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特表2023-538088モーター、モーター・コントローラ、熱交換システム、及び制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-06
(54)【発明の名称】モーター、モーター・コントローラ、熱交換システム、及び制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02P 29/64 20160101AFI20230830BHJP
   H02K 9/19 20060101ALI20230830BHJP
   B60L 15/00 20060101ALN20230830BHJP
   B60L 53/20 20190101ALN20230830BHJP
   B60L 53/14 20190101ALN20230830BHJP
【FI】
H02P29/64
H02K9/19 B
B60L15/00 Z
B60L53/20
B60L53/14
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023512020
(86)(22)【出願日】2020-10-23
(85)【翻訳文提出日】2023-02-16
(86)【国際出願番号】 CN2020123436
(87)【国際公開番号】W WO2022082788
(87)【国際公開日】2022-04-28
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521531171
【氏名又は名称】ファーウェイ デジタル パワー テクノロジーズ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】ウー,チャオチアーン
(72)【発明者】
【氏名】シー,チャオジエ
(72)【発明者】
【氏名】ジョウ,ユエン
(72)【発明者】
【氏名】ワーン,シャオフェイ
(72)【発明者】
【氏名】シエ,シヤオフェイ
【テーマコード(参考)】
5H125
5H501
5H609
【Fターム(参考)】
5H125AA01
5H125AC12
5H125AC24
5H125BB00
5H125EE05
5H125EE23
5H125EE25
5H125FF01
5H501AA01
5H501AA20
5H501CC04
5H501DD04
5H501EE10
5H501FF05
5H501HA09
5H501HB08
5H501JJ04
5H501LL38
5H501LL39
5H609BB03
5H609PP07
5H609QQ05
5H609RR37
(57)【要約】
本願は、モーター、制御コントローラ、熱交換システム、及び制御方法を開示しており、モーターの分野に関連し、モーター熱効率を改善するために使用されるものである。モーターは、ハウジングと、ハウジング内に取り付けられた固定子と、ベアリングを介してハウジングに接続された回転子と、固定子に巻き付けられた巻線と、ハウジング内の空洞につながる液体インレット孔及び液体アウトレット孔とを含む。液体インレット孔は絶縁冷却剤の流入のために使用され、液体アウトレット孔は絶縁冷却剤の流出のために使用される。回転子は、回転シャフトと、回転シャフトの周囲に取り付けられた回転子鉄心と、回転子鉄心に取り付けられた永久磁石とを含む。空洞につながる第1の孔チャネルが回転子鉄心に配置されている。巻線は直軸交流電流を入力するように構成されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、前記ハウジング内に取り付けられた固定子と、ベアリングを介して前記ハウジングに接続された回転子と、前記固定子に巻き付けられた巻線と、前記ハウジング内の空洞につながる液体インレット孔及び液体アウトレット孔とを含むモーターであって、前記液体インレット孔は絶縁冷却剤の流入のために使用され、前記液体アウトレット孔は前記絶縁冷却剤の流出のために使用され;
前記回転子は、回転シャフトと、前記回転シャフトの周囲に取り付けられた回転子鉄心と、前記回転子鉄心に取り付けられた永久磁石とを含み;
前記空洞につながる第1の孔チャネルが前記回転子鉄心に配置されており;且つ
前記巻線は直軸交流電流を入力するように構成されている、モーター。
【請求項2】
請求項1に記載のモーターにおいて、前記空洞につながる第2の孔チャネルが前記回転シャフトに配置されている、モーター。
【請求項3】
請求項2に記載のモーターにおいて、前記液体インレット孔は第1の液体インレット孔を含み、前記第1の液体インレット孔は前記回転シャフトに配置されており且つ前記第2の孔チャネルにつながっている、モーター。
【請求項4】
請求項2又は3に記載のモーターにおいて、前記回転シャフトと前記回転子鉄心との間に第3の孔チャネルが更に配置されており、前記第1の孔チャネルは前記第3の孔チャネルを介して前記第2の孔チャネルにつながっている、モーター。
【請求項5】
請求項1ないし4のうちの何れか1項に記載のモーターにおいて、前記空洞につながる第4の孔チャネルが前記固定子に配置されている、モーター。
【請求項6】
請求項1ないし5のうちの何れか1項に記載のモーターにおいて、前記液体インレット孔は第2の液体インレット孔を含み、前記第2の液体インレット孔は、前記ハウジングのトップの位置であって前記巻線に面する位置に配置されている、モーター。
【請求項7】
請求項1ないし6のうちの何れか1項に記載のモーターにおいて、前記液体アウトレット孔は、前記ハウジングのボトムに配置されている、モーター。
【請求項8】
インバータ回路と制御装置とを含むモーター・コントローラであって、前記制御装置は、直軸交流電流を、請求項1ないし7のうちの何れか1項に記載のモーターの巻線に出力するように構成されている、モーター・コントローラ。
【請求項9】
請求項8に記載のモーター・コントローラにおいて、前記制御装置は、更に:
バッテリーの温度がバッテリー温度閾値より低い場合に、前記バッテリーが外部充電電源に接続されているかどうか及び前記バッテリーの出力電圧に基づいて、前記直軸交流電流の周波数を調整する;
ように更に構成されている、モーター・コントローラ。
【請求項10】
請求項9に記載のモーター・コントローラにおいて、前記制御装置は、具体的には:
前記バッテリーが外部充電電源に接続されている場合、又は前記バッテリーが外部充電電源に接続されておらず、前記バッテリーの出力電圧が第1の電圧閾値より大きい場合に、前記直軸交流電流の周波数を第1の周波数に調整するように;又は
前記バッテリーが外部充電電源に接続されておらず、前記バッテリーの出力電圧が前記第1の電圧閾値以下であるが第2の電圧閾値より大きい場合に、前記直軸交流電流の周波数を第2の周波数に調整するように;
構成されており、前記第1の電圧閾値は前記第2の電圧閾値より大きく、第1の電流強度は第2の電流強度より大きく、前記第1の周波数は前記第2の周波数より大きい、モーター・コントローラ。
【請求項11】
請求項8ないし10のうちの何れか1項に記載のモーター・コントローラにおいて、前記制御装置は、更に:
前記バッテリーの温度が前記バッテリー温度閾値より低い場合に、前記モーターのハウジングの温度、前記巻線の温度、前記モーターから流出する絶縁冷却剤の温度、及び周囲温度のうちの少なくとも1つに基づいて、前記モーターの回転子の温度を決定し;及び
前記回転子の温度に基づいて、前記直軸交流電流の電流強度を調整する;
ように構成されている、モーター・コントローラ。
【請求項12】
請求項11に記載のモーター・コントローラにおいて、前記制御装置は、具体的には:
前記回転子の温度が第1の回転子温度閾値より高い場合に、前記直軸交流電流の電流強度を、前記第1の電流強度に調整するように;
前記回転子の温度が第2の回転子温度閾値より低い場合に、前記直軸交流電流の電流強度を、前記第2の電流強度に調整するように;又は
前記回転子の温度が前記第1の回転子温度閾値以下であり且つ前記第2の回転子温度閾値以上である場合に、前記直軸交流電流の電流強度を維持する;
ように構成されており、前記第1の回転子温度閾値は前記第2の回転子温度閾値より大きく、前記第1の電流強度は前記第2の電流強度より小さい、モーター・コントローラ。
【請求項13】
請求項12に記載のモーター・コントローラにおいて、前記制御装置は、更に:
前記回転子の温度が前記第1の回転子温度閾値より高い場合に、前記直軸交流電流の周波数を前記第2の周波数に調整する;
ように構成されている、モーター・コントローラ。
【請求項14】
請求項8ないし13のうちの何れか1項に記載のモーター・コントローラにおいて、前記制御装置は、更に:
横軸電流を前記巻線に出力する;
ように構成されている、モーター・コントローラ。
【請求項15】
請求項1ないし7のうちの何れか1項に記載のモーターと、請求項8ないし14のうちの何れか1項に記載のモーター・コントローラと、熱交換器と、液体ポンプとを含む熱交換システムであって、
前記液体ポンプと、前記熱交換器と、前記モーターの液体アウトレット孔及び液体インレット孔とは接続されており、且つ絶縁冷却剤を流すように構成されており;及び
前記モーター・コントローラは、直軸交流電流を前記モーターの巻線に出力するように構成されており、且つ前記液体ポンプの動作を制御するように更に構成されている、熱交換システム。
【請求項16】
直軸交流電流を請求項1ないし7のうちの何れか1項に記載のモーターの巻線に出力することを含む制御方法。
【請求項17】
請求項16に記載の制御方法において、当該方法は、更に:
バッテリーの温度がバッテリー温度閾値より低い場合に、前記バッテリーが外部充電電源に接続されているかどうか及び前記バッテリーの出力電圧に基づいて、前記直軸交流電流の周波数を調整すること;
を含む方法。
【請求項18】
請求項17に記載の制御方法において、前記バッテリーが外部充電電源に接続されているかどうか及び前記バッテリーの出力電圧に基づいて、前記直軸交流電流の周波数を調整することは:
前記バッテリーが外部充電電源に接続されている場合、又は前記バッテリーが外部充電電源に接続されておらず、前記バッテリーの出力電圧が第1の電圧閾値より大きい場合に、前記直軸交流電流の周波数を第1の周波数に調整すること;又は
前記バッテリーが外部充電電源に接続されておらず、前記バッテリーの出力電圧が前記第1の電圧閾値以下であるが第2の電圧閾値より大きい場合に、前記直軸交流電流の周波数を第2の周波数に調整すること;
を含み、前記第1の電圧閾値は前記第2の電圧閾値より大きく、前記第1の電流強度は前記第2の電流強度より大きく、前記第1の周波数は前記第2の周波数より大きい、制御方法。
【請求項19】
請求項16ないし18のうちの何れか1項に記載の制御方法において、当該方法は、更に:
前記バッテリーの温度が前記バッテリー温度閾値より低い場合に、前記モーターのハウジングの温度、前記巻線の温度、前記モーターから流出する絶縁冷却剤の温度、及び周囲温度のうちの少なくとも1つに基づいて、前記モーターの回転子の温度を決定すること;及び
前記回転子の温度に基づいて、前記直軸交流電流の電流強度を調整すること;
を含む制御方法。
【請求項20】
請求項19に記載の制御方法において、前記回転子の温度に基づいて、前記直軸交流電流の電流強度を調整することは:
前記回転子の温度が第1の回転子温度閾値より高い場合に、前記直軸交流電流の電流強度を、前記第1の電流強度に調整すること;
前記回転子の温度が第2の回転子温度閾値より低い場合に、前記直軸交流電流の電流強度を、前記第2の電流強度に調整すること;又は
それ以外の場合に、前記直軸交流電流の電流強度を維持すること;
を含み、前記第1の回転子温度閾値は前記第2の回転子温度閾値より大きく、前記第1の電流強度は前記第2の電流強度より小さい、制御方法。
【請求項21】
請求項20に記載の制御方法において、当該方法は、更に:
前記回転子の温度が前記第1の回転子温度閾値より高い場合に、前記直軸交流電流の周波数を前記第2の周波数に調整すること;
を含む制御方法。
【請求項22】
請求項16ないし21のうちの何れか1項に記載の制御方法において、当該方法は、更に:
横軸電流を前記巻線に出力すること;
を含む制御方法。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001] 本願は、モーターの分野に関連し、特に、モーター、モーター・コントローラ、熱交換システム、及び制御方法に関連する。
【背景技術】
【0002】
[0002] 新エネルギー車両技術の発展と市場の拡大に伴い、電気車両が消費者からますます支持を受けている。しかしながら、現在、電気車両のバッテリーは特定の温度範囲内で動作することに適しており、極端に低い温度は、バッテリーのパフォーマンス応答に大きく影響を及ぼす。リチウム・バッテリーを例として使用する。
【0003】
[0003] (1)バッテリーの正極材料の活性度が低下し、バッテリー内を移動するリチウム・イオンの量が減少し、バッテリー容量が減少する。
【0004】
[0004] (2)電解質の凝固は、バッテリーの正極及び負極材料中の荷電イオンの拡散及び移動能力の劣化、電力エネルギー伝達速度の低下、及びバッテリー放電レートの低下を招く。
【0005】
[0005] (3)負極材料の結晶格子が収縮し、リチウム・イオンはインターカレートしにくくなり、充電速度が低下する。
【0006】
[0006] 従って、上記の問題を回避するために、バッテリーは低温環境では加熱されることを必要とする。現在、バッテリー加熱方法は、モーター固定子の巻線に直流電流をつなぎ、バッテリーを加熱するために巻線の銅損失を使用することによって、バッテリーを加熱するものである。しかしながら、この方法では、巻線は比較的小さいので、加熱電力も小さく、加熱速度は比較的遅い。
【発明の概要】
【0007】
[0007] 本願の実施形態は、モーターの加熱効率を改善するために、モーター、モーター・コントローラ、熱交換システム、及び制御方法を提供する。
【0008】
[0008] 前述の課題を達成するために、以下の技術的解決策が本願の実施態様で使用される。
【0009】
[0009] 第1の態様によれば、モーターが提供される。モーターは、ハウジングと、ハウジング内に取り付けられた固定子と、ベアリングを介してハウジングに接続された回転子と、固定子に巻き付けられた巻線と、ハウジング内の空洞につながる液体インレット孔及び液体アウトレット孔とを含む。液体インレット孔は絶縁冷却剤の流入のために使用され、液体アウトレット孔は絶縁冷却剤の流出のために使用される。回転子は、回転シャフトと、回転シャフトの周囲に取り付けられた回転子鉄心と、回転子鉄心に取り付けられた永久磁石とを含む。空洞につながる第1の孔チャネルが回転子鉄心に配置されている。巻線は直軸交流電流を入力するように構成されている。
【0010】
[0010] 本願のこの実施形態で提供されるモーターによれば、横軸交流電流がモーターの巻線に入力され、その結果、モーターの回転子の回転シャフトと回転子鉄心及び固定子が、渦電流損失及び磁気ヒステリシス損失に起因して熱を発生し、回転子の永久磁石が渦電流損失に起因して熱を発生し、巻線が銅損失に起因して熱を発生する。従って、熱を発生させるために、巻線の銅損失を単に当てにしているに過ぎないものと比較して、本願は、より高い加熱パワー及び加熱効率を提供し、加熱速度を高めることができる。
【0011】
[0011] 可能な実装において、空洞につながる第2の孔チャネルが回転シャフトに配置されている。第2の孔チャネルに流入する絶縁冷却剤は、回転シャフトと熱交換を行う。
【0012】
[0012] 可能な実装において、液体インレット孔は第1の液体インレット孔を含む。第1の液体インレット孔は回転シャフトに配置されており、且つ第2の孔チャネルにつながっている。絶縁冷却剤は、回転シャフトを通ってモーターの内部に流入することが可能である。
【0013】
[0013] 可能な実装において、回転シャフトと回転子鉄心との間に第3の孔チャネルが更に配置されており、第1の孔チャネルは第3の孔チャネルを介して第2の孔チャネルにつながっている。第3の孔チャネルは、第1の孔チャネルを第2の孔チャネルにつなぎ、モーター内部の絶縁冷却剤の流れを促進するように構成されている。
【0014】
[0014] 可能な実装において、空洞につながる第4の孔チャネルが固定子に配置されている。固定子との熱交換を実行するために、第4の孔チャネルに流れる絶縁冷却材が使用される。
【0015】
[0015] 可能な実装において、液体インレット孔は第2の液体インレット孔を含み、第2の液体インレット孔は、ハウジングのトップの位置であって巻線に面する位置に配置されている。このようにして、第2の液体インレット孔から流入する絶縁冷却剤は重力下で巻線に流れ込み、これにより巻線との熱交換を行う。
【0016】
[0016] 可能な実装において、液体アウトレット孔は、ハウジングのボトムに配置されている。このようにして、絶縁冷却剤は、重力下で液体インレット孔からモーターの外へ流れる。
【0017】
[0017] 第2の態様によれば、モーター・コントローラが提供される。モーター・コントローラは、インバータ回路と制御装置とを含む。制御装置は、インバータ回路を制御して、直軸交流電流を、第1の態及び第1の態様の実装のうちの任意の1つによるモーターの巻線に出力するように構成されている。
【0018】
[0018] 本願のこの実施形態で提供されるモーター・コントローラによれば、横軸交流電流がモーターの巻線に入力され、その結果、モーターの回転子の回転シャフトと回転子鉄心及び固定子が、渦電流損失及び磁気ヒステリシス損失に起因して熱を発生し、回転子の永久磁石が渦電流損失に起因して熱を発生し、巻線が銅損失に起因して熱を発生する。従って、熱を発生させるために、巻線の銅損失を単に当てにしているに過ぎないものと比較して、本願は、より高い加熱パワー及び加熱効率を提供し、加熱速度を高めることができる。
【0019】
[0019] 可能な実装において、制御装置は、更に:バッテリーの温度がバッテリー温度閾値より低い場合に、バッテリーが外部充電電源に接続されているかどうか及びバッテリーの出力電圧に基づいて、直軸交流電流の周波数を調整するように更に構成されている。この実施形態は、直軸交流電流の周波数を調節する方法を提供する。
【0020】
[0020] 可能な実装において、制御装置は、具体的には:バッテリーが外部充電電源に接続されている場合、又はバッテリーが外部充電電源に接続されておらず、バッテリーの出力電圧が第1の電圧閾値より大きい場合に、直軸交流電流の周波数を第1の周波数に調整するように;又はバッテリーが外部充電電源に接続されておらず、バッテリーの出力電圧が第1の電圧閾値以下であるが第2の電圧閾値より大きい場合に、直軸交流電流の周波数を第2の周波数に調整するように構成されている。第1の電圧閾値は前記第2の電圧閾値より大きく、第1の電流強度は第2の電流強度より大きく、第1の周波数は第2の周波数より大きい。この実装は、直軸交流電流の周波数を具体的に調整する方法を提供する。
【0021】
[0021] 可能な実装において、制御装置は、更に:バッテリーの温度がバッテリー温度閾値より低い場合に、モーターのハウジングの温度、巻線の温度、モーターから流出する絶縁冷却剤の温度、及び周囲温度のうちの少なくとも1つに基づいて、モーターの回転子の温度を決定し;及び回転子の温度に基づいて、直軸交流電流の電流強度を調整するように構成されている。この実装は、直軸交流電流の電流強度を調整する方法を提供する。
【0022】
[0022] 可能な実装において、制御装置は、具体的には:回転子の温度が第1の回転子温度閾値より高い場合に、直軸交流電流の電流強度を、第1の電流強度に調整するように;又は回転子の温度が第2の回転子温度閾値より低い場合に、直軸交流電流の電流強度を、第2の電流強度に調整するように;それ以外の場合に、直軸交流電流の電流強度を維持するように構成されている。第1の回転子温度閾値は第2の回転子温度閾値より大きく、第1の電流強度は第2の電流強度より小さい。この実装は、直軸交流電流の電流強度を具体的に調整する方法を提供する。
【0023】
[0023] 可能な実装において、制御装置は、更に:回転子の温度が第1の回転子温度閾値より高い場合に、直軸交流電流の周波数を第2の周波数に調整するように構成されている。直軸交流電流の周波数は、回転子の温度に基づいて更に調節されてもよい。
【0024】
[0024] 可能な実装において、制御装置は、更に:横軸電流を巻線に出力するように構成されている。モーターが回転するように駆動されている間に、モーターは加熱されてもよい。
【0025】
[0025] 第3の態様によれば、熱交換システムが提供される。熱交換システムは、第1の態様及び第1の態様の実装のうちの任意の1つによるモーターと、第2の態様及び第2の態様の実装のうちの任意の1つによるモーター・コントローラと、熱交換器と、液体ポンプとを含む。液体ポンプと、熱交換器と、モーターの液体アウトレット孔及び液体インレット孔とは、接続されており、且つ絶縁冷却剤を流すように構成されている。 モーター・コントローラは、直軸交流電流をモーターの巻線に出力するように構成されており、且つ液体ポンプの動作を制御するように更に構成されている。
【0026】
[0026] 第4の態様によれば、制御方法が提供される。方法は、第1の態様及び第1の態様の実装のうちの任意の1つによるモーターの巻線に、直軸交流電流を出力することを含む。
【0027】
[0027] 可能な実装において、方法は、更に:バッテリーの温度がバッテリー温度閾値より低い場合に、バッテリーが外部充電電源に接続されているかどうか及びバッテリーの出力電圧に基づいて、直軸交流電流の周波数を調整することを含む。
【0028】
[0028] 可能な実装において、バッテリーが外部充電電源に接続されているかどうか及びとバッテリーの出力電圧に基づいて、直軸交流電流の周波数を調整することは:バッテリーが外部充電電源に接続されている場合、又はバッテリーが外部充電電源に接続されておらず、バッテリーの出力電圧が第1の電圧閾値より大きい場合に、直軸交流電流の周波数を第1の周波数に調整すること;又はバッテリーが外部充電電源に接続されておらず、バッテリーの出力電圧が第1の電圧閾値以下であるが第2の電圧閾値より大きい場合に、直軸交流電流の周波数を第2の周波数に調整することを含む。第1の電圧閾値は第2の電圧閾値より大きく、第1の電流強度は第2の電流強度より大きく、第1の周波数は第2の周波数より大きい。
【0029】
[0029] 可能な実装において、当該方法は、更に:バッテリーの温度がバッテリー温度閾値より低い場合に、モーターのハウジングの温度、巻線の温度、モーターから流出する絶縁冷却剤の温度、及び周囲温度のうちの少なくとも1つに基づいて、モーターの回転子の温度を決定すること;及び回転子の温度に基づいて、直軸交流電流の電流強度を調整することを含む。
【0030】
[0030] 可能な実装において、回転子の温度に基づいて、直軸交流電流の電流強度を調整することは:回転子の温度が第1の回転子温度閾値より高い場合に、直軸交流電流の電流強度を、第1の電流強度に調整すること;回転子の温度が第2の回転子温度閾値より低い場合に、直軸交流電流の電流強度を、第2の電流強度に調整すること;それ以外の場合に、直軸交流電流の電流強度を維持することを含む。第1の回転子温度閾値は第2の回転子温度閾値より大きく、第1の電流強度は第2の電流強度より小さい。
【0031】
[0031] 可能な実装において、方法は、更に:回転子の温度が第1の回転子温度閾値より高い場合に、直軸交流電流の周波数を第2の周波数に調整することを含む。
【0032】
[0032] 可能な実装において、方法は、更に:横軸電流を巻線に出力することを含む。
【0033】
[0033] 第5の態様によれば、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体が提供される。コンピュータ読み取り可能な記憶媒体は、コンピュータ・プログラムを記憶する。コンピュータ・プログラムがコンピュータ又はプロセッサ上で実行されると、コンピュータ又はプロセッサは、第4の態様及び第4の態様の可能な実装のうちの任意の1つによる方法を実行する。
【0034】
[0034] 第6の態様によれば、命令を含むコンピュータ・プログラム製品が提供される。命令がコンピュータ又はプロセッサ上で実行されると、コンピュータ又はプロセッサは、第4の態様及び第4の態様の可能な実装のうちの任意の1つによる方法を実行することが可能である。
【0035】
[0035] 第3の態様ないし第6の態様の技術的効果については、第1の態様ないし第2の態様の内容を参照されたい。詳細は、ここでは再び説明しない。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】[0036] 図1は、本願の実施形態による直軸及び横軸の概略図である。
図2】[0037] 図2は、本願の実施形態による直軸交流電流の電流値Idが正と負の間で交互に変化する概略図である。
図3】[0038] 図3は、本願の実施形態による熱交換システムのアーキテクチャの概略図である。
図4】[0039] 図4は、本願の実施形態によるモーターを使用することでバッテリーを加熱する概略フローチャートである。
図5】[0040] 図5は、本願の実施形態によるモーターの構造の概略図である。
図6】[0041] 図6は、本願の実施形態によるモーターの回転子の構造の概略図である。
図7】[0042] 図7は、本願の実施形態による制御方法の概略フローチャート1である。
図8】[0043] 図8は、本願の実施形態による制御方法の概略フローチャート2である。
図9A】[0044] 図9Aは、本願の実施形態による制御方法の概略フローチャート3である。
図9B】[0044] 図9Bは、本願の実施形態による制御方法の概略フローチャート3である。
図10A】[0045] 図10Aは、本願の実施形態による制御方法の概略フローチャート4である。
図10B】[0045] 図10Bは、本願の実施形態による制御方法の概略フローチャート4である。
図11】[0046] 図11は、本願の実施形態によるバッテリーの出力電圧と回転子の温度に基づいて設定される座標系における直軸交流電流の周波数と電流強度の関係の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
[0047] 先ず本願の実施態様に関わる概念を説明する。
【0038】
[0048] 本願の実施形態に関わるモーターは、永久磁石モーター、非同期モーター、励磁モーター、同期リラクタンス・モーター等であってもよい。
【0039】
[0049] U/V/W三相座標軸:現在、電気車両のモーターは、通常、交流モーターであり、バッテリーは直流電源である。従って、バッテリーにより出力される直流電流は、インバータを用いることで、モーターの三相交流電流に変換される。三相交流電流の座標軸はそれぞれU軸、V軸、W軸である。
【0040】
[0050] 直軸(direct axis)は、D軸又はd軸とも呼ばれ、固定U/V/W三相座標軸に関してパーク変換(Park Transformation)を実行することによって得られる時変・直流・座標軸である。
【0041】
[0051] 横軸(quadrature axis)は、Q軸又はq軸とも呼ばれ、固定U/V/W三相座標軸に関してパーク変換を実行することによって得られる時変・交流・座標軸である。
【0042】
[0052] 図1に示されるように、直軸は横軸に垂直であり、直軸とU軸との間の角度θは時間変動し、
θ=ωt
を満足し、ここで、ωは電気周波数であり、tは時間である。
【0043】
[0053] パーク変換は、U/V/W三相交流モーターの解析方式を、直流モーターの直軸と横軸の解析方式に変換し、三相交流モーターの電磁界デカップリング制御を実行するために使用される。
【0044】
[0054] 巻線は、モーターの固定子鉄歯に巻き付けられたコイルであり、電流のための経路を提供するように構成されており、モーターの回転軸の軸方向で両端において回転子鉄心から伸びる部分は、端部巻線と呼ばれる。巻線の材料は、通常、銅である。
【0045】
[0055] 銅損失は、銅の導体を流れる電流によって生じる損失である。
【0046】
[0056] 回転子鉄心の損失は、交番磁界中での回転子鉄心の損失であり、誘導された渦電流によって生じる渦電流損失と、磁気ヒステリシス効果によって生じる磁気ヒステリシス損失とを含む。同様に、回転子及び固定子の回転シャフトもまた、交番磁界中で渦電流損失及び磁気ヒステリシス損失をもたらす。上記の損失は全て熱を発生させるが、回転子及び固定子の回転シャフトは、僅かな熱しか発生させない一方、回転子鉄心は、より多くの熱を発生させる。
【0047】
[0057] 永久磁石の渦電流損失:永久磁石は交流磁場中で渦電流を発生させ、それに対応する渦電流損失を発生させる。
【0048】
[0058] パルス磁界:磁場は空間内で固定された位置を有し、その磁界強度振幅のみが時間とともに交互に変化する。
【0049】
[0059] 現在、電気車両の分野では、複数のバッテリー加熱方式が存在する。第1のバッテリー加熱方式では、直流電流がモーター固定子の巻線に接続され、その結果、銅損失に起因して巻線が熱を発生させ、冷却剤がモーターの熱を熱交換器に伝え、熱交換器がバッテリーを加熱する。この方法は以下の欠点を有する。
【0050】
[0060](1)モーターの巻線の銅損失のみが、熱を発生させるために使用されている。モーターの巻線の抵抗は比較的小さいので、加熱電力も小さく、加熱速度も比較的遅い。
【0051】
[0061] (2)モーターにおいて、巻線のみが熱を発生させているが、モーターの他の部分は発熱に関与していない。従って、モーターの発熱は不均一であり、この不均一は巻線の局所的な過熱を引き起こし、巻線の寿命に影響を及ぼす可能性がある。
【0052】
[0062] (3)巻線の温度は急激に上昇し、特定の温度に達すると、過熱保護がトリガーされる。従って、加熱の継続時間は非常に短い。
【0053】
[0063] (4)モーターは交流モーターであるので、直流が接続された場合に動作することができない。従って、モーターの動作中に(例えば、車両が走行している場合に)、バッテリーを加熱することができない。
【0054】
[0064] 第2のバッテリー加熱方式では、ニュートラルな地点が、モーターの三相巻線から引き出され、エネルギー蓄積装置に接続される。加熱モードにおいて、バッテリーは、インバータを介して、モーターの巻線及びエネルギー蓄積装置を充電し、次いで、モーターの巻線及びエネルギー蓄積装置を、同じループを介してバッテリーに放電する。2つのプロセスは交互に実行される。上述のプロセスにおける電流は、三相巻線を通って流れ、次いで、ニュートラル地点を通ってエネルギー蓄積装置を介して流れる。従って、電流はゼロ・シーケンス電流であり、即ち、三相巻線を通過する電流の波形と位相は同じである。この技術も、巻線の銅損失を利用して熱を発生させている。
【0055】
[0065] このように、ニュートラル地点が、モーターの巻線から、エネルギー蓄積装置に接続されるように導かれることを必要とし、それにより、装置コストを増加させる。巻線の銅損失のみが熱を発生させるために使用される場合、加熱する電力は小さく、加熱する速度は比較的遅い。更に、このような方法は、モーターの通常の動作と矛盾し、モーターの動作中に(例えば、車両が走行している場合に)、バッテリーを加熱することができない。
【0056】
[0066] 第3のバッテリー加熱方式は、外部ヒーターを使用してバッテリーを加熱するものである。しかしながら、このようにして、バッテリー・ヒーターが追加され、装置コストが増加する。
【0057】
[0067] 第4のバッテリー加熱方式は、外部加熱フィルムを使用することにより、バッテリーを加熱するものである。加熱フィルムは、複数の耐高温性有機材料、高分子材料、炭素、耐高温性繊維で構成される。同様に、加熱フィルムは高価であるので、そのコストはヒーターのコストよりもはるかに高い。更に、追加の制御回路を追加する必要があり、それにより、装置コストが増加する。
【0058】
[0068] 本願の実施形態は、バッテリー加熱方式を提供する。現在一般的に使用されている直軸直流電流の代わりに、直軸交流電流が巻線に入力される。図2に示すように、直軸交流電流の電流値Idは、正及び負の間で交互に変化し、その結果、巻線は磁界を発生させる。磁界の方向は変化しないままであり、振幅のみが正と負の間で交互に変化する。磁界は脈動する磁界である。
【0059】
[0069] 磁界は、モーターの回転子の回転シャフト、回転子鉄心、固定子が、渦電流損失と磁気ヒステリシス損失に起因して発熱することを引き起こし、回転子の永久磁石は渦電流損失に起因して発熱し、巻線は銅損失に起因して発熱する。従って、熱を発生させるために単に巻線の銅損失を当てにしているものと比較して、本願のこの実施形態で提供される方法は、より高い加熱パワーを提供し、加熱速度を高速化することができる。
【0060】
[0070] 更に、本願のこの実施形態で提供されるバッテリー加熱方法は、別の装置を必要としたり、あるいは追加コストを増加させたりしない。巻線、固定子、回転子の回転シャフト、回転子鉄心、永久磁石の全てが熱を発生するので、モーターが不均一に熱を発生させてモーターを損傷させることを防止する。熱源は分散しており、そのため、モーターは熱をより均一に発生させる。同じ加熱電力を用いて、モーターは、より持続的に発生させることが可能であるし、あるいは同じ過熱保護制限の下で、より高い加熱電力を持つことが可能である。また、モーターの通常動作において、横軸電流がモーターに入力されて、モーターの回転子の回転を駆動させることに加えて、直軸交流電流がモーターに入力されて熱を発生させ、その結果、バッテリーはモーターの動作中に(例えば、車両が走行している際に)加熱されることが可能である。
【0061】
[0071] 図3は、本願の実施形態による熱交換システムの概略図である。熱交換システムは、バッテリー31、モーター・コントローラ32、モーター33、熱交換器34、及び液体ポンプ35を含む。バッテリー31は、高電圧直流バスを介してモーター・コントローラ32に結合され、モーター・コントローラ32は、三相ラインを介してモーター33に結合される。モーター33、熱交換器34、及び液体ポンプ35は、パイプラインを介して互いに結合され、絶縁冷却剤がパイプライン内を流れる。絶縁冷却剤は、鉱物絶縁油、合成絶縁油、植物油などを含むことが可能である。
【0062】
[0072] バッテリー31は、直流電流を出力するように構成され、例えば、蓄電池、リチウム・バッテリー、燃料電池、スーパー・キャパシタ等を含む。
【0063】
[0073] モーター・コントローラ32は、モーター制御ユニット(motor control unit,MCU)とも呼ばれ、制御装置321及びインバータ回路322を含む。制御装置321は、三相(U/V/W)電流(例えば、直軸交流電流)をモーター33に出力するようにインバータ回路322を制御し、液体ポンプ35の停止及び動作を制御するように構成されている。図において、インバータ回路322は、三相フル・ブリッジ・インバータ回路の一例であるか、又は別のインバータ回路であってもよい。これは、本願において限定されない。
【0064】
[0074] モーター33は三相交流モーターである。絶縁冷却剤がモーター33に流れ込み、モーター33が熱を発生させる場合に、モーターはその熱を絶縁冷却剤に移す。
【0065】
[0075] 熱交換器34は、バッテリー31の周辺に配置され、バッテリー31との熱交換を実行するように構成される。絶縁冷却剤は熱交換器34内を流れる。
【0066】
[0076] 液体ポンプ35は、熱交換器34とモーター33との間を流れるように絶縁冷却剤を運ぶように構成されている。液体ポンプ35が電源投入されている場合には、熱を発生させ、絶縁冷却剤を加熱し、これにより加熱効率を向上させる。
【0067】
[0077] 図4に示すように、モーターを用いてバッテリーを加熱する手順は、S401ないしS404を含む。バッテリーの温度がバッテリー温度閾値未満である場合、ステップS401ないしS403が実行される。そうではない場合、ステップS404が実行される。
【0068】
[0078] S401:バッテリーの温度がバッテリー温度閾値未満である場合、制御装置321は液体ポンプ35を動作するように制御し、絶縁冷却剤が、液体ポンプ35、モーター33、及び熱交換器34の間を循環する。
【0069】
[0079] S402:制御装置321は、直軸交流電流をモーター33に出力するようにインバータ回路322を制御し、その結果、モーター33は、絶縁冷却剤を加熱する。
【0070】
[0080] S403:熱交換器34内の絶縁冷却剤はバッテリー31を加熱し、バッテリー31は絶縁冷却剤を冷却する。
【0071】
[0081] S404:バッテリーの温度がバッテリー温度閾値以上である場合、制御装置321は、直軸交流電流をモーター33に出力しないようにインバータ回路322を制御し、加熱を停止する。
【0072】
[0082] なお、上記のプロセスは、ある時間間隔で繰り返し実行されてもよく、バッテリーの温度を頻繁に検出する必要はない。
【0073】
[0083] 以下、図5及び図6を参照しながらモーター33の構造を説明する。
【0074】
[0084] 図5に示すように、モーター33は、ハウジング331と、ハウジング331の内側に取り付けられた固定子332と、ベアリングを介してハウジング331に接続された回転子333と、固定子332に巻き付けられた巻線334と、ハウジング331内の空洞335につながる液体インレット孔336及び液体アウトレット孔337とを含む。
【0075】
[0085] 図5及び図6に示されるように、回転子333は、回転シャフト3331と、回転シャフト3331の周囲に取り付けられた回転子鉄心3332と、ロータ鉄心3332に取り付けられた永久磁石(図示せず)とを含む。
【0076】
[0086] 永久磁石は、励起磁界を生成するように構成され、永久磁石は、積み重ねられた磁性鋼板及び磁気タイルなどを含んでもよい。回転子鉄心3332は、シリコン鋼板のような軟磁性材料を含む。
【0077】
[0087] オプションとして、空洞335につながる第1の孔チャネルH1は回転子鉄心3332に配置され、空洞335につながる第2の孔チャネルH2は回転シャフト3331に配置され、回転シャフト3331と回転子鉄心3332との間に第3の孔チャネルH3が更に配置される。第1の孔チャネルH1と第2の孔チャネルH2は、第3の孔チャネルH3を介して接続されることが可能であり、空洞335につながる第4の孔チャネルH4が固定子332に配置されてもよい。前述の孔チャネルは、絶縁冷却剤を流すように構成されている。第1の孔チャネルH1内を流れる絶縁冷却剤は、回転シャフト3331との熱交換を実行するために使用され、第2の孔チャネルH2内を流れる絶縁冷却剤は、回転子鉄心3332との熱交換を実行するために使用される。第3の孔チャネルH3は、第1の孔チャネルH1を第2の孔チャネルH2に接続するように構成されており、その結果、絶縁冷却剤はモーター内部を流れる。固定子332及び回転子鉄心3332は、渦電流損失及び磁気ヒステリシス損失に起因して熱を発生し、巻線334により熱を伝導する。第4の孔チャネルH4内を流れる絶縁冷却剤は、固定子332との熱交換を実行するために使用される。
【0078】
[0088] 第1の孔チャネルH1及び第2の孔チャネルH2は、回転シャフト3331の半径方向に平行であってもよく、第3の孔チャネルH3は回転シャフト3331の半径方向に垂直であってもよい。第4の孔チャネルは、回転シャフト3331の半径方向に対して平行又は垂直であってもよい。
【0079】
[0089] 第1の孔チャネルH1、第2の孔チャネルH2、及び第3の孔チャネルH3の数量は本願では制限されず、即ち、1つ以上存在する可能性がある。
【0080】
[0090] 液体インレット孔336は絶縁冷却剤の流入のために使用され、液体アウトレット孔337は絶縁冷却剤の流出のために使用される。図中の断熱冷却剤の流れ方向は唯の一例に過ぎない。
【0081】
[0091] 可能な実装において、液体インレット孔336は第1の液体インレット孔を含む。第1の液体インレット孔は回転シャフト3331に配置され、第2の孔チャネルH2に接続されることが可能であり、その結果、絶縁冷却剤が回転シャフト3331を介してモーターに流れ込むことが可能になる。
【0082】
[0092] 別の可能な実装において、液体インレット孔336は第2の液体インレット孔を含む。第2の液体インレット孔は、ハウジング331のトップにある位置であって巻線334に面する位置に配置され、その結果、第2の液体インレット孔から流れ込む絶縁冷却剤は、重力の下で巻線334の方へ流れ、それによって巻線334と熱交換を行う。
【0083】
[0093] 可能な実装において、液体アウトレット孔337はハウジング331のボトムに配置されてもよく、その結果、絶縁冷却剤は、重力の下で液体アウトレット孔337からモーターの外へ流出する。
【0084】
[0094] 具体的な制御方法として、以下、どのようにして制御装置が、インバータ回路を制御することにより、三相(U/V/W)電流(例えば、直軸交流電流)をモーターに出力し、バッテリーを加熱するかを説明する。制御方法は、電気車両の種々の状態に適用することが可能である。例えば、状態は:バッテリーが外部充電電源に接続された状態、キーがセルフ・チェック・ギアに動かされた状態、スタート・ボタンが押された状態、キーレス・スタートがトリガーされた状態、及び電気車両が走行中である状態であってもよい。
【0085】
[0095] 具体的には、図7に示すように、制御方法はS701及びS702を含む。
【0086】
[0096] S701:バッテリーの温度がバッテリー温度閾値未満である場合、制御装置は、直軸交流電流を巻線に出力するようにインバータ回路を制御する。
【0087】
[0097] バッテリーの温度がバッテリー温度閾値未満である場合、それは、バッテリーの温度が過度に低いことを示しており、これはバッテリーのパフォーマンスに影響を及ぼす。従って、制御装置は、直軸交流電流を巻線に出力してバッテリーを加熱するように、インバータ回路を制御することができる。
【0088】
[0098] 本願では、直軸交流電流の波形は限定されない。例えば、正弦波、三角波、鋸波などであってもよい。
【0089】
[0099] 直軸交流電流の周波数及び電流強度は、固定されてもよいし、又は動的に調整されてもよい。直軸交流電流の周波数又は電流強度が大きいほど、モーターの発熱電力はより大きくなり、バッテリーの発熱時間はより短くなる。直軸交流電流の周波数や電流強度が小さいほど、モーターの加熱電力はより小さくなり、バッテリーの加熱時間はより長くなるが、モーターに対する過熱によるダメージを防ぐことができる。具体的な調整プロセスについては、図8図9A及び図9Bの関連する説明を参照されたい。
【0090】
[0100] 更に、制御装置は、横軸電流を巻線に出力するようにインバータ回路を制御することが可能であり、即ち、横軸電流はゼロであってもよいし、ゼロでなくてもよい。横軸電流がゼロでない場合、モーターはトルクを発生するので、電気車両が静止している場合、横軸電流は、モーター振動を回避するためにゼロであってもよい。電気車両が走行中である場合、横軸電流はゼロではなく、モーターの回転シャフトを回転するように駆動し、電気車両を正常に走行させることが可能である。電気車両の走行プロセスにおいて、モーターは、直軸交流電流により依然として熱を発生する可能性があり、その結果、バッテリーは依然として加熱されることが可能である。
【0091】
[0101] S702:それ以外の場合、制御装置は、直軸交流電流を巻線に出力しないようにインバータ回路を制御する。
【0092】
[0102] 即ち、バッテリーのエネルギーを節約するために、バッテリーを加熱されることを必要としない。例えば、車両の走行プロセスにおいて、制御装置は、横軸電流を巻線に出力し、且つ直軸交流電流を巻線に出力することを停止するように、インバータ回路を制御することが可能であり、その結果、モーターのトルクを発生させるために、節約電された電力が使用され、それによりモーターの効率を向上させることができる。
【0093】
[0103] バッテリー加熱プロセスにおいて、前述のプロセスは、特定の時間間隔で再実行されてもよい、ということに留意すべきである。バッテリーの温度がバッテリー温度閾値以上である場合、直軸交流電流は巻線に出力されず、バッテリーの加熱は停止される。
【0094】
[0104] オプションとして、図8に示されるように、前述の制御方法は、ステップS801、S802、及びステップS803を更に含んでもよい。ステップS801、S802及びステップS803を実行する順序はない。
【0095】
[0105] S801:制御装置は、モーターのハウジングの温度、巻線の温度、モーターから流出する絶縁冷却剤の温度、及び周囲温度のうちの少なくとも1つに基づいて、モーターの回転子の温度を決定する。
【0096】
[0106] 本願のこの実施形態では、熱を発生させる回転シャフト、回転子鉄心、及び永久磁石は全て回転子に配置されているので、回転子の温度は高く、高温で永久磁石は消磁される。従って、過剰に高くなることから防ぐように、回転子の温度は監視されることを必要とする。回転子は回転することが可能であるので、その温度を直接的に測定するために温度センサを設置することは適当ではない。従って、回転子の温度と、モーターのハウジングの温度、巻線の温度、モーターから流出する絶縁冷却剤の温度、及び周囲温度のうちの少なくとも1つとの間のマッピング・テーブルが、実験的較正方法で設定しておくことが可能であり、回転子の温度は、テーブル1を検査するのと同様な方法で決定されてもよい。
【0097】
テーブル1
【0098】
【表1】
[0107] S802:制御装置は、回転子の温度に基づいて、直軸交流電流の電流強度を調整する。
【0099】
[0108] オプションとして、図9A又は図10Aに示されるように、ステップS802は以下を含む:
[0109] S8021:回転子の温度が第1の回転子温度閾値よりも大きい場合、制御装置は、直軸交流電流の電流強度を、第1の電流強度に調整する。
【0100】
[0110] S8022:回転子の温度が第2の回転子温度閾値未満である場合、制御装置は、直軸交流電流の電流強度を、第2の電流強度に調整する。
【0101】
[0111] それ以外の場合、直軸交流電流の電流強度は、変更されないまま残る。即ち、回転子の温度が第1の回転子温度閾値以下であり且つ第2の回転子温度閾値以上である場合、直軸交流電流の電流強度は、変更されないまま残る。
【0102】
[0112] 第1の回転子温度閾値は、第2の回転子温度閾値よりも大きく、第1の電流強度は、第2の電流強度よりも小さく、即ち、第1の電流強度は小さな電流であり、第2の電流強度は大きな電流である。回転子の温度が比較的高い場合、モーターは小さな電流で加熱され、その結果、モーターの過熱を防止することができ、永久磁石の消磁を回避することができる。回転子の温度が比較的低い場合、モーターは大きな電流で加熱され、その結果、加熱電力を増やすことができ、バッテリー加熱時間は短縮される。
【0103】
[0113] S803:制御装置は、バッテリーが外部充電電源に接続されているかどうか、及びバッテリーの出力電圧に基づいて、直軸交流電流の周波数を調整する。
【0104】
[0114] オプションとして、図9B又は図10Bに示すように、ステップS803は、S8031及びS8032を含む。
【0105】
[0115] S8031:バッテリーが外部充電電源に接続される場合、又はバッテリーが外部充電電源に接続されておらず、バッテリーの出力電圧が第1電圧閾値より大きい場合、制御装置は、直軸交流電流の周波数を第1周波数に調整する。
【0106】
[0116] バッテリーが外部充電電源に接続される場合、バッテリー・エネルギーは消費されず、バッテリー電力の低さに起因して車両を正常に起動することができない事態は、引き起こされない。この場合、インバータ回路は、比較的高い電流強度及び/又は比較的高い周波数で、直軸交流電流を巻線に出力してモーター加熱効率を改善し、バッテリー加熱時間を短縮するように制御されることが可能である。
【0107】
[0117] バッテリーが外部充電電源に接続されていない場合において、モーターにより入力される直軸交流電流の振幅が特定の値である場合には、モーターの終端電圧は入力の直軸交流電流の周波数に比例し、直軸交流電流のより高い周波数は、モーターのより高い終端電圧を示す。モーターの終端電圧が、バッテリーの出力電圧(即ち、バス電圧)より高い場合、バッテリーは電源電力をモーターに正常に供給することができない。
【0108】
[0118] 従って、バッテリーの出力電圧が比較的高い場合には、直軸交流電流は比較的高い周波数で巻線に出力されるので、モーターの加熱効率を向上させ、バッテリーの加熱時間を短縮する。
【0109】
[0119] S8032:バッテリーが外部充電電源に接続されておらず、バッテリーの出力電圧が第1電圧閾値以下であるが第2電圧閾値より大きい場合、制御装置は、直軸交流電流の周波数を第2周波数に調整する。
【0110】
[0120] 第1の電圧閾値は第2の電圧閾値より大きく、第1の周波数は第2の周波数より大きく、即ち、第1の周波数は高い周波数であり、第2の周波数は低い周波数である。
【0111】
[0121] ステップS8031で説明したように、バッテリーの出力電圧が低い場合には、直軸交流電流は、比較的低い周波数で巻線に出力されるので、モーターの過剰に高い終端電圧に起因してバッテリーが電力をモーターに供給できない事態を防止することができる。
【0112】
[0122] また、バッテリーが外部充電電源に接続されておらず、バッテリーの出力電圧が第2電圧閾値以下である場合には、ステップS702が実行される。この場合、バッテリー電力は過度に低く、バッテリーは、モーターの加熱によって加熱することはできない。
【0113】
[0123] 図9A及び図9Bに示されるように、可能な実装では、直軸交流電流の電流強度及び周波数は、独立して制御されてもよいことに留意すべきである。
【0114】
[0124] 図10A及び図10Bに示されるように、別の可能な実装では、直軸交流電流の電流強度及び周波数は、両方とも、回転子の温度に基づいて制御され、即ち、回転子の温度が第1の回転子温度閾値よりも大きい場合、ステップS8021及びステップS8032が実行される。回転子の温度とバッテリーの出力電圧に従って座標系が確立され、直軸電流の電流強度と周波数の関係は図11に示されている。
【0115】
[0125] 本願の実施形態に提供されるモーター、モーター・コントローラ、熱交換システム、及び制御方法によれば、横軸交流電流がモーターの巻線に入力され、回転子の回転シャフト、回転子の鉄心及び固定子が、渦電流損失及び磁気ヒステリシス損失に起因して熱を発生し、回転子の永久磁石が渦電流損失に起因して熱を発生し、巻線が銅損失に起因して熱を発生する。従って、熱を発生させるために単に巻線の銅損失を当てにしていに過ぎないものと比較して、本件は、より高い加熱電力及び加熱効率を提供し、加熱速度を高速化することができる。
【0116】
[0126] 本願の実施形態はコンピュータ読み取り可能な記憶媒体を更に提供する。コンピュータ読み取り可能な記憶媒体は、コンピュータ・プログラムを記憶し、コンピュータ・プログラムがコンピュータ又はプロセッサ上で実行されると、図7ないし図10Bの制御方法が実行される。
【0117】
[0127] 本願の実施形態は、命令を含むコンピュータ・プログラム製品を更に提供する。命令がコンピュータ又はプロセッサ上で実行される場合、図7ないし図10Bの制御方法が実行される。
【0118】
[0128] 本願の実施形態は、チップ・システムを提供し、チップ・システムは、モーター・コントローラによって図7ないし図10Bの制御方法を実行するように構成されたプロセッサを含む。
【0119】
[0129] 可能な設計において、チップ・システムはメモリを更に含み、メモリは、必要なプログラム命令及び必要なデータを記憶するように構成される。チップ・システムは、チップ及び集積回路を含んでもよく、又はチップ及び別の個別デバイスを含んでもよい。これは、本願のこの実施態様で具体的には限定されない。
【0120】
[0130] 本願において提供されるコンピュータ読み取り可能な記憶媒体、コンピュータ・プログラム製品、又はチップ・システムは、上記方法を実行するように構成される。従って、達成することが可能な有益な効果については、前述の実装における有益な効果を参照されたい。詳細は、ここでは再び説明されない。
【0121】
[0131] 本願のこの実施形態におけるプロセッサはチップであってもよい。例えば、プロセッサは、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(field programmable gate array,FPGA)、特定用途向け集積チップ(application specific integrated circuit,ASIC)、システム・オン・チップ(system on chip,SoC)、中央処理ユニット(central processor unit,CPU)、ネットワーク・プロセッサ(network processor,NP)、デジタル信号処理回路(digital signal processor,DSP)、マイクロ・コントローラ・ユニット(micro controller unit,MCU)、プログラマブル・コントローラ(programmable logic device,PLD)、又はその他の集積チップであってもよい。
【0122】
[0132] 本件のこの実施形態のメモリは、揮発性メモリ又は不揮発性メモリであってもよいし、あるいは揮発性メモリ及び不揮発性メモリの両方を含んでもよい。不揮発性メモリは、リード・オンリー・メモリ(read-only memory,ROM)、プログラマブル・リード・オンリー・メモリ(programmable ROM,PROM)、消去可能プログラマブル・リード・オンリー・メモリ(erasable PROM,EPROM)、電気的に消去可能なプログラマブル・リード・オンリー・メモリ(electrically EPROM,EEPROM)、又はフラッシュ・メモリであってもよい。揮発性メモリは、外部バッファとして使用されるランダム・アクセス・メモリ(random access memory,RAM)であってもよい。限定ではなく例示として、多くの形態のRAMを使用することが可能であり、例えば、スタティック・ランダム・アクセス・メモリ(static RAM,SRAM)、ダイナミック・ランダム・アクセス・メモリ(dynamic RAM,DRAM)、同期ダイナミック・ランダム・アクセス・メモリ(synchronous DRAM,SDRAM)、二重データ・レート同期ダイナミック・ランダム・アクセス・メモリ(double data rate SDRAM,DDR SDRAM)、拡張同期ダイナミック・ランダム・アクセス・メモリ(enhanced SDRAM,ESDRAM)、同期リンク・ダイナミック・ランダム・アクセス・メモリ(synchlink DRAM,SLDRAM)、及びダイレクト・ランバス・ランダム・アクセス・メモリ(direct rambus RAM,DR RAM)である。本明細書で説明されるシステム及び方法におけるメモリは、これらのメモリ及び別の適切なタイプの任意のメモリを含むが、これらに限定されないことに留意すべきである。
【0123】
[0133] 本願の実施態様において、前述のプロセスの順序番号は、実行順序を意味しないことが理解されるべきである。プロセスの実行順序は、プロセスの機能及び内部論理に基づいて決定されるべきであり、本願の実施態様の実装プロセスに対する如何なる制限も構成しないはずである。
【0124】
[0134] 当業者は、本明細書に開示された実施形態で説明されている実施例と組み合わせて、ユニット及びアルゴリズム・ステップは、電子ハードウェア又はコンピュータ・ソフトウェアと電子ハードウェアの組み合わせによって実施されてもよい、ということを認識するであろう。機能がハードウェアにより又はソフトウェアにより実行されるかどうかは、特定のアプリケーション及び技術的解決策の設計上の制約に依存する。当業者は、特定のアプリケーションの各々について、説明された機能を実装するために様々な方法を使用することが可能であるが、その実装が本願の範囲を超えて行くものであると考えるべきではない。
【0125】
[0135] 簡便な説明のために、前述のシステム、装置、及びユニットの詳細な動作プロセスについては、前述の方法の実施形態における対応するプロセスを参照されたい、ということは当業者により明確に理解されるであろう。詳細は、ここでは再び説明しない。
【0126】
[0136] 本願で提供される幾つかの実施形態において、開示されるシステム、デバイス、及び方法は、他の方法で実施されてもよい、ということが理解されるはずである。例えば、説明されたデバイスの実施形態は、単なる一例であるに過ぎない。例えば、ユニット区分は単なる論理的な機能区分であり、実際の実装では他の区分であってもよい。例えば、複数のユニット又は構成要素は、別のシステムに結合又は統合されてもよく、あるいは幾つかの特徴は、無視されたり又は実行されなかったりしてもよい。更に、図示又は説明された相互結合、直接的な結合又は通信接続は、何らかのインターフェースを介して実現されてもよい。デバイス又はユニット間の間接的な結合又は通信接続は、電子的、機械的、又はその他の形態で実施されてもよい。
【0127】
[0137] 別個のパーツとして記述されているユニットは、物理的に別個であってもなくてもよく、ユニットとして図示されているパーツは、物理的なユニットであってもなくてもよく、一カ所に配置されていてもよいし、あるいは複数のネットワーク・ユニット上に分散されていてもよい。ユニットの全部又は一部は、実施形態の解決策の目的を達成するために、実際の要件に基づいて選択することができる。
【0128】
[0138] 更に、本願の実施形態における機能ユニットは、1つの処理ユニットに統合されてもよく、あるいは、ユニットの各々は、物理的に単独で存在してもよいし、又は2つ以上のユニットが1つのユニットに統合されてもよい。
【0129】
[0139] 前述の実施形態の全部又は一部は、ソフトウェア、ハードウェア、ファームウェア、又はそれらの任意の組み合わせを使用することによって実現されてもよい。ソフトウェア・プログラムが実施形態を実現するために使用される場合、実施形態の全部又は一部は、コンピュータ・プログラム製品の形態で実現されてもよい。コンピュータ・プログラム製品は、1つ以上のコンピュータ命令を含む。コンピュータ・プログラム命令がコンピュータ上にロードされて実行される場合、本願の実施形態による手順又は機能が全体的又は部分的に生じる。コンピュータは、汎用コンピュータ、特殊目的コンピュータ、コンピュータ・ネットワーク、又はその他のプログラム可能な装置であってもよい。コンピュータ命令は、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶されてもよいし、あるいはコンピュータ読み取り可能な記憶媒体から別のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体に伝送されてもよい。例えば、コンピュータ命令は、ウェブサイト、コンピュータ、サーバー、又はデータ・センターから、別のウェブサイト、コンピュータ、サーバー、又はデータセンターに有線(例えば、同軸ケーブル、光ファイバ、又はデジタル加入者回線(Digital Subscriber Line,DSL))又は無線(例えば、赤外線、無線、又はマイクロ波)方式で伝送されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記憶媒体は、コンピュータによってアクセスすることが可能な任意の利用可能な媒体、又は1つ以上の利用可能な媒体を統合するサーバー又はデータ・センターのようなデータ・ストレージ・デバイスであってもよい。利用可能な媒体は、磁気媒体(例えば、フロッピー・ディスク、ハード・ディスク、又は磁気テープ)、光媒体(例えば、DVD)、半導体媒体(例えば、ソリッド・ステート・ディスク(Solid State Disk,SSD))などであってもよい。
【0130】
[0140] 前述の説明は、本願の特定の実装であるに過ぎず、本願の保護範囲を限定するようには意図されていない。本願に開示される技術的範囲内で当業者により容易に把握される如何なる変形や代替も、本願の保護範囲内に含まれるものとする。従って、本願の保護範囲はクレームの保護範囲に従うものとする。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10A
図10B
図11
【手続補正書】
【提出日】2023-02-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001] 本願は、モーターの分野に関連し、特に、モーター、モーター・コントローラ、熱交換システム、及び制御方法に関連する。
【背景技術】
【0002】
[0002] 新エネルギー車両技術の発展と市場の拡大に伴い、電気車両が消費者からますます支持を受けている。しかしながら、現在、電気車両のバッテリーは特定の温度範囲内で動作することに適しており、極端に低い温度は、バッテリーのパフォーマンス応答に大きく影響を及ぼす。リチウム・バッテリーを例として使用する。
【0003】
[0003] (1)バッテリーの正極材料の活性度が低下し、バッテリー内を移動するリチウム・イオンの量が減少し、バッテリー容量が減少する。
【0004】
[0004] (2)電解質の凝固は、バッテリーの正極及び負極材料中の荷電イオンの拡散及び移動能力の劣化、電力エネルギー伝達速度の低下、及びバッテリー放電レートの低下を招く。
【0005】
[0005] (3)負極材料の結晶格子が収縮し、リチウム・イオンはインターカレートしにくくなり、充電速度が低下する。
【0006】
[0006] 従って、上記の問題を回避するために、バッテリーは低温環境では加熱されることを必要とする。現在、バッテリー加熱方法は、モーター固定子の巻線に直流電流をつなぎ、バッテリーを加熱するために巻線の銅損失を使用することによって、バッテリーを加熱するものである。しかしながら、この方法では、巻線は比較的小さいので、加熱電力も小さく、加熱速度は比較的遅い。
【発明の概要】
【0007】
[0007] 本願の実施形態は、モーターの加熱効率を改善するために、モーター、モーター・コントローラ、熱交換システム、及び制御方法を提供する。
【0008】
[0008] 前述の課題を達成するために、以下の技術的解決策が本願の実施態様で使用される。
【0009】
[0009] 第1の態様によれば、モーターが提供される。モーターは、ハウジングと、ハウジング内に配置された固定子と、ベアリングを介してハウジングに接続された回転子と、固定子に巻き付けられた巻線と、ハウジング内の空洞につながる液体インレット孔及び液体アウトレット孔とを含む。液体インレット孔は絶縁冷却剤の流入のために使用され、液体アウトレット孔は絶縁冷却剤の流出のために使用される。回転子は、回転シャフトと、回転シャフトの周囲に配置された回転子鉄心と、回転子鉄心に配置された永久磁石とを含む。空洞につながる第1の孔チャネルが回転子鉄心に配置されている。巻線は直軸交流電流を入力するように構成されている。
【0010】
[0010] 本願のこの実施形態で提供されるモーターによれば、横軸交流電流がモーターの巻線に入力され、その結果、モーターの回転子の回転シャフトと回転子鉄心及び固定子が、渦電流損失及び磁気ヒステリシス損失に起因して熱を発生し、回転子の永久磁石が渦電流損失に起因して熱を発生し、巻線が銅損失に起因して熱を発生する。従って、熱を発生させるために、巻線の銅損失を単に当てにしているに過ぎないものと比較して、本願は、より高い加熱パワー及び加熱効率を提供し、加熱速度を高めることができる。
【0011】
[0011] 可能な実装において、空洞につながる第2の孔チャネルが回転シャフトに配置されている。第2の孔チャネルに流入する絶縁冷却剤は、回転シャフトと熱交換を行う。
【0012】
[0012] 可能な実装において、液体インレット孔は第1の液体インレット孔を含む。第1の液体インレット孔は回転シャフトに配置されており、且つ第2の孔チャネルにつながっている。絶縁冷却剤は、回転シャフトを通ってモーターの内部に流入することが可能である。
【0013】
[0013] 可能な実装において、回転シャフトと回転子鉄心との間に第3の孔チャネルが更に配置されており、第1の孔チャネルは第3の孔チャネルを介して第2の孔チャネルにつながっている。第3の孔チャネルは、第1の孔チャネルを第2の孔チャネルにつなぎ、モーター内部の絶縁冷却剤の流れを促進するように構成されている。
【0014】
[0014] 可能な実装において、空洞につながる第4の孔チャネルが固定子に配置されている。固定子との熱交換を実行するために、第4の孔チャネルに流れる絶縁冷却材が使用される。
【0015】
[0015] 可能な実装において、液体インレット孔は第2の液体インレット孔を含み、第2の液体インレット孔は、ハウジングのトップの位置であって巻線に面する位置に配置されている。このようにして、第2の液体インレット孔から流入する絶縁冷却剤は重力下で巻線に流れ込み、これにより巻線との熱交換を行う。
【0016】
[0016] 可能な実装において、液体アウトレット孔は、ハウジングのボトムに配置されている。このようにして、絶縁冷却剤は、重力下で液体インレット孔からモーターの外へ流れる。
【0017】
[0017] 第2の態様によれば、モーター・コントローラが提供される。モーター・コントローラは、インバータ回路と制御装置とを含む。制御装置は、インバータ回路を制御して、直軸交流電流を、第1の態及び第1の態様の実装のうちの任意の1つによるモーターの巻線に出力するように構成されている。
【0018】
[0018] 本願のこの実施形態で提供されるモーター・コントローラによれば、横軸交流電流がモーターの巻線に入力され、その結果、モーターの回転子の回転シャフトと回転子鉄心及び固定子が、渦電流損失及び磁気ヒステリシス損失に起因して熱を発生し、回転子の永久磁石が渦電流損失に起因して熱を発生し、巻線が銅損失に起因して熱を発生する。従って、熱を発生させるために、巻線の銅損失を単に当てにしているに過ぎないものと比較して、本願は、より高い加熱パワー及び加熱効率を提供し、加熱速度を高めることができる。
【0019】
[0019] 可能な実装において、制御装置は、更に:バッテリーの温度がバッテリー温度閾値より低い場合に、バッテリーが外部充電電源に接続されているかどうか及びバッテリーの出力電圧に基づいて、直軸交流電流の周波数を調整するように更に構成されている。この実施形態は、直軸交流電流の周波数を調節する方法を提供する。
【0020】
[0020] 可能な実装において、制御装置は、具体的には:バッテリーが外部充電電源に接続されている場合、又はバッテリーが外部充電電源に接続されておらず、バッテリーの出力電圧が第1の電圧閾値より大きい場合に、直軸交流電流の周波数を第1の周波数に調整するように;又はバッテリーが外部充電電源に接続されておらず、バッテリーの出力電圧が第1の電圧閾値以下であるが第2の電圧閾値より大きい場合に、直軸交流電流の周波数を第2の周波数に調整するように構成されている。第1の電圧閾値は前記第2の電圧閾値より大きく、第1の電流強度は第2の電流強度より大きく、第1の周波数は第2の周波数より大きい。この実装は、直軸交流電流の周波数を具体的に調整する方法を提供する。
【0021】
[0021] 可能な実装において、制御装置は:バッテリーの温度がバッテリー温度閾値より低い場合に、モーターのハウジングの温度、巻線の温度、モーターから流出する絶縁冷却剤の温度、及び周囲温度のうちの少なくとも1つに基づいて、モーターの回転子の温度を決定し;及び回転子の温度に基づいて、直軸交流電流の電流強度を調整するように構成されている。この実装は、直軸交流電流の電流強度を調整する方法を提供する。
【0022】
[0022] 可能な実装において、制御装置は、具体的には:回転子の温度が第1の回転子温度閾値より高い場合に、直軸交流電流の電流強度を、第1の電流強度に調整するように;又は回転子の温度が第2の回転子温度閾値より低い場合に、直軸交流電流の電流強度を、第2の電流強度に調整するように;それ以外の場合に、直軸交流電流の電流強度を維持するように構成されている。第1の回転子温度閾値は第2の回転子温度閾値より大きく、第1の電流強度は第2の電流強度より小さい。この実装は、直軸交流電流の電流強度を具体的に調整する方法を提供する。
【0023】
[0023] 可能な実装において、制御装置は:回転子の温度が第1の回転子温度閾値より高い場合に、直軸交流電流の周波数を第2の周波数に調整するように構成されている。直軸交流電流の周波数は、回転子の温度に基づいて調節されてもよい。
【0024】
[0024] 可能な実装において、制御装置は:横軸電流を巻線に出力するように構成されている。モーターが回転するように駆動されている間に、モーターは加熱されてもよい。
【0025】
[0025] 第3の態様によれば、熱交換システムが提供される。熱交換システムは、第1の態様及び第1の態様の実装のうちの任意の1つによるモーターと、第2の態様及び第2の態様の実装のうちの任意の1つによるモーター・コントローラと、熱交換器と、液体ポンプとを含む。液体ポンプと、熱交換器と、モーターの液体アウトレット孔及び液体インレット孔とは、接続されており、且つ絶縁冷却剤を流すように構成されている。 モーター・コントローラは、直軸交流電流をモーターの巻線に出力するように構成されており、且つ液体ポンプの動作を制御するように構成されている。
【0026】
[0026] 第4の態様によれば、制御方法が提供される。方法は、第1の態様及び第1の態様の実装のうちの任意の1つによるモーターの巻線に、直軸交流電流を出力することを含む。
【0027】
[0027] 可能な実装において、方法は:バッテリーの温度がバッテリー温度閾値より低い場合に、バッテリーが外部充電電源に接続されているかどうか及びバッテリーの出力電圧に基づいて、直軸交流電流の周波数を調整することを含む。
【0028】
[0028] 可能な実装において、バッテリーが外部充電電源に接続されているかどうか及びとバッテリーの出力電圧に基づいて、直軸交流電流の周波数を調整することは:バッテリーが外部充電電源に接続されている場合、又はバッテリーが外部充電電源に接続されておらず、バッテリーの出力電圧が第1の電圧閾値より大きい場合に、直軸交流電流の周波数を第1の周波数に調整すること;又はバッテリーが外部充電電源に接続されておらず、バッテリーの出力電圧が第1の電圧閾値以下であるが第2の電圧閾値より大きい場合に、直軸交流電流の周波数を第2の周波数に調整することを含む。第1の電圧閾値は第2の電圧閾値より大きく、第1の電流強度は第2の電流強度より大きく、第1の周波数は第2の周波数より大きい。
【0029】
[0029] 可能な実装において、当該方法は:バッテリーの温度がバッテリー温度閾値より低い場合に、モーターのハウジングの温度、巻線の温度、モーターから流出する絶縁冷却剤の温度、及び周囲温度のうちの少なくとも1つに基づいて、モーターの回転子の温度を決定すること;及び回転子の温度に基づいて、直軸交流電流の電流強度を調整することを含む。
【0030】
[0030] 可能な実装において、回転子の温度に基づいて、直軸交流電流の電流強度を調整することは:回転子の温度が第1の回転子温度閾値より高い場合に、直軸交流電流の電流強度を、第1の電流強度に調整すること;回転子の温度が第2の回転子温度閾値より低い場合に、直軸交流電流の電流強度を、第2の電流強度に調整すること;それ以外の場合に、直軸交流電流の電流強度を維持することを含む。第1の回転子温度閾値は第2の回転子温度閾値より大きく、第1の電流強度は第2の電流強度より小さい。
【0031】
[0031] 可能な実装において、方法は:回転子の温度が第1の回転子温度閾値より高い場合に、直軸交流電流の周波数を第2の周波数に調整することを含む。
【0032】
[0032] 可能な実装において、方法は:横軸電流を巻線に出力することを含む。
【0033】
[0033] 第5の態様によれば、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体が提供される。コンピュータ読み取り可能な記憶媒体は、コンピュータ・プログラムを記憶する。コンピュータ・プログラムがコンピュータ又はプロセッサ上で実行されると、コンピュータ又はプロセッサは、第4の態様及び第4の態様の可能な実装のうちの任意の1つによる方法を実行する。
【0034】
[0034] 第6の態様によれば、命令を含むコンピュータ・プログラム製品が提供される。命令がコンピュータ又はプロセッサ上で実行されると、コンピュータ又はプロセッサは、第4の態様及び第4の態様の可能な実装のうちの任意の1つによる方法を実行することが可能である。
【0035】
[0035] 第3の態様ないし第6の態様の技術的効果については、第1の態様ないし第2の態様の内容を参照されたい。詳細は、ここでは再び説明しない。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】[0036] 図1は、本願の実施形態による直軸及び横軸の概略図である。
図2】[0037] 図2は、本願の実施形態による直軸交流電流の電流値Idが正と負の間で交互に変化する概略図である。
図3】[0038] 図3は、本願の実施形態による熱交換システムのアーキテクチャの概略図である。
図4】[0039] 図4は、本願の実施形態によるモーターを使用することでバッテリーを加熱する概略フローチャートである。
図5】[0040] 図5は、本願の実施形態によるモーターの構造の概略図である。
図6】[0041] 図6は、本願の実施形態によるモーターの回転子の構造の概略図である。
図7】[0042] 図7は、本願の実施形態による制御方法の概略フローチャート1である。
図8】[0043] 図8は、本願の実施形態による制御方法の概略フローチャート2である。
図9A】[0044] 図9Aは、本願の実施形態による制御方法の概略フローチャート3である。
図9B】[0044] 図9Bは、本願の実施形態による制御方法の概略フローチャート3である。
図10A】[0045] 図10Aは、本願の実施形態による制御方法の概略フローチャート4である。
図10B】[0045] 図10Bは、本願の実施形態による制御方法の概略フローチャート4である。
図11】[0046] 図11は、本願の実施形態によるバッテリーの出力電圧と回転子の温度に基づいて設定される座標系における直軸交流電流の周波数と電流強度の関係の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
[0047] 先ず本願の実施態様に関わる概念を説明する。
【0038】
[0048] 本願の実施形態に関わるモーターは、永久磁石モーター、非同期モーター、励磁モーター、同期リラクタンス・モーター等であってもよい。
【0039】
[0049] U/V/W三相座標軸:現在、電気車両のモーターは、通常、交流モーターであり、バッテリーは直流電源である。従って、バッテリーにより出力される直流電流は、インバータを用いることで、モーターの三相交流電流に変換される。三相交流電流の座標軸はそれぞれU軸、V軸、W軸である。
【0040】
[0050] 直軸(direct axis)は、D軸又はd軸とも呼ばれ、固定U/V/W三相座標軸に関してパーク変換(Park Transformation)を実行することによって得られる時変・直流・座標軸である。
【0041】
[0051] 横軸(quadrature axis)は、Q軸又はq軸とも呼ばれ、固定U/V/W三相座標軸に関してパーク変換を実行することによって得られる時変・交流・座標軸である。
【0042】
[0052] 図1に示されるように、直軸は横軸に垂直であり、直軸とU軸との間の角度θは時間変動し、
θ=ωt
を満足し、ここで、ωは電気周波数であり、tは時間である。
【0043】
[0053] パーク変換は、U/V/W三相交流モーターの解析方式を、直流モーターの直軸と横軸の解析方式に変換し、三相交流モーターの電磁界デカップリング制御を実行するために使用される。
【0044】
[0054] 巻線は、モーターの固定子鉄歯に巻き付けられたコイルであり、電流のための経路を提供するように構成されており、モーターの回転軸の軸方向で両端において回転子鉄心から伸びる部分は、端部巻線と呼ばれる。巻線の材料は、通常、銅である。
【0045】
[0055] 銅損失は、銅の導体を流れる電流によって生じる損失である。
【0046】
[0056] 回転子鉄心の損失は、交番磁界中での回転子鉄心の損失であり、誘導された渦電流によって生じる渦電流損失と、磁気ヒステリシス効果によって生じる磁気ヒステリシス損失とを含む。同様に、回転子及び固定子の回転シャフトもまた、交番磁界中で渦電流損失及び磁気ヒステリシス損失をもたらす。上記の損失は全て熱を発生させるが、回転子及び固定子の回転シャフトは、僅かな熱しか発生させない一方、回転子鉄心は、より多くの熱を発生させる。
【0047】
[0057] 永久磁石の渦電流損失:永久磁石は交流磁場中で渦電流を発生させ、それに対応する渦電流損失を発生させる。
【0048】
[0058] パルス磁界:磁場は空間内で固定された位置を有し、その磁界強度振幅のみが時間とともに交互に変化する。
【0049】
[0059] 現在、電気車両の分野では、複数のバッテリー加熱方式が存在する。第1のバッテリー加熱方式では、直流電流がモーター固定子の巻線に接続され、その結果、銅損失に起因して巻線が熱を発生させ、冷却剤がモーターの熱を熱交換器に伝え、熱交換器がバッテリーを加熱する。この方法は以下の欠点を有する。
【0050】
[0060](1)モーターの巻線の銅損失のみが、熱を発生させるために使用されている。モーターの巻線の抵抗は比較的小さいので、加熱電力も小さく、加熱速度も比較的遅い。
【0051】
[0061] (2)モーターにおいて、巻線のみが熱を発生させているが、モーターの他の部分は発熱に関与していない。従って、モーターの発熱は不均一であり、この不均一は巻線の局所的な過熱を引き起こし、巻線の寿命に影響を及ぼす可能性がある。
【0052】
[0062] (3)巻線の温度は急激に上昇し、特定の温度に達すると、過熱保護がトリガーされる。従って、加熱の継続時間は非常に短い。
【0053】
[0063] (4)モーターは交流モーターであるので、直流が接続された場合に動作することができない。従って、モーターの動作中に(例えば、車両が走行している場合に)、バッテリーを加熱することができない。
【0054】
[0064] 第2のバッテリー加熱方式では、ニュートラルな地点が、モーターの三相巻線から引き出され、エネルギー蓄積装置に接続される。加熱モードにおいて、バッテリーは、インバータを介して、モーターの巻線及びエネルギー蓄積装置を充電し、次いで、モーターの巻線及びエネルギー蓄積装置を、同じループを介してバッテリーに放電する。2つのプロセスは交互に実行される。上述のプロセスにおける電流は、三相巻線を通って流れ、次いで、ニュートラル地点を通ってエネルギー蓄積装置を介して流れる。従って、電流はゼロ・シーケンス電流であり、即ち、三相巻線を通過する電流の波形と位相は同じである。この技術も、巻線の銅損失を利用して熱を発生させている。
【0055】
[0065] このように、ニュートラル地点が、モーターの巻線から、エネルギー蓄積装置に接続されるように導かれることを必要とし、それにより、装置コストを増加させる。巻線の銅損失のみが熱を発生させるために使用される場合、加熱する電力は小さく、加熱する速度は比較的遅い。更に、このような方法は、モーターの通常の動作と矛盾し、モーターの動作中に(例えば、車両が走行している場合に)、バッテリーを加熱することができない。
【0056】
[0066] 第3のバッテリー加熱方式は、外部ヒーターを使用してバッテリーを加熱するものである。しかしながら、このようにして、バッテリー・ヒーターが追加され、装置コストが増加する。
【0057】
[0067] 第4のバッテリー加熱方式は、外部加熱フィルムを使用することにより、バッテリーを加熱するものである。加熱フィルムは、複数の耐高温性有機材料、高分子材料、炭素、耐高温性繊維で構成される。同様に、加熱フィルムは高価であるので、そのコストはヒーターのコストよりもはるかに高い。更に、追加の制御回路を追加する必要があり、それにより、装置コストが増加する。
【0058】
[0068] 本願の実施形態は、バッテリー加熱方式を提供する。現在一般的に使用されている直軸直流電流の代わりに、直軸交流電流が巻線に入力される。図2に示すように、直軸交流電流の電流値Idは、正及び負の間で交互に変化し、その結果、巻線は磁界を発生させる。磁界の方向は変化しないままであり、振幅のみが正と負の間で交互に変化する。磁界は脈動する磁界である。
【0059】
[0069] 磁界は、モーターの回転子の回転シャフト、回転子鉄心、固定子が、渦電流損失と磁気ヒステリシス損失に起因して発熱することを引き起こし、回転子の永久磁石は渦電流損失に起因して発熱し、巻線は銅損失に起因して発熱する。従って、熱を発生させるために単に巻線の銅損失を当てにしているものと比較して、本願のこの実施形態で提供される方法は、より高い加熱パワーを提供し、加熱速度を高速化することができる。
【0060】
[0070] 更に、本願のこの実施形態で提供されるバッテリー加熱方法は、別の装置を必要としたり、あるいは追加コストを増加させたりしない。巻線、固定子、回転子の回転シャフト、回転子鉄心、永久磁石の全てが熱を発生するので、モーターが不均一に熱を発生させてモーターを損傷させることを防止する。熱源は分散しており、そのため、モーターは熱をより均一に発生させる。同じ加熱電力を用いて、モーターは、より持続的に発生させることが可能であるし、あるいは同じ過熱保護制限の下で、より高い加熱電力を持つことが可能である。また、モーターの通常動作において、横軸電流がモーターに入力されて、モーターの回転子の回転を駆動させることに加えて、直軸交流電流がモーターに入力されて熱を発生させ、その結果、バッテリーはモーターの動作中に(例えば、車両が走行している際に)加熱されることが可能である。
【0061】
[0071] 図3は、本願の実施形態による熱交換システムの概略図である。熱交換システムは、バッテリー31、モーター・コントローラ32、モーター33、熱交換器34、及び液体ポンプ35を含む。バッテリー31は、高電圧直流バスを介してモーター・コントローラ32に結合され、モーター・コントローラ32は、三相ラインを介してモーター33に結合される。モーター33、熱交換器34、及び液体ポンプ35は、パイプラインを介して互いに結合され、絶縁冷却剤がパイプライン内を流れる。絶縁冷却剤は、鉱物絶縁油、合成絶縁油、植物油などを含むことが可能である。
【0062】
[0072] バッテリー31は、直流電流を出力するように構成され、例えば、蓄電池、リチウム・バッテリー、燃料電池、スーパー・キャパシタ等を含む。
【0063】
[0073] モーター・コントローラ32は、モーター制御ユニット(motor control unit,MCU)とも呼ばれ、制御装置321及びインバータ回路322を含む。制御装置321は、三相(U/V/W)電流(例えば、直軸交流電流)をモーター33に出力するようにインバータ回路322を制御し、液体ポンプ35の停止及び動作を制御するように構成されている。図において、インバータ回路322は、三相フル・ブリッジ・インバータ回路の一例であるか、又は別のインバータ回路であってもよい。これは、本願において限定されない。
【0064】
[0074] モーター33は三相交流モーターである。絶縁冷却剤がモーター33に流れ込み、モーター33が熱を発生させる場合に、モーターはその熱を絶縁冷却剤に移す。
【0065】
[0075] 熱交換器34は、バッテリー31の周辺に配置され、バッテリー31との熱交換を実行するように構成される。絶縁冷却剤は熱交換器34内を流れる。
【0066】
[0076] 液体ポンプ35は、熱交換器34とモーター33との間を流れるように絶縁冷却剤を運ぶように構成されている。液体ポンプ35が電源投入されている場合には、熱を発生させ、絶縁冷却剤を加熱し、これにより加熱効率を向上させる。
【0067】
[0077] 図4に示すように、モーターを用いてバッテリーを加熱する手順は、S401ないしS404を含む。バッテリーの温度がバッテリー温度閾値未満である場合、ステップS401ないしS403が実行される。そうではない場合、ステップS404が実行される。
【0068】
[0078] S401:バッテリーの温度がバッテリー温度閾値未満である場合、制御装置321は液体ポンプ35を動作するように制御し、絶縁冷却剤が、液体ポンプ35、モーター33、及び熱交換器34の間を循環する。
【0069】
[0079] S402:制御装置321は、直軸交流電流をモーター33に出力するようにインバータ回路322を制御し、その結果、モーター33は、絶縁冷却剤を加熱する。
【0070】
[0080] S403:熱交換器34内の絶縁冷却剤はバッテリー31を加熱し、バッテリー31は絶縁冷却剤を冷却する。
【0071】
[0081] S404:バッテリーの温度がバッテリー温度閾値以上である場合、制御装置321は、直軸交流電流をモーター33に出力しないようにインバータ回路322を制御し、加熱を停止する。
【0072】
[0082] なお、上記のプロセスは、ある時間間隔で繰り返し実行されてもよく、バッテリーの温度を頻繁に検出する必要はない。
【0073】
[0083] 以下、図5及び図6を参照しながらモーター33の構造を説明する。
【0074】
[0084] 図5に示すように、モーター33は、ハウジング331と、ハウジング331の内側に取り付けられた固定子332と、ベアリングを介してハウジング331に接続された回転子333と、固定子332に巻き付けられた巻線334と、ハウジング331内の空洞335につながる液体インレット孔336及び液体アウトレット孔337とを含む。
【0075】
[0085] 図5及び図6に示されるように、回転子333は、回転シャフト3331と、回転シャフト3331の周囲に取り付けられた回転子鉄心3332と、ロータ鉄心3332に取り付けられた永久磁石(図示せず)とを含む。
【0076】
[0086] 永久磁石は、励起磁界を生成するように構成され、永久磁石は、積み重ねられた磁性鋼板及び磁気タイルなどを含んでもよい。回転子鉄心3332は、シリコン鋼板のような軟磁性材料を含む。
【0077】
[0087] オプションとして、空洞335につながる第1の孔チャネルH1は回転子鉄心3332に配置され、空洞335につながる第2の孔チャネルH2は回転シャフト3331に配置され、回転シャフト3331と回転子鉄心3332との間に第3の孔チャネルH3が配置される。第1の孔チャネルH1と第2の孔チャネルH2は、第3の孔チャネルH3を介して接続されることが可能であり、空洞335につながる第4の孔チャネルH4が固定子332に配置されてもよい。前述の孔チャネルは、絶縁冷却剤を流すように構成されている。第1の孔チャネルH1内を流れる絶縁冷却剤は、回転シャフト3331との熱交換を実行するために使用され、第2の孔チャネルH2内を流れる絶縁冷却剤は、回転子鉄心3332との熱交換を実行するために使用される。第3の孔チャネルH3は、第1の孔チャネルH1を第2の孔チャネルH2に接続するように構成されており、その結果、絶縁冷却剤はモーター内部を流れる。固定子332及び回転子鉄心3332は、渦電流損失及び磁気ヒステリシス損失に起因して熱を発生し、巻線334により熱を伝導する。第4の孔チャネルH4内を流れる絶縁冷却剤は、固定子332との熱交換を実行するために使用される。
【0078】
[0088] 第1の孔チャネルH1及び第2の孔チャネルH2は、回転シャフト3331の半径方向に平行であってもよく、第3の孔チャネルH3は回転シャフト3331の半径方向に垂直であってもよい。第4の孔チャネルは、回転シャフト3331の半径方向に対して平行又は垂直であってもよい。
【0079】
[0089] 第1の孔チャネルH1、第2の孔チャネルH2、及び第3の孔チャネルH3の数量は本願では制限されず、即ち、1つ以上存在する可能性がある。
【0080】
[0090] 液体インレット孔336は絶縁冷却剤の流入のために使用され、液体アウトレット孔337は絶縁冷却剤の流出のために使用される。図中の断熱冷却剤の流れ方向は唯の一例に過ぎない。
【0081】
[0091] 可能な実装において、液体インレット孔336は第1の液体インレット孔を含む。第1の液体インレット孔は回転シャフト3331に配置され、第2の孔チャネルH2に接続されることが可能であり、その結果、絶縁冷却剤が回転シャフト3331を介してモーターに流れ込むことが可能になる。
【0082】
[0092] 別の可能な実装において、液体インレット孔336は第2の液体インレット孔を含む。第2の液体インレット孔は、ハウジング331のトップにある位置であって巻線334に面する位置に配置され、その結果、第2の液体インレット孔から流れ込む絶縁冷却剤は、重力の下で巻線334の方へ流れ、それによって巻線334と熱交換を行う。
【0083】
[0093] 可能な実装において、液体アウトレット孔337はハウジング331のボトムに配置されてもよく、その結果、絶縁冷却剤は、重力の下で液体アウトレット孔337からモーターの外へ流出する。
【0084】
[0094] 具体的な制御方法として、以下、どのようにして制御装置が、インバータ回路を制御することにより、三相(U/V/W)電流(例えば、直軸交流電流)をモーターに出力し、バッテリーを加熱するかを説明する。制御方法は、電気車両の種々の状態に適用することが可能である。例えば、状態は:バッテリーが外部充電電源に接続された状態、キーがセルフ・チェック・ギアに動かされた状態、スタート・ボタンが押された状態、キーレス・スタートがトリガーされた状態、及び電気車両が走行中である状態であってもよい。
【0085】
[0095] 具体的には、図7に示すように、制御方法はS701及びS702を含む。
【0086】
[0096] S701:バッテリーの温度がバッテリー温度閾値未満である場合、制御装置は、直軸交流電流を巻線に出力するようにインバータ回路を制御する。
【0087】
[0097] バッテリーの温度がバッテリー温度閾値未満である場合、それは、バッテリーの温度が過度に低いことを示しており、これはバッテリーのパフォーマンスに影響を及ぼす。従って、制御装置は、直軸交流電流を巻線に出力してバッテリーを加熱するように、インバータ回路を制御することができる。
【0088】
[0098] 本願では、直軸交流電流の波形は限定されない。例えば、正弦波、三角波、鋸波などであってもよい。
【0089】
[0099] 直軸交流電流の周波数及び電流強度は、固定されてもよいし、又は動的に調整されてもよい。直軸交流電流の周波数又は電流強度が大きいほど、モーターの発熱電力はより大きくなり、バッテリーの発熱時間はより短くなる。直軸交流電流の周波数や電流強度が小さいほど、モーターの加熱電力はより小さくなり、バッテリーの加熱時間はより長くなるが、モーターに対する過熱によるダメージを防ぐことができる。具体的な調整プロセスについては、図8図9A及び図9Bの関連する説明を参照されたい。
【0090】
[0100] 更に、制御装置は、横軸電流を巻線に出力するようにインバータ回路を制御することが可能であり、即ち、横軸電流はゼロであってもよいし、ゼロでなくてもよい。横軸電流がゼロでない場合、モーターはトルクを発生するので、電気車両が静止している場合、横軸電流は、モーター振動を回避するためにゼロであってもよい。電気車両が走行中である場合、横軸電流はゼロではなく、モーターの回転シャフトを回転するように駆動し、電気車両を正常に走行させることが可能である。電気車両の走行プロセスにおいて、モーターは、直軸交流電流により依然として熱を発生する可能性があり、その結果、バッテリーは依然として加熱されることが可能である。
【0091】
[0101] S702:それ以外の場合、制御装置は、直軸交流電流を巻線に出力しないようにインバータ回路を制御する。
【0092】
[0102] 即ち、バッテリーのエネルギーを節約するために、バッテリーを加熱されることを必要としない。例えば、車両の走行プロセスにおいて、制御装置は、横軸電流を巻線に出力し、且つ直軸交流電流を巻線に出力することを停止するように、インバータ回路を制御することが可能であり、その結果、モーターのトルクを発生させるために、節約電された電力が使用され、それによりモーターの効率を向上させることができる。
【0093】
[0103] バッテリー加熱プロセスにおいて、前述のプロセスは、特定の時間間隔で再実行されてもよい、ということに留意すべきである。バッテリーの温度がバッテリー温度閾値以上である場合、直軸交流電流は巻線に出力されず、バッテリーの加熱は停止される。
【0094】
[0104] オプションとして、図8に示されるように、前述の制御方法は、ステップS801、S802、及びステップS803を含んでもよい。ステップS801、S802及びステップS803を実行する順序はない。
【0095】
[0105] S801:制御装置は、モーターのハウジングの温度、巻線の温度、モーターから流出する絶縁冷却剤の温度、及び周囲温度のうちの少なくとも1つに基づいて、モーターの回転子の温度を決定する。
【0096】
[0106] 本願のこの実施形態では、熱を発生させる回転シャフト、回転子鉄心、及び永久磁石は全て回転子に配置されているので、回転子の温度は高く、高温で永久磁石は消磁される。従って、過剰に高くなることから防ぐように、回転子の温度は監視されることを必要とする。回転子は回転することが可能であるので、その温度を直接的に測定するために温度センサを設置することは適当ではない。従って、回転子の温度と、モーターのハウジングの温度、巻線の温度、モーターから流出する絶縁冷却剤の温度、及び周囲温度のうちの少なくとも1つとの間のマッピング・テーブルが、実験的較正方法で設定しておくことが可能であり、回転子の温度は、テーブル1を検査するのと同様な方法で決定されてもよい。
【0097】
テーブル1
【0098】
【表1】
[0107] S802:制御装置は、回転子の温度に基づいて、直軸交流電流の電流強度を調整する。
【0099】
[0108] オプションとして、図9A又は図10Aに示されるように、ステップS802は以下を含む:
[0109] S8021:回転子の温度が第1の回転子温度閾値よりも大きい場合、制御装置は、直軸交流電流の電流強度を、第1の電流強度に調整する。
【0100】
[0110] S8022:回転子の温度が第2の回転子温度閾値未満である場合、制御装置は、直軸交流電流の電流強度を、第2の電流強度に調整する。
【0101】
[0111] それ以外の場合、直軸交流電流の電流強度は、変更されないまま残る。即ち、回転子の温度が第1の回転子温度閾値以下であり且つ第2の回転子温度閾値以上である場合、直軸交流電流の電流強度は、変更されないまま残る。
【0102】
[0112] 第1の回転子温度閾値は、第2の回転子温度閾値よりも大きく、第1の電流強度は、第2の電流強度よりも小さく、即ち、第1の電流強度は小さな電流であり、第2の電流強度は大きな電流である。回転子の温度が比較的高い場合、モーターは小さな電流で加熱され、その結果、モーターの過熱を防止することができ、永久磁石の消磁を回避することができる。回転子の温度が比較的低い場合、モーターは大きな電流で加熱され、その結果、加熱電力を増やすことができ、バッテリー加熱時間は短縮される。
【0103】
[0113] S803:制御装置は、バッテリーが外部充電電源に接続されているかどうか、及びバッテリーの出力電圧に基づいて、直軸交流電流の周波数を調整する。
【0104】
[0114] オプションとして、図9B又は図10Bに示すように、ステップS803は、S8031及びS8032を含む。
【0105】
[0115] S8031:バッテリーが外部充電電源に接続される場合、又はバッテリーが外部充電電源に接続されておらず、バッテリーの出力電圧が第1電圧閾値より大きい場合、制御装置は、直軸交流電流の周波数を第1周波数に調整する。
【0106】
[0116] バッテリーが外部充電電源に接続される場合、バッテリー・エネルギーは消費されず、バッテリー電力の低さに起因して車両を正常に起動することができない事態は、引き起こされない。この場合、インバータ回路は、比較的高い電流強度及び/又は比較的高い周波数で、直軸交流電流を巻線に出力してモーター加熱効率を改善し、バッテリー加熱時間を短縮するように制御されることが可能である。
【0107】
[0117] バッテリーが外部充電電源に接続されていない場合において、モーターにより入力される直軸交流電流の振幅が特定の値である場合には、モーターの終端電圧は入力の直軸交流電流の周波数に比例し、直軸交流電流のより高い周波数は、モーターのより高い終端電圧を示す。モーターの終端電圧が、バッテリーの出力電圧(即ち、バス電圧)より高い場合、バッテリーは電源電力をモーターに正常に供給することができない。
【0108】
[0118] 従って、バッテリーの出力電圧が比較的高い場合には、直軸交流電流は比較的高い周波数で巻線に出力されるので、モーターの加熱効率を向上させ、バッテリーの加熱時間を短縮する。
【0109】
[0119] S8032:バッテリーが外部充電電源に接続されておらず、バッテリーの出力電圧が第1電圧閾値以下であるが第2電圧閾値より大きい場合、制御装置は、直軸交流電流の周波数を第2周波数に調整する。
【0110】
[0120] 第1の電圧閾値は第2の電圧閾値より大きく、第1の周波数は第2の周波数より大きく、即ち、第1の周波数は高い周波数であり、第2の周波数は低い周波数である。
【0111】
[0121] ステップS8031で説明したように、バッテリーの出力電圧が低い場合には、直軸交流電流は、比較的低い周波数で巻線に出力されるので、モーターの過剰に高い終端電圧に起因してバッテリーが電力をモーターに供給できない事態を防止することができる。
【0112】
[0122] また、バッテリーが外部充電電源に接続されておらず、バッテリーの出力電圧が第2電圧閾値以下である場合には、ステップS702が実行される。この場合、バッテリー電力は過度に低く、バッテリーは、モーターの加熱によって加熱することはできない。
【0113】
[0123] 図9A及び図9Bに示されるように、可能な実装では、直軸交流電流の電流強度及び周波数は、独立して制御されてもよいことに留意すべきである。
【0114】
[0124] 図10A及び図10Bに示されるように、別の可能な実装では、直軸交流電流の電流強度及び周波数は、両方とも、回転子の温度に基づいて制御され、即ち、回転子の温度が第1の回転子温度閾値よりも大きい場合、ステップS8021及びステップS8032が実行される。回転子の温度とバッテリーの出力電圧に従って座標系が確立され、直軸電流の電流強度と周波数の関係は図11に示されている。
【0115】
[0125] 本願の実施形態に提供されるモーター、モーター・コントローラ、熱交換システム、及び制御方法によれば、横軸交流電流がモーターの巻線に入力され、回転子の回転シャフト、回転子の鉄心及び固定子が、渦電流損失及び磁気ヒステリシス損失に起因して熱を発生し、回転子の永久磁石が渦電流損失に起因して熱を発生し、巻線が銅損失に起因して熱を発生する。従って、熱を発生させるために単に巻線の銅損失を当てにしていに過ぎないものと比較して、本件は、より高い加熱電力及び加熱効率を提供し、加熱速度を高速化することができる。
【0116】
[0126] 本願の実施形態はコンピュータ読み取り可能な記憶媒体を提供する。コンピュータ読み取り可能な記憶媒体は、コンピュータ・プログラムを記憶し、コンピュータ・プログラムがコンピュータ又はプロセッサ上で実行されると、図7ないし図10Bの制御方法が実行される。
【0117】
[0127] 本願の実施形態は、命令を含むコンピュータ・プログラム製品を提供する。命令がコンピュータ又はプロセッサ上で実行される場合、図7ないし図10Bの制御方法が実行される。
【0118】
[0128] 本願の実施形態は、チップ・システムを提供し、チップ・システムは、モーター・コントローラによって図7ないし図10Bの制御方法を実行するように構成されたプロセッサを含む。
【0119】
[0129] 可能な設計において、チップ・システムはメモリを含み、メモリは、必要なプログラム命令及び必要なデータを記憶するように構成される。チップ・システムは、チップ及び集積回路を含んでもよく、又はチップ及び別の個別デバイスを含んでもよい。これは、本願のこの実施態様で具体的には限定されない。
【0120】
[0130] 本願において提供されるコンピュータ読み取り可能な記憶媒体、コンピュータ・プログラム製品、又はチップ・システムは、上記方法を実行するように構成される。従って、達成することが可能な有益な効果については、前述の実装における有益な効果を参照されたい。詳細は、ここでは再び説明されない。
【0121】
[0131] 本願のこの実施形態におけるプロセッサはチップであってもよい。例えば、プロセッサは、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(field programmable gate array,FPGA)、特定用途向け集積チップ(application specific integrated circuit,ASIC)、システム・オン・チップ(system on chip,SoC)、中央処理ユニット(central processor unit,CPU)、ネットワーク・プロセッサ(network processor,NP)、デジタル信号処理回路(digital signal processor,DSP)、マイクロ・コントローラ・ユニット(micro controller unit,MCU)、プログラマブル・コントローラ(programmable logic device,PLD)、又はその他の集積チップであってもよい。
【0122】
[0132] 本件のこの実施形態のメモリは、揮発性メモリ又は不揮発性メモリであってもよいし、あるいは揮発性メモリ及び不揮発性メモリの両方を含んでもよい。不揮発性メモリは、リード・オンリー・メモリ(read-only memory,ROM)、プログラマブル・リード・オンリー・メモリ(programmable ROM,PROM)、消去可能プログラマブル・リード・オンリー・メモリ(erasable PROM,EPROM)、電気的に消去可能なプログラマブル・リード・オンリー・メモリ(electrically EPROM,EEPROM)、又はフラッシュ・メモリであってもよい。揮発性メモリは、外部バッファとして使用されるランダム・アクセス・メモリ(random access memory,RAM)であってもよい。限定ではなく例示として、多くの形態のRAMを使用することが可能であり、例えば、スタティック・ランダム・アクセス・メモリ(static RAM,SRAM)、ダイナミック・ランダム・アクセス・メモリ(dynamic RAM,DRAM)、同期ダイナミック・ランダム・アクセス・メモリ(synchronous DRAM,SDRAM)、二重データ・レート同期ダイナミック・ランダム・アクセス・メモリ(double data rate SDRAM,DDR SDRAM)、拡張同期ダイナミック・ランダム・アクセス・メモリ(enhanced SDRAM,ESDRAM)、同期リンク・ダイナミック・ランダム・アクセス・メモリ(synchlink DRAM,SLDRAM)、及びダイレクト・ランバス・ランダム・アクセス・メモリ(direct rambus RAM,DR RAM)である。本明細書で説明されるシステム及び方法におけるメモリは、これらのメモリ及び別の適切なタイプの任意のメモリを含むが、これらに限定されないことに留意すべきである。
【0123】
[0133] 本願の実施態様において、前述のプロセスの順序番号は、実行順序を意味しないことが理解されるべきである。プロセスの実行順序は、プロセスの機能及び内部論理に基づいて決定されるべきであり、本願の実施態様の実装プロセスに対する如何なる制限も構成しないはずである。
【0124】
[0134] 当業者は、本明細書に開示された実施形態で説明されている実施例と組み合わせて、ユニット及びアルゴリズム・ステップは、電子ハードウェア又はコンピュータ・ソフトウェアと電子ハードウェアの組み合わせによって実施されてもよい、ということを認識するであろう。機能がハードウェアにより又はソフトウェアにより実行されるかどうかは、特定のアプリケーション及び技術的解決策の設計上の制約に依存する。当業者は、特定のアプリケーションの各々について、説明された機能を実装するために様々な方法を使用することが可能であるが、その実装が本願の範囲を超えて行くものであると考えるべきではない。
【0125】
[0135] 簡便な説明のために、前述のシステム、装置、及びユニットの詳細な動作プロセスについては、前述の方法の実施形態における対応するプロセスを参照されたい、ということは当業者により明確に理解されるであろう。詳細は、ここでは再び説明しない。
【0126】
[0136] 本願で提供される幾つかの実施形態において、開示されるシステム、デバイス、及び方法は、他の方法で実施されてもよい、ということが理解されるはずである。例えば、説明されたデバイスの実施形態は、単なる一例であるに過ぎない。例えば、ユニット区分は単なる論理的な機能区分であり、実際の実装では他の区分であってもよい。例えば、複数のユニット又は構成要素は、別のシステムに結合又は統合されてもよく、あるいは幾つかの特徴は、無視されたり又は実行されなかったりしてもよい。更に、図示又は説明された相互結合、直接的な結合又は通信接続は、何らかのインターフェースを介して実現されてもよい。デバイス又はユニット間の間接的な結合又は通信接続は、電子的、機械的、又はその他の形態で実施されてもよい。
【0127】
[0137] 別個のパーツとして記述されているユニットは、物理的に別個であってもなくてもよく、ユニットとして図示されているパーツは、物理的なユニットであってもなくてもよく、一カ所に配置されていてもよいし、あるいは複数のネットワーク・ユニット上に分散されていてもよい。ユニットの全部又は一部は、実施形態の解決策の目的を達成するために、実際の要件に基づいて選択することができる。
【0128】
[0138] 更に、本願の実施形態における機能ユニットは、1つの処理ユニットに統合されてもよく、あるいは、ユニットの各々は、物理的に単独で存在してもよいし、又は2つ以上のユニットが1つのユニットに統合されてもよい。
【0129】
[0139] 前述の実施形態の全部又は一部は、ソフトウェア、ハードウェア、ファームウェア、又はそれらの任意の組み合わせを使用することによって実現されてもよい。ソフトウェア・プログラムが実施形態を実現するために使用される場合、実施形態の全部又は一部は、コンピュータ・プログラム製品の形態で実現されてもよい。コンピュータ・プログラム製品は、1つ以上のコンピュータ命令を含む。コンピュータ・プログラム命令がコンピュータ上にロードされて実行される場合、本願の実施形態による手順又は機能が全体的又は部分的に生じる。コンピュータは、汎用コンピュータ、特殊目的コンピュータ、コンピュータ・ネットワーク、又はその他のプログラム可能な装置であってもよい。コンピュータ命令は、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶されてもよいし、あるいはコンピュータ読み取り可能な記憶媒体から別のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体に伝送されてもよい。例えば、コンピュータ命令は、ウェブサイト、コンピュータ、サーバー、又はデータ・センターから、別のウェブサイト、コンピュータ、サーバー、又はデータセンターに有線(例えば、同軸ケーブル、光ファイバ、又はデジタル加入者回線(Digital Subscriber Line,DSL))又は無線(例えば、赤外線、無線、又はマイクロ波)方式で伝送されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記憶媒体は、コンピュータによってアクセスすることが可能な任意の利用可能な媒体、又は1つ以上の利用可能な媒体を統合するサーバー又はデータ・センターのようなデータ・ストレージ・デバイスであってもよい。利用可能な媒体は、磁気媒体(例えば、フロッピー・ディスク、ハード・ディスク、又は磁気テープ)、光媒体(例えば、DVD)、半導体媒体(例えば、ソリッド・ステート・ディスク(Solid State Disk,SSD))などであってもよい。
【0130】
[0140] 前述の説明は、本願の特定の実装であるに過ぎず、本願の保護範囲を限定するようには意図されていない。本願に開示される技術的範囲内で当業者により容易に把握される如何なる変形や代替も、本願の保護範囲内に含まれるものとする。従って、本願の保護範囲はクレームの保護範囲に従うものとする。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、前記ハウジング内に取り付けられた固定子と、ベアリングを介して前記ハウジングに接続された回転子と、前記固定子に巻き付けられた巻線と、前記ハウジング内の空洞につながる液体インレット孔及び液体アウトレット孔とを含むモーターであって、前記液体インレット孔は絶縁冷却剤の流入のために使用され、前記液体アウトレット孔は前記絶縁冷却剤の流出のために使用され;
前記回転子は、回転シャフトと、前記回転シャフトの周囲に取り付けられた回転子鉄心と、前記回転子鉄心に取り付けられた永久磁石とを含み;
前記空洞につながる第1の孔チャネルが前記回転子鉄心に配置されており;且つ
前記巻線は直軸交流電流を入力するように構成されている、モーター。
【請求項2】
請求項1に記載のモーターにおいて、前記空洞につながる第2の孔チャネルが前記回転シャフトに配置されている、モーター。
【請求項3】
請求項2に記載のモーターにおいて、前記液体インレット孔は第1の液体インレット孔を含み、前記第1の液体インレット孔は前記回転シャフトに配置されており且つ前記第2の孔チャネルにつながっている、モーター。
【請求項4】
請求項2に記載のモーターにおいて、前記回転シャフトと前記回転子鉄心との間に第3の孔チャネルが配置されており、前記第1の孔チャネルは前記第3の孔チャネルを介して前記第2の孔チャネルにつながっている、モーター。
【請求項5】
請求項1に記載のモーターにおいて、前記空洞につながる第4の孔チャネルが前記固定子に配置されている、モーター。
【請求項6】
請求項1に記載のモーターにおいて、前記液体インレット孔は第2の液体インレット孔を含み、前記第2の液体インレット孔は、前記ハウジングのトップの位置であって前記巻線に面する位置に配置されている、モーター。
【請求項7】
請求項1に記載のモーターにおいて、前記液体アウトレット孔は、前記ハウジングのボトムに配置されている、モーター。
【請求項8】
インバータ回路と制御装置とを含むモーター・コントローラであって、前記制御装置は、直軸交流電流を、モーターの巻線に出力するように構成されており、前記モーターは、ハウジングと、前記ハウジング内に取り付けられた固定子と、ベアリングを介して前記ハウジングに接続された回転子と、前記固定子に巻き付けられた巻線と、前記ハウジング内の空洞につながる液体インレット孔及び液体アウトレット孔とを含み、前記液体インレット孔は絶縁冷却剤の流入のために使用され、前記液体アウトレット孔は前記絶縁冷却剤の流出のために使用され;
前記回転子は、回転シャフトと、前記回転シャフトの周囲に取り付けられた回転子鉄心と、前記回転子鉄心に取り付けられた永久磁石とを含み;
前記空洞につながる第1の孔チャネルが前記回転子鉄心に配置されており;且つ
前記巻線は直軸交流電流を入力するように構成されている、モーター・コントローラ。
【請求項9】
請求項8に記載のモーター・コントローラにおいて、前記制御装置は:
バッテリーの温度がバッテリー温度閾値より低い場合に、前記バッテリーが外部充電電源に接続されているかどうか及び前記バッテリーの出力電圧に基づいて、前記直軸交流電流の周波数を調整する;
ように更に構成されている、モーター・コントローラ。
【請求項10】
請求項9に記載のモーター・コントローラにおいて、前記制御装置は、具体的には:
前記バッテリーが外部充電電源に接続されている場合、又は前記バッテリーが外部充電電源に接続されておらず、前記バッテリーの出力電圧が第1の電圧閾値より大きい場合に、前記直軸交流電流の周波数を第1の周波数に調整するように;又は
前記バッテリーが外部充電電源に接続されておらず、前記バッテリーの出力電圧が前記第1の電圧閾値以下であるが第2の電圧閾値より大きい場合に、前記直軸交流電流の周波数を第2の周波数に調整するように;
構成されており、前記第1の電圧閾値は前記第2の電圧閾値より大きく、第1の電流強度は第2の電流強度より大きく、前記第1の周波数は前記第2の周波数より大きい、モーター・コントローラ。
【請求項11】
請求項8に記載のモーター・コントローラにおいて、前記制御装置は:
バッテリーの温度が前記バッテリー温度閾値より低い場合に、前記モーターのハウジングの温度、前記巻線の温度、前記モーターから流出する絶縁冷却剤の温度、及び周囲温度のうちの少なくとも1つに基づいて、前記モーターの回転子の温度を決定し;及び
前記回転子の温度に基づいて、前記直軸交流電流の電流強度を調整する;
ように構成されている、モーター・コントローラ。
【請求項12】
請求項11に記載のモーター・コントローラにおいて、前記制御装置は、具体的には:
前記回転子の温度が第1の回転子温度閾値より高い場合に、前記直軸交流電流の電流強度を、前記第1の電流強度に調整するように;
前記回転子の温度が第2の回転子温度閾値より低い場合に、前記直軸交流電流の電流強度を、前記第2の電流強度に調整するように;又は
前記回転子の温度が前記第1の回転子温度閾値以下であり且つ前記第2の回転子温度閾値以上である場合に、前記直軸交流電流の電流強度を維持する;
ように構成されており、前記第1の回転子温度閾値は前記第2の回転子温度閾値より大きく、前記第1の電流強度は前記第2の電流強度より小さい、モーター・コントローラ。
【請求項13】
請求項12に記載のモーター・コントローラにおいて、前記制御装置は:
前記回転子の温度が前記第1の回転子温度閾値より高い場合に、前記直軸交流電流の周波数を前記第2の周波数に調整する;
ように構成されている、モーター・コントローラ。
【請求項14】
請求項8に記載のモーター・コントローラにおいて、前記制御装置は:
横軸電流を前記巻線に出力する;
ように構成されている、モーター・コントローラ。
【請求項15】
ーターと、モーター・コントローラと、熱交換器と、液体ポンプとを含む熱交換システムであって、
前記モーターは、ハウジングと、前記ハウジング内に取り付けられた固定子と、ベアリングを介して前記ハウジングに接続された回転子と、前記固定子に巻き付けられた巻線と、前記ハウジング内の空洞につながる液体インレット孔及び液体アウトレット孔とを含み、前記液体インレット孔は絶縁冷却剤の流入のために使用され、前記液体アウトレット孔は前記絶縁冷却剤の流出のために使用され;
前記回転子は、回転シャフトと、前記回転シャフトの周囲に取り付けられた回転子鉄心と、前記回転子鉄心に取り付けられた永久磁石とを含み;
前記空洞につながる第1の孔チャネルが前記回転子鉄心に配置されており;且つ
前記巻線は直軸交流電流を入力するように構成されており;
前記モーター・コントローラは、インバータ回路と制御装置とを含み、前記制御装置は、直軸交流電流を、モーターの巻線に出力するように前記インバータを制御するように構成されており、 前記液体ポンプと、前記熱交換器と、前記モーターの液体アウトレット孔及び液体インレット孔とは接続されており、且つ絶縁冷却剤を流すように構成されており;及び
前記モーター・コントローラは、直軸交流電流を前記モーターの巻線に出力するように構成されており、且つ前記液体ポンプの動作を制御するように構成されている、熱交換システム。
【国際調査報告】