタンパク質のアミノ酸配列を分割し(パースし)、結果として得られた120aaよりも小さいライゲーション誘導性セグメントを化学的に合成する。
【0153】
以上で考察したとおり、既存の分裂部位を利用するか又はタンパク質のアミノ酸配列に分裂部位を導入すると、タンパク質の化学的全合成が容易となる。このように、本発明の一部の実施形態によれば、本方法は、以上に提示したステップ(i)の前に、タンパク質のアミノ酸配列を少なくとも2つのドメイン形成セグメントに分割し、且つドメイン形成セグメントの各々が化学的に合成可能である場合(約120、150又は200アミノ酸残基長以下)、ドメイン形成セグメントの各々を化学的に合成し、続いてそれらのドメイン形成セグメントを一緒に折り畳み、それによりタンパク質を得ることを更に含む。
【0154】
一部の実施形態によれば、ドメイン形成セグメントの1つが化学的に合成可能でない場合(例えば、約120、150又は200アミノ酸残基より長い場合)又は実際に合成及び精製することができない他の長さである場合、それがライゲーション誘導性セグメントに更に分割され、これについては、以上で考察したとおりである。
【0155】
好ましくは、ドメイン形成セグメントは、その中の構造喪失セクションでパースされる。これは、ドメイン形成セグメントの範囲内にある構造喪失セクションを同定することから始まり、次に、構造喪失セクション中の少なくとも1つのライゲーション誘導性配列を同定することが続き、その後、ドメイン形成セグメントのアミノ酸配列をそれらのライゲーション誘導性配列でパースすることが続く。この場合もやはり、セグメント又は構造喪失セクションが本質的にライゲーション誘導性配列を欠いている場合、上述したとおり、変異によってそれを導入することができる。ドメイン形成セグメントがパースされ、化学的に合成可能な(SPPSには約10~120aa、AFPSには約10~180)ライゲーション誘導性セグメント配列となったところで、それらを化学的に合成し、連結すると、ドメイン形成セグメントが形成される。
【0156】
図1は、本願で提供する方法をフローチャートの形式で図解するものであり、「ボックス1」において、使用者は、目的のタンパク質、好ましくは何らかのタンパク質ファミリー及び構造情報が利用可能なものを選択し、「ボックス2」において、本方法によれば、MSA及び構造データを使用して、ライゲーション誘導性aaの変異、分裂部位及びIle残基の置換を導入するための構造喪失セクションを同定することが求められる。目的のタンパク質が約400aaよりも短い場合、「ボックス3」において、本方法によれば、ライゲーション誘導性aaを見つけ出すか又はそれに変異させることによってライゲーション誘導性配列中に見つけ出す及び/又はそれを導入することにより、タンパク質の配列をライゲーション誘導性セグメントにパースすることで、各々が化学的に合成可能である複数のライゲーション誘導性セグメント配列を形成することが求められる。目的のタンパク質が約400aaよりも長い場合、「ボックス4」において、本方法によれば、少なくとも1つの分裂部位を見つけ出すか又はそれを導入してそれぞれが約400aa未満のドメイン形成セグメントを形成することが求められ、「ボックス5」において、本方法によれば、ライゲーション誘導性配列中に見つけ出す及び/又はそれを導入することにより、ドメイン形成セグメントの各々の配列をライゲーション誘導性セグメントにパースすることで、各々が化学的に合成可能である複数のライゲーション誘導性セグメント配列を形成することが求められる。「ボックス6」において、本方法によれば、MSA及び/又は構造情報に従う配列保存の判断基準に基づき、ドメイン形成セグメントの各々又は結果として得られるライゲーション誘導性セグメント中にある疎水性aaを置換することが求められる。目的のタンパク質がD-アミノ酸タンパク質である場合、「ボックス7」では、MSA及び/又は構造情報が許容する限り多くのIle残基を、各ドメイン形成セグメント又は結果として得られるライゲーション誘導性セグメント中にある類似のaaで変異させることが求められ、そして「ボックス8」において、本方法によれば、D-アミノ酸を使用して全てのライゲーション誘導性セグメントを合成し、且つそれに応じてセグメントを連結することが求められ、目的のタンパク質がLアミノ酸タンパク質である場合、「ボックス9」では、全てのライゲーション誘導性セグメントをL-アミノ酸を使用して合成し、それに応じてロットを連結することが求められ、そして最後に「ボックス10」において、本方法によれば、全てのドメイン形成セグメントを一緒に折り畳んで目的のタンパク質を得ることが求められる。
【0157】
本発明の一部の実施形態において、本方法によれば、目的のタンパク質のアミノ酸配列を化学的全合成に好適なものにするため、変異させるステップが要件となる。この要件は、目的のタンパク質の長さが過剰であることに起因し得、その場合、対応する生物学的に発現したタンパク質に存在しない分裂部位又は対応する生物学的に発現したタンパク質に存在しないライゲーション誘導性配列を導入するため、さらにはSPPS(又はポリペプチドを製造する他の化学的方法)によって実現するのに十分に短いと定義されるライゲーション誘導性セグメントを提供するために、変異が必要となる。この要件は、ライゲーション誘導性セグメントの疎水性が過剰であるため、水性条件下でのポリペプチドの合成及びライゲーションが困難となることに起因し得る。一方、その疎水性を低下させれば、ポリペプチドは、この課題に一層好適になる。
【0158】
本発明の一部の実施形態において、本方法によれば、特に、タンパク質をD-アミノ酸タンパク質、即ちその対応する生物学的に製造された(又は発現した)タンパク質の鏡像である、即ち、同等のL-アミノ酸タンパク質の鏡像として実現するとき、目的のタンパク質のアミノ酸配列を、化学的全合成コストが低下したものとなるように変異させるステップが必要となる。
【0159】
本発明の実施形態との関連において、用語「対応するタンパク質」、「対応する生物学的に製造されたタンパク質」、「対応する生物学的に発現したタンパク質」は、同義的に使用される用語であって、本願で提供する方法によって製造されるタンパク質と、その機能及びある程度は構造の点において同等であるが、製造過程及びアミノ酸配列は異なるものであり、上述したように、本願で提供する方法を実行する過程において、変異させることのできるタンパク質を意味する。鏡像タンパク質の場合、用語「対応するL-アミノ酸タンパク質」は、用語「対応する生物学的に製造されたタンパク質」に、同等のL-アミノ酸タンパク質と比較した構造的反転を加えたものと類似する。このように、本願で提供する方法によって製造されるD-アミノ酸タンパク質は以下の点で同等のタンパク質と関連する:分裂部位を導入してドメイン形成セグメントをもたらすために起こり得る変異、及び/又はライゲーション誘導性配列を導入するために起こり得る変異、及び/又は残基の疎水性を低減するために起こり得る変異、及び/又はIle残基の数を低減するために起こり得る変異以外は実質的に同様の配列を有すること;少なくとも90%がL-アミノ酸残基でなく、むしろGly以外のD-アミノ酸残基で出来ている組成を有すること;実質的に反転した(鏡像)構造を有すること;及び鏡像のリガンド、基質、製造物等を有することを除き、同様の活性を有すること。これらの配列、組成、構造及び活性は、本発明の一部の実施形態による化学的に製造されたタンパク質と、その対応する生物学的に製造されたタンパク質との間にもある程度存在するが、しかし、これらの2つがL-アミノ酸残基で出来ており、従って構造及び活性の点で互いの鏡像でないことを除く。
【0160】
タンパク質を化学的に合成する方法の一部には、複数の化学的に合成された鎖のライゲーション後又は連結して一緒に折り畳んだ後の、結果として得られたタンパク質の精製及び単離が含まれる。精製プロトコルは、かかるタンパク質精製作業のための公知の任意のプロトコルであり得、標的タンパク質が熱安定性である一部の場合、このプロトコルは、加熱ステップを含むことで、この熱安定性の利点を生かすことができる。即ち、このプロトコルは、合成/ライゲーションステップ、続く折り畳みステップ、更に続く加熱沈殿ステップを最終結果の精製の一部として含む。加熱沈殿温度は、通常、標的タンパク質の最高安定温度と、不純物(誤って折り畳まれたポリペプチド鎖及び誤ったアミノ酸配列のポリペプチド鎖)の多くについての最低沈殿温度との間に設定される。例えば、Pfu DNAポリメラーゼの場合、最高安定温度は、約95℃であり、従って、加熱沈殿温度は、約85℃に設定される。Dpo4の場合、最高安定温度は、約86℃であり、従って、加熱沈殿温度は、約78℃に設定される。沈殿した(熱不安定性の)不純物は、概して、超遠心法及び/又はろ過によって除去されるが、一方、正しく折り畳まれた熱安定性のタンパク質は、上清中に見出され、それから単離することができる。本明細書では、正しく折り畳まれたタンパク質の全収率を増加させるため、複数回の折り畳み及び加熱沈殿ラウンドが実施されることが言及され、1回又は複数回の前の折り畳み及び加熱沈殿ラウンドから沈殿したタンパク質は、かかる手順でよく行われるように廃棄されるのでなく、むしろ更なる再折り畳み及び再加熱沈殿ラウンドに供される。
【0161】
上記に加えて、本発明の範囲は、生物学的に製造されたタンパク質及び/又はタンパク質断片を使用して、合成的に製造されたタンパク質及び/又はタンパク質断片の正しい折り畳みを誘導する場合を包含する。このように、合成タンパク質及びその断片はまた、本発明の一部の実施形態によれば、生物学的に製造されたタンパク質又はその断片と一緒に折り畳まれることによってもたらされるが、一方、その最終結果は、生物学的に製造された部分と、合成的に製造された部分とを有するキメラ多断片/多ドメインタンパク質となり得る。
【0162】
化学的に合成されたタンパク質:
本発明の一部の実施形態のある態様によれば、本明細書に開示される方法によって化学的に合成されるタンパク質が提供される。一部の実施形態において、化学的に製造されたタンパク質は、少なくとも約240アミノ酸残基長、又は少なくとも約250アミノ酸残基長、又は少なくとも約300アミノ酸残基長、又は少なくとも約350アミノ酸残基長、又は少なくとも約400アミノ酸残基長、又は少なくとも約450アミノ酸残基長、又は少なくとも約500アミノ酸残基長、又は少なくとも約550アミノ酸残基長、又は少なくとも約600アミノ酸残基長である。
【0163】
化学的に合成されたタンパク質は、目的のタンパク質のいずれでもあり得、酵素、輸送タンパク質、構造/機構タンパク質、ホルモン、シグナル伝達タンパク質、抗体、体液平衡化タンパク質、pH平衡化タンパク質、細胞チャネル又は細胞ポンプ等として機能し得る。
【0164】
化学的に合成されたタンパク質は、本明細書では、対応する生物学的に製造されたタンパク質とも称される、その生物学的に製造された及び/又は組換えによって製造された対応物と同じように機能性である。化学的に製造されたタンパク質は、対応する生物学的に製造されたタンパク質の活性の少なくとも5%を保持している。一部の実施形態において、化学的に製造されたタンパク質は、対応する生物学的に製造されたタンパク質の活性の少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%又は少なくとも90%を保持している。
【0165】
対応する生物学的に製造されたタンパク質の活性の少なくとも何らかの割合を保持しているとは、生物学的に製造されたタンパク質が触媒活性、特異的結合活性及び/又は任意の構造的に関係のある活性を呈する場合、本発明の対応する化学的に製造されたタンパク質がその活性の少なくとも5%を呈することを意味する。D-アミノ酸タンパク質の場合、活性は、化学的に得られるか、及び/又は生物学的に得られるかにかかわらず、その対応するL-アミノ酸タンパク質と比較したときの、そのエナンチオマータンパク質に対応する適切な/対応するエナンチオマー基質、エナンチオマー反応物、エナンチオマー試薬などを使用して定義、判定及び測定される。
【0166】
本発明の一部の実施形態によれば、D-アミノ酸タンパク質であり、このタンパク質は、その対応する生物学的に製造されたL-アミノ酸タンパク質の3次元構造と比較して本質的に鏡像を成す3次元構造を呈する。本願においては、(その対応するL-アミノ酸タンパク質又は天然に存在するタンパク質に対する)鏡像タンパク質とも称されるD-アミノ酸タンパク質を製造するとは、ライゲーション誘導性セグメントを化学的に製造する際に少なくとも75%、80%、90%又は少なくとも95%のGly以外のD-アミノ酸残基を使用して、製造することを意味する。
【0167】
タンパク質が少なくとも2つのドメイン形成セグメントを含むと言うとき、それは、本発明の実施形態による、結果として得られる化学的に製造されたタンパク質が、少なくとも2つの非共有結合的に取り付けられた(主鎖原子によって取り付けられているのでない)ポリペプチド鎖を含み、それぞれがドメイン形成セグメントに対応することを意味する。一部の実施形態において、対応するドメイン形成セグメントは、生物学的に製造されたタンパク質の少なくとも1つの対応するファミリーメンバーに共有結合的に取り付けられたポリペプチド鎖である。
【0168】
本願においては、合成L-/D-タンパク質を任意の反応に使用すると、その反応混合物を単離して、合成タンパク質をアフィニティー精製によって再生利用し、将来の反応に使用する、又はその稀少な高コストのアミノ酸残基のために再使用できることが注記される。例えば、合成タンパク質は、Hisタグなど、任意の公知のアフィニティータグを伴って製造することができ、その使用後、反応混合物を対応するアフィニティー樹脂又はビーズと共にインキュベートすると、反応混合物から合成L-/D-酵素をその上に単離させることができる。
【0169】
本方法によって調製される例示的タンパク質:
本発明の一部の実施形態の別の態様によれば、少なくとも約240、300、350、400、500アミノ酸残基長又はそれを超える、本願で提供する方法によって製造されるタンパク質が提供される。このタンパク質は、対応するライゲーション誘導性セグメントの例えばSPPSによる化学合成において使用されるアミノ酸に応じて、L-アミノ酸タンパク質又はD-アミノ酸タンパク質であり得る。
【0170】
以下の表1及び表2は、遺伝子にコードされるアミノ酸(表1)及び本発明で使用することのできる非標準/修飾アミノ酸の非限定的な例(表2)を列挙する。
【0171】
【表1】
【0172】
【表2-1】
【0173】
【表2-2】
【0174】
【表2-3】
【0175】
【表2-4】
【0176】
タンパク質の化学的全合成方法を実証するため、本発明者らは、その対応する生物学的に製造された酵素によって触媒される反応を触媒することができる活性酵素を合成した。そうした酵素の1つは、DNAテンプレートを用いてリボヌクレオチドからRNAを合成することができるRNAポリメラーゼである。以下に続く実施例の節では、例示的RNAポリメラーゼは、T7 RNAポリメラーゼである。別の例において、酵素は、デオキシリボヌクレオチドからDNAを合成することができるDNAポリメラーゼである。以下に続く実施例の節では、例示的DNAポリメラーゼは、Pfu DNAポリメラーゼである。
【0177】
本願で提供する方法がD-アミノ酸RNAポリメラーゼの製造に使用されるとき、このユニークな鏡像酵素は、L-DNAテンプレートを使用してL-リボヌクレオチドからL-RNAを合成することができる。例えば、D-アミノ酸RNAポリメラーゼは、D-アミノ酸T7 RNAポリメラーゼである。
【0178】
以下に提示するとおり、D-アミノ酸T7 RNAポリメラーゼは、少なくとも1つの分裂部位と、WT位置番号付けスキームを用いてK363とP364との間の第1の分裂部位と、N601とT602との間の第2の分裂部位とを含むように調製される。代替的に、D-アミノ酸T7 RNAポリメラーゼ及び本願で提供する方法によって製造されるL-アミノ酸T7 RNAポリメラーゼは、K363とP364との間の分裂及び/又はN601とT602との間の分裂によって形成される少なくとも2つのポリペプチド鎖を含む。更に、前記分裂部位は、同じループ、即ち357位~366位及び/又は564位~607位にある上述の部位の近傍に選択され得る可能性がある。
【0179】
本発明の一部の実施形態によれば、本願で提供する方法によって製造されるT7 RNAポリメラーゼは、I6V、I14L、I74V、I82V、I109V、I117L、I141V、I210M、I244L、I281V、I320V、I322L、I330V及びI367Lからなる群から選択される少なくとも1つの変異を更に含み得る。これらの変異は、コストのかかるD-Ile残基を別の適合性のあるD-アミノ酸残基に置換することにより、コスト削減戦略を促進する。
【0180】
本発明のある態様によれば、本願で提供する方法によって製造されるD-又はL-アミノ酸T7 RNAポリメラーゼが提供され、これは、配列番号83と同一であるか、又は配列番号83と少なくとも80~90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有している。
【0181】
本願で提供する方法がD-アミノ酸DNAポリメラーゼの製造に使用されるとき、このユニークな鏡像酵素は、L-デオキシリボヌクレオチドからL-DNAを合成することができる。例えば、D-アミノ酸DNAポリメラーゼは、D-アミノ酸Pfu DNAポリメラーゼである。
【0182】
このように、本発明の別の態様によれば、K467とM468との間の分裂によって形成される少なくとも2つのポリペプチド鎖を含む(ここで、位置の番号付けは、対応するWT酵素のアミノ酸位置番号付けに基づく)Pfu DNAポリメラーゼが提供される。本明細書では、この部位の近傍、即ちPfu DNAポリメラーゼのフィンガードメインのコイルドコイルモチーフ中において、例えば449位と498位との間に他の分裂部位を選択し得ることが注記される。
【0183】
一部の実施形態によれば、本願で提供する合成Pfu DNAポリメラーゼは、E102A、E276A、K317G、V367L及びI540Aからなる群から選択される少なくとも1つの変異を更に含む。他の実施形態によれば、V93Q、D141A、E143A、Y410G、A486L及びE665Kからなる群から選択される少なくとも1つの変異を更に含む、本願で提供するPfu DNAポリメラーゼである。
【0184】
本発明のある態様によれば、本願で提供する方法によって製造される、DNA結合構造ドメイン(配列番号78)を有する又は有しないD-又はL-アミノ酸Pfu DNAポリメラーゼが提供され、これは、配列番号48、配列番号49、配列番号50、配列番号51、配列番号74、配列番号75、配列番号76、配列番号77及び配列番号79からなる群から選択されるか、又は配列番号51と少なくとも80~90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する。
【0185】
バイオ直交性データストレージ:
世界的にデータの製造されるペースが一層速まっていることを受け、大量の情報を保存するための信頼できる高密度媒体の必要性の高まりが生じている。天然のDNAは、情報を符号化、格納及び伝搬するように精巧に進化している。
【0186】
緊密に詰め込まれた染色体に膨大なゲノム命令をコードする選り抜かれた天然の分子であるDNAによるストレージが、有望な解決法として浮上している(1~3)。他方で、鏡像DNAは、バイオ直交性の情報ストレージという課題に独自の適性を示し、その目的上、L-DNAデータの登録及び検索方法論が不可欠であるが、大部分は調査されないままである。
【0187】
本発明者らは、同じ情報容量を備えるキラル反転した(鏡像)DNAが、生物学的分解及び混入を回避する独自の能力を保持し、従って高度にロバストなバイオ直交性データ保管庫としての役割を果たし得ることを企図した。本発明を実施化する中で、L-DNA配列の正確な書き込み及び読み取りのための、本発明の一部の実施形態による忠実度の高い90kDaのD-アミノ酸Pfu DNAポリメラーゼを化学的に合成した。
【0188】
本発明者らは、本発明の一部の実施形態の態様の1つである、鏡像DNAにおけるデジタルテキストの一節全体の格納を実証した。以下に続く実施例の節を見ると分かるとおり、未精製環境水試料中の痕跡量のメッセージを担持するL-DNAバーコードは、何ヵ月間にもわたり及び潜在的にそれを越えて安定し、増幅可能なままであった。更に、本発明の一部の実施形態によって製造される高忠実度のD-ポリメラーゼによれば、鏡像翻訳の実現及び鏡像セントラルドグマの確立に向けて不可欠な工程である完全長キロベースサイズの鏡像遺伝子の正確なアセンブリが可能であった。次世代鏡像酵素ツールの合成、従って長い鏡像遺伝子のアセンブリのこの成功は、鏡像バイオロジーシステムの開発及びその新たに生じつつある応用の探索を変容させるものであった。
【0189】
簡潔に言えば、DNAは、本質的にデータストレージ分子である。DNAは、細胞(又は生物全体)が自らを維持するために必要とするあらゆる命令を収容している。こうした命令は、遺伝子中に見出され、遺伝子とは、DNAにおいて特定のヌクレオチド配列で構成されている各区間である。遺伝子内に収容されている命令を実行に移すには、それが発現するか又はコピーされて、細胞が生命を支えるために必要なタンパク質の産生に使用できる形態にならなければならない。DNA内に格納されている命令は、細胞によって二段階、即ち転写及び翻訳を経て読み取られ、プロセシングされる。これらの段階は、それぞれ複数の分子が関わる別個の生化学的過程である。転写時、細胞のDNAの一部は、RNA分子を作り出すためのテンプレートとしての役割を果たす。ある場合には、新たに作り出されたRNA分子自体が最終産物であり、それが細胞内で重要な機能を果たす。他の場合、RNA分子は、DNAから細胞中のプロセシングのための他の部分にメッセージを運ぶ。ほとんどの場合、この情報は、タンパク質の製造に用いられる。DNAに格納されている情報を細胞の他の領域に運ぶ特定の種類のRNAは、メッセンジャーRNA又はmRNAと呼ばれる。
【0190】
図4は、L-DNAを例示的なXNAとして使用した、本発明の一部の実施形態による分子データストレージを図解するフローチャートである。
【0191】
このように、本発明の実施形態のある態様によれば、D-アミノ酸RNAポリメラーゼ又はD-アミノ酸DNAポリメラーゼ及びそれぞれL-リボ核酸又はL-デオキシリボ核酸を使用して、バイオ直交性データストレージポリマーを形成する方法が提供され、ここで、前記ポリメラーゼは、本願で提供する方法によって製造される。
【0192】
本発明の実施形態の別の態様によれば、本願で提供するD-アミノ酸RNAポリメラーゼ又は本願で提供するD-アミノ酸DNAポリメラーゼ及びそれぞれL-リボ核酸又はL-デオキシリボ核酸を使用して、バイオ直交性データストレージポリマーを形成する方法が提供される。
【0193】
本発明の実施形態の別の態様によれば、本願で提供する方法によって製造される少なくとも1つのD-アミノ酸タンパク質を使用して、バイオ直交性データストレージポリマーを復号する方法が提供され、ここで、バイオ直交性データストレージポリマーは、L-リボ核酸又はL-デオキシリボ核酸残基を含む。
【0194】
更に本発明の実施形態の別の態様によれば、実質的に上述したような、下記を含むバイオ直交性データストレージシステムが提供される:A、T、G及びCの4つの文字を使用して配列中に情報データをコードする少なくとも1つのL-DNAと、L-DNAの合成(DNA配列へのコードの書き込み)及び/又はL-DNAのシーケンシング(DNA配列中のコードの読み取り)のためのD-アミノ酸RNA/DNAポリメラーゼ。
【0195】
本発明の範囲には、本願及び当技術分野において「ゼノ核酸」又はXNAと称する、他の種類の天然に存在しない又は標準的でないヌクレオチド及びその重合体の使用が含まれることを意図することをここに注記する。このように、本発明の一部の実施形態によれば、分子データストレージを製造及び使用するためのここに提供されるシステム及び方法は、例えば、Eremeeva, E and Herdewijn, P.によって、刊行物“Non canonical genetic material”[Current Opinion in Biotechnology, 2019, 57, pp. 25-33]において考察されるもの、及びChaput, J.C. et al.[Chem. Biol., 2012, 21;19(11), pp. 1360-71]によって考察されるものなどのXNAの使用を含む。
【0196】
L-DNAの正確なアセンブリ、増幅及びシーケンシングは、バイオ直交性情報ストレージ、環境及び食品のバーコード化、医療インプラントのモニタリング、法医学検査並びに安全なメッセージングの絶好の機会を提供することができる。これらは、少量の情報伝達L-DNA分子を増幅及びシーケンシングするには余りにも非効率化且つエラー率が高過ぎたことが原因で、ASFV pol X又はDpo4などの以前のバージョンの鏡像ポリメラーゼシステムでは実現することのできなかったものである(5、17、18、21)。鏡像遺伝子、更に将来的にはゲノム全体までも正確にアセンブリできれば、本システムは、ゲノムバンク化及び惑星間輸送を目的とした自然界の生物の鏡像ゲノムバックアップコピーの製造にも好適となる可能性がある。
【0197】
鏡像リボソーム:
鏡像セントラルドグマの確立における次の段階は、機能的鏡像リボソームを構築することによって鏡像翻訳を実現することである。本発明者らは、近年、合成L-DNAテンプレートを120ntの完全長5S rRNAに転写することにより、L-RNA化学合成の限界(典型的には約70nt未満)を打破したが、1.5kbの16S rRNA及び2.9kbの23S rRNA、並びに翻訳のためのmRNAを得るには、鏡像遺伝子をより長いL-RNAに転写する能力を有する一層効率的な酵素システムが要求される。1つの可能性は、これまでに実証されているとおり、DNAポリメラーゼをDNA依存性RNAポリメラーゼに変異させることである。実際、本発明者らは、分裂Pfu DNAポリメラーゼ(7個の点変異V93Q、E102A、D141A、E143A、Y410G、A486L及びE665Kを有する)を効率的なDNA依存性RNAポリメラーゼにリエンジニアリングすることに成功した。しかしながら、長い一本鎖(ss)L-DNAテンプレートの調製及び精製は、別の課題を突き付けるものであり、最初に対処しなければならない。代替的に、二本鎖(ds)L-DNAテンプレートを使用する鏡像バージョンの100kDa T7 RNAポリメラーゼを合成できれば、あらゆる鏡像rRNA及び鏡像翻訳に必要なmRNAの酵素的転写が可能となるはずである。本発明の実施化の過程で、以下に続く実施例の節に提示するとおり、本発明の一部の実施形態による化学的全合成によってD-アミノ酸T7 RNAポリメラーゼが実現した。
【0198】
ラセミ体結晶構造解析:
タンパク質結晶構造解析の技術分野で公知のとおり、タンパク質構造の解明における最初の及び恐らく最大の律速段階は、X線回折可能な結晶を得ることである。小分子の結晶化実験では、ある分子の2つのエナンチオマーのラセミ混合物が高品質の回折結晶を形成する傾向があることが観察されており、単位格子に観察される対称操作の少なくとも1つは、反転である。構造生物学における新たに出現したラセミ体結晶構造解析領域では、特に大型鏡像タンパク質を探し求めるとき、その希少性に起因して鏡像タンパク質試料の不足に悩まされる。
【0199】
このように、本発明の一部の実施形態によれば、目的のタンパク質の結晶を形成する方法であって、目的のタンパク質と、本明細書で提供するとおりに得られる、その目的のタンパク質のエナンチオモルフとを共結晶化させて、それによりエナンチオマータンパク質対の結晶を形成することによって実行する方法が提供され、ここで、エナンチオモルフは、D-アミノ酸(鏡像)タンパク質及び対応する目的のL-アミノ酸タンパク質である。
【0200】
本発明の別の種類の実施形態において、鏡像エナンチオモルフは、本願で提供するように、鏡像タンパク質によって製造される。例えば、本願で考察するとおりに提供される忠実度の高い鏡像RNAポリメラーゼを使用してL-RNAを転写し、それによりその対応するD-RNAのエナンチオモルフを製造することができ、次にそれをD-RNAとのエナンチオマー/ラセミ体共結晶化に使用してRNA構造を解くことができる。
【0201】
ラセミ体結晶構造解析に関する追加情報については、例えば、Matthews, B.W., “Racemic crystallography-Easy crystals and easy structures: What’s not to like?”, Protein Science, 2009, 18(6), pp. 1135-1138、Yeates, T.O. and Kent, S.B.H., “Racemic Protein Crystallography”, Annual Review of Biophysics, 2012,41(1), pp. 41-61、及びMandal, P.K. et al., “Racemic DNA Crystallography”, Angewandte Chemie International Edition, 2014, 53(52), pp. 14424-14427(これらの内容は、それが本明細書に全て説明されたものとして全体が参照により本明細書に援用される)を参照することができる。
【0202】
シーケンシング:
本発明の一部の実施形態によれば、本合成タンパク質をシーケンシング及び化学的に合成された鏡像DNAオリゴを分離するための変性シーケンシングPAGEに使用すると、-1及び-2nt産物の圧倒的多数が減少することにより、合成オリゴのクオリティが実質的に向上し得る。D-又はL-アミノ酸合成タンパク質のいずれかをこのように使用すると、シーケンシングプロセスの忠実度が向上し、最終的にアセンブルされる遺伝子配列の大多数が正しい配列となる。
【0203】
本発明の一部の実施形態によれば、鏡像PCR及びPCR増幅されるL-DNA産物のゲル精製に要求される規模を低減するために、変性シーケンシングPAGE(これは、特定の所要量をその「デッドボリューム」として有する)による精製の前に、未標識の担体D-(又はL-)DNAを試料に加える。本発明の一部の実施形態によれば、L-DNA及びL-RNAなどの鏡像核酸のシーケンシング・バイ・シンセシスには、忠実度の高い合成鏡像ポリメラーゼをホスホロチオエートL-dNTPと共に使用することができる。また、2つの異なる色素(それぞれFAM及びCy5)で5’-標識された2つのプライマーによる双方向シーケンシング戦略の使用も、1回の反応におけるリード長を、160~170bpを超えるまで向上させるために用いられる。
【0204】
試験管内進化法:
本発明の一部の実施形態による、例えば本願で提供する鏡像Pfu DNAポリメラーゼを使用するシーケンシング・バイ・シンセシスの開発は、厄介なL-DNA化学的シーケンシング手法と比較して一層有効なL-DNAシーケンシング技法の実現に向かう、新たな一歩である。
【0205】
試験管内進化法(SELEX)は、インビトロ選択又はインビトロ進化とも称され、1つ又は複数の標的リガンドに特異的に結合する一本鎖DNA又はRNAのいずれかのオリゴヌクレオチドを製造するための分子生物学におけるコンビナトリアルケミストリー技法である。このプロセスは、プライマーとしての役割を果たす、定常の5’末端及び3’末端が隣接した固定長のランダムに製造された配列からなる大型オリゴヌクレオチドライブラリの合成から始まる。長さnのランダムに製造された領域について、ライブラリ中に存在し得る配列の数は、4である(各位置について、4つの可能性(A、T、C及びG)を有する位置がn個)。ライブラリ中の配列が標的リガンド(これは、タンパク質又は小さい有機化合物であり得る)に曝露され、標的に結合しないものは、通常、アフィニティークロマトグラフィー又は常磁性ビーズでの標的捕捉により除去される。結合した配列が溶出され、PCRによって増幅されて、後続の選択ラウンドのために調製され、溶出条件のストリンジェンシーを増加させると、最も緊密に結合する配列を同定することができる。SELEXは、臨床目的及び研究目的の両方にとって興味深い標的と結合する幾つものアプタマーの開発に用いられている。また、このような目的で、SELEX反応には、化学的に修飾された糖及び塩基を有する幾つものヌクレオチドが取り入れられている。こうした修飾ヌクレオチドにより、新規の結合特性を備え、且つ潜在的に安定性が向上したアプタマーの選択が可能となる。
【0206】
今後、鏡像サンガーシーケンシング及び更に自動化されたハイスループットL-DNAシーケンシング技法のための高忠実度の鏡像ポリメラーゼの(例えば、3’-5’エキソヌクレアーゼ活性のない変異体又はトランケートバージョンの合成を通した)リエンジニアリングに取り組んでいくことは、マルチプレックスL-DNAシーケンシング及びL-アプタマー薬物の直接的な選択のための鏡像試験管内進化法(MI-SELEX)などの新規応用につながり得る(17、18)。
【0207】
本願から満了までの特許の存続期間中、多くの関連性のある大型合成D/L-タンパク質が開発されるであろうことが予想され、大型合成D/L-タンパク質という用語の範囲には、全てのかかる新規技術が先験的に含まれることが意図される。
【0208】
本明細書で使用されるとき、用語「約」は、±10%を指す(例えば、「約30」は、27~33又は30±3を意味する)。
【0209】
用語「含む」、「含んでいる」、「包含する」、「包含している」、「有する」及びこれらの活用変化形は、「~を含むが、それに限定されない」を意味する。
【0210】
用語「からなる」は、「~を含み、且つそれに限定される」を意味する。
【0211】
用語「から本質的になる」は、組成物、方法又は構造に追加の成分、ステップ及び/又は部品が含まれ得るが、但し、その追加の成分、ステップ及び/又は部品によって特許請求される組成物、方法又は構造の基本的な新規の特徴が事実上変わらない場合に限られることを意味する。
【0212】
本明細書で使用されるとき、ある種の物質に関連して、語句「実質的に欠いている」及び/又は「本質的に欠いている」とは、その物質を完全に欠いているか、又は組成物の総重量若しくは総体積基準で物質を約5、1、0.5若しくは0.1パーセント未満のみ含む組成物を指す。代替的に、プロセス、方法、特性又は特徴に関連して、語句「実質的に欠いている」及び/又は「本質的に欠いている」とは、ある種のプロセス/方法のステップ、又はある種の特性若しくは特徴を完全に欠いているプロセス、組成物、構造又は物品、或いは所与の標準的なプロセス/方法と比較して、ある種のプロセス/方法のステップを約5、1、0.5若しくは0.1パーセント未満のみ実行するプロセス/方法、又は所与の標準と比較して、特性若しくは特徴が約5、1、0.5若しくは0.1パーセント未満であることをもって特徴付けられる特性若しくは特徴を指す。
【0213】
用語「例示的」は、本明細書では、「例、事例又は実例として供すること」を意味して使用される。「例示的」と記載されるいずれの実施形態も、必ずしも他の実施形態と比べて好ましい又は有利であると解釈されるべきとは限らず、及び/又は他の実施形態からの特徴の援用を除外すべきとは限らない。
【0214】
単語「任意選択で」又は「代替的に」は、本明細書では、「一部の実施形態では提供され、他の実施形態では提供されない」ことを意味して使用される。本発明の任意の詳細な実施形態は、複数の「任意選択の」特徴を、かかる特徴が矛盾しない限り含み得る。
【0215】
本明細書で使用されるとき、単数形「ある(a)」、「ある(an)」及び「その(the)」は、文脈上特に明確に指示されない限り、複数形の指示対象を含む。例えば、用語「ある化合物」又は「少なくとも1つの化合物」は、複数の化合物を、その混合物を含めて含み得る。
【0216】
本願全体を通して、本発明の様々な実施形態が範囲形式で提示され得る。範囲形式での説明は、単に便宜上のものであり、簡潔にするために過ぎず、本発明の範囲に対する柔軟性のない限定と解釈されてはならないことが理解されなければならない。それに応じて、範囲の記載は、全ての可能な部分的範囲及びその範囲内にある個々の数値が具体的に開示されたものと考えなければならない。例えば、1~6などの範囲の記載は、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6などの部分的範囲並びにその範囲内にある個々の数字、例えば1、2、3、4、5及び6が具体的に開示されたものと考えなければならない。これは、範囲の幅に関係なく適用される。
【0217】
本明細書において数値の範囲が指示される場合には常に、指示される範囲内にある引用されるいずれの数(分数又は整数)も含むことが意味される。第1の指示される数と第2の指示される数との「間の範囲をとる/間にある範囲」及び第1の指示される数「から」第2の指示される数「までの範囲をとる/までの範囲」という語句は、本明細書では同義的に使用され、第1及び第2の指示される数並びにそれらの間にある全ての分数及び整数を含むことが意味される。
【0218】
本明細書で使用されるとき、用語「プロセス」及び「方法」は、限定されないが、化学、材料、機械、計算及びデジタル技術分野の当業者に公知であるか、又はその当業者によって公知の様式、手段、技法及び手順から容易に開発されるかのいずれかである様式、手段、技法及び手順を含め、所与の課題を達成するための様式、手段、技法及び手順を指す。
【0219】
本明細書で使用されるとき、用語「治療する」には、病態を解消すること、実質的に阻害すること、その進行を遅らせるか若しくは好転させること、病態の臨床的若しくは審美的症状を実質的に改善すること又は病態の臨床的若しくは審美的症状の出現を実質的に予防することが含まれる。
【0220】
詳細な配列表が参照されるとき、かかる参照は、例えば、シーケンシングエラー、クローニングエラー又は塩基置換、塩基欠失若しくは塩基付加を生じさせる他の変化によって生じる軽微な配列変異を含むとおりの、その相補配列に実質的に対応する配列も包含すると理解されるべきであり、但し、かかる変異の頻度は、50ヌクレオチドに1つ未満、代替的に100ヌクレオチドに1つ未満、代替的に200ヌクレオチドに1つ未満、代替的に500ヌクレオチドに1つ未満、代替的に1000ヌクレオチドに1つ未満、代替的に5,000ヌクレオチドに1つ未満、代替的に10,000ヌクレオチドに1つ未満であるものとする。
【0221】
明確にするため、別々の実施形態に関連して記載されている本発明のある種の特徴は、単一の実施形態に組み合わせても提供され得ることが理解される。逆に、簡潔にするため、単一の実施形態に関連して記載されている本発明の様々な特徴は、別々に若しくは任意の好適な部分的組み合わせにおいて、又は本発明の任意の他の記載される実施形態において好適なものとしても提供され得る。様々な実施形態に関連して記載されるある種の特徴は、それらの要素がなければその実施形態が実施不能となるのでない限り、それらの実施形態の必須の特徴と考えられてはならない。
【0222】
以上に明示したとおりの且つ以下の特許請求の範囲の節に主張するとおりの本発明の様々な実施形態及び態様について、以下の例に実験的な及び/又は計算されたサポートが見出される。
【実施例
【0223】
ここで、以下の実施例に参照するが、これらの実施例は、上記の説明と併せて、本発明の一部の実施形態を非限定的な形式で例示するものである。
【0224】
実施例1
Pfu DNAポリメラーゼの化学的全合成
天然(L-アミノ酸タンパク質)及び鏡像型の両方のPfu DNAポリメラーゼの化学的全合成により、本発明の一部の実施形態の概念実証を行った。
【0225】
本願で提供する方法の実施における第一段階は、Pfu DNAポリメラーゼに関する利用可能な情報を使用することにより、酵素の化学的全合成につながるような既存の配列特徴を同定すること、及び配列中において、構造的安定性、従って酵素の所望の活性を損なうことなくそこに変異を導入することを可能にするのに十分な構造的柔軟性(緩さ)を備える位置を同定することであった。そのため、Pfu-WT(配列番号47)、Pfu-5m(配列番号48)、Pfu-5m-55I(配列番号49)、Pfu-5m-46I(配列番号50)、Pfu-5m-30I(配列番号51)、Pfu-5m-0I(配列番号52)、KOD1(配列番号53)、Tgo(配列番号54)、9°N-7(配列番号55)及びTok(配列番号56)ポリメラーゼを使用して多重配列アラインメント(MSA)を実施した。MSAにより、高度に保存されたアミノ酸が明らかとなり、それらは変わらないままにしておいた一方で、MSAの他の部分は、そこに追加的なNCL部位、分裂部位を導入するための変異、疎水性を低下させる変異及びIleを減量する変異につながる多様性を示した。このように、MSAに基づいて、E102A、E276A、K317G、V367L及びI540Aを、配列の多様なアミノ酸セクションにライゲーション誘導性アミノ酸を導入するため(且つ540位のイソロイシンを置換するため)の変異として選択した。MSA分析及びタンパク質構造情報に基づいて、イソロイシンWT残基であるI38、I62、I65、I80、I127、I137、I158、I171、I176、I191、I197、I198、I205、I206、I228、I232、I244、I256、I264、I268、I282、I331、I401、I434、I446、I478、I557、I598、I605、I611、I619、I631、I643、I648、I656、I677、I716、I734、I745及びI772を他の適合性のある残基に置換した。加えて、Pfu DNAポリメラーゼをL-アミノ酸及びD-アミノ酸の両方の型で効率的なRNAポリメラーゼに変えるため、V93Q、D141A、E143A、Y410G、A486L及びE665K変異を導入した。
【0226】
Pfu DNAポリメラーゼのアミノ酸配列を、本発明の一部の実施形態により、本願においてPfu-N断片(配列番号57)及びPfu-C断片(配列番号67)と称する2つのドメイン形成セグメントに分割した。以下の図2A図2Bに見られるとおり、Pfu-N断片を、40~62aa長の範囲の9個のペプチドセグメント(配列番号58~66)に分け、及びPfu-C断片を、33~63aaの範囲の6個のセグメント(配列番号68~73)に分けた。
【0227】
図2A図2Bは、追加的なNCL部位(E102A、E276A、K317G、V367L)を導入してライゲーション誘導性セグメントを形成し、且つ25個のイソロイシン残基を置換した変異体Pfu-N断片の合成経路の設計フロー(図2A)、及び追加的なNCL部位(I540A)を導入すると共に、他の15個のイソロイシン残基の変異も導入した変異体Pfu-C断片の合成経路の設計フロー(図2B)を提示する。一方、これらの変異を導入することにより、SPPSでのタンパク質合成及びライゲーションプロセスを容易にし、鏡像型の合成コストを削減した。
【0228】
ペプチドセグメントをFmocベースのSPPSによって調製し、逆相高速液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)により精製し、収束的アセンブリ戦略によるヒドラジドベースのNCLによりアセンブルした後、続いて金属-フリーラジカルベースの脱硫を行った。L-ポリメラーゼについては、4.3mgのL-Pfu-N断片が、分子量(M.W.)実測値54830.0Da(M.W.計算値54829.9Da、分析的HPLC及びESI-MSにより決定したとき、図示せず)、2.2mgのL-Pfu-C断片が、M.W.実測値35563.2Da(M.W.計算値35563.02Da)で得られ、D-ポリメラーゼについては、16.5mgのD-Pfu-N断片がM.W.実測値54829.5Da、11.9mgのD-Pfu-C断片がM.W.実測値35561.9Daで得られた。合成L-ポリメラーゼ及びD-ポリメラーゼは共に、連続的な透析、続く85℃での加熱沈殿により折り畳まれ、この加熱沈殿により、正しく折り畳まれたタンパク質の純度が更に向上した(ESI-MS、図示せず)。次に、これらのポリメラーゼのPCR活性について、短い100bpの合成D-又はL-DNAテンプレートで試験し(配列番号12)、組換え及び合成L-ポリメラーゼ及びD-ポリメラーゼ間で同等の増幅効率が測定された(3%で篩分ける(sieving)アガロースゲル電気泳動による分析、ExRed.M,DNAマーカーによる染色、ImageLabソフトウェア(米国、カリフォルニア州、Bio-Rad Laboratories社)。MはDNAマーカー)。合成L-ポリメラーゼの忠実度もpUC19プラスミド(配列番号80)からの1.2kbのD-DNA配列で定量化し、PCR産物のサンガーシーケンシングによれば、3.6×10-6未満のエラー率が測定され(以下の表3を参照されたい)、これは、先行研究に報告されるWT Pfu DNAポリメラーゼのものと一致している。
【0229】
【表3】
【0230】
材料:
L-DNAオリゴは、H-8オリゴシンセサイザー(独国、K&A Laborgeraete社)でL-デオキシヌクレオシドホスホロアミダイト(米国、マサチューセッツ州、ChemGenes社)によって合成した。組換えタンパク質発現のためのプライマーは、Genewiz社(中国、北京)に注文した。細菌16S rRNA遺伝子アセンブリのためのプライマーは、変性シーケンシングPAGEにより精製した。他のDNAオリゴは、オリゴヌクレオチド精製カートリッジ(OPC)(中国、北京、Ruibiotech社)によって精製した。PAGE DNA精製キットは、Tiandz Inc.(中国、北京)から購入した。トリス塩基、NP-40、Tween-20、KCl、塩酸グアニジン(Gn・HCl)及びβ-メルカプトエタノール(β-ME)は、Amresco Inc.(米国、ペンシルベニア州)から購入した。イミダゾール及びEDTAは、Solarbio Life Sciences社(中国、北京)から購入した。2-クロロトリチルクロリド樹脂(ローディング=0.6mmole/g)は、Tianjin Nankai Hecheng Science & Technology Co.(中国、天津)から購入した。Wang Chemmatrix樹脂は、CSBio Ltd(中国、上海)から購入した。Fmoc-D-アミノ酸、Fmoc-L-アミノ酸及びO-(6-クロロベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HCTU)は、GL Biochem Co.(中国、上海)から購入した。N,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIEA)、トリフルオロ酢酸(TFA)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、チオアニソール、トリイソプロピルシラン(TIPS)、1,2-エタンジチオール(EDT)、塩化パラジウム(PdCl)、2-メルカプトエタンスルホン酸ナトリウム(MESNa)及び2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩(VA-044)は、J&K Scientific社(中国、北京)から購入した。4-メルカプトフェニル酢酸(MPAA)は、Alfa Aesar Chemicals Co.(中国、上海)から購入した。ピペリジン、NaHPO・12HO、NaHPO・2HO、亜硝酸ナトリウム(NaNO)及び無水酢酸は、Sinopharm Chemical Reagent Co.(中国、上海)から購入した。NaCl、NaOH及び塩酸は、Sinopharm Chemical Reagent社(中国、北京)から購入した。ジクロロメタン(DCM)は、Shanghai Titan Scientific Co.(中国、上海)から購入した。トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩(TCEP・HCl)、カルバジン酸9-フルオレニルメチル(Fmoc-NHNH)、シアノグリオキシル酸エチル-2-オキシム(Oxyma)、N,N’-ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)及びDL-1,4-ジチオスレイトール(DTT)は、Adamas Reagent Co.(中国、上海)から購入した。還元型グルタチオン(GSH)は、Acros Organics社(米国、ニュージャージー州)から購入した。無水エーテルは、Beijing Tongguang Fine Chemicals Company(中国、北京)から購入した。アセトニトリル(HPLCグレード)は、J.T.Baker社(米国、ニュージャージー州)から購入した。
【0231】
Fmocベースの固相ペプチド合成(Fmoc-SPPS):
ペプチドは、全てLiberty Blue自動マイクロ波ペプチドシンセサイザー(米国、ノースカロライナ州、CEM Corporation)及びPrelude X自動ペプチドシンセサイザー(米国、アリゾナ州、Protein Technologies Inc.)でFmocベースのSPPSにより合成した。Pfu-N-9及びPfu-C-6などのC末端カルボン酸を有するペプチドは、1番目のC末端残基を予め負荷したWang Chemmatrix樹脂(中国、上海、CSBio Ltd)上で合成した。全ての他のペプチドは、Fmoc-ヒドラジン2-クロロトリチルクロリド樹脂で合成してペプチドヒドラジドを調製した。各ペプチド酸について、1番目の残基は、二重カップリング法によりWang Chemmatrix樹脂に手動で取り付けた:最初のカップリング反応では、4当量のアミノ酸、3.8当量のHCTU及び8当量のDIEAを使用してアミノ酸を30℃で1時間カップリングし、樹脂をDMF及びDCMで洗浄し、脱保護することなく、4当量のアミノ酸、4当量のOxyma及び4当量のDICで第2のカップリング反応を25℃で一晩行った。全ての樹脂は、DMF中で5~10分間膨潤させた後に使用した。樹脂及びアセンブルされたアミノ酸の両方のFmoc基とも、85℃のDMF中20%ピペリジン及び0.1mol/LのOxymaで処理することによって除去した。Fmoc-Cys(Trt)-OH及びFmoc-His(Trt)-OHを除くアミノ酸のカップリングは、4当量のアミノ酸、4当量のOxyma及び8当量のDICを使用して85℃で行った。Fmoc-Cys(Trt)-OH及びFmoc-His(Trt)-OHのカップリング反応は、高温での副反応を回避するため、50℃で10分間行った。トリフルオロアセチルチアゾリジン-4-カルボン酸-OH(Tfa-Thz-OH)は、Oxyma/DIC活性化を用いて室温でカップリングした。ペプチド鎖アセンブリの完了後、HO/チオアニソール/トリイソプロピルシラン/1,2-エタンジチオール/トリフルオロ酢酸(0.5/0.5/0.5/0.25/8.25)を使用して樹脂からペプチドを切断した。切断反応は、27℃で撹拌下において2.5時間かかった。混合物中のほとんどのTFAをNブローによって除去し、冷エーテルを加えて粗ペプチドを沈殿させた。遠心後、上清を廃棄し、沈殿物をエーテルで2回洗浄した。粗ペプチドをCHCN/HOに溶解させて、RP-HPLC及びESI-MSにより分析し、セミ分取HPLCにより精製した。
【0232】
ネイティブケミカルライゲーション(NCL):
C末端ペプチドヒドラジドセグメントを、酸性化したライゲーション緩衝液(6MのGn・HCl及び0.1MのNaHPO、pH3.0の水溶液)に溶解させた。この混合物を氷塩浴(-10℃)で冷却し、酸性化したライゲーション緩衝液(pH3.0)中10当量のNaNOを加えた。活性化反応系を氷塩浴に撹拌下で25分間置き、その後、ライゲーション緩衝液中40当量のMPAA及び1当量のN末端システインペプチドを加え、溶液のpHを室温で6.5に調整した。一晩の反応後、ライゲーション緩衝液(pHは7.0に調整)中の150mMのTCEPを加えて反応系を2倍希釈し、この反応系を撹拌下で室温に30分間置いた。最後に、ライゲーション産物をHPLC及びESI-MSにより分析し、セミ分取HPLCにより精製した。注目すべきことに、Pfu-C-1及びPfu-C-2セグメントをライゲーションする間、不溶性Pfu-C-2セグメントに起因して、このライゲーションが極めて非効率的であることが発見され、従ってGn・HClの初期濃度を8Mに増加させたところ(最終Gn・HCl濃度は約7M)、それによりこれらの2つのペプチドセグメントの溶解度及びライゲーション効率が大幅に向上した。
【0233】
脱硫:
Cys含有ペプチド(3mg/ml)を脱硫緩衝液(6M Gn・HCl、200mMのTCEP、40mMの還元型L-グルタチオン及び20mMのVA-044を含有する0.1Mのリン酸緩衝水溶液、pH6.8)に溶解した。この混合物を37℃で一晩撹拌下に置き、脱硫産物をHPLC及びESI-MSにより分析し、セミ分取HPLCにより精製した。
【0234】
Acm脱保護:
アセトアミドメチル(Acm)基をPd補助脱保護戦略により除去した。Acm保護されたペプチドをAcm脱保護緩衝液(6M Gn・HCl、0.1Mのリン酸塩及び40mMのTCEPの水溶液、pH7.0)に1mMの最終濃度となるように溶解し、その後、20当量のPdClを加えた。この反応混合物を撹拌しながら25℃で一晩インキュベートした。最終濃度が50mMとなるようにDTTを加えて反応をクエンチした。この反応混合物を撹拌下に1時間置き、セミ分取HPLCにより精製した。
【0235】
インビトロでの分裂Pfu DNAポリメラーゼの折り畳み:
Pfu DNAポリメラーゼの凍結乾燥したN断片及びC断片を、10mMのβ-MEを含有するそれぞれ4M及び5MのGn・HClに溶解した。等濃度の2つの断片(0.5μM)を混合した後、続いて40mMのトリス-HCl(pH7.5)、1mMのEDTA、100mMのKCl、10%のグリセロールを含有する緩衝液で4℃において一晩透析することにより、インビトロでのタンパク質の折り畳みを実施した。折り畳まれたPfu DNAポリメラーゼを85℃に15分間加熱することにより熱不安定性ペプチドを沈殿させて、続いてそれを4℃において20,000×gで40分間遠心することにより除去した。上清を濃縮し、ストレージ緩衝液である100mMのトリス-HCl(pH8.0)、50%のグリセロール、0.2mMのEDTA、0.2%のNP-40非イオン性界面活性剤、0.2%のTween 20、2mMのDTTで透析した。
【0236】
RP-HPLC及びESI-MS:
RP-HPLC分析及び精製は、全てSPD-20A紫外可視検出器及びLC-20AT溶媒送達ユニットを備えたShimadzu Prominence HPLCシステム(日本、京都、島津製作所)で行った。分析では、Ultimate XB-C4カラム(5μm、4.6×250mm)(中国、上海、Welch Materials社)を1ml/分の流速で使用してライゲーション反応をモニタし、ペプチド産物の純度を分析した。Ultimate XB-C4及びC18カラム(5μm、21.2×250mm又は5μm、10×250mm)(中国、上海、Welch Materials社)を使用して、それぞれ粗ペプチド及びライゲーション産物を4~8ml/分の流速で分離した。精製した産物をShimadzu LC/MS-2020システム(日本、京都、島津製作所)でESI-MSにより特徴付けた。
【0237】
タンパク質発現及び精製:
Pfu DNAポリメラーゼの遺伝子をpET-28cプラスミドにクローニングし、pEASY-Uniシームレスクローニング及びアセンブリキット(中国、北京、TransGen Biotech.社)によって変異体を構築した。N末端Hisタグに融合したタンパク質をLB培地中のE. coli株BL21(DE3)を使用して発現させた。誘導した細胞を回収し、溶解緩衝液(40mMのトリス-HCl、300mMのNaCl、10mMのイミダゾール、10mMのβ-ME、10mg/mlのリゾチーム、pH8.0)に再懸濁した。細胞ライセートを85℃で15分間加熱し、続いて熱不安定性タンパク質を4℃において20,000×gで40分間遠心することによって除去した。上清をNi-NTA Superflow樹脂(中国、蘇州、Senhui Microsphere Tech.社)中4℃で1時間インキュベートした。40mMトリス-HCl(pH8.0)、300mMのNaCl、40mMイミダゾール及び10mMのβ-MEを含有する緩衝液によって樹脂を洗浄し、次にそれを、40mMのトリス-HCl(pH8.0)、300mMのNaCl、250mMイミダゾール及び10mMのβ-MEを含有する緩衝液によって溶出させた。精製及び濃縮したPfu DNAポリメラーゼ及び変異体を、100mMのトリス-HCl(pH8.0)、50%のグリセロール、0.2mMのEDTA、0.2%のNP-40非イオン性界面活性剤、0.2%のTween 20及び2mMのDTTを含有するストレージ緩衝液で透析した。
【0238】
PCR活性及び忠実度:
1×Pfu緩衝液(中国、北京、Solarbio Life Sciences社)を200μMの各dNTP、0.2μMの各プライマー、テンプレート及びポリメラーゼと共に含有する50μlの反応系で天然及び鏡像PCR反応を実施した。Pfu DNAポリメラーゼ及びその変異体のPCR活性を定量化するため、ポリメラーゼを12%のSDS-PAGEによって野生型(WT)Pfu DNAポリメラーゼと同じ濃度に調整した。SDS-PAGE分析により、E. coliから発現させて精製した組換え分裂変異体Pfu DNAポリメラーゼの断片と、同じ配列の合成の天然及び鏡像Pfu DNAポリメラーゼとの分子量が類似していることが確認された(結果は図示せず)。PCRプログラム設定は、94℃で3分(初期変性)、94℃で30秒、50~65℃(Tmに依存する)で30秒及び72℃で1~7分(アンプリコンの長さに依存する)を10~35サイクル、72℃で10分(最終伸長)とした。合成Pfu DNAポリメラーゼの増幅効率を定量化するため、100bpのDNA配列をテンプレートとして使用した。組換え、合成L-及び合成D-Pfu DNAポリメラーゼ(分裂Pfu-5m-30I)によるPCR増幅について、3%の篩分けアガロースゲル電気泳動により分析し、ExRedによって染色した(結果は図示せず)。合成D-Pfu DNAポリメラーゼのPCR増幅効率は、産物バンドの強度に基づいて推定して、約1.5と測定された。最初の9サイクルの増幅産物について、ImageJソフトウェア(米国、カリフォルニア州、Bio-Rad Laboratories社)により分析した。合成Pfu DNAポリメラーゼの忠実度を調べるため、天然PCR(1.2kbのD-DNA)におけるサイクル45後の産物をV-eluteゲルミニ精製キット(中国、北京、Beijing Zoman Biotech.社)により精製し、サンガーシーケンシングのためにゼロバックグラウンドZT4 Simple-Blunt Fast Clone Kit(中国、北京、Beijing Zoman Biotech.社)によりクローニングし、先述の方法に従って計算した。
【0239】
実施例2
T7 RNAポリメラーゼの化学的全合成及びその使用
上記で考察したとおり、二本鎖(ds)L-DNAテンプレートを使用する鏡像バージョンのRNAポリメラーゼを合成すれば、あらゆる鏡像rRNA及び鏡像翻訳に必要なmRNAの酵素的転写が可能となり得る。そのため、本発明の一部の態様の概念実証における別の段階として、2分裂部位設計である天然(L-アミノ酸タンパク質)及び鏡像バージョンの両方の100kDaのT7 RNAポリメラーゼを化学的に合成した。
【0240】
T7 RNAポリメラーゼは、公知の分裂形態を有し、例えば、Segall-Shapiro et al.[Mol Syst Biol., 2014, 30(10), pp. 742]は、トランスポゾンベースの方法を用いてT7 RNAポリメラーゼ中の幾つかの分裂部位を見つけ出した。Tiyun Han et al.[ACS Synth Biol., 2017, 6(2), pp. 357-366.]は、異なる状況で光活性化型遺伝子発現を実施するため、分裂T7 RNAポリメラーゼをベースとして、光活性化が可能な遺伝子スイッチを設計した。しかしながら、これらの天然酵素で使用される分裂部位は、必ずしもT7 RNAポリメラーゼの化学合成に好適とは限らない:T7 RNAポリメラーゼの分裂部位の一部は、その酵素活性を大幅に変化させることになり、一部は、タンパク質ペプチド鎖のN末端又はC末端の近傍にあるため、1つ以上の大型タンパク質断片(400~500aaを超える)が生じることになり、それは、化学的に合成するにはなおも大き過ぎるであろうものである。
【0241】
実際的なドメイン形成セグメントをもたらすため、低い配列保存性及び構造的柔軟性という判断基準を用いて、本発明の一部の実施形態による、これまで提案されたことのない第2の分裂部位、即ちK363とP364との間の分裂部位を同定した。Segall-Shapiro et al.によって報告されるN601とT602との間の分裂部位と、本発明を実施化する間に発見されたT7 RNAポリメラーゼの構造の溶媒露出ループ中の分裂部位(K363とP364との間)とが一緒になって、酵素活性及び忠実度を大きく改変することなく、化学合成に好適な(典型的には400~500aa未満の)ほぼ等しい長さの以下の3つの断片にポリメラーゼを分割した:369aa T7-分裂-N断片(N末端にHisタグが取り付けられている)、238aa T7-分裂-M断片及び282aa T7-分裂-C断片。上述の分裂部位は、同じループ、即ち357位~366位及び/又は564位~607位にある上述の部位の近傍にあるように選択することができる。同時に、分裂T7 RNAポリメラーゼを転写AND論理として使用することができる。例えば、タンパク質を断片に分割し、且つ制御ドメインを用いてその再構成を調節するというエンジニアリング戦略に伴い、T7 RNAポリメラーゼの活性が外部シグナルによって直接制御される遺伝子スイッチを得ることができる。優れた遮光時オフ/入光時オン特性を備えるロバストな切替可能システムが、制御ドメインとしての光活性化可能なVVDドメイン及びその変異体により得ることができる。
【0242】
また、T7-WT(配列番号82)、T7-37I(配列番号83)、YenP(配列番号84)、phiEap(配列番号85)及びKpnP(配列番号86)ポリメラーゼを使用した多重配列アラインメント(MSA)並びに構造情報に基づいて、系統的イソロイシン置換手法も実施し、T7 RNAポリメラーゼ中の幾つものイソロイシン(51個中14個又は27%のIle残基)を、その酵素活性及び忠実度を大きく改変することなく、バリン、ロイシン及びメチオニンなどの他のアミノ酸に変異させた(I6V、I14L、I74V、I82V、I109V、I117L、I141V、I210M、I244L、I281V、I320V、I322L、I330V、I367L)。この手法により、このD-ポリメラーゼを合成するためのアミノ酸コストが削減されることになった。これは、将来のその大規模合成及び実際的応用を促進するであろう。
【0243】
図3A図3Cは、イソロイシン残基の置換、新規NCL及びK363とP364との間の新規分裂部位(これらは、SPPSにおけるタンパク質合成及びライゲーションプロセスを容易にし、且つ鏡像バージョンの合成コストを削減するために導入した)を含めた、369aa変異体T7-分裂-N断片(配列番号87)(図3A)、238aa変異体T7-分裂-M断片(配列番号94)(図3B)及び282aa変異体T7-分裂-C断片(配列番号101)(図3C)の合成経路の設計フローを提示する。
【0244】
ライゲーション誘導性残基の置換を導入することにより、T7 RNAポリメラーゼの化学的全合成を更に行った。T7-分裂-N断片を32~76aa長の範囲の7個のペプチドセグメント(配列番号88~94)に分け、T7-分裂-M断片を23~45aa長の範囲の6個のペプチドセグメント(配列番号96~101)に分け、T7-分裂-C断片を41~75aa長の範囲の5個のペプチドセグメント(配列番号103~107)に分けた。これらのペプチドセグメントは、FmocベースのSPPSによって調製し、逆相高速液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)により精製し、収束的アセンブリ戦略でヒドラジドベースのNCLによりアセンブリした後、続いて金属-フリーラジカルベースの脱硫を行った。合成、ライゲーション、精製及び凍結乾燥後、L-ポリメラーゼについては、約3mgのT7-分裂-N断片が分子量(M.W.)実測値41369.0Da(M.W.計算値41372.6Da)、約2.5mgのT7-分裂-M断片のM.W.が26786.0Da(M.W.計算値26787.4Da)、約4.8mgのT7-分裂-C断片がM.W.31459.0Da(M.W.計算値31459.9Da)で得られ、D-ポリメラーゼについては、約9mgのD-T7-分裂-N断片が分子量(M.W.)実測値41373.0Da、約8mgのT7-分裂-M断片がM.W.26787.0Da、約15mgのT7-分裂-C断片のM.W.が31459.0Daで得られた。
【0245】
インビトロでの合成ポリメラーゼの折り畳み:
連続透析、続く限外ろ過によって不純物を沈殿させることにより、合成ポリメラーゼを折り畳んだ。
【0246】
T7 RNAポリメラーゼの凍結乾燥した合成N、M及びC断片を、それぞれ6MのGn・HCl及び20mMのDTTを含有する変性緩衝液に溶解した。N、M及びC断片を等しく(0.5nmol/ml)混合し、且つ復元緩衝液(50mMのトリス-HCl、100mMのKCl、10%のグリセロール、1mMのEDTA、10mMのDTT、pH8.0)で4℃において24時間、穏やかに撹拌しながら透析することにより、タンパク質の折り畳みを実施した。復元後、50%のグリセロール、50mMのトリス-HCl(pH8.0)、100mMのNaCl、1mMのEDTA、0.1%のTriton X-100、10mMのDTTを含有するストレージ緩衝液で酵素を4℃で12時間、穏やかに撹拌しながら透析した後、続いてAmicon Utra遠心フィルタ(0.5ml、100,000MWCO)を使用して限外ろ過を行った。
【0247】
合成T7 RNAポリメラーゼの転写活性及び忠実度:
1×T7反応緩衝液(中国、北京、New England Biolabs社)を、500μMの各rNTP、10%のDMSO、5mMのDTT、テンプレート及びポリメラーゼをすべて含有する10μlの反応系で天然及び鏡像転写を実施した。T7 RNAポリメラーゼ及びその変異体の転写活性を定量化するため、12%のSDS-PAGEによってポリメラーゼを野生型(WT)T7 RNAポリメラーゼと同じ濃度に調整した(結果は図示せず)。反応液を37℃で様々な時間にわたってインキュベートした。天然及び鏡像T7 RNAポリメラーゼの転写活性が示したところによれば、このポリメラーゼは、160bpのDNAテンプレート(配列番号108)及び1.5kbのDNAテンプレート(配列番号109)の転写を成功させることができ、合成鏡像T7 RNAポリメラーゼによって1.5kbのL-DNAテンプレートから広範囲にわたる長さのL-RNA分子を製造できることが指摘される(結果は図示せず)。異なる長さの精製及び濃度決定された一本鎖L-RNA転写物の混合物は、未変性又は変性ゲル上でのRNAのサイズ処理及び定量化の際のRNAマーカー(又はRNAラダー)として使用することができ、これは、その天然RNアーゼ耐性のため、市販のD-RNAマーカー(D-RNAラダー)よりも優れている。合成T7 RNAポリメラーゼの忠実度も、Superscript IV高忠実度逆転写酵素によるDNアーゼI消化した転写産物の逆転写、続く高忠実度のPfu DNAポリメラーゼによるPCR増幅及びサンガーシーケンシングによるアンプリコンのシーケンシングによって調べ、先行研究に報告されるWT T7 RNAポリメラーゼのエラー率と一致するエラー率(10-6程度の大きさ)が測定された。
【0248】
L-tRNASerチャージ:
変異型の鏡像Dpo4(D-Dpo4-5m)によってL-tDNASer(配列番号110)をアセンブルした。L-tRNASerを高忠実度鏡像T7 RNAポリメラーゼにより転写し、1×T7反応緩衝液A(40mMのトリス-HCl、25mMのMgCl、1mMのスペルミジン、2mMのDTT、pH8.0)を2mMの各L-rNTP、10%のDMSO、0.3μMのテンプレート及び2μMのポリメラーゼと共に含有する反応系を37℃で一晩インキュベートした。産物を変性PAGEによって単一ヌクレオチド分解能で精製し、精製産物を10%の変性PAGEにより分析した(結果は図示せず)。25mMのHEPES-KOH(pH7.5)、50mMのKCl、2μMのL-tRNASer及び10μMのL-dFx中でL-tRNASerチャージを実施した。この反応系を95℃で2分間加熱し、ゆっくりと室温に冷却してアニーリングさせた。次に、この系に100mMのMgClを加え、反応系を室温で10分間、次に4℃で10分間インキュベートした。最後に、この系に5mMのD-Ser-DBEを加え、反応系を4℃で6時間インキュベートした。10分の1容量の3MのNaOAc及び2.5容量のエタノールを加えることによりエタノール沈殿を実施し、-20℃で一晩インキュベートした。産物を8%の酸性PAGEにより分析した(結果は図示せず)。
【0249】
L-16S rRNA精製:
L-16S rDNA(配列番号109)を高忠実度の鏡像Pfu DNAポリメラーゼによってアセンブリした。L-16S rRNAを高忠実度の鏡像T7 RNAポリメラーゼによって転写し、1×T7反応緩衝液(中国、北京、New England Biolabs社)を500μMの各L-rNTP、10%のDMSO、5mMのDTT、テンプレート及びポリメラーゼと共に含有する反応系を37℃で一晩インキュベートした。2%の低融点アガロースゲル(米国、Amersco社)からβ-アガラーゼ消化により転写産物を精製した。RNA試料を含有するゲル切片を10容量の1×β-アガラーゼ緩衝液によって室温で60分間平衡化させて、次に70℃で15分間融解させて、45℃に冷却した。融解したアガロース溶液を2単位のβ-アガラーゼ(中国、北京、New England Biolabs社)と共に45℃で60分間インキュベートした後、続いて-20℃に15分間置き、4℃で15分間遠心した。上清を新しい微量遠心管に移して10分の1容量の3MのNaOAc及び2.5容量のエタノールを加えることによりエタノール沈殿させて、-20℃で一晩インキュベートした。精製産物を3%のアガロースゲルによって分析した(結果は図示せず)。
【0250】
L-グアニンセンサー:
合成L-及びD-T7 RNAポリメラーゼによって転写されるD-及びL-グアニンセンサーの特異性を追うことにより、グアニンセンサーの分子識別能を実証した。L-グアニンセンサーDNAテンプレート(配列番号111)をD-Dpo4-5mによってアセンブリした。L-グアニンセンサーを高忠実度の鏡像T7 RNAポリメラーゼによって転写し、1×T7反応緩衝液A(40mMのトリス-HCl、25mMのMgCl、1mMのスペルミジン、2mMのDTT、pH8.0)を2mMの各L-rNTP、10%のDMSO、0.2μMのテンプレート及び2μMのポリメラーゼと共に含有する反応系を37℃で一晩インキュベートした。産物を8Mの尿素中のポリアクリルアミドゲルにより精製し、精製産物を10%の変性PAGEにより分析した(結果は図示せず)。40mMのHEPES(pH7.4)、125mMのKCl及び1mMのMgClを含有する緩衝液中で1μMのL-グアニンセンサー及び10μMのDFHBIを37℃でインキュベートした。次に、この溶液に1mMのグアニンを速やかに加え、以下の機器パラメータ:励起波長、460nm、発光波長、500nm、スリット幅、12nmを用いて常時照明下において37℃で15分間にわたって蛍光発光を記録した。0.1μMのRNA及び10μMのDFHBIを100μMのグアニン又は競合分子と共にインキュベートし、500nmの蛍光発光に関してアッセイした。グアニンセンサーは、100μMのグアニンで飽和し、同じ濃度でGTP及びアデニンに対して高度な分子識別能を示した(結果は図示せず)。
【0251】
L-38-6 RNA重合反応:
L-38-6リボザイムのDNAテンプレート(配列番号112)及びL-クラスIリガーゼDNAテンプレート(配列番号113)をD-Dpo4-5mによってアセンブリした。RNAを高忠実度の鏡像T7 RNAポリメラーゼによって転写し、1×T7反応緩衝液A(40mMのトリス-HCl、25mMのMgCl、1mMのスペルミジン、2mMのDTT、pH8.0)を2mMの各L-rNTP、10%のDMSO、0.3μMのテンプレート及び2μMのポリメラーゼと共に含有する反応系を37℃で一晩インキュベートした。産物を8Mの尿素中のポリアクリルアミドゲルによって精製した(結果は図示せず)。RNA重合反応には、100nMのL-38-6リボザイム(配列番号114)、80nMのL-5’-FAM標識プライマー(配列番号115)及び100nMのL-クラスIリガーゼテンプレート(配列番号116)を使用した。RNAをアニーリングさせるため、初めに80℃で30秒間加熱し、次にゆっくりと17℃に冷却し、次に各4mMのL-rNTP、200mMのMgCl、25mMのトリス・HCl、pH8.3及び0.05%のTween-20を含有する反応混合物に加え、それを17℃で様々な時間にわたってインキュベートした。産物をssDNA/RNA Clean & Concentratorキット(米国、カリフォルニア州、ZYMO RESEARCH社)によって濃縮し、次に変性緩衝液(98%のホルムアミド、0.25mMのEDTA)と混合した後、続いて65℃になるまで10分間加熱し、次に迅速に氷上に置いた。この試料を8M尿素中10%のポリアクリルアミドゲルにより分離し、Cy2モードで動作するTyphoon Trio+システムによってスキャンした。
【0252】
天然及び鏡像16S rRNAにおけるRNA分解の反応速度:
制御された条件下におけるRNAの完全性を評価するため、天然16S rRNA、天然16S rRNAとRNアーゼ阻害薬及び鏡像16S rRNAを含む3つの調製転写物をバイオアナライザー(Bioanalyzer)方法によって検出し、解析した。天然及び鏡像16S rRNAをそれぞれ天然及び鏡像T7 RNAポリメラーゼによって転写し、2%低融点アガロースゲルからβ-アガラーゼI消化によって精製した。精製したRNAを37℃に5分間、30分間、1時間、2時間、4時間、8時間、18時間、24時間、48時間、72時間、7日間、15日間、30日間、60日間及び100日間置き、RNAの品質をマイクロチップゲル電気泳動の電気泳動図に基づいて判定した。天然16S rRNAについて、37℃に30分間置いたとき分解の徴候は、最小限しか観察されず、1時間で分解は一層明白となり、ベースラインの実質的な上昇があった。37℃で6時間後、分解が進んだことに起因してピークが完全に消失した。RNアーゼ阻害薬を伴う天然16S rRNAの試料では、37℃に4時間置いたとき、分解の徴候は最小限しか観察されず、8時間でRNAの分解は一層明白となり、ベースラインの実質的な上昇があった。37℃で48時間後、分解が進んだことに起因してピークが完全に消失した。鏡像16S rRNAの試料では、37℃に15日間置いたときでさえ、分解の徴候は検出できなかった。これは、RNアーゼを完全に取り除いた条件下では、RNAがより強い安定性を有することを示している。L-RNAシステムを使用してRNAの異なる条件下での加水分解反応速度を測定すると、RNアーゼ阻害試薬の有効性を評価するための対照を供することができる。
【0253】
実施例3
鏡像DNA情報ストレージ
高忠実度の鏡像Pfu DNAポリメラーゼの入手後、L-DNA配列の正確な書き込み及び読み取りを通して鏡像DNA情報ストレージにおけるその応用を探索することにより、本発明の一部の実施形態による鏡像DNA情報ストレージの概念実証を行った。
【0254】
鏡像分子及び鏡像バイオロジーシステムの概念が初めて提案されたルイ・パスツールによる1860年の刊行物からの下記の一節をDNA配列にコードし(表4を参照されたい)、それぞれ4個の70~90ntの短い合成L-DNAオリゴからアセンブルした11個の220bp長のL-DNAセグメントにアーカイブ化した(表5)。
Pasteur: “And consequently, if the mysterious influence to which the
asymmetry of natural products is due should change its sense or direction,
the constitutive elements of all living beings would assume the opposite
asymmetry. Perhaps a new world would present itself to our view. Who could
foresee the organisation of living things if cellulose, right as it is,
became left; if the albumen of the blood, now left, became right? These
are mysteries which furnish much work for the future, and demand henceforth
the most serious consideration from science.”
【0255】
【表4】
【0256】
各々4個の70~90ntの短い合成L-DNAオリゴから鏡像アセンブリPCRを用いて鏡像Pfu DNAポリメラーゼによってアセンブルした220bpの情報格納用二本鎖L-DNAセグメント及び11個のセグメントの全てを含むL-DNAストレージライブラリ(L-ライブラリ)を2.5%のアガロースゲル電気泳動により分析し、ExRed.M,DNAマーカーによって染色し(結果は図示せず)、表5に掲載した。表5は、L-DNA情報ストレージに使用した配列を示し、小文字は、増幅のためのM13-F及びM13-R配列であり、下線を付した(アンダースコア、アンダーストライク)文字は、個々のセグメントのシーケンシングのためのユニークな配列である。
【0257】
【表5-1】
【0258】
【表5-2】
【0259】
L-DNAの読み取りは、シーケンシング・バイ・シンセシスにより、ホスホロチオエート手法(L-デオキシヌクレオシドα-チオ三リン酸(L-dNTPαS)及び2-ヨードエタノールによる切断を伴う)によって鏡像Pfu DNAポリメラーゼを使用するか、又はL-ジデオキシヌクレオシド三リン酸(L-ddNTP)での連鎖停止手法によって変異体鏡像Pfu DNAポリメラーゼを使用して実現することができる。双方向シーケンシング手法も適用しており、2つの異なる色素(それぞれFAM及びCy5)による5’標識プライマーを使用したところ、変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE、PCR増幅)による1回の反応における最大リード長が約180bpまで向上した。ストレージ媒体中にある情報を担持するL-DNAの203bp配列を、DNアーゼI処理したL-DNAストレージライブラリからD-Dpo4-5mによってセグメント特異的シーケンシングプライマーでそれぞれ増幅し、2.5%のアガロースゲル電気泳動により分析し、ExRed.M,DNAマーカーによって染色し(結果は図示せず)、且つL-DNAストレージセグメントS1(配列番号1)をホスホロチオエート手法によって鏡像DNAポリメラーゼを使用してシーケンシングすることにより、コードされたデジタルデータを取得した。具体的には、L-DNA S1セグメントを4回の別個のPCR反応でD-Dpo4-5mによって5’-FAM標識(フォワード)及び5’-Cy5標識(リバース)シーケンシングプライマーで特異的に増幅し、その反応内において、L-dNTPの1つが対応するL-dNTPαSに置換され、各々が2-ヨードエタノールによって切断された。10%の変性PAGEにより分析し、Cy2及びCy5モードで動作するTyphoon Trio+システムによってスキャンした。L-dNTPαS及び5’標識フォワード及びリバースシーケンシングプライマーでのD-Dpo4-5mによる情報格納用L-DNAセグメントS1のシーケンシングクロマトグラムをImageJソフトウェアによって処理した(結果は図示せず)。鏡像Pfu DNAポリメラーゼは、L-DNAストレージセグメントの増幅及びシーケンシングが可能であるものの、実際の実験には、その合成の簡便さからD-Dpo4を使用した。
【0260】
キラル・ステガノグラフィー:
ステガノグラフィーは、受取人以外にメッセージを見ることができないか又はその存在を知ることができないようにメッセージを隠す技術及び科学として公知である。これは、情報自体の存在を隠すのでなく、その内容のみを隠すクリプトグラフィーとは対照的である。本願で提供するL-DNA情報ストレージシステムは、キラル・ステガノグラフィー実験の設計を通してセキュリティ通信にも適用することができ、この実験は、ルイ・パスツールの1860年の一節をコードするD-DNAストレージライブラリが「カバーテキスト」としての役割を果たし、L-DNA鍵が「ステゴテキスト」(秘密のメッセージ)の解読を支援するというものである。秘密のメッセージをなおも更に偽装するため、キメラD-DNA/L-DNA鍵分子(配列番号46)が読み取りのキラリティーに応じて偽のメッセージ「エラー」又は秘密のメッセージ「ミラー」のいずれかを伝えるように設計した。D-DNAストレージライブラリをサンガーシーケンシングによりシーケンシングして、「カバーテキスト」を取得した。天然PCRを使用すると、ストレージライブラリに埋め込まれたキメラ鍵のD-DNA部分のみを増幅及びシーケンシングすることができ、偽のメッセージが明らかとなる。一方、鏡像PCRを使用すると、キメラ鍵のL-DNA部分を増幅及びシーケンシングすることができ、秘密のメッセージが明らかとなる。ステガノグラフィー及びクリプトグラフィーは、データの秘密を守る2つの卓越した技法である。ステガノグラフィーは、秘密のメッセージの存在を隠匿する技術であり、一方、クリプトグラフィーは、秘密のメッセージを読み取り不能な形式に変換する慣用手段を指す。ここで開発したキラル・ステガノグラフィーは、DNAクリプトグラフィーと組み合わせることにより、暗号化されたデータを使用して追加のセキュリティ層を提供できる可能性がある。
【0261】
図5は、本発明の一部の実施形態による、一見して通常のD-DNAストレージライブラリにキメラD-DNA/L-DNA鍵分子を埋め込むことにより、秘密のメッセージを運ぶDNAベースのステガノグラフィーを図解するフローチャートを提示する。
【0262】
L-DNA情報ストレージ媒体が自然環境からの生物学的分解及び混入を回避する能力を実証するため、地域の池から淡水試料を採取し、採取した水試料に対し、試料採取場所の情報(「蓮池、北京」)をコードする痕跡量の100bpのL-DNAバーコード(配列番号12)(50μg/L又は770pM)(表5)を加えた。顕著なことに、メッセージ担体のL-DNAバーコードは、最長7ヵ月(任意に選択された時間)にわたり及び潜在的にそれを越えて安定し、増幅可能なままであった。比較すると、同じ配列及び濃度のD-DNAバーコードは、1日経ったのみで増幅不可能となった。具体的には、24時間後のL-Dpo4-5mによるD-DNAバーコードの増幅後、及び1年後のD-Dpo4-5mによるL-DNAバーコードの増幅後に、続いてアガロースゲル電気泳動を行った。は40mlの池水試料中で、L-Dpo4-5mによる24時間後のD-DNAバーコードのPCR増幅を実行し、40mlの池水試料中で、D-Dpo4-5mによる1年後のL-DNAバーコードのMI-PCR増幅を実行し、3%の篩分けアガロースゲル電気泳動により分析し、ExRed.M,DNAマーカーによって染色した(結果は図示せず)。
【0263】
更に、水試料から抽出した微生物DNAのL-DNAバーコード化も、それがD-ポリメラーゼ及びL-DNAプライマーによる鏡像PCRによって特異的に増幅可能であったと共に、D-DNAメタゲノム微生物シーケンシング結果に影響を及ぼさなかった点でバイオ直交性である。
【0264】
L-DNA配列の正確な書き込み及び読み取りに後押しされて、高忠実度の鏡像Pfu DNAポリメラーゼによる完全長1.5kbの鏡像細菌16S rRNA遺伝子のアセンブリを行った。この試みは、以下の二段階アセンブリ手順を用いて、D-DNAに対して合成L-ポリメラーゼを使用して遺伝子アセンブリを試験することから始めた:初めに約90ntの短い合成オリゴから450~600bpのDNAブロックをアセンブルし(表6)、続いてDNAブロックを完全長16S rRNA遺伝子(配列番号81)にアセンブルする第2段階を行った。
【0265】
【表6-1】
【0266】
【表6-2】
【0267】
最初の試みでは、完全長D-DNA産物のサンガーシーケンシングにおいて、アセンブルされた配列のうち、正しいものは僅か約40%であったことが示され(表3)、エラーのほとんどは、ヌクレオチド欠失であり、オリゴ合成からのマイナス1nt及び2nt産物から生じたものと思われた。従って、単一ヌクレオチド分解能での変性PAGEを用いてオリゴ精製手法を変更すると、マイナス1nt及び2nt産物の大多数が除去されたことによって合成オリゴのクオリティが実質的に向上し、その後、欠失エラーのほとんどがなくなり、最終的にアセンブルされた配列の約90%が正しかった(残りの配列は、ランダムに現れた変異を1つのみ含んでいた)。従って、同じオリゴ精製手法及び鏡像アセンブリPCRを用いて、完全長1.5kbの鏡像16S rRNA遺伝子のアセンブリを実施した。この遺伝子は、将来、機能性鏡像リボソームを構築する際の要となる鏡像16S rRNAに酵素的に転写するためのテンプレートとなるであろう。具体的には、鏡像16S rRNA遺伝子を鏡像Pfu DNAポリメラーゼによってアセンブルした後、続いてアガロースゲル電気泳動にかけ、完全長である1.5kbの鏡像細菌16S rRNA遺伝子を鏡像Pfu DNAポリメラーゼを使用した鏡像アセンブリPCRにより得て、1.5%アガロースゲル電気泳動により分析し、ExRed.M,DNAマーカーによって染色した。(結果は図示せず)。
【0268】
DNAテンプレートを用いたRNA重合:
1×Thermopol緩衝液(米国、マサチューセッツ州、New England Biolabs社)、3mMのMgSO、0.625mMの各NTP、0.5μMの5’-FAM標識DNAプライマー(21nt)、及び1μMのssDNAテンプレート(41nt)、及びポリメラーゼにおいてRNA重合を実施した。ポリメラーゼを加える前に、アニーリングのためこの反応系を94℃で30秒間加熱し、4℃にゆっくりと冷却した。プライマー伸長反応を65℃で10分間行った。98%のホルムアミド、0.25mMのEDTA及び0.0125%のSDSを含有するローディング緩衝液を加えることによって反応を停止させて、産物を8Mの尿素中、20%の変性PAGEにより分析した。具体的には、種々の変異体Pfu DNAポリメラーゼのDNAテンプレートを用いたRNA重合活性アッセイの後にPAGE分析を行い、ここでは、41ntの一本鎖DNAテンプレート、5’-FAM標識した21ntのDNAプライマー及びNTPを用い、65℃で10分間インキュベートする、種々のPfu DNAポリメラーゼ変異体によるDNAテンプレート特異的プライマー伸長を行い、8Mの尿素中、20%のPAGEにより分析した(結果は図示せず)。
【0269】
L-DNAの書き込み及び読み取り:
550文字を含むルイ・パスツールによる1860年の刊行物からの一節(上記のテキストを参照されたい)を1650ヌクレオチドのDNA配列に変換し(表4)、それぞれ70~90ntの4個の短い合成L-DNAオリゴからアセンブルした11個の220bp長のL-DNAセグメントにコードした(表5)。アセンブリPCRプログラム設定は、94℃で3分(初期変性)、94℃で30秒、55℃で30秒及び72℃で1分(アンプリコンの長さに依存する)を35サイクル、72℃で10分(最終伸長)とした。ホスホロチオエート手法については、5’-FAM標識(フォワード)及び5’-Cy5標識(リバース)プライマーを用い、D-Dpo4-5m(その化学合成を容易にするための変異型のDpo4)によって、4回の別個のPCR反応でL-DNAセグメントを増幅し、毎回の反応内において、L-dNTPの1つを対応するL-dNTPαSに置換した。PCRプログラム設定は、86℃で3分(初期変性)、86℃で30秒、54℃(Tmに依存する)で1分及び65℃で1~2.5分(アンプリコンの長さに依存する)を45サイクル、65℃で5分(最終伸長)とした。PCR産物(同じ長さの非標識担体dsDNAと1:20w/wで混合した)を8%PAGEにより精製し、約200ng/μlの濃度となるように水に溶解した。各シーケンシング反応につき2.5μlの二重標識L-DNAを、2%(v/v)の2-ヨードエタノールを含有する2.5μlの変性緩衝液(98%のホルムアミド、0.25mMのEDTA)と混合した後、続いて95℃で3分間加熱し、次に迅速に氷上に置いた。連鎖停止手法については、5’-FAM標識(フォワード)及び/又は5’-Cy5標識(リバース)プライマーを用い、鏡像Pfu DNAポリメラーゼ変異体(D215A、L490W)(配列番号77)によって、4回の別個のPCR反応でL-DNAセグメントを増幅し、毎回の反応内において、L-dNTPの1つを対応するL-ddNTPに一定の比率で置換した。PCRプログラム設定は、94℃で3分(初期変性)、94℃で30秒、54℃(Tmに依存する)で30秒及び72℃で30~60秒(アンプリコンの長さに依存する)を20サイクル、72℃で5分(最終伸長)とした。二重標識PCR産物をそれぞれ等容積の変性緩衝液(98%ホルムアミド、0.25mM EDTA)と混合した後、続いて95℃で3分間加熱し、次に迅速に氷上に置いた。ddNTP及び5’-Cy5標識(リバース)シーケンシングプライマーを用いた発現されたPfu DNAポリメラーゼ変異体(D215A、L490W)による連鎖停止手法で得たD-DNAセグメントS1、及びddNTP及び5’-Cy5標識リバースシーケンシングプライマーを用いたPfu DNAポリメラーゼ変異体(D215A、L490W)によるD-DNAセグメントS1の増幅産物のシーケンシングゲルを、10%変性PAGEにより分析し、Cy5モードで動作するTyphoon Trio+システムによってスキャンした。AはdATPが部分的にddATPに置き換わったもの、CはdCTPが部分的にddCTPに置き換わったもの、GはdGTPが部分的にddGTPに置き換わったもの、TはdTTPが部分的にdTTPに置き換わったものである(結果は図示せず)。シーケンシング試料を0.4mm×340mm×300mmのスラブにロードし、8Mの尿素中、10%のポリアクリルアミドゲルによって分離した。ゲルは、50W(定出力)で2時間、30~40℃に加熱されるまで予め泳動を行った。ローディング後、ゲルを50W(定出力)で1.5時間の泳動を行い、蛍光スキャンのために中断した後、ゲルの泳動を続け、1時間おきにスキャンし、これを総泳動時間が最長5時間になるまで行った。ポリアクリルアミドゲルを、それぞれCy2及びCy5モードで動作するTyphoon Trioシステムによってスキャンした。ゲル定量化及びクロマトグラム分析は、ImageJソフトウェアによって実施した。
【0270】
キラル・ステガノグラフィー:
上記に記載される方法を用いて、キメラD-DNA/L-DNAオリゴをD-及びL-デオキシヌクレオシドホスホロアミダイトで合成した。オリゴD-F1、D-R1、D/L-F2及びD/L-R2(表7)をアニーリングのため95℃に3分加熱し、ゆっくりと4℃に冷却し、アニールした二本鎖DNAをT3 DNAリガーゼ(米国、マサチューセッツ州、New England Biolabs社)によって25℃で1.5時間連結した。L-DNAストレージライブラリのときと同じような方法を用いて、「カバーテキスト」としての役割を果たすD-DNAストレージライブラリをTransStart FastPfu Flyポリメラーゼ(中国、北京、TransGen Biotech.社)によって調製した。アガロースゲルによって精製したキメラ二本鎖D-DNA/L-DNA鍵をD-DNAストレージライブラリに各D-DNAセグメントとして1:1の濃度比で加えた。11個の情報格納用D-DNAセグメント及びキメラ鍵のD-DNA部分をそれぞれストレージライブラリからセグメント特異的プライマーで増幅し、サンガーシーケンシングのためにゼロバックグラウンドZT4 Simple-Blunt Fastクローンキット(中国、北京、Beijing Zoman Biotech.社)によってクローニングした(補表S6)。キメラ鍵のL-DNA部分をストレージライブラリからのD-Dpo4-5mによってL-M13F及びL-M13Rプライマーで増幅し、ホスホロチオエート手法によりシーケンシングした。
【0271】
表7は、キラル・ステガノグラフィーに使用した配列を提示し、小文字は、D-DNA配列であり、大文字は、L-DNA配列であり、下線を付した(アンダースコア、アンダーストライク)文字は、個々のセグメントの増幅及びシーケンシングのためのユニークな配列である。
【0272】
【表7】
【0273】
L-DNAバーコード化:
2019年12月8日に清華大学の蓮池(40°0’27”N、116°19’34”E)から未精製の環境水試料を採取した。合成D-及びL-DNAオリゴをアニーリングのため95℃に5分間加熱し、ゆっくりと4℃に冷却し、アニールしたdsDNAを水試料に50μg/Lの濃度となるように加えた。DNAバーコード(配列番号12)を増幅するため、2mlの水試料を0.22μmのフィルタ(米国、ウィスコンシン州、Pall Corporation)によってろ過し、Amicon Utra遠心フィルタユニット(0.5ml、10,000MWCO)によってDEPC処理水に再懸濁した後、D-/L-Pfu DNAポリメラーゼによって増幅した。PCRプログラム設定は、94℃で3分(初期変性)、94℃で30秒、55℃で30秒及び72℃で1分を25サイクル、72℃で10分(最終伸長)とした。メタゲノム微生物DNA抽出のために、水試料を0.2μm Supor 200 PESメンブレンディスクフィルター(米国、ニューヨーク州、Pall社)でろ過し、DNeasy PowerSoilキット(米国、メリーランド州、Qiagen社)によって微生物DNAを抽出した。
【0274】
16S rRNA遺伝子アセンブリ:
各0.005~0.02μM(内側)又は各0.2μM(外側)の濃度の約90nt長の合成オリゴを二段階で完全長遺伝子にアセンブルした。最初の段階では、アセンブリPCRプログラム設定は、94℃で3分(初期変性)、94℃で30秒、60℃で30秒及び72℃で3分を35サイクル、72℃で10分(最終伸長)とした。第2段階では、予めアセンブルした約450~550bp長のDNAブロックを1.5%アガロースゲルにより精製した後、アセンブリPCRに供した。アセンブリPCRプログラム設定は、94℃で3分(初期変性)、94℃で30秒、60℃で30秒及び72℃で7分を35サイクル、72℃で10分(最終伸長)とした。アセンブルした産物を、PCRプログラム設定:94℃で3分(初期変性)、94℃で30秒、60℃で30秒及び72℃で7分を35サイクル、72℃で10分(最終伸長)によって更に増幅した。天然アセンブリPCRの最終D-DNA産物(配列番号81)をV-eluteゲルミニ精製キット(中国、北京、Beijing Zoman Biotech.社)によって精製し、ゼロバックグラウンドZT4 Simple-Blunt Fastクローンキット(中国、北京、Beijing Zoman Biotech.社)によってサンガーシーケンシングのためにクローニングした。
【0275】
本発明は、その具体的な実施形態と併せて記載されているが、多くの代替形態、改良形態及び変形形態が明らかであろうことは、当業者に明白である。従って、添付の特許請求の範囲の趣旨及び広義の範囲内にあるかかる代替形態、改良形態及び変形形態が全て包含されることが意図される。
【0276】
本明細書で言及される全ての刊行物、特許及び特許出願は、本明細書において、それぞれの個別の刊行物、特許又は特許出願が参照により本明細書に援用されることが具体的且つ個別的に指示されたものとみなすのと同程度に、全体として参照により本明細書に援用される。加えて、本願における任意の参考文献の引用又は特定は、かかる参考文献が本発明の先行技術として利用可能であることを承認するものと解釈されてはならない。節の見出しが使用される限り、それらは、必ずしも限定するものではないと解釈されるべきである。加えて、本願の任意の1つ又は複数の優先権書類は、全体が参照により本明細書に援用される。
【0277】
加えて、本願の任意の1つ又は複数の優先権書類は、全体が参照により本明細書に援用される。
【0278】
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【配列表フリーテキスト】
【0279】
配列番号1: L-DNA核酸配列
配列番号2: L-DNA核酸配列
配列番号3: L-DNA核酸配列
配列番号4: L-DNA核酸配列
配列番号5: L-DNA核酸配列
配列番号6: L-DNA核酸配列
配列番号7: L-DNA核酸配列
配列番号8: L-DNA核酸配列
配列番号9: L-DNA核酸配列
配列番号10: L-DNA核酸配列
配列番号11: L-DNA核酸配列
配列番号12: DNAバーコード核酸配列
配列番号13: 短い合成オリゴ核酸配列
配列番号14: 短い合成オリゴ核酸配列
配列番号15: 短い合成オリゴ核酸配列
配列番号16: 短い合成オリゴ核酸配列
配列番号17: 短い合成オリゴ核酸配列
配列番号18: 短い合成オリゴ核酸配列
配列番号19: 短い合成オリゴ核酸配列
配列番号20: 短い合成オリゴ核酸配列
配列番号21: 短い合成オリゴ核酸配列
配列番号22: 短い合成オリゴ核酸配列
配列番号23: 短い合成オリゴ核酸配列
配列番号24: 短い合成オリゴ核酸配列
配列番号25: 短い合成オリゴ核酸配列
配列番号26: 短い合成オリゴ核酸配列
配列番号27: 短い合成オリゴ核酸配列
配列番号28: 短い合成オリゴ核酸配列
配列番号29: 短い合成オリゴ核酸配列
配列番号30: 短い合成オリゴ核酸配列
配列番号31: 短い合成オリゴ核酸配列
配列番号32: 短い合成オリゴ核酸配列
配列番号33: 短い合成オリゴ核酸配列
配列番号34: 短い合成オリゴ核酸配列
配列番号35: 短い合成オリゴ核酸配列
配列番号36: 単鎖DNAオリゴヌクレオチド
配列番号37: 単鎖DNAオリゴヌクレオチド
配列番号38: 短い合成オリゴ核酸配列
配列番号39: 短い合成オリゴ核酸配列
配列番号40: 短い合成D-/L-キメラオリゴ核酸配列
配列番号41: 短い合成D-/L-キメラオリゴ核酸配列
配列番号42: 単鎖DNAオリゴヌクレオチド
配列番号43: 単鎖DNAオリゴヌクレオチド
配列番号44: 単鎖L-DNAオリゴヌクレオチド
配列番号45: 単鎖L-DNAオリゴヌクレオチド
配列番号46: D-/L-キメラDNA核酸配列
配列番号47: Pfu DNAポリメラーゼ
配列番号48: Pfu DNAポリメラーゼの変異型
配列番号49: Pfu-5m-55Iアミノ酸配列
配列番号50: Pfu-5m-46Iアミノ酸配列
配列番号51: Pfu DNAポリメラーゼの変異型
配列番号52: Pfu DNAポリメラーゼの変異型
配列番号53: KOD1ポリメラーゼ
配列番号54: Tgoポリメラーゼ
配列番号55: 9度のN-7ポリメラーゼのアミノ酸配列
配列番号56: Tokポリメラーゼ
配列番号57: Pfu DNAポリメラーゼのN断片
配列番号58: Pfu DNAポリメラーゼのN断片
配列番号59: Pfu DNAポリメラーゼのN断片
配列番号60: Pfu DNAポリメラーゼのN断片、1位はN末端トリフルオロ酢酸チアゾリジン-4-カルボン酸(Tfa-Thz)結合
配列番号61: Pfu DNAポリメラーゼのN断片、1位はN末端トリフルオロ酢酸チアゾリジン-4-カルボン酸(Tfa-Thz)結合
配列番号62: Pfu DNAポリメラーゼのN断片
配列番号63: Pfu DNAポリメラーゼのN断片、1位はN末端トリフルオロ酢酸チアゾリジン-4-カルボン酸(Tfa-Thz)結合
配列番号64: Pfu DNAポリメラーゼのN断片、1位はN末端トリフルオロ酢酸チアゾリジン-4-カルボン酸(Tfa-Thz)結合
配列番号65: Pfu DNAポリメラーゼのN断片、1位はN末端トリフルオロ酢酸チアゾリジン-4-カルボン酸(Tfa-Thz)結合
配列番号66: Pfu DNAポリメラーゼのN断片
配列番号67: Pfu DNAポリメラーゼのC断片
配列番号68: Pfu DNAポリメラーゼのC断片
配列番号69: Pfu DNAポリメラーゼのC断片
配列番号70: Pfu DNAポリメラーゼのC断片
配列番号71: Pfu DNAポリメラーゼのC断片、1位はN末端トリフルオロ酢酸チアゾリジン-4-カルボン酸(Tfa-Thz)結合
配列番号72: Pfu DNAポリメラーゼのC断片、1位はN末端トリフルオロ酢酸チアゾリジン-4-カルボン酸(Tfa-Thz)結合
配列番号73: Pfu DNAポリメラーゼのC断片
配列番号74: Pfu DNAポリメラーゼの変異型
配列番号75: Pfu DNAポリメラーゼの変異型
配列番号76: Pfu DNAポリメラーゼの変異型
配列番号77: Pfu DNAポリメラーゼの変異型
配列番号78: sso7d構造ドメインのアミノ酸配列
配列番号79: Pfu DNAポリメラーゼのアミノ酸配列
配列番号80: pUC19プラスミドの核酸配列
配列番号81: 細菌16S rRNA遺伝子をコードするDNAテンプレート
配列番号82: T7-WTアミノ酸配列
配列番号83: T7-37I(I6V,I14L,I74L,I82V,I109V,I117L,I141V,I219M,I244L,I281V,I320V,I322L,I330V,I367L)アミノ酸配列
配列番号84: YenPアミノ酸配列
配列番号85: phiEapアミノ酸配列
配列番号86: KpnPアミノ酸配列
配列番号87: T7-分裂-N断片のアミノ酸配列
配列番号88: T7-N-1アミノ酸配列
配列番号89: T7-N-2アミノ酸配列
配列番号90: T7-N-3アミノ酸配列
配列番号91: T7-N-4アミノ酸配列
配列番号92: T7-N-5アミノ酸配列
配列番号93: T7-N-6アミノ酸配列、1位はN末端トリフルオロ酢酸チアゾリジン-4-カルボン酸(Tfa-Thz)結合
配列番号94: T7-N-7アミノ酸配列
配列番号95: T7-分裂-M断片のアミノ酸配列
配列番号96: T7-M-1アミノ酸配列
配列番号97: T7-M-2アミノ酸配列
配列番号98: T7-M-3アミノ酸配列
配列番号99: T7-M-4アミノ酸配列、1位はN末端トリフルオロ酢酸チアゾリジン-4-カルボン酸(Tfa-Thz)結合
配列番号100: T7-M-5アミノ酸配列、1位はN末端トリフルオロ酢酸チアゾリジン-4-カルボン酸(Tfa-Thz)結合
配列番号101: T7-M-6アミノ酸配列
配列番号102: T7-split-C断片のアミノ酸配列
配列番号103: T7-C-1アミノ酸配列
配列番号104: T7-C-2アミノ酸配列
配列番号105: T7-C-3アミノ酸配列
配列番号106: T7-C-4アミノ酸配列、1位はN末端トリフルオロ酢酸チアゾリジン-4-カルボン酸(Tfa-Thz)結合
配列番号107: T7-C-5のアミノ酸配列
配列番号108: DNAテンプレートの核酸配列
配列番号109: Tt 16SのDNAテンプレートの核酸配列
配列番号110: tRNA(Ser)のDNAテンプレート
配列番号111: L-グアニンセンサーのDNAテンプレート
配列番号112: L- 38-6リボザイムのDNAテンプレート
配列番号113: L-クラスIリガーゼのDNAテンプレート
配列番号114: L-38-6リボザイム
配列番号115: L-5’-FAM-標識プライマー、1位はFAM標識、1位はFAM結合
配列番号116: L-クラスIリガーゼのテンプレート
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図4
図5
【配列表】
2023537902000001.app
【国際調査報告】