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特表2023-538092繊維セメント生産のための高い固形物保持能力を有する方法、高い固形物保持能力を有する使用及び生産方法、並びに繊維セメント物品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-06
(54)【発明の名称】繊維セメント生産のための高い固形物保持能力を有する方法、高い固形物保持能力を有する使用及び生産方法、並びに繊維セメント物品
(51)【国際特許分類】
   B28B 1/52 20060101AFI20230830BHJP
   B28B 3/02 20060101ALI20230830BHJP
   B28B 5/02 20060101ALI20230830BHJP
   C04B 28/02 20060101ALI20230830BHJP
   C04B 16/02 20060101ALI20230830BHJP
   C04B 16/06 20060101ALI20230830BHJP
   C04B 14/28 20060101ALI20230830BHJP
   C04B 24/26 20060101ALI20230830BHJP
【FI】
B28B1/52
B28B3/02 E
B28B5/02
C04B28/02
C04B16/02 Z
C04B16/06 B
C04B14/28
C04B24/26 D
B28B3/02 S
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023512204
(86)(22)【出願日】2021-08-17
(85)【翻訳文提出日】2023-04-07
(86)【国際出願番号】 BR2021050348
(87)【国際公開番号】W WO2022036429
(87)【国際公開日】2022-02-24
(31)【優先権主張番号】BR1020200167774
(32)【優先日】2020-08-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】BR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521023425
【氏名又は名称】スザノ・エス.エー.
【氏名又は名称原語表記】SUZANO S.A.
(71)【出願人】
【識別番号】519120798
【氏名又は名称】ウニベルシダデ デ サンパウロ-ユーエスピー
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】シケイラ、ジェルマーノ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン、バンダレイ・モアシル
(72)【発明者】
【氏名】ダ・シルバ、ベアトリス・ロドリゲス
(72)【発明者】
【氏名】カルドーゾ、ファビオ・アロンソ
(72)【発明者】
【氏名】ジュニア、ホルマー・サバスターノ
【テーマコード(参考)】
4G052
4G054
4G112
【Fターム(参考)】
4G052GA02
4G052GA11
4G054AA01
4G054BA14
4G054BA27
4G054CA01
4G112MD00
4G112PA10
4G112PA15
4G112PA24
4G112PB31
(57)【要約】
本開示は、建築用材料の分野に属する。特に、本開示は、乾燥段階において高い固形物保持能力を有する繊維セメントを生産するための方法及び処理であって、生産性を上昇させ、潜在的に、処理水中のより低濃度の固形物及び添加物に関する他の処理上の利得を提供する、方法及び処理に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)繊維セメント懸濁液を形成するために、
a1)分散水、並びに
a2)粉末状材料、強化繊維材料、セルロースフィラメント及びセルロース繊維の添加並びに混合によって、繊維セメント懸濁液を調製する工程、
b)前記繊維セメント懸濁液を脱水して、繊維セメントを得る工程
を含む、繊維セメントの生産のための高い固形物保持能力を有する方法。
【請求項2】
添加及び混合する工程a)が、前記粉末状材料を水に添加して、水と粉末状材料との混合物を形成すること、続いて、前記強化繊維材料、セルロースフィラメント及びセルロース繊維を添加して、繊維セメント懸濁液を形成することを含む、請求項1に記載の繊維セメントの生産のための高い固形物保持能力を有する方法。
【請求項3】
添加及び混合する工程a)が、前記強化繊維材料を水に添加して、水と強化繊維材料との混合物を形成すること、続いて、前記粉末状材料、セルロースフィラメント及びセルロース繊維を添加して、繊維セメント懸濁液を形成することを含むことを含む、請求項1に記載の繊維セメントの生産のための高い固形物保持能力を有する方法。
【請求項4】
添加及び混合する工程a)が、前記セルロースフィラメントを水に添加して、水とセルロースフィラメントとの混合物を形成すること、続いて、前記粉末状材料、強化繊維材料及びセルロース繊維を添加して、繊維セメント懸濁液を形成することを含むことを含む、請求項1に記載の繊維セメントの生産のための高い固形物保持能力を有する方法。
【請求項5】
添加及び混合する工程a)が、前記セルロース繊維を水に添加して、水とセルロース繊維との混合物を形成すること、続いて、前記粉末状材料、強化繊維材料及びセルロースフィラメントを添加して、繊維セメント懸濁液を形成することを含むことを含む、請求項1に記載の繊維セメントの生産のための高い固形物保持能力を有する方法。
【請求項6】
水が、前記繊維セメント懸濁液組成物中に存在する粉末状材料の重量の0.4~10倍の比で添加されることを含む、請求項5に記載の繊維セメントの生産のための高い固形物保持能力を有する方法。
【請求項7】
充填剤、レオロジー調整剤であってもよい1種以上の鉱物添加物を添加することをさらに含み;鉱物添加物はセメント状作用を有する、請求項1に記載の繊維セメントの生産のための高い固形物保持能力を有する方法。
【請求項8】
炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カルシウム及びマグネシウムの炭酸塩、シリカ、アルミナ、千枚岩、酸化鉄、水酸化鉄、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、列挙した材料を含有する採掘残留物及び他の産業残留物、並びにこれらの混合物から選択される1種以上の充填剤を添加することをさらに含む、請求項1に記載の繊維セメントの生産のための高い固形物保持能力を有する方法。
【請求項9】
凝集剤を添加することをさらに含む、請求項1に記載の繊維セメントの生産のための高い固形物保持能力を有する方法。
【請求項10】
カチオン性、アニオン性、非イオン性、両性、疎水性若しくは親水性のポリマー、又はこれらの混合物から選択される凝集剤を添加することをさらに含む、請求項1に記載の繊維セメントの生産のための高い固形物保持能力を有する方法。
【請求項11】
前記凝集剤が、アニオン性ポリアクリルアミド(Pam)、アクリルアミドとアクリル酸とのコポリマー、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂(PFR)、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)又はこれらの混合物から選択されることを含む、請求項10に記載の繊維セメントの生産のための高い固形物保持能力を有する方法。
【請求項12】
前記凝集剤が、少なくとも1種のアニオン性ポリアクリルアミド(Pam)を含むことを含む、請求項11に記載の繊維セメントの生産のための高い固形物保持能力を有する方法。
【請求項13】
脱水する工程が、サイジング、続いてコンベアベルト上で真空吸引、及び最後に形成シリンダに押し込むことという手段によって行われることを特徴とする、請求項1に記載の繊維セメントの生産のための高い固形物保持能力を有する方法。
【請求項14】
前記繊維セメント懸濁液を脱水する工程が、好ましくは、吸引の手段によって行われることを特徴とする、請求項13に記載の繊維セメントの生産のための高い固形物保持能力を有する方法。
【請求項15】
前記脱水する工程が、透水性コンベアベルトを通じたものであることを特徴とする、請求項14に記載の繊維セメントの生産のための高い固形物保持能力を有する方法。
【請求項16】
前記粉末状材料が少なくとも1種のセメントを含むことを含む、請求項1に記載の繊維セメントの生産のための高い固形物保持能力を有する方法。
【請求項17】
前記粉末状材料が、ポルトランドセメント、ケイ酸系セメント、アルミン酸系セメント、たとえばアルミン酸カルシウム、ポゾランセメント、複合セメント、アルカリ性溶液によって活性化されるジオポリマー系セメント、マグネシウムセメント、高炉セメントから選択される少なくとも1種のセメントを含むことを含む、請求項1に記載の繊維セメントの生産のための高い固形物保持能力を有する方法。
【請求項18】
強化繊維材料が、前記粉末状材料の0.1~3重量%の割合で添加されることを含む、請求項1に記載の繊維セメントの生産のための高い固形物保持能力を有する方法。
【請求項19】
前記強化繊維材料が、加工繊維、天然植物繊維、天然鉱物繊維、繊維繊維、ポリマー性繊維、ポリ(酢酸ビニル)(PVA)繊維、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、フィブラポリエチレン(PE)繊維等)であってもよい、合成繊維、無機合成繊維、ガラス繊維又は合成ロックウール繊維、ウール繊維)、金属質合成繊維、鋼繊維等、これらのアロイ、他の様々なアロイから選択される少なくとも1種の繊維を含み、好ましくは前記強化繊維材料が、ポリ(酢酸ビニル)(PVA)繊維及びポリプロピレン(PP)、又はこれらの混合物であることを特徴とする、請求項1に記載の繊維セメントの生産のための高い固形物保持能力を有する方法。
【請求項20】
前記強化繊維材料が、0.5乃至20mmの長さを有する強化繊維を含むことを含む、請求項1に記載の繊維セメントの生産のための高い固形物保持能力を有する方法。
【請求項21】
前記セルロース繊維が、好ましくは、45乃至70ショッパーリーグラの度数に精製され、典型的には、0.6~4mmの長さであることを特徴とする、請求項20に記載の繊維セメントの生産のための高い固形物保持能力を有する方法。
【請求項22】
前記セルロース繊維が、前記粉末状材料の1~10重量%、好ましくは前記粉末状材料の2乃至6重量%の割合で添加されることを特徴とする、請求項21に記載の繊維セメントの生産のための高い固形物保持能力を有する方法。
【請求項23】
前記セルロース繊維が、長繊維及び短繊維のセルロース性パルプ、漂白及び未漂白、再生繊維、並びにセルロース系製品(紙)であることを特徴とする、請求項1に記載の繊維セメントの生産のための高い固形物保持能力を有する方法。
【請求項24】
前記セルロースフィラメントが、前記粉末状材料の0.1~3重量%、好ましくは前記粉末状材料の0.4~1.5重量%の割合で添加されることを特徴とする、請求項23に記載の繊維セメントの生産のための高い固形物保持能力を有する方法。
【請求項25】
前記セルロースフィラメントが、予備分散化形態であることを含む、請求項24に記載の繊維セメントの生産のための高い固形物保持能力を有する方法。
【請求項26】
前記セルロースフィラメントが、20nm乃至700nm、好ましくは80nm~600nm、より好ましくは300nm~500nmの直径を有することを特徴とする、請求項25に記載の繊維セメントの生産のための高い固形物保持能力を有する方法。
【請求項27】
前記セルロースフィラメントが、1μm超、好ましくは10マイクロメートル超の長さを有することを特徴とする、請求項26に記載の繊維セメントの生産のための高い固形物保持能力を有する方法。
【請求項28】
前記セルロースフィラメントが、予備分散化セルロースフィラメントであることを含む、請求項1に記載の繊維セメントの生産のための高い固形物保持能力を有する方法。
【請求項29】
前記分散水が、前記粉末状材料の質量の0.4乃至10倍の質量比であることを含む、請求項28に記載の繊維セメントの生産のための高い固形物保持能力を有する方法。
【請求項30】
前記繊維セメントが、請求項1に記載の方法によって得られることを特徴とする、繊維セメント部品を生産するための方法。
【請求項31】
硬化させる工程を前記繊維セメント部品に適用することを特徴とする、請求項30に記載の繊維セメント部品を生産するための方法。
【請求項32】
繊維セメント物品の製造のための、請求項1に記載の繊維セメントの生産のための高い固形物保持能力を有する方法の使用。
【請求項33】
請求項32に記載の繊維セメント物品の生産によって得られる物品を硬化させる工程の適用を特徴とする、繊維セメントの生産のための高い固形物保持能力を有する方法の使用。
【請求項34】
タイル、プレート及び他の繊維セメント製品の製造のための、請求項33に記載の繊維セメントの生産のための高い固形物保持能力を有する方法の使用。
【請求項35】
(1)粉状材料、強化繊維材料、セルロースフィラメント及びセルロース繊維を含む繊維セメント懸濁液を準備すること、
(2)前記繊維セメント懸濁液をコンベアベルト上に放出すること、並びに
(3)前記繊維セメント懸濁液を脱水して、所定の厚さを有する繊維セメントを形成すること
を含む、繊維セメントの生産のための高い固形物保持能力を有する生産処理。
【請求項36】
前記繊維セメント懸濁液を脱水する工程(3)が、コンベアベルト、スクリーンシリンダの少なくとも1つ、又は両方によって達成されることを特徴とする、請求項35に記載の繊維セメントの生産のための高い固形物保持能力を有する生産処理。
【請求項37】
前記繊維セメント懸濁液が、請求項1の工程a1)によって得られる繊維セメント懸濁液であることを特徴とする、請求項36に記載の繊維セメントの生産のための高い固形物保持能力を有する生産処理。
【請求項38】
ドライベース調合物が
a)セメント状材料、
b)PVA強化繊維材料、
c)セルロース繊維、及び
d)セルロースフィラメント
を含む、請求項1又は37に記載の高い繊維セメント固形物保持能力を有する生産処理において固形物を保持する方法。
【請求項39】
前記ドライベース調合物が鉱物添加物をさらに含む、請求項38に記載の高い繊維セメント固形物保持能力を有する生産処理において固形物を保持する方法。
【請求項40】
請求項1に記載の繊維セメントの生産のための高い固形物保持能力を有する方法によって得られる、繊維セメント。
【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
[001]本開示は、建築用材料の分野に関する。特に、本開示は、脱水する工程において高い固形物保持能力を呈する繊維セメントの生産方法及び処理であって、上昇した生産性と、潜在的に、処理水中のより低濃度の固形物及び添加物に関する他の処理上の利得を提供する、方法及び処理に関する。
【発明の背景】
【0002】
[002]繊維セメントは、当技術分野において一般に知られている。しかしながら、繊維セメントの生産は、懸濁液の固形物濃度の上昇をもたらす脱水する工程を含み、この濃縮懸濁液の層が、繊維セメント生成物を形成するためのフェルトに堆積し、続いて、典型的には水硬性セメント状材料に関係する、剛化及び機械的強度の発現を促進するために、硬化(空気、熱又は強制炭酸化を用いて)させる。繊維セメントブランケットに保持されない固形物は、廃棄されずに生産システムを再循環するが、生産処理の効率を損なうことに加えて、さらに他の問題を発生させることがある。たとえば:(a)システム内を再循環するセメントは水和して結合能力を失い、そのため、繊維セメントに組み込まれたとき、高コスト且つ環境影響の大きい不活性の負荷としてのみ作用する;(b)システム内でのいくつかのポリマー性材料(凝集剤、脱泡剤、リグニン)の蓄積は、最終製品の品質に大きな影響を及ぼす;(c)生産システムが非常に汚れている、又は固形物が装填されていると、デカンテーションタンク内の処理水の処置が必要であり、この場合、操作のコスト及びデカントした排泥の対処を要するだけでなく、デカンテーション工程を行うための資産への投資が必要になる。
【0003】
[003]当技術分野では、この問題の解決を試みている。
【0004】
[004]米国特許出願公開第20160083808(A1)号は、繊維セメントにおける使用には具体的に言及していないが、リグノセルロース性加水分解物における固形物保持の増加を扱うものである。
【0005】
[005]米国特許第6872246(B2)号は、高性能セルロース繊維によって強化された複合材料を扱うものであるが、産業生産処理の際の具体的な固形物保持には言及していない。
【発明の概要】
【0006】
[006]本発明は、繊維セメントの生産のための高い固形物保持能力を有する方法であって、繊維セメント懸濁液を形成するために、粉末材料、強化繊維材料、セルロースフィラメント及びセルロース繊維の少なくとも1つに分散水を添加及び混合すること;並びに繊維セメントを得るために、繊維セメント懸濁液を脱水することを含む、方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】[007]図1は、CF1と比較してより高い脱フィブリル度を有する、CF2についての走査型電子顕微鏡画像である。
図2】[008]図2は、CF1と比較してより高い脱フィブリル度を有する、CF2の走査型電子顕微鏡画像である。
図3】[009]図3は、0.4mm タミスを用いた重力式濾過を通じた、繊維セメント保持を定量するための機械である。
図4】[010]図4は、繊維セメントの重力式濾過後の物質収支を包括するために使用した、モルタルの保水率を真空下で測定するための機器である;正面図(a);上面図(b)。
図5】[011]図5は、重力による、タミスにおける通過質量を時間の関数として示す曲線である:各調合物について、30分までのアッセイの6回反復の平均。
図6】[012]図6は、重力による、タミスにおける通過質量を時間の関数として示す曲線である:各調合物について、2分までのアッセイの6回反復の平均。
図7】[013]図7は、分析した異なる調合物についての、重力式濾過後のタミスにおける固形物及び水の保持率を示す棒グラフである。
【発明の詳細な説明】
【0008】
[014]本発明は、脱水する工程において高い固形物保持能力を有するフィブロセメントの生産方法及び処理であって、上昇した生産性と、潜在的に、処理水中のより低濃度の固形物及び添加物に関する他の処理上の利得を提供する、方法及び処理に関する。
【0009】
[015]ここで使用される「繊維セメント」という用語は、繊維質材料を含有し、任意の所望の形状を取ることができるセメント状材料を指す。「繊維セメント懸濁液」、「繊維セメントペースト」又は「繊維セメントスラリー」という用語は、一般に、水と繊維とセメントとを少なくとも含むスラリーを指す。一般に、繊維セメントは、粒子(反応性及び/若しくは不活性)、有機及び/若しくは合成繊維、又は鉱物(たとえばアスベスト)及び化学添加物の希釈懸濁液をすすいだ後に得られ、(硬化の前に)部品の生産のために所望されるいかなる形態にも成形することができ、続いて、機械的強度及び繊維セメント部品の性能に関係する他の特性の発現のために硬化させることができる。
【0010】
[016]本発明は、繊維セメントの生産のための高い固形物保持能力を有する方法であって、繊維セメント懸濁液を形成するために、粉末材料、強化繊維材料、セルロースフィラメント及びセルロース繊維の少なくとも1つに分散用水を添加及び混合すること;並びに繊維セメントを得るために、繊維セメント懸濁液を脱水することを含む、方法を通じて具体化される。本発明はまた、繊維セメント物品の製造のための繊維セメントの生産のための高い固形物保持能力を有する方法の使用、並びにa)繊維セメント懸濁液を形成するために、a1)分散水、並びにa2)粉末状材料、強化繊維材料、セルロースフィラメント及びセルロース繊維の添加並びに混合によって、繊維セメント懸濁液を調製すること、b)繊維セメント懸濁液を脱水して、所定の厚さを有する繊維セメントを得ることを含む、繊維セメントの生産のための高い固形物保持能力を有する生産処理を開示している。
【0011】
[017]粉末状材料
[018]「粉末状材料」という用語は、好ましくは、セメント状材料を含む材料を指す。セメント状材料という用語は、ここで使用される場合、たとえば、水の存在下で硬質化する水硬性物質、たとえばポルトランドセメント、ケイ酸系セメント、アルミン酸系セメント、たとえばアルミン酸カルシウム、ポゾランセメント、複合セメント、アルカリ性溶液によって活性化されるジオポリマー系セメント、マグネシウムセメント、高炉セメントを含む。
【0012】
[019]一側面では、水は、繊維セメント懸濁液の組成物中に、粉末状材料の重量に対して、0.4~10倍の比で存在する。
【0013】
[020]強化繊維材料
[021]一側面では、本発明は、フィブロセメント組成物に特徴的な強化繊維材料を含む。本発明の強化繊維材料は、加工繊維、植物天然繊維、鉱物天然有機繊維、アスベスト繊維であってもよい合成繊維、ポリマー性繊維、ポリ(酢酸ビニル)(PVA)繊維、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)繊維等)、無機合成繊維、ガラス繊維又は合成ロックウール繊維、ウール繊維)、金属質合成繊維、鋼繊維等、これらのアロイ、他の多様なアロイから選択される少なくとも1種の繊維を含んでもよく、好ましくは、強化繊維材料は、ポリ(酢酸ビニル)(PVA)及びポリプロピレン(PP)繊維、又はこれらの混合物である。
【0014】
[022]好ましくは、強化繊維材料は、0.5乃至20mmの長さを有する強化繊維を含む。
【0015】
[023]本発明の強化繊維材料は、粉状材料の0.1~3重量%の割合で存在してもよい。
【0016】
[024]セルロース繊維
[025]ここで使用される「セルロース繊維」という用語は、好ましくは、45乃至70ショッパーリーグラの度数に精製されたセルロース性繊維を含む。個々のセルロース繊維は、典型的には、0.6~4mmの長さである。
【0017】
[026]一側面では、セルロース繊維は、針葉樹及び広葉樹セルロース性パルプ、漂白、未漂白、再生繊維、セルロース系製品(紙)又はこれらの組合せ由来であってもよい。
【0018】
[027]典型的には、セルロース繊維は、粉状材料の1~10重量%、好ましくは粉状材料の2~6重量%の割合で存在する。
【0019】
[028]セルロースフィラメント
[029]一側面では、本発明は、セルロースフィラメントを含む。本発明者らは、セルロースフィラメントの添加が、繊維セメント懸濁液を脱水する工程中の繊維セメントに固形物保持を提供し、水の保持を支援し、セメントの水和を改善することを見出した。
【0020】
[030]特に、セルロースフィラメントは、セルロースフィブリルの分離を促進する、セルロースフィブリルをせん断する方法によって起こりうる、脱フィブリル処理によって得られる。このような処理の例としては、特に、高圧均質化、マイクロ流動化、コロイド状ミル粉砕、機械的精製が挙げられる。
【0021】
[031]一側面では、セルロースフィラメントは、予備分散化形態であってもよい。予備分散化は、ここで開示される方法及び処理において続いて使用されるように、セルロースフィラメントを水性媒体と混合することによる。
【0022】
[032]本発明によるセルロースフィラメントは、粉末状材料の0.1~3重量%、好ましくは粉末状材料の0.4~1.5重量%の割合で存在してもよい。
【0023】
[033]一側面では、セルロースフィラメントは、20nm乃至700nm、好ましくは80nm~600nm、より好ましくは300nm~500nmの直径を有してもよい。さらに、セルロースフィラメントは、1μm超、好ましくは10マイクロメートル超の長さを有してもよい。
【0024】
[034]一側面では、セルロースフィラメントは、マイクロフィブリル化セルロース、ナノフィブリル化セルロース又はセルロースフィラメントとすることができる。マイクロフィブリル化セルロースという用語は、ここで使用される場合、セルロース系フィブリル状構成成分を含むが、この組成物に排他的に限定されず、極微量のヘミセルロースを含有してもよく、特に、クラフト法、ソーダ法、亜硫酸法、CTMPを含む、熱的-化学的-機械的処理から生じてもよい。
【0025】
[035]鉱物添加物
[036]本発明は、1種以上の鉱物添加物:(i)充填剤、(ii)レオロジー調整剤、たとえば、繊維セメント懸濁液のレオロジー挙動改質作用を有する粒子、又は(iii)セメント状作用を有する鉱物添加物を任意に含み、これらは、当初からセメントに入っていてもよく、繊維セメント生産工程中に添加されてもよい。
【0026】
[037]使用される充填剤は置きかえ材料としてのものであり、すなわち、セメントと類似の物理的特性を有し、基本的には、CO削減に関係するコスト及び環境影響を低減することを狙って、調合物中の反応性材料を大部分が不活性の材料で置きかえるために使用される。
【0027】
[038]充填剤の好適な例は、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カルシウム及びマグネシウムの炭酸塩、シリカ、アルミナ、千枚岩、酸化鉄、水酸化鉄、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、列挙した材料を含有する採掘残留物及び他の産業残留物、並びにこれらの混合物である。
【0028】
[039]凝集剤
[040]別の態様では、本発明の方法は、少なくとも1種の凝集剤をさらに含んでもよい。この意味において、本発明の繊維セメント生産のための高い固形物保持能力を有する方法及び生産処理は、凝集剤をさらに含んでもよい。凝集剤は、通常は低(たとえば103g/mol未満)から高(たとえば106g/mol超)の範囲内の分子質量を有する、カチオン性、アニオン性、非イオン性(電荷を有しない、又はわずかに負電荷を有する)、両性(正及び負電荷)、疎水性又は親水性でありうる水溶性ポリマーであり、直鎖状若しくは分枝分子構造、又はこれらの混合物を提示してもよい。
【0029】
[041]凝集剤の例は、ポリアクリルアミド(PAM)である。アニオン性ポリアクリルアミド(PAM)は、繊維セメントについて最も効果的であり、通例、アクリルアミドとアクリル酸とのコポリマーを使用する。文献において見出された代替は、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂(PFR)及びポリ(エチレンオキシド)(PEO)、又はこれらの混合物を利用する二重投与系である。
【0030】
[042]本発明の方法は、あってもよい硬化させる工程の前に、繊維セメントブランケットが得られる繊維セメント懸濁液を脱水する工程を含む。好ましくは、脱水する工程は、透水性コンベアベルトを介して、吸引の手段を用いて行われる。脱水は、当技術分野で公知の方法で実行してもよく、繊維セメントを生じる。好ましくは、水は、処理の閉鎖式水路に戻る。
【0031】
[043]このようにして、本発明は、
[044]a)繊維セメント懸濁液を形成するために、
[045]a1)分散水、並びに
[046]a2)粉末状材料、強化繊維材料、セルロースフィラメント及びセルロース繊維
の添加並びに混合によって、繊維セメント懸濁液を調製すること、
[047]b)繊維セメント懸濁液を脱水して、繊維セメントを得ること
を含む、繊維セメントの生産のための高い固形物保持能力を有する方法を通じて具体化される。
【0032】
[048]特に、本発明の方法の工程a)は、複数の方法で達成することができる。一側面では、水の添加及び混合の工程a)は、粉末状材料を水に添加して、水と粉末状材料との混合物を形成すること、続いて、残りの強化繊維材料、セルロースフィラメント及びセルロース繊維を添加して、繊維セメント懸濁液を形成することによって行ってもよい。別の側面では、工程a)は、強化繊維材料を水に添加して、水と強化繊維材料との混合物を形成すること、続いて、残りの粉末状材料、セルロースフィラメント及びセルロース繊維を添加して、繊維セメント懸濁液を形成することによって行ってもよい。またさらに別の側面では、工程a)の工程は、セルロースフィラメントを水に添加して、水とセルロースフィラメントとの混合物を形成すること、続いて、他のもの:粉末状材料、強化繊維材料及びセルロース繊維を添加して、繊維セメント懸濁液を形成することによって行うこともできる。またさらに別の側面では、添加及び混合の工程a)は、セルロース繊維を水に添加して、水とセルロース繊維との混合物を形成すること、続いて、残りの粉末状材料、強化繊維材料、及びセルロースフィラメントを添加して、繊維セメント懸濁液を形成することによって行うこともできる。
【0033】
[049]一側面では、繊維セメント生産のための高い固形物保持能力を有する方法の水は、粉末状材料の重量に対して、0.4~10倍の比で添加されてもよい。したがって、強化繊維材料は、粉末状材料の0.1~3重量%の割合で添加されてもよく;セルロース繊維は、粉末状材料の1~10重量%、好ましくは粉末状材料の2乃至6重量%の割合で添加されてもよい。
【0034】
[050]別の側面では、繊維セメントの生産のための高い固形物保持能力を有する方法のセルロースフィラメントは、粉末状材料の0.1~3重量%、好ましくは粉末状材料の0.4~1.5重量%の割合で添加されてもよい。一側面では、セルロースフィラメントは、予備分散化形態であってもよい。
【0035】
[051]一側面では、繊維セメント生産のための高い固形物保持能力を有する方法において添加されるセルロースフィラメントは、予備分散化マイクロフィブリル化セルロースであってもよい。
【0036】
[052]一側面では、繊維セメント生産のための高い固形物保持能力を有する方法の分散水は、粉末状材料の質量の0.4乃至10倍の質量比で添加されてもよい。
【0037】
[053]したがって、いっそうさらに希釈された繊維セメント懸濁液を得るために、たとえば、水を一度に、若しくは繊維セメント懸濁液を形成するための、粉末状材料、強化繊維材料、セルロースフィラメント及びセルロース繊維の各々の添加に割り込ませて、同時に又は任意の他の様式で、粉末状材料の質量の最大10倍の水の量で添加してもよく、50g/L乃至500g/Lの固形物含有量、たとえば、粉状材料、強化繊維材料、セルロースフィラメント、セルロース繊維及び不活性(又は反応性)固形物粒子を有する懸濁液を提供するのに十分によく流動化された繊維セメント分散体が準備される。
【0038】
[054]脱水
[055]ここで記載される方法及び処理では、少なくとも1つの脱水する工程において、水の少なくとも一部が繊維セメント懸濁液から除去されて、繊維セメントを提供する。典型的には、水の少なくとも一部は、機械的手段によって、たとえば、スクリーンを通じた濾過によって、任意に真空箱を用いて、除去される。
【0039】
[056]本発明の脱水する工程は、最初に、タミス中に繊維セメント層を留めること、続いてコンベアベルト上で真空吸引(常圧未満)、及び最後に形成シリンダに押し込むことによって行うことができる。繊維セメント懸濁液を脱水する工程は、さらに、透水性コンベアベルトを通じて吸引することによって行ってもよい。
【0040】
[057]繊維セメント、好ましくは得られた繊維セメントブランケットの形態のものは、剛化、機械的強度及び繊維セメント部品の性能の発現に関係する他の特性を担う、繊維セメント中に存在するセメント状材料の水和(及び任意に炭酸化)反応を促進するために、硬化処理に供してもよい。
【0041】
[058]この意味において、ひとたび繊維セメントが得られたら、繊維セメント部品の製造は、任意の公知の手順によって実行することができる。
【0042】
[059]繊維セメント部品は、まだ湿潤である間にブレードを積み重ねることによって得られる、Hatschek/Mazza法によって得られ、所望の厚さの積層体を得る。しばしば、層状の積層体の集積は、シリンダ(マンドレル)においてブレードを連続的に巻くことによって達成される。この円筒形生産物は、管の形態に保ってもよく、切断して、いくつかのある特定の形状の平らなプレード又はプレート(たとえば波形ブレード)に形成し、成形に要求される強度と可撓性とを有する新規な平らなブレードをさらに成形してもよい。述べたように、好ましくは、生産の最終段階は硬化であり、室温で、又は加熱処置によって行うことができる。Hatschek生産法は、プレートの製造及びその改造について最も一般的であり、Mazza法は、圧力パイプの製造に適用される。
【0043】
[060]固形物の量
[061]本発明がまた、脱水する工程後の繊維セメント中により多量の水を提供している通り、繊維セメントの質量の観点における固形物の量は、大幅に変動してもよく、当技術分野の懸濁液よりも大きな体積を有する繊維セメントを生産することができる。
【0044】
[062]本発明は、脱水する工程後の繊維セメントの10~40質量パーセントの範囲内の、繊維セメント中の水レベルを提供する。
【0045】
[063]硬化
[064]得られた繊維セメント部品を硬化させる工程を、本発明の方法及び処理に使用することができ、繊維セメント部品を室温で、水分条件を制御下に保ったトンネル中で処置すること、又は硬質化処理及び機械的強度の発現を加速するために、より高温で蒸気硬化させることによって行うことができる。オートクレーブ硬化、及び炭酸下反応を促進するためのCOガスリッチチャンバ硬化も使用することができる。
【0046】
[065]繊維セメント物品
[066]したがって、本発明の処理及び方法は、典型的には建築産業において適用される、繊維セメント物品を提供してもよい。たとえば、プレート、ファサードプレート、タイル、サイディング等である。
【0047】
[067]この様式では、繊維セメント部品は、本発明の高い固形物保持能力を有する方法又は処理によって得てもよい。繊維セメント部品のこのような生産は、硬化させる工程を繊維セメント部品に適用することによって行っても、硬化させる工程を有しなくてもよい。
【0048】
[068]使用
[069]さらに、本発明は、典型的には建築産業において適用される、繊維セメント物品の製造のための繊維セメントの生産のための高い固形物保持能力を有する方法の使用を提供する。たとえば、プレートの製造に使用される。さらに、壁の外表面、建物又は建築物の内側と外側の両方、たとえば、ファサードプレート、タイル、サイディング等を提供するために使用することもできる。
【0049】
[070]一側面では、繊維セメントの生産のための高い固形物保持能力を有する方法の使用は、本発明による繊維セメント物品を生産することによって得られる物品を硬化させる工程を適用することによる。
【0050】
[071]一側面では、繊維セメントの生産のための高い固形物保持能力を有する方法の使用は、シート金属の製造のためであってもよい。
【0051】
[072]この意味において、Hatschek法の一般的記載を参照すると、5つの区別される生産段階を有する:
[073]1-固形物を水に混合することからなる、スラリーの調製;
[074]2-シーブシリンダ上でのブレードの形成、及びフェルトベルトへの連続的塗布;
[075]3-所望の厚さが得られるまで、シリンダ(マンドレル)において巻かれた積層体を形成するブレード(層)の集積;
[076]4-任意に、積層体の切断及び造形;
[077]5-硬化。
【0052】
[078]ブレードの形成は、スラリーを脱水する操作を用いて行う。この段階において、スクリーンシリンダが回転するにつれて、その表面に繊維セメント懸濁液層が堆積し、スクリーンシリンダの乾燥側へ水が濾過されるにつれて、凝集層に変わる。積層体の特性は、濾過速度に依存する。
【0053】
[079]この様式では、Hatschek法スラリーへのセルロースフィラメントの添加は、繊維セメント懸濁液を生じるが、これは次の工程によって行うことができる:
[080](1)粉末状材料、強化繊維材料、セルロースフィラメント及びセルロース繊維を含む繊維セメント懸濁液を準備する工程、
[081](2)繊維セメント懸濁液をコンベアベルト上に放出する工程、並びに
[082](3)繊維セメント懸濁液を脱水して、所定の厚さを有する繊維セメントを形成する工程。
【0054】
[083]一側面では、繊維セメントの生産のための高い固形物保持能力を有する生産処理の工程(3)は、繊維セメント懸濁液を脱水することによって行い、これは、コンベアベルト、シーブシリンダの少なくとも1つ、又は両方によって達成することができる。たとえば、繊維セメント懸濁液は、吸引によって脱水されてもよい。たとえば、脱水を促進するために、透水性コンベアベルトを使用することができる。或いは、透水性シーブシリンダを使用してもよい。好ましくは、繊維セメント懸濁液の脱水は、透水性コンベアベルトを通じた吸引によって行う。
【0055】
[084]過剰の水を繊維セメントから除去するのに透水性コンベアベルトを使用することによって、高い固形物保持能力を有する生産処理の最後に繊維セメント物品の厚さが戻ることなく、シート金属の厚さ及び密度を正確に調節することができる。
【0056】
[085]他の製造処理としては、Hatschek法の代替として、Magnani法、射出、押出、流し込み及びその他が挙げられる。
【0057】
[086]たとえば、米国特許第3,974,024号及び同4,194,946号は、強化セメント製品の連続調製のための処理を明らかにしている。これらの処理では、繊維材料及びセメント懸濁液は、分離装置の手段によって、分離処理工程において、濾過ベルト上に堆積させる。続いて、ベルト上に堆積したセメントスラリー及び繊維材料は、繊維材料をスラリーに混ぜ込み、セメント状マトリックス中の繊維材料の少なくともある程度均一な分散体を得るために、いわゆる「叩解」装置を用いて処置される。脱水後に繊維セメント物品を生じる、セルロース繊維を含む繊維セメント懸濁液を得ることに支障はない。脱水する工程の存在が十分であれば、この結果が達成される。
【0058】
[087]濾過を使用しない場合、他の排水の手段も可能である。この意味において、本発明は、特にHatschek法専用ではない。特に、代替的処理では、脱水する工程は、通例、機械的力の手段のみによって、たとえば、ベルトプレス又は圧力プレートの手段によって行われる。
【0059】
[088]さらに、繊維セメント懸濁液を供給する工程は、連続的に実行してもよく、連続的ではなく実行してもよい。連続的である場合、繊維セメント懸濁液流は、1つ以上の送出装置を使用して生成される。このような供給装置は、繊維セメント懸濁液を連続的に流動させる、少なくとも1つの放出口を有する。さらに、供給装置は、繊維セメント懸濁液供給源に直接的又は間接的に動作するように接続された、1つ以上の吸込口を含んでもよい。繊維セメント懸濁液供給源は、たとえば、限定するものではないが、1つ以上の連続供給システム、又は繊維セメント懸濁液を形成するように構築された1つ以上の連続混合装置、及びスラリーを1つ以上の送出装置に間接的若しくは直接的に供給するための手段であってもよい。
【0060】
[089]1つ以上の送出装置は、壁によって内部的に仕切られていてもよい、連続的に動く壁を有する少なくとも部分、1つ以上の撹拌される装置、たとえば植毛ブラシ形状の装置、1つ以上の繊維セメント懸濁液供給源によって提供される繊維セメント懸濁液(の液滴)を、1つ以上の供給システムの任意の好適な組合せのコンベアベルト上に、連続的且つランダムに噴霧する1つ以上の噴霧システムを含んでもよい。
【0061】
[090]さらに、ある特定の態様では、繊維セメント懸濁液を脱水する工程は、1つ以上の機械的プレス、たとえば、限定するものではないが、ベルトに隣接して任意に設置されてもよい機械的ベルトプレスによる、機械的な力を適用することによって実行される。
【0062】
[091]繊維セメント物品が押出しによって生産される場合、静的機械的プレスがさらに使用されてもよい。
【0063】
[092]一側面では、本発明の生産処理における水は、繊維セメント懸濁液の組成物中に、粉末状材料の重量による量の0.4~10倍の比で存在する。
【0064】
[093]一態様では、本発明は、ドライベース調合物が
[094]a.セメント状材料、
[095]b.PVA強化繊維材料、
[096]d.セルロース繊維、及び
[097]d.セルロースフィラメント
を含むことによる、高い繊維セメント固形物保持能力を有する生産処理において固形物を保持する方法を提供する。
【0065】
[098]一側面では、高い繊維セメント固形物保持能力を有する生産方法における固形物保持の方法のベース調合物は、1種以上の鉱物添加物、充填剤、レオロジー調整剤をさらに含んでもよく;鉱物添加物はセメント状作用を有する。
【0066】
[099]一態様では、本発明は、繊維セメントの生産のための高い固形物保持能力を有する方法によって得られる、繊維セメントを提供する。
【0067】
[0100]実験の詳細
[0101]実験
[0102]原材料
[0103]使用した原材料は、セメント、石灰石充填剤、セルロース繊維及びPVA繊維、セルロースフィラメントCF1及びCF2、凝集剤並びに水であった。セルロース及びPVA繊維は、それぞれ0.89及び1.49g/cmの密度を有する。使用した凝集剤は、30%の固形物含有量を有するポリアクリルアミド(Praestol)をベースとする。
【0068】
[0104]顆粒材料の特性
[0105]繊維セメント調合物に使用したセメント及び充填剤のいくつかの物理的特性を測定し、表1に提示する。
【0069】
[0106]
【0070】
【表1】
【0071】
[0107]使用したセメントは、標準ABNT NBR 16697に準拠した、高い初期強度のCPVタイプのブラジル市場の製品であった。セメントの化学組成は、Axios Advancedの機器、ブランドPANalyticalを使用して、X線蛍光分光によって決定した。結果を表2に表すが、これらのデータでは、鉱物相は、Bogue法(NEVILLE, Adam M. et al. Properties of concrete. London: Longman, 1995)を使用して推定した。Bogue法によって推定された結果は、セメントが高含有量のエーライト及びビーライト、並びに初期の高強度のセメント(CPV ARI)に予想されるアルミネート、フェライト及びカルサイトの含有量を有することを実証している。
【0072】
【表2】
【0073】
[0108]走査型電子顕微鏡(SEM)
[0109]CFは、透過型電子顕微鏡(TEM)を通じて、モルフォロジー及びテクスチャについて評価した。
【0074】
[0110]図1及び2の画像は、2つのレベルの脱フィブリルによるCFのモルフォロジーを示し、セルロース繊維がランダムに配列された「ウェブ」形状を示している。
【0075】
[0111]ベース調合物
[0112]この工程に使用した繊維セメントのベース調合物を、表4に記載する。この調合物を、参照REFと称している。
【0076】
【表3】
【0077】
[0113]他の調合物
[0114]違いがセルロースフィラメント(CF)又は凝集剤の添加のみである、他の調合物を試験した。他の調合物の内容物及び命名を、表5に提示する。
【0078】
[0115]凝集剤の添加は0.03質量%であり、CF(乾燥基準)は、乾燥繊維セメント組成物の0.48質量%の含有量で使用した。
【0079】
【表4】
【0080】
[0116]繊維セメントの調製
[0117]PVA予備分散
[0118]PVA繊維の分散は、圧縮空気のジェットが、100kgf/cmの圧力で30+10秒間射出される装置において実行した。区画の上には、繊維を保持する75μmの開口を有するスクリーンがある。
【0081】
[0119]混合物
[0120]この混合する工程について、プラネタリーベンチモルタル(EMIC)を使用した。繊維セメント懸濁液の調製は、次の工程によって行った。
【0082】
[0121](a)水を混合容器に入れる工程;
[0122](b)粉末を添加し、低速(62±5rpm)で3分間混合する工程;
[0123](c)ミキサーの電源を切らずに、まずセルロースを30秒間添加し、さらに3分間混合したままにする工程。
【0083】
[0124](d,e)次いで、30秒間PVAを添加し、さらに3分間混合する。(f)すべての材料を混合した後、ミキサーの速度を高い(125±10rpm)に変更し、既に凝集剤及び/又はCFを有する希釈水を添加し、5分間混合する。包括的な混合処理は15分続いた。希釈水に組み込まれる前のCFは、高エネルギーミキサー(Makita RT0700C、10000rpmにおいて)を使用して、事前に100gの水に分散させた。
【0084】
[0125]Hatschek法の濾過工程の再現性試験
[0126]重力式濾過
[0127]濾過処理は、真空を用いずに、0.4mmメッシュタミスを用いて行った(平らな又は波型プレートの製造のために、Hatschek繊維セメントの生産において使用されるものと同じタミス)。タミスの下では、箱が穴を有し、濾過された懸濁液は穴を通じてまっすぐにビーカーに流れ、次に、正確な秤において、タミスを通過した懸濁液の質量の変化を記録する。図3に図示される通りである。
【0085】
[0128]重力式濾過を実行するため、次の工程を実行した。(i)濃縮懸濁液を機械に注ぎ込み、およそ25分間、濾液を生じさせる;(ii)試験時間全体にわたって、各測定について30秒の間隔で、秤の上の質量変動を記す。
【0086】
[0129]真空濾過
[0130]この工程は、以前の工程(重力式濾過)において濾過された懸濁液の微物及び水の量を測定する目的で実行した。この工程を実行するため、機器(図4)を使用して、モルタル中の保水率を測定した(ABNT NBR 13277:2005)。この機器は、水銀圧力計に連結された真空ポンプからなる。漏斗の上にプレートがあり、ここに濾紙が収容される。真空濾過の手順は、次の通り実行した:以前の工程で濾過した懸濁液を、80g/m坪量の濾紙で覆われた装置のプレートに一度で注ぎ、次いで、材料を2分間、作用下においた。プレート上に保持されたケーキを濾紙から除去して容器に入れ、2つの区別される手順:(i)電子レンジ(1500W-Brastemp)中で、重量が一定になるまで、5分間を3サイクル;及び(ii)オーブン中で100℃で48時間、を使用した乾燥を通じて、含水率を決定した。通過してガラスバイアルに入った液体は、水のみからなるものであることが採用された。
【0087】
[0131]結果
[0132]重力式濾過手順及び真空濾過手順において得た結果から、固形物含有量(繊維、セメント及び充填剤)とタミスを通過した水とを計算し、物質収支によって、その合計がtamix中に保持された繊維セメント懸濁液である、保持された固形物及び水の百分率を決定した。
【0088】
[0133]重力式濾過工程は、繊維セメント濾過処理におけるCFの使用の影響を示している。各調合物について、アッセイを6回繰り返した。重力式濾過アッセイの結果(6回反復の平均)を、図5(30分までの完全なアッセイ)及び図6(2分までの視覚化)に提示する。試験の最初の2分間における、CF及び凝集剤の使用による濾過の動力学における、参照に対する変動が最も大きい区間。
【0089】
[0134]CFの使用によって、最初の1分間においてはより大きな差異で、タミスを通過した懸濁液の量が減少したが;この減少は、参照調合物と、凝集剤を有する混合物の両方に対して起こっており、使用したタミスにおいて、CFが、繊維セメント懸濁液(主に固形物であるが、水も含む)の保持能力をもたらしたことを示していることに留意されたい。
【0090】
[0135]図7は、分析した4種の調合物についての、重力式濾過後のタミスに保持された固形物及び水の質量の百分率を示す。予想された通り、参照組成物は、最も低い固形物及び水の保持率を示した。その一方で、CFを有する組成物は、凝集剤の添加がなくてさえ、すべての調合物の中で最も高い、固形物の保持率を示した。有効性は、floc(産業実施水準)と比較して7%、REFと比較して23%上昇する。これらの結果は、繊維セメント懸濁液を濾過する際の、固形物保持能力の上昇における、CFの有効性を裏付けるものである。
【0091】
[0136]セルロース微物及び繊維並びにPVAの保持に対するセルロースフィラメントの物理的効果は、化学添加物(凝集剤)の組込みを通じて得られる、粒子の凝集の物理的-化学的効果よりも有効であることが証明された。
【0092】
[0137]より高い固形物保持率に加えて、CFの添加を有する調合物はまた、他の調合物と比較した場合、タミス中の保水率もわずかに上昇させることができた。この結果はさらに、繊維セメント処理の次の工程において有益でありうる。わずかに高い保水率は、材料のより大きな可塑性をもたらしうるが、これは、パーツを形成するための繊維セメントの圧縮工程において、張力の上昇及び欠陥の形成を防止しうる。より大きな繊維セメントの可塑性はまた、圧縮処理において消費されるエネルギーを減少させることができる。
【0093】
[0138]図7に提示した結果は、30分間のアッセイについて計算したことに注目されたい。しかしながら、図6に示したように、2分間のアッセイについて、CFを有する調合物の固形物保持率は、30分間の結果と比較した場合、他の調合物の場合よりもいっそう高い傾向がある。
【0094】
[0139]したがって、試験は、CFの組込みに起因して、凝集剤を使用しなくとも、タミス中の固形物(粉末及び繊維)の保持率が有意に上昇することを実証している。より高い固形物保持率に加えて、CFを有する組成物は、とりわけ処理バッチにおいて、繊維セメント中により多くの水を保持することもできた(より優れた精製)。これらの結果は、繊維セメント生産時の濾過処理の有効性が改善したことを示している。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】