(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-06
(54)【発明の名称】CD40アゴニスト抗体及び使用方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20230830BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20230830BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20230830BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20230830BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20230830BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20230830BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230830BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20230830BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20230830BHJP
【FI】
C12N15/13
C07K16/28 ZNA
C07K16/46
C12N15/63 Z
C12P21/08
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61P35/00
A61P37/04
A61P35/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023512310
(86)(22)【出願日】2021-08-20
(85)【翻訳文提出日】2023-04-13
(86)【国際出願番号】 CN2021113679
(87)【国際公開番号】W WO2022037662
(87)【国際公開日】2022-02-24
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2020/110536
(32)【優先日】2020-08-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520442184
【氏名又は名称】ウーシー・バイオロジクス・(シャンハイ)・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】WUXI BIOLOGICS (SHANGHAI) CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【氏名又は名称】池田 達則
(72)【発明者】
【氏名】ヤン パオティエン
(72)【発明者】
【氏名】リー チン
(72)【発明者】
【氏名】チョン ヨン
【テーマコード(参考)】
4B064
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG26
4B064AG27
4B064CA19
4B064CC24
4B064CE12
4B064DA01
4C085AA13
4C085AA14
4C085DD62
4C085EE01
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA75
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
4H045GA26
(57)【要約】
抗CD40アゴニスト抗体、この抗CD40抗体をコードする核酸分子、抗CD40抗体を発現させるために用いる発現ベクターと宿主細胞が提供される。抗体の機能をインビトロで、抗体の有効性を生体内で検証するための方法がさらに提供される。前記抗体は、免疫機能を変化させることを通じ、がんを治療するための非常に強力な薬剤を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単離された抗体またはその抗原結合部分であって、
(A)(i)配列番号1を含むHCDR1;
(ii)配列番号2を含むHCDR2;および
(iii)配列番号3を含むHCDR3
からなる群から選択される1つ以上の重鎖CDR(HCDR);
(B)(i)配列番号4または7を含むLCDR1;
(ii)配列番号5を含むLCDR2;および
(iii)配列番号6を含むLCDR3
からなる群から選択される1つ以上の軽鎖CDR(LCDR);または
(C)A)の1つ以上のHCDRと、B)の1つ以上のLCDR
を含む、単離された抗体またはその抗原結合部分。
【請求項2】
(A)(i)配列番号1に記載のHCDR1;
(ii)配列番号2に記載のHCDR2;および
(iii)配列番号3に記載のHCDR3
からなる群から選択される1つ以上の重鎖CDR(HCDR);
(B)(i)配列番号4または7に記載のLCDR1;
(ii)配列番号5に記載のLCDR2;および
(iii)配列番号6に記載のLCDR3
からなる群から選択される1つ以上の軽鎖CDR(LCDR);または
(C)A)の1つ以上のHCDRと、B)の1つ以上のLCDR
を含む、請求項1に記載の単離された抗体またはその抗原結合部分。
【請求項3】
重鎖可変領域(VH)と軽鎖可変領域(VL)とを含み、
(a)前記VHが、
(i)配列番号1に記載のHCDR1;
(ii)配列番号2に記載のHCDR2;および
(iii)配列番号3に記載のHCDR3
を含み;および
(b)前記VLが、
(i)配列番号4または7に記載のLCDR1;
(ii)配列番号5に記載のLCDR2;および
(iii)配列番号6に記載のLCDR3
を含む、請求項1または2に記載の単離された抗体またはその抗原結合部分。
【請求項4】
(A)重鎖可変領域(VH)であって:
(i)配列番号8に記載のアミノ酸配列を含む;
(ii)配列番号8と少なくとも85%、90%、または95%一致するアミノ酸配列を含む;または
(iii)配列番号8と比べて1個以上のアミノ酸の付加、欠失、および/または置換を有するアミノ酸配列を含む、
重鎖可変領域(VH)、および/または
(B)軽鎖可変領域(VL)であって:
(i)配列番号9または10に記載のアミノ酸配列を含む;
(ii)配列番号9または10と少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%一致するアミノ酸配列を含む;または
(iii)配列番号9または10と比べて1個以上のアミノ酸の付加、欠失、および/または置換を有するアミノ酸配列を含む、
軽鎖可変領域(VL)、
を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の単離された抗体またはその抗原結合部分。
【請求項5】
配列番号8に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号9または10に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、請求項4に記載の単離された抗体またはその抗原結合部分。
【請求項6】
前記単離された抗体がヒトIgG定常ドメインをさらに含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の単離された抗体またはその抗原結合部分。
【請求項7】
前記ヒトIgG定常ドメインが、ヒトIgG1定常ドメインまたはヒトIgG2定常ドメインであり、好ましくはヒトIgG2定常ドメインである、請求項6に記載の単離された抗体またはその抗原結合部分。
【請求項8】
前記抗体がCD40に対するアゴニスト抗体である、請求項1~7のいずれか1項に記載の単離された抗体またはその抗原結合部分。
【請求項9】
前記抗体が、キメラ抗体、ヒト化抗体、または完全ヒト抗体である、請求項1~8のいずれか1項に記載の単離された抗体またはその抗原結合部分。
【請求項10】
前記抗体が完全ヒトモノクローナル抗体である、請求項1~9のいずれか1項に記載の単離された抗体またはその抗原結合部分。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の単離された抗体の重鎖可変領域および/または軽鎖可変領域をコードする核酸配列を含む、単離された核酸分子。
【請求項12】
請求項11に記載の核酸分子を含む、ベクター。
【請求項13】
請求項12に記載のベクターを含む、宿主細胞。
【請求項14】
請求項1~10のいずれか1項に記載の少なくとも1つの抗体またはその抗原結合部分と、医薬として許容可能な担体とを含む、医薬組成物。
【請求項15】
前記抗体またはその抗原結合部分をコードする発現ベクターを含む宿主細胞を適切な条件下で培養する工程;と
その細胞培養物から前記抗体またはその抗原結合部分を回収する工程を含む、
請求項1~10のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合部分を作製する方法。
【請求項16】
対象の体内でCD40に関連する免疫応答を調節する方法であって、請求項1~10のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合部分、または請求項14の医薬組成物を前記対象に投与し、その対象の体内で免疫応答を調節することを含む、方法。
【請求項17】
対象の体内で腫瘍細胞の増殖を阻害する方法であって、請求項1~10のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合部分、または請求項14の医薬組成物を有効量で前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項18】
対象の体内のがんを治療または予防する方法であって、請求項1~10のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合部分、または請求項14に記載の医薬組成物を有効量で前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項19】
前記がんが、乳がん、肺がん、大腸がん、卵巣がん、黒色腫、膀胱がん、腎細胞癌、肝臓がん、前立腺がん、胃がん、膵臓がん、NSCLC、非ホジキンリンパ腫、慢性リンパ性白血病、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、および多発性骨髄腫から選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記がんが大腸がんまたは黒色腫である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
対象の体内でCD40に関連する免疫応答を調節するか、または腫瘍細胞の増殖を阻害するための薬剤の製造における、請求項1~10のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合部分の使用。
【請求項22】
がんを治療または予防するための薬剤の製造における、請求項1~10のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合部分の使用。
【請求項23】
前記がんが大腸がんまたは黒色腫である、請求項22に記載の使用。
【請求項24】
がんの治療または予防に使用するための、請求項1~10のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合部分。
【請求項25】
請求項1~10のいずれか1項に記載の少なくとも1つの抗体またはその抗原結合部分を含む容器を含む、がんの予防、治療、または診断のためのキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
本出願は、2020年8月21日に出願された国際特許出願第号PCT/CN2020/110536号の優先権を主張するものであり、その内容全体が参照によって本明細書に組み込まれている。
【0002】
配列表
本出願は配列表を含有しており、その全体が参照によって本明細書に組み込まれている。
【0003】
本出願は全体として抗体に関する。より具体的には、本出願は、CD40に対する完全ヒトモノクローナル抗体、それを調製する方法、およびその抗体の使用に関する。
【背景技術】
【0004】
免疫チェックポイントの阻止(抗CTLA-4、PD-1、およびPD-L1 mAb)は、最も一般的ながん(例えば肺がん、乳がん)を含め、広い範囲のがんで患者の持続的寛解を提供する可能性がある。しかしこの広範囲の適用性にもかかわらず、がん患者の大半(80%よりもはるかに多い)はこの療法が奏功しないか、この療法に対して耐性になる[1]。腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーのメンバー5(TNFRSF5、別名CD40)は免疫チェックポイントタンパク質の1つであり、抗原提示細胞(APC)の活性化を通じたT細胞免疫の調節に重要な役割を果たす。CD40は、広い範囲の造血細胞(樹状細胞、B細胞、単球)[4-6]と非造血細胞[7-8]の表面に発現する。APCの表面のCD40と、活性化されたエフェクタT細胞の表面に発現したそのリガンドCD40Lが相互作用する[9]結果としてAPCライセンシングが起こり、サイトカイン産生、抗原提示分子、共刺激分子、および接着分子がアップレギュレーションされる[10-11]。さらに、CD40はT細胞上の他のTNFファミリーシグナル伝達受容体の近位調節因子である[12-13]。CD40シグナル伝達の結果として、IL-12の産生と、APCの表面におけるCD70、CD86、OX40リガンド、4-1BBリガンド、およびGITRリガンドのアップレギュレーションが起こる。CD8+ T細胞上の対応する受容体の刺激にIL-12とI型IFNが組み合わさると、ロバストなCD8+ T細胞活性化、増殖、およびエフェクタ機能のほか、腫瘍特異的CD8+ T細胞メモリの形成と維持が起こる[14]。
【0005】
いくつかの臨床前マウス腫瘍モデル臨床試験において、アゴニストCD40はがんを治療するための1つの非常に有望な戦略であることが示された。CD40を標的とする多重アゴニスト剤が製薬会社(Pfizer、Roche、Abbvie、およびApexigenなど)によって開発されている。Pfizerによって開発されたアゴニストCD40抗体(CP-870,893、現在はセリクレルマブまたはRO7009789と呼ばれる)は、樹状細胞を強く活性化してT細胞にIFN-γを分泌させる完全ヒトIgG2抗体である[15]。CP-870,893は、単独で、または他の薬(ゲムシタビンや抗CTLA-4抗体トレメリムマブなど)との組み合わせで、進行したがんを持つ患者において臨床で有効性を示した[16-18]。Apexigenは、Fcが変異したヒト化IgG1モノクローナル抗体であるCD40アゴニストAPX005Mも開発中である。小規模なIb相研究の中間解析において、転移した膵管腺癌を持つ24人の評価可能な患者のうちの20人(83%)で、抗PD-1抗体ニボルマブあり、またはなしでAPX005Mにゲムシタビンとナブ-パクリタキセルを組み合わせた治療の後に腫瘍が縮小することが実証された[19]。CellDexのCD40抗体であるCDX-1140はCP-870,893よりもアゴニスト活性が低レベルだが、異種移植モデルにおいて強力な抗腫瘍活性を持つ。このCDX-1140が、最大耐量を決めるため、そしてその忍容性と有効性をさらに評価するため、現在1相試験中である[20];さらに、AlligatorのADC-1013が、進行した固形腫瘍の治療の可能性を求めてJ&Jと共同研究された。
【0006】
治療剤としてのCD40に対する抗体を改善するいくらかの余地がある。共刺激受容体に対するアゴニスト抗体として、毒性(サイトカイン放出症候群など)が最も懸念される問題である可能性があり、それが臨床応用を制限している。試験した最強のアゴニストであるCP-870,893について、最も一般的な副作用はサイトカイン放出症候群であり、輸液直後の寒気、発熱、悪寒や、それ以外の症状として表出する。APX005Mとニボルマブを組み合わせる研究において、54%の患者(24人中13人)が有害事象を経験して治療の中断につながり、10人の患者(42%)は治療に関連する深刻な有害事象を経験した[19]。2件の用量制限毒性(グレード3と4の発熱性好中球減少症)が治療中に観察された。
【0007】
本開示では、CD40経路に対する適切なアゴニスト活性を有するだけでなく、安全性リスクが最小でもある、CD40に対する完全ヒト抗体が生成した。本開示の抗体はヒトCD40タンパク質に大きな親和性で結合でき;弱いADCC効果を示すかADCC効果をまったく示さず、サイトカイン放出を刺激することがCP-870,893よりもはるかに少なく;インビトロと生体内で免疫応答を効果的に調節する。
【発明の概要】
【0008】
概要
これらの目的とそれ以外の目的は、広い意味で、有効性が改善された抗体を提供する化合物、方法、および製品に向けられた本開示によって満たされる。本開示によって提供される利点は、抗体による治療剤と診断の分野に広く適用可能であり、多彩な標的と反応する抗体と組み合わせて使用することができる。
【0009】
本開示により、CD40に対する抗体、抗CD40抗体をコードする核酸分子、抗CD40抗体を発現させるための発現ベクターと宿主細胞、およびインビトロと生体内で抗体の機能を検証する方法が提供される。本開示の抗体は、ヒト免疫機能を調節することにより多くのがんを治療するための非常に強力な薬剤を提供する。
【0010】
いくつかの態様では、本開示は、CD40(ヒトCD40またはカニクイザルCD40など)に対する単離された抗体またはその抗原結合部分を含む。この単離された抗体またはその抗原結合部分は、CD40に対するアゴニスト活性を持つことが好ましい。
【0011】
いくつかの実施形態では、前記単離された抗体またはその抗原結合部分は、
(A)(i)配列番号1を含むHCDR1;
(ii)配列番号2を含むHCDR2;および
(iii)配列番号3を含むHCDR3
からなる群から選択される1つ以上の重鎖CDR(HCDR);
(B)(i)配列番号7を含むLCDR1;
(ii)配列番号5を含むLCDR2;および
(iii)配列番号6を含むLCDR3
からなる群から選択される1つ以上の軽鎖CDR(LCDR);または
(C)(A)の1つ以上のHCDRと、(B)の1つ以上のLCDR
を含む。
【0012】
いくつかの実施形態では、配列番号7のバリアントは、配列番号7の2つ以下のアミノ酸位置、好ましくは配列番号7の1つのアミノ酸位置に置換を含む。いくつかのさらなる実施形態では、置換は、配列番号7の3個のアミノ酸「NNG」のうちの1つの位置に起こる。少なくとも1つの実施形態では、配列番号7のバリアントは配列番号4に記載されている通りであり、配列番号7とは「NNG」の中の「G」から「A」への1個のアミノ酸置換が異なる。
【0013】
いくつかの実施形態では、前記単離された抗体またはその抗原結合部分は、
(A)(i)配列番号1に記載のHCDR1;
(ii)配列番号2に記載のHCDR2;および
(iii)配列番号3に記載のHCDR3
からなる群から選択される1つ以上の重鎖CDR(HCDR);
(B)(i)配列番号4または7に記載のLCDR1;
(ii)配列番号5に記載のLCDR2;および
(iii)配列番号6に記載のLCDR3
からなる群から選択される1つ以上の軽鎖CDR(LCDR);または
(C)(A)の1つ以上のHCDRと、(B)の1つ以上のLCDR
を含む。
【0014】
いくつかの実施形態では、前記単離された抗体またはその抗原結合部分は、重鎖可変領域(VH)と軽鎖可変領域(VL)を含み、
(a)前記VHは、
(i)配列番号1に記載のHCDR1;
(ii)配列番号2に記載のHCDR2;および
(iii)配列番号3に記載のHCDR3
を含み;
(b)前記VLは、
(i)配列番号4または7に記載のLCDR1;
(ii)配列番号5に記載のLCDR2;および
(iii)配列番号6に記載のLCDR3
を含む。
【0015】
いくつかの実施形態では、前記単離された抗体またはその抗原結合部分は、
(A)(i)配列番号8に記載のアミノ酸配列を含む;
(ii)配列番号8と少なくとも85%、90%、または95%一致するアミノ酸配列を含む;または
(iii)配列番号8と比べて1個以上のアミノ酸の付加、欠失、および/または置換を有するアミノ酸配列を含む
重鎖可変領域(VH)、および/または
(B)(i)配列番号9または10に記載のアミノ酸配列を含む;
(ii)配列番号9または10と少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%一致するアミノ酸配列を含む;または
(iii)配列番号9または10と比べて1個以上のアミノ酸の付加、欠失、および/または置換を有するアミノ酸配列を含む
軽鎖可変領域(VL)を含む。
【0016】
いくつかの実施形態では、前記単離された抗体またはその抗原結合部分は、配列番号8に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号9または10に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、前記単離された抗体またはその抗原結合部分は、配列番号8に記載の重鎖可変領域と、配列番号9または10に記載の軽鎖可変領域を含む。
【0018】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されている単離された抗体またはその抗原結合部分は、ヒトIgG定常ドメインをさらに含む。ヒトIgG定常ドメインとして、ヒトIgG1またはIgG2定常ドメインが可能であり、ヒトIgG2定常ドメインが好ましい。
【0019】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されている単離された抗体またはその抗原結合部分は、以下の特性:
(a)細胞表面のヒトCD40またはカニクイザルCD40に強く結合し、EC50は、FACSによって測定するとき、参照抗体と同等であるか、参照抗体よりも優れている;
(b)ヒトCD40に特異的に結合し、ヒトのOX40、4-1BB、GITR、およびBCMAとの交差反応性はない;
(c)CD40への結合をヒトCD40Lと効果的に競合し、IC50はnMのグレードであり、約100%の阻害率である;
(d)NFκB活性化を濃度に依存して誘導し、B細胞増殖を用量に依存して効果的に増強し、両方の効果はBMK4(すなわちCP-870,893)よりも抑制されている;
(e)中レベルのIL-12p40分泌のほか、CD80とCD86のアップレギュレーションを誘導する;
(f)ヒトB細胞(例えばCD40陽性B細胞)上でADCC活性を媒介しないか、弱く媒介する;
(g)ヒトPBMCを刺激してサイトカインIL-2、IL-4、IL-6、IL-10、TNF、IFN-γ、およびIL-17Aを大量に放出させることはない;および
(h)治療されたマウスにおいてすべての用量レベルでよく忍容されつつ、有意な抗腫瘍活性を持つ
の1つ以上を持つ。
【0020】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されている単離された抗体またはその抗原結合部分は、キメラ抗体、ヒト化抗体、または完全ヒト抗体である。この抗体は完全ヒトモノクローナル抗体であることが好ましい。
【0021】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されている単離された抗体またはその抗原結合部分は、配列番号14のアミノ酸配列を持つ重鎖と、配列番号15のアミノ酸配列を持つ軽鎖を含む。
【0022】
いくつかの態様では、本開示は、本明細書に開示されている単離された抗体の重鎖可変領域および/または軽鎖可変領域をコードする核酸配列を含む単離された核酸分子に向けられている。
【0023】
いくつかの態様では、本開示は、本明細書に開示されている単離された抗体またはその抗原結合部分をコードする核酸配列を含むベクターに向けられている。
【0024】
いくつかの態様では、本開示は、本明細書に開示されている発現ベクターを含む宿主細胞に向けられている。
【0025】
いくつかの態様では、本開示は、本明細書に開示されている単離された抗体またはその抗原結合部分と、医薬として許容可能な担体とを含む医薬組成物に向けられている。
【0026】
いくつかの態様では、本開示は、抗CD40抗体またはその抗原結合部分を調製する方法に向けられており、この方法は、前記抗体またはその抗原結合部分を宿主細胞の中で発現させ、その抗体またはその抗原結合部分を前記宿主細胞から単離することを含む。
【0027】
いくつかの態様では、本開示は、対象でCD40に関連する免疫応答を調節する方法に向けられており、この方法は、本明細書に開示されている抗体またはその抗原結合部分を前記対象に投与してその対象におけるCD40に関連する前記免疫応答を調節することを含む。
【0028】
いくつかの態様では、本開示は、対象で腫瘍細胞の成長を阻害する方法に向けられており、この方法は、本明細書に開示されている抗体またはその抗原結合部分または医薬組成物を前記対象に有効な量で投与することを含む。
【0029】
いくつかの態様では、本開示は、対象でがんを治療または予防する方法に向けられており、この方法は、本明細書に開示されている抗体またはその抗原結合部分または医薬組成物を有効量で前記対象に投与することを含む。いくつかの実施形態では、前記がんは、乳がん、肺がん、大腸がん、卵巣がん、黒色腫、膀胱がん、腎細胞癌、肝臓がん、前立腺がん、胃がん、膵臓がん、NSCLC、非ホジキンリンパ腫、慢性リンパ球性白血病、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、および多発性骨髄腫から選択することができる。一実施形態では、前記がんは大腸がんである。他のいくつかの実施形態では、前記がんは黒色腫である。
【0030】
いくつかの態様では、本開示は、がんを治療または予防するための薬剤の製造における本明細書に開示されている抗体またはその抗原結合部分の使用に向けられている。
【0031】
いくつかの態様では、本開示は、がんの治療または予防に使用するための、本明細書に開示されている抗体またはその抗原結合部分に向けられている。
【0032】
いくつかの態様では、本開示は、本明細書に開示されている抗体またはその抗原結合部分と本明細書に開示されている医薬組成物を用いるキットまたは装置と、関連する方法に向けられている。
【0033】
上記はまとめであるため、必要により、詳細の単純化、一般化、および省略が含まれる;その帰結として、当業者は、このまとめが説明に過ぎず、いかなる意味でも制限する意図はないことがわかるであろう。本明細書に記載されている方法、組成物、および/または装置、および/または他の主題の他の態様、特徴、および利点は、本明細書に記載されている教示の中で明らかになろう。このまとめは、考え方を選択して簡単化された形で導入するために提示されており、それは下記の発明を実施するための形態の中でさらに説明される。このまとめは、請求項の主題の鍵となる特徴または本質的な特徴を特定することを意図しておらず、請求項の主題の範囲を定める助けに使用することも想定していない。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】
図1~3は、FACSによる、ヒトCD40改変細胞(
図1)、
【
図3】A431細胞(
図3)の表面へのW3525-1.9.16-P5-uIgG2Kの結合結果を示す。
【
図4】
図4は、FACSによる、細胞表面のカニクイザルCD40へのW3525-1.9.16-P5-uIgG2Kの結合結果を示す。
【
図5】
図5は、FACSによる、CD40への結合に関してCD40Lと競合する抗体の結合結果を示す。
【
図6】
図6は、CD40と相同性を共有するTNFRスーパーファミリーのメンバーへのW3525-1.9.16-P5-uIgG2Kの結合結果を示す。
【
図7】
図7は、ELISAによる、ヒト、カニクイザル、マウス、ラット、およびイヌのCD40タンパク質へのW3525-1.9.16-P5-uIgG2Kの結合結果の比較を示す。
【
図9】U937細胞(
図9)に基づくNFκBレポーターアッセイの結果を示す。
【
図10】
図10は、インビトロB細胞増殖アッセイにおいてW3525-1.9.16-P5-uIgG2Kによって刺激したB細胞増殖の結果を示す。
【
図11】
図11~15は、インビトロDC活性化アッセイにおいてW3525-1.9.16-P5-uIgG2Kによって誘導されるIL-12p40分泌(
図11)、
【
図16】
図16は、ヒト初代B細胞に対する抗体のADCC効果を示す。
【
図17】
図17~18は、CD40ヒト化マウスにおけるMC38マウス大腸癌モデルでの抗体の腫瘍増殖抑制の結果(
図17)および
【
図18】体重変化の結果(
図18)を示す。矢印は投与日を示す。
【
図19】
図19~20は、CD40ヒト化マウスにおけるB16F10マウス黒色腫モデルでの抗体の腫瘍増殖抑制の結果(
図19)および
【
図20】体重変化の結果(
図20)を示す。矢印は投与日を示す。
【
図21】
図21は、B16F10黒色腫を有するマウスを抗体で治療した後の生存率曲線を示す。
【発明を実施するための形態】
【0035】
詳細な説明
本開示は多くの異なる形態で具体化することができるが、本明細書に開示されているのは、本開示の原理を例示するその特別な説明用の実施形態である。本開示が説明されている特別な実施形態に限定されないことを強調すべきである。さらに、本明細書で使用されている項目の見出しは構成を明確にすることだけを目的としており、記載されている主題を限定すると解釈してはならない。
【0036】
特に断わらない限り、本開示に関して用いられる科学技術用語は、当業者によって一般に理解されている意味を持つ。さらに、単数形の用語は複数形を含み、複数形は単数形を含むが、文脈がそうでないことを要求している場合は別である。より具体的には、本明細書と添付の請求項で用いられているように、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、複数への言及を含むが、文脈が明らかにそうでないと述べている場合は別である。したがって例えば「1つのタンパク質」への言及は複数のタンパク質を含み;「1つの細胞」への言及は複数の細胞の混合物を含む、などである。本出願では、「または」の使用は、そうでないと述べられているのでなければ「および/または」を意味する。さらに、「含んでいる」という用語とそれ以外の形態(「含む」と「含まれる」など)の使用は、列挙に制限がない。それに加え、本明細書と添付の請求項に提示されている範囲は、両方の端点と、それら端点の間のあらゆる点を含む。
【0037】
一般に、本明細書に記載されている細胞と組織の培養、分子生物学、免疫学、微生物学、遺伝学、およびタンパク質と核酸の化学とハイブリダイゼーションに関して用いられる用語体系と、これらの技術で用いられる用語体系は周知であり、本分野で一般に用いられている。本開示の方法と技術は、特に断わらない限り、一般に、本分野において周知で、本明細書全体を通じて引用し、論じられているさまざまな一般的な参考文献とより特別な参考文献に記載されている従来法に従って実施される。例えばAbbas et al., Cellular and Molecular Immunology, 6th ed., W.B. Saunders Company (2010);Sambrook J. & Russell D. Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 3rd ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y. (2000);Ausubel et al., Short Protocols in Molecular Biology: A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology, Wiley, John & Sons, Inc. (2002);Harlow and Lane Using Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y. (1998);およびColigan et al., Short Protocols in Protein Science, Wiley, John & Sons, Inc. (2003)を参照されたい。本明細書に記載されている分析化学、合成有機化学、および医薬品・創薬化学の実験室の手続きと技術に関して用いられる用語体系は周知であり、本分野で一般に用いられている。
【0038】
定義
【0039】
本開示をよりよく理解するため、関連する用語の定義と説明を以下に提示する。
【0040】
「抗体」または「Ab」という用語は、本明細書では一般に、ジスルフィド共有結合と非共有結合相互作用によって互いに保持されている2つの重(H)ポリペプチド鎖と2つの軽(L)ポリペプチド鎖を含むY字形の四量体タンパク質を指す。抗体の軽鎖はκ軽鎖とλ軽鎖に分類することができる。重鎖は、μ、δ、γ、α、およびεに分類することができ、これらはそれぞれIgM、IgD、IgG、IgA、およびIgEという抗体のアイソタイプを規定する。軽鎖と重鎖において、可変領域は約12個以上のアミノ酸からなる「J」領域を介して定常領域に連結され、重鎖はさらに、約3個以上のアミノ酸からなる「D」領域を含む。各重鎖は重鎖可変領域(VH)と重鎖定常領域(CH)からなる。重鎖定常領域は3つのドメイン(CH1、CH2、およびCH3)からなる。各軽鎖は軽鎖可変領域(VL)と軽鎖定常領域(CL)からなる。VH領域とVL領域はさらに、相対的に保存された領域(フレームワーク領域(FR)と呼ばれる)を間に挟んだ超可変領域(相補性決定領域(CDR)と呼ばれる)に分割することができる。それぞれのVHとVLは3つのCDRと4つのFRからなり、N末端からC末端へとFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4の順番に並んでいる。各重/軽鎖ペアの可変領域(VHとVL)はそれぞれ抗原結合部位を形成する。さまざまな領域またはドメインの中のアミノ酸の分布は、免疫学的に興味あるタンパク質のKabat配列(National Institutes of Health, Bethesda, Md. (1987 and 1991))、またはChothia & Lesk (1987) J. Mol. Biol. 196:901-917;Chothia et al., (1989) Nature 342:878-883の中の定義に従う。抗体は、抗体アイソタイプが異なる抗体、例えばIgG(例えばIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4サブタイプ)、IgA1、IgA2、IgD、IgE、またはIgM抗体であってもよい。
【0041】
抗体の「抗原結合部分」または「抗原結合断片」という用語は、本出願の文脈では交換可能に使用でき、完全長抗体の断片を含むポリペプチドのうちで、完全長抗体が特異的に結合する抗原に特異的に結合する能力を保持しているもの、および/または同じ抗原への結合に関して完全長抗体と競合するものを意味する。一般に、Fundamental Immunology、第7章(Paul, W編、第2版、Raven Press, N.Y. (1989))を参照されたい(これは、あらゆる目的で参照によって本明細書に組み込まれている)。抗体の抗原結合断片は、組換えDNA技術によって生成させるか、完全な抗体の酵素による切断または化学的切断によって生成させることができる。いくつかの条件下では、抗原結合断片に含まれるのは、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fd、Fv、dAbと相補性決定領域(CDR)断片、一本鎖抗体(例えばscFv)、キメラ抗体、ディアボディと、抗体のうちで少なくとも特異的な抗原結合能力を与えるのに十分な部分を含むポリペプチドである。抗体の抗原結合断片は、所与の抗体(例えば本出願に提示されているモノクローナル抗ヒトCD40抗体)から当業者に知られている従来の技術(例えば組換えDNA技術、または酵素切断法または化学的切断法)によって取得し、完全な抗体をスクリーニングするのと同じやり方で特異性に関してスクリーニングすることができる。
【0042】
「モノクローナル抗体」または「mAb」という用語は、本明細書では、単一分子組成の抗体分子の調製物を意味する。モノクローナル抗体は特定の抗原に対して結合特異性と親和性を示す。
【0043】
「ヒト化抗体」という用語は、別の哺乳類種(マウスなど)の生殖細胞系列に由来するCDR配列がヒトフレームワーク配列にグラフトされた抗体を意味することが想定されている。フレームワーク領域の追加の修飾はヒトフレームワーク配列内で実施することができる。
【0044】
「組換え抗体」という用語は、本明細書では、組換え手段によって調製、発現、創出、または単離された抗体を意味し、その例は、別の種の免疫グロブリン遺伝子にとってトランスジェニックな動物から単離された抗体、宿主細胞にトランスフェクトされた組換え発現ベクターを用いて発現させた抗体、組換えコンビナトリアル抗体ライブラリから単離された抗体、または免疫グロブリン遺伝子配列のスプライシングによって他のDNA配列にすることを含む他の任意の手段によって調製、発現、創出、または単離された抗体などである。
【0045】
抗体または抗原結合ドメインに関する「完全ヒト」という用語は、抗体または抗原結合ドメインが、ヒトまたはヒト免疫細胞によって産生された抗体のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を持つか、そのようなアミノ酸配列からなること、またはヒト抗体レパートリーまたはヒト抗体をコードする他の配列を利用する非ヒト供給源(トランスジェニック非ヒト動物など)に由来することを意味する。ある実施形態では、完全ヒト抗体は、非ヒト抗体に由来するアミノ酸残基(特に抗原結合残基)を含まない。
【0046】
「CD40」、「CD40抗原」、または「CD40タンパク質」という用語は本明細書では交換可能に使用され、腫瘍壊死因子/神経成長因子スーパーファミリーの1つのメンバーとして知られる一本鎖糖タンパク質である。CD40は、抗原提示細胞(例えばB細胞、マクロファージ、およびDC)のほか、非免疫細胞と腫瘍によって発現される。CD40Lは、CD40と、II型の39-kDaの膜糖タンパク質にとっての天然のリガンドである。CD40-CD40Lは共刺激分子のペアであり、その相互作用は、多彩な免疫応答と炎症応答(T細胞依存性免疫グロブリンのクラススイッチ、メモリB細胞の発達、および胚中心の形成が含まれる)を媒介する上で不可欠であることが見いだされている。
【0047】
「抗CD40抗体」または「CD40抗体」または「CD40に対する抗体」という用語は、本明細書では、CD40(例えばヒトCD40タンパク質)に結合することのできる、本明細書で定義した抗体を意味する。ある実施形態では、本明細書に開示されている抗CD40抗体はCD40のアゴニストである。
【0048】
「アゴニスト」または「アゴニストの」という用語は、天然配列のペプチドの生物活性を増強または刺激するあらゆる分子を含む。適切なアゴニスト分子は特に、アゴニストペプチド、アゴニスト抗体または抗体断片、天然ペプチドの断片またはアミノ酸配列バリアントなどを含む。「CD40アゴニスト」という用語は、例えばCD40に結合してCD40活性を刺激することによって、または1つ以上のCD40阻害剤に結合してその阻害剤とCD40の相互作用を阻止することによってCD40の活性を刺激すること、活性化させること、または増強することのできる分子を意味する。アゴニストの非限定的な例に含まれるのは、CD40阻害剤に向かう抗体とその抗原結合断片、タンパク質、ペプチド、糖タンパク質、糖ペプチド、糖脂質、多糖、オリゴ糖、核酸、生体有機分子、ペプチド模倣体、薬剤とその代謝産物、小分子、融合タンパク質、受容体分子、および誘導体のほか、アンチセンス分子、RNAアプタマー、およびリボザイムである。
【0049】
「Ka」という記号は、本明細書では、ある特別な抗体-抗原相互作用の会合速度を意味することが想定されているのに対し、「Kd」という記号は、本明細書では、ある特別な抗体-抗原相互作用の解離速度を意味することが想定されている。抗体のKd値は本分野でよく確立されている方法を用いて求めることができる。「KD」という記号は、本明細書では、特定の抗体-抗原相互作用の解離定数を意味することが想定されており、解離定数はKaに対するKdの比(すなわちKd/Ka)から得られてモル濃度(M)として表わされる。抗体のKdを求める1つの好ましい方法は、好ましくはバイオセンサー系(Biacore(登録商標)系など)を用いる表面プラズモン共鳴の使用による。
【0050】
IgG抗体に対する「高親和性」という用語は、本明細書では、標的抗原(例えばCD40)に対するKDが1×10-7M以下、より好ましくは5×10-8M以下、より一層好ましくは1×10-8M以下である抗体を意味する。
【0051】
「EC50」という用語は、「半数効果濃度」とも呼ばれ、本明細書では、指定された曝露時間の後にベースラインと最大値の間の中間の応答を誘導する薬、抗体、または毒物の濃度を意味する。本出願の文脈では、EC50は「nM」の単位で表わされる。
【0052】
「結合を阻止する」能力は、本明細書では、抗体またはその抗原結合断片が2つの分子の結合を任意の検出可能なレベルで阻止または阻害する能力を意味する。ある実施形態では、CD40とCD40Lの間の結合は、本明細書に開示されている抗体またはその抗原結合断片によって少なくとも50%阻害することができる。ある実施形態では、そのような阻害効果は60%超、70%超、80%超、または90%超である可能性がある。
【0053】
「単離された」という用語は、本明細書では、天然状態から人工的手段によって得られたある状態を意味する。ある「単離された」物質または成分が自然界に存在している場合、そうなることは、その自然環境が変化したためか、その物質が自然環境から単離されたため、またはその両方のために可能である。例えばある生きている動物の体内に、ある単離されていないポリヌクレオチドまたはポリペプチドが自然に存在していると、そのような天然状態から高純度で単離されたその同じポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、単離されたポリヌクレオチドまたはポリペプチドと呼ばれる。「単離された」という用語は、単離された物質の活性に影響しない混合された人工物質または合成物質も、他の不純な物質も排除しない。
【0054】
「単離された抗体」という用語は、本明細書では、異なる抗原特異性を持つ他の抗体を実質的に含まない(例えばCD40タンパク質に特異的に結合する単離された抗体は、CD40タンパク質以外の抗原に特異的に結合する抗体を実質的に含まない)抗体を意味することが想定されている。しかしヒトCD40タンパク質に特異的に結合する単離された抗体は、他の抗原(他の種からのCD40タンパク質など)に対する交差反応性を持つ可能性がある。さらに、単離された抗体は、他の細胞材料および/または化学物質を実質的に含まないことが可能である。
【0055】
「ベクター」という用語は、本明細書では、ポリヌクレオチドを中に挿入することのできる核酸担体を意味する。あるベクターが、その中に挿入されたポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質の発現を可能にするとき、そのベクターは発現ベクターと呼ばれる。ベクターは、宿主細胞の形質転換、宿主細胞への形質導入、またはトランスフェクションによって持ち込まれた遺伝材料エレメントをその宿主細胞の中で発現させることができる。ベクターは当業者に周知であり、その非限定的な例に含まれるのは、プラスミド、ファージ、コスミド、人工染色体(酵母人工染色体(YAC)、細菌人工染色体(BAC)、またはP1由来人工染色体(PAC)など);ファージ(λファージまたはM13ファージなど)、および動物ウイルスである。ベクターとして使用できる動物ウイルスの非限定的な例に含まれるのは、レトロウイルス(レンチウイルスが含まれる)、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス(単純ヘルペスウイルスなど)、ポックスウイルス、バキュロウイルス、パピローマウイルス、パポバウイルス(SV40など)である。ベクターは、発現を制御するための多くのエレメントを含むことができ、その非限定的な例に含まれるのは、プロモータ配列、転写開始配列、エンハンサ配列、選択エレメント、およびレポータ遺伝子である。それに加え、ベクターは複製起点を含むことができる。
【0056】
「宿主細胞」という用語は、本明細書では、興味あるタンパク質、タンパク質断片、またはペプチドを産生するように改変した細胞系を意味する。宿主細胞の非限定的な例に含まれるのは、培養した細胞(例えば齧歯類(ラット、マウス、モルモット、またはハムスター)に由来する哺乳類培養細胞であるCHO、BHK、NSO、SP2/0、YB2/0など);またはヒト組織またはハイブリドーマ細胞、酵母細胞、および昆虫細胞と、トランスジェニック動物または培養した組織の中に含まれる細胞である。この用語は、特定の対象細胞だけでなく、そのような細胞の子孫も包含する。変異または環境の影響によりある修飾が後続世代に起こる可能性があるため、そのような子孫は親細胞と同一でない可能性があるが、それでも「宿主細胞」の用語の範囲に含まれる。
【0057】
「同一」という用語は、本明細書では、2つ以上のポリペプチド分子、または2つ以上の核酸分子の配列をアラインメントさせて比較することによって明らかになる、それら配列の間の関係を意味する。「一致率」は、比較される分子内のアミノ酸またはヌクレオチドの間で一致する残基の割合を意味し、比較される分子のうちの最小のもののサイズに基づいて計算される。これらの計算のため、アラインメントの中のギャップ(存在する場合)は、特別な数学モデルまたはコンピュータプログラム(すなわち「アルゴリズム」)によって対処されることが好ましい。アラインメントされた核酸またはポリペプチドの一致を計算するのに利用できる方法に含まれるのは、Computational Molecular Biology, (Lesk, A. M., ed.), 1988, New York: Oxford University Press;Biocomputing Informatics and Genome Projects, (Smith, D. W., ed.), 1993, New York: Academic Press;Computer Analysis of Sequence Data, Part I, (Griffin, A. M., and Griffin, H. G., eds.), 1994, New Jersey: Humana Press;von Heinje, G., 1987, Sequence Analysis in Molecular Biology, New York: Academic Press;Sequence Analysis Primer, (Gribskov, M. and Devereux, J., eds.), 1991, New York: M. Stockton Press;およびCarillo et al, 1988, SIAMJ. Applied Math. 48:1073に記載されている方法である。
【0058】
「免疫原性」という用語は、本明細書では、生物の中で特異的抗体または感作リンパ球の形成を刺激する能力を意味する。この用語は、特定の免疫細胞を刺激して活性化、増殖、および分化させ、最終的に免疫学的エフェクタ物質(抗体と感作リンパ球など)を生成させる抗原の特性を意味するだけでなく、生物が抗原で刺激された後にその生物の免疫系において抗体または感作Tリンパ球を形成できるという特異的免疫応答も意味する。免疫原性は抗原の最も重要な特性である。抗原が宿主の中で免疫応答の生成をうまく誘導できるかどうかは、3つの因子、すなわち抗原の特性、宿主の反応性、および免疫化手段に依存する。
【0059】
「トランスフェクション」という用語は、本明細書では、核酸が真核細胞(特に哺乳類細胞)の中に導入されるプロセスを意味する。トランスフェクションのためのプロトコルと技術の非限定的な例に含まれるのは、脂質トランスフェクションと、化学的・物理的方法(電気穿孔など)である。多数のトランスフェクション技術が本分野で周知であり、本明細書に開示されている。例えばGraham et al., 1973, Virology 52:456;Sambrook et al., 2001, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, supra; Davis et al., 1986, Basic Methods in Molecular Biology, Elsevier;Chu et al, 1981, Gene 13:197を参照されたい。本開示の特別な一実施形態では、ヒトCD40遺伝子が293F細胞にトランスフェクトされる。
【0060】
「ハイブリドーマ」という用語と「ハイブリドーマ細胞系」という用語は、本明細書では交換可能に用いることができる。「ハイブリドーマ」という用語と「ハイブリドーマ細胞系」という用語に言及されているとき、これらの用語はハイブリドーマのサブクローンと子孫細胞も含む。
【0061】
「SPR」または「表面プラズモン共鳴」という用語は、本明細書では、バイオセンサーマトリックス内のタンパク質濃度の変化を例えばBIAcore系(Pharmacia Biosensor AB、ウプサラ、スウェーデン国と、ピスカタウェイ、ニュージャージー州)を用いて検出することによりリアルタイムでの生物特異的相互作用の分析を可能にする光学現象を意味するともに、その光学現象を含む。さらなる説明については、実施例5とJonsson, U., et al. (1993) Ann. Biol. Clin. 51:19-26;Jonsson, U., et al. (1991) Biotechniques 11:620-627;Johnsson, B., et al. (1995) J. Mol. Recognit. 8:125-131;およびJohnnson, B., et al. (1991) Anal. Biochem. 198:268-277を参照されたい。
【0062】
「蛍光活性化セルソーティング」または「FACS」という用語は、本明細書では、特殊なタイプのフローサイトメトリーを意味する。これは、生物細胞の異種混合物を、各セルの特定の光散乱と蛍光特性に基づいて一度に1個の細胞の割合で2つ以上の容器に分類する方法を提供する(FlowMetric. “Sorting Out Fluorescence Activated Cell Sorting”。2017年11月09日に回収)。FACSを実施するための装置は当業者に知られており、市販されている。このような装置の例に含まれるのは、Becton Dickinson(フォスター・シティ、カリフォルニア州)からのFACS Star Plus、FACScan、およびFACSort装置Coulter Epics Division(ハイアリア、フロリダ州)からのEpics C、およびCytomation(コロラド・スプリングズ、コロラド州)からのMoFloである。
【0063】
「抗体依存性細胞傷害」または「ADCC」という用語は、本明細書では、細胞毒性の1つの形態を意味しており、分泌されたIgが細胞傷害性細胞(例えばナチュラルキラー(NK)細胞、好中球、およびマクロファージ)の表面に存在するFc受容体(FcR)に結合することにより、これら細胞傷害性エフェクタ細胞が抗原を有する標的細胞に特異的に結合し、その後その標的細胞を細胞毒で殺傷することが可能になる。抗体は細胞傷害性細胞を「武装」させるため、そのような殺傷に絶対に必要とされる。ADCCを媒介する初代細胞であるNK細胞はFcγRIIIだけを発現するのに対し、単球は、FcγRI、FcγRII、およびFcγRIIIを発現する。造血細胞の表面でのFcR発現は、Ravetch and Kinet, Annu. Rev. Immunol 9:457-92 (1991)の464ページの表3にまとめられている。興味ある分子のADCC活性を評価するには、アメリカ合衆国特許第5,500,362号または第5,821,337号に記載されているようなインビトロADCCアッセイを実施することができる。このようなアッセイのための有用なエフェクタ細胞に含まれるのは、末梢血単核細胞(PBMC)とナチュラルキラー(NK)細胞である。その代わりに、またはそれに加えて、興味ある分子のADCC活性は、生体内で、例えばClynes et al. PNAS (USA) 95:652-656 (1998)に開示されているような動物モデルにおいて評価することができる。
【0064】
「対象」という用語は任意のヒトまたは非ヒト動物を含み、ヒトであることが好ましい。
【0065】
「がん」という用語は、本明細書では、あらゆる腫瘍または悪性細胞の成長、増殖、または転移によって生じる固形腫瘍と非固形腫瘍(白血病など)を意味し、ある医学的状態を開始させる。
【0066】
ある状態の治療の文脈における「治療」、「治療する」、または「治療された」という用語は、本明細書では、一般に、何らかの望む治療効果(例えば状態の進行の阻害)が実現されるヒトまたは動物の治療と療法に関係しており、治療効果には、進行速度の低下、進行速度の停止、状態の退行、状態の改善、および状態の治癒が含まれる。予防的措置としての治療(すなわち予防、防止)も含まれる。がんについては、「治療する」は、腫瘍または悪性細胞の成長、増殖、または転移、またはこれらの何らかの組み合わせの減速または遅延化を意味することができる。腫瘍については、「治療」は、腫瘍の全体または一部の除去、腫瘍の成長と転移の阻害または減速、腫瘍の発達の阻止または遅延化、またはこれらの何らかの組み合わせを含む。
【0067】
「有効な量」という用語は、本明細書では、望ましい治療計画に従って投与されたとき、合理的なベネフィット/リスク比で何らかの望む治療効果を生じさせる活性化合物または材料の量、活性化合物を含む組成物または剤型の量に関する。例えばCD40に関連する疾患または状態の治療に関して使用されるときの「有効な量」は、前記疾患または状態を治療するのに有効な量または濃度の抗体またはその抗原結合部分を意味する。
【0068】
哺乳類のある疾患状態に関する「予防する」、「予防」、または「予防している」という用語は、疾患の発症を阻止するか遅延させること、またはその臨床症状または準臨床症状の出現を阻止することを意味する。
【0069】
「医薬として許容可能な」という表現は、本明細書では、媒体、希釈剤、賦形剤、および/またはその塩が、化学的および/または物理的に製剤中の他の成分に適合するとともに、生理学的にレシピエントに適合していることを意味する。
【0070】
本明細書では、「医薬として許容可能な担体および/または賦形剤」という表現は、対象と活性剤に対して薬理学的および/または生理学的に適合していて本分野(例えばRemington’s Pharmaceutical Sciences. Edited by Gennaro AR, 19th ed. Pennsylvania: Mack Publishing Company, 1995参照)で周知の担体および/または賦形剤を意味し、その非限定的な例に含まれるのは、pH調節剤、界面活性剤、アジュバント、およびイオン強度増強剤である。例えばpH調節剤の非限定的な例に含まれるのはリン酸塩バッファであり;界面活性剤の非限定的な例に含まれるのは、カチオン性、アニオン性、または非イオン性の界面活性剤(例えばTween(登録商標)-80)であり;イオン強度増強剤の非限定的な例に含まれるのは塩化ナトリウムである。
【0071】
本明細書では、「アジュバント」という用語は、抗原とともに生物に送達されたとき、またはあらかじめ生物に送達されたとき、その生物でその抗原に対する免疫応答を増強すること、または免疫応答のタイプを変化させることのできる非特異的免疫増強剤を意味する。多彩なアジュバントが存在しており、その非限定的な例に含まれるのは、アルミニウムアジュバント(例えば水酸化アルミニウム)、フロイントのアジュバント(例えばフロイントの完全アジュバントとフロイントの不完全アジュバント)、コリネバクテリウム・パルヴム、リポ多糖、サイトカインなどである。フロイントのアジュバントは、現在動物実験で最も一般的に使用されているアジュバントである。臨床試験では水酸化アルミニウムアジュバントがより一般的に使用される。
【0072】
抗CD40抗体
【0073】
いくつかの態様では、本開示は、CD40に対する単離された抗体またはその抗原結合部分を含む。
【0074】
本出願の文脈では、「抗体」に含めることができるのは、ポリクローナル抗体、マルチクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体と霊長類化抗体、CDRグラフト抗体、ヒト抗体、組換えで作製された抗体、イントラボディ、多特異性抗体、二重特異性抗体、1価抗体、多価抗体、抗イディオタイプ抗体、合成抗体(ムテインとそのバリアントが含まれる);およびこれらの誘導体(Fc融合とそれ以外の修飾が含まれる)、およびCD40タンパク質との優先的な会合または結合を示す場合の他の任意の免疫反応性分子である。さらに、この用語は、あらゆるクラスの抗体(すなわちIgA、IgD、IgE、IgG、およびIgM)と、あらゆるサブクラス(すなわちIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、およびIgA2)を含むが、文脈の制約によりそうでないと記載されている場合は別である。好ましい一実施形態では、抗体はモノクローナル抗体である。より好ましい一実施形態では、抗体は、ヒト化モノクローナル抗体または完全ヒトモノクローナル抗体である。
【0075】
モノクローナル抗体は、本分野で知られている広範囲の技術(ハイブリドーマ技術、組換え技術、ファージ提示技術、トランスジェニック動物(例えばXenoMouse(登録商標))、またはこれらの何らかの組み合わせが含まれる)を使用して調製することができる。例えばモノクローナル抗体は、ハイブリドーマと、本分野で認められている生化学の技術と遺伝子改変の技術を用いて調製することができ、そのような技術がより詳細に記述されているのは、An, Zhigiang (ed.) Therapeutic Monoclonal Antibodies: From Bench to Clinic, John Wiley and Sons, 1st ed. 2009;Shire et. al. (eds.) Current Trends in Monoclonal Antibody Development and Manufacturing, Springer Science + Business Media LLC, 1st ed. 2010;Harlow et al., Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 2nd ed. 1988;Hammerling, et al., in: Monoclonal Antibodies and T-Cell Hybridomas 563-681 (Elsevier, N.Y., 1981) である(そのそれぞれが参照によってその全体が本明細書に組み込まれている)。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されている抗体は、ハイブリドーマ技術と(Open Monoclonal Technology(OMT)Companyによって開発された[2-3])遺伝子改変されたOmniRatを用いることによって得られる。選択された結合配列をさらに変化させ、例えば標的に対する親和性を改善すること、標的結合配列をヒト化すること、細胞培養物の中でのその産生を改善すること、生体内でのその免疫原性を低下させること、多特異性抗体を創出することなどが可能であることと、変化した標的結合配列を含む抗体も本開示の抗体であることを理解すべきである。
【0076】
好ましい一実施形態では、抗ヒトCD40モノクローナル抗体はハイブリドーマ技術を利用して調製される。ハイブリドーマの生成は本分野で周知である。例えばHarlow and Lane (1988) Antibodies, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Publications、New Yorkを参照されたい。
【0077】
本出願では、一連のハイスループットスクリーニングを実施して陽性ハイブリドーマ細胞系を同定する。スクリーニングプロセスの目的は、CD40経路に対する適切な機能的活性を持つヒトとカニクイザルのCD40高親和性バインダの候補を見いだすことである。抗体の配列をさらに最適化する(例えばPTM除去)と、大きな結合親和性と適切なアゴニスト活性を持つリード抗体が得られる。
【0078】
抗CD40アゴニスト抗体
【0079】
アンタゴニスト抗CD40抗体が開発されているが、アゴニストCD40はがんを治療するための極めて有望な1つの戦略であることが見いだされている。CD40を標的とする多重アゴニスト剤(CP-870,893(Pfizer)、APX005M(Apexigen)、CDX-1140(CellDex)、およびADC-1013(Alligator)などでありこれらはすべてアゴニストCD40抗体である)が臨床試験中である。
【0080】
がんの治療では、CD40アゴニスト抗体の主要な機構は、APCをライセンス化して抗腫瘍T細胞応答を誘導するというものであり、腫瘍細胞の表面でのCD40発現を必要としない。CD40アゴニスト抗体は、免疫を強化するのに活性化されたT細胞の表面上のCD40Lの代替物になりうる。CD40によって活性化されたB細胞は増殖状態に入り、すると今度はT細胞応答が増強される。
【0081】
実施例で実証されているように、本明細書に開示されている抗CD40抗体は、(インビトロ増殖アッセイにおいて)B細胞増殖を効果的に増強することができ、濃度に依存してNFκB(RGAアッセイ)の活性化を誘導することができ、参照抗体と比べてはるかに低レベルのサイトカイン(IL-2、IL-4、IL-6、およびTNFなど)産生を誘導する。したがって本明細書に開示されている抗CD40抗体は、臨床試験においてアゴニスト抗CD40抗体に関して最も多く報告されている有害事象であるサイトカイン放出症候群(CRS)を引き起こすリスクがはるかに小さい。
【0082】
ある特性を持つ抗CD40抗体
【0083】
本開示の抗体は、これら抗体の特別な機能的特徴または特性によって特徴づけられる。抗体のインビトロでの機能的特徴と医薬活性は、標的に対する作用機序に従って分子と細胞のレベルで十分に評価されている。いくつかの実施形態では、本開示の単離された抗体またはその抗原結合部分は、以下の特性:
(a)細胞表面のヒトCD40またはカニクイザルCD40に強く結合し、EC50は参照抗体と同等であるか、参照抗体よりも優れている;
(b)CD40への結合に関してヒトCD40Lと効果的に競合し、IC50は1.4nM、阻害率は100%である;
(c)ヒトCD40に特異的に結合し、ヒトのOX40、4-1BB、GITR、およびBCMAへの交差反応性はない;
(d)ヒトCD40とカニクイザルCD40に対する交差反応性を示すが、マウス、ラット、およびイヌのCD40に対する交差反応性はない;
(e)濃度に依存してNFκBの活性化を誘導し、BMK4よりもはるかに抑制された大きさであることが実証されている;
(f)濃度に依存してB細胞増殖を効果的に増強し、その効果はBMK4よりも抑制されている;
(g)中レベルのIL-12p40分泌を誘導するほか、VD80とCD86をアップレギュレーションする;
(h)ヒトIgG2形式であり、ヒトB細胞上でADCC活性を媒介しないか、弱く媒介する;
(i)ヒトPBMCを刺激してサイトカインIL-2、IL-4、IL-6、IL-10、TNF、IFN-γ、およびIL-17Aを大量に放出させることはない;および
(j)有意な抗腫瘍活性を持ち、治療されたマウスにおいてあらゆる投与レベルでよく忍容される
の1つ以上を持つ。
【0084】
本開示の抗体は、ヒトとカニクイザル両方のCD40に大きな親和性で結合する。CD40への本開示の抗体の結合は、本分野でよく確立された1つ以上の技術(例えばELISA)を利用して評価することができる。本開示の抗体の結合特異性は、CD40タンパク質を発現している細胞への抗体の結合をモニタすること(例えばフローサイトメトリー)によって明らかにすることもできる。例えば抗体は、その抗体を、ヒトCD40を発現する細胞系(トランスフェクションにより細胞表面にCD40を発現するようにされたCHO K1細胞など)と反応させるフローサイトメトリーアッセイによって調べることができる。それに加え、またはその代わりに、抗体の結合は、結合動態(例えばKd値)を含め、BIAcore結合アッセイで調べることができる。さらに別の適切な結合アッセイに含まれるのは、例えば組換えCD40タンパク質を用いるELISAアッセイである。例えば本開示の抗体は、BIAcore結合アッセイによって求めたとき、ヒトCD40に10nM以下のKDで結合する、ヒトCD40に9.5nM以下のKDで結合する、ヒトCD40に9nM以下のKDで結合する、ヒトCD40タンパク質に8.5nM以下のKDで結合する、ヒトCD40タンパク質に8nM以下のKDで結合する、ヒトCD40タンパク質に7.5nM以下のKDで結合する、またはヒトCD40タンパク質に7nM以下のKDで結合する。
【0085】
さらに、本開示の抗体は、CD40へのCD40Lの結合を阻止することができる。CD40リガンド/CD40経路は、免疫調節とホメオスタシスにおけるその顕著な役割が広く認識されている。炎症条件下でT細胞と他の非免疫細胞の表面で一過性に発現するCD40とCD40リガンドが係合すると、広い範囲の分子プロセスと細胞プロセスが調節される(その中には細胞と液性適応免疫の開始と進行が含まれる)。本開示の抗体はCD40への結合に関してヒトCD40Lと効果的に競合することが示されており、IC50はnMのグレードであり、阻害率は約100%である。
【0086】
CDRを含む抗CD40抗体
【0087】
いくつかの実施形態では、単離された抗体またはその抗原結合部分は、
(A)(i)配列番号1を含むHCDR1;
(ii)配列番号2を含むHCDR2;および
(iii)配列番号3を含むHCDR3
からなる群から選択される1つ以上の重鎖CDR(HCDR);
(B)(i)配列番号7を含むLCDR1;
(ii)配列番号5を含むLCDR2;および
(iii)配列番号6を含むLCDR3
からなる群から選択される1つ以上の軽鎖CDR(LCDR);または
(C)A)の1つ以上のHCDRと、B)の1つ以上のLCDR
を含む。
【0088】
いくつかの実施形態では、配列番号7のバリアントは配列番号7の2つ以下のアミノ酸位置、好ましくは7の1つ以下のアミノ酸位置に置換を含む。いくつかのさらなる実施形態では、置換は、配列番号7内のアミノ酸「NNG」の1つの位置で例えばアミノ酸「G」を他の任意のアミノ酸に変異させることによって起こる。一実施形態では、配列番号7のバリアントは配列番号4に示されている通りであり、それは、配列番号7とは「NNG」の中の「G」から「A」への1つのアミノ酸置換だけ異なる。
【0089】
抗体配列の中の可変領域とCDRは、本分野で開発された一般的な規則(上記のように、例えばKabat番号付けシステムなど)に従って同定すること、または配列を既知の可変領域のデータベースに対してアラインメントすることによって同定することができる。これら領域を同定する方法は、Kontermann and Dubel, eds., Antibody Engineering, Springer, New York, NY, 2001と、Dinarello et al., Current Protocols in Immunology, John Wiley and Sons Inc., Hoboken, NJ, 2000に記載されている。抗体配列の代表的なデータベースは、Retter et al., Nucl. Acids Res., 33 (Database issue): D671-D674 (2005)に記載されているように、(ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドンの生化学・分子生物学部、ロンドン、イングランドのA.C. Martinによって維持されている)「Abysis」のウェブサイトwww.bioinf.org.uk/absと、VBASE2のウェブサイトwww.vbase2.orgに記載されており、それらを通じてアクセスすることができる。配列は、Kabat、IMGT、およびタンパク質データバンク(PDB)からの配列データをPDBからの構造データと統合したAbysisデータベースを用いて分析されることが好ましい。書籍Antibody Engineering Lab Manual(編:Duebel, S. and Kontermann, R., Springer-Verlag, Heidelberg, ISBN-13: 978-3540413547、ウェブサイトbioinforg.uk/absでも入手可能)の中のAndrew C. R. Martin博士の章 Protein Sequence and Structure Analysis of Antibody Variable Domainsを参照されたい。Abysisデータベースのウェブサイトにはさらに、CDRを同定するために開発された一般的な規則が含まれており、それを本明細書の教示に従って利用することができる。特に断わらない限り、本明細書に示されているすべてのCDRはKabat番号付けシステムに従って導出される。
【0090】
いくつかの実施形態では、単離された抗体またはその抗原結合部分は、
(A)(i)配列番号1に記載のHCDR1;
(ii)配列番号2に記載のHCDR2;および
(iii)配列番号3に記載のHCDR3
からなる群から選択される1つ以上の重鎖CDR(HCDR);
(B)(i)配列番号4または7に記載のLCDR1;
(ii)配列番号5に記載のLCDR2;および
(iii)配列番号6に記載のLCDR3
からなる群から選択される1つ以上の軽鎖CDR(LCDR);または
(C)A)の1つ以上のHCDRと、B)の1つ以上のLCDR
を含む。
【0091】
特別な一実施形態では、単離された抗体またはその抗原結合部分は、重鎖可変領域(VH)と軽鎖可変領域(VL)を含み、
(a)前記VHは、
(i)配列番号1に記載のHCDR1;
(ii)配列番号2に記載のHCDR2;および
(iii)配列番号3に記載のHCDR3
を含み;
(b)前記VLは、
(i)配列番号4または7に記載のLCDR1;
(ii)配列番号5に記載のLCDR2;および
(iii)配列番号6に記載のLCDR3
を含む。
【0092】
重鎖可変領域と軽鎖可変領域を含む抗CD40抗体
【0093】
いくつかの実施形態では、単離された抗体またはその抗原結合部分は、
(A)(i)配列番号8に記載のアミノ酸配列を含む;
(ii)配列番号8と少なくとも85%、90%、または95%一致するアミノ酸配列を含む;または
(iii)配列番号8と比べて1個以上のアミノ酸の付加、欠失、および/または置換を有するアミノ酸配列を含む
重鎖可変領域(VH)、および/または
(B)(i)配列番号9または10に記載のアミノ酸配列を含む;
(ii)配列番号9または10と少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%一致するアミノ酸配列を含む;または
(iii)配列番号9または10と比べて1個以上のアミノ酸の付加、欠失、および/または置換を有するアミノ酸配列を含む
軽鎖可変領域(VL)を含む。
【0094】
2つのアミノ酸配列の間の一致率は、ALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれているE. Meyersto W. Millerのアルゴリズム(Comput. Appl. Biosci., 4:11-17 (1988))を、PAM120重み残基表を用い、ギャップ長のペナルティを12にし、ギャップペナルティを4にして求めることができる。それに加え、2つのアミノ酸配列の間の一致率は、GCGソフトウエアパッケージ(http://www.gcg.comで入手可能)の中のGAPプログラムに組み込まれているNeedlemanとWunschのアルゴリズム(J. Mol. Biol. 48:444-453 (1970))を、Blossum 62行列またはPAM250行列のいずれかを用い、ギャップの重みを16、14、12、10、8、6、または4にし、長さの重みを1、2、3、4、5、または6にして求めることができる。
【0095】
それに加え、またはその代わりに、例えば関連する配列を同定するため、本開示のタンパク質配列をさらに「質問配列」として使用し、公開データベースに対して検索を実施することができる。このような検索は、Altschul, et al. (1990) J. MoI. Biol. 215:403-10のXBLASTプログラム(バージョン2.0)を用いて実施することができる。BLASTタンパク質検索をXBLASTプログラム、スコア=50、ワード長=3で実施し、本開示の抗体分子と相同なアミノ酸配列を得ることができる。比較する目的でギャップ付きのアラインメントを得るには、Gapped BLASTを、Altschul et al, (1997) Nucleic Acids Res. 25(17):3389-3402に記載されているようにして用いることができる。BLASTとGapped BLASTプログラムを利用するときには、それぞれのプログラムのデフォルトパラメータ(例えばXBLASTとNBLAST)を使用することができる。www.ncbi.nlm.nih.gov参照。
【0096】
特別な一実施形態では、単離された抗体またはその抗原結合部分は、配列番号8のアミノ酸配列を含むかそのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域と、配列番号9または10のアミノ酸配列を含むかそのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む。
【0097】
他の実施形態では、重鎖可変領域および/または軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、上記のそれぞれの配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%一致していることが可能である。
【0098】
いくつかのさらなる実施形態では、単離された抗体またはその抗原結合部分は、重鎖および/または軽鎖の可変領域の中にアミノ酸の保存された置換または修飾を含む可能性がある。本分野では、ある保存された配列修飾を、抗原の結合を失わせることなく実現できると理解されている。例えばBrummell et al. (1993) Biochem 32:1180-8;de Wildt et al. (1997) Prot. Eng. 10:835-41;Komissarov et al. (1997) J. Biol. Chem. 272:26864- 26870;Hall et al. (1992) J. Immunol. 149:1605-12;Kelley and O’ Connell (1993) Biochem. 32:6862-35;Adib-Conquy et al. (1998) Int. Immunol. 10:341-6、およびBeers et al. (2000) Clin. Can. Res. 6:2835-43を参照されたい。
【0099】
上述のように、「保存された置換」という用語は、本明細書では、アミノ酸配列を含むタンパク質/ポリペプチドの本質的な特性が不利な影響を受けたり変化したりしないと考えられるアミノ酸置換を意味する。例えば保存された置換は、本分野で知られている標準的な技術(部位特異的変異誘発や、PCRを媒介とした変異誘発など)によって導入することができる。保存されたアミノ酸置換に含まれるのは、アミノ酸残基が、対応するアミノ酸残基と似た側鎖を持つ別のアミノ酸残基、例えば物理的または機能的に似た残基(似たサイズ、形、電荷、化学的特性(共有結合または水素結合などを形成する能力を含む)を持つ残基など)で置換される置換である。似た側鎖を持つアミノ酸残基のファミリーは本分野で明確にされている。そのようなファミリーに含まれるのは、アルカリ側鎖を持つアミノ酸(例えばリシン、アルギニン、およびヒスチジン)、酸性側鎖を持つアミノ酸(例えばアスパラギン酸とグルタミン酸)、帯電していない極性側鎖を持つアミノ酸(例えばグリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン、トリプトファン)、非極性側鎖を持つアミノ酸(例えばアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン)、β分岐側鎖を持つアミノ酸(トレオニン、バリン、イソロイシンなど)、および芳香族側鎖を持つアミノ酸(例えばチロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)である。したがって対応するアミノ酸残基は、同じ側鎖ファミリーからの別のアミノ酸残基で置換されることが好ましい。保存されたアミノ酸置換を同定する方法は本分野で周知である(例えばBrummell et al., Biochem. 32: 1180-1187 (1993);Kobayashi et al., Protein Eng. 12(10): 879-884 (1999);およびBurks et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94: 412-417 (1997)を参照されたい。これらは参照によって本明細書に組み込まれている)。
【0100】
Fc領域を含むIgG定常ドメイン
【0101】
本明細書に提示されている抗CD40抗体と抗原結合断片は、IgG定常ドメイン(ヒトIgG定常ドメインなど)をさらに含む。ヒトIgG定常ドメインとしてヒトIgG1またはIgG2定常ドメインが可能であり、ヒトIgG2定常ドメインが好ましい。いくつかの実施形態では、Fc領域はヒトIgG2 Fc領域である。例えばFc領域として野生型Fc領域が可能である;あるいはFc領域は、抗体依存性細胞傷害(ADCC)機能または他のエフェクタ機能を変化させる1つ以上のアミノ酸置換を含むことができる。
【0102】
ヒトIgG2はFcγRIIBとFcγRIIIAの結合に関する最も弱いアイソタイプであるため、Fcを媒介とした架橋とは独立にアゴニスト活性を誘導することができ、したがってFcとFcγRの相互作用を通じた超クラスター化によって生じる潜在的な毒性を減らすことができる。さらに、1つのCD40L三量体が2つのCD40受容体と自然に相互作用する[24]。同様に、ヒトIgG2骨格を有する本明細書に開示されている抗体はCD40とクラスターになって二量体を形成し、CD40L三量体とCD40の間の相互作用を模倣することができる。
【0103】
実施例に示されているように、ヒトIgG2形式であるW3525-1.9.16-P5-uIgG2KとBMK4は、ヒトB細胞上でADCC活性を媒介しないか弱く媒介したため、CD40陽性B細胞上でADCCを開始させることはなかろう。逆に、Fc骨格がヒトIgG1であるBMK5は、用量に依存してヒトB細胞上でADCC効果を効果的に誘導することができる。
【0104】
本開示の抗体をコードする核酸分子
【0105】
いくつかの態様では、本開示は、本明細書に開示されている単離された抗体の重鎖可変領域および/または軽鎖可変領域をコードする核酸配列を含む単離された核酸分子に向けられている。
【0106】
本開示の核酸は、標準的な分子生物学の技術を利用して得ることができる。ハイブリドーマ(例えば下により詳しく記載するように、ヒト免疫グロブリン遺伝子を有するトランスジェニックマウスから調製されるハイブリドーマ)によって発現される抗体については、そのハイブリドーマによって作られる抗体の軽鎖と重鎖をコードするcDNAを、標準的なPCR増幅またはcDNAクローニング技術によって得ることができる。免疫グロブリン遺伝子ライブラリから(例えばファージ提示技術を利用して)得られる抗体については、そのような抗体をコードする核酸をその遺伝子ライブラリから回収することができる。
【0107】
VH領域をコードする単離された核酸は、VHをコードする核酸を、重鎖定常領域(CH1、CH2、およびCH3)をコードする別のDNA分子に機能可能に連結させることによって完全長重鎖遺伝子に変換することができる。ヒト重鎖定常領域遺伝子の配列は本分野で知られており(例えばKabat et al. (1991)、上記文献参照)、これらの領域を包含するDNA断片は標準的なPCR増幅によって得ることができる。重鎖定常領域として、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgE、IgM、またはIgDの定常領域が可能だが、より好ましいのは、IgG1またはIgG4の定常領域である。
【0108】
VL領域をコードする単離された核酸は、VLをコードするDNAを、軽鎖定常領域CLをコードする別のDNA分子に機能可能に連結させることによって完全長軽鎖遺伝子(のほかFab軽鎖遺伝子)に変換することができる。ヒト軽鎖定常領域遺伝子の配列は本分野で知られており(例えばKabat et al.、上記文献参照)、これら領域を包含するDNA断片は標準的なPCR増幅によって得ることができる。好ましい実施形態では、軽鎖定常領域としてカッパまたはラムダ定常領域が可能である。
【0109】
VHセグメントとVLセグメントをコードするDNA断片が得られると、これらDNA断片を標準的組換えDNA技術によってさらに改変し、例えば可変領域遺伝子を完全長抗体鎖遺伝子に変換すること、Fab断片遺伝子に変換すること、またはscFv遺伝子に変換することができる。これらの改変では、VLまたはVHをコードするDNA断片が、別のタンパク質をコードする別のDNA断片(抗体定常領域または可撓性リンカーなど)に機能可能に連結される。「機能可能に連結された」という表現は、この文脈では、2つのDNA断片によってコードされるアミノ酸配列がフレーム内に留まるようにこれら2つのDNA断片が接合されることを意味することが想定されている。
【0110】
本明細書に記載されている抗CD40抗体の重鎖と軽鎖をコードする核酸配列を1つの発現ベクターにクローニングすることができる(ただし各ヌクレオチド配列は、適切なプロモータに機能可能に連結されている)。一実施形態では、重鎖と軽鎖をコードするヌクレオチド配列のそれぞれは別々のプロモータに機能可能に連結される。あるいは重鎖と軽鎖をコードするヌクレオチド配列を単一のプロモータに機能可能に連結させ、重鎖と軽鎖の両方を同じプロモータから発現させることができる。必要なときには、内部リボソーム侵入部位(IRES)を、重鎖をコードする配列と軽鎖をコードする配列の間に挿入することができる。
【0111】
いくつかの実施形態では、抗体の2本の鎖をコードするヌクレオチド配列を2つのベクターにクローニングし、それらを同じ細胞または異なる細胞に導入することができる。2本の鎖が異なる細胞の中で発現するとき、それぞれの鎖を、それを発現している宿主細胞から単離することができ、単離された重鎖と軽鎖は、適切な条件下で混合してインキュベートすることにより抗体を形成することができる。
【0112】
いくつかの実施形態では、本開示は、本明細書に開示されている単離された抗体の重鎖可変領域または重鎖をコードする核酸配列を含む単離された核酸分子に向けられている。
【0113】
いくつかの実施形態では、単離された核酸分子は、単離された抗体の重鎖可変領域をコードしており、
(A)配列番号8に記載の重鎖可変領域をコードする核酸配列;
(B)配列番号11に記載の核酸配列;または
(C)(A)または(B)の核酸配列の相補的な鎖に非常にストリンジェントな条件下でハイブリダイズした核酸配列
からなる群から選択される核酸配列を含む。
【0114】
いくつかの実施形態では、本開示は、本明細書に開示されている単離された抗体の軽鎖可変領域または軽鎖をコードする核酸配列を含む単離された核酸分子に向けられている。
【0115】
いくつかの実施形態では、単離された核酸分子は、単離された抗体の軽鎖可変領域をコードしており、
(A)配列番号9または10に記載の軽鎖可変領域をコードする核酸配列;
(B)配列番号12または13に記載の核酸配列;または
(C)(A)または(B)の核酸配列の相補的な鎖に非常にストリンジェントな条件下でハイブリダイズした核酸配列
からなる群から選択される核酸配列を含む。
【0116】
例えば、核酸分子は配列番号11、12、または13からなる。あるいは核酸分子は、配列番号11、12、または13と少なくとも80%(例えば少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%)一致する配列を共有する。いくつかの特別な実施形態では、一致率は遺伝暗号の縮重から導出され、コードされたタンパク質配列は変化しないままである。
【0117】
代表的な非常にストリンジェントな条件に含まれるのは、5×SSPEと45%ホルムアミドの中における45℃でのハイブリダイゼーションと、0.1×SSCの中における65℃での最終洗浄である。本分野では、同等なストリンジェントな条件は、Ausubel, et al. (Eds.), Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons (1994), pp. 6.0.3~6.4.10に記載されているように、温度とバッファ、または塩の濃度を変化させることを通じて実現できると理解されている。ハイブリダイゼーション条件の変更は、経験的に決定すること、またはプローブのグアノシン/シトシン(GC)塩基対の長さと割合に基づいて正確に計算することができる。ハイブリダイゼーション条件は、Sambrook, et al, (Eds.), Molecular Cloning: A laboratory Manual. Cold Spring Harbor Laboratory Press: Cold Spring Harbor, New York (1989), pp. 9.47~9.51に記載されているようにして計算することができる。
【0118】
宿主細胞
【0119】
本開示に開示されている宿主細胞として、本開示の抗体を発現させるのに適した任意の細胞が可能であり、それは例えば、大腸菌細胞、酵母細胞、昆虫細胞、および哺乳類細胞である。本開示の抗体を発現させるための哺乳類宿主細胞に含まれるのは、チャイニーズハムスター卵巣(CHO細胞)(その中にはUrlaub and Chasin, (1980) Proc. Natl. Acad. ScL USA 77:4216-4220に記載されているdhfr-CHO細胞が含まれ、例えばR. J. Kaufman and P. A. Sharp (1982) J. MoI. Biol. 159:601-621に記載されているようにDHFR選択マーカーとともに使用される)、NSO骨髄腫細胞、COS細胞、およびSP2細胞である。特に、NSO骨髄腫細胞とともに使用するための別の発現系は、WO 87/04462、WO 89/01036、およびEP 338,841に開示されているGS遺伝子発現系である。抗体をコードする組換え発現ベクターが哺乳類宿主細胞の中に導入される場合には、抗体は、宿主細胞の中でその抗体が発現すること、または宿主細胞を増殖させる培地の中にその抗体を分泌させることが可能になるのに十分な期間にわたってその宿主細胞を培養することによって生成する。抗体は、標準的なタンパク質精製法を利用して培地から回収することができる。
【0120】
医薬組成物
【0121】
いくつかの態様では、本開示は、本明細書に開示されている少なくとも1つの抗体またはその抗原結合部分と、医薬として許容可能な担体とを含む医薬組成物に向けられている。
【0122】
組成物の成分
【0123】
医薬組成物は、場合により、医薬として活性な1つ以上の追加成分(別の抗体または薬など)を含有することができる。本開示の医薬組成物は、併用療法において例えば別の免疫刺激剤、抗がん剤、抗ウイルス剤、またはワクチンとともに投与することもできるため、抗CD40抗体はワクチンに対する免疫応答を増強する。医薬として許容可能な担体に含めることができるのは、例えば医薬として許容可能な液体、ゲルまたは固体の担体、水性媒体、非水性媒体、抗微生物剤、等張剤、バッファ、抗酸化剤、麻酔剤、懸濁/分散剤、キレート化剤、希釈剤、アジュバント、賦形剤、または非毒性の補助物質、諸成分の本分野で知られている他のさまざまな組み合わせなどである。
【0124】
適切な成分は、例えば抗酸化剤、充填剤、結合剤、崩壊剤、バッファ、保存剤、滑沢剤、香味剤、増粘剤、着色剤、乳化剤、または安定剤(糖とシクロデキストリンなど)を含むことができる。適切な抗酸化剤は、例えばメチオニン、アスコルビン酸、EDTA、チオ硫酸ナトリウム、白金、カタラーゼ、クエン酸、システイン、メルカプトグリセロール、チオグリコール酸、メルカプトソルビトール、ブチルメチルアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、および/または没食子酸プロピルを含むことができる。本開示に開示されているように、本開示の抗体または抗原結合断片を含有する溶媒の中には組成物を開示するは1つ以上の抗酸化剤(メチオニンなど)を含み、減っている抗体またはその抗原結合断片を酸化することができる。酸化の減少によって結合親和性の低下を阻止すること、または減らすことができ、そのことによって抗体の安定性が増強され、保管期限が延長される。したがっていくつかの実施形態では、1つ以上の抗体またはその抗原結合断片と、1つ以上の抗酸化剤(メチオニンなど)を含む組成物が提供される。本開示によりさらに、抗体またはその抗原結合断片が1つ以上の抗酸化剤(メチオニンなど)と混合されることで抗体またはその抗原結合断片の酸化を阻止することが可能になり、その保管期限を延長させる、および/または活性を増加させる多彩な方法が提供される。
【0125】
さらに説明すると、医薬として許容可能な担体に含めることができるのは、例えば、水性媒体(塩化ナトリウム液、リンゲル液、等張デキストロース液、減菌水、またはデキストロースと乳酸加リンゲル液など)、非水性媒体(植物起源の不揮発性油、綿実油、トウモロコシ油、ゴマ油、またはピーナツ油など)、静菌濃度または静真菌濃度の抗微生物剤、等張剤(塩化ナトリウムまたはデキストロースなど)、バッファ(リン酸塩またはクエン酸塩バッファなど)、抗酸化剤(硫酸水素ナトリウムなど)、局所麻酔剤(塩酸プロカインなど)、懸濁剤と分散剤(カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、またはポリビニルピロリドンなど)、乳化剤(ポリソルベート80(TWEEN(登録商標)-80)など)、封鎖剤またはキレート化剤(EDTA(エチレンジアミン四酢酸)またはEGTA(エチレングリコール四酢酸)、エチルアルコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、水酸化ナトリウム、塩酸、クエン酸、または乳酸など)である。担体として使用される抗微生物剤を、フェノールまたはクレゾール、水銀剤、ベンジルアルコール、クロロブタノール、p-ヒドロキシ安息香酸メチルエステルとp-ヒドロキシ安息香酸プロピルエステル、チメロサール、塩化ベンズアルコニウム、および塩化ベンゼトニウムを含む多回投与容器の中の医薬組成物に添加することができる。適切な賦形剤に含めることができるのは、例えば水、生理食塩水、デキストロース、グリセロール、またはエタノールである。適切な非毒性の補助物質に含めることができるのは、例えば、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝剤、安定剤、溶解性増強剤、または酢酸ナトリウム、モノラウリン酸ソルビタン、オレイン酸トリエタノールアミン、またはシクロデキストリンなどの薬剤である。
【0126】
投与、製剤、および用量
【0127】
本開示の医薬組成物は、それを必要とする対象に、さまざまな経路によって(その非限定的な例に含まれるのは、経口、静脈内、動脈内、皮下、非経口、鼻腔内、筋肉内、頭蓋内、心臓内、心室内、気管内、口腔内、直腸、腹腔内、皮内、局所、経皮、および髄腔内である)、あるいはそうでない場合には移植または吸入によって生体内投与することができる。対象とする組成物を製剤化して固体、半固体、液体、または気体の形態の調製物にすることができ;その非限定的な例に含まれるのは、錠剤、カプセル、粉末、顆粒、軟膏、溶液、座薬、浣腸、注射液、吸入剤、およびエアロゾルである。適切な製剤と投与経路は、意図する用途と治療計画に従って選択することができる。
【0128】
腸投与に適した製剤に含まれるのは、硬質または軟質のゼラチンカプセル、ピル、錠剤(被覆錠剤が含まれる)、エリキシル、懸濁液、シロップ、または吸入剤とその制御放出形態である。
【0129】
非経口投与(例えば注射による投与)に適した製剤は、水性または非水性で、等張で、発熱物質を含まない減菌液体(例えば溶液、懸濁液)を含み、その中の活性成分は、溶解形態、懸濁形態、または他の形態で(例えばリポソームまたは他の微粒子の中に入れて)提供される。そのような液体は、医薬として許容可能な他の成分(抗酸化剤、バッファ、保存剤、安定剤、静菌剤、懸濁剤、増粘剤、および製剤を、想定するレシピエントの血液(または他の関連する体液)と等張にする溶質など)を追加して含むことができる。賦形剤の例に含まれるのは、例えば水、アルコール、ポリオール、グリセロール、植物油などである。そのような製剤で用いるのに適した等張担体の例に含まれるのは、塩化ナトリウム液、リンゲル液、または乳酸加リンゲル液である。同様に、具体的な投与計画(用量、時期、および反復回数が含まれる)は、具体的な個体とその個体の病歴のほか、薬物動態(例えば半減期、クリアランス率など)などの経験的考慮事項に依存することになる。
【0130】
投与の頻度は、治療のコース全体にわたって決定し、調節することができ、増殖性細胞または発がん性細胞の数の減少、そのような新生細胞の減少の維持、新生細胞の増殖の減少、または転移の発達の遅延に基づく。いくつかの実施形態では、投与される用量は、潜在的な副作用および/または毒性を管理するために調節すること、または減らすことができる。あるいは対象とする治療用組成物の持続的連続放出製剤が適切である可能性がある。
【0131】
当業者は、適切な用量が患者ごとに異なる可能性があることがわかるであろう。最適な用量の決定は、一般に、あらゆるリスクまたは有害な副作用に対して治療の利益のレベルをバランスさせることを含むことになる。選択される用量レベルは多彩な因子に依存することになり、その非限定的な例に含まれるのは、具体的な化合物の活性、投与経路、投与時刻、化合物の排出速度、治療の期間、併用される他の薬、化合物、および/または材料、状態の重症度、および患者の種、性別、年齢、体重、状態、全体的健康、および以前の病歴である。化合物の量と投与経路は最終的には医師、獣医師、または臨床医の裁量になるであろうが、一般に用量は、作用部位において実質的に有害または有毒な副作用を生じさせることなく望む効果を実現する局所濃度が実現されるように選択される
【0132】
一般に、本開示の抗体またはその抗原結合部分は、さまざまな範囲で投与することができる。範囲に含まれるのは、1回の投与につき体重1kg当たり約5μg~約100mg;1回の投与につき体重1kg当たり約50μg~約5mg;1回の投与につき体重1kg当たり約100μg~約10mgである。他の範囲に含まれるのは、1回の投与につき体重1kg当たり約100μg~約20mgと、1回の投与につき体重1kg当たり約0.5mg~約20mgである。ある実施形態では、用量は、体重1kg当たり少なくとも約100μg、体重1kg当たり少なくとも約250μg、体重1kg当たり少なくとも約750μg、体重1kg当たり少なくとも約3mg、体重1kg当たり少なくとも約5mg、体重1kg当たり少なくとも約10mgである。
【0133】
いずれにせよ、本開示の抗体またはその抗原結合部分は、それを必要とする対象に必要なときに投与されることが好ましい。投与頻度の決定は、当業者(担当医など)が、治療中の状態、治療中の対象の年齢、治療中の状態の重症度、治療中の対象の健康の全体的状態などを考慮して下すことができる。
【0134】
ある好ましい実施形態では、本開示の抗体またはその抗原結合部分が関与する治療のコースは、選択された薬製品を数週間または数ヶ月間かけて多数回投与することを含むことになろう。より具体的には、本開示の抗体またはその抗原結合部分は、毎日1回、2日ごと、4日ごと、毎週、10日ごと、2週間ごと、3週間ごと、毎月、6週間ごと、2ヶ月ごと、10週間ごと、または3ヶ月ごとに投与することができる。この点に関し、患者の応答と臨床での実際に基づき用量を変えること、または間隔を調節することが可能であることがわかるであろう。
【0135】
用量と計画は、開示されている治療用組成物に関して1回以上の投与を受けたことがある個体では経験的に決定することもできる。例えば本明細書に記載されているようにして製造された治療用組成物を個体に漸増用量で与えることができる。選択された実施形態では、用量は、経験的に判断されるか観察された副作用または毒性に基づいて漸増または漸減または漸次減少させることができる。選択された組成物の有効性を評価するため、具体的な疾患、障害、または状態のマーカーを以前に記載されているようにして追跡することができる。がんについては、マーカーに含まれるのは、触診または目視観察による腫瘍のサイズの直接測定、x線または他のイメージング技術による腫瘍のサイズの間接測定;直接的腫瘍生検と腫瘍サンプルの顕微鏡検査によって評価したときの改善;間接的腫瘍マーカー(例えば前立腺がんに関するPSA)または本明細書に記載されている方法に従って同定された発がん性抗原、痛みまたは麻痺の減少の測定;発話、視覚、呼吸、または腫瘍に関連する他の不具合の改善;食欲増加;または受け入れられている試験によって測定した生活の質の向上、または生存期間の延長である。用量が、個体、新生物のタイプ、新生物のステージ、新生物が個体内の他の位置に転移を始めたかどうか、および過去の治療と現在受けている治療に応じて変わることは当業者には明らかであろう。
【0136】
非経口投与(例えば静脈内注射)に適合した製剤は、本明細書に開示されている抗体またはその抗原結合部分を約10μg/ml~約100mg/mlの濃度で含むことになろう。ある選択された実施形態では、抗体またはその抗原結合部分の濃度は、20μg/ml、40μg/ml、60μg/ml、80μg/ml、100μg/ml、200μg/ml、300、μg/ml、400μg/ml、500μg/ml、600μg/ml、700μg/ml、800μg/ml、900μg/ml、または1mg/mlを含むことになろう。他の好ましい実施形態では、抗体またはその抗原結合部分の濃度は、2mg/ml、3mg/ml、4mg/ml、5mg/ml、6mg/ml、8mg/ml、10mg/ml、12mg/ml、14mg/ml、16mg/ml、18mg/ml、20mg/ml、25mg/ml、30mg/ml、35mg/ml、40mg/ml、45mg/ml、50mg/ml、60mg/ml、70mg/ml、80mg/ml、90mg/ml、または100mg/mlを含むことになる。
【0137】
本開示の応用
【0138】
本開示の抗体、抗体組成物、および方法には、インビトロと生体内での多くの利用可能性があり、その中には例えばCD40の検出または免疫応答の増強が含まれる。例えばこれらの分子を培養物の中の細胞、インビトロの細胞、または生体外の細胞に投与して、またはヒト対象(例えば生体内)に投与して、多彩な状況で免疫を増強することができる。免疫応答を調節すること(例えば増大、刺激、またはアップレギュレーション)ができる。
【0139】
例えば対象には、免疫応答の増強を必要とするヒト患者が含まれる。本開示の方法は、免疫応答(例えばT細胞を媒介とする免疫応答)を増大させることによって治療できる障害を持つヒト患者の治療に特に適している。特別な一実施形態では、本開示の方法は、生体内のがんの治療に特に適している。免疫の抗原特異的増強を実現するため、抗CD40抗体を興味ある抗原とともに投与することが可能だが、抗原は、治療する対象(例えば腫瘍またはウイルスを持つ対象)にすでに存在している可能性がある。CD40に対する抗体を別の薬剤とともに投与するとき、その2つを順番に、または同時に投与することができる。
【0140】
本開示によりさらに、サンプル中のヒトCD40抗原の存在を検出する方法、またはヒトCD40抗原の量を測定する方法が提供され、この方法は、サンプルと対照サンプルを、ヒトCD40に特異的に結合するヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合部分と、抗体またはその一部とヒトCD40の間の複合体の形成を可能にする条件下で接触させることを含む。その後、複合体の形成を検出する。そのとき対照サンプルと比べてサンプルで異なる複合体が形成された場合には、サンプル中にヒトCD40抗原が存在することを示している。さらに、本開示の抗CD40抗体を用いて免疫親和性精製によりヒトCD40を精製することができる。
【0141】
がんを含む障害の治療
【0142】
いくつかの態様では、本開示により、哺乳類で障害または疾患を治療する方法が提供され、この方法は、治療を必要とする対象(例えばヒト)に、本明細書に開示されている抗体またはその抗原結合部分を治療に有効な量で投与することを含む。障害または疾患として、がんが可能である。
【0143】
CD40が関与する多彩ながんを、悪性であるか良性であるか、または、原発であるか二次的であるかに関係なく、本開示に提示されている方法で治療または予防できる可能性がある。がんとして、固形がんまたは血液悪性腫瘍が可能である。そのようながんの例に含まれるのは、肺がん(気管支原性癌(例えば非小細胞肺がん、扁平上皮癌、小細胞癌、大細胞癌、および腺癌)、肺胞細胞癌、気管支腺腫、軟骨性過誤腫(非がん性)、および肉腫(がん性)など);心臓がん(粘液腫、線維腫、および横紋筋腫など);骨がん(骨軟骨腫、軟骨腫、軟骨芽細胞腫、軟骨粘液線維腫、類骨骨腫、巨細胞腫瘍、軟骨肉腫、多発性骨髄腫、骨肉腫、線維肉腫、悪性線維性組織球腫、ユーイング腫瘍(ユーイング肉腫)、および細網細胞肉腫など);脳がん(神経膠腫(例えば多形膠芽腫)、退形成性星細胞腫、星細胞腫、乏突起膠腫、髄芽腫、脊索腫、神経鞘腫、上衣腫、髄膜腫、下垂体腺腫、松果体腫、骨腫、血管芽腫、頭蓋咽頭腫、脊索腫、胚腫、奇形腫、類皮嚢胞、および血管腫など);消化器系のがん(大腸がん、平滑筋腫、類表皮癌、腺癌、平滑筋肉腫、胃腺癌、腸脂肪腫、腸神経線維腫、腸線維腫、大腸のポリープ、および結腸直腸がんなど);肝臓がん(肝細胞腺腫、血管腫、肝細胞癌、線維層板型癌、胆管癌、肝芽腫、および血管肉腫など);腎臓がん(腎臓腺癌、腎細胞癌、副腎腫、および腎盂の移行上皮癌など);膀胱がん;血液がん(急性リンパ性(リンパ芽球性)白血病、急性骨髄腫(骨髄性、骨髄由来、骨髄芽球、骨髄単球性)白血病、慢性リンパ性白血病(例えばセザリー症候群と有毛細胞白血病)、慢性骨髄性(骨髄性、骨髄由来、顆粒球性)白血病、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、B細胞リンパ腫、菌状息肉症、および骨髄増殖性疾患(真性多血症、骨髄線維症、血小板血症、および慢性骨髄性白血病などの骨髄増殖性疾患が含まれる);皮膚がん(基底細胞癌、扁平上皮癌、黒色腫、カポジ肉腫、およびページェット病など);頭頸部がん;目に関連するがん(網膜芽細胞腫と眼内黒色腫など);男性生殖器系のがん(良性前立腺肥大症、前立腺がん、および精巣がん(例えばセミノーマ、奇形腫、胎児性癌、および絨毛膜癌)など);乳がん;女性生殖器系のがん(子宮がん(子宮内膜癌)、子宮頸がん(子宮頸癌)、卵巣のがん(卵巣癌)、陰門癌、膣癌、卵管がん、および胞状奇胎など);甲状腺がん(乳頭状、濾胞性、退形成性、または髄様がんが含まれる);褐色細胞腫(副腎);副甲状腺の非がん性成長;膵臓がん;および血液がん(白血病、骨髄腫、非ホジキンリンパリンパ腫、およびホジキンリンパ腫など)である。特別な一実施形態では、がんは大腸がんである。別の特別な一実施形態では、がんは黒色腫である。
【0144】
いくつかの実施形態では、がんの非限定的な例に含まれるのは、B細胞リンパ腫(低悪性度/濾胞性非ホジキンリンパ腫(NHL);小リンパ球性(SL)NHL;中悪性度/濾胞性NHL;中悪性度びまん性NHL;高悪性度免疫芽球性NHL;高悪性度リンパ芽球性NHL;高悪性度小型非切れ込み核細胞性NHL;巨大病変NHL;マンテル細胞リンパ腫;AIDS関連リンパ腫;およびワルデンシュトレームマクログロブリン血症が含まれる;慢性リンパ性白血病(CLL);急性リンパ芽球性白血病(ALL);有毛細胞白血病;慢性骨髄芽球性白血病;および移植後リンパ増殖性疾患(PTLD)のほか、母斑症に付随する異常な血管増殖、浮腫(脳腫瘍に付随するものなど)、B細胞増殖性障害、およびメイグス症候群である。より具体的な非限定的な例に含まれるのは、再発または難治性のNHL、フロントライン低悪性度NHL、ステージIII/IVのNHL、化学療法耐性NHL、前駆Bリンパ芽球性白血病、および/またはリンパ腫、小リンパ性リンパ腫、B細胞慢性リンパ性白血病、および/または前リンパ球性白血病、および/または小リンパ性リンパ腫、B細胞前リンパ球性リンパ腫、免疫細胞腫、および/またはリンパ形質細胞性リンパ腫、リンパ形質細胞性リンパ腫、辺縁帯B細胞リンパ腫、脾辺縁帯リンパ腫、節外性辺縁帯-MALTリンパ腫、節性辺縁帯リンパ腫、有毛細胞白血病、形質細胞腫、および/または形質細胞骨髄腫、低悪性度/濾胞性リンパ腫、中悪性度/濾胞性NHL、マントル細胞リンパ腫、濾胞中心リンパ腫(濾胞性)、中悪性度びまん性NHL、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、アグレッシブNHL(アグレッシブフロントラインNHLとアグレッシブ再発NHLが含まれる)、自家幹細胞移植後に再発したNHLまたは自家幹細胞移植に対する難治性NHL、原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫、原発性滲出液リンパ腫、高悪性度免疫芽球性NHL、高悪性度リンパ芽球性NHL、高悪性度小型非切れ込み核細胞性NHL、巨大病変NHL、バーキットリンパ腫、前駆(末梢)大顆粒リンパ性白血病、菌状息肉症、および/またはセザリー症候群、皮膚(皮膚性)リンパ腫、退形成性大細胞型リンパ腫、血管中心性リンパ腫である。
【0145】
いくつかの実施形態では、がんのさらなる非限定的な例に含まれるのはB細胞増殖性疾患であり、そのさらなる非限定的な例に含まれるのはリンパ腫(例えばB細胞非ホジキンリンパ腫(NHL))とリンパ性白血病である。このようなリンパ腫とリンパ性白血病に含まれるのは、例えばa)濾胞性リンパ腫、b)小型非切れ込み核細胞性リンパ腫/バーキットリンパ腫(エンデミックバーキットリンパ腫、散発性バーキットリンパ腫、および非バーキットリンパ腫が含まれる)、c)辺縁帯リンパ腫(節外性辺縁帯B細胞リンパ腫(粘膜関連リンパ組織リンパ腫、MALT)、節性辺縁帯B細胞リンパ腫、および脾辺縁帯リンパ腫が含まれる)、d)マントル細胞リンパ腫(MCL)、e)大細胞型リンパ腫(B細胞びまん性大細胞型リンパ腫(DLCL)、びまん性混合細胞型リンパ腫、免疫芽球性リンパ腫、原発性縦隔B細胞リンパ腫、血管中心性リンパ腫-肺B細胞リンパ腫が含まれる)、f)有毛細胞白血病、g)リンパ性リンパ腫、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、h)急性リンパ性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病(CLL)/小リンパ性リンパ腫(SLL)、B細胞前リンパ球性白血病、i)形質細胞新生物、形質細胞骨髄腫、多発性骨髄腫、形質細胞腫、および/またはj)ホジキン病である。
【0146】
免疫応答の刺激
【0147】
いくつかの態様では、本開示により、対象で免疫応答を増強する(例えば刺激する)方法も提供され、この方法は、本開示の抗体またはその抗原結合部分をその対象に投与し、その対象で免疫応答を増強することを含む。例えば対象は哺乳類である。特別な一実施形態では、対象はヒトである。
【0148】
「免疫応答を増強する」という表現、またはその文法的なバリエーションは、哺乳類の免疫系のあらゆる応答を刺激する、誘起する、増加させる、改善する、または増大させることを意味する。免疫応答として、細胞応答(すなわち細胞を媒介とする(細胞傷害性Tリンパ球を媒介とするなど))または液性応答(すなわち抗体を媒介とした応答)が可能であり、一次または二次の免疫応答が可能である。免疫応答の増強の例に含まれるのは、増加したCD4+ヘルパーT細胞活性と、細胞溶解性T細胞の生成である。免疫応答の増強は当業者に知られている多数のインビトロまたは生体内での測定を利用して評価することができ、そのような測定の非限定的な例に含まれるのは、細胞傷害性Tリンパ球アッセイ、サイトカインの放出(例えばIL-2産生またはIFN-γ産生)、腫瘍の退縮、腫瘍を有する動物の生存、抗体産生、免疫細胞増殖、細胞表面マーカーの発現、および細胞毒の測定である。典型的には、本開示の方法は、哺乳類による免疫応答を、治療を受けていない哺乳類、または本明細書に開示されている方法を用いて治療されていない哺乳類による免疫応答と比べて増強する。一実施形態では、免疫応答は、サイトカイン産生、特にIFN-γ産生またはIL-12産生である。別の一実施形態では、免疫応答は、増強されたB細胞増殖である。
【0149】
共刺激受容体に対するアゴニスト抗体について、毒性(サイトカイン放出症候群など)がその臨床応用を制限する。したがって、大きな細胞毒性、またはサイトカインの大量放出を誘導しないようにするには中レベルのアゴニスト活性が好ましかろう。本明細書に開示されている抗体はIL-12の分泌とDCの活性化マーカーの発現を増強するが、BMK4よりも抑制された大きさである。
【0150】
前記抗体またはその抗原結合部分は、単剤療法として単独で使用すること、または化学療法または放射線療法と組み合わせて使用することができる。
【0151】
化学療法との併用
【0152】
前記抗体またはその抗原結合部分は、抗がん剤、細胞毒性剤、または化学療法剤と組み合わせて使用することができる。
【0153】
「抗がん剤」または「抗増殖剤」という用語は、細胞増殖性障害(がんなど)の治療に使用できるあらゆる薬剤を意味し、その非限定的な例に含まれるのは、細胞毒性剤、細胞増殖抑制剤、抗血管新生剤、減量剤、化学療法剤、放射線療法と放射線療法剤、標的抗がん剤、BRM、治療用抗体、がんワクチン、サイトカイン、ホルモン療法、放射線療法、および抗転移剤と免疫療法剤である。上述のような選択された実施形態では、そのような抗がん剤は複合体を含むことができ、開示されている部位特異的抗体と投与前に会合させることができることがわかるであろう。より具体的には、ある実施形態では、選択された抗がん剤は改変された抗体の不対シトシンに連結されて、本明細書に記載の改変された複合体を提供する。したがってそのような改変された複合体は本開示の範囲内であると明示的に考慮される。他の実施形態では、開示されている抗がん剤は、上記の異なる治療剤を含む部位特異的複合体と組み合わせて与えられることになろう。
【0154】
本明細書では、「細胞毒性剤」という用語は、細胞にとって毒性である物質を意味し、細胞の機能を低下させるか阻害する、および/または細胞の破壊を引き起こす。ある実施形態では、その物質は生きている生物に由来する天然分子である。細胞毒性剤の非限定的な例に含まれるのは、細菌の小分子毒素または酵素活性な毒素(例えばジフテリア毒素、緑膿菌の内毒素と外毒素、ブドウ球菌のエンテロトキシンA)、真菌の小分子毒素または酵素活性な毒素(例えばα-サルシン、レストリクトシン)、植物の小分子毒素または酵素活性な毒素(例えばアブリン、リシン、モデッシン、ビスクミン、ヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質、サポリン、ゲロニン、モモリジン、トリコサンチン、オオムギ毒素、アブラギリタンパク質、ジアンチンタンパク質、ヨウシュヤマゴボウタンパク質(PAPI、PAPII、PAP-S)、ツルレイシ阻害剤、クルシン、クロチン、サボンソウ阻害剤、ゲロニン、ミテゲリン、レストリクトシン、フェノマイシン、ネオマイシン、およびトリコテセン)、または動物の小分子毒素または酵素活性な毒素(例えば細胞傷害性RNアーゼ(細胞外膵臓RNアーゼなど);DNアーゼIであり、断片および/またはそのバリアントが含まれる)である。
【0155】
本開示の目的のため、「化学療法剤」は、がん細胞の成長、増殖、および/または生存を非特異的に低下させるか阻害する化合物(例えば細胞毒性剤または静細胞剤)を含む。このような化学剤は細胞の成長または分裂に必要な細胞内プロセスに向けられることがしばしばあるため、一般に、急速に成長して分裂するがん性細胞に対して特に有効である。例えばビンクリスチンは微小管を解重合するため、細胞が有糸分裂に入るのを阻害する。一般に、化学療法剤は、がん性細胞、またはがんになるか発がん性の子孫(例えばTIC)を生成させる可能性の高い細胞を阻害するか阻害するように設計された任意の化学剤を含むことができる。このような薬剤が例えばCHOPまたはFOLFIRIなどの計画においてしばしば投与され、組み合わせで最も有効であることがしばしばある。
【0156】
本開示の部位特異的コンストラクトと(部位特異的複合体の一成分として、または非複合体状態のいずれかで)組み合わせて使用できる抗がん剤の非限定的な例に含まれるのは、アルキル化剤、スルホン酸アルキル、アジリジン、エチレンイミンとメチラメラミン、アセトゲニン、カンプトテシン、ブリオスタチン、カリスタチン、CC-1065、クリプトフィシン、ドラスタチン、デュオカルマイシン、エロイテロビン、パンクラチスタチン、サルコジクチイン、スポンギスタチン、ナイトロジェンマスタード、抗生剤、エンジイン抗生剤、ダイネミシン、ビスホスホネート、エスペラマイシン、色素タンパク質エンジイン抗生剤発色団、アラシノマイシン、アクチノマイシン、オートラマイシン、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カラビシン、カルミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ADRIAMYCIN(登録商標)ドキソルビシン、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシン、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン、ピューロマイシン、ケラマイシン、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシン;抗代謝産物、エルロチニブ、ベムラフェニブ、クリゾチニブ、ソラフェニブ、イブルチニブ、エンザルタミド、葉酸類似体、プリン類似体、アンドロゲン、抗副腎剤、葉酸補充剤(フォリン酸など)、アセグラトン、アルドホスファミドグリコシド、アミノレブリン酸、エニルウラシル、アムサクリン、ベストラブシル、ビサントレン、エダトレキサート、デフォファミン、デメコルシン、ジアジクオン、エフロルニチン、酢酸エリプチニウム、エポチロン、エトグルシド、硝酸ガリウム、ヒドロキシウレア、レンチナン、ロニダイニン、メイタンシノイド、ミトグアゾン、ミトキサントロン、モピダンモール、ニトラエリン、ペントスタチン、フェナメット、ピラルビシン、ロソキサントロン、ポドフィリン酸、2-エチルヒドラジド、プロカルバジン、PSK(登録商標)多糖複合体(JHS Natural Products、ユージーン、オレゴン州)、ラゾキサン;リゾキシン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジクオン;2,2’,2”-トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン(特にT-2毒素、ベラクリンA、ロリジンA、およびアングイジン);ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン;アラビノシド(「Ara-C」);シクロホスファミド;チオテパ;タキソイド、クロラムブシル;GEMZAR(登録商標)ゲムシタビン;6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキサート;白金類似体、ビンブラスチン;白金;エトポシド(VP-16);イホスファミド;ミトキサントロン;ビンクリスチン;NAVELBINE(登録商標)ビノレルビン;ノバントロン;テニポシド;エダトレキサート;ダウノマイシン;アミノプテリン;ゼローダ;イバンドロネート;イリノテカン(Camptosar、CPT-11)、トポイソメラーゼ阻害剤RFS 2000;ジフルオロメチルオルニチン;レチノイド;カペシタビン;コンブレタスタチン;ロイコボリン;オキサリプラチン;細胞増殖を低下させるPKC-アルファ、Raf、H-Ras、EGFR、およびVEGF-Aの阻害剤、および上記の任意のものの医薬として許容可能な塩、酸、または誘導体である。この定義には、腫瘍に対するホルモン作用を調節または阻害する作用のある抗ホルモン剤(抗エストロゲンと選択的エストロゲン受容体モジュレータなど)、副腎においてエストロゲン産生を調節する酵素アロマターゼを阻害するアロマターゼ阻害剤、および抗アンドロゲンのほか;トロキサシタビン(1,3-ジオキソランヌクレオシドシトシン類似体);アンチセンスオリゴヌクレオチド、リボザイム(VEGF発現阻害剤とHER2など);ワクチン、PROLEUKIN(登録商標)rIL-2;LURTOTECAN(登録商標)トポイソメラーゼ(登録商標)トポイソメラーゼ1阻害剤;ABARELIXトポイソメラーゼrmRH;ビノレルビンとエスペラマイシン、および上記の任意のものの医薬として許容可能な塩、酸、または誘導体も含まれる。
【0157】
放射線療法との併用
【0158】
本開示により、抗体またはその抗原結合部分と放射線療法(すなわち腫瘍細胞の中で局所的にDNA損傷を誘導するためのあらゆる機構(ガンマ線、X線、UV放射線、マイクロ波、電子放出など))の組み合わせも提供される。放射性同位体を腫瘍細胞に向けて送達することを利用した併用療法も考慮され、開示されている抗体は、標的に向かう抗がん剤または他の標的化手段と組み合わせて使用することができる。典型的には、放射線療法は約1~約2週間の期間にわたってパルスで投与される。放射線療法は頭頸部がんを持つ対象に約6~7週間にわたって投与することができる。場合により放射線療法は、単回投与として、または多数回の逐次投与として投与することができる。
【0159】
診断
【0160】
本開示により、増殖性障害の検出、診断、またはモニタのためのインビトロと生体内の方法と、発がん性細胞を含む腫瘍細胞を同定するため患者からの細胞をスクリーニングする方法が提供される。このような方法は、治療のために、またはがんの進行をモニタするためにがんを持つ個体を同定することを含んでおり、患者を、または患者から得られたサンプルを(生体内またはインビトロのいずれかで)本明細書に記載されている抗体と接触させ、サンプル中の結合した標的分子または遊離している標的分子の存在または不在、またはそれら標的分子への抗体の会合のレベルを検出することを含む。いくつかの実施形態では、抗体は、本明細書に開示されている検出可能な標識またはレポータ分子を含むことになろう。
【0161】
いくつかの実施形態では、抗体とサンプル内の特定の細胞の会合は、そのサンプルが発がん性細胞を含有している可能性があることを示すことができるため、それは、がんを持つ個体が本明細書に記載されている抗体で有効に治療される可能性があることを示す。
【0162】
サンプルは多数のアッセイ(例えばラジオイムノアッセイ、酵素イムノアッセイ(例えばELISA)、競合結合アッセイ、蛍光イムノアッセイ、イムノブロットアッセイ、ウエスタンブロットアッセイ、およびフローサイトメトリーアッセイ)によって分析することができる。適合性のある生体内での治療診断アッセイまたは診断アッセイは、当業者であれば知っているように、本分野で認められているイメージングまたはモニタリングの技術(例えば磁気共鳴イメージング、コンピュータ化トモグラフィ(例えばCAT走査)、陽電子トモグラフィ(例えばPET走査)、放射線療法、超音波などを含むことができる。
【0163】
医薬パックとキット
【0164】
1回以上の用量の抗体またはその抗原結合部分を収容した1つ以上の容器を含む医薬パックとキットも提供される。ある実施形態では、例えば抗体またはその抗原結合部分を1つ以上の追加薬剤とともに、または1つ以上の追加薬剤なしで含むあらかじめ決められた量の組成物を含有する単位用量が提供される。他の実施形態では、そのような単位用量は、注射のための使い捨てプレフィルド・シリンジに入れて提供される。さらに別の実施形態では、単位用量の中に含まれる組成物は、生理食塩水、スクロースなど;バッファ(リン酸塩など)を含むこと;および/または安定で効果的なpH範囲で製剤化することができる。あるいはある実施形態では、組成物は、適切な液体(例えば減菌水または生理食塩水溶液)を添加して再構成することのできる凍結乾燥粉末として提供することができる。ある好ましい実施形態では、組成物は、タンパク質の凝集を阻害する1つ以上の物質(その非限定的な例に含まれるのはスクロースとアルギニンである)を含む。容器上の、または容器に付随するあらゆる標識は、中にある複合体組成物が選択した新生物疾患の治療に使用されることを示す。
【0165】
本開示により、抗体と場合により1つ以上の抗がん剤からなる単回用量または多数回用量の投与単位を生成させるためのキットも提供される。このキットは、容器と、その容器上の、または容器に付随するラベルまたはパッケージ挿入物を含む。適切な容器に含まれるのは、例えば瓶、バイアル、注射器などである。容器は多彩な材料(ガラスまたはプラスチックなど)で形成することができ、医薬として有効な量の開示されている抗体を複合体形態または非複合体形態で含有する。他の好ましい実施形態では、容器は殺菌アクセスポートを含む(例えば容器として、皮下注射針が貫通するストッパを持つ静脈内溶液バッグまたはバイアルが可能である)。このようなキットは一般に、適切な容器の中に、医薬として許容可能な抗体製剤を含み、場合により同じ容器または異なる容器の中に、1つ以上の抗がん剤を含むことになろう。キットは、診断または併用療法いずれかのため、医薬として許容可能な他の製剤も含むことができる。例えばこのようなキットは、本開示の抗体またはその抗原結合部分に加え、ある範囲の抗がん剤(化学療法薬または放射線療法薬;抗血管新生剤;抗転移剤;標的抗がん剤;細胞毒性剤;および/または他の抗がん剤など)の任意の1つ以上を含むことができる。
【0166】
より具体的には、キットは、開示されている抗体またはその抗原結合部分を追加成分とともに、または追加成分なしで収容した単一の容器を持つこと、または望むそれぞれの薬剤のための別々の容器を持つことができる。複合体を形成するため組み合わせる治療剤が提供される場合には、単一の溶液は、同モルの組み合わせで、または一方の成分を他方よりも過剰にしてあらかじめ混合することができる。あるいはキットの抗体と場合による任意の抗がん剤は、患者に投与する前は別々の容器の中に維持することができる。キットは、医薬として許容可能な減菌バッファまたは他の希釈剤(注射用静菌水(BWFI)、リン酸塩緩衝化生理食塩水(PBS)、リンゲル液、およびデキストロース溶液など)を収容するための第2/第3の容器手段も含むことができる。
【0167】
キットの構成要素が1つ以上の溶液の中に入れて提供されるとき、その溶液は水溶液であることが好ましく、減菌された水溶液または生理食塩水であることが特に好ましい。しかしキットの構成要素は乾燥粉末で提供することができる。試薬または成分が乾燥粉末として提供されるとき、その粉末は適切な溶媒を添加することによって再構成することができる。溶媒は別の容器で提供することも可能であると考えられる。
【0168】
上に簡単に示したように、キットは、抗体またはその抗原結合部分と場合による任意の成分を患者に投与する手段(例えば1つ以上の針、I.V.バッグまたは注射器、それどころか点眼器、ピペット、または他の同様の装置)も含有することができ、その手段から製剤を動物の中に注射または導入するか、身体の疾患領域に適用することができる。本開示のキットは、典型的には、バイアルなどと、市販するため密封される他の構成要素を含有する手段(例えば望むバイアルと他の装置を収容して保持する射出成形またはブロー成形のプラスチック製容器)も含むことになろう。
【0169】
配列表のまとめ
【0170】
多数の核酸とアミノ酸の配列を含む配列表が本出願に添付されている。以下の表A、B、C、およびDは、含まれる配列のまとめを提供する。
【0171】
本明細書に示されている最終リード抗CD40抗体は、「W3525-1.9.16-P5-uIgG2K」と表記するか「W3525」抗体と略す。その親抗体「W3525-1.9.16-uIgG2K」は、W3525とは軽鎖CDR1の中の1個のアミノ酸置換だけ異なっている。CDR、VH、およびVLのアミノ酸配列と、可変領域をコードするヌクレオチド配列が、下記の表に掲載されている。
【0172】
【0173】
【0174】
【0175】
【実施例】
【0176】
このように一般的に記述した本開示は、以下の実施例を参照することによってより容易に理解されよう。しかし実施例は説明のために提示されているのであり、本開示を制限する意図はない。実施例は、下記の実験が実施したすべての実験であるとか、下記の実験だけを実施したことを表わすことは意図していない。
【0177】
実施例1
【0178】
材料、ベンチマーク抗体、および細胞系の調製
【0179】
1.1 材料の調製
【0180】
実施例で使用する市販の材料に関する情報を表1に示す。
【0181】
【0182】
材料コードの情報を下記の表2に示す。
【0183】
【0184】
1.2 抗原の作製
【0185】
抗原W352-hPro1.ECD.hFc(NP_001241.1、21-193)、W352-mPro1.ECD.hFc(NP_035741.2、20-193)、W352-hPro1.ECD.His(NP_001241.1、21-193)、W352-mPro1.ECD.His(NP_035741.2、20-193)、W352-cynoPro1.ECD.His(XP_005569274.1、21-193)、W352-hpro1L1.ECD.mFc(NP_000065.1、47-261)をヒトExpi-293F細胞の中で発現させ、産生させた。これら抗原タンパク質を精製して-80℃で保管した。
【0186】
1.3 ベンチマーク抗体の作製
【0187】
抗ヒトCD40抗体BMK3、BMK4、BMK5、およびBMK7を以下の研究でベンチマーク抗体として使用した。これら抗体の可変ドメインは各特許の中に開示されている配列に従って合成した。その情報が表3にまとめられている。BMK4とBMK7は可変ドメインをヒトIgG2(カッパ軽鎖)定常ドメインと融合させることによって構成したのに対し、BMK3とBMK5は可変ドメインをヒトIgG1(カッパ軽鎖)定常ドメインと融合させることによって構成した。ヒトIgG1/IgG2抗体をアイソタイプ対照抗体として使用した。上記の全抗体を-80℃で保管した。
【0188】
【0189】
1.4 細胞プール/系の作製
【0190】
完全長ヒトCD40(NM_001250.5、NP_001241.1)をトランスフェクトされたCHO-K1細胞を用いてヒトCD40を発現する細胞系W352-CHOK1.hPro1.A7を生成させた。
【0191】
完全長マウスCD40(NP_035741.2)をトランスフェクトされたCHO-K1細胞を用いてマウスCD40を発現する細胞系W352-CHOK1.mPro1.B3を生成させた。
【0192】
不安定な形態のNanolucルシフェラーゼ融合タンパク質(JQ513377.1)の転写を駆動する5コピーのNF-κB応答エレメントを含有するベクターをレポータ細胞プールW352-Ramos.NFkBRE.lucにトランスフェクトした。
【0193】
レポータ細胞プールW352-U937.hPro1.NFkBRE.lucに2つのベクターを同時にトランスフェクトした。一方は完全長ヒトCD40(NM_001250.5、NP_001241.1)を含有し、他方は不安定な形態のNanolucルシフェラーゼ融合タンパク質(JQ513377.1)の転写を駆動する5コピーのNF-κB応答エレメントを含有する。
【0194】
レポータ細胞系Jurkat-NFAT-CD16.A5に2つのベクターを同時にトランスフェクトした。一方はV158バリアントである完全長ヒトFcγRIIIa(NM_000569.7、NP_000560.6)を含有し、他方はホタルルシフェラーゼの発現を駆動するNFAT応答エレメント(DQ904462)を含有する。
【0195】
実施例2
【0196】
抗体ハイブリドーマの作製、スクリーニング、および最適化
【0197】
2.1 免疫化
【0198】
OmniRatはOpen Monoclonal Technology Companyによって開発されたトランスジェニックラットであり、キメラヒト/ラットIgH遺伝子座(ラットCH遺伝子座に連結された天然配置のすべてのヒトDセグメントとJHセグメントである22個のヒトVHを含む)を完全ヒトIgL遺伝子座(Jκ-Cκに連結された12個のVκと、Jλ-Cλに連結された16個のVλ)とともに有する[2-3]。デザイナージンクフィンガーヌクレアーゼを用いて内在性Ig遺伝子座を沈黙させた。OmniRatラットは、野生型動物がラット抗体を産生するのと同じくらい効率的にヒトイディオタイプである抗体を産生することができた。
【0199】
6~8週齢の2匹のOmniRat(1匹は雄、1匹は雌)を、40 μgのW352-hPro1.ECD.hFcとW352-mPro1.ECD.hFcをともに用いて、または交互に用いて免疫化した。免疫化を1または2週間ごとに合計182日間にわたって繰り返した。
【0200】
2.2 血清力価の検出
【0201】
血清サンプル中の抗ヒト/マウスCD40抗体の力価をELISAによって求めた。マイクロプレートを、ウエル1つ当たり0.5μg/mLのW352-hPro1.ECD.HisまたはW352-mPro1.ECD.Hisを含む100μLのコーティングバッファ(0.02MのNa2CO3と0.18MのNaHCO3、pH9.2)で被覆し、4℃で一晩インキュベートした。アッセイの当日、1×PBS/2%BSAでブロックしてから1時間後、希釈したラット血清サンプル(1×PBS/2%BSAを用いて最初は1:100に、次いで3倍に希釈)と陰性対照をプレートに添加し、その後プレートを周囲温度で2時間インキュベートした。1×PBST(0.05%のTween(登録商標)-20を含有するPBS)で3回洗浄した後、HRPで標識したヤギ抗ラットIgG Fcを添加し、周囲温度で1時間インキュベートした。結合しなかった物質を除去した後、TMB(3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン)基質を添加し、反応を2MのHClによって停止させた。450nmでの吸光度をマイクロプレート分光光度計によって検出した。
【0202】
免疫化されたOMTラットの血清力価が表4に示されている。2回目の採血の後、最終抗原ブーストのためにラット#1を選択し、安楽死させてそのリンパ節を回収し、融合に使用した。
【0203】
【0204】
2.3 ハイブリドーマの作製
【0205】
リンパ節をOMTラットから減菌条件下で回収し、解離させて単一の細胞懸濁液の中に入れた。その後、単離された細胞を骨髄腫細胞SP2/0tpと1:1.2の比で混合した。BTX 2001 Electro細胞マニピュレータを製造者の指示に従って用いて電気細胞融合を実施した。融合後、融合室からの細胞懸濁液を、より多くの培地を収容した殺菌チューブにただちに移し、37℃、5%CO2のインキュベータの中で少なくとも24時間インキュベートした。細胞懸濁液を混合し、96ウエルのプレートに移した(1×104個の細胞/ウエル)。96ウエルのプレートを37℃、5%CO2で培養し、定期的にモニタした。ウエル内のクローンが約80%の集密度に到達したとき、抗体のスクリーニングのため100μLの上清を組織培養プレートから96ウエルのアッセイプレートに移した。
【0206】
2.4 抗体のスクリーニングとサブクローニング
【0207】
ハイスループットスクリーニングのプロセスは、ELISAによる一次スクリーニング(ヒトCD40バインダを探すスクリーニング)、FACS/ELISAによる確認スクリーニング(FACSによりヒトとマウスCD40バインダを探すスクリーニング、ELISAによりサルCD40バインダを探すスクリーニング、ヒトCD40/CD40L相互作用を阻止する抗体を探すスクリーニング)、およびNFκBレポータ遺伝子アッセイによる機能的スクリーニング(RGAによってCD40経路を活性化させることのできる抗体を探すスクリーニング)を含んでいた。結合、競合、および機能的活性に基づき、合計30個のハイブリドーマ系がサブクローニングのために同定された。
【0208】
対数期の各ハイブリドーマ細胞系を希釈して半固体HAT培地1.5mL当たり150~200個の細胞にした。この細胞懸濁液をボルテックス・オシレータで軽く混合した後、6ウエルのプレートの1つのウエルに播種した。細胞クラスターが増殖し終わったとき、目視できるそれぞれの単一のコロニーを採取し、10%ウシ胎仔血清を補足したDMEM培地とともに96ウエルのプレートに播種した。2~3日間培養した後、単一クローンの上清を回収して精製した。
【0209】
サブクローニングの後、合計500個の単一クローンが得られ、そのすべてが次のラウンドのハイスループットスクリーニングに進んだ。26個の陽性クローンが精製とシークエンシングのために選択され、さらに特徴づけられた。
【0210】
2.5 抗体の最適化
【0211】
2.5.1 IgG変換
【0212】
配列分析と機能的スクリーニングの後、完全ヒト抗体を構成するための候補を選択した。
【0213】
これら候補の可変ドメインのDNA配列を合成し、ヒトIgG2 Fcを含有するpCIベクターにクローニングした。配列を確認した後、完全ヒト抗体のIgG全体を含有する発現ベクターを抗体作製のための一過性トランスフェクションに使用した。
【0214】
2.5.2 PTMの除去
【0215】
候補W3525-1.9.16-uIgG2K軽鎖のCDR1の中のアミノ酸「NG」が高リスク脱アミド化部位であると特定されたため、アンチセンス変異誘発ヌクレオチドを設計していくつかの変異を「W3525-1.9.16-uIgG2K」軽鎖に導入した。
【0216】
結合親和性とアゴニスト活性の比較に基づき、W3525-1.9.16-P5-uIgG2K(W3525抗体と呼ぶ)が、バリアントからの最終リード抗体として選択された。
【0217】
実施例3
【0218】
W3525抗体のインビトロでの特徴づけ
【0219】
3.1 ヒトCD40結合アッセイ(FACS)
【0220】
W352-CHOK1.hPro1.A7細胞(1×105個の細胞/ウエル)、Raji細胞(1×105個の細胞/ウエル)、またはA431細胞(5×104個の細胞/ウエル)をさまざまな濃度のW3525抗体(100nMから0.0051nMまで3倍段階希釈、または100nMから0.00128nMまで5倍段階希釈)とともに4℃で1時間インキュベートした。1×PBS/1%BSAで洗浄した後、二次抗体としてAlex647で標識したヤギ抗ヒトIgG(1:250)またはR-PEで標識したヤギ抗ヒトIgG(1:150)を添加し、細胞を暗所で4℃にて1時間インキュベートした。抗ヒトCD40抗体BMK4とBMK5を陽性対照として使用した。ヒトIgG1とIgG2アイソタイプ抗体をアイソタイプ対照として使用した。次いで細胞を洗浄し、1×PBS/1%BSAの中に再懸濁させた。細胞のMFIをフローサイトメトリーによって測定し、FlowJoによって分析した。GraphPad Prismを用いて抗体濃度の対数(x軸)に対してMFI(y軸)をプロットした。4パラメータ用量-応答曲線モデルを用いてEC50値を求めた。
【0221】
W352-CHOK1.hPro1.A7細胞、Raji細胞、およびA431細胞へのW3525の結合結果がそれぞれ
図1、2、および3に示されている。W3525は、細胞表面のヒトCD40に強く結合することができ、EC50は1.1nMであり;Raji細胞に強く結合することができ、EC50は0.36nMであり;A431細胞に強く結合することができ、EC50は0.16nMであり、参照抗体と同等以上である。
【0222】
3.2 カニクイザルCD40結合アッセイ(FACS)
【0223】
カニクイザルCD40を一過性にトランスフェクトされた293F細胞(2×105個の細胞/ウエル)をさまざまな濃度のW3525(200nMから0.0102nMまで3倍段階希釈)とともに4℃で1時間インキュベートした。1×PBS/1%BSAで洗浄した後、二次抗体としてR-PEで標識したヤギ抗ヒトIgG(1:150)を添加し、細胞を暗所で4℃にて1時間インキュベートした。細胞を洗浄し、懸濁させ、MFIとEC50の値を上記のようにして求めた。
【0224】
細胞表面のカニクイザルCD40へのW3525の結合結果が
図4に示されている。W3525は細胞表面のカニクイザルCD40への強い結合を示し、EC50は参照抗体と同等な2.4nMであった。
【0225】
3.3 リガンド結合競合アッセイ(FACS)
【0226】
W352-CHOK1.hPro1.A7細胞を1×105個の細胞/ウエルの密度で96ウエルのプレートに播種した。1×PBS/1%BSAの中で希釈した一定濃度のW352-hPro1L1.ECD.mFc(5μg/mL)を細胞に添加した後、段階希釈した抗体(1×PBS/1%BSAの中で60nMから0.0274nMまで3倍段階希釈)を添加し、よく混合した。プレートを4℃で1時間インキュベートした。
【0227】
ヒトCD40/CD40Lの競合結果が
図5に示されている。W3525はCD40への結合に関して抗ヒトCD40Lと効果的に競合でき、IC50が1.4nMであり、100%の阻害率であるのに対し、BMK4はCD40への結合に関してCD40Lと部分的にだけ競合することができる。注:%阻害=(MFI
top-MFI
bottom)/MFI
top×100%。
【0228】
3.4 CD40相同タンパク質結合アッセイ(ELISA)
【0229】
ウエル1つ当たり1μg/mLの組換えヒトCD40、OX40、4-1BB、GITR、またはBCMA細胞外ドメインを含む100μLの被覆バッファ(0.02MのNa2CO3と0.18MのNaHCO3、pH9.2)でプレートを4℃にて一晩かけてあらかじめ被覆した。翌日、プレートを1×PBSTで1回洗浄した。200μLの1×PBS/2%BSAを用いて1時間ブロックした後、1×PBSTを用いてプレートを3回洗浄した。W3525を66.7nMの濃度でプレートに添加し、周囲温度で1時間インキュベートした。抗CD40抗体BMK4とBMK5、抗OX40抗体MEDI0562、抗4-1BB抗体BMS-663513、抗GITR抗体INCAGN01876、および抗BCMA抗体EM801をそれぞれ陽性対照として使用した。ヒトIgG2アイソタイプ抗体をアイソタイプ対照として使用した。インキュベーションの後、1×PBSTを用いてプレートを1×PBSTで3回洗浄した。HRPで標識したヤギ抗ヒトIgG抗体を1×PBS/2%BSAの中で1:5000の比に希釈して添加し、1時間インキュベートした。1×PBSTで6回洗浄した後、100μLのTMB基質を供給することによって発色させ、2MのHClを100μL添加することによって反応を停止させた。マイクロプレート分光光度計を用いて吸光度を450nmと540nmで読んだ。GraphPad Prismを用いて抗体濃度(x軸)に対して吸光度(y軸)をプロットした。全サンプルを二連で調べた。
【0230】
CD40と相同性を共有するTNFRスーパーファミリーのメンバーに対するW3525の結合結果が
図6に示されている。W3525抗体はヒトCD40に特異的に結合することができ、ヒトOX40、4-1BB、GITR、およびBCMAに対する交差反応性はない。
【0231】
3.5 種間タンパク質結合(ELISA)
【0232】
ウエル1つ当たり1μg/mLの組換えヒト、カニクイザル、マウス、イヌ、またはラットCD40細胞外ドメインを含む100μLの被覆バッファでプレートを4℃にて一晩かけてあらかじめ被覆した。次いでELISA手続きを上記のようにして実施した。抗ヒトCD40抗体BMK4とBMK5を陽性対照として使用した。ヒトIgG1とIgG2アイソタイプ抗体をアイソタイプ対照として使用した。
【0233】
ヒト、カニクイザル、マウス、ラット、およびイヌCD40タンパク質に対するW3525の結合を比較した結果が
図7に示されている。W3525はヒトとカニクイザルCD40に対して交差反応性を示すが、マウス、ラット、およびイヌCD40に対しては交差反応性を示さないのに対し、BMK4はイヌCD40に対して交差反応性を示す。
【0234】
3.6 ヒトCD40に対する親和性(SPR)
【0235】
表面プラズモン共鳴(SPR)を使用して十分な結合動態分析を実施し、組換えCD40細胞外ドメインに対するW3525の結合親和性を定量的に明らかにした。SPRにより生体分子相互作用を無標識でリアルタイムに検出することができる。SPRは偏光した光が2つの媒体の界面にある導電性表面に衝突するときに発生する。するとプラズモンと呼ばれる電荷密度波が生成し、共鳴角として知られる特定の角度で反射光の強度がセンサー表面上の質量に比例して低下する。
【0236】
Biacore 8Kを用いてヒトCD40に対するW3525の親和性を求めた。アクチベータを、注入の直前に400mMのEDCと100mMのNHSを混合することによって調製した。アクチベータを10μL/分の流速で用いてCM5センサーチップを420秒間かけて活性化させた。次いでヤギ抗ヒトFc IgG(10mMのNaAc、pH4.5の中に30μg/mL)を10μL/分の流速でチャネルに420秒間注入した。チップを10μL/分の流速の1Mのエタノールアミン-HClによって420秒間かけて脱活性化した。固定化の後、抗体W3525をランニングバッファ(1×HBS-EP+)の中で66.7nMに希釈し、チャネルFc4の表面に10μL/分の流速で30秒間にわたって捕獲した。90秒間の会合相の間、7通りの濃度(0、1.5625、3.125、6.25、12.5、25、および50nM)の分析物W352-hPro1.ECD.Hisを30μL/分の流速で順番にチャネルに注入した後、300秒間解離させた。解離相の後、再生バッファとしてグリシン溶液(10mM、pH1.5)を注入してチップを再生させた。
【0237】
ProteOn XPR36を用いてヒトCD40に対するBMK4とBMK5の親和性を求めた。アクチベータを、注入の直前に40mMのEDCと100mMのスルホ-NHSを混合することによって調製した。アクチベータを30μL/分の流速で用いてGLMセンサーチップを300秒間かけて活性化させた。次いでヤギ抗ヒトFc IgG(10mMのNaAc、pH4.5の中に30μg/mL)を30μL/分の流速でチャネルに300秒間注入した。チップを30μL/分の流速の1Mのエタノールアミン-HClによって300秒間かけて脱活性化した。抗体BMK5をランニングバッファ(1×HBS-EP+)の中で13.34nMに希釈し、L4チャネルに30μL/分の流速で100秒間注入した。チップを90°回転させ、ベースラインが安定するまでランニングバッファで洗浄した。120秒間の会合相の間、6通りの濃度(10、5、2.5、1.25、0.625、および0nM)の分析物W352-hPro1.ECD.Hisを100μL/分の流速で順番にA1~A6チャネルに注入した後、240秒間解離させた。解離相の後、再生バッファとしてグリシン溶液(10mM、pH1.5)を注入してチップを再生させた。再生の後、抗体BMK4をランニングバッファ(1×HBS-EP+)の中で13.34nMに希釈し、流速30μL/分でL3チャネルに80秒間にわたって注入した。チップを90°回転させ、ベースラインが安定するまでランニングバッファで洗浄した。240秒間の会合相の間、6通りの濃度(40、20、10、5、2.5、および0nM)の分析物W352-hPro1.ECD.Hisを100μL/分の流速で順番にA1~A6チャネルに注入した後、600秒間解離させた。各サイクルの後、再生バッファとしてグリシン溶液(10mM、pH1.5)を注入してチップを再生させた。
【0238】
参照チャネルとバッファチャネルのセンサーグラムを試験センサーグラムから差し引いた。実験データを1:1結合モデルに基づいてフィットさせた。
【0239】
29kDaの分子量を使用してW352-hPro1.ECD.Hisのモル濃度を計算した。W352-hPro1.ECD.Hisに対するW3525の動的親和性が表5に示されており、親和性定数は7.12nMである。
【0240】
【0241】
3.7 サルCD40に対する親和性(SPR)
【0242】
Biacore 8Kを用いてカニクイザルCD40に対するBMK4とBMK5の親和性を求めた。固定化のプロセスは上と同じであった。抗体BMK4とBMK5をランニングバッファ(1×HBS-EP+)の中で希釈して33.35nMにし、10μL/分の流速で30秒間にわたってチャネル6と7のFc2の表面にそれぞれ捕獲した。240秒間の会合相の間、7通りの濃度(0、1.563、3.125、6.25、12.5、25、および50nM)の分析物W352-cynoPro1.ECD.Hisを30μL/分の流速で順番にチャネルのFc1とFc2に注入した後、600秒間解離させた。解離相の後、再生バッファとしてグリシン溶液(10mM、pH1.5)を注入してチップを再生させた。
【0243】
Biacore T200を用いてカニクイザルCD40に対するW3525の親和性を求めた。固定化のプロセスはBiacore 8Kと同じであった。抗体W3525をランニングバッファ(1×HBS-EP+)の中で33.35nMに希釈し、10μL/分の流速で60秒間かけてFc2の表面に捕獲した。240秒間の会合相の間、7通りの濃度(0、1.56、3.13、6.25、12.5、25、および50nM)の分析物W352-cynoPro1.ECD.Hisを30μL/分の流速で順番にFc1とFc2に注入した後、300秒間解離させた。各サイクルの後、再生バッファとしてグリシン溶液(10mM、pH1.5)を注入してチップを再生させた。
【0244】
29kDaの分子量を使用してW352-cPro1.ECD.Hisのモル濃度を計算した。W352-cPro1.ECD.Hisに対するW3525の動的親和性が表6に示されており、親和性定数は8.47nMである。
【0245】
【0246】
3.8 NFκBレポーターアッセイ
【0247】
W352-Ramos.NFκBRE.lucとW352-U937.hPro1.NFκBRE.lucという2つのNFκBルシフェラーゼレポータ細胞系を成長させてCD40経路に対するW3525のアゴニスト活性を評価した。細胞を50μLの体積で96ウエルのプレートに4×104個の細胞/ウエルで播種した。その後さまざまな濃度のW3525(100nMから0.00001nMまで10倍段階希釈)を50μLの体積で細胞に添加した。抗ヒトCD40抗体BMK4とBMK5を陽性対照として使用した。ヒトIgG1とIgG2アイソタイプ抗体をアイソタイプ対照として使用した。プレートを37℃、5%CO2で5~6時間インキュベートした。再構成されたルシフェラーゼ基質を各ウエル(50μL/ウエル)に添加してよく混合した。マイクロプレート分光光度計(Envision)を用いてルシフェラーゼの強度を読んだ。GraphPad Prismを用いて抗体濃度の対数(x軸)に対してルシフェラーゼの強度の倍数変化(y軸)をプロットした。4パラメータ用量-応答曲線モデルを用いてEC50値を求めた。この実験を3回実施し、全サンプルを二連で調べた。
【0248】
CD40の活性化を直接実証するため、2つのルシフェラーゼレポータ細胞系(一方はBリンパ腫細胞系Rajiに基づいており、他方は単球性白血病細胞系U937である)を用いてW3525のインビトロでの効力を定量化した。データが
図8と
図9に示されており、効力のデータが表7にまとめられている。W3525は濃度に依存してNFκBの活性化を誘導することができ、BMK4よりも抑制された大きさであることが実証される。
【0249】
【0250】
3.9 インビトロB細胞増殖アッセイ
【0251】
EasySep(商標)ヒトCD19陽性選択キットIIを製造者のプロトコルに従って用いた磁性選択により、ヒトB細胞をヒト末梢血単核細胞(PBMC)から単離した。新たに単離したヒト細胞を100μLの体積で各ウエルに6×104個の細胞/ウエルの密度で添加した。その後さまざまな濃度の抗体(100nMから0.001nMまで10倍段階希釈)を100μLの体積でウエルに添加した。抗ヒトCD40抗体BMK4とBMK5を陽性対象として使用した。ヒトIgG1とIgG2アイソタイプ抗体をアイソタイプ対照として使用した。プレートを37℃、5%CO2で5日間インキュベートした後、B細胞の増殖レベルをCellTiter-Gloにより製造者の指示に従って求めた。マイクロプレート分光光度計(M5e)を用いてルシフェラーゼの強度を読んだ。GraphPad Prismを用いて抗体濃度の対数(x軸)に対して相対光単位(y軸)をプロットした。4パラメータ用量-応答曲線モデルを用いてEC50値を求めた。この実験は2回実施し、すべてのサンプルを三連で調べた。
【0252】
活性化されたT細胞上のCD40Lの代わりにCD40アゴニスト抗体を用いて免疫を増強することができる。CD40で活性化させたB細胞は増幅状態に入り、今度はT細胞応答を増強する。W3525によって刺激したB細胞増殖の結果が
図10に示されており、効力のデータが表8にまとめられている。W3525は、用量に依存してB細胞の増殖を効果的に増強することができ、この効果はBMK4の効果よりも抑制されている。
【0253】
【0254】
3.10 インビトロDC活性化アッセイ
【0255】
ヒトCD14マイクロビーズを製造者のプロトコルに従って用いた磁性選択により、ヒト単球をヒトPBMCから単離した。新たに単離した単球を、800U/mLの組換えヒトGM-CSFと50ng/mLのIL-4を補足した完全RPMI-1640培地の中で2×106個の細胞/mLに調節した。細胞を4または5日間培養して樹状細胞へと誘導した。これら樹状細胞を100μLの体積で96ウエルのプレートに1×105個の細胞/ウエルの密度で播種した。その後さまざまな濃度の抗体(30nMから0.1235nMまで3倍段階希釈、または10nMから0.0412nMまで3倍段階希釈)を100μLの体積でウエルに添加した。抗ヒトCD40抗体BMK4とBMK5を陽性対照として使用した。ヒトIgG1とIgG2アイソタイプ抗体をアイソタイプ対照として使用した。プレートを37℃、5%CO2で3日間インキュベートした。上清を回収してELISAによってIL-12p40を測定し、細胞ペレットを回収してFACSによってCD80、CD86、CD83、および/またはCD54の発現を検出した。この実験を3回実施し、すべてのサンプルを三連で調べた。
【0256】
ヒトIL-12(p40)ELISAセットキットを以下のようにして用いてヒトIL-12p40の分泌をELISAによって測定した:組換えヒトIL-12p40を基準として使用した。段階濃度8、4、2、1、0.5、0.25、0.125、0.0625、および0.03125ng/mLを使用して標準曲線を求めた。ヒトIL-12p40に対して特異的な捕獲抗体を1:250の希釈比で含む50μLの被覆バッファでプレートをあらかじめ被覆した後、プレートを密封し、4℃で一晩インキュベートした。翌日、1×PBSTを用いてプレートを1回洗浄した。1×PBS/2%BSAで1時間ブロックした後、50μLの基準またはサンプルをピペットで各ウエルに移し、周囲温度で2時間インキュベートした。インキュベーションの後、1×PBSTを用いてプレートを3回洗浄した。結合しなかった基質を除去した後、作業用検出液(ビオチニル化された検出抗体とストレプトアビジン-HRPを1:250の希釈比で含む1×PBS/2%BSA)をウエルに添加し、プレートを周囲温度で1時間インキュベートした。インキュベーションの後、1×PBSTを用いてプレートを6回洗浄した。50μLのTMB基質溶液を供給して発色させた後、2MのHClを50μL用いて反応を停止させた。マイクロプレート分光光度計(M5e)を用いて吸光度を450nmと540nmで読んだ。M5eに組み込まれているソフトウエアSoftMax Proを用いて上清の中のIL-12p40の濃度を標準曲線から逆算した。GraphPad Prismを用いて抗体の対数(x軸)に対してIL-12p40の濃度(y軸)をプロットした。4パラメータ用量-応答曲線モデルを用いてシグモイド曲線をフィットさせた。
【0257】
CD80、CD86、CD83、およびCD54の発現を、対応する市販の蛍光抗体を用いてFACSによって測定した。細胞を培養プレートからFACSプレートに移し、1×PBS/1%BSAを一度だけ1回洗浄した。蛍光抗体を1×PBS/1%BSAの中で(CD83については)20倍または(CD80、CD86、およびCD54については)100倍に希釈し、100μL/ウエルで細胞に添加した。プレートを暗所で4℃にて1時間インキュベートした。次いで細胞を洗浄し、1×PBS/1%BSAの中に再懸濁させた。細胞のMFIをフローサイトメータによって測定し、FlowJoによって分析した。GraphPad Prismを用いて抗体の対数(x軸)に対してMFI(y軸)をプロットした。4パラメータ用量-応答曲線モデルを用いてシグモイド曲線をフィットさせた。
【0258】
CD40は単球や樹状細胞などのAPCの表面で発現する。単球と樹状細胞のCD40にCD40LまたはCD40アゴニスト抗体が連結する結果として多種類のサイトカイン(IL-12など)が分泌されるほか、活性化マーカー(CD80、CD86、CD54、およびCD83など)がアップレギュレーションされる。W3525によって誘導されたIL-12p40分泌の結果が
図11に示されている。CD80、CD86、CD54、およびCD83の発現の結果が
図12、13、14、および15に示されている。IL-12p40の放出と、CD80、CD86、CD54、およびCD83の発現に関する効力のデータが表9にまとめられている。W3525は、BMK4と比べると、中レベルのIL-12p40の分泌のほか、CD80とCD86のアップレギュレーションを誘導することができる。
【0259】
【0260】
3.11 抗体依存性細胞傷害アッセイ(ADCC)
【0261】
CD40陽性血液細胞に対するW3525のADCC活性を調べるため、CD40を発現しているB細胞を標的細胞として使用し、Jurkat-NFAT-CD16.A5をエフェクタ細胞として使用した。ヒトCD19マイクロビーズを製造者のプロトコルに従って使用し、ヒト初代B細胞を磁性選択によってヒトPBMCから単離した。ヒト初代B細胞上のCD40の発現をFACSによって調べた。新たに単離したヒトB細胞を50μLの体積で96ウエルのプレートに4×104個の細胞/ウエルの密度で播種した。次いでさまざまな濃度の試験抗体(200nMから0.0001nMまで8倍段階希釈)を50μLの体積でウエルに添加した。抗ヒトCD40抗体BMK4とBMK5を陽性対照として使用した。ヒトIgG1とIgG2アイソタイプ抗体をアイソタイプ対照として使用した。その後、50μLのJurkat-NFAT-CD16.A5細胞をエフェクタ/標的比を2:1にしてウエルに添加した。プレートを5%CO2インキュベータの中で約5時間にわたって37℃に維持した。ADCCにおける抗体生物活性を、NFAT経路活性化の結果として生成するルシフェラーゼによって定量化した。エフェクタ細胞の中のルシフェラーゼ活性をOne-Gloによって定量化し、マイクロプレート分光光度計(Envision)を用いて読んだ。GraphPad Prismを用いて抗体濃度の対数(x軸)に対してルシフェラーゼ強度の倍数変化(y軸)をプロットした。4パラメータ用量-応答曲線モデルを用いてシグモイド曲線をフィットさせた。全サンプルを二連で調べた。
【0262】
CD40は腫瘍細胞(B細胞リンパ腫、黒色腫、および癌腫など)の表面で発現するだけでなく、多種類の正常な細胞(単球、DC、およびB細胞など)の表面でも強く発現するため、ヒト初代B細胞の表面でのW3525のADCC活性を評価した。ヒトB細胞の表面でのCD40の発現をFACSによって確認した。ADCCアッセイの結果が
図16に示されている。Fc骨格がヒトIgG1であるBMK5は、ヒトB細胞の表面でADCC効果を用量に依存して効果的に誘導できることを結果は示している。しかしヒトIgG2形式であるW3525とBMK4は、ヒトB細胞の表面でADCC活性を媒介しないか、弱く媒介した。W3525がCD40陽性B細胞の表面でADCCを開始させる可能性は小さいであろうことを結果は示している。
【0263】
がんの治療では、CD40-アゴニスト抗体の主要な機構は、腫瘍細胞の表面でのCD40の発現を必要とせずにAPCに抗腫瘍T細胞応答を誘導させることである。しかしIgG1抗体はCD40を発現しているDCとB細胞の表面でFcエフェクタ機能(ADCCなど)を誘導するため、抗腫瘍応答が低下する可能性がある。実際、B細胞のカウント数の減少が臨床試験で観察された[22-23]. W3525はヒトIgG2抗CD40抗体であり、CD40陽性の正常細胞に対する潜在的な損傷が回避される。
【0264】
3.12 サイトカイン放出アッセイ
【0265】
臨床試験においてアゴニスト抗体としての抗CD40抗体の最も頻繁に報告されている有害事象はサイトカイン放出症候群(CRS)であった。サイトカイン放出アッセイは、可溶性条件でヒトPBMCを用い、他の刺激なしでW3525のサイトカイン放出プロファイルを評価することが目的であった。
【0266】
ヒトPBMCは、Ficoll-Paque PLUS勾配遠心分離を使用して健康なドナーから新たに単離するか、PBMCの販売者から購入した。精製したPBMCを1×105個の細胞/100μL/ウエルの密度で各ウエルに添加した。W3525と他の抗体をプレートに66.7nMの作業濃度にて100μL/ウエルで添加した。抗CD28抗体TGN1412を陽性対照として使用し、ヒトIgG1とIgG2アイソタイプ抗体をアイソタイプ対照として使用した。LPSを1μg/mLの作業濃度で添加した。プレートを37℃、5%CO2で2日間インキュベートした。上清を回収し、検出の準備ができるまで-80℃で保管した。
【0267】
10セットのサンプルを回収した後、Cytometric Bead Array(CBA)ヒトTh1/Th2/Th17サイトカインキットを製造者のプロトコルに従って使用してサイトカインIL-2、IL-4、IL-6、IL-10、TNF、IFN-γ、およびIL-17Aを測定した。キットは、7種類のサイトカインがあらかじめ捕獲されたビーズ(IL-2、IL-4、IL-6、IL-10、TNF、IFN-γ、およびIL-17A)、7種類のサイトカインがあらかじめ混合された基準、PEで標識した検出抗体、および洗浄バッファを含む。CBAキットは、研究サンプルの中の複数のサイトカインタンパク質を同時に検出するのにビーズアレイ技術を利用する。アッセイ手続きの間、サイトカイン捕獲ビーズと組換え基準または未知のサンプルを混合し、PEで標識した検出抗体とともにインキュベートしてサンドイッチ複合体を形成する。各サンドイッチ複合体のPE蛍光の強度が、そのサイトカインの濃度を明らかにする。フローサイトメータでサンプルを取得した後、各サイトカインの濃度を標準曲線に従って定量することができる。
【0268】
W3525が複数のサイトカインを放出させずにPBMCを活性化させる能力をインビトロサイトカイン放出アッセイによって予測できるかどうかを調べた。インビトロサイトカイン放出アッセイを実施し、サイトカイン放出の潜在的な害を特定した。W3525を可溶形態のヒトPBMCの中でサイトカイン放出に関して評価した。このアッセイは10人のドナーのPBMCを用いて実施した。抗CD28抗体TGN1412とLPSを陽性対照として使用し;ヒトIgG1とIgG2アイソタイプ抗体をアイソタイプ対照として使用した。標準曲線を、サイトカイン濃度をx軸に、MFIをy軸にして対数-対数グラフ用紙にプロットした。GraphPad Prismを用いて基準点を通る最もよくフィットした標準曲線を描いた。各サイトカインの濃度が表10に示されている。結果は、W3525だけを用いた処理がヒトPBMCを刺激してサイトカインIL-2、IL-4、IL-6、IL-10、TNF、IFN-γ、およびIL-17Aを大量に放出させることはなかったことを示している。しかし臨床試験においてサイトカイン放出症候群の問題があったBMK4は、はるかに高レベルのサイトカイン産生(IL-2、IL-4、IL-6、およびTNFなど)を誘導した。すべての値が平均値±SEMで示されている。
【0269】
【0270】
実施例4
【0271】
W3525抗体の生体内特徴づけ
【0272】
4.1 CD40ヒト化マウスの中のMC38マウス大腸癌での生体内有効性研究
【0273】
CD40陰性腫瘍モデルでW3525の抗腫瘍活性を調べるため、腫瘍細胞を接種するのにヒトCD40トランスジェニックCD40-Huマウス(Shanghai Model Organisms)を使用した。0.1mLのDPBS(ダルベッコのリン酸塩緩衝化生理食塩水)に懸濁させた野生型MC38腫瘍細胞(1×105)をCD40-Huマウスの右前脇腹に皮下注射して腫瘍を発達させた。平均腫瘍サイズが約80mm3に到達したとき、腫瘍を有する動物をランダムに6つの研究群に割り当てた。各群は8匹のマウスで構成した。示されている表12の中の研究設計。腫瘍を有するマウスに全抗体を週に2回の頻度で腹腔内投与した。体重と腫瘍の体積を週に2回測定した。あらかじめ決めた健康基準に従ってマウスを安楽死させ、最初の投与の25日後に研究を終えた。
【0274】
【0275】
最良の治療の時点(群分けの21日後)に腫瘍増殖抑制率(TGI)を計算して分析した。腫瘍の体積の結果が
図17に示されており、表13と表14にまとめられている。
【0276】
【0277】
【0278】
4回目の注射後、群WBP352-BMK4.hIgG4K、10mg/kgの動物の体重は10%超減少し、この群の全マウスが不活発かつ低体温であることが見いだされ、それが実験終了まで1週間超継続した。平均体重の結果が表15と
図18に示されている。
【0279】
【0280】
群分けの21日後、W3525が10mg/kgと1mg/kgのTGI値はそれぞれ101.01%と51.24%であった。これら2つの群の平均腫瘍体積は、ヒトIgG2群とは統計的に有意に異なっていた(P<0.05)。W3525が0.1mg/kgのTGI値は26.06%だが、ヒトIgG2群と統計的に異なっていなかった(P>0.05)。これらの結果は、W3525が10mg/kgと1mg/kgの用量で有意な抗腫瘍活性を持つことと;0.1mg/kgの用量で限定された腫瘍増殖抑制活性を持つことを示していた。
【0281】
BMK4が10mg/kgと1mg/kgのTGI値はそれぞれ102.75%と54.79%であった。その一方で、これら群の平均腫瘍体積は、ヒトIgG2群の平均腫瘍体積と統計的に有意な差があった(P<0.05)。これらの結果は、BMK4参照抗体が10mg/kgと1mg/kgで有意な抗腫瘍活性を持つことを示している。
【0282】
しかしBMK4が10mg/kgの群で4回目の投与の後に10%超の体重喪失とともに不活発かつ低体温であることが観察され、これらの徴候は1週間超継続した。これは、この参照抗体がこの用量レベルで毒性である可能性を示している。逆にW3525は、治療を受けたマウスにおいてあらゆる用量レベルでよく忍容された。
【0283】
まとめると、W3525は1mg/kgと10mg/kg両方の用量レベルで腫瘍成長に対して有意な阻害効果を示し、阻害効果は用量に依存する。より重要なのは、W3525で治療した群のすべてのマウスがよく忍容されたが、高用量群のマウスはBMK4治療に対して不耐性を示した。W3525はBMK4(すなわちPfizerのCP-870,893)と同等の抗腫瘍活性を媒介するが、より少ない毒性を誘導する。これは、アゴニスト作用と毒性を分離できる可能性と、臨床試験における治療剤としてのW3525の潜在的な有用性を実証している。
【0284】
4.2 ヒト化CD40マウスにおけるB16F10マウス黒色腫モデルでの抗体の生体内有効性研究
【0285】
この研究では、冷たい腫瘍B16F10黒色腫モデルでW3525の抗腫瘍活性を評価した。0.1mLのDPBSに懸濁させたB16F10腫瘍細胞(5×106個)をヒトCD40トランスジェニックCD40-Huマウスの右前脇腹に皮下注射して腫瘍を発達させた。平均腫瘍サイズが約60~80mm3に到達したとき、腫瘍を有する動物をランダムに7つの研究群に割り当てた。各群は7匹のマウスで構成した。示されている表16の中の研究設計。すべての抗体を、腫瘍を有するマウスにQ3dの頻度で腹腔内投与した。体重と腫瘍体積もQ3dで測定した。マウスをあらかじめ決めた健康基準に従って安楽死させ、最初の投与の24日後に研究を終えた。
【0286】
【0287】
実験全体を通じてすべてのマウスで腫瘍成長と体重を注意深くモニタし、3日ごとに腫瘍のサイズを測定して記録した。最良の治療時点(群分け後の12日後)で腫瘍増殖抑制率(TGI)を計算し、分析した。腫瘍の体積の結果が
図19に示され、表17と表18にまとめられている。
【0288】
【0289】
【0290】
この研究では明らかな体重減少は観察されなかった。平均体重の結果を表19と
図20に示す。
【0291】
【0292】
マウスの生存率も求め、
図21に示した。W3525は、3と10mg/kgの用量で、B16F10腫瘍を移植されたマウスの生存期間を延長させた
【0293】
群分けの12日後、W3525が3mg/kgと10mg/kgのTGI値はそれぞれ71.45%と76.43%であった。これら2つの群の平均腫瘍体積はDPBS群と統計的に有意に異なっていた(P<0.05)。W3525が1mg/kgのTGI値は25.61%だが、DPBS群と統計的に異なっていなかった(P>0.05)。これらの結果は、W3525が10mg/kgと3mg/kgの用量で有意な抗腫瘍活性を持ち;1mg/kgの用量で限定された腫瘍増殖抑制活性を持つことを示していた。
【0294】
APX005Mが1mg/kg、3mg/kg、および10mg/kgのTGI値は、それぞれ16.05%、23.14%、および32.25%であった。しかしこれらの群の平均腫瘍体積はDPBS群の平均腫瘍体積と統計的に有意な差がなかった(P<0.05)。これらの結果は、参照抗体が上記の3つの用量で抗腫瘍活性をほとんど持たないか弱い抗腫瘍活性を持つことを示している。
【0295】
W3525はB16F10腫瘍モデルにおいてAPX005Mよりも有効であり、腫瘍の成長を抑制しただけでなく、腫瘍を有するマウスの生存率も改善したことを結果は実証している。
【0296】
CP-870,893とCDX-1140を除くそれ以外のCD40アゴニスト抗体は、野生型ヒトIgG1であるか、FcγRに特異的に結合する能力を増強するため修飾されたFcを持つヒトIgG1であるため、そのアゴニスト活性のためには一般にFcγR架橋を必要とする。CP-870,893は強いアゴニスト活性を持つ完全ヒトIgG2であり、初期の臨床試験において有望な治療有効性を示した[15-16]。しかしCP-870,893は治療濃度域が制限されていて最大耐量が0.2mg/kgである。3件の用量制限毒性事象が観察されており、その中には0.3mg/kgでの静脈血栓塞栓症、0.3mg/kgでのグレード3の頭痛、および0.2mg/kgでのグレード3の血清トランスアミナーゼの一過性上昇が含まれる。CP-870,893治療に伴う最も一般的な有害事象はサイトカイン放出症候群(グレード1とグレード2)であり、その中には寒気、悪寒、および発熱が含まれていた(NCT02225002)。アクセス可能な腫瘍はCP-870,893(NCT02665416)の腫瘍内注入によって制御されるが、この投与経路がその臨床応用を大きく制限してきた。逆に、CDX-1140は、ヒトIgG2形式である別のCD40アゴニスト抗体であり、カニクイザルにおいて良好な安全性プロファイルを持つが、ヒトCD40に対しては低親和性(約120nM)であるため、DCを活性化させるアゴニスト活性が制限された。ADC-1013も良好な安全性プロファイルを示したが、臨床研究(NCT02379741)において単剤として使用したときの治療有効性は限定されていた。増強されたCD32b結合性を持つヒトIgG1であるAPX-005Mについては、以前に治療されていない転移性膵臓腺癌を持つ患者の治療のための2相臨床試験(NCT03214250)で有望な有効性が観察されたが、安全性も大きな問題である。
【0297】
W3525-1.9.16-P5-uIgG2Kは、野生型ヒトIgG2定常領域を持つ完全ヒトアゴニスト抗体である。この抗体はCD40LがCD40に結合するのを阻止するのに対し、CP-870,893はCD40LがCD40に結合するのを阻止できなかった。CD40L阻止抗体はCD40L非阻止抗体よりも強力なCD40アゴニスト活性を持つ傾向があることが示されている[21]。
【0298】
本開示を、その精神または中心的属性から逸脱することなく、他の具体的な形態に具体化できることが当業者にはさらにわかるであろう。本開示のこれまでの説明は、その代表的な実施形態だけを開示しており、他のバリエーションが本開示の範囲内であるとして考慮されることが理解されるべきである。したがって本開示が、本明細書で詳細に記述した特定の実施形態に限定されることはない。むしろ、本開示の範囲と内容を示すものとして添付の請求項を参照すべきである。
【0299】
参考文献
【0300】
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【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2023-04-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
CD40に結合する単離された抗体またはその抗原結合部分であって、
配列番号1を含む
重鎖CDR(HCDR
)1;
配列番号2を含むHCDR2;
配列番号3を含むHCDR3
;
配列番号4または7を含む
軽鎖CDR(LCDR
)1;
配列番号5を含むLCDR2;および
配列番号6を含むLCDR3
;
を含む、単離された抗体またはその抗原結合部分。
【請求項2】
(A)重鎖可変領域(VH)であって:
(i)配列番号8に記載のアミノ酸配列を含む;
(ii)配列番号8と少なくとも85%、90%、または95%一致するアミノ酸配列を含む;
重鎖可変領域(VH)、および/または
(B)軽鎖可変領域(VL)であって:
(i)配列番号9または10に記載のアミノ酸配列を含む;
(ii)配列番号9または10と少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%一致するアミノ酸配列を含む
;
軽鎖可変領域(VL)、
を含む、請求項
1に記載の単離された抗体またはその抗原結合部分。
【請求項3】
前記単離された抗体がヒトIgG定常
領域をさらに含む、請求項1
または2に記載の単離された抗体またはその抗原結合部分。
【請求項4】
前記ヒトIgG定常
領域が、ヒトIgG1定常
領域またはヒトIgG2定常
領域であ
る、請求項
3に記載の単離された抗体またはその抗原結合部分。
【請求項5】
前記ヒトIgG定常領域が、ヒトIgG2定常領域である、請求項4に記載の単離された抗体またはその抗原結合部分。
【請求項6】
前記ヒトIgG定常領域が、野生型であるか、または抗体依存性細胞性細胞傷害(ADCC)機能もしくは他のエフェクタ機能を変化させる1つ以上のアミノ酸置換を含む、請求項3~5のいずれか1項に記載の単離された抗体またはその抗原結合部分。
【請求項7】
前記抗体がCD40に対するアゴニスト抗体である、請求項1~
6のいずれか1項に記載の単離された抗体またはその抗原結合部分。
【請求項8】
前記抗体が、キメラ抗体、ヒト化抗体、または完全ヒト抗体である、請求項1~
7のいずれか1項に記載の単離された抗体またはその抗原結合部分。
【請求項9】
配列番号14のアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号15のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、請求項1に記載の単離された抗体またはその抗原結合部分。
【請求項10】
請求項1~
9のいずれか1項に記載の単離された抗体の重鎖可変領域および/または軽鎖可変領域をコードする核酸配列を含む、単離された核酸分子。
【請求項11】
請求項
10に記載の核酸分子を含む、ベクター。
【請求項12】
請求項
11に記載のベクターを含む、宿主細胞。
【請求項13】
請求項1~
9のいずれか1項に記載
の抗体またはその抗原結合部分と、医薬として許容可能な担体とを含む、医薬組成物。
【請求項14】
がんの治療または予防において使用するための、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記抗体またはその抗原結合部分をコードする発現ベクターを含む宿主細胞を適切な条件下で培養する工程;と、
その細胞培養物から前記抗体またはその抗原結合部分を回収する工程とを含む、
請求項1~
9のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合部分を作製する方法。
【請求項16】
前記抗体またはその抗原結合部
分を対象に投
与することを含む、
前記対象
においてCD40に関連する免疫応答の調節
に使用するための、請求項1~9のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合部分。
【請求項17】
前記抗体またはその抗原結合部分を有効量で対象に投与することを含む、前記対象においてT細胞の活性化および/または腫瘍細胞の増殖を阻害するための、請求項1~9のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合部分。
【請求項18】
がんの治療または予防に使用するための、請求項1~
9のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合部分。
【請求項19】
前記がんが、乳がん、肺がん、大腸がん、卵巣がん、黒色腫、膀胱がん、腎細胞癌、肝臓がん、前立腺がん、胃がん、膵臓がん
、非ホジキンリンパ腫、慢性リンパ性白血病、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、および多発性骨髄腫から選択される、請求項18に記載の抗体またはその抗原結合部分。
【請求項20】
前記がんが、大腸がんまたは黒色腫である、請求項
19に記載の抗体またはその抗原結合部分。
【請求項21】
請求項1~
9のいずれか1項に記載
の抗体またはその抗原結合部分を含む容器を含む
、キット。
【国際調査報告】