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特表2023-538075長時間作用のインサイチュ形成/ゲル化組成物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-06
(54)【発明の名称】長時間作用のインサイチュ形成/ゲル化組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/00 20060101AFI20230830BHJP
   A61K 31/445 20060101ALI20230830BHJP
   A61K 31/5415 20060101ALI20230830BHJP
   A61K 31/573 20060101ALI20230830BHJP
   A61K 31/16 20060101ALI20230830BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20230830BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20230830BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20230830BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20230830BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20230830BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20230830BHJP
   A61K 47/20 20060101ALI20230830BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20230830BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20230830BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20230830BHJP
【FI】
A61K45/00
A61K31/445
A61K31/5415
A61K31/573
A61K31/16
A61K47/36
A61K47/10
A61K47/38
A61K47/42
A61K47/34
A61K47/22
A61K47/20
A61K9/10
A61K9/06
A61P29/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023511926
(86)(22)【出願日】2021-08-17
(85)【翻訳文提出日】2023-03-07
(86)【国際出願番号】 US2021046237
(87)【国際公開番号】W WO2022040141
(87)【国際公開日】2022-02-24
(31)【優先権主張番号】63/066,547
(32)【優先日】2020-08-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BRIJ
(71)【出願人】
【識別番号】522499151
【氏名又は名称】ヒューマンウェル ファーマシューティカル ユーエス
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】タン, ジウェン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン, ジュン
(72)【発明者】
【氏名】ユエ, バオフア
(72)【発明者】
【氏名】ヘ, チャン
(72)【発明者】
【氏名】リー, ユンフア
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA09
4C076AA22
4C076AA94
4C076BB11
4C076BB15
4C076BB16
4C076CC01
4C076CC04
4C076DD09
4C076DD38
4C076DD55
4C076DD60
4C076EE23
4C076EE32
4C076EE43
4C076FF31
4C076FF32
4C076FF35
4C076GG01
4C084AA17
4C084MA05
4C084MA23
4C084MA28
4C084MA66
4C084NA12
4C084NA14
4C084ZA08
4C084ZA21
4C084ZB11
4C086AA01
4C086AA10
4C086BC21
4C086BC89
4C086DA10
4C086GA10
4C086GA16
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA23
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4C086MA66
4C086NA12
4C086NA14
4C086ZA08
4C086ZA21
4C086ZB11
4C206AA01
4C206AA10
4C206CB19
4C206FA31
4C206GA09
4C206MA03
4C206MA05
4C206MA43
4C206MA48
4C206MA86
4C206NA12
4C206NA14
4C206ZA08
4C206ZA21
4C206ZB11
(57)【要約】
本発明は、1つ以上の活性医薬成分と、少なくとも1つの生体適合性ポリマー賦形剤と、少なくとも1つの生体適合性溶媒とを含む持続放出製剤、持続放出製剤を調製するための方法、及び局所疼痛の治療を必要とする対象においてそれを治療するための方法を提供する。一態様において、本開示は、持続放出製剤であって、前記持続放出製剤が、a.1つ以上の活性医薬成分と、b.少なくとも1つの生体適合性ポリマー賦形剤と、c.少なくとも1つの生体適合性溶媒と、を含み、前記活性医薬成分のうちの1つが、約0.5μm~約100.0μmの範囲の粒径分布を有する、持続放出製剤を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
持続放出製剤であって、前記持続放出製剤が、
a. 1つ以上の活性医薬成分と、
b. 少なくとも1つの生体適合性ポリマー賦形剤と、
c. 少なくとも1つの生体適合性溶媒と、を含み、
前記活性医薬成分のうちの1つが、約0.5μm~約100.0μmの範囲の粒径分布を有する、持続放出製剤。
【請求項2】
前記1つ以上の医薬成分が、麻酔薬、抗炎症薬、制吐薬、又はそれらの組み合わせである、請求項1に記載の持続放出製剤。
【請求項3】
前記1つ以上の活性医薬成分が、ブピバカイン、ロピバカイン、レボブピバカイン、リドカイン、ブプレノルフィン、セレコキシブ、メロキシカム、デキサメタゾン、ベタメタゾン、ベタメタゾン-21-アセテート、トリアムシノロンアセトニド、ネパフェナク、アプレピタント、cox1阻害剤、cox2阻害剤、ロラピタント、ホスアプレピタント、グラニセトロン、オンダンセトロン、パロノセトロン、プロクロルペラジン、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、ヒアルロン酸の架橋誘導体、又はそれらの組み合わせを含む、請求項1又は2に記載の持続放出製剤。
【請求項4】
前記少なくとも1つの生体適合性ポリマー賦形剤が、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、ヒアルロン酸の架橋誘導体、PEG3350、PEG4000、ポリエチレンオキシド(PolyOX)、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、コラーゲン、カルボキシメチルセルロース、又はそれらの組み合わせを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の持続放出製剤。
【請求項5】
前記少なくとも1つの生体適合性溶媒が、PEG200、PEG300、PEG400、EtOH、水、ポリソルベート20、ポリソルベート80、プロピレングリコール、NMP、DMSO、ベンジルアルコール、グリセロール、又はそれらの組み合わせを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の持続放出製剤。
【請求項6】
前記持続放出製剤が、懸濁液、粘性混合物、又はゲルである、請求項1~5のいずれか一項に記載の持続放出製剤。
【請求項7】
前記持続放出製剤が、前記1つ以上の活性医薬成分、前記少なくとも1つの生体適合性ポリマー賦形剤、及び前記少なくとも1つの生体適合性溶媒の部分的ゲルである、請求項1~6のいずれか一項に記載の持続放出製剤。
【請求項8】
前記持続放出製剤が、水又は生理学的流体と接触すると、インサイチュゲルを形成する、請求項1~7のいずれか一項に記載の持続放出製剤。
【請求項9】
前記1つ以上の活性医薬成分が、約0.01重量%~約20.0重量%(全持続放出製剤のw/w)の範囲である、請求項1~8のいずれか一項に記載の持続放出製剤。
【請求項10】
前記少なくとも1つの生体適合性ポリマー賦形剤が、約0.01重量%~約20.0重量%(全持続放出製剤のw/w)の範囲である、請求項1~9のいずれか一項に記載の持続放出製剤。
【請求項11】
前記少なくとも1つの生体適合性溶媒が、約5.0重量%~約90.0重量%(全持続放出製剤のw/w)の範囲である、請求項1~10のいずれか一項に記載の持続放出製剤。
【請求項12】
持続放出製剤を調製する方法であって、前記方法が、
1つ以上の活性医薬成分と、少なくとも1つの生体適合性ポリマー賦形剤と、少なくとも1つの生体適合性溶媒とを接触させることを含み、
前記活性医薬成分のうちの1つが、約0.5μm~約100.0μmの範囲の粒径分布を有する、方法。
【請求項13】
前記1つ以上の活性医薬成分、前記少なくとも1つの生体適合性ポリマー賦形剤、及び前記少なくとも1つの溶媒が、段階的に、任意の順序で、又は全て一度に添加され得る、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記活性医薬成分が、ブピバカイン、ロピバカイン、レボブピバカイン、リドカイン、ブプレノルフィン、セレコキシブ、メロキシカム、デキサメタゾン、ベタメタゾン、ベタメタゾン-21-アセテート、トリアムシノロンアセトニド、ネパフェナク、アプレピタント、cox1阻害剤、cox2阻害剤、ロラピタント、ホスアプレピタント、グラニセトロン、オンダンセトロン、パロノセトロン、プロクロルペラジン、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、ヒアルロン酸の架橋誘導体、又はそれらの組み合わせを含む、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
前記少なくとも1つの生体適合性ポリマー賦形剤が、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、ヒアルロン酸の架橋誘導体、PEG3350、PEG4000、ポリエチレンオキシド(PolyOX)、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、コラーゲン、カルボキシメチルセルロース、又はそれらの組み合わせを含む、請求項12~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記少なくとも1つの生体適合性溶媒が、PEG200、PEG300、PEG400、EtOH、水、ポリソルベート20、ポリソルベート80、プロピレングリコール、NMP、DMSO、ベンジルアルコール、グリセロール、又はそれらの組み合わせを含む、請求項12~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記持続放出製剤が、懸濁液、粘性混合物、又はゲルである、請求項12~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
局所疼痛の治療を必要とする対象においてそれを治療する方法であって、請求項1に記載の持続放出製剤を局所的に投与することを含む、方法。
【請求項19】
前記対象が、ヒト又は非ヒト動物である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記持続放出製剤が、投与後、水又は生理学的流体と接触すると、インサイチュゲルを形成する、請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年8月17日に米国特許商標庁に出願された米国仮特許出願第63/066,547号の利益を主張し、これらの全ては、全ての目的について、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、概して、持続放出製剤、持続放出製剤を調製するための方法、及び続放出製剤を使用する方法に関し、これらの持続放出製剤は、インサイチュ形成ゲル化製剤である。
【背景技術】
【0003】
持続放出薬物送達システムは、バイオ医薬品、薬物動態、及び薬力学的特性を最適化することによって、薬物の安全性及び有効性を改善する。従来の剤形と比較して、持続放出薬物送達システムは、患者のコンプライアンスの改善、定常状態の薬物レベル、バイオアベイラビリティの増強、副作用の減少、医療費の低下などのいくつかの利点を有する。しかしながら、持続放出薬物送達システムの開発は、種々の薬物の複雑な生物学的相互作用及び独自の物理化学的特性のために困難である。したがって、疼痛管理、抗ウイルス、がん療法、CNSなどの多くの治療分野では、長時間作用の製品に対する需要及び市場が依然として満たされていない。
【0004】
局所麻酔薬の有効性は通常、数時間持続し、これはほとんどの外科的又は侵襲的な診断プロセスをカバーするのに十分な長さである。しかしながら、外科的プロセスの後、患者はまだはるかに長い期間疼痛に苦しむ。単に麻酔用量を増加させることによって有効性期間を増加させることは、深刻な毒性作用を引き起こす可能性がある。この術後疼痛(POP)を治療するための現在の解決策は、主に、短時間の局所麻酔薬の繰り返し注射、局所麻酔ポンプ、又は患者管理鎮痛法(PCA)などの異なる経路を介した鎮痛剤の連続投与に依存する。これらの方法の多くは不便であり、オピオイド薬の使用が含まれる。特にPCAを介したオピオイド鎮痛剤の使用は、可能性のある麻薬中毒、嘔吐及び呼吸抑制などの深刻な安全性の懸念を引き起こす可能性がある。したがって、この目的のために長時間作用の鎮痛製品の開発の高いニーズがある。延長放出注射用製剤は、そのニーズに対処するために、持続放出製剤ビヒクルに1つ以上の鎮痛成分を担持させることによって開発された。得られた複合注射製剤は、POPのための1回の投与を可能にするだけでなく、オピオイド薬物の使用を低減させる(US2013/0189349A1、US8,834,921B2、US9,668,974、US9,694,079、US5,244,678)。
【0005】
生分解性ポリマー(US2015/0182512A1、US9,694,079B2)及び粘性油製剤(US10,206,876B2)及びリポソーム(US8,834,921B2)などの種々のアプローチが、鎮痛剤を担持し、放出プロファイルを延長するためのビヒクルとして開発されている。モルヒネ、ブピバカイン、ロピバカイン、及びブプレノルフィンなどのオピオイド及び非オピオイド鎮痛剤の両方が、これらの新規な延長放出ビヒクルに担持されている。
【0006】
この分野で最初にFDAが承認した長時間作用の局所麻酔製品であるExparel(登録商標)は、2012年から市場に出ており、ブピバカインを担持するための送達ビヒクルとして多胞性リポソームを利用して、最大72時間の長時間作用の麻酔効果を達成している。しかしながら、多胞性リポソーム製品の製造は困難である。リポソーム製品の薬物放出及び麻酔有効期間も限定されている。
【0007】
US10,213,510には、Heron Therapeutics,Inc.によって開発されたポリマー製剤が記載されている。ポリオルトエステル材料は、ブピバカイン及び非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)であるメロキシカムを担持するためのビヒクルとして使用され、最大72時間の長時間作用の麻酔効果を達成した。この製品、ZynReliefは、術後疼痛管理のために承認され、ブピバカイン及びメロキシカムの一貫した送達のための制御拡散Biochronomer(登録商標)ポリマーで製剤化されている。動物及びヒトの臨床試験では、メロキシカムが有効性を延長するために重要であり、重篤な心血管副作用のリスクの増加を引き起こす可能性があることが証明された。このポリマーは、化学療法誘導性吐き気及び嘔吐のためのグラニセトロンの延長放出のために、別の市販製品SUSTOLにも使用されている。ただし、この製剤は粘性が高く、粘性低減成分を添加することなく注射することができない。
【0008】
Durectは、薬物物質を溶解させるためにスクロースアセテートイソブチレート(SAIB)及びN-メチルピロリドン(NMP)溶媒を使用するSABER長時間作用プラットフォームを開発した(US8,153,149、「Controlled delivery system」)。この製品は、注射後に粘性ゲルマトリックスを形成し、長期間にわたって薬物を放出する。安全性及び有効性の懸念により、製品POSIMIRは、直接関節鏡可視化の下で肩峰下腔への投与についてのみが承認されている。
【0009】
US8,236,292B2は、中性ジアシル脂質/トコフェロール、リン脂質、及び生体適合性低粘性有機溶媒を利用して、活性医薬成分を溶解又は分散させ、液晶相構造を有する低粘性混合物を調製する。この混合物は、水性と接触すると粘性ゲルを形成し、薬物の遅い放出を示す。このFluidCrystalシステムは、小分子及びペプチドなどの生体分子の両方を送達することができる(US8,865,021B2、「Compositions of lipids and cationic peptides」)。多くの製品が、FluidCrystal技術を使用してCamurusによって開発されている。同様の長時間作用技術は、長時間作用の局所麻酔の目的のためにPainReform Ltd.によっても報告されている(US9,849,088、「Depot formulations of a hydrophobic active ingredient and methods for preparation thereof」)。プロリポソーム油製剤は、投与後にリポソーム構造を形成して、ロピバカインの延長放出を達成する。これらの製剤からの延長された有効性が報告されているが、利益は限定されている。
【0010】
Xaracollは、鼠径ヘルニア修復手術後、最大24時間、術後局所鎮痛を生成するためのFDA承認の薬物/デバイス組み合わせ製品である。それは、コラーゲンマトリックスを使用して、手術部位におけるブピバカインの放出を延長する(USRE47,826、「Drug delivery device for providing local analgesia, local anesthesia or nerve blockage」)。しかしながら、手術部位におけるインプラントマトリックスの必要性により、Xaracollの適用が限定される。
【0011】
台湾リポソームは、多層リポソームを利用して、術後疼痛管理のためのロピバカインを担持する(WO2020/176568A1、「Pharmaceutical compositions for use in treating pain」)。臨床結果は、ブピバカイン注射を使用する標準的治療と比較して限定された利益があることを示した。
【0012】
Lipocure及びVirPaxは、多層リポソームをアルギン酸ヒドロゲルと混合することにより、ブピバカイン担持リポソームヒドロゲルを調製した。多層リポソーム及びアルギン酸ヒドロゲルの組み合わせは、二重長時間作用機序を介して薬物ペイロードの延長放出を提供する。しかしながら、製造プロセスは複雑で、課題がある。
【0013】
PLGAは、生分解性及び生体適合性材料である。それは、制御放出医薬製品を製造するために広く使用されている。剤形には、ミクロスフィア、インサイチュ形成、ナノ粒子などが含まれる。Alkermesは、例えば、リスペリドン、ナルトレキソンなどの薬物をPLGA微小粒子に担持するために、水中油型エマルション法を使用した(US5,792,477、生物学的活性薬剤を含有する延長された貯蔵寿命の生分解性生体適合性微粒子の調製)。体内に注射した後、薬物は、2週間から数ヶ月まで長期間放出され得る。Liquidiaは、ブピバカインの放出を制御するために使用され得る、設計された形状及び径を有するPLGA微粒子を製造するためのPRINT技術を開発した(US9,744,715、パターン化材料を製造するための方法)。Indiviorは、ブプレノルフィン及びPLGAをN-メチル-2-ピロリドン中に溶解させるためのインサイチュ形成製剤を開発した(US10,198,218-「Injectable flowable composition comprising buprenorphine」)。それが体内に注射されると、内部に閉じ込められたブプレノルフィンを有するPLGAゲルマトリックスを形成する。ブプレノルフィンは、PLGAゲルマトリックスから最大1ヶ月間ゆっくりと放出される。しかしながら、PLGA材料は注射部位に長期間(2週間から数ヶ月)留まるが、1週間より短い用途には理想的ではない。
【0014】
Amaca Theraは、ヒアルロン酸及びメチルセルロースを使用したヒドロゲル薬物送達システムを開発した。高濃度のヒアルロン酸及びメチルセルロースは、製品の高い粘性により、製造及び臨床実践を困難にする。
【0015】
様々な複雑な製剤マトリックス材料の中で、ヒアルロン酸は、その優れた生体適合性及び生分解性により理想的な候補材料である。ヒアルロン酸は負に荷電した多糖類材料であり、人体中で自然に生じ、ヒアルロニダーゼによって徐々に分解される。リドカイン、ロピバカイン、ブピバカイン及び他の局所麻酔は、ヒアルロン酸含有マトリックスに充填されている。延長放出マトリックスを調製するために、ヒアルロン酸は、多くの場合、ある程度架橋され、水又は水溶液中に溶解される。しかしながら、ヒアルロン酸製剤は、延長放出性能を有する製剤の設計を限定する高粘性の欠点に苦しむ。(US10,098,961B2「Hyaluronic acid composition」、KR102030508B1-「Hyaluronic acid composition」、KR20140025117A「Composition of anesthetic comprising hyaluronic acid」、WO2019/121694A1「Injectable compositions of cross-linked hyaluronic acid and bupivacaine, and uses thereof」、JP4334620B2「A pharmaceutical product comprising a salt of hyaluronic acid with a local anesthetic」)。
【0016】
上記の利点の他に、この分野にはまだ制限及び満たされていないニーズがある。最初に市販された複合製剤製品であるExparelは、その有効性が最大72時間持続すると主張しているが、この分野ではより長い有効性に対する依然満たされていないニーズがある。ポリマー製剤は、より長い有効性を達成する可能性が高いが、ポリマー製剤の粘性は通常非常に高く、それは投与を困難にする。様々な他の材料の使用はまた、臨床試験中に観察された安全性の懸念及び無視できない副作用を引き起こした。ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、及びヒアルロン酸の架橋誘導体は、この分野で有望な適用を示す高い生体適合性の材料であるが、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、及びヒアルロン酸の架橋誘導体の性能は、好適な製剤を設計することによって改善される必要がある。長時間作用の局所麻酔効果のための低い毒性及び高い生体適合性を有する改善された製剤を有し、術後疼痛管理を容易にし、オピオイド薬物の使用を低減することが望ましいであろう。
【0017】
必要とされるのは、ポリマーと部分的ゲル化を形成する、生体適合性賦形剤及び分散/溶解した薬物含有量を有する溶媒を使用した持続放出製剤である。部分的ゲル化ポリマーは、体内に投与した後、更に水和され、インサイチュゲルマトリックスを形成することができる。水和されたインサイチュゲルマトリックスは、長時間作用の局所麻酔効果を達成するために、周囲の組織への薬物ペイロードの持続可能な放出を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】時間に対する2つの新規製剤の活性医薬成分のパーセンテージを表す。
図2A】一定期間のインビトロ放出研究にわたる透析バッグ中のヒアルロン酸ナトリウムのゲル化及び活性医薬成分の放出を示す写真である。図2Aは、インビトロ放出研究におけるゲル化及び活性医薬成分を示す0分後の写真である。図2Bは、インビトロ放出研究におけるゲル化及び活性医薬成分を示す1時間後の写真である。図2Cは、インビトロ放出研究におけるゲル化及び活性医薬成分を示す2時間後の写真である。図2Dは、インビトロ放出研究におけるゲル化及び活性医薬成分を示す4時間後の写真である。図2Eは、インビトロ放出研究におけるゲル化及び活性医薬成分を示す6時間後の写真である。図2Fは、インビトロ放出研究におけるゲル化及び活性医薬成分を示す24時間後の写真である。インビトロ放出研究が進行するにつれて、製剤はより透明になり、研究の終わりに透明になった。
図2B】同上。
図2C】同上。
図2D】同上。
図2E】同上。
図2F】同上。
図3A】一定期間のインビトロ放出研究にわたる透析バッグ中のヒアルロン酸ナトリウムのゲル化及び活性医薬成分の放出の別の視点を示す写真である。図3Aは、インビトロ放出研究におけるゲル化及び活性医薬成分を示す0分後の写真である。図3Bは、インビトロ放出研究におけるゲル化及び活性医薬成分を示す1時間後の写真である。図3Cは、インビトロ放出研究におけるゲル化及び活性医薬成分を示す2時間後の写真である。図3Dは、インビトロ放出研究におけるゲル化及び活性医薬成分を示す4時間後の写真である。図3Eは、インビトロ放出研究におけるゲル化及び活性医薬成分を示す6時間後の写真である。図3Fは、インビトロ放出研究におけるゲル化及び活性医薬成分を示す24時間後の写真である。インビトロ放出研究が進行するにつれて、製剤はより透明になり、研究の終わりに透明になった。
図3B】同上。
図3C】同上。
図3D】同上。
図3E】同上。
図3F】同上。
図4】開示された4つの製剤中の活性医薬成分のインビトロ放出を示すグラフを示す。
図5】製剤1及び2対レボブピバカインHClの直接投与のラット坐骨遮断研究の結果を示し、グラフは、応答(疼痛)対時間をプロットしている。製剤1及び2は、レボブピバカインHCl試料と比較して延長された有効性を示し、懸濁液製剤の優れた有効性を示している。これら2つの製剤における薬物濃度の差は、有効性に顕著に影響を及ぼさなかった。
図6】製剤3、4及び5対ブピバカインHClの直接投与のラット坐骨遮断研究の結果を示し、グラフは、応答(疼痛)対時間をプロットしている。製剤3は、ブピバカインHClと比較して延長された有効性を示す。製剤4及び5におけるベタメタゾン-21-アセテートの添加は、有効性期間を更に改善した。
図7】製剤6及び7のラット坐骨遮断研究の結果を示し、グラフは、応答(疼痛)対時間をプロットしている。製剤6及び7の両方とも、同様の有効性期間を示した。これら2つの製剤において使用されたヒアルロン酸ナトリウムの異なる量は、ラット坐骨遮断モデルにおける有効性に顕著に影響を及ぼさなかった。
図8】ミニブタ皮膚切開モデルの動物研究の結果を示し、グラフは、生理食塩水、レボブピバカインHCl、及び製剤8を比較する、応答(疼痛)対時間をプロットしている。生理食塩水を注射されたミニブタは、手術の30分後に疼痛を感じる可能性がある。イソフルラン麻酔の効果が弱まるにつれて、生理食塩水群のミニブタの応答力は劇的に低下した。レボブピバカインHCl注射の有効性は、約4時間持続することができ、これは、報告された文献と同様である。製剤8の麻酔有効性は、レボブピバカインHClよりも顕著に長く、40~56時間にわたって持続した。
【発明を実施するための形態】
【0019】
発明の概要
一態様では、本明細書で提供されるのは、持続放出製剤である。持続放出製剤は、A1つ以上の活性医薬成分と、B少なくとも1つの生体適合性ポリマー賦形剤と、C少なくとも1つの溶媒とを含み、1つの活性医薬成分は、約0.5μm~約100.0μmの範囲の粒径分布を有する。これらの製剤は、水又は生理学的流体と接触すると、インサイチュゲルを形成する。
【0020】
別の態様では、本明細書で提供されるのは、持続放出製剤を調製する方法であって、方法は、1つ以上の活性医薬成分と、少なくとも1つの生体適合性ポリマー賦形剤と、少なくとも1つの溶媒とを接触させることを含み、活性医薬成分のうちの1つは、約0.5μm~約100.0μmの範囲の粒径分布を有する、方法である。
【0021】
更に別の態様では、本明細書で提供されるのは、局所疼痛の治療を必要とする対象においてそれを治療する方法であって、上記の持続放出製剤を局所的に投与することを含む、方法である。
【0022】
本発明の他の特徴及び反復は、以下でより詳細に記載される。
発明を実施するための形態
【0023】
一態様では、本開示は、持続放出製剤を提供する。持続放出製剤は、それを必要とする対象の組織領域に局所的に適用される場合、長期間の有効性を提供する。これらの持続放出製剤は、局所疼痛の治療を必要とする対象におけるその治療に有用である。
【0024】
(I)持続放出製剤
本開示は、持続放出製剤を包含する。これらの持続放出製剤は、A1つ以上の活性医薬成分と、B少なくとも1つの生体適合性ポリマー賦形剤と、C少なくとも1つの生体適合性溶媒とを含み、少なくとも1つの活性医薬成分は、約0.5μm~約100.0μmの範囲の粒径分布を有する。
【0025】
A 1つ以上の活性医薬成分
持続放出製剤は、1つ以上の活性医薬成分を含む。持続放出製剤中の活性医薬成分のうちの1つは、約0.5μm~約100.0μmの範囲の粒径分布を有する。
【0026】
1つ以上の活性医薬成分は、麻酔薬、抗炎症薬(ステロイド又は非ステロイド)、制吐薬、又はそれらの組み合わせである。概して、1つ以上の活性成分は、ブピバカイン、ロピバカイン、レボブピバカイン、リドカイン、ブプレノルフィン、セレコキシブ、メロキシカム、デキサメタゾン、ベタメタゾン、ベタメタゾン-21-アセテート、トリアムシノロンアセトニド、ネパフェナク、アプレピタント、cox1阻害剤、cox2阻害剤、ロラピタント、ホスアプレピタント、グラニセトロン、オンダンセトロン、パロノセトロン、プロクロルペラジン、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、ヒアルロン酸の架橋誘導体、又はそれらの組み合わせを含む。
【0027】
概して、これらの活性医薬成分のうちの1つは、約0.5μm~約100.0μmの範囲の粒径分布を有する。様々な実施形態では、これらの活性医薬成分のうちのこれら1つのうちの1つは、その間の全ての部分範囲を含む、約0.5μm~約100.0μm、約5μm~約75μm、約5μm~約50μm、又は約5μm~約15μmの範囲の粒径分布を有する。
【0028】
概して、1つ以上の活性医薬成分は、約0.01重量%~約20.0重量%(全持続放出製剤のw/w)の範囲である。様々な実施形態では、1つ以上の活性医薬成分は、その間の全ての部分範囲を含む、0.01重量%~約20.0重量%、約1.0重量%~約15.0重量%、約2.5重量%~約10.0重量%、又は5.0重量%~約7.5重量%の範囲の製剤の全重量の重量%を有する。
【0029】
B 少なくとも1つの生体適合性ポリマー賦形剤
持続放出製剤は、少なくとも1つの生体適合性ポリマー賦形剤を含む。好適な生体適合性ポリマー賦形剤の非限定的な例は、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、ヒアルロン酸の架橋誘導体、PEG3350、PEG4000、ポリエチレンオキシド(PolyOX)、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、コラーゲン、カルボキシメチルセルロース、又はそれらの組み合わせであり得る。
【0030】
概して、少なくとも1つの生体適合性ポリマー賦形剤は、約0.01重量%~約20.0重量%(全持続放出製剤のw/w)の範囲である。様々な実施形態では、少なくとも生体適合性のポリマー賦形剤は、その間の全ての部分範囲を含む、約0.01重量%~約20.0重量%、約1.0重量%~約15.0重量%、又は約5.0重量%~約10.0重量%の範囲である。
【0031】
C 少なくとも1つの生体適合性溶媒
持続放出製剤は、少なくとも1つの生体適合性溶媒を含む。少なくとも1つの溶媒の非限定的な例は、PEG200、PEG300、PEG400、EtOH、水、ポリソルベート20、ポリソルベート80、プロピレングリコール、NMP、DMSO、ベンジルアルコール、グリセロール、又はそれらの組み合わせであり得る。
【0032】
概して、少なくとも1つの生体適合性溶媒は、約5.0重量%~約90.0重量%(全持続放出製剤のw/w)の範囲である。様々な実施形態では、少なくとも1つの生体適合性溶媒は、その間の全ての部分範囲を含む、約5.0重量%~約90.0重量%、約10.0重量%~約75重量%、又は約20.0重量%~約50.0重量%の範囲である。
【0033】
D 持続放出製剤の特性
本明細書に詳述される持続放出製剤は、様々な独自の特性を示す。持続放出製剤は、懸濁液、粘性混合物、又はゲルとして存在する。この持続放出製剤懸濁液は、1つ以上の活性医薬成分の粒径分布による1つ以上の活性医薬成分及び少なくとも1つの生体適合性ポリマー賦形剤の部分的ゲルである。水又は生理学的流体(血液など)と接触すると、部分的ゲルは、ゲルを形成する水又は生理学的流体と相互作用する。このインサイチュゲルは、製剤の持続放出態様を提供した。
【0034】
持続放出製剤は、投与後、1つ以上の活性医薬成分の放出期間を提供し、これは、1つ以上の活性医薬成分の直接放出製剤よりも少なくとも2倍大きい。様々な実施形態では、持続放出製剤は、1つ以上の活性医薬成分の直接製剤と比較して、少なくとも2倍大きい、少なくとも3倍大きい、少なくとも4倍大きい、少なくとも5倍大きい、少なくとも6倍大きい、少なくとも7倍大きい、少なくとも8倍大きい、少なくとも9倍大きい、又は少なくとも10倍大きい、1つ以上の活性医薬成分の放出期間を提供する。
【0035】
(II)持続放出製剤を調製するための方法
本開示の別の態様は、持続放出製剤を調製するための方法を包含する。本方法は、1つ以上の活性医薬成分と、少なくとも1つの生体適合性ポリマー賦形剤と、少なくとも1つの溶媒とを接触させることを含む。
【0036】
好適な1つ以上の活性医薬成分のリストは、上記のセクションIAに詳述されている。少なくとも1つの生体適合性ポリマー賦形剤及び少なくとも1つの溶媒のリストは、それぞれ、上記のセクションIB及びセクションICに詳述されている。
【0037】
1つ以上の活性医薬成分と、少なくとも1つの生体適合性ポリマー賦形剤と、少なくとも1つの生体適合性溶媒とを含む製剤の構成要素は、反応容器又は反応器内で、段階的に、任意の順序で、又は全て一度に添加され得る。一実施形態では、活性医薬成分のうちの1つを、少なくとも1つの生体適合性ポリマー賦形剤と接触させ、混合する。次いで、1つの活性医薬成分と少なくとも1つの生体適合性ポリマー賦形剤との組み合わせを、少なくとも1つの生体適合性溶媒と接触させ、混合して、懸濁液、粘性混合物、又はゲルを形成する。
【0038】
方法の開始前に、活性医薬成分のうちの1つ以上を、約0.5μm~約100.0μmの範囲の粒径分布に微粒子化する。1つ以上の医薬成分を微粒子化するための非限定的な方法は、ジェットミリング、粉砕、ボールミリング、又は均質化であり得る。
【0039】
持続放出製剤を調製するための接触及び混合の温度は、特定の1つ以上の活性医薬成分、特定の少なくとも1つの生体適合性ポリマー賦形剤、特定の少なくとも1つの溶媒、及びこれらの構成要素の各々の量に応じて変化し得、かつ変化するであろう。概して、接触及び混合の温度は、10℃~約40℃の範囲であり得る。様々な実施形態では、接触及び混合の温度は、10℃~約40℃、約15℃~約35℃、又は約20℃~約30℃の範囲であり得る。一実施形態では、接触及び混合の温度は、室温(約23℃)であり得る。
【0040】
当業者が理解するように、持続放出製剤の構成要素を混合する時間は、構成要素だけでなく、いつ構成要素が適切に分散され、懸濁液、粘性混合物、又はゲルを形成するかにも依存する。概して、混合する時間は、約5分~約1時間の範囲であり得る。様々な実施形態では、混合する時間は、約5分~約1時間、約15分~約45分、又は約25分~約35分の範囲であり得る。
【0041】
持続放出製剤の形成後、製剤を室温で又はそれを下回って保存される。この持続放出製剤は、少なくとも2年間保存され得る。
【0042】
この持続放出製剤懸濁液は、1つ以上の活性医薬成分の粒径分布に起因して、1つ以上の活性医薬成分、少なくとも1つの生体適合性ポリマー賦形剤、及び少なくとも1つの生体適合性溶媒の部分的ゲルである。水又は生理学的流体(血液など)と接触すると、部分的ゲルは、インサイチュゲルを形成する水又は生理学的流体と相互作用する。このインサイチュゲルは、製剤の持続放出態様を提供した。
【0043】
(III)局所疼痛の治療を必要とする対象においてそれを治療する方法
また別の態様では、局所疼痛の治療を必要とする対象においてそれを治療する方法であって、セクション(I)に記載される持続放出製剤を局所的に投与することを含む、方法が提供される。
【0044】
いかなる理論にも拘束されることなく、製剤は、局所疼痛を治療するための方法を提供する。皮下、筋肉内、軟部組織への注射、又は関節腔への注射を介して部分的ゲル又は懸濁液を投与すると、これらの製剤は、最初に水又は生理学的流体に接触する。接触すると、これらの部分的ゲルはゲル化送達マトリックスを形成する。このインサイチュゲル化マトリックスは、1つ以上の活性医薬成分の延長かつ持続された放出を提供する。これらの製剤は、術後の局所疼痛、吐き気、及び嘔吐(手術、放射線、局所化学療法)を治療するために使用され得る。
【0045】
好適な対象には、ヒト、並びにネコ、イヌ、げっ歯類、及びウマなどの連れ合い動物;ウサギ、ヒツジ、ブタ、イヌ、霊長類、マウス、ラット、及び他のげっ歯類などの研究動物;ウシ(cows)、ウシ(cattle)、ブタ、ヤギ、ヒツジ、ウマ、シカ、ニワトリ、及び他の家禽などの農業動物;動物園動物;並びにチンパンジー、サル、及びゴリラなどの霊長類が含まれ得るが、これらに限定されない。対象は、制限なしに任意の年齢のものであり得る。好ましい実施形態において、対象は、ヒトであり得る。
【0046】
定義
本明細書に記載の実施形態の要素を紹介するとき、冠詞の「a」、「an」、「the」、及び「said」は、1つ以上の要素があることを意味することを意図している。「含む(comprising)」、「含む(including)」、及び「有する(having)」という用語は、包括的であり、列挙された要素以外の更なる要素があり得ることを意味することを意図している。
【0047】
本発明の範囲から逸脱することなく、上記の方法に様々な変更を加えることができるため、上記の説明及び以下に示す実施例に含まれる全ての事項は、例示的であり、限定する意味ではないと解釈されるべきであることが意図される。
【実施例
【0048】
実施例1:微粒子化された活性医薬成分(API)及びヒアルロン酸ナトリウムを用いた試料調製。
高速グラインダーを使用して微粒子化レボブピバカインを調製した。所望のAPI粒径は、グラインダー速度を変化させることによって達成された。ジェットミル、ホモジナイザー、又はボールミルなどの他の機器を使用して、APIを微粒子化することもできる。製剤組成に従って、微粒子化API及びヒアルロン酸ナトリウムを完全に混合し、粉末ブレンドをPEG300溶液と混合して、流動性又は粘性のクリーム様懸濁液を形成した。いくつかの製剤のものでは、ベタメタゾン-21-アセテートなどの他の活性成分が、作用の期間を増強するために添加された。製剤の組成を以下の表1に記載した。
【表1】
【0049】
調製後、製剤のアッセイ、インビトロ放出を試験した。いくつかの製剤の麻酔有効性も動物モデルにおいて評価した。
【0050】
実施例2:微粒子化API及びPolyOXを使用した製剤の調製
種々のポリマーを使用して、製剤を調製することができる。微粒子化レボブピバカインをPolyOXと完全に混合した。粉末ブレンドをPEG300溶液と混合して、均一な懸濁液を形成した。4つの製剤の組成を以下の表2に記載した。
【表2】
【0051】
調製後、製剤のアッセイ及びインビトロ放出を試験した。
【表3】
【0052】
調製後、これらの製剤を、アッセイ及びインビトロ放出について試験した。選択された製剤を、動物モデルにおける有効性について評価した。
【0053】
実施例4:製剤のインビトロ放出
製剤6及び7からのAPIのインビトロ放出を、USP溶解装置、2型を使用して試験した。1グラムの各製剤を、透析セルロース膜カラム(Float-A-Lyzer G2、1000Kd MWCO)に慎重に充填した。次いで、透析カラムをdisso Agilent 708-DSに設置し、1000mlの緩衝液(pH6.6、リン酸-クエン酸緩衝液)中に入れた。インビトロ放出試験中、緩衝液温度を37℃に維持し、パドルを100rpmで撹拌した。各所望の時点で、2mlの緩衝液を移し、レボブピバカインの含有量をHPLCによって分析した。結果を図1にプロットした。製剤6及び7のインビトロ放出(IVR)プロファイルは、これらの製剤中のヒアルロン酸塩含有量が異なるが、同等である。
【0054】
実施例5:インビトロ放出試験によるインサイチュ成形ヒドロゲルの評価
薬物の放出速度は、ヒドロゲルの形成、及び薬物とヒドロゲルポリマーとの相互作用と相関する。ヒドロゲル形成及び薬物放出を評価するために、インビトロ放出研究を実施して、ゲル化及び薬物放出プロセスを監視した。製剤8を、33×60mmのセルロース透析チューブ内に充填し、透析チューブクランプで密封した。クランプは、浮遊リングの穴を介して保持された。透析チューブを、撹拌棒を含有する透析液リザーバ内に浮遊させ、撹拌速度を調整して、穏やかな回転流を形成した。試料を、リン酸緩衝液中の界面活性剤で37℃で透析した。透析リザーバから少量の溶液を定期的に取り出すことにより、インプロセス分析を行った。透析チューブもまた、リザーバから取り出し、写真を撮り、総重量を測定した。透析チューブの代表的な写真を図2A~F及び図3A~Fに示す。正味重量の変化を表4に要約する。
【表4】
【0055】
インビトロ放出試験中の透析バッグ中の製剤の重量増加が、経時的なヒアルロン酸ナトリウムのゲル化も示された表4に示された。
【0056】
製剤9、10、11、及び12からのAPIのインビトロ放出も試験した。1グラムの各製剤を、透析セルロース膜チューブ(Sigma、50k MWCO)に慎重に充填した。透析膜チューブを2つの透析チューブクランプで閉じ、1000mlの緩衝液(pH6.8、1.0%Brij)中に入れた。インビトロ放出試験中、緩衝液温度を37Cに維持し、磁気撹拌器によって100rpmで撹拌した。各所望の時点で、1mlの緩衝液を移し、レボブピバカインの含有量をHPLCによって分析した。製剤のIVR結果を図4に示した。結果は、PolyOXの添加が製剤からの薬物放出を減速させることを示した。薬物放出速度は、低分子量のPolyOXを有する製剤と比較して、より高い分子量のPolyOXを有する製剤において遅い。
【0057】
実施例6:動物試験、ラット坐骨神経遮断ホットプレート疼痛モデル
ラット坐骨神経遮断モデルを使用して、製剤の麻酔有効性を評価した。若い成体の雄のSprague-Dawleyラット(180~220g)を、ラットの食べ物及び水は自由にし、ケージ当たり4つの群に分けて飼育した。動物のリビングルームを、12時間明/12時間暗の概日周期で、23℃で制御した。膝窩の領域へ後内側に針を導入し、骨が接触すると0.3~1.0mLの試験試料を注射し、坐骨神経上に注射物を沈着させた。試験試料を両方の後肢に注射した。
【0058】
熱痛覚を、ホットプレート試験を使用して評価した。動物を50℃のホットプレートに曝した。足を引っ込めてなめるまでの時間(潜時)をストップウォッチで測定した。動物が60秒以内に足を舐めなかった場合、次いで、実験者は熱損傷又は痛覚過敏の発症を防ぐためにラットをホットプレートから取り出した。投与前に、全てのラットをホットプレート上で2回試験して、応答ベースラインを得た。応答時間が短すぎる(<5秒)又は応答が遅すぎる(>40秒)動物を除去した。次いで、適格な動物を、異なる群、類似した平均応答時間を有する各群中の4匹に無作為に分けた。4つの群に、それぞれ、生理食塩水、レボブピバカインHCl、製剤1及び2を注射した。注射後、以下の間隔:10分、30分、60分、次いで麻酔の有効性がなくなるまで、1時間ごとに又は最大18時間、ホットプレート試験を実施した。結果を以下の図5に示す。
【0059】
製剤1及び2は、レボブピバカインHCl試料と比較して延長された有効性を示し、懸濁液製剤の優れた有効性を示している。これら2つの製剤における薬物濃度の差は、有効性に顕著に影響を及ぼさなかった。
【0060】
別のラット坐骨神経遮断研究では、4つの群のラットにブピバカインHCl、製剤3、製剤4、及び製剤5を注射した。ホットプレート試験は最大24時間持続した。結果を以下の図6に示す。
【0061】
製剤3は、ブピバカインHClと比較して延長された有効性を示した。製剤4及び5におけるベタメタゾン-21-アセテートの添加は、有効性期間を更に改善した。
【0062】
別のラット坐骨神経遮断研究では、2つの群のラットに製剤6及び製剤7を注射した。ラットの足への潜在的な熱損傷を最小限に抑えるために、プレート上の試験時間を50秒に設定した。結果を以下の図7に示す。
【0063】
製剤6及び7の両方とも、同様の有効性期間を示した。これら2つの製剤において使用されたヒアルロン酸ナトリウムの異なる量は、ラット坐骨遮断モデルにおける有効性に顕著に影響を及ぼさなかった。
【0064】
実施例7:動物研究ミニブタ皮膚切開モデル
いくつかの製剤の麻酔有効性を試験するために、ミニブタ皮膚切開モデルを使用した。人間との皮膚の類似性により、ミニブタがこのモデルで使用された。
【0065】
ミニブタ(9~12kg)を無作為に試験群に割りあてた。イソフルラン麻酔及び滅菌手術条件下で、後部左脇腹の皮膚を介して6cmの長さの切開を行った。試験薬を切開の両側に皮下投与した。次いで、創傷を連続的縫合によって閉じた。手術後、ミニブタは創傷治療として3日間抗生物質アモキシシリン注射を受けた。
【0066】
試験薬の有効性を、Von Frey試験によって評価した。所望の時点で、電気自動Von Freyを使用して、切開部に約0.5cmの力を加えた。操作者が皮膚/筋肉の収縮を観察した場合、又は加えられた力が100gを超えた場合、操作者は試験を停止し、加えられた力の読み取りを記録する。全てのミニブタの応答ベースライン
【0067】
を試験し、疼痛閾値をベースライン及び100gの中間に設定した。応答力が疼痛閾値よりも高い場合、麻酔有効性があり、その逆もまた同様であった。ミニブタ切開モデルの麻酔有効性結果を図8に示す。
【0068】
生理食塩水を注射されたミニブタは、手術の30分後に疼痛を感じる可能性がある。イソフルラン麻酔の効果が弱まるにつれて、生理食塩水群のミニブタの応答力は劇的に低下した。レボブピバカインHCl注射の有効性は、約4時間持続することができ、これは、報告された文献と同様である。製剤8の麻酔有効性は、レボブピバカインHClよりも顕著に長く、40~56時間にわたって持続した。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】