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特表2023-538090BTK阻害剤としての架橋二環式化合物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-06
(54)【発明の名称】BTK阻害剤としての架橋二環式化合物
(51)【国際特許分類】
   C07D 487/04 20060101AFI20230830BHJP
   A61K 31/53 20060101ALI20230830BHJP
   A61K 31/5377 20060101ALI20230830BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230830BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230830BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20230830BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20230830BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20230830BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20230830BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20230830BHJP
   A61P 7/00 20060101ALI20230830BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20230830BHJP
【FI】
C07D487/04 144
C07D487/04 CSP
A61K31/53
A61K31/5377
A61P43/00 111
A61P35/00
A61P35/02
A61P37/02
A61P29/00
A61P19/02
A61P25/00
A61P7/00
A61P13/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023512197
(86)(22)【出願日】2021-08-19
(85)【翻訳文提出日】2023-03-24
(86)【国際出願番号】 CN2021113538
(87)【国際公開番号】W WO2022037650
(87)【国際公開日】2022-02-24
(31)【優先権主張番号】202010836243.4
(32)【優先日】2020-08-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516095419
【氏名又は名称】ベイジン・イノケア・ファーマ・テク・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Beijing InnoCare Pharma Tech Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】Bldg.8,No.8 Life Park Rd.,ZGC Life Science Park,Changping Dist.,Beijing,PRC,102206
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】チェン、シャンヤン
(72)【発明者】
【氏名】パン、イーチョン
【テーマコード(参考)】
4C050
4C086
【Fターム(参考)】
4C050AA02
4C050BB05
4C050CC07
4C050EE04
4C050FF04
4C050FF05
4C050GG04
4C050HH04
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086CB05
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA02
4C086ZA81
4C086ZA96
4C086ZB07
4C086ZB11
4C086ZB15
4C086ZB26
4C086ZB27
4C086ZC20
(57)【要約】
本発明は、ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)及びそのC481変異体の阻害剤としての、架橋二環式化合物A及びB又はその薬学的に許容される塩を提供する。化合物A及びB又はその薬学的に許容される塩の製造方法も提供する。化合物A及びBは、BTK又はそのC481変異体が仲介する疾患、とりわけがん及び自己免疫疾患を治療及び/又は予防するために使用できる。
【化1】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
化合物A若しくはB、又はその薬学的に許容される塩、安定な同位体誘導体若しくは立体異性体。
【化1】
【請求項2】
化合物A若しくはB、又はその薬学的に許容される塩、安定な同位体誘導体若しくは立体異性体と、その薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物。
【請求項3】
BTK又はそのC481変異体が仲介する疾患を予防又は治療する方法であって、必要とする患者に、治療有効量の化合物A若しくはB、又はその薬学的に許容される塩、安定な同位体誘導体若しくは立体異性体を投与することを含み、前記BTK及びそのC481変異体が仲介する疾患が、がん、リンパ腫、白血病、自己免疫疾患及び炎症性疾患からなる群から選択される、方法。
【請求項4】
前記疾患が、B細胞リンパ腫、慢性リンパ球性白血病、小リンパ球性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、ワルデンストロームマクログロブリン血症、辺縁帯リンパ腫、ろ胞性リンパ腫、中枢神経系リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、多発性骨髄腫、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、多発性硬化症、ループス腎炎、シェーグレン症候群、IgG4関連疾患、特発性血小板減少性紫斑病、免疫性血小板減少症又は天疱瘡である、請求項3に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)及びそのC481変異体の活性を調節又は阻害するのに好適な、架橋二環式化合物又はその薬学的に許容される塩に関する。本発明は、また、前記化合物又はその薬学的に許容される塩の製造方法に関する。さらに、本発明は、がん及び自己免疫疾患の治療及び/又は予防における前記化合物又はその薬学的に許容される塩の用途及び使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
BTKは、細胞シグナル伝達を仲介する重要な非受容体型チロシンキナーゼであり、B細胞を含む形質細胞中に存在する。B細胞は、B細胞受容体(BCR)を介して活性化され、BTKは、BCR仲介シグナル伝達経路において重要な役割を果たす。B細胞上のBCRが活性化されると、BTKが活性化され、下流のホスホリパーゼC(PLC)の濃度が上昇し、IP3及びDAGシグナル伝達経路が活性化される。このシグナル伝達経路は、細胞の増殖、接着及び生存を促進でき、B細胞リンパ腫の発生において重要な役割を果たす。
【0003】
BTK阻害剤は、BTKの活性を阻害することでBリンパ腫細胞の増殖を阻害し、腫瘍細胞の接着を破壊し、腫瘍細胞のアポトーシスを促進し、BTKを、B細胞に関連するがん、例えば非ホジキンリンパ腫(NHL)、慢性リンパ球性白血病(CLL)/小リンパ球性リンパ腫(SLL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、ワルデンストロームマクログロブリン血症(WM)、辺縁帯リンパ腫(MZL)、中枢神経系白血病(CNSL)等の注目せずにはいられない標的にする。Abbvie/JNJのイブルチニブ、AZのアカラブルチニブ、Beigeneのザヌブルチニブ及びGilead/Onoのチラブルチニブを含め、いくつかのBTK阻害剤が現在上市されており、多くのBTK阻害剤が臨床研究中である。
【0004】
B細胞に関連するリンパ腫の治療に加え、BTK阻害剤は、B細胞自己抗体及びサイトカインの産生も阻害できる。自己免疫疾患では、B細胞は、自身の抗原を提示し、T細胞の活性化を促進し、組織損傷を引き起こす炎症性因子を分泌し、同時に、B細胞を活性化して自己免疫応答を誘発する多数の抗体を産生する。T細胞及びB細胞は、互いに相互作用して、制御されていない自己免疫応答をもたらし、組織の病理学的損傷を悪化させる正のフィードバック調節チェーンを形成する。研究によれば、体内には、インターロイキン10(IL-10)又はトランスフォーミング成長因子β1(TGF-β1)の分泌及び他の機構を介して、免疫応答を負に調節し、免疫が仲介する炎症を阻害できる制御性B細胞が存在することが示されている。したがって、BTKは、例えば関節リウマチ(RA)、多発性硬化症(MS)、全身性エリテマトーデス(SLE)、天疱瘡等の自己免疫疾患の標的となる可能性がある。自己免疫疾患への適応に関し、BTK阻害剤は依然として臨床研究中である。その中で、Sanofiのリルザブルチニブ及びMerck Seronoのエボブルチニブは、それぞれ、天疱瘡及び多発性硬化症の治療において、有効な結果を達成している。
【0005】
市販されている及び研究中のBTK阻害剤の大部分は、BTKタンパク質の481位のシステイン残基と共有結合することでBTKの活性を阻害する不可逆的阻害剤である。一部のB細胞リンパ腫の患者は、一定期間イブルチニブによる治療を受けた後に、BTKのC481の変異、例えばC481Sによってイブルチニブがタンパク質と共有結合する部位を失い、その結果、イブルチニブの活性が低下し、患者がイブルチニブ治療に対して耐性となった(Quinquenel, et. al Blood 2019, 134, 641-644)。
【0006】
BTKとそのC481変異体の活性を有効に阻害し、不可逆的BTK阻害剤に関連するC481変異によって生じる薬剤耐性を克服するBTK阻害剤が必要とされている。
【発明を実施するための形態】
【0007】
発明の詳細な説明
定義
別途説明しない限り、この出願で使用する以下の用語は、以下の意味を有する。
【0008】
「CSF/血漿比(Kp,CSF)」は、脳脊髄液(CSF)中の化合物濃度と血漿中の化合物濃度の比率を指す。化合物が血液脳関門(BBB)を通過する能力は、げつ歯類のCSF及び血漿中の化合物の濃度を測定し、その比率(Kp,CSF)を決定することによって評価される。
【0009】
「異性体」は、分子式は共通するが、原子の結合位置や空間配置が異なる化合物を指す。原子の空間配置が異なる異性体を「立体異性体」と呼ぶ。立体異性体には、光学異性体、幾何異性体及び配座異性体が含まれる。
【0010】
本発明の化合物は光学異性体として存在してもよい。光学異性体には、エナンチオマーとジアステレオマーが含まれる。エナンチオマーは、互いに鏡像であり、重ね合わせることができない2つの立体異性体の一方である。ラセミ混合物又はラセミ体は、キラル分子の等量の左旋性及び右旋性エナンチオマーを有するものである。ジアステレオマーは、互いに鏡像ではなく、互いに重ね合わせることができない立体異性体である。化合物が単一の異性体であり、絶対配置が決定されている場合、キラル炭素原子の周囲の置換基の配置により、「R」又は「S」異性体と呼ばれる。絶対配置が決定されていない場合、測定された旋光度に応じて、(+)又は(-)異性体と呼ばれる。光学異性体を製造し分離する方法は、当業者に知られている。
【0011】
本発明の化合物は、炭素-炭素二重結合、炭素-窒素二重結合、シクロアルキル基又はヘテロシクリル基の周囲の置換基の分布から生じる幾何異性体を有していてもよい。炭素-炭素二重結合又は炭素-窒素結合の周囲の置換基は、Z又はEの立体配置にあるといい、シクロアルキル又は複素環の周囲の置換基は、シス又はトランスの立体配置にあるという
【0012】
本発明の化合物は、また、ケト-エノール互変異性などの互変異性であってもよい。
【0013】
本発明は、任意の互変異性又は立体異性の形態及びその混合物を含み、化合物の命名法又は化学構造式で特定される互変異性又は立体異性の形態には限定されない。
【0014】
「同位体」には、本発明の化合物中の原子の全ての安定な同位体が含まれる。同位体は、原子番号が同じで質量が異なる原子を含む。本発明の化合物に組み込むのに適した同位体の例は、水素、炭素、窒素、酸素、リン、フッ素及び塩素の同位体であり、H(D)、H、13C、14C、15N、18O、17O、31P、32P、35S、18F及び36Clが例示されるが、これらには限定されない。本発明の同位体標識化合物は、一般に、当業者に知られている従来技術によって、又は、非同位体標識試薬に代えて適切な同位体標識試薬を使用して、実施の形態に記載した方法と同様の方法によって製造できる。このような化合物には、生物学的活性の決定における標準物質及び試薬といった、さまざまな潜在的な用途がある。安定な同位体では、そのような化合物は、生物学的、薬理学的又は薬物動態的特性を有利に変化させる可能性がある。重水素H(D)は、本発明の好ましい同位体である。例えば、メチル、メチレン又はメチンの水素を、重水素で置換できる。
【0015】
本発明の化合物は、プロドラッグの形態で投与できる。「プロドラッグ」は、in vivoの生理学的条件下で、例えば酸化、還元及び加水分解(それぞれ酵素の関与の有無にかかわらず生じる)によって、生物学的に活性な化合物に変換される誘導体を指す。プロドラッグの例は、アミノがアシル化、アルキル化又はリン酸化された本発明の化合物、例えばエイコサノイルアミノ、アラニルアミノ及びピバロイルオキシメチルアミノであり、ヒドロキシルがアシル化、アルキル化又はリン酸化されたか、ボレートに変換された本発明の化合物、例えばアセトキシ、パルミトイルオキシ、ピバロイルオキシ、スクシニルオキシ、フマロイルオキシ及びアラニルオキシであり、カルボニルがエステル化又はアミド化された本発明の化合物であり、チオールが、ペプチドのような薬物を標的及び/又は細胞のサイトゾルに選択的に送達する担体分子と、ジスルフィド架橋を形成する本発明の化合物である。プロドラッグは、本発明の化合物から周知の方法で製造できる。
【0016】
「薬学的に許容される塩」は、本発明の化合物が1つ以上の酸性基又は塩基性基を含むという条件で、本発明の化合物と、無機アルカリ又は無機酸及び有機塩基又は有機酸を含む薬学的に許容される塩基又は酸から作られる塩を指す。酸性基を含む本発明の化合物は、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩又はアンモニウム塩などの塩の形態で存在できる。例えば、そのような塩は、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩若しくはアンモニア、又はエチルアミン、エタノールアミン、トリエタノールアミン若しくはアミノ酸の塩などの有機アミン塩を含む。塩基性基を含む本発明の化合物は、無機酸塩又は有機酸塩などの塩の形態で存在できる。適切な酸の例には、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸、硝酸、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、シュウ酸、酢酸、酒石酸、乳酸、サリチル酸、安息香酸、ギ酸、プロパン酸、ピバル酸、マロン酸、コハク酸、ピメリン酸、フマル酸、マレイン酸、リンゴ酸、スルファミン酸、フェニルプロピオン酸、グルコン酸、アスコルビン酸、イソニコチン酸、クエン酸、アジピン酸及び当業者に知られている他の酸が含まれる。本発明の化合物が分子内に酸性基と塩基性基を含む場合、本発明は、塩の形態に加えて分子内塩を更に含む。各塩は、当業者に知られている従来の方法で、例えば、溶媒又は分散剤中で本発明の化合物と有機若しくは無機の酸若しくは塩基とを混合することで、又は、別の塩との陰イオン交換若しくは陽イオン交換することで得ることができる。
【0017】
「医薬組成物」は、本発明の化合物又はその薬学的に許容される塩、安定な同位体誘導体、異性体、プロドラッグ及びそれらの混合物、並びに、薬学的に許容される担体及び添加物といった他の成分の1つ以上を含む組成物を指す。
【0018】
「がん、リンパ腫又は白血病」は、B細胞悪性腫瘍、B細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、慢性リンパ球性白血病、小リンパ球性リンパ腫、非ホジキンリンパ腫(例.ABC-DLBCL)、マントル細胞リンパ腫、ろ胞性リンパ腫、ワルデンストロームマクログロブリン血症、辺縁帯リンパ腫、中枢神経系リンパ腫、慢性リンパ球性リンパ腫、B細胞前リンパ球性白血病、形質細胞リンパ腫、多発性骨髄腫、種々の固形腫瘍(例.黒色腫、骨がん、脳のがん、結腸がん、肝がん、皮膚がん、腎がん、肺がん、筋肉のがん、膀胱がん、消化管/胃腸がん、乳がん、卵巣がん、頭頚部がん、前立腺がん)等を含むがこれらに限定されるものではない。
【0019】
「自己免疫又は炎症性疾患」は、関節炎、多発性硬化症、骨粗しょう症、炎症性腸疾患、大腸炎、クローン病、狼瘡、関節リウマチ、乾癬性関節炎、ループス腎炎、シェーグレン症候群、IgG4関連疾患、特発性血小板減少性紫斑病、免疫性血小板減少症、ライト症候群、乾癬、ベーチェット病、喘息、天疱瘡、糖尿病、重症筋無力症、ギランバレー症候群、バセドウ病、橋本甲状腺炎、血管炎、自己免疫性血管炎、多発性血管炎を伴う肉芽腫、自己免疫性肝炎等を含むがこれらに限定されるものではない。
【0020】
「治療有効量」は、BTKとそのC481変異体の活性を有効に阻害し、及び/又はBTKとそのC481変異体が仲介する疾患を治療若しくは予防できる本発明の化合物の量を指す。
【0021】
「患者」は、哺乳動物、好ましくはヒトを指す。
【0022】
本発明は、可逆的BTK阻害剤としての2種の架橋二環式化合物A及びB(以下に示す構造を有する)に関し、これらの化合物は、BTKとそのC481変異体の活性を有効に阻害し、不可逆的BTK阻害剤に関連するC481変異によって生じる薬剤耐性を克服する。
【0023】
本発明は、化合物A若しくはB、又はその薬学的に許容される塩、プロドラッグ、安定な同位体誘導体、異性体及びそれらの混合物を対象とする。
【0024】
【化1】
【0025】
化合物A及びBは、BTKとそのC481変異体の活性を有効に阻害し、IC50が10nM未満である。化合物A及びBは非脳透過剤であり、Kp,CSFが0.1未満である。
【0026】
本発明は、また、化合物A若しくはB、又はその薬学的に許容される塩、安定な同位体誘導体、異性体及びプロドラッグ、並びに、1つ以上の薬学的に許容される担体又は添加物を含む医薬組成物に関する。
【0027】
本発明はさらに、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩、安定な同位体誘導体、異性体、プロドラッグ及びそれらの混合物と、少なくとも1種の追加の治療剤とを含む医薬組成物に関し、前記治療薬は、低分子化学療法薬(例.抗炎症性ステロイド薬、キナーゼ標的化薬、アポトーシス阻害剤、炎症モジュレーター、細胞毒性薬、DNA損傷関連薬)又は高分子免疫及び/若しくは炎症モジュレーター(例.CD20抗体、CD19抗体、PD抗体)であってもよい。
【0028】
化合物A又はB及び別の治療薬は、同じ医薬組成物中に存在してもよく、又は別々の医薬組成物中に存在してもよい。式(I)で表される化合物及び別の薬剤は、同じ又は異なる形態で、同時に又は連続して投与してもよい。
【0029】
本発明は、BTK又はそのC481変異体が仲介する疾患の治療又は予防方法を提供する。該方法は、必要とする患者に、治療有効量の化合物A若しくはB又はその薬学的に許容される塩、安定な同位体誘導体、異性体、プロドラッグ及びそれらの混合物を投与することを含む。疾患には、例えば、B細胞悪性腫瘍、B細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、慢性リンパ球性白血病、小リンパ球性リンパ腫、非ホジキンリンパ腫(例.ABC-DLBCL)、マントル細胞リンパ腫、ろ胞性リンパ腫、ワルデンストロームマクログロブリン血症、辺縁帯リンパ腫、中枢神経系リンパ腫、慢性リンパ球性リンパ腫、B細胞前リンパ球性白血病、形質細胞リンパ腫、多発性骨髄腫、種々の固形腫瘍(例.肺がん、前立腺がん、頭頚部がん、乳がん、卵巣がん、子宮がん、膵がん、結腸がん、直腸がん、胃がん、食道がん、脳のがん、肝臓がん、腎臓がん、皮膚のがん、筋肉のがん、上皮がん、膀胱がん、神経芽腫、黒色腫、骨のがん、黒色腫)、関節炎、多発性硬化症、骨粗しよう症、炎症性腸疾患、大腸炎、クローン病、狼瘡、関節リウマチ、乾癬性関節炎、ループス腎炎、シェーグレン症候群、IgG4関連疾患、特発性血小板減少性紫斑病、免疫性血小板減少症、ライト症候群、乾癬、ベーチェット病、喘息、天疱瘡、糖尿病、重症筋無力症、ギランバレー症候群、グレーブス病、橋本甲状腺炎、血管炎、自己免疫性血管炎、多発性血管炎を伴う肉芽腫、自己免疫性肝炎といった、がん、リンパ腫、白血病、自己免疫疾患又は炎症疾患、とりわけ、B細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、慢性リンパ球性白血病、小リンパ球性リンパ腫、非ホジキンリンパ腫(例.ABC-DLBCL)、マントル細胞リンパ腫、ろ胞性リンパ腫、ワルデンストロームマクログロブリン血症、辺縁帯リンパ腫、中枢神経系リンパ腫、慢性リンパ球性リンパ腫、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、多発性硬化症、ループス腎炎、乾燥症候群、IgG4関連疾患、特発性血小板減少性紫斑病、免疫性血小板減少症、天疱瘡、蕁麻疹等が含まれるが、これらには限定されない。
【0030】
本発明では、医薬組成物は、錠剤、カプセル剤、液剤、凍結乾燥調製物及び注射剤を含むがこれらには限定されない剤形であってもよい。
【0031】
本発明の医薬製剤は、所定の量の活性成分を含む投与単位の形態で投与してもよい。このような単位は、治療する疾患、投与方法、並びに患者の年齢、体重及び状態に応じて、1mg~1g、好ましくは5mg~700mg、特に好ましくは10mg~500mgの本発明の化合物を含んでいてもよい。医薬製剤は、製薬分野で周知の方法により、例えば、活性成分を1種以上の添加物又は1種以上のアジュバントとともに製剤化することによって製造してもよい
【0032】
本発明の医薬製剤は、任意の適切な方法、例えば経口(経口又は舌下を含む)又は非経口(皮下、筋肉内、静脈内又は皮内を含む)による投与に好適である。
【0033】
本発明は、化合物A及びBの製造方法も提供する。本発明の化合物の製造は、以下の代表的な方法及び実施例で行ってもよいが、これらの方法及び例は、本発明の範囲を如何なる形でも限定するものと考えるべきではない。本発明の化合物は、当業者に公知の合成技術により、又は当技術分野で公知の方法と本発明の方法との組合せにより、合成してもよい。反応の各工程で得られた生成物は、抽出、ろ過、蒸留、結晶化及びクロマトグラフィー分離を含むがこれらには限定されない、当技術分野で公知の分離技術によって単離する。合成に使用する出発物質及び試薬は、文献(例.SciFinder)に基づいて従来の方式で製造してもよく、又は購入してもよい。
【実施例
【0034】
本発明における出発材料は、当技術分野における公知の方法で合成するか、又はABCR GmbH & Co. KG、Acros Organics、Aldrich Chemical Company、Accela ChemBio Inc.、Beijing Ouhe等から購入した。
【0035】
化合物の構造は、核磁気共鳴(NMR)又は質量分析(MS)によって決定した。NMR測定は、Bruker ASCEND-400 NMR分光計を使用した。溶媒として、重水素化ジメチルスルホキシド(DMSO-d)、重水素化クロロホルム(CDCl)又は重水素化メタノール(CDOD)を使用した。内部標準物質はテトラメチルシラン(TMS)を用い、化学シフトを10-6(ppm)の単位で示した。MS測定は、Agilent SQD(ESI)質量分析計(Agilent6120)を使用した。
【0036】
HPLC測定は、Agilent 1260 DAD高圧液体クロマトグラフィー(カラム:Poroshell120 EC-C18、50×3.0mm、2.7μm)又はWaters Arc高圧液体クロマトグラフィー(カラム:Sunfire C18、150×4.6mm、5μm)を使用した。
【0037】
薄層クロマトグラフィー(TLC)は、厚さ0.15~0.2mmのQingdao Haiyang Chemical Co.,Ltd.製GF254シリカゲルプレートを使用し、薄層クロマトグラフィーによる生成物の分離/精製は、厚さ0.4~0.5mmのシリカプレートを使用した。
【0038】
カラムクロマトグラフィーは、通常、Qingdao Haiyang Chemical Co.,Ltd.製の200~300メッシュシリカゲルを使用した。
【0039】
実施例において別に説明しない限り、反応は、室温(20~30℃)、容量が約1Lのバルーンを用いるアルゴン又は窒素雰囲気中で実行した。
【0040】
水素化は、真空にした後に水素を充填し、反応容器に取り付けた容量が約1Lのバルーンを用いる水素雰囲気中で、繰り返し3回実施した。
【0041】
反応は、Agilent LCMS (1260/6120)又は薄層クロマトグラフィーを使用して監視した。カラムクロマトグラフィー及びTLCの溶出溶媒系は、a)ジクロロメタン/メタノール、b)石油エーテル/酢酸エチル、又は記載した他の系を使用した。溶媒の比は、化合物の極性に従って調整し、必要に応じて、少量のTEA又は酸性若しくはアルカリ性試薬を添加して更に調整した。化合物の精製は、MS検出器(SQD2)を備えたWatersのMS誘導自動調製システム(分取HPLCという)を使用して行い、適切なアセトニトリル/水(TFA又はギ酸を0.1%含有)又はアセトニトリル/水(25~28%水酸化アンモニウムを0.05%含有)の勾配(XBridge-C18、19×150mm、5μm)を用い、流速20mL/分で溶出させた。一部の化合物は、分取HPLCによる精製後、得られた画分に1N塩酸を添加し、続いて、減圧下で乾燥することによって、塩酸塩として製造した。
【0042】
DMFは、N,N-ジメチルホルムアミドを指す。
DIPEAは、N,N-ジイソプロピルエチルアミンを指す。
DBUは、1,8-ジアザビシクロウンデカ-7-エンを指す。
NISは、N-ヨードスクシンイミドを指す。
Pd(dppf)Clは、[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウムを指す。
HATUは、2-(7-アザベンゾトリアゾール)-N,N,N’,N’-テトラメチル尿素ヘキサフルオロホスフェートを指す。
【0043】
実施例1 4-(4-アミノ-5-(4-((5-フルオロ-2-メトキシベンズアミド)メチル)フェニル)イミダゾ[5,1-f][1,2,4]トリアジン-7-イル)ビシクロ[2.2.2]オクタン-1-カルボン酸(化合物A)の製造
【0044】
【化2】
【0045】
工程1 (4-((5-フルオロ-2-メトキシベンズアミド)メチル)フェニル)ボロン酸(1b)
0℃のジクロロメタン(10mL)中の5-フルオロ-2-メトキシ安息香酸1a(340mg、2mmol)及びDMF(0.05mL)の溶液に、塩化オキサリル(279mg、2.2mmol)を添加した。混合物を室温に徐々に加温し、1時間撹拌し、次いで、再度0℃に冷却し、THF(20mL)中の(4-(アミノメチル)フェニル)ボロン酸塩酸塩(374mg、2mmol)及びDIPEA(516mg、4mmol)の懸濁液を添加した。室温で15時間撹拌した後、溶媒を減圧下で除去した。残留物を酢酸エチル(100mL)に溶解し、飽和塩化アンモニウム(50mL)及びブライン(50mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過した。ろ液を減圧下で濃縮して表題化合物1bを得た(460mg、76%)。
MS m/z (ESI): 304 [M+1]
【0046】
工程2 1-(2,5-ジオキソピロリジン-1-イル)4-メチルビシクロ[2.2.2]オクタン-1,4-ジカルボキシレート(1d)
0℃のTHF(50mL)中の(メトキシカルボニル)ビシクロ[2.2.2]オクタン-1-カルボン酸1c(850mg、4mmol)及び1-ヒドロキシ-ピロリジン-2,5-ジオン(552mg、4.8mmol)の溶液に、DCC(1.07g、5.2mmol)を添加した。室温に加温し、15時間撹拌した後、混合物を0℃に冷却し、ろ過した。ろ液を濃縮乾固して表題化合物1dを得た(1.4g、粗生成物)。
MS m/z (ESI): 310 [M+H]+
【0047】
工程3 4-(((5-オキソ-4,5-ジヒドロ-1,2,4-トリアジン-6-イル)メチル)カルバモイル)ビシクロ[2.2.2]オクタン-1-カルボン酸メチル(1e)
DMF(5mL)中の6-アミノメチル-4H-[1,2,4]トリアジン-5-オン(252mg、2mmol)及びDIPEA(1.03g、8mmol)の溶液に、THF(5mL)中の1d(1.4g、粗生成物)の溶液を滴下した。混合物を3時間撹拌し、次いで、濃縮乾固した。残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン/メタノール=50/1~10/1)で精製して表題化合物1eを得た(150mg、2工程で23%)。
MS m/z (ESI): 321 [M+H]+
【0048】
工程4 4-(4-オキソ-3,4-ジヒドロイミダゾ[5,1-f][1,2,4]トリアジン-7-イル)ビシクロ[2.2.2]オクタン-1-カルボン酸メチル(1f)
MeCN(10mL)中の1e(150mg、0.47mmol)の溶液に、POCl(2mL)を添加した。混合物を80℃に加熱し、5時間撹拌した。次いで、混合物を濃縮乾固して表題化合物1fを得た(150mg、100%)。
MS m/z (ESI): 303 [M+H]+
【0049】
工程5 4-(5-ヨード-4-オキソ-3,4-ジヒドロイミダゾ[5,1-f][1,2,4]トリアジン-7-イル)ビシクロ[2.2.2]オクタン-1-カルボン酸メチル(1g)。
DMF(5mL)中の1f(150mg、粗生成物、0.47mmol)の溶液に、NIS(529mg、2.35mmol)を添加した。混合物を55℃に加熱し、5時間撹拌した。室温に冷却した後、混合物を分取HPLCで精製して表題化合物1gを得た(80mg、40%)。
MS m/z (ESI): 429 [M+H]+
【0050】
工程6 4-(4-アミノ-5-ヨードイミダゾ[5,1-f][1,2,4]トリアジン-7-イル)ビシクロ[2.2.2]オクタン-1-カルボン酸メチル(1h)
ピリジン(2mL)中の1H-[1,2,4]トリアゾール(131mg、1.9mmol)の溶液に、POCl(86mg、0.56mmol)を添加した。混合物を10分間撹拌し、ピリジン(2mL)中の1g(80mg、0.19mmol)の溶液を添加した。更に1時間撹拌した後、混合物にNHの溶液(イソプロパノール中2M、10mL)を添加し、0.5時間撹拌した。次いで、混合物を濃縮乾固し、残留物を分取HPLCで精製して表題化合物1hを得た(60mg、74%)。
MS m/z (ESI): 428 [M+H]+
【0051】
工程7 4-(4-アミノ-5-(4-((5-フルオロ-2-メトキシベンズアミド)メチル)フェニル)イミダゾ[5,1-f][1,2,4]トリアジン-7-イル)ビシクロ[2.2.2]オクタン-1-カルボン酸メチル(1i)。
【0052】
1h(60mg、0.14mmol)、1b(64mg、0.21mmol)、KCO(39mg、0.28mmol)、Pd(dppf)Cl(11mg、0.014mmol)、1,4-ジオキサン(4mL)及び水(1mL)の混合物を窒素雰囲気中で100℃に加熱し、2時間撹拌した。室温に冷却した後、混合物を濃縮乾固し、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(石油エーテル/EtOAc=20:1~1:2)で精製して表題化合物1iを得た(60mg、77%)。
MS m/z (ESI): 559 [M+H]+.
1H NMR (400 MHz, CD3OD) δ 7.80 (s, 1H), 7.64 - 7.57 (m, 3H), 7.52 (d, J = 8.3 Hz, 2H), 7.25 (ddd, J = 9.1, 7.6, 3.3 Hz, 1H), 7.17 (dd, J = 9.1, 4.2 Hz, 1H), 4.69 (s, 2H), 3.96 (s, 3H), 3.66 (s, 3H), 2.26 (dd, J = 9.7, 6.2 Hz, 6H), 1.93 (dd, J = 9.7, 6.3 Hz, 6H).
【0053】
工程8 4-(4-アミノ-5-(4-((5-フルオロ-2-メトキシベンズアミド)メチル)フェニル)イミダゾ[5,1-f][1,2,4]トリアジン-7-イル)ビシクロ[2.2.2]オクタン-1-カルボン酸(A)
THF(10mL)中の1i(55mg、0.098mmol)の溶液に、水酸化リチウム溶液(1N、4mL)を添加した。混合物を40℃に加熱し、48時間撹拌した。室温に冷却した後、反応混合物に氷酢酸(1mL)を添加し、酢酸エチル(2×50mL)で抽出した。合わせた有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過し、減圧下で濃縮した。残留物を分取HPLCで精製して表題化合物Aを得た(40mg、固体、75%)。
MS m/z (ESI): 545 [M+1]
1H NMR (400 MHz, CD3OD) δ 7.80 (s, 1H), 7.64 - 7.56 (m, 3H), 7.53 (d, J = 8.1 Hz, 2H), 7.28 - 7.22 (m, 1H), 7.17 (dd, J = 9.1, 4.2 Hz, 1H), 4.69 (s, 2H), 3.96 (d, J = 7.6 Hz, 3H), 2.30 - 2.22 (m, 6H), 1.98 - 1.90 (m, 6H).
【0054】
実施例2 N-(4-(4-アミノ-7-(4-(モルホリン-4-カルボニル)ビシクロ[2.2.2]オクタン-1-イル)イミダゾ[5,1-f][1,2,4]トリアジン-5-イル)ベンジル)-5-フルオロ-2-メトキシベンズアミド(化合物B)の製造
【0055】
【化3】
【0056】
DMF(5mL)中のA(75mg、0.137mmol)、モルホリン(12mg、0.137mmol)及びDIPEA(53mg、0.409mmol)の溶液に、HATU(58mg、0.151mmol)を添加した。得られた混合物を5分間撹拌し、次いで、分取HPLCで精製して表題化合物Bを得た(40mg、固体、48%)。
MS m/z (ESI): 614.2 [M+H]+
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 8.84 (t, J = 6.0 Hz, 1H), 7.88 (s, 1H), 7.58 (d, J = 8.2 Hz, 2H), 7.52 (dd, J = 9.2, 3.3 Hz, 1H), 7.46 (d, J = 8.2 Hz, 2H), 7.39 - 7.29 (m, 1H), 7.19 (dd, J = 9.1, 4.3 Hz, 1H), 4.57 (d, J = 6.1 Hz, 2H), 3.90 (s, 3H), 3.57 (d, J = 9.6 Hz, 8H), 2.21 - 2.09 (m, 6H), 1.97 - 1.84 (m, 6H).
【0057】
実施例3 BTK活性阻害アッセイ
in vitroキナーゼアッセイにより、本発明化合物のBTK活性に対する効果を評価した(表1)。
【0058】
実験方法を以下に要約する:
ホモジニアス均一時間分解蛍光(HTRF)キナーゼ検出キット(Cisbio、カタログ番号62TK0PEC)を用い、BTKの酵素活性を、キナーゼ反応における基質のリン酸化のレベルを検出することで決定する。反応バッファーは、キット中の酵素反応バッファー(1×)、5mMのMgCl、1mMのDTT、10nMのSEB及び0.01%のTween(登録商標)20を含む;キナーゼ反応溶液は、反応バッファーで0.2ng/μLに希釈したヒト由来組換えBTKタンパク質(Carna Biosciences、カタログ番号08-180)を含む;基質反応溶液は、反応バッファーで0.5μMに希釈したビオチン標識チロシンキナーゼ基質及び40μMのATPを含む;検出バッファーは、反応バッファーで0.05ng/μLに希釈したEu3+標識ケージ抗体、及び31.25nMに希釈したストレプトアビジン標識XL665抗体を含む;試験化合物は、DMSOに溶解して100μMに希釈し、続いて、DMSOで最低濃度6.1nMまで4段階希釈し、反応バッファーで最終的に40倍希釈する。化合物のIC50値が非常に低い場合、化合物の初期濃度を小さくする。
【0059】
4μLの試験化合物溶液及び2μLのキナーゼ反応溶液を384ウェル検出プレート(Corning, catalog number 3674)に加え、十分に混合し、室温で15分間インキュベートする;4μLの基質反応溶液を加え、50分間インキュベートする;10μLの検出バッファーを加え、十分に混合し、60分間放置する;Envisionプレートリーダー(Perkin Elmer)を使用して620nm及び665nmにおけるシグナルを検出する。シグナルの値(665nmの吸光度/620nmの吸光度)は、基質のリン酸化の程度と正に相関しており、それによって、BTKのキナーゼ活性を検出する。この実験では、BTKを含まない群が陰性対照(100%阻害)であり、BTKを含むが化合物を含まない群が陽性対照(0%阻害)である。阻害曲線をプロットし、試験化合物の対応するIC50値を、XLfitソフトウェア(ID Business Solutions Ltd., UK)で計算する。
【0060】
実施例4 BTK C481S活性阻害アッセイ
in vitroキナーゼアッセイにより、本発明化合物のBTK C481S活性に対する効果を評価した(表1)。
【0061】
実験方法を以下に要約する:
ホモジニアス時間分解蛍光(HTRF)キナーゼ検出キット(Cisbio、カタログ番号62TK0PEC)を用い、BTK C481Sの酵素活性を、キナーゼ反応における基質のリン酸化のレベルを検出することで決定する。反応バッファーは、キット中の酵素反応バッファー(1×)、5mMのMgCl、1mMのDTT、10nMのSEB及び0.01%のTween(登録商標)20を含有する;キナーゼ反応溶液は、反応バッファーで1.5ng/μLに希釈したヒト組換えBTK C481Sタンパク質(社内で精製)を含む;基質反応溶液は、反応バッファーで0.5μMに希釈したビオチン標識チロシンキナーゼ基質及び35μMのATPを含む;検出バッファーは、反応バッファーで0.05ng/μLに希釈したEu3+標識ケージ抗体、及び31.25nMに希釈したストレプトアビジン標識XL665抗体を含む;試験化合物は、DMSOで溶解して100μMに希釈し、続いて、DMSOで最低濃度6.1nMまで4段階希釈し、反応バッファーで最終的に40倍希釈する。化合物のIC50値が非常に低い場合、化合物の初期濃度を小さくする。
【0062】
4μLの試験化合物溶液及び2μLのキナーゼ反応溶液を384ウェル検出プレート(Corning, catalog number 3674)に加え、十分に混合し、室温で15分間インキュベートする;4μLの基質反応溶液を加え、50分間インキュベートする;10μLの検出バッファーを加え、十分に混合し、60分間放置する;Envisionプレートリーダー(Perkin Elmer)を使用して620nm及び665nmにおけるシグナルを検出する。シグナルの値(665nmの吸光度/620nmの吸光度)は、基質のリン酸化の程度と正に相関しており、それによって、BTK C481Sのキナーゼ活性を検出する。この実験では、BTKを含まない群が陰性対照(100%阻害)であり、BTK C481Sを含むが化合物を含まない群が陽性対照(0%阻害)である。阻害曲線をプロットし、試験化合物の対応するIC50値を、XLfitソフトウェア(ID Business Solutions Ltd., UK)で計算する。
【0063】
表1は、化合物A及びBのBTKのIC50及びBTK C481SのIC50を示す。
【0064】
【表1】
【0065】
実施例5 脳透過活性試験
0.5mg/mLの、N,N-ジメチルアセトアミドを5%、solutolを10%及び生理食塩水を85%を有する溶液中の化合物A又はBを、12匹の雄のSprague Dawleyラットに、用量5mg/kgで経口投与した。投与の1、2、4及び8時間後に、血漿、脳組織ホモジネート(Kp,脳を測定するため)及び脳脊髄液(Kp,CSFを測定するため)の試料を、(各時点で3匹の動物から)収集した。
【0066】
API-4500質量分析計のLC-MS/MSにより、血漿、脳組織ホモジネート及びCSF中の化合物の濃度を定量した。分析の定量限界(LOQ)は1ng/mLであった。薬物動態学的(PK)パラメータを、WinNonlinを用いて非コンパートメント法で計算した。Kp,脳及びKp,CSFを、それぞれ、AUC脳/AUC血漿及びAUC CSF/AUC血漿として計算した。結果を表2に示し、これは、化合物AとBの両者が非脳透過剤であることを示す。
【0067】
【表2】
【0068】
本発明、並びにそれを製造し、使用する様式及び方法が、本発明が関係する技術分野の当業者がそれを製造し、使用できるように、完全、明瞭、簡潔かつ正確な用語でこの明細書に記載されている。この明細書は本発明の好ましい態様を記載したもので、特許請求の範囲に記載した本発明の範囲から逸脱することなく、それに修正を加えてもよいことが理解される。発明とみなされる主題を特に指摘し、明確に請求するために、以下の特許請求の範囲をもって本明細書の結びとする。
【国際調査報告】