(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-06
(54)【発明の名称】尿素誘導体ならびに樹脂系のための硬化剤および硬化促進剤としてのそれらの使用
(51)【国際特許分類】
C08G 59/40 20060101AFI20230830BHJP
C08J 5/24 20060101ALI20230830BHJP
【FI】
C08G59/40
C08J5/24
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023509771
(86)(22)【出願日】2021-08-12
(85)【翻訳文提出日】2023-04-07
(86)【国際出願番号】 EP2021072561
(87)【国際公開番号】W WO2022034201
(87)【国際公開日】2022-02-17
(32)【優先日】2020-08-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504132032
【氏名又は名称】ヘクセル コンポジッツ、リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】メイソン、クリストファー
【テーマコード(参考)】
4F072
4J036
【Fターム(参考)】
4F072AB06
4F072AB09
4F072AB10
4F072AD23
4F072AE01
4F072AG03
4F072AL02
4F072AL17
4J036AA01
4J036AH18
4J036DC05
4J036DC23
4J036DC25
4J036JA11
(57)【要約】
ビスオルトヒドロキシ芳香族ウロン、ならびに樹脂系、特にエポキシ樹脂系における硬化剤および硬化促進剤としてのそれらの使用は、良好な寿命、低い硬化温度、および硬化後の望ましいガラス転移温度を備えた配合物を提供し、航空宇宙産業および風力タービン産業用の部品の製造に使用されるプリプレグに特に有用である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下から選択される式のビスオルトヒドロキシ芳香族ウロン。
【化1】
(式中、R
1は、S、SO
2、SO、P、PX、N、NH、NX、P=O(OXもしくはOH)、C=O、直鎖もしくは分岐鎖の脂肪族基(置換もしくは非置換)、または非置換、ハロ置換および/もしくはアルキル置換の芳香族基であり、nは2~20の数であり、
Xは、直鎖もしくは分岐鎖の脂肪族基(置換もしくは非置換)、または非置換、ハロ置換および/もしくはアルキル置換の芳香族基であり、
R
2およびR
3は、それぞれの場合において、互いに独立して、ハロゲン原子(好ましくは塩素原子)によって、またはヒドロキシルもしくはシアノ基によって置換されていてもよい、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、またはアラルキル基から選択され、ただし、R
2は代わりに水素原子を表していてよく、またはR
2およびR
3は、示された結合窒素原子と一緒になって、環内に3~5個の炭素原子、および任意選択で1個の酸素原子を含む複素環を表し、
R
4は、それぞれの場合において、互いに独立して、H、NH
2、NO
2、ニトリル、ハロゲン、直鎖もしくは分岐鎖の脂肪族基、または非置換、ハロ置換および/もしくはアルキル置換の芳香族基から選択され、Yは1~3である、
ビスオルトヒドロキシ芳香族ウロン。
【請求項2】
N,N’-[プロピレン(4-ヒドロキシ-3,1-フェニレン)]ビス(N,N-ジメチル)尿素。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のビスオルトヒドロキシ芳香族ウロンの、エポキシ樹脂用硬化剤としての使用。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載のビスオルトヒドロキシ芳香族ウロンの、エポキシ樹脂用促進剤またはエポキシ樹脂用硬化剤としての使用。
【請求項5】
プリプレグにおける請求項3または請求項4に記載の使用。
【請求項6】
請求項1または請求項2に記載のビスオルトヒドロキシ芳香族ウロンを、エポキシ、ポリイソシアナートおよびフェノール樹脂から選択される少なくとも1つの樹脂成分と組み合わせて含む樹脂配合物。
【請求項7】
請求項6に記載の樹脂配合物を繊維強化材料と組み合わせて含む成形材料。
【請求項8】
前記繊維強化材料が、織布、多軸布、細断繊維としての個々の繊維トウ、短繊維および/またはフィラメント、ならびにそれらの混合物から選択される、請求項7に記載の成形材料。
【請求項9】
前記繊維材料が、炭素繊維、ガラス繊維およびアラミドから選択される、請求項8に記載の成形材料。
【請求項10】
繊維強化材および請求項6に記載の樹脂配合物を含むプリプレグ。
【請求項11】
請求項10に記載のプリプレグのスタック。
【請求項12】
少なくとも40個のプリプレグを含む、請求項11に記載のスタック。
【請求項13】
請求書10に記載のプリプレグ、または請求項11もしくは請求項12に記載のプリプレグのスタックを硬化させることを含む、物品の製造プロセス。
【請求項14】
前記硬化が外部から加えられる60℃~190℃の温度によって引き起こされる、請求項13に記載のプロセス。
【請求項15】
真空バッグ中で行われる、請求項13または請求項14に記載のプロセス。
【請求項16】
硬化がプレス中で行われる、請求項13または請求項14に記載のプロセス。
【請求項17】
風力タービン部品を製造するための、請求項13~16のいずれかに記載のプロセス。
【請求項18】
航空宇宙部品を製造するための、請求項13~16のいずれかに記載のプロセス。
【請求項19】
エポキシ樹脂、および2~20重量%の請求項1に記載のビスオルトヒドロキシ芳香族ウロンを含む組成物。
【請求項20】
エポキシ樹脂、請求項1記載のビスオルトヒドロキシ芳香族ウロン以外の硬化剤、および0.1~2重量%の請求項1記載のビスオルトヒドロキシ芳香族ウロンを含む組成物。
【請求項21】
前記の請求項1に記載のビスオルトヒドロキシ芳香族ウロン以外の硬化剤が、第一級アミンまたは第二級アミンである、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
前記の第一級アミンまたは第二級アミンが、エチレンジアミン、ジエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、プロピレンジアミン、テトラエチレンペンタミン、ヘキサエチレンヘプタミン、ヘキサメチレンジアミン、シアノグアニジン、2-メチル-1,5-ペンタメチレン-ジアミン、4,7,10-トリオキサトリデカン-1,13-ジアミン、アミノエチルピペラジン、ジシアノポリアミド、4,4’-ジアミノジフェニルスルホンまたは3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、ビスアニリン、ジヒドラジド、ポリアミン、1つまたは複数のアミン部分を有するポリエーテルアミン、およびそれらの混合物から選択される、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
請求項7~9のいずれかに記載の成形材料または請求項19~22のいずれかに記載の組成物から形成された風力タービン部品
【請求項24】
請求項7~9のいずれかに記載の成形材料または請求項19~22のいずれかに記載の組成物から形成された航空宇宙部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、尿素の新規誘導体、樹脂系、特にエポキシ樹脂のための硬化剤または硬化促進剤としてのそれらの使用、尿素の誘導体を含有するエポキシ樹脂配合物、ならびにそのようなエポキシ樹脂配合物を使用するプリプレグおよび成形品に関する。したがって、本発明は、新規の尿素系化合物、硬化剤系、樹脂配合物、硬化樹脂、使用、複合材料および成形材料を提供する。
【背景技術】
【0002】
アジピン酸ジヒドラジドおよびイソフタル酸ジヒドラジドは、エポキシ樹脂配合物の硬化剤として知られている。米国特許第4404356号および第4507445号に開示されているように、これらは尿素系材料などの促進剤と一緒に使用され得ることが示唆されている。しかしながら、硬化前の樹脂配合物の保存安定性(貯蔵安定性)、高いガラス転移温度(Tg)を有する硬化樹脂を生成するための低温硬化、急速硬化を組み合わせることを可能にし、さらに特に高められた温度で湿分に曝されるときに所定の期間に渡ってそのようなTgを保持する硬化剤に対する必要性が依然として存在する。従って、本発明の1つの目的は、優れた保存安定性、低温およびより速い硬化を含む強化された硬化特性を有し、優れた機械的特性を有する硬化物を提供する硬化性エポキシ樹脂組成物を提供することである。
【0003】
硬化剤は、重合性樹脂の重合反応を開始または進行させるのに適した化合物である。促進剤は、硬化剤によって引き起こされる重合反応(または「硬化」)を促進する化合物である。
【0004】
エポキシ樹脂の硬化は、通常、発熱反応であり、反応を制御することにより、エポキシ材料を劣化させ、エポキシ含有配合物から作成された物品や部品に亀裂などの応力や変形を引き起こす可能性のある過剰な温度を避けることが重要である。しかしながら、特に、ときどきプリプレグとして知られている樹脂含侵繊維強化材において繊維が使用されているときには、特に物品および部品に十分な強度を提供するように硬化したエポキシ樹脂のTgを上昇させる必要性が継続的に存在する。これらのプリプレグは、ますます大きくなっていく物品、特に、例えば40を超えるプリプレグのスタック、特に航空宇宙産業および風力タービン産業用の部品の製造においてときどき60を超え80までのプリプレグなどの、プリプレグのスタックから形成される厚みが増大した物品を製造するために使用される。プリプレグは、金型または真空バッグ内ですぐに硬化される硬化性樹脂を含浸させた繊維強化材を含む。今日まで、より高い硬化温度および/またはより長い硬化サイクルを使用し、ならびにより高い硬化温度を必要とするジシアンジアミドなどの硬化剤を採用することで、より高いTgが得られている。ただし、これにより、樹脂が高温で劣化するリスクが高まる。
【0005】
ウロン(urone)を硬化剤として使用すると、より低い硬化温度とより短い硬化サイクルを使用して、より高いTgを得ることが可能であることが提案されている。
【0006】
尿素の誘導体は、エポキシ樹脂の硬化剤としての用途を有することが知られており、そのような誘導体はウロン(urone)として知られている場合がある。米国特許第4,404,356号は、以下の式のヒドロキシフェニル尿素、およびエポキシ樹脂の熱硬化のための促進剤としてのそれらの使用、ならびにエポキシ樹脂のための主要な硬化剤としてのそれらの使用に関する。
【化1】
【0007】
米国特許第9,663,609号は、二官能性または多官能性N,N’-(ジメチル)ウロンの使用、およびそのようなウロンを使用してエポキシ樹脂組成物を硬化させる方法に関する。これらの材料の使用は、特に、エポキシ樹脂から製造される成形品または部品における内部応力または他の熱的損傷を回避するためにエポキシ樹脂の大きな層厚を有する固体部品について、エポキシ樹脂の制御された硬化のための方法を提供することが記載されている。この二官能性または多官能性N,N’-(ジメチル)ウロンは、一般式:
R-(NH-CO-N(CH3)2)n
を有し、式中、Rは直鎖もしくは分枝鎖の脂肪族基、または非置換、ハロ置換および/もしくはアルキル置換芳香族基であり、nは2~20の数である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、米国特許第9,663,609号は、Rが芳香族基である場合、それがヒドロキシ置換され得ることを想定していない。本発明による二官能性または多官能性オルトヒドロキシ芳香族ウロンを硬化剤または硬化促進剤として使用すると、特にプリプレグにおけるエポキシ樹脂の硬化の制御がさらに改善される。
【課題を解決するための手段】
【0009】
ここで、本発明者らは、二官能性オルトヒドロキシ芳香族ウロンを製造し、そして本発明者らは、エポキシ樹脂の硬化剤として使用する場合、80℃~150℃の外部適用温度などのより低い温度で樹脂を硬化させることで、完全に硬化させたときにより高いTgを有する硬化エポキシ樹脂を製造可能であることを見出した。このような硬化エポキシ樹脂は、米国特許第9,663,609号に記載されているもののような非ヒドロキシ置換芳香族二官能性ウロン、および米国特許第4,404,356号のヒドロキシルフェニル尿素から製造される硬化エポキシ樹脂よりも高いTgを有する。本発明のウロンはまた、硬化温度が例えば180℃に至るまでより高くなり得る場合、他のエポキシ硬化剤のための促進剤として使用され得る。
【0010】
従って、一実施形態では、本発明は、二官能性および多官能性オルトヒドロキシ芳香族ウロン、エポキシ樹脂の硬化剤としてのそれらの使用、エポキシ樹脂の他の硬化剤の促進剤としてのそれらの使用、二官能性および多官能性オルトヒドロキシウロンを含むエポキシ樹脂配合物、ならびに、特にそれから製造されたプリプレグおよび繊維強化材料における繊維を強化するための樹脂マトリックスとしてのそのような配合物の使用を提供する。
【0011】
それゆえ、本発明は、以下から選択される式の二官能性および多官能性オルトヒドロキシ芳香族ウロンを提供する:
【化2】
式中、
R
1は、S、SO
2、SO、P、PX、N、NH、NX、P=O(OXもしくはOH)、C=O、直鎖もしくは分岐鎖の脂肪族基(置換もしくは非置換)、または非置換、ハロ置換および/もしくはアルキル置換の芳香族基であり、nは2~20の数である。
Xは、直鎖もしくは分岐鎖の脂肪族基(置換もしくは非置換)、または非置換、ハロ置換および/もしくはアルキル置換の芳香族基である。
R
2およびR
3は、それぞれの場合において、互いに独立して、ハロゲン原子(好ましくは塩素原子)によって、またはヒドロキシルもしくはシアノ基によって置換されていてもよい、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、またはアラルキル基から選択され、ただし、Rは代わりに水素原子を表していてよく、またはR
2およびR
3は、示された結合窒素原子と一緒になって、3~5個の炭素原子、および任意選択で1個の酸素原子を含む複素環を表す。
R
4は、それぞれの場合において、互いに独立して、H、NH
2、NO
2、ニトリル、ハロゲン、直鎖もしくは分岐鎖の脂肪族基、または非置換、ハロ置換および/もしくはアルキル置換の芳香族基から選択され、Yは1~3である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1であるグラフは、例5において、寿命性能が、標準の二官能性ウロンおよび単官能性OHFUの両方の性能と同様であることを実証している。
【
図2】
図2であるグラフは、例6において、本発明の生成物についての寿命性能が、標準の二官能性ウロンの性能と類似しており、単官能性OHFUよりも少し良好であることを実証している。
【
図3】
図3であるグラフは、例6において、本発明のPBOHFUが80℃で単官能性OHFUよりも良好なレイテンシー性能を示し、標準の二官能性ウロンUR500およびU52のそれに近づくことを実証している。
【
図4】
図4であるグラフは、例7において、本発明のFBOHFUおよびPBOHFUが、促進剤が用いられていない配合物と比べて1%および0.50%の装入量の両方により100℃でのレイテンシー性能が変わらないことを実証している。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の化合物は、硬化剤もしくは他の硬化剤のための促進剤として使用することができ、またはこれらの機能の両方を特にエポキシ樹脂で実行することができ、そして、本発明はまた、本発明の化合物の1つまたは複数を含み、任意選択で1つまたは複数の他の硬化剤を併せて含むエポキシ樹脂配合物を提供する。
【0014】
本発明の尿素誘導体が樹脂の主要な硬化剤または唯一の硬化剤として使用される場合、樹脂の重量に基づいて2~20重量%、より好ましくは5~15重量%の尿素誘導体を使用することが好ましい。
【0015】
本発明の尿素誘導体を熱硬化性樹脂系における主要な硬化剤または唯一の硬化剤として使用することにより、顕著な硬化なしで(系の寿命として知られる)数週間保存することが可能であり、かつ、特に各部品の厚みがありプリプレグの複数の層のスタックから形成されている場合に、航空宇宙産業や風力エネルギー産業向けの部品の製造に使用されるプリプレグなどの用途のために望ましいTgを有する硬化樹脂を製造する材料が得られる。上記スタックは、通常、少なくとも40層、場合によっては60層以上である。硬化剤の使用はまた、硬化反応中に発生する熱の制御を改善し、樹脂の劣化および硬化物品への損傷を引き起こし得る反応の暴走のリスクを回避することを可能にする。
【0016】
本発明の化合物は、エポキシ樹脂の他の硬化剤のための促進剤としても使用され得る。本発明の化合物によって性能が増強され得る硬化剤の例としては、第一級または第二級アミンが挙げられる。これらのアミンは、1つ以上のアミノ部分を有する脂肪族、脂環式、芳香族、または芳香族構造であってもよい。
【0017】
アミン硬化剤の例としては、エチレンジアミン、ジエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、プロピレンジアミン、テトラエチレンペンタミン、ヘキサエチレンヘプタミン、ヘキサメチレンジアミン、シアノグアニジン、2-メチル-1,5-ペンタメチレン-ジアミン、4,7,10-トリオキサトリデカン-1,13-ジアミン、アミノエチルピペラジン等が挙げられる。例示的な硬化剤には、ジシアノポリアミド、最も好ましくは(DICY)、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン(4,4’-DDS)または3,3’-ジアミノジフェニルスルホン(3,3’-DDS)が挙げられる。これらは、潜在アミン硬化剤として有利に用いられ、同様に、DICYおよびDDSの混合物も好適に用いられる。ジヒドラジド(例えばADH、IDH)、ポリアミン(例えばAncamine 2441)、BF3-MEA複合体(例えばAnchor 1040(Air Products製))もまた、潜在硬化剤として好適である。
【0018】
いくつかの実施形態では、アミン硬化剤は、ポリプロピレンオキシドまたはポリエチレンオキシドから誘導することができるポリエーテルアミンを包含する、1つ以上のアミン部分を有するポリエーテルアミンである。市販のポリエーテルアミンには、ポリエーテルポリアミン(Huntsman Corporationから商品名「JEFFAMINE」で入手可能)および4,7,10-トリオキサトリデンカン-1,13-ジアミン(TTD)(BASFから入手可能)が含まれる。好ましい潜在アミン硬化剤は、AlzChemのDyhard 100Eである。
【0019】
好ましい他の硬化剤は、4,4-ジアミノジフェニルスルホン(4,4-DDSとして知られる場合もある)および3,3-ジアミノジフェニルスルホン(3,3-DDSとして知られる場合もある)などのアミノスルホンであり、これらは、典型的に、航空宇宙部品の製造において使用される樹脂配合物にて硬化剤として用いられる。
【0020】
本発明の化合物を他の硬化剤の促進剤として使用する場合、化合物が主要なまたは唯一の硬化剤である場合よりも、エポキシ樹脂の重量に基づいて少ない量で使用することができる。この用途のために、エポキシ樹脂の重量に基づいて0.1から1.5重量%を使用することが好ましく、0.2から1重量%を使用することがより好ましい。
【0021】
本発明のさらなる実施形態において、ビスオルトヒドロキシ芳香族ウロンを、エポキシ、ポリイソシアナートおよびフェノール樹脂、特にエポキシ樹脂などの少なくとも1つの樹脂成分と組み合わせて含む樹脂配合物が提供される。樹脂配合物は、好ましくは、使用前に成分をさらに混合する必要のない一成分樹脂配合物の形態である。
【0022】
さらなる実施形態では、硬化剤の促進剤として作用する本発明のビスオルトヒドロキシ芳香族ウロンと一緒に本発明のビスオルトヒドロキシ芳香族ウロン以外の硬化剤を含有するエポキシ、ポリイソシアナートおよびフェノール樹脂などの硬化性樹脂を含む樹脂配合物が提供される。
【0023】
さらなる実施形態において、本発明は、プリプレグであり得るか、または樹脂配合物を用いて金型内にレイアップされた乾燥繊維材料の樹脂注入によって得られ得る繊維強化複合材料におけるマトリックスとしての、本発明の樹脂配合物の使用を提供する。本発明はさらに、そのような樹脂マトリックスの熱硬化によって得られる繊維強化複合材料を提供し、この熱硬化はプレス(press)または真空バッグ内で行うことができる。
【0024】
樹脂の硬化Tgは、ASTM D7028(Dynamic Mechanical Analysis(DMA)によるポリマーマトリックス複合材料のガラス転移温度(DMA Tg)“Glass Transition Temperature (DMA Tg) of Polymer Matrix Composites by Dynamic Mechanical Analysis (DMA)”)に従って測定される。
【0025】
硬化反応中に放出された熱は、完全に硬化するための総熱量に関連しており、次のようにデジタル走査熱量計を使用して測定され得る。参照樹脂サンプルを10℃から350℃に10℃/分の速度で加熱して完全に硬化(100%)させ、発生した熱ΔHiを記録する。次に、参照樹脂サンプルと同じ組成の特定の樹脂サンプルについて、所望の温度まで所望の速度で所望の時間にわたってこれらの条件でサンプルを加熱することで硬化させ、この硬化反応で発生する熱ΔHeを測定することによって、その特定の樹脂サンプルの硬化度を測定することができる。この硬化度(硬化%)は、次のように定義される。
硬化% = [(ΔHi-ΔHe)/ΔHi]×100[%]
式中、ΔHiは、10℃から350℃で完全に硬化するまで加熱された未硬化の樹脂によって生成された熱である。ΔHeは、所望の温度に至るまで所望の速度で加熱された、特定の程度まで硬化した樹脂によって生成された熱である。
【0026】
本発明の別の実施形態では、本発明の熱硬化性樹脂配合物を繊維強化材料と組み合わせて含む成形材料が提供される。繊維強化材料は、プリプレグを形成するための織布もしくは多軸布として、樹脂組成物を含浸させてトウプレグを形成するための個々の繊維トウとして、または成形コンパウンドを形成するための細断繊維、短繊維もしくはフィラメントとして提供されてもよい。好ましい繊維材料は、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド、およびそれらの混合物から選択される。成形材料は、樹脂配合物を含有し、繊維強化層と組み合わされたキャスト樹脂フィルムから構成することができる。樹脂フィルムを繊維強化材に含浸させることが好ましいが、これは、樹脂の層を繊維材料上にプレスすることによって、または金型内の繊維材料中に樹脂を注入することによって達成され得る。
【0027】
本発明のさらなる実施形態では、本発明の樹脂配合物を少なくとも1つの充填剤と組み合わせて含む接着剤が提供される。
【0028】
本発明の組成物は、硬化前に周囲温度で保存安定性があり、80℃~150℃などの比較的低温で迅速に硬化することができる一方で、硬化樹脂のTg、保持されたTg、および機械的特性によって、工業用構造用途における、特に自動車および航空宇宙構造部品ならびにスポーツ用品および風力タービン部品として有用な繊維強化材料としての硬化樹脂配合物の使用が可能になる。
【0029】
樹脂がエポキシ樹脂である場合、それは単官能性または多官能性であり、好ましくは少なくとも二官能性である。一実施形態において、エポキシ樹脂成分(A)は、従来公知の種々のポリエポキシ化合物から選択することができる。その例としては、芳香族グリシジルエーテル化合物、例えば、ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンジグリシジルエーテル、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジブロモフェニル)プロパンジグリシジルエーテル、ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタンジグリシジルエーテル、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタンジグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、フロログルシノールトリグリシジルエーテル、トリヒドロキシビフェニルトリグリシジルエーテル、テトラグリシジルベンゾフェノン、ビスレゾルシノールテトラグリシジルエーテル、テトラメチルビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールCジグリシジルエーテル、ビスフェノールヘキサフルオロプロパンジグリシジルエーテル、1,3-ビス[1-(2,3-エポキシプロポキシ)-1-トリフルオロメチル-2,2,2-トリフルオロエチル]ベンゼン、1,4-ビス[1-(2,3-エポキシプロポキシ)-1-トリフルオロメチル-2,2,2-トリフルオロメチル]ベンゼン、4,4’-ビス(2,3-エポキシプロポキシ)オクタフルオロビフェニル、およびフェノールノボラック型ビスエポキシ化合物;脂環式ポリエポキシ化合物、例えば、脂環式ジエポキシアセタール、脂環式ジエポキシアジパート、脂環式ジエポキシカルボキシラート、およびビニルシクロヘキセンジオキシド;グリシジルエステル化合物、例えば、フタル酸ジグリシジル、テトラヒドロフタル酸ジグリシジル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジル、フタル酸ジメチルグリシジル、ヘキサヒドロフタル酸ジメチルグリシジル、p-オキシ安息香酸ジグリシジル、ジグリシジルシクロペンタン-1,3-ジカルボキシラート、およびダイマー酸グリシジルエステル;グリシジルアミン化合物、例えば、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルトルイジン、トリグリシジルアミノフェノール、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、およびジグリシジルトリブロモアニリン;複素環エポキシ化合物、例えば、ジグリシジルヒダントイン、グリシジルグリシドキシアルキルヒダントイン、およびトリグリシジルイソシアヌラート;ならびに、それらのオリゴマー化合物群が挙げられる。
【0030】
液状エポキシ樹脂の例としては、ポリアルキレンエーテル型エポキシ化合物、例えば、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールジグリシジルエーテル、およびトリメチロールプロパントリグリシジルエーテル;グリシジルエステル型エポキシ化合物、例えば、ダイマー酸ジグリシジルエステル、フタル酸ジグリシジルエステル、およびテトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル;ならびに、グリシジル(メタ)アクリラート、アリルグリシジルエーテル等の単独重合体、またはこれらの単量体と他の軟質不飽和単量体との共重合体が挙げられる。ここで、軟質不飽和モノマーとは、ガラス転移温度が60℃未満のホモポリマーを含むモノマーを指す。軟質不飽和モノマーの例としては、メチルアクリラート、エチルアクリラート、ブチル(メタ)アクリラート、イソブチル(メタ)アクリラート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリラート、およびラウリルメタクリラートが挙げられる。
【0031】
本発明の液状硬化性エポキシ樹脂組成物は、保存安定性および硬化特性の両方に優れ、かつ、優れた特性、特に耐有機溶剤性を有する硬化物を与える一液型の液状エポキシ樹脂プリプレグマトリックス樹脂配合物として特に有用である。
【0032】
本発明のエポキシ樹脂組成物をプリプレグ樹脂配合物として使用する場合、充填剤(フィラー)、粘度調整剤、強化剤、顔料、チキソトロピー剤、および難燃剤などの既知の添加剤を、任意選択で配合物に混合して、その機械的性能および硬化中の流動挙動を増大させることができる。
【0033】
本発明の組成物は、耐衝撃性改良剤、充填剤、酸化防止剤などの熱硬化性樹脂配合物に使用される他の典型的な添加剤を含むことができる。
【0034】
本発明の好ましいウロンは、N,N’-[プロピレン(4-ヒドロキシ-3,1-フェニレン)]ビス(N,N-ジメチル)尿素である。樹脂の主要なまたは唯一の硬化剤として使用される場合、本発明のウロンは、本発明のエポキシ樹脂組成物中に、好ましくは、組成物の総重量に対して2~20重量%、より好ましくは3~12重量%の量で、最も好ましくは組成物の総重量に対して4~8重量%の量で存在する。
【0035】
本発明の二官能性オルトヒドロキシ芳香族ウロンは、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)プロパンと1,1’-カルボニルジイミダゾールとの反応によって得られる前駆体から調製して、以下の式のビスベンゾオキサゾリノン前駆体を生成することができる。
【0036】
【0037】
この前駆体をジメチルアミンと反応させて、以下の式のN,N’-[プロピレン(4-ヒドロキシ-3,1-フェニレン)]ビス(N,N-ジメチル)尿素を生成することができる。
【0038】
【化4】
以降にて、これはPBOHFUと称される。
【0039】
本発明の二官能性または多官能性オルトヒドロキシ芳香族ウロンは、以下の式によって表される構造を有する。
【0040】
【化5】
式中、R
1は、S、SO
2、SO、P、PX、N、NH、NX、P=O(OXもしくはOH)、C=O、直鎖もしくは分岐鎖の脂肪族基(置換もしくは非置換)、または、非置換、ハロ置換および/もしくはアルキル置換の芳香族基であり、nは2~20までの数である。
式中、Xは、直鎖もしくは分岐鎖の脂肪族基(置換もしくは非置換)、または非置換、ハロ置換および/もしくはアルキル置換の芳香族基である。
【0041】
R2およびR3は、各々の位置にて、互いに独立して、ハロゲン原子(好ましくは塩素原子)またはヒドロキシルもしくはシアノ基によって置換されていてもよい、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、またはアラルキル基から選択され、ただし、R2は代わりに水素原子を表すことができ、または R2およびR3は、示された結合窒素原子と一緒になって、環内に3~5個の炭素原子、および任意選択で1個の酸素原子を含む複素環を表す。
【0042】
R4は、各々の位置にて、互いに独立して、H、NH2、NO2、ニトリル、ハロゲン、直鎖もしくは分岐鎖の脂肪族基、または非置換、ハロ置換および/もしくはアルキル置換の芳香族基から選択され、Yは1~3である。
【0043】
官能性は、尿素置換基または尿素基の数によってのみ決定される。さらに、尿素置換基または尿素基は、式-(NH-CO-N(R)2)による基または置換基である。
【0044】
式(i)の化合物における基R1は、S、SO2、SO、P、PX、N、NH、NX、P=O(OXもしくはOH)、C=O、直鎖もしくは分岐鎖の脂肪族基(置換もしくは非置換)、または、非置換、ハロ置換および/もしくはアルキル置換の芳香族基から選択される架橋単位であり、ここで、Xは、直鎖もしくは分岐鎖の脂肪族基(置換もしくは非置換)、または、非置換、ハロ置換および/もしくはアルキル置換の芳香族基である。
【0045】
本発明によれば、式(i)中のnは2~20の数を表すことができる。すなわち、2から20個の尿素基を有する化合物を本発明に従って使用することができる。好ましくは、nは2~10の整数であり、より好ましくはnは2~8の整数であり、さらにより好ましくはnは2または3である。従って、本発明によれば、特に、2、3または20までのジメチルウレア基を有する、一般式(i)のジウロン、トリウロンもしくはオリゴウロン、またはそれらの混合物を使用することができる。n=2のジウロンおよびn=3のトリウロンが特に好ましい。さらに、nが4~20の数であってよい、n=4~20のオリゴロンもまた好ましい。基本構造の選択はあまり重要ではないことが強調されるべきである。
【0046】
式(ii)および(iii)の化合物によって示される本発明の別の実施形態では、二官能性オルトヒドロキシ芳香族ウロンは、尿素置換基に対するオルト位にヒドロキシル基を有する2つの尿素置換基が結合した単一の芳香族部分を含み得る。
【0047】
特に、本発明によれば、上記一般式のウロンがエポキシ樹脂組成物中の唯一の硬化剤として使用され得ることが見出された。従って、この実施形態では、これらのエポキシ樹脂組成物は、さらなる硬化剤、共硬化剤(硬化助剤)、硬化促進剤および/またはエポキシ樹脂の硬化のための触媒を含まなくてよい。
【0048】
樹脂配合物に使用される本発明の化合物の量は、その化合物が要求される機能に依存すると共に、その化合物が一次硬化剤もしくは唯一の硬化剤として使用されるか、または別の硬化剤の促進剤として使用されるかに依存する。その量は、樹脂100部当たり本発明のウロンまたはその混合物0.01~20部、好ましくは樹脂100部当たり0.1~15部、好ましくは1~15部、最も特に好ましくは2~15部の範囲であり得る。また、好ましくは、本発明のウロンが使用される量は、樹脂100部当たり1~12部、特に2~12部、より好ましくは3~12部、特に好ましくは4~12部、最も特に好ましくは5~12部であってよい。
【0049】
本発明によれば、これらの量を用いることで、60~180℃の温度で、エポキシ樹脂組成物が完全に硬化するように、エポキシ樹脂組成物において0.05~0.99W/g(エポキシ樹脂の質量に基づく)の最大のヒートフローを発生させることが可能である。
【0050】
本発明者らは、本発明の化合物をエポキシ樹脂組成物の主要な(一次の)硬化剤として使用すると、60~190℃、特に60~180℃、特に60~160℃の温度で硬化が可能になり、特に最も好ましくは60~150℃であり、そして、エポキシ樹脂組成物が、樹脂およびそれから製造された物品を損傷する可能性のある過剰な熱の発生なしに完全に硬化するように、硬化反応が制御されることを見出した。本化合物が他の硬化剤の促進剤として使用される場合、硬化温度は150~190℃、特に60℃~180℃などの範囲の上限であってもよい。
【0051】
エポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂組成物が≧80%、好ましくは≧90%、より好ましくは≧95%、さらにより好ましくは≧98%、特には≧99%、最も好ましくは100%の程度まで硬化する場合、完全に硬化したとみなされる。したがって、硬化エポキシ樹脂組成物中のエポキシ基は、特に≧80%、好ましくは≧90%、より好ましくは≧95%、さらにより好ましくは≧98%、特には≧99%、最も好ましくは100%の程度まで反応した。
【0052】
本発明の組成物は、以下に示す耐衝撃性改良剤および充填剤など、エポキシ樹脂配合物に従来から使用されている他の成分を含むことができる。
【0053】
耐衝撃性改良剤
本組成物は耐衝撃性改良剤を含んでもよい。耐衝撃性改良剤は、硬化した樹脂組成物の衝撃強さを改善するために広く使用されており、その固有の脆性および亀裂の伝播を補償することを目的としている。耐衝撃性改良剤は、CTBNゴム(カルボキシル末端ブタジエン-アクリロニトリル)などのゴム粒子、またはポリマーシェルに包まれたゴムもしくは他のエラストマー化合物を含有するコアシェル粒子を含むことができる。ゴム粒子に対するコアシェル粒子の利点は、それらが効果的な強靭化のためにゴムコアの制御された粒子サイズを有し、グラフト化されたポリマーシェルがエポキシ樹脂組成物との接着性および相溶性を確実にすることである。そのようなコアシェルゴムの例は、EP0985692およびWO2014/062531に開示されている。
【0054】
別の耐衝撃性改良剤には、メチルアクリラートベースのポリマー、ポリアミド、アクリル類、ポリアクリラート、アクリラートコポリマー、フェノキシベースのポリマー、およびポリエーテルスルホンが含まれうる。
【0055】
充填剤
さらに、本組成物は、組成物の流動特性を高めるために、1つまたは複数の充填剤(フィラー)を含んでもよい。好適な充填剤は、タルク、マイクロバルーン、フロック、ガラスビーズ、シリカ、ヒュームドシリカ、カーボンブラック、繊維、フィラメントおよびリサイクル誘導体、ならびに二酸化チタンを含み得る。
【0056】
本発明のプリプレグの樹脂配合物は、ポットミル、ボールミル、ビーズミル、ロールミル、ホモジナイザー、スーパーミル、ホモディスパー、ユニバーサルミキサー、バンバリーミキサー、ニーダー等を用いて、本発明の硬化剤、樹脂およびその他の添加剤を均一に混合することによって調製することができる。
【0057】
本発明のプリプレグの樹脂配合物は、高い保存安定性および優れた熱硬化性の両方を有する一液型であり得るため、長期保存や室温でコンディショニングされていない設備での保存が必要な用途に好適に使用され得る。
【0058】
本発明の樹脂配合物は、風力タービンの部品や、航空機の翼および胴体などの航空宇宙産業の部品の製造に使用されるプリプレグにおけるような、繊維強化物品の製造のための硬化性マトリックスとして特に有用である。この配合物はまた、自動車部品および出荷(輸送)に使用される部品の製造、ならびにスキーなどのスポーツ用品の製造に使用することができる。
【実施例】
【0059】
本発明は、以下の材料が使用された以下の実施例によって例証される。
【0060】
2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)プロパンおよび2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンは、東京化成工業株式会社から購入した。
3,3-ジアミノ-4,4-ジヒドロキシジフェニルスルホン(4,4-DDS)は、文献に記載されているように調製された。
1,1-カルボニルジイミダゾールは、Apollo Scientificから提供された。
Dyhard UR500(3,3’-(4-メチル-1,3-フェニレン)ビス(1,1-ジメチル尿素)は、Alzchemから購入した(米国特許第9,663,609号を参照)。
U52(4,4’-メチレンジフェニレンビス(N,N-ジメチル尿素)は、Emerald Performance Materials Companyから入手した。
オルトヒドロキシフェニュロン(OHFU)およびN-(2-ヒドロキシ-5-ニトロフェニル)-N,N’-ジメチル尿素(5-NOHFU)は、US4404356Aに記載されているように調製した。
MY721、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタンエポキシ樹脂、LY3581、ビスフェノールFエポキシ樹脂、MY0610、トリグリシジル-m-アミノフェノールに基づくエポキシ樹脂、および4,4’-ジフェニルジアミノスルホンは、Huntsman Advanced Materialsから入手した。
ビスフェノールAエポキシ、Epikote 828は、Brenntagから得た。
LY1556、Aralditeエポキシ樹脂は、Huntsmanから入手した。
5003P、ポリエーテルスルホン熱可塑性樹脂は、Sumitomoにより供給された。
ポリアミド粒子は、Arkemaにより供給された。
全ての他の試薬および溶媒は、Sigma-Aldrichにより供給された。
【0061】
以下の試験方法を実施例の材料に使用した。
【0062】
TA Q100装置を使用し、-50~350℃にて10℃/分の加熱速度で動的示差走査熱量測定(DSC)を実行し、樹脂の未硬化Tgならびに開始温度およびピーク温度を測定した。動的DSCはまた、%硬化の決定のため、硬化配合物の残留エンタルピーを測定するためにも使用された。
【0063】
Mettler Toledoの機器であるDSC 1を使用して等温示差走査熱量測定(DSC)を実行し、様々な外部適用温度での硬化の間にピーク温度に達するのにかかる時間を測定した。
【0064】
Q800装置を使用し、加熱速度5℃/分、周波数1Hzおよび振幅30μmで、硬化樹脂に対して動的機械分析(DMA)を実行し、ガラス転移温度を測定した。
【0065】
Mettler ToledoのTGA/DSC 1を使用し、空気中25~350℃にて10℃/分の加熱速度で熱重量分析(TGA-DSC)を実行し、融点/分解温度を測定した。
【0066】
Anton PaarのMCR92を使用して動的および等温レオロジーを試験した。2℃/分の加熱速度で動的レオロジーを試験した。
【0067】
混合物の未硬化Tgを経時的にモニタリングすることによって寿命(outlife)を測定した。混合物は、23℃に設定された温度制御インキュベーターで保存された。
【0068】
以下の略語が使用される。
PBOHFU - N,N’-[プロピレン(4-ヒドロキシ-3,1-フェニレン)]ビス(N,N-ジメチル)尿素
FPBOHFU - N,N’-[ヘキサフルオロプロピレン(4-ヒドロキシ-3,1-フェニレン)]ビス(N,N-ジメチル)尿素
SBOHFU - N,N’-[スルホニル(4-ヒドロキシ-3,1-フェニレン)]ビス(N,N-ジメチル)尿素
DOHFU - 3,3’-(4,6-ジヒドロキシ-1,3-フェニレン)ビス(1,1-ジメチル尿素)
OHFU - オルトヒドロキシフェニュロン
5-NOHFU - N-(2-ヒドロキシ-5-ニトロフェニル)-N,N’-ジメチル尿素
4,4-DDS - 4,4-ジアミノジフェニルスルホン
実施例で採用された試験の結果は、本明細書に付された
図1~4に示されている。
【0069】
例1
N,N’-[プロピレン(4-ヒドロキシ-3,1-フェニレン)]ビス(N,N-ジメチル)尿素、PBOHFUの製造
【化6】
【0070】
この式のビスベンゾオキサゾリノン前駆体を、最初に次のように調製した。500mlの丸底フラスコに2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン25.2gおよびジメチルアセトアミド300mlを加えた。撹拌溶液に、57.0gの1,1-カルボニルジイミダゾールを1時間かけて少しずつ添加した。溶液を60℃に加熱し、この温度で6時間撹拌した後、室温に冷却した。次いで、溶液を1リットルの脱イオン水に注ぎ、生成物を沈殿させた。混合物に、溶液がわずかに酸性になるまで4M塩酸を加えた。沈殿物を真空濾過によって回収し、脱イオン水で洗浄した後、60℃の真空オーブンで一晩乾燥させて、融点278℃の白色粉末29.7gを収率98.0%で得た。
【0071】
【0072】
下記式のPBOHFUを次のように調製した。
【化7】
250mlの丸底フラスコに、29.7gの2,2-ビス(3H-1,3-ベンゾオキサゾール-2-オン)プロパン前駆体および85mlの40重量%ジメチルアミン水溶液を加えた。混合物を50℃に加熱し、この温度で合計15時間撹拌し、次いで室温に冷却した。この間、80mlの脱イオン水を加えて固形分を希釈し、撹拌を補助した。次いで、混合物を一口丸底フラスコに移し、ロータリーエバポレーターで過剰のジメチルアミンを除去した。次いで、4M塩酸を使用して混合物をわずかに酸性化した。沈殿物を濾過によって回収し、脱イオン水で洗浄した後、60℃にて真空オーブンで一晩乾燥させて、36.1gの白色粉末を得た。収率は94.3%、融点は189℃(分解)であった。
【0073】
【0074】
例2
N,N-[ヘキサフルオロプロピレン(4-ヒドロキシ-3,1-フェニレン)]ビス(N,N-ジメチル)尿素、FPBOHFUの製造
【化8】
【0075】
上記のベンゾオキサゾリノン前駆体を、最初に以下のように調製した。2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン25.0g、ジメチルアセトアミド175ml、および1,1-カルボニルジイミダゾール36.2gを使用して、2.5時間の反応時間で、例1に記載されたものと同じ手順により調製を行って、26.2gの白色粉末を得た。収率は91.8%、融点は322℃であった。
【0076】
【0077】
2,2-ビス(3H-1,3-ベンゾオキサゾール-2-オン)ヘキサフルオロプロパン26.2g、および40重量%ジメチルアミン水溶液50mlを用い、2.5時間の反応時間で例1と同じ手順によりウロンを調製し、17.7gの白色粉末を得た。収率は55.6%、融点は202℃(分解)であった。これにより以下の式の生成物が得られた。
【化9】
【0078】
【0079】
例3
N,N’-[スルホニル(4-ヒドロキシ-3,1-フェニレン)]ビス(N,N-ジメチル)尿素、SBOHFUの製造
【0080】
【化10】
5.6gの3,3-ジアミノ-4,4-ジヒドロキシジフェニルスルホン、50mlのジメチルアセトアミドおよび10.3gの1,1-カルボニルジイミダゾールを用い、4時間の反応時間で例1と同じ手順によりベンゾオキサゾリノン前駆体を最初に調製し、6.2gの白色粉末を得た。収率は91.2%、融点は>350℃であった。
【0081】
【0082】
【化11】
6.2gの2,2-ビス(3H-1,3-ベンゾオキサゾール-2-オン)スルホン、および15mlの40重量%ジメチルアミン水溶液を用い、7時間の反応時間で例1と同じ手順によりウロンを調製し、6.2gの黄褐色粉末を得た。収率は79.5%、融点は220℃(分解)であった。
【0083】
例4
3,3’-(4,6-ジヒドロキシ-1,3-フェニレン)ビス(1,1-ジメチル尿素)、DOHFUの製造
【0084】
【化12】
ビスベンゾオキサゾリノン前駆体を最初に調製した。500mlの丸底フラスコに25.0gの4,6-ジアミノレゾルシノール二塩酸塩を加え、フラスコを窒素の不活性雰囲気下に置いた。次いで、ジメチルアセトアミド300mlを添加した。撹拌懸濁液にトリエチルアミン16.0mlを滴下し、続いて1,1-カルボニルジイミダゾール63.4gを1時間かけて少しずつ加えた。懸濁液を60℃に加熱し、この温度で2時間攪拌した後、室温に冷却した。次いで混合物を1Lの脱イオン水に注ぎ、生成物を沈殿させた。溶液がわずかに酸性になるまで、混合物に4M塩酸を加えた。沈殿物を真空濾過によって収集し、脱イオン水で洗浄した後、60℃にて真空オーブンで一晩乾燥させて、オフホワイトの粉末21.8gを得た。収率は96.9%、融点は>350℃であった。
【0085】
【0086】
【化13】
[1,3]-オキサゾロ[4,5-F][1,3]ベンゾオキサゾール-2,6-(3H,5H)-ジオン10.1gおよび40重量%のジメチルアミン水溶液40mlを用いて、2.5時間の反応時間で例1と同じ手順によりウロンを調製した。生成物を加熱されたジメチルアセトアミド100mlに溶解し、濾過することにより精製した。次に濾液を250mlの脱イオン水に注いだ。沈殿物を濾過によって収集し、脱イオン水で洗浄した後、60℃にて真空オーブンで一晩乾燥させて、バーガンディー色の粉末11.4gを得た。収率は77.0%、融点は233℃(分解)であった。
【0087】
【0088】
例5
例1および例2の生成物をエポキシ樹脂の硬化剤として使用し、標準の二官能性ウロンUR500およびU52と比較し、単官能性オルトヒドロキシフェニュロンとしてのOHFUおよびNOHFUと比較した。これらのウロンを、ウロン官能基対エポキシ樹脂基の当量比=5.6モル%のウロン基対エポキシ基となるように、エポキシ樹脂Epikote 828中に分散させた。
【0089】
【0090】
混合物を、150℃に到達するまで1℃/分の温度上昇で150℃にてファンオーブン内で1時間硬化させた。また、サンプルを180℃にて2時間後硬化させて、完全な硬化を達成した。表2の結果は、本発明のウロンの使用が、標準のウロンおよび単官能性OHFUと比較して改善された最終Tg(ultimate Tg)を示すことを実証している。
【0091】
【0092】
反応性を、等温DSCから、ピークまでの時間によって様々な硬化温度で測定した。表3は、本発明のPBOHFUが、非ヒドロキシフェニル二官能性尿素U52よりわずかに優れていないにせよ匹敵する程度に機能することを実証している。
【0093】
【0094】
混合物の寿命(outlife)を、23℃にて所定の時間にわたって保持したときの混合物の未硬化Tgをモニタリングすることによって追跡した。本明細書に添付された
図1であるグラフは、寿命性能が、標準の二官能性ウロンおよび単官能性OHFUの両方の性能と同様であることを実証している。
【0095】
さらに、表4は、エポキシ樹脂中の本発明のビスOHFUの含量をウロン基対エポキシ基5.6モル%から10モル%に増加させると、単官能性OHFUを使用する場合よりも大幅にTgが改善されることを実証している。
【0096】
【0097】
ここから把握されるとおり、PBOHFUは、単官能性OHFUと比較して改善されたTgを示した。OHFUは、5.6モル%と比較して10モル%を添加すると最終Tgが6℃しか上昇しないのに対し、PBOHFUは5.6モル%と比較して10モル%で11℃の上昇を示す。
【0098】
例6
例1の生成物をエポキシ樹脂の硬化剤として使用して、標準の二官能性ウロンUR500およびU52と比較し、単官能性オルトヒドロキシフェニュロンとしてのOHFUと比較した。これらのウロンを、ウロン官能基対エポキシ樹脂基の当量比=5.6モル%のウロン基対エポキシ基となるように、エポキシ樹脂MY721中に分散させた。
【0099】
【0100】
混合物を、180℃に到達するまで1℃/分の温度上昇で180℃にてファンオーブン内で2時間硬化させた。表6の結果は、本発明のウロンの使用が、標準のウロンおよび単官能性OHFUと比較して改善された最終Tgの後硬化を示すことを実証している。
【0101】
【0102】
表5の混合物の寿命(outlife)を、23℃にて所定の時間にわたって保持したときの混合物の未硬化Tgをモニタリングすることによって追跡した。本明細書に添付された
図2であるグラフは、本発明の生成物についての寿命性能が、標準の二官能性ウロンの性能と類似しており、単官能性OHFUよりも少し良好であることを実証している。
【0103】
80℃での混合物のレイテンシー(潜在性)を、3時間の時間枠で等温レオロジーによってモニタリングした。本明細書に添付された
図3であるグラフは、本発明のPBOHFUが80℃で単官能性OHFUよりも良好なレイテンシー性能を示し、標準の二官能性ウロンUR500およびU52のそれに近づくことを実証している。
【0104】
例7
例1および例2の生成物を、表7に示すように4,4-DDS硬化系の促進剤として使用して、標準的な二官能性ウロンUR200およびU52と比較し、単官能性オルトヒドロキシフェニュロンとしてOHFUと比較した。
【0105】
【0106】
混合物を、180℃に到達するまで1℃/分の温度上昇で、180℃にてファンオーブン内で45分間、75分間および120分間硬化させた。表8および表9の結果は、本発明のPBOHFUおよびFPBOHFUが、%硬化に関して同様の硬化促進効果を示す一方、それらは、標準のウロンおよび単官能性OHFUと比較して、すべての硬化サイクル時間にわたって改善されたTgを示すことを実証している。
【0107】
【0108】
【0109】
ウロン含有量を表10に示すものまで減少させることによって、配合物の組成を変更した。表11および表12は、DDS硬化系において本発明のビスOHFUの含有量を減少させることにより、いかにしてTgがさらに改善され、なおかつ、いかにして全ての硬化サイクル時間にわたって良好な促進効果が与えられるかを実証している。
【0110】
【0111】
【0112】
【0113】
100℃での混合物のレイテンシー(潜在性)を、3時間の時間枠で等温レオロジーによってモニタリングした。本明細書に添付された
図4であるグラフによって実証されているように、本発明のFBOHFUおよびPBOHFUは、促進剤が用いられていない配合物と比べて1%および0.50%の装入量の両方により100℃でのレイテンシー性能が変わらないことを示している。
【国際調査報告】