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特表2023-537919金属粉末の使用を最小限に抑える3次元プリントシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-06
(54)【発明の名称】金属粉末の使用を最小限に抑える3次元プリントシステム
(51)【国際特許分類】
   B22F 12/55 20210101AFI20230830BHJP
   B22F 1/05 20220101ALI20230830BHJP
   B22F 10/34 20210101ALI20230830BHJP
   B22F 10/28 20210101ALI20230830BHJP
   B22F 10/37 20210101ALI20230830BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20230830BHJP
   B33Y 50/00 20150101ALI20230830BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20230830BHJP
   B22F 10/40 20210101ALI20230830BHJP
【FI】
B22F12/55
B22F1/05
B22F10/34
B22F10/28
B22F10/37
B33Y30/00
B33Y50/00
B33Y10/00
B22F10/40
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023508548
(86)(22)【出願日】2021-08-16
(85)【翻訳文提出日】2023-02-16
(86)【国際出願番号】 US2021046077
(87)【国際公開番号】W WO2022036301
(87)【国際公開日】2022-02-17
(31)【優先権主張番号】63/065,847
(32)【優先日】2020-08-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】597013711
【氏名又は名称】スリーディー システムズ インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100139723
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 洋
(72)【発明者】
【氏名】ワトソン,ジョナサン
(72)【発明者】
【氏名】ウィンター,カート
【テーマコード(参考)】
4K018
【Fターム(参考)】
4K018AB04
4K018BB04
(57)【要約】
3次元(3D)物品を製造するための3次元(3D)プリントシステムは、支持粉末を収容する支持粉末ディスペンサ、金属粉末を収容する金属粉末ディスペンサ、造形プレート、ビームシステム、およびコントローラを含む。コントローラは、以下を実行するように構成される:(1)3D物品の2次元(2D)スライスを画定する情報を受信する、(2)金属粉末の新しい層を受け取るように造形プレートを配置する、(3)金属粉末ディスペンサを動作させ、金属粉末の新しい層を分配し、金属粉末の新しい層は、2Dスライスにかかり、境界を超えて延在して、未溶融粉末のゾーンを画定する、(4)ビームシステムを動作させ、2Dスライスに対応する領域上で粉末の新しい層を選択的に溶融する、(5)支持粉末ディスペンサを動作させ、未溶融粉末のゾーンに近接するまたは重なり合う支持粉末の境界輪郭を分配する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
3次元(3D)物品を製造するための3次元(3D)プリントシステムであって、
支持粉末を収容する支持粉末ディスペンサ;
金属粉末を収容する金属粉末ディスペンサ;
垂直位置決めシステムに連結された造形プレート;
ビームシステム;および
コントローラ
を含み、
該コントローラは、
(1)溶融領域を画定し、スライス境界を有する3D物品の2次元(2D)スライスを画定する情報を受信し;
(2)前記垂直位置決めシステムを動作させ、金属粉末の新しい層を受け取るように造形プレートを配置し;
(3)前記金属粉末ディスペンサを動作させ、金属粉末の新しい層を分配し、該金属粉末の新しい層は、前記2Dスライスにかかり、前記スライス境界を超えて延在して、少なくともオフセット距離Dである横幅を有する未溶融粉末のゾーンを画定し;
(4)前記ビームシステムを動作させ、前記2Dスライスに対応する領域上で粉末の新しい層を選択的に溶融し、未溶融粉末のゾーンを残し;
(5)前記支持粉末ディスペンサを動作させ、前記未溶融粉末のゾーンに近接するまたは重なり合う支持粉末の境界輪郭を分配し;かつ
前記情報の受信、および、前記支持粉末ディスペンサ、前記垂直位置決めシステム、前記金属粉末ディスペンサ、および前記ビームシステムの動作を繰り返して、前記3D物品の作製を完了する、
3次元プリントシステム。
【請求項2】
前記工程(1)~(4)が、前記工程(5)を実行する前にN回繰り返され、Nは1より大きいことを特徴とする、請求項1に記載の3次元プリントシステム。
【請求項3】
前記工程(5)は、前記工程(1)~(4)が実行される前に行われ、前記工程(1)~(4)は、前記工程(5)を繰り返す前にN回繰り返され、Nは1よりも大きいことを特徴とする、請求項1に記載の3次元プリントシステム。
【請求項4】
前記支持粉末は、砂粒子、ジルコン粒子、および二酸化ケイ素粒子のうちの1つまたは複数を含むことを特徴とする、請求項1に記載の3次元プリントシステム。
【請求項5】
前記支持粉末は第1のアバランシェ角を有し、前記金属粉末は第2のアバランシェ角を有し、前記第1のアバランシェ角は前記第2のアバランシェ角よりも大きいことを特徴とする、請求項1に記載の3次元プリントシステム。
【請求項6】
前記支持粉末は、少なくとも40度のアバランシェ角を有することを特徴とする、請求項1に記載の3次元プリントシステム。
【請求項7】
前記支持粉末は第1の平均粒径を有する粒子からなり、前記金属粉末は第2の平均粒径を有する粒子からなり、前記第1の平均粒径は前記第2の平均粒径の少なくとも2倍であることを特徴とする、請求項1に記載の3次元プリントシステム。
【請求項8】
前記支持粉末の境界輪郭は、前記2Dスライスを横方向に囲む外側境界輪郭と、前記2Dスライスによって横方向に囲まれる少なくとも1つの内側境界輪郭とを含むことを特徴とする、請求項1に記載の3次元プリントシステム。
【請求項9】
3D物品を製造する方法であって、
支持粉末を収容する支持粉末ディスペンサと、金属粉末を収容する金属粉末ディスペンサと、垂直位置決めシステムに連結された造形プレートと、ビームシステムとを含む3Dプリントシステムを提供する工程;
(1)溶融領域を画定し、スライス境界を有する3D物品の2次元(2D)スライスを画定する情報を受信する工程;
(2)前記垂直位置決めシステムを動作させ、金属粉末の新しい層を受け取るように造形プレートを配置する工程;
(3)前記金属粉末ディスペンサを動作させ、金属粉末の新しい層を分配する工程であって、前記金属粉末の新しい層を分配し、金属粉末の新しい層は、2Dスライスにかかり、前記スライス境界を超えて延在して、少なくともオフセット距離Dである横幅を有する未溶融粉末のゾーンを画定する、工程;
(4)前記ビームシステムを動作させ、前記2Dスライスに対応する領域上で粉末の新しい層を選択的に溶融し、前記未溶融粉末のゾーンを残す、工程;
(5)前記支持粉末ディスペンサを動作させ、前記未溶融粉末のゾーンに近接するまたは重なり合う支持粉末の境界輪郭を分配する工程;および
前記情報の受信、および、前記支持粉末ディスペンサ、前記垂直位置決めシステム、前記金属粉末ディスペンサ、および前記ビームシステムの動作を繰り返して、前記3D物品の作製を完了する、工程
を含む、方法。
【請求項10】
前記工程(1)~(4)が、前記工程(5)を実行する前にN回繰り返され、Nは1より大きいことを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記工程(5)は、前記工程(1)~(4)が実行される前に行われ、前記工程(1)~(4)は、前記工程(5)を繰り返す前にN回繰り返され、Nは1よりも大きいことを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記支持粉末は、砂粒子、ジルコン粒子、および二酸化ケイ素粒子のうちの1つまたは複数を含むことを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記支持粉末は第1のアバランシェ角を有し、前記金属粉末は第2のアバランシェ角を有し、前記第1のアバランシェ角は前記第2のアバランシェ角よりも大きいことを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記支持粉末は、少なくとも40度のアバランシェ角を有することを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
前記支持粉末は第1の平均粒径を有する粒子からなり、前記金属粉末は第2の平均粒径を有する粒子からなり、前記第1の平均粒径は前記第2の平均粒径の少なくとも2倍であることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項16】
前記支持粉末は第1の平均粒径を有する粒子からなり、前記金属粉末は第2の平均粒径を有する粒子からなり、前記第1の平均粒径は前記第2の平均粒径の少なくとも3倍であることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項17】
前記支持粉末の境界輪郭は、前記2Dスライスを横方向に囲む外側境界輪郭と、前記2Dスライスによって横方向に囲まれる少なくとも1つの内側境界輪郭とを含むことを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項18】
3D物品を製造するためのソフトウェア命令を記憶する非一時的記憶媒体であって、プロセッサによって実行されると、以下:
(1)溶融領域を画定し、境界を有する3D物品の2次元(2D)スライスを画定する情報を受信し;
(2)前記垂直位置決めシステムを動作させ、金属粉末の新しい層を受け取るように造形プレートを配置し;
(3)前記金属粉末ディスペンサを動作させ、金属粉末の新しい層を分配し、該金属粉末の新しい層は、前記2Dスライスにかかり、前記境界を超えて延在して、少なくともオフセット距離Dである横幅を有する未溶融粉末のゾーンを画定し;
(4)前記ビームシステムを動作させ、前記2Dスライスに対応する領域上で粉末の新しい層を選択的に溶融し、前記未溶融粉末のゾーンを残し;
(5)前記支持粉末ディスペンサを動作させ、前記未溶融粉末のゾーンに近接するまたは重なり合う支持粉末の境界輪郭を分配し;かつ
前記情報の受信、および、前記支持粉末ディスペンサ、前記垂直位置決めシステム、前記金属粉末ディスペンサ、および前記ビームシステムの動作を繰り返して、3D物品の作製を完了する
の工程を実行する、非一時的記憶媒体。
【請求項19】
前記工程(1)~(4)が、前記工程(5)を実行する前にN回繰り返され、Nは1より大きいことを特徴とする、請求項18に記載の非一時的記憶媒体。
【請求項20】
前記工程(5)は、前記工程(1)~(4)が実行される前に行われ、前記工程(1)~(4)は、前記工程(5)を繰り返す前にN回繰り返され、Nは1よりも大きいことを特徴とする、請求項18に記載の非一時的記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
政府権利の陳述
本発明は、米国陸軍研究所(U.S.Army Research Laboratory)によって授与された許可番号W911NF-18-9-000.3および国立製造科学センター(National Center for Manufacturing Sciences)(NCMS)によって授与されたAMMPコンソーシアムメンバー許可番号201935の下で政府の支援を受けて行われた。政府は本発明に一定の権利を有する。
【0002】
関連出願の相互参照
本非仮特許出願は、2020年8月14日に出願されたJonathan Watsonらによる「THREE-DIMENSIONAL PRINTING SYSTEM THAT MINIMIZES USE OF METAL POWDER」と題された米国仮特許出願第63/065,847号に対する優先権の利益を主張する;その内容は、U.S.C.119(e)号の利益の下で参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
本開示は、金属粉末材料を選択的に溶融することによって3次元(3D)物品を層ごとに製造するための装置および方法に関する。より詳細には、本開示は、3D物品の表面品質を維持しながら、金属粉末の使用を最小限に抑えるシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0004】
3次元(3D)プリントシステムは、プロトタイピングおよび製造などの目的のために急速に使用が増加している。1つのタイプの3次元プリンタは、層ごとのプロセスを利用して、粉末金属材料から3次元製造物品を形成する。粉末材料の各層は、レーザビーム、電子ビーム、または粒子ビームなどのエネルギービームを使用して選択的に溶融される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これらのシステムの課題の1つは、金属粉末のコストが非常に高く、その一部は未溶融であることである。別の課題は、高解像度および高品質の表面を画定する能力である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の態様では、3次元(3D)物品を製造するための3次元(3D)プリントシステムは、支持粉末を収容する支持粉末ディスペンサ、金属粉末を収容する金属粉末ディスペンサ、垂直位置決めシステムに連結された造形プレート、ビームシステム、およびコントローラを含む。コントローラは、以下を実行するように構成される:(1)溶融領域を画定し、スライス境界を有する3D物品の2次元(2D)スライスを画定する情報を受信する、(2)垂直位置決めシステムを動作させ、金属粉末の新しい層を受け取るように造形プレートを配置する、(3)金属粉末ディスペンサを動作させ、金属粉末の新しい層を分配し、金属粉末の新しい層は、2Dスライスにかかり、スライス境界を超えて延在して、少なくともオフセット距離Dである横幅を有する未溶融粉末のゾーンを画定する、(4)ビームシステムを動作させ、2Dスライスに対応する領域上で粉末の新しい層を選択的に溶融し、未溶融粉末のゾーンを残す、(5)支持粉末ディスペンサを動作させ、未溶融粉末のゾーンに近接するまたは重なり合う支持粉末の境界輪郭を分配し、情報の受信、および、支持粉末ディスペンサ、垂直位置決めシステム、金属粉末ディスペンサ、およびビームシステムの動作を繰り返して、3D物品の製造を完了する。特定の工程の順序は変更することができる。工程(5)は、金属の層を分配および溶融する前または後に行うことができる。
【0007】
支持粉末の境界輪郭を分配することによって、物品を製造するのに必要な金属粉末の量が最小限に抑えられる。これは、造形容積の全てが金属粉末で充填される必要はないため、非常に大きい金属物品を製造することができるシステムにとって特に重要である。また、境界輪郭とスライス境界との間のオフセットにより、支持粉末が3D物品の表面に埋め込まれることによって生じる任意の欠陥を伴わずに、ビームシステムが各スライスの外側境界を画定することが可能になる。いくつかの実施形態では、スライス境界は、内側および外側スライス境界を含むことができる。
【0008】
一実装形態では、支持粉末の境界輪郭は、金属粉末層の垂直厚さの少なくとも2倍である垂直厚さを有する。これにより、分配される支持粉末の各境界輪郭に対して2つ以上の金属粉末の層を分配することが可能になる。これにより、3D物品の製造に要する時間が短縮される。いくつかのシステムでは、分配される個々の境界輪郭に対して分配されるN層の金属粉末がある。Nは、支持粉末のアバランシェ角などの要因に応じて、2、3、4、5、またはそれ以上であり得る。したがって、工程(3)~(5)は、工程(2)が実行される個々の時間について、各時間に対してN回繰り返される。
【0009】
別の実装形態では、支持粉末は砂材料である。砂材料は、ジルコン(ケイ酸ジルコニウム)粒子または二酸化ケイ素粒子のうちの1つ以上を含むことができる。特定の実装形態では、支持材料はジルコン粒子からなる。
【0010】
さらに別の実装形態では、支持粉末は、第1のアバランシェ角を有する。金属粉末は、第2のアバランシェ角を有する。第1のアバランシェ角は、第2のアバランシェ角よりも大きい。第1のアバランシェ角は、分配された境界輪郭の高さ対幅の比を最大にする少なくとも40度であり得る。第2のアバランシェ角は、分配される金属粉末層の均一性および表面品質を向上させるために、第1のアバランシェ角よりも小さい。
【0011】
さらなる実装形態において、支持粉末は、第1の平均粒径を有する粒子からなる。金属粉末は、第2の平均粒径を有する粒子からなる。第1の平均粒径は、第2の平均粒径の少なくとも2倍であり得る。第1の平均粒径は、第2の平均粒径の少なくとも3倍であり得る。第1の平均粒径は、第2の平均粒径の少なくとも4倍であり得る。支持粉末と金属粉末との粒径差が大きいと、支持粉末と金属粉末との分離が容易になる。これにより、金属粉末をリサイクルすることができる。
【0012】
さらに別の実装形態では、支持粉末の境界輪郭は、2Dスライスを横方向に囲む外側境界輪郭と、2Dスライスによって横方向に囲まれる少なくとも1つの内側境界輪郭とを含む。
【0013】
本開示の第2の態様では、3D物品を製造する方法は、3Dプリントシステムを提供し、動作させる工程を含む。3Dプリントシステムは、支持粉末を収容する支持粉末ディスペンサと、金属粉末を収容する金属粉末ディスペンサと、垂直位置決めシステムに連結された造形プレートと、ビームシステムと、コントローラとを含む。3Dプリントシステムを動作させる工程は、以下を含む:(1)溶融領域を画定し、スライス境界を有する3D物品の2次元(2D)スライスを画定する情報を受信する工程、(2)垂直位置決めシステムを動作させ、金属粉末の新しい層を受け取るように造形プレートを配置する工程、(3)金属粉末ディスペンサを動作させ、金属粉末の新しい層を分配する工程であって、金属粉末の新しい層を分配し、金属粉末の新しい層は、2Dスライスにかかり、スライス境界を超えて延在して、少なくともオフセット距離Dである横幅を有する未溶融粉末のゾーンを画定する、工程、(4)ビームシステムを動作させ、2Dスライスに対応する領域上で粉末の新しい層を選択的に溶融し、未溶融粉末のゾーンを残す、工程、(5)支持粉末ディスペンサを動作させ、未溶融粉末のゾーンに近接するまたは重なり合う支持粉末の境界輪郭を分配し、情報の受信、および、支持粉末ディスペンサ、垂直位置決めシステム、金属粉末ディスペンサ、およびビームシステムの動作を繰り返して、3D物品の製造を完了する、工程。
【0014】
本開示の第3の態様では、非一時的記憶媒体は、3D物品を製造するためのソフトウェア命令を記憶する。プロセッサによって実行されると、ソフトウェア命令は、少なくとも以下の工程を実行する:(1)溶融領域を画定し、スライス境界を有する3D物品の2次元(2D)スライスを画定する情報を受信する、(2)垂直位置決めシステムを動作させ、金属粉末の新しい層を受け取るように造形プレートを配置する、(3)金属粉末ディスペンサを動作させ、金属粉末の新しい層を分配し、金属粉末の新しい層は、2Dスライスにかかり、スライス境界を超えて延在して、少なくともオフセット距離Dである横幅を有する未溶融粉末のゾーンを画定する、(4)ビームシステムを動作させ、2Dスライスに対応する領域上で粉末の新しい層を選択的に溶融し、未溶融粉末のゾーンを残す、(5)支持粉末ディスペンサを動作させ、未溶融粉末のゾーンに近接するまたは重なり合う支持粉末の境界輪郭を分配し、情報の受信、および、支持粉末ディスペンサ、垂直位置決めシステム、金属粉末ディスペンサ、およびビームシステムの動作を繰り返して、3D物品の製造を完了する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】3次元(3D)プリントシステムの一実施形態の概略図
図2】金属3D物品を製造する方法の第1の実施形態のフローチャート
図3A】支持粉末の境界輪郭が堆積された造形プレートの側方領域を見下ろした平面図である。境界輪郭の特定のパターンは、多くの他のパターンが可能であるため、単なる例示である。図示の境界輪郭は、外側境界輪郭と内側境界輪郭とを含み、それらの間には内部領域がある。
図3B】内側境界輪郭と外側境界輪郭との間の内部領域上に金属粉末層が堆積されていることを除いて、図3Aと同様である。図示の実施形態では、未溶融金属粉末層は、境界輪郭に近接するかまたは接触するエッジを有する。
図3C】金属粉末層の2Dスライス領域が溶融されていることを除いて、図3Bと同様である。溶融金属粉末と輪郭との間には、未溶融金属のゾーンがある。未溶融金属のゾーンは、溶融金属の領域が支持粉末のいかなる粒子も含有または溶融しないことを確保する。
図4図3CのAA’からとられた断面図
図5】金属3D物品を作製する方法の第2の実施形態のフローチャート
図6A】金属粉末の新しい層が選択的に分配された造形プレートの側方領域を見下ろした平面図である。金属粉末の新しい層は、3D物品の2Dスライスの領域と、2Dスライスの境界を超えて延在して少なくともオフセット距離Dの横幅を有するゾーンを含む未溶融粉末のゾーンとを含む。
図6B】金属粉末の新しい層の2Dスライス領域がビームシステムによって溶融されていることを除いて、図6Aと同様である。未溶融粉末のゾーンは、2Dスライス領域の境界を超えて延在する。
図6C】支持材料の輪郭が、未溶融粉末のゾーンに近接してまたはそれと重なり合って分配されていることを除いて、図6Bと同様である。
図7図6Cの側面図を通した断面AA’の側面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、金属粉末から3次元(3D)物品3を製造するための3次元(3D)プリントシステム2の一実施形態を示す概略図である。3Dプリントシステム2を説明する際に、相互に直交する軸X、Y、およびZを使用することができる。軸XおよびYは、概して水平である横軸である。軸Zは、重力基準と概して位置合わせされた縦軸である。「概して」とは、設計上そうであることを意図するが、製造または他の公差のために変化し得る。
【0017】
システム1は、造形プレート6を収容する造形ボックス4を含む。造形プレート6は、上面8を有し、垂直位置決めシステム10に連結される。造形ボックス4は、粉末(図示せず)を収容するように構成されている。造形ボックス4は、ハウジング14によって囲まれたチャンバ12内に収容される。ガス処理システム16は、チャンバ12から空気(酸素を含む)を排気し、窒素またはアルゴンなどの非酸化性ガスでチャンバ12を埋め戻すように構成される。
【0018】
チャンバ12内には、第1の粉末ディスペンサ18および第2の粉末ディスペンサ20がある。第1の粉末ディスペンサ18(支持粉末ディスペンサ18)は、支持粉末を含み、連続的または断続的に支持粉末供給部22に連結される。支持粉末は、ジルコン(ケイ酸ジルコニウム)粉末などの砂材料であり得る。例示的な実施形態では、砂またはジルコンは、少なくとも約100ミクロンのサイズの粒子からなる。いくつかの実施形態では、粒子は、少なくとも約150または200または250ミクロンのサイズであり得る。粒子は、サイズが100~300ミクロン、またはサイズが150~200ミクロンの範囲内に入るサイズを有することができる。他のサイズも可能である。
【0019】
粒子または粒子のサイズに言及する場合、「サイズ」は線寸法である。粒子が球体である場合、サイズは直径である。不規則または非球状粒子については、「サイズ」は、粒子と同等の質量を有する固体球体の直径にほぼ等しくてもよい。
【0020】
第2の粒子ディスペンサ20(金属粉末ディスペンサ20)は、金属粉末を含み、連続的または断続的に金属粉末供給部24に連結される。金属粉末は、元素または合金であり得る。金属粉末の例としては、チタンおよびステンレス鋼が挙げられるが、多数の他の可能性が存在する。金属粉末は、約10~60ミクロンのサイズを有することができる粒子からなる。より詳細には、金属粉末粒子は、20~50ミクロンの範囲のサイズを有することができる。他の範囲の粒径も可能である。
【0021】
支持粉末と金属粉末との分離を容易にするために、支持粉末粒径範囲と金属粉末粒径範囲とは重ならないことが好ましい。好ましくは、支持粉末の平均粒径は、金属の平均粒径よりも少なくとも100%、150%、200%、250%、または300%大きい。この差が大きいほど混合粉末の分離が容易になる。粉末を分離できることにより、非常に高価である金属粉末のリサイクルが容易になる。
【0022】
いくつかの実施形態では、複数の種類の金属粉末を分配できるように、複数の金属粉末ディスペンサ20があってもよい。粉末ディスペンサ18および20のために、様々な種類の粉末ディスペンサを利用することができる。粉末ディスペンサの一例が米国特許第10,576,542号に説明される。他の粉末ディスペンサの設計もシステム2において使用することができる。
【0023】
粒子ディスペンサ18および20は、粉末の輪郭を分配するように構成される。輪郭は、幅を有し、頂部が平坦であり、粉末の安息角またはアバランシェ角に依存する傾斜を有する傾斜エッジを有する。輪郭は、上面8上で粉末ディスペンサ18および20を移動させる運動制御によって決定される任意の所望の幾何学的形状を有することができる。運動制御は、分配システムに横方向および垂直方向の運動を提供する既知の方法である機械的ガントリシステムによって提供することができる。
【0024】
システム2は、分配された金属粉末の層を選択的に溶融するためのビーム28を生成するように構成されたビームシステム26を含む。例示的な実施形態では、ビームシステム26は、少なくとも100ワット、少なくとも500ワット、または約1000ワット以上の光パワー層を個々に有する放射ビームを生成するための複数の高出力レーザを含む。ビームシステム26は、金属粉末の新しい層の上面と概ね一致する造形平面29を横切って放射ビームを個別に操向するための光学系を含むことができる。造形平面29は、XおよびYにおける側方領域およびZ高さによって画定される。造形平面29の側方領域は、3D物品3を製造する際のビームシステム26の横方向走査限界によって画定される。造形平面29は、概して、ビームシステム26の最適な焦点範囲に対応するZ座標を有する。代替的な実施形態では、ビームシステム26は、電子ビーム、粒子ビーム、または異なるビームタイプのハイブリッド混合を生成することができる。
【0025】
コントローラ30は、垂直位置決めシステム10、ガス処理システム16、粉末ディスペンサ18および20、粉末供給部22および24、ビームシステム26、ならびに3Dプリントシステム2の他の部分を動作させるように制御可能に連結される。コントローラ30は、不揮発性または非一時的な情報記憶装置に結合されたプロセッサを含む。情報記憶装置は、3Dプリントシステム2の一部またはすべての制御可能な部分を動作させるためのソフトウェア命令を記憶する。プロセッサによって実行されると、ソフトウェア命令は、3Dプリントシステム2を動作させ、以下の工程を含む3D物品を製造する方法を実行することができる:(1)ガス処理システム16を動作させて、アルゴンまたは窒素を含む非酸化性ガス環境をチャンバ12内に提供する、(2)垂直位置決めシステムを動作させて、上面8(または後の金属粉末の上面)を造形平面29に近接して(金属粉末の最も新しく分配された層の上面と概ね一致するように)配置する、(3)支持粉末ディスペンサ18を動作させて、支持粉末の1つ以上の輪郭を上面8上に分配する、(4)金属粉末ディスペンサを動作させて、支持粉末の1つ以上の輪郭によって境界付けられた1つ以上の領域内に金属粉末の層を分配する、(5)ビームシステムを動作させて、金属粉末の最も新しく分配された層を選択的に溶融させて3D物品の層を画定し、工程(2)~(5)を繰り返して3D物品の製造を完了する。この方法の一実施形態は、図2の方法32に関して説明される。いくつかの実施形態では、工程(3)は、図5の方法70のように工程(5)の後に行われる。
【0026】
図2は、3D物品を製造するための方法またはプロセス32の第1の実施形態を示すフローチャートである。コントローラ30は、ソフトウェア命令の実行を通じて方法32を実行するようにシステム2のコンポーネントを動作させるように構成される。図3A図3Cおよび図4は、方法32の工程を示す。図3A図3Cは、分配され選択的に溶融された粉末のパターンを示す側面図である。図4は、図3Cの側面図を通した断面AA’の側面図である。
【0027】
34によれば、コントローラ30は、3D物品の複数のN(1つまたは複数)の層またはスライスを画定する情報を受信する。36によれば、コントローラ30は、支持粉末ディスペンサ18を動作させて、支持粉末52の少なくとも1つの境界輪郭50を分配する。(図3A参照)。支持粉末52の境界輪郭50は、3D物品の2D層またはスライスを取り囲む。境界輪郭50は、2Dスライスを含む内部領域56に面する境界面54を個々に有する。境界面54と2Dスライスとの間にはオフセット距離Dがある(まだ示されていないが、後続の図に示されている)。図示の実施形態では、境界輪郭50は、外側境界輪郭50-Oおよび内側境界輪郭50-Iを含む。内部領域56は、外側境界輪郭50-Oと内側境界輪郭50-Iとの間の側方領域である。
【0028】
38によれば、3D物品の作製が完了したかどうかに関する決定が行われる。イエスの場合、プロセス32は終了する(これは、工程34および36が工程38の前に行われなかったことを示す)。そうでなければ、プロセス32は工程40に移行する。40によれば、コントローラ30は、垂直位置決めシステム10を動作させて、1層の金属層厚さ分だけ造形平面29の下に上面8(造形プレート6のまたは部分的に溶融した粉末の上面)を位置決めする。
【0029】
42によれば、コントローラ30は、金属粉末ディスペンサ20を動作させて、境界面54によって境界付けられた内部領域56の上に未溶融金属粉末58の層を分配する。(図3B参照)。44によれば、コントローラ30は、ビームシステム26を動作させて、金属粉末58を選択的に溶融させて溶融金属粉末60の領域を画定する。(図3C、4参照)。溶融金属粉末60の領域は、3D物品の層またはスライスに対応し、画定する。溶融金属粉末60と境界輪郭50との間には、未溶融金属粉末58のゾーン62がある。ゾーン62は、オフセット距離Dに等しい幅を有する。
【0030】
好ましくは、図4に示すように、境界輪郭50の垂直厚さは、金属粉末層の垂直厚さよりも大きい。これは、3D物品を形成する間に工程36を繰り返す必要がある回数を低減する。図2を参照すると、プロセス32は、工程44から工程38へ戻るループを最大N回(作製が完了するまで)行う。N個の金属層が形成された後、プロセスは、工程44から工程34または工程36にループして、新しい支持輪郭50を形成する。
【0031】
好ましくは、境界輪郭50は、溶融金属粉末60の単一層の垂直厚さの少なくとも2倍である垂直厚さを有する。境界輪郭は、溶融金属粉末60の層の厚さの少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、または5倍超であり得る。金属粉末の単一層は、厚さが10~60ミクロンまたは厚さが約20~50ミクロンであり得る。
【0032】
1つの境界輪郭50層の厚さを部分的に制限するのは、支持粉末52の安息角またはアバランシェ角である。安息角は、横軸または水平軸に対する最大安定角である。アバランシェ角は、その上で傾斜が安定性を失い滑り始める水平面に対する角度である。典型的には、アバランシェ角は安息角より約2度大きい。好ましくは、支持粉末52は、水平に対して少なくとも40度のアバランシェ角を有する。また、未溶融金属粉末58のアバランシェ角は、支持粉末52のアバランシェ角よりも小さいことが好ましい。
【0033】
オフセット距離Dは、効率を改善するために最小限に抑えられるが、溶融金属粉末60が境界輪郭50に重なるのを防止するように充分に大きくなければならない。これにより、溶融金属粉末60の境界64の品質が向上する。境界輪郭50と境界64との重なりにより、支持粉末52のピットおよび埋め込み粒子などの境界64における欠陥が生じ得る。
【0034】
図5は、3D物品を作製するための方法またはプロセス70の第2の実施形態を示すフローチャートである。コントローラ30は、ソフトウェア命令の実行を通じて方法70を実行するようにシステム2のコンポーネントを動作させるように構成される。図6A図6Cおよび図7は、方法70の工程を示す。図6A図6Cは、分配され選択的に溶融された粉末のパターンを示す側面図である。図7は、図6Cの側面図を通した断面AA’の側面図である。方法70は、特定の工程の順序が変更されることを除いて、方法32と非常に類似している。
【0035】
72によれば、コントローラ30(またはコントローラ30内のプロセッサ)は、3次元(3D)物品の2次元(2D)スライス84(図6B)を画定する情報を受信する。2Dスライスは、溶融される領域を境界付ける境界86を含む選択的に溶融されるべき金属粉末の2D領域を画定する。図6Bの図示される実施形態では、境界は、外側境界86-Oおよび内側境界86-Iを含む。
【0036】
74によれば、垂直位置決めシステム10は、粉末88の新しい層を受け取るように造形プレート6を位置決めするように動作される。この位置は、粉末88の新しい層の上面が、ビームシステム26の焦点面である造形平面29に配置されることを確保する。
【0037】
76によれば、金属粉末ディスペンサ20は、金属粉末88の新しい層を分配するように動作される。金属粉体88の新しい層は、2Dスライス86にかかり、境界86を超えて延在して、少なくともオフセット距離Dである横幅を有する未溶融粉末のゾーン90を画定する。図6Aは、外側境界89-Oおよび内側境界89-Iを含む境界89を有する金属粉末の新しい層を図示する。
【0038】
78によれば、ビームシステム26は、2Dスライス84に対応し、横方向に同じである金属粉末の2D領域上に金属の新しい層を選択的に溶融するように動作される。工程78の後に残っているのは、未溶融粉末のゾーン90である。ゾーン90は、最小幅Dを有する。Dは「オフセット距離」と称される。
【0039】
80によれば、3D物品の作製が完了したかどうかを調べるための決定が行われる。イエスの場合、方法70は終了する。ノーの場合、プロセスは工程72にループバックする。
【0040】
工程72~80をN回繰り返す。Nは少なくとも1に等しい。N回繰り返した後、プロセスは工程82に進む。
【0041】
82によれば、支持粉末ディスペンサ22は、支持粉末94の輪郭92を分配するように動作される。支持粉末94の輪郭92は、未溶融粉末のゾーン90に近接して、またはそれと重なり合って分配される。次いで、プロセスは80にループバックする。
【0042】
図7は、図6(C)のAA’を通して取られた断面図である。図示の実施形態では、金属粉末88の3つの層が堆積され、輪郭92が堆積される前に、選択的に溶融される。全ての層について、最小オフセット距離Dは、支持粉末94の輪郭92と溶融粉末の2Dスライス84との間に維持される。
【0043】
上述の特定の実施形態およびその適用は、例示のみを目的としており、以下の特許請求の範囲によって包含される修正および変形を排除するものではない。例えば、方法32および70を含む多数の異なる動作可能なシーケンスのバリエーションが存在し、これらは依然として特許請求の範囲内であり得る。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図7
【国際調査報告】