(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-06
(54)【発明の名称】自動化された熱循環のための熱アダプタ
(51)【国際特許分類】
C12M 1/34 20060101AFI20230830BHJP
G01N 1/00 20060101ALI20230830BHJP
G01N 35/00 20060101ALI20230830BHJP
C12Q 1/686 20180101ALN20230830BHJP
【FI】
C12M1/34 Z
G01N1/00 101K
G01N35/00 B
C12Q1/686 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023511799
(86)(22)【出願日】2021-08-30
(85)【翻訳文提出日】2023-02-15
(86)【国際出願番号】 US2021048277
(87)【国際公開番号】W WO2022047327
(87)【国際公開日】2022-03-03
(32)【優先日】2020-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507301040
【氏名又は名称】ラブサイト インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】エルソン, リチャード エヌ.
【テーマコード(参考)】
2G052
2G058
4B029
4B063
【Fターム(参考)】
2G052AD26
2G052CA03
2G052CA18
2G052CA30
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2G052EB13
2G058BB02
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2G058CD23
4B029AA07
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4B063QQ42
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4B063QR08
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4B063QR62
(57)【要約】
マルチウェル反応容器内のサンプルを処理するためのシステムおよび方法は、熱サイクラの加熱チャンバの中にマルチウェル反応容器を挿入することと、加熱チャンバ内にマルチウェル反応容器を封入することと、底部表面と応従性の熱的に伝導性の挿入部との間の熱接触面積を増加させるために、応従性の熱的に伝導性の挿入部の中にマルチウェル反応容器の底部表面を圧縮することとを含むことができる。応従性の熱的に伝導性の挿入部は、マルチウェル反応容器と熱サイクラの加熱要素との間に設置されることができ、加熱要素からの熱流束は、反応容器に応従性の熱的に伝導性の挿入部を通して通過する。応従性の熱的に伝導性の挿入部は、反応容器および/または加熱要素のトポグラフィまたは撓曲に依存する異なる圧縮プロファイルに従って可逆的に変形することができる、弾性的に変形可能なクレープ黒鉛シートを含むことができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
システムであって、
マルチウェル反応容器を保定および移動させるように構成される、ロボットサンプルハンドラと、
加熱要素を含有する、加熱チャンバと、前記加熱要素に隣接して位置付けられる、弾性的に変形可能なクレープ黒鉛シートを備える、応従性の熱的に伝導性の挿入部と、閉鎖機構とを備える、熱サイクラであって、前記加熱チャンバは、前記マルチウェル反応容器を受容するように成形され、前記閉鎖機構は、前記応従性の熱的に伝導性の挿入部および前記加熱要素に向かって、前記マルチウェル反応容器を押圧するように構成される、熱サイクラと、
前記ロボットサンプルハンドラおよび熱サイクラと動作可能に接続される、コントローラと
を備え、
前記コントローラは、少なくとも1つのプロセッサと、実行可能命令を含有するメモリとを備え、前記実行可能命令は、前記少なくとも1つのプロセッサによって実行されると、
前記ロボットサンプルハンドラに、前記熱サイクラの中に前記マルチウェル反応容器を挿入させることと、
前記閉鎖機構に、前記加熱チャンバ内に前記マルチウェル反応容器を封入させることと、
前記閉鎖機構によって、前記応従性の熱的に伝導性の挿入部の中に前記マルチウェル反応容器の底部表面を圧縮することと、
前記応従性の熱的に伝導性の挿入部を通して、前記加熱要素から前記マルチウェル反応容器に制御された熱流束を印加することによって、前記加熱要素によって前記加熱チャンバ内の前記マルチウェル反応容器を熱的に循環させることと
を行うように前記コントローラを構成する、システム。
【請求項2】
前記応従性の熱的に伝導性の挿入部の中に前記マルチウェル反応容器の前記底部表面を圧縮することは、第1の圧縮プロファイルに従って、前記クレープ黒鉛シートの可逆的変形を生じさせ、
前記応従性の熱的に伝導性の挿入部の中に第2のマルチウェル反応容器の第2の底部表面を圧縮することは、前記第1の圧縮プロファイルと異なる第2の圧縮プロファイルに従って、前記クレープ黒鉛シートの可逆的変形を生じさせ、
前記応従性の熱的に伝導性の挿入部は、恒久的に変形せずに、前記第1の圧縮されたプロファイルから、かつ前記第2の圧縮されたプロファイルから、非圧縮状態に戻る、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
試薬またはサンプルを含有する、源容器と、
音響エジェクタであって、前記音響エジェクタは、集束音響放射を放出するように構成される変換器と、前記マルチウェル反応容器のウェルと前記音響エジェクタおよび源容器を整合するように構成されるアクチュエータとを備える、音響エジェクタと
をさらに備え、
前記実行可能命令は、前記少なくとも1つのプロセッサによって実行されると、
前記アクチュエータに、前記マルチウェル反応容器の前記ウェルのうちの1つと前記変換器および源容器を選択的に整合させることと、
前記音響エジェクタに、前記源容器内に含有されるサンプルに前記集束音響放射を印加することによって、前記源容器から前記ウェルに1つ以上の液滴を射出させることと
を行うように前記コントローラをさらに構成する、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
マルチウェル受容容器と、
音響エジェクタであって、前記音響エジェクタは、集束音響放射を放出するように構成される変換器と、前記マルチウェル受容容器のウェルと前記音響エジェクタおよび前記マルチウェル反応容器を整合するように構成されるアクチュエータとを備える、音響エジェクタと
をさらに備え、
前記実行可能命令は、前記少なくとも1つのプロセッサによって実行されると、
前記アクチュエータに、前記マルチウェル受容容器の前記ウェルのうちの1つ以上と前記変換器およびマルチウェル反応容器を選択的に整合させることと、
前記音響エジェクタに、前記マルチウェル反応容器内に含有されるサンプルに前記集束音響放射を印加することによって、前記マルチウェル反応容器から前記マルチウェル受容容器の前記ウェルに1つ以上の液滴を射出させることと
を行うように前記コントローラをさらに構成する、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
サンプル入口を備える、分析器と、
音響エジェクタであって、前記音響エジェクタは、集束音響放射を放出するように構成される変換器と、前記分析器の前記サンプル入口と前記音響エジェクタおよび前記マルチウェル反応容器を整合するように構成されるアクチュエータとを備える、音響エジェクタと
をさらに備え、
前記実行可能命令は、前記少なくとも1つのプロセッサによって実行されると、
前記アクチュエータに、前記分析器の前記サンプル入口と前記変換器およびマルチウェル反応容器を選択的に整合させることと、
前記音響エジェクタに、前記マルチウェル反応容器内に含有されるサンプルに前記集束音響放射を印加することによって、前記マルチウェル反応容器から前記サンプル入口に1つ以上の液滴を射出させることと
を行うように前記コントローラをさらに構成する、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
方法であって、
熱サイクラの加熱要素上の応従性の熱的に伝導性の挿入部上にマルチウェル反応容器を設置することによって、前記熱サイクラの加熱チャンバの中に前記マルチウェル反応容器を挿入することであって、前記応従性の熱的に伝導性の挿入部は、弾性的に変形可能なクレープ黒鉛シートを備える、ことと、
前記加熱チャンバ内に前記マルチウェル反応容器を封入することと、
前記応従性の熱的に伝導性の挿入部の中に前記マルチウェル反応容器の底部表面を圧縮することにより、前記底部表面と前記応従性の熱的に伝導性の挿入部との間の熱接触面積を増加させることと、
前記応従性の熱的に伝導性の挿入部を通して、前記加熱要素によって前記マルチウェル反応容器に制御された熱流束を印加することによって、前記加熱チャンバ内の前記マルチウェル反応容器を熱的に循環させることと
を含む、方法。
【請求項7】
前記応従性の熱的に伝導性の挿入部は、250ミクロン~2,000ミクロンの範囲内の非圧縮厚さを有する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記応従性の熱的に伝導性の挿入部は、少なくとも200W/m-K、好ましくは、少なくとも700W/m-Kの面内熱伝導性を有する、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記応従性の熱的に伝導性の挿入部は、圧縮応力に伴って非線形に増加する貫通平面熱伝導性を有し、前記貫通平面熱伝導性は、100kPa圧縮応力において1-5W/m-K~700kPa圧縮応力において10-30W/m-Kに及ぶ、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記応従性の熱的に伝導性の挿入部は、700kPaの圧縮応力を受けると、元の厚さの60%未満に可逆的に圧縮する、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
前記マルチウェル反応容器は、少なくとも1つの平坦底部表面を有するウェルのアレイを備える、マイクロプレートを備え、前記少なくとも1つの平坦底部表面は、前記平坦底部表面を通して前記ウェルのアレイに含有されるサンプルの音響検査を可能にするように構成され、前記方法はさらに、
音響エミッタから前記平坦底部表面を通して、照会トーンバーストを放出することと、
前記照会トーンバーストによって生じた音響エコーを検出することと、
前記検出された音響エコーから前記サンプルのパラメータを判定することと
を含む、請求項6-10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記加熱チャンバ内の前記マルチウェル反応容器を熱的に循環させることは、順次、少なくとも1℃/秒、好ましくは、少なくとも1.5℃/秒、好ましくは、少なくとも2℃/秒の加熱または冷却率において、PCR熱サイクルプログラムに従って前記マルチウェル反応容器内に含有されるサンプルを加熱および冷却することを含む、請求項6-10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記源ウェルから流体液滴を音響的に射出するように位置付けられる、源ウェルおよび音響エジェクタと前記マルチウェル反応容器のうちの1つ以上のウェルを整合することと、
前記音響エジェクタから前記源ウェルに含有されるサンプルに集束音響放射を印加することによって、前記源ウェルから前記マルチウェル反応容器の前記ウェルに1つ以上の液滴を射出することと
をさらに含む、請求項6-10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記マルチウェル反応容器から流体液滴を音響的に射出するように位置付けられる音響エジェクタと、かつマルチウェル受容容器と、前記マルチウェル反応容器のうちの1つ以上のウェルを整合することと、
前記音響エジェクタから前記マルチウェル反応容器の前記ウェルに含有されるサンプルに、集束音響放射を印加することによって、前記マルチウェル反応容器のウェルから前記マルチウェル受容容器のウェルに、1つ以上の液滴を射出することと
をさらに含む、請求項6-10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記マルチウェル反応容器から流体液滴を音響的に射出するように位置付けられる音響エジェクタと、かつ分析デバイスのサンプル入口と、前記マルチウェル反応容器のウェルを整合することと、
前記音響エジェクタから前記ウェルに含有されるサンプルに、集束音響放射を印加することによって、前記マルチウェル反応容器の前記ウェルから前記サンプル入口に1つ以上の液滴を射出することと
をさらに含む、請求項6-10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
熱サイクラアセンブリであって、
加熱チャンバと、
前記加熱チャンバに含有される、加熱要素と、
マルチウェル反応容器が前記加熱チャンバに受容されるとき、前記加熱チャンバを封入し、かつ前記マルチウェル反応容器上に押圧するように構成される、閉鎖機構と、
前記加熱要素と接触する前記加熱チャンバ内に位置付けられる、応従性の熱的に伝導性の挿入部であって、前記応従性の熱的に伝導性の挿入部は、弾性的に変形可能なクレープ黒鉛シートを備える、応従性の熱的に伝導性の挿入部と
を備える、熱サイクラアセンブリ。
【請求項17】
前記応従性の熱的に伝導性の挿入部は、層状に弾性的に変形可能なクレープ黒鉛シートを備える、請求項16に記載の熱サイクラアセンブリ。
【請求項18】
前記応従性の熱的に伝導性の挿入部は、前記加熱チャンバの中に取外可能に挿入可能である前記弾性的に変形可能なクレープ黒鉛シートと接続され、前記マルチウェル反応容器が前記加熱チャンバに挿入されるとき、前記加熱要素と、かつ前記マルチウェル反応容器と、前記弾性的に変形可能なクレープ黒鉛シートを整合するように成形される、インターフェースフレームを備える、請求項16に記載の熱サイクラアセンブリ。
【請求項19】
前記応従性の熱的に伝導性の挿入部は、250ミクロン~2,000ミクロンの範囲内の非圧縮厚さと、少なくとも200W/m-K、好ましくは、少なくとも700W/m-Kの面内熱伝導性とを有する、請求項16に記載の熱サイクラアセンブリ。
【請求項20】
前記応従性の熱的に伝導性の挿入部は、圧縮応力に伴って非線形に増加する貫通平面熱伝導性を有し、前記貫通平面熱伝導性は、100kPa圧縮応力において1-5W/m-K~700kPa圧縮応力において10-30W/m-Kに及び、前記応従性の熱的に伝導性の挿入部は、700kPaの圧縮応力に応答して、元の厚さの60%未満に可逆的に圧縮性である、請求項16に記載の熱サイクラアセンブリ。
【請求項21】
方法であって、
熱サイクラの加熱要素上の応従性の熱的に伝導性の挿入部上にマルチウェル反応容器を設置することによって、前記熱サイクラの加熱チャンバの中に第1のマルチウェル反応容器を挿入することであって、前記応従性の熱的に伝導性の挿入部は、弾性的に変形可能なクレープ黒鉛シートを備える、ことと、
前記第1のマルチウェル反応容器の第1の底部表面と前記加熱要素との間の圧力が、第1の圧縮プロファイルに従って、前記クレープ黒鉛シートの可逆的変形を生じさせるように、前記応従性の熱的に伝導性の挿入部の中に前記第1の底部表面を圧縮することと、
前記応従性の熱的に伝導性の挿入部上に第2のマルチウェル反応容器を設置することによって、前記熱サイクラの前記加熱チャンバの中に前記第2のマルチウェル反応容器を挿入することと、
前記第2のマルチウェル反応容器の第2の底部表面と前記加熱要素との間の圧力が、前記第1の圧縮プロファイルと異なる第2の圧縮プロファイルに従って、前記クレープ黒鉛シートの可逆的変形を生じさせるように、前記応従性の熱的に伝導性の挿入部の中に前記第2の底部表面を圧縮することであって、前記応従性の熱的に伝導性の挿入部は、恒久的に変形せずに、前記第1の圧縮されたプロファイルから、かつ前記第2の圧縮されたプロファイルから、非圧縮状態に戻る、ことと
を含む、方法。
【請求項22】
前記応従性の熱的に伝導性の挿入部を通して、前記加熱要素によって前記マルチウェル反応容器に制御された熱流束を印加することによって、前記加熱チャンバ内の前記マルチウェル反応容器を熱的に循環させることをさらに含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
音響エミッタから前記マルチウェル反応容器の前記ウェルに含有されるサンプルに、集束音響放射を印加するように位置付けられる前記音響エミッタと、前記第1または第2のマルチウェル反応容器のウェルを整合することと、
前記第1または第2のマルチウェル反応容器の平坦底部表面を通して、前記音響エミッタから照会トーンバーストを放出することと、
前記照会トーンバーストによって生じた音響エコーを検出することと、
前記検出された音響エコーから前記ウェル内のサンプルのパラメータを判定することと
をさらに含む、請求項21-22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
少なくとも1℃/秒、好ましくは、少なくとも1.5℃/秒、好ましくは、少なくとも2℃/秒の前記第1または前記第2のマルチウェル反応容器内のサンプルの温度変化を生じさせるために十分である、前記応従性の熱的に伝導性の挿入部を通して前記第1または前記第2のマルチウェル反応容器に前記加熱要素からの熱流束を印加することをさらに含む、請求項21-22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
音響エジェクタから前記マルチウェル反応容器の前記ウェルに含有されるサンプルに、集束音響放射を印加するように位置付けられる前記音響エジェクタと、前記第1または第2のマルチウェル反応容器のウェルを整合することと、
前記第1または第2のマルチウェル反応容器の平坦底部表面を通して、前記音響エジェクタから射出トーンバーストを放出することによって、前記ウェルから液滴を射出することと
をさらに含む、請求項21-22のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、その全内容が、参照することによって本明細書に組み込まれる、2020年8月31日に出願された、米国仮特許出願第63/072,838号の利益および優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
(背景)
DNAの増幅のための一般的商業用システムは、典型的には、所定の温度を上回ると活性化し、次いで、所定の温度を下回ると不活性化される酵素に基づく、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)に基づく。多くの用途では、本サイクルは、何度も繰り返される。例えば、qPCRと称される、DNAの量を定量化するPCR方法では、上限温度と下限温度との間の循環は、40回以上の回数にわたって生じ得る。故に、所望の活性化および不活性化温度を達成するための時間を短縮させることは、本方法に関する生産性において重要な要因である。
【0003】
自動化と互換性がある様式において、一度に多くのサンプルを処理することもまた、所望される。多くの商業用PCR反応が、96ウェルマイクロプレート等の規則的アレイにおいて組み合わせられた複数の反応容器を用いて、並行して実施される。商業用PCR熱サイクラにおいて使用するための1,536個のウェルを伴う、より高い密度のマイクロプレートは、あまり一般的ではない。マイクロプレートに関する上限温度と下限温度との間で循環するための時間を短縮させるための1つの従来の方略は、特殊化されたマルチウェルマイクロプレートの同様に成形された底部表面に合致するように、「鶏卵箱」形状を有するカスタマイズされた加熱ブロックの使用を伴う。本アプローチは、プレートおよびプレート自体内への熱伝達を改良するが、プラスチック射出成型マイクロプレートまたは高価な複合材プレートと、熱的に伝導性で、かつ非応従性の金属加熱ブロック(多くの場合、アルミニウム)の形状に合致させることによって、物理的熱接触を維持するために、厳格な仕様を要求する。しかしながら、そのようなプレートは、精密な寸法に成型することが困難であり、温度への異なる材料の応答からの応力に起因して、非同一の金型空洞から加工され、歪曲を受けやすくあり得る(金型から離れた後またはPCR熱循環後のいずれかにおいて)。
【0004】
PCR熱循環のために設計されたマルチウェルプレートの1つの不利益は、熱伝達を最大限にすることを目的として設計されることであり、それらは、概して、両方ともプロセス自動化のための高度に所望される属性である、音響射出または音響照会と併用するための要件を満たすことに失敗する。音響放射(すなわち、音響圧力波)を使用するサンプル輸送方法が、例えば、米国特許第10,156,499号(参照することによって本明細書に組み込まれる)に説明されている。しかしながら、音響的に互換性があるプレートが、概して、PCR熱循環の高速温度変化を提供するために必要とされる、物理的要件(例えば、熱誘導変形に対する表面積、薄さ、耐久性)を満たすことに失敗する。これらのプレートは、約数百ミクロンのそのウェルを横断して撓むことに起因して、平坦性から逸脱するため、それらは、PCR加熱ブロックに均一熱結合を提供しない。さらに、プレートは、大圧縮力を用いてさえ、均一熱結合を可能にするほど十分に応従性ではない。したがって、高速熱循環ならびに自動化されたサンプルハンドリングを提供し得るようなシステムの中にマイクロプレートの手動および自動化された(ロボット)操作の両方を可能にする解決策を提供することに関心が集まっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第10,156,499号公報
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
(要約)
本特許において使用される用語「発明(invention)」、「本発明(the invention)」、「本発明(this invention)」、および「本発明(the present invention)」は、下記の本特許の主題および特許請求の範囲の全てを広く参照することが意図される。これらの用語を含有する陳述は、本明細書に説明される主題を限定しない、または下記の特許請求の意味もしくは範囲を限定しないと理解されたい。本特許によって網羅される本発明の実施形態は、本概要ではなく、下記の請求項によって定義される。本概要は、本発明の種々の側面の大まかな概要であり、下記の詳細な説明の節においてさらに説明される概念のうちのいくつかを導入する。本概要は、請求される主題の重要な特徴または不可欠な特徴を識別するように意図されず、請求された主題の範囲を判定するために、分離して使用されるように意図されるものでもない。本主題は、本特許の明細書全体と、任意または全ての図面と、各請求項の適切な部分とを参照することによって理解されるべきである。
【0007】
本開示のある実施形態によると、マルチウェル反応容器のためのサンプルハンドリングに関するシステムは、マルチウェル反応容器を保定および移動させるように構成される、ロボットサンプルハンドラと、反応容器内に含有されるサンプルに熱循環動作を実施するための熱サイクラとを含むことができる。熱サイクラは、加熱要素を含有するマルチウェル反応容器を受容するために成形された加熱チャンバと、加熱要素に隣接して位置付けられる応従性の熱的に伝導性の挿入部と、閉鎖されるとき、応従性の熱的に伝導性の挿入部および加熱要素に向かって、マルチウェル反応容器を押圧する、閉鎖機構とを含む。少なくとも一実施形態によると、応従性の熱的に伝導性の挿入部は、弾性的に変形可能なクレープ黒鉛シート、または高熱伝導性を有し、かつ可逆的に変形可能である、任意の好適な数の並列黒鉛シートのアセンブリから形成されることができる。
【0008】
応従性の熱的に伝導性の挿入部は、2つの間で圧縮されるときに可逆的に変形することによって、マルチウェル反応容器の底部表面の幾何学形状と加熱要素の上部表面との不整合を調整することができる。本効果は、非平行平坦表面または湾曲表面に関して、表面欠陥に関して、または熱サイクルの間、変形熱によって生じた表面プロファイルにおける変化に関して、補償することができる。コントローラを用いる自動化されたシステムの文脈では、本システムは、ロボットサンプルハンドラに、熱サイクラの中にマルチウェル反応容器を挿入させ、加熱チャンバ内にマルチウェル反応容器を封入させ、閉鎖機構によって、応従性の熱的に伝導性の挿入部の中にマルチウェル反応容器の底部表面を圧縮させることができる。本システムは、次いで、熱サイクラに、応従性の熱的に伝導性の挿入部を通して、加熱要素からマルチウェル反応容器に制御された熱流束を印加することによって、加熱要素によって加熱チャンバ内のマルチウェル反応容器を自動的に循環させることができる。
【0009】
熱循環プロセスステップは、自動化された音響サンプルハンドリングのために設計されるマルチウェル反応容器を用いて実施されることができ、本システムは、したがって、音響射出によって源容器からマルチウェル反応容器にサンプル注入するために、または熱循環前もしくは後、音響照会によってサンプルの側面を分析するために、音響サンプル輸送および音響サンプル照会技法を利用することができる。加えて、本システムは、熱循環後、マルチウェル反応容器からサンプル分析器にサンプルを輸送するために、音響サンプル輸送技法を利用することができる。
【0010】
本開示のある実施形態によると、マルチウェル反応容器のためのサンプルハンドリングに関する方法は、熱サイクラの加熱要素上の応従性の熱的に伝導性の挿入部上にマルチウェル反応容器を設置することによって、熱サイクラの加熱チャンバの中にマルチウェル反応容器を挿入することを含むことができる。応従性の熱的に伝導性の挿入部は、高熱伝導性を有し、かつ可逆的に変形可能である、単独でまたは並列に置かれた1つ以上の弾性的に変形可能なクレープ黒鉛シートを含むことができる。応従性の熱的に伝導性の挿入部は、2つの間で圧縮されるときに可逆的に変形することによって、マルチウェル反応容器の底部表面の幾何学形状と加熱要素の上部表面との不整合を調整することができる。本効果は、非平行平坦表面または湾曲表面に関して、表面欠陥に関して、または熱サイクルの間、変形熱によって生じた表面プロファイルにおける変化に関して、補償することができる。
【0011】
本明細書に説明される方法はさらに、底部表面と応従性の熱的に伝導性の挿入部との間の熱接触面積を増加させるために、応従性の熱的に伝導性の挿入部の中にマルチウェル反応容器の底部表面を圧縮することと、応従性の熱的に伝導性の挿入部を通して、加熱要素によってマルチウェル反応容器に制御された熱流束を印加することによって、加熱チャンバ内のマルチウェル反応容器を熱的に循環させることとを含むことができる。応従性の熱的に伝導性の挿入部は、マルチウェル反応容器または加熱要素が、サイクルの繰り返される加熱および冷却段階の間、変形する場合でさえ、熱循環動作全体を通して増加した接触面積を維持することができる。随意に、応従性の熱的に伝導性の挿入部が、マルチウェル反応容器が、これらの表面の間の改良された熱接触を要求する場合、マルチウェル反応容器の上部表面と加熱チャンバの上側表面との間で使用され得る。
【0012】
本開示のある実施形態によると、マルチウェル反応容器のためのサンプルハンドリングにおいて使用するための熱サイクラアセンブリが、加熱チャンバと、加熱チャンバに含有される、加熱要素と、閉鎖されるとき、加熱チャンバ内にマルチウェル反応容器を封入し、加熱要素と接触する加熱チャンバ内に位置付けられる応従性の熱的に伝導性の挿入部の中にそれを圧縮するために、マルチウェル反応容器上で押圧する、閉鎖機構とを含むことができる。種々の実施形態によると、応従性の熱的に伝導性の挿入部は、弾性的に変形可能なクレープ黒鉛シート、または高熱伝導性を有し、部分的または完全に可逆的に変形可能である、複数の変形可能クレープ黒鉛シートのアセンブリを含む。
【0013】
本開示のある実施形態によると、マルチウェル反応容器のためのサンプルハンドリングに関する方法は、熱サイクラの加熱要素上の応従性の熱的に伝導性の挿入部上にマルチウェル反応容器を設置することによって、熱サイクラの加熱チャンバの中に第1のマルチウェル反応容器を挿入することと、第1のマルチウェル反応容器を取り出すことと、続いて、応従性の熱的に伝導性の挿入部上に第2のマルチウェル反応容器を設置することによって、熱サイクラの加熱チャンバの中に第2のマルチウェル反応容器を挿入することとを含むことができる。応従性の熱的に伝導性の挿入部は、弾性的に変形可能なクレープ黒鉛シート、または高熱伝導性を伴う弾性的に変形可能なクレープ黒鉛シートのアセンブリを含むことができる。第1のマルチウェル反応容器が、応従性の熱的に伝導性の挿入部の中に圧縮されるとき、第1の底部表面と加熱要素との間の圧力が、第1の圧縮プロファイルに従って、クレープ黒鉛シートの可逆的変形を生じさせる。同様に、第2のマルチウェル反応容器が、応従性の熱的に伝導性の挿入部の中に圧縮されるとき、第2の底部表面と加熱要素との間の圧力は、第1の圧縮プロファイルと異なる第2の圧縮プロファイルに従って、クレープ黒鉛シートの可逆的変形を生じさせる。応従性の熱的に伝導性の挿入部は、圧力および可逆的変形に応答して、恒久的に変形または「流動」せずに、第1の圧縮されたプロファイルから、かつ第2の圧縮されたプロファイルから、非圧縮状態に戻る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
本開示による種々の実施形態が、図面を参照して説明されるであろう。
【0015】
【
図1】
図1は、本開示の種々の実施形態による、マルチウェル反応容器のためのサンプルハンドリングに関する例示的システムを図示する、簡略化されたブロック図である。
【0016】
【
図2】
図2は、マルチウェル反応容器を受容し、応従性の熱的に伝導性の挿入部を組み込むための
図1のシステムと互換性がある熱サイクラアセンブリを図示する、簡略化された側断面概略である。
【0017】
【
図3】
図3は、
図2の応従性の熱的に伝導性の挿入部の側面を図示する、詳細な斜視図である。
【0018】
【
図4-1】
図4A-4Eは、
図2および
図3に示されるような応従性の熱的に伝導性の挿入部の種々の変形プロファイルを図示する、簡略化された側断面概略である。
【
図4-2】
図4A-4Eは、
図2および
図3に示されるような応従性の熱的に伝導性の挿入部の種々の変形プロファイルを図示する、簡略化された側断面概略である。
【0019】
【
図5】
図5は、応従性の熱的に伝導性の挿入部および代替材料との熱サイクラ内のサンプル含有マルチウェル反応容器の比較傾斜率を図示する、グラフ図である。
【0020】
【
図6】
図6は、応従性の熱的に伝導性の挿入部を使用して、マルチウェル反応容器内に含有されるサンプルのサンプルハンドリングおよび熱循環のためのプロセスの第1の実施例を図示する、プロセスフロー図である。
【0021】
【
図7】
図7は、応従性の熱的に伝導性の挿入部を使用して、マルチウェル反応容器内に含有されるサンプルのサンプルハンドリングおよび熱循環のためのプロセスの第2の実施例を図示する、プロセスフロー図である。
【0022】
【
図8】
図8は、応従性の熱的に伝導性の挿入部を使用して、マルチウェル反応容器内に含有されるサンプルのサンプルハンドリングおよび熱循環のためのプロセスの第3の実施例を図示する、プロセスフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(詳細な説明)
以下の説明では、種々の実施形態が、説明されるであろう。解説の目的のために、具体的構成および詳細が、本実施形態の完全な理解を提供するために、記載される。しかしながら、実施形態が、他の構成において、または具体的詳細を伴わずに実践されてもよいことが、当業者に明白であろう。さらに、周知の特徴が、説明されている実施形態を曖昧にさせないために、省略または簡略化されてもよい。
【0024】
熱サイクラでは、サンプル含有マルチウェル反応容器と加熱要素との間の非均一熱結合は、マイクロプレート上の加熱ブロック表面とウェル底部表面との間にある空気と最も関連付けられる。非均一熱結合が生じる場合、これは、空隙を伴ういくつかのウェルが、空隙が存在する隣り合ったウェルと同一のレベルで熱流束を被らないであろうことを意味する。従来のマイクロプレート材料(ポリプロピレン、シクロオレフィン、および同等物のようなポリマー等)を通した熱流束は、マイクロプレート内で迅速に熱を拡散し、加熱ブロックと接触しないウェルのために高速熱循環を支援するために、マイクロプレートを通して十分な側方熱流束を提供することができない。熱接触するためにプレートを平坦にすることは、概して、空隙問題を軽減することに失敗する。
【0025】
熱循環プロセスの自動化は、音響サンプルハンドリングを利用することによって、大幅に向上されることができる。しかしながら、音響照会および音響サンプル射出は、PCRおよび熱循環を要求する他の手順に関して一般的な「鶏卵箱」マルチウェル反応容器の文脈において工学的課題を課す。平坦加熱要素ブロックを伴う平底の音響的に互換性があるマルチウェル反応容器の使用が、考慮されるが、また、非効果的である。「完璧に平坦な」底部表面を伴う音響的に互換性がある、または従来のPCRシステムの平坦ブロックに対して圧縮されたときの応従性の範囲内まで「再現可能に平坦」である、プレートを生産することは、法外な費用がかかる。プラスチック材料におけるより大きな可撓性はまた、材料剛性が音響性能と相関されるため、音響マイクロプレート上に有害な影響を有する可能性が高い。特に、より応従性の材料が、より大きい音響減衰を有する傾向がある。また、より高い応従性の材料が、多くの場合、熱循環からの応力へのより大きい変形を受け、潜在的に、マイクロプレートの撓みに起因して、自動化されたプレートハンドリングロボットによってハンドリングされるとき、故障につながる。
【0026】
本発明の説明される実施形態は、マルチウェル反応容器のためのサンプルハンドリングに関するシステムおよび方法を説明する。種々の実施形態によると、そのようなシステムは、限定ではないが、PCR等の反応容器内に含有されるサンプルに熱循環動作を実施するための熱サイクラの中への自動化された挿入および/またはそれからの取出のために、マルチウェル反応容器を保定および移動する、ロボットサンプルハンドラを含むことができる。そのようなシステムと併用するための熱サイクラが、加熱要素を含有するマルチウェル反応容器を受容するために成形された加熱チャンバと、加熱要素に隣接して位置付けられる応従性の熱的に伝導性の挿入部と、閉鎖されるとき、応従性の熱的に伝導性の挿入部および加熱要素に向かって、マルチウェル反応容器を押圧する、閉鎖機構とを含むことができる。少なくとも一実施形態によると、応従性の熱的に伝導性の挿入部は、加熱要素の表面のものを上回る側方熱伝導性を伴う、変形可能固体である。具体的実施形態によると、応従性の熱的に伝導性の挿入部は、弾性的に変形可能なクレープ黒鉛シート、または高熱伝導性を有し、かつ可逆的に変形可能である、任意の好適な数の並列黒鉛シートのアセンブリから形成されることができる。
【0027】
その中で同様の参照番号が関連要素を示す図に目を向けると、
図1は、本開示の種々の実施形態による、マルチウェル反応容器のためのサンプルハンドリングに関する例示的システム100を図示する、簡略化されたブロック図である。
【0028】
システム100は、1つ以上のプロセッサ103と、システムによって自動化されたタスクを制御する実行可能命令を含有する、非一過性メモリデバイス105とから動作するコンピュータシステムであり得る、コントローラ101を含む。コントローラ101は、分散型または一元型であり得る、クラウドベースであり得る、もしくは本明細書に説明される種々のアセンブリのオンボードコントローラのうちの1つ以上から動作し得ることに留意されたい。さらに、下記に説明されるシステム100のある部分が、手動で動作される、または別様に本明細書に説明されるアセンブリの任意の好適なサブセットを含む、自動化されたシステムから分離され得る。システム要素のコントローラ101による制御は、有線または無線ネットワークであり得る、ネットワーク107を介してもたらされることができる。
【0029】
少なくとも一実施形態によると、システム100は、音響サンプルハンドラ120、熱サイクラ140、および分析器アセンブリ160のうちの1つ以上を含む。これらのシステム要素は、例えば、コントローラ101によって自動的に制御され得る、またはユーザ入力を用いて自律的または半自律的のいずれかで、ローカルに制御され得る。マルチウェル反応容器119が、例えば、コントローラ101の制御下で、手でまたは自動化されたロボットシステム110によって、システム要素の間で輸送されることができる。自動化されたロボットシステム110は、システム要素の間でサンプル輸送をもたらすためのアクチュエータの任意の好適なアセンブリを含み得るが、一実施形態によると、種々のシステム要素の中にまたはそれからマルチウェル反応容器を挿入する、もしくは取り出すために、マルチウェル反応容器119を握持し、かつ空間内でその配向を操作し得る、その上にマニピュレータ117を有する端部115を伴う、異なるシステム要素の間でロボットアーム113を回転させる、少なくとも回転式アクチュエータ111を含む。
【0030】
音響サンプルハンドラ120は、マルチウェル反応容器、個々のサンプル容器、または同等物の間で音響的にサンプルを輸送することができる。音響サンプルハンドラ120は、音響照会および/または射出を制御するオンボードプロセッサ121およびメモリデバイス123、音響エジェクタ125、ならびに音響エジェクタ、源容器129、マルチウェル反応容器119であり得る、または他の容器であり得る、受容容器131のうちの1つ以上を保定および移動させる任意の好適な数のアクチュエータ127を含むことができる。例えば、いくつかの実施形態によると、単数の源容器が、マルチウェル反応容器にサンプル注入するために使用されることができる、または第1のマルチウェル反応容器が、音響エジェクタ125を介して、1つのものの中のウェルから他のものの中のウェル内に、音響射出によって第2のマルチウェル反応容器にサンプル注入することができる。いくつかの実施形態によると、音響エジェクタ125は、例えば、源容器の中に音響エネルギーを放出することと、放出される音響エネルギーのエコーを検出することと、エコーから照会されたウェルのパラメータを判定することとによって、源容器129内のウェルを音響的に照会するために使用されることができる。そのようなパラメータは、限定ではないが、メニスカス高さ、粘度、音響インピーダンス、および同等物を含むことができる。
【0031】
熱サイクラ140は、加熱チャンバ151内にマルチウェル反応容器119を受容し、ローカルプロセッサ141と、プロセッサの制御下で熱プロセスに関するプログラム命令を含有し得る、メモリデバイス143との制御下で、反応容器内のサンプルに熱サイクルを実施することができる。熱サイクラは、加熱チャンバ151をともに画定する、ヒンジ149において接続される、断熱本体145と、閉鎖部147とを含む。加熱チャンバ151は、加熱要素153、例えば、概して、加熱要素を保護する、熱的に伝導性加熱要素ブロック155内に封入された、抵抗加熱フィラメントまたは同等物を含有する。加熱要素153および加熱要素ブロック155は、加熱要素と全体を通して集合的に称される。
【0032】
応従性の熱的に伝導性の挿入部157が、容器が加熱チャンバ151の中に挿入されるとき、加熱要素(または加熱要素ブロック155)と熱接触して、かつマルチウェル反応容器119と直接接触するための位置に、加熱要素153上の加熱チャンバ151内に設置されることができる。加熱チャンバ151は、挿入部が、加熱要素153およびマルチウェル反応容器の両方との応従性の熱的に伝導性の挿入部の熱接触面積を増加させる、圧縮されたプロファイルを採用するために変形させるように、マルチウェル反応容器119がその中に挿入され、蓋159が固着されるとき、閉塞器がマルチウェル反応容器に応従性の熱的に伝導性の挿入部157を圧縮させるように定寸される。
【0033】
応従性の熱的に伝導性の挿入部157は、異なる具体的トポグラフィを有するマルチウェル反応容器119の間、または異なる具体的トポグラフィを有する異なる熱サイクラ内の加熱要素の間の圧縮に応答して、種々の異なる圧縮されたプロファイルを採用し得るように、圧力下で可逆的に変形可能である。いくつかの実施形態によると、応従性の熱的に伝導性の挿入部は、圧縮性形態で配列される、任意の好適な数の黒鉛層を含む。黒鉛の熱的に伝導性の挿入部が、例えば、クレープ黒鉛層または複数のクレープ黒鉛層のアセンブリから構成されることができる。好適なクレープ黒鉛層が、約10~2,000ミクロン、またはそれより大きいシート厚さを有する、アコーディオン状マイクロ構造を採用する多数のマイクロ折畳を導入するために、平面黒鉛シートを微細に変形させることによって、形成されることができる。種々の他の実施形態によると、応従性の熱的に伝導性の挿入部は、熱的に伝導性、かつ応従性の弾性ポリマーまたはポリマー複合材であることができる。
【0034】
1つの好適なクレープ黒鉛材料は、NeoGraf Solutions(LLC, OH, USA)によって生産されており、「A GRAPHITE ARTICLE AND METHOD OF MAKING SAME」と題された、PCT特許公開第WO2019/142082A2号(あらゆる目的のために参照することによって本明細書に組み込まれる)において説明される。具体的製品は、アルミニウムのものを超える(250W/m-Kを下回る)、400W/m-K超の面内熱伝導性を有するが、500ミクロンシートに対して100kPaにおいて250ミクロンを上回る厚さ範囲に関する応従性を呈する。比較として、熱サイクラが、少なくとも100kPaのかなりの割合の密閉完全性を維持するために、循環の間、マイクロプレート上に圧力を発生させることができる。着目すべきこととして、弾性的に変形可能黒鉛は、熱サイクラにおいて使用するために決して適合されていないが、代わりに、例えば、プロセッサとヒートシンクとの間で恒久的に圧着される、電子機器内の恒久的配設のための解決策として仮説を立てられている。
【0035】
種々の実施形態によると、応従性の熱的に伝導性の挿入部は、250ミクロン~2,000ミクロン、または250ミクロン~1,000ミクロン、または250ミクロン~750ミクロンの範囲内の非圧縮厚さを有することができる。応従性の熱的に伝導性の挿入部は、少なくとも200W/m-K、好ましくは、少なくとも700W/m-K、またはそれより大きい面内熱伝導性を有してもよい。応従性の熱的に伝導性の挿入部は、加熱要素とマルチウェル反応容器との間に設置されるとき、圧縮応力に伴って非線形に増加する貫通平面熱伝導性を有し得る。貫通平面熱伝導性は、100kPa圧縮応力において1-5W/m-K~700kPa圧縮応力において10-30W/m-Kに及び得る、またはそれより高くあり得る。代替として、応従性の熱的に伝導性の挿入部の貫通平面熱伝導性は、少なくとも0.5℃、または1℃/秒、好ましくは、少なくとも1.5℃/秒、より好ましくは、少なくとも2℃/秒のサンプル加熱を生じさせるために、加熱要素から平底の音響的に使用可能プレート内のサンプルへの十分な熱流束を可能にするために十分であり得る。応従性の熱的に伝導性の挿入部はまた、可逆的に変形可能であり得る。例えば、700kPaの圧縮応力を受けると、応従性の熱的に伝導性の挿入部は、元の(無負荷)厚さの60%未満に可逆的に圧縮され得、元の厚さの少なくとも70%、好ましくは、元の厚さの少なくとも80%、より好ましくは、元の厚さの少なくとも90%に戻り得る。繰り返し圧縮されるとき、応従性の熱的に伝導性の挿入部は、後続圧縮後、同一の非圧縮厚さに戻り得る。いくつかの実施形態によると、応従性の熱的に伝導性の挿入部は、加熱チャンバ内のマルチウェル反応容器の撓曲を促進する、および/または応従性の熱的に伝導性の挿入部によって反応容器を横断して改良された側方熱伝導を提供するために、同様にマルチウェル反応容器の上への設置のために構成されてもよい。
【0036】
分析器アセンブリ160は、本開示の種々の実施形態に従って、ローカルプロセッサ161と、分析器169を制御するためのプログラム命令を含有し得る、メモリデバイス163との制御下で、音響射出を介して、自動化されたサンプル分析をもたらすために、マルチウェル反応容器119を受容することができる。種々の具体的自動化された分析器が、説明される自動化システム100と併用するために示されてもよい。例えば、いくつかの実施形態によると、分析器169は、DNAスキャナ、フローサイトメータ、ガスクロマトグラフ、および/または質量分析計、高圧力液体クロマトグラフ、または液体サンプルを受容および処理する他の好適な分析器であることができる。マルチウェル反応容器119は、サンプルハンドリングステージ167において、分析器アセンブリ160内に挿入されることができる。マルチウェル反応容器119からの個々のサンプルが、音響エジェクタ165を介して、分析器169の入口ポート171の中に容器から射出されることができる。サンプルハンドリングステージ167は、入口ポート171に対してマルチウェル反応容器119を移動させるため、射出をもたらすために音響エジェクタ165を移動させるため、または両方のための任意の好適なアクチュエータを含むことができる。いくつかの実施形態によると、音響エジェクタ165はまた、例えば、射出、または他の好適な照会に先立って、深度および/または音響インピーダンスを検査するために、マルチウェル反応容器119内のサンプルウェルの音響照会を行うためのエミッタとして機能することができる。
【0037】
組み合わせて、システム100は、種々の実施形態に従って、例えば、ロボットシステム110によって、音響サンプルハンドラ120を介して源容器とマルチウェル反応容器119との間で、熱サイクラ140へおよびそれから、かつ分析器アセンブリ160に、部分的または完全に自動化されたサンプルハンドリングおよび輸送を提供することができる。熱サイクラ140は、応従性の熱的に伝導性の挿入部157を介して、挿入されるマルチウェル反応容器119と加熱要素153との間の熱接触を向上させることによって、概して、堅性かつ平底である音響的に互換性があるマイクロプレートをハンドリングすることが可能である、技術的利益を有する。応従性の熱的に伝導性の挿入部における可逆的に変形可能かつ不活性材料の使用はまた、マルチウェル反応容器の底部表面上の残留物の堆積を防止し、それが繰り返される音響サンプル輸送のための自動化されたサンプルハンドリング手順全体を通して、十分に清浄なままであることを可能にする。本アプローチは、その中で特殊化されたプレート幾何学形状が、加熱要素と反応容器との間の乾燥熱伝達、またはその中で作業流体が熱伝達を向上させるために使用され得る、部分的浸漬を向上させるために採用される、従来のアプローチとは対照的である。
【0038】
図2は、マルチウェル反応容器119を受容し、かつ応従性の熱的に伝導性の挿入部157を組み込むための
図1システム100と互換性がある、熱サイクラ140をさらに詳細に図示する、簡略化された側断面概略である。応従性の熱的に伝導性の挿入部157は、加熱要素153と、マルチウェル反応容器119とを含有する、加熱要素ブロック155の間で層状であることができる。蓋159の閉鎖は、マルチウェル反応容器119の底部表面118と加熱要素153との間の応従性の熱的に伝導性の挿入部157を圧縮する。圧縮は、マルチウェル反応容器119の底部表面118に沿って挿入部の接触面積を増加させるために、応従性の熱的に伝導性の挿入部157を変形させ、任意の特定のウェル116下のエアポケットの形成を防止し、その中に含有されるサンプル114への熱の印加さえも助長する。応従性の熱的に伝導性の挿入部は、少なくとも従来の「平坦」PCR熱伝達ブロックと「平坦底部」マイクロプレートのウェルの下の表面との間の物理的接触を維持するために十分な応従性を有する。応従性の熱的に伝導性の挿入部の厚さ、使用されたシートの数、および印加された圧力に応じて、挿入部によって充填され得る、マルチウェル反応容器プレートの加熱要素ブロック155と底部表面118との間の非平坦性は、100、200、またはさらに500ミクロン(すなわち、最大100、最大200、または最大500ミクロンの隣接する最高および最下点の間のトポグラフィ差異)の「間隙」によって特徴付けられ得る。
【0039】
種々の実施形態によると、応従性の熱的に伝導性の挿入部157は、マルチウェル反応容器119の底部表面および加熱要素153、または両方を整合するために、加熱チャンバ151内に挿入部を整合するために定寸および成形されるフレーム158において支援される、クレープ黒鉛材料156を含むことができる。いくつかの実施形態によると、フレーム158は、自動的に加熱チャンバ151の中に設置される、またはそれから取り出され得るように、ロボットシステム110のマニピュレータ117(
図1)と互換性があることができる。
【0040】
図3は、付加的詳細において、
図2の応従性の熱的に伝導性の挿入部157の側面を図示する、詳細な斜視図である。フレーム158は、クレープ黒鉛材料156の少なくとも1つの層、随意に、クレープ黒鉛材料の複数の層を封入および支持する。クレープ黒鉛材料の層は、上部表面152と底部表面154との間に、10ミクロンと同程度の薄さ~最大2,000ミクロンに及ぶ厚さを有することができる。底部表面154および上部表面152の一方または両方は、可撓性かつ熱的に伝導性であるが、クレープ黒鉛材料(または他の好適な応従性かつ高熱伝導性材料)のシートに接合するための保護外側表面または表面のいずれかを提供するために、有意に応従性の支持材料ではない、付加的層を含むことができる。フレームは、装置の熱ブロック接面、プレート接面、または内部のうちの1つ以上において、単一または複数のシートを含み得る。挿入フレーム厚さ152が、同様に、例えば、クレープ黒鉛材料156の近似厚さに合致する、10ミクロン~2,000ミクロンに変動されることができる、または自動化されたハンドリングのために把持表面を提供するために、より有意に厚くあることができる。フレーム158は、熱サイクラの中におよびそれから外に応従性の熱的に伝導性の挿入部を移動させるためのインターフェース装置として特徴付けられ、SLAS/ANSI標準マイクロプレートを移動させるために作製されるもの等の自動化システムによって、フレームの移動を促進するように設計されてもよい。フレーム158はまた、マルチウェル反応容器119、または好適なマイクロプレート、および組み合わせられたアセンブリとして移動可能であるべきプレートならびにフレームの両方に取外可能または恒久的に接続するために、成形されることができる。
【0041】
応従性の熱的に伝導性の挿入部157は、熱サイクラのマルチウェル反応容器119または加熱要素ブロック155において、種々の欠陥または非平坦トポグラフィを調整するために、変形されることができる。いくつかのそのような使用例は、下記の
図4A-4Eを参照して説明され、これは、
図2および
図3に示されるように、応従性の熱的に伝導性の挿入部の種々の変形プロファイルを図示する。
【0042】
例えば、
図4Aは、その中でマルチウェル反応容器419aが、熱サイクラ440の加熱空洞451内で封入および圧縮される、第1の使用事例400aを図示する。上記に図示される熱サイクラ140のように、熱サイクラ440は、容器が加熱空洞451内に挿入されるとき、マルチウェル反応容器419a上に圧力を付与するために降下され得る、ヒンジ449において取り付けられる蓋459を有する、断熱本体445を含む。応従性の熱的に伝導性の挿入部457が、マルチウェル反応容器419aと加熱ブロック455および関連付けられる加熱要素453との間に狭入されて位置付けられる。第1の使用事例400aでは、マルチウェル反応容器419aは、熱循環に応答して、凸面の湾曲された構成を採用する。従来のアプローチを受ける場合、蓋459による圧着力は、効率的熱伝達を維持するために十分な加熱ブロック455と接触する、マルチウェル反応容器419aを平坦にするために不十分である。しかしながら、応従性の熱的に伝導性の挿入部457内の応従性の熱的に伝導性材料456aは、加熱ブロック455、ひいては、加熱要素453との接触を維持しながら、マルチウェル反応容器419aの底部表面の全てまたは実質的に全てと接触するために、可逆的に変形することができる。いくつかの実施形態によると、付加的応従性の熱的に伝導性の挿入部が、側方熱伝導を最大限にしながら、反応容器の撓曲を調整するために、マルチウェル反応容器の上に設置されることができる。
【0043】
同様に、
図4Bは、その中でマルチウェル反応容器419bが、熱サイクラ440の加熱空洞451内で封入および圧縮される、第2の使用事例400bを図示する。第2の使用事例400bでは、マルチウェル反応容器419bは、熱循環に応答して、凹面構成を採用する。従来のアプローチを受ける場合、蓋459による圧着力は、効率的熱伝達を維持するために十分な加熱ブロック455と接触する、マルチウェル反応容器419bを平坦にするために不十分である。しかしながら、応従性の熱的に伝導性の挿入部457内の応従性の熱的に伝導性材料456bは、加熱ブロック455、ひいては、加熱要素453との接触を維持しながら、マルチウェル反応容器419bの底部表面の全てまたは実質的に全てと接触するために、可逆的に変形することができる。
【0044】
図4Cは、その中で応従性の熱的に伝導性の挿入部457が、加熱ブロック455の変形または不整合を調整する、第3の使用事例400cを図示する。例えば、第3の使用事例400cでは、マルチウェル反応容器の平坦底部表面419cは、加熱ブロック455の上部表面ともはや平行ではない。応従性の熱的に伝導性の挿入部457内の応従性の熱的に伝導性材料456cは、加熱ブロック455、ひいては、加熱要素453との接触を維持しながら、マルチウェル反応容器419cの底部表面の全てまたは実質的に全てと接触するために、楔状形状に可逆的に変形することができる。
【0045】
図4Dは、その中でマルチウェル反応容器419dが、例えば、表面損傷または欠陥、もしくは別様に隆起したトポグラフィを表し得る、表面特徴454dを伴う加熱ブロック455dの上方に熱サイクラ440の加熱空洞451内で封入および圧縮される、第4の使用事例400dを図示する。応従性の熱的に伝導性の挿入部457が、マルチウェル反応容器419dと加熱ブロック455dおよび関連付けられる加熱要素453との間で狭入されて位置付けられる。応従性の熱的に伝導性の挿入部457内の応従性の熱的に伝導性材料456dは、加熱ブロック455d、ひいては、加熱要素453との接触を維持しながら、エアポケットを最小限にし、マルチウェル反応容器の底部表面419dの全て、または実質的に全てと接触するために、表面特徴454dの周囲の空間を充填するために、可逆的に変形することができる。
【0046】
図4Eは、その中で熱サイクラ440の加熱空洞451内に封入および圧縮されたマルチウェル反応容器419eが、例えば、表面損傷または欠陥、もしくは別様に隆起したトポグラフィを反映する、その底部表面上に表面特徴418eを有する、第5の使用事例400eを図示する。応従性の熱的に伝導性の挿入部457が、マルチウェル反応容器419eと加熱ブロック455eおよび関連付けられる加熱要素453との間に狭入されて位置付けられる。応従性の熱的に伝導性の挿入部457内の応従性の熱的に伝導性材料456eは、加熱ブロック455e、ひいては、熱要素453との接触を維持しながら、エアポケットを最小限にし、マルチウェル反応容器の底部表面419eの全てまたは実質的に全てに接触するために、表面特徴418eの周囲の空間を充填するために、可逆的に変形することができる。
【0047】
いくつかの介在材料オプションのための効果的傾斜率に関するデータが、応従性の熱的に伝導性の挿入部が、従来の材料にわたって改良されたかどうかを判定するために収集され、
図5に示される。
図5は、応従性の熱的に伝導性の挿入部および代替材料との熱サイクラ内のサンプル含有マルチウェル反応容器の比較傾斜率500を図示する、グラフ図である。
【0048】
図5に図示される比較傾斜率500は、384ウェルのいくつかのセルにおいて、経時的に温度を測定することによって取得され、平底の音響マイクロプレートが、水溶液を含有し、各ウェルが、10マイクロリットルの流体を含有する。これらのプレートは、典型的PCRプレート(対照に関して約600ミクロンの厚さ)より厚い底部(公称980ミクロン)と、平坦底部対従来の円錐形形状への熱伝達のためのより小さい表面積とを有することに留意されたい。したがって、音響マイクロプレートデータに関してより低い傾斜率が、対照PCRプレートデータと比較して予期された。
【0049】
温度傾斜データを取得するために、熱電対が、384ウェルプレートのウェルE7、L7、E18、およびL18内の流体サンプルの中に挿入された。付加的熱電対が、熱伝達ブロック温度を監視するために使用された。本付加的熱電対は、アルミ箔の2つの層の間に設置され、加熱ブロックの上に直接位置付けられ、熱アダプタ媒体の底部に対してしっかりと押圧される。異なる熱アダプタ媒体が、
図5に反映され、下記の表1に示されるような熱循環の間、ウェル温度傾斜率におけるその性能に関して試験された。
【表1】
【0050】
上記の表1および
図5に図示されるように、平面加熱要素ブロックと平底の音響的に使用可能プレートとの間で達成される傾斜率は、PCRプレートを使用して達成される対照傾斜率よりはるかに低かった。しかしながら、クレープ黒鉛材料、すなわち、可逆的に圧縮性熱的に伝導性材料を使用する平均傾斜率は、選択された任意の他の材料より平底のプレートに対して有意に高かった。黒鉛シート(黒鉛1、黒鉛2)が、より熱的に伝導性であったが、応従性ではなかった一方、シリコーンゴム(シリコーンゴム1、シリコーンゴム2)は、高度に応従性であったが、あまり熱的に伝導性ではなかった。示されるように、可逆的変形(応従性)および熱伝導性の組み合わせは、傾斜率における有意な改良を提供した。
【0051】
例えば、自動化されたPCRと併せて使用するためのサンプルハンドリングおよび熱循環に関する自動化ならびに半自動化されたプロセスの実施例が、
図6-8を参照して、下記に説明される。プロセス600、700、および800(または本明細書に説明される任意の他のプロセスもしくは変形例、および/またはそれらの組み合わせ)は、実行可能命令を用いて構成される1つ以上のコンピュータシステムの制御下で、機械的に自動化および実施され、ハードウェアまたはそれらの組み合わせによって、集合的に1つ以上のプロセッサ上で実行される、コード(例えば、実行可能命令、1つ以上のコンピュータプログラム、または1つ以上のアプリケーション)として実装されてもよい。コードは、例えば、1つ以上のプロセッサによって実行可能な複数の命令を備える、コンピュータプログラムの形態で、コンピュータ可読記憶媒体上に記憶されてもよい。コンピュータ可読記憶媒体は、非一過性であってもよい。いくつかの実施形態では、プロセス600、700、および800の側面が、手動で実施されてもよい。具体的プロセスステップが、各プロセスにおいて説明されるが、具体的に矛盾しない限り、プロセス600、700、および800の各プロセスステップは、任意の好適な順序で実施され得る、または異なるプロセスのステップと連続して実施され得る。例えば、プロセス700またはプロセス800のステップは、プロセス600のステップの後、またはその逆に続いてもよい。
【0052】
図6は、応従性の熱的に伝導性の挿入部を使用して、マルチウェル反応容器内に含有されるサンプルのサンプルハンドリングおよび熱循環のためのプロセス600の第1の実施例を図示する、プロセスフロー図である。プロセス600では、第1のマルチウェル反応容器が、601において、熱サイクラの中に挿入される。第1のマルチウェル反応容器は、次いで、熱サイクラ内に封入され、603において、第1の圧縮されたプロファイルに従って、容器にその加熱要素上に位置付けられる熱的に伝導性の挿入部を圧縮させることができる。熱サイクラは、次いで、605において、挿入部を通して加熱要素からの熱流束を印加することによって、マルチウェル反応容器の温度を、順次、上昇および降下させるように事前に定義された温度プログラムに従って、循環されることができる。いったん完了すると、第1のマルチウェル反応容器は、熱サイクラから取り出され、熱的に伝導性の挿入部が、607において、第1の圧縮されたプロファイルから非圧縮状態に戻ることを可能にすることができる。
【0053】
続いて、第2のマルチウェル反応容器が、熱サイクラ内に挿入され、609において、第2の圧縮されたプロファイルに従って、容器に加熱要素上に位置付けられる熱的に伝導性の挿入部を圧縮させ得、その場合、第2の圧縮されたプロファイルは、第1の圧縮されたプロファイルと異なる幾何学形状である。例えば、プロファイルは、各動作におけるマルチウェル反応容器の底部表面の異なる表面トポグラフィを反映し得る。熱サイクラは、611において、挿入部を通して加熱要素から熱流束を印加することによって、マルチウェル反応容器の温度を、順次、上昇および降下させるように循環されることができ、次いで、第2のマルチウェル反応容器は、熱サイクラから取り出され、熱的に伝導性の挿入部が、613において、第2の圧縮されたプロファイルから非圧縮状態に戻ることを可能にすることができる。重要なこととして、第1および第2の圧縮されたプロファイルは、異なるが、応従性の熱的に伝導性の挿入部の非圧縮状態を著しく改変しない。さらに、応従性の熱的に伝導性の挿入部は、加熱要素とマルチウェル反応容器との間の間隙を横断して均一熱流束を提供するために、両方の動作において圧縮する。
【0054】
図7は、応従性の熱的に伝導性の挿入部を使用して、マルチウェル反応容器内に含有されるサンプルのサンプルハンドリングおよび熱循環のためのプロセスの第2の実施例を図示する、プロセスフロー図である。プロセス700では、ユーザまたは自動ロボットマニピュレータのいずれかが、701において、熱サイクラの加熱要素上の応従性の熱的に伝導性の挿入部上にマルチウェル反応容器を設置することによって、熱サイクラの加熱チャンバの中にマルチウェル反応容器を挿入してもよい。マルチウェル反応容器は、次いで、703において、加熱チャンバ内に封入されることができる。熱サイクラカバーを固着することは、705において、底部表面と応従性の熱的に伝導性の挿入部との間の熱接触面積を増加させるために、応従性の熱的に伝導性の挿入部の中にマルチウェル反応容器の底部表面を圧縮することを含むことができる。
【0055】
いったんマルチウェル反応容器が、加熱チャンバ内に封入されると、熱サイクラは、707において、応従性の熱的に伝導性の挿入部を通して、加熱要素によってマルチウェル反応容器に制御された熱流束を印加することによって、熱プログラムに従って熱的に循環されることができる。いくつかの実施形態によると、熱サイクラは、繰り返し、温度を増加および減少させることができる。いくつかの熱サイクラが、単に、加熱サイクルの間でマルチウェル反応容器を冷却するために、熱が消散することを可能にし得る一方、他の熱サイクラは、冷却機構(例えば、低温作業流体、冷蔵法、または同等物)を含み得る。いったん熱プログラムが、完了すると、マルチウェル反応容器は、加熱チャンバから取り外されることができる。
【0056】
いくつかの実施形態によると、マルチウェル反応容器は、熱プログラムの完了後、709において、サンプル輸送のための音響エジェクタが装備されている分析器に輸送されることができる。音響エジェクタは、音響射出プロセスによって分析器の中にマルチウェル反応容器内に含有されるサンプルの液滴を音響的に輸送するように構成され得、それによって、集束音響エネルギーが、分析器の入口の中にサンプルの液滴を輸送するために、711において、マルチウェル反応容器の底部表面を通して伝送される。
【0057】
図8は、応従性の熱的に伝導性の挿入部を使用して、マルチウェル反応容器内に含有されるサンプルのサンプルハンドリングおよび熱循環のためのプロセスの第3の実施例を図示する、プロセスフロー図である。プロセス800では、源ウェルからサンプルを含有する液滴が、例えば、音響サンプルハンドリングアセンブリを介して、801において、マルチウェル反応容器の中に音響的に輸送されることができる。本システムはまた、803において、マルチウェル反応容器の底部表面を通して、音響エミッタから照会トーンバーストを伝送することによって、マルチウェル反応容器内のサンプル含有ウェルを音響的に照会することができる。サンプル照会は、種々のサンプル属性、例えば、サンプル深度、音響インピーダンス、粘度、および他の属性を判定するために、使用されることができる。マルチウェル反応容器は、805において、熱サイクラの加熱要素上の応従性の熱的に伝導性の挿入部上にマルチウェル反応容器を設置することによって、手動または自動的に、熱サイクラの加熱チャンバの中に挿入されることができる。熱サイクラ内にマルチウェル反応容器を封入することは、807において、底部表面と応従性の熱的に伝導性の挿入部との間の熱接触面積を増加させるために、応従性の熱的に伝導性の挿入部の中にマルチウェル反応容器の底部表面を圧縮する。接触面積における増加は、例えば、マルチウェル反応容器の底部表面と平坦熱プレートまたは非応従性の熱的に伝導性の挿入部との間で達成され得る、仮説接触面積に対してであり、その中で空隙またはエアポケットが、隣接する表面の間に形成される傾向があろう。本増加した接触面積は、809において、マルチウェル反応容器または加熱要素の熱変形に応答して、応従性の熱的に伝導性の挿入部の弾性変形を介して、加熱チャンバ内のマルチウェル反応容器を熱的に循環する間、維持される。例えば、マルチウェル反応容器が、加熱または冷却に起因して、上向きまたは下向きのいずれかに撓む場合、応従性の熱的に伝導性の挿入部は、恒久的に流動または塑性的に変形せずに、圧縮される限り、その底部表面に従って弾性的に変形することができる。加熱チャンバからのマルチウェル反応容器の取出は、811において、応従性の熱的に伝導性の挿入部が非圧縮状態に戻ることを可能にする。
【0058】
上記に議論される種々の算出方法が、ハードウェア、ソフトウェア、および/またはファームウェアを有する、コンピュータまたは他のプロセッサと併せて、もしくはそれを使用して、実施されてもよい。種々の方法ステップは、モジュールによって実施され得、モジュールは、本明細書に説明される方法ステップを実施するために配列される、広い種々のデジタルおよび/またはアナログデータ処理ハードウェアならびに/もしくはソフトウェアのいずれかを備え得る。モジュールは、随意に、それと関連付けられる適切な機械プログラミングコードを有することによって、これらのステップのうちの1つ以上を実施するように適合される、データ処理ハードウェアを備え、2つ以上のステップに関するモジュール(または2つ以上のステップの部分)は、単一プロセッサボードの中に統合されている、または異なるプロセッサボードを、広い種々の統合および/または分散処理アーキテクチャのいずれかに分離させている。これらの方法およびシステムは、多くの場合、上記に説明される方法ステップを実施するための命令を伴う機械可読コードを具体化する有形媒体を採用するであろう。好適な有形媒体は、メモリ(揮発性メモリおよび/または不揮発性メモリを含む)、記憶媒体(フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク、テープ、または同等物上の磁気記録、CD、CD-R/W、CD-ROM、DVD、または同等物等の光学メモリ、もしくは任意の他のデジタルまたはアナログ記憶媒体等)、または同等物を備えてもよい。
【0059】
本明細書に示される項目は、実施例として、かつ本発明の好ましい実施形態の例証的議論の目的のみのためであり、最も有用であって、本発明の種々の実施形態の原理の説明および概念的側面が容易に理解されると考えられるものを提供するために、提示される。この関連で、本発明の基本理解、図面を用いて行なわれる説明、および/または本発明のいくつかの形態が実際に具現化され得る方法が、当業者に明白にされる実施例に必要であるものよりもさらに詳細に、本発明の構造的詳細を示すための試みは行なわれない。
【0060】
以下の定義および解説は、以下の実施例において明確かつ明らかに修正されない限り、または意味の適用が構造を無意味にするか、もしくは本質的に無意味にするかのいずれかであるとき、任意の将来的構造において優先するように意味および意図される。用語の構造が、無意味または本質的に無意味にするであろう場合、定義は、ウェブスター辞書第3版、または生化学および分子生物学のオックスフォード辞書(Ed. Anthony Smith, Oxford University Press, Oxford, 2004)等の当業者に公知の辞書から行なわれるべきである。
【0061】
文脈が別様に明確に要求しない限り、説明および請求項全体を通して、単語「~を備える(comprise)」、「~を備える(comprising)」、および同等物は、排他的または包含的意味とは対照的に、包括的意味、すなわち、「限定ではないが、~を含む(including, but not limited to)」という意味で、解釈されるべきである。単数形または複数形を使用する単語はまた、それぞれ、複数形および単数形を含む。加えて、単語「本明細書では(herein)」、「上記の(above)」、および「下記の(below)」、ならびに類似の趣旨の単語は、本願で使用されるとき、本用途の任意の特定の部分ではなく、全体として本願を指すものとする。
【0062】
本開示の実施形態の説明は、包括的である、または本開示を開示される精密な形態に限定するように意図されない。本開示の具体的実施形態および実施例は、例証的目的のために本明細書に説明されるが、種々の均等物修正が、関連技術における当業者が認識するであろうため、本開示の範囲内で可能である。
【0063】
特許申請書(特許、特許出願、および特許刊行物を含む)、科学雑誌、書籍、論文、技術的参考文献、および他の刊行物ならびに本願に議論される資料を含む、全ての参考文献が、その全体としてあらゆる目的のために、参照することによって本明細書に組み込まれる。
【0064】
本開示の側面が、必要な場合、本開示のなおもさらなる実施形態を提供するために、上記の参考文献および出願のシステム、機能、ならびに概念を採用するように、修正されることができる。これらおよび他の変更は、詳細な説明に照らして、本開示に行なわれることができる。
【0065】
任意の前述の実施形態の具体的要素が、他の実施形態における要素に関して組み合わせられる、または代用されることができる。さらに、本開示のある実施形態と関連付けられる利益が、これらの実施形態の文脈において説明されているが、他の実施形態もまた、そのような利益を呈し得、全ての実施形態が、本開示の範囲内に該当するために、必ずしもそのような利益を呈する必要があるわけではない。
【0066】
上記は、本発明の例示的実施形態の全部かつ完全な開示を提供するが、種々の修正、代替構造、および均等物が、所望に応じて採用されてもよい。その結果、実施形態が、実施例として、かつ理解を明確にするために、ある程度詳細に説明されているが、種々の修正、変更、および適合が、当業者に明白であろう。故に、上記の説明および例証は、本発明を限定するものとして解釈されるべきではなく、これは、添付の請求項によって定義されることができる。
【0067】
他の変形例も、本開示の精神内にある。したがって、開示される技法は、種々の修正および代替構造を受けやすいが、そのある図示される実施形態が、図面に示され、詳細に上記に説明されている。しかしながら、本開示を開示される具体的形態に限定する意図は存在せず、対照的に、意図は、添付の請求項に定義されるように、本開示の精神および範囲内に該当する全ての修正、代替構造、ならびに均等物を網羅することではないことを理解されたい。
【0068】
開示される実施形態を説明する文脈における(特に、以下の請求項の文脈における)用語「a」および「an」ならびに「the」および類似参照の使用は、本明細書に別様に示される、または文脈によって明確に包含されない限り、単数形および複数形の両方を網羅すると解釈されるべきである。用語「~を備える(comprising)」、「~を有する(having)」、「~を含む(including)」、および「~を含有する(containing)」は、別様に記載されない限り、非限定的用語(すなわち、「限定ではないが、~を含む(including, but not limited to)」を意味する)として解釈されるべきである。用語「接続される(connected)」は、介在している何らかのものが存在する場合でさえ、部分的に、または全体的に、その中に含有される、それに取り付けられる、もしくはともに継合されるものとして解釈されるべきである。本明細書の値の範囲の列挙は、単に、本明細書に別様に示されない限り、範囲内に該当する各別個の値を個々に参照する短縮表現方法としての役割を果たすように意図され、各別個の値は、個々に本明細書に列挙されるかのように、本明細書の中に組み込まれる。全ての本明細書に説明される方法が、別様に本明細書に示される、または別様に文脈によって明確に包含されない限り、任意の好適な順序で実施されることができる。本明細書に提供されるいずれかおよび全ての実施例、または例示的言語(例えば、「等(such as)」)の使用は、単に、本開示の実施形態をより詳しく明らかにし、別様に請求されない限り、本開示の範囲に関する限界を課さないように意図される。本明細書における言語は、本開示の実践に不可欠なものとして、任意の請求されない要素を示すものとして解釈されるべきではない。
【0069】
語句「X、Y、またはZのうちの少なくとも1つ」等の離接的な言語は、別様に具体的に記述されない限り、アイテム、用語等を提示するために一般に使用される文脈内にあると理解されるように意図され、X、Y、またはZのいずれか、もしくはそれらの任意の組み合わせ(例えば、X、Y、および/またはZ)であってもよい。したがって、そのような離接的な言語は、概して、ある実施形態が、Xのうちの少なくとも1つ、Yのうちの少なくとも1つ、またはZのうちの少なくとも1つが、それぞれが提示されることを要求するように意図されない、かつ含意するべきではない。
【0070】
本開示を実行する本発明者らに公知の最良モードを含む、本開示の好ましい実施形態が、本明細書に説明される。それらの好ましい実施形態の変形例が、前述の説明を熟読することに応じて、当業者に明白になり得る。本発明者らは、当業者が、必要に応じて、そのような変形例を採用することを予期し、本発明者らは、本開示が本明細書に具体的に説明されるもの以外に別様に実践されることを意図する。故に、本開示は、適用可能な法律によって許可されるように、ここに添付の請求項に列挙される主題の全ての修正および均等物を含む。さらに、そのあらゆる可能性として考えられる変形例における上記に説明される要素の任意の組み合わせは、別様に本明細書に示される、または別様に文脈によって明確に矛盾しない限り、本開示によって包含される。
【0071】
本明細書に引用される刊行物、特許出願、および特許を含む、全ての参考文献が、各参照が、個々に、かつ具体的に参照することによって組み込まれるように示され、ならびにその全体として本明細書に記載されるものと同一の範囲に、参照することによって本明細書に組み込まれる。
【0072】
以下では、さらなる実施例が、本発明の理解を促進するために説明される。
【0073】
実施例A.
システムであって、
マルチウェル反応容器を保定および移動させるように構成される、ロボットサンプルハンドラと、
加熱要素を含有する、加熱チャンバと、加熱要素に隣接して位置付けられる、弾性的に変形可能なクレープ黒鉛シートを備える、応従性の熱的に伝導性の挿入部と、閉鎖機構とを備える、熱サイクラであって、加熱チャンバは、マルチウェル反応容器を受容するように成形され、閉鎖機構は、応従性の熱的に伝導性の挿入部および加熱要素に向かって、マルチウェル反応容器を押圧するように構成される、熱サイクラと、
ロボットサンプルハンドラおよび熱サイクラと動作可能に接続される、コントローラと
を備え、
コントローラは、少なくとも1つのプロセッサと、実行可能命令を含有するメモリとを備え、実行可能命令は、少なくとも1つのプロセッサによって実行されると、
ロボットサンプルハンドラに、熱サイクラの中にマルチウェル反応容器を挿入させることと、
閉鎖機構に、加熱チャンバ内にマルチウェル反応容器を封入させることと、
閉鎖機構によって、応従性の熱的に伝導性の挿入部の中にマルチウェル反応容器の底部表面を圧縮することと、
応従性の熱的に伝導性の挿入部を通して、加熱要素からマルチウェル反応容器に制御された熱流束を印加することによって、加熱要素によって加熱チャンバ内のマルチウェル反応容器を熱的に循環させることと
を行うようにコントローラを構成する、システム。
【0074】
実施例B.
応従性の熱的に伝導性の挿入部の中にマルチウェル反応容器の底部表面を圧縮することは、第1の圧縮プロファイルに従って、クレープ黒鉛シートの可逆的変形を生じさせ、
応従性の熱的に伝導性の挿入部の中に第2のマルチウェル反応容器の第2の底部表面を圧縮することは、第1の圧縮プロファイルと異なる第2の圧縮プロファイルに従って、クレープ黒鉛シートの可逆的変形を生じさせ、
応従性の熱的に伝導性の挿入部は、恒久的に変形せずに、第1の圧縮されたプロファイルから、かつ第2の圧縮されたプロファイルから、非圧縮状態に戻る、前述の実施例に記載のシステム。
【0075】
実施例C.
試薬またはサンプルを含有する、源容器と、
音響エジェクタであって、音響エジェクタは、集束音響放射を放出するように構成される変換器と、マルチウェル反応容器のウェルと音響エジェクタおよび源容器を整合するように構成されるアクチュエータとを備える、音響エジェクタと
をさらに備え、
実行可能命令は、少なくとも1つのプロセッサによって実行されると、
アクチュエータに、マルチウェル反応容器のウェルのうちの1つ以上と変換器および源容器を選択的に整合させることと、
音響エジェクタに、源容器内に含有されるサンプルに集束音響放射を印加することによって、源容器からマルチウェル反応容器のウェルに1つ以上の液滴を射出させることと
を行うようにコントローラをさらに構成する、前述の実施例のいずれか1項に記載のシステム。
【0076】
実施例D.
マルチウェル受容容器と、
音響エジェクタであって、音響エジェクタは、集束音響放射を放出するように構成される変換器と、マルチウェル受容容器のウェルと音響エジェクタおよびマルチウェル反応容器を整合するように構成されるアクチュエータとを備える、音響エジェクタと
をさらに備え、
実行可能命令は、少なくとも1つのプロセッサによって実行されると、
アクチュエータに、マルチウェル受容容器のウェルのうちの1つ以上と変換器およびマルチウェル反応容器を選択的に整合させることと、
音響エジェクタに、マルチウェル反応容器内に含有されるサンプルに集束音響放射を印加することによって、マルチウェル反応容器からマルチウェル受容容器のウェルに1つ以上の液滴を射出させることと
を行うようにコントローラをさらに構成する、前述の実施例のいずれか1項に記載のシステム。
【0077】
実施例E.
サンプル入口を備える、分析器と、
音響エジェクタであって、音響エジェクタは、集束音響放射を放出するように構成される変換器と、分析器のサンプル入口と音響エジェクタおよびマルチウェル反応容器を整合するように構成されるアクチュエータとを備える、音響エジェクタと
をさらに備え、
実行可能命令は、少なくとも1つのプロセッサによって実行されると、
アクチュエータに、分析器のサンプル入口と変換器およびマルチウェル反応容器を選択的に整合させることと、
音響エジェクタに、マルチウェル反応容器内に含有されるサンプルに集束音響放射を印加することによって、マルチウェル反応容器からサンプル入口に1つ以上の液滴を射出させることと
を行うようにコントローラをさらに構成する、前述の実施例のいずれか1項に記載のシステム。
【0078】
実施例F.方法であって、
熱サイクラの加熱要素上の応従性の熱的に伝導性の挿入部上にマルチウェル反応容器を設置することによって、熱サイクラの加熱チャンバの中にマルチウェル反応容器を挿入することであって、応従性の熱的に伝導性の挿入部は、弾性的に変形可能なクレープ黒鉛シートを備える、ことと、
加熱チャンバ内にマルチウェル反応容器を封入することと、
応従性の熱的に伝導性の挿入部の中にマルチウェル反応容器の底部表面を圧縮することにより、底部表面と応従性の熱的に伝導性の挿入部との間の熱接触面積を増加させることと、
応従性の熱的に伝導性の挿入部を通して、加熱要素によってマルチウェル反応容器に制御された熱流束を印加することによって、加熱チャンバ内のマルチウェル反応容器を熱的に循環させることと
を含む、方法。
【0079】
実施例G.
応従性の熱的に伝導性の挿入部は、250ミクロン~2,000ミクロンの範囲内の非圧縮厚さを有する、前述の実施例に記載の方法。
【0080】
実施例H.
応従性の熱的に伝導性の挿入部は、少なくとも200W/m-K、好ましくは、少なくとも700W/m-Kの面内熱伝導性を有する、前述の実施例のいずれか1項に記載の方法。
【0081】
実施例I.
応従性の熱的に伝導性の挿入部は、圧縮応力に伴って非線形に増加する貫通平面熱伝導性を有し、貫通平面熱伝導性は、100kPa圧縮応力において1-5W/m-K~700kPa圧縮応力において10-30W/m-Kに及ぶ、前述の実施例のいずれか1項に記載の方法。
【0082】
実施例J.
応従性の熱的に伝導性の挿入部は、700kPaの圧縮応力を受けると、元の厚さの60%未満に可逆的に圧縮する、前述の実施例のいずれか1項に記載の方法。
【0083】
実施例K.
マルチウェル反応容器は、少なくとも1つの平坦底部表面を有するウェルのアレイを備える、マイクロプレートを備え、少なくとも1つの平坦底部表面は、平坦底部表面を通してウェルのアレイに含有されるサンプルの音響検査を可能にするように構成され、方法はさらに、
音響エミッタから平坦底部表面を通して、照会トーンバーストを放出することと、
照会トーンバーストによって生じた音響エコーを検出することと、
検出された音響エコーからサンプルのパラメータを判定することと
を含む、前述の実施例のいずれか1項に記載の方法。
【0084】
実施例L.
加熱チャンバ内のマルチウェル反応容器を熱的に循環させることは、順次、少なくとも1℃/秒、好ましくは、少なくとも1.5℃/秒、好ましくは、少なくとも2℃/秒の加熱または冷却率において、PCR熱サイクルプログラムに従ってマルチウェル反応容器内に含有されるサンプルを加熱および冷却することを含む、前述の実施例のいずれか1項に記載の方法。
【0085】
実施例M.
源ウェルから流体液滴を音響的に射出するように位置付けられる、源ウェルおよび音響エジェクタとマルチウェル反応容器のうちの1つ以上のウェルを整合することと、
音響エジェクタから源ウェルに含有されるサンプルに集束音響放射を印加することによって、源ウェルからマルチウェル反応容器のウェルに1つ以上の液滴を射出することと
をさらに含む、前述の実施例のいずれか1項に記載の方法。
【0086】
実施例N.
マルチウェル反応容器から流体液滴を音響的に射出するように位置付けられる音響エジェクタと、かつマルチウェル受容容器と、マルチウェル反応容器のうちの1つ以上のウェルを整合することと、
音響エジェクタからマルチウェル反応容器のウェルに含有されるサンプルに、集束音響放射を印加することによって、マルチウェル反応容器のウェルからマルチウェル受容容器のウェルに、1つ以上の液滴を射出することと
をさらに含む、前述の実施例のいずれか1項に記載の方法。
【0087】
実施例O.
マルチウェル反応容器から流体液滴を音響的に射出するように位置付けられる音響エジェクタと、かつ分析デバイスのサンプル入口と、マルチウェル反応容器のウェルを整合することと、
音響エジェクタからウェルに含有されるサンプルに、集束音響放射を印加することによって、マルチウェル反応容器のウェルからサンプル入口に1つ以上の液滴を射出することと
をさらに含む、前述の実施例のいずれか1項に記載の方法。
【0088】
実施例P.
熱サイクラアセンブリであって、
加熱チャンバと、
加熱チャンバに含有される、加熱要素と、
マルチウェル反応容器が加熱チャンバに受容されるとき、加熱チャンバを封入し、かつマルチウェル反応容器上に押圧するように構成される、閉鎖機構と、
加熱要素と接触する加熱チャンバ内に位置付けられる、応従性の熱的に伝導性の挿入部であって、応従性の熱的に伝導性の挿入部は、弾性的に変形可能なクレープ黒鉛シートを備える、応従性の熱的に伝導性の挿入部と
を備える、熱サイクラアセンブリ。
【0089】
実施例Q.
応従性の熱的に伝導性の挿入部は、複数の層状に弾性的に変形可能なクレープ黒鉛シートを備える、前述の実施例に記載の熱サイクラアセンブリ。
【0090】
実施例R.
応従性の熱的に伝導性の挿入部は、加熱チャンバの中に取外可能に挿入可能である弾性的に変形可能なクレープ黒鉛シートと接続され、マルチウェル反応容器が加熱チャンバに挿入されるとき、加熱要素と、かつマルチウェル反応容器と、弾性的に変形可能なクレープ黒鉛シートを整合するように成形される、インターフェースフレームを備える、前述の実施例のいずれか1項に記載の熱サイクラアセンブリ。
【0091】
実施例S.
応従性の熱的に伝導性の挿入部は、250ミクロン~2,000ミクロンの範囲内の非圧縮厚さと、少なくとも200W/m-K、好ましくは、少なくとも700W/m-Kの面内熱伝導性とを有する、前述の実施例のいずれか1項に記載の熱サイクラアセンブリ。
【0092】
実施例T.
応従性の熱的に伝導性の挿入部は、圧縮応力に伴って非線形に増加する貫通平面熱伝導性を有し、貫通平面熱伝導性は、100kPa圧縮応力において1-5W/m-K~700kPa圧縮応力において10-30W/m-Kに及び、応従性の熱的に伝導性の挿入部は、700kPaの圧縮応力に応答して、元の厚さの60%未満に可逆的に圧縮性である、前述の実施例のいずれか1項に記載の熱サイクラアセンブリ。
【0093】
実施例U.
方法であって、
熱サイクラの加熱要素上の応従性の熱的に伝導性の挿入部上にマルチウェル反応容器を設置することによって、熱サイクラの加熱チャンバの中に第1のマルチウェル反応容器を挿入することであって、応従性の熱的に伝導性の挿入部は、弾性的に変形可能なクレープ黒鉛シートを備える、ことと、
第1のマルチウェル反応容器の第1の底部表面と加熱要素との間の圧力が、第1の圧縮プロファイルに従って、クレープ黒鉛シートの可逆的変形を生じさせるように、応従性の熱的に伝導性の挿入部の中に第1の底部表面を圧縮することと、
応従性の熱的に伝導性の挿入部上に第2のマルチウェル反応容器を設置することによって、熱サイクラの加熱チャンバの中に第2のマルチウェル反応容器を挿入することと、
第2のマルチウェル反応容器の第2の底部表面と加熱要素との間の圧力が、第1の圧縮プロファイルと異なる第2の圧縮プロファイルに従って、クレープ黒鉛シートの可逆的変形を生じさせるように、応従性の熱的に伝導性の挿入部の中に第2の底部表面を圧縮することであって、応従性の熱的に伝導性の挿入部は、恒久的に変形せずに、第1の圧縮されたプロファイルから、かつ第2の圧縮されたプロファイルから、非圧縮状態に戻る、ことと
を含む、方法。
【0094】
実施例V.
応従性の熱的に伝導性の挿入部を通して、加熱要素によってマルチウェル反応容器に制御された熱流束を印加することによって、加熱チャンバ内のマルチウェル反応容器を熱的に循環させることをさらに含む、前述の実施例に記載の方法。
【0095】
実施例W.
音響エミッタからマルチウェル反応容器のウェルに含有されるサンプルに、集束音響放射を印加するように位置付けられる音響エミッタと、第1または第2のマルチウェル反応容器のウェルを整合することと、
第1または第2のマルチウェル反応容器の平坦底部表面を通して、音響エミッタから照会トーンバーストを放出することと、
照会トーンバーストによって生じた音響エコーを検出することと、
検出された音響エコーからウェル内のサンプルのパラメータを判定することと
をさらに含む、前述の実施例のいずれか1項に記載の方法。
【0096】
実施例X.
少なくとも1℃/秒、好ましくは、少なくとも1.5℃/秒、好ましくは、少なくとも2℃/秒の第1または第2のマルチウェル反応容器内のサンプルの温度変化を生じさせるために十分である、応従性の熱的に伝導性の挿入部を通して第1または第2のマルチウェル反応容器に加熱要素からの熱流束を印加することをさらに含む、前述の実施例のいずれか1項に記載の方法。
【0097】
実施例Y.
音響エジェクタからマルチウェル反応容器のウェルに含有されるサンプルに、集束音響放射を印加するように位置付けられる音響エジェクタと、第1または第2のマルチウェル反応容器のウェルを整合することと、
第1または第2のマルチウェル反応容器の平坦底部表面を通して、音響エジェクタから射出トーンバーストを放出することによって、ウェルから液滴を射出することと
をさらに含む、前述の実施例のいずれか1項に記載の方法。
【国際調査報告】