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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-06
(54)【発明の名称】凍結保存された血管内皮細胞組成物
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/071 20100101AFI20230830BHJP
   C12N 15/861 20060101ALI20230830BHJP
   C12N 15/867 20060101ALI20230830BHJP
   C12N 1/04 20060101ALI20230830BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230830BHJP
   C12N 15/34 20060101ALI20230830BHJP
   C12N 5/078 20100101ALI20230830BHJP
   A61K 35/51 20150101ALI20230830BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230830BHJP
   A61K 35/44 20150101ALI20230830BHJP
【FI】
C12N5/071
C12N15/861 Z ZNA
C12N15/867 Z
C12N1/04
C12N5/10
C12N15/34
C12N5/078
A61K35/51
A61P35/00
A61K35/44
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023509525
(86)(22)【出願日】2021-08-10
(85)【翻訳文提出日】2023-04-06
(86)【国際出願番号】 US2021045388
(87)【国際公開番号】W WO2022035859
(87)【国際公開日】2022-02-17
(31)【優先権主張番号】63/063,668
(32)【優先日】2020-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516389363
【氏名又は名称】アンジオクライン・バイオサイエンス・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Angiocrine Bioscience, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100138911
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻井 陽子
(72)【発明者】
【氏名】ギンズバーグ,マイケル ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】ランディーン,リー
(72)【発明者】
【氏名】フィネガン,ポール ウィリアム
(72)【発明者】
【氏名】フレイザー,ジョン ケイ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA93X
4B065AB01
4B065AC14
4B065AC20
4B065BA02
4B065BB11
4B065BB19
4B065BD27
4B065BD39
4B065CA44
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB59
4C087BB63
4C087MA65
4C087NA14
4C087ZB26
(57)【要約】
本発明は、凍結培地中に高密度の内皮細胞(ヒト臍帯静脈内皮細胞など)を含む組成物、かかる組成物の製造方法、および治療用内皮細胞組成物の調製においてかかる組成物を使用する方法を提供する。このような組成物および方法は、治療用内皮細胞組成物をヒト対象に投与する前に凍結保存剤を除去する必要性を排除し、治療方法における使用前に最小限の操作および人的介入を必要とするなどの多くの利点をもたらす。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効量の凍結保存剤を含む凍結培地中に1mlあたり約5000万細胞~約1億5000万細胞の密度でE4ORF1+内皮細胞(EC)を含む、組成物。
【請求項2】
内皮細胞(EC)がヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
内皮細胞(EC)が、1mlあたり約7500万細胞~約1億2500万細胞の密度である、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
内皮細胞(EC)が、1mlあたり約1億細胞の密度である、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項5】
ヒト血清アルブミン(HSA)をさらに含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
約10%のヒト血清アルブミン(HSA)をさらに含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
凍結保存剤が、ジメチルスルホキシド、エチレングリコール、プロピレングリコールおよびグリセロールからなる群より選択される、請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
凍結保存剤がジメチルスルホキシドである、請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
約5%~約10%のジメチルスルホキシドを含む、請求項1から8のいずれ一項かに記載の組成物。
【請求項10】
約10%のジメチルスルホキシドを含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
凍結培地が内皮増殖培地を含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
ECが、異種プロモーターに作動可能に連結されたアデノウイルスE4ORF1タンパク質をコードする組換えヌクレオチド配列を含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
ヌクレオチド配列がベクター内にある、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
ベクターがレトロウイルスベクターである、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
レトロウイルスベクターがレンチウイルスベクターである、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
レトロウイルスベクターがモロニ-マウス白血病ウイルス(MMLV)ベクターである、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
E4ORF1がヒトアデノウイルス5型E4ORF1である、請求項1から16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
ECがアデノウイルスE4領域全体を含んでいない、請求項1から17のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
ECが、E4ORF2、E4ORF3、E4ORF4、E4ORF5もしくはE4ORF6をコードする配列またはアミノ酸配列を含んでいない、請求項1から18のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項20】
(a)1mlあたり約1億細胞の細胞密度のE4ORF1+EC、(b)内皮増殖培地、(c)約5%~約10%のDMSO、および(d)約10%のHSAを含む、組成物。
【請求項21】
(a)1mlあたり約1億細胞の細胞密度のE4ORF1+HUVEC、(b)内皮増殖培地、(c)約5%~約10%のDMSO、および(d)約10%のHSAを含む、組成物。
【請求項22】
造血幹細胞または造血前駆細胞をさらに含む、請求項1から21のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項23】
造血幹細胞または造血前駆細胞が骨髄由来である、請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
造血幹細胞または造血前駆細胞が末梢血由来である、請求項22に記載の組成物。
【請求項25】
造血幹細胞または造血前駆細胞が羊水由来である、請求項22に記載の組成物。
【請求項26】
造血幹細胞または造血前駆細胞が臍帯血由来である、請求項22に記載の組成物。
【請求項27】
組成物が凍結容器に入っている、請求項1から26のいずれ一項かに記載の組成物。
【請求項28】
凍結容器がクライオバイアルである、請求項27に記載の組成物。
【請求項29】
凍結容器がクライオバッグである、請求項27に記載の組成物。
【請求項30】
凍結容器が、その内容物を閉鎖系で患者に無菌的に送達するために適合されている、請求項27に記載の組成物。
【請求項31】
ヒト対象への投与のための治療用組成物の調製における使用のための、請求項1から30のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項32】
ヒト対象への投与のための治療用組成物の調製における、請求項1から31のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項33】
ヒト対象への投与のための治療用組成物を調製する方法であって、請求項1から32のいずれか一項に記載の組成物を生理食塩水で希釈することを含み、ここで、希釈後のEC細胞濃度が1mlあたり約300万細胞~約500万細胞であり、それによってヒト対象への投与のための治療用組成物を調製する、方法。
【請求項34】
生理的食塩水が、希釈後に治療用組成物が約8%のデキストランおよび約4%のHSAを含む量で、デキストラン40およびHSAを含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
いかなる遠心分離工程も含まない、請求項33記載の方法。
【請求項36】
凍結培地または細胞保存剤を除去することを含まない、請求項33または34に記載の方法。
【請求項37】
内皮細胞を凍結する方法であって、該方法が、
a.内皮細胞(EC)を凍結培地中に1mlあたり約5000万細胞~約1億5000万細胞の密度で懸濁させ、ここで、凍結培地が有効量の凍結保存剤を含み、それによって凍結組成物を調製すること、および
b.凍結組成物を約-80℃~-90℃への漸減温度に供すること
を含む、方法。
【請求項38】
工程(b)において、温度を1分あたり約1℃の速度で低下させる、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
次いで、凍結組成物を液体窒素に移すことを含む、請求項37または38に記載の方法。
【請求項40】
内皮細胞(EC)が、1mlあたり約7500万細胞~約1億2500万細胞の密度である、請求項37から39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
内皮細胞(EC)が1mlあたり約1億細胞の密度である、請求項37から39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
ECがヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)である、請求項37から41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
凍結培地が、ヒト血清アルブミン(HSA)を含む、請求項37から42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
凍結培地が、約10%のヒト血清アルブミン(HSA)を含む、請求項37から43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
凍結保存剤が、ジメチルスルホキシド、エチレングリコール、プロピレングリコールおよびグリセロールからなる群より選択される、請求項37から44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
凍結保存剤がジメチルスルホキシドである、請求項37から45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
凍結培地が約5%~約10%のジメチルスルホキシドを含む、請求項37から46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
凍結培地が約10%のジメチルスルホキシドを含む、請求項37から47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
凍結培地が細胞培養液を含む、請求項37から48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
凍結培地が内皮増殖培地を含む、請求項37から49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
内皮細胞(EC)がアデノウイルスE4ORF1+ECである、請求項37から50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
ECが、アデノウイルスE4ORF1タンパク質をコードする組換えヌクレオチド配列を含む、請求項37から51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
ヌクレオチド配列が異種プロモーターに作動可能に連結されている、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
ヌクレオチド配列がベクター内にある、請求項52または53に記載の方法。
【請求項55】
ベクターがレトロウイルスベクターである、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
レトロウイルスベクターがレンチウイルスベクターである、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
レトロウイルスベクターがモロニ-マウス白血病ウイルス(MMLV)ベクターである、請求項55に記載の方法。
【請求項58】
E4ORF1がヒトアデノウイルス5型E4ORF1である、請求項51から57のいずれか一項に記載の方法。
【請求項59】
ECがアデノウイルスE4領域全体を含んでいない、請求項51から58のいずれか一項に記載の方法。
【請求項60】
ECが、E4ORF2、E4ORF3、E4ORF4、E4ORF5またはE4ORF6をコードする配列またはアミノ酸配列を含んでいない、請求項51から59のいずれか一項に記載の方法。
【請求項61】
凍結組成物が、造血幹細胞または造血前駆細胞をさらに含む、請求項37から60のいずれか一項に記載の方法。
【請求項62】
造血幹細胞または造血前駆細胞が骨髄由来である、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
造血幹細胞または造血前駆細胞が末梢血由来である、請求項61に記載の方法。
【請求項64】
造血幹細胞または造血前駆細胞が羊水由来である、請求項61に記載の方法。
【請求項65】
造血幹細胞または造血前駆細胞が臍帯血由来である、請求項61に記載の方法。
【請求項66】
凍結組成物が凍結容器に入っている、請求項37から65のいずれか一項に記載の方法。
【請求項67】
凍結容器がクライオバイアルである、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
凍結容器がクライオバッグである、請求項66に記載の方法。
【請求項69】
凍結容器が、その内容物を閉鎖系で患者に無菌的に送達するために適合されている、請求項66に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年8月10日出願の米国仮特許出願第63/063,668号に対して優先権の利益を主張し、その内容全体を引用により本明細書中に包含させる。
【0002】
配列表
本出願は、ASCIIフォーマットで電子的に提出された配列リストを含み、その内容全体を引用により本明細書中に包含させる。2021年8月10日作成のASCIIコピーは、Angiocrine_027_WO1_SL.txtという名称で、1,543バイトのサイズである。
【0003】
引用による包含
引用による包含を認める法域のみの目的のために、本明細書で引用された文献は、その全体が引用により包含されるものとする。また、引用または言及されている何れかの製品の製造者の説明書またはカタログは、引用により本明細書に包含される。引用により本明細書に包含された文献、またはその中の何らかの教示は、本発明の実施に使用できる。米国特許第8,465,732号に提供されている一般的な教示の多くは、本発明と共に使用でき、または本発明と共に使用するために適合させることができる。従って、米国特許第8,465,732号の内容全体は、引用により本明細書に明示的に包含される。
【背景技術】
【0004】
背景
ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)などの内皮細胞(EC)は、研究分野で広く使用されており、細胞治療用途として臨床開発も行われている。EC(HUVECなど)は、一般的には、ジメチルスルホキシド(DMSO)などの1以上の凍結保存剤を含む細胞凍結培地中で1mlあたり約100万細胞の濃度で凍結される(例えば、Polchow et al., (2012), “Cryopreservation of human vascular umbilical cord cells under good manufacturing practice conditions for future cell banks,” Journal of Translational Medicine, 10:98; Sultani et al., (2016), “Improved Cryopreservation of Human Umbilical Vein Endothelial Cells: A Systematic Approach,” Sci. Rep., 6, 34393; and Pegg et al., (2002), “Cryopreservation of vascular endothelial cells as isolated cells and as monolayers.” Cryobiology, 44, 46-53)。臨床適用について、ECを凍結したバイアルを提供し、解凍してペレット化し、ECを凍結液および凍結保存剤から分離して生理食塩水に再懸濁し、輸液バッグに移して患者に投与する。患者への投与に十分な細胞を得るために、凍結ECの複数のバイアルの内容物を合併し、および/またはECを培養で増殖させる必要があり得る。凍結細胞を受け取ってから患者に投与するまでの全過程では、遠心分離、容器の交換および培地/溶液の交換など多くの操作があり、それぞれに汚染のリスクがある。また、このプロセスは非常に手間および時間がかかり、ヒトのエラーの影響を受けやすい。このように、凍結ECの受容からECの使用(例えば、患者への細胞の注入による)までのプロセス全体を、最小限の操作で安全かつ効率的に行うことができる組成物および方法の提供に対するニーズが当技術分野に存在する。本発明は、このニーズに応えるものである。
【発明の概要】
【0005】
発明の概要
本発明は、HUVECなどのECを1mlあたり約1億細胞の密度で凍結融解すると、優れた細胞回収率および細胞生存率が得られること、そして、融解した細胞を、凍結保存剤の除去を伴うか否かにかかわらず単に希釈して、ヒト患者に安全に投与できる治療用組成物を生成できることの発見に、一部基づいている。本発明者らの知る限り、このような密度でECを凍結および融解させることは前例がない。
【0006】
通常、ECは、本明細書に記載する濃度より約20倍から100倍低い濃度で凍結および解凍される。例えば、Sultaniらの、“Improved Cryopreservation of Human Umbilical Vein Endothelial Cells: A Systematic Approach”と題された刊行物には、改良型HUVEC凍結保存システムを開発するための研究が記載されている。Sultani et al., 2016, Sci. Rep., Vol. 6, 34393, p. 1-14を参照のこと。Sultaniの研究では、HUVECは1mlあたり百万~2百万個の細胞濃度で凍結された。Sultaniは、凍結保存プロトコルを調整し最適化した多くの態様を記載しているが、細胞凍結密度は変更されていない。同様に、Polchowらの、“Cryopreservation of human vascular umbilical cord cells under good manufacturing practice conditions for future cell banks”と題する刊行物は、臨床用途のためのHUVECの調製を記載し、10%DMSOおよび20%ヒト血清アルブミン(HSA)を含む冷凍培地で、HUVECを1ml当たり100万細胞の濃度で冷凍することを記載している。Polchow et al., 2012, Journal of Translational Medicine, Vol. 10, 98, p. 1-17を参照のこと。その他、多数の論文および細胞培養ガイドに、1mlあたり50万~500万細胞の濃度でECおよびHUVECを凍結保存することが記載されている(例えば、Lehle et al., “Cryopreservation of human endothelial cells for vascular tissue engineering,” 2005, Cryobiology, Vol. 50, p. 154-161; Lonza, “Clonetics(商標) Endothelial Cell System; Technical Information & Instructions,” 2002, www.lonza.com; Pegg., “Cryopreservation of vascular endothelial cells as isolated cells and as monolayers,” 2002, Cryobiology, Vol. 44, p. 46-53; Reardon et al., “Investigating membrane and mitochondrial cryobiological responses of HUVEC using interrupted cooling protocols,” 2015, Cryobiology, Vol. 71, p. 306-317; および、von Bomhard et al., “Cryopreservation of Endothelial Cells in Various Cryoprotective Agents and Media - Vitrification versus Slow Freezing Methods,” 2016, PLoS ONE, Vo. 11. No.2を参照のこと)。
【0007】
例えば、凍結保存剤および/または栄養素の細胞あたりの利用が制限されたり、細胞に物理的なストレスがかかるなど、本明細書に記載のような極めて高い細胞凍結密度が有害であることが予期され得る。実際、様々な種類の細胞を用いた先行研究では、細胞を高密度で凍結させることによる有害な影響が見いだされている。例えば、De Loecherらの研究では、凍結保存中に赤血球の濃度を上げると解凍後の溶血が進み、凍結保存中に肝細胞の濃度を上げると解凍後の肝細胞の生存率および代謝活性が共に劇的に低下することがわかった。De Loecher et al., “Effects of Cell Concentration on Viability and Metabolic Activity During Cryopreservation,” 1998, Cryobiology, Vol. 37(2), p. 103-109を参照のこと。著者であるDe Loecherらは、凍結融解の過程で生じる非生理的な細胞-細胞間接触による細胞ストレスが原因ではないかと推定している。しかしながら、驚くべきことに、一般的な内皮細胞の凍結濃度よりも20~100倍高い密度で内皮細胞を凍結しても、有害な影響を示す証拠は見つからなかった。一方、解凍したECは、細胞生存率、細胞増殖、共培養したCD34+臍帯血細胞の増殖能が期待通り、あるいは期待以上であった。
【0008】
本明細書で記載の極めて高い細胞凍結密度は、多くの利点をもたらす。一つの利点は、患者に注入するのに十分なEC(HUVECなど)を一つの容器で提供できることで、ECの複数の容器の内容物を合併させる必要性を回避できる。別の大きな利点は、解凍したEC含有組成物を希釈して、治療上有用なEC組成物、すなわち、患者への投与に適した溶液中で患者への投与に適したECの数および密度を有するEC組成物を直接得ることができることである。これは、必要とされる/用いられる希釈レベルにおいて、希釈された組成物中の凍結保存剤の濃度が、患者への投与に安全であるために達成できる。このため、遠心分離および再懸濁の工程を行うことで凍結保存剤を除去する必要がなく、また、必要に応じてECを別の容器に移し替える必要もない。例えば、必要に応じて、ECが凍結された容器に適切な希釈剤組成物を直接添加し、解凍して最終的なEC組成物を作製し、これを閉鎖系で患者に直接送達できる。
【0009】
また、HUVECなどのECを高密度で凍結および解凍できるという発見をもとに、ECを凍結および解凍して患者に投与するための組成物および方法について、用いるヒト血清アルブミン(HSA)レベルの最適化など、さまざまな改良を試みた。
【0010】
ECの凍結保存および使用のために本発明者らが開発した改良された組成物および方法については、以下および本明細書の他の箇所でさらに説明する。
【0011】
従って、いくつかの面において、本発明は、凍結培地中に内皮細胞(EC)を含む種々の組成物を提供する。これらの組成物は、異なる温度および異なる状態で存在し得る-例えば、それらは凍結前の状態、凍結/凍結保存の状態、または解凍(凍結後/凍結保存後)の状態で存在し得る。
【0012】
例えば、一態様において、本発明は、(a)高密度の内皮細胞(EC)、および(b)有効量の凍結保存剤を含む凍結培地を含む組成物を提供する。そのような態様のいくつかでは、ECは、1mlあたり約5000万細胞から約1億5000万細胞の密度で存在する。そのような態様のいくつかでは、ECは、1mlあたり約7500万細胞から約1億2500万細胞の密度である。いくつかの態様では、ECは、1mlあたり約1億細胞の密度である。
【0013】
いくつかの態様では、組成物は、何れかの所望のECを含んでいてもよい。いくつかの態様において、組成物は、肺、肝臓、腎臓、膀胱、膵臓、胸腺、腸、精巣、卵巣、子宮、心臓、神経系、脳、脊髄、眼、網膜、皮膚、脂肪組織、リンパ組織、骨髄、胎盤および臍帯から選択される組織由来のECを含み得る。いくつかの態様では、組成物中のECは、臍帯静脈内皮細胞(UVEC)である。いくつかの態様では、組成物中のECは、ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)である。
【0014】
いくつかの態様では、組成物中のECは、E4ORF1+ ECである。そのような態様では、ECは、アデノウイルスE4ORF1タンパク質をコードする組換えヌクレオチド配列を含む。いくつかの態様では、かかるヌクレオチド配列は、異種プロモーターに作動的に連結されている。いくつかの態様では、かかるヌクレオチド配列は、レトロウイルスベクターのようなベクター内にある。いくつかの態様では、かかるヌクレオチド配列は、レンチウイルスベクター内にある。いくつかの態様では、かかるヌクレオチド配列は、モロニ-マウス白血病ウイルス(MMLV)ベクター内にある。いくつかの態様では、E4ORF1は、ヒトアデノウイルス5型E4ORF1である。いくつかの態様では、ECは、アデノウイルスE4領域全体を含まない。いくつかの態様では、ECは、E4ORF2、E4ORF3、E4ORF4、E4ORF5またはE4ORF6コーディング配列またはアミノ酸配列を含んでいない。
【0015】
いくつかの態様では、組成物中のECは、他の組換えヌクレオチド配列を含んでいてもよい。例えば、いくつかの態様では、組成物中のECは、BMP4をコードし、かつ発現する組換えヌクレオチド配列を含んでいてもよい(すなわち、それらはBMP4+ ECであってもよい)。同様に、いくつかの態様では、組成物中のECは、ETV2などのETS転写因子をコードする組換えヌクレオチド配列を含んでいてもよい(すなわち、それらはETV2+ ECであってもよい)。
【0016】
いくつかの態様では、組成物はまた、ヒト血清アルブミン(HSA)も含む。いくつかの態様において、組成物は、約10%~約20%のHSAを含む。いくつかの態様では、組成物は約10%のHASを含む。
【0017】
いくつかの態様では、組成物は、何れかの適切な凍結保存剤を含んでいてもよい。いくつかの態様では、凍結保存剤は、ジメチルスルホキシド(DMSO)、エチレングリコール、プロピレングリコール、およびグリセロールからなる群より選択される。いくつかの態様では、凍結保存剤はジメチルスルホキシド(DMSO)である。例えば、いくつかの態様において、組成物は、約5%~約10%のジメチルスルホキシドを含む。いくつかの態様において、組成物は約5%のジメチルスルホキシドを含む。
【0018】
いくつかの態様では、組成物は、内皮細胞の凍結保存に適した何れかの凍結培地を含み得る。このような凍結培地は、当技術分野において多数知られており、かつ/または市販されている。このような培地のいくつかは、本特許開示の実施例セクションに記載されている。いくつかの態様では、凍結培地は血清を含まない。
【0019】
ECに加えて、いくつかの態様では、本発明の組成物はまた、追加の細胞タイプを含み得る。いくつかの態様では、組成物は、ECに加えて、幹細胞を含み得る。いくつかの態様では、組成物は、ECに加えて、前駆細胞を含み得る。いくつかの態様では、組成物は、ECに加えて、間葉系幹細胞を含み得る。いくつかの態様において、組成物は、ECに加えて、造血幹細胞および/または造血前駆細胞を含み得る。このような態様では、造血幹細胞または造血前駆細胞は、骨髄、末梢血、羊水または臍帯血由来であってもよい。いくつかの態様では、組成物は、ECに加えて、実質細胞を含み得る。いくつかの態様では、組成物は、ECに加えて、膵島細胞を含み得る。いくつかの態様では、組成物は、ECに加えて、神経細胞を含み得る。いくつかの態様では、組成物は、ECに加えて、グリア細胞を含み得る。
【0020】
いくつかの態様において、本明細書に記載される様々な組成物は、細胞を凍結する際に用いるのに適した容器(すなわち、凍結容器)において提供され得る。いくつかの態様では、組成物はクライオバイアル中に提供されてもよい。いくつかの態様では、組成物はクライオバッグで提供され得る。組成物は、内容物(例えば、解凍したEC)を無菌的に容器から取り出し、希釈して最終的な臨床治療製品を形成し、汚染のリスクを低減するために閉鎖系で患者に投与できるように適合された容器(例えば、クライオバイアルまたはクライオバッグ)に入れて提供されることが特に望ましい。使用できる市販の凍結容器の例としては、Daikyo社製のCrystal Zenith(登録商標)クライオチューブ(cryovial)、Pall Medical社製のBriostor(商標)輸送/凍結バックセットなどがあるが、これらに限定されない。
【0021】
上記および本明細書の他の箇所に記載された様々な組成物は、研究目的および/または治療目的を含む、ECが通常用いられる状況および/またはECを凍結/凍結保存する必要がある状況で使用できる。
【0022】
いくつかの態様では、本発明は、対象(ヒト対象など)への投与に適した治療用組成物を調製する種々の方法を提供する。いくつかの態様において、そのような方法は、治療方法において対象への投与に適した希釈後のEC細胞濃度を含む治療用組成物を得るために、本明細書に記載の組成物の1つ(例えば、以前に冷凍され、その後解凍されたもの)を生理食塩液で希釈することを含む。例えば、いくつかのそのような態様では、本明細書に記載の組成物の1つを生理的食塩水で希釈して、1mlあたり約300万個から約500万個の細胞の最終EC濃度をもたらす。いくつかのそのような態様では、希釈に用いられる生理的食塩水は、最終的な治療用組成物の望ましい成分である種々の薬剤を含み得る。かかる成分としては、例えば、デキストラン(例えば、デキストラン40)および/またはHSAが挙げられる。いくつかのそのような態様では、かかる薬剤は、生理的食塩水中に存在しなくてもよいが、その場合であっても、組成物に添加されてよい。いくつかの態様では、希釈後、治療用組成物が約8%のデキストラン(例えば、デキストラン40)および約4%のHSAを含むように、デキストランおよび/またはHSAが(生理食塩水中か否かにかかわらず)添加される。
【0023】
他の面では、本発明は、内皮細胞を凍結するための種々の方法を提供する。
【0024】
例えば、一態様では、本発明は、内皮細胞を凍結する方法を提供し、該方法は:(a)内皮細胞(EC)を凍結培地中に約5000万個の細胞/ml~約1億5000万個の細胞/mlの密度で懸濁し、ここで、凍結培地は有効量の凍結保存剤(cryopreservative)を含み、それによって凍結組成物を作製し、(b)次いで、凍結組成物を少なくとも約-80℃~-90℃まで徐々に温度を低下させることを含む。このような方法では、例えば、凍結速度を制御された冷凍機(controlled rate freezer)などを用いて、1分あたり約1℃の割合で温度を低下させる。このような方法では、凍結組成物はその後、液体窒素に移される。
【0025】
いくつかの態様では、凍結方法は、何れかの所望のECを用いて実施され得る。いくつかの態様において、凍結方法は、ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)を用いて実施される。
【0026】
いくつかの態様では、凍結方法は、ヒト血清アルブミン(HSA)を凍結組成物に添加することも含み得る。いくつかの態様では、凍結方法は、凍結組成物中に約10%~約20%のHSAの終濃度をもたらすようにHSAを添加することを含む。いくつかの態様において、凍結方法は、凍結組成物中に約10%のHSAの終濃度をもたらすようにHSAを添加することを含む。
【0027】
いくつかの態様では、凍結方法は、何れかの適切な凍結保存剤を用いて実施され得る。いくつかの態様では、凍結保存剤は、ジメチルスルホキシド、エチレングリコール、プロピレングリコールおよびグリセロールからなる群より選択される。いくつかの態様では、凍結保存剤はジメチルスルホキシドである。例えば、いくつかの態様では、凍結方法は、凍結組成物中の約5%~約10%のジメチルスルホキシドを用いて実施できる。いくつかの態様では、凍結方法は、凍結組成物中に約10%のジメチルスルホキシドを用いて実施できる。
【0028】
いくつかの態様では、凍結方法は、内皮細胞の凍結保存に適する何れかの凍結培地を用いて実施できる。
【0029】
いくつかの態様では、凍結方法は、E4ORF1+であるECを用いて実施され得る。そのような態様では、ECは、一般的には、アデノウイルスE4ORF1タンパク質をコードする組換えヌクレオチド配列を含み得る。いくつかの態様では、そのようなヌクレオチド配列は、異種プロモーターに作動的に連結されている。いくつかの態様では、そのようなヌクレオチド配列は、レトロウイルスベクターのようなベクター内にある。いくつかの態様では、そのようなヌクレオチド配列は、レンチウイルスベクター内にある。いくつかの態様では、かかるヌクレオチド配列は、モロニ-マウス白血病ウイルス(MMLV)ベクター内にある。いくつかの態様では、E4ORF1は、ヒトアデノウイルス5型E4ORF1である。いくつかの態様では、ECは、アデノウイルスE4領域全体を含まない。いくつかの態様では、ECは、E4ORF2、E4ORF3、E4ORF4、E4ORF5またはE4ORF6コーディング配列またはアミノ酸配列を含んでいない。
【0030】
いくつかの態様では、凍結方法は、ECに加えて、追加の細胞タイプを用いて実施できる。例えば、いくつかの態様では、凍結方法は、ECに加えて、造血幹細胞および/または造血前駆細胞を用いて実施できる。このような態様では、造血幹細胞または造血前駆細胞は、骨髄由来、末梢血由来、羊水由来または臍帯血由来であってもよい。
【0031】
いくつかの態様では、凍結方法は、細胞を凍結するのに適した容器(すなわち、凍結容器)であって、その中で様々な工程中にECが維持される容器を用いて実施される。いくつかの態様において、凍結方法は、クライオバイアルを用いて行われる。いくつかの態様では、凍結方法は、クライオバッグを用いて実施される。凍結方法は、内容物(例えば、解凍したEC)を無菌的に容器から取り出し、希釈して最終的な臨床治療製品を作製し、汚染のリスクを低減するために閉鎖系で患者に投与できるように適合された容器(例えばクライオバイアルまたはクライオバッグ)を用いて実施することが特に好ましい。
【0032】
本発明のこれらおよび他の態様は、本明細書の他のセクションでさらに説明される。さらに、当業者には明らかなように、本明細書に記載された様々な態様の特定の変更および組み合わせは、本発明の範囲に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1図1は、解凍後0時間、2時間、4時間、6時間、24時間、48時間および72時間におけるE4ORF1+ HUVECの総細胞数を示すグラフである。実施例1に記載した速度制御された凍結プログラムを用いて、細胞を、2mlのクライオバイアルに1mlあたり1x108(すなわち、1億)個の細胞濃度で凍結した。“初期(Initial)”とは、凍結前のデータを意味する。
図2図2は、解凍後0時間、2時間、4時間、6時間、24時間、48時間および72時間におけるE4ORF1+ HUVECの生存率を示すグラフである。実施例1に記載の速度制御凍結プログラムを用いて、細胞を、2mlのクライオバイアルに1mlあたり1x108個の細胞濃度で凍結した。“初期”とは、凍結前のデータを意味する。
図3図3は、解凍後0時間、2時間、4時間、6時間、24時間、48時間および72時間におけるE4ORF1+ HUVECの生存細胞数を示すグラフである。実施例1に記載の速度制御凍結プログラムを用いて、細胞を、2mlのクライオバイアルに1mlあたり1x108個の細胞濃度で凍結した。“初期”とは、凍結前のデータを意味する。
図4図4は、解凍後0時間、2時間、4時間、6時間、24時間、48時間および72時間におけるE4ORF1+ HUVECの生存細胞回復を示すグラフである。実施例1に記載の速度制御凍結プログラムを用いて、細胞を、2mlのクライオバイアルに1mlあたり1x108個の細胞濃度で凍結した。
図5図5は、実施例1に記載のHUVEC凍結プログラムを用いて、2mLクライオバイアルの5%DMSOおよび20%ヒト血清アルブミン(HSA)を含む凍結培地中で1.3x107(すなわち、1300万)細胞/mlまたは1x108(すなわち、1億)細胞/mlで、示されるように、E4ORF1+ HUVECの生存率(左パネル)および回復率(右パネル)を示すバーチャートである。細胞を液体窒素中で24時間以上凍結保存後、解凍し、8.3%デキストランおよび4.2%HSAを含む希釈バッファーで1:20の比率で希釈し、遠心分離/ペレット化、または冷凍保存剤の除去などの濯ぎを一切行わずに用いた。
【発明を実施するための形態】
【0034】
詳細な説明
本明細書の“発明の概要”および“特許請求の範囲”には、本発明の主な態様が記載されている。この“詳細な説明”セクションは、本発明の組成物および方法に関連する特定の追加的な説明を提供し、本特許明細書の他のすべてのセクションと合わせて読まれることが意図される。さらに、当業者には明らかなように、本特許明細書全体を通して説明される異なる態様は、様々な異なる方法で組み合わせることができ、また、組み合わせることを意図される。本明細書に記載された特定の態様のそのような組合せは、本発明の範囲内であることが意図される。
【0035】
定義および略語
以下に、任意の定義および略語を記載する。その他の用語または語句は、本特許開示の他の箇所で定義されているか、またはそれらが用いられる文脈から明らかな意味を有し得る。本明細書で特に定義されない限り、または本明細書の文脈におけるそれらの使用から他の意味が明らかでない限り、本明細書で用いるすべての技術用語および科学用語および略語は、この発明が関連する技術分野における当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。例えば、The Dictionary of Cell and Molecular Biology (5th ed. J.M. Lackie ed., 2013)、the Oxford Dictionary of Biochemistry and Molecular Biology (2d ed. R. Cammack et al. eds., 2008)、および The Concise Dictionary of Biomedicine and Molecular Biology (2d ed. P-S. Juo, 2002)は、本明細書で用いるいくつかの用語の一般的な定義を当業者に提供できる。
【0036】
本明細書および添付の特許請求の範囲で用いる場合、単数形“a”、“an”および“the”は、文脈から明らかにそうでないと指示されない限り、複数の参照語を含む。用語“a”(または“an”)だけでなく、用語“1以上”および“少なくとも1つ”も互換的に用いられ得る。
【0037】
さらに、“および/または”は、2つの特定された機能または構成要素のそれぞれについて、他方の機能または構成要素を伴うかまたは伴わないかの具体的な開示として捉えられる。したがって、“Aおよび/またはB”などの語句で用いられる用語“および/または”は、AおよびB、AまたはB、A(単独)、ならびにB(単独)を含むことを意図する。同様に、“A、B、および/またはC”などの語句で用いられる用語“および/または”とは、A、B、およびC;A、B、またはC;AまたはB;AまたはC;BまたはC;AおよびB;AおよびC;BおよびC;A(単独);B(単独);ならびに、C(単独)を意図する。
【0038】
単位、接頭辞および記号は、国際単位系(SI)で認められている形で表記される。数値範囲は、その範囲を定義する数値を含むものであり、本明細書で提供される個々の値は、本明細書で提供される他の個々の値を含む範囲の終点として機能できる。例えば、1、2、3、8、9および10などの値の集合は、1~10までの数値の範囲の開示でもある。
【0039】
態様が“含む”という言葉で記載されるとき、“からなる”および/または“から本質的になる”という言葉で説明される他の類似の態様も含まれる。
【0040】
本明細書において、数値に関連して用いられるとき、用語“約”および“およそ”は、記載される値の+または-10%以内を意味する。
【0041】
本明細書で用いる略号“EC”は内皮細胞を意味する。
【0042】
本明細書で用いる略号“E4ORF1”は、アデノウイルスゲノムの初期(early)4(E4)領域のオープンリーディングフレーム(ORF)1、またはそのORFによってコードされるポリペプチド/タンパク質を意味する(遺伝子またはタンパク質を意味するかどうかは、使用の文脈から明らかになり得る)。
【0043】
本明細書で用いる “E4ORF1+”は、E4ORF1を発現するように操作された細胞を意味するのに用いられる。例えば、略語“E4ORF1+ HUVEC”は、E4ORF1を発現するように操作されたヒト臍帯内皮細胞(HUVEC)を意味するのに用いられる。E4ORF1+細胞は、組換えE4ORF1核酸分子を含み、E4ORF1タンパク質を発現する。
【0044】
本明細書で用いる用語“培養”は、様々な種類の培地上または培地中で細胞を増殖させることを意味する。“共培養”とは、2以上の異なる種類の細胞を、様々な種類の培地上または培地中で増殖させることを意味する。
【0045】
本明細書で用いる用語“有効量”とは、本明細書に記載の1以上の結果を達成するのに十分な、特定の薬剤(例えば、凍結保存剤)または特定の細胞集団(例えば、E4ORF1+HUVEC)の量を意味する。例えば、凍結保存剤の有効量は、効果的な細胞凍結および凍結後の効果的な細胞回復をもたらす量である。個々の場合における適切な“有効量”は、例えば当技術分野で知られている標準的な技術を用いて、経験的に決定できる。さらに、“有効量”は、本特許明細書の実施例セクションに記載のようなアッセイを用いて、細胞凍結に対する効果および/または細胞凍結からの回復に対する効果を評価できる。特定の薬剤または特定の細胞集団を含む組成物、またはそれを使用する方法を伴う本明細書に記載のすべての態様について、いくつかの態様では、薬剤(複数可)または細胞集団(複数可)の量は、何れかの有効量である。例えば、具体的な量が指定されていない場合は、何れかの有効量であり得る。
【0046】
本明細書において細胞(一般的にはHUVECなどの内皮細胞)に関連して用いられるとき、“操作された”という用語は、言及された表現型(例えば、E4ORF1+)をもたらすように、または言及された核酸分子もしくはポリペプチドを発現するようにヒトにより操作された細胞を意味する。“操作された細胞”という用語は、天然に存在する細胞を包含することを意図しておらず、代わりに、例えば、組換え核酸分子を含む細胞、または、他の方法では発現しないであろうポリペプチドを発現するように(例えば、遺伝子組み換えによって)人為的に変更された細胞を包含することを意図している。
【0047】
用語“凍結”および“凍結保存”(およびその文法的変形)は、本明細書において互換的に用いられ、当技術分野における通常の意味に従って使用される。
【0048】
“遺伝子組換え”および/または“遺伝子的に改変された”および/または“遺伝子改変された”という用語は、ヌクレオチド配列、細胞のゲノムまたは細胞の遺伝物質の含有量に対する何れかの追加、欠失、変更または切断を意味する。いくつかの態様において、本明細書に記載の内皮細胞は、E4ORF1をコードする核酸分子を提供するように遺伝子改変されることに加えて、所望により1以上の他の遺伝子改変を含んでいてもよい。“遺伝子組換え”および上記関連用語は、一過性の遺伝子組換えおよび安定した遺伝子組換えの両方を包含し、形質転換(インビボまたはインビトロでのウイルスによる核酸のレシピエントへの転移)、トランスフェクション(単離核酸の細胞への取り込み)、リポソーム介在転移および当技術分野で周知の遺伝子導入の他の手段を含むが、これに限定されない様々な異なる遺伝子導入手段および方法を用いることを包含する。
【0049】
本明細書で用いる用語“単離された”とは、生きている対象の体内で自然に発生する状態など、通常の状態で関連する少なくとも1つの他の細胞集団、製品、化合物、または組成物から分離されている細胞集団、製品、化合物、または組成物を指す。
【0050】
本明細書で用いる用語“組換え”とは、分子生物学および遺伝子工学の方法(分子クローニングなど)を用いてヒト(機器によるものを含む)によって単離、生成および/または設計された核酸分子であって、自然界には存在しないヌクレオチド配列を含むか、または自然界に存在しないヌクレオチド配列内に包含されるか、自然界では関連しないヌクレオチド配列と関連して提供されるか、または自然界で通常関連するヌクレオチド配列が存在しない状態で提供される核酸分子を意味する。したがって、組換え核酸分子は、天然に存在する核酸分子、例えば、生物のゲノム中に存在する核酸分子とは区別される。例えば、mRNA配列の相補的DNAまたは“cDNA”コピーを含み、対応するゲノムDNA配列に見られるようなイントロン配列が介在していない核酸分子は、組換え核酸分子とみなされ得る。さらなる例として、組換えE4ORF1核酸分子は、そのコード配列が天然に存在するアデノウイルスゲノムにおいて通常関連しない、またはアデノウイルスゲノムにおいて通常関連するヌクレオチド配列が存在しない状態で、プロモーターおよび/または他の遺伝子要素に作動可能に連結したE4ORF1コード配列を含み得る。
【0051】
用語“対象”には、ヒトおよび非ヒト霊長動物などの哺乳動物、ならびにウサギ、ラット、マウス、ネコ、イヌ、ウマ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ブタなどを含む他の哺乳動物種も含まれる。いくつかの態様では、対象は哺乳動物対象である。いくつかの態様では、対象はヒトである。いくつかの態様では、対象は非ヒト霊長動物である。
【0052】
本明細書において、用語“患者”および“ヒト対象”は互換的に用いられ得る。
【0053】
E4ORF1
本明細書に記載の本発明の態様のいくつかは、E4ORF1+である人工内皮細胞(EC)を含む。“E4ORF1”ポリペプチドは、アデノウイルスゲノムの初期4(E4)領域のオープンリーディングフレーム(ORF)1によってコードされている。本発明に従って用いるためのE4ORF1+ ECは、一般的には、内皮細胞におけるE4ORF1コード配列の発現に適したプロモーターに作動可能に連結されたE4ORF1コード配列を含む組換え核酸分子を含む。
【0054】
E4ORF1アミノ酸配列およびヌクレオチド配列は当技術分野で既知である。このような配列は、いずれも本発明に従って用いられ得る。いくつかの態様において、E4ORF1ポリペプチドは、ヒトアデノウイルス2型、3型、5型、7型、9型、11型、12型、14型、34型、35型、46型、50型または52型などの何れかの適切なアデノウイルス型または株由来であり得る。いくつかの態様では、用いられるポリペプチド配列は、ヒトアデノウイルス5型由来である。このようなアデノウイルスポリペプチドのアミノ酸配列、およびこのようなポリペプチドをコードする核酸配列は、当技術分野でよく知られており、Genbankデータベースなどの周知の一般公開データベースで入手できる。例えば、好適な配列としては、以下のものが挙げられる:ヒトアデノウイルス9型(Genbank受託番号CAI05991)、ヒトアデノウイルス7型(Genbank受託番号AAR89977)、ヒトアデノウイルス46型(Genbank受託番号AAX70946)、ヒトアデノウイルス52型(Genbank受託番号ABK35065)、ヒトアデノウイルス34型(Genbank受託番号AAW33508)、ヒトアデノウイルス14型(Genbank受託番号AAW33146)、ヒトアデノウイルス50型(Genbank受託番号AAW33554)、ヒトアデノウイルス2型(Genbank受託番号AP.sub.jp.--000196)、ヒトアデノウイルス12型(Genbank受託番号AP.sub.--000141)、ヒトアデノウイルス35型(Genbank受託番号AP.sub.--000607)、ヒトアデノウイルス7型(Genbank受託番号AP.sub.--000570)、ヒトアデノウイルス1型(Genbank受託番号AP.sub.--000533)、ヒトアデノウイルス11型(Genbank受託番号AP.sub.--000474)、ヒトアデノウイルス3型(Genbank受託番号ABB 17792)、ヒトアデノウイルス5型(Genbank受託番号D12587)。一態様では、用いられるE4ORF1配列は、NCBI受託番号AZR66741.1を有するものである。一態様では、用いられるE4ORF1配列は、NCBI受託番号AP_000232.1を有するものである。一態様では、用いられるE4ORF1配列は、アミノ酸配列MAAAVEALFVVLEREGAILPRQEGFSGVYVFFSPINFVIPPMGAVMLSLRLRVCIPPGYFGRFLALTDVNQPDVFTESYIMTPDMTEELSVLFNHGDQFFYGHAGMAVVRLMLIRVFPVVRQASNV(配列番号1)を有する。
【0055】
いくつかの態様では、E4ORF1ポリペプチドは、本明細書で提供されるまたは当技術分野で既知の特定の配列のいずれかの変形、誘導体、変異体またはフラグメントである、アミノ酸配列を有するか、または核酸配列によってコードされ得るが、かかる変形、誘導体、変異体またはフラグメントは、当技術分野で既知のアデノウイルスE4ORF1の機能特性の1以上を有するポリペプチド(例えば米国特許第8,465,732号に記載されている)または本明細書に記載されている。いくつかの態様では、変形、誘導体、変異体またはフラグメントは、既知の配列に対して約85%の同一性、または既知の配列に対して約88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有する。いくつかの態様では、既知のヌクレオチド配列の変形、誘導体、変異体またはフラグメントが、既知のヌクレオチド配列に対して約50ヌクレオチド長、または約45ヌクレオチド長、または約40ヌクレオチド長、または約35ヌクレオチド長、または約30ヌクレオチド長、または約28ヌクレオチド長、26ヌクレオチド長、24ヌクレオチド長、22ヌクレオチド長、20ヌクレオチド長、18ヌクレオチド長、16ヌクレオチド長、14ヌクレオチド長、12ヌクレオチド長、10ヌクレオチド長、9ヌクレオチド長、8ヌクレオチド長、7ヌクレオチド長、6ヌクレオチド長、5ヌクレオチド長、4ヌクレオチド長、3ヌクレオチド長、2ヌクレオチド長、または1ヌクレオチド長の種々の長さで用いられる。いくつかの態様では、既知のアミノ酸配列の変形、誘導体、変異体またはフラグメントは、既知のアミノ酸配列に対して長さが約50アミノ酸長、または約45アミノ酸長、または約40アミノ酸長、または約35アミノ酸長、または約30アミノ酸長、または約28アミノ酸長、26アミノ酸長、24アミノ酸長、22アミノ酸長、20アミノ酸長、18アミノ酸長、16アミノ酸長、14アミノ酸長、12アミノ酸長、10アミノ酸長、9アミノ酸長、8アミノ酸長、7アミノ酸長、6アミノ酸長、5アミノ酸長、4アミノ酸長、3アミノ酸長、2アミノ酸長、または1アミノ酸長の種々の長さで用いられる。
【0056】
いくつかの態様では、E4ORF1配列は、アデノウイルスE4領域からの他の配列なしで用いられ、例えば、E4領域全体で用いられることなく、またE4領域内の他のORFと共に用いられることはない。しかしながら、他の態様では、E4ORF1は、E4ORF2、E4ORF3、E4ORF4、E4ORF5またはE4ORF6/7配列などのE4領域からの1以上の他のORFと組み合わせて用いられ得る。例えば、E4ORF1配列は、他の配列、遺伝子またはコーディング領域(プロモーター、マーカー遺伝子、抗生物質耐性遺伝子など)を含む構築物(ウイルスベクターなど)に使用できる。特定の態様では、E4ORF1配列は、E4領域全体を含まない、またはE4ORF2、E4ORF3、E4ORF4、および/またはE4ORF5のようなE4領域全体からの他のORFを含まない構築物に用いられる。
【0057】
E4ORF1コーディング配列は、例えば、プロモーター、エンハンサー、抗生物質耐性遺伝子、レポーター遺伝子または発現タグ(例えば、GFPをコードするヌクレオチド配列など)、または望ましい他の何れかのヌクレオチド配列または遺伝子を含む種々の他の配列、遺伝子またはコード領域を含む構築物またはベクターに存在し得る。
【0058】
E4ORF1をコードする核酸分子は、発現を可能にするために、1つまたは複数のプロモーターの制御下に配置できる。内皮細胞においてE4ORF1核酸配列を発現させ得る何れかのプロモーターを使用できる。好適なプロモーターの例としては、CMV、SV40、RSV、HIV-LtrおよびMMLプロモーターが挙げられるが、これらに限定されない。また、プロモーターは、アデノウイルスゲノム由来のプロモーター、またはその変異体であり得る。例えば、いくつかの態様では、プロモーターは、アデノウイルスゲノムにおいて天然にてE4ORF1を発現させるプロモーターであってもよい。しかしながら、他の態様では、プロモーターは、アデノウイルスゲノムにおいて天然でE4ORF1を発現させるものでない。
【0059】
E4ORF1をコードする配列は、天然ヌクレオチド、合成ヌクレオチド、またはそれらの組合せを含み得る。例えば、いくつかの態様では、本発明の核酸分子は、細胞内で安定であり、かつ細胞内で直接タンパク質の発現/生産をもたらすために使用できる合成修飾RNAなどのRNAを含み得る。他の態様では、E4ORF1をコードする配列は、DNAを含み得る。DNAが用いられる態様では、DNA配列は、細胞内での発現を可能にする(および/または促進、強化または調節する)1以上の適切なプロモーターおよび/または調節要素に作動可能に連結され、1以上の適切なベクターまたは構築物中に存在していてよい。
【0060】
E4ORF1をコードする配列は、トランスフェクション技術およびウイルス介在導入技術を含むがこれらに限定されない、当技術分野で既知の何れかの適切なシステムを用いて内皮細胞に導入できる。本発明に従って使用できるトランスフェクション法には、リポソーム介在トランスフェクション、ポリブレン介在トランスフェクション、DEAEデキストラン介在トランスフェクション、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈殿、マイクロインジェクション、マイクロ粒子銃法などがあるが、これらに限定されない。使用できるウイルス介在導入法には、レンチウイルス介在導入法、アデノウイルス介在導入法、レトロウイルス介在導入法、アデノ随伴ウイルス介在導入法、ヘルペスウイルス介在導入法などがあるが、これらに限定されない。
【0061】
いくつかの態様では、E4ORF1をコードする配列は、ベクター中にある。いくつかの態様では、E4ORF1をコードする配列は、ウイルスベクター中にある。いくつかの態様では、E4ORF1をコードする配列は、レンチウイルスベクター中にある。いくつかの態様では、E4ORF1をコードする配列は、アデノウイルスベクター中にある。いくつかの態様では、E4ORF1をコードする配列は、アデノ随伴ウイルスベクター中にある。いくつかの態様では、E4ORF1をコードする配列は、レトロウイルスベクター中にある。いくつかの態様では、E4ORF1をコードする配列は、モロニーマウス白血病ウイルス(MMLV)ベクター(レトロウイルスベクターの一種)内にある。
【0062】
いくつかの態様では、本発明の組成物は、E4ORF1+およびE4ORF1-陰性の両方の内皮細胞を含む。いくつかの態様では、組成物中の内皮細胞の少なくとも約75%がE4ORF1+である。いくつかの態様では、組成物中の内皮細胞の少なくとも約80%がE4ORF1+である。いくつかの態様では、組成物中の内皮細胞の少なくとも約85%がE4ORF1+である。いくつかの態様では、組成物中の内皮細胞の少なくとも約90%がE4ORF1+である。いくつかの態様では、組成物中の内皮細胞の少なくとも約95%が、E4ORF1+である。いくつかの態様では、組成物中の内皮細胞の少なくとも約98%がE4ORF1+である。いくつかの態様では、組成物中の内皮細胞の少なくとも約99%がE4ORF1+である。
【0063】
いくつかの態様では、本発明の組成物は、組成物中のすべての内皮細胞にわたる平均で、細胞あたり1コピー未満のゲノム内に挿入されたE4ORF1コード配列を含んでなる内皮細胞を含む。いくつかの態様では、本発明の組成物は、組成物中のすべての内皮細胞にわたる平均で、細胞あたりゲノム内に挿入されたE4ORF1コード配列の約1つのコピーを含む内皮細胞を含む。いくつかの態様では、本発明の組成物は、組成物中のすべての内皮細胞にわたる平均で、細胞あたりゲノム内に挿入されたE4ORF1コード配列の1コピー以上を含む内皮細胞を含む。いくつかの態様では、本発明の組成物は、組成物中のすべての内皮細胞にわたる平均で、細胞あたり約0.7コピーのゲノム内に挿入されたE4ORF1コード配列を含む内皮細胞を含む。いくつかの態様では、本発明の組成物は、組成物中のすべての内皮細胞にわたる平均で、細胞あたり約0.8コピーのゲノム内に挿入されたE4ORF1コード配列を含む内皮細胞を含む。いくつかの態様では、本発明の組成物は、組成物中のすべての内皮細胞にわたる平均で、細胞あたり約0.9コピーのゲノム内に挿入されたE4ORF1コード配列を含む内皮細胞を含む。いくつかの態様では、本発明の組成物は、組成物中のすべての内皮細胞にわたる平均で、細胞あたりゲノム内に挿入されたE4ORF1コード配列の約1.0コピーを含む内皮細胞を含む。いくつかの態様では、本発明の組成物は、組成物中のすべての内皮細胞にわたる平均で、細胞あたり約1.1コピーのゲノム内に挿入されたE4ORF1コード配列を含む内皮細胞を含む。いくつかの態様では、本発明の組成物は、組成物中のすべての内皮細胞にわたる平均で、細胞あたり約1.2コピーのゲノム内に挿入されたE4ORF1コード配列を含む内皮細胞を含む。いくつかの態様では、本発明の組成物は、組成物中のすべての内皮細胞にわたる平均で、細胞あたり約1.3コピーのゲノム内に挿入されたE4ORF1コード配列を含む内皮細胞を含む。いくつかの態様では、本発明の組成物は、組成物中のすべての内皮細胞にわたる平均で、細胞あたり約1.4コピーのゲノム内に挿入されたE4ORF1コード配列を含む内皮細胞を含む。いくつかの態様では、本発明の組成物は、組成物中のすべての内皮細胞にわたる平均で、細胞あたり約1.5コピーのゲノム内に挿入されたE4ORF1コード配列を含む内皮細胞を含む。
【0064】
いくつかの態様では、E4ORF1コード配列の存在は、PCRベースの技術(例えば、定量PCR)および配列決定ベースの技術(例えば、定量次世代配列決定ベースの技術)のような、当技術分野で既知の標準核酸検出および/または定量化アッセイを用いて確認および/または定量化できる。いくつかの態様では、E4ORF1ポリペプチドの存在は、抗体ベースの技術など、当技術分野で知られている標準的なタンパク質検出および/または定量化アッセイを用いて確認および/または定量化できる。いくつかの態様では、機能的E4ORF1ポリペプチドの発現(または機能的E4ORF1ポリペプチドの適切な量)は、当技術分野で知られているE4ORF1発現内皮細胞の機能特性のいずれかについて機能アッセイ(例えば、インビトロまたはインビボアッセイ)を用いて確認および/または定量できる(米国特許第8,465,732号明細書に記載されているものなど)。そのような態様のいくつかでは、そのようなアッセイのいずれかの結果を、例えば、一貫性を評価するため、および/またはそれに基づいて何れかの調整を行うために、E4ORF1+内皮細胞のバッチ間(例えば、試験バッチおよび既知のE4ORF1特性を有する対照バッチ間)で比較できる。
【0065】
内皮細胞におけるE4ORF1配列の取り扱い、操作および発現は、分子生物学および細胞生物学の従来技術を用いて行うことができる。このような技術は、当技術分野でよく知られている。例えば、Sambrook, Fritsch and Maniatis eds., “Molecular Cloning A Laboratory Manual, 2nd Ed., Cold Springs Harbor Laboratory Press, 1989;シリーズMethods of Enzymology(Academic Press、Inc.)の教示、また、ヌクレオチドおよび/またはアミノ酸配列の取り扱い、操作および発現に使用する適切な技術に関するガイダンスについての標準的なテキストを参照のこと。内皮細胞におけるE4ORF1配列の取り扱いおよび発現に関連するさらなる態様は、米国特許第8,465,732号に記載されており、その内容は引用により本明細書中に包含される。
【0066】
内皮細胞
いくつかの態様において、本明細書に記載される内皮細胞(EC)は、当技術分野で知られている血管内皮細胞の何れかの適切な供給源に由来し得る。いくつかの態様では、内皮細胞は、初代内皮細胞である。いくつかの態様では、内皮細胞は、ヒトまたは非ヒト霊長動物細胞、またはウサギ、ラット、マウス、ヤギ、ブタまたは他の哺乳動物細胞などの哺乳動物細胞である。いくつかの態様では、内皮細胞は、初代ヒト内皮細胞である。いくつかの態様では、内皮細胞は、ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)などの臍帯静脈内皮細胞(UVEC)である。いくつかの態様において、内皮細胞は、脂肪ECである。いくつかの態様では、内皮細胞は皮膚ECである。いくつかの態様では、内皮細胞は心臓ECである。いくつかの態様では、内皮細胞は腎臓ECである。いくつかの態様では、内皮細胞は肺ECである。いくつかの態様では、内皮細胞は肝臓ECである。いくつかの態様では、内皮細胞は骨髄ECである。使用できる他の適切な内皮細胞には、米国特許第8,465,732号においてE4ORF1発現に適しているとして以前に記載されたものが含まれ、その内容は引用により本明細書中に包含される。
【0067】
いくつかの態様において、内皮細胞は、1以上の遺伝子修飾を含むように遺伝子修飾されている。例えば、いくつかの態様において、内皮細胞は、E4ORF1を発現するように操作される。いくつかの態様では、内皮細胞は、ETV2を発現するように操作され得る。実際、ECがE4ORF1を発現する本特許明細書を通じて記載される各態様において、ECはETV2も発現し得る。同様に、いくつかの態様では、内皮細胞は、BMP4を発現するように操作されることもある。実際、ECがE4OR1を発現する本特許明細書を通じて記載される各態様において、ECはBMP4も発現し得る。
【0068】
さらに、いくつかの態様において、本明細書に記載のECは、内皮細胞に影響を及ぼす疾患または障害に関与することが知られている、または関与することが疑われる遺伝子、または治療上有用な遺伝子など、内皮細胞に提供すること、または人工内皮細胞を用いて投与または送達することが望まれる何れか他の遺伝子の修正バージョンを含み得る。
【0069】
使用方法
いくつかの態様において、本明細書に記載の組成物は、様々な治療方法において使用でき、または順番に様々な治療方法において使用できる治療組成物の調製において使用できる。そのような治療方法は、対象へのEC(HUVECなど)の投与が所望または有益であり得る何れかの方法を含み得る。このような治療方法を実施する際に、本明細書に記載の治療用組成物は、当技術分野で知られている何れかの適切な手段、例えば、注射(例えば、静脈注射、筋肉注射、皮下注射、局所注射)によって、注入(例えば、静脈注射、皮下注射、局所注射など)によって、または外科的移植によって、対象に投与され得る。治療用組成物は、単回投与または複数回投与で投与できる。当業者であれば、特定の状況に応じて、適切な投与経路および適切な投与スケジュールを選択できる。
【0070】
いくつかの態様では、本明細書に記載の治療用組成物は、1以上の追加の細胞型を含む組成物を含むか、またはそれらと共に投与され得る。そのような追加の細胞タイプは、例えば、造血幹細胞、造血前駆細胞、c-kit+Sca1+造血幹細胞、リンパ系前駆細胞、CD4-CD8-CD44+CD25-ckit+細胞、初期胸腺前駆細胞、CD4-CD8-CD44+CD25-ckit-細胞またはDN1細胞などの幹細胞または前駆細胞であってもよい。
【0071】
細胞培養および凍結保存法
細胞を培養する方法は当技術分野でよく知られており、何れかの適切な細胞培養方法を使用できる。例えば、他の内皮細胞の培養に有用であることが知られている方法、または、E4ORF1発現内皮細胞の培養に有用であることが知られている方法、例えば、米国特許第8,465,732号(その内容は引用により本明細書中に包含される)に記載されている方法を用いて、ECを培養できる。いくつかの態様では、ECは、血清の不存在下、または外因性成長因子の不存在下、または血清および外因性成長因子の両方の不存在下で培養され得る。
【0072】
例示的な凍結保存プロトコルは、本特許明細書の実施例セクションを含む本明細書に記載されている。さらに、EC(HUVECを含む)の凍結保存のためのいくつかの方法が当技術分野で知られており、本発明との関連で使用できる。特に、Lehle et al., “Cryopreservation of human endothelial cells for vascular tissue engineering.” Cryobiology 50 (2005) 154-161; Lehle et al., “Identification and Reduction of Cryoinjury in Endothelial Cells: A First Step toward Establishing a Cell Bank for Vascular Tissue Engineering.” Tissue Engineering Volume 12, Number 12, 2006; Lonza; “Clonetics(商標) Endothelial Cell System - Technical Information & Instructions,” www.lonza.com; 2018, Technical Information & Instructions; Marquez-Curtis et al., “Beyond membrane integrity: Assessing the functionality of human umbilical vein endothelial cells after cryopreservation.” Cryobiology 72 (2016) 183-190; Pegg., “Cryopreservation of vascular endothelial cells as isolated cells and as monolayers.” Cryobiology 44 (2002) 46-53; Polchow et al., “Cryopreservation of human vascular umbilical cord cells under good manufacturing practice conditions for future cell banks.” Journal of Translational Medicine 2012 10:98; Puzanov et al., “New Approach to Cryopreservation of Primary Noncultivated Human Umbilical Vein Endothelium in Biobanking.” Biopreservation And Biobanking; Volume 16, Number 2, 2018; Sultani, A. B. et al. “Improved Cryopreservation of Human Umbilical Vein Endothelial Cells: A Systematic Approach.” Sci. Rep. 6, 34393; (2016); Reardon et al. “Investigating membrane and mitochondrial cryobiological responses of HUVEC using interrupted cooling protocols.” Cryobiology 71 (2015) 306-317; および、 von Bomhard A. et al., (2016) Cryopreservation of Endothelial Cells in Various Cryoprotective Agents and Media - Vitrification versus Slow Freezing Methods. PLoS ONE 11(2)(それぞれの内容は、本明細書中に参考として援用される)に記載のEC/HUVEC冷凍保存方法を参照のこと。
【0073】
キット
本発明はまた、本明細書に記載の組成物を含むキット、または本明細書に記載の組成物を調製するためのキット、および/または本明細書に記載の方法のいずれかを実施するためのキットを企図する。そのようなキットは、ヌクレオチド配列(例えば、E4ORF1をコード化するものなど)、EC(HUVECなど)、E4ORF1+ECの集団(E4ORF1+HUVECなど)、EC(HUVECなど)またはそれに発現するタンパク質もしくは核酸分子を検出する手段または組成物(例えば、核酸プローブ、抗体など)、凍結培地、凍結保存剤、HSA、デキストラン(例えば、デキストラン40)、クライオバイアル、クライオバッグ、またはそれらの何れかの組合せを含むが、それだけに限らず、本明細書に記載の成分のいずれも含み得る。このようなキットには、要すれば使用説明書が添付されていてもよい。ラベルは、キットに添付でき、キットの内容物の使用に関する指示またはその他の情報を提供する文書または記録物(電子的またはコンピュータ可読形式であってもよい)を含み得る。例えば、いくつかの態様において、このようなキットは、クライオバイアルまたはクライオバッグ内の凍結培地中にE4ORF1+HUVECを含む組成物と、その解凍、希釈および/または臨床使用のための説明書とを含み得る。
【0074】
本発明の特定の態様は、以下の限定されない実施例を参照してさらに説明できる。
【実施例
【0075】
実施例1
E4ORF1+ HUVECの高密度凍結について
E4ORF1+HUVECを凍結保存し、凍結速度を制御したプログラム、様々な凍結容器(直接希釈おおび閉鎖系での患者への無菌投与に適応した容器を含む)を用いて、その回復と生存率を評価する実験を行った。
【0076】
E4ORF1+ HUVECをペレット化し、5% DMSOおよび20%ヒト血清アルブミン(HSA)からなる凍結培地に、1mlあたり約1300万(1.3 x 107)細胞または1mlあたり1億(1.0 x108)細胞のいずれかの濃度で懸濁した。
【0077】
いくつかの試験では、この細胞懸濁液の約0.5ml(0.57ml)を、いくつかの2mlクライオバイアルのそれぞれに移した。実験によっては、この細胞懸濁液の約1mlを、2mlまたは5mlのクライオバイアルやクライオバッグにそれぞれ移し替えた。これらの実験では、大京社製クライオバイアルの「Crystal Zenith」またはBriostor(商標)、Pall Medical社製Transfer/Freezing バッグセットが用いられたが、いずれも閉鎖系で解凍した細胞製品を患者に無菌的に送達するために適応されたものである。
【0078】
E4ORF1+のHUVECを凍結培地で凍結するために、凍結速度を制御された凍結プログラムが利用された(その詳細は以下の表1に記載されている)。
【0079】
【表1】

【0080】
凍結速度を制御された凍結プログラムを実行した後、凍結した細胞を液体窒素(LN2)中で少なくとも24時間(1日)~96時間(4日間)保存した。
【0081】
その後、E4ORF1+ HUVECを解凍し、デキストランおよびHSAを含む希釈バッファー(デキストラン40 8.3% HSA 4.2%を含む)で希釈して、約340万細胞/mlの希釈細胞濃度とした。
【0082】
生存細胞の回復は、解凍直後(すなわち解凍後0時間)、または解凍2時間後、4時間後、6時間後、24時間後、48時間後または72時間後室温で維持した後、トリパンブルーで細胞を染色し、血球計数器で細胞をカウントする標準的な方法で評価した。
【0083】
図1~4は、E4ORF1+ HUVECの全細胞数(図1)、生存率(図2)、絶対生存細胞数(図3)および生存細胞回復率(図4)を、2mlクライオバイアルで速度制御冷凍プログラムを用いて細胞を冷凍したときの解凍後0時間、2時間、4時間、6時間、24時間、48時間および72時間においてグラフ形式で示す(図中の“初期(initial)”とは冷凍前の生存率を示す)。解凍後の生存率は安定しており(図2参照)、予想に反して試験期間中の生存率の低下はほとんど見られなかった。
【0084】
5%DMSOおよび20%ヒト血清アルブミン(HSA)を含む凍結培地で1.3x107細胞/mlまたは1x108細胞/mlで凍結したE4ORF1+ HUVECの生存率および回復率を、2mLまたは5mLサイズのHUVEC冷凍プログラムで標準スクリューキャップ・クライオバイアルのいずれか、CZクライオバイアルスまたはクライオバッグ(Briostor(登録商標)Transfer/Freezing Bag Set)に入れて測定した。細胞を液体窒素中で少なくとも24時間凍結保存してから解凍し、8.3%デキストランおよび4.2%HSAを含む希釈バッファーで1:20の比率で希釈し、遠心分離または濯ぎによる凍結保存剤の除去(上述の通り)を行わず、その後、細胞数/生存率を評価(上述の通り)した。
その結果を図5A-Bおよび表2に示す。
【0085】
【表2】

【0086】
これらの研究のデータを以下に示す:
(a)E4ORF1+HUVECを超高密度で凍結したときでも、驚くほど高レベルの生存率および生存細胞回収率が達成され、細胞密度を約1000万細胞/mlから約1億細胞/mlまで増加させても生存率/回収率の低下は観察されなかった(いずれの冷凍プロトコルでも)。
(b)超高密度で凍結したE4ORF1+ HUVECを、凍結保存剤を除去する必要なく直接希釈して、ヒト対象への投与に適した緩衝液中に適切な量および濃度のE4ORF1+ HUVECを含む使用可能な細胞治療製品を生成できる(すべて、生存率を著しく低下させることなく)。
(c)本発明者らが説明するHUVEC凍結プログラムは、E4ORF1+ HUVECの解凍後の生存率を維持するために用い得る。
【0087】
実施例2
高密度で凍結したE4ORF1+ HUVECは解凍、希釈してヒトに安全に投与できる
E4ORF1+ HUVECのヒトへの投与に関する安全性を評価するため、第I相臨床治験を実施した。高用量療法-自家造血細胞移植(HDT-AHCT)の対象となる化学物質感受性リンパ腫の対象を登録した。
【0088】
臨床治験で用いられたE4ORF1+ HUVECは、ヒト血清アルブミン(HSA)およびDMSOを添加した無血清、CGMP製造、凍結培地(CryoStor(登録商標)CS5)中、HSAの終濃度が10%、DMSOの終濃度が5%となるように、1億細胞/ml(1 x 108細胞/ml)濃度で(本明細書に記載の方法を使用)臨床治験施設に冷凍供給した。
【0089】
臨床治験サイトでは、細胞を解凍し、希釈培地(本明細書に記載の方法を使用)で希釈し(凍結保存剤を除去しない)、生理食塩水にE4ORF1+ HUVEC細胞(5x106細胞/ml程度)、デキストラン40(~8.3%)、HSA(~4.3%)およびDMSO(~0.25%)を含む治療組成物を得た。
【0090】
その後、治療用組成物をAHCT後のヒト対象に、5x106、10x106または20x106細胞/kgのいずれかを単回または分割投与(分割投与の場合、0日目に細胞を投与し、2日後に再度投与)する用量漸増コホートにて静脈内投与した。支持療法は、各施設のガイドラインに従って実施した。
【0091】
臨床治験の主要目的は、投与された治療用組成物の安全性を評価することであった。副次的な目標として、NCI-CTCAEv5.0グレーディングシステムを用いたグレード3以上の有害事象の評価を行った。Common Terminology Criteria for Adverse Events (CTCAE) Version 5.0, Published: : November 27, 2017, U.S. Department of Health and Human Services, National Institutes of Health, National Cancer Institute、およびFreites-Martinez et al., Using the Common Terminology Criteria for Adverse Events (CTCAE - Version 5.0) to Evaluate the Severity of Adverse Events of Anticancer Therapies. Actas Dermosifiliogr (Engl Ed). 2021 Jan;112(1):90-92を参照のこと。このシステムでは、グレード1は有害事象(AE)が軽度、グレード2は中等度、グレード3は重度、グレード4は生命を脅かす、グレード5は致命的(AEに関連した死亡)であることを示す。評価対象となったグレード3以上の口腔/消化器系の有害事象は、口腔粘膜炎、悪心、嘔吐、下痢などであった。
【0092】
全身性リンパ腫の29名のヒト対象が治療を受け、中央値で271日(範囲179、566)のフォローアップが行われた。有害事象は一般的に軽度/中等度であり、HDT-AHCTで予想される種類および重症度であった。忍容性が高いため、20 x 106 細胞/kgまでの投与による最大耐容量は設定されなかった。
【0093】
この第I相治験の結果、高密度凍結E4ORF1+ HUVECから本明細書に記載の方法および組成物を用いて調製したこれらの治療用組成物は、ヒト対象に安全に投与できることが示された。
【0094】
参考文献一覧
ATTC; Animal Cell Culture Guide; 2014 www.atcc.org
Common Terminology Criteria for Adverse Events (CTCAE) Version 5.0, Published: November 27, 2017, U.S. Department of Health and Human Services, National Institutes of Health, National Cancer Institute.
De Loecher et al., “Effects of Cell Concentration on Viability and Metabolic Activity During Cryopreservation,” 1998, Cryobiology, Vol. 37(2), p. 103-109.
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図1
図2
図3
図4
図5
【配列表】
2023537949000001.app
【国際調査報告】