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特表2023-537951自己組織化両親媒性ペプチドハイドロゲル
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-06
(54)【発明の名称】自己組織化両親媒性ペプチドハイドロゲル
(51)【国際特許分類】
   A61L 27/22 20060101AFI20230830BHJP
   A61L 27/52 20060101ALI20230830BHJP
   A61L 27/58 20060101ALI20230830BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20230830BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20230830BHJP
   A61P 31/10 20060101ALI20230830BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20230830BHJP
   A61L 27/54 20060101ALI20230830BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230830BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20230830BHJP
   A61P 7/04 20060101ALI20230830BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20230830BHJP
   A61L 27/02 20060101ALI20230830BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20230830BHJP
   A61K 9/19 20060101ALI20230830BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20230830BHJP
   A61P 1/02 20060101ALI20230830BHJP
   A61K 9/12 20060101ALI20230830BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20230830BHJP
   A61L 31/10 20060101ALI20230830BHJP
   A61L 31/14 20060101ALI20230830BHJP
   C07K 14/00 20060101ALI20230830BHJP
【FI】
A61L27/22
A61L27/52
A61L27/58
A61P31/00
A61P31/04
A61P31/10
A61P31/12
A61L27/54
A61P35/00
A61P29/00
A61P7/04
A61P25/04
A61L27/02
A61K47/42
A61K9/19
A61P17/02
A61P1/02
A61K9/12
A61K47/02
A61L31/10
A61L31/14 300
C07K14/00 ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023509532
(86)(22)【出願日】2021-08-09
(85)【翻訳文提出日】2023-04-07
(86)【国際出願番号】 US2021045265
(87)【国際公開番号】W WO2022035779
(87)【国際公開日】2022-02-17
(31)【優先権主張番号】63/063,743
(32)【優先日】2020-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523044703
【氏名又は名称】ジェルフォーメッド,インク.
【氏名又は名称原語表記】GEL4MED,INC.
【住所又は居所原語表記】1660 Soldiers Field Rd.STE 7 #1063 Brighton, MA 02135 United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100091502
【弁理士】
【氏名又は名称】井出 正威
(72)【発明者】
【氏名】メータ,マナブ
(72)【発明者】
【氏名】メカラ,ラビ キラン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C081
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA24
4C076BB29
4C076DD28
4C076EE41
4C076FF61
4C081AA01
4C081AB01
4C081AB11
4C081AC00
4C081BA12
4C081BA16
4C081BB09
4C081CD11
4C081CE02
4C081CE03
4C081CF13
4C081CF21
4C081DA12
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA15
4H045BA16
4H045BA17
4H045BA18
4H045BA19
4H045BA20
4H045BA21
4H045EA20
4H045EA34
4H045FA33
4H045GA25
(57)【要約】
ハイドロゲルに自己組織化するよう構成された、実質的に交互のパターンおよびターンシーケンスで配置された複数の荷電アミノ酸残基および疎水性アミノ酸残基を有するフォールディング基を含む精製両親媒性ペプチドを含み、熱的に安定である調製物が開示される。ペプチドは-7~+11の正味電荷を有し得る。ペプチドは有効量の対イオンを含み得る。調製物は、0.5%w/v~6.0%w/vの間のペプチドを含み得る。調製物は生体適合性溶液を含み得る。調製物は緩衝液を含み得る。緩衝液は、ハイドロゲルを形成するための有効量のイオン性塩および生物学的緩衝剤を含み得る。調製物を含むキットも開示される。キットは、混合装置および/または送達装置を含み得る。外面の少なくとも一部がハイドロゲルでコーティングされている医療または手術ツールも開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的に交互のパターンおよびターンシーケンスで配置された複数の荷電アミノ酸残基および疎水性アミノ酸残基を有するフォールディング基を含む精製両親媒性ペプチドであって、ハイドロゲルに自己組織化するよう構成されており、-7~+11の間の正味電荷を有するペプチドと;
生体適合性水溶液と
を含み、熱的に安定である調製物。
【請求項2】
実質的に交互のパターンおよびターンシーケンスで配置された複数の荷電アミノ酸残基および疎水性アミノ酸残基を有するフォールディング基を含む0.5%w/v~6.0%w/vの間の精製両親媒性ペプチドであって、ハイドロゲルに自己組織化するよう構成されているペプチドと;
生体適合性水溶液と
を含み、熱的に安定である調製物。
【請求項3】
実質的に交互のパターンおよびターンシーケンスで配置された複数の荷電アミノ酸残基および疎水性アミノ酸残基を有するフォールディング基を含む精製両親媒性ペプチドであって、ハイドロゲルに自己組織化するよう構成されており、有効量の対イオンを含むペプチドと;
生体適合性水溶液と
を含み、熱的に安定である調製物。
【請求項4】
実質的に交互のパターンおよびターンシーケンスで配置された複数の荷電アミノ酸残基および疎水性アミノ酸残基を有するフォールディング基を含む精製両親媒性ペプチドであって、ハイドロゲルに自己組織化するよう構成されているペプチドと;
生体適合性水溶液と;
前記ハイドロゲルを形成するための有効量のイオン性塩および生物学的緩衝剤を含む緩衝液と
を含み、熱的に安定である調製物で形成されたハイドロゲル。
【請求項5】
前記ペプチドの自己組織化を誘導して前記ハイドロゲルを形成するよう構成された緩衝液をさらに含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の調製物。
【請求項6】
前記ペプチド、前記生体適合性溶液、および前記緩衝液のうちのいずれか1つまたは複数が別々に用意される、請求項1から5のいずれか一項に記載の調製物。
【請求項7】
前記ペプチドが約10~200個の間のアミノ酸残基を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の調製物。
【請求項8】
前記フォールディング基が約2~50個の間のアミノ酸残基を有する、請求項7に記載の調製物。
【請求項9】
前記疎水性アミノ酸残基が、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トレオニン、トリプトファン、およびこれらの組合せから独立して選択される、請求項1から4のいずれか一項に記載の調製物。
【請求項10】
前記疎水性アミノ酸残基がバリンである、請求項9に記載の調製物。
【請求項11】
無菌である、請求項1から4のいずれか一項に記載の調製物。
【請求項12】
前記荷電アミノ酸残基が正に帯電したアミノ酸残基である、請求項1から4のいずれか一項に記載の調製物。
【請求項13】
前記荷電アミノ酸残基が、アルギニン、リジン、ヒスチジン、およびこれらの組合せから独立して選択される、請求項12に記載の調製物。
【請求項14】
前記フォールディング基が、2~10個の間の正に帯電したアミノ酸残基を有する、請求項12に記載の調製物。
【請求項15】
前記フォールディング基が、アルギニンおよびリジンから選択される6個の正に帯電したアミノ酸残基を有する、請求項14に記載の調製物。
【請求項16】
前記荷電アミノ酸残基が負に帯電したアミノ酸残基である、請求項1から4のいずれか一項に記載の調製物。
【請求項17】
前記荷電アミノ酸残基が、アスパラギン酸、グルタミン酸、およびこれらの組合せから独立して選択される、請求項16に記載の調製物。
【請求項18】
前記ペプチドのN末端およびC末端の少なくとも1つが修飾されている、請求項1から4のいずれか一項に記載の調製物。
【請求項19】
前記修飾がアミド化である、請求項18に記載の調製物。
【請求項20】
前記ペプチドのN末端およびC末端の少なくとも1つが遊離である、請求項1から4のいずれか一項に記載の調製物。
【請求項21】
前記フォールディング基が、Y[AY][T][YA]Y(式中、Aは塩基性、中性、脂肪族、芳香族、極性、および荷電アミノ酸のうちの1つまたは複数から選択される1~3個のアミノ酸であり、Yは1~3個の疎水性アミノ酸であり、Tは2~8個のターンシーケンスアミノ酸であり、NおよびMは、それぞれ独立して、2~10の間である)を含む配列を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の調製物。
【請求項22】
前記フォールディング基が、Y[XY][T][YX]Y(式中、Xは1~3個の荷電アミノ酸であり、Yは1~3個の疎水性アミノ酸であり、Tは2~8個のターンシーケンスアミノ酸であり、NおよびMは、それぞれ独立して、2~10の間である)を含む配列を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の調製物。
【請求項23】
前記ターンシーケンスが、D-プロリン、L-プロリン、アスパラギン酸、トレオニン、およびアスパラギンから独立して選択される2~8個のアミノ酸残基を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の調製物。
【請求項24】
前記ターンシーケンスが1~4個のプロリン残基を有する、請求項23に記載の調製物。
【請求項25】
前記フォールディング基が、(Z)c(Y)b(X)a-[(d)PP、(d)PG、またはNG]-(X)a(Y)b(Z)c(式中、ターンシーケンスは(d)PP、(d)PG、またはNGであり、(d)PはD-プロリンであり、Xは荷電アミノ酸であり、Yは疎水性アミノ酸であり、Zは疎水性アミノ酸または極性アミノ酸であり、a、b、およびcは、それぞれ独立して、1~10の整数である)を含む配列を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の調製物。
【請求項26】
前記ペプチドが有効量の対イオンを含む、請求項1、2、および4のいずれか一項に記載の調製物。
【請求項27】
前記対イオンが、酢酸、クエン酸、および塩化物対イオンの少なくとも1つを含む、請求項26または請求項3に記載の調製物。
【請求項28】
前記対イオンが酢酸対イオンを含む、請求項27に記載の調製物。
【請求項29】
前記ペプチドが塩化物対イオンを実質的に含まない、および/または前記生体適合性溶液が塩化物イオンを実質的に含まない、請求項1から4のいずれか一項に記載の調製物。
【請求項30】
前記ペプチドが、少なくとも80%、例えば、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または少なくとも99.9%精製されている、請求項1から4のいずれか一項に記載の調製物。
【請求項31】
前記精製ペプチドが、10重量%未満、例えば、8%未満、5%未満、2%未満、1%未満、または0.1%未満の残留有機溶媒を有する、請求項30に記載の調製物。
【請求項32】
前記精製ペプチドが、約1%w/v未満の残留トリフルオロ酢酸(TFA)濃度を有する、請求項31に記載の調製物。
【請求項33】
前記精製ペプチドが、約410ppm未満の残留アセトニトリル濃度を有する、請求項31に記載の調製物。
【請求項34】
前記精製ペプチドが、約880ppm未満の残留N,N-ジメチルホルムアミド濃度を有する、請求項31に記載の調製物。
【請求項35】
前記精製ペプチドが、約5000ppm未満の残留トリエチルアミン濃度を有する、請求項31に記載の調製物。
【請求項36】
前記精製ペプチドが、約1000ppm未満の残留エチルエーテル濃度を有する、請求項31に記載の調製物。
【請求項37】
前記精製ペプチドが、約100ppm未満の残留イソプロパノール濃度を有する、請求項31に記載の調製物。
【請求項38】
前記精製ペプチドが、約0.1%w/v未満の残留酢酸濃度を有する、請求項31に記載の調製物。
【請求項39】
前記精製ペプチドが凍結乾燥されている、請求項30に記載の調製物。
【請求項40】
前記ペプチドが、温度変化、pH変化、光への曝露、音波の適用、および期間の経過の少なくとも1つに応じて所定の二次構造を有するハイドロゲルに自己組織化するよう構成されている、請求項1から4のいずれか一項に記載の調製物。
【請求項41】
前記ペプチドが-7~+11の正味電荷を有する、請求項2から4のいずれか一項に記載の調製物。
【請求項42】
前記ペプチドが+2~+11、例えば+5~+9の正味電荷を有する、請求項1または請求項41に記載の調製物。
【請求項43】
前記ペプチドが、70%w/v~99.9%w/vの間の窒素を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の調製物。
【請求項44】
前記ペプチドが、約10EU/mg未満の細菌エンドトキシンレベルを有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の調製物。
【請求項45】
前記ペプチドが、約1%w/v~約15%w/vの間の含水量を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の調製物。
【請求項46】
0.1%w/v~8.0%w/vの間の前記ペプチドを含む、請求項1、3、および4のいずれか一項に記載の調製物。
【請求項47】
0.5%w/v~6.0%w/vの間、例えば、0.5%w/v~3.0%w/vの間、0.5%w/v~1.5%w/vの間、0.5%w/v~1.0%w/vの間、または0.7%w/v~0.8%w/vの間の前記ペプチドを含む、請求項2または請求項46に記載の調製物。
【請求項48】
0.25%w/v~6.0%w/vの間の前記ペプチドを含む、請求項4に記載のハイドロゲル。
【請求項49】
前記ペプチドが、90%w/v~99.9%w/vの間の水溶液を有するハイドロゲルに自己組織化するよう構成されている、請求項1から4のいずれか一項に記載の調製物。
【請求項50】
前記ハイドロゲルを形成するための有効量のイオン性塩および生物学的緩衝剤を含む緩衝液をさらに含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の調製物。
【請求項51】
前記緩衝液が、水、酸、塩基、および鉱物の少なくとも1つをさらに含む、請求項50または請求項4に記載の調製物。
【請求項52】
前記緩衝液が実質的に生理的pHを有し、酸性であるか、アルカリであるか、または実質的に中性である、請求項50または請求項4に記載の調製物。
【請求項53】
前記緩衝液の量および組成が、前記ハイドロゲルのpHを制御して標的部位で実質的に生理的pHを維持するよう選択される、請求項50または請求項4に記載の調製物。
【請求項54】
前記緩衝液が、約5mM~約200mMのイオン性塩を含む、請求項50または請求項4に記載の調製物。
【請求項55】
前記イオン性塩が、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、鉄イオン、アンモニウムイオン、ピリジウムイオン、第四級アンモニウムイオン、塩化物イオン、クエン酸イオン、酢酸イオン、および硫酸イオンの少なくとも1つに解離する、請求項54に記載の調製物。
【請求項56】
前記イオン性塩が、塩化ナトリウム、塩化アンモニウム、塩化マグネシウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、硫酸アンモニウム、硫酸マグネシウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸カルシウム、重炭酸ナトリウム、およびこれらの組合せの少なくとも1つを含む、請求項54に記載の調製物。
【請求項57】
前記緩衝液が、約10mM~約150mMの塩化ナトリウムを含む、請求項56に記載の調製物。
【請求項58】
前記緩衝液が、前記ハイドロゲルの剛性を制御するのに有効な量のイオン性塩を含む、請求項54に記載の調製物。
【請求項59】
前記緩衝液が、約1mM~約150mMの前記生物学的緩衝剤を含む、請求項50または請求項4に記載の調製物。
【請求項60】
前記生物学的緩衝剤が、ビス-トリスプロパン(BTP)、4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸(HEPES)、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(TRIS)、2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸ヘミナトリウム塩、4-モルホリンエタンスルホン酸ヘミナトリウム塩(MES)、3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸(MOPS)、および3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸(MOBS)、トリシン、ビシン、(トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミノ)プロパンスルホン酸(TAPS)、N-(2-アセトアミド)-2-アミノエタンスルホン酸(ACES)、β-ヒドロキシ-4-モルホリンプロパンスルホン酸、3-モルホリノ-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸(MOPSO)、(N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-2-アミノエタンスルホン酸)(BES)およびこれらの組合せから選択される、請求項59に記載の調製物。
【請求項61】
前記緩衝液が、約10mM~約100mMのBTPを含む、請求項60に記載の調製物。
【請求項62】
前記ペプチドが、2.5~9.0の間のpHレベルを有するハイドロゲルに自己組織化するよう構成されている、請求項1から4のいずれか一項に記載の調製物。
【請求項63】
前記ペプチドが、7.0~8.0の間のpHレベルを有するハイドロゲルに自己組織化するよう構成されている、請求項62に記載の調製物。
【請求項64】
前記ペプチドが、実質的に透明なハイドロゲルに自己組織化するよう構成されている、請求項1から4のいずれか一項に記載の調製物。
【請求項65】
前記実質的に透明なハイドロゲルが、巨視的および顕微鏡光学イメージングによって決定されるように、目に見える混濁を実質的に含まない、請求項64に記載の調製物。
【請求項66】
前記実質的に透明なハイドロゲルが、静的光散乱(SLS)およびUV-VIS試験によって示されるように、目に見えるペプチド凝集体を実質的に含まない、請求項65に記載の調製物。
【請求項67】
前記実質的に透明なハイドロゲルが、約205nm~約300nmの間の波長で、約0.1~3.0±1.5の間のUV-VIS光吸光度を有する、請求項64に記載の調製物。
【請求項68】
生体適合性色素をさらに含む、請求項64に記載の調製物。
【請求項69】
前記ペプチドが、ナノポーラス構造を有するハイドロゲルに自己組織化するよう構成されている、請求項1から4のいずれか一項に記載の調製物。
【請求項70】
前記ナノポーラス構造が、1nm~1000nmの間の平均細孔径および1nm~100nmの間のフィブリル幅を有する、請求項69に記載の調製物。
【請求項71】
前記ナノポーラス構造が、標的微生物に対して不透過性となるよう選択される、請求項70に記載の調製物。
【請求項72】
前記ナノポーラス構造が、ガス交換を可能にするよう選択される、請求項71に記載の調製物。
【請求項73】
前記ペプチドが、カチオン性ハイドロゲルに自己組織化するよう構成されている、請求項1から4のいずれか一項に記載の調製物。
【請求項74】
前記ペプチドが、せん断減粘ハイドロゲルに自己組織化するよう構成されている、請求項1から4のいずれか一項に記載の調製物。
【請求項75】
前記ペプチドが、負荷機械力に応じて可逆的に解体するよう構成されている、請求項74に記載の調製物。
【請求項76】
前記ペプチドが、温度変化、pH変化、イオンキレート剤との接触、溶媒による希釈、音波の適用、凍結乾燥、および風乾の少なくとも1つに応じて可逆的に解体するよう構成されている、請求項74に記載の調製物。
【請求項77】
前記ペプチドが、実質的に噴霧可能および/または注射可能なハイドロゲルに自己組織化するよう構成されている、請求項74に記載の調製物。
【請求項78】
前記ペプチドが、レオロジー試験によって決定されるように、約2Pa~約3500Paの間の剛性率を有するハイドロゲルに自己組織化するよう構成されている、請求項74に記載の調製物。
【請求項79】
前記ペプチドが、実質的にイオン架橋したハイドロゲルに自己組織化するよう構成されている、請求項1から4のいずれか一項に記載の調製物。
【請求項80】
前記疎水性アミノ酸残基が、前記ペプチドを所定の二次構造を有するポリマーに自己組織化するよう選択される、請求項1から4のいずれか一項に記載の調製物。
【請求項81】
前記所定の二次構造が、βシート、αヘリックス、およびランダムコイルの少なくとも1つから予備選択される構造を含む、請求項80に記載の調製物。
【請求項82】
前記予備選択される構造がβヘアピンを含む、請求項81に記載の調製物。
【請求項83】
前記疎水性アミノ酸残基が、前記ペプチドを、大部分のβシート構造を有するポリマーに自己組織化するよう選択される、請求項82に記載の調製物。
【請求項84】
前記疎水性アミノ酸残基の量および種類が、前記ハイドロゲルの剛性を制御するよう選択される、請求項1から4のいずれか一項に記載の調製物。
【請求項85】
前記フォールディング基が、βヘアピン二次構造を採用するよう構成されている、請求項1から4のいずれか一項に記載の調製物。
【請求項86】
前記フォールディング基が、ナノポーラスハイドロゲル三次構造を採用するよう構成されている、請求項1から4のいずれか一項に記載の調製物。
【請求項87】
前記ペプチドが、抗微生物特性、抗ウイルス、および/または抗真菌特性を有するハイドロゲルに自己組織化するよう構成されている、請求項1から4のいずれか一項に記載の調製物。
【請求項88】
前記ペプチドが、実質的に生体適合性のハイドロゲルに自己組織化するよう構成されている、請求項1から4のいずれか一項に記載の調製物。
【請求項89】
前記ペプチドが、細胞に優しいハイドロゲルに自己組織化するよう構成されている、請求項88に記載の調製物。
【請求項90】
前記ペプチドが、実質的に生分解性、非炎症性、および/または非毒性のハイドロゲルに自己組織化するよう構成されている、請求項89に記載の調製物。
【請求項91】
前記ペプチドが官能基を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の調製物。
【請求項92】
前記官能基が3~30個の間のアミノ酸残基を有する、請求項91に記載の調製物。
【請求項93】
前記官能基が生理活性特性を発現するよう操作される、請求項91に記載の調製物。
【請求項94】
前記官能基が、前記ペプチドまたは調製物の電荷またはpHを制御するか、または変化させるよう操作される、請求項91に記載の調製物。
【請求項95】
前記官能基が、標的効能のために操作される、請求項91に記載の調製物。
【請求項96】
前記標的効能が、細胞培養、細胞送達、創傷治癒、バイオフィルムの処置、およびこれらの組合せから選択される、請求項95に記載の調製物。
【請求項97】
前記官能基が、RGD、IKVAV、YIGSR、LKKTETQ、SNKPGVL、PKPQQFFGLM、GKLTWQELYQLKYKGI、およびGGGから選択される配列を有する、請求項91に記載の調製物。
【請求項98】
前記ペプチドが、リンカーおよびスペーサーから選択される修飾を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の調製物。
【請求項99】
局所、経腸、または非経口投与用に製剤化されている、請求項1から4のいずれか一項に記載の調製物。
【請求項100】
スプレー、エアロゾル、点滴器、チューブ、アンプル、フィルム、点滴、注射、またはシリンジによる投与用に製剤化されている、請求項99に記載の調製物。
【請求項101】
全身投与用に製剤化されている、請求項1から4のいずれか一項に記載の調製物。
【請求項102】
微生物汚染を処置するか、または標的微生物を排除もしくはその増殖を阻害するために製剤化されている、請求項1から4のいずれか一項に記載の調製物。
【請求項103】
前記標的微生物が病原性微生物である、請求項102に記載の調製物。
【請求項104】
微生物バイオバーデンを管理または阻害するために製剤化されている、請求項1から4のいずれか一項に記載の調製物。
【請求項105】
真菌汚染を処置するために製剤化されている、請求項1から4のいずれか一項に記載の調製物。
【請求項106】
ウイルス汚染を処置するために製剤化されている、請求項1から4のいずれか一項に記載の調製物。
【請求項107】
細菌汚染を処置するために製剤化されている、請求項1から4のいずれか一項に記載の調製物。
【請求項108】
細胞培養および/または細胞送達のために製剤化されている、請求項1から4のいずれか一項に記載の調製物。
【請求項109】
組織培養および/または組織送達のために製剤化されている、請求項108に記載の調製物。
【請求項110】
感染創傷を処置する、および/またはバイオフィルムを処置もしくは阻害するために製剤化されている、請求項1から4のいずれか一項に記載の調製物。
【請求項111】
創傷および/またはバイオフィルム管理のために製剤化されている、請求項1から4のいずれか一項に記載の調製物。
【請求項112】
水分管理および/または創傷もしくは組織の滲出液管理のために製剤化されている、請求項1から4のいずれか一項に記載の調製物。
【請求項113】
フィルム、バリア、バリアドレッシング材、デブリードマン剤、および/または止血剤として製剤化されている、請求項1から4のいずれか一項に記載の調製物。
【請求項114】
活性剤、例えば、抗菌組成物、抗真菌組成物、抗ウイルス組成物、抗腫瘍組成物、防臭組成物、止血剤、抗炎症性組成物、細胞培養培地、細胞培養血清、および鎮痛剤、局所麻酔薬、または疼痛緩和組成物の少なくとも1つをさらに含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の調製物。
【請求項115】
有効量の鉱物粘土をさらに含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の調製物。
【請求項116】
約0.1%w/v~約20%w/vの間の鉱物粘土を含む、請求項115に記載の調製物。
【請求項117】
前記鉱物粘土が、ラポナイトおよびモンモリロナイトの少なくとも1つを含む、請求項116に記載の調製物。
【請求項118】
-20℃~150℃の間で熱的に安定である、請求項1から4のいずれか一項に記載の調製物。
【請求項119】
最終および/またはオートクレーブ滅菌によって滅菌されている、請求項118に記載の調製物。
【請求項120】
室温で少なくとも約1~5年の貯蔵寿命を有する、請求項118に記載の調製物。
【請求項121】
2℃~125℃の間で熱的に安定である、請求項1から4のいずれか一項に記載の調製物。
【請求項122】
超音波処理されている、請求項1から4のいずれか一項に記載の調製物。
【請求項123】
最大約25psiの圧力で安定、例えば物理的に安定、化学的に安定、および/または生物学的に安定である、請求項1から4のいずれか一項に記載の調製物。
【請求項124】
前記ペプチドが、2℃~40℃の間の温度で自己組織化することができる、請求項1から4のいずれか一項に記載の調製物。
【請求項125】
前記ペプチドが、40℃超の温度で実質的に組織化していない、請求項124に記載の調製物。
【請求項126】
前記ペプチドが、約60分未満、約30分未満、約15分未満、約10分未満、または約5分未満、約2分未満、約60秒未満、約30秒未満、約10秒未満、約3秒未満、または約1秒未満で自己組織化するよう構成されている、請求項1から4のいずれか一項に記載の調製物。
【請求項127】
前記ペプチドが、約30秒未満、約10秒未満、または約3秒未満で自己組織化を始めるよう構成されている、請求項1から4のいずれか一項に記載の調製物。
【請求項128】
前記ペプチドが前記生体適合性溶液に溶解している、請求項1から4のいずれか一項に記載の調製物。
【請求項129】
前記生体適合性溶液が、脱イオン水、医薬品グレードの水、もしくは注射グレードの水を含むか、またはこれらから本質的になる水溶液である、請求項1から4のいずれか一項に記載の調製物。
【請求項130】
保存剤を実質的に含まない、請求項1から4のいずれか一項に記載の調製物。
【請求項131】
対象を処置する方法であって、有効量の請求項1から4のいずれか一項に記載の調製物を前記対象に投与するステップを含む方法。
【請求項132】
ペプチド調製物を製造する方法であって、前記請求項のいずれか一項に記載のペプチドと生体適合性溶液を合わせるステップを含む方法。
【請求項133】
自己組織化したペプチドハイドロゲルを製造する方法であって、前記請求項のいずれか一項に記載のペプチド、生体適合性溶液、および緩衝液を合わせるステップを含む方法。
【請求項134】
請求項1から3のいずれか一項に記載の調製物と;
前記ペプチドの前記ハイドロゲルへの自己組織化を誘導するよう構成された緩衝液と;
前記調製物の対象への投与前にまたは投与と並行して、前記調製物と前記緩衝液を合わせるための説明書と
を含むキット。
【請求項135】
前記緩衝液が、前記ハイドロゲルを形成するための有効量のイオン性塩および生物学的緩衝剤を含む、請求項134に記載のキット。
【請求項136】
送達装置をさらに含む、請求項134に記載のキット。
【請求項137】
前記送達装置が、シリンジ、点滴器、フィルム、またはスプレーである、請求項136に記載のキット。
【請求項138】
混合装置をさらに含む、請求項134に記載のキット。
【請求項139】
前記混合装置がマルチチャンバー装置、例えば2チャンバー装置である、請求項138に記載のキット。
【請求項140】
前記混合装置が静的混合装置である、請求項138に記載のキット。
【請求項141】
前記混合装置中で前記緩衝液を前記調製物と合わせて前記ハイドロゲルを形成するための説明書をさらに含む、請求項138に記載のキット。
【請求項142】
抗菌製剤、抗真菌製剤、抗ウイルス製剤、止血製剤、抗腫瘍製剤、抗炎症性製剤、細胞培養培地、細胞培養血清、防臭製剤、および鎮痛剤、局所麻酔薬、または疼痛緩和製剤の少なくとも1つをさらに含む、請求項134に記載のキット。
【請求項143】
局所ドレッシング材をさらに含む、請求項134に記載のキット。
【請求項144】
室温でキットを貯蔵するための説明書をさらに含む、請求項134に記載のキット。
【請求項145】
包装約1~5年後の失効の表示をさらに含む、請求項144に記載のキット。
【請求項146】
温度制御装置、pH制御添加剤、イオンキレート剤組成物、溶媒、音制御装置、凍結乾燥装置、および風乾装置の少なくとも1つをさらに含む、請求項134に記載のキット。
【請求項147】
生体適合性水溶液中に精製両親媒性ペプチドを含む熱的に安定な調製物であって、前記ペプチドは、実質的に交互のパターンおよびターンシーケンスで配置された複数の荷電アミノ酸残基および疎水性アミノ酸残基を有するフォールディング基を含み、前記ペプチドはハイドロゲルに自己組織化するよう構成されている、調製物と;
前記ハイドロゲルを形成するための有効量のイオン性塩および生物学的緩衝剤を含む緩衝液と
で形成されたハイドロゲルで外面の少なくとも一部がコーティングされている医療または手術ツール。
【請求項148】
少なくとも部分的に植込み可能である、請求項147に記載の医療または手術ツール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国特許法第119条(e)の下で、その開示全体が全ての目的のために全体が参照により本明細書に組み込まれる、2020年8月10日に出願された「自己組織化両親媒性ペプチドハイドロゲル」と題する米国仮特許出願第63/063743号に基づく優先権を主張する。
【0002】
連邦政府による資金提供を受けた研究の記載
本発明は、アメリカ国立衛生研究所(NIH)によって与えられた、中小企業技術革新研究プログラム(SBIR)認可番号1R44GM133305-01の下で、政府支援を受けてなされた。政府は本発明における一定の権利を有する。
【0003】
配列表
本出願は、ASCII形式で電子的に提出され、全体が参照により本明細書に組み込まれる配列表を含有する。2021年8月6日に作成された前記ASCIIコピーは、G2093-7001WOFSR_SL.txtと命名され、サイズが9674バイトである。
【0004】
本明細書に開示される態様および実施形態は、自己組織化ペプチドを投与するためのシステムおよび方法に向けられている。特に、態様および実施形態は、両親媒性ペプチド製剤および両親媒性ペプチド製剤を投与する方法に向けられている。
【背景技術】
【0005】
組織工学は、生物組織を置換、修復、および/または強化するための、適切な生化学的および生理学的特性を有する材料の使用を伴う。関与する特定の組織は、適切な機能のためのある特定の機械的および構造的要件を有し得る。特定の標的組織で使用するために容易に調整可能であり、組織工学に適した生化学的および生理学的特性を有する材料が必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様によると、実質的に交互のパターンおよびターンシーケンスで配置された複数の荷電アミノ酸残基および疎水性アミノ酸残基を有するフォールディング基を含む精製両親媒性ペプチドを含む調製物が提供される。ペプチドは、ハイドロゲルに自己組織化するよう構成され得、-7~+11の間の正味電荷を有する。調製物は生体適合性水溶液を含み得る。調製物は熱的に安定であり得る。
【0007】
別の態様によると、実質的に交互のパターンおよびターンシーケンスで配置された複数の荷電アミノ酸残基および疎水性アミノ酸残基を有するフォールディング基を含む0.5%w/v~6.0%w/vの間の精製両親媒性ペプチドを含む調製物が提供される。ペプチドはハイドロゲルに自己組織化するよう構成され得る。調製物は生体適合性水溶液を含み得る。調製物は熱的に安定であり得る。
【0008】
別の態様によると、実質的に交互のパターンおよびターンシーケンスで配置された複数の荷電アミノ酸残基および疎水性アミノ酸残基を有するフォールディング基を含む精製両親媒性ペプチドを含む調製物が提供される。ペプチドはハイドロゲルに自己組織化するよう構成され得る。調製物は有効量の対イオンを含み得る。調製物は生体適合性水溶液を含み得る。調製物は熱的に安定であり得る。
【0009】
別の態様によると、実質的に交互のパターンおよびターンシーケンスで配置された複数の荷電アミノ酸残基および疎水性アミノ酸残基を有するフォールディング基ターンシーケンスを含む精製両親媒性ペプチドを含む調製物で形成されたハイドロゲルが提供される。ペプチドはハイドロゲルに自己組織化するよう構成され得る。調製物は生体適合性水溶液を含み得る。調製物は、ハイドロゲルを形成するための有効量のイオン性塩および生物学的緩衝剤を含む緩衝液を含み得る。調製物は熱的に安定であり得る。
【0010】
調製物は、ペプチドの自己組織化を誘導してハイドロゲルを形成するよう構成された緩衝液を含み得る。
【0011】
一部の実施形態では、ペプチド、生体適合性溶液、および緩衝液のうちのいずれか1つまたは複数が別々に用意され得る。
【0012】
ペプチドは約10~200個の間のアミノ酸残基を有し得る。
【0013】
フォールディング基は約2~50個の間のアミノ酸残基を有し得る。
【0014】
疎水性アミノ酸残基は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トレオニン、トリプトファン、およびこれらの組合せから独立して選択され得る。
【0015】
一部の実施形態では、疎水性アミノ酸残基がバリンであり得る。
【0016】
一部の実施形態では、調製物が無菌であり得る。
【0017】
荷電アミノ酸残基は正に帯電したアミノ酸残基であり得る。
【0018】
荷電アミノ酸残基は、アルギニン、リジン、トリプトファン、ヒスチジン、およびこれらの組合せから独立して選択され得る。
【0019】
フォールディング基は、2~10個の間の正に帯電したアミノ酸残基を有し得る。
【0020】
フォールディング基は、アルギニンおよびリジンから選択される6個の正に帯電したアミノ酸残基を有し得る。
【0021】
荷電アミノ酸残基は負に帯電したアミノ酸残基であり得る。
【0022】
荷電アミノ酸残基は、アスパラギン酸、グルタミン酸、およびこれらの組合せから独立して選択され得る。
【0023】
一部の実施形態では、ペプチドのN末端およびC末端の少なくとも1つが修飾され得る。
【0024】
修飾はアミド化であり得る。
【0025】
一部の実施形態では、ペプチドのN末端およびC末端の少なくとも1つが遊離であり得る。
【0026】
一部の実施形態では、フォールディング基が、Y[AY][T][YA]Y(式中、Aは塩基性、中性、脂肪族、芳香族、極性、および荷電アミノ酸のうちの1つまたは複数から選択される1~3個のアミノ酸であり、Yは1~3個の疎水性アミノ酸であり、Tは2~8個のターンシーケンスアミノ酸であり、NおよびMは、それぞれ独立して、2~10の間である)を含む配列を有し得る。
【0027】
一部の実施形態では、フォールディング基が、Y[XY][T][YX]Y(式中、Xは1~3個の荷電アミノ酸であり、Yは1~3個の疎水性アミノ酸であり、Tは2~8個のターンシーケンスアミノ酸であり、NおよびMは、それぞれ独立して、2~10の間である)を含む配列を有し得る。
【0028】
ターンシーケンスは、D-プロリン、L-プロリン、アスパラギン酸、トレオニン、およびアスパラギンから独立して選択される2~8個のアミノ酸残基を有し得る。
【0029】
ターンシーケンスは1~4個のプロリン残基を有し得る。
【0030】
一部の実施形態では、フォールディング基が、(Z)c(Y)b(X)a-[(d)PP、(d)PG、またはNG]-(X)a(Y)b(Z)c(式中、ターンシーケンスは(d)PP、(d)PG、またはNGであり、(d)PはD-プロリンであり、Xは荷電アミノ酸であり、Yは疎水性アミノ酸であり、Zは疎水性アミノ酸または極性アミノ酸であり、a、b、およびcは、それぞれ独立して、1~10の整数である)を含む配列を有し得る。
【0031】
ペプチドは有効量の対イオンを含み得る。
【0032】
対イオンは、酢酸、クエン酸、および塩化物対イオンの少なくとも1つを含み得る。
【0033】
対イオンは酢酸対イオンを含み得る。
【0034】
ペプチドは塩化物対イオンを実質的に含まないことができる。
【0035】
生体適合性溶液は塩化物イオンを実質的に含まないことができる。
【0036】
ペプチドは少なくとも80%精製され得る。例えば、ペプチドは少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または少なくとも99.9%精製され得る。
【0037】
精製ペプチドは10重量%未満の残留有機溶媒を有し得る。例えば、精製ペプチドは、8%未満、5%未満、2%未満、1%未満、または0.1%未満の残留有機溶媒を有し得る。
【0038】
精製ペプチドは、約1%w/v未満の残留トリフルオロ酢酸(TFA)濃度を有し得る。
【0039】
精製ペプチドは、約410ppm未満の残留アセトニトリル濃度を有し得る。
【0040】
精製ペプチドは、約880ppm未満の残留N,N-ジメチルホルムアミド濃度を有し得る。
【0041】
精製ペプチドは、約5000ppm未満の残留トリエチルアミン濃度を有し得る。
【0042】
精製ペプチドは、約1000ppm未満の残留エチルエーテル濃度を有し得る。
【0043】
精製ペプチドは、約100ppm未満の残留イソプロパノール濃度を有し得る。
【0044】
精製ペプチドは、約0.1%w/v未満の残留酢酸濃度を有し得る。
【0045】
精製ペプチドは凍結乾燥され得る。
【0046】
ペプチドは、温度変化、pH変化、光への曝露、音波の適用、および期間の経過の少なくとも1つに応じて所定の二次構造を有するハイドロゲルに自己組織化するよう構成され得る。
【0047】
ペプチドは-7~+11の正味電荷を有し得る。
【0048】
ペプチドは+2~+11の正味電荷を有し得る。
【0049】
ペプチドは+5~+9の正味電荷を有し得る。
【0050】
ペプチドは、70%w/v~99.9%w/vの間の窒素を有し得る。
【0051】
ペプチドは、約10EU/mg未満の細菌エンドトキシンレベルを有し得る。
【0052】
ペプチドは、約1%w/v~約15%w/vの間の含水量を有し得る。
【0053】
調製物は、0.1%w/v~8.0%w/vの間のペプチドを含み得る。
【0054】
調製物は、0.5%w/v~6.0%w/vの間のペプチドを含み得る。
【0055】
調製物は、0.5%w/v~3.0%w/vの間のペプチドを含み得る。
【0056】
調製物は、0.5%w/v~1.5%w/vの間のペプチドを含み得る。
【0057】
調製物は、0.5%w/v~1.0%w/vの間のペプチドを含み得る。
【0058】
調製物は、0.7%w/v~2.0%w/vの間のペプチドを含み得る。
【0059】
調製物は、0.7%w/v~0.8%w/vの間のペプチドを含み得る。
【0060】
ハイドロゲルは、0.25%w/v~6.0%w/vの間のペプチドを含み得る。
【0061】
ハイドロゲルは、1.5%w/v~6.0%w/vの間のペプチドを含み得る。
【0062】
ハイドロゲルは、0.25%w/v~3.0%w/vの間のペプチドを含み得る。
【0063】
ペプチドは、90%w/v~99.9%w/vの間の水溶液を有するハイドロゲルに自己組織化するよう構成され得る。
【0064】
調製物は、ハイドロゲルを形成するための有効量のイオン性塩および生物学的緩衝剤を含む緩衝液を含み得る。
【0065】
緩衝液は、水、酸、塩基、および鉱物の少なくとも1つをさらに含み得る。
【0066】
緩衝液は実質的に生理的pHを有し得る。
【0067】
緩衝液は酸性であり得る。
【0068】
緩衝液はアルカリであり得る。
【0069】
緩衝液は実質的に中性であり得る。
【0070】
一部の実施形態では、緩衝液の量および組成が、ハイドロゲルのpHを制御して標的部位で実質的に生理的pHを維持するよう選択され得る。
【0071】
緩衝液は、約5mM~約200mMのイオン性塩を含み得る。
【0072】
イオン性塩は、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、鉄イオン、アンモニウムイオン、ピリジウムイオン、第四級アンモニウムイオン、塩化物イオン、クエン酸イオン、酢酸イオン、および硫酸イオンの少なくとも1つに解離し得る。
【0073】
イオン性塩は、塩化ナトリウム、塩化アンモニウム、塩化マグネシウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、硫酸アンモニウム、硫酸マグネシウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸カルシウム、重炭酸ナトリウム、およびこれらの組合せの少なくとも1つを含み得る。
【0074】
緩衝液は、約10mM~約150mMの塩化ナトリウムを含み得る。
【0075】
緩衝液は、ハイドロゲルの剛性を制御するのに有効な量のイオン性塩を含み得る。
【0076】
緩衝液は、約1mM~約150mMの生物学的緩衝剤を含み得る。
【0077】
生物学的緩衝剤は、ビス-トリスプロパン(BTP)、4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸(HEPES)、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(TRIS)、2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸ヘミナトリウム塩、4-モルホリンエタンスルホン酸ヘミナトリウム塩(MES)、3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸(MOPS)、および3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸(MOBS)、トリシン、ビシン、(トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミノ)プロパンスルホン酸(TAPS)、N-(2-アセトアミド)-2-アミノエタンスルホン酸(ACES)、β-ヒドロキシ-4-モルホリンプロパンスルホン酸、3-モルホリノ-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸(MOPSO)、(N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-2-アミノエタンスルホン酸)(BES)およびこれらの組合せから選択され得る。
【0078】
緩衝液は、約10mM~約100mMのBTPを含み得る。
【0079】
ペプチドは、4.0~9.0の間のpHレベルを有するハイドロゲルに自己組織化するよう構成され得る。
【0080】
ペプチドは、7.0~8.0の間のpHレベルを有するハイドロゲルに自己組織化するよう構成され得る。
【0081】
ペプチドは、実質的に透明なハイドロゲルに自己組織化するよう構成され得る。
【0082】
実質的に透明なハイドロゲルは、巨視的および顕微鏡光学イメージングによって決定されるように、目に見える混濁を実質的に含まないことができる。
【0083】
実質的に透明なハイドロゲルは、静的光散乱(SLS)およびUV-VIS試験によって示されるように、目に見えるペプチド凝集体を実質的に含まないことができる。
【0084】
実質的に透明なハイドロゲルは、約205nm~約300nmの間の波長で、約0.1~3.0±1.5の間のUV-VIS光吸光度を有し得る。
【0085】
調製物は生体適合性色素をさらに含み得る。
【0086】
ペプチドは、ナノポーラス構造を有するハイドロゲルに自己組織化するよう構成され得る。
【0087】
ナノポーラス構造は、1nm~1000nmの間の平均細孔径および1nm~100nmの間のフィブリル幅を有し得る。
【0088】
ナノポーラス構造は、標的微生物に対して不透過性となるよう選択され得る。
【0089】
ナノポーラス構造は、ガス交換を可能にするよう選択され得る。
【0090】
ペプチドは、カチオン性ハイドロゲルに自己組織化するよう構成され得る。
【0091】
ペプチドは、せん断減粘ハイドロゲルに自己組織化するよう構成され得る。
【0092】
ペプチドは、負荷機械力に応じて可逆的に解体するよう構成され得る。
【0093】
ペプチドは、温度変化、pH変化、イオンキレート剤との接触、溶媒による希釈、音波の適用、凍結乾燥、および風乾の少なくとも1つに応じて可逆的に解体するよう構成され得る。
【0094】
ペプチドは、実質的に噴霧可能および/または注射可能なハイドロゲルに自己組織化するよう構成され得る。
【0095】
ペプチドは、レオロジー試験によって決定されるように、約2Pa~約3500Paの間の剛性率を有するハイドロゲルに自己組織化するよう構成され得る。
【0096】
ペプチドは、実質的にイオン架橋したハイドロゲルに自己組織化するよう構成され得る。
【0097】
疎水性アミノ酸残基は、ペプチドを所定の二次構造を有するポリマーに自己組織化するよう選択され得る。
【0098】
所定の二次構造は、βシート、αヘリックス、およびランダムコイルの少なくとも1つから予備選択される構造を含み得る。
【0099】
予備選択される構造はβヘアピンを含み得る。
【0100】
疎水性アミノ酸残基は、ペプチドを、大部分のβシート構造を有するポリマーに自己組織化するよう選択され得る。
【0101】
一部の実施形態では、疎水性アミノ酸残基の量および種類が、ハイドロゲルの剛性を制御するよう選択され得る。
【0102】
一部の実施形態では、フォールディング基が、βヘアピン二次構造を採用するよう構成され得る。
【0103】
一部の実施形態では、フォールディング基が、ナノポーラスハイドロゲル三次構造を採用するよう構成され得る。
【0104】
ペプチドは、抗微生物特性、抗ウイルス、および/または抗真菌特性を有するハイドロゲルに自己組織化するよう構成され得る。
【0105】
ペプチドは、実質的に生体適合性のハイドロゲルに自己組織化するよう構成され得る。
【0106】
ペプチドは、細胞に優しいハイドロゲルに自己組織化するよう構成され得る。
【0107】
ペプチドは、実質的に生分解性、非炎症性、および/または非毒性のハイドロゲルに自己組織化するよう構成され得る。
【0108】
ペプチドは官能基を含み得る。
【0109】
官能基は3~30個の間のアミノ酸残基を有し得る。
【0110】
官能基は、生理活性特性を発現するよう操作され得る。
【0111】
官能基は、ペプチドまたは調製物の電荷を制御するか、または変化させるよう操作され得る。
【0112】
官能基は、ペプチドまたは調製物のpHを制御するか、または変化させるよう操作され得る。
【0113】
官能基は標的効能のために操作され得る。
【0114】
標的効能は、細胞培養、細胞送達、創傷治癒、バイオフィルムの処置、およびこれらの組合せから選択され得る。
【0115】
官能基は、RGD、IKVAV、YIGSR、LKKTETQ、SNKPGVL、PKPQQFFGLM、GKLTWQELYQLKYKGI、およびGGGから選択される配列を有し得る。
【0116】
ペプチドは、リンカーおよびスペーサーから選択される修飾を含み得る。
【0117】
調製物は、局所、経腸、または非経口投与用に製剤化され得る。
【0118】
調製物は、スプレー、エアロゾル、点滴器、チューブ、アンプル、フィルム、点滴、注射、またはシリンジによる投与用に製剤化され得る。
【0119】
調製物は全身投与用に製剤化され得る。
【0120】
調製物は、微生物汚染を処置するか、または標的微生物を排除もしくはその増殖を阻害するために製剤化され得る。
【0121】
標的微生物は病原性微生物であり得る。
【0122】
調製物は、微生物バイオバーデンを管理するために製剤化され得る。
【0123】
調製物は、真菌汚染を処置するために製剤化され得る。
【0124】
調製物は、ウイルス汚染を処置するために製剤化され得る。
【0125】
調製物は、細菌汚染を処置するために製剤化され得る。
【0126】
調製物は、細胞培養および/または細胞送達のために製剤化され得る。
【0127】
調製物は、組織培養および/または組織送達のために製剤化され得る。
【0128】
調製物は、感染創傷を処置する、および/またはバイオフィルムを処置もしくは阻害するために製剤化され得る。
【0129】
調製物は、創傷および/またはバイオフィルム管理のために製剤化され得る。
【0130】
調製物は、水分管理および/または創傷もしくは組織の滲出液管理のために製剤化され得る。
【0131】
調製物は、フィルム、バリアドレッシング材、デブリードマン剤、および/または止血剤として製剤化され得る。
【0132】
調製物は、活性剤、例えば、抗菌組成物、抗真菌組成物、抗ウイルス組成物、抗腫瘍組成物、防臭組成物、止血剤、抗炎症性組成物、細胞培養培地、細胞培養血清、および鎮痛剤、局所麻酔薬、または疼痛緩和組成物の少なくとも1つをさらに含み得る。
【0133】
調製物は、有効量の鉱物粘土をさらに含み得る。
【0134】
調製物は、約0.1%w/v~約20%w/vの間の鉱物粘土を含み得る。
【0135】
鉱物粘土は、ラポナイトおよびモンモリロナイトの少なくとも1つを含み得る。
【0136】
調製物は、-20℃~150℃の間で熱的に安定であり得る。
【0137】
調製物は、最終および/またはオートクレーブ滅菌によって滅菌され得る。
【0138】
調製物は、室温で少なくとも約1~5年の貯蔵寿命を有し得る。
【0139】
調製物は、2℃~125℃の間で熱的に安定であり得る。
【0140】
調製物は超音波処理され得る。
【0141】
調製物は、最大約25psiの圧力で安定、例えば物理的に安定、化学的に安定、および/または生物学的に安定であり得る。
【0142】
ペプチドは、2℃~40℃の間の温度で自己組織化することができ得る。
【0143】
ペプチドは、40℃超の温度で実質的に組織化していなくてもよい。
【0144】
ペプチドは、約60分未満で自己組織化するよう構成され得る。
【0145】
ペプチドは、約30分未満で自己組織化するよう構成され得る。
【0146】
ペプチドは、約15分未満で自己組織化するよう構成され得る。
【0147】
ペプチドは、約10分未満で自己組織化するよう構成され得る。
【0148】
ペプチドは、約5分未満で自己組織化するよう構成され得る。
【0149】
ペプチドは、約2分未満で自己組織化するよう構成され得る。
【0150】
ペプチドは、約60秒未満で自己組織化するよう構成され得る。
【0151】
ペプチドは、約30秒未満で自己組織化するよう構成され得る。
【0152】
ペプチドは、約10秒未満で自己組織化するよう構成され得る。
【0153】
ペプチドは、約3秒未満で自己組織化するよう構成され得る。
【0154】
ペプチドは、約1秒未満で自己組織化するよう構成され得る。
【0155】
ペプチドは、約30秒未満で自己組織化を始めるよう構成され得る。
【0156】
ペプチドは、約10秒未満で自己組織化を始めるよう構成され得る。
【0157】
ペプチドは、約3秒未満で自己組織化を始めるよう構成され得る。
【0158】
ペプチドは生体適合性溶液に溶解し得る。
【0159】
生体適合性溶液は水溶液であり得る。生体適合性溶液は、脱イオン水、医薬品グレードの水、または注射グレードの水を含み得る。生体適合性溶液は、脱イオン水、医薬品グレードの水、または注射グレードの水から本質的になり得る。
【0160】
調製物は保存剤を実質的に含まないことができる。
【0161】
別の態様によると、対象を処置する方法であって、有効量の調製物を対象に投与するステップを含む方法が提供される。
【0162】
別の態様によると、ペプチド調製物を製造する方法であって、前記請求項のいずれかに記載のペプチドと生体適合性溶液を合わせるステップを含む方法が提供される。
【0163】
別の態様によると、自己組織化したペプチドハイドロゲルを製造する方法であって、前記請求項のいずれかに記載のペプチド、生体適合性溶液、および緩衝液を合わせるステップを含む方法が提供される。
【0164】
さらに別の態様によると、調製物と、ペプチドのハイドロゲルへの自己組織化を誘導するよう構成された緩衝液と、調製物の対象への投与前にまたは投与と並行して、調製物と緩衝液を合わせるための説明書とを含むキットが提供される。
【0165】
緩衝液は、ハイドロゲルを形成するための有効量のイオン性塩および生物学的緩衝剤を含み得る。
【0166】
キットは送達装置をさらに含み得る。
【0167】
送達装置は、シリンジ、点滴器、フィルム、またはスプレーであり得る。
【0168】
キットは混合装置をさらに含み得る。
【0169】
混合装置はマルチチャンバー装置であり得る。
【0170】
混合装置は2チャンバー装置であり得る。
【0171】
混合装置は静的混合装置であり得る。
【0172】
キットは、混合装置中で緩衝液を調製物と合わせてハイドロゲルを形成するための説明書をさらに含み得る。
【0173】
キットは、抗菌製剤、抗真菌製剤、抗ウイルス製剤、止血製剤、抗腫瘍製剤、抗炎症性製剤、細胞培養培地、細胞培養血清、防臭製剤、および鎮痛剤、局所麻酔薬、または疼痛緩和製剤の少なくとも1つをさらに含み得る。
【0174】
キットは、局所ドレッシング材をさらに含み得る。
【0175】
キットは、室温でキットを貯蔵するための説明書をさらに含み得る。
【0176】
キットは、包装約1~5年後の失効の表示をさらに含み得る。
【0177】
キットは、温度制御装置、pH制御添加剤、イオンキレート剤組成物、溶媒、音制御装置、凍結乾燥装置、および風乾装置の少なくとも1つをさらに含み得る。
【0178】
本開示は、前記態様および/または実施形態のいずれか1つまたは複数の全ての組合せ、ならびに詳細な説明および任意の実施例に示される実施形態のいずれか1つまたは複数との組合せを企図している。
【0179】
付随する図面は縮尺通り描かれることを意図するものではない。図面において、様々な数値で示されている各同一の、またはほぼ同一の成分は、同様の数字によって表される。明確性のために、必ずしも全ての成分が全ての図面に表示されているわけではない。
【図面の簡単な説明】
【0180】
図1A】一実施形態による、コラーゲンと比較した、封入細胞を有する組織化ペプチドハイドロゲルマトリックスの概略図および顕微鏡画像である。
図1B】一実施形態による、混合装置の概略図およびハイドロゲルマトリックス中の細胞の概略図である。
図2】一実施形態による、従来ポリマーと比較した投与ペプチドハイドロゲルの持続的な治療活性の画像である。
図3】一実施形態による、正に帯電したペプチドハイドロゲルの顕微鏡画像である。
図4】一実施形態による、ペプチドハイドロゲルの抗微生物活性を示すグラフである。
図5】一実施形態による、ペプチドハイドロゲルの抗微生物活性を示す、細菌感染を有する熱傷傷害後マウスモデルの画像である。
図6】一実施形態による、ペプチドハイドロゲル上に移植された細胞の顕微鏡画像である。
図7A】一部の実施形態による、温度の関数としての例示的なペプチドの266nmでの静的光散乱(SLS)のグラフである。
図7B】一部の実施形態による、温度の関数としての例示的なペプチドの266nmでの静的光散乱(SLS)のグラフである。
図8】一実施形態による、ペプチド濃度の関数としてのペプチドハイドロゲルの吸光度を示すグラフである。
図9】一実施形態による、pH値の関数としてのペプチド調製物の正味電荷を示すグラフである。
図10】一実施形態による、いくつかのアミノ酸残基についてのpH7.4での正味ペプチド電荷の可視化表現を示す図である。
図11】一実施形態による、ペプチド調製物による処置後のMRSAの微生物増殖のグラフである。
図12】一実施形態による、調製物の貯蔵弾性率および損失弾性率のグラフである。
図13A】一実施形態による、調製物の施用後の緑膿菌(P.aeruginosa)の増殖を示すグラフである。
図13B】一実施形態による、調製物の施用後のMRSAの増殖を示すグラフである。
図14A】一実施形態による、調製物の貯蔵弾性率および損失弾性率のグラフである。
図14B】一実施形態による、調製物の貯蔵弾性率および損失弾性率のグラフである。
図15】一実施形態による、調製物の抗微生物活性のグラフである。
図16A】一実施形態による、調製物のUPLCのグラフである。
図16B】一実施形態による、調製物のUPLCのグラフである。
図17】一実施形態による、調製物の抗微生物活性のグラフである。
図18】一実施形態による、調製物の細胞生存率のグラフである。
図19】一実施形態による、調製物のレオロジーデータのグラフである。
図20A】一実施形態による、ラポナイト調製物のレオロジーデータのグラフである。
図20B】一実施形態による、調製物のレオロジーデータのグラフである。
図21-1】一実施形態による、ラポナイト調製物のレオロジーデータのグラフおよびペプチド調製物のレオロジーデータのグラフである。
図21-2】図21-1の続きである。
図22】一実施形態による、鼻スプレーアプリケーターによって投与される調製物の画像である。
図23】一実施形態による、エアロゾル化による調製物の投与後の細菌コロニーの画像である。
図24】一実施形態による、調製物の抗微生物活性のグラフである。
図25】一実施形態による、エアロゾル化による調製物の投与前および後の細菌コロニーの画像である。
図26】一実施形態による、最終使用容器中に用意された調製物の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0181】
自己組織化ペプチドハイドロゲルを含む調製物が本明細書に開示される。自己組織化したペプチドは両親媒性であり得る。ペプチドは、一般に、実質的に交互のパターンで配置された複数の荷電アミノ酸残基および疎水性残基を有するフォールディング基を有し得る。ペプチドは、投与すると所望の物理的または化学的特性を提供する官能基を含み得る。精製ペプチドは、調製物の生体適合性を改善する対イオンを含み得る。対イオンは、ペプチドの自己組織化、物理的および化学的特性を制御し得る。対イオンは、ペプチドの治療的機能特性を強化し得る。調製物は、生体適合性水溶液中にペプチドを含み得る。調製物は、接触するとペプチドの自己組織化を誘導することができる緩衝液を含み得る。緩衝液は、緩衝剤およびイオン性塩を含有し得る。緩衝液組成は、組織化したハイドロゲルの物理的または化学的特性を制御するよう設計され得る。調製物は、熱的に安定となるよう設計され得る。
【0182】
一般に、調製物は、せん断減粘特性および実質的に生理的なpHレベルを有し得る。自己組織化したハイドロゲルは、抗微生物、抗ウイルス、および/または抗真菌特性を有し得る。調製物は局所または非経口投与され得る。調製物は、組織工学用途で投与され得る。ある特定の例示的な用途としては、細胞送達、細胞培養、真菌感染症の処置および予防、細菌感染症の処置および予防、創傷治癒、バイオフィルム処置、バイオフィルム管理、ならびにバイオフィルムおよび創傷感染症(慢性創傷の感染症を含む)の予防が挙げられる。他の組織工学用途も本開示の範囲内にある。
【0183】
調製物を対象に投与する方法が本明細書に開示される。方法は、一般に、投与のための標的部位を選択するステップと、調製物を標的部位に投与するステップとを含み得る。調製物を投与する方法はまた、調製物を、ペプチドの自己組織化を誘導するよう構成された緩衝液と混合してハイドロゲルを形成するステップと、ハイドロゲルを標的部位に投与するステップとを含み得る。ある特定の例示的な実施形態では、調製物および/またはハイドロゲルが、スプレー、エアロゾル、点滴器、チューブ、アンプル、点滴注入、注射、またはシリンジによって投与され得る。
【0184】
ある特定の実施形態では、細胞を対象に投与する方法が本明細書に開示される。方法は、一般に、細胞を、自己組織化ペプチドを含む溶液に懸濁するステップと、有効量の懸濁液を対象の標的部位に投与するステップとを含み得る。方法は、溶液を、ペプチドの自己組織化を誘導するよう構成された緩衝液と合わせるステップを含み得る。溶液は、投与前に、投与と並行して、または投与後に緩衝液と合わせられ得る。緩衝液は、一般に、有効量のイオン性塩および生物学的緩衝剤を含み得る。
【0185】
水溶液中の他のペプチドとは異なり、本明細書に開示されるペプチドは、自己組織化を受ける。自己組織化は、ペプチドが濃縮された、または局在化された方法で標的組織に投与されることを可能にし得る。例えば、自己組織化ペプチドは、自由浮遊性ペプチドと比較して高い濃度で投与され得る。自己組織化ペプチドは、投与した場合の局在化効果により、ペプチドのオフサイト毒性を低減するという臨床的利益を示し得る。さらに、ペプチドの治療投与量を、標的投与部位の近くで増加させることができる。
【0186】
水溶液中の他のポリマーとは異なり、本明細書に開示されるペプチドは、標的部位においてその場で自己組織化を受け得る。その場での自己組織化は、ペプチドが標的組織に投与され、例えば、投与の数秒以内に物理的またはイオン的に架橋することを可能にし得る。例えば、自己組織化ペプチドは、標的部位に直接投与され得る。従来の自由浮遊性ペプチドまたはポリマーは通常、架橋剤または外因的に添加される共有結合性架橋剤を必要とする。よって、本明細書に開示される自己組織化ペプチドは、製品施用および複雑さを低減するという臨床的利益をもたらし得る。さらに、ペプチドのイオン性架橋は、自己組織化すると、製品除去と標的投与部位への永久的な接着との間の選択の利益をもたらし得る。
【0187】
選択された定義
ハイドロゲルは、軟部組織および骨工学への使用についての有意な見込みを有する材料のクラスである。ハイドロゲルをこれらの用途にとって重要な材料にするハイドロゲルの一般的な特徴は、それらの十分に水和した、多孔質構造である。ハイドロゲルは、様々な細胞型、例えば線維芽細胞および骨芽細胞の接着および増殖と適合性となり、これらを結合組織、例えば軟骨、腱、および靭帯、ならびに骨を生成するための潜在的な組織工学足場にするよう設計され得る。
【0188】
ハイドロゲル材料は細胞適合性であり得る。本明細書で定義される細胞適合性は、ハイドロゲルが、インビトロおよび/またはインビボで、所望の細胞に対して有害であってはならないことを意味する。細胞に対する有害性は、細胞傷害性、細胞接着、増殖、表現型維持、および/または前駆細胞の分化によって測定され得る。
【0189】
ハイドロゲル材料は生体適合性であり得る。本明細書で定義される「生体適合性」は、材料が、インビボに置かれた場合に、有意な免疫学的応答および/または炎症性応答を引き起こさないことを意味する。生体適合性は、国際標準化機構(ISO)10993規格に従って測定され得る。
【0190】
ハイドロゲル材料は生分解性で、非毒性種を与え得る。ハイドロゲル材料はタンパク質分解的に生分解性であり得る。本明細書で定義される「タンパク質分解的」生分解は、細胞由来プロテアーゼの存在に応じた材料の局所分解および/または細胞の増殖による段階的分解を指す。ハイドロゲル材料は加水分解的に生分解性であり得る。本明細書で定義される「加水分解的」生分解は、生物学的条件下での酵素からの援助なしのポリマー分解を指す。
【0191】
ハイドロゲル材料は生体吸収性であり得る。本明細書で定義される生体吸収性は、ハイドロゲル材料が、体内に容易に吸収されて、元の塊の完全な喪失をもたらす天然産物であるレムナントに分解することを意味する。
【0192】
ハイドロゲル材料はせん断減粘であり得る。本明細書に記載される「せん断減粘」は、可変的な見かけの粘度、特に負荷応力の増加による粘度減少を指す。例えば、せん断減粘ハイドロゲルは、非ニュートン流体特性を示し得る。特に、本明細書に開示されるハイドロゲルは、針またはカテーテルを通して投与され得、機械力の除去後に迅速にゲル化を再開し得る。
【0193】
本明細書に開示されるハイドロゲルおよび/または他の材料は、1つまたは複数の生理学的特性を有すると言われ得る。本明細書に開示される場合、生理学的特性または値は、対象と適合性のものを指す。特に、生理学的特性または値は、特定の標的組織と適合性のものを指し得る。ある特定の実施形態では、生理学的特性または値が、標的組織の特性または値と実質的に類似のものを指し得る。生理学的特性は、pH値、温度、正味電荷、含水量、剛性などのうちの1つまたは複数を含み得る。
【0194】
「自己組織化」ペプチドは、典型的には、刺激に曝露された後に、所望の二次構造を呈するペプチドを含む。ペプチドは、高次構造、例えば三次元ネットワーク、および結果として、ハイドロゲルに自己組織化し得る。自己組織化したハイドロゲルは、電荷遮蔽、疎水性、およびジスルフィド相互作用を通した三次および/または四次構造のペプチドを含有し得る。ペプチドは、ヘリカルリボン、ナノファイバー、ナノチューブおよび小胞、表面組織化構造などに自己組織化することが観察されている。自己組織化ペプチドは、ある特定の環境条件、例えばpH、温度、正味電荷、光への曝露、音波の適用、または環境因子の存在もしくは非存在に応じて組織化し得る。環境条件は、対象への投与で、または緩衝液と組み合わせることによって生じ得る。他の実施形態では、ペプチドが、中性pHレベル下で、溶液中で自発的に組織化し得る。ペプチドは、生理的条件下ならびに/あるいはカチオンおよび/またはアニオンの存在下で、溶液中で自発的に組織化し得る。
【0195】
自己組織化ペプチドは、アルファヘリックス、パイヘリックス、ベータシート、ランダムコイル、ターン、ベータプリーツ平行、逆平行、ねじれ、バルジ、または鎖接続二次構造およびこれらの組合せに組織化し得る。例えば、βストランドに自己組織化する20アミノ酸ペプチドは、テトラペプチド配列に隣接する交互のバリン残基およびリジン残基を含み得る(-VDPPT-)。低イオン強度および緩衝化水溶液に溶解すると、例示的なペプチドは、正に帯電したリジン残基の静電反発力により、ランダムコイルコンフォーマーの集合にある。溶液のイオン強度および/またはpHを増加させると、リジンに基づく正電荷が、電荷の遮蔽または十分な量の側鎖アミンの脱プロトン化により緩和される。この例示的な作用により、両親媒性βヘアピンへのペプチドフォールディングが可能になる。折り畳まれた状態では、例示的なペプチドが、ヘアピンの側面および正面会合を介して自己組織化して、βシートに富むフィブリルを含有する非共有結合的架橋ハイドロゲルを形成する。よって、自己組織化ペプチドは、ペプチド配列の合理的設計を通して、様々な条件下でハイドロゲル化を受けるよう設計され得る。
【0196】
本明細書に開示される自己組織化ペプチドは、ナノポーラス三次構造に組織化し得る。本明細書に開示される場合、ナノポーラス構造は、1~1000nmの平均径を有する細孔を含有する三次元マトリックスである。細孔または空隙は、三次元マトリックスの10体積%~90体積%の間を構成し得る。例えば、細孔または空隙は、三次元マトリックスの10体積%、20体積%、30体積%、40体積%、50体積%、60体積%、70体積%、80体積%、または90体積%を構成し得る。細孔は、透過性であり、液体および/または気体の拡散を可能にし得る。ナノポーラス構造は、物理的架橋によって構築され、イオン結合が断定される応力で破壊および再形成されるのを可能にする。これらのナノポーラス構造は、細胞がマトリックスを通して接着および/または移動するのを可能にし得る。ナノポーラス構造はまた、組織の内因性細胞外マトリックス環境を模倣し、場合により、特定の組織を模倣するよう選択され得る。
【0197】
ペプチドの「解体」は、ペプチドが、刺激に曝露された後に、低次構造を呈する能力を指し得る。解体はまた、物理的に架橋したペプチドが、刺激に曝露された後に、疎水性結合およびジスルフィド結合を一時的に破壊して低次構造を呈する能力を指し得る。例えば、三次構造タンパク質は、二次構造タンパク質に解体し、一次構造ペプチドにさらに解体し得る。ある特定の実施形態によると、ペプチドの自己組織化および解体は可逆的であり得る。
【0198】
本明細書に開示される調製物および製剤は、一般に、ペプチド調製物と呼ばれ得る。ペプチド調製物は、本明細書に開示される自己組織化ペプチドおよび/または自己組織化したハイドロゲルを含み得る。ペプチド調製物は、細胞適合性および/または生体適合性溶液を含み得る。調製物は緩衝液を含み得る。溶液に言及しているが、調製物が液体、ゲル、または固体粒子の形態であってもよいことが理解されるべきである。ある特定の実施形態では、例えば、調製物が組織化したハイドロゲルの形態であり得る。他の実施形態では、調製物が、凍結乾燥粉末の形態であり得る。
【0199】
ペプチド調製物は、組織工学用の1つまたは複数の生理活性成分、例えば、官能化ペプチド、細胞、培地、血清、コラーゲンおよび他の構造付与成分、抗体および抗原、生理活性低分子、ならびに他の生理活性薬物をさらに含み得る。本明細書に記載される「生理活性」は、化合物が生物学的効果を付与する能力を指す。
【0200】
本明細書に開示される細胞含有調製物および製剤は細胞懸濁液と呼ばれ得る。細胞懸濁液は、溶液に懸濁した複数の細胞、例えば生細胞を含む。溶液は、水、培地、もしくは緩衝液であってもよいし、またはこれを含んでもよい。懸濁液は一般に、本明細書に開示される自己組織化ペプチドおよび/または自己組織化したハイドロゲルをさらに含み得る。細胞に言及しているが、懸濁液が、細胞に加えてまたは細胞の代わりに、細胞片および/または組織、例えば組織移植片を含有してもよいことが理解されるべきである。例えば、懸濁液は、生もしくは死細胞または細胞片、スフェロイド、および/または細胞凝集体を含有し得る。
【0201】
細胞は、生きている組織から単離され、その後、細胞培養で維持および/または増殖され得る。細胞培養条件は変化し得るが、一般に、必須栄養素、例えばアミノ酸、炭水化物、ビタミン、ミネラル、成長因子、ホルモン、ならびに気体、例えばCOおよびOを供給する基質または培地を含む適切な容器中で細胞を維持し、生理化学的環境、例えばpH、浸透圧、温度を調節することを含み得る。細胞は、生細胞株、例えば単一細胞の子孫であり、同じ遺伝子構造を含有するHeLa細胞の集団で維持され得る。
【0202】
本明細書で使用される「単離された」という用語は、その元々のまたは天然の環境(例えば、それが天然に存在する場合、天然の環境)から取り出された材料を指す。例えば、生きている動物に存在する天然に存在するポリヌクレオチドまたはポリペプチドは単離されていないが、天然系中の共存する材料の一部または全部からヒト介入によって分離された同じポリヌクレオチドまたはポリペプチドは単離されている。このようなポリヌクレオチドはベクターの一部であり得る、および/またはこのようなポリヌクレオチドもしくはポリペプチドは組成物の一部であり得るが、このようなベクターまたは組成物が、天然に見られる環境の一部ではないという点でなお単離されている。
【0203】
本明細書で使用される場合、傷害、状態、または疾患の「処置」は、類似であるが未処置の対象と比較した、その傷害、状態、または疾患の少なくとも1つの症状の重症度または頻度の低減を指す。処置はまた、類似であるが未処置の対象と比較した、傷害、状態、または疾患の進行の停止、減速、または逆転を指し得る。処置は、傷害、状態、もしくは疾患および/または1つもしくは複数の症状の根本原因に対処することを含み得る。傷害、状態、または疾患の「管理」は、対象または医療供給者によって決定される、傷害、状態、または疾患の少なくとも1つの症状の重症度または頻度の許容レベルまでの低減を指し得る。
【0204】
本明細書で使用される場合、有効量は、所望の結果を達成するのに十分な用量を指す。例えば、有効量は、ハイドロゲルの自己組織化を達成する、および/または所望の特性を提供するのに十分な濃度を指し得る。有効量は、傷害、状態、もしくは疾患の進行を予防するか、またはその退縮を引き起こすのに十分な、あるいは傷害、状態、または疾患の症状を緩和することができる、あるいは所望の結果を達成することができる用量を指し得る。有効量は、例えば、調製物、溶液、または緩衝液中のペプチドまたは他の成分の濃度として測定され得る。有効量は、例えば、生理活性剤の濃度または生理活性剤の効果もしくは副産物として測定され得る。有効量は、例えば、細胞数もしくは生細胞数、または細胞質量(例えば、ミリグラム、グラム、またはキログラム)、または細胞容積(例えば、mm)として測定され得る。
【0205】
本開示を通して、製剤は、組成物または調製物または製品を指し得る。
【0206】
本明細書で使用される「組み合わせて」投与されるは、傷害による対象の苦痛の過程中に2つ(以上)の異なる処置が対象に送達される、例えば、対象が状態または傷害を有すると診断された後かつ状態または傷害が治癒または排除される前に、調製物が第2の薬剤と共に送達されることを意味する。ある特定の実施形態では、組み合わせての投与が、調製物が1つまたは複数の第2の薬剤をさらに含むことを意味する。一部の実施形態では、1つの処置の送達が、第2の送達が始まる際に依然として行われており、重複が存在する。これは、本明細書において、時々「同時」または「付随」または「並行送達」と呼ばれる。他の実施形態では、1つの処置の送達が、他の処置の送達が始まる前に終了する。これは、本明細書において、時々「連続」または「順次送達」と呼ばれる。
【0207】
いずれかの場合の実施形態では、処置が、併用投与のためにより有効である。例えば、第2の薬剤がより有効である、例えばより少ない第2の薬剤で同等の効果が見られるか、または第2の薬剤が本明細書に開示される調製物の非存在下で投与される場合に見られるよりも大きく症状を低減するか、または調製物で類似の状況が見られる。一部の実施形態では、送達が、症状の減少、または障害に関連する他のパラメータが、ある処置が他の処置の非存在下で送達される場合に観察されるよりも大きくなるようなものである。2つの処置の効果は、部分的に相加的、完全に相加的、または相加的より大きくなり得る(すなわち、相乗的)。送達は、第2の薬剤が送達される際に、調製物の投与の効果が依然として検出可能であるようなものであり得る。一部の実施形態では、1つまたは複数の処置が、傷害を有する患者の診断前に送達され得る。
【0208】
本明細書で使用される場合、対象は、動物、哺乳動物、ヒト、非ヒト動物、家畜動物、または伴侶動物を含み得る。「対象」という用語は、ヒトおよび非ヒト動物、例えば、脊椎動物、大型動物、および霊長類を含むことを意図している。ある特定の実施形態では、対象が哺乳動物対象であり、特定の実施形態では、対象がヒト対象である。ヒトでの用途が明らかに予見されるが、例えば非ヒト動物での獣医学的用途も本明細書で想起される。本開示の「非ヒト動物」という用語は、全ての脊椎動物、例えば、非哺乳動物(例えば、鳥類、例えば、ニワトリ;両生類;爬虫類)ならびに哺乳動物、例えば非ヒト霊長類、飼育動物、および農業上有効な動物、例えば、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、ラットなどを含む。「非ヒト動物」という用語は、研究動物、例えば、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ブタなどを含む。
【0209】
ペプチド配列および二次構造の特性
本明細書に開示されるペプチドは、所望の二次構造に折り畳むよう構成された配列を有し得る。二次構造は、タンパク質の局所セグメントの三次元形態を指し得る。二次構造は、例えば、プリーツシート、ヘリカルリボン、ナノチューブおよび小胞、表面組織化構造などを含み得る。本明細書に開示されるペプチドは、所望の三次構造に自己組織化するよう構成された配列を有し得る。三次構造は、二次構造タンパク質形態の三次元組織化を指し得る。三次構造は、例えば、三次元マトリックス、多孔性マトリックス、ナノポーラスマトリックスを含み得る。
【0210】
開示される自己組織化ペプチドは、1つまたは複数のシグナルに応じて、二次構造、例えば、βヘアピン、および/または三次構造を採用するよう設計され得る。典型的には、二次構造を採用した後、ペプチドは、高次構造、例えばハイドロゲルに自己組織化する。ある特定の実施形態では、ペプチド分子上の側鎖が二次構造コンフォメーションで特有に提示されない限り、自己組織化が起こらない。自己組織化ペプチドは、ある特定の環境条件、例えばpH、温度、正味電荷、光への曝露、音波の適用、または環境因子の存在もしくは非存在に応じて組織化し得る。自己組織化を誘導する環境条件は、対象への投与で、例えば標的組織との接触で生じ得る。一部の実施形態では、自己組織化を誘導する環境条件が、ペプチド調製物を、自己組織化を誘導するよう構成された緩衝液と組み合わせると生じ得る。緩衝液は、自己組織化を誘導するよう構成されたpHまたは組成を有し得る。例えば、緩衝液は、自己組織化を誘導するよう構成されたイオン濃度を有し得る。
【0211】
本明細書に開示されるペプチドの自己組織化は、ペプチドの意図した機能との生物物理学的構造関係を示すコンパクトな構造をもたらし得る。例えば、コンパクトな三次構造は、非組織化ペプチドと比較して多数の単位面積当たりの活性アミノ酸残基を有し得る。抗微生物ペプチドの特定の例では、三次構造が、より高濃度の、面積当たりの帯電した、例えば正に帯電したアミノ酸残基を可能にして、抗微生物特性(例えば、細菌膜不安定化および破壊)を増加させ得る。
【0212】
ある特定の実施形態では、自己組織化ペプチドハイドロゲルが、全ての目的のために全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第8221773号;同第7884185号;同第8426559号;同第7858585号;および同第8834926号のいずれかに開示されるもの、および/またはこれらに開示される方法によって調製されたものを含み得る。例えば、自己組織化ペプチドハイドロゲルは、米国特許第8221773号、同第7884185号、および同第7858585号の配列番号1~20;ならびに米国特許第8834926号の配列番号1~33のいずれかであり得るか、またはこれらを含み得る。他の自己組織化ペプチドは公知であり、本明細書に開示される方法をもたらすために使用され得る。
【0213】
自己組織化ペプチドの所望の特性は、ペプチド設計によって制御され得る。自己組織化ペプチドは、例えば約6~約200個の残基または約6~約50個の残基または約10~約50個の残基の低分子ペプチドであり得る。アミノ酸残基のいずれもDアイソフォームであり得る。アミノ酸残基のいずれもLアイソフォームであり得る。
【0214】
本明細書に開示される自己組織化ペプチドは、三次構造に組織化した場合に実質的に両親媒性となるよう設計され得る。本明細書に開示される「両親媒性」分子、例えば高分子またはポリマーは、典型的には疎水性成分および親水性成分を含有する。ペプチド両親媒性物質は、両親媒性分子の1つの例示的なクラスである。ペプチド両親媒性物質は、典型的には、ある特定の条件下で高アスペクト比ナノ構造に自己組織化する傾向を有するペプチド系分子である。例示的な条件は、選択されたpH、温度、およびイオン強度値を含み得る。ペプチド両親媒性物質の1つの特定の型は、例えば、本明細書に開示される繰り返しパターンの、交互の荷電残基、中性残基、および疎水性残基を含む。分子間水素結合ならびに疎水性および静電相互作用の組合せは、開示されるペプチド両親媒性物質の会合によってはっきり定義された自己組織化したナノ構造を形成するよう設計され得る。
【0215】
自己組織化ペプチドは、追加のアミノ酸、例えば、エピトープを含み得る。例えば、自己組織化ペプチドは、場合によりペプチド設計によって選択される、追加の官能基を含み得る。本明細書に開示される例示的な官能基は、例えば、細胞シグナル伝達、細胞外マトリックス(ECM)の細胞接着、細胞増殖、および細胞運動性などの生物学的プロセスに対する効果を有する、生物由来のモチーフを含む。ペプチドは、1つまたは複数の修飾、例えば、リンカーまたはスペーサーを含み得る。一部の実施形態では、N末端およびC末端の少なくとも1つが修飾され得る。例えば、N末端およびC末端の少なくとも1つがアミド化され得る。N末端およびC末端の少なくとも1つがアセチル化され得る。ある特定の例示的な実施形態では、C末端がアミド化され得る、および/またはN末端がアセチル化され得る。一部の実施形態では、N末端およびC末端の少なくとも1つが遊離であり得る。
【0216】
一般に、自己組織化ペプチドは、二次構造および/または高次構造を採用するよう構成されたフォールディング基を有し得る。例示的な自己組織化ペプチドは、βヘアピン二次構造を採用するよう設計されたフォールディング基を有し得る。例示的な自己組織化ペプチドは、三次元ナノポーラスマトリックス三次構造を採用するよう設計されたフォールディング基を有し得る。本明細書に開示される自己組織化ペプチドは、標的部位、例えば局所または非経口部位での1つまたは複数の環境刺激に応じて、βヘアピン二次構造および/またはナノポーラスマトリックス三次構造を採用するよう設計され得る。自己組織化ペプチドはまた、球状ミセル、小胞、二重層(ラメラ構造)、ナノファイバー、ナノチューブ、およびリボンなどの一定範囲の他の自己組織化した構造に自己組織化するよう設計され得る。
【0217】
自己組織化フォールディング基は、約2個~約200個の間の残基、例えば、約2個~約50個の間の残基、約10個~約30個の間の残基、約15個~約25個の間の残基、例えば、約20個の残基を有し得る。
【0218】
一部の実施形態によると、自己組織化フォールディング基は疎水性アミノ酸を含み得る。「疎水性」アミノ酸残基は、水をはじく傾向があるアミノ酸残基である。このような疎水性アミノ酸としては、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トレオニン、およびトリプトファンが挙げられ得る。ある特定の実施形態では、疎水性アミノ酸残基がバリンを含み得る。
【0219】
フォールディング基は、本明細書に記載されか、または自己組織化のために保存された他の機能性残基の付加によって官能化され得る。例示的な機能性残基としては、塩基性、中性、脂肪族、芳香族、および極性アミノ酸残基が挙げられる。
【0220】
フォールディング基は、複数の塩基性、中性、脂肪族、芳香族、極性、荷電アミノ酸残基を有し得る。フォールディング基は、非疎水性アミノ酸残基と実質的に交互のパターンで配置された複数の疎水性アミノ酸残基を有し得る。ある特定の実施形態では、フォールディング基が、複数の荷電アミノ酸残基と実質的に交互のパターンで配置された複数の疎水性アミノ酸残基を有し得る。
【0221】
フォールディング基はターンシーケンス(turn sequence)を含み得る。ターンシーケンスは、フォールディング基内の1つまたは複数の内部アミノ酸残基を含み得る。ある特定の実施形態では、ターンシーケンスが、フォールディング基内に実質的に中心に位置し得る。
【0222】
ターンシーケンスは、約2個~約20個の間の残基、例えば、約2個~約10個の間の残基、約2個~約8個の間の残基、約2個~約5個の間の残基、例えば、約2個の残基、約3個の残基、約4個の残基、または約5個の残基を有し得る。
【0223】
例示的な実施形態では、ターンシーケンスが、プロリン、アスパラギン酸、トレオニン、およびアスパラギンのうちの1つまたは複数を含み得る。ターンシーケンスはD-プロリンおよび/またはL-プロリンを含み得る。一部の実施形態では、ターンシーケンスが、1~4個のプロリン残基、例えば、1個のプロリン残基、2個のプロリン残基、3個のプロリン残基、または4個のプロリン残基を有し得る。
【0224】
例示的な自己組織化ペプチドは、[AY][T][YA](式中、Aは、塩基性、中性、脂肪族、芳香族、極性、および荷電アミノ酸のうちの1つまたは複数から選択される1~3個のアミノ酸であり、Yは1~3個の疎水性アミノ酸であり、Tは2~8個のターンシーケンスアミノ酸であり、NおよびMは、それぞれ独立して、2~10の間である)を含むフォールディング基配列を有し得る。Yアミノ酸は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トレオニン、およびトリプトファンから独立して選択され得る。一部の実施形態では、フォールディング基配列がY[AY][T][YA]Y-NHであり得る。
【0225】
ある特定の例示的な自己組織化ペプチドは、[XY][T][YX](式中、Xは1~3個の荷電アミノ酸であり、Yは1~3個の疎水性アミノ酸であり、Tは2~8個のターンシーケンスアミノ酸であり、NおよびMは、それぞれ独立して、2~10の間である)を含むフォールディング基配列を有し得る。Xアミノ酸は、アルギニン、リジン、トリプトファン、およびヒスチジンから独立して選択され得る。Yアミノ酸は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トレオニン、およびトリプトファンから独立して選択され得る。一部の実施形態では、フォールディング基配列がY[XY][T][YX]Y-NHであり得る。
【0226】
ある特定の例示的な自己組織化ペプチドは、[ZY][T][YZ](式中、Zは1~3個の極性または荷電アミノ酸であり、Yは1~3個の疎水性アミノ酸であり、Tは2~8個のターンシーケンスアミノ酸であり、NおよびMは、それぞれ独立して、2~10の間である)を含むフォールディング基配列を有し得る。Zアミノ酸は、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、アルギニン、リジン、アスパラギン酸、およびグルタミン酸から独立して選択され得る。Yアミノ酸は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トレオニン、およびトリプトファンから独立して選択され得る。一部の実施形態では、フォールディング基配列がY[ZY][T][YZ]Y-NHであり得る。
【0227】
1つの例示的な自己組織化ペプチドは、-RYRYRYTYRYRYR-(式中、Rはアルギニン残基であり、Yは1~3個の疎水性アミノ酸であり、Tは2~6個のターンシーケンスアミノ酸である)を含むフォールディング基を有し得る。
【0228】
1つの例示的な自己組織化ペプチドは、-VXVXVXVXVTXVXVXVXV-(式中、Vはバリン残基であり、Xは、荷電および中性アミノ酸残基セリン、グルタミン酸、リジン、トリプトファン、およびヒスチジンから独立して選択され得、Tは2~8個のターンシーケンスアミノ酸である)を含むフォールディング基を有し得る。一部の実施形態では、例示的なフォールディング基が、独立して選択される親水性および/または中性アミノ酸残基と交互の一連の疎水性バリンアミノ残残基を含み得る。
【0229】
1つの例示的な自己組織化ペプチドは、-KYKYKYTYKYKYK-(式中、Rはアルギニン残基であり、Yは1~3個の疎水性アミノ酸であり、Tは2~6個のターンシーケンスアミノ酸である)を含むフォールディング基を有し得る。
【0230】
1つの例示的な自己組織化ペプチドは、-VZVZVZVTVZVZVZV-(式中、Vはバリン残基であり、Zは1~3個の親水性アミノ酸であり、Tは2~6個のターンシーケンスアミノ酸である)を含むフォールディング基を有し得る。
【0231】
例示的な自己組織化ペプチドは、2~8個のターンシーケンスアミノ酸、例えば2~5個のターンシーケンスアミノ酸を含むターンシーケンスを有し得る。ターンシーケンスアミノ酸は、プロリン、例えばD-プロリンおよび/またはL-プロリン、アスパラギン酸、ならびにアスパラギンから選択され得る。一部の実施形態では、ターンシーケンスが(d)PP、(d)PG、またはNGであり得る。
【0232】
ターンシーケンスを有する例示的な自己組織化ペプチドとしては、VKVRVRVRV(d)PPTRVRVRVKV-NHおよびVLTKVKTKV(d)PPTKVEVKVLV-NHが挙げられる。例示的なペプチドでは、テトラペプチドターンシーケンス(-V(d)PPT-)が、II’型ターンを採用し、ペプチド配列の中央に位置するように選択された。この四残基ターンシーケンスは、ターンのi、i+1、i+2およびi+3位を占める。ヘテロキラル配列((d)P(i+1)-P(i+2))ジペプチドが、II’型ターンと一致した二面角を採用する傾向のために選択された。ターンシーケンスのi位での嵩高いβ分岐残基(バリン)の組み込みは、i+1位でのトランスプロリルアミド結合の形成を強制する。この位置のバリンの配置は、意図したヘアピンではなく拡張されたコンフォメーションを採用するβストランドをもたらす、シスプロリル結合の形成をたくらんで選択される。トレオニンは、i+3位の残基に対する統計学的傾向を示す。したがって、トレオニンは、i位のアミド骨格カルボニルと水素結合して、ターンをさらに安定化することができる側鎖ヒドロキシル基を有するテトラペプチド配列にこの位置で組み込まれるよう選択された。
【0233】
例示的なフォールディングペプチドは、II’型ターンシーケンスに隣接するβシート形成残基の高い傾向を含むよう設計され得る。鎖に沿った交互の疎水性残基と親水性残基の選択は、ペプチドが折り畳まれた場合に、両親媒性βシートを提供する。例えば、リジンは、約10.5の側鎖pKa値を提供するために親水性残基として選択され得る。側鎖アミンは、一般に、わずかな酸性条件下で溶解すると、プロトン化されて、ヘアピンのβストランド間の好ましくない静電相互作用を形成し、ペプチドフォールディングおよび自己組織化を阻害する。しかしながら、pHを約pH9に上昇させると、リジン側鎖の十分な部分が脱プロトン化し、ペプチドが両親媒性βヘアピンに折り畳まれることを可能にする。静電相互作用を使用して、開示されるペプチドのpH応答性を設計することができる。
【0234】
理論によって拘束されることを望むものではないが、両親媒性βヘアピンは、同じヘアピン内の隣接したアミノ酸側鎖間のファンデルワールス接触によって分子内折り畳み状態で安定化されると考えられている。ヘアピンのクロスβストランド間の分子内水素結合の形成およびターンシーケンスがII’型ターンを採用する傾向は、折り畳まれたコンフォメーションをさらに安定化し得る。いったん折り畳まれた状態になると、βヘアピンの側方および正面会合は、自己組織化を設計するよう選択され得る。例えば、βヘアピンの側方会合は、隣接アミノ酸間の分子間水素結合およびファンデルワールス接触の形成を促進する。
【0235】
例示的な自己組織化ペプチドは、(X)a(Y)b(Z)c-[(d)PP、(d)PG、またはNG]-(Z)c(Y)b(X)a(式中、ターンシーケンスは(d)PP、(d)PG、またはNGであり、(d)PはD-プロリンであり、Xは荷電アミノ酸であり、Yは疎水性アミノ酸であり、Zは疎水性アミノ酸または極性アミノ酸であり、a、b、およびcは、それぞれ独立して、1~10の整数である)を含むフォールディング基配列を有し得る。ある特定の実施形態では、Xが、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、トリプトファン、チロシン、トレオニン、およびこれらの組合せから独立して選択される。ある特定の実施形態では、Yが、グルタミン酸、セリン、アラニン、プロリン、アスパラギン酸、およびこれらの組合せから独立して選択される。一部の実施形態では、Zが、グルタミン、グルタミン酸、リジン、アルギニン、およびこれらの組合せから独立して選択される。
【0236】
例示的な自己組織化ペプチドは、(Z)c(Y)b(X)a-[(d)PP、(d)PG、またはNG]-(X)a(Y)b(Z)c(式中、ターンシーケンスは(d)PP、(d)PG、またはNGであり、(d)PはD-プロリンであり、Xは荷電アミノ酸であり、Yは疎水性アミノ酸であり、Zは疎水性アミノ酸または極性アミノ酸であり、a、b、およびcは、それぞれ独立して、1~10の整数である)を含むフォールディング基配列を有し得る。ある特定の実施形態では、Xが、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、トリプトファン、チロシン、トレオニン、およびこれらの組合せから独立して選択される。ある特定の実施形態では、Yが、グルタミン酸、セリン、アラニン、プロリン、アスパラギン酸、およびこれらの組合せから独立して選択される。一部の実施形態では、Zが、グルタミン、グルタミン酸、リジン、アルギニン、およびこれらの組合せから独立して選択される。
【0237】
本明細書に開示される荷電、疎水性、極性、または両親媒性アミノ酸のいずれも、生体適合性溶液の組成物からそれらの特性の1つまたは複数を得ることができる。
【0238】
疎水性アミノ酸は、水をはじく傾向があるアミノ酸である。疎水性アミノ酸としては、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、チロシン、トリプトファン、フェニルアラニン、メチオニン、およびシステインが挙げられる。疎水性アミノ酸は、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、システイン、およびこれらの組合せから独立して選択され得る。一部の実施形態では、疎水性アミノ酸がバリンを含む。
【0239】
荷電アミノ酸は、所与の条件下で電荷を有する傾向があるアミノ酸である。荷電アミノ酸は、塩架橋を形成する側鎖を有し得る。荷電アミノ酸としては、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、システイン、アルギニン、リジン、ヒスチジン、アスパラギン酸、およびグルタミン酸が挙げられる。フォールディング基は、2~10個の荷電アミノ酸、例えば2~8個の荷電アミノ酸を含み得る。
【0240】
荷電アミノ酸は正に帯電したアミノ酸であり得る。フォールディング基は、2~10個の荷電アミノ酸、例えば2~8個の荷電アミノ酸を含み得る。正に帯電したアミノ酸は、アルギニン、リジン、ヒスチジン、およびこれらの組合せから独立して選択され得る。フォールディング基は、2~8個のアルギニン残基、リジン残基、またはアルギニン残基とリジン残基の組合せを含み得る。一部の実施形態では、フォールディング基が、アルギニン、リジン、またはアルギニンとリジンの組合せから選択される6個の正に帯電した残基を含み得る。
【0241】
荷電アミノ酸は負に帯電したアミノ酸であり得る。フォールディング基は、2~10個の負に帯電したアミノ酸、例えば、2~8個の負に帯電したアミノ酸を含み得る。一部の実施形態では、負に帯電したアミノ酸が、アスパラギン酸、グルタミン酸、およびこれらの組合せから独立して選択され得る。
【0242】
極性アミノ酸は、不均一な電荷分布を有するアミノ酸である。極性アミノ酸は、プロトン供与体または受容体として水素結合を形成する傾向があり得る。極性アミノ酸としては、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、セリン、トレオニン、チロシン、およびシステインが挙げられる。
【0243】
両親媒性アミノ酸は、極性成分と非極性成分の両方を有するアミノ酸である。両親媒性アミノ酸は、タンパク質または脂質膜の表面に見られ得る。両親媒性アミノ酸としては、トリプトファン、チロシン、およびメチオニンが挙げられる。
【0244】
例示的な自己組織化ペプチドは、配列番号1~23のいずれかのフォールディング基配列を有し得る。自己組織化ペプチドは、配列番号1のフォールディング基配列を有し得る。ある特定の実施形態では、自己組織化ペプチドが、配列番号2のフォールディング基配列を有し得る。自己組織化ペプチドは、配列番号3のフォールディング基配列を有し得る。自己組織化ペプチドは、配列番号4のフォールディング基配列を有し得る。自己組織化ペプチドは、配列番号5のフォールディング基配列を有し得る。自己組織化ペプチドは、配列番号6のフォールディング基配列を有し得る。自己組織化ペプチドは、配列番号7のフォールディング基配列を有し得る。自己組織化ペプチドは、配列番号8のフォールディング基配列を有し得る。自己組織化ペプチドは、配列番号9のフォールディング基配列を有し得る。自己組織化ペプチドは、配列番号10のフォールディング基配列を有し得る。自己組織化ペプチドは、配列番号11のフォールディング基配列を有し得る。自己組織化ペプチドは、配列番号12のフォールディング基配列を有し得る。自己組織化ペプチドは、配列番号13のフォールディング基配列を有し得る。自己組織化ペプチドは、配列番号14のフォールディング基配列を有し得る。自己組織化ペプチドは、配列番号15のフォールディング基配列を有し得る。自己組織化ペプチドは、配列番号16のフォールディング基配列を有し得る。自己組織化ペプチドは、配列番号17のフォールディング基配列を有し得る。自己組織化ペプチドは、配列番号18のフォールディング基配列を有し得る。自己組織化ペプチドは、配列番号19のフォールディング基配列を有し得る。自己組織化ペプチドは、配列番号20のフォールディング基配列を有し得る。自己組織化ペプチドは、配列番号21のフォールディング基配列を有し得る。自己組織化ペプチドは、配列番号22のフォールディング基配列を有し得る。自己組織化ペプチドは、配列番号23のフォールディング基配列を有し得る。
【0245】
せん断減粘特性を有する例示的な自己組織化ペプチドとしては、VKVRVRVRV(d)PPTRVRVRVKV-NH、およびVKVRVRVRV(d)PPTRVEVRVKV-NH(親水面上の15位にグルタミン酸の単一置換を有する)が挙げられる。グルタミン酸置換により、生体適合性溶液中のイオン性塩の存在下で、自己組織化ペプチドゲルのゲル化の速度が速くなる。負に帯電したグルタミン酸が、ペプチドの全体的な正電荷を低下させ、より速いフォールディングおよび自己組織化を可能にする。
【0246】
正味のペプチド電荷について調整することができる、せん断減粘特性を有する例示的な自己組織化ペプチドとしては、VKVRVRVRV(d)PPTRVEVRVKV-NH、およびVKVKVKVKV(d)PPTKVEVKVKV-NH(親水面上のアルギニンがリジンに置換されている)が挙げられる。リジン置換により、生理的pHでのペプチド正味電荷が低下し、高いアルギニン含有量(高い正味電荷)を有するペプチドと比較して優れた哺乳動物細胞の細胞適合性が可能になる。例示的なペプチドは抗微生物自己組織化ペプチドである。
【0247】
ゲル化の速度が速く、剛性が増加したペプチドゲルのために調整することができるせん断減粘特性を有する例示的な自己組織化ペプチドとしては、FKFRFRFRV-(d)PPTRFRFRFKF-NH(疎水面上のバリンがフェニルアラニンに置換されている)が挙げられる。フェニルアラニン置換により、ペプチドの疎水面が増加し、ペプチドゲルのより硬く速いゲル化が可能になる。例示的なペプチドは抗微生物自己組織化ペプチドである。
【0248】
せん断減粘特性を有する例示的な自己組織化ペプチドとしては、VKVRVRVRV(d)PPTRVRVRVKV-NH、(d)V(d)K(d)V(d)R(d)V(d)R(d)V(d)R(d)V(L)P(d)P(d)T(d)R(d)V(d)R(d)V(d)R(d)V(d)K(d)V-NH(配列のDアイソフォームおよびPのLアイソフォームを有する)のエナンチオマー形態などの、上に列挙される例示的な配列のエナンチオマー形態が挙げられる。アイソフォーム置換は、生理的pHでペプチド正味電荷を損なうことなく、ペプチド分解の制御および安定性増加を提供し得る。配列は、哺乳動物細胞とのより優れた適合性を提供し得る。ペプチドは、アミノ酸のいずれか1つまたは複数が上に列挙される配列のエナンチオマーとなり得るように完全エナンチオマー(上に示される)または部分エナンチオマーであり得る。例示的なペプチドは抗微生物自己組織化ペプチドである。
【0249】
他の例示的な自己組織化ペプチドとしては、Ac-VEVSVSVEV(d)PPTEVSVEV EVGGGGRGDV-NHおよびVEVSVSVEVdPPTEVSVEVEV-NHが挙げられる。
【0250】
自己組織化ペプチドは、少なくとも1つのグアニジン部分を含み得る。グアニジン部分は、ペプチド鎖の一部を構成する有機分子と会合し得る。例示的な実施形態では、グアニジン基が、アルギニン残基の側鎖の一部として組み込まれ得る。しかしながら、ペプチドは、アルギニン残基と会合していないグアニジン部分を含み得る。
【0251】
グアニジン部分は、一般に、カチオン性ペプチド上に配置されると、疎水性基および親水性基との対形成を可能にして、塩架橋および水素結合を形成し得る高度極性基である。このようなペプチドは、細胞膜を貫通し、抗微生物活性を提供する高い能力を示し得る。グアニジン部分はまた、ペプチドフォールディング、ペプチドおよび/またはハイドロゲルの物理特性および熱安定性を改善することによってペプチド安定性を促進し得る。
【0252】
ペプチドは、一般に、グアニジン基の数/ペプチドのアミノ酸残基の総数によって測定される、20~50%のグアニジウム含有量を有し得る。例えば、そのうちの6個がグアニジン基を有するアルギニン残基である、20個のアミノ酸を有する例示的なペプチド配列は、30%のグアニジウム含有量を有する。例示的なペプチドは、細胞膜を貫通および破壊し得る。
【0253】
ペプチドハイドロゲル調製物の特性
調製物は、一般に、生体適合性溶液中に自己組織化ペプチドを含み得る。例えば、ペプチドは、生体適合性溶液に溶解または実質的に溶解され得る。調製物は、約0.1%w/v~約8.0w/vの間のペプチドを含み得る。調製物は標的効能のために製剤化され得る。例えば、自己組織化ペプチドの濃度は、標的効能に基づいて選択され得る。例えば、抗微生物特性を有する例示的な調製物は、1.5%w/v未満のペプチド、例えば、約0.5%w/vのペプチド~1.0%w/vのペプチドの間を含み得る。
【0254】
例示的な調製物は、約0.25%w/v~約6.0%w/vの間のペプチド、例えば、約0.5%w/v~約6.0%w/vの間のペプチドを含み得る。ペプチドが精製されている場合、調製物は最大約6.0%w/vのペプチドを含み得る。ある特定の実施形態では、調製物が、約3.0%w/v未満のペプチド、例えば、約0.25%w/v~約3.0%w/vの間のペプチド、約0.25%w/v~約2.0%w/vの間のペプチド、約0.25%w/v~約1.25%w/vの間のペプチド、または約0.5%w/v~約1.5%w/vの間のペプチドを含み得る。調製物は、約0.5%w/v~約1.0%w/vの間のペプチド、約0.7%w/v~約2.0%w/vの間のペプチド、または約0.7%w/v~約0.8%w/vの間のペプチドを含み得る。例えば、調製物は、約0.25%w/v、約0.5%w/v、約0.7%w/v、約0.75%w/v、約0.8%w/v、約1.0%w/v、約1.5%w/v、約2.0%w/v、または約3.0%w/vのペプチドを含み得る。特定の実施形態では、調製物が約1.5%w/v未満のペプチドを含み得る。調製物は、約1.25%w/v未満のペプチドまたは約1.0%w/v未満のペプチドを含み得る。1つの例示的な実施形態では、調製物が約0.75%w/vのペプチドを含み得る。
【0255】
緩衝液と組み合わせた後、ハイドロゲルは、約0.05%w/v~6.0%w/vの間のペプチドを有し得る。例えば、ハイドロゲルは、約0.1%w/v~6.0%w/vの間のペプチド、約0.25%w/v~6.0w/vの間のペプチド、約1.5%w/v~6.0%w/vの間のペプチド、約0.25%w/v~3.0%w/vの間のペプチド、約0.25%w/v~1.0%w/vの間のペプチド、約0.25%w/v~0.5%w/vの間のペプチド、または約0.3%w/v~0.4%w/vの間のペプチドを有し得る。ペプチド調製物および緩衝液を合わせて、約2:1~0.5:1の間のペプチド調製物と緩衝液の比のハイドロゲルを形成することができる。一部の実施形態では、ペプチド調製物と緩衝液を合わせて、約1:1の比のハイドロゲルを形成することができる。
【0256】
調製物中のペプチドは精製され得る。本明細書に開示される場合、「精製」は、汚染物質を除去するために処理された組成物を指し得る。特に、精製ペプチドは、臨床用途に適した組成を有し得る。例えば、ペプチドは、臨床投与のための健康および/または規制基準を満たすよう精製され得る。ペプチドは、少なくとも80%、例えば、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または少なくとも99.9%精製され得る。
【0257】
ある特定の実施形態では、ペプチドが、ペプチドの固相合成からの残留有機溶媒含有量を除去するまたは減少させるために精製され得る。ペプチドは20重量%未満の残留有機溶媒を含み得る。ペプチドは15重量%未満の残留有機溶媒を含み得る。ペプチドは10重量%未満の残留有機溶媒を含み得る。例えば、ペプチドは、8重量%未満、5重量%未満、2重量%未満、1重量%未満、または0.1重量%未満の残留有機溶媒を含み得る。合成ペプチドから除去され得るか、または減少させられ得る例示的な有機溶媒としては、トリフルオロ酢酸(TFA)、アセトニトリル、イソプロパノール、N,N-ジメチルホルムアミド、トリエチルアミン、エチルエーテル、および酢酸が挙げられる。
【0258】
精製ペプチドは、トリフルオロ酢酸(TFA)を実質的に含まないことができる。例えば、精製ペプチドは、1%w/v未満の残留TFA、または約0.005%w/v~1%w/vの間の残留TFAを有し得る。
【0259】
精製ペプチドは、アセトニトリルを実質的に含まないことができる。一部の実施形態では、精製ペプチドが、約410ppm未満の残留アセトニトリルを有し得る。精製ペプチドは、約0.005ppm~約410ppmの間の残留アセトニトリルを有し得る。
【0260】
精製ペプチドは、イソプロパノールを実質的に含まないことができる。一部の実施形態では、精製ペプチドが、約400ppm未満の残留イソプロパノールを有し得る。精製ペプチドは、約100ppm未満の残留イソプロパノールを有し得る。精製ペプチドは、約0.005ppm~100ppmの間の残留イソプロパノールを有し得る。
【0261】
精製ペプチドは、N,N-ジメチルホルムアミドを実質的に含まないことができる。一部の実施形態では、精製ペプチドが、約880ppm未満の残留N,N-ジメチルホルムアミドを有し得る。精製ペプチドは、約0.005ppm~約880ppmの間の残留N,N-ジメチルホルムアミドを有し得る。
【0262】
精製ペプチドは、トリエチルアミンを実質的に含まないことができる。一部の実施形態では、精製ペプチドが、約5000ppm未満の残留トリエチルアミンを有し得る。精製ペプチドは、約0.005ppm~約5000ppmの間の残留トリエチルアミンを有し得る。
【0263】
精製ペプチドは、エチルエーテルを実質的に含まないことができる。一部の実施形態では、精製ペプチドが、約1000ppm未満の残留エチルエーテルを有し得る。精製ペプチドは、約0.005ppm~約1000ppmの間の残留エチルエーテルを有し得る。
【0264】
精製ペプチドは、酢酸を実質的に含まないことができる。例えば、精製ペプチドは、2%w/v未満の残留酢酸、例えば、1%w/v未満の残留酢酸、0.5%w/v未満の残留酢酸、0.1%w/v未満の残留酢酸、約0.0001w/v~2%w/vの間の残留酢酸、または約0.005%w/v~0.1%w/vの間の残留酢酸を有し得る。
【0265】
一般に、精製ペプチドおよび/または生体適合性溶液は、医薬品規制調和国際会議(ICH)によって定義される規制限界と一致する特性を有し得る。
【0266】
調製物の生体適合性溶液は、ペプチドのための実質的に液体の担体を指し得る。生体適合性溶液は、一般に、水溶液であり得る。生体適合性溶液は、水、例えば、脱イオン水を含み得る。脱イオン水は、25℃で約18MΩ超の抵抗率および約0.056μS未満の電気伝導率を有し得る。脱イオン水は、0.03エンドトキシンユニット(EU)/mlの最大エンドトキシン仕様および1CFU/mL以下の微生物作用を有し得る。脱イオン水は、10ppb以下の全有機炭素(TOC)濃度を有し得る。生体適合性溶液は、医薬品グレードの水を含み得る。医薬品グレードの水は、500ppb以下の全有機炭素(TOC)および100CFU/ml以下の微生物作用を有し得る。生体適合性溶液は、注射グレードの水を含み得る。注射グレードの水は、0.25エンドトキシンユニット(EU)/mlの最大エンドトキシン仕様および10CFU/10ml以下の微生物作用を有し得る。ある特定の実施形態では、調製物または生体適合性溶液が塩化物イオンを実質的に含まないことができる。
【0267】
調製物またはペプチドは対イオンを含み得る。本明細書に開示される場合、対イオンは電荷バランスイオンを指し得る。調製物またはペプチドは、調製物を実質的に電気的に中性にするのに有効な量の対イオンを有し得る。調製物またはペプチドは、調製物を実質的に生体適合性および/または安定にするのに有効な量の対イオンを有し得る。調製物またはペプチドは、ペプチドのアニオン性またはカチオン性残基の反発を制御するのに有効な量の対イオンを有し得る。対イオンの濃度は、ペプチド配列ならびにペプチドおよび任意の添加剤の濃度に依存し得る。例示的な実施形態では、ペプチドが、0.1~20%の間の対イオンを含み得る。さらに、対イオンの電荷は、ペプチドおよび任意の添加剤の電荷に依存し得る。よって、対イオンはアニオンまたはカチオンであり得る。一般に、対イオンは細胞適合性であり得る。ある特定の実施形態では、対イオンが生体適合性であり得る。例えば、対イオンは、酢酸、クエン酸、アンモニウム、フッ化物、または塩化物を含み得る。他の実施形態では、調製物またはペプチドが塩化物対イオンを実質的に含まないことができる。
【0268】
例示的な実施形態では、調製物またはペプチドが有効量の酢酸対オンを含み得る。特に、残留TFAを含むペプチド濃度を有する調製物は、残留TFAのバランスをとるのに十分な量の酢酸対イオンを有し得る。手短に言えば、TFAは、固相樹脂から合成されたペプチドを放出するために一般的に使用される。TFAはまた、ペプチドの逆相HPLC精製中に一般的に使用される。しかしながら、残留TFAまたはフッ化物は、毒性であり得、臨床的使用を意図したペプチドにおいて望ましくないだろう。さらに、TFAは、N末端および正に帯電した残基(例えば、リジン、ヒスチジン、およびアルギニン)の側鎖で遊離アミン基と相互作用し得る。ペプチド調製物中のTFA-塩対イオンの存在は、生物材料にとって有害であり得、意図したペプチド活性の正確性および再現性に悪影響を及ぼし得る。
【0269】
酢酸または塩酸塩によるTFA-酢酸塩交換を使用して、上記のTFAの負の効果の一部または全部を中和することができる。本発明者らは、酢酸対イオンが、ペプチド調製物の生物活性を維持し、ペプチドの溶解度およびペプチドの自己組織化のための電荷を制御するのに驚くほどよく適していることを決定した。さらに、酢酸(pKa=4.5)は、トリフルオロ酢酸(pKa約0)と塩酸(pKa=-7)の両方よりも弱い。酢酸対イオンは、ペプチド調製物のpHを生理的に中性にさらに制御し得る。
【0270】
調製物は、可変的なハイドロゲル化速度論を有し得る。ある特定の実施形態によると、調製物のハイドロゲル化速度論が、特定の投与様式のために設計され得る。調製物は液体として投与され得る。調製物は固体または半固体として投与され得る。調製物がゲルとして投与され得る。調製物は、液体に懸濁したハイドロゲルの組合せとして投与され得る。調製物は、可変的な見かけの粘度を有し得る。例えば、調製物は、投与条件下での注射を可能にするのに有効な見かけの粘度を有し得る。ある特定の実施形態では、調製物が、せん断応力を増加させると低下する見かけの粘度を有し得る。
【0271】
調製物は、負荷応力、例えば負荷機械力に応じて可逆的に自己組織化および解体するよう構成され得る。固体またはゲル調製物は、負荷応力の増加により破壊され、いったん負荷応力が減少すると後で復元し得る。固体またはゲルは、例えば、送達装置を通した送達中に、負荷応力に応じて液体となり得る。ペプチドは、負荷応力に応じて、連続的相転移を受けることができ得る。ペプチドは、各1回または複数の連続的相転移後に回復することができ得る。
【0272】
調製物は、温度変化、pH変化、イオンキレート剤との接触、溶媒による希釈、音波の適用、凍結乾燥、真空乾燥、および風乾の少なくとも1つに応じて可逆的に自己組織化および解体するよう構成され得る。投与された流体は、固体またはゲルとして再形成する前に組織空隙に適合し得る。よって、固体またはゲル調製物は、適当なせん断応力下で注射可能、流動性、または噴霧可能であり得る。いったん投与されると、調製物は、固体またはゲル形態に復元し、標的部位に実質的に適合し得る。形成は、1分未満、約1分、約2分未満、約3分未満、約5分未満、または約10分未満以内に起こり得る。形成は、約1分、約30秒未満、約10秒未満、または約3~5秒以内に起こり得る。
【0273】
ペプチドは精製され得る。例えば、ペプチドは凍結乾燥され得る。図9に示されるように、正味電荷は、pH値の関数として定量化され得る。図9で測定される例示的なペプチドは、2個のリジン残基を有するアルギニンリッチペプチドである。図9の例示的なペプチドは、pH7で+9の正味電荷を有する。他のペプチドも本開示の範囲内にある。例えば、精製ペプチドは、pH7で-9~+11の間、例えば、pH7で-7~+9の正味電荷を有し得る。本明細書に開示される場合、「正味電荷」は、典型的にはpH7で測定される、生物物理学的および生化学的特性としての、ペプチドの総電荷を指し得る。
【0274】
精製ペプチドは、pH7で-7~+11の正味電荷を有し得る。一部の実施形態では、ペプチドが、+2~+9、例えば、+5~+9または+7~+9の正味電荷を有し得る。精製ペプチドは、pH7で約+5、+6、+7、+8、+9、+10、または+11の電荷を有し得る。+5~+9の電荷を有する例示的なペプチドとしては、VLTKVKTKV(d)PPTKVEVKVLV、VKVRVRVRV(d)PPTRVRVRVKV、およびVKVRVRVRV(d)PPTRVEVRVKVが挙げられる。他の実施形態では、精製ペプチドが実質的に中性であり得る。他の実施形態では、ペプチドが正味負電荷を有し得る。正味負電荷を有する例示的なペプチドはVEVSVSVEV(d)PPTEVSVEVEVである。図10に示されるように、ペプチド配列中のグルタミン酸の単一置換により、pH7で正味ペプチド電荷が+7(上のパネル)から+9(下のパネル)に変化すると同時に、等電点が11.45から14に変化し得る。正味電荷はペプチド設計によって選択され得る。ペプチドハイドロゲルの帯電の設計により、細胞膜およびタンパク質との電荷相互作用の制御が可能になり得る。
【0275】
ペプチドは、投与の標的部位でタンパク質を吸着する、および/またはタンパク質の非活性化を促進する電荷を有するよう設計され得る。例えば、正に帯電したペプチドハイドロゲルは、負に帯電した分子および中性に帯電した分子、例えば低分子、タンパク質、および小胞外(extravesicular)膜の吸着を促進し得る。負に帯電したペプチドハイドロゲルは、正に帯電した分子および中性に帯電した分子、例えば低分子、タンパク質、および小胞外膜の吸着を促進し得る。さらに、ペプチドは、正電荷、中性電荷、または負電荷の領域を様々な程度に有するよう設計され得る。ある特定の実施形態では、ペプチド電荷が、ペプチドが帯電した分子に富む溶液に入れられると、分子をハイドロゲルに吸い取るまたは吸収して、吸着によって分子をペプチドに結合させ得るよう設計され得る。図3は、正に帯電したハイドロゲル上に吸着された負に帯電したトリパンブルーを示す顕微鏡画像である。
【0276】
精製ペプチドは、70%w/v超、80%w/v超、または90%w/v超の窒素、例えば、70%w/v~99.9%w/vの間の窒素を有し得る。
【0277】
精製ペプチドは、約10EU/mg未満、例えば、約5EU/mg未満、約2EU/mg未満、または約1EU/mg未満の細菌エンドトキシンレベルを有し得る。他の実施形態では、精製ペプチドが、約-0.010~-0.015EU/mlの間のエンドトキシンレベルを有し得る。例えば、精製ペプチドは、0.004~0.008の間、例えば、約0.006の410nmでのODを有し得る。ペプチドハイドロゲルは、0.010~0.020の間、例えば、約0.015の410nmでのODを有し得る。一部の実施形態では、精製ペプチドおよび/または調製物がエンドトキシンを実質的に含まないことができる。
【0278】
生体適合性溶液中の精製ペプチドは、約1%w/v~約20%w/vの間、例えば、少なくとも約10%w/v、または約15%w/v未満の含水量を有し得る。
【0279】
精製ペプチドは、約7~14の間の等電点を有し得る。例えば、精製ペプチドは、約7、8、9、10、11、12、13、または14の等電点を有し得る。
【0280】
精製ペプチドは、レオロジー試験によって決定される、約2Pa~3500Paの間の剛性率を有するハイドロゲルに自己組織化するよう構成され得る。例えば、精製ペプチドは、100Pa超、100Pa~3500Paの間、100Pa~3000Paの間、2Pa~1000Paの間、または2Pa~500Paの間の剛性率を有するハイドロゲルに自己組織化し得る。例えば、0.75%w/vのペプチドを有する製剤は、約2Pa~500Paの間の剛性率を有し得る。1.5%w/vのペプチドを有する製剤は、約100Pa~3000Paの間の剛性率を有し得る。3.0%w/vのペプチドを有する製剤は、約1000Pa~10000Paの間の剛性率を有し得る。よって、ハイドロゲルの剛性率は、製剤中のペプチド濃度の選択によって制御され得る。
【0281】
ペプチドは、所定の二次構造を採用するよう設計され得る。例えば、ペプチドは、前に記載されるように、βヘアピン二次構造を採用するよう設計され得る。所定の二次構造は、βシート、αヘリックス、およびランダムコイルの少なくとも1つから予備選択される構造を含み得る。例示的な実施形態では、疎水性アミノ酸残基(例えば、疎水性アミノ酸残基の量、配置、および/または構造)が、ペプチドを、大部分のβシート構造を有するポリマーに自己組織化するよう選択され得る。特定の実施形態では、疎水性アミノ酸残基が、ハイドロゲルの剛性を制御するよう選択され得る。例えば、疎水性アミノ酸残基の量および種類は、ハイドロゲルの剛性を制御するよう選択され得る。
【0282】
一部の実施形態では、温度、pH変化、光および音波の適用などの外部刺激を使用して、自己組織化ペプチドの優先的な二次構造形成を制御および促進することができる。二次構造形成の制御により、ペプチドの生物学的、生物物理学的、および化学的治療機能が強化され得る。例えば、自己組織化ペプチドのより高い細胞膜透過は、βヘアピンペプチドを高pH(例えば、少なくともpH9)または高温(例えば、少なくとも125℃)または低温(例えば、4℃以下)に曝露することによって達成され得る。結果は、大部分のβシートまたはαヘリックス形成を有するペプチド二次構造を有するハイドロゲルとなる。
【0283】
ペプチドは、調製物にせん断減粘特性を与えるよう設計され得る。特に、ペプチドは注射可能となるよう設計され得る。例えば、ペプチドは、せん断減粘速度論を使用することによって、注射可能な固体またはゲルになるよう設計され得る。施用前に固体またはゲルの形態の調製物は、送達装置による投与中に加えられる有効なせん断応力下で、流動性状態にせん断減粘するよう構成され得る。一部の例示的な実施形態では、固体またはゲルが、シリンジによる注射または局所施用中に流動性状態にせん断減粘し得る。他の投与様式を使用してもよい。固体またはゲルは、内視鏡投与中に流動性状態にせん断減粘し得る。固体またはゲルは、せん断減粘して、解剖学的管腔、例えば、動脈、静脈、消化管、気管支、腎管、生殖管等を通して流れるよう構成され得る。一部の実施形態では、せん断減粘特性が経管腔的処置中に使用され得る。ペプチドは噴霧可能となるよう設計され得る。例えば、ペプチドは、前に記載されるように、せん断減粘速度論を使用することによって、スプレーまたは他の液滴、例えば、他の噴射液滴として投与するために設計され得る。
【0284】
ハイドロゲルのせん断減粘速度論は、ペプチドの正味電荷を変化させることによって操作され得る。一部の実施形態では、正味電荷が、カチオン性粒子またはペプチドの存在または非存在、アニオン性粒子またはペプチドの存在または非存在、緩衝液、塩、ペプチド濃度、ペプチド純度、およびペプチド対イオンの存在または非存在のうちの1つまたは複数を制御することによって変化し得る。特に、せん断減粘は、ペプチド純度を変化させて所望のせん断減粘速度論を達成することによって制御され得る。ペプチドの正味電荷は正であり得る。ペプチドの正味電荷は負であり得る。
【0285】
せん断減粘は、ハイドロゲルへの機械的撹拌または環境刺激によって誘導され得る。機械的撹拌は、例えば、送達または超音波処理混合を通して誘導され得る。環境刺激は、熱、光、イオン性剤、キレート剤、緩衝液、もしくはタンパク質を加えることによって、またはpHレベルを変化させることによって誘導され得る。
【0286】
よって、調製物は実質的に流動性であり得る。方法は、カニューレまたは針を通して調製物を分注するステップを含み得る。方法は、任意のサイズおよび形状の創傷床をコンフォーマルに充填する(conformally filling)ステップを含み得る。ペプチドハイドロゲルはせん断減粘機械特性を有し得る。せん断減粘機械特性により、投与中、例えば、針からの注射またはスプレーノズルによる投与中に、ゲルネットワークが破壊され、流体になることが可能になり得る。負荷応力が止むと、ゲルネットワークは再形成し、所定の期間、例えば、数分以内に弾性率が回復され得る。せん断減粘ペプチドハイドロゲルを使用して、注射中の損傷から細胞を保護し、生理食塩水または媒体での直接注射よりも改善した生存率を示すことができる。せん断減粘ハイドロゲルは、非ニュートン流体流動を示すことができ、これにより例えば数分~2、3時間以内の賦形剤の有効な混合が可能になり得る。一部の実施形態では、色素、低分子、および大分子が、120分未満で、例えば、30~120分の間にハイドロゲル内に実質的に均質に分散され得る。
【0287】
ペプチドは半透明のハイドロゲルに自己組織化し得る。一部の実施形態では、ペプチドが実質的に透明のハイドロゲルに自己組織化し得る。ハイドロゲルの透明度により、使用者または医療供給者がハイドロゲルを通して周囲組織を見ることが可能になり得る。例示的な実施形態では、外科的処置が、ハイドロゲルによる実質的な視界の妨げなしに実施され得る。ハイドロゲルは、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約99%、または約100%の光透過率を有し得る。ハイドロゲルは無色であり得る。ハイドロゲルの光透過率および色は、ペプチドの配列および/または調製物もしくは溶液の組成を調整することによって操作され得る。図8のグラフに示されるように、ペプチドハイドロゲルの透明度は吸光度測定によって定量化され得る。図8で測定された例示的なペプチドハイドロゲルは実質的に透明である。
【0288】
一部の実施形態では、調製物が色素を含み得る。色素は食品グレードの色素または医薬品グレードの色素であり得る。色素は細胞適合性であり得る。色素は生体適合性であり得る。一般に、色素は、使用者または医療供給者が施用後にハイドロゲルを見るのを助けることができる。調製物は、ハイドロゲルの所望の不透明度を提供するのに有用な量の色素を含み得る。ハイドロゲルは、約60%未満、約50%未満、約40%未満、約30%未満、約20%未満、または約10%未満の光透過率を有するのに有効な量の色素を含み得る。ハイドロゲルは、色素を含む場合、実質的に不透明であり得る。
【0289】
ペプチドは、実質的にイオン架橋されたハイドロゲルに自己組織化し得る。「イオン架橋」は、二次構造タンパク質を形成するペプチド間および/またはハイドロゲル三次構造を形成する二次構造タンパク質間のイオン結合を指し得る。ハイドロゲルのせん断減粘特性は、イオン結合が破壊および再形成されることを可能にする物理的架橋によって可能になり得る。ある特定の実施形態によると、ハイドロゲルが大部分のイオン架橋で形成される。例えば、形成されたハイドロゲルの物理的架橋の50%超、60%超、70%超、80%超、90%超、95%超、99%超、または実質的に全部がイオン性の性質であり得る。
【0290】
調製物および/または組織化したハイドロゲルは、実質的に生理的pHレベルを有するよう設計され得る。調製物またはハイドロゲルは、約4.0~9.0の間のpHレベルを有し得る。一部の実施形態では、調製物またはハイドロゲルが、約7.0~8.0の間のpHレベルを有し得る。調製物またはハイドロゲルは、約7.3~7.5の間のpHレベルを有し得る。実質的に生理的pHにより、ゲル化時の調製物の投与が可能になり得る。一部の実施形態では、ハイドロゲルが治療時に調製され得る。方法は、調製物を、自己組織化を誘導するよう構成された緩衝液と混合するステップと、場合により混合物を撹拌するステップと、治療時に調製物またはハイドロゲルを投与するステップとを含み得る。投与は、以下にさらに詳細に記載されるように、局所または非経口であり得る。
【0291】
ペプチドは、刺激に応じて自己組織化するよう設計され得る。刺激は、環境刺激、例えば温度変化(例えば、熱の適用)、光への曝露、pH変化、音波の適用、またはイオン性剤、キレート剤、もしくはタンパク質への曝露であり得る。刺激は、例えば、送達、超音波処理、または混合を通して誘導される、機械的撹拌であり得る。一部の実施形態では、方法が、調製物を液体として投与するステップを含み得る。方法は、調製物をゲルとして投与するステップを含み得る。方法は、調整物を固体または半固体として投与するステップを含み得る。
【0292】
一部の実施形態では、調製物が、一定期間経過後に自己組織化するよう設計され得る。例えば、調製物は、ペプチドが約5分未満、約3分未満、約2分未満、約30秒未満、約10秒未満、または約3秒未満で自己組織化し始めるよう構成されるように設計され得る。ある特定の実施形態では、調製物が、ペプチドが約60分以内、約30分以内、約15分以内、約10分以内、約5分以内、約3分以内、約2分以内、約30秒以内、約10秒以内、約5秒以内、または約3秒以内に自己組織化する、すなわち、実質的に自己組織化されるよう構成されるように設計され得る。調製物は、自己組織化のタイミングを制御するよう構成された組成を有し得る。例えば、調製物は、イオン性剤またはpH変更剤の時限放出用に構成された組成を有し得る。ある特定の実施形態では、ペプチドの配列または構造が、ペプチドの自己組織化を制御するよう設計され得る。
【0293】
一部の実施形態では、方法が、調製物を緩衝液と合わせるステップを含み得る。「緩衝液」は、調製物の対象への投与前、投与後、または投与と並行してゲル化を誘導するよう構成された薬剤を指し得る。よって、一部の実施形態では、調製物が緩衝液を含み得る。例えば、調製物は、最大約1000mMの緩衝液を含み得るか、またはこれと合わせられ得る。緩衝液は、例えば、ゲル化を誘導する、および/または所望の特性を提供するのに有効な量のイオン性塩および緩衝剤を含み得る。例えば、緩衝液は、調製物のpHを制御または維持するよう配合され得る。
【0294】
特定の実施形態では、緩衝液が、ハイドロゲルの剛性を制御するのに有効な量のイオン性塩を有し得る。「イオン性塩」は、溶液中でイオンに解離する化合物を指し得る。緩衝液は約5mM~400mMの間のイオン性塩を含み得る。例えば、緩衝液は、約5mM~200mMの間のイオン性塩、約50mM~400mMの間のイオン性塩、約50mM~200mMの間のイオン性塩、または約50mM~100mMの間のイオン性塩を含み得る。イオン性塩は、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、鉄イオン、アンモニウムイオン、ピリジウムイオン、第四級アンモニウムイオン、塩化物イオン、クエン酸イオン、酢酸イオン、および硫酸イオンの少なくとも1つに解離するものであり得る。イオン性塩は、塩化ナトリウム、塩化アンモニウム、塩化マグネシウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、硫酸アンモニウム、硫酸マグネシウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸カルシウム、重炭酸ナトリウム、およびこれらの組合せを含み得る。
【0295】
例示的な実施形態では、緩衝液が約1mM~約200mMの間の塩化ナトリウムを含み得る。例えば、緩衝液は、約10mM~約150mMの間の塩化ナトリウム、例えば約50mM~約100mMの間の塩化ナトリウムを含み得る。
【0296】
緩衝液は対イオンを含み得る。緩衝液は、ハイドロゲルを実質的に電気的に中性にするのに有効な量の対オンを有し得る。緩衝液は、ペプチドの自己組織化を誘導するのに有効な量の対イオンを有し得る。対イオンの濃度は、ペプチド調製物の組成に依存し得る。さらに、対イオンの電荷は、ペプチド調製物の電荷に依存し得る。よって、対イオンはアニオンまたはカチオンであり得る。一般に、対イオンは細胞適合性であり得る。ある特定の実施形態では、対イオンが生体適合性であり得る。例えば、対イオンは酢酸または塩化物を含み得る。他の実施形態では、生体適合性溶液が塩化物対イオンを実質的に含まないことができる。
【0297】
緩衝液は、約1mM~約150mMの生物学的緩衝剤を含み得る。例えば、緩衝液は、約1mM~約100mMの生物学的緩衝剤、約1mM~約40mMの生物学的緩衝剤、または約10mM~約20mMの生物学的緩衝剤を含み得る。生物学的緩衝剤は、ビス-トリスプロパン(BTP)、4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸(HEPES)、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(TRIS)、2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸ヘミナトリウム塩、4-モルホリンエタンスルホン酸ヘミナトリウム塩(MES)、3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸(MOPS)、および3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸(MOBS)、トリシン、ビシン、(トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミノ)プロパンスルホン酸(TAPS)、N-(2-アセトアミド)-2-アミノエタンスルホン酸(ACES)、β-ヒドロキシ-4-モルホリンプロパンスルホン酸、3-モルホリノ-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸(MOPSO)、(N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-2-アミノエタンスルホン酸)(BES)およびこれらの組合せから選択され得る。他の生物学的緩衝剤も本開示の範囲内にある。
【0298】
例示的な実施形態では、緩衝液が約1mM~約150mMのBTPを含み得る。緩衝液は、約10mM~約100mMのBTP、例えば、約10mM~約50mMのBTP、約10mM~約40mM、約20mM~約40mM、または約20mM~約40mMのBTPを含み得る。
【0299】
緩衝液は、水、酸、および塩基の少なくとも1つをさらに含み得る。酸および/または塩基は、緩衝液のpHを実質的に生理的pHになるよう制御するのに有効な量で添加され得る。他の実施形態では、緩衝液が、酸性、アルカリ性、または実質的に中性であり得る。緩衝液は、ハイドロゲルのpHを制御し、標的部位で所望のpHを維持するよう選択され得る。例えば、ハイドロゲルのpHを標的部位で実質的に生理的pHとなるよう制御する。よって、緩衝液の特性は標的部位に基づいて選択され得る。緩衝液は、選択される追加の特性、例えば、正味電荷、追加のタンパク質の存在または非存在等を有し得る。緩衝液は、1つまたは複数の鉱物をさらに含み得る。
【0300】
調製物は、有効量の鉱物粘土をさらに含み得る。調製物は、約0.1%w/v~約20%w/vの間の鉱物粘土を含み得る。例えば、調製物は、0.75%w/v、1.5%w/v、2%w/v、3%w/v、4%w/v、8%w/v、10%w/v、または20%w/vの鉱物粘土を含み得る。鉱物粘土の量は、施用の標的部位にとって望ましいレオロジー特性を提供するのに有効であり得る。鉱物粘土の量はフィルムを形成するのに有効であり得る。鉱物粘土は天然または合成であり得る。鉱物粘土は、ラポナイトおよびモンモリロナイトの少なくとも1つを含み得る。一部の実施形態では、調製物が、1:1~1:2比(w/v)のペプチドと鉱物粘土を含み得る。例えば、調製物中のペプチドと鉱物粘土の比は、1:1、3:4、3:8、または1:2(w/v)であり得る。
【0301】
調製物は、標的効能のために製剤化され得る。例えば、調製物は、微生物感染症を処置するか、または微生物、例えば病原性微生物の増殖を阻害するために製剤化され得る。調製物は、真菌感染症を処置するか、または真菌生物の増殖を阻害するために製剤化され得る。調製物は、細胞培養および/または細胞送達のために製剤化され得る。調製物は、創傷、例えば慢性創傷、またはバイオフィルムを処置または阻害するために製剤化され得る。調製物は、以下にさらに詳細に記載されるようにペプチドを操作することによって製剤化され得る。調製物は、生体適合性溶液および/または添加剤を選択することによって製剤化され得る。
【0302】
ある特定の実施形態では、調製物が、併用処置のために製剤化され得る。調製物は、併用処置を提供するよう構成された少なくとも1つの活性剤を含み得る。一部の実施形態では、調製物が、活性剤の組合せにより相乗的結果を示し得る。活性剤は、例えば、抗菌組成物、抗ウイルス組成物、抗真菌組成物、抗腫瘍組成物、抗炎症性組成物、止血剤、細胞培養培地、細胞培養血清、防臭組成物、鎮痛剤、局所麻酔薬、または疼痛緩和組成物であり得る。調製物は、上記組成物の1つと合わせて投与するために製剤化され得る。調製物は、同時または並行併用投与のために製剤化され得る。調製物は、順次併用投与のために製剤化され得る。
【0303】
一部の実施形態では、調製物および/またはハイドロゲルが、-20℃~150℃の間、-20℃~125℃の間、-20℃~100℃の間、2℃~125℃の間、および37℃~125℃の間で熱的に安定となるよう設計され得る。本明細書に開示される場合、「熱的安定性」は、実質的な分解も、生物活性の喪失も、化学活性の喪失もなく、温度処理に耐える能力を指す。図7A図7Bのグラフは、温度の関数としての例示的なペプチドの266nmでの静的光散乱(SLS)によって測定されるペプチド凝集を示す。例示的なペプチドとしては、アルギニン、リジン、バリン、トレオニン、およびプロリン残基が挙げられる。図7A図7Bのグラフに示されるように、ペプチドハイドロゲルおよびペプチドは、温度の関数として熱安定性である。
【0304】
ある特定の実施形態では、調製物および/またはペプチドが機械的に安定であり得る。例えば、調製物はせん断減粘または超音波処理され得る。調製物は、実質的な分解も、生物または化学活性の喪失もなく、超音波処理され得る。調製物は、実質的な分解も、生物または化学活性の喪失もなく、せん断減粘され得る。
【0305】
ある特定の実施形態では、調製物および/またはペプチドが無菌であり得るか、または滅菌され得る。調製物および/またはペプチドはオートクレーブ滅菌によって滅菌され得る。オートクレーブ滅菌中、調製物および/またはペプチドは、120℃~150℃の間、例えば、最高125℃、最高135℃、または最高150℃の温度に加熱され得る。調製物および/またはペプチドは、少なくとも約2分間、例えば、約2~20分間の間または約10~160分間の間、オートクレーブ温度で維持され得る。オートクレーブ滅菌は、任意の病原性微生物の少なくとも約90%、95%、99%、99.9%、99.99%、99.999%、または100%を滅菌するのに十分であり得る。調製物および/またはペプチドは、オートクレーブ滅菌中および後に安定なままであり得る。例えば、調製物および/またはペプチドは、オートクレーブ滅菌後に、物理的、化学的、生物学的、および/または機能的に安定なままであり得る。
【0306】
ある特定の実施形態では、調製物および/またはペプチドが低温殺菌され得る。低温殺菌中、調製物および/またはペプチドは、50℃~100℃の間、例えば、最高60℃、最高70℃、または最高100℃の温度に加熱され得る。調製物および/またはペプチドは、少なくとも約15秒間、例えば、約1~30分間の間または約3~15分間の間、低温殺菌温度で維持され得る。低温殺菌は、任意の病原性微生物の少なくとも約90%、95%、99%、99.9%、99.99%、または99.999%を滅菌するのに十分であり得る。
【0307】
ある特定の実施形態では、調製物が、超高温(UHT)または高温/短時間(HTST)滅菌によって滅菌され得る。UHTまたはHTST滅菌中、調製物および/またはペプチドは、100℃~150℃の間、例えば、最高130℃、最高140℃、または最高150℃の温度に加熱され得る。調製物および/またはペプチドは、少なくとも約15秒間、例えば、約1分間未満~約6分間、例えば、約2~4分間の間、UHTまたはHTST温度で維持され得る。UHTまたはHTST滅菌は、任意の病原性微生物の少なくとも約90%、95%、99%、99.9%、99.99%、または99.999%を滅菌するのに十分であり得る。
【0308】
ある特定の実施形態では、滅菌または低温殺菌が最終であり得る。最終滅菌または低温殺菌は、密封された最終使用包装中での調製物の処理を指し得る。
【0309】
調製物および/またはペプチドは、加熱処理中および後に安定であり得る。本明細書に開示される場合、加熱処理、例えば、オートクレーブ滅菌中および後の安定性は、分解の減少または阻害、生物活性、および化学活性を指し得る。例えば、調製物および/またはペプチドは、分解も、生物活性の喪失も、化学活性の喪失もなく、加熱処理され得る。生物活性は、本明細書に開示されるペプチドの任意の生理活性特性を指し得る。一部の実施形態では、生物活性が抗微生物活性を指し得る。化学活性は、本明細書に開示されるペプチドの任意の化学または物理化学特性を指し得る。一部の実施形態では、化学活性が、本明細書に開示されるペプチドの自己組織化能力またはせん断減粘特性を指し得る。よって、調製物および/またはペプチドは、抗微生物活性の喪失も、自己組織化の喪失も、せん断減粘特性の喪失もなく、加熱処理され得る。ある特定の実施形態では、加熱処理が、ペプチドおよび/または調製物の1つまたは複数の生物活性または化学活性を強化し得る。例えば、加熱処理は、ペプチドまたは調製物の抗微生物活性、自己組織化、またはせん断減粘特性を強化し得る。
【0310】
調製物は無菌であり得る。例えば、調製物は、保存剤を添加することなく実質的に無菌のままであり得る。調製物は、ガンマ線照射処理なしで実質的に無菌であり得る。調製物は、電子線照射処理なしで実質的に無菌であり得る。
【0311】
調製物は所定の貯蔵寿命を有し得る。「貯蔵寿命」は、調製物が、所与の条件下での貯蔵後に安定なままである、および/または有効性を維持することができる時間の長さを指し得る。調製物および/またはハイドロゲルは、-20℃~150℃の間の温度で少なくとも約1年の貯蔵寿命を有し得る。例えば、調製物および/またはハイドロゲルは、室温(約20℃~25℃の間)で少なくとも約1年の貯蔵寿命を有し得る。調製物および/またはハイドロゲルは、室温で少なくとも約2年、約3年、約4年、約5年、または約6年の貯蔵寿命を有し得る。調製物および/またはハイドロゲルは、最大約25psi、例えば、最大約15psiの圧力で安定であり得る。
【0312】
ペプチドは、2℃~40℃の間の温度で自己組織化することができ得る。例えば、ペプチドは、2℃~20℃の間、20℃~25℃の間、または36℃~40℃の間の温度を有する環境で自己組織化することができ得る。
【0313】
ペプチドは、40℃超の温度で実質的に組織化していなくてもよい。例えば、ペプチド調製物は、40℃~150℃の間の温度で実質的に液体であり得る。ペプチド調製物は、40℃~125℃の間または最高150℃の温度で実質的に液体および熱的に安定であり得る。温度は、調製物の取り扱いのために制御され得る。例えば、調製物は、液体状態での包装、取り扱い、および/または投与のために40℃超の温度に加熱され得る。
【0314】
調製物は、所望の投与経路のために製剤化され得る。例えば、調製物は、局所または非経口投与のために製剤化され得る。特に、調製物は、局所投与または非経口投与に適した粘度を有するよう操作され得る。局所投与用の調製物は、投与部位または標的部位での環境および機械的ストレス因子に耐えるよう製剤化され得る。非経口投与用の調製物は、投与部位または標的部位からの移動を減少させるよう製剤化され得る。他の実施形態では、非経口投与用の調製物が、投与部位から標的部位への移動を誘因するよう製剤化され得る。調製物は、特定の送達装置による投与のために製剤化され得る。例えば、調製物は、スプレー、点滴器、またはシリンジによる投与のために製剤化され得る。調製物は、注射またはカテーテルによる投与のために製剤化され得る。
【0315】
表1は、3つの例示的なペプチド調製物試料の分析的特性評価を含む。例示的なペプチドは、2個のリジンアミノ酸残基を含むアルギニンリッチ配列を有する。従来の検出方法によって値を検出した。「N.D.」と示される成分は検出限界未満であった。ペプチド精製、残留溶媒、ペプチド含有量、および含水量は、ハイドロゲルの抗微生物活性および細胞膜破壊能力を制御するよう選択され得る。
【0316】
【表1】
【0317】
精製ペプチドおよびハイドロゲルは、表2に示されるように、保存剤の添加も滅菌もなしで、実質的にエンドトキシンフリーであり得る。よって、一部の実施形態では、ペプチド調製物が保存剤を実質的に含まないことができる。
【0318】
【表2】
【0319】
自己組織化ペプチドハイドロゲル
本明細書に開示される調製物は、予め選択された特性を有するハイドロゲルに自己組織化するよう提供され得る。ポリマーハイドロゲルは実質的に生理的pHを有し得る。一般に、ポリマーハイドロゲルは、4.0~9.0の間、例えば、7.0~8.0の間、7.2~7.8の間、または7.3~7.5の間のpHを有し得る。
【0320】
ポリマーハイドロゲルは実質的に透明であり得る。例えば、ポリマーハイドロゲルは、混濁、例えば、目に見える混濁を実質的に含まないことができる。目に見える混濁は、巨視的および顕微鏡光学イメージングによって決定され得る。ポリマーハイドロゲルは、ペプチド凝集体(ペプチドクラスター)、例えば、目に見えるペプチド凝集体を実質的に含まないことができる。目に見えるペプチド凝集体は、静的光散乱(SLS)およびUV-VIS試験によって決定され得る。「透明度」は、ハイドロゲルが可視光を通す能力を指し得る。実質的に透明なハイドロゲルは、約205nm~約300nmの間の波長で、約0.1~3.0±1.5の間のUV-VIS吸光度を有し得る。
【0321】
組織化したポリマーハイドロゲルはナノポーラス構造を有し得る。ポリマーハイドロゲルは、水和し得る、または実質的に飽和であり得る。一部の実施形態では、ハイドロゲルが、90%w/v~99.9%w/vの間、例えば、92%w/v~99.9%w/vの間または94%w/v~99.9%w/vの間の水溶液を有し得る。ナノポーラス構造は、標的微生物に対して不透過性となるよう選択され得る。よって、ハイドロゲルを使用して、標的微生物を封入するか、または標的部位を標的微生物がない状態に維持することができる。ナノポーラス構造は、標的部位でのガス交換を可能にするよう選択され得る。ポリマーハイドロゲルは、(例えば、標的微生物、標的細胞、または所望の機能性に基づいて)選択される、1nm~1000nmの間の細孔径を有するナノポーラス構造を有し得る。ポリマーハイドロゲルは、選択される、1nm~100nmの間のフィブリル幅を有し得る。
【0322】
ハイドロゲルは、一般に、カチオン性の性質であり得る。他の実施形態では、ハイドロゲルが、アニオン性の性質であり得る。さらに他の実施形態では、ハイドロゲルを、複数ドメインのカチオン性および/またはアニオン性成分を含有するようブレンドすることができる。ハイドロゲルは予め選択された電荷を有するよう設計され得る。本明細書に開示される自己組織化ペプチドハイドロゲルは、手術中設定における容易で迅速な投与を可能にするせん断減粘機械特性を示す、創傷バイオバーデンを制御する抗微生物特性を示す、ウイルス感染を処置もしくは阻害する抗ウイルス活性を示す、および/または真菌感染を処置もしくは阻害する抗真菌特性を示すように、移植された治療用細胞の生存率および機能を支持する生物学的機能性に調整され得る。
【0323】
特に、ペプチド配列および構造は、さらに自己組織化して高分子構造を形成するナノファイバーを形成するペプチド官能基を含み得る(図1A図1B)。ペプチドは環境刺激に応じて自己組織化し得る。ペプチドは、実質的に生理的緩衝液、例えば培地または生理食塩水の存在下で自己組織化し得る。ペプチドハイドロゲルは、天然線維性コラーゲンと類似の細胞外足場マトリックスに組織化し得る(図1A図1B)。ゲルマトリックス自己組織化の概略図および例示的なナノ構造を図1A図1Bに示す。図1Aに示されるように、イオン性緩衝液が添加されると、単一ペプチドナノファイバーがゲルに自己組織化する。図1Aは、ペプチドゲルのナノ構造および細孔径が天然ECM(コラーゲン)と類似に見えることを実証するTEM画像を含む。図1Bは、細胞懸濁液をペプチドゲルマトリックスと混合するための手術中混合装置の概略図を含む。細胞搭載マトリックスの図1Bの概略的SEM画像は、マトリックス中の細胞の例示的な概念を実証している。
【0324】
ペプチドは、実質的に生体適合性のハイドロゲルに自己組織化するよう設計によって操作され得る。ペプチドは、細胞に優しいハイドロゲルに自己組織化するよう設計によって操作され得る。ある特定の実施形態では、細胞に優しいポリマーハイドロゲルが非炎症性、および/または非毒性であり得る。細胞に優しいポリマーハイドロゲルは実質的に生分解性であり得る。ペプチドは、実質的に抗微生物性、抗ウイルス性、および/または抗真菌性になるよう設計によって操作され得る。
【0325】
短ペプチドおよび/またはペプチド官能基は合成的に製造され得る。よって、ペプチドは、製造、スケールアップ、および品質管理の容易さを提供し得る。一般に、ペプチドは、植物または動物発現系を使用することなく製造され得る。ペプチドは、天然に存在するエンドトキシンおよび疾患を伝播する病原体を実質的に含まないことができる。さらに、ペプチド配列および官能基を調整して、生分解、機械特性、および生物活性などの物理的および化学的特性に関するものを含む、組織化したハイドロゲルの制御および設計の汎用性を可能にすることができる。
【0326】
ペプチドは、標的効能のために操作された官能基を有し得る。例えば、ペプチドは生理活性官能基を有し得る。標的効能は標的組織の組織工学であり得る。標的効能としては、例えば、細胞培養、細胞送達、創傷治癒、および/またはバイオフィルムの処置が挙げられ得る。よって、ペプチドは、実質的に生体適合性のハイドロゲルに自己組織化するよう設計によって操作され得る。ペプチド官能基は、約3個~約30個の間のアミノ酸残基を有し得る。例えば、ペプチド官能基は、約3個~約20個の間のアミノ酸残基を有し得る。ペプチド官能基は、RGD、IKVAV、YIGSR、LKKTETQ、SNKPGVL、PKPQQFFGLM、GKLTWQELYQLKYKGI、およびGGGから選択される配列を有し得る。
【0327】
一部の実施形態では、ペプチドが、リンカーおよびスペーサーから選択される修飾を含み得る。ペプチド「リンカー」は、一般に、ペプチドの複数のドメインを連結するために含まれる短アミノ酸配列を指し得る。ペプチド「スペーサー」は、一般に、組織化したタンパク質の複数のドメインを連結し、その空間的関係を制御するよう配置されたアミノ酸配列を指す。リンカーまたはスペーサーは疎水性または親水性であり得る。リンカーまたはスペーサーは剛性または可撓性であり得る。例示的なスペーサーとしては、アミノヘキサン酸(Ahx)(疎水性)およびポリ(エチレン)グリコール(PEG)(親水性)が挙げられる。グリシンリッチスペーサーは、一般に、可撓性である。
【0328】
例示的な生理活性官能基としては、ラミニン、骨髄ホーミング、コラーゲン(例えば、I、II、およびVI)、骨髄精製、およびRGD/フィブロネクチン型が挙げられる。例示的な生理活性官能基としては、VEGF、サブスタンスP、チモシンベータ、心臓ホーミングペプチド、骨髄ホーミングペプチド、オステオポンチン、および骨形成ペプチドが挙げられる。例示的な生理活性官能基としては、以下の表3~5のものが挙げられる。
【0329】
【表3】
【0330】
【表4】
【0331】
【表5】

【0332】
ペプチドは、ペプチドまたは調製物の電荷またはpHを制御するか、または変化させるよう操作された官能基を有し得る。予め選択された電荷またはpHは生理活性特性を提供し得る。一部の実施形態では、予め選択された電荷またはpHが、抗微生物、抗真菌、および/または抗ウイルス特性を提供し得る。一部の実施形態では、予め選択された電荷またはpHにより、調製物を適合性標的部位に投与することが可能になり得る。
【0333】
ペプチドは抗微生物官能基を有し得る。抗微生物官能基は、抗微生物残基の保存された配列を含み得る。他の実施形態では、抗微生物官能基が、自己組織化官能基と重複または部分的に重複し得る。少なくとも1つの実施形態では、ペプチドが、交互または実質的に交互の抗微生物残基と自己組織化残基を有し得る。
【0334】
ペプチドは抗真菌官能基を有し得る。抗真菌官能基は、抗真菌残基の保存された配列を含み得る。他の実施形態では、抗真菌官能基が、自己組織化官能基と重複または部分的に重複し得る。少なくとも1つの実施形態では、ペプチドが、交互または実質的に交互の抗真菌残基と自己組織化残基を有し得る。
【0335】
ペプチドは抗ウイルス官能基を有し得る。抗ウイルス官能基は、抗ウイルス残基の保存された配列を含み得る。他の実施形態では、抗ウイルス官能基が、自己組織化官能基と重複または部分的に重複し得る。少なくとも1つの実施形態では、ペプチドが、交互または実質的に交互の抗ウイルス残基と自己組織化残基を有し得る。
【0336】
自己組織化したハイドロゲルは、標的部位で細胞保護特性を有するよう設計され得る。特に、自己組織化したハイドロゲルは外来微生物、例えば病原性微生物に対して保護的となるよう設計され得る。自己組織化したハイドロゲルは、真菌生物に対して保護的となるよう設計され得る。自己組織化したハイドロゲルは、環境免疫細胞からの免疫攻撃に対して保護的となるよう設計され得る。ハイドロゲルの抗微生物、抗ウイルス、抗真菌、および/または保護特性は、標的部位で細胞の生存性、増殖、または機能に実質的に影響を及ぼし得ない。
【0337】
ハイドロゲルの保護特性は、ペプチドの正味電荷を変化させることによって操作され得る。一部の実施形態では、正味電荷が、カチオン性粒子またはペプチドの存在または非存在、アニオン性粒子またはペプチドの存在または非存在、緩衝液、塩、ペプチド濃度、ペプチド純度、およびペプチド対イオンの存在または非存在のうちの1つまたは複数を制御することによって変化し得る。ペプチドは、正に帯電したアミノ酸残基、負に帯電したアミノ酸残基、疎水性アミノ酸残基、または親水性アミノ酸残基を有するよう操作され得る。例示的な実施形態では、ペプチドが、実質的に中性のpHレベルで正に帯電しているアミノ酸を含めることによって抗微生物、抗ウイルス、および/または抗真菌特性を提供し得る。このようなアミノ酸としては、例えば、アルギニン、リジン、トリプトファン、およびヒスチジンが挙げられ得る。
【0338】
ペプチドハイドロゲルは、抗微生物特性をさらに示し得る。一般に、抗微生物特性は、抗微生物官能基を含めることによって提供され得る。一部の実施形態では、抗微生物官能基がカチオンリッチペプチド配列を含み得る。例示的な実施形態では、抗微生物官能基が、様々な比のリジン(K)とアルギニン(R)を含み得る(図4)。抗微生物ペプチドハイドロゲルは、例えば、大腸菌(E.coli)(図4)、黄色ブドウ球菌(S.aureus)、および緑膿菌(P.aeruginosa)を含むグラム陽性菌およびグラム陰性菌に対する抗微生物効果を提供し得る。図4は、8個のアルギニン残基(PEP8R)、6個のアルギニン残基(PEP6R)、4個のアルギニン残基(PEP4R)、および2個のアルギニン残基(PEP2R)を有する様々な濃度のペプチドの(投与の24時間後に残っている、生きていない大腸菌(E.coli)のパーセントとしての)抗微生物活性を示すグラフである。
【0339】
ペプチドハイドロゲルは広域抗微生物活性を示し得る。ある特定の実施形態によると、ペプチドハイドロゲルは、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(S.aureus)(MRSA)を接種した部分層創傷においてインビボでバイオバーデンを減少させ得る(図5)。図5は、ペプチドゲルで生物発光MRSA(US300)を処理することの抗微生物利益を実証する予備的データを示している。画像(A)および(B)は、100μlのゲルおよび100μlのUS300(1×10CFU/ml)を蒔いたウェルを示し、1時間および3時間での対照と比較したペプチドゲルの抗微生物活性を実証している(n=3)。画像(C)は、50μlの10CFU/ml US300を接種し、ペプチドゲルで処置した部分層熱傷を有するマウスを示している。画像(C)に示されるように、マウスは、投与3時間後でバイオバーデン減少を示す。
【0340】
特に、ペプチドハイドロゲルは、外来および/または病原性微生物に対する抗微生物特性を示すことができ、投与細胞と適合性であり得る。例えば、このようなペプチドハイドロゲルは、哺乳類赤血球およびマクロファージと適合性であり得る。1つの例示的な実験では、細菌と哺乳動物細胞を本明細書に開示されるペプチドハイドロゲル上に同時に播種すると、細菌は死滅したが、哺乳動物細胞は24時間後に90%超が生存したままであり、増殖し続けることができた。
【0341】
一部の実施形態では、ペプチドが、MSC機能と適合性のまたは協力する生物活性を強化または促進する官能基を含み得る。例えば、ある特定の実施形態では、ペプチド配列が、フィブロネクチンを模倣し、ヒトMSCの接着および増殖を他のECMリガンドよりも大きく促進する官能基を含有し得る。ある特定の実施形態では、ペプチド配列が、炎症を抑制し、血管新生を誘導することによって、糖尿病性創傷の治癒を促進するための神経ペプチドを含む官能基を含有し得る。ある特定の実施形態では、ペプチド配列が、MSCの増殖および移動を誘導すると同時に、MSCの免疫調節機能を強化するための神経ペプチドを含む官能基を含有し得る。ある特定の実施形態では、ペプチド配列が、血管新生を増加させ、MSC増殖および移動を誘導することによって創傷治癒を改善する官能基を含有し得る。ある特定の実施形態では、ペプチド配列が、タンパク質分解活性を阻害する官能基を欠き得る。ペプチドは、当業者に公知の他の官能基を含有するよう操作され得る。
【0342】
インビトロでは、本明細書に開示されるペプチドハイドロゲルが、3D構築物中での細胞侵入および増殖を可能にし、ハイドロゲルが組織再生のための足場マトリックスとして働くのを可能にし得る。ペプチドハイドロゲルは、皮下植込み後に生体適合性を示し得る。実験は、皮下投与7日後にゲル植込み部位で最小の細胞片または死細胞を示す。実験は、ナイーブ組織と比較して、ゲルおよび周囲組織中のサイトカイン濃度の最小の上昇をさらに示し、ゲルが取るに足らない急性炎症効果を有することを示唆している。
【0343】
ペプチド調製物を含むキット
ペプチド調製物を含むキットが本明細書に記載される。キットは、ペプチド調製物および緩衝液を含み得る。緩衝液は、ペプチドの投与前にまたは投与と並行してペプチドの自己組織化を誘導するよう構成され得る。ペプチド調製物および緩衝液の各々はバイアルまたはチャンバーに含まれ得る。例えば、キットは、調製物および緩衝液の1つまたは複数を含有する充填済パッケージングを含み得る。キットは、ペプチド調製物を使用および/または送達するための1つまたは複数の装置を含み得る。キットは混合装置を含み得る。キットは送達装置を含み得る。ある特定の実施形態では、送達装置および/または混合装置が充填済パッケージングであり得、例えば、キットが、充填済シリンジ、スプレーボトル、アンプル、またはチューブを含み得る。図26は、最終使用容器に包装された調製物の写真である。図26の例示的な最終使用容器は充填済シリンジである。最終使用容器は、送達装置または混合装置として使用され得る。キットおよび/またはキットの任意の成分は無菌であり得るか、または滅菌され得る。例えば、キットおよび/または任意の成分は、オートクレーブ滅菌、場合により最終オートクレーブ滅菌を使用して滅菌され得る。
【0344】
キットのいずれか1つまたは複数の成分はオートクレーブ処理可能(autoclavable)であり得る。包装されたキットはオートクレーブ処理可能であり得る。キットのいずれか1つまたは複数の成分は滅菌され得るか、または無菌であり得る。例えば、キットのいずれか1つまたは複数の成分はオートクレーブによって滅菌され得る。滅菌された1つまたは複数の成分は、実質的に気密の容器に包装され得る。一部の実施形態では、包装されたキットが、例えばオートクレーブによって滅菌され得る。
【0345】
ある特定の実施形態では、キットが、乾燥形態または粉末形態の精製ペプチドを含み得る。例えば、精製ペプチドは凍結乾燥され得る。キットは、精製ペプチドと合わせてペプチド調製物を製造するための生体適合性溶液を含み得る。他の実施形態では、キットが、精製ペプチドを生体適合性溶液と合わせて調製物を製造するための説明書を含み得る。キットは緩衝液をさらに含み得る。
【0346】
キットは、使用のための説明書を含み得る。特に、キットは、場合により、混合装置中で、緩衝液を調製物と合わせて、ハイドロゲルを形成するための説明書を含み得る。使用者は、使用時に調製物と緩衝液を合わせるよう指示され得る。一部の実施形態では、使用者が、投与前にまたは投与と並行して調製物と緩衝液を合わせるよう指示され得る。使用者は、調製物と緩衝液を標的部位に別々に施用するよう指示され得る。
【0347】
キットは、推奨される貯蔵条件下でキットを貯蔵するための説明書をさらに含み得る。例えば、キットは、室温(およそ20~25℃)で調製物または任意の成分を貯蔵するための説明書を含み得る。キットは、冷蔵温度(およそ1~4℃)下で調製物または任意の成分を貯蔵するための説明書を含み得る。キットは、冷凍庫温度(およそ0~-20℃)下で調製物または任意の成分を貯蔵するための説明書を含み得る。キットは、体温(およそ36~38℃)で調製物または任意の成分を貯蔵するための説明書を含み得る。キットは、低温および乾燥条件下で調製物または任意の成分を貯蔵するための説明書を含み得る。
【0348】
キットは、調製物または任意の成分の失効の表示をさらに含み得る。失効の表示は包装の約1年後であり得る。失効の表示は包装の約6か月後~約10年後の間、例えば、包装の約1年後~約5年後の間であり得る。
【0349】
キットは、調製物と組み合わせて投与するための追加の成分を含み得る。一部の実施形態では、キットが、投与前または投与と並行して追加の成分を合わせるための説明書を含み得る。キットは、調製物と追加の成分を標的部位に別々に投与するための説明書を含み得る。追加の成分は、抗菌製剤、抗ウイルス製剤、抗真菌製剤、抗腫瘍製剤、抗炎症性製剤、細胞培養培地、細胞培養血清、防臭製剤、鎮痛剤、止血製剤、局所麻酔薬、もしくは疼痛緩和製剤であり得るか、またはこれを含み得る。特定の実施形態では、キットが、本明細書に記載されるように、調製物と組み合わせて投与するための細胞の培養物を含み得る。一部の実施形態では、キットが、ドレッシング材、例えば局所ドレッシング材、バリアドレッシング材、および/または創傷ドレッシング材をさらに含み得る。
【0350】
キットは、ハイドロゲルのせん断減粘を誘導するよう構成された1つまたは複数の成分を含み得る。混合装置または送達装置(下記)を使用して、機械的撹拌によってハイドロゲルのせん断減粘を誘導することができる。キットは、せん断減粘を誘導するための温度制御装置、pH制御添加剤、イオンキレート剤組成物、溶媒、音制御装置、凍結乾燥装置、および風乾装置から選択される1つまたは複数の成分を含み得る。例えば、キットは、加熱器もしくは冷却器、酸もしくは塩基源、イオンキレート剤源、溶媒源、スピーカーもしくは音声送信機、凍結乾燥器、または圧縮空気乾燥機、またはファンを含み得る。
【0351】
混合装置
治療時にハイドロゲルを調製するための混合装置が本明細書に開示される。装置はマルチチャンバー装置であり得る。例示的な実施形態では、装置が2チャンバー装置であり得る。装置はペプチド調製物用の第1のチャンバーを含み得る。調製物は、生体適合性溶液中に自己組織化ペプチドを含み得る。装置は、緩衝液用の第2のチャンバーを含み得る。第1のチャンバーと第2のチャンバーは、第1のチャンバーと第2のチャンバーとの間の流体連通を予防するために用意されたバリアによって分離され得る。装置は、場合により、混合チャンバーをさらに含み得る。混合チャンバーは、第1のチャンバーおよび第2のチャンバーと流体接続可能であり得る。混合前に、混合チャンバーは、バリアによって第1のチャンバーおよび/または第2のチャンバーから分離され得る。他の実施形態では、混合装置が、第1および第2のチャンバーの内容物を直接混合するよう構成され得る。一部の実施形態では、装置が、対象に投与するための追加の製剤または化合物用の第3のチャンバーを含み得る。第3のチャンバーは、第1のチャンバー、第2のチャンバー、および/または混合チャンバーから分離され得る。第3のチャンバーは、第1のチャンバーおよび/または第2のチャンバーと直接または混合チャンバーを介して流体接続可能であり得る。
【0352】
装置は単回使用装置であり得る。装置は複数回使用装置であり得る。
【0353】
例示的な実施形態では、第1、第2、または第3のチャンバーの各々がシリンジバレルであり得る。各バレルは、撹拌用の会合プランジャーを有し得る。各バレルは、混合チャンバーを形成する、連結アダプターに密閉して取り付けられ得る。密閉取り付けは、例えば、ルアーロックまたはルアーテーパー接続であり得る。
【0354】
調製物および緩衝液を撹拌またはその他の方法で混合して均質または実質的に均質な混合物を形成し、ハイドロゲル化を誘導することができる。一部の実施形態では、調製物および緩衝液が、混合物を第1のチャンバーと第2のチャンバーとの間で前後に動かすことによって撹拌され得る。一部の実施形態では、ハイドロゲルが、撹拌中に混合物が実質的に液体になるように、せん断減粘特性を示す。沈降すると、混合物は固体またはゲル材料を形成し得る。
【0355】
例示的な実施形態では、装置が、使用時に細胞移植片を調製するよう構成され得る。使用時、第1のチャンバーが細胞調製物を含み、第2のチャンバーがペプチド調製物を含み得る。細胞調製物が緩衝液を含み得る。あるいは、第3のチャンバーが緩衝液を含み得る。作動時、細胞調製物とペプチド調製物が混合または接触し得る、すなわち、混合チャンバー内にあり得る。細胞をペプチド溶液に懸濁し、自己組織化ペプチドを含む細胞懸濁液を形成することができる。
【0356】
細胞調製物およびペプチド調製物を緩衝液と混合して、緩衝懸濁液を形成することができる。緩衝懸濁液を上記のように撹拌して、ハイドロゲルの自己組織化を誘導することができる。緩衝懸濁液を撹拌して細胞を分散させて、均質または実質的に均質な混合物を形成することができる。均質または実質的に均質な懸濁液は自己組織化してハイドロゲル細胞移植片を形成することができる。
【0357】
混合装置は静的混合装置であり得る。静的ミキサーは、一般に、成分を動かすことなく、調製物を実質的に連続的に混合するための装置を含み得る。例えば、静的ミキサーは、混合される各成分のための1つまたは複数の入口と混合物のための単一の出口を有する、円筒形または長方形ハウジングを備え得る。静的ミキサーはプレート型ミキサーを含み得る。
【0358】
混合装置は、一般に、不活性で、熱的に安定な材料で形成され得るか、またはこれで裏打ちされ得る。ある特定の実施形態では、材料が不透明および/または飛散防止であり得る。
【0359】
送達装置
一部の実施形態では、キットが送達装置を含み得る。例えば、キットはシリンジまたはカテーテルを含み得る。キットは点滴器を含み得る。キットは、例えばボトルと合わせて、スプレーを含み得る。スプレー装置は、例えば、鼻スプレーであり得る。キットはチューブまたはアンプルを含み得る。キットは、例えば、フィルムを含み得る。送達装置の種類は、標的効能に基づいて選択され得る。さらに、送達装置の特性は、標的効能に基づいて選択され得る。例えば、調製物の局所送達用のシリンジは、調製物の注射用のシリンジよりも大きな通路を有し得る。
【0360】
一部の実施形態では、シリンジが調製物の局所施用に使用され得る。他の実施形態では、シリンジが非経口施用のための針を含み得る。シリンジの針は、7~34の間のバーミンガムシステムゲージを有し得る。カテーテルが非経口施用に使用され得る。カテーテルの針は、14~26の間のバーミンガムシステムゲージを有し得る。ペプチドは、特定のゲージ針を通した投与のために製剤化され得る。例えば、ペプチドは、特定のゲージ針を通した調製物の施用を可能にする可変的粘度を有するよう選択され得る。
【0361】
一部の実施形態では、スプレーボトルが調製物の局所施用に使用され得る。スプレーボトルは、調製物用の容器およびスプレーノズルを備え得る。スプレーノズルは、標的組織への標的化送達用に構成され得る。例えば、上皮組織への標的化送達用のスプレーノズルは実質的に平らな面を有し、鼻腔内組織への標的化送達用のスプレーノズルは実質的に円錐形の面を有し得る。スプレーノズルは、所定量の調製物を送達するよう構成され得る。一部の実施形態では、スプレーノズルが、場合により、スプレーボトルの配向にかかわらず、実質的に一方向性の流れで調製物を送達するよう構成され得る。
【0362】
スプレーノズルは逆流を減少させるよう構成され得る。ある特定の実施形態では、スプレーノズルがスプリング式(spring-loaded)であり得る。他の実施形態では、スプレーノズルが圧力作動式であり得る。作動圧力は、調製物の可変的粘度に基づいて選択され得る。例えば、作動圧力は、スプレーノズルを通してハイドロゲルを分注するのに十分となるよう選択され得る。
【0363】
フィルムは調製物の局所施用に使用され得る。フィルムは調製物で飽和され得る。フィルムはバリアドレッシング材および/または止血剤として使用され得る。一部の実施形態では、フィルムがバリアドレッシング材を伴い得る。
【0364】
送達装置は単回使用装置であり得る。送達装置は複数回使用装置であり得る。送達装置は、ペプチド調製物用の第1のチャンバーを含み得る。調製物は、生体適合性溶液中に自己組織化ペプチドを含み得る。送達装置は、緩衝液用の第2のチャンバーを含み得る。第1のチャンバーと第2のチャンバーは、第1のチャンバーと第2のチャンバーとの間の流体連通を予防するために用意されたバリアによって分離され得る。送達装置は、ペプチド調製物と緩衝液を同時または実質的に同時に投与するよう構築および配置され得る。一部の実施形態では、送達装置が、追加の製剤または化合物を対象に投与するための第3のチャンバーを含み得る。第3のチャンバーは、第1のチャンバーおよび/または第2のチャンバーから分離され得る。
【0365】
送達装置は、一般に、不活性で、熱的に安定な材料で形成され得るか、またはこれで裏打ちされ得る。ある特定の実施形態では、材料が不透明および/または飛散防止であり得る。
【0366】
コーティング医療または手術装置
一部の実施形態では、医療または手術ツールが、外面の少なくとも一部が本明細書に開示される調製物またはハイドロゲルでコーティングされていてもよい。コーティングにより、ツールの外面が抗微生物特性を示すことが可能になり、感染の発生率を低下させることができる。コーティングにより、ツールの外面が生体適合性または細胞適合性となることが可能になり、接触による拒絶および有害反応を減少させることができる。
【0367】
手術ツールは手術器具であり得る。例えば、ツールは、把持器、例えば鉗子、クランプもしくは遮眼子、ニードルドライバーもしくは持針器、縫合糸もしくは縫合針、開創器、伸延器、ポジショナー、定位装置、メカニカルカッター、例えばメス、ランセット、ドリルビット、やすり、トロカール、リガシュア、ハーモニックスカルペル、外科用鋏、もしくは骨鉗子、拡張器、検鏡、吸引チップもしくは管、シーリング装置、例えば外科用ステープラー、イリゲーションニードルもしくは注射針、チップおよびチューブ、受電装置、例えばドリル、頭蓋ドリル、もしくは採皮刀、ファイバー内視鏡および触覚プローブを含むスコープもしくはプローブ、光学、電子、および機械装置用のキャリアもしくはアプリケーター、超音波組織破壊装置、クライオトーム(cryotome)、切断レーザーガイド、または測定装置、例えばルーラーもしくはキャリパーであり得る。他の手術ツールまたは器具も本開示の範囲内にある。
【0368】
医療または手術ツールは植込み型ツールであり得る。例えば、医療または手術ツールは、植込み型除細動器(IUD)、ペースメーカー、子宮内避妊用具(IUD)、ステント、例えば冠動脈ステント、耳チューブ、または眼レンズなどの植込み型装置であり得る。他の植込み型ツールも本開示の範囲内にある。植込み型医療または手術ツールは、補綴装置またはその一部、例えば、人工股関節、人工膝、人工肩、もしくは人口骨、または義肢の一部であり得る。植込み型医療または手術ツールは、ねじ、ロッド、ピン、プレート、ディスク、または他の機械的支持などの機械的ツールであり得る。植込み型医療または手術ツールは、乳房インプラント、腓腹インプラント、臀部インプラント、顎インプラント、頬骨インプラント、または他のプラスチックもしくは再建術インプラントなどの美容ツールであり得る。他の医療または植込み型ツールも本開示の範囲内にある。
【0369】
製剤および/またはコーティングの厚さは、一時的となる、例えば、所定の期間、例えば、約3か月未満、約1か月未満、または約2週間未満以内に分解するよう選択され得る。製剤および/またはコーティングの厚さは、半永久的となる、例えば、約3か月~3年の間、または約6か月~約2年の間の所定の期間内に分解するよう選択され得る。製剤および/またはコーティングの厚さは、永久的となる、例えば、2年超もしくは3年超の寿命を有するか、または医療もしくは手術ツールが対象と接触している所定の期間より長い寿命を有するよう選択され得る。
【0370】
ペプチドハイドロゲルの投与による処置方法
一部の実施形態では、本明細書に開示される調製物が所定のレジメンに従って投与され得る。本明細書に開示される調製物は、毎日、毎週、毎月、毎年、隔年投与され得る。
【0371】
本明細書に開示される調製物は即時放出効果をもたらし得る。例えば、有効成分の作用の開始が、1分未満、数分、または1時間未満であり得る。
【0372】
本明細書に開示される調製物は遅延放出効果をもたらし得る。例えば、有効成分の作用の開始が、1時間超、数時間、1日超、数日超、または1週間超であり得る。
【0373】
本明細書に開示される調製物は延長放出効果をもたらし得る。例えば、調製物が、1日間超、数日間超、1週間超、1か月間超、数か月間、または最大約6か月間有効であり得る。
【0374】
本明細書に開示される調製物は、関連疾患もしくは障害または関連疾患もしくは障害の症状を処置する医学的アプローチと合わせて投与され得る。例えば、調製物は、関連疾患もしくは障害または関連疾患もしくは障害の症状を処置するために承認されている医学的アプローチと合わせて投与される。調製物は、関連疾患もしくは障害または関連疾患もしくは障害の症状を処置するために一般的に使用される医学的アプローチと合わせて投与され得る。
【0375】
本明細書に開示される調製物は、外科的処置と組み合わせて投与され得る。本明細書に開示される調製物は、外科的処置に関連する創傷を処置するため、および/またはバイオフィルムを予防もしくは処置するために投与され得る。
【0376】
本明細書に開示される調製物は、抗炎症剤または処置と組み合わせて投与され得る。抗炎症剤は、局所または全身性炎症を低減または阻害する組成物または処置を指す。抗炎症剤は、例えば、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、抗ロイコトリエン薬、免疫選択的抗炎症誘導体(ImSAID)、および/または低体温処置を含み得る。
【0377】
本明細書に開示される調製物は、抗菌剤、抗ウイルス剤、および/または抗真菌剤と組み合わせて投与され得る。このような薬剤は、それぞれ、細菌、ウイルス、および/または真菌生物を排除するか、またはその増殖を阻害する組成物または処置を指し得る。例示的な抗菌剤としては、抗生物質ならびに局所防腐剤および消毒剤が挙げられる。抗ウイルス剤は、標的特異的抗ウイルス剤または広域スペクトル抗ウイルス剤(例えば、ムデシビル、リトナビル/ロピナビル)であり得る。例示的な局所抗ウイルス剤としては、局所防腐剤および消毒剤が挙げられる。例示的な抗真菌剤としては、抗真菌抗生物質、合成剤(例えば、フルシトシン、アゾール、アリルアミン、およびエキノカンジン)、ならびに局所防腐剤および消毒剤が挙げられる。
【0378】
本明細書に開示される調製物は、創傷、例えば、急性、亜急性、または慢性創傷を処置するために投与され得る。創傷は、外科的創傷、裂傷、熱傷、咬傷/刺傷、血管創傷(静脈、動脈または混合)、糖尿病性創傷、神経障害性創傷、褥瘡、虚血性創傷、水分関連皮膚炎、または病理学的プロセスの結果であり得る。ある特定の実施形態では、調製物が、糖尿病性足潰瘍(DFU)を処置するのに有効な量で投与され得る。ある特定の実施形態では、調製物が、痔瘻、憩室炎、または潰瘍などの胃腸創傷を処置するのに有効な量で投与され得る。特に、調製物は、無感染創傷閉鎖を促進するのに有効な量で投与され得る。
【0379】
本明細書に開示される調製物は、麻酔および/または疼痛緩和を提供する処置または薬剤、例えば局所麻酔薬と組み合わせて投与され得る。「麻酔薬」は、感覚または意識の一時的喪失をもたらす組成物を指し得る。麻酔薬は、全身麻酔薬(例えば、GABA受容体アゴニスト、NMDA受容体アンタゴニスト、または2細孔カリウムチャネルアクチベーター)または局所麻酔薬(例えば、エステル基剤、アミド基剤、および天然由来の薬剤)であり得る。
【0380】
調製物は、鎮痛剤または疼痛緩和剤と組み合わせて投与され得る。「鎮痛剤」は、疼痛の全身処置または阻害のための組成物を指し得る。鎮痛剤は、抗炎症剤またはオピオイドを含み得る。
【0381】
本明細書に開示される調製物は、止血剤と組み合わせて投与され得る。「止血剤」は、出血を制御するためのツールまたは組成物を指し得る。例示的な止血組成物としては、コラーゲン系剤、セルロース系剤、およびキトサン系剤が挙げられる。
【0382】
本明細書に開示される調製物は、細胞または組織移植片療法を強化する処置または薬剤と組み合わせて投与され得る。ある特定の実施形態では、本明細書に開示される調製物が、細胞死を予防もしくは阻害する、および/または炎症を制御もしくは低減する処置または薬剤と組み合わせて投与され得る。本明細書に開示される調製物は、細胞培養培地または細胞培養血清と組み合わせて投与され得る。
【0383】
投与されたペプチドハイドロゲルは即時局所効果を有し得る。例えば、投与された調製物は、創傷を閉鎖するか、または空隙を埋めることによって、局在化創傷治癒または傷害処置効果を提供し得る。ある特定の実施形態では、投与されたハイドロゲルが全身効果を有し得る。例えば、投与されたハイドロゲルにより、細胞移植片と環境細胞とのとの間の細胞移動または連通が可能になり、全身効果をもたらし得る。他の実施形態では、投与されたハイドロゲルにより、細胞産物または副産物の送達が可能になり、全身効果をもたらし得る。投与されたペプチドハイドロゲルは、投与の局在化部位で抗微生物、抗ウイルス、および/または抗真菌特性を有し得る。他の実施形態では、投与されたペプチドハイドロゲルが、全身抗微生物、抗ウイルス、および/または抗真菌特性を提供し得る。
【0384】
投与されたペプチドハイドロゲルは、投与の局在化部位で長期の持続的な抗微生物、抗ウイルス、および/または抗真菌特性を有し得る。ペプチドは、直接接触抗微生物、抗ウイルス、抗真菌効果を有するハイドロゲルを形成するよう設計され得る。よって、ハイドロゲルは、標的部位でハイドロゲルと直接接触する微生物を根絶し得る。ハイドロゲルは、封入抗微生物剤、抗ウイルス剤、および/または抗真菌剤を実質的に含まないことができる。さらに、ハイドロゲルが標的組織と接触している限り、局所抗微生物、抗ウイルス、および/または抗真菌効果が持続し得る。図2は、標的部位で持続的な抗微生物、抗ウイルス、および/または抗真菌効果を示す画像を含む。
【0385】
全身抗微生物、抗ウイルス、および/または抗真菌効果を提供するために、ペプチドハイドロゲルは、封入抗微生物剤、抗ウイルス剤、および/または抗真菌剤をさらに含むことができる。このようなハイドロゲルの投与は、一般に、(1)前に記載されるような直接接触による局所抗微生物、抗ウイルス、および/または抗真菌処置、ならびに(2)封入治療剤のビヒクルとしての全身抗微生物、抗ウイルス、および/または抗真菌処置を提供し得る。
【0386】
本明細書に開示される調製物は、止血剤、デブリードマン剤、またはバリアドレッシング材(例えば、抗微生物、抗真菌、または抗ウイルスバリアドレッシング材)として製剤化され得る。調製物は創傷処置用に製剤化され得る。調製物の投与によって処置され得る例示的な創傷としては、部分および全層創傷(例えば、褥瘡、下腿潰瘍、糖尿病性潰瘍)、第1度および第2度熱傷、トンネル/ポケット創傷、外科的創傷(例えば、採皮部/移植片、組織および細胞移植片、モース術後、レーザー手術後、足病治療、音離開に関連する)、外傷性創傷(例えば、擦過傷、裂傷、熱傷、スキンテア)、胃腸創傷(例えば、痔瘻、憩室炎、潰瘍)、および排液性創傷が挙げられる。調製物は、所定の標的組織、例えば、間葉組織、結合組織、筋組織、神経組織、胚組織、真皮組織、骨組織、歯系組織、角膜組織、皮膚組織、外皮組織、軟部組織、および硬組織、または生体液への投与用に製剤化され得る。
【0387】
微生物感染を処置する方法
調製物は、標的部位で投与すると抗微生物特性を提供するよう製剤化され得る。例えば、自己組織化したポリマーハイドロゲルは抗微生物特性を有し得る。本明細書に開示される場合、「抗微生物」特性は、微生物集団に対する効果、例えば、微生物集団の1つまたは複数の微生物を死滅させるか、または阻害することを指し得る。よって、微生物感染症を処置するか、または標的微生物の増殖を阻害する方法が本明細書に開示される。「増殖」は、一般に、生物の代謝または生殖活性を指し得る。微生物汚染を低減または排除する方法が本明細書に開示される。微生物バイオバーデンを管理する方法が本明細書に開示される。方法は、一般に、標的微生物の非活性化を促進するのに有効な量の調製物を投与するステップを含み得る。特に、約3.0%w/v以下、例えば、1.5%w/v以下、または1.0%w/v以下のペプチドを含む調製物が、標的部位で抗微生物特性を提供し得る。
【0388】
方法は、対象を、微生物汚染、定着、または感染の処置を必要とすると特定するステップを含み得る。一般に、微生物定着または感染は、病原性微生物(疾患を引き起こす微生物)の増殖によって誘導され得る。微生物汚染は、1つまたは複数の微生物の存在によって特定され得る。一部の実施形態では、方法が、微生物定着または感染の予防または処置に使用され得る。微生物定着は、1つまたは複数の微生物の確立されたコロニーを指し得る。微生物感染は、臨床評価によって診断された、1つまたは複数の微生物の確立されたコロニーを指し得る。微生物定着または感染は限局性または全身性であり得る。一般に、十分な処置が提供されない場合に、微生物汚染が微生物定着または感染に発達し得る。
【0389】
調製物は、バイオフィルムまたは微生物感染症を処置するのに有効な量で投与され得る。方法は、一般に、病原性微生物の非活性化を促進するのに有効な量の調製物を投与するステップを含み得る。ある特定の実施形態では、病原性微生物が病原性細菌生物であり得る。例えば、調製物および方法は、広域(グラム陽性およびグラム陰性)細菌の非活性化の促進に有効であり得る。病原性微生物は、バチルス属(Bacillus)、バルトネラ属(Bartonella)、ボルデテラ属(Bordetella)、ボレリア属(Borrelia)、ブルセラ属(Brucella)、カンピロバクター属(Campylobacter)、クラミジア属(Chlamydia)、クラミドフィラ属(Chlamydophila)、クロストリディオイデス属(Clostridioides)、クロストリジウム属(Clostridium)、コリネバクテリウム属(Corynebacterium)、エンテロコッカス属(Enterococcus)、エシェリキア属(Escherichia)、フランシセラ属(Francisella)、ヘモフィルス属(Haemophilus)、ヘリコバクター属(Helicobacter)、レジオネラ属(Legionella)、レプトスピラ属(Leptospira)、リステリア属(Listeria)、マイコバクテリウム属(Mycobacterium)、マイコプラズマ属(Mycoplasma)、ナイセリア属(Neisseria)、シュードモナス属(Pseudomonas)、リケッチア属(Rickettsia)、サルモネラ属(Salmonella)、シゲラ属(Shigella)、スタフィロコッカス属(Staphylococcus)、ストレプトコッカス属(Streptococcus)、トレポネーマ属(Treponema)、ウレアプラズマ属(Ureaplasma)、ビブリオ属(Vibrio)、およびエルシニア属(Yersinia)から選択される属の種であり得る。
【0390】
調製物は、外科的処置と組み合わせて投与され得る。方法は、標的部位で標的微生物の少なくとも90%を滅菌するのに有効な量の調製物を投与するステップを含み得る。例えば、方法は、標的部位で標的微生物の少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.9%、少なくとも99.99%、または少なくとも99.999%を滅菌するのに有効な量の調製物を投与するステップを含み得る。例示的な標的部位としては、上皮組織、胃腸系組織、呼吸器系組織、心臓系組織、神経系組織、生殖系組織、眼組織、聴覚組織、および血流が挙げられる。上皮組織としては、例えば、上皮、真皮、毛髪、および爪が挙げられ得る。しかしながら、追加の標的部位が本明細書に開示される方法によって処置され得る。本明細書に開示される場合、滅菌するは、標的部位で微生物を排除する、除去する、死滅させる、または非活性化する任意のプロセスを指し得る。
【0391】
真菌感染を処置する方法
調製物は、標的部位で投与すると抗真菌特性を提供するよう製剤化され得る。例えば、自己組織化したポリマーハイドロゲルは抗真菌特性を有し得る。本明細書に開示される場合、「抗真菌」特性は、真菌集団に対する効果、例えば、真菌集団の1つまたは複数の微生物を死滅させるか、または阻害することを指し得る。よって、真菌感染症を処置するか、または真菌生物の増殖を阻害する方法が本明細書に開示される。方法は、一般に、真菌生物の非活性化を促進するのに有効な量の調製物を投与するステップを含み得る。真菌汚染を低減または排除する方法が本明細書に開示される。例示的な実施形態では、約3.0%w/v以下、例えば、1.5%w/v以下、または1.0%w/v以下のペプチドを含む調製物が、標的部位で抗真菌特性を提供し得る。
【0392】
方法は、対象を、真菌汚染、定着、または感染の処置を必要とすると特定するステップを含み得る。ある特定の実施形態では、調製物が、対象のバイオフィルム、体部白癬、カンジダ症、ブラストミセス症、コクシジオイデス症、ヒストプラズマ症、クリプトコッカス症、パラコクシジオイデス症、アスペルギルス症、アスペルギルス腫、髄膜炎、ムコール症、ニューモシスチス肺炎(PCP)、タラロマイセス症(Talaromycosis)、スポロトリクム症、および真菌性菌腫(Eumycetoma)の少なくとも1つを処置するのに有効な量で投与され得る。一部の実施形態では、真菌生物が、アスペルギルス属(Aspergillus)およびカンジダ属(Candida)から選択される属の種であり得る。
【0393】
調製物および方法は、広域(胞子形成および非胞子形成)真菌生物の非活性化の促進に有効であり得る。調製物は、アスペルギルス・クラバタス(Aspergillus clavatus)、アスペルギルス・フィスケリアヌス(Aspergillus fischerianus)、アスペルギルス・フラバス(Aspergillus flavus)、アスペルギルス・フミガーツス(Aspergillus fumigatus)、クロコウジカビ(Aspergillus niger)、トリコフィトン・メンタグロフィテス(Trichophyton mentagrophytes)、トリコフィトン・ルブルム(Trichophyton rubrum)、イヌ小胞子菌(Microsporum canis)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、カンジダ・アウリス(Candida auris)、カンジダ・パラプシローシス(Candida parapsilosis)、カンジダ・トロピカリス(Candida tropicalis)、ブラストミセス・デルマチチジス(Blastomyces dermatitidis)、コクシジオイデス・イミティス(Coccidioides immitis)、コクシジオイデス・ポサダシイ(Coccidioides posadasii)、クリプトコッカス・ガッティ(Cryptococcus gattii)、クリプトコッカス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)、ヒストプラズマ・カプスラーツム(Histoplasma capsulatum)、パラコクシジオイデス・ブラジリエンシス(Paracoccidioides brasiliensis)、ニューモシスチス・イロベチイ(Pneumocystis jirovecii)、ムコールミセテス・リゾプス(Mucormycetes rhizopus)、ムコールミセテス・ムコール(Mucormycetes mucor)、ムコールミセテス・リクテイミア(Mucormycetes lichtheimia)、タラロマイセス・マルネッフェイ(Talaromyces marneffei)、スポロトリックス・シェンキイ(Sporothrix schenckii)、アクレモニウム・ストリクタム(Acremonium strictum)、ノエテスツディナ・ロサチイ(Noetestudina rosatii)、ファエオアクレモニウム・クラジェデニイ(Phaeoacremonium krajdenii)、シュードアレシェリア・ボイジイ(Pseudallescheria boydii)、カーブラリア・ルナータ(Curvularia lunata)、クラドフィアロフォラ・バンティアナ(Cladophilaophora bantiana)、エクソフィアラ・ジャンセルメイ(Exophiala jeanselmei)、レプトスファエリア・セネガレンシス(Leptosphaeria senegalensis)、レプトスファエリア・トンプキンシイ(Leptosphaeria tompkinsii)、マズレラ・グリセア(Madurella grisea)、マズレラ・マイセトマチス(Madurella mycetomatis)、ピレノケータ・ロメロイ(Pyrenochaeta romeroi)、トリコスポロン・アサヒ(Trichosporon asahii)、クラドスポリウム・ヘルバルム(Cladosporium herbarum)、およびフザリウム・スポロトリコイデス(Fusarium sporotrichioides)の少なくとも1つに関連する真菌感染症を処置するか、またはその増殖を阻害するのに有効な量で投与され得る。
【0394】
調製物は、外科的処置と組み合わせて投与され得る。方法は、標的部位で真菌生物の少なくとも90%を滅菌するのに有効な量の調製物を投与するステップを含み得る。例えば、方法は、標的部位で真菌生物の少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.9%、少なくとも99.99%、または少なくとも99.999%を滅菌するのに有効な量の調製物を投与するステップを含み得る。例示的な標的部位としては、上皮組織、口腔組織、食道組織、気管組織、肺組織、心臓組織、腎臓組織、眼組織、および血流が挙げられ得る。上皮組織としては、例えば、上皮、真皮、毛髪、および爪が挙げられ得る。しかしながら、追加の標的部位が本明細書に開示される方法によって処置され得る。本明細書に開示される場合、滅菌するは、標的部位で真菌生物を排除する、除去する、死滅させる、または非活性化する任意のプロセスを指し得る。
【0395】
バイオフィルムを処置する方法
調製物はバイオフィルムを処置するために製剤化され得る。よって、本明細書に開示される方法はバイオフィルムの処置を含み得る。バイオフィルムの処置は、一般に、バイオフィルムの少なくとも一部を排除すること、またはバイオフィルム形成を阻害することを含み得る。調製物の投与は、バイオフィルム集団に対する効果、例えば、バイオフィルム群集中の1つまたは複数の生物を死滅させるか、または阻害することを有し得る。一般に、帯電したペプチドポリマーハイドロゲルは、接触すると多微生物性真菌および細菌バイオフィルムバリアを分解し得る。理論によって拘束されることを望むものではないが、本明細書に開示される調製物が、バイオフィルム集団の細胞外マトリックスを解体し、バイオフィルムの真菌、ウイルス、および微生物生物をハイドロゲルのカチオン性ペプチドに曝露させるよう選択され得ると考えられる。ペプチドハイドロゲルは、バイオフィルム内の微生物、真菌、およびウイルス生物を破壊することによって有効になり得る。調製物は、細胞溶解を通して、例えばバイオフィルム集団中の真菌、微生物、および/またはウイルス生物を破壊する抗真菌、抗微生物、および/または抗ウイルスペプチドとして投与され得る。
【0396】
バイオフィルムを管理する方法も本明細書に開示される。例えば、方法はバイオフィルムを予防するために使用され得る。調製物は、バイオフィルムの集団を有する、またはバイオフィルムを発達しやすいと特定された標的組織、例えば創傷または創傷組織に投与され得る。調製物は、組織汚染または臭いに応じて投与され得る。
【0397】
方法は、一般に、バイオフィルムの処置および/またはバイオフィルム集団の非活性化を促進するのに有効な量の調製物を投与するステップを含み得る。バイオフィルム集団は、細菌生物、例えばグラム陽性および/またはグラム陰性細菌生物を含み得る。バイオフィルム集団は、真菌生物、例えば、胞子形成および/または非胞子形成真菌生物を含み得る。よって、調製物は、上記の抗微生物および/または抗真菌特性ならびに方法によるバイオフィルムの処置を提供し得る。ある特定の実施形態では、バイオフィルム集団がウイルス生物を含み得る。調製物は、本明細書に記載される抗ウイルス特性および方法によるバイオフィルムの処置を提供し得る。
【0398】
調製物は、バイオフィルム除去剤として製剤化され得る。一部の実施形態では、調製物がバイオフィルムを除去するために標的組織に投与され得る。例えば、調製物は、バイオフィルムおよび/またはバイオフィルム感染組織のデブリードマンのために投与され得る。
【0399】
ウイルス感染を処置する方法
調製物は、標的部位で投与すると抗ウイルス特性を提供するよう製剤化され得る。例えば、自己組織化したポリマーハイドロゲルは抗ウイルス特性を有し得る。本明細書に開示される場合、「抗ウイルス」特性は、ウイルス集団に対する効果、例えば、ウイルス集団の1つまたは複数の微生物を死滅させるか、または阻害することを指し得る。よって、ウイルス感染症を処置するか、またはウイルス生物の増殖を阻害する方法が本明細書に開示される。方法は、一般に、ウイルス生物の非活性化を促進するのに有効な量の調製物を投与するステップを含み得る。ウイルス汚染を低減または排除する方法が本明細書に開示される。例示的な実施形態では、約3.0%w/v以下、例えば、1.5%w/v以下、または1.0%w/v以下のペプチドを含む調製物が標的部位で抗ウイルス特性を提供し得る。
【0400】
方法は、対象を、ウイルス汚染、定着、または感染の処置を必要とすると特定するステップを含み得る。ある特定の実施形態では、調製物が、対象の呼吸器ウイルス定着または感染症(例えば、ライノウイルス、インフルエンザ、コロナウイルス、または呼吸器合胞体ウイルスに関連する)、ウイルス皮膚感染症(例えば、伝染性軟属腫、単純ヘルペスウイルス、または水痘帯状疱疹ウイルスに関連する)、食物媒介性ウイルス感染症(例えば、A型肝炎、ノロウイルス、またはロタウイルスに関連する)、性感染ウイルス感染症(例えば、ヒトパピローマウイルス、B型肝炎、性器ヘルペス、またはヒト免疫不全ウイルスに関連する)、および他のウイルス感染症(例えば、エプスタイン・バーウイルス、ウエストナイルウイルス、またはウイルス性髄膜炎に関連する)の少なくとも1つを処置するのに有効な量で投与され得る。
【0401】
調製物は、外科的処置と組み合わせて投与され得る。方法は、標的部位でウイルス生物の少なくとも90%を滅菌するのに有効な量の調製物を投与するステップを含み得る。例えば、方法は、標的部位でまたは全身的にウイルス生物の少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.9%、少なくとも99.99%、または少なくとも99.999%を滅菌するのに有効な量の調製物を投与するステップを含み得る。一部の実施形態では、方法が、標的部位でまたは全身的にウイルス生物の100%を滅菌するのに有効な量の調製物を投与するステップを含み得る。ある特定の実施形態では、調製物が、バイオフィルムを処置する、またはウイルス生物を含有するバイオフィルム集団を死滅させるかもしくは非活性化するのに有効な量で投与され得る。
【0402】
例示的な標的部位としては、上皮組織、口腔組織、食道組織、気管組織、肺組織、心臓組織、腎臓組織、眼組織、および血流が挙げられ得る。しかしながら、追加の標的部位が本明細書に開示される方法によって処置され得る。本明細書に開示される場合、滅菌するは、標的部位でウイルス生物を排除する、除去する、死滅させる、または非活性化する任意のプロセスを指し得る。
【0403】
ペプチドハイドロゲルを投与する方法
ペプチドハイドロゲルは、当業者に公知の任意の投与様式によって投与され得る。投与方法は、対象の標的部位を選択するステップと、調製物を標的部位に投与するステップとを含み得る。ある特定の実施形態では、方法が、ペプチドを、ペプチドの自己組織化を誘導するよう構成された緩衝液と混合してハイドロゲルを形成するステップを含み得る。一般に、ペプチドは投与前に緩衝液と混合され得る。しかしながら、一部の実施形態では、ペプチドが標的部位で緩衝液と合わせられ得る。
【0404】
標的部位は任意の体組織または血流であり得る。一部の実施形態では、標的部位が、上皮組織、胃腸系組織、呼吸器系組織、心臓系組織、神経系組織、生殖系組織、眼組織、または聴覚組織であり得る。投与経路は、標的組織に基づいて選択され得る。例示的な投与経路を以下でさらに詳細に論じる。
【0405】
一部の実施形態では、方法が、調製物の投与を必要とする対象を特定するステップを含み得る。方法は、標的部位を画像化するステップまたは全身的にもしくは標的部位で対象の少なくとも1つのパラメータを監視するステップを含み得る。監視され得る例示的なパラメータとしては、温度、pH、光刺激に対する反応、および誘電刺激に対する反応が挙げられる。よって、一部の実施形態では、方法が、反応を測定するために、場合により標的部位で、光刺激または誘電刺激を対象に提供するステップを含み得る。反応は、場合によりメモリ記憶装置に記録され得る。一般に、使用者に調製物の投与の必要性または要求を知らせることができる任意のパラメータが監視および/または記録され得る。方法は、調製物の投与前に、調製物の投与と並行して、または調製物の投与後に、標的部位を画像化するステップまたは対象の少なくとも1つのパラメータを監視するステップを含み得る。例えば、方法は、調製物の初回投与後かつ潜在的なその後の投与前に、標的部位を画像化するステップまたは対象の少なくとも1つのパラメータを監視するステップを含み得る。
【0406】
ある特定の実施形態では、調製物が、標的値の許容値の外側にある測定パラメータに応じて投与され得る。調製物は、測定パラメータに応じて自動または手動で投与され得る。
【0407】
調製物は、局所、非経口、または経腸投与用に製剤化され得る。調製物は全身投与用に製剤化され得る。様々な薬学的に許容される担体およびその製剤は、標準的な製剤論文、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences E.W.Martinに記載されている。Wang,Y.J.およびHanson,M.A.、Journal of Parenteral Science and Technology、Technical Report 第10号 補遺42:2S,1988;Aulton,M.およびTaylor,K.、Aulton’s Pharmaceutics:The Design and Manufacture of Medicines、第5版、2017;Antoine,A.、Gupta M.R.、およびStagner,W.C.、Integrated Pharmaceutics:Applied Preformulation,Product Design,and Regulatory Science、2013;Dodou K.Exploring the Unconventional Routes-Rectal and Vaginal Dosage Formulations、The Pharmaceutical Journal、2012年8月29日も参照されたい。
【0408】
ペプチドハイドロゲルの非経口投与
【0409】
ある特定の実施形態では、ハイドロゲルが非経口投与され得る。一般に、非経口投与には、経腸ではない任意の投与経路が含まれ得る。調製物は、低侵襲的処置を介して非経口投与され得る。特定の実施形態では、非経口投与が、シリンジ、例えば、針、またはカテーテルによる送達を含み得る。例えば、非経口投与は、注射による送達を含み得る。非経口投与は、筋肉内、皮下、静脈内、または皮内であり得る。ハイドロゲルのせん断減粘能力により、依然として低侵襲的処置を提供しながら、小管腔を通した分配が可能になり得る。
【0410】
方法は、非経口投与のために機械力をハイドロゲルに加えるステップを含み得る。ハイドロゲルは、加えられた機械力、例えば、注射により調製物を投与するためにシリンジによって加えられた圧力によって減粘され得る。特に、針またはカテーテルを通して調製物を投与するために加えられた圧力は、施用のためにハイドロゲルをせん断減粘するのに十分であり得る。
【0411】
ペプチドハイドロゲルは、それを必要とする任意の内部標的部位に非経口投与され得る。例えば、心臓組織、神経組織、結合組織、上皮組織、または筋組織等が標的部位となり得る。ペプチドハイドロゲルは、固形腫瘍の標的部位に非経口投与され得る。例示的な実施形態では、肺組織の抗真菌処置が、本明細書に記載されるペプチドハイドロゲルの非経口投与によって提供され得る。
【0412】
ペプチドハイドロゲルの局所投与
ある特定の実施形態では、ハイドロゲルが局所投与され得る。一般に、局所投与は、任意の外部または経皮投与を含み得る。例えば、投与のための標的部位は上皮組織であり得る。特定の実施形態では、局所投与が創傷ドレッシング材または止血剤を伴い得る。
【0413】
調製物は、送達装置により局所投与され得る。例えば、調製物は、スプレー、エアロゾル、点滴器、チューブ、アンプル、フィルム、またはシリンジによって局所投与され得る。特定の実施形態では、調製物がスプレーによって局所投与され得る。スプレーは、例えば、鼻スプレーであり得る。投与のために選択され得る噴霧パラメータとしては、液滴径、噴霧パターン、容量、噴霧衝撃、噴霧角度、および噴霧直径が挙げられる。よって、方法は、標的部位または標的効能と相関するように噴霧パラメータを選択するステップを含み得る。例えば、小さい創傷への投与にはより小さい噴霧直径が選択され得る。到達するのが困難な標的部位への投与には特定の噴霧角度が選択され得る。湿った標的部位への投与にはより高密度な噴霧パターンまたはより大きな液滴径が選択され得る。
【0414】
例示的な液滴径は65μm~650μmの間であり得る。例えば、65μm~225μmの平均直径を有する微細液滴、225μm~400μmの平均直径を有する中間液滴、または400μm~650μmの平均直径を有する粗液滴が選択され得る。噴霧パターンは、密集した液滴から希薄な液滴に及び得る。噴霧直径は1cm未満~100cmに及び得る。例えば、噴霧直径は、1cm未満~10cmの間、10cm~50cmの間、または50cm~100cmの間となるよう選択され得る。噴霧角度は0°~90°に及び得る。例えば、噴霧角度は、0°~10°の間、10°~45°の間、または45°~90°の間となるよう選択され得る。
【0415】
一部の実施形態では、調製物がフィルムにより局所投与され得る。フィルムは、剛性、半可撓性、または可撓性フィルムであり得る。ある特定の実施形態では、可撓性または半可撓性フィルムが、標的部位のトポロジーコンフォメーションを採用するよう構成され得る。一般に、フィルムは、調製物またはハイドロゲルが飽和した基質の形態であり得る。基質は、剛性、半可撓性、または可撓性であり得る。フィルムは、バリアドレッシング材および/または止血剤として投与され得る。調製物は、フィルムにより局所投与され得、バリアドレッシング材を伴い得る。
【0416】
飽和フィルムまたはバリアドレッシング材として製剤化されたペプチドは、前に記載されるように、標的集団との直接接触によって抗微生物、抗ウイルス、および/または抗真菌処置を提供し得る。従来の抗微生物創傷ドレッシング材は、伝統的な抗生物質に依拠し、抗生物質用のビヒクルとしてしか機能しない。しかしながら、本明細書に記載されるペプチドハイドロゲル飽和フィルムまたはバリアドレッシング材は、広域(グラム陽性およびグラム陰性)細菌培養物に対する細胞膜破壊の生物物理学的様式を提供するよう設計され得る。よって、抗微生物、抗ウイルス、および/もしくは抗真菌ペプチドハイドロゲル飽和フィルムまたはバリアドレッシング材は、一般に、従来の低分子搭載ポリマーに典型的な最小阻害細菌濃度に関する懸念を回避し得る。代わりに、本明細書に開示されるペプチドハイドロゲルは、ペプチドのアミノ酸電荷比を選択することによって、細胞に優しく、非炎症性、かつ非毒性のままでありながら、グラム陽性菌およびグラム陰性菌(抗生物質耐性菌株を含む)に対して毒性を発揮するよう設計され得る。同様に、本明細書に開示されるペプチドハイドロゲルは、真菌生物(例えば、胞子形成および非胞子形成真菌生物)および/またはウイルス生物に対して毒性を発揮するよう設計され得る。本明細書に開示される飽和フィルムまたはバリアドレッシング材は、組織再生用の一時的な細胞外マトリックス足場を提供し得る。
【0417】
ペプチドハイドロゲルは、それを必要とする任意の標的部位に局所投与され得る。創傷治癒、例えば糖尿病性創傷治癒は、1つの例示的な実施形態として本明細書に記載される。しかしながら、例えば、上記のように、多くの他の局所標的部位および処置が想起されることが理解されるべきである。創傷は、急性、亜急性、および慢性創傷を含み得る。創傷は外科的創傷または虚血性創傷であり得る。静脈性および動脈性潰瘍創傷または褥瘡創傷などの慢性創傷、ならびに外傷によって引き起こされる創傷などの急性創傷が処置され得る。一部の実施形態では、調製物が、フィルム、バリアドレッシング材、および/または止血剤として製剤化され得る。調製物の投与は、バリアドレッシング材および/または止血剤を伴い得る。
【0418】
バイオフィルムの処置および/または管理または阻害は、別の例示的な実施形態として本明細書に記載される。創傷または組織の水分管理および/または滲出液管理は、別の例示的な実施形態として本明細書に記載される。組織デブリードマンは、別の例示的な実施形態として本明細書に記載される。調製物は、例えば、創傷に関連して、予防薬として局所投与され得る。調製物は、例えば、慢性創傷またはバイオフィルムの部位に、鎮痛剤として局所投与され得る。
【0419】
ペプチドハイドロゲルの経腸投与
ある特定の実施形態では、ハイドロゲルが経腸投与され得る。一般に、経腸投与は、任意の経口または胃腸投与を含み得る。例えば、投与のための標的部位は口腔組織または胃腸組織であり得る。特定の実施形態では、経腸投与が、食品または飲料を伴い得る。調製物は、実質的に空腹で投与され得る。一部の実施形態では、調製物の投与後に、水が対象に投与される。一部の実施形態では、投与後、食品の摂取前に数時間待たされる。
【0420】
このような経腸調製物は、経口、舌下、口唇下、頬側、または直腸施用のために製剤化され得る。経口施用製剤は、一般に、特に口を通した摂取のために調製される。舌下および口唇下製剤、例えば錠剤、ストリップ、ドロップ、スプレー、エアロゾル、ミスト、ロゼンジ、および発泡錠は、舌または唇の下の結合組織を通した拡散用に経口投与され得る。具体的には、舌下投与用の製剤は舌の下に配置され、口唇下投与用の製剤は唇と歯肉(歯茎)との間に配置され得る。口唇下投与は、剤形が舌の下の敏感な組織に腐食性であり得る材料を含む場合に有益となり得る。頬側製剤は、一般に、頬側領域に保持または施用されて、頬を裏打ちする口腔粘膜組織を通して拡散し得る。直腸施用は、装置の助けを借りてまたは借りないで、製剤を直腸腔に挿入することによって達成され得る。装置の助けを借りた施用としては、例えば、アプリケーターもしくは挿入可能なアプリケーター、カテーテル、栄養管を介した送達、または内視鏡もしくは超音波と合わせた送達が挙げられ得る。適切なアプリケーターとしては、液体製剤バルブおよびランチャーならびに固体製剤を挿入可能なアプリケーターが挙げられる。
【0421】
本明細書に開示される投与経路のいずれについても、方法は、単回投与量の調製物を投与するステップを含み得る。投与部位は、ブースターまたはその後の投与量の調製物を投与すべきかどうかを決定するために一定期間監視され得る。例えば、方法は、投与部位を監視するステップを含み得る。場合により標的部位での、対象のパラメータが前に記載されるように監視され得る。対象は、1時間毎に、2~3時間毎に、6~8時間毎に、10~12時間毎に、12~18時間毎に、または1日1回監視され得る。対象は、毎日、1日置きに、数日毎に1回、または毎週監視され得る。対象は毎月または隔月監視され得る。ある特定の実施形態では、対象が最大6か月間にわたって監視され得る。例えば、対象は、約1か月間、約2か月間、約3か月間、約4か月間、約5か月間、または約6か月間監視され得る。
【0422】
方法は、少なくとも1回のブースターまたはその後の投与量の調製物を投与するステップを含み得る。例えば、方法は、初回投与量の少なくとも約1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、または14日後にブースター投与量を標的部位に投与するステップを含み得る。方法は、初回投与量の1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、または6週間後にブースター投与量を投与するステップを含み得る。方法は、初回投与量の少なくとも6か月または1年後にブースター投与量を投与するステップを含み得る。ある特定の実施形態では、ハイドロゲルの少なくとも一部がブースター投与量時に標的部位に存在し得る。他の実施形態では、ハイドロゲルが、ブースター投与量時に完全に代謝され得るか、または標的部位から排除され得る。
【0423】
ペプチドハイドロゲルによる生物材料送達の方法
生物材料を対象に投与する方法が本明細書に開示される。方法は、一般に、生物材料をハイドロゲルに懸濁するステップを含み得る。生物材料を、生体適合性溶液中に自己組織化ペプチドを含む調製物ならびにハイドロゲルの自己組織化を誘導するのに有効な量のイオン性塩および生物学的緩衝剤を含む緩衝液と合わせることができる。方法は、有効量の生物材料、調製物、および緩衝液(場合により、ハイドロゲル形態)を対象の標的部位に投与するステップを含み得る。生物材料を調製物または懸濁液で懸濁することにより、一般に、液体懸濁液が生成される。調製物を緩衝液と合わせると、懸濁液の、生物材料を含むハイドロゲルへのゲル化が誘因され得る。
【0424】
投与される生物材料としては、生体液、細胞、および/または組織材料が挙げられ得る。一部の実施形態では、投与される1つまたは複数の生物材料が合成であり得る。例えば、生体液は合成液であり得るか、またはこれを含み得る。他の実施形態では、生物材料がドナーから入手され得る。生物材料は自家(レシピエント対象から入手される)であり得る。生物材料は、同種(レシピエント対象と同じ種のドナー対象から入手される)または異種(レシピエント対象と異なる種のドナー対象から入手される)であり得る。
【0425】
自己組織化したハイドロゲルは、生物材料の天然細胞外マトリックスと実質的に類似の物理的構造を有し、ゲルが細胞増殖、機能、および/または生存性を促進するための一時的な足場として働くことを可能にし得る。特に、自己組織化したハイドロゲルは、生物材料の天然細胞外マトリックスと類似の特性(例えば、細孔径、密度、水和、電荷、剛性等を含む)を有し得る。特性は、生物材料の種類に応じて選択され得る。
【0426】
自己組織化したハイドロゲルは、選択された分解速度を有し得る。分解速度は、植込みまたは投与の標的部位に応じて選択され得る。自己組織化したハイドロゲルの特性は、細胞のハイドロゲル環境への移動を促進するよう選択され得る。自己組織化したハイドロゲルの特性は、有害環境中での細胞保護を促進するよう選択され得る。自己組織化したハイドロゲルの特性は、例えば、宿主組織上に生着しない細胞と同様に、ハイドロゲル内の生物材料の固着を促進するよう選択され得る。自己組織化したハイドロゲルの特性は、細胞産物もしくは副産物または組織由来材料、例えば、成長因子、エキソソーム、細胞溶解物、細胞断片、または遺伝子材料のハイドロゲル環境への移動を促進するよう選択され得る。例示的な実施形態では、自己組織化したハイドロゲルの特性が、細胞、例えば前駆細胞または幹細胞、例えば間葉系幹細胞の分化を制御するよう選択され得る。
【0427】
自己組織化したハイドロゲルの特性は、ペプチドを設計することによって制御され得る。例えば、ペプチドは、1つまたは複数の選択された物理特性を提供する官能基を含み得る。特性は、培地または緩衝液の組成を選択することによって制御され得る。例えば、培地は血清を含んでもよいし、または血清を実質的に含まなくてもよい。例えば、緩衝液は正味正電荷を有しても、正味中性であっても、または正味負電荷を有してもよい。一部の実施形態では、官能基が、ペプチドが溶液に懸濁すると、ペプチドの正味電荷または対イオンを変化させるよう構成され得る。
【0428】
標的部位での細胞および細胞産物、副産物、組織、または組織由来材料の投与は、ハイドロゲルの放出特性を変化させることによって制御され得る。一部の実施形態では、放出特性が、細胞外マトリックスまたはタンパク質モチーフの発現、融合タンパク質の存在または非存在、ペプチドの正味電荷、カチオン性粒子またはペプチドの存在または非存在、アニオン性粒子またはペプチドの存在または非存在、緩衝液、塩、ペプチド濃度、ペプチド純度、およびペプチド対イオンの存在または非存在のうちの1つまたは複数を制御することによって操作され得る。特性は、標的部位で細胞を配置するよう操作され得る。特性は、標的部位で細胞産物または副産物を配置する、例えば、エキソソーム、成長因子、遺伝子材料、RNA、siRNA、shRNA、miRNA等を送達するよう操作され得る。
【0429】
自己組織化したハイドロゲルは、細胞保護特性を有するよう設計され得る。特に、自己組織化したハイドロゲルは、外来微生物、例えば病原性微生物に対して保護的となるよう設計され得る。自己組織化したハイドロゲルは、例えば、物理的バリアまたは生化学的調整を提供することによって、環境免疫細胞からの免疫攻撃に対して保護的となるよう設計され得る。ハイドロゲルの抗微生物および/または保護特性は、移植細胞の生存性、増殖、または機能に実質的に影響を及ぼし得ない。
【0430】
ハイドロゲルの保護特性は、ペプチドの正味電荷を変化させることによって操作され得る。一部の実施形態では、正味電荷が、カチオン性粒子またはペプチドの存在または非存在、アニオン性粒子またはペプチドの存在または非存在、緩衝液、塩、ペプチド濃度、ペプチド純度、およびペプチド対イオンの存在または非存在のうちの1つまたは複数を制御することによって変化し得る。
【0431】
懸濁液は、実質的に生理的pHレベルを有するよう設計され得る。懸濁液は、約4.0~9.0の間のpHレベルを有し得る。一部の実施形態では、懸濁液が、約7.0~8.0の間のpHレベルを有し得る。懸濁液は、約7.3~7.5の間のpHレベルを有し得る。実質的に生理的pHにより、調製時の懸濁液の投与が可能になり得る。一部の実施形態では、懸濁液が治療時に調製され得る。方法は、細胞をペプチド溶液に懸濁するステップと、場合により、懸濁液を撹拌して細胞の実質的に均質な分布を提供するステップと、治療時に懸濁液を投与するステップとを含み得る。投与は、本明細書に記載されるように、局所または非経口であり得る。
【0432】
ペプチドハイドロゲルを用いた生物材料移植片のバイオファブリケーション
インビボで投与するためにインビトロで生物材料移植片を調製する方法が本明細書に開示される。方法は、インビトロでのペプチド足場マトリックス中に細胞を含む液体懸濁液の自己組織化を含み得る。自己組織化した高次構造が対象の標的部位に投与され得る。
【0433】
インビボで生物材料移植片を調製する方法が本明細書に開示される。方法は、標的部位での高次構造への自己組織化のために生物材料を含む液体懸濁液を投与するステップを含み得る。
【0434】
方法は、以下に詳細に記載されるように、治療時の生物材料移植片のバイオファブリケーションを含み得る。
【0435】
本明細書に開示されるハイドロゲルは、生物材料がマトリックス内に実質的に均質に組み込まれることを保証するのに十分速いゲル化速度論を有する。特に、ゲル化速度論は、マトリックス内の細胞密度の再現性のある制御を可能にするために封入細胞の均一な分布をもたらすのに十分速い。さらに、本明細書に開示されるハイドロゲルは、インビボで導入することができ、例えば、空間腔がない場合でさえ、投与時に局在化したままであることができる構築物を有する。投与時のハイドロゲルの局在化により、細胞構築物の隣接組織への漏出が制限または阻害され得る。
【0436】
方法は、生物材料を調製物に懸濁するステップと、場合により、懸濁液を撹拌して生物材料の実質的に均質または不均質な分布を得るステップと、治療時に懸濁液を投与するステップとを含み得る。一部の実施形態では、懸濁液を撹拌して生物材料の実質的に均質な分布を得ることができる。他の実施形態では、懸濁液を調製または撹拌して、例えば、生物材料のクラスターまたはスフェロイドを含む、不均質懸濁液を得ることができる。
【0437】
移植前に、細胞をインビトロで培養することができる。細胞培養プロトコルは、一般に、細胞型により異なる。細胞培養プロトコルの条件は、細胞型に基づいて選択され得る。例示的な実施形態では、細胞が、自家、同種細胞、または異種細胞であり得る。培養された細胞を水および/または培地に懸濁することができる。一部の実施形態では、本明細書に開示される方法が、生物から細胞を回収または収穫するステップを含み得る。例えば、本明細書に開示される方法は、対象から細胞を回収または収穫するステップを含み得る。本明細書に開示される方法は、生物、例えば対象から組織移植片を回収または収穫するステップを含み得る。
【0438】
懸濁液は、外部刺激に応じて自己組織化するよう構成されたペプチドを含み得る。懸濁液および/またはペプチドは、所望の特性を発現するよう操作され得る。例えば、懸濁液および/またはペプチドは、せん断減粘および/または抗微生物特性を発現するよう設計され得る。
【0439】
一部の実施形態では、緩衝液を懸濁液または懸濁液の一部に添加して、投与前にまたは投与と並行してハイドロゲル化を誘導することができる。ハイドロゲルは、均質または実質的に均質な細胞マトリックスを形成し得る。細胞マトリックスは、前に記載されるように、場合によりせん断減粘特性を有する、固体またはゲルとして、標的部位に投与され得る。
【0440】
細胞は、細胞懸濁液を対象に投与する前に所定の期間、インビトロで、細胞移植片中で培養され得る。期間は数分~数時間、~数日に及び得る。培養期間は、細胞型および標的施用に基づいて選択され得る。他の実施形態では、細胞が、懸濁または移植直後に投与され得る。細胞は、植え込まれた細胞移植片中で、その場で培養され得る。
【0441】
懸濁液および/またはペプチドは、所望の特性を発現するよう操作され得る。ある特定の実施形態では、懸濁液および/またはペプチドが、有害環境から細胞を保護するよう操作され得る。特に、懸濁液および/またはペプチドは、高い微生物負荷、有害免疫細胞、または環境タンパク質を含む環境から細胞を保護するよう操作され得る。懸濁液および/またはペプチドは、細胞生存率を増加させるよう操作され得る。懸濁液および/またはペプチドは、分化を制御する、その場で細胞運命を制御する、インビボで細胞運命を制御する、エキソビボで細胞運命を制御する、またはインビトロで細胞運命を制御するよう操作され得る。懸濁液および/またはペプチドは、マトリックスへの細胞接着を増加させるか、または環境中での細胞接着および/もしくは移動を増加させるよう操作され得る。懸濁液および/またはペプチドは、例えば、細胞接着および/または生物学的調整を提供することによって、アポトーシスを減少させるよう操作され得る。
【0442】
懸濁液および/またはペプチドは、タンパク質モチーフの発現またはペプチドの正味電荷を変化させることによって上記の結果を達成するよう操作され得る。ハイドロゲル特性は、細胞外マトリックスまたはタンパク質モチーフの発現、融合タンパク質の存在または非存在、ペプチドの正味電荷、カチオン性粒子またはペプチドの存在または非存在、アニオン性粒子またはペプチドの存在または非存在、緩衝液、塩、ペプチド濃度、ペプチド純度、ペプチド対イオンの存在または非存在、特殊なタンパク質の存在または非存在、および特殊な低分子もしくは大分子の存在または非存在のうちの1つまたは複数を制御することによって操作され得る。
【0443】
治療時の細胞移植片のバイオファブリケーションのための混合装置が本明細書に開示される。装置は、細胞調製物用の第1のチャンバーを含み得る。細胞調製物は、水、培地、または緩衝液に懸濁した細胞を含み得る。装置は、前に記載されるように、ペプチド調製物用の第2のチャンバー、および場合により、緩衝液用の第3のチャンバーを含み得る。
【0444】
実施例
これらのおよび他の実施形態の機能および利点は以下の実施例からよりよく理解され得る。これらの実施例は、例示的な性質であることを意図しており、本発明の範囲を限定するものとみなされない。
【実施例1】
【0445】
0.5%、0.75%、および1.5%w/vの様々な濃度の移植ペプチドハイドロゲルによる病原体汚染糖尿病性創傷の処置
清澄な糖尿病性創傷と汚染された糖尿病性創傷の両方において組織再生を加速させるために治療用細胞を送達するための本明細書に記載されるペプチドハイドロゲルの有効性を調べる。db/dbマウスにおける副子をした全層切除創傷モデルを使用する。マウスの創傷へのシリコーン副子の適用が、治癒中に皮膚収縮を最小化し、ヒト創傷治癒によりよく接近し、新たな処置戦力を創傷再上皮化および肉芽組織形成を改善する能力について評価することを可能にするモデルをもたらすことが示された。初代同種マウスMSCを免疫不全糖尿病マウスに送達する。しかしながら、自家または異種MSCを使用してもよい。その後の試験はブタモデルを使用する。
【0446】
特に、試験は、ペプチドハイドロゲルに封入されたMSCのインビボ生存率を確認する。試験は、ペプチドハイドロゲルを使用して初代MSCを迅速かつ穏やかに封入すると同時に、インビボでそれらの生存率を支持する足場を提供することができることを実証する。試験は、ペプチドハイドロゲルがインビボで生体適合性であり、ゲルが移植後に初代MSCを高い細胞保持および生存率で封入することができることを実証する。
【0447】
抗微生物細胞外マトリックスへの封入後の細胞のインビトロ生存性および増殖を実証する。特定のペプチドを、インビトロでの封入後のMSCの高い細胞保持および生存率について試験する。インビボでの移植細胞の検出を容易にするために、マウス創傷治癒モデルで使用されている、GFPを発現するC57BL/6マウス(Cyagen)からの初代MSCを、試験を通して使用する。GFP+MSCを、0.5%、0.75%、および1.5%w/vのペプチド含有量のペプチドマトリックス内に封入する。混合後、ゲルを、シリンジを通して細胞培養ウェルプレートに分注して、創傷床への施用を刺激する。組織培養ポリスチレン(TCPS)およびコラーゲン足場(Integra(登録商標)創傷マトリックスまたは他の同様の多孔質コラーゲン足場)上に播種したMSCが対照として働く。
【0448】
細胞封入または播種後、MSCを30分間接着させる。次いで、細胞を培養するために、培地を異なる条件に添加し、初回細胞封入/播種の1日後、3日後、および7日後にそれらの生存率および増殖を評価する。ペプチドネットワークを破壊するために穏やかにピペッティングし、培地に希釈することによって細胞マトリックスを解離する。対照条件については、トリプシン-EDTAを使用して細胞を酵素的に放出させる。生死判別染色色素による染色および血球計数器を使用した計数によって、細胞を総細胞数、生存率、および増殖について評価する。試験は、ペプチドハイドロゲルが初代MSCを迅速で、安全で、かつ穏やかな方法で封入し、封入細胞の高い保持および生存率をもたらすことを確認する。
【0449】
MG-63骨芽細胞前駆細胞株を使用した予備的結果は、細胞が、ゲル内での封入およびせん断減粘後に高い生存率を示すことを実証した。試験は、治療能力を有する細胞型である初代MSCを使用してこれらの所見を拡張する。ペプチドハイドロゲル内への細胞封入は、ペプチド自己組織化機序およびゲルの流動性の結果として、迅速かつ穏やかとなると予想される。ペプチドマトリックス内の高い(95%超)初期細胞保持、ならびに封入後数日の高い(80%超)細胞生存率が予想される。生理活性モチーフを有するペプチドは、細胞生存率および/または増殖をさらに強化すると予想される。1日目、3日目、および7日目で90%超のMSCの細胞生存率をもたらすペプチド製剤をインビボ試験に進める。
【0450】
試験は、植え込まれたマトリックスのインビボ生体適合性および封入細胞の生存率を実証する。試験は、植え込まれたマトリックスがインビボで生体適合性であり、これらが移植後3日目および14日目にゲル内に封入されたMSCの生存を支持することを実証する。GFP+MSCを使用してインビボ送達後の細胞の検出を可能にする。40匹の雌CD1マウスが、以下の処置の100μl皮下注射を受ける:1)PBS、2)0.5×106 MSC単独(対照)、3)コラーゲン足場+0.5×106 MSC(比較製品対照)、4)自己組織化ペプチドハイドロゲル+0.5×106 MSC、および5)生理活性自己組織化ペプチドハイドロゲル+0.5×106 MSC。0.75%w/v濃度の自己組織化ペプチドを使用し、各マウスは2回の皮下植込みを受ける。マウスを3日目および14日目に安楽死させ、植込み生体適合性、ならびにMSC生存率および機能的活性を分析するために、ゲル植込みを周囲組織と合わせて切除する。
【0451】
各時点で、1条件当たり4つの植込みを組織学のために処理し、1条件当たりさらに4つの植込みを、組織再生に関連するパラクリン因子の発現を分析するために保管する。組織学試料をヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)で染色し、植込みの周りの組織形態、壊死、および線維化組織の厚さを評価することによって、様々な条件を生体適合性について評価する。インビボ送達後のMSCの生存を促進する条件を特定するために、組織切片を分析して、ゲル中のGFP+MSC(細胞/cm)を数えあげ、アポトーシスを受けた細胞を除外する(TUNELアッセイ)。試験は、ペプチド製剤がインビボで安全かつ生体適合性であり、植込み後にMSC生存を促進することを確認する。
【0452】
予備的インビトロ結果は、ペプチドハイドロゲルが哺乳動物細胞と細胞適合性であることを示した(図5)。よって、ペプチドハイドロゲルが、植込み期間を通して安全でかつMSCと生体適合性であると予想される。全ての時点でゲル内の10%未満の壊死細胞が予想され(細胞/cmによって定量化)、最小限の線維化組織がゲルを取り囲む(厚さ/cmによって定量化される)。14日目のゲルは、3日目と比較していくらかの分解を示すが、ゲル分解産物に応じた有意なマクロファージも巨体細胞応答(細胞/cmによって定量化される)も予想されない。さらに、ペプチドハイドロゲルは、ゲル中の送達されたMSCの生存率を支持すると予想され、これは組織切片中の生GFP+MSCを定量化することによって確認される。生理活性ペプチド製剤は、マトリックス内のMSCのより大きな生存および植込みへの内因性細胞の浸潤増加を促進し得る。
【0453】
16匹の追加の動物を用意してドロップアウトの責任をとり、MSCに対して作用し得る生物学的機能を持つ生理活性製剤を試験する。VEGF、Ang-1、EGF、およびKGFなどの再生促進パラクリン因子の発現を、保管した試料を使用したELISA(pgタンパク質/mg組織として定量化される)によって、ならびに組織切片の免疫組織化学染色(3日目および14日目のタンパク質の空間的および時間的局在化を特定するための画像分析)によって分析する。
【実施例2】
【0454】
MSC移植ペプチドハイドロゲルの抗微生物特性
試験は、抗微生物ペプチドマトリックスに封入されたMSCが、db+/db+糖尿病マウスにおいて全層創傷の組織再生を強化することを実証する。糖尿病のdb/dbマウスモデル(db+/db+;BKS.Cg-Dock7m+/+Leprdb/J)は、感染しやすさ、宿主応答の変化、および治癒障害を示す糖尿病性創傷治癒の一般的に使用されるモデルである。清澄な糖尿病性創傷については14日目(部分創傷閉鎖)および28日目(完全創傷閉鎖)ならびに組織再生の遅延を示すと予想される病原体汚染創傷については28日目の異なる処置群間の組織形態を調べる。試験は、MSCを送達するペプチドマトリックスが、対照と比較して加速した創傷閉鎖速度および改善した再生組織品質をもたらすことを実証する。
【0455】
試験は、清澄な糖尿病性創傷における加速した組織再生を実証する。この試験では、ハイドロゲルマトリックスが、db+/db+マウスにおいて非感染創傷の治癒を改善することができることが実証される。合計30匹の雌の10週齢db+/db+マウスがそれぞれ2か所の全層皮膚創傷を受け、その後、これらのマウスを以下の処置群に無作為化する:1)PBS(対照)、2)0.5×10 MSC単独(対照)、3)コラーゲン足場+0.5×10 MSC(比較製品対照)、4)自己組織化ペプチドハイドロゲル、および5)自己組織化ペプチドハイドロゲル+0.5×10 MSC。
【0456】
動物の手術は、以前確立されたプロトコルに従って実施する。手短に言えば、マウスを麻酔下に置き、正中線の両側の、各マウスの背側に、2つの5mm全層切除創傷を作成する。ドーナツ形シリコーン副子を創傷の周りに配置し、液状接着剤(Krazy(登録商標)Glue、Elmer’s Products)および断続縫合を使用して固定させる。100μLの処置を創傷に施用した後、非接着性創傷ドレッシング材料であるTegaderm(商標)(3M)で覆う。MSC単独対照については、100μLのPBSに懸濁したMSCを、創傷の周囲の4つの部位で皮内注射する。比較製品対照については、MSCを、37℃で30分間、コラーゲン足場(Integra(登録商標)創傷マトリックスまたは他の同様の多孔質コラーゲン足場)上に事前播種した後、足場を創傷床に配置する。創傷表面積を測定し、画像分析により経時的な創傷閉鎖パーセントを定量化するために、0日目、3日目、7日目、14日目、21日目、および28日目に創傷の写真を撮る。
【0457】
創傷ドレッシング材を除去したら、創傷を点数化し(創傷スコアリング、皮膚刺激についてのドレイズスコアリング)、水和、痂皮、滲出液、および管理性について定性的に評価する。マウスを14日目および28日目に安楽死させ、10mm生検パンチを使用して、創傷および周囲組織を切除する。1条件当たり6つの創傷をH&E染色のために処理し、組織学的切片を、再上皮化、肉芽組織形成、浮腫、紅斑、線維化組織、および巨体細胞応答(細胞/cmによって定量化される)について評価する。試験は、対照と比較して、処置群で加速した創傷閉鎖速度および改善した再生組織品質(増加した再上皮化および肉芽組織形成)を確立する。
【0458】
予備的インビトロ結果はペプチドハイドロゲルが細胞適合性であることを示し、ゲルが外因的に送達されたMSCの生存および機能を支持すると同時に組織再生のために内因性細胞の侵入および増殖を可能にすることができることを示唆している。MSCを送達するペプチドハイドロゲルが、創傷治癒速度(画像分析による)および認定病理専門医による組織病理学評価によって測定されるように、対照と比較して改善した糖尿病性創傷の治癒を示すと予想される。
【0459】
ペプチドハイドロゲルは、細胞接着を媒介して(図6)、封入MSCの生存率および機能を支持すると同時に、創傷治癒プロセス中の内因性細胞の浸潤のための足場マトリックスとして働くことができる。図6は、病原体に対する選択的毒性を実証する画像を含む。特に、図6は、ペプチドハイドロゲル上の共培養MRSAおよびC3H10t1/2間葉系幹細胞のアッセイでの生細胞(緑色)および死細胞(赤色)を示している。図6の右の画像に示されるように、MRSAは死滅しているが、哺乳動物細胞は健康なままである。より高い倍率は、C3H10t1/2細胞がハイドロゲルに接着し、伸展することができることを示している。
【0460】
強化された細胞接着能および創傷治癒に対する生理活性ペプチドハイドロゲルの効果を調べる。さらに、生理活性ペプチドマトリックスは、創傷治癒を加速する生物活性を通してMSCと協力する能力を有する。
【0461】
ペプチドハイドロゲルは、病原体によって汚染された糖尿病性創傷で組織再生を加速し得る。感染した糖尿病性創傷への送達後にマトリックス内に封入された治療用MSCを保護し、改善した創傷治癒を可能にするペプチドハイドロゲルの固有の抗微生物特性が決定される。上記のように20匹のdb+/db+マウスで創傷を作成する。創傷作成および副子適用後、10μlのPBS中10CFUの黄色ブドウ球菌(S.aureus)(ATCC25923)を創傷床上に配置し、15分間手を加えずそのままにする。接種後、100μlの処置を施用した後、Tegaderm創傷ドレッシング材で覆う。
【0462】
処置群は、1)PBS(対照)、2)0.5×10 MSC単独(対照)、3)コラーゲン足場+0.5×10 MSC(比較製品対照)、4)自己組織化ペプチドハイドロゲル、および5)自己組織化ペプチドハイドロゲル+0.5×10 MSCからなる。創傷閉鎖速度をデジタル写真によって3日目、7日目、14日目、21日目、および28日目で監視し、上記と同一の方法に従って創傷を点数化する。28日目の安楽死後、10mm生検パンチを使用して創傷を切除する。1処置群当たり8つの創傷をH&E染色のために処理し、組織病理学評価に供する。試験は、対照と比較して、ペプチドハイドロゲルで処置した群で加速した創傷閉鎖速度および改善した再生組織品質(増加した再上皮化および肉芽組織形成)を確立する。
【0463】
予備的インビトロ結果は、ペプチドハイドロゲルが、強力な抗微生物効果を示しながら、同時に哺乳動物細胞と細胞適合性のままであることを示している。したがって、MSCを送達するペプチドハイドロゲルが、創傷治癒速度(画像分析による)および認定病理専門医による組織病理学的評価によって測定されるように、対照処置と比較して糖尿病マウスにおいて感染創傷の治癒を改善すると予想される。上記のように調べた並行処置群は、ここで試験される感染創傷と比較するための非感染創傷治癒対照として働く。
【0464】
創傷のバイオバーデンは、1~7日目の間に組織生検を使用して測定され得る(対スワブ)。治癒表現型も評価され得る。創傷生検を採取し、細菌負荷(CFU/組織g)を定量化することによって、処置群の創傷バイオバーデンを3日目と7日目で比較する。補足的な進行中の試験は、臨床的に関連する病原体のより大きなセットを試験する。
【0465】
ペプチドハイドロゲルに封入された移植MSCのインビボ生存率、ならびにペプチドハイドロゲルに封入されたMSCによる処置後の清澄なおよび汚染された糖尿病性創傷におけるインビボでの改善した組織再生を確認することによって、ペプチドハイドロゲルの実行可能性を実証する。次いで、糖尿病ブタモデルにおいて組織再生を促進するペプチドハイドロゲルの有効性を決定する。試験は、合成マトリックスに封入された局所施用治療用細胞からなる。
【実施例3】
【0466】
MRSAに感染した全層創傷の処置
MRSAに感染した全層創傷の処置において、0.75%w/vおよび1.5%w/vのペプチドでのハイドロゲルの有効性を試験した。
【0467】
手短に言えば、前に記載されるようにマウスにおいて全層切開を作成した。切開にMRSA微生物コロニーを感染させた。感染創傷を対照、0.75%w/vペプチドハイドロゲル、または1.5%w/vペプチドハイドロゲルで処置した。MRSA増殖を感染24時間後で測定した。結果を図11のグラフに提示する。
【0468】
図11のグラフに示されるように、0.75%w/vと1.5%w/vの両方のペプチド調製物による処置が、対照と比較して微生物増殖を減少させた。さらに、0.75%w/vペプチド調製物による処置と1.5%w/vペプチド調製物による処置との間に有意差はなかった。
【実施例4】
【0469】
製剤の貯蔵安定性(Shelf-Stability)
貯蔵安定性を示すために、調製物の抗微生物有効性およびレオロジーを一定期間の貯蔵後に試験した。貯蔵後に、製剤は抗微生物有効性を保持し、ゲル化を示し、細胞生存性および増殖を許した。
【0470】
手短に言えば、0.75%w/vの6アルギニンペプチドを用いて製剤を調製した。緩衝液と組み合わせることによってゲル化を誘導した。緩衝液は、33mM、50mM、および100mMの様々な濃度でBTP、酢酸塩、クエン酸塩、リン酸塩、およびトリスの1つを含んでいた。ゲルを1日または7日間貯蔵した。目視検査によって形態を決定した。レオロジーを試験してゲルが液体になるひずみを決定した。抗微生物有効性をグラム陽性MRSA(ATCC33591)およびグラム陰性緑膿菌(ATCC9027)に対して試験した。結果を表6および図12図13Bのグラフに提示する。
【0471】
【表6】
【0472】
0.001%未満の増殖の報告値は、抗微生物活性のFDA基準である、細菌の4log超の減少に相当する。33mM BTPを有する製剤は、試験病原体に対して6log超の減少の抗微生物有効性を示し、100Pa超のG’を有するレオロジー特性によって測定されるようにゲルを形成した。図12は、貯蔵弾性率(G’’)および損失弾性率(G’)の33mM BTPを有する製剤のレオロジーデータを示している。交差点は、ゲル(G’)が溶液状態(G’’)に変わるひずみ率を表す。図13A図13Bは、ゲル製造の1日後および7日後に緑膿菌(P.aeruginosa)(図13A)およびMRSA(図13B)に対して試験した異なる緩衝液製剤の抗微生物活性を示すグラフを含む。黒色点線は、10~10CFUの対照接種材料と比較した細菌の4log減少(0.01%増殖)を表す。赤色点線は、10~10CFUの対照接種材料と比較した細菌の6log減少(0.0001%増殖)を表す。
【0473】
細胞適合性アッセイも実施した。BTPおよびトリスで作成された全てのハイドロゲルが、マウス間葉系幹細胞の強力な細胞生存性および増殖を示した。
【0474】
したがって、ハイドロゲルは、7日間の貯蔵後に抗微生物有効性、レオロジー特性、および細胞適合性を保持する。ハイドロゲルは、長期間の貯蔵後にも同様の特性を維持すると予想される。
【実施例5】
【0475】
製剤の温度安定性
加熱処理後の抗微生物有効性および自己組織化を調べることによって、調製物の温度安定性を試験した。製剤は、加熱滅菌後に抗微生物有効性および自己組織化を保持した。
【0476】
手短に言えば、0.75%w/vの6アルギニンペプチドを用いて製剤を調製した。33mMの濃度の生物学的緩衝剤としてのBTPを有する緩衝液と組み合わせることによってゲル化を誘導した。調製物を125℃での湿熱滅菌に供した。調製物の抗微生物活性を非加熱滅菌ゲルおよび0.2μm濾過ゲルと比較した。10μLの細菌(10CFU)を無菌寒天プレート上に置き、次いで、この接種材料を実験製剤で覆うことによって、抗微生物活性を決定した。次いで、処理した接種材料を37℃で24時間インキュベートした。
【0477】
自己組織化結果を図14A図14Bのグラフに提示する。図14Aは、非加熱滅菌ゲルのレオロジーを示す。図14Bは、加熱滅菌ゲルのレオロジーを示す。両試料が自己組織化の特性を示した。さらに、2つの試料間で最大ひずみの有意差はなかった。
【0478】
抗微生物活性結果を図15のグラフに提示する。加熱滅菌試料は、細菌の6log超の減少を示した。図15に示されるように、加熱滅菌ハイドロゲルは、非加熱滅菌ハイドロゲルと比較して著しく増加した抗微生物活性を示す。
【0479】
0.2μm無菌フィルタに通過させることによって、ペプチドハイドロゲルの別の実験試料を滅菌した。無菌濾過も、細菌の6log超の減少を達成した。しかしながら、この滅菌方法は、ペプチド喪失の可能性を提起する。
【0480】
加熱滅菌後のペプチド安定性も試験した。結果を図16A図16Bのグラフに示す。手短に言えば、加熱滅菌ハイドロゲルおよび非加熱滅菌ハイドロゲルの超高速液体クロマトグラフィー(UPLC)は、同じ保持時間(それぞれ、5.2分および5.3分)でピークを示し、6アルギニンペプチドが両ハイドロゲルに存在することを確認した。図16Aは、非加熱滅菌ハイドロゲルのUPLCデータを示す。図16Bは、加熱滅菌ハイドロゲルのUPLCデータを示す。さらに、クロマトグラフは、非加熱滅菌ハイドロゲルと比較して加熱滅菌ハイドロゲルに追加のピークがないことを示した。これらの結果は、ペプチドが加熱滅菌プロセス中に分解しなかったことを実証している。
【0481】
したがって、加熱滅菌調製物は、加熱滅菌後に、抗微生物活性(6log以上の減少)を示し、ハイドロゲル(G’>100Pa)に自己組織化し、安定である/分解していない。
【実施例6】
【0482】
製剤の長期貯蔵寿命安定性
調製物の貯蔵寿命安定性を異なる時間および温度条件下で試験した。抗微生物有効性および自己組織化を測定することによって、貯蔵寿命安定性を決定した。
【0483】
製剤を実施例6に記載されるように調製し、実施例5に記載されるように室温で1日、10日、40日、および180日間貯蔵した。抗微生物活性を、実施例5に記載されるように、10CFU MRSAに対して試験した。結果を図17に示す。
【0484】
手短に言えば、図17に示されるように、黒色点線は、対照と比較した4log減少を示す。全ての試験した試料が、赤色点線によって示される、細菌の6log超の減少の抗微生物有効性を示した。よって、試験した製剤は、全ての試験した時点で、180日まで、抗微生物有効性を保持した。
【0485】
調製物を細胞適合性についても試験した。結果を図18のグラフに提示する。全ての試験した試料が、100%超の細胞生存率を示した。
【0486】
したがって、加熱滅菌調製物は、抗微生物活性および細胞生存率によって示されるように、製造後180日まで貯蔵安定性である。より長期の安定性についての生存率試験は進行中である。しかしながら、180日間超貯蔵した調製物についても同様の結果が予想される。
【実施例7】
【0487】
シリンジ中の調製物のレオロジー評価
シリンジ中のハイドロゲルの弾性率を評価した。実施例5に記載されるように、6アルギニンペプチドを用いて製剤を調製した。緩衝液と組み合わせることによってゲル化を誘導した。調製物を、実施例6に記載されるように蒸気滅菌した。
【0488】
調製物をシクロオレフィンポリマー(COP)シリンジに充填し、レオロジーを測定した。結果を図19のグラフに示す。
【0489】
図19に示されるように、調製物は、シリンジから加えられる機械的応力により可逆的に自己組織化する。
【実施例8】
【0490】
ラポナイトを含有する製剤
ラポナイトを含む調製物を試験した。ハイドロゲルは、ラポナイトを調製物に含めると、より高い弾性率およびより低い最大ひずみ率を示す。
【0491】
手短に言えば、1.5%w/vの6アルギニンペプチドを用いて製剤を調製した。2mLのペプチド製剤を、2%w/vの濃度を有する2mLのラポナイト調製物と合わせることによって、第1のラポナイト製剤を調製した。2mLのペプチド製剤を、1.5%w/vの濃度を有する2mLのラポナイト調製物と合わせることによって、第2のラポナイト製剤を調製した。超音波ホーンを使用して、ラポナイト製剤を2分間パルスホモジナイズした(20%Ampで10秒オン/10秒オフ)。緩衝液と組み合わせることによってゲル化を誘導した。
【0492】
水中2%w/vラポナイトと比較した2%w/vラポナイト製剤についてのデータを図20A図20Bのグラフに示す。水中1.5%w/vラポナイト(上の列)と比較した1.5%w/vラポナイト製剤(下の列)についてのデータを図21のグラフに示す。データによって示されるように、ラポナイトの添加により、ゲル力学が強化され、ゲル化プロセスが強化され得る。1:1比のラポナイトとペプチドを有する調製物は、より高濃度のラポナイトを有する調製物よりも高い貯蔵弾性率を示したが、低い最大ひずみを示した。
【実施例9】
【0493】
エアロゾル化ハイドロゲルの抗微生物有効性
鼻スプレー装置による投与後の調製物の抗微生物有効性を試験した。24時間後、細菌コロニーの完全な除去が観察され、エアロゾル化調製物が優れた抗微生物有効性を示すことを示した。
【0494】
手短に言えば、0.75%w/vの6アルギニンペプチドを用いて製剤を調製した。緩衝液と組み合わせることによってゲル化を誘導した。製剤を、鼻スプレーアプリケーターと接続したシリンジに充填した。10μl容量のグラム陽性MRSAまたはグラム陰性緑膿菌(P.aeruginosa)PA01(10~10CFU)をBHI寒天プレートに蒔き、室温で乾燥させた。15分後、調製物を細菌スポット上に3連で噴霧送達し、プレートを37℃で24時間インキュベートした。図22は、鼻スプレーディスペンサーを介した噴霧施用の画像である。結果を図23図25の画像およびグラフに示す。24時間後、プレートを画像化し(図23図25)、得られたコロニーを数えあげた。図24のグラフに示されるように、ハイドロゲルを噴霧送達した場合、試験したCFU濃度のいずれでもコロニーは観察されなかった。よって、ハイドロゲルのエアロゾル化によって、細菌の完全な(100%)除去が達成された。
【0495】
本明細書で使用される語法および用語は、説明を目的とするものであり、限定的であるとみなされるべきではない。本明細書で使用される場合、「複数」という用語は、2つ以上の項目または成分を指す。明細書または請求項などのいずれであっても、「含む(comprising)」、「含む(including)」、「保有する」、「有する」、「含有する」、および「伴う」という用語は、オープンエンドの用語である、すなわち、「それだけに限らないが~を含む」を意味する。よって、このような用語の使用は、その後列挙される項目、およびその等価物、ならびに追加の項目を包含することを意味する。「からなる」および「から本質的になる」という移行句のみが、請求項に関して、それぞれ、閉じた移行句または半分閉じた移行句である。請求項要素を修飾するための請求項における「第1の」、「第2の」、「第3の」などの順序用語の使用自体は、ある請求項要素の別の請求項要素に対する優先、先行、もしくは順序も、方法の行為が実施される時間的順序も暗示せず、請求項要素を区別するためにある特定の名称を有するある請求項要素を、同じ名称を有する(但し、順序用語の使用を除く)別の要素と区別するための表示として単に使用される。
【0496】
少なくとも1つの実施形態のいくつかの態様をこのように記載してきたが、様々な変更、修正、および改善が当業者に容易に思い浮かぶことが認識されるべきである。いずれかの実施形態に記載されるいずれの特徴も、他の実施形態のいずれかの特徴に含めるかまたはこれに置換することができる。このような変更、修正、および改善は、本開示の一部であることを意図しており、本発明の範囲内にあることを意図している。したがって、前記説明および図面は単なる例としてのものである。
【0497】
当業者であれば、本明細書に記載されるパラメータおよび構成が例示的なものであり、実際のパラメータおよび/または構成が、開示される方法および材料が使用される具体的な用途に依存することを認識するはずである。当業者であればまた、ただの日常的な実験に過ぎないものを使用して、開示される具体的な実施形態の等価物を認識するか、または確認することができるはずである。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9
図10
図11
図12
図13A
図13B
図14A
図14B
図15
図16A
図16B
図17
図18
図19
図20A
図20B
図21-1】
図21-2】
図22
図23
図24
図25
図26
【国際調査報告】