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特表2023-538089切り替え装置を有するバルブ作動装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-06
(54)【発明の名称】切り替え装置を有するバルブ作動装置
(51)【国際特許分類】
   F01L 13/00 20060101AFI20230830BHJP
【FI】
F01L13/00 301B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023512189
(86)(22)【出願日】2021-08-24
(85)【翻訳文提出日】2023-04-14
(86)【国際出願番号】 AT2021060291
(87)【国際公開番号】W WO2022040710
(87)【国際公開日】2022-03-03
(31)【優先権主張番号】A50710/2020
(32)【優先日】2020-08-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513131176
【氏名又は名称】アーファオエル・リスト・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】マルティン・クランプファー
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス・ツルク
(72)【発明者】
【氏名】トマス・ザルムター
【テーマコード(参考)】
3G018
【Fターム(参考)】
3G018AB03
3G018BA12
3G018CA01
3G018CB02
3G018DA28
3G018FA06
3G018GA14
(57)【要約】
本発明は、機械的な切り替え装置(110)によって第1の位置及び第2の位置にもたらすことができるロック要素(13B)を備えた連結装置(10)を有するレシプロピストンエンジンのバルブのためのバルブ作動装置(100)に関する。切り替え装置(110)は、相対移動が可能な、ガイドロッド(83)及び平行な作動ロッド(81)と、ロック要素(85)を移動させるためにガイドロッド(83)上に移動可能に取り付けられたスロット付きガイド要素(84、85)と、スロット付きガイド要素(84、85)に連結されたトリガ要素(111)とを備え、スロット付きガイド要素(84、85)及びトリガ要素(111)は、作動ロッド(81)上の2つのストッパ(89、89’)の間にクランプされ、それぞれが関連するスプリング要素(93、94)を有し、スロット付きガイド要素(84、85)及びトリガ要素(111)は、作動ロッド(81)と共にガイドロッド(83)に沿って、及び/またはガイドロッド(83)と平行に変位可能である。ブロッキング要素(112)はトリガ要素(111)と相互に作用し、第1の状態において、スプリング要素(93、94)が予荷重を受けるように作動ロッド(81)を軸方向に変位させたときに、トリガ要素(111)及びスロット付きガイド要素(84、85)の変位をブロックし、第2の状態において、トリガ要素(111)及びスロット付きガイド要素(84、85)の変位を可能にして、連結装置(111)の作動をもたらす。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レシプロピストンエンジン、特に内燃機関の少なくとも1つのバルブを作動させるためのバルブ作動装置(100)であって、
前記バルブ作動装置(100)は、機械的な連結装置(10)であって、該連結装置(10)を作動させるための切り替え装置(110)によって、少なくとも第1の位置及び第2の位置に至らせることが可能なロック要素(13B)を有する、連結装置(10)を備え、
前記バルブ作動装置(100)は、前記ロック要素(13B)の少なくとも前記第1の位置において、前記少なくとも1つのバルブの作動運動を伝達しており、
前記切り替え装置(110)は、
- 特にハウジングに固定して取り付けられたガイドロッドと(83)、
- 該ガイドロッド(83)と略平行に延在しており、前記ガイドロッドに対して軸方向に移動可能な作動ロッド(81)と、
- 前記ガイドロッド(83)に移動可能に取り付けられ、前記ロック要素(13B)を少なくとも前記第1の位置から前記第2の位置に、またはその逆に移動させるように設計されたスロット付きガイド要素(84、85)と、
- 前記作動ロッド(81)の軸方向で前記スロット付きガイド要素(84、85)に連結されたトリガ要素(111)と、
を備えており、
前記スロット付きガイド要素(84、85)及び前記トリガ要素(111)は、前記作動ロッド(81)上に配置された2つのストッパ(89、89’)の間に、2つのスプリング要素(93、94)によってクランプされ、各ストッパは、それぞれのスプリング要素(93、94)を割り当てられており、
前記作動ロッド(81)は、少なくとも前記スロット付きガイド要素(84、85)及び前記トリガ要素(111)を、前記ガイドロッド(83)に沿った方向及び/または前記ガイドロッド(83)と平行な方向に変位させるように構成されており、
ブロッキング要素(112)が、第1の状態において、前記スプリング要素(93、94)のうちの少なくとも1つに予荷重が加えられるように前記作動ロッド(81)を軸方向に変位させたときに、前記ブロッキング要素(112)が、前記トリガ要素(111)及び前記スロット付きガイド要素(84、85)の変位をブロックし、第2の状態において、前記トリガ要素(111)及び前記スロット付きガイド要素(84、85)の変位を可能にして前記連結装置(10)の作動をもたらすように、前記トリガ要素(111)と相互作用するように構成されている、バルブ作動装置。
【請求項2】
前記トリガ要素(111)及び/または前記スロット付きガイド要素(84、85)は、前記作動ロッド(81)上で移動可能に取り付けられている、請求項1に記載のバルブ作動装置。
【請求項3】
前記作動ロッド(81)は、前記スプリング要素(93、94)を貫通している、請求項2に記載のバルブ作動装置。
【請求項4】
前記連結装置(10)はタペット(13A)を更に備え、該タペット(13A)は、前記ロック要素(13B)を変位、特に回転させるために前記スロット付きガイド要素(84)のリンク(85)と相互作用するように前記ロック要素(13B)に固定されている、請求項1~3のいずれか一項に記載のバルブ作動装置。
【請求項5】
前記リンク(85)は、前記タペット(13A)を作動運動の方向に移動可能に案内しており、前記リンク(85)は、好ましくはU字状プロファイルの設計である、請求項4に記載のバルブ作動装置。
【請求項6】
前記連結装置(10)は、前記ロック要素(13B)と相互作用する第1の連結要素(11)を更に備え、該第1の連結要素(11)及び前記ロック要素(13B)は、前記連結装置(10)がその軸方向の規定長さ内に十分に留まるように、前記ロック要素(13B)の前記第1の位置で互いに対してブロックされ、前記ロック要素(13B)の前記第2の位置では、前記第1の連結要素(11)及び前記ロック要素(13B)は、前記連結装置(10)が前記規定長さと比較して軸方向に短縮されるように、互いに対して、特に互いに対して変位可能である、請求項1~5のいずれか一項に記載のバルブ作動装置。
【請求項7】
前記連結装置(10)は、前記第1の連結要素(11)または前記ロック要素(13B)に対して前記連結装置(10)の軸方向に移動可能であり、少なくとも前記作動運動が伝達されているときに前記第1の連結要素(11)または前記ロック要素(13B)に当接する第2の連結要素(12)を更に備えている、請求項6に記載のバルブ作動装置。
【請求項8】
前記ブロッキング要素(112)は、シャフト(216)、特にカムシャフトに回転方向に固定された状態で接続されたロックディスクとして設計され、該ロックディスク(112)の半径がロックディスク(112)の所定の角度セクタに亘って減少する切り替えウィンドウ(113)を有し、前記トリガ要素(111)、特に前記トリガ要素(111)の解放ピン(115)は、前記第1の状態で前記ロックディスク(112)の側面に当接し、前記切り替えウィンドウ(113)は、前記第2の状態で前記トリガ要素(111)の領域内に配置されている、請求項1~7のいずれか一項に記載のバルブ作動装置。
【請求項9】
前記トリガ要素(111)は、前記ガイドロッド(83)に対して平行に延びる回転軸の周りに、または前記ガイドロッド(83)の周りに直接回動可能であり、特に、少なくとも前記ロックディスク(112)の回転方向において前記回転軸の周りに回動可能である、請求項1~8のいずれか一項に記載のバルブ作動装置。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載のバルブ作動装置を備えている内燃機関。
【請求項11】
少なくとも2つのシリンダを有し、各シリンダ当たり1つの請求項1~9のいずれか一項に記載のバルブ作動装置を備え、前記作動ロッド(81)がシリンダからシリンダへ延在しており、各ケースにおいて少なくとも前記スロット付きガイド要素(84、85)及び前記トリガ要素(111)を、前記ガイドロッド(83)に向かって変位させるように構成された内燃機関。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レシプロピストンエンジン、特に内燃機関の少なくとも1つのバルブを作動させるためのバルブ作動装置(valve-actuating device)に関し、バルブ作動装置は、連結装置を作動させるための切り替え装置(switching device)によって少なくとも第1及び第2の位置に移動させることができるロック要素を備えた機械的連結装置を含み、バルブ作動装置は、ロック要素の少なくとも第1の位置において少なくとも1つのバルブについての作動運動(actuating movement)を伝達している。
【背景技術】
【0002】
一般的なバルブ作動装置、及びこのようなバルブ作動装置を有する燃焼機関は、従来技術から一般的に知られている。
【0003】
性能、効率及び排出に関する要求がますます大きくなっているので、可変バルブトレイン(variable valve train)、すなわち可変バルブリフトを有するバルブトレインは、レシプロ内燃機関、特に4ストローク作動及び6ストローク作動のレシプロ内燃機関においてますます重要性を増している。
【0004】
可変バルブトレインは、燃焼機関の設計技術者が直面する必要性と、特に燃焼機関の運転状況に応じて1つまたは複数のバルブに異なるバルブリフト曲線を代替的に割り当てる際の熱力学的な願望とを満たすことができ、それによって、バルブリフト並びに開放点及び閉鎖点の両方を調整することができる。
【0005】
これは、一般に、バルブトレインの伝達経路を切り替えることによって達成される。様々な用途では、バケットタペット(bucket tappet)、ローラタペット、ロッカアーム等の切り替え可能なカムフォロワを備えたリフト切り替え(lift switching)及びリフトカットオフシステム(lift cut-off system)がシリーズで使用されている。ここで適用可能なのは、各追加の代替バルブリフトに対して、対応するカムも、代替リフトがゼロリフトでない限り、リフトを提供する要素として提供される必要があるということである。
【0006】
可変または可変バルブリフトを有するバルブトレインの使用には、様々な適用分野がある。次にいくつかの例を示す。
【0007】
リフト切り替え:リフト切り替えは、少なくとも2つの異なるバルブリフトの動作点依存の使用(operating point-dependent use)を可能にしている。ここでは、部分負荷範囲に合わせて特別に調整されたより小さなバルブリフトが使用され、トルク曲線を改善し、消費及びエミッションを低減している。大きなバルブリフトは、更なる性能向上のために最適化することができる。より低い最大リフトのより小さなバルブリフト及びより短い期間は、著しく早期の吸気閉鎖点及び吸気システムのスロットル解除を介して、ガス交換作業(ミラーサイクル:Miller cycle)を低減することを可能にしている。アトキンソンサイクル(Atkinson cycle)でも同様の結果が得られる可能性がある。すなわち、非常に遅い吸気閉鎖である。それによって、燃焼室の最適な充填は、依然として、部分負荷範囲におけるトルクの増加をもたらす。
【0008】
シリンダカットオフ(cylinder cut-off):シリンダカットオフは、大容量の4シリンダエンジン(例えば、4シリンダ、8シリンダ、10シリンダまたは12シリンダのエンジンシリンダ)で主に使用されている。これにより、選択されたエンジンシリンダは、吸気バルブ及び排気バルブにおけるリフトのスイッチを切ることにより停止され、これにより、カムリフトから完全に分離されている。等間隔の点火シーケンスにより、共通のV8及びV12モータをA4またはR6エンジンに切り替えることができる。エンジンシリンダの遮断の目的は、ガス交換損失を最小にし、動作点をより高い平均圧力、従ってより高い熱力学的効率にシフトさせ、それによって大幅な燃料節約が達成されることを可能にすることである。
【0009】
エンジンブレーキモード:エンジンブレーキモードを可能にするエンジンブレーキシステムは、車両の燃焼エンジン、特に商用車においてますます重要になってきており、その理由は、これらのエンジンブレーキシステムは、特に長い下り坂で車輪ブレーキへの負荷を減少させることができる、コスト効率が良く、場所をとらない追加のブレーキシステムを構成するからである。更に、現代の商用車エンジンの比出力(specific power)を増加させるには、達成可能な制動力を増加させることも必要である。
【0010】
エンジンブレーキ効果を達成する既知の方法は、燃焼エンジンのシリンダ内に追加のマクロバルブ(macrovalve)を提供することであり、これは、特に4ストロークエンジンまたは6ストロークエンジンにおいて、圧縮ストロークの終わりに追加のエンジンバルブを介してシリンダを減圧することにより、いわゆる減圧ブレーキを実施することができる。これにより、圧縮ガスに作用する仕事は、燃焼エンジンの排気システムを介して排出されている(exit)。更に、燃焼エンジンは、シリンダにガスを再充填するために作業を費やさなければならない。特に、実際の排気バルブの可変バルブトレインを介してエンジンブレーキ効果を生じさせることが知られている。
【0011】
バルブリフトを変化させるための様々なシステム及び概念が知られている。特に、バルブ作動装置の1つまたは複数のカムリフト伝達バルブ作動要素間に機械式または油圧式の連結装置を設けることが知られており、この連結装置を介して、バルブトレインの伝達経路におけるスイッチを達成することができる。
【0012】
例えば、特許文献1には、可変バルブタイミングのための、特にエンジンブレーキ効果を発生させるためのシステムが開示されており、このシステムは、バルブ作動機構を選択的にロックまたはロック解除するための液圧作動可能なロック要素を備えた「ロストモーション(lost motion)」装置を備え、バルブの作動運動が1つまたは複数のバルブに選択的に伝達されるかまたは伝達されないようにして、バルブリフトを変化させ、それによって、特にエンジンブレーキを発生させている。
【0013】
特許文献2には、レシプロピストンエンジン、特に内燃機関の少なくとも第1のバルブを作動させるためのバルブ作動装置であって、特にエンジン制動のために使用することができ、第1のロッカアーム部と、第2のロッカアーム部と、少なくとも1つの第1のバルブのバルブリフトを変化させるための第1の切り替え要素とを有し、第1のロッカアーム部及び第2のロッカアーム部は、第1のカムシャフトの少なくとも1つの第1のバルブタイミング運動が、第1のロッカアーム部及び第2のロッカアームを介して、少なくとも1つの第1のバルブに伝達され得るように、回動可能に取り付けられ且つ配置されたバルブ作動装置が開示されている。
【0014】
特許文献3は、可変バルブリフトを有するレシプロピストンエンジンの少なくとも1つのバルブを作動させるためのバルブ作動装置、特にレシプロ内燃機関のバルブ作動装置、並びにバルブ作動装置及びレシプロピストンエンジンのための連結装置に関し、連結装置は、第1の連結要素、第2の連結要素、及びロック装置を備えている。第1の連結要素及び第2の連結要素は、第1の軸に沿って少なくとも所定の限度内で互いに対して変位可能であり、それによって、ロック装置は、少なくとも第1の方向における第1の軸に沿った互いに対する2つの連結要素の相対変位を阻止することができる。ロック装置は、少なくとも定められた領域内で第1の軸の周りに円周方向に回転可能なロック要素を有し、ロック要素がブロック位置にあるとき、第1の軸に沿った2つの連結要素の相対変位は、少なくとも第1の方向においてブロックされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】米国特許出願公開第2014/0326212号明細書
【特許文献2】国際公開第2015/022071号
【特許文献3】国際公開第2019/025511号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の一つの課題は、可変バルブタイミングのための改良されたバルブ作動装置を提供することである。本発明の特定の課題は、異なるタイプのバルブタイミング間の正確な切り替えを可能にする切り替え装置を備えたバルブ作動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
この課題は、独立請求項に係るバルブ作動装置及び燃焼機関によって解決される。有利な発展は、従属請求項においてクレームされている。
【0018】
本発明の第1の態様は、レシプロピストンエンジン、特に内燃機関の少なくとも1つのバルブを作動させるための可変バルブ作動装置であって、
前記バルブ作動装置は、機械的な連結装置であって、該連結装置を作動させるための切り替え装置によって、少なくとも第1及び第2の位置に至らせることが可能なロック要素を有する、連結装置を備え、
前記バルブ作動装置は、前記ロック要素の少なくとも前記第1の位置において、前記少なくとも1つのバルブの作動運動を伝達しており、
前記切り替え装置は、
- 特にハウジングに固定して取り付けられたガイドロッドと、
- 該ガイドロッドと略平行に延在しており、前記ガイドロッドに対して軸方向に移動可能な作動ロッドと、
- 前記ガイドロッドに移動可能に取り付けられ、前記ロック要素を少なくとも前記第1の位置から前記第2の位置に、またはその逆に移動させるように設計されたスロット付きガイド要素(slotted guide element)と、
- 作動ロッドの軸方向でスロット付きガイド要素に連結されたトリガ要素と、
を備えており、
前記スロット付きガイド要素及びトリガ要素は、作動ロッド上に配置された2つのストッパの間に、2つのスプリング要素によってクランプされ、各ストッパは、それぞれのスプリング要素を割り当てられており、
前記作動ロッドは、少なくとも前記スロット付きガイド要素及び前記トリガ要素を、前記ガイドロッドに沿った方向及び/またはそれに平行な方向に変位させるように構成されており、
ブロッキング要素が、第1の状態において、スプリング要素のうちの少なくとも1つに予荷重が加えられるように作動ロッドを軸方向に変位させたときに、ブロッキング要素が、トリガ要素及びスロット付きガイド要素の変位をブロックし、第2の状態において、トリガ要素及びスロット付きガイド要素の変位を可能にして連結装置の作動をもたらすように、トリガ要素と相互作用するように構成されている。
【0019】
ロック要素は、特に回転によって、第1の位置から第2の位置へ、またはその逆に移動する。
【0020】
本発明の第2の態様は、このようなバルブ作動装置を有する内燃機関に関する。
【0021】
本発明の意味におけるスロット付きガイド要素は、力及び/または運動を別の機械要素に伝達することができる機械要素であることが好ましく、スロット付きガイド要素の設計により、他の機械要素は、伝達された力または運動の方向とは異なる方向に独立して移動することができる。
【0022】
本発明の意味におけるハウジングへの固定取付は、基準フレーム、特にバルブ作動装置及び/又はレシプロピストンエンジンに対して固定されていることを意味している。
【0023】
本発明は、燃焼エンジンにおけるバルブリフト曲線またはバルブタイミングの変化の制御は、特に、それが時間依存またはクランクシャフト角度依存である場合、燃焼エンジンが最適化された消費及び/またはエミッション及び/または同時に低摩耗で運転されるために、可能な限り正確であるべきであるという認識に基づいている。
【0024】
本発明は、一方では、少なくとも2つの異なるバルブリフト曲線を切り替えるために連結装置を作動させるスロット付きガイド要素によってこれを達成し、トリガ要素は、2つのスプリング要素によって作動ロッド上に配置された2つのストッパの間にクランプされている。その結果、作動ロッドによって誘発される運動は、スロット付きガイド要素によって直ちに実行される必要は無く、その代わりに、スプリング要素内に位置エネルギーとして蓄積することができる。従って、切り替えの正確な時期(moment)は、作動の時期とは無関係にすることができる。
【0025】
一方、第1の状態において、スプリング要素のうちの少なくとも1つが作動ロッドの移動によって予荷重を加えられるように、ブロッキング要素がトリガ要素及びスロット付きガイド要素の変位をブロックし、第2の状態において、トリガ要素及びスロット付きガイド要素の変位を可能にすることによって達成される。ブロッキング要素を利用することにより、連結装置が作動される時点、従って、切り替え点を正確に指示することが可能になる。ブロッキング要素を解放するだけで済む。また、作動ロッドは、その長手方向軸線に沿った一方向に、またはそれぞれガイドロッドに対して実質的に平行に移動することのみが必要である。
【0026】
更に、複数のバルブ作動装置の切り替えは、1つの作動ロッド、従って単一のアクチュエータで開始することができ、それによって、バルブ作動装置の個々の切り替え事象は、タイミングまたはクランクシャフト角度に関してオフセットされている。このことは、異なるバルブ作動装置が、それぞれ異なるタイミングで作動されるそれぞれ異なるシリンダの一部である場合に特に有利である。従って、作動ロッドの作動は、一方では全てのシリンダに対して切り替えを開始することができるが、切り替えは、それぞれの場合において、ブロッキング要素がトリガ要素のブロックを解除することによってのみトリガされる。個々のシリンダの低負荷領域における切り替えは、特に有利であることが判明している。
【0027】
バルブ作動装置の1つの有利な実施形態では、トリガ要素及び/またはスロット付きガイド要素は、作動ロッド上で移動可能に取り付けられている。これにより、スロット付きガイド要素及び/またはトリガ要素は、そのために追加の取付手段を設ける必要無く、取り付けることができる。これはまた、作動ロッドからトリガ要素及びスロット付きガイド要素への力の伝達を改善することができる。
【0028】
バルブ作動装置の更なる有利な実施形態では、作動ロッドは、スプリング要素を貫通している。この構成により、他の手段を用いること無く、スプリング要素を取り付けることができる。換言すれば、スプリング要素は、1つの有利な実施形態では作動ロッドに取り付けられ、それによって、スプリング要素は、有利には、渦巻スプリング要素または作動ロッドの周りをそれぞれ走る要素として設計される。
【0029】
バルブ作動装置の更なる有利な実施形態では、連結装置はタペットを更に備え、タペットはロック要素に固定され、ロック要素を変位、特に回転させるためにスロット付きガイド要素のリンクと相互作用している。タペットを設けることにより、スロット付きガイド要素が連結装置を作動させることが特に容易になる。
【0030】
バルブ作動装置の更なる有利な実施形態では、リンクは作動運動の方向にタペットを移動可能に案内し、それによって、リンクはU字状プロファイル(U-profile)の設計であることが好ましい。U字状プロファイルは、要素を一方向に選択的に固定するのに特に適している。
【0031】
バルブ作動装置の更なる有利な実施形態では、連結装置は、ロック要素と相互作用する第1の連結要素を更に備え、第1の連結要素及びロック要素は、連結装置がその軸方向の規定長さ内に十分に留まるように、ロック要素の第1の位置で互いに対してブロックされ、ロック要素の第2の位置では、第1の連結要素及びロック要素は、連結装置が規定長さと比較して軸方向に短縮されるように、互いに対して、特に互いに対して変位可能である。ロック要素を設けることにより、連結装置の特に簡単な切り替えを達成することができる。好ましくは、ロック要素は、第1の位置から第2の位置まで、連結装置及び/または第1の連結要素の長手方向軸線を中心に回動している。好ましくは、ロック要素に固定されたタペットは、連結装置の長手方向軸線に対して略垂直に延在している。
【0032】
バルブ作動装置の更なる有利な実施形態では、連結装置は、第1の連結要素またはロック要素に対して連結装置の軸方向に移動可能であり、少なくとも作動運動が伝達されているときに第1の連結要素またはロック要素に当接する第2の連結要素を更に備えている。力伝達接続(force transmission connection)は、ストッパによってのみ実現されるので、第2の連結要素は、第1の連結要素及び/またはロック要素からリフトオフ(lift off)することができる。従って、連結装置は、外部から誘発される運動(externally induced movement)に対して制限的な効果を有さない。
【0033】
バルブ作動装置の別の有利な実施形態では、ブロッキング要素は、シャフト、特にカムシャフトに回転方向に固定された状態で接続されたロックディスクとして設計され、ロックディスクの半径がロックディスクの所定の角度セクタに亘って減少する切り替えウィンドウ(switching window)を有し、トリガ要素、特にトリガ要素の解放ピンは、第1の状態でロックディスクの側面に当接し、切り替えウィンドウは、第2の状態でトリガ要素の領域内に配置されている。ロックディスクは、カムシャフトを介して更に直接制御することができるブロック要素のための、特に簡単な構成で故障しにくい機械的解決策であることが証明されている。特に、ブロッキング要素を作動させるための電子制御及び電気信号は、この場合には不要である。
【0034】
バルブ作動装置の更なる有利な実施形態では、トリガ要素は、ガイドロッドに対して平行に延びる回転軸の周りに、またはガイドロッドの周りに回動可能であり、特に、少なくともロックディスクの回転方向において回転軸の周りに回動可能である。これにより、ブロッキング要素がトリガ要素を損傷するのを防止することができる。
【0035】
本発明の第1の態様に関して上述した特徴及び利点は、本発明の第2の態様にも同様に適用され、逆もまた同様である。
【0036】
1つの有利な実施形態では、内燃機関は少なくとも2つのシリンダを有し、各シリンダは1つのシリンダ当たり1つのバルブ作動装置を有し、それによって作動ロッドはシリンダからシリンダへと延在しており、各ケースにおいて少なくともスロット付きガイド要素及びトリガ要素を、ガイドロッドに向かって変位させるように構成されている。換言すれば、作動ロッドは、全てのシリンダに沿って、好ましくは、シリンダの長手方向軸線によって形成される内燃機関の長手方向平面に対して略平行に延在している。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】バルブ作動装置の例示的な実施形態の斜視図である。
図2図1によるバルブ作動装置の例示的な実施形態の平面図である。
図3図2のI-I線に沿った断面図における、図1及び図2によるバルブ作動装置の例示的な実施形態の第2のロッカアームの図である。
図4図3のII-II線に沿った断面図における、図1及び図2によるバルブ作動装置の例示的な実施形態の第2のロッカアームの図である。
図5】バルブ作動装置の例示的な実施形態の図1による拡大斜視図の詳細図である。
図6】スロット付きガイド要素の斜視詳細図である。
図7図6によるスロット付きガイド要素の平面図である。
図8】第1の状態における図1及び図2によるバルブ作動装置の例示的な実施形態の更なる平面図である。
図9】第2の状態における切り替えウィンドウの開始時の、図1及び図2によるバルブ作動装置の例示的な実施形態の図8の平面図である。
図10】第2の状態における切り替えウィンドウの端部における図1及び図2によるバルブ作動装置の例示的な実施形態の図8及び図9の平面図である。
図11】第2の状態における切り替えウィンドウの端部における図1及び図2によるバルブ作動装置の例示的な実施形態の拡大平面図である。
図12】切り替えウィンドウの後の、図1及び図2によるバルブ作動装置の例示的な実施形態の拡大平面図である。
図13図1及び図2によるバルブ作動装置で実現することができる2つの異なるバルブリフト曲線の例示的な実施形態である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明の更なる利点及び特徴は、以下の説明及び図面を参照することによって得られる。以下の説明及び図面は少なくとも部分的に概略的に示されている。
【0039】
図1は、バルブ作動装置100の例示的な実施形態を斜視図で示しており、バルブ作動装置100は、燃焼エンジンバルブ(ここでは図示せず)を作動させるように設計されている。
【0040】
図示された例示的な実施形態では、バルブ作動装置100は、第1のロッカアーム210及び第2のロッカアーム211を備え、それによって、2つのロッカアーム210、211は、好ましくは共通の回転軸213の周りに回転可能に取り付けられている。第1のロッカアーム210及び/または第2のロッカアーム211からバルブに作動運動を伝達するために、プッシュロッド220が第1のロッカアーム210に接続され、特に作動的に接続されている。ロッカアームの代わりに、本発明は他の伝達要素、例えばロッカビームを用いて実施することもできる。
【0041】
第1のロッカアーム210は、第1のカム214の輪郭をマークするように設計され、第2のロッカアーム211は、第2のカム215の輪郭をマークするように設計されている。2つのカム214、215は、特に共通のシャフト216に回転可能に取り付けられている。好ましくは、第1のカム214は、シャフト216の円周方向において第2のカム215とは異なる輪郭を有し、及び/またはカムローブは、互いから円周方向にオフセットされている。
【0042】
第1のロッカアーム210と第2のロッカアーム211とは、連結装置10を介して連結されている。連結装置10は、特に、連結装置10がブロックされている状態にあるときに第2のロッカアーム211から第1のロッカアーム210に作動運動を伝達するように、または連結装置10がブロックされていない状態にあるときに第2のロッカアーム211の運動をいわゆるロストモーション運動に変換するように構成されている。
【0043】
図示のような例示的な実施形態では、連結装置10は、第2のロッカアーム211上または第2のロッカアーム211の構成要素上にそれぞれ配置されている。好ましくは、連結装置10の長さがそれに沿って調節可能である連結装置10の長手方向軸線A(図3参照)は、回転軸213を中心とする第2のロッカアーム211の軌道に対して接線方向に位置している。縦軸Aは、シャフト216に対して半径方向に実質的に沿って、またはそれぞれ半径方向に平行に延在している。
【0044】
特に、第1のロッカアーム210は、第2のロッカアーム211の軌道内に延在することが好ましく、作動運動を伝達するために、例えば、ロックナット221を介して連結部分217内に取り付け可能で調節可能な第2の連結要素12(図3参照)を介して、第2のロッカアーム211または連結装置10にそれぞれ作動的に連結される連結部分217を有している。
【0045】
長さ方向の調節のために、連結装置10は、好ましくは、第1の連結要素11(図1には示されていない-例えば、図3を参照)と、好ましくはスリーブ状のロック要素13Bとを備えている。連結装置10の上述したブロックされていない状態に対応する第1の位置において、連結要素11及びロック要素13Bは、連結装置10の長手方向軸線Aに沿って、互いに対して軸方向に、好ましくは入れ子式に(telescopically)、変位可能である。
【0046】
連結装置10をブロックされていない状態とブロックされている状態との間で切り替えるために、ロック要素13Bは、好ましくは、連結装置10の長手方向軸線Aを中心として円周方向に、従って、少なくとも連結装置10のブロックされていない状態に対応する第1の位置とブロックされている状態に対応する第2の位置とに回動することができる。第1の連結要素11(図3)とロック要素13Bとの相対変位は、長手方向軸線Aに沿ってブロックされ、従って、連結装置10は、ロック要素13Bが第1の位置(以下、ブロック位置と呼ぶ)にあるとき、ブロックされている状態にある。従って、ロック要素13Bが第2の位置(以下、非ブロック位置という)にあるとき、第1の連結要素11とロック要素13Bとの長手方向軸線Aに沿った相対変位が可能になり、連結装置10はブロックされていない状態になる。
【0047】
ロック要素13Bは、好ましくは、半径方向外方に延在しているタペット13Aを有しており、このタペット13Aは、切り替え装置110によってロック要素13Bを作動させる働きをしている。具体的には、タペット13Aは、連結装置10の長手方向軸線Aに対して半径方向に延在するか、又は該長手方向軸線Aに対して略垂直に延在している。好ましくは、ロック要素13Bは、タペット13Aと共にロック装置を形成している。タペット13Aは、好ましくはタペット13Aに対応する設計の切り替え装置110のスロット付きガイド要素84のリンク85と相互作用するように配置されることが好ましい。
【0048】
これにより、切り替え装置110は、ロッカアーム210、211とは独立して、好ましくは制御バルブ(いずれも図示せず)と共に燃焼機関のハウジングに固定して取り付けられている。切り替え装置110は、好ましくは、アクチュエータ(図示せず)によって液圧的または電気機械的に作動され、更に好ましくは、燃焼エンジンのコントローラ(ECU)によって制御されている。
【0049】
ロックディスク112は、回転しないようにシャフト216に接続されている。後述するように、これは、切り替え装置110による連結装置10の作動を阻止または可能にするのに役立つ。
【0050】
図2は、図1による例示的な実施形態のバルブ作動装置100の回転軸213とは反対の側の平面図を示す。
【0051】
第1のロッカアーム210は、図2の左側に示されている。第1のカム214から第1のロッカアーム210へ、そして第1のピックアップ218を介してプッシュロッド220への、実線の矢印として示される力伝達の第1の経路Fは、好ましくは、第1のロッカアーム210の移動方向と略平行に延びている。
【0052】
第2のロッカアーム211は、図2の右側に示されている。第2のロッカアーム211から第1のロッカアーム210への力の伝達は、連結装置10がブロックされている状態にあるときにのみ行われる。連結装置10がブロックされている状態にあるとき、第2のカム215及び第2のロッカアーム210から第2のピックアップ219を介して連結装置10に伝達される力の第2の経路Fは、第2のロッカアーム211の移動方向と略平行に延びている。連結装置10からの力の伝達の第2の経路Fは、好ましくは連結部分217を介して、特に第2のロッカアーム211の運動軸に略垂直に、第1のロッカアーム210及びプッシュロッド220まで延びている。
【0053】
以上のことから、経路Fは、図示の実施形態では常にイネーブルとされている(enabled)ことになる。一方、経路Fは、連結装置10の状態に応じて選択的にアクティベートされている(activated)。
【0054】
図3は、連結装置10の中心軸Aが存在する、図2からのI-I平面におけるバルブ作動装置100の第2のロッカアーム211の実施形態の断面図を示す。図1を参照してある程度まで既に説明し、図3から十分に明らかなように、連結装置10は、第1の連結要素11と、タペット13Aを備えたロック要素13Bと、更に第2の連結要素12とを備えている。
【0055】
第1の連結要素11は、第2のロッカアーム211に力を伝達するように固定され、第2の連結要素12は、第1のロッカアーム210に、好ましくはその連結部分217に力を伝達するように固定され、更に好ましくは、ねじによってねじ込まれ、及び/またはロックナット221によって第1の連結要素11またはロック要素13Bに対するその位置に関して固定またはそれぞれ調節可能である。
【0056】
この例示的な実施形態では、ロック要素13Bは、第1の連結要素11の周囲に完全に係合している。すなわち、本発明による連結装置10のこの例示的な実施形態では、ロック要素13Bは、円周方向に閉じた構成である。
【0057】
図4は、連結装置10の領域における、図3のII-II平面における作動装置100の断面図の詳細を示す。ブロッキングを行うことができ、次いでそれを再びアンブロッキングすることができるようにするために、連結装置10の第1の連結要素11は、第1の連結要素11の長手方向に延在している外側の長手方向の歯部を有する第1の部分16と、同様に第1の連結要素11の長手方向に延在し、第1の部分16に直接隣接する歯部を有しない第2の部分18とを有している。更に、第2の部分18に隣接する第3の部分19が設けられ、この第3の部分は、同様に第1の連結要素11の長手方向に延在し、同様に外側の長手方向の歯部を呈している。ここで、長手方向の歯部とは、連結装置10の長手方向Aに対して略平行に延在している構造、例えば、溝、プリズム状突起等を備えることを意味している。
【0058】
スリーブ形状のロック要素13Bは、その軸方向長さの一部に亘って(特に、連結装置10の長手方向軸線Aに平行に)、第1の部分16及び第3の部分19の歯部の形状に対応する設計の内側の長手方向の歯部17を有している。内側の長手方向の歯部17は、最大でも歯部の無い第2の部分18の幅に対応する長さの領域に亘って軸方向に延びているだけであり、ロック要素13Bは、ロック要素13Bの内側の長手方向の歯部17が第1の連結要素11の外側の長手方向の歯部と係合せず、むしろ歯部の無い第2の部分18の高さ、すなわち部分16と部分19との間にあるように、外側の長手方向の歯部を有する第1の連結要素11がロック要素13Bに対して軸方向に変位されるときに、第1の軸(実質的に連結装置10の長手方向軸線Aに対応する)の周りに回転可能である。
【0059】
従って、この連結装置10では、第1の連結要素11の歯部の無い第2の部分18の外径は、第1の連結要素11の第1の部分16の外側の長手方向の歯部の先端円直径よりも小さく、それによって、特に、第2の部分18の外径は、第1の部分16の外側の長手方向の歯部の歯底円直径よりも小さいか、またはそれに等しい。
【0060】
第3の部分19の外側の長手方向の歯部は、ロック要素13Bにおける第1の連結要素11の案内を改善するのに役立ち、第3の部分19の外側の長手方向の歯部の歯形状は、好ましくは、第1の部分16の外側の長手方向の歯部の歯形状と同一の設計である。
【0061】
従って、この例示的な実施形態における第3の部分19は、歯部の無い第2の部分に直接隣接して、第1の連結要素11の自由端に配置され、第3の部分19の個々の歯部は、第1の部分16における外側の長手方向の歯部と整列して配置されている。
【0062】
これにより、ロック要素13Bは、外側の長手方向の歯部を有する連結要素11が、内側の長手方向の歯部17が第1の連結要素11の第1の部分16の外側の長手方向の歯部と係合せず、ロック要素13Bの内側の長手方向の歯部17が代わりに歯部の無い第2の部分18の高さで軸方向にあるように、ロック要素13Bに対して軸方向に変位されたとき、及びロック要素13Bが円周方向に回転されたとき、すなわち、第1の軸(長手方向軸線Aに対応する)の周りに回転されたときに、第1の連結要素11の第1の部分16の外側の長手方向の歯部の少なくとも1つの歯、特に全ての歯が、ロック要素13Bの内側の長手方向の歯部17の少なくとも1つの歯、特に全ての歯と軸方向に少なくとも部分的に整列され、特にそれらの端面が互いに当接するように、ブロック位置にある。
【0063】
第2のロッカアーム211の作動運動の第1のロッカアーム210への伝達は、ロック要素13Bがブロック位置にあり、連結要素11とロック要素13Bとの互いの軸方向の相対変位がブロックされるときに生じる。このブロック位置において、ロック要素13Bは、第2のロッカアームに固定的に連結された第1の連結要素11の動きに追従して、第2のロッカアーム211の作動運動を第2の連結要素12に伝達している。
【0064】
従って、ロック要素13Bが円周方向に回転されたとき、ロック要素13Bは、第1の連結要素11の第1の部分16の外側の長手方向の歯部の全ての歯がロック要素13Bの内側の長手方向の歯部17の全ての歯に対してオフセットして配置され、第1の連結要素11の外側の長手方向の歯部の歯が内側の長手方向の歯部17の歯と少なくともその軸方向長さの一部に亘って係合するように、非ブロック位置にある。ロック要素13Bが非ブロック位置にあるとき、第2のロッカアーム211の動きは、逆に、消散される(dissipated)か、またはそれぞれ無効になり、その結果、第1の連結要素11のいかなる動きも第2の連結要素12に伝達されること無く、第1の連結要素11がロック要素13Bの円筒状部分に妨げられること無く入り込む(dip into)ことができる。
【0065】
ロック要素13Bは、ロック要素13Bが非ブロック位置にあるとき、スプリング要素49によって第2の連結要素12に対して軸方向に支持されることが好ましい。第2の連結要素12の案内を改善するために、ロック要素13Bのシリンダベースは、好ましくは内側に湾曲しており、第2の連結要素12の自由端は、対応して凸状に湾曲している。
【0066】
このようにすることにより、機械的な切り替え装置によって、所定のバルブリフトを選択的に有効または無効にする(enabled or disabled)ことができる。
【0067】
図5は、図1の斜視図の拡大を示し、特に、バルブ作動装置100の切り替え装置110の実施形態が示されている。
【0068】
切り替え装置110は、スロット付きガイド要素84とトリガ要素111とを備え、スロット付きガイド要素84は、連結装置10を作動させるように構成されている。ロック要素13Bを連結装置10の長手方向軸線Aを中心としてその端まで回転させるために、タペット13Aは、スロット付きガイド要素84によって変位させることができる。これにより、スロット付きガイド要素84は、シャフト216(図5には示されていない)及び/または回転軸213に対して略平行に変位することができる。スロット付きガイド要素84とロック要素13Bとの相互作用を改善するために、スロット付きガイド要素84は、好ましくは、タペット13Aに面する端部に、ロック要素13Bのタペット13Aと相互作用するように設計され、好ましくはU字状プロファイルに設計された顎部85を有している。スロット付きガイド要素84は、ガイドロッド83及び作動ロッド81上に移動可能に取り付けられることが好ましく、トリガ要素111は、少なくとも作動ロッド81上に取り付けられる。ガイドロッド83及び作動ロッド81の長手方向軸線は、互いに平行に延び、好ましくは、回転軸213及びシャフト216にも平行であるが、作動運動及び連結装置10の長手方向軸線Aには垂直である。作動ロッド81は、スロット付きガイド要素84をガイドロッド83上で移動させるように構成されている。
【0069】
そのために、スロット付きガイド要素84及びトリガ要素111は、作動ロッド81上に配置された2つのストッパ89、89’の間に、2つのスプリング要素93、94によってクランプされている(ストッパ89’は、図5では隠されている)。これにより、ストッパ89、89’は、作動ロッド81の長手方向軸線に沿ったスプリング要素93、94の軸方向変位を阻止し、スロット付きガイド要素84に対するスプリング要素93、94の予荷重を可能にするために、作動ロッド81に固定された環状ディスクとして設計されることが好ましい。
【0070】
図6及び図7は、スロット付きガイド要素84の詳細図を示す。これによって特に認識できるのは、顎部85のU字状プロファイルが、連結装置10の長手方向軸線Aに対して垂直に配向された平面内に実質的に形成されていることである。これは、顎部85によるタペット13Aの最良の可能な包囲を保証している。ここで使用されるように、U字状プロファイルは、第1の顎部アーム85a及び第2の顎部アーム85bの提供を意味し、これらは、ベースから延び、ガイドロッド83に沿ったスロット付きガイド要素84の移動方向に応じてタペット13Aと相互作用している。
【0071】
図6及び図7によれば、作動ロッド81及びガイドロッド83と相互作用するスロット付きガイド要素84の部分もまた、略U字状である。ガイドロッド83を取り囲むと共にガイドロッド83に沿って移動可能なガイド部95からは、第1作動アーム95a及び第2作動アーム95bが延びており、ガイドロッド83からのそれぞれの遠端は、それぞれ作動ロッド81を緩く取り囲むので、作動ロッド81は、作動アーム95a、95b又はスロット付きガイド要素84に対してそれぞれ移動可能である。それによって、作動アーム95a、95bは、一方で、スプリング要素93、94のためのそれぞれのストッパとして働き、ストッパ89、89’に関して予荷重を可能にしている。他方、作動ロッドに沿って同様に移動可能なトリガ要素111は、スロット付きガイド要素84が移動するときにトリガ要素111も移動するように、作動アーム95a、95bの間に関連するリターンスプリング114と共に配置されている。
【0072】
ガイド部95は、作動アーム95a、95bと共に、接続部96を介して顎部85に連結され、好ましくは、ガイド部95、作動アーム95a、95b、顎部85及び接続部96は、一体構造である。接続部96は、図示の例示的な実施形態では、第2の作動アーム95bから始まるが、他の実施形態も可能である。
【0073】
切り替え装置110は、スロット付きガイド要素84の軸方向変位を阻止または可能にするためにトリガ要素111と相互作用するように設計されたブロッキング要素112を備える。図示の実施形態におけるブロッキング要素112は、既に上述したように、ロックディスクの形態で構成されている。従って、以下では、一般に、ロック要素及びロックディスクに対してそれぞれ参照番号112が使用されている。ロックディスク112は、第1及び第2のカム214、215に対して軸方向にオフセットされたシャフト216上に取り付けられ、従って、2つのカム214、215と同期して回転することができる。
【0074】
図示の実施形態のトリガ要素111は、作動ロッド81から半径方向に突出して配置され、ロックディスク112と相互作用することができる解放ピン115を有している。解放ピン115またはトリガ要素全体は、好ましくは作動ロッド81の周りに回動可能に取り付けられ、更に好ましくはリターンスプリング114によってスロット付きガイド要素84に対して所定の配置で保持されている。ここで、定義された構成は、特に、解放ピン115が作動ロッド81から半径方向に突出する方向として理解されるべきである。
【0075】
第1の位置において、解放ピン115は、連結装置10とは反対側のロックディスク112の第1の側面に配置されている。好ましくは、解放ピン115は、必要なときにシャフト216と共に回転するロックディスク112に沿って転がることができるように構成されている。
【0076】
作動ロッド81が、切り替え装置10を切り替えるために連結要素10に向かって軸方向に変位されると、解放ピン115がロックディスク112上に係止される。従って、これはまた、作動ロッド81またはガイドロッド83に沿ったトリガ要素111及びスロット付きガイド要素84の変位をそれぞれ阻止している。これにより、連結要素10とは反対側のスロット付きガイド要素84の側面に配置された第1のスプリング要素93に予荷重が加えられる。
【0077】
ロックディスク112は、その外周上にボイド(void)の形態の切り替えウィンドウ113を有している。切り替えウィンドウ113は、切り替えウィンドウ113が軸216を中心に回転するロックディスク112上の解放ピン115の領域に位置するとき、トリガ要素111、特に解放ピン115が切り替えウィンドウ113を通過できるように設計されている。ロックディスク112の円周に沿った切り替えウィンドウ113の長手方向の延長部は、切り替え装置110による連結装置10の作動が可能な時間のウィンドウを規定している。
【0078】
スプリング要素93の予荷重の結果として切り替えウィンドウ113を通過するトリガ要素111、特に解放ピン115は、トリガ要素111及びスロット付きガイド要素84の変位を可能にしている。次に、トリガ要素111及びスロット付きガイド要素84は、作動ロッド83に沿って、ここでは連結装置10の方向に、軸方向に変位されている。スロット付きガイド要素84の軸方向変位は、特にタペット13Aを介してロック要素13Bの回転運動を生じさせ、ロック要素13Bをブロック位置から非ブロック位置に、またはその逆に移動させる。
【0079】
第2の位置では、解放ピン115は、連結装置10に面するロックディスク112の第2の側面に配置されている。作動ロッド81が連結要素10から軸方向に離れるように変位すると、解放ピン115は、切り替えウィンドウ113の外側でロックディスク112に接触するので、ロックディスク112上に係止されている。従って、作動ロッド81またはガイドロッド83に沿ったトリガ要素111及びスロット付きガイド要素84の軸方向変位は、それぞれ阻止されている。これにより、連結要素84に面するスロット付きガイド要素84の側面に配置された第2のスプリング要素94に予荷重が加えられる。
【0080】
スプリング要素93の予荷重の結果として切り替えウィンドウ113を通過するトリガ要素111、特に解放ピン115は、トリガ要素111及びスロット付きガイド要素84の変位を可能にしている。次に、トリガ要素111及びスロット付きガイド要素84は、作動ロッド83上で、ここでは連結装置10から離れる方向に、軸方向に変位されている。スロット付きガイド要素84の軸方向変位は、特にタペット13Aを介してロック要素13Bの回転運動を生じさせ、ロック要素13Bをブロック位置から非ブロック位置に、またはその逆に切り替える。図8から図10は、この場合、それぞれ紙面に対して垂直に延在している回転軸213またはシャフト216に沿ったバルブ作動装置の例示的な実施形態の更なる平面図を示しており、この平面図は、今度は、スロット付きガイド要素84とは反対側からのものである。これにより、解放ピン115は、第1の位置(図8、ロックディスク112によって隠される)または第2の位置(図9及び図10)のいずれかにある。これらの図は、切り替え装置110による切り替えプロセスを説明する際に参照される。
【0081】
図8において、解放ピン115は第1の位置にある。作動ロッド81は、切り替え装置110の切り替えを決定するので、第2の位置に到達するために、スプリング要素(図示せず)を介してトリガ要素111に力が加えられ、従って、解放ピン115に力が加えられる。ロックディスク112は、トリガタペット、従って、解放要素111及びスロット付きガイド要素84の変位を阻止するので、解放ピン115は、ロックディスク112に当接し、それによって、解放ピン115に取り付けられたローラは、第1のカム214と共に回転するロックディスク112の見えない側に沿って転がる。
【0082】
解放ピンがロックディスク112のボイドすなわち切り替えウィンドウ113に達すると、解放ピン115はボイド113を通過して第2の位置に達する。トリガ要素111及びトリガ要素111に連結されたスロット付きガイド要素84は、解放ピン115によってガイドロッド83及び作動ロッド81上で変位される。この状態を図9に示す。
【0083】
図10において、カム214及びロックディスク112は、解放ピンが切り替えウィンドウ113のボイドの端部に到達するように、更に回転している。解放ピン115は、この時点で第2の位置にあるべきであり、次いで、ロックディスク112の目に見える側に沿って転がり始める。次に、トリガ要素111及びスロット付きガイド要素84は、ブロックされ、両方とも、作動ロッド81によって、今度は反対方向に、再びプレテンションをかけられ得る。
【0084】
しかしながら、切り替えウィンドウ113のボイドの端部では、ロックディスク112が第1の位置と第2の位置との間の中間位置にあるときに、ロックディスク112の側面(flank)が解放ピンにロックディスクの回転方向の荷重を加え、その結果、ロックピンが破断する危険性がある。
【0085】
これは、特に保護スプリング114の力に抗して、解放ピン115またはトリガ要素111全体を回動可能に取り付けることによって防止されている。好ましくは、図に示すように、トリガ要素111は、その端部まで、作動ロッド81上に回動可能に取り付けられる。保護スプリング114は、常に、解放ピン115をその元の位置に戻す。
【0086】
図11及び図12の更に拡大された描写に示されるように、解放ピン115は、位置合わせ不良のために、ボイドの側面、またはそれぞれの切り替えウィンドウ113に接触した場合、回動して離れる(pivot away)ことができる。トリガ要素111が最終的に第2の位置に到達すると、トリガ要素は、復帰または保護スプリング114(図11及び図12には示されていない)によって提供される力によって、再び後方に回動される。
【0087】
図13は、図1及び図2によるバルブ作動装置100で実現可能な2つの異なるバルブリフト曲線の例示的な実施形態を示す。これにより、バルブ開度はクランクシャフト角度の関数として与えられる。
【0088】
IVC-480バルブリフト曲線は、ミラーサイクルからのものであり、第1のカム214によって生成され、従って、前の図に示されたバルブ作動装置100の例示的な実施形態では、いわゆるミラーカム(Miller cam)である。
【0089】
ミラー運転における燃焼機関の運転は、消費に関して特に最適化されているが、ミラー運転では、シリンダ充填(cylinder fill)が低すぎるために始動することができない。
【0090】
IVC-580バルブリフト曲線は、異なる燃焼サイクルに属し、この燃焼サイクルでは、バルブは、図示されたミラーサイクルよりも8.7mm大きいより大きなバルブリフトを有すると共に、より長く開放されている。このIVC-580バルブリフト曲線は、第2のカム215によって生成される。従って、IVC-580バルブリフト曲線は、IVC-480バルブリフト曲線と重なる。
【0091】
図13に示されるように、IVC-580バルブリフト曲線の上昇は、経時的にIVC-480バルブリフト曲線の上昇に続く。これにより、バルブが開いたときにバルブ作動装置100内で発生する力の大部分が、より安定した剛性の第1のロッカアーム210を介して伝達されることが保証される(力の流れF)。その場合、約3分の1の力のみが可変または調整可能なロッカアーム211に作用している。従って、強度の低い設計とし、より小さな寸法、特により狭い寸法とすることができる。
【0092】
従って、シャフト216の回転動作方向に対して、第2のカム215の側面は、第1のカム214の側面よりも遅れて上昇する。その結果、第1のロッカアーム210の作動運動は、第2のロッカアーム211の作動運動とは異なる、好ましくはより早い時点で行われる。燃焼エンジン、特にいわゆる大型エンジンは、運転期間の90%以上に亘ってミラーサイクルで運転されることが好ましい。IVC-580バルブリフト曲線は、好ましくは、始動時及び過渡的なセールモード(コースティングモードとも呼ばれる)時にのみ使用される。
【0093】
上述の例示的な実施形態は、保護、適用、及び構成の範囲を限定することを決して意図しない単なる例であることに留意されたい。むしろ、前述の説明は、少なくとも1つの例示的な実施形態を実施するためのガイドラインを当業者に提供するものであり、それによって、特許請求の範囲及び特徴の同等の組合せから生じる保護の範囲から逸脱すること無く、特に、記載された構成要素の機能及び配置に関して、様々な修正を行うことができる。特に、バルブ作動装置は、カムフォロア又はロッカ又は同様の装置であっても良い。更に、切り替え装置は、特に特許文献3に示される変形に従って、異なる構成のものであり得る。
【符号の説明】
【0094】
10 連結装置
11 第1の連結要素
12 第2の連結要素
13A タペット
13B ロック要素
16 第1の連結要素11の第1の部分
17 スリーブ状ロック要素13Bの内側の長手方向の歯部
18 第1の連結要素11の第2の部分
19 第1の連結要素11の第3の部分
81 作動ロッド
83 ガイドロッド
84 スロット付きガイド要素
85 リンク、顎部、U字状プロファイル
85a 第1の顎部アーム
85b 第2の顎部アーム
89 ストッパ
93,94 スプリング要素
95 ガイド部
95a 第1の作動アーム
95b 第2の作動アーム
100 バルブ作動装置
110 切り替え装置
111 トリガ要素
112 ブロッキング要素
113 切り替えウィンドウ
114 保護スプリング
115 解放ピン
210 第1のロッカアーム
211 第2のロッカアーム
213 回転軸
214 第1のカム
215 第2のカム
216 シャフト
217 連結部分
218 第1のピックアップ
219 第2のピックアップ
220 プッシュロッド
221 ロックナット
A 連結装置10の長手方向軸線
第1の力の伝達経路
第2の力の伝達経路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【国際調査報告】