IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲーの特許一覧

特表2023-537973少なくとも1つの目的の分析物を判定するための方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-06
(54)【発明の名称】少なくとも1つの目的の分析物を判定するための方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/62 20210101AFI20230830BHJP
   H01J 49/16 20060101ALI20230830BHJP
   H01J 49/04 20060101ALI20230830BHJP
   G01N 1/28 20060101ALI20230830BHJP
【FI】
G01N27/62 G
H01J49/16 400
H01J49/04 180
G01N1/28 V
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023509757
(86)(22)【出願日】2021-08-09
(85)【翻訳文提出日】2023-03-08
(86)【国際出願番号】 EP2021072155
(87)【国際公開番号】W WO2022034018
(87)【国際公開日】2022-02-17
(31)【優先権主張番号】20190319.2
(32)【優先日】2020-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ. ホフマン-ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN-LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100157923
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴喰 寿孝
(72)【発明者】
【氏名】ハインドル,ディーター
(72)【発明者】
【氏名】レンプト,マルティン
(72)【発明者】
【氏名】ザイツ,マヌエル・ヨーゼフ
(72)【発明者】
【氏名】ツート,クリストフ
【テーマコード(参考)】
2G041
2G052
【Fターム(参考)】
2G041CA01
2G041DA04
2G041FA10
2G041FA11
2G041FA12
2G041FA18
2G041JA07
2G041JA08
2G052AA29
2G052AB16
2G052AB18
2G052AB19
2G052AB20
2G052AD26
2G052AD42
2G052EB02
2G052GA24
(57)【要約】
本発明は、少なくとも1つの目的の分析物を判定するための方法に関する。本発明は更に、少なくとも1つの目的の分析物を判定するための試料要素、装置、キット及びそれらの使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの目的の分析物を判定するための方法であって、
a)試料ホルダの表面上に、マトリックスと、前記少なくとも1つの目的の分析物とを含む試料を調製する工程であって、
前記マトリックスが、少なくとも1つの遷移金属ジスルフィドを含み、好ましくは、前記遷移金属ジスルフィドが、MoS、TiS、SnS及びそれらの組み合わせからなる群から選択され、
前記遷移金属ジスルフィドが粒子として形成されており、
工程a)が、
液体形態の前記試料を試料ホルダの前記表面に塗布すること及び前記試料を乾燥させることを含み、前記塗布することが、
(i)前記マトリックスと前記目的の分析物とを合わせて塗布し、続いて乾燥させること、又は
(ii)前記マトリックス及び前記目的の分析物を順次塗布することであって、前記マトリックス及び前記目的の分析物を順次塗布する場合、前記マトリックス及び前記目的の分析物をそれぞれ順次塗布した後に前記乾燥させることが続く、前記マトリックス及び前記目的の分析物を順次塗布すること
を含む、マトリックスと、前記少なくとも1つの目的の分析物とを含む試料を調製する工程と、
b)400nmより小さい波長を有するレーザー照射を介して前記少なくとも1つの目的の分析物をイオン化する工程と、
c)質量分析を使用して前記目的の分析物を判定する工程と、
を含む、方法。
【請求項2】
前記方法が、銀ナノ粒子、インターカレートされたリチウム、リチウム媒介剥離工程、水酸化ナトリウム支援剥離工程、及び/又は多孔質ナノ構造化工程を含まない、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記方法が、工程b)における直接イオン化によってアルカリイオン及び/又はアルカリ土類イオンを検出することができ、前記アルカリイオン及び/又はアルカリ土類イオンが、Na、K、Rb、Cs、Mg2+、Ca2+、Sr2+、Ba2+の群から選択される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
工程a)の前に、さらなる工程a1):
a1)前記マトリックスの超音波処理、
が行われる、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
工程a)において、前記遷移金属ジスルフィドの前記粒子が、1nm~6μmの範囲、好ましくは80nm~150nmの範囲の粒径を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記表面が導電性表面であり、前記導電性表面が構造化されている、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記目的の分析物が、2000Daより小さい分子量を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記目的の分析物が、核酸、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、代謝物、ホルモン、脂肪酸、脂質、炭水化物、ステロイド、ケトステロイド、セコステロイド、別の分子の特定の修飾を特徴とする分子、生体によって内在化された物質、そのような物質の代謝物、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも1つの目的の分析物を判定するための、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法の使用。
【請求項10】
400nmより小さい波長を有するレーザー照射を介して少なくとも1つの目的の分析物をイオン化するための試料要素であって、
前記試料要素が試料ホルダ及び試料を含み、前記試料がマトリックス及び前記少なくとも1つの目的の分析物を含み、
前記試料ホルダが、前記レーザー照射に面する導電性表面を備え、
前記マトリックス及び前記目的の分析物が、前記レーザー照射のビーム経路内の前記導電性表面上に配置され、
前記マトリックスが、1nm~6μmの範囲の粒径を有する粒子として形成されている遷移金属ジスルフィドを含むか、又はそれからなる、試料要素。
【請求項11】
少なくとも1つの目的の分析物を判定するための、請求項10に記載の試料要素の使用。
【請求項12】
少なくとも1つの目的の分析物を判定するための装置であって、
- 400nmより小さい波長でレーザー照射を放射することが可能なレーザー照射源と、
- 請求項10に記載の前記試料要素と、
- 質量分析ユニットと、
を備える、装置。
【請求項13】
少なくとも1つの目的の分析物を判定するための、請求項12に記載の装置の使用。
【請求項14】
請求項1~8のいずれか一項に記載の方法を実施するのに適したキットであって、
(A)粒子として形成されている少なくとも1つの遷移金属ジスルフィドを含むマトリックスと、
(B)有機溶媒又はその混合物と、
(C)任意に、少なくとも1つの内部標準と、
を備える、キット。
【請求項15】
請求項1~8のいずれか一項に記載の方法における、請求項14に記載のキットの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、少なくとも1つの目的の分析物を判定するための方法に関する。本発明は更に、少なくとも1つの目的の分析物を判定するための試料要素、装置、キット及びそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
低分子量成分に対処するためのいくつかの調製工程後のMoS又はWSのような無機マトリックスを使用するSELDI(表面増強レーザー脱離イオン化)プロセスは、DHB等の有機マトリックスの一般的な使用に代わるものとして最近関心を集めている。
【0003】
有機(古典的)マトリックスの主な問題は、試料とマトリックス成分が液体溶液中で一緒なった後に乾燥し、その結果、共結晶化する必要があることである。得られた有機マトリックス支援レーザー脱離のイオン種はプロトン化種[M+H]である。無機マトリックスは、主に金属化種、例えば[M+Na]を与え、これは主にマトリックスから分析物への熱伝達のみによって駆動され、したがって共結晶化の必要はない。
【0004】
先行技術は、a)銀イオンが組み込まれるか、若しくはMoS/WSのような物質が使用される、又はb)リチウムインターカレーションと呼ばれる方法を使用して剥離される、又はc)高沸点溶媒を使用して剥離される無機マトリックスの調製方法を記載しており、これは、沸点溶媒が1バールで100℃を超える沸点を有することを意味し得る。
【0005】
しかしながら、これらの方法は手動の工程を必要とし、制御が困難な不安定なプロセス及び/又は材料、又は完全に除去するのが困難な溶媒(Xu et al.ACS Sens.2018,3,806-814;Xu et al.Anal.Chim.Acta 2016,937,87-95;Rotello et al.Nanoscale 2017,9,10854-10860)及び中国特許題105929017号B)。
【0006】
したがって、上記の問題を克服することが当技術分野において緊急に必要とされている。
【0007】
本発明の目的は、少なくとも1つの目的の分析物を判定するための方法を提供することである。さらに、本発明の目的は、少なくとも1つの目的の分析物を判定するための試料要素、装置、キット及びそれらの使用を提供することである。
【0008】
この目的は、独立請求項の主題によって解決される。さらなる実施形態は、従属請求項に従う。
【発明の概要】
【0009】
発明の概要
以下では、本発明は以下の態様に関する:
第1の態様では、本発明は、少なくとも1つの目的の分析物を判定するための方法であって、
a)試料ホルダの表面上に、マトリックスと、少なくとも1つの目的の分析物とを含む試料を調製する工程と、
b)400nmより小さい波長を有するレーザー照射を介して少なくとも1つの目的の分析物をイオン化する工程と、
c)質量分析を使用して目的の分析物を判定する工程と、
を含む方法に関する。
【0010】
マトリックスは、少なくとも1つの遷移金属硫化物を含み、遷移金属硫化物は粒子として形成される。好ましくは、遷移金属硫化物は、MoS、TiS、SnS及びそれらの組み合わせからなる群から選択される遷移金属ジスルフィドであり、
工程a)は、
液体形態の試料を試料ホルダの前記表面に塗布すること及び試料を乾燥させることを含む。好ましくは、塗布する工程は、
(i)マトリックスと目的の分析物とを合わせて塗布し、続いて乾燥させること、又は
(ii)マトリックス及び目的の分析物を順次塗布することであって、マトリックス及び目的の分析物を順次塗布する場合、マトリックス及び目的の分析物をそれぞれ順次塗布した後に乾燥させることが続く、マトリックス及び目的の分析物を順次塗布すること
を含む。
【0011】
第2の態様では、本発明は、少なくとも1つの目的の分析物を判定するための本発明の第1の態様の方法の使用に関する。
【0012】
第3の態様では、本発明は、400nmより小さい波長を有するレーザー照射を介して少なくとも1つの目的の分析物をイオン化するための試料要素に関し、
試料要素は試料ホルダ及び試料を含み、試料はマトリックス及び少なくとも1つの目的の分析物を含み、
試料ホルダは、レーザー照射に面する導電性表面を備え、
マトリックス及び目的の分析物は、レーザー照射のビーム経路内の導電性表面上に配置され、
マトリックスは、1nm~6μmの範囲の粒径を有する粒子として形成されている遷移金属硫化物、好ましくは遷移金属ジスルフィドを含むか、又はそれからなる。
【0013】
第4の態様では、本発明は、少なくとも1つの目的の分析物を判定するための本発明の第3の態様の試料要素の使用に関する。
【0014】
第5の態様では、本発明は、少なくとも1つの目的の分析物を判定するための装置であって、
- 400nmより小さい波長でレーザー照射を放射することが可能なレーザー照射源と、
- 本発明の第3の態様の試料要素と、
質量分析ユニットと、を備える装置に関する。質量分析ユニットは、目的の分析物を判定することができる。
【0015】
第6の態様では、本発明は、少なくとも1つの目的の分析物を判定するための本発明の第5の態様の装置の使用に関する。
【0016】
第7の態様では、本発明は、本発明の第1の態様の方法を実施するのに適したキットであって、
(A)粒子として形成された少なくとも1つの遷移金属硫化物、好ましくは少なくとも1つの遷移金属ジスルフィドを含むマトリックスと、
(B)有機溶媒又はその混合物と、
(C)任意に、少なくとも1つの内部標準と、を備える、キットに関する。
【0017】
第8の態様では、本発明は、本発明の第1の態様の方法における本発明の第7の態様のキットの使用に関する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1-1】図1A図6Dは、それぞれステロイド混合物及び治療物質混合物のMSスペクトルを示す。
図1-2】図1A図6Dは、それぞれステロイド混合物及び治療物質混合物のMSスペクトルを示す。
図2-1】図1A図6Dは、それぞれステロイド混合物及び治療物質混合物のMSスペクトルを示す。
図2-2】図1A図6Dは、それぞれステロイド混合物及び治療物質混合物のMSスペクトルを示す。
図3-1】図1A図6Dは、それぞれステロイド混合物及び治療物質混合物のMSスペクトルを示す。
図3-2】図1A図6Dは、それぞれステロイド混合物及び治療物質混合物のMSスペクトルを示す。
図4-1】図1A図6Dは、それぞれステロイド混合物及び治療物質混合物のMSスペクトルを示す。
図4-2】図1A図6Dは、それぞれステロイド混合物及び治療物質混合物のMSスペクトルを示す。
図5-1】図1A図6Dは、それぞれステロイド混合物及び治療物質混合物のMSスペクトルを示す。
図5-2】図1A図6Dは、それぞれステロイド混合物及び治療物質混合物のMSスペクトルを示す。
図6-1】図1A図6Dは、それぞれステロイド混合物及び治療物質混合物のMSスペクトルを示す。
図6-2】図1A図6Dは、それぞれステロイド混合物及び治療物質混合物のMSスペクトルを示す。
図7図7は、市販のインジウム-スズ-酸化物試料ホルダの写真を示す。
図8-1】図8A図10Dは、それぞれ、試料ホルダとしてのITOガラススライド上にコーティングされたステロイド混合物及び治療物質混合物のMSスペクトルを示す。
図8-2】図8A図10Dは、それぞれ、試料ホルダとしてのITOガラススライド上にコーティングされたステロイド混合物及び治療物質混合物のMSスペクトルを示す。
図9-1】図8A図10Dは、それぞれ、試料ホルダとしてのITOガラススライド上にコーティングされたステロイド混合物及び治療物質混合物のMSスペクトルを示す。
図9-2】図8A図10Dは、それぞれ、試料ホルダとしてのITOガラススライド上にコーティングされたステロイド混合物及び治療物質混合物のMSスペクトルを示す。
図10-1】図8A図10Dは、それぞれ、試料ホルダとしてのITOガラススライド上にコーティングされたステロイド混合物及び治療物質混合物のMSスペクトルを示す。
図10-2】図8A図10Dは、それぞれ、試料ホルダとしてのITOガラススライド上にコーティングされたステロイド混合物及び治療物質混合物のMSスペクトルを示す。
図11-1】図11A図12Dは、それぞれ、試料ホルダとしての銅導電性テープ上にコーティングされたステロイド混合物及び治療物質混合物のMSスペクトルを示す。
図11-2】図11A図12Dは、それぞれ、試料ホルダとしての銅導電性テープ上にコーティングされたステロイド混合物及び治療物質混合物のMSスペクトルを示す。
図12-1】図11A図12Dは、それぞれ、試料ホルダとしての銅導電性テープ上にコーティングされたステロイド混合物及び治療物質混合物のMSスペクトルを示す。
図12-2】図11A図12Dは、それぞれ、試料ホルダとしての銅導電性テープ上にコーティングされたステロイド混合物及び治療物質混合物のMSスペクトルを示す。
図13図13A図15Bは、対照実験のMSスペクトルを示す。
図14図13A図15Bは、対照実験のMSスペクトルを示す。
図15図13A図15Bは、対照実験のMSスペクトルを示す。
図16-1】図16A図19Dは、それぞれ、アルカリイオンの存在下でのステロイド混合物及び治療物質混合物のMSスペクトルを示す。
図16-2】図16A図19Dは、それぞれ、アルカリイオンの存在下でのステロイド混合物及び治療物質混合物のMSスペクトルを示す。
図17-1】図16A図19Dは、それぞれ、アルカリイオンの存在下でのステロイド混合物及び治療物質混合物のMSスペクトルを示す。
図17-2】図16A図19Dは、それぞれ、アルカリイオンの存在下でのステロイド混合物及び治療物質混合物のMSスペクトルを示す。
図18-1】図16A図19Dは、それぞれ、アルカリイオンの存在下でのステロイド混合物及び治療物質混合物のMSスペクトルを示す。
図18-2】図16A図19Dは、それぞれ、アルカリイオンの存在下でのステロイド混合物及び治療物質混合物のMSスペクトルを示す。
図19-1】図16A図19Dは、それぞれ、アルカリイオンの存在下でのステロイド混合物及び治療物質混合物のMSスペクトルを示す。
図19-2】図16A図19Dは、それぞれ、アルカリイオンの存在下でのステロイド混合物及び治療物質混合物のMSスペクトルを示す。
図20-1】図20A図21Dは、それぞれ18-クラウン6エーテルと予め混合されたステロイド混合物及び治療物質混合物のMSスペクトルを示す。
図20-2】図20A図21Dは、それぞれ18-クラウン6エーテルと予め混合されたステロイド混合物及び治療物質混合物のMSスペクトルを示す。
図21-1】図20A図21Dは、それぞれ18-クラウン6エーテルと予め混合されたステロイド混合物及び治療物質混合物のMSスペクトルを示す。
図21-2】図20A図21Dは、それぞれ18-クラウン6エーテルと予め混合されたステロイド混合物及び治療物質混合物のMSスペクトルを示す。
図22-1】図22A図23Dは、LiインターカレートされたMoS/WSマトリックス上でそれぞれ調製されたステロイド混合物及び治療物質混合物のMSスペクトルを示す。
図22-2】図22A図23Dは、LiインターカレートされたMoS/WSマトリックス上でそれぞれ調製されたステロイド混合物及び治療物質混合物のMSスペクトルを示す。
図23-1】図22A図23Dは、LiインターカレートされたMoS/WSマトリックス上でそれぞれ調製されたステロイド混合物及び治療物質混合物のMSスペクトルを示す。
図23-2】図22A図23Dは、LiインターカレートされたMoS/WSマトリックス上でそれぞれ調製されたステロイド混合物及び治療物質混合物のMSスペクトルを示す。
図24-1】図24A図26は、それぞれグラフェンベースの化合物マトリックス上で予備混合されたステロイド混合物及び治療物質混合物のMSスペクトルを示す。
図24-2】図24A図26は、それぞれグラフェンベースの化合物マトリックス上で予備混合されたステロイド混合物及び治療物質混合物のMSスペクトルを示す。
図25-1】図24A図26は、それぞれグラフェンベースの化合物マトリックス上で予備混合されたステロイド混合物及び治療物質混合物のMSスペクトルを示す。
図25-2】図24A図26は、それぞれグラフェンベースの化合物マトリックス上で予備混合されたステロイド混合物及び治療物質混合物のMSスペクトルを示す。
図26図24A図26は、それぞれグラフェンベースの化合物マトリックス上で予備混合されたステロイド混合物及び治療物質混合物のMSスペクトルを示す。
図27図27A及び27Bは、構造化試料表面と組み合わせた連続MALDIシステムを示す。
図28図28A及び図28Bは、試料ホルダの微細構造化されたキャビティを示す。
図29図29は、超音波処理された約6μmの粒径を有するバルクMoSマトリックスの単層のAFM(原子間力顕微鏡法)画像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
発明の詳細な説明
本発明を以下に詳細に説明する前に、本発明は、本明細書に記載の特定の実施形態及び例に限定されず、これらは変化し得ることを理解されたい。本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的とし、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される本発明の範囲を限定することを意図しないことも理解されるべきである。別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、当該技術分野の当業者によって一般的に理解されている意味と同じ意味を有する。
【0020】
いくつかの文献が本明細書中で引用されている。本明細書に引用されている各文献(全ての特許、特許出願、科学出版物、製造者の仕様書、説明書等を含む)は、上記であろうと以下であろうと、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。このように組み込まれた参照の定義又は教示と、本明細書に引用された定義又は教示との間に矛盾がある場合には、本明細書の本文が優先する。
【0021】
以下、本発明の各要素について説明する。これらの要素は特定の実施形態と共に列挙されているが、これらは任意の方法及び任意の数で組み合わせて追加の実施形態を作成することができることを理解されたい。種々の説明された実施例及び好ましい実施形態は、本発明を明示的に説明された実施形態のみに限定するように解釈されるべきではない。この記載は、明示的に記載された実施形態を任意の数の開示及び/又は好ましい要素と組み合わせる実施形態を支持し、かつ包含するものと理解されるべきである。さらに、本出願に記載されている全ての要素の任意の順列及び組合せは、文脈が別段の意味を示さない限り、本出願の説明によって開示されていると考えるべきである。
【0022】
定義
「含む(comprise)」という単語、並びに「含む(comprises)」及び「含むこと(comprising)」のような変形は、記載された整数若しくは工程又は整数若しくは工程のグループの包含を意味するが、いかなる他の整数若しくは工程又は整数若しくは工程のグループの除外を意味しないことが理解されよう。
【0023】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」は、別途内容が明確に指示しない限り、複数の指示対象を含む。
【0024】
比率、濃度、量、及び他の数値データは、「範囲」の形式で本明細書に表す又は提示することができる。このような範囲の形式は、便宜上及び簡潔にするために単に使用されているにすぎないことが理解され、したがって、その範囲の境界として明示的に列挙されている数値を含むだけではなく、各数値及び部分範囲があたかも明示的に列挙されているかのごとく、その範囲内に包含される個々の数値又は部分範囲の全てを含むことを柔軟に解釈するべきである。例示として、「4%~20%」の数値範囲は、4%~20%という明示的に列挙されている値を含むだけではなく、表示されている範囲内の個々の値及び部分範囲を含むと解釈されるべきである。したがって、この数値範囲には、4、5、6、7、8、9、10、...18、19、20%等の個々の値と、4~10%、5~15%、10~20%等のサブレンジとが含まれる。この同じ原理は、最小値又は最大値を列挙する範囲に適用される。さらに、このような解釈は、その範囲の幅又は記載されている特性にかかわらず、適用すべきである。
【0025】
「約」という用語は、数値に関連して使用される場合、示された数値よりも5%小さい下限値を有し、且つ示された数値よりも5%大きい上限値を有する範囲内の数値を包含することを意味する。
【0026】
本開示の文脈において、「分析物」、「分析物分子」又は「目的の分析物(複数可)」という用語は、互換的に使用されて、質量分析によって分析される化学種を指す。質量分析を介して分析されるのに適した化学種、すなわち分析物は、生体内に存在する任意の種類の分子であり得、核酸(例えば、DNA、mRNA、miRNA、rRNA等)、アミノ酸、ペプチド、タンパク質(例えば、細胞表面受容体、サイトゾルタンパク質等)、代謝産物又はホルモン(例えば、テストステロン、エストロゲン、エストラジオール等)、脂肪酸、脂質、炭水化物、ステロイド、ケトステロイド、セコステロイド(例えば、ビタミンD)、別の分子の特定の修飾に特徴的な分子(例えば、タンパク質上の糖部分又はホスホリル残基、ゲノムDNA上のメチル残基)、若しくは生体によって内在化された物質(例えば、治療薬、乱用薬物、毒素等)、又はそのような物質の代謝物が挙げられるが、これらに限定されない。そのような分析物は、バイオマーカーとして役立つ可能性がある。本発明の文脈において、「バイオマーカー」という用語は、生物系の生物学的状態の指標として使用される当該系内の物質を指す。
【0027】
目的の分析物又は分析物は、生物学的試料又は臨床試料に存在し得る。「生物学的試料又は臨床試料」という用語は、本明細書において互換的に使用され、組織、器官若しくは個体の部分又は片を指し、通常、組織、器官又は個体の全体を表すことが意図されているこのような組織、器官又は個体より小さい。分析に際して、生物学的試料又は臨床試料は、組織の状態、又は器官若しくは個体の健康若しくは疾患状態に関する情報をもたらす。生物学的試料又は臨床試料の例は、以下に限定されないが、血液、血清、血漿、滑液、髄液、尿、唾液及びリンパ液等の液体試料、又は乾燥血液スポット及び組織抽出物等の固体の生物学的試料又は臨床試料を含む。生物学的試料又は臨床試料のさらなる例は、細胞培養物又は組織培養物である。
【0028】
「質量分析(Mass Spectrometry)」(「Mass Spec」又は「MS」)、又は「質量分析決定(mass spectrometric determination)」、又は「質量分析(mass spectrometric analysis)」という用語は、化合物をその質量によって同定するために使用される分析技術に関する。MSは、その質量電荷比又は「m/z」に基づいてイオンをフィルタにかける、検出する、及び測定する方法である。MS技術は、概して、(1)化合物をイオン化して荷電化合物を形成すること;及び、(2)荷電化合物の分子量を検出し、質量電荷比を計算することを含む。化合物は、任意の好適な手段によってイオン化されて、検出され得る。「質量分析計」は、一般に、イオン化装置及びイオン検出器を含む。一般に、1つ以上の目的の分子がイオン化されて、続いて、このイオンは、質量分析機器に導入されて、この機器において、磁場及び電場の組合せにより、イオンは、質量(「m」)及び電荷(「z」)に依存して空間の経路をたどる。「イオン化」又は「イオン化」という用語は、1つ以上の単位に等しい正味電荷を有する分析物イオンを生成するプロセスを指す。負イオンは1ユニット以上の正味の負電荷を有するものであり、正イオンは1ユニット以上の正味の正電荷を有するものである。MS方法は、陰イオンが発生してこれが検出される「ネガティブイオンモード」、又は陽イオンが発生してこれが検出される「ポジティブイオンモード」のどちらか一方で実施することができる。
【0029】
「タンデム質量分析」又は「MS/MS」は、分析物の断片化が段階間で生じる、質量分析の選択の複数工程を含む。タンデム質量分析計では、イオンをイオン源で生成し、質量分析の第一段階(MS1)で質量電荷比により分離する。特定の質量電荷比(前駆イオン又は親イオン)のイオンが選択され、フラグメントイオン(娘イオン)が、衝突誘起解離、イオン分子反応、又は光解離によって生成される。次いで、得られたイオンを分離し、質量分析の第二段階(MS2)で検出する。
【0030】
質量分析計は、わずかに異なる質量のイオンを分離して検出するので、所与の元素からなる異なる同位体を容易に区別する。したがって、質量分析は、以下に限定されないが、低分子量の分析物、ペプチド、ポリペプチド又はタンパク質を含めた、分析物の正確な質量決定及び特徴づけにとって重要な方法である。その用途は、タンパク質及びその翻訳後修飾の同定、タンパク質複合体、そのサブユニット及び機能的相互作用の解明、並びにプロテオミクスにおけるタンパク質の全測定を含む。質量分析によるペプチド又はタンパク質のデノボ配列決定は、通常、アミノ酸配列のこれまでの知識なしに実施することができる。
【0031】
MSにおけるほとんどの試料ワークフローは、更に、試料調製及び/又は濃縮工程を含み、例えば目的の分析物(複数可)は、ガス又は液体クロマトグラフィを用いてマトリクスから分離する。典型的には、質量分析測定の場合、以下の3つの工程が実施される:
1.目的の分析物を含む試料がイオン化される。イオン化源としては、エレクトロスプレーイオン化(ESI)、大気圧化学イオン化(APCI)、及びマトリックス支援レーザー脱離/イオン化(MALDI)が挙げられるが、これらに限定されない。
2.イオンをその質量及び電荷に応じて分類し、分離する。高電場非対称波形イオン移動度分光分析(FAIMS)をイオンフィルタとして使用することができる。
3.分離されたイオンを、例えば多重反応モード(multiple reaction mode:MRM)で検出し、その結果をチャートに表示する。
【0032】
「エレクトロスプレーイオン化」又は「ESI」という用語は、溶液を長さの短いキャピラリー管に沿って通過させて、キャピラリー管の端部に高い正電位又は負電位を印加する、方法を指す。チューブの端に到達した溶液は、溶媒蒸気中の非常に小さな液滴のジェット又はスプレイへと気化(噴霧)される。液滴のこの霧は、エバポレーションチャンバーを通り、このチャンバーは、わずかに加熱されて、縮合を予防して溶媒をエバポレートする。液滴が小さくなるほど、同じ電荷間の自然な反発によってイオンと中性分子が放出されるまで、電気的な表面電荷密度が向上する。
【0033】
「大気圧化学イオン化」又は「APCI」という用語は、ESIに類似した質量分析法を指す。しかしながら、APCIは、大気圧のプラズマ内で起こるイオン分子反応によってイオンを生成する。プラズマは、スプレーキャピラリーと対電極との間の電気放電により維持される。次いで、イオンは、典型的には、差動的にポンピングされたスキマステージのセットを使用して質量分析器に抽出される。溶媒の除去を改善するために、乾燥及び予熱されたNiガスの対向流を使用してもよい。APCIにおける気相イオン化は、極性がより低い実体を分析するためにESIよりも有効となり得る。
【0034】
「高電場非対称波形イオン移動度高電界非対称波形イオン移動度分光法(FAIM:High-field asymmetric-waveform ion-mobility spectrometry)」は、気相イオンを強電場及び弱電場での挙動によって分離する大気圧イオン移動度技術である。
【0035】
「多重反応モード」又は「MRM」は、前駆イオン及び1つ以上のフラグメントイオンが選択的に検出される、MS機器の検出モードである。
【0036】
質量分析決定は、ガスクロマトグラフィ(GC)、液体クロマトグラフィ(LC)、特にHPLC、及び/又はイオン移動度に基づく分離技法等のクロマトグラフィ法を含めた追加の分析法と組み合わされてもよい。好ましい実施形態では、質量分析決定は、ガスクロマトグラフィ(GC)、液体クロマトグラフィ(LC)、特にHPLC等のクロマトグラフィ法、及び/又はイオン移動度に基づく分離技術を含む追加の分析方法を含まない。
【0037】
質量分析による分析前に、試料は、試料及び/又は分析物に特有の方法で前処理されてもよい。本開示の文脈において、「前処理」という用語は、質量分析による所望の分析物の後の分析を可能にするために必要な任意の手段を指す。前処理手段としては、典型的には、固体試料の溶出(例えば、乾燥血液スポットの溶出)、全血試料への溶血試薬(hemolizing reagent:HR)の添加、及び尿試料への酵素試薬の添加が挙げられるが、これらに限定されない。同様に、内部標準(ISTD)の添加は、試料の前処理と見なされる。
【0038】
「溶血試薬」(HR)という用語は、試料中に存在する細胞を溶解する試薬を指し、本発明の文脈では、溶血試薬、特に、限定されるものではないが、全血試料中に存在する赤血球を含む血液試料中に存在する細胞を溶解する試薬を指す。周知の溶血試薬は水(HO)である。溶血試薬のさらなる例としては、脱イオン水、高浸透圧(例えば8M尿素)を有する液体、イオン液体、及び種々の洗浄剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0039】
通常、「内部標準」(ISTD)は、質量分析検出のワークフローに施すと、目的の分析物と類似の特性を示す、既知量の物質である(すなわち、任意の前処理、濃縮及び実際の検出工程を含む)。ISTDは目的の分析物と同様の特性を呈するが、目的の分析物とは明確に区別できる。例示すると、ガス又は液体クロマトグラフィのようなクロマトグラフ分離の間、ISTDは、試料からの目的の分析物とほぼ同じ保持時間を有する。したがって、分析物及びISTDの両方が同時に質量分析計に入る。ISTDは、しかしながら、試料からの目的の分析物とは異なる分子量を呈する。これにより、異なる質量/電荷(m/z)比を用いて、ISTDからのイオンと分析物からのイオンとを質量分析で区別することができる。両方を断片化に供し、娘イオンを得る。これらの娘イオンは、互いのm/z比及びそれぞれの親イオンによって区別することができる。結果として、ISTD及び分析物からのシグナルの別個の決定及び定量化を実施することができる。ISTDは既知量で添加されているので、試料からの分析物のシグナル強度は、特定の定量的量の分析物に帰属し得る。かくして、ISTDの添加は、検出された分析物の量の相対的比較を可能にし、分析物(複数可)が質量分析計に到達した際、試料中に存在する目的の分析物(複数可)の明白な同定及び定量化を可能にする。典型的には、必ずしもそうではないが、ISTDは目的の分析物の同位体標識されたバリアントである(例えば、H、13C、又は15N等の標識を含む)。
【0040】
前処理に加えて、試料はまた、1つ以上の濃縮工程に供され得る。本開示の文脈において、「第1の濃縮プロセス」又は「第1の濃縮ワークフロー」という用語は、試料の前処理の後に行われ、初期試料に対して濃縮された分析物を含む試料を提供する濃縮プロセスを指す。第1の濃縮ワークフローは、化学沈殿(例えば、アセトニトリルを使用する)又は固相の使用を含み得る。適切な固相としては、固相抽出(SPE)カートリッジ、及びビーズが挙げられるが、これらに限定されない。ビーズは、非磁性、磁性、又は常磁性であり得る。ビーズは、目的の分析物に特異的であるように異なるようにコーティングされてもよい。コーティングは、意図される用途、すなわち意図される捕捉分子に応じて異なり得る。どのコーティングがどの分析物に適しているかは当業者に周知である。ビーズは、様々な異なる材料で作られてもよい。ビーズは、様々なサイズを有してもよく、細孔を含む又はそれを含まない表面を備えてもよい。ビーズは免疫官能化されてもよい。
【0041】
本開示の文脈において、「第2の濃縮プロセス」又は「第2の濃縮ワークフロー」という用語は、試料の前処理及び第1の富化プロセスの後に行われ、初期試料及び第1の濃縮プロセス後の試料に対して濃縮された分析物を含む試料を提供する濃縮プロセスを指す。
【0042】
「クロマトグラフィ」という用語は、液体又はガスによって運ばれる化学混合物が、静止した液相又は固相の周り又は上を流れる際に化学成分の異なる分布の結果として成分中に分離される、プロセスを指す。本発明の実施形態では、方法又は試料要素又は装置又はキットは、それぞれクロマトグラフィ工程及びクロマトグラフィユニットを含まない。
【0043】
「液体クロマトグラフィ」又は「LC」という用語は、細かく分かれた物質のカラム又は毛管路を通って流体が均一に浸透する際に、流体溶液の1つ以上の成分を選択的に遅延させるプロセスを指す。遅延は、この流体が固定相(複数可)に対して移動する際の、1つ以上の固定相とバルク流体(すなわち、移動相)との間の混合物成分の分布に起因する。固定相が移動相よりも高い極性である(例えば、移動相としてトルエン、固定相としてシリカ)方法は順相液体クロマトグラフィ(normal phase liquid chromatography:NPLC)と呼ばれ、固定相が移動相よりも低い極性である(例えば、移動相として水-メタノール混合物、固定相としてC18(オクタデシルシリル))方法は逆相液体クロマトグラフィ(reversed phase liquid chromatography:RPLC)と呼ばれる。
【0044】
「高速液体クロマトグラフィ」又は「HPLC」とは、圧力下において固定相、典型的には高密度に充填されたカラムに移動相を通すことによって分離の程度が増加する、液体クロマトグラフィの方法を指す。典型的に、カラムには、不規則又は球形の粒子、多孔質モノリシック層、又は多孔質膜で構成される固定相が充填されている。HPLCは、歴史的に、移動相及び固定相の極性に基づいて2つの異なるサブクラスに分けられる。固定相が移動相よりも高い極性である(例えば、移動相としてトルエン、固定相としてシリカ)方法は順相液体クロマトグラフィ(NPLC)と呼ばれ、反対の(例えば、移動相として水-メタノール混合物、固定相としてC18(オクタデシルシリル))方法は逆相液体クロマトグラフィ(RPLC)と呼ばれる。マイクロLCとは、典型的には1mm未満、例えば約0.5mmの狭い(norrow)内径を有するカラムを用いるHPLC法を指す。「超高速液体クロマトグラフィ」又は「UHPLC」とは、120MPa(17,405lbf/in2)又は約1200気圧の圧力を用いるHPLC法を指す。ラピッドLCとは、上記のような内径であり、長さが2cm未満、例えば1cmの短いカラムを用いて、上記のような流量及び上記のような圧力を加えるLC法を指す(マイクロLC、UHPLC)。短いラピッドLCプロトコルは、単一の分析カラムを用いるトラッピング/洗浄/溶出工程を含み、1分未満の非常に短い時間でLCを実現する。
【0045】
さらに、親水性相互作用クロマトグラフィ(hydrophilic interaction chromatography:HILIC)、サイズ排除型LC、イオン交換型LC、及びアフィニティ型LCがよく知られている。
【0046】
LC分離は、並列に配置された複数のLCチャネルを含むシングルチャネルLC又はマルチチャネルLCであってもよい。LCにおいて、分析物は、当業者に一般的に知られているように、それらの極性又はログP値、サイズ、又は親和性に従って分離され得る。
【0047】
「キットは、少なくとも1つの試薬、例えば障害の治療のための薬品、又は本発明のバイオマーカー遺伝子若しくはタンパク質を特異的に検出するためのプローブを含む、任意の製品(例えば、パッケージ又は容器)である。キットは、好ましくは、本発明の方法を実施するためのユニットとして、奨励、流通、又は販売される。典型的には、キットは、バイアル、チューブ等の1つ以上の容器手段を密接に閉じ込めて受け入れるように区画化された担体手段を更に含むことができる。特に、容器手段の各々は、第1の態様の方法で使用される別個の要素のうちの1つを備える。キットは、反応触媒を含むがこれに限定されない1つ以上の他の試薬を更に備えてもよい。キットは、緩衝液、内部標準、希釈剤、フィルタ、針、注射器、及び使用説明を伴う添付文書を含むがこれらに限定されない、さらなる材料を含む1つ以上の他の容器を更に備えてもよい。標識は、組成物が特定の用途に使用されることを示すために容器上に提示され得、in vivo使用又はin vitro使用のいずれかに関する指示も示し得る。コンピュータ・プログラム・コードは、光記憶媒体(例えば、コンパクトディスク)等のデータ記憶媒体若しくは装置上に、又はコンピュータ若しくはデータ処理装置に直接提供されてもよい。その上キットは、較正目的のために、本明細書の別の箇所に記載されるようなバイオマーカーの標準量を含み得る。
【0048】
「銀ナノ粒子」という用語は、本発明の少なくとも1つの態様又は全ての態様の文脈において、元素銀原子及び/又は酸化銀構造の凝集体が、銀イオンの還元によって表面に意図的に導入されることを意味する。
【0049】
「インターカレートされたリチウムを含まない」という用語は、本発明の少なくとも1つの態様又は全ての態様の文脈において、試料、特にマトリックスが、化学的インターカレーションプロセスによって試料、特にマトリックスに含まれる又は挿入されるリチウムを含まないことを意味する。
【0050】
「リチウム媒介剥離工程を含まない」という用語は、本発明の少なくとも1つの態様又は全ての態様の文脈において、リチウムインターカレートされたバルク材料が超音波剥離プロセスで使用されないことを意味する。リチウムインターカレートされたバルク材料は、間にインターカレートされたリチウム原子を有する少なくとも10層の数の非剥離多層を含むか、又はそれからなる。
【0051】
「水酸化ナトリウム支援剥離工程を含まない」という用語は、本発明の少なくとも1つの態様又は全ての態様の文脈において、剥離工程が、高沸点溶媒(1バールでの沸点100℃超)、例えばN-メチル-2-ピロリドン(NMP)と共にpH>8の水酸化ナトリウムを含まないことを意味する。
【0052】
「多孔質ナノ構造化工程を含まない」という用語は、本発明の少なくとも1つの態様又は全ての態様の文脈において、対応する表面上の多孔度又は欠陥の数を増加させるために化学的又は電気化学的エッチングプロセスが適用されないことを意味する。
【0053】
「バルク材料」という用語は、本発明の少なくとも1つの態様又は全ての態様の文脈において、遷移金属硫化物材料、好ましくは遷移金属ジスルフィドが、全方向において20nmより大きいそれぞれの中間点からの粒径を有する多層を含むか又はそれからなることを意味する。
【0054】
「単一スポット」という用語は、本発明の少なくとも1つの態様又は全ての態様の文脈において、対応する懸濁液又は溶液の所定の体積、例えば0.7μLが一度に表面に塗布されることを意味する。
【0055】
「乾燥液滴法」という用語は、本発明の少なくとも1つの態様又は全ての態様の文脈において、塗布された単一の液滴が大気条件又は真空のいずれかによって乾燥されることを意味する。
【0056】
「液体形態」という用語は、本発明の少なくとも1つの態様又は全ての態様の文脈において、マトリックス懸濁液又は分析物溶液のいずれかが水若しくは有機溶媒又はそれらの組み合わせに可溶化されていることを意味し得る。好ましくは、試料は、動作温度において液体形態である。
【0057】
「塗布する(applying)」という用語は、本発明の少なくとも1つの態様又は全ての態様の文脈において、液体試料形態が、例えばピペッティングワークフローを介して表面上に位置することを意味する。ピペッティングワークフローを、以下:1)ピペットにマトリックス懸濁液又は分析物溶液のいずれかを充填する工程、2)試料ホルダの表面上の位置を特定する工程、及び3)試料ホルダの表面上に所望の体積の液体を放出する工程により行ってもよい。
【0058】
「乾燥する」という用語は、本発明の少なくとも1つの態様又は全ての態様の文脈において、塗布された液体が、例えば大気条件によって、又は例えば真空中で蒸発乾固することを意味する。
【0059】
「導電性表面」という用語は、本発明の少なくとも1つの態様又は全ての態様の文脈において、対応する材料が100Ω/sq以下、好ましくは60Ω/sq以下のシート抵抗を有することを意味する。例えば、約17μΩ/の厚さ1mmの銅テープ、約28μΩ/の厚さ1mmのアルミニウムテープ、又は約60Ω/の厚さ300Åのガラス上のITOコーティングを、対応する材料として使用することができる。
【0060】
「直接イオン化」という用語は、本発明の少なくとも1つの態様又は全ての態様の文脈において、対応するイオンの脱離のみが起こり、さらなる付加物形成は起こらないことを意味する。
【0061】
「MALDI」という用語は、本発明の少なくとも1つの態様又は全ての態様の文脈において、マトリックス又はコーティングされた表面の支持により、紫外線レーザー光が吸収され、得られた熱エネルギーがマトリックスから1つ以上の分析物(複数可)に伝達され、したがって1つ以上の数の分析物(複数可)の脱離及びイオン化をもたらすことを意味することができる。
【0062】
「ポジティブモードでのMALDI-TOF測定」という用語は、本発明の少なくとも1つの態様又は全ての態様の文脈において、質量分析計がポジティブイオン化モードで動作することを意味する。ポジティブイオン化モードは当業者に知られているため、詳細には説明しない。
【0063】
「レーザー照射」という用語は、本発明の少なくとも1つの態様又は全ての態様の文脈において、好ましくは1Hzより大きいパルス周波数を有する単色光の集束ビームが利用されることを意味する。
【0064】
実施形態
第1の態様では、本発明は、少なくとも1つの目的の分析物を判定するための方法であって、
a)試料ホルダの表面上に、マトリックスと、少なくとも1つの目的の分析物とを含む試料を調製する工程と、
b)400nmより小さい波長を有するレーザー照射を介して少なくとも1つの目的の分析物をイオン化する工程と、
c)質量分析を使用して目的の分析物を判定する工程と、を含む方法に関する。
【0065】
マトリックスは、少なくとも1つの遷移金属硫化物、好ましくは少なくとも1つの遷移金属ジスルフィドを含み、遷移金属硫化物は粒子として形成されている。好ましくは、遷移金属硫化物又は遷移金属ジスルフィドは、MoS、TiS、SnS及びそれらの組み合わせからなる群から選択され、より好ましくは、遷移金属硫化物又は遷移金属ジスルフィドはMoSである。工程a)は、
液体形態の試料を試料ホルダの前記表面に塗布すること及び試料を乾燥させることを含む。好ましくは、塗布することは、
(i)マトリックスと目的の分析物とを合わせて塗布し、続いて乾燥させること、又は
(ii)マトリックス及び目的の分析物を順次塗布することであって、マトリックス及び目的の分析物を順次塗布する場合、マトリックス及び目的の分析物をそれぞれ順次塗布した後に乾燥させることが続く、マトリックス及び目的の分析物を順次塗布すること
を含む。
【0066】
本発明者らは、驚くべきことに、本発明の主題、特に本発明の第1の態様による方法が、上述の欠点を克服するための単純で堅牢な方法を示すことを見出した。
【0067】
当該方法は、分析物分子への特定の金属付加物(Na、K、Rb、Cs)を増強して、分析物を部分として得るのに適している。
【0068】
クラウンエーテルの添加による特定の金属付加物を安定化するさらなる増強を観察することができる。
【0069】
当該方法は、直接イオン化、例えばNa、K、Rb、Cs、Mg2+、Ca2+、Sr2+、Ba2+等によってアルカリイオン及び可能性としてのアルカリ土類を検出することができる。
【0070】
当該方法は、したがって非常に容易な製造プロセスを使用して、予めコーティングされた消耗品を用いて低分子量分析物を測定することができるマトリックス支援レーザー脱離プロセスを作製することを目的とする。
【0071】
前記方法は、有機溶媒に溶解し、直接塗布した後の、例えばMoS又はWS又はTiS又はSnSに基づくバルク材料の利用、並びに超音波処理プロセス工程を使用して無機材料の高濃度懸濁液を得る方法を示す。
【0072】
本発明者らは、MoS、又はWS、又はTiS、又はSnSのような無機マトリックスの有用性のために、先行技術において除去されるようなさらなる銀インターカレーション又はリチウム媒介剥離又は多孔質ナノ構造化(指向性)は必要ないことを示すことができた。試料を調製する、例えばピペッティング及び空気乾燥又は真空乾燥の唯一の試料処理工程a)は、レーザー照射後に十分なMSシグナルを得るために必要である。
【0073】
本発明の第1の態様の実施形態では、方法又は試料は銀ナノ粒子を含まない。
【0074】
本発明の第1の態様の実施形態では、方法又は試料は、インターカレートされたリチウムを含まない。特に、マトリックスは、インターカレートされたリチウムを含まない。
【0075】
本発明の第1の態様の実施形態では、方法又は試料は、リチウム媒介剥離工程を含まない。特に、マトリックスは、リチウム媒介剥離工程を含まない。
【0076】
本発明の第1の態様の実施形態では、方法又は試料は、水酸化ナトリウム支援剥離工程を含まない。特に、マトリックスは、水酸化ナトリウム支援剥離工程を含まない。
【0077】
本発明の第1の態様の実施形態では、方法又は試料は多孔質ナノ構造化工程を含まない。特に、多孔質ナノ構造化工程を含まないマトリックス。
【0078】
工程a)によれば、試料は、試料ホルダの表面上に調製される。試料は、マトリックス及び少なくとも1つの目的の分析物、又は2つ以上、例えば2個、又は3個、又は4個、又は5個、又は6個、又は7個、又は8個、又は9個、又は10個、又は11個、又は12個、又は13個、又は14個、又は15個の分析物を含む。試料調製工程a)は、少なくとも1つの適用工程及び少なくとも1つの乾燥工程を含む。液体形態の試料は、試料ホルダの表面に塗布される。試料は、好ましくは少なくとも1つの塗布工程が実施された後に乾燥される。
【0079】
液体形態での試料の塗布は、マトリックスと目的の分析物とを組み合わせて塗布し、続いて乾燥させることとすることができる。例えば、マトリックスとインタストの分析物とを混合し、次いで試料ホルダの表面に塗布し、次いで乾燥させ、好ましくはマトリックス及び目的の分析物を含む1つの層構造が形成される。
【0080】
あるいは、塗布は、マトリックス及び目的の分析物を順次塗布することであり、マトリックス及び目的の分析物を順次塗布する場合、マトリックス及び目的の分析物をそれぞれ順次塗布した後に乾燥させることが続く。例えば、マトリックスを塗布し、次いで乾燥させて第1の層を形成し、次いで目的の分析物を塗布し、次いで乾燥させて第2の層を形成する。第1及び第2の層は、層構造を形成することができる。あるいは、目的の分析物を塗布し、次いで乾燥させて第1の層を形成し、次いでマトリックスを塗布し、次いで乾燥させて第2の層を形成する。第1及び第2の層は、層構造を形成することができる。
【0081】
マトリックスは、少なくとも1つの遷移金属硫化物、好ましくは少なくとも1つの遷移金属ジスルフィドを含み、遷移金属硫化物は粒子として形成されている。
【0082】
本発明の第1の態様の実施形態では、マトリックスは試料ホルダの表面に塗布され、次いで乾燥される。マトリックスの適用及び乾燥後、目的の分析物又は分析物の混合物は、試料ホルダの表面、特にマトリックス上に直接適用され、次いで乾燥される。特に、マトリックス層及び分析物層を含む少なくとも2つの層構造が形成され、マトリックス層は、試料ホルダの表面上及び試料ホルダの表面と分析物層との間に直接配置される。さらに、3つ以上の層が層構造を形成することができる。例えば、少なくとも2つのマトリックス層と少なくとも2つの分析物層とが層構造を形成するか、又は少なくとも1つのマトリックス層と少なくとも2つの分析物層とが層構造を形成するか、又は少なくとも2つのマトリックス層と少なくとも1つの分析物層とが層構造を形成する。
【0083】
本発明の第1の態様の実施形態では、マトリックスを有機溶媒に溶解し、超音波処理して、遷移金属硫化物粒子、好ましくは遷移金属ジスルフィド粒子の懸濁液を形成する。特に、遷移金属硫化物粒子、好ましくは遷移金属ジスルフィド粒子は、1nm~7μm、好ましくは50nm~150nm、より好ましくは80nm~130nmの範囲の粒子を有する。
【0084】
本発明の第1の態様の実施形態では、遷移金属硫化物粒子は、インターカレートされていないバルク材料から超音波処理プロセスによって直接得られる遷移金属ジスルフィド粒子である。
【0085】
本発明の第1の態様の実施形態では、工程a)において、遷移金属硫化物、好ましくは遷移金属ジスルフィドの粒子は、1nm~6μmの範囲の粒径を有する。
【0086】
本発明の第1の態様の実施形態では、工程a)において、遷移金属硫化物、好ましくは遷移金属ジスルフィドの粒子は、1nm~1000nmの範囲の粒径を有する。
【0087】
本発明の第1の態様の実施形態では、工程a)において、遷移金属硫化物、好ましくは遷移金属ジスルフィドの粒子は、1nm~1000nmの範囲、好ましくは20nm~300nmの範囲、より好ましくは20nm~100nmの範囲の粒子高(particle high)を有する。粒径及び/又は粒子高は、走査型電子顕微鏡(SEM)、透過型電子顕微鏡(TEM)又は原子/走査力顕微鏡(AFM)によって決定することができる。
【0088】
本発明の第1の態様の実施形態では、工程a)において、遷移金属硫化物、好ましくは遷移金属ジスルフィドの粒子は、50nm~500nmの範囲の粒径を有する。
【0089】
本発明の第1の態様の実施形態では、工程a)において、遷移金属硫化物、好ましくは遷移金属ジスルフィドの粒子は、50nm~300nmの範囲の粒径を有する。
【0090】
本発明の第1の態様の実施形態では、工程a)において、遷移金属硫化物、好ましくは遷移金属ジスルフィドの粒子は、80nm~150nmの範囲の粒径を有する。
【0091】
本発明の第1の態様の実施形態では、遷移金属硫化物、好ましくは遷移金属ジスルフィドはバルク材料である。
【0092】
本発明の第1の態様の実施形態では、遷移金属硫化物の遷移金属、好ましくは遷移金属二硫化物は、タングステン、モリブデン、チタン及びスズからなる群から選択される。
【0093】
本発明の第1の態様の実施形態では、遷移金属硫化物、好ましくは遷移金属ジスルフィドは、WS、MoS、TiS、SnS及びそれらの組み合わせ、好ましくはMoS、TiS、SnS及びそれらの組み合わせ、より好ましくはMoSからなる群から選択される。
【0094】
本発明の第1の態様の実施形態では、有機溶媒は100℃以上の沸点を有する。好ましくは、有機溶媒は、水、アセトニトリル、アルコール、例えばイソプロパノール、及びそれらの組み合わせの群から選択される。
【0095】
本発明の第1の態様の実施形態では、試料は、乾燥液滴法によって単一のスポットとして試料ホルダに塗布される。
【0096】
本発明の第1の態様の実施形態では、試料は、試料ホルダの表面に液体形態で塗布される。
【0097】
本発明の第1の態様の実施形態では、工程a)の後に、マトリックス及び目的の分析物のそれぞれが層構造を形成し、マトリックスの層構造が、試料ホルダの表面と前記目的の分析物の層構造との間に形成される。
【0098】
本発明の第1の態様の実施形態では、マトリックスの層構造は単層又は単層として形成される。好ましくは、単層は、20~300nm、より好ましくは20nm~100nmの厚さを有する。
【0099】
本発明の第1の態様の実施形態では、目的の分析物の層構造は単層として形成される。
【0100】
本発明の第1の態様の実施形態では、少なくとも1つの目的の分析物は、マトリックスに埋め込まれ、及び/又はマトリックスの表面上に配置され、マトリックスは、試料ホルダの表面の反対側に配置される。
【0101】
本発明の第1の態様の実施形態では、工程a)の前に、さらなる工程a1)である、
a1)マトリックスの超音波処理、が行われる。
【0102】
本発明の第1の態様の実施形態では、超音波処理プロセスa1)は、プローブ型超音波ホモジナイザー又は超音波浴の使用によって実施される。プローブ型超音波ホモジナイザー及び超音波浴の使用は当業者には既知であるため、詳細には説明しない。
【0103】
本発明の第1の態様の実施形態では、試料ホルダは、試料を保持又は保持することができる。
【0104】
本発明の第1の態様の実施形態では、試料ホルダは、鋼、銅、ITO及びアルミニウムからなる群から選択される材料を含むか、又はそれからなる。
【0105】
本発明の第1の態様の実施形態では、試料ホルダは、レーザー照射に面する、及び/又は400nmより小さい波長のレーザー照射を発することができるレーザー照射源に面する表面備える。
【0106】
本発明の第1の態様の実施形態では、試料ホルダは、MALDI鋼板又はITOガラススライド又は銅導電性テープである。
【0107】
本発明の第1の態様の実施形態では、表面は導電性表面である。
【0108】
本発明の第1の態様の実施形態では、導電性表面は構造化されていても規定されていなくてもよい。
【0109】
本発明の第1の態様の実施形態では、表面、好ましくは導電性表面は構造を含み、構造は平面視で長方形又は五角形又は六角形として成形される。長方形は長方形又は正方形であり得る。
【0110】
本発明の第1の態様の実施形態では、構造化は以下のように実行することができる:目的とする構造のネガ(negative)を含むスタンプ又はスタンピングローラは、表面、主にアルミニウム又は銅のテープに押し付けられる。スタンプの材料、好ましくは鋼は、表面と比較してより高い硬度から構成されなければならない。スタンプを解除した後、均一に配置されたキャビティが約500μmの深さで形成される。キャビティの構造は、例えば、二次又は六角形のいずれかであり、対称的なアセンブリに配置される。
【0111】
本発明の第1の態様の実施形態では、マトリックスは、100nm~100μmの範囲のサイズ厚さを有する層として形成される。
【0112】
本発明の第1の態様の実施形態では、クラウンエーテル、特に18-クラウン-6が工程a)で添加される。クラウンエーテルは、遷移金属スルフィド、好ましくは遷移金属ジスルフィド上に存在する天然に存在するナトリウムイオン及びカリウムイオンに結合する錯化試薬として作用する。
【0113】
本発明の第1の態様の実施形態では、当該方法は、工程b)における直接イオン化によってアルカリイオン及び/又はアルカリ土類を検出することができる。
【0114】
本発明の第1の態様の実施形態では、アルカリイオン及び/又はアルカリ土類は、Na、K、Rb、Cs、Mg2+、Ca2+、Sr2+、Ba2+の群から選択される。
【0115】
本発明の第1の態様の実施形態では、目的の分析物は2000Daより小さい分子量を有する。
【0116】
本発明の第1の態様の実施形態では、目的の分析物は、核酸、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、代謝物、ホルモン、脂肪酸、脂質、炭水化物、ステロイド、ケトステロイド、セコステロイド、別の分子の特定の修飾を特徴とする分子、生体によって内在化された物質、そのような物質の代謝物、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0117】
本発明の第1の態様の実施形態では、目的の分析物は官能基を含む。官能基は、表面又は化合物の反応性ユニットQと反応することができる。
【0118】
本発明の第1の態様の実施形態では、官能基は、カルボニル基、ジエン基、ヒドロキシル基、アミン基、イミン基、ケトン基、アルデヒド基、チオール基、ジオール基、フェノール基、エポキシ基、ジスルフィド基、核酸塩基基、カルボン酸基、末端システイン基、末端セリン基及びアジド基からなる群から選択される。
【0119】
本発明の第1の態様の実施形態では、分析物分子は、カルボン酸基、アルデヒド基、ケト基、マスクされたアルデヒド、マスクされたケト基、エステル基、アミド基、及び無水物基からなる群から選択される官能基としてカルボニル基を含む。アルドース(アルデヒド及びケト)は、親アルデヒド/ケトの一種のマスクされた形態であるアセタール及びヘミアセタールとして存在する。
【0120】
本発明の第1の態様の実施形態では、カルボニル基はアミド基であり、当業者は、アミド基自体が安定な基であるが、アミド基を加水分解してカルボン酸基及びアミノ基に変換することができることを十分に認識している。アミド基の加水分解は、酸/塩基触媒反応によって、又はいずれも当業者に周知の酵素プロセスによって達成され得る。カルボニル基がマスクされたアルデヒド基又はマスクされたケト基である本発明の第1の態様の実施形態では、それぞれの基は、ヘミアセタール基又はアセタール基、特に環状ヘミアセタール基又はアセタール基のいずれかである。本発明の第1の態様の実施形態では、アセタール基は、化合物と反応する前にアルデヒド基又はケト基に変換される。
【0121】
本発明の第1の態様の実施形態では、カルボニル基はケト基である。本発明の第1の態様の実施形態では、ケト基は、化合物の反応性単位と反応する前に中間体イミン基に転移され得る。本発明の第1の態様の実施形態では、1つ以上のケト基を含む分析物分子は、ケトステロイドである。本発明の第1の態様の特定の実施形態では、ケトステロイドは、テストステロン、エピテストステロン、ジヒドロテストステロン(DHT)、デスオキシメチルテストステロン(DMT)、テトラヒドロゲストリノン(THG)、アルドステロン、エストロン、4-ヒドロキシエストロン、2-メトキシエストロン、2-ヒドロキシエストロン、16ケトエストラジオール、16-アルファ-ヒドロキシエストロン、2-ヒドロキシエストロン-3-メチルエーテル、プレドニゾン、プレドニゾロン、プレグネノロン、プロゲステロン、デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)、17-ヒドロキシプレグネノロン、17-ヒドロキシプロゲステロン、アンドロステロン、エピアンドロステロン、Δ4-アンドロステンジオン、11-デオキシコルチゾール、コルチコステロン、21-デオキシコルチゾール、11-デオキシコルチコステロン、アロプレグナノロン及びアルドステロンからなる群から選択される。
【0122】
本発明の第1の態様の実施形態では、カルボニル基はカルボキシル基である。本発明の第1の態様の実施形態では、カルボキシル基は、化合物と直接反応するか、又は化合物と反応する前に活性化エステル基に変換される。本発明の第1の態様の実施形態では、1つ以上のカルボキシル基を含む分析物分子は、Δ8-テトラヒドロカンナビノール酸、ベンゾイルエクゴニン、サリチル酸、2-ヒドロキシ安息香酸、ガバペンチン、プレガバリン、バルプロ酸、バンコマイシン、メトトレキサート、ミコフェノール酸、モンテルカスト、レパグリニド、フロセミド、テルミサルタン、ゲムフィブロジル、ジクロフェナク、イブプロフェン、インドメタシン、ゾメピラク、イソキセパック及びペニシリンからなる群から選択される。本発明の第1の態様の実施形態では、1つ以上のカルボキシル基を含む分析物分子は、アルギニン、リジン、アスパラギン酸、グルタミン酸、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン、トリプトファン、アラニン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、バリン、プロリン及びグリシンからなる群から選択されるアミノ酸である。
【0123】
本発明の第1の態様の実施形態では、カルボニル基はアルデヒド基である。本発明の第1の態様の実施形態では、アルデヒド基は、化合物の反応性単位と反応する前に中間体イミン基に転移され得る。本発明の第1の態様の実施形態では、1つ以上のアルデヒド基を含む分析物分子は、ピリドキサール、N-アセチル-D-グルコサミン、アルカフタジン、ストレプトマイシン及びジョサマイシンからなる群から選択される。
【0124】
本発明の第1の態様の実施形態では、カルボニル基は、カルボニルエステル基である。本発明の第1の態様の実施形態では、1つ以上のエステル基を含む分析物分子は、コカイン、ヘロイン、リタリン、アセクロフェナク、アセチルコリン、アムシノニド、アミロキサート、アミロカイン、アニレリジン、アルニジピンアルテスネート及びペチジンからなる群から選択される。
【0125】
本発明の第1の態様の実施形態では、カルボニル基は無水物基である。本発明の第1の態様の実施形態では、1つ以上の無水物基を含む分析物分子は、カンタリジン、無水コハク酸、無水トリメリット酸及び無水マレイン酸からなる群から選択される。
【0126】
本発明の第1の態様の実施形態では、分析物分子は、官能基として、1つ以上のジエン基、特に共役ジエン基を含む。本発明の第1の態様の実施形態では、1つ以上のジエン基を含む分析物分子は、セコステロイドである。複数の実施形態では、セコステロイドは、コレカルシフェロール(ビタミンD3)、エルゴカルシフェロール(ビタミンD2)、カルシフェジオール、カルシトリオール、タキステロール、ルミステロール及びタカルシトールからなる群から選択される。特に、セコステロイドは、ビタミンD、特にビタミンD2若しくはD3、又はそれらの誘導体である。特定の実施形態では、セコステロイドは、ビタミンD2、ビタミンD3、25ヒドロキシビタミンD2、25-ヒドロキシビタミンD3(カルシフェジオール)、3-エピ-25-ヒドロキシビタミンD2、3-エピ-25-ヒドロキシビタミンD3、1,25-ジヒドロキシビタミンD2、1,25-ジヒドロキシビタミンD3(カルシトリオール)、24,25-ジヒドロキシビタミンD2、24,25-ジヒドロキシビタミンD3からなる群から選択される。本発明の第1の態様の実施形態では、1つ以上のジエン基を含む分析物分子は、ビタミンA、トレチノイン、イソトレチノイン、アリトレチノイン、ナタマイシン、シロリムス、アムホテリシンB、ナイスタチン、エベロリムス、テムシロリムス及びフィダキソミシンからなる群から選択される。
【0127】
本発明の第1の態様の実施形態では、分析物分子は、官能基として1つ以上のヒドロキシル基を含む。本発明の第1の態様の実施形態では、分析物分子は、単一のヒドロキシル基又は2つのヒドロキシル基を含む。2つ以上のヒドロキシル基が存在する実施形態では、2つのヒドロキシル基は、互いに隣接して配置されてもよく(1,2-ジオール)、又は1、2若しくは3個のC原子によって分離されてもよい(それぞれ1,3-ジオール、1,4-ジオール、1,5-ジオール)。第1の態様の特定の実施形態では、分析物分子は1,2-ジオール基を含む。ヒドロキシル基が1つのみ存在する実施形態では、当該分析物は、第1級アルコール、第2級アルコール及び第3級アルコールからなる群から選択される。分析物分子が1つ以上のヒドロキシル基を含む本発明の第1の態様の実施形態では、分析物は、ベンジルアルコール、メントール、L-カルニチン、ピリドキシン、メトロニダゾール、一硝酸イソソルビド、グアイフェネシン、クラブラン酸、ミグリトール、ザルシタビン、イソプレナリン、アシクロビル、メトカルバモール、トラマドール、ベンラファキシン、アトロピン、クロフェダノール、アルファ-ヒドロキシアルプラゾラム、アルファ-ヒドロキシトリアゾラム、ロラゼパム、オキサゼパム、テマゼパム、エチルグルクロニド、エチルモルヒネ、モルヒネ、モルヒネ-3-グルクロニド、ブプレノルフィン、コデイン、ジヒドロコデイン、p-ヒドロキシプロポキシフェン、O-デスメチルトラマドール、デスメタドール、ジヒドロキニジン及びキニジンからなる群から選択される、分析物分子が2つ以上のヒドロキシル基を含む本発明の第1の態様の実施形態では、分析物は、ビタミンC、グルコサミン、マンニトール、テトラヒドロビプテリン、シタラビン、アザシチジン、リバビリン、フロクスウリジン、ゲムシタビン、ストレプトゾトシン、アデノシン、ビダラビン、クラドリビン、エストリオール、トリフルリジン、クロファラビン、ナドロール、ザナミビル、ラクツロース、アデノシンモノホスフェート、イドクスウリジン、レガデノソン、リンコマイシン、クリンダマイシン、カナグリフロジン、トブラマイシン、ネチルマイシン、カナマイシン、チカグレロル、エピルビシン、ドキソルビシン、アルベカシン、ストレプトマイシン、ウアバイン、アミカシン、ネオマイシン、フラミセチン、パリモセチン、エリスロマイシン、クラリスロマイシン、アジスロマイシン、ビンデシン、ジギトキシン、ジゴキシン、メトリザミド、アセチルジギトキシン、デスラノシド、フルダラビン、クロファラビン、ゲムシタビン、シタラビン、カペシタビン、ビダラビン、及びプリカマイシンからなる群から選択される。
【0128】
本発明の第1の態様の実施形態では、分析物分子は、官能基として1つ以上のチオール基(アルキルチオール及びアリールチオール基を含むがこれらに限定されない)を含む。本発明の第1の態様の実施形態では、1つ以上のチオール基を含む分析物分子は、チオマンデル酸、DL-カプトプリル、DL-チオルファン、N-アセチルシステイン、D-ペニシラミン、グルタチオン、L-システイン、ゾフェノプリラート、チオプロニン、ジメルカプロール、スクシマーからなる群から選択される。
【0129】
本発明の第1の態様の実施形態では、分析物分子は、官能基として1つ以上のジスルフィド基を含む。本発明の第1の態様の実施形態では、1つ以上のジスルフィド基を含む分析物分子は、グルタチオンジスルフィド、ジピリチオン、硫化セレン、ジスルフィラム、リポ酸、L-シスチン、フルスルチアミン、オクトレオチド、デスモプレシン、バプレオチド、テルリプレシン、リナクロチド及びペジネサチドからなる群から選択される。硫化セレンは、二硫化セレン、SeS、又は六硫化セレン、Seであり得る。
【0130】
本発明の第1の態様の実施形態では、分析物分子は、官能基として1つ以上のエポキシド基を含む。本発明の第1の態様の実施形態では、1つ以上のエポキシド基を含む分析物分子は、カルバマゼピン-10,11-エポキシド、カルフィルゾミブ、フロセミドエポキシド、ホスホマイシン、塩酸セベラマー、セルレニン、スコポラミン、チオトロピウム、チオトロピウムブロミド、メチルスコポラミンブロミド、エプレレノン、ムピロシン、ナタマイシン、及びトロレアンドマイシンからなる群から選択される。
【0131】
本発明の第1の態様の実施形態では、分析物分子は、官能基として1つ以上のフェノール基を含む。本発明の第1の態様の特定の実施形態では、1つ以上のフェノール基を含む分析物分子は、ステロイド又はステロイド様化合物である。本発明の第1の態様の実施形態では、1つ以上のフェノール基を含む分析物分子は、spハイブリダイズするA環と、A環の3位にOH基とを有するステロイド又はステロイド様化合物である。本発明の第1の態様の特定の実施形態では、ステロイド又はステロイド様分析物分子は、エストロゲン、エストロゲン様化合物、エストロン(E1)、エストラジオール(E2)、17a-エストラジオール、17b-エストラジオール、エストリオール(E3)、16-エピエストリオール、17-エピエストリオール、及び16,17-エピエストリオール及び/又はそれらの代謝物からなる群から選択される。実施形態では、代謝物は、エストリオール、16-エピエストリオール(16-epiE3)、17-エピエストリオール(17-epiE3)、16,17-エピエストリオール(16,17-epiE3)、16-ケトエストラジオール(16-ケトE2)、16a-ヒドロキシエストロン(16a-OHEl)、2-メトキシエストロン(2-MeOEl)、4-メトキシエストロン(4-MeOEl)、2-ヒドロキシエストロン-3-メチルエーテル(3-MeOEl)、2-メトキシエストラジオール(2-MeOE2)、4-メトキシエストラジオール(4-MeOE2)、2-ヒドロキシエストロン(2-OHE1)、4-ヒドロキシエストロン(4-OHE1)、2-ヒドロキシエストラジオール(2-OHE2)、エストロン(El)、エストロンサルフェート(Els)、17a-エストラジオール(E2a)、17b-エストラジオール(E2B)、エストラジオールサルフェート(E2S)、エキリン(EQ)、17a-ジヒドロエキリン(EQa)、17b-ジヒドロエキリン(EQb)、エキレニン(EN)、17-ジヒドロエキレニン(ENa)、17α-ジヒドロエキレニン,17β-ジヒドロエキレニン(ENb),Δ8,9-ジヒドロエストロン(dEl)、Δ8,9-ジヒドロエストロンサルフェート(dEls)、Δ9-テトラヒドロカンナビノール、ミコフェノール酸からなる群から選択される。β又はbは交換可能に使用することができる。α及びaは交換可能に使用することができる。
【0132】
本発明の第1の態様の実施形態では、分析物分子は、官能基としてアミン基を含む。本発明の第1の態様の実施形態では、アミン基は、アルキルアミン又はアリールアミン基である。本発明の第1の態様の実施形態では、1つ以上のアミン基を含む分析物は、タンパク質及びペプチドからなる群から選択される。本発明の第1の態様の実施形態では、アミン基を含む分析物分子は、3,4-メチレンジオキシアンフェタミン、3,4-メチレンジオキシ-N-エチルアンフェタミン、3,4-メチレンジオキシメタンフェタミン、アンフェタミン、メタンフェタミン、N-メチル-1,3-ベンゾジオキソリルブタンアミン、7-アミノクロナゼパム、7-アミノフルニトラゼパム、3,4-ジメチルメトカチノン、3-フルオロメトカチノン、4-メトキシメトカチノン、4-メチルエトカチノン、4-メチルメトカチノン、アンフェプラモン、ブチロン、エトカチノン、エレフェヘドロン、メトカチノン、メチロン、メチレンジオキシピロバレロン、ベンゾイルエクゴニン、デヒドロノルケタミン、ケタミン、ノルケタミン、メタドン、ノルメタドン、6-アセチルモルヒネ、ジアセチルモルヒネ、モルヒネ、ノルヒドロコドン、オキシコドン、オキシモルホン、フェンシクリジン、ノルプロポキシフェン、アミトリプチリン、クロミプラミン、ドチエピン、ドキセピン、イミプラミン、ノルトリプチリン、トリミプラミン、フェンタニル、グリシルキシリジド、リドカイン、モノエチルグリシルキシリジド、N-アセチルプロカインアミド、プロカインアミド、プレガバリン、2-メチルアミノ-1-(3,4-メチレンジオキシフェニル)ブタン、N-メチル-1,3-ベンゾジオキソリルブタンアミン、2-アミノ-1-(3,4-メチレンジオキシフェニル)ブタン、1,3-ベンゾジオキソリルブタンアミン、ノルメペリジン、O-デストラマドール、デスメタマドール、トラマドール、ラモトリギン、テオフィリン、アミカシン、ゲンタマイシン、トブラマイシン、バンコマイシン、メトトレキサート、ガバペンチンシソマイシン、及び5-メチルシトシからなる群から選択される。
【0133】
本発明の第1の態様の実施形態では、分析物分子は、炭水化物又は炭水化物部分を有する物質、例えば糖タンパク質又はヌクレオシドである。本発明の第1の態様の実施形態では、分析物分子は、単糖であり、特にリボース、デソキシリボース(desoxyribose)、アラビノース、リブロース、グルコース、マンノース、ガラクトース、フコース、フルクトース、N-アセチルグルコサミン、N-アセチルガラクトサミン、ノイラミン酸、N-アセチルニューロミン酸等からなる群から選択される。実施形態では、分析物分子は、特に二糖、三糖、四糖、多糖からなる群から選択されるオリゴ糖である。本発明の第1の態様の実施形態では、二糖は、スクロース、マルトース及びラクトースからなる群から選択される。本発明の第1の態様の実施形態では、分析物分子は、上記のモノ-、ジ-、トリ-、テトラ-、オリゴ-又は多糖部分を含む物質である。
【0134】
本発明の第1の態様の実施形態では、分析物分子は、アルキルアジド又はアリールアジドからなる群から選択されるアジド基を官能基として含む。本発明の第1の態様の実施形態では、1つ以上のアジド基を含む分析物分子は、ジドブジン及びアジドシリンからなる群から選択される。
【0135】
そのような分析物分子は、体液、例えば血液、血清、血漿、尿、唾液、髄液等、組織又は細胞抽出物等の生物学的試料又は臨床試料中に存在し得る。本発明の第1の態様の実施形態では、分析物分子(複数可)は、血液、血清、血漿、尿、唾液、髄液及び乾燥血液スポットからなる群から選択される生物学的試料又は臨床試料中に存在する。本発明の第1の態様のいくつかの実施形態では、分析物分子は、精製又は部分的に精製された試料、例えば精製又は部分的に精製されたタンパク質混合物又は抽出物である試料中に存在し得る。
【0136】
本発明の第1の態様の実施形態では、表面又は化合物の反応性ユニットQは、カルボニル反応性ユニット、ジエン反応性ユニット、ヒドロキシル反応性ユニット、アミノ反応性ユニット、イミン反応性ユニット、チオール反応性ユニット、ジオール反応性ユニット、フェノール反応性ユニット、エポキシド反応性ユニット、ジスルフィド反応性ユニット、及びアジド反応性ユニットからなる群から選択される。
【0137】
当該方法の工程b)によれば、少なくとも1つの目的の分析物は、400nmより小さい波長を有するレーザー照射によってイオン化される。
【0138】
本発明の第1の態様の実施形態では、工程b)は、355nm以下の波長を有するレーザー照射によって実施される。
【0139】
本発明の第1の態様の実施形態では、レーザー照射は355nmの主波長を有する。
【0140】
本発明の第1の態様の実施形態では、工程b)は、Nd:YAGレーザー又はNd:YLFレーザー又はNd:YVO4レーザー又は窒素レーザー、好ましくはNd:YAGレーザーを介して実施される。Nd:YAGレーザー又はNd:YLFレーザー又はNd:YVO4レーザー又は窒素レーザーは当業者に知られているため、詳細には説明しない。
【0141】
本発明の第1の態様の実施形態では、工程b)は、マトリックス支援レーザー脱離及び/又はイオン化プロセス(MALDI)である。
【0142】
本発明の第1の態様の実施形態では、工程b)は、ポジティブモードでのMALDI-TOF測定である。
【0143】
本発明の第1の態様の実施形態では、工程c)は、ポジティブモードでのMALDI-TOF測定である。
【0144】
本発明の第1の態様の実施形態では、工程b)及びc)は、ポジティブモードでのMALDI-TOF測定である。
【0145】
当該方法の工程c)によれば、目的の分析物は、質量分析を使用して判定される。判定は、定量的及び/又は定性的であり得る。
【0146】
第2の態様では、本発明は、少なくとも1つの目的の分析物を判定するための本発明の第1の態様の方法の使用に関する。本発明の第1の態様について述べた全ての実施形態は、本発明の第2の態様に適用され、逆もまた同様である。
【0147】
第3の態様では、本発明は、400nmより小さい波長を有するレーザー照射を介して少なくとも1つの目的の分析物をイオン化するための試料要素に関し、
試料要素は試料ホルダ及び試料を含み、試料はマトリックス及び少なくとも1つの目的の分析物を含み、
前記試料ホルダが、前記レーザー照射に面する導電性表面を備え、
マトリックス及び目的の分析物は、レーザー照射のビーム経路内の導電性表面上に配置され、
マトリックスは、1nm~6μmの範囲の粒径を有する粒子として形成されている遷移金属硫化物、好ましくは遷移金属ジスルフィドを含むか、又はそれからなる。本発明の第1の態様及び/又は本発明の第2の態様について述べた全ての実施形態は、本発明の第3の態様に適用され、その逆も同様である。
【0148】
第4の態様では、本発明は、少なくとも1つの目的の分析物を判定するための本発明の第3の態様の試料要素の使用に関する。本発明の第1の態様及び/又は本発明の第2の態様及び/又は本発明の第3の態様について述べた全ての実施形態は、本発明の第4の態様に適用され、逆もまた同様である。
【0149】
第5の態様では、本発明は、少なくとも1つの目的の分析物を判定するための装置であって、
- 400nmより小さい波長でレーザー照射を放射することが可能なレーザー照射源と、
- 本発明の第3の態様の試料要素と、
- 質量分析ユニットと、を備える装置に関する。質量分析ユニットは、目的の分析物を判定することができる。
本発明の第1の態様及び/又は本発明の第2の態様及び/又は本発明の第3の態様及び/又は本発明の第4の態様について述べた全ての実施形態は、本発明の第5の態様に適用され、逆もまた同様である。
【0150】
本発明の第5の態様の実施形態では、装置は臨床診断システムである。
【0151】
「臨床診断システム」は、in vitro診断のための試料の分析専用の実験室自動化機器である。臨床診断システムは、必要に応じて、及び/又は所望の実験室ワークフローに従って、異なる構成を有してもよい。追加の構成は、複数の機器及び/又はモジュールを互いに結合することによって得ることができる。「モジュール(module)」は、専用機能を有する、臨床診断システム全体よりサイズが典型的には小さい作業セルである。この関数は分析的であってもよいが、分析前又は分析後であってもよく、又は分析前関数、分析関数又は分析後関数のいずれかに対する補助関数であってもよい。特に、モジュールは、例えば試料の前分析及び/又は分析及び/又は後分析工程を行うことによって、試料処理ワークフローの専用タスクを実行するための1つ以上の他のモジュールと協働するように構成することができる。特に、臨床診断システムは、特定の種類の分析、例えば臨床化学、免疫化学、凝固、血液学、液体クロマトグラフィ分離、質量分析等のために最適化されたそれぞれのワークフローを実行するように設計された1つ以上の分析機器を備えることができる。したがって、臨床診断システムは、1つの分析機器、又はそれぞれのワークフローを有するそのような分析機器のいずれかの組み合わせを備えることができ、前分析及び/又は後分析モジュールは、個々の分析機器に結合されるか、又は複数の分析機器によって共有され得る。あるいは、分析前及び/又は分析後の機能は、分析機器に組み込まれたユニットによって実施されてもよい。臨床診断システムは、試料及び/又は試薬及び/又はシステム流体のピペッティング及び/又はポンピング及び/又は混合のための液体処理ユニット等の機能ユニット、並びに選別、保存、輸送、識別、分離、検出のための機能ユニットも備えることができる。臨床診断システムは、目的の分析物を含む試料の自動調製のための試料調製ステーション、任意に複数のLCチャネルを含む液体クロマトグラフィ(LC)分離ステーション、及び/又は任意に調製された試料をLCチャネルのいずれか1つに入力するための試料調製/LCインターフェースを備えることができる。臨床診断システムは、それぞれが試料調製工程の予め定義されたシーケンスを含み、目的の分析物に応じて完了のために予め定義された時間を必要とする予め定義された試料調製ワークフローに試料を割り当てるようにプログラムされたコントローラを更に備えることができる。臨床診断システムは、質量分析計(MS)と、LC分離ステーションを質量分析計に接続するためのLC/MSインターフェースとを更に備えることができる。本明細書で使用される場合、「自動的に(automatically)」又は「自動化された/自動(automated)」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってのその通常及び通例の意味が与えられるべきであり、特別な又はカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定するものではないが、少なくとも1つのコンピュータ及び/又はコンピュータネットワーク及び/又は機械によって、特に手動の動作及び/又はユーザとの対話なしに完全に実施されるプロセスを指すことができる。
【0152】
本発明の第5の態様の実施形態では、臨床診断システムは試料調製ステーションを含む。
【0153】
「試料調製ステーション」は、試料中の干渉マトリックス成分を除去若しくは少なくとも低減すること、及び/又は試料中の目的の分析物を濃縮することを目的とした一連の試料処理工程を実行するように設計された1つ以上の分析機器又は分析機器内のユニットに結合された前分析モジュールであり得る。そのような処理工程は、試料又は複数の試料に対して順次、並行して、又は交互に実行される以下の処理操作:流体のピペッティング(吸引及び/又は分注)、流体のポンピング、試薬との混合、特定の温度でのインキュベーション、加熱又は冷却、遠心分離、分離、濾過、ふるい分け、乾燥、洗浄、再懸濁、アリコート(aliquoting)、移送、貯蔵等のうちの任意の1つ以上を含み得る。
【0154】
臨床診断システム、例えば試料調製ステーションはまた、新しい試料調製開始シーケンスが開始される前に複数の試料を受け取るためのバッファユニットを備えてもよく、試料は個別にランダムにアクセス可能であってもよく、その個々の調製は試料調製開始シーケンスに従って開始されてもよい。
【0155】
臨床診断システムは、より簡便で信頼性が高く、したがって臨床診断に適した質量分析を利用する。特に、質量分析へのオンライン結合を可能にしながら、ランダムアクセス試料調製及びLC分離を用いてハイスループット、例えば最大100試料/時間以上を得ることができる。さらに、プロセスを完全に自動化して、ウォークアウェイタイム(walk-away time)を増やし、必要な技能のレベルを下げることができる。
【0156】
第6の態様では、本発明は、少なくとも1つの目的の分析物を判定するための本発明の第5の態様の装置の使用に関する。
【0157】
本発明の第1の態様及び/又は本発明の第2の態様及び/又は本発明の第3の態様及び/又は本発明の第4の態様及び/又は本発明の第5の態様について述べた全ての実施形態は、本発明の第6の態様に適用され、逆もまた同様である。
【0158】
第7の態様では、本発明は、本発明の第1の態様の方法を実施するのに適したキットであって、
(A)粒子として形成された少なくとも1つの遷移金属硫化物、好ましくは少なくとも1つの遷移金属ジスルフィドを含むマトリックスと、
(B)有機溶媒又はその混合物と、
(C)任意に、少なくとも1つの内部標準と、を備える、キットに関する。
【0159】
本発明の第1の態様及び/又は本発明の第2の態様及び/又は本発明の第3の態様及び/又は本発明の第4の態様及び/又は本発明の第5の態様及び/又は本発明の第6の態様について述べた全ての実施形態は、本発明の第7の態様に適用され、逆もまた同様である。
【0160】
第8の態様では、本発明は、本発明の第1の態様の方法における本発明の第7の態様のキットの使用に関する。
【0161】
本発明の第1の態様及び/又は本発明の第2の態様及び/又は本発明の第3の態様及び/又は本発明の第4の態様及び/又は本発明の第5の態様及び/又は本発明の第6の態様及び/又は本発明の第7の態様について述べた全ての実施形態は、本発明の第8の態様に適用され、逆もまた同様である。
【0162】
さらなる実施形態では、本発明は、以下の態様に関する:
1.少なくとも1つの目的の分析物を判定するための方法であって、
a)試料ホルダの表面上に、マトリックスと、少なくとも1つの目的の分析物とを含む試料を調製する工程であって、
前記マトリックスが、少なくとも1つの遷移金属硫化物、好ましくは少なくとも1つの遷移金属ジスルフィドを含み、
前記遷移金属スルフィド、好ましくは前記遷移金属ジスルフィドは粒子として形成されており、
工程a)が、
液体形態の試料を試料ホルダの前記表面に塗布すること及び試料を乾燥させることを含む、マトリックスと、少なくとも1つの目的の分析物とを含む試料を調製する工程と、
b)400nmより小さい波長を有するレーザー照射を介して少なくとも1つの目的の分析物をイオン化する工程と、
c)質量分析を使用して目的の分析物を判定する工程と、を含み、
好ましくは、前記塗布することが、
(i)マトリックスと目的の分析物とを合わせて塗布し、続いて乾燥させること、又は
(ii)マトリックス及び目的の分析物を順次塗布することであって、マトリックス及び目的の分析物を順次塗布する場合、マトリックス及び目的の分析物をそれぞれ順次塗布した後に乾燥させることが続く、マトリックス及び目的の分析物を順次塗布すること
を含む、方法。
【0163】
2.前記試料又は方法が銀ナノ粒子を含まない、態様1の方法。
【0164】
3.前記試料又は方法が、インターカレートされたリチウムを含まない、先行する態様のいずれかの方法。
【0165】
4.リチウム媒介剥離工程を含まない、先行する態様のいずれかの方法。
【0166】
5.水酸化ナトリウム支援剥離工程を含まない、先行する態様のいずれかの方法。
【0167】
6.多孔質ナノ構造化工程を含まない、先行する態様のいずれかの方法。
【0168】
7.前記マトリックスを有機溶媒に溶解し、超音波処理して、遷移金属スルフィド粒子、好ましくは遷移金属ジスルフィド粒子の懸濁液を形成する、先行する態様のいずれかの方法。
【0169】
8.前記有機溶媒が100℃以下の沸点を有し、好ましくは前記有機溶媒が、水、アセトニトリル、アルコール、例えばイソプロパノール、及びそれらの組み合わせの群から選択される、先行する態様のいずれかの方法。
【0170】
9.前記方法が、工程b)において直接イオン化によってアルカリイオン及び/又はアルカリ土類イオンを検出することができる、先行する態様のいずれかの方法。
【0171】
10.前記アルカリイオン及び/又はアルカリ土類が、Na、K、Rb、Cs、Mg2+、Ca2+、Sr2+、Ba2+の群から選択される、態様8に記載の方法:。
【0172】
11.前記試料が、乾燥液滴法によって単一のスポットとして試料ホルダに塗布される、先行する態様のいずれかの方法。
【0173】
12.前記試料が試料ホルダの表面全体に塗布される、先行する態様のいずれかの方法。
【0174】
13.工程a)の後に、前記マトリックス及び前記目的の分析物のそれぞれが層構造を形成し、前記マトリックスの層構造が、前記試料ホルダの表面と前記目的の分析物の層構造との間に形成される、先行する態様のいずれかの方法。
【0175】
14.前記マトリックスの層構造が単層として形成されている、先行する態様のいずれかの方法。
【0176】
15.前記目的の分析物の層構造が単層として形成されている、先行する態様のいずれかの方法。
【0177】
16.前記少なくとも1つの目的の分析物が、マトリックスに埋め込まれ、及び/又は前記試料ホルダの表面の反対側に配置された前記マトリックスの表面に配置される、先行する態様のいずれかの方法。
【0178】
17.工程a)の前に、さらなる工程a1):
a1)前記マトリックスの超音波処理、
が行われる、先行する態様のいずれかの方法。
【0179】
18.前記超音波処理プロセスa1)が、プローブ型超音波ホモジナイザー又は超音波浴の使用によって行われる、先行する態様のいずれかの方法。
【0180】
19.工程a)において、遷移金属硫化物、好ましくは遷移金属ジスルフィドの粒子が、1nm~6μmの範囲の粒径を有する、先行する態様のいずれかの方法。
【0181】
20.工程a)において、遷移金属硫化物、好ましくは遷移金属ジスルフィドの粒子が、1nm~1000nmの範囲の粒径を有する、先行する態様のいずれかの方法。
【0182】
21.工程a)において、遷移金属硫化物、好ましくは遷移金属ジスルフィドの粒子が、50nm~500nmの範囲の粒径を有する、先行する態様のいずれかの方法。
【0183】
22.工程a)において、遷移金属硫化物、好ましくは遷移金属ジスルフィドの粒子が、50nm~300nmの範囲の粒径を有する、先行する態様のいずれかの方法。
【0184】
23.工程a)において、遷移金属硫化物、好ましくは遷移金属ジスルフィドの粒子が、80nm~150nmの範囲の粒径を有する、先行する態様のいずれかの方法。
【0185】
24.前記遷移金属硫化物、好ましくは遷移金属ジスルフィドがバルク材料である、先行する態様のいずれかの方法。
【0186】
25.前記遷移金属硫化物の遷移金属、好ましくは遷移金属二硫化物が、タングステン、モリブデン、チタン及びスズからなる群から選択される、先行する態様のいずれかの方法。
【0187】
26.前記遷移金属硫化物、好ましくは遷移金属ジスルフィドが、WS、MoS、TiS及びSnS、好ましくはMoSからなる群から選択される、先行する態様のいずれかの方法。
【0188】
27.前記試料ホルダが、鋼、銅、ITO及びアルミニウムからなる群から選択される材料を含むか、又はそれからなる、先行する態様のいずれかの方法。
【0189】
28.前記試料ホルダが、MALDI鋼板又はITOガラススライド又は銅導電性テープである、先行する態様のいずれかの方法。
【0190】
29.前記表面が構造を含み、前記構造が平面視で長方形又は五角形又は六角形として成形されている、先行する態様のいずれかの方法。
【0191】
30.前記表面が導電性表面である、先行する態様のいずれかの方法。
【0192】
31.導電性表面が構造化されている、先行する態様のいずれかに記載の方法。
【0193】
32.目的の分析物が2000Daより小さい分子量を有する、先行する態様のいずれかに記載の方法。
【0194】
33.前記目的の分析物が、核酸、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、代謝物、ホルモン、脂肪酸、脂質、炭水化物、ステロイド、ケトステロイド、セコステロイド、別の分子の特定の修飾を特徴とする分子、生体によって内在化された物質、そのような物質の代謝物、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、先行する態様のいずれかに記載の方法。
【0195】
34.前記マトリックスが、100nm~100μmの範囲のサイズ厚さを有する層として形成されている、先行する態様のいずれかの方法。
【0196】
35.クラウンエーテル、特に18-クラウン-6が工程a)において添加される、先行する態様のいずれかの方法。
【0197】
36.工程b)が、355nmより小さい波長を有するレーザー照射によって実施される、先行する態様のいずれかの方法。
【0198】
37.工程b)が、Nd:YAGレーザー又は窒素レーザー、好ましくはNd:YAGレーザーを介して実施される、先行する態様のいずれかの方法。
【0199】
38.工程b)が、マトリックス支援レーザー脱離及び/又はイオン化プロセス(MALDI)である、先行する態様のいずれかの方法。
【0200】
39.工程b)及びc)が、ポジティブモードでのMALDI-TOF測定である、先行する態様のいずれかに記載の方法。
【0201】
40.少なくとも1つの目的の分析物を判定するための態様1~39のいずれか1つの方法の使用。
【0202】
41.400nmより小さい波長を有するレーザー照射を介して少なくとも1つの目的の分析物をイオン化するための試料要素であって、
前記試料要素が試料ホルダ及び試料を含み、前記試料がマトリックス及び前記少なくとも1つの目的の分析物を含み、
前記試料ホルダが、前記レーザー照射に面する導電性表面を備え、
マトリックス及び目的の分析物は、レーザー照射のビーム経路内の導電性表面上に配置され、
マトリックスは、1nm~6μmの範囲の粒径を有する粒子として形成されている遷移金属硫化物、好ましくは前記遷移金属ジスルフィドを含むか、又はそれからなる、試料要素。
【0203】
42.少なくとも1つの目的の分析物を判定するための態様41の試料要素の使用。
【0204】
43.少なくとも1つの目的の分析物を判定するための装置であって、
- 400nmより小さい波長でレーザー照射を放射することが可能なレーザー照射源と、
- 態様41の試料要素と、
- 質量分析ユニットと、
を備える、装置。
【0205】
44.少なくとも1つの目的の分析物を判定するための、態様43の装置の使用。
【0206】
45.態様1~39のいずれか1つの方法を実施するのに適したキットであって、
(A)粒子として形成された少なくとも1つの遷移金属硫化物、好ましくは少なくとも1つの遷移金属ジスルフィドを含むマトリックスと、
(B)有機溶媒又はその混合物と、
(C)任意に、少なくとも1つの内部標準と、
を備える、キット。
【0207】
46.態様1~39のいずれか一項の方法における、態様45のキットの使用。
【実施例
【0208】
以下の実施例は、本明細書で特許請求される発明を例示するために提供されるのであって、限定するものではない。
【0209】
評価に使用した分析物:
分析物の溶液は、分析対象の分子、特にステロイド及び治療関連物質から調製される。主な実験のため、7つの天然に存在するステロイドの混合物(すなわち、Pr=プロゲステロン、Te=テストステロン、Es=エストラジオール、S7=アンドロステンジオン、S9=コルチゾール、S10=コルチゾン、S19=21-デオキシコルチゾール、それぞれMeCN/O中14μg/mL=50/50)、並びに7つの治療物質の混合物(すなわち、T3=アミカシン(硫酸塩)、T7=ジギトキシン、T16=ミコフェノール酸、T37=リドカイン、T41=ジゴキシン、T62=ボリコナゾール、T71=メロペネム、MeCN/HO中14μg/mL=50/50)を調製する。乾燥液滴法(0.7μL)を適用して、予めコーティングされたMoS又はWS又はTiS又はSnS表面に分析物をスポットする。
【0210】
現実的なマトリックスバックグラウンドを模倣するため、両方の分析物混合物をウマ血清上清(MeCN中に沈殿)で更に溶解し、1.4μg/mLの分析物の最終濃度を得る(HSsup+S/Tと略す)。
【0211】
バルク材料のレーザー脱離/イオン化:
懸濁液の調製は、それぞれのバルクMoS又はWS材料(粒径90nm~40μm、Sigma-Aldrichから購入)を秤量すること、MeCN/HO=50/50で洗浄すること、及び3mg/mL~25mg/mL、好ましくは7mg/mLの濃度でMeCN/HO=50/50で懸濁することを含む。TiS又はSnS材料をMeCNで洗浄し、5mg/mL~30mg/mL、好ましくは14mg/mLの濃度でMeCNに懸濁する。これにより形成された懸濁液をボルテックス後に直接使用して、乾燥液滴法(好ましくは0.7μL)を適用するMALDI-MS測定(一般的には、MALDI鋼板、ITOガラススライド、又は同様のもの)に適した表面をコーティングすることができる。続いて、分析物堆積及び風乾の後、MALDI-TOF測定を、レーザー強度を約4500単位(MoS又はWS)、又はむしろ5500~6000単位(TiS又はSnS)の最適値に調整するポジティブモードで行い、スポット当たり合計2000個のレーザーショットを行う。分析物シグナルは、アルカリ付加物([M+Na]及び[M+K])として自然に生じた。結果として得られるステロイド分析物を含むアルカリ付加物の得られた質量電荷比は、m/z=295[Es+Na]、m/z=309[S7+Na]、m/z=311[Te+Na]、m/z=337[Pr+Na]、m/z=369[S19+Na]、m/z=383[S10+Na]、m/z=385[S9+Na]、m/z=325[S7+K]、m/z=327[Te+K]、m/z=353[Pr+K]、m/z=385[S19+K]、m/z=399[S10+K]、m/z=401[S9+K]である。結果として得られる治療用分析物を含むアルカリ付加物の質量電荷比は、m/z=257[T37+Na]、m/z=343[T16+Na]、m/z=372[T62+Na]、m/z=406[T71+Na]、m/z=608[T3+Na]、m/z=787[T7+Na]、m/z=803[T41+Na]、m/z=273[T37+K]、m/z=359[T16+K]、m/z=388[T62+K]、m/z=422[T71+K]、m/z=624[T3+K]、m/z=803[T7+K]、m/z=819[T41+K]である。
【0212】
分析物の選択は、多様な官能基、ヘテロ原子及び極性の存在に基づく。特に、E(分子内に存在するフェノール部分に対応するそのそれぞれの基本的な気相特性のため、ネガティブモードではるかに良好にイオン化されると考えられる)、T3/T7/T41(異なるグリカン構造を含む)、及びT71(その限定された安定性について知られている)を含む困難な分析物が選択される。したがって、全ての選択された分析物が成功すると予想されたわけではなかったが、驚くべきことに、全ての分析物が提示された方法でイオン化することが示された。イオン消光(電荷がイオン化するための分析物の競合)は起こらなかった。したがって、この方法は、分析物の独立したイオン化を示す。
【0213】
図1A図4Dは、異なるバルク無機マトリックスを使用することによって本発明の第1の態様による方法から得られる、分析物混合物、特にステロイド混合物及び治療物質混合物のMSスペクトルをそれぞれ示す。図1A図4Dから分かるように、アルカリイオンNa及びKは、それぞれm/z=23及びm/z=39で本発明の第1の態様による方法を介して直接検出することができる。
【0214】
図1A及び図1Bは、7つのステロイドを含むステロイド混合物のm/zの関数としての相対強度又は絶対強度を示す:Te、Pr、Es、S7、S9、S10及びS19(それぞれ14μg/ml)。マトリックスは、約6μmの粒径を有するバルクMoSマトリックスである。図1Bは、250~550のm/z範囲における図1AのMSスペクトルの拡大図である。図1A及び図1Bは、ステロイド分析物Te、Pr、S7、S9、S10及びS19の良好な脱離、並びに主に対応するナトリウム付加物[M+Na]の形成によるイオン化を実証し、少量のカリウム付加物形成[M+K]を伴った。さらに、有意なバックグラウンドシグナルを観察することができない。
【0215】
図1C及び図1Dは、7つの治療物質の混合物のm/zの関数としての相対強度又は絶対強度を示す:T3、T7、T16、T37、T41、T62及びT71(それぞれ14μg/ml)。マトリックスは、約6μmの粒径を有するバルクMoSマトリックスである。図1Dは、200~1100のm/z範囲における図1CのMSスペクトルの拡大図である。図1C及び図1Dは、治療物質T3、T7、T16、T37、T41、T62及びT71の脱離、並びに対応するナトリウム付加物[M+Na]の形成によるイオン化を実証し、いくつかの分析物(T37、T16、T62、T71)はカリウム付加物[M+K]]も形成した。さらに、有意なバックグラウンドシグナルを観察することができない。
【0216】
図2A及び図2Bは、7つのステロイドを含むステロイド混合物のm/zの関数としての相対強度又は絶対強度を示す:Te、Pr、Es、S7、S9、S10及びS19(それぞれ14μg/ml)。マトリックスは、約2μmの粒径を有するバルクWSマトリックスである。図2Bは、250~500のm/z範囲における図2AのMSスペクトルの拡大図である。図2A及び図2Bは、ステロイド分析物Te、Pr、S7、S9、S10及びS19の脱離、並びに主に対応するナトリウム付加物[M+Na]の形成によるイオン化を実証し、カリウム付加物形成[M+K]及び複数のアルカリ付加物形成(例えば、m/z=753[S19-H+Na+K])も伴った。さらに、有意なバックグラウンドシグナルを観察することができない。
【0217】
図2C及び図2Dは、7つの治療物質の混合物のm/zの関数としての相対強度又は絶対強度を示す:T3、T7、T16、T37、T41、T62及びT71(それぞれ14μg/ml)。マトリックスは、約2μmの粒径を有する大きなバルクWSマトリックスである。図2Dは、200~1100のm/z範囲における図2CのMSスペクトルの拡大図である。図2C及び図2Dは、治療物質T3、T7、T16、T37、T41、T62及びT71の脱離、並びに対応するナトリウム付加物[M+Na]の形成によるイオン化を実証し、いくつかの分析物(T37、T16、T62、T71)はカリウム付加物[M+K]]も形成した。さらに、有意なバックグラウンドシグナルを観察することができない。
【0218】
図3A及び図3Bは、7つのステロイドを含むステロイド混合物のm/zの関数としての相対強度又は絶対強度を示す:Te、Pr、Es、S7、S9、S10及びS19(それぞれ14μg/ml)。マトリックスはバルクSnSマトリックスである。図3Bは、250~500のm/z範囲における図3AのMSスペクトルの拡大図である。図3A及び図3Bは、ステロイド分析物Te、Pr、S7、S9、S10及びS19の脱離、並びに主に対応するナトリウム付加物[M+Na]の形成によるイオン化を実証し、微量のカリウム付加物形成[M+K]を伴った。さらに、m/z=800までの範囲内のわずかなバックグラウンドシグナルを観察することができる。
【0219】
図3C及び図3Dは、7つの治療物質の混合物のm/zの関数としての相対強度又は絶対強度を示す:T3、T7、T16、T37、T41、T62及びT71(それぞれ14μg/ml)。マトリックスはバルクSnSマトリックスである。図3Dは、100~1000のm/z範囲における図3CのMSスペクトルの拡大図である。図3C及び図3Dは、微量のT7、T41、T62、T71を含む治療物質T16、T37の脱離、及び主に対応するナトリウム付加物[M+Na]の形成によるイオン化実証し、T37及びT16はカリウム付加物[M+K]も形成する。いくつかのバックグラウンドシグナルは、m/z=800までの範囲で観察することができる。
【0220】
図4A及び図4Bは、7つのステロイドを含むステロイド混合物のm/zの関数としての相対強度又は絶対強度を示す:Te、Pr、Es、S7、S9、S10及びS19(それぞれ14μg/ml)。マトリックスはバルクTiSマトリックスである。図4Bは、250~500のm/z範囲における図4AのMSスペクトルの拡大図である。図4A及び図4Bは、ステロイド分析物Es、Te、Pr、S7、S9、S10及びS19の脱離、並びに主に対応するナトリウム付加物[M+Na]の形成によるイオン化を実証し、いくつかのカリウム付加物形成[M+K]も伴った。さらに、有意なバックグラウンドシグナルを観察することができない。
【0221】
図4C及び図4Dは、7つの治療物質の混合物のm/zの関数としての相対強度又は絶対強度を示す:T3、T7、T16、T37、T41、T62及びT71(それぞれ14μg/ml)。マトリックスはバルクTiSマトリックスである。図4Dは、200~1000のm/z範囲における図4CのMSスペクトルの拡大図である。図4C及び図4Dは、治療物質T3、T7、T16、T37、T41、T62及びT71の脱離、並びに対応するナトリウム付加物[M+Na]の形成によるイオン化を実証し、いくつかの分析物(T37、T16、T62、T71、T3)はカリウム付加物[M+K]]も形成した。さらに、有意なバックグラウンドシグナルを観察することができない。
【0222】
超音波処理された材料のレーザー脱離/イオン化:
安定なMoS又はWS分散液の調製は、それぞれのバルクMoS又はWS材料(90nm~40μm、好ましくはMoSついては6μm又はWSについては2μmの粒径)を秤量すること、MeCN/HO=50/50で洗浄すること、及び3mg/mL~10mg/mL、好ましくは7mg/mLの濃度でMeCN/HO=50/50に懸濁することを含む。超音波プローブ(200W、30分、水浴)を用いたその後の超音波処理により、それぞれのMoS又はWS分散液が形成される。残留バルク材料は、単純な遠心分離(5000rpm)工程で除去される。得られた分散液は、直接、乾燥液滴法(好ましくは2×0.7μL)を適用したMALDI-MS測定(一般的には、MALDI鋼板、ITOガラススライド、又は同様のもの)に適した表面をコーティングするために使用することができる。続いて、分析物の堆積及び風乾後、ポジティブモードでMALDI-TOF測定を行い、レーザー強度を約4500単位の最適値に調整し、スポット当たり合計2000のレーザーショットを行う。分析物シグナルは、アルカリ付加物([M+Na]及び[M+K])として自然に生じた。
【0223】
図5A図6Dは、異なるバルク無機マトリックスを使用することによって本発明の第1の態様による方法から得られる、ステロイド混合物及び治療物質混合物のMSスペクトルをそれぞれ示す。図1A図4Dとは対照的に、バルク材料は、例えばプローブソニケーターを使用することによって追加で超音波処理された。図5A図6Dから分かるように、アルカリイオンNa及びKは、それぞれm/z=23及びm/z=39で本発明の第1の態様による方法を介して直接検出することができる。
【0224】
図5A及び図5Bは、7つのステロイドを含むステロイド混合物のm/zの関数としての相対強度又は絶対強度を示す:Te、Pr、Es、S7、S9、S10及びS19(それぞれ14μg/ml)。マトリックスは、超音波処理された、約6μmの粒径を有するバルクMoSマトリックスである。図5Bは、250~500のm/z範囲における図5AのMSスペクトルの拡大図である。図5A及び図5Bは、ステロイド分析物Te、Pr、S7、S9、S10及びS19の脱離、並びに主に対応するナトリウム付加物[M+Na]の形成によるイオン化を実証し、カリウム付加物形成[M+K]も伴った。さらに、有意なバックグラウンドシグナルを観察することができない。
【0225】
図5C及び図5Dは、7つの治療物質の混合物のm/zの関数としての相対強度又は絶対強度を示す:T3、T7、T16、T37、T41、T62及びT71(それぞれ14μg/ml)。マトリックスは、超音波処理された、約6μmの粒径を有するバルクMoSマトリックスである。図5Dは、100~1100のm/z範囲における図5CのMSスペクトルの拡大図である。図5C及び図5Dは、治療物質T3、T7、T16、T37、T41、T62及びT71の脱離、並びに対応するナトリウム付加物[M+Na]の形成によるイオン化を実証し、いくつかの分析物(T37、T16、T62、T71)はカリウム付加物[M+K]]も形成した。さらに、有意なバックグラウンドシグナルを観察することができない。
【0226】
図6A及び図6Bは、7つのステロイドを含むステロイド混合物のm/zの関数としての相対強度又は絶対強度を示す:Te、Pr、Es、S7、S9、S10及びS19(それぞれ14μg/ml)。マトリックスは、超音波処理された、約2μmの粒径を有するバルクWSマトリックスである。図6Bは、250~550のm/z範囲における図6AのMSスペクトルの拡大図である。図6A及び図6Bは、ステロイド分析物Te、Pr、S7、S9、S10及びS19の脱離、並びに主に対応するナトリウム付加物[M+Na]の形成によるイオン化を実証し、カリウム付加物形成[M+K]及び複数のアルカリ付加物形成(例えば、m/z=753[S19-H+Na+K])も伴った。さらに、有意なバックグラウンドシグナルを観察することができない。
【0227】
図6C及び図6Dは、7つの治療物質の混合物のm/zの関数としての相対強度又は絶対強度を示す:T3、T7、T16、T37、T41、T62及びT71(それぞれ14μg/ml)。マトリックスは、超音波処理された、約2μmの粒径を有するバルクWSマトリックスである。図6Dは、200~1100のm/z範囲における図6CのMSスペクトルの拡大図である。図6C及び図6Dは、治療物質T7、T16、T37、T41、T62及びT71の脱離、並びに対応するナトリウム付加物[M+Na]の形成によるイオン化を実証し、いくつかの分析物(T37、T16、T62、T71)はカリウム付加物[M+K]も形成した。さらに、有意なバックグラウンドシグナルを観察することができない。
【0228】
ITOガラススライド上にコーティングされたMoS
本明細書で報告されるMoS懸濁液及び分散液の普遍的な用途を実証するために、市販のインジウム-スズ-酸化物(ITO、図7参照)でコーティングされた顕微鏡用ガラススライドを対応するMoS材料と積層し、乾燥液滴法を適用する(好ましくは2×0.7μL)。続いて、分析物の堆積及び風乾後、ポジティブモードでMALDI-TOF測定を行い、レーザー強度を約5500単位の最適値に調整し、スポット当たり合計2000のレーザーショットを行う。分析物シグナルは、アルカリ付加物([M+Na]及び[M+K])として生じた。
【0229】
図8A及び図8Bは、7つのステロイドを含むステロイド混合物のm/zの関数としての相対強度又は絶対強度を示す:Te、Pr、Es、S7、S9、S10及びS19(それぞれ14μg/ml)。分析物の混合物は、ITOガラススライド試料ホルダ上にコーティングされたバルクMoSマトリックス上で調製される。図8Bは、280~440のm/z範囲における図8AのMSスペクトルの拡大図である。図8A及び図8Bは、ステロイド分析物Te、Pr、S7、S9、S10及びS19の脱離、並びに主に対応するナトリウム付加物[M+Na]の形成によるイオン化を実証し、いくつかのカリウム付加物形成[M+K]を伴った。さらに、有意なバックグラウンドシグナルを観察することができない。
【0230】
図8C及び図8Dは、7つの治療物質の混合物のm/zの関数としての相対強度又は絶対強度を示す:T3、T7、T16、T37、T41、T62及びT71(それぞれ14μg/ml)。分析物の混合物は、ITOガラススライド試料ホルダ上にコーティングされたバルクMoSマトリックス上で調製される。図8Dは、200~1000のm/z範囲における図8CのMSスペクトルの拡大図である。図8C及び図8Dは、治療物質T3、T7、T16、T37、T41、T62及びT71の脱離、並びに対応するナトリウム付加物[M+Na]の形成によるイオン化を実証し、いくつかの分析物(T37、T16、T62、T71)はカリウム付加物[M+K]も形成した。さらに、有意なバックグラウンドシグナルを観察することができない。
【0231】
図9A及び図9Bは、7つのステロイドを含むステロイド混合物のm/zの関数としての相対強度又は絶対強度を示す:Te、Pr、Es、S7、S9、S10及びS19(それぞれ14μg/ml)。分析物の混合物は、ITOガラススライド試料ホルダ上にコーティングされたバルク超音波処理MoSマトリックス上で調製される。図9Bは、250~500のm/z範囲における図9AのMSスペクトルの拡大図である。図9A及び図9Bは、ステロイド分析物Te、Pr、S7、S9、S10及びS19の脱離、並びに主に対応するナトリウム付加物[M+Na]の形成によるイオン化を実証し、微量のいくつかのカリウム付加物形成[M+K]を伴った。さらに、有意なバックグラウンドシグナルを観察することができない。
【0232】
図9C及び図9Dは、7つの治療物質の混合物のm/zの関数としての相対強度又は絶対強度を示す:T3、T7、T16、T37、T41、T62及びT71(それぞれ14μg/ml)。分析物の混合物は、ITOガラススライド試料ホルダ上にコーティングされたバルク超音波処理MoSマトリックス上で調製される。図9Dは、200~900のm/z範囲における図9CのMSスペクトルの拡大図である。図9C及び図9Dは、治療物質T7、T16、T37、T41、T62及びT71の脱離、並びに対応するナトリウム付加物[M+Na]の形成によるイオン化を実証し、いくつかの分析物(T37、T16、T62、T71)はカリウム付加物[M+K]も形成した。さらに、有意なバックグラウンドシグナルを観察することができない。
【0233】
図10A及び図10Bは、7つのステロイドを含むステロイド混合物のm/zの関数としての相対強度又は絶対強度を示す:Te、Pr、Es、S7、S9、S10及びS19(枯渇ウマ血清中、それぞれ1.4μg/ml)。枯渇ウマ血清中の分析物の混合物は、ITOガラススライド試料ホルダ上にコーティングされたバルク超音波処理MoSマトリックス上で調製される。図10Bは、200~600のm/z範囲における図10AのMSスペクトルの拡大図である。図10A及び図10Bは、ステロイド分析物Te、Pr、S7、S9、S10及びS19の脱離、並びに主に対応するナトリウム付加物[M+Na]の形成によるイオン化を実証し、いくつかのカリウム付加物形成[M+K]も伴った。おそらく枯渇ウマ血清試料に由来するいくつかのバックグラウンドシグナルが、特にm/z=260~300の範囲で観察され得る。
【0234】
図10C及び図10Dは、7つの治療物質の混合物のm/zの関数としての相対強度又は絶対強度を示す:T3、T7、T16、T37、T41、T62及びT71(枯渇ウマ血清中、それぞれ1.4μg/ml)。枯渇ウマ血清中の分析物の混合物は、ITOガラススライド試料ホルダ上にコーティングされたバルク超音波処理MoSマトリックス上で調製される。図10Dは、200~1000のm/z範囲における図10CのMSスペクトルの拡大図である。図10C及び10Dは、治療物質T7、T37、T41及びT62、T16及びT71の脱離、並びに対応するナトリウム付加物[M+Na]の形成によるイオン化を実証し、いくつかの分析物(T37、T62、T41)はカリウム付加物[M+K]も形成した。おそらく枯渇ウマ血清試料に由来するいくつかのバックグラウンドシグナルが、特にm/z=230~320の範囲で観察され得る。
【0235】
銅導電性テープ上にコーティングされたMoS-単一スポット:
本明細書で報告されるMoS懸濁液の普遍的な用途を実証するため、試料ホルダとして市販の銅導電性テープを対応するMoS材料と単一スポットで積層し、乾燥液滴法(好ましくは2×0.7μL)を適用する。続いて、分析物の堆積及び風乾後、ポジティブモードでMALDI-TOF測定を行い、レーザー強度を約4500単位の最適値に調整し、スポット当たり合計2000のレーザーショットを行う。分析物シグナルは、アルカリ付加物([M+Na]及び[M+K])として生じた。図11A及び図11Bは、ステロイド分析物Te、Pr、S7、S9、S10及びS19の脱離、並びに主に対応するナトリウム付加物[M+Na]の形成によるイオン化を実証し、いくつかのカリウム付加物形成[M+K]及びいくつかの複数のアルカリ付加物形成(例えば、m/z=753[S19-H+Na+K])も伴った。さらに、有意なバックグラウンドシグナルを観察することができない。
【0236】
図11A及び図11Bは、7つのステロイドを含むステロイド混合物のm/zの関数としての相対強度又は絶対強度を示す:Te、Pr、Es、S7、S9、S10及びS19(それぞれ14μg/ml)。分析物の混合物は、試料ホルダとしての銅導電性テープ上にコーティングされた大きなバルクMoSマトリックス上の単一スポットとして調製される。図11Bは、200~600のm/z範囲における図11AのMSスペクトルの拡大図である。
【0237】
図11C及び図11Dは、7つの治療物質の混合物のm/zの関数としての相対強度又は絶対強度を示す:T3、T7、T16、T37、T41、T62及びT71(それぞれ14μg/ml)。分析物の混合物は、試料ホルダとしての銅導電性テープ上にコーティングされたバルクMoSマトリックス上の単一スポットとして調製される。図11Dは、100~1100のm/z範囲における図11CのMSスペクトルの拡大図である。図11C及び図11Dは、治療物質T7、T16、T37、T41、T62及びT71の脱離、並びに対応するナトリウム付加物[M+Na]の形成によるイオン化を実証し、いくつかの分析物(T37、T16、T62、T71、T41)はカリウム付加物[M+K]も形成した。さらに、有意なバックグラウンドシグナルを観察することができない。
【0238】
銅導電性テープ上にコーティングされたMoS-全領域:
本明細書で報告されるMoS分散液の普遍的な用途を実証するため、試料ホルダとして市販の銅導電性テープの全表面を、対応するMoS材料と積層する。したがって、表面をMoS分散液で完全に湿潤し、続いて減圧下で完全に蒸発させる。続いて、分析物の堆積及び風乾後、ポジティブモードでMALDI-TOF測定を行い、レーザー強度を約4500単位の最適値に調整し、スポット当たり合計2000のレーザーショットを行う。分析物シグナルは、アルカリ付加物([M+Na]及び[M+K])として生じた。
【0239】
図12A及び図12Bは、7つのステロイドを含むステロイド混合物のm/zの関数としての相対強度又は絶対強度を示す:Te、Pr、Es、S7、S9、S10及びS19(それぞれ14μg/ml)。分析物の混合物は、試料ホルダとしての銅導電性テープ領域全体にコーティングされたバルク超音波処理されたMoSマトリックス上で調製される。図12Bは、250~500のm/z範囲における図12AのMSスペクトルの拡大図である。図12A及び図12Bは、ステロイド分析物Te、Pr、S7、S9、S10及びS19の脱離を実証する。イオン化は、主に対応するナトリウム付加物[M+Na]の形成によって起こり、微量のカリウム付加物形成[M+K]を伴った。特にm/z=360~400の範囲で、いくつかのバックグラウンドシグナルを観察することができる。
【0240】
図12C及び図12Dは、7つの治療物質の混合物のm/zの関数としての相対強度又は絶対強度を示す:T3、T7、T16、T37、T41、T62及びT71(それぞれ14μg/ml)。分析物の混合物は、試料ホルダとしての銅導電性テープ領域全体にコーティングされたバルク超音波処理されたMoSマトリックス上で調製される。図12Dは、200~900のm/z範囲における図12CのMSスペクトルの拡大図である。図12C及び12Dは、治療物質T7、T16、T37、T41及びT62の脱離を実証する。イオン化は、主に、対応するナトリウム付加物[M+Na]の形成によって起こり、いくつかの分析物(T37、T16)もカリウム付加物[M+K]を形成した。特にm/z=360~430の範囲で、いくつかのバックグラウンドシグナルを観察することができる。
【0241】
対照実験:
脱離/イオン化機構が本明細書に記載のMoS表面に基づくことを検証するために、裸のMALDI鋼板又は裸のITOガラススライド上で分析物を試験する。分析物の検出は行われていない。さらに、分析物分子を装填しない純粋なMoS表面も、バックグラウンドシグナルの有意な検出をもたらさない。
【0242】
図13A及び図13Bは、7つのステロイドを含むステロイド混合物のm/zの関数としての相対強度又は絶対強度を示す:Te、Pr、Es、S7、S9、S10及びS19(それぞれ14μg/ml)、並びに7つの治療物質の混合物:T3、T7、T16、T37、T41、T62及びT71(それぞれ各14μg/ml)。分析物の混合物は、マトリックスを含まない試料ホルダとしてMALDI鋼板上で調製される。マトリックスを欠くことによって検出されるシグナルは存在し得ない。
【0243】
図14は、分析物を含まないバルク超音波処理されたMoSマトリックスのm/zの関数としての相対強度又は絶対強度を示す。分析物又は分析物の混合物を欠くことによって検出されるシグナルは存在し得ない。
【0244】
図15A及び図15Bは、7つのステロイドを含むステロイド混合物のm/zの関数としての相対強度又は絶対強度を示す:Te、Pr、Es、S7、S9、S10及びS19(それぞれ14μg/ml)、並びに7つの治療物質の混合物:T3、T7、T16、T37、T41、T62及びT71(それぞれ各14μg/ml)。分析物の混合物は、マトリックスを含まない試料ホルダとしてブランクITOガラススライド上で調製される。基本的なバックグラウンドノイズのみが検出され得る。
【0245】
アルカリイオンの存在下での付加物形成:
MoS懸濁液又はMoS分散液のいずれかにおけるアルカリイオン(Na、K、Rb、Cs)の濃度の増強は、それぞれのアルカリ塩溶液(NaCO、酒石酸ナトリウムカリウム、KCO、KI、RbI、CsOAc、CsI)をそれぞれ約20μg/mLの最終アルカリ塩濃度まで添加することによって実施される。これにより形成された懸濁液又は分散液をボルテックス後に直接使用して、乾燥液滴法(好ましくは2×0.7μL)を適用するMALDI-MS測定(一般的には、MALDI鋼板)に適した表面をコーティングすることができる。
【0246】
図16A及び図16Bは、7つのステロイドを含むステロイド混合物のm/zの関数としての相対強度又は絶対強度を示す:Te、Pr、Es、S7、S9、S10及びS19(それぞれ14μg/ml)。分析物の混合物は、バルクMoSマトリックス及び炭酸ナトリウム上で調製される。図16Bは、200~1200のm/z範囲における図16AのMSスペクトルの拡大図である。図16A及び図16Bは、ステロイド分析物Es、Te、Pr、S7、S9、S10及びS19の脱離を実証する。イオン化は、対応するナトリウム付加物[M+Na]の形成によってほぼ排他的に起こり、微量のカリウム付加物形成[M+K]を伴った。おそらく外部不純物を表すいくつかのバックグラウンドシグナルは、特にm/z=700~860の範囲で観察され得る。
【0247】
図16C及び図16Dは、7つの治療物質の混合物のm/zの関数としての相対強度又は絶対強度を示す:T3、T7、T16、T37、T41、T62及びT71(それぞれ14μg/ml)。分析物の混合物は、バルクMoSマトリックス及び炭酸ナトリウム上で調製される。図16Dは、100~1200のm/z範囲における図16CのMSスペクトルの拡大図である。図16C及び図16Dは、治療物質T7、T16、T37、T41、T62及びT71の脱離を実証する。イオン化は、T37がそのカリウム付加物[M+K]も形成することを除いて、対応するナトリウム付加物[M+Na]の形成によってほぼ排他的に起こった。おそらく外部不純物を表すいくつかのバックグラウンドシグナルは、特にm/z=700~930の範囲で観察され得る。
【0248】
図17A及び図17Bは、7つのステロイドを含むステロイド混合物のm/zの関数としての相対強度又は絶対強度を示す:Te、Pr、Es、S7、S9、S10及びS19(それぞれ14μg/ml)。分析物の混合物は、バルクMoSマトリックス及びヨウ化カリウム上で調製される。図17Bは、200~1200のm/z範囲における図17AのMSスペクトルの拡大図である。図17A及び図17Bは、ステロイド分析物Te、Pr、S7及びS9の脱離を実証する。イオン化は、ほぼ排他的に、対応するカリウム付加物[M+K]の形成によって起こり、微量のナトリウム付加物[M+Na]を伴った。おそらく外部不純物を表すいくつかのバックグラウンドシグナルは、m/z=640~950の範囲で観察され得る。
【0249】
図17C及び図17Dは、7つの治療物質の混合物のm/zの関数としての相対強度又は絶対強度を示す:T3、T7、T16、T37、T41、T62及びT71(それぞれ14μg/ml)。分析物の混合物は、バルクMoSマトリックス及びヨウ化カリウム上で調製される。図17Dは、200~1100のm/z範囲における図17CのMSスペクトルの拡大図である。図17C及び図17Dは、治療物質T16及びT37の脱離を実証する。イオン化は、対応するカリウム付加物[M+K]の形成によってのみ起こった。おそらく外部不純物を表すいくつかのバックグラウンドシグナルは、特にm/z=700~930の範囲で観察され得る。
【0250】
図18A及び図18Bは、7つのステロイドを含むステロイド混合物のm/zの関数としての相対強度又は絶対強度を示す:Te、Pr、Es、S7、S9、S10及びS19(それぞれ14μg/ml)。分析物の混合物は、RbIと予備混合したバルクMoSマトリックス上で調製される。図18Bは、200~700のm/z範囲における図18AのMSスペクトルの拡大図である。図18A及び図18Bは、ステロイド分析物Te、Pr、S7、S9、S10及びS19の脱離を実証する。イオン化は、主に、対応するルビジウム付加物[M+Rb]の形成によって起こり、ナトリウム及びカリウム付加物[M+Na/K]がわずかに残留した。さらに、有意なバックグラウンドを観察することができない。
【0251】
図18C及び図18Dは、7つの治療物質の混合物のm/zの関数としての相対強度又は絶対強度を示す:T3、T7、T16、T37、T41、T62及びT71(それぞれ14μg/ml)。分析物の混合物は、RbIと予備混合したバルクMoSマトリックス上で調製される。図18Dは、200~1200のm/z範囲における図18CのMSスペクトルの拡大図である。図18C及び図18Dは、治療物質T3、T16、T37及びT71の脱離を実証する。イオン化は、主に、対応するルビジウム付加物[M+Rb]の形成によって起こり、ナトリウム及びカリウム付加物[M+Na/K]がわずかに残留した。さらに、有意なバックグラウンドを観察することができない。
【0252】
図19A及び図19Bは、7つのステロイドを含むステロイド混合物のm/zの関数としての相対強度又は絶対強度を示す:Te、Pr、Es、S7、S9、S10及びS19(それぞれ14μg/ml)。分析物の混合物は、CsOAcと予備混合したバルクMoSマトリックス上で調製される。図19Bは、200~700のm/z範囲における図19AのMSスペクトルの拡大図である。図19A及び図19Bは、ステロイド分析物Te、Pr、S7、S9、S10及びS19の脱離を実証する。イオン化は、主に、ナトリウム及びカリウム付加物[M+Na/K]のわずかな残留物を含む、対応するセシウム付加物[M+Cs]の形成によって起こった。さらに、有意なバックグラウンドを観察することができない。
【0253】
図19C及び図19Dは、7つの治療物質の混合物のm/zの関数としての相対強度又は絶対強度を示す:T3、T7、T16、T37、T41、T62及びT71(それぞれ14μg/ml)。分析物の混合物は、CsOAcと予備混合したバルクMoSマトリックス上で調製される。図19Dは、200~1200のm/z範囲における図19CのMSスペクトルの拡大図である。図19C及び図19Dは、治療物質T16、T37及びT71の脱離を実証する。イオン化は、主に、ナトリウム及びカリウム付加物[M+Na/K]のわずかな残留物を含む、対応するセシウム付加物[M+Cs]の形成によって起こった。さらに、有意なバックグラウンドを観察することができない。
【0254】
K-擬分子イオン種を増強する実験:
カリウム付加物種の存在を増強するためのさらなる方法は、クラウンエーテル(18-クラウン-6)の存在下で示される。したがって、バルクMoS懸濁液(MeCN/HO=50/50)に、18-クラウン-6(MeCN/HO=50/50)の溶液を添加して、20μg/mLの後者の最終濃度にする。激しくボルテックスした後、試料を取り、これにKCO(MeCN/HO=50/50)の溶液を更に添加して、後者の20μg/mLの最終濃度にする。得られた懸濁液は、いずれも直接、乾燥液滴法(好ましくは2×0.7μL)を適用したMALDI-MS測定(一般的には、MALDI鋼板、ITOガラススライド、又は同様のもの)に適した表面をコーティングするために使用することができる。続いて、分析物の堆積及び風乾後、ポジティブモードでMALDI-TOF測定を行い、レーザー強度を約4500単位の最適値に調整し、スポット当たり合計2000のレーザーショットを行う。分析物シグナルは、アルカリ付加物([M+Na]及び[M+K])としてバルクMoS+18-クラウン-6を用いて生じたが、KCOを添加したバルクMoS+18-クラウン-6上の試料は、純粋な[M+K]付加物種をほぼ完全にもたらした。
【0255】
図20A及び図20Bは、7つのステロイドを含むステロイド混合物のm/zの関数としての相対強度又は絶対強度を示す:Te、Pr、Es、S7、S9、S10及びS19(それぞれ14μg/ml)。分析物の混合物は、18-クラウン-6エーテルと予備混合したバルクMoSマトリックス上で調製される。図20Bは、250~500のm/z範囲における図20AのMSスペクトルの拡大図である。図20A及び図20Bは、ステロイド分析物Te、Pr、S7、S9、S10及びS19の脱離を実証する。イオン化は、対応するナトリウム又はカリウム付加物[M+Na/K]の形成によって生じた。m/z=399でのさらなるシグナルに加えて、有意なバックグラウンドを観察することができない。
【0256】
図20C及び図20Dは、7つの治療物質の混合物のm/zの関数としての相対強度又は絶対強度を示す:T3、T7、T16、T37、T41、T62及びT71(それぞれ14μg/ml)。分析物の混合物は、18-クラウン-6エーテルと予備混合したバルクMoSマトリックス上で調製される。図20Dは、200~1000のm/z範囲における図20CのMSスペクトルの拡大図である。図20C及び図20Dは、治療物質T3、T16、T37及びT71の脱離を実証する。イオン化は、対応するナトリウム又はカリウム付加物[M+Na/K]の形成によって生じた。m/z=383及びm/z=399でのさらなるシグナルに加えて、有意なバックグラウンドを観察することができない。
【0257】
図21A及び図21Bは、7つのステロイドを含むステロイド混合物のm/zの関数としての相対強度又は絶対強度を示す:Te、Pr、Es、S7、S9、S10及びS19(それぞれ14μg/ml)。分析物の混合物は、18-クラウン-6エーテル、次いでKCOと予備混合したバルクMoSマトリックス上で調製される。図21Bは、250~500のm/z範囲における図21AのMSスペクトルの拡大図である。図21A及び図21Bは、ステロイド分析物Es、Te、Pr、S7、S9、S10及びS19の脱離を実証する。イオン化は、ほぼ排他的に、対応するカリウム付加物[M+K]の形成によって起こり、微量のナトリウム付加物[M+Na]を伴った。m/z=399でのさらなるシグナルに加えて、有意なバックグラウンドを観察することができない。
【0258】
図21C及び図21Dは、7つの治療物質の混合物のm/zの関数としての相対強度又は絶対強度を示す:T3、T7、T16、T37、T41、T62及びT71(それぞれ14μg/ml)。分析物の混合物は、18-クラウン-6エーテル、次いでKCOと予備混合したバルクMoSマトリックス上で調製される。図21Dは、200~1000のm/z範囲における図21CのMSスペクトルの拡大図である。図20C及び図20Dは、治療物質T3、T7、T16、T37、T41及びT71の脱離を実証する。イオン化は、ほぼ排他的に、対応するカリウム付加物[M+K]の形成によって起こり、微量のナトリウム付加物[M+Na]を伴った。m/z=399でのさらなるシグナルに加えて、有意なバックグラウンドを観察することができない。
【0259】
LiインターカレートされたMoS/WS(技術水準):
本明細書に記載の方法をより困難な文献公知のリチウム剥離プロセス(Xu et al.,ACS Sens.2018,3,806-814)と比較するため、市販のLiインターカレートされたMoS及びWS材料を同等の方法で適用する。これは、MoS/WS Liインターカレート懸濁液(MeCN/HO=50/50、10mg/mL)を超音波浴中で4時間超音波処理した後、遠心分離(3000rpm)して非剥離MoS/WS材料を除去し、追加の洗浄工程を行ってMoS/WS単層溶液を得る。その後のSALDI測定では、超音波処理されたMoS単層溶液のみが、試験されたステロイド分子及びいくつかの治療用分子(アルカリ付加物[M+Li]、[M+Na]及び[M+K])を脱離/イオン化することができたが、Liインターカレーション法によって調製された超音波処理されたWS材料は、分析物のLDIに適合しなかった。
【0260】
図22A及び図22Bは、7つのステロイドを含むステロイド混合物のm/zの関数としての相対強度又は絶対強度を示す:Te、Pr、Es、S7、S9、S10及びS19(それぞれ14μg/ml)、並びに7つの治療物質の混合物:T3、T7、T16、T37、T41、T62及びT71(それぞれ各14μg/ml)。分析物の混合物は、MoSインターカレートされたマトリックス上で調製される。分析物シグナルを検出することができない。
【0261】
図22C及び図22Dは、7つのステロイドを含むステロイド混合物のm/zの関数としての相対強度又は絶対強度を示す:Te、Pr、Es、S7、S9、S10及びS19(それぞれ14μg/ml)、並びに7つの治療物質の混合物:T3、T7、T16、T37、T41、T62及びT71(それぞれ各14μg/ml)。分析物の混合物は、MoS Liインターカレートされたマトリックス上で調製される(超音波処理及び遠心分離)。本明細書に記載のMoSマトリックスと比較して、調製され超音波処理されたままのLiインターカレートされたMoSマトリックスは、試験されたステロイド[M+Li/Na/K]のリチウム、ナトリウム及びカリウム付加物形成をもたらすより複雑な結果を示した。3つの独立したイオン種(Na+、K+、Li+)への分子ピーク強度の分割のため、本方法の定量限界能力は、1つのイオン種(例えばNa又はK)のみが観察される場合の能力の1/3にすぎない。したがって、可能な限り低い異なるイオン付加物種が優先される。
【0262】
図23A及び図23Bは、7つのステロイドを含むステロイド混合物のm/zの関数としての相対強度又は絶対強度を示す:Te、Pr、Es、S7、S9、S10及びS19(それぞれ14μg/ml)、並びに7つの治療物質の混合物:T3、T7、T16、T37、T41、T62及びT71(それぞれ各14μg/ml)。分析物の混合物は、WSインターカレートされたマトリックス上で調製される。バックグラウンドシグナルのみを検出することができる。
【0263】
図23C及び図23Dは、7つのステロイドを含むステロイド混合物のm/zの関数としての相対強度又は絶対強度を示す:Te、Pr、Es、S7、S9、S10及びS19(それぞれ14μg/ml)、並びに7つの治療物質の混合物:T3、T7、T16、T37、T41、T62及びT71(それぞれ各14μg/ml)。分析物の混合物は、WS Liインターカレートされたマトリックス上で調製される(超音波処理及び遠心分離)。少なくとも分析物の脱離又はイオン化は検出できない。
【0264】
グラフェン/酸化グラフェン(技術水準):
LDI-MSのマトリックスとして適用する本明細書に記載の材料を、文献の公知のグラフェンベースの化合物(Wang et al.,Anal.Chem.2010,82,6208-6214;Min et al.,Chem.Eur.J.2015,21,7217-7223)と比較するため、市販のグラフェンナノプレートレット(GR)、並びに単層酸化グラフェン分散液(GO)を評価する。その結果、GRの懸濁液(5mg/mL、MeCN/HO)が生成され、GO分散液の濃度が調整される(1mg/mL、HO/MeCN)。激しくボルテックスした後、両方をMALDI鋼板の表面をコーティングするために直接使用し、乾燥液滴法(2×0.5μL)を適用する。続いて、分析物の堆積及び風乾後、ポジティブモードでMALDI-TOF測定を行い、レーザー強度を約5500単位(GR)又は5000単位(GO)の値に調整し、スポット当たり合計2000のレーザーショットを行う。分析物シグナルはアルカリ付加物([M+Na]及び[M+K])として生じ、GRはMoS/WS/TiS/SnSと比較して分析物のより低い脱離/イオン化を示し、一方GOはバックグラウンドシグナル自体の有意な発生をもたらす。
【0265】
図24A及び図24Bは、7つのステロイド:Te、Pr、Es、S7、S9、S10及びS19(それぞれ14μg/ml)を含むステロイド混合物のm/zの関数としての相対強度又は絶対強度を示す。分析物の混合物は、グラフェンナノペレット(GR、サイズ25μm、厚さ6~8μm)上で調製される。本明細書に記載のMoSマトリックスと比較して、グラフェンナノプレートレットの分析は、試験されたステロイド分析物のわずかな脱離/イオン化を示した。
【0266】
図24C及び図24Dは、7つの治療物質:T3、T7、T16、T37、T41、T62及びT71(それぞれ14μg/ml)の混合物のm/zの関数としての相対強度又は絶対強度を示す。分析物の混合物は、グラフェンナノペレット(GR、サイズ25μm、厚さ6~8μm)上で調製される。
【0267】
図25Aは、7つのステロイド:Te、Pr、Es、S7、S9、S10及びS19(それぞれ14μg/ml)を含むステロイド混合物のm/zの関数としての相対強度又は絶対強度を示す。分析物の混合物は単層GO分散液(mGO、図25B及び図25C)上で調製される。図25Cは、図25AのMSスペクトルの拡大図である。本明細書に記載の(MoS-)マトリックスと比較して、単層GO分散液での分析は、試験されたステロイド分析物のわずかな脱離/イオン化を示したが、特にm/z<150の範囲で有意なバックグラウンドを観察することができ、(図25Cに見られるように)広い質量範囲にわたる追加の炭素由来フラグメントを有する。さらに、本明細書に記載のマトリックスと比較して十分に定義されたグラフェンの製造は満たされない。
【0268】
図26は、7つの治療物質:T3、T7、T16、T37、T41、T62及びT71(それぞれ14μg/ml)の混合物のm/zの関数としての相対強度又は絶対強度を示す。分析物の混合物は単層GO分散液(mGO上で調製される。本明細書に記載のMoSマトリックスと比較して、単層GO分散液の分析は、試験した治療用分析物のわずかな脱離/イオン化を示したが、特にm/z<150の範囲で有意なバックグラウンドを観察することができる。
【0269】
図27A及び図27Bは、構造化試料表面と組み合わせた連続MALDIシステムを示す。
【0270】
図27Aは、試料及び試料ホルダ1-1の調製を示す。この場合、試料ホルダ1-1は、例えば銅製の導電性材料ストリップである。試料ホルダ1-1は、構造化されている。構造化は微細構造化である。微細構造化は、それぞれ100μm~1000μmの範囲のいくつかのキャビティを含むか、又はそれらからなることができる。構造化は、微細構造化スタンプ1-2によって生成される。微細構造化スタンプ1-2は、構造化の適切な形状を試料ホルダ1-1にスタンプする。試料ホルダ1-1を構造化した後、試料ホルダ1-1は、ピペッティングユニット(複数可)を使用することによって、マトリックス及び少なくとも1つの目的の分析物を含む試料1-3を装填することができる。試料1-3は、試料ホルダ1-1の構造化表面にピペッティングされる。ピペッティングワークフローは、懸濁液としての本明細書に記載のマトリックスによるプレコーティング、及び溶液としての分析物の堆積を含むことができる。連続的なMALDI動作のため、少なくとも2つの真空ゾーン(例えば、高真空及び低真空)を含むか、又はそれからなる真空システム1-4、1-5を通過することが好ましい。質量分析ユニット1~7は、四重極を含み、その後にイオントラップ、イオン移動度を介した同重体分離、コリジョンセルにおけるフラグメンテーションが行われ、続いて四重極又は飛行時間(ToF)質量分析(1-6-紫外線レーザー光学系、1-8-分析モジュール)が行われる。磁気セクタのようなイオン操作の他の技術、及び対応するユニットの異なる組み合わせも可能である。
【0271】
図27Bは、少なくとも1つの目的の分析物を判定するための方法を示す。マトリックス及び少なくとも1つの目的の分析物を含む調製された試料2-2は、試料ホルダ2-1、特に例えば銅製の導電性材料ストリップの表面上に提供される。次いで、試料2-2は、波長400nmより小さいレーザー照射によりイオン化される。レーザー照射は、紫外線レーザー光学系2-5によって生成される。次いで、質量分析2-6(2-3-真空チャンバー(低真空)、2-4-真空チャンバー(高真空)、2-7-分析モジュール)を使用して、目的の分析物を判定する。
【0272】
図28A及び図28Bは、構造化試料ホルダの上面図(3-1及び3-3)及び側面図(3-2及び3-4)を示す。構造化試料ホルダ、例えば導電性材料ストリップは、微細構造化スタンプによって生成される微細構造化キャビティを含む。均一な形状の構造は、二次(3-1、3-2)又は六方(3-3、3-4)であってもよく、一般的に観察されるコーヒーリング効果の存在を伴わずに、キャビティの上の懸濁液としてのマトリックス及び溶液としての分析物のより良好な分布を確実にすることができる。コーヒーリング効果は当業者に知られているため、詳細には説明されない。
【0273】
図29は、超音波処理された、約6μmの初期粒径を有するバルクMoSマトリックスの単層のAFM画像を示す。得られた粒子は、主に0.5~3μmの範囲の寸法を有し、高さは主に20~300nmの範囲で観察され、いくつかのより小さい又はより大きい粒子も見える。
【0274】
本特許出願は、欧州特許出願20190319.2の優先権を主張し、この欧州特許出願の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
図1-1】
図1-2】
図2-1】
図2-2】
図3-1】
図3-2】
図4-1】
図4-2】
図5-1】
図5-2】
図6-1】
図6-2】
図7
図8-1】
図8-2】
図9-1】
図9-2】
図10-1】
図10-2】
図11-1】
図11-2】
図12-1】
図12-2】
図13
図14
図15
図16-1】
図16-2】
図17-1】
図17-2】
図18-1】
図18-2】
図19-1】
図19-2】
図20-1】
図20-2】
図21-1】
図21-2】
図22-1】
図22-2】
図23-1】
図23-2】
図24-1】
図24-2】
図25-1】
図25-2】
図26
図27
図28
図29
【国際調査報告】