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特表2023-537980メチルCPG結合タンパク質2(MECP2)プロモータ配列を含む核酸構築体を用いた遺伝子治療
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-06
(54)【発明の名称】メチルCPG結合タンパク質2(MECP2)プロモータ配列を含む核酸構築体を用いた遺伝子治療
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/12 20060101AFI20230830BHJP
   C12N 15/85 20060101ALI20230830BHJP
   C12N 15/86 20060101ALI20230830BHJP
   C12N 15/864 20060101ALI20230830BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230830BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20230830BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20230830BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20230830BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20230830BHJP
【FI】
C12N15/12 ZNA
C12N15/85 Z
C12N15/86 Z
C12N15/864 100Z
C12N5/10
A61K48/00
A61P25/00
A61P25/28
A61K35/76
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023509770
(86)(22)【出願日】2021-08-11
(85)【翻訳文提出日】2023-04-07
(86)【国際出願番号】 EP2021072365
(87)【国際公開番号】W WO2022034130
(87)【国際公開日】2022-02-17
(31)【優先権主張番号】63/064,431
(32)【優先日】2020-08-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514232085
【氏名又は名称】ユーシービー バイオファルマ エスアールエル
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ダラル、ニキタ
(72)【発明者】
【氏名】カバディ、アミ
(72)【発明者】
【氏名】パテル、トシャル、ロヒット
(72)【発明者】
【氏名】ダウニー、パトリック、マーク
(72)【発明者】
【氏名】シュリバスタバ、アムールヤ、ニディ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA44
4C084AA13
4C084NA14
4C084ZA02
4C084ZA15
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
4C087BB65
4C087BC83
4C087CA12
4C087NA14
4C087ZA15
(57)【要約】
本発明は、メチルCpG結合タンパク質2(MeCP2)プロモータ配列を含む核酸構築体に関する。本発明はさらに、前記核酸構築体を含むベクター、ウイルスベクター、宿主細胞、及び医薬組成物に関する。本発明はまた、前記核酸構築体、ベクター、ウイルスベクター、及び医薬組成物の治療的使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プログラニュリン(PGRN)タンパク質をコードするヌクレオチド配列に作動可能に連結されたメチルCpG結合タンパク質2(MeCP2)プロモータを含む、核酸構築体。
【請求項2】
MeCP2プロモータが、最小プロモータ配列及び少なくとも1つのイントロンを含む操作されたMeCP2プロモータである、請求項1に記載の核酸構築体。
【請求項3】
注目するタンパク質(POI)をコードするヌクレオチド配列に作動可能に連結された操作されたメチルCpG結合タンパク質2(MeCP2)プロモータを含む核酸構築体であって、前記操作されたMeCP2プロモータが、最小プロモータ配列及び少なくとも1つのイントロンを含む、核酸構築体。
【請求項4】
POIがプログラニュリン(PGRN)タンパク質である、請求項3に記載の核酸構築体。
【請求項5】
(a)少なくとも1つのイントロンが、最小プロモータ配列の3’側にあり;又は(b)少なくとも1つのイントロンが、最小プロモータ配列の5’側にある、請求項2~4のいずれかに記載の核酸構築体。
【請求項6】
少なくとも1つのイントロンが、合成イントロンである、請求項2~5のいずれかに記載の核酸構築体。
【請求項7】
少なくとも1つの合成イントロンが、MECP2遺伝子の1つ以上のヌクレオチド配列を含み、少なくとも1つの合成イントロンが、MECP2遺伝子の1つ以上のイントロン配列及び/又はMECP2遺伝子の1つ以上の非発現エクソン配列を含んでよく、好ましくは、前記MECP2遺伝子が、マウス又はヒトMECP2遺伝子であり、より好ましくは、前記MECP2遺伝子がマウスMECP2遺伝子である、請求項6に記載の核酸構築体。
【請求項8】
少なくとも1つの合成イントロンが、マウスMECP2遺伝子の2つのイントロン配列、及びマウスMECP2遺伝子の2つの非発現エクソン配列を含む、請求項6又は7に記載の核酸構築体。
【請求項9】
少なくとも1つの合成イントロンが以下を含む、請求項6~8のいずれかに記載の核酸構築体:
(a)配列番号4のヌクレオチド配列、もしくは配列番号4に対して少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む非発現エクソン配列;
(b)配列番号5のヌクレオチド配列、もしくは配列番号5のヌクレオチド配列に対して少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列を含むイントロン配列;
(c)配列番号6のヌクレオチド配列、もしくは配列番号6のヌクレオチド配列に対して少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列を含むイントロン配列;及び/又は
(d)配列番号7のヌクレオチド配列、もしくは配列番号7のヌクレオチド配列に対して少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む非発現エクソン配列。
【請求項10】
5’から3’方向に、少なくとも1つの合成イントロンが以下を含む、請求項6~9のいずれかに記載の核酸構築体:
(a)配列番号4のヌクレオチド配列、又は配列番号4のヌクレオチド配列に対して少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む非発現エクソン配列;
(b)配列番号5のヌクレオチド配列、又は配列番号5のヌクレオチド配列に対して少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列を含むイントロン配列;
(c)配列番号6のヌクレオチド配列、又は配列番号6のヌクレオチド配列に対して少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列を含むイントロン配列;及び
(d)配列番号7のヌクレオチド配列、又は配列番号7のヌクレオチド配列に対して少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む非発現エクソン配列。
【請求項11】
少なくとも1つの合成イントロンが、配列番号2のヌクレオチド配列、又は配列番号2のヌクレオチド配列に対して少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む、請求項6~10のいずれかに記載の核酸構築体。
【請求項12】
少なくとも1つのイントロンが、天然イントロンである、請求項2~5のいずれかに記載の核酸構築体。
【請求項13】
少なくとも1つの天然イントロンが、MECP2遺伝子、好ましくはマウス又はヒトMECP2遺伝子のヌクレオチド配列を含む、請求項12に記載の核酸構築体。
【請求項14】
少なくとも1つの天然イントロンが、マウスMECP2遺伝子のヌクレオチド配列を含む、請求項13に記載の核酸構築体。
【請求項15】
少なくとも1つの天然イントロンが、配列番号9のヌクレオチド配列、又は配列番号9のヌクレオチド配列に対して少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む、請求項14に記載の核酸構築体。
【請求項16】
最小プロモータ配列が、配列番号1のヌクレオチド配列、又は配列番号1のヌクレオチド配列に対して少なくとも90%の同一性を有するその機能的バリアントもしくは断片を含む、請求項2~15のいずれかに記載の核酸構築体。
【請求項17】
操作されたMeCP2プロモータが、配列番号3のヌクレオチド配列、又は配列番号3のヌクレオチド配列に対して少なくとも90%の同一性を有するその機能的バリアントもしくは断片を含む、請求項1~11のいずれかに記載の核酸構築体。
【請求項18】
操作されたMeCP2プロモータが、配列番号8のヌクレオチド配列、又は配列番号8のヌクレオチド配列に対して少なくとも90%の同一性を有するその機能的バリアントもしくは断片を含む、請求項1~5及び12~15のいずれかに記載の核酸構築体。
【請求項19】
MeCP2プロモータが、少なくとも約1000bp、1500bp、2000bp、2100bp、2150bp、2175bp、2200bp、2210bp、2220bp、2230bp、2240bp、2250bp、2260bp、2280bp、2290bp、2300bp、2310bp、2320bp、2330bpの長さであり、好ましくはMeCP2プロモータが約2200~2350bpの長さである、請求項1~18のいずれかに記載の核酸配列。
【請求項20】
以下である、請求項1、2、及び4~19のいずれかに記載の核酸構築体:
(a)PGRNタンパク質がヒトPGRNタンパク質である;
(b)PGRNタンパク質が野生型タンパク質である;
(c)PGRNタンパク質をコードするヌクレオチド配列が、ヒトヌクレオチド配列である;
(d)PGRNタンパク質をコードするヌクレオチド配列が、野生型ヌクレオチド配列である;
(e)PGNタンパク質をコードするヌクレオチド配列が、コドン最適化されていない;及び/又は
(f)PGRNタンパク質をコードするヌクレオチド配列が、少なくとも約1600bp、1700bp、1750bp、1760bp、1770bp、もしくは1780bpであり、好ましくは、PGRNタンパク質をコードするヌクレオチド配列が、約1780bpの長さである。
【請求項21】
PGRNタンパク質をコードするヌクレオチド配列が、配列番号12のヌクレオチド配列であるか、又は配列番号12のヌクレオチド配列と少なくとも70%の同一性を有するその機能的バリアントもしくは断片を含む;及び/又は
PGRNタンパク質が、配列番号13のアミノ酸配列であるか、又は配列番号13のアミノ酸配列に対して少なくとも70%の同一性を有するその機能的バリアントもしくは断片を含む、
請求項1、2、及び4~20のいずれかに記載の核酸構築体。
【請求項22】
さらに以下を含む、請求項1~21のいずれかに記載の核酸構築体:
(a)ウッドチャック肝炎ウイルス(WHP)転写後調節エレメント(WPRE)配列であって、WPREが、POIもしくはPGRNタンパク質をコードするヌクレオチド配列の3’側にある、及び/又は配列番号15のヌクレオチド配列、もしくは配列番号15のヌクレオチド配列に対して少なくとも90%の同一性を有するその機能的バリアントもしくは断片を含んでよい、WPRE配列;
(b)ポリアデニル化シグナル配列、ただし、以下であってよい:
POI又はPGRNタンパク質をコードするヌクレオチド配列の3’側にあり、及び/又は配列番号16のヌクレオチド配列、又は配列番号16のヌクレオチド配列に対して少なくとも90%の同一性を有するその機能的バリアントもしくは断片を含むポリアデニル化シグナル配列;あるいは
(c)前記(a)及び前記(b)、

5’から3’方向に、MeCP2プロモータ、POI又はPGRNタンパク質をコードするヌクレオチド配列、前記WPRE、及び前記ポリアデニル化シグナル配列を含んでよい。
【請求項23】
3700~4700bp、3800~4800bp、3900~4700bp、4000~4600bp、4000~4500bp、4000~4400bp、4000~4300bp、又は4000~4200bpである、請求項1~22のいずれかに記載の核酸構築体。
【請求項24】
請求項1~23のいずれかに記載の核酸構築体を含むベクター。
【請求項25】
プラスミド又はウイルスベクターである、請求項24に記載のベクター。
【請求項26】
(a)配列番号11、又は配列番号11のヌクレオチド配列に対して少なくとも70%の同一性を有するその機能的バリアントもしくは断片;
(b)配列番号10、又は配列番号10のヌクレオチド配列に対して少なくとも70%の同一性を有するその機能的バリアントもしくは断片
のヌクレオチド配列を含むウイルスベクターである、請求項24又は25に記載のベクター。
【請求項27】
ウイルスベクターであり、以下から選択される、請求項24~26のいずれかに記載のベクター:
(a)アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、又は、
AAVゲノムもしくはその誘導体を含むウイルスベクター、ただし該誘導体はキメラ、シャッフルもしくはキャプシド修飾誘導体であってよい;又は
(b)レンチウイルスベクター、又は、
レンチウイルスゲノムもしくはその誘導体を含むウイルスベクター。
【請求項28】
AAV血清型2(AAV2)、AAV血清型3(AAV3)、AAV血清型4(AAV4)、AAV血清型5(AAV5)、AAV血清型6(AAV6)、AAV血清型7(AAV7)、AAV血清型8(AAV8)、AAV血清型9(AAV9)、又はAAV血清型rh10(AAVrh10)に由来するゲノムを含むAAVベクターであり、好ましくは、AAVが、AAV2、AAV9、又はAAVrH10に由来するゲノムを含む、請求項27に記載のウイルスベクター。
【請求項29】
AAVベクターが、AAV2に由来するゲノムを含み、好ましくは、AAVがAAV-TTである、請求項28に記載のAAVベクター。
【請求項30】
AAVベクターが、5’から3’方向に:
(a)5’ITR;
(b)5’隣接断片;
(c)最小MeCP2プロモータ配列;
(d)少なくとも1つの合成イントロン;
(e)Kozak配列;
(f)PGRNタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列;
(g)SV40ポリ(A)配列;
(h)3’隣接断片;及び
(i)3’ITR
の1つ又は2つ以上を含むヌクレオチド配列を含む、請求項28又は29に記載のAAVベクター。
【請求項31】
以下である、 請求項30に記載のAAVベクター:
(a)5’ITRが、配列番号20のヌクレオチド配列、又は配列番号20と少なくとも70%の同一性を有するその機能的バリアントもしくは断片を含むか、又はそれからなる;
(b)5’隣接断片が、配列番号21のヌクレオチド配列、又は配列番号21と少なくとも70%の同一性を有するその機能的バリアントもしくは断片を含むか、又はそれからなる;
(c)最小MeCP2プロモータ配列が、配列番号1のヌクレオチド配列、又は配列番号1に対して少なくとも70%の同一性を有するその機能的バリアントもしくは断片を含むか、又はそれからなる;
(d)少なくとも1つの合成イントロンが、配列番号2のヌクレオチド配列、又は配列番号2に対して少なくとも70%の同一性を有するその機能的バリアントもしくは断片を含むか、又はそれからなる;
(e)Kozak配列が、配列番号24のヌクレオチド配列を含むか、又はそれからなる;
(f)PGRNタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列が、配列番号12のヌクレオチド配列、又は配列番号12に対して少なくとも70%の同一性を有するその機能的バリアントもしくは断片を含むか、又はそれからなる;
(g)SV40ポリ(A)配列が、配列番号16のヌクレオチド配列、又は配列番号16に対して少なくとも70%の同一性を有するその機能的バリアントもしくは断片を含むか、又はそれからなる;
(h)3’隣接断片が、配列番号22のヌクレオチド配列、又は配列番号22に対して少なくとも70%の同一性を有するその機能的バリアントもしくは断片を含むか、又はそれからなる;及び/又は
(i)3’ITRが、配列番号23のヌクレオチド配列、又は配列番号23に対して少なくとも70%の同一性を有するその機能的バリアントもしくは断片を含むか、又はそれからなる。
【請求項32】
AAVベクターが、配列番号17のヌクレオチド配列、又は配列番号17のヌクレオチド配列に対して少なくとも70%の同一性を有するその機能的バリアントもしくは断片を含む、請求項29~31のいずれかに記載のAAVベクター。
【請求項33】
AAVベクターが:
(a)配列番号18、又は配列番号18のヌクレオチド配列に対して少なくとも70%の同一性を有するその機能的バリアントもしくは断片;あるいは
(b)配列番号19、又は配列番号19のヌクレオチド配列に対して少なくとも70%の同一性を有するその機能的バリアントもしくは断片
のヌクレオチド配列を含むか、又はそれからなる、請求項29~32のいずれかに記載のAAVベクター。
【請求項34】
請求項1~23のいずれかに記載の核酸構築体及び/もしくは請求項24~33のいずれかに記載のベクターを含む、及び/又は請求項26~33のいずれかに記載のウイルスベクターを生成する、HEK293細胞又はHEK293 T細胞であってよい、宿主細胞。
【請求項35】
請求項1~23のいずれかに記載の核酸構築体、請求項24もしくは25に記載のベクター、及び/又は請求項26~33のいずれかに記載のウイルスベクターを、薬学的に許容される担体、賦形剤、又は希釈剤と共に含む医薬組成物。
【請求項36】
プログラニュリン(PGRN)欠乏によって特徴付けられる疾患の処置又は予防を必要とする患者において前記疾患を処置又は予防する方法での使用のための、請求項1~23のいずれかに記載の核酸構築体、請求項24もしくは25に記載のベクター、請求項26~33のいずれかに記載のウイルスベクター、及び/又は請求項35に記載の医薬組成物。
【請求項37】
プログラニュリン(PGRN)欠乏によって特徴付けられる疾患の処置又は予防を必要とする患者において前記疾患を処置又は予防する方法であって、前記患者に、治療有効量の、請求項1~23のいずれかに記載の核酸構築体、請求項24もしくは25に記載のベクター、請求項26~33のいずれかに記載のウイルスベクター、及び/又は請求項35に記載の医薬組成物を投与することを含む方法。
【請求項38】
請求項1~23のいずれかに記載の核酸構築体、請求項24もしくは25に記載のベクター、請求項26~33のいずれかに記載のウイルスベクター、及び/又は請求項35に記載の医薬組成物の、プログラニュリン(PGRN)欠乏によって特徴付けられる疾患の処置又は予防を必要とする患者において前記疾患を処置又は予防するための医薬品を製造するための使用。
【請求項39】
以下である、請求項36に記載の使用のための核酸構築体、ベクター、ウイルスベクターもしくは医薬組成物、請求項37に記載の方法、又は請求項38に記載の使用:
PGRN欠乏によって特徴付けられる疾患が、中枢神経系の疾患である;
PGRN欠乏によって特徴付けられる疾患が、患者のニューロン及び/又は星状細胞におけるPGRNの欠乏によって特徴付けられる;
患者が、そのGRN遺伝子の少なくとも1つの対立遺伝子内に機能喪失変異を有する;及び/又は
患者が、そのGRN遺伝子の双方の対立遺伝子内に機能喪失変異を有する。
【請求項40】
PGRN欠乏によって特徴付けられる疾患が、前頭側頭型認知症(FTD)又は神経セロイドリポフスチン症11型(NCL11)である、請求項36もしくは39に記載の使用のための核酸構築体、ベクター、ウイルスベクターもしくは医薬組成物、請求項37もしくは39に記載の方法、又は請求項38もしくは39に記載の使用。
【請求項41】
以下である、請求項36、39、もしくは40に記載の使用のための核酸構築体、ベクター、ウイルスベクターもしくは医薬組成物、請求項37、39、もしくは40に記載の方法、又は請求項38~40のいずれかに記載の使用:
前記核酸構築体、ベクター、ウイルスベクター、又は医薬組成物は、患者に、該患者の脳及び/又は脳脊髄液(CSF)への送達によって投与される、
ここで、前記送達は、注射によって以下になされてよい:
(i)患者の脳;前記脳への前記注射は、好ましくは脳内注射、実質内注射、視床下部内注射、及びそれらの組合せから選択される;及び/又は
(ii)患者のCSF;前記CSFへの前記注射は、好ましくは大槽内注射、髄腔内注射、脳室内(ICV)注射、及びそれらの組合せから選択される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メチルCpG結合タンパク質2(MeCP2)プロモータ配列を含む核酸構築体に関する。本発明はさらに、前記核酸構築体を含むベクター、ウイルスベクター、宿主細胞、及び医薬組成物に関する。本発明はまた、前記核酸構築体、ベクター、ウイルスベクター、及び医薬組成物の治療的使用に関する。
【背景技術】
【0002】
前頭側頭型認知症(FTD)は、アルツハイマー病(Olney et al.Neurol.Clin.2017 May;35(2):339-374)に続いて2番目に一般的なタイプの認知症である。タンパク質プログラニュリン(PGRN)をコードするGRN遺伝子の1つの対立遺伝子内の変異が、FTDの発症と関連する(Baker et al.,Nature.2006 Aug 24;442(7105):916-919)。GRN内のホモ接合変異は、神経セロイドリポフスチン症11(NCL11)と関連し、これは、小脳性運動失調、発作、色素性網膜炎、及び認知障害によって特徴付けられ、通常は13歳~25歳の間に始まる(Faber et al.Brain.2020;143(1):303-31)。
【0003】
種々の変異が、PGRNの機能の喪失を引き起こし得る。PGRN欠損マウスモデルにおいて、AAV遺伝子治療アプローチを用いてPGRNのニューロン発現を駆動することにより、FTDと関連する行動障害が修正されることが示されている(Arrant et al.Brain.2017;140.5:1447-1465)。ゆえに、中枢神経系(CNS)の組織及び細胞におけるPGRNのレベルを増大させて、PGRN欠乏と関連する神経疾患を処置する治療アプローチについて、強い生物学的根拠がある。
【0004】
アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターは、臨床障害を処置するための分子治療薬を送達するのに一般的に用いられるビヒクルである。多くのAAVベースの治療が、遺伝子置換療法である。しかしながら、ロバストなAAV生成及び導入遺伝子発現を実現するために、注目する導入遺伝子を含むAAV構築体は、AAVの最適なパッケージングを可能にするために4.1kb~4.7kbであるべきである。いわゆる「スタッファー配列」又は不活性DNAが、導入遺伝子又はベクター骨格に加えられて、構築体の全長を延ばすことができる。しかしながら、ベクターは、スタッファー配列に感受性であるので、導入遺伝子発現、患者の免疫応答、及びAAVパッケージング効率に悪影響を及ぼさないように慎重に選択しなければならない。全長をAAV構築体中に組み込む別のアプローチは、導入遺伝子配列自体を改変するものである。しかしながら、このアプローチは、天然の(野生型)導入遺伝子ヌクレオチド配列を用いることが望ましい場合には、適切でない場合がある。
【0005】
AAV構築体の全長を延ばすための更なるアプローチは、操作された(engineered)プロモータ配列を含めることによるものである。そのようなプロモータは、適切なインビボ導入遺伝子発現レベルを確実にするように慎重に選択されなければならない。さらに、PGRN遺伝子治療の場合のように、部位特異的な導入遺伝子発現が神経障害の処置に必要とされる場合、所望の組織又は細胞型における注目する導入遺伝子の標的発現を実現するプロモータの選択が重要である。
【0006】
典型的には、PGRNコード配列をコードするヌクレオチド配列は、約1.8kb長であり、これは、核酸構築体をAAV中にパッケージングするための最適な4.1~4.7kb長よりもかなり短い。ゆえに、ウイルスベクター構築体の長さを延ばすと同時に、PGRNのロバストなCNS標的発現を実現するのに用いることができるプロモータ配列が、依然として必要とされている。
【発明の概要】
【0007】
メチル-CpG結合タンパク質2(MeCP2)遺伝子に由来するプロモータは、遺伝子治療の場において、PGRNのCNS標的発現を駆動するのに非常に有効であることが見出された。そのようなプロモータは、ニューロン特異的エノラーゼ1(NSE1)遺伝子に由来するもの等の代替的なCNS特異的プロモータを含む等価なプロモータよりも高いPGRN発現及び形質導入効率を実現することが観察された。
【0008】
また、本発明者らは、2000bpを超える操作されたMeCP2プロモータを生成した。最小MeCP2プロモータ配列に加えて、当該操作されたMeCP2プロモータは、追加のイントロンを含む。当該イントロンのヌクレオチド配列は、MECP2遺伝子の天然に存在するストレッチ(天然イントロン)に由来したか、又はMECP2遺伝子に由来する異なる配列(合成イントロン)を組み合わせることによって構築した。本発明の操作されたMeCP2プロモータを含む遺伝子治療構築体は、最小プロモータを含む構築体と比較して、CNS細胞のより高い発現レベル及び/又は向上した形質導入効率を実現することが見出された。さらに、合成イントロンを含むMeCP2プロモータは、最も高い発現レベル及び形質導入効率を実現することが見出された。
【0009】
ゆえに、本発明は、プログラニュリン(PGRN)タンパク質をコードするヌクレオチド配列に作動可能に連結されたメチルCpG結合タンパク質2(MeCP2)プロモータを含む核酸構築体を提供する。
【0010】
また、本発明は、注目するタンパク質(POI)をコードするヌクレオチド配列に作動可能に連結された操作されたメチルCpG結合タンパク質2(MeCP2)プロモータを含む核酸構築体を提供し、操作されたMeCP2プロモータは、最小プロモータ配列及び少なくとも1つのイントロンを含む。
【0011】
本発明はさらに、本発明の核酸構築体を含むベクターを提供する。ベクターは、プラスミドであってもウイルスベクターであってもよい。
【0012】
本発明はさらに、本発明の核酸構築体及び/もしくは本発明のベクターを含み、及び/又は本発明のウイルスベクターを生成する宿主細胞を提供し、任意に宿主細胞は、HEK293細胞又はHEK293T細胞である。
【0013】
本発明によってさらに提供されるのは、本発明の核酸構築体、本発明のベクター、及び/又は本発明のウイルスベクターを、薬学的に許容される担体、賦形剤、又は希釈剤と一緒に含む医薬組成物である。
【0014】
また、本発明によってさらに提供されるのは、プログラニュリン(PGRN)欠乏によって特徴付けられる疾患の処置又は予防を必要とする患者において当該疾患を処置又は予防する方法に用いられる本発明の核酸構築体、本発明のベクター、本発明のウイルスベクター、及び/又は本発明の医薬組成物である。
【0015】
本発明はさらに、ログラニュリン(PGRN)欠乏によって特徴付けられる疾患の処置又は予防を必要とする患者において当該疾患を処置又は予防する方法であって、患者に、治療有効量の本発明の核酸構築体、本発明のベクター、本発明のウイルスベクター、及び/又は本発明の医薬組成物を投与することを含む方法を提供する。
【0016】
また、本発明は、本発明の核酸構築体、本発明のベクター、本発明のウイルスベクター、及び/又は本発明の医薬組成物の、プログラニュリン(PGRN)欠乏によって特徴付けられる疾患の処置又は予防を必要とする患者において当該疾患を処置又は予防するための医薬品を製造するための使用を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】A.構築体pAK169、pPG21、pPG35、及びpPG36の構成を示す概略図。MeCP2(250bp)は、最小MeCP2プロモータ配列を示す。GFPは、緑色蛍光タンパク質をコードする遺伝子を示す。5’MeCP2(2100bp)は、MeCP2(250bp)の5’側に約2100bpの天然イントロンを示す。PGRN(1800bp)は、PGRNをコードするポリヌクレオチド配列を示す。イントロン(2100bp)は、約100bpの合成イントロン配列を示す。B.プロモータ活性のウエスタンブロット分析の画像。pAK169、pPG21、pPG35、及びpPG36の各々について、PGRN発現を評価した。
図2】A.pAK168、pPG20、pPG33、及びpPG34の構成を示す概略図。NSE1(1300bp)は、最小NSE1プロモータ配列を示す。GFPは、緑色蛍光タンパク質をコードする遺伝子を示す。5’NSE1(1100bp)は、NSE1(250bp)の5’側に約1100bpの天然イントロンを示す。PGRN(1800bp)は、PGRNをコードするポリヌクレオチド配列を示す。イントロン(900bp)は、約900bpの合成イントロン配列を示す。B.プロモータ活性のウエスタンブロット分析の画像。pAK168、pPG20、pPG33、及びpPG34の各々について、PGRN発現を評価した。
図3】構築体pPG20、pPG33、pPG34、pPG21、pPG21、pPG35、及びpPG36についての、一次ニューロン及び星状細胞におけるPGRN発現の評価。A.(A)ニューロンにおける形質導入効率;(B)形質導入されたニューロンにおけるPGRN発現レベル;(C)星状細胞における形質導入効率;及び(D)形質導入された星状細胞におけるPGRN発現レベルを示す棒グラフ。
図4】一次ニューロン及び星状細胞によるPGRN分泌の評価。構築体pPG21、pPG35、pPG36、pPG20、pPG26により形質導入したニューロン-アストロサイト共培養体によって分泌されるPGRNの濃度を示す棒グラフ。また、形質導入されていない対照を示している。
図5】PGRNをコードする核酸構築体のコドン最適化。A.ELISAによって判定した、PGRNをコードするレンチウイルスベクターにより形質移入したGRN-/-HAP-1細胞についてのPGRNの発現レベルを示す棒グラフ。PGRNをコードするコドン最適化ヌクレオチド配列(CpG0、4、9、17、25、40、71、及び90と表記)を含むベクターを、PGRNをコードする野生型ヌクレオチド配列(WTと表記)を含むベクターと比較した。また、空ベクターによる対照形質移入及びWT HAP-1細胞(GRN+/+)についてのPGRN発現レベルを示す。B.PGRNをコードするコドン最適化ヌクレオチド配列(CpG25、40、71、及び90と表記)を含むレンチウイルスベクター、及びPGRNをコードする野生型ヌクレオチド配列(WTと表記)を含むベクターにより形質移入したGRN-/-HAP-1細胞におけるPGRN発現レベルのウエスタンブロット分析の画像。また、PGRN発現レベルを、空ベクター(モックと表記)による対照形質移入、非形質移入野生型GRN+/+HAP-1細胞(WTと表記)、及び非形質移入GRN-/-HAP-1細胞(KOと表記)について示す。
図6】ヒトPGRNの発現は、GRN-/-マウス一次ニューロンにおけるリソソーム欠損を修正する。A.pPG36構築体を含むレンチウイルスベクターにより形質導入したWT(GRN+/+)及びKO(GRN-/-)一次ニューロンにおけるリソソームタンパク質カテプシンDのレベルを定量するために実行したウエスタンブロット分析の画像。B.カテプシンDタンパク質(それぞれ未成熟、成熟重鎖、及び成熟軽鎖)のレベルを示す棒グラフ。カテプシンDの発現についての値を、アクチン及びGADPH発現レベルに対して正規化している。
図7】AAVTT-p1PG36の線条体注射後のWTマウス及びGRN-/-マウスにおけるヒトPGRN(hPGRN)のCNS発現のELISA分析及びFRET分析。A.ELISAによって測定した、hPGRN(ng/ml)のCSFレベル及び血漿レベルを示す棒グラフ。高レベルのhPGRNが、AAVTT-p1PG36(pPG36構築体を含むAAVTTベクター)を注射した動物において、WTマウス及びGRN-/-マウスの双方のCSF(1:100希釈)中で検出された。また、hPGRNが、マウスの血漿(1:10希釈)中で検出された。B.AAVTT-p1PG36を注射したWTマウス又はGRN-/-マウスの種々の脳領域におけるhPGRN濃度(ng/mg)のFRET測定の結果を示す棒グラフ。hPGRNの最も高い発現が、注射部位(線条体及び中脳)の近くで検出された。また、中レベルのhPGRN発現が、皮質及び海馬において検出された。低レベルのhPGRN発現が、脳幹、嗅球、及び小脳等の遠位脳領域(distant brain region)において検出された。C.AAVTT-p1PG36及びAAVTT-p2PG36のWTマウス線条体注射後にELISAによって測定したhPGRNのCSFレベル(ng/ml)を示す棒グラフ。高レベルのhPGRNが、双方のAAV構築体を注射した動物において、CSF(1:100希釈)中で検出された。
図8】AAVTT-p1PG36の線条体注射後のGRN-/-マウスにおけるヒトPGRN(hPGRN)のCNS発現のIHC分析の画像。hPGRNのIHC染色が、AAVTT-p1PG36の線条体投与を受けたGRN-/-KOマウスの脳において観察された。ビヒクル又は対照AAV-GFPを受けたマウスではシグナルが観察されなかったので、免疫反応シグナルはヒトプログラニュリンに特異的であった。高レベルのhPGRNが主に、GRN-/-KOマウスの前脳全体、特に、線条体、視床、視床下部、大脳皮質、及び海馬、ならびに中脳及び黒質において検出された。
図9】ヒトPGRN発現は、カテプシンD活性にインビボで影響を及ぼす。ビヒクルで処理したWT(GRN+/+)マウス(黒丸で示す)、及びビヒクル(黒丸)又はAAVTT-p1PG36(黒三角)で処理したGRN-/-KOマウスの中脳溶解物におけるカテプシンD酵素活性の測定を示す棒グラフ。カテプシンD酵素活性の増大が、4ヶ月齢のGRN-/-マウスにおいて観察された。AAVTT-p1PG36を注射したGRN-/-マウスにおいて、ビヒクルを注射したマウスと比較して、カテプシンD活性の低下が観察された。
図10】AAVTT-pPG36構築体(配列番号17)における構成核酸配列の構成を示す概略図。
図11】全長マウスMECP2遺伝子内のMeCP2_2イントロン(配列番号2)の構成領域の位置を示す概略図。
【0018】
配列の簡単な説明
配列番号1は、MeCP2最小プロモータのヌクレオチド配列である。
【0019】
配列番号2は、MeCP2_2イントロンのヌクレオチド配列である。
【0020】
配列番号3は、MeCP2_2プロモータのヌクレオチド配列である。
【0021】
配列番号4は、MeCP2_2イントロンのエクソン1のヌクレオチド配列である。
【0022】
配列番号5は、MeCP2_2イントロンの5’イントロンのヌクレオチド配列である。
【0023】
配列番号6は、MeCP2_2イントロンの3’イントロンのヌクレオチド配列である。
【0024】
配列番号7は、MeCP2_2イントロンのエクソン2のヌクレオチド配列である。
【0025】
配列番号8は、MeCP2_1プロモータのヌクレオチド配列である。
【0026】
配列番号9は、MeCP2_1イントロンのヌクレオチド配列である。
【0027】
配列番号10及び11は、それぞれ構築体pPG35及びpPG36のヌクレオチド配列である。
【0028】
配列番号12及び13は、それぞれヒトPGRNヌクレオチド配列及びアミノ酸配列に相当する。
【0029】
配列番号14は、Age1制限部位(5’-ACCGGT-3’)のヌクレオチド配列である。
【0030】
配列番号15は、ウッドチャック肝炎ウイルス(WHP)転写後調節エレメント(WPRE)のヌクレオチド配列である。
【0031】
配列番号16は、SV40ポリアデニル化(ポリ(A)シグナル)配列のヌクレオチド配列である。
【0032】
配列番号17は、AAVTT-pPG36構築体のヌクレオチド配列である。
【0033】
配列番号18は、AAVTT-p1PG36プラスミドのヌクレオチド配列である。
【0034】
配列番号19は、AAVTT-p2PG36プラスミドのヌクレオチド配列である。
【0035】
配列番号20は、AAVTT-pPG36構築体に用いられる5’ITRのヌクレオチド配列である。
【0036】
配列番号21は、AAVTT-pPG36構築体に用いられる5’隣接断片のヌクレオチド配列である。
【0037】
配列番号22は、AAVTT-pPG36構築体に用いられる3’隣接断片のヌクレオチド配列である。
【0038】
配列番号23は、AAVTT-pPG36構築体に用いられる3’ITRのヌクレオチド配列である。
【0039】
配列番号24は、AAVTT-pPG36構築体に用いられるKozak配列のヌクレオチド配列である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本明細書中で、上記又は下記に拘わらずに引用される刊行物、特許、及び特許出願は全て、それらの全体が参照によって組み込まれる。
【0041】
定義
本明細書及び添付の特許請求の範囲において用いられる単数形「a」、「an」、及び「the」は、内容が明らかにそうでないことを示さない限り、複数の指示対象を含む。ゆえに、例えば、「核酸(a nucleic acid)」への言及は、「複数の核酸(nucleic acids)」を含む等である。
【0042】
用語「含む」(comprise,comprising)は、当該技術分野におけるその通常の意味を有すること、すなわち、記載される特徴又は特徴の群が含まれるが、当該用語が、他の記載されるいかなる特徴も特徴の群も存在することを除外しないことが理解されるべきである。例えば、最小プロモータ配列を含むプロモータは、1つ以上のイントロン等の他の構成要素を含有してよい。また、用語「からなる(consists of)」は、当該技術分野におけるその通常の意味を有すること、すなわち、記載される特徴又は特徴の群が、更なる特徴を除外して含まれることが理解されるべきである。例えば、最小プロモータ配列からなるプロモータは、最小プロモータ配列を含有し、他の構成要素を含有しない。「含む(comprises)」又は「含む(comprising)」が用いられる全ての実施形態について、「からなる(consists of)」又は「からなる(consisting of)」が用いられる更なる実施形態が予想される。ゆえに、「含む(comprises)」の全ての開示は、「からなる(consists of)」の開示であるとみなされるべきである。
【0043】
用語「タンパク質」及び「ポリペプチド」は、本明細書中で互換的に用いられており、それらの最も広い意味において、2つ以上のサブユニットアミノ酸、アミノ酸類似体、又は他のペプチド模倣体の化合物を指す。ゆえに、用語「タンパク質」は、短いペプチド配列を、そしてより長いポリペプチドも含む。本明細書で用いられる用語「アミノ酸」は、D又はL光学異性体の双方、ならびにアミノ酸類似体及びペプチド模倣体を含む、天然及び/もしくは非天然のアミノ酸、又は合成アミノ酸を指す。
【0044】
用語「患者」及び「対象」は、本明細書中で互換的に用いられる。典型的には、患者はヒトである。
【0045】
配列相同性/同一性
また、配列相同性は、機能的類似性(すなわち、類似の化学的特性/機能を有するアミノ酸残基)に関して考慮され得るが、本文書の文脈では、配列同一性に関して相同性を表すことが好ましい。
【0046】
配列比較は、眼で見て、又はより一般的には、容易に利用可能な配列比較プログラムの助けを借りて行うことができる。これらの公的に、又は商業的に入手可能なコンピュータプログラムは、2つ以上の配列間の相同性パーセント(同一性パーセント等)を算出することができる。
【0047】
同一性パーセントを、連続配列の全体にわたって算出することができ、すなわち、一方の配列を他方の配列とアラインして、一方の配列内の各アミノ酸を、他方の配列内の対応するアミノ酸と直接、1回に1残基ずつ比較する。これは、「ギャップなし」アライメントと呼ばれる。典型的には、そのようなギャップなしアラインメントは、比較的少数の残基(例えば、50個未満の連続アミノ酸)の全体にわたってのみ実行される。より長い配列の全体にわたる比較については、ギャップスコアリングを用いて、互いに対して挿入又は欠失を有する関連配列における同一性レベルを正確に反映するのに最適なアラインメントを生成する。そのようなアライメントを実行するのに適したコンピュータプログラムとして、GCG Wisconsin Bestfitパッケージ(University of Wisconsin,U.S.A;Devereux et al.,1984,Nucleic Acids Research 12:387)がある。配列比較を実行することができる他のソフトウェアの例として、BLASTパッケージ、FASTA(Altschul et al.,1990,J.Mol.Biol.215:403-410)及びGENEWORKS比較ツール一式が挙げられるが、これらに限定されない。
【0048】
典型的には、配列比較は、参照配列の全長にわたって実行される。例えば、所与の配列が配列番号2と70%同一であるかをユーザが判定したい場合、配列番号2は参照配列である。例えば、配列が配列番号2(参照配列の例)と少なくとも90%同一であるかを評価するために、当業者であれば、配列番号2の全長にわたってアラインメントを実行して、試験配列内のいくつの位置が、配列番号2の位置と同一であったかを特定するであろう。位置の少なくとも70%が同一であれば、試験配列は、配列番号2と少なくとも70%同一である。配列が配列番号27よりも短ければ、ギャップ又は欠落位置は、非同一の位置であるとみなされるべきである。
【0049】
当業者であれば、2つの配列間の相同性又は同一性を判定するのに利用可能な様々なコンピュータプログラムを認識している。例えば、2つの配列間の配列の比較及び同一性パーセントの判定は、数学的アルゴリズムを用いて達成することができる。一実施形態において、2つのアミノ酸又は核酸配列間の同一性パーセントは、Blosum 62マトリックス又はPAM 250マトリックスのいずれか、そして16、14、12、10、8、6、又は4のギャップ重み、及び1、2、3、4、5、又は6の長さ重みを用いる、Accelrys GCGソフトウェアパッケージ(http://www.accelrys.com/products/gcg/にて入手可能)内のGAPプログラム中に組み込まれているNeedleman and Wunsch(1970)アルゴリズムを用いて判定される。
【0050】
本明細書中で用いられる用語「断片」は、参照配列の連続部分を指す。例えば、50ヌクレオチド長の配列番号2の断片は、配列番号2の50個の連続ヌクレオチドを指す。
【0051】
本明細書中で用いられる用語「機能的バリアント」は、参照配列と比較して修飾されているが、前記参照配列の機能を保持している核酸又はアミノ酸配列を指す。例えば、MeCP2プロモータの機能的バリアントは、ニューロン又は星状細胞等のCNSの細胞内で、POIをコードするヌクレオチド配列の発現を駆動する能力を保持している。同様に、PGRNタンパク質の機能的バリアントは、参照PGRNタンパク質の活性を保持している。
【0052】
核酸
用語「ポリヌクレオチド」及び「核酸分子」は、本明細書中で互換的に用いられており、デオキシリボヌクレオチドもしくはリボヌクレオチドのいずれか、又はその類似体の、任意の長さのヌクレオチドのポリマー形態を指す。ポリヌクレオチドの非限定的な例として、遺伝子、遺伝子断片、メッセンジャーRNA(mRNA)、cDNA、組換えポリヌクレオチド、プラスミド、ベクター、あらゆる配列の単離されたDNA、あらゆる配列の単離されたRNA、核酸プローブ、及びプライマーが挙げられる。本発明のポリヌクレオチドは、単離された形態又は実質的に単離された形態で提供され得る。実質的に単離されたとは、あらゆる周囲培地からのポリペプチドの完全ではないが実質的な単離であり得ることを意味する。ポリヌクレオチドは、その意図される用途を妨げることのない担体又は希釈剤と混合されていてもよく、依然として実質的に単離されているとみなされ得る。選択されたポリペプチドを「コードする」核酸配列は、適切な調節配列の制御下、例えば発現ベクター中に置かれた場合に、インビボで転写され(DNAの場合)、そしてポリペプチドに翻訳される(mRNAの場合)核酸分子である。コード配列の境界は、5’(アミノ)末端の開始コドン及び3’(カルボキシ)末端の翻訳終止コドンによって決定される。本発明の目的のために、そのような核酸配列は、ウイルス、原核生物、又は真核生物のmRNAからのcDNA、ウイルス又は原核生物のDNA又はRNA由来のゲノム配列、さらには合成DNA配列を含むことができるが、これらに限定されない。転写終結配列は、コード配列の3’側に位置決めされ得る。
【0053】
ポリヌクレオチドは、一例としてSambrook et al(1989,Molecular Cloning-a laboratory manual;Cold Spring Harbor Press)に記載されているような、当該技術分野において周知の方法に従って合成することができる。
【0054】
本明細書中で用いられる用語「核酸構築体」は、少なくとも1つの制御配列(プロモータ等)及び注目するタンパク質(POI)をコードする少なくとも1つのヌクレオチド配列を含む人工(例えば、組換えにより生成又は合成される)核酸を指す。ゆえに、本発明の核酸構築体は、発現カセットとみなされ得る。本発明の核酸構築体は、単離又は実質的に単離されていてよい。典型的には、本発明の核酸構築体は、注目するタンパク質(例えばPGRN)をコードするヌクレオチド配列に作動可能に連結された制御配列(例えばMeCP2プロモータ)を含むので、注目するタンパク質のインビボ発現を可能にする。本発明の核酸構築体は、適切なプロモータ、エンハンサ、イニシエータ、及び他の要素、例えば、ポリアデニル化(ポリA)シグナル及び/又はウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメント(WPRE)配列を含んでよい。また、本発明の核酸構築体は、制限部位(例えば、配列番号14のヌクレオチド配列を有するAge1制限部位)等の、遺伝子操作を容易にするヌクレオチド配列を含んでもよい。
【0055】
本明細書中で用いられる用語「作動可能に連結された」は、2つ以上のヌクレオチド配列の並置であって、前記2つ以上の配列の各々が、その正常な機能を実行することを可能にする並置を指す。典型的には、用語「作動可能に連結された」は、調節エレメント(例えば、プロモータ、エンハンサ、ポリAシグナル配列、WPRE配列等)、及び注目するタンパク質(POI)をコードするヌクレオチド配列の並置を指すのに用いられる。例えば、プロモータと、タンパク質コードヌクレオチド配列との間の操作可能な連結により、プロモータは、POIの発現をインビボで駆動するように機能することが可能となる。
【0056】
MeCP2プロモータに加えて、本発明の核酸構築体は、1つ以上の更なる調節エレメントを含んでよい。好ましい調節エレメントは、核酸構築体から転写されたmRNAを安定化させ、及び/又は核酸構築体からの注目するタンパク質(POI)、例えばPGRNの発現を増強するように機能するものである。
【0057】
本発明の核酸構築体に用いることができる好ましい調節エレメントとして、ウッドチャック肝炎ウイルス(WHP)転写後調節エレメント(WPRE)がある。WPREは、mRNAに転写される場合、mRNA転写産物に三次構造をもたらすことによって、mRNAの安定性、及び核酸構築体によってコードされるPOIの発現を増強するDNA配列である。本発明の核酸構築体において、WPREは、POI又はPGRNタンパク質をコードするヌクレオチド配列の3’側にあり得る。WPREは、配列番号15のヌクレオチド配列、又はその、配列番号15のヌクレオチド配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、もしくは99.9%の同一性を有する機能的バリアントもしくは断片を含み得る。WPREの機能的バリアント又は断片は、対応する非バリアント又は全長WPREの特徴を保持している。ゆえに、バリアント又は断片WPREは、mRNA転写産物に三次構造をもたらすこと、及び/又はmRNA転写産物の安定性を増強すること、及び/又は核酸構築体によってコードされるPOIの発現を増強することが可能であり得る。増強は、バリアント又は断片WPREを含有しないmRNAと比較したものである。
【0058】
本発明の核酸構築体に用いることができる好ましい調節エレメントは、ポリアデニル化(ポリ(A))シグナル配列である。真核細胞において、mRNA転写産物内のポリアデニル化シグナル配列が認識されて、mRNA転写産物の3’末端に複数のアデノシン一リン酸からなるポリ(A)尾部を付加するようにプロセシングされる。ポリ(A)尾部は、核から細胞質へのmRNAの輸送を促進するように機能し、かつmRNAの分解を妨げることによって、核酸構築体によってコードされるPOIの発現を増強する。本発明の核酸構築体において、ポリアデニル化シグナル配列は、POI又はPGRNタンパク質をコードするヌクレオチド配列の3’側にあり得る。ポリアデニル化シグナル配列は、配列番号16のヌクレオチド配列、又はその、配列番号16のヌクレオチド配列に対して少なくとも90%の同一性を有する機能的バリアントもしくは断片を含み得る。ポリアデニル化配列の機能的バリアント又は断片は、対応する非バリアント又は全長ポリアデニル化シグナル配列の特徴を保持している。
【0059】
本発明の核酸構築体は、5’から3’方向に、MeCP2プロモータ、POI又はPGRNタンパク質をコードするヌクレオチド配列、WPRE、及びポリアデニル化シグナル配列を含み得る。
【0060】
本発明の核酸構築体は、ベクター(例えば、プラスミド又は組換えウイルスベクター)内に提供されてよい。適切なベクターは、十分な量の遺伝情報を有し、かつPOIのインビボ発現を可能にすることができるあらゆるベクターであってよい。本発明の核酸構築体を含むベクターは、それを必要とする患者に直接投与されてよい。そのようなベクターは、分子生物学の技術分野においてルーチンで構築され、例えば、プラスミドDNA及び適切なイニシエータ、プロモータ、エンハンサ、及び他の要素、例えば、必須であり得、かつ本発明のペプチドの発現を可能にするように正しい向きに置かれているポリアデニル化シグナルの使用を包含し得る。他の適切なベクターが、当業者に明らかであろう。これに関する更なる例として、Sambrook et al.(1989,Molecular Cloning-a laboratory manual;Cold Spring Harbor Press)参照。
【0061】
メチルCpG結合タンパク質2(MeCP2)プロモータ
メチルCpG結合タンパク質2(MeCP2)は、転写リプレッサであり、遺伝子の転写を、この遺伝子のプロモータ内のメチル化シトシンヌクレオチドに結合してから、共リプレッサタンパク質複合体を動員することによって全体的にサイレンシングするという説が出されている。加えて、MeCP2は、DNAメチルトランスフェラーゼ1に結合し、そしてヒストンメチルトランスフェラーゼ活性を調節する。これは、DNAメチル化を維持するのに役立ち、そしてヒストンH3におけるLys9のメチル化を促進する。ゆえに、メチル化DNAに結合することによって、MeCP2は、DNAメチル化の維持、ならびにヒストンの脱アセチル化及びメチル化等の複数のエピジェネティック修飾により、その抑制機能を強化する。
【0062】
MeCP2は、脳、肺、及び脾臓において高度に発現され、そして心臓及び腎臓において中程度に発現される。特に、中枢神経系(CNS)内では、MeCP2がニューロンにおいて高濃度で発現される。
【0063】
ヒトMECP2遺伝子(遺伝子ID:4204)は、約122kbpであり、X染色体の長腕(Xq28)上に位置決めされており、4つのコードエクソンを含む(Singh et al.Nucleic Acids Research.(2008)Vol.36,No.19 6035-6047)。マウスMECP2遺伝子(遺伝子ID:17257)は、約59kbpであり、マウスX染色体上に、位置ChrX:73070198-73129296bp(-鎖)にて位置決めされている。
【0064】
2つのMeCP2アイソフォーム:MeCP2_e1(e1)及びMeCP2_e2(e2)が同定されている。e1イソ型は、498アミノ酸長であり、エクソン1、3、及び4によってコードされる。e2イソ型は、486アミノ酸長であり、エクソン2、3、及び4によってコードされる。マウス及びヒトMECP2遺伝子のプロモータ領域は、とりわけ、Adachi et al.(Hum.Mol.Genetics.2005;14(23):3709-3722)によって特徴付けられている。MECP2遺伝子のセグメント(-677/+56)は、神経細胞株及び皮質ニューロンにおいて強いプロモータ活性を示すことが見出されたが、非神経細胞及びグリアにおいて不活性であった。ニューロン特異的プロモータ活性に必須の領域(MR要素と呼ばれる)は、19bp領域内に位置決めされていることが観察された(-63/-45)。
【0065】
Adachi et al.(Hum.Mol.Genetics.2005;14(23):3709-3722)に記載されるように、MECP2遺伝子のマウス(-677/+56)領域の配列は、対応するヒトMeCP2プロモータと68%類似している。特に、ヒト配列及びマウス配列は、MR要素を含有するヌクレオチド位置-87~+56の間で、92%同一である。
【0066】
本明細書中に記載され、かつ例示される構築体に用いられるMeCP2配列(例えば、配列番号1~9)は、マウスMECP2遺伝子に由来する。しかしながら、上記のように、マウスMECP2遺伝子とヒトMECP2遺伝子との最小プロモータ領域間で、高いレベルの配列類似性がある。さらに、マウスMR要素とヒトMR要素との間で、非常に高度の配列同一性があり、これがニューロン特異的発現を担う。したがって、1つ以上のマウスMeCP2ヌクレオチド配列を含む本発明の実施形態毎に、前記1つ以上のマウスMeCP2ヌクレオチド配列が、対応するヒトMeCP2ヌクレオチド配列によって置換されている実施形態も提供される。
【0067】
ゆえに、本明細書中で用いられる用語「MeCP2プロモータ」は、プロモータとして機能することができる、すなわち、前記MeCP2プロモータが作動可能に連結されているヌクレオチド配列の転写を駆動することによって、前記ヌクレオチド配列によってコードされるタンパク質の発現を駆動することができる、MECP2遺伝子(例えば、マウス又はヒトMECP2遺伝子)のヌクレオチド配列を指す。典型的には、本発明に用いられるMeCP2プロモータ配列は、特定の組織又は細胞型に特異的である。好ましくは、本発明に用いられるMeCP2プロモータは、CNSの細胞に特異的である。より好ましくは、本発明に用いられるMeCP2プロモータは、ニューロン及び/又は星状細胞内で、注目するタンパク質(POI)、例えばPGRNの発現を特異的に駆動することとなる。
【0068】
本発明の核酸構築体に用いられるMeCP2プロモータは、本明細書中に記載されるMeCP2プロモータの機能的バリアント又は断片であり得る。本明細書中に記載されるMeCP2プロモータの機能的バリアント又は断片は、対応する非バリアント又は全長MeCP2プロモータの特徴を保持しているという意味で、機能的であり得る。ゆえに、本明細書中に記載されるMeCP2プロモータの機能的バリアント又は断片は、前記機能的バリアント又は断片が作動可能に連結されているヌクレオチド配列の転写を駆動することによって、前記ヌクレオチド配列によってコードされるタンパク質の発現を駆動する能力を保持している。本明細書中に記載されるMeCP2プロモータの機能的バリアント又は断片は、特定の組織型に対する特異性を保持し得る。例えば、本明細書中に記載されるMeCP2プロモータの機能的バリアント又は断片は、CNSの細胞に特異的であり得る。本明細書中に記載されるMeCP2プロモータの機能的バリアント又は断片は、ニューロン及び/又は星状細胞内で、注目するタンパク質(POI)、例えばPGRNの発現を特異的に駆動し得る。
【0069】
本発明に用いられるMeCP2プロモータは、「最小プロモータ配列」を含み得、これは、十分な長さのMECP2遺伝子のプロモータ領域のヌクレオチド配列であると理解されるべきであり、そしてMeCP2プロモータとして機能するために、すなわち、前記MeCP2プロモータが作動可能に連結されているヌクレオチド配列の転写を駆動することによって、前記ヌクレオチド配列によってコードされるタンパク質の発現を駆動することができるために必要とされる要素を含む。
【0070】
本発明の核酸構築体に用いられる最小MeCP2プロモータは、本明細書中に記載される最小MeCP2プロモータの機能的バリアント又は断片であり得る。本明細書中に記載される最小MeCP2プロモータの機能的バリアント又は断片は、対応する非バリアント又は全長最小MeCP2プロモータの特徴を保持しているという意味で、機能的であり得る。ゆえに、本明細書中に記載される最小MeCP2プロモータの機能的バリアント又は断片は、十分な長さのものであり、MeCP2プロモータとして機能するのに必要とされる要素を含み、そして前記機能的バリアント又は断片が作動可能に連結されているヌクレオチド配列の転写を駆動することによって、前記ヌクレオチド配列によってコードされるタンパク質の発現を駆動することができる。
【0071】
本明細書中に記載されるMeCP2プロモータに用いられ得る好ましい最小プロモータ配列は、配列番号1のヌクレオチド配列、又はその、配列番号1のヌクレオチド配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、もしくは99.9%の同一性を有する機能的バリアントを含み得るか、又はそれからなり得る。また、配列番号1又は前記機能的バリアントの任意の長さの断片を、本発明の核酸構築体内の最小プロモータ配列として用いてもよい。最小プロモータ配列は、160~300bp、170~290bp、180~280bp、190~270bp、200~260bp、210~250bp、220~240bp、又は約230bpであり得る。
【0072】
本発明に用いられるMeCP2プロモータは、1つ以上のイントロンを含み得る。本明細書中で用いられる用語「イントロン」は、遺伝子内非コードヌクレオチド配列を指す。典型的には、イントロンは、遺伝子の転写中にDNAからメッセンジャーRNA(mRNA)に転写されるが、mRNA転写産物から、その翻訳前のスプライシングによって切除される。
【0073】
本発明に用いられるMeCP2プロモータは、本明細書中に記載されるイントロンの機能的バリアント又は断片を含んでよい。本明細書中に記載されるイントロンの機能的バリアント又は断片は、対応する非バリアント又は全長イントロンの特徴を保持しているという意味で、機能的であり得る。ゆえに、本明細書中に記載されるイントロンの機能的バリアント又は断片は、非コードである。また、本明細書中に記載されるイントロンの機能的バリアント又は断片は、DNAからmRNAに転写される能力、及び/又はスプライシングによってmRNAから切除される能力を保持し得る。
【0074】
最小プロモータ配列及びイントロンを含むMeCP2プロモータは、本明細書中で「操作されたMeCP2プロモータ」と称される。
【0075】
本発明に用いられるMeCP2プロモータに組み込まれ得るイントロンは、MECP2遺伝子の天然の非コード領域に由来し得る。ゆえに、用語イントロンは、MECP2遺伝子の天然に存在する連続ヌクレオチド配列に対応するヌクレオチド配列を包含する。そのようなイントロンは、本明細書中で「天然」イントロンと称される。
【0076】
本明細書中に記載されるMeCP2プロモータに用いられ得る好ましいイントロンは、配列番号9のヌクレオチド配列、又はその、配列番号9に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、もしくは99.9%の同一性を有する機能的バリアントを含むか、又はそれからなる。また、前記イントロンの断片が用いられてもよい。そのような断片は、1000~2107bp、1200~2100bp、1400~2000bp、1600~1900bp、又は1700~1800bpであり得る。また、前記イントロンを含むより長いヌクレオチド配列が用いられてもよい。
【0077】
本発明の核酸構築体に用いられ得る好ましいMeCP2プロモータは、MeCP2_1(配列番号8)と命名される。このMeCP2プロモータは、配列番号9のヌクレオチド配列を有するイントロンを含む。ゆえに、本発明の核酸構築体に用いられるMeCP2プロモータは、配列番号8のヌクレオチド配列、又はその、配列番号8に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、もしくは99.9%の同一性を有する機能的バリアントを含み得るか、又はそれからなり得る。また、前記MeCP2プロモータの断片が用いられてもよい。そのような断片は、1000~2336bp、1200~2300bp、1400~2200bp、1600~2100bp、1700~2000bp、又は1800~1900bpであり得る。また、前記MeCP2プロモータを含むより長いヌクレオチド配列が用いられてもよい。
【0078】
本発明の核酸構築体に用いられるMeCP2プロモータは、「合成イントロン」を含んでよい。合成イントロンは、例えばMECP2遺伝子の、2つ以上の異なる(例えば、別個かつ不連続の)配列から構築されたものと理解されるべきである。合成イントロンを調製するのに用いられる2つ以上の配列は、MECP2遺伝子のいかなる位置由来のものであってもよい。したがって、合成イントロンは、MECP2遺伝子のイントロンのヌクレオチド配列を含んでよく、これは故に「イントロン配列」と称される。
【0079】
これ以外にも、合成イントロンの構成ヌクレオチド配列は、MECP2遺伝子のイントロンに由来する必要はなく、代わりにMECP2遺伝子のエクソン(すなわち、タンパク質コードヌクレオチド)に由来してもよい。典型的には、エクソンMECP2遺伝子のヌクレオチド配列は、エクソン配列が発現しないように、(例えば、トランケーション、欠失、置換等によって)修飾され、及び/又は合成イントロン内に配置されることとなる。ゆえに、そのようなヌクレオチド配列は、ポリペプチド(例えば、MeCP2タンパク質又はその断片)に翻訳され得る転写産物を生成することができない。したがって、本明細書中に記載されるMeCP2プロモータに用いられる合成イントロンは、例えばMECP2遺伝子の、1つ以上の「非発現エクソン配列」を含んでよい。適切には、前記非発現エクソン配列は、イントロン配列の側面に位置して、スプライス部位を提供してよい。当該スプライス部位により、合成イントロンを、前記合成イントロンを含む核酸構築体の転写によって産生されるmRNAからのスプライシングによって切除することが可能となる。
【0080】
本明細書中に記載されるMeCP2プロモータに用いられる合成イントロンは、本明細書中に記載される非発現エクソン配列の機能的バリアント又は断片を含んでよい。本明細書中に記載される非発現エクソン配列の機能的バリアント又は断片は、対応する非バリアント又は全長エクソン配列の特徴を保持しているという意味で、機能的であり得る。ゆえに、本明細書中に記載される非発現エクソン配列の機能的バリアント又は断片は、イントロン配列の側面に位置する能力を保持し得、かつスプライス部位を含み得る。これらは、エクソンの除去により、一緒に接合(又はスプライシング)され得る。
【0081】
本明細書中に記載されるMeCP2プロモータに用いられる合成イントロンは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10個のイントロン配列、及び/又は1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10個の非発現エクソン配列を含んでよい。好ましくは、合成イントロンは、2つのイントロン配列及び2つの非発現エクソン配列を含む。
【0082】
本明細書中に記載されるMeCP2プロモータに用いられ得る好ましい非発現エクソン配列は、配列番号4のヌクレオチド配列、又はその、配列番号4に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、もしくは99.9%の同一性を有する機能的バリアントを含むか、又はそれからなる。また、前記非発現エクソン配列の断片が用いられてもよい。また、前記非発現エクソン配列を含むより長いヌクレオチド配列が用いられてもよい。
【0083】
本明細書中に記載されるMeCP2プロモータに用いられ得る好ましい非発現エクソン配列は、配列番号7のヌクレオチド配列、又はその、配列番号7に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、もしくは99.9%の同一性を有する機能的バリアントを含むか、又はそれからなる。また、前記非発現エクソン配列の断片が用いられてもよい。また、前記非発現エクソン配列を含むより長いヌクレオチド配列が用いられてもよい。
【0084】
本明細書中に記載されるMeCP2プロモータに用いられ得る好ましいイントロン配列は、配列番号5のヌクレオチド配列、又はその、配列番号5に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、もしくは99.9%の同一性を有する機能的バリアントを含むか、又はそれからなる。また、前記イントロン配列の断片が用いられてもよい。また、前記イントロン配列を含むより長いヌクレオチド配列が用いられてもよい。
【0085】
本明細書中に記載されるMeCP2プロモータに用いられ得る好ましいイントロン配列は、配列番号6のヌクレオチド配列、又はその、配列番号6に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、もしくは99.9%の同一性を有する機能的バリアントを含むか、又はそれからなる。また、前記イントロン配列の断片が用いられてもよい。また、前記イントロン配列を含むより長いヌクレオチド配列が用いられてもよい。
【0086】
ゆえに、本発明の核酸構築体は:
(a)配列番号4のヌクレオチド配列、又はその、配列番号4に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、もしくは99.9%の同一性を有する機能的バリアントもしくは断片を含む非発現エクソン配列;
(b)配列番号5のヌクレオチド配列、又はその、配列番号5に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、もしくは99.9%の同一性を有する機能的バリアントもしくは断片を含むイントロン配列;
(c)配列番号6のヌクレオチド配列、又はその、配列番号6に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、もしくは99.9%の同一性を有する機能的バリアントもしくは断片を含むイントロン配列;及び/あるいは
(d)配列番号7のヌクレオチド配列、又はその、配列番号7に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、もしくは99.9%の同一性を有する機能的バリアントもしくは断片を含む非発現エクソン配列
を含む少なくとも1つの合成イントロンを含むMeCP2プロモータを含み得るか、又はそれからなり得る。
【0087】
合成イントロンは、先の(a)、(b)、(c)、及び/又は(d)を、5’から3’方向にいかなる順序で含んでもよい。合成イントロンは、(a)、(b)、(c)、及び/又は(d)を、先に列挙した順序で含み得る。例えば、5’から3’方向に、合成イントロンは:
i.(a)及び(b);
ii.(a)及び(c);
iii.(a)及び(d);
iv.(b)及び(c);
v.(b)及び(d);
vi.(c)及び(d);
vii.(a)、(b)、及び(c);
viii.(a)、(b)、及び(d);
ix.(b)、(c)、及び(d);又は
x.(a)、(b)、(c)、及び(d)を含み得る。
【0088】
合成イントロンは、その5’末端に非発現エクソン配列を含んでよい。例えば、合成イントロンは、その5’末端に:
(a)配列番号4のヌクレオチド配列、又はその、配列番号4に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、もしくは99.9%の同一性を有する機能的バリアントもしくは断片を含む非発現エクソン配列;あるいは
(d)配列番号7のヌクレオチド配列、又はその、配列番号7に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、もしくは99.9%の同一性を有する機能的バリアントもしくは断片を含む非発現エクソン配列
を含んでよい。
【0089】
合成イントロンは、その3’末端に非発現エクソン配列:
(a)配列番号4のヌクレオチド配列、又はその、配列番号4に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、もしくは99.9%の同一性を有する機能的バリアントもしくは断片を含む非発現エクソン配列;あるいは
(d)配列番号7のヌクレオチド配列、又はその、配列番号7に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、もしくは99.9%の同一性を有する機能的バリアントもしくは断片を含む非発現エクソン配列
を含んでよい。
【0090】
合成イントロンは、その5’末端及びその3’末端に非発現エクソン配列を含んでよい。例えば、合成イントロンは、その5’末端に:
(a)配列番号4のヌクレオチド配列、又はその、配列番号4に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、もしくは99.9%の同一性を有する機能的バリアントもしくは断片を含む非発現エクソン配列;あるいは
(d)配列番号7のヌクレオチド配列、又はその、配列番号7に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、もしくは99.9%の同一性を有する機能的バリアントもしくは断片を含む非発現エクソン配列;
を含んでよく、そして
合成イントロンは、その3’末端に:
(a)配列番号4のヌクレオチド配列、又はその、配列番号4に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、もしくは99.9%の同一性を有する機能的バリアントもしくは断片を含む非発現エクソン配列;あるいは
(d)配列番号7のヌクレオチド配列、又はその、配列番号7に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、もしくは99.9%の同一性を有する機能的バリアントもしくは断片を含む非発現エクソン配列
を含んでよい。
【0091】
5’末端及び3’末端の非発現エクソン配列は、1つ以上のイントロン配列、例えば本明細書中に記載される1つ以上のイントロン配列の側面に位置してよい。例えば、5’から3’方向に、本明細書中に記載されるMeCP2プロモータに用いられる合成イントロンは:
i.(a)、(b)、及び(d);
ii.(a)、(c)、及び(d);
iii.(a)、(b)、(c)、及び(d);
iv.(a)、(c)、(b)、及び(d);
v.(a)、(b)、及び(a);
vi.(a)、(c)、及び(a);
vii.(a)、(b)、(c)、及び(a);
viii.(a)、(c)、(b)、及び(a);
ix.(d)、(b)、及び(d);
x.(d)、(c)、及び(d);
xi.(d)、(b)、(c)、及び(d);
xii.(d)、(c)、(b)、及び(d)
xiii.(d)、(b)、及び(a);
xiv.(d)、(c)、及び(a);
xv.(d)、(b)、(c)、及び(a);又は
xvi.(d)、(c)、(d)、及び(a)を含み得:
(a)は、配列番号4のヌクレオチド配列、又はその、配列番号4に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、もしくは99.9%の同一性を有する機能的バリアントもしくは断片を含む非発現エクソン配列に相当し;
(b)は、配列番号5のヌクレオチド配列、又はその、配列番号5に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、もしくは99.9%の同一性を有する機能的バリアントもしくは断片を含むイントロン配列に相当し;
(c)は、配列番号6のヌクレオチド配列、又はその、配列番号6に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、もしくは99.9%の同一性を有する機能的バリアントもしくは断片を含むイントロン配列に相当し;かつ
(d)は、配列番号7のヌクレオチド配列、又はその、配列番号7に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、もしくは99.9%の同一性を有する機能的バリアントもしくは断片を含む非発現エクソン配列に相当する。
【0092】
本明細書中に記載されるMeCP2プロモータに用いられ得る好ましい合成イントロンは、5’から3’方向に:
(a)配列番号4のヌクレオチド配列、又はその、配列番号4に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、もしくは99.9%の同一性を有する機能的バリアントもしくは断片を含む非発現エクソン配列;
(b)配列番号5のヌクレオチド配列、又はその、配列番号5に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、もしくは99.9%の同一性を有する機能的バリアントもしくは断片を含むイントロン配列;
(c)配列番号6のヌクレオチド配列、又はその、配列番号6に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、もしくは99.9%の同一性を有する機能的バリアントもしくは断片を含むイントロン配列;及び/あるいは
(d)配列番号7のヌクレオチド配列、又はその、配列番号7に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、もしくは99.9%の同一性を有する機能的バリアントもしくは断片を含む非発現エクソン配列
を含むか、又はそれからなる。
【0093】
本明細書中に記載されるMeCP2プロモータに用いられ得る好ましい合成イントロンは、5’から3’方向に:
(a)配列番号4のヌクレオチド配列、又はその、配列番号4に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、もしくは99.9%の同一性を有する機能的バリアントもしくは断片を含む非発現エクソン配列;
(b)配列番号5のヌクレオチド配列、又はその、配列番号5に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、もしくは99.9%の同一性を有する機能的バリアントもしくは断片を含むイントロン配列;
(c)配列番号6のヌクレオチド配列、又はその、配列番号6に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、もしくは99.9%の同一性を有する機能的バリアントもしくは断片を含むイントロン配列;及び
(d)配列番号7のヌクレオチド配列、又はその、配列番号7に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、もしくは99.9%の同一性を有する機能的バリアントもしくは断片を含む非発現エクソン配列
を含むか、又はそれからなる。
【0094】
本明細書中に記載されるMeCP2プロモータに用いられ得る好ましい合成イントロンは、5’から3’方向に:
(a)配列番号4のヌクレオチド配列、又はその、配列番号4に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、もしくは99.9%の同一性を有する機能的バリアントもしくは断片を含む非発現エクソン配列;
(b)配列番号5のヌクレオチド配列、又はその、配列番号5に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、もしくは99.9%の同一性を有する機能的バリアントもしくは断片を含むイントロン配列;
(c)配列番号6のヌクレオチド配列、又はその、配列番号6に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、もしくは99.9%の同一性を有する機能的バリアントもしくは断片を含むイントロン配列;及び
(d)配列番号7のヌクレオチド配列、又はその、配列番号7に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、もしくは99.9%の同一性を有する機能的バリアントもしくは断片を含む非発現エクソン配列
からなる。
【0095】
本明細書中に記載されるMeCP2プロモータに用いられ得る好ましい合成イントロンは、配列番号2のヌクレオチド配列、又はその、配列番号2に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、もしくは99.9%の同一性を有する機能的バリアントを含むか、又はそれからなる。また、前記合成イントロンの断片が用いられてもよい。そのような断片は、1000~2005bp、1200~2000bp、1400~1900bp、1600~1800bp、又は1700~1800bpであり得る。また、前記合成イントロンを含むより長いヌクレオチド配列が用いられてもよい。
【0096】
本発明の核酸構築体に用いられ得る好ましいMeCP2プロモータは、MeCP2_2(配列番号3)と命名される。このプロモータ領域は、配列番号2のヌクレオチド配列を有する合成イントロンを含む。ゆえに、本発明の核酸構築体に用いられるMeCP2プロモータは、配列番号3のヌクレオチド配列、又はその、配列番号3に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、もしくは99.9%の同一性を有する機能的バリアントを含み得るか、又はそれからなり得る。また、前記MeCP2プロモータの断片が用いられてもよい。そのような断片は、1000~2234bp、1200~2200bp、1400~2100bp、1600~2000bp、又は1700~1900bpであり得る。また、前記MeCP2プロモータを含むより長いヌクレオチド配列が用いられてもよい。
【0097】
本明細書中に記載されるMeCP2プロモータを含む核酸構築体は、これがコードする目的のタンパク質(POI)、例えばPGRNの発現を高める。また、前記構築体は、形質導入効率を高める。ゆえに、特定の実施形態において、MeCP2プロモータを含む本発明の核酸構築体からのPOI又はPGRNタンパク質の発現は、他の点では同一であるMeCP2プロモータを欠く構築体と比較して、増し得る。特定の実施形態において、MeCP2プロモータを含む本発明の核酸構築体は、他の点では同一であるMeCP2プロモータを欠く構築体と比較して、形質導入効率が増す。
【0098】
本明細書中に記載される操作されたMeCP2プロモータを含む核酸構築体は、これがコードする目的のタンパク質(POI)、例えばPGRNの発現を高める。また、前記構築体は、形質導入効率を高める。ゆえに、特定の実施形態において、操作されたMeCP2プロモータを含む本発明の核酸構築体からのPOI又はPGRNタンパク質の発現は、操作されたMeCP2プロモータを欠く構築体、例えば最小MeCP2プロモータを含む等価な構築体と比較して、増し得る。特定の実施形態において、操作されたMeCP2プロモータを含む本発明の核酸構築体は、操作されたMeCP2プロモータを欠く構築体、例えば最小MeCP2プロモータを含む等価な構築体と比較して、形質導入効率が増す。
【0099】
本明細書中に記載される合成イントロンを含む操作されたMeCP2プロモータを含む核酸構築体は、これがコードする注目するタンパク質(POI)の発現を高める。また、前記構築体は、形質導入効率を高める。ゆえに、特定の実施形態において、合成イントロンを含む操作されたMeCP2プロモータを含む本発明の核酸構築体からのPOI又はPGRNタンパク質の発現は、合成イントロンを含む操作されたMeCP2プロモータを欠く構築体、例えば最小MeCP2プロモータを含む構築体、又は合成イントロンを欠く操作されたMeCP2プロモータを含む構築体と比較して、増し得る。特定の実施形態において、合成イントロンを含む操作されたMeCP2プロモータを含む本発明の核酸構築体は、合成イントロンを含む操作されたMeCP2プロモータを欠く構築体、例えば最小MeCP2プロモータを含む構築体、又は合成イントロンを欠く操作されたMeCP2プロモータを含む構築体と比較して、形質導入効率が増す。
【0100】
プログラニュリン(PGRN)
プログラニュリン(PGRN;グラニュリン-エピテリン前駆体、プロエピテリン、前立腺癌(PC)細胞由来成長因子、及びアクログラニンとしても知られている)は、全身の多くの細胞型によって発現される分泌糖タンパク質である。染色体17q21上の単一遺伝子(GRN;Gene ID:2896)によってコードされるPGRNは、推定分子量68.5kDaの、593アミノ酸のシステインリッチタンパク質である。これは、7.5個のグラニュリン様ドメインを含有し、これらは各々、12個のシステイニルモチーフの高度に保存されたタンデムリピートからなる。エラスターゼ等の細胞外プロテアーゼによるPGRNのタンパク質分解的切断は、グラニュリン又はエピテリンと称されるより小さなペプチド断片(例えば、グラニュリンA、グラニュリンB、グラニュリンC等)を生じる。これらの断片は、6~25kDaのサイズに及び、様々な生物学的機能に関係している。
【0101】
PGRN欠乏は、前頭側頭葉認知症とも称される前頭側頭型認知症(FTD)の病因と強く関連している。タンパク質プログラニュリン(PGRN)をコードするGRN遺伝子の1つの対立遺伝子内の変異が、FTDの発症と関連する(Baker et al.,Nature.2006 Aug 24;442(7105):916-919)。FTDのGRN関連形態は、ユビキチン化かつ断片化されたTDP-43(TARDBPによってコードされる)を含有する神経封入体の出現によって特徴付けられるプロテイノパチーである。PGRN欠損マウスモデルにおいて、AAV遺伝子治療アプローチを用いてPGRNのニューロン発現を駆動することにより、FTDと関連する行動障害が修正されることが示されている(Arrant et al.Brain.2017;140.5:1447-1465)。
【0102】
また、PGRN欠乏は、神経セロイドリポフスチン症11(NCL11)とも関連する。特に、GRN内のホモ接合変異は、神経セロイドリポフスチン症11(NCL11)と関連し、これは、小脳性運動失調、発作、色素性網膜炎、及び認知障害によって特徴付けられ、通常は13歳~25歳の間に始まる(Faber et al.Brain.2020;143(1):303-31)。
【0103】
ゆえに、中枢神経系におけるPGRNのレベルを増大させて、PGRN欠乏と関連する神経疾患を処置する治療アプローチについて、強い生物学的根拠がある。PGRN欠乏とCNS障害との関連(FTD及びNCL11が挙げられる)は、Mole and Cotman,Biochimica et Biophysica Acta.2015;1852:2237-2241,Chitramuthu et al.Brain.2017;140:3081-3104、及びHuin et al.,Brain.2020;143:303-319において詳細に論じられている。
【0104】
本発明の核酸構築体に用いられるPGRNタンパク質をコードするヌクレオチド配列は、ヒトPGRNタンパク質をコードしてよい。本発明の核酸構築体に用いられるPGRNタンパク質をコードするヌクレオチド配列は、野生型PGRNタンパク質をコードしてよい。本発明の核酸構築体に用いられるPGRNタンパク質をコードするヌクレオチド配列は、野生型ヒトPGRNタンパク質をコードしてよい。
【0105】
本発明者らは、MeCP2プロモータを含む核酸構築体及びベクターについて、PGRNタンパク質をコードするヌクレオチド配列のコドン最適化が、PGRNをコードする野生型ヌクレオチド配列と比較して、より低いPGRN発現レベルを実現することを見出した(例5及び図5参照)。ゆえに、本発明の一部の実施形態において、PGRNタンパク質をコードするヌクレオチド配列は、コドン最適化されていない。
【0106】
本発明の核酸構築体に用いられ得るPGRNタンパク質をコードする好ましいヌクレオチド配列は、配列番号12のヌクレオチド配列、又はその、配列番号12のヌクレオチド配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、もしくは99.9%の同一性を有する機能的バリアントを含むか、又はそれからなる。また、前記ヌクレオチド配列の断片が用いられてもよい。そのような断片は、1000~1781bp、1200~1750bp、1400~1700bp、又は1500~1600bpさであり得る。
【0107】
本発明の核酸構築体に用いられ得るPGRNタンパク質をコードする好ましいヌクレオチド配列は、配列番号13のアミノ酸配列、又はその、配列番号13のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、もしくは99.9%の同一性を有する機能的バリアントを含むか、又はそれからなるPGRNタンパク質をコードする。また、前記PGRNタンパク質の断片をコードするヌクレオチドが用いられてもよい。そのような断片は、300~592、350~490、400~480、又は450~475アミノ酸残基長であり得る。
【0108】
本明細書中に記載されるあらゆるタンパク質又はポリペプチドにおいて、アミノ酸配列は、修飾された配列を有するポリペプチドが、修飾されていない配列を有するポリペプチドと比較して、同じ活性を示すことを条件として、付加、欠失、又は置換によって修飾されていてよい。「同じ」とは、修飾された配列のポリペプチドが、修飾されていない配列のポリペプチドと比較して、有意に引き下げられた活性を示さないことであると理解されるべきである。そのような修飾されたタンパク質又は前記修飾されたタンパク質をコードするヌクレオチド配列は、「機能的バリアント」とみなされ得る。
【0109】
本発明の核酸構築体は、本明細書中に記載されるPGRNタンパク質をコードするヌクレオチド配列の機能的バリアント又は断片を含み得る。本明細書中に記載されるPGRNタンパク質をコードするヌクレオチド配列の機能的バリアント又は断片は、対応する非バリアント又はPGRNタンパク質をコードする全長ヌクレオチド配列の特徴を保持しているという意味で、機能的であり得る。
【0110】
本発明の核酸構築体は、本明細書中に記載されるPGRNタンパク質の機能的バリアント又は断片をコードするヌクレオチド配列を含み得る。本明細書中に記載されるPGRNタンパク質の機能的バリアント又は断片は、対応する非バリアント又は全長PGRNタンパク質の特徴を保持しているという意味で、機能的であり得る。
【0111】
PRGNの機能及び細胞内相互作用を特徴付ける研究は、依然として進行中である。それにも拘わらず、PGRNは、リソソームマーカータンパク質LAMP-1(リソソーム関連膜タンパク質1)と共局在化すること、そしてリソソームの酸性化によるリソソーム機能及び生合成の調節において役割を果たすことが観察されている(Tanaka et al.,Human Molecular Genetics.2017;26(5):969-988)。
【0112】
特定の実施形態において、PGRNタンパク質をコードするヌクレオチド配列の機能的バリアント又は断片は、LAMP-1と共局在化することができるPGRNタンパク質をコードする。機能的バリアント又は断片によってコードされるPGRNタンパク質、及びLAMP-1の共局在化は、対応する非バリアント又は全長ヌクレオチド配列によってコードされるPGRNタンパク質とLAMP-1との、同じ条件下での共局在化の少なくとも約50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%であり得る。機能的バリアント又は断片によってコードされるPGRNタンパク質、及びLAMP-1の共局在化は、対応する非バリアント又は全長ヌクレオチド配列によってコードされるPGRNタンパク質とLAMP-1との、同じ条件下での共局在化と実質的に同じであり得るか、又はそれよりも大きくなり得る。
【0113】
特定の実施形態において、PGRNタンパク質の機能的バリアント又は断片は、LAMP-1と共局在化することができる。PGRNタンパク質の断片のバリアント及びLAMP-1の共局在化は、対応する非バリアント又は全長PGRNタンパク質の、同じ条件下での共局在化の少なくとも約50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%であり得る。PGRNタンパク質の断片のバリアントの共局在化は、対応する非バリアント又は全長PGRNタンパク質の、同じ条件下での共局在化と実質的に同じであり得るか、又はそれよりも大きくなり得る。
【0114】
PGRNタンパク質及びLAMP-1の共局在化は、当該技術分野において知られている適切なあらゆる技術を用いて評価及び/又は定量することができる。例えば、PGRNが欠損した培養細胞(例えば、GRN-/-細胞、又は発現PGRN発現がsiRNAによって下方制御されている細胞)が、PGRNタンパク質をコードするヌクレオチド配列の機能的バリアント又は断片を含む核酸構築体を含むベクターにより形質移入されてよい。次いで、当該細胞が、PGRNに特異的な第1の蛍光標識された(例えば緑色)抗体及びLAMP-1に特異的な第2の蛍光標識された(例えば赤色)抗体を用いて免疫染色されてよい。次いで、蛍光顕微鏡を用いて、赤色染色及び緑色染色の共局在化を評価することができる(Tanaka et al.,Human Molecular Genetics.2017;26(5):969-988参照)。
【0115】
特定の実施形態において、PGRNタンパク質をコードするヌクレオチド配列の機能的バリアント又は断片は、リソソーム酸性化を調節することができるPGRNタンパク質をコードする。機能的バリアント又は断片によってコードされるPGRNタンパク質によるリソソーム酸性化の調節は、対応する非バリアント又は全長ヌクレオチド配列によってコードされるPGRNタンパク質による、同じ条件下でのリソソーム酸性化の調節の少なくとも約50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%であり得る。機能的バリアント又は断片によってコードされるPGRNタンパク質によるリソソーム酸性化の調節は、対応する非バリアント又は全長ヌクレオチド配列によってコードされるPGRNタンパク質による、同じ条件下でのリソソーム酸性化の調節と実質的に同じであり得るか、又はそれよりも大きくなり得る。
【0116】
特定の実施形態において、PGRNタンパク質の機能的バリアント又は断片は、リソソーム酸性化を調節することができる。PGRNタンパク質のバリアント又は断片によるリソソーム酸性化の調節は、対応する非バリアント又は全長PGRNタンパク質による、同じ条件下でのリソソーム酸性化の調節の少なくとも約50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%であり得る。PGRNタンパク質のバリアント又は断片によるリソソーム酸性化の調節は、対応する非バリアント又は全長PGRNタンパク質による、同じ条件下でのリソソーム酸性化の調節と実質的に同じであり得るか、又はそれよりも大きくなり得る。
【0117】
特定の実施形態において、PGRNタンパク質をコードするヌクレオチド配列の機能的バリアント又は断片は、リソソーム酸性化を増大させることができるPGRNタンパク質をコードする。機能的バリアント又は断片によってコードされるPGRNタンパク質は、対応する非バリアント又は全長ヌクレオチド配列によってコードされるPGRNタンパク質によって実現されるリソソーム酸性化の、同じ条件下での増大の少なくとも約50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%まで、リソソーム酸性化を増大させることができる。機能的バリアント又は断片によってコードされるPGRNタンパク質は、対応する非バリアント又は全長ヌクレオチド配列によってコードされるPGRNタンパク質によって提供されるリソソーム酸性化の、同じ条件下での増大と実質的に同じであるか、又はそれを超える程度まで、リソソーム酸性化を増大させることができる。
【0118】
特定の実施形態において、PGRNタンパク質の機能的バリアント又は断片は、リソソーム酸性化を増大させることができる。PGRNタンパク質のバリアント又は断片は、対応する非バリアント又は全長PGRNタンパク質によって提供されるリソソーム酸性化の、同じ条件下での増大の少なくとも約50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%まで、リソソーム酸性化を増大させることができる。PGRNタンパク質のバリアント又は断片は、対応する非バリアント又は全長PGRNタンパク質によるリソソーム酸性化の、同じ条件下での調節と実質的に同じであるか、又はそれを超える程度まで、リソソーム酸性化を増大させることができる。
【0119】
リソソーム酸性化に及ぼすPGRNの効果を、当該技術分野における適切なあらゆる技術を用いて評価することができる。例えば、PGRNが欠損した培養細胞(例えば、GRN-/-細胞、又は発現PGRN発現がsiRNAによって下方制御されている細胞)が、PGRNタンパク質をコードするヌクレオチド配列の機能的バリアント又は断片を含む核酸構築体を含むベクターにより形質移入されてよい。次いで、形質移入された細胞におけるリソソームの酸性化を、LysoSensor DND-189又はアクリジンオレンジ等の細胞透過性色素を用いて評価することができる(Tanaka et al.,Human Molecular Genetics.2017;26(5):969-988参照)。LysoSensor DND-189の蛍光は、リソソーム酸性度に依存して増す。アクリジンオレンジ単量体は、緑色蛍光を発するが、その二量体及びオリゴマーが、プロトン化されると形成される。ゆえに、赤色/緑色蛍光の比は、リソソームの相対酸性度を示す。色素によって生成される蛍光シグナルは、蛍光顕微鏡又は蛍光プレートリーダーを用いて測定することができる。
【0120】
配列間の活性のいかなる比較も、同じアッセイを用いて行うべきである。別段の定めがない限り、ポリペプチド配列に対する修飾は、好ましくは保存的アミノ酸置換である。保存的置換は、アミノ酸を、類似の化学構造、類似の化学特性、又は類似の側鎖体積の他のアミノ酸で置換する。導入されるアミノ酸は、これが置換するアミノ酸と類似の極性、親水性、疎水性、塩基性、酸性度、中性、又は電荷を有し得る。これ以外にも、保存的置換は、既存の芳香族又は脂肪族アミノ酸の代わりに、芳香族又は脂肪族である別のアミノ酸を導入してよい。保存的アミノ酸変化は、当該技術分野において周知であり、以下の表A1に定義される20個の主アミノ酸の特性に従って選択され得る。アミノ酸が類似の極性を有する場合、表A2のアミノ酸側鎖の疎水性スケールを参照することによって決定することができる。
【表1】
【0121】
ベクター
本発明は、本発明の核酸構築体を含むベクターを提供する。ベクターは、あらゆるタイプのものであってよい。例えば、ベクターは、プラスミドベクターであってもミニサークルDNAであってもよい。しかしながら、典型的には、本発明のベクターはウイルスベクターである。ウイルスベクターは、単純ヘルペスウイルス、アデノウイルス、又はレンチウイルスベースであってよい。ウイルスベクターは、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター又はその誘導体であってよい。ウイルスベクター誘導体は、キメラ、シャッフル、又はカプシド修飾誘導体であり得る。
【0122】
ウイルスベクターは、AAVの天然由来の血清型、単離体、又はクレード由来のAAVゲノムを含み得る。AAV血清型は、AAVウイルスの感染(又は向性)の組織特異性を決定する。好ましくは、本発明に用いられるAAVは、CNSの細胞、例えば神経細胞、星状細胞、及び/又は乏突起膠細胞に形質導入することができる。例えば、AAV血清型は、AAV2、AAV5、又はAAV8、好ましくはAAV2であり得る。
【0123】
遺伝子治療の有効性は、一般に、供与されたDNAの適切かつ効率的な送達次第である。この方法は、通常、ウイルスベクターによって媒介される。パルボウイルスファミリーのメンバーであるアデノ随伴ウイルス(AAV)が、遺伝子治療に一般的に用いられている。ウイルス遺伝子を含有する野生型AAVは、そのゲノム材料を、宿主細胞の第19染色体中に挿入する(Kotin,et al.PNAS USA 1990.87:2211-2215)。AAV一本鎖DNAゲノムは、構造(cap)遺伝子及びパッケージング(rep)遺伝子を含有する2つの逆方向末端反復(ITR)及び2つのオープンリーディングフレームを含む(Hermonat et al.,J.Virol 1984.51:329-339)。治療目的のために、シスに必要な唯一の配列は、治療用遺伝子に加えて、ITRである。したがって、AAVウイルスは修飾される:ウイルス遺伝子は、ゲノムから除去されて、組換えAAV(rAAV)が生じる。これは、治療用遺伝子、2つのITRのみを含有する。ウイルス遺伝子の除去により、rAAVは、そのゲノムを宿主細胞DNA中にアクティブに挿入することができなくなる。代わりに、rAAVゲノムは、ITRを介して融合して、環状のエピソーム構造を形成するか、又は既存の染色体切断に挿入される。ウイルス生成のために、現在rAAVから除去されている構造遺伝子及びパッケージング遺伝子は、ヘルパープラスミドの形態でトランスで供給される。AAVベクターは、約4.8kbの比較的小さいパッケージング容量によって制限される。
【0124】
ほとんどの遺伝子治療ベクター構築体は、AAV血清型2(AAV2)に基づく。AAV2は、標的細胞にヘパラン硫酸プロテオグリカン受容体を介して結合する(Summerford and Samulski J.Virol,1998,72:1438-1445)。AAV2ゲノムは、全てのAAV血清型のゲノムと同様に、いくつかの異なるカプシドタンパク質内に封入され得る。AAV2は、その天然のAAV2カプシド内にパッケージングすることができ(AAV2/2)、又は他のカプシドによりシュードタイプ化することができる(例えば、AAV1カプシド内のAAV2ゲノム;AAV2/1、AAV5カプシド内のAAV2ゲノム;AAV2/5、及びAAV8カプシド内のAAV2ゲノム;AAV2/8)。
【0125】
本発明のベクターは、アデノ随伴ウイルス(AAV)ゲノム又はその誘導体を含み得る。
【0126】
AAVゲノムは、AAVウイルス粒子の生成に必要な機能をコードするポリヌクレオチド配列である。当該機能として、宿主細胞内でのAAVの複製及びパッケージングサイクルにおいて作動するものが挙げられ、AAVゲノムの、AAVウイルス粒子へのカプシド形成が挙げられる。天然に存在するAAVウイルスは、複製欠損しており、そして複製及びパッケージングサイクルの完了のためのトランスでのヘルパー機能の提供に依存する。したがって、そしてAAV rep及びcap遺伝子の更なる除去により、本発明のベクターのAAVゲノムは、複製欠損している。
【0127】
AAVゲノムは、ポジティブセンスもしくはネガティブセンスのいずれかの一本鎖形態、又は二本鎖形態であり得る。二本鎖形態の使用は、標的細胞におけるDNA複製工程のバイパスを可能にするので、導入遺伝子発現を加速することができる。AAVゲノムは、天然由来のあらゆる血清型、又はAAVの単離体もしくはクレードに由来し得る。当業者に知られているように、自然界に存在するAAVウイルスは、種々の生物系に従って分類され得る。
【0128】
一般に、AAVウイルスは、その血清型に関して言及される。血清型は、カプシド表面抗原の発現のプロファイルにより、他のバリアント亜種と区別するのに用いることができる特徴的な反応性を有するAAVのバリアント亜種に対応する。典型的には、特定のAAV血清型を有するウイルスは、他のあらゆるAAV血清型に特異的な中和抗体と効率的に交差反応しない。AAV血清型として、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10(AAVrH10)、及びAAV11が挙げられ、また、組換え血清型、例えば、霊長類の脳から同定されたRec2及びRec3も挙げられる。本発明のベクターにおいて、ゲノムは、あらゆるAAV血清型に由来し得る。また、カプシドは、あらゆるAAV血清型に由来し得る。ゲノム及びカプシドは、同じ血清型に由来しても異なる血清型に由来してもよい。本発明のベクターにおいて、ゲノムは、AAV血清型2(AAV2)、AAV血清型4(AAV4)、AAV血清型5(AAV5)、又はAAV血清型8(AAV8)に由来することが好ましい。ゲノムは、AAV2に由来することがより好ましい。
【0129】
AAVがAAV-TTであることがさらに好ましい。AAV-TTは、Tordo et al.,Brain.2018;141(7):2014-2031及び国際公開第2015/121501号パンフレット(これらは参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる)に詳細に説明されている。
【0130】
AAV血清型のレビューを、Choi et al(Curr Gene Ther.2005;5(3);299-310)及びWu et al(Molecular Therapy.2006;14(3),316-327)において見出すことができる。本発明に用いられるITR配列、rep又はcap遺伝子を含むAAVゲノムの配列、又はAAVゲノムの要素の配列は、AAV全ゲノム配列について、以下の受託番号に由来し得る:アデノ随伴ウイルス1 NC_002077、AF063497;アデノ随伴ウイルス2 NC_001401;アデノ随伴ウイルス3 NC_001729;アデノ随伴ウイルス3B NC_001863;アデノ随伴ウイルス4 NC_001829;アデノ随伴ウイルス5 Y18065、5 AF085716;アデノ随伴ウイルス6 NC_001862;トリAAV ATCC VR-865 AY186198、AY629583、NC_004828;トリAAV株DA-1 NC_006263、AY629583;ウシAAV NC_005889、AY388617。
【0131】
また、AAVウイルスは、クレード又はクローンに関して言及され得る。これは、天然由来のAAVウイルスの系統関係に言及し、そして典型的には、共通の祖先に遡ることができ、かつその全ての子孫を含むAAVウイルスの系統群に言及する。加えて、AAVウイルスは、特定の単離体、すなわち自然界で見出される特定のAAVウイルスの遺伝的単離体に関して言及され得る。用語遺伝的単離体は、他の天然に存在するAAVウイルスとの遺伝的混合が限られていたことによって、遺伝子レベルで認識可能に異なる集団を定義するAAVウイルスの集団を説明する。本発明に用いられ得るAAVのクレード及び単離体の例として、以下が挙げられる:
・クレードA:AAV1 NC_002077、AF063497、AAV6 NC_001862、Hu.48 AY530611、Hu 43 AY530606、Hu 44 AY530607、Hu 46 AY530609;
・クレードB:Hu.19 AY530584、Hu.20 AY530586、Hu 23 AY530589、Hu22 AY530588、Hu24 AY530590、Hu21 AY530587、Hu27 AY530592、Hu28 AY530593、Hu 29 AY530594、Hu63 AYS30624、Hu64 AY530625、Hul3 AY530578、Hu56 AY530618、Hu57 AY530619、Hu49 AY530612、Hu58 AY530620、Hu34 AY530598、Hu35 AY530599、AAV2 NC_001401、Hu45 AY530608、Hu47 AY530610、Hu51 AY530613、Hu52 AY530614、Hu T41 AY695378、Hu S17 AY695376、Hu T88 AY695375、Hu T71 AY695374、Hu T70 AY695373、Hu T40 AY695372、Hu T32 AY695371、Hu T17 AY695370、Hu LG15 AY695377;
・クレードC:Hu9 AY530629、HulO AY530576、Hull AY530577、Hu53 AY530615、Hu55 AY530617、Hu54 AY530616、Hu7 AY530628、Hul8 AY530583、Hul5 AY530580、Hul6 AY530581、Hu25 AY530591、Hu60 AY530622、Ch5 AY243021、Hu3 AY530595,Hul AY530575、Hu4 AY530602 Hu2、AY530585、Hu61 AY530623;
・クレードD:Rh62 AY530573、Rh48 AY530561、Rh54 AY530567、Rh55 AY530568、Cy2 AY243020、AAV7 AF513851、Rh35 AY243000、Rh37 AY242998、Rh36 AY242999、Cy6 AY243016、Cy4 AY243018、Cy3 AY243019、Cy5 AY243017、Rhl3 AY243013;
・クレードE:Rh38 AY530558、Hu66 AY530626、Hu42 AY530605、Hu67 AY530627、Hu40 AY530603、Hu41 AY530604、Hu37 AY530600、Rh40 AY530559、Rh2 AY243007、Bbl AY243023、Bb2 AY243022、RhlO AY243015、Hul7 AY530582、Hub AY530621、Rh25 AY530557、Pi2 AY530554、Pil AY530553、Pi3 AY530555、Rh57 AY530569、Rh50 AY530563、Rh49 AY530562、Hu39 AY530601、Rh58 AY530570、Rhbl AY530572、Rh52AY530565、Rh53 AY530566、Rh51 AY530564、Rh64 AY530574、Rh43 AY530560、AAV8 AF513852、Rh8 AY242997、Rhl AY530556;及び
・クレードF:Hu 14(AAV9)AY530579、Hu31 AY530596、Hu32 AY530597;クローン単離体AAV5 Y18065、AF085716、AAV 3 NC_001729、AAV 3B NC_001863、AAV4 15 NC_001829、Rh34 AY243001、Rh33 AY243002、Rh32 AY243003。
【0132】
当業者であれば、共通の一般知識に基づいて、本発明に用いられるAAVの適切な血清型、クレード、クローン、又は単離体を選択することができる。しかしながら、本発明はまた、まだ同定も特徴付けもされていない可能性がある他の血清型のAAVゲノムの使用も包含することが理解されるべきである。
【0133】
典型的には、AAVの天然由来の血清型、又は単離体もしくはクレードのAAVゲノムは、少なくとも1つの逆方向末端反復配列(ITR)を含む。本発明のベクターは、2つのITR、好ましくはゲノムの各末端に1つのITRを含み得る。ITR配列は、シスで作用して、機能的複製起点を提供し、そしてベクターの組込み、及び細胞のゲノムからの切除を可能にする。好ましいITR配列は、AAV2及びそのバリアントのITR配列である。AAVゲノムは典型的に、AAVウイルス粒子のパッケージング機能をコードするrep及び/又はcap遺伝子等のパッケージング遺伝子を含む。rep遺伝子は、タンパク質Rep78、Rep68、Rep52、及びRep40、又はそれらのバリアントの1つ以上をコードする。cap遺伝子は、1つ以上のカプシドタンパク質、例えば、VP1、VP2、及びVP3、又はそれらのバリアントをコードする。これらのタンパク質は、AAVウイルス粒子のカプシドを構成する。カプシドバリアントを、以下で考察する。
【0134】
好ましくは、AAVゲノムは、患者への投与を目的として誘導体化されることとなる。そのような誘導体化は、当該技術分野において標準的であり、そして本発明は、AAVゲノムの知られているあらゆる誘導体、及び当該技術分野において知られている技術を用いることによって生成され得る誘導体の使用を包含する。AAVゲノムの、そしてAAVカプシドの誘導体化は、Coura and Nardi(Virology Journal.2007;4:99)及び上記のChoi et alにおいてレビューされている。
【0135】
AAVゲノムの誘導体として、本発明のベクターからのRep-1導入遺伝子のインビボ発現を可能にするあらゆるトランケート形態又は修飾形態のAAVゲノムが挙げられる。典型的には、最小ウイルス配列を含むが、先の機能を保持するようにAAVゲノムをかなりトランケートすることが可能である。これは、ベクターの、野生型ウイルスとの組換えのリスクを引き下げ、そしてまた、標的細胞内でのウイルス遺伝子タンパク質の存在によって細胞性免疫応答をトリガーするのを回避する安全上の理由から、好ましい。典型的には、誘導体は、少なくとも1つの逆方向末端反復配列(ITR)、好ましくは複数のITR、例えば2つ以上のITRを含むこととなる。ITRの1つ以上が、異なる血清型を有するAAVゲノムに由来してもよいし、キメラ又は変異ITRであってもよい。好ましい変異ITRは、trs(末端分離部位)の欠失を有する変異ITRである。この欠失は、ゲノムの継続的な複製を可能にして、コード配列及び相補配列の双方を含有する一本鎖ゲノム、すなわち自己相補性AAVゲノムを生成する。これは、標的細胞におけるDNA複製のバイパスを可能にするので、導入遺伝子発現の加速を可能にする。
【0136】
1つ以上のITRは、好ましくは、本発明の核酸構築体、すなわち、MeCP2プロモータを含むヌクレオチド配列及びPGRNタンパク質をコードするヌクレオチド配列の側面に位置することとなる。1つ以上のITRを含めることは、本発明のベクターの、ウイルス粒子中へのパッケージングを助けるのに好ましい。好ましい実施形態において、ITR要素は、誘導体内の天然AAVゲノムから保持される唯一の配列となる。ゆえに、誘導体は、好ましくは、天然ゲノム及び天然ゲノムの他のあらゆる配列のrep及び/又はcap遺伝子を含むこととはならない。これは、上記の、そしてまた、宿主細胞ゲノム中へのベクターの組込みの可能性を引き下げる理由から、好ましい。加えて、AAVゲノムのサイズを引き下げることにより、導入遺伝子に加えて、他の配列要素(調節エレメント等)をベクター内に組み込む際のフレキシビリティを増大させることが可能になる。
【0137】
したがって、AAV2ゲノムを参照して、本発明の誘導体内の以下の部分を除去することができる:1つの逆方向末端反復(ITR)配列、複製(rep)及びカプシド(cap)遺伝子。しかしながら、インビトロ実施形態を含む一部の実施形態において、誘導体は加えて、AAVゲノムの1つ以上のrep及び/もしくはcap遺伝子又は他のウイルス配列を含んでよい。誘導体は、1つ以上の天然に存在するAAVウイルスのキメラ、シャッフル、又はカプシド修飾誘導体であってよい。本発明は、同じベクター内でのAAVの異なる血清型、クレード、クローン、又は単離体由来のカプシドタンパク質配列の使用を包含する。また、本発明は、一方の血清型のゲノムを、もう一方の血清型のカプシド中にパッケージングすること、すなわちシュードタイプ化することを包含する。キメラ、シャッフル、又はカプシド修飾誘導体は、ウイルスベクターに1つ以上の所望の官能基を提供するように選択され得る。ゆえに、これらの誘導体は、天然に存在するAAVゲノム(AAV2のもの等)を含むAAVウイルスベクターと比較して、遺伝子送達の効率の向上、免疫原性(体液性又は細胞性)の低下、向性範囲の改変、及び/又は特定の細胞型の標的化の向上を示し得る。遺伝子送達の効率の向上は、細胞表面での受容体又は共受容体結合の向上、インターナリゼーションの向上、細胞内及び核中への輸送の向上、ウイルス粒子のアンコーティングの向上、ならびに一本鎖ゲノムの、二本鎖形態への変換の向上によって達成され得る。また、効率の向上は、ベクター用量が、これを必要としない組織への投与によって希釈されないような、特定の細胞集団の向性範囲又は標的化の改変に関連し得る。
【0138】
キメラカプシドタンパク質として、天然に存在するAAV血清型の2つ以上のカプシドコード配列間の組換えによって生成されるものが挙げられる。これは、例えば、1つの血清型の非感染性カプシド配列を、異なる血清型のカプシド配列と同時形質移入して、指向性選択を用いて、所望の特性を有するカプシド配列を選択するマーカーレスキューアプローチによって実行され得る。異なる血清型のカプシド配列は、細胞内の相同組換えによって変更されて、新規キメラカプシドタンパク質を生成することができる。また、キメラカプシドタンパク質として、2つ以上のカプシドタンパク質間、例えば異なる血清型の2つ以上のカプシドタンパク質間に、特定のカプシドタンパク質ドメイン、表面ループ、又は特定のアミノ酸残基を移入するようにカプシドタンパク質配列を操作することによって生成されるものが挙げられる。また、シャッフル又はキメラカプシドタンパク質は、DNAシャッフル又はエラープローンPCRによって生成され得る。ハイブリッドAAVカプシド遺伝子は、関連するAAV遺伝子、例えば複数の異なる血清型のカプシドタンパク質をコードする遺伝子の配列をランダムに断片化してから、自己プライミングポリメラーゼ反応において断片を再アセンブルすることによって作出することができ、これはまた、配列相同性の領域において交差を引き起こし得る。いくつかの血清型のカプシド遺伝子をシャッフルすることによって、このようにして作成されるハイブリッドAAV遺伝子のライブラリをスクリーニングして、所望の機能性を有するウイルスクローンを同定することができる。同様に、エラープローンPCRを用いて、AAVカプシド遺伝子をランダムに変異させて、バリアントの多様なライブラリを作成することができ、これはその後、所望の特性について選択され得る。
【0139】
また、カプシド遺伝子の配列は、天然の野生型配列に対して特異的な欠失、置換、又は挿入を導入するように遺伝子修飾され得る。特に、カプシド遺伝子は、カプシドコード配列のオープンリーディングフレーム内に、又はカプシドコード配列のN末端及び/もしくはC末端に、無関係のタンパク質又はペプチドの配列を挿入することによって修飾され得る。無関係なタンパク質又はペプチドは、有利には、特定の細胞型に対するリガンドとして作用することによって、標的細胞への結合の向上を付与するか、又は特定の細胞集団に対するベクターの標的化の特異性を向上させるものであり得る。また、無関係なタンパク質は、生成方法の一部としてウイルス粒子の精製を補助するもの、すなわちエピトープであってもアフィニティタグであってもよい。挿入部位は、典型的には、ウイルス粒子の他の機能、例えば内在化、ウイルス粒子の輸送に干渉しないように選択されることとなる。当業者であれば、一般知識に基づいて、挿入に適した部位を特定することができる。特定の部位が、上記のChoi et alに開示されている。
【0140】
本発明は加えて、ネイティブAAVゲノムの配列とは異なる順序及び構成のAAVゲノムの配列の使用を包含する。また、本発明は、1つ以上のAAV配列又は遺伝子を、別のウイルス由来の配列、又は複数のウイルス由来の配列で構成されるキメラ遺伝子と置換することを包含する。そのようなキメラ遺伝子は、異なるウイルス種の2つ以上の関連ウイルスタンパク質由来の配列で構成されていてよい。
【0141】
また、本発明は、本発明のベクターを含むAAVウイルス粒子を提供する。本発明のAAV粒子は、一血清型のITRを有するAAVゲノム又は誘導体が、異なる血清型のキャプシド内にパッケージングされているトランスキャプシド化形態を含む。また、本発明のAAV粒子は、2つ以上の異なる血清型に由来する未修飾カプシドタンパク質の混合物が、ウイルスエンベロープを構成するモザイク形態を含む。また、AAV粒子は、キャプシド表面に吸着されるリガンドを有する化学修飾形態を含む。例えば、そのようなリガンドは、特定の細胞表面受容体を標的とするための抗体を含み得る。
【0142】
本発明の、AAVベクターが挙げられるベクター、及び本発明のAAVウイルス粒子は、遺伝子治療のためのベクターを提供するための、当該技術分野において知られている標準的な手段によって調製され得る。ゆえに、十分に確立されたパブリックドメイン形質移入、パッケージング、及び精製方法を用いて、適切なベクター調製物を調製することができる。
【0143】
PGRNタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む本発明の核酸構築体及びベクターは、例えば、患者のGRN遺伝子の一方又は双方の対立遺伝子内の変異によって生じ得るPGRN機能の消失をレスキューする能力を有する。「レスキュー」は、一般に、PRGN欠乏と関連する表現型のあらゆる改善又は進行の遅延、例えば、脳内のPGRNタンパク質の存在の回復及び/又は神経病態の軽減を意味する。
【0144】
本発明の核酸構築体及びベクターの特性は、当業者に知られている技術を用いて試験されてよい。例えば、本発明の核酸構築体が、本発明のベクター中にアセンブルされて、マウス又は霊長類等のPRGN欠損試験動物に送達されて、効果を観察して、対照と比較することができる。
【0145】
配列番号10は、MeCP2_2プロモータを含む構築体pPG36のヌクレオチド配列に相当する。特定の実施形態において、本発明の核酸構築体又はウイルスベクターは、配列番号10のヌクレオチド配列、又はその、配列番号10のヌクレオチド配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、もしくは99.9%の同一性を有する機能的バリアントもしくは断片を含むか、又はそれらからなる。
【0146】
配列番号11は、MeCP2_1プロモータを含む構築体pPG35のヌクレオチド配列に相当する。特定の実施形態において、本発明の核酸構築体又はウイルスベクターは、配列番号11のヌクレオチド配列、又はその、配列番号11のヌクレオチド配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、もしくは99.9%の同一性を有する機能的バリアントもしくは断片を含むか、又はそれらからなる。
【0147】
配列番号17は、AAVTT-pPG36のヌクレオチド配列、すなわち構築体pPG36のヌクレオチド配列を含むAAVTTベクターゲノムに相当する。特定の実施形態において、本発明のウイルスベクター、例えばAAVベクター又はAAVTTベクターは、配列番号17のヌクレオチド配列、又はその、配列番号17のヌクレオチド配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、もしくは99.9%の同一性を有する機能的バリアントもしくは断片を含むか、又はそれらからなる。
【0148】
配列番号18及び19は、それぞれAAVTT-p1PG36及びAAVTT-p2PG36と称される2つの代替AAVTTベクターゲノムのヌクレオチド配列に相当する。AAVTT-p1PG36(配列番号18)及びAAVTT-p2PG36(配列番号19)は双方とも、配列番号17のヌクレオチド配列を含む。特定の実施形態において、本発明のウイルスベクター、例えばAAVベクター又はAAVTTベクターは、配列番号18のヌクレオチド配列、又はその、配列番号18のヌクレオチド配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、もしくは99.9%の同一性を有する機能的バリアントもしくは断片を含むか、又はそれらからなる。特定の実施形態において、本発明のウイルスベクター、例えばAAVベクター又はAAVTTベクターは、配列番号19のヌクレオチド配列、又はその、配列番号19のヌクレオチド配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、もしくは99.9%の同一性を有する機能的バリアントもしくは断片を含むか、又はそれらからなる。
【0149】
医薬組成物及び投薬量
本発明の核酸構築体及びベクターは、医薬組成物に製剤化することができる。ゆえに、本発明は、本発明の核酸構築体、本発明のベクター、及び/又は本発明のウイルスベクターを、薬学的に許容される担体、賦形剤、又は希釈剤と一緒に含む医薬組成物を提供する。
【0150】
本発明の医薬組成物は、薬学的に許容される賦形剤、担体、バッファ、安定化剤、又は当業者に周知の他の材料を含んでよい。そのような材料は、非毒性であるべきであり、活性成分の有効性に干渉すべきでない。担体又は他の材料の正確な性質は、投与経路に従って、当業者によって決定され得る。
【0151】
医薬組成物は、液体形態で提供され得る。液体医薬組成物は、一般に、水、石油、動物油もしくは植物油、鉱油、又は合成油等の液体担体を含む。生理食塩水、塩化マグネシウム、デキストロース、もしくは他の糖の溶液、又はグリコール、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、もしくはポリエチレングリコールが含まれてもよい。任意に、プルロン酸(PF68)0.001%等の界面活性剤が用いられ得る。
【0152】
罹患部位での注射のために、活性成分は、パイロジェンフリーであり、かつpH、等張性、及び安定性が適切な水溶液の形態となる。当業者であれば、例えば、塩化ナトリウム注射液、リンガー注射液、ラクトリンガー注射液、ハルトマン溶液等の等張性ビヒクルを用いて、適切な溶液を調製することが十分に可能である。必要に応じて、防腐剤、安定化剤、バッファ、酸化防止剤、及び/又は他の添加剤が含まれてよい。遅延放出のために、ベクターは、当該技術分野において知られている方法に従って、徐放用に製剤化されている医薬組成物内に、例えば、生体適合性ポリマーから形成されたマイクロカプセル内に、又はリポソーム担体系内に含まれてよい。
【0153】
投薬量及び投薬レジメンは、組成物の投与を担当する医師の通常の技能の範囲内で決定することができる。
【0154】
治療方法及び医学的使用
また、本発明は、本明細書中に記載される核酸構築体、ベクター、ウイルスベクター、及び医薬組成物の、患者において疾患又は症状を処置又は予防する際の使用を包含する。
【0155】
ゆえに、本発明は、疾患又は症状の処置又は予防を必要とする患者において疾患又は症状を処置又は予防する方法に用いられる本発明の核酸構築体、本発明のベクター、本発明のウイルスベクター、及び/又は本発明の医薬組成物を提供する。本発明はさらに、疾患又は症状の処置又は予防を必要とする患者において疾患又は症状を処置又は予防する方法であって、患者に、治療有効量の本発明の核酸構築体、本発明のベクター、本発明のウイルスベクター、及び/又は本発明の医薬組成物を投与することを含む方法を提供する。また、本発明は、本発明の核酸構築体、本発明のベクター、本発明のウイルスベクター、及び/又は本発明の医薬組成物の、疾患又は症状の処置又は予防を必要とする患者において疾患又は症状を処置又は予防するための医薬品を製造するための使用を提供する。
【0156】
疾患又は症状は、PGRN欠乏によって特徴付けられ得る。前記PGRN欠乏は、処置されることとなる患者のGRN遺伝子の一方又は双方の対立遺伝子における機能変異の消失の結果として生じ得る。
【0157】
ゆえに、本発明は、プログラニュリン(PGRN)欠乏によって特徴付けられる疾患の処置又は予防を必要とする患者において当該疾患を処置又は予防する方法に用いられる本発明の核酸構築体、本発明のベクター、本発明のウイルスベクター、及び/又は本発明の医薬組成物を提供する。本発明はさらに、ログラニュリン(PGRN)欠乏によって特徴付けられる疾患の処置又は予防を必要とする患者において当該疾患を処置又は予防する方法であって、患者に、治療有効量の本発明の核酸構築体、本発明のベクター、本発明のウイルスベクター、及び/又は本発明の医薬組成物を投与することを含む方法を提供する。また、本発明は、本発明の核酸構築体、本発明のベクター、本発明のウイルスベクター、及び/又は本発明の医薬組成物の、ログラニュリン(PGRN)欠乏によって特徴付けられる疾患を処置又は予防するための医薬品を製造するための使用を提供する。
【0158】
本発明の核酸構築体、本発明のベクター、本発明のウイルスベクター、及び/又は本発明の医薬組成物により処置されることとなるPGRN欠乏によって特徴付けられる疾患は、中枢神経系(CNS)の疾患であり得る。
【0159】
本発明の核酸構築体、本発明のベクター、本発明のウイルスベクター、及び/又は本発明の医薬組成物により処置されることとなるPGRN欠乏によって特徴付けられる疾患は、前頭側頭型認知症(FTD)であり得る。
【0160】
本発明の核酸構築体、本発明のベクター、本発明のウイルスベクター、及び/又は本発明の医薬組成物により処置されることとなるPGRN欠乏によって特徴付けられる疾患は、神経セロイドリポフスチン症11型(NCL11)であり得る。
【0161】
本発明の核酸構築体、本発明のベクター、本発明のウイルスベクター、及び/又は本発明の医薬組成物により処置されることとなるPGRN欠乏によって特徴付けられる疾患はさらに、リソソーム酸性化の調節不全等のリソソーム機能不全によって特徴付けられ得る。前記リソソーム機能不全は、カテプシンD、好ましくは成熟重鎖及び/又は軽鎖カテプシンDの発現レベル及び/又は活性の増大によって特徴付けられ得る。
【0162】
本発明の核酸構築体、本発明のベクター、本発明のウイルスベクター、及び/又は本発明の医薬組成物による処置を必要とする患者は、男性であっても女性であってもよい。前記患者は、PGRN欠乏によって特徴付けられる疾患のリスクがあるか、又は当該疾患を有すると以前に特定されていてよい。前記患者は、FTDのリスクがあるか、又はFTDを有すると以前に特定されていてよい。前記患者は、NCL11のリスクがあるか、又はNCL11を有すると以前に特定されていてよい。
【0163】
本発明のベクターの用量は、種々のパラメータに従って、とりわけ処置されることとなる患者の年齢、体重、及び状態;投与経路;ならびに必要とされるレジメンに従って決定され得る。医師は、任意の特定の患者に必要とされる投与経路及び投薬量を決定することができる。
【0164】
本発明の核酸構築体、ベクター、ウイルスベクター、又は医薬組成物は、患者の脳及び/又は脳脊髄液(CSF)に投与され得る。脳への送達は、脳内送達、実質内送達、被殻内送達、及びそれらの組合せから選択され得る。脳内の更なる標的領域として、視床、小脳、視床下核、及びそれらの組合せが挙げられ得る。CSFへの送達は、大槽内送達、髄腔内送達、脳室内(ICV)送達、及びそれらの組合せから選択され得る。
【0165】
患者の脳及び/又は脳脊髄液(CSF)への送達は、注射によるものであり得る。脳への注射は、脳内注射、実質内注射、被殻内注射、及びそれらの組合せから選択され得る。CSFへの送達は、大槽内注射、髄腔内注射、脳室内(ICV)注射、及びそれらの組合せから選択され得る。
【0166】
脳及び/又は脳脊髄液への注射は、対流増強送達(CED)を含み得る。CED手順は、脳の低侵襲性外科的曝露と、それに続く脳の標的領域中への小径カテーテルの直接的配置とを含む。CEDは、例えば、Debinski et al.(2009)Expert Rev Neurother.9(10):1519-27によって説明されている。
【0167】
本発明の核酸構築体、ベクター、ウイルスベクター、又は医薬組成物の用量は、単回用量として提供されてもよいが、正しい領域をベクターが標的としなかった場合に、繰り返されてもよい。処置は、好ましくは単回注射であるが、例えば将来の数年間の、及び/又は異なるAAV血清型による反復注射が考慮されてもよい。
【0168】
宿主細胞
本発明は加えて、本発明の核酸構築体、本発明のベクター、本発明のウイルスベクター、及び/又は本発明のAAVウイルス粒子を含む宿主細胞を提供する。また、本発明は、本発明のウイルスベクター及び/又は本発明のAAV粒子を生成する宿主細胞を提供する。
【0169】
適切なあらゆる宿主細胞は、本発明の核酸構築体、本発明のベクター、本発明のウイルスベクター、及び/又は本発明のAAVウイルス粒子を含み得る。さらに、適切なあらゆる宿主細胞を用いて、本発明のウイルスベクター及び/又は本発明のAAV粒子を生成することができる。一般に、そのような細胞は、形質移入される哺乳動物細胞となるが、他の細胞型、例えば昆虫細胞を用いることもできる。哺乳動物細胞生成系に関して、HEK293及びHEK293TがAAVベクターに好ましい。また、BHK細胞又はCHO細胞を用いてもよい。
【0170】
キット
本発明はさらに、本発明の核酸構築体、本発明のベクター、本発明のウイルスベクター、及び/又は本発明の医薬組成物を含むキットを提供する。
【0171】
本発明を、以下の例によってさらに説明するが、当該例は、保護の範囲を限定するものとして解釈されるべきでない。前述の説明及び以下の例に開示される特徴は、別々に、そしてそれらのあらゆる組合せで、本発明をその多様な形態で実現するための材料となり得る。
【0172】

例1-材料及び方法
細胞培養
HEK293T細胞を、American Tissue Collection Center(ATCC,Manassas,VA,USA)から得て、10%FBS及び1%ペニシリン/ストレプトマイシンを補充したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)内で維持した。A549細胞を、Sigma Aldrich(St Louis,MO,USA)から得て、10%FBS及び1%ペニシリン/ストレプトマイシンを補充したHam’s F-12培地(F-12K)のKaighn改変内で維持した。CaSki細胞を、ATCC(Manassas,VA,USA)から得て、10%FBS及び1%ペニシリン/ストレプトマイシンを補充したロズウェルパーク記念研究所の1640培地(RPMI-1640)で維持した。COS-7細胞を、ATCC(Manassas,VA,USA)から得て、10%FBS及び1%ペニシリン/ストレプトマイシンを補充したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)内で維持した。VERO細胞を、ATCC(Manassas,VA,USA)から得て、10%FBS及び1%ペニシリン/ストレプトマイシンを補充したイーグル最小必須培地(EMEM)内で維持した。Neuro-2A細胞を、ATCC(Manassas,VA,USA)から得て、10%FBS及び1%ペニシリン/ストレプトマイシンを補充したイーグル最小必須培地(EMEM)内で維持した。NIH3T3細胞を、ATCC(Manassas,VA,USA)から得て、10%FBS及び1%ペニシリン/ストレプトマイシンを補充したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)内で維持した。HAP1細胞及びHAP1 GRN KO細胞を、Horizon Discovery(Waterbeach,United Kingdom)から得て、10%FBS及び1%ペニシリン/ストレプトマイシンを補充したIscoveの改変ダルベッコ培地(IMEM)内で維持した。
【0173】
コドン最適化
CpG含量が引き下げられたPGRNをコードするコドン最適化ヌクレオチド配列を生成した。コドン最適化配列を「CpG X」と命名し、式中、Xは、コドン最適化配列内に保持された野生型CpG部位のパーセンテージを示す。例えば、CpG 90と命名したヌクレオチド配列は、対応する野生型配列のCpG部位の90%を含む。結果として生じた配列を、発現ベクター中にクローニングした。
【0174】
レンチウイルス生成
用いたレンチウイルスベクターは全て、第2世代であり、Salmon,P.and D.Trono(「レンチウイルスベクターの生成及び滴定」(’Production and titration of lentiviral vectors’).Curr Protoc Neurosci,2006.Chapter 4:Unit 4.21)において以前に説明された標準的なウイルス生成方法を用いて生成した。簡潔には、10cmディッシュあたり570万個のHEK293T細胞をプレーティングした。翌日、細胞を、10μgのトランスファーベクター、3μgのpMD2G、及び8μgのpsPAX2を有するリポフェクタミン2000(ThermoFisher)により形質移入した。培地を、形質移入の12~14時間後に交換した。この培地交換の24時間後及び48時間後に、合計20mLのウイルスについて、ウイルス上清を収集して、0.45μmフィルターに通した。ウイルス上清を、急速凍結する前にLenti-X(商標)コンセントレータ(CloneTech)を用いてPBS中に20×に濃縮した。
【0175】
レンチウイルス滴定
全てのレンチウイルスを、Lenti-X qRT-PCR滴定キット(Takara)を用いて滴定した。
【0176】
レンチウイルス形質導入
細胞を再懸濁させて、4μg/mlポリブレンを補充した等しい濃度のウイルス上清中にプレーティングした。12~24時間後、ウイルス上清をフレッシュな培地と交換した。Cos-8、NIH3T3、A549、CaSKi、HEK293T、SK-N-SH細胞を、200のMOIにて形質導入した。VERO及びNeuro-2A細胞を、1000のMOIにて形質導入した。
【0177】
ウエスタンブロット分析
リポフェクタミン2000(ThermoFisher)を用いて、製造業者の指示に従って、注目する構築体をHEK293T細胞に形質移入した。形質移入の2日後、細胞を、プロテアーゼインヒビタカクテル(Sigma-Aldrich)を補充したRIPAバッファ(Sigma-Aldrich)中に溶解した。タンパク質濃度を、BCAタンパク質アッセイ試薬(ThermoFisher)及びVarioskab LUX Microplate Reader(ThermoFisher)を用いて測定した。溶解物をローディングバッファと混合した;等量のタンパク質を、Mini-PROTEAN TGX 4~15%プレキャストポリアクリルアミドゲル(Bio-Rad)上で泳動して、Trans-Blot Turbo System(Bio-Rad)を用いてニトロセルロース膜に転写した。非特異的抗体結合を、Intercept TBSブロッキングバッファ(Li-Cor)により、室温にて1時間ブロッキングした。膜を、以下の一次抗体とインキュベートした:抗PGRN(1:200希釈、AF2420、R&D Systems)(Intercept T20 TBS(Li-Cor)中)、4℃にて一晩;抗アクチン(1:5000希釈、Sigma-Aldrich、A 2066)(Intercept T20 TBS(Li-Cor)中)、4℃にて一晩。膜を、TBSTで15分間洗浄して、ロバ抗ヤギ680 RD(Li-Cor、1:5000)及びロバ抗ウサギ800CW(Li-Cor、1:5000)抗体(Intercept T20 TBS中)と45分間インキュベーションしてから、TBSTで15分間洗浄した。膜を、Odyssey CLx(Li-Cor)を用いて視覚化した。
【0178】
リポフェクタミン2000(ThermoFisher)を用いて、製造業者の指示に従って、注目する構築体をGRN+/+HAP-1(野生型)細胞及びGRN-/-HAP-1(KO)細胞に形質移入した。形質移入の2日後、細胞を、RIPAバッファ(Sigma-Aldrich)中に溶解した。タンパク質濃度を、Pierce BCAタンパク質アッセイ試薬(ThermoFisher)及びSpectraMax i3X Multiplate Reader(Molecular Devices)を用いて測定した。溶解物をローディングバッファと混合した;等量のタンパク質を、Mini-PROTEAN TGX 4~15%プレキャストポリアクリルアミドゲル(Bio-Rad)上で泳動して、Trans-Blot Turbo System(Bio-Rad)を用いてニトロセルロース膜に転写した。非特異的抗体結合を、Intercept TBSブロッキングバッファ(Li-Cor)により、室温にて1時間ブロッキングした。膜を、以下の一次抗体とインキュベートした:抗PGRN(1:200希釈、AF2420、R&D Systems)(Intercept T20 TBS(Li-Cor)中)、4℃にて一晩;抗アクチン(1:10000希釈、Sigma-Aldrich、A 2066)(Intercept T20 TBS(Li-Cor)中)、4℃にて一晩。膜を、TBSTで15分間洗浄して、ロバ抗ヤギ680 RD(Li-Cor、1:5000)及びロバ抗マウス800CW(Li-Cor、1:5000)抗体(Intercept T20 TBS中)と1時間インキュベーションしてから、TBSTで15分間洗浄した。膜を、Odyssey CLx(Li-Cor)を用いて視覚化した。
【0179】
ニューロン-星状細胞の共培養及び形質導入
一次ニューロン-星状細胞共培養体を、C57BL/6Jマウス(Janvier Labs,France)の17日目の胚から調製した。新たに切開した皮質組織を最初に、パパイン溶液(Sigma Aldrich,P4762)を用いて解離させた。細胞をニューロンアタッチメント培地中に希釈して、ポリ-D-リジン(CORNING 356692)によりプレコーティングした96ウェルプレート上にプレーティングした(10000個の細胞/ウェル)。ニューロンアタッチメント培地は、2.5%熱不活化ウシ胎仔血清(ThermoFisher Scientific,A3840002)、1mMピルビン酸ナトリウム(ThermoFisher Scientific,11360070)、2mM Glutamax-100X(ThermoFisher Scientific,35050061)、B27 Plus Supplement(ThermoFisher Scientific,17504044)、及び50単位/mlペニシリン/ストレプトマイシン(ThermoFisher Scientific,15070063)を補充したNeurobasal plus培地(ThermoFisher Scientific,A3582901)からなる。細胞を、フレッシュな無血清neurobasal培地を毎週補充することによって維持した。レンチウイルス媒介形質導入を、DIV3(インビトロ日)に実行した。レンチウイルスストックを、培養培地中に希釈して、図の説明文に示すように、所与のMOI(感染多重度)にて細胞の上部にアプライした。DIV14、すなわち形質導入の10日後に、細胞を固定して、免疫細胞化学を実行した。
【0180】
免疫標識及び画像化
免疫細胞化学を、一次ニューロン及び星状細胞における形質導入の後に実行した。細胞を3回洗浄してから(1×PBS)、4%PFA(ThermoFischer Scientific,28908)を用いて室温にて10分間固定した。次いで、細胞を、0.25%-Triton-X/3%-BSA/1X-PBS溶液(BSA:ウシ血清アルブミン、VWR、1005-30-1L;Sigma AldrichのTriton-X-100,T8787)を用いて10分間透過処理した。透過処理後、細胞を、3%-BSA/1X-PBS溶液を用いて30分間ブロッキングした。次いで、細胞を、一次抗体で標識してから(60分)、蛍光コンジュゲート二次抗体で標識した(45分)(抗体のリストについては以下を参照)。画像化を、Zeiss LSM 880(SH-SY5Y細胞)及びPerkin Elmer OperaPhenix(ニューロン/星状細胞)機器で実行した。閾値設定及び定量化を、Image J又はPerkin Elmer Harmonyソフトウェアで実行した。
【表2】
【0181】
ELISA
ヒトプログラニュリンELISAキット(AG-45A-0018YEK-KI 01,Adipogen)を用いて、マウスニューロン-星状細胞共培養体の形質導入後の分泌されたヒトPGRNのレベルを定量した。細胞培養培地を、形質導入の10日後に収集した。サンプルを1:100に希釈して、ELISA測定を、供給元の指示に従って実行した。比色反応を、標準プレートリーダー(Flex Station3,Molecular Devices)を用いて測定した。
【0182】
ヒトプログラニュリンELISAキット(DPGRN0,RD Systems)を用いて、GRN+/+HAP-1(野生型)細胞及びGRN-/-HAP-1(KO)細胞の形質移入後の分泌されたヒトプログラニュリンのレベルを定量した。細胞培養培地を、形質移入の24時間後に収集した。ELISA測定を、供給元の指示に従って実施した。比色反応を、SpectraMax i3X Multiplate Reader(Molecular Devices)により測定した。
【0183】
脳の切片化、免疫組織化学、及び獲得
脳切片化を、Neuroscience Associates(TN,USA)にて実行した。最初に、脳を20%グリセロール及び2%ジメチルスルホキシドにより一晩処理して凍結アーチファクトを防止して、MultiBrain(登録商標)Technologyを用いてゼラチンマトリックス内に包埋した。硬化後、ブロックを、クラッシュしたドライアイスにより-70℃に冷却したイソペンタン中に浸漬することによって急速に凍結させて、AO860スライド式ミクロトームの凍結ステージ上に載せた。MultiBrain(登録商標)ブロックを、冠状面で40μmに切片化した。抗原保存液(49%PBS pH7.0、50%エチレングリコール、1%ポリビニルピロリドン)で満たした、ブロックあたり24個の容器中に、全ての切片を連続して収集した。直ぐに染色しなかった切片を、-20℃にて保存した。
【0184】
自由浮遊性の切片を、ヒトプログラニュリン(R&D-AF2420)に対する抗体(1:15.000に希釈)により免疫化学によって染色した。ブロッキング血清以降の全てのインキュベーション溶液は、ビヒクルとしてトリトンX-100入りトリス緩衝生理食塩水(TBS)を用いた;リンスは全てTBSによった。内因性ペルオキシダーゼ活性を0.9%過酸化水素処理によってブロックして、非特異的結合を1.26%正常全血清によりブロックした。リンス後、切片を一次抗体により室温にて一晩染色した。ビヒクル溶液に、透過処理用の0.3%Triton X-100を含有させた。リンス後、切片を、アビジン-ビオチン-HRP複合体(Vectastain Elite ABC kit,Vector Laboratories,Burlingame,CA)と室温にて1時間インキュベートした。リンス後、切片を、四塩酸ジアミノベンジジン(DAB)及び0.0015%過酸化水素により処理して、可視反応生成物を作出して、ゲル化した(サブベッド)スライドガラス上に載せて、風乾して、チオニンにより軽く染色して、アルコール中で脱水して、キシレン中でクリアにして、Permount封入剤によりカバースリップした。染色した切片のデジタル画像を、20×対物レンズを備えるAxioScan Z1スライドスキャナ(Zeiss)を用いて得た。
【0185】
AAVベクター
AAVベクターを、2つの異なる供給元から得た。対応するプラスミド配列を、配列番号18(AAVTT-p1PG36)及び配列番号19(AAVTT-p2PG36)に示す。ヘルパープラスミド、Rep/Capコードプラスミド、及び配列番号17を含むプラスミド(AAVTT-pPG36)を含む、HEK 293T細胞又はHEK293細胞をそれぞれ用いる、Grieger et al(「懸濁HEK293細胞、ならびにGMP FIX及びFLT1臨床ベクター用の培養培地からのベクターの連続収集を用いる組換えアデノ随伴ウイルスベクターの生成」(’Production of Recombinant Adeno-associated Virus Vectors Using Suspension HEK293 Cells and Continuous Harvest of Vector From the Culture Media for GMP FIX and FLT1 Clinical Vector’)Molecular Therapy vol.24 no.2,287-297 feb.2016)において以前に説明されるようなトリプルプラスミド形質移入法を用いて、AAVベクターを生成した。図10は、配列番号17のヌクレオチド配列の構成部分を示す概略図を提供する。
【0186】
例2-操作されたプロモータ構築体の生成及び評価
レンチウイルスベクター構築体pAK169、pPG21、pPG35、及びpPG36を、上記のように生成した。これらの構築体は全て、図1Aに示すように、ニューロン特異的MeCP2プロモータ配列を含む。構築体pAK169及びpPG21は各々、229bpの最小MeCP2プロモータ配列(配列番号1)を含む。
【0187】
構築体pPG35(配列番号10)は、MeCP2_1(配列番号8)と称される操作されたプロモータ領域を含む。MeCP2_1プロモータは、最小プロモータ配列(配列番号1)及び天然イントロンを含む。天然イントロンは、マウスMeCP2遺伝子の2108bpヌクレオチド配列(配列番号9)であり、最小プロモータ配列に対して5’側に配置されている。MeCP2_1プロモータ配列は、2337bpである。
【0188】
構築体pPG36(配列番号11)は、MeCP2_2(配列番号3)と称される操作されたプロモータ領域を含む。MeCP2_2プロモータは、最小MeCP2プロモータ配列(配列番号1)、及び最小プロモータ配列に対して3’側に配置されている2006bpの合成イントロン(配列番号2)を含む。MeCP2_2プロモータは、2235bpである。合成イントロン(MeCP 2_2イントロン;配列番号2)を、マウスMECP2遺伝子の2つのイントロン配列及び2つのサイレンシングされた(すなわち、非発現)エクソンから構築した。エクソンを、開始コドンを除去するような定方向変異によってサイレンシングした。MeCP2_2イントロン(配列番号2)の構築を示す概略図について、図11参照。
【0189】
操作されたMeCP2_2プロモータは、5’から3’に:MeCP2最小プロモータ配列(配列番号1)、Age1制限部位(ACCGGT;配列番号14)、エクソン1(配列番号5)、5’イントロン(配列番号6)、3’イントロン(配列番号7)、及びエクソン2(配列番号8)を含む。
【0190】
また、対照レンチウイルスベクター構築体pAK168、pPG20、pPG33、及びpPG34を生成した。これらの構築体は各々、図2Aに示すように、ニューロン特異的NSE1プロモータ配列を含む。構築体pAK168及びpPG20は、約1300bpの最小NSE1プロモータ配列を含む。構築体pAK168及びpPG20を、それぞれpAK169及びpPG21の等価対照として用いた。
【0191】
構築体pPG33は、最小プロモータ配列であるNSE1_1と称される操作されたプロモータ領域、及び最小プロモータ配列に対して5’側に配置されているヒトNSE1遺伝子の1100bpの天然に存在する配列を含む。構築体pPG34は、約0.9kb長の合成イントロンを含む、NSE_2と称される操作されたプロモータ領域を含む。構築体pPG33及びpPG34を、それぞれpPG35及びpPG36の等価対照として用いた。
【0192】
HEK293T細胞を、MeCP2ベクター及びNSE1ベクターの各々により形質移入した。PGRNの発現を、ウエスタンブロットによって評価した。これらの実験の結果を図1B及び図2Bに示す。
【0193】
MeCP2プロモータを含む構築体、すなわちpPG21、pPG35、及びpPG36は、NSE1プロモータを含む構築体(すなわち、pPG20、pPG33、及びpPG34)よりも高いPGRN発現レベルを実現した。
【0194】
また、構築体pPG36(MeCP2_2プロモータを含む)は、構築体pPG21(最小MeCP2プロモータ配列を含む)及びpPG35(MeCP2_1プロモータを含む)と比較して、より高いPGRN発現レベルを実現することが観察された。
【0195】
例3-一次ニューロン及び星状細胞内でのNSE1プロモータ及びMeCP2プロモータによる導入遺伝子発現の評価
野生型マウス一次皮質ニューロン-星状細胞共培養体に、レンチウイルスを用いてヒトプログラニュリンタンパク質を発現するように形質導入した。レンチウイルスを、図3に示すように、様々な感染多重度(MOI)にてアプライした。レンチウイルス形質導入の10日後、細胞を固定して、NeuN(ニューロンマーカー)、GFAP(アストロサイトマーカー)、及びヒトプログラニュリン抗体を用いて免疫標識した。形質導入された細胞のパーセンテージを、図3A(ニューロン)及び図3C(星状細胞)に示し、そして発現レベル(蛍光強度/細胞)を、図3B(ニューロン)及び図3D(星状細胞)に示す。
【0196】
操作されたNSE1プロモータ(pPG33及びpPG34)を含む構築体は、最小NSE1プロモータを含む構築体pPG20と比較して、形質導入効率又は発現レベルを変化させないことが見出された。対照的に、プロモータMeCP2_1及びMeCP2_2を含む構築体(それぞれpPG35及びpPG36)は、最小MeCP2プロモータを含む構築体pPG21と比較して、形質導入効率又は発現レベルを増大させた。特に、MeCP2_2プロモータ(pPG36)は、形質導入効率及びPGRN発現レベルに関して試験した全てのプロモータの中で最も良好に機能した。
【0197】
例4-MeCP2プロモータを含むベクターにより形質移入したニューロン及び星状細胞によるPGRN分泌の評価
野生型マウス一次皮質ニューロン-星状細胞共培養体に、レンチウイルスベクターを用いてヒトプログラニュリンタンパク質を発現するように形質導入した。レンチウイルスを、20の感染多重度(MOI)にてアプライした。レンチウイルス形質導入の10日後、培養培地を収集して、ELISAを実行した。この実験の結果を、図4に示す。操作されたプロモータMeCP2_1及びMeCP2_2を含む構築体(それぞれpPG35及びpPG36)は、最小MeCP2プロモータを含む構築体(pPG21)と比較して、分泌PGRNを増大させることが見出された。プロモータMeCP2_2(pPG36)は、試験した全てのプロモータの中で最も高い発現レベルの分泌PGRNを提供した。
【0198】
例5-PGRNコドン最適化
非メチル化CpG部位は、toll様受容体9(TLR9)によって媒介される自然免疫応答を誘導し得る。ゆえに、CpG含量が引き下げられたヒトPGRNをコードするコドン最適化ヌクレオチド配列を生成して、CpG 0、4、9、17、25、40、71、及び90と示される発現ベクター中にクローニングした。これらのベクターは各々、対応するWT配列と比較して、CpG含量が引き下げられたコドン最適化ヒトPGRNヌクレオチド配列を含む。
【0199】
コドン最適化ベクター、そしてWTベクターにより形質移入したHAP-1 GRNノックアウト(GRN-/-)細胞について、PGRN発現レベルを、ELISA及びウエスタンブロットによって評価した。発現レベルデータを図5に示す。WT PGRNヌクレオチド配列を含むベクターは、試験した全てのコドン最適化ベクターよりも高いレベルのPGRN発現を実現することが観察された。
【0200】
例6-ヒトPGRNの発現は、GRN-/-マウス一次ニューロンにおけるリソソーム欠損を修正する。
ウエスタンブロット分析を実行して、リソソームタンパク質カテプシンDのレベルを定量した。カテプシンDは、可溶性リソソームアスパラギン酸エンドペプチダーゼである。未成熟形態は、タンパク質分解的に切断されて、非共有結合性相互作用によって連結される重鎖(約30kDa)及び軽鎖(14kDa)で構成される成熟活性リソソームプロテアーゼが生じる。カテプシンDは、リソソーム機能不全のマーカーであり、カテプシンDのレベルの増大は、タンパク質分解及びオートファジーカーゴの蓄積の障害を示唆している。
【0201】
マウス一次皮質ニューロンを、WTマウス又はGRN-/-(KO)マウスから調製した。プレーティングの3日後、ニューロンにレンチウイルス構築体(20のMOI)を形質導入して、ヒトPGRNタンパク質を発現させた。形質導入の10日後、細胞を収集して、タンパク質を、RIPAバッファを用いて抽出した。次いで、タンパク質溶解物をウエスタンブロッティングに供して、カテプシンDタンパク質を検出した。カテプシンDのウエスタンブロットレベルを、アクチン及びGAPDHの発現レベルに対して正規化した。データは、3つの独立した実験に由来する。
【0202】
WTニューロンと比較して、成熟カテプシンDのレベルの増大が、形質導入されていない状態のKOニューロンにおいて観察された。hPGRN(pPG36)のレンチウイルス媒介発現は、カテプシンDの成熟を妨げた。これらの結果を図6に示す。
【0203】
例7-AAVTT-p1PG36の線条体注射後のWTマウス及びGRN-/-マウスにおけるヒトPGRN(hPGRN)のCNS発現
成体(4ヶ月齢)WTマウス又はGRN-/-マウスの線条体に、AAVTT-p1PG36(MeCP2_2プロモータ+ヒトPGRN導入遺伝子の構築体を含有するAAVTT;配列番号18)又はAAVTT-GFP(MeCP2_2プロモータ+GFP導入遺伝子)又はビヒクルを、210ベクターゲノム(vg)の総用量にて両側に注射した。4週後に動物を犠牲にして、CSF、血漿、及び脳組織を収集して、分析した。切開前に、経心腔的灌流を1×PBSにより実行した。脳の半分を免疫組織化学分析のために固定して、他方の半分を生化学分析(FRET)に用いた。異なる脳領域を切開して、凍結した。
【0204】
ELISA分析及びFRET分析
hPGRN(ng/ml)のCSFレベル及び血漿レベルを、ELISA(Adipogen)を用いて測定した。高レベルのhPGRNが、AAVTT-p1PG36(配列番号18)及びAAVTT-p2PG36(配列番号19)を注射した動物において、WTマウス及びGRN-/-マウスの双方のCSF(1:100希釈)中で検出された。これらの結果を図7A及び図7Cに示す。また、低レベルのhPGRNが、マウスの血漿(1:10希釈)中で検出された。これらの結果を図7Aに示す。
【0205】
FRET(Cisbio)を用いて、AAVTT-p1PG36を注射したWTマウス又はGRN-/-マウスの種々の脳領域におけるhPGRN濃度(ng/mg)を測定した。hPGRNの最も高い発現が、注射部位(線条体及び中脳)の近くで検出された。また、中レベルのhPGRN発現が、皮質及び海馬において検出された。低レベルのhPGRN発現が、脳幹、嗅球、及び小脳等の遠位脳領域において検出された。これらの結果を図7Bに示す。
【0206】
免疫組織化学
hPGRNのIHC染色が、AAV-p1PG36(配列番号18)の線条体内投与を受けたGRN-/-KOマウスの脳において観察された。特異的なヒトPGRNシグナルは、AAVTT-p1PG36注射マウスにおいてのみ検出され、GFP注射マウスにおいては検出されなかった。FRET結果と同様に、注射を実行したマウスの線条体において強い免疫反応性が観察された。また、hPGRN免疫反応性が、注射部位から離れた脳領域、すなわち視床、中脳、黒質、皮質、及び海馬において観察された。細胞(細胞体)免疫反応性は、注射部位の近く、すなわち線条体、皮質の一部、海馬の一部、視床、中脳において主に観察された。このことは、これらの領域におけるAAVTT-p 1PG36による細胞の形質導入を示唆している。拡散染色が、注射部位から強度が低下しながら、他のほとんどの脳領域内で観察することができた。これは、hPGRNが細胞外空間内に分泌されて、ISF及びCSFのフローを介して遠位脳領域に拡散することを示している。GRN-/-マウスについて得られた結果を図8に示すが、AAV-p1PG36を注射したWTマウスについても同様の画像が得られた。
【0207】
免疫蛍光
MeCP2プロモータが、一次混合星状細胞-ニューロン培養体において、hPGRNのニューロン特異的発現をインビトロで駆動することができることが示された(上記の例3及び例4参照)。このニューロン特異性がマウスにおいてインビボで維持されているかを判定するために、以下のプロトコルに従って、AAVTT-p1PG36(配列番号18)を注射したマウスから得た切片に二重免疫蛍光標識を実行して、ヒトPGRN及びNeuN(ニューロンマーカー)を標識した(全ての工程を室温にて実行):
切片を、0.3%Triton X-100を含有するPBS中に希釈したニューロンマーカーNeuN(1:2,000;Abcam,ab 177487)及びヒトプログラニュリン(1:1,000;R&D-AF2420)一次抗体と一緒に、加湿チャンバ内で一晩インキュベートした。インキュベーション後、切片をPBSで3回洗浄してから、抗ウサギAlexa 488及び抗ヤギAlexa 647二次抗体と1時間インキュベートした(全てPBS中に1:1,000にて希釈;全てThermo Fisher製)。次いで、切片をDAPIにより対比染色して、細胞核を標識し、そしてPBSにより3回洗浄した。最後に、切片をProlong Gold退色防止封入剤(Life Technologies)により封入して、カバースリップをアプライした。染色した切片のデジタル画像を、20×対物レンズを備えるAxioScan Z1スライドスキャナ(Zeiss)を用いて得た。
【0208】
細胞体内でヒトPGRNを発現する細胞はほぼ全てNeuN陽性であることが観察された。これは、hGRNのAAVTT-p1PG36媒介発現がインビボでニューロン特異的であることを実証している。hGRNのニューロン発現は、線条体、皮質、海馬、及び視床が挙げられる種々の全ての脳領域において観察された。重要なことに、細胞発現hGRNは、星状細胞(GFAP染色を用いて識別)又はミクログリア(Iba1染色を用いて識別)の細胞体において観察されなかった。ゆえに、これらのインビボデータは、用いられるMeCP2_2プロモータがニューロン特異的プロモータであるという結論を支持している。
【0209】
例8-ヒトPGRN(hPGRN)発現は、AAVTT-p1PG36の線条体注射後にWTマウス及びGRN-/-マウスにおいてカテプシンD活性にインビボで影響を及ぼす。
カテプシンDのレベルの増大は、タンパク質分解及びオートファジーカーゴの蓄積の障害を示唆している。カテプシンD酵素活性を、ビヒクルで処置したWT(GRN+/+)マウス(黒丸で示す)、及びビヒクル又はAAVTT-p1PG36(配列番号18)で処置したGRN-/-KOマウスの中脳溶解物において測定した。これらの結果を図9に示す。
【0210】
インビトロ研究により、pPG36の発現によって覆されているGRN-/-一次ニューロンにおけるカテプシンD成熟の加速成熟が明らかとなった(上記の例6参照)。成熟の増大は、カテプシンD活性の増大と関連すると予想される。WTマウスと比較して、若齢(4~5ヶ月齢)GRN-/-マウスの種々の脳領域におけるカテプシンD酵素活性が僅かに増す。特に、カテプシンD活性の増大は、より高齢の動物(例えば1歳齢)において、より顕著である。ゆえに、カテプシンD活性は、4~5ヶ月齢という早い時期に検出可能な、GRN-/-マウスにおけるストレスの初期マーカーであることが提唱されている。
【0211】
いずれの場合も、4ヶ月齢のGRN-/-マウスにおける、AAVTT-p1PG36によって媒介されるhGRNの発現は、カテプシンD酵素活性の低下をもたらした。これは、ニューロン特異的MeCP2_2プロモータによって駆動されるAAV媒介hPGRN発現が、カテプシンD活性(リソソーム機能不全のマーカー)に直接影響を及ぼすことを実証している。
【表3-1】

【表3-2】

【表3-3】

【表3-4】

【表3-5】

【表3-6】

【表3-7】

【表3-8】

【表3-9】

【表3-10】

【表3-11】

【表3-12】

【表3-13】

【表3-14】

【表3-15】

【表3-16】
【0212】
本発明の更なる態様:
1.プログラニュリン(PGRN)タンパク質をコードするヌクレオチド配列に作動可能に連結されたメチルCpG結合タンパク質2(MeCP2)プロモータを含む核酸構築体。
【0213】
2.MeCP2プロモータは、最小プロモータ配列及び少なくとも1つのイントロンを含む操作されたMeCP2プロモータである、段落1に記載の核酸構築体。
【0214】
3.注目するタンパク質(POI)をコードするヌクレオチド配列に作動可能に連結された操作されたメチルCpG結合タンパク質2(MeCP2)プロモータを含む核酸構築体であって、操作されたMeCP2プロモータは、最小プロモータ配列及び少なくとも1つのイントロンを含む、核酸構築体。
【0215】
4.POIはプログラニュリン(PGRN)タンパク質である、段落3に記載の核酸構築体。
【0216】
5.(a)少なくとも1つのイントロンは、最小プロモータ配列の3’側にあり;又は(b)少なくとも1つのイントロンは、最小プロモータ配列の5’側にある、段落2~4のいずれかに記載の核酸構築体。
【0217】
6.少なくとも1つのイントロンは、合成イントロンである、段落2~5のいずれかに記載の核酸構築体。
【0218】
7.少なくとも1つの合成イントロンは、MECP2遺伝子の1つ以上のヌクレオチド配列を含み、任意に、少なくとも1つの合成イントロンは、MECP2遺伝子の1つ以上のイントロン配列及び/又はMECP2遺伝子の1つ以上の非発現エクソン配列を含み、好ましくは、MECP2遺伝子はヒトMECP2遺伝子である、段落6に記載の核酸構築体。
【0219】
8.少なくとも1つの合成イントロンは、ヒトMECP2遺伝子の2つのイントロン配列、及びヒトMECP2遺伝子の2つの非発現エクソン配列を含む、段落6又は7に記載の核酸構築体。
【0220】
9.少なくとも1つの合成イントロンは:
(a)配列番号4のヌクレオチド配列、もしくは配列番号4に対して少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む非発現エクソン配列;
(b)配列番号5のヌクレオチド配列、もしくは配列番号5のヌクレオチド配列に対して少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列を含むイントロン配列;
(c)配列番号6のヌクレオチド配列、もしくは配列番号6のヌクレオチド配列に対して少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列を含むイントロン配列;及び/又は
(d)配列番号7のヌクレオチド配列、もしくは配列番号7のヌクレオチド配列に対して少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む非発現エクソン配列
を含む、段落6~8のいずれかに記載の核酸構築体。
【0221】
10.5’から3’方向に、少なくとも1つの合成イントロンは:
(a)配列番号4のヌクレオチド配列、又は配列番号4のヌクレオチド配列に対して少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む非発現エクソン配列;
(b)配列番号5のヌクレオチド配列、又は配列番号5のヌクレオチド配列に対して少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列を含むイントロン配列;
(c)配列番号6のヌクレオチド配列、又は配列番号6のヌクレオチド配列に対して少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列を含むイントロン配列;及び
(d)配列番号7のヌクレオチド配列、又は配列番号7のヌクレオチド配列に対して少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む非発現エクソン配列
を含む、段落6~9のいずれかに記載の核酸構築体。
【0222】
11.少なくとも1つの合成イントロンは、配列番号2のヌクレオチド配列、又は配列番号2のヌクレオチド配列に対して少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む、段落6~10のいずれかに記載の核酸構築体。
【0223】
12.少なくとも1つのイントロンは、天然イントロンである、段落2~5のいずれかに記載の核酸構築体。
【0224】
13.少なくとも1つの天然イントロンは、MeCP2遺伝子、好ましくはヒトMeCP2遺伝子のヌクレオチド配列を含む、段落12に記載の核酸構築体。
【0225】
14.少なくとも1つの天然イントロンは、配列番号9のヌクレオチド配列、又は配列番号9のヌクレオチド配列に対して少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む、段落13に記載の核酸構築体。
【0226】
15.最小プロモータ配列は、配列番号1のヌクレオチド配列、又はその、配列番号1のヌクレオチド配列に対して少なくとも90%の同一性を有する機能的バリアントもしくは断片を含む、段落2~14のいずれかに記載の核酸構築体。
【0227】
16.操作されたMeCP2プロモータは、配列番号3のヌクレオチド配列、又はその、配列番号3のヌクレオチド配列に対して少なくとも90%の同一性を有する機能的バリアントもしくは断片を含む、段落1~11のいずれかに記載の核酸構築体。
【0228】
17.操作されたMeCP2プロモータは、配列番号8のヌクレオチド配列、又はその、配列番号8のヌクレオチド配列に対して少なくとも90%の同一性を有する機能的バリアントもしくは断片を含む、段落1~5又は12~14のいずれかに記載の核酸構築体。
【0229】
18.MeCP2プロモータは、少なくとも約1000bp、1500bp、2000bp、2100bp、2150bp、2175bp、2200bp、2210bp、2220bp、2230bp、2240bp、2250bp、2260bp、2280bp、2290bp、2300bp、2310bp、2320bp、2330bpであり、好ましくはMeCP2プロモータは約2200~2350bpである、段落1~17のいずれかに記載の核酸配列。
【0230】
19.(a)PGRNタンパク質はヒトPGRNタンパク質であり;
(b)PGRNタンパク質は野生型タンパク質であり;
(c)PGRNタンパク質をコードするヌクレオチド配列は、ヒトヌクレオチド配列であり;
(d)PGRNタンパク質をコードするヌクレオチド配列は、野生型ヌクレオチド配列であり;
(e)PGNタンパク質をコードするヌクレオチド配列は、コドン最適化されておらず;及び/又は
(f)PGRNタンパク質をコードするヌクレオチド配列は、少なくとも約1600bp、1700bp、1750bp、1760bp、1770bp、もしくは1780bpであり、好ましくは、PGRNタンパク質をコードするヌクレオチド配列は、約1780bpである、
段落1、2、又は4~18のいずれかに記載の核酸構築体。
【0231】
20.PGRNタンパク質をコードするヌクレオチド配列は、配列番号12のヌクレオチド配列、又はその、配列番号12のヌクレオチド配列と少なくとも70%の同一性を有する機能的バリアントもしくは断片を含み;及び/又は
PGRNタンパク質は、配列番号13のアミノ酸配列、又はその、配列番号13のアミノ酸配列に対して少なくとも70%の同一性を有する機能的バリアントもしくは断片を含む、
段落1、2、又は4~19のいずれかに記載の核酸構築体。
【0232】
21.(a)ウッドチャック肝炎ウイルス(WHP)転写後調節エレメント(WPRE)配列であって、任意に、WPREは、POIもしくはPGRNタンパク質をコードするヌクレオチド配列の3’側にあり、及び/又は配列番号15のヌクレオチド配列、もしくはその、配列番号15のヌクレオチド配列に対して少なくとも90%の同一性を有する機能的バリアントもしくは断片を含む、WPRE配列;
(b)ポリアデニル化シグナル配列であって、任意に、POI又はPGRNタンパク質をコードするヌクレオチド配列の3’側にあり、及び/又は配列番号16のヌクレオチド配列、又はその、配列番号16のヌクレオチド配列に対して少なくとも90%の同一性を有する機能的バリアントもしくは断片を含むポリアデニル化シグナル配列;あるいは
(c)先の(a)及び(b)
をさらに含む、段落1~20のいずれかに記載の核酸構築体であって、
任意に、5’から3’方向に、MeCP2プロモータ、POI又はPGRNタンパク質をコードするヌクレオチド配列、WPRE、及びポリアデニル化シグナル配列を含む、核酸構築体。
【0233】
22.3700~4700bp、3800~4800bp、3900~4700bp、4000~4600bp、4000~4500bp、4000~4400bp、4000~4300bp、又は4000~4200bpである、段落1~21のいずれかに記載の核酸構築体。
【0234】
23.段落1~22のいずれか1つに定義される核酸構築体を含むベクター。
【0235】
24.プラスミド又はウイルスベクターである、段落23に記載のベクター。
【0236】
25.(a)配列番号11、又はその、配列番号11のヌクレオチド配列に対して少なくとも70%の同一性を有する機能的バリアントもしくは断片;あるいは
(b)配列番号10、又はその、配列番号10のヌクレオチド配列に対して少なくとも70%の同一性を有する機能的バリアントもしくは断片
のヌクレオチド配列を含むウイルスベクターである、段落23又は24に記載のベクター。
【0237】
26.ウイルスベクターであり、以下から選択される、段落23~25のいずれかに記載のベクター:
(a)アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、又は、
AAVゲノムもしくはその誘導体を含むウイルスベクター、ただし該誘導体はキメラ、シャッフルもしくはキャプシド修飾誘導体であってよい;又は
(b)レンチウイルスベクター、又は、
レンチウイルスゲノムもしくはその誘導体を含むウイルスベクター。
(The vector of paragraph any one of paragraphs 23-25, which is a viral vector selected from: (a) an adeno-associated virus (AAV) vector or which comprises an AAV genome or a derivative thereof, optionally wherein said derivative is a chimeric, shuffled or capsid modified derivative; or (b) a lentiviral vector or which comprises a lentivirus genome or a derivative thereof.)
【0238】
27.AAV血清型2(AAV2)、AAV血清型3(AAV3)、AAV血清型4(AAV4)、AAV血清型5(AAV5)、AAV血清型6(AAV6)、AAV血清型7(AAV7)、AAV血清型8(AAV8)、AAV血清型9(AAV9)、又はAAV血清型rh10(AAVrh10)に由来するゲノムを含むAAVベクターであり、好ましくは、AAVは、AAV2、AAV9、又はAAVrH10に由来するゲノムを含む、段落26に記載のウイルスベクター。
【0239】
28.AAVベクターは、AAV2に由来するゲノムを含み、好ましくは、AAVはAAV-TTである、段落27に記載のAAVベクター。
【0240】
29.段落1~22のいずれかに記載の核酸構築体及び/もしくは段落23~28のいずれかに記載のベクターを含み、及び/又は段落25~28のいずれかに記載のウイルスベクターを生成する宿主細胞であって、任意に、HEK293細胞又はHEK293 T細胞である宿主細胞。
【0241】
30.段落1~22のいずれかに記載の核酸構築体、段落23もしくは24に記載のベクター、及び/又は段落25~28のいずれかに記載のウイルスベクターを、薬学的に許容される担体、賦形剤、又は希釈剤と共に含む医薬組成物。
【0242】
31.プログラニュリン(PGRN)欠乏によって特徴付けられる疾患の処置又は予防を必要とする患者において当該疾患を処置又は予防する方法に用いられる、段落1~22のいずれか1つに定義される核酸構築体、段落23もしくは24に定義されるベクター、段落25~28のいずれか1つに定義されるウイルスベクター、及び/又は段落30に定義される医薬組成物。
【0243】
32.プログラニュリン(PGRN)欠乏によって特徴付けられる疾患の処置又は予防を必要とする患者において当該疾患を処置又は予防する方法であって、患者に、治療有効量の、段落1~22のいずれか1つに定義される核酸構築体、段落23もしくは24に定義されるベクター、段落25~28のいずれか1つに定義されるウイルスベクター、及び/又は段落30に定義される医薬組成物を投与することを含む方法。
【0244】
33.段落1~22のいずれか1つに定義される核酸構築体、段落23もしくは24に定義されるベクター、段落25~28のいずれか1つに定義されるウイルスベクター、及び/又は段落30に定義される医薬組成物の、プログラニュリン(PGRN)欠乏によって特徴付けられる疾患の処置又は予防を必要とする患者において当該疾患を処置又は予防するための医薬品を製造するための使用。
【0245】
34.PGRN欠乏によって特徴付けられる疾患は、中枢神経系の疾患であり;
PGRN欠乏によって特徴付けられる疾患は、患者のニューロン及び/又は星状細胞におけるPGRNの欠乏によって特徴付けられ;
患者は、そのGRN遺伝子の少なくとも1つの対立遺伝子内に機能喪失変異を有し;及び/又は
患者は、そのGRN遺伝子の双方の対立遺伝子内に機能喪失変異を有する、
段落31、段落32に記載の方法、又は段落33に記載の使用に従って用いられる核酸構築体、ベクター、ウイルスベクター、又は医薬組成物。
【0246】
35.PGRN欠乏によって特徴付けられる疾患は、前頭側頭型認知症(FTD)又は神経セロイドリポフスチン症11型(NCL11)である、段落31もしくは34、段落32もしくは34に記載の方法、又は段落33もしくは34に記載の使用に従って用いられる核酸構築体、ベクター、ウイルスベクター、又は医薬組成物。
【0247】
36.前記核酸構築体、ベクター、ウイルスベクター、又は医薬組成物は、患者に、患者の脳及び/又は脳脊髄液(CSF)への送達によって投与され、任意に、送達は、注射によって:
(i)患者の脳;及び/又は
(ii)患者のCSFになされ、
好ましくは、脳への注射は、脳内注射、実質内注射、視床下部内注射、及びそれらの組合せから選択され;
好ましくは、CSFへの注射は、大槽内注射、髄腔内注射、脳室内(ICV)注射、及びそれらの組合せから選択される、
段落31、34、もしくは35、段落32、34、もしくは35に記載の方法、又は段落33~35のいずれか一項に記載の使用に従って用いられる核酸構築体、ベクター、ウイルスベクター、又は医薬組成物。
【配列表フリーテキスト】
【0248】
配列表1 <223>MeCP2最小プロモータ
配列表2 <223>MeCP2_2イントロン
配列表3 <223>MeCP2_2プロモータ
配列表4 <223>MeCP2_2イントロン-エクソン1
配列表5 <223>MeCP2_2イントロン-5’イントロン
配列表6 <223>MeCP2_2イントロン-3’イントロン
配列表7 <223>MeCP2_2イントロン-エクソン2
配列表8 <223>MeCP2_1プロモータ
配列表9 <223>MeCP2_1イントロン
配列表10 <223>pPG35
配列表11 <223>pPG36
配列表14 <223>Age1制限部位
配列表16 <223>ポリAシグナル配列
配列表17 <223>AAVTT-pPG36
配列表18 <223>AAVTT-p1PG36
配列表19 <223>AAVTT-p2PG36
配列表20 <223>5’ITR
配列表21 <223>5’隣接断片
配列表22 <223>3’隣接断片
配列表23 <223>3’ITR
配列表24 <223>Kozak配列
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図4
図5
図6-1】
図6-2】
図7-1】
図7-2】
図8-1】
図8-2】
図8-3】
図9
図10
図11
【配列表】
2023537980000001.app
【国際調査報告】