(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-06
(54)【発明の名称】臨床グレードのレンチウイルスベクターを製造する方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/867 20060101AFI20230830BHJP
【FI】
C12N15/867 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023509768
(86)(22)【出願日】2021-08-12
(85)【翻訳文提出日】2023-04-10
(86)【国際出願番号】 US2021045677
(87)【国際公開番号】W WO2022036048
(87)【国際公開日】2022-02-17
(32)【優先日】2020-08-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523046969
【氏名又は名称】トュミュニティ セラピューティクス インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】TMUNITY THERAPEUTICS INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】バーンハム、 マイケル シーン
(72)【発明者】
【氏名】ラヒミアン、 マリアム
(57)【要約】
レンチウイルスベクター等の臨床グレードのレトロウイルスベクターの製造及び精製のための改良された方法を開示する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンチウイルスベクター製剤を製造する方法であって、該方法は、
(a)フィルター滅菌されたレンチウイルスベクター調製物をヌクレアーゼで処理する工程、及び
(b)前記のヌクレアーゼ処理されたレンチウイルスベクター調製物を濃縮して、レンチウイルスベクター製剤を製造する工程、を含み、
前記濃縮工程は、前記方法の最終工程である、方法。
【請求項2】
細胞培養上清の清澄化工程を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記清澄化工程の後に、第1のヌクレアーゼ処理を行う、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ヌクレアーゼは、エンドヌクレアーゼ活性を有する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記ヌクレアーゼは、エキソヌクレアーゼ活性を有する、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記ヌクレアーゼは、セラチア・マルセッセンス(Serratia marcescens)由来の修飾ヌクレアーゼである、請求項4又は5の何れか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記第1のヌクレアーゼ処理は、限外濾過/透析濾過工程に先行する、請求項3~6の何れか1項に記載の方法。
【請求項8】
限外濾過/透析濾過工程は、接線流濾過を含む、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記限外濾過/透析濾過工程は、中空糸濾過を含む、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
前記レンチウイルスベクター調製物のフィルター滅菌の前に、該レンチウイルスベクター調製物を希釈する、先行する請求項の何れかに記載の方法。
【請求項11】
前記レンチウイルスベクター調製物を製剤緩衝液中に希釈する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
請求項7~9の何れか1項に記載の限外濾過/透析濾過工程中に、前記レンチウイルスベクター調製物を前記製剤緩衝液中に希釈する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記方法は、第2のヌクレアーゼ処理を含む、請求項1記載の方法。
【請求項14】
前記第2のヌクレアーゼ処理は、該方法の最後から2番目の工程である、請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記ヌクレアーゼは、エンドヌクレアーゼ活性を有する、請求項14記載の方法。
【請求項16】
前記ヌクレアーゼは、エキソヌクレアーゼ活性を有する、請求項14記載の方法。
【請求項17】
前記ヌクレアーゼは、セラチア・マルセッセンス(Serratia marcescens)由来の修飾ヌクレアーゼである、請求項15又は16に記載の方法。
【請求項18】
レンチウイルスベクター製剤を製造する方法であって、該方法は、
(a)レンチウイルスベクターを産生する細胞を培養する工程、
(b)前記培養細胞から上清を回収する工程、
(c)前記上清を清澄化する工程、
(d)前記清澄化上清を濃縮する工程、
(e)前記濃縮上清からレンチウイルスベクターを精製して、レンチウイルスベクター調製物を製造する工程、
(f)前記レンチウイルスベクター調製物をフィルター滅菌する工程、
(g)前記のフィルター滅菌されたレンチウイルスベクター調製物を1つ以上のヌクレアーゼで処理する工程、及び
(h)前記のヌクレアーゼ処理されたレンチウイルスベクター調製物を濃縮して最終生成物を生成する工程、
を含む、方法。
【請求項19】
レンチウイルスベクター製剤を製造する方法であって、該方法は、
(a)レンチウイルスベクターを産生する細胞を培養する工程、
(b)前記培養細胞から上清を回収する工程、
(c)前記上清を清澄化する工程、
(d)前記清澄化上清を濃縮する工程、
(e)前記濃縮上清からレンチウイルスベクターを精製して、レンチウイルスベクター調製物を製造する工程、
(f)前記レンチウイルスベクター調製物をフィルター滅菌する工程、及び
(g)前記ヌクレアーゼ処理されたレンチウイルスベクター調製物を濃縮して最終生成物を生成する工程、
を含み、
前記の清澄化上清及び/又はレンチウイルスベクター調製物は、ヌクレアーゼで処理される、方法。
【請求項20】
前記清澄化上清を濃縮する工程は、前記濃縮上清を製剤緩衝液と交換する工程を含む、請求項18又は19記載の方法。
【請求項21】
前記清澄化上清及びレンチウイルスベクター調製物は、ヌクレアーゼで処理される、請求項19記載の方法。
【請求項22】
(d)より先に、前記清澄化上清は、ヌクレアーゼで処理される、請求項19~21の何れか1項に記載の方法。
【請求項23】
(c)の後に、前記清澄化上清は、ヌクレアーゼで処理される、請求項19~21の何れか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記ヌクレアーゼは、エンドヌクレアーゼ活性を有する、請求項18~23の何れか1項記載の方法。
【請求項25】
前記ヌクレアーゼは、エキソヌクレアーゼ活性を有する、請求項18~23の何れか1項記載の方法。
【請求項26】
前記ヌクレアーゼは、セラチア・マルセッセンス(Serratia marcescens)由来の修飾ヌクレアーゼである、請求項24又は25に記載の方法。
【請求項27】
レンチウイルスベクター製剤を製造する方法であって、時系列順に以下の工程を含む:
(a)レンチウイルスベクターを産生する細胞を培養する工程、
(b)前記のレンチウイルスベクターを含む上清を回収する工程、
(c)前記上清を清澄化する工程、
(d)前記清澄化上清をヌクレアーゼで処理する工程、
(e)前記ヌクレアーゼ処理された清澄化上清を濃縮する工程であって、該濃縮上清を製剤緩衝液と交換することを含む、工程、
(f)前記濃縮上清からレンチウイルスベクターを精製し、レンチウイルス調製物を製造する工程、
(g)前記レンチウイルスベクター調製物をフィルター滅菌する工程、
(h)前記のフィルター滅菌されたレンチウイルスベクター調製物をヌクレアーゼで処理する工程、及び
(i)前記のヌクレアーゼ処理されたレンチウイルスベクター調製物を濃縮して最終生成物を生成する工程。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
・関連出願の相互参照:
本出願は、2020年8月13日に出願された米国仮出願第63/065,225号の優先権を主張するPCT出願であり、その全体が参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
・背景:
免疫受容体を発現するように操作されたT細胞を用いた新しい治療法は、癌や自己免疫疾患を含む広範囲の難治性疾患に対する有望な免疫療法として期待されている。レンチウイルスベクターは、レンチウイルスが非分裂細胞に感染することができるため、多くの異なる用途で導入遺伝子の送達に使用されてきた(非特許文献1)。さらに、レンチウイルスベクターは、導入遺伝子の非常に安定した長期発現を可能にする。
【0003】
レンチウイルスベクターの製造方法は単純なものではなく、多くの工程が必要である。多くの工程がある程度の成功を収める一方で、ベクターの臨床応用のためには、生物学的及び非生物学的汚染物質を含まない高純度のサンプルが必要であるため、これらの工程はさらに複雑になっている。ベクター精製工程は、臨床遺伝子導入療法において重要な工程であり、より効率的に、安全に、かつ大規模にウイルスベクターを提供するための新規な方法が必要である。本開示は、この必要性に対処するものである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Lewis and Emerman (1993) J. Virol. 68:510
【発明の概要】
【0005】
・開示の概要:
本開示は、一般に、レンチウイルスベクターを製造し、精製する方法に向けられる。
【0006】
いくつかの態様において、本開示は、レンチウイルスベクター製剤を製造する方法に広く向けられ、該方法は、
(a)フィルター滅菌されたレンチウイルスベクター調製物をヌクレアーゼで処理する工程、及び
(b)前記のヌクレアーゼ処理されたレンチウイルスベクター調製物を濃縮して、レンチウイルスベクター製剤を製造する工程、を含み、
前記濃縮工程は、前記方法の最終工程である。
いくつかの態様において、前記方法は、細胞培養上清の清澄化工程を有する。
いくつかの態様において、前記清澄化工程の後に、第1のヌクレアーゼ処理を行う。
いくつかの態様において、前記ヌクレアーゼは、エンドヌクレアーゼ活性を有する。
いくつかの態様において、前記ヌクレアーゼは、エキソヌクレアーゼ活性を有する。
いくつかの態様において、前記ヌクレアーゼは、セラチア・マルセッセンス(Serratia marcescens)由来の修飾ヌクレアーゼである。
【0007】
いくつかの態様において、前記第1のヌクレアーゼ処理は、限外濾過/透析濾過工程に先行する。
いくつかの態様において、前記限外濾過/透析濾過工程は、接線流濾過を含む。
いくつかの態様において、前記限外濾過/透析濾過工程は、中空糸濾過を含む。
【0008】
いくつかの態様において、前記レンチウイルスベクター調製物のフィルター滅菌の前に、該レンチウイルスベクター調製物を希釈する。
いくつかの態様において、前記レンチウイルスベクター調製物を、製剤緩衝液中に希釈する。
いくつかの態様において、前記限外濾過/透析濾過工程中に、前記レンチウイルスベクター調製物を、前記製剤緩衝液中に希釈する。
【0009】
いくつかの態様において、前記方法は、第2のヌクレアーゼ処理を含む。
いくつかの態様において、前記第2のヌクレアーゼ処理は、該方法の最後から2番目の工程である。
いくつかの態様において、前記ヌクレアーゼは、エンドヌクレアーゼ活性を有する。
いくつかの態様において、前記ヌクレアーゼは、エキソヌクレアーゼ活性を有する。
いくつかの態様において、前記ヌクレアーゼは、セラチア・マルセッセンス(Serratia marcescens)由来の修飾ヌクレアーゼである。
【0010】
いくつかの態様において、本開示は、レンチウイルスベクター製剤を製造する方法に広く向けられ、該方法は、
(a)レンチウイルスベクターを産生する細胞を培養する工程、
(b)前記培養細胞から上清を回収する工程、
(c)前記上清を清澄化する工程、
(d)前記清澄化上清を濃縮する工程、
(e)前記濃縮上清からレンチウイルスベクターを精製して、レンチウイルスベクター調製物を製造する工程、
(f)前記レンチウイルスベクター調製物をフィルター滅菌する工程、
(g)前記のフィルター滅菌されたレンチウイルスベクター調製物を1つ以上のヌクレアーゼで処理する工程、及び
(h)前記のヌクレアーゼ処理されたレンチウイルスベクター調製物を濃縮して最終生成物を生成する工程、
を含む。
【0011】
いくつかの態様において、本開示は、レンチウイルスベクター製剤を製造する方法に広く向けられ、該方法は、
(a)レンチウイルスベクターを産生する細胞を培養する工程、
(b)前記培養細胞から上清を回収する工程、
(c)前記上清を清澄化する工程、
(d)前記清澄化上清を濃縮する工程、
(e)前記濃縮上清からレンチウイルスベクターを精製して、レンチウイルスベクター調製物を製造する工程、
(f)前記レンチウイルスベクター調製物をフィルター滅菌する工程、及び
(g)前記ヌクレアーゼ処理されたレンチウイルスベクター調製物を濃縮して最終生成物を生成する工程、
を含み、
前記の清澄化上清及び/又はレンチウイルスベクター調製物は、ヌクレアーゼで処理される。
いくつかの態様において、前記清澄化上清を濃縮する工程は、前記濃縮上清を製剤緩衝液と交換する工程を含む。
【0012】
いくつかの態様において、前記清澄化上清及びレンチウイルスベクター調製物は、ヌクレアーゼで処理される。
いくつかの態様において、(d)より先に、前記清澄化上清は、ヌクレアーゼで処理される。
いくつかの態様において、(c)の後に、前記清澄化上清はヌクレアーゼで処理される。
いくつかの態様において、前記ヌクレアーゼは、エンドヌクレアーゼ活性を有する。
いくつかの態様において、前記ヌクレアーゼは、エキソヌクレアーゼ活性を有する。
いくつかの態様において、前記ヌクレアーゼは、セラチア・マルセッセンス(Serratia marcescens)由来の修飾ヌクレアーゼである。
【0013】
レンチウイルスベクター製剤を製造する方法であって、時系列順に以下の工程を含む:
(a)レンチウイルスベクターを産生する細胞を培養する工程、
(b)前記のレンチウイルスベクターを含む上清を回収する工程、
(c)前記上清を清澄化する工程、
(d)前記清澄化上清をヌクレアーゼで処理する工程、
(e)前記ヌクレアーゼ処理された清澄化上清を濃縮する工程であって、該濃縮上清を製剤緩衝液と交換することを含む、工程、
(f)前記濃縮上清からレンチウイルスベクターを精製し、レンチウイルス調製物を製造する工程、
(g)前記レンチウイルスベクター調製物をフィルター滅菌する工程、
(h)前記のフィルター滅菌されたレンチウイルスベクター調製物をヌクレアーゼで処理する工程、及び
(i)前記のヌクレアーゼ処理されたレンチウイルスベクター調製物を濃縮して最終生成物を生成する工程。
【0014】
いくつかの態様において、本開示は、一般に、ウイルスベクター製剤を製造する方法であって、該方法は、
ウイルスベクターを産生する細胞を培養する工程、
前記培養細胞から上清を回収する工程、
前記上清を清澄化する工程、
前記清澄化上清を濃縮する工程、
前記濃縮上清からレンチウイルスベクターを精製してウイルスベクター製剤を生成する工程、
前記レンチウイルスベクター調製物をフィルター滅菌する工程、及び
前記のヌクレアーゼで処理されたレンチウイルスベクター調製物を濃縮し、最終生成物を生成する工程を含み、
ここで、当該方法は、好ましくは、ベクターを単一のヌクレアーゼ工程(step)のみで処理することを含み、
ベクターの精製は、
(1)1回又は複数回のクロマトグラフィー経由、
(2)高速遠心分離若しくは超遠心分離経由、又は
(3)PEG若しくはLENTI-X CONCENTRATOR等の濃度溶液経由であってよい。
いくつかの態様において、当該方法は、2つの別個のヌクレアーゼ処理工程を含む。
いくつかの態様において、2つの別個のヌクレアーゼ処理工程のうちの1つは、
(1)1回若しくは複数回のクロマトグラフィー、
(2)高速遠心分離若しくは超遠心分離、又は
(3)PEG若しくはLENTI-X CONCENTRATOR等の濃縮液を介してベクターを精製することを含むベクター精製工程に置き換えられる。
いくつかの態様において、本明細書に記載の方法は、2つの別個のヌクレアーゼ処理工程、第1のヌクレアーゼ処理及び第2のヌクレアーゼ処理を含む。
いくつかの態様において、第1のヌクレアーゼ処理は、
(1)1回若しくは複数回のクロマトグラフィー、
(2)高速遠心分離若しくは超遠心分離、又は
(3)PEG若しくはLENTI-X CONCENTRATOR等の濃縮液を介してベクターを精製することを含むベクター精製工程に置き換えられる。
いくつかの態様において、第2のヌクレアーゼ処理は、
(1)1回若しくは複数回のクロマトグラフィー、
(2)高速遠心分離若しくは超遠心分離、又は
(3)PEG若しくはLENTI-X CONCENTRATOR等の濃縮液を介してベクターの精製を含むベクター精製ステップに置き換えられる。
【0015】
本明細書で説明され請求される発明は、この簡単な概要(Brief Summary)及び以下の図面の簡単な説明(Brief Description of the Drawings)並びに詳細な説明(Detailed Description)に記載又は説明又は言及されているものを含むが、これらに限定されない多くの属性及び実施形態を有する。
全てを網羅することを意図しておらず、本明細書で説明され請求される発明は、例示のみを目的として含まれ、制限されない、この簡単な概要で特定される特徴又は実施形態に限定されるものではなく、またそれによっても限定されない。
追加の実施形態は、以下の詳細な説明において開示され得る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本開示のウイルス精製プロセスの概略を示す図である。CC700の記載は、ウイルス及び他の大きな生体分子の精製/研磨に使用されるマルチモーダルクロマトグラフィー樹脂(multimodal chromatography resin)であるCAPTOCORE 700を含むカラムに相当する。
【
図2】
図2は、水疱性口内炎ウイルス糖タンパク質(VSV-G)遺伝子を検出し定量化したqPCRアッセイの結果を示している。VSV-Gの検出は、ベクター製造プロセスの複数の時点で依然として存在する残留VSV-Gの量を効果的に測定する。残留VSV-Gの量は、一般に、ベクターの製造時に残留したプラスミド汚染物質の量を示す指標となる。図は、ベクターの製造プロセスにおける3つの工程の後に観察される工程除去パーセント(step removal percent)をグラフ化したものである。「ハーヴェスト(Harvest)」サンプルは清澄化工程の直後に回収された。「TFF1」サンプルは、最初の接線流濾過工程の直後に回収された。「TFF2」サンプルは、最後の接線流濾過工程の直後に回収され、したがって、レンチウイルスベクターの製造及び精製方法の最終結果が得られる。データは、ハーベストサンプルのVSV-Gの量が1、すなわち100%であり、TFF1サンプルのVSV-Gの量が0.16、すなわち16%であり、TFF2サンプルのVSV-Gの量が0.009、すなわち0.09%となるように正規化される。
【
図3】
図3は、本開示のウイルス精製方法に供されるレンチウイルスベクターの全収率に対する様々なレンチウイルスベクター力価の影響を決定するためのアッセイの結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
・詳細な説明:
I.概要
本願は、レンチウイルスベクター等のレトロウイルスベクターの製造方法、及びこれらのベクターを含む製剤、特に高力価で分離され、細胞破片、核酸分解分子、及びタンパク質分解物質による汚染が十分にない製剤に向けられる。レンチウイルスベクター等のレトロウイルスベクターの精製製剤を、高力価で、かつ汚染物質のない状態で製造することは、簡単な作業ではない。本発明者らは、驚くべきことに、レトロウイルス(例えば、レンチウイルス)ベクターストックの力価を高める結果となるレトロウイルスベクター精製方法の複数の態様を特定した。
【0018】
特に、本開示は、レトロウイルス(例えば、レンチウイルス)ベクターの製造の2つの態様に向けられている:
(1)滅菌濾過前のウイルスストック(stock)の希釈、及び
(2)最終ベクター製造における残留及びゲノムDNAの除去である。
最終的なレトロウイルス生成物に残留する核酸は望ましくない。
本明細書に記載の新しいウイルスベクター製造方法の2つの側面は、改善された最終生成物を製造するだけでなく、全体の収率を改善する。
【0019】
第1の態様は、精製方法において回収されるベクターの力価に多大な影響を及ぼすレトロウイルス(例えば、レンチウイルス)ベクターの濃度に向けられる。レトロウイルス(例えば、レンチウイルス)ベクターのより希薄なサンプルは、より濃縮されたレトロウイルス(例えば、レンチウイルス)ベクターサンプルと比較して、より大きい総回収率を示す。
驚くべきことに、1つの態様において、約2×106のレトロウイルス(例えば、レンチウイルス)ベクターの感染力価、又はこの量を包含する1.5×106~2.5×106の範囲が、最も効率的にレトロウイルス(例えば、レンチウイルス)ベクターを回収する結果となることを発見した。
【0020】
本開示の第2の態様は、回収されたレトロウイルス(例えば、レンチウイルス)ベクターの力価にも大きな影響を及ぼす、1つ以上の段階(stage)でのレトロウイルス(例えば、レンチウイルス)ベクターサンプルからの宿主細胞及びゲノムDNAの除去の効率に向けられる。具体的には、驚くべきことに、フィルター滅菌工程の後、ベクター濃縮工程(例えば、接線流濾過(TFF)を使用)の前に、希釈ベクターに少なくとも1つのヌクレアーゼ処理を加えることにより、宿主細胞及びゲノムDNA除去効率が高まることが発見された。任意の適切なヌクレアーゼ処理を使用することができ、例示的な処理は本明細書に記載されている。
例示的な態様において、残留核酸の除去効率を高めることができるように、本発明者らは、中空糸又はカセットTFFのための約10kDa~約1,000kDaの間の分子サイズが、宿主細胞及びゲノムDNA除去効率を高めるために使用できることを示した。
【0021】
本明細書に記載の新規な態様を使用するレンチウイルスベクター製造方法の例示的なフローチャートを
図1に示す。
【0022】
本明細書に記載の例示的な下流プロセス(downstream process)では、2つの精製工程(例えば、TFFを使用)があり、各精製(例えば、TFF)工程の前にヌクレアーゼ処理工程が実施される。
本発明者らは、驚くべきことに、ヌクレアーゼ処理工程がそれぞれの前に行われる、2つの濃縮工程を有するベクター精製方法を実施すると、さらなる効率が向上することを実証した。
【0023】
さらに、最初の濃縮工程の前に、清澄化した上清に第1のヌクレアーゼ工程を行うことで、残留DNAの除去を助け、フィルター(例えば、TFF)の目詰まりを防止することが判明した。しかし、最終濃縮工程の前に行う2回目のヌクレアーゼ処理により、下流の製造工程にかかる時間を増加させることなく、残留DNAを効果的に除去することができる。各ヌクレアーゼ処理のインキュベーションの時間と温度は、我々の精製方法のプロセス時間と効率を最大化するために、異なるようできる。
【0024】
本発明者らは、約750kDaから約1,000kDaの高分子量細孔カットオフ(pore cutoff)がヌクレアーゼを効果的に除去するため、最終生成物に残留するヌクレアーゼに関する懸念がないことを実証している。
【0025】
さらなる態様において、ヌクレアーゼプロセスは、例えば、室温又は例えば、ヌクレアーゼプロセスが実施される典型的な温度である30℃ではない、低下した温度で実施される。例えば、本明細書にさらに記載されるように、ヌクレアーゼプロセスは、約2~約8℃の「低温」で実施され得る。
ヌクレアーゼプロセスが実施され得る他の例示的な温度は、本明細書に記載される。
【0026】
レンチウイルスベクター精製方法にこれらの追加工程を導入すると、生存可能なベクターを製造するのにかかる時間が必然的に増加し、すでに~3日かかる工程に時間が追加される。すでに時間のかかるプロセスに約1日の作業を追加することは、他者がこの道を追求することを思いとどまらせたであろう。
【0027】
ベクター精製方法は、臨床遺伝子導入療法の確立において重要な工程であり、より効率的に、安全に、かつ高い力価でウイルスベクターを提供するための新規な方法が必要である。本開示は、この必要性に対処するものである。
【0028】
II.レトロウイルスベクター
いくつかの態様において、ウイルスはレトロウイルスベクターである。
いくつかの態様において、ウイルスは、目的の異種導入遺伝子(heterologous transgene)又は核酸配列を含む組換えレトロウイルスベクターである。
いくつかの態様において、異種導入遺伝子又は核酸配列は、遺伝子治療の目的のために治療的な設定で使用され得る。
いくつかの態様において、目的の異種導入遺伝子又は核酸配列を含むレトロウイルスベクターは、免疫細胞をトランスフェクト(transduce)するために使用され得る。
【0029】
いくつかの態様において、ベクターは所望の細胞型(cell type)に標的化される。
いくつかの態様において、ベクターは、ベクターがベクター媒介遺伝子導入のプロセスで融合する所望の細胞型に標的化される。
さらなる態様において、所望の細胞型は、免疫細胞である。
いくつかの態様において、所望の細胞型は、T細胞、B細胞、樹状細胞、又は抗原提示細胞(antigen presenting cell)である。
【0030】
いくつかの態様において、目的の異種導入遺伝子又は核酸配列は、治療的又は診断的な用途を有し得る。目的の好適な異種導入遺伝子又は核酸配列は、酵素、サイトカイン、ケモカイン、ホルモン、抗体、及び抗酸化分子をコードする配列を含み得るが、これらに限定されない。
いくつかの態様において、目的の異種導入遺伝子又は核酸配列としては、操作された免疫グロブリン様分子(engineered immunoglobulin-like molecules)、免疫調節分子(immunomodulatory molecules)、アンチセンスRNA、マイクロRNA、shRNA、siRNA、リボザイム、遺伝子編集システム(例えば、CRISPR/CAS、ジンクフィンヌクレアーーゼ、TALENs)、抗原受容体(キメラ抗原受容体、T細胞受容体等)、抗原、毒素、標的タンパク質のトランスドメイン陰性変異体、腫瘍抑制タンパク質、成長因子、膜タンパク質、レポータータンパク質(蛍光タンパク質等)、及びその誘導体が挙げられる。
【0031】
いくつかの態様において、レトロウイルスベクターは、レンチウイルスベクターである。
いくつかの態様において、レンチウイルスベクターは、ウシ免疫不全ウイルス、カプリン関節炎脳炎ウイルス、ウマ感染症貧血ウイルス、ネコ免疫不全ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス1、ヒト免疫不全ウイルス2、ジェンブラナ病ウイルス、プルマレンチウイルス、シミアン免疫不全ウイルス、又はビスナメディウイルスからである。
【0032】
いくつかの態様において、レンチウイルスベクターは、異なるウイルスに由来するエンベロープ糖タンパク質を含んでいることを意味する、偽型である。
いくつかの態様において、レンチウイルスベクターは、水疱性口内炎ウイルス(VSV-G)、麻疹ウイルス、修飾麻疹ウイルス、ヒヒ内生ウイルス、ジボン猿白血病ウイルスに由来するエンベロープ糖タンパク質で偽型化されている。
いくつかの態様において、レンチウイルスベクターは、修飾エンベロープ糖タンパク質を用いて偽型化される。
いくつかの態様において、レンチウイルスベクターは、キメラエンベロープ糖タンパク質を用いて偽型化される。
【0033】
いくつかの態様において、レンチウイルスベクターは、複製に必要な1つ又は複数のタンパク質コード領域がレンチウイルスベクターから除去され、したがってベクターが複製不全となるように修飾される。
いくつかの態様において、目的の異種導入遺伝子又は核酸配列は、ウイルスゲノムの一部を置換又は代替する。
いくつかの態様において、目的の異種導入遺伝子又は核酸配列は、ウイルスゲノムに付加され得、こうしてベクターの複製を十分なものにすることができる。
いくつかの態様において、ベクターは、非統合ベクターであり、U.S.Pat.Appln.Pub.No.US20090014754A1に記載されている。
いくつかの態様において、レンチウイルスベクターは、複製に必要な1つ又は複数のタンパク質コード領域がレンチウイルスベクターから除去されるように修飾され、U.S.Pat.Appln.Pub.No.US20090075370A1に記載されている。
【0034】
III.レトロウイルスベクター生産システム
レトロウイルスベクターは、プロデューサー細胞又はパッケージング細胞で増殖させることができる。プロデューサー細胞又はパッケージング細胞は、レトロウイルスベクターを増殖させ、その後収穫することができる任意の細胞であり得る。
いくつかの態様では、プロデューサー細胞又はパッケージング細胞は、その後の精製のために大量のウイルス粒子を増殖させるための安定したプロデューサー細胞株又は宿主細胞株であり得る。
いくつかの態様において、プロデューサー細胞又はパッケージング細胞は、ヒト細胞から選択される。
さらなる態様において、ヒト細胞は、HEK293、HEK293T、HEK293FT、Te671、HT1080、又はCEMである。
いくつかの態様において、プロデューサー細胞又はパッケージング細胞は、マウス細胞から選択される。
さらなる態様において、マウス細胞はNIH-3T3である。
いくつかの態様において、プロデューサー細胞又はパッケージング細胞は、イタチ科細胞(mustelidae cell)から選択される。
さらなる態様において、イタチ科細胞はMpfである。
いくつかの態様において、プロデューサー細胞又はパッケージング細胞は、イヌ科細胞(canine cell)から選択される。
さらなる態様において、イヌ科細胞はD17である。
いくつかの態様において、プロデューサー細胞又はパッケージング細胞は、HEK293細胞である。
いくつかの態様において、一過性トランスフェクション(transient transfection)は、プロデューサー細胞及び/又はパッケージング細胞においてレンチウイルスベクターを生成するために使用され得る。
【0035】
本明細書で使用される「パッケージング細胞」及び「プロデューサー細胞」という用語は、ウイルスゲノムを欠く組換えレトロウイルス又はレンチウイルスウイルスの生成に必要な要素を含む細胞を意味するものである。
典型的には、このようなパッケージング細胞は、ウイルス構造タンパク質(コドン最適化されたgag-pol及びenv等)を発現することができるがパッケージングシグナル(packaging signal)を含まない1つ又は複数のプロデューサープラスミド(producer plasmids)を含む。 好ましくは、プロデューサー/パッケージング細胞は、哺乳類細胞、好ましくは、ヒト細胞のような霊長類細胞から得られる。
いくつかの態様において、ヒト細胞は、ヒト胚性腎臓(HEK)細胞である。 組換えレトロウイルス又はレンチウイルスウイルスの複製を支持する(supporting)ことができる任意のタイプの細胞を、組換えウイルスを増殖させるために使用することができる。
【0036】
いくつかの態様において、パッケージング/プロデューサー細胞株は、安全性を向上させるために、プロウイルスの3’LTRが削除されるように改良されている。さらに、gag-pol及びenv遺伝子を別々のプラスミド上に導入するように改良され、さらに組換えを避けるために細胞株に順次導入することができる。
いくつかの態様において、組換えウイルス及び導入遺伝子は、第3世代レンチウイルスシステムとしてパッケージング/プロデューサー細胞株に導入される。このレンチウイルスシステムは、gag-polをコードするプラスミド、ウイルスrev遺伝子(viral rev gene)をコードするプラスミド、エンベロープ糖タンパク質(例えば、VSV-G)をコードするエンベローププラスミド、及び目的の導入遺伝子又は核酸配列をコードする導入プラスミドという4つの別々のプラスミドとして細胞内に導入される。
【0037】
レトロウイルスベクターシステムでトランスフェクトされた細胞は、当業者によく知られた手段及び方法により、細胞及びウイルス数及び/又はウイルス力価を増加させるために培養され、適切な培養液中で細胞に適切な栄養素を提供することを含むが、これらに限定されない。
方法は、表面に付着した増殖、懸濁液中での増殖、又はそれらの組合せを含んでよい。
培養は、例えば、組織培養フラスコ、皿、ローラーボトル、又はバイオリアクターにおいて、バッチ、フェドバッチ、連続システム、中空糸等を用いて行うことができるが、細胞培養によるウイルスの大規模(連続)製造を達成するためには、懸濁状態で成長できる細胞を有することが当技術分野で好まれる。細胞を培養するための適切な条件は知られている(例えば、Tissue Culture, Academic Press, Kruse and Paterson, editors (1973)、及び、R.I. Freshney, Culture of animal cells: A manual of basic technique, fourth edition (Wiley- Liss Inc., 2000, ISBN 0-471-34889-9)を参照されたい。)。
【0038】
いくつかの態様において、細胞は組織培養フラスコで培養され、その後、多層培養チャンバーで培養されて、組換えウイルス粒子プロデューサー細胞を生成する。
いくつかの態様において、プロデューサー細胞は、ウイルス粒子を伝播させるための付着性細胞である。
いくつかの態様において、プロデューサー細胞は、ウイルス粒子を伝播させるための非付着性細胞である。
【0039】
いくつかの態様において、細胞は、選択された細胞型の培養及びレンチウイルスベクターの産生に十分に適した培地中で成長させる。
いくつかの態様において、培地は複合培地又は最小培地である。
いくつかの態様において、培地は、抗生物質、哺乳類血液血清(ウシ胎児血清等)、pH指示薬等を補充される。
いくつかの態様では、培地は無血清培地である。
【0040】
IV.
レトロウイルスベクターの精製
例示的なベクター精製プロセスは、
図1に例示されている。
いくつかの態様において、精製プロセスは、使用済み細胞培養液/上清を清澄化することから始まる。
さらなる態様において、清澄化の後に、
(1)1つ又は複数の濃縮工程、
(2)1つ又は複数のヌクレアーゼ処理工程、
(3)1つ又は複数の精製工程、及び
(4)1つ又は複数の滅菌濾過工程が続く。
さらなる態様において、清澄化の後に、
(1)1又は2(又はそれ以上)の濃縮工程、
(2)1又は2(又はそれ以上)のヌクレアーゼ処理工程、
(3)1又は2(又はそれ以上)の精製工程、及び
(4)1又は2(又はそれ以上)の滅菌濾過工程が続き、
ここで工程は(1)~(4)の工程順に実施されてもよいし実施されなくてもよい。
さらなる態様において、清澄化の後に1つ又は複数の希釈工程が続き、この工程は清澄化の直後及び後続の工程の前に実施されても実施されなくてもよい。
【0041】
いくつかの態様において、精製プロセスは、時系列順に、
(1)使用済み培養液/上清を清澄化する工程、
(2)第1の濃縮工程、
(3)ヌクレアーゼ工程、
(4)精製工程、
(5)滅菌濾過工程、及び
(6)第2の濃縮工程を含む、又はそれらからなる。
いくつかの態様において、精製プロセスは、時系列順に、
(1)使用済み培養液/上清の清澄化する工程、
(2)ヌクレアーゼ工程、
(3)第1の濃縮工程、
(4)精製工程、
(5)滅菌濾過工程、及び
(6)第2の濃縮工程を含む、又はそれらからなる。
いくつかの態様において、精製工程は、時系列順に、
(1)使用済み培養液/上清の清澄化する工程、
(2)第1のヌクレアーゼ工程、
(3)第1の濃縮工程、
(4)精製工程、
(5)滅菌濾過工程、
(6)第2のヌクレアーゼ工程、及び
(7)第2の濃度工程を含む、又はそれらからなる。
いくつかの態様において、精製工程は、1つ又は複数の希釈工程を含み得る。
【0042】
いくつかの態様において、第1のヌクレアーゼ処理は、第1の濃縮工程の前に実施される。
いくつかの態様において、第2のヌクレアーゼ処理は、第2の濃縮工程の前に実施される。
いくつかの態様において、第1及び第2のヌクレアーゼ工程は、最終濃縮工程の前に実施される。
いくつかの態様において、第1及び第2のヌクレアーゼ工程は連続的に実施されない。
いくつかの態様において、第1及び第2の精製工程は、連続的に実施されない。
いくつかの態様において、第1及び第2の精製工程は、連続的に実施されない。
いくつかの態様において、第1及び第2の精製工程は、連続的に実施されない。
いくつかの態様において、第1及び第2の濃縮工程は、同時に実施されない。
いくつかの態様において、第1及び第2のヌクレアーゼ工程は、連続して実施されない。
いくつかの態様において、第1及び第2の精製工程は、連続して実施されない。
【0043】
いくつかの態様において、濃縮工程は、当該方法の最終工程である。
いくつかの態様において、第1及び第2のヌクレアーゼ工程が実施される場合、第1のヌクレアーゼ工程は、第1の濃縮工程の前に実施され、第2のヌクレアーゼ工程は、第2の濃縮工程の前に実施される。
いくつかの態様において、希釈工程は、第1のヌクレアーゼ工程の何れか後、又は両方のヌクレアーゼ工程の後に実施される。
いくつかの態様において、ヌクレアーゼ工程は、清澄化工程の前に実施される。
いくつかの態様において、滅菌濾過工程及び濃縮工程は、濾液が滅菌フィルターから濃縮デバイスに直接流れるような閉鎖系で実施される。
【0044】
いくつかの態様では、滅菌濾過工程は、精製プロセスの最終工程ではない。
いくつかの態様において、滅菌濾過工程は、精製プロセスの最後から2番目の工程ではない。
いくつかの態様において、第2のヌクレアーゼ処理工程は、滅菌濾過工程の前に実施されない。
いくつかの態様において、滅菌濾過工程が精製プロセスの最終工程である場合、ベクター収量は、滅菌濾過工程が最後に実施されない対照と比較して、又は
図1に規定される段階的慣例(stepwise convention)と比較して、減少する。
【0045】
いくつかの態様において、濃縮工程は、限外濾過工程であり、緩衝液交換に使用される場合、時々、透析濾過と呼ばれる。
いくつかの態様において、限外濾過/透析濾過工程は、ベクターを濃縮する。
いくつかの態様において、限外濾過/透析濾過は、接線流濾過(TFF)の形態であってよい。
いくつかの態様において、限外濾過/透析濾過膜は、ベクターを保持するのに十分小さく、不純物を効果的に除去するのに十分な大きさの細孔径を有するように選択される。
【0046】
レンチウイルスベクターでトランスフェクトされた細胞を培養する過程で、レンチウイルスベクターは、培養液を構成する細胞が培養されている使用済み培養液中に蓄積される。
いくつかの態様において、培養液中に残存する無傷の細胞は、溶解され、それにより残存するレンチウイルスベクターが遊離される。
【0047】
いくつかの態様において、使用済み培地/細胞培養上清は、清澄化される。清澄化とは、レンチウイルスベクターの単離を開始するための手段として、上清から細胞残骸を除去することである。
【0048】
いくつかの態様において、細胞培養上清の清澄化は、細胞破片及び他の不純物を除去するために濾過工程によって実施される。
適切なフィルターは、セルロースフィルター、再生セルロース繊維、無機フィルター補助剤(例えば、珪藻土、パーライト、ヒュームドシリカ)と組み合わせたセルロース繊維、無機フィルター補助剤及び有機樹脂と組み合わせたセルロースフィルター、又はそれらの任意の組み合わせ、及びポリマーフィルター(例えば、ナイロン、ポリプロピレン、ポリエーテルスルホンが挙げられるがこれらに限らない)により有効な除去及び許容できる回収を実現できる。
一般に、多段式プロセスが好ましいが、必須ではない。
例示的な2段階又は3段階のプロセスでは、粗いフィルターで大きな沈殿物や細胞破片を除去した後、公称細孔径が0.2ミクロン以上1ミクロン未満の研磨用第2段階フィルターを含む。
最適な組み合わせは、沈殿物のサイズ分布や他の変数の関数であり得る。
さらに、比較的小さな細孔径のフィルターや遠心分離を使用した単段操作も、清澄化に使用することができる。
より一般的には、デッドエンド濾過、精密濾過、遠心分離、又はデッドエンド濾過又は深層濾過と組み合わせたフィルター助剤(例えば珪藻土)の体内投入を含むがこれに限定されない任意の清澄化アプローチは、その後の段階で膜及び/又は樹脂を汚さないのに適した透明度の濾液を提供し、本発明の清澄化工程に使用することを許容するものとする。
【0049】
いくつかの態様において、清澄化は、フィルターを用いて行われる。
いくつかの態様において、フィルターは、約0.1μm~約1.5μmの間にわたる細孔径(pore size)を有する。
いくつかの態様において、フィルターは、約0.2μmから約1.5μmの間にわたる細孔径を有する。
いくつかの態様において、フィルターは、約0.45μm~約0.8μmの間にわたる細孔径を有する。
いくつかの態様において、フィルターは、約0.45μm~約1.5μmの間にわたる細孔径を有する。
いくつかの態様において、フィルターは、約0.1μm、約0.2μm、約0.22μm、約0.45μm、約0.65μm、約0.8μm、約1.0μm、約1.2μm、約1.3μm、又は約1.5μmの細孔径を有する。
いくつかの態様において、最大細孔径は、0.1μm、0.2μm、0.22μm、0.45μm、0.65μm、0.8μm、1.0μm、1.2μm、1.3μm、又は1.5μmである。
【0050】
いくつかの態様において、清澄化した上清をヌクレアーゼで処理して、特にプロデューサー細胞(producer cell)からのDNA及び/又はRNAのような汚染核酸を分解させる。
いくつかの態様において、ヌクレアーゼは、DNAse又はRNAseである。
いくつかの態様において、ヌクレアーゼは、DNAseとRNAseの両方である。
【0051】
いくつかの態様において、本開示の改良された最終生成物は、検出不可能な量のヌクレアーゼを含む。任意の適切なヌクレアーゼが、本明細書に記載される方法において使用され得る。
いくつかの態様において、ヌクレアーゼは、BENZONASEヌクレアーゼ(EP0229866及び米国特許第5,173,418号)であり、これは、一本鎖、二本鎖、線形、及び環状を含む、すべての形態のDNA及びRNAを分解する。BENZONASEヌクレアーゼは、Merck KGaAから商業的に入手することができる。BENZONASEは、セラチア・マルセッセンス(Serratia marcescens)由来の遺伝子操作されたエンドヌクレアーゼである。このタンパク質は、2つの必須ジスルフィドボッド(disulfide bods)を持つ30kDaのサブユニットの二量体である。このエンドヌクレアーゼは、あらゆる形態のDNA及びRNA(一本鎖、二本鎖、直鎖、及び環状)を攻撃して分解し、幅広い操作条件下で効果を発揮する。BENZONASEは、DNAseとRNAseの両方の活性を持ち、タンパク質分解活性はない。
【0052】
いくつかの態様において、ヌクレアーゼは、DENARASEヌクレアーゼである。DENARASEヌクレアーゼは、c-LECTA GmbHから商業的に入手することができる。
いくつかの態様において、ヌクレアーゼは、調製物から不要な又は汚染されたDNA及び/又はRNAを除去する目的で当技術分野で一般的に使用されるDNase及び/又はRNaseである。DENARASEは、US2012/0135498に記載されており、そこに配列識別子番号3として含まれている。DENARASEは、セラチア・マルセッセンス(Serratia marcescens)由来の遺伝子操作されたエンドヌクレアーゼである。DENARASEは、DNAseとRNAseの両方の活性を有し、タンパク質分解活性を有しない。
【0053】
いくつかの態様において、精製プロトコル(purification protocol)は、1つ又は複数のヌクレアーゼ処理を含む。
いくつかの態様において、各ヌクレアーゼ処理は、単一のタイプのヌクレアーゼのみ、例えば、DENARASEのみを含む。
いくつかの態様では、各ヌクレアーゼ処理は、1つ又は複数のヌクレアーゼを含み得る。
いくつかの態様において、第1のヌクレアーゼ処理は、1つのタイプのヌクレアーゼのみを含み、第2のヌクレアーゼ処理は、1つ又は複数の異なるタイプのヌクレアーゼを含む。
いくつかの態様において、第1のヌクレアーゼ処理は、1つ又は複数の異なるタイプのヌクレアーゼを含み、第2のヌクレアーゼ処理は、1つのタイプのヌクレアーゼのみを含む。
【0054】
いくつかの態様において、1つ又は複数のヌクレアーゼは、エンドヌクレアーゼである。
いくつかの態様において、1つ又は複数のヌクレアーゼは、エキソヌクレアーゼである。
いくつかの態様において、1つ又は複数のヌクレアーゼは、エンドヌクレアーゼ及びエキソヌクレアーゼの両方を含む。
いくつかの態様において、エンドヌクレアーゼ又はエキソヌクレアーゼは、細菌又は真菌から単離された修飾酵素である。
いくつかの態様において、エンドヌクレアーゼ又はエキソヌクレアーゼは、エンドヌクレアーゼ及び/又はエキソヌクレアーゼ活性を、依然として(still)、保有する遺伝子組み換え酵素である。
【0055】
いくつかの態様において、本明細書に記載のウイルス精製方法の1つ又は複数が、1つ又は複数のヌクレアーゼ処理の後に実施される。
いくつかの態様では、1つ又は複数のヌクレアーゼ処理は、最終の限外濾過/濾過透析工程の前に、後処理として実施される。
いくつかの態様では、本明細書に記載のウイルス精製方法の1つ又は複数が、ヌクレアーゼ処理の代わりに実施される。
いくつかの態様において、ヌクレアーゼ処理は、ウイルス精製方法から省略される。
【0056】
いくつかの態様において、ヌクレアーゼ処理工程は、約1℃、約2℃、約3℃、約4℃、約5℃、約6℃、約7℃、約8℃、約9℃、約10℃、約11℃、約12℃、約13℃、約14℃、又は約15℃で実施される。
いくつかの態様において、ヌクレアーゼ処理は、清澄化工程の直前又は直後である。
いくつかの態様において、ヌクレアーゼ処理は、精製プロトコルの最後から2番目の工程(penultimate step)である。
【0057】
いくつかの態様において、希釈工程は、レンチウイルスベクターのサンプルを、1ml当たり、約1×105、約2×105、約3×105、約4×105、約5×105、約6×105、約7×105、約8×105、約9×105、約1×106、約2×106、約3×106、約4×106、約5×106、約6×106、約7×106、約8×106、約9×106、約1×107、約2×107、約3×107、約4×107、約5×107、約6×107、約7×107、約8×107、又は約9×107感染力価単位(infectious titer units per ml)に希釈する。
いくつかの態様において、希釈工程は、レンチウイルスベクターのサンプルを、1mlあたり最大5×106感染力価単位に希釈する。
【0058】
いくつかの態様において、1つ又は複数のヌクレアーゼ処理工程の前にレトロウイルス(例えば、レンチウイルス)ベクターの量を希釈することにより、最終生成物中のレトロウイルス(例えば、レンチウイルス)ベクターの力価が増加する。
いくつかの態様において、この増加は、レトロウイルス(例えば、レンチウイルス)ベクターの力価が希釈されなかった対照精製アッセイ(control purification assay)と比較して、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約100%、少なくとも約125%、少なくとも約150%、少なくとも約175%、少なくとも約200%、少なくとも約250%、少なくとも約300%、少なくとも約350%、又は少なくとも約400%、又は最大で約400%の増加である。
【0059】
いくつかの態様において、レトロウイルス(例えば、レンチウイルス)ベクターの精製のための本明細書に記載の方法は、
(1)レトロウイルスベクターの製造に使用されたプラスミド、及び/又は
(2)レトロウイルスベクターの製造に使用された細胞から残留した不純物を除去する結果となる。
いくつかの態様において、不純物は、細胞破片、残留細胞DNA、及び/又は残留プラスミドDNAである。
いくつかの態様において、VSV-Gの存在の測定は、残留プラスミドDNAの存在の指標を提供する。
【0060】
いくつかの態様において、本明細書に記載の方法は、レトロウイルス(例えば、レンチウイルス)ベクターの精製サンプルである、改善された最終生成物を生成する。
いくつかの態様において、この改善は、ベクターを製造するために使用される細胞からの残留細胞DNAの除去である。
いくつかの態様において、この改善は、ベクターを製造するために使用される細胞にレトロウイルス核酸をシャトル(shuttle)するために使用される残留プラスミドDNAの除去である。
いくつかの態様において、残留細胞DNAは、残留核DNAである。
【0061】
いくつかの態様において、改善された最終生成物は、清澄化後のサンプル中に存在する細胞DNAの量と比較して、約0.00001%未満、約0.00005%未満、約0.0001%未満、約0.0005%未満、約0.001%未満、約0.005%未満、約0.01%未満、約0.05%未満、約0.1%未満、0.5%未満、又は約1%未満の残留細胞DNAを示す(exhibits)。
【0062】
いくつかの態様において、改善された最終生成物は、清澄化後のサンプル中に存在する残留DNAの量と比較して、約0.00001%未満、約0.00005%未満、約0.0001%未満、約0.0005%未満、約0.001%未満、約0.005%未満、約0.01%未満、約0.05%未満、約0.1%未満、約0.5%未満又は約1%の総残留DNAを示す(exhibits)。
【0063】
いくつかの態様において、清澄化後、ベクター懸濁液は、限外濾過/透析濾過を介した濃縮工程に付される。
いくつかの態様において、限外濾過/透析濾過は、精製プロセス中に1回実施され(occur)得る。
いくつかの態様において、限外濾過/透析濾過は、精製プロセス中に複数回実施され得る。限外濾過/透析濾過は、ベクター調製物から希釈剤が除去される一方で、ベクターはフィルターを通過することができず、それによってベクター調製物中に濃縮された形態で残るような方法で希釈剤をフィルターに強制的に通過させることによってベクターを濃縮するために使用される。
いくつかの態様において、限外濾過/透析濾過プロセスは、例えば、MILLIPORE catalogue entitled "Pharmaceutical Process Filtration Catalogue" pp. 177-202 (Bedford, Massachusetts, 1995/96)に記載されているように、接線流濾過(TFF)である。TFFは、バイオプロセス産業において、細胞の採取、ウイルスを含む生成物の、清澄化、精製、及び濃縮に広く使用されている。このシステムは、供給液(feed solution)、透過液(permeate)、回収液(retentate)の3つの異なるプロセスストリーム(process streams)で構成されている。用途に応じて、異なる細孔径のフィルターが使用され得る。本発明では、回収液に生成物(レトロウイルス又はレンチウイルスベクター)が含まれる。ここで、選択される特定の限外濾過膜は、ベクターを保持するのに十分小さく、不純物を効果的に除去するのに十分大きい細孔径を有する。メーカー及び膜の種類にもよるが、レトロウイルスベクターの場合、100~1000kDaの公称分子量カットオフ(cutoffs)(NMWC)が適切であり、例えば、300kDa又は50OkDaのNMWCの膜が挙げられる。
好ましい態様において、中空糸は、方法の第1又はすべてのTFF工程に使用される。
いくつかの態様において、中空糸は、すべてのTFF工程に使用される。
いくつかの態様において、分子量カットオフは、約10~約1,000kDaの間である。
いくつかの態様において、分子量カットオフは、約10kDa~約750kDa、約10~約500kDa、約10kDa~約250kDa、約10kDa~約100kDa、約100kDa~約1,000kDa、約100kDa~750kDa、約100kDa~約500kDa、約100kDa~約250kDa、約250kDa~約1,000kDa、約250kDa~約750kDa、約250kDa~約500kDa、約500kDa~約1,000kDa、約500kDa~750kDa、又は750kDa~約1,000kDaの間である。
好ましい態様において、中空糸は750kDaの中空糸である。
【0064】
いくつかの態様において、ベクターは、ベクターを濃縮するために高速遠心分離プロセスを介して精製される。
いくつかの態様において、高速遠心分離は少なくとも10,000×gより大きい。
いくつかの態様において、超遠心分離はベクターを精製するために利用される。
いくつかの態様において、ベクターは、スクロース、イオジキサノール(iodixanol)等の勾配調製物を通して精製される。
いくつかの態様において、ベクターは、ポリエチレングリコール(PEG)又はLENTI-X CONCENTRATOR等の、ベクターを濃縮することができる1つ若しくは複数の溶液又は化合物に供される。
いくつかの態様において、1つ若しくは複数の濃縮溶液又は化合物に供されたベクターは、遠心分離されベクターは、ペレット化される。
いくつかの態様では、ペレットを緩衝液に再懸濁され、こうしてベクター懸濁液が製造される。
【0065】
いくつかの態様において、ウイルスベクター精製プロセスは、カラム精製工程を含む。カラム精製工程は、カラムクロマトグラフィーを含んでよい。この工程は、当技術分野で知られているように、ウイルスベクター粒子のさらなる精製のために、ベクター粒子を細胞破片及び他の汚染物質から分離させる。
いくつかの態様において、この工程は、イオン交換カラム精製、例えば、陰イオン交換又は陽イオン交換であり得る。
いくつかの態様において、カラムクロマトグラフィーは、サイズ排除クロマトグラフィーであり得る。
いくつかの態様において、カラムクロマトグラフィーは、アフィニティークロマトグラフィーであり得る。
いくつかの態様において、カラムクロマトグラフィーは、固定化金属イオンアフィニティークロマトグラフィーであり得る。
いくつかの態様において、カラムクロマトグラフィーは、1つ又は複数のクロマトグラフィー戦略(strategy)を含み得る。
いくつかの態様において、クロマトグラフィーは、オープン(open)クロマトグラフィーシステムで実施される。
いくつかの態様において、クロマトグラフィーは、閉鎖型(closed)クロマトグラフィーシステムにおいて実施される。
【0066】
いくつかの態様において、本開示の方法は、イオン交換クロマトグラフィーを利用しない。
いくつかの態様において、本開示の方法は、陰イオン交換クロマトグラフィーを利用しない。
いくつかの態様において、レンチウイルスベクターを精製するための本開示の方法は、イオン交換クロマトグラフィー又は陰イオン交換クロマトグラフィーを利用しない。
【0067】
上記のような工程の何れか又はすべてを進め、ベクターはフィルター滅菌される。フィルター滅菌は、製薬グレードの材料のための一般的なプロセスであり、当業者に公知である。フィルター滅菌は、ウイルスベクター調製物中に残存する汚染物質を除去する。フィルター滅菌後の汚染物質のレベルは、ベクター調製物が臨床使用であるようにする必要がある。
いくつかの態様において、フィルター滅菌は、無菌条件下で実施される。好適なフィルターは、当業者によく知られている。
いくつかの態様において、滅菌フィルターは、0.22μmの細孔径を有する。
【0068】
いくつかの態様において、レンチウイルスベクター調製物は、フィルター滅菌後、限外濾過/透析濾過の前に、クロマトグラフィーを介して精製される。潜在的な汚染事象(events)を低減するために、クロマトグラフィーは、好ましくは、閉鎖型システムプロセスを使用して実施される。
いくつかの態様において、クロマトグラフィーは、イオン交換クロマトグラフィー、マルチモーダルクロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、及びアフィニティークロマトグラフィーから選択される。
いくつかの態様において、クロマトグラフィーは、各繰り返しについて同じタイプのクロマトグラフィー、又は繰り返しの少なくとも1つについて異なるタイプのクロマトグラフィーで2回以上繰り返されてもよい。
【0069】
V.ターゲット細胞
いくつかの態様において、本発明のウイルスベクターは、標的細胞を修飾するために使用され得る。
いくつかの態様において、ウイルスベクターは、免疫細胞又は免疫細胞の集団に目的の導入遺伝子又は核酸配列を導入し得る。
いくつかの態様において、目的の導入遺伝子又は核酸配列は、外因性抗原受容体をコードする。
いくつかの態様において、外因性抗原受容体は、キメラ抗原受容体(CAR)又はT細胞受容体(TCR)である。
いくつかの態様において、細胞は哺乳動物細胞である。
いくつかの態様において、哺乳動物細胞は、免疫細胞又はその前駆体細胞であってよい。
いくつかの態様において、免疫細胞又はその前駆体細胞は、T細胞であってもよい。
いくつかの態様において、T細胞は、細胞傷害性T細胞、制御性T細胞、NKT細胞であり得る。
例示的な態様では、T細胞は、CD8+T細胞及び/又はCD4+T細胞である。
【0070】
いくつかの態様において、免疫細胞又は免疫細胞の集団は、患者からのアフェレーシス(apheresis)サンプルから採取される(harvested)。
いくつかの態様において、アフェレーシスサンプルは、免疫細胞又は免疫細胞の集団を採取する前に凍結保存される。
いくつかの態様において、アフェレーシスサンプルは、凍結保存されていない患者からの新鮮なアフェレーシスサンプルである。
いくつかの態様において、免疫細胞又は免疫細胞の集団は、濃縮工程(enrichment step)を含むプロセス又はプロトコルの間にアフェレーシスサンプルから得られる。
いくつかの態様において、修飾された細胞は、自己細胞である。
いくつかの態様において、修飾された細胞は同種異系細胞(allogeneic cell)である。
【0071】
いくつかの態様において、本発明のウイルスベクターによって修飾された免疫細胞又は免疫細胞の集団は、疾患(disease)又は障害(disorder)を治療、予防、又は改善(ameliorate)するために使用することができる。
いくつかの態様において、疾患又は障害は、癌、良性及び悪性腫瘍の成長、転移、血管新生を含む悪性疾患(malignancy disorders)、関節炎、関節リウマチ、アレルギー反応、喘息、全身性エリテマトーデスを含む自己免疫疾患、を含み得るが、これらに限定されるものではない。
【0072】
VI.医薬組成物
本発明の医薬組成物は、1つ若しくは複数の薬学的又は生理学的に許容される担体、希釈剤、アジュバント又は賦形剤と組み合わせて、本明細書に記載の遺伝子修飾免疫細胞を含んでよい。そのような組成物は、中性緩衝生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水等の緩衝剤;グルコース、マンノース、スクロース、又はデキストラン等の炭水化物、マンニトール;タンパク質;ポリペプチド又はグリシン等のアミノ酸、抗酸化剤;EDTA又はグルタチオン等のキレート剤;アジュバント(例えば水酸化アルミニウム);及び防腐剤からなる場合がある。
いくつかの態様において、本発明の組成物は、好ましくは静脈内投与のために処方される。
いくつかの態様において、レトロウイルス(例えば、レンチウイルス)ベクターを含む医薬組成物は、患者への投与に適している。
いくつかの態様において、レトロウイルス(例えば、レンチウイルス)ベクターを含む医薬組成物は、患者に投与される、細胞への投与に適している。
【0073】
VII.定義
以下の用語は、当業者によってよく理解されると考えられるが、現在開示されている主題の説明を容易にするために、以下の定義が定められている。
【0074】
用語「a」又は「an」は、その実体(entity)の1つ又は複数(one or more)を指すことができ、すなわち、複数の参照語(plural referents)を指すことができる。そのため、用語「a」又は「an」、「1つ又は複数(one or more)」、及び「少なくとも1つ(at least one)」は、本明細書において交換可能に使用される。さらに、不定冠詞「a」又は「an」による「ある要素」への言及は、文脈上、要素のうちの1つだけが存在することを明確に要求しない限り、要素のうちの2つ以上が存在する可能性を除外しない。
【0075】
本明細書全体を通して「一実施形態(one embodiment)」、「一実施形態(an embodiment)」、「一態様(one aspect)」、又は「一態様(an aspect)」への言及は、実施形態に関連して説明される特定の特徴(feature)、構造(structure)、又は特性(characteristic)が本開示の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書を通じて様々な場所で「一実施形態において(one embodiment)」又は「一実施形態において(an embodiment)」という表現が現れるのは、必ずしもすべてが同じ実施形態を指しているわけではない。さらに、特定の特徴、構造、又は特性は、1つ又は複数の実施形態において任意の適切な方法で組み合わせることができる。
【0076】
本明細書で使用される場合、数値に先行する場合の「約(about)」又は「約(approximately)」という用語は、その値の10%の範囲をプラス又はマイナスする値を示す。
【0077】
当業者には理解されるであろうが、あらゆる目的、特に書面による説明を提供するという点で、本明細書に開示されるすべての範囲は、あらゆる可能なサブレンジ(subranges)及びそのサブレンジの組み合わせも包含している。任意の列挙された範囲は、同じ範囲が少なくとも等しい半分(equal halves)、3分の1、4分の1、5分の1、10分の1等に分解されることを十分に説明し、可能にすると容易に認識することができる。非限定的な例として、本明細書で議論される各範囲は、下位3分の1、中位3分の1及び上位3分の1等に容易に分解され得る。また、当業者には理解されるであろうが、「最大(up to)」、「少なくとも(at least)」、「より大きい(greater than)」、「より小さい(less than)」等のすべての言語は、言及された数を含み、上で議論したようにサブレンジにその後分解することができる範囲を意味する。最後に、当業者によって理解されるように、範囲(range)は、各個別の数値を含む。したがって、例えば、1~3個のセルを有するグループは、1、2、又は3個のセルを有するグループを指す。同様に、1~5個のセルを有するグループは、1、2、3、4、又は5個のセルを有するグループ等を意味する。
【0078】
本開示の様々な態様は、範囲形式(range format)で示すことができる。範囲形式での説明は、単に利便性と簡潔さのためであり、本発明の範囲に対する柔軟性のない制限として解釈されるべきではないことを理解されたい。したがって、範囲の説明は、その範囲内の個々の数値だけでなく、すべての可能なサブレンジを具体的に開示したものとみなされるべきである。例えば、1から6までの範囲の記述は、1から3まで、1から4まで、1から5まで、2から4まで、2から6まで、3から6までの範囲等のサブレンジと、その範囲内の個々の数値、例えば、1、2、2.7、3、4、5、5.3、6を具体的に開示したとみなされるべきである。これは、範囲の広さに関係なく適用される。
【0079】
一般に、本明細書に記載の、細胞及び組織培養、分子生物学、免疫学、微生物学、遺伝学、並びにタンパク質及び核酸化学及びハイブリダイゼーションに関連して用いられる命名法は、当該技術分野において周知であり、一般的に用いられている。 本明細書で提供される方法及び技術は、一般に、特に断らない限り、当該技術分野でよく知られた従来の方法に従って、また、本明細書を通じて引用及び議論される種々の一般的及びより具体的な文献に記載されているように実施される。 酵素反応及び精製技術は、当技術分野で一般的に達成されるように、又は本明細書に記載されるように、製造者の仕様書に従って実施される。 本明細書に記載された分析化学、有機合成化学、及び医薬化学に関連して使用される命名法、並びに実験室の手順及び技術は、当技術分野でよく知られ、一般的に使用されているものである。標準的な技術は、化学合成、化学分析、医薬品の調製、製剤、及び送達、並びに患者の治療に使用される。
【0080】
本明細書で使用する「対照(control)」は、比較の目的で実験に使用される代替サンプル(alternative sample)である。対照は、「陽性(positive)」又は「陰性(negative)」であり得る。本明細書で使用される「対照サンプル(control sample)」又は「参照サンプル(reference sample)」は、実験サンプルと比較するための対照として機能するサンプル又は参照物(reference)を指す。例えば、実験サンプルは、バイアル内の化合物A、B、及びCを含み、対照は、実験サンプルと同じように処理されるが、化合物A、B、又はCの1つ又は複数を欠いている同じタイプのサンプルであってよい。
【0081】
本開示は、ウイルスベクターの製造及び精製のための新規な方法及び組成物を提供する。
特定の態様において、本明細書で提供されるレンチウイルスベクター製剤を製造する方法は、フィルター滅菌されたレンチウイルスベクター製剤をヌクレアーゼで処理する工程、ヌクレアーゼ処理レンチウイルスベクター製剤を濃縮してレンチウイルスベクター製剤を製造する工程を含み、ここで濃縮工程は当該方法における最終工程である。
特定の態様において、本明細書で提供される、レンチウイルスベクター製剤を製造する方法は、時系列順に以下の工程を含む:
(i)レンチウイルスベクターを産生する細胞を培養する工程、
(ii)前記レンチウイルスベクターを含む上清を回収する工程、
(iii)前記上清を清澄化する工程、
(iv)前記清澄化上清を濃縮する工程(濃縮上清を製剤緩衝液に交換することを含む)、
(v)前記濃縮上清からレンチウイルスベクターを精製してレンチウイルスベクター調製物を製造する工程、
(vii)フィルター滅菌したレンチウイルスベクター調製物をヌクレアーゼで処理する工程、及び、
(viii)前記ヌクレアーゼ処理レンチウイルスベクター調製物を濃縮して最終生成物を製造する工程。
【0082】
さらに、本明細書に記載される実験は、特に指示しない限り、当業者の範囲内で従来の分子及び細胞生物学的並びに免疫学的技術を使用する。このような技術は、当業者によく知られており、文献で十分に説明されている。 例えば、Ausubel, et al., ed., Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, Inc., NY, N.Y. (1987-2008), including all supplements, Molecular Cloning、 A Laboratory Manual (Fourth Edition) by MR Green and J. Sambrook and Harlow et al., Antibodies、A Laboratory Manual, Chapter 14, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor (2013, 2nd edition)が挙げられる。
【0083】
本明細書中で使用される場合、用語「ポリヌクレオチド」は、ヌクレオチドの鎖として定義される。さらに、核酸はヌクレオチドの重合体である。したがって、本明細書で使用される核酸及びポリヌクレオチドは、互換性(interchangeable)がある。当業者は、核酸がポリヌクレオチドであり、これは加水分解されてモノマー「ヌクレオチド」(monomeric “nucleotides”)になることができるという一般的な知識を有している。モノマーヌクレオチドは、ヌクレオシドに加水分解されることができる。ポリヌクレオチドは、限定されないが、組換え手段、すなわち、通常のクローニング技術及びポリメラーゼ連鎖反応等を用いた、組換えライブラリー又は細胞ゲノムからの核酸配列のクローニング、及び合成手段によって得られる、当技術分野で利用可能なあらゆる手段によって得られる全ての核酸配列を含む。
【0084】
本明細書中で使用される場合、「ペプチド」、「ポリペプチド」、「タンパク質」という用語は互換的に使用され、ペプチド結合によって共有結合されたアミノ酸残基からなる化合物を指す。タンパク質又はペプチドは、少なくとも2つのアミノ酸を含む必要があり、タンパク質又はペプチドの配列を構成することができるアミノ酸の最大数は制限されない。ポリペプチドは、ペプチド結合によって互いに結合した2つ以上のアミノ酸からなる任意のペプチド又はタンパク質を含む。本明細書で使用される場合、この用語は、例えば、一般にペプチド、オリゴペプチド及びオリゴマーとも当技術分野で呼ばれる短い鎖と、一般にタンパク質と当技術分野で呼ばれる長い鎖の両方を指し、その中には多くの種類が存在する。「ポリペプチド」には、例えば、生物学的に活性な断片、実質的に相同なポリペプチド、オリゴペプチド、ホモダイマー、ヘテロダイマー、ポリペプチドの変種、修飾ポリペプチド、誘導体、アナログ(analogs)、融合タンパク質、等が挙げられる。ポリペプチドは、天然ペプチド、組換えペプチド、合成ペプチド、又はそれらの組合せを含む。
【0085】
本明細書で使用される場合、「組成物(composition)」という用語は、指定された成分(例えば、本明細書で提供するウイルスベクター)を、任意に、指定された量で含む生成物、並びに、指定された成分を、任意に、指定された量で組み合わせることによって、直接的又は間接的に生じる任意の生成物を包含することを意図している。
【0086】
本明細書で使用される場合、「ベクター」という用語は、単離核酸を含み、単離核酸を細胞の内部に送達するために使用することができる物質組成物(composition of matter)をいう。線状ポリヌクレオチド、イオン性又は両親媒性化合物に関連するポリヌクレオチド、プラスミド、及びウイルスを含むが、これらに限定されない多数のベクターが当技術分野で知られている。したがって、「ベクター」という用語は、自律的に複製するプラスミド又はウイルスを含む。この用語はまた、例えば、ポリリジン化合物、リポソーム等のような、細胞への核酸の移動(transfer)を容易にする非プラスミド及び非ウイルス化合物を含むように解釈されるべきである。ウイルスベクターの例としては、センダイウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0087】
本明細書で使用される場合、「発現ベクター(expression vector)」という用語は、発現されるべきヌクレオチド配列に作動的に連結した発現制御配列を含む組換えポリヌクレオチドを含むベクターをいう。 発現ベクターは、発現のために十分なシス作用要素を含んでおり、発現のための他の要素は、宿主細胞又はin vitro発現システムにおいて供給され得る。 発現ベクターは、組換えポリヌクレオチドを組み込むコスミド、プラスミド(例えば、裸(naked)又はリポソームに含まれる)及びウイルス(例えば、センダイウイルス、レンチウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス、及びアデノ随伴ウイルス)等の当該分野で知られているものをすべて含む。
【0088】
本明細書で使用される場合、「発現」という用語は、そのプロモーター(promoter)によって駆動される特定のヌクレオチド配列の転写及び/又は翻訳として定義される。
【0089】
本明細書で使用される場合、「レンチウイルス」という用語は、レトロウイルス科の属を指す。レンチウイルスは、非分裂細胞に感染することができるという点で、レトロウイルスの中でもユニークである。宿主細胞のDNAに大量の遺伝情報を送り込むことができるため、最も効率的な遺伝子導入方法の1つである。HIV、SIV、及びFIVはすべてレンチウイルスの例である。レンチウイルスに由来するベクターは、in vivoで重要なレベルの遺伝子導入を達成する手段を提供する。
【0090】
本明細書で使用される場合、「レンチウイルスベクター」という用語は、レンチウイルスゲノムの少なくとも一部に由来するベクターを指し、特に、Milone et al., Mol. Ther. 17(8): 1453-1464 (2009)で提供するような自己不活性化レンチウイルスベクターを含む。 臨床で使用され得るレンチウイルスベクターの他の例としては、例えば、「LENTIVECTOR」(登録商標)遺伝子送達技術、Oxford BioMedica製、「LENTIMAX」(登録商標)ベクターシステム、Lentigen製 等が挙げられるが、これらに限定されない。非臨床タイプのレンチウイルスベクターも利用可能であり、当業者には既知であろう。
【0091】
本明細書で使用される場合、「残留核酸」という用語は、レトロウイルス(例えば、レンチウイルス)ベクターの清澄化後に本開示のサンプル中に存在する非レトロウイルス(例えば、非レンチウイルス)核酸を意味する。同様に、「残留DNA」という用語は、レトロウイルス(例えば、レンチウイルス)ベクターの清澄化後に本開示のサンプル中に存在する非レトロウイルス(例えば、非レンチウイルス)核酸を指す。残留核酸は、DNA及びRNAを指す。残留核酸は、ベクターの清澄化後に本明細書に記載のサンプルに残留する核DNA及び/又はプラスミドに対応する遺伝物質を意味する。
【0092】
特に指定しない限り、「アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列」は、互いに縮重バージョンであり、かつ同一のアミノ酸配列をコードする全てのヌクレオチド配列を含む。
「タンパク質又はRNAをコードするヌクレオチド配列」という語句は、タンパク質をコードするヌクレオチド配列が何らかのバージョンでイントロンを含む可能性がある限り、イントロンも含みうる。
【0093】
本技術は、本願に記載された特定の態様に関して限定されるものではなく、これらは本技術の個々の態様の単一の例示として意図されるものである。本技術の多くの修正及び変形は、当業者に明らかなように、その精神及び範囲から逸脱することなく行うことができる。本技術の範囲内の機能的に等価な方法及び装置は、ここに列挙したものに加えて、前述の説明から当業者には明らかであろう。そのような修正及び変形は、本技術の範囲内に入ることが意図されている。本技術は、特定の方法、試薬、化合物、組成物、又は生物学的システムに限定されないことを理解され、それらは、もちろん、変化し得る。また、本明細書で使用される用語は、特定の態様を説明する目的のみのものであり、限定することを意図するものではないことを理解されたい。
【実施例】
【0094】
・実施例1
・レトロウイルスベクターの製造と精製
HEK293T細胞を組織培養フラスコで増殖させた後、10層セルファクトリーに最長14日間入れた。14日目に、第3世代レンチウイルスベクターシステムをコードするプラスミドで細胞をトランスフェクトし、2日後、16日目にウイルスベクターを含む培養培地を回収した。
【0095】
細胞培地を清澄化した。清澄化後、最初の接線流濾過(TFF)の前に、清澄化培地をDENARASEヌクレアーゼ(c-LECTA GmbH;Leipzig, Germany)で処理して、残留する細胞ゲノムDNAを除去し、フィルターの目詰まりを防止した。
次に、ベクター含有ヌクレアーゼ処理した清澄化培地を、製剤緩衝液(トリス、塩、糖、及びほぼ中性pH)中のTFFを用いて限外濾過/透析濾過工程で濃縮した。TFFは750kDaの中空糸カラムを使用した。次に、ベクターを含む製剤緩衝液をCAPTOCORE 700樹脂(GE社)のカラムに通し、宿主細胞タンパク質、血清タンパク質、核酸、及び残留ヌクレアーゼを除去した。
次に、得られた調製物を希釈し、フィルター滅菌した後、DENARASEヌクレアーゼで2回目の処理を行った。これにより、残留する汚染DNAが効果的に除去された。次に、ベクター調製物を、最終的な限外濾過工程として750kDaの中空糸にもう一度通し、ヌクレアーゼを除去し、最終生成物を製造した。
この工程は、
図1によって示されている。
【0096】
プロセスを通して残留DNAの除去を追跡するため、方法の異なる工程(step)で定量的PCR(qPCR)を使用して、水疱性口内炎ウイルス糖タンパク質遺伝子(VSV-G)の存在を検出した。サンプルは、細胞培養上清の清澄化後、最初のTFF工程後、そして最終生成物で採取された。
図2は、ベクターの採取から最終生成物に残留するDNAが、方法終了時にはほとんど検出されないレベルまで減少していることを示す。
【0097】
特に、
図2は、水疱性口内炎ウイルス糖タンパク質(VSV-G)遺伝子を検出し定量化したqPCRアッセイの結果を示している。VSV-Gの検出は、ベクター製造プロセスにおける複数の時点で依然として存在する残留VSV-Gの量を効果的に測定するものである。残留VSV-Gの量は、一般に、ベクターの製造から残された残留プラスミド汚染物質の量を示す指標となる。以下の表1は、ベクターを製造するプロセスにおける3つの工程の後に観察される工程除去パーセントを特定する。
図2は、表1に示された「rVSV DNA 残存率」データのグラフ表示である。清澄化ハーベストサンプルは、清澄化直後に回収された。「TFF 1」サンプルは、最初の接線流濾過工程の直後に回収された。「最終生成物」サンプルは、最後の接線流濾過工程の直後に回収され、したがって、レンチウイルスベクター製造及び精製方法の最終結果がもたらされた。
【0098】
【0099】
2回目のヌクレアーゼ工程がプロセスの最後から2番目の工程であるため、TFF工程後の製剤、ひいては最終生成物にどれだけの残留ヌクレアーゼが残存するのかという疑問があった。
残留エンドヌクレアーゼの検出と定量は、MIILLIPORESIGMA BENZONASE ELISA Kit II, #1016810001 を用いて実施する。これは、BENZONASEエンドヌクレアーゼに特異的な抗体を用いた酵素結合免疫吸着(ELISA)アッセイである。
BENZONASE ELISA Kit IIの評価では、GMPグレードのDENARASEサンプルを用いてアッセイのテストを実施した。この評価では、BENZONASE特異的抗体を用いてDENARASEの複数希釈液を測定し、DENARASEの検出が確認された。
表2より、TFF工程後の残留DENARASEヌクレアーゼのレベルはほぼ検出限界以下であり、最終生成物に極微量の残留エンドヌクレアーゼが存在することがわかる。
【0100】
【0101】
・実施例2
・レンチウイルスの力価
ヒトT細胞リンパ芽球性リンパ腫細胞株SupT1を用いてレンチウイルスベクターの滴定を行い、導入遺伝子を発現しているSupT1細胞の割合をフローサイトメトリーで測定した。
【0102】
4つのサンプルを、各サンプル中のレンチウイルスの量について評価した(フローサイトメトリーによるSupT1細胞)。サンプルを清澄化し、フィルター滅菌し、レンチウイルスの単離及び精製について本明細書に記載の方法に供した。各サンプルについて、方法は、力価が1.75×10
6~4.84×10
6に及ぶように、滅菌濾過に供される前に希釈されたレンチウイルスの量によって変化された。
図3は、レンチウイルスの力価のそれぞれと、それに対応する最終収量を示している。
図3に基づいて、力価と収量との間の標準用量(力価)依存曲線が存在しないことが明らかである。その代わりに、最適な力価は~2×10
6であり、1.75×10
6の力価で最終収量がわずかに減少するようである。しかし、レンチウイルスベクターの最終収量の著しい減少は、より高い力価で起こった(例えば、
図3に描かれているように、2.55×10
6及び4.84×10
6)。
【0103】
・実施例3
・残留DNAアッセイ:
残存する水疱性口内炎ウイルス糖タンパク質遺伝子(VSV-G)の検出と定量は、VSV-Gを特異的に標的とするプライマーとプローブを用いた定量PCR(QPCR)アッセイで実施した。
表3に示す結果は、3回のラージスケール実験の要約である。
【0104】
・残留DENARASEのアッセイ:
残留エンドヌクレアーゼの検出と定量は、BENZONASEエンドヌクレアーゼに特異的な抗体を用いた酵素結合免疫吸着法(ELISA)であるMillipore Sigma BENZONASE ELISA Kit II, #1016810001を用いて実施した。
BENZONASE ELISA Kit IIの評価では、GMPグレードのDENARASEサンプルを用いてアッセイをテストした。この評価では、BENZONASE特異的抗体を用いてDENARASEの複数希釈液を測定し、DENARASEの検出が確認された。
残留DENARASEの結果を表3に示す。
【0105】
【0106】
・実施例4
・スケールアップした製造
本明細書に記載の臨床グレードのレンチウイルスベクターを製造する方法は、米国食品医薬品局によって公布された適正製造基準(GMP)条件下で臨床スケールで実施されている。臨床スケールは、7×106TU/ml~8×107TU/mlの間におけるバッチ当たり20~60人の患者投与と定義され、ここでTUはトランスダクション単位である。
【0107】
本明細書中に例示的に記載される方法は、本明細書中に具体的に開示されていない何らかの要素(any element)又は要素(elements)、制限(limitations)又は制限がない場合(limitations, not specifically)に好適に実施され得る。したがって、例えば、用語「含む(comprising)」、「含む(including)」、「含む(containing)」等は、拡大解釈され、限定されることなく読まれるものとする。さらに、本明細書で採用された用語及び表現は、説明の用語として使用されており、制限の用語ではなく、このような用語及び表現の使用において、示され、説明された特徴又はその一部の任意の等価物を排除する意図はない。請求項の開示の範囲内で様々な変更が可能であることが認識される。したがって、本開示は好ましい態様及び任意の特徴によって具体的に開示されているが、本明細書中に具体化された開示の修正及び変更は当業者に頼ることができ、このような修正及び変更は本開示の範囲内であると考えられることが理解されるべきである。
【0108】
本開示は、本明細書において広範かつ一般的に説明されている。一般的な開示に該当する狭義の種及び亜属の各グループもまた、方法の一部を形成する。これは、切除された材料が本明細書に具体的に記載されているか否かにかかわらず、属から任意の主題を削除する但し書き又は否定的な限定を伴う方法の一般的記載を含む。本技術は、本願に記載された特定の態様に関して限定されるものではなく、これらは本技術の個々の態様の単一の例示として意図されるものである。本技術の多くの修正及び変形は、当業者に明らかなように、その精神及び範囲から逸脱することなく行うことができる。本技術の範囲内の機能的に等価な方法及び装置は、ここに列挙したものに加えて、前述の説明から当業者には明らかであろう。そのような修正及び変形は、本技術の範囲内に入ることが意図されている。本技術は、特定の方法、試薬、化合物、組成物、又は生物学的システムに限定されないことを理解され、それらは、もちろん、変化し得る。また、本明細書で使用される用語は、特定の態様を説明する目的のみのものであり、限定することを意図するものではないことを理解されたい。
【0109】
当業者は、本開示が、目的を遂行し、言及された目的及び利点、並びにそこに固有のものを得るためによく適合していることを容易に理解する。そこでの修正及び他の使用は、当業者に生じるであろう。これらの修正は、本開示の精神内に包含され、本開示の非限定的な側面を規定する特許請求の範囲によって定義されるものである。
【0110】
さらに、開示の特徴又は態様がマーカッシュグループに関して記載されている場合、当業者は、開示がそれによってマーカッシュグループのメンバーの何れかの個々のメンバー又はサブグループに関しても記載されることを認識するであろう。
【0111】
本書に引用されたすべての参考文献、論文(articles)、刊行物、特許、特許公報、及び特許出願は、全ての目的のためにその全体が参照により組み込まれる。
【0112】
しかし、本明細書に引用される参考文献、論文、刊行物、特許、特許公開、及び特許出願の記載は、それらが有効な先行技術を構成する、又は世界中の何れかの国における技術常識の一部を構成するという承認(an acknowledgment)又は何らかの形式の示唆とはみなされず、またみなされるべきではない。
【国際調査報告】