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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-06
(54)【発明の名称】原子炉用の熱交換器構成
(51)【国際特許分類】
   G21D 1/00 20060101AFI20230830BHJP
   G21C 1/02 20060101ALI20230830BHJP
   F28D 9/02 20060101ALI20230830BHJP
   F28F 11/00 20060101ALI20230830BHJP
【FI】
G21D1/00 Q
G21D1/00 S
G21C1/02 230
F28D9/02
F28F11/00 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023511816
(86)(22)【出願日】2021-04-09
(85)【翻訳文提出日】2023-04-14
(86)【国際出願番号】 US2021026733
(87)【国際公開番号】W WO2022039795
(87)【国際公開日】2022-02-24
(31)【優先権主張番号】63/066,788
(32)【優先日】2020-08-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513313945
【氏名又は名称】テラパワー, エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】フリーマン,チャールズ グレゴリー
(72)【発明者】
【氏名】ヘイツラー,パヴェル
(72)【発明者】
【氏名】カネコ,カレン
(72)【発明者】
【氏名】ルーコフ,デビッド エム.
(72)【発明者】
【氏名】マーティン,クリストファー エー.
(72)【発明者】
【氏名】ピアース,ダニエル エル.
(72)【発明者】
【氏名】リオルダン,トーマス イー.
(72)【発明者】
【氏名】ワーナー,マーク アール.
【テーマコード(参考)】
3L103
【Fターム(参考)】
3L103AA42
3L103BB08
3L103CC40
(57)【要約】
原子炉は、一次原子炉冷却材から二次冷却材に熱エネルギーを伝達する熱交換器を含む。前記熱交換器は、小型プレート式熱交換器である。2以上の熱交換器が、前記原子炉容器の周りにおいて、離隔して配置されてもよい。複数の熱交換器は、前記原子炉容器の周りにおいて、垂直方向に、半径方向に、および/または周方向に離隔して配置されてもよい。第1熱交換器は、第2熱交換器と流体連通してもよい。2以上の熱交換器が、熱負荷を共有してもよく、したがって熱応力を共有してもよい。前記熱交換器は、第3流体流路および第3流体を有してもよい。前記第3流体は、核分裂生成物を除去するために使用されてもよく、漏れ検出のために使用されてもよく、放射化生成物の移動が阻害されるように酸化層を生成してもよく、および/または、追加の熱伝達を提供するために使用されてもよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子炉用のプレート式熱交換器であって、
複数のプレートと、
第1流体入口と、
第1流体出口と、
前記第1流体入口と前記第1流体出口との間を連通する第1流体通路であって、複数の案内チャネルとして複数の前記プレートに形成された第1流体通路と、
第2流体入口と、
第2流体出口と、
前記第2流体入口と前記第2流体出口との間を連通し、複数の第2案内チャネルとして複数の前記プレートに形成された第2流体通路であって、前記第1流体通路から流体的に分離された第2流体通路と、
を備える、プレート式熱交換器。
【請求項2】
第3流体入口と、
第3流体出口と、
前記第3流体入口と前記第3流体出口との間を連通する第3流体通路であって、前記第1流体通路および前記第2流体通路から流体的に分離された第3流体通路と、
をさらに備え、
前記第3流体通路は、熱エネルギー伝達以外の目的のために構成されている、請求項1に記載のプレート式熱交換器。
【請求項3】
第3流体通路は、第1流体および第2流体とは異なる第3流体を受け入れるように構成されている、請求項2に記載のプレート式熱交換器。
【請求項4】
前記第3流体は、前記第1流体の漏れ検出、前記第2流体の漏れ検出、または、前記第1流体の漏れ検出と前記第2流体の漏れ検出との両方のために用いられる、請求項3に記載のプレート式熱交換器。
【請求項5】
前記第3流体は、前記第3流体通路内に酸化層を生成するために用いられる、請求項3に記載のプレート式熱交換器。
【請求項6】
前記第3流体は、核分裂生成物または放射化生成物を捕捉するために用いられる、請求項3に記載のプレート式熱交換器。
【請求項7】
前記第3流体は、トリチウムを捕捉する、請求項6に記載のプレート式熱交換器。
【請求項8】
前記第3流体は、水素、ヘリウム、またはCOである、請求項3に記載のプレート式熱交換器。
【請求項9】
前記第1流体入口と前記第1流体出口とは、前記プレート式熱交換器の同じ側に形成されている、請求項1に記載のプレート式熱交換器。
【請求項10】
前記第1流体入口および前記第1流体出口に結合された同軸導管をさらに備え、
前記同軸導管は、内側流体導管および外側流体導管を定めており、
前記内側流体導管は、前記第1流体入口および前記第1流体出口のうちの一方に流体的に結合されており、
前記外側流体導管は、前記第1流体入口および前記第1流体出口のうちの他方に流体的に結合されている、請求項9に記載のプレート式熱交換器。
【請求項11】
前記第1流体通路内における第1流体と、
前記第2流体通路内における第2流体と、
をさらに備える、請求項1に記載のプレート式熱交換器。
【請求項12】
前記第1流体は、ナトリウムである、請求項11に記載のプレート式熱交換器。
【請求項13】
前記第2流体は、溶融塩である、請求項11に記載のプレート式熱交換器。
【請求項14】
前記プレート式熱交換器は、第1プレート式熱交換器であり、
前記第1プレート式熱交換器に流体的に結合された第2プレート式熱交換器をさらに備える、請求項1に記載のプレート式熱交換器。
【請求項15】
前記第1プレート式熱交換器の前記第1流体出口は、前記第2プレート式熱交換器の第1流体入口と流体連通している、請求項14に記載のプレート式熱交換器。
【請求項16】
前記プレート式熱交換器は、第1プレート式熱交換器であり、
協働して原子炉の熱負荷を扱うように構成された複数の熱交換器をさらに備える、請求項1に記載のプレート式熱交換器。
【請求項17】
複数の前記熱交換器のうちの少なくとも一部の熱交換器は、流体ヘッダによって流体連通している、請求項16に記載のプレート式熱交換器。
【請求項18】
複数の前記熱交換器のうちの少なくとも一部の熱交換器は、直列に配管されている、請求項16に記載のプレート式熱交換器。
【請求項19】
複数の前記熱交換器のうちの少なくとも一部の熱交換器は、並列に配管されている、請求項16に記載のプレート式熱交換器。
【請求項20】
原子炉の熱交換器内の原子炉冷却材から核分裂生成物または放射化生成物を除去するための方法であって、
原子炉容器内にプレート式熱交換器を配置する工程と、
一次冷却材に、前記プレート式熱交換器の第1流体通路を通過させる工程と、
二次冷却材に、前記プレート式熱交換器の第2流体通路を通過させる工程と、
前記核分裂生成物または前記放射化生成物を引き寄せるように選択された第3流体に、前記プレート式熱交換器の第3流体通路を通過させる工程と、
前記核分裂生成物または前記放射化生成物を、前記プレート式熱交換器から前記第3流体により除去する工程と、
を含む、方法。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔関連出願の相互参照〕
本出願は、2020年8月17日に出願された「HEAT EXCHANGER CONFIGURATION FOR NUCLEAR REACTOR」という名称の米国仮特許出願第63/066,788号の米国特許法第119条(e)に基づく利益を主張するものである。その内容全体が、参照によって本明細書に援用される。
【0002】
〔背景〕
熱交換器は、運転中の原子炉の炉心から二次流体への熱エネルギー伝達を可能にする装置である。熱エネルギーは二次流体に受け取られ、有用な目的に利用される。一部の場合において、熱エネルギーは、蒸気の発生に利用される。発生した蒸気は、例えば蒸気タービンを通じて、発電に利用される。
【0003】
多くの場合において、熱交換器はかなり大きく、原子炉の原子炉容器内のかなりの空間を占める。多くの場合において、熱交換器は、原子炉を設計する際の主要な設計因子であり、大部分において、原子炉容器の全高を決定し、結果として、格納構造物および他の構成要素の全体的なサイズに影響を及ぼす。
【0004】
さらに、大きな熱交換器は、必然的に、その流路の一部を炉心近傍に有し得る。炉心近傍において、当該熱交換器は、相対的に高い中性子放射線を受ける。熱交換器とその流路との遮蔽には、コスト、複雑さ、および原子炉容器内に設置する必要のある構成要素の数の増大が伴う。
【0005】
熱交換器内を循環する流体に応じて、この問題は悪化する。例えば、ナトリウム冷却高速炉では、一次冷却材は、ナトリウムであり、一次冷却材から熱エネルギーを受け取る二次流体もまた、ナトリウムであり得る。二次冷却材としてナトリウムを選択することは、その熱伝導率のため、熱交換器に関する設計上の諸決定のうちの多くの決定の決定要因となる。熱伝導率がより小さい二次冷却材を用いる原子炉では、熱交換器を大型化することが必要となり得る。例えば、一次冷却材としてナトリウムを使用し、二次冷却材として溶融塩を使用する原子炉では、熱交換器は必然的に、ナトリウム/ナトリウム熱交換器よりも実質的に大きなものとなる。これは主に、冷却材溶融塩の伝導率のオーダーが、ナトリウムの伝導率のオーダーよりも100倍低いためである。結果として、一部の場合において、ナトリウム/塩熱交換器の高さは、同様の熱エネルギー伝達を提供するナトリウム/ナトリウム熱交換器の高さの2倍を超える。
【0006】
過去を振り返ると、結果的な熱交換器の必要とされるサイズによって、一次熱交換器に利用可能な冷却材が制限される場合がある。さらに、典型的な熱交換器のサイズは、少なくとも部分的に、原子炉容器の高さの決定要因となる。一次冷却材および二次冷却材の選択に関してより多くのフレキシビリティを有し、さらに原子炉容器内における1または複数の熱交換器の配置に関して複数の選択肢を有しつつ、その過程で原子炉容器の全体的なサイズを低減することができれば、当技術分野において顕著な利点となるだろう。これらの利点およびその他の利点は、以下の説明および添付の図面を参照することによって、明白になるだろう。
【0007】
〔概要〕
一部の実施形態によれば、原子炉用のプレート式熱交換器は、複数のプレート;第1流体入口と、第1流体出口と、前記第1流体入口と前記第1流体出口との間を連通する第1流体通路であって、複数の案内チャネルとして複数の前記プレートに形成された第1流体通路;および、第2流体入口と、第2流体出口と、前記第2流体入口と前記第2流体出口との間を連通し、複数の第2案内チャネルとして複数の前記プレートに形成された第2流体通路であって、前記第1流体通路から流体的に分離された第2流体通路を備える。
【0008】
一部の実施例では、当該プレート式熱交換器は、第3流体入口と、第3流体出口と、前記第3流体入口と前記第3流体出口との間を連通する第3流体通路であって、前記第1流体通路および前記第2流体通路から流体的に分離された第3流体通路と、をさらに備える。前記第3流体通路は、熱エネルギー伝達以外の目的のために構成されてもよい。
【0009】
例えば、第3流体通路は、第1流体および第2流体とは異なる第3流体を受け入れるように構成されてもよく、前記第1流体の漏れ検出、前記第2流体の漏れ検出、または、前記第1流体の漏れ検出と前記第2流体の漏れ検出との両方のために用いられてもよい。任意選択的に、前記第3流体は、前記第3流体通路内に酸化層(oxidation layer)を生成するために用いられてもよい。一部の場合において、第3流体は、核分裂生成物または放射化生成物(例えば、トリチウム)を捕捉するために用いられてもよい。
【0010】
一部の実施例によれば、前記第1流体入口と前記第1流体出口とは、前記プレート式熱交換器の同じ側に形成されていてもよい。一部の場合において、同軸導管が、前記第1流体入口および前記第1流体出口に結合されており、前記同軸導管は、内側流体導管および外側流体導管を定めており、前記内側流体導管は、前記第1流体入口および前記第1流体出口のうちの一方に流体的に結合されており、前記外側流体導管は、前記第1流体入口および前記第1流体出口のうちの他方に流体的に結合されている。
【0011】
前記第3流体は、水素、ヘリウム、CO2、またはこれらの組合せであってもよい。
【0012】
一部の実施形態において、第1流体が、前記第1流体通路内にあり、第2流体が、前記第2流体通路内にある。前記第1流体と前記第2流体とは異なる流体であってもよく、一部の場合において、前記第1流体と前記第2流体とは同じ流体であってもよい。前記第1流体は、ナトリウムであってもよく、一部の場合において、前記第2流体は、溶融塩であってもよい。
【0013】
一部の例では、前記プレート式熱交換器は、第1プレート式熱交換器であり、第2プレート式熱交換器が、前記第1プレート式熱交換器に流体的に結合されていてもよい。例えば、2以上の熱交換器(例えば、2個、3個、4個、6個、8個、またはそれ以上の数の熱交換器)が互いに流体的に結合された、複数の熱交換器のアレイが設けられてもよい。
【0014】
一部の場合において、前記第1プレート式熱交換器の前記第1流体出口は、前記第2プレート式熱交換器の第1流体入口と流体連通している。複数の熱交換器が、協働して原子炉の熱負荷(heat load)を扱うように構成されてもよい。
【0015】
一部の実施例では、複数の前記熱交換器のうちの少なくとも一部の熱交換器は、流体ヘッダによって流体連通している。言い換えれば、流体ヘッダは、共通の源から複数の前記熱交換器のうちの一部の熱交換器へ、流体を送達し得る。
【0016】
一部の場合において、複数の前記熱交換器のうちの少なくとも一部の熱交換器は、直列に配管されている。一部の場合において、複数の前記熱交換器のうちの少なくとも一部の熱交換器は、並列に配管されている。例えば、複数の前記熱交換器のうちの一部の熱交換器が、直列に配管されていてもよく、複数の前記熱交換器のうちの他の熱交換器が、並列に配管されていてもよい。一部の場合において、複数の熱交換器の第1グループを直列に配管する一方、複数の熱交換器の別のグループを並列に配管してもよい。一部の場合において、これらの2つのグループは、互いに流体連通するように配管されている。
【0017】
一部の実施形態による、原子炉の熱交換器内の原子炉冷却材から核分裂生成物または放射化生成物を除去するための方法であって、原子炉容器内にプレート式熱交換器を配置する工程と、一次冷却材に、前記プレート式熱交換器の第1流体通路を通過させる工程と、二次冷却材に、前記プレート式熱交換器の第2流体通路を通過させる工程と、前記核分裂生成物または前記放射化生成物を引き寄せるように選択された第3流体に、前記プレート式熱交換器の第3流体通路を通過させる工程と、前記核分裂生成物または前記放射化生成物を、前記プレート式熱交換器から前記第3流体により除去する工程と、を含む方法。
【0018】
〔図面の簡単な説明〕
詳細な説明において、添付の図面を参照して説明がなされる。図面においては、参照番号の最も左側の(1つ以上の)数字によって、その参照番号が最初に現れる図が識別される。異なる図における同じ参照番号の使用は、同様または同一の構成要素または特徴を示す。
【0019】
図1Aは、一部の実施形態による、高温流体から低温流体へ熱エネルギーを伝達するためのプレート式熱交換器の模式図である。
【0020】
図1Bは、一部の実施形態による、同軸の入口および出口を有するプレート式熱交換器の模式図である。
【0021】
図2aは、一部の実施形態による、シェルアンドチューブ式熱交換器を有するナトリウム冷却高速炉の模式図である。
【0022】
図2Bは、一部の実施形態による、プレート式熱交換器を有するナトリウム冷却高速炉の模式図である。
【0023】
図3Aは、一部の実施形態による、インライン構成を有するプレート式熱交換器の図である。
【0024】
図3Bは、一部の実施形態による、図3Aのプレート式熱交換器の断面図である。
【0025】
図4Bは、一部の実施形態による、ラテラル構成を有するプレート式熱交換器の図である。
【0026】
図4Bは、一部の実施形態による、図4Aのプレート式熱交換器の断面図である。
【0027】
図5は、一部の実施形態による、ヘッダに結合された複数の熱交換器コアの一構成を示す。
【0028】
図6は、一部の実施形態による、配管によってヘッダに結合された複数の熱交換器コアの一構成を示す。
【0029】
図7は、一部の実施形態による、円弧状に配置された複数の熱交換器コアを示す。
【0030】
図8は、一部の実施形態による、積重ね構成において配置された複数の熱交換器コアを示す。
【0031】
図9は、一部の実施形態による、原子炉容器の一部分の周りに周方向に配置された複数の熱交換器コアを示す。
【0032】
図10は、一部の実施形態による、列および行に配置され、かつ原子炉容器の内壁に沿って延びるように構成された、複数の熱交換器コアを示す。
【0033】
図11は、一部の実施形態による、配管によってヘッダと流体連通する、垂直線に対してある角度で配置された複数の熱交換器コアを示す。
【0034】
図12は、一部の実施形態による、原子炉容器内の複数の熱交換器コアの構成の例示的な配置を示す。
【0035】
〔詳細な説明〕
本開示は概して、原子炉用の熱交換器装置に関する。また、本開示は、原子炉容器全体にわたる複数の熱交換器の構成および位置に関する。一部の場合において、当該熱交換器によって、使用される熱交換器の配置、向きおよび数をフレキシブルにすることができる。さらに、記載された熱交換器に関して、より多様な二次冷却材が使用されてもよく、一部の場合において、1または複数の熱交換器を通る第3流体通路が設けられ得る。
【0036】
一部の実施形態において、小型熱交換器(compact heat exchanger)が、原子炉の原子炉容器内に設けられ、炉心内の一次冷却材から二次冷却材へ、熱を伝達する。一部の場合において、熱交換器は、ナトリウムから塩へ、熱エネルギーを伝達する。例えば、ナトリウム冷却高速炉(「SFR(sodium-cooled fast reactor)」)では、原子炉容器内の一次冷却材として、ナトリウムが使用され得る。自然循環か、1もしくは複数の循環ポンプか、または複数の循環方式の組合せかのいずれかを通じてナトリウムが原子炉容器全体を循環するとき、反応性の高い領域に対してより近接したナトリウムが、熱エネルギーを受け取り、加熱されることになる。加熱されたナトリウムは熱交換器を通って流れるようにされてもよく、当該熱交換器において、熱エネルギーが、一次ナトリウム冷却材から二次冷却材へ伝達される。一部の場合において、当該二次冷却材は、ナトリウム、塩、または他の何らかの二次冷却材である。
【0037】
一次冷却材(例えば、ナトリウム)から二次冷却材(一部の場合において、溶融塩であってもよい)へ熱エネルギーを伝達するために、プレート式熱交換器が使用されてもよい。一部の場合において、プレート式熱交換器は、2つの入口および2つの出口を有してもよい。例えば、プレート式熱交換器は、ナトリウムのための入口および出口と、塩のための入口および出口と、を有してもよい。これらの液体のための流路は、熱交換器のそれぞれのプレート内のチャネルによって定められ得、これらのプレートは、これらの液体を分離した状態に保ち、高温流体から低温流体へと熱エネルギーを伝導する熱連通状態にあり得る。
【0038】
一部の場合において、第3入口および第3出口が設けられてもよく、第3流体流路は、熱交換器内の1または複数のプレートによって定められている。第3流体は、複数の目的のうちのいずれかの目的のために設けられてもよい。例えば、第3流体は、追加の熱伝達のために、高温流体もしくは低温流体のいずれかの流体の熱交換器における漏れを検出するために、核分裂生成物もしくは放射化生成物(例えば、トリチウム)を除去するために、または他の何らかの目的のために、提供されてもよい。一部の場合において、水素が、熱交換器内の第3流体として使用されてもよい。一部の場合において、CO2が、熱交換器内の第3流体として使用されてもよい。一部の場合において、ヘリウムが、熱交換器内の第3流体として使用されてもよい。
【0039】
いずれの場合においても、第3流体は、漏れ検出のために使用されてもよい。例えば、1または複数の検出器が、熱交換器の下流にある第3流体流上に配置されてもよく、第3流体は、熱交換器に入る前には第3流体中に存在していなかった1または複数の物質の含有に関して、検査されてもよい。例えば、第3流体が熱交換器を通過した後に、当該第3流体を塩に関して検査することができる。第3流体中の塩の存在は、(それが液体形態であろうと気体形態であろうと、)熱交換器内における塩漏れの指標となる。
【0040】
追加的または代替的に、熱交換器内の第3流体は、核分裂生成物および放射化生成物を引き寄せるために使用されてもよい。例えば、第3流体(例えば、ヘリウム、水素等)は、トリチウムを軽減する第3流体として使用されてもよい。第3流体は、核分裂生成物または放射化生成物が冷却材塩よりもむしろ当該第3流体に対してより高い親和性(affinity)を有するように、選択および/または構成されてもよい。この結果、熱交換器内に第3流体が存在しない場合と比較して、塩等の冷却材流体のトリチウム捕捉量が低減する。
【0041】
一部の場合において、熱交換器内の第3流体は、熱交換器内に酸化層を形成するために用いられてもよい。後述するように、酸化層は、トリチウムの侵入(penetration)を低減することが示されている。一例として、ナトリウム/塩熱交換器では、ナトリウム流路については、流路内に顕著な酸化層を有することはないだろうが、塩流路については、測定可能な酸化層を形成し得る。これにより、トリチウムの侵入が、ある程度低減する。酸化層を生じるように構成された第3流体を導入することによって、酸化層がない場合と比較して、トリチウムの侵入は、劇的に影響を受け、低減し得る。
【0042】
例えば、CO等の第3流体に、熱交換器を通る第3流体通路を通過させて、熱交換器内の表面上に酸化層を意図的に形成してもよい。本明細書に記載された通り、第3流体は、漏れ検出等の他の目的のために、さらに使用されてもよい。一部の場合において、CO等の第3流体に、第3流体通路を通過させてもよく、次いで、第4流体を、当該第3流体通路を通過させてもよい。例えば、COが第3流体通路を通って流れてもよく、その後、別の時に、ヘリウムに第3流体通路を通過させてもよい。このように、第3流体通路は、複数の目的のために用いられてもよい。例えば、第3流体通路は、酸化層の形成、核分裂生成物または放射化生成物の捕捉、追加的な熱伝達の提供、漏れ検出のための利用、または、他の何らかの目的に使用されてもよいが、これらに限定されるものではない。熱交換器内において捕捉され得る、かかる放射化生成物の1つとして、トリチウムがある。
【0043】
すべての原子炉において、トリチウムは、炉心(燃料および他の炉心構成要素)における核反応によって、および、減速材/冷却材における核反応によって、生成される。トリチウム原子は、移動性が非常に高く、被覆およびその他の金属障壁を通過して拡散することができる。トリチウム原子は、「トラップ(trap)」され規制放射性廃棄物として処分されない限り、環境へ放出され得る。LWR(軽水型原子炉(Light Water Reactor))におけるトリチウム生成とSFRにおけるトリチウム生成とは同様である。しかしながら、放出比(放出トリチウム/生成トリチウム)は、2つの原子炉タイプに関して明確に異なっている。LWRから環境中に放出されるトリチウムの量は、SFRから環境中に放出されるトリチウムの量よりも、著しく多い。
【0044】
一部の場合において、ナトリウムシステムコールドトラップが、環境へのトリチウム放出を制御するために用いられる。コールドトラップは、コールドトラップ効率(一部の場合において、約70%であってもよい)のために、低い入口温度(例えば、約115℃)で動作させてもよい。蒸気発生器の有無にかかわらず、ナトリウム冷却高速炉では、通常、一次コールドトラップおよび二次コールドトラップにおける高いトラップ効率を維持し、環境へのトリチウム放出を規制限界未満に保つのに十分なHが、一次ナトリウムにおける(n,p)反応によって生成され得る。
【0045】
ナトリウムシステムの配管および構成要素の金属表面上における酸化によって、最大で約88の係数だけ、金属障壁を通るトリチウムの拡散速度(diffusion rate)が低減し得る。一部の場合において、液体ナトリウムとの接触状態にある金属表面は、ナトリウムが酸素を捕集するため、酸化物コーティングをほとんど有しておらず、そのため、通常は、空気に曝された表面にのみ、酸化物コーティングが発達することとなる。
【0046】
混合酸化物燃料(mixed oxide fuel:MOX)または三元合金金属燃料(ternary alloy metal fuel)を使用するSFRの場合、三体核分裂生成によるトリチウム生成は、16.9mCi/MWDのオーダーである。TWRが二元合金金属燃料を使用する一部の場合において、トリチウムの三体核分裂生成率(ternary fission production rate)は、約13.6mCi/MWDである。U-235に関するトリチウム量が、Pu-239に関するトリチウム量の値の76%だからである。
【0047】
トリチウムは、移動性が高く、ほとんどの金属障壁を通過して拡散する。したがって、多くの場合において、一部のトリチウムは、通常のプラント運転中に、炉心から一般的な環境中へ放出されることとなる。また、トリチウムは、事故に関連する放射性物質のソースタームを評価する際に重要な放射性同位体である。トリチウムは、燃料内の三体核分裂と、制御棒および半径方向遮蔽材内のホウ素(B)における中性子捕捉により、炉心内で生成される。
【0048】
燃料内またはBC吸収材中で生成されたトリチウム原子は、通常、ピン被覆を通じて一次ナトリウム内へ拡散する。トリチウム原子は、一次ナトリウムにおいて、ナトリウムと化学反応して、NaH(ナトリウムトリチド(sodium tritide))を形成する。多くの場合において、NaHの大部分は、一次ナトリウムループの壁を通って複数の不活性セルのうちの1つの不活性セル内へ拡散し得る前に、一次コールドトラップ内においてトラップされ得る。また、一部のトリチウムは、I熱交換器(中間(intermediate)熱交換器)配管を通って3つの二次ループのうちの1つの二次ループ内へ拡散する傾向があり得る。当該一部のトリチウムは、そこでナトリウムと反応して、NaHを形成し得る。当該NaHは、二次コールドトラップ内においてトラップされ得る。
【0049】
「二次コールドトラップ(secondary cold trap)」に捕捉されないトリチウムは、二次ナトリウムループ配管の壁を通って格納構造物の外側の管路内へ拡散し得、ダンプ(dump)熱交換器(D熱交換器)の「管壁(tube walls)」を通って拡散するトリチウムと共に、外部環境へ排出され得る。
【0050】
トリチウムは、小さな原子であり、したがって、ほとんどの金属障壁を通って拡散することが予想される。しかしながら、金属表面が酸化物コーティングを有する場合、トリチウム拡散速度は、約88の係数だけ、著しく低減する。この効果は、環境へのHの放出率(release rate)の重要な抑制因子である。
【0051】
一部の実施形態において、環境へのトリチウム放出は、ナトリウムシステムコールドトラップの働きによって制御され得る。ナトリウム冷却LMRの場合、ナトリウム冷却材中の不純物は、被覆の完全性が保護されるように、特定の濃度未満に維持される。不純物濃度は、PTI(プラギング温度インジケータ(Plugging Temperature Indicator))によって監視される。PTIは、オリフィス板を通過するナトリウム流の圧力降下(ΔP)を測定する装置である。ΔPの増加は、ナトリウム冷却材中のナトリウム不純物(酸化物および水素化物)の濃度が許容範囲を超えて増大したために、当該ナトリウム不純物が沈殿し始めていることを示す。ナトリウム処理システムのコールドトラップは、不純物レベルを、技術仕様によって要求される濃度未満に維持する。
【0052】
一部の例では、一次ナトリウム処理システム内のコールドトラップを使用して、トリチウム核分裂生成物の大部分を除去し得る。しかしながら、一部のトリチウムは、例えばナトリウム‐塩熱交換器を通じて、冷却材塩へ移動し得ることが可能である。一部の場合において、塩ループ内の1または複数のコールドトラップを用いて、冷却材塩ループからトリチウムを除去し、それによって、塩ループ内のトリチウムの量を低減することができる。しかしながら、トリチウムは、例えば、トリチウムが下流でトラップされるよう熱交換器を通過するときにトリチウムをトラップし得る流体を当該熱交換器に通過させることによって、熱交換器それ自体の内部において除去されてもよい。
【0053】
図1Aおよび図1Bは、プレート式熱交換器として形成され得る小型熱交換器100を示す。小型熱交換器100において、2以上の流体が、適切な数字プレート102(1)、102(2)、102(n)のうちのいずれかのプレートによって、互いに分離されている。プレートには、流体流れのチャネルが形成されていてもよい。流体流路は、機械加工、化学エッチング、レーザエッチング、または他の何らかの適切な処理によって形成されてもよい。プレートは、例えば材料伝導を通じて、当該2以上の流体の間に熱連通を提供していてもよい。一部の場合において、複数のプレートは、一体構造が形成されるように、互いに融合されてもよい。図示のように、一次原子炉冷却材104(ナトリウムであってもよい)は、頂部入口106から熱交換器に入り、そこでプレート内のチャネルを通って流れ、熱交換器の反対側の出口108から出る。二次冷却材流体(塩であってもよい)のための第2入口110を、熱交換器100の1または複数の位置に設けることができる。二次冷却材流体出口112によって、二次冷却材が熱交換器100から出られるようになる。一部の場合において、二次冷却材ループには、同軸管が含まれる。当該同軸管において、内側管は、外側管を通って延在する。内側管は、熱交換器の入口に結合されていてもよく、外側管は、熱交換器の出口に結合されていてもよい。
【0054】
この構成では、塩入口と塩出口とは、熱交換器の同じ側に形成されていてもよい。
【0055】
一部の場合において、第1熱交換器100(1)の出口108によって、第2熱交換器100(2)への入力が提供される。一部の場合において、2以上の熱交換器が、第1熱交換器の流体出口が第2熱交換器への流体入口を提供できるように、互いに直接、流体的に結合されてもよい。この構成によって、原子炉容器内でより小さな熱交換器を利用できるようになるとともに、熱交換器に加えられる熱応力が低減し、効率が大きくなり得る。
【0056】
例えば、熱交換器の入口と出口との間における所望の温度差がΔTである場合に、熱エネルギーを伝達するために単一の熱交換器を設けると、結果として当該熱交換器に熱応力が生じる。2以上の熱交換器を同じΔTを達成するために利用することによって、各々の熱交換器は、所望であるΔTの全部よりも、小さな熱伝達を担うことができる。この結果、2以上の熱交換器の各々が受ける熱応力は、ΔTの全部を担う単一の熱交換器よりも小さくなる。
【0057】
一部の実施形態において、2以上の熱交換器は、各々が自由に変形して互いに独立に膨張/収縮するよう、互いに流体的に結合されているが互いに構造的に結合されていない。言い換えれば、2以上の熱交換器は、熱応力を独立に扱う。その結果、複数の熱交換器にわたって熱応力を広げることによって、熱交換器に対する全体的な熱応力を低減しつつ熱伝達を管理することができる、ロバストな熱伝達システムが得られる。流れ抵抗の増大および圧力降下が起こり得るが、これらの損失は、熱交換器の設計、熱交換器を通る流路の設計、および熱伝達システムにおける寿命の増大によって、軽減され得る。
【0058】
さらに、熱交換器のサイズが小さいほど、原子炉容器内の適切な場所に熱交換器を配置できる可能性が大きくなる。例えば、複数の熱交換器を利用することによって、当該複数の熱交換器は、半径方向に、垂直方向に、周方向に、またはこれらの組合せにおいて、原子炉容器全体にわたって離隔して配置されてもよい。
【0059】
適切な熱交換器100には、プリント回路熱交換器(printed circuit heat exchanger)、プレート式熱交換器(plate heat exchanger)、成形プレート式熱交換器(formed plate heat exchanger)、またはハイブリッド熱交換器(hybrid heat exchanger)が含まれるが、これらに限定されるものではない。そこでは、2以上の媒体が、1または複数の接合されたプレートにおける互いに反対の側を流れる。冷却媒体は、高圧下にあってもよいが、一部の実施形態では、低圧である。作動流体(一部の実施形態において、ナトリウムおよび塩である)は、2Dまたは3Dプレートパターンを通じて、1または複数の接合されたプレートの両側を流れるようにされてもよい。当該2Dまたは3Dプレートパターンは、所望の熱長さ(thermal length)および圧力降下を生成するように構成することができる。本明細書で使用されているように、ナトリウムおよび塩は、熱交換器内の例示的な作動流体として用いられる。ここで、ナトリウムは、炉心内の冷却材流体として使用され、塩は、原子炉容器の外部に熱エネルギーを伝達するための熱伝達流体として使用される。一部の実施形態において、熱交換器は、ナトリウムプール型原子炉と共に使用される。
【0060】
一部の実施形態によれば、ナトリウム入口106は、熱交換器100の1つの面に隣接して(の近傍に)形成されている。ナトリウム出口108は、熱交換器100の反対の面(反対の側)に形成されていてもよい。一部の実施形態において、原子炉容器内に設置された構成では、ナトリウム入口106は、熱交換器100の頂面に隣接して(の近傍に)あってもよく、ナトリウム出口108は、熱交換器100の底面に隣接して(の近傍に)あってもよい。一部の実施形態において、ナトリウム入口106は、ナトリウム出口108よりも高い位置にあってもよい。しかしながら、他の実施形態では、ナトリウム入口106は、熱交換器100のいずれかの面にあってもよく、または、熱交換器100のいずれかの面に隣接して(の近傍に)あってもよい。そして、ナトリウム出口108は、熱交換器100の他のいずれかの面にあってもよく、または、熱交換器100の他のいずれかの面に隣接して(の近傍に)あってもよい。多くの場合において、ナトリウム入口106およびナトリウム出口108は、熱交換器100における互いに反対の面にある。
【0061】
塩入口110は、熱交換器100の1つの面に位置してもよく、または、熱交換器100の1つの面に隣接して(の近傍に)位置してもよい。当該1つの面は、ナトリウム入口106を有するように構成された面に直交する面であってもよい。塩出口112は、原子炉容器の同じ面を出入りし得る塩ループ配管が設けられるように、塩入口110と同じ面に形成されていてもよい。しかしながら、塩入口110および塩出口112は、熱交換器100の異なる表面上に形成されていてもよい。一部の場合において、塩入口110と塩出口112とは、同軸であってもよく、外側導管によって取り囲まれた内側導管から形成されていてもよい。
【0062】
熱交換器100は、複数の表面溝114を有する一連の平行プレート102(1)、102(2)、102(n)から形成されていてもよい。それらは、複数のプレート102が互いに接合されたときに一連のチャネルが形成されるように、互いに隣接して配置されている。表面溝114は、光化学的にエッチングすることによって、機械的に形成することによって、または、他の何らかの処理を通じて、プレートの表面に形成されてもよい。表面溝114は、流体経路長および圧力降下等の所望の流れ特性をもたらすような大きさおよび構成とされてもよい。
【0063】
多くの場合において、プレート102は、互いに拡散接合されている。拡散接合は、接合を母材金属強度に戻し、優れた熱流体性能を可能にし、熱交換器100を通る2Dおよび/または3D流体通路の設計最適化を可能にする、固相溶接処理(solid-state welding process)である。
【0064】
第2流体のための通路116は、第1流体を案内するためのチャネルを有するプレートを通して形成されてもよい。一部の実施形態において、同軸導管118は、第2流体の入口および出口のために使用されてもよい。一部の場合において、第2流体の入口および出口は、配管が単純となるように、熱交換器100の同じ面に形成されてもよい。
【0065】
一部の実施形態において、同時に熱交換器100のすべての層を通る流体連通経路を提供するヘッダまたはマニホルド(図示せず)が、流体入口または流体出口に取り付けられてもよい。代替的または追加的に、熱交換器100内に一体型ヘッダが提供されるように、プレート形成段階中にポートを構成することができる。一部の場合において、熱交換器100は、マニホルドによって接続されたヘッダとポートとの混合体でセミポートされ(semi-ported)てもよい。
【0066】
熱交換器100は、任意の適切な材料から形成されてもよく、意図する用途に適したサイズで形成されてもよい。多くの場合、熱交換器100は、同じ用途のためのシェルアンドチューブ式熱交換器よりも実質的に小さいように形成してもよい。言い換えれば、原子炉容器内で使用される場合、ナトリウム/塩熱交換器として設計された熱交換器100は、同様の熱エネルギー伝達能力を有する、ナトリウム/塩熱伝達のために構成されたシェルアンドチューブ式熱交換器よりも、実質的に小さくてもよい。一部の場合において、熱交換器100には、同様の用途のための同等のシェルアンドチューブ式熱交換器よりも、約7分の1の体積が必要となる。
【0067】
図示の例では、一次ナトリウムは、上面に形成されたナトリウム入口106から開いたスロットを通って下流へ流れ、熱交換器100のプレート間に形成されたチャネルを通り、熱交換器100の底面に形成されたナトリウム出口108へと流れる。塩は、塩入口110に入り、分配器を通じて複数の低温チャネルへ分配され、熱交換器100内に形成されたチャネル内を上方へ流れて、塩出口112から出る。このような構成(当該構成においては、高温流体は、熱交換器の頂部付近から出て/入り、低温流体は、熱交換器の底部付近から出る/入る)では、効率的な流体の流れを促すために、自然の対流サイクルが利用される。例えば、通常、流体の温度差のせいで、より高温の流体は、流体のより低温の部分よりも、小さな密度を有するようになる。結果として、温められた流体は上昇傾向となり、より低温の流体は、重力によって下降することとなる。
【0068】
許容可能な圧力降下を指定することができる。運転コストを低減し、サイクル効率を向上するために、通常、圧力降下がより低いことが望ましい。一部の実施形態において、熱交換器100を通るナトリウムの圧力降下は、約6psi未満であるか、または約5psi未満であるか、または約4psi未満であるか、または約3psi未満である。通常、より低い圧力降下には、冷却材の流れの長さが短いことと粘性が小さいこととが必要とされ得る。これは、その熱伝達係数に直接影響を及ぼす。圧力降下は、流れの長さ、流体の粘性および/または流れの幅を変化させることによって、調整することができる。同様に、熱通過(overall heat transfer)は、層の数および熱伝達面積の変化によって、影響を受け得る。
【0069】
プレート表面の種類は、特定の目的のために適応させることができる。プレート表面は、表面密度および熱伝達係数を高めるように形成されてもよい。プレート表面は、鋸歯状(serrated)、矢筈模様状(herringbone)、または多孔状(perforated)等の、任意の適切な構成を有するフィンとして形成されてもよい。もちろん、その他の構成も可能であり、本明細書において想定されている。組合せにおいて、または代替的に、通路は、任意の適切な方法を通じて、プレートに直接的に形成されてもよい。一部の場合において、通路は、光化学的エッチングにより形成されている。
【0070】
通路は、任意の適切なサイズおよび断面形状であってもよい。一部の実施形態において、形成されるチャネルは、約0.5mm、約0.75mmまたは約1mmの半径を有する半円形状である。もちろん、熱交換器の設計流れパラメータに従って、その他の適切な断面形状およびサイズが考えられる。
【0071】
図2Aおよび図2Bは、ナトリウム/ナトリウムシェルアンドチューブ式熱交換器200(図2A)とナトリウム/塩小型熱交換器100(図2B)との間の、相対的なサイズ差を示す。特に、ナトリウム/塩シェルアンドチューブ式熱交換器200は、図2Aに示すナトリウム/ナトリウムシェルアンドチューブ式熱交換器100よりも、著しく大きい。
【0072】
図2Aは、ナトリウム/ナトリウム熱伝達のために設計されたシェルアンドチューブ式熱交換器200を有する原子炉202の模式図を示す。図から分かるように、ナトリウム/ナトリウム熱交換器200は、原子炉容器204内の最大の構成要素のうちの1つであり、原子炉202を設計する際の主要な設計因子である。事実、ナトリウム/ナトリウム熱交換器200は、大部分において、原子炉容器204の高さを決定する。これにより、格納構造物およびその他の構成要素の全体的なサイズに影響が及ぼされる。
【0073】
さらに、ナトリウム/ナトリウム熱交換器200が、相対的に高い中性子放射線を受ける炉心206に隣接して(の近傍に)あるため、ナトリウム/ナトリウム熱交換器200の遮蔽は、困難であり、かつ費用がかかる。原子炉容器204内の空間的な制約のため、また、熱交換器200のサイズのため、遮蔽は困難である。シェルアンドチューブ式ナトリウム/ナトリウム熱交換器200をシェルアンドチューブ式ナトリウム/塩熱交換器に置き換える場合、上記の考慮事項は一層厳しいものとなる。ナトリウム/塩シェルアンドチューブ式熱交換器は、図示のナトリウム/ナトリウムシェルアンドチューブ式熱交換器200よりも著しく大きいからである。
【0074】
多くの典型的な構成では、冷却材塩は、ナトリウムの約100分の1の熱伝導率を有する。その結果、ナトリウム/塩シェルアンドチューブ式熱交換器には、ナトリウム/ナトリウム熱交換器よりも、実質的に大きな熱交換器が必要となる。一部の場合において、ナトリウム/塩熱交換器の高さは、ナトリウム/ナトリウムシェルアンドチューブ式熱交換器200の高さの2倍を超える。一部の場合において、ナトリウム/塩熱交換器を利用することが有利であり得る。ナトリウム/塩熱交換器において、塩は、例えば統合エネルギーシステムにおける作動流体であり、塩は、熱エネルギー蓄積媒体である。典型的な中間ナトリウムループ(原子炉容器204内の一次冷却材から熱エネルギーを受け取り、原子炉容器204の外側の塩ループにそれを供給する)は、ナトリウム/塩熱交換器によって除かれ得る。しかしながら、中間ナトリウムループを除くことから実現されるいかなる利益も、急速に失われてしまう。ナトリウム/塩シェルアンドチューブ式熱交換器を促進するためには、原子炉容器204を著しく大きく(例えば、2倍高いオーダーに)する必要があるからである。同様に、格納構造物もまた、より大きな原子炉容器204が収容されるよう、サイズを増大させる必要がある。
【0075】
一部の実施形態において、原子炉容器204内の熱交換器は、原子炉容器204のサイズにおいて顕著な役割を演じる。熱交換器のサイズを低減することにより、原子炉容器のサイズをそれに応じて低減することができる。一部の実施形態において、小型熱交換器100は、本明細書における実施形態全体を通じて実質的に記載されているように、原子炉容器204内の一次ナトリウム/塩熱交換器100として使用される。
【0076】
図2Bに示すように、1または複数の熱交換器100は、炉心206から一定距離離隔した場所において、原子炉容器204内に配置することができる。一部の場合において、放射線曝露の観点から、離隔が重要である。例えば、熱交換器100が炉心206から離隔していればいるほど、熱交換器100が曝露する放射線は少なくなる。その結果、熱交換器100が炉心206から遠くに配置されていればいるほど、塩ループ内における塩の放射化を低減するために必要となる遮蔽が少なくなる。加えて、炉心206からの熱交換器100の距離を長くすることで、原子炉容器204内のナトリウムの自然循環が向上する。また、炉心206からの熱交換器100の距離を長くすることで、循環ポンプ208のサイズを低減できる場合もある。その結果、効率およびサイズに関するさらなる利点が得られる。一部の場合において、原子炉容器204内における1または複数の熱交換器100を利用することによって、原子炉202の熱エネルギー出力の量を増大させることができ、または、熱エネルギー出力の量を犠牲にせずに、原子炉202のサイズを低減することができる。
【0077】
図2Aのシェルアンドチューブ式熱交換器200では、熱交換器は炉心206に隣接して(の近傍に)あり、熱伝達流体の放射化を低減するために多量の遮蔽が必要となる。この図2Aのシェルアンドチューブ式熱交換器200と比較して、熱交換器100は小さく、かつ炉心206からより遠くに離隔して配置されているため、必要とされる遮蔽の量が低減する。したがって、熱交換器100により、設計、構造、遮蔽、配管および必要コストが著しく簡素化されたプール原子炉の設計が可能となる。一部の実施形態において、熱交換器100は、プール型原子炉と共に使用される。一部の実施形態において、プール型原子炉は、ナトリウムプール型原子炉である。一部の場合において、ナトリウムプール型原子炉は、高速中性子スペクトルにおいて運転する。
【0078】
一部の実施形態において、熱交換器100内の塩ループの圧力は、熱交換器100のナトリウムループ内の圧力よりも高い圧力である。結果として、熱交換器100におけるいかなる漏れも、塩をナトリウム中に流入させるだろう。熱交換器100内のいかなる潜在的な(起こり得る)漏れも、原子炉202のカバーガスシステムにおいて検出され得る。熱交換器100のサイズおよび位置によって、熱交換器100の除去および交換が容易になる。その結果、シェルアンドチューブ式熱交換器200と比較して、熱交換器100の保守および交換の効率が増大する。
【0079】
一部の実施形態において、複数の熱交換器を、プール型原子炉で利用することができる。前述したように、ナトリウム入口を熱交換器100上のより高い位置に配置しつつ、ナトリウム出口を熱交換器100上のより低い位置に配置してもよい。塩入口および塩出口は、熱交換器100の同じ面に配置されてもよい。塩入口および塩出口は、熱交換器100の設置、配管および任意選択的な(optional)交換における効率を促進するように配置されてもよい。一部の実施形態において、塩入口および塩出口は、同軸の入口および出口の管によって提供されてもよい。もちろん、例えば、別個の管、非同軸の管等の、その他の構成も可能である。また、塩入口および塩出口のその他の構成も可能である。塩入口および塩出口は、熱交換器100における隣り合う面または互いに反対の面に配置されてもよい。
【0080】
2以上の熱交換器からのナトリウム出口を併合して、冷却されたナトリウムを炉心206に戻す単一のナトリウム出口としてもよい。原子炉202から熱エネルギーを受け取り、熱エネルギー蓄積システムに当該熱エネルギーを伝達するための作動流体として、塩を利用することによって、追加のナトリウムループが除かれる。さらに、これにより、ナトリウムの発火防止および遮蔽を有する大型のナトリウム管の必要性が改善し、従って、組立ておよびそれに伴うコストがさらに簡素化される。
【0081】
例示的な熱交換器100がナトリウムプール原子炉に関して説明されてきたが、本明細書に記載された構成および利点は、他の原子炉タイプにも同様に適用可能であり得る。さらに、記載された冷却媒体には一例として塩が用いられているが、これは例示であって、その他の媒体および媒体の種類も可能である。
【0082】
図3Aは、サンプル熱交換器300を示し、図3Bは、熱交換器300の断面図を示す。熱交換器300は、ハウジング302を含む。熱交換器300は、熱交換器300を取り付けおよび/または配置するために使用され得る、1または複数の取り付け表面304(例えば、フランジ)を含んでもよい。熱交換器300は、2つの作動流体が熱交換器300を通過できるように、2対の入口/出口を含んでもよい。一方の流体が、もう一方の流体から熱エネルギーを受け取る。
【0083】
熱交換器300は、所望の位置および向きに入口および出口を有するように、設計および構成することができる。例えば、一部の場合において、塩等の作動流体を熱交換器300へ送達するためには、インラインインターフェース(in-line interface)とするか、あるいは、ラテラル(側方)インターフェース(lateral interface)とするか、の2つの選択肢がある。例えば、図3Aおよび図3Bに示すように、インラインインターフェースでは、入口および出口は、熱交換器の互いに反対の側に配置される。一方、ラテラルインターフェースでは、入口および出口は、互いに反対の側に配置されるのではなく、直交する側または同じ側に配置され得る。
【0084】
一部の場合において、インラインルーティングの選択肢によって、長さが増す可能性がある一方で、ルーティングの複数の選択肢のうちで最小の高さ/幅が提供される。また、インラインの選択肢では、高温および低温のナトリウム流れ内へ直接、インターフェース配管が配置されてもよい。代替のルーティングとして、混合ルーティング(mixed routing)がある。混合ルーティングでは、1つの流体通路がインラインルーティングにより構成され、第2流体通路がラテラルルーティングに合わせて構成される。流体通路のルーティングは、原子炉容器内における位置および向きに基づいて、必要となる接続部および配管と共に、必要に応じて決定することができる。
【0085】
図4Aおよび図4Bは、入口402および出口404が熱交換器400の同じ側に設けられた、ラテラルな流体ルーティングを有するサンプル熱交換器400を示す。一部の場合において、熱交換器400のコアは、原子炉容器内におけるナトリウムプール内において高温プールから低温プール内に入る大きな漏れが阻止されるよう、シールされている。一部の場合において、高温プールと低温プールとの間の漏れが計量されるよう、熱交換器において設計される。これにより、すべての漏れを防止するように熱交換器400を設計することなく、設計が単純化され得る。また、これにより、熱交換器400内における漏れを阻止するために通常、使用されるバッフルを省略できるようになり得る。
【0086】
一部の場合において、熱交換器400は、入口402における高温プールと出口404における低温プールとの間の温度差を受ける。これによって、熱交換器400に熱応力が生じる。したがって、熱交換器は、軸方向および垂直方向における熱交換器400の相対運動を引き起こすように設計され得るが、横方向ではより顕著である。一部の場合において、流体流路を維持しつつ、長手方向における熱交換器の熱膨張および熱収縮が可能となるように、スライドラビリンスシール406が使用される。もちろん、流体シールを維持しつつ熱膨張および熱収縮が可能となるように、その他の適切な構造体が設けられてもよい。
【0087】
一部の場合において、スライドラビリンスシール406によって、配管の間もしくは隣り合う熱交換器400の間の固定空間に熱交換器400を挿入することが可能となり、または、当該固定空間から熱交換器400を除去することが可能になる。一部の場合において、スライドラビリンスシール406によって、固定長さの位置に挿入するために熱交換器400の全長を減少させ、次いで、隣接する構造体に結合できるように拡張することが可能になる。もちろん、確実な取り付けおよび熱交換器400のための流体シールが得られるように、他の構造体(例えば、別個のシーリングプレート等)が、選択的に取り付けられてもよい。
【0088】
熱交換器400における熱応力を管理する1つの方法は、熱交換器400の少なくとも一部分を取り囲む熱スリーブ408を設け、高温プールからの一部の流体が熱スリーブ408へ漏入できるようにすることである。高温流体の一部が熱スリーブに入れるようにすることで、熱交換器壁への周期的熱応力が減衰し得る。
【0089】
図5は、互い違いの高温プレナムおよび低温プレナムとヘッダとを用いる熱交換器コア510の構成500を示している。一部の場合において、高温プレナム502は、高温ヘッダ504と共通の流体連通状態にある。同様に、低温プレナム506は、低温ヘッダ508と共通の流体連通状態にあってもよい。低温ヘッダ508によって、熱交換器のプレート内を流れる一次冷却材(例えば、ナトリウム)から熱エネルギーを受け取る塩が流入してもよい。高温ヘッダ504によって、高温流体(例えば、塩)が高温プレナム502から出るための流路が設けられてもよい。
【0090】
熱交換器コア510は、本明細書の様々な実施形態に記載された通り、各々が流体通路を定める複数の接合されたプレートから形成されてもよい。熱交換器コア510のプレートによって、互い違いの高温プレナム502と低温プレナム506との間に分離が設けられてもよい。本明細書で使用されている通り、一群の接合されたプレートは、熱交換器コア510と称されることがある。図示の実施例では、複数の熱交換器コアが、共有の熱交換器本体内において一緒に使用されている。任意の適切な数の熱交換器コアが、熱交換器本体内において使用されてもよい。
【0091】
一部の実施形態において、複数の熱交換器コアは、原子炉の熱負荷(heat duty)要件を満たすように設けられている。熱交換器コアの数は、原子炉の全体的な熱負荷、熱交換器の設計された周期的熱応力、ならびに、流入流体と流出流体とのΔTに基づいて選択されてもよい。一部の場合において、12個、24個、36個、48個、50個またはそれ以上の数の熱交換器コアが、原子炉の熱負荷を扱うように設けられてもよい。複数の熱交換器が、任意の適切な構成において、炉心の周りに離隔して配置されていてもよく、互いに流体連通していてもよい。一部の実施例において、複数の熱交換器のうちの一部の熱交換器は、他の複数の熱交換器と流体連通している。
【0092】
熱負荷に応答して熱交換器コア510が熱膨張および熱収縮できるように、シールが設けられてもよい。当該シールは、例えば、溶接されたベローズ、または、隣り合う熱交換器コア間の結合部もしくは隣り合う熱交換器間の結合部の移動の制限を可能にする、他の何らかの膨張シールであってもよい。
【0093】
図6は、熱交換器コア602(1)、602(2)、602(n)の構成600を示す。ここでは、低温ヘッダ604および高温ヘッダ606は、配管608によって、個々の熱交換器コア602に結合されている。その結果、個々のコア602と、低温ヘッダ604または高温ヘッダ606との間に、流体連通が設けられている。熱交換器コア602は、実質的に熱交換器の実施形態に関して本明細書に記載された通りのものであってもよく、垂直方向もしくは水平方向、または他の何らかの向きを向いていてもよい。
【0094】
一部の場合において、この構成によって、個々のコア602を効率的に設置、除去、および/または交換することができ、さらに、熱膨張および熱収縮に適応するように、個々のコア602間に十分な空間を設けることができる。一部の場合において、熱交換器コア602は全て、並列配管構成において、共通のヘッダ604と連通している。一方、他の場合において、熱交換器コア602は、直列に配管されており、この場合、第1熱交換器コアの出口は、第2熱交換器コアの入口へ供給し得る。直列または並列に配管される場合、熱交換器コアの回路は各々、熱交換器の全温度変化の一部分のみを担ってもよい。一部の場合において、熱交換器コア602の各々は、熱交換器の全熱負荷内の特定の温度範囲を扱うように設計されてもよい。例えば、第1熱交換器コアは、原子炉内の一次冷却材の熱境界にある流体作動温度を扱うように設計されてもよい。言い換えれば、第1熱交換器コアは、第2熱交換器コアとは異なるように設計および構成されてもよい。個々のコアでは、種々の材料、流路長、圧力降下、および/または熱交換器コアのその他の特性が利用されてもよい。
【0095】
図7は、熱交換器コア702(1)、702(2)、702(n)に関する積重ね構成700を示す。熱交換器コア702は、実質的に熱交換器の実施形態に関して本明細書に記載された通りのものであってもよい。コア702は、垂直方向、水平方向、または他の何らかの向きを向いていてもよい。一部の場合において、コア702は、原子炉容器の周りにおいて、周方向および/または半径方向に配置されてもよい。一部の場合において、複数のコアの外側リング704は、複数のコアの内側リング706よりも、原子炉容器の壁の近くに配置されている。個々のコア702(1)、702(2)間の間隔は、半径および冷却材のルーティングのためのアクセスの必要性に応じたものであってもよい。任意の適切な数の熱交換器コア702が設けられ、直列に、並列に、または直列と並列との組合せ等の、任意の適切な構成において配管されてもよい。
【0096】
図8は、熱交換器コア802(1)、802(2)、802(n)に関する例示的な積重ね構成800を示す。熱交換器コア802は、実質的に熱交換器の実施形態に関して本明細書に記載された通りのものであってもよい。熱交換器コア802は、水平方向、垂直方向、または他の何らかの向きを向いていてもよい。コア802は、原子炉容器の周りにおいて、周方向および/または半径方向に配置されてもよい。図示のように、一部の場合において、2以上のコア802が、上下に積み重ねられてもよい。一部の場合において、原子炉容器高温プールからの流路は、複数のコア802の上側行(row)804に入ってもよく、炉心高温プールからコア802内への平行な経路および/または複数の入口が定められるように、複数のコアの下側行806にさらに入ってもよい。
【0097】
複数の熱交換器コア802の全ての例示的な構成がそうであろうように、個々のコアは、直列に、並列に、または直列と並列との組合せにおいて配管されてもよい。図示の積重ね構成800では、第1熱交換器本体808は、複数のコア802の上側行804を含んでもよく、第2熱交換器本体810は、複数のコア802の下側行806を含んでもよい。各行は、一次冷却材が原子炉容器内を循環して熱交換器に入ることができるように、原子炉容器高温プールとは別個の入口を有してもよい。上側行804および下側行806では、同様に、一次冷却材をコア802内に導くためのヘッダ(図示せず)が利用されてもよく、または、追加的もしくは代替的に、一次冷却材を1または複数のコア802内に導くための配管が利用されてもよい。
【0098】
図9は、原子炉容器904の内部の周りにおいて周方向に配置された熱交換器コア902(1)、902(2)、902(n)の例示的な位置を示す。コア902は、実質的に本明細書に記載された通りに構成されてもよい。コア902は、一部の場合において、炉心(図示せず)から遠隔に配置されている。熱交換器コア902のサイズの相対的な小ささと、炉心内における高い中性子放射能の領域に対する熱交換器コア902の近接性とによって、熱交換器コア902は、中性子放射線の多くを回避できるようになる。これにより、熱交換器がこれより著しく大きい場合、または、熱交換器が炉心に対してより近いところに冷却材流路を定める場合よりも、必要となる遮蔽がはるかに少なくなる。
【0099】
図10は、熱交換器コア1002(1)、1002(2)、1002(n)の構成1000を示す。コア1002は、実質的に、熱交換器の実施形態に関して本明細書に記載された通りのものであってもよい。コア1002は、原子炉容器の周りにおいて周方向に配置されていてもよく、さらに、複数の行(row)において積み重ねられていてもよい。図示のように、合計20個のコア1002に対して、高さ5で積み重ねられた4行のコア1002がある。もちろん、原子炉の熱負荷要件に基づいて、より少ない数のコア1002またはより多い数のコア1002が同様に配置されてもよい。追加のコア1002が、隣接する列(column)、追加の行に配置されてもよく、または、別個の熱交換器構成1000に、原子炉容器の異なる部分に配置された任意の適切な数の行および/もしくは列が含まれてもよい。
【0100】
図11は、原子炉の熱負荷に適応する任意の適切な数の行および列を含む複数の熱交換器コア1102の構成1100を示す。熱交換器コアは、実質的に本明細書に記載された通りのものであってもよく、任意の適切な配管構成を用いるように設計されてもよい。例えば、複数の熱交換器コア1102は、直列に、並列に、または直列と並列との組合せにおいて配管されてもよい。図示のように、熱交換器構成1100には、熱交換器コア1102を出入りする流体のための流路が定められるように、低温ヘッダ1104、高温ヘッダ1106、および配管1108が含まれてもよい。図示のように、コア1102は、任意の適切な向き(例えば、水平方向に、垂直方向に、または、任意の適切な角度で)を向いていてもよい。一部の場合において、第1熱交換器コアの出口は、第1熱交換器コアと第2熱交換器コアとが互いに直列に配管されるように、第2熱交換器コアの入口に流体的に結合されている。
【0101】
低温ヘッダ1104および高温ヘッダ1106は、二次冷却材(塩であってもよい)のための流体経路が形成されるように用いられてもよい。一部の場合において、複数のコアは、循環する一次冷却材(ナトリウムであってもよい)が個々の熱交換器コア内に入ることができるようにする個々の入口を有する。
【0102】
図12は、図11の複数の熱交換器コア1102に関する例示的な向きおよび位置を示す。原子炉1200は、原子炉容器1202と、1または複数のポンプ1204と、を含む。ポンプ1204は、原子炉容器内の一次冷却材を、熱交換器コア1102内に導いてもよい。一部の場合において、ポンプ1204によって、例えば、1または複数の熱交換器コア入口と流体連通するプレナム内へ一次冷却材が強制的に入れられることにより、一次冷却材が高温プールから熱交換器内へ導かれる。
【0103】
図示のように、熱交換器コア1102は、低中性子放射能の領域である原子炉容器1202の頂部付近に配置されている。したがって、二次冷却材(一部の場合において、塩であってもよい)の放射化の程度は、炉心付近に流路を定める通常の熱交換器よりも、はるかに低い。さらに、複数の熱交換器コアのコンパクトな構成では、二次冷却材を中性子放射化から保護するために必要となる遮蔽1206がはるかに少ない。さらに、一部の実施形態において、記載された複数の熱交換器コアおよび原子炉容器内におけるそれらの様々な配置によって、原子炉容器内の塩放射化に関する問題を改善するナトリウム‐塩熱交換器が可能となる。
【0104】
本明細書に記載された熱交換器コアの構成では、個々のコアは、別個に構造的に支持されていてもよい。これにより、1つの熱交換器コアが他の熱交換器コアから機械的に分離され、個々のコアが互いに独立して変形および膨張できるようになる。このように、熱交換器コアは、熱応力を個別に扱うが、互いに流体的に結合されたままであってもよい。
【0105】
通常、中間ループが、SFR内に設けられている。当該SFRでは、一次ナトリウムが熱エネルギーを中間ナトリウムループへ伝達する。次いで、中間ナトリウムループは、第3ループへ熱エネルギーを送達する。当該第3ループには、水、塩、または他の何らかの作動流体が含まれてもよい。図示され本明細書に記載された小型熱交換器を利用することによって、当該中間ループが除かれ得る。その結果、ナトリウム/塩熱交換器に必要となるサイズ、および、塩の放射化の回避等の、従来の実施における問題のうちの多くを回避するナトリウム‐塩熱交換器が得られる。
【0106】
本明細書に記載された複数の実施形態のうちの任意の実施形態と同様に、熱交換器コアによって、高温流路と低温流路との間に第3流体流路が定められ得る。第3流体流路は、漏れ検出のために使用されてもよく、さらに、一次冷却材を二次冷却材から分離するために使用されてもよい。第3流体が熱交換器を出るとき、当該第3流体を、一次冷却材材料または二次冷却材材料の含有に関して検査することができる。例えば、ヘリウムに第3流体流路を通過させ、その出口において、一次冷却材または二次冷却材の存在について検査することができる。
【0107】
一部の実施例では、第3流体流路は、熱交換器コア内における高温プレートおよび低温プレートの酸化を促進するために使用されてもよい。例えば、酸化性流体(oxidizing fluid)(例えば、CO等)に第3流体流路を通過させることで、流れのチャネル内に酸化層が形成されるようにしてもよい。酸化層は、トリチウム等の放射化生成物の移動(migration)を阻害することが示されている。
【0108】
一部の場合において、製造時に、熱交換器コア内に酸化層を形成することができる。例えば、複数の熱交換コアプレートを形成するとき、例えば、付加製造(additive manufacturing)、蒸着、プリンティング、または他の何らかの材料付加処理を通じて、複数のプレートに材料を付加することで複数の当該プレート上に酸化層を形成し、その後、それらを互いに結合してもよい。
【0109】
さらに、第3流体流路は、トリチウム等の放射化生成物を引き寄せるために使用されてもよい。一例として、塩へ渡る前にトリチウムを捕捉することができる流体(ヘリウム等)に、第3流体経路を通過させてもよい。二次冷却材に引き寄せられるトリチウムよりも多くのトリチウムが、第3流体に引き寄せられてもよい。次いで、捕捉されたトリチウムを、ヘリウムから除去することができる。一方法は、第1流体流路、第2流体流路および第3流体流路を有する熱交換器コアを形成する工程を含んでもよい。本方法は、トリチウム等の放射化生成物を引き寄せるように選択された第3流体に、第3流体流路を通過させる工程を含んでもよい。本方法は、第3流体が熱交換器コアを通過した後に当該第3流体を回収し、次いで、放射化生成物を隔離する工程をさらに含んでもよい。一部の場合において、本方法は、第4流体に第3流体流路を通過させる工程を含んでもよい。当該第4流体は、漏れ検出、酸化層の形成、または他の何らかの目的等の、別の目的に使用されてもよい。
【0110】
本明細書では、「熱交換器」という用語および「複数の熱交換器コア(heat exchanger cores)」という用語が使用されている。一部の場合において、熱交換器は、1または複数の熱交換器コアから形成されていてもよい。このように、単一のコアが他の熱交換器コアとは独立して独立した熱交換器として機能し得るとき、これらの用語は互換的に使用され得る。一部の場合において、複数の熱交換器コアは協働し、当該複数の熱交換器コアがまとめて1つの熱交換器として指し示され得る。
【0111】
本開示は、例示的な実施形態を提示するものである。それゆえ、本開示は、いかなる点においても、本開示の実施形態の範囲および添付した特許請求の範囲を限定することを意図するものではない。特定された構成要素、機能およびそれらの関係の実装を示す機能構成ブロックの助けを借りつつ、実施形態を上述してきた。本明細書において、これらの機能的構成要素の境界は、説明の便宜上、任意に定められている。特定された機能およびそれらの関係が適切に実施される程度に、代替的な境界が定められてもよい。
【0112】
本開示の実施形態の一般的性質は、本開示の実施形態の一般的思想から逸脱することなく、当業者の知識を適用することで、様々な応用のために特定の実施形態を他者が過度の実験なしに容易に修正および/または適合し得る程度に十分に、かかる特定の実施形態の前述した説明によって明らかとなるだろう。それゆえ、かかる適合および修正は、本明細書に提示された教示および導きに基づいて、開示された実施形態の均等物の意味および範囲の中にあることが意図されている。本明細書における語法または用語は、本明細書に提示された教示および導きに照らして、当該本明細書の用語または語法が当業者によって解釈されるように説明することを目的とするものであって、限定を目的とするものではない。
【0113】
本開示の実施形態の広さおよび範囲は、上述した例示的実施形態のいずれの実施形態によっても限定されるべきではなく、以下の特許請求の範囲およびその均等物に従ってのみ画定されるべきである。
【0114】
別段の定めのない限り、または、使用された文脈内で別様に理解されない限り、とりわけ「し得る」、「し得るだろう」、「してもよいだろう」または「してもよい」等の、条件に関する語は概して、特定の実装形態が特定の特徴、要素および/または動作を含み得る一方で、他の実装形態が特定の特徴、要素および/または動作を含まないことを伝えることを意図したものである。このように、かかる条件に関する語は概して、特徴、要素および/もしくは動作が何らかの形で、1もしくは複数の実装形態に求められることを意図するものではなく、または、これらの特徴、要素および/もしくは動作が、任意の特定の実装形態に含まれるものなのか、あるいは、これらの特徴、要素および/もしくは動作が、任意の特定の実装形態において実行されるべきものなのかを判定するための論理が、ユーザ入力もしくはプロンプトの有無とは無関係に、1もしくは複数の実装形態に必ず含まれることを意図するものではない。
【0115】
当業者は、本明細書に開示される任意のプロセスまたは方法が多くの方法で修正され得ることを認識するであろう。本明細書に記載および/または図示された工程の工程パラメータおよび配列は単なる例として与えられており、所望に応じて変更することができる。例えば、本明細書で図示および/または説明される工程は特定の順序で示され、または説明され得るが、これらの工程は必ずしも図示または説明される順序で実行される必要はない。
【0116】
本明細書で説明および/または図示された様々な例示的な方法は、本明細書で説明または図示されたステップのうちの1つ以上のものを省略することもでき、または開示されたステップに加えて追加のステップを備えることもできる。さらに、本明細書で開示される任意の方法の工程は、本明細書で開示される任意の他の方法の任意の1つ以上の工程と組み合わせることができる。
【0117】
もちろん、本開示の様々な特徴を説明する目的のために、要素および/または方法の考えられる全ての組合せについて述べることは不可能である。しかしながら、当業者には、開示された特徴のさらなる多数の組合せおよび置換が可能であることが認識される。したがって、本開示の範囲または趣旨から逸脱することなく、本開示に対して様々な修正が行われ得る。さらに、明細書および添付した図面について考察することで、また、本明細書に提示された、開示された実施形態を実施することで、本開示のその他の実施形態が明らかとなり得る。本明細書および添付した図面において提示された実施例は、あらゆる点において、限定的なものではなく、例示的なものであるとみなされるべきである。本明細書には特定の用語が用いられているが、それらの用語は一般的かつ説明的な意味においてのみ使用されており、限定を目的として使用されたものではない。
【0118】
特に断らない限り、明細書で使用される用語「接続されている」、「結合されている」、「流体連通する」(およびそれらの派生語)は直接的および間接的(すなわち、他の要素または構成要素を介して)接続の両方を可能にするものとして解釈されるべきである。さらに、明細書で使用される用語「a」または「an」は「のうちの少なくとも1つ」を意味するものとして解釈されるべきである。最後に、使用を容易にするために、明細書で使用される用語「含む」および「有する」(およびそれらの派生語)は、単語「備える」と交換可能であり、同じ意味を有する。
【0119】
以上に述べた事柄と添付の図面とから、本明細書には特定の実装形態が例示の目的で記載されているが、添付した特許請求の範囲の趣旨および範囲ならびに特許請求の範囲において列挙された要件から逸脱せずに、様々な修正が行われ得ることが理解されるだろう。加えて、特定の態様が特定の特許請求の形態において以下に提示されているが、本発明者らは、利用可能な任意の特許請求の形態において、様々な態様を想定している。例えば、一部の態様のみが特定の構成において具現化されるものとして目下、説明がなされ得る一方で、その他の態様が同様に、そのようにして具現化され得る。本開示の利益を得る当業者には明らかであろうような様々な修正および変更が行われ得る。全てのかかる修正および変更を包含することが意図されている。したがって、限定的な意味ではなく、むしろ例示的な意味において、上記の説明が考察されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0120】
図1A】一部の実施形態による、高温流体から低温流体へ熱エネルギーを伝達するためのプレート式熱交換器の模式図である。
図1B】一部の実施形態による、同軸の入口および出口を有するプレート式熱交換器の模式図である。
図2a】一部の実施形態による、シェルアンドチューブ式熱交換器を有するナトリウム冷却高速炉の模式図である。
図2B】一部の実施形態による、プレート式熱交換器を有するナトリウム冷却高速炉の模式図である。
図3A】一部の実施形態による、インライン構成を有するプレート式熱交換器の図である。
図3B】一部の実施形態による、図3Aのプレート式熱交換器の断面図である。
図4B】一部の実施形態による、ラテラル構成を有するプレート式熱交換器の図である。
図4B】一部の実施形態による、図4Aのプレート式熱交換器の断面図である。
図5】一部の実施形態による、ヘッダに結合された複数の熱交換器コアの一構成を示す。
図6】一部の実施形態による、配管によってヘッダに結合された複数の熱交換器コアの一構成を示す。
図7】一部の実施形態による、円弧状に配置された複数の熱交換器コアを示す。
図8】一部の実施形態による、積重ね構成において配置された複数の熱交換器コアを示す。
図9】一部の実施形態による、原子炉容器の一部分の周りに周方向に配置された複数の熱交換器コアを示す。
図10】一部の実施形態による、列および行に配置され、かつ原子炉容器の内壁に沿って延びるように構成された、複数の熱交換器コアを示す。
図11】一部の実施形態による、配管によってヘッダと流体連通する、垂直線に対してある角度で配置された複数の熱交換器コアを示す。
図12】一部の実施形態による、原子炉容器内の複数の熱交換器コアの構成の例示的な配置を示す。
図1A-1B】
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【国際調査報告】