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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-06
(54)【発明の名称】原子炉の受動的熱除去システム
(51)【国際特許分類】
   G21D 1/02 20060101AFI20230830BHJP
   G21D 3/04 20060101ALI20230830BHJP
   G21C 15/18 20060101ALI20230830BHJP
   G21D 1/00 20060101ALI20230830BHJP
【FI】
G21D1/02 L
G21D3/04 B
G21C15/18 Y
G21D1/00 Q
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023511815
(86)(22)【出願日】2021-03-04
(85)【翻訳文提出日】2023-02-15
(86)【国際出願番号】 US2021020961
(87)【国際公開番号】W WO2022039787
(87)【国際公開日】2022-02-24
(31)【優先権主張番号】63/066,785
(32)【優先日】2020-08-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/159,743
(32)【優先日】2021-01-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513313945
【氏名又は名称】テラパワー, エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ヘイツラー,パヴェル
(72)【発明者】
【氏名】マクナブ,ピーター
(57)【要約】
原子炉は、有益な目的のために炉心から熱エネルギーを伝達するための中間冷却材ループを有する。前記中間冷却材ループは、起動中および/または停止中に原子炉熱を放出するための空気熱交換器を備えたバイパス流路を含む。前記バイパス流路に沿った流体ダイオードは、前記バイパス流路を横切る流動を非対称的に制限し、最大出力運転状態の間、第1流動方向の流動を抑制し、起動中および/または停止時の低出力運転状態の間、第2方向の比較的抑制されない流動を可能にする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子炉容器と、
前記原子炉容器内の炉心と、
前記原子炉容器内の一次熱交換器と、
前記一次熱交換器を通して中間冷却材を循環させ、中間冷却材が流れるホットレグおよびコールドレグを有する、中間冷却材ループと、
前記中間冷却材ループと流体連通し、前記中間冷却材ループを通して中間冷却材を循環させるポンプと、
前記中間冷却材ループの前記ホットレグと前記コールドレグとの間のバイパス流路に沿って配置された空気熱交換器と、
前記バイパス流路に沿った流体流動を非対称に制限するために、バイパス流路に沿って配置された流体ダイオードと、を含む、ナトリウム冷却原子炉。
【請求項2】
前記流体ダイオードは、前記原子炉容器の外側に配置される、請求項1に記載のナトリウム冷却原子炉。
【請求項3】
前記流体ダイオードは、前記バイパス流路を横切って前記中間冷却材を循環させる前記ポンプに対する流動抵抗を提供する、請求項1に記載のナトリウム冷却原子炉。
【請求項4】
前記流体ダイオードは、前記ポンプが動作していないとき、前記バイパス流路を横切る比較的制限されていない流体流動を可能にする、請求項1に記載のナトリウム冷却原子炉。
【請求項5】
前記空気熱交換器は、低出力運転起動状態の間に原子炉出力熱を放出する、請求項1に記載のナトリウム冷却原子炉。
【請求項6】
前記空気熱交換器は、低出力運転停止状態の間に原子炉出力熱を放出する、請求項1に記載のナトリウム冷却原子炉。
【請求項7】
前記中間冷却材は、ナトリウムである、請求項1に記載のナトリウム冷却原子炉。
【請求項8】
前記中間冷却材は、塩である、請求項1に記載のナトリウム冷却原子炉。
【請求項9】
中間冷却材を前記バイパス流路に沿って流すバイパス流動ポンプをさらに備える、請求項1に記載のナトリウム冷却原子炉。
【請求項10】
前記流体ダイオードは、第1方向に流れる流体に、第2方向に流れる流体と比較して5倍を超える流動制限を提供する、請求項1に記載のナトリウム冷却原子炉。
【請求項11】
原子炉の炉心において熱を発生させるステップと、
一次熱交換器を通して原子炉内に一次冷却材を流すステップと、
中間冷却材ループおよび前記一次熱交換器を通して中間冷却材を流すステップと、
バイパス流路を通して前記中間冷却材を流すステップと、
低原子炉出力の期間中に、前記中間冷却材ループ内の前記バイパス流路に沿って配置された空気熱交換器から熱を放出するステップと、を含む、中間冷却材ループを有する原子炉の運転方法。
【請求項12】
前記原子炉が対象閾値出力に達するまで、前記バイパス流路に沿って配置された前記空気熱交換器から熱を放出し続けるステップをさらに含む、請求項11に記載の原子炉の運転方法。
【請求項13】
前記原子炉が前記対象閾値出力を超えると、前記中間冷却材の一部を前記バイパス流路からそらすステップをさらに含む、請求項12に記載の原子炉の運転方法。
【請求項14】
バイパス流路を通して前記中間冷却材を流すステップは、前記バイパス流路と流体連通する流体ダイオードを通して前記中間冷却材を流すステップをさらに含む、請求項11に記載の原子炉の運転方法。
【請求項15】
前記低原子炉出力の期間は、約5%未満の原子炉出力である、請求項11に記載の原子炉の運転方法。
【請求項16】
前記低原子炉出力の期間は、約20%未満の原子炉出力である、請求項11に記載の原子炉の運転方法。
【請求項17】
前記低原子炉出力の期間は、前記原子炉が停止しているときに生じる、請求項11に記載の原子炉の運転方法。
【請求項18】
前記熱を放出するステップは、原子炉停止サイクル中に前記原子炉から崩壊熱を放出するステップを含む、請求項17に記載の原子炉の運転方法。
【請求項19】
前記中間冷却材を流すステップは、前記中間冷却ループを通してナトリウムを流すステップを含む、請求項11に記載の原子炉の運転方法。
【請求項20】
前記中間冷却材を流すステップは、前記中間冷却ループを通して塩を流すステップを含む、請求項11に記載の原子炉の運転方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔関連出願の相互参照〕
本願は、2021年1月27日に出願された「PASSIVE HEAT REMOVAL SYSTEM FOR NUCLEAR REACTORS」という名称の米国特許出願第17/159,734号の利益を主張し、2020年8月17日に出願された「CARTRIDGE CORE BARREL FOR NUCLEAR REACTOR」という名称の米国仮特許出願第63/066,785号の利益を主張する。その内容全体は、参照によって本明細書に援用される。
【0002】
〔背景〕
ほとんどの原子炉は、炉心を有し、当該炉心内では、燃料要素および制御要素が様々な相互に関連する配置で支持され、これにより臨界反応度をサポートして原子炉の出力を制御する。冷却材は、典型的には燃料要素と制御要素との間の通路を通って押し出され、これにより核分裂燃料要素によって生成された熱は、有益な目的に使用される熱交換器に伝達される。
【0003】
反応性を低下させるために制御要素を炉心に挿入するなどして原子炉が停止するとき、核分裂生成物は、放射性崩壊を起こすため熱を発生し続ける。場合によっては、崩壊熱出力レベルは、初めは、運転停止前の炉心出力の約6~7%である。これは、原子炉運転停止時に対処しなければならないかなりの量の熱であり得る。
【0004】
残留熱除去システムは、停止した原子炉からの崩壊熱に対処するように設計された標準的な安全システムである。残留熱除去システムは、循環ポンプを駆動する緊急発電機、受動的熱除去システム、および他のタイプの熱除去システムを含み得る。適切に機能する崩壊熱除去システムがなければ、残留熱は、原子炉システム内で壊滅的な故障を引き起こす可能性がある。
【0005】
一部の原子炉は、残留熱に対処するために、直接原子炉補助冷却システム(DRACS)または原子炉容器補助冷却システム(RVACS)を利用する。これらのシステムは主に、原子炉停止後の崩壊熱の放出について信頼できる安全システムである。
【0006】
受動システムにおいて残留崩壊熱を除去するのを助けるだけでなく、起動手順中に原子炉から熱を除去するように機能することが、当該技術分野において受動熱除去システムを使用する上での改善であろう。そのようなシステムが安全システムとして分類されないならば、すなわち、安全等級基準に合わせて設計および構築されるべき要件を有するというよりむしろ、当該安全システムに加えて商業的な防御の第一線であったならば、さらなる利点となるであろう。
【0007】
〔概要〕
いくつかの実施形態によれば、受動的熱除去システムは、中間流体ループ内に位置する熱交換器の、ホットレグとコールドレグとの間の強制循環および自然循環の両方を可能にすることによって、原子炉の起動中および停止中の両方で、崩壊熱除去を可能にするように機能する。より高密度の低温流体を降下させ、より低密度の加熱流体を上昇させる重力に依存することによって、流体の自然循環は促進される。これは、熱交換器を通る中間冷却材ループを通じた自然循環を引き起こす。場合によっては、選択的な流量調整器が第1流体方向に高い圧力降下を引き起こし、第2流体方向に低い圧力降下を引き起こす。
【0008】
いくつかの実施形態によれば、ナトリウム冷却原子炉は、原子炉容器と、前記原子炉容器内の炉心と、前記原子炉容器内の一次熱交換器と、前記一次熱交換器を通して中間冷却材を循環させ、中間冷却材が流れるホットレグおよびコールドレグを有する、中間冷却材ループと、前記中間冷却材ループと流体連通し、前記中間冷却材ループを通して中間冷却材を循環させるポンプと、前記中間冷却材ループの前記ホットレグと前記コールドレグとの間のバイパス流路に沿って配置された空気熱交換器と、前記バイパス流路に沿った流体流動を非対称に制限するために、バイパス流路に沿って配置された流体ダイオードと、を含む。
【0009】
場合によっては、前記流体ダイオードは、前記原子炉容器の外側に配置される。前記流体ダイオードは、前記バイパス流路を横切って前記中間冷却材を循環させる前記ポンプに対する流動抵抗を提供してもよい。すなわち、ポンプが動作するとき、流体ダイオードは、中間冷却材がバイパス流路に沿ってコールドレグからホットレグに流れることに対する抵抗を提供する。
【0010】
前記流体ダイオードは、前記ポンプが動作していないとき、前記バイパス流路を横切る比較的制限されていない流体流動を可能にしてもよい。言い換えれば、ポンプが動作していないとき、自然循環により、中間流体は、流体ダイオードを通ってホットレグからコールドレグに、非常に少ない流動抵抗で流れる。
【0011】
いくつかの例では、前記空気熱交換器は、低出力運転起動状態の間に原子炉出力熱を放出する。例えば、前記空気熱交換器は、低出力運転停止状態の間(例えば、原子炉出力が約20%の出力、15%の出力、10%の出力、またはそれ以下の出力を下回るとき)に原子炉出力熱を放出してもよい。
【0012】
いくつかの例では、前記中間冷却材は、液状ナトリウムである。他の例では、前記中間冷却材は溶融塩である。もちろん、他の中間冷却材が意図され、開示されたシステムおよび構成と共に使用されてもよい。
【0013】
いくつかの実施形態では、バイパス流動ポンプが中間冷却材を前記バイパス流路に沿って流すように構成されてもよい。場合によっては、バイパス流動ポンプは省略され、自然循環が中間冷却材をバイパス流路に沿って流す。
【0014】
いくつかの実施形態によれば、中間冷却材ループを有する原子炉の運転方法は、原子炉の炉心において熱を発生させるステップと、一次熱交換器を通して原子炉内に一次冷却材を流すステップと、中間冷却材ループおよび前記一次熱交換器を通して中間冷却材を流すステップと、バイパス流路を通して前記中間冷却材を流すステップと、低原子炉出力の期間中に、前記中間冷却材ループ内の前記バイパス流路に沿って配置された空気熱交換器から熱を放出するステップと、を含む。
【0015】
いくつかの例では、該方法は、前記原子炉が対象閾値出力に達するまで、前記バイパス流路に沿って配置された前記空気熱交換器から熱を放出し続けるステップを含む。言い換えれば、前記原子炉が前記対象閾値出力を超えると、前記中間冷却材の一部を前記バイパス流路からそらしてもよい。
【0016】
いくつかの実施形態では、バイパス流路を通して前記中間冷却材を流すステップは、前記バイパス流路と流体連通する流体ダイオードを通して前記中間冷却材を流すステップをさらに含む。
【0017】
いくつかの例では、低原子炉出力の期間は、約5%未満の原子炉出力、約10%未満の原子炉出力、または約20%未満の原子炉出力である。いくつかの例では、中間冷却材は、原子炉の起動中に空気熱交換器を通して熱を放出させられる。いくつかの例では、中間冷却材は、原子炉の停止中に空気熱交換器を通して熱を放出させられる。
【0018】
いくつかの実施形態では、前記中間冷却材を流すステップは、前記中間冷却ループを通してナトリウムまたは塩を流すステップを含む。他の適切な冷却材が、原子炉構成および中間ループ構成に応じて、代替物として利用されてもよい。
【0019】
〔図面の簡単な説明〕
図1は、いくつかの実施形態に係る、定常運転状態における原子炉中間冷却材ループの模式図である。
【0020】
図2は、いくつかの実施形態に係る、自然循環運転状態における原子炉中間冷却材ループの模式図を示す。
【0021】
図3は、いくつかの実施形態に係る、定常運転状態における流体ダイオードを組み込んだ原子炉中間冷却材ループの模式図を示す。
【0022】
図4は、いくつかの実施形態に係る、自然循環運転状態における流体ダイオードを組み込んだ原子炉中間冷却材ループの模式図を示す。
【0023】
〔詳細な説明〕
本開示は、概して、停止中および/または起動中の原子炉からの崩壊熱除去のための受動装置および構成に関し、自然循環の原理を通じて動作し得る受動システムを含む。
【0024】
図1は、定常運転状態における原子炉中間冷却材ループを示している。任意の適切な設計である原子炉100は、典型的には原子炉容器104内に炉心を含む。炉心は、典型的には核分裂過程を通して熱を発生させる燃料を含む。任意の適切な冷却材であり得る一次冷却材は、核分裂燃料から熱を抽出するために、炉心102を通って押し出される。一次冷却材は、炉心を通過した後、一次熱交換器106に送られ、そこで、中間冷却材ループ108を流れる中間冷却材に熱エネルギーを伝達する。
【0025】
図示の実施形態では、原子炉容器内の一次冷却材は、任意の適切な冷却材であってもよく、いくつかの例では、ナトリウムなどの液状金属である。中間冷却材ループ108内の中間冷却材は同様に、任意の適切な冷却材であってもよく、場合によっては、ナトリウムである。いくつかの例では、中間冷却材ループ108内の中間冷却材は塩である。
【0026】
中間冷却材ループ108は、多くの場合、ホットレグ110、コールドレグ112、およびポンプ114を含む閉流体ループである。通常の使用において、ポンプ114は、中間冷却材を加圧し、ポンプ114により、コールドログ108内の冷却材は、一次熱交換器106に流入し、原子炉100内の一次冷却材から熱エネルギーを受け取る。中間冷却材は、ホットレグ110を通って一次熱交換器106を出る。中間冷却材は、熱エネルギーが有益な目的のために使用される別のシステムに輸送される。いくつかの実施形態では、中間冷却材ループ108によって伝達される熱エネルギーは、熱エネルギーを貯蔵するために使用され、水蒸気を生成するために使用され、または他の目的のために提供される。
【0027】
いくつかの実施形態では、空気熱交換器116は、ホットレグ110とコールドレグ112との間に、バイパス流路118に沿って設けられる。いくつかの例では、空気熱交換器116は上昇し、重力によりコールドレグ112からホットレグ110への直接的なバイパス流は抑制される。バイパス流は、ホットレグ110内の中間冷却材の温度を低下させる傾向があり、したがって、バイパス流路118の下流における、有益な目的のために利用可能な熱エネルギーを低下させる。
【0028】
原子炉100の通常運転中、ポンプ114は、中間冷却材ループ108内の流体を加圧して、中間冷却材を一次熱交換器106に流す。中間冷却材ループが加圧されるので、中間冷却材は、一次熱交換器106を通る流路と平行であるバイパス流体経路118に沿って流れる可能性がある。場合によっては、バイパス流路がコールドレグとホットレグとの混合をもたらし、それゆえ、ホットレグ内の中間冷却材の熱エネルギーを低減するので、これは望ましくない状況である。空気熱交換器116を上昇させることにより、重力がバイパス流路118に沿って流動抵抗を与えることに起因して、バイパス流の一部が軽減され得る。
【0029】
図2は、原子炉停止構成における原子炉中間冷却材ループ108を示す。図示されるように、ポンプ114は、電力を欠いており、したがって、中間冷却材ループ108を加圧せず中間冷却材を循環させない。中間冷却材は、自然循環を通じて(例えば矢印202によって示される方向に)流れ続け得る。原子炉停止時には、炉心からの崩壊熱に対処する必要があり、典型的には残留熱除去システムによって対処される。残留熱除去システムは、炉心から残留熱を放出するように構成された任意の数の適切な安全システムであり得る。図示されるように、ポンプ114が通電されず、ポンピング力を提供しない場合、中間冷却材ロップ108のホットレグ110およびコールドレグ112内の流体は停滞し、したがって、意図されるように、炉心から熱エネルギーを運搬しないことがある。空気熱交換器116は、自然循環流動を可能にし続け得る。それは、中間冷却材の流体経路を提供する。それは、ホットレグ110内の流体が空気熱交換器116を通ってコールドレグ112に流れ、ポンピング力がない場合でも、炉心102からの熱除去を提供し続け得るために循環することを可能にする。もちろん、(例えばバイパス流路118に沿って)ポンプを設けて、一次熱交換器106から空気熱交換器116への中間冷却流体の強制循環を提供して、崩壊熱を周囲空気に放出させてもよい。図示の実施形態は概略的に表されており、多くの場合、空気熱交換器116を上昇させてもよく、それゆえ、より高密度の低温流体を降下させ、より低密度の加熱流体を上昇させる重力に依存することによって自然循環を提供する。これは、空気熱交換器116を通る中間冷却材ループを通じた自然循環を引き起こす。
【0030】
多くの場合、バイパス流路118は、電力がない場合であっても自動的にアクセスされ、空気熱交換器116を通って中間冷却材を流すための流体経路のいかなる変更も必要としない。例えば、ホットレグ110およびコールドレグ112は、バイパス流路118が流体流動に対する最小抵抗の経路となるように十分な流動摩擦を提供し得る。この場合、中間冷却材は、一次熱交換器106から流れ、それゆえ炉心102から熱を取り出し、ホットレグ110に沿って流れ、空気熱交換器116に向かって流れ、コールドレグ112に向かって流れ、一次熱交換器106に戻る。したがって、中間冷却材は、炉心102から熱エネルギーを受け取り、それを空気熱交換器116において周囲空気に放出する。
【0031】
いくつかの実施形態では、崩壊熱の放出をさらに促進するために、バイパス流路118に沿ってポンプが設けられてもよい。中間流体のコールドレグ112からホットレグ110へのバイパス流動に対する抵抗を提供するために、空気熱交換器116は上昇させられ得るが、いくつかの実施形態では、バイパス流動の可能性をさらに低減するために、バイパス流動に対する追加の抵抗を導入してもよい。
【0032】
図3は、選択的な流動抵抗を提供するためにバイパス流路118に組み込まれた流体ダイオード302を有する原子炉中間冷却材ループ300を示す。原子炉100の通常の最大出力運転中において、ポンプ114は、中間冷却材ループ108を通して中間流体を循環させる。流体ダイオード302は、バイパス流路118内(例えば、コールドレグ112と空気熱交換器116との間)に設けられてもよい。流体ダイオード302は、中間冷却材がコールドレグ112から空気熱交換器116に入るのを阻止するように、増加した流動抵抗を提供してもよい。
【0033】
流体ダイオード302は、増加した流動抵抗を提供し、それゆえ、第1方向の流体流動を制限しつつ、第2方向の流体流動に対してより低い抵抗を提供する装置である。このような構成には、逆止弁が使用され得る。逆止弁は典型的には、開位置と閉位置との間で移動可能な可動構成要素(例えば、封止部材)を有する。ここで、封止部材は、第1方向の流体流動に応答して閉位置に付勢され、第2方向の流体流動に応答して開位置に付勢される。しかしながら、逆止弁は、複雑で、信頼性がなく、場合によっては、開構成または閉構成のいずれかで絡まったり、固着したりする可能性がある。それゆえ、流体ダイオード302は、多くの同じ利点を複雑性または故障の可能性なしに提供できる。
【0034】
いくつかの実施形態によれば、流体ダイオードは、可動部品を有しておらず、むしろ、内部流体経路の形状ならびに/または入口および出口のサイズに起因する流体摩擦差を有する。その結果、第1方向の流動に対する高い抵抗と、第2方向の流動に対する低い抵抗とを提供する可動部品を持たない弁が得られる。いくつかの実施形態によれば、流体ダイオードによって生じる第1方向の圧力降下は、流体ダイオードによって生じる第2方向の圧力降下の約1.5倍、2倍、5倍、10倍、またはそれ以上である。いくつかの実施形態では、流体ダイオードは、バイパス流路118を横切るコールドレグ112からホットレグ110への流動に抵抗する。流体ダイオード302は、反対方向の流体流動よりも著しく低い抵抗で、空気熱交換器116を通ってホットレグ110からコールドレグ112への流体流動を可能にし得る。
【0035】
図4は、選択的な流動抵抗を提供するために組み込まれた流体ダイオード302を有する原子炉中間冷却材ループ300を示す。図示するように、中間ポンプ114が中間冷却材ループ300を加圧するようにポンピングしていないとき、中間冷却材流体は、自然循環によって、矢印202によって示される方向に流れ得る。この構成では、ホットレグ110からの流体は、空気熱交換器116を通って、流体ダイオード302を通って、コールドレグ112に自然に流れる。
【0036】
発電サイクルまたは蓄熱などの目的地に熱エネルギーを送るのではなく、原子炉で発生した熱を放出することが望ましい状況がある。例えば、原子炉の起動中、空気熱交換器116は、原子炉が閾値運転出力に達するまでに生成された熱エネルギーを放出するために利用され得る。例えば、原子炉の起動中、中間冷却材は、原子炉の出力が上昇するにつれて、空気熱交換器116を通って流れてもよい。場合によっては、空気熱交換器は、低出力運転状態の間(例えば、原子炉が3%の出力、4%の出力、5%の出力、7%の出力、8%の出力、10%の出力、またはそれ以上に達するまで)に原子炉で発生した熱を放出するために利用される。原子炉の出力が起動後に徐々に上昇するにつれて、熱は一次熱輸送構造体に徐々に伝達され得る。原子炉が閾値出力に達すると、空気熱交換器116は、実質的にアイドル状態であり得る。
【0037】
同様に、原子炉停止中に、空気熱交換器116を使用して熱エネルギーを放出し、原子炉が低出力運転状態中において停止しているときに原子炉を冷却し得る。例えば、原子炉が約20%の出力まで減少すると、中間冷却材ループは、空気熱交換器116を通って中間冷却材を流し始め、過剰な熱を放出し得る。原子炉が約20%未満の出力にて減少し続けると、熱伝達デューティは相応に空気熱交換器116に引き渡され得る。その結果、運転停止中に原子炉が約5%の出力に達すると、空気熱交換器116は崩壊熱の100%を処理している。空気熱交換器116は、可動部品がなく、そして、システム、バルブ、またはポンプを作動させるために必要な介入がなく、受動モードにて停止中の原子炉からの崩壊熱除去を安全に取り扱うことができる。
【0038】
いくつかの実施形態では、空気熱交換器116が原子炉出力に応答して熱エネルギーを受け取る。例えば、起動時に、空気熱交換器116は、初めは、原子炉が閾値出力(例えば、約5%の出力)に達するまで、原子炉によって生成される熱エネルギーの100%を受け取る。この時点で、空気熱交換器116は、中間冷却材ポンプ114の作動などによって、熱エネルギーを通常の熱管理システムに徐々に渡し始める。その後、原子炉が別の閾値出力に達し、熱エネルギーの全体が熱管理システムに渡される。多くの場合、流体ダイオード302は、第1流動方向と第2流動方向との間で非対称に流体の流動を制限する。したがって、流体ダイオード302は、中間冷却材ループが加圧され、原子炉が最大出力で運転しているとき、第1方向の流動を抑制し、起動および/または停止などの低原子炉出力シナリオ中においては、第2方向の流動を可能にする。場合によっては、第2方向の流体流動は、第1方向の流体流動と比較して実質的に制限されない。
【0039】
いくつかの例では、中間冷却材はナトリウムであり、一次熱交換器はナトリウム/ナトリウム熱交換器である。いくつかの例では、中間冷却材は塩であり、一次熱交換器はナトリウム/塩熱交換器である。もちろん、これらの構成は、一次冷却材としてナトリウムを利用する原子炉に依存し、他の一次冷却材が、開示されたシステムおよび構成に等しく適用可能である。
【0040】
本開示は、例示的な実施形態を提示するものである。それゆえ、本開示は、いかなる点においても、本開示の実施形態の範囲および添付した特許請求の範囲を限定することを意図するものではない。特定された機能およびそれらの関係の実装を示す機能構成ブロックの助けを借りつつ、実施形態を上述してきた。本明細書において、これらの機能的構成要素の境界は、説明の便宜上、任意に定められている。特定された機能およびそれらの関係が適切に実施される程度に、代替的な境界が定められてもよい。
【0041】
本開示の実施形態の一般的性質は、本開示の実施形態の一般的思想から逸脱することなく、当業者の知識を適用することで、様々な応用のために特定の実施形態を他者が過度の実験なしに容易に修正および/または適合し得る程度に十分に、かかる特定の実施形態の前述した説明によって明らかとなるだろう。それゆえ、かかる適合および修正は、本明細書に提示された教示および導きに基づいて、開示された実施形態の均等物の意味および範囲の中にあることが意図されている。本明細書における語法または用語は、本明細書に提示された教示および導きに照らして、当該本明細書の用語または語法が当業者によって解釈されるように説明することを目的とするものであって、限定を目的とするものではない。
【0042】
本開示の実施形態の広さおよび範囲は、上述した例示的実施形態のいずれの実施形態によっても限定されるべきではなく、以下の特許請求の範囲およびその均等物に従ってのみ画定されるべきである。
【0043】
本明細書全体にわたって、所与のパラメータ、性質、または状態を言及する用語「実質的に」は、上記所与のパラメータ、性質、または状態が小さい変動(例えば許容交差)を満たすことを当業者が理解するであろう程度を意味し、含有するであろう。例として、実質的に満たす特定のパラメータ、性質、または状態に依存して、上記パラメータ、性質、または状態は、少なくとも約90%満たし、少なくとも約95%満たし、または少なくとも約99%満たし得る。
【0044】
別段の定めのない限り、または、使用された文脈内で別様に理解されない限り、とりわけ「し得る」、「し得るだろう」、「してもよいだろう」または「してもよい」等の、条件に関する語は概して、特定の実装形態が特定の特徴、要素および/または動作を含み得る一方で、他の実装形態が特定の特徴、要素および/または動作を含まないことを伝えることを意図したものである。このように、かかる条件に関する語は概して、特徴、要素および/もしくは動作が何らかの形で、1もしくは複数の実装形態に求められることを意図するものではなく、または、これらの特徴、要素および/もしくは動作が、任意の特定の実装形態に含まれるものなのか、あるいは、これらの特徴、要素および/もしくは動作が、任意の特定の実装形態において実行されるべきものなのかを判定するための論理が、ユーザ入力もしくはプロンプトの有無とは無関係に、1もしくは複数の実装形態に必ず含まれることを意図するものではない。
【0045】
明細書および図面には、原子炉のモジュールを製造設備内で製造し、モジュールが組み立てられる製造現場に輸送し、それによって現場での製造の煩雑さおよび費用を大幅に低減することができる、システム、装置、デバイスおよび技術の例が開示されている。さらに、原子炉のシステムは、簡略化され、現場製造の代わりに工場製造を行うことをさらに促進する。
【0046】
当業者は、本明細書に開示される任意のプロセスまたは方法が多くの方法で修正され得ることを認識するであろう。本明細書に記載および/または図示された工程の工程パラメータおよび配列は単なる例として与えられており、所望に応じて変更することができる。例えば、本明細書で図示および/または説明される工程は特定の順序で示され、または説明され得るが、これらの工程は必ずしも図示または説明される順序で実行される必要はない。
【0047】
本明細書で説明および/または図示された様々な例示的な方法は、本明細書で説明または図示されたステップのうちの1つ以上のものを省略することもでき、または開示されたステップに加えて追加のステップを備えることもできる。さらに、本明細書で開示される任意の方法の工程は、本明細書で開示される任意の他の方法の任意の1つ以上の工程と組み合わせることができる。
【0048】
勿論、本開示の様々な特徴を説明する目的のために、要素および/または方法の考えられる全ての組合せについて述べることは不可能である。しかしながら、当業者には、開示された特徴のさらなる多数の組合せおよび置換が可能であることが認識される。したがって、本開示の範囲または趣旨から逸脱することなく、本開示に対して様々な修正が行われ得る。さらに、明細書および添付した図面について考察することで、また、本明細書に提示された、開示された実施形態を実施することで、本開示のその他の実施形態が明らかとなり得る。本明細書および添付した図面において提示された実施例は、あらゆる点において、限定的なものではなく、例示的なものであるとみなされるべきである。本明細書には特定の用語が用いられているが、それらの用語は一般的かつ説明的な意味においてのみ使用されており、限定を目的として使用されたものではない。
【0049】
特に断らない限り、明細書で使用される用語「接続される」および「結合される」(およびそれらの派生語)は直接的および間接的(すなわち、他の要素または構成要素を介して)接続の両方を可能にするものとして解釈されるべきである。さらに、明細書で使用される用語「a」または「an」は「のうちの少なくとも1つ」を意味するものとして解釈されるべきである。最後に、使用を容易にするために、明細書で使用される用語「含む」および「有する」(およびそれらの派生語)は、単語「備える」と交換可能であり、同じ意味を有するものとする。
【0050】
以上から、および添付の図面から、本明細書には特定の実装形態が例示の目的で記載されているが、添付した特許請求の範囲の趣旨および範囲ならびに特許請求の範囲において列挙された要件から逸脱せずに、様々な修正が行われ得ることが理解されるだろう。加えて、特定の態様が特定の特許請求の形態において以下に提示されているが、本発明者らは、利用可能な任意の特許請求の形態において、様々な態様を想定している。例えば、一部の態様のみが特定の構成において具現化されるものとして目下、説明がなされ得る一方で、その他の態様が同様に、そのようにして具現化され得る。本開示の利益を得る当業者には明らかであろうような様々な修正および変更が行われ得る。全てのかかる修正および変更を包含することが意図されている。したがって、限定的な意味ではなく、むしろ例示的な意味において、上記の説明が考察されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0051】
図1】いくつかの実施形態に係る、定常運転状態における原子炉中間冷却材ループの模式図である。
図2】いくつかの実施形態に係る、自然循環運転状態における原子炉中間冷却材ループの模式図を示す。
図3】いくつかの実施形態に係る、定常運転状態における流体ダイオードを組み込んだ原子炉中間冷却材ループの模式図を示す。
図4】いくつかの実施形態に係る、自然循環運転状態における流体ダイオードを組み込んだ原子炉中間冷却材ループの模式図を示す。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】