IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

2023-537923感作患者を低免疫原性細胞で処置する方法、ならびに関連する方法及び組成物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-06
(54)【発明の名称】感作患者を低免疫原性細胞で処置する方法、ならびに関連する方法及び組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/12 20150101AFI20230830BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230830BHJP
   C07K 14/705 20060101ALI20230830BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20230830BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALI20230830BHJP
   C12N 5/07 20100101ALI20230830BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20230830BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20230830BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20230830BHJP
   A61K 35/39 20150101ALI20230830BHJP
   A61K 35/34 20150101ALI20230830BHJP
   A61K 35/30 20150101ALI20230830BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230830BHJP
   C07K 16/28 20060101ALN20230830BHJP
【FI】
A61K35/12
C12N5/10 ZNA
C07K14/705
C12N15/12
C12N5/0783
C12N5/07
C07K19/00
C12N15/09 100
C12N15/62 Z
A61K35/39
A61K35/34
A61K35/30
A61P43/00 101
C07K16/28
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023508562
(86)(22)【出願日】2021-08-12
(85)【翻訳文提出日】2023-04-06
(86)【国際出願番号】 US2021045822
(87)【国際公開番号】W WO2022036150
(87)【国際公開日】2022-02-17
(31)【優先権主張番号】63/065,342
(32)【優先日】2020-08-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/151,628
(32)【優先日】2021-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/136,137
(32)【優先日】2021-01-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/175,030
(32)【優先日】2021-04-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.パイレックス
2.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】522043688
【氏名又は名称】サナ バイオテクノロジー,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】シュレプファー,ソーニャ
(72)【発明者】
【氏名】ハー,スティーブ
(72)【発明者】
【氏名】マリー,チャールズ,イー.
【テーマコード(参考)】
4B065
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA44
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
4C087BB45
4C087BB47
4C087BB51
4C087BB64
4C087BB65
4C087CA04
4C087NA06
4C087NA14
4C087ZA01
4C087ZA31
4C087ZA36
4C087ZC35
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA50
4H045DA76
4H045EA20
4H045EA34
4H045FA74
(57)【要約】
本明細書では、感作患者に投与するための低免疫原性細胞が開示される。一部の事例では、患者は、以前の妊娠または以前の移植から感作されている。一部の実施形態では、該細胞は、CD47タンパク質を外因的に発現するとともに、MHCクラスIタンパク質、MHCクラスIIタンパク質、または両方の低減された発現を示す。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
処置する必要がある患者を処置する方法であって、低免疫原性細胞の集団を投与することを含み、前記低免疫原性細胞が、CD47をコードする第1の外因性ポリヌクレオチドと、
(I)
a.主要組織適合性複合体(MHC)クラスI及び/またはクラスIIヒト白血球抗原の低減された発現、
b.MHCクラスI及びクラスIIヒト白血球抗原の低減された発現、
c.ベータ-2-ミクログロブリン(B2M)及び/またはMHCクラスIIトランス活性化因子(CIITA)の低減された発現、及び/または
d.B2M及びCIITAの低減された発現、
のうちの1つまたは複数と、を含み、
前記低減された発現が、改変に起因し、前記低減された発現が、前記改変を含まない同じ細胞種の細胞と比べたものであり、
(II)前記患者が、感作患者であり、前記患者が、
i.1つもしくは複数の同種異系抗原に対して感作されている、
ii.1つもしくは複数の自己抗原に対して感作されている、
iii.以前の移植から感作されている、
iv.以前の妊娠から感作されている、
v.病態もしくは疾患に対する以前の処置を受けたことがある、及び/または
vi.組織移植もしくは臓器移植患者であり、前記低免疫原性細胞が、前記組織移植もしくは前記臓器移植を施与する前、それと同時、及び/またはその後に投与される、
前記方法。
【請求項2】
処置する必要がある患者を処置する方法であって、膵島細胞の集団を投与することを含み、前記膵島細胞が、CD47をコードする第1の外因性ポリヌクレオチドと、
(I)
a.主要組織適合性複合体(MHC)クラスI及び/またはクラスIIヒト白血球抗原の低減された発現、
b.MHCクラスI及びクラスIIヒト白血球抗原の低減された発現、
c.ベータ-2-ミクログロブリン(B2M)及び/またはMHCクラスIIトランス活性化因子(CIITA)の低減された発現、及び/または
d.B2M及びCIITAの低減された発現、
のうちの1つまたは複数と、を含み、
前記低減された発現が、改変に起因し、前記低減された発現が、前記改変を含まない同じ細胞種の細胞と比べたものであり、
(II)
a.前記患者が、感作患者ではないか、または
b.前記患者が、感作患者であり、前記患者が、
i.1つもしくは複数の同種異系抗原に対して感作されている、
ii.1つもしくは複数の自己抗原に対して感作されている、
iii.以前の移植から感作されている、
iv.以前の妊娠から感作されている、
v.病態もしくは疾患に対する以前の処置を受けたことがある、及び/または
vi.組織もしくは臓器患者であり、前記膵島細胞が、前記組織移植もしくは前記臓器移植を施与する前に投与される、
前記方法。
【請求項3】
処置する必要がある患者を処置する方法であって、心筋前駆細胞の集団を投与することを含み、前記心筋前駆細胞が、CD47をコードする第1の外因性ポリヌクレオチドと、
(I)
a.主要組織適合性複合体(MHC)クラスI及び/またはクラスIIヒト白血球抗原の低減された発現、
b.MHCクラスI及びクラスIIヒト白血球抗原の低減された発現、
c.ベータ-2-ミクログロブリン(B2M)及び/またはMHCクラスIIトランス活性化因子(CIITA)の低減された発現、及び/または
d.B2M及びCIITAの低減された発現、
のうちの1つまたは複数と、を含み、
前記低減された発現が、改変に起因し、前記低減された発現が、前記改変を含まない同じ細胞種の細胞と比べたものであり、
(II)
a.前記患者が、感作患者ではないか、または
b.前記患者が、感作患者であり、前記患者が、
i.1つもしくは複数の同種異系抗原に対して感作されている、
ii.1つもしくは複数の自己抗原に対して感作されている、
iii.以前の移植から感作されている、
iv.以前の妊娠から感作されている、
v.病態もしくは疾患に対する以前の処置を受けたことがある、及び/または
vi.組織もしくは臓器患者であり、前記心筋細胞が、前記組織移植もしくは前記臓器移植を施与する前に投与される、
前記方法。
【請求項4】
処置する必要がある患者を処置する方法であって、グリア前駆細胞の集団を投与することを含み、前記グリア前駆細胞が、CD47をコードする第1の外因性ポリヌクレオチドと、
(I)
a.主要組織適合性複合体(MHC)クラスI及び/またはクラスIIヒト白血球抗原の低減された発現、
b.MHCクラスI及びクラスIIヒト白血球抗原の低減された発現、
c.ベータ-2-ミクログロブリン(B2M)及び/またはMHCクラスIIトランス活性化因子(CIITA)の低減された発現、及び/または
d.B2M及びCIITAの低減された発現、
のうちの1つまたは複数と、を含み、
前記低減された発現が、改変に起因し、前記低減された発現が、前記改変を含まない同じ細胞種の細胞と比べたものであり、
(II)
a.前記患者が、感作患者ではないか、または
b.前記患者が、感作患者であり、前記患者が、
i.1つもしくは複数の同種異系抗原に対して感作されている、
ii.1つもしくは複数の自己抗原に対して感作されている、
iii.以前の移植から感作されている、
iv.以前の妊娠から感作されている、
v.病態もしくは疾患に対する以前の処置を受けたことがある、及び/または
vi.組織もしくは臓器患者であり、前記グリア前駆細胞が、前記組織移植もしくは前記臓器移植を施与する前に投与される、
前記方法。
【請求項5】
前記患者が、感作患者であり、前記患者が、前記1つもしくは複数の同種異系抗原または前記1つもしくは複数の自己抗原に対して反応性のメモリーB細胞及び/またはメモリーT細胞を示す、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記1つもしくは複数の同種異系抗原が、ヒト白血球抗原を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記患者が、以前の移植から感作されている感作患者であり、
a.前記以前の移植が、細胞移植、輸血、組織移植、及び臓器移植からなる群から選択され、任意選択で、前記以前の移植が、同種異系移植片であるか、または
b.前記以前の移植が、ヒト起源のキメラ、改変された非ヒト自家細胞、改変された自家細胞、自家組織、及び自家臓器からなる群から選択される移植であり、任意選択で、前記以前の移植が、自家移植である、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記患者が、以前の妊娠から感作されている感作患者であり、前記患者が、妊娠中の同種免疫化を以前に示したことがあり、任意選択で、前記妊娠中の同種免疫化が、胎児及び新生児の溶血性疾患(HDFN)、新生児同種免疫性好中球減少症(NAN)、または胎児及び新生児同種免疫性血小板減少症(FNAIT)である、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記患者が、病態または疾患に対する以前の処置から感作されている感作患者であり、前記病態または前記疾患が、前記患者が請求項1~6のいずれか1項に記載の処置を受けている前記疾患または前記病態とは異なるか、またはそれと同じである、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記患者が、病態または疾患に対する以前の処置を受けたことがあり、前記以前の処置が、前記細胞集団を含まず、
a.前記細胞集団が、前記以前の処置と同じ病態もしくは疾患の前記処置のために投与される、
b.前記細胞集団が、前記以前の処置と比較して前記患者における前記病態もしくは前記疾患の前記処置に対して強化された治療効果を示す、
c.前記細胞集団が、前記以前の処置と比較して前記患者における前記病態もしくは前記疾患の前記処置に対してより長期の治療効果を示す、
d.前記以前の処置が、治療上有効であった、
e.前記以前の処置が、治療上有効でなかった、
f.前記患者が、前記以前の処置に対して免疫反応を起こした、及び/または
g.前記細胞集団が、前記以前の処置とは異なる病態もしくは疾患の前記処置のために投与される、
請求項1~6または9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記以前の処置が、自殺遺伝子または安全スイッチシステムを含む治療用細胞の集団を投与することを含み、前記免疫反応が、前記自殺遺伝子または前記安全スイッチシステムの作動に応答して起こる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記以前の処置が、機械補助による処置を含み、任意選択で、前記機械補助による処置が、血液透析または補助人工心臓を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記以前の処置が、同種異系CAR-T細胞ベースの療法または自家CAR-T細胞ベースの療法を含み、前記自家CAR-T細胞ベースの療法が、ブレクスカブタゲンオートルユーセル、アキシカブタゲンシロルユーセル、イデカブタゲンビクルユーセル、リソカブタゲンマラルユーセル、チサゲンレクルユーセル、Cartesian TherapeuticsからのDescartes-08またはDescartes-11、NovartisからのCTL110、Poseida TherapeuticsからのP-BMCA-101、Autolus LimitedからのAUTO4、CellectisからのUCARTCS、Precision BiosciencesからのPBCAR19BまたはPBCAR269A、Fate TherapeuticsからのFT819、及びClyad OncologyからのCYAD-211からなる群から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記患者が、アレルギーを有し、任意選択で、前記アレルギーが、花粉症、食物アレルギー、昆虫アレルギー、薬物アレルギー、及びアトピー性皮膚炎からなる群から選択されるアレルギーである、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記細胞が、DUX4、CD24、CD46、CD55、CD59、CD200、PD-L1、HLA-E、HLA-G、IDO1、FasL、IL-35、IL-39、CCL21、CCL22、Mfge8、Serpin B9、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される1つまたは複数の外因性ポリペプチドをさらに含む、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記細胞が、改変を含まない同じ細胞種の細胞と比べて、低減された発現レベルのCD142をさらに含む、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記細胞が、改変を含まない同じ細胞種の細胞と比べて、低減された発現レベルのCD46をさらに含む、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記細胞が、改変を含まない同じ細胞種の細胞と比べて、低減された発現レベルのCD59をさらに含む、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記細胞が、幹細胞から分化させられる、請求項1~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記幹細胞が間葉系幹細胞である、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記幹細胞が胚性幹細胞である、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記幹細胞が多能性幹細胞であり、任意選択で、前記多能性幹細胞が人工多能性幹細胞である、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
前記細胞が、心細胞、心筋前駆細胞、神経細胞、グリア前駆細胞、内皮細胞、T細胞、B細胞、膵島細胞、網膜色素上皮細胞、肝細胞、甲状腺細胞、皮膚細胞、血液細胞、形質細胞、血小板、腎細胞、上皮細胞、キメラ抗原受容体(CAR)T細胞、NK細胞、及びCAR-NK細胞からなる群から選択される、請求項1~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記細胞が、初代細胞に由来する、請求項1~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記初代細胞が、初代T細胞、初代ベータ細胞、または初代網膜色素上皮細胞である、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記初代T細胞に由来する細胞が、前記患者とは異なる1以上の対象からの初代T細胞を含むT細胞のプールに由来する、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記細胞が、キメラ抗原受容体(CAR)をコードする第2の外因性ポリヌクレオチドを含む、請求項1~25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記CARの抗原結合ドメインが、CD19、CD22、またはBCMAに結合する、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記CARが、CD19特異的CARであり、それにより前記細胞が、CD19 CAR T細胞である、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記CARが、CD22特異的CARであり、それにより前記細胞が、CD22 CAR T細胞である、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
前記細胞が、CD19特異的CAR及びCD22特異的CARを含み、それにより前記細胞が、CD19/CD22 CAR T細胞である、請求項27に記載の方法。
【請求項32】
前記CD19特異的CAR及び前記CD22特異的CARが、単一のバイシストロン性ポリヌクレオチドによってコードされる、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
前記CD19特異的CAR及び前記CD22特異的CARが、2つの別個のポリヌクレオチドによってコードされる、請求項30に記載の方法。
【請求項34】
前記第1の外因性ポリヌクレオチド及び/または前記第2の外因性ポリヌクレオチドが、セーフハーバー遺伝子座、標的遺伝子座、B2M遺伝子座、CIITA遺伝子座、TRAC遺伝子座、またはTRB遺伝子座を含むゲノム遺伝子座内に挿入される、請求項1~32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
前記第1のゲノム遺伝子座及び前記第2のゲノム遺伝子座が同じである、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記第1のゲノム遺伝子座及び前記第2のゲノム遺伝子座が異なる、請求項33に記載の方法。
【請求項37】
前記細胞が各々、第3のゲノム遺伝子座内に挿入された第3の外因性ポリヌクレオチドをさらに含む、請求項1~35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
前記第3のゲノム遺伝子座が、前記第1のゲノム遺伝子座または前記第2のゲノム遺伝子座と同じである、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
前記第3のゲノム遺伝子座が、前記第1のゲノム遺伝子座及び/または前記第2のゲノム遺伝子座とは異なる、請求項36に記載の方法。
【請求項40】
前記セーフハーバー遺伝子座が、CCR5遺伝子座、PPP1R12C(別名、AAVS1)遺伝子、ROSA26遺伝子座、及びCLYBL遺伝子座からなる群から選択される、請求項33~38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
前記標的遺伝子座が、CXCR4遺伝子座、アルブミン遺伝子座、SHS231遺伝子座、CD142遺伝子座、MICA遺伝子座、MICB遺伝子座、LRP1遺伝子座、HMGB1遺伝子座、ABO遺伝子座、RHD遺伝子座、FUT1遺伝子座、及びKDM5D遺伝子座からなる群から選択される、請求項33~38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
前記CCR5遺伝子座内への前記挿入が、前記CCR5遺伝子のエクソン1~3、イントロン1~2、または別のコード配列(CDS)内である、請求項39に記載の方法。
【請求項43】
前記PPP1R12C遺伝子座内への前記挿入が、前記PPP1R12C遺伝子のイントロン1またはイントロン2である、請求項39に記載の方法。
【請求項44】
前記CLYBL遺伝子座内への前記挿入が、前記CLYBL遺伝子のイントロン2である、請求項39に記載の方法。
【請求項45】
前記ROSA26遺伝子座内への前記挿入が、前記ROSA26遺伝子のイントロン1である、請求項40に記載の方法。
【請求項46】
前記セーフハーバー遺伝子座内への前記挿入が、SHS231遺伝子座である、請求項40に記載の方法。
【請求項47】
前記CD142遺伝子座内への前記挿入が、前記CD142遺伝子のエクソン2または別のCDS内である、請求項40に記載の方法。
【請求項48】
前記MICA遺伝子座内への前記挿入が、前記MICA遺伝子のCDS内である、請求項40に記載の方法。
【請求項49】
前記MICB遺伝子座内への前記挿入が、前記MICB遺伝子のCDS内である、請求項40に記載の方法。
【請求項50】
前記B2M遺伝子座内への前記挿入が、前記B2M遺伝子のエクソン2または別のCDS内である、請求項33~38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項51】
前記CIITA遺伝子座内への前記挿入が、前記CIITA遺伝子のエクソン3または別のCDS内である、請求項33~38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項52】
前記TRAC遺伝子内への前記挿入が、前記TRAC遺伝子のエクソン2または別のCDS内である、請求項33~38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項53】
前記TRB遺伝子座内への前記挿入が、前記TRB遺伝子のCDS内である、請求項33~38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項54】
前記初代T細胞に由来する細胞が、
a.内在性T細胞受容体、
b.細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA4)、
c.プログラム細胞死(PD1)、及び
d.プログラム細胞死リガンド1(PD-L1)、のうちの1つまたは複数の低減された発現を含み、前記低減された発現が、改変に起因し、前記低減された発現が、前記改変を含まない同じ細胞種の細胞と比べたものである、請求項24~52のいずれか1項に記載の方法。
【請求項55】
前記初代T細胞に由来する細胞が、TRACの低減された発現を含んでいた、請求項53に記載の方法。
【請求項56】
前記細胞が、
a.内在性T細胞受容体、
b.細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA4)、
c.プログラム細胞死(PD1)、及び
d.プログラム細胞死リガンド1(PD-L1)、
のうちの1つまたは複数の低減された発現を含む人工多能性幹細胞に由来するT細胞である、請求項22~52のいずれか1項に記載の方法。
【請求項57】
前記細胞が、TRAC及びTRBの低減された発現を含む人工多能性幹細胞に由来するT細胞である、請求項55に記載の方法。
【請求項58】
前記外因性ポリヌクレオチドが、プロモーターに作動可能に連結されている、請求項1~56のいずれか1項に記載の方法。
【請求項59】
前記プロモーターが、CAG及び/またはEF1aプロモーターである、請求項57に記載の方法。
【請求項60】
前記細胞集団が、前記患者が1つもしくは複数の同種異系抗原に対して感作されてから少なくとも1日以上後、または前記患者が前記同種異系移植を受けてから少なくとも1日以上後に投与される、請求項1~58のいずれか1項に記載の方法。
【請求項61】
前記細胞集団が、前記患者が1つもしくは複数の同種異系抗原に対して感作されてから少なくとも1週間以上後、または前記患者が前記同種異系移植を受けてから少なくとも1週間以上後に投与される、請求項1~58のいずれか1項に記載の方法。
【請求項62】
前記細胞集団が、前記患者が1つもしくは複数の同種異系抗原に対して感作されてから少なくとも1ヶ月以上後、前記患者が前記同種異系移植を受けてから少なくとも1ヶ月以上後に投与される、請求項1~58のいずれか1項に記載の方法。
【請求項63】
前記患者が、前記細胞集団の投与時に免疫応答の不在を示す、請求項1~61のいずれか1項に記載の方法。
【請求項64】
前記細胞集団の投与時の前記免疫応答の不在が、全身性の免疫応答の不在、適応免疫応答の不在、自然免疫応答の不在、T細胞応答の不在、B細胞応答の不在、及び全身性の急性細胞性免疫応答の不在からなる群から選択される、請求項62に記載の方法。
【請求項65】
前記患者が、
a.前記細胞集団を投与したときの全身性のTH1活性化の不在、
b.前記細胞集団を投与したときの末梢血単核細胞(PBMC)の免疫活性化の不在、
c.前記細胞集団を投与したときの前記細胞集団に対するドナー特異的IgG抗体の不在、
d.前記細胞集団を投与したときの前記細胞集団に対するIgM及びIgG抗体産生の不在、ならびに
e.前記細胞集団を投与したときの前記細胞集団の細胞傷害性T細胞による殺傷の不在、
のうちの1つまたは複数を示す、請求項63に記載の方法。
【請求項66】
前記患者が、前記細胞集団の前記投与前または後の少なくとも3日以上、免疫抑制剤を投与されない、請求項1~64のいずれか1項に記載の方法。
【請求項67】
前記方法が、
a.治療上有効量の前記細胞集団を含む1回目の投与、
b.回復期間、及び
c.治療上有効量の前記細胞集団を含む2回目の投与、
を含む投与レジメンを含む、請求項1~65のいずれか1項に記載の方法。
【請求項68】
前記回復期間が、少なくとも1ヶ月以上を含む、請求項66に記載の方法。
【請求項69】
前記回復期間が、少なくとも2ヶ月以上を含む、請求項66に記載の方法。
【請求項70】
前記2回目の投与が、前記1回目の投与からの前記細胞が前記患者においてもはや検出可能でないときに開始され、任意選択で、前記細胞が、自殺遺伝子または安全スイッチシステムからもたらされる排除に起因してもはや検出可能でない、請求項66~68のいずれか1項に記載の方法。
【請求項71】
前記低免疫原性細胞が、自殺遺伝子または安全スイッチシステムによって排除され、前記2回目の投与が、前記1回目の投与からの前記細胞が前記患者においてもはや検出可能でないときに開始される、請求項66~69のいずれか1項に記載の方法。
【請求項72】
前記投与レジメンを少なくとも2回施与することをさらに含む、請求項66~70のいずれか1項に記載の方法。
【請求項73】
前記細胞集団が、細胞欠損症の処置のために、または心臓、肺、腎臓、肝臓、膵臓、腸、胃、角膜、骨髄、血管、心臓弁、脳、脊髄、及び骨からなる群から選択される組織もしくは臓器における病態もしくは疾患の前記処置のための細胞療法として投与される、請求項1~71のいずれか1項に記載の方法。
【請求項74】
a.前記細胞欠損症が、神経変性疾患に関連するか、または前記細胞療法が、神経変性疾患の前記処置のためである、
b.前記細胞欠損症が、肝臓疾患に関連するか、または前記細胞療法が、肝臓疾患の前記処置のためである、
c.前記細胞欠損症が、角膜疾患に関連するか、または前記細胞療法が、角膜疾患の前記処置のためである、
d.前記細胞欠損症が、心血管病態もしくは疾患に関連するか、または前記細胞療法が、心血管病態もしくは疾患の前記処置のためである、
e.前記細胞欠損症が、糖尿病に関連するか、または前記細胞療法が、糖尿病の前記処置のためである、
f.前記細胞欠損症が、血管病態もしくは疾患に関連するか、または前記細胞療法が、血管病態もしくは疾患の前記処置のためである、
g.前記細胞欠損症が、自己免疫性甲状腺炎に関連するか、または前記細胞療法が、自己免疫性甲状腺炎の前記処置のためである、あるいは
h.前記細胞欠損症が、腎臓疾患に関連するか、または前記細胞療法が、腎臓疾患の前記処置のためである、
請求項1~72のいずれか1項に記載の方法。
【請求項75】
a.前記神経変性疾患が、白質ジストロフィー、ハンチントン病、パーキンソン病、多発性硬化症、横断性脊髄炎、及びペリツェウス・メルツバッハ病(PMD)からなる群から選択される、
b.前記肝臓疾患が、肝硬変を含む、
c.前記角膜疾患が、フックスジストロフィーもしくは先天性遺伝性内皮ジストロフィーである、または
d.前記心血管疾患が、心筋梗塞もしくはうっ血性心不全である、
請求項73に記載の方法。
【請求項76】
前記細胞集団が、
a.グリア前駆細胞、乏突起膠細胞、星状細胞、及びドーパミン作動性ニューロンからなる群から選択され、任意選択で、前記ドーパミン作動性ニューロンが、神経幹細胞、神経前駆細胞、未成熟ドーパミン作動性ニューロン、及び成熟ドーパミン作動性ニューロンからなる群から選択される、細胞、
b.肝細胞もしくは肝前駆細胞、
c.角膜内皮前駆細胞もしくは角膜内皮細胞、
d.心筋細胞もしくは心筋前駆細胞、
e.膵臓ベータ島細胞を含む膵島細胞であって、任意選択で、前記膵島細胞が、膵島前駆細胞、未成熟膵島細胞、及び成熟膵島細胞からなる群から選択される、前記膵島細胞、
f.内皮細胞、
g.甲状腺前駆細胞、または
h.腎前駆体細胞もしくは腎細胞、
を含む、請求項73または74に記載の方法。
【請求項77】
前記細胞集団が、がんの前記処置のために投与される、請求項1~75のいずれか1項に記載の方法。
【請求項78】
前記がんが、B細胞急性リンパ芽球性白血病(B-ALL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、肝臓癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、結腸直腸癌、肺癌、非小細胞肺癌、急性骨髄性リンパ性白血病、多発性骨髄腫、胃癌、胃腺癌、膵臓腺癌、神経膠芽腫、神経芽細胞腫、肺扁平上皮癌、肝細胞癌、及び膀胱癌からなる群から選択される、請求項76に記載の方法。
【請求項79】
前記患者が、組織移植または臓器移植を受けており、任意選択で、前記組織移植もしくは前記臓器移植または部分的臓器移植が、心臓移植、肺移植、腎臓移植、肝臓移植、膵臓移植、腸移植、胃移植、角膜移植、骨髄移植、血管移植、心臓弁移植、骨移植、部分的肺移植、部分的腎臓移植、部分的肝臓移植、部分的膵臓移植、部分的腸移植、及び部分的角膜移植からなる群から選択される、請求項1~75のいずれか1項に記載の方法。
【請求項80】
前記組織移植もしくは前記臓器移植が、同種異系移植片移植である、請求項78に記載の方法。
【請求項81】
前記組織移植もしくは前記臓器移植が、自家移植片移植である、請求項78に記載の方法。
【請求項82】
前記細胞集団が、組織または臓器における細胞欠損症の前記処置のために投与され、前記組織移植もしくは前記臓器移植が、同じ組織または臓器の置換のためである、請求項78~80のいずれか1項に記載の方法。
【請求項83】
前記細胞集団が、組織または臓器における細胞欠損症の前記処置のために投与され、前記組織移植もしくは前記臓器移植が、異なる組織または臓器の置換のためである、請求項78~80のいずれか1項に記載の方法。
【請求項84】
前記臓器移植が、腎臓移植であり、前記細胞集団が、膵臓ベータ島細胞の集団である、請求項78~82のいずれか1項に記載の方法。
【請求項85】
前記患者が、糖尿病を有する、請求項83に記載の方法。
【請求項86】
前記臓器移植が、心臓移植であり、前記細胞集団が、ペースメーカー細胞の集団である、請求項78~82のいずれか1項に記載の方法。
【請求項87】
前記臓器移植が、膵臓移植であり、前記細胞集団が、ベータ島細胞の集団である、請求項78~82のいずれか1項に記載の方法。
【請求項88】
前記臓器移植が、部分的肝臓移植であり、前記細胞集団が、肝細胞または肝前駆細胞の集団である、請求項78~82のいずれか1項に記載の方法。
【請求項88】
患者における障害の処置のための低免疫原性細胞の集団の使用であって、前記低免疫原性細胞が、CD47をコードする第1の外因性ポリヌクレオチドと、
(I)
a.主要組織適合性複合体(MHC)クラスI及び/またはクラスIIヒト白血球抗原の低減された発現、
b.MHCクラスI及びクラスIIヒト白血球抗原の低減された発現、
c.ベータ-2-ミクログロブリン(B2M)及び/またはMHCクラスIIトランス活性化因子(CIITA)の低減された発現、及び/または
d.B2M及びCIITAの低減された発現、
のうちの1つまたは複数と、を含み、
前記低減された発現が、改変に起因し、前記低減された発現が、前記改変を含まない同じ細胞種の細胞と比べたものであり、
(II)
a.前記患者が、感作患者ではないか、または
b.前記患者が、感作患者である、
前記使用。
【請求項89】
患者における障害の処置のための膵島細胞の集団の使用であって、前記膵島細胞が、CD47をコードする第1の外因性ポリヌクレオチドと、
(I)
a.主要組織適合性複合体(MHC)クラスI及び/またはクラスIIヒト白血球抗原の低減された発現、
b.MHCクラスI及びクラスIIヒト白血球抗原の低減された発現、
c.ベータ-2-ミクログロブリン(B2M)及び/またはMHCクラスIIトランス活性化因子(CIITA)の低減された発現、及び/または
d.B2M及びCIITAの低減された発現、
のうちの1つまたは複数と、を含み、
前記低減された発現が、改変に起因し、前記低減された発現が、前記改変を含まない同じ細胞種の細胞と比べたものであり、
(II)
a.前記患者が、感作患者ではないか、または
b.前記患者が、感作患者である、
前記使用。
【請求項90】
患者における障害の処置のための心筋細胞の集団の使用であって、前記心筋細胞が、CD47をコードする第1の外因性ポリヌクレオチドと、
(I)
a.主要組織適合性複合体(MHC)クラスI及び/またはクラスIIヒト白血球抗原の低減された発現、
b.MHCクラスI及びクラスIIヒト白血球抗原の低減された発現、
c.ベータ-2-ミクログロブリン(B2M)及び/またはMHCクラスIIトランス活性化因子(CIITA)の低減された発現、及び/または
d.B2M及びCIITAの低減された発現、
のうちの1つまたは複数と、を含み、
前記低減された発現が、改変に起因し、前記低減された発現が、前記改変を含まない同じ細胞種の細胞と比べたものであり、
(II)
a.前記患者が、感作患者ではないか、または
b.前記患者が、感作患者である、
前記使用。
【請求項91】
患者における障害の処置のためのグリア前駆細胞の集団の使用であって、前記グリア前駆細胞が、CD47をコードする第1の外因性ポリヌクレオチドと、
(I)
a.主要組織適合性複合体(MHC)クラスI及び/またはクラスIIヒト白血球抗原の低減された発現、
b.MHCクラスI及びクラスIIヒト白血球抗原の低減された発現、
c.ベータ-2-ミクログロブリン(B2M)及び/またはMHCクラスIIトランス活性化因子(CIITA)の低減された発現、及び/または
d.B2M及びCIITAの低減された発現、
のうちの1つまたは複数と、を含み、
前記低減された発現が、改変に起因し、前記低減された発現が、前記改変を含まない同じ細胞種の細胞と比べたものであり、
(II)
a.前記患者が、感作患者ではないか、または
b.前記患者が、感作患者である、
前記使用。
【請求項92】
前記患者が、感作患者であり、前記患者が、前記1つもしくは複数の同種異系抗原または前記1つもしくは複数の自己抗原に対して反応性のメモリーB細胞及び/またはメモリーT細胞を示す、請求項88~91のいずれか1項に記載の使用。
【請求項93】
前記1つもしくは複数の同種異系抗原が、ヒト白血球抗原を含む、請求項92に記載の使用。
【請求項94】
前記患者が、以前の移植から感作されている感作患者であり、
a.前記以前の移植が、細胞移植、輸血、組織移植、及び臓器移植からなる群から選択され、任意選択で、前記以前の移植が、同種異系移植片であるか、または
b.前記以前の移植が、ヒト起源のキメラ、改変された非ヒト自家細胞、改変された自家細胞、自家組織、及び自家臓器からなる群から選択される移植であり、任意選択で、前記以前の移植が、自家移植である、
請求項88~93のいずれか1項に記載の使用。
【請求項95】
前記患者が、以前の妊娠から感作されている感作患者であり、前記患者が、妊娠中の同種免疫化を以前に示したことがあり、任意選択で、前記妊娠中の同種免疫化が、胎児及び新生児の溶血性疾患(HDFN)、新生児同種免疫性好中球減少症(NAN)、または胎児及び新生児同種免疫性血小板減少症(FNAIT)である、請求項88~93のいずれか1項に記載の使用。
【請求項96】
前記患者が、病態または疾患に対する以前の処置から感作されている感作患者である、請求項88~93のいずれか1項に記載の使用。
【請求項97】
前記患者が、病態または疾患に対する以前の処置を受けたことがあり、前記以前の処置が、前記細胞集団を含まず、
a.前記細胞集団が、前記以前の処置と同じ病態もしくは疾患の前記処置のために投与される、
b.前記細胞集団が、前記以前の処置と比較して前記患者における前記病態もしくは前記疾患の前記処置に対して強化された治療効果を示す、
c.前記細胞集団が、前記以前の処置と比較して前記患者における前記病態もしくは前記疾患の前記処置に対してより長期の治療効果を示す、
d.前記以前の処置が、治療上有効であった、
e.前記以前の処置が、治療上有効でなかった、
f.前記患者が、前記以前の処置に対して免疫反応を起こした、及び/または
g.前記細胞集団が、前記以前の処置とは異なる病態もしくは疾患の前記処置のために投与される、
請求項88~93または96のいずれか1項に記載の使用。
【請求項98】
前記以前の処置が、自殺遺伝子または安全スイッチシステムを含む治療用細胞の集団を投与することを含み、前記免疫反応が、前記自殺遺伝子または前記安全スイッチシステムの作動に応答して起こる、請求項97に記載の使用。
【請求項99】
前記以前の処置が、機械補助による処置を含み、任意選択で、前記機械補助による処置が、血液透析または補助人工心臓を含む、請求項97に記載の使用。
【請求項100】
前記患者が、アレルギーを有し、任意選択で、前記アレルギーが、花粉症、食物アレルギー、昆虫アレルギー、薬物アレルギー、及びアトピー性皮膚炎からなる群から選択されるアレルギーである、請求項88~99のいずれか1項に記載の使用。
【請求項101】
前記細胞が、DUX4、CD24、CD46、CD55、CD59、CD200、PD-L1、HLA-E、HLA-G、IDO1、FasL、IL-35、IL-39、CCL21、CCL22、Mfge8、Serpin B9、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される1つまたは複数の外因性ポリペプチドをさらに含む、請求項88~100のいずれか1項に記載の使用。
【請求項102】
前記細胞が、改変を含まない同じ細胞種の細胞と比べて、低減された発現レベルのCD142をさらに含む、請求項88~101のいずれか1項に記載の使用。
【請求項103】
前記細胞が、改変を含まない同じ細胞種の細胞と比べて、低減された発現レベルのCD46をさらに含む、請求項88~102のいずれか1項に記載の使用。
【請求項104】
前記細胞が、改変を含まない同じ細胞種の細胞と比べて、低減された発現レベルのCD59をさらに含む、請求項88~103のいずれか1項に記載の使用。
【請求項105】
前記細胞が、幹細胞から分化させられる、請求項88~104のいずれか1項に記載の使用。
【請求項106】
前記幹細胞が間葉系幹細胞である、請求項105に記載の使用。
【請求項107】
前記幹細胞が胚性幹細胞である、請求項105に記載の使用。
【請求項108】
前記幹細胞が多能性幹細胞であり、任意選択で、前記多能性幹細胞が人工多能性幹細胞である、請求項105に記載の使用。
【請求項109】
前記細胞が、心細胞、神経細胞、内皮細胞、T細胞、B細胞、膵島細胞、網膜色素上皮細胞、肝細胞、甲状腺細胞、皮膚細胞、血液細胞、形質細胞、血小板、腎細胞、上皮細胞、キメラ抗原受容体(CAR)T細胞、NK細胞、及びCAR-NK細胞からなる群から選択される、請求項88~108のいずれか1項に記載の使用。
【請求項110】
前記細胞が、初代細胞に由来する、請求項88~109のいずれか1項に記載の使用。
【請求項111】
前記初代細胞が、初代T細胞、初代ベータ細胞、または初代網膜色素上皮細胞である、請求項110に記載の使用。
【請求項112】
前記初代T細胞に由来する細胞が、前記患者とは異なる1以上の対象からの初代T細胞を含むT細胞のプールに由来する、請求項111に記載の使用。
【請求項113】
前記細胞が、キメラ抗原受容体(CAR)をコードする第2の外因性ポリヌクレオチドを含む、請求項88~112のいずれか1項に記載の使用。
【請求項114】
前記CARの抗原結合ドメインが、CD19、CD22、またはBCMAに結合する、請求項113に記載の使用。
【請求項115】
前記CARが、CD19特異的CARであり、それにより前記細胞が、CD19 CAR T細胞である、請求項114に記載の使用。
【請求項116】
前記CARが、CD22特異的CARであり、それにより前記細胞が、CD22 CAR T細胞である、請求項114に記載の使用。
【請求項117】
前記細胞が、CD19特異的CAR及びCD22特異的CARを含み、それにより前記細胞が、CD19/CD22 CAR T細胞である、請求項114に記載の使用。
【請求項118】
前記CD19特異的CAR及び前記CD22特異的CARが、単一のバイシストロン性ポリヌクレオチドによってコードされる、請求項117に記載の使用。
【請求項119】
前記CD19特異的CAR及び前記CD22特異的CARが、2つの別個のポリヌクレオチドによってコードされる、請求項117に記載の使用。
【請求項120】
前記第1の外因性ポリヌクレオチド及び/または前記第2の外因性ポリヌクレオチドが、セーフハーバー遺伝子座、標的遺伝子座、B2M遺伝子座、CIITA遺伝子座、TRAC遺伝子座、またはTRB遺伝子座を含むゲノム遺伝子座内に挿入される、請求項88~119のいずれか1項に記載の使用。
【請求項121】
前記第1のゲノム遺伝子座及び前記第2のゲノム遺伝子座が同じである、請求項120に記載の使用。
【請求項122】
前記第1のゲノム遺伝子座及び前記第2のゲノム遺伝子座が異なる、請求項120に記載の使用。
【請求項123】
前記細胞が各々、第3のゲノム遺伝子座内に挿入された第3の外因性ポリヌクレオチドをさらに含む、請求項88~122のいずれか1項に記載の使用。
【請求項124】
前記第3のゲノム遺伝子座が、前記第1のゲノム遺伝子座または前記第2のゲノム遺伝子座と同じである、請求項123に記載の使用。
【請求項125】
前記第3のゲノム遺伝子座が、前記第1のゲノム遺伝子座及び/または前記第2のゲノム遺伝子座とは異なる、請求項123に記載の使用。
【請求項126】
前記セーフハーバー遺伝子座が、CCR5遺伝子座、PPP1R12C(別名、AAVS1)遺伝子、及びCLYBL遺伝子座からなる群から選択される、請求項120~125のいずれか1項に記載の使用。
【請求項127】
前記標的遺伝子座が、CXCR4遺伝子座、アルブミン遺伝子座、SHS231遺伝子座、ROSA26遺伝子座、CD142遺伝子座、MICA遺伝子座、MICB遺伝子座、LRP1遺伝子座、HMGB1遺伝子座、ABO遺伝子座、RHD遺伝子座、FUT1遺伝子座、及びKDM5D遺伝子座からなる群から選択される、請求項120~125のいずれか1項に記載の使用。
【請求項128】
前記CCR5遺伝子座内への前記挿入が、前記CCR5遺伝子のエクソン1~3、イントロン1~2、または別のコード配列(CDS)内である、請求項126に記載の使用。
【請求項129】
前記PPP1R12C遺伝子座内への前記挿入が、前記PPP1R12C遺伝子のイントロン1またはイントロン2である、請求項126に記載の使用。
【請求項130】
前記CLYBL遺伝子座内への前記挿入が、前記CLYBL遺伝子のイントロン2である、請求項126に記載の使用。
【請求項131】
前記ROSA26遺伝子座内への前記挿入が、前記ROSA26遺伝子のイントロン1である、請求項127に記載の使用。
【請求項132】
前記セーフハーバー遺伝子座内への前記挿入が、SHS231遺伝子座である、請求項127に記載の使用。
【請求項133】
前記CD142遺伝子座内への前記挿入が、前記CD142遺伝子のエクソン2または別のCDS内である、請求項127に記載の使用。
【請求項134】
前記MICA遺伝子座内への前記挿入が、前記MICA遺伝子のCDS内である、請求項127に記載の使用。
【請求項135】
前記MICB遺伝子座内への前記挿入が、前記MICB遺伝子のCDS内である、請求項127に記載の使用。
【請求項136】
前記B2M遺伝子座内への前記挿入が、前記B2M遺伝子のエクソン2または別のCDS内である、請求項120~135のいずれか1項に記載の使用。
【請求項137】
前記CIITA遺伝子座内への前記挿入が、前記CIITA遺伝子のエクソン3または別のCDS内である、請求項120~135のいずれか1項に記載の使用。
【請求項138】
前記TRAC遺伝子内への前記挿入が、前記TRAC遺伝子のエクソン2または別のCDS内である、請求項120~135のいずれか1項に記載の使用。
【請求項139】
前記TRB遺伝子座内への前記挿入が、前記TRB遺伝子のCDS内である、請求項120~135のいずれか1項に記載の使用。
【請求項140】
前記初代T細胞に由来する細胞が、
a.内在性T細胞受容体、
b.細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA4)、
c.プログラム細胞死(PD1)、及び
d.プログラム細胞死リガンド1(PD-L1)、のうちの1つまたは複数の低減された発現を含み、前記低減された発現が、改変に起因し、前記低減された発現が、前記改変を含まない同じ細胞種の細胞と比べたものである、請求項111~139のいずれか1項に記載の使用。
【請求項141】
前記初代T細胞に由来する細胞が、TRACの低減された発現を含む、請求項140に記載の使用。
【請求項142】
前記細胞が、
a.内在性T細胞受容体、
b.細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA4)、
c.プログラム細胞死(PD1)、及び
d.プログラム細胞死リガンド1(PD-L1)、のうちの1つまたは複数の低減された発現を含む人工多能性幹細胞に由来するT細胞であり、前記低減された発現が、改変に起因し、前記低減された発現が、前記改変を含まない同じ細胞種の細胞と比べたものである、請求項109~139のいずれか1項に記載の使用。
【請求項143】
前記細胞が、TRAC及びTRBの低減された発現を含む人工多能性幹細胞に由来するT細胞である、請求項142に記載の使用。
【請求項144】
前記外因性ポリヌクレオチドが、プロモーターに作動可能に連結されている、請求項88~143のいずれか1項に記載の使用。
【請求項145】
前記プロモーターが、CAG及び/またはEF1aプロモーターである、請求項144に記載の使用。
【請求項146】
前記細胞集団が、前記患者が1つもしくは複数の同種異系抗原に対して感作されてから少なくとも1日以上後、または前記患者が前記同種異系移植を受けてから少なくとも1日以上後に投与される、請求項88~145のいずれか1項に記載の使用。
【請求項147】
前記細胞集団が、前記患者が1つもしくは複数の同種異系抗原に対して感作されてから少なくとも1週間以上後、または前記患者が前記同種異系移植を受けてから少なくとも1週間以上後に投与される、請求項88~145のいずれか1項に記載の使用。
【請求項148】
前記細胞集団が、前記患者が1つもしくは複数の同種異系抗原に対して感作されてから少なくとも1ヶ月以上後、前記患者が前記同種異系移植を受けてから少なくとも1ヶ月以上後に投与される、請求項88~145のいずれか1項に記載の使用。
【請求項149】
前記患者が、前記細胞集団の投与時に免疫応答の不在を示す、請求項88~148のいずれか1項に記載の使用。
【請求項150】
前記細胞集団の投与時の前記免疫応答の不在が、全身性の免疫応答の不在、適応免疫応答の不在、自然免疫応答の不在、T細胞応答の不在、B細胞応答の不在、及び全身性の急性細胞性免疫応答の不在からなる群から選択される、請求項149に記載の使用。
【請求項151】
前記患者が、
a.前記細胞集団を投与したときの全身性のTH1活性化の不在、
b.前記細胞集団を投与したときの末梢血単核細胞(PBMC)の免疫活性化の不在、
c.前記細胞集団を投与したときの前記細胞集団に対するドナー特異的IgG抗体の不在、
d.前記細胞集団を投与したときの前記細胞集団に対するIgM及びIgG抗体産生の不在、ならびに
e.前記細胞集団を投与したときの前記細胞集団の細胞傷害性T細胞による殺傷の不在、
のうちの1つまたは複数を示す、請求項150に記載の使用。
【請求項152】
前記患者が、前記細胞集団の前記投与前または後の少なくとも3日以上、免疫抑制剤を投与されない、請求項88~151のいずれか1項に記載の使用。
【請求項153】
前記方法が、
a.治療上有効量の前記細胞集団を含む1回目の投与、
b.回復期間、及び
c.治療上有効量の前記細胞集団を含む2回目の投与、
を含む投与レジメンを含む、請求項88~152のいずれか1項に記載の使用。
【請求項154】
前記回復期間が、少なくとも1ヶ月以上を含む、請求項153に記載の使用。
【請求項155】
前記回復期間が、少なくとも2ヶ月以上を含む、請求項153に記載の使用。
【請求項156】
前記2回目の投与が、前記1回目の投与からの前記細胞が前記患者においてもはや検出可能でないときに開始される、請求項153~155のいずれか1項に記載の使用。
【請求項157】
前記低免疫原性細胞が、自殺遺伝子または安全スイッチシステムによって排除され、前記2回目の投与が、前記1回目の投与からの前記細胞が前記患者においてもはや検出可能でないときに開始される、請求項153~156のいずれか1項に記載の使用。
【請求項158】
前記投与レジメンを少なくとも2回施与することをさらに含む、請求項155~157のいずれか1項に記載の使用。
【請求項159】
前記細胞集団が、細胞欠損症の処置のために、または心臓、肺、腎臓、肝臓、膵臓、腸、胃、角膜、骨髄、血管、心臓弁、脳、脊髄、及び骨からなる群から選択される組織もしくは臓器における病態もしくは疾患の前記処置のための細胞療法として投与される、請求項88~158のいずれか1項に記載の使用。
【請求項160】
a.前記細胞欠損症が、神経変性疾患に関連するか、または前記細胞療法が、神経変性疾患の前記処置のためである、
b.前記細胞欠損症が、肝臓疾患に関連するか、または前記細胞療法が、肝臓疾患の前記処置のためである、
c.前記細胞欠損症が、角膜疾患に関連するか、または前記細胞療法が、角膜疾患の前記処置のためである、
d.前記細胞欠損症が、心血管病態もしくは疾患に関連するか、または前記細胞療法が、心血管病態もしくは疾患の前記処置のためである、
e.前記細胞欠損症が、糖尿病に関連するか、または前記細胞療法が、糖尿病の前記処置のためである、
f.前記細胞欠損症が、血管病態もしくは疾患に関連するか、または前記細胞療法が、血管病態もしくは疾患の前記処置のためである、
g.前記細胞欠損症が、自己免疫性甲状腺炎に関連するか、または前記細胞療法が、自己免疫性甲状腺炎の前記処置のためである、あるいは
h.前記細胞欠損症が、腎臓疾患に関連するか、または前記細胞療法が、腎臓疾患の前記処置のためである、
請求項88~159のいずれか1項に記載の使用。
【請求項161】
a.前記神経変性疾患が、白質ジストロフィー、ハンチントン病、パーキンソン病、多発性硬化症、横断性脊髄炎、及びペリツェウス・メルツバッハ病(PMD)からなる群から選択される、
b.前記肝臓疾患が、肝硬変を含む、
c.前記角膜疾患が、フックスジストロフィーもしくは先天性遺伝性内皮ジストロフィーである、または
d.前記心血管疾患が、心筋梗塞もしくはうっ血性心不全である、
請求項160に記載の使用。
【請求項162】
前記細胞集団が、
a.グリア前駆細胞、乏突起膠細胞、星状細胞、及びドーパミン作動性ニューロンからなる群から選択され、任意選択で、前記ドーパミン作動性ニューロンが、神経幹細胞、神経前駆細胞、未成熟ドーパミン作動性ニューロン、及び成熟ドーパミン作動性ニューロンからなる群から選択される、細胞、
b.肝細胞もしくは肝前駆細胞、
c.角膜内皮前駆細胞もしくは角膜内皮細胞、
d.心筋細胞もしくは心筋前駆細胞、
e.膵臓ベータ島細胞を含む膵島細胞であって、任意選択で、前記膵島細胞が、膵島前駆細胞、未成熟膵島細胞、及び成熟膵島細胞からなる群から選択される、前記膵島細胞、
f.内皮細胞、
g.甲状腺前駆細胞、または
h.腎前駆体細胞もしくは腎細胞、
を含む、請求項160または161に記載の使用。
【請求項163】
前記細胞集団が、がんの前記処置のために投与される、請求項88~162のいずれか1項に記載の使用。
【請求項164】
前記がんが、B細胞急性リンパ芽球性白血病(B-ALL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、肝臓癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、結腸直腸癌、肺癌、非小細胞肺癌、急性骨髄性リンパ性白血病、多発性骨髄腫、胃癌、胃腺癌、膵臓腺癌、神経膠芽腫、神経芽細胞腫、肺扁平上皮癌、肝細胞癌、及び膀胱癌からなる群から選択される、請求項163に記載の使用。
【請求項165】
前記患者が、組織移植または臓器移植を受けており、任意選択で、前記組織移植もしくは前記臓器移植または部分的臓器移植が、心臓移植、肺移植、腎臓移植、肝臓移植、膵臓移植、腸移植、胃移植、角膜移植、骨髄移植、血管移植、心臓弁移植、骨移植、部分的肺移植、部分的腎臓移植、部分的肝臓移植、部分的膵臓移植、部分的腸移植、及び部分的角膜移植からなる群から選択される、請求項88~164のいずれか1項に記載の使用。
【請求項166】
前記組織移植もしくは前記臓器移植が、同種異系移植片移植である、請求項165に記載の使用。
【請求項167】
前記組織移植もしくは前記臓器移植が、自家移植片移植である、請求項165に記載の使用。
【請求項168】
前記細胞集団が、組織または臓器における細胞欠損症の前記処置のために投与され、前記組織移植もしくは前記臓器移植が、同じ組織または臓器の置換のためである、請求項165~167のいずれか1項に記載の使用。
【請求項169】
前記細胞集団が、組織または臓器における細胞欠損症の前記処置のために投与され、前記組織移植もしくは前記臓器移植が、異なる組織または臓器の置換のためである、請求項165~168のいずれか1項に記載の使用。
【請求項170】
前記臓器移植が、腎臓移植であり、前記細胞集団が、腎前駆体細胞もしくは腎細胞の集団である、請求項165~169のいずれか1項に記載の使用。
【請求項171】
前記患者が、糖尿病を有する、請求項170に記載の使用。
【請求項172】
前記臓器移植が、心臓移植であり、前記細胞集団が、心筋前駆細胞またはペースメーカー細胞の集団である、請求項165~169のいずれか1項に記載の使用。
【請求項173】
前記臓器移植が、膵臓移植であり、前記細胞集団が、膵臓ベータ島細胞の集団である、請求項165~169のいずれか1項に記載の使用。
【請求項174】
前記臓器移植が、部分的肝臓移植であり、前記細胞集団が、肝細胞または肝前駆細胞の集団である、請求項165~169のいずれか1項に記載の使用。
【請求項175】
処置する必要がある患者を処置する方法であって、低免疫原性細胞の集団を投与することを含み、前記低免疫原性細胞が、CD47をコードする第1の外因性ポリヌクレオチドと、CARをコードする第2の外因性ポリヌクレオチドと、
(I)
a.主要組織適合性複合体(MHC)クラスI及び/またはクラスIIヒト白血球抗原の低減された発現、
b.MHCクラスI及びクラスIIヒト白血球抗原の低減された発現、
c.ベータ-2-ミクログロブリン(B2M)及び/またはMHCクラスIIトランス活性化因子(CIITA)の低減された発現、及び/または
d.B2M及びCIITAの低減された発現、
のうちの1つまたは複数と、を含み、
前記低減された発現が、改変に起因し、前記低減された発現が、前記改変を含まない同じ細胞種の細胞と比べたものであり、
(II)
a.前記患者が、感作患者ではないか、または
b.前記患者が、感作患者であり、前記患者が、
i.1つもしくは複数の同種異系抗原に対して感作されている、
ii.1つもしくは複数の自己抗原に対して感作されている、
iii.以前の移植から感作されている、
iv.以前の妊娠から感作されている、
v.病態もしくは疾患に対する以前の処置を受けたことがある、及び/または
vi.組織もしくは臓器患者であり、前記低免疫原性細胞が、前記組織移植もしくは前記臓器移植を施与する前に投与される、
前記方法。
【請求項176】
前記患者が、感作患者であり、前記患者が、前記1つもしくは複数の同種異系抗原または前記1つもしくは複数の自己抗原に対して反応性のメモリーB細胞及び/またはメモリーT細胞を示す、請求項175に記載の方法。
【請求項177】
前記1つもしくは複数の同種異系抗原が、ヒト白血球抗原を含む、請求項176に記載の方法。
【請求項178】
前記患者が、以前の移植から感作されている感作患者であり、
a.前記以前の移植が、細胞移植、輸血、組織移植、及び臓器移植からなる群から選択され、任意選択で、前記以前の移植が、同種異系移植片であるか、または
b.前記以前の移植が、ヒト起源のキメラ、改変された非ヒト自家細胞、改変された自家細胞、自家組織、及び自家臓器からなる群から選択される移植であり、任意選択で、前記以前の移植が、自家移植である、
請求項175~177のいずれか1項に記載の方法。
【請求項179】
前記患者が、以前の妊娠から感作されている感作患者であり、前記患者が、妊娠中の同種免疫化を以前に示したことがあり、任意選択で、前記妊娠中の同種免疫化が、胎児及び新生児の溶血性疾患(HDFN)、新生児同種免疫性好中球減少症(NAN)、または胎児及び新生児同種免疫性血小板減少症(FNAIT)である、請求項175~178のいずれか1項に記載の方法。
【請求項180】
前記患者が、病態または疾患に対する以前の処置から感作されている感作患者である、請求項175~178のいずれか1項に記載の方法。
【請求項181】
前記患者が、病態または疾患に対する以前の処置を受けたことがあり、前記以前の処置が、前記細胞集団を含まず、
a.前記細胞集団が、前記以前の処置と同じ病態もしくは疾患の前記処置のために投与される、
b.前記細胞集団が、前記以前の処置と比較して前記患者における前記病態もしくは前記疾患の前記処置に対して強化された治療効果を示す、
c.前記細胞集団が、前記以前の処置と比較して前記患者における前記病態もしくは前記疾患の前記処置に対してより長期の治療効果を示す、
d.前記以前の処置が、治療上有効であった、
e.前記以前の処置が、治療上有効でなかった、
f.前記患者が、前記以前の処置に対して免疫反応を起こした、及び/または
g.前記細胞集団が、前記以前の処置とは異なる病態もしくは疾患の前記処置のために投与される、
請求項175~178のいずれか1項に記載の方法。
【請求項182】
前記以前の処置が、自殺遺伝子または安全スイッチシステムを含む治療用細胞の集団を投与することを含み、前記免疫反応が、前記自殺遺伝子または前記安全スイッチシステムの作動に応答して起こる、請求項181に記載の方法。
【請求項183】
前記以前の処置が、機械補助による処置を含み、任意選択で、前記機械補助による処置が、血液透析または補助人工心臓を含む、請求項181に記載の方法。
【請求項184】
前記患者が、アレルギーを有し、任意選択で、前記アレルギーが、花粉症、食物アレルギー、昆虫アレルギー、薬物アレルギー、及びアトピー性皮膚炎からなる群から選択されるアレルギーである、請求項1~183のいずれか1項に記載の方法。
【請求項185】
前記細胞が、DUX4、CD24、CD46、CD55、CD59、CD200、PD-L1、HLA-E、HLA-G、IDO1、FasL、IL-35、IL-39、CCL21、CCL22、Mfge8、Serpin B9、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される1つまたは複数の外因性ポリペプチドをさらに含む、請求項175~184のいずれか1項に記載の方法。
【請求項186】
前記細胞が、改変を含まない同じ細胞種の細胞と比べて、低減された発現レベルのCD142をさらに含む、請求項175~185のいずれか1項に記載の方法。
【請求項187】
前記細胞が、改変を含まない同じ細胞種の細胞と比べて、低減された発現レベルのCD46をさらに含む、請求項175~186のいずれか1項に記載の方法。
【請求項188】
前記細胞が、改変を含まない同じ細胞種の細胞と比べて、低減された発現レベルのCD59をさらに含む、請求項175~187のいずれか1項に記載の方法。
【請求項189】
前記細胞が、幹細胞から分化させられる、請求項175~188のいずれか1項に記載の方法。
【請求項190】
前記幹細胞が間葉系幹細胞である、請求項189に記載の方法。
【請求項191】
前記幹細胞が胚性幹細胞である、請求項189に記載の方法。
【請求項192】
前記幹細胞が多能性幹細胞であり、任意選択で、前記多能性幹細胞が人工多能性幹細胞である、請求項189に記載の方法。
【請求項193】
前記細胞が、CAR T細胞またはCAR-NK細胞である、請求項175~192のいずれか1項に記載の方法。
【請求項194】
前記細胞が、初代T細胞に由来する、請求項175~193のいずれか1項に記載の方法。
【請求項195】
前記細胞が、前記患者とは異なる1以上の対象からの初代T細胞を含むT細胞のプールに由来する、請求項194に記載の方法。
【請求項196】
前記CARの抗原結合ドメインが、CD19、CD22、またはBCMAに結合する、請求項175~195のいずれか1項に記載の方法。
【請求項197】
前記CARが、CD19特異的CARであり、それにより前記細胞が、CD19 CAR T細胞である、請求項196に記載の方法。
【請求項198】
前記CARが、CD22特異的CARであり、それにより前記細胞が、CD22 CAR T細胞である、請求項196に記載の方法。
【請求項199】
前記細胞が、CD19特異的CAR及びCD22特異的CARを含み、それにより前記細胞が、CD19/CD22 CAR T細胞である、請求項196に記載の方法。
【請求項200】
前記CD19特異的CAR及び前記CD22特異的CARが、単一のバイシストロン性ポリヌクレオチドによってコードされる、請求項199に記載の方法。
【請求項201】
前記CD19特異的CAR及び前記CD22特異的CARが、2つの別個のポリヌクレオチドによってコードされる、請求項199に記載の方法。
【請求項202】
前記第1の外因性ポリヌクレオチド及び/または前記第2の外因性ポリヌクレオチドが、セーフハーバー遺伝子座、標的遺伝子座、B2M遺伝子座、CIITA遺伝子座、TRAC遺伝子座、またはTRB遺伝子座を含むゲノム遺伝子座内に挿入される、請求項175~201のいずれか1項に記載の方法。
【請求項203】
前記第1のゲノム遺伝子座及び前記第2のゲノム遺伝子座が同じである、請求項202に記載の方法。
【請求項204】
前記第1のゲノム遺伝子座及び前記第2のゲノム遺伝子座が異なる、請求項202に記載の方法。
【請求項205】
前記細胞が各々、第3のゲノム遺伝子座内に挿入された第3の外因性ポリヌクレオチドをさらに含む、請求項175~204のいずれか1項に記載の方法。
【請求項206】
前記第3のゲノム遺伝子座が、前記第1のゲノム遺伝子座または前記第2のゲノム遺伝子座と同じである、請求項206に記載の方法。
【請求項207】
前記第3のゲノム遺伝子座が、前記第1のゲノム遺伝子座及び/または前記第2のゲノム遺伝子座とは異なる、請求項206に記載の方法。
【請求項208】
前記セーフハーバー遺伝子座が、CCR5遺伝子座、PPP1R12C(別名、AAVS1)遺伝子、及びCLYBL遺伝子座からなる群から選択される、請求項202~207のいずれか1項に記載の方法。
【請求項209】
前記標的遺伝子座が、CXCR4遺伝子座、アルブミン遺伝子座、SHS231遺伝子座、ROSA26遺伝子座、CD142遺伝子座、MICA遺伝子座、MICB遺伝子座、LRP1遺伝子座、HMGB1遺伝子座、ABO遺伝子座、RHD遺伝子座、FUT1遺伝子座、及びKDM5D遺伝子座からなる群から選択される、請求項202~207のいずれか1項に記載の方法。
【請求項210】
前記CCR5遺伝子座内への前記挿入が、前記CCR5遺伝子のエクソン1~3、イントロン1~2、または別のコード配列(CDS)内である、請求項208に記載の方法。
【請求項211】
前記PPP1R12C遺伝子座内への前記挿入が、前記PPP1R12C遺伝子のイントロン1またはイントロン2である、請求項208に記載の方法。
【請求項212】
前記CLYBL遺伝子座内への前記挿入が、前記CLYBL遺伝子のイントロン2である、請求項208に記載の方法。
【請求項213】
前記ROSA26遺伝子座内への前記挿入が、前記ROSA26遺伝子のイントロン1である、請求項209に記載の方法。
【請求項214】
前記セーフハーバー遺伝子座内への前記挿入が、SHS231遺伝子座である、請求項209に記載の方法。
【請求項215】
前記CD142遺伝子座内への前記挿入が、前記CD142遺伝子のエクソン2または別のCDS内である、請求項209に記載の方法。
【請求項216】
前記MICA遺伝子座内への前記挿入が、前記MICA遺伝子のCDS内である、請求項209に記載の方法。
【請求項217】
前記MICB遺伝子座内への前記挿入が、前記MICB遺伝子のCDS内である、請求項209に記載の方法。
【請求項218】
前記B2M遺伝子座内への前記挿入が、前記B2M遺伝子のエクソン2または別のCDS内である、請求項202~217のいずれか1項に記載の方法。
【請求項219】
前記CIITA遺伝子座内への前記挿入が、前記CIITA遺伝子のエクソン3または別のCDS内である、請求項202~217のいずれか1項に記載の方法。
【請求項220】
前記TRAC遺伝子内への前記挿入が、前記TRAC遺伝子のエクソン2または別のCDS内である、請求項202~217のいずれか1項に記載の方法。
【請求項221】
前記TRB遺伝子座内への前記挿入が、前記TRB遺伝子のCDS内である、請求項202~217のいずれか1項に記載の方法。
【請求項222】
前記初代T細胞に由来する細胞が、
a.内在性T細胞受容体、
b.細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA4)、
c.プログラム細胞死(PD1)、及び
d.プログラム細胞死リガンド1(PD-L1)のうちの1つまたは複数の低減された発現を含み、前記低減された発現が、改変に起因し、前記低減された発現が、前記改変を含まない同じ細胞種の細胞と比べたものである、請求項194~221のいずれか1項に記載の方法。
【請求項223】
前記初代T細胞に由来する細胞が、TRACの低減された発現を含んでいた、請求項222に記載の方法。
【請求項224】
前記細胞が、
a.内在性T細胞受容体、
b.細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA4)、
c.プログラム細胞死(PD1)、及び
d.プログラム細胞死リガンド1(PD-L1)、のうちの1つまたは複数の低減された発現を含む人工多能性幹細胞に由来するT細胞であり、前記低減された発現が、改変に起因し、前記低減された発現が、前記改変を含まない同じ細胞種の細胞と比べたものである、請求項193~221のいずれか1項に記載の方法。
【請求項225】
前記細胞が、TRAC及びTRBの低減された発現を含む人工多能性幹細胞に由来するT細胞である、請求項224に記載の方法。
【請求項226】
前記外因性ポリヌクレオチドが、プロモーターに作動可能に連結されている、請求項175~225のいずれか1項に記載の方法。
【請求項227】
前記プロモーターが、CAG及び/またはEF1aプロモーターである、請求項226に記載の方法。
【請求項228】
前記細胞集団が、前記患者が1つもしくは複数の同種異系抗原に対して感作されてから少なくとも1日以上後、または前記患者が前記同種異系移植を受けてから少なくとも1日以上後に投与される、請求項175~227のいずれか1項に記載の方法。
【請求項229】
前記細胞集団が、前記患者が1つもしくは複数の同種異系抗原に対して感作されてから少なくとも1週間以上後、または前記患者が前記同種異系移植を受けてから少なくとも1週間以上後に投与される、請求項175~227のいずれか1項に記載の方法。
【請求項230】
前記細胞集団が、前記患者が1つもしくは複数の同種異系抗原に対して感作されてから少なくとも1ヶ月以上後、前記患者が前記同種異系移植を受けてから少なくとも1ヶ月以上後に投与される、請求項175~227のいずれか1項に記載の方法。
【請求項231】
前記患者が、前記細胞集団の投与時に免疫応答の不在を示す、請求項175~230のいずれか1項に記載の方法。
【請求項232】
前記細胞集団の投与時の前記免疫応答の不在が、全身性の免疫応答の不在、適応免疫応答の不在、自然免疫応答の不在、T細胞応答の不在、B細胞応答の不在、及び全身性の急性細胞性免疫応答の不在からなる群から選択される、請求項231に記載の方法。
【請求項233】
前記患者が、
a.前記細胞集団を投与したときの全身性のTH1活性化の不在、
b.前記細胞集団を投与したときの末梢血単核細胞(PBMC)の免疫活性化の不在、
c.前記細胞集団を投与したときの前記細胞集団に対するドナー特異的IgG抗体の不在、
d.前記細胞集団を投与したときの前記細胞集団に対するIgM及びIgG抗体産生の不在、ならびに
e.前記細胞集団を投与したときの前記細胞集団の細胞傷害性T細胞による殺傷の不在、
のうちの1つまたは複数を示す、請求項232に記載の方法。
【請求項234】
前記患者が、前記細胞集団の前記投与前または後の少なくとも3日以上、免疫抑制剤を投与されない、請求項175~233のいずれか1項に記載の方法。
【請求項235】
前記方法が、
a.治療上有効量の前記細胞集団を含む1回目の投与、
b.回復期間、及び
c.治療上有効量の前記細胞集団を含む2回目の投与、
を含む投与レジメンを含む、請求項175~234のいずれか1項に記載の方法。
【請求項236】
前記回復期間が、少なくとも1ヶ月以上を含む、請求項235に記載の方法。
【請求項237】
前記回復期間が、少なくとも2ヶ月以上を含む、請求項235に記載の方法。
【請求項238】
前記2回目の投与が、前記1回目の投与からの前記細胞が前記患者においてもはや検出可能でないときに開始される、請求項235~237のいずれか1項に記載の方法。
【請求項239】
前記低免疫原性細胞が、自殺遺伝子または安全スイッチシステムによって排除され、前記2回目の投与が、前記1回目の投与からの前記細胞が前記患者においてもはや検出可能でないときに開始される、請求項235~238のいずれか1項に記載の方法。
【請求項240】
前記投与レジメンを少なくとも2回施与することをさらに含む、請求項235~239のいずれか1項に記載の方法。
【請求項241】
前記細胞集団が、がんの前記処置のために投与される、請求項175~240のいずれか1項に記載の方法。
【請求項242】
前記がんが、B細胞急性リンパ芽球性白血病(B-ALL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、肝臓癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、結腸直腸癌、肺癌、非小細胞肺癌、急性骨髄性リンパ性白血病、多発性骨髄腫、胃癌、胃腺癌、膵臓腺癌、神経膠芽腫、神経芽細胞腫、肺扁平上皮癌、肝細胞癌、及び膀胱癌からなる群から選択される、請求項241に記載の方法。
【請求項243】
患者における障害の処置のための低免疫原性細胞の集団の使用であって、前記低免疫原性細胞が、CD47をコードする第1の外因性ポリヌクレオチドと、CARをコードする第2の外因性ポリヌクレオチドと、
(I)
a.主要組織適合性複合体(MHC)クラスI及び/またはクラスIIヒト白血球抗原の低減された発現、
b.MHCクラスI及びクラスIIヒト白血球抗原の低減された発現、
c.ベータ-2-ミクログロブリン(B2M)及び/またはMHCクラスIIトランス活性化因子(CIITA)の低減された発現、及び/または
d.B2M及びCIITAの低減された発現、
のうちの1つまたは複数と、を含み、
前記低減された発現が、改変に起因し、前記低減された発現が、前記改変を含まない同じ細胞種の細胞と比べたものであり、
(II)
a.前記患者が、感作患者ではないか、または
b.前記患者が、感作患者である、
前記使用。
【請求項244】
前記患者が、感作患者であり、前記患者が、前記1つもしくは複数の同種異系抗原または前記1つもしくは複数の自己抗原に対して反応性のメモリーB細胞及び/またはメモリーT細胞を示す、請求項243に記載の使用。
【請求項245】
前記1つもしくは複数の同種異系抗原が、ヒト白血球抗原を含む、請求項244に記載の使用。
【請求項246】
前記患者が、以前の移植から感作されている感作患者であり、
a.前記以前の移植が、細胞移植、輸血、組織移植、及び臓器移植からなる群から選択され、任意選択で、前記以前の移植が、同種異系移植片であるか、または
b.前記以前の移植が、ヒト起源のキメラ、改変された非ヒト自家細胞、改変された自家細胞、自家組織、及び自家臓器からなる群から選択される移植であり、任意選択で、前記以前の移植が、自家移植である、
請求項243~245のいずれか1項に記載の使用。
【請求項247】
前記患者が、以前の妊娠から感作されている感作患者であり、前記患者が、妊娠中の同種免疫化を以前に示したことがあり、任意選択で、前記妊娠中の同種免疫化が、胎児及び新生児の溶血性疾患(HDFN)、新生児同種免疫性好中球減少症(NAN)、または胎児及び新生児同種免疫性血小板減少症(FNAIT)である、請求項243~245のいずれか1項に記載の使用。
【請求項248】
前記患者が、病態または疾患に対する以前の処置から感作されている感作患者である、請求項243~245のいずれか1項に記載の使用。
【請求項249】
前記患者が、病態または疾患に対する以前の処置を受けたことがあり、前記以前の処置が、前記細胞集団を含まず、
a.前記細胞集団が、前記以前の処置と同じ病態もしくは疾患の前記処置のために投与される、
b.前記細胞集団が、前記以前の処置と比較して前記患者における前記病態もしくは前記疾患の前記処置に対して強化された治療効果を示す、
c.前記細胞集団が、前記以前の処置と比較して前記患者における前記病態もしくは前記疾患の前記処置に対してより長期の治療効果を示す、前記以前の処置が、治療上有効であった、
d.前記以前の処置が、治療上有効でなかった、
e.前記患者が、前記以前の処置に対して免疫反応を起こした、及び/または
f.前記細胞集団が、前記以前の処置とは異なる病態もしくは疾患の前記処置のために投与される、
請求項243~245のいずれか1項に記載の使用。
【請求項250】
前記以前の処置が、自殺遺伝子または安全スイッチシステムを含む治療用細胞の集団を投与することを含み、前記免疫反応が、前記自殺遺伝子または前記安全スイッチシステムの作動に応答して起こる、請求項249に記載の使用。
【請求項251】
前記以前の処置が、機械補助による処置を含み、任意選択で、前記機械補助による処置が、血液透析または補助人工心臓を含む、請求項249に記載の使用。
【請求項252】
前記患者が、アレルギーを有し、任意選択で、前記アレルギーが、花粉症、食物アレルギー、昆虫アレルギー、薬物アレルギー、及びアトピー性皮膚炎からなる群から選択されるアレルギーである、請求項243~251のいずれか1項に記載の使用。
【請求項253】
前記細胞が、DUX4、CD24、CD46、CD55、CD59、CD200、PD-L1、HLA-E、HLA-G、IDO1、FasL、IL-35、IL-39、CCL21、CCL22、Mfge8、Serpin B9、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される1つまたは複数の外因性ポリペプチドをさらに含む、請求項243~252のいずれか1項に記載の使用。
【請求項254】
前記細胞が、改変を含まない同じ細胞種の細胞と比べて、低減された発現レベルのCD142をさらに含む、請求項243~253のいずれか1項に記載の使用。
【請求項255】
前記細胞が、改変を含まない同じ細胞種の細胞と比べて、低減された発現レベルのCD46をさらに含む、請求項243~254のいずれか1項に記載の使用。
【請求項256】
前記細胞が、改変を含まない同じ細胞種の細胞と比べて、低減された発現レベルのCD59をさらに含む、請求項243~255のいずれか1項に記載の使用。
【請求項257】
前記細胞が、幹細胞から分化させられる、請求項243~256のいずれか1項に記載の使用。
【請求項258】
前記幹細胞が間葉系幹細胞である、請求項257に記載の使用。
【請求項259】
前記幹細胞が胚性幹細胞である、請求項257に記載の使用。
【請求項260】
前記幹細胞が多能性幹細胞であり、任意選択で、前記多能性幹細胞が人工多能性幹細胞である、請求項257に記載の使用。
【請求項261】
前記細胞が、CAR T細胞またはCAR-NK細胞である、請求項243~260のいずれか1項に記載の使用。
【請求項262】
前記細胞が、初代T細胞に由来する、請求項243~261のいずれか1項に記載の使用。
【請求項263】
前記細胞が、前記患者とは異なる1以上の対象からの初代T細胞を含むT細胞のプールに由来する、請求項262に記載の使用。
【請求項264】
前記CARの抗原結合ドメインが、CD19、CD22、またはBCMAに結合する、請求項243~263のいずれか1項に記載の使用。
【請求項265】
前記CARが、CD19特異的CARであり、それにより前記細胞が、CD19 CAR T細胞である、請求項264に記載の使用。
【請求項266】
前記CARが、CD22特異的CARであり、それにより前記細胞が、CD22 CAR T細胞である、請求項264に記載の使用。
【請求項267】
前記細胞が、CD19特異的CAR及びCD22特異的CARを含み、それにより前記細胞が、CD19/CD22 CAR T細胞である、請求項264に記載の使用。
【請求項268】
前記CD19特異的CAR及び前記CD22特異的CARが、単一のバイシストロン性ポリヌクレオチドによってコードされる、請求項267に記載の使用。
【請求項269】
前記CD19特異的CAR及び前記CD22特異的CARが、2つの別個のポリヌクレオチドによってコードされる、請求項267に記載の使用。
【請求項270】
前記第1の外因性ポリヌクレオチド及び/または前記第2の外因性ポリヌクレオチドが、セーフハーバー遺伝子座、標的遺伝子座、B2M遺伝子座、CIITA遺伝子座、TRAC遺伝子座、またはTRB遺伝子座を含むゲノム遺伝子座内に挿入される、請求項243~269のいずれか1項に記載の使用。
【請求項271】
前記第1のゲノム遺伝子座及び前記第2のゲノム遺伝子座が同じである、請求項270に記載の使用。
【請求項272】
前記第1のゲノム遺伝子座及び前記第2のゲノム遺伝子座が異なる、請求項270に記載の使用。
【請求項273】
前記細胞が各々、第3のゲノム遺伝子座内に挿入された第3の外因性ポリヌクレオチドをさらに含む、請求項243~272のいずれか1項に記載の使用。
【請求項274】
前記第3のゲノム遺伝子座が、前記第1のゲノム遺伝子座または前記第2のゲノム遺伝子座と同じである、請求項273に記載の使用。
【請求項275】
前記第3のゲノム遺伝子座が、前記第1のゲノム遺伝子座及び/または前記第2のゲノム遺伝子座とは異なる、請求項273に記載の使用。
【請求項276】
前記セーフハーバー遺伝子座が、CCR5遺伝子座、PPP1R12C(別名、AAVS1)遺伝子、及びCLYBL遺伝子座からなる群から選択される、請求項270~275のいずれか1項に記載の使用。
【請求項277】
前記標的遺伝子座が、CXCR4遺伝子座、アルブミン遺伝子座、SHS231遺伝子座、ROSA26遺伝子座、CD142遺伝子座、MICA遺伝子座、MICB遺伝子座、LRP1遺伝子座、HMGB1遺伝子座、ABO遺伝子座、RHD遺伝子座、FUT1遺伝子座、及びKDM5D遺伝子座からなる群から選択される、請求項270~275のいずれか1項に記載の使用。
【請求項278】
前記CCR5遺伝子座内への前記挿入が、前記CCR5遺伝子のエクソン1~3、イントロン1~2、または別のコード配列(CDS)内である、請求項276に記載の使用。
【請求項279】
前記PPP1R12C遺伝子座内への前記挿入が、前記PPP1R12C遺伝子のイントロン1またはイントロン2である、請求項276に記載の使用。
【請求項280】
前記CLYBL遺伝子座内への前記挿入が、前記CLYBL遺伝子のイントロン2である、請求項276に記載の使用。
【請求項281】
前記ROSA26遺伝子座内への前記挿入が、前記ROSA26遺伝子のイントロン1である、請求項277に記載の使用。
【請求項282】
前記セーフハーバー遺伝子座内への前記挿入が、SHS231遺伝子座である、請求項277に記載の使用。
【請求項283】
前記CD142遺伝子座内への前記挿入が、前記CD142遺伝子のエクソン2または別のCDS内である、請求項277に記載の使用。
【請求項284】
前記MICA遺伝子座内への前記挿入が、前記MICA遺伝子のCDS内である、請求項277に記載の使用。
【請求項285】
前記MICB遺伝子座内への前記挿入が、前記MICB遺伝子のCDS内である、請求項277に記載の使用。
【請求項286】
前記B2M遺伝子座内への前記挿入が、前記B2M遺伝子のエクソン2または別のCDS内である、請求項270~285のいずれか1項に記載の使用。
【請求項287】
前記CIITA遺伝子座内への前記挿入が、前記CIITA遺伝子のエクソン3または別のCDS内である、請求項270~285のいずれか1項に記載の使用。
【請求項288】
前記TRAC遺伝子内への前記挿入が、前記TRAC遺伝子のエクソン2または別のCDS内である、請求項270~285のいずれか1項に記載の使用。
【請求項289】
前記TRB遺伝子座内への前記挿入が、前記TRB遺伝子のCDS内である、請求項270~285のいずれか1項に記載の使用。
【請求項290】
前記初代T細胞に由来する細胞が、
a.内在性T細胞受容体、
b.細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA4)、
c.プログラム細胞死(PD1)、及び
d.プログラム細胞死リガンド1(PD-L1)、のうちの1つまたは複数の低減された発現を含み、前記低減された発現が、改変に起因し、前記低減された発現が、前記改変を含まない同じ細胞種の細胞と比べたものである、請求項262~289のいずれか1項に記載の使用。
【請求項291】
前記初代T細胞に由来する細胞が、TRACの低減された発現を含んでいた、請求項290に記載の使用。
【請求項292】
前記細胞が、
a.内在性T細胞受容体、
b.細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA4)、
c.プログラム細胞死(PD1)、及び
d.プログラム細胞死リガンド1(PD-L1)、のうちの1つまたは複数の低減された発現を含む人工多能性幹細胞に由来するT細胞であり、前記低減された発現が、改変に起因し、前記低減された発現が、前記改変を含まない同じ細胞種の細胞と比べたものである、請求項261~289のいずれか1項に記載の使用。
【請求項293】
前記細胞が、TRAC及びTRBの低減された発現を含む人工多能性幹細胞に由来するT細胞である、請求項292に記載の使用。
【請求項294】
前記外因性ポリヌクレオチドが、プロモーターに作動可能に連結されている、請求項243~293のいずれか1項に記載の使用。
【請求項295】
前記プロモーターが、CAG及び/またはEF1aプロモーターである、請求項294に記載の使用。
【請求項296】
前記細胞集団が、前記患者が1つもしくは複数の同種異系抗原に対して感作されてから少なくとも1日以上後、または前記患者が前記同種異系移植を受けてから少なくとも1日以上後に投与される、請求項243~295のいずれか1項に記載の使用。
【請求項297】
前記細胞集団が、前記患者が1つもしくは複数の同種異系抗原に対して感作されてから少なくとも1週間以上後、または前記患者が前記同種異系移植を受けてから少なくとも1週間以上後に投与される、請求項243~295のいずれか1項に記載の使用。
【請求項298】
前記細胞集団が、前記患者が1つもしくは複数の同種異系抗原に対して感作されてから少なくとも1ヶ月以上後、前記患者が前記同種異系移植を受けてから少なくとも1ヶ月以上後に投与される、請求項243~295のいずれか1項に記載の使用。
【請求項299】
前記患者が、前記細胞集団の投与時に免疫応答の不在を示す、請求項243~298のいずれか1項に記載の使用。
【請求項300】
前記細胞集団の投与時の前記免疫応答の不在が、全身性の免疫応答の不在、適応免疫応答の不在、自然免疫応答の不在、T細胞応答の不在、B細胞応答の不在、及び全身性の急性細胞性免疫応答の不在からなる群から選択される、請求項299に記載の使用。
【請求項301】
前記患者が、
a.前記細胞集団を投与したときの全身性のTH1活性化の不在、
b.前記細胞集団を投与したときの末梢血単核細胞(PBMC)の免疫活性化の不在、
c.前記細胞集団を投与したときの前記細胞集団に対するドナー特異的IgG抗体の不在、
d.前記細胞集団を投与したときの前記細胞集団に対するIgM及びIgG抗体産生の不在、ならびに
e.前記細胞集団を投与したときの前記細胞集団の細胞傷害性T細胞による殺傷の不在、
のうちの1つまたは複数を示す、請求項300に記載の使用。
【請求項302】
前記患者が、前記細胞集団の前記投与前または後の少なくとも3日以上、免疫抑制剤を投与されない、請求項243~301のいずれか1項に記載の使用。
【請求項303】
前記方法が、
a.治療上有効量の前記細胞集団を含む1回目の投与、
b.回復期間、及び
c.治療上有効量の前記細胞集団を含む2回目の投与、
を含む投与レジメンを含む、請求項243~302のいずれか1項に記載の使用。
【請求項304】
前記回復期間が、少なくとも1ヶ月以上を含む、請求項303に記載の使用。
【請求項305】
前記回復期間が、少なくとも2ヶ月以上を含む、請求項303に記載の使用。
【請求項306】
前記2回目の投与が、前記1回目の投与からの前記細胞が前記患者においてもはや検出可能でないときに開始される、請求項303~305のいずれか1項に記載の使用。
【請求項307】
前記低免疫原性細胞が、自殺遺伝子または安全スイッチシステムによって排除され、前記2回目の投与が、前記1回目の投与からの前記細胞が前記患者においてもはや検出可能でないときに開始される、請求項303~306のいずれか1項に記載の使用。
【請求項308】
前記投与レジメンを少なくとも2回施与することをさらに含む、請求項303~307のいずれか1項に記載の使用。
【請求項309】
前記細胞集団が、がんの前記処置のために投与される、請求項243~308のいずれか1項に記載の使用。
【請求項310】
前記がんが、B細胞急性リンパ芽球性白血病(B-ALL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、肝臓癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、結腸直腸癌、肺癌、非小細胞肺癌、急性骨髄性リンパ性白血病、多発性骨髄腫、胃癌、胃腺癌、膵臓腺癌、神経膠芽腫、神経芽細胞腫、肺扁平上皮癌、肝細胞癌、及び膀胱癌からなる群から選択される、請求項309に記載の使用。
【請求項311】
前記以前の処置が、同種異系CAR-T細胞ベースの療法または自家CAR-T細胞ベースの療法を含み、前記自家CAR-T細胞ベースの療法が、ブレクスカブタゲンオートルユーセル、アキシカブタゲンシロルユーセル、イデカブタゲンビクルユーセル、リソカブタゲンマラルユーセル、チサゲンレクルユーセル、Cartesian TherapeuticsからのDescartes-08またはDescartes-11、NovartisからのCTL110、Poseida TherapeuticsからのP-BMCA-101、Autolus LimitedからのAUTO4、CellectisからのUCARTCS、Precision BiosciencesからのPBCAR19BまたはPBCAR269A、Fate TherapeuticsからのFT819、及びClyad OncologyからのCYAD-211からなる群から選択される、請求項97もしくは249に記載の使用または請求項181に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、米国特許法第119条(e)の下、2020年8月13日に出願された米国仮出願第63/065,342号、2021年1月11日に出願された同第63/136,137号、2021年2月19日に出願された同第63/151,628号、及び2021年4月14日に出願された同第63/175,030号に対する優先権を主張するものであり、同文献の開示は参照によりそれらの全体が本明細書に援用される。
【発明の概要】
【0002】
抗原(例えば、ドナー同種異系抗原)に対する感作は、臨床移植療法が直面している問題である。例えば、移植レシピエントの免疫系が同種異系材料を拒絶する傾向が、治療法の潜在的な有効性を大幅に低減し、かかる治療に関連する考えられるプラスの効果を減弱させる。幸いなことに、動物モデル及びヒト患者の両方において、低免疫原性細胞または組織移植が多数の障害及び病態の処置への科学的に実現可能で臨床的に有望なアプローチであるという確固たる証拠がある。
【0003】
したがって、レシピエントの免疫系による検出を回避する細胞ベースの治療法を生み出すための新規のアプローチ、組成物、及び方法に対する必要性が依然として存在する。
【0004】
抗原(例えば、ドナー同種異系抗原)に対する感作は、臨床移植療法が直面している問題である。例えば、移植レシピエントの免疫系が同種異系材料を拒絶する傾向が、治療法の潜在的な有効性を大幅に低減し、かかる治療に関連する考えられるプラスの効果を減弱させる。幸いなことに、動物モデル及びヒト患者の両方において、低免疫原性細胞または組織移植が多数の障害及び病態の処置への科学的に実現可能で臨床的に有望なアプローチであるという確固たる証拠がある。
【0005】
したがって、レシピエントの免疫系による検出を回避する細胞ベースの治療法を生み出すための新規のアプローチ、組成物、及び方法に対する必要性が依然として存在する。
【0006】
一部の態様では、処置の必要がある患者を処置する方法が提供され、該方法は、低免疫原性細胞の集団を投与することを含み、ここで、低免疫原性細胞は、CD47をコードする第1の外因性ポリヌクレオチドと、(I)(a)主要組織適合性複合体(MHC)クラスI及び/またはクラスIIヒト白血球抗原の低減された発現、(b)MHCクラスI及びクラスIIヒト白血球抗原の低減された発現、(c)ベータ-2-ミクログロブリン(B2M)及び/またはMHCクラスIIトランス活性化因子(CIITA)の低減された発現、及び/または(d)B2M及びCIITAの低減された発現のうちの1つまたは複数と、を含み、ここで、低減された発現は、改変に起因し、低減された発現は、改変を含まない同じ細胞種の細胞と比べたものであり、(II)患者は、感作患者であり、ここで、患者は、(i)1つもしくは複数の同種異系抗原に対して感作されている、(ii)1つまたは複数の自己抗原に対して感作されている、(iii)以前の移植から感作されている、(iv)以前の妊娠から感作されている、(v)病態もしくは疾患に対する以前の処置を受けたことがある、及び/または(vi)組織移植もしくは臓器移植患者であり、低免疫原性細胞は、組織移植または臓器移植を施与する前、それと同時、及び/またはその後に投与される。
【0007】
一部の態様では、処置の必要がある患者を処置する方法が提供され、該方法は、膵島細胞の集団を投与することを含み、ここで、膵島細胞は、CD47をコードする第1の外因性ポリヌクレオチドと、(I)(a)主要組織適合性複合体(MHC)クラスI及び/またはクラスIIヒト白血球抗原の低減された発現、(b)MHCクラスI及びクラスIIヒト白血球抗原の低減された発現、(c)ベータ-2-ミクログロブリン(B2M)及び/またはMHCクラスIIトランス活性化因子(CIITA)の低減された発現、及び/または(d)B2M及びCIITAの低減された発現のうちの1つまたは複数と、を含み、ここで、低減された発現は、改変に起因し、低減された発現は、改変を含まない同じ細胞種の細胞と比べたものであり、(II)(a)患者は、感作患者ではないか、または(b)患者は、感作患者であり、ここで、患者は、(i)1つもしくは複数の同種異系抗原に対して感作されている、(ii)1つまたは複数の自己抗原に対して感作されている、(iii)以前の移植から感作されている、(iv)以前の妊娠から感作されている、(v)病態もしくは疾患に対する以前の処置を受けたことがある、及び/または(vi)組織もしくは臓器患者であり、膵島細胞は、組織移植または臓器移植を施与する前に投与される。
【0008】
一部の態様では、処置の必要がある患者を処置する方法が提供され、該方法は、心筋前駆細胞の集団を投与することを含み、ここで、心筋前駆細胞は、CD47をコードする第1の外因性ポリヌクレオチドと、(I)(a)主要組織適合性複合体(MHC)クラスI及び/またはクラスIIヒト白血球抗原の低減された発現、(b)MHCクラスI及びクラスIIヒト白血球抗原の低減された発現、(c)ベータ-2-ミクログロブリン(B2M)及び/またはMHCクラスIIトランス活性化因子(CIITA)の低減された発現、及び/または(d)B2M及びCIITAの低減された発現のうちの1つまたは複数と、を含み、ここで、低減された発現は、改変に起因し、低減された発現は、改変を含まない同じ細胞種の細胞と比べたものであり、(II)(a)患者は、感作患者ではないか、または(b)患者は、感作患者であり、ここで、患者は、(i)1つもしくは複数の同種異系抗原に対して感作されている、(ii)1つまたは複数の自己抗原に対して感作されている、(iii)以前の移植から感作されている、(iv)以前の妊娠から感作されている、(v)病態もしくは疾患に対する以前の処置を受けたことがある、及び/または(vi)組織もしくは臓器患者であり、心筋細胞は、組織移植または臓器移植を施与する前に投与される。
【0009】
一部の態様では、処置の必要がある患者を処置する方法が提供され、該方法は、グリア前駆細胞の集団を投与することを含み、ここで、グリア前駆細胞は、CD47をコードする第1の外因性ポリヌクレオチドと、(I)(a)主要組織適合性複合体(MHC)クラスI及び/またはクラスIIヒト白血球抗原の低減された発現、(b)MHCクラスI及びクラスIIヒト白血球抗原の低減された発現、(c)ベータ-2-ミクログロブリン(B2M)及び/またはMHCクラスIIトランス活性化因子(CIITA)の低減された発現、及び/または(d)B2M及びCIITAの低減された発現のうちの1つまたは複数と、を含み、ここで、低減された発現は、改変に起因し、低減された発現は、改変を含まない同じ細胞種の細胞と比べたものであり、(II)(a)患者は、感作患者ではないか、または(b)患者は、感作患者であり、ここで、患者は、(i)1つもしくは複数の同種異系抗原に対して感作されている、(ii)1つまたは複数の自己抗原に対して感作されている、(iii)以前の移植から感作されている、(iv)以前の妊娠から感作されている、(v)病態もしくは疾患に対する以前の処置を受けたことがある、及び/または(vi)組織もしくは臓器患者であり、グリア前駆細胞は、組織移植または臓器移植を施与する前に投与される。
【0010】
一部の実施形態では、患者は、感作患者であり、ここで、患者は、1つもしくは複数の同種異系抗原または1つもしくは複数の自己抗原に対して反応性のメモリーB細胞及び/またはメモリーT細胞を示す。一部の実施形態では、1つもしくは複数の同種異系抗原は、ヒト白血球抗原を含む。
【0011】
一部の実施形態では、患者は、以前の移植から感作されている感作患者であり、ここで、(a)以前の移植は、細胞移植、輸血、組織移植、及び臓器移植からなる群から選択され、任意選択で、以前の移植は、同種異系移植片であるか、または(b)以前の移植は、ヒト起源のキメラ、改変された非ヒト自家細胞、改変された自家細胞、自家組織、及び自家臓器からなる群から選択される移植であり、任意選択で、以前の移植は、自家移植片である。
【0012】
一部の実施形態では、患者は、以前の妊娠から感作されている感作患者であり、ここで、患者は、妊娠中の同種免疫化を以前に示したことがあり、任意選択で、妊娠中の同種免疫化は、胎児及び新生児の溶血性疾患(HDFN)、新生児同種免疫性好中球減少症(NAN)、または胎児及び新生児同種免疫性血小板減少症(FNAIT)である。
【0013】
一部の実施形態では、患者は、病態または疾患に対する以前の処置から感作されている感作患者であり、ここで、病態もしくは疾患は、患者が本明細書に記載される処置を受けている疾患または病態とは異なるか、またはそれと同じである。
【0014】
一部の実施形態では、患者は、病態もしくは疾患に対する以前の処置を受けたことがあり、ここで、以前の処置は、該細胞集団を含まず、(a)該細胞集団は、以前の処置と同じ病態もしくは疾患の処置のために投与される、(b)該細胞集団は、以前の処置と比較して患者における病態もしくは疾患の処置に対して強化された治療効果を示す、(c)該細胞集団は、以前の処置と比較して患者における病態もしくは疾患の処置に対してより長期の治療効果を示す、(d)以前の処置は、治療上有効であった、(e)以前の処置は、治療上有効でなかった、(f)患者は、以前の処置に対して免疫反応を起こした、及び/または(g)該細胞集団は、以前の処置とは異なる病態もしくは疾患の処置のために投与される。
【0015】
一部の実施形態では、以前の処置は、自殺遺伝子または安全スイッチシステムを含む治療用細胞の集団を投与することを含み、免疫反応は、自殺遺伝子または安全スイッチシステムの作動に応答して起こる。
【0016】
一部の実施形態では、以前の処置は、機械補助による処置を含み、任意選択で、機械補助による処置は、血液透析または補助人工心臓を含む。
【0017】
一部の実施形態では、以前の処置は、同種異系CAR-T細胞ベースの療法または自家CAR-T細胞ベースの療法を含み、ここで、自家CAR-T細胞ベースの療法は、ブレクスカブタゲンオートルユーセル、アキシカブタゲンシロルユーセル、イデカブタゲンビクルユーセル、リソカブタゲンマラルユーセル、チサゲンレクルユーセル、Cartesian TherapeuticsからのDescartes-08またはDescartes-11、NovartisからのCTL110、Poseida TherapeuticsからのP-BMCA-101、Autolus LimitedからのAUTO4、CellectisからのUCARTCS、Precision BiosciencesからのPBCAR19BまたはPBCAR269A、Fate TherapeuticsからのFT819、及びClyad OncologyからのCYAD-211からなる群から選択される。
【0018】
一部の実施形態では、患者は、アレルギーを有し、任意選択で、アレルギーは、花粉症、食物アレルギー、昆虫アレルギー、薬物アレルギー、及びアトピー性皮膚炎からなる群から選択されるアレルギーである。
【0019】
一部の実施形態では、該細胞は、DUX4、CD24、CD46、CD55、CD59、CD200、PD-L1、HLA-E、HLA-G、IDO1、FasL、IL-35、IL-39、CCL21、CCL22、Mfge8、Serpin B9、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される1つまたは複数の外因性ポリペプチドをさらに含む。
【0020】
一部の実施形態では、該細胞は、改変を含まない同じ細胞種の細胞と比べて、低減された発現レベルのCD142をさらに含む。一部の実施形態では、該細胞は、改変を含まない同じ細胞種の細胞と比べて、低減された発現レベルのCD46をさらに含む。一部の実施形態では、該細胞は、改変を含まない同じ細胞種の細胞と比べて、低減された発現レベルのCD59をさらに含む。
【0021】
一部の実施形態では、該細胞は、幹細胞から分化させられる。一部の実施形態では、幹細胞は、間葉系幹細胞である。一部の実施形態では、幹細胞は、胚性幹細胞である。一部の実施形態では、幹細胞は、多能性幹細胞であり、任意選択で、多能性幹細胞は、人工多能性幹細胞である。一部の実施形態では、該細胞は、心細胞、心筋前駆細胞、神経細胞、グリア前駆細胞、内皮細胞、T細胞、B細胞、膵島細胞、網膜色素上皮細胞、肝細胞、甲状腺細胞、皮膚細胞、血液細胞、形質細胞、血小板、腎細胞、上皮細胞、キメラ抗原受容体(CAR)T細胞、NK細胞、及びCAR-NK細胞からなる群から選択される。一部の実施形態では、該細胞は、初代細胞に由来する。一部の実施形態では、初代細胞は、初代T細胞、初代ベータ細胞、または初代網膜色素上皮細胞である。一部の実施形態では、初代T細胞に由来する細胞は、患者とは異なる1以上の対象からの初代T細胞を含むT細胞のプールに由来する。
【0022】
一部の実施形態では、該細胞は、キメラ抗原受容体(CAR)をコードする第2の外因性ポリヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、CARの抗原結合ドメインは、CD19、CD22、またはBCMAに結合する。
【0023】
一部の実施形態では、CARは、CD19特異的CARであり、それにより該細胞は、CD19 CAR T細胞である。一部の実施形態では、CARは、CD22特異的CARであり、それにより該細胞は、CD22 CAR T細胞である。一部の実施形態では、該細胞は、CD19特異的CAR及びCD22特異的CARを含み、それにより該細胞は、CD19/CD22 CAR T細胞である。一部の実施形態では、CD19特異的CAR及びCD22特異的CARは、単一のバイシストロン性ポリヌクレオチドによってコードされる。一部の実施形態では、CD19特異的CAR及びCD22特異的CARは、2つの別個のポリヌクレオチドによってコードされる。
【0024】
一部の実施形態では、第1の外因性ポリヌクレオチド及び/または第2の外因性ポリヌクレオチドは、セーフハーバー遺伝子座、標的遺伝子座、B2M遺伝子座、CIITA遺伝子座、TRAC遺伝子座、またはTRB遺伝子座を含むゲノム遺伝子座内に挿入される。
【0025】
一部の実施形態では、第1のゲノム遺伝子座及び第2のゲノム遺伝子座は同じである。一部の実施形態では、第1のゲノム遺伝子座及び第2のゲノム遺伝子座は異なる。一部の実施形態では、該細胞は各々、第3のゲノム遺伝子座内に挿入された第3の外因性ポリヌクレオチドをさらに含む。一部の実施形態では、第3のゲノム遺伝子座は、第1のゲノム遺伝子座または第2のゲノム遺伝子座と同じである。一部の実施形態では、第3のゲノム遺伝子座は、第1のゲノム遺伝子座及び/または第2のゲノム遺伝子座とは異なる。
【0026】
一部の実施形態では、セーフハーバー遺伝子座は、CCR5遺伝子座、PPP1R12C(別名、AAVS1)遺伝子、ROSA26遺伝子座、及びCLYBL遺伝子座からなる群から選択される。一部の実施形態では、標的遺伝子座は、CXCR4遺伝子座、アルブミン遺伝子座、SHS231遺伝子座、CD142遺伝子座、MICA遺伝子座、MICB遺伝子座、LRP1遺伝子座、HMGB1遺伝子座、ABO遺伝子座、RHD遺伝子座、FUT1遺伝子座、及びKDM5D遺伝子座からなる群から選択される。
【0027】
一部の実施形態では、CCR5遺伝子座内への挿入は、CCR5遺伝子のエクソン1~3、イントロン1~2、または別のコード配列(CDS)内である。一部の実施形態では、PPP1R12C遺伝子座内への挿入は、PPP1R12C遺伝子のイントロン1またはイントロン2である。一部の実施形態では、CLYBL遺伝子座内への挿入は、CLYBL遺伝子のイントロン2である。一部の実施形態では、ROSA26遺伝子座内への挿入は、ROSA26遺伝子のイントロン1である。一部の実施形態では、セーフハーバー遺伝子座内への挿入は、SHS231遺伝子座である。一部の実施形態では、CD142遺伝子座内への挿入は、CD142遺伝子のエクソン2または別のCDS内である。一部の実施形態では、MICA遺伝子座内への挿入は、MICA遺伝子のCDS内である。一部の実施形態では、MICB遺伝子座内への挿入は、MICB遺伝子のCDS内である。一部の実施形態では、B2M遺伝子座内への挿入は、B2M遺伝子のエクソン2または別のCDS内である。一部の実施形態では、CIITA遺伝子座内への挿入は、CIITA遺伝子のエクソン3または別のCDS内である。一部の実施形態では、TRAC遺伝子座内への挿入は、TRAC遺伝子のエクソン2または別のCDS内である。一部の実施形態では、TRB遺伝子座内への挿入は、TRB遺伝子のCDS内である。
【0028】
一部の実施形態では、初代T細胞に由来する細胞は、内在性T細胞受容体、細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA4)、プログラム細胞死(PD1)、及びプログラム細胞死リガンド1(PD-L1)のうちの1つまたは複数の低減された発現を含み、ここで、低減された発現は、改変に起因し、低減された発現は、改変を含まない同じ細胞種の細胞と比べたものである。一部の実施形態では、初代T細胞に由来する細胞は、TRACの低減された発現を含んでいた。
【0029】
一部の実施形態では、該細胞は、内在性T細胞受容体、細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA4)、プログラム細胞死(PD1)、及びプログラム細胞死リガンド1(PD-L1)のうちの1つまたは複数の低減された発現を含む人工多能性幹細胞に由来するT細胞である。一部の実施形態では、該細胞は、TRAC及びTRBの低減された発現を含む人工多能性幹細胞に由来するT細胞である。
【0030】
一部の実施形態では、外因性ポリヌクレオチドは、プロモーターに作動可能に連結されている。一部の実施形態では、プロモーターは、CAG及び/またはEF1aプロモーターである。
【0031】
一部の実施形態では、該細胞集団は、患者が1つもしくは複数の同種異系抗原に対して感作されてから少なくとも1日以上後、または患者が同種異系移植を受けてから少なくとも1日以上後に投与される。一部の実施形態では、該細胞集団は、患者が1つもしくは複数の同種異系抗原に対して感作されてから少なくとも1週間以上後、または患者が同種異系移植を受けてから少なくとも1週間以上後に投与される。
【0032】
一部の実施形態では、該細胞集団は、患者が1つもしくは複数の同種異系抗原に対して感作されてから少なくとも1ヶ月以上後、患者が同種異系移植を受けてから少なくとも1ヶ月以上後に投与される。
【0033】
一部の実施形態では、患者は、細胞集団の投与時に免疫応答の不在を示す。一部の実施形態では、該細胞集団の投与時の免疫応答の不在は、全身性の免疫応答の不在、適応免疫応答の不在、自然免疫応答の不在、T細胞応答の不在、B細胞応答の不在、及び全身性の急性細胞性免疫応答の不在からなる群から選択される。
【0034】
一部の実施形態では、患者は、(a)該細胞集団を投与したときの全身性のTH1活性化の不在、(b)該細胞集団を投与したときの末梢血単核細胞(PBMC)の免疫活性化の不在、(c)該細胞集団を投与したときの該細胞集団に対するドナー特異的IgG抗体の不在、(d)該細胞集団を投与したときの該細胞集団に対するIgM及びIgG抗体産生の不在、ならびに(e)該細胞集団を投与したときの該細胞集団の細胞傷害性T細胞による殺傷の不在のうちの1つまたは複数を示す。
【0035】
一部の実施形態では、患者は、該細胞集団の投与前または後の少なくとも3日以上、免疫抑制剤を投与されない。
【0036】
一部の実施形態では、該方法は、治療上有効量の該細胞集団を含む1回目の投与、回復期間、及び治療上有効量の該細胞集団を含む2回目の投与を含む、投与レジメンを含む。一部の実施形態では、回復期間は、少なくとも1ヶ月以上を含む。一部の実施形態では、回復期間は、少なくとも2ヶ月以上を含む。
【0037】
一部の実施形態では、2回目の投与は、1回目の投与からの細胞が患者においてもはや検出可能でないときに開始され、任意選択で、細胞は、自殺遺伝子または安全スイッチシステムからもたらされる排除に起因してもはや検出可能でない。
【0038】
一部の実施形態では、低免疫原性細胞は、自殺遺伝子または安全スイッチシステムによって排除され、2回目の投与は、1回目の投与からの細胞が患者においてもはや検出可能でないときに開始される。
【0039】
一部の実施形態では、該方法は、該投与レジメンを少なくとも2回施与することをさらに含む。一部の実施形態では、該細胞集団は、細胞欠損症の処置のために、または心臓、肺、腎臓、肝臓、膵臓、腸、胃、角膜、骨髄、血管、心臓弁、脳、脊髄、及び骨からなる群から選択される組織もしくは臓器における病態もしくは疾患の処置のための細胞療法として投与される。
【0040】
該方法の一部の実施形態では、(a)細胞欠損症は、神経変性疾患に関連するか、または細胞療法は、神経変性疾患の処置のためである、(b)細胞欠損症は、肝臓疾患に関連するか、または細胞療法は、肝臓疾患の処置のためである、(c)細胞欠損症は、角膜疾患に関連するか、または細胞療法は、角膜疾患の処置のためである、(d)細胞欠損症は、心血管病態もしくは疾患に関連するか、または細胞療法は、心血管病態もしくは疾患の処置のためである、(e)細胞欠損症は、糖尿病に関連するか、または細胞療法は、糖尿病の処置のためである、(f)細胞欠損症は、血管病態もしくは疾患に関連するか、または細胞療法は、血管病態もしくは疾患の処置のためである、(g)細胞欠損症は、自己免疫性甲状腺炎に関連するか、または細胞療法は、自己免疫性甲状腺炎の処置のためである、あるいは(h)細胞欠損症は、腎臓疾患に関連するか、または細胞療法は、腎臓疾患の処置のためのものである。
【0041】
該方法の一部の実施形態では、(a)神経変性疾患は、白質ジストロフィー、ハンチントン病、パーキンソン病、多発性硬化症、横断性脊髄炎、及びペリツェウス・メルツバッハ病(PMD)からなる群から選択される、(b)肝臓疾患は、肝硬変を含む、(c)角膜疾患は、フックスジストロフィーもしくは先天性遺伝性内皮ジストロフィーである、または(d)心血管疾患は、心筋梗塞またはうっ血性心不全である。
【0042】
一部の実施形態では、該細胞集団は、(a)グリア前駆細胞、乏突起膠細胞、星状細胞、及びドーパミン作動性ニューロンからなる群から選択される細胞(任意選択で、ドーパミン作動性ニューロンは、神経幹細胞、神経前駆細胞、未成熟ドーパミン作動性ニューロン、及び成熟ドーパミン作動性ニューロンからなる群から選択される)、(b)肝細胞もしくは肝前駆細胞、(c)角膜内皮前駆細胞もしくは角膜内皮細胞、(d)心筋細胞もしくは心筋前駆細胞、(e)膵臓ベータ島細胞を含む膵島細胞(任意選択で、膵島細胞は、膵島前駆細胞、未成熟膵島細胞、及び成熟膵島細胞からなる群から選択される)、(f)内皮細胞、(g)甲状腺前駆細胞、または(h)腎前駆体細胞もしくは腎細胞を含む。
【0043】
一部の実施形態では、該細胞集団は、がんの処置のために投与される。一部の実施形態では、がんは、B細胞急性リンパ芽球性白血病(B-ALL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、肝臓癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、結腸直腸癌、肺癌、非小細胞肺癌、急性骨髄性リンパ性白血病、多発性骨髄腫、胃癌、胃腺癌、膵臓腺癌、神経膠芽腫、神経芽細胞腫、肺扁平上皮癌、肝細胞癌、及び膀胱癌からなる群から選択される。
【0044】
一部の実施形態では、患者は、組織移植または臓器移植を受けており、任意選択で、組織移植または臓器移植もしくは部分的臓器移植は、心臓移植、肺移植、腎臓移植、肝臓移植、膵臓移植、腸移植、胃移植、角膜移植、骨髄移植、血管移植、心臓弁移植、骨移植、部分的肺移植、部分的腎臓移植、部分的肝臓移植、部分的膵臓移植、部分的腸移植、及び部分的角膜移植からなる群から選択される。
【0045】
一部の実施形態では、組織移植または臓器移植は、同種異系移植片移植である。一部の実施形態では、組織移植または臓器移植は、自家移植片移植である。
【0046】
一部の実施形態では、該細胞集団は、組織または臓器における細胞欠損症の処置のために投与され、組織移植または臓器移植は、同じ組織または臓器の置換のためのものである。一部の実施形態では、該細胞集団は、組織または臓器における細胞欠損症の処置のために投与され、組織移植または臓器移植は、異なる組織または臓器の置換のためのものである。一部の実施形態では、臓器移植は、腎臓移植であり、該細胞集団は、膵臓ベータ島細胞の集団である。一部の実施形態では、患者は、糖尿病を有する。一部の実施形態では、臓器移植は、心臓移植であり、該細胞集団は、ペースメーカー細胞の集団である。一部の実施形態では、臓器移植は、膵臓移植であり、該細胞集団は、ベータ島細胞の集団である。一部の実施形態では、臓器移植は、部分的肝臓移植であり、該細胞集団は、肝細胞もしくは肝前駆細胞の集団である。
【0047】
一部の態様では、患者における障害の処置のための低免疫原性細胞の集団の使用が本明細書で提供され、ここで、低免疫原性細胞は、CD47をコードする第1の外因性ポリヌクレオチドと、(I)(a)主要組織適合性複合体(MHC)クラスI及び/またはクラスIIヒト白血球抗原の低減された発現、(b)MHCクラスI及びクラスIIヒト白血球抗原の低減された発現、(c)ベータ-2-ミクログロブリン(B2M)及び/またはMHCクラスIIトランス活性化因子(CIITA)の低減された発現、及び/または(d)B2M及びCIITAの低減された発現のうちの1つまたは複数と、を含み、ここで、低減された発現は、改変に起因し、低減された発現は、改変を含まない同じ細胞種の細胞と比べたものであり、(II)(a)患者は、感作患者ではないか、または(b)患者は、感作患者である。
【0048】
一部の態様では、患者における障害の処置のための膵島細胞の集団の使用が本明細書で提供され、ここで、膵島細胞は、CD47をコードする第1の外因性ポリヌクレオチドと、(I)(a)主要組織適合性複合体(MHC)クラスI及び/またはクラスIIヒト白血球抗原の低減された発現、(b)MHCクラスI及びクラスIIヒト白血球抗原の低減された発現、(c)ベータ-2-ミクログロブリン(B2M)及び/またはMHCクラスIIトランス活性化因子(CIITA)の低減された発現、及び/または(d)B2M及びCIITAの低減された発現のうちの1つまたは複数と、を含み、ここで、低減された発現は、改変に起因し、低減された発現は、改変を含まない同じ細胞種の細胞と比べたものであり、(II)(a)患者は、感作患者ではないか、または(b)患者は、感作患者である。
【0049】
一部の態様では、患者における障害の処置のための心筋細胞の集団の使用が本明細書で提供され、ここで、心筋細胞は、CD47をコードする第1の外因性ポリヌクレオチドと、(I)(a)主要組織適合性複合体(MHC)クラスI及び/またはクラスIIヒト白血球抗原の低減された発現、(b)MHCクラスI及びクラスIIヒト白血球抗原の低減された発現、(c)ベータ-2-ミクログロブリン(B2M)及び/またはMHCクラスIIトランス活性化因子(CIITA)の低減された発現、及び/または(d)B2M及びCIITAの低減された発現のうちの1つまたは複数と、を含み、ここで、低減された発現は、改変に起因し、低減された発現は、改変を含まない同じ細胞種の細胞と比べたものであり、(II)(a)患者は、感作患者ではないか、または(b)患者は、感作患者である。
【0050】
一部の態様では、患者における障害の処置のためのグリア前駆細胞の集団の使用が本明細書で提供され、ここで、グリア前駆細胞は、CD47をコードする第1の外因性ポリヌクレオチドと、(I)(a)主要組織適合性複合体(MHC)クラスI及び/またはクラスIIヒト白血球抗原の低減された発現、(b)MHCクラスI及びクラスIIヒト白血球抗原の低減された発現、(c)ベータ-2-ミクログロブリン(B2M)及び/またはMHCクラスIIトランス活性化因子(CIITA)の低減された発現、及び/または(d)B2M及びCIITAの低減された発現のうちの1つまたは複数と、を含み、ここで、低減された発現は、改変に起因し、低減された発現は、改変を含まない同じ細胞種の細胞と比べたものであり、(II)(a)患者は、感作患者ではないか、または(b)患者は、感作患者である。
【0051】
一部の実施形態では、患者は、感作患者であり、ここで、患者は、1つもしくは複数の同種異系抗原または1つもしくは複数の自己抗原に対して反応性のメモリーB細胞及び/またはメモリーT細胞を示す。一部の実施形態では、1つもしくは複数の同種異系抗原は、ヒト白血球抗原を含む。
【0052】
一部の実施形態では、患者は、以前の移植から感作されている感作患者であり、ここで、以前の移植は、細胞移植、輸血、組織移植、及び臓器移植からなる群から選択され、任意選択で、以前の移植は、同種異系移植片であるか、または以前の移植は、ヒト起源のキメラ、改変された非ヒト自家細胞、改変された自家細胞、自家組織、及び自家臓器からなる群から選択される移植であり、任意選択で、以前の移植は、自家移植片である。
【0053】
一部の実施形態では、患者は、以前の妊娠から感作されている感作患者であり、ここで、患者は、妊娠中の同種免疫化を以前に示したことがあり、任意選択で、妊娠中の同種免疫化は、胎児及び新生児の溶血性疾患(HDFN)、新生児同種免疫性好中球減少症(NAN)、または胎児及び新生児同種免疫性血小板減少症(FNAIT)である。
【0054】
一部の実施形態では、患者は、病態または疾患に対する以前の処置から感作されている感作患者である。一部の実施形態では、患者は、病態もしくは疾患に対する以前の処置を受けたことがあり、ここで、以前の処置は、該細胞集団を含まず、(a)該細胞集団は、以前の処置と同じ病態もしくは疾患の処置のために投与される、(b)該細胞集団は、以前の処置と比較して患者における病態もしくは疾患の処置に対して強化された治療効果を示す、(c)該細胞集団は、以前の処置と比較して患者における病態もしくは疾患の処置に対してより長期の治療効果を示す、(d)以前の処置は、治療上有効であった、(e)以前の処置は、治療上有効でなかった、(f)患者は、以前の処置に対して免疫反応を起こした、及び/または(g)該細胞集団は、以前の処置とは異なる病態もしくは疾患の処置のために投与される。
【0055】
一部の実施形態では、以前の処置は、自殺遺伝子または安全スイッチシステムを含む治療用細胞の集団を投与することを含み、免疫反応は、自殺遺伝子または安全スイッチシステムの作動に応答して起こる。
【0056】
一部の実施形態では、以前の処置は、機械補助による処置を含み、任意選択で、機械補助による処置は、血液透析または補助人工心臓を含む。
【0057】
一部の実施形態では、患者は、アレルギーを有し、任意選択で、アレルギーは、花粉症、食物アレルギー、昆虫アレルギー、薬物アレルギー、及びアトピー性皮膚炎からなる群から選択されるアレルギーである。
【0058】
一部の実施形態では、該細胞は、DUX4、CD24、CD46、CD55、CD59、CD200、PD-L1、HLA-E、HLA-G、IDO1、FasL、IL-35、IL-39、CCL21、CCL22、Mfge8、Serpin B9、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される1つまたは複数の外因性ポリペプチドをさらに含む。
【0059】
一部の実施形態では、該細胞は、改変を含まない同じ細胞種の細胞と比べて、低減された発現レベルのCD142をさらに含む。一部の実施形態では、該細胞は、改変を含まない同じ細胞種の細胞と比べて、低減された発現レベルのCD46をさらに含む。一部の実施形態では、該細胞は、改変を含まない同じ細胞種の細胞と比べて、低減された発現レベルのCD59をさらに含む。
【0060】
一部の実施形態では、該細胞は、幹細胞から分化させられる。一部の実施形態では、幹細胞は、間葉系幹細胞である。一部の実施形態では、幹細胞は、胚性幹細胞である。一部の実施形態では、幹細胞は、多能性幹細胞であり、任意選択で、多能性幹細胞は、人工多能性幹細胞である。
【0061】
一部の実施形態では、該細胞は、心細胞、神経細胞、内皮細胞、T細胞、B細胞、膵島細胞、網膜色素上皮細胞、肝細胞、甲状腺細胞、皮膚細胞、血液細胞、形質細胞、血小板、腎細胞、上皮細胞、キメラ抗原受容体(CAR)T細胞、NK細胞、及びCAR-NK細胞からなる群から選択される。一部の実施形態では、該細胞は、初代細胞に由来する。一部の実施形態では、初代細胞は、初代T細胞、初代ベータ細胞、または初代網膜色素上皮細胞である。一部の実施形態では、初代T細胞に由来する細胞は、患者とは異なる1以上の対象からの初代T細胞を含むT細胞のプールに由来する。
【0062】
一部の実施形態では、該細胞は、キメラ抗原受容体(CAR)をコードする第2の外因性ポリヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、CARの抗原結合ドメインは、CD19、CD22、またはBCMAに結合する。一部の実施形態では、CARは、CD19特異的CARであり、それにより該細胞は、CD19 CAR T細胞である。一部の実施形態では、CARは、CD22特異的CARであり、それにより該細胞は、CD22 CAR T細胞である。一部の実施形態では、該細胞は、CD19特異的CAR及びCD22特異的CARを含み、それにより該細胞は、CD19/CD22 CAR T細胞である。一部の実施形態では、CD19特異的CAR及びCD22特異的CARは、単一のバイシストロン性ポリヌクレオチドによってコードされる。一部の実施形態では、CD19特異的CAR及びCD22特異的CARは、2つの別個のポリヌクレオチドによってコードされる。
【0063】
一部の実施形態では、第1の外因性ポリヌクレオチド及び/または第2の外因性ポリヌクレオチドは、セーフハーバー遺伝子座、標的遺伝子座、B2M遺伝子座、CIITA遺伝子座、TRAC遺伝子座、またはTRB遺伝子座を含むゲノム遺伝子座内に挿入される。
【0064】
一部の実施形態では、第1のゲノム遺伝子座及び第2のゲノム遺伝子座は同じである。一部の実施形態では、第1のゲノム遺伝子座及び第2のゲノム遺伝子座は異なる。一部の実施形態では、該細胞は各々、第3のゲノム遺伝子座内に挿入された第3の外因性ポリヌクレオチドをさらに含む。一部の実施形態では、第3のゲノム遺伝子座は、第1のゲノム遺伝子座または第2のゲノム遺伝子座と同じである。一部の実施形態では、第3のゲノム遺伝子座は、第1のゲノム遺伝子座及び/または第2のゲノム遺伝子座とは異なる。
【0065】
一部の実施形態では、セーフハーバー遺伝子座は、CCR5遺伝子座、PPP1R12C(別名、AAVS1)遺伝子、及びCLYBL遺伝子座からなる群から選択される。
【0066】
一部の実施形態では、標的遺伝子座は、CXCR4遺伝子座、アルブミン遺伝子座、SHS231遺伝子座、ROSA26遺伝子座、CD142遺伝子座、MICA遺伝子座、MICB遺伝子座、LRP1遺伝子座、HMGB1遺伝子座、ABO遺伝子座、RHD遺伝子座、FUT1遺伝子座、及びKDM5D遺伝子座からなる群から選択される。
【0067】
一部の実施形態では、CCR5遺伝子座内への挿入は、CCR5遺伝子のエクソン1~3、イントロン1~2、または別のコード配列(CDS)内である。一部の実施形態では、PPP1R12C遺伝子座内への挿入は、PPP1R12C遺伝子のイントロン1またはイントロン2である。一部の実施形態では、CLYBL遺伝子座内への挿入は、CLYBL遺伝子のイントロン2である。一部の実施形態では、ROSA26遺伝子座内への挿入は、ROSA26遺伝子のイントロン1である。一部の実施形態では、セーフハーバー遺伝子座内への挿入は、SHS231遺伝子座である。一部の実施形態では、CD142遺伝子座内への挿入は、CD142遺伝子のエクソン2または別のCDS内である。一部の実施形態では、MICA遺伝子座内への挿入は、MICA遺伝子のCDS内である。一部の実施形態では、MICB遺伝子座内への挿入は、MICB遺伝子のCDS内である。一部の実施形態では、B2M遺伝子座内への挿入は、B2M遺伝子のエクソン2または別のCDS内である。一部の実施形態では、CIITA遺伝子座内への挿入は、CIITA遺伝子のエクソン3または別のCDS内である。一部の実施形態では、TRAC遺伝子座内への挿入は、TRAC遺伝子のエクソン2または別のCDS内である。一部の実施形態では、TRB遺伝子座内への挿入は、TRB遺伝子のCDS内である。
【0068】
一部の実施形態では、初代T細胞に由来する細胞は、(a)内在性T細胞受容体、(b)細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA4)、(c)プログラム細胞死(PD1)、及び(d)プログラム細胞死リガンド1(PD-L1)のうちの1つまたは複数の低減された発現を含み、ここで、低減された発現は、改変に起因し、低減された発現は、改変を含まない同じ細胞種の細胞と比べたものである。一部の実施形態では、初代T細胞に由来する細胞は、TRACの低減された発現を含む。
【0069】
一部の実施形態では、該細胞は、(a)内在性T細胞受容体、(b)細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA4)、(c)プログラム細胞死(PD1)、及び(d)プログラム細胞死リガンド1(PD-L1)のうちの1つまたは複数の低減された発現を含む人工多能性幹細胞に由来するT細胞であり、ここで、低減された発現は、改変に起因し、低減された発現は、改変を含まない同じ細胞種の細胞と比べたものである。一部の実施形態では、該細胞は、TRAC及びTRBの低減された発現を含む人工多能性幹細胞に由来するT細胞である。
【0070】
一部の実施形態では、外因性ポリヌクレオチドは、プロモーターに作動可能に連結されている。一部の実施形態では、プロモーターは、CAG及び/またはEF1aプロモーターである。
【0071】
一部の実施形態では、該細胞集団は、患者が1つもしくは複数の同種異系抗原に対して感作されてから少なくとも1日以上後、または患者が同種異系移植を受けてから少なくとも1日以上後に投与される。一部の実施形態では、該細胞集団は、患者が1つもしくは複数の同種異系抗原に対して感作されてから少なくとも1週間以上後、または患者が同種異系移植を受けてから少なくとも1週間以上後に投与される。一部の実施形態では、該細胞集団は、患者が1つもしくは複数の同種異系抗原に対して感作されてから少なくとも1ヶ月以上後、患者が同種異系移植を受けてから少なくとも1ヶ月以上後に投与される。
【0072】
一部の実施形態では、患者は、細胞集団の投与時に免疫応答の不在を示す。一部の実施形態では、該細胞集団の投与時の免疫応答の不在は、全身性の免疫応答の不在、適応免疫応答の不在、自然免疫応答の不在、T細胞応答の不在、B細胞応答の不在、及び全身性の急性細胞性免疫応答の不在からなる群から選択される。
【0073】
一部の実施形態では、患者は、(a)該細胞集団を投与したときの全身性のTH1活性化の不在、(b)該細胞集団を投与したときの末梢血単核細胞(PBMC)の免疫活性化の不在、(c)該細胞集団を投与したときの該細胞集団に対するドナー特異的IgG抗体の不在、(d)該細胞集団を投与したときの該細胞集団に対するIgM及びIgG抗体産生の不在、ならびに(e)該細胞集団を投与したときの該細胞集団の細胞傷害性T細胞による殺傷の不在のうちの1つまたは複数を示す。
【0074】
一部の実施形態では、患者は、該細胞集団の投与前または後の少なくとも3日以上、免疫抑制剤を投与されない。
【0075】
一部の実施形態では、該方法は、(a)治療上有効量の該細胞集団を含む1回目の投与、(b)回復期間、及び(c)治療上有効量の該細胞集団を含む2回目の投与を含む、投与レジメンを含む。一部の実施形態では、回復期間は、少なくとも1ヶ月以上を含む。一部の実施形態では、回復期間は、少なくとも2ヶ月以上を含む。一部の実施形態では、2回目の投与は、1回目の投与からの細胞が患者においてもはや検出可能でないときに開始される。
【0076】
一部の実施形態では、低免疫原性細胞は、自殺遺伝子または安全スイッチシステムによって排除され、2回目の投与は、1回目の投与からの細胞が患者においてもはや検出可能でないときに開始される。
【0077】
一部の実施形態では、該細胞の使用は、該投与レジメンを少なくとも2回施与することをさらに含む。
【0078】
一部の実施形態では、該細胞集団は、細胞欠損症の処置のために、または心臓、肺、腎臓、肝臓、膵臓、腸、胃、角膜、骨髄、血管、心臓弁、脳、脊髄、及び骨からなる群から選択される組織もしくは臓器における病態もしくは疾患の処置のための細胞療法として投与される。
【0079】
一部の実施形態では、(a)細胞欠損症は、神経変性疾患に関連するか、または細胞療法は、神経変性疾患の処置のためである、(b)細胞欠損症は、肝臓疾患に関連するか、または細胞療法は、肝臓疾患の処置のためである、(c)細胞欠損症は、角膜疾患に関連するか、または細胞療法は、角膜疾患の処置のためである、(d)細胞欠損症は、心血管病態もしくは疾患に関連するか、または細胞療法は、心血管病態もしくは疾患の処置のためである、(e)細胞欠損症は、糖尿病に関連するか、または細胞療法は、糖尿病の処置のためである、(f)細胞欠損症は、血管病態もしくは疾患に関連するか、または細胞療法は、血管病態もしくは疾患の処置のためである、(g)細胞欠損症は、自己免疫性甲状腺炎に関連するか、または細胞療法は、自己免疫性甲状腺炎の処置のためである、あるいは(h)細胞欠損症は、腎臓疾患に関連するか、または細胞療法は、腎臓疾患の処置のためのものである。
【0080】
一部の実施形態では、(a)神経変性疾患は、白質ジストロフィー、ハンチントン病、パーキンソン病、多発性硬化症、横断性脊髄炎、及びペリツェウス・メルツバッハ病(PMD)からなる群から選択される、(b)肝臓疾患は、肝硬変を含む、(c)角膜疾患は、フックスジストロフィーもしくは先天性遺伝性内皮ジストロフィーである、または(d)心血管疾患は、心筋梗塞またはうっ血性心不全である。
【0081】
一部の実施形態では、該細胞集団は、(a)グリア前駆細胞、(b)乏突起膠細胞、星状細胞、及びドーパミン作動性ニューロンからなる群から選択される細胞(任意選択で、ドーパミン作動性ニューロンは、神経幹細胞、神経前駆細胞、未成熟ドーパミン作動性ニューロン、及び成熟ドーパミン作動性ニューロンからなる群から選択される)、(c)肝細胞もしくは肝前駆細胞、(d)角膜内皮前駆細胞もしくは角膜内皮細胞、(e)心筋細胞もしくは心筋前駆細胞、(f)膵臓ベータ島細胞を含む膵島細胞(任意選択で、膵島細胞は、膵島前駆細胞、未成熟膵島細胞、及び成熟膵島細胞からなる群から選択される)、(g)内皮細胞、(h)甲状腺前駆細胞、または(i)腎前駆体細胞もしくは腎細胞を含む。
【0082】
一部の実施形態では、該細胞集団は、がんの処置のために投与される。一部の実施形態では、がんは、B細胞急性リンパ芽球性白血病(B-ALL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、肝臓癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、結腸直腸癌、肺癌、非小細胞肺癌、急性骨髄性リンパ性白血病、多発性骨髄腫、胃癌、胃腺癌、膵臓腺癌、神経膠芽腫、神経芽細胞腫、肺扁平上皮癌、肝細胞癌、及び膀胱癌からなる群から選択される。
【0083】
一部の実施形態では、患者は、組織移植または臓器移植を受けており、任意選択で、組織移植または臓器移植もしくは部分的臓器移植は、心臓移植、肺移植、腎臓移植、肝臓移植、膵臓移植、腸移植、胃移植、角膜移植、骨髄移植、血管移植、心臓弁移植、骨移植、部分的肺移植、部分的腎臓移植、部分的肝臓移植、部分的膵臓移植、部分的腸移植、及び部分的角膜移植からなる群から選択される。
【0084】
一部の実施形態では、組織移植または臓器移植は、同種異系移植片移植である。一部の実施形態では、組織移植または臓器移植は、自家移植片移植である。
【0085】
一部の実施形態では、該細胞集団は、組織または臓器における細胞欠損症の処置のために投与され、組織移植または臓器移植は、同じ組織または臓器の置換のためのものである。一部の実施形態では、該細胞集団は、組織または臓器における細胞欠損症の処置のために投与され、組織移植または臓器移植は、異なる組織または臓器の置換のためのものである。一部の実施形態では、臓器移植は、腎臓移植であり、該細胞集団は、腎前駆体細胞もしくは腎細胞の集団である。一部の実施形態では、患者は、糖尿病を有する。一部の実施形態では、臓器移植は、心臓移植であり、該細胞集団は、心筋前駆細胞またはペースメーカー細胞の集団である。一部の実施形態では、臓器移植は、膵臓移植であり、該細胞集団は、膵臓ベータ島細胞の集団である。一部の実施形態では、臓器移植は、部分的肝臓移植であり、該細胞集団は、肝細胞もしくは肝前駆細胞の集団である。
【0086】
一部の態様では、処置の必要がある患者を処置する方法が本明細書で提供され、該方法は、低免疫原性細胞の集団を投与することを含み、ここで、低免疫原性細胞は、CD47をコードする第1の外因性ポリヌクレオチドと、CARをコードする第2の外因性ポリヌクレオチドと、(I)(a)主要組織適合性複合体(MHC)クラスI及び/またはクラスIIヒト白血球抗原の低減された発現、(b)MHCクラスI及びクラスIIヒト白血球抗原の低減された発現、(c)ベータ-2-ミクログロブリン(B2M)及び/またはMHCクラスIIトランス活性化因子(CIITA)の低減された発現、及び/または(d)B2M及びCIITAの低減された発現のうちの1つまたは複数と、を含み、ここで、低減された発現は、改変に起因し、低減された発現は、改変を含まない同じ細胞種の細胞と比べたものであり、(II)(a)患者は、感作患者ではないか、または(b)患者は、感作患者であり、ここで、患者は、(i)1つもしくは複数の同種異系抗原に対して感作されている、(ii)1つまたは複数の自己抗原に対して感作されている、(iii)以前の移植から感作されている、(iv)以前の妊娠から感作されている、(v)病態もしくは疾患に対する以前の処置を受けたことがある、及び/または(vi)組織もしくは臓器患者であり、低免疫原性細胞は、組織移植または臓器移植を施与する前に投与される。
【0087】
一部の実施形態では、患者は、感作患者であり、ここで、患者は、1つもしくは複数の同種異系抗原または1つもしくは複数の自己抗原に対して反応性のメモリーB細胞及び/またはメモリーT細胞を示す。一部の実施形態では、1つもしくは複数の同種異系抗原は、ヒト白血球抗原を含む。
【0088】
一部の実施形態では、患者は、以前の移植から感作されている感作患者であり、ここで、以前の移植は、細胞移植、輸血、組織移植、及び臓器移植からなる群から選択され、任意選択で、以前の移植は、同種異系移植片であるか、または以前の移植は、ヒト起源のキメラ、改変された非ヒト自家細胞、改変された自家細胞、自家組織、及び自家臓器からなる群から選択される移植であり、任意選択で、以前の移植は、自家移植片である。
【0089】
一部の実施形態では、患者は、以前の妊娠から感作されている感作患者であり、ここで、患者は、妊娠中の同種免疫化を以前に示したことがあり、任意選択で、妊娠中の同種免疫化は、胎児及び新生児の溶血性疾患(HDFN)、新生児同種免疫性好中球減少症(NAN)、または胎児及び新生児同種免疫性血小板減少症(FNAIT)である。
【0090】
一部の実施形態では、患者は、病態または疾患に対する以前の処置から感作されている感作患者である。一部の実施形態では、患者は、病態もしくは疾患に対する以前の処置を受けたことがあり、ここで、以前の処置は、該細胞集団を含まず、(a)該細胞集団は、以前の処置と同じ病態もしくは疾患の処置のために投与される、(b)該細胞集団は、以前の処置と比較して患者における病態もしくは疾患の処置に対して強化された治療効果を示す、(c)該細胞集団は、以前の処置と比較して患者における病態もしくは疾患の処置に対してより長期の治療効果を示す、(d)以前の処置は、治療上有効であった、(e)以前の処置は、治療上有効でなかった、(f)患者は、以前の処置に対して免疫反応を起こした、及び/または(g)該細胞集団は、以前の処置とは異なる病態もしくは疾患の処置のために投与される。
【0091】
一部の実施形態では、以前の処置は、自殺遺伝子または安全スイッチシステムを含む治療用細胞の集団を投与することを含み、免疫反応は、自殺遺伝子または安全スイッチシステムの作動に応答して起こる。
【0092】
一部の実施形態では、以前の処置は、機械補助による処置を含み、任意選択で、機械補助による処置は、血液透析または補助人工心臓を含む。
【0093】
一部の実施形態では、患者は、アレルギーを有し、任意選択で、アレルギーは、花粉症、食物アレルギー、昆虫アレルギー、薬物アレルギー、及びアトピー性皮膚炎からなる群から選択されるアレルギーである。
【0094】
一部の実施形態では、該細胞は、DUX4、CD24、CD46、CD55、CD59、CD200、PD-L1、HLA-E、HLA-G、IDO1、FasL、IL-35、IL-39、CCL21、CCL22、Mfge8、Serpin B9、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される1つまたは複数の外因性ポリペプチドをさらに含む。
【0095】
一部の実施形態では、該細胞は、改変を含まない同じ細胞種の細胞と比べて、低減された発現レベルのCD142をさらに含む。一部の実施形態では、該細胞は、改変を含まない同じ細胞種の細胞と比べて、低減された発現レベルのCD46をさらに含む。一部の実施形態では、該細胞は、改変を含まない同じ細胞種の細胞と比べて、低減された発現レベルのCD59をさらに含む。
【0096】
一部の実施形態では、該細胞は、幹細胞から分化させられる。一部の実施形態では、幹細胞は、間葉系幹細胞である。一部の実施形態では、幹細胞は、胚性幹細胞である。一部の実施形態では、幹細胞は、多能性幹細胞であり、任意選択で、多能性幹細胞は、人工多能性幹細胞である。一部の実施形態では、該細胞は、CAR T細胞またはCAR-NK細胞である。一部の実施形態では、該細胞は、初代T細胞に由来する。一部の実施形態では、該細胞は、患者とは異なる1以上の対象からの初代T細胞を含むT細胞のプールに由来する。
【0097】
一部の実施形態では、CARの抗原結合ドメインは、CD19、CD22、またはBCMAに結合する。一部の実施形態では、CARは、CD19特異的CARであり、それにより該細胞は、CD19 CAR T細胞である。一部の実施形態では、CARは、CD22特異的CARであり、それにより該細胞は、CD22 CAR T細胞である。一部の実施形態では、該細胞は、CD19特異的CAR及びCD22特異的CARを含み、それにより該細胞は、CD19/CD22 CAR T細胞である。一部の実施形態では、CD19特異的CAR及びCD22特異的CARは、単一のバイシストロン性ポリヌクレオチドによってコードされる。
【0098】
一部の実施形態では、CD19特異的CAR及びCD22特異的CARは、2つの別個のポリヌクレオチドによってコードされる。
【0099】
一部の実施形態では、第1の外因性ポリヌクレオチド及び/または第2の外因性ポリヌクレオチドは、セーフハーバー遺伝子座、標的遺伝子座、B2M遺伝子座、CIITA遺伝子座、TRAC遺伝子座、またはTRB遺伝子座を含むゲノム遺伝子座内に挿入される。一部の実施形態では、第1のゲノム遺伝子座及び第2のゲノム遺伝子座は同じである。一部の実施形態では、第1のゲノム遺伝子座及び第2のゲノム遺伝子座は異なる。
【0100】
一部の実施形態では、該細胞は各々、第3のゲノム遺伝子座内に挿入された第3の外因性ポリヌクレオチドをさらに含む。一部の実施形態では、第3のゲノム遺伝子座は、第1のゲノム遺伝子座または第2のゲノム遺伝子座と同じである。一部の実施形態では、第3のゲノム遺伝子座は、第1のゲノム遺伝子座及び/または第2のゲノム遺伝子座とは異なる。
【0101】
一部の実施形態では、セーフハーバー遺伝子座は、CCR5遺伝子座、PPP1R12C(別名、AAVS1)遺伝子、及びCLYBL遺伝子座からなる群から選択される。一部の実施形態では、標的遺伝子座は、CXCR4遺伝子座、アルブミン遺伝子座、SHS231遺伝子座、ROSA26遺伝子座、CD142遺伝子座、MICA遺伝子座、MICB遺伝子座、LRP1遺伝子座、HMGB1遺伝子座、ABO遺伝子座、RHD遺伝子座、FUT1遺伝子座、及びKDM5D遺伝子座からなる群から選択される。
【0102】
一部の実施形態では、CCR5遺伝子座内への挿入は、CCR5遺伝子のエクソン1~3、イントロン1~2、または別のコード配列(CDS)内である。一部の実施形態では、PPP1R12C遺伝子座内への挿入は、PPP1R12C遺伝子のイントロン1またはイントロン2である。一部の実施形態では、CLYBL遺伝子座内への挿入は、CLYBL遺伝子のイントロン2である。一部の実施形態では、ROSA26遺伝子座内への挿入は、ROSA26遺伝子のイントロン1である。一部の実施形態では、セーフハーバー遺伝子座内への挿入は、SHS231遺伝子座である。一部の実施形態では、CD142遺伝子座内への挿入は、CD142遺伝子のエクソン2または別のCDS内である。一部の実施形態では、MICA遺伝子座内への挿入は、MICA遺伝子のCDS内である。一部の実施形態では、MICB遺伝子座内への挿入は、MICB遺伝子のCDS内である。一部の実施形態では、B2M遺伝子座内への挿入は、B2M遺伝子のエクソン2または別のCDS内である。一部の実施形態では、CIITA遺伝子座内への挿入は、CIITA遺伝子のエクソン3または別のCDS内である。一部の実施形態では、TRAC遺伝子座内への挿入は、TRAC遺伝子のエクソン2または別のCDS内である。一部の実施形態では、TRB遺伝子座内への挿入は、TRB遺伝子のCDS内である。
【0103】
一部の実施形態では、初代T細胞に由来する細胞は、内在性T細胞受容体、細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA4)、プログラム細胞死(PD1)、及びプログラム細胞死リガンド1(PD-L1)のうちの1つまたは複数の低減された発現を含み、ここで、低減された発現は、改変に起因し、低減された発現は、改変を含まない同じ細胞種の細胞と比べたものである。一部の実施形態では、初代T細胞に由来する細胞は、TRACの低減された発現を含んでいた。
【0104】
一部の実施形態では、該細胞は、内在性T細胞受容体、細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA4)、プログラム細胞死(PD1)、及びプログラム細胞死リガンド1(PD-L1)のうちの1つまたは複数の低減された発現を含む人工多能性幹細胞に由来するT細胞であり、ここで、低減された発現は、改変に起因し、低減された発現は、改変を含まない同じ細胞種の細胞と比べたものである。一部の実施形態では、該細胞は、TRAC及びTRBの低減された発現を含む人工多能性幹細胞に由来するT細胞である。
【0105】
一部の実施形態では、外因性ポリヌクレオチドは、プロモーターに作動可能に連結されている。一部の実施形態では、プロモーターは、CAG及び/またはEF1aプロモーターである。
【0106】
一部の実施形態では、該細胞集団は、患者が1つもしくは複数の同種異系抗原に対して感作されてから少なくとも1日以上後、または患者が同種異系移植を受けてから少なくとも1日以上後に投与される。一部の実施形態では、該細胞集団は、患者が1つもしくは複数の同種異系抗原に対して感作されてから少なくとも1週間以上後、または患者が同種異系移植を受けてから少なくとも1週間以上後に投与される。一部の実施形態では、該細胞集団は、患者が1つもしくは複数の同種異系抗原に対して感作されてから少なくとも1ヶ月以上後、患者が同種異系移植を受けてから少なくとも1ヶ月以上後に投与される。
【0107】
一部の実施形態では、患者は、細胞集団の投与時に免疫応答の不在を示す。一部の実施形態では、該細胞集団の投与時の免疫応答の不在は、全身性の免疫応答の不在、適応免疫応答の不在、自然免疫応答の不在、T細胞応答の不在、B細胞応答の不在、及び全身性の急性細胞性免疫応答の不在からなる群から選択される。
【0108】
一部の実施形態では、患者は、(i)該細胞集団を投与したときの全身性のTH1活性化の不在、(ii)該細胞集団を投与したときの末梢血単核細胞(PBMC)の免疫活性化の不在、(iii)該細胞集団を投与したときの該細胞集団に対するドナー特異的IgG抗体の不在、(iv)該細胞集団を投与したときの該細胞集団に対するIgM及びIgG抗体産生の不在、ならびに(v)該細胞集団を投与したときの該細胞集団の細胞傷害性T細胞による殺傷の不在のうちの1つまたは複数を示す。
【0109】
一部の実施形態では、患者は、該細胞集団の投与前または後の少なくとも3日以上、免疫抑制剤を投与されない。
【0110】
一部の実施形態では、該方法は、治療上有効量の該細胞集団を含む1回目の投与、回復期間、及び治療上有効量の該細胞集団を含む2回目の投与を含む、投与レジメンを含む。一部の実施形態では、回復期間は、少なくとも1ヶ月以上を含む。一部の実施形態では、回復期間は、少なくとも2ヶ月以上を含む。
【0111】
一部の実施形態では、2回目の投与は、1回目の投与からの細胞が患者においてもはや検出可能でないときに開始される。
【0112】
一部の実施形態では、低免疫原性細胞は、自殺遺伝子または安全スイッチシステムによって排除され、2回目の投与は、1回目の投与からの細胞が患者においてもはや検出可能でないときに開始される。
【0113】
一部の実施形態では、該方法は、該投与レジメンを少なくとも2回施与することをさらに含む。
【0114】
一部の実施形態では、該細胞集団は、がんの処置のために投与される。一部の実施形態では、がんは、B細胞急性リンパ芽球性白血病(B-ALL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、肝臓癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、結腸直腸癌、肺癌、非小細胞肺癌、急性骨髄性リンパ性白血病、多発性骨髄腫、胃癌、胃腺癌、膵臓腺癌、神経膠芽腫、神経芽細胞腫、肺扁平上皮癌、肝細胞癌、及び膀胱癌からなる群から選択される。
【0115】
一態様では、患者における障害の処置のための低免疫原性細胞の集団の使用が提供され、ここで、低免疫原性細胞は、CD47をコードする第1の外因性ポリヌクレオチドと、CARをコードする第2の外因性ポリヌクレオチドと、(I)(a)主要組織適合性複合体(MHC)クラスI及び/またはクラスIIヒト白血球抗原の低減された発現、(b)MHCクラスI及びクラスIIヒト白血球抗原の低減された発現、(c)ベータ-2-ミクログロブリン(B2M)及び/またはMHCクラスIIトランス活性化因子(CIITA)の低減された発現、及び/または(d)B2M及びCIITAの低減された発現のうちの1つまたは複数と、を含み、ここで、低減された発現は、改変に起因し、低減された発現は、改変を含まない同じ細胞種の細胞と比べたものであり、(II)患者は、感作患者ではないか、または患者は、感作患者である。
【0116】
一部の実施形態では、患者は、感作患者であり、ここで、患者は、1つもしくは複数の同種異系抗原または1つもしくは複数の自己抗原に対して反応性のメモリーB細胞及び/またはメモリーT細胞を示す。
【0117】
一部の実施形態では、1つもしくは複数の同種異系抗原は、ヒト白血球抗原を含む。
【0118】
一部の実施形態では、患者は、以前の移植から感作されている感作患者であり、ここで、以前の移植は、細胞移植、輸血、組織移植、及び臓器移植からなる群から選択され、任意選択で、以前の移植は、同種異系移植片であるか、または以前の移植は、ヒト起源のキメラ、改変された非ヒト自家細胞、改変された自家細胞、自家組織、及び自家臓器からなる群から選択される移植であり、任意選択で、以前の移植は、自家移植片である。
【0119】
一部の実施形態では、患者は、以前の妊娠から感作されている感作患者であり、ここで、患者は、妊娠中の同種免疫化を以前に示したことがあり、任意選択で、妊娠中の同種免疫化は、胎児及び新生児の溶血性疾患(HDFN)、新生児同種免疫性好中球減少症(NAN)、または胎児及び新生児同種免疫性血小板減少症(FNAIT)である。
【0120】
一部の実施形態では、患者は、病態または疾患に対する以前の処置から感作されている感作患者である。一部の実施形態では、患者は、病態もしくは疾患に対する以前の処置を受けたことがあり、ここで、以前の処置は、該細胞集団を含まず、(a)該細胞集団は、以前の処置と同じ病態もしくは疾患の処置のために投与される、(b)該細胞集団は、以前の処置と比較して患者における病態もしくは疾患の処置に対して強化された治療効果を示す、(c)該細胞集団は、以前の処置と比較して患者における病態もしくは疾患の処置に対してより長期の治療効果を示す、(d)以前の処置は、治療上有効であった、(e)以前の処置は、治療上有効でなかった、(f)患者は、以前の処置に対して免疫反応を起こした、及び/または(g)該細胞集団は、以前の処置とは異なる病態もしくは疾患の処置のために投与される。一部の実施形態では、以前の処置は、自殺遺伝子または安全スイッチシステムを含む治療用細胞の集団を投与することを含み、免疫反応は、自殺遺伝子または安全スイッチシステムの作動に応答して起こる。一部の実施形態では、以前の処置は、機械補助による処置を含み、任意選択で、機械補助による処置は、血液透析または補助人工心臓を含む。
【0121】
一部の実施形態では、患者は、アレルギーを有し、任意選択で、アレルギーは、花粉症、食物アレルギー、昆虫アレルギー、薬物アレルギー、及びアトピー性皮膚炎からなる群から選択されるアレルギーである。
【0122】
一部の実施形態では、該細胞は、DUX4、CD24、CD46、CD55、CD59、CD200、PD-L1、HLA-E、HLA-G、IDO1、FasL、IL-35、IL-39、CCL21、CCL22、Mfge8、Serpin B9、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される1つまたは複数の外因性ポリペプチドをさらに含む。
【0123】
一部の実施形態では、該細胞は、改変を含まない同じ細胞種の細胞と比べて、低減された発現レベルのCD142をさらに含む。一部の実施形態では、該細胞は、改変を含まない同じ細胞種の細胞と比べて、低減された発現レベルのCD46をさらに含む。一部の実施形態では、該細胞は、改変を含まない同じ細胞種の細胞と比べて、低減された発現レベルのCD59をさらに含む。
【0124】
一部の実施形態では、該細胞は、幹細胞から分化させられる。一部の実施形態では、幹細胞は、間葉系幹細胞である。一部の実施形態では、幹細胞は、胚性幹細胞である。一部の実施形態では、幹細胞は、多能性幹細胞であり、任意選択で、多能性幹細胞は、人工多能性幹細胞である。一部の実施形態では、該細胞は、CAR T細胞またはCAR-NK細胞である。該細胞は、幹細胞から分化させられる。一部の実施形態細胞は、初代T細胞に由来する。一部の実施形態では、該細胞は、患者とは異なる1以上の対象からの初代T細胞を含むT細胞のプールに由来する。
【0125】
一部の実施形態では、CARの抗原結合ドメインは、CD19、CD22、またはBCMAに結合する。一部の実施形態では、CARは、CD19特異的CARであり、それにより該細胞は、CD19 CAR T細胞である。一部の実施形態では、CARは、CD22特異的CARであり、それにより該細胞は、CD22 CAR T細胞である。一部の実施形態では、該細胞は、CD19特異的CAR及びCD22特異的CARを含み、それにより該細胞は、CD19/CD22 CAR T細胞である。一部の実施形態では、CD19特異的CAR及びCD22特異的CARは、単一のバイシストロン性ポリヌクレオチドによってコードされる。一部の実施形態では、CD19特異的CAR及びCD22特異的CARは、2つの別個のポリヌクレオチドによってコードされる。
【0126】
一部の実施形態では、第1の外因性ポリヌクレオチド及び/または第2の外因性ポリヌクレオチドは、セーフハーバー遺伝子座、標的遺伝子座、B2M遺伝子座、CIITA遺伝子座、TRAC遺伝子座、またはTRB遺伝子座を含むゲノム遺伝子座内に挿入される。
【0127】
一部の実施形態では、第1のゲノム遺伝子座及び第2のゲノム遺伝子座は同じである。一部の実施形態では、第1のゲノム遺伝子座及び第2のゲノム遺伝子座は異なる。一部の実施形態では、該細胞は各々、第3のゲノム遺伝子座内に挿入された第3の外因性ポリヌクレオチドをさらに含む。一部の実施形態では、第3のゲノム遺伝子座は、第1のゲノム遺伝子座または第2のゲノム遺伝子座と同じである。一部の実施形態では、第3のゲノム遺伝子座は、第1のゲノム遺伝子座及び/または第2のゲノム遺伝子座とは異なる。
【0128】
一部の実施形態では、セーフハーバー遺伝子座は、CCR5遺伝子座、PPP1R12C(別名、AAVS1)遺伝子、及びCLYBL遺伝子座からなる群から選択される。一部の実施形態では、標的遺伝子座は、CXCR4遺伝子座、アルブミン遺伝子座、SHS231遺伝子座、ROSA26遺伝子座、CD142遺伝子座、MICA遺伝子座、MICB遺伝子座、LRP1遺伝子座、HMGB1遺伝子座、ABO遺伝子座、RHD遺伝子座、FUT1遺伝子座、及びKDM5D遺伝子座からなる群から選択される。一部の実施形態では、CCR5遺伝子座内への挿入は、CCR5遺伝子のエクソン1~3、イントロン1~2、または別のコード配列(CDS)内である。一部の実施形態では、PPP1R12C遺伝子座内への挿入は、PPP1R12C遺伝子のイントロン1またはイントロン2である。一部の実施形態では、CLYBL遺伝子座内への挿入は、CLYBL遺伝子のイントロン2である。
【0129】
一部の実施形態では、ROSA26遺伝子座内への挿入は、ROSA26遺伝子のイントロン1である。一部の実施形態では、セーフハーバー遺伝子座内への挿入は、SHS231遺伝子座である。一部の実施形態では、CD142遺伝子座内への挿入は、CD142遺伝子のエクソン2または別のCDS内である。一部の実施形態では、MICA遺伝子座内への挿入は、MICA遺伝子のCDS内である。一部の実施形態では、MICB遺伝子座内への挿入は、MICB遺伝子のCDS内である。一部の実施形態では、B2M遺伝子座内への挿入は、B2M遺伝子のエクソン2または別のCDS内である。一部の実施形態では、CIITA遺伝子座内への挿入は、CIITA遺伝子のエクソン3または別のCDS内である。一部の実施形態では、TRAC遺伝子座内への挿入は、TRAC遺伝子のエクソン2または別のCDS内である。一部の実施形態では、TRB遺伝子座内への挿入は、TRB遺伝子のCDS内である。
【0130】
一部の実施形態では、初代T細胞に由来する細胞は、(a)内在性T細胞受容体、(b)細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA4)、(c)プログラム細胞死(PD1)、及び(d)プログラム細胞死リガンド1(PD-L1)のうちの1つまたは複数の低減された発現を含み、ここで、低減された発現は、改変に起因し、低減された発現は、改変を含まない同じ細胞種の細胞と比べたものである。
【0131】
一部の実施形態では、初代T細胞に由来する細胞は、TRACの低減された発現を含んでいた。
【0132】
一部の実施形態では、該細胞は、(a)内在性T細胞受容体、(b)細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA4)、(c)プログラム細胞死(PD1)、及び(d)プログラム細胞死リガンド1(PD-L1)のうちの1つまたは複数の低減された発現を含む人工多能性幹細胞に由来するT細胞であり、ここで、低減された発現は、改変に起因し、低減された発現は、改変を含まない同じ細胞種の細胞と比べたものである。一部の実施形態では、該細胞は、TRAC及びTRBの低減された発現を含む人工多能性幹細胞に由来するT細胞である。
【0133】
一部の実施形態では、外因性ポリヌクレオチドは、プロモーターに作動可能に連結されている。一部の実施形態では、プロモーターは、CAG及び/またはEF1aプロモーターである。
【0134】
一部の実施形態では、該細胞集団は、患者が1つもしくは複数の同種異系抗原に対して感作されてから少なくとも1日以上後、または患者が同種異系移植を受けてから少なくとも1日以上後に投与される。一部の実施形態では、該細胞集団は、患者が1つもしくは複数の同種異系抗原に対して感作されてから少なくとも1週間以上後、または患者が同種異系移植を受けてから少なくとも1週間以上後に投与される。一部の実施形態では、該細胞集団は、患者が1つもしくは複数の同種異系抗原に対して感作されてから少なくとも1ヶ月以上後、患者が同種異系移植を受けてから少なくとも1ヶ月以上後に投与される。
【0135】
一部の実施形態では、患者は、細胞集団の投与時に免疫応答の不在を示す。一部の実施形態では、該細胞集団の投与時の免疫応答の不在は、全身性の免疫応答の不在、適応免疫応答の不在、自然免疫応答の不在、T細胞応答の不在、B細胞応答の不在、及び全身性の急性細胞性免疫応答の不在からなる群から選択される。一部の実施形態では、患者は、(a)該細胞集団を投与したときの全身性のTH1活性化の不在、(b)該細胞集団を投与したときの末梢血単核細胞(PBMC)の免疫活性化の不在、(c)該細胞集団を投与したときの該細胞集団に対するドナー特異的IgG抗体の不在、(d)該細胞集団を投与したときの該細胞集団に対するIgM及びIgG抗体産生の不在、ならびに(e)該細胞集団を投与したときの該細胞集団の細胞傷害性T細胞による殺傷の不在のうちの1つまたは複数を示す。
【0136】
一部の実施形態では、患者は、該細胞集団の投与前または後の少なくとも3日以上、免疫抑制剤を投与されない。
【0137】
一部の実施形態では、該方法は、(a)治療上有効量の該細胞集団を含む1回目の投与、(b)回復期間、及び(c)治療上有効量の該細胞集団を含む2回目の投与を含む、投与レジメンを含む。一部の実施形態では、回復期間は、少なくとも1ヶ月以上を含む。一部の実施形態では、回復期間は、少なくとも2ヶ月以上を含む。一部の実施形態では、2回目の投与は、1回目の投与からの細胞が患者においてもはや検出可能でないときに開始される。一部の実施形態では、低免疫原性細胞は、自殺遺伝子または安全スイッチシステムによって排除され、2回目の投与は、1回目の投与からの細胞が患者においてもはや検出可能でないときに開始される。一部の実施形態では、本明細書で提供される細胞の使用は、該投与レジメンを少なくとも2回施与することをさらに含む。
【0138】
一部の実施形態では、該細胞集団は、がんの処置のために投与される。一部の実施形態では、がんは、B細胞急性リンパ芽球性白血病(B-ALL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、肝臓癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、結腸直腸癌、肺癌、非小細胞肺癌、急性骨髄性リンパ性白血病、多発性骨髄腫、胃癌、胃腺癌、膵臓腺癌、神経膠芽腫、神経芽細胞腫、肺扁平上皮癌、肝細胞癌、及び膀胱癌からなる群から選択される。
【0139】
記載される使用または方法の一部の実施形態では、以前の処置は、同種異系CAR-T細胞ベースの療法または自家CAR-T細胞ベースの療法を含み、ここで、自家CAR-T細胞ベースの療法は、ブレクスカブタゲンオートルユーセル、アキシカブタゲンシロルユーセル、イデカブタゲンビクルユーセル、リソカブタゲンマラルユーセル、チサゲンレクルユーセル、Cartesian TherapeuticsからのDescartes-08またはDescartes-11、NovartisからのCTL110、Poseida TherapeuticsからのP-BMCA-101、Autolus LimitedからのAUTO4、CellectisからのUCARTCS、Precision BiosciencesからのPBCAR19BまたはPBCAR269A、Fate TherapeuticsからのFT819、及びClyad OncologyからのCYAD-211からなる群から選択される。
【図面の簡単な説明】
【0140】
図1A】野生型ヒト及びHIP iPSCをクロスオーバーで投与したNHPの血清からの一連の代表的なELISPOT定量である。1回目の注射で野生型ヒトiPSC(野生型異種)、2回目の注射で野生型異種、及び3回目の注射でヒトHIP iPSC(HIP異種)を与えた試験群の結果を示す。野生型異種注射及びHIP異種注射を与えた後に実行した全てのアッセイは、それぞれ横線付きのバー及び縦線付きのバーとして示される。種々の時点で、例えば、細胞投与の処置前(「pre-Tx」)、7日目、13日目、75日目、ならびにクロスオーバー注射時(「pre-Tx」)及びクロスオーバー注射後7日目、13日目、及び75日目を含むそれ以降に、分析のために血液を採取した。下の括弧内の日を表す数字は、1回目の注射(1行目)、2回目の注射(2行目)、及び3回目の注射(3行目)に対する、血液が採取された時間を表示する。
図1B】野生型ヒトiPSCをクロスオーバーで投与したNHPの血清からの一連の代表的なELISPOT定量である。1回目の注射で野生型ヒトiPSC(野生型異種)、2回目の注射で野生型異種、及び3回目の注射でヒトHIP iPSC(HIP異種)を与えた試験群の結果を示す。野生型異種注射及びHIP異種注射を与えた後に実行した全てのアッセイは、それぞれ横線付きのバー及び縦線付きのバーとして示される。種々の時点で、例えば、細胞投与の処置前(「pre-Tx」)、7日目、13日目、75日目、ならびにクロスオーバー注射時(「pre-Tx」)及びクロスオーバー注射後7日目、13日目、及び75日目を含むそれ以降に、分析のために血液を採取した。下の括弧内の日を表す数字は、1回目の注射(1行目)、2回目の注射(2行目)、及び3回目の注射(3行目)に対する、血液が採取された時間を表示する。
図1C】ヒトHIP iPSCをクロスオーバーで投与したNHPの血清からの一連の代表的なELISPOT定量である。1回目の注射で野生型ヒトiPSC(野生型異種)、2回目の注射で野生型異種、及び3回目の注射でヒトHIP iPSC(HIP異種)を与えた試験群の結果を示す。野生型異種注射及びHIP異種注射を与えた後に実行した全てのアッセイは、それぞれ横線付きのバー及び縦線付きのバーとして示される。種々の時点で、例えば、細胞投与の処置前(「pre-Tx」)、7日目、13日目、75日目、ならびにクロスオーバー注射時(「pre-Tx」)及びクロスオーバー注射後7日目、13日目、及び75日目を含むそれ以降に、分析のために血液を採取した。下の括弧内の日を表す数字は、1回目の注射(1行目)、2回目の注射(2行目)、及び3回目の注射(3行目)に対する、血液が採取された時間を表示する。
図1D】野生型ヒト及びHIP iPSCをクロスオーバーで投与したNHPの血清からの一連の代表的なELISPOT定量である。1回目の注射でHIP異種、2回目の注射でHIP異種、及び3回目の注射で野生型異種を与えた試験群の結果を示す。野生型異種注射及びHIP異種注射を与えた後に実行した全てのアッセイは、それぞれ横線付きのバー及び縦線付きのバーとして示される。種々の時点で、例えば、細胞投与の処置前(「pre-Tx」)、7日目、13日目、75日目、ならびにクロスオーバー注射時(「pre-Tx」)及びクロスオーバー注射後7日目、13日目、及び75日目を含むそれ以降に、分析のために血液を採取した。下の括弧内の日を表す数字は、1回目の注射(1行目)、2回目の注射(2行目)、及び3回目の注射(3行目)に対する、血液が採取された時間を表示する。
図1E】ヒトHIP iPSCをクロスオーバーで投与したNHPの血清からの一連の代表的なELISPOT定量である。1回目の注射でHIP異種、2回目の注射でHIP異種、及び3回目の注射で野生型異種を与えた試験群の結果を示す。野生型異種注射及びHIP異種注射を与えた後に実行した全てのアッセイは、それぞれ横線付きのバー及び縦線付きのバーとして示される。種々の時点で、例えば、細胞投与の処置前(「pre-Tx」)、7日目、13日目、75日目、ならびにクロスオーバー注射時(「pre-Tx」)及びクロスオーバー注射後7日目、13日目、及び75日目を含むそれ以降に、分析のために血液を採取した。下の括弧内の日を表す数字は、1回目の注射(1行目)、2回目の注射(2行目)、及び3回目の注射(3行目)に対する、血液が採取された時間を表示する。
図1F】野生型ヒトiPSCをクロスオーバーで投与したNHPの血清からの一連の代表的なELISPOT定量である。1回目の注射でHIP異種、2回目の注射でHIP異種、及び3回目の注射で野生型異種を与えた試験群の結果を示す。野生型異種注射及びHIP異種注射を与えた後に実行した全てのアッセイは、それぞれ横線付きのバー及び縦線付きのバーとして示される。種々の時点で、例えば、細胞投与の処置前(「pre-Tx」)、7日目、13日目、75日目、ならびにクロスオーバー注射時(「pre-Tx」)及びクロスオーバー注射後7日目、13日目、及び75日目を含むそれ以降に、分析のために血液を採取した。下の括弧内の日を表す数字は、1回目の注射(1行目)、2回目の注射(2行目)、及び3回目の注射(3行目)に対する、血液が採取された時間を表示する。
図2A】野生型またはHIPヒトiPSCをクロスオーバーで投与したNHPの血清中のドナー特異的IgG抗体結合を示す一連の代表的なグラフである。1回目の注射で野生型異種、2回目の注射で野生型異種、及び3回目の注射でHIP異種を与えた試験群の結果を示す。野生型異種及びHIP異種に対して実行した全てのアッセイは、それぞれ横線付きの円及び縦線付きの円として示される。下の括弧内の日を表す数字は、1回目の注射(1行目)、2回目の注射(2行目)、及び3回目の注射(3行目)に対する、血液が採取された時間を表示する。
図2B】HIPヒトiPSCをクロスオーバーで投与したNHPの血清中のドナー特異的IgG抗体結合を示す一連の代表的なグラフである。1回目の注射で野生型異種、2回目の注射で野生型異種、及び3回目の注射でHIP異種を与えた試験群の結果を示す。HIP異種注射を与えた後のIgG DSAレベルを示す。下の括弧内の日を表す数字は、1回目の注射(1行目)、2回目の注射(2行目)、及び3回目の注射(3行目)に対する、血液が採取された時間を表示する。
図3A】野生型またはHIPヒトiPSCをクロスオーバーで投与したNHPの血清中のドナー特異的IgG抗体結合を示す一連の代表的なグラフである。1回目の注射でHIP異種、2回目の注射でHIP異種、及び3回目の注射で野生型異種を与えた試験群の結果を示す。野生型異種及びHIP異種に対して実行した全てのアッセイは、それぞれ横線付きの円及び縦線付きの円として示される。下の括弧内の日を表す数字は、1回目の注射(1行目)、2回目の注射(2行目)、及び3回目の注射(3行目)に対する、血液が採取された時間を表示する。
図3B】野生型ヒトiPSCをクロスオーバーで投与したNHPの血清中のドナー特異的IgG抗体結合を示す一連の代表的なグラフである。1回目の注射でHIP異種、2回目の注射でHIP異種、及び3回目の注射で野生型異種を与えた試験群の結果を示す。野生型異種注射を与えた後のIgG DSAレベルを示す。下の括弧内の日を表す数字は、1回目の注射(1行目)、2回目の注射(2行目)、及び3回目の注射(3行目)に対する、血液が採取された時間を表示する。
図4A】野生型またはHIPヒトiPSCをクロスオーバーで投与したNHPの血清中の総IgM抗体を示す一連の代表的なグラフである。1回目の注射でヒトHIP iPSC(HIP異種)、2回目の注射でHIP異種、及び3回目の注射で野生型異種を与えた試験群の結果を示す。下の括弧内の日を表す数字は、1回目の注射(1行目)、2回目の注射(2行目)、及び3回目の注射(3行目)に対する、血液が採取された時間を表示する。
図4B】野生型ヒトiPSCをクロスオーバーで投与したNHPの血清中の総IgM抗体を示す一連の代表的なグラフである。1回目の注射でヒトHIP iPSC(HIP異種)、2回目の注射でHIP異種、及び3回目の注射で野生型異種を与えた試験群の結果を示す。野生型異種注射を与えた後の総IgM抗体レベルを示す。下の括弧内の日を表す数字は、1回目の注射(1行目)、2回目の注射(2行目)、及び3回目の注射(3行目)に対する、血液が採取された時間を表示する。
図4C】HIPヒトiPSCをクロスオーバーで投与したNHPの血清中の総IgM抗体を示す一連の代表的なグラフである。1回目の注射でヒトHIP iPSC(HIP異種)、2回目の注射でHIP異種、及び3回目の注射で野生型異種を与えた試験群の結果を示す。2回目の注射でHIP異種を与えた後の総IgM抗体レベルを示す。下の括弧内の日を表す数字は、1回目の注射(1行目)、2回目の注射(2行目)、及び3回目の注射(3行目)に対する、血液が採取された時間を表示する。
図5A】野生型またはHIPヒトiPSCをクロスオーバーで投与したNHPの血清中の総IgM抗体を示す一連の代表的なグラフである。1回目の注射で野生型異種、2回目の注射で野生型異種、及び3回目の注射でHIP異種を与えた試験群の結果を示す。下の括弧内の日を表す数字は、1回目の注射(1行目)、2回目の注射(2行目)、及び3回目の注射(3行目)に対する、血液が採取された時間を表示する。
図5B】野生型ヒトiPSCをクロスオーバーで投与したNHPの血清中の総IgM抗体を示す一連の代表的なグラフである。1回目の注射で野生型異種、2回目の注射で野生型異種、及び3回目の注射でHIP異種を与えた試験群の結果を示す。2回目の注射で野生型異種を与えた後の総IgM抗体レベルを示す。下の括弧内の日を表す数字は、1回目の注射(1行目)、2回目の注射(2行目)、及び3回目の注射(3行目)に対する、血液が採取された時間を表示する。
図5C】HIPヒトiPSCをクロスオーバーで投与したNHPの血清中の総IgM抗体を示す一連の代表的なグラフである。1回目の注射で野生型異種、2回目の注射で野生型異種、及び3回目の注射でHIP異種を与えた試験群の結果を示す。3回目の注射でHIP異種を与えた後の総IgM抗体レベルを示す。下の括弧内の日を表す数字は、1回目の注射(1行目)、2回目の注射(2行目)、及び3回目の注射(3行目)に対する、血液が採取された時間を表示する。
図6A】野生型またはHIPヒトiPSCをクロスオーバーで投与したNHPの血清中の総IgG抗体を示す一連の代表的なグラフである。1回目の注射でHIP異種、2回目の注射でHIP異種、及び3回目の注射で野生型異種を与えた試験群の結果を示す。下の括弧内の日を表す数字は、1回目の注射(1行目)、2回目の注射(2行目)、及び3回目の注射(3行目)に対する、血液が採取された時間を表示する。
図6B】野生型ヒトiPSCをクロスオーバーで投与したNHPの血清中の総IgG抗体を示す一連の代表的なグラフである。1回目の注射でHIP異種、2回目の注射でHIP異種、及び3回目の注射で野生型異種を与えた試験群の結果を示す。3回目の注射で野生型異種を与えた後の総IgG抗体レベルを示す。下の括弧内の日を表す数字は、1回目の注射(1行目)、2回目の注射(2行目)、及び3回目の注射(3行目)に対する、血液が採取された時間を表示する。
図6C】HIPヒトiPSCをクロスオーバーで投与したNHPの血清中の総IgG抗体を示す一連の代表的なグラフである。1回目の注射でHIP異種、2回目の注射でHIP異種、及び3回目の注射で野生型異種を与えた試験群の結果を示す。2回目の注射でHIP異種を与えた後の総IgG抗体レベルを示す。下の括弧内の日を表す数字は、1回目の注射(1行目)、2回目の注射(2行目)、及び3回目の注射(3行目)に対する、血液が採取された時間を表示する。
図7A】野生型またはHIPヒトiPSCをクロスオーバーで投与したNHPの血清中の総IgG抗体を示す一連の代表的なグラフである。1回目の注射でHIP異種、2回目の注射で野生型異種、及び3回目の注射でHIP異種を与えた試験群の結果を示す。下の括弧内の日を表す数字は、1回目の注射(1行目)、2回目の注射(2行目)、及び3回目の注射(3行目)に対する、血液が採取された時間を表示する。
図7B】野生型ヒトiPSCをクロスオーバーで投与したNHPの血清中の総IgG抗体を示す一連の代表的なグラフである。1回目の注射でHIP異種、2回目の注射で野生型異種、及び3回目の注射でHIP異種を与えた試験群の結果を示す。2回目の注射で野生型異種を与えた後の総IgG抗体レベルを示す。下の括弧内の日を表す数字は、1回目の注射(1行目)、2回目の注射(2行目)、及び3回目の注射(3行目)に対する、血液が採取された時間を表示する。
図7C】HIPヒトiPSCをクロスオーバーで投与したNHPの血清中の総IgG抗体を示す一連の代表的なグラフである。1回目の注射でHIP異種、2回目の注射で野生型異種、及び3回目の注射でHIP異種を与えた試験群の結果を示す。3回目の注射でHIP異種を与えた後の総IgG抗体レベルを示す。下の括弧内の日を表す数字は、1回目の注射(1行目)、2回目の注射(2行目)、及び3回目の注射(3行目)に対する、血液が採取された時間を表示する。
図8A】野生型NHPへのHIPヒトiPSCのナチュラルキラー(NK)細胞媒介性殺傷の不在を示す一連の代表的なグラフである。1回目の注射でHIP異種、2回目の注射でHIP異種、及び3回目の注射で野生型異種を与えた試験群におけるNK細胞媒介性殺傷を示す。1回目の注射段階でのヒトHIP iPSCのNK細胞殺傷の不在が、リアルタイム細胞バイオセンサーデータグラフで図示される。
図8B】野生型NHPへのHIPヒトiPSCのナチュラルキラー(NK)細胞媒介性殺傷の不在を示す一連の代表的なグラフである。1回目の注射でHIP異種、2回目の注射でHIP異種、及び3回目の注射で野生型異種を与えた試験群におけるNK細胞媒介性殺傷を示す。2回目の注射段階でのヒトHIP iPSCのNK細胞殺傷の不在が、リアルタイム細胞バイオセンサーデータグラフで図示される。
図8C】野生型NHPへのHIPヒトiPSCのナチュラルキラー(NK)細胞媒介性殺傷の不在を示す一連の代表的なグラフである。1回目の注射でHIP異種、2回目の注射でHIP異種、及び3回目の注射で野生型異種を与えた試験群におけるNK細胞媒介性殺傷を示す。標的細胞殺傷パーセントが左側のy軸上に(平均値±標準偏差)、殺傷速度が右側のy軸上に(殺傷t1/2 -1、平均値±標準誤差;中空の三角形として示される)示される。野生型異種及びHIP異種注射を与えた後に実行したアッセイは、それぞれ横線付きの円及び縦線付きの円として示される。下の括弧内の日を表す数字は、1回目の注射(1行目)、2回目の注射(2行目)、及び3回目の注射(3行目)に対する、血液が採取された時間を表示する。
図8D】野生型NHPへのHIPヒトiPSCのナチュラルキラー(NK)細胞媒介性殺傷の不在を示す一連の代表的なグラフである。1回目の注射で野生型異種、2回目の注射で野生型異種、及び3回目の注射でHIP異種を与えた試験群におけるNK細胞媒介性殺傷を示す。3回目の注射段階でのヒトHIP iPSCのNK細胞殺傷の不在が、リアルタイム細胞バイオセンサーデータグラフで図示される。
図8E】野生型NHPへのHIPヒトiPSCのナチュラルキラー(NK)細胞媒介性殺傷の不在を示す一連の代表的なグラフである。1回目の注射で野生型異種、2回目の注射で野生型異種、及び3回目の注射でHIP異種を与えた試験群におけるNK細胞媒介性殺傷を示す。標的細胞殺傷パーセントが左側のy軸上に(平均値±標準偏差)、殺傷速度が右側のy軸上に(殺傷t1/2 -1、平均値±標準誤差;中空の三角形として示される)示される。野生型異種及びHIP異種注射を与えた後に実行したアッセイは、それぞれ横線付きの円及び縦線付きの円として示される。下の括弧内の日を表す数字は、1回目の注射(1行目)、2回目の注射(2行目)、及び3回目の注射(3行目)に対する、血液が採取された時間を表示する。
図9】Aは、同種異系NHPレシピエントの左脚における移植されたHIPアカゲザルiPSCの代表的なBLI画像を示す。経時的なBLIシグナル、及び0日目または移植前でのレベルに対する経時的なBLIシグナルのパーセントがBLI画像の下に示される。Bは、移植後6週間での注射部位からの組織の免疫組織学的画像を示す。画像は、移植されたHIPアカゲザルiPSC及びその子孫を示す、SMA陽性血管及びルシフェラーゼ陽性細胞を示す。
図10】同種異系NHPレシピエントの左脚における移植された野生型アカゲザルiPSC(上段)、及び野生型アカゲザルiPSCの移植に次いで5週間感作された同じレシピエントの右脚における移植されたHIPアカゲザルiPSC(下段)の代表的なBLI画像を示す。経時的なBLIシグナル、及び0日目または移植前でのレベルに対する経時的なBLIシグナルのパーセントがBLI画像の下に示される。
図11】別の同種異系NHPレシピエントの左脚における移植された野生型アカゲザルiPSC(上段)、及び野生型アカゲザルiPSCの移植に次いで5週間感作された同じレシピエントの右脚における移植されたHIPアカゲザルiPSC(下段)の代表的なBLI画像を示す。経時的なBLIシグナル、及び0日目または移植前でのレベルに対する経時的なBLIシグナルのパーセントがBLI画像の下に示される。
図12A】HIPアカゲザルiPSC対野生型アカゲザルiPSCのクロスオーバー研究からの同種異系NHPレシピエントの代表的なBLI画像を示す。上段は、同種異系NHPレシピエントの左脚における移植されたHIPアカゲザルiPSC及びその子孫の画像を示し、下段は、同じレシピエントの右脚における移植された野生型アカゲザルiPSCを示す。経時的なBLIシグナル、及び0日目または移植前でのレベルに対する経時的なBLIシグナルのパーセントがBLI画像の下に示される。
図12B】HIPアカゲザルiPSC対野生型アカゲザルiPSCのクロスオーバー研究からの同種異系NHPレシピエントの代表的なBLI画像を示す。また、右下には、初回HIP iPSC移植後8週間及び9週間での同種異系NHPレシピエントの左脚における移植されたHIPアカゲザルiPSC及びその子孫の画像が図示される。経時的なBLIシグナル、及び0日目または移植前でのレベルに対する経時的なBLIシグナルのパーセントがBLI画像の下に示される。
図13A】同種異系NHPレシピエントの左脚における初回の移植された野生型アカゲザルiPSC、及びクロスオーバー注射時の同じレシピエントの右脚における移植されたHIPアカゲザルiPSCの代表的な同種異系NHPレシピエントについての代表的な経時的BLIシグナルを示す。
図13B】同種異系NHPレシピエントの左脚における初回の移植されたHIPアカゲザルiPSC、及びクロスオーバー注射時の同じレシピエントの右脚における移植された野生型アカゲザルiPSCの代表的な同種異系NHPレシピエントについての代表的な経時的BLIシグナルを示す。
図13C】1回目の注射において左脚に投与されたHIPアカゲザルiPSCの同種異系NHPレシピエントの、0日目から9週目までの代表的なBLI画像を示す。経時的なBLIシグナル、及び0日目または移植前でのレベルに対する経時的なBLIシグナルのパーセントがBLI画像の下に示される。
図14A】NHPレシピエントへの異種間移植前のヒト野生型及びHIP iPSCの特性評価を示す。野生型異種培養物の形態を示す。
図14B】NHPレシピエントへの異種間移植前のヒト野生型及びHIP iPSCの特性評価を示す。HIP異種培養物の形態を示す。
図14C】NHPレシピエントへの異種間移植前のヒト野生型及びHIP iPSCの特性評価を示す。野生型異種上でのHLAクラスI及びクラスIIならびにCD47の表面発現をフローサイトメトリーによって評定し、ヒストグラムとして図示した。
図14D】NHPレシピエントへの異種間移植前のヒト野生型及びHIP iPSCの特性評価を示す。HIP異種上でのHLAクラスI及びクラスIIならびにCD47の表面発現をフローサイトメトリーによって評定し、ヒストグラムとして図示した。
図14E】NHPレシピエントへの異種間移植前のヒト野生型及びHIP iPSCの特性評価を示す。移植前の野生型異種及びHIP異種の細胞調製物の生存率を示す。NHPレシピエントの中への生存率は90%超(平均値±標準偏差)であった。
図14F】NHPレシピエントへの異種間移植前のヒト野生型及びHIP iPSCの特性評価を示す。野生型異種iPSCを皮下注射されたNSGマウスの代表的なBLI画像及び経時的なBLIシグナルを示す。
図14G】NHPレシピエントへの異種間移植前のヒト野生型及びHIP iPSCの特性評価を示す。HIP異種iPSCを皮下注射されたNSGマウスの代表的なBLI画像及び経時的なBLIシグナルを示す。
図15A】NHPレシピエントへの同種異系移植前のアカゲザル野生型及びHIP iPSCの特性評価を示す。野生型同種異系培養物の形態を示す。
図15B】NHPレシピエントへの同種異系移植前のアカゲザル野生型及びHIP iPSCの特性評価を示す。HIP同種異系培養物の形態を示す。
図15C】NHPレシピエントへの同種異系移植前のアカゲザル野生型及びHIP iPSCの特性評価を示す。HIP同種異系培養物の形態を示す。
図15D】NHPレシピエントへの同種異系移植前のアカゲザル野生型及びHIP iPSCの特性評価を示す。野生型同種異系上でのHLAクラスI及びクラスIIならびにCD47の表面発現をフローサイトメトリーによって評定し、ヒストグラムとして図示した。
図15E】NHPレシピエントへの同種異系移植前のアカゲザル野生型及びHIP iPSCの特性評価を示す。HIP同種異系上でのHLAクラスI及びクラスIIならびにCD47の表面発現をフローサイトメトリーによって評定し、ヒストグラムとして図示した。
図15F】NHPレシピエントへの同種異系移植前のアカゲザル野生型及びHIP iPSCの特性評価を示す。HIP同種異系上でのHLAクラスI及びクラスIIならびにCD47の表面発現をフローサイトメトリーによって評定し、ヒストグラムとして図示した。
図15G】NHPレシピエントへの同種異系移植前のアカゲザル野生型及びHIP iPSCの特性評価を示す。移植前の野生型同種異系及びHIP同種異系の細胞調製物の生存率を示す。NHPレシピエントの中への生存率は90%超(平均値±標準偏差)であった。
図15H】NHPレシピエントへの同種異系移植前のアカゲザル野生型及びHIP iPSCの特性評価を示す。野生型同種異系iPSCを皮下注射されたNSGマウスの代表的なBLI画像及び経時的なBLIシグナルを示す。
図15I】NHPレシピエントへの同種異系移植前のアカゲザル野生型及びHIP iPSCの特性評価を示す。HIP同種異系iPSCを皮下注射されたNSGマウスの代表的なBLI画像及び経時的なBLIシグナルを示す。
図15J】NHPレシピエントへの同種異系移植前のアカゲザル野生型及びHIP iPSCの特性評価を示す。HIP同種異系iPSCを皮下注射されたNSGマウスの代表的なBLI画像及び経時的なBLIシグナルを示す。
図16】B2Mインデル/インデル、CIITAインデル/インデル、CD47tg iPSCにおけるCD47発現を評定する代表的なグラフである。これらのiPSCにおいては、CD47導入遺伝子をセーフハーバー部位(AAVS1、CYBL、またはCCR5)内に挿入し、CAGまたはEF1αプロモーターを使用して、CD47ポリヌクレオチドの発現を制御した。示されるように、B2Mインデル/インデル、CIITAインデル/インデル、CD47tg iPSCは、ベースラインを約30~200倍上回ってCD47を発現する。
図17】B2Mインデル/インデル、CIITAインデル/インデル、CD47tg iPSCにおけるCD47発現を評定する代表的なグラフである。これらのiPSCにおいては、CD47導入遺伝子をCYBLセーフハーバー部位内に挿入し、EF1αプロモーターを使用して、CD47ポリヌクレオチドの発現を制御した。示されるように、B2Mインデル/インデル、CIITAインデル/インデル、CD47tg iPSCは、P23及びP27でCD47を過剰発現する。
図18】B2Mインデル/インデル、CIITAインデル/インデル、CD47tg iPSCにおけるいくつかの時点(P20、P21、P23、及びP27)でのCD47発現を評定する代表的なグラフである。これらのiPSCにおいては、CD47導入遺伝子をCCR5またはCLYBLセーフハーバー部位内に挿入し、CAGまたはEF1αプロモーターを使用して、CD47ポリヌクレオチドの発現を制御した。示されるように、B2Mインデル/インデル、CIITAインデル/インデル、CD47tg iPSCは、種々の時点でCD47を過剰発現する。
図19A】自然免疫細胞(NK細胞及びマクロファージ)によるB2Mインデル/インデル、CIITAインデル/インデル、CD47tg iPSCの殺傷を評定するための研究からの代表的なグラフである。B2Mインデル/インデル及びCIITAインデル/インデルiPSCのCD47tgをセーフハーバー部位(AAVS1)内に挿入した。示されるように、全ての細胞クローンは、NK及びマクロファージによる細胞殺傷から保護された。
図19B】自然免疫細胞(NK細胞及びマクロファージ)によるB2Mインデル/インデル、CIITAインデル/インデル、CD47tg iPSCの殺傷を評定するための研究からの代表的なグラフである。B2Mインデル/インデル及びCIITAインデル/インデルiPSCのCD47tgをセーフハーバー部位(CYBL)内に挿入した。示されるように、全ての細胞クローンは、NK及びマクロファージによる細胞殺傷から保護された。
図19C】自然免疫細胞(NK細胞及びマクロファージ)によるB2Mインデル/インデル、CIITAインデル/インデル、CD47tg iPSCの殺傷を評定するための研究からの代表的なグラフである。B2Mインデル/インデル及びCIITAインデル/インデルiPSCのCD47tgをセーフハーバー部位(CCR5)内に挿入した。示されるように、全ての細胞クローンは、NK及びマクロファージによる細胞殺傷から保護された。
【0141】
本技術の他の目的、利点、及び実施形態は、以下の詳細な説明から明らかとなろう。
【発明を実施するための形態】
【0142】
I.序論
本開示は、細胞療法に対する免疫系の反応の影響を緩和する及び/または回避するための方法及び組成物に関連する。対象の免疫によるこれらの細胞由来移植片及び/または組織移植片の拒絶反応の問題を克服するために、本発明者らは、任意の移植可能な細胞種のための実用可能な供給源を代表する免疫回避性細胞(例えば、低免疫原性細胞または低免疫原性多能性細胞)を開発しており、これを本明細書に開示する。有利なことに、本明細書に開示される細胞は、対象の遺伝子構成、あるいは1つまたは複数の以前の同種異系または自家細胞由来移植片及び/または組織移植片に対する対象内の任意の既存の応答を問わず、レシピエント対象の免疫系によって拒絶されない。
【0143】
本明細書に開示される技術は、遺伝子改変を利用して、MHC I及び/またはMHC II発現を調節する(例えば、低減または排除する)。一部の実施形態では、レアカット(rare-cutting)エンドヌクレアーゼ(例えば、CRISPR/Cas、TALEN、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、メガヌクレアーゼ、及びホーミングエンドヌクレアーゼシステム)を利用したゲノム編集技術を使用して、ヒト細胞における免疫応答に関与する遺伝子の発現もまた(例えば、遺伝子発現が影響を受けるように、免疫応答に関与する遺伝子のゲノムDNAを欠失させることによって、またはかかる遺伝子へのゲノムDNAの挿入によって)低減または排除される。ある特定の実施形態では、ゲノム編集技術または他の遺伝子調節技術を使用して、ヒト細胞において耐性誘導(寛容原性)因子が挿入されて、それらの細胞及びそれらから調製される分化細胞を、レシピエント対象への移植時に免疫認識を回避することができる細胞にする。かくして、本明細書に記載の細胞は、MHC I及び/またはMHC II発現に影響を及ぼす1つまたは複数の遺伝子及び/または因子の調節された発現を示す。
【0144】
本明細書に記載のゲノム編集技法は、所望の遺伝子座部位での二本鎖DNA切断を可能にする。これらの制御された二本鎖切断は、特定の遺伝子座部位にて相同組換えを促進する。このプロセスは、当該配列を認識してそれに結合し、当該核酸分子における二本鎖切断を誘導するエンドヌクレアーゼによる、染色体等の核酸分子の特定の配列の標的化に焦点を当てる。二本鎖切断は、エラープローン非相同末端結合(NHEJ)または相同組換え(HR)のいずれかによって修復される。
【0145】
本明細書に記載のある特定のゲノム編集技法は、ゲノム配列を変化させるために、塩基編集またはプライム編集を使用して単一の核酸塩基を代替の塩基に変更することができる、所望の遺伝子座部位での一本鎖DNA切断を可能にする。一部の実施形態では、塩基編集を使用して、MHC I及び/またはMHC II抗原、寛容原性因子(複数可)、及び/またはCAR発現が調節される。塩基編集の説明は、例えば、Rothgangl et al.,Nat Biotechnol.,2021,39,949-957、Porto et al.,Nat Rev Drug Discov.,2020,19,839-859、及びRees and Lui,Nat Rev Genet.,2018,19(12),770-788に見出すことができる。一部の実施形態では、プライム編集を使用して、MHC I及び/またはMHC II抗原、寛容原性因子(複数可)、及び/またはCAR発現が調節される。プライム編集の説明は、例えば、Anzalone et al.,Nature,2019,576,149-157、Kantor et al.,Int J Mole Sci.,2020,21(17),6240、Schene et al.,Nat.Commun.,2020,11,5232、及びScholefield and Harrison,Gene Therapy,2021,doi.org/10.1038/s41434-021-00263-9に見出すことができる。
【0146】
特定の実施形態の実施は、特にそれとは反対の指示がない限り、当業者の技能の範囲内である化学、生化学、有機化学、分子生物学、微生物学、組換えDNA技法、遺伝学、免疫学、及び細胞生物学の従来の方法を用いることになり、これらのうちの多くが例示説明の目的で下記に記載される。かかる技法は、文献において完全に説明される。例えば、Sambrook,et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(3rd Edition,2001)、Sambrook,et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(2nd Edition,1989)、Maniatis et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(1982)、Ausubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology(John Wiley and Sons,updated July 2008)、Short Protocols in Molecular Biology:A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology,Greene Pub.Associates and Wiley-Interscience、Glover,DNA Cloning:A Practical Approach,vol.I & II(IRL Press,Oxford,1985)、Anand,Techniques for the Analysis of Complex Genomes,(Academic Press,New York,1992)、Transcription and Translation(B.Hames & S.Higgins,Eds.,1984)、Perbal,A Practical Guide to Molecular Cloning(1984)、Harlow and Lane,Antibodies,(Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,1998)Current Protocols in Immunology Q.E.Coligan,A.M.Kruisbeek,D.H.Margulies,E.M.Shevach and W.Strober,eds.,1991)、Annual Review of Immunology、ならびにAdvances in Immunology等の刊行物における研究論文を参照されたい。
【0147】
II.定義
「自己免疫疾患」という用語は、対象がそれ自身の組織及び/または細胞に対して破壊的な免疫応答を発動する任意の疾患または障害を指す。自己免疫障害は、神経系、胃腸管系、及び内分泌系、ならびに皮膚及び他の結合組織、眼、血液及び血管の疾患を含むがこれらに限定されない、対象(例えば、ヒト)におけるほぼ全ての臓器系を侵す可能性がある。自己免疫疾患の例としては、橋本甲状腺炎、全身性エリテマトーデス、シェーグレン症候群、グレーブス病、強皮症、関節リウマチ、多発性硬化症、重症筋無力症、及び糖尿病が挙げられるが、これらに限定されない。
【0148】
本明細書で使用される「がん」という用語は、細胞の過剰増殖であって、その固有の形質(例えば、正常な制御の喪失)が無制御な成長、分化の欠如、局所組織浸潤、及び転移をもたらすものとして定義される。本発明の方法に関して、がんは、急性リンパ性癌、急性骨髄性白血病、胞巣型横紋筋肉腫、膀胱癌、骨癌、脳癌、乳癌、肛門、肛門管、または肛門直腸の癌、眼癌、肝内胆管癌、関節の癌、頸部、胆嚢、または胸膜の癌、鼻、鼻腔、または中耳の癌、口腔癌、外陰部の癌、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性癌、結腸癌、食道癌、子宮頸癌、線維肉腫、消化管カルチノイド腫瘍、ホジキンリンパ腫、下咽頭癌、腎臓癌、喉頭癌、白血病、液体腫瘍、肝臓癌、肺癌、リンパ腫、悪性中皮腫、肥満細胞腫、黒色腫、多発性骨髄腫、鼻咽頭癌、非ホジキンリンパ腫、卵巣癌、膵臓癌、腹膜、大網、及び腸間膜の癌、咽頭癌、前立腺癌、直腸癌、腎癌、皮膚癌、小腸癌、軟組織癌、固形腫瘍、胃癌、精巣癌、甲状腺癌、尿管癌、及び/または膀胱癌のうちのいずれも含む、任意のがんであり得る。本明細書で使用されるとき、「腫瘍」という用語は、別途明確に指示されない限り悪性型の細胞または組織の異常な成長を指し、良性型の組織は含まない。
【0149】
「慢性感染性疾患」という用語は、感染因子によって引き起こされる疾患であって、感染が持続しているものを指す。かかる疾患には、肝炎(A、B、またはC)、ヘルペスウイルス(例えば、VZV、HSV-1、HSV-6、HSV-II、CMV、及びEBV)、及びHIV/AIDSが含まれ得る。非ウイルス性の例としては、アスペルギルス症、カンジダ症、コクシジオイデス症、ならびにクリプトコッカス及びヒストプラズマ症に関連する疾患のような慢性真菌性疾患が挙げられ得る。慢性細菌性感染因子の非限定的な例は、Chlamydia pneumoniae、Listeria monocytogenes、及びMycobacterium tuberculosisであり得る。一部の実施形態では、障害は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症である。一部の実施形態では、障害は、後天性免疫不全症候群(AIDS)である。
【0150】
一部の実施形態では、本明細書に記載の変化または改変(例えば、遺伝子変化または改変を含む)は、標的または選択したポリヌクレオチド配列の低減された発現をもたらす。一部の実施形態では、本明細書に記載の変化または改変は、標的または選択したポリペプチド配列の低減された発現をもたらす。一部の実施形態では、本明細書に記載の変化または改変は、標的または選択したポリヌクレオチド配列の発現の増加をもたらす。一部の実施形態では、本明細書に記載の変化または改変は、標的または選択したポリペプチド配列の発現の増加をもたらす。「減少する」、「低減された」、「低減」、及び「減少」という用語は全て、統計学的に有意な量の減少を一般に意味するように本明細書で使用される。しかしながら、疑義を避けるために、「減少する」、「低減された」、「低減」、「減少」とは、参照レベルと比較して少なくとも10%の減少、例えば、参照レベルと比較して少なくとも約20%、もしくは少なくとも約30%、もしくは少なくとも約40%、もしくは少なくとも約50%、もしくは少なくとも約60%、もしくは少なくとも約70%、もしくは少なくとも約80%、もしくは少なくとも約90%の減少、または最大100%かつこれを含む減少(すなわち、参照試料と比較して不在のレベル)、または10~100%の任意の減少を意味する。一部の実施形態では、該細胞は、未変化または未改変の野生型細胞と比べて1つまたは複数の標的の低減された発現を有するように操作される。細胞の文脈における「野生型(wild-type)」または「野生型(wt)」とは、自然界で見出される任意の細胞を意味する。しかしながら、例として、本明細書で使用される、操作された細胞または低免疫原性細胞の文脈において、「野生型」とはまた、MHC I及び/またはII及び/またはT細胞受容体の低減された発現をもたらす核酸変更を含有し得るが、CD47タンパク質の過剰発現をもたらすような遺伝子編集手順を経なかった、操作された細胞または低免疫原性細胞も意味し得、例えば、細胞は、CD47に関して「野生型」であり得るが、MHC I及び/またはII及び/またはT細胞受容体に関しては変化している可能性がある。本明細書で使用されるとき、「野生型」はまた、CD47タンパク質の過剰発現をもたらす核酸変更を含有し得るが、MHC I及び/またはII及び/またはT細胞受容体の低減された発現をもたらすような遺伝子編集手順を経なかった、操作された細胞または低免疫原性細胞も意味し得、例えば、細胞は、MHC I及び/またはII及び/またはT細胞受容体に関して「野生型」であり得るが、CD47に関しては変化している可能性がある。PSCまたはその子孫の文脈において、「野生型」とはまた、多能性をもたらす核酸変更を含有し得るが、MHC I及び/またはII及び/またはT細胞受容体の低減された発現、及び/またはCD47タンパク質の過剰発現を達成するような本技術の遺伝子編集手順を経なかった、PSCまたはその子孫も意味する。また、PSCまたはその子孫の文脈において、「野生型」とはまた、CD47タンパク質の過剰発現をもたらす核酸変更を含有し得るが、MHC I及び/またはII及び/またはT細胞受容体の低減された発現をもたらすような遺伝子編集手順を経なかった、PSCまたはその子孫も意味する。初代細胞またはその子孫の文脈において、「野生型」とはまた、MHC I及び/またはII及び/またはT細胞受容体の低減された発現をもたらす核酸変更を含有し得るが、CD47タンパク質の過剰発現をもたらすような遺伝子編集手順を経なかった、初代細胞またはその子孫も意味する。また、初代細胞またはその子孫の文脈において、「野生型」とはまた、CD47タンパク質の過剰発現をもたらす核酸変更を含有し得るが、MHC I及び/またはII及び/またはT細胞受容体の低減された発現をもたらすような遺伝子編集手順を経なかった、初代細胞またはその子孫も意味する。一部の実施形態では、該細胞は、改変を含まない同じ細胞種の細胞と比べて、1つまたは複数の標的の低減されたまたは増加した発現を有するように操作される。
【0151】
「内在性」という用語は、細胞内に自然に存在する指示対象の分子またはポリペプチドを指す。同様に、コーディング核酸の発現に関して使用される場合のこの用語は、細胞内に自然に含まれる、外因的に導入されたのではないコーディング核酸の発現を指す。
【0152】
本明細書で使用されるとき、「外因性」という用語は、指示対象の分子または指示対象のポリペプチドが目的の細胞に導入されることを意味することが意図される。ポリペプチドは、例えば、コーディング核酸を、染色体内への組み込みによって、またはプラスミドもしくは発現ベクター等の非染色体遺伝物質として等で、細胞の遺伝物質に導入することによって導入され得る。したがって、この用語は、コーディング核酸の発現に関して使用されるとき、発現可能な形態でのコーディング核酸の細胞への導入を指す。「外因性」分子とは、細胞内に通常は存在しないが、1つまたは複数の遺伝学的方法、生化学的方法、または他の方法によって細胞に導入され得る分子、構築物、因子等である。「細胞内での通常の存在」は、細胞の特定の発生段階及び環境条件に対して決定される。故に、例えば、ニューロンの胚発生中にのみ存在する分子は、成体ニューロン細胞に対して外因性分子である。外因性分子は、例えば、機能不全の内在性分子の機能性バージョン、または正常に機能している内在性分子の機能不全バージョンを含み得る。
【0153】
外因性分子または因子は、とりわけ、例えば、コンビナトリアルケミストリープロセスによって生成される低分子、またはタンパク質、核酸、炭水化物、脂質、糖タンパク質、リポタンパク質、多糖類等の高分子、上記の分子の任意の改変された誘導体、または上記の分子のうちの1つもしくは複数を含む任意の複合体であり得る。核酸には、DNA及びRNAが含まれ、一本鎖または二本鎖であり得、直鎖状、分岐状、または環状であり得、任意の長さであり得る。核酸には、二重鎖を形成することができる核酸、ならびに三重鎖形成核酸が含まれる。例えば、米国特許第5,176,996号及び同第5,422,251号を参照されたい。タンパク質には、DNA結合タンパク質、転写因子、クロマチンリモデリング因子、メチル化DNA結合タンパク質、ポリメラーゼ、メチラーゼ、デメチラーゼ、アセチラーゼ、デアセチラーゼ、キナーゼ、ホスファターゼ、インテグラーゼ、リコンビナーゼ、リガーゼ、トポイソメラーゼ、ジャイレース、及び/またはヘリカーゼが含まれるが、これらに限定されない。
【0154】
本開示の目的において、「遺伝子」は、遺伝子産物をコードするDNA領域、ならびに遺伝子産物の産生を制御する全てのDNA領域(かかる制御配列がコード配列及び/または転写された配列に隣接するか否かにかかわらず)を含む。したがって、遺伝子には、プロモーター配列、ターミネーター、翻訳制御配列、例えば、リボソーム結合部位及び内部リボソーム進入部位、エンハンサー、サイレンサー、インシュレーター、境界エレメント、複製起点、マトリックス付着部位、及び/または遺伝子座制御領域が含まれるが、必ずしもこれらに限定されない。
【0155】
「遺伝子発現」とは、遺伝子に含まれる情報の遺伝子産物への変換を指す。遺伝子産物は、遺伝子の直接転写産物(例えば、mRNA、tRNA、rRNA、アンチセンスRNA、リボザイム、構造RNA、または任意の他の種類のRNA)、またはmRNAの翻訳によって産生されるタンパク質であり得る。遺伝子産物にはまた、キャッピング、ポリアデニル化、メチル化、及び編集等のプロセスによって修飾されるRNA、ならびに、例えば、メチル化、アセチル化、リン酸化、ユビキチン化、ADPリボシル化、ミリストイル化、及び/またはグリコシル化によって修飾されるタンパク質も含まれる。
【0156】
本明細書で使用される「遺伝子改変」という用語及びその文法上の等価物は、核酸、例えば、生物のゲノム内の核酸の1つまたは複数の変化を指し得る。例えば、遺伝子改変とは、遺伝子もしくは遺伝子の一部分または他の核酸配列の変化、付加、及び/または欠失を指し得る。遺伝子改変された細胞とはまた、遺伝子または遺伝子の一部分の付加、欠失、及び/または変化を有する細胞も指し得る。遺伝子改変された細胞とはまた、遺伝子または遺伝子部分ではない核酸配列の付加を有する細胞も指し得る。遺伝子改変には、例えば、標的遺伝子もしくは遺伝子の一部分または核酸配列の一過性のノックインまたはノックダウン機構、及び永続的なノックイン、ノックダウン、またはノックアウトをもたらす機構の両方が含まれる。遺伝子改変には、例えば、核酸配列の一過性のノックイン、及び永続的なノックインをもたらす機構の両方が含まれる。
【0157】
本明細書で使用されるとき、「移植すること(grafting)」、「投与すること」、「導入すること」、「埋め込むこと」、及び「移植すること(transplanting)」という用語、ならびにその文法的変形は、導入された細胞の所望の部位での局在化もしくは少なくとも部分的な局在化または全身性導入(例えば、循環中へ)をもたらす方法または経路による、細胞(例えば、本明細書に記載の細胞)の、対象内への配置の文脈において互換的に使用される。細胞は、対象内の所望の部位に直接埋め込まれ得るか、または代替として、所望の箇所への送達をもたらす任意の適切な経路によって投与され得、ここで、埋め込まれた細胞または細胞の構成要素の少なくとも一部分は、生存したままである。対象への投与後の細胞の生存期間は、数時間、例えば、24時間ほどの短期間から、数日、数年ほどの長期間であり得る。一部の実施形態では、細胞はまた、例えば、埋め込まれた細胞を埋め込み箇所に維持するとともに、埋め込まれた細胞の移動を回避するためにカプセル中で、脳内または皮下等の所望の部位以外の箇所に投与する(例えば、注射する)こともできる。
【0158】
「HLA」または「ヒト白血球抗原」複合体とは、ヒトにおいて主要組織適合性複合体(MHC)タンパク質をコードする遺伝子複合体である。HLA複合体を構成するこれらの細胞表面タンパク質は、抗原に対する免疫応答の制御を担う。ヒトにおいては、クラスI及びクラスIIの2種のMHC、「HLA-I」及び「HLA-II」が存在する。HLA-Iには、細胞の内側からペプチドを提示するHLA-A、HLA-B、及びHLA-Cの3種のタンパク質が含まれ、HLA-I複合体によって提示される抗原が、キラーT細胞(別名、CD8+ T細胞または細胞傷害性T細胞)を引き付ける。HLA-Iタンパク質は、β-2ミクログロブリン(B2M)に会合している。HLA-IIには、細胞の外側から抗原をTリンパ球に提示するHLA-DP、HLA-DM、HLA-DOB、HLA-DQ、及びHLA-DRの5種のタンパク質が含まれる。これは、CD4+細胞(別名、ヘルパーT細胞)を刺激する。「MHC」または「HLA」のいずれかの使用は、遺伝子がヒト(HLA)またはマウス(MHC)のどちらに由来するかに依存するため、限定することは意図されないことを理解されたい。故に、それが哺乳類細胞に関するとき、これらの用語は、本明細書で互換的に使用され得る。
【0159】
本明細書で細胞を特徴付けるために使用されるとき、「低免疫原性」という用語は、一般に、かかる細胞が、かかる細胞を移植される対象による免疫拒絶反応、例えば、自然免疫または適応免疫拒絶反応を受けにくい、例えば、該細胞が、かかる細胞を移植される対象による同種異系拒絶反応を受けにくいことを意味する。例えば、未変化または未改変の野生型細胞または非低免疫細胞と比べて、かかる低免疫原性細胞は、かかる細胞を移植される対象による免疫拒絶反応を約2.5%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、97.5%、99%、またはそれを超えて、受けにくい可能性がある。一部の実施形態では、ゲノム編集技術を使用して、MHC I及びMHC II遺伝子の発現が調節され、ひいては低免疫原性細胞の生成に寄与する。一部の実施形態では、低免疫原性細胞は、MHC不適合の同種異系レシピエントにおいて免疫拒絶反応を回避する。一部の事例では、本明細書に概説される低免疫原性幹細胞から生産される分化細胞は、MHC不適合の同種異系レシピエントに投与された(例えば、移植された(transplanted)または移植された(grafted))ときに免疫拒絶反応を回避する。一部の実施形態では、低免疫原性細胞は、T細胞媒介性の適応免疫による拒絶反応及び/または自然免疫細胞による拒絶反応から保護される。低免疫原性細胞、その生産方法、及びその使用方法の詳細な説明は、2015年5月9日に出願されたWO2016183041、2018年1月14日に出願されたWO2018132783、2018年3月20日に出願されたWO2018176390、2019年7月17日に出願されたWO2020018615、2019年7月17日に出願されたWO2020018620、2020年7月31日に出願されたPCT/US2020/44635、2019年8月1日に出願されたUS62/881,840、2019年8月23日に出願されたUS62/891,180、2020年4月27日に出願されたUS63/016,190、及び2020年7月15日に出願されたUS63/052,360に見出され、実施例、配列表、及び図を含めたこれらの開示は、参照によりそれらの全体が本明細書に援用される。
【0160】
細胞の低免疫原性は、細胞が適応免疫応答及び自然免疫応答を誘発する能力またはかかる適応免疫応答及び自然免疫応答を誘発するのを回避する能力等の細胞の免疫原性を評価することによって決定することができる。かかる免疫応答は、当業者に認識されるアッセイを使用して測定することができる。一部の実施形態では、免疫応答アッセイは、T細胞増殖、T細胞活性化、T細胞殺傷、ドナー特異的抗体生成、NK細胞増殖、NK細胞活性化、及びマクロファージ活性に対する低免疫原性細胞の効果を測定する。場合によっては、低免疫原性細胞及びその派生物は、対象への投与時にT細胞及び/またはNK細胞による減少した殺傷を経る。一部の事例では、該細胞及びその派生物は、未改変または野生型の細胞と比較してマクロファージの貪食の減少を示す。一部の実施形態では、低免疫原性細胞は、対応する未改変の野生型細胞と比較してレシピエント対象において低減または減弱した免疫応答を誘発する。一部の実施形態では、低免疫原性細胞は、レシピエント対象において非免疫原性であるか、または免疫応答を誘発するに至らない。
【0161】
2つ以上の核酸またはポリペプチド配列の文脈における「同一性」パーセントという用語は、下記に記載される配列比較アルゴリズム(例えば、BLASTP及びBLASTNまたは当業者に利用可能な他のアルゴリズム)のうちの1つを使用してまたは目視検査によって測定したとき、最大限に対応するように比較及びアライメントした場合に同じであるヌクレオチドまたはアミノ酸残基の指定のパーセンテージを有する、2つ以上の配列または部分配列を指す。用途に応じて、「同一性」パーセントは、比較されている配列のある領域にわたって、例えば、機能的ドメインにわたって存在し得るか、または代替として、比較される2つの配列の全長にわたって存在し得る。配列比較のために、典型的には、一方の配列は、試験配列の比較対象となる参照配列として機能する。配列比較アルゴリズムを使用する場合、試験配列及び参照配列をコンピュータに入力し、必要であれば部分配列の座標を指定し、配列アルゴリズムプログラムパラメータを指定する。次いで、配列比較アルゴリズムが、指定されたプログラムパラメータに基づいて、参照配列に対する試験配列(複数可)の配列同一性パーセントを算出する。
【0162】
比較のための配列の最適なアライメントは、例えば、Smith & Waterman,Adv.Appl.Math.2:482(1981)の局所相同性アルゴリズムによって、Needleman & Wunsch,J.Mol.Mol.Biol.48:443(1970)の相同性アライメントアルゴリズムによって、Pearson & Lipman,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:2444(1988)の類似検索法によって、これらのアルゴリズムのコンピュータ実装によって(Wisconsin Genetics Software Package,Genetics Computer Group,575 Science Dr.,Madison,Wis.におけるGAP、BESTFIT、FASTA、及びTFASTA)、または目視検査によって実施することができる(全般的にはAusubelら(下記)を参照されたい)。
【0163】
配列同一性及び配列類似性パーセントを決定するのに好適なアルゴリズムの一例は、Altschul et al,J.Mol.Biol.215:403-410(1990)に記載される、BLASTアルゴリズムである。BLAST解析を実施するためのソフトウェアは、National Center for Biotechnology Informationを介して一般公開されている。
【0164】
本明細書で使用される「免疫シグナル伝達因子」とは、場合によっては、免疫シグナル伝達経路を活性化する分子、タンパク質、ペプチド等を指す。
【0165】
本明細書で使用される「免疫抑制因子」または「免疫制御因子」または「寛容原性因子」とは、細胞が投与、移植(transplantation)、または移植(engraftment)時に宿主またはレシピエント対象の免疫系によって認識される能力を調節するかまたはそれに影響を及ぼす、低免疫因子、補体インヒビター、及び他の因子を含む。これらは、追加の遺伝子改変と組み合わせたものであってもよい。
【0166】
「増加した」、「増加」、または「強化する」もしくは「活性化する」という用語は全て、本明細書で統計学的に有意な量の増加を一般に意味するように使用される。疑義を避けるために、「増加した」、「増加」、または「強化する」もしくは「活性化する」という用語は、参照レベルと比較して少なくとも10%の増加、例えば、参照レベルと比較して少なくとも約20%、もしくは少なくとも約30%、もしくは少なくとも約40%、もしくは少なくとも約50%、もしくは少なくとも約60%、もしくは少なくとも約70%、もしくは少なくとも約80%、もしくは少なくとも約90%の増加、または最大100%かつこれを含む増加、または10~100%の任意の増加、または参照レベルと比較して少なくとも約2倍、もしくは少なくとも約3倍、もしくは少なくとも約4倍、もしくは少なくとも約5倍、もしくは少なくとも約10倍の増加、または2倍~10倍超の任意の増加を意味する。
【0167】
一部の実施形態では、変化は、インデルである。本明細書で使用されるとき、「インデル」とは、挿入、欠失、またはそれらの組み合わせからもたらされる変異を指す。当業者には理解されようが、ゲノム配列のコード領域におけるインデルは、インデルの長さが3の倍数でない限り、フレームシフト変異をもたらすことになる。一部の実施形態では、変化は、点変異である。本明細書で使用されるとき、「点変異」とは、ヌクレオチドのうちの1つを置き換える置換を指す。本開示のCRISPR/Casシステムを使用して、例えば、遺伝子編集、塩基編集、またはプライム編集を使用して、標的ポリヌクレオチド配列において任意の長さのインデルまたは点変異を誘導することができる。「塩基編集」という用語は、一部の事例では二本鎖DNA切断を作製することのない、及び他の事例では一本鎖DNA切断を作製することのない、標的遺伝子座での1つの塩基対から別の塩基対へのプログラム可能な変換のための方法を指す。一部の実施形態では、塩基編集は、触媒的に損なわれたCas9を利用して標的DNA部位を認識し、また様々なPAM配列認識により、プロトスペーサー配列内及び/またはその外側の塩基編集ウィンドウを認識する。「プライム編集」という用語は、プログラム可能なポリメラーゼ(限定されないが、WO2020191242に記載されるようなnapDNAbp等)及び特定のガイドRNAを利用する、遺伝子編集のための方法を指す。一部の実施形態では、ガイドRNAは、標的DNA配列に組み込まれる遺伝情報をコードするための(または遺伝情報を欠失させるための)DNA合成鋳型を含む。当業者には認識されようが、塩基編集及びプライム編集は、記載されるポリヌクレオチド及びポリペプチドの発現を調節する(例えば、低減する、排除する、増加させる、及び強化する)のに有用である。
【0168】
本明細書で使用されるとき、「ノックアウト」及び「ノックダウン」とは、それぞれ、編集された遺伝子の発現の不在及び低減された発現をもたらす遺伝子改変を指す。本明細書で使用されるとき、「ノックダウン」とは、標的mRNAまたは対応する標的タンパク質の発現の低減を指す。ノックダウンは一般的に、RNAの発現レベルの低減を媒介しない対照分子(例えば、非標的化対照shRNA、siRNA、ガイドRNA、またはmiRNA)の投与または発現後に存在するレベルに対して報告される。一部の実施形態では、標的遺伝子のノックダウンは、shRNA、siRNA、miRNA、またはCRISPR干渉(CRISPRi)を用いて達成される。一部の実施形態では、標的遺伝子のノックダウンは、デグロン法等のタンパク質ベースの方法を用いて達成される。一部の実施形態では、標的遺伝子のノックダウンは、shRNA、siRNA、miRNAを含めた遺伝子改変、または遺伝子編集システム(例えば、CRISPR/Cas)の使用によって達成される。
【0169】
ノックダウンは一般的に、定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)増幅を使用してmRNAレベルを測定することによって、またはウェスタンブロットもしくは酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)によってタンパク質レベルを測定することによって評定される。タンパク質レベルの分析は、mRNA切断ならびに翻訳阻害の両方の評定を提供する。ノックダウンを測定するためのさらなる技法には、RNA溶液ハイブリダイゼーション、ヌクレアーゼ保護、ノーザンハイブリダイゼーション、マイクロアレイを用いた遺伝子発現の監視、抗体結合、ラジオイムノアッセイ、及び蛍光活性化細胞解析が含まれる。当業者であれば、本明細書に記載の詳細に基づいて、本開示の遺伝子編集システム(例えば、CRISPR/Cas)をどのように使用して、標的ポリヌクレオチド配列またはその一部分をノックアウトするかについて容易に理解しよう。
【0170】
本明細書における「ノックイン」とは、宿主細胞における染色体遺伝子座内へのDNA配列の挿入からもたらされる遺伝子改変を意味する。これは、ノックインされた遺伝子、遺伝子の一部分、または核酸配列挿入産物の発現レベルの増加、例えば、RNA転写物レベル及び/またはコードされたタンパク質レベルの増加を引き起こす。当業者には理解されようが、これは、遺伝子もしくはその一部分の1つもしくは複数の追加のコピーを宿主細胞に挿入もしくは付加すること、または内在性遺伝子の制御構成要素を変化させることにより、作製されるタンパク質の発現を増加させること、または発現が所望される特定の核酸配列を挿入することを含めた、いくつかの方式で遂行することができる。これは、プロモーターを改変すること、異なるプロモーターを付加すること、エンハンサーを付加すること、他の制御エレメントを付加すること、または他の遺伝子発現配列を改変することによって遂行されてもよい。本開示のCRISPR/Casシステムを使用して、相同性アームを有する鋳型を使用した相同DNA修復によって、または特定の配列が編集により導入されるプライム編集もしくは遺伝子ライティング(gene writing)によってのいずれを問わず、配列をノックインすることができる。一部の事例では、「ノックイン」という用語は、遺伝子機能を宿主細胞に付加するプロセスとして意図される。これは、ノックインされた遺伝子産物、例えば、RNAまたはコードされたタンパク質のレベルの増加を引き起こす。当業者には理解されようが、これは、遺伝子の1つもしくは複数の追加のコピーを宿主細胞に付加すること、または内在性遺伝子の制御構成要素を変化させることにより、作製されるタンパク質の発現を増加させることを含めた、いくつかの方式で遂行することができる。これは、プロモーターを改変すること、異なるプロモーターを付加すること、エンハンサーを付加すること、または他の遺伝子発現配列を改変することによって遂行されてもよい。
【0171】
本明細書で使用されるとき、「ノックアウト」は、標的ポリヌクレオチド配列の翻訳または機能を妨げるように、標的ポリヌクレオチド配列の全てまたは一部分を欠失させることを含む。例えば、ノックアウトは、標的ポリヌクレオチド配列の機能的ドメイン(例えば、DNA結合ドメイン)内を含めて、標的ポリヌクレオチド配列内に挿入または欠失(「インデル」)を誘導することにより標的ポリヌクレオチド配列を変化させることによって、達成され得る。当業者であれば、本明細書に記載の詳細に基づいて、本開示の遺伝子編集システム(例えば、CRISPR/Cas)をどのように使用して、標的ポリヌクレオチド配列またはその一部分をノックアウトするかについて容易に理解しよう。
【0172】
一部の実施形態では、遺伝子改変または変化は、標的ポリヌクレオチド配列またはその一部分のノックアウトまたはノックダウンをもたらす。本技術の遺伝子編集システム(例えば、CRISPR/Cas)を使用した標的ポリヌクレオチド配列またはその一部分のノックアウトは、様々な用途に有用であり得る。例えば、細胞内の標的ポリヌクレオチド配列のノックアウトを研究目的のためにインビトロで実施することができる。エクスビボ目的では、細胞内の標的ポリヌクレオチド配列のノックアウトは、(例えば、細胞における変異アレルをエクスビボでノックアウトし、ノックアウトされた変異アレルを含むそれらの細胞を対象に導入することによって)標的ポリヌクレオチド配列の発現に関連する障害を処置もしくは予防するか、または細胞の遺伝型もしくは表現型を変更するのに有用であり得る。一部の事例では、本明細書で使用されるとき、「ノックアウト」は、標的ポリヌクレオチド配列の機能を妨げるように、標的ポリヌクレオチド配列の全てまたは一部分を欠失させることを含む。例えば、ノックアウトは、標的ポリヌクレオチド配列の機能的ドメイン(例えば、DNA結合ドメイン)において標的ポリヌクレオチド配列におけるインデルを誘導することにより標的ポリヌクレオチド配列を変化させることによって、達成され得る。当業者であれば、本明細書に記載の詳細に基づいて、本開示の遺伝子編集システム(例えば、CRISPR/Casシステム)をどのように使用して、標的ポリヌクレオチド配列またはその一部分をノックアウトするかについて容易に理解しよう。一部の実施形態では、変化は、標的ポリヌクレオチド配列またはその一部分のノックアウトをもたらす。本開示のCRISPR/Casシステムを使用した標的ポリヌクレオチド配列またはその一部分のノックアウトは、様々な用途に有用であり得る。例えば、細胞内の標的ポリヌクレオチド配列のノックアウトを研究目的のためにインビトロで実施することができる。エクスビボ目的では、細胞内の標的ポリヌクレオチド配列のノックアウトは、(例えば、細胞における変異アレルをエクスビボでノックアウトし、ノックアウトされた変異アレルを含むそれらの細胞を対象に導入することによって)標的ポリヌクレオチド配列の発現に関連する障害を処置または予防するのに有用であり得る。
【0173】
遺伝子発現の「調節」とは、遺伝子の発現レベルの変化を指す。発現の調節には、遺伝子活性化及び遺伝子抑制が含まれ得るが、これらに限定されない。調節はまた、完全であってもよく(すなわち、遺伝子発現が完全に不活性化されるか、または野生型のレベル以上まで活性化される)、またはそれは部分的であってもよい(遺伝子発現が部分的に低減されるか、または野生型のレベルのある割合まで部分的に活性化される)。
【0174】
追加のまたは代替の態様では、本技術は、当業者に利用可能な任意の様態で、例えば、TALエフェクターヌクレアーゼ(TALEN)またはジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)システム等のヌクレアーゼシステムを利用して、標的ポリヌクレオチド配列を変化させることを企図する。CRISPR/Cas(例えば、Cas9及びCpf1)及びTALENを利用した方法の例が本明細書に詳述されているが、本技術は、これらの方法/システムの使用に限定されないことを理解されたい。標的細胞における発現を低減または消失させるために、当業者に既知の他の標的化方法を本明細書で利用することができる。本明細書で提供される方法を使用して、細胞内の標的ポリヌクレオチド配列を変化させることができる。本技術は、任意の目的で細胞内の標的ポリヌクレオチド配列を変化させることを企図する。一部の実施形態では、細胞内の標的ポリヌクレオチド配列は、変異細胞を生産するように変化させられる。本明細書で使用されるとき、「変異細胞」とは、結果として生じる遺伝型がその元の遺伝型とは異なる細胞を指す。一部の事例では、「変異細胞」は、例えば、正常に機能している遺伝子が本開示の遺伝子編集システム(例えば、CRISPR/Cas)を使用して変化させられる場合、変異表現型を示す。他の事例では、「変異細胞」は、例えば、本開示の遺伝子編集システム(例えば、CRISPR/Cas)を使用して変異遺伝型が補正される場合、野生型表現型を示す。一部の実施形態では、細胞内の標的ポリヌクレオチド配列は、遺伝子変異を補正または修復するように(例えば、細胞に正常な表現型を取り戻すように)変化させられる。一部の実施形態では、細胞内の標的ポリヌクレオチド配列は、遺伝子変異を誘導するように(例えば、遺伝子またはゲノムエレメントの機能を破壊するように)変化させられる。
【0175】
「作動的に連結された」または「作動可能に連結された」という用語は、2つ以上の構成要素(配列エレメント等)の並置に関して互換的に使用され、これらの構成要素は、両方の構成要素が正常に機能し、構成要素のうちの少なくとも1つが、その他の構成要素のうちの少なくとも1つに及ぼす機能を媒介し得るという可能性を許容するように配置される。例示説明として、プロモーター等の転写制御配列は、その転写制御配列が1つまたは複数の転写制御因子の存否に応答してコード配列の転写レベルを制御する場合、コード配列に作動的に連結されている。転写制御配列は、一般に、シスでコード配列と作動的に連結されるが、それに直接隣接している必要はない。例えば、エンハンサーは、コード配列に、それらが連続していない場合であっても、作動的に連結されている転写制御配列である。
【0176】
本明細書で使用される「多能性幹細胞」は、内胚葉(例えば、胃壁、消化管、肺等)、中胚葉(例えば、筋肉、骨、血液、泌尿生殖器系組織等)、または外胚葉(例えば、上皮組織及び神経系組織)の3種の胚葉のうちのいずれかへと分化する潜在能力を有する。本明細書で使用される「多能性幹細胞」という用語はまた、「人工多能性幹細胞」または「iPSC」、すなわち非多能性細胞に由来する多能性幹細胞の一種も包含する。一部の実施形態では、多能性幹細胞は、多能性細胞ではない細胞から生産または生成される。換言すれば、多能性幹細胞は、非多能性細胞の直接的または間接的な子孫であり得る。親細胞の例としては、種々の手段によって多能性で未分化の表現型を誘導するように再プログラミングされた体細胞が挙げられる。かかる「iPS」または「iPSC」細胞は、ある特定の制御遺伝子の発現を誘導することによって、またはある特定のタンパク質の外因性の適用によって作出することができる。iPS細胞の誘導のための方法は、当該技術分野で既知であり、下記にさらに記載される(例えば、Zhou et al.,Stem Cells 27(11):2667-74(2009)、Huangfu et al.,Nature Biotechnol.26(7):795(2008)、Woltjen et al.,Nature 458(7239):766-770(2009)、及びZhou et al.,Cell Stem Cell 8:381-384(2009)を参照されたく、同文献の各々は参照によりそれらの全体が本明細書に援用される)。人工多能性幹細胞(iPSC)の生成は、下記に概説される。本明細書で使用されるとき、「hiPSC」とは、ヒト人工多能性幹細胞である。
【0177】
本明細書で使用される「セーフハーバー遺伝子座」とは、新たに挿入された遺伝要素が予測通りに機能することを可能にする様態での導入遺伝子または外因性遺伝子の発現を可能にし、また宿主細胞にリスクをもたらす様態での宿主ゲノムの変化を引き起こさない可能性がある、遺伝子座を指す。例となる「セーフハーバー」遺伝子座には、CCR5遺伝子、PPP1R12C(別名、AAVS1)遺伝子、CLYBL遺伝子、及び/またはRosa遺伝子(例えば、ROSA26)が含まれるが、これらに限定されない。本明細書で使用される「標的遺伝子座」とは、導入遺伝子または外因性遺伝子の発現を可能にする遺伝子座を指す。例となる「標的遺伝子座」には、CXCR4遺伝子、アルブミン遺伝子、SHS231遺伝子座、F3遺伝子(別名、CD142)、MICA遺伝子、MICB遺伝子、LRP1遺伝子(別名、CD91)、HMGB1遺伝子、ABO遺伝子、RHD遺伝子、FUT1遺伝子、及び/またはKDM5D遺伝子(別名、HY)が含まれるが、これらに限定されない。外因性遺伝子は、B2M、CIITA、TRAC、TRBC、CCR5、F3(すなわち、CD142)、MICA、MICB、LRP1、HMGB1、ABO、RHD、FUT1、KDM5D(すなわち、HY)、PDGFRa、OLIG2、及び/またはGFAPのCDS領域に挿入され得る。外因性遺伝子は、PPP1R12C(すなわち、AAVS1)またはCCR5のイントロン1または2に挿入され得る。外因性遺伝子は、CCR5のエクソン1または2または3に挿入され得る。外因性遺伝子は、CLYBLのイントロン2に挿入され得る。外因性遺伝子は、Ch-4:58,976,613(すなわち、SHS231)における500bpウィンドウに挿入され得る。外因性遺伝子は、例えば、セーフハーバーまたは標的遺伝子座内のイントロン、エクソン、またはコード配列領域を含めた、外因性遺伝子の発現を可能にする前述のセーフハーバーまたは標的遺伝子座の任意の好適な領域に挿入され得る。
【0178】
「対象」及び「個体」という用語は、本明細書で互換的に使用され、細胞を得ることができる及び/または本明細書に記載されるような細胞による処置(予防的処置を含む)が提供される、動物、例えば、ヒトを指す。ヒト対象等の特定の動物に特有である感染症、病態、または疾患状態の処置の場合、対象という用語は、その特定の動物を指す。本明細書で互換的に使用される「非ヒト動物」及び「非ヒト哺乳動物」は、ラット、マウス、ウサギ、ヒツジ、ネコ、イヌ、ウシ、ブタ、及び/または非ヒト霊長類等の哺乳動物を含む。「対象」という用語はまた、哺乳動物、爬虫類、両生類、及び/または魚類を含むがこれらに限定されない、任意の脊椎動物を含む。しかしながら、有利には、対象は、ヒト等の哺乳動物、または、例えば、イヌ、ネコ、ウマ等の飼育哺乳動物、もしくは、例えば、ウシ、ヒツジ、ブタ等の生産哺乳動物等の他の哺乳動物である。
【0179】
本明細書で使用されるとき、「処置すること」及び「処置」という用語は、対象が疾患の少なくとも1つの症状の低減または疾患の改善、例えば、有益なまたは所望の臨床結果を有するように、有効量の本明細書に記載の細胞を対象に投与することを含む。本技術の目的において、有益なまたは所望の臨床結果には、検出可能であるか検出不能であるかにかかわらず、1つまたは複数の症状の緩和、疾患の程度の減弱、安定化した(すなわち、悪化していない)疾患状態、疾患進行の遅延または減速、疾患状態の改善または一時的緩和、及び寛解(部分的か完全かにかかわらず)が含まれるが、これらに限定されない。処置することは、処置を受けない場合に予想される生存期間と比較して生存期間を延長することを指し得る。故に、当業者は、処置が病状を改善し得るが、疾患に対する完全な治療ではない場合があることを認識している。一部の実施形態では、疾患または障害の1つまたは複数の症状は、疾患の処置により少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、または少なくとも50%緩和される。
【0180】
本技術の目的において、疾患処置の有益なまたは所望の臨床結果には、検出可能であるか検出不能であるかにかかわらず、1つまたは複数の症状の緩和、疾患の程度の減弱、安定化した(すなわち、悪化していない)疾患状態、疾患進行の遅延または減速、疾患状態の改善または一時的緩和、及び寛解(部分的か完全かにかかわらず)が含まれるが、これらに限定されない。
【0181】
「ベクター」または「構築物」は、遺伝子配列を標的細胞に移入することができる。典型的には、「ベクター構築物」、「発現ベクター」、及び「遺伝子移入ベクター」とは、目的の遺伝子の発現を導くことができ、遺伝子配列を標的細胞に移入し得る、任意の核酸構築物を意味する。故に、この用語は、クローニング、及び発現ビヒクル、ならびに組み込みベクターを含む。ベクターまたは構築物を細胞に導入するための方法は、当業者に既知であり、これには脂質媒介性移入(すなわち、中性及びカチオン性脂質を含むリポソーム)、エレクトロポレーション、直接注入、細胞融合、粒子ボンバードメント、リン酸カルシウム共沈、DEAE-デキストラン媒介性移入、及び/またはウイルスベクター媒介性移入が含まれるが、これらに限定されない。
【0182】
特許請求の範囲は、いずれの任意選択的な要素も除外するように起草され得ることに留意されたい。したがって、この記述は、特許請求の範囲の要素の列挙に関連した「単に」、「のみ」等のような排他的な専門用語の使用のため、または「否定的な」制限の使用のための先行詞として役立つよう意図される。本開示を読むと当業者には明らかであるように、本明細書に記載及び例示される個々の実施形態の各々は、本技術の範囲または趣旨から逸脱することなく、他のいくつかの実施形態のうちのいずれかの特徴から容易に切り離されるか、またはそれと組み合わされる別々の構成要素及び特徴を有する。いずれの列挙される方法も、列挙される事象の順序で、または論理的に可能な任意の他の順序で実施され得る。本明細書に記載される方法及び材料と類似または同等の任意の方法及び材料が、本技術の実施または試験においても使用され得るが、代表的な例示的方法及び材料が次に記載される。
【0183】
本技術をさらに説明する前に、本技術が記載される特定の実施形態に限定されず、かくして当然のことながら、様々であり得ることを理解されたい。本明細書で使用される専門用語は、特定の実施形態を説明するためのものにすぎず、本技術の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるため、限定するものとしては意図されないことも理解されたい。
【0184】
別途定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本技術が属する技術分野の当業者によって一般に理解される意味と同じ意味を有する。値の範囲が提供される場合、文脈上そうでないとする明確な指示がない限り下限値の単位の10分の1までの、その範囲の上限値から下限値の間の各介在値、ならびにその表示範囲の任意の他の表示値または介在値が、本技術内に包含されることが理解される。これらのより小さい範囲の上限値及び下限値は独立して、より小さい範囲内に含まれてもよく、また、表示範囲内の任意の具体的に除外される限界値を条件として、本技術内に包含されてもよい。表示範囲が限界値の一方または両方を含む場合、それらの含まれる限界値の片方または両方を除外する範囲もまた、本技術に含まれる。ある特定の範囲は、本明細書で、数値の前に「約」という用語を付けて提示される。「約」という用語は、それが前に付く数そのもの、ならびにこの用語が前に付く数に近いまたはそれに近似する数に文字通りの支持を提供するように本明細書で使用される。ある数が具体的に列挙される数に近いまたはそれに近似するかどうかを決定する際、その近いまたは近似する列挙されていない数は、提示される文脈において、具体的に列挙される数の実質的な同等値を提供する数であり得る。
【0185】
本明細書で引用される全ての刊行物、特許、及び特許出願は、あたかもそれぞれ個々の刊行物、特許、または特許出願が、参照により援用されることが明確かつ個別に示された場合と同じ程度に、参照により本明細書に援用される。さらに、引用される各刊行物、特許、または特許出願は、それらの刊行物が関連して引用される内容を開示及び説明するために、参照により本明細書に援用される。いずれの刊行物の引用も、出願日より前のその開示のためのものであり、本明細書に記載の技術が、先行技術に基づいてかかる刊行物に先行する権利を有しないことを認めるものとして解釈されるべきではない。さらに、提供される刊行物の日付は、実際の刊行物の日付とは異なる場合があり、独立して確認する必要があり得る。
【0186】
本技術をさらに説明する前に、本技術が記載される特定の実施形態に限定されず、かくして当然のことながら、様々であり得ることを理解されたい。本明細書で使用される専門用語は、特定の実施形態を説明するためのものにすぎず、本技術の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるため、限定するものとしては意図されないことも理解されたい。本明細書で使用される見出しは、限定するものではなく、読み手に方向性を与えることが意図されるにすぎないが、その内容は一般に、本明細書に開示される技術に当てはまることも理解されるべきである。
【0187】
III.発明を実施するための形態
A.低免疫原性細胞の患者への投与
一態様では、本明細書に記載の低免疫原性細胞の集団を投与することによって患者を処置する方法が本明細書で提供される。本明細書で提供される対象となる低免疫原性細胞(例えば、本明細書に記載される低免疫原性幹細胞から分化させた細胞)は、例えば、疾患または障害の処置のための細胞療法の候補を含めた、任意の好適な患者に投与することができる。細胞療法の候補には、本明細書で提供される対象となる低免疫原性細胞の治療効果が有益な可能性があり得る、疾患または病態を有する任意の患者が含まれる。一部の実施形態では、患者は、細胞欠損症を有する。本明細書で提供される対象となる低免疫原性細胞の治療効果が有益である候補は、疾患または病態の排除、低減、または改善を示す。本明細書で使用されるとき、「細胞欠損症」とは、患者において細胞集団の機能不全または喪失を引き起こし、患者が細胞集団を自然に置換または再生することができない、任意の疾患または病態を指す。例となる細胞欠損症には、自己免疫性疾患(例えば、多発性硬化症、重症筋無力症、関節リウマチ、糖尿病、全身性ループス及びエリテマトーデス)、神経変性疾患(例えば、ハンチントン病及びパーキンソン病)、心血管病態及び疾患、血管病態及び疾患、角膜病態及び疾患、肝臓病態及び疾患、甲状腺病態及び疾患、及び/または腎臓病態及び疾患が含まれるが、これらに限定されない。一部の実施形態では、低免疫原性細胞を投与される患者は、がんを有する。本明細書で提供される低免疫原性細胞によって処置され得る、例となるがんには、B細胞急性リンパ芽球性白血病(B-ALL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、肝臓癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、結腸直腸癌、肺癌、非小細胞肺癌、急性骨髄性リンパ性白血病、多発性骨髄腫、胃癌、胃腺癌、膵臓腺癌、神経膠芽腫、神経芽細胞腫、肺扁平上皮癌、肝細胞癌、及び/または膀胱癌が含まれるが、これらに限定されない。ある特定の実施形態では、がん患者は、本明細書で提供される低免疫原性CAR-T細胞の投与によって処置される。
【0188】
一部の実施形態では、本明細書で提供される低免疫原性細胞は、例えば、細胞移植、輸血、組織移植、及び/または臓器移植等の、以前の移植に存在する1つまたは複数の抗原から感作された患者の処置に有用である。ある特定の実施形態では、以前の移植は、同種異系移植であり、患者は、同種異系移植からの1つもしくは複数の同種異系抗原に対して感作されている。同種異系移植には、同種異系細胞移植、同種異系輸血、同種異系組織移植、及び/または同種異系臓器移植が含まれるが、これらに限定されない。一部の実施形態では、患者は、妊娠しているか、または妊娠したことがある(例えば、妊娠中の同種免疫化を有するか、または有したことがある)感作患者である。ある特定の実施形態では、患者は、以前の移植に含まれる1つまたは複数の抗原から感作されており、ここで、以前の移植は、改変されたヒト細胞、組織、及び/または臓器である。一部の実施形態では、改変されたヒト細胞、組織、及び/または臓器は、改変された自家ヒト細胞、組織、及び/または臓器である。一部の実施形態では、以前の移植は、非ヒト細胞、組織、及び/または臓器である。例となる実施形態では、以前の移植は、改変された非ヒト細胞、組織、及び/または臓器である。ある特定の実施形態では、以前の移植は、ヒト成分を含むキメラである。ある特定の実施形態では、以前の移植は、CAR-T細胞であり、及び/またはそれを含む。ある特定の実施形態では、以前の移植は、自家移植であり、患者は、自家移植からの1つまたは複数の自己抗原に対して感作されている。ある特定の実施形態では、以前の移植は、自家細胞、組織、及び/または臓器である。一部の実施形態では、感作患者は、同種異系CAR-T細胞ベースの療法または自家CAR-T細胞ベースの療法を以前に受けている。自家CAR-T細胞ベースの療法の非限定的な例としては、ブレクスカブタゲンオートルユーセル(TECARTUS(登録商標))、アキシカブタゲンシロルユーセル(YESCARTA(登録商標))、イデカブタゲンビクルユーセル(ABECMA(登録商標))、リソカブタゲンマラルユーセル(BREYANZI(登録商標))、チサゲンレクルユーセル(KYMRIAH(登録商標))、Cartesian TherapeuticsからのDescartes-08及びDescartes-11、NovartisからのCTL110、Poseida TherapeuticsからのP-BMCA-101、ならびにAutolus LimitedからのAUTO4が挙げられる。同種異系CAR-T細胞ベースの療法の非限定的な例としては、CellectisからのUCARTCS、Precision BiosciencesからのPBCAR19B及びPBCAR269A、Fate TherapeuticsからのFT819、ならびにClyad OncologyからのCYAD-211が挙げられる。一部の実施形態では、患者が、本技術の細胞を含まない同種異系CAR-T細胞ベースの療法または自家CAR-T細胞ベースの療法を含む第1の療法を以前に受けた後、感作患者は、本技術の細胞を含む第2の療法を施与される。一部の実施形態では、患者が、本技術の細胞を含まない同種異系CAR-T細胞ベースの療法または自家CAR-T細胞ベースの療法のいずれかを含む第1の療法及び/または第2の療法を以前に受けた後、感作患者は、本技術の細胞を含む第3の療法を施与される。一部の実施形態では、患者が、本技術の細胞を含まない同種異系CAR-T細胞ベースの療法または自家CAR-T細胞ベースの療法を含む一連の療法を以前に受けた後、感作患者は、本技術の細胞を含む後続の療法を施与される。一部の実施形態では、本明細書で提供される方法は、(i)限定されないが、本明細書で提供される細胞を含まない同種異系もしくは自家CAR-T細胞ベースの療法等の、処置の不成功の後、(ii)限定されないが、本明細書で提供される細胞を含まない同種異系もしくは自家CAR-T細胞ベースの療法等の、治療上有効でない処置の後、または(iii)限定されないが、本明細書で提供される細胞を含まない同種異系もしくは自家CAR-T細胞ベースの療法等の、有効な処置の後の、特定の病態もしくは疾患に対する次の選択(next in-line)処置として使用され、各場合において、一部の実施形態では第1選択、第2選択、第3選択、及び追加の選択処置に続く使用を含む。
【0189】
ある特定の実施形態では、感作患者は、アレルギーを有するか、1つまたは複数のアレルゲンに感作されている。例となる実施形態では、患者は、花粉症、食物アレルギー、昆虫アレルギー、薬物アレルギー、及び/またはアトピー性皮膚炎を有する。
【0190】
本開示に鑑みて当該技術分野で既知の任意の好適な方法を使用して、患者が感作患者であるかどうかを決定することができる。患者が感作患者であるかどうかを決定するための方法の例としては、補体依存性細胞傷害作用(CDC)及びフローサイトメトリーアッセイを含めた細胞ベースのアッセイ、ならびにELISA及びポリスチレンビーズベースアレイアッセイを含めた固相アッセイが挙げられるが、これらに限定されない。患者が感作患者であるかどうかを決定するための方法の他の例としては、抗体スクリーニング法、パーセントパネル反応性抗体(PRA)試験、例えば、単一抗体ビーズ(SAB)及びLuminex IgGアッセイを使用した、Luminexベースのアッセイ、HLA抗体の平均蛍光強度(MFI)値の評価、計算パネル反応性抗体(cPRA)アッセイ、IgG力価試験、補体結合アッセイ、IgGサブタイピングアッセイ、及び/またはColvin et al.,Circulation.2019 Mar 19;139(12):e553-e578に記載されるものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0191】
一部の実施形態では、対象となる低免疫原性細胞を使用した処置を受けている患者は、以前の処置を受けたことがある。一部の実施形態では、低免疫原性細胞は、以前の処置と同じ病態を処置するために使用される。一部の実施形態では、低免疫原性細胞は、以前の処置とは異なる病態を処置するために使用される。一部の実施形態では、患者に投与される低免疫原性細胞は、以前の処置によって処置された同じ病態もしくは疾患の処置に対して強化された治療効果を示す。一部の実施形態では、投与された低免疫原性細胞は、以前の処置と比較して患者における病態もしくは疾患の処置に対してより長期の治療効果を示す。例となる実施形態では、投与された細胞は、以前の処置と比較してがん細胞に対して強化された効力、有効性、及び/または特異性を示す。特定の実施形態では、低免疫原性細胞は、がんの処置のためのCAR-T細胞である。
【0192】
一部の実施形態では、本明細書で提供される方法は、処置の不成功の後、治療上有効でない処置の後、または有効な処置後の、特定の病態もしくは疾患に対する次の選択処置として使用され得、各場合において、第1選択、第2選択、第3選択、及び追加の選択処置に続く使用を含む。一部の実施形態では、以前の処置(例えば、第1選択処置)は、治療上有効でない処置である。本明細書で使用されるとき、「治療上有効でない」処置は、患者において所望に満たない臨床成果をもたらす処置を指す。例えば、細胞欠損症に対する処置に関して、治療上有効でない処置とは、患者において欠損細胞を置換するために所望されるレベルの機能的細胞及び/または細胞活性を達成しない、及び/または治療持続性を欠いた処置を指す場合がある。がん処置に関しては、治療上有効でない処置とは、所望されるレベルの効力、有効性、及び/または特異性を達成しない処置を指す。治療有効性は、当該技術分野で既知の任意の好適な技法を使用して測定することができる。一部の実施形態では、患者は、以前の処置に対して免疫応答を生じる。一部の実施形態では、以前の処置は、患者によって拒絶される細胞、組織、及び/または臓器移植片である。一部の実施形態では、以前の処置は、機械補助による処置を含んでいた。一部の実施形態では、機械補助による処置は、血液透析または補助人工心臓を含んでいた。一部の実施形態では、患者は、機械補助による処置に対して免疫応答を生じた。一部の実施形態では、以前の処置は、治療用細胞が望まれない様態で増殖及び分裂するようなことがあれば、安全スイッチが作動されると治療用細胞の死を引き起こすことができる、安全スイッチを含む治療用細胞の集団を含んでいた。一部の実施形態では、患者は、安全スイッチにより誘導される治療用細胞の死の結果として、免疫応答を生じる。一部の実施形態では、患者は、以前の処置から感作されている。例となる実施形態では、患者は、投与された低免疫原性細胞によっては感作されない。
【0193】
一部の実施形態では、対象となる低免疫原性細胞は、組織、臓器、及び/または部分的臓器移植を、それを必要とする患者に提供する前、それと同時、及び/またはその後に投与される。一部の実施形態では、患者は、低免疫原性細胞に対して免疫応答を示さない。一部の実施形態では、低免疫原性細胞は、特定の組織及び/または臓器における細胞欠損症の処置のために患者に投与され、患者はその後、同じ特定の組織または臓器に対する組織移植または臓器移植を受ける。一部の実施形態では、低免疫原性細胞は、移植用の組織または臓器内でインサイチュとして患者に投与される。一部の実施形態では、低免疫原性細胞は、組織移植または臓器移植前または後に組織または臓器内でインサイチュとして患者に投与される。かかる実施形態では、低免疫原性細胞による処置は、やがて行われる組織または臓器置換へのブリッジ療法として機能する。例えば、一部の実施形態では、患者は、肝臓障害を有し、肝臓移植を受ける前に、本明細書で提供される低免疫原性肝細胞による処置を受ける。一部の実施形態では、患者は、肝臓障害を有し、肝臓移植を受けた後に、本明細書で提供される低免疫原性肝細胞による処置を受ける。一部の実施形態では、低免疫原性細胞は、特定の組織及び/または臓器における細胞欠損症の処置のために患者に投与され、患者はその後、異なる組織または臓器に対する組織移植及び/または臓器移植を受ける。例えば、一部の実施形態では、患者は、腎臓移植を受ける前に低免疫原性膵臓ベータ細胞で処置される糖尿病患者である。一部の実施形態では、患者は、腎臓移植を受けた後に低免疫原性膵臓ベータ細胞で処置される糖尿病患者である。一部の実施形態では、低免疫原性細胞による処置は、患者が組織移植または臓器移植を受ける前及び/または受けた後に、ドナー組織及び/または臓器に施与される。一部の実施形態では、該方法は、細胞欠損症の処置のためのものである。例となる実施形態では、組織移植または臓器移植は、心臓移植、肺移植、腎臓移植、肝臓移植、膵臓移植、腸移植、胃移植、角膜移植、骨髄移植、血管移植、心臓弁移植、及び/または骨移植である。
【0194】
患者を処置する方法は一般に、本明細書で提供される細胞、特に低免疫原性細胞の投与を介する。理解されようが、該細胞及び/または療法のタイミングに関連する本明細書に記載の全ての複数の実施形態に関して、該細胞の投与は、所望の部位での導入細胞の少なくとも部分的な局在化をもたらす方法または経路によって遂行される。細胞は、対象内の所望の部位に直接埋め込まれ得るか、または代替として、所望の箇所への送達をもたらす任意の適切な経路によって投与され得、ここで、埋め込まれた細胞または細胞の構成要素の少なくとも一部分は、生存したままである。一部の実施形態では、該細胞は、所望の臓器または臓器の所望の箇所においてインサイチュで埋め込まれる。一部の実施形態では、該細胞は、患者が組織移植または臓器移植を受ける前及び/または受けた後に、ドナー組織及び/または臓器に埋め込まれ得る。一部の実施形態では、該細胞は、細胞療法によって緩和され得る任意の疾患、障害、病態等の疾患または障害、及び/またはその症状を処置するために投与される。
【0195】
一部の実施形態では、該細胞集団は、患者が感作されてから少なくとも1日、少なくとも2日、少なくとも3日、少なくとも4日、少なくとも5日、少なくとも6日、少なくとも1週間、または少なくとも1ヶ月以上後に投与される。一部の実施形態では、該細胞集団は、患者が感作されてから、または感作の特性もしくは特徴を示してから少なくとも1週間(例えば、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間、11週間、12週間、13週間、14週間、15週間、16週間、17週間、18週間、19週間、20週間、またはそれよりも長い期間)以上後に投与される。一部の実施形態では、該細胞集団は、患者が移植(例えば、同種異系移植)を受けてから、妊娠してから(例えば、妊娠中の同種免疫化を有するか、または有したことがある)、及び/または感作されてから、及び/または感作の特性及び/または特徴を示してから少なくとも1ヶ月(例えば、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、12ヶ月、13ヶ月、14ヶ月、15ヶ月、16ヶ月、17ヶ月、18ヶ月、19ヶ月、20ヶ月、またはそれよりも長い期間)以上後に投与される。
【0196】
一部の実施形態では、移植を受けたことがある、妊娠したことがある(例えば、妊娠中の同種免疫化を有するか、または有したことがある)、及び/または抗原(例えば、同種異系抗原)に対して感作されている患者は、本明細書に記載の細胞集団の1回目の用量の投与、1回目の用量の後の回復期間、及び記載される細胞集団の2回目の用量の投与を含む、投与レジメンを施与される。一部の実施形態では、第1の細胞集団及び第2の細胞集団中に存在する細胞種の混成は異なる。ある特定の実施形態では、第1の細胞集団及び第2の細胞集団中に存在する細胞種の混成は、同じであるか、または実質的に同等である。多くの実施形態では、第1の細胞集団及び第2の細胞集団は、同じ細胞種を含む。一部の実施形態では、第1の細胞集団及び第2の細胞集団は、異なる細胞種を含む。一部の実施形態では、第1の細胞集団及び第2の細胞集団は、同じパーセンテージの細胞種を含む。他の実施形態では、第1の細胞集団及び第2の細胞集団は、異なるパーセンテージの細胞種を含む。
【0197】
一部の実施形態では、該細胞集団は、細胞欠損症の処置のために、及び/または心臓、肺、腎臓、肝臓、膵臓、腸、胃、角膜、骨髄、血管、心臓弁、脳、脊髄、及び/または骨からなる群から選択される組織及び/または臓器における病態もしくは疾患の処置のための細胞療法として投与される。
【0198】
一部の実施形態では、細胞欠損症は、神経変性疾患に関連し、細胞療法は、神経変性疾患の処置のためのものである。一部の実施形態では、神経変性疾患は、白質ジストロフィー、ハンチントン病、パーキンソン病、多発性硬化症、横断性脊髄炎、及び/またはペリツェウス・メルツバッハ病(PMD)からなる群から選択される。一部の実施形態では、該細胞は、グリア前駆細胞、乏突起膠細胞、星状細胞、及びドーパミン作動性ニューロン、任意選択で、ドーパミン作動性ニューロンは、神経幹細胞、神経前駆細胞、未成熟ドーパミン作動性ニューロン、及び成熟ドーパミン作動性ニューロンからなる群から選択される。一部の実施形態では、細胞欠損症は、肝臓疾患に関連し、細胞療法は、肝臓疾患の処置のためのものである。一部の実施形態では、肝臓疾患は、肝硬変を含む。一部の実施形態では、該細胞は、肝細胞もしくは肝前駆細胞である。一部の実施形態では、細胞欠損症は、角膜疾患に関連し、細胞療法は、角膜疾患の処置のためのものである。一部の実施形態では、角膜疾患は、フックスジストロフィーもしくは先天性遺伝性内皮ジストロフィーである。一部の実施形態では、該細胞は、角膜内皮前駆細胞もしくは角膜内皮細胞である。一部の実施形態では、細胞欠損症は、心血管病態もしくは疾患に関連し、細胞療法は、心血管病態もしくは疾患の処置のためのものである。一部の実施形態では、心血管疾患は、心筋梗塞及び/またはうっ血性心不全である。一部の実施形態では、該細胞は、心筋細胞もしくは心筋前駆細胞である。一部の実施形態では、細胞欠損症は、糖尿病に関連し、細胞療法は、糖尿病の処置のためのものである。一部の実施形態では、該細胞は、膵臓ベータ島細胞を含む膵島細胞であり、任意選択で、膵島細胞は、膵島前駆細胞、未成熟膵島細胞、及び成熟膵島細胞からなる群から選択される。一部の実施形態では、細胞欠損症は、血管病態もしくは疾患に関連し、細胞療法は、血管病態もしくは疾患の処置のためのものである。一部の実施形態では、該細胞は、内皮細胞である。一部の実施形態では、細胞欠損症は、自己免疫性甲状腺炎に関連し、細胞療法は、自己免疫性甲状腺炎の処置のためのものである。一部の実施形態では、該細胞は、甲状腺前駆細胞である。一部の実施形態では、細胞欠損症は、腎臓疾患に関連し、細胞療法は、腎臓疾患の処置のためのものである。一部の実施形態では、該細胞は、腎前駆体細胞もしくは腎細胞である。
【0199】
一部の実施形態では、該細胞集団は、がんの処置のために投与される。一部の実施形態では、該細胞集団は、がんの処置のために投与され、該細胞集団は、CAR-T細胞の集団である。一部の実施形態では、がんは、B細胞急性リンパ芽球性白血病(B-ALL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、肝臓癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、結腸直腸癌、肺癌、非小細胞肺癌、急性骨髄性リンパ性白血病、多発性骨髄腫、胃癌、胃腺癌、膵臓腺癌、神経膠芽腫、神経芽細胞腫、肺扁平上皮癌、肝細胞癌、及び膀胱癌からなる群から選択される。
【0200】
一部の実施形態では、患者は、組織移植または臓器移植を受けており、任意選択で、組織移植または臓器移植もしくは部分的臓器移植は、心臓移植、肺移植、腎臓移植、肝臓移植、膵臓移植、腸移植、胃移植、角膜移植、骨髄移植、血管移植、心臓弁移植、骨移植、部分的肺移植、部分的腎臓移植、部分的肝臓移植、部分的膵臓移植、部分的腸移植、及び/または部分的角膜移植からなる群から選択される。
【0201】
一部の実施形態では、組織移植または臓器移植は、同種異系移植片移植である。一部の実施形態では、組織移植または臓器移植は、自家移植片移植である。一部の実施形態では、該細胞集団は、組織または臓器における細胞欠損症の処置のために投与され、組織移植または臓器移植は、同じ組織または臓器の置換のためのものである。一部の実施形態では、該細胞集団は、組織及び/または臓器における細胞欠損症の処置のために投与され、組織移植及び/または臓器移植は、異なる組織または臓器の置換のためのものである。一部の実施形態では、臓器移植は、腎臓移植であり、該細胞集団は、腎前駆体細胞もしくは腎細胞の集団である。一部の実施形態では、患者は、糖尿病を有し、該細胞集団は、ベータ島細胞の集団である。一部の実施形態では、臓器移植は、心臓移植であり、該細胞集団は、心筋前駆細胞またはペースメーカー細胞の集団である。一部の実施形態では、臓器移植は、膵臓移植であり、該細胞集団は、膵臓ベータ島細胞の集団である。一部の実施形態では、臓器移植は、部分的肝臓移植であり、該細胞集団は、肝細胞もしくは肝前駆細胞の集団である。
【0202】
一部の実施形態では、回復期間は、低免疫原性細胞の集団の1回目の投与に次いで開始し、かかる細胞が、患者においてもはや存在しないかまたは検出可能でないときに終了する。一部の実施形態では、回復期間の継続期間は、該細胞の初回投与から少なくとも1週間(例えば、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間、11週間、12週間、13週間、14週間、15週間、16週間、17週間、18週間、19週間、20週間、またはそれよりも長い期間)以上後である。一部の実施形態では、回復期間の継続期間は、該細胞の初回投与から少なくとも1ヶ月(例えば、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、12ヶ月、13ヶ月、14ヶ月、15ヶ月、16ヶ月、17ヶ月、18ヶ月、19ヶ月、20ヶ月、またはそれよりも長い期間)以上後である。
【0203】
一部の実施形態では、投与された低免疫原性細胞の集団は、患者において減少したまたはより低いレベルの全身性のTH1活性化を誘発する。一部の事例では、該細胞によって誘発される全身性のTH1活性化のレベルは、免疫原性細胞の投与によってもたらされる全身性のTH1活性化のレベルと比較して少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%低い。一部の実施形態では、投与された低免疫原性細胞の集団は、患者において全身性のTH1活性化を誘発するに至らない。
【0204】
一部の実施形態では、投与された低免疫原性細胞の集団は、患者において減少したまたはより低いレベルの末梢血単核細胞(PBMC)の免疫活性化を誘発する。一部の事例では、該細胞によって誘発されるPBMCの免疫活性化のレベルは、免疫原性細胞の投与によってもたらされるPBMCの免疫活性化のレベルと比較して少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%低い。一部の実施形態では、投与された低免疫原性細胞の集団は、患者においてPBMCの免疫活性化を誘発するに至らない。
【0205】
一部の実施形態では、投与された低免疫原性細胞の集団は、患者において減少したまたはより低いレベルのドナー特異的IgG抗体を誘発する。一部の事例では、該細胞によって誘発されるドナー特異的IgG抗体のレベルは、免疫原性細胞の投与によってもたらされるドナー特異的IgG抗体のレベルと比較して少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%低い。一部の実施形態では、投与された低免疫原性細胞の集団は、患者においてドナー特異的IgG抗体を誘発するに至らない。
【0206】
一部の実施形態では、投与された低免疫原性細胞の集団は、患者において減少したまたはより低いレベルのIgM及びIgG抗体産生を誘発する。一部の事例では、該細胞によって誘発されるIgM及びIgG抗体産生のレベルは、免疫原性細胞の投与によってもたらされるIgM及びIgG抗体産生のレベルと比較して少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%低い。一部の実施形態では、投与された低免疫原性細胞の集団は、患者においてIgM及びIgG抗体産生を誘発するに至らない。
【0207】
一部の実施形態では、投与された低免疫原性細胞の集団は、患者において減少したまたはより低いレベルの細胞傷害性T細胞による殺傷を誘発する。一部の事例では、該細胞によって誘発される細胞傷害性T細胞による殺傷のレベルは、免疫原性細胞の投与によってもたらされる細胞傷害性T細胞による殺傷のレベルと比較して少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%低い。一部の実施形態では、投与された低免疫原性細胞の集団は、患者において細胞傷害性T細胞による殺傷を誘発するに至らない。
【0208】
上記で考察したように、本明細書では、ある特定の実施形態においてヒト白血球抗原等の同種異系抗原に対して感作された患者に投与され得る、細胞が提供される。一部の実施形態では、患者は、妊娠しているか、または妊娠したことがあり、例えば、妊娠中の同種免疫化(例えば、胎児及び新生児の溶血性疾患(HDFN)、新生児同種免疫性好中球減少症(NAN)、または胎児及び新生児同種免疫性血小板減少症(FNAIT))を有する。換言すれば、患者は、限定されないが、胎児及び新生児の溶血性疾患(HDFN)、新生児同種免疫性好中球減少症(NAN)、ならびに胎児及び新生児同種免疫性血小板減少症(FNAIT)等の、妊娠中の同種免疫化に関連する障害または病態を有するか、または有したことがある。一部の実施形態では、患者は、限定されないが、同種異系細胞移植、同種異系輸血、同種異系組織移植、または同種異系臓器移植等の、同種異系移植を受けたことがある。一部の実施形態では、患者は、同種異系抗原に対するメモリーB細胞を示す。一部の実施形態では、患者は、同種異系抗原に対するメモリーT細胞を示す。かかる患者は、同種異系抗原に対するメモリーB細胞及びメモリーT細胞の両方を示す可能性がある。
【0209】
記載される細胞の投与時に、患者は、低免疫原性ではない細胞に対する応答と比較して、全身性の免疫応答の不在または低減されたレベルの全身性の免疫応答を示す。一部の実施形態では、患者は、低免疫原性ではない細胞に対する応答と比較して、適応免疫応答の不在または低減されたレベルの適応免疫応答を示す。一部の実施形態では、患者は、低免疫原性ではない細胞に対する応答と比較して、自然免疫応答の不在または低減されたレベルの自然免疫応答を示す。一部の実施形態では、患者は、低免疫原性ではない細胞に対する応答と比較して、T細胞応答の不在または低減されたレベルのT細胞応答を示す。一部の実施形態では、患者は、低免疫原性ではない細胞に対する応答と比較して、B細胞応答の不在または低減されたレベルのB細胞応答を示す。
【0210】
本明細書にさらに詳細に記載されるように、本明細書では、外因性CD47ポリペプチドを含むとともにMHCクラスIヒト白血球抗原の低減された発現を含む、低免疫原性細胞の集団、外因性CD47ポリペプチドを含むとともにMHCクラスIIヒト白血球抗原の低減された発現を含む、低免疫原性細胞の集団、ならびに外因性CD47ポリペプチドを含むとともにMHCクラスI及びクラスIIヒト白血球抗原の低減された発現を含む、低免疫原性細胞の集団が提供される。
【0211】
B.低免疫原性細胞
本明細書では、MHC I分子、MHC II分子、またはMHC I及びMHC II分子の発現を調節する1つまたは複数の標的ポリヌクレオチド配列の改変を含む細胞が提供される。ある特定の態様では、改変は、CD47の発現を増加させることを含む。一部の実施形態では、該細胞は、MHCクラスI分子の発現を低減する1つまたは複数の一過性の改変またはゲノム改変、及びCD47の発現を増加させる改変を含む。換言すれば、操作された細胞は、CD47タンパク質をコードする外因性ポリヌクレオチドを含み、かつ1つまたは複数のMHCクラスI分子の表面発現の低減またはサイレンシングを示す。一部の実施形態では、該細胞は、MHCクラスII分子の発現を低減する1つまたは複数のゲノム改変、及びCD47の発現を増加させる改変を含む。一部の事例では、操作された細胞は、外因性CD47核酸及びタンパク質を含み、かつ1つまたは複数のMHCクラスI分子の表面発現の低減またはサイレンシングを示す。一部の実施形態では、該細胞は、MHCクラスII分子の発現を低減または排除する1つまたは複数のゲノム改変、MHCクラスII分子の発現を低減または排除する1つまたは複数のゲノム改変、及びCD47の発現を増加させる改変を含む。一部の実施形態では、操作された細胞は、外因性CD47タンパク質を含み、1つまたは複数のMHCクラスI分子の表面発現の低減またはサイレンシングを示し、かつ1つまたは複数のMHCクラスII分子の表面発現の低減または欠如を示す。多くの実施形態では、該細胞は、B2Mインデル/インデル、CIITAインデル/インデル、CD47tg細胞である。
【0212】
MHC I及び/またはMHC II発現の低減は、例えば、以下のうちの1つまたは複数によって遂行することができる:(1)多型HLAアレル(HLA-A、HLA-B、HLA-C)及びMHC-II遺伝子を直接標的化すること、(2)B2Mの除去により、全てのMHC-I分子の表面輸送を低減すること、及び/または(3)HLA発現に重要である、LRC5、RFX-5、RFXANK、RFXAP、IRF1、NF-Y(NFY-A、NFY-B、NFY-Cを含む)、及びCIITA等のMHCエンハンセオソームの1つまたは複数の構成要素の欠失。
【0213】
ある特定の実施形態では、HLA発現が妨害される。一部の実施形態では、HLA発現は、個々のHLAを標的化すること(例えば、HLA-A、HLA-B、及び/またはHLA-Cの発現をノックアウトすること)、HLA発現の転写レギュレーターを標的化すること(例えば、NLRC5、CIITA、RFX5、RFXAP、RFXANK、NFY-A、NFY-B、NFY-C、及び/またはIRF-1の発現をノックアウトすること)、MHCクラスI分子の表面輸送を遮断すること(例えば、B2M及び/またはTAP1の発現をノックアウトすること)、及び/またはHLA-Razorで標的化すること(例えば、WO2016183041を参照されたい)によって妨害される。
【0214】
ある特定の態様では、本明細書に開示される、幹細胞または分化した幹細胞を含めた細胞は、MHC-I及び/またはMHC-IIに対応する1つまたは複数のヒト白血球抗原(例えば、HLA-A、HLA-B、及び/またはHLA-C)を発現せず、故に低免疫原性であるとして特徴付けられる。例えば、ある特定の態様では、本明細書に開示される、幹細胞または分化した幹細胞を含めた細胞は、該幹細胞またはそれから調製される分化した幹細胞が以下のMHC-I分子、すなわちHLA-A、HLA-B、及びHLA-Cのうちの1つまたは複数を発現しないか、またはその発現の低減を示すように改変されている。一部の実施形態では、HLA-A、HLA-B、及びHLA-Cのうちの1つまたは複数が、細胞から「ノックアウト」され得る。HLA-A遺伝子、HLA-B遺伝子、及び/またはHLA-C遺伝子がノックアウトされた細胞は、ノックアウトされた各遺伝子の発現の低減または排除を示し得る。
【0215】
ある特定の実施形態では、HLA遺伝子における保存領域を標的とすることによって全てのMHCクラスIアレルの同時欠失を可能にするガイドRNAは、HLA Razorとして特定される。一部の実施形態では、ガイドRNAは、CRISPRシステム、例えば、CRISPR-Cas9システムの一部である。代替の態様では、gRNAは、TALENシステムの一部である。一態様では、HLAにおける特定された保存領域を標的とするHLA Razorが、WO2016183041に記載される。他の態様では、特定された保存領域を標的とする複数のHLA Razorが利用される。一般に、HLAにおける保存領域を標的とする任意のガイドがHLA Razorとしての機能を果たし得ることが理解される。
【0216】
一部の実施形態では、該細胞は、CD47、ならびにDUX4、CD24、CD27、CD46、CD55、CD59、CD200、HLA-C、HLA-E、HLA-E重鎖、HLA-G、PD-L1、IDO1、CTLA4-Ig、C1-インヒビター、IL-10、IL-35、IL-39、FasL、CCL21、CCL22、Mfge8、CD16、CD52、H2-M3、及びSerpinb9からなる群から選択される1つまたは複数の因子の発現を増加させるための改変を含む。
【0217】
一部の実施形態では、該細胞は、MHCクラスI分子、MHCクラスII分子のいずれか、またはMHCクラスI及びMHCクラスII分子の発現を制御する、1つまたは複数の標的ポリヌクレオチド配列のゲノム改変を含む。一部の実施形態では、遺伝子編集システムを使用して、1つまたは複数の標的ポリヌクレオチド配列が改変される。一部の実施形態では、標的ポリヌクレオチド配列は、B2M、CIITA、及びNLRC5を含む群から選択される1つまたは複数である。一部の実施形態では、該細胞は、B2M遺伝子に対する遺伝子編集による改変を含む。一部の実施形態では、該細胞は、CIITA遺伝子に対する遺伝子編集による改変を含む。一部の実施形態では、該細胞は、NLRC5遺伝子に対する遺伝子編集による改変を含む。一部の実施形態では、該細胞は、B2M及びCIITA遺伝子に対する遺伝子編集による改変を含む。一部の実施形態では、該細胞は、B2M及びNLRC5遺伝子に対する遺伝子編集による改変を含む。一部の実施形態では、該細胞は、CIITA及びNLRC5遺伝子に対する遺伝子編集による改変を含む。特定の実施形態では、該細胞は、B2M、CIITA、及びNLRC5遺伝子に対する遺伝子編集による改変を含む。一部の実施形態では、細胞のゲノムは、HLA発現の重要な構成要素を低減または欠失させるように変化させられている。
【0218】
一部の実施形態では、本開示は、遺伝子が、ゲノムDNAの連続した連なりを欠失するように編集されており、それによって細胞またはその集団におけるMHCクラスI分子の発現、例えば、細胞またはその集団におけるMHCクラスI分子の表面発現が低減または排除されたゲノムを含む、細胞(例えば、幹細胞、人工多能性幹細胞、分化細胞、造血幹細胞、初代細胞、またはCAR-T細胞)またはその集団を提供する。ある特定の態様では、本開示は、遺伝子が、ゲノムDNAの連続した連なりを欠失するように編集されており、それによって細胞またはその集団におけるMHCクラスII分子の表面発現が低減または排除されたゲノムを含む、細胞(例えば、幹細胞、人工多能性幹細胞、分化細胞、造血幹細胞、初代細胞、またはCAR-T細胞)またはその集団を提供する。特定の態様では、本開示は、1つまたは複数の遺伝子が、ゲノムDNAの連続した連なりを欠失するように編集されており、それによって細胞またはその集団におけるMHCクラスI及びII分子の表面発現が低減または排除されたゲノムを含む、細胞(例えば、幹細胞、人工多能性幹細胞、分化細胞、造血幹細胞、初代細胞、またはCAR-T細胞)またはその集団を提供する。
【0219】
ある特定の実施形態では、MHC I分子及び/またはMHC II分子の発現は、ゲノムDNAの連続した連なりを標的化して欠失させ、それによってB2M、CIITA、及びNLRC5からなる群から選択される標的遺伝子の発現が低減または排除されることによって調節される。一部の実施形態では、外因性CD47タンパク質、及び不活性化または改変されたCIITA遺伝子配列、ならびに一部の事例ではB2M遺伝子配列を不活性化または改変する追加の遺伝子改変を含む、遺伝子編集された細胞(例えば、改変されたヒト細胞)が本明細書に記載される。一部の実施形態では、外因性CD47タンパク質、及び不活性化または改変されたCIITA遺伝子配列、ならびに一部の事例ではNLRC5遺伝子配列を不活性化または改変する追加の遺伝子改変を含む、遺伝子編集された細胞が本明細書に記載される。一部の実施形態では、外因性CD47タンパク質、及び不活性化または改変されたB2M遺伝子配列、ならびに一部の事例ではNLRC5遺伝子配列を不活性化または改変する追加の遺伝子改変を含む、遺伝子編集された細胞が本明細書に記載される。一部の実施形態では、外因性CD47タンパク質、及び不活性化または改変されたB2M遺伝子配列、ならびに一部の事例ではCIITA遺伝子配列及びNLRC5遺伝子配列を不活性化または改変する追加の遺伝子改変を含む、遺伝子編集された細胞が本明細書に記載される。
【0220】
一部の実施形態では、該細胞は、B2M-/-、CIITA-/-、TRAC-/-、TRB-/-、CD47tg細胞である。一部の実施形態では、B2M-/-、CIITA-/-、TRAC-/-、TRB-/-、CD47tg細胞は、初代T細胞、または低免疫原性多能性細胞(例えば、低免疫原性iPSC)に由来するT細胞である。
【0221】
一部の実施形態では、該細胞は、B2M-/-、CIITA-/-、TRAC-/-、及びCD47tg細胞である。一部の実施形態では、B2M-/-、CIITA-/-、TRAC-/-、及びCD47tg細胞は、初代T細胞、または低免疫原性多能性細胞(例えば、低免疫原性iPSC)に由来するT細胞である。
【0222】
一部の実施形態では、本明細書に記載の細胞には、多能性幹細胞、人工多能性幹細胞、かかる幹細胞に由来するまたはそれから生産された分化細胞、造血幹細胞、初代T細胞、キメラ抗原受容体(CAR)T細胞、及びそれらの任意の子孫が含まれるが、これらに限定されない。
【0223】
一部の実施形態では、初代T細胞は、細胞傷害性T細胞、ヘルパーT細胞、メモリーT細胞、制御性T細胞、腫瘍浸潤リンパ球、及びそれらの組み合わせを含む群から選択される。
【0224】
一部の実施形態では、低免疫T細胞及び初代T細胞は、CD47及びキメラ抗原受容体(CAR)を過剰発現し、B2M遺伝子のゲノム改変を含む。一部の実施形態では、低免疫T細胞及び初代T細胞は、CD47を過剰発現し、CIITA遺伝子のゲノム改変を含む。一部の実施形態では、低免疫T細胞及び初代T細胞は、CD47及びCARを過剰発現し、TRAC遺伝子のゲノム改変を含む。一部の実施形態では、低免疫T細胞及び初代T細胞は、CD47及びCARを過剰発現し、TRB遺伝子のゲノム改変を含む。一部の実施形態では、低免疫T細胞及び初代T細胞は、CD47及びCARを過剰発現し、B2M、CIITA、TRAC、及びTRB遺伝子からなる群から選択される1つまたは複数のゲノム改変を含む。一部の実施形態では、低免疫T細胞及び初代T細胞は、CD47及びCARを過剰発現し、B2M、CIITA、TRAC、及びTRB遺伝子のゲノム改変を含む。一部の実施形態では、該細胞は、CARもまた発現する、B2M-/-、CIITA-/-、TRAC-/-、及びCD47tg細胞である。
【0225】
一部の実施形態では、該細胞は、CARもまた発現する、B2M-/-、CIITA-/-、TRB-/-、及びCD47tg細胞である。一部の実施形態では、該細胞は、CARもまた発現する、B2M-/-、CIITA-/-、TRAC-/-、TRB-/-、及びCD47tg細胞である。多くの実施形態では、該細胞は、CARもまた発現する、B2Mインデル/インデル、CIITAインデル/インデル、TRACインデル/インデル、及びCD47tg細胞である。多くの実施形態では、該細胞は、CARもまた発現する、B2Mインデル/インデル、CIITAインデル/インデル、TRBインデル/インデル、及びCD47tg細胞である。多くの実施形態では、該細胞は、CARもまた発現する、B2Mインデル/インデル、CIITAインデル/インデル、TRACインデル/インデル、TRBインデル/インデル、及びCD47tg細胞である。一部の実施形態では、記載される改変細胞は、多能性幹細胞、人工多能性幹細胞、かかる多能性幹細胞及び人工多能性幹細胞から分化させた細胞、または初代T細胞である。初代T細胞の非限定的な例としては、CD3+ T細胞、CD4+ T細胞、CD8+ T細胞、ナイーブT細胞、制御性T(Treg)細胞、非制御性T細胞、Th1細胞、Th2細胞、Th9細胞、Th17細胞、濾胞性ヘルパーT(Tfh)細胞、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)、エフェクターT(Teff)細胞、セントラルメモリーT(Tcm)細胞、エフェクターメモリーT(Tem)細胞、CD45RAを発現するエフェクターメモリーT細胞(TEMRA細胞)、組織常在メモリー(Trm)細胞、仮想メモリーT細胞、自然メモリーT細胞、メモリー幹細胞(Tsc)、γδT細胞、及びT細胞の任意の他のサブタイプが挙げられる。一部の実施形態では、初代T細胞は、細胞傷害性T細胞、ヘルパーT細胞、メモリーT細胞、制御性T細胞、腫瘍浸潤リンパ球、及び/またはそれらの組み合わせを含む群から選択される。
【0226】
一部の実施形態では、初代T細胞は、レシピエント対象(例えば、該細胞を投与される患者)とは異なる1以上のドナー対象からの初代T細胞のプールからのものである。初代T細胞は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、50、100、またはそれよりも多くのドナー対象から得、一緒にプールすることができる。初代T細胞は、1以上、2以上、3以上、4以上、5以上、6以上、7以上、8以上、9以上、10以上、20以上、50以上、または100以上のドナー対象から得、一緒にプールすることができる。一部の実施形態では、初代T細胞は、1以上の個体から採取され、一部の事例では、初代T細胞または初代T細胞のプールは、インビトロで培養される。一部の実施形態では、初代T細胞または初代T細胞のプールは、CD47を外因性で発現するように操作され、インビトロで培養される。
【0227】
一部の実施形態では、初代T細胞または初代T細胞のプールは、キメラ抗原受容体(CAR)を発現するように操作される。CARは、当業者に既知のいずれでもあり得る。有用なCARには、CD19、CD20、CD22、CD38、CD123、CD138、及びBCMAを含む群から選択される抗原に結合するものが含まれる。場合によっては、CARは、限定されないが、ブレクスカブタゲンオートルユーセル、アキシカブタゲンシロルユーセル、イデカブタゲンビクルユーセル、リソカブタゲンマラルユーセル、チサゲンレクルユーセル、または臨床試験で調査中のその他において使用されるもの等の、FDA承認済みのCAR-T細胞療法で使用されるものと同じまたは同等である。
【0228】
一部の実施形態では、初代T細胞または初代T細胞のプールは、未改変の初代T細胞と比較して内在性T細胞受容体の低減された発現を示すように操作される。一部の実施形態では、初代T細胞または初代T細胞のプールは、未改変の初代T細胞と比較してCTLA4、PD1、またはCTLA4及びPD1の両方の低減された発現を示すように操作される。T細胞を含めた細胞を遺伝子改変する方法は、例えば、WO2020018620及びWO2016183041に詳述され、この開示は参照により、表、付録、配列表、及び図を含めてその全体が本明細書に援用される。
【0229】
一部の実施形態では、CAR-T細胞は、(a)抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、及びシグナル伝達ドメインを含む第1世代CAR、(b)抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、及び少なくとも2つのシグナル伝達ドメインを含む第2世代CAR、(c)抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、及び少なくとも3つのシグナル伝達ドメインを含む第3世代CAR、ならびに(d)抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、3つまたは4つのシグナル伝達ドメイン、及びCARのシグナル伝達の成功時にサイトカイン遺伝子の発現を誘導するドメインを含む第4世代CARを含む群から選択されるCARを含む。
【0230】
一部の実施形態では、CAR-T細胞は、抗原結合ドメイン、膜貫通、及び1つまたは複数のシグナル伝達ドメインを含むCARを含む。一部の実施形態では、CARはまた、リンカーも含む。一部の実施形態では、CARは、CD19抗原結合ドメインを含む。一部の実施形態では、CARは、CD28またはCD8α膜貫通ドメインを含む。一部の実施形態では、CARは、CD8αシグナルペプチドを含む。一部の実施形態では、CARは、WhitlowリンカーGSTSGSGKPGSGEGSTKG(配列番号14)を含む。一部の実施形態では、CARの抗原結合ドメインは、(a)新生細胞に特有の抗原を標的とする抗原結合ドメイン、(b)T細胞に特有の抗原を標的とする抗原結合ドメイン、(c)自己免疫障害または炎症性障害に特有の抗原を標的とする抗原結合ドメイン、(d)老化細胞に特有の抗原を標的とする抗原結合ドメイン、(e)感染性疾患に特有の抗原を標的とする抗原結合ドメイン、及び(f)細胞の細胞表面抗原に結合する抗原結合ドメインを含むがこれらに限定されない群から選択される。
【0231】
一部の実施形態では、抗原結合ドメインは、抗体、その抗原結合部分または断片、scFv、及びFabを含む群から選択される。一部の実施形態では、抗原結合ドメインは、CD19、CD20、CD22、CD38、CD123、CD138、またはBCMAに結合する。一部の実施形態では、抗原結合ドメインは、限定されないがFMC63等の抗CD19 scFvである。
【0232】
一部の実施形態では、膜貫通ドメインは、TCRα、TCRβ、TCRζ、CD3ε、CD3γ、CD3δ、CD3ζ、CD4、CD5、CD8α、CD8β、CD9、CD16、CD28、CD45、CD22、CD33、CD34、CD37、CD40、CD40L/CD154、CD45、CD64、CD80、CD86、OX40/CD134、4-1BB/CD137、CD154、FcεRIγ、VEGFR2、FAS、FGFR2Bの膜貫通領域、及びそれらの機能的バリアントを含む群から選択される1つを含む。
【0233】
一部の実施形態では、CARのシグナル伝達ドメイン(複数可)は、共刺激ドメイン(複数可)を含む。例えば、単数のシグナル伝達ドメインが、単数の共刺激ドメインを含有し得る。あるいは、単数のシグナル伝達ドメインが、1つまたは複数の共刺激ドメインを含有し得る。ある特定の実施形態では、単数のシグナル伝達ドメインは、単数の共刺激ドメインを含む。他の実施形態では、複数のシグナル伝達ドメインは、複数の共刺激ドメインを含む。場合によっては、CARが2つ以上の共刺激ドメインを含む場合、2つの共刺激ドメインは、同じでない。一部の実施形態では、共刺激ドメインは、同じでない2つの共刺激ドメインを含む。一部の実施形態では、共刺激ドメインは、T細胞活性化中のサイトカイン産生、CAR-T細胞増殖、及び/またはCAR-T細胞存続を強化する。一部の実施形態では、共刺激ドメインは、T細胞活性化中のサイトカイン産生、CAR-T細胞増殖、及び/またはCAR-T細胞存続を強化する。
【0234】
本明細書に記載されるように、第4世代CARは、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、3つまたは4つのシグナル伝達ドメイン、及びCARのシグナル伝達の成功時にサイトカイン遺伝子の発現を誘導するドメインを含有し得る。一部の事例では、サイトカイン遺伝子は、低免疫原性細胞の内在性または外因性サイトカイン遺伝子である。場合によっては、サイトカイン遺伝子は、炎症促進性サイトカインをコードする。一部の実施形態では、炎症促進性サイトカインは、IL-1、IL-2、IL-9、IL-12、IL-18、TNF、IFN-ガンマ、及びそれらの機能的断片を含む群から選択される。一部の実施形態では、CARのシグナル伝達の成功時にサイトカイン遺伝子の発現を誘導するドメインは、転写因子またはその機能的ドメインもしくは断片を含む。
【0235】
一部の実施形態では、CARは、CD3ゼータ(CD3ζ)ドメインもしくは免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)、またはその機能的バリアントを含む。一部の実施形態では、CARは、(i)CD3ゼータドメインもしくは免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)、またはその機能的バリアント、及び(ii)CD28ドメインもしくは4-1BBドメイン、またはその機能的バリアントを含む。他の実施形態では、CARは、(i)CD3ゼータドメインもしくは免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)、またはその機能的バリアント、(ii)CD28ドメインまたはその機能的バリアント、及び(iii)4-1BBドメインもしくはCD134ドメイン、またはその機能的バリアントを含む。一部の実施形態では、CARは、(i)CD3ゼータドメインもしくは免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)、またはその機能的バリアント、(ii)CD28ドメインまたはその機能的バリアント、(iii)4-1BBドメインもしくはCD134ドメイン、またはその機能的バリアント、及び(iv)サイトカインまたは共刺激リガンド導入遺伝子を含む。一部の実施形態では、CARは、(i)抗CD19 scFv、(ii)CD8αヒンジ及び膜貫通ドメインまたはその機能的バリアント、(iii)4-1BB共刺激ドメインまたはその機能的バリアント、ならびに(iv)CD3ζシグナル伝達ドメインまたはその機能的バリアントを含む。
【0236】
CAR構築物を導入する方法またはCAR-T細胞を生産する方法は、当業者に周知である。詳細な説明は、例えば、Vormittag et al.,Curr Opin Biotechnol.,2018,53,162-181、及びEyquem et al.,Nature,2017,543,113-117に見出される。
【0237】
一部の実施形態では、初代T細胞に由来する細胞は、例えば、内在性T細胞受容体遺伝子(例えば、T細胞受容体アルファ定常領域(「TRAC」と称される)及び/またはT細胞受容体ベータ定常領域(「TRBC」または「TRB」と称される)の破壊によって、内在性T細胞受容体の低減された発現を含む。一部の実施形態では、本明細書に開示されるようなポリペプチド(例えば、キメラ抗原受容体、CD47、または本明細書に開示される別の寛容原性因子)をコードする外因性核酸は、破壊されたT細胞受容体遺伝子にて挿入される。一部の実施形態では、ポリペプチドをコードする外因性核酸は、TRACまたはTRB遺伝子座にて挿入される。
【0238】
一部の実施形態では、初代T細胞に由来する細胞は、細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA4)及び/またはプログラム細胞死(PD1)の低減された発現を含む。CTLA4、PD1、ならびにCTLA4及びPD1の両方の発現を低減または排除する方法には、限定されないが、レアカットエンドヌクレアーゼを利用する遺伝子改変技術、及びRNAサイレンシングまたはRNA干渉技術等の、当業者に認識されるいずれも含まれ得る。レアカットエンドヌクレアーゼの非限定的な例としては、任意のCasタンパク質、TALEN、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、メガヌクレアーゼ、及び/またはホーミングエンドヌクレアーゼが挙げられる。一部の実施形態では、本明細書に開示されるようなポリペプチド(例えば、キメラ抗原受容体、CD47、または本明細書に開示される別の寛容原性因子)をコードする外因性核酸は、CTLA4及び/またはPD1遺伝子座にて挿入される。
【0239】
一部の実施形態では、CD47導入遺伝子は、細胞のあらかじめ選択された遺伝子座内に挿入される。一部の実施形態では、CARをコードする導入遺伝子は、細胞のあらかじめ選択された遺伝子座内に挿入される。多くの実施形態では、CD47導入遺伝子及びCARをコードする導入遺伝子は、細胞のあらかじめ選択された遺伝子座内に挿入される。あらかじめ選択された遺伝子座は、セーフハーバー遺伝子座または標的遺伝子座であり得る。セーフハーバー遺伝子座の非限定的な例としては、CCR5遺伝子座、PPP1R12C(別名、AAVS1)遺伝子座、CLYBL遺伝子座、及び/またはRosa遺伝子座(例えば、ROSA26遺伝子座)が含まれるが、これらに限定されない。標的遺伝子座の非限定的な例としては、CXCR4遺伝子、アルブミン遺伝子、SHS231遺伝子座、F3遺伝子(別名、CD142)、MICA遺伝子、MICB遺伝子、LRP1遺伝子(別名、CD91)、HMGB1遺伝子、ABO遺伝子、RHD遺伝子、FUT1遺伝子、KDM5D遺伝子(別名、HY)、B2M遺伝子、CIITA遺伝子、TRAC遺伝子、TRBC遺伝子、CCR5遺伝子、F3(すなわち、CD142)遺伝子、MICA遺伝子、MICB遺伝子、LRP1遺伝子、HMGB1遺伝子、ABO遺伝子、RHD遺伝子、FUT1遺伝子、KDM5D(すなわち、HY)遺伝子、PDGFRa遺伝子、OLIG2遺伝子、及び/またはGFAP遺伝子が挙げられるが、これらに限定されない。一部の実施形態では、あらかじめ選択された遺伝子座は、B2M遺伝子座、CIITA遺伝子座、TRAC遺伝子座、及びTRB遺伝子座からなる群から選択される。一部の実施形態では、あらかじめ選択された遺伝子座は、B2M遺伝子座である。一部の実施形態では、あらかじめ選択された遺伝子座は、CIITA遺伝子座である。一部の実施形態では、あらかじめ選択された遺伝子座は、TRAC遺伝子座である。一部の実施形態では、あらかじめ選択された遺伝子座は、TRB遺伝子座である。
【0240】
一部の実施形態では、CD47導入遺伝子及びCARをコードする導入遺伝子は、同じ遺伝子座内に挿入される。一部の実施形態では、CD47導入遺伝子及びCARをコードする導入遺伝子は、異なる遺伝子座内に挿入される。多くの事例では、CD47導入遺伝子は、セーフハーバーまたは標的遺伝子座内に挿入される。多くの事例では、CARをコードする導入遺伝子は、セーフハーバーまたは標的遺伝子座内に挿入される。一部の事例では、CD47導入遺伝子は、B2M遺伝子座内に挿入される。一部の事例では、CARをコードする導入遺伝子は、B2M遺伝子座内に挿入される。一部の実施形態では、CD47導入遺伝子は、CIITA遺伝子座内に挿入される。一部の実施形態では、CARをコードする導入遺伝子は、CIITA遺伝子座内に挿入される。一部の実施形態では、CD47導入遺伝子は、TRAC遺伝子座内に挿入される。一部の実施形態では、CARをコードする導入遺伝子は、TRAC遺伝子座内に挿入される。他の実施形態では、CD47導入遺伝子は、TRB遺伝子座内に挿入される。他の実施形態では、CARをコードする導入遺伝子は、TRB遺伝子座内に挿入される。一部の実施形態では、CD47導入遺伝子及びCARをコードする導入遺伝子は、セーフハーバー遺伝子座(例えば、CCR5遺伝子座、PPP1R12C遺伝子座、CLYBL遺伝子座、及び/またはRosa遺伝子座内に挿入される。一部の実施形態では、CD47導入遺伝子及びCARをコードする導入遺伝子は、標的遺伝子座(例えば、CXCR4遺伝子、アルブミン遺伝子、SHS231遺伝子座、F3遺伝子(別名、CD142)、MICA遺伝子、MICB遺伝子、LRP1遺伝子(別名、CD91)、HMGB1遺伝子、ABO遺伝子、RHD遺伝子、FUT1遺伝子、KDM5D遺伝子(別名、HY)、B2M遺伝子、CIITA遺伝子、TRAC遺伝子、TRBC遺伝子、CCR5遺伝子、F3(すなわち、CD142)遺伝子、MICA遺伝子、MICB遺伝子、LRP1遺伝子、HMGB1遺伝子、ABO遺伝子、RHD遺伝子、FUT1遺伝子、KDM5D(すなわち、HY)遺伝子、PDGFRa遺伝子、OLIG2遺伝子、及び/またはGFAP遺伝子内に挿入される。
【0241】
多くの実施形態では、CD47導入遺伝子及びCARをコードする導入遺伝子は、セーフハーバーまたは標的遺伝子座内に挿入される。多くの実施形態では、CD47導入遺伝子及びCARをコードする導入遺伝子は、単一のプロモーターによって制御され、セーフハーバーまたは標的遺伝子座内に挿入される。多くの実施形態では、CD47導入遺伝子及びCARをコードする導入遺伝子は、それらの独自のプロモーターによって制御され、セーフハーバーまたは標的遺伝子座内に挿入される。多くの実施形態では、CD47導入遺伝子及びCARをコードする導入遺伝子は、TRAC遺伝子座内に挿入される。多くの実施形態では、CD47導入遺伝子及びCARをコードする導入遺伝子は、単一のプロモーターによって制御され、TRAC遺伝子座内に挿入される。多くの実施形態では、CD47導入遺伝子及びCARをコードする導入遺伝子は、それらの独自のプロモーターによって制御され、TRAC遺伝子座内に挿入される。一部の実施形態では、CD47導入遺伝子及びCARをコードする導入遺伝子は、TRB遺伝子座内に挿入される。一部の実施形態では、CD47導入遺伝子及びCARをコードする導入遺伝子は、単一のプロモーターによって制御され、TRB遺伝子座内に挿入される。一部の実施形態では、CD47導入遺伝子及びCARをコードする導入遺伝子は、それらの独自のプロモーターによって制御され、TRB遺伝子座内に挿入される。他の実施形態では、CD47導入遺伝子及びCARをコードする導入遺伝子は、B2M遺伝子座内に挿入される。他の実施形態では、CD47導入遺伝子及びCARをコードする導入遺伝子は、単一のプロモーターによって制御され、B2M遺伝子座内に挿入される。他の実施形態では、CD47導入遺伝子及びCARをコードする導入遺伝子は、それらの独自のプロモーターによって制御され、B2M遺伝子座内に挿入される。種々の実施形態では、CD47導入遺伝子及びCARをコードする導入遺伝子は、CIITA遺伝子座内に挿入される。種々の実施形態では、CD47導入遺伝子及びCARをコードする導入遺伝子は、単一のプロモーターによって制御され、CIITA遺伝子座内に挿入される。種々の実施形態では、CD47導入遺伝子及びCARをコードする導入遺伝子は、それらの独自のプロモーターによって制御され、CIITA遺伝子座内に挿入される。一部の事例では、記載される任意の導入遺伝子の発現を制御するプロモーターは、構成的プロモーターである。他の事例では、記載される任意の導入遺伝子に対するプロモーターは、誘導性プロモーターである。一部の実施形態では、プロモーターは、EF1アルファ(EF1α)プロモーターである。一部の実施形態では、プロモーターは、CAGプロモーターである。一部の実施形態では、CD47導入遺伝子及びCARをコードする導入遺伝子は両方とも、構成的プロモーターによって制御される。一部の実施形態では、CD47導入遺伝子及びCARをコードする導入遺伝子は両方とも、誘導性プロモーターによって制御される。一部の実施形態では、CD47導入遺伝子は、構成的プロモーターによって制御され、CARをコードする導入遺伝子は、誘導性プロモーターによって制御される。一部の実施形態では、CD47導入遺伝子は、誘導性プロモーターによって制御され、CARをコードする導入遺伝子は、構成的プロモーターによって制御される。種々の実施形態では、CD47導入遺伝子は、EF1アルファプロモーターによって制御され、CARをコードする導入遺伝子は、EF1アルファプロモーターによって制御される。他の実施形態では、CD47導入遺伝子及びCARをコードする導入遺伝子の両方の発現が、単一のEF1アルファプロモーターによって制御される。種々の実施形態では、CD47導入遺伝子は、CAGプロモーターによって制御され、CARをコードする導入遺伝子は、CAGプロモーターによって制御される。他の実施形態では、CD47導入遺伝子及びCARをコードする導入遺伝子の両方の発現が、単一のCAGプロモーターによって制御される。一部の実施形態では、CD47導入遺伝子は、CAGプロモーターによって制御され、CARをコードする導入遺伝子は、EF1アルファプロモーターによって制御される。一部の実施形態では、CD47導入遺伝子は、EF1アルファプロモーターによって制御され、CARをコードする導入遺伝子は、CAGプロモーターによって制御される。
【0242】
一部の実施形態では、本明細書に記載の細胞は、安全スイッチを含む。本明細書で使用される「安全スイッチ」という用語は、下方制御または上方制御されたときに、例えば、宿主の免疫系による認識を通して、細胞の排除または死を引き起こす、目的の遺伝子またはタンパク質の発現を制御するためのシステムを指す。安全スイッチは、有害臨床事象の際に外因性分子によって発動されるように設計することができる。安全スイッチは、DNA、RNA、及びタンパク質レベルで発現を制御することによって操作することができる。安全スイッチには、有害事象に応答して細胞活性の制御を可能にするタンパク質または分子が含まれる。一実施形態では、安全スイッチは、非作動状態で発現される「殺傷スイッチ」であり、外部から提供される選択的な薬剤によりスイッチが作動されると、安全スイッチを発現している細胞にとって致死的である。一実施形態では、安全スイッチ遺伝子は、構築物における目的の遺伝子に対してシス作用型である。安全スイッチの作動は、細胞にそれ自体のみ、またはそれ自体及び隣接する細胞をアポトーシスまたは壊死により殺傷させる。一部の実施形態では、本明細書に記載の細胞、例えば、幹細胞、人工多能性幹細胞、造血幹細胞、初代細胞、または心細胞、心筋前駆細胞、神経細胞、グリア前駆細胞、内皮細胞、T細胞、B細胞、膵島細胞、網膜色素上皮細胞、肝細胞、甲状腺細胞、皮膚細胞、血液細胞、形質細胞、血小板、腎細胞、上皮細胞、CART細胞、NK細胞、及び/またはCAR-NK細胞を含むがこれらに限定されない分化細胞は、安全スイッチを含む。
【0243】
一部の実施形態では、本明細書に記載の細胞は、「自殺遺伝子」(または「自殺スイッチ」)を含む。自殺遺伝子は、低免疫原性細胞が望まれない様態で増殖及び分裂するようなことがあれば、それらの細胞の死を引き起こすことができる。「自殺遺伝子」による除去アプローチは、特定の化合物によって作動されたときにのみ細胞殺傷をもたらすタンパク質をコードする、遺伝子移入ベクター内の自殺遺伝子を含む。自殺遺伝子は、無毒の化合物を毒性の高い代謝産物へと選択的に変換する酵素をコードし得る。一部の実施形態では、本明細書に記載の細胞、例えば、幹細胞、人工多能性幹細胞、造血幹細胞、初代細胞、または心細胞、心筋前駆細胞、神経細胞、グリア前駆細胞、内皮細胞、T細胞、B細胞、膵島細胞、網膜色素上皮細胞、肝細胞、甲状腺細胞、皮膚細胞、血液細胞、形質細胞、血小板、腎細胞、上皮細胞、CART細胞、NK細胞、及び/またはCAR-NK細胞を含むがこれらに限定されない分化細胞は、自殺遺伝子を含む。
【0244】
一部の実施形態では、記載される操作された細胞の集団は、レシピエント対象への投与時に低減されたレベルの免疫活性化を誘発するかまたは免疫活性化を誘発しない。一部の実施形態では、低減された免疫応答は、「野生型」細胞集団を投与された患者または対照被験者における免疫応答と比較される。一部の実施形態では、該細胞は、レシピエント対象において低減されたレベルの全身性のTH1活性化を誘発するかまたは全身性のTH1活性化を誘発しない。一部の実施形態では、該細胞は、レシピエント対象において低減されたレベルの末梢血単核細胞(PBMC)の免疫活性化を誘発するかまたはPBMCの免疫活性化を誘発しない。一部の実施形態では、該細胞は、レシピエント対象への投与時に該細胞に対する低減されたレベルのドナー特異的IgG抗体を誘発するかまたはドナー特異的IgG抗体を誘発しない。一部の実施形態では、該細胞は、レシピエント対象において該細胞に対する低減されたレベルのIgM及びIgG抗体産生を誘発するかまたはIgM及びIgG抗体産生を誘発しない。一部の実施形態では、該細胞は、レシピエント対象への投与時に該細胞の低減されたレベルの細胞傷害性T細胞による殺傷を誘発する。
【0245】
1.T細胞及びiPSCに由来する治療用細胞
本明細書では、免疫認識を回避する、T細胞を含むがこれらに限定されない低免疫原性細胞が提供される。一部の実施形態では、低免疫原性細胞は、iPSC、MSC、及び/またはESC等の多能性幹細胞から生産される(例えば、生成、培養、または派生させられる)。一部の実施形態では、低免疫原性細胞は、初代T細胞等のT細胞から生産される(例えば、生成、培養、または派生させられる)。一部の事例では、初代T細胞は、対象または個体から得られる(例えば、採取、抽出、取り出し、または取得される)。一部の実施形態では、初代T細胞は、T細胞が1以上の対象(例えば、1以上の健常なヒトを含む1以上のヒト)からのものであるように、T細胞のプールから生産される。一部の実施形態では、T細胞のプールは、1~100、1~50、1~20、1~10、1以上、2以上、3以上、4以上、5以上、10以上、20以上、30以上、40以上、50以上、または100以上の対象からのものである。一部の実施形態では、ドナー対象は、患者(例えば、治療用細胞を投与されるレシピエント)とは異なる。一部の実施形態では、T細胞のプールは、患者からの細胞を含まない。一部の実施形態では、T細胞のプールが得られるドナー対象のうちの1以上は、患者とは異なる。
【0246】
一部の実施形態では、低免疫原性細胞は、患者(例えば、投与時にレシピエント)において免疫応答を活性化しない。障害を処置する方法が提供され、該方法は、障害を処置する必要がある対象(例えば、レシピエント)または患者への低免疫原性細胞の集団の反復投与を含む。一部の実施形態では、低免疫原性細胞(例えば、低免疫原性初代T細胞)の集団は、ヒト患者に少なくとも2回(例えば、2、3、4、5回、またはそれよりも多く)投与される。
【0247】
一部の実施形態では、低免疫原性細胞は、患者(例えば、投与時にレシピエント)において免疫応答を活性化しない。疾患を処置する必要がある対象(例えば、レシピエント)または患者に低免疫原性細胞の集団を投与することによって疾患を処置する方法が提供される。一部の実施形態では、本明細書に記載の低免疫原性細胞は、本明細書に記載のキメラ抗原受容体を含むがこれらに限定されないキメラ抗原受容体を発現するように操作された(例えば、改変される)T細胞を含む。一部の事例では、T細胞は、1以上の個体からの初代T細胞の集団または亜集団である。一部の実施形態では、操作または改変されたT細胞等の本明細書に記載のT細胞は、内在性T細胞受容体の低減された発現を含む。
【0248】
一部の実施形態では、本技術は、CD47及びCARを過剰発現するとともに、MHCクラスI及び/またはMHCクラスIIヒト白血球抗原の低減された発現を有するかまたはその発現を欠いており、TCR複合体分子の低減された発現を有するかまたはその発現を欠いている、低免疫原性初代T細胞を対象とする。本明細書に概説される細胞は、CD47及びCARを過剰発現し、免疫認識を回避する。一部の実施形態では、初代T細胞は、MHCクラスI抗原、MHCクラスII抗原、及び/またはTCR複合体分子の低減されたレベルまたは活性を示す。ある特定の実施形態では、初代T細胞は、CD47及びCARを過剰発現し、B2M遺伝子にゲノム改変をもつ。一部の実施形態では、T細胞は、CD47及びCARを過剰発現し、CIITA遺伝子にゲノム改変をもつ。一部の実施形態では、初代T細胞は、CD47及びCARを過剰発現し、TRAC遺伝子にゲノム改変をもつ。一部の実施形態では、初代T細胞は、CD47及びCARを過剰発現し、TRB遺伝子にゲノム改変をもつ。一部の実施形態では、T細胞は、CD47及びCARを過剰発現し、以下の遺伝子、すなわちB2M、CIITA、TRAC、及びTRB遺伝子のうちの1つまたは複数にゲノム改変をもつ。
【0249】
本開示の例となるT細胞は、細胞傷害性T細胞、ヘルパーT細胞、メモリーT細胞、セントラルメモリーT細胞、エフェクターメモリーT細胞、エフェクターメモリーRA T細胞、制御性T細胞、組織浸潤リンパ球、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。多くの実施形態では、T細胞は、CCR7、CD27、CD28、及びCD45RAを発現する。一部の実施形態では、セントラルT細胞は、CCR7、CD27、CD28、及びCD45ROを発現する。他の実施形態では、エフェクターメモリーT細胞は、PD1、CD27、CD28、及びCD45ROを発現する。他の実施形態では、エフェクターメモリーRA T細胞は、PD1、CD57、及びCD45RAを発現する。
【0250】
一部の実施形態では、T細胞は、改変されたT細胞である。場合によっては、改変されたT細胞は、該細胞に、損傷細胞、異形成細胞、感染細胞、免疫原性細胞、炎症細胞、悪性細胞、化生細胞、変異細胞、及びそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つの表面上に発現した目的の抗原またはエピトープに特異的に結合する、少なくとも1つのキメラ抗原受容体を発現させる改変を含む。他の実例では、改変されたT細胞は、該細胞が隣接する細胞、組織、または臓器に近接する場合に、該細胞に、隣接する細胞、組織、または臓器における目的の生物学的効果を調節する少なくとも1つのタンパク質を発現させる改変を含む。初代T細胞に対する有用な改変は、US2016/0348073及びWO2020/018620に詳述され、同文献の開示は参照によりそれらの全体が本明細書に援用される。
【0251】
一部の実施形態では、本明細書に記載の低免疫原性細胞は、本明細書に記載のキメラ抗原受容体を含むがこれらに限定されないキメラ抗原受容体を発現するように操作された(例えば、改変される)T細胞を含む。一部の事例では、T細胞は、1以上の個体からの初代T細胞の集団または亜集団である。一部の実施形態では、操作または改変されたT細胞等の本明細書に記載のT細胞は、内在性T細胞受容体の低減された発現を含む。一部の実施形態では、操作または改変されたT細胞等の本明細書に記載のT細胞は、細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA4)の低減された発現を含む。他の実施形態では、操作または改変されたT細胞等の本明細書に記載のT細胞は、プログラム細胞死(PD1)の低減された発現を含む。ある特定の実施形態では、操作または改変されたT細胞等の本明細書に記載のT細胞は、CTLA4及びPD1の低減された発現を含む。ある特定の実施形態では、操作または改変されたT細胞等の本明細書に記載のT細胞は、PD-L1の強化された発現を含む。
【0252】
一部の実施形態では、低免疫原性T細胞は、CARをコードするポリヌクレオチドを含み、ここで、ポリヌクレオチドは、ゲノム遺伝子座に挿入される。一部の実施形態では、ポリヌクレオチドは、限定されないが、AAVS1、CCR5、CLYBL、ROSA26、SHS231、F3(別名、CD142)、MICA、MICB、LRP1(別名、CD91)、HMGB1、ABO、RHD、FUT1、PDGFRa、OLIG2、GFAP、またはKDM5D遺伝子座等のセーフハーバーまたは標的遺伝子座内に挿入される。一部の実施形態では、ポリヌクレオチドは、B2M、CIITA、TRAC、TRB、PD1、またはCTLA4遺伝子に挿入される。
【0253】
2.キメラ抗原受容体
本明細書では、キメラ抗原受容体(CAR)を含む低免疫原性細胞が提供される。一部の実施形態では、低免疫原性細胞は、本明細書で提供される低免疫原性多能性細胞(HIP)(例えば、多能性幹細胞)に由来する初代T細胞またはT細胞である。一部の実施形態では、CARは、第1世代CAR、第2世代CAR、第3世代CAR、及び第4世代CARからなる群から選択される。
【0254】
一部の実施形態では、本明細書に記載の低免疫原性細胞は、抗原結合ドメインを含むキメラ抗原受容体(CAR)をコードするポリヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、本明細書に記載の低免疫原性細胞は、抗原結合ドメインを含むキメラ抗原受容体(CAR)を含む。一部の実施形態では、ポリヌクレオチドは、抗原結合ドメイを含むキメラ抗原受容体(CAR)を含むであるか、またはそれを含む。一部の実施形態では、CARは、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、及び少なくとも1つのシグナル伝達ドメイン(例えば、1、2、または3つのシグナル伝達ドメイン)を含む第1世代CARであるか、またはそれを含む。一部の実施形態では、CARは、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、及び少なくとも2つのシグナル伝達ドメインを含む第2世代CARを含む。一部の実施形態では、CARは、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、及び少なくとも3つのシグナル伝達ドメインを含む第3世代CARを含む。一部の実施形態では、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、3つまたは4つのシグナル伝達ドメイン、及びCARのシグナル伝達の成功時にサイトカイン遺伝子の発現を誘導するドメインを含む第4世代CAR。一部の実施形態では、抗原結合ドメインは、抗体、抗体断片、scFv、またはFabであるか、またはそれを含む。
【0255】
一部の実施形態では、本明細書に記載の低免疫原性細胞(例えば、低免疫原性初代T細胞またはHIP由来のT細胞)は、CARをコードするポリヌクレオチドを含み、ここで、ポリヌクレオチドは、ゲノム遺伝子座に挿入される。一部の実施形態では、ポリヌクレオチドは、限定されないが、AAVS1、CCR5、CLYBL、ROSA26、SHS231、F3(別名、CD142)、MICA、MICB、LRP1(別名、CD91)、HMGB1、ABO、RHD、FUT1、PDGFRa、OLIG2、GFAP、及び/またはKDM5D遺伝子座等のセーフハーバーまたは標的遺伝子座内に挿入される。一部の実施形態では、ポリヌクレオチドは、B2M、CIITA、TRAC、TRB、PD1、またはCTLA4遺伝子に挿入される。本明細書に記載の遺伝子編集法(例えば、CRISPR/Casシステム)を含めて、任意の好適な方法を使用して、CARを低免疫原性細胞のゲノム遺伝子座内に挿入することができる。
【0256】
a)抗原結合ドメイン(ABD)は、新生細胞またはがん細胞に特有の抗原を標的とする
一部の実施形態では、抗原結合ドメイン(ABD)は、新生細胞に特有の抗原を標的とする。換言すれば、抗原結合ドメインは、新生細胞またはがん細胞によって発現される抗原を標的とする。一部の実施形態では、ABDは、腫瘍関連抗原に結合する。一部の実施形態では、新生細胞に特有の抗原(例えば、新生細胞またはがん細胞に関連する抗原)または腫瘍関連抗原は、細胞表面受容体、イオンチャネル連結型受容体、酵素連結型受容体、Gタンパク質共役型受容体、受容体型チロシンキナーゼ、チロシンキナーゼ会合型受容体、受容体様チロシンホスファターゼ、受容体型セリン/トレオニンキナーゼ、受容体型グアニリルシクラーゼ、ヒスチジンキナーゼ会合型受容体、上皮成長因子受容体(EGFR)(ErbB1/EGFR、ErbB2/HER2、ErbB3/HER3、及びErbB4/HER4を含む)、線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)(FGF1、FGF2、FGF3、FGF4、FGF5、FGF6、FGF7、FGF18、及びFGF21を含む)、血管内皮細胞増殖因子受容体(VEGFR)(VEGF-A、VEGF-B、VEGF-C、VEGF-D、及びPIGFを含む)、RET受容体及びEph受容体ファミリー(EphA1、EphA2、EphA3、EphA4、EphA5、EphA6、EphA7、EphA8、EphA9、EphA10、EphB1、EphB2、EphB3、EphB4、及びEphB6を含む)、CXCR1、CXCR2、CXCR3、CXCR4、CXCR6、CCR1、CCR2、CCR3、CCR4、CCR5、CCR6、CCR8、CFTR、CIC-1、CIC-2、CIC-4、CIC-5、CIC-7、CIC-Ka、CIC-Kb、ベストロフィン、TMEM16A、GABA受容体、グリシン受容体、ABC輸送体、NAV1.1、NAV1.2、NAV1.3、NAV1.4、NAV1.5、NAV1.6、NAV1.7、NAV1.8、NAV1.9、スフィンゴシン-1-リン酸受容体(S1P1R)、NMDAチャネル、膜貫通型タンパク質、マルチスパン膜貫通型タンパク質、T細胞受容体モチーフ;T細胞アルファ鎖;T細胞β鎖;T細胞γ鎖;T細胞δ鎖、CCR7、CD3、CD4、CD5、CD7、CD8、CD11b、CD11c、CD16、CD19、CD20、CD21、CD22、CD25、CD28、CD34、CD35、CD40、CD45RA、CD45RO、CD52、CD56、CD62L、CD68、CD80、CD95、CD117、CD127、CD133、CD137(4-1 BB)、CD163、F4/80、IL-4Ra、Sca-1、CTLA-4、GITR、GARP、LAP、グランザイムB、LFA-1、トランスフェリン受容体、NKp46、パーフォリン、CD4+、Th1、Th2、Th17、Th40、Th22、Th9、Tfh、古典的Treg、FoxP3+、Tr1、Th3、Treg17、TREG、CDCP、NT5E、EpCAM、CEA、gpA33、ムチン、TAG-72、炭酸脱水酵素IX、PSMA、葉酸結合タンパク質、ガングリオシド(例えば、CD2、CD3、GM2)、ルイス-γ、VEGF、VEGFR1/2/3、αVβ3、α5β1、ErbB1/EGFR、ErbB1/HER2、ErB3、c-MET、IGF1R、EphA3、TRAIL-R1、TRAIL-R2、RANKL、FAP、テネイシン、PDL-1、BAFF、HDAC、ABL、FLT3、KIT、MET、RET、IL-1β、ALK、RANKL、mTOR、CTLA-4、IL-6、IL-6R、JAK3、BRAF、PTCH、スムーズンド、PIGF、ANPEP、TIMP1、PLAUR、PTPRJ、LTBR、もしくはANTXR1、葉酸受容体アルファ(FRa)、ERBB2(Her2/neu)、EphA2、IL-13Ra2、上皮成長因子受容体(EGFR)、メソテリン、TSHR、CD19、CD123、CD22、CD30、CD171、CS-1、CLL-1、CD33、EGFRvIII、GD2、GD3、BCMA、MUC16(CA125)、L1CAM、LeY、MSLN、IL13Rα1、L1-CAM、Tn Ag、前立腺特異膜抗原(PSMA)、ROR1、FLT3、FAP、TAG72、CD38、CD44v6、CEA、EPCAM、B7H3、KIT、インターロイキン-11受容体a(IL-11Ra)、PSCA、PRSS21、VEGFR2、ルイスY、CD24、血小板由来成長因子受容体-ベータ(PDGFR-ベータ)、SSEA-4、CD20、MUC1、NCAM、前立腺、PAP、ELF2M、エフリンB2、IGF-1受容体、CAIX、LMP2、gp100、bcr-abl、チロシナーゼ、フコシルGM1、sLe、GM3、TGS5、HMWMAA、o-アセチル-GD2、葉酸受容体ベータ、TEM1/CD248、TEM7R、CLDN6、GPRC5D、CXORF61、CD97、CD179a、ALK、ポリシアル酸、PLACl、GloboH、NY-BR-1、UPK2、HAVCR1、ADRB3、PANX3、GPR20、LY6K、OR51E2、TARP、WT1、NY-ESO-1、LAGE-1a、MAGE-A1、レグマイン、HPV E6、E7、ETV6-AML、精子タンパク質17、XAGE1、Tie 2、MAD-CT-1、MAD-CT-2、主要組織適合性複合体クラスI関連遺伝子タンパク質(MR1)、ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子受容体(uPAR)、Fos関連抗原1、p53、p53変異体、プロステイン、サバイビン、テロメラーゼ、PCTA-1/ガレクチン8、MelanA/MART1、Ras変異体、hTERT、肉腫転座切断点、ML-IAP、ERG(TMPRSS2 ETS融合遺伝子)、NA17、PAX3、アンドロゲン受容体、サイクリンB1、MYCN、RhoC、TRP-2、CYPIB I、BORIS、SART3、PAX5、OY-TES1、LCK、AKAP-4、SSX2、RAGE-1、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素、RU1、RU2、腸カルボキシルエステラーゼ、mut hsp70-2、CD79a、CD79b、CD72、LAIR1、FCAR、LILRA2、CD300LF、CLEC12A、BST2、EMR2、LY75、GPC3、FCRL5、IGLL1、新生抗原、CD133、CD15、CD184、CD24、CD56、CD26、CD29、CD44、HLA-A、HLA-B、HLA-C(HLA-A,B,C)、CD49f、CD151、CD340、CD200、tkrA、trkB、もしくはtrkC、及び/またはそれらの抗原断片もしくは抗原部分から選択される。
【0257】
b)ABDは、T細胞に特有の抗原を標的とする
一部の実施形態では、抗原結合ドメインは、T細胞に特有の抗原を標的とする。一部の実施形態では、ABDは、T細胞に関連する抗原に結合する。一部の事例では、かかる抗原は、T細胞によって発現されるか、またはT細胞の表面上に位置する。一部の実施形態では、T細胞に特有の抗原すなわちT細胞関連抗原は、T細胞に特有の細胞表面受容体、膜輸送タンパク質(例えば、イオンチャネルタンパク質、膜孔形成タンパク質等といった、例えば、能動または受動輸送タンパク質)、膜貫通型受容体、膜酵素、及び/または細胞接着タンパク質から選択される。一部の実施形態では、T細胞に特有の抗原は、Gタンパク質共役型受容体、受容体型チロシンキナーゼ、チロシンキナーゼ会合型受容体、受容体様チロシンホスファターゼ、受容体型セリン/トレオニンキナーゼ、受容体型グアニリルシクラーゼ、ヒスチジンキナーゼ会合型受容体、AKT1;AKT2;AKT3;ATF2;BCL10;CALM1;CD3D(CD3δ);CD3E(CD3ε);CD3G(CD3γ);CD4;CD8;CD28;CD45;CD80(B7-1);CD86(B7-2);CD247(CD3ζ);CTLA4(CD152);ELK1;ERK1(MAPK3);ERK2;FOS;FYN;GRAP2(GADS);GRB2;HLA-DRA;HLA-DRB1;HLA-DRB3;HLA-DRB4;HLA-DRB5;HRAS;IKBKA(CHUK);IKBKB;IKBKE;IKBKG(NEMO);IL2;ITPR1;ITK;JUN;KRAS2;LAT;LCK;MAP2K1(MEK1);MAP2K2(MEK2);MAP2K3(MKK3);MAP2K4(MKK4);MAP2K6(MKK6);MAP2K7(MKK7);MAP3K1(MEKK1);MAP3K3;MAP3K4;MAP3K5;MAP3K8;MAP3K14(NIK);MAPK8(JNK1);MAPK9(JNK2);MAPK10(JNK3);MAPK11(p38β);MAPK12(p38γ);MAPK13(p38δ);MAPK14(p38α);NCK;NFAT1;NFAT2;NFKB1;NFKB2;NFKBIA;NRAS;PAK1;PAK2;PAK3;PAK4;PIK3C2B;PIK3C3(VPS34);PIK3CA;PIK3CB;PIK3CD;PIK3R1;PKCA;PKCB;PKCM;PKCQ;PLCY1;PRF1(パーフォリン);PTEN;RAC1;RAF1;RELA;SDF1;SHP2;SLP76;SOS;SRC;TBK1;TCRA;TEC;TRAF6;VAV1;VAV2;及び/またはZAP70であり得る。
【0258】
c)ABDは、自己免疫障害または炎症性障害に特有の抗原を標的とする
一部の実施形態では、抗原結合ドメインは、自己免疫障害または炎症性障害に特有の抗原を標的とする。一部の実施形態では、ABDは、自己免疫障害または炎症性障害に関連する抗原に結合する。一部の事例では、抗原は、自己免疫障害または炎症性障害に関連する細胞によって発現される。一部の実施形態では、自己免疫障害または炎症性障害は、慢性移植片対宿主病(GVHD)、ループス、関節炎、免疫複合体糸球体腎炎、グッドパスチャー、ブドウ膜炎、肝炎、全身性硬化症または強皮症、I型糖尿病、多発性硬化症、寒冷凝集素症、尋常性天疱瘡、グレーブス病、自己免疫溶血性貧血、血友病A、原発性シェーグレン症候群、血栓性血小板減少性紫斑病、視神経脊髄炎、エバンス症候群、IgM媒介性ニューロパチー、クリオグロブリン血症、皮膚筋炎、特発性血小板減少症、強直性脊椎炎、水疱性類天疱瘡、後天性血管性浮腫、慢性蕁麻疹、抗リン脂質脱髄性多発ニューロパチー、及び自己免疫血小板減少症または好中球減少症または赤芽球癆から選択され、一方で、同種異系免疫疾患の例となる非限定的例としては、造血または実質臓器移植、輸血による同種異系感作(allosensitization)(例えば、Blazar et al.,2015,Am.J.Transplant,15(4):931-41を参照されたい)及び/または異種感作、胎児同種異系感作を伴う妊娠、新生児の同種異系免疫性血小板減少症、新生児溶血性疾患、酵素またはタンパク質補充療法、血液製剤、及び/または遺伝子療法で処置される遺伝性または後天性欠損障害の補充に伴い起こり得るもの等の外来抗原への感作が挙げられる。同種異系感作とは、一部の事例では、レシピエント対象または妊娠している対象の免疫系が非自己抗原と見なすヒト白血球抗原に対する免疫応答(循環抗体等)の発達を指す。一部の実施形態では、自己免疫障害または炎症性障害に特有の抗原は、細胞表面受容体、イオンチャネル連結型受容体、酵素連結型受容体、Gタンパク質共役型受容体、受容体型チロシンキナーゼ、チロシンキナーゼ会合型受容体、受容体様チロシンホスファターゼ、受容体型セリン/トレオニンキナーゼ、受容体型グアニリルシクラーゼ、及び/またはヒスチジンキナーゼ会合型受容体から選択される。
【0259】
一部の実施形態では、CARの抗原結合ドメインは、B細胞、形質細胞、または形質芽細胞上に発現したリガンドに結合する。一部の実施形態では、CARの抗原結合ドメインは、CD10、CD19、CD20、CD22、CD24、CD27、CD38、CD45R、CD138、CD319、BCMA、CD28、TNF、インターフェロン受容体、GM-CSF、ZAP-70、LFA-1、CD3ガンマ、CD5、またはCD2に結合する。US2003/0077249、WO2017/058753、WO2017/058850を参照されたく、同文献の内容は参照により本明細書に援用される。
【0260】
d)ABDは、老化細胞に特有の抗原を標的とする
一部の実施形態では、抗原結合ドメインは、老化細胞に特有の抗原、例えば、ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子受容体(uPAR)を標的とする。一部の実施形態では、ABDは、老化細胞に関連する抗原に結合する。一部の事例では、抗原は、老化細胞によって発現される。一部の実施形態では、CARは、老化細胞の異常な蓄積を特徴とする障害、例えば、肝臓及び肺線維症、アテローム性動脈硬化症、糖尿病、ならびに骨関節炎の処置または予防に使用されてもよい。
【0261】
e)ABDは、感染性疾患に特有の抗原を標的とする
一部の実施形態では、抗原結合ドメインは、感染性疾患に特有の抗原を標的とする。一部の実施形態では、ABDは、感染性疾患に関連する抗原に結合する。一部の事例では、抗原は、感染性疾患に罹患した細胞によって発現される。一部の実施形態では、ここで、感染性疾患は、HIV、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、ヒトヘルペスウイルス、ヒトヘルペスウイルス8(HHV-8、カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス(KSHV))、ヒトTリンパ向性ウイルス-1(HTLV-1)、メルケル細胞ポリオーマウイルス(MCV)、シミアンウイルス40(SV40)、エプスタイン・バーウイルス、CMV、ヒトパピローマウイルスから選択される。一部の実施形態では、感染性疾患に特有の抗原は、細胞表面受容体、イオンチャネル連結型受容体、酵素連結型受容体、Gタンパク質共役型受容体、受容体型チロシンキナーゼ、チロシンキナーゼ会合型受容体、受容体様チロシンホスファターゼ、受容体型セリン/トレオニンキナーゼ、受容体型グアニリルシクラーゼ、ヒスチジンキナーゼ会合型受容体、HIV Env、HIV-1 Env上のgp120またはCD4誘導性エピトープから選択される。
【0262】
f)ABDは、細胞の細胞表面抗原に結合する
一部の実施形態では、抗原結合ドメインは、細胞の細胞表面抗原に結合する。一部の実施形態では、細胞表面抗原は、特定のまたは具体的な細胞種に特有である(例えば、それによって発現される)。一部の実施形態では、細胞表面抗原は、1つよりも多くの種類の細胞に特有である。
【0263】
一部の実施形態では、CARの抗原結合ドメインは、T細胞上の細胞表面抗原等の、T細胞に特有の細胞表面抗原に結合する。一部の実施形態では、T細胞に特有の抗原は、T細胞に特有の細胞表面受容体、膜輸送タンパク質(例えば、イオンチャネルタンパク質、膜孔形成タンパク質等といった、例えば、能動または受動輸送タンパク質)、膜貫通型受容体、膜酵素、及び/または細胞接着タンパク質であり得る。一部の実施形態では、T細胞に特有の抗原は、Gタンパク質共役型受容体、受容体型チロシンキナーゼ、チロシンキナーゼ会合型受容体、受容体様チロシンホスファターゼ、受容体型セリン/トレオニンキナーゼ、受容体型グアニリルシクラーゼ、及び/またはヒスチジンキナーゼ会合型受容体であり得る。
【0264】
一部の実施形態では、CARの抗原結合ドメインは、T細胞受容体に結合する。一部の実施形態では、T細胞受容体は、AKT1;AKT2;AKT3;ATF2;BCL10;CALM1;CD3D(CD3δ);CD3E(CD3ε);CD3G(CD3γ);CD4;CD8;CD28;CD45;CD80(B7-1);CD86(B7-2);CD247(CD3ζ);CTLA4(CD152);ELK1;ERK1(MAPK3);ERK2;FOS;FYN;GRAP2(GADS);GRB2;HLA-DRA;HLA-DRB1;HLA-DRB3;HLA-DRB4;HLA-DRB5;HRAS;IKBKA(CHUK);IKBKB;IKBKE;IKBKG(NEMO);IL2;ITPR1;ITK;JUN;KRAS2;LAT;LCK;MAP2K1(MEK1);MAP2K2(MEK2);MAP2K3(MKK3);MAP2K4(MKK4);MAP2K6(MKK6);MAP2K7(MKK7);MAP3K1(MEKK1);MAP3K3;MAP3K4;MAP3K5;MAP3K8;MAP3K14(NIK);MAPK8(JNK1);MAPK9(JNK2);MAPK10(JNK3);MAPK11(p38β);MAPK12(p38γ);MAPK13(p38δ);MAPK14(p38α);NCK;NFAT1;NFAT2;NFKB1;NFKB2;NFKBIA;NRAS;PAK1;PAK2;PAK3;PAK4;PIK3C2B;PIK3C3(VPS34);PIK3CA;PIK3CB;PIK3CD;PIK3R1;PKCA;PKCB;PKCM;PKCQ;PLCY1;PRF1(パーフォリン);PTEN;RAC1;RAF1;RELA;SDF1;SHP2;SLP76;SOS;SRC;TBK1;TCRA;TEC;TRAF6;VAV1;VAV2;またはZAP70であり得る。
【0265】
g)膜貫通ドメイン
一部の実施形態では、CAR-膜貫通ドメインは、T細胞受容体のアルファ、ベータ、またはゼータ鎖、CD28、CD3イプシロン、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、CD154、またはそれらの機能的バリアントの少なくとも膜貫通領域を含む。一部の実施形態では、膜貫通ドメインは、CD8α、CD8β、4-1BB/CD137、CD28、CD34、CD4、FcεRIγ、CD16、OX40/CD134、CD3ζ、CD3ε、CD3γ、CD3δ、TCRα、TCRβ、TCRζ、CD32、CD64、CD64、CD45、CD5、CD9、CD22、CD37、CD80、CD86、CD40、CD40L/CD154、VEGFR2、FAS、及び/またはFGFR2B、及び/またはそれらの機能的バリアントの少なくとも膜貫通領域(複数可)を含む。
【0266】
h)シグナル伝達ドメイン(単数)または複数のシグナル伝達ドメイン
一部の実施形態では、本明細書に記載のCARは、B7-1/CD80;B7-2/CD86;B7-H1/PD-L1;B7-H2;B7-H3;B7-H4;B7-H6;B7-H7;BTLA/CD272;CD28;CTLA-4;Gi24/VISTA/B7-H5;ICOS/CD278;PD1;PD-L2/B7-DC;PDCD6);4-1BB/TNFSF9/CD137;4-1BBリガンド/TNFSF9;BAFF/BLyS/TNFSF13B;BAFF R/TNFRSF13C;CD27/TNFRSF7;CD27リガンド/TNFSF7;CD30/TNFRSF8;CD30リガンド/TNFSF8;CD40/TNFRSF5;CD40/TNFSF5;CD40リガンド/TNFSF5;DR3/TNFRSF25;GITR/TNFRSF18;GITRリガンド/TNFSF18;HVEM/TNFRSF14;LIGHT/TNFSF14;リンホトキシン-アルファ/TNF-ベータ;OX40/TNFRSF4;OX40リガンド/TNFSF4;RELT/TNFRSF19L;TACI/TNFRSF13B;TL1A/TNFSF15;TNF-アルファ;TNF RII/TNFRSF1B);2B4/CD244/SLAMF4;BLAME/SLAMF8;CD2;CD2F-10/SLAMF9;CD48/SLAMF2;CD58/LFA-3;CD84/SLAMF5;CD229/SLAMF3;CRACC/SLAMF7;NTB-A/SLAMF6;SLAM/CD150);CD2;CD7;CD53;CD82/Kai-1;CD90/Thy1;CD96;CD160;CD200;CD300a/LMIR1;HLAクラスI;HLA-DR;Ikaros;インテグリンアルファ4/CD49d;インテグリンアルファ4ベータ1;インテグリンアルファ4ベータ7/LPAM-1;LAG-3;TCL1A;TCL1B;CRTAM;DAP12;デクチン-1/CLEC7A;DPPIV/CD26;EphB6;TIM-1/KIM-1/HAVCR;TIM-4;TSLP;TSLP R;リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1);NKG2C、CD3ゼータドメイン、免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)、CD27、CD28、4-1BB、CD134/OX40、CD30、CD40、PD1、ICOS、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、CD83と特異的に結合するリガンド、及び/またはそれらの機能的断片のうちの1つまたは複数から選択される1つまたは少なくとも1つのシグナル伝達ドメインを含む。
【0267】
一部の実施形態では、少なくとも1つのシグナル伝達ドメインは、CD3ゼータドメインもしくは免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)、またはその機能的バリアントを含む。他の実施形態では、少なくとも1つのシグナル伝達ドメインは、(i)CD3ゼータドメインもしくは免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)、またはその機能的バリアント、及び(ii)CD28ドメインもしくは4-1BBドメイン、またはその機能的バリアントを含む。なおも他の実施形態では、少なくとも1つのシグナル伝達ドメインは、(i)CD3ゼータドメインもしくは免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)、またはその機能的バリアント、(ii)CD28ドメインまたはその機能的バリアント、及び(iii)4-1BBドメインもしくはCD134ドメイン、またはその機能的バリアントを含む。一部の実施形態では、少なくとも1つのシグナル伝達ドメインは、(i)CD3ゼータドメインもしくは免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)、またはその機能的バリアント、(ii)CD28ドメインまたはその機能的バリアント、(iii)4-1BBドメインもしくはCD134ドメイン、またはその機能的バリアント、及び(iv)サイトカインまたは共刺激リガンド導入遺伝子を含む。
【0268】
一部の実施形態では、少なくとも2つのシグナル伝達ドメインは、CD3ゼータドメインもしくは免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)、またはその機能的バリアントを含む。他の実施形態では、少なくとも2つのシグナル伝達ドメインは、(i)CD3ゼータドメインもしくは免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)、またはその機能的バリアント、及び(ii)CD28ドメインもしくは4-1BBドメイン、またはその機能的バリアントを含む。なおも他の実施形態では、少なくとも1つのシグナル伝達ドメインは、(i)CD3ゼータドメインもしくは免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)、またはその機能的バリアント、(ii)CD28ドメインまたはその機能的バリアント、及び(iii)4-1BBドメインもしくはCD134ドメイン、またはその機能的バリアントを含む。一部の実施形態では、少なくとも2つのシグナル伝達ドメインは、(i)CD3ゼータドメインもしくは免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)、またはその機能的バリアント、(ii)CD28ドメインまたはその機能的バリアント、(iii)4-1BBドメインもしくはCD134ドメイン、またはその機能的バリアント、及び(iv)サイトカインまたは共刺激リガンド導入遺伝子を含む。
【0269】
一部の実施形態では、少なくとも3つのシグナル伝達ドメインは、CD3ゼータドメインもしくは免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)、またはその機能的バリアントを含む。他の実施形態では、少なくとも3つのシグナル伝達ドメインは、(i)CD3ゼータドメインもしくは免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)、またはその機能的バリアント、及び(ii)CD28ドメインもしくは4-1BBドメイン、またはその機能的バリアントを含む。なおも他の実施形態では、少なくとも3つのシグナル伝達ドメインは、(i)CD3ゼータドメインもしくは免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)、またはその機能的バリアント、(ii)CD28ドメインまたはその機能的バリアント、及び(iii)4-1BBドメインもしくはCD134ドメイン、またはその機能的バリアントを含む。一部の実施形態では、少なくとも3つのシグナル伝達ドメインは、(i)CD3ゼータドメインもしくは免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)、またはその機能的バリアント、(ii)CD28ドメインまたはその機能的バリアント、(iii)4-1BBドメインもしくはCD134ドメイン、またはその機能的バリアント、及び(iv)サイトカインまたは共刺激リガンド導入遺伝子を含む。
【0270】
一部の実施形態では、少なくとも3つのシグナル伝達ドメインは、CD8αまたはその機能的バリアントを含む。
【0271】
一部の実施形態では、CARは、CD3ゼータドメインもしくは免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)、またはその機能的バリアントを含む。一部の実施形態では、CARは、(i)CD3ゼータドメインもしくは免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)、またはその機能的バリアント、及び(ii)CD28ドメインもしくは4-1BBドメイン、またはその機能的バリアントを含む。
【0272】
一部の実施形態では、CARは、(i)CD3ゼータドメインもしくは免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)、またはその機能的バリアント、(ii)CD28ドメインまたはその機能的バリアント、及び(iii)4-1BBドメインもしくはCD134ドメイン、またはその機能的バリアントを含む。
【0273】
一部の実施形態では、CARは、(i)CD3ゼータドメインもしくは免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)、またはその機能的バリアント、(ii)CD28ドメインもしくは4-1BBドメイン、またはその機能的バリアント、及び/または(iii)4-1BBドメインもしくはCD134ドメイン、またはその機能的バリアントを含む。
【0274】
一部の実施形態では、CARは、(i)CD3ゼータドメインもしくは免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)、またはその機能的バリアント、(ii)CD28ドメインまたはその機能的バリアント、(iii)4-1BBドメインもしくはCD134ドメイン、またはその機能的バリアント、及び(iv)サイトカインまたは共刺激リガンド導入遺伝子を含む。
【0275】
i)CARのシグナル伝達の成功時にサイトカイン遺伝子の発現を誘導するドメイン
一部の実施形態では、第1世代、第2世代、第3世代、または第4世代CARは、CARのシグナル伝達の成功時にサイトカイン遺伝子の発現を誘導するドメインをさらに含む。一部の実施形態では、サイトカイン遺伝子は、CARのシグナル伝達の成功時にサイトカイン遺伝子の発現を誘導するドメインを含むCARを含む標的細胞にとって内在性または外因性である。一部の実施形態では、サイトカイン遺伝子は、炎症促進性サイトカインをコードする。一部の実施形態では、サイトカイン遺伝子は、IL-1、IL-2、IL-9、IL-12、IL-18、TNF、もしくはIFN-ガンマ、またはそれらの機能的断片をコードする。一部の実施形態では、CARのシグナル伝達の成功時にサイトカイン遺伝子の発現を誘導するドメインは、転写因子またはその機能的ドメインもしくは断片であるか、またはそれを含む。一部の実施形態では、CARのシグナル伝達の成功時にサイトカイン遺伝子の発現を誘導するドメインは、転写因子またはその機能的ドメインもしくは断片であるか、またはそれを含む。一部の実施形態では、転写因子またはその機能的ドメインもしくは断片は、活性化T細胞の核内因子(NFAT)、NF-kB、またはその機能的ドメインもしくは断片であるか、またはそれを含む。例えば、Zhang.C.et al.,Engineering CAR-T cells.Biomarker Research.5:22(2017)、WO2016126608、Sha,H.et al.Chimaeric antigen receptor T-cell therapy for tumour immunotherapy.Bioscience Reports Jan 27,2017,37(1)を参照されたい。
【0276】
一部の実施形態では、CARは、1つまたは複数のスペーサー、またはヒンジをさらに含み、例えば、ここで、スペーサーは、抗原結合ドメインと膜貫通ドメインとの間の第1のスペーサーである。一部の実施形態では、第1のスペーサーは、免疫グロブリン定常領域またはそのバリアントもしくは改変バージョンの少なくとも一部分を含む。一部の実施形態では、スペーサーは、膜貫通ドメインとシグナル伝達ドメインとの間の第2のスペーサーである。一部の実施形態では、第2のスペーサーは、オリゴペプチドであり、例えば、ここで、オリゴペプチドは、限定されないがグリシン-セリンダブレット等のグリシン及びセリン残基を含む。一部の実施形態では、CARは、2つ以上のスペーサー、例えば、抗原結合ドメインと膜貫通ドメインとの間のスペーサー及び膜貫通ドメインとシグナル伝達ドメインとの間のスペーサーを含む。一部の実施形態では、スペーサーは、CD28ヒンジ、CD8aヒンジ、またはIgG4ヒンジである。
【0277】
一部の実施形態では、CARは、1つまたは複数のリンカーをさらに含む。scFvの形式は一般に、2つの可変ドメインが柔軟なペプチド配列または「リンカー」によって、VH-リンカー-VLまたはVL-リンカー-VHのいずれかの向きで連結されたものである。本明細書に鑑みて当該技術分野で既知の任意の好適なリンカーがCARで使用され得る。好適なリンカーの例としては、GSベースのリンカー配列、及びWhitlowリンカーGSTSGSGKPGSGEGSTKG(配列番号14)が挙げられるが、これらに限定されない。一部の実施形態では、リンカーは、GSまたはgly-serリンカーである。例となるgly-serポリペプチドリンカーは、アミノ酸配列Ser(GlySer)、ならびに(GlySer)及び/または(GlySerを含む。一部の実施形態では、n=1である。一部の実施形態では、n=2である。一部の実施形態では、n=3、すなわち、Ser(GlySer)である。一部の実施形態では、n=4、すなわち、Ser(GlySer)である。一部の実施形態では、n=5である。一部の実施形態では、n=6である。一部の実施形態では、n=7である。一部の実施形態では、n=8である。一部の実施形態では、n=9である。一部の実施形態では、n=10である。別の例となるgly-serポリペプチドリンカーは、アミノ酸配列Ser(GlySer)を含む。一部の実施形態では、n=1である。一部の実施形態では、n=2である。一部の実施形態では、n=3である。別の実施形態では、n=4である。一部の実施形態では、n=5である。一部の実施形態では、n=6である。別の例となるgly-serポリペプチドリンカーは、(GlySer)を含む。一部の実施形態では、n=1である。一部の実施形態では、n=2である。一部の実施形態では、n=3である。一部の実施形態では、n=4である。一部の実施形態では、n=5である。一部の実施形態では、n=6である。別の例となるgly-serポリペプチドリンカーは、(GlySer)を含む。一部の実施形態では、n=1である。一部の実施形態では、n=2である。一部の実施形態では、n=3である。一部の実施形態では、n=4である。別の実施形態では、n=5である。なおも別の実施形態では、n=6である。別の例となるgly-serポリペプチドリンカーは、(GlySerを含む。一部の実施形態では、n=1である。一部の実施形態では、n=2である。一部の実施形態では、n=3である。一部の実施形態では、n=4である。一部の実施形態では、n=5である。一部の実施形態では、n=6である。別の例となるgly-serポリペプチドリンカーは、(Gly3Ser)を含む。一部の実施形態では、n=1である。一部の実施形態では、n=2である。一部の実施形態では、n=3である。一部の実施形態では、n=4である。別の実施形態では、n=5である。なおも別の実施形態では、n=6である。
【0278】
一部の実施形態では、本明細書に記載の細胞のうちのいずれか1つは、CARまたは第1世代CARをコードする核酸を含む。一部の実施形態では、第1世代CARは、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、及びシグナル伝達ドメインを含む。一部の実施形態では、シグナル伝達ドメインは、T細胞活性化中の下流シグナル伝達を媒介する。
【0279】
一部の実施形態では、本明細書に記載の細胞のうちのいずれか1つは、CARまたは第2世代CARをコードする核酸を含む。一部の実施形態では、第2世代CARは、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、及び2つのシグナル伝達ドメインを含む。一部の実施形態では、シグナル伝達ドメインは、T細胞活性化中の下流シグナル伝達を媒介する。一部の実施形態では、シグナル伝達ドメインは、共刺激ドメインである。一部の実施形態では、共刺激ドメインは、T細胞活性化中のサイトカイン産生、CAR-T細胞増殖、及び/またはCAR-T細胞存続を強化する。
【0280】
一部の実施形態では、本明細書に記載の細胞のうちのいずれか1つは、CARまたは第3世代CARをコードする核酸を含む。一部の実施形態では、第3世代CARは、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、及び少なくとも3つのシグナル伝達ドメインを含む。一部の実施形態では、シグナル伝達ドメインは、T細胞活性化中の下流シグナル伝達を媒介する。一部の実施形態では、シグナル伝達ドメインは、共刺激ドメインである。一部の実施形態では、共刺激ドメインは、T細胞活性化中のサイトカイン産生、CAR-T細胞増殖、及び/またはCAR-T細胞存続を強化する。一部の実施形態では、第3世代CARは、少なくとも2つの共刺激ドメインを含む。一部の実施形態では、少なくとも2つの共刺激ドメインは、同じでない。
【0281】
一部の実施形態では、本明細書に記載の細胞のうちのいずれか1つは、CARまたは第4世代CARをコードする核酸を含む。一部の実施形態では、第4世代CARは、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、及び少なくとも2、3、または4つのシグナル伝達ドメインを含む。一部の実施形態では、シグナル伝達ドメインは、T細胞活性化中の下流シグナル伝達を媒介する。一部の実施形態では、シグナル伝達ドメインは、共刺激ドメインである。一部の実施形態では、共刺激ドメインは、T細胞活性化中のサイトカイン産生、CAR-T細胞増殖、及び/またはCAR-T細胞存続を強化する。
【0282】
j)抗体またはその抗原結合部分を含むABD
一部の実施形態では、CARの抗原結合ドメインは、抗体またはその抗原結合部分であるか、またはそれを含む。一部の実施形態では、CARの抗原結合ドメインは、scFvまたはFabであるか、またはそれを含む。一部の実施形態では、CARの抗原結合ドメインは、T細胞アルファ鎖抗体、T細胞β鎖抗体、T細胞γ鎖抗体、T細胞δ鎖抗体、CCR7抗体、CD3抗体、CD4抗体、CD5抗体、CD7抗体、CD8抗体、CD11b抗体、CD11c抗体、CD16抗体、CD19抗体、CD20抗体、CD21抗体、CD22抗体、CD25抗体、CD28抗体、CD34抗体、CD35抗体、CD40抗体、CD45RA抗体、CD45RO抗体、CD52抗体、CD56抗体、CD62L抗体、CD68抗体、CD80抗体、CD95抗体、CD117抗体、CD127抗体、CD133抗体、CD137(4-1BB)抗体、CD163抗体、F4/80抗体、IL-4Ra抗体、Sca-1抗体、CTLA-4抗体、GITR抗体GARP抗体、LAP抗体、グランザイムB抗体、LFA-1抗体、MR1抗体、uPAR抗体、またはトランスフェリン受容体抗体のscFvまたはFab断片を含む。
【0283】
一部の実施形態では、CARは、共刺激ドメインであるシグナル伝達ドメインを含む。一部の実施形態では、CARは、第2の共刺激ドメインを含む。一部の実施形態では、CARは、少なくとも2つの共刺激ドメインを含む。一部の実施形態では、CARは、少なくとも3つの共刺激ドメインを含む。一部の実施形態では、CARは、CD27、CD28、4-1BB、CD134/OX40、CD30、CD40、PD1、ICOS、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、リガンドであって、CD83と特異的に結合するもののうちの1つまたは複数から選択される共刺激ドメインを含む。一部の実施形態では、CARが2つ以上の共刺激ドメインを含む場合、2つの共刺激ドメインは、異なる。一部の実施形態では、CARが2つ以上の共刺激ドメインを含む場合、2つの共刺激ドメインは、同じである。
【0284】
本明細書に記載のCARに加えて、種々のCAR及びそれらをコードするヌクレオチド配列が当該技術分野で既知であり、本明細書に記載されるようなインビボ及びインビトロでの標的細胞のフソソーム送達及びリプログラミングに好適であろう。例えば、WO2013040557、WO2012079000、WO2016030414、Smith T,et al.,Nature Nanotechnology.2017.DOI:10.1038/NNANO.2017.57を参照されたく、同文献の開示は参照により本明細書に援用される。
【0285】
3.多能性幹細胞に由来する治療用細胞
本明細書では、免疫認識を回避する、多能性幹細胞に由来する細胞を含む低免疫原性細胞が提供される。一部の実施形態では、該細胞は、患者または対象(例えば、投与時にレシピエント)において免疫応答を活性化しない。障害を処置する方法が提供され、該方法は、障害を処置する必要があるレシピエント対象への低免疫原性細胞の集団の反復投与を含む。
【0286】
一部の実施形態では、多能性幹細胞及びかかる多能性幹細胞から分化させた任意の細胞は、MHCクラスIヒト白血球抗原の低減された発現を示すように改変される。他の実施形態では、多能性幹細胞及びかかる多能性幹細胞から分化させた任意の細胞は、MHCクラスIIヒト白血球抗原の低減された発現を示すように改変される。一部の実施形態では、多能性幹細胞及びかかる多能性幹細胞から分化させた任意の細胞は、MHCクラスI及びIIヒト白血球抗原の低減された発現を示すように改変される。一部の実施形態では、多能性幹細胞及びかかる多能性幹細胞から分化させた任意の細胞は、MHCクラスI及び/またはIIヒト白血球抗原の低減された発現を示し、かつ増加したCD47の発現を示すように改変される。一部の事例では、該細胞は、寛容原性因子をコードする1つまたは複数の導入遺伝子を内部にもつことによってCD47を過剰発現する。一部の実施形態では、多能性幹細胞及びかかる多能性幹細胞から分化させた任意の細胞は、MHCクラスI及び/またはIIヒト白血球抗原の低減された発現を示し、かつ増加した寛容原性因子の発現を示すように改変される。一部の事例では、該細胞は、1つまたは複数のCD24導入遺伝子を内部にもつことによってCD24を過剰発現する。一部の事例では、該細胞は、1つまたは複数のDUX4導入遺伝子を内部にもつことによってDUX4を過剰発現する。かかる多能性幹細胞は、低免疫原性多能性細胞である。かかる分化細胞は、低免疫原性細胞である。分化細胞の例としては、心細胞、心筋前駆細胞、神経細胞、グリア前駆細胞、内皮細胞、T細胞、B細胞、膵島細胞、網膜色素上皮細胞、肝細胞、甲状腺細胞、皮膚細胞、血液細胞、形質細胞、血小板、腎細胞、上皮細胞、キメラ抗原受容体(CAR)T細胞、NK細胞、及び/またはCAR-NK細胞が挙げられるが、これらに限定されない。
【0287】
本明細書に記載の多能性幹細胞のうちのいずれも、生物及び組織の任意の細胞に分化させることができる。一部の実施形態では、該細胞は、MHCクラスI及び/またはIIヒト白血球抗原の低減された発現を示す。一部の事例では、MHCクラスI及び/またはIIヒト白血球抗原の発現は、同じ細胞種の未改変または野生型の細胞と比較して低減される。一部の実施形態では、該細胞は、増加したCD47の発現を示す。一部の事例では、CD47の発現は、本明細書に記載の細胞において、同じ細胞種の未改変または野生型の細胞と比較して増加する。MHCクラスI及び/またはIIヒト白血球抗原のレベルを低減するとともに、CD47及び1つまたは複数の寛容原性因子の発現を増加させるための方法が、本明細書に記載される。
【0288】
一部の実施形態では、本明細書に記載の方法において使用される細胞は、患者(例えば、レシピエント対象)に投与されたときに免疫認識及び応答を回避する。該細胞は、インビトロ及びインビボで免疫細胞による殺傷を回避することができる。一部の実施形態では、該細胞は、マクロファージ及びNK細胞による殺傷を回避する。一部の実施形態では、該細胞は、免疫細胞または対象の免疫系によって無視される。換言すれば、本明細書に記載の方法に従って投与される細胞は、免疫系の免疫細胞によって検出可能でない。一部の実施形態では、該細胞は、覆い隠され、したがって免疫拒絶反応を回避する。
【0289】
多能性幹細胞及びかかる多能性幹細胞から分化させた任意の細胞が免疫認識を回避するかどうかを決定する方法には、IFN-γ Elispotアッセイ、ミクログリア殺傷アッセイ、細胞移植動物モデル、サイトカイン放出アッセイ、ELISA、生物発光イメージングまたはクロム放出アッセイまたはXcelligence解析を使用した殺傷アッセイ、混合リンパ球反応、免疫蛍光解析等が含まれるが、これらに限定されない。
【0290】
本明細書に概説される治療用細胞は、限定されないが、がん、遺伝子障害、慢性感染性疾患、自己免疫障害、神経学的障害等といった障害を処置するのに有用である。
【0291】
4.改変細胞の例となる実施形態
一部の実施形態では、該細胞及びその集団は、CD47の増加した発現、及びMHCクラスI複合体の1つまたは複数の分子の低減された発現を示す。一部の実施形態では、該細胞及びその集団は、CD47の増加した発現、及びMHCクラスII複合体の1つまたは複数の分子の低減された発現を示す。一部の実施形態では、該細胞及びその集団は、CD47の増加した発現、ならびにMHCクラスII及びMHCクラスII複合体の1つまたは複数の分子の低減された発現を示す。
【0292】
一部の実施形態では、該細胞及びその集団は、CD47の増加した発現及びB2Mの低減された発現を示す。一部の実施形態では、該細胞及びその集団は、CD47の増加した発現及びCIITAの低減された発現を示す。一部の実施形態では、該細胞及びその集団は、CD47の増加した発現及びNLRC5の低減された発現を示す。一部の実施形態では、該細胞及びその集団は、CD47の増加した発現、ならびにB2M及びCIITAの1つまたは複数の分子の低減された発現を示す。一部の実施形態では、該細胞及びその集団は、CD47の増加した発現、ならびにB2M及びNLRC5の1つまたは複数の分子の低減された発現を示す。一部の実施形態では、該細胞及びその集団は、CD47の増加した発現、ならびにCIITA及びNLRC5の1つまたは複数の分子の低減された発現を示す。一部の実施形態では、該細胞及びその集団は、CD47の増加した発現、ならびにB2M、CIITA、及びNLRC5の1つまたは複数の分子の低減された発現を示す。本明細書に記載の細胞のうちのいずれも、DUX4、CD24、CD27、CD46、CD55、CD59、CD200、HLA-C、HLA-E、HLA-E重鎖、HLA-G、PD-L1、IDO1、CTLA4-Ig、C1-インヒビター、IL-10、IL-35、IL-39、FasL、CCL21、CCL22、Mfge8、及びSerpinb9を含むがこれらに限定されない群から選択される1つまたは複数の因子の増加した発現もまた示す可能性がある。
【0293】
一部の実施形態では、該細胞及びその集団は、CD47及び少なくとも1つの他の寛容原性因子の増加した発現、ならびにMHCクラスI複合体の1つまたは複数の分子の低減された発現を示す。一部の実施形態では、該細胞及びその集団は、CD47及び少なくとも1つの他の寛容原性因子の増加した発現、ならびにMHCクラスII複合体の1つまたは複数の分子の低減された発現を示す。一部の実施形態では、該細胞及びその集団は、CD47及び少なくとも1つの他の寛容原性因子の増加した発現、ならびにMHCクラスII及びMHCクラスII複合体の1つまたは複数の分子の低減された発現を示す。一部の実施形態では、該細胞及びその集団は、CD47及び少なくとも1つの他の寛容原性因子の増加した発現、ならびにB2Mの低減された発現を示す。一部の実施形態では、該細胞及びその集団は、CD47及び少なくとも1つの他の寛容原性因子の増加した発現、ならびにCIITAの低減された発現を示す。一部の実施形態では、該細胞及びその集団は、CD47及び少なくとも1つの他の寛容原性因子の増加した発現、ならびにNLRC5の低減された発現を示す。一部の実施形態では、該細胞及びその集団は、CD47及び少なくとも1つの他の寛容原性因子の増加した発現、ならびにB2M及びCIITAの1つまたは複数の分子の低減された発現を示す。一部の実施形態では、該細胞及びその集団は、CD47及び少なくとも1つの他の寛容原性因子の増加した発現、ならびにB2M及びNLRC5の1つまたは複数の分子の低減された発現を示す。一部の実施形態では、該細胞及びその集団は、CD47及び少なくとも1つの他の寛容原性因子の増加した発現、ならびにCIITA及びNLRC5の1つまたは複数の分子の低減された発現を示す。一部の実施形態では、該細胞及びその集団は、CD47及び少なくとも1つの他の寛容原性因子の増加した発現、ならびにB2M、CIITA、及びNLRC5の1つまたは複数の分子の低減された発現を示す。一部の実施形態では、寛容原性因子は、DUX4、CD24、CD27、CD46、CD55、CD59、CD200、HLA-C、HLA-E、HLA-E重鎖、HLA-G、PD-L1、IDO1、CTLA4-Ig、C1-インヒビター、IL-10、IL-35、IL-39、FasL、CCL21、CCL22、Mfge8、及びSerpinb9を含むがこれらに限定されない群からのいずれも含む。
【0294】
当業者であれば、遺伝子、タンパク質、または分子の増加した発現または低減された発現等の発現レベルは、同等の細胞を基準とし得るかまたはそれと比較され得ることを理解しよう。一部の実施形態では、CD47の増加した発現を有する操作された幹細胞は、未改変の幹細胞と比較してより高いレベルのCD47タンパク質を有する改変された幹細胞を指す。
【0295】
一実施形態では、外因性CD47ポリペプチドを発現するとともに、1つもしくは複数のMHCクラスI複合体タンパク質、1つもしくは複数のMHCクラスII複合体タンパク質のいずれか、またはMHCクラスI及びクラスII複合体タンパク質の任意の組み合わせの低減された発現を有する細胞(例えば、幹細胞、人工多能性幹細胞、分化細胞、造血幹細胞、初代細胞、CAR-T細胞、及び/またはCAR-NK細胞)が本明細書で提供される。別の実施形態では、該細胞は、外因性CD47ポリペプチドを発現するとともに、低減されたレベルのB2M及びCIITAポリペプチドを発現する。一部の実施形態では、該細胞は、外因性CD47ポリペプチドを発現するとともに、B2M及びCIITA遺伝子の遺伝子改変をもつ。一部の事例では、該遺伝子改変は、B2M及びCIITA遺伝子を不活性化する。
【0296】
一部の実施形態では、該細胞(例えば、幹細胞、人工多能性幹細胞、分化細胞、造血幹細胞、初代細胞、CAR-T細胞及び/またはCAR-NK細胞)は、B2M及びCIITA遺伝子を不活性化する遺伝子改変をもつとともに、CD47及びDUX4、CD47及びCD24、CD47及びCD27、CD47及びCD46、CD47及びCD55、CD47及びCD59、CD47及びCD200、CD47及びHLA-C、CD47及びHLA-E、CD47及びHLA-E重鎖、CD47及びHLA-G、CD47及びPD-L1、CD47及びIDO1、CD47及びCTLA4-Ig、CD47及びC1-インヒビター、CD47及びIL-10、CD47及びIL-35、CD47及びIL-39、CD47及びFasL、CD47及びCCL21、CD47及びCCL22、CD47及びMfge8、ならびにCD47及びSerpinb9、ならびにそれらの任意の組み合わせを含む群から選択される複数の外因性ポリペプチドを発現する。一部の事例では、かかる細胞はまた、CD142遺伝子を不活性化する遺伝子改変をもつ。
【0297】
C.CD47
一部の実施形態では、本開示は、寛容原性因子(例えば、免疫調節ポリペプチド)CD47を発現するように改変された細胞またはその集団を提供する。一部の実施形態では、本開示は、CD47を発現するように細胞のゲノムを変化させるための方法を提供する。一部の実施形態では、幹細胞は、外因性CD47を発現する。一部の事例では、該細胞は、ヒトCD47ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む発現ベクターを発現する。一部の実施形態では、該細胞は、相同性指向修復を使用して、CD47をコードする組み込まれた外因性ポリヌクレオチドを含むように遺伝子改変される。
【0298】
CD47は、白血球表面抗原であり、インテグリンの細胞接着及び調節において役割を有する。それは細胞の表面上に発現し、循環マクロファージに当該細胞を食べないようにさせるシグナルを伝達する。
【0299】
一部の実施形態では、本明細書に概説される細胞は、NCBI参照配列番号NP_001768.1及びNP_942088.1に定められるアミノ酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれを超える)を有するCD47ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、本明細書に概説される細胞は、NCBI参照配列番号NP_001768.1及びNP_942088.1に定められるアミノ酸配列を有するCD47ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、該細胞は、NCBI参照番号NM_001777.3及びNM_198793.2に定められる配列に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれを超える)を有するCD47に対するヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、該細胞は、NCBI参照配列番号NM_001777.3及びNM_198793.2に定められるCD47に対するヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、CD47ポリヌクレオチドをコードするヌクレオチド配列は、コドン最適化された配列である。一部の実施形態では、CD47ポリヌクレオチドをコードするヌクレオチド配列は、ヒトコドン最適化された配列である。
【0300】
一部の実施形態では、該細胞は、NCBI参照配列番号NP_001768.1及びNP_942088.1に定められるアミノ酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれを超える)を有するCD47ポリペプチドを含む。一部の実施形態では、本明細書に概説される細胞は、NCBI参照配列番号NP_001768.1及びNP_942088.1に定められるアミノ酸配列を有するCD47ポリペプチドを含む。
【0301】
シグナル配列を含む及びシグナル配列を含まないヒトCD47の例となるアミノ酸配列が、表1で提供される。
【0302】
【表1】
【0303】
一部の実施形態では、該細胞は、配列番号12のアミノ酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれを超える)を有するCD47ポリペプチドを含む。一部の実施形態では、該細胞は、配列番号12のアミノ酸配列を有するCD47ポリペプチドを含む。一部の実施形態では、該細胞は、配列番号12のアミノ酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれを超える)を有するCD47ポリペプチドを含む。一部の実施形態では、該細胞は、配列番号12のアミノ酸配列を有するCD47ポリペプチドを含む。
【0304】
一部の実施形態では、該細胞は、配列番号13のアミノ酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれを超える)を有するCD47ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、該細胞は、配列番号13のアミノ酸配列を有するCD47ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、該細胞は、配列番号13のアミノ酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれを超える)を有するCD47ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、該細胞は、配列番号13のアミノ酸配列を有するCD47ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、ヌクレオチド配列は、特定の細胞における発現のためにコドン最適化される。
【0305】
一部の実施形態では、好適な遺伝子編集システム(例えば、CRISPR/Casシステム、または本明細書に記載の遺伝子編集システムのうちのいずれか)を使用して、低免疫原性細胞のゲノム遺伝子座内への、CD47をコードするポリヌクレオチドの挿入が容易にされる。場合によっては、CD47をコードするポリヌクレオチドは、限定されないが、AAVS1、CCR5、CLYBL、ROSA26、SHS231、F3(別名、CD142)、MICA、MICB、LRP1(別名、CD91)、HMGB1、ABO、RHD、FUT1、PDGFRa、OLIG2、GFAP、またはKDM5D遺伝子座等のセーフハーバーまたは標的遺伝子座内に挿入される。一部の実施形態では、CD47をコードするポリヌクレオチドは、B2M遺伝子座、CIITA遺伝子座、TRAC遺伝子座、またはTRB遺伝子座内に挿入される。一部の実施形態では、CD47をコードするポリヌクレオチドは、本明細書で提供される表4に示される遺伝子座のうちのいずれか1つに挿入される。ある特定の実施形態では、CD47をコードするポリヌクレオチドは、プロモーターに作動可能に連結されている。
【0306】
別の実施形態では、CD47タンパク質発現は、CD47タンパク質に対する抗体によりプロービングされる細胞ライセートのウェスタンブロットを使用して検出される。別の実施形態では、逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)を使用して、外因性CD47 mRNAの存在が確認される。
【0307】
D.CD24
一部の実施形態では、本開示は、寛容原性因子(例えば、免疫調節ポリペプチド)CD24を発現するように改変された細胞またはその集団を提供する。一部の実施形態では、本開示は、CD24を発現するように細胞のゲノムを変化させるための方法を提供する。一部の実施形態では、幹細胞は、外因性CD24を発現する。一部の事例では、該細胞は、ヒトCD24ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む発現ベクターを発現する。一部の実施形態では、該細胞は、相同性指向修復を使用して、CD24をコードする組み込まれた外因性ポリヌクレオチドを含むように遺伝子改変される。
【0308】
熱安定性抗原または小細胞肺癌クラスター4抗原とも称されるCD24は、グリコシル化グリコシルホスファチジルイノシトールアンカー型表面タンパク質である(Pirruccello et al.,J Immunol,1986,136,3779-3784、Chen et al.,Glycobiology,2017,57,800-806)。それは自然免疫細胞上のSiglec-10に結合する。最近、Siglec-10を介してCD24が自然免疫チェックポイントとしての機能を果たすことが示された(Barkal et al.,Nature,2019,572,392-396)。
【0309】
一部の実施形態では、本明細書に概説される細胞は、NCBI参照番号NP_001278666.1、NP_001278667.1、NP_001278668.1、及びNP_037362.1に定められるアミノ酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれを超える)を有するCD24ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、本明細書に概説される細胞は、NCBI参照番号NP_001278666.1、NP_001278667.1、NP_001278668.1、及びNP_037362.1に定められるアミノ酸配列を有するCD24ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む。
【0310】
一部の実施形態では、該細胞は、NCBI参照番号NM_00129737.1、NM_00129738.1、NM_001291739.1、及びNM_013230.3に定められる配列に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれを超える)を有するヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、該細胞は、NCBI参照番号NM_00129737.1、NM_00129738.1、NM_001291739.1、及びNM_013230.3に定められるヌクレオチド配列を含む。
【0311】
別の実施形態では、CD24タンパク質発現は、CD24タンパク質に対する抗体によりプロービングされる細胞ライセートのウェスタンブロットを使用して検出される。別の実施形態では、逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)を使用して、外因性CD24 mRNAの存在が確認される。
【0312】
一部の実施形態では、好適な遺伝子編集システム(例えば、CRISPR/Casシステム、または本明細書に記載の遺伝子編集システムのうちのいずれか)を使用して、低免疫原性細胞のゲノム遺伝子座内への、CD24をコードするポリヌクレオチドの挿入が容易にされる。場合によっては、CD24をコードするポリヌクレオチドは、限定されないが、AAVS1、CCR5、CLYBL、ROSA26、SHS231、F3(別名、CD142)、MICA、MICB、LRP1(別名、CD91)、HMGB1、ABO、RHD、FUT1、PDGFRa、OLIG2、GFAP、またはKDM5D遺伝子座等のセーフハーバーまたは標的遺伝子座内に挿入される。一部の実施形態では、CD24をコードするポリヌクレオチドは、B2M遺伝子座、CIITA遺伝子座、TRAC遺伝子座、またはTRB遺伝子座内に挿入される。一部の実施形態では、CD24をコードするポリヌクレオチドは、本明細書で提供される表4に示される遺伝子座のうちのいずれか1つに挿入される。一部の実施形態では、CD24をコードするポリヌクレオチドは、プロモーターに作動可能に連結されている。
【0313】
E.DUX4
一部の実施形態では、本開示は、DUX4等の寛容原性または免疫抑制因子の発現を増加させるように改変されたゲノムを含む細胞(例えば、幹細胞、人工多能性幹細胞、分化細胞、造血幹細胞、初代細胞、またはCAR-T細胞)またはその集団を提供する。一部の実施形態では、本開示は、DUX4の増加した発現をもたらすように細胞のゲノムを変化させるための方法を提供する。一態様では、本開示は、外因性で発現させたDUX4タンパク質を含む細胞またはその集団を提供する。一部の実施形態では、該細胞は、相同性指向修復を使用して、DUX4をコードする組み込まれた外因性ポリヌクレオチドを含むように遺伝子改変される。一部の実施形態では、DUX4の増加した発現は、以下のMHC I分子、すなわちHLA-A、HLA-B、及びHLA-Cのうちの1つまたは複数の発現を抑制、低減、または排除する。
【0314】
DUX4は、胚組織及び人工多能性幹細胞において活性をもち、正常な健常体細胞組織においてはサイレントである転写因子である(Feng et al.,2015,ELife4、De Iaco et al.,2017,Nat Genet.,49,941-945、Hendrickson et al.,2017,Nat Genet.,49,925-934、Snider et al.,2010,PLoS Genet.,e1001181、Whiddon et al.,2017,Nat Genet.)。DUX4発現は、主要組織適合性複合体(MHC)クラスI遺伝子発現(例えば、B2M、HLA-A、HLA-B、及びHLA-Cの発現)のIFN-ガンマ媒介性の誘導を遮断するように作用する。DUX4発現は、MHCクラスIによる抗原提示の抑制に関わっているとされている(Chew et al.,Developmental Cell,2019,50:1-14)。DUX4は、切断段階の遺伝子発現(転写)プログラムにおける転写因子として機能する。その標的遺伝子には、コード遺伝子、非コード遺伝子、及び反復エレメントが含まれるが、これらに限定されない。
【0315】
DUX4の少なくとも2つのアイソフォームが存在し、このうち最も長いアイソフォームがDUX4のC末端に転写活性化ドメインを含む。これらのアイソフォームは、選択的スプライシングによって生み出される。例えば、Geng et al.,2012,Developmental Cell,22,38-51、Snider et al.,2010,PLoS Genet.,e1001181を参照されたい。DUX4の活性なアイソフォームは、そのN末端にDNA結合ドメイン及びそのC末端に活性化ドメインを含む。例えば、Choi et al.,2016,Nucleic Acid Res.,44,5161-5173を参照されたい。
【0316】
DUX4のCpGモチーフの数を低減することにより、DUX4導入遺伝子のサイレンシングが減少することが示されている(Jagannathan et al.,Human Molecular Genetics,2016,25(20):4419-4431)。Jagannathan et al.,(上記参照)で提供される核酸配列は、DUX4タンパク質配列を保存しながらCpG部位の総数を低減する1つまたは複数の塩基置換を含む、DUX4のコドンが変化した配列を表す。この核酸配列は、Addgene(カタログ番号99281)から市販されている。
【0317】
ある特定の態様では、少なくとも1つまたは複数のポリヌクレオチドを利用して、細胞、例えば、幹細胞、人工多能性幹細胞、分化細胞、造血幹細胞、初代細胞、またはCAR-T細胞によるDUX4の外因性発現を容易にしてもよい。
【0318】
一部の実施形態では、好適な遺伝子編集システム(例えば、CRISPR/Casシステム、または本明細書に記載の遺伝子編集システムのうちのいずれか)を使用して、低免疫原性細胞のゲノム遺伝子座内への、DUX4をコードするポリヌクレオチドの挿入が容易にされる。場合によっては、DUX4をコードするポリヌクレオチドは、限定されないが、AAVS1、CCR5、CLYBL、ROSA26、SHS231、F3(別名、CD142)、MICA、MICB、LRP1(別名、CD91)、HMGB1、ABO、RHD、FUT1、PDGFRa、OLIG2、GFAP、またはKDM5D遺伝子座等のセーフハーバーまたは標的遺伝子座内に挿入される。一部の実施形態では、DUX4をコードするポリヌクレオチドは、B2M遺伝子座、CIITA遺伝子座、TRAC遺伝子座、またはTRB遺伝子座内に挿入される。一部の実施形態では、DUX4をコードするポリヌクレオチドは、本明細書で提供される表4に示される遺伝子座のうちのいずれか1つに挿入される。ある特定の実施形態では、DUX4をコードするポリヌクレオチドは、プロモーターに作動可能に連結されている。
【0319】
一部の実施形態では、DUX4をコードするポリヌクレオチド配列は、DUX4タンパク質配列を保存しながらCpG部位の総数を低減する1つまたは複数の塩基置換を含む、DUX4のコドンが変化したヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、CpG部位の総数を低減する1つまたは複数の塩基置換を含む、DUX4をコードするポリヌクレオチド配列は、2020年7月31日に出願されたPCT/US2020/44635の配列番号1に対して少なくとも85%(例えば、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%)の配列同一性を有する。一部の実施形態では、DUX4をコードするポリヌクレオチド配列は、PCT/US2020/44635の配列番号1である。
【0320】
一部の実施形態では、DUX4をコードするポリヌクレオチド配列は、PCT/US2020/44635で提供される、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、及び配列番号29を含む群から選択される配列に対して少なくとも95%(例えば、95%、96%、97%、98%、99%または100%)の配列同一性を有するポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列である。一部の実施形態では、DUX4をコードするポリヌクレオチド配列は、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、及び配列番号29を含む群から選択されるポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列である。配列番号2~29として定められるアミノ酸配列は、PCT/US2020/44635の図1A~1Gに示される。
【0321】
一部の事例では、DUX4ポリペプチドは、GenBank受託番号ACN62209.1に定められる配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列、またはGenBank受託番号ACN62209.1に定められるアミノ酸配列を含む。一部の事例では、DUX4ポリペプチドは、NCBI参照配列番号NP_001280727.1に定められる配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列、またはNCBI参照配列番号NP_001280727.1に定められるアミノ酸配列を含む。一部の事例では、DUX4ポリペプチドは、GenBank受託番号ACP30489.1に定められる配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列、またはGenBank受託番号ACP30489.1に定められるアミノ酸配列を含む。一部の事例では、DUX4ポリペプチドは、UniProt番号P0CJ85.1に定められる配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列、またはUniProt番号P0CJ85.1に定められるアミノ酸配列を含む。一部の事例では、DUX4ポリペプチドは、GenBank受託番号AUA60622.1に定められる配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列、またはGenBank受託番号AUA60622.1に定められるアミノ酸配列を含む。一部の事例では、DUX4ポリペプチドは、GenBank受託番号ADK24683.1に定められる配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列、またはGenBank受託番号ADK24683.1に定められるアミノ酸配列を含む。一部の事例では、DUX4ポリペプチドは、GenBank受託番号ACN62210.1に定められる配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列、またはGenBank受託番号ACN62210.1に定められるアミノ酸配列を含む。一部の事例では、DUX4ポリペプチドは、GenBank受託番号ADK24706.1に定められる配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列、またはGenBank受託番号ADK24706.1に定められるアミノ酸配列を含む。一部の事例では、DUX4ポリペプチドは、GenBank受託番号ADK24685.1に定められる配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列、またはGenBank受託番号ADK24685.1に定められるアミノ酸配列を含む。一部の事例では、DUX4ポリペプチドは、GenBank受託番号ACP30488.1に定められる配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列、またはGenBank受託番号ACP30488.1に定められるアミノ酸配列を含む。一部の事例では、DUX4ポリペプチドは、GenBank受託番号ADK24687.1に定められる配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列、またはGenBank受託番号ADK24687.1に定められるアミノ酸配列を含む。一部の事例では、DUX4ポリペプチドは、GenBank受託番号ACP30487.1に定められる配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列、またはGenBank受託番号ACP30487.1に定められるアミノ酸配列を含む。一部の事例では、DUX4ポリペプチドは、GenBank受託番号ADK24717.1に定められる配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列、またはGenBank受託番号ADK24717.1に定められるアミノ酸配列を含む。一部の事例では、DUX4ポリペプチドは、GenBank受託番号ADK24690.1に定められる配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列、またはGenBank受託番号ADK24690.1に定められるアミノ酸配列を含む。一部の事例では、DUX4ポリペプチドは、GenBank受託番号ADK24689.1に定められる配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列、またはGenBank受託番号ADK24689.1に定められるアミノ酸配列を含む。一部の事例では、DUX4ポリペプチドは、GenBank受託番号ADK24692.1に定められる配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列、またはGenBank受託番号ADK24692.1に定められるアミノ酸配列を含む。一部の事例では、DUX4ポリペプチドは、GenBank受託番号ADK24693.1に定められる配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列、またはGenBank受託番号ADK24693.1に定められるアミノ酸配列を含む。一部の事例では、DUX4ポリペプチドは、GenBank受託番号ADK24712.1に定められる配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列、またはGenBank受託番号ADK24712.1に定められるアミノ酸配列を含む。一部の事例では、DUX4ポリペプチドは、GenBank受託番号ADK24691.1に定められる配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列、またはGenBank受託番号ADK24691.1に定められるアミノ酸配列を含む。一部の事例では、DUX4ポリペプチドは、UniProt番号P0CJ87.1に定められる配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列、またはUniProt番号P0CJ87.1に定められるアミノ酸配列を含む。一部の事例では、DUX4ポリペプチドは、GenBank受託番号ADK24714.1に定められる配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列、またはGenBank受託番号ADK24714.1に定められるアミノ酸配列を含む。一部の事例では、DUX4ポリペプチドは、GenBank受託番号ADK24684.1に定められる配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列、またはGenBank受託番号ADK24684.1に定められるアミノ酸配列を含む。一部の事例では、DUX4ポリペプチドは、GenBank受託番号ADK24695.1に定められる配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列、またはGenBank受託番号ADK24695.1に定められるアミノ酸配列を含む。一部の事例では、DUX4ポリペプチドは、GenBank受託番号ADK24699.1に定められる配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列、またはGenBank受託番号ADK24699.1に定められるアミノ酸配列を含む。一部の事例では、DUX4ポリペプチドは、NCBI参照配列番号NP_001768.1に定められる配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列、またはNCBI参照配列番号NP_001768に定められるアミノ酸配列を含む。一部の事例では、DUX4ポリペプチドは、NCBI参照配列番号NP_942088.1に定められる配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列、またはNCBI参照配列番号NP_942088.1に定められるアミノ酸配列を含む。一部の事例では、DUX4ポリペプチドは、PCT/US2020/44635で提供される配列番号28に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列、またはPCT/US2020/44635で提供される配列番号28のアミノ酸配列を含む。一部の事例では、DUX4ポリペプチドは、PCT/US2020/44635で提供される配列番号29に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列、またはPCT/US2020/44635で提供される配列番号29のアミノ酸配列を含む。
【0322】
他の実施形態では、寛容原性因子の発現は、発現ベクターを使用して容易にされる。一部の実施形態では、発現ベクターは、DUX4タンパク質配列を保存しながらCpG部位の総数を低減する1つまたは複数の塩基置換を含む、コドンが変化した配列である、DUX4をコードするポリヌクレオチド配列を含む。場合によっては、DUX4のコドンが変化した配列は、PCT/US2020/44635の配列番号1を含む。場合によっては、DUX4のコドンが変化した配列は、PCT/US2020/44635の配列番号1である。他の実施形態では、発現ベクターは、PCT/US2020/44635の配列番号1を含む、DUX4をコードするポリヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、発現ベクターは、PCT/US2020/44635の配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、及び配列番号29を含む群から選択される配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するDUX4ポリペプチド配列をコードするポリヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、発現ベクターは、PCT/US2020/44635の配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、及び配列番号29を含む群から選択されるDUX4ポリペプチド配列をコードするポリヌクレオチド配列を含む。
【0323】
DUX4発現の増加は、本明細書に記載の分子のうちのいずれかの発現の存在について、ウェスタンブロット、ELISAアッセイ、FACSアッセイ、イムノアッセイ等といった既知の技法を使用してアッセイすることができる。
【0324】
F.CIITA
ある特定の態様では、本明細書に開示される技術は、クラスIIトランス活性化因子(CIITA)の発現を標的化し、調節すること(例えば、低減または排除すること)によって、MHC II遺伝子の発現を調節する(例えば、低減または排除する)。一部の実施形態では、調節は、遺伝子編集(例えば、CRISPR/Cas)システムを使用して起こる。一部の実施形態では、改変は、一過性である(例えば、siRNA法を用いることによるものを含む)。一部の実施形態では、調節は、CRISPR、TALEN、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、ホーミングエンドヌクレアーゼ、及びメガヌクレアーゼからなる群から選択される方法を使用したノックアウトまたはノックダウンからなる群から選択されるDNAベースの方法を使用して起こる。一部の実施形態では、改変は、一過性である(例えば、siRNA法を用いることによるものを含む)。一部の実施形態では、調節は、shRNA、siRNA、miRNA、及びCRISPR干渉(CRISPRi)からなる群から選択されるRNAベースの方法を使用して起こる。一部の実施形態では、CIITA発現の調節には、低減された転写、減少したmRNA安定性(RNAi機構を用いて等)、及び低減されたタンパク質レベルが含まれるが、これらに限定されない。
【0325】
CIITAは、LR、またはヌクレオチド結合ドメイン(NBD)ロイシンリッチリピート(LRR)ファミリーのタンパク質のメンバーであり、MHCエンハンセオソームと会合することによってMHC IIの転写を制御する。
【0326】
一部の実施形態では、標的ポリヌクレオチド配列は、CIITAのバリアントである。一部の実施形態では、標的ポリヌクレオチド配列は、CIITAのホモログである。一部の実施形態では、標的ポリヌクレオチド配列は、CIITAのオルソログである。
【0327】
一部の実施形態では、CIITAの低減された発現またはその排除は、以下のMHCクラスII、すなわちHLA-DP、HLA-DM、HLA-DOA、HLA-DOB、HLA-DQ、及びHLA-DRのうちの1つまたは複数の発現を低減または排除する。
【0328】
一部の実施形態では、本明細書に概説される細胞は、CIITA遺伝子を標的とする遺伝子改変を含む。一部の実施形態では、レアカットエンドヌクレアーゼによるCIITA遺伝子を標的とする遺伝子改変は、Casタンパク質またはCasタンパク質をコードするポリヌクレオチド、及びCIITA遺伝子を特異的に標的とするための少なくとも1つのガイドリボ核酸配列を含む。一部の実施形態では、CIITA遺伝子を特異的に標的とするための少なくとも1つのガイドリボ核酸配列は、WO2016183041の付録1または表12の配列番号5184~36352からなる群から選択され、この開示は参照によりその全体が援用される。一部の実施形態では、本明細書に開示されるようなポリペプチド(例えば、キメラ抗原受容体、CD47、または本明細書に開示される別の寛容原性因子)をコードする外因性核酸は、CIITA遺伝子にて挿入される。
【0329】
CIITA遺伝子が不活性化されているかどうかを試験するためのアッセイは、既知であるとともに、本明細書に記載される。一実施形態では、結果として生じるCIITA遺伝子の遺伝子改変はPCRによって、HLA-II発現の低減はFACS解析によってアッセイすることができる。別の実施形態では、CIITAタンパク質発現は、CIITAタンパク質に対する抗体によりプロービングされる細胞ライセートのウェスタンブロットを使用して検出される。別の実施形態では、逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)を使用して、不活性化する遺伝子改変の存在が確認される。
【0330】
G.B2M
ある特定の実施形態では、本明細書に開示される技術は、アクセサリー鎖B2Mの発現を標的化し、調節すること(例えば、低減または排除すること)によって、MHC-I遺伝子の発現を調節する(例えば、低減または排除する)。一部の実施形態では、調節は、遺伝子編集(例えば、CRISPR/Cas)システムを使用して起こる。一部の実施形態では、改変は、一過性である(例えば、siRNA法を用いることによるものを含む)。一部の実施形態では、調節は、CRISPR、TALEN、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、ホーミングエンドヌクレアーゼ、及びメガヌクレアーゼからなる群から選択される方法を使用したノックアウトまたはノックダウンからなる群から選択されるDNAベースの方法を使用して起こる。一部の実施形態では、改変は、一過性である(例えば、siRNA法を用いることによるものを含む)。一部の実施形態では、調節は、shRNA、siRNA、miRNA、及びCRISPR干渉(CRISPRi)からなる群から選択されるRNAベースの方法を使用して起こる。一部の実施形態では、B2M発現の調節には、低減された転写、減少したmRNA安定性(RNAi機構を用いて等)、及び低減されたタンパク質レベルが含まれるが、これらに限定されない。
【0331】
B2Mの発現を調節すること(例えば、低減するまたは欠失させること)によって、MHC-I分子の表面輸送が遮断され、かかる細胞は、レシピエント対象に移植されたときに免疫寛容を示す。一部の実施形態では、該細胞は、例えば、投与時にレシピエント対象または患者において低免疫原性と見なされる。
【0332】
一部の実施形態では、本明細書で提供される標的ポリヌクレオチド配列は、B2Mのバリアントである。一部の実施形態では、標的ポリヌクレオチド配列は、B2Mのホモログである。一部の実施形態では、標的ポリヌクレオチド配列は、B2Mのオルソログである。
【0333】
一部の実施形態では、B2Mの発現の減少または排除は、以下のMHC I分子、すなわちHLA-A、HLA-B、及びHLA-Cのうちの1つまたは複数の発現を低減または排除する。
【0334】
一部の実施形態では、本明細書に概説される低免疫原性細胞は、B2M遺伝子を標的とする遺伝子改変を含む。一部の実施形態では、レアカットエンドヌクレアーゼによるB2M遺伝子を標的とする遺伝子改変は、Casタンパク質またはCasタンパク質をコードするポリヌクレオチド、及びB2M遺伝子を特異的に標的とするための少なくとも1つのガイドリボ核酸配列を含む。一部の実施形態では、B2M遺伝子を特異的に標的とするための少なくとも1つのガイドリボ核酸配列は、WO2016/183041の付録2または表15の配列番号81240~85644からなる群から選択され、この開示は参照によりその全体が援用される。一部の実施形態では、本明細書に開示されるようなポリペプチド(例えば、キメラ抗原受容体、CD47、または本明細書に開示される別の寛容原性因子)をコードする外因性核酸は、B2M遺伝子にて挿入される。
【0335】
B2M遺伝子が不活性化されているかどうかを試験するためのアッセイは、既知であるとともに、本明細書に記載される。一実施形態では、結果として生じるB2M遺伝子の遺伝子改変はPCRによって、HLA-I発現の低減はFACS解析によってアッセイすることができる。別の実施形態では、B2Mタンパク質発現は、B2Mタンパク質に対する抗体によりプロービングされる細胞ライセートのウェスタンブロットを使用して検出される。別の実施形態では、逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)を使用して、不活性化する遺伝子改変の存在が確認される。
【0336】
H.NLRC5
ある特定の態様では、本明細書に開示される技術は、NLRファミリー、CARDドメイン含有5/NOD27/CLR16.1(NLRC5)の発現を標的化し、調節すること(例えば、低減または排除すること)によって、MHC-I遺伝子の発現を調節する(例えば、低減または排除する)。一部の実施形態では、調節は、遺伝子編集(例えば、CRISPR/Cas)システムを使用して起こる。一部の実施形態では、改変は、一過性である(例えば、siRNA法を用いることによるものを含む)。一部の実施形態では、調節は、CRISPR、TALEN、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、ホーミングエンドヌクレアーゼ、及びメガヌクレアーゼからなる群から選択される方法を使用したノックアウトまたはノックダウンからなる群から選択されるDNAベースの方法を使用して起こる。一部の実施形態では、改変は、一過性である(例えば、siRNA法を用いることによるものを含む)。一部の実施形態では、調節は、shRNA、siRNA、miRNA、及びCRISPR干渉(CRISPRi)からなる群から選択されるRNAベースの方法を使用して起こる。一部の実施形態では、NLRC5発現の調節には、低減された転写、減少したmRNA安定性(RNAi機構を用いて等)、及び低減されたタンパク質レベルが含まれるが、これらに限定されない。
【0337】
NLRC5は、MHC-I媒介性免疫応答のレギュレーターであり、CIITAと同様に、NLRC5は、IFN-γによって高度に誘導性であり、核内に移行することができる。NLRC5は、MHC-I遺伝子のプロモーターを活性化し、MHC-Iのみならず、MHC-I抗原提示に関与する関連遺伝子の転写を誘導する。
【0338】
一部の実施形態では、標的ポリヌクレオチド配列は、NLRC5のバリアントである。一部の実施形態では、標的ポリヌクレオチド配列は、NLRC5のホモログである。一部の実施形態では、標的ポリヌクレオチド配列は、NLRC5のオルソログである。
【0339】
一部の実施形態では、NLRC5の発現の減少または排除は、以下のMHC I分子、すなわちHLA-A、HLA-B、及びHLA-Cのうちの1つまたは複数の発現を低減または排除する。
【0340】
一部の実施形態では、本明細書に概説される細胞は、NLRC5遺伝子を標的とする遺伝子改変を含む。一部の実施形態では、レアカットエンドヌクレアーゼによるNLRC5遺伝子を標的とする遺伝子改変は、Casタンパク質またはCasタンパク質をコードするポリヌクレオチド、及びNLRC5遺伝子を特異的に標的とするための少なくとも1つのガイドリボ核酸配列を含む。一部の実施形態では、NLRC5遺伝子を特異的に標的とするための少なくとも1つのガイドリボ核酸配列は、WO2016183041の付録3または表14の配列番号36353~81239からなる群から選択され、この開示は参照によりその全体が援用される。
【0341】
NLRC5遺伝子が不活性化されているかどうかを試験するためのアッセイは、既知であるとともに、本明細書に記載される。一実施形態では、結果として生じるNLRC5遺伝子の遺伝子改変はPCRによって、HLA-I発現の低減はFACS解析によってアッセイすることができる。別の実施形態では、NLRC5タンパク質発現は、NLRC5タンパク質に対する抗体によりプロービングされる細胞ライセートのウェスタンブロットを使用して検出される。別の実施形態では、逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)を使用して、不活性化する遺伝子改変の存在が確認される。
【0342】
I.TRAC
多くの実施形態では、本明細書に開示される技術は、T細胞受容体アルファ鎖の定常領域の発現を制御可能に標的化し、調節すること(例えば、低減または排除すること)によって、TRAC遺伝子を含むTCR遺伝子の発現を制御可能に調節する(例えば、低減または排除する)。一部の実施形態では、調節は、遺伝子編集(例えば、CRISPR/Cas)システムを使用して起こる。一部の実施形態では、改変は、一過性である(例えば、siRNA法を用いることによるものを含む)。一部の実施形態では、調節は、CRISPR、TALEN、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、ホーミングエンドヌクレアーゼ、及びメガヌクレアーゼからなる群から選択される方法を使用したノックアウトまたはノックダウンからなる群から選択されるDNAベースの方法を使用して起こる。一部の実施形態では、改変は、一過性である(例えば、siRNA法を用いることによるものを含む)。一部の実施形態では、調節は、shRNA、siRNA、miRNA、及びCRISPR干渉(CRISPRi)からなる群から選択されるRNAベースの方法を使用して起こる。一部の実施形態では、TRAC発現の調節には、低減された転写、減少したmRNA安定性(RNAi機構を用いて等)、及び低減されたタンパク質レベルが含まれるが、これらに限定されない。
【0343】
TRACの発現を調節すること(例えば、低減するまたは欠失させること)によって、TCR分子の表面輸送が遮断される。一部の実施形態では、該細胞はまた、レシピエント対象において免疫応答を誘導する能力も低減されている。
【0344】
一部の実施形態では、本技術の標的ポリヌクレオチド配列は、TRACのバリアントである。一部の実施形態では、標的ポリヌクレオチド配列は、TRACのホモログである。一部の実施形態では、標的ポリヌクレオチド配列は、TRACのオルソログである。
【0345】
一部の実施形態では、TRACの発現の減少または排除は、TCRの表面発現を低減または排除する。
【0346】
一部の実施形態では、限定されないが、多能性幹細胞、人工多能性幹細胞、人工多能性幹細胞から分化させたT細胞、初代T細胞、及び初代T細胞に由来する細胞等の細胞は、TRACタンパク質をコードする遺伝子座にて制御可能な遺伝子改変を含む。換言すれば、該細胞は、TRAC遺伝子座にて制御可能な遺伝子改変を含む。一部の事例では、TRACタンパク質をコードするヌクレオチド配列は、Genbank番号X02592.1に定められる。一部の事例では、TRAC遺伝子座は、参照配列番号NG_001332.3及びNCBI遺伝子ID番号28755に記載される。ある特定の実例では、TRACのアミノ酸配列は、Uniprot番号P01848として示される。TRACタンパク質及び遺伝子座の追加の説明は、Uniprot番号P01848、HGNC参照番号12029、及びOMIM参照番号186880に見出すことができる。
【0347】
一部の実施形態では、本明細書に概説される低免疫原性細胞は、TRAC遺伝子を標的とする制御可能な遺伝子改変を含む。一部の実施形態では、TRAC遺伝子を標的とする制御可能な遺伝子改変は、制御可能なCasタンパク質またはCasタンパク質をコードする制御可能なポリヌクレオチド、及びTRAC遺伝子を特異的に標的とするための少なくとも1つのガイドリボ核酸配列を含む、制御可能なレアカットエンドヌクレアーゼを用いる。一部の実施形態では、TRAC遺伝子を特異的に標的とするための少なくとも1つのガイドリボ核酸配列は、US20160348073の配列番号532~609及び9102~9797からなる群から選択され、同文献は参照により本明細書に援用される。
【0348】
TRAC遺伝子が不活性化されているかどうかを試験するためのアッセイは、既知であるとともに、本明細書に記載される。一部の実施形態では、結果として生じるTRAC遺伝子の遺伝子改変はPCRによって、TCR発現の低減はFACS解析によってアッセイすることができる。別の実施形態では、TRACタンパク質発現は、TRACタンパク質に対する抗体によりプロービングされる細胞ライセートのウェスタンブロットを使用して検出される。別の実施形態では、逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)を使用して、不活性化する遺伝子改変の存在が確認される。
【0349】
一部の実施形態では、本明細書に概説される低免疫原性細胞は、TRAC発現の制御可能なノックアウトを含み、それにより該細胞は、制御可能にTRAC-/-である。一部の実施形態では、本明細書に概説される低免疫原性細胞は、TRAC遺伝子座内にインデルを制御可能に導入し、それにより該細胞は、制御可能にTRACインデル/インデルである。一部の実施形態では、本明細書に概説される低免疫原性細胞は、TRAC発現の制御可能なノックダウンを含み、それにより該細胞は、制御可能にTRACノックダウンである。
【0350】
J.TRB
多くの実施形態では、本明細書に開示される技術は、T細胞受容体ベータ鎖の定常領域の発現を制御可能に標的化し、調節すること(例えば、低減または排除すること)によって、T細胞抗原受容体、ベータ鎖をコードする遺伝子(例えば、TRB、TRBC、またはTCRB遺伝子)を含むTCR遺伝子の発現を制御可能に調節する(例えば、低減または排除する)。一部の実施形態では、調節は、遺伝子編集(例えば、CRISPR/Cas)システムを使用して起こる。一部の実施形態では、改変は、一過性である(例えば、siRNA法を用いることによるものを含む)。一部の実施形態では、調節は、CRISPR、TALEN、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、ホーミングエンドヌクレアーゼ、及びメガヌクレアーゼからなる群から選択される方法を使用したノックアウトまたはノックダウンからなる群から選択されるDNAベースの方法を使用して起こる。一部の実施形態では、改変は、一過性である(例えば、siRNA法を用いることによるものを含む)。一部の実施形態では、調節は、shRNA、siRNA、miRNA、及びCRISPR干渉(CRISPRi)からなる群から選択されるRNAベースの方法を使用して起こる。一部の実施形態では、TRB発現の調節には、低減された転写、減少したmRNA安定性(RNAi機構を用いて等)、及び低減されたタンパク質レベルが含まれるが、これらに限定されない。
【0351】
TRBの発現を調節すること(例えば、低減するまたは欠失させること)によって、TCR分子の表面輸送が遮断される。一部の実施形態では、該細胞はまた、レシピエント対象において免疫応答を誘導する能力も低減されている。
【0352】
一部の実施形態では、本技術の標的ポリヌクレオチド配列は、TRBのバリアントである。一部の実施形態では、標的ポリヌクレオチド配列は、TRBのホモログである。一部の実施形態では、標的ポリヌクレオチド配列は、TRBのオルソログである。
【0353】
一部の実施形態では、TRBの発現の減少または排除は、TCRの表面発現を低減または排除する。
【0354】
一部の実施形態では、限定されないが、多能性幹細胞、人工多能性幹細胞、人工多能性幹細胞から分化させたT細胞、初代T細胞、及び初代T細胞に由来する細胞等の細胞は、TRBタンパク質をコードする遺伝子座にて制御可能な遺伝子改変を含む。換言すれば、該細胞は、TRB遺伝子座にて制御可能な遺伝子改変を含む。一部の事例では、TRBタンパク質をコードするヌクレオチド配列は、UniProt番号P0DSE2に定められる。一部の事例では、TRB遺伝子座は、参照配列番号NG_001333.2及びNCBI遺伝子ID番号6957に記載される。ある特定の実例では、TRBのアミノ酸配列は、Uniprot番号P01848として示される。TRBタンパク質及び遺伝子座の追加の説明は、GenBank番号L36092.2、Uniprot番号P0DSE2、及びHGNC参照番号12155に見出すことができる。
【0355】
一部の実施形態では、本明細書に概説される低免疫原性細胞は、TRB遺伝子を標的とする制御可能な遺伝子改変を含む。一部の実施形態では、TRB遺伝子を標的とする制御可能な遺伝子改変は、制御可能なCasタンパク質またはCasタンパク質をコードする制御可能なポリヌクレオチド、及びTRB遺伝子を特異的に標的とするための少なくとも1つのガイドリボ核酸配列を含む、制御可能なレアカットエンドヌクレアーゼを用いる。一部の実施形態では、TRB遺伝子を特異的に標的とするための少なくとも1つのガイドリボ核酸配列は、US20160348073の配列番号610~765及び9798~10532からなる群から選択され、同文献は参照により本明細書に援用される。
【0356】
TRB遺伝子が不活性化されているかどうかを試験するためのアッセイは、既知であるとともに、本明細書に記載される。一部の実施形態では、結果として生じるTRB遺伝子の遺伝子改変はPCRによって、TCR発現の低減はFACS解析によってアッセイすることができる。別の実施形態では、TRBタンパク質発現は、TRBタンパク質に対する抗体によりプロービングされる細胞ライセートのウェスタンブロットを使用して検出される。別の実施形態では、逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)を使用して、不活性化する遺伝子改変の存在が確認される。
【0357】
一部の実施形態では、本明細書に概説される低免疫原性細胞は、TRB発現の制御可能なノックアウトを含み、それにより該細胞は、制御可能にTRB-/-である。一部の実施形態では、本明細書に概説される低免疫原性細胞は、TRB遺伝子座内にインデルを制御可能に導入し、それにより該細胞は、制御可能にTRBインデル/インデルである。一部の実施形態では、本明細書に概説される低免疫原性細胞は、TRB発現の制御可能なノックダウンを含み、それにより該細胞は、制御可能にTRBノックダウンである。
【0358】
K.CD142
ある特定の態様では、本明細書に開示される技術は、CD142(組織因子、因子III、及びF3としても知られる)の発現を調節する(例えば、低減または排除する)。一部の実施形態では、調節は、遺伝子編集(例えば、CRISPR/Cas)システムを使用して起こる。一部の実施形態では、改変は、一過性である(例えば、siRNA法を用いることによるものを含む)。一部の実施形態では、調節は、CRISPR、TALEN、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、ホーミングエンドヌクレアーゼ、及びメガヌクレアーゼからなる群から選択される方法を使用したノックアウトまたはノックダウンからなる群から選択されるDNAベースの方法を使用して起こる。一部の実施形態では、改変は、一過性である(例えば、siRNA法を用いることによるものを含む)。一部の実施形態では、調節は、shRNA、siRNA、miRNA、及びCRISPR干渉(CRISPRi)からなる群から選択されるRNAベースの方法を使用して起こる。一部の実施形態では、CD142発現の調節には、低減された転写、減少したmRNA安定性(RNAi機構を用いて等)、及び低減されたタンパク質レベルが含まれるが、これらに限定されない。
【0359】
一部の実施形態では、標的ポリヌクレオチド配列は、CD142またはCD142のバリアントである。一部の実施形態では、標的ポリヌクレオチド配列は、CD142のホモログである。一部の実施形態では、標的ポリヌクレオチド配列は、CD142のオルソログである。
【0360】
一部の実施形態では、本明細書に概説される細胞は、CD142遺伝子を標的とする遺伝子改変を含む。一部の実施形態では、レアカットエンドヌクレアーゼによるCD142遺伝子を標的とする遺伝子改変は、Casタンパク質またはCasタンパク質をコードするポリヌクレオチド、及びCD142遺伝子を特異的に標的とするための少なくとも1つのガイドリボ核酸(gRNA)配列を含む。CD142を標的とするgRNA配列を特定するための有用な方法は、下記に記載される。
【0361】
CD142遺伝子が不活性化されているかどうかを試験するためのアッセイは、既知であるとともに、本明細書に記載される。一実施形態では、結果として生じるCD142遺伝子の遺伝子改変はPCRによって、CD142発現の低減はFACS解析によってアッセイすることができる。別の実施形態では、CD142タンパク質発現は、CD142タンパク質に対する抗体によりプロービングされる細胞ライセートのウェスタンブロットを使用して検出される。別の実施形態では、逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)を使用して、不活性化する遺伝子改変の存在が確認される。
【0362】
ヒトCD142についての有用なゲノム、ポリヌクレオチド、及びポリペプチドの情報は、例えば、GeneCard識別記号GC01M094530、HGNC番号3541、NCBI遺伝子ID 2152、NCBI参照配列番号NM_001178096.1、NM_001993.4、NP_001171567.1、及びNP_001984.1、UniProt番号P13726等で提供される。
【0363】
L.CTLA4
ある特定の態様では、本明細書に開示される技術は、CTLA4の発現を調節する(例えば、低減または排除する)。一部の実施形態では、調節は、遺伝子編集(例えば、CRISPR/Cas)システムを使用して起こる。一部の実施形態では、改変は、一過性である(例えば、siRNA法を用いることによるものを含む)。一部の実施形態では、調節は、CRISPR、TALEN、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、ホーミングエンドヌクレアーゼ、及びメガヌクレアーゼからなる群から選択される方法を使用したノックアウトまたはノックダウンからなる群から選択されるDNAベースの方法を使用して起こる。一部の実施形態では、改変は、一過性である(例えば、siRNA法を用いることによるものを含む)。一部の実施形態では、調節は、shRNA、siRNA、miRNA、及びCRISPR干渉(CRISPRi)からなる群から選択されるRNAベースの方法を使用して起こる。一部の実施形態では、CTLA4発現の調節には、低減された転写、減少したmRNA安定性(RNAi機構を用いて等)、及び低減されたタンパク質レベルが含まれるが、これらに限定されない。
【0364】
一部の実施形態では、標的ポリヌクレオチド配列は、CTLA4またはCTLA4のバリアントである。一部の実施形態では、標的ポリヌクレオチド配列は、CTLA4のホモログである。一部の実施形態では、標的ポリヌクレオチド配列は、CTLA4のオルソログである。
【0365】
一部の実施形態では、本明細書に概説される細胞は、CTLA4遺伝子を標的とする遺伝子改変を含む。ある特定の実施形態では、初代T細胞は、CTLA4遺伝子を標的とする遺伝子改変を含む。遺伝子改変は、初代T細胞及びCAR-T細胞を含むT細胞におけるCTLA4ポリヌクレオチド及びCTLA4ポリペプチドの発現を低減し得る。一部の実施形態では、レアカットエンドヌクレアーゼによるCTLA4遺伝子を標的とする遺伝子改変は、Casタンパク質またはCasタンパク質をコードするポリヌクレオチド、及びCTLA4遺伝子を特異的に標的とするための少なくとも1つのガイドリボ核酸(gRNA)配列を含む。CTLA4を標的とするgRNA配列を特定するための有用な方法は、下記に記載される。
【0366】
CTLA4遺伝子が不活性化されているかどうかを試験するためのアッセイは、既知であるとともに、本明細書に記載される。一実施形態では、結果として生じるCTLA4遺伝子の遺伝子改変はPCRによって、CTLA4発現の低減はFACS解析によってアッセイすることができる。別の実施形態では、CTLA4タンパク質発現は、CTLA4タンパク質に対する抗体によりプロービングされる細胞ライセートのウェスタンブロットを使用して検出される。別の実施形態では、逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)を使用して、不活性化する遺伝子改変の存在が確認される。
【0367】
ヒトCTLA4についての有用なゲノム、ポリヌクレオチド、及びポリペプチドの情報は、例えば、GeneCard識別記号GC02P203867、HGNC番号2505、NCBI遺伝子ID 1493、NCBI参照配列番号NM_005214.4、NM_001037631.2、NP_001032720.1及びNP_005205.2、UniProt番号P16410等で提供される。
【0368】
M.PD1
ある特定の態様では、本明細書に開示される技術は、PD1の発現を調節する(例えば、低減または排除する)。一部の実施形態では、調節は、遺伝子編集(例えば、CRISPR/Cas)システムを使用して起こる。一部の実施形態では、改変は、一過性である(例えば、siRNA法を用いることによるものを含む)。一部の実施形態では、調節は、CRISPR、TALEN、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、ホーミングエンドヌクレアーゼ、及びメガヌクレアーゼからなる群から選択される方法を使用したノックアウトまたはノックダウンからなる群から選択されるDNAベースの方法を使用して起こる。一部の実施形態では、改変は、一過性である(例えば、siRNA法を用いることによるものを含む)。一部の実施形態では、調節は、shRNA、siRNA、miRNA、及びCRISPR干渉(CRISPRi)からなる群から選択されるRNAベースの方法を使用して起こる。一部の実施形態では、PD1発現の調節には、低減された転写、減少したmRNA安定性(RNAi機構を用いて等)、及び低減されたタンパク質レベルが含まれるが、これらに限定されない。
【0369】
一部の実施形態では、標的ポリヌクレオチド配列は、PD1またはPD1のバリアントである。一部の実施形態では、標的ポリヌクレオチド配列は、PD1のホモログである。一部の実施形態では、標的ポリヌクレオチド配列は、PD1のオルソログである。
【0370】
一部の実施形態では、本明細書に概説される細胞は、プログラム細胞死タンパク質1(PD1)タンパク質をコードする遺伝子またはPDCD1遺伝子を標的とする遺伝子改変を含む。ある特定の実施形態では、初代T細胞は、PDCD1遺伝子を標的とする遺伝子改変を含む。遺伝子改変は、初代T細胞及びCAR-T細胞を含むT細胞におけるPD1ポリヌクレオチド及びPD1ポリペプチドの発現を低減し得る。一部の実施形態では、レアカットエンドヌクレアーゼによるPDCD1遺伝子を標的とする遺伝子改変は、Casタンパク質またはCasタンパク質をコードするポリヌクレオチド、及びPDCD1遺伝子を特異的に標的とするための少なくとも1つのガイドリボ核酸(gRNA)配列を含む。PD1を標的とするgRNA配列を特定するための有用な方法は、下記に記載される。
【0371】
PDCD1遺伝子が不活性化されているかどうかを試験するためのアッセイは、既知であるとともに、本明細書に記載される。一実施形態では、結果として生じるPDCD1遺伝子の遺伝子改変はPCRによって、PD1発現の低減はFACS解析によってアッセイすることができる。別の実施形態では、PD1タンパク質発現は、PD1タンパク質に対する抗体によりプロービングされる細胞ライセートのウェスタンブロットを使用して検出される。別の実施形態では、逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)を使用して、不活性化する遺伝子改変の存在が確認される。
【0372】
PDCD1遺伝子を含むヒトPD1についての有用なゲノム、ポリヌクレオチド、及びポリペプチドの情報は、例えば、GeneCard識別記号GC02M241849、HGNC番号8760、NCBI遺伝子ID 5133、Uniprot番号Q15116、ならびにNCBI参照配列番号NM_005018.2及びNP_005009.2で提供される。
【0373】
N.追加の寛容原性因子
ある特定の実施形態では、1つまたは複数の寛容原性因子をゲノム編集された細胞に挿入または再挿入して、普遍的ドナー幹細胞、普遍的ドナーT細胞、または普遍的ドナー細胞等の、免疫特権が備わった普遍的ドナー細胞を作出することができる。ある特定の実施形態では、本明細書に開示される低免疫原性細胞は、1つまたは複数の寛容原性因子を発現するようにさらに改変されている。
【0374】
例となる寛容原性因子には、限定されないが、CD47、DUX4、CD24、CD27、CD46、CD55、CD59、CD200、HLA-C、HLA-E、HLA-E重鎖、HLA-G、PD-L1、IDO1、CTLA4-Ig、C1-インヒビター、IL-10、IL-35、IL-39、FasL、CCL21、CCL22、Mfge8、Serpinb9、CD16 Fc受容体、IL15-RF、CD16、CD52、H2-M3、及びCD35が含まれる。一部の実施形態では、寛容原性因子は、CD200、HLA-G、HLA-E、HLA-C、HLA-E重鎖、PD-L1、IDO1、CTLA4-Ig、IL-10、IL-35、FasL、Serpinb9、CCL21、CCL22、及びMfge8からなる群から選択される。一部の実施形態では、寛容原性因子は、DUX4、HLA-C、HLA-E、HLA-F、HLA-G、PD-L1、CTLA-4-Ig、C1-インヒビター、及びIL-35からなる群から選択される。一部の実施形態では、寛容原性因子は、HLA-C、HLA-E、HLA-F、HLA-G、PD-L1、CTLA-4-Ig、C1-インヒビター、及びIL-35からなる群から選択される。
【0375】
一部の事例では、免疫拒絶反応を能動的に阻害するために、CRISPR/Casシステム等の遺伝子編集システムを使用して、AAVS1遺伝子座等のセーフハーバーまたは標的遺伝子座内への寛容原性因子等の、寛容原性因子の挿入が容易にされる。一部の事例では、寛容原性因子は、発現ベクターを使用してセーフハーバーまたは標的遺伝子座内に挿入される。一部の実施形態では、セーフハーバーまたは標的遺伝子座は、AAVS1、CCR5、CLYBL、ROSA26、SHS231、F3(別名、CD142)、MICA、MICB、LRP1(別名、CD91)、HMGB1、ABO、RHD、FUT1、PDGFRa、OLIG2、GFAP、またはKDM5D遺伝子座である。
【0376】
一部の実施形態では、本開示は、細胞のゲノムがCD47を発現するように改変されているゲノムを含む、細胞(例えば、初代細胞及び/または低免疫原性幹細胞及びその派生物)またはその集団を提供する。一部の実施形態では、本開示は、CD47を発現するように細胞のゲノムを変化させるための方法を提供する。ある特定の態様では、少なくとも1つのリボ核酸または少なくとも1対のリボ核酸を利用して、細胞株内へのCD47の挿入を容易にしてもよい。ある特定の実施形態では、少なくとも1つのリボ核酸または少なくとも1対のリボ核酸は、WO2016183041の表29の配列番号200784~231885からなる群から選択され、同文献は参照により本明細書に援用される。一部の実施形態では、初代細胞には、心細胞、心筋前駆細胞、神経細胞、グリア前駆細胞、内皮細胞、膵島細胞、網膜色素上皮細胞、肝細胞、甲状腺細胞、皮膚細胞、血液細胞、形質細胞、血小板、腎細胞、上皮細胞、T細胞、B細胞、またはNK細胞が含まれるが、これらに限定されない。一部の実施形態では、幹細胞には、胚性幹細胞、人工幹細胞、間葉系幹細胞、及び造血幹細胞が含まれるが、これらに限定されない。
【0377】
一部の実施形態では、本開示は、細胞のゲノムがHLA-Cを発現するように改変されているゲノムを含む、細胞(例えば、初代細胞及び/または低免疫原性幹細胞及びその派生物)またはその集団を提供する。一部の実施形態では、本開示は、HLA-Cを発現するように細胞のゲノムを変化させるための方法を提供する。ある特定の態様では、少なくとも1つのリボ核酸または少なくとも1対のリボ核酸を利用して、細胞株内へのHLA-Cの挿入を容易にしてもよい。ある特定の実施形態では、少なくとも1つのリボ核酸または少なくとも1対のリボ核酸は、WO2016183041の表10の配列番号3278~5183からなる群から選択され、同文献は参照により本明細書に援用される。一部の実施形態では、初代細胞には、心細胞、心筋前駆細胞、神経細胞、グリア前駆細胞、内皮細胞、膵島細胞、網膜色素上皮細胞、肝細胞、甲状腺細胞、皮膚細胞、血液細胞、形質細胞、血小板、腎細胞、上皮細胞、T細胞、B細胞、またはNK細胞が含まれるが、これらに限定されない。一部の実施形態では、幹細胞には、胚性幹細胞、人工幹細胞、間葉系幹細胞、及び造血幹細胞が含まれるが、これらに限定されない。
【0378】
一部の実施形態では、本開示は、細胞のゲノムがHLA-Eを発現するように改変されているゲノムを含む、細胞(例えば、初代細胞及び/または低免疫原性幹細胞及びその派生物)またはその集団を提供する。一部の実施形態では、本開示は、HLA-Eを発現するように細胞のゲノムを変化させるための方法を提供する。ある特定の態様では、少なくとも1つのリボ核酸または少なくとも1対のリボ核酸を利用して、細胞株内へのHLA-Eの挿入を容易にしてもよい。ある特定の実施形態では、少なくとも1つのリボ核酸または少なくとも1対のリボ核酸は、WO2016183041の表19の配列番号189859~193183からなる群から選択され、同文献は参照により本明細書に援用される。一部の実施形態では、初代細胞には、心細胞、心筋前駆細胞、神経細胞、グリア前駆細胞、内皮細胞、膵島細胞、網膜色素上皮細胞、肝細胞、甲状腺細胞、皮膚細胞、血液細胞、形質細胞、血小板、腎細胞、上皮細胞、T細胞、B細胞、またはNK細胞が含まれるが、これらに限定されない。一部の実施形態では、幹細胞には、胚性幹細胞、人工幹細胞、間葉系幹細胞、及び造血幹細胞が含まれるが、これらに限定されない。
【0379】
一部の実施形態では、本開示は、細胞のゲノムがHLA-Fを発現するように改変されているゲノムを含む、細胞(例えば、初代細胞及び/または低免疫原性幹細胞及びその派生物)またはその集団を提供する。一部の実施形態では、本開示は、HLA-Fを発現するように細胞のゲノムを変化させるための方法を提供する。ある特定の態様では、少なくとも1つのリボ核酸または少なくとも1対のリボ核酸を利用して、細胞株内へのHLA-Fの挿入を容易にしてもよい。ある特定の実施形態では、少なくとも1つのリボ核酸または少なくとも1対のリボ核酸は、WO2016183041の表45の配列番号688808~399754からなる群から選択され、同文献は参照により本明細書に援用される。一部の実施形態では、初代細胞には、心細胞、心筋前駆細胞、神経細胞、グリア前駆細胞、内皮細胞、膵島細胞、網膜色素上皮細胞、肝細胞、甲状腺細胞、皮膚細胞、血液細胞、形質細胞、血小板、腎細胞、上皮細胞、T細胞、B細胞、またはNK細胞が含まれるが、これらに限定されない。一部の実施形態では、幹細胞には、胚性幹細胞、人工幹細胞、間葉系幹細胞、及び造血幹細胞が含まれるが、これらに限定されない。
【0380】
一部の実施形態では、本開示は、細胞のゲノムがHLA-Gを発現するように改変されているゲノムを含む、細胞(例えば、初代細胞及び/または低免疫原性幹細胞及びその派生物)またはその集団を提供する。一部の実施形態では、本開示は、HLA-Gを発現するように細胞のゲノムを変化させるための方法を提供する。ある特定の態様では、少なくとも1つのリボ核酸または少なくとも1対のリボ核酸を利用して、幹細胞株内へのHLA-Gの挿入を容易にしてもよい。ある特定の実施形態では、少なくとも1つのリボ核酸または少なくとも1対のリボ核酸は、WO2016183041の表18の配列番号188372~189858からなる群から選択され、同文献は参照により本明細書に援用される。一部の実施形態では、初代細胞には、心細胞、心筋前駆細胞、神経細胞、グリア前駆細胞、内皮細胞、膵島細胞、網膜色素上皮細胞、肝細胞、甲状腺細胞、皮膚細胞、血液細胞、形質細胞、血小板、腎細胞、上皮細胞、T細胞、B細胞、またはNK細胞が含まれるが、これらに限定されない。一部の実施形態では、幹細胞には、胚性幹細胞、人工幹細胞、間葉系幹細胞、及び造血幹細胞が含まれるが、これらに限定されない。
【0381】
一部の実施形態では、本開示は、細胞のゲノムがPD-L1を発現するように改変されているゲノムを含む、細胞(例えば、初代細胞及び/または低免疫原性幹細胞及びその派生物)またはその集団を提供する。一部の実施形態では、本開示は、PD-L1を発現するように細胞のゲノムを変化させるための方法を提供する。ある特定の態様では、少なくとも1つのリボ核酸または少なくとも1対のリボ核酸を利用して、幹細胞株内へのPD-L1の挿入を容易にしてもよい。ある特定の実施形態では、少なくとも1つのリボ核酸または少なくとも1対のリボ核酸は、WO2016183041の表21の配列番号193184~200783からなる群から選択され、同文献は参照により本明細書に援用される。一部の実施形態では、初代細胞には、心細胞、心筋前駆細胞、神経細胞、グリア前駆細胞、内皮細胞、膵島細胞、網膜色素上皮細胞、肝細胞、甲状腺細胞、皮膚細胞、血液細胞、形質細胞、血小板、腎細胞、上皮細胞、T細胞、B細胞、またはNK細胞が含まれるが、これらに限定されない。一部の実施形態では、幹細胞には、胚性幹細胞、人工幹細胞、間葉系幹細胞、及び造血幹細胞が含まれるが、これらに限定されない。
【0382】
一部の実施形態では、本開示は、細胞のゲノムがCTLA4-Igを発現するように改変されているゲノムを含む、細胞(例えば、初代細胞及び/または低免疫原性幹細胞及びその派生物)またはその集団を提供する。一部の実施形態では、本開示は、CTLA4-Igを発現するように細胞のゲノムを変化させるための方法を提供する。ある特定の態様では、少なくとも1つのリボ核酸または少なくとも1対のリボ核酸を利用して、幹細胞株内へのCTLA4-Igの挿入を容易にしてもよい。ある特定の実施形態では、少なくとも1つのリボ核酸または少なくとも1対のリボ核酸は、配列表を含めてWO2016183041に開示されるいずれか1つから選択される。
【0383】
一部の実施形態では、本開示は、細胞のゲノムがC1-インヒビターを発現するように改変されているゲノムを含む、細胞(例えば、初代T細胞及び/または低免疫原性幹細胞及びその派生物)またはその集団を提供する。一部の実施形態では、本開示は、C1-インヒビターを発現するように細胞のゲノムを変化させるための方法を提供する。ある特定の態様では、少なくとも1つのリボ核酸または少なくとも1対のリボ核酸を利用して、幹細胞株内へのC1-インヒビターの挿入を容易にしてもよい。ある特定の実施形態では、少なくとも1つのリボ核酸または少なくとも1対のリボ核酸は、配列表を含めてWO2016183041に開示されるいずれか1つから選択される。一部の実施形態では、初代細胞には、心細胞、心筋前駆細胞、神経細胞、グリア前駆細胞、内皮細胞、膵島細胞、網膜色素上皮細胞、肝細胞、甲状腺細胞、皮膚細胞、血液細胞、形質細胞、血小板、腎細胞、上皮細胞、T細胞、B細胞、またはNK細胞が含まれるが、これらに限定されない。一部の実施形態では、幹細胞には、胚性幹細胞、人工幹細胞、間葉系幹細胞、及び造血幹細胞が含まれるが、これらに限定されない。
【0384】
一部の実施形態では、本開示は、細胞のゲノムがIL-35を発現するように改変されているゲノムを含む、細胞(例えば、初代細胞及び/または低免疫原性幹細胞及びその派生物)またはその集団を提供する。一部の実施形態では、本開示は、IL-35を発現するように細胞のゲノムを変化させるための方法を提供する。ある特定の態様では、少なくとも1つのリボ核酸または少なくとも1対のリボ核酸を利用して、幹細胞株内へのIL-35の挿入を容易にしてもよい。ある特定の実施形態では、少なくとも1つのリボ核酸または少なくとも1対のリボ核酸は、配列表を含めてWO2016183041に開示されるいずれか1つから選択される。一部の実施形態では、初代細胞には、心細胞、心筋前駆細胞、神経細胞、グリア前駆細胞、内皮細胞、膵島細胞、網膜色素上皮細胞、肝細胞、甲状腺細胞、皮膚細胞、血液細胞、形質細胞、血小板、腎細胞、上皮細胞、T細胞、B細胞、またはNK細胞が含まれるが、これらに限定されない。一部の実施形態では、幹細胞には、胚性幹細胞、人工幹細胞、間葉系幹細胞、及び造血幹細胞が含まれるが、これらに限定されない。
【0385】
一部の実施形態では、寛容原性因子は、発現ベクターを使用して細胞において発現される。例えば、細胞においてCD47を発現させるための発現ベクターは、CD47をコードするポリヌクレオチド配列を含む。発現ベクターは、誘導性発現ベクターであり得る。発現ベクターは、限定されないがレンチウイルスベクター等のウイルスベクターであり得る。
【0386】
一部の実施形態では、本開示は、細胞のゲノムが、HLA-A、HLA-B、HLA-C、RFX-ANK、CIITA、NFY-A、NLRC5、B2M、RFX5、RFX-AP、HLA-G、HLA-E、NFY-B、PD-L1、NFY-C、IRF1、TAP1、GITR、4-1BB、CD28、B7-1、CD47、B7-2、OX40、CD27、HVEM、SLAM、CD226、ICOS、LAG3、TIGIT、TIM3、CD160、BTLA、CD244、LFA-1、ST2、HLA-F、CD30、B7-H3、VISTA、TLT、PD-L2、CD58、CD2、HELIOS、及びIDO1からなる群から選択されるポリペプチドのうちのいずれか1つを発現するように改変されたゲノムを含む、細胞(例えば、初代細胞及び/または低免疫原性幹細胞及びその派生物)またはその集団を提供する。一部の実施形態では、本開示は、HLA-A、HLA-B、HLA-C、RFX-ANK、CIITA、NFY-A、NLRC5、B2M、RFX5、RFX-AP、HLA-G、HLA-E、NFY-B、PD-L1、NFY-C、IRF1、TAP1、GITR、4-1BB、CD28、B7-1、CD47、B7-2、OX40、CD27、HVEM、SLAM、CD226、ICOS、LAG3、TIGIT、TIM3、CD160、BTLA、CD244、LFA-1、ST2、HLA-F、CD30、B7-H3、VISTA、TLT、PD-L2、CD58、CD2、HELIOS、及びIDO1からなる群から選択されるポリペプチドのうちのいずれか1つを発現するように細胞のゲノムを変化させるための方法を提供する。ある特定の態様では、少なくとも1つのリボ核酸または少なくとも1対のリボ核酸を利用して、幹細胞株内への選択されたポリペプチドの挿入を容易にしてもよい。ある特定の実施形態では、少なくとも1つのリボ核酸または少なくとも1対のリボ核酸は、WO2016183041の付録1~47及び配列表に開示されるいずれか1つから選択され、同文献の開示は参照により本明細書に援用される。
【0387】
一部の実施形態では、好適な遺伝子編集システム(例えば、CRISPR/Casシステム、または本明細書に記載の遺伝子編集システムのうちのいずれか)を使用して、低免疫原性細胞のゲノム遺伝子座内への、寛容原性因子をコードするポリヌクレオチドの挿入が容易にされる。場合によっては、寛容原性因子をコードするポリヌクレオチドは、限定されないが、AAVS1、CCR5、CLYBL、ROSA26、SHS231、F3(別名、CD142)、MICA、MICB、LRP1(別名、CD91)、HMGB1、ABO、RHD、FUT1、PDGFRa、OLIG2、GFAP、またはKDM5D遺伝子座等のセーフハーバーまたは標的遺伝子座内に挿入される。一部の実施形態では、寛容原性因子をコードするポリヌクレオチドは、B2M遺伝子座、CIITA遺伝子座、TRAC遺伝子座、またはTRB遺伝子座内に挿入される。一部の実施形態では、寛容原性因子をコードするポリヌクレオチドは、本明細書で提供される表4に示される遺伝子座のうちのいずれか1つに挿入される。ある特定の実施形態では、寛容原性因子をコードするポリヌクレオチドは、プロモーターに作動可能に連結されている。
【0388】
O.遺伝子改変の方法
一部の実施形態では、レアカットエンドヌクレアーゼは、レアカットエンドヌクレアーゼをコードする核酸の形態で、標的ポリヌクレオチド配列を含有する細胞に導入される。核酸を細胞に導入するプロセスは、任意の好適な技法によって達成され得る。好適な技法には、リン酸カルシウムまたは脂質媒介性トランスフェクション、エレクトロポレーション、及びウイルスベクターを使用した形質導入または感染が含まれる。一部の実施形態では、核酸は、DNAを含む。一部の実施形態では、核酸は、本明細書に記載されるような改変DNAを含む。一部の実施形態では、核酸は、mRNAを含む。一部の実施形態では、核酸は、本明細書に記載されるような改変mRNA(例えば、合成の改変mRNA)を含む。
【0389】
本明細書に記載の標的ポリヌクレオチド配列は、本開示の遺伝子編集システム(例えば、CRISPR/Cas)を利用して、当業者に利用可能である任意の様態で変化させてもよい。細胞内の標的ポリヌクレオチド配列を変化させることができる任意のCRISPR/Casシステムが使用され得る。かかるCRISPR-Casシステムは、様々なCasタンパク質を用いることができる(Haft et al.PLoS Comput Biol.2005;1(6)e60)。CRISPR/Casシステムが細胞内の標的ポリヌクレオチド配列を変化させることを可能にするかかるCasタンパク質の分子機構には、RNA結合タンパク質、エンドヌクレアーゼ及びエキソヌクレアーゼ、ヘリカーゼ、ならびにポリメラーゼが含まれる。一部の実施形態では、CRISPR/Casシステムは、I型CRISPRシステムである。一部の実施形態では、CRISPR/Casシステムは、II型CRISPRシステムである。一部の実施形態では、CRISPR/Casシステムは、V型CRISPRシステムである。
【0390】
本明細書に開示される遺伝子編集(例えば、CRISPR/Cas)システムを使用して、細胞内の任意の標的ポリヌクレオチド配列を変化させることができる。当業者であれば、任意の特定の細胞において変化させるのに望ましい標的ポリヌクレオチド配列は、ゲノム配列の発現が障害に関連するかまたはさもなければ細胞内への病原体の進入を容易にする、任意のゲノム配列に対応してもよいことを容易に理解しよう。例えば、細胞において変化させるのに望ましい標的ポリヌクレオチド配列は、疾患に関連する単一ポリヌクレオチド多型を含有するゲノム配列に対応するポリヌクレオチド配列であってもよい。かかる例では、本明細書に開示されるCRISPR/Casシステムを使用して、細胞において疾患に関連するSNPを、それを野生型アレルと置き換えることによって補正することができる。別の例では、細胞内への病原体の進入または増殖の原因となる標的遺伝子のポリヌクレオチド配列が、標的遺伝子の機能を破壊して、病原体が該細胞に進入するかまたは該細胞の内部で増殖することを阻止するための好適な欠失または挿入の標的であり得る。
【0391】
一部の実施形態では、標的ポリヌクレオチド配列は、ゲノム配列である。一部の実施形態では、標的ポリヌクレオチド配列は、ヒトゲノム配列である。一部の実施形態では、標的ポリヌクレオチド配列は、哺乳類ゲノム配列である。一部の実施形態では、標的ポリヌクレオチド配列は、脊椎動物ゲノム配列である。
【0392】
一部の実施形態では、本明細書で提供されるCRISPR/Casシステムは、Casタンパク質、及びCasタンパク質を標的ポリヌクレオチド配列の標的モチーフに導くとともにそれにハイブリダイズすることができる少なくとも1~2つのリボ核酸を含む。本明細書で使用されるとき、「タンパク質」及び「ポリペプチド」とは、ペプチド結合によって接合された一続きのアミノ酸残基(すなわち、アミノ酸のポリマー)を指して互換的に使用され、修飾されたアミノ酸(例えば、リン酸化、糖化、グリコシル化等)及びアミノ酸類似体を含む。例となるポリペプチドまたはタンパク質には、遺伝子産物、天然型タンパク質、ホモログ、パラログ、断片、ならびに上記のものの他の同等物、バリアント、及び類似体が含まれる。
【0393】
一部の実施形態では、Casタンパク質は、1つまたは複数のアミノ酸置換または改変を含む。一部の実施形態では、1つまたは複数のアミノ酸置換は、保存的アミノ酸置換を含む。一部の事例では、置換及び/または改変は、細胞においてタンパク質分解を阻止もしくは低減する、及び/またはポリペプチドの半減期を延長することができる。一部の実施形態では、Casタンパク質は、ペプチド結合の置き換え(例えば、尿素、チオ尿素、カルバメート、スルホニル尿素等)を含み得る。一部の実施形態では、Casタンパク質は、天然型アミノ酸を含み得る。一部の実施形態では、Casタンパク質は、代替のアミノ酸(例えば、D-アミノ酸、ベータ-アミノ酸、ホモシステイン、ホスホセリン等)を含み得る。一部の実施形態では、Casタンパク質は、部分構造(例えば、PEG化、グリコシル化、脂質化、アセチル化、エンドキャッピング等)を含めるような修飾を含み得る。
【0394】
一部の実施形態では、Casタンパク質は、コアCasタンパク質、そのアイソフォーム、または任意のCasタンパク質もしくはそのアイソフォームの類似の機能または活性を有する任意のCas様タンパク質を含む。例となるCasコアタンパク質には、Cas1、Cas2、Cas3、Cas4、Cas5、Cas6、Cas7、Cas8、及びCas9が含まれるが、これらに限定されない。一部の実施形態では、Casタンパク質は、E.coliサブタイプのCasタンパク質(別名、CASS2)を含む。E.Coliサブタイプの例となるCasタンパク質には、Cse1、Cse2、Cse3、Cse4、及びCas5eが含まれるが、これらに限定されない。一部の実施形態では、Casタンパク質は、YpestサブタイプのCasタンパク質(別名、CASS3)を含む。Ypestサブタイプの例となるCasタンパク質には、Csy1、Csy2、Csy3、及びCsy4が含まれるが、これらに限定されない。一部の実施形態では、Casタンパク質は、NmeniサブタイプのCasタンパク質(別名、CASS4)を含む。Nmeniサブタイプの例となるCasタンパク質には、Csn1及びCsn2が含まれるが、これらに限定されない。一部の実施形態では、Casタンパク質は、DvulgサブタイプのCasタンパク質(別名、CASS1)を含む。Dvulgサブタイプの例となるCasタンパク質には、Csd1、Csd2、及びCas5dが含まれる。一部の実施形態では、Casタンパク質は、TneapサブタイプのCasタンパク質(別名、CASS7)を含む。Tneapサブタイプの例となるCasタンパク質には、Cst1、Cst2、Cas5tが含まれるが、これらに限定されない。一部の実施形態では、Casタンパク質は、HmariサブタイプのCasタンパク質を含む。Hmariサブタイプの例となるCasタンパク質には、Csh1、Csh2、及びCas5hが含まれるが、これらに限定されない。一部の実施形態では、Casタンパク質は、ApernサブタイプのCasタンパク質(別名、CASS5)を含む。Apernサブタイプの例となるCasタンパク質には、Csa1、Csa2、Csa3、Csa4、Csa5、及びCas5aが含まれるが、これらに限定されない。一部の実施形態では、Casタンパク質は、MtubeサブタイプのCasタンパク質(別名、CASS6)を含む。Mtubeサブタイプの例となるCasタンパク質には、Csm1、Csm2、Csm3、Csm4、及びCsm5が含まれるが、これらに限定されない。一部の実施形態では、Casタンパク質は、RAMPモジュールCasタンパク質を含む。例となるRAMPモジュールCasタンパク質には、Cmr1、Cmr2、Cmr3、Cmr4、Cmr5、及びCmr6が含まれるが、これらに限定されない。例えば、Klompe et al.,Nature 571,219-225(2019)、Strecker et al.,Science 365,48-53(2019)を参照されたい。一部の実施形態では、Casタンパク質は、I型サブタイプのCasタンパク質を含む。I型CRISPR/Casエフェクタータンパク質は、クラス1 CRISPR/Casエフェクタータンパク質のサブタイプである。例としては、Cas3、Cas8a、Cas5、Cas8b、Cas8c、Cas10d、Cse1、Cse2、Csy1、Csy2、Csy3、及び/またはGSU0054が挙げられるが、これらに限定されない。一部の実施形態では、Casタンパク質は、Cas3、Cas8a、Cas5、Cas8b、Cas8c、Cas10d、Cse1、Cse2、Csy1、Csy2、Csy3、及び/またはGSU0054を含む。一部の実施形態では、Casタンパク質は、II型サブタイプのCasタンパク質を含む。II型CRISPR/Casエフェクタータンパク質は、クラス2 CRISPR/Casエフェクタータンパク質のサブタイプである。例としては、Cas9、Csn2、及び/またはCas4が挙げられるが、これらに限定されない。一部の実施形態では、Casタンパク質は、Cas9、Csn2、及び/またはCas4を含む。一部の実施形態では、Casタンパク質は、III型サブタイプのCasタンパク質を含む。III型CRISPR/Casエフェクタータンパク質は、クラス1 CRISPR/Casエフェクタータンパク質のサブタイプである。例としては、Cas10、Csm2、Cmr5、Cas10、Csx11、及び/またはCsx10が挙げられるが、これらに限定されない。一部の実施形態では、Casタンパク質は、Cas10、Csm2、Cmr5、Cas10、Csx11、及び/またはCsx10を含む。一部の実施形態では、Casタンパク質は、IV型サブタイプのCasタンパク質を含む。IV型CRISPR/Casエフェクタータンパク質は、クラス1 CRISPR/Casエフェクタータンパク質のサブタイプである。例としては、Csf1が挙げられるが、これらに限定されない。一部の実施形態では、Casタンパク質は、Csf1を含む。一部の実施形態では、Casタンパク質は、V型サブタイプのCasタンパク質を含む。V型CRISPR/Casエフェクタータンパク質は、クラス2 CRISPR/Casエフェクタータンパク質のサブタイプである。V型CRISPR/Casシステム及びそれらのエフェクタータンパク質(例えば、Cas12a等のCas12ファミリータンパク質)の例については、例えば、Shmakov et al.,Nat Rev Microbiol.2017;15(3):169-182:“Diversity and evolution of class 2 CRISPR-Cas systems.”を参照されたい。例としては、Cas12ファミリー(Cas12a、Cas12b、Cas12c)、C2c4、C2c8、C2c5、C2c10、及びC2c9、ならびにCasX(Cas12e)及びCasY(Cas12d)が挙げられるが、これらに限定されない。また、例えば、Koonin et al.,Curr Opin Microbiol.2017;37:67-78:“Diversity,classification and evolution of CRISPR-Cas systems.”も参照されたい。一部の実施形態では、Casタンパク質は、Cas12a、Cas12b、Cas12c、Cas12d、及び/またはCas12e等のCas12タンパク質を含む。
【0395】
一部の実施形態では、Casタンパク質は、本明細書に記載のCasタンパク質のうちのいずれか1つまたはその機能的部分を含む。本明細書で使用されるとき、「機能的部分」とは、少なくとも1つのリボ核酸(例えば、ガイドRNA(gRNA))と複合体化して、標的ポリヌクレオチド配列を切断するその能力を保持するペプチドの一部分を指す。一部の実施形態では、機能的部分は、DNA結合ドメイン、少なくとも1つのRNA結合ドメイン、ヘリカーゼドメイン、及びエンドヌクレアーゼドメインからなる群から選択される、作動可能に連結されたCas9タンパク質の機能的ドメインの組み合わせを含む。一部の実施形態では、機能的部分は、DNA結合ドメイン、少なくとも1つのRNA結合ドメイン、ヘリカーゼドメイン、及びエンドヌクレアーゼドメインからなる群から選択される、作動可能に連結されたCas12a(別名、Cpf1)タンパク質の機能的ドメインの組み合わせを含む。一部の実施形態では、機能的ドメインは、複合体を形成する。一部の実施形態では、Cas9タンパク質の機能的部分は、RuvC様ドメインの機能的部分を含む。一部の実施形態では、Cas9タンパク質の機能的部分は、HNHヌクレアーゼドメインの機能的部分を含む。一部の実施形態では、Cas12aタンパク質の機能的部分は、RuvC様ドメインの機能的部分を含む。
【0396】
一部の実施形態では、外因性Casタンパク質は、ポリペプチド形態で細胞に導入され得る。ある特定の実施形態では、Casタンパク質は、細胞透過ポリペプチドまたは細胞透過ペプチドにコンジュゲートまたは融合され得る。本明細書で使用されるとき、「細胞透過ポリペプチド」及び「細胞透過ペプチド」とは、細胞内への分子の取り込みを容易にするポリペプチドまたはペプチドをそれぞれ指す。細胞透過ポリペプチドは、検出可能な標識を含有し得る。
【0397】
ある特定の実施形態では、Casタンパク質は、荷電タンパク質(例えば、正電荷、負電荷、または全体的に中性の電荷を保有する)にコンジュゲートまたは融合され得る。かかる連結は、共有結合性であり得る。一部の実施形態では、Casタンパク質は、Casタンパク質が細胞を透過する能力を顕著に増加させるために、超陽性荷電したGFPに融合され得る(Cronican et al.ACS Chem Biol.2010;5(8):747-52)。ある特定の実施形態では、Casタンパク質は、細胞内へのその進入を容易にするためにタンパク質形質導入ドメイン(PTD)に融合され得る。例となるPTDには、Tat、オリゴアルギニン、及びペネトラチンが含まれる。一部の実施形態では、Cas9タンパク質は、細胞透過ペプチドに融合されたCas9ポリペプチドを含む。一部の実施形態では、Cas9タンパク質は、PTDに融合されたCas9ポリペプチドを含む。一部の実施形態では、Cas9タンパク質は、tatドメインに融合されたCas9ポリペプチドを含む。一部の実施形態では、Cas9タンパク質は、オリゴアルギニンドメインに融合されたCas9ポリペプチドを含む。一部の実施形態では、Cas9タンパク質は、ペネトラチンドメインに融合されたCas9ポリペプチドを含む。一部の実施形態では、Cas9タンパク質は、超陽性荷電したGFPに融合されたCas9ポリペプチドを含む。一部の実施形態では、Cas12aタンパク質は、細胞透過ペプチドに融合されたCas12aポリペプチドを含む。一部の実施形態では、Cas12aタンパク質は、PTDに融合されたCas12aポリペプチドを含む。一部の実施形態では、Cas12aタンパク質は、tatドメインに融合されたCas12aポリペプチドを含む。一部の実施形態では、Cas12aタンパク質は、オリゴアルギニンドメインに融合されたCas12aポリペプチドを含む。一部の実施形態では、Cas12aタンパク質は、ペネトラチンドメインに融合されたCas12aポリペプチドを含む。一部の実施形態では、Cas12aタンパク質は、超陽性荷電したGFPに融合されたCas12aポリペプチドを含む。
【0398】
一部の実施形態では、Casタンパク質は、Casタンパク質をコードする核酸の形態で、標的ポリヌクレオチド配列を含有する細胞に導入され得る。核酸を細胞に導入するプロセスは、任意の好適な技法によって達成され得る。好適な技法には、リン酸カルシウムまたは脂質媒介性トランスフェクション、エレクトロポレーション、及びウイルスベクターを使用した形質導入または感染が含まれる。一部の実施形態では、核酸は、DNAを含む。一部の実施形態では、核酸は、本明細書に記載されるような改変DNAを含む。一部の実施形態では、核酸は、mRNAを含む。一部の実施形態では、核酸は、本明細書に記載されるような改変mRNA(例えば、合成の改変mRNA)を含む。
【0399】
一部の実施形態では、Casタンパク質は、1~2つのリボ核酸と複合体化される。一部の実施形態では、Casタンパク質は、2つのリボ核酸と複合体化される。一部の実施形態では、Casタンパク質は、1つのリボ核酸と複合体化される。一部の実施形態では、Casタンパク質は、本明細書に記載されるような改変核酸(例えば、合成の改変mRNA)によってコードされる。
【0400】
本明細書に開示される方法は、Casタンパク質を標的ポリヌクレオチド配列の標的モチーフに導くとともにそれにハイブリダイズすることができる、任意のリボ核酸の使用を企図する。一部の実施形態では、リボ核酸のうちの少なくとも1つは、tracrRNAを含む。一部の実施形態では、リボ核酸のうちの少なくとも1つは、CRISPR RNA(crRNA)を含む。一部の実施形態では、単一のリボ核酸が、Casタンパク質を細胞内の標的ポリヌクレオチド配列の標的モチーフに導くとともにそれにハイブリダイズするガイドRNAを含む。一部の実施形態では、リボ核酸のうちの少なくとも1つは、Casタンパク質を細胞内の標的ポリヌクレオチド配列の標的モチーフに導くとともにそれにハイブリダイズするガイドRNAを含む。一部の実施形態では、1~2つのリボ核酸の両方が、Casタンパク質を細胞内の標的ポリヌクレオチド配列の標的モチーフに導くとともにそれにハイブリダイズするガイドRNAを含む。当業者には理解されようが、本明細書で提供されるリボ核酸は、用いられる特定のCRISPR/Casシステムに応じて様々な異なる標的モチーフにハイブリダイズし、標的ポリヌクレオチドの配列にハイブリダイズするように選択され得る。1~2つのリボ核酸はまた、標的ポリヌクレオチド配列以外の核酸配列とのハイブリダイゼーションを最小限に抑えるようにも選択され得る。一部の実施形態では、1~2つのリボ核酸は、細胞における全ての他のゲノムヌクレオチド配列と比較したときに少なくとも2つのミスマッチを含有する標的モチーフにハイブリダイズする。一部の実施形態では、1~2つのリボ核酸は、細胞における全ての他のゲノムヌクレオチド配列と比較したときに少なくとも1つのミスマッチを含有する標的モチーフにハイブリダイズする。一部の実施形態では、1~2つのリボ核酸は、Casタンパク質によって認識されるデオキシリボ核酸モチーフに直接隣接する標的モチーフにハイブリダイズするように設計される。一部の実施形態では、1~2つのリボ核酸の各々が、標的モチーフ間に位置する変異アレルの両側に位置する、Casタンパク質によって認識されるデオキシリボ核酸モチーフに直接隣接する標的モチーフにハイブリダイズするように設計される。
【0401】
一部の実施形態では、1~2つのリボ核酸の各々が、Casタンパク質を細胞内の標的ポリヌクレオチド配列の標的モチーフに導くとともにそれにハイブリダイズするガイドRNAを含む。
【0402】
一部の実施形態では、1つまたは2つのリボ核酸(例えば、ガイドRNA)は、標的ポリヌクレオチド配列の同じ鎖上の配列に相補的であり、及び/またはそれにハイブリダイズする。一部の実施形態では、1つまたは2つのリボ核酸(例えば、ガイドRNA)は、標的ポリヌクレオチド配列の反対の鎖上の配列に相補的であり、及び/またはそれにハイブリダイズする。一部の実施形態では、1つまたは2つのリボ核酸(例えば、ガイドRNA)は、標的ポリヌクレオチド配列の反対の鎖上の配列には相補的でなく、及び/またはそれにはハイブリダイズしない。一部の実施形態では、1つまたは2つのリボ核酸(例えば、ガイドRNA)は、標的ポリヌクレオチド配列の重複する標的モチーフに相補的であり、及び/またはそれにハイブリダイズする。一部の実施形態では、1つまたは2つのリボ核酸(例えば、ガイドRNA)は、標的ポリヌクレオチド配列のオフセット標的モチーフに相補的であり、及び/またはそれにハイブリダイズする。
【0403】
一部の実施形態では、Casタンパク質をコードする核酸及び少なくとも1~2つのリボ核酸をコードする核酸は、ウイルス形質導入(例えば、レンチウイルス形質導入)を介して細胞に導入される。一部の実施形態では、Casタンパク質は、1~2つのリボ核酸と複合体化される。一部の実施形態では、Casタンパク質は、2つのリボ核酸と複合体化される。一部の実施形態では、Casタンパク質は、1つのリボ核酸と複合体化される。一部の実施形態では、Casタンパク質は、本明細書に記載されるような改変核酸(例えば、合成の改変mRNA)によってコードされる。
【0404】
本明細書に記載の遺伝子のCRISPR/Casベースの標的化に有用な例となるgRNA配列が、表2で提供される。これらの配列は、2016年5月9日に出願されたWO2016183041に見出すことができ、表、付録、及び配列表を含めたこの開示は、参照によりその全体が本明細書に援用される。
【0405】
【表2】
【0406】
本明細書に記載される遺伝子のCRISPR/Casベースの標的化に有用な他の例となるgRNA配列は、2021年5月19日に出願された米国仮特許出願第63/190,685号、及び2021年7月14日に出願された米国仮特許出願第63/221,887号で提供され、表、付録、及び配列表を含めた同文献の開示は、参照によりそれらの全体が本明細書に援用される。
【0407】
一部の実施形態では、本明細書に記載の細胞は、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)手法を使用して作製される。「TALE-ヌクレアーゼ」(TALEN)とは、転写活性化因子様エフェクター(TALE)に典型的に由来する核酸結合ドメイン及び核酸標的配列を切断するための1つのヌクレアーゼ触媒ドメインからなる融合タンパク質を意図する。触媒ドメインは、好ましくはヌクレアーゼドメイン、より好ましくは、例えば、I-TevI、ColE7、NucA、及びFok-Iのような、エンドヌクレアーゼ活性を有するドメインである。特定の実施形態では、TALEドメインは、例えば、I-CreI及びI-Onulまたはそれらの機能的バリアントのような、メガヌクレアーゼに融合され得る。より好ましい実施形態では、該ヌクレアーゼは、モノマーTALE-ヌクレアーゼである。モノマーTALE-ヌクレアーゼは、WO2012138927に記載される操作されたTALリピートとI-TevIの触媒ドメインとの融合体等の、特異的認識及び切断のために二量体化を必要としないTALE-ヌクレアーゼである。転写活性化因子様エフェクター(TALE)は、細菌種Xanthomonas由来のタンパク質であり、複数のリピートを含み、各リピートが、12位及び13位において核酸標的配列の各ヌクレオチド塩基に特異的である二残基(RVD)を含む。類似のモジュール式塩基対塩基核酸結合特性(modular base-per-base nucleic acid binding properties)を有する結合ドメイン(MBBBD)もまた、出願人によって最近発見された異なる細菌種における新たなモジュール式タンパク質に由来し得る。この新たなモジュール式タンパク質は、TALリピートよりも大きな配列可変性を示すという利点を有する。好ましくは、異なるヌクレオチドの認識に関連するRVDは、Cを認識するためのHD、Tを認識するためのNG、Aを認識するためのNI、GまたはAを認識するためのNN、A、C、G、またはTを認識するためのNS、Tを認識するためのHG、Tを認識するためのIG、Gを認識するためのNK、Cを認識するためのHA、Cを認識するためのND、Cを認識するためのHI、Gを認識するためのHN、Gを認識するためのNA、GまたはAを認識するためのSN及びTを認識するためのYG、Aを認識するためのTL、AまたはGを認識するためのVT、ならびにAを認識するためのSWである。別の実施形態では、アミノ酸12及び13は、ヌクレオチドA、T、C、及びGに対するそれらの特異性を調節するため、ならびに特にこの特異性を強化するために、他のアミノ酸残基に向けて変異させることができる。TALENキットは、市販されている。
【0408】
一部の実施形態では、該細胞は、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)を使用して操作される。「ジンクフィンガー結合タンパク質」とは、亜鉛イオンの配位によるタンパク質構造の安定化の結果として、好ましくは配列特異的様態で、DNA、RNA、及び/またはタンパク質に結合するタンパク質またはポリペプチドである。ジンクフィンガー結合タンパク質という用語は、ジンクフィンガータンパク質またはZFPと略称される場合が多い。個々のDNA結合ドメインは、典型的には、「フィンガー」と称される。ZFPは、少なくとも1つのフィンガー、典型的には2つのフィンガー、3つのフィンガー、または6つのフィンガーを有する。各フィンガーは、DNAの2~4つの塩基対、典型的にはDNAの3または4つの塩基対に結合する。ZFPは、標的部位または標的セグメントと呼ばれる核酸配列に結合する。各フィンガーは、典型的には、およそ30アミノ酸の亜鉛キレート化DNA結合サブドメインを含む。このクラスの単一のジンクフィンガーは、単一のベータターンの2つのシステイン残基とともに亜鉛と配位結合した2つの不変のヒスチジン残基を含むアルファヘリックスからなることが、研究により実証されている(例えば、Berg & Shi,Science 271:1081-1085(1996)を参照されたい)。
【0409】
一部の実施形態では、本明細書に記載の細胞は、ホーミングエンドヌクレアーゼを使用して作製される。かかるホーミングエンドヌクレアーゼは、当該技術分野で周知である(Stoddard 2005)。ホーミングエンドヌクレアーゼは、DNA標的配列を認識し、一本鎖または二本鎖切断を生じさせる。ホーミングエンドヌクレアーゼは、高度に特異的であり、長さ12~45塩基対(bp)の範囲、通常は長さ14~40bpの範囲のDNA標的部位を認識する。ホーミングエンドヌクレアーゼは、例えば、LAGLIDADGエンドヌクレアーゼ、HNHエンドヌクレアーゼ、またはGIY-YIGエンドヌクレアーゼに対応し得る。一部の実施形態では、ホーミングエンドヌクレアーゼは、I-CreIバリアントであり得る。
【0410】
一部の実施形態では、本明細書に記載の細胞は、メガヌクレアーゼを使用して作製される。メガヌクレアーゼは、定義上、大きな配列を認識する配列特異的エンドヌクレアーゼである(Chevalier,B.S.and B.L.Stoddard,Nucleic Acids Res.,2001,29,3757-3774)。それらは、生細胞において固有の部位を切断し、それによって切断部位の近傍で遺伝子の標的化を1000倍以上強化することができる(Puchta et al.,Nucleic Acids Res.,1993,21,5034-5040、Rouet et al.,Mol.Cell.Biol.,1994,14,8096-8106、Choulika et al.,Mol.Cell.Biol.,1995,15,1968-1973、Puchta et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,1996,93,5055-5060、Sargent et al.,Mol.Cell.Biol.,1997,17,267-77、Donoho et al.,Mol.Cell.Biol,1998,18,4070-4078、Elliott et al.,Mol.Cell.Biol.,1998,18,93-101、Cohen-Tannoudji et al.,Mol.Cell.Biol.,1998,18,1444-1448)。
【0411】
一部の実施形態では、本明細書で提供される細胞は、寛容原性因子等のポリペプチドの発現をノックダウンする(例えば、減少させる、排除する、または阻害する)ためのRNAサイレンシングまたはRNA干渉(RNAi、別称siRNA)を使用して作製される。有用なRNAi法は、合成RNAi分子、低分子干渉RNA(siRNA)、PIWI相互作用NRA(piRNA)、低分子ヘアピン型RNA(shRNA)、マイクロRNA(miRNA)、及び当業者に認識される他の一過性ノックダウン法を利用するものを含む。配列特異的shRNA、siRNA、miRNA等を含めたRNAiのための試薬は、市販されている。例えば、多能性幹細胞において、細胞にCIITA siRNAを導入するかまたはCIITA shRNA発現ウイルスを形質導入することによって、CIITAをノックダウンすることができる。一部の実施形態では、RNA干渉を用いて、CIITA、B2M、及びNLRC5からなる群から選択される少なくとも1つの発現が低減または阻害される。
【0412】
1.遺伝子編集システム
一部の実施形態では、1つまたは複数の遺伝子をノックアウト、ノックダウン、または別様に改変するように細胞を遺伝子改変するための方法は、当該技術分野で既知の、例えば、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、メガヌクレアーゼ、トランスポザーゼ、及び規則的な間隔をもってクラスター化された短鎖反復回文配列(CRISPR)/Casシステムを含めた部位特異的ヌクレアーゼ、ならびにニッカーゼシステム、塩基編集システム、プライム編集システム、及び遺伝子ライティングシステムを使用することを含む。
【0413】
a)ZFN
ZFNは、細菌FokI制限酵素のエンドヌクレアーゼドメインに結合したジンクフィンガー含有転写因子から適応された数々の部位特異的DNA結合ドメインを含む融合タンパク質である。ZFNは、1つまたは複数(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個、またはそれよりも多く)のDNA結合ドメインまたはジンクフィンガードメインを有してもよい。例えば、Carroll et al.,Genetics Society of America(2011)188:773-782、Kim et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1996)93:1156-1160を参照されたい。各ジンクフィンガードメインは、1つまたは複数の亜鉛イオンによって安定化された小さなタンパク質の構造モチーフであり、通常、3~4bpのDNA配列を認識する。タンデムドメインは、故に、細胞のゲノム内で固有である長いヌクレオチド配列に結合する可能性があり得る。
【0414】
特異性が知られている種々のジンクフィンガーを組み合わせて、約6、9、12、15、または18bpの配列を認識するマルチフィンガーポリペプチドを生み出すことができる。ファジーディスプレイ、酵母ワンハイブリッドシステム、細菌ワンハイブリッド及びツーハイブリッドシステム、ならびに哺乳類細胞を含む、特定の配列を認識するジンクフィンガー(及びそれらの組み合わせ)を生成するための種々の選択及びモジュール式組立て技法が利用可能である。ジンクフィンガーは、既定の核酸配列に結合するように操作され得る。既定の核酸配列に結合するようにジンクフィンガーを操作するための基準は、当該技術分野で既知である。例えば、Sera et al.,Biochemistry(2002)41:7074-7081、Liu et al.,Bioinformatics(2008)24:1850-1857を参照されたい。
【0415】
FokIヌクレアーゼドメインまたは他の二量体ヌクレアーゼドメインを含有するZFNは、二量体として機能する。故に、非回文型DNA部位を標的とするためにZFNの対が必要とされる。2つの個々のZFNは、それらのヌクレアーゼが適切に離間した状態でDNAのそれぞれ反対の鎖に結合しなければならない。Bitinaite et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1998)95:10570-10575を参照されたい。ゲノム内の特定の部位を切断するために、ZFNの対は、一方が順方向鎖上、他方が逆方向鎖上で、当該部位の両側に位置する2つの配列を認識するように設計される。ZFNが当該部位のそれぞれの側で結合すると、ヌクレアーゼドメインは二量体化し、当該部位にてDNAを切断して、5’オーバーハングを伴うDSBを生じさせる。次いでHDRを使用して、相同性アームが両側に位置する所望の変異を含有する修復鋳型の一助により、特定の変異を誘導することができる。修復鋳型は通常、細胞に導入される外因性二本鎖DNAベクターである。Miller et al.,Nat.Biotechnol.(2011)29:143-148、Hockemeyer et al.,Nat.Biotechnol.(2011)29:731-734を参照されたい。
【0416】
b)TALEN
TALENは、標的遺伝子を編集するために使用され得る人工ヌクレアーゼの別の例である。TALENは、長いDNA配列に結合し、それを認識する10~30個のリピートを有するタンデムアレイを通常含む、TALEリピートと呼ばれるDNA結合ドメインに由来する。各リピートは、33~35アミノ酸長であり、このうち2つの隣接するアミノ酸(反復可変性二残基(repeat-variable di-residue)またはRVDと呼ばれる)が4つのDNA塩基対のうちの1つに対する特異性を付与する。故に、標的DNA配列においてリピートと塩基対との間に1対1の対応関係が存在する。
【0417】
TALENは、1つまたは複数のTALE DNA結合ドメイン(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個、またはそれよりも多く)をヌクレアーゼドメイン、例えば、FokIエンドヌクレアーゼドメインに融合することによって人工的に生産される。Zhang,Nature Biotech.(2011)29:149-153を参照されたい。TALENにおける使用に向けてFokIに対するいくつかの変異が作製されており、これらは、例えば、切断特異性または活性を改善する。Cermak et al.,Nucl.Acids Res.(2011)39:e82、Miller et al.,Nature Biotech.(2011)29:143-148、Hockemeyer et al.,Nature Biotech.(2011)29:731-734、Wood et al.,Science(2011)333:307、Doyon et al.,Nature Methods(2010)8:74-79、Szczepek et al.,Nature Biotech(2007)25:786-793、Guo et al.,J.Mol.Biol.(2010)200:96を参照されたい。FokIドメインは二量体として機能するため、適切な向き及び間隔での、標的ゲノム内の部位に対する固有のDNA結合ドメインを有する2つの構築物を必要とする。TALE DNA結合ドメインとFokIヌクレアーゼドメインとの間のアミノ酸残基の数、及び2つの個々のTALEN結合部位の間の塩基の数の両方が、高レベルの活性を達成するために重要なパラメータであるようである。Miller et al.,Nature Biotech.(2011)29:143-148。
【0418】
操作されたTALEリピートをヌクレアーゼドメインと組み合わせることによって、任意の所望のDNA配列に特異的な部位特異的ヌクレアーゼを生産することができる。ZFNに類似して、TALENを細胞に導入して、ゲノム内の所望の標的部位にてDSBを生じさせることができるため、これを使用して、類似のHDR媒介性経路で遺伝子をノックアウトまたは変異をノックインすることができる。Boch,Nature Biotech.(2011)29:135-136、Boch et al.,Science(2009)326:1509-1512、Moscou et al.,Science(2009)326:3501を参照されたい。
【0419】
c)メガヌクレアーゼ
メガヌクレアーゼは、大きなDNA配列(14~40塩基対)を認識し、切断する能力を特徴とする、エンドヌクレアーゼファミリー内の酵素である。メガヌクレアーゼは、ヌクレアーゼ活性及び/またはDNA認識に影響を及ぼすそれらの構造モチーフに基づいて複数のファミリーに群分けされる。最も普及し、最もよく知られたメガヌクレアーゼは、LAGLIDADGファミリー内のタンパク質であり、それらの名称は保存されたアミノ酸配列に帰する。Chevalier et al.,Nucleic Acids Res.(2001)29(18):3757-3774を参照されたい。一方で、GIY-YIGファミリーメンバーは、GIY-YIGモジュールを有し、これは70~100残基長であり、4つの不変残基を有し、このうち2つが活性に必要とされる、4つまたは5つの保存された配列モチーフを含む。Van Roey et al.,Nature Struct.Biol.(2002)9:806-811を参照されたい。His-Cysファミリーのメガヌクレアーゼは、数百個のアミノ酸残基を包含する領域にわたって高度に保存された一連のヒスチジン及びシステインを特徴とする。Chevalier et al.,Nucleic Acids Res.(2001)29(18):3757-3774を参照されたい。NHNファミリーのメンバーは、アスパラギン残基に囲まれた2対の保存されたヒスチジンを含有するモチーフによって定義される。Chevalier et al.,Nucleic Acids Res.(2001)29(18):3757-3774を参照されたい。
【0420】
特異性要件の高さに起因して特定の標的DNA配列に対する天然メガヌクレアーゼを特定する見込みが低いため、変異誘発法及び高スループットスクリーニング法を含めた種々の方法を使用して、固有の配列を認識するメガヌクレアーゼバリアントが作出されている。例えば、既定の核酸配列に結合するように、変化したDNA結合特異性を有するメガヌクレアーゼを操作するための戦略は、当該技術分野で既知である。例えば、Chevalier et al.,Mol.Cell.(2002)10:895-905、Epinat et al.,Nucleic Acids Res(2003)31:2952-2962、Silva et al.,J Mol.Biol.(2006)361:744-754、Seligman et al.,Nucleic Acids Res(2002)30:3870-3879、Sussman et al.,J Mol Biol(2004)342:31-41、Doyon et al.,J Am Chem Soc(2006)128:2477-2484、Chen et al.,Protein Eng Des Sel(2009)22:249-256、Arnould et al.,J Mol Biol.(2006)355:443-458、Smith et al.,Nucleic Acids Res.(2006)363(2):283-294を参照されたい。
【0421】
ZFN及びTALENと同様に、メガヌクレアーゼは、ゲノムDNAにDSBを作出することができ、これにより、例えばNHEJを介して、不適切に修復される場合にフレームシフト変異が作出され得、細胞における標的遺伝子の発現の減少につながる。代替として、メガヌクレアーゼに加えて外来DNAを細胞に導入することができる。外来DNAの配列及び染色体配列に応じて、このプロセスを使用して、標的遺伝子を改変することができる。Silva et al.,Current Gene Therapy(2011)11:11-27を参照されたい。
【0422】
d)トランスポザーゼ
トランスポザーゼは、トランスポゾンの末端に結合し、切り貼り機構または複製型転移機構によってゲノムの別の部分へのその移動を触媒する酵素である。トランスポザーゼをCRISPER/Casシステム等の他のシステムと連結することによって、ゲノムDNAの部位特異的挿入または操作を可能にする新たな遺伝子編集ツールを開発することができる。触媒的に不活性なCasエフェクタータンパク質及びTn7様トランスポゾンを使用する、トランスポゾンを使用した2つの既知のDNA組み込み方法が存在する。トランスポザーゼ依存性のDNA組み込みは、ゲノム内にDSBを誘発せず、これはより安全でより特異的なDNA組み込みを保証し得る。
【0423】
e)CRISPR/Casシステム
CRISPRシステムは元々、獲得免疫の一形態を提供する、侵入するファージ及びプラスミドに対する防御に関与するシステムとして原核生物(例えば、細菌及び古細菌)において発見された。今では、それは研究及び臨床応用で普及した遺伝子編集ツールとして適応され、使用されている。
【0424】
CRISPR/Casシステムは一般に、少なくとも2つの構成要素、すなわち1つまたは複数のガイドRNA(gRNA)及びCasタンパク質を含む。Casタンパク質は、標的部位にDSBを導入するヌクレアーゼである。CRISPR-Casシステムは、以下の2つの主要なクラスに該当する:クラス1システムは、核酸を分解するために複数のCasタンパク質の複合体を使用し、クラス2システムは、同じ目的のために単一の大きなCasタンパク質を使用する。クラス1は、I型、III型、及びIV型に分類され、クラス2は、II型、V型、及びVI型に分類される。遺伝子編集用途に適応された異なるCasタンパク質には、Cas3、Cas4、Cas5、Cas8a、Cas8b、Cas8c、Cas9、Cas10、Cas12、Cas12a(Cpf1)、Cas12b(C2c1)、Cas12c(C2c3)、Cas12d(CasY)、Cas12e(CasX)、Cas12f(C2c10)、Cas12g、Cas12h、Cas12i、Cas12k(C2c5)、Cas13、Cas13a(C2c2)、Cas13b、Cas13c、Cas13d、C2c4、C2c8、C2c9、Cmr5、Cse1、Cse2、Csf1、Csm2、Csn2、Csx10、Csx11、Csy1、Csy2、Csy3、及びMad7が含まれるが、これらに限定されない。最も広く使用されるCas9は、II型Casタンパク質であり、例示説明として本明細書に記載される。これらのCasタンパク質は、異なる源の種を起源とし得る。例えば、Cas9は、S.pyogenesまたはS.aureusに由来し得る。
【0425】
元の微生物ゲノム内で、II型CRISPRシステムは、宿主ゲノム内のアレイとしてコードされるCRISPRリピート配列の間に侵入DNAからの配列を組み込む。CRISPRリピートアレイからの転写物は、各々がCRISPRリピートの部分のみならず「プロトスペーサー」配列として知られる侵入DNAから転写された可変配列を内部にもつ、CRISPR RNA(crRNA)へとプロセスされる。各crRNAは、第2のトランス活性化CRISPR RNA(tracrRNA)とハイブリダイズし、これらの2つのRNAが、Cas9ヌクレアーゼと複合体を形成する。crRNAのプロトスペーサーにコードされる部分は、相補的な標的DNA配列を、それらが「プロトスペーサー隣接モチーフ」(PAM)として知られる短い配列に隣接することを条件として、切断するようにCas9複合体を導く。
【0426】
その発見以来、CRISPRシステムは、細菌からヒト細胞を含めた真核細胞に及ぶ広範な細胞及び生物において配列特異的DSB及び標的ゲノム編集を誘導するために適応されてきた。遺伝子編集用途でのその使用においては、人工的に設計された合成gRNAが元のcrRNA:tracrRNA複合体を置き換えている。例えば、gRNAは、crRNA、テトラループ、及びtracrRNAから構成される単一ガイドRNA(sgRNA)であり得る。crRNAは通常、目的の標的DNAを認識するようにユーザー設計される相補的領域(別称、スペーサー、通常は約20ヌクレオチド長)を含む。tracrRNA配列は、Casヌクレアーゼ結合のための足場領域を含む。crRNA配列及びtracrRNA配列は、テトラループによって連結され、各々が互いとハイブリダイズするための短いリピート配列を有し、故にキメラsgRNAを生成する。gRNAに存在するスペーサーまたは相補的領域の配列を単に変更することによって、Casヌクレアーゼのゲノム標的を変更することができる。相補的領域は、標準的なRNA-DNA相補的塩基対合規則によりCasヌクレアーゼを標的DNA部位に導く。
【0427】
Casヌクレアーゼが機能するためには、PAMがゲノムDNA内の標的配列の直ぐ下流に存在しなければならない。Casタンパク質によるPAMの認識は、隣接するゲノム配列を不安定化すると考えられ、gRNAによる配列の問合せを可能にして、一致する配列が存在する場合にgRNA-DNA対合をもたらす。PAMの特定の配列は、Cas遺伝子の種に応じて様々である。例えば、S.pyogenesに由来する、最も一般的に使用されるCas9ヌクレアーゼは、5’-NGG-3’のPAM配列を認識するか、またはそれよりも低い効率で5’-NAG-3’を認識する(ここで、「N」は任意のヌクレオチドであることができる)。代替のPAMを用いる他のCasヌクレアーゼバリアントもまた特性評価され、ゲノム編集に成功裏に使用されている。これらは下記の表3に要約される。
【0428】
【表3】
【0429】
一部の実施形態では、Casヌクレアーゼは、それらの活性、特異性、認識、及び/または他の特性を変化させるための1つまたは複数の変異を含んでもよい。例えば、Casヌクレアーゼは、オフターゲット効果を軽減するためにその忠実度を変化させる1つまたは複数の変異を有してもよい(例えば、eSpCas9、SpCas9-HF1、HypaSpCas9、HeFSpCas9、及びevoSpCas9は、SpCas9の高忠実度バリアントである)。別の例として、Casヌクレアーゼは、そのPAM特異性を変化させる1つまたは複数の変異を有してもよい。
【0430】
一部の実施形態では、本明細書で提供される細胞は、免疫特権が備わった細胞または低免疫原性細胞を作出するために、1つまたは複数の免疫因子(標的ポリペプチドを含む)の発現を低減するように遺伝子改変される。ある特定の実施形態では、本明細書に開示される細胞(例えば、幹細胞、人工多能性幹細胞、分化細胞、造血幹細胞、初代T細胞、及びCAR-T細胞)は、1つまたは複数の標的ポリヌクレオチドの発現を低減するような1つまたは複数の遺伝子改変を含む。かかる標的ポリヌクレオチド及びポリペプチドの非限定的な例としては、CIITA、B2M、NLRC5、CTLA4、PD1、HLA-A、HLA-BM、HLA-C、RFX-ANK、NFY-A、RFX5、RFX-AP、NFY-B、NFY-C、IRF1、及び/またはTAP1が挙げられる。
【0431】
一部の実施形態では、遺伝子改変は、CRISPR/Casシステムを使用して起こる。1つまたは複数の標的ポリヌクレオチドの発現を調節すること(例えば、低減するまたは欠失させること)によって、かかる細胞は、レシピエント対象に移植されたときに減少した免疫活性化を示す。一部の実施形態では、該細胞は、例えば、投与時にレシピエント対象または患者において低免疫原性と見なされる。
【0432】
f)ニッカーゼ
Cas(特にCas9)ヌクレアーゼのヌクレアーゼドメインを独立して変異させて、DNA「ニッカーゼ」と称される酵素を生成することができる。ニッカーゼは、例えばCRISPR/Cas9を含めた通常のCRISPR/Casヌクレアーゼシステムと同じ特異性で、一本鎖切断を導入することができる。ニッカーゼを用いて、遺伝子編集システムにおいて有用であり得る二本鎖切断を生じさせることができる(Mali et al.,Nat Biotech,31(9):833-838(2013)、Mali et al.Nature Methods,10:957-963(2013)、Mali et al.,Science,339(6121):823-826(2013))。一部の事例では、2つのCasニッカーゼが使用される場合、切断末端の各々において平滑末端の代わりに長いオーバーハングが生み出され、これにより精密な遺伝子組み込み及び挿入に対する追加の制御が可能となる(Mali et al.,Nat Biotech,31(9):833-838(2013)、Mali et al.Nature Methods,10:957-963(2013)、Mali et al.,Science,339(6121):823-826(2013))。両方のニッキングCas酵素がそれらの標的DNAに有効に切れ目を入れなければならないため、対合したニッカーゼは、二本鎖切断Casベースのシステムと比較してより低いオフターゲット効果を有し得る(Ran et al.,Cell,155(2):479-480(2013)、Mali et al.,Nat Biotech,31(9):833-838(2013)、Mali et al.Nature Methods,10:957-963(2013)、Mali et al.,Science,339(6121):823-826(2013))。
【0433】
P.寛容原性因子及び/またはキメラ抗原受容体の組換え発現方法
これらの技術の全てについて、周知の組換え技法を使用して、本明細書に概説されるような組換え核酸が生成される。ある特定の実施形態では、寛容原性因子またはキメラ抗原受容体をコードする組換え核酸は、発現構築物において1つまたは複数の制御ヌクレオチド配列に作動可能に連結されてもよい。制御ヌクレオチド配列は、一般に、処置される宿主細胞及びレシピエント対象に適切であろう。様々な宿主細胞に対して、数多くの種類の適切な発現ベクター及び好適な制御配列が当該技術分野で既知である。典型的には、1つまたは複数の制御ヌクレオチド配列には、プロモーター配列、リーダーまたはシグナル配列、リボソーム結合部位、転写開始及び終結配列、翻訳開始及び終結配列、ならびにエンハンサーまたは活性化因子配列が含まれ得るが、これらに限定されない。当該技術分野で既知であるような構成的または誘導性プロモーターもまた企図される。プロモーターは、天然型プロモーター、または1つよりも多くのプロモーターのエレメントを組み合わせたハイブリッドプロモーターのいずれであってもよい。発現構築物は、細胞においてプラスミド等のエピソーム上に存在してもよいし、または発現構築物は、染色体内に挿入されてもよい。具体的な実施形態では、発現ベクターは、形質転換された宿主細胞の選択を可能にするための選択可能マーカー遺伝子を含む。ある特定の実施形態は、少なくとも1つの制御配列に作動可能に連結されたバリアントポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む、発現ベクターを含む。本明細書で使用するための制御配列には、プロモーター、エンハンサー、及び他の発現制御エレメントが含まれる。ある特定の実施形態では、発現ベクターは、形質転換される宿主細胞、発現させることが望まれる特定のバリアントポリペプチド、ベクターのコピー数、そのコピー数を制御する能力、及び/またはベクターによってコードされる任意の他のタンパク質、例えば、抗生物質マーカーの発現の選定に対して設計される。
【0434】
好適な哺乳類プロモーターの例としては、例えば、以下の遺伝子からのプロモーター、すなわち、伸長因子1アルファ(EF1α)プロモーター、ハムスターのユビキチン/S27aプロモーター(WO97/15664)、サル空胞ウイルス40(SV40)初期プロモーター、アデノウイルス主要後期プロモーター、マウスメタロチオネイン-Iプロモーター、ラウス肉腫ウイルス(RSV)の長鎖末端反復配列領域、マウス乳癌ウイルスプロモーター(MMTV)、モロニーマウス白血病ウイルス長鎖末端反復配列領域、及びヒトサイトメガロウイルス(CMV)の初期プロモーターが挙げられる。他の異種哺乳類プロモーターの例は、アクチン、免疫グロブリン、または熱ショックプロモーター(複数可)である。追加の実施形態では、哺乳類宿主細胞において使用するためのプロモーターは、ポリオーマウイルス、鶏痘ウイルス(1989年7月5日に公開されたUK2,211,504)、ウシパピローマウイルス、トリ肉腫ウイルス、サイトメガロウイルス、レトロウイルス、B型肝炎ウイルス、及びサルウイルス40(SV40)等のウイルスのゲノムから得ることができる。さらなる実施形態では、異種哺乳類プロモーターが使用される。例としては、アクチンプロモーター、免疫グロブリンプロモーター、及び熱ショックプロモーターが挙げられる。SV40の初期及び後期プロモーターは、SV40ウイルス複製起点も含有するSV40制限断片として好都合に得られる(Fiers et al,Nature 273:113-120(1978))。ヒトサイトメガロウイルスの最初期プロモーターは、HindIII制限酵素断片として好都合に得られる(Greenaway et al,Gene 18:355-360(1982))。前述の参考文献は、参照によりそれらの全体が援用される。
【0435】
一部の実施形態では、発現ベクターは、バイシストロン性またはマルチシストロン性発現ベクターである。バイシストロン性またはマルチシストロン性発現ベクターは、(1)オープンリーディングフレームの各々に融合された複数のプロモーター、(2)遺伝子の間のスプライシングシグナルの挿入、(3)発現が単一のプロモーターによって駆動される遺伝子の融合、及び(4)遺伝子の間のタンパク質分解切断部位の挿入(自己切断ペプチド)または遺伝子の間の内部リボソーム進入部位(IRES)の挿入を含んでもよい。
【0436】
本明細書に記載のポリヌクレオチドを細胞に導入するプロセスは、任意の好適な技法によって達成することができる。好適な技法には、リン酸カルシウムまたは脂質媒介性トランスフェクション、エレクトロポレーション、フソゲン、及びウイルスベクターを使用した形質導入または感染が含まれる。一部の実施形態では、ポリヌクレオチドは、ウイルス形質導入を介して細胞に導入されるか(例えば、レンチウイルス形質導入)、またはウイルスベクター上で別様に送達される(例えば、フソゲン媒介性送達)。
【0437】
本明細書では、レシピエント対象への投与時に免疫応答を発動または活性化しない細胞が提供される。上述したように、一部の実施形態では、該細胞は、レシピエントにおける免疫認識及び寛容に影響を及ぼす遺伝子及び寛容原性(例えば、免疫)因子の発現を増加させるように改変される。
【0438】
ある特定の実施形態では、本明細書に列挙される1つまたは複数の標的タンパク質の発現を調節するゲノム改変を内部にもつ、本明細書に開示される細胞(例えば、幹細胞、人工多能性幹細胞、分化細胞、造血幹細胞、初代T細胞CAR-T細胞、及びCAR-NK細胞)のうちのいずれも、1つまたは複数の寛容原性因子を発現するようにもまた改変される。例となる寛容原性因子には、限定されないが、CD47、DUX4、CD24、CD27、CD35、CD46、CD55、CD59、CD200、HLA-C、HLA-E、HLA-E重鎖、HLA-G、PD-L1、IDO1、CTLA4-Ig、C1-インヒビター、IL-10、IL-35、FasL、CCL21、CCL22、Mfge8、及びSerpinb9のうちの1つまたは複数が含まれる。一部の実施形態では、寛容原性因子は、DUX4、CD47、CD24、CD27、CD35、CD46、CD55、CD59、CD200、HLA-C、HLA-E、HLA-E重鎖、HLA-G、PD-L1、IDO1、CTLA4-Ig、C1-インヒビター、IL-10、IL-35、FasL、CCL21、CCL22、Mfge8、及びSerpinb9を含む群から選択される。
【0439】
ヒトCD27(CD27L受容体、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー7(TNFSF7)、T細胞活性化抗原S152、Tp55、及びT14としても知られる)についての有用なゲノム、ポリヌクレオチド、及びポリペプチドの情報は、例えば、GeneCard識別記号GC12P008144、HGNC番号11922、NCBI遺伝子ID 939、Uniprot番号P26842、ならびにNCBI参照配列番号NM_001242.4及びNP_001233.1で提供される。
【0440】
ヒトCD46についての有用なゲノム、ポリヌクレオチド、及びポリペプチドの情報は、例えば、GeneCard識別記号GC01P207752、HGNC番号6953、NCBI遺伝子ID 4179、Uniprot番号P15529、ならびにNCBI参照配列番号NM_002389.4、NM_153826.3、NM_172350.2、NM_172351.2、NM_172352.2 NP_758860.1、NM_172353.2、NM_172359.2、NM_172361.2、NP_002380.3、NP_722548.1、NP_758860.1、NP_758861.1、NP_758862.1、NP_758863.1、NP_758869.1、及びNP_758871.1で提供される。
【0441】
ヒトCD55(別名、補体崩壊促進因子)についての有用なゲノム、ポリヌクレオチド、及びポリペプチドの情報は、例えば、GeneCard識別記号GC01P207321、HGNC番号2665、NCBI遺伝子ID 1604、Uniprot番号P08174、ならびにNCBI参照配列番号NM_000574.4、NM_001114752.2、NM_001300903.1、NM_001300904.1、NP_000565.1、NP_001108224.1、NP_001287832.1、及びNP_001287833.1で提供される。
【0442】
ヒトCD59についての有用なゲノム、ポリヌクレオチド、及びポリペプチドの情報は、例えば、GeneCard識別記号GC11M033704、HGNC番号1689、NCBI遺伝子ID 966、Uniprot番号P13987、ならびにNCBI参照配列番号NP_000602.1、NM_000611.5、NP_001120695.1、NM_001127223.1、NP_001120697.1、NM_001127225.1、NP_001120698.1、NM_001127226.1、NP_001120699.1、NM_001127227.1、NP_976074.1、NM_203329.2、NP_976075.1、NM_203330.2、NP_976076.1、及びNM_203331.2で提供される。
【0443】
ヒトCD200についての有用なゲノム、ポリヌクレオチド、及びポリペプチドの情報は、例えば、GeneCard識別記号GC03P112332、HGNC番号7203、NCBI遺伝子ID 4345、Uniprot番号P41217、ならびにNCBI参照配列番号NP_001004196.2、NM_001004196.3、NP_001305757.1、NM_001318828.1、NP_005935.4、NM_005944.6、XP_005247539.1、及びXM_005247482.2で提供される。
【0444】
ヒトHLA-Cについての有用なゲノム、ポリヌクレオチド、及びポリペプチドの情報は、例えば、GeneCard識別記号GC06M031272、HGNC番号4933、NCBI遺伝子ID 3107、Uniprot番号P10321、ならびにNCBI参照配列番号NP_002108.4及びNM_002117.5で提供される。
【0445】
ヒトHLA-Eについての有用なゲノム、ポリヌクレオチド、及びポリペプチドの情報は、例えば、GeneCard識別記号GC06P047281、HGNC番号4962、NCBI遺伝子ID 3133、Uniprot番号P13747、ならびにNCBI参照配列番号NP_005507.3及びNM_005516.5で提供される。
【0446】
ヒトHLA-Gについての有用なゲノム、ポリヌクレオチド、及びポリペプチドの情報は、例えば、GeneCard識別記号GC06P047256、HGNC番号4964、NCBI遺伝子ID 3135、Uniprot番号P17693、ならびにNCBI参照配列番号NP_002118.1及びNM_002127.5で提供される。
【0447】
ヒトPD-L1またはCD274についての有用なゲノム、ポリヌクレオチド、及びポリペプチドの情報は、例えば、GeneCard識別記号GC09P005450、HGNC番号17635、NCBI遺伝子ID 29126、Uniprot番号Q9NZQ7、ならびにNCBI参照配列番号NP_001254635.1、NM_001267706.1、NP_054862.1、及びNM_014143.3で提供される。
【0448】
ヒトIDO1についての有用なゲノム、ポリヌクレオチド、及びポリペプチドの情報は、例えば、GeneCard識別記号GC08P039891、HGNC番号6059、NCBI遺伝子ID 3620、Uniprot番号P14902、ならびにNCBI参照配列番号NP_002155.1及びNM_002164.5で提供される。
【0449】
ヒトIL-10についての有用なゲノム、ポリヌクレオチド、及びポリペプチドの情報は、例えば、GeneCard識別記号GC01M206767、HGNC番号5962、NCBI遺伝子ID 3586、Uniprot番号P22301、ならびにNCBI参照配列番号NP_000563.1及びNM_000572.2で提供される。
【0450】
ヒトFasリガンド(FasL、FASLG、CD178、TNFSF6等として知られる)についての有用なゲノム、ポリヌクレオチド、及びポリペプチドの情報は、例えば、GeneCard識別記号GC01P172628、HGNC番号11936、NCBI遺伝子ID 356、Uniprot番号P48023、ならびにNCBI参照配列番号NP_000630.1、NM_000639.2、NP_001289675.1、及びNM_001302746.1で提供される。
【0451】
ヒトCCL21についての有用なゲノム、ポリヌクレオチド、及びポリペプチドの情報は、例えば、GeneCard識別記号GC09M034709、HGNC番号10620、NCBI遺伝子ID 6366、Uniprot番号O00585、ならびにNCBI参照配列番号NP_002980.1及びNM_002989.3で提供される。
【0452】
ヒトCCL22についての有用なゲノム、ポリヌクレオチド、及びポリペプチドの情報は、例えば、GeneCard識別記号GC16P057359、HGNC番号10621、NCBI遺伝子ID 6367、Uniprot番号O00626、ならびにNCBI参照配列番号NP_002981.2、NM_002990.4、XP_016879020.1、及びXM_017023531.1で提供される。
【0453】
ヒトMfge8についての有用なゲノム、ポリヌクレオチド、及びポリペプチドの情報は、例えば、GeneCard識別記号GC15M088898、HGNC番号7036、NCBI遺伝子ID 4240、Uniprot番号Q08431、ならびにNCBI参照配列番号NP_001108086.1、NM_001114614.2、NP_001297248.1、NM_001310319.1、NP_001297249.1、NM_001310320.1、NP_001297250.1、NM_001310321.1、NP_005919.2、及びNM_005928.3で提供される。
【0454】
ヒトSerpinB9についての有用なゲノム、ポリヌクレオチド、及びポリペプチドの情報は、例えば、GeneCard識別記号GC06M002887、HGNC番号8955、NCBI遺伝子ID 5272、Uniprot番号P50453、ならびにNCBI参照配列番号NP_004146.1、NM_004155.5、XP_005249241.1、及びXM_005249184.4で提供される。
【0455】
遺伝子及び因子(タンパク質)の発現を調節するための方法には、ゲノム編集技術、及びRNAまたはタンパク質発現技術等が含まれる。これらの技術の全てについて、周知の組換え技法を使用して、本明細書に概説されるような組換え核酸が生成される。
【0456】
一部の実施形態では、標的遺伝子(例えば、DUX4、CD47、または別の寛容原性因子)の発現は、(1)内在性DUX4、CD47、または他の遺伝子に特異的な部位特異的結合ドメイン、及び(2)転写活性化因子を含有する、融合タンパク質またはタンパク質複合体の発現によって増加させられる。
【0457】
一部の実施形態では、該方法は、相同性指向修復/組換えを含む遺伝子改変方法によって達成される。
【0458】
一部の実施形態では、制御因子は、ガイドRNA(gRNA)等の部位特異的DNA結合核酸分子から構成される。一部の実施形態では、該方法は、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)としても知られるジンクフィンガータンパク質(ZFP)またはZFPを含有する融合タンパク質等の、部位特異的DNA結合標的タンパク質によって達成される。
【0459】
一部の実施形態では、制御因子は、標的領域にて遺伝子に特異的に結合またはハイブリダイズする、例えばDNA結合タンパク質またはDNA結合核酸を使用した、部位特異的結合ドメインを含む。一部の実施形態では、提供されるポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、改変ヌクレアーゼ等の部位特異的ヌクレアーゼに連結されるかまたはそれと複合体化される。例えば、一部の実施形態では、投与は、改変ヌクレアーゼ、例えば、メガヌクレアーゼまたはRNA誘導型ヌクレアーゼ、例えば、規則的な間隔をもってクラスター化された短鎖回文配列核酸(CRISPR)-Casシステム、例えば、CRISPR-Cas9システムのDNA標的化タンパク質を含む融合体を使用して成し遂げられる。一部の実施形態では、ヌクレアーゼは、ヌクレアーゼ活性を欠くように改変される。一部の実施形態では、改変ヌクレアーゼは、触媒的に死んだdCas9である。
【0460】
一部の実施形態では、部位特異的結合ドメインは、ヌクレアーゼに由来し得る。例えば、I-SceI、I-CeuI、PI-PspI、PI-Sce、I-SceIV、I-CsmI、I-PanI、I-SceII、I-PpoI、I-SceIII、I-CreI、I-TevI、I-TevII、及びI-TevIII等のホーミングエンドヌクレアーゼ及びメガヌクレアーゼの認識配列。また、米国特許第5,420,032号、米国特許第6,833,252号、Belfort et al.,(1997)Nucleic Acids Res.25:3379-3388、Dujon et al.,(1989)Gene 82:115-118、Perler et al,(1994)Nucleic Acids Res.22,1125-1127、Jasin(1996)Trends Genet.12:224-228、Gimble et al.,(1996)J.Mol.Biol.263:163-180、Argast et al,(1998)J.Mol.Biol.280:345-353、及びNew England Biolabsカタログも参照されたい。加えて、ホーミングエンドヌクレアーゼ及びメガヌクレアーゼのDNA結合特異性は、非天然標的部位に結合するように操作され得る。例えば、Chevalier et al,(2002)Molec.Cell 10:895-905、Epinat et al,(2003)Nucleic Acids Res.31:2952-2962、Ashworth et al,(2006)Nature 441:656-659、Paques et al,(2007)Current Gene Therapy 7:49-66、米国特許公開第2007/0117128号を参照されたい。
【0461】
ジンクフィンガー、TALE、及びCRISPRシステムの結合ドメインは、例えば、天然型ジンクフィンガーまたはTALEタンパク質の認識ヘリックス領域を操作すること(1つまたは複数のアミノ酸を変化させること)によって、既定のヌクレオチド配列に結合するように「操作」され得る。操作されたDNA結合タンパク質(ジンクフィンガーまたはTALE)は、天然に存在しないタンパク質である。設計のための合理的基準は、置換規則の適用、ならびに既存のZFP及び/またはTALE設計及び結合データの情報を格納するデータベース内の情報を処理するためのコンピュータ化アルゴリズムを含む。例えば、米国特許第6,140,081号、同第6,453,242号、及び同第6,534,261号を参照されたく、また、WO98/53058、WO98/53059、WO98/53060、WO02/016536、及びWO03/016496、ならびに米国公開第20110301073号も参照されたい。
【0462】
一部の実施形態では、部位特異的結合ドメインは、配列特異的様態でDNAに結合する1つもしくは複数のジンクフィンガータンパク質(ZFP)またはそのドメインを含む。ZFPまたはそのドメインは、亜鉛イオンの配位により構造が安定化される結合ドメイン内のアミノ酸配列の領域である、1つまたは複数のジンクフィンガーを介して配列特異的様態でDNAに結合するタンパク質、またはより大きなタンパク質内のドメインである。
【0463】
ZFPの中には、個々のフィンガーの集合によって生成される、典型的には9~18ヌクレオチド長の特異的DNA配列を標的とする人工ZFPドメインがある。ZFPには、単一のフィンガードメインの長さがおよそ30アミノ酸であり、単一のベータターンの2つのシステインとともに亜鉛へと配位結合した2つの不変のヒスチジン残基を含有するアルファヘリックスを含有し、2、3、4、5、または6つのフィンガーを有するものが含まれる。一般に、ZFPの配列特異性は、ジンクフィンガーの認識ヘリックス上の4つのヘリックス位置(-1、2、3、及び6)にてアミノ酸置換を行うことによって変化させてもよい。故に、一部の実施形態では、ZFPまたはZFP含有分子は、非天然型であり、例えば、選択する標的部位に結合するように操作される。例えば、Beerli et al.(2002)Nature Biotechnol.20:135-141、Pabo et al.(2001)Ann.Rev.Biochem.70:313-340、Isalan et al.(2001)Nature Biotechnol.19:656-660、Segal et al.(2001)Curr.Opin.Biotechnol.12:632-637、Choo et al.(2000)Curr.Opin.Struct.Biol.10:411-416、米国特許第6,453,242号、同第6,534,261号、同第6,599,692号、同第6,503,717号、同第6,689,558号、同第7,030,215号、同第6,794,136号、同第7,067,317号、同第7,262,054号、同第7,070,934号、同第7,361,635号、同第7,253,273号、及び米国特許公開第2005/0064474号、同第2007/0218528号、同第2005/0267061号を参照されたく、全て参照によりそれらの全体が本明細書に援用される。
【0464】
多くの遺伝子特異的な操作されたジンクフィンガーが市販されている。例えば、Sangamo Biosciences(Richmond,CA,USA)は、Sigma-Aldrich(St.Louis,MO,USA)と提携して、研究者がジンクフィンガーの構築及び検証を完全に省略することを可能にするジンクフィンガー構築のためのプラットフォーム(CompoZr)を開発し、何千ものタンパク質に対して特異的に標的化されたジンクフィンガーを提供する(Gaj et al.,Trends in Biotechnology,2013,31(7),397-405)。一部の実施形態では、市販のジンクフィンガーが使用されるか、またはカスタム設計される。
【0465】
一部の実施形態では、部位特異的結合ドメインは、転写活性化因子様タンパク質エフェクター(TALE)タンパク質にあるような、天然型または操作された(非天然型)転写活性化因子様タンパク質(TAL)のDNA結合ドメインを含む。例えば、米国特許公開第20110301073号(参照によりその全体が本明細書に援用される)を参照されたい。
【0466】
一部の実施形態では、部位特異的結合ドメインは、CRISPR/Casシステムに由来する。一般に、「CRISPRシステム」は、Cas遺伝子をコードする配列、tracr(トランス活性化CRISPR)配列(例えば、tracrRNAまたは活性な部分的tracrRNA)、tracrメイト配列(内在性CRISPRシステムの関連において「ダイレクトリピート」及びtracrRNAによりプロセシングされた部分的ダイレクトリピートを包含する)、ガイド配列(内在性CRISPRシステムの関連において「スペーサー」、または「標的化配列」とも称される)、及び/またはCRISPR遺伝子座からの他の配列及び転写物を含めた、CRISPR関連(「Cas」)遺伝子の発現に関与するかまたはその活性を導く転写物及び他のエレメントを総称的に指す。
【0467】
一般に、ガイド配列は、標的配列とハイブリダイズして、CRISPR複合体の標的配列への配列特異的結合を導くのに十分な標的ポリヌクレオチド配列との相補性を有するポリヌクレオチド配列を含む、標的化ドメインを含む。一部の実施形態では、ガイド配列とその対応する標的配列との間の相補性の程度は、好適なアライメントアルゴリズムを使用して最適にアライメントされたときに、約50%以上、約60%以上、約75%以上、約80%以上、約85%以上、約90%以上、約95%以上、約97.5%以上、約99%以上、またはそれを超える。一部の例では、gRNAの標的化ドメインは、標的核酸上の標的配列に相補的、例えば、少なくとも80、85、90、95、98、または99%相補的、例えば、完全に相補的である。
【0468】
一部の実施形態では、標的部位は、標的遺伝子の転写開始部位の上流にある。一部の実施形態では、標的部位は、遺伝子の転写開始部位に隣接している。一部の実施形態では、標的部位は、遺伝子の転写開始部位の下流のRNAポリメラーゼ休止部位に隣接している。
【0469】
一部の実施形態では、標的化ドメインは、転写開始、1つもしくは複数の転写エンハンサーもしくは活性化因子、及び/またはRNAポリメラーゼの結合を促進するための標的遺伝子のプロモーター領域を標的とするように構成される。1つまたは複数のgRNAを使用して、遺伝子のプロモーター領域を標的化することができる。一部の実施形態では、遺伝子の1つまたは複数の領域を標的化することができる。ある特定の態様では、標的部位は、遺伝子の転写開始部位(TSS)のいずれかの側の600塩基対以内にある。
【0470】
エクソン配列ならびにプロモーター及び活性化因子を含む制御領域の配列を含めた、遺伝子を標的とする配列であるかまたはその配列を含むgRNA配列を設計または同定することは、当業者の技能水準の範囲内である。CRISPRゲノム編集のためのゲノム全域にわたるgRNAデータベースが一般公開されており、これは、ヒトゲノムまたはマウスゲノムにおける遺伝子の構成的エクソン内の例となる単一ガイドRNA(sgRNA)標的配列を含む(例えば、genescript.com/gRNA-database.htmlを参照されたく、また、Sanjana et al.(2014)Nat.Methods,11:783-4、www.e-crisp.org/E-CRISP/、crispr.mit.edu/も参照されたい)。一部の実施形態では、gRNA配列は、非標的遺伝子へのオフターゲット結合が最小である配列であるか、またはそれを含む。
【0471】
一部の実施形態では、制御因子は、機能的ドメイン、例えば、転写活性化因子をさらに含む。
【0472】
一部の実施形態では、転写活性化因子は、標的遺伝子の1つまたは複数の転写制御エレメント等の1つまたは複数の制御エレメントであるか、またはそれを含有し、それによって、上記で提供されるような部位特異的ドメインが認識されて、かかる遺伝子の発現を駆動する。一部の実施形態では、転写活性化因子は、標的遺伝子の発現を駆動する。場合によっては、転写活性化因子は、異種トランス活性化ドメインの全部または一部分であり得るか、またはそれを含有し得る。例えば、一部の実施形態では、転写活性化因子は、単純ヘルペス由来トランス活性化ドメイン、Dnmt3aメチルトランスフェラーゼドメイン、p65、VP16、及びVP64から選択される。
【0473】
一部の実施形態では、制御因子は、ジンクフィンガー転写因子(ZF-TF)である。一部の実施形態では、制御因子は、VP64-p65-Rta(VPR)である。
【0474】
ある特定の実施形態では、制御因子は、転写制御ドメインをさらに含む。一般的なドメインには、例えば、転写因子ドメイン(活性化因子、抑制因子、共活性化因子、共抑制因子)、サイレンサー、発がん遺伝子(例えば、myc、jun、fos、myb、max、mad、rel、ets、bcl、myb、mosファミリーメンバー等);DNA修復酵素ならびにそれらの関連因子及び修飾因子;DNA再構成酵素ならびにそれらの関連因子及び修飾因子;クロマチン関連タンパク質及びそれらの修飾因子(例えば、キナーゼ、アセチラーゼ、及びデアセチラーゼ);ならびにDNA修飾酵素(例えば、DNMTファミリーのメンバー等のメチルトランスフェラーゼ(例えば、DNMT1、DNMT3A、DNMT3B、DNMT3L等、トポイソメラーゼ、ヘリカーゼ、リガーゼ、キナーゼ、ホスファターゼ、ポリメラーゼ、エンドヌクレアーゼ)ならびにそれらの関連因子及び修飾因子が含まれる。例えば、米国公開第2013/0253040号(参照によりその全体が本明細書に援用される)を参照されたい。
【0475】
活性化を達成するのに好適なドメインには、HSV VP16活性化ドメイン(例えば、Hagmann et al,J.Virol.71,5952-5962(197)を参照されたい)、核内ホルモン受容体(例えば、Torchia et al.,Curr.Opin.Cell.Biol.10:373-383(1998)を参照されたい)、核内因子カッパBのp65サブユニット(Bitko & Bank,J.Virol.72:5610-5618(1998)及びDoyle & Hunt,Neuroreport 8:2937-2942(1997))、Liu et al.,Cancer Gene Ther.5:3-28(1998))、またはVP64等の人工キメラ機能的ドメイン(Beerli et al.,(1998)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 95:14623-33)、及びデグロン(Molinari et al.,(1999)EMBO J.18,6439-6447)が含まれる。追加の例となる活性化ドメインには、Oct1、Oct-2A、Spl、AP-2、及びCTF1(Seipel et al,EMBOJ.11,4961-4968(1992)、ならびにp300、CBP、PCAF、SRC1 PvALF、AtHD2A、及びERF-2が含まれる。例えば、Robyr et al,(2000)Mol.Endocrinol.14:329-347、Collingwood et al,(1999)J.Mol.Endocrinol 23:255-275、Leo et al,(2000)Gene 245:1-11、Manteuffel-Cymborowska(1999)Acta Biochim.Pol.46:77-89、McKenna et al,(1999)J.Steroid Biochem.Mol.Biol.69:3-12、Malik et al,(2000)Trends Biochem.Sci.25:277-283、及びLemon et al,(1999)Curr.Opin.Genet.Dev.9:499-504を参照されたい。追加の例となる活性化ドメインには、OsGAI、HALF-1、Cl、AP1、ARF-5、-6、-1、及び-8、CPRF1、CPRF4、MYC-RP/GP、ならびにTRAB1が含まれるが、これらに限定されない。例えば、Ogawa et al,(2000)Gene 245:21-29、Okanami et al,(1996)Genes Cells 1:87-99、Goff et al,(1991)Genes Dev.5:298-309、Cho et al,(1999)Plant Mol Biol 40:419-429、Ulmason et al,(1999)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 96:5844-5849、Sprenger-Haussels et al,(2000)Plant J.22:1-8、Gong et al,(1999)Plant Mol.Biol.41:33-44、及びHobo et al.,(1999)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 96:15,348-15,353を参照されたい。
【0476】
遺伝子抑制因子を作製するために使用され得る、例となる抑制ドメインには、KRAB A/B、KOX、TGF-ベータ誘導性初代遺伝子(TIEG)、v-erbA、SID、MBD2、MBD3、DNMTファミリーのメンバー(例えば、DNMT1、DNMT3A、DNMT3B、DNMT3L等)、Rb、及びMeCP2が含まれるが、これらに限定されない。例えば、Bird et al,(1999)Cell 99:451-454、Tyler et al,(1999)Cell 99:443-446、Knoepfler et al,(1999)Cell 99:447-450、及びRobertson et al,(2000)Nature Genet.25:338-342を参照されたい。追加の例となる抑制ドメインには、ROM2及びAtHD2Aが含まれるが、これらに限定されない。例えば、Chem et al,(1996)Plant Cell 8:305-321、及びWu et al,(2000)Plant J.22:19-27を参照されたい。
【0477】
一部の事例では、ドメインは、染色体の後成的制御に関与する。一部の実施形態では、ドメインは、核局在性のヒストンアセチルトランスフェラーゼ(HAT)(例えば、A型)、例えば、MYSTファミリーメンバーMOZ、Ybf2/Sas3、MOF、及びTip60、GNATファミリーメンバーGcn5またはpCAF、p300ファミリーメンバーCBP、p300、またはRtt109(Bemdsen and Denu(2008)Curr Opin Struct Biol 18(6):682-689)である。他の事例では、ドメインは、ヒストンデアセチラーゼ(HD AC)、例えば、クラスI(HDAC-l、2、3、及び8)、クラスII(HDAC IIA(HDAC-4、5、7及び9)、HD AC IIB(HDAC 6及び10))、クラスIV(HDAC-l 1)、クラスIII(別名、サーチュイン(SIRT);SIRT1~7)である(Mottamal et al.,(2015)Molecules 20(3):3898-3941を参照されたい)。一部の実施形態で使用される別のドメインは、ヒストンホスホリラーゼまたはキナーゼであり、例としては、MSK1、MSK2、ATR、ATM、DNA-PK、Bubl、VprBP、IKK-a、PKCpi、Dik/Zip、JAK2、PKC5、WSTF、及びCK2が挙げられる。一部の実施形態では、メチル化ドメインが使用され、これはEzh2、PRMT1/6、PRMT5/7、PRMT 2/6、CARM1、set7/9、MLL、ALL-1、Suv 39h、G9a、SETDB1、Ezh2、Set2、Dotl、PRMT1/6、PRMT5/7、PR-Set7、及びSuv4-20h等の群から選定され得る。SUMO化及びビオチン化に関与するドメイン(Lys9、13、4、18、及び12)もまた一部の実施形態で使用され得る(概説については、Kousarides(2007)Cell 128:693-705を参照されたい)。
【0478】
融合分子は、当業者に周知であるクローニング方法及び生化学的コンジュゲーション方法によって構築される。融合分子は、DNA結合ドメイン及び機能的ドメイン(例えば、転写活性化または抑制ドメイン)を含む。融合分子はまた、任意選択で、核局在化シグナル(例えば、SV40中型T抗原からのシグナル等)及びエピトープタグ(例えば、FLAG及びヘマグルチニン等)を含む。融合タンパク質(及びそれらをコードする核酸)は、融合体の構成要素の間で翻訳リーディングフレームが保存されるように設計される。
【0479】
一方で機能的ドメイン(またはその機能的断片)のポリペプチド構成要素と、他方で非タンパク質DNA結合ドメイン(例えば、抗生物質、インターカレーター、副溝結合剤、核酸)との間の融合体は、当業者に既知の生化学的コンジュゲーション方法によって構築される。例えば、Pierce Chemical Company(Rockford,IL)Catalogueを参照されたい。副溝結合剤とポリペプチドとの間の融合体を作製するための方法及び組成物が記載されている。Mapp et al,(2000)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 97:3930-3935。同様に、ポリペプチド構成要素である機能ドメインと関連付けてsgRNA核酸である構成要素を含むCRISPR/Cas TF及びヌクレアーゼもまた、当業者に既知であるとともに、本明細書に詳述される。
【0480】
本明細書では、野生型T細胞と比べて低減されたHLA-A、HLA-B、HLA-C、CIITA、TCR-アルファ、及び/またはTCR-ベータの発現を含む非活性化T細胞が提供され、ここで、活性化T細胞は、キメラ抗原受容体(CAR)をコードする第1の遺伝子をさらに含む。
【0481】
一部の実施形態では、非活性化T細胞は、抗CD3抗体、抗CD28抗体、T細胞活性化サイトカイン、または可溶性T細胞共刺激分子で処理されていない。一部の実施形態では、非活性化T細胞は、活性化マーカーを発現しない。一部の実施形態では、非活性化T細胞は、CD3及びCD28を発現し、ここで、CD3及び/またはCD28は、不活性である。
【0482】
一部の実施形態では、抗CD3抗体は、OKT3である。一部の実施形態では、抗CD28抗体は、CD28.2である。一部の実施形態では、T細胞活性化サイトカインは、IL-2、IL-7、IL-15、及びIL-21からなるT細胞活性化サイトカインの群から選択される。一部の実施形態では、可溶性T細胞共刺激分子は、抗CD28抗体、抗CD80抗体、抗CD86抗体、抗CD137L抗体、及び抗ICOS-L抗体からなる可溶性T細胞共刺激分子の群から選択される。
【0483】
一部の実施形態では、非活性化T細胞は、初代T細胞である。他の実施形態では、非活性化T細胞は、本技術の低免疫原性細胞から分化させられる。一部の実施形態では、T細胞は、CD8 T細胞である。
【0484】
一部の実施形態では、第1の遺伝子は、CD8結合因子を含むレンチウイルスベクターによって運搬される。一部の実施形態では、第1の遺伝子は、CARは、CD19特異的CAR及びCD22特異的CARからなる群から選択される。一部の実施形態では、CARは、二重特異性CARである。一部の実施形態では、二重特異性CARは、CD19/CD22二重特異性CARである。
【0485】
一部の実施形態では、第1の遺伝子及び/または第2の遺伝子は、CD8結合因子を含むレンチウイルスベクターによって運搬される。一部の実施形態では、第1の遺伝子及び/または第2の遺伝子は、フソゲン媒介性送達、または条件付きもしくは誘導性トランスポザーゼ、条件付きもしくは誘導性PiggyBacトランスポゾン、条件付きもしくは誘導性Sleeping Beauty(SB11)トランスポゾン、条件付きもしくは誘導性Mos1トランスポゾン、及び条件付きもしくは誘導性Tol2トランスポゾンからなる群から選択されるトランスポザーゼシステムを使用して細胞に導入される。
【0486】
一部の実施形態では、非活性化T細胞は、第2の遺伝子CD47をさらに含む。一部の実施形態では、第1の遺伝子及び/または第2の遺伝子は、T細胞の少なくとも一方のアレルの特定の遺伝子座内に挿入される。一部の実施形態では、特定の遺伝子座は、セーフハーバー遺伝子座、標的遺伝子座、B2M遺伝子座、CIITA遺伝子座、TRAC遺伝子座、及びTRB遺伝子座からなる群から選択される。一部の実施形態では、CD47をコードする第2の遺伝子は、セーフハーバー遺伝子座、標的遺伝子座、B2M遺伝子座、CIITA遺伝子座、TRAC遺伝子座、及びTRB遺伝子座からなる群から選択される特定の遺伝子座内に挿入される。一部の実施形態では、CARをコードする第1の遺伝子は、セーフハーバー遺伝子座、標的遺伝子座、B2M遺伝子座、CIITA遺伝子座、TRAC遺伝子座、及びTRB遺伝子座からなる群から選択される特定の遺伝子座内に挿入される。一部の実施形態では、CD47をコードする第2の遺伝子及びCARをコードする第1の遺伝子は、異なる遺伝子座内に挿入される。一部の実施形態では、CD47をコードする第2の遺伝子及びCARをコードする第1の遺伝子は、同じ遺伝子座内に挿入される。一部の実施形態では、CD47をコードする第2の遺伝子及びCARをコードする第1の遺伝子は、B2M遺伝子座内に挿入される。一部の実施形態では、CD47をコードする第2の遺伝子及びCARをコードする第1の遺伝子は、CIITA遺伝子座内に挿入される。一部の実施形態では、CD47をコードする第2の遺伝子及びCARをコードする第1の遺伝子は、TRAC遺伝子座内に挿入される。一部の実施形態では、CD47をコードする第2の遺伝子及びCARをコードする第1の遺伝子は、TRB遺伝子座内に挿入される。一部の実施形態では、CD47をコードする第2の遺伝子及びCARをコードする第1の遺伝子は、セーフハーバーまたは標的遺伝子座内に挿入される。一部の実施形態では、セーフハーバーまたは標的遺伝子座は、CCR5遺伝子座、CXCR4遺伝子座、PPP1R12C遺伝子座、アルブミン遺伝子座、SHS231遺伝子座、CLYBL遺伝子座、Rosa遺伝子座、F3(CD142)遺伝子座、MICA遺伝子、遺伝子座MICB遺伝子、遺伝子座LRP1(CD91)遺伝子座、HMGB1遺伝子座、ABO遺伝子座、RHD遺伝子座、FUT1遺伝子座、PDGFRa遺伝子座、OLIG2遺伝子座、GFAP遺伝子座、及びKDM5D遺伝子座)からなる群から選択される。
【0487】
一部の実施形態では、非活性化T細胞は、HLA-A、HLA-B、及び/またはHLA-C抗原を発現しない。一部の実施形態では、非活性化T細胞は、B2Mを発現しない。一部の実施形態では、非活性化T細胞は、HLA-DP、HLA-DQ、及び/またはHLA-DR抗原を発現しない。一部の実施形態では、非活性化T細胞は、CIITAを発現しない。一部の実施形態では、非活性化T細胞は、TCR-アルファ及びTCR-ベータを発現しない。
【0488】
一部の実施形態では、非活性化T細胞は、TRAC遺伝子座内に挿入されたCD47をコードする第2の遺伝子及び/またはCARをコードする第1の遺伝子を含む、B2Mインデル/インデル、CIITAインデル/インデル、TRACインデル/インデル細胞である。一部の実施形態では、非活性化T細胞は、TRAC遺伝子座内に挿入されたCD47をコードする第2の遺伝子及びCARをコードする第1の遺伝子を含む、B2Mインデル/インデル、CIITAインデル/インデル、TRACインデル/インデル細胞である。一部の実施形態では、非活性化T細胞は、TRB遺伝子座内に挿入されたCD47をコードする第2の遺伝子及び/またはCARをコードする第1の遺伝子を含む、B2Mインデル/インデル、CIITAインデル/インデル、TRACインデル/インデル細胞である。一部の実施形態では、非活性化T細胞は、TRB遺伝子座内に挿入されたCD47をコードする第2の遺伝子及びCARをコードする第1の遺伝子を含む、B2Mインデル/インデル、CIITAインデル/インデル、TRACインデル/インデル細胞である。一部の実施形態では、非活性化T細胞は、B2M遺伝子座内に挿入されたCD47をコードする第2の遺伝子及び/またはCARをコードする第1の遺伝子を含む、B2Mインデル/インデル、CIITAインデル/インデル、TRACインデル/インデル細胞である。一部の実施形態では、非活性化T細胞は、B2M遺伝子座内に挿入されたCD47をコードする第2の遺伝子及びCARをコードする第1の遺伝子を含む、B2Mインデル/インデル、CIITAインデル/インデル、TRACインデル/インデル細胞である。一部の実施形態では、非活性化T細胞は、CIITA遺伝子座内に挿入されたCD47をコードする第2の遺伝子及び/またはCARをコードする第1の遺伝子を含む、B2Mインデル/インデル、CIITAインデル/インデル、TRACインデル/インデル細胞である。一部の実施形態では、非活性化T細胞は、CIITA遺伝子座内に挿入されたCD47をコードする第2の遺伝子及びCARをコードする第1の遺伝子を含む、B2Mインデル/インデル、CIITAインデル/インデル、TRACインデル/インデル細胞である。
【0489】
本明細書では、野生型T細胞と比べて低減されたHLA-A、HLA-B、HLA-C、CIITA、TCR-アルファ、及び/またはTCR-ベータの発現を含む操作されたT細胞が提供され、ここで、操作されたT細胞は、CD8結合因子を含むレンチウイルスベクターによって運搬される、キメラ抗原受容体(CAR)をコードする第1の遺伝子をさらに含む。
【0490】
一部の実施形態では、操作されたT細胞は、初代T細胞である。他の実施形態では、操作されたT細胞は、本技術の低免疫原性細胞から分化させられる。一部の実施形態では、T細胞は、CD8 T細胞である。一部の実施形態では、T細胞は、CD4 T細胞である。
【0491】
一部の実施形態では、操作されたT細胞は、活性化マーカーを発現しない。一部の実施形態では、操作されたT細胞は、CD3及びCD28を発現し、ここで、CD3及び/またはCD28は、不活性である。
【0492】
一部の実施形態では、操作されたT細胞は、抗CD3抗体、抗CD28抗体、T細胞活性化サイトカイン、または可溶性T細胞共刺激分子で処理されていない。一部の実施形態では、抗CD3抗体はOKT3であり、抗CD28抗体はCD28.2であり、T細胞活性化サイトカインは、IL-2、IL-7、IL-15、及びIL-21からなる群から選択される1つまたは複数のT細胞活性化サイトカインの群から選択され、可溶性T細胞共刺激分子は、抗CD28抗体、抗CD80抗体、抗CD86抗体、抗CD137L抗体、及び抗ICOS-L抗体からなる可溶性T細胞共刺激分子の群から選択される。一部の実施形態では、操作されたT細胞は、IL-2、IL-7、IL-15、及びIL-21からなる群から選択される1つまたは複数のT細胞活性化サイトカインで処理されていない。一部の事例では、サイトカインは、IL-2である。一部の実施形態では、1つまたは複数のサイトカインは、IL-2であり、別のサイトカインは、IL-7、IL-15、及びIL-21からなる群から選択される。
【0493】
一部の実施形態では、操作されたT細胞は、第2の遺伝子CD47をさらに含む。一部の実施形態では、第1の遺伝子及び/または第2の遺伝子は、T細胞の少なくとも一方のアレルの特定の遺伝子座内に挿入される。一部の実施形態では、特定の遺伝子座は、セーフハーバー遺伝子座、標的遺伝子座、B2M遺伝子座、CIITA遺伝子座、TRAC遺伝子座、及びTRB遺伝子座からなる群から選択される。一部の実施形態では、CD47をコードする第2の遺伝子は、セーフハーバー遺伝子座、標的遺伝子座、B2M遺伝子座、CIITA遺伝子座、TRAC遺伝子座、及びTRB遺伝子座からなる群から選択される特定の遺伝子座内に挿入される。一部の実施形態では、CARをコードする第1の遺伝子は、セーフハーバー遺伝子座、標的遺伝子座、B2M遺伝子座、CIITA遺伝子座、TRAC遺伝子座、及びTRB遺伝子座からなる群から選択される特定の遺伝子座内に挿入される。一部の実施形態では、CD47をコードする第2の遺伝子及びCARをコードする第1の遺伝子は、異なる遺伝子座内に挿入される。一部の実施形態では、CD47をコードする第2の遺伝子及びCARをコードする第1の遺伝子は、同じ遺伝子座内に挿入される。一部の実施形態では、CD47をコードする第2の遺伝子及びCARをコードする第1の遺伝子は、B2M遺伝子座、CIITA遺伝子座、TRAC遺伝子座、TRB遺伝子座、またはセーフハーバーもしくは標的遺伝子座内に挿入される。一部の実施形態では、セーフハーバーまたは標的遺伝子座は、CCR5遺伝子座、CXCR4遺伝子座、PPP1R12C遺伝子座、アルブミン遺伝子座、SHS231遺伝子座、CLYBL遺伝子座、Rosa遺伝子座、F3(CD142)遺伝子座、MICA遺伝子、遺伝子座MICB遺伝子、遺伝子座LRP1(CD91)遺伝子座、HMGB1遺伝子座、ABO遺伝子座、RHD遺伝子座、FUT1遺伝子座、PDGFRa遺伝子座、OLIG2遺伝子座、GFAP遺伝子座、及びKDM5D遺伝子座)からなる群から選択される。
【0494】
一部の実施形態では、CARは、CD19特異的CAR及びCD22特異的CARからなる群から選択される。
【0495】
一部の実施形態では、操作されたT細胞は、HLA-A、HLA-B、及び/またはHLA-C抗原を発現せず、操作されたT細胞は、B2Mを発現せず、操作されたT細胞は、HLA-DP、HLA-DQ、及び/またはHLA-DR抗原を発現せず、操作されたT細胞は、CIITAを発現せず、及び/または操作されたT細胞は、TCR-アルファ及びTCR-ベータを発現しない。
【0496】
一部の実施形態では、操作されたT細胞は、TRAC遺伝子座内、TRB遺伝子座内、B2M遺伝子座内、またはCIITA遺伝子座内に挿入されたCD47をコードする第2の遺伝子及び/またはCARをコードする第1の遺伝子を含む、B2Mインデル/インデル、CIITAインデル/インデル、TRACインデル/インデル細胞である。
【0497】
一部の実施形態では、本技術の非活性化T細胞及び/または操作されたT細胞は、対象の内部にある。他の実施形態では、本技術の非活性化T細胞及び/または操作されたT細胞は、インビトロである。
【0498】
一部の実施形態では、本技術の非活性化T細胞及び/または操作されたT細胞は、CD8結合因子を発現する。一部の実施形態では、CD8結合因子は、抗CD8抗体である。一部の実施形態では、抗CD8抗体は、マウス抗CD8抗体、ウサギ抗CD8抗体、ヒト抗CD8抗体、ヒト化抗CD8抗体、ラクダ科動物(例えば、ラマ、アルパカ、ラクダ)抗CD8抗体、及びそれらの断片からなる群から選択される。一部の実施形態では、その断片は、scFVまたはVHHである。一部の実施形態では、CD8結合因子は、CD8アルファ鎖及び/またはCD8ベータ鎖に結合する。
【0499】
一部の実施形態では、CD8結合因子は、ウイルスエンベロープに組み込まれて膜貫通ドメインに融合される。一部の実施形態では、レンチウイルスベクターは、ウイルス融合タンパク質でシュードタイピングされる。一部の実施形態では、ウイルス融合タンパク質は、その天然受容体への結合を低減するような1つまたは複数の改変を含む。
【0500】
一部の実施形態では、ウイルス融合タンパク質は、CD8結合因子に融合される。一部の実施形態では、ウイルス融合タンパク質は、CD8結合因子に融合されたニパウイルスF糖タンパク質及びニパウイルスG糖タンパク質を含む。一部の実施形態では、レンチウイルスベクターは、T細胞活性化分子またはT細胞共刺激分子を含まない。一部の実施形態では、レンチウイルスベクターは、第1の遺伝子及び/または第2の遺伝子をコードする。
【0501】
一部の実施形態では、第1の対象への移入後に、非活性化T細胞または操作されたT細胞は、第2の対象への移入後の野生型細胞と比較して低減される、(a)T細胞応答、(b)NK細胞応答、及び(c)マクロファージ応答からなる群から選択される1つまたは複数の応答を示す。一部の実施形態では、第1の対象及び第2の対象は、異なる対象である。一部の実施形態では、マクロファージ応答は、貪食である。
【0502】
一部の実施形態では、対象への移入後に、非活性化T細胞または操作されたT細胞は、対象への移入後の野生型細胞と比較して、(a)対象における低減されたTH1活性化、(b)対象における低減されたNK細胞殺傷、及び(c)対象における全PBMCによる低減された殺傷からなる群から選択される1つまたは複数を示す。
【0503】
一部の実施形態では、対象への移入後に、非活性化T細胞または操作されたT細胞は、対象への移入後の野生型細胞と比較して、(a)対象における低減されたドナー特異的抗体、(b)対象における低減されたIgMまたはIgG抗体、及び(c)対象における低減された補体依存性細胞傷害作用(CDC)からなる群から選択される1つまたは複数を誘発する。
【0504】
一部の実施形態では、非活性化T細胞または操作されたT細胞は、対象の内部で、CD8結合因子を含むレンチウイルスベクターにより形質導入される。一部の実施形態では、レンチウイルスベクターは、CAR及び/またはCD47をコードする遺伝子を運搬する。
【0505】
本明細書では、本技術の非活性化T細胞及び/または操作されたT細胞の集団と、薬学的に許容される添加剤、担体、希釈剤、または賦形剤とを含む、薬学的組成物が提供される。
【0506】
本明細書では、本技術の非活性化T細胞及び/または操作されたT細胞の集団、または本技術の1つもしくは複数の薬学的組成物を含む組成物を対象に投与することを含む方法が提供される。
【0507】
一部の実施形態では、対象は、該組成物の投与の前、後、及び/またはそれと同時にT細胞活性化処置を施与されない。一部の実施形態では、T細胞活性化処置は、リンパ球枯渇を含む。
【0508】
本明細書では、がんを患う対象を処置する方法が提供され、該方法は、本技術の非活性化T細胞及び/または操作されたT細胞の集団を含む組成物、または本技術の1つもしくは複数の薬学的組成物を対象に投与することを含み、ここで、対象は、該組成物の投与の前、後、及び/またはそれと同時にT細胞活性化処置を施与されない。一部の実施形態では、T細胞活性化処置は、リンパ球枯渇を含む。
【0509】
本明細書では、腫瘍細胞を認識し、殺傷する必要がある対象における腫瘍細胞を認識し、殺傷することができるT細胞を対象の内部で増殖させるための方法が提供され、該方法は、本技術の非活性化T細胞及び/または操作されたT細胞の集団を含む組成物、または本技術の1つもしくは複数の薬学的組成物を対象に投与することを含み、ここで、対象は、該組成物の投与の前、後、及び/またはそれと同時にT細胞活性化処置を施与されない。一部の実施形態では、T細胞活性化処置は、リンパ球枯渇を含む。
【0510】
本明細書では、対象における疾患または障害を処置するための投与レジメンが提供され、該レジメンは、本技術の非活性化T細胞及び/または操作されたT細胞の集団、または本技術の1つもしくは複数の薬学的組成物と、薬学的に許容される添加剤、担体、希釈剤、または賦形剤とを含む薬学的組成物の投与を含み、ここで、薬学的組成物は、約1~3回用量で投与される。
【0511】
ひとたび変化させられると、本明細書に記載の分子のうちのいずれかの発現の存在について、ウェスタンブロット、ELISAアッセイ、FACSアッセイ等といった既知の技法を使用してアッセイすることができる。
【0512】
Q.人工多能性幹細胞の生成
一態様では、低免疫原性多能性細胞の生産方法が本明細書で提供される。一部の実施形態では、該方法は、多能性幹細胞を生成することを含む。マウス及びヒト多能性幹細胞(iPSCと総称される;マウス細胞の場合はmiPSC、またはヒト細胞の場合はhiPSC)の生成は、一般に当該技術分野で既知である。当業者には理解されようが、iPSCの生成のための様々な異なる方法が存在する。元々の誘導は、Oct3/4、Sox2、c-Myc、及びKlf4の4つの転写因子のウイルスによる導入を使用してマウス胚性または成体線維芽細胞から行われた。Takahashi and Yamanaka Cell 126:663-676(2006)を参照されたい(参照によりその全体が、特にその中で概説される技法に関して本明細書に援用される)。それ以来、いくつかの方法が開発されてきた。概観についてはSeki et al,World J.Stem Cells 7(1):116-125(2015)、及びLakshmipathy and Vermuri,editors,Methods in Molecular Biology:Pluripotent Stem Cells,Methods and Protocols,Springer 2013を参照されたく、同文献はいずれも、参照によりそれらの全体が、とりわけhiPSCを生成するための方法(例えば、後者の参考文献の第3章を参照されたい)に関して本明細書に明示的に援用される。
【0513】
一般に、iPSCは、通常はエピソームベクターを使用して導入される、宿主細胞における1つまたは複数の再プログラミング因子の一過性発現によって生成される。これらの条件下では、少量の細胞が誘導されて、iPSCとなる(一般に、このステップの効率は低いため、選択マーカーは使用されない)。ひとたび細胞が「再プログラミング」され、多能性となると、それらはエピソームベクター(複数可)を喪失し、内在性遺伝子を使用して当該因子を産生する。
【0514】
同じく当業者には理解されようが、使用され得るまたは使用される再プログラミング因子の数は、様々であり得る。一般的に、より少数の再プログラミング因子が使用される場合、多能性状態への細胞の形質転換の効率、ならびに「多能性」は下がり、例えば、より少数の再プログラミング因子は、完全に多能性でないが、より少数の細胞種に分化することのみ可能であり得る細胞をもたらし得る。
【0515】
一部の実施形態では、単一の再プログラミング因子、OCT4が使用される。他の実施形態では、2つの再プログラミング因子、OCT4及びKLF4が使用される。他の実施形態では、3つの再プログラミング因子、OCT4、KLF4、及びSOX2が使用される。他の実施形態では、4つの再プログラミング因子、OCT4、KLF4、SOX2、及びc-Mycが使用される。他の実施形態では、SOKMNLT、すなわちSOX2、OCT4(POU5F1)、KLF4、MYC、NANOG、LIN28、及びSV40L T抗原から選択される5、6、または7つの再プログラミング因子が使用され得る。一般に、これらの再プログラミング因子遺伝子は、当該技術分野で既知であり、市販されているようなエピソームベクター上で提供される。
【0516】
一般に、当該技術分野で既知であるように、iPSCは、本明細書に記載されるような再プログラミング因子を一過性で発現させることによって、限定されないが血液細胞、線維芽細胞等といった非多能性細胞から作製される。
【0517】
R.低免疫原性表現型及び多能性の保持に関するアッセイ
ひとたび低免疫原性細胞が生成されると、それらは、WO2016183041及びWO2018132783に記載されるように、それらの低免疫原性及び/または多能性の保持に関してアッセイすることができる。
【0518】
一部の実施形態では、低免疫原性は、WO2018132783の図13及び図15に例として挙げられるようないくつかの技法を使用してアッセイされる。これらの技法は、同種異系宿主への移植、及び宿主免疫系を回避する低免疫原性多能性細胞の増殖(例えば、奇形腫)に対する監視を含む。一部の事例では、低免疫原性多能性細胞の誘導体が、ルシフェラーゼを発現するように形質導入され、次いで生物発光イメージングを使用して追跡され得る。同様に、かかる細胞に対する宿主動物のT細胞及び/またはB細胞応答が、細胞が宿主動物において免疫反応を引き起こさないことを確認するために試験される。T細胞応答は、Elispot、ELISA、FACS、PCR、またはマスサイトメトリー(CYTOF)によって評定され得る。B細胞応答または抗体応答は、FACSまたはルミネックスを使用して評定される。追加としてまたは代替として、細胞は、WO2018132783の図14及び15に一般に示されるように、それらが自然免疫応答、例えば、NK細胞による殺傷を回避する能力に関してアッセイすることができる。
【0519】
一部の実施形態では、細胞の免疫原性は、当業者に認識されるT細胞増殖アッセイ、T細胞活性化アッセイ、及びT細胞殺傷アッセイ等のT細胞イムノアッセイを使用して評価される。場合によっては、T細胞増殖アッセイは、細胞をインターフェロン-ガンマで前処理することと、細胞を標識したT細胞と共培養し、あらかじめ選択された一定時間後にT細胞集団(または増殖しているT細胞集団)の存在をアッセイすることとを含む。場合によっては、T細胞活性化アッセイは、T細胞を本明細書に概説される細胞と共培養することと、T細胞におけるT細胞活性化マーカーの発現レベルを決定することとを含む。
【0520】
本明細書に概説される細胞の免疫原性を評定するために、インビボアッセイを実施することができる。一部の実施形態では、低免疫原性細胞の生存及び免疫原性は、同種異系ヒト化免疫不全マウスモデルを使用して決定される。一部の事例では、低免疫原性多能性幹細胞は、同種異系ヒト化NSG-SGM3マウスに移植され、細胞拒絶反応、細胞生存、及び奇形腫形成に関してアッセイされる。一部の事例では、移植された低免疫原性多能性幹細胞またはその分化細胞は、マウスモデルにおいて長期生存を示す。
【0521】
細胞の低免疫原性を含めた免疫原性を決定するための追加の技法は、例えば、Deuse et al.,Nature Biotechnology,2019,37,252-258及びHan et al.,Proc Natl Acad Sci USA,2019,116(21),10441-10446に記載され、図、図の凡例、及び方法の説明を含めたこれらの開示は、参照によりそれらの全体が本明細書に援用される。
【0522】
同様に、多能性の保持は、いくつかの方式で試験される。一実施形態では、多能性は、本明細書に一般に記載されるとともに、WO2018132783の図29に示されるように、ある特定の多能性特異的因子の発現によってアッセイされる。追加としてまたは代替として、多能性細胞は、多能性の指標として1つまたは複数の細胞種に分化させられる。
【0523】
当業者には理解されようが、多能性細胞におけるMHC I機能(細胞がヒト細胞に由来する場合はHLA I)の低減は、当該技術分野で既知であるとともに下記に記載されるような技法、例えば、HLA複合体に結合する標識抗体を使用した、例えば、ヒト主要組織適合性HLAクラスI抗原のアルファ鎖に結合する市販のHLA-A、B、C抗体を使用したFACS技法を使用して、測定することができる。
【0524】
加えて、HLA I複合体が細胞表面上で発現しないことを確認するために、細胞を試験することができる。これは、上記で考察したようなHLA細胞表面の1つまたは複数の構成要素に対する抗体を使用してFACS解析によってアッセイすることができる。
【0525】
多能性細胞またはその誘導体におけるMHC II機能(細胞がヒト細胞に由来する場合はHLA II)の低減の成功は、当該タンパク質に対する抗体を使用したウェスタンブロッティング、FACS技法、RT-PCR技法等といった、当該技術分野で既知の技法を使用して測定することができる。
【0526】
加えて、HLA II複合体が細胞表面上で発現しないことを確認するために、細胞を試験することができる。ここでもまた、このアッセイは、当該技術分野で既知であるように行われ(例えば、WO2018132783の図21を参照されたい)、一般には、ヒトHLAクラスII HLA-DR、DP、及びほとんどのDQ抗原に結合する市販の抗体に基づくウェスタンブロットまたはFACS解析のいずれかを使用して行われる。
【0527】
HLA I及びII(またはMHC I及びII)の低減に加えて、本明細書で提供される低免疫原性細胞は、マクロファージの食作用及びNK細胞による殺傷に対して低減された感受性を有する。結果として生じる低免疫原性細胞は、1つまたは複数のCD24導入遺伝子の発現に起因して免疫マクロファージ及び自然経路を「回避する」。
【0528】
S.多能性幹細胞の維持
ひとたび低免疫原性多能性幹細胞が生成されると、それらは、iPSCの維持に関して既知であるように、未分化状態で維持され得る。例えば、細胞は、分化を防止するとともに多能性を維持する培養基を使用してマトリゲル上で培養され得る。加えて、それらは、多能性を維持するような条件下で培養基中にあることができる。
【0529】
T.低免疫原性人工多能性(HIP)幹細胞から分化させた細胞
ある態様では、レシピエント対象へのその後の移植用に異なる細胞種に分化させられるHIP細胞が本明細書で提供される。分化は、一般に細胞特異的マーカーの存在を評価することによって、当該技術分野で既知であるようにアッセイすることができる。当業者には理解されようが、分化した低免疫原性多能性細胞派生物は、細胞種及びこれらの細胞の最終的用途の両方に依存する当該技術分野で既知の技法を使用して移植することができる。
【0530】
1.低免疫原性多能性細胞から分化させた心細胞
本明細書では、対象(例えば、レシピエント)へのその後の移植(transplantation)または移植(engraftment)用にHIP細胞から分化させた心細胞種が提供される。当業者には理解されようが、分化のための方法は、既知の技法を使用して所望の細胞種に依存する。例となる心細胞種には、心筋細胞、結節心筋細胞、伝導心筋細胞(conducting cardiomyocyte)、稼働心筋細胞(working cardiomyocyte)、心筋細胞の前駆体細胞、心筋細胞の前駆細胞、心臓幹細胞、心筋細胞、心房心臓幹細胞、心室心臓幹細胞、心外膜細胞、造血細胞、血管内皮細胞、心内膜内皮細胞、心臓弁間質細胞、心臓ペースメーカー細胞等が含まれるが、これらに限定されない。
【0531】
一部の実施形態では、本明細書に記載の心細胞は、小児期心筋症、加齢性心筋症、拡張型心筋症、肥大型心筋症、拘束型心筋症、慢性虚血性心筋症、周産期心筋症、炎症性心筋症、特発性心筋症、他の心筋症、心筋虚血再灌流傷害、心室機能不全、心不全、うっ血性心不全、冠動脈疾患、末期心疾患、アテローム性動脈硬化症、虚血、高血圧症、再狭窄、狭心症、リウマチ性心臓、動脈炎症、心血管疾患、心筋梗塞、心筋虚血、うっ血性心不全、心筋梗塞、心虚血、心外傷、心筋虚血、血管疾患、後天性心疾患、先天性心疾患、アテローム性動脈硬化症、冠動脈疾患、機能不全の伝導系、機能不全の冠動脈、肺高血圧症、心不整脈、筋ジストロフィー、筋肉量異常、筋肉変性、心筋炎、感染性心筋炎、薬物または毒素誘発性筋肉異常、過敏性心筋炎、及び自己免疫心内膜炎からなる群から選択される心障害を処置するために、レシピエント対象に投与される。
【0532】
したがって、本明細書では、心外傷または心疾患もしくは障害の処置及び予防を必要とする対象における、心外傷または心疾患もしくは障害の処置及び予防のための方法が提供される。本明細書に記載の方法を使用して、いくつかの心疾患またはそれらの症状、例えば、心臓の構造及び/または機能への病理学的損傷をもたらすものを処置するか、改善させるか、予防するか、またはその進行を緩徐化することができる。「心疾患」、「心障害」、及び「心外傷」という用語は、本明細書で互換的に使用され、弁、内皮、梗塞領域、または心臓の他の構成要素もしくは構造を含めた心臓に関係する病態及び/または障害を指す。かかる心疾患または心臓関連疾患には、とりわけ、心筋梗塞、心不全、心筋症、先天性心臓欠陥、心臓弁疾患または機能不全、心内膜炎、リウマチ熱、僧帽弁逸脱症、感染性心内膜炎、肥大型心筋症、拡張型心筋症、心筋炎、心肥大、及び/または僧帽弁閉鎖不全症が含まれるが、これらに限定されない。
【0533】
一部の実施形態では、心筋細胞前駆体には、成熟(最終段階)心筋細胞を含む子孫を生じさせることができる細胞が含まれる。心筋細胞の前駆体細胞は、多くの場合、GATA-4、Nkx2.5、及びMEF-2ファミリーの転写因子から選択される1つまたは複数のマーカーを使用して特定することができる。一部の事例では、心筋細胞は、以下のリストからの1つまたは複数のマーカー(ときには少なくとも2、3、4、または5つのマーカー)を発現する未成熟心筋細胞または成熟心筋細胞を指す:心臓トロポニンI(cTnl)、心臓トロポニンT(cTnT)、サルコメリックミオシン重鎖(MHC)、GATA-4、Nkx2.5、N-カドヘリン、β2-アドレナリン受容体、ANF、MEF-2ファミリーの転写因子、クレアチンキナーゼMB(CK-MB)、ミオグロビン、及び心房性ナトリウム利尿因子(ANF)。一部の実施形態では、心細胞は、自発的な周期的収縮活動を示す。場合によっては、その心細胞が、適切なCa2+濃度及び電解質の均衡を有する好適な組織培養環境で培養される場合、細胞は、培養培地にいずれの追加の構成成分も添加する必要なしに、細胞の一軸方向に周期的様態で収縮し、次いで収縮を解除することが観察され得る。一部の実施形態では、心細胞は、低免疫原性心細胞である。
【0534】
一部の実施形態では、インビトロでの分化によって低免疫原性多能性(HIP)細胞の集団から低免疫原性心細胞の集団を生産する方法は、(a)GSK阻害剤を含む培養培地中でHIP細胞の集団を培養することと、(b)WNTアンタゴニストを含む培養培地中でHIP細胞の集団を培養して、心臓前駆細胞の集団を生産することと、(c)インスリンを含む培養培地中で心臓前駆細胞の集団を培養して、低免疫心細胞の集団を生産することとを含む。一部の実施形態では、GSK阻害剤は、CHIR-99021、その誘導体、またはそのバリアントである。一部の事例では、GSK阻害剤は、約2mM~約10mMの範囲の濃度である。一部の実施形態では、WNTアンタゴニストは、IWR1、その誘導体、またはそのバリアントである。一部の事例では、WNTアンタゴニストは、約2mM~約10mMの範囲の濃度である。
【0535】
一部の実施形態では、低免疫原性心細胞の集団は、非心細胞から単離される。一部の実施形態では、低免疫原性心細胞の単離された集団は、投与前に増殖させられる。ある特定の実施形態では、低免疫原性心細胞の単離された集団は、投与前に増殖させられ、凍結保存される。
【0536】
一部の実施形態では、多能性細胞は、心血管疾患に対処するために心筋細胞に分化させられる。hiPSCの心筋細胞への分化のための技法は、当該技術分野で既知であり、実施例で考察される。分化は、一般に心筋細胞関連もしくは特異的マーカーの存在を評価することによって、または機能的に測定することによって、当該技術分野で既知であるようにアッセイすることができる。例えば、Loh et al.,Cell,2016,166,451-467を参照されたい(参照によりその全体が、特に心筋細胞を含む幹細胞を分化させる方法に関して本明細書に援用される)。
【0537】
人工多能性幹細胞または多能性幹細胞を心細胞に分化させるための他の有用な方法は、例えば、US2017/0152485、US2017/0058263、US2017/0002325、US2016/0362661、US2016/0068814、US9,062,289、US7,897,389、及びUS7,452,718に記載される。人工多能性幹細胞または多能性幹細胞から心細胞を生産するための追加の方法は、例えば、Xu et al.,Stem Cells and Development,2006,15(5):631-9、Burridge et al.,Cell Stem Cell,2012,10:16-28、及びChen et al.,Stem Cell Res,2015,l5(2):365-375に記載される。
【0538】
種々の実施形態では、低免疫原性心細胞は、BMP経路阻害剤、WNTシグナル伝達活性化剤、WNTシグナル伝達阻害剤、WNTアゴニスト、WNTアンタゴニスト、Src阻害剤、EGFR阻害剤、PCK活性化剤、サイトカイン、成長因子、心臓作用性剤(cardiotropic agent)、化合物等を含む培養培地中で培養され得る。
【0539】
WNTシグナル伝達活性化剤には、CHIR99021が含まれるが、これらに限定されない。PCK活性化剤には、PMAが含まれるが、これらに限定されない。WNTシグナル伝達阻害剤には、KY02111、SO3031(KY01-I)、SO2031(KY02-I)、及びSO3042(KY03-I)、及びXAV939から選択される化合物が含まれるが、これらに限定されない。Src阻害剤には、A419259が含まれるが、これらに限定されない。EGFR阻害剤には、AG1478が含まれるが、これらに限定されない。
【0540】
iPSCから心細胞を生成するための薬剤の非限定的な例としては、アクチビンA、BMP4、Wnt3a、VEGF、可溶性フリズルドタンパク質、シクロスポリンA、アンジオテンシンII、フェニルエフリン、アスコルビン酸、ジメチルスルホキシド、5-アザ-2’-デオキシシチジン等が挙げられる。
【0541】
本明細書で提供される細胞は、低免疫原性多能性細胞の心細胞への分化を補助及び/または促進するための合成表面等の表面上で培養することができる。一部の実施形態では、表面は、選択される1つまたは複数のアクリレートモノマーのホモポリマーまたはコポリマーを含むがこれらに限定されない、ポリマー材料を含む。アクリレートモノマー及びメタクリレートモノマーの非限定的な例としては、テトラ(エチレングリコール)ジアクリレート、グリセロールジメタクリレート、1,4-ブタンジオールジメタクリレート、ポリ(エチレングリコール)ジアクリレート、ジ(エチレングリコール)ジメタクリレート、テトラ(エチレン(ethyiene)グリコール)ジメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールプロポキシレートジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパンベンゾエートジアクリレート、トリメチロールプロパンエトキシレート(eihoxylate)(1 EO/QH)メチル、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノールジアクリレート、ネオペンチルグリコールエトキシレート(exhoxylate)ジアクリレート、及びトリメチロールプロパントリアクリレートが挙げられる。アクリレートは、当該技術分野で既知のように合成されるか、またはPolysciences,Inc.、Sigma Aldrich,Inc.、及びSartomer,Inc.等の商業的供給業者から得られる。
【0542】
ポリマー材料は、支持材料の表面上に分散させることができる。細胞を培養するのに好適である有用な支持材料には、セラミック物質、ガラス、プラスチック、ポリマーもしくはコポリマー、それらの任意の組み合わせ、または1つの材料の別の材料上へのコーティングが含まれる。一部の事例では、ガラスには、ソーダ石灰ガラス、パイレックスガラス、バイコールガラス、石英ガラス、ケイ素、またはこれらの誘導体もしくは同等物が含まれる。
【0543】
一部の事例では、プラスチック、または樹枝状ポリマーを含めたポリマーには、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(酢酸ビニル-無水マレイン酸)、ポリ(ジメチルシロキサン)モノメタクリレート、環状オレフィンポリマー、フルオロカーボンポリマー、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンイミン、またはこれらの誘導体もしくは同等物が含まれる。一部の事例では、コポリマーには、ポリ(酢酸ビニル-co-無水マレイン酸)、ポリ(スチレン-co-無水マレイン酸)、ポリ(エチレン-co-アクリル酸)、またはこれらの誘導体もしくは同等物が含まれる。
【0544】
本明細書に記載されるように調製された心細胞の有効性は、処置なしでは左室壁組織の55%が瘢痕組織となることにつながる心臓凍結損傷の動物モデルにおいて評定することができる(Li et al.,Ann.Thorac.Surg.62:654,1996、Sakai et al.,Ann.Thorac.Surg.8:2074,1999、Sakai et al.,Thorac.Cardiovasc.Surg.118:715,1999)。処置の成功は、瘢痕の面積を低減し、瘢痕の拡大を制限し、収縮期圧、拡張期圧、及び最大圧によって決定されるような心臓機能を改善し得る。心外傷はまた、左前下行枝の遠位部において塞栓コイルを使用してモデル化することもでき(Watanabe et al.,Cell Transplant.7:239,1998)、処置の有効性を組織学的検査及び心機能によって評価することができる。
【0545】
一部の実施形態では、投与は、対象の心臓組織内への埋め込み、静脈内注射、動脈内注射、冠動脈内注射、筋肉内注射、腹腔内注射、心筋内注射、経心内膜注射、経心外膜注射、または輸注を含む。
【0546】
一部の実施形態では、操作された心細胞を投与される患者はまた、心臓薬も投与される。併用療法において使用するのに好適である心臓薬の例示的な例としては、成長因子、成長因子をコードするポリヌクレオチド、血管新生剤、カルシウムチャネル遮断薬、血圧降下剤、有糸分裂阻害剤、変力作用剤、アテローム生成抑制剤、抗凝血薬、ベータ遮断薬、抗不整脈剤、抗炎症剤、血管拡張剤、血栓溶解剤、強心配糖体、抗生物質、抗ウイルス剤、抗真菌剤、原虫を阻害する薬剤、硝酸塩、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、アンジオテンシンII受容体アンタゴニスト、脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP);抗新生細胞剤、ステロイド等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0547】
本明細書で提供される方法による療法の効果は、様々な方式で監視され得る。例えば、心電図(ECG)またはホルターモニターを利用して、処置の有効性を決定することができる。ECGは、心臓のリズム及び電気インパルスの尺度であり、療法が対象の心臓における電気伝導を改善もしくは維持、予防、またはその性能低下を緩徐化したかどうかを決定するために非常に有効で非侵襲的な方法である。心臓異常、不整脈障害等を監視するために長時間にわたって装着され得る携帯型ECGであるホルターモニターの使用もまた、療法の有効性を評定するための信頼のおける方法である。ECGまたは核研究を使用して、心室機能の改善を決定することができる。
【0548】
2.低免疫原性多能性細胞から分化させた神経細胞
本明細書では、レシピエント対象へのその後の移植(transplantation)または移植(engraftment)に有用である、HIP細胞から分化させた異なる神経細胞種が提供される。当業者には理解されようが、分化のための方法は、既知の技法を使用して所望の細胞種に依存する。例となる神経細胞種には、脳内皮細胞、ニューロン(例えば、ドーパミン作動性ニューロン)、グリア細胞等が含まれるが、これらに限定されない。
【0549】
一部の実施形態では、人工多能性幹細胞の分化は、目的とする特定の所望の系列及び/または細胞種にそれらの分化を標的指向化するように、特定の細胞系列(複数可)を生み出すことが知られている特定の因子に細胞を曝露または接触させることによって実施される。一部の実施形態では、最終分化した細胞は、特化した表現型の特性または特徴を示す。ある特定の実施形態では、本明細書に記載の幹細胞は、神経外胚葉性、ニューロン、神経内分泌、ドーパミン作動性、コリン作動性、セロトニン作動性(5-HT)、グルタミン酸作動性、GABA作動性、アドレナリン作動性、ノルアドレナリン作動性、交感神経ニューロン、副交感神経ニューロン、交感神経末梢ニューロン、またはグリア細胞集団に分化させられる。一部の事例では、グリア細胞集団には、ミクログリア(例えば、アメボイド型、ラミファイド型、活性化した食作用性、及び活性化した非食作用性)細胞集団、もしくはマクログリア(中枢神経系細胞:星状細胞、乏突起膠細胞、上衣細胞、及び放射状グリア;ならびに末梢神経系細胞:シュワン細胞及び衛星細胞)細胞集団、または前述の細胞のうちのいずれかの前駆体及び前駆細胞が含まれる。
【0550】
異なる種類の神経細胞を生成するためのプロトコルは、PCT出願第WO2010144696号、米国特許第9,057,053号、同第9,376,664号、及び同第10,233,422号に記載される。低免疫原性多能性細胞を分化させるための方法の追加の説明は、例えば、Deuse et al.,Nature Biotechnology,2019,37,252-258及びHan et al.,Proc Natl Acad Sci USA,2019,116(21),10441-10446に見出すことができる。神経学的障害または神経学的病態の動物モデルにおける神経細胞移植の効果を決定するための方法は、以下の参考文献に記載される:脊髄損傷については、Curtis et al.,Cell Stem Cell,2018,22,941-950、パーキンソン病については、Kikuchi et al.,Nature,2017,548:592-596、ALSについては、Izrael et al.,Stem Cell Research,2018,9(1):152及びIzrael et al.,IntechOpen,DOI:10.5772/intechopen.72862、癲癇については、Upadhya et al.,PNAS,2019,116(1):287-296。
【0551】
a.脳内皮細胞
一部の実施形態では、神経細胞は、パーキンソン病、ハンチントン病、多発性硬化症、他の神経変性疾患または病態、注意欠陥多動性障害(ADHD)、トゥレット症候群(TS)、統合失調症、精神病、うつ病、他の神経精神性障害を処置するために対象に投与される。一部の実施形態では、本明細書に記載の神経細胞は、脳卒中を処置または改善するために対象に投与される。一部の実施形態では、ニューロン及びグリア細胞が、筋萎縮性側索硬化症(ALS)を有する対象に投与される。一部の実施形態では、脳内皮細胞が、脳出血の症状または影響を緩和するために投与される。一部の実施形態では、ドーパミン作動性ニューロンが、パーキンソン病を有する患者に投与される。一部の実施形態では、ノルアドレナリン作動性ニューロン、GABA作動性介在ニューロンが、癲癇発作を経験した患者に投与される。一部の実施形態では、運動ニューロン、介在ニューロン、シュワン細胞、乏突起膠細胞、及びミクログリアが、脊髄損傷を経験した患者に投与される。
【0552】
一部の実施形態では、脳内皮細胞(EC)、その前駆体、及び前駆細胞は、脳ECまたは神経細胞の生成を促進する1つまたは複数の因子を含む培地中で細胞を培養することによって、表面上で多能性幹細胞(例えば、人工多能性幹細胞)から分化させられる。一部の事例では、培地は、以下のうちの1つまたは複数を含む:CHIR-99021、VEGF、塩基性FGF(bFGF)、及びY-27632。一部の実施形態では、培地は、神経細胞の生存及び機能性を促進するように設計されたサプリメントを含む。
【0553】
一部の実施形態では、脳内皮細胞(EC)、その前駆体、及び前駆細胞は、非馴化または馴化培地中で細胞を培養することによって、表面上で多能性幹細胞から分化させられる。一部の事例では、培地は、分化を促進または容易にする因子または低分子を含む。一部の実施形態では、培地は、VEGR、FGF、SDF-1、CHIR-99021、Y-27632、SB431542、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される1つまたは複数の因子または低分子を含む。一部の実施形態では、分化用の表面は、1つまたは複数の細胞外マトリックスタンパク質を含む。表面を1つまたは複数の細胞外マトリックスタンパク質でコーティングすることができる。細胞は、懸濁液中で分化させ、次いで細胞生存を容易にするためにマトリゲル、ゼラチン、またはフィブリン/トロンビン形態等のゲルマトリックス形態に入れることができる。場合によっては、分化は、一般に細胞特異的マーカーの存在を評価することによって、当該技術分野で既知であるようにアッセイされる。
【0554】
一部の実施形態では、脳内皮細胞は、CD31、VEカドヘリン、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される因子を発現または分泌する。ある特定の実施形態では、脳内皮細胞は、CD31、CD34、CD45、CD117(c-kit)、CD146、CXCR4、VEGF、SDF-1、PDGF、GLUT-1、PECAM-1、eNOS、クローディン-5、オクルディン、ZO-1、p-糖タンパク質、フォン・ヴィレブランド因子、VE-カドヘリン、低密度リポタンパク質受容体LDLR、低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質1 LRP1、インスリン受容体INSR、レプチン受容体LEPR、基底細胞接着分子BCAM、トランスフェリン受容体TFRC、終末糖化産物特異的受容体AGER、レチノール取り込み受容体STRA6、大型中性アミノ酸輸送体小サブユニット1 SLC7A5、興奮性アミノ酸輸送体3 SLC1A1、ナトリウム共役中性アミノ酸輸送体5 SLC38A5、溶質キャリアファミリー16メンバー1 SLC16A1、ATP依存性トランスロカーゼABCB1、ATP-ABCC2結合カセット輸送体ABCG2、多剤耐性関連タンパク質1 ABCC1、小管多重特異性有機アニオン輸送体1 ABCC2、多剤耐性関連タンパク質4 ABCC4、及び多剤耐性関連タンパク質5 ABCC5からなる群から選択される因子のうちの1つまたは複数を発現または分泌する。
【0555】
一部の実施形態では、脳ECは、タイトジャンクションの高発現、高い電気抵抗、低窓性、小さな血管周囲腔、インスリン及びトランスフェリン受容体の高い分布率、ならびに多数のミトコンドリアからなる群から選択される特徴のうちの1つまたは複数を特徴とする。
【0556】
一部の実施形態では、脳ECは、正の選択戦略を使用して選択または精製される。一部の事例では、脳ECは、限定されないがCD31等の内皮細胞マーカーに照らし合わせて選別される。換言すれば、CD31陽性脳ECが単離される。一部の実施形態では、脳ECは、負の選択戦略を使用して選択または精製される。一部の実施形態では、TRA-1-60及びSSEA-1を含むがこれらに限定されない多能性マーカーを発現する細胞について選択することによって、未分化または多能性幹細胞が除去される。
【0557】
b.ドーパミン作動性ニューロン
一部の実施形態では、本明細書に記載のHIP細胞は、ニューロン幹細胞、ニューロン前駆細胞、未成熟ドーパミン作動性ニューロン、及び成熟ドーパミン作動性ニューロンを含めたドーパミン作動性ニューロンに分化させられる。
【0558】
場合によっては、「ドーパミン作動性ニューロン」という用語は、ドーパミン合成のための律速酵素であるチロシンヒドロキシラーゼ(TH)を発現するニューロン細胞を含む。一部の実施形態では、ドーパミン作動性ニューロンは、神経伝達物質ドーパミンを分泌し、ドーパミンヒドロキシラーゼをほとんどまたは全く発現しない。ドーパミン作動性(DA)ニューロンは、以下のマーカーのうちの1つまたは複数を発現することができる:ニューロン特異的エノラーゼ(NSE)、1-芳香族アミノ酸脱炭酸酵素、小胞モノアミン輸送体2、ドーパミン輸送体、Nurr-l、及びドーパミン-2受容体(D2受容体)。ある特定の実例では、「神経幹細胞」という用語は、神経細胞経路に沿って部分的に分化させられており、例えば、ネスチンを含めた1つまたは複数の神経マーカーを発現する、多能性細胞の集団を含む。神経幹細胞は、ニューロンまたはグリア細胞(例えば、星状細胞及び乏突起膠細胞)に分化させられてもよい。「神経前駆細胞」という用語は、FOXA2及び低レベルのb-チューブリンを発現するが、チロシンヒドロキシラーゼは発現しない培養細胞を含む。かかる神経前駆細胞は、本明細書に記載の因子等の適切な因子の培養時に、様々なニューロンサブタイプ、特に様々なドーパミン作動性ニューロンサブタイプに分化する能力を有する。
【0559】
一部の実施形態では、HIP細胞に由来するDAニューロンは、神経変性疾患または病態を処置するために患者、例えば、ヒト患者に投与される。場合によっては、神経変性疾患または病態は、パーキンソン病、ハンチントン病、及び多発性硬化症からなる群から選択される。他の実施形態では、DAニューロンは、注意欠陥多動性障害(ADHD)、トゥレット症候群(TS)、統合失調症、精神病、及びうつ病等の神経精神性障害の1つまたは複数の症状を処置または改善するために使用される。なおも他の実施形態では、DAニューロンは、障害のあるDAニューロンを有する患者を処置するために使用される。
【0560】
一部の実施形態では、DAニューロン、その前駆体、及び前駆細胞は、1つまたは複数の因子または添加剤を含む培地中で幹細胞を培養することによって多能性幹細胞から分化させられる。DAニューロンの分化、成長、増殖、維持、及び/または成熟を促進する有用な因子及び添加剤には、Wntl、FGF2、FGF8、FGF8a、ソニックヘッジホッグ(SHH)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、トランスフォーミング増殖因子(TGF-a)、TGF-b、インターロイキン1ベータ、グリア細胞株由来神経栄養因子(GDNF)、GSK-3阻害剤(例えば、CHIR-99021)、TGF-b阻害剤(例えば、SB-431542)、B-27サプリメント、ドルソモルフィン、プルモルファミン、ノギン、レチノイン酸、cAMP、アスコルビン酸、ニュールツリン、ノックアウト血清置換、N-アセチルシステイン、c-kitリガンド、それらの改変形態、それらの模倣体、それらの類似体、及びそれらのバリアントが含まれるが、これらに限定されない。一部の実施形態では、DAニューロンは、WNT経路、NOTCH経路、SHH経路、BMP経路、FGF経路等を活性化または阻害する1つまたは複数の因子の存在下で分化させられる。分化プロトコル及びその詳細な説明は、例えば、US9,968,637、US7,674,620、Kim et al.,Nature,2002,418,50-56、Bjorklund et al.,PNAS,2002,99(4),2344-2349、Grow et al.,Stem Cells Transl Med.2016,5(9):1133-44、ならびにCho et al,PNAS,2008,105:3392-3397で提供され、実施例、方法、図、及び結果の詳細な説明を含めたそれらの全体的な開示は、参照により本明細書に援用される。
【0561】
一部の実施形態では、低免疫原性ドーパミン作動性ニューロンの集団は、非ニューロン細胞から単離される。一部の実施形態では、低免疫原性ドーパミン作動性ニューロンの単離された集団は、投与前に増殖させられる。ある特定の実施形態では、低免疫原性ドーパミン作動性ニューロンの単離された集団は、投与前に増殖させられ、凍結保存される。
【0562】
DAの分化を特性評価及び監視するとともに、DAの表現型を評定するために、任意の数の分子マーカー及び遺伝子マーカーの発現を評価することができる。例えば、遺伝子マーカーの存在は、当業者に既知の種々の方法によって決定することができる。分子マーカーの発現は、限定されないが、qPCRベースのアッセイ、イムノアッセイ、免疫細胞化学アッセイ、免疫ブロットアッセイ等といった定量法によって決定することができる。DAニューロンに対する例となるマーカーには、TH、b-チューブリン、ペアードボックスタンパク質(Pax6)、インスリン遺伝子エンハンサータンパク質(Isl1)、ネスチン、ジアミノベンジジン(DAB)、Gタンパク質活性化内向き整流カリウムチャネル2(GIRK2)、微小管関連タンパク質2(MAP-2)、NURR1、ドーパミン輸送体(DAT)、フォークヘッドボックスタンパク質A2(FOXA2)、FOX3、ダブルコルチン、及びLIMホメオボックス転写因子l-ベータ(LMX1B)等が含まれるが、これらに限定されない。一部の実施形態では、DAニューロンは、コリン、FOXA2、TuJ1、NURR1、及びそれらの任意の組み合わせから選択されるマーカーのうちの1つまたは複数を発現する。
【0563】
一部の実施形態では、DAニューロンは、細胞の電気生理学的活性に従って評定される。細胞の電気生理学は、当業者に既知のアッセイを使用することによって評価することができる。例えば、全細胞及び穿孔パッチクランプ法、細胞の電気生理学的活性を検出するためのアッセイ、細胞の活動電位の規模及び持続期間を測定するためのアッセイ、ならびにDA細胞のドーパミン産生を検出するための機能アッセイ。
【0564】
一部の実施形態では、DAニューロンの分化は、自発性律動的活動電位、及び脱分極電流の注入時のスパイク周波数適応を伴う高周波活動電位を特徴とする。他の実施形態では、DAの分化は、ドーパミンの産生を特徴とする。産生されるドーパミンのレベルは、それが最大振幅の半分に達した時点での活動電位の幅(スパイク半値幅)を測定することによって算出される。
【0565】
一部の実施形態では、分化したDAニューロンは、患者において静脈内にまたは特定の箇所での注射によってのいずれかで移植される。一部の実施形態では、分化したDA細胞は、パーキンソン病をもたらした変性を有するDAニューロンを置換するために、脳の黒質(特に緻密部内にまたはそれに隣接して)、腹側被蓋野(VTA)、尾状核、被殻、側坐核、視床下核、またはそれらの任意の組み合わせに移植される。分化したDA細胞は、細胞懸濁液として標的領域に注射することができる。代替として、分化したDA細胞は、支持マトリックスまたは足場に(かかる送達デバイス内に収容された場合)埋め込むことができる。一部の実施形態では、足場は、生分解性である。他の実施形態では、足場は、生分解性ではない。足場は、天然または合成(人工)材料を含み得る。
【0566】
DAニューロンの送達は、限定されないがリポソーム、微粒子、またはマイクロカプセル等の好適なビヒクルを使用することによって達成することができる。他の実施形態では、分化したDAニューロンは、等張性賦形剤を含む薬学的組成物中で投与される。薬学的組成物は、ヒト投与のために十分に滅菌された条件下で調製される。一部の実施形態では、HIP細胞から分化させたDAニューロンは、薬学的組成物の形態で供給される。細胞組成物の治療用製剤の一般原則は、Cell Therapy:Stem Cell Transplantation,Gene Therapy,and Cellular Immunotherapy,G.Morstyn & W.Sheridan eds,Cambridge University Press,1996、及びHematopoietic Stem Cell Therapy,E.Ball,J.Lister & P.Law,Churchill Livingstone,2000に見出され、これらの開示は参照により本明細書に援用される。
【0567】
幹細胞に由来するニューロン有用な説明及びその作製方法は、例えば、Kirkeby et al.,Cell Rep,2012,1:703-714、Kriks et al.,Nature,2011,480:547-551、Wang et al.,Stem Cell Reports,2018,11(1):171-182、Lorenz Studer,“Chapter 8-Strategies for Bringing Stem Cell-Derived Dopamine Neurons to the clinic-The NYSTEM Trial”in Progress in Brain Research,2017,volume 230,pg.191-212、Liu et al.,Nat Protoc,2013,8:1670-1679、Upadhya et al.,Curr Protoc Stem Cell Biol,38,2D.7.1-2D.7.47、米国公開出願第20160115448号、ならびにUS8,252,586、US8,273,570、US9,487,752、及びUS10,093,897に見出すことができ、これらの内容は、参照によりそれらの全体が本明細書に援用される。
【0568】
DAニューロンに加えて、他のニューロン細胞、その前駆体、及び前駆細胞が、1つまたは複数の因子または添加剤を含む培地中で細胞を培養することによって、本明細書に概説されるHIP細胞から分化させられ得る。因子及び添加剤の非限定的な例としては、GDNF、BDNF、GM-CSF、B27、塩基性FGF、塩基性EGF、NGF、CNTF、SMAD阻害剤、Wntアンタゴニスト、SHHシグナル伝達活性化剤、及びそれらの任意の組み合わせが挙げられる。一部の実施形態では、SMAD阻害剤は、SB431542、LDN-193189、ノギンPD169316、SB203580、LY364947、A77-01、A-83-01、BMP4、GW788388、GW6604、SB-505124、レルデリムマブ、メテリムマブ、GC-I008、AP-12009、AP-110I4、LY550410、LY580276、LY364947、LY2109761、SB-505124、E-616452(RepSox ALK阻害剤)、SD-208、SMI6、NPC-30345、K26894、SB-203580、SD-093、アクチビン-M108A、P144、可溶性TBR2-Fc、DMH-1、ドルソモルフィン二塩酸塩、及びそれらの誘導体からなる群から選択される。一部の実施形態では、Wntアンタゴニストは、XAV939、DKK1、DKK-2、DKK-3、DKK-4、SFRP-1、SFRP-2、SFRP-3、SFRP-4、SFRP-5、WIF-1、Soggy、IWP-2、IWR1、ICG-001、KY0211、Wnt-059、LGK974、IWP-L6、及びその誘導体からなる群から選択される。一部の実施形態では、SHHシグナル伝達活性化因子は、平滑化アゴニスト(SAG)、SAG類似体、SHH、C25-SHH、C24-SHH、プルモルファミン、Hg-Ag、及び/またはそれらの誘導体からなる群から選択される。
【0569】
一部の実施形態では、ニューロンは、グルタミン酸イオンチャネル型受容体NMDA型サブユニット1 GRIN1、グルタミン酸脱炭酸酵素1 GAD1、ガンマ-アミノ酪酸GABA、チロシンヒドロキシラーゼTH、LIMホメオボックス転写因子1-アルファLMX1A、フォークヘッドボックスタンパク質O1 FOXO1、フォークヘッドボックスタンパク質A2 FOXA2、フォークヘッドボックスタンパク質O4 FOXO4、FOXG1、2’,3’-環状-ヌクレオチド3’-ホスホジエステラーゼCNP、ミエリン塩基性タンパク質MBP、チューブリンベータ鎖3 TUB3、チューブリンベータ鎖3 NEUN、溶質キャリアファミリー1メンバー6 SLC1A6、SST、PV、カルビンジン、RAX、LHX6、LHX8、DLX1、DLX2、DLX5、DLX6、SOX6、MAFB、NPAS1、ASCL1、SIX6、OLIG2、NKX2.1、NKX2.2、NKX6.2、VGLUT1、MAP2、CTIP2、SATB2、TBR1、DLX2、ASCL1、ChAT、NGFI-B、c-fos、CRF、RAX、POMC、ヒポクレチン、NADPH、NGF、Ach、VAChT、PAX6、EMX2p75、CORIN、TUJ1、NURR1、及び/またはそれらの任意の組み合わせからなる群から選択されるマーカーのうちの1つまたは複数を発現する。
【0570】
c.グリア細胞
一部の実施形態では、記載される神経細胞には、限定されないが、多能性幹細胞を治療上有効なグリア細胞等に分化させることによって生産されるミクログリア、星状細胞、乏突起膠細胞、上衣細胞、及びシュワン細胞、そのグリア前駆体、及びグリア前駆細胞等のグリア細胞が含まれる。低免疫原性多能性幹細胞の分化は、低免疫原性グリア細胞等の低免疫原性神経細胞を生産する。
【0571】
一部の実施形態では、グリア細胞、その前駆体、及び前駆細胞は、レチノイン酸、IL-34、M-CSF、FLT3リガンド、GM-CSF、CCL2、TGFベータ阻害剤、BMPシグナル伝達阻害剤、SHHシグナル伝達活性化因子、FGF、血小板由来増殖因子PDGF、PDGFR-アルファ、HGF、IGF1、ノギン、SHH、ドルソモルフィン、ノギン、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される1つまたは複数の作用物質を含む培地中で多能性幹細胞を培養することによって生成される。ある特定の事例では、BMPシグナル伝達阻害剤は、LDN193189、SB431542、またはそれらの組み合わせである。一部の実施形態では、グリア細胞は、NKX2.2、PAX6、SOX10、脳由来神経栄養因子BDNF、ニューロトロフィン(neutrotrophin)-3 NT-3、NT-4、EGF、毛様体神経栄養因子CNTF、神経増殖因子NGF、FGF8、EGFR、OLIG1、OLIG2、ミエリン塩基性タンパク質MBP、GAP-43、LNGFR、ネスチン、GFAP、CD11b、CD11c、CX3CR1、P2RY12、IBA-1、TMEM119、CD45、及びそれらの任意の組み合わせを発現する。例となる分化培地は、当業者によって認識されるような、グリア細胞種の生成を容易または可能にし得る任意の特定の因子及び/または低分子を含むことができる。
【0572】
インビトロ分化プロトコルに従って生成された細胞がグリア細胞の性質及び特徴を示すかどうかを決定するために、細胞を動物モデルに移植することができる。一部の実施形態では、グリア細胞は、免疫無防備状態のマウス、例えば、免疫無防備状態のシバラーマウスに注射される。グリア細胞は、マウスの脳に投与され、あらかじめ選択された一定時間後に、移植された細胞が評価される。一部の事例では、脳内の移植された細胞は、免疫染色及びイメージング法を使用することによって可視化される。一部の実施形態では、グリア細胞が既知のグリア細胞バイオマーカーを発現することが決定される。
【0573】
幹細胞からグリア細胞、その前駆体、及び前駆細胞を生成するための有用な方法は、例えば、US7,579,188、US7,595,194、US8,263,402、US8,206,699、US8,252,586、US9,193,951、US9,862,925、US8,227,247、US9,709,553、US2018/0187148、US2017/0198255、US2017/0183627、US2017/0182097、US2017/253856、US2018/0236004、WO2017/172976、及びWO2018/093681に見出される。多能性幹細胞を分化させるための方法は、例えば、Kikuchi et al.,Nature,2017,548,592-596、Kriks et al.,Nature,2011,547-551、Doi et al.,Stem Cell Reports,2014,2,337-50、Perrier et al.,Proc Natl Acad Sci USA,2004,101,12543-12548、Chambers et al.,Nat Biotechnol,2009,27,275-280、及びKirkeby et al.,Cell Reports,2012,1,703-714に記載される。
【0574】
脊髄損傷に対する神経細胞移植の有効性は、例えば、McDonald et al.,Nat.Med.,1999,5:1410及びKim et al.,Nature,2002,418:50によって記載されるような、急性脊髄損傷のラットモデルにおいて評定することができる。例えば、移植の成功は、2~5週間後の病変における移植由来の細胞の存在、星状細胞、乏突起膠細胞、及び/またはニューロンへの分化、病変端部から脊髄に沿った移動、ならびに歩行、協調、及び体重負荷の改善を示し得る。具体的な動物モデルは、神経細胞種及び処置される神経学的疾患または神経学的病態に基づいて選択される。
【0575】
神経細胞は、それらが意図される組織部位に生着し、機能的に不全の領域を再構成または再生することを可能にする様態で投与することができる。例えば、神経細胞は、処置されている疾患に応じて、中枢神経系の実質部位または髄腔内部位に直接移植することができる。一部の実施形態では、脳内皮細胞、ニューロン、ドーパミン作動性ニューロン、上衣細胞、星状細胞、ミクログリア細胞、乏突起膠細胞、及びシュワン細胞を含めた、本明細書に記載の神経細胞のうちのいずれも、静脈内、脊髄内、脳室内、髄腔内、動脈内、筋肉内、腹腔内、皮下、筋肉内、腹部内、眼内、眼球後、及びそれらの組み合わせを介して患者に注射される。一部の実施形態では、細胞は、ボーラス注射または持続注入の形態で注射または蓄積される。ある特定の実施形態では、神経細胞は、脳内に、脳に適切(apposite)に、及びそれらの組み合わせへの注射によって投与される。注射は、例えば、対象の頭蓋に作製された穿頭孔を通して行うことができる。脳への神経細胞の投与に好適な部位には、脳室、側脳室、大槽、被殻、基底核、海馬皮質、線条体、脳の尾状領域、及びそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0576】
本技術における使用に向けたドーパミン作動性ニューロンを含めた神経細胞の追加の説明は、WO2020/018615に見出され、この開示は参照によりその全体が本明細書に援用される。
【0577】
3.低免疫原性多能性細胞から分化させた内皮細胞
本明細書では、対象(例えば、レシピエント)へのその後の移植(transplantation)または移植(engraftment)用に種々の内皮細胞種に分化させられる低免疫原性多能性細胞が提供される。当業者には理解されようが、分化のための方法は、既知の技法を使用して所望の細胞種に依存する。
【0578】
一部の実施形態では、対象となる低免疫原性多能性細胞から分化させられた内皮細胞は、患者、例えば、投与の必要があるヒト患者に投与される。内皮細胞は、限定されないが、心血管疾患、血管疾患、末梢血管疾患、虚血性疾患、心筋梗塞、うっ血性心不全、末梢血管閉塞性疾患、脳卒中、再灌流損傷、肢虚血、ニューロパチー(例えば、末梢ニューロパチーまたは糖尿病性ニューロパチー)、臓器不全(例えば、肝臓不全、腎臓不全等)、糖尿病、関節リウマチ、骨粗鬆症、血管損傷、組織損傷、高血圧症、冠動脈疾患に起因する狭心症及び心筋梗塞、腎血管性高血圧症、腎動脈狭窄に起因する腎不全、下肢の跛行等のような疾患または病態を患う患者に投与することができる。ある特定の実施形態では、患者は、一過性の虚血性発作または脳卒中を患ったことがあるか、またはそれを患っており、これは場合によっては、脳血管疾患に起因し得る。一部の実施形態では、操作された内皮細胞は、例えば、アテローム性動脈硬化症、心筋梗塞、及び肢虚血において起こるような組織虚血を処置するため、ならびに損傷した血管を修復するために投与される。一部の事例では、該細胞は、移植片の生体工学で使用される。
【0579】
例えば、内皮細胞は、虚血組織の修復、血管及び心臓弁の形成、人工血管の工学、損傷を受けた血管の修復、ならびに操作された組織における血管の形成の誘導(例えば、移植前)のために細胞療法で使用され得る。追加として、内皮細胞は、作用物質を標的に送達し、腫瘍を処置するようにさらに改変され得る。
【0580】
多くの実施形態では、血管細胞または血管新生を必要とする組織の修復または置換方法が本明細書で提供される。該方法は、かかる処置を必要とするヒト患者に、かかる組織における血管新生を促進するために単離された内皮細胞を含有する組成物を投与することを伴う。血管細胞または血管新生を必要とする組織は、とりわけ、心組織、肝臓組織、膵臓組織、腎組織、筋組織、神経組織、骨組織であり得、これは損傷を受けた、過剰な細胞死を特徴とする組織、損傷の危険性がある組織、または人工的に操作された組織であり得る。
【0581】
一部の実施形態では、心疾患または障害に関連し得る血管疾患は、限定されないが、本明細書に記載されるように派生させた最終的な血管内皮細胞及び心内膜内皮細胞等の内皮細胞を投与することによって処置することができる。かかる血管疾患には、冠動脈疾患、脳血管疾患、大動脈狭窄、大動脈瘤、末梢動脈疾患、アテローム性動脈硬化症、静脈瘤、血管障害、冠灌流を欠いた心臓の梗塞領域、非治癒性創傷、糖尿病性もしくは非糖尿病性潰瘍、または血管の形成の誘導が望ましい任意の他の疾患もしくは障害が含まれるが、これらに限定されない。
【0582】
ある特定の実施形態では、内皮細胞は、血管再建手術で使用される補綴インプラント(例えば、Dacron及びGortex等の合成材料で作製された血管)を改善するために使用される。例えば、重要な臓器または肢を灌流する病変動脈を置換するために、補綴動脈移植片が使用される場合が多い。他の実施形態では、操作された内皮細胞は、弁表面での血栓形成性を下げることによって塞栓形成の危険性を低下させるように補綴心臓弁の表面を覆うために使用される。
【0583】
概説される内皮細胞は、組織及び/または単離された細胞を血管に移植するための周知の外科的技法を使用して、患者に移植することができる。一部の実施形態では、該細胞は、注射(例えば、心筋内注射、冠動脈内注射、経心内膜注射、経心外膜注射、経皮注射)、注入、移植、及び埋め込みによって患者の心臓組織に導入される。
【0584】
内皮細胞の投与(送達)には、静脈内、動脈内(例えば、冠動脈内)、筋肉内、腹腔内、心筋内、経心内膜、経心外膜、鼻腔内投与ならびに髄腔内、及び注入技法を含む、皮下または非経口が含まれるが、これらに限定されない。
【0585】
当業者には理解されようが、HIP派生物は、細胞種及びこれらの細胞の最終的用途の両方に依存する当該技術分野で既知の技法を使用して移植される。一部の実施形態では、該細胞は、患者において静脈内にまたは特定の箇所での注射によってのいずれかで移植される。特定の箇所で移植する場合、細胞は、それらが定着する間の分散を防止するためにゲルマトリックス中に懸濁させてもよい。
【0586】
例となる内皮細胞種には、毛細血管内皮細胞、血管内皮細胞、大動脈内皮細胞、動脈内皮細胞、静脈内皮細胞、腎内皮細胞、脳内皮細胞、肝臓内皮細胞等が含まれるが、これらに限定されない。
【0587】
本明細書に概説される内皮細胞は、1つまたは複数の内皮細胞マーカーを発現し得る。かかるマーカーの非限定的な例としては、VE-カドヘリン(CD144)、ACE(アンジオテンシン変換酵素)(CD143)、BNH9/BNF13、CD31、CD34、CD54(ICAM-l)、CD62E(E-セレクチン)、CD105(エンドグリン)、CD146、エンドカン(ESM-l)、エンドグリクス-l、エンドムチン、エオタキシン-3、EPAS1(内皮PASドメインタンパク質1)、第VIII因子関連抗原、FLI-l、Flk-l(KDR、VEGFR-2)、FLT-l(VEGFR-l)、GATA2、GBP-l(グアニル酸結合タンパク質-l)、GRO-アルファ、HEX、ICAM-2(細胞間接着分子2)、LM02、LYVE-l、MRB(マジックラウンドアバウト(magic roundabout))、ヌクレオリン、PAL-E(病理解剖学的ライデン内皮(pathologische anatomie Leiden-endothelium)、RTK、sVCAM-l、TALI、TEM1(腫瘍内皮マーカー1)、TEM5(腫瘍内皮マーカー5)、TEM7(腫瘍内皮マーカー7)、トロンボモジュリン(TM、CD141)、VCAM-l(血管細胞接着分子-1)(CD106)、VEGF、vWF(フォン・ヴィレブランド因子)、ZO-l、内皮細胞選択的接着分子(ESAM)、CD102、CD93、CD184、CD304、及びDLL4が挙げられる。
【0588】
一部の実施形態では、内皮細胞は、障害/病態を処置するかまたは障害/病態の症状を改善させるのに有用である、限定されないが酵素、ホルモン、受容体、リガンド、または薬物等の目的のタンパク質をコードする外因性遺伝子を発現するように遺伝子改変される。内皮細胞を遺伝子改変するための標準的方法は、例えば、US5,674,722に記載される。
【0589】
かかる内皮細胞を使用して、疾患の予防または処置において有用であるポリペプチドまたはタンパク質の構成的合成及び送達を提供することができる。このようにして、ポリペプチドは、個体の血流または身体の他の領域(例えば、中枢神経系)中に直接分泌される。一部の実施形態では、内皮細胞は、インスリン、血液凝固因子(例えば、第VIII因子またはフォン・ヴィレブランド因子)、アルファ-1抗トリプシン、アデノシンデアミナーゼ、組織プラスミノーゲン活性化因子、インターロイキン(例えば、IL-1、IL-2、IL-3)等を分泌するように改変され得る。
【0590】
一部の実施形態では、内皮細胞は、埋め込まれた移植片の関連においてそれらの性能を改善するように改変され得る。非限定的で例示的な例としては、管腔内血塊形成を予防するための血栓溶解物質の分泌もしくは発現、平滑筋肥大に起因する管腔狭窄を予防するための平滑筋増殖の阻害物質の分泌、ならびに内皮細胞増殖を刺激し、移植片管腔の内皮細胞による裏打ちの範囲もしくは持続期間を改善するための内皮細胞分裂促進因子もしくは自己分泌因子の発現及び/または分泌が挙げられる。
【0591】
一部の実施形態では、操作された内皮細胞は、治療的レベルの分泌産物を特定の臓器または肢に送達するのに利用される。例えば、インビトロで操作された(形質導入された)内皮細胞で裏打ちされた血管インプラントが、特定の臓器または肢に移植され得る。形質導入された内皮細胞の分泌産物は、灌流組織に高濃度で送達され、それによって標的とする解剖学的位置への所望の効果を達成するであろう。
【0592】
他の実施形態では、内皮細胞は、血管新生化している腫瘍において、内皮細胞によって発現されるときに血管新生を妨害または阻害する遺伝子を含有するように遺伝子改変される。場合によっては、内皮細胞はまた、腫瘍処置の完了時に移植された内皮細胞の負の選択を可能にする、本明細書に記載の選択可能自殺遺伝子のうちのいずれか1つを発現するように遺伝子改変され得る。
【0593】
一部の実施形態では、本明細書に記載の内皮細胞は、血管損傷、心血管疾患、血管疾患、末梢血管疾患、虚血性疾患、心筋梗塞、うっ血性心不全、末梢血管閉塞性疾患、高血圧症、虚血性組織損傷、再灌流損傷、肢虚血、脳卒中、ニューロパチー(例えば、末梢ニューロパチーまたは糖尿病性ニューロパチー)、臓器不全(例えば、肝不全、腎不全等)、糖尿病、関節リウマチ、骨粗鬆症、脳血管疾患、高血圧症、冠動脈疾患に起因する狭心症及び心筋梗塞、腎血管性高血圧症、腎動脈狭窄に起因する腎不全、下肢の跛行、及び/または他の血管病態または疾患からなる群から選択される血管障害を処置するためにレシピエント対象に投与される。
【0594】
一部の実施形態では、低免疫原性多能性細胞は、末梢動脈疾患に対処するために新たな血管を形成させるための内皮コロニー形成細胞(ECFC)に分化させられる。内皮細胞への分化のための技法は、既知である。例えば、Prasain et al.,doi:10.1038/nbt.3048を参照されたい(参照によりその全体が、特にヒト多能性幹細胞からの内皮細胞の生成のための方法及び試薬に関して、また移植技法に関して本明細書に援用される)。分化は、一般に内皮細胞関連もしくは特異的マーカーの存在を評価することによって、または機能的に測定することによって、当該技術分野で既知であるようにアッセイすることができる。
【0595】
一部の実施形態では、インビトロでの分化によって低免疫原性多能性細胞の集団から低免疫原性内皮細胞の集団を生産する方法は、(a)GSK阻害剤を含む第1の培養培地中でHIP細胞の集団を培養することと、(b)VEGF及びbFGFを含む第2の培養培地中でHIP細胞の集団を培養して、内皮前駆細胞の集団を生産することと、(c)ROCK阻害剤及びALK阻害剤を含む第3の培養培地中で内皮前駆細胞の集団を培養して、低免疫原性内皮細胞の集団を生産することとを含む。
【0596】
一部の実施形態では、GSK阻害剤は、CHIR-99021、その誘導体、またはそのバリアントである。一部の事例では、GSK阻害剤は、約1mM~約10mMの範囲の濃度である。一部の実施形態では、ROCK阻害剤は、Y-27632、その誘導体、またはそのバリアントである。一部の事例では、ROCK阻害剤は、約1pM~約20pMの範囲の濃度である。一部の実施形態では、ALK阻害剤は、SB-431542、その誘導体、またはそのバリアントである。一部の事例では、ALK阻害剤は、約0.5pM~約10pMの範囲の濃度である。
【0597】
一部の実施形態では、第1の培養培地は、2pM~約10pMのCHIR-99021を含む。一部の実施形態では、第2の培養培地は、50ng/mlのVEGF及び10ng/mlのbFGFを含む。他の実施形態では、第2の培養培地は、Y-27632及びSB-431542をさらに含む。種々の実施形態では、第3の培養培地は、10pMのY-27632及び1pMのSB-431542を含む。ある特定の実施形態では、第3の培養培地は、VEGF及びbFGFをさらに含む。特定の事例では、第1の培養培地及び/または第2の培地は、インスリンを含まない。
【0598】
本明細書で提供される細胞は、低免疫原性多能性細胞の心細胞への分化を補助及び/または促進するための合成表面等の表面上で培養することができる。一部の実施形態では、表面は、選択される1つまたは複数のアクリレートモノマーのホモポリマーまたはコポリマーを含むがこれらに限定されない、ポリマー材料を含む。アクリレートモノマー及びメタクリレートモノマーの非限定的な例としては、テトラ(エチレングリコール)ジアクリレート、グリセロールジメタクリレート、1,4-ブタンジオールジメタクリレート、ポリ(エチレングリコール)ジアクリレート、ジ(エチレングリコール)ジメタクリレート、テトラ(エチレン(ethyiene)グリコール)ジメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールプロポキシレートジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパンベンゾエートジアクリレート、トリメチロールプロパンエトキシレート(eihoxylate)(1 EO/QH)メチル、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノールジアクリレート、ネオペンチルグリコールエトキシレート(exhoxylate)ジアクリレート、及びトリメチロールプロパントリアクリレートが挙げられる。アクリレートは、当該技術分野で既知のように合成されるか、またはPolysciences,Inc.、Sigma Aldrich,Inc.、及びSartomer,Inc.等の商業的供給業者から得られる。
【0599】
一部の実施形態では、内皮細胞は、ポリマーマトリックス上に播種されてもよい。場合によっては、ポリマーマトリックスは、生分解性である。好適な生分解性マトリックスは、当該技術分野で周知であり、これにはコラーゲン-GAG、コラーゲン、フィブリン、PLA、PGA、及びPLA/PGAコポリマーが含まれる。追加の生分解性材料には、ポリ(無水物)、ポリ(ヒドロキシ酸)、ポリ(オルトエステル)、ポリ(プロピルフマレート)、ポリ(カプロラクトン)、ポリアミド、ポリアミノ酸、ポリアセタール、生分解性ポリシアノアクリレート、生分解性ポリウレタン、及び多糖類が含まれる。
【0600】
非生分解性ポリマーも同様に使用されてもよい。他の非生分解性であるが、それでも生体適合性であるポリマーには、ポリピロール、ポリアニブン(polyanibne)、ポリチオフェン、ポリスチレン、ポリエステル、非生分解性ポリウレタン、ポリ尿素、ポリ(エチレン酢酸ビニル)、ポリプロピレン、ポリメタクリレート、ポリエチレン、ポリカーボネート、及びポリ(エチレンオキシド)が含まれる。ポリマーマトリックスは、任意の形状で、例えば、粒子、スポンジ、管、球、ストランド、コイル状ストランド、毛細管網目構造、フィルム、繊維、メッシュ、またはシートとして、形成され得る。ポリマーマトリックスは、天然または合成の細胞外マトリックス材料及び因子を含むように改変され得る。
【0601】
ポリマー材料は、支持材料の表面上に分散させることができる。細胞を培養するのに好適である有用な支持材料には、セラミック物質、ガラス、プラスチック、ポリマーもしくはコポリマー、それらの任意の組み合わせ、または1つの材料の別の材料上へのコーティングが含まれる。一部の事例では、ガラスには、ソーダ石灰ガラス、パイレックスガラス、バイコールガラス、石英ガラス、ケイ素、またはこれらの誘導体もしくは同等物が含まれる。
【0602】
一部の事例では、プラスチック、または樹枝状ポリマーを含めたポリマーには、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(酢酸ビニル-無水マレイン酸)、ポリ(ジメチルシロキサン)モノメタクリレート、環状オレフィンポリマー、フルオロカーボンポリマー、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンイミン、またはこれらの誘導体もしくは同等物が含まれる。一部の事例では、コポリマーには、ポリ(酢酸ビニル-co-無水マレイン酸)、ポリ(スチレン-co-無水マレイン酸)、ポリ(エチレン-co-アクリル酸)、またはこれらの誘導体もしくは同等物が含まれる。
【0603】
一部の実施形態では、低免疫原性内皮細胞の集団は、非内皮細胞から単離される。一部の実施形態では、低免疫原性内皮細胞の単離された集団は、投与前に増殖させられる。ある特定の実施形態では、低免疫原性内皮細胞の単離された集団は、投与前に増殖させられ、凍結保存される。
【0604】
本明細書で提供される方法における使用に向けた内皮細胞の追加の説明は、WO2020/018615に見出され、この開示は参照によりその全体が本明細書に援用される。
【0605】
4.低免疫原性多能性細胞から分化させた甲状腺細胞
一部の実施形態では、低免疫原性多能性細胞は、自己免疫性甲状腺炎に対処するために甲状腺ホルモンを分泌することができる甲状腺前駆細胞及び甲状腺濾胞オルガノイドに分化させられる。甲状腺細胞への分化のための技法は、当該技術分野で既知である。例えば、Kurmann et al.,Cell Stem Cell,2015 Nov 5;17(5):527-42を参照されたい(参照によりその全体が、特にヒト多能性幹細胞からの甲状腺細胞の生成のための方法及び試薬に関して、また移植技法に関して本明細書に援用される)。分化は、一般に甲状腺細胞関連もしくは特異的マーカーの存在を評価することによって、または機能的に測定することによって、当該技術分野で既知であるようにアッセイすることができる。
【0606】
5.低免疫原性多能性細胞から分化させた肝細胞
一部の実施形態では、低免疫原性多能性細胞は、肝細胞機能の喪失または肝硬変に対処するために肝細胞に分化させられる。HIP細胞を肝細胞に分化させるために使用され得るいくつかの技法が存在する。例えば、Pettinato et al ,doi:10.1038/spre32888,Snykers et al.,Methods Mol Biol,2011 698:305-314,Si-Tayeb et al.,Hepatology,2010,51:297-305及びAsgari et al.,Stem Cell Rev,2013,9(4):493- 504を参照されたく、同文献の全ては参照によりそれらの全体が、特に分化のための手法及び試薬に関して本明細書に援用される。分化は、一般にアルブミン、アルファフェトプロテイン、及びフィブリノゲンを含むがこれらに限定されない肝細胞関連及び/または特異的マーカーの存在を評価することによって、当該技術分野で既知であるようにアッセイすることができる。分化はまた、アンモニアの代謝、LDL貯蔵及び取り込み、ICG取り込み及び放出、ならびにグリコーゲン貯蔵等、機能的に測定することもできる。
【0607】
6.低免疫原性多能性細胞から分化させた膵島細胞
一部の実施形態では、膵島細胞(別称、膵臓ベータ細胞)は、本明細書に記載のHIP細胞に由来する。一部の事例では、種々の膵島細胞種に分化させられる低免疫原性多能性細胞は、対象(例えば、レシピエント)に移植(transplanted)または移植(engrafted)される。当業者には理解されようが、分化のための方法は、既知の技法を使用して所望の細胞種に依存する。例となる膵島細胞種には、膵島前駆細胞、未成熟膵島細胞、成熟膵島細胞等が含まれるが、これらに限定されない。一部の実施形態では、本明細書に記載の膵臓細胞は、糖尿病を処置するために対象に投与される。
【0608】
一部の実施形態では、膵島細胞は、本明細書に記載の低免疫原性多能性細胞に由来する。多能性幹細胞を膵島細胞に分化させるための有用な方法は、例えば、US9,683,215、US9,157,062、及びUS8,927,280に記載される。
【0609】
一部の実施形態では、本明細書に開示される方法によって生産される膵島細胞は、インスリンを分泌する。一部の実施形態では、膵島細胞は、内在性膵島細胞の少なくとも2つの性質、例えば、限定されないが、グルコースに応答したインスリンの分泌、及びベータ細胞マーカーの発現を示す。
【0610】
例となるベータ細胞マーカーまたはベータ細胞前駆細胞マーカーには、c-ペプチド、Pdx1、グルコース輸送体2(Glut2)、HNF6、VEGF、グルコキナーゼ(GCK)、プロホルモン変換酵素(PC1/3)、Cdcpl、NeuroD、Ngn3、Nkx2.2、Nkx6.1、Nkx6.2、Pax4、Pax6、Ptf1a、Isl1、Sox9、Sox17、及びFoxA2が含まれるが、これらに限定されない。
【0611】
一部の実施形態では、単離された膵島細胞は、グルコースの増加に応答してインスリンを産生する。種々の実施形態では、単離された膵島細胞は、グルコースの増加に応答してインスリンを分泌する。一部の実施形態では、この細胞は、敷石の細胞形態及び/または約17pm~約25pmの直径等の特有の形態を有する。
【0612】
一部の実施形態では、低免疫原性多能性細胞は、I型真性糖尿病(T1DM)に対処するための移植用にベータ様細胞または島オルガノイドに分化させられる。細胞システムは、T1DMに対処するための有望な方法である。例えば、Ellis et al.,Nat Rev Gastroenterol Hepatol.2017 Oct;14(10):612-628を参照されたい(参照により本明細書に援用される)。追加として、Pagliucaら(Cell,2014,159(2):428-39)は、hiPSCからのβ細胞の成功裏の分化に関して報告している(この内容は、参照によりその全体が、特にヒト多能性幹細胞からの機能的ヒトβ細胞の大規模生産について同文献で概説される方法及び試薬に関して本明細書に援用される)。さらに、Vegasらは、ヒト多能性幹細胞からのヒトβ細胞の生産、続いて宿主による免疫拒絶反応を回避するための封入について示している(Vegas et al.,Nat Med,2016,22(3):306-11(参照によりその全体が、特にヒト多能性幹細胞からの機能的ヒトβ細胞の大規模生産について同文献で概説される方法及び試薬に関して本明細書に援用される)。
【0613】
一部の実施形態では、インビトロでの分化によって低免疫原性多能性細胞の集団から低免疫原性膵島細胞の集団を生産する方法は、(a)インスリン様成長因子、形質転換成長因子、FGF、EGF、HGF、SHH、VEGF、形質転換成長因子-bスーパーファミリー、BMP2、BMP7、GSK阻害剤、ALK阻害剤、BMP1型受容体阻害剤、ならびにレチノイン酸からなる群から選択される1つまたは複数の因子を含む第1の培養培地中でHIP細胞の集団を培養して、未成熟膵島細胞の集団を生産することと、(b)第1の培養培地とは異なる第2の培養培地中で未成熟膵島細胞の集団を培養して、低免疫膵島細胞の集団を生産することとを含む。一部の実施形態では、GSK阻害剤は、CHIR-99021、その誘導体、またはそのバリアントである。一部の事例では、GSK阻害剤は、約2mM~約10mMの範囲の濃度である。一部の実施形態では、ALK阻害剤は、SB-431542、その誘導体、またはそのバリアントである。一部の事例では、ALK阻害剤は、約1pM~約10pMの範囲の濃度である。一部の実施形態では、第1の培養培地及び/または第2の培養培地は、動物血清を含まない。
【0614】
一部の実施形態では、低免疫原性膵島細胞の集団は、非膵島細胞から単離される。一部の実施形態では、低免疫原性膵島細胞の単離された集団は、投与前に増殖させられる。ある特定の実施形態では、低免疫原性膵島細胞の単離された集団は、投与前に増殖させられ、凍結保存される。
【0615】
分化は、一般にインスリンを含むがこれらに限定されないβ細胞関連または特異的マーカーの存在を評価することによって、当該技術分野で既知であるようにアッセイされる。分化はまた、グルコース代謝の測定等、機能的に測定することもできる。一般に、Muraro et al.,Cell Syst.2016 Oct 26;3(4):385-394.e3を参照されたい(参照によりその全体が、特に同文献で概説されるバイオマーカーに関して本明細書に援用される)。ひとたびベータ細胞が生成されると、それらは、門脈/肝臓、大網、胃腸粘膜、骨髄、筋肉、または皮下嚢に移植され得る(細胞懸濁液としてまたは本明細書で考察されるゲルマトリックス内でのいずれかで)。
【0616】
本技術における使用に向けたドーパミン作動性ニューロンを含めた膵島細胞の追加の説明は、WO2020/018615に見出され、この開示は参照によりその全体が本明細書に援用される。
【0617】
7.低免疫原性多能性細胞から分化させた網膜色素上皮(RPE)細胞
本明細書では、上述のHIP細胞に由来する網膜色素上皮(RPE)細胞が提供される。例えば、ヒトRPE細胞は、ヒトHIP細胞を分化させることによって生産することができる。一部の実施形態では、種々のRPE細胞種に分化させられる低免疫原性多能性細胞は、対象(例えば、レシピエント)に移植(transplanted)または移植(engrafted)される。当業者には理解されようが、分化のための方法は、既知の技法を使用して所望の細胞種に依存する。
【0618】
「RPE」細胞という用語は、天然RPE細胞の遺伝子発現プロファイルに類似または実質的に類似した遺伝子発現プロファイルを有する色素性網膜上皮細胞(pigmented retinal epithelial cell)を指す。多能性幹細胞に由来するかかるRPE細胞は、平面基板上でコンフルエントの状態まで増殖させたときに天然RPE細胞の多角形で平面状のシートの形態をもつことが可能である。
【0619】
RPE細胞は、黄斑変性を患う患者または損傷を受けたRPE細胞を有する患者に移植することができる。一部の実施形態では、患者は、加齢黄斑変性(AMD)、初期AMD、中期AMD、後期AMD、新生血管を伴わない加齢黄斑変性、ドライ型黄斑変性(ドライ型加齢黄斑変性)、ウェット型黄斑変性(ウェット型加齢黄斑変性)、若年性黄斑変性(JMD)(例えば、スターガルト病、ベスト病、及び若年性網膜分離症)、レーバー先天性黒内障、または網膜色素変性症を有する。他の実施形態では、患者は、網膜剥離を患う。
【0620】
例となるRPE細胞種には、網膜色素上皮(RPE)細胞、RPE前駆細胞、未成熟RPE細胞、成熟RPE細胞、機能的RPE細胞等が含まれるが、これらに限定されない。
【0621】
多能性幹細胞をRPE細胞に分化させるための有用な方法は、例えば、US9,458,428及びUS9,850,463に記載され、これらの開示は、明細書を含めてそれらの全体が参照により本明細書に援用される。ヒト人工多能性幹細胞からRPE細胞を生産するための追加の方法は、例えば、Lamba et al.,PNAS,2006,103(34):12769-12774、Mellough et al.,Stem Cells,2012,30(4):673-686、Idelson et al.,Cell Stem Cell,2009,5(4):396-408、Rowland et al.,Journal of Cellular Physiology,2012,227(2):457-466、Buchholz et al.,Stem Cells Trans Med,2013,2(5):384-393、及びda Cruz et al.,Nat Biotech,2018,36:328-337に見出すことができる。
【0622】
ヒト多能性幹細胞は、Kamao et al.,Stem Cell Reports 2014:2:205-18に概説される技法を使用して、RPE細胞に分化させられた(参照によりその全体が、特に分化技法及び試薬について同文献で概説される方法及び試薬に関して本明細書に援用される)。また、Mandai et al.,N Engl J Med,2017,376:1038-1046も参照されたい(この内容は参照によりその全体が、RPE細胞のシートの生成及び患者への移植のための技法に関して本明細書に援用される)。分化は、一般にRPE関連及び/または特異的マーカーの存在を評価することによって、または機能的に測定することによって、当該技術分野で既知であるようにアッセイすることができる。例えば、Kamao et al.,Stem Cell Reports,2014,2(2):205-18を参照されたい(この内容は参照によりその全体が、特に結果の節の第1段落に概説されるマーカーに関して本明細書に援用される)。
【0623】
一部の実施形態では、インビトロでの分化によって低免疫原性多能性細胞の集団から低免疫原性網膜色素上皮(RPE)細胞の集団を生産する方法は、(a)アクチビンA、bFGF、BMP4/7、DKK1、IGF1、ノギン、BMP阻害剤、ALK阻害剤、ROCK阻害剤、及びVEGFR阻害剤からなる群から選択される因子のうちのいずれか1つを含む第1の培養培地中で低免疫原性多能性細胞の集団を培養して、RPE前駆細胞の集団を生産することと、(b)第1の培養培地とは異なる第2の培養培地中でRPE前駆細胞の集団を培養して、低免疫原性RPE細胞の集団を生産することとを含む。一部の実施形態では、ALK阻害剤は、SB-431542、その誘導体、またはそのバリアントである。一部の事例では、ALK阻害剤は、約2mM~約10pMの範囲の濃度である。一部の実施形態では、ROCK阻害剤は、Y-27632、その誘導体、またはそのバリアントである。一部の事例では、ROCK阻害剤は、約1pM~約10pMの範囲の濃度である。一部の実施形態では、第1の培養培地及び/または第2の培養培地は、動物血清を含まない。
【0624】
分化は、一般にRPE関連及び/または特異的マーカーの存在を評価することによって、または機能的に測定することによって、当該技術分野で既知であるようにアッセイすることができる。例えば、Kamao et al.,Stem Cell Reports,2014,2(2):205-18を参照されたい(この内容は参照によりその全体が、特に結果の節に関して本明細書に援用される)。
【0625】
本技術における使用に向けたRPE細胞の追加の説明は、WO2020/018615に見出され、この開示は参照によりその全体が本明細書に援用される。
【0626】
治療用途では、開示される方法に従って調製された細胞は、典型的には、等張性賦形剤を含む薬学的組成物の形態で供給することができ、ヒト投与のために十分に滅菌された条件下で調製される。細胞組成物の医薬製剤における一般原則については、“Cell Therapy:Stem Cell Transplantation,Gene Therapy,and Cellular Immunotherapy,”by Morstyn & Sheridan eds,Cambridge University Press,1996、及び“Hematopoietic Stem Cell Therapy,”E.D.Ball,J.Lister & P.Law,Churchill Livingstone,2000を参照されたい。細胞は、流通または臨床使用に好適なデバイスまたは容器に包装され得る。
【0627】
8.低免疫原性多能性細胞に由来するTリンパ球
本明細書で提供される、Tリンパ球(初代T細胞を含むT細胞)は、本明細書に記載のHIP細胞(例えば、低免疫原性iPSC)に由来する。多能性幹細胞(例えば、iPSC)からCAR-T細胞を含めたT細胞を生成するための方法は、例えば、Iriguchi et al.,Nature Communications 12,430(2021)、Themeli et al.,16(4):357-366(2015)、Themeli et al.,Nature Biotechnology 31:928-933(2013)に記載される。低免疫原性細胞に由来するTリンパ球には、免疫認識を回避する初代T細胞が含まれるが、これらに限定されない。一部の実施形態では、低免疫原性細胞は、初代T細胞等のT細胞から生産される(例えば、生成、培養、または派生させられる)。一部の事例では、初代T細胞は、対象または個体から得られる(例えば、採取、抽出、取り出し、または取得される)。一部の実施形態では、初代T細胞は、T細胞が1以上の対象(例えば、1以上の健常なヒトを含む1以上のヒト)からのものであるように、T細胞のプールから生産される。一部の実施形態では、初代T細胞のプールは、1~100、1~50、1~20、1~10、1以上、2以上、3以上、4以上、5以上、10以上、20以上、30以上、40以上、50以上、または100以上の対象からのものである。一部の実施形態では、ドナー対象は、患者(例えば、治療用細胞を投与されるレシピエント)とは異なる。一部の実施形態では、T細胞のプールは、患者からの細胞を含まない。一部の実施形態では、T細胞のプールが得られるドナー対象のうちの1以上は、患者とは異なる。
【0628】
一部の実施形態では、低免疫原性細胞は、患者(例えば、投与時にレシピエント)において免疫応答を活性化しない。障害を処置する必要がある対象(例えば、レシピエント)または患者に低免疫原性細胞の集団を投与することによって障害を処置する方法が提供される。一部の実施形態では、本明細書に記載の低免疫原性細胞は、本明細書に記載のキメラ抗原受容体を含むがこれらに限定されないキメラ抗原受容体を発現するように操作された(例えば、改変される)T細胞を含む。一部の事例では、T細胞は、1以上の個体からの初代T細胞の集団または亜集団である。一部の実施形態では、操作または改変されたT細胞等の本明細書に記載のT細胞は、内在性T細胞受容体の低減された発現を含む。
【0629】
一部の実施形態では、HIP由来のT細胞は、キメラ抗原受容体(CAR)を含む。本明細書に記載のCARを含めて、任意の好適なCARが、HIP由来のT細胞に含まれ得る。一部の実施形態では、HIP由来のT細胞は、CARをコードするポリヌクレオチドを含み、ここで、ポリヌクレオチドは、ゲノム遺伝子座に挿入される。一部の実施形態では、ポリヌクレオチドは、セーフハーバーまたは標的遺伝子座内に挿入される。一部の実施形態では、ポリヌクレオチドは、B2M、CIITA、TRAC、TRB、PD1、またはCTLA4遺伝子に挿入される。本明細書に記載の遺伝子編集法(例えば、CRISPR/Casシステム)を含めて、任意の好適な方法を使用して、CARを低免疫原性細胞のゲノム遺伝子座内に挿入することができる。
【0630】
本明細書で提供されるHIP由来のT細胞は、B細胞急性リンパ芽球性白血病(B-ALL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、肝臓癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、結腸直腸癌、肺癌、非小細胞肺癌、急性骨髄性リンパ性白血病、多発性骨髄腫、胃癌、胃腺癌、膵臓腺癌、神経膠芽腫、神経芽細胞腫、肺扁平上皮癌、肝細胞癌、及び膀胱癌を含むがこれらに限定されない、好適ながんの処置に有用である。
【0631】
9.低免疫原性多能性細胞に由来するNK細胞
本明細書で提供される、ナチュラルキラー(NK)細胞は、本明細書に記載のHIP細胞(例えば、低免疫原性iPSC)に由来する。
【0632】
NK細胞(「大顆粒リンパ球」とも定義される)は、リンパ球系共通前駆細胞(これはまたBリンパ球及びTリンパ球も生じさせる)から分化した細胞系列を表す。T細胞とは異なり、NK細胞は、原形質膜でCD3を自然には含まない。重要な点として、NK細胞は、TCRを発現せず、典型的には、他の抗原特異的な細胞表面受容体(ならびにTCR及びCD3、それらはまた免疫グロブリンB細胞受容体も発現せず、代わりに、典型的にはCD16及びCD56を発現する)もまた欠いている。NK細胞の細胞傷害性活性は、感作を必要しないが、IL-2を含めた様々なサイトカインによる活性化によって強化される。NK細胞は、一般に、抗原-受容体媒介性シグナル伝達に必要な適切または完全なシグナル伝達経路が欠如していると考えられ、故に、抗原受容体依存性シグナル伝達、活性化、及び増殖の能力があると考えられていない。NK細胞は細胞傷害性であり、それらの細胞傷害性活性を調節するために活性化及び阻害性受容体シグナル伝達の均衡を保つ。例えば、CD16を発現しているNK細胞は、感染細胞に結合した抗体のFcドメインに結合して、NK細胞の活性化をもたらし得る。対照的に、高レベルのMHCクラスIタンパク質を発現している細胞に対しては活性が低減される。標的細胞に接触すると、NK細胞は、パーフォリン等のタンパク質、及びプロテアーゼ(グランザイム)等の酵素を放出する。パーフォリンは、標的細胞の細胞膜に孔を形成して、アポトーシスまたは細胞溶解を誘導することができる。
【0633】
多能性幹細胞(例えば、iPSC)からCAR-NK細胞を含めたNK細胞を生成するために使用され得るいくつかの技法が存在する。例えば、Zhu et al.,Methods Mol Biol.2019;2048:107-119、Knorr et al.,Stem Cells Transl Med.2013 2(4):274-83.doi:10.5966/sctm.2012-0084、Zeng et al.,Stem Cell Reports.2017 Dec 12;9(6):1796-1812、Ni et al.,Methods Mol Biol.2013;1029:33-41、Bernareggi et al.,Exp Hematol.2019 71:13-23、Shankar et al.,Stem Cell Res Ther.2020;11(1):234を参照されたく、同文献の全ては参照によりそれらの全体が、特に分化のための手法及び試薬に関して本明細書に援用される。分化は、一般にCD56、KIR、CD16、NKp44、NKp46、NKG2D、TRAIL、CD122、CD27、CD244、NK1.1、NKG2A/C、NCR1、Ly49、CD49b、CD11b、KLRG1、CD43、CD62L、及び/またはCD226を含むがこれらに限定されないNK細胞関連及び/または特異的マーカーの存在を評価することによって、当該技術分野で既知であるようにアッセイすることができる。
【0634】
一部の実施形態では、低免疫原性多能性細胞は、肝細胞機能の喪失または肝硬変に対処するために肝細胞に分化させられる。HIP細胞を肝細胞に分化させるために使用され得るいくつかの技法が存在する。例えば、Pettinato et al ,doi:10.1038/spre32888,Snykers et al.,Methods Mol Biol,2011 698:305-314,Si-Tayeb et al.,Hepatology,2010,51:297-305及びAsgari et al.,Stem Cell Rev,2013,9(4):493- 504を参照されたく、同文献の全ては参照によりそれらの全体が、特に分化のための手法及び試薬に関して本明細書に援用される。分化は、一般にアルブミン、アルファフェトプロテイン、及びフィブリノゲンを含むがこれらに限定されない肝細胞関連及び/または特異的マーカーの存在を評価することによって、当該技術分野で既知であるようにアッセイすることができる。分化はまた、アンモニアの代謝、LDL貯蔵及び取り込み、ICG取り込み及び放出、ならびにグリコーゲン貯蔵等、機能的に測定することもできる。
【0635】
一部の実施形態では、NK細胞は、患者(例えば、投与時にレシピエント)において免疫応答を活性化しない。障害を処置する必要がある対象(例えば、レシピエント)または患者にNK細胞の集団を投与することによって障害を処置する方法が提供される。一部の実施形態では、本明細書に記載のNK細胞は、本明細書に記載のキメラ抗原受容体を含むがこれらに限定されないキメラ抗原受容体を発現するように操作された(例えば、改変される)NK細胞を含む。本明細書に記載のCARを含めて、任意の好適なCARが、NK細胞に含まれ得る。一部の実施形態では、NK細胞は、CARをコードするポリヌクレオチドを含み、ここで、ポリヌクレオチドは、ゲノム遺伝子座に挿入される。一部の実施形態では、ポリヌクレオチドは、セーフハーバーまたは標的遺伝子座内に挿入される。一部の実施形態では、ポリヌクレオチドは、B2M、CIITA、TRAC、TRB、PD1、またはCTLA4遺伝子に挿入される。本明細書に記載の遺伝子編集法(例えば、CRISPR/Casシステム)を含めて、任意の好適な方法を使用して、CARをNK細胞のゲノム遺伝子座内に挿入することができる。
【0636】
U.外因性ポリヌクレオチド
一部の実施形態では、本明細書で提供される低免疫原性細胞は、低免疫原性細胞の1つまたは複数のゲノム遺伝子座に挿入された1つまたは複数の外因性ポリヌクレオチドを含むように遺伝子改変される。一部の実施形態では、外因性ポリヌクレオチドは、目的のタンパク質、例えば、キメラ抗原受容体をコードする。本明細書に記載の遺伝子編集法(例えば、CRISPR/Casシステム)を含めて、任意の好適な方法を使用して、外因性ポリヌクレオチドを低免疫原性細胞のゲノム遺伝子座内に挿入することができる。
【0637】
外因性ポリヌクレオチドは、低免疫原性細胞の任意の好適なゲノム遺伝子座内に挿入され得る。一部の実施形態では、外因性ポリヌクレオチドは、本明細書に記載されるセーフハーバーまたは標的遺伝子座内に挿入される。好適なセーフハーバー及び標的遺伝子座には、CCR5遺伝子、CXCR4遺伝子、PPP1R12C(別名、AAVS1)遺伝子、アルブミン遺伝子、SHS231遺伝子座、CLYBL遺伝子、Rosa遺伝子(例えば、ROSA26)、F3遺伝子(別名、CD142)、MICA遺伝子、MICB遺伝子、LRP1遺伝子(別名、CD91)、HMGB1遺伝子、ABO遺伝子、RHD遺伝子、FUT1遺伝子、PDGFRa遺伝子、OLIG2遺伝子、GFAP遺伝子、及びKDM5D遺伝子(別名、HY)が含まれるが、これらに限定されない。一部の実施形態では、外因性ポリヌクレオチドは、セーフハーバーまたは標的遺伝子座のイントロン、エクソン、またはコード配列領域内に挿入(interested)される。一部の実施形態では、外因性ポリヌクレオチドは、内在性遺伝子内に挿入され、この挿入が、内在性遺伝子のサイレンシングまたは低減された発現を引き起こす。一部の実施形態では、ポリヌクレオチドは、B2M、CIITA、TRAC、TRB、PD1、またはCTLA4遺伝子座に挿入される。外因性ポリヌクレオチドの挿入に向けた例となるゲノム遺伝子座が、表4及び5に示される。
【0638】
【表4】

【0639】
【表5】
【0640】
Cas9ガイドに関しては、全てのCas9ガイドに対するスペーサー配列が、表6で提供される。20ntのガイド配列は固有のガイド配列に対応し、例えば、表6に列挙されるものを含めた、本明細書に記載されるもののうちのいずれかであり得るという説明付き。
【0641】
【表6】
【0642】
一部の実施形態では、外因性ポリヌクレオチドを含む低免疫原性細胞は、例えば、本明細書に記載される、低免疫原性多能性細胞(HIP)に由来する。かかる低免疫原性細胞には、例えば、心細胞、神経細胞、脳内皮細胞、ドーパミン作動性ニューロン、グリア細胞、内皮細胞、甲状腺細胞、膵島細胞(ベータ細胞)、網膜色素上皮細胞、及びT細胞が含まれる。一部の実施形態では、外因性ポリヌクレオチドを含む低免疫原性細胞は、膵臓ベータ細胞、T細胞(例えば、初代T細胞)、またはグリア前駆細胞である。
【0643】
一部の実施形態では、外因性ポリヌクレオチドは、外因性CD47ポリペプチド(例えば、ヒトCD47ポリペプチド)をコードし、外因性ポリペプチドは、本明細書に開示されるようなセーフハーバーもしくは標的遺伝子座またはセーフハーバーもしくは標的部位、または内在性遺伝子のサイレンシングもしくは低減された発現を引き起こすゲノム遺伝子座内に挿入される。一部の実施形態では、ポリヌクレオチドは、B2M、CIITA、TRAC、TRB、PD1、またはCTLA4遺伝子座に挿入される。一部の実施形態では、CD47をコードする遺伝子は、セーフハーバー遺伝子座、標的遺伝子座、B2M遺伝子座、CIITA遺伝子座、TRAC遺伝子座、TRB遺伝子座、PD1遺伝子座及びCTLA4遺伝子座からなる群から選択される特定の遺伝子座内に挿入される。一部の実施形態では、CARをコードする遺伝子は、セーフハーバー遺伝子座、標的遺伝子座、B2M遺伝子座、CIITA遺伝子座、TRAC遺伝子座、及びTRB遺伝子座からなる群から選択される特定の遺伝子座内に挿入される。一部の実施形態では、CD47をコードする遺伝子及びCARをコードする遺伝子は、異なる遺伝子座内に挿入される。一部の実施形態では、CD47をコードする遺伝子及びCARをコードする遺伝子は、同じ遺伝子座内に挿入される。一部の実施形態では、CD47をコードする遺伝子及びCARをコードする遺伝子は、B2M遺伝子座、CIITA遺伝子座、TRAC遺伝子座、TRB遺伝子座、またはセーフハーバーもしくは標的遺伝子座内に挿入される。一部の実施形態では、セーフハーバーまたは標的遺伝子座は、CCR5遺伝子座、CXCR4遺伝子座、PPP1R12C遺伝子座、アルブミン遺伝子座、SHS231遺伝子座、CLYBL遺伝子座、Rosa遺伝子座、F3(CD142)遺伝子座、MICA遺伝子、遺伝子座MICB遺伝子、遺伝子座LRP1(CD91)遺伝子座、HMGB1遺伝子座、ABO遺伝子座、RHD遺伝子座、FUT1遺伝子座、PDGFRa遺伝子座、OLIG2遺伝子座、GFAP遺伝子座、及びKDM5D遺伝子座)からなる群から選択される。
【0644】
一部の実施形態では、外因性ポリヌクレオチドを含む低免疫原性細胞は、初代T細胞、または低免疫原性多能性細胞(例えば、低免疫原性iPSC)に由来するT細胞である。例となる実施形態では、外因性ポリヌクレオチドは、キメラ抗原受容体(例えば、本明細書に記載のCARのうちのいずれか)である。一部の実施形態では、外因性ポリヌクレオチドは、低免疫原性細胞における外因性ポリヌクレオチドの発現用のプロモーターに作動可能に連結されている。
【0645】
一部の実施形態では、外因性ポリヌクレオチドを含む低免疫原性細胞は、初代T細胞、または低免疫原性多能性細胞(例えば、低免疫原性iPSC)に由来するT細胞であり、CARポリペプチドをコードする第1の外因性ポリヌクレオチド及びCD47ポリペプチドをコードする第2の外因性ポリヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、第1の外因性ポリヌクレオチド及び第2の外因性ポリヌクレオチドは、同じゲノム遺伝子座内に挿入される。一部の実施形態では、第1の外因性ポリヌクレオチド及び第2の外因性ポリヌクレオチドは、異なるゲノム遺伝子座内に挿入される。例となる実施形態では、低免疫原性細胞は、初代T細胞、または低免疫原性多能性細胞(例えば、iPSC)に由来するT細胞である。
【0646】
一部の実施形態では、外因性ポリヌクレオチドを含む低免疫原性細胞は、初代NK細胞、または低免疫原性多能性細胞(例えば、低免疫原性iPSC)に由来するNK細胞である。例となる実施形態では、外因性ポリヌクレオチドは、キメラ抗原受容体(例えば、本明細書に記載のCARのうちのいずれか)である。一部の実施形態では、外因性ポリヌクレオチドは、低免疫原性細胞における外因性ポリヌクレオチドの発現用のプロモーターに作動可能に連結されている。一部の実施形態では、外因性ポリヌクレオチドを含む低免疫原性細胞は、初代NK細胞、または低免疫原性多能性細胞(例えば、低免疫原性iPSC)に由来するNK細胞であり、CARポリペプチドをコードする第1の外因性ポリヌクレオチド及びCD47ポリペプチドをコードする第2の外因性ポリヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、第1の外因性ポリヌクレオチド及び第2の外因性ポリヌクレオチドは、同じゲノム遺伝子座内に挿入される。一部の実施形態では、第1の外因性ポリヌクレオチド及び第2の外因性ポリヌクレオチドは、異なるゲノム遺伝子座内に挿入される。例となる実施形態では、低免疫原性細胞は、初代NK細胞、または低免疫原性多能性細胞(例えば、iPSC)に由来するNK細胞である。
【0647】
一部の実施形態では、低免疫原性細胞は、本明細書(例えば、表4)に記載される1つまたは複数のゲノム遺伝子座に挿入された1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個、またはそれよりも多くの異なる外因性ポリヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、外因性ポリヌクレオチドは、同じゲノム遺伝子座内に挿入される。一部の実施形態では、外因性ポリヌクレオチドは、異なるゲノム遺伝子座内に挿入される。
【0648】
一部の実施形態では、外因性ポリヌクレオチドは、以下の因子のうちの1つ:DUX4、CD24、CD27、CD46、CD55、CD59、CD200、HLA-C、HLA-E、HLA-E重鎖、HLA-G、PD-L1、IDO1、CTLA4-Ig、C1-インヒビター、IL-10、IL-35、IL-39、FasL、CCL21、CCL22、Mfge8、Serpinb9、及び本明細書で提供される寛容原性因子のうちのいずれかをコードする。
【0649】
V.細胞の移植
当業者には理解されようが、該細胞及びその派生物は、細胞種及びこれらの細胞の最終的用途の両方に依存する当該技術分野で既知の技法を使用して移植することができる。一般に、本明細書に記載の細胞は、患者において静脈内からまたは特定の箇所での注射によってのいずれかで移植することができる。特定の箇所で移植する場合、細胞は、それらが定着する間の分散を防止するためにゲルマトリックス中に懸濁させてもよい。
【0650】
W.免疫抑制剤
一部の実施形態では、免疫抑制剤及び/または免疫調節剤は、低免疫原性細胞の集団の1回目の投与前に患者に投与されない。多くの実施形態では、免疫抑制剤及び/または免疫調節剤は、低免疫原性細胞集団の1回目の投与前に患者に投与される。一部の実施形態では、免疫抑制剤及び/または免疫調節剤は、該細胞の1回目の投与の少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14日前、またはそれよりも前に投与される。一部の実施形態では、免疫抑制剤及び/または免疫調節剤は、該細胞の1回目の投与の少なくとも1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間前、またはそれよりも前に投与される。特定の実施形態では、免疫抑制及び/または免疫調節剤は、該細胞の1回目の投与後に患者に投与されないか、または該細胞の1回目の投与から少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14日後、もしくはそれよりも後に投与される。一部の実施形態では、免疫抑制剤及び/または免疫調節剤は、該細胞の1回目の投与から少なくとも1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間後、またはそれよりも後に投与される。免疫抑制剤及び/または免疫調節剤の非限定的な例としては、シクロスポリン、アザチオプリン、ミコフェノール酸、ミコフェノール酸モフェチル、プレドニゾン等のコルチコステロイド、メトトレキサート、金塩、スルファサラジン、抗マラリア薬、ブレキナール、レフルノミド、ミゾリビン、15-デオキシスペルグアリン、6-メルカプトプリン、シクロホスファミド、ラパマイシン、タクロリムス(FK-506)、OKT3、抗胸腺細胞グロブリン、チモペンチン、チモシン-α、及び類似の薬剤が挙げられる。一部の実施形態では、免疫抑制剤及び/または免疫調節剤は、IL-2受容体のp75に結合する抗体、例えば、MHC、CD2、CD3、CD4、CD7、CD28、B7、CD40、CD45、IFN-ガンマ、TNF-.アルファ.、IL-4、IL-5、IL-6R、IL-6、IGF、IGFR1、IL-7、IL-8、IL-10、CD11a、またはCD58に結合する抗体、及びそれらのリガンドのうちのいずれかに結合する抗体からなる免疫抑制抗体の群から選択される。免疫抑制剤及び/または免疫調節剤が細胞の1回目の投与前または後に患者に投与される一部の実施形態では、投与は、MHC I及び/またはMHC II発現を有し、かつCD47の外因性発現を有しない細胞に必要とされよう投薬量よりも低い投薬量である。
【0651】
一実施形態では、かかる免疫抑制剤及び/または免疫調節剤は、可溶性IL-15R、IL-10、B7分子(例えば、B7-1、B7-2、それらのバリアント、及びそれらの断片)、負のT細胞制御因子の阻害剤であるICOS及びOX40(CTLA-4に対する抗体等)、ならびに類似の薬剤から選択され得る。
【0652】
一部の実施形態では、免疫抑制剤及び/または免疫調節剤は、低免疫原性細胞の集団の投与前に患者に投与されない。多くの実施形態では、免疫抑制剤及び/または免疫調節剤は、低免疫原性細胞集団の1回目及び/または2回目の投与前に患者に投与される。一部の実施形態では、免疫抑制剤及び/または免疫調節剤は、該細胞の投与の少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14日前、またはそれよりも前に投与される。一部の実施形態では、免疫抑制剤及び/または免疫調節剤は、該細胞の1回目及び/または2回目の投与の少なくとも1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間前、またはそれよりも前に投与される。特定の実施形態では、免疫抑制及び/または免疫調節剤は、該細胞の投与から少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14日後、またはそれよりも後に投与される。一部の実施形態では、免疫抑制剤及び/または免疫調節剤は、該細胞の1回目及び/または2回目の投与から少なくとも1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間後、またはそれよりも後に投与される。免疫抑制剤及び/または免疫調節剤が細胞の投与前または後に患者に投与される一部の実施形態では、投与は、MHC I及び/またはMHC II発現を有し、かつCD47の外因性発現を有しない細胞に必要とされよう投薬量よりも低い投薬量である。
【0653】
IV.発明を実施するための形態
一態様では、外因性CD47ポリペプチドを含むとともに、MHCクラスI及び/またはクラスIIヒト白血球抗原の低減された発現を含む、低免疫原性細胞の集団を患者に投与することを含む方法が本明細書で提供され、ここで、患者は、1つもしくは複数の同種異系抗原に対して感作されている。一部の実施形態では、該方法は、患者における障害を処置するためのものである。
【0654】
一部の実施形態では、患者は、以前の妊娠または以前の同種異系移植から感作されている。一部の実施形態では、1つもしくは複数の同種異系抗原は、ヒト白血球抗原を含む。一部の実施形態では、患者は、1つもしくは複数の同種異系抗原に対して反応性のメモリーB細胞及び/またはメモリーT細胞を示す。一部の実施形態では、同種異系移植は、同種異系細胞移植、同種異系輸血、同種異系組織移植、及び同種異系臓器移植からなる群から選択される。一部の実施形態では、患者は、低免疫原性細胞の集団に対して低減された免疫応答または免疫応答の不在を示す。一部の事例では、患者は、同種異系移植に対して免疫応答を示し、低免疫原性細胞の集団に対しては低減された免疫応答または免疫応答の不在を示す。一部の実施形態では、低減された免疫応答または免疫応答の不在は、低免疫原性細胞の集団に対する低減された全身性の免疫応答または全身性の免疫応答の不在、低減された適応免疫応答または適応免疫応答の不在、低減された自然免疫応答または自然免疫応答の不在、低減されたT細胞応答またはT細胞応答の不在、及び低減されたB細胞応答またはB細胞応答の不在からなる群から選択される。
【0655】
一部の実施形態では、低免疫原性細胞の集団は、患者が1つもしくは複数の同種異系抗原に対して感作されてから少なくとも1週間以上後に投与される。ある特定の実施形態では、低免疫原性細胞の集団は、患者が1つもしくは複数の同種異系抗原に対して感作されてから少なくとも1ヶ月以上後に投与される。
【0656】
一部の実施形態では、低免疫原性細胞は、MHCクラスI及びクラスIIヒト白血球抗原の低減された発現を含む。一部の実施形態では、低免疫原性細胞は、外因性CD47ポリペプチドを含むとともに、B2M及び/またはCIITAの低減された発現を含む。一部の実施形態では、低免疫原性細胞は、外因性CD47ポリペプチドを含むとともに、B2M及びCIITAの低減された発現を含む。一部の実施形態では、低免疫原性細胞は、DUX4、CD24、CD46、CD55、CD59、CD200、PD-L1、HLA-E、HLA-G、IDO1、FasL、IL-35、IL-39、CCL21、CCL22、Mfge8、Serpin B9、及び/またはそれらの組み合わせからなる群から選択される1つまたは複数の外因性ポリペプチドをさらに含む。一部の実施形態では、低免疫原性細胞は、低減された発現レベルのCD142をさらに含む。
【0657】
一部の実施形態では、低免疫原性細胞は、多能性幹細胞に由来する分化細胞である。一部の実施形態では、多能性幹細胞は、人工多能性幹細胞を含む。一部の実施形態では、分化細胞は、心細胞、神経細胞、内皮細胞、T細胞、B細胞、膵島細胞、網膜色素上皮細胞、肝細胞、甲状腺細胞、皮膚細胞、血液細胞(例えば、形質細胞または血小板)、及び上皮細胞からなる群から選択される。
【0658】
一部の実施形態では、低免疫原性細胞は、初代T細胞に由来する細胞を含む。一部の実施形態では、初代T細胞に由来する細胞は、患者とは異なる1以上の(例えば、2以上、3以上、4以上、5以上、10以上、20以上、50以上、または100以上の)対象からの初代T細胞を含むT細胞のプールに由来する。
【0659】
一部の実施形態では、初代T細胞に由来する細胞は、キメラ抗原受容体を含む。一部の実施形態では、キメラ抗原受容体(CAR)は、(a)抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、及びシグナル伝達ドメインを含む第1世代CAR、(b)抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、及び少なくとも2つのシグナル伝達ドメインを含む第2世代CAR、(c)抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、及び少なくとも3つのシグナル伝達ドメインを含む第3世代CAR、ならびに(d)抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、3つまたは4つのシグナル伝達ドメイン、及びCARのシグナル伝達の成功時にサイトカイン遺伝子の発現を誘導するドメインを含む第4世代CARからなる群から選択される。
【0660】
CARの一部の実施形態では、抗原結合ドメインは、(a)新生細胞に特有の抗原を標的とする抗原結合ドメイン、(b)T細胞に特有の抗原を標的とする抗原結合ドメイン、(c)自己免疫障害または炎症性障害に特有の抗原を標的とする抗原結合ドメイン、(d)老化細胞に特有の抗原を標的とする抗原結合ドメイン、(e)感染性疾患に特有の抗原を標的とする抗原結合ドメイン、及び(f)細胞の細胞表面抗原に結合する抗原結合ドメインからなる群から選択される。
【0661】
一部の実施形態では、CARの抗原結合ドメインは、抗体、その抗原結合部分、scFv、及びFabからなる群から選択される。一部の実施形態では、抗原結合ドメインは、CD19またはBCMAに結合する。
【0662】
一部の実施形態では、CARの膜貫通ドメインは、TCRα、TCRβ、TCRζ、CD3ε、CD3γ、CD3δ、CD3ζ、CD4、CD5、CD8α、CD8β、CD9、CD16、CD28、CD45、CD22、CD33、CD34、CD37、CD40、CD40L/CD154、CD45、CD64、CD80、CD86、OX40/CD134、4-1BB/CD137、CD154、FcεRIγ、VEGFR2、FAS、FGFR2Bの膜貫通領域、及びそれらの機能的バリアントからなる群から選択される1つを含む。
【0663】
一部の実施形態では、CARのシグナル伝達ドメイン(複数可)は、共刺激ドメイン(複数可)を含む。一部の実施形態では、共刺激ドメインは、同じでない2つの共刺激ドメインを含む。一部の実施形態では、共刺激ドメイン(複数可)は、T細胞活性化中のサイトカイン産生、CAR-T細胞増殖、及び/またはCAR-T細胞存続を強化する。
【0664】
CARのシグナル伝達の成功時にサイトカイン遺伝子の発現を誘導するドメインを含む第4世代CARに関して、一部の実施形態では、サイトカイン遺伝子は、低免疫原性細胞にとって内在性または外因性のサイトカイン遺伝子である。一部の実施形態では、サイトカイン遺伝子は、炎症促進性サイトカインをコードする。一部の実施形態では、炎症促進性サイトカインは、IL-1、IL-2、IL-9、IL-12、IL 18、TNF、IFN-ガンマ、及びそれらの機能的断片からなる群から選択される。
【0665】
第4世代CARの一部の実施形態では、CARのシグナル伝達の成功時にサイトカイン遺伝子の発現を誘導するドメインは、転写因子またはその機能的ドメインもしくは断片を含む。
【0666】
初代T細胞に由来する細胞の一部の実施形態では、CARは、CD3ゼータ(CD3ζ)ドメインもしくは免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)、またはその機能的バリアントを含む。一部の実施形態では、CARは、(i)CD3ゼータドメインもしくは免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)、またはその機能的バリアント、及び(ii)CD28ドメインもしくは4-1BBドメイン、またはその機能的バリアントを含む。一部の実施形態では、CARは、(i)CD3ゼータドメインもしくは免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)、またはその機能的バリアント、(ii)CD28ドメインまたはその機能的バリアント、及び(iii)4-1BBドメインもしくはCD134ドメイン、またはその機能的バリアントを含む。一部の実施形態では、CARは、(i)CD3ゼータドメインもしくは免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)、またはその機能的バリアント、(ii)CD28ドメインまたはその機能的バリアント、(iii)4-1BBドメインもしくはCD134ドメイン、またはその機能的バリアント、及び(iv)サイトカインまたは共刺激リガンド導入遺伝子を含む。ある特定の実施形態では、CARは、(i)抗CD19 scFv、(ii)CD8αヒンジ及び膜貫通ドメインまたはその機能的バリアント、(iii)4-1BB共刺激ドメインまたはその機能的バリアント、ならびに(iv)CD3ζシグナル伝達ドメインまたはその機能的バリアントを含む。
【0667】
一部の実施形態では、初代T細胞に由来する細胞は、内在性T細胞受容体の低減された発現を含む。特定の実施形態では、初代T細胞に由来する細胞は、細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA4)及び/またはプログラム細胞死(PD1)の低減された発現を含む。ある特定の実施形態では、初代T細胞に由来する細胞は、プログラム細胞死リガンド1(PD-L1)の増加した発現を含む。
【0668】
該方法の一部の実施形態では、低免疫原性細胞の集団は、投与時に患者において低減されたレベルの免疫活性化を誘発するかまたは免疫活性化を誘発しない。ある特定の実施形態では、低免疫原性細胞の集団は、投与時に患者において低減されたレベルの全身性のTH1活性化を誘発するかまたは全身性のTH1活性化を誘発しない。一部の実施形態では、低免疫原性細胞の集団は、投与時に患者において低減されたレベルの末梢血単核細胞(PBMC)の免疫活性化を誘発するかまたはPBMCの免疫活性化を誘発しない。特定の実施形態では、低免疫原性細胞の集団は、投与時に患者において低免疫原性細胞に対する低減されたレベルのドナー特異的IgG抗体を誘発するかまたはドナー特異的IgG抗体を誘発しない。一部の実施形態では、低免疫原性細胞の集団は、投与時に患者において低免疫原性細胞に対する低減されたレベルのIgM及びIgG抗体産生を誘発するかまたはIgM及びIgG抗体産生を誘発しない。他の実施形態では、低免疫原性細胞の集団は、投与時に患者において低免疫原性細胞の低減されたレベルの細胞傷害性T細胞による殺傷を誘発するかまたは細胞傷害性T細胞による殺傷を誘発しない。ある特定の実施形態では、低免疫原性細胞の集団は、投与時に患者において全身性の急性細胞性免疫応答を発動しない。
【0669】
一部の実施形態では、患者は、低免疫原性細胞の集団の投与前または後の少なくとも3日以上、免疫抑制剤を投与されない。
【0670】
別の態様では、(a)治療上有効量の低免疫原性細胞を含む1回目の投与、(b)回復期間、及び(c)治療上有効量の低免疫原性細胞を含む2回目の投与を含む、投与レジメンを患者に施与することを含む方法が本明細書で提供され、ここで、低免疫原性細胞は、外因性CD47ポリペプチドを含むとともに、MHCクラスI及び/またはクラスIIヒト白血球抗原の低減された発現を含み、患者は、1つもしくは複数の同種異系抗原に対して感作されている。一部の実施形態では、該方法は、患者における障害を処置するのに有用である。
【0671】
一部の実施形態では、患者は、以前の妊娠または以前の同種異系移植から感作されている。一部の実施形態では、1つもしくは複数の同種異系抗原は、ヒト白血球抗原を含む。一部の実施形態では、患者は、1つもしくは複数の同種異系抗原に対して反応性のメモリーB細胞及び/またはメモリーT細胞を示す。一部の実施形態では、同種異系移植は、同種異系細胞移植、同種異系輸血、同種異系組織移植、及び同種異系臓器移植からなる群から選択される。
【0672】
一部の実施形態では、患者は、低免疫原性細胞の集団に対して低減された免疫応答または免疫応答の不在を示す。一部の事例では、低減された免疫応答または免疫応答の不在は、低免疫原性細胞の集団に対する低減された全身性の免疫応答または全身性の免疫応答の不在、低減された適応免疫応答または適応免疫応答の不在、低減された自然免疫応答または自然免疫応答の不在、低減されたT細胞応答またはT細胞応答の不在、及び低減されたB細胞応答またはB細胞応答の不在からなる群から選択される。
【0673】
一部の実施形態では、低免疫原性細胞の1回目の投与は、患者が1つもしくは複数の同種異系抗原に対して感作されてから少なくとも1週間以上後に起こる。一部の実施形態では、低免疫原性細胞の1回目の投与は、患者が1つもしくは複数の同種異系抗原に対して感作されてから少なくとも1ヶ月以上後に起こる。
【0674】
一部の実施形態では、低免疫原性細胞は、MHCクラスI及びIIヒト白血球抗原の低減された発現をさらに含む。一部の実施形態では、低免疫原性細胞は、外因性CD47ポリペプチドを発現するとともに、B2M及び/またはCIITAの発現が低減されている。一部の実施形態では、低免疫原性細胞は、外因性CD47ポリペプチドを発現するとともに、B2M及びCIITAの発現が低減されている。一部の実施形態では、低免疫原性細胞は、DUX4、CD24、CD46、CD55、CD59、CD200、PD-L1、HLA-E、HLA-G、IDO1、FasL、IL-35、IL-39、CCL21、CCL22、Mfge8、Serpin B9、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される1つまたは複数の外因性ポリペプチドをさらに含む。一部の実施形態では、低免疫原性細胞は、低減された発現レベルのCD142をさらに含む。
【0675】
一部の実施形態では、低免疫原性細胞は、多能性幹細胞に由来する分化細胞である。ある特定の実施形態では、多能性幹細胞は、人工多能性幹細胞を含む。多くの実施形態では、分化細胞は、心細胞、神経細胞、内皮細胞、T細胞、B細胞、膵島細胞、網膜色素上皮細胞、肝細胞、甲状腺細胞、皮膚細胞、血液細胞(例えば、形質細胞または血小板)、及び上皮細胞からなる群から選択される。
【0676】
一部の実施形態では、低免疫原性細胞は、初代T細胞に由来する細胞を含む。ある特定の実施形態では、初代T細胞に由来する細胞は、患者とは異なる1以上の(例えば、2以上、3以上、4以上、5以上、10以上、20以上、50以上、または100以上の)対象からの初代T細胞を含むT細胞のプールに由来する。一部の実施形態では、初代T細胞に由来する細胞は、キメラ抗原受容体を含む。
【0677】
一部の実施形態では、キメラ抗原受容体(CAR)は、(a)抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、及びシグナル伝達ドメインを含む第1世代CAR、(b)抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、及び少なくとも2つのシグナル伝達ドメインを含む第2世代CAR、(c)抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、及び少なくとも3つのシグナル伝達ドメインを含む第3世代CAR、ならびに(d)抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、3つまたは4つのシグナル伝達ドメイン、及びCARのシグナル伝達の成功時にサイトカイン遺伝子の発現を誘導するドメインを含む第4世代CARからなる群から選択される。
【0678】
一部の実施形態では、抗原結合ドメインは、(a)新生細胞に特有の抗原を標的とする抗原結合ドメイン、(b)T細胞に特有の抗原を標的とする抗原結合ドメイン、(c)自己免疫障害または炎症性障害に特有の抗原を標的とする抗原結合ドメイン、(d)老化細胞に特有の抗原を標的とする抗原結合ドメイン、(e)感染性疾患に特有の抗原を標的とする抗原結合ドメイン、及び(f)細胞の細胞表面抗原に結合する抗原結合ドメインからなる群から選択される。一部の実施形態では、抗原結合ドメインは、抗体、その抗原結合部分、scFv、及びFabからなる群から選択される。ある特定の実施形態では、抗原結合ドメインは、CD19またはBCMAに結合する。
【0679】
一部の実施形態では、膜貫通ドメインは、TCRα、TCRβ、TCRζ、CD3ε、CD3γ、CD3δ、CD3ζ、CD4、CD5、CD8α、CD8β、CD9、CD16、CD28、CD45、CD22、CD33、CD34、CD37、CD40、CD40L/CD154、CD45、CD64、CD80、CD86、OX40/CD134、4-1BB/CD137、CD154、FcεRIγ、VEGFR2、FAS、FGFR2Bの膜貫通領域、及びそれらの機能的バリアントからなる群から選択される1つを含む。
【0680】
一部の実施形態では、シグナル伝達ドメイン(複数可)は、共刺激ドメイン(複数可)を含む。一部の実施形態では、共刺激ドメインは、同じでない2つの共刺激ドメインを含む。一部の実施形態では、共刺激ドメイン(複数可)は、T細胞活性化中のサイトカイン産生、CAR-T細胞増殖、及び/またはCAR-T細胞存続を強化する。
【0681】
第4世代CARの一部の実施形態では、CARのシグナル伝達の成功は、サイトカイン遺伝子の発現を誘導する。一部の実施形態では、サイトカイン遺伝子は、低免疫原性細胞にとって内在性または外因性のサイトカイン遺伝子である。一部の実施形態では、サイトカイン遺伝子は、炎症促進性サイトカインをコードする。一部の実施形態では、炎症促進性サイトカインは、IL-1、IL-2、IL-9、IL-12、IL 18、TNF、IFN-ガンマ、及びそれらの機能的断片からなる群から選択される。第4世代CARの一部の実施形態では、CARのシグナル伝達の成功時にサイトカイン遺伝子の発現を誘導するドメインは、転写因子またはその機能的ドメインもしくは断片を含む。
【0682】
一部の実施形態では、CARは、CD3ゼータ(CD3ζ)ドメインもしくは免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)、またはその機能的バリアントを含む。一部の実施形態では、CARは、(i)CD3ゼータドメインもしくは免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)、またはその機能的バリアント、及び(ii)CD28ドメインもしくは4-1BBドメイン、またはその機能的バリアントを含む。一部の実施形態では、CARは、(i)CD3ゼータドメインもしくは免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)、またはその機能的バリアント、(ii)CD28ドメインまたはその機能的バリアント、及び(iii)4-1BBドメインもしくはCD134ドメイン、またはその機能的バリアントを含む。一部の実施形態では、CARは、(i)CD3ゼータドメインもしくは免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)、またはその機能的バリアント、(ii)CD28ドメインまたはその機能的バリアント、(iii)4-1BBドメインもしくはCD134ドメイン、またはその機能的バリアント、及び(iv)サイトカインまたは共刺激リガンド導入遺伝子を含む。一部の実施形態では、CARは、(i)抗CD19 scFv、(ii)CD8αヒンジ及び膜貫通ドメインまたはその機能的バリアント、(iii)4-1BB共刺激ドメインまたはその機能的バリアント、ならびに(iv)CD3ζシグナル伝達ドメインまたはその機能的バリアントを含む。
【0683】
一部の実施形態では、初代T細胞に由来する細胞は、内在性T細胞受容体の低減された発現を含む。一部の実施形態では、初代T細胞に由来する細胞は、細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA4)及び/またはプログラム細胞死(PD1)の低減された発現を含む。一部の実施形態では、初代T細胞に由来する細胞は、プログラム細胞死リガンド1(PD-L1)の増加した発現を含む。
【0684】
一部の実施形態では、回復期間は、少なくとも1ヶ月以上(例えば、少なくとも1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、またはそれよりも長い期間)を含む。一部の実施形態では、回復期間は、少なくとも2ヶ月以上(例えば、少なくとも2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、またはそれよりも長い期間)を含む。
【0685】
一部の実施形態では、細胞の2回目の投与は、1回目の投与からの低免疫原性細胞が患者においてもはや検出可能でないときに開始される。
【0686】
一部の実施形態では、1回目の投与及び/または2回目の投与時に(例えば、1回目の投与もしくは2回目の投与時に、または1回目及び2回目の両方の投与時に)、低免疫原性細胞は、患者において低減されたレベルの免疫活性化を誘発するかまたは免疫活性化を誘発しない。一部の実施形態では、1回目の投与及び/または2回目の投与時に、低免疫原性細胞は、患者において低減されたレベルの全身性のTH1活性化を誘発するかまたは全身性のTH1活性化を誘発しない。一部の実施形態では、1回目の投与及び/または2回目の投与時に、低免疫原性細胞は、患者において低減されたレベルの末梢血単核細胞(PBMC)の免疫活性化を誘発するかまたはPBMCの免疫活性化を誘発しない。一部の実施形態では、1回目の投与及び/または2回目の投与時に、低免疫原性細胞は、患者において低免疫原性細胞に対する低減されたレベルのドナー特異的IgG抗体を誘発するかまたはドナー特異的IgG抗体を誘発しない。一部の実施形態では、1回目の投与及び/または2回目の投与時に、低免疫原性細胞は、患者において低免疫原性細胞に対する低減されたレベルのIgM及びIgG抗体産生を誘発するかまたはIgM及びIgG抗体産生を誘発しない。一部の実施形態では、1回目の投与及び/または2回目の投与時に、低免疫原性細胞は、患者において低免疫原性細胞の低減されたレベルの細胞傷害性T細胞による殺傷を誘発するかまたは細胞傷害性T細胞による殺傷を誘発しない。
【0687】
一部の実施形態では、患者は、低免疫原性細胞の1回目の投与前または後の少なくとも3日以上、免疫抑制剤を投与されない。一部の実施形態では、患者は、低免疫原性細胞の2回目の投与前または後の少なくとも3日以上、免疫抑制剤を投与されない。ある特定の実施形態では、患者は、回復期間中に免疫抑制剤を投与されない。
【0688】
一部の実施形態では、記載される方法は、該投与レジメンを少なくとも2回施与することをさらに含む。ある特定の事例では、該投与レジメンは、1つもしくは複数の同種異系抗原に対して感作されている患者に少なくとも2回(例えば、少なくとも2、3、4回、またはそれよりも多くの回数)施与される。
【0689】
患者における障害の処置のための、外因性CD47ポリペプチドを含むとともに、MHCクラスI及び/またはクラスIIヒト白血球抗原の低減された発現を含む、低免疫原性細胞の集団の使用が本明細書で提供され、ここで、患者は、1つもしくは複数の同種異系抗原に対して感作されている。
【0690】
患者における障害の処置のための、外因性CD47ポリペプチドを含むとともに、MHCクラスI及びクラスIIヒト白血球抗原の低減された発現を含む、低免疫原性細胞の集団の使用が本明細書で提供され、ここで、患者は、1つもしくは複数の同種異系抗原に対して感作されている。
【0691】
患者における障害の処置のための、外因性CD47ポリペプチドを含むとともに、低減されたレベルのB2M及びCIITAポリペプチドを含む、低免疫原性細胞の集団の使用が本明細書で提供され、ここで、患者は、1つもしくは複数の同種異系抗原に対して感作されている。
【0692】
患者における障害の処置のための、外因性CD47ポリペプチド、B2M遺伝子のゲノム改変、及びCIITA遺伝子のゲノム改変を含む、低免疫原性細胞の集団の使用が本明細書で提供され、ここで、患者は、1つもしくは複数の同種異系抗原に対して感作されている。
【0693】
該細胞集団の使用の一部の実施形態では、1つもしくは複数の同種異系抗原は、ヒト白血球抗原を含む。一部の実施形態では、患者は、1つもしくは複数の同種異系抗原に対して反応性のメモリーB細胞及び/またはメモリーT細胞を示す。
【0694】
記載される使用の一部の実施形態では、患者は、以前の妊娠または以前の同種異系移植から感作されている。一部の実施形態では、同種異系移植は、同種異系細胞移植、同種異系輸血、同種異系組織移植、及び同種異系臓器移植からなる群から選択される。
【0695】
一部の実施形態では、患者は、低免疫原性細胞の集団に対して低減された免疫応答または免疫応答の不在を示す。ある特定の実施形態では、低減された免疫応答または免疫応答の不在は、低免疫原性細胞の集団に対する低減された全身性の免疫応答または全身性の免疫応答の不在、低減された適応免疫応答または適応免疫応答の不在、低減された自然免疫応答または自然免疫応答の不在、低減されたT細胞応答またはT細胞応答の不在、及び低減されたB細胞応答またはB細胞応答の不在からなる群から選択される。
【0696】
一部の実施形態では、低免疫原性細胞は、DUX4、CD24、CD46、CD55、CD59、CD200、PD-L1、HLA-E、HLA-G、IDO1、FasL、IL-35、IL-39、CCL21、CCL22、Mfge8、Serpin B9、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される1つまたは複数の外因性ポリペプチドをさらに含む。ある特定の実施形態では、低免疫原性細胞は、CD142遺伝子のゲノム改変をさらに含む。
【0697】
一部の実施形態では、低免疫原性細胞の集団は、多能性幹細胞に由来する分化細胞を含む。一部の実施形態では、多能性幹細胞は、人工多能性幹細胞を含む。一部の実施形態では、分化細胞は、心細胞、神経細胞、内皮細胞、T細胞、B細胞、膵島細胞、網膜色素上皮細胞、肝細胞、甲状腺細胞、皮膚細胞、血液細胞(例えば、形質細胞または血小板)、及び上皮細胞からなる群から選択される。
【0698】
一部の実施形態では、低免疫原性細胞の集団は、初代T細胞に由来する細胞を含む。一部の実施形態では、初代T細胞に由来する細胞は、患者とは異なる1以上の(例えば、2以上、3以上、4以上、5以上、10以上、20以上、50以上、または100以上の)対象からの初代T細胞を含むT細胞のプールに由来する。一部の実施形態では、初代T細胞に由来する細胞は、キメラ抗原受容体(CAR)を含む。
【0699】
一部の実施形態では、キメラ抗原受容体(CAR)は、(a)抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、及びシグナル伝達ドメインを含む第1世代CAR、(b)抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、及び少なくとも2つのシグナル伝達ドメインを含む第2世代CAR、(c)抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、及び少なくとも3つのシグナル伝達ドメインを含む第3世代CAR、ならびに(d)抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、3つまたは4つのシグナル伝達ドメイン、及びCARのシグナル伝達の成功時にサイトカイン遺伝子の発現を誘導するドメインを含む第4世代CARからなる群から選択される。
【0700】
一部の実施形態では、抗原結合ドメインは、(a)新生細胞に特有の抗原を標的とする抗原結合ドメイン、(b)T細胞に特有の抗原を標的とする抗原結合ドメイン、(c)自己免疫障害または炎症性障害に特有の抗原を標的とする抗原結合ドメイン、(d)老化細胞に特有の抗原を標的とする抗原結合ドメイン、(e)感染性疾患に特有の抗原を標的とする抗原結合ドメイン、及び(f)細胞の細胞表面抗原に結合する抗原結合ドメインからなる群から選択される。
【0701】
CARの一部の実施形態では、抗原結合ドメインは、抗体、その抗原結合部分、scFv、及びFabからなる群から選択される。一部の実施形態では、抗原結合ドメインは、CD19またはBCMAに結合する。
【0702】
CARの一部の実施形態では、膜貫通ドメインは、TCRα、TCRβ、TCRζ、CD3ε、CD3γ、CD3δ、CD3ζ、CD4、CD5、CD8α、CD8β、CD9、CD16、CD28、CD45、CD22、CD33、CD34、CD37、CD40、CD40L/CD154、CD45、CD64、CD80、CD86、OX40/CD134、4-1BB/CD137、CD154、FcεRIγ、VEGFR2、FAS、FGFR2Bの膜貫通領域、及びそれらの機能的バリアントからなる群から選択される1つを含む。
【0703】
CARの一部の実施形態では、シグナル伝達ドメイン(複数可)は、共刺激ドメイン(複数可)を含む。一部の実施形態では、共刺激ドメインは、同じでない2つの共刺激ドメインを含む。一部の実施形態では、共刺激ドメイン(複数可)は、T細胞活性化中のサイトカイン産生、CAR-T細胞増殖、及び/またはCAR-T細胞存続を強化する。
【0704】
第4世代CARで記載されるように、CARのシグナル伝達の成功は、サイトカイン遺伝子の発現を誘導する。一部の実施形態では、サイトカイン遺伝子は、低免疫原性細胞にとって内在性または外因性のサイトカイン遺伝子である。一部の実施形態では、サイトカイン遺伝子は、炎症促進性サイトカインをコードする。一部の実施形態では、炎症促進性サイトカインは、IL-1、IL-2、IL-9、IL-12、IL 18、TNF、IFN-ガンマ、及びそれらの機能的断片からなる群から選択される。第4世代CARの一部の実施形態では、CARのシグナル伝達の成功時にサイトカイン遺伝子の発現を誘導するドメインは、転写因子またはその機能的ドメインもしくは断片を含む。
【0705】
一部の実施形態では、CARは、CD3ゼータドメインもしくは免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)、またはその機能的バリアントを含む。一部の実施形態では、CARは、(i)CD3ゼータドメインもしくは免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)、またはその機能的バリアント、及び(ii)CD28ドメインもしくは4-1BBドメイン、またはその機能的バリアントを含む。一部の実施形態では、CARは、(i)CD3ゼータドメインもしくは免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)、またはその機能的バリアント、(ii)CD28ドメインまたはその機能的バリアント、及び(iii)4-1BBドメインもしくはCD134ドメイン、またはその機能的バリアントを含む。一部の実施形態では、CARは、(i)CD3ゼータドメインもしくは免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)、またはその機能的バリアント、(ii)CD28ドメインまたはその機能的バリアント、(iii)4-1BBドメインもしくはCD134ドメイン、またはその機能的バリアント、及び(iv)サイトカインまたは共刺激リガンド導入遺伝子を含む。一部の実施形態では、CARは、(i)抗CD19 scFv、(ii)CD8αヒンジ及び膜貫通ドメインまたはその機能的バリアント、(iii)4-1BB共刺激ドメインまたはその機能的バリアント、ならびに(iv)CD3ζシグナル伝達ドメインまたはその機能的バリアントを含む。
【0706】
一部の実施形態では、初代T細胞に由来する細胞は、内在性T細胞受容体の低減された発現を含む。一部の実施形態では、初代T細胞に由来する細胞は、細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA4)及び/またはプログラム細胞死(PD1)の低減された発現を含む。一部の実施形態では、初代T細胞に由来する細胞は、プログラム細胞死リガンド1(PD-L1)の増加した発現を含む。
【0707】
一態様では、外因性CD47ポリペプチドを含むとともに、MHCクラスI及び/またはクラスIIヒト白血球抗原の低減された発現を含む、低免疫原性細胞の集団を患者に投与することを含む方法が本明細書で提供され、ここで、患者は、同種異系移植を以前に受けていた。
【0708】
一部の実施形態では、同種異系移植は、同種異系細胞移植、同種異系輸血、同種異系組織移植、及び同種異系臓器移植からなる群から選択される。一部の実施形態では、患者は、1つもしくは複数の同種異系抗原に対して反応性のメモリーB細胞及び/またはメモリーT細胞を示す。一部の実施形態では、1つもしくは複数の同種異系抗原は、ヒト白血球抗原を含む。
【0709】
一部の実施形態では、患者は、低免疫原性細胞の集団に対して低減された免疫応答または免疫応答の不在を示す。一部の実施形態では、低減された免疫応答または免疫応答の不在は、低免疫原性細胞の集団に対する低減された全身性の免疫応答または全身性の免疫応答の不在、低減された適応免疫応答または適応免疫応答の不在、低減された自然免疫応答または自然免疫応答の不在、低減されたT細胞応答またはT細胞応答の不在、及び低減されたB細胞応答またはB細胞応答の不在からなる群から選択される。
【0710】
一部の実施形態では、低免疫原性細胞の集団は、患者が同種異系移植を受けてから少なくとも1週間以上後に投与される。特定の実施形態では、低免疫原性細胞の集団は、患者が同種異系移植を受けてから少なくとも1ヶ月以上後に投与される。
【0711】
一部の実施形態では、低免疫原性細胞は、MHCクラスI及びクラスIIヒト白血球抗原の低減された発現を含む。一部の実施形態では、低免疫原性細胞は、外因性CD47ポリペプチドを含むとともに、B2M及び/またはCIITAの低減された発現を含む。一部の実施形態では、低免疫原性細胞は、外因性CD47ポリペプチドを含むとともに、B2M及びCIITAの低減された発現を含む。一部の実施形態では、低免疫原性細胞は、DUX4、CD24、CD46、CD55、CD59、CD200、PD-L1、HLA-E、HLA-G、IDO1、FasL、IL-35、IL-39、CCL21、CCL22、Mfge8、Serpin B9、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される1つまたは複数の外因性ポリペプチドをさらに含む。一部の実施形態では、低免疫原性細胞は、低減された発現レベルのCD142をさらに含む。
【0712】
一部の実施形態では、低免疫原性細胞は、多能性幹細胞に由来する分化細胞である。一部の実施形態では、多能性幹細胞は、人工多能性幹細胞を含む。一部の実施形態では、分化細胞は、心細胞、神経細胞、内皮細胞、T細胞、B細胞、膵島細胞、網膜色素上皮細胞、肝細胞、甲状腺細胞、皮膚細胞、血液細胞(例えば、形質細胞または血小板)、及び上皮細胞からなる群から選択される。
【0713】
一部の実施形態では、低免疫原性細胞は、初代T細胞に由来する細胞を含む。一部の実施形態では、初代T細胞に由来する細胞は、患者とは異なる1以上の(例えば、2以上、3以上、4以上、5以上、10以上、20以上、50以上、または100以上の)対象からの初代T細胞を含むT細胞のプールに由来する。
【0714】
一部の実施形態では、初代T細胞に由来する細胞は、キメラ抗原受容体を含む。一部の実施形態では、キメラ抗原受容体(CAR)は、(a)抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、及びシグナル伝達ドメインを含む第1世代CAR、(b)抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、及び少なくとも2つのシグナル伝達ドメインを含む第2世代CAR、(c)抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、及び少なくとも3つのシグナル伝達ドメインを含む第3世代CAR、ならびに(d)抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、3つまたは4つのシグナル伝達ドメイン、及びCARのシグナル伝達の成功時にサイトカイン遺伝子の発現を誘導するドメインを含む第4世代CARからなる群から選択される。
【0715】
一部の実施形態では、抗原結合ドメインは、(a)新生細胞に特有の抗原を標的とする抗原結合ドメイン、(b)T細胞に特有の抗原を標的とする抗原結合ドメイン、(c)自己免疫障害または炎症性障害に特有の抗原を標的とする抗原結合ドメイン、(d)老化細胞に特有の抗原を標的とする抗原結合ドメイン、(e)感染性疾患に特有の抗原を標的とする抗原結合ドメイン、及び(f)細胞の細胞表面抗原に結合する抗原結合ドメインからなる群から選択される。一部の実施形態では、抗原結合ドメインは、抗体、その抗原結合部分、scFv、及びFabからなる群から選択される。一部の実施形態では、抗原結合ドメインは、CD19またはBCMAに結合する。
【0716】
一部の実施形態では、膜貫通ドメインは、TCRα、TCRβ、TCRζ、CD3ε、CD3γ、CD3δ、CD3ζ、CD4、CD5、CD8α、CD8β、CD9、CD16、CD28、CD45、CD22、CD33、CD34、CD37、CD40、CD40L/CD154、CD45、CD64、CD80、CD86、OX40/CD134、4-1BB/CD137、CD154、FcεRIγ、VEGFR2、FAS、FGFR2Bの膜貫通領域、及びそれらの機能的バリアントからなる群から選択される1つを含む。
【0717】
一部の実施形態では、シグナル伝達ドメイン(複数可)は、共刺激ドメイン(複数可)を含む。一部の実施形態では、共刺激ドメインは、同じでない2つの共刺激ドメインを含む。一部の実施形態では、共刺激ドメイン(複数可)は、T細胞活性化中のサイトカイン産生、CAR-T細胞増殖、及び/またはCAR-T細胞存続を強化する。
【0718】
サイトカイン遺伝子の発現を誘導する第4世代CARの一部の実施形態では、サイトカイン遺伝子は、低免疫原性細胞にとって内在性または外因性のサイトカイン遺伝子である。一部の実施形態では、サイトカイン遺伝子は、炎症促進性サイトカインをコードする。一部の実施形態では、炎症促進性サイトカインは、IL-1、IL-2、IL-9、IL-12、IL 18、TNF、IFN-ガンマ、及びそれらの機能的断片からなる群から選択される。
【0719】
第4世代CARの一部の実施形態では、CARのシグナル伝達の成功時にサイトカイン遺伝子の発現を誘導するドメインは、転写因子またはその機能的ドメインもしくは断片を含む。
【0720】
一部の実施形態では、初代T細胞に由来する細胞のCARは、CD3ゼータドメインもしくは免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)、またはその機能的バリアントを含む。一部の実施形態では、CARは、(i)CD3ゼータドメインもしくは免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)、またはその機能的バリアント、及び(ii)CD28ドメインもしくは4-1BBドメイン、またはその機能的バリアントを含む。一部の実施形態では、CARは、(i)CD3ゼータドメインもしくは免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)、またはその機能的バリアント、(ii)CD28ドメインまたはその機能的バリアント、及び(iii)4-1BBドメインもしくはCD134ドメイン、またはその機能的バリアントを含む。
【0721】
一部の実施形態では、CARは、(i)CD3ゼータドメインもしくは免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)、またはその機能的バリアント、(ii)CD28ドメインまたはその機能的バリアント、(iii)4-1BBドメインもしくはCD134ドメイン、またはその機能的バリアント、及び(iv)サイトカインまたは共刺激リガンド導入遺伝子を含む。一部の実施形態では、CARは、(i)抗CD19 scFv、(ii)CD8αヒンジ及び膜貫通ドメインまたはその機能的バリアント、(iii)4-1BB共刺激ドメインまたはその機能的バリアント、ならびに(iv)CD3ζシグナル伝達ドメインまたはその機能的バリアントを含む。
【0722】
一部の実施形態では、初代T細胞に由来する細胞は、内在性T細胞受容体の低減された発現を含む。一部の実施形態では、初代T細胞に由来する細胞は、細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA4)及び/またはプログラム細胞死(PD1)の低減された発現を含む。一部の実施形態では、初代T細胞に由来する細胞は、プログラム細胞死リガンド1(PD-L1)の増加した発現を含む。
【0723】
一部の実施形態では、低免疫原性細胞の集団は、投与時に患者において低減されたレベルの免疫活性化を誘発するかまたは免疫活性化を誘発しない。一部の実施形態では、低免疫原性細胞の集団は、投与時に患者において低減されたレベルの全身性のTH1活性化を誘発するかまたは全身性のTH1活性化を誘発しない。一部の実施形態では、低免疫原性細胞の集団は、投与時に患者において低減されたレベルの末梢血単核細胞(PBMC)の免疫活性化を誘発するかまたはPBMCの免疫活性化を誘発しない。一部の実施形態では、低免疫原性細胞の集団は、投与時に患者において低免疫原性細胞に対する低減されたレベルのドナー特異的IgG抗体を誘発するかまたはドナー特異的IgG抗体を誘発しない。一部の実施形態では、低免疫原性細胞の集団は、投与時に患者において低免疫原性細胞に対する低減されたレベルのIgM及びIgG抗体産生を誘発するかまたはIgM及びIgG抗体産生を誘発しない。一部の実施形態では、低免疫原性細胞の集団は、投与時に患者において低免疫原性細胞の低減されたレベルの細胞傷害性T細胞による殺傷を誘発するかまたは細胞傷害性T細胞による殺傷を誘発しない。一部の実施形態では、低免疫原性細胞の集団は、投与時に患者において全身性の急性細胞性免疫応答を発動しない。
【0724】
一部の実施形態では、患者は、低免疫原性細胞の集団の投与前または後の少なくとも3日以上、免疫抑制剤を投与されない。
【0725】
別の態様では、外因性CD47ポリペプチドを含むとともに、MHCクラスI及び/またはクラスIIヒト白血球抗原の低減された発現を含む、低免疫原性細胞の集団を患者に投与することを含む方法が提供され、ここで、患者は、妊娠中の同種免疫化を以前に示したことがあった。一部の実施形態では、妊娠中の同種免疫化は、胎児及び新生児の溶血性疾患(HDFN)、新生児同種免疫性好中球減少症(NAN)、または胎児及び新生児同種免疫性血小板減少症(FNAIT)である。一部の実施形態では、記載される方法は、患者における障害を処置するのに有用である。
【0726】
一部の実施形態では、患者は、低免疫原性細胞の集団に対して低減された免疫応答または免疫応答の不在を示す。一部の実施形態では、低減された免疫応答または免疫応答の不在は、低免疫原性細胞の集団に対する低減された全身性の免疫応答または全身性の免疫応答の不在、低減された適応免疫応答または適応免疫応答の不在、低減された自然免疫応答または自然免疫応答の不在、低減されたT細胞応答またはT細胞応答の不在、及び低減されたB細胞応答またはB細胞応答の不在からなる群から選択される。
【0727】
多くの実施形態では、低免疫原性細胞は、MHCクラスI及びクラスIIヒト白血球抗原の低減された発現を含む。一部の実施形態では、低免疫原性細胞は、外因性CD47ポリペプチドを含むとともに、B2M及び/またはCIITAの低減された発現を含む。一部の実施形態では、低免疫原性細胞は、外因性CD47ポリペプチドを含むとともに、B2M及びCIITAの低減された発現を含む。特定の実施形態では、低免疫原性細胞は、DUX4、CD24、CD46、CD55、CD59、CD200、PD-L1、HLA-E、HLA-G、IDO1、FasL、IL-35、IL-39、CCL21、CCL22、Mfge8、Serpin B9、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される1つまたは複数の外因性ポリペプチドをさらに含む。ある特定の実施形態では、低免疫原性細胞は、低減された発現レベルのCD142をさらに含む。
【0728】
一部の実施形態では、低免疫原性細胞は、多能性幹細胞に由来する分化細胞である。ある特定の実施形態では、多能性幹細胞は、人工多能性幹細胞を含む。
【0729】
多くの実施形態では、分化細胞は、心細胞、神経細胞、内皮細胞、T細胞、B細胞、膵島細胞、網膜色素上皮細胞、肝細胞、甲状腺細胞、皮膚細胞、血液細胞(例えば、形質細胞または血小板)、及び上皮細胞からなる群から選択される。
【0730】
一部の実施形態では、低免疫原性細胞は、初代T細胞に由来する細胞を含む。ある特定の実施形態では、初代T細胞に由来する細胞は、患者とは異なる1以上の(例えば、2以上、3以上、4以上、5以上、10以上、20以上、50以上、または100以上の)対象からの初代T細胞を含むT細胞のプールに由来する。
【0731】
一部の実施形態では、初代T細胞に由来する細胞は、キメラ抗原受容体を含む。一部の実施形態では、キメラ抗原受容体(CAR)は、(a)抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、及びシグナル伝達ドメインを含む第1世代CAR、(b)抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、及び少なくとも2つのシグナル伝達ドメインを含む第2世代CAR、(c)抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、及び少なくとも3つのシグナル伝達ドメインを含む第3世代CAR、ならびに(d)抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、3つまたは4つのシグナル伝達ドメイン、及びCARのシグナル伝達の成功時にサイトカイン遺伝子の発現を誘導するドメインを含む第4世代CARからなる群から選択される。
【0732】
一部の実施形態では、抗原結合ドメインは、(a)新生細胞に特有の抗原を標的とする抗原結合ドメイン、(b)T細胞に特有の抗原を標的とする抗原結合ドメイン、(c)自己免疫障害または炎症性障害に特有の抗原を標的とする抗原結合ドメイン、(d)老化細胞に特有の抗原を標的とする抗原結合ドメイン、(e)感染性疾患に特有の抗原を標的とする抗原結合ドメイン、及び(f)細胞の細胞表面抗原に結合する抗原結合ドメインからなる群から選択される。一部の実施形態では、抗原結合ドメインは、抗体、その抗原結合部分、scFv、及びFabからなる群から選択される。一部の実施形態では、抗原結合ドメインは、CD19またはBCMAに結合する。
【0733】
一部の実施形態では、膜貫通ドメインは、TCRα、TCRβ、TCRζ、CD3ε、CD3γ、CD3δ、CD3ζ、CD4、CD5、CD8α、CD8β、CD9、CD16、CD28、CD45、CD22、CD33、CD34、CD37、CD40、CD40L/CD154、CD45、CD64、CD80、CD86、OX40/CD134、4-1BB/CD137、CD154、FcεRIγ、VEGFR2、FAS、FGFR2Bの膜貫通領域、及びそれらの機能的バリアントからなる群から選択される1つを含む。
【0734】
一部の実施形態では、シグナル伝達ドメイン(複数可)は、共刺激ドメイン(複数可)を含む。一部の実施形態では、共刺激ドメインは、同じでない2つの共刺激ドメインを含む。一部の実施形態では、共刺激ドメイン(複数可)は、T細胞活性化中のサイトカイン産生、CAR-T細胞増殖、及び/またはCAR-T細胞存続を強化する。
【0735】
サイトカイン遺伝子の発現を誘導する第4世代CARに関して、一部の実施形態では、サイトカイン遺伝子は、低免疫原性細胞にとって内在性または外因性のサイトカイン遺伝子である。一部の実施形態では、サイトカイン遺伝子は、炎症促進性サイトカインをコードする。一部の実施形態では、炎症促進性サイトカインは、IL-1、IL-2、IL-9、IL-12、IL 18、TNF、IFN-ガンマ、及びそれらの機能的断片からなる群から選択される。一部の実施形態では、CARのシグナル伝達の成功時にサイトカイン遺伝子の発現を誘導するCARのドメインは、転写因子またはその機能的ドメインもしくは断片を含む。
【0736】
一部の実施形態では、CARは、CD3ゼータドメインもしくは免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)、またはその機能的バリアントを含む。一部の実施形態では、CARは、(i)CD3ゼータドメインもしくは免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)、またはその機能的バリアント、及び(ii)CD28ドメインもしくは4-1BBドメイン、またはその機能的バリアントを含む。一部の実施形態では、CARは、(i)CD3ゼータドメインもしくは免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)、またはその機能的バリアント、(ii)CD28ドメインまたはその機能的バリアント、及び(iii)4-1BBドメインもしくはCD134ドメイン、またはその機能的バリアントを含む。一部の実施形態では、CARは、(i)CD3ゼータドメインもしくは免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)、またはその機能的バリアント、(ii)CD28ドメインまたはその機能的バリアント、(iii)4-1BBドメインもしくはCD134ドメイン、またはその機能的バリアント、及び(iv)サイトカインまたは共刺激リガンド導入遺伝子を含む。一部の実施形態では、CARは、(i)抗CD19 scFv、(ii)CD8αヒンジ及び膜貫通ドメインまたはその機能的バリアント、(iii)4-1BB共刺激ドメインまたはその機能的バリアント、ならびに(iv)CD3ζシグナル伝達ドメインまたはその機能的バリアントを含む。
【0737】
一部の実施形態では、初代T細胞に由来する細胞は、内在性T細胞受容体の低減された発現を含む。一部の実施形態では、初代T細胞に由来する細胞は、細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA4)及び/またはプログラム細胞死(PD1)の低減された発現を含む。一部の実施形態では、初代T細胞に由来する細胞は、プログラム細胞死リガンド1(PD-L1)の増加した発現を含む。
【0738】
一部の実施形態では、低免疫原性細胞の集団は、投与時に患者において低減されたレベルの免疫活性化を誘発するかまたは免疫活性化を誘発しない。一部の実施形態では、低免疫原性細胞の集団は、投与時に患者において低減されたレベルの全身性のTH1活性化を誘発するかまたは全身性のTH1活性化を誘発しない。一部の実施形態では、低免疫原性細胞の集団は、投与時に患者において低減されたレベルの末梢血単核細胞(PBMC)の免疫活性化を誘発するかまたはPBMCの免疫活性化を誘発しない。一部の実施形態では、低免疫原性細胞の集団は、投与時に患者において低免疫原性細胞に対する低減されたレベルのドナー特異的IgG抗体を誘発するかまたはドナー特異的IgG抗体を誘発しない。一部の実施形態では、低免疫原性細胞の集団は、投与時に患者において低免疫原性細胞に対する低減されたレベルのIgM及びIgG抗体産生を誘発するかまたはIgM及びIgG抗体産生を誘発しない。一部の実施形態では、低免疫原性細胞の集団は、投与時に患者において低免疫原性細胞の低減されたレベルの細胞傷害性T細胞による殺傷を誘発するかまたは細胞傷害性T細胞による殺傷を誘発しない。一部の実施形態では、低免疫原性細胞の集団は、投与時に患者において全身性の急性細胞性免疫応答を発動しない。
【0739】
一部の実施形態では、患者は、低免疫原性細胞の集団の投与前または後の少なくとも3日以上、免疫抑制剤を投与されない。
【0740】
一態様では、細胞欠損症を有する感作患者を処置する方法が本明細書で提供され、該方法は、1つまたは複数の低免疫原性改変を含む幹細胞から分化した細胞集団を患者に投与することを含む。
【0741】
別の態様では、細胞療法の候補である感作患者を処置する方法が本明細書で提供され、該方法は、1つまたは複数の低免疫原性改変を含む幹細胞から分化した細胞集団を患者に投与することを含む。
【0742】
一態様では、細胞療法の候補である患者に1つまたは複数の低免疫原性改変を含む幹細胞から分化した細胞集団を投与することを含む方法が本明細書で提供され、ここで、患者は、病態もしくは疾患に対する以前の処置を受けたことがある。
【0743】
一態様では、細胞療法の候補である感作患者を処置する方法が本明細書で提供され、該方法は、1つまたは複数の低免疫原性改変を含む幹細胞から分化した細胞集団を患者に投与することを含み、ここで、患者は、該細胞集団の投与前、最中、または後に免疫抑制剤を投与されない。
【0744】
一態様では、処置する必要がある、少なくとも部分的な臓器不全を有する患者を処置する方法が本明細書で提供され、該方法は、患者に少なくとも部分的な臓器移植を施与する前に1つまたは複数の低免疫原性改変を含む幹細胞から分化した細胞集団を患者に投与することを含む。
【0745】
別の態様では、処置する必要がある患者に組織移植または臓器移植を施与する方法が本明細書で提供され、該方法は、組織移植または臓器移植を施与する前に1つまたは複数の低免疫原性改変を含む幹細胞から分化した細胞集団を患者に投与することを含む。
【0746】
一部の実施形態では、患者は、感作患者である。ある特定の実施形態では、患者は、以前の妊娠または以前の移植から感作されている。ある特定の実施形態では、以前の移植は、細胞移植、輸血、組織移植、及び臓器移植からなる群から選択される。一部の実施形態では、以前の移植は、同種異系移植である。
【0747】
一部の実施形態では、以前の移植は、ヒト起源のキメラ、改変された非ヒト自家細胞、改変された自家細胞、自家組織、及び自家臓器からなる群から選択される移植である。一部の実施形態では、患者は、1つもしくは複数の同種異系抗原または1つもしくは複数の自己抗原に対して感作されている。ある特定の実施形態では、患者は、1つもしくは複数の同種異系抗原または1つもしくは複数の自己抗原に対して反応性のメモリーB細胞及び/またはメモリーT細胞を示す。
【0748】
一部の実施形態では、患者は、アレルギーを有する。ある特定の実施形態では、アレルギーは、花粉症、食物アレルギー、昆虫アレルギー、薬物アレルギー、及びアトピー性皮膚炎からなる群から選択されるアレルギーである。
【0749】
ある特定の実施形態では、該細胞集団は、外因性CD47ポリペプチドを発現するとともに、B2M及び/またはCIITAの低減された発現を有する細胞を含む。一部の実施形態では、該細胞集団は、心細胞、神経細胞、内皮細胞、T細胞、B細胞、膵島細胞、網膜色素上皮細胞、肝細胞、甲状腺細胞、皮膚細胞、血液細胞、形質細胞、血小板、腎細胞、上皮細胞、及びキメラ抗原受容体(CAR)T細胞からなる群から選択される。
【0750】
一部の実施形態では、患者は、該細胞集団に対して低減された免疫応答または免疫応答の不在を示す。一部の実施形態では、低減された免疫応答は、「野生型」細胞集団を投与された患者または対照被験者における免疫応答と比較される。一部の実施形態では、該細胞集団に対する低減された免疫応答または免疫応答の不在の応答が示されることは、低免疫原性細胞の集団に対する低減された全身性の免疫応答または全身性の免疫応答の不在、低減された適応免疫応答または適応免疫応答の不在、低減された自然免疫応答または自然免疫応答の不在、低減されたT細胞応答またはT細胞応答の不在、及び低減されたB細胞応答またはB細胞応答の不在からなる群から選択される。例となる実施形態では、患者は、a)該細胞集団を投与したときの低減されたレベルの全身性のTH1活性化もしくは全身性のTH1活性化の不在、b)該細胞集団を投与したときの低減されたレベルの末梢血単核細胞(PBMC)の免疫活性化もしくはPBMCの免疫活性化の不在、c)該細胞集団を投与したときの該細胞集団に対する低減されたレベルのドナー特異的IgG抗体もしくはドナー特異的IgG抗体の不在、d)該細胞集団を投与したときの該細胞集団に対する低減されたレベルのIgM及びIgG抗体産生もしくはIgM及びIgG抗体産生の不在、及び/またはe)該細胞集団を投与したときの該細胞集団の低減されたレベルの細胞傷害性T細胞による殺傷もしくは細胞傷害性T細胞による殺傷の不在を示す。
【0751】
ある特定の実施形態では、患者は、該細胞集団の投与前に免疫抑制剤を投与されない。一部の実施形態では、該細胞集団は、患者が感作されてから少なくとも1日、少なくとも2日、少なくとも3日、少なくとも4日、少なくとも5日、少なくとも6日、少なくとも1週間、または少なくとも1ヶ月以上後に投与される。
【0752】
一部の実施形態では、幹細胞は、多能性幹細胞である。ある特定の実施形態では、多能性幹細胞は、人工多能性幹細胞である。
【0753】
一部の実施形態では、細胞欠損症は、神経変性疾患に関連するか、または細胞療法は、神経変性疾患の処置のためのものである。ある特定の実施形態では、神経変性疾患は、白質ジストロフィー、ハンチントン病、パーキンソン病、多発性硬化症、横断性脊髄炎、及びペリツェウス・メルツバッハ病(PMD)からなる群から選択される。一部の実施形態では、該細胞集団は、グリア前駆細胞、乏突起膠細胞、星状細胞、及びドーパミン作動性ニューロンからなる群から選択される細胞を含む。ある特定の実施形態では、ドーパミン作動性ニューロンは、神経幹細胞、神経前駆細胞、未成熟ドーパミン作動性ニューロン、及び成熟ドーパミン作動性ニューロンからなる群から選択される。
【0754】
一部の実施形態では、細胞欠損症は、糖尿病に関連するか、または細胞療法は、糖尿病の処置のためのものである。ある特定の実施形態では、該細胞集団は、膵臓ベータ島細胞を含む膵島細胞の集団である。一部の実施形態では、膵島細胞は、膵島前駆細胞、未成熟膵島細胞、及び成熟膵島細胞からなる群から選択される。
【0755】
ある特定の実施形態では、細胞欠損症は、心血管病態もしくは疾患に関連するか、または細胞療法は、心血管病態もしくは疾患の処置のためのものである。一部の実施形態では、該細胞集団は、心筋細胞の集団である。
【0756】
一部の実施形態では、細胞欠損症は、血管病態もしくは疾患に関連するか、または細胞療法は、血管病態もしくは疾患の処置のためのものである。一部の実施形態では、該細胞集団は、内皮細胞の集団である。
【0757】
一部の実施形態では、細胞欠損症は、自己免疫性甲状腺炎に関連するか、または細胞療法は、自己免疫性甲状腺炎の処置のためのものである。一部の実施形態では、該細胞集団は、甲状腺前駆細胞の集団である。
【0758】
ある特定の実施形態では、細胞欠損症は、肝臓疾患に関連するか、または細胞療法は、肝臓疾患の処置のためのものである。一部の実施形態では、肝臓疾患は、肝硬変を含む。
【0759】
一部の実施形態では、該細胞集団は、肝細胞または肝前駆細胞の集団である。ある特定の実施形態では、細胞欠損症は、角膜疾患に関連するか、または細胞療法は、角膜疾患の処置のためのものである。一部の実施形態では、角膜疾患は、フックスジストロフィーもしくは先天性遺伝性内皮ジストロフィーである。一部の実施形態では、該細胞集団は、角膜内皮前駆細胞もしくは角膜内皮細胞の集団である。
【0760】
一部の実施形態では、細胞欠損症は、腎臓疾患に関連するか、または細胞療法は、腎臓疾患の処置のためのものである。一部の実施形態では、該細胞集団は、腎前駆体細胞もしくは腎細胞の集団である。
【0761】
ある特定の実施形態では、細胞療法は、がんの処置のためのものである。一部の実施形態では、がんは、B細胞急性リンパ芽球性白血病(B-ALL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、肝臓癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、結腸直腸癌、肺癌、非小細胞肺癌、急性骨髄性リンパ性白血病、多発性骨髄腫、胃癌、胃腺癌、膵臓腺癌、神経膠芽腫、神経芽細胞腫、肺扁平上皮癌、肝細胞癌、及び膀胱癌からなる群から選択される。一部の実施形態では、該細胞集団は、キメラ抗原受容体(CAR)T細胞の集団である。
【0762】
一部の実施形態では、以前の処置は、細胞集団を含まなかった。ある特定の実施形態では、該細胞集団は、以前の処置と同じ病態もしくは疾患の処置のために投与される。一部の実施形態では、該細胞集団は、以前の処置と比較して患者における病態もしくは疾患の処置に対して強化された治療効果を示す。ある特定の実施形態では、該細胞集団は、以前の処置と比較して患者における病態もしくは疾患の処置に対してより長期の治療効果を示す。一部の実施形態では、該細胞集団は、以前の処置とは異なる病態もしくは疾患の処置のために投与される。一部の実施形態では、以前の処置は、治療上有効でない。一部の実施形態では、患者は、以前の処置に対して免疫反応を起こした。
【0763】
一部の実施形態では、以前の処置は、自殺遺伝子安全スイッチシステムを含む治療用細胞の集団を投与することを含み、免疫反応は、自殺遺伝子安全スイッチシステムの作動に応答して起こる。
【0764】
一部の実施形態では、以前の処置は、機械補助による処置を含む。例となる実施形態では、機械補助による処置は、血液透析または補助人工心臓を含む。
【0765】
一部の実施形態では、組織移植及び/または臓器移植もしくは部分的臓器移植は、心臓移植、肺移植、腎臓移植、肝臓移植、膵臓移植、腸移植、胃移植、角膜移植、骨髄移植、血管移植、心臓弁移植、骨移植、部分的肺移植、部分的腎臓移植、部分的肝臓移植、部分的膵臓移植、部分的腸移植、及び/または部分的角膜移植からなる群から選択される。一部の実施形態では、該細胞集団は、心臓、肺、腎臓、肝臓、膵臓、腸、胃、角膜、骨髄、血管、心臓弁、及び/または骨からなる群から選択される組織または臓器における細胞欠損症の処置のために投与される。
【0766】
一部の実施形態では、組織移植または臓器移植は、同種異系移植片移植である。ある特定の実施形態では、組織移植または臓器移植は、自家移植片移植である。一部の実施形態では、該細胞集団は、組織または臓器における細胞欠損症の処置のために投与され、組織移植または臓器移植は、同じ組織または臓器の置換のためのものである。
【0767】
ある特定の実施形態では、該細胞集団は、組織または臓器における細胞欠損症の処置のために投与され、組織移植または臓器移植は、異なる組織または臓器の置換のためのものである。一部の実施形態では、臓器移植は、腎臓移植であり、該細胞集団は、膵臓ベータ島細胞の集団である。例となる実施形態では、患者は、糖尿病を有する。
【0768】
別の態様では、低免疫原性細胞の集団を患者に投与することを含む方法が本明細書で提供される。この方法では、低免疫原性細胞は各々、a)セーフハーバー遺伝子座、標的遺伝子座、B2M遺伝子座、CIITA遺伝子座、TRAC遺伝子座、またはTRB遺伝子座を含むゲノム遺伝子座内に挿入された外因性ポリヌクレオチド、b)外因性CD47ポリペプチド、ならびにc)MHCクラスI及び/またはクラスIIヒト白血球抗原の低減された発現を含む。
【0769】
一態様では、ある投与レジメンを患者に施与することを含む方法が本明細書で提供される。この方法では、該投与レジメンは、a)治療上有効量の低免疫原性細胞を含む1回目の投与、b)回復期間、及びc)治療上有効量の低免疫原性細胞を含む2回目の投与を含み、ここで、低免疫原性細胞は各々、B2M遺伝子座、CIITA遺伝子座、TRAC遺伝子座、またはTRB遺伝子座を含むゲノム遺伝子座内に挿入された外因性ポリヌクレオチドを含み、また、低免疫原性細胞は各々、外因性CD47ポリペプチドを含むとともに、MHCクラスI及び/またはクラスIIヒト白血球抗原の低減された発現を含む。
【0770】
一態様では、患者における疾患の処置のための低免疫原性細胞の集団の使用が本明細書で提供され、ここで、低免疫原性細胞は各々、セーフハーバー遺伝子座、標的遺伝子座、B2M遺伝子座、CIITA遺伝子座、TRAC遺伝子座、またはTRB遺伝子座を含むゲノム遺伝子座内に挿入された外因性ポリヌクレオチドを含み、また、低免疫原性細胞は各々、外因性CD47ポリペプチドを含むとともに、MHCクラスI及び/またはクラスIIヒト白血球抗原の低減された発現を含む。
【0771】
一態様では、低免疫原性細胞の集団を患者に投与することを含む方法が本明細書で提供される。この方法では、低免疫原性細胞は各々、a)セーフハーバー遺伝子座、標的遺伝子座、B2M遺伝子座、CIITA遺伝子座、TRAC遺伝子座、またはTRB遺伝子座を含むゲノム遺伝子座内に挿入された外因性ポリヌクレオチド、b)外因性CD47ポリペプチド、ならびにc)MHCクラスI及び/またはクラスIIヒト白血球抗原の低減された発現を含み、ここで、患者は、同種異系移植を以前に受けていた。
【0772】
一態様では、細胞療法の候補である患者を処置する方法が本明細書で提供され、該方法は、低免疫原性細胞の集団を患者に投与することを含む。この方法では、低免疫原性細胞は各々、a)セーフハーバー遺伝子座、標的遺伝子座、B2M遺伝子座、CIITA遺伝子座、TRAC遺伝子座、またはTRB遺伝子座を含むゲノム遺伝子座内に挿入された外因性ポリヌクレオチド、b)外因性CD47ポリペプチド、ならびにc)MHCクラスI及び/またはクラスIIヒト白血球抗原の低減された発現を含む。
【0773】
一態様では、細胞療法の候補である患者に低免疫原性細胞の集団を投与することを含む方法が本明細書で提供される。この方法では、低免疫原性細胞は各々、a)セーフハーバー遺伝子座、標的遺伝子座、B2M遺伝子座、CIITA遺伝子座、TRAC遺伝子座、またはTRB遺伝子座を含むゲノム遺伝子座内に挿入された外因性ポリヌクレオチド、b)外因性CD47ポリペプチド、ならびにc)MHCクラスI及び/またはクラスIIヒト白血球抗原の低減された発現を含み、ここで、患者は、病態もしくは疾患に対する以前の処置を受けたことがある。
【0774】
一態様では、細胞療法の候補である患者を処置する方法が本明細書で提供され、該方法は、低免疫原性細胞の集団を患者に投与することを含み、ここで、低免疫原性細胞は各々、a)B2M遺伝子座、CIITA遺伝子座、TRAC遺伝子座、またはTRB遺伝子座を含むゲノム遺伝子座内に挿入された外因性ポリヌクレオチド、b)外因性CD47ポリペプチド、ならびにc)MHCクラスI及び/またはクラスIIヒト白血球抗原の低減された発現を含み、ここで、患者は、該細胞集団の投与前、最中、または後に免疫抑制剤を投与されない。
【0775】
別の態様では、処置する必要がある、少なくとも部分的な臓器不全を有する患者を処置する方法が本明細書で提供され、該方法は、低免疫原性細胞の集団を患者に投与することを含む。この方法では、低免疫原性細胞は各々、a)セーフハーバー遺伝子座、標的遺伝子座、B2M遺伝子座、CIITA遺伝子座、TRAC遺伝子座、またはTRB遺伝子座を含むゲノム遺伝子座内に挿入された外因性ポリヌクレオチド、b)外因性CD47ポリペプチド、ならびにc)MHCクラスI及び/またはクラスIIヒト白血球抗原の低減された発現を含み、ここで、低免疫原性細胞の集団は、患者に少なくとも部分的な臓器移植を施与する前に投与される。
【0776】
なおも別の態様では、組織移植または臓器移植の必要がある患者に組織移植または臓器移植を施与する方法が本明細書で提供され、該方法は、低免疫原性細胞の集団を患者に投与することを含む。この方法では、低免疫原性細胞は各々、a)セーフハーバー遺伝子座、標的遺伝子座、B2M遺伝子座、CIITA遺伝子座、TRAC遺伝子座、またはTRB遺伝子座を含むゲノム遺伝子座内に挿入された外因性ポリヌクレオチド、及びb)外因性CD47ポリペプチドを含み、ここで、低免疫原性細胞の集団は、組織移植または臓器移植を施与する前に投与される。
【0777】
別の態様では、低免疫原性細胞の集団を患者に投与する方法が本明細書で提供される。この方法では、低免疫原性細胞は各々、a)セーフハーバー遺伝子座、標的遺伝子座、B2M遺伝子座、CIITA遺伝子座、TRAC遺伝子座、またはTRB遺伝子座を含むゲノム遺伝子座内に挿入された、キメラ抗原受容体(CAR)をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む遺伝子改変、b)外因性CD47ポリペプチド、ならびにc)MHCクラスI及び/またはクラスIIヒト白血球抗原の低減された発現を含む。
【0778】
別の態様では、がんを処置する必要がある患者を必要とするがんを処置する方法が本明細書で提供され、該方法は、低免疫原性細胞の集団を患者に投与することを含む。低免疫原性細胞は各々、a)セーフハーバー遺伝子座、標的遺伝子座、B2M遺伝子座、CIITA遺伝子座、TRAC遺伝子座、またはTRB遺伝子座を含むゲノム遺伝子座内に挿入された、キメラ抗原受容体(CAR)をコードする外因性ポリヌクレオチド、b)外因性CD47ポリペプチド、ならびにc)MHCクラスI及び/またはクラスIIヒト白血球抗原の低減された発現を含む。
【0779】
一部の実施形態では、低免疫原性細胞は、外因性CD47ポリペプチドをコードする追加の外因性ポリヌクレオチドを含む。ある特定の実施形態では、追加の外因性ポリヌクレオチドは、i)(a)におけるゲノム遺伝子座とは異なるゲノム遺伝子座に位置する、またはii)(a)におけるゲノム遺伝子座と同じゲノム遺伝子座に位置する。
【0780】
別の態様では、低免疫原性細胞の集団を患者に投与することを含む方法が本明細書で提供される。この方法では、低免疫原性細胞は各々、a)第1のゲノム遺伝子座内に挿入された、キメラ抗原受容体(CAR)をコードする第1の外因性ポリヌクレオチド、及びb)第2のゲノム遺伝子座内に挿入された、CD47ポリペプチドをコードする第2の外因性ポリヌクレオチドを含み、ここで、低免疫原性細胞は、MHCクラスI及び/またはクラスIIヒト白血球抗原の低減された発現を示し、第1のゲノム遺伝子座及び第2のゲノム遺伝子座は各々、セーフハーバー遺伝子座、標的遺伝子座、B2M遺伝子座、CIITA遺伝子座、TRAC遺伝子座、またはTRB遺伝子座である。
【0781】
一態様では、がんを処置する必要がある患者を必要とするがんを処置する方法が本明細書で提供され、低免疫原性細胞の集団を患者に投与することを含む。この方法では、低免疫原性細胞は各々、a)第1のゲノム遺伝子座内に挿入された、キメラ抗原受容体(CAR)をコードする第1の外因性ポリヌクレオチド、及びb)第2のゲノム遺伝子座内に挿入された、CD47ポリペプチドをコードする第2の外因性ポリヌクレオチドを含み、ここで、低免疫原性細胞は、MHCクラスI及び/またはクラスIIヒト白血球抗原の低減された発現を示し、第1のゲノム遺伝子座及び第2のゲノム遺伝子座は各々、セーフハーバー遺伝子座、標的遺伝子座、B2M遺伝子座、CIITA遺伝子座、TRAC遺伝子座、またはTRB遺伝子座である。
【0782】
一部の実施形態では、第1のゲノム遺伝子座及び第2のゲノム遺伝子座は同じである。ある特定の実施形態では、第1のゲノム遺伝子座及び第2のゲノム遺伝子座は異なる。一部の実施形態では、低免疫原性細胞は各々、第3のゲノム遺伝子座内に挿入された第3の外因性ポリヌクレオチドをさらに含む。一部の実施形態では、第3のゲノム遺伝子座は、第1のゲノム遺伝子座または第2のゲノム遺伝子座と同じである。一部の実施形態では、第3のゲノム遺伝子座は、第1のゲノム遺伝子座及び/または第2のゲノム遺伝子座とは異なる。
【0783】
一部の実施形態では、セーフハーバーまたは標的遺伝子座は、CCR5遺伝子座、CXCR4遺伝子座、PPP1R12C(別名、AAVS1)遺伝子、アルブミン遺伝子座、SHS231遺伝子座、CLYBL遺伝子座、ROSA26遺伝子座、CD142遺伝子座、MICA遺伝子座、MICB遺伝子座、LRP1遺伝子座、HMGB1遺伝子座、ABO遺伝子座、RHD遺伝子座、FUT1遺伝子座、PDGFRa遺伝子座、OLIG2遺伝子座、GFAP遺伝子座、及びKDM5D遺伝子座からなる群から選択される。ある特定の実施形態では、CCR5遺伝子座は、CCR5遺伝子のエクソン1~3、イントロン1~2、またはコード配列(CDS)である。一部の実施形態では、PPP1R12C遺伝子座は、PPP1R12C遺伝子のイントロン1またはイントロン2である。一部の実施形態では、CLYBL遺伝子座は、CLYBL遺伝子のイントロン2である。ある特定の実施形態では、ROSA26遺伝子座は、ROSA26遺伝子のイントロン1である。一部の実施形態では、標的ハーバー遺伝子座(target harbor locus)は、SHS231遺伝子座である。一部の実施形態では、CD142遺伝子座は、CD142遺伝子のCDSである。ある特定の実施形態では、MICA遺伝子座は、MICA遺伝子のCDSである。一部の実施形態では、MICB遺伝子座は、MICB遺伝子のCDSである。一部の実施形態では、B2M遺伝子座は、B2M遺伝子のCDSである。例となる実施形態では、CIITA遺伝子座は、CIITA遺伝子のCDSである。ある特定の実施形態では、TRAC遺伝子座は、TRAC遺伝子のCDSである。一部の実施形態では、TRB遺伝子座は、TRB遺伝子のCDSである。
【0784】
ある特定の実施形態では、外因性ポリヌクレオチドは、プロモーターに作動可能に連結されている。
【0785】
一部の実施形態では、低免疫原性細胞は、多能性幹細胞に由来する分化細胞である。一部の実施形態では、多能性幹細胞は、人工多能性幹細胞を含む。
【0786】
ある特定の実施形態では、分化細胞は、膵臓ベータ島細胞、グリア前駆細胞、心細胞、神経細胞、内皮細胞、B細胞、網膜色素上皮細胞、肝細胞、甲状腺細胞、皮膚細胞、血液細胞(例えば、形質細胞または血小板)、及び上皮細胞からなる群から選択される。一部の実施形態では、分化細胞は、T細胞である。
【0787】
一部の実施形態では、低免疫原性細胞は、初代T細胞に由来する。ある特定の実施形態では、低免疫原性細胞は、多能性幹細胞に由来するT細胞である。一部の実施形態では、低免疫原性細胞は、初代T細胞に由来する。一部の実施形態では、外因性ポリヌクレオチドは、キメラ抗原受容体(CAR)をコードする。
【0788】
例となる実施形態では、キメラ抗原受容体(CAR)は、a)少なくとも1つの抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、及びシグナル伝達ドメインを含む第1世代CAR、b)少なくとも1つの抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、及び少なくとも2つのシグナル伝達ドメインを含む第2世代CAR、c)少なくとも1つの抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、及び少なくとも3つのシグナル伝達ドメインを含む第3世代CAR、ならびにd)少なくとも1つの抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、3つまたは4つのシグナル伝達ドメイン、及びCARのシグナル伝達の成功時にサイトカイン遺伝子の発現を誘導するドメインを含む第4世代CARからなる群から選択される。
【0789】
一部の実施形態では、少なくとも1つの抗原結合ドメインは、a)新生細胞に特有の抗原を標的とする抗原結合ドメイン、b)T細胞に特有の抗原を標的とする抗原結合ドメイン、c)自己免疫障害または炎症性障害に特有の抗原を標的とする抗原結合ドメイン、d)老化細胞に特有の抗原を標的とする抗原結合ドメイン、e)感染性疾患に特有の抗原を標的とする抗原結合ドメイン、及びf)細胞の細胞表面抗原に結合する抗原結合ドメインからなる群から選択される。
【0790】
ある特定の実施形態では、少なくとも1つの抗原結合ドメインは、抗体、その抗原結合部分、scFv、及びFabからなる群から選択される。一部の実施形態では、CARは、2つの異なる抗原に結合する2つの抗原結合ドメインを含む二重特異性CARである。一部の実施形態では、少なくとも1つの抗原結合ドメイン(複数可)は、CD19、CD22、及びBCMAからなる群から選択される抗原に結合する。ある特定の実施形態では、二重特異性CARは、CD19及びCD22に結合する。
【0791】
一部の実施形態では、CARの膜貫通ドメインは、TCRα、TCRβ、TCRζ、CD3ε、CD3γ、CD3δ、CD3ζ、CD4、CD5、CD8α、CD8β、CD9、CD16、CD28、CD45、CD22、CD33、CD34、CD37、CD40、CD40L/CD154、CD45、CD64、CD80、CD86、OX40/CD134、4-1BB/CD137、CD154、FcεRIγ、VEGFR2、FAS、FGFR2Bからの膜貫通領域、及びそれらの機能的バリアントからなる群から選択される膜貫通領域を含む。
【0792】
ある特定の実施形態では、CARのシグナル伝達ドメイン(複数可)は、共刺激ドメイン(複数可)を含む。ある特定の実施形態では、共刺激ドメインは、同じでない2つの共刺激ドメインを含む。一部の実施形態では、共刺激ドメイン(複数可)は、T細胞活性化中のサイトカイン産生、CAR-T細胞増殖、及び/またはCAR-T細胞存続を強化する。一部の実施形態では、サイトカイン遺伝子は、低免疫原性細胞にとって内在性または外因性のサイトカイン遺伝子である。一部の実施形態では、サイトカイン遺伝子は、炎症促進性サイトカインをコードする。一部の実施形態では、炎症促進性サイトカインは、IL-1、IL-2、IL-9、IL-12、IL 18、TNF、IFN-ガンマ、及びそれらの機能的断片からなる群から選択される。ある特定の実施形態では、CARのシグナル伝達の成功時にサイトカイン遺伝子の発現を誘導するドメインは、転写因子またはその機能的ドメインもしくは断片を含む。
【0793】
一部の実施形態では、CARは、CD3ゼータ(CD3ζ)ドメインもしくは免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)、またはその機能的バリアントを含む。ある特定の実施形態では、CARは、(i)CD3ゼータドメインもしくは免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)、またはその機能的バリアント、及び(ii)CD28ドメインもしくは4-1BBドメイン、またはその機能的バリアントを含む。一部の実施形態では、CARは、(i)CD3ゼータドメインもしくは免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)、またはその機能的バリアント、(ii)CD28ドメインまたはその機能的バリアント、及び(iii)4-1BBドメインもしくはCD134ドメイン、またはその機能的バリアントを含む。一部の実施形態では、CARは、(i)CD3ゼータドメインもしくは免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)、またはその機能的バリアント、(ii)CD28ドメインまたはその機能的バリアント、(iii)4-1BBドメインもしくはCD134ドメイン、またはその機能的バリアント、及び(iv)サイトカインまたは共刺激リガンド導入遺伝子を含む。ある特定の実施形態では、CARは、(i)抗CD19 scFv、(ii)CD8αヒンジ及び膜貫通ドメインまたはその機能的バリアント、(iii)4-1BB共刺激ドメインまたはその機能的バリアント、ならびに(iv)CD3ζシグナル伝達ドメインまたはその機能的バリアントを含む。
【0794】
一部の実施形態では、低免疫原性細胞は、内在性T細胞受容体の低減された発現を含む。一部の実施形態では、低免疫原性細胞は、細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA4)及び/またはプログラム細胞死(PD1)の低減された発現を含む。ある特定の実施形態では、低免疫原性細胞は、プログラム細胞死リガンド1(PD-L1)の増加した発現を含む。
【0795】
一部の実施形態では、患者は、1つもしくは複数の同種異系抗原に対して感作されている。一部の実施形態では、患者は、以前の妊娠または以前の同種異系移植から感作されている。ある特定の実施形態では、1つもしくは複数の同種異系抗原は、ヒト白血球抗原を含む。
【0796】
一部の実施形態では、患者は、1つもしくは複数の同種異系抗原に対して反応性のメモリーB細胞及び/またはメモリーT細胞を示す。ある特定の実施形態では、同種異系移植は、同種異系細胞移植、同種異系輸血、同種異系組織移植、及び同種異系臓器移植からなる群から選択される。
【0797】
一部の実施形態では、患者は、該細胞集団に対して低減された免疫応答または免疫応答の不在を示す。ある特定の実施形態では、該細胞集団に対する低減された免疫応答または免疫応答の不在の応答が示されることは、低免疫原性細胞の集団に対する低減された全身性の免疫応答または全身性の免疫応答の不在、低減された適応免疫応答または適応免疫応答の不在、低減された自然免疫応答または自然免疫応答の不在、低減されたT細胞応答またはT細胞応答の不在、及び低減されたB細胞応答またはB細胞応答の不在からなる群から選択される。
【0798】
一部の実施形態では、患者は、a)該細胞集団を投与したときの低減されたレベルの全身性のTH1活性化もしくは全身性のTH1活性化の不在、b)該細胞集団を投与したときの低減されたレベルの末梢血単核細胞(PBMC)の免疫活性化もしくはPBMCの免疫活性化の不在、c)該細胞集団を投与したときの該細胞集団に対する低減されたレベルのドナー特異的IgG抗体もしくはドナー特異的IgG抗体の不在、d)該細胞集団を投与したときの該細胞集団に対する低減されたレベルのIgM及びIgG抗体産生もしくはIgM及びIgG抗体産生の不在、及び/またはe)該細胞集団を投与したときの該細胞集団の低減されたレベルの細胞傷害性T細胞による殺傷もしくは細胞傷害性T細胞による殺傷の不在を示す。
【0799】
一部の実施形態では、障害は、がんまたは細胞療法は、がんの処置のためのものである。一部の実施形態では、がんは、B細胞急性リンパ芽球性白血病(B-ALL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、肝臓癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、結腸直腸癌、肺癌、非小細胞肺癌、急性骨髄性リンパ性白血病、多発性骨髄腫、胃癌、胃腺癌、膵臓腺癌、神経膠芽腫、神経芽細胞腫、肺扁平上皮癌、肝細胞癌、及び膀胱癌からなる群から選択される。
【実施例
【0800】
V.実施例
実施例1:異種間移植研究におけるヒトB2Mインデル/インデル、CIITAインデル/インデル、CD47tg人工多能性幹細胞
細胞移植に関してMHC I及びMHC II発現を減少させるとともに、CD47発現を増加させることの効果を研究するために、ヒトB2Mインデル/インデル、CIITAインデル/インデル、CD47tg人工多能性幹細胞(HIP細胞)をアカゲザル(非ヒト霊長類またはNHP)レシピエントに移植した(異種間移植)。
【0801】
研究設計及び投与。8匹のNHP(雌/雄、2~3kg、月齢12~36ヶ月)を、野生型細胞またはHIP細胞のいずれかを盲検下で投与するために2つの群(n=4)に無作為割付けした。IACUCにより承認されたプロトコルの下で、各NHPの背中に約10個のヒト野生型細胞またはHIP細胞の4回の皮下注射を投与した。ヒト野生型iPSC及びヒトHIP iPSCの特性が、図14に示される。注射前(「pre-Tx」または0日目)、注射後7、13、25日目、及び以下同様に分析のために血液を採取した。また、生物発光イメージング(BLI)のために、野生型細胞及びHIP細胞の両方にホタルルシフェラーゼをトランスジェニックで発現させ、細胞生存をBLIによって監視した。研究設計及び結果が、図1A~1F、2A、2B、3A、3B、4A~4C、5A~5C、6A~6C、及び7A~7Cに示される。
【0802】
T細胞活性化、IgM及びIgGレベル、ならびにドナー特異的IgM及びIgGの増加を示した、野生型細胞を注射したNHPとは対照的に、異種間HIP細胞を受けたNHPにおいて最初の注射後に全身性の免疫応答は何ら観察されなかった。HIP細胞が、免疫活性化の類似の欠如を伴って再投与され得るかどうかを決定するために、最初の注射後118日目~123日目に、NHPに2回目の注射として同じ細胞種(野生型またはHIP)を再注射した。前と同様に、再注射前(「pre-Txまたは0日目)ならびに再注射後7及び13日目に(1回目の注射からそれぞれ125及び131日後)分析のために血液を採取し、細胞生存をBLIによって監視した。際だったことに、異種間HIP細胞を再注射した動物において全身性の免疫応答は何ら観察されなかったが、一方で、野生型細胞を再注射した動物は、全身性の免疫活性化を示した。HIP細胞を投与した動物において全身性の免疫活性化は何ら観察されなかったが、これらの細胞は、見たところでは局所の異種間応答ならびにビヒクル(マトリゲル)に対する応答に起因して、初回用量または2回目の用量に際して13日の期間にわたっては生き延びなかった(BLI<最初の5%)。これらの結果は、HIP細胞が複数回投与時に免疫認識及び活性化を回避し得ることを示す。
【0803】
HIP細胞が、既に形成された免疫応答を回避し得るかどうかを決定するために、野生型細胞の2回用量を最初に投与した4匹のNHPにHIP細胞を移植し、その逆もまた行った(クロスオーバー投与)。2回目の注射後118日目~123日目(初回注射後241日目)に、HIPまたは野生型細胞を動物に皮下投与した。前と同様に、再注射の48日前ならびに再注射後7及び13日目に(1回目の注射からそれぞれ248及び254日後)分析のために血液を採取し、細胞生存をBLIによって監視した。
【0804】
T細胞活性化。野生型及びHIPヒトiPSCを投与した動物におけるT細胞活性化をElispotアッセイによって測定した。一方向性Elispotアッセイのために、3回目の注射(クロスオーバー投与)の48日前ならびに注射から7及び13日後にレシピエントPBMCをアカゲザルから単離した。T細胞をCD3のMACS選別(Miltenyi)によってPBMCから精製し、これをレスポンダー細胞として使用した。ドナー細胞(野生型またはHIP細胞)をマイトマイシンで処理し(50μg/mL、30分間、Sigma)、刺激細胞として使用した。1×10個の刺激細胞を5×10個のレシピエントレスポンダーT細胞とともに36時間インキュベートし、Elispotプレートリーダーを使用してIFN-γスポット頻度を数えた。HIP細胞の2回の先の注射後に野生型細胞を投与した動物については、観察されたElispot活性は、クロスオーバー注射後7日目に最も高かった(図1A~1F)。これらの結果は、HIP細胞の先の注射による免疫抑制を伴わない、野生型細胞の注射後の全身性のTH1活性化及び急性細胞性免疫応答を示すものである。対照的に、野生型細胞の2回の先の注射後にHIP細胞を注射した動物(クロスオーバー注射)は、0日目にナイーブTH1細胞と同等のElispot活性を有し、このことは、野生型異種間細胞に対する既に形成された免疫応答を有する動物においてさえも、改変細胞に対する全身性のTH1活性化または細胞性免疫応答が不在であること示す(図1A~1F)。
【0805】
ドナー特異的抗体活性。野生型及びHIP細胞のクロスオーバー注射時の動物によるドナー特異的抗体の産生もまたアッセイした。レシピエントサルの血清を56℃まで30分間加熱することによって補体を失活させた。等量の血清及び野生型またはHIP細胞懸濁液(5×10個の細胞/mL)を4℃で45分間インキュベートした。細胞をFITCコンジュゲートヤギ抗IgM(BD Bioscience)または抗IgGで標識し、フローサイトメトリー(BD Bioscience)によって分析した。
【0806】
HIP細胞を先に投与した動物において野生型細胞のクロスオーバー注射後7及び13日目で、注射前レベルを上回るドナー特異的反応性の増加が観察され、このうちIgMは、アイソタイプスイッチングと一致するように7日目から13日目で減少した(データは図示せず)。対照的に、野生型細胞の2回の注射を先に与えた、HIP細胞を投与した動物においてドナー特異的IgM結合は何ら観察されなかった(データは図示せず)。HIP細胞を先に投与した動物において野生型細胞のクロスオーバー注射後13日目で、ドナー特異的反応性の増加が観察され、このうちIgGは、アイソタイプスイッチングと一致するように7日目から13日目で増加し、次いで13日目から75日目で減少した(図3A~3B)。対照的に、7、13、及び75日目で、野生型細胞の2回の注射を先に与えた、HIP細胞を投与した動物においてドナー特異的IgG結合は何ら観察されなかった(図2A及び2B)。
【0807】
バルク抗体産生。IgM及びIgG ELISAキット(Abcam)を使用して、野生型またはHIP細胞のクロスオーバー注射を与えた動物における総計の抗体産生もまたアッセイした。洗浄による未結合のタンパク質の除去後、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)とコンジュゲートした抗IgMまたは抗IgG抗体を添加する。これらの酵素標識抗体は、先に結合したIgMまたはIgGと複合体を形成する。免疫吸着剤に結合した酵素を、発色基質である3,3’,5,5’-テトラメチル-ベンジジン(TMB)の添加によってアッセイする。HIP細胞の2回の投与後に野生型細胞をクロスオーバーで投与した動物において、総IgM及びIgGの急激な増加が観察され、このうち最も高いIgM産生が7日目で観察され、最も高いIgG産生が13日目で観察され、これはアイソタイプスイッチングを示すものである(図4A~4C及び6A~6C)。
【0808】
際だったことに、野生型細胞の2回の注射後にHIP細胞をクロスオーバーで投与した動物においては、総IgMまたはIgGの増加は何ら観察されなかった(図5A~5C及び7A~7C)。
【0809】
HIPの注射前にいくらかのIgGが観察され、これは恐らく先の野生型の投与からの残存する産生である(図7A~5C)。まとめると、これらの結果は、HIP細胞に対する液性免疫応答のほぼ完全な欠如を示す。
【0810】
NK細胞殺傷。野生型またはHIP細胞をクロスオーバーで注射した動物において、NK細胞による全身性の自然免疫もまたアッセイした。NK細胞殺傷アッセイは、XCELLIGENCE MPプラットフォーム(ACEA BioSciences)で実施した。96ウェルE-プレート(ACEA BioSciences)をコラーゲン(Sigma-Aldrich)でコーティングし、4×10個の野生型またはHIP細胞を100μlの細胞特異的培地中にプレートした。細胞インデックス値が0.7に達した後、処置動物から単離されたアカゲザルNK細胞を、1ng/mlのアカゲザルIL-2(MyBiosource,San Diego,CA)とともにまたはそれなしで1:1のE:T比で添加した。殺傷対照として、細胞を2%TRITON X100で処理した。刺激されたまたは未刺激のNK細胞による殺傷は、野生型またはHIP細胞で何ら観察されず、このことは、HIP細胞上のCD47発現がHLA I及びHLA IIの不在下でNK細胞及びマクロファージから保護するのに有効であったことを示す(Deuse et al.,2019,Nat.Biotechnol.,37:252-258を参照されたい)。図8A~8cに示されるように、野生型NHPへのHIP細胞の1回目の用量の投与後にも(図8C)、野生型NHPへのHIP細胞の再投与でも(図8c)、NK細胞殺傷は何ら観察されなかった。HIP細胞に対するHLA I/HLA II(例えば、MHC編集)にもかかわらず、既存の免疫を有する野生型NHPへのHIP細胞のクロスオーバー注射後にも、NK細胞殺傷の欠如が観察された(図8D及び8E)。
【0811】
移植細胞の生存。ヒトHIP細胞をクロスオーバーで投与した動物について全身性の免疫応答は何ら観察されなかったものの、これらの細胞は、恐らくは局所の異種間応答に起因して生き延びなかった。先の野生型及びHIP注射に関して、動物から取り出した細胞栓に対して実施した病理組織学的分析は、好中球浸潤またはフィブリン(好中球が当該領域内に存在していることの指標として)、ならびにビヒクルに対する異物反応及びIV型過敏症反応の徴候を示し、これはそれぞれ、ヒト細胞に対する異種間応答及びビヒクルに対するアレルギー反応を示すものである。ビヒクルに対するアレルギー反応及び異物反応は、類似の病理組織学的特徴を示した、ビヒクルのみ(細胞なし)を注射した追加の対照サルによって確認された。
【0812】
この実施例は、既存の全身性の同種異系免疫応答を有する対象に、新たな全身性の免疫応答を誘発することなくHIP細胞を投与することができることを実証する。
【0813】
実施例2:同種異系移植クロスオーバー研究におけるヒトB2Mインデル/インデル、CIITAインデル/インデル、CD47tg人工多能性幹細胞(iPSC)及び野生型iPSC
この実施例は、アカゲザル(非ヒト霊長類またはNHP)レシピエントへのヒトB2Mインデル/インデル、CIITAインデル/インデル、CD47tg人工多能性幹細胞(HIP iPSC)及び野生型iPSCの移植の効果を比較する同種異系移植クロスオーバー研究について記載する。一組のクロスオーバー研究において、野生型iPSCをレシピエント動物の背中に皮下(subcutaneously)(皮下(s.c,))移植し、約6週間後、HIP iPSCを隣接箇所に皮下移植した。第2の組のクロスオーバー研究において、HIP iPSCをレシピエント動物の背中に皮下移植し、約6週間後、野生型iPSCを隣接箇所に皮下移植した。移植された細胞及びそれらの子孫の存在を監視した。
【0814】
データは、HIP iPSCが、感作されたNHPレシピエント(野生型iPSCを初回に移植したNHPレシピエント)の免疫系によって検出されず、故に免疫拒絶反応を回避することを示す。移植されたHIP iPSCは、レシピエントが機能する免疫系をもつ場合であってもレシピエント免疫応答を回避した。加えて、HIP iPSCを初回に移植したNHPレシピエントは、その後に移植された野生型iPSCに対する免疫応答を有した。
【0815】
A.方法
アカゲザルCD47を過剰発現させるヒトiPSCの遺伝子編集。ヒトiPSC B2Mインデル/インデル、CIITAインデル/アカゲザルCD47tg細胞(別称、HIP iPSCまたはHIP細胞)を、当業者に認識される標準的なヒトiPSC細胞の培養方法を使用して培養した。アカゲザル野生型iPSC及びアカゲザルHIP iPSCの特性が、図15に示される。
【0816】
アカゲザルiPSC細胞培養。アカゲザルiPSCを、当業者に認識される標準的なアカゲザルiPSC細胞の培養方法を使用して培養した。
【0817】
hIPSCのルシフェラーゼ形質導入。hiPSC(すなわち、HIP iPSC及び野生型iPSC)を、構成的に活性なプロモーター(すなわち、CAGプロモーター)による発現制御下でルシフェラーゼII遺伝子を発現させるレンチウイルス粒子に感染させた。標準的な市販のルシフェラーゼアッセイを使用して感染細胞によるルシフェラーゼ発現を確認した。
【0818】
非ヒト霊長類への移植用のiPSC調製。iPSCを、生存促進カクテル(すなわち、カスパーゼ阻害剤、BcL-xL、IGF-1、ピナシジル、及びシクロスポリンAを含むカクテル)を含む標準的な培養基中に再懸濁させた。細胞を注射のためにシリンジに充填した。
【0819】
アカゲザルにおける筋肉内iPSC注射。動物を、速効型麻酔剤(すなわち、チレタミン及びゾラゼパン(zolazepan)の組み合わせ)の筋肉内(IM)注射で鎮静させた(好ましくは細胞インプラントを受ける脚ではない)。ひとたび麻酔がかかると、動物の両脚のカテーテル及び細胞インプラント部位を剃毛した。血液試料を、経皮的静脈穿刺を介して大腿静脈から採取した。カテーテルを伏在静脈内に留置した(好ましくは細胞インプラントを受ける脚ではない)。細胞埋め込みの領域、すなわち、大腿前面または四頭筋を、グルコン酸クロルヘキシジン/エタノールスクラブ剤を交互に使用し、最終的にグルコン酸クロルヘキシジンで終えるようにして外科的にこすった。
【0820】
動物の四頭筋の中部前側にわたって皮膚に切開を作製した。四頭筋をつまむことによって分離し、iPSCを星形模様で注射し、注射された細胞が模様内の複数の箇所に注射されるようにした。切開を縫合により閉じ、今後の参照のために注射領域に印を付けた。
【0821】
ルシフェリン注入のためにあらかじめ留置した静脈内カテーテルを介してルシフェリンをレシピエント動物に注射した。ひとたび動物の心拍等のバイタルが正常に戻ると、生物発光イメージング(BLI)を用いて注射領域を画像化した。細胞生存をBLIによって監視した。定量的生物発光イメージングデータ(ata)は、BLI画像及び経時的なBLIシグナルとして表される。
【0822】
B.HIP iPSCの移植
図9Aに示されるように、同種異系HIPアカゲザルiPSCをアカゲザルレシピエントの左脚に移植した。かかるHIP細胞は、レシピエントにおいて免疫応答を誘発しなかった。移植された細胞は、移植後少なくとも6週間にわたって注射部位で検出された。図9Bは、HIP iPSCを移植された左脚の移植後6週間での免疫組織化学的染色を示す。図9Bは、血管を表す平滑筋アクチン(SMA)の染色、及び移植されたHIP iPSCを示すルシフェラーゼを示す。
【0823】
また、図13Cは、同種異系アカゲザルレシピエントの左脚における移植された同種異系HIPアカゲザルiPSCの存在を監視するための類似の研究のBLI画像を示す。移植された細胞及びその子孫は、初回移植後少なくとも9週間にわたって注射部位で見出された。HIP iPSCは、この細胞が移植後少なくとも9週間にわたって存続したことから、アカゲザルレシピエントにおいて顕著な免疫応答を誘発しなかった。
【0824】
C.クロスオーバー研究:同じNHPにおける野生型iPSCとそれに続くHIP iPSCの投与
野生型iPSCからHIP iPSCへのクロスオーバー研究において、同種異系アカゲザル野生型iPSCをアカゲザルレシピエントの左脚に移植した。移植されたアカゲザル野生型iPSCの集団は、移植後7日目までに実質的に減少した(100%から6.8%、図10)。移植後2週間で、移植された集団のわずか10%が検出され、移植後3週間で、集団のほんの1.4%が残っていた。移植後4週間及び5週間で、移植された細胞は、注射部位で何ら見当たらなかった。かくして、アカゲザルレシピエントは、感作されたようであった。同研究のクロスオーバーアームにおいて、初回野生型iPSC移植後5週間で(クロスオーバー0日目(d0)とも称される)、同種異系HIPアカゲザルiPSCを感作アカゲザルレシピエントの右脚に注射した。
【0825】
クロスオーバー移植の0日目、移植された同種異系HIPアカゲザルiPSCは、注射部位で検出された(図10、下段)。クロスオーバー移植の7日目(d7)、移植されたHIP iPSCの69.2%が検出された。また、クロスオーバー移植から2週間後、この細胞の48.1%が残っていた。かくして、レシピエント動物は、同研究の最初のアームでは野生型iPSCに対して免疫応答を誘発し、クロスオーバーアームでは、HIP iPSCが感作レシピエント動物において存続した。
【0826】
図11は、野生型iPSCからHIP iPSCへの別のクロスオーバー研究からの結果を示す。移植されたアカゲザル野生型iPSCは、ナイーブレシピエントにおいて免疫応答を誘発した。具体的に述べると、移植された野生型iPSCのわずか10.2%が移植後d7で検出された。アカゲザル野生型iPSCの初回移植後5週間で(クロスオーバー移植のd0とも称される)、HIPアカゲザルiPSCを今や感作されたアカゲザルレシピエントの右脚に移植した。移植されたHIP iPSCが注射部位で検出された(図11、下段)。クロスオーバー移植後7日目で、移植された細胞及びその子孫の28.8%が、注射部位において所在が特定された。クロスオーバー移植後3週間で、検出された集団は、移植されたHIP iPSCの約32.9%であった。
【0827】
D.クロスオーバー研究:同じNHPにおけるHIP iPSCとそれに続く野生型iPSCの投与
HIP iPSCから野生型iPSCへのクロスオーバー研究において、同種異系HIP iPSCをアカゲザルレシピエントの左脚に移植した(図12)。移植されたHIP iPSC及びその子孫は、移植後少なくとも9週間にわたって注射部位で検出可能であった。移植後5週間で、初回移植されたHIP iPSC集団及びその子孫の約112%が存在し、7週間で、HIP iPSC及びその子孫の202.4%が存在していた。8週間及び9週間で、HIP iPSC及びその子孫のそれぞれ154.8%及び178.6%が存在していた。HIP iPSCは、初回移植後少なくとも9週間にわたってレシピエント内に見出された。
【0828】
HIP iPSCの初回移植後6週間で(クロスオーバー移植の0日目とも称される)、同種異系アカゲザル野生型iPSCをアカゲザルレシピエントの右脚に移植した。移植された野生型iPSCが注射部位で検出された(図12、下段)。クロスオーバー移植後7日目で、移植された細胞及びその子孫は、注射部位において何一つ所在が特定されなかった。ルシフェラーゼシグナルは何ら検出されなかった。対照的に、HIP iPSCの初回移植後7週間で、アカゲザルレシピエントの左脚において初回移植されたHIP iPSC集団及びその子孫の約202.4%が存在した。
【0829】
上述の一連のクロスオーバー研究からの結果は、HIP iPSCが感作NHPレシピエント(野生型iPSCを初回に移植したNHPレシピエント)の免疫系から隠れることができ、故に、HIP iPSCが免疫拒絶反応を回避し得ることを示す。加えて、HIP iPSCを初回に移植したレシピエントは、その後に移植された野生型iPSCに対する免疫応答を生じた。例えば、図13A及び13Bを参照されたい。移植されたHIP iPSCは、レシピエントが機能する免疫系をもっていた場合であっても免疫応答を回避した。
【0830】
実施例3:セーフハーバー部位を使用したヒトB2Mインデル/インデル、CIITAインデル/インデル、CD47tg人工多能性幹細胞(iPSC)における外因性CD47の発現
この実施例は、外因性CD47をコードするポリヌクレオチドがiPSCのセーフハーバー部位内に挿入される、ヒトB2Mインデル/インデル、CIITAインデル/インデル、CD47tg人工多能性幹細胞(iPSC)における外因性CD47発現の発現を特性評価する研究について記載する。
【0831】
B2Mインデル/インデル、CIITAインデル/インデル人工多能性幹細胞(iPSC)を、標準的なCRISPR/Cas9遺伝子編集技法を使用して生成した。CAGまたはEF1αプロモーターによって駆動され、3つのセーフハーバー部位(AAVS1、CLYBL、またはCCR5)に対する1kb相同性アームが両側に位置する、発現カセット内のヒトCD47をコードするHDRドナープラスミドを、B2Mインデル/インデル、CIITAインデル/インデルiPSCに導入した。
【0832】
セーフハーバー部位でのCD47の標的組み込みは、相同性指向修復を媒介する標準的なCRISPR/Cas9遺伝子編集技法を使用して達成した。以下のバルク編集された株を生成した。
・CAG-CD47_AAVS1
・CAG-CD47_CLYBL
・CAG-CD47_CCR5
・EF1α-CD47_AAVS1
・EF1α-CD47_CLYBL
・EF1α-CD47_CCR5
【0833】
バルク編集された株からの単一細胞クローニングを実施した。クローンをコピー数及びプラスミド挿入に関して評定し、セーフハーバー部位への正しい組み込み箇所を検証するために標準的な技法を使用してPCRによる遺伝子型判定を実施した。ゲノム評定に合格したクローンを増殖させ、各セーフハーバー部位につき2つまたは3つのクローンに絞り込むためにクローン選択アッセイを実施した。フローサイトメトリーを使用してB2Mインデル/インデル、CIITAインデル/インデル、CD47tgクローンにおけるCD47発現の評定を実施した。
【0834】
図16に示されるように、CD47導入遺伝子が3つのハーバー部位の各々に挿入されているB2Mインデル/インデル、CIITAインデル/インデル、CD47tgは、内在性レベルを約30~200倍上回って強化されたCD47発現を示した。CD47はまた、iPSCのいくつかのセーフハーバー部位からCAGプロモーターによって安定に発現されることが観察された(図17及び18を参照されたい)。上述の方法を使用して全身性の自然免疫からのB2Mインデル/インデル、CIITAインデル/インデル、CD47tg iPSCの保護をさらに評定した。図19に示されるように、セーフハーバー部位内に挿入されたCD47導入遺伝子を含むB2Mインデル/インデル、CIITAインデル/インデル、CD47tg iPSCは、NK細胞及びマクロファージによる殺傷から保護するのに十分なレベルでCD47を安定に発現した。
【0835】
全ての見出し及び節の表記は、明確化及び参照目的で使用されるにすぎず、いかようにも限定するものと見なされるべきではない。例えば、当業者であれば、本明細書に記載の技術の趣旨及び範囲に従って、適宜、異なる見出し及び節からの種々の態様を組み合わせることの有用性を理解しよう。
【0836】
本明細書で引用される全ての参考文献は、あたかもそれぞれ個々の刊行物または特許もしくは特許出願が参照によりその全体が全目的で援用されることが明確かつ個別に示された場合と同じ程度に、本明細書での参照によりそれらの全体が全目的で本明細書に援用される。
【0837】
当業者には明らかであろうが、本願の趣旨及び範囲から逸脱することなく、本願の多くの修正及び変形を行うことができる。本明細書に記載の具体的な実施形態及び実施例は、例として提供されるにすぎず、本願は、添付の特許請求の範囲が権利を有する均等物の全範囲とともに、特許請求の範囲の条件によってのみ限定されるべきである。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図8C
図8D
図8E
図9
図10
図11
図12A
図12B
図13A
図13B
図13C
図14A
図14B
図14C
図14D
図14E
図14F
図14G
図15A
図15B
図15C
図15D
図15E
図15F
図15G
図15H
図15I
図15J
図16
図17
図18
図19A
図19B
図19C
【配列表】
2023537923000001.app
【国際調査報告】