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▶ コディアック バイオサイエンシーズ, インコーポレイテッドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-06
(54)【発明の名称】がんの治療方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/20 20060101AFI20230830BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230830BHJP
   A61P 15/00 20060101ALI20230830BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20230830BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20230830BHJP
   A61K 47/64 20170101ALI20230830BHJP
   A61K 47/65 20170101ALI20230830BHJP
   A61K 47/46 20060101ALI20230830BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20230830BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230830BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230830BHJP
   C07K 14/54 20060101ALN20230830BHJP
   C07K 19/00 20060101ALN20230830BHJP
   C07K 14/705 20060101ALN20230830BHJP
   C12N 5/10 20060101ALN20230830BHJP
【FI】
A61K38/20
A61P35/00
A61P15/00
A61P25/00
A61P17/00
A61K47/64
A61K47/65
A61K47/46
A61K45/00
A61P43/00 121
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61K39/395 U
A61K39/395 E
A61K39/395 T
C07K14/54 ZNA
C07K19/00
C07K14/705
C12N5/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023511932
(86)(22)【出願日】2021-08-17
(85)【翻訳文提出日】2023-03-20
(86)【国際出願番号】 US2021046358
(87)【国際公開番号】W WO2022040223
(87)【国際公開日】2022-02-24
(31)【優先権主張番号】63/066,603
(32)【優先日】2020-08-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/069,423
(32)【優先日】2020-08-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/131,870
(32)【優先日】2020-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/136,051
(32)【優先日】2021-01-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/145,762
(32)【優先日】2021-02-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/166,772
(32)【優先日】2021-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520170759
【氏名又は名称】コディアック バイオサイエンシーズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ルイス, ヌルディーン
(72)【発明者】
【氏名】シア, チャン リン
(72)【発明者】
【氏名】カーウィン, キャサリン
(72)【発明者】
【氏名】エコノミデス, キリアコス
(72)【発明者】
【氏名】サティヤナラヤナン, スリラム
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA01
4B065CA24
4B065CA44
4C076AA11
4C076AA16
4C076BB13
4C076CC01
4C076CC17
4C076CC18
4C076CC27
4C076CC41
4C076EE41
4C076EE59
4C076FF70
4C084AA02
4C084AA19
4C084DA12
4C084MA16
4C084MA66
4C084NA14
4C084ZA02
4C084ZA81
4C084ZA89
4C084ZB26
4C084ZC75
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB31
4C085CC22
4C085CC23
4C085EE01
4C085EE03
4C085EE05
4C085GG02
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA02
4H045DA50
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本開示は、対象のがんを治療する方法に関するものであって、当該対象に、サイトカイン、例えば、インターロイキン-12(IL-12)部分を含む細胞外小胞、例えば、エキソソームを投与することを含む方法に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インターロイキン-12(IL-12)を含む細胞外小胞(EV)を投与することを含む、皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)、トリプルネガティブ乳癌(TNBC)、膠芽腫、メルケル細胞癌(MCC)、及び/またはカポジ肉腫の治療を必要とする対象においてそれを治療する方法。
【請求項2】
インターロイキン-12(IL-12)を含む細胞外小胞(EV)を投与することを含む、皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)の治療を必要とする対象においてそれを治療する方法。
【請求項3】
前記CTCLが、IA-IIBステージにある請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
インターロイキン-12(IL-12)を含む細胞外小胞(EV)を投与することを含む、皮膚カポジ肉腫の治療を必要とする対象においてそれを治療する方法。
【請求項5】
インターロイキン-12(IL-12)を含む細胞外小胞(EV)を投与することを含む、トリプルネガティブ乳癌(TNBC)の治療を必要とする対象においてそれを治療する方法。
【請求項6】
インターロイキン-12(IL-12)を含む細胞外小胞(EV)を投与することを含む、膠芽腫の治療を必要とする対象においてそれを治療する方法。
【請求項7】
インターロイキン-12(IL-12)を含む細胞外小胞(EV)を投与することを含む、メルケル細胞癌(MCC)の治療を必要とする対象においてそれを治療する方法。
【請求項8】
前記EVの投与は、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約100%の客観的奏効率(ORR)を示す、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記EVの投与が、約25~56%のORRを示す、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記EVの投与は、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約100%の完全寛解(CR)を示す、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記EVの投与が、約22%のCRを示す、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記EVが、スキャフォールド部分をさらに含む、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記IL-12が、前記スキャフォールド部分に連結する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記スキャフォールド部分が、Scaffold Xである、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
前記Scaffold Xが、前記IL-12を、前記EVの外表面に固定させることができるスキャフォールドタンパク質である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記Scaffold Xが、プロスタグランジンF2受容体ネガティブレギュレーター(PTGFRNタンパク質);バシジン(BSGタンパク質);免疫グロブリンスーパーファミリーメンバー2(IGSF2タンパク質);免疫グロブリンスーパーファミリーメンバー3(IGSF3タンパク質);免疫グロブリンスーパーファミリーメンバー8(IGSF8タンパク質);インテグリンベータ-1(ITGB1タンパク質);インテグリンアルファ-4(ITGA4タンパク質);4F2細胞表面抗原重鎖(SLC3A2タンパク質);ATPトランスポータータンパク質(ATP1A1、ATP1A2、ATP1A3、ATP1A4、ATP1B3、ATP2B1、ATP2B2、ATP2B3、ATP2B4タンパク質)のクラス、及びこれらのあらゆる組み合わせからなる群から選択される、請求項12~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記スキャフォールド部分が、PTGFRNタンパク質である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記スキャフォールド部分が、配列番号33に記載のアミノ酸配列を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記スキャフォールド部分が、配列番号1に対して、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または約100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項17または18に記載の方法。
【請求項20】
前記IL-12が、リンカーによって前記スキャフォールド部分に連結している、請求項1~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記リンカーが、ポリペプチドである、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記リンカーが、非ポリペプチド部分である、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記IL-12が、配列番号2に対して、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または約100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記IL-12が、配列番号3に対して、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または約100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記IL-12が、単一のポリペプチドである、請求項1~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記IL-12が、リンカーによって連結したp35及びp40を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記リンカーが、GSリンカーである、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記GSリンカーが、(GS)または(GS)を含み、また、nは、1と10との間のあらゆる整数である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記IL-12が、配列番号4に対して、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または約100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1~28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記EVを、非経口的、経口的、静脈内、筋肉内、腫瘍内、鼻腔内、皮下、または腹腔内に投与する、請求項1~29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記EVが、エキソソームである、請求項1~30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
IL-12を含むEV、及び請求項1~31のいずれか1項に記載の方法の使用説明書を含む、キット。
【請求項33】
追加の治療薬をさらに投与することを含む、請求項1~31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
前記追加の治療薬が、抗腫瘍薬である、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記抗腫瘍薬が、免疫チェックポイント阻害剤である、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記免疫チェックポイント阻害剤が、抗PD-1抗体は、抗PD-L1抗体、抗LAG3抗体、抗TIM3抗体、抗CTLA4抗体、抗TIGIT抗体、または、これらのあらゆる組み合わせである、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記EVを、少なくとも約0.3μg、少なくとも約1μg、少なくとも約2μg、少なくとも約3μg、少なくとも約4μg、少なくとも約5μg、少なくとも約6μg、少なくとも約7μg、少なくとも約8μg、少なくとも約9μg、少なくとも約10μg、少なくとも約11μg、または少なくとも約12μgの治療有効量で投与する、請求項1~31及び33~36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
前記EVを、約1μg~約12μg、約1μg~約11μg、約1μg~約10μg、約1μg~約9μg、約1μg~約8μg、約1μg~約7μg、約1μg~約6μg、約1μg~約5μg、約2μg~約12μg、約2μg~約11μg、約2μg~約10μg、約2μg~約9μg、約2μg~約8μg、約2μg~約7μg、約2μg~約6μg、約2μg~約5μg、約3μg~約12μg、約3μg~約11μg、約3μg~約10μg、約3μg~約9μg、約3μg~約8μg、約3μg~約7μg、約3μg~約6μg、約3μg~約5μg、約4μg~約12μg、約4μg~約11μg、約4μg~約10μg、約4μg~約9μg、約4μg~約8μg、約4μg~約7μg、約4μg~約6μg、または約4μg~約5μgの治療有効量で投与する、請求項1~31及び33~36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
前記EVを、約0.3μg、約1μg、約2μg、約3μg、約4μg、約5μg、約6μg、約7μg、約8μg、約9μg、約10μg、約10μg、約11μg、約11μg、または約12μgの治療有効量で投与する、請求項1~31及び33~36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
前記治療有効量を、少なくとも1回、少なくとも2回、または少なくとも3回投与する、請求項37~39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
前記治療有効量を、複数回用量で投与する、請求項37~39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
前記治療有効量が、同じ用量の組換えIL-12の投与と比較して、前記対象での全身毒性が小さい、請求項37~39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
前記EVを、約5μg~約7μgの間、例えば、約6μgの治療有効量で投与する、請求項1~31及び33~42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
前記EVを、約5μg~約7μgの間、例えば、約6μgの治療有効量で、毎週ごとに1回、約2週間ごとに1回、約3週間ごとに1回、または約4週間ごとに1回投与する、請求項1~31及び33~43のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
前記EVを、約5μg~約7μgの間、例えば、約6μgの治療有効量で、約2週間ごとに1回投与する、請求項1~31及び33~44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
前記EVを、約5μg~約7μgの間、例えば、約6μgの治療有効量で、約10~18日ごとに1回、約12~約16日ごとに1回、約14~約21日ごとに1回、約10~14日ごとに1回、または、約14~約18日ごとに1回投与する、請求項1~31及び33~43のいずれか1項に記載の方法。
【請求項47】
前記EVを、約5μg~約7μgの間、例えば、約6μgの治療有効量で、約14日ごとに1回投与する、請求項1~31及び33~43のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
EFS-WEBを介して電子的に提出をした配列表の援用
本出願と共に、ASCIIテキストファイル(名称4000_114PC06_Seqlisting_ST25;サイズ:56,982バイト;作成日:2021年8月10日)で、電子的に提出をする配列表の全内容を、参照により本明細書で援用する。
【0002】
このPCT出願は、2021年3月26日に出願した米国仮出願第63/166,772号;2021年2月4日に出願した第63/145,762号;2021年1月11日に出願した第63/136,051号;2020年12月30日に出願した第63/131,870号;2020年8月24日に出願した第63/069,423号;及び、2020年8月17日に出願した第63/066,603号の優先権の利益を主張するものであり、それぞれの全内容を参照により本明細書で援用する。
【0003】
開示の分野
本開示は、がんを治療及び/または予防するために使用することができる改変した細胞外小胞、例えば、エキソソーム(例えば、IL-12部分を含むもの)に関する。また、本開示は、そのようなEV、エキソソームの製造方法、及びそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0004】
背景
免疫療法は、免疫応答を、誘導、増強、または抑制することで、様々なタイプのがんを治療する主要な手段にまで進展した。免疫療法は、患者自身の免疫系を刺激して、癌細胞を攻撃することができる。インターロイキン-12(IL-12)は、T細胞の成長因子として作用するものであり、T細胞を活性化して、免疫応答を高めることができる。しかしながら、遊離IL-12の投与は、腫瘍微小環境を超えて広範囲にわたって効果を奏し得る。
【0005】
EV、エキソソームは、細胞間伝達の重要なメディエーターである。また、それらは、数多くの疾患の診断及び予後における重要なバイオマーカーである。薬物送達手段として、EV、例えば、エキソソームは、数多くの治療分野での新規の治療法として、従来の薬物送達方法(例えば、ペプチド免疫、DNAワクチン)と比較して、数多くの利点を提供する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
開示の概要
本開示の特定の態様は、インターロイキン-12(IL-12)を含む細胞外小胞(EV)を投与することを含む、皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)、トリプルネガティブ乳癌(TNBC)、膠芽腫、メルケル細胞癌(MCC)、及び/またはカポジ肉腫の治療を必要とする対象においてそれを治療する方法に関する。
【0007】
本開示の一部の態様は、インターロイキン-12(IL-12)を含む細胞外小胞(EV)を投与することを含む、皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)の治療を必要とする対象においてそれを治療する方法に関する。一部の態様では、CTCLは、IA-IIBステージにある。
【0008】
本開示の一部の態様は、インターロイキン-12(IL-12)を含む細胞外小胞(EV)を投与することを含む、皮膚カポジ肉腫の治療を必要とする対象においてそれを治療する方法に関する。
【0009】
本開示の一部の態様は、インターロイキン-12(IL-12)を含む細胞外小胞(EV)を投与することを含む、トリプルネガティブ乳癌(TNBC)の治療を必要とする対象においてそれを治療する方法に関する。
【0010】
本開示の一部の態様は、インターロイキン-12(IL-12)を含む細胞外小胞(EV)を投与することを含む、膠芽腫の治療を必要とする対象においてそれを治療する方法に関する。
【0011】
本開示の一部の態様は、インターロイキン-12(IL-12)を含む細胞外小胞(EV)を投与することを含む、メルケル細胞癌(MCC)の治療を必要とする対象においてそれを治療する方法に関する。
【0012】
一部の態様では、EVの投与は、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、または約100%の客観的奏効率(ORR)を示す。一部の態様では、EVの投与は、約25~56%のORRを示す。一部の態様では、奏効率は、例えば、CTCLに対するmSWAT分析を用いて測定する。
【0013】
一部の態様では、EVの投与は、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、または約100%の完全寛解(CR)を示す。一部の態様では、EVの投与は、約22%のCRを招く。
【0014】
一部の態様では、EVは、スキャフォールド部分をさらに含む。一部の態様では、IL-12は、スキャフォールド部分に連結する。一部の態様では、スキャフォールド部分は、Scaffold Xである。一部の態様では、Scaffold Xは、EVの外表面にIL-12を固定させることができるスキャフォールドタンパク質である。一部の態様では、Scaffold Xは、プロスタグランジンF2受容体ネガティブレギュレーター(PTGFRNタンパク質);バシジン(BSGタンパク質);免疫グロブリンスーパーファミリーメンバー2(IGSF2タンパク質);免疫グロブリンスーパーファミリーメンバー3(IGSF3タンパク質);免疫グロブリンスーパーファミリーメンバー8(IGSF8タンパク質);インテグリンベータ-1(ITGB1タンパク質);インテグリンアルファ-4(ITGA4タンパク質);4F2細胞表面抗原重鎖(SLC3A2タンパク質);ATPトランスポータータンパク質(ATP1A1、ATP1A2、ATP1A3、ATP1A4、ATP1B3、ATP2B1、ATP2B2、ATP2B3、ATP2B4タンパク質)のクラス、及びこれらのあらゆる組み合わせからなる群から選択する。
【0015】
一部の態様では、スキャフォールド部分は、PTGFRNタンパク質である。一部の態様では、スキャフォールド部分は、配列番号33に記載のアミノ酸配列を含む。一部の態様では、スキャフォールド部分は、配列番号1に対して、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または約100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0016】
一部の態様では、IL-12は、リンカーによってスキャフォールド部分に連結する。一部の態様では、リンカーは、ポリペプチドである。一部の態様では、リンカーは、非ポリペプチド部分である。
【0017】
一部の態様では、IL-12は、配列番号2に対して、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または約100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の態様では、IL-12は、配列番号3に対して、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または約100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の態様では、IL-3は、単一のポリペプチドである。
【0018】
一部の態様では、IL-12は、リンカーによって連結したp35及びp40を含む。一部の態様では、リンカーは、GSリンカーである。一部の態様では、GSリンカーは、(GS)または(GS)を含み、また、nは、1~10の間のあらゆる整数である。
【0019】
一部の態様では、IL-12は、配列番号4に対して、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または約100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0020】
一部の態様では、EVは、非経口、経口、静脈内、筋肉内、腫瘍内、鼻腔内、皮下、または腹腔内で投与する。
【0021】
一部の態様では、EVは、エキソソームである。
【0022】
本開示の特定の態様は、IL-12を含むEV、及び本明細書に開示した方法に従って使用するための使用説明書を含むキットに関する。
【0023】
一部の態様では、方法は、追加の治療薬を投与することをさらに含む。一部の態様では、追加の治療薬は、抗腫瘍薬である。一部の態様では、抗腫瘍薬は、免疫チェックポイント阻害剤である。一部の態様では、免疫チェックポイント阻害剤は、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、抗LAG3抗体、抗TIM3抗体、抗CTLA4抗体、抗TIGIT抗体、またはこれらのあらゆる組み合わせを含む。
【0024】
一部の態様では、本方法に関するEVを、少なくとも約0.3μg、少なくとも約1μg、少なくとも約2μg、少なくとも約3μg、少なくとも約4μg、少なくとも約5μg、少なくとも約6μg、少なくとも約7μg、少なくとも約8μg、少なくとも約9μg、少なくとも約10μg、少なくとも約11μg、または少なくとも約12μgの治療有効量で投与する。一部の態様では、本方法に関するEVを、約1μg~約12μg、約1μg~約11μg、約1μg~約10μg、約1μg~約9μg、約1μg~約8μg、約1μg~約7μg、約1μg~約6μg、約1μg~約5μg、約2μg~約12μg、約2μg~約11μg、約2μg~約10μg、約2μg~約9μg、約2μg~約8μg、約2μg~約7μg、約2μg~約6μg、約2μg~約5μg、約3μg~約12μg、約3μg~約11μg、約3μg~約10μg、約3μg~約9μg、約3μg~約8μg、約3μg~約7μg、約3μg~約6μg、約3μg~約5μg、約4μg~約12μg、約4μg~約11μg、約4μg~約10μg、約4μg~約9μg、約4μg~約8μg、約4μg~約7μg、約4μg~約6μg、または約4μg~約5μgの治療有効量で投与する。
【0025】
一部の態様では、本方法に関するEVを、約0.3μg、約1μg、約2μg、約3μg、約4μg、約5μg、約6μg、約7μg、約8μg、約9μg、約10μg、約11μg、または約12μgの治療有効量で投与する。一部の態様では、EVを、約6μgの治療有効量で投与する。一部の態様では、EVを、約5μgと約7μgとの間、例えば、約5μg、約6μg、または約7μgの治療有効量で投与する。
【0026】
一部の態様では、方法においてEVの治療有効量を、少なくとも1回、少なくとも2回、または少なくとも3回投与する。一部の態様では、EVの治療有効量は、複数回用量で投与する。
【0027】
一部の態様では、EVの治療有効量は、同じ用量の組換えIL-12の投与と比較して、対象での全身毒性が小さい。
【0028】
一部の態様では、EVを、約5μg~約7μgの間、例えば、約6μgの治療有効量で、約毎週ごとに1回、約2週間ごとに1回、約3週間ごとに1回、または約4週間ごとに1回投与する。一部の態様では、EVを、約5μg~約7μgの間、例えば、約6μgの治療有効量で、約2週間ごとに1回投与する。一部の態様では、EVを、約5μg~約7μgの間、例えば、約6μgの治療有効量で、約10~18日ごとに1回、約12~約16日ごとに1回、約14~約21日ごとに1回、約10~14日ごとに1回、または、約14~約18日ごとに1回投与する。一部の態様では、EVを、約5μg~約7μgの間、例えば、約6μgの治療有効量で、約14日ごとに1回投与する、
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】IL-12(「exoIL-12」)を表面に有する、遺伝子操作したエキソソームの図である。
【0030】
図2A】未処置マウス、及び遊離組換えIL-12、またはexoIL-12で処置したマウスでの腫瘍滞留を示す散布図である。
図2B】未処置マウス、及び遊離組換えIL-12、またはexoIL-12で処置したマウスでのIFN-ガンマAUCを示す散布図である。
図2C】未処置マウス、及び遊離組換えIL-12、またはexoIL-12で処置したマウスでの腫瘍増殖を示す散布図である。
図2D】未処置マウス、及び遊離組換えIL-12、またはexoIL-12で処置したマウスでの再接種した後の腫瘍増殖を示す散布図である。
図2E】コントロール及びexoIL-12処置マウスでの抗原特異的CD8T細胞の割合を示すボックスプロットである。
【0031】
図3A】0.3μg、1.0μg、または3.0μgのexoIL-12を投与した後に認められた皮膚及び血漿においてexoIL-12で測定した薬物動態のグラフ表示である。
図3B】0.3μg、1.0μg、または3.0μgのexoIL-12を投与した後に認められた皮膚でのIP-10のビヒクルの経時的な倍率変化で測定する組織薬力学のグラフ表示である。
図3C】0.3μg、1.0μg、または3.0μgのexoIL-12を投与した後に認められた血漿でのIP-10のビヒクルの経時的な倍率変化で測定する組織薬力学のグラフ表示である。
【0032】
図4】健康なボランティア(A)及びがん患者(B)でのexoIL-12治療の安全性及び有効性を評価する臨床研究の概略図である。
【0033】
図5】血漿(A)及び皮膚(B)試料生検の概略図である。
【0034】
図6】投与して700時間後までに、0.3μg、1.0μg、3.0μg、6.0μg、または12.0μg exoIL-12を投与したヒト対象の血漿IL-12(pg/mL)濃度のグラフ表示である。それぞれの投与量から得たすべてのデータをプールする。
【0035】
図7A】0.3μg、1.0μg、3.0μg、6.0μg、または12.0μg exoIL-12を投与した対象の皮膚でのIP-10レベルのグラフ表示である。
図7B】0.3μg、1.0μg、3.0μg、6.0μg、または12.0μg exoIL-12を投与した対象の血漿でのIP-10レベルのグラフ表示である。
図7C】0.3μg、1.0μg、3.0μg、6.0μg、または12.0μg exoIL-12を投与した対象の皮膚でのIP-10レベルのグラフ表示である。
図7D】0.3μg、1.0μg、3.0μg、6.0μg、または12.0μg exoIL-12を投与した対象の血漿でのIL-12レベルのグラフ表示である。
【0036】
図8】投与して700時間後までに、0.3μg(mcg)、1.0μg、3.0μg、6.0μg、または12.0μg exoIL-12を投与したヒト対象の血漿IFNγ(pg/mL)濃度のグラフ表示である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
開示の詳細な説明
本開示は、がんの治療を必要とする対象においてそれを治療する方法に関するものであり、EV、例えば、サイトカイン、例えば、IL-12部分を含むエキソソームを対象に投与することを含む。一部の態様では、サイトカイン、例えば、IL-12部分は、EV、例えば、エキソソームの表面、または、EV、例えば、エキソソームの内腔側表面の1つ以上のスキャフォールド部分に付着(または、連結)する。一部の態様では、がんは、皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)、黒色腫、トリプルネガティブ乳癌(TNBC)、膠芽腫、メルケル細胞癌(MCC)、及び/またはカポジ肉腫からなる群から選択する。
【0038】
一部の態様では、対象には、EV、例えば、エキソソームを投与せずに、STINGアゴニストを含むように遺伝子操作する。
【0039】
様々な態様の例を本開示に示すが、これらに限定されるものではない。
【0040】
I.定義
本記載の理解をさらに容易にするために、まず、特定の用語を定義する。さらなる定義は、詳細な説明で記載する。
【0041】
用語「a」または「an」が示す実体は、その実体のうちの1つ以上のこと;例えば、「ヌクレオチド配列」は、1つ以上のヌクレオチド配列を示す、ことに留意したい。そのように、用語「a」(または「an」)、「1つ以上」、及び「少なくとも1つ」は、本明細書において互換可能に使用する。さらに、特許請求の範囲は、任意の要素を除外するように記載することができる、ことに留意したい。そのため、この記載は、特許請求の範囲に記載の要素に関連して、「だけの」、「のみ」などの排他的な用語の使用、または否定的な制限の使用に対する先行詞としての役割を有する。
【0042】
さらに、本明細書で使用する「及び/または」とは、その他のものの有無に関係なく、2つの特定の特性または要素のそれぞれの具体的な開示として解釈するべきである。したがって、本明細書での句「A及び/またはB」で用いられている用語「及び/または」は、「A及びB」、「AまたはB」、「A」(のみ)、及び「B」(のみ)を含むことを意図している。同様に、句「A、B、及び/またはC」で使用する用語「及び/または」は、以下の態様:A、B、及びC;A、B、またはC;AまたはC;AまたはB;BまたはC;A及びC;A及びB;B及びC;A(のみ);B(のみ);及びC(のみ)のそれぞれを含むことを意図している。
【0043】
「からなる(consisting of)」及び/または「から本質的になる(consisting essentially of)」の用語で同様の態様も提供されていない限りは、本明細書に記載したそれぞれの態様は、文言「を含む(comprising)」で記載したものと理解する。
【0044】
別段の定義がない限り、本明細書で使用するすべての技術用語及び科学用語は、本開示が関連する技術分野の当業者が一般的に理解するものと同じ意味を有するものとする。例えば、Concise Dictionary of Biomedicine and Molecular Biology,Juo,Pei-Show,2nd ed.,2002,CRC Press、The Dictionary of Cell and Molecular Biology,3rd ed.,1999,Academic Press、及びOxford Dictionary Of Biochemistry And Molecular Biology,Revised,2000,Oxford University Pressは、当業者に、本開示で使用する用語の多くに関する一般的な辞書になりうる。
【0045】
単位、接頭語、及び記号は、国際単位系(SI)で認めた形式で記載する。数値範囲は、その範囲を規定する数を含む。数値範囲が記載する場合、その範囲の記載した上限と下限との間にあるそれぞれの介在する整数値、及びそのそれぞれの分数もまた、そのような値の間のそれぞれの部分範囲とともに具体的に開示する点は理解するべきである。任意の範囲の上限値及び下限値は、独立してその範囲に含める、または、その範囲から除外することができるが、いずれかの限界値を含む、いずれの限界値も含まない、または両方の限界値を含むそれぞれの範囲もまた、本開示は含む。したがって、本明細書に記載した範囲は、記載する端点を含む、その範囲内のすべての値の簡略的な表記であるものとして理解する。例えば、1~10の範囲は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、及び10からなる群からの任意の数、数の組み合わせ、または部分範囲を含むものとして理解する。
【0046】
値を明示的に記載する場合、記載する値とほぼ同じ数または量である値もまた、本開示の範囲内に含まれることを理解されたい。ある組み合わせが開示する場合、その組み合わせの要素の部分的な組み合わせのそれぞれも具体的に開示され、本開示の範囲内に含まれる。逆に、異なる要素または要素群を個別に開示している場合、それらの組み合わせも開示する。ある開示のあらゆる要素が複数の選択肢を有するものとして開示する場合、それぞれの選択肢が単独で、またはその他の選択肢とのあらゆる組み合わせとして除外するその開示の例もまた、本明細書に開示する;ある開示の複数の要素が、そのような除外を有することができ、そのような除外を有する要素のすべての組み合わせを本明細書に開示する。
【0047】
ヌクレオチドは、広く認められているそれらの1文字表記で呼称する。特記しない限り、ヌクレオチド配列は5’から3’の方向に、左から右に向けて記載する。本明細書では、ヌクレオチドは、IUPAC-IUB Biochemical Nomenclature Commissionが推奨する、それらヌクレオチドの一般的に公知の1文字記号で呼称する。したがって、Aはアデニンを表し、Cはシトシンを表し、Gはグアニンを表し、Tはチミンを表し、Uはウラシルを表す。
【0048】
アミノ酸配列は、アミノ末端からカルボキシ末端の方向に左から右に向けて記載する。本明細書では、アミノ酸は、一般的に公知のアミノ酸の3文字表記、またはIUPAC-IUB Biochemical Nomenclature Commissionが推奨する1文字表記で呼称する。
【0049】
本明細書で示す見出しは、開示の様々な態様を制限するものではなく、本明細書全体を援用することができるものでもない。したがって、直下で定義する用語は、明細書全体を参照することで、十分に定義されている。
【0050】
用語「約」または「およそ」は、本明細書では、概ね、大体、おおよそ、またはその周辺であることを意味するために使用する。用語「約」を、数値範囲とともに使用する場合、記載する数値の上下の境界値を広げて、その範囲を変更する。一般に、用語「約」は、記載した数値の上下の値を、例えば、10パーセント上下の調整をして(上げる、または上げる)、変更させることができる。一部の態様では、本明細書で使用するこの用語は、参照する量の5%以内を意味しており、例えば、約50%とは、47.5%~52.5%の値の範囲を包含するものとして理解する。
【0051】
本明細書で使用する用語「細胞外小胞」または「EV」は、内部空間を封入する膜を含む細胞由来の小胞のことを指す。細胞外小胞は、それらが由来する細胞よりも小さい直径を有するすべての膜結合小胞(例えば、エキソソーム、ナノ小胞)を含む。一般的に、細胞外小胞は、直径が20nm~1000nmの範囲であり、内部空間(すなわち、内腔)内にある場合、細胞外小胞の外表面に提示する、及び/または膜を貫通しているとのいずれかの形で、様々なマクロ分子ペイロードを含むことができる。一部の態様では、ペイロードは、核酸、タンパク質、炭水化物、脂質、小分子、及び/またはそれらの組み合わせを含むことができる。特定の態様では、細胞外小胞はスキャフォールド部分を含む。また、例として、細胞外小胞は、アポトーシス小体、細胞のフラグメント、直接的操作または間接的操作(例えば、連続押出またはアルカリ溶液での処理)によって細胞から誘導する小胞、小胞化オルガネラ、及び生細胞から産生される小胞(例えば、直接の原形質膜出芽または後期エンドソームの原形質膜との融合によるもの)があるが、これらに限定されない。細胞外小胞は、生きている生物または死んだ生物、外植した組織または臓器、原核細胞または真核細胞、及び/または培養した細胞に由来するものであってよい。一部の態様では、細胞外小胞は、1つ以上の導入遺伝子産物を発現する細胞で生成する。
【0052】
本明細書で使用する用語「エキソソーム」は、内部空間(すなわち、内腔)を封入する膜を含み、直接の原形質膜出芽によって、または後期エンドソームの原形質膜との融合によって細胞から生成する、当該細胞に由来する小さな(直径20~300nm、例えば、直径40~200nmの)小胞のことを指す。エキソソームは、細胞外小胞の一種である。エキソソームは、脂質または脂肪酸及びポリペプチドを含み、任意に、ペイロード(例えば、治療薬)、レシーバー(例えば、標的化部分)、ポリヌクレオチド(例えば、核酸、RNA、またはDNA)、糖(例えば、単糖、多糖類、もしくはグリカン)、またはその他の分子を含む。一部の態様では、エキソソームは、スキャフォールド部分を含む。エキソソームは、産生細胞に由来するものであってよく、その大きさ、密度、生化学的パラメータ、またはそれらの組み合わせに基づいて産生細胞から単離することができる。一部の態様では、本開示のエキソソームは、1つ以上の導入遺伝子産物を発現する細胞が生成する。
【0053】
本明細書で使用する用語「ナノ小胞」は、内部空間を封入する膜を含む、細胞由来の小さい(直径20~250nm、より好ましくは、直径30~150nm)小胞であって、ナノ小胞が操作が無いと産生細胞が産生しないようにする直接的操作または間接的操作によって細胞から生成することを指す。当該産生細胞の適切な操作として、連続押出、アルカリ溶液による処理、超音波処理、またはそれらの組み合わせがあるが、これらに限定されない。ナノ小胞の産生は、一部の事例では、当該産生細胞の破壊につながり得る。ナノ小胞の集団は、原形質膜からの直接出芽または後期エンドソームの原形質膜との融合によって産生細胞から誘導する小胞を実質的に含まないことが好ましい。ナノ小胞は、脂質または脂肪酸及びポリペプチドを含み、任意に、ペイロード(例えば、治療薬)、レシーバー(例えば、標的化部分)、ポリヌクレオチド(例えば、核酸、RNA、またはDNA)、糖(例えば、単糖、多糖類、もしくはグリカン)または、その他の分子を含む。一部の態様では、ナノ小胞は、スキャフォールド部分を含む。ナノ小胞は、当該操作で産生細胞から誘導すると、その大きさ、密度、生化学的パラメータ、またはそれらの組み合わせに基づいて、産生細胞から単離することができる。
【0054】
本明細書で使用する用語「表面-遺伝子操作したEV、例えば、エキソソーム」(例えば、Scaffold X-遺伝子操作したEV、例えば、エキソソーム)とは、EV、例えば、エキソソームを改変する前に、または自然発生する前に、EV、例えば、EVの膜または表面を備えたエキソソーム、例えば、その組成物を改変して、遺伝子操作をしたEV、例えば、エキソソームの表面が、EV、例えば、エキソソームの表面とは異なるものである、ことを指す。この遺伝子操作は、EV、例えば、エキソソームの表面、またはEV、例えば、エキソソームの膜の内部で行うことができる、その結果、EV、例えば、エキソソームを改変させることができる。例えば、膜は、タンパク質、脂質、小分子、炭水化物などの組成を改変する。組成は、化学的、物理的、または生物学的方法によって変化させることができる、または組成物を、化学的、物理的、または生物学的方法によって、先行して、もしくは同時に細胞から産生することができる。具体的には、組成物は、遺伝子操作によって、または遺伝子操作で先に改変させた細胞から産生して変化させることができる。一部の態様では、表面-遺伝子操作したEV、例えば、エキソソームは、外因性タンパク質(すなわち、EV、例えば、エキソソームを自然に発現しないタンパク質)、またはEV、例えば、エキソソームの表面に露出可能なそのフラグメントもしくはバリアント、またはEV、例えば、エキソソームの表面に露出した部分の固定ポイント(付着)とすることができる。その他の態様では、表面-遺伝子操作したEV、例えば、エキソソームは、天然エキソソームタンパク質(例えば、Scaffold X)またはそのフラグメントもしくはバリアントの大きな(例えば、数多くの)発現を招き、EV、例えば、エキソソームの表面に露出することができる、またはEV、例えば、エキソソームの表面に露出した部分に対する固定ポイント(付着)とすることができる。
【0055】
本明細書で使用する用語「内腔-遺伝子操作したエキソソーム」(例えば、Scaffold Y-遺伝子操作したエキソソーム)とは、EV、例えば、エキソソームを改変する前に、または自然発生する前に、EV、例えば、EVの膜または内腔を備えたエキソソーム、例えば、その組成を改変して、遺伝子操作をしたEV、例えば、エキソソームの内腔が、EV、例えば、エキソソームの内腔とは異なるものである、ことを指す。この遺伝子操作は、EV、例えば、エキソソームの内腔、またはEV、例えば、エキソソームの膜の内部で直接に行うことができる、その結果、EV、例えば、エキソソームを改変させることができる。例えば、膜は、タンパク質、脂質、小分子、炭水化物などの組成を改変する。組成は、化学的、物理的、または生物学的方法で変化させることができる、または組成物を、化学的、物理的、または生物学的方法によって、先行して、もしくは同時に細胞から産生することができる。具体的には、組成物は、遺伝子操作によって、または遺伝子操作で先に改変させた細胞から産生して変化させることができる。一部の態様では、内腔-遺伝子操作したエキソソームは、外因性タンパク質(すなわち、EV、例えば、エキソソームを自然に発現しないタンパク質)、またはEV、例えば、エキソソームの内腔に露出可能なそのフラグメントもしくはバリアント、またはEV、例えば、エキソソームの内腔に露出した部分の固定ポイント(付着)とすることができる。その他の態様では、内腔-遺伝子操作したEV、例えば、エキソソームは、天然エキソソームタンパク質(例えば、Scaffold XまたはScaffold Y)またはそのフラグメントもしくはバリアントの大きな(例えば、数多くの)発現を招き、EV、例えば、エキソソームの内腔に露出することができる、またはエキソソームの内腔に露出した部分に対する固定ポイント(付着)とすることができる。
【0056】
用語「改変した」は、本明細書に記載したEV、例えば、エキソソームとの関連で使用する場合、改変したEV、例えば、エキソソームが天然に存在するEV、例えば、エキソソームとは異なるように行う、EV、例えば、エキソソームの改変または遺伝子操作のことを指す。一部の態様では、本明細書に記載した改変したEV、例えば、エキソソームは、天然に存在するEV、例えば、エキソソームの膜と比較して、タンパク質、脂質、小分子、炭水化物などの組成が異なる膜を含む(例えば、膜は、高密度または数多くの天然エキソソームタンパク質を含む、及び/または膜は、エキソソームには天然には認められないタンパク質(例えば、IL-12部分)を含む。特定の態様では、膜に対するそのような改変は、EV、例えば、エキソソーム(例えば、本明細書に記載した表面-遺伝子操作したEV、例えば、エキソソーム)の外表面を変化させる。特定の態様では、内腔に対するそのような改変は、EV、例えば、エキソソーム(例えば、本明細書に記載した内腔-遺伝子操作したEV、例えば、エキソソーム)の内腔を変化させる。
【0057】
本明細書で使用する用語「スキャフォールド部分」は、関心のある固定、例えば、IL-12部分、またはその他のあらゆる化合物を、EV、例えば、エキソソームの内腔表面または外表面のいずれかに、EV、例えば、エキソソームを固定するために使用できる分子のことを指す。特定の態様では、スキャフォールド部分は、合成分子を含む。一部の態様では、スキャフォールド部分は、非ポリペプチド部分を含む。その他の態様では、スキャフォールド部分は、EV、例えば、エキソソームに天然に存在する脂質、炭水化物、またはタンパク質を含む。一部の態様では、スキャフォールド部分は、EV、例えば、エキソソームに天然には存在しない脂質、炭水化物、またはタンパク質を含む。特定の態様では、スキャフォールド部分は、Scaffold Xである。一部の態様では、スキャフォールド部分は、Scaffold Yである。さらなる態様では、スキャフォールド部分は、Scaffold XとScaffold Yの両方を含む。特定の態様では、スキャフォールド部分は、Lamp-1、Lamp-2、CD13、CD86、Flotillin、Syntaxin-3、CD2、CD36、CD40、CD40L、CD41a、CD44、CD45、ICAM-1、Integrin アルファ4、L1CAM、LFA-1、Mac-1アルファ及びベータ、Vti-1A及びB、CD3イプシロン及びゼータ、CD9、CD18、CD37、CD53、CD63、CD81、CD82、CXCR4、FcR、GluR2/3、HLA-DM(MHC II)、免疫グロブリン、MHC-IもしくはMHC-II成分、TCRベータ、テトラスパニン、または、それらの組み合わせを含む。
【0058】
本明細書で使用する用語「Scaffold X」は、エキソソームの表面で最近になって同定されたエキソソームタンパク質のことを指す。例えば、参照により本明細書でその全内容を援用する米国特許10,195,290号を参照されたい。Scaffold Xタンパク質の例として:プロスタグランジンF2受容体ネガティブレギュレーター(「PTGFRNタンパク質」);ベイシジン(「BSGタンパク質」);免疫グロブリンスーパーファミリーメンバー2(「IGSF2タンパク質」);免疫グロブリンスーパーファミリーメンバー3(「IGSF3タンパク質」);免疫グロブリンスーパーファミリーメンバー8(「IGSF8タンパク質」);インテグリンベータ-1(「ITGB1タンパク質」);インテグリンアルファ-4(「ITGA4タンパク質」);4F2細胞表面抗原重鎖(「SLC3A2タンパク質」);及びATPトランスポータータンパク質(「ATP1A1タンパク質」、「ATP1A2タンパク質」、「ATP1A3タンパク質」、「ATP1A4タンパク質」、「ATP1B3タンパク質」、「ATP2B1タンパク質」、「ATP2B2タンパク質」、「ATP2B3タンパク質」、「ATP2Bタンパク質」)のクラスがあるが、これらに限定されない。一部の態様では、Scaffold Xタンパク質は、タンパク質全体またはそのフラグメント(例えば、機能的フラグメント、例えば、EV、例えば、エキソソームの外表面または内腔表面に別の部分を固定することができる最小フラグメント)とすることができる。一部の態様では、Scaffold Xは、エキソソームの外表面または内腔表面の部分(例えば、IL-12部分)に固定することができる。
【0059】
本明細書で使用する用語「Scaffold Y」は、エキソソームの内腔表面で新たに同定されたエキソソームタンパク質のことを指す。例えば、本明細書でその全内容を援用する国際公開第WO/2019/099942号を参照されたい。Scaffold Yタンパク質の例として;ミリストイル化アラニンリッチプロテインキナーゼC基質(「MARCKSタンパク質」);ミリストイル化アラニンリッチプロテインキナーゼC基質様1(「MARCKSL1タンパク質」)、及び脳酸可溶性タンパク質1(「BASP1タンパク質」)があるが、これらに限定されない。一部の態様では、Scaffold Yタンパク質は、タンパク質全体またはそのフラグメント(例えば、機能的フラグメント、例えば、EV、例えば、エキソソームの内腔表面に部分を固定することができる最小フラグメント)とすることができる。一部の態様では、Scaffold Yは、EV、例えば、エキソソームの内腔にIL-2部分を固定することができる。
【0060】
本明細書で使用するタンパク質(例えば、治療用タンパク質、Scaffold X、またはScaffold Y)の用語「フラグメント」は、天然に存在する配列よりも短いタンパク質のアミノ酸配列、天然に存在するタンパク質と比較してタンパク質のN末端及び/またはC末端、またはあらゆる部分が欠失したタンパク質のことを指す。本明細書で使用する用語「機能的フラグメント」は、タンパク質機能を保有しているタンパク質フラグメントのことを指す。したがって、一部の態様では、Scaffold Xタンパク質の機能的フラグメントは、部分を、EV、例えば、エキソソームの内腔表面及び/または外表面に固定する能力を保有している。同様に、特定の態様では、Scaffold Yタンパク質の機能的フラグメントは、部分を、EV、例えば、エキソソームの内腔表面に固定する能力を保有している。フラグメントが機能的フラグメントであるか否かは、ウエスタンブロット、FACS分析、及びフラグメントと、例えば、GFPなどの自家蛍光タンパク質との融合を含む、EVのタンパク質含有量を決定するためのあらゆる周知の方法で評価することができる。特定の態様では、Scaffold Xタンパク質の機能的フラグメントは、天然に存在するScaffold Xタンパク質の能力を、例えば、部分を固定する能力の少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、または少なくとも約100%を保有している。一部の態様では、Scaffold Yタンパク質の機能的フラグメントは、天然に存在するScaffold Yタンパク質の能力を、例えば、別の分子を固定する能力の少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%または少なくとも約100%を保有している。
【0061】
本明細書で使用する分子(例えば、機能性分子、抗原、Scaffold X及び/またはScaffold Y)の用語「バリアント」は、当該技術分野で周知の方法で比較した場合に、別の分子と特定の構造的及び機能的同一性を共有する分子のことを指す。例えば、あるタンパク質のバリアントは、別のタンパク質における置換、挿入、欠失、フレームシフトまたは再構成を含み得る。
【0062】
一部の態様では、Scaffold Xのバリアントは、完全長の成熟したPTGFRN、BSG、IGSF2、IGSF3、IGSF8、ITGB1、ITGA4、SLC3A2、もしくはATPトランスポータータンパク質、またはPTGFRN、BSG、IGSF2、IGSF3、IGSF8、ITGB1、ITGA4、SLC3A2、もしくはATPトランスポータータンパク質のフラグメント(例えば、機能的フラグメント)と、少なくとも約70%の同一性を有するバリアントを含む。一部の態様では、PTGFRNのバリアントまたはそのフラグメントのバリアントは、配列番号1によるPTGFRNまたはその機能的フラグメントと、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を共有する。
【0063】
一部の態様では、Scaffold Yのバリアントは、MARCKS、MARCKSL1、BASP1、またはMARCKS、MARCKSL1、もしくはBASP1のフラグメントに対して、少なくとも70%の同一性を有するバリアントを含む。一部の態様では、MARCKSのバリアントまたはそのフラグメントのバリアントは、配列番号47によるMARCKSまたはその機能的フラグメントと、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または、少なくとも約99%の配列同一性を共有する。一部の態様では、MARCKSL1のバリアントまたはそのフラグメントのバリアントは、配列番号48によるMARCKSL1またはその機能的フラグメントと、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または、少なくとも約99%の配列同一性を共有する。一部の態様では、BASP1のバリアントまたはそのフラグメントのバリアントは、配列番号49によるBASP1またはその機能的フラグメントと、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を共有する。一部の態様では、Scaffold Yタンパク質のバリアントまたはそのフラグメントのバリアントは、EV、例えば、エキソソームの内腔を特異的に標的化する能力を保有している。一部の態様では、Scaffold Yは、1つ以上の変異、例えば、保存的アミノ酸置換を含む。
【0064】
「保存的アミノ酸置換」とは、アミノ酸残基が、類似の側鎖を有するアミノ酸残基で置換するものである。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当該技術分野において定義されており、塩基性側鎖(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、無電荷極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、ベータ-側鎖(例えば、スレオニン、バリン、イソロイシン)、及び芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)がある。したがって、ポリペプチドでのアミノ酸が、同じ側鎖ファミリー由来の別のアミノ酸で置換する場合、その置換は保存的であるとみなす。別の態様では、アミノ酸のストリングは、側鎖ファミリーメンバーの順序及び/または組成が異なる構造的に類似したストリングで保存的に置換することができる。
【0065】
2つのポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列の間に関する用語「配列同一性パーセント」または「同一性パーセント」は、比較ウインドウにわたって、それぞれの配列が共有する同一の一致位置の数のことを指しており、2つの配列の最適なアラインメントを得るために導入する必要のある付加または欠失(すなわち、ギャップ)を考慮したものである。一致位置とは、同一のヌクレオチドまたはアミノ酸が、標的配列と参照配列の両方に存在するあらゆる位置である。標的配列内に示すギャップは、ヌクレオチドまたはアミノ酸ではないので、カウントしない。同様に、標的配列のヌクレオチドまたはアミノ酸はカウントするが、参照配列のヌクレオチドまたはアミノ酸はカウントされないので、参照配列内に示すギャップは、カウントされない。
【0066】
配列同一性のパーセンテージは、同一のアミノ酸残基または核酸塩基が、両方の配列に存在する位置の数を求めて一致位置の数を得て、一致位置の数を比較ウインドウ内の位置の総数で割って、その結果を100倍して配列同一性のパーセンテージを得て計算する。配列同士の比較及び2つの配列間の配列同一性パーセントの決定は、オンライン使用、及びダウンロードの両方で容易に入手可能なソフトウェアを使用して行うことができる。適切なソフトウェアプログラムは、様々な販売元から入手可能であり、タンパク質及びヌクレオチド配列の両方のアライメント用のものがある。配列同一性パーセントを決定するための適切なプログラムの1つに、米国政府のNational Center for Biotechnology Information BLASTウェブサイト(blast.ncbi.nlm.nih.gov)から入手可能なBLASTパッケージプログラムの一部であるbl2seqがある。Bl2seqは、BLASTNまたはBLASTPアルゴリズムのいずれかを使用して、2つの配列の間の比較を行う。BLASTNが核酸配列を比較するために使用するのに対して、BLASTPはアミノ酸配列を比較するために使用する。その他の適切なプログラムとしては、例えば、バイオインフォマティクスプログラムパッケージEMBOSSの一部であり、European Bioinformatics Institute(EBI)から、www.ebi.ac.uk/Tools/psaで、やはり入手可能なNeedle、Stretcher、Water、またはMatcherがある。
【0067】
ポリヌクレオチドまたはポリペプチド参照配列と整列する単一のポリヌクレオチドまたはポリペプチド標的配列内の異なる領域は、それぞれ、それら自体の配列同一性パーセントを有することができる。配列同一性パーセントの値は、10分の1の位を、四捨五入している点に留意されたい。例えば、80.11、80.12、80.13、及び80.14は、80.1に切り捨てられ、80.15、80.16、80.17、80.18、及び80.19は、80.2に切り上げられる。また、長さの値は、常に整数である点に留意されたい。
【0068】
当業者であれば、配列同一性パーセントを計算するための配列アラインメントの生成が、一次配列データによってのみ行われるバイナリー配列間比較に限定されない、ことを理解するであろう。配列アラインメントは、複数の配列アラインメントから導出することができる。複数の配列アラインメントを生成するための適切なプログラムの1つに、www.clustal.orgから入手できるClustalW2がある。別の適切なプログラムとして、www.drive5.com/muscle/から入手できるMUSCLEがある。あるいは、ClustalW2及びMUSCLEは、例えば、EBIから入手することもできる。
【0069】
配列アラインメントは、配列データを、構造データ(例えば、結晶学的タンパク質構造)、機能的データ(例えば、突然変異の位置)、または系統発生データなどの異種ソースからのデータと統合して生成できる、ことも理解するであろう。異種データを統合してマルチプル配列アラインメントを生成する適切なプログラムとして、www.tcoffee.orgで入手可能であり、あるいは、例えば、EBIからも入手可能であるT-Coffeeがある。配列同一性パーセントを計算するために使用する最終的なアラインメントは、自動または手動のいずれかで整理できる、ことも理解するであろう。
【0070】
ポリヌクレオチドバリアントは、コード領域、非コード領域、またはその両方に改変を含むことができる。ある態様では、ポリヌクレオチドバリアントは、サイレント置換、付加、または欠失を生じるが、コードするポリペプチドの性質または活性を変化させない改変を含む。別の態様では、ヌクレオチドバリアントは、遺伝コードの縮重に起因するサイレント置換によって作り出す。その他の態様では、5~10個、1~5個、または1~2つのアミノ酸があらゆる組み合わせで置換、削除、または付加するバリアント。ポリヌクレオチドバリアントは、例えば、特定の宿主のコドン発現を最適化する(ヒトmRNAのコドンをその他のもの、例えば、E.coliなどの細菌宿主に変更する)ためなど、様々な理由で作り出すことができる。
【0071】
天然に存在するバリアントは「対立遺伝子バリアント」と称されており、生物の染色体上の特定の遺伝子座を占める遺伝子の幾つかの代替形態の1つのことを指す(Genes II,Lewin,B.,ed.,John Wiley & Sons,New York(1985))。これらの対立遺伝子バリアントは、ポリヌクレオチド、及び/またはポリペプチドレベルのいずれかで異なり得るものであり、本開示に含まれる。あるいは、天然に存在しないバリアントは、突然変異誘発技術または直接合成によって生成することもできる。
【0072】
タンパク質工学及び組換えDNA技術の公知の方法を使用して、ポリペプチドの特性を改善または改変するためのバリアントを作り出すことができる。例えば、生物学的機能を実質的に喪失せずに、分泌したタンパク質のN末端またはC末端から1つ以上のアミノ酸を欠失させることができる。その全内容を本明細書で援用するRon et al.,J.Biol.Chem.268:2984-2988(1993)は、3つ、8つ、または27個のアミノ末端のアミノ酸残基を欠失させた後でもヘパリン結合活性を有するバリアントKGFタンパク質を報告している。同様に、インターフェロンガンマは、このタンパク質のカルボキシ末端から8~10個のアミノ酸残基を欠失させた後に最大で10倍も高い活性を示した。(参照により、その全内容を本明細書で援用するDobeli et al.,J.Biotechnology 7:199-216(1988))。
【0073】
さらに、バリアントが、天然によく認められるタンパク質と同様の生物学的活性を保有していることを示す十分な証拠がある。例えば、Gayleと共同研究者(参照により、その全内容を本明細書で援用する、J.Biol.Chem 268:22105-22111(1993))は、ヒトサイトカインIL-1aの広範な突然変異分析を行っている。彼らはランダム突然変異誘発を使用して、分子の全長にわたってバリアント当たり平均2.5個のアミノ酸の変化を有する3500種を超える個々のIL-1aバリアントを作り出した。可能なすべてのアミノ酸位置で、複数の変異を調べた。これらの研究者は、「これら分子のほとんどは、[結合または生物活性]のいずれにも、ほとんど影響を与えずに改変できる」ことを発見した。(抄録を参照されたい)実際のところ、調べた3500種を超えるヌクレオチド配列の内、23種の固有のアミノ酸配列だけが、野生型とは活性が大きく異なるタンパク質を生成した。
【0074】
上記したように、ポリペプチドバリアントには、例えば、改変したポリペプチドがある。改変には、例えば、アセチル化、アシル化、ADP-リボシル化、アミド化、フラビンの共有結合、ヘム部分の共有結合、ヌクレオチドまたはヌクレオチド誘導体の共有結合、脂質または脂質誘導体の共有結合、ホスファチジルイノシトールの共有結合、架橋、環化、ジスルフィド結合の形成、脱メチル化、共有架橋の形成、システインの形成、ピログルタミン酸塩の形成、ホルミル化、ガンマ-カルボキシル化、グリコシル化、GPI固定の形成、ヒドロキシル化、ヨウ素化、メチル化、ミリストイル化、酸化、PEG化(参照により、その全内容を援用するMei et al.,Blood 116:270-79(2010))、タンパク分解プロセシング、リン酸化、プレニル化、ラセミ化、セレノイル化、硫酸化、及び、アルギニル化などのタンパク質に向けたアミノ酸の転移RNAの媒介による付加、及びユビキチン化がある。一部の態様では、Scaffold X及び/またはScaffold Yは、あらゆる好適な位置を改変する。
【0075】
本明細書で使用する用語「連結する」または「コンジュゲートする」は、互換的に使用しており、第1の部分と第2の部分との間、例えば、Scaffold XとIL-12部分との間のそれぞれに形成する共有または非共有結合のことを指しており、例えば、一部の態様では、スキャフォールド部分は、細胞外小胞内または細胞外小胞上、及びIL-12部分、例えば、Scaffold X(例えば、PTGFRNタンパク質)が、それぞれ、細胞外小胞の内腔表面または外表面で発現する。
【0076】
用語「封入した」、またはこの用語の文法的に異なる形態(例えば、封入、または封入する)は、第1の部分(例えば、IL-12部分)が、第2の部分(例えば、EV、例えば、エキソソーム)の内部にあり、2つの部分が、化学的または物理的に連結されていない状態またはプロセスのことを指す。一部の態様では、用語「封入した」は、「の内腔内」と互換可能に使用することができる。第1の部分(例えば、IL-12部分)を、第2の部分(例えば、EV、例えば、エキソソーム)内に封入する例は、限定を意図するものではなく、本明細書のその他の箇所でも開示している。
【0077】
本明細書で使用する用語「産生細胞」は、EV、例えば、エキソソームを生成するために使用する細胞のことを指す。産生細胞は、インビトロ、またはインビボで培養した細胞とすることができる。産生細胞として、例えば、EV、例えば、エキソソーム、例えば、HEK293細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、間葉系幹細胞(MSC)、BJヒト包皮線維芽細胞、s9f細胞、fHDF線維芽細胞、AGE.HN(登録商標)神経前駆細胞、CAP(登録商標)羊膜細胞、脂肪組織由来間葉系幹細胞、及びRPTEC/TERT1細胞の生成に有効であることが公知の細胞があるが、これらに限定されない。特定の態様では、産生細胞は、抗原提示細胞である。一部の態様では、産生細胞は、細菌細胞である。一部の態様では、産生細胞は、樹状細胞、B細胞、マスト細胞、マクロファージ、好中球、Kupffer-Browicz細胞、またはこれらの細胞のいずれかに由来する細胞、またはこれらのあらゆる組み合わせである。一部の態様では、産生細胞は、細菌細胞ではない。その他の態様では、産生細胞は、抗原提示細胞ではない。
【0078】
本明細書で使用する用語「関連付けた」は、それぞれ、第1の部分、例えば、IL-12部分と、第2の部分、例えば、細胞外小胞との間に形成する共有結合または非共有結合;または、第1の部分、例えば、IL-12部分を、第2の部分、例えば、細胞外小胞へ封入することを指す。例えば、一部の態様では、スキャフォールド部分、例えば、Scaffold X(例えば、PTGFRNタンパク質)が、細胞外小胞内または細胞外小胞で発現され、及びIL-12部分を、細胞外小胞の外表面にロードする。ある態様では、用語「関連付けた」は、共有の非ペプチド結合または非共有結合を意味する。例えば、アミノ酸システインは、第2のシステイン残基上のチオール基とジスルフィド結合を形成する、または架橋することができるチオール基を含む。共有結合の例として、ペプチド結合、金属結合、水素結合、ジスルフィド結合、シグマ結合、パイ結合、デルタ結合、グリコシド結合、不可知論的結合、屈曲結合、双極子結合、パイバック結合、二重結合、三重結合、四重結合、五重結合、六重結合、共役、超共役、芳香族性、ハプト数、または反結合があるが、これらに限定されない。非共有結合の例として、イオン結合(例えば、カチオン-パイ結合または塩結合)、金属結合、水素結合(例えば、二水素結合、二水素錯体、低バリア水素結合、または対称水素結合)、ファンデルワールス力、ロンドン分散力、機械的結合、ハロゲン結合、金親和性、インターカレーション、スタッキング、エントロピー力、または化学的極性があるが、これらに限定されない。その他の態様では、用語「関連付けた」は、第1の部分、例えば、細胞外小胞が、第2の部分、例えば、IL-12部分を封入することを意味する。一部の態様では、第1の部分と第2の部分とは、互いに連結することができる。その他の態様では、第1の部分と第2の部分とは、互いに物理的及び/または化学的に連結されない。
【0079】
本明細書で使用する用語「に連結する」または「とコンジュケートする」は、互換可能に使用でき、第1の部分と第2の部分、例えば、それぞれ、IL-12部分と細胞外小胞との間に形成する共有または非共有結合のことを指す。一部の態様では、スキャフォールド部分は、細胞外小胞、例えば、Scaffold X(例えば、PTGFRNタンパク質)の内部または当該小胞上で発現され、及び、IL-12部分(例えば、「表面に提示したIL-12」)は、細胞外小胞の表面に露出したScaffold Xタンパク質(例えば、PTGFRNタンパク質)の部分に連結する、またはコンジュケートする。一部の態様では、スキャフォールド部分は、細胞外小胞、例えば、Scaffold X(例えば、PTGFRNタンパク質)の内部または当該小胞上で発現され、及び、IL-12部分は、細胞外小胞の内腔に露出したScaffold Xタンパク質(例えば、PTGFRNタンパク質)の部分に連結する、またはコンジュケートする。
【0080】
本明細書で使用する用語「ロードした」、またはこの用語の文法的に異なる形態(例えば、ロードする(load)またはロードした(loaded))は、第1の部分(例えば、IL-12部分)が、第2の部分(例えば、EV、例えば、エキソソーム)に関連付けた状態またはプロセスのことを指す。一部の態様では、第1の部分は、第2の部分と化学的または物理的に連結する。一部の態様では、第1の部分は、第2の部分と化学的または物理的に連結されない。一部の態様では、第1の部分は、第2の部分内、例えば、EV(例えば、エキソソーム)の内腔内に存在しており、例えば、「封入する」。一部の態様では、第1の部分は、第2の部分の外表面に関連付けられており、例えば、EV(例えば、エキソソーム)の表面、例えば、第2の部分の「表層提示」に連結またはコンジュケートする。
【0081】
用語「封入した」、またはこの用語の文法的に異なる形態(例えば、封入、または封入すること)は、第1の部分(例えば、IL-12部分)が、第2の部分(例えば、EV、例えば、エキソソーム)の内部にあり、2つの部分が化学的または物理的に連結されていない状態またはプロセスのことを指す。一部の態様では、用語「封入した」は、「の内腔内」と互換的に使用可能である。第1の部分(例えば、IL-12部分)を、第2の部分(例えば、EV、例えば、エキソソーム)内に封入する例を、本明細書のその他の箇所で開示しているが、それらに限定されない。
【0082】
本明細書で使用する用語「単離する」、「単離した」、及び「単離すること」または「精製する」、「精製した」、及び「精製すること」、ならびに「抽出した」及び「抽出すること」は互換可能に使用でき、1つ以上の精製プロセス、例えば、所望のEV調製物の選択または濃縮が行われた、所望のEVの調製(例えば、複数の公知の、または未知の量及び/または濃度)の状態のことを指す。一部の態様では、本明細書で使用する、単離すること、または精製することとは、産生細胞を含有する試料からEVを除去、部分的に除去(例えば、画分)するプロセスである。一部の態様では、単離したEV組成物は、検出可能な望ましくない活性を有さない、あるいは、望ましくない活性のレベルまたは量が、許容可能なレベルまたは量以下である。その他の態様では、単離したEV組成物は、許容可能な量及び/または濃度以上の所望のEVの量及び/または濃度を有する。その他の態様では、単離したEV組成物は、組成物を得るための出発材料(例えば、産生細胞調製物)と比較して濃縮する。この濃縮は、出発材料と比較して、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%、99.99%、99.999%、99.9999%、または99.9999%超とすることができる。一部の態様では、単離したEV調製物は、残留する生物学的産物を実質的に含まない。一部の態様では、単離したEV調製物は、いかなる夾雑生物物質も100%含まない、99%含まない、98%含まない、97%含まない、96%含まない、95%含まない、94%含まない、93%含まない、92%含まない、91%含まない、または90%含まない。残留する生物学的産物は、非生物物質(化学物質を含む)もしくは不要な核酸、タンパク質、脂質、または代謝産物を含み得る。残留する生物学的産物を実質的に含まないとは、EV組成物が、検出可能な産生細胞を含有せず、EVのみが検出可能であることを意味するものでもある。
【0083】
本明細書で使用する用語「遊離IL-12部分」は、細胞外小胞に関連付けられていないIL-12部分を意味するが、それ以外の点では、細胞外小胞に関連付けたIL-12部分と同じである。特に、IL-12部分に関連付けた細胞外小胞と比較した場合、遊離IL-12部分は、細胞外小胞と関連付けた同じIL-12部分である。一部の態様では、遊離IL-12部分を、その有効性、毒性、及び/またはその他のあらゆる特性についてIL-12部分を含む細胞外小胞と比較した場合、細胞外小胞に関連付けたIL-12部分と比較した遊離IL-12部分の量は、EVに関連付けたIL-12部分の量と同じである。
【0084】
本明細書で使用する用語「exoIL-12」は、IL-12部分、例えば、IL-12タンパク質またはそのフラグメントをロードしたエキソソームのことを指す。一部の態様では、IL-12部分は、エキソソームの外表面(例えば、IL-12部分の表層提示)に関連付けられる。一部の態様では、IL-12部分は、エキソソームの外表面に連結する、またはコンジュケートする。一部の態様では、IL-12部分は、表面露出したスキャフォールドタンパク質、例えば、Scaffold Xタンパク質、例えば、PTGFRNタンパク質に連結する、またはコンジュゲートする。一部の態様では、IL-12部分は、エキソソームの脂質二重層に連結する、またはコンジュゲートする。一部の態様では、エキソソームは、エキソソームの内腔にIL-12部分を含む。一部の態様では、IL-12部分は、エキソソームの内腔表面、例えば、スキャフォールドタンパク質、例えば、Scaffold X、例えば、PTGFRNと関連する。一部の態様では、IL-12部分は、エキソソームの内腔内に封入されており、スキャフォールドタンパク質と関連付けされていない。
【0085】
本明細書で使用する用語「リガンド」は、受容体に結合し、受容体を調節して生物学的応答を生じる分子のことを指す。調節は、受容体が媒介する生物学的応答の活性化、非活性化、遮断、または減衰とし得る。受容体は、内因性または外因リガンドのいずれかによって調節し得る。内因性リガンドの例として、抗体及びペプチドがあるが、これらに限定されない。外因性アゴニストの例として、薬物、小分子、及び環状ジヌクレオチドがあるが、これらに限定されない。リガンドを、完全リガンド、部分リガンド、またはインバースリガンドとすることができる。
【0086】
本明細書で使用する用語「抗体」は、天然のもの、または部分的もしくは全体的に合成したものであるかに関係なく、免疫グロブリン、及びそのフラグメントを含む。また、この用語は、免疫グロブリン結合ドメインに相同である結合ドメインを有するあらゆるタンパク質を含む。「抗体」は、抗原に特異的に結合して認識する免疫グロブリン遺伝子またはそのフラグメント由来のフレームワーク領域を含むポリペプチドをさらに含む。抗体という用語の使用は、全抗体、ポリクローナル、モノクローナル、及び組換え抗体、それらのフラグメントを含むことを意図しており、一本鎖抗体、ヒト化抗体、マウス抗体、キメラ、マウス-ヒト、マウス-霊長類、霊長類-ヒトモノクローナル抗体、抗イディオタイプ抗体、例えば、scFv、(scFv)、Fab、Fab’、及びF(ab’)、F(ab1)、Fv、dAb、及びFdフラグメントなどの抗体フラグメント、ダイアボディ、及び抗体関連ポリペプチドをさらに含む。抗体は、所望の生物学的活性または機能を示す限りは、二重特異性抗体及び多重特異性抗体を含む。
【0087】
本明細書で使用する用語「治療有効量」は、所望の治療効果、薬理学的及び/または生理学的効果を必要とする対象において十分な効果を招く試薬または医薬化合物の量である。予防は、治療とみなすことができるので、治療有効量とは「予防有効量」とすることができる。
【0088】
本明細書で使用する用語「医薬組成物」は、例えば、医薬として許容可能な担体及び賦形剤などの1つ以上のその他の化学成分と混合もしくは混ぜ合わせる、またはそれと懸濁させたEVなど、本明細書に記載した1つ以上の化合物のことを指す。医薬組成物の目的の1つは、EVの調製物の対象への投与を促すことにある。用語「賦形剤」または「担体」は、化合物の投与をさらに促すために医薬組成物に添加する不活性物質のことを指す。用語「医薬として許容可能な担体」または「医薬として許容可能な賦形剤」、及びそれらの文法的変形は、ヒトを含む動物での使用について米国連邦政府の規制機関の承認を受けている、または米国薬局方に記載されている作用物質のいずれかであること、ならびに、対象への組成物の投与が、禁止されている程度の望ましくない生理学的作用の発生を引き起こさない、また、投与した化合物の生物学的活性及び特性を無効化しないあらゆる担体または希釈剤を含む。医薬組成物を調製する上で有用であり、一般に安全で、非毒性であり、望ましい賦形剤及び担体を含む。
【0089】
本明細書で使用する用語「ペイロード」は、EVと接触する標的(例えば、標的細胞)に作用する治療剤のことを指す。EV及び/または産生細胞に導入することができるペイロードとして、ヌクレオチド(例えば、検出可能な部分もしくは毒素を含む、または転写を妨げるヌクレオチド)、核酸(例えば、酵素などのポリペプチドをコードするDNAもしくはmRNA分子、またはmiRNA、dsDNA、lncRNA、及びsiRNAのような制御機能を有するRNA分子)、アミノ酸(例えば、検出可能な部分もしくは毒素を含む、または翻訳を妨げるアミノ酸)、ポリペプチド(例えば、酵素)、脂質、炭水化物、及び小分子(例えば、小分子薬及び毒素)などの治療剤がある。
【0090】
用語「投与」、「投与すること」、及びそれらの変形は、EVなどの組成物または作用物質を対象に導入することを指しており、組成物または作用物質の同時及び連続的な導入を含む。対象への組成物または作用物質の導入は、腫瘍内、経口、肺内、鼻腔内、非経口的(静脈内、動脈内、筋肉内、腹腔内、または皮下)、直腸内、リンパ管内、くも膜下腔内、眼周囲、または局所的を含むあらゆる適切な経路で行う。投与は、自己投与及び他者による投与を含む。適切な投与経路によって、組成物または作用物質は、その目的とする機能を奏することができる。例えば、適切な経路が静脈内である場合、組成物は、組成物または作用物質を対象の静脈内に導入して投与する。
【0091】
用語「個体」「対象」「宿主」及び「患者」は、本明細書では互換可能に使用しており、診断、処置または治療が望ましいあらゆる哺乳動物対象、特に、ヒトのことを指す。本明細書に記載する組成物及び方法は、ヒトの治療及び獣医学的用途の両方に適用可能である。一部の態様では、対象は哺乳動物であり、その他の態様では、対象はヒトである。本明細書で使用する「哺乳動物対象」として、ヒト、家庭用動物(例えば、イヌ、ネコなど)、家畜(例えば、ウシ、ヒツジ、ブタ、ウマなど)、及び実験動物(例えば、サル、ラット、マウス、ウサギ、モルモットなど)を含むすべての哺乳動物があるが、これらに限定されない。
【0092】
本明細書で使用する用語「実質的に含まない」は、EV、例えば、エキソソームを含む試料が、質量/体積(m/v)濃度比率で10%未満のマクロ分子しか含まないことを意味する。一部の画分は、0.001%未満、0.01%未満、0.05%未満、0.1%未満、0.2%未満、0.3%未満、0.4%未満、0.5%未満、0.6%未満、0.7%未満、0.8%未満、0.9%未満、1%未満、2%未満、3%未満、4%未満、5%未満、6%未満、7%未満、8%未満、9%未満、または10%(m/v)未満のマクロ分子を含有し得る。
【0093】
本明細書で使用する用語「マクロ分子」は、核酸、外因性タンパク質、脂質、炭水化物、代謝産物、またはそれらの組み合わせのことを意味する。
【0094】
本明細書で使用する用語「従来のエキソソームタンパク質」は、エキソソームに豊富にあることが従来から知られているタンパク質のことを意味しており、CD9、CD63、CD81、PDGFR、GPI固定タンパク質、ラクタドヘリン(MFGE8)、LAMP2、及びLAMP2B、そのフラグメント、またはこれらに結合するペプチドがあるが、これらに限定されない。
【0095】
本明細書で使用する「免疫応答」とは、外因性因子または異常、例えば、感染細胞に対する脊椎動物での生物学的応答のことを指しており、この応答は、これらの因子、及びそれらで発症する疾患から生物を保護する。免疫応答は、免疫系の1つ以上の細胞(例えば、Tリンパ球、Bリンパ球、ナチュラルキラー(NK)細胞、マクロファージ、好酸球、肥満細胞、樹状細胞、または好中球)、及びこれらの細胞または肝臓が産生する可溶性高分子(抗体、サイトカイン、及び補体など)の作用を媒介し、その結果、脊椎動物の体内に侵入する病原体、病原体に感染した細胞または組織、がん性細胞またはその他の異常な細胞、または自己免疫または病理学的炎症の事例では、正常なヒト細胞または組織に結合する、損傷を招く、破壊する、及び/または排除する、選択的標的化をもたらす。免疫反応は、例えば、T細胞、例えば、エフェクターT細胞、Th細胞、CD4+細胞、CD8+細胞、またはTreg細胞の活性化または阻害、または免疫系のあらゆるその他の細胞、例えば、NK細胞の活性化または阻害を含む。したがって、免疫応答は、液性免疫応答(例えば、B細胞が媒介するもの)、細胞性免疫応答(例えば、T細胞が媒介するもの)、または体液性免疫応答及び細胞性免疫応答の両方を含むことができる。一部の態様では、免疫応答は「抑制」免疫応答である。抑制免疫応答は、刺激(例えば、抗原)の効果を遮断または減衰させる免疫応答である。特定の態様では、抑制免疫応答は、刺激に対する阻害抗体の産生を含む。一部の態様では、阻害応答は、サイトカインに対する抗体、例えば、IL-12に対する抗体の産生を含む。一部の態様では、免疫応答は「刺激的」免疫応答である。刺激的免疫応答は、標的抗原(例えば、腫瘍抗原)を破壊する、及び除去することができるエフェクター細胞(例えば、細胞傷害性Tリンパ球)の生成を招く免疫応答である。
【0096】
本明細書で使用する用語「治療する」、「治療」または「治療すること」は、例えば、疾患または状態の重症度の低下、疾患経過の期間短縮、疾患または状態に関連する1つ以上の症状の改善または消失、疾患または状態を必ずしも治癒しなくとも疾患または状態を有する対象に有益な効果をもたらすことを指す。この用語は、疾患もしくは状態またはその症状の予防または防止も含む。一部の態様では、用語「治療する」または「治療」は、対象において抗原に対する免疫応答を誘導することを意味する。一部の態様では、疾患または状態は、がんである。一部の態様では、がんは、皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)、トリプルネガティブ乳癌(TNBC)、膠芽腫、メルケル細胞癌(MCC)、カポジ肉腫、または、それらのあらゆる組み合わせからなる群から選択する。一部の態様では、がんは、黒色腫を含む。
【0097】
本明細書で使用する用語「予防する」または「予防すること」は、特定の転帰の出現または重症度を減少または低下させることを指す。一部の態様では、転帰の予防は、予防的治療によって実現する。一部の態様では、本明細書に記載した、サイトカイン、例えば、IL-12部分を含むEV、例えば、エキソソームを、予防的に対象に投与する。一部の態様では、対象は、皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)、トリプルネガティブ乳癌(TNBC)、黒色腫、膠芽腫、メルケル細胞癌(MCC)、カポジ肉腫、またはそれらのあらゆる組み合わせからなる群から選択するがんを発症するリスクがある。
【0098】
本明細書で使用する用語「調節する」、「調節すること」、「改変する」及び/または「調節因子」は、一般的には、例えば、アンタゴニストまたはアゴニストとして作用するために、特定の濃度、レベル、発現、機能または挙動を増加または減少させる、例えば、直接的または間接的に促進/刺激/アップレギュレートまたは干渉/阻害/ダウンレギュレートすることで変化させる能力のことを指す。一部の事例では、調節因子は、コントロールに対して、または一般的に予想される活性の平均的レベルに対して、または活性のコントロールレベルに対して、特定の濃度、レベル、活性または機能を、増加及び/または減少させることができる。
【0099】
本明細書で使用する「哺乳動物対象」として、ヒト、家庭用動物(例えば、イヌ、ネコなど)、家畜(例えば、ウシ、ヒツジ、ブタ、ウマなど)、及び実験動物(例えば、サル、ラット、マウス、ウサギ、モルモットなど)を含むすべての哺乳動物があるが、これらに限定されない。
【0100】
用語「個体」「対象」「宿主」及び「患者」は、本明細書では互換可能に使用しており、診断、処置または治療が望ましいあらゆる哺乳動物対象、特に、ヒトんおことを指す。本明細書に記載した方法は、ヒトの治療及び獣医学的用途の両方に適用可能である。一部の態様では、対象は哺乳動物であり、その他の態様では、対象はヒトである。
【0101】
本明細書で使用する「原発腫瘍」とは、腫瘍が増殖を開始した対象内の箇所での当初の腫瘍、または最初の腫瘍のことを指す。原発腫瘍は、例えば、原発腫瘍内の細胞の転移による原発腫瘍の箇所以外の箇所での原発腫瘍の増殖の開始後に発生する腫瘍のことを指す「二次腫瘍」とは対照的に使用する。
【0102】
本明細書に記載した範囲は、記載する端点を含むその範囲内のすべての値の簡略的な表記であると理解されたい。例えば、1~50の範囲は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、及び50からなる群のあらゆる数、数の組み合わせ、または部分範囲を含む、ものと理解されたい。
【0103】
特記しない限り、1つ以上の立体中心を有する化合物について言及する場合、そのそれぞれの立体異性体及びその立体異性体のすべての組み合わせを意図する。
【0104】
II.本開示の方法
本開示の特定の態様は、がんの治療を必要とする対象に、EV、例えば、IL-12を含むサイトカインを含むエキソソームを投与することを含む、治療の方法に関する。一部の態様では、がんは、皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)、黒色腫、トリプルネガティブ乳癌(TNBC)、膠芽腫、メルケル細胞癌(MCC)、カポジ肉腫、及びこれらのあらゆる組み合わせから選択する。一部の態様では、がんは、膀胱癌を含む。一部の態様では、がんは、基底細胞癌(BCC)を含む。一部の態様では、EVは、IL-12、例えば、ヒトIL-12を含む。一部の態様では、対象には、STINGアゴニストを含むように遺伝子操作したEV、例えば、エキソソームは投与されない。
【0105】
一部の態様では、本明細書に記載したエキソソームは、IL-12部分を含む。特定の態様では、IL-12部分は、ヒトIL-12、またはそのフラグメントを含む。ヒトIL-12は、樹状細胞、マクロファージ、好中球、及びB-リンパ芽球様細胞が天然に産生するインターロイキンである。IL-12は、IFN-ガンマ及びTNF-アルファの産生を刺激し、及び、IL-4が媒介したIFN-ガンマの抑制を低減させるなど、T細胞の増殖及び機能を刺激することが知られている。IL-12は、ナイーブT細胞のThl細胞への分化にも関与している。また、IL-12は、NK/リンホカイン活性化キラー細胞の溶解活性を強める。IL-12は、IL-12A(p35)サブユニットとIL-12B(p40)サブユニットからなるヘテロ二量体サイトカインである。活性ヘテロダイマーは、P70としても公知である。IL-12A(p35;Uniprot P29459;配列番号2)、及びIL-12B(p40;Uniprot P29460;配列番号3)のアミノ酸配列を、表1に示す。
【表1】
【0106】
一部の態様では、IL-12部分は、p35ポリペプチド、またはそのフラグメントを含む。一部の態様では、IL-12は、配列番号2と、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または約100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の態様では、IL-12は、配列番号2と、少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の態様では、IL-12は、配列番号2と、少なくとも約95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の態様では、IL-12は、配列番号2と、少なくとも約96%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の態様では、IL-12は、配列番号2と、少なくとも約97%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の態様では、IL-12は、配列番号2と、少なくとも約98%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の態様では、IL-12は、配列番号2と、少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の態様では、IL-12は、配列番号2に記載のアミノ酸配列を含む。一部の態様では、IL-12部分は、シグナルペプチドを欠いている(表1を参照されたい)。
【0107】
一部の態様では、IL-12部分は、p40ポリペプチド、またはそのフラグメントを含む。一部の態様では、IL-12は、配列番号3と、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または約100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の態様では、IL-12は、配列番号3と、少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の態様では、IL-12は、配列番号3と、少なくとも約95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の態様では、IL-12は、配列番号3と、少なくとも約96%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の態様では、IL-12は、配列番号3と、少なくとも約97%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の態様では、IL-12は、配列番号3と、少なくとも約98%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の態様では、IL-12は、配列番号3と、少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の態様では、IL-12は、配列番号3に記載のアミノ酸配列を含む。一部の態様では、IL-12部分は、シグナルペプチドを欠いている(表1を参照されたい)。
【0108】
一部の態様では、IL-12部分は、p35ポリペプチドまたはそのフラグメント、及びp40ポリペプチドまたはそのフラグメントを含む。一部の態様では、IL-12部分は、単一のポリペプチドを含み、また、p35ポリペプチドまたはそのフラグメントを、p40ポリペプチドまたはそのフラグメントに連結する。一部の態様では、p35ポリペプチドまたはそのフラグメントを、リンカーによって、p40ポリペプチドまたはそのフラグメントに連結する。一部の態様では、リンカーは、ペプチドリンカーである。一部の態様では、リンカーは、1つ以上のアミノ酸を含む。一部の態様では、リンカーは、Gly-Ser(GS)リンカーを含む。一部の態様では、GSリンカーは、(GS)を含み、また、nは、1と10との間の整数である。一部の態様では、GSリンカーは、(GS)を含み、また、nは、1と10との間の整数である。
【0109】
特定の態様では、IL-12部分は、配列番号4と、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または約100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の態様では、IL-12は、配列番号4と、少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の態様では、IL-12は、配列番号4と、少なくとも約95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の態様では、IL-12は、配列番号4と、少なくとも約96%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の態様では、IL-12は、配列番号4と、少なくとも約97%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の態様では、IL-12は、配列番号4と、少なくとも約98%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の態様では、IL-12は、配列番号4と、少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の態様では、IL-12は、配列番号4に記載のアミノ酸配列を含む。一部の態様では、IL-12は、配列番号4に記載のアミノ酸配列からなる。一部の態様では、IL-12は、配列番号4に記載のアミノ酸配列から実施的になる。一部の態様では、IL-12部分は、シグナルペプチドを欠いている(表1を参照されたい)。
【0110】
一部の態様では、EVの投与は、約20%~約100%、約30%~約100%、約40%~約100%、約50%~約100%、約60%~約100%、約70%~約100%、または約80%~約100%の客観的奏効率(ORR)を示す。一部の態様では、EVの投与は、約20%~約90%、約20%~約80%、約20%~約75%、約20%~約70%、約20%~約65%、約20%~約60%、約20%~約55%、約20%~約50%のORRを示す。一部の態様では、EVの投与は、約25%~約56%のORRを示す。一部の態様では、EVの投与は、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または約100%ORRを示す。一部の態様では、奏効率は、例えば、CTCLに対するmSWAT分析を用いて測定する。
【0111】
一部の態様では、EVの投与は、対象において完全寛解を示す。一部の態様では、EVを投与した結果、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または約100%の対象で完全寛解(CR)を示す。一部の態様では、EVを投与した結果、少なくとも約20%の対象でCRを示す。一部の態様では、EVを投与した結果、少なくとも約22%の対象でCRを示す。
【0112】
ある特定のメカニズムに縛られるものではないが、一部の態様では、本明細書に開示したEVの投与は、免疫細胞を活性化して、腫瘍細胞を標的として死滅させる。一部の態様では、本明細書に開示したEV、例えば、IL-12部分をロードしたEVは、T細胞を活性化する。一部の態様では、本明細書に開示したEV、例えば、IL-12部分をロードしたEVは、CD8 T細胞を活性化する。一部の態様では、本明細書に開示したEV、例えば、IL-12部分をロードしたEVは、NK細胞を活性化する。
【0113】
EVは、当該技術分野で公知のあらゆる経路で対象に投与することができる。一部の態様では、EVを、非経口、経口、静脈内(IV)、筋肉内(IM)、腫瘍内(IT)、鼻腔内、皮下、または腹腔内(IP)に投与する。特定の態様では、EVは、例えば、IT送達によって、腫瘍微小環境に直接に投与する。一部の態様では、本明細書に開示したEVのIT送達は、全身曝露を減らす、選択的免疫細胞活性化を高める、組織保持を強める(長期応答を提供する)、または、それらのあらゆる組み合わせを示す。
【0114】
一部の態様では、本方法に関するEVは、少なくとも約0.3μg、少なくとも約1μg、少なくとも約2μg、少なくとも約3μg、少なくとも約4μg、少なくとも約5μg、少なくとも約6μg、少なくとも約7μg、少なくとも約8μg、少なくとも約9μg、少なくとも約10μg、少なくとも約11μg、または少なくとも約12μgの治療有効量で投与する。一部の態様では、本方法に関するEVは、少なくとも約0.3μgの治療有効量で投与する。一部の態様では、本方法に関するEVは、少なくとも約1μgの治療有効量で投与する。一部の態様では、本方法に関するEVは、少なくとも約2μgの治療有効量で投与する。一部の態様では、本方法に関するEVは、少なくとも約3μgの治療有効量で投与する。一部の態様では、本方法に関するEVは、少なくとも約4μgの治療有効量で投与する。一部の態様では、本方法に関するEVは、少なくとも約5μgの治療有効量で投与する。一部の態様では、本方法に関するEVは、少なくとも約6μgの治療有効量で投与する。一部の態様では、本方法に関するEVは、少なくとも約7μgの治療有効量で投与する。一部の態様では、本方法に関するEVは、少なくとも約8μgの治療有効量で投与する。一部の態様では、本方法に関するEVは、少なくとも約9μgの治療有効量で投与する。一部の態様では、本方法に関するEVは、少なくとも約10μgの治療有効量で投与する。一部の態様では、本方法に関するEVは、少なくとも約11μgの治療有効量で投与する。一部の態様では、本方法に関するEVは、少なくとも約12μgの治療有効量で投与する。
【0115】
一部の態様では、本方法に関するEVは、約0.3μg~約12μg、約1μg~約12μg、約1μg~約11μg、約1μg~約10μg、約1μg~約9μg、約1μg~約8μg、約1μg~約7μg、約1μg~約6μg、約1μg~約5μg、約2μg~約12μg、約2μg~約11μg、約2μg~約10μg、約2μg~約9μg、約2μg~約8μg、約2μg~約7μg、約2μg~約6μg、約2μg~約5μg、約3μg~約12μg、約3μg~約11μg、約3μg~約10μg、約3μg~約9μg、約3μg~約8μg、約3μg~約7μg、約3μg~約6μg、約3μg~約5μg、約4μg~約12μg、約4μg~約11μg、約4μg~約10μg、約4μg~約9μg、約4μg~約8μg、約4μg~約7μg、約4μg~約6μg、または約4μg~約5μgの治療有効量で投与する。
【0116】
一部の態様では、本方法に関するEVは、約1μg~約2μg、約2μg~約3μg、約3μg~約4μg、約4μg~約5μg、約5μg~約6μg、約6μg~約7μg、約7μg~約8μg、約8μg~約9μg、約9μg~約10μg、約10μg~約11μg、または約11μg~約12μgの治療有効量で投与する。一部の態様では、本方法に関するEVは、約1μg~約2μgの治療有効量で投与する。一部の態様では、本方法に関するEVは、約2μg~約3μgの治療有効量で投与する。一部の態様では、本方法に関するEVは、約3μg~約4μgの治療有効量で投与する。一部の態様では、本方法に関するEVは、約4μg~約5μgの治療有効量で投与する。一部の態様では、本方法に関するEVは、約5μg~約6μgの治療有効量で投与する。一部の態様では、本方法に関するEVは、約6μg~約7μgの治療有効量で投与する。一部の態様では、本方法に関するEVは、約7μg~約8μgの治療有効量で投与する。一部の態様では、本方法に関するEVは、約8μg~約9μgの治療有効量で投与する。一部の態様では、本方法に関するEVは、約9μg~約10μgの治療有効量で投与する。一部の態様では、本方法に関するEVは、約10μg~約11μgの治療有効量で投与する。一部の態様では、本方法に関するEVは、約11μg~約12μgの治療有効量で投与する。
【0117】
一部の態様では、本方法に関するEVは、約0.3μg、約1μg、約2μg、約3μg、約4μg、約5μg、約6μg、約7μg、約8μg、約9μg、約10μg、約11μg、または約12μgの治療有効量で投与する。一部の態様では、本方法に関するEVは、約0.3μgの治療有効量で投与する。一部の態様では、本方法に関するEVは、約1μgの治療有効量で投与する。一部の態様では、本方法に関するEVは、約2μgの治療有効量で投与する。一部の態様では、本方法に関するEVは、約3μgの治療有効量で投与する。一部の態様では、本方法に関するEVは、約4μgの治療有効量で投与する。一部の態様では、本方法に関するEVは、約5μgの治療有効量で投与する。一部の態様では、本方法に関するEVは、約6μgの治療有効量で投与する。一部の態様では、本方法に関するEVは、約7μgの治療有効量で投与する。一部の態様では、本方法に関するEVは、約8μgの治療有効量で投与する。一部の態様では、本方法に関するEVは、約9μgの治療有効量で投与する。一部の態様では、本方法に関するEVは、約10μgの治療有効量で投与する。一部の態様では、本方法に関するEVは、約11μgの治療有効量で投与する。一部の態様では、本方法に関するEVは、約12μgの治療有効量で投与する。
【0118】
一部の態様では、方法におけるEVの治療有効量は、少なくとも1回、少なくとも2回、または少なくとも3回投与する。一部の態様では、EVの治療有効量は、複数回用量で投与する。
【0119】
一部の態様では、EVの治療有効量は、同じ用量の組換えIL-12の投与と比較して、対象での全身毒性が小さい。
【0120】
一部の態様では、EVは、約毎週ごとに1回、約2週間ごとに1回、約3週間ごとに1回、または約4週間ごとに1回投与する。一部の態様では、EVは、約毎週ごとに1回投与する。一部の態様では、EVは、約7~21日ごとに1回、約7~18日ごとに1回、約7~14日ごとに1回、約10~21日ごとに1回、約10~18日ごとに1回、約10~14日ごとに1回、約10~16日ごとに1回、約12~約20日ごとに1回、約12~約18日ごとに1回、約12~約16日ごとに1回、約12~約14日ごとに1回、約14~約21日ごとに1回、約14~約16日ごとに1回、約14~約18日ごとに1回、または、約14~約21日ごとに1回投与する。一部の態様では、EVは、約7日ごとに1回投与する。一部の態様では、EVは、約10日ごとに1回投与する。一部の態様では、EVは、約12日ごとに1回投与する。一部の態様では、EVは、約14日ごとに1回投与する。一部の態様では、EVは、約16日ごとに1回投与する。一部の態様では、EVは、約18日ごとに1回投与する。一部の態様では、EVは、約20日ごとに1回投与する。一部の態様では、EVは、約21日ごとに1回投与する。
【0121】
一部の態様では、EVは、約5μgと約7μgの間の治療有効量、例えば、約6μgで、約毎週ごとに1回、約2週間ごとに1回、約3週間ごとに1回、または約4週間ごとに1回投与する。一部の態様では、EVは、約5μgと約7μgの間の治療有効量、例えば、約6μgで、約毎週ごとに1回投与する。一部の態様では、EVは、約5μgと約7μgの間の治療有効量、例えば、約6μgで、約10~18日ごとに1回、約12~約16日ごとに1回、約14~約21日ごとに1回、約10~約14日ごとに1回、または約14~約18日ごとに1回投与する。一部の態様では、EVは、約5μgと約7μgの間の治療有効量、例えば、約6μgで、約14日ごとに1回投与する。
【0122】
一部の態様では、EVは、約1週間ごとに1回、約3.0μgの治療有効量で投与する。一部の態様では、EVは、約7日ごとに1回、約3.0μgの治療有効量で投与する。一部の態様では、EVは、約8日ごとに1回、約3.0μgの治療有効量で投与する。一部の態様では、EVは、約9日ごとに1回、約3.0μgの治療有効量で投与する。一部の態様では、EVは、約10日ごとに1回、約3.0μgの治療有効量で投与する。一部の態様では、EVは、約11日ごとに1回、約3.0μgの治療有効量で投与する。一部の態様では、EVは、約12日ごとに1回、約3.0μgの治療有効量で投与する。一部の態様では、EVは、約13日ごとに1回、約3.0μgの治療有効量で投与する。一部の態様では、EVは、約14日ごとに1回、約3.0μgの治療有効量で投与する。一部の態様では、EVは、約2週間ごとに1回、約3.0μgの治療有効量で投与する。一部の態様では、EVは、約15日ごとに1回、約3.0μgの治療有効量で投与する。一部の態様では、EVは、約15日ごとに1回、約3.0μgの治療有効量で投与する。一部の態様では、EVは、約17日ごとに1回、約3.0μgの治療有効量で投与する。一部の態様では、EVは、約18日ごとに1回、約3.0μgの治療有効量で投与する。一部の態様では、EVは、約19日ごとに1回、約3.0μgの治療有効量で投与する。一部の態様では、EVは、約20日ごとに1回、約3.0μgの治療有効量で投与する。一部の態様では、EVは、約21日ごとに1回、約3.0μgの治療有効量で投与する。一部の態様では、EVは、約3週間ごとに1回、約3.0μgの治療有効量で投与する。一部の態様では、EVは、約毎週ごとに1回、約3.0μgの治療有効量で投与する。一部の態様では、EVは、約7日ごとに1回、約3.0μgの治療有効量で投与する。一部の態様では、EVは、約8日ごとに1回、約3.0μgの治療有効量で投与する。一部の態様では、EVは、約9日ごとに1回、約3.0μgの治療有効量で投与する。一部の態様では、EVは、約10日ごとに1回、約3.0μgの治療有効量で投与する。一部の態様では、EVは、約11日ごとに1回、約3.0μgの治療有効量で投与する。一部の態様では、EVは、約12日ごとに1回、約3.0μgの治療有効量で投与する。一部の態様では、EVは、約13日ごとに1回、約3.0μgの治療有効量で投与する。一部の態様では、EVは、約14日ごとに1回、約3.0μgの治療有効量で投与する。一部の態様では、EVは、約2週間ごとに1回、約3.0μgの治療有効量で投与する。一部の態様では、EVは、約15日ごとに1回、約3.0μgの治療有効量で投与する。一部の態様では、EVは、約15日ごとに1回、約3.0μgの治療有効量で投与する。一部の態様では、EVは、約17日ごとに1回、約3.0μgの治療有効量で投与する。一部の態様では、EVは、約18日ごとに1回、約3.0μgの治療有効量で投与する。一部の態様では、EVは、約19日ごとに1回、約3.0μgの治療有効量で投与する。一部の態様では、EVは、約20日ごとに1回、約3.0μgの治療有効量で投与する。一部の態様では、EVは、約21日ごとに1回、約3.0μgの治療有効量で投与する。一部の態様では、EVは、約3週間ごとに1回、約3.0μgの治療有効量で投与する。
【0123】
一部の態様では、EVは、約1週間ごとに1回、約6.0μgの治療有効量で投与する。一部の態様では、EVは、約7日ごとに1回、約6.0μgの治療有効量で投与する。一部の態様では、EVは、約8日ごとに1回、約6.0μgの治療有効量で投与する。一部の態様では、EVは、約9日ごとに1回、約6.0μgの治療有効量で投与する。一部の態様では、EVは、約10日ごとに1回、約6.0μgの治療有効量で投与する。一部の態様では、EVは、約11日ごとに1回、約6.0μgの治療有効量で投与する。一部の態様では、EVは、約12日ごとに1回、約6.0μgの治療有効量で投与する。一部の態様では、EVは、約13日ごとに1回、約6.0μgの治療有効量で投与する。一部の態様では、EVは、約14日ごとに1回、約6.0μgの治療有効量で投与する。一部の態様では、EVは、約2週間ごとに1回、約6.0μgの治療有効量で投与する。一部の態様では、EVは、約15日ごとに1回、約6.0μgの治療有効量で投与する。一部の態様では、EVは、約15日ごとに1回、約6.0μgの治療有効量で投与する。一部の態様では、EVは、約17日ごとに1回、約6.0μgの治療有効量で投与する。一部の態様では、EVは、約18日ごとに1回、約6.0μgの治療有効量で投与する。一部の態様では、EVは、約19日ごとに1回、約6.0μgの治療有効量で投与する。一部の態様では、EVは、約20日ごとに1回、約6.0μgの治療有効量で投与する。一部の態様では、EVは、約21日ごとに1回、約6.0μgの治療有効量で投与する。一部の態様では、EVは、約3週間ごとに1回、約6.0μgの治療有効量で投与する。一部の態様では、EVは、約毎週ごとに1回、約6.0μgの治療有効量で投与する。一部の態様では、EVは、約7日ごとに1回、約6.0μgの治療有効量で投与する。一部の態様では、EVは、約8日ごとに1回、約6.0μgの治療有効量で投与する。一部の態様では、EVは、約9日ごとに1回、約6.0μgの治療有効量で投与する。一部の態様では、EVは、約10日ごとに1回、約6.0μgの治療有効量で投与する。一部の態様では、EVは、約11日ごとに1回、約6.0μgの治療有効量で投与する。一部の態様では、EVは、約12日ごとに1回、約6.0μgの治療有効量で投与する。一部の態様では、EVは、約13日ごとに1回、約6.0μgの治療有効量で投与する。一部の態様では、EVは、約14日ごとに1回、約6.0μgの治療有効量で投与する。一部の態様では、EVは、約2週間ごとに1回、約6.0μgの治療有効量で投与する。一部の態様では、EVは、約15日ごとに1回、約6.0μgの治療有効量で投与する。一部の態様では、EVは、約15日ごとに1回、約6.0μgの治療有効量で投与する。一部の態様では、EVは、約17日ごとに1回、約6.0μgの治療有効量で投与する。一部の態様では、EVは、約18日ごとに1回、約6.0μgの治療有効量で投与する。一部の態様では、EVは、約19日ごとに1回、約6.0μgの治療有効量で投与する。一部の態様では、EVは、約20日ごとに1回、約6.0μgの治療有効量で投与する。一部の態様では、EVは、約21日ごとに1回、約6.0μgの治療有効量で投与する。一部の態様では、EVは、約3週間ごとに1回、約6.0μgの治療有効量で投与する。
【0124】
一部の態様では、EVは、約1週間ごとに1回、約12.0μgの治療有効量で投与する。一部の態様では、EVは、約7日ごとに1回、約12.0μgの治療有効量で投与する。一部の態様では、EVは、約8日ごとに1回、約12.0μgの治療有効量で投与する。一部の態様では、EVは、約9日ごとに1回、約12.0μgの治療有効量で投与する。一部の態様では、EVは、約10日ごとに1回、約12.0μgの治療有効量で投与する。一部の態様では、EVは、約11日ごとに1回、約12.0μgの治療有効量で投与する。一部の態様では、EVは、約12日ごとに1回、約12.0μgの治療有効量で投与する。一部の態様では、EVは、約13日ごとに1回、約12.0μgの治療有効量で投与する。一部の態様では、EVは、約14日ごとに1回、約12.0μgの治療有効量で投与する。一部の態様では、EVは、約2週間ごとに1回、約12.0μgの治療有効量で投与する。一部の態様では、EVは、約15日ごとに1回、約12.0μgの治療有効量で投与する。一部の態様では、EVは、約15日ごとに1回、約12.0μgの治療有効量で投与する。一部の態様では、EVは、約17日ごとに1回、約12.0μgの治療有効量で投与する。一部の態様では、EVは、約18日ごとに1回、約12.0μgの治療有効量で投与する。一部の態様では、EVは、約19日ごとに1回、約12.0μgの治療有効量で投与する。一部の態様では、EVは、約20日ごとに1回、約12.0μgの治療有効量で投与する。一部の態様では、EVは、約21日ごとに1回、約12.0μgの治療有効量で投与する。一部の態様では、EVは、約3週間ごとに1回、約12.0μgの治療有効量で投与する。一部の態様では、EVは、約22日ごとに1回、約12.0μgの治療有効量で投与する。一部の態様では、EVは、約23日ごとに1回、約12.0μgの治療有効量で投与する。一部の態様では、EVは、約24日ごとに1回、約12.0μgの治療有効量で投与する。一部の態様では、EVは、約25日ごとに1回、約12.0μgの治療有効量で投与する。一部の態様では、EVは、約26日ごとに1回、約12.0μgの治療有効量で投与する。一部の態様では、EVは、約27日ごとに1回、約12.0μgの治療有効量で投与する。EVは、約28日ごとに1回、約12.0μgの治療有効量で投与する。一部の態様では、EVは、約4週間ごとに1回、約12.0μgの治療有効量で投与する。一部の態様では、EVは、約毎月ごとに1回、約12.0μgの治療有効量で投与する。
【0125】
一部の態様では、EVは、約3.0μgの治療有効量を、約2週間ごとに、少なくとも1用量、少なくとも約2用量、少なくとも約3用量、少なくとも約4用量、少なくとも約5用量、少なくとも約6用量、少なくとも約7用量、少なくとも約8用量、少なくとも約9用量、少なくとも約10用量、少なくとも約11用量、少なくとも約12用量、少なくとも約13用量、少なくとも約14用量、少なくとも約15用量、少なくとも約16用量、少なくとも約17用量、少なくとも約18用量、少なくとも約19用量、少なくとも約20用量、少なくとも約25用量、少なくとも約30用量、少なくとも約35用量、少なくとも約40用量、少なくとも約45用量、または少なくとも約50用量で投与する。一部の態様では、EVは、約3.0μgの治療有効量で、少なくとも約2週間、少なくとも約4週間、少なくとも約週間、少なくとも約6週間、少なくとも約8週間、少なくとも約10週間、少なくとも約12週間、少なくとも約14週間、少なくとも約16週間、少なくとも約18週間、少なくとも約20週間、少なくとも約22週間、少なくとも約24週間、少なくとも約26週間、少なくとも約28週間、少なくとも約30週間、少なくとも約32週間、少なくとも約34週間、少なくとも約36週間、少なくとも約38週間、少なくとも約40週間、少なくとも約42週間、少なくとも約44週間、少なくとも約46週間、少なくとも約48週間、少なくとも約50週間、または、少なくとも約52週間は、約2週間ごとに1回投与する。一部の態様では、EVは、約3.0μgの治療有効量で、少なくとも6週間は、約2週間ごとに1回投与する。一部の態様では、EVは、約3.0μgの治療有効量で、少なくとも12週間は、約2週間ごとに1回投与する。一部の態様では、EVは、約3.0μgの治療有効量で、治療効果がある限りは、約2週間ごとに1回投与する。
【0126】
一部の態様では、EVは、約6.0μgの治療有効量を、約2週間ごとに、少なくとも1用量、少なくとも約2用量、少なくとも約3用量、少なくとも約4用量、少なくとも約5用量、少なくとも約6用量、少なくとも約7用量、少なくとも約8用量、少なくとも約9用量、少なくとも約10用量、少なくとも約11用量、少なくとも約12用量、少なくとも約13用量、少なくとも約14用量、少なくとも約15用量、少なくとも約16用量、少なくとも約17用量、少なくとも約18用量、少なくとも約19用量、少なくとも約20用量、少なくとも約25用量、少なくとも約30用量、少なくとも約35用量、少なくとも約40用量、少なくとも約45用量、または少なくとも約50用量で投与する。一部の態様では、EVは、約6.0μgの治療有効量で、少なくとも約2週間、少なくとも約4週間、少なくとも約週間、少なくとも約6週間、少なくとも約8週間、少なくとも約10週間、少なくとも約12週間、少なくとも約14週間、少なくとも約16週間、少なくとも約18週間、少なくとも約20週間、少なくとも約22週間、少なくとも約24週間、少なくとも約26週間、少なくとも約28週間、少なくとも約30週間、少なくとも約32週間、少なくとも約34週間、少なくとも約36週間、少なくとも約38週間、少なくとも約40週間、少なくとも約42週間、少なくとも約44週間、少なくとも約46週間、少なくとも約48週間、少なくとも約50週間、または、少なくとも約52週間は、約2週間ごとに1回投与する。一部の態様では、EVは、約6.0μgの治療有効量で、少なくとも6週間は、約2週間ごとに1回投与する。一部の態様では、EVは、約6.0μgの治療有効量で、少なくとも12週間は、約2週間ごとに1回投与する。一部の態様では、EVは、約6.0μgの治療有効量で、治療効果がある限りは、約2週間ごとに1回投与する。
【0127】
一部の態様では、EVは、約12.0μgの治療有効量を、約2週間ごとに、少なくとも1用量、少なくとも約2用量、少なくとも約3用量、少なくとも約4用量、少なくとも約5用量、少なくとも約6用量、少なくとも約7用量、少なくとも約8用量、少なくとも約9用量、少なくとも約10用量、少なくとも約11用量、少なくとも約12用量、少なくとも約13用量、少なくとも約14用量、少なくとも約15用量、少なくとも約16用量、少なくとも約17用量、少なくとも約18用量、少なくとも約19用量、少なくとも約20用量、少なくとも約25用量、少なくとも約30用量、少なくとも約35用量、少なくとも約40用量、少なくとも約45用量、または少なくとも約50用量で投与する。一部の態様では、EVは、約12.0μgの治療有効量で、少なくとも約2週間、少なくとも約4週間、少なくとも約週間、少なくとも約6週間、少なくとも約8週間、少なくとも約10週間、少なくとも約12週間、少なくとも約14週間、少なくとも約16週間、少なくとも約18週間、少なくとも約20週間、少なくとも約22週間、少なくとも約24週間、少なくとも約26週間、少なくとも約28週間、少なくとも約30週間、少なくとも約32週間、少なくとも約34週間、少なくとも約36週間、少なくとも約38週間、少なくとも約40週間、少なくとも約42週間、少なくとも約44週間、少なくとも約46週間、少なくとも約48週間、少なくとも約50週間、または、少なくとも約52週間は、約2週間ごとに1回投与する。一部の態様では、EVは、約12.0μgの治療有効量で、少なくとも6週間は、約2週間ごとに1回投与する。一部の態様では、EVは、約12.0μgの治療有効量で、少なくとも12週間は、約2週間ごとに1回投与する。一部の態様では、EVは、約12.0μgの治療有効量で、治療効果がある限りは、約2週間ごとに1回投与する。
【0128】
II.A.皮膚T細胞リンパ腫
本開示の特定の態様は、皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)の治療を必要とする対象に、IL-12部分を含む細胞外小胞(EV)を投与することを含む、治療の方法に関する。本明細書で使用するCTCLは、皮膚に影響を及ぼす非ホジキンT細胞リンパ腫の一種のことを指す。CTCLとして、菌状息肉腫(MF)、セザリー症候群(SS)、及びCD30陽性リンパ増殖性疾患と称するT細胞新生物のスペクトルなどの幾つかのサブタイプがあるが、これらに限定されない。このように、特定の態様では、本明細書に開示した方法は、MFの治療を必要とする対象においてMFを治療する。一部の態様では、本明細書に開示した方法は、SSの治療を必要とする対象においてSSを治療する。一部の態様では、本明細書に開示した方法は、CD30陽性リンパ増殖性障害を治療する。
【0129】
一部の態様では、CTCLは、悪性表現型を含む。一部の態様では、CTCLは、遅発性、すなわち、進行の遅い表現型を含む。
【0130】
CTCLには4つの主要なステージ、例えば、MF、SS、及び/またはCD30陽性リンパ増殖性障害がある。ステージ1のCTCLは、皮膚にのみ影響を与える表現型を特徴としており、沈着または斑として出現する。ステージ1Aでは、皮膚の10分の1未満が影響を受ける;ステージ1Bの間は、皮膚の10分の1以上に影響が及ぶ。ステージ2のCTCLは、異常なリンパ腫細胞が認められない皮膚及び肥大したリンパ節での沈着また斑を特徴としている(ステージ2A);または、リンパ節の肥大の有無に関係なく、皮膚に盛り上がった1つ以上のしこりまたは腫瘍が認められる(ステージ2B)。ステージ3のCTCLは、皮膚の5分の4以上に影響を与える沈着または斑を特徴としており、皮膚には、一般的に、発赤、腫れ、かゆみ、時には痛み(紅皮症)を伴う;異常なリンパ腫細胞が認められない肥大したリンパ節;及び、血中のリンパ腫細胞(菌状息肉腫紅皮症;ステージ3A)、血中の適度の数のリンパ腫細胞(セザリー症候群;ステージ3B)のいずれもが殆どまたは皆無である。ステージ4のCTCLは、皮膚に影響を及ぼす、及び、血流、リンパ節、またはその他の臓器にも及ぶ。ステージ4Aとは、血中の異常な数のリンパ腫細胞(セザリー症候群)またはリンパ節内のリンパ腫細胞の提示のことを指す;及び、ステージ4Bは、リンパ腫がその他の臓器へ広がることを指す。
【0131】
一部の態様では、本明細書に開示した方法は、ステージ1AのCTCLを治療する。一部の態様では、本明細書に開示した方法は、ステージ1BのCTCLを治療する。一部の態様では、本明細書に開示した方法は、ステージ2AのCTCLを治療する。一部の態様では、本明細書に開示した方法は、ステージ2BのCTCLを治療する。一部の態様では、本明細書に開示した方法は、ステージ3AのCTCLを治療する。一部の態様では、本明細書に開示した方法は、ステージ3BのCTCLを治療する。一部の態様では、本明細書に開示した方法は、ステージ4AのCTCLを治療する。一部の態様では、本明細書に開示した方法は、ステージ4BのCTCLを治療する。
【0132】
II.B.メルケル細胞癌
本開示の特定の態様は、メルケル細胞癌(MCC)の治療を必要とする対象に対して、IL-12部分を含む細胞外小胞(EV)を投与することを含む、治療の方法に関する。本明細書で使用するMCC、または皮膚の神経内分泌癌とは、顔、頭または首に出現することが多い橙色または青みがかった赤色の結節を特徴とする稀少タイプの皮膚癌のことを指す。MCCは、一般的に、悪性度の高い皮膚癌であり、再発や転移のリスクが大きい。
【0133】
MCCに対する標準治療療法として、放射線療法、外科手術、全身療法もしくは化学療法、またはそれらの組み合わせがある。さらに、プログラム死1(PD-1)とそのリガンド(PD-L1)との相互作用を阻害する抗体は、アベルマブを含むMCCの治療法として承認を受けている。
【0134】
ステージ0のMCCとは、皮膚の最上層での異常なメルケル細胞の出現のことを指す。ステージ1のMCCは、直径2cm以下の腫瘍の出現のことを指す。ステージ2のMCCとは、2cmを超える腫瘍(ステージ2A)または近傍の結合組織、筋肉、軟骨、または骨にまで広がった腫瘍(ステージ2B)のいずれかのことを指す。ステージ3AのMCCとは、(i)近傍の結合組織、筋肉、軟骨、または骨にまで広がっており、またはリンパ節にがんが認められるあらゆる大きさの腫瘍のことを指す;または(ii)リンパ節への広がりは、診察で認められ、かつ生検で確認することができる。ステージ3BのMCCとは、(i)近傍の結合組織、筋肉、軟骨、または骨にまで広がっており、かつリンパ節にがんが認められるあらゆる大きさの腫瘍のことを指す;または(ii)原発腫瘍と近位及び/または遠位リンパ節との間のリンパ管にまで広がっている。ステージIVのMCCとは、皮膚の遠位位置またはその他の臓器、例えば、肝臓、肺、骨、または脳へがんが転移している、ことを指す。
【0135】
一部の態様では、本明細書に開示した方法は、ステージ0のMCCを治療する。一部の態様では、本明細書に開示した方法は、ステージ1のMCCを治療する。一部の態様では、本明細書に開示した方法は、ステージ2AのMCCを治療する。一部の態様では、本明細書に開示した方法は、ステージ2BのMCCを治療する。一部の態様では、本明細書に開示した方法は、ステージ3AのMCCを治療する。一部の態様では、本明細書に開示した方法は、ステージ3BのMCCを治療する。一部の態様では、本明細書で開示した方法は、ステージ4のMCCを治療する。一部の態様では、本明細書に開示した方法は、再発性MCCを治療する。
【0136】
II.C.カポジ肉腫
本開示の特定の態様は、カポジ肉腫の治療を必要とする対象に対して、IL-12部分を含む細胞外小胞(EV)を投与することを含む、治療の方法に関する。本明細書で使用するカポジ肉腫とは、リンパ管または血管の内側を覆う細胞から発生するがんのことを指しており、通常は、皮膚、口中などの粘膜表面、またはリンパ節を含む身体のその他の部分ではさほど頻繁には出現しない腫瘍(紫色、赤色、または茶色の染み)のことを指す。
【0137】
カポジ肉腫には少なくとも4つのタイプ:流行性カポジ肉腫(HIVに感染した方々が発症する)、古典的カポジ肉腫、風土病のカポジ肉腫、及び医原性(移植関連)のカポジ肉腫がある。大抵の場合、カポジ肉腫は、免疫系が弱くなること、例えば、栄養失調または高齢の患者であること、または慢性ウイルス感染(例えば、HIVまたはHSV)に罹患している患者に関連している。
【0138】
カポジ肉腫は、一般的には、特に、HIV患者に対しては、免疫再構成によって治療する。また、化学療法として、ドキソルビシン、ダウノルビシン、パクリタキセル、及びそれらの組み合わせなどがあるが、これらに限定されない。
【0139】
II.D.トリプルネガティブ乳癌
本開示の特定の態様は、トリプルネガティブ乳癌(TNBC)の治療を必要とする対象に対して、IL-12部分を含む細胞外小胞(EV)を投与することを含む、治療の方法に関する。本明細書で使用するTNBCは、エストロゲン受容体(ERネガティブ)、プロゲステロン受容体(PRネガティブ)、及びHER2(HER2ネガティブ)の発現に関して陰性である腫瘍を特徴とする乳癌のことを指す。TNBCは、悪性度の高いがんと考えられており、急速に増殖し、診断時に広がっている可能性が高く、その他の形態の乳癌よりも治療後の再発の発生率が高い。その結果、TNBCは、その他の乳癌よりも生存率が低く、限局性TNBCの5年生存率は約91%、局所TNBCでは約65%、遠隔TNBCでは約11%である。
【0140】
TNBCは、ER、PR、及びHER2の発現を欠いているので、TNBCに利用可能な治療法は限られている。非転移性TNBCに関しては、化学療法と、それに続く手術が主な治療選択肢である。転移性TNBCは、通常は、化学療法(例えば、PARP阻害剤、プラチナをベースとした化学療法、及び/または免疫療法など)を使用して治療する。
【0141】
ステージ0のTNBCとは、DCIS(非浸潤性乳管癌)などの非浸潤性乳癌のことを指す。ステージ0では、がん細胞または非がん性異常細胞が、それらが出現し始めた乳房部分から抜け出て、隣接する正常組織に到達または侵入するような証拠は無い。ステージIのTNBCは、浸潤性乳癌のことを指す(がん細胞は、周囲の正常な乳房組織に侵入または浸潤することが認められる)。ステージ1Aは、腫瘍が、最大で2センチメートル(cm)の大きさで、がんが、乳房の外に広がっていない(リンパ節にまで影響が及んでいない)浸潤性乳癌のことを指す。ステージ1Bとは、(i)リンパ節にがん細胞(直径0.2mm~2mm)の小さな群が認められるが、乳房に腫瘍が出現していない、または(ii)乳房に2cm以下の腫瘍があり、かつ、リンパ節にがん細胞(直径0.2mm~2mm)の小さな群が存在する浸潤性乳癌のことのことを指す。ステージ1の乳癌では、顕微鏡的浸潤が可能である。顕微鏡的浸潤では、がん細胞は、管や小葉の内層の外側の組織に浸潤し始めてはいるが、1mmを超える浸潤したがん細胞は測定されない。HER2ネガティブ乳癌(TNBCなど)の場合、2cm超、5cm以下であり、リンパ節にまで広がっていない腫瘍を、ステージ1とみなす。ステージ2Aは、(i)乳房に腫瘍が認められないが、腋窩リンパ節または乳房の近傍のリンパ節に1つ~3つのがん(2mm以上)が認められる;または、(ii)腫瘍の大きさが、2cm以下であり、腋窩リンパ節に広がっている、乳癌のことのことを指す。ステージ2Bは、(i)腫瘍の大きさが、2cm~5cmであり、リンパ節に乳癌細胞(大きさが0.2~2mm)の小さなグループが出現している;(ii)腫瘍の大きさが、2cm~5cmであり、1つ~3つの腋窩リンパ節または胸骨近傍のリンパ節へ転移している;または(iii)腫瘍が5cmより大きいが、腋窩リンパ節にまで広がっていない、浸潤性乳癌のことを指す。ステージ3Aは、(i)乳房に腫瘍が認められない、または、腫瘍は、あらゆる大きさのものである、及び、4つ~9つの腋窩リンパ節または胸骨近傍のリンパ節に転位が認められる;(ii)腫瘍の大きさが、5cmより大きく、及びリンパ節に乳癌細胞(大きさが0.2~2mm)の小さなグループが出現している;または、(iii)腫瘍が5cmより大きく、及び1つ~3つの腋窩リンパ節または胸骨近傍のリンパ節にまでがんが広がっている、浸潤性乳癌のことを指す。ステージ3Bとは、あらゆる大きさの腫瘍であり、乳房の胸壁及び/または皮膚にまで広がっており、浮腫または潰瘍を引き起こしており、及び、腫瘍が(i)9つまでの腋窩リンパ節、または(ii)胸骨近傍のリンパ節に広がっている、浸潤性乳癌のことである。ステージ3Cとは、乳房にがんの兆候がない、または腫瘍があっても、あらゆる大きさのものであり、胸壁及び/または乳房の皮膚にまで広がっており、及び、がんが、(i)10個以上の腋窩リンパ節に広がっている、(ii)鎖骨の上下のリンパ節、または(iii)胸骨近傍のリンパ節にまで広がっている、浸潤性乳癌のことである。ステージ4、または進行性乳癌とは、乳房及び近傍のリンパ節を超えて、肺、遠隔リンパ節、皮膚、骨、肝臓、脳などの身体のその他の臓器にまで転移した浸潤性乳癌のことを指す。
【0142】
一部の態様では、本明細書に開示した方法は、ステージ0のTNBCを治療する。一部の態様では、本明細書に開示した方法は、ステージ1AのTNBCを治療する。一部の態様では、本明細書に開示した方法は、ステージ1BのTNBCを治療する。一部の態様では、本明細書に開示した方法は、ステージ2AのTNBCを治療する。一部の態様では、本明細書に開示した方法は、ステージ2BのTNBCを治療する。一部の態様では、本明細書に開示した方法は、ステージ3AのTNBCを処置する。一部の態様では、本明細書に開示した方法は、ステージ3BのTNBCを治療する。一部の態様では、本明細書に開示した方法は、ステージ3CのTNBCを治療する。一部の態様では、本明細書に開示した方法は、ステージ4のTNBCを治療する。一部の態様では、本明細書で開示した方法は、再発性TNBCを治療する。
【0143】
II.E.膠芽腫
本開示の特定の態様は、膠芽腫の治療を必要とする対象に対して、IL-12部分を含む細胞外小胞(EV)を投与することを含む、治療の方法に関する。本明細書で使用する膠芽腫、別名、「多形性膠芽腫」または「GBM」とは、ステージIV星状細胞腫のサブセットであるがんの一種のことを指す。膠芽腫には、幾つかのバリアントがあり、巨細胞性膠芽腫、神経肉腫、古典的膠芽腫、神経性膠芽腫、前神経膠芽腫、及び間葉系膠芽腫などがある。膠芽腫腫瘍は、原発性(デノボ)または続発性であり得る。
【0144】
現在のところ、膠芽腫の治療法は無い。膠芽腫の標準治療は、外科的切除と、それに続く放射線療法と化学療法(例えば、テモゾロミド)である。ベバシズマブは、膠芽腫の二次治療としても使用することができる。診断後の生存期間の中央値は15~18か月であるが、この病気の5年生存率は約10%である。すべての膠芽腫が再発するが、最初の治療は、腫瘍を、数か月、または数年にもわたって制御し続け得る。
【0145】
II.F.併用療法
一部の態様では、本明細書に開示した方法は、IL-12部分を含むEV、例えば、エキソソームを、1つ以上の追加の治療薬(例えば、免疫腫瘍学的作用物質)と組み合わせて投与することを含むことができる。一部の態様では、併用療法は、免疫経路の複数の要素を標的とする。このような組合せの例として、STINGアゴニスト;腫瘍抗原提示を強める治療法(例えば、樹状細胞ワクチン、GM-CSF分泌細胞ワクチン、CpGオリゴヌクレオチド、イミキモド);ネガティブ免疫調節を阻害する治療法、例えば、CTLA-4、及び/またはPD1/PD-L1/PD-L2経路を阻害する、及び/または、Tregまたはその他の免疫抑制細胞(例えば、骨髄由来サプレッサー細胞)を枯渇または遮断することによって、ネガティブ免疫調節を阻害する治療法;ポジティブ免疫調節を刺激する治療法、例えば、CD-137、OX-40、及び/またはCD40、またはGITR経路を刺激するアゴニスト、及び/またはT細胞エフェクター機能を刺激するアゴニストで、ポジティブ免疫調節を刺激する治療法;抗腫瘍T細胞の頻度を全身的に増加させる治療法;腫瘍内のTregsなどのTregを枯渇または阻害する治療法、例えば、CD25のアンタゴニスト(例えば、ダクリズマブ)を使用する、またはエクスビボ抗CD25ビーズを枯渇させることによって、腫瘍内のTregsなどのTregを枯渇または阻害する治療法;腫瘍内のサプレッサー骨髄細胞の機能に影響を与える治療法;腫瘍細胞の免疫原性を高める治療法(例えば、アントラサイクリン);遺伝子改変細胞、例えば、キメラ抗原受容体が改変した細胞を含む養子T細胞またはNK細胞導入(CAR-T療法);インドールアミンジオキシゲナーゼ(IDO)、ジオキシゲナーゼ、アルギナーゼ、または一酸化窒素シンテターゼなどの代謝酵素を阻害する治療法;T細胞のアネルギーまたは消耗を逆転/予防する治療法;腫瘍部位で自然免疫活性化及び/または炎症を引き起こす治療法;免疫刺激性サイトカインの投与;または、免疫抑制性サイトカインの遮断があるが、これらに限定されない。一部の態様では、追加の治療薬は、抗腫瘍薬である。
【0146】
一部の態様では、本明細書に開示したEV、例えば、エキソソームと組み合わせて使用することができる免疫腫瘍学的作用物質は、免疫チェックポイント阻害剤(すなわち、特定の免疫チェックポイント経路を通るシグナル伝達を遮断する)を含む。本方法において使用し得る免疫チェックポイント阻害剤の例として、CTLA-4アンタゴニスト(例えば、抗CTLA-4抗体)、PD-1アンタゴニスト(例えば、抗PD-1抗体、及び/または抗PD-L抗体)、TIM-3アンタゴニスト(例えば、抗TIM-3抗体)、TIGITアンタゴニスト(例えば、抗TIGIT抗体)、及びこれらの組合せがあるが、これらに限定されない。
【0147】
一部の態様では、免疫腫瘍作用物質は、免疫チェックポイント活性化因子を含む(すなわち、特定の免疫チェックポイント経路を通るシグナル伝達を促す)。特定の態様では、免疫チェックポイント活性化剤は、OX40アゴニスト(例えば、抗OX40抗体)、LAG-3アゴニスト(例えば、抗LAG-3抗体)、4-1BB(CD137)アゴニスト(例えば、抗CD137抗体)、GITRアゴニスト(例えば、抗GITR抗体)、または、それらのあらゆる組み合わせを含む。
【0148】
一部の態様では、本明細書に開示したEV、例えば、エキソソームは、STINGアゴニストと組み合わせて使用することもできる。あらゆるSTINGアゴニストを、本明細書に開示した方法及び組成物で使用することができる。STINGアゴニストの例として、DMXAA、STINGアゴニスト-1、ML RR-S2 CDA、ML RR-S2c-ジ-GMP、ML-RR-S2 cGAMP、2’3’-c-ジ-AM(PS)2、2’3’-cGAMP、2’3’-cGAMPdFHS、3’3’-cGAMP、3’3’-cGAMPdFSH、cAIMP、cAIM(PS)2、3’3’-cAIMP、3’3’-cAIMPdFSH、2’2’-cGAMP、2’3’-cGAM(PS)2、3’3’-cGAMP、c-ジ-AMP、2’3’-c-ジ-AMP、2’3’-c-ジ-AM(PS)2、c-ジ-GMP、2’3’-c-ジ-GMP、c-ジ-IMP、c-ジ-UMP、または、これらのあらゆる組み合わせがあるが、これらに限定されない。好ましい態様では、STINGアゴニストは、3’3’-cAIMPdFSH、別名、3-3 cAIMPdFSHである。本明細書に開示した組成物及び方法において使用することができるSTINGアゴニストのさらなる例として、国際公開第WO 2021/062060号、及び/またはWO 2019/183578号に記載したものがあり、これらの各々の全内容を参照により本明細書で援用する。
【0149】
一部の態様では、本明細書に開示したEV、例えば、エキソソームは、1つ以上のさらなる免疫調節剤と組み合わせて使用することもできる。このような作用物質として、例えば、化学療法薬、低分子薬、または所与のがんに対する免疫応答を刺激する抗体を含み得る。一部の態様では、本明細書に記載した方法は、標準治療(例えば、手術、放射線、及び化学療法)と組み合わせて使用する。
【0150】
一部の態様では、本明細書に開示したEV、例えば、エキソソームと、本明細書に記載した第2の作用物質(例えば、免疫チェックポイント阻害薬)との組み合わせを、医薬として許容可能な担体で、単一の組成物として同時に投与することができる。その他の態様では、EV、例えば、エキソソームと、本明細書に記載した第2の作用物質(例えば、免疫チェックポイント阻害剤)との組み合わせを、別個の組成物として同時に投与することができる。さらなる態様では、EV、例えば、エキソソームと、本明細書に記載した第2の作用物質(例えば、免疫チェックポイント阻害剤)との組み合わせを、連続して投与することができる。一部の態様では、EV、例えば、エキソソームは、第2の作用物質(例えば、免疫チェックポイント阻害剤)を投与する前に投与する。
【0151】
III.細胞外小胞、例えば、エキソソーム
本明細書では、対象の免疫系を調節することができるEV、例えば、エキソソームを開示した。本開示において有用なEV、例えば、エキソソームは、IL-12部分を含むように遺伝子操作している。
【0152】
本明細書に記載したEV、例えば、エキソソームは、約20~300nmの間の直径を有する細胞外小胞である。ある態様では、本開示のEV、例えば、エキソソームは、約20~290nm、20~280nm、20~270nm、20~260nm、20~250nm、20~240nm、20~230nm、20~220nm、20~210nm、20~200nm、20~190nm、20~180nm、20~170nm、20~160nm、20~150nm、20~140nm、20~130nm、20~120nm、20~110nm、20~100nm、20~90nm、20~80nm、20~70nm、20~60nm、20~50nm、20~40nm、20~30nm、30~300nm、30~290nm、30~280nm、30~270nm、30~260nm、30~250nm、30~240nm、30~230nm、30~220nm、30~210nm、30~200nm、30~190nm、30~180nm、30~170nm、30~160nm、30~150nm、30~140nm、30~130nm、30~120nm、30~110nm、30~100nm、30~90nm、30~80nm、30~70nm、30~60nm、30~50nm、30~40nm、40~300nm、40~290nm、40~280nm、40~270nm、40~260nm、40~250nm、40~240nm、40~230nm、40~220nm、40~210nm、40~200nm、40~190nm、40~180nm、40~170nm、40~160nm、40~150nm、40~140nm、40~130nm、40~120nm、40~110nm、40~100nm、40~90nm、40~80nm、40~70nm、40~60nm、40~50nm、50~300nm、50~290nm、50~280nm、50~270nm、50~260nm、50~250nm、50~240nm、50~230nm、50~220nm、50~210nm、50~200nm、50~190nm、50~180nm、50~170nm、50~160nm、50~150nm、50~140nm、50~130nm、50~120nm、50~110nm、50~100nm、50~90nm、50~80nm、50~70nm、50~60nm、60~300nm、60~290nm、60~280nm、60~270nm、60~260nm、60~250nm、60~240nm、60~230nm、60~220nm、60~210nm、60~200nm、60~190nm、60~180nm、60~170nm、60~160nm、60~150nm、60~140nm、60~130nm、60~120nm、60~110nm、60~100nm、60~90nm、60~80nm、60~70nm、70~300nm、70~290nm、70~280nm、70~270nm、70~260nm、70~250nm、70~240nm、70~230nm、70~220nm、70~210nm、70~200nm、70~190nm、70~180nm、70~170nm、70~160nm、70~150nm、70~140nm、70~130nm、70~120nm、70~110nm、70~100nm、70~90nm、70~80nm、80~300nm、80~290nm、80~280nm、80~270nm、80~260nm、80~250nm、80~240nm、80~230nm、80~220nm、80~210nm、80~200nm、80~190nm、80~180nm、80~170nm、80~160nm、80~150nm、80~140nm、80~130nm、80~120nm、80~110nm、80~100nm、80~90nm、90~300nm、90~290nm、90~280nm、90~270nm、90~260nm、90~250nm、90~240nm、90~230nm、90~220nm、90~210nm、90~200nm、90~190nm、90~180nm、90~170nm、90~160nm、90~150nm、90~140nm、90~130nm、90~120nm、90~110nm、90~100nm、100~300nm、110~290nm、120~280nm、130~270nm、140~260nm、150~250nm、160~240nm、170~230nm、180~220nm、または190~210nmの間の直径を有する。本明細書に記載したEV、例えば、エキソソームの大きさは、後述の記載の方法に従って測定することができる。
【0153】
一部の態様では、本開示のEV、例えば、エキソソームは、内部(管腔)表面及び外表面を含む二重脂質膜(「EV、例えば、エキソソーム、膜」)を含む。特定の態様では、内部(管腔)表面は、EV、例えば、エキソソームの内核(すなわち、内腔)に面する。特定の態様では、外表面は、エンドソーム、多胞体、または産生細胞もしくは標的細胞の膜/細胞質と接触することができる
【0154】
一部の態様では、EV、例えば、エキソソーム、膜は、脂質及び脂肪酸を含む。一部の態様では、EV、例えば、エキソソーム、膜は、リン脂質、糖脂質、脂肪酸、スフィンゴ脂質、ホスホグリセリド、ステロール、コレステロール、及びホスファチジルセリンを含む。
【0155】
一部の態様では、EV、例えば、エキソソーム、膜は、内葉及び外葉を含む。内葉及び外葉の組成は、当該技術分野において公知の二層間分布アッセイによって決定することができる、例えば、Kuypers et al.,Biohim Biophys Acta 1985 819:170を参照されたい。一部の態様では、外葉の組成は、約70~90%のコリンリン脂質、約0~15%の酸性リン脂質、及び約5~30%のホスファチジルエタノールアミンである。一部の態様では、内葉の組成は、約15~40%のコリンリン脂質、約10~50%の酸性リン脂質、及び約30~60%のホスファチジルエタノールアミンである。
【0156】
一部の態様では、EV、例えば、エキソソーム、膜は、グリカンなどの1つ以上の多糖を含む。
【0157】
一部の態様では、本開示のEV、例えば、エキソソームは、IL-12部分を含み、また、IL-12部分は、EVの外表面またはEVの内腔表面のいずれかで、スキャフォールド部分を介してEVに連結する。
【0158】
一部の態様では、本開示のEV、例えば、エキソソームは、EVの内腔にIL-12部分を含む。その他の態様では、EVは、EVの外表面にIL-12部分を含み、任意に、第1のスキャフォールド部分(例えば、Scaffold X)を介して連結する。その他の態様では、EVは、EVの内腔表面にIL-12部分を含み、任意に、スキャフォールド部分(例えば、Scaffold XまたはScaffold Y)を介して連結する。
【0159】
III.A.スキャフォールド部分
1つ以上のスキャフォールド部分を、本開示のEVにIL-12部分を固定するために使用することができる。一部の態様では、IL-12部分を、スキャフォールド部分に連結する。一部の態様では、EVは、複数のスキャフォールド部分を備える。一部の態様では、IL-12を、第1のスキャフォールド部分に連結し、第2の部分(例えば、第2のポリペプチドまたはポリヌクレオチド)を、第2のスキャフォールド部分に連結する。一部の態様では、第1のスキャフォールド部分及び第2のスキャフォールド部分は、同じタイプのスキャフォールド部分であり、例えば、第1及び第2のスキャフォールド部分は、両方とも、Scaffold Xタンパク質である。一部の態様では、第1のスキャフォールド部分及び第2のスキャフォールド部分は、異なるタイプのスキャフォールド部分であり、例えば、第1のスキャフォールド部分は、Scaffold Yタンパク質であり、及び、第2のスキャフォールド部分は、Scaffold Xタンパク質である。一部の態様では、第1のスキャフォールド部分は、本明細書に開示したScaffold Yである。一部の態様では、第1のスキャフォールド部分は、本明細書に開示したScaffold Xである。一部の態様では、第2のスキャフォールド部分は、本明細書に開示したScaffold Yである。一部の態様では、第2のスキャフォールド部分は、本明細書に開示したScaffold Xである。
【0160】
一部の態様では、EVは、1つ以上のスキャフォールド部分を含み、このものは、例えば、n個のIL-12部分を、EV、例えば、エキソソーム(例えば、内腔表面または外表面)に固定することができる。特定の態様では、スキャフォールド部分は、ポリペプチド(「スキャフォールドタンパク質」)である。特定の態様では、スキャフォールドタンパク質は、エキソソームタンパク質またはそのフラグメントを含む。その他の態様では、スキャフォールド部分は、非ポリペプチド部分である。一部の態様では、スキャフォールドタンパク質は、エキソソーム膜に、膜貫通タンパク質、内在性タンパク質、及び末梢タンパク質などの様々な膜タンパク質を豊富に含む。それらは、様々なCDタンパク質、トランスポーター、インテグリン、レクチン、及びカドヘリンを含むことができる。特定の態様では、スキャフォールド部分(例えば、スキャフォールドタンパク質)は、Scaffold Xを含む。その他の態様では、スキャフォールド部分(例えば、エキソソームタンパク質)は、Scaffold Yを含む。さらなる態様では、スキャフォールド部分(例えば、エキソソームタンパク質)は、Scaffold X及びScaffold Yの両方を含む。
【0161】
一部の態様では、IL-12部分を、EVの外表面のスキャフォールド部分(例えば、Scaffold X)に連結する。一部の態様では、IL-12部分を、EVの内腔表面のスキャフォールド部分(例えば、Scaffold X)に連結する。一部の態様では、IL-12部分を、EVの内腔表面のスキャフォールド部分(例えば、Scaffold Y)に連結する。
【0162】
III.A.1.Scaffold X-遺伝子操作したEV、例えば、エキソソーム
一部の態様では、本開示のEV、例えば、エキソソームは、その組成に改変を加えた膜を含む。例えば、それらの膜組成物は、膜のタンパク質、脂質、またはグリカン含量を変えることで改変することができる。
【0163】
一部の態様では、表面-遺伝子操作したEV、例えば、エキソソームは、PEG誘導融合及び/または超音波融合などの化学的及び/または物理的方法で生成する。その他の態様では、表面-遺伝子操作したEV、例えば、エキソソームは、遺伝子工学によって生成する。遺伝子改変した産生細胞または遺伝子改変細胞の子孫から産生したEV、例えば、エキソソームは、改変した膜組成物を含むことができる。一部の態様では、表面-遺伝子操作したEV、例えば、エキソソームは、スキャフォールド部分(例えば、エキソソームタンパク質、例えば、Scaffold X)を高密度で、または低密度(例えば、多数)で有する、またはスキャフォールド部分のバリアントまたはフラグメントを含む。
【0164】
例えば、表面(例えば、Scaffold X)―遺伝子操作したEVは、スキャフォールド部分(例えば、エキソソームタンパク質、例えば、Scaffold X)をコードする外因性配列、またはそのバリアントもしくはそのフラグメントで形質転換した細胞(例えば、HEK293細胞)から産生することができる。外因性配列から発現するスキャフォールド部分を含むEVは、改変した膜組成物を含むことができる。
【0165】
スキャフォールド部分の様々な改変またはフラグメントを、本開示の態様に使用することができる。例えば、結合剤に対して強固な親和性を有するように改変したスキャフォールド部分は、結合剤を用いて精製することができる表面-遺伝子操作したEVを生成するために使用することができる。EV及び/または膜をさらに効果的な標的になるように改変したスキャフォールド部分を使用することができる。エキソソーム膜に対して特異的かつ効果的な標的化に必要な最小限のフラグメントを含むように改変したスキャフォールド部分も使用することができる。
【0166】
スキャフォールド部分は、融合分子、例えば、IL-12部分に対するScaffold Xの融合分子として発現するように遺伝子操作することができる。例えば、融合分子は、IL-12部分に連結した、本明細書に開示したスキャフォールド部分(例えば、Scaffold X、例えば、PTGFRN、BSG、IGSF2、IGSF3、IGSF8、ITGB1、ITGA4、SLC3A2、ATPトランスポーター、またはそれらのフラグメントまたはバリアント)を含むことができる。
【0167】
一部の態様では、本明細書に記載した表面(例えば、Scaffold X)-遺伝子操作したEVは、当該技術分野において公知のEVと比較して優れた特性を示す。例えば、表面(例えば、Scaffold X)-遺伝子操作した修飾タンパク質は、天然に存在するEVまたは従来のエキソソームタンパク質を使用して製造したEVよりも、表面に修飾タンパク質を非常に豊富に含む。さらに、本開示の表面(例えば、ScaffoldX)-遺伝子操作したEVは、天然に存在するEVまたは従来のエキソソームタンパク質を使用して製造したEVと比較して、大きな、特異的で、制御の効いた生物学的活性を有することができる。
【0168】
一部の態様では、Scaffold Xは、Prostaglandin F2受容体ネガティブレギュレーター(PTGFRNポリペプチド)を含む。このPTGFRNタンパク質の別名は、CD9パートナー1(CD9P-1)、Glu-Trp-Ile EWIモチーフ含有タンパク質F(EWI-F)、Prostaglandin F2-アルファ受容体調節タンパク質、Prostaglandin F2-アルファ受容体関連タンパク質、またはCD315である。ヒトPTGFRNタンパク質の全長アミノ酸配列(Uniprot受託番号Q9P2B2)を配列番号1として表2に示す。このPTGFRNポリペプチドは、シグナルペプチド(配列番号1のアミノ酸1~25)、細胞外ドメイン(配列番号1のアミノ酸26~832)、膜貫通ドメイン(配列番号1の833~853)、及び細胞質ドメイン(配列番号1のアミノ酸854~879)がある。成熟PTGFRNポリペプチドは、シグナルペプチド、すなわり、配列番号1のアミノ酸26~879を含まない配列番号1からなる。一部の態様では、本開示に有用なPTGFRNポリペプチドフラグメントは、PTGFRNポリペプチドの膜貫通ドメインを含む。その他の態様では、本開示に有用なPTGFRNポリペプチドフラグメントは、PTGFRNポリペプチドの膜貫通ドメインと、(i)膜貫通ドメインのN末端にある少なくとも5つ、少なくとも10個、少なくとも15個、少なくとも20個、少なくとも25個、少なくとも30個、少なくとも40個、少なくとも50個、少なくとも70個、少なくとも80個、少なくとも90個、少なくとも100個、少なくとも110個、少なくとも120個、少なくとも130個、少なくとも140個、少なくとも150個のアミノ酸;(ii)膜貫通ドメインのC末端にある少なくとも5つ、少なくとも10個、少なくとも15個、少なくとも20個、少なくとも25個のアミノ酸、または、(i)及び(ii)の両方を含む。
【0169】
一部の態様では、PTGFRNポリペプチドのフラグメントは、IgVなどの1つ以上の機能的または構造的ドメインを欠いている。
【0170】
その他の態様では、Scaffold Xは、配列番号1のアミノ酸26~879のアミノ酸配列と、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または約100%が同一のアミノ酸配列を含む。その他の態様では、Scaffold Xは、配列番号1と、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも98%、少なくとも約99%、または約100%が同一であるアミノ酸配列を含む。その他の態様では、Scaffold Xは、配列番号33と、少なくとも約少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも98%、少なくとも約99%、または約100%が同一であるアミノ酸配列を含む。その他の態様では、Scaffold Xは、配列番号33のアミノ酸配列を含む、ただし、1つのアミノ酸変異、2つのアミノ酸変異、3つのアミノ酸変異、4つのアミノ酸変異、5つのアミノ酸変異、6つのアミノ酸変異、または7つのアミノ酸変異がある。これらの変異は、置換、挿入、欠失、またはそれらのあらゆる組み合わせとすることができる。一部の態様では、Scaffold Xは、配列番号33のアミノ酸配列を含み、及び配列番号33のN末端及び/またはC末端において、1つのアミノ酸、2つのアミノ酸、3つのアミノ酸、4つのアミノ酸、5つのアミノ酸、6つのアミノ酸、7つのアミノ酸、8つのアミノ酸、9つのアミノ酸、10個のアミノ酸、11個のアミノ酸、12個のアミノ酸、13個のアミノ酸、14個のアミノ酸、15個のアミノ酸、16個のアミノ酸、17個のアミノ酸、18個のアミノ酸、19個のアミノ酸、20個のアミノ酸、または、それより長いアミノ酸を含む。
【0171】
その他の態様では、Scaffold Xは、配列番号9、14、21、22、または23と、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または約100%が同一であるアミノ酸配列を含む。その他の態様では、ScaffoldXは、配列番号9、14、21、22、または23のアミノ酸配列を含む、ただし、1つのアミノ酸変異、2つのアミノ酸変異、3つのアミノ酸変異、4つのアミノ酸変異、5つのアミノ酸変異、6つのアミノ酸変異、または7つのアミノ酸変異がある。これらの変異は、置換、挿入、欠失、またはそれらのあらゆる組み合わせとすることができる。一部の態様では、Scaffold Xは、配列番号9、14、21、22、または23のアミノ酸配列を含み、及び配列番号9、14、21、22、または23のN末端及び/またはC末端において、1つのアミノ酸、2つのアミノ酸、3つのアミノ酸、4つのアミノ酸、5つのアミノ酸、6つのアミノ酸、7つのアミノ酸、8つのアミノ酸、9つのアミノ酸、10個のアミノ酸、11個のアミノ酸、12個のアミノ酸、13個のアミノ酸、14個のアミノ酸、15個のアミノ酸、16個のアミノ酸、17個のアミノ酸、18個のアミノ酸、19個のアミノ酸、20個のアミノ酸、または、それより長いアミノ酸を含む。


【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【0172】
一部の態様では、Scaffold Xは、配列番号9に記載のバシギン(BSGタンパク質)を含む。BSGタンパク質の別名は、5F7、コラゲナーゼ刺激因子、細胞外マトリックスメタロプロテイナーゼ誘導因子(EMMPRIN)、白血球活性化抗原M6、OK血液型抗原、腫瘍細胞由来コラゲナーゼ刺激因子(TCSF)、またはCD147である。ヒトBSGタンパク質のUniprot番号は、P35613である。BSGタンパク質のシグナルペプチドは、配列番号9のアミノ酸1~21である。配列番号9のアミノ酸138~323は細胞外ドメインであり、アミノ酸324~344は膜貫通ドメインであり、及び配列番号9のアミノ酸345~385は細胞質ドメインである。
【0173】
その他の態様では、Scaffold Xは、配列番号9のアミノ酸22~385と、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または約100%が同一であるアミノ酸を含む。一部の態様では、BSGポリペプチドのフラグメントは、IgV、例えば、配列番号9のアミノ酸221~315の1つ以上の機能的または構造的ドメインを欠いている。その他の態様では、Scaffold Xは、配列番号10、11、または12と、少なくとも約少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも98%、少なくとも約99%、または約100%が同一であるアミノ酸配列を含む。その他の態様では、Scaffold Xは、配列番号10、11、または12のアミノ酸配列を含む、ただし、1つのアミノ酸変異、2つのアミノ酸変異、3つのアミノ酸変異、4つのアミノ酸変異、5つのアミノ酸変異、6つのアミノ酸変異、または7つのアミノ酸変異がある。これらの変異は、置換、挿入、欠失、またはそれらのあらゆる組み合わせとすることができる。一部の態様では、Scaffold Xは、配列番号10、11、または12のアミノ酸配列を含み、及び配列番号10、11、または12のN末端及び/またはC末端において、1つのアミノ酸、2つのアミノ酸、3つのアミノ酸、4つのアミノ酸、5つのアミノ酸、6つのアミノ酸、7つのアミノ酸、8つのアミノ酸、9つのアミノ酸、10個のアミノ酸、11個のアミノ酸、12個のアミノ酸、13個のアミノ酸、14個のアミノ酸、15個のアミノ酸、16個のアミノ酸、17個のアミノ酸、18個のアミノ酸、19個のアミノ酸、20個のアミノ酸、または、それより長いアミノ酸を含む。
【0174】
一部の態様では、Scaffold Xは、免疫グロブリンスーパーファミリーメンバー8(IgSF8またはIGSF8タンパク質)、別名、CD81パートナー3、Glu-Trp-Ile EWIモチーフ含有タンパク質2(EWI-2)、ケラチノサイト関連膜貫通タンパク質4(KCT-4)、LIR-Dl、プロスタグランジン調節様タンパク質(PGRL)またはCD316を含む。全長ヒトIGSF8タンパク質は、Uniprotでの受託番号はQ969P0であり、本明細書では配列番号14に記載している。ヒトIGSF8タンパク質は、シグナルペプチド(配列番号14のアミノ酸1~27)、細胞外ドメイン(配列番号14のアミノ酸28~579)、膜貫通ドメイン(配列番号14のアミノ酸580~600)、及び細胞質ドメイン(配列番号14のアミノ酸601~613)を有する。
【0175】
その他の態様では、Scaffold Xは、配列番号14のアミノ酸28~613と、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または約100%が同一であるアミノ酸を含む。一部の態様では、IGSF8タンパク質は、IgVなどの1つ以上の機能的または構造的ドメインを欠いている。その他の態様では、Scaffold Xは、配列番号15、16、17、または18と、少なくとも約少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも98%、少なくとも約99%、または約100%が同一であるアミノ酸配列を含む。その他の態様では、Scaffold Xは、配列番号15、16、17、または18のアミノ酸配列を含む、ただし、1つのアミノ酸変異、2つのアミノ酸変異、3つのアミノ酸変異、4つのアミノ酸変異、5つのアミノ酸変異、6つのアミノ酸変異、または7つのアミノ酸変異がある。これらの変異は、置換、挿入、欠失、またはそれらのあらゆる組み合わせとすることができる。一部の態様では、Scaffold Xは、配列番号15、16、17、または18のアミノ酸配列を含み、及び配列番号15、16、17、または18のN末端及び/またはC末端において、1つのアミノ酸、2つのアミノ酸、3つのアミノ酸、4つのアミノ酸、5つのアミノ酸、6つのアミノ酸、7つのアミノ酸、8つのアミノ酸、9つのアミノ酸、10個のアミノ酸、11個のアミノ酸、12個のアミノ酸、13個のアミノ酸、14個のアミノ酸、15個のアミノ酸、16個のアミノ酸、17個のアミノ酸、18個のアミノ酸、19個のアミノ酸、20個のアミノ酸、または、それより長いアミノ酸を含む。
【0176】
一部の態様では、Scaffold Xは、免疫グロブリンスーパーファミリーメンバー3(IgSF3またはIGSF3タンパク質)、別名、Glu-Trp-Ile EWIモチーフ含有タンパク質3(EWI-3)を含み、及び配列番号20のアミノ酸配列で示している。ヒトIGSF3タンパク質は、シグナルペプチド(配列番号20のアミノ酸1~19)、細胞外ドメイン(配列番号20のアミノ酸20~1124)、膜貫通ドメイン(配列番号20のアミノ酸1125~1145)、及び細胞質ドメイン(配列番号20のアミノ酸1146~1194)を有する。
【0177】
その他の態様では、Scaffold Xは、配列番号20のアミノ酸28~613と、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または約100%が同一であるアミノ酸を含む。一部の態様では、IGSF3タンパク質は、IgVのような1つ以上の機能的または構造的ドメインを欠いている。
【0178】
一部の態様では、本開示に関するScaffold Xは、インテグリンベータ-29(ITGB21タンパク質)、別名、フィブロネクチン受容体サブユニットベータ、糖タンパク質Ila(GPIIA)、VLA-4サブユニットベータ、またはCD29を含み、及び配列番号21のアミノ酸配列として示している。ヒトITGB1タンパク質は、シグナルペプチド(配列番号21のアミノ酸1~21)、細胞外ドメイン(配列番号21のアミノ酸21~728)、膜貫通ドメイン(配列番号21のアミノ酸729~751)、及び細胞質ドメイン(配列番号21のアミノ酸752~798)を有する。
【0179】
その他の態様では、Scaffold Xは、アミノ酸配列21のアミノ酸21~798と、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または約100%が同一であるアミノ酸を含む。一部の態様では、ITGB1タンパク質は、IgVなどの1つ以上の機能的または構造的ドメインを欠いている。
【0180】
その他の態様では、Scaffold Xは、ITGA4タンパク質を含み、このものは、シグナルペプチド(配列番号22のアミノ酸1~33)を欠いている配列番号22と、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または約100%が同一であるアミノ酸を含む。一部の態様では、ITGA4タンパク質は、IgVなどの1つ以上の機能的または構造的ドメインを欠いている。
【0181】
その他の態様では、Scaffold Xは、SLC3A2タンパク質を含み、このものは、シグナルペプチドを欠いている配列番号23と、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または約100%が同一であるアミノ酸を含む。一部の態様では、SLC3A2タンパク質は、IgVなどの1つ以上の機能的または構造的ドメインを欠いている。
【0182】
その他のScaffold Xタンパク質の例は、2019年2月5日発行の米国特許第US10195290B1号に認められることができ、その全内容を、参照により援用する。
【0183】
一部の態様では、配列は、天然タンパク質のN末端から少なくとも5、10、50、100、200、300、400、500、600、700、または800個のアミノ酸を欠いているスキャフォールド部分のフラグメントをコードする。一部の態様では、配列は、天然タンパク質のC末端から少なくとも5、10、50、100、200、300、400、500、600、700、または800個のアミノ酸を欠いているスキャフォールド部分のフラグメントをコードする。一部の態様では、配列は、天然タンパク質のN末端及びC末端の両方から少なくとも5、10、50、100、200、300、400、500、600、700、または800個のアミノ酸を欠いているスキャフォールド部分のフラグメントをコードする。一部の態様では、配列は、天然タンパク質の1つ以上の機能的または構造的ドメインを欠いているスキャフォールド部分のフラグメントをコードする。
【0184】
一部の態様では、スキャフォールド部分、例えば、Scaffold X、例えば、PTGFRNタンパク質を、1つ以上の異種タンパク質に連結する。1つ以上の異種タンパク質を、スキャフォールド部分のN末端に連結することができる。1つ以上の異種タンパク質を、スキャフォールド部分のC末端に連結することができる。一部の態様では、1つ以上の異種タンパク質を、スキャフォールド部分のN末端及びC末端の両方に連結する。一部の態様では、異種タンパク質は、哺乳動物タンパク質である。一部の態様では、異種タンパク質は、ヒトタンパク質である。
【0185】
一部の態様では、Scaffold Xは、あらゆる部分、例えば、IL-12部分を、EV、例えば、エキソソームの内腔表面及び外表面に同時に連結するために使用することができる。例えば、PTGFRNポリペプチドは、EV、例えば、エキソソームの外表面に加えて、内腔内部(例えば、内腔表面)のIL-12部分に連結するために使用することができる。一部の態様では、Scaffold Xは、IL-12を、EVの内腔表面及び/またはEVの外表面に固定することができるスキャフォールドタンパク質である。
【0186】
III.A.2.Scaffold Y-遺伝子操作したEV、例えば、エキソソーム
一部の態様では、本開示のEV、例えば、エキソソームは、天然に存在するEVのそれとは異なる内部空間(すなわち、内腔)を備える。例えば、EVは、EV、例えば、エキソソームの内腔表面の組成が、天然に存在するエキソソームとは異なるタンパク質、脂質、またはグリカン含量を有するように変更することができる。
【0187】
一部の態様では、遺伝子操作したEV、例えば、エキソソームは、スキャフォールド部分(例えば、エキソソームタンパク質、例えば、Scaffold Y)をコードする外因性配列、または、EV、例えば、エキソソームの内腔表面の組成もしくは含量を変化させるスキャフォールド部分の改変もしくはフラグメントで形質転換した細胞から製造することができる。EV、例えば、エキソソームの内腔表面で発現することができるエキソソームタンパク質の様々な改変またはフラグメントを、本開示の態様に使用することができる。
【0188】
一部の態様では、EV、例えば、エキソソームの内腔表面を変化させることができるエキソソームタンパク質として、ミリストイル化アラニンリッチプロテインキナーゼC基質(MARCKS)タンパク質、ミリストイル化アラニンリッチプロテインキナーゼC基質1(MARCKSL1)タンパク質、脳酸可溶性タンパク質1(BASP1)タンパク質、または、これらのあらゆる組み合わせがあるが、これらに限定されない。
【0189】
一部の態様では、Scaffold Yは、MARCKSタンパク質(Uniprot受託番号P29966)を含む。MARCKSタンパク質は、プロテインキナーゼC基質、80kDaタンパク質、軽鎖としても知られている。全長ヒトMARCKSタンパク質は、長さが332アミノ酸であり、及びアミノ酸残基152~176にカルモジュリン結合ドメインを含む。一部の態様では、Scaffold Yは、MARCKSL1タンパク質(Uniprot受託番号P49006)を含む。MARCKSL1タンパク質は、MARCKS様タンパク質1、及びマクロファージミリストイル化アラニンリッチCキナーゼ基質としても知られている。全長ヒトMARCKSL1タンパク質は、長さが195アミノ酸である。MARCKSL1タンパク質は、アミノ酸残基87~110において脂質結合及びカルモジュリン結合に関与するエフェクタードメインを有する。一部の態様では、Scaffold Yは、BASP1タンパク質(Uniprot受託番号P80723)を含む。BASP1タンパク質は、22kDaのニューロン組織が豊富な酸性タンパク質、またはニューロン軸索膜タンパク質NAP-22としても知られている。全長ヒトBASP1タンパク質配列(異性体1)は、長さが227アミノ酸である。選択的スプライシングによって生成する異性体は、配列番号49のアミノ酸88~141のアミノ酸(異性体1)を欠いている。表3に、本明細書に開示した例示的なScaffold Y(すなわち、MARCKS、MARCKSL1、及びBASPlタンパク質)の全長配列を提供する。
【表3】
【0190】
成熟BASP1タンパク質配列は、配列番号49の最初のMetを欠失しており、したがって、配列番号49のアミノ酸2~227を含む。同様に、成熟したMARCKS及びMARCKSL1タンパク質もまた、それぞれ、配列番号47及び48の最初のMetを欠いている。したがって、成熟MARCKSタンパク質は、配列番号47のアミノ酸2~332を含む。成熟MARCKSL1タンパク質は、配列番号48のアミノ酸2~227を含む。
【0191】
その他の態様では、本開示に有用なScaffold Yは、配列番号49のアミノ酸2~227と、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または配列番号100が同一であるアミノ酸配列を含む。その他の態様では、本開示に有用なScaffold Yは、配列番号49のアミノ酸配列を含む、ただし、1つのアミノ酸変異、2つのアミノ酸変異、3つのアミノ酸変異、4つのアミノ酸変異、5つのアミノ酸変異、6つのアミノ酸変異、または7つのアミノ酸変異がある。変異は、置換、挿入、欠失、またはそれらのあらゆる組み合わせであり得る。
【0192】
一部の態様では、配列番号47~49のアミノ酸残基1のMetを欠いている配列番号47~49のいずれかのタンパク質配列は、本開示のためのScaffold Y(例えば、IL-12部分に連結したスキャフォールド部分として十分である。一部の態様ではScaffold Yは、配列番号47~49のアミノ酸残基1のMetを欠いている配列番号47~49のいずれかと、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または配列番号100が同一であるアミノ酸配列を含む。
【0193】
本明細書に記載したScaffold Y-遺伝子操作したEV、例えば、エキソソームは、配列番号47~49のアミノ酸残基1のMetを欠いている配列番号47~49に記載の配列で形質転換した細胞から製造することができる。
【0194】
一部の態様では、本開示に有用なScaffold Yタンパク質は、「N末端ドメイン」(ND)及び「エフェクタードメイン」(ED)を含み、また、ND及び/またはEDは、EV、例えば、エキソソームの内腔表面と会合している。一部の態様では、本開示に有用なScaffold Yタンパク質は、細胞内ドメイン、膜貫通ドメイン、及び細胞外ドメインを含む;また、細胞内ドメインは、「N末端ドメイン」(ND)及び「エフェクタードメイン」(ED)を含み、また、ND及び/またはEDは、EV、例えば、エキソソームの内腔表面と関連している。本明細書で使用する用語「関連する」は、スキャフォールドタンパク質と、EV、例えば、及びエキソソームの内腔表面との間の相互作用のことを指しており、膜成分に対する共有結合には関与しない。例えば、本開示に有用なスキャフォールドは、例えば、脂質固定(例えば、ミリスチン酸)、及び/または膜リン脂質の負に帯電した頭部と静電的に相互作用する多塩基性ドメインを介して、EVの内腔表面と会合することができる。その他の態様では、Scaffold Yタンパク質は、N末端ドメイン(ND)、及びエフェクタードメイン(ED)を含み、また、NDは、EVの内腔表面と関連しており、及びEDがイオン相互作用によってEVの内腔表面と会合しており、また、EDは、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、または少なくとも7つの連続する塩基性アミノ酸、例えば、リジン(Lys)を順番に含む。
【0195】
その他の態様では、Scaffold Yタンパク質は、N末端ドメイン(ND)及びエフェクタードメイン(ED)を含み、また、NDは、EV、例えば、エキソソームの内腔表面と会合しており、及びEDは、イオン相互作用によってEVの内腔表面と会合しており、また、EDは、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、または少なくとも7つの連続する塩基性アミノ酸、例えば、リジン(Lys)を順番に含む。
【0196】
一部の態様では、NDは、EV、例えば、エキソソームの内腔表面と、脂質化、例えば、ミリストイル化を介して会合する。一部の態様では、NDは、N末端にGlyを有する。一部の態様では、N末端Glyは、ミリストイル化する。
【0197】
一部の態様では、EDは、イオン相互作用によって、EV、例えば、エキソソームの内腔表面と会合する。一部の態様では、EDは、静電相互作用、特に、引力静電相互作用によって、EV、例えば、エキソソームの内腔表面と会合する。
【0198】
一部の態様では、EDは、(i)1つの塩基性アミノ酸(例えば、リジン)、または、(ii)ポリペプチド配列において互いに隣り合う2つ以上の塩基性アミノ酸(例えば、リジン)を含む。一部の態様では、塩基性アミノ酸は、リジン(Lys;K)、アルギニン(Arg、R)、またはヒスチジン(His、H)である。一部の態様では、塩基性アミノ酸は、(Lys)nであり、また、nは、1と10との間の整数である。
【0199】
その他の態様では、EDのN末端が、NDのC末端のリジンに直接に連結している場合、EDは、少なくともリジンを含み、及び、NDは、C末端にリジンを含む、すなわち、リジンは、EDのN末端にあり、及びNDのC末端でリジンに融合している。その他の態様では、EDのN末端が、リンカー、例えば、1つ以上のアミノ酸でNDのC末端に連結している場合、EDは、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、または少なくとも7つのリジンを含む。
【0200】
本開示に有用なScaffold Yタンパク質の例は、国際公開第WO/2019/099942号に開示されており、その全内容を、参照により本明細書で援用する。
【0201】
一部の態様では、本開示に有用なScaffold Yタンパク質は、N末端Metを含まない。一部の態様では、Scaffold Yタンパク質は、脂質固定として機能するスキャフォールドタンパク質のN末端において、脂質化アミノ酸、例えば、ミリストイル化アミノ酸を含む。一部の態様では、スキャフォールドタンパク質のN末端のアミノ酸残基は、Glyである。N末端Glyの存在は、N-ミリストイル化の絶対要件である。一部の態様では、スキャフォールドタンパク質のN末端のアミノ酸残基を合成する。一部の態様では、スキャフォールドタンパク質のN末端のアミノ酸残基は、グリシン類似体、例えば、アリルグリシン、ブチルグリシン、またはプロパルギルグリシンである。
【0202】
その他の態様では、脂質固定は、当該技術分野で公知のあらゆる脂質固定、例えば、パルミチン酸またはグリコシルホスファチジルイノシトールですることができる。特殊な状況下では、例えば、ミリスチン酸が制限を受ける培養培地を使用することで、短鎖及び不飽和などのその他の一部の脂肪酸を、N末端グリシンに結合することができる。例えば、BKチャネルでは、ミリスチン酸は、ヒドロキシエステル結合を介して、翻訳後に、内部のセリン/スレオニンまたはチロシン残基に結合する、ことが報告されている。当該技術分野で公知のメンブレン固定を、以下の表に示す:
【表4】
【0203】
III.B.リンカー
上記したように、本開示の細胞外小胞(EV)(例えば、エキソソーム及びナノ小胞)は、関心のある分子(例えば、IL-12部分)をEV(例えば、外表面または内腔表面に)連結する1つ以上のリンカーを含むことができる。一部の態様では、IL-12部分は、直接に、またはスキャフォールド部分(例えば、Scaffold XまたはScaffold Y)を介してEVに連結する。特定の態様では、IL-12部分は、リンカーによってスキャフォールド部分に連結する。特定の態様では、IL-12部分は、リンカーによって第2のスキャフォールド部分に連結する。
【0204】
特定の態様では、IL-12部分を、Scaffold Xを介してエキソソームの外表面に連結する。さらなる態様では、IL-12部分を、Scaffold XまたはScaffold Yを介してエキソソームの内腔表面に連結する。リンカーは、当該技術分野において公知のあらゆる化学的部分とすることができる。
【0205】
一部の態様では、2つ以上のリンカーを直列に連結することができる。複数のリンカーが存在する場合、それぞれのリンカーの異同は問わない。一般に、リンカーは柔軟性を与えるか、または立体障害を防止/改善する。リンカーは通常は切断されない;しかしながら、特定の態様では、そのような切断が望ましい場合もある。したがって、一部の態様では、リンカーを、リンカーの配列内に位置させる、またはリンカー配列のいずれかの末端でリンカーに隣接させることができる1つ以上のプロテアーゼ切断部位を含むことができる。
【0206】
一部の態様では、リンカーは、ペプチドリンカーである。一部の態様では、ペプチドリンカーは、少なくとも約2つ、少なくとも約3つ、少なくとも約4つ、少なくとも約5つ、少なくとも約10個、少なくとも約15個、少なくとも約20個、少なくとも約25個、少なくとも約30個、少なくとも約35個、少なくとも約40個、少なくとも約45個、少なくとも約50個、少なくとも約55個、少なくとも約60個、少なくとも約65個、少なくとも約70個、少なくとも約75個、少なくとも約80個、少なくとも約85個、少なくとも約90個、少なくとも約95個、または少なくとも約100個のアミノ酸を含むことができる。
【0207】
一部の態様では、ペプチドリンカーは、合成、すなわち、非天然のものである。ある態様では、ペプチドリンカーは、アミノ酸の第1の直線配列を、第1の直線配列が自然には連結されていない、または遺伝子的に自然に融合されていないアミノ酸の第2の直線配列に連結または遺伝子的に融合するアミノ酸配列を含むペプチド(または、ポリペプチド)(例えば、天然または非天然ペプチド)を含む。例えば、ある態様では、ペプチドリンカーは、天然に存在するポリペプチドの改変した形態(例えば、付加、置換、または欠失などの変異を含む)である非天然のポリペプチドを含むことができる。
【0208】
一部の態様では、リンカーは、非ポリペプチド部分である。
【0209】
リンカーは、切断(「切断可能なリンカー」)に対して感受性であり得る、それにより、生物学的に活性な分子(例えば、IL-12部分)の放出を促す。
【0210】
一部の態様では、リンカーは、「還元感受性リンカー」である。一部の態様では、還元感受性リンカーは、ジスルフィド結合を含む。一部の態様では、リンカーは「酸不安定性リンカー」である。一部の態様では、酸不安定性リンカーは、ヒドラゾンを含む。適切な酸不安定性リンカーとして、例えば、cis-アコニットリンカー、ヒドラジドリンカー、チオカルバモイルリンカー、またはそれらのあらゆる組み合わせもある。
【0211】
一部の態様では、リンカーは、非切断性リンカーを含む、
【0212】
IV.遺伝子操作したエキソソームを生産する産生細胞
EV、例えば、エキソソームは、インビトロで増殖させた細胞または対象の体液から産生することができる。エキソソームをインビトロで細胞培養から産生する場合、様々な産生細胞、例えば、HEK293細胞、CHO細胞、及びMSCを使用することができる。特定の態様では、産生細胞は、樹状細胞、マクロファージ、B細胞、肥満細胞、好中球、Kupffer-Browicz細胞、これらの細胞のいずれかに由来する細胞、またはそれらのあらゆる組み合わせではない。
【0213】
産生細胞は、本明細書に記載したEVを産生するIL-12部分をコードする外因性配列を含むように遺伝子改変することができる。遺伝子改変した産生細胞は、一過的な、または安定した形質転換によって外因性配列を含むことができる。外因性配列は、プラスミドとして形質転換することができる。一部の態様では、外因性配列は、ベクターである。外因性配列は、産生細胞のゲノム配列、標的部位、またはランダム部位に安定に組み込むことができる。一部の態様では、内腔を遺伝子操作したエキソソームの産生のために安定な細胞株が生成する。
【0214】
外因性配列は、エキソソームタンパク質をコードする内因性配列の上流(5’末端)または下流(3’末端)内に位置する産生細胞のゲノム配列に挿入することができる。当該技術分野で公知の様々な方法を、産生細胞に対する外因性配列の導入に使用することができる。例えば、様々な遺伝子編集方法(例えば、相同組換えを用いる方法、トランスポゾン媒介系、loxP-cre系、CRISPR/Cas9またはTALEN)を使用して改変した細胞は、本開示の範囲内にある。
【0215】
外因性配列は、本明細書で開示したスキャフォールド部分またはそのフラグメントもしくはバリアントをコードする配列を含むことができる。スキャフォールド部分をコードする配列の余分なコピーを導入して、本明細書に記載した(例えば、EV、例えばエキソソームの表面、または内腔表面に高密度のスキャフォールド部分を有する)エキソソームを生成することができる。スキャフォールド部分の改変またはフラグメントをコードする外因性配列を導入して、スキャフォールド部分の改変またはフラグメントを含む内腔-遺伝子操作した、及び/または表面-遺伝子操作したエキソソームを生成することができる。
【0216】
一部の態様では、産生細胞は、IL-12部分に連結したスキャフォールド部分をコードする1つ以上のベクターで改変、例えば、トランスフェクトすることができる。
【0217】
一部の態様では、本明細書で開示した産生細胞は、さらなる外因性配列を含むようにさらに改変する。例えば、内因性遺伝子発現を調節する追加の外因性配列を導入する、またはペイロードとして特定のポリペプチド(例えば、IL-12部分)を含むエキソソームを産生することができる。一部の態様では、産生細胞は、2つの外因性配列を含むように改変しており、一方は、スキャフォールド部分(例えば、Scaffold X及び/またはScaffold Y)、またはそのバリアントもしくはフラグメントをコードしており、及び、他方は、ペイロード、例えば、IL-12部分をコードする)。一部の態様では、産生細胞は、2つの外因性配列を含むように改変しており、その一方は、本明細書に開示したスキャフォールド部分、またはそのバリアントもしくはフラグメントをコードする、及び、他方は、エキソソームに追加の機能性を付与するタンパク質をコードする。一部の態様では、産生細胞は、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、または10個以上の追加の外因性配列を含むようにさらに改変する。
【0218】
一部の態様では、本開示のEV、例えば、エキソソーム(例えば、表面-遺伝子操作したエキソソーム、及び/または内腔-遺伝子操作したエキソソーム)を、本明細書に開示した全長の成熟スキャフォールド部分またはIL-12部分に連結したスキャフォールド部分をコードする配列で形質転換した細胞から産生することができる。本明細書に記載したスキャフォールド部分のいずれでも、プラスミド、ゲノムに挿入した外因性配列、またはその他の外因性核酸、例えば、合成メッセンジャーRNA(mRNA)から発現させることができる。
【0219】
V.医薬組成物
本明細書では、所望の純度を有する本開示のEV、例えば、エキソソーム、及び医薬として許容可能な担体または賦形剤を、対象への投与に適した形態で含む医薬組成物を提供する。医薬として許容可能な賦形剤または担体は、一部には、投与する特定の組成物によって、また、組成物を投与するために使用する特定の方法によって決定することができる。したがって、複数の細胞外小胞、例えば、エキソソームを含む医薬組成物の多種多様な適切な製剤が存在する(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Co.,Easton,Pa.21st ed.(2005)を参照されたい)。医薬組成物は、一般的には、無菌状態で、米国食品医薬品局の適正製造基準(GMP)規制のすべてに完全に準拠するように製剤する。
【0220】
一部の態様では、医薬組成物は、本明細書に記載した1つ以上の治療薬及びエキソソームを含む。特定の態様では、EV、例えば、エキソソームは、医薬として許容可能な担体で、1つ以上の追加の治療薬、例えば、抗腫瘍薬と同時に投与する。一部の態様では、EV、例えば、エキソソームを含む医薬組成物は、追加の治療薬、例えば、抗腫瘍薬を投与する前に投与する。その他の態様では、EV、例えば、エキソソームを含む医薬組成物は、追加の治療薬、例えば、抗腫瘍薬を投与した後に投与する。さらなる態様では、EV、例えば、エキソソームを含む医薬組成物は、追加の治療薬、例えば、抗腫瘍薬と同時に投与する。
【0221】
許容可能な担体、賦形剤、または安定剤は、使用する用量及び濃度で、レシピエント、例えば、動物またはヒトに対して無毒であり、及び、リン酸塩、クエン酸塩、及びその他の有機酸などの緩衝剤;アスコルビン酸、及びメチオニンなどの抗酸化剤;防腐剤(オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;ヘキサメトニウムクロリド;ベンザルコニウムクロリド、ベンゼトニウムクロリド;フェノール、ブチルまたはベンジルアルコール;メチルまたはプロピルパラベンなどのアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;及び、m-クレゾールなど);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、またはリジンなどのアミノ酸;単糖類、二糖類、及びグルコース、マンノース、またはデキストリンなどのその他の炭水化物;EDTAなどのキレート剤;スクロース、マンニトール、トレハロース、またはソルビトールなどの糖類;ナトリウムなどの塩を形成する対イオン;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質複合体);及び/またはTWEEN(登録商標)、PLURONICS(登録商標)、またはポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン性界面活性剤、などがある。
【0222】
担体または希釈剤の例として、水、生理食塩水、リンガー液、デキストロース溶液、及び5%ヒト血清アルブミンがあるが、これらに限定されない。医薬活性物質のための当該媒体及び化合物の使用は、当該技術分野で周知である。あらゆる従来の培地または化合物が、本明細書に記載したEV、例えば、エキソソームと不適合でない限り、組成物でのそれらの使用を企図している。補助治療剤を組成物に添加することもできる。一般的に、医薬組成物は、その意図する投与経路に適合するように製剤する。EV、例えば、エキソソームは、非経口、局所、静脈内、経口、皮下、動脈内、皮内、経皮、直腸内、頭蓋内、腹腔内、鼻腔内、腫瘍内、筋肉内経路または吸入剤として投与することができる。特定の態様では、EV、例えば、エキソソームを含む医薬組成物は、例えば、注射によって静脈内投与する。EV、例えば、エキソソームは、任意に、EV、例えば、エキソソームが意図する疾患、障害または状態の治療に、少なくとも部分的に有効であるその他の治療薬と組み合わせて投与することができる。
【0223】
溶液または懸濁液は、次の成分を含むことができる:水、生理食塩水、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、またはその他の合成溶媒などの滅菌希釈剤;ベンジルアルコールまたはメチルパラベンなどの抗菌化合物;アスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウムなどの抗酸化剤;エチレンジアミン四酢酸(EDTA)などのキレート化合物;酢酸塩、クエン酸塩、またはリン酸塩などの緩衝剤、及び、塩化ナトリウムまたはデキストロースなどの浸透圧を調節するための化合物を含むことができる。pHは、塩酸や水酸化ナトリウムなどの酸または塩基で調整することができる。製剤は、ガラスもしくはプラスチックで形成したアンプル、使い捨て注射器、または複数用量バイアルに封入することができる。
【0224】
注射の使用に適した医薬組成物として、滅菌水溶液(水溶性の場合)または分散液及び滅菌粉末がある。静脈内投与の場合、適切な担体として、生理食塩水、静菌水、Cremophor EL(商標)(BASF,Parsippany,N.J.)またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)がある。組成物は、一般的に、無菌であり、容易に注射器で使用できる程度の流動性を有する。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコールなど)、及びそれらの適切な混合物を含有する溶媒または分散媒とすることができる。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用、分散液の場合には必要な粒径の維持、及び界面活性剤の使用によって維持することができる。微生物の活動の防止は、様々な抗菌化合物及び抗真菌化合物、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなどで達成することができる。必要に応じて、等張化合物、例えば、糖類、マンニトール、ソルビトールなどのポリアルコール、塩化ナトリウムを、組成物に添加することができる。例えば、モノステアリン酸アルミニウムまたはゼラチンなどの吸収を遅延させる化合物を、組成物に含めることで、注射用組成物の長期的吸収を可能にする。
【0225】
EV、例えば、エキソソームを、有効量で、適切な溶媒において、必要に応じて、本明細書に記載した1つ以上の成分と一緒に加えて滅菌注射液を調製することができる。一般的に、分散液は、EV、例えば、エキソソームを、塩基性分散媒、及びあらゆる所望のその他の成分を含む無菌溶媒に添加して調製する。滅菌注射液を調製するための滅菌粉末の事例では、調製方法は、真空乾燥及びフリーズドライであり、予め滅菌濾過したその溶液から有効成分、及びあらゆる追加の所望の成分の粉末が得られる。EV、例えば、エキソソームは、EV、例えば、エキソソームの持続的放出またはパルス放出を可能ならしめる形態で製剤できるデポー注射またはインプラント製剤の形態で投与することができる。
【0226】
EV、例えば、エキソソームを含む組成物の全身投与は、経粘膜的手段によって行うこともできる。経粘膜投与のために、震盪させるバリアに対して適切な浸透剤を製剤に用いる。このような浸透剤は、一般的に、当該技術分野で周知のものであり、例えば、経粘膜投与の場合では、洗剤、胆汁酸塩、及びフシジン酸誘導体がある。経粘膜投与は、例えば、点鼻薬を使用して達成することができる。
【0227】
ある態様では、EV、例えば、エキソソームを含む医薬組成物は、医薬組成物が有益であろう対象に静脈内投与する。特定のその他の態様では、組成物は、例えば、リンパ内注射によって、または節内注射(例えば、Senti et al.,PNAS 105(46): 17908(2008)を参照されたい)によって、または筋肉内注射によって、皮下投与によって、腫瘍内注射によって、胸腺または肝臓への直接注射によって、リンパ系に投与する。
【0228】
ある態様では、エキソソームを含む医薬組成物は、液体懸濁液として投与する。特定の態様では、医薬組成物は、投与した後にデポーを形成することができる製剤として投与する。特定の好ましい態様では、デポーは、EV、例えば、エキソソームを緩慢に循環させる、またはデポー形態のままとする。
【0229】
一般的に、医薬として許容可能な組成物は、夾雑物を含んでおらず、生体適合性であり、毒性が無く、かつ対象への投与に適するように高度に精製されている。水が担体の構成成分である場合、水は高度に精製されており、及び、例えば、エンドトキシンなどの汚染物質が無いように処理する。
【0230】
医薬として許容可能な担体として、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アラビアゴム、リン酸カルシウム、アルギン酸塩、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微結晶セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、シロップ、メチルセルロース、メチルヒドロキシ安息香酸、プロピルヒドロキシ安息香酸、タルク、ステアリン酸マグネシウム、及び/または鉱油があるが、これらに限定されない。医薬組成物は、滑沢剤、湿潤剤、甘味料、風味増強剤、乳化剤、懸濁剤、及び/または保存剤をさらに含むことができる。
【0231】
本明細書に記載した医薬組成物は、本明細書に記載したEV、例えば、エキソソーム、及び、任意に、医薬として活性な作用物質または治療薬を含む。治療薬は、生物学的作用物質、低分子作用物質、または核酸剤とすることができる。
【0232】
本明細書に記載したEV、例えば、エキソソームを含む医薬組成物を含む製剤を提供する。一部の態様では、製剤は、静脈内注射用の液体懸濁液として製剤する。一部の態様では、製剤は、腫瘍内注射用の液体懸濁液として製剤する。
【0233】
特定の態様では、エキソソームの調製は、放射線、例えば、X線、ガンマ線、ベータ粒子、アルファ粒子、中性子、陽子、元素核、UV線に供して、残留複製能力核酸に損傷を与える。
【0234】
特定の態様では、エキソソームの調製では、1、5、10、15、20、25、30、35、40、50、60、70、80、90、100、または100kGy超の照射線量を使用して、ガンマ線照射を与える。
【0235】
特定の態様では、エキソソームの調製では、0.1、0.5、1、5、10、15、20、25、30、35、40、50、60、70、80、90、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、2000、3000、4000、5000、6000、7000、8000、9000、10000、または10000mSv超の照射線量を使用して、X線照射を与える。
【0236】
一部の態様では、エキソソームは、国際公開第WO 2021/062317号に開示した医薬組成物内にあり、この文献の全内容を、参照により、本明細書で援用する。一部の態様では、組成物:
(a)本明細書に開示したIL-12部分を含む細胞外小胞;
(b)約146mMの濃度のスクロース;
(c)約50mMの濃度の塩化ナトリウム;
(d)約5mMの濃度のリン酸一塩基性カリウム;
(e)約15mMの濃度のリン酸二塩基性ナトリウム、
(f)組成物のpHが、約7.2であること、を含む。
【0237】
一部の態様では、組成物は:
(a)本明細書に開示したIL-12部分を含む細胞外小胞;
(b)約5%の濃度のスクロース;
(c)約50mMの濃度の塩化ナトリウム;
(d)約5mMの濃度のリン酸一塩基性カリウム;
(e)約15mMの濃度のリン酸二塩基性ナトリウム、
(f)組成物のpHが、約7.2であること、を含む。
【0238】
VI.キット
本明細書に記載した1つ以上のエキソソームを含むキットも本明細書で提供する。一部の態様では、本明細書では、本明細書に記載した医薬組成物の1つ以上の成分、例えば、本明細書に記載した1つ以上のエキソソームなどを充填した1つ以上の容器、任意に使用説明書を含む医薬パックまたはキットを提供する。一部の態様では、キットは、本明細書に記載した医薬組成物、及び本明細書に記載したようなあらゆる予防剤または治療薬を含む。一部の態様では、キットは、本明細書に開示したあらゆる方法に従ってEVを投与する指示書をさらに含む。
【0239】
VII.EVの生産方法
一部の態様では、本開示は、本明細書に記載したEVを製造する方法にも関する。一部の態様では、方法は、EV、例えば、エキソソームを産生細胞から得る工程、また、産生細胞が、EV、例えば、エキソソームの1つ以上の成分(例えば、IL-12部分を含む;及び、任意に、EV、例えば、エキソソームを単離する。一部の態様では、方法は:本明細書に開示したEVの1つ以上の要素(例えば、IL-12部分)を導入して産生細胞を改変すること;改変した産生細胞からEV、例えば、エキソソームを得る工程;及び、任意に、得たEV、例えば、エキソソームを単離する、ことを含む。さらなる態様では、方法は:産生細胞からEVを得る;得たEVを単離する;及び、単離したEVを改変する、ことを含む。特定の態様では、方法は、単離したEVを、医薬組成物に製剤することをさらに含む。
【0240】
VII.A.産生細胞を改変する方法
上記したように、一部の態様では、EVを製造する方法は、1つ以上の部分(例えば、IL-12部分)で産生細胞を改変することを含む。特定の態様では、1つ以上の部分は、IL-12部分を含む。一部の態様では、1つ以上の部分は、本明細書に開示したスキャフォールド部分(例えば、Scaffold XまたはScaffold Y)をさらに含む。
【0241】
一部の態様では、産生細胞は、哺乳動物細胞株、植物細胞株、昆虫細胞株、真菌細胞株、または原核細胞株とすることができる。特定の態様では、産生細胞は、哺乳動物細胞株である。哺乳動物細胞株の例として:ヒト胚性腎臓(HEK)細胞株、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株、HT-1080細胞株、HeLa細胞株、PERC-6細胞株、CEVEC細胞株、線維芽細胞株、膜細胞株、上皮細胞株、間葉系幹細胞(MSC)細胞株、及びそれらの組み合わせがあるが、これらに限定されない。特定の態様では、哺乳動物細胞株は、HEK-293細胞、BJヒト包皮線維芽細胞、fHDF線維芽細胞、AGE.HN(登録商標)神経前駆細胞、CAP(登録商標)膜細胞、脂肪間葉系幹細胞、RPTEC/TERT1細胞、またはそれらの組み合わせがある。一部の態様では、産生細胞は、初代細胞である。特定の態様では、初代細胞を、初代哺乳動物細胞、初代植物細胞、初代昆虫細胞、初代真菌細胞、または初代原核細胞とすることができる。
【0242】
一部の態様では、産生細胞は、抗原提示細胞、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)、マクロファージ、Tヘルパー細胞、または制御性T細胞(Treg細胞)などの免疫細胞ではない。その他の態様では、産生細胞は、抗原提示細胞(例えば、樹状細胞、マクロファージ、B細胞、肥満細胞、好中球、Kupffer-Browicz細胞、またはそのようなあらゆる細胞に由来する細胞)ではない。
【0243】
一部の態様では、1つ以上の部分を、導入遺伝子またはmRNAとすることができる、及び、トランスフェクション、ウイルス形質導入、エレクトロポレーション、押出、超音波処理、細胞融合、または当業者に公知であるその他の方法で産生細胞に導入することができる。
【0244】
一部の態様では、1つ以上の部分は、トランスフェクションによって産生細胞に導入する。一部の態様では、カチオン性脂質及びポリマーなどの合成高分子を使用して1つ以上の部分を適切な産生細胞に導入することができる(Papapetrou et al.,Gene Therapy 12:S118-S130(2005))。一部の態様では、カチオン性脂質は、電荷相互作用によって1つ以上の部分と複合体を形成する。これらの態様の一部は、正に荷電した複合体は、負に荷電した細胞表面に結合し、エンドサイトーシスによって細胞に取り込まれる。一部のその他の態様では、カチオン性ポリマーを使用して産生細胞をトランスフェクトすることができる。これらの態様の一部では、カチオン性ポリマーは、ポリエチレンイミン(PEI)である。特定の態様では、リン酸カルシウム、シクロデキストリン、またはポリブレンのような化学物質を使用して、1つ以上の部分を産生細胞に導入することができる。また、1つ以上の部分は、粒子介在型トランスフェクション、「遺伝子銃」、バイオリステック、またはパーティクルボンバードメント法などの物理的方法を使用して産生細胞に導入することができる(Papapetrou et al.,Gene Therapy12:S118-S130(2005))。例えば、ベータ-ガラクトシダーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、ルシフェラーゼ、または緑色蛍光タンパク質などのレポーター遺伝子を使用して産生細胞のトランスフェクション効率を評価することができる。
【0245】
特定の態様では、1つ以上の部分は、ウイルス形質導入によって産生細胞に導入する。モロニーマウス白血病ウイルス(MMLV)、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、単純ヘルペスウイルス(HSV)、レンチウイルス、及びスプマウイルスなどの数多くのウイルスを遺伝子導入ビヒクルとして使用することができる。ウイルス媒介型遺伝子導入ビヒクルは、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、及びヘルペスウイルスなどのDNAウイルスをベースとしたベクター、ならびにレトロウイルスをベースとしたベクターを含む。
【0246】
特定の態様では、1つ以上の部分は、エレクトロポレーションによって産生細胞に導入する。エレクトロポレーションは、細胞膜に一時的な細孔を形成し、細胞内への様々な分子の導入を可能ならしめる。一部の態様では、DNA及びRNA、ならびにポリペプチド及び非ポリペプチド治療薬を、エレクトロポレーションによって産生細胞に導入することができる。
【0247】
特定の態様では、1つ以上の部分は、マイクロインジェクションによって産生細胞に導入する。一部の態様では、ガラス製マイクロピペットを使用して、1つ以上の部分を顕微鏡レベルで産生細胞に注入することができる。
【0248】
特定の態様では、1つ以上の部分は、押し出しによって産生細胞に導入する。
【0249】
特定の態様では、1つ以上の部分は、超音波処理によって産生細胞に導入する。一部の態様では、産生細胞は高強度の音波に曝露されると、細胞膜の一時的な破裂が起こり、1つ以上の部分のローディングを可能ならしめる。
【0250】
特定の態様では、1つ以上の部分は、細胞融合によって産生細胞に導入する。一部の態様では、1つ以上の部分は、電気的細胞融合によって導入する。その他の態様では、ポリエチレングリコール(PEG)を、産生細胞を融合するために使用する。さらなる態様では、センダイウイルスを、産生細胞を融合するために使用する。
【0251】
一部の態様では、1つ以上の部分は、低張溶解によって産生細胞に導入する。そのような態様では、産生細胞を低イオン強度緩衝液に曝露して破裂させて、1つ以上の部分のローディングを可能ならしめる。その他の態様では、低張溶液に対する制御した透析を使用して産生細胞を膨潤させて、産生細胞の膜に細孔を形成することができる。その後、産生細胞を、膜の再封止を可能ならしめる条件に曝露する。
【0252】
一部の態様では、1つ以上の部分は、洗剤処理によって産生細胞に導入する。特定の態様では、産生細胞を中性洗剤で処理して、1つ以上の部分のローディングを可能ならしめる細孔を形成することで産生細胞の膜を一時的に破裂させる。産生細胞のローディングを終えた後に、洗剤を洗い流して膜の再封止を行う。
【0253】
一部の態様では、1つ以上の部分は、受容体介在型エンドサイトーシスによって産生細胞に導入する。特定の態様では、産生細胞は、1つ以上の部分の結合時に、受容体及び関連する部分の内部移行を誘導する表面受容体を有する。
【0254】
一部の態様では、1つ以上の部分は、濾過によって産生細胞に導入する。特定の態様では、産生細胞及び1つ以上の部分を、産生細胞より小さい孔径のフィルターに強制的に通すことで、産生細胞の膜を一時的に破裂させて、1つ以上の部分を産生細胞に入れることができる。
【0255】
一部の態様では、産生細胞に対して、数回の凍結融解サイクルを行うことで細胞膜の破裂を招き、1つ以上の部分のローディングが可能となる。
【0256】
VII.B.EV、例えば、エキソソームの改変方法
一部の態様では、EV、例えば、エキソソームを製造する方法は、1つ以上の部分を、EVに直接に導入して、単離したEVを改変することを含む。特定の態様では、1つ以上の部分は、IL-12部分を含む。一部の態様では、1つ以上の部分は、本明細書で開示したスキャフォールド部分(例えば、Scaffold XまたはScaffold Y)を含む。
【0257】
特定の態様では、1つ以上の部分は、トランスフェクションによってEVに導入する。一部の態様では、カチオン性脂質及びポリマーなどの合成高分子を使用して1つ以上の部分をEVに導入することができる(Papapetrou et al.,Gene Therapy 12:S118-S130(2005))。特定の態様では、リン酸カルシウム、シクロデキストリン、またはポリブレンなどの化学物質を使用して、1つ以上の部分を、EVに導入することができる。
【0258】
特定の態様では、1つ以上の部分を、エレクトロポレーションによってEVに導入する。一部の態様では、EVは、EV膜に一過的な細孔を生じる電界に曝されて、1つ以上の部分のローディングを可能にする。
【0259】
特定の態様では、1つ以上の部分を、マイクロインジェクションによってEVに導入する。一部の態様では、ガラス製マイクロピペットを使用して、1つ以上の部分を、顕微鏡レベルでEVに直接に注入することができる。
【0260】
特定の態様では、1つ以上の部分は、押し出しによってEVに導入する。
【0261】
特定の態様では、1つ以上の部分は、超音波処理によってEVに導入する。一部の態様では、EVを高強度の音波に曝露して、EV膜に一時的な破裂を起こして、1つ以上の部分のローディングを可能にする。
【0262】
一部の態様では、1つ以上の部分を、EVの表面にコンジュゲートすることができる。コンジュゲーションは、化学的または酵素的に、当該技術分野で公知の方法で達成することができる。
【0263】
一部の態様では、EVは、化学的にコンジュゲートした1つ以上の部分を含む。化学的コンンジュケーションは、リンカーの使用の有無に関係なく、1つ以上の部分と、別の分子との共有結合によって達成することができる。そのようなコンジュゲーションの形成は、当業者の理解の範囲内であり、コンジュゲーションを達成するための様々な技術が公知であり、特定の技術の選択は、コンジュゲーションする材料によって定まる。特定の態様では、ポリペプチドを、EVにコンジュゲートする。一部の態様では、脂質、炭水化物、核酸、及び小分子などの非ポリペプチドを、EVにコンジュゲートする。
【0264】
一部の態様では、1つ以上の部分を、低張溶解によってEVに導入する。このような態様では、EVは、低イオン強度の緩衝剤に曝されて、EVが破裂して、1つ以上の部分のローディングが可能になる。その他の態様では、低張溶液に対する制御透析を使用して、EVを膨潤させて、EV膜に細孔を作り出すことができる。その後、EVは、膜の再封止を可能にする条件に曝す。
【0265】
一部の態様では、1つ以上の部分は、洗剤処理によってEVに導入する。特定の態様では、細胞外小胞は、EV膜を一時的に損傷させる中性洗剤で処理して、1つ以上の部分のローディングを可能にする細孔を作り出す。EVのローディングを終えた後に、洗剤を洗い流してしまい、それにより、膜が再封止される。
【0266】
一部の態様では、1つ以上の部分は、受容体媒介性エンドサイトーシスによってEVに導入する。特定の態様では、EVは、1つ以上の部分の結合時に、受容体及び関連部分の内在化を誘導する表面受容体を有する。
【0267】
一部の態様では、1つ以上の部分は、機械的焼成によってEVに導入する。特定の態様では、細胞外小胞には、金マイクロキャリアなどの重質粒子または荷電粒子に付着した1つ以上の部分で衝撃を与えることができる。これらの態様の一部では、粒子は、EV膜を横断するがごとく、機械的または電気的に加速することができる。
【0268】
一部の態様では、細胞外小胞に対して、数回の凍結融解サイクルを行うことでEV膜を破裂させて、1つ以上の部分のローディングが可能となる。
【0269】
VII.C.EV、例えば、エキソソームの単離方法
一部の態様では、本明細書で開示したEVを生産する方法は、産生細胞からEVを単離することを含む。特定の態様では、産生細胞が放出したEVを、細胞培養培地に入れる。EVのすべての公知の単離方法も、本明細書に記載した使用に適しているものとみなす、ことを企図している。例えば、電荷(例えば、電気泳動による分離)、大きさ(例えば、濾過、分子篩など)、密度(例えば、通常の遠心分離または勾配遠心分離)、スヴェドベリ定数(例えば、外力によるもの、または外力によらない沈降など)をベースとした分離など、EVの物理的性質を利用して、培地またはその他の供給材料からそれらを分離することができる。あるいは、または加えて、単離は、1つ以上の生物学的特性をベースとしたものにすることができ、及び、表面マーカーを利用できるような方法(例えば、沈降に関しては、固相への可逆的結合、FACS分離、特異的リガンド結合、非特異的リガンド結合など)を含むことができる。
【0270】
単離及び濃縮は、一般的かつ非選択的な方法、一般的には連続遠心分離で行うことができる。あるいは、単離及び濃縮は、EVまたは産生細胞特異的表面マーカーを使用するなど、より特異的かつ選択的な方法で行うことができる。例えば、特異的表面マーカーは、免疫沈降、FACS選別、アフィニティー精製、及びビーズ結合リガンドを使用する磁気分離などで使用することができる。
【0271】
一部の態様では、サイズ排除クロマトグラフィーは、EVを単離するために利用することができる。サイズ排除クロマトグラフィー技術は、当該技術分野で公知である。例示的な技術を本明細書で提供するが、それらに限定されない。一部の態様では、空隙容量を単離する、及び対象となるEVを含む。さらに、一部の態様では、EVは、当該技術分野において一般的に公知である遠心分離技術(1つ以上のクロマトグラフィー画分)によるクロマトグラフィー分離の後にさらに単離することができる。一部の態様では、例えば、密度勾配遠心分離を利用して、細胞外小胞をさらに単離することができる。特定の態様では、産生細胞由来のEVを、その他の起源のEVからさらに分離することが望ましい場合がある。例えば、産生細胞由来EVは、産生細胞に特異的な抗原抗体を使用した免疫吸着捕捉によって非産生細胞由来EVから分離することができる。
【0272】
一部の態様では、EVの単離は、分画遠心法、大きさをベースとした膜濾過、免疫沈降、FACS選別、及び磁気分離を含む方法の組み合わせと連係させることができるが、これらに限定されない。
【0273】
本開示の実施にあたっては、別段の指示が無い限り、細胞生物学、細胞培養、分子生物学、トランスジェニック生物学、微生物学、組換えDNA、及び免疫学の従来の技術を採用する、これらは当業者の技術の範囲内である。そのような技術は、文献でしっかりと説明がされている。例えば、Sambrook et al.,ed.(1989)Molecular Cloning A Laboratory Manual(2nd ed.;Cold Spring Harbor Laboratory Press);Sambrook et al.,ed.(1992)Molecular Cloning: A Laboratory Manual,(Cold Springs Harbor Laboratory,NY);D.N.Glover ed.,(1985)DNA Cloning,Volumes I and II;Gait,ed.(1984)Oligonucleotide Synthesis;Mullis et al.米国特許第4,683,195号;Hames and Higgins,eds.(1984)Nucleic Acid Hybridization;Hames and Higgins,eds.(1984)Transcription And Translation;Freshney(1987)Culture Of Animal Cells(Alan R.Liss,Inc.);Immobilized Cells And Enzymes(IRL Press)(1986);Perbal(1984)A Practical Guide To Molecular Cloning;the treatise,Methods In Enzymology(Academic Press,Inc.,N.Y.);Miller and Calos eds.(1987)Gene Transfer Vectors For Mammalian Cells,(Cold Spring Harbor Laboratory);Wu et al.,eds.,Methods In Enzymology,Vols.154 and 155;Mayer and Walker,eds.(1987)Immunochemical Methods In Cell And Molecular Biology(Academic Press,London);Weir and Blackwell,eds.,(1986)Handbook Of Experimental Immunology,Volumes I-IV;Manipulating the Mouse Embryo,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,(1986););Crooke,Antisense drug Technology: Principles,Strategies and Applications,2nd Ed.CRC Press(2007)及び in Ausubel et al.(1989)Current Protocols in Molecular Biology(John Wiley and Sons,Baltimore,Md.)を参照されたい。
【0274】
先に引用した全ての参考文献、ならびに本明細書で引用した全ての参考文献は、その全内容を、参照により、本明細書で援用する。
【0275】
以下の実施例は、例示目的に他ならず、限定を意図していない。
【実施例
【0276】
実施例1
表層提示したIL-12を有するエキソソームを、PTGFRNに連結した単一ペプチドIL-12(ペプチドリンカーp40で連結したp29)を含む融合構築物を、エキソソーム産生細胞で発現させて調製した(図1)。有効性は、ヒトPBMCまたはマウス脾細胞を使用してインビトロで評価した、及び、マウス皮下腫瘍モデルを使用してインビボで評価した。局所対全身薬理学は、マウスにおける腫瘍内注射、及びサルにおける皮下注射で決定した。すべての研究は、組換えIL-12(rIL-12)に対してベンチマークをした。
【0277】
MC38マウス腫瘍モデルでは、表層提示したIL-12(exoIL-12)を有するエキソソームの腫瘍内投与は、遊離組換えIL-12及び未処置コントロールと比較して、増強したPK及び持続的PDを示した。exoIL-12を投与したマウスでは、投与して3、12、24、及び48時間後のIL-12p70濃度/腫瘍によって測定した腫瘍滞留は、遊離組換えIL-12と比較して高かった(約15倍)(図2A)。加えて、exoIL-12投与は、組換えIL-12と比較して、約4倍も腫瘍内IFN-ガンマAUCを高めた(図2B)。さらに、exoIL-12の腫瘍内投与は、マウスにおけるMC38腫瘍増殖の用量依存的減少を招いた。ExoIL-12は、腫瘍増殖阻害についてはrlL-12よりも100倍も有効性が大きく、100ngのExoIL-12を投与したマウスでは、腫瘍増殖を殆ど無く、または皆無であった(図2C)。MC38腫瘍モデルでは、exoIL-12で治療したマウスの63%で完全寛解が認められた;対照的に、rIL-12は、同等のIL-12用量での完全寛解は0%であった。このことは、腫瘍抗原特異的CD8+ T細胞での用量依存的増加と相関しており、exoIL-12で治療したマウスでは、ほぼ4倍も高くなっていた(図2E)。
【0278】
腫瘍増殖の抑制を、MC38の再接種に続いて改めて観察した(図2D)。exoIL-12完全レスポンダーマウスの再接種試験は、腫瘍の再増殖、及びCD8+ T細胞の枯渇は、exoIL-12の抗腫瘍活性を完全には無効にしない、ことを示した。腫瘍内投与後、exoIL-12は、rIL-12よりも10倍も大きな腫瘍内曝露を示し、及び、IFNγ産生を、最長で48時間にまで延ばした。保たれたexoIL-12の局所薬理学は、非ヒト霊長類に皮下注射して、さらに確認をした。
【0279】
毒物学分析は、試験した最高用量、3μgのexoIL-12では、NOAEL(観察可能な有害作用レベル無し)であり、限られた血漿レベル、及び用量依存性組織レベルを示すことを明らかにした(図3A)。CXCL10/IP-10の発現は、単回投与した後に皮膚において持続することが認められたが、血漿中では検出できなかった(図3B~3C)。
【0280】
exoIL-12の腫瘍制限薬理学は、全身性IL-12曝露及び関連毒性は認められず、優れたインビボ有効性及び免疫記憶を示す。このように、exoIL-12は、rIL-12の主たる制限事項を克服している。
【0281】
実施例2
表層提示IL-12を含む遺伝子操作したエキソソームを投与してヒト対象のがんを治療することの安全性及び有効性を試験するための臨床試験を行う(図4A~4B)。パートAでは、健康なボランティアに、様々な用量のexoIL-12を投与して、有害事象及びバイオマーカーをモニタリングする(図4A)。パートBでは、CTCL(ステージIA~IIB)と診断された対象に、様々な用量のexoIL-12を投与して、安全性及びバイオマーカーに関してモニタリングする(図4B)。臨床試験は、1回以上のCTスキャンでモニタリングする。CTCL、TNBC、黒色腫、GBM、MCC、及び/またはカポジ肉腫の対象は、試験のパートBの対象となる。
【0282】
実施例3
exoIL-12の第I相試験を、健康なボランティアで実施した(表4)。研究の最初の段階では、合計で5つのコホートを作り、それぞれのコホートでは5名の対象を登録して、活性薬物とプラセボを3:2に無作為に分けて投与した。それぞれのコホートは、exoIL-12を、単回漸増用量:0.3μg、1.0μg、3.0μg、6.0μg、及び12.0μgで皮下投与した。


【表5】
【0283】
このデータは、第1相試験の最初の段階で主たる目的を達成したことを示す。この無作為化プラセボコントロール二重盲検試験では、exoIL-12が、良好な安全性と忍容性プロファイルを示しており、局所的または全身治療関連の有害事象は無く、及び、IL-12の検出可能な全身曝露も無いことを実証した。10日間のフォローアップを通じて、治療関連の有害事象は認められなかった。特に、悪寒、発熱、倦怠感、目眩、筋肉痛、頭痛、または背痛の報告は無かった。これらの症状は、この研究で使用したexoIL-12の用量(2μg~12μgの範囲)と匹敵する用量のrIL-12を皮下投与した従前の臨床試験では認められていた。Gokhale MS,et al.Exp Hematol Oncol.2014;3(1):11.Published 2014 Apr 11.doi:10.1186/2162-3619-3-11
【0284】
血漿及び皮膚生検コアを、様々な時点で採取した(図5A~5B)。血漿薬物動態(PK)測定は、試験したすべての用量で定量限界を下回るIL-12レベルでも全身曝露を示さなかった(図6)。対照的に、rIL-12を使用した従前の臨床試験では、5μg及び12μgの投与量では、用量依存的な全身曝露が認められており、投与して6~12時間以内には約12pg/ml~45pg/mlのCmax血漿レベルに達した。Gokhale MS,et al.2014(前掲)を参照されたい。これらのデータは、安全性と忍容性の重大な懸念が故に一般的に限界を有する組換えIL-12(rIL-12)をベースとした治療法と比較して、exoIL-12の潜在的な利点、例えば、全身毒性が低いことを示している。これらの制限を克服するために、IL-12を腫瘍微小環境(TME)に局在化させて、治療指数を引き上げるために、IL-12の用量制御を容易ならしめ、全身曝露及び関連する毒性を制限するように、exoIL-12をデザインした。
【0285】
IL-12の局所保持の確認は、処置前、及び処置して24時間、8日及び15日後の皮膚パンチ生検でのIL-12レベルを測定して評価する。いかなる理論にも拘束されるわけではないが、全身性IL-12曝露が無いことと符合して、全身性IFNγ及びIP-10とexoIL-12とプラセボとの間に差異が認められないものと考えられる。
【0286】
局所薬力学的効果は、連続皮膚パンチ生検でのIP-10レベルを定量する、及び探索的遺伝子発現分析を使用することで評価する。皮膚生検は、Stiefel Biopsy Punch(3mm及び外科用メス)を使用して、表皮及び真皮を貫通して、上部皮下組織に到達させて得た。生検は、exoIL-12の注射部位から少なくとも30mm離れた箇所で得た(図5B)。有効で、持続的なIP-10効果は、すべての用量レベル(0.3μg、1.0μg、3.0μg、6.0μg、または12.0μgのexoIL-12;図7A)のexoIL-12を投与した後の皮膚生検で認められた。皮膚生検での最大平均IP-10レベルは、6.0μg用量を投与した対象で認められた(図7A、菱形)。逆に、0.3μg、1.0μg、3.0μg、または6.0μgのexoIL-12を投与した対象では、血漿IP-10での増加は認められなかったが、3日目に12.0μgのexoIL-12を投与することで、血漿IP-10でのわずかな増加があった(図7B)。高レベルのIL-12及びIP-10が、6.0μgのexoIL-12を投与した対象の皮膚生検で認められており、及び、活性は、8日目に測定可能であった(図7C~7D)。さらに、0.3μg、1.0μg、3.0μg、6.0μg、または12.0μgのexoIL-12を投与した対象では、血漿IFNγでの増加は認められなかった(図8)、それに対して、rIL-12(12.0μg)を投与した後では、血漿IFNγでの増加が事前に認められていた。これらの結果は、注射部位での少なくとも24時間のIL-12の所望の局在性及び維持、ならびに用量に応じて8~15日間のIP-10産生が持続していることを示す;及び、これらのデータは、6.0μgのexoIL-12を投与した対象に関する研究のパートBでの2週間ごとの投与を支持している。
【0287】
これらの結果は、exoIL-12が、健康なボランティアでは、0.3~12.0μgのSADで十分に許容できていたことを示す。同等量のrIL-12を投与された対象の履歴結果とは対照的に、exoIL-12を投与した対象では、IL-12の全身曝露は認められなかった。exoIL-12は、6μgで皮膚での検出が可能であり、このことは、注射部位でexoIL-12が保持されていることを示唆している。1.0μg~12.0μgのExoIL-12は、強力な皮膚IP-10レベルを示しており、6.0μgのexoIL-12の投与後に最高レベルが認められた。これらのデータは、2週間ごとに6.0μgの開始用量を使用するパートBでの研究を継続することを支持している。第1相臨床試験の次の部分を進めるものとし、皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)患者でのexoIL-12の安全性と有効性を、6ugの用量で評価する。
【0288】
実施例4
皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)、黒色腫、トリプルネガティブ乳癌(TNBC)、膠芽腫、メルケル細胞癌(MCC)、カポジ肉腫、基底細胞癌(BCC)、膀胱癌、または、それらの組み合わせに罹患した対象を含むがん対象に対して、exoIL-12を投与することの安全性及び有効性を研究するための臨床試験を実施する。対象は、6μgのexoIL-12または12μgのexoIL-12を、2週間ごとに1回投与する。対象は、奏効率、全生存(OS)、無増悪生存(PFS)、及び有害事象の発生についてモニタリングを行う。
【0289】
参照による援用
本出願で引用するすべての刊行物、特許、特許出願、及びその他の文献は、それぞれの個別の刊行物、特許、特許出願、またはその他の文献が、あらゆる目的で、参照により、個別に援用することを示している場合と同程度に、あらゆる目的で、それらの全内容を、参照により、本明細書で援用する。
【0290】
均等物
様々な特定の態様を例示及び説明してきたが、上記の明細書は限定的なものではない。本発明(複数可)の趣旨及び範囲から逸脱せずとも、様々な変更を行うことができる点は認識されるであろう。数多くの変形例は、本明細書を検討することで、当業者には明らかになるであろう。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図8
【配列表】
2023538077000001.app
【国際調査報告】