(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-06
(54)【発明の名称】若い無傷ヒト血清アルブミンによる人類の寿命の延長
(51)【国際特許分類】
A61K 38/38 20060101AFI20230830BHJP
A61P 3/02 20060101ALI20230830BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20230830BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20230830BHJP
C07K 14/765 20060101ALI20230830BHJP
【FI】
A61K38/38
A61P3/02 101
A61P21/00
A61P25/28
C07K14/765 ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023511637
(86)(22)【出願日】2021-08-11
(85)【翻訳文提出日】2023-04-12
(86)【国際出願番号】 CN2021112093
(87)【国際公開番号】W WO2022033525
(87)【国際公開日】2022-02-17
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2020/108496
(32)【優先日】2020-08-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518389990
【氏名又は名称】シェンチェン、プロトゲン、リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SHENZHEN PROTGEN LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(72)【発明者】
【氏名】ルオ,ヨンチァン
(72)【発明者】
【氏名】フー,ヤン
(72)【発明者】
【氏名】タン,ジアゾ
(72)【発明者】
【氏名】ジュー,アンジ
(72)【発明者】
【氏名】リー,ボヤ
(72)【発明者】
【氏名】ゴン,ユアンチャオ
(72)【発明者】
【氏名】チャン,シャオセン
(72)【発明者】
【氏名】チャン,グオドン
(72)【発明者】
【氏名】リー,フイ
【テーマコード(参考)】
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA02
4C084BA01
4C084CA36
4C084CA53
4C084DA37
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZA151
4C084ZA152
4C084ZA941
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4C084ZC221
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4C084ZC522
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA09
4H045BA61
4H045CA40
4H045DA70
4H045EA20
4H045FA72
4H045FA74
4H045GA00
(57)【要約】
本発明は被験者の寿命延長及び/又は老化防止の方法を提供し、有効量の若い無傷ヒト血清アルブミン(HSA)の製剤を被験者に投与するステップを含み、上記製剤は、被験者から得られた内因性HSA製剤に比べて、(1)Cys-34残基における遊離チオール基の比率がより高く、(2)終末糖化産物(AGE)のレベルがより低く、(3)カルボニル化のレベルがより低く、及び(4)ホモシステイン化のレベルがより低いという特性の少なくとも1つ、好ましくはすべてを示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
若いヒト個体から得られた内因性HSA製剤に比べて、(1)Cys-34残基における遊離チオール基の比率がより高く、(2)終末糖化産物(AGE)のレベルがより低く、(3)カルボニル化のレベルがより低く、及び(4)ホモシステイン化のレベルがより低いという特性の少なくとも1つ、好ましくはすべてを示す、若い無傷ヒト血清アルブミン(HSA)の製剤。
【請求項2】
前記若い個体は30歳未満、好ましくは18歳未満である、請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
(1)Ellman方法で測定した場合、Cys-34残基における遊離チオール基の比率が50%より大きく、たとえば70%、特に80%、好ましくは90%であり、より好ましくは95%より大きく、(2)ELISA(CLOUD-CLONE Co.,CEB353Ge)で測定した場合、終末糖化産物(AGE)のレベルが60μg/gタンパク質未満、好ましくは40μg/gタンパク質、より好ましくは30μg/gタンパク質未満であり、(3)Protein Carbonyl Content Assay Kit(Abcam)で測定した場合、カルボニル基のレベルが1.7nmol/mgタンパク質未満、好ましくは1.5nmol/mgタンパク質未満であり、及び(4)ELISA(Jianglai, JL10022)で測定した場合、ホモシステインのレベルが5nmol/gタンパク質未満、好ましくは3.5nmol/gタンパク質、より好ましくは2nmol/gタンパク質未満であるという特性の少なくとも1つ、好ましくはすべてを示す、若い無傷ヒト血清アルブミン(HSA)の製剤。
【請求項4】
Cys-34残基における前記遊離チオール基の比率は80%より大きい、前述の請求項のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項5】
前記AGEのレベルは30μg/gタンパク質未満である、前述の請求項のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項6】
前記カルボニル基のレベルは1.5nmol/mgタンパク質未満である、前述の請求項のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項7】
前記ホモシステインのレベルは2nmol/gタンパク質未満である、前述の請求項のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項8】
前記Cys-34残基における遊離チオール基の比率は80%より大きく、前記AGEのレベルは30μg/gタンパク質未満であり、前記カルボニル基のレベルは1.5nmol/mgタンパク質未満であり、前記ホモシステインのレベルは2nmol/gタンパク質未満である、前述の請求項のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項9】
前記製剤は組換えによって産生されるか、又は血漿から精製される、前述の請求項のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項10】
被験者の寿命延長及び/又は老化防止における若い無傷ヒト血清アルブミン(HSA)の製剤の使用であって、前記製剤は、前記被験者から得られた内因性HSA製剤に比べて、(1)Cys-34残基における遊離チオール基の比率がより高く、(2)終末糖化産物(AGE)のレベルがより低く、(3)カルボニル化のレベルがより低く、及び(4)ホモシステイン化のレベルがより低いという特性の少なくとも1つ、好ましくはすべてを示す、使用。
【請求項11】
前記製剤は、(1)Ellman方法で測定した場合、Cys-34残基における遊離チオール基の比率が50%より大きく、たとえば70%、特に80%、好ましくは90%であり、より好ましくは95%より大きく、(2)ELISA(CLOUD-CLONE Co.,CEB353Ge)で測定した場合、終末糖化産物(AGE)のレベルが60μg/gタンパク質未満、好ましくは40μg/gタンパク質、より好ましくは30μg/gタンパク質未満であり、(3)Protein Carbonyl Content Assay Kit(Abcam)で測定した場合、カルボニル基のレベルが1.7nmol/mgタンパク質未満、好ましくは1.5nmol/mgタンパク質未満であり、及び(4)ELISA(Jianglai, JL10022)で測定した場合、ホモシステインのレベルが5nmol/gタンパク質未満、好ましくは3.5nmol/gタンパク質、より好ましくは2nmol/gタンパク質未満であるという特性の少なくとも1つ、好ましくはすべてを示す、請求項10に記載の使用。
【請求項12】
Cys-34残基における前記遊離チオール基の比率は80%より大きい、請求項10~11のいずれか1項に記載の使用。
【請求項13】
前記AGEのレベルは30μg/gタンパク質未満である、請求項10~12のいずれか1項に記載の使用。
【請求項14】
前記カルボニル基のレベルは1.5nmol/mgタンパク質未満である、請求項10~13のいずれか1項に記載の使用。
【請求項15】
ELISAで測定した場合、前記ホモシステインのレベルは2nmol/gタンパク質未満である、請求項10~14のいずれか1項に記載の使用。
【請求項16】
前記Cys-34残基における遊離チオール基の比率は80%より大きく、前記AGEのレベルは30μg/gタンパク質未満であり、前記カルボニル基のレベルは1.5nmol/mgタンパク質未満であり、前記ホモシステインのレベルは2nmol/gタンパク質未満である、請求項10~15のいずれか1項に記載の使用。
【請求項17】
前記被験者は患者又は健康な個体である、請求項10~16のいずれか1項に記載の使用。
【請求項18】
被験者の寿命延長及び/又は老化防止の方法であって、有効量の若い無傷ヒト血清アルブミン(HSA)の製剤を前記被験者に投与するステップを含み、前記製剤は、前記被験者から得られた内因性HSA製剤に比べて、(1)Cys-34残基における遊離チオール基の比率がより高く、(2)終末糖化産物(AGE)のレベルがより低く、(3)カルボニル化のレベルがより低く、及び(4)ホモシステイン化のレベルがより低いという特性の少なくとも1つ、好ましくはすべてを示す、方法。
【請求項19】
前記製剤は、(1)Ellman方法で測定した場合、Cys-34残基における遊離チオール基の比率が50%より大きく、たとえば70%、特に80%、好ましくは90%であり、より好ましくは95%より大きく、(2)ELISA(CLOUD-CLONE Co.,CEB353Ge)で測定した場合、終末糖化産物(AGE)のレベルが60μg/gタンパク質未満、好ましくは40μg/gタンパク質、より好ましくは30μg/gタンパク質未満であり、(3)Protein Carbonyl Content Assay Kit(Abcam)で測定した場合、カルボニル基のレベルが1.7nmol/mgタンパク質未満、好ましくは1.5nmol/mgタンパク質未満であり、及び(4)ELISA(Jianglai, JL10022)で測定した場合、ホモシステインのレベルが5nmol/gタンパク質未満、好ましくは3.5nmol/gタンパク質、より好ましくは2nmol/gタンパク質未満であるという特性の少なくとも1つ、好ましくはすべてを示す、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
Cys-34残基における前記遊離チオール基の比率は80%より大きい、請求項18~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記AGEのレベルは30μg/gタンパク質未満である、請求項18~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記カルボニル基のレベルは1.5nmol/mgタンパク質未満である、請求項18~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
ELISAで測定した場合、前記ホモシステインのレベルは2nmol/gタンパク質未満である、請求項18~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記Cys-34残基における遊離チオール基の比率は80%より大きく、前記AGEのレベルは30μg/gタンパク質未満であり、前記カルボニル基のレベルは1.5nmol/mgタンパク質未満であり、前記ホモシステインのレベルは2nmol/gタンパク質未満である、請求項18~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記被験者は患者又は健康な個体である、請求項18~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
請求項1~9のいずれか1項に定義された若い無傷ヒト血清アルブミンの製剤と、薬学的に許容される担体と、を含む、医薬組成物。
【請求項27】
被験者の老化状態の変化を監視するための方法であって、
前記被験者からヒト血清アルブミン(HSA)サンプルを得るステップと、
前記サンプルにおいて、(1)Cys-34残基における遊離チオール基の比率、(2)終末糖化産物(AGE)のレベル、(3)カルボニル化のレベル、及び(4)ホモシステイン化のレベルのHSAの4つのパラメータの少なくとも1つ、好ましくはすべてを試験するステップと、
同じ被験者からの以前の試験データに比べて、Cys-34残基における遊離チオール基の比率が増加し、及び/又はAGEのレベル、カルボニル化のレベル及び/又はホモシステイン化のレベルが低下した場合、被験者の老化状態が改善されたと判定するステップと、を含む、方法。
【請求項28】
被験者の骨格筋機能及び/又は認知能力を改善する方法であって、有効量の請求項1~9のいずれか1項に定義された若い無傷ヒト血清アルブミン(HSA)の製剤を前記被験者に投与するステップを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は生物医学の分野に関し、特に人類の寿命の延長における若い無傷ヒト血清アルブミン(HSA)の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
長寿は人類の永遠の追求である。永遠に生きることを熱狂的に追求する物語は人類の歴史全体に流れている。皮肉なことに、老化が進んでいるが、不老不死の霊薬は発見されていない。老化のメカニズムを理解することは長寿の夢を実現するために非常に重要であるが、老化の複雑さ及び全身性により、この過程はあまり理解されていない。
【発明の概要】
【0003】
本発明は、部分的に、生理食塩水治療群に比べて、自然老齢のマウスモデルにおける若い無傷組換えマウス血清アルブミン(rMSA)の投与が、寿命を顕著に延長し、骨格筋の強さ及び認知能力を増加するという驚くべき発見に基づいている。
【0004】
本発明の一態様は、若いヒト個体から得られた内因性HSA製剤に比べて、(1)Cys-34残基における遊離チオール基の比率がより高く、(2)終末糖化産物(AGE)のレベルがより低く、(3)カルボニル化のレベルがより低く、及び(4)ホモシステイン化のレベルがより低いという特性の少なくとも1つ、好ましくはすべてを示す、若い無傷ヒト血清アルブミン(HSA)の製剤を提供する。
【0005】
本発明の別の1つの態様は被験者の寿命延長及び/又は老化防止の方法を提供し、有効量の若い無傷ヒト血清アルブミン(HSA)の製剤を被験者に投与するステップを含み、該製剤は、前記被験者から得られた内因性HSA製剤に比べて、(1)Cys-34残基における遊離チオール基の比率がより高く、(2)終末糖化産物(AGE)のレベルがより低く、(3)カルボニル化のレベルがより低く、及び(4)ホモシステイン化のレベルがより低いという特性の少なくとも1つ、好ましくはすべてを示す。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】rMSA治療によりマウスの寿命が延長された
【0007】
A及びBはrMSA又は生理食塩水で治療された6M群における雌(A)及び雄(B)のマウスの生存曲線である。CはrMSA又は生理食塩水で治療されたマウスの代表的な画像である。
D及びEはrMSA又は生理食塩水で治療された3M群における雌(D)及び雄(E)のマウスの生存曲線である。F及びGはrMSA又は生理食塩水で治療された18M群における雌(F)及び雄(G)のマウスの生存曲線である。6M、3M及び18M群(A~G)におけるマウスは、3週間ごとに20mg/マウスのrMSA又は等量の生理食塩水で治療される。H及びIは3週間ごとに体重1gあたり1.5mgのrMSA又は等量の生理食塩水で治療された12M群における雌(H)及び雄(I)のマウスの生存曲線である。生存期間の中央値(月単位、M)及び百分率増加が示されている。ログランク(Mantel-Cox)検定によりp値を計算する。nは各回の分析に用いられるマウスの数である。
【
図2】マウスの骨格筋の機能に対するrMSAの影響
【0008】
A及びBは12M群における体重調整投与量のrMSA又は生理食塩水で治療された雌(A)及び雄(B)のマウスの握力である。Cは腓腹筋のトルイジンブルー染色である。縮尺、50μm。D~GはCにおけるデータの統計結果である。生理食塩水で治療されたマウス、rSMAで治療されたマウス、雌、n=4、雄、n=6。筋線維の平均サイズ=横断面積/線維の数。HはマウスのMHC1(緑)及び4′,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI)(青)の免疫蛍光染色である。縮尺、50μm。I及びJはImage Jを使用することによるHにおけるMHC1の蛍光強度の測定である。3週間ごとに体重1gあたり1.5mgのrMSA又は等量の生理食塩水でマウスを8ヶ月治療した。すべてのグラフは平均値とSEMを表し、p値は両側t検定によって計算される。nは各回の分析に用いられるマウスの数である。
【0009】
A及びCは12M群における雄のマウスの一次逃避率(A)及び一次逃避時間(C)の測定である。BはAの平均値である。DはCの平均値である。Eは12Mマウスの皮質におけるp-tauの代表的な画像である。縮尺、50μm。F~HはEのデータに基づく雄及び雌のマウスの皮質におけるp-auレベルの統計結果である。3週間ごとに用体重1gあたり1.5mgのrMSA又は等量の生理食塩水でマウスを8ヶ月治療した。すべてのグラフは平均値とSEMを表し、p値は両側t検定によって計算される。nは各回の分析に用いられるマウスの数である。
【
図4-1】rMSA治療により老化に関連する4つのパラメータが改善された
【0010】
A~Dは1.5ヶ月齢、12ヶ月齢及び28ヶ月齢のマウスの血清サンプルにおけるrMSA及び内因性アルブミンの遊離チオール基(A)、カルボニル基(B)、AGE(C)及びHcy(D)のレベルである。E~Hは12M群における体重調整投与量のrMSA又は等量の生理食塩水で治療されたマウスの内因性アルブミンの遊離チオール基(E)、カルボニル基(F)、AGE(G)及びHcy(H)のレベルである。I~Lは1.5ヶ月齢、12ヶ月齢及び20ヶ月齢のマウスの血清サンプルにおけるrMSA及び内因性アルブミンの遊離チオール基(I)、カルボニル基(J)、AGE(K)及びHcy(L)のレベルである。すべてのグラフは平均値とSEMを表し、p値は両側t検定によって計算される。nは各回の分析に用いられるマウスの数である。
【
図4-2】rMSA治療により老化に関連する4つのパラメータが改善された
【0011】
A~Dは1.5ヶ月齢、12ヶ月齢及び28ヶ月齢のマウスの血清サンプルにおけるrMSA及び内因性アルブミンの遊離チオール基(A)、カルボニル基(B)、AGE(C)及びHcy(D)のレベルである。E~Hは12M群における体重調整投与量のrMSA又は等量の生理食塩水で治療されたマウスの内因性アルブミンの遊離チオール基(E)、カルボニル基(F)、AGE(G)及びHcy(H)のレベルである。I~Lは1.5ヶ月齢、12ヶ月齢及び20ヶ月齢のマウスの血清サンプルにおけるrMSA及び内因性アルブミンの遊離チオール基(I)、カルボニル基(J)、AGE(K)及びHcy(L)のレベルである。すべてのグラフは平均値とSEMを表し、p値は両側t検定によって計算される。nは各回の分析に用いられるマウスの数である。
【
図5】rMSA注射の21日後、アルブミンの発現及びタンパク質レベルは正常に戻ることができる。 Aは各マウス(n=3)に20mgのrMSAを注射した後、qRT-PCRで測定された肝臓でのアルブミン遺伝子の動的発現レベルである。Bは各マウス(n=3)に50mgのrMSAを注射した後、qRT-PCRで測定された肝臓でのアルブミン遺伝子の動的発現レベルである。Cは各マウス(n=3)に20又は50mgのrMSAを注射してから1日(左上)及び2~21日(右上)の血清アルブミンの動的タンパク質レベルである。表(底部)は平均定量値を示す。すべてのグラフは平均値とSEMを表す。
【
図6】総タンパク質レベル及びアルブミン/グロブリン比に対するrMSA注射の影響
【0012】
各マウス(n=3)に20又は50mgのrMSAを注射してから1日(左上)及び2~21日(右上)の動的総タンパク質レベル(A)、総グロブリンレベル(B)及びアルブミン/グロブリン比(C)。表(底部)は平均定量値を示す。すべてのグラフは平均値とSEMを表す。
【
図7-1】主な血液生化学パラメータに対するrMSA注射の影響
【0013】
主な血液生化学パラメータの動的変化(折れ線グラフで表示され、グルタミンGLU、血中尿素窒素BUN、コレステロールCHO、トリグリセリドTG、乳酸脱水素酵素LDH、アラニンアミノトランスフェラーゼALT、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼAST、アルカリ性ホスファターゼALP、γ-グルタミルトランスペプチダーゼGGT)。表(底部)は平均定量値を示す。すべてのグラフは平均値とSEMを表す。
【
図7-2】主な血液生化学パラメータに対するrMSA注射の影響
【0014】
主な血液生化学パラメータの動的変化(折れ線グラフで表示され、グルタミンGLU、血中尿素窒素BUN、コレステロールCHO、トリグリセリドTG、乳酸脱水素酵素LDH、アラニンアミノトランスフェラーゼALT、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼAST、アルカリ性ホスファターゼALP、γ-グルタミルトランスペプチダーゼGGT)。表(底部)は平均定量値を示す。すべてのグラフは平均値とSEMを表す。
【
図7-3】主な血液生化学パラメータに対するrMSA注射の影響
【0015】
主な血液生化学パラメータの動的変化(折れ線グラフで表示され、グルタミンGLU、血中尿素窒素BUN、コレステロールCHO、トリグリセリドTG、乳酸脱水素酵素LDH、アラニンアミノトランスフェラーゼALT、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼAST、アルカリ性ホスファターゼALP、γ-グルタミルトランスペプチダーゼGGT)。表(底部)は平均定量値を示す。すべてのグラフは平均値とSEMを表す。
【
図8】若い無傷rMSAで治療されたマウスはより健康な外観を示した
【0016】
rMSA又は生理食塩水を注射した老齢の雌のマウスの代表的な画像。後弯症(kyphosis)は矢印で示される。
【0017】
3週間ごとにマウスあたり20mgのrMSA/又は等量の生理食塩水で治療された(A)6M、(B)3M及び(C)18M群における雌及び雄のマウスの体重。Dは3週間ごとに体重1gあたり1.5mgのrMSA又は等量の生理食塩水で治療された12M群における雌及び雄のマウスの体重である。すべてのグラフは平均値とSEMを表す。
【
図10】バーンズ迷路試験における代表的な移動軌跡
【0018】
Aは12M群における生理食塩水で治療された雄のマウスの代表的な移動軌跡である。
Bは12M群における体重1gあたり1.5mgのrMSAで治療された雄のマウスの代表的な移動軌跡である。
【
図11】rMSAのインタクトタンパク質の質量分析
【0019】
rMSAの分子量はQ-TOF質量分析法で検証された。
【
図12】若い無傷rHSAと血液由来の内因性HSAとの間の4つのパラメータの比較。
【0020】
A~Dは若い無傷rHSA及び血液由来の内因性HSAの遊離チオール基(A)、カルボニル基(B)、AGE(C)及びHcy(D)のレベルである。すべてのグラフは平均値とSEMを表し、p値は両側t検定によって計算される。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本明細書で使用される用語「a」、「an」及び「the」は、文脈から明確に単数の意味を指示しない限り、「1つ及び複数」又は「少なくとも1つ」を意味する。
【0022】
本明細書で使用される用語「及び/又は」は、1つ又は複数の列挙された項目のあらゆる可能な組み合わせを含むことを意図する。
【0023】
本明細書で使用される用語「comprises」及び「comprising」(含む)は、素子、構成要素、特徴、ステップ等の存在を示すことを意図するが、その他の素子、構成要素、特徴、ステップ等の存在を排除するものではない。本発明では、製品が特定の構成要素を含むと言及されている場合、それは、これらの構成要素のみからなる製品も列挙していることを理解すべきである。
【0024】
用語「薬学的に許容される担体」は、標準的な薬学的担体、緩衝液及び賦形剤のいずれかを含み、緩衝生理食塩水溶液、水及び乳濁液(例えば油/水又は水/油乳濁液)、及び様々なタイプの湿潤剤及び/又は補助剤を含む。適切な薬学的担体及びその製剤はRemington’s Pharmaceutical Sciences(Mack Publishing Co.,Easton,19th ed.,1995)を説明するために用いられる。好ましい薬学的担体は活性成分剤の意図する投与モードに決められる。
【0025】
本発明では、特に明記しない限り、配列方向は5’~3’である。
【0026】
本明細書で使用される用語「ヒト血清アルブミン」(human serum albumin)又は「HSA」は交換可能に使用することができ、且つ広い意味で解釈されるべきである。用語「ヒト血清アルブミン」又は「HSA」は野生型ヒト血清アルブミン(たとえば、遺伝子名:ALB、NCBI ID:213、UniProtKB-P02768を参照)及びその任意の機能的変異体を含み、上記機能的変異体は1つ又はいくつかのアミノ酸残基の付加、欠失又は置換を含み、且つ野生型HSAと基本的に同じ生物学的機能を維持する。HSAの生物学的機能は本分野で周知である。
【0027】
本明細書で使用される用語「若い」HSA及び「若い無傷」HSAは同じ意味を有し、交換可能に使用することができ、これは、特定のHSA製剤(たとえば、30歳の個体から得られたHSA製剤)に比べて、タンパク質が新鮮な状態にあり、大きな損傷がないことを意味する。
【0028】
当業者は、用語「若い無傷」HSAが損傷がまったくないことを厳密に要求するものではないのを理解するであろう。完全に不可能ではないにしても、このような完璧の製剤を調製することは非常に困難である。本発明の目的のために、限られた損傷を含むHSA製剤は依然として許容される。
【0029】
「若い」HSAは通常、(1)Cys-34残基における遊離チオール基の比率がより高く、(2)終末糖化産物(AGE)のレベルがより低く、(3)カルボニル化のレベルがより低く、及び(4)ホモシステイン化のレベルがより低いという特性の少なくとも1つ、たとえば2つ又は3つ、好ましくはすべてを示す。より若いHSAは通常、より高い遊離チオール基の比率、より低いAGE、カルボニル基及びホモシステインのレベルを有する。
【0030】
いくつかの実施形態では、「若い」HSAは、(1)Ellman方法で測定した場合、Cys-34残基における遊離チオール基の比率が50%より大きく、たとえば70%、特に80%、好ましくは90%であり、より好ましくは95%より大きく、(2)ELISA(CLOUD-CLONE Co.,CEB353Ge)で測定した場合、終末糖化産物(AGE)のレベルが60μg/gタンパク質未満、好ましくは40μg/gタンパク質、より好ましくは30μg/gタンパク質未満であり、(3)Protein Carbonyl Content Assay Kit(Abcam)で測定した場合、カルボニル基のレベルが1.7nmol/mgタンパク質未満、好ましくは1.5nmol/mgタンパク質未満であり、及び(4)ELISA(Jianglai,JL10022)で測定した場合、ホモシステインのレベルが5nmol/gタンパク質未満、好ましくは3.5nmol/gタンパク質、より好ましくは2nmol/gタンパク質未満であるという特性の少なくとも1つ(たとえば2つ又は3つ)、好ましくはすべてを示す。
【0031】
本明細書で使用される用語「製剤」はプロセスによって調製された材料を指す。たとえば、HSA製剤は、ヒト血清アルブミン分子の集団を含む、特定の個体又は複数の個体から調製されたHSAサンプルを指すことができる。「製剤」は包装された市販製品であってもよく、又は溶液又は凍結乾燥粉末等の形態で調製された原料であってもよい。
【0032】
4つのパラメータ及びその測定
遊離チオール基:野生型HSA(遺伝子名:ALB、NCBI ID:213、UniProtKB-P02768)は1つの還元されたシステイン残基(Cys-34残基)を含有し、これは各HSA分子が1つの遊離チオール基を有することを意味する。還元されたCys-34残基の遊離チオール基はインビトロ及びインビボで酸化されて酸化形態になることができる。
【0033】
HSAにおける遊離チオール基の比率は以下を意味する。
【0034】
【0035】
Ellman方法:DTNBを添加した後、412nmでの吸光度は上昇する。
【0036】
AGE:血清アルブミンは糖化に非常に敏感な血漿タンパク質である。この過程はメイラード反応(Maillard reaction)とも呼ばれ、ゆっくりとした非酵素反応であり、最初はグルコース又は誘発体とアルブミンの遊離アミン基との結合に関し、シッフ塩基生成物を可逆的に形成し、Amadori再配列の後に、安定したフルクトサミン残基(ケトアミン)を形成する。これは初期の糖化過程であり:シッフ塩基とフルクトサミンは初期糖化付加物と呼ばれる。その後、Amadori生成物は環化し、ピラノース又はフラノース炭水化物付加物を形成することができる。これらの初期糖化生成物は、再配列、酸化、重合及び解剖など、さらに修飾されると、不可逆的なコンジュゲートが生成され、終末糖化産物(advanced glycation end products、AGE)と呼ばれる。メーカーの説明書(CLOUD-CLONE Co.,CEB353Ge)に従って、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)キットでAGEの質量濃度を測定する。結果は反応あたりのHSA濃度によって正規化され、且つタンパク質1グラムあたりのAGEのマイクログラムとして表される。
【0037】
カルボニル基:カルボニル基は酸素原子に二重結合している炭素原子を含有する。ここで、カルボニル化はHSAのアミノ酸残基にカルボニル基が形成されることを意味する。Protein Carbonyl Content Assay Kit(ab126287)はHSAにおけるカルボニル基を定量することに用いられる。該方法は、DNPHとタンパク質カルボニル基の反応に基づいており、該反応はDNPヒドラゾンを形成し、且つマイクロプレートリーダーを使用して375nmの吸光度で定量化できる。マニュアルに従って、Protein Carbonyl Content Assay Kit(Abcam,ab126287)を使用してカルボニル基のモル濃度を定量する。結果は反応あたりのHSA濃度によって正規化され、且つタンパク質1mgあたりのnmolカルボニルとして表される。
【0038】
Hcy:ホモシステイン(Hcy)は必須の食事タンパク質アミノ酸Metから代謝され、非タンパク質構成アミノ酸と見なされ、該非タンパク質構成アミノ酸はタンパク質の翻訳後修飾(PTM)に関与することが分かっている。Hcyは、リジン(Lys)残基へのイソペプチド結合(N-Hcy-タンパク質)を介して、又はCys-34残基へのジスルフィド結合(S-Hcy-タンパク質)を介してタンパク質に結合することができる。N-ホモシステイン化は新型のPTMであり、それはタンパク質の構造及び機能に影響を与えてタンパク質の損傷を引き起こす。N-ホモシステイン化はHcyチオラクトンによって提供され、HcyチオラクトンはHcyのみから生じられる。Hcyのモル濃度はELISA及びHPLCによって定量的に測定できる。研究では、メーカーの説明に従って、ELISAでHcyのモル濃度を測定する(Jianglai,JL10022)。結果は反応あたりのHSA濃度によって正規化され、タンパク質1グラムあたりのnmol Hcyとして表される。
【0039】
この研究の結果に基づいて、若いHSAはそれを受ける人間の被験者に顕著な健康上の利点をもたらす。
【0040】
発明者は、(1)Cys-34残基における遊離チオール基の比率、(2)終末糖化産物(AGE)のレベル、(3)カルボニル化のレベル、及び(4)ホモシステイン化のレベルの4つのパラメータでHSAの老化状態を定義するという考え方を創造的に提案する。
【0041】
一態様では、本発明は若い無傷ヒト血清アルブミン(human serum albumin、HSA)の製剤を提供し、それは、若いヒト個体から得られた内因性HSA製剤に比べて、(1)Cys-34残基における遊離チオール基の比率がより高く、(2)終末糖化産物(AGE)のレベルがより低く、(3)カルボニル化のレベルがより低く、及び(4)ホモシステイン化のレベルがより低いという特性の少なくとも1つ(たとえば2つ又は3つ)、好ましくはすべてを示す。
【0042】
用語「若い」ヒトの個体は通常、30歳未満、好ましくは18歳未満、より好ましくは3歳未満、さらに1歳未満のヒトを指す。
【0043】
1つの実施形態では、(1)Ellman方法で測定した場合、Cys-34残基における遊離チオール基の比率が50%より大きく、たとえば70%、特に80%、好ましくは90%であり、より好ましくは95%より大きく、(2)ELISA(CLOUD-CLONE Co.,CEB353Ge)で測定した場合、終末糖化産物(AGE)のレベルが60μg/gタンパク質未満、好ましくは40μg/gタンパク質、より好ましくは30μg/gタンパク質未満であり、(3)Protein Carbonyl Content Assay Kitで測定した場合、カルボニル基のレベルが1.7nmol/mgタンパク質未満、好ましくは1.5nmol/mgタンパク質未満であり、及び(4)ELISA(Jianglai,JL10022)で測定した場合、ホモシステインのレベルが5nmol/gタンパク質未満、好ましくは3.5nmol/gタンパク質、より好ましくは2nmol/gタンパク質未満であるという特性の少なくとも1つ、好ましくはすべてを示す、若い無傷ヒト血清アルブミン(HSA)の製剤を提供する。
【0044】
野生型HSAにおいて、1つのみの遊離チオール基はCys-34残基にある。当業者は、該HSAが野生型HSAの機能的変異体であり且つ僅かに異なるアミノ酸配列を含むと、Cys-34残基が34と僅かに異なる位置にある可能性があることを容易に理解できる。該位置は野生型HSAのアミノ酸配列に基づいて決定される。
【0045】
1つの実施形態では、Cys-34残基における遊離チオール基の比率はEllman方法で測定される。好ましくは、Cys-34残基における遊離チオール基の比率は70%より大きく、特に80%、好ましくは90%であり、より好ましくは95%より大きい。
【0046】
1つの実施形態では、AGEのレベルはELISA(CLOUD-CLONE Co.,CEB353Ge)で測定される。好ましくは、ELISAで測定した場合、AGEのレベルは60μg/gタンパク質未満、好ましくは40μg/gタンパク質、より好ましくは30μg/gタンパク質である。
【0047】
1つの実施形態では、Protein Carbonyl Content Assay Kit(Abcam)でカルボニル基のレベルを測定する。好ましくは、カルボニル基のレベルは1.7nmol/mgタンパク質未満、好ましくは1.5nmol/mgタンパク質未満である。
【0048】
1つの実施形態では、ELISAでホモシステインのレベル(Jianglai,JL10022)を測定する。好ましくは、ホモシステインのレベルは5nmol/gタンパク質未満、好ましくは3.5nmol/gタンパク質、より好ましくは2nmol/gタンパク質未満である。
【0049】
当業者は、上記4つのパラメータがその他の認められた方法で試験され得、且つ異なる方法で同じサンプルから試験されたパラメータの値の結果は異なる可能性があることを理解するであろう。当業者は、限られた数の実験によって、異なる方法で試験された結果と、本発明で使用される方法で得られた結果とを比較することができる。
【0050】
好ましい実施形態では、Cys-34残基における遊離チオール基の比率は80%より大きく、AGEのレベルは30μg/gタンパク質未満であり、カルボニル基のレベルは1.5nmol/mgタンパク質未満であり、ホモシステインのレベルは2nmol/gタンパク質未満である。
【0051】
若いHSAの製剤は組換えによって産生され得るか又は血漿から精製され得る。好ましくは、HSA製剤は組換えによって産生される。
【0052】
別の態様では、被験者の寿命延長及び/又は老化防止における若い無傷ヒト血清アルブミン(HSA)の製剤の使用を提供し、それは、上記被験者から得られた内因性HSA製剤に比べて、(1)Cys-34残基における遊離チオール基の比率がより高く、(2)終末糖化産物(AGE)のレベルがより低く、(3)カルボニル化のレベルがより低く、及び(4)ホモシステイン化のレベルがより低いという特性の少なくとも1つ、好ましくはすべてを示す。
【0053】
この状況では、被験者自体から得られた内因性HSA製剤に比べて、被験者は、「より若い」HSA製剤を受けることで健康上の利点を得ることができる。たとえば、被験者が70歳であると、年齢又は老化状態が70歳未満(たとえば50歳、40歳又は30歳)である被験者から得られたHSA製剤は有効である。
【0054】
HSA製剤の老化状態は上記4つのパラメータによって評価できる。特定のHSA製剤の4つのパラメータのうちいくつか又は好ましくはすべてが、特定の年齢、たとえば30歳の被験者から得られた製剤のパラメータよりも優れていると、該製剤は30歳未満の老化状態にあると判定される。
【0055】
被験者の寿命延長及び/又は老化を防止の方法を提供し、有効量の若い無傷ヒト血清アルブミン(HSA)の製剤を被験者に投与するステップを含み、該製剤は、上記被験者から得られた内因性HSA製剤に比べて、(1)Cys-34残基における遊離チオール基の比率がより高く、(2)終末糖化産物(AGE)のレベルがより低く、(3)カルボニル化のレベルがより低く、及び(4)ホモシステイン化のレベルがより低いという特性の少なくとも1つ、好ましくはすべてを示す。
【0056】
被験者は、健康な個体又は病気やけがをしている患者であってもよい。
【0057】
1つの実施形態では、該製剤は、(1)Ellman方法で測定した場合、Cys-34残基における遊離チオール基の比率が50%より大きく、たとえば70%、特に80%、好ましくは90%であり、より好ましくは95%より大きく、(2)ELISA(CLOUD-CLONE Co.,CEB353Ge)で測定した場合、終末糖化産物(AGE)のレベルが60μg/gタンパク質未満、好ましくは40μg/gタンパク質、より好ましくは30μg/gタンパク質未満であり、(3)Protein Carbonyl Content Assay Kitで測定した場合、カルボニル基のレベルが1.7nmol/mgタンパク質未満、好ましくは1.5nmol/mgタンパク質未満であり、及び(4)ELISA(Jianglai,JL10022)で測定した場合、ホモシステインのレベルが5nmol/gタンパク質未満、好ましくは3.5nmol/gタンパク質、より好ましくは2nmol/gタンパク質未満であるという特性の少なくとも1つ、好ましくはすべてを示す。
【0058】
本明細書に定義された若いHSA及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を提供する。
【0059】
別の態様では、被験者の老化状態の変化を監視するための方法を提供し、
該被験者からヒト血清アルブミン(HSA)サンプルを得るステップと、
サンプルにおいて、(1)Cys-34残基における遊離チオール基の比率、(2)終末糖化産物(AGE)のレベル、(3)カルボニル化のレベル、及び(4)ホモシステイン化のレベルというHSAの4つのパラメータのうちの少なくとも1つ、好ましくはすべてを試験するステップと、
Cys-34残基における遊離チオール基の比率が増加し、及び/又はAGEのレベル、カルボニル化のレベル及び/又はホモシステイン化のレベルが低下すると、同じ被験者からのより前の試験データに比べて、被験者の老化状態が改善されたと判定するステップと、を含む。
【0060】
別の態様では、有効量の上述した若い無傷ヒト血清アルブミン(HSA)の製剤を被験者に投与するステップを含む、被験者の骨格筋の機能及び/又は認知能力を改善する方法を提供する。
【0061】
免疫反応を回避するために、すべての動物研究はrMSA(組換えマウス血清アルブミン)を使用して行われ、異なる年齢のマウスからの内因性MSA(マウス血清アルブミン)に比べて、この4つのパラメータによって、使用されるrMSAは若い無傷のものである。マウス寿命(longevity)及び健康寿命(healthspan)におけるrMSAの改善に基づいて、若い無傷rHSAが人類で同様な効果を得ると予想するのは合理的である。
【0062】
実施例
1972年に、Ludwigらはパラビオシスモデル(parabiosis model)において年長のラットの寿命がより若いラットによって延長されることを初めに報告した1。Egermanグループ及びVilledaグループはそれぞれ、若いマウスとパラビオシス手術を行った後、老齢のマウスの筋力及び認知能力が改善されたことを発見した2,3。これは、老化の「謎」が血液に存在する可能性があることを表す。循環系の主な構成部分として、血液は全身の細胞及び組織に影響を与えることにより老化の過程を調節することができる。ヒトの血漿プロテオームは年齢に伴って変化することが示されている4。老化は少なくとも部分的に、高分子の構造変化又は損傷の継続的な蓄積に引き起こされると考えられている5-7。先ず、報告されるように、酸化ストレスは老化において非常に重要な役割を果たしており8,9、これは活性酸素(reactive oxygen species、ROS)がタンパク質を破壊することに関連する。人類では、年齢の増加とともに、血漿チオール基/ジスルフィド酸化還元状態(REDST)はより酸化促進的になる10,11。また、非酵素的タンパク質糖化の重要性は老化研究で注目されている12-14。高齢者の血漿終末糖化産物(AGE)のレベルが上昇している15。第3、酸化環境において、特にタンパク質のPro、Arg、Lys及びThr残基の側鎖にもカルボニル基が形成される16,17。重要なことは、カルボニル基の濃度は年齢の増加とともに増加する18。第4、広く報告されるように、ホモシステイン(Hcy)は年齢の増加とともに増加し、且つ年齢に関連する退行性疾患に関連する19-22。Hcyは、タンパク質と共有結合し、その正常の機能に干渉することが分かっている23,24。要するに、血漿タンパク質の損傷又は不必要な修飾は年齢の増加とともに増加する。血漿タンパク質の損傷又は不必要な修飾を減少することで、寿命を延長し、さらに老化過程を逆転する可能性があると提案するのは合理的である。
【0063】
ヒト血清アルブミン(human serum albumin、HSA)は血漿中の最も豊富なタンパク質であり、その血清半減期は約21日間である25。それはは安定した血漿コロイド浸透圧を維持するだけでなく、重要な担体でもある26。HSAのこれらの機能により、様々な臨床応用が可能になる26。
【0064】
基本的な特性に加えて、HSAの酸化及び糖化(glycation)はいくつかの病態に関連することが広く報告されている。HSAのCys-34残基における単一の遊離チオール基は血漿中の総遊離チオール基の約80%を占めることが提案されており、それは抗酸化機能を提供する27,28。HSAチオール基の酸化及び老化は年齢に関連する疾患に密接に関連することが注目されている29。Letoらは、遊離チオール基とHSAの濃度が年齢の増加とともに減少するだけでなく、遊離チオール基とHSAの比率も年齢の増加とともに減少することを発見した。これは、老化中の酸化還元電位の変化に起因されるものである30。Eraらは、細胞外液体の一定の酸化還元電位を維持するために、HSAが酸化還元緩衝液として機能できることを考える31。若い男性被験者の還元アルブミンの割合は老齢の被験者よりも大きい。HSAにおけるチオール基酸化に加えて、カルボニル基のレベルの上昇も老化及び疾患に関連することが発見された32-34。アルブミンの糖化は老化や老人性疾患に関連する別の重要な要因である。血清アルブミンは長寿のタンパク質として、インビボで年齢の増加とともにAGEを蓄積する35。糖化がアルブミンの正常な機能を損ない、且つ炎症反応を誘発する可能性があることが広く報告されており、これは老化及び重篤な疾患の進行に関連する35,36。この他、HSAはHcy修飾の主な標的であり、従って、それは、その他のタンパク質をHcyの毒性から効果的に保護することができる23,37。従って、損傷又は不必要な修飾がほとんどない新鮮に調製された組換え血清アルブミンを用いる治療は、寿命(lifespan)及び健康寿命(healthspan)を延ばす可能性が最も高い。ここで、生理食塩水治療群に比べて、自然老齢のマウスモデルにおいて、若い無傷組換えマウス血清アルブミン(rMSA)で治療された群の寿命が顕著に延長され、骨格筋の強さ及び認知能力が増加することを報告した。
【0065】
実施例1:rMSA治療によりマウスの寿命が延長された
rMSA治療がマウスの寿命を延ばすことができるか否かを検証するために、異なる年齢のC57BL/6Nマウスを自然老化モデルに選択した。第1群(6M)のマウスは6ヶ月齢であり、死亡するまで、3週間ごとに20mgのrMSA又は等量の生理食塩水(isometric saline)を静脈内注射した。qRT-PCR及び血液生化学分析により、アルブミンのmRNA及びタンパク質レベルは第1回の注射後8日以内に正常に戻る前に僅かに変動した(
図5)。主な血液生化学パラメータは正常レベルで変化しなかった(
図6、7)。
【0066】
性別ごとの生存曲線は、rMSA治療のマウスの寿命の中央値がそれぞれ46.4%(雌、5.8ヶ月増加、p<0.0001)及び7.6%(雄、1.7ヶ月増加、p=0.0387、以下の検証を参照)増加したことを示している(
図1A、B)。寿命の中央値に達するとき、両性の外見の変化が観察された。興味深いことに、rMSAで治療されたマウスは、生理食塩水で治療されたマウスよりも光沢があり、毛が厚い(
図1C)。この他、生理食塩水治療群の後弯症(kyphosis)がrMSA治療群よりも深刻であることが観察された(
図8)。これらの現象は、rMSA治療が長期使用に対して安全であり、且つ6M群におけるC57BL/6Nマウスの寿命を延ばすことができることを表す。
【0067】
rMSAで治療し始めたマウスが若いほど、より深刻な効果を達成できることが提案した。従って、第2群(3M)において、3ヶ月齢のマウスを選択し、6M群と同じ投与量を使用した。驚くべきことに、生理食塩水治療群に比べるときに、rMSAで治療された雌及び雄のマウスの寿命の中央値はそれぞれ69.4%(雌、7.5ヶ月増加、p=0.0093)及び47.4%(雄、6.3ヶ月増加、p=0.0002)増加した(
図1D、E)。
【0068】
同様に、rMSA治療が老齢のマウスに何れかの影響を与えるか否かを知りたい。第3群(18M)において、18ヶ月齢のマウスを選択した。18M群のrMSAで治療されたマウスの寿命の中央値は2つの性別においていずれも改善され、雌のマウスが9.0%(2.0ヶ月増加、p=0.0414)、雄のマウスが11.3%(2.6ヶ月増加、p=0.8635)である(
図1F、G)。この他、すべての群において、rMSAは体重に影響を与えなかった(
図9)。
【0069】
3M群及び6M群において、雄のマウスの寿命延長は、同じ量のrMSAで治療された雌のマウスほど顕著ではなく、18M群において観察されておらず、これは、3M群及び6M群における雌と雄のマウスの間の体重に大きな差があるが、18Mにおいて大きな差がないためである可能性がある(
図9)。従って、同等の投与量を得るために、体重に応じてrMSAの量を調整する必要があることを提案した。
【0070】
各マウスのrMSA投与量を3週間ごとに体重1グラムあたり20mgから1.5mgに調整した。第4群(12M)において、12ヶ月齢のマウスを選択して体重調整投与量で注射した。12M群におけるrMSAで治療されたマウスの寿命は顕著に改善され、雌が17.6%(3.4ヶ月増加、p=0.0164)、雄が20.3%(3.9ヶ月増加、p=0.0342)であり(
図1H、I)、これは、体重調整投与量で注射することが2つの性別の間の寿命延長差を減少できることを表す。
【0071】
実施例2:rMSAはマウスの骨格筋の機能を強化した
マウスの寿命が驚くべき延長されたことは、健康寿命も改善できるか否かをさらに探査することにつながる。骨格筋の機能障害は常に老化中に観察されるため、12M群において体重調整投与量のrMSA又は等量の生理食塩水で8ヶ月治療されたマウスの握力の変化を最初に検出した。
【0072】
生理食塩水で治療されたマウスに比べて、12M群におけるrMSAで治療されたマウスの前肢の握力は顕著に増加し、雌が177.9gから230.5g(29.6%増加、p=0.0002)に増加し、雄が189.6gから222.5g(17.4%増加、p=0.0069)に増加した(
図2A、B)。
【0073】
インビボでの骨格筋のサイズ及び質に対するrMSA注射の影響を評価するために、さらに腓腹筋の組織学的分析を行った(
図2C)。生理食塩水群に比べて、rMSAで治療された雌のマウスの筋線維の横断面積及び平均サイズはそれぞれ顕著に増加した(横断面積94.6%増加、p=0.0304、平均サイズ405.2%増加、p=0.0348)ことが発見された(
図2D、E)。しかしながら、雄のマウスにおいて、同様な現象が観察されなかった(
図2F、G)。次に、筋力を評価するための別の重要なパラメータである、rMSA及び生理食塩水治療群における遅ミオシン重鎖I(MHC1)の発現レベルを研究した(
図2H)。生理食塩水で治療されたマウスに比べて、rMSAで治療された雄のマウスは有意に遅いMHC1陽性線維を示し(37.7%増加、p=0.0327)、雌のマウスにおいて同様な結果を得なかった(
図2I、J)。要するに、研究は、rMSA治療が、雌のマウス腓腹筋線維のサイズを増加し、且つ雄のマウスにおける遅いMHC1のレベルを増加したが、線維の数及び周長にほとんど影響を与えないことを表す。
【0074】
実施例3:rMSA治療はマウスの認知能力を改善した
次に、バーンズ迷路試験(Barnes Maze test)を使用して老化に伴う記憶障害に対するrMSAの影響を研究した。12M群の雄のマウスが選択され、rMSA又は生理食塩水で8ヶ月治療された。生理食塩水治療群に比べて、rMSA治療群の一次逃避率は大幅に増加した(73.2%対50.2%、23.0%増加、p=0.0016)(
図3A、B)。同時に、生理食塩水で治療されたマウスに比べて、rMSAで治療された雄のマウスは、顕著に短縮された一次逃避時間(85.8秒対133.4秒、47.6秒速く、p<0.0001)を示した(
図3C及びD、
図10A及びB)。すべてのこれらの結果は、rMSA治療が老齢のマウスの空間学習及び記憶の能力を顕著に向上させたことを表す。
【0075】
次に、これらの群のマウスを使用して認知能力に関連する組織学的変化を評価した。興味深いのは、皮質の免疫蛍光(IF)染色の結果は、生理食塩水群に比べて、rMSA治療が雄のマウスのp-tauレベルを顕著に減少した(70.1%減少、p=0.0012)ことを示した(
図3E、F)。しかしながら、rMSAで治療されたマウスにおけるp-tauレベルが生理食塩水で治療されたマウスよりも低いが、雌群において有意な差がなかった(57.8%減少、p=0.1469、
図3E、G)。要するに、rMSAを注射することは、マウス、特に雄のマウスのp-tauレベルを減少することができる(63.2%減少、p=0.0036、
図3H)。
【0076】
実施例4:rMSA治療は老化に関連する4つのパラメータを改善した
以前の研究では、老化は、遊離チオール基の酸化、カルボニル化、AGE形成及びホモシステイン化の合計4つのパラメータを含むタンパク質損傷レベルの増加に密接に関連することが表される。比較のために、1.5ヶ月齢、12ヶ月齢及び28ヶ月齢のマウスの血清サンプルからの内因性アルブミンを精製した。老化過程で、血清アルブミンは4つのパラメータの一連の変化を起こし、遊離チオール基のレベルが低下し、カルボニル基、AGE及びHcyのレベルが上昇した。本研究に使用されたrMSAは、1.5ヶ月齢の若いマウスの内因性血清アルブミンよりもさらに若く、損傷がよりも少ない。該rMSAは、より多くの遊離チオール基(18.1%増加、p=0.0571)、同等のカルボニル基のレベル、より少ないAGE(37.7%減少、p=0.0589)、より少ないHcy(rMSAにおいて検出されない、p=0.1215)(
図4A~D)を含有し、これにより、rMSAはより多くの保護を提供することができ、不必要な修飾及び損傷を防止する。
【0077】
若い無傷rMSAがマウスの寿命及び健康寿命を如何に改善するかを探査するために、3週間ごとに体重1gあたり1.5mgのrMSA又は等量の生理食塩水で12ヶ月齢のマウスを8ヶ月治療した。最後の注射から21日後にすべての血清サンプルを収集した。生理食塩水で治療されたマウスに比べて、rMSAで治療されたマウスのアルブミンは、より多くの遊離チオール基(11.6%増加、p=0.1635)、より低いカルボニル基のレベル(22.1%減少、p=0.0230)、AGEのレベル(24.4%減少、p=0.0243)及びホモシステインのレベル(42.6%減少、p=0.0370)(
図4E~H)を含有する。
【0078】
4つのパラメータを比較するために、より大きなサンプル量で追加の試験を行い、より顕著な有意性を得た。1.5ヶ月齢のマウスの内因性血清アルブミンに比べるときに、外因性rMSAは、より多くの遊離チオール基(95.5%増加、p=0.0002)、より少ないカルボニル基(13.0%減少、p=0.2262)、より少ないAGE(40.6%減少、p=0.0020)及びより少ないHcy(80.9%減少、p=0.0052)(
図4I~L)を含有し、これにより、rMSAはより多くの保護を提供することができ、不必要な修飾及び損傷を防止する。
【0079】
要するに、若い無傷rMSAは強力な保護機能を提供し、遊離チオール基酸化、カルボニル化、AGE形成及びホモシステイン化を防止する。
【0080】
実施例5:若い無傷rHSAは老化に関連する4つのパラメータで内因性HSAと異なる
若い無傷rHSAと内因性HSAとの間の違いを見つけるために、独立したメーカーから3つの血液由来の内因性HSA製品を購入して比較研究を行い、遊離チオール基、カルボニル基、AGE及びホモシステインを以下に説明するように試験した。
【0081】
先ず、Ellman方法で遊離チオール基の絶対量を決定し、該絶対量をHSAの量で割って(HSA分子は理論的に1つのみの遊離チオール基を有する)、残留の遊離チオール基の含有率を求めた。結果は、rHSA(Protgen)が損傷を受けていない遊離チオール基を含有し、血液由来のHSAが深刻な損傷(102.8%対17.6%、p<0.0001)を受けていることを表す(
図12A)。
【0082】
次に、マニュアルに従って、Protein Carbonyl Content Assay Kit(Abcam,ab126287)を使用してカルボニル基のモル濃度を定量した。結果は反応あたりのHSA濃度によって正規化され、且つタンパク質1mgあたりのnmolカルボニルとして表される。rHSA(Protgen)のカルボニル基のレベルは血液由来のHSAよりも低い(1.46対1.80nmol/mgタンパク質、p=0.0072)ことが発見された(
図12B)。
【0083】
第3、メーカーの説明書(CLOUD-CLONE Co.,CEB353Ge)に従って、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)キットでAGEの質量濃度を測定した。結果は反応あたりのHSA濃度によって正規化され、且つタンパク質1グラムあたりのAGEのマイクログラムとして表される。明らかなように、rHSA(Protgen)は血液由来のHSAよりも少ないAGE(21.4対66.8μg/gタンパク質、p<0.0001)を含有する(
図12C)。
【0084】
第4、メーカーの説明(Jianglai,JL10022)に従って、ELISAでホモシステイン(Hcy)のモル濃度を測定した。結果は反応あたりのHSA濃度によって正規化され、且つ且つタンパク質1gあたりのnmol Hcyとして表される。結果は、rHSA(Protgen)のHcyレベルが血液由来のHSAよりもはるかに低い(1.46対5.56nmol/gタンパク質、p=0.0063)ことを表す(
図12D)。
【0085】
【0086】
検討
第1部分 寿命
本発明では、3M、6M及び18M群において、rMSA治療による寿命延長の百分率は雌性でそれぞれ69.4%、46.4%及び9.0%であり、雄性でそれぞれ47.4%、7.6%及び11.3%であり、長期のrMSA治療によって健康寿命を顕著に長くすることもできる。これらの結果は、治療をできるだけ早く始めると、最適な効果を得ることができることを表す。
【0087】
しかしながら、同じ量のrMSA条件において、3M及び6M群の雄のマウスの寿命延長の百分率は雌のマウスほど顕著ではない。これは、この年齢で、雄のマウスの体重が雌のマウスよりもはるかに大きいためである可能性がある。その後、体重に応じてrMSAの量を調整し、各マウスに同じ投与量で注射し、且つ12M群の2つの性別で一致する結果を得た。従って、体重調整投与量は最適な効果を得ることに非常に重要である。
【0088】
第2部分 健康寿命
健康寿命に関して、体重調整投与量のrMSAの治療により、12M群のマウスの前肢の握力は顕著に増加した。rMSA治療による握力の改善は寿命の改善と一致し、これは、rMSAが同じ基本原理に基づいて寿命及び健康寿命を調節する可能性が高いことを表す。
【0089】
この他、rMSAは、雄のマウスのI型線維の割合を増加し、雌のマウスの筋線維のサイズを大きくすることで、腓腹筋の機能を改善したことが発見された。雄と雌のマウスの間のこれらの違いの1つの解釈は、ホルモンと代謝メカニズムの違いかもしれない。
【0090】
バーンズ迷路試験によって、rMSA注射がマウスの空間学習及び記憶の能力を効果的に向上させ、且つ老齢のマウスの皮質のp-tauレベルを顕著に減少できることが発見された。現在進行中の項目において、記憶力の改善に対するrMSA注射の作用は、神経変性疾患モデルにおいてさらに検証されている。
【0091】
第3部分 4つのパラメータ
分析に基づき、若い無傷rMSAが強力な保護機能を提供し、遊離チオール基酸化、カルボニル化、AGE形成及びホモシステイン化を防止することを提案することは合理的である。
【0092】
ここで、実施例では、「若い」は、rMSAが4つのパラメータ(遊離チオール基、カルボニル基、AGE及びホモシステイン)によって分析された僅かに1.5ヶ月齢の若いマウスの内因性アルブミンよりもはるかに新鮮であることを意味する。「無傷」は、理論的に損傷を受けていない遊離チオール基、AGEなし、カルボニル化なし、及びホモシステイン化なしを意味する。実際には、製造過程及び検出方法の原因で、このような完璧なサンプルを得ることはほとんど不可能である。
【0093】
従って、1.5ヶ月齢の若いマウスの内因性血清アルブミンに比べても、rMSAはより多くの遊離チオール基、同等レベルのカルボニル基、より少ないAGE及びホモシステインを含有する。ここで、質量分析法で測定された分子量(
図11)が理論計算値
38とまったく同じであるため、サンプルにおいてその他の損傷が観察されなかったことを強調する必要がある。要するに、本研究に使用されるrMSAは「若い」だけでなく、ほとんど「無傷」である。
【0094】
マウスの寿命に対するrMSAと内因性アルブミンの影響を、並行して比較するべきであることに気付けた。この実験を行うために、rMSAをいつ使用するかにかかわらず、非常に若い(3ヶ月)から非常に年老いた(データによる29ヶ月)まで、内因性アルブミンは異なる年齢のマウスから調製するべきである。しかしながら、十分な純度の内因性マウス血清アルブミンは市販されていない。この他、純度が99%より大きい十分な量のアルブミンを精製するために、少なくとも100,000匹の異なる年齢のマウスが必要であり、これは非倫理的である。
【0095】
2016年に、米国は、若いドナー(16~25歳)から年老いた大人(≧35歳)への血漿注入の有益な効果を評価することを目的とした臨床試験を始めたが、今までのところ結果は発表されていない(ClinicalTrials.govID番号:NCT02803554)。最近では、Conboyチームは、5%内因性アルブミンを含有する生理食塩水で古い血漿を交換することにより、マウスの筋肉、肝臓及び海馬の若返りを報告した39。しかしながら、これらの研究はいずれも組換え血清アルブミンを使用していないため、結果は比較できない。
【0096】
第4部分 寿命及び健康寿命の最適化、延長、及びその他のタンパク質
2014年に、Wyss-Corayチームは、若いマウスの血漿が老齢のマウスの学習及び記憶を改善できることを報告した。アルブミンは総血漿タンパク質の約50%を占めるため、この過程で最も重要な役割を果たす可能性が高く、これはここで発見されるものである。寿命に対するrMSAの最大の影響を達成するために、最適な投与量、頻度及び薬物送達方法を含む様々な手段が研究されている。耐性及び安全性が保証される前提で、早期で徐放の高投与量のrMSAの使用は、寿命及び健康寿命をより顕著に延ばすと予測している。
【0097】
さらに、若い無傷アルブミンが寿命を長くする概念は、主な血漿タンパク質である免疫グロブリン、フィブリノーゲン、トランスフェリン、トランスサイレチン、及びハプトグロビン等の任意のその他のタンパク質にも適用できると予測している。
【0098】
遊離チオール基、カルボニル基、AGE及びホモシステインを含む4つのパラメータは、糖尿病、心血管疾患、肥満症及びアルツハイマー病等の様々な疾患に密接に関連することは十分に実証されている20,24,40-43。
【0099】
近い将来、単独した若い無傷タンパク質(組換え又は非組換え)HSAが人類の寿命を延ばすことが可能であることは注目を集めている。このようにすれば、若い無傷の主な血漿タンパク質の組み合わせは寿命をさらに延ばすことができる。理想的に、すべての若い無傷血漿タンパク質は一緒になって寿命を最大限に延ばすことができる。
【0100】
方法
マウスと薬物治療
C57BL/6NマウスはBeijing Vital River Laboratory Animal Technology Co.,Ltd.(中国のCharles River Laboratoriesの販売代理店)から購入された。清華大学実験動物研究センター(THU-LARC)に輸送する期間で、マウス輸送ストレス症候群は慎重に回避された。新しい環境への適応を保証するために、すべてのマウスは1ヶ月隔離され、品質検出が行われた。動物は、12時間の暗-光サイクルを有する病原体のないバリア環境に飼育された。室温は23℃に維持された。マウスが到着した後、研究全体を通して、マウスに放射線滅菌されたJAX-標準繁殖用飼料(SHOOBREE(R)、Xietong Pharmaceutical Bio-technology Co.,Ltd.,1010058)及び滅菌水を投与した。
【0101】
マウスが所定の年齢(3ヶ月、6ヶ月、12ヶ月及び18ヶ月)に達したとき、rMSA又は生理食塩水治療群にランダムに分けられた。1キログラムのrMSAは、Shenzhen Protgen,Ltdから提供される。ピキア(pichia pastoris)によって発現されるGMPグレードのrMSAの品質は、純度が99%よりも大きいことを確保するために、厳密に制御されている。最も重要なことは、ELISAで測定した場合、宿主細胞タンパク質(host cell proteins、HCPs)が1μg/g rMSA未満であることであり、これは、rMSAがほとんどHCPsを含まないことを意味する。
【0102】
生理食塩水に溶解した125mg/mLのrMSAをゆっくりと静脈内注射した。毎回注射する前にマウスの体重を量って投与量を計算し、生理食塩水用を陰性対照とした。示されるように、3週間ごとにマウスに注射し、各マウスに20mgのrMSAを注射し又はマウス体重1グラムあたり1.5mgのrMSA及び等量の生理食塩水を注射した。すべての動物研究は清華大学動物保護・使用委員会(北京,中国)によって承認された。
【0103】
タンパク質レベルの測定
血液の生化学パラメータを測定するために、Avertin(R)(トリブロモエタノール、Sigma Aldrich、T48402)(400mg/kg)を腹腔内注射して麻酔した後、マウスの尾静脈又は眼窩洞から血液サンプルを収集した。4℃、1,000×gで20分間遠心した後に血清サンプルを収集した。血漿サンプルを収集し、ヘパリン ナトリウム塩を新鮮な血液サンプル(20単位/mL血液、Sigma-Aldrich、H3149)に添加し、血液の凝固を防止し、次に4℃、1,000×gで30分間遠心した。自動生化学分析装置(Olympus AU 400)で血清サンプルの主な血液生化学パラメータを測定した。
【0104】
アルブミンの発現レベルを測定するために、麻酔後に二酸化炭素でマウスを安楽死させた。肝組織サンプルを迅速に取り出して、ホモジナイズした。TRIzol Reagent(Invitrogen,15596026)でホモジネート中の全RNAを分離し、且つFirst Strand cDNA Synthesis Kit(Fermentas,K1622)でそれをcDNAに転化した。TransStart(R)Top Green qPCR SuperMix(TransGen Biotech Co.,AQ131)でRT-PCR(qRT-PCR)を定量した。2^-ΔΔCt方法で相対定量を分析した。グリセルアルデヒド3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)を内部対照とした。独立した実験を3回繰り返した。Albフォワード5’-TGCTTTTCCAGGGGTGTGTT、リバース5’-TTACTTCCTGCACTAATTTGGCA、Gapdhフォワード5’-GTTGTCTCCTGCGACTTCA、リバース5’- GGTGGTCCAGG GTTTCTTAというプライマーを使用した。
【0105】
握力試験
握力は握力計(Yiyan Co. Ltd.,YLS-13A)で測定された。マウスに金属製のグリッドを把持させ、マウスがグリッドを把持できなくなるまで、一定速度で尻尾を後ろにゆっくりと引いた。各マウスに対して5回の試験を行い、平均値は個々のマウスの握力を表すことに用いられた。
【0106】
バーンズ迷路試験
空間記憶機能を評価するために、12M群の雄のマウスに対してバーンズ迷路試験を行った。バーンズ迷路試験において、マウスは、円形のプラットフォームの周りに位置する黒い脱出ボックスに接続される穴を見つけるように訓練された。円形のプラットフォームの直径が91cmであり、厚さが0.4cmであり、エッジの周りには、直径が5cmの20個の均一に分布した穴があり、2つのオーバーヘッドライトは嫌悪刺激として使用された。各試験はいずれもプラットフォームに取り付けられたビデオカメラに記録された。プロセスはRosenfeldらの説明と同じであるが、変更がある44。
【0107】
アルブミンの精製
予め平衡化したBlue BestaroseTMFFカラム(Bestchrom)に適用する前に、pH7.8の、0.15M NaClを含有する20mM Tris緩衝液で指定された群の血清サンプルを希釈し、次に3ベッドボリュームで非特異的結合タンパク質を洗浄した。溶出緩衝液(0.2M NaSCN、pH8.0)でマウスアルブミンを溶出し、次にPBSで透析し、且つAmicon(R)超遠心フィルタを用いて、4℃でUltracel-30再生セルロース膜(MerckMillipore,UFC803008)で濃縮した。タンパク質濃度はメーカーの説明に従ってPierceTM BCA Protein Assay Kit(Thermo Scientific,23227)によって測定された。Q-TOF質量分析計(Waters,SYNAPT G2-Si)でサンプルを分析し、該機器は最適化されて高質量タンパク質の分子量分析に用いられた。
【0108】
免疫蛍光アッセイ
マウスから解剖した凍結切片を冷アセトンで固定した。次に10%ヤギ血清でこれらのサンプルをブロックし、且つ4℃で一次抗体で一晩染色し、次に4℃で適切な二次蛍光標識抗体で一晩染色した。スライドガラスを、FITC-、Alexa 555-又はAlexa 647-結合二次抗体で染色し、細胞核をDAPIで染色した。蛍光イメージングをニコンA1レーザ走査共焦点顕微鏡で行い、且つNIS-Elements Software(Nikon)で分析した。
【0109】
マウス抗リン酸化タウモノクローナル抗体(Thermo Scientific,MN1020)及び抗MHC1抗体(Sigma-Aldrich,M 8421)という抗体を使用した。
【0110】
老化に関連するパラメータの決定
Ellman法は遊離チオール基の含有量の測定に用いられた45。マウス血清アルブミン及びrMSAをそれぞれ等体積の5,5’-ジチオビス-(2-ニトロ安息香酸)(DTNB)試薬と混合した。本研究に使用されたDTNBの体積及び濃度はそれぞれ100μL及び2mMであった。800μLのTris緩衝液(1M)を添加し、反応系の体積を1000μLにした。サンプルを室温で30分間保持した。412nmで蛍光吸光度を測定した。マニュアルに従って、Protein Carbonyl Content Assay Kit(Abcam,ab126287)でタンパク質サンプル中のカルボニル基を定量した。メーカーの説明(MEIMIAN,1213)に従って、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)でホモシステインの濃度を測定した。メーカーの説明(CLOUD-CLONE Co.,CEB353Ge)に従って、ELISAキットでAGEの濃度を測定した。
【0111】
統計分析
Kaplan-Meier法を生存分析に用い、且つログランク(Mantel-Cox)検定によって生存曲線を比較した。両側の対応のないStudent t-検定(2-tailed unpaired Student t-test)又はANOVAで各群の間の統計的有意差を決定し、ここで、p<0.05は有意であると見なされる。特に明記しない限り、Graphpad Prism 6.01ソフトウェアで統計分析及びグラフ化を行った。
【0112】
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